1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月十九日(水曜日)
午前十時四十一分開議
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議事日程第十四号
昭和三十三年三月十九日
午前十時開議
第一 刑法の一部を改正する法律案
(趣旨説明)
第二 日本国とソヴィエト社会主義
共和国連邦との間の通商に関する
条約の締結について承認を求める
の件(衆議院送付)
(委員長報告)
第三 売春防止法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
(委員長報告)
第四 婦人補導院法案(内閣提
出、衆議院送付)(委員長報告)
第五 製造たばこの定価の決定又は
改定に関する法律の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議
院送付) (委員長報告)
第六 昭和二十八年度から昭和三十
二年度までの各年度における国債
整理基金に充てるべき資金の繰入
の特例に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出、衆議院送
付) (委員長報告)
第七 漁船再保険特別会計における
特殊保険及び給与保険の再保険事
業について生じた損失をうめるた
めの一般会計からする繰入金に関
する法律案(内閣提出、衆議院送
付) (委員長報告)
第八 繭糸価格安定法の一部を改正
する法律案(内閣提出、衆議院送
付) (委員長報告)
第九 旅館業法の一部を改正する法
律案(内閣提出)(委員長報告)
第一〇 身体障害者福祉法の一部を
改正する法律案(内閣提出)
(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/0
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001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告
は、朗読を省略いたします。
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去る十四日議長において、左の常任委
員の辞任を許可した。
内閣委員 吉田 法晴君
地方行政委員(国会法第四十二
条第二項の規定
による辞任)
郡 祐一君
同 松岡 平市君
法務委員 松野 鶴平君
大蔵委員 伊能繁次郎君
文教委員 林田 正治君
同 矢嶋 三義君
建設委員 斎藤 昇君
予算委員 苫米地英俊君
同 西田 信一君
同 竹中 恒夫君
決算委員 青柳 秀夫君
同 千田 正君
議院運営委員 下條 康麿君
同日議長において、常任委員の補欠を
左の通り指名した。
内閣委員 矢嶋 三義君
地方行政委員(国会法第四十二
条第三項の規定
によるもの)
成田 一郎君
同 伊能繁次郎君
法務委員 斎藤 昇君
大蔵委員 林田 正治君
文教委員 松岡 平市君
同 吉田 法晴君
建設委員 松野 鶴平君
予算委員 武藤 常介君
同 青柳 秀夫君
同 千田 正君
決算委員 下條 康麿君
同 竹中 恒夫君
議院運営委員 西田信一君
同日決算委員会において当選した理事
は左の通りである。
理事 堀本 宜実君(大谷贇雄君の
補欠)
同日内閣から左の議案を提出した。
よって議長は即日これを農林水産委員
会に付託した。
中央卸売市場法の一部を改正する法
律案
同日衆議院から左の内閣提出案を受領
した。よって議長は即日これを委員会
に付託した。
日本国とインドネシア共和国との間
の平和条約の締結について承認を求
めるの件
日本国とインドネシア共和国との間
の賠償協定の締結について承認を求
めるの件
旧清算勘定その他の諸勘定の残高に
関する請求権の処理に関する日本国
政府とインドネシア共和国政府との
間の議定書の締結について承認を求
めるの件
外務委員会に付託
国立学校設置法の一部を改正する法
律案 文教委員会に付託
繭糸価格安定法の一部を改正する法
律案 農林水産委員会に付託
企業合理化促進法の一部を改正する
法律案
合成ゴム製造事業特別措置法の一部
を改正する法律案
商工委員会に付託
日本道路公団法の一部を改正する法
律案
道路法の一部を改正する法律案
道路整備緊急措置法案
建設委員会に付託
同日衆議院から、同院において修正議
決した左の内閣提出案を受領した。
よって議長は即日これを地方行政委員
会に付託した。
公営企業金融公庫法の一部を改正す
る法律案
同日議長は、内閣から予備審査のため
送付された左の議案を逓信委員会に付
託した。
放送法の一部を改正する法律案
同日衆議院から予備審査のため左の議
案が送付された。よって議長は即日こ
れを大蔵委員会に付託した。
酒税の保全及び酒類業組合等に関す
る法律の一部を改正する法律案(横
山利秋君外十三名提出)
同日可決した左の内閣提出案は、即日
これを衆議院に送付した。
輸出保険法の一部を改正する法律
案
郵便振替貯金法の一部を改正する法
律案
同日本院は、衆議院送付の左の内閣提
出案を可決した旨衆議院に通知した。
簡易生命保険法の一部を改正する法
律案
郵便切手類売さばき所及び印紙売さ
ばき所に関する法律の一部を改正す
る法律案
同日衆議院から、本院の送付した左の
内閣提出案は、同院においてこれを可
決した旨の通知書を受領した。
国庫出納金等端数計算法の一部を改
正する法律案
同日衆議院議長から、左の法律の公布
を奏上した旨の通知書を受領した。
国庫出納金等端数計算法の一部を改
正する法律
同日左の法律の公布を奏上し、その旨
衆議院に通知した。
簡易生命保険法の一部を改正する法
律
郵便切手類売さばき所及び印紙売さ
ばき所に関する法律の一部を改正す
る法律
同日本院は、衆議院議員高碕達之助君
を日ソ漁業問題交渉における日本政府
代表に任命することができると議決し
た旨内閣に通知した。
同日内閣総理大臣から議長宛、郵政大
臣官房文書課長上原一郎君(去る十三
日議長承認のとおり)を第二十八回国会政府委員に任命した旨の通知書を受
領した。
同日内閣を経由して土地調整委員会委
員長から土地調整委員会設置法第十九
条の規定に基く左の報告書を受領し
た。
昭和三十二年度土地調整委員会年次
報告書
去る十五日議長において、左の常任委
員の辞任を許可した。
予算委員 岸 良一君
同日議長において、常任委員の補欠を
左の通り指名した。
予算委員 加藤 正人君
同日内閣から左の議案を提出した。
よって議長は即日これを農林水産委員
会に付託した。
森林開発公団法の一部を改正する法
律案
同日内閣から予備審査のため左の議案
が送付された。よって議長は即日これ
を文教委員会に付託した。
義務教育諸学校施設費国庫負担法案
一昨十七日議長において左の常任委
員の辞任を許可した。
内閣委員 森中 守義君
逓信委員 松本治一郎君
予算委員 武藤 常介君
同 田村 文吉君
同 豊田 雅孝君
決算委員 竹中 勝男君
同日議長において常任委員の補欠を
左の通り指名した。
内閣委員 松本治一郎君
逓信委員 森中 守義君
予算委員 鹿島守之助君
同 中山 福藏君
同 岸 良一君
決算委員 鈴木 壽君
同日議員から左の議案を提出した。
よって議長は即日これを社会労働委員
会に付託した。
労働基準法等の一部を改正する法律
案(藤田藤太郎君外六名発議)
けい肺及び外傷性せき髄障害に関す
る特別保護法の一部を改正する法律
案(大矢正君外六名発議)
同日委員長から左の報告書を提出し
た。
売春防止法の一部を改正する法律案
可決報告書
婦人補導院法案可決報告書
昨十八日議長において、左の常任委員
の辞任を許可した。
文教委員 榊原 亨君
社会労働委員 高野 一夫君
予算委員 鹿島守之助君
同 加藤 正人君
同 加賀山之雄君
同日議長において、常任委員の補欠を
左の通り指名した。
文教委員 高野 一夫君
社会労働委員 榊原 亨君
予算委員 苫米地英俊君
同 豊田 雅孝君
同 田村 文吉君
同日文教委員会において当選した理事
は左の通りである。
理事松永忠二君(竹中勝男君の補
欠)
同日内閣から予備審査のため左の議案
が送付された。よって議長は即日これ
を地方行政委員会に付託した。
地方自治法の一部を改正する法律案
同日議長は、左の議員提出案を予備審
査のため衆議院に送付した。
労働基準法等の一部を改正する法律
案(藤田藤太郎君外六名発議)
けい肺及び外傷性せき髄障害に関す
る特別保護法の一部を改正する法律
案(大矢正君外六名発議)
同日委員長から左の報告書を提出し
た。
製造たばこの定価の決定又は改定に
関する法律の一部を改正する法律案
可決報告書
昭和二十八年度から昭和三十二年度
までの各年度における国債整理基金
に充てるべき資金の繰入の特例に関
する法律の一部を改正する法律案可
決報告書
日本国とソヴィエト社会主義共和国
連邦との間の通商に関する条約の締
結について承認を求めるの件議決報
告書
漁船再保険特別会計における特殊保
険及び給与保険の再保険事業につい
て生じた損失をうめるための一般会
計からする繰入金に関する法律案可
決報告書
繭糸価格安定法の一部を改正する法
律案可決報告書
旅館業法の一部を改正する法律案可
決報告書
身体障害者福祉法の一部を改正する
法律案可決報告書
一昨十七日委員長から提出した左の実
地調査のための委員派遣を要求書記載
の通り議長は、昨十八日これを承認し
た。
委員派遣承認要求書
一、目的 中央卸売市場法の一部を
改正する法律案の審査に資するた
め、実情を調査し、関係者の意見
を聴取する。
一、派遣委員
第一班
田中 啓一 堀 末治
東 隆
第二班
堀本 宜実 河合 義一
上林 忠次
第三班
雨森 常夫 安部キミ子
北條 雋八
一、派遣地
第一班愛知県
第二班大阪府
第三班 広島県
一、期間
第一班昭和三十三年三月二十一
日から三月二十三日まで三日間
第二班 昭和三十三年三月二十一
日から三月二十三日まで三日間
第三班 昭和三十三年三月二十日
から三月二十三日まで四日間
一、費用 概算七八、〇〇〇円
右本委員会の決議を経て参議院規
則第百八十条の二により要求する。
昭和三十三年三月十七日
農林水産 重政 庸徳
委員長
参議院議長松野鶴平殿
昨十八日内閣から、地方財政法第三十
条の二の規定による左の報告書を受領
した。
地方財政の状況報告書
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/1
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002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、刑法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
本案について国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。唐澤法務大臣。
〔国務大臣唐澤俊樹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/2
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003・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 刑法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
政府におきましては、かねてから汚職と暴力の追放に努力して参ったのでありますが、最近におけるこれら事犯の趨勢にかんがみまして、刑法の一部に改正を加えるの必要を認め、ここにいわゆるあっせん贈収賄罪に関する規定の新設並びに若干の暴力取締りのための規定の新設及び改正を内容とするこの法律案を提出することといたしたのであります。
この法律案の骨子は次の通りであります。まず、あっせん収賄罪に関する規定は、事柄の性質にかんがみまして、一挙にそのすべてを処罰するような広範囲なものとすることには、かえって各般の弊害を伴うことを考慮いたしまして、明白に悪質と見られる行為だけを取り上げ、かつ乱用のおそれのないようにするため、すでに刑法で用いならされている明確な概念によることといたしました。すなわち公務員の行なったあっせん行為のうちでも、請託を受けて他の公務員に職務上の不正の行為をさせ、または相当の行為をさせないようにあっせんすること、またはあっせんしたことだけを対象とするものといたしました。また、そのことに関する報酬だけが、わいろとなることを明らかにいたしておるのであります。なお、これに対応する贈賄罪の規定を設け、また、国外で犯されたあっせん収賄罪をも処罰することといたしました。
次に、暴力取締りに関する規定は、第一に、被害者またはその親族等に対しまして一面会を強請するなどの、いわゆるお礼参りの行為を新たに処罰することといたしました。第二に、強姦罪、強制わいせつ罪等は現在親告罪となっておりますが、これらのうち、二人以上の者が現場において共同して犯した場合には、これを非親告罪といたしました。第三には、新たにいわゆる持凶器集合罪ともいうべきものを新設いたしまして二人以上の者が他人の生命、身体または財産に対して共同して害を加える目的で集合いたしました場合には、凶器を準備して集合した者、凶器の準備があることを知って集合した者及び凶器を準備し、もしくはその準備があることを知って集合させた者を処罰することといたしました。第四に、現在親告罪となっております器物損壊罪及び私文書投棄罪を非親告罪といたしたことなどであります。
以上が刑法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/3
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004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次、発言を許します。大川光三君。
〔大川光三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/4
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005・大川光三
○大川光三君 ただいま議題となりました刑法の一部を改正する法律案につき、私は自由民主党を代表いたしまして総理大臣並びに法務大臣に対し数点の質問を行わんとするものであります。
まず、あっせん収賄罪に関連してただしたい第一点は、岸総理は、汚職の根本的防止策についていかなる構想を持っておられるかという点であります。昨年五月、岸総理は、汚職、暴力、貧乏の三悪追放を政治目標として提唱せられました。そして燃え上る世論にこたえ、汚職追放の一環として、ここに多年の懸案であったあっせん贈収賄罪の法案を提出されましたその熱意と努力に対しまして、私は深甚の敬意を表するものであります。しかしながら、およそ汚職の追放は、取締り法規の制定や、刑罰の強化だけでは、とうていその目的は達せられない。汚職のよって起るその源をたずね、抜本的な対策を講ずるにあらざれば、汚職追放の悲願も百年河清を待つにひとしいと思量いたすのであります。その意味において、汚職を防止するためには、世論の喚起をはかり、汚職に対し、全国民が指弾の態勢を確立しなければならぬ。また、公務員の待遇を改善し、もって優秀なる人物を吸収するとともに、他面、汚職の必要を失わしめ、ここに刑罰以上の成果をおさめなければならない。さらに進んでは、信賞必罰を励行して、清廉の士を抜擢することの気風を養うことが肝要であると存じます。その他行政管理の適正化、事務機構、権限の合理化、行政上の欠陥是正等の諸施策を必要と考えまするが、岸総理は、これら一連の汚職防止の根本策をいかに考えておられるか、具体的にその所見を承わりたいのであります。
次に第二点としてあっせん収賄罪の制定によって、民主政治を後退せしめる憂いはないかという点であります。公職選挙法によって選ばれた各種の議員が、選挙区民の要望にこたえ、行政官庁その他にあっせんし、民意を反映せしめることは、議員に課せられた一つの任務であり、自由なる政治活動の範囲であります。しこうして本法案では、その議員のあっせん行為を禁止するのではない、あっせん行為に対する不当なる対価の収受ないしは要求、約束を禁止するものであります。しかもこれによって正しい政治、清潔なる政治を行い、すべての公務員が国民の奉仕者として廉潔性を保持するというのが、この法の精神であると存じます。しかるに、世上往々にしてこのあっせん収賄罪の制定が、あたかも議員活動を極度に制圧し、民主政治を後退せしめるものであるとの説をなす者がある。政府は、果して本法案が民主政治を後退せしめる憂いなしとの確信を有せられるやいなや、岸総理の御所見を明らかにされたいのであります。
次に、第三点として、あっせん収賄罪に関する検察の運用について、法務大臣にお伺いいたします。刑罰はしばしば両刃の剣にたとえられます。一方では、社会悪をえぐり出すための鋭利なメスとして作用するが、他方、その範囲の定め方や運用の仕方いかんによっては、かえって多くの害悪を流し、個人の人権を不当に抑圧する凶刃ともなりかねないからであります。従って新しい社会的必要に応ずるための刑罰法規を制定するに当っては、あるいはこれによってもたらされるかもしれない弊害についても、常に深甚の考慮を怠ってはならない。ことに、あっせん収賄行為は、適法な役務の提供に対する正当なる報酬の収受との区別が必ずしも容易ではない場合が多い、どこにその可罰性の一線を引くかは、かなり困難な問題であると存じますが、果してその配慮がなされておるかどうか。ことにわいろ罪というものは、その性質上、政治的に乱用されると、恐るべき検察ファッショの弊を招来しないとは保障しがたいのであります。
およそ議員の身分を有する者が、犯罪の嫌疑を受けた事実が広く報道されまするならば、罪はなくても、すでに致命的な打撃をこうむるのであります。戒むべきは軽率なる検挙であり、捜査権の乱用であると考えまするが、法務大臣は、これらの諸点について、いかなる決意と心がまえを有せられるかを伺いたいのであります。
次に第四点としてあっせん収賄罪の構成要件について伺います。新設されたあっせん収賄罪の法案によりますると、請託を受けたことと、不正の行為をさせ、または相当の行為をさせないようあっせんしたということが、ともに犯罪の構成要件となっております。従って、その二つのいずれかが欠けておれば、もはや犯罪は成立しない。第一に請託の場合を考えてみましても、請託を受けた事実がなければ、この罪は成立しない。現行刑法に定める他の収賄罪は、請託は犯罪になるか、ならないかを左右する構成要件ではない。刑が重くなるという加重条件に過ぎないが、あっせん収賄罪に限って請託が構成要件にされてしまった。しかも今日まで多くの汚職事件の前例に徴しまして、この請託の有無の立証が非常にむずかしい。やむなく状況証拠によって請託を受けたとみなす判例が少くない。かくのごとく立証が困難なものを立証しなければならないから、結局あっせん収賄罪は容易に成立しがたいことになる。
第二には、不正の行為をさせ、または相当の行為をさせないようあっせんした場合に限って罪になるといたしておる。諸官庁の公務員が不正の行為さえしてくれなければ、幾らでもわいろはもらい得だということになる。一般の収賄罪が、不正の行為をなすといなとにかかわらず成立するのに比較してこのあっせん収賄罪は、罪にならない範囲があまりにも広過ぎます。請託でしぼり、その上を不正行為でしぼり、さらに報酬としてのわいろでしぼって二重にも三重にも、がんじがらめにしぼり過ぎておる。これではこの法案は手も足も出ません。手も足も出ない法案で、悪質なあっせん収賄者をつかまえるのは、これは無理な注文だと私は考える。今日まで世論があっせん収賄罪を作れと望んだのは、こんななまぬるい法律ではないのです。端的に申せば、議員や役人が顔をきかせて、業者からわいろをもらうことを取り締れというのであります。しかるに、この法案が、請託と不正行為を犯罪の構成要件としたために、ほとんど世論の期待は裏切られてしまった感があります。だから、世上の法案をざる法案だ、骨抜き法案だと非難することは当然であります。私は多年在野法曹の経験を持つ者ですが、私のこの法律的な良心に照らしても、世上の非難には、まさに傾聴すべきものがあると考えておるのであります。
一体かくのごとく、請託と不正行為を犯罪の構成要件とせられた立法趣旨はどこにあるのか、それをまず承わりたいのであります。それとともに、あっせん収賄罪の制定の経過にかんがみまして昭和十六年に議会で否決された政府原案や、社会党案によりますると、公務員がその地位を利用してという基準を定めておるのでありますが、この地位利用を本法案が全く削除されたのは、そういう理由であったかをあわせて伺いたいのであります。
なお、この法案には、はなはだしく満たされないものがいま一つある。それは、第三者供賄を制定していないことである。その結果として、あっせん行為をした者が、みずから報酬としてわいろを受け取るかわりに、自分の後援者や、自分の属する政党に寄付せしめることは、罪となるのかならぬのか不明でありまするその点をはっきり伺いたい。もし罪にならないとするならば、呑舟の魚はことごとくこの穴から逃げ去るおそれがあると思うのでありますが、この点は特に岸総理と法務大臣の御所見を伺っておきたいのであります。
次に、暴力関係について、岸総理並びに法務大臣に伺いたい。現内閣が重要政策の一つとして、暴力の追放をかかげ、その実現のため関係機関を督励して諸般の施策を講ぜしめているにもかかわらず、今なお各種の暴力が存在することは、民主主義社会の恥辱として、まことに遺憾にたえません。現下、これらの暴力によって惹起される事犯の趨勢を見まするのに、もっぱらいわゆる粗暴事犯に限定しても、大は近時各地に続発しておる暴力団相互の殺傷事犯から、小は押し売り等に至るまで、その種類は種々雑多であり、また、最近における注目すべき現象としては、少年の犯罪の粗暴化の傾向、性的犯罪の増加、暴力的徒輩による被害者その他の者に対するお礼参りの事犯の発生等が指摘されておりますが、本法案は、これらの事態に対処するために立案せられたと思われますが、果して十分なる効果を期待し得る確信があるかどうか。本法案の立法趣旨について、法務大臣の御所見を伺いたいのであります。
なお、それに関連して総理に伺いたいことは、いわゆる言論による暴力、その他知能的暴力追放に対して、いかなる構想を持っておられるかを伺いたいのであります。
最後に、今回新たに設けられた持凶器集合罪に対して伺いたいのですが、この法案は、近時各地に続発しておる暴力団相互間の対立抗争に基因する殺傷事犯に対処して、その早期防遏をはかろうとする意図から立案せられたと思われる。しかしながら、この法規が、この種事犯に適用されるのはもちろんであるとしても、これが一たん法律として成立し、一人歩きをするという暁には、正常なる労働運動、大衆運動等にもひとしく適用されてその弾圧に転用されることを懸念されるのでありまするが、この点について、岸総理並びに法務大臣から所信を伺うことといたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/5
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006・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
第一点は、汚職追放に対する私の信念並びに具体的の方策いかんという御質問でございました。私は、民主政治のこの国民的な信用を確保するということが、民主主義の政治を完成する上から見ると最も大事なことである。国民が政治に対して信頼を失うということになれば、民主政治の破壊になる。この意味からいって、政治をきれいなものにする、政治に関連して汚職があるということに対して、国民にきれいなものだという感じを持たせるようにすることが何よりも必要だという信念のもとに、汚職追放ということを三悪の一つに掲げたわけです。そうしてこれをやるためには、単に法規をもって取り締るというだけで足りないことは、今、大川議員のおっしゃった通りでありまして、まず、そういうことが生ずる社会的環境をなくすることが私は必要だ、あるいは公務員等の待遇の改善であるとか、あるいは生活環境をきれいなものにするということが、公務員の汚職をなくする上においても非常に必要である。綱紀の粛正の問題、あるいはいろいろな機構の問題等に関しても考えなければならない。また、政党自体の運営及び政党自体のモラルの問題についても、私は非常にこの点は大事だと思います。こういうすべての点を通じて、汚職をなくし、政治をきれいなものとして、国民の信頼をかち得ることが必要であるというのが私の根本の考えであります。
しこうして、このためには、やはり法規の足らざるもの、また、世論が特に問題にいたしておりまする点は取り上げて、これを取り締るということが必要である。このあっせん収賄罪につきましては、法制上非常なむずかしい点もあります。また、各国の立法例や日本の沿革を見ましても、この問題が非常に困難な問題でございますけれども、私はやはり、この汚職追放の念願からいって、ぜひともこれを本国会に提案いたして、そうして成立させたいという気持から提案をいたしたわけであります。(拍手)
次は、いわゆるあっせん収賄罪のこの規定と、正当なる政治活動との関係についてどうだという御質問であります。言うまでもなく、民主政治におきまして、国民の要望や国民の真の気持というようなものを、十分に国または公共団体等にこれを徹底せしめるということについて、政治家が活動するということは、これは民主政治の当然の公正なる政治活動であります。しかしながら、そういうことと、本法が禁止しておりますような、私は、あっせんはしてもいいけれども、それらの当然の何として報酬を得るというところにその弊害があると思う。従って、そういう意味におきまして本法の制定をいたしておるわけでありまして、決してこれがために正当なる民主政治の政治、活動を制約するものとは私は考えておりません。
それから、第三者供賄の問題について規定がないじゃないかということでございます。詳しいことは法務大臣から、沿革等の問題については、あるいは立法例等を御説明申すと思いますが、この点は、今回あっせん収賄罪というものは、とにかくずいぶんの議論があり、世論におきましても、いろいろな批判があるところの、また、実際の運営から申しましても、今御懸念のありました検察ファッショの点等も考
え、この困難な点を解決するために、まず第一に、このあっせん収賄罪の規定を私は提案いたしたのでありますが、もちろん、これが完備を最初から期待するということは私は無理だと思う。しかし、この案を提案するにつきましては、私どもは、十分な慎重な検討と、専門家等の意見も十分に聞き入れまして、これを設けたわけでありまして、この第三者供賄がないから、呑舟の魚を逸するというようなことには私はならぬと、かように考えております。
第四に、暴力追放に関する暴力取締りの規定の問題でありますが、言うまでもなく、この暴力には、いろいろな暴力がありまして、すべて民主政治の本体からいうと暴力というものは許されない。今おあげになりました言論の暴力とか、あるいは知能的暴力というようなお言葉がありましたが、具体的の集団的の暴力あるいは個人的の暴力、さらに言論やその他のものにおいても、やはり各人の自由と各人の人格というものが十分に尊重されずに、あらゆる暴力的な力でもってこれが行われるということは、その暴力の内容のいかんにかかわらず、なくすることが民主政治の私は理想であると思います。しかし、法律で取り締る問題としてまた、現在の日本の実情から見まして今回改正をいたしておりますような、集団的な行動や、あるいは持凶器の問題等につきましては、最も弊害の大なるものとして、法規で明定して、これを取り締ろうといたしておるものであります。(拍手)
〔国務大臣唐澤俊樹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/6
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007・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいま総理大臣からお答えがありました。それ以外において、私に対するお尋ねの点についてお答えいたしたいと存じます。
まず、あっせん収賄罪に関する規定は、その運用を誤まれば、検察ファッショになるおそれがあるのではないかという御懸念に基いてのお尋ねでございまして、全くその通りと存じます。この点が、従来あっせん収賄罪に関する各種の議論のあった原因でございます。このたび立案するに当りましても、用語等につきまして、慎重にこの点を考慮いたして、条文の作成をしたつもりでございます。幸いにして、この法案が成立いたしました暁におきましては、この運用につきまして、検察当局に十分注意を与えて、その運用の誤まりなきを期したいと考えておる次第でございます。
次に、あっせん収賄罪に関する規定を見ると、いろいろと条件が、犯罪の構成要件として並べられておる。これでは実際問題として、犯罪を検挙しても、これを有罪とする道がないではないかというお尋ねでございました。これもいかにもごもっとものお尋ねと存ずるのでございまして、元来、このあっせん収賄罪に関しましては、わが国の学者、専門家の間におきましても、古くからいろいろと議論がございまして、必ずしも学者、専門家の議論は一致しておりません。わが国ばかりでなく、諸外国の立法例を見ましても、実にまちまちでございます。ある国もあり、ない国もある。ある国の法律も非常にまちまちでございまするし、ことに、わが国の刑法の母法と言われておりますドイツの刑法を見ましても、長い間、学者、専門家が議論いたしましたけれども、ついに、まだ立法化されておらない。それほど立法技術上めんどうな問題とされております。その理由は、一方において、あっせん収賄行為は、これは法律をもって処罰すべき社会悪である、これを取締らなければならぬという観念がございます。その考え方から申しますれば、なるべく広く規定をいたしまして、その種類の行為は網羅的にこれを処罰して、法律の目的を達したいという考えになって参るのでございまするが、一方、この法律は、その運用を一歩誤まりますれば、先ほど大川議員からも、るる御指摘のありました通り、非常に相手方に迷惑をかけまして、ひいては検察ファッショになるおそれがあるのでございます。民主主義のもとにおきまして、議員が、あるいは国家の機関、あるいは地方団体の機関に民意を伝達することは当然のことでございまするが、ややもすれば、こういう種類の行為が、この法律のために非常な制圧を受けるということになりますと、この立法の趣旨に全く相反するわけでございまして、従いまして、この法律を作るに当りましては、なるべくこの悪質の行為は法律で処罰するけれども、しかし、この法律があるがために、善意の公務員の適正な政治活動を阻害しないようにという、この二つの要請の間に立って立案をしなければならないために、非常にこれは立法技術上むずかしい問題と相なっております。そこで、過去における各種の案を振り返ってみましても、広く公務員のあっせん収賄行為を処罰するという案もございまするが、過去二十年間にわたって、学者、専門家が知恵をしぼって作り上げました、昭和十五年に発表になりました改正刑法仮案の中に、このあっせん収賄罪に関する一条文がございます。これは御承知のように、広くあっせん収賄行為を処罰するようにはなっておりまするけれども、しかし、このうちで、わいろを要求して取った場合だけが有罪となっております。また、その地位を利用してあっせんをした場合のみが犯罪を構成するようになっております。当時の速記録を拝見してみましても、何ゆえに要求した場合だけを処罰するかという質疑がございましてその当時の委員長の答弁によると、何分にもこの法律は、わが刑法において初めての試みであるからして、あまりにこれを広く規定しては、その反面において非常に副作用としての弊害がある。この点を苦慮して、とりあえずの規定としては、要求をしてわいろを取った場合だけを処罰するという説明をいたしておるようでございます。いずれにいたしましても、この法律を立案するに当りましては、ある程度のしぼりをかけなければならないということが、大体専門家の間で一致した考えではないかと思うのでございます。今、御審議を願いまするこの政府案につきまして、やはり不正の行為をあっせんした場合だけとか、あるいは請託とか、いろいろ条件がございます。かような立法技術については、いろいろ御批評もあろうかと思いますが、これは委員会等で申し上げたいと思いまするけれども、そういうようないきさつで、ある程度のしぼりをかけておることだけは、仰せの通りでございます。ことに、この法案においては、第三者供賄の罪がないではないかという御指摘でございまして、まことにその通りでございます。これも、第三者供賄罪を一緒に規定しなければ、やはりそこだけは抜けておると言われても仕方ございません。しかし、この収賄罪の刑法上の沿革を顧みてみますと、私が申すまでもなく、刑法は明治四十年に制定されまして、そのときに収賄罪は入っております。しかし、第三者供賄罪が新たに付加せられましたのは、昭和十五年でございます。この第三者供賄罪は、理屈の上では、いかにももっともでございます。自分が取らなくとも、自分の身内の者、自分と一心同体の者に取らせればいいじゃないかということになるから、どうしても第三者供賄罪が要るということ、こういう理論になりますけれども、また、その理論によって、現行刑法に第三者供賄罪が規定されておりまするが、施行せられましてから今日まで、実際これで起訴された者は、たった四人きりないのでございまして、理屈の上では、この条文がどうしても要るのでございますが、実際の業績はさようになっております。そうして過去における改正刑法の仮案の中に、この条文はございません。また、昭和十六年に政府から時の国会に提出されましたあっせん収賄罪に関する規定にも、これはございません。また妙なことを申し上げるのですが、社会党から御提案になっておりまする広いあっせん収賄罪に関する規定にも、第三者供賄罪の規定はございません。これはおそらく、
やはり、まずあっせん収賄に関する規定を定めましてそれからその実績によって、そうして、さらに第三者供賄罪が要るならば付加しようというお心持から、これを除いておられると思います。私ども全く同感に存ずるわけでございます。
それから最後に、暴力取締りに関する問題でございますが、今ごらんを願っておりまする法案は、最近のいろいろの暴力事犯を対象といたしまして、まず、この程度の規定をいたしますれば足りるという考えから、立案をいたしておるわけでございます。ことに、その中のいわゆる持凶器集合罪でございますが、この規定が誤まって適用されれば、あるいは労働運動その他の大衆運動に適用されるおそれはないかというお考えのようでございますが、これは御承知のように、たとえば、別府事件とか、小松島事件というような、暴力団が凶器を持って相対峙しまして、そうして非常な殺傷事犯を起した、これを取り締ることを目途といたしまして立案いたしたものでございまして、労働運動等について、これを適用する意図は全然ございませんし、これは条文をごらん下さいましても、さようなおそれはないと信じております。いろいろ詳細の点は、委員会で申し上げたいと存じます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/7
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008・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 亀田得治君。
〔亀田得治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/8
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009・亀田得治
○亀田得治君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりました刑法の一部を改正する法律案中、まず、刑法第百九十七条の四、すなわち、あっせん収賄罪の点について、質疑をいたしたいと存じます。
初めに、三点、岸総理にお尋ねいたします。第一点は、総理は、今国会中に、必ずこの法案を通す決意をお持ちかどうかという点であります。総理は政権担当以来、三悪の一つとしての汚職の追放を唱え、そのためあっせん収賄罪の規定を設けることを約束してきたのであり、国民は一日も早くその立法化を望んでいます。このように急がれている法案を、会期もすでに半ばを過ぎた今ごろ、ようやく提出するごとき態度は、はなはだ不適当であると存じます。従って、私たちが本法案の審議を始めるに当り、率直に総理の心境を聞きたいと思うことは、一体、総理は、いわゆる四月解散をする方針なのかどうか。そして四月解散をするようなことがあっても、その前に必ず本法案が国会を通るように努力するとの確固たる方針を持っているかどうかについて、明確にお答えを願いたいと存じます。
第二に、何ゆえにこのような手ぬるい法案を出したかという点であります。すなわち、本法案のあっせん収賄罪が成立するためには、単に公務員が他の公務員に対して、職務上の行為をさせるようにあっせんし、わいろを受け取っただけでは犯罪にならないのであります。犯罪成立のためには、依頼者の請託を受けたこと、他の公務員に対して不正な職務行為をさせるようあっせんしたことなどの条件をつけており、かつ、第三者供賄罪の規定を設けていないため、本案が成立しても、なかなか効果を上げることはむずかしいのであります。このようなわけで、世論は本法案に対して、売春防止法とともにざる法案の名称を与えているのでありますが、総理が汚職追放にほんとうに熱意を持っているのであれば、何ゆえにもっと世論の動向にマッチしたものを提案しなかったのであるか、その心境を率直に承わりたいと存じます。
第三に、収賄罪の処罰方法についての考え方につきお尋ねいたします。現行刑法及び改正案ともに、収賄罪について、一般の犯罪行為と同じ方法で処罰しているのであるが、ほんとうに汚職追放の効果を上げようと考えるならば、それと同時に、収賄者を公職から追放する方法を考えるべきであると思うのであります。理論的にも、公けの仕事についてわいろを取るということは、その人が公的地位につくことの不適格性の表現と見なければなりません。汚職追放のためには、ここまで徹底しなければいけないと存じます。私はいたずらに一般の法律問題として厳罰主義をとるものではありませんが、しかし、世論はここまで望んでいると私は考えるのであります。イギリスの一八八九年の公共機関汚職取締法第二条によれば、「わいろを取って有罪とされた日から七年間いかなる公職にも選挙されもしくは任命される資格を失う」旨規定し、さらに、再犯者については、「永久にいかなる公職にもつく資格を失い、かつ七年間国会議員その他公共機関の構成員の選挙権をも失う」旨規定しているのであります。私はこのような考え方は、すでに日本でも、公職選挙法違反について若干取り入れられているのでありますが、わいろ罪についても、この際、公職からの追放という方法を大胆に導入すべきではないかと思うのでありますが、総理の見解を承わりたいと存じます。
総理に対する質問は、最後に再びいたすごとにして、次に法務大臣に対してお尋ねいたします。
本論に入る前に、公務員の犯罪中、一番多いのは横領と収賄だと言われておりますが、昭和二十八年より昭和三十二年末までの最近五カ年間に検察当局が処理した公務員の収賄事件について、各年度別にその人員を明らかにしていただきたいと存じます。ともかく、公務員の収賄が世論の一番批判を受けている現状において、果して今回のごときなまぬるい法案で、その使命を達し得るかどうか、はなはだ疑わしいのであって以上、このような立場から、本案の重要な問題点五つについて、多少先ほどの質問と重複もいたします。が、法務大臣にお尋ねいたします。
その第一点は、法案では請託を受けることをあっせん収賄罪成立の条件にしたことによって、犯罪成立の範囲が著しく狭められた点であります。この点、請託の方法と内容の両面から検討しなければなりません。まず、何らかの方法で依頼行為があれば、これをすべて請託と見れるかどうか疑問があります。すなわち、たとえば依頼者が、特別の個人の手紙でなく、一般的に印刷した文書を、多数の公務員に配布した場合はどうか、あるいは依頼者が、公務員個人に面談するのでなく、集会所などに多一数の公務員の参集を求めて、説明依頼した場合はどうか、これらの各場合に請託があったと見るのであれば、検察側の立証も割合楽になるのであるが、もし、このようないわゆる陳情形式では請託と言えないということになると、個人的手紙や個人的面談は、容易に証拠を隠すことができますから、検察側は、はなはだしく立証困難に陥ると思われます。提案者の考えを承わりたいと存じます。さらに、請託の内容としては、他の公務員をして、職務上不正の行為をなさしめるように依頼する意味のことを含む内容のものでなければならぬと解釈すべきだと思うが、そうなりますと、検察側の立証はますます困難になるのでありますが、この点に関する提案者の見解を明らかにしていただきたいと存じます。
第二点として、職務上不正の行為をなさしめ、または相当の行為をなさしめないようあっせんすることを、犯罪成立の条件としたことによって、本法の適用範囲は、さらにはなはだしく縮小された点についてであります。この場合の不正行為の最も明白なものは、法規に違反する行為であります。しかし、そのように明確に違法な行為を依頼することは、実際には少いと思われます。通常、問題になるのは、公務員が法規のワク内で自由裁量できる事柄について特定人のために便宜をはかるよう依頼する場合であります。しかし、この自由裁量の行政行為については、個人の便宜をはかることが、どの程度に達したら不正の行為となるか、はなはだ疑わしいのであります。狭く解釈すれば、いわゆる官庁への口きき料は、ほとんど合法化されてしまうのであります。そこで、具体的にお聞きしますが、本法案によれば、公務員が他の公務員に許可、認可、査定、支払い、採用などのことをあっせんするに当り、法規のワク内で、しかるべく頼むと言った場合には、犯罪はほとんど成立しないことになると思うが、提案者の具体的な見解を承わりたいと存じます。
第三に、わいろに対して、法文上特に「報酬トシテ」との条件をつけておる点であります。この点は現行刑法のわいろ罪にない表現であります。おそらく提案者は、「報酬トシテ」という文言があってもてなくても、現行刑法のわいろ罪の場合と意味は変らないとの考えかもしれませんが、特にかかる条件をつけることによって、報酬としてでなく金銭の授受を、すべて合法化する結果になるのであります。この点に関連して、あっせんのための実費、たとえば、旅費、宿泊料、日当など、あるいは依頼者との簡単な食事などは、報酬としてのわいろに当らぬとの解釈になるようでありますが、提案者の考えを明白にしていただきたいと存じます。
第四に、改正案には、第三者供賄に関する規定が盛られておりません。以上述べたごとく、本案によっては、いわゆる官庁への口きき料はなかなか押えがたいのでありますが、かりに本法案に引っかかるような、それこそ職務上不正な行為をさせるようなあっせんをして、口きき料を出させた場合であっても、本人が受け取らないで、後援会、外郭団体その他のトンネル機関を設けて、そこを通すようにすれば、第三者供賄に関する規定がないため、結局、法にかからぬことになるのであります。法制審議会においても、かかる場合を予想して第三者供賄の規定を置くべきであるとの主張が、相当強くなされたのでありますが、政府の態度が積極的でないため、最終的には「あっせん収賄罪について、将来いわゆる第三者供賄に関する規定を設けることを考慮する」との付帯要望がつけられたにとどまっているのであります。しこうして、この付帯要望は、政府が、本法案の国会提出までに第三者供賄罪を設けることを決意するのであれば、そのように処置しても差しっかえない意味のようにも承わっているのであるが、何ゆえに政府は第三者供賄の規定を設けることに踏み切らなかったのであるか、明らかにされたいと思います。
第五に、公務員が各種の地位を兼ねている場合についての解釈を確かめておきたいと存じます。たとえば、議員が会社の役員や顧問、あるいは労働組合や政党の幹部、あるいは弁護士、会計士というような場合に、それぞれの関係者から依頼され、あっせんしたような場合であります。会社の顧問として、あるいは組合の幹部として、あるいは弁護士として、あっせんしたことが形式的にも明確であれば問題はないが、通常は、一々いかなる身分であっせんするか断わるわけでもありませんから、かかる場合には、何を基準として公務員としての行動と、そうでない他の地位に基く行動を区別するのか、考え方を明確にしていただきたいと存じます。
次に、再び総理にお伺いいたします。以上、私は本法案の欠点を指摘しつつ法務大臣にただしたのでありますが、先ほど大川議員より、自民党代表として本法案の批判をされました中で、私も御意見を承わって意を強くしたのでありますが、総理も、おそらくこれらの法案の欠陥をお認めになると思います。もしそうだとすれば、私は、汚職追放を唱えることに総理が熱心であれば、改正案のこれらの欠陥を修正することにやぶさかでないかどうか、お伺いいたしたいのであります。もちろんこのことは、私ども国会自身の判断すべきことでありますが、政党内閣の建前からして、自民党総裁である岸総理の考え方というものは、きわめて重大であると思いますので、率直に腹の中を聞かせていただきたいと存じます。
あっせん収賄罪に関する質問はこの程度にとどめ、私は最後に、本法案の二百八条の二について伺います。すなわち本条は、表面上は悪質な暴力団を対象とするものであります。しかしながら、最近における政府の労働運動に関する紛争の取扱い態度を見ると、本条が、かかる運動に対しても悪用されることを危惧するのであります。本質的に暴力的であるいわゆる暴力団と、本質的に公認された労働団体との区別について、政府も観念的にはわかっていると思いますが、しかし、政府の労働運動に対する深い理解の欠除から、具体的事件の処理になると、両者を混同することがしばしば現に起きておるのでございます。今一々例をあげる時間もありませんが、この点はきわめて重大な問題でありますので、私はこの際、岸総理から、直接、本条は労働運動に悪用されることが絶対にないかどうか、見解を承わっておきたいと存じます。
さらに法務大臣に確かめておきますが、本条の凶器の中には、プラカード、旗ざおのごときものを含むものでないことは当然と思いますが、念のため伺っておきたいと存じます。以上です。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/9
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010・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
本案の提出が会期半ばになり、果して今国会中において成立せしめる意思かどうかという点でございます。本案の提案につきましては、先ほど来いろいろ御論議がありましたように、本案自身が非常に重大な案であると同時に、困難な問題を幾多含んでおりますので、これが成案を得るために、われわれはあらゆる慎重な検討を加えたわけであります。そのために提出がややおくれておりますが、私といたしましては、本案は、私自身が国民に公約しております汚職追放の一環をなすところのものでありまして、ぜひとも本国会において成立せしめたい希望でございますから、どうぞよろしく御審議の上、成立するように御協力を願いたいと存じます。
第二は、本案は、内容的に見て非常に手ぬるい案であり、従って、ざる法案である。これをさらに、世論に言われているように、十分にそういう手ぬるさのないような法案を作ったらどうか、これに関する私の心境いかんということでございます。先ほど来いろいろと説明をいたしましたように、この案自体につきましては、いろいろな世評もあることも、私よく承知いたしております。また、本案自身の、この提出するまでの慎重な審議の途上におきましても、いろいろな議論のありましたことも、よく承知をいたしております。しかしながら、私は先ほどもその心境の一端を述べたのでありますが、汚職の追放ということは、ただ単に、この法案を提出成立せしめることによって取り締るだけで、その目的を達することのできないことは言うを待たないのであります。各般の施策、国民自身のこの汚職に対する十分な道義的の批判なり、考え方というものが、公務員のあらゆる面に反映されるような施策をとらなければならないことは、言うを待ちませんが、しかしながら、この法案自身が非常にむずかしい法案でございまして、ただ、ほんとうに真剣にこれの検討をし、この出しているところの法案が、今の実情から見て最も適当であるという考えのもとに、その成案を得て、提案をいたしましたわけでありますから、決して私は、これをもってざる法案であるとは、実は考えておらないのであります。もちろん、いろいろな御批判のあることも承知をいたしておりますし、また、御審議の道程におきまして、いろいろな御議論の出ることもよく承知しております。十分に一つ御審議を願って、この案の政府が考えておりまする真意も、御了解いただきたいと存じます。
第三に、収賄者に対して、これは単に刑罰を課すだけではいけない。公職、追放というようなことを考えて行くべきじゃないかというお考えであります。私は、そのお考えについては非常にごもっともな点が多々あると思います。特にこの現在の法制におきましても、そういう気持が盛られているものが多少あるのであります。たとえば、この収賄をするような公務員は、多くの場合、これは懲戒処分あるいは懲戒免職になることは当然でありまして、懲戒免職になった者は、その後二年間は公務員になれないというような規定もございますし、公務員法の規定で、刑の執行猶予中の者はこれにつくことはできないというような点におきまして、その思想の一端が現われております。しかしそれは、今、亀田議員のお話のような徹底したものではございませんが、この考え方につきましては、私はごもっともなる点があると思いますが、十分にこれは検討をいたして見たいと思います。
それから二百八条の改正規定が、正常なる労働運動にも適用さるるおそれはないかというお話でありますが、これは二百八条の立法理由及びその条文を御検討下さいますならばわかるように、最近ときどき各地において現われておる暴力団等のこの事態に対処して、これを取り締る趣旨でできておるものでありまして、正当なる労働運動がこれに入らないことは言うを待たないのでありまして、そういうことに対してわれわれは適用する意思は絶対に持っておらないということを明確にいたしておきます。
〔国務大臣唐澤俊樹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/10
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011・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 私に対するお尋ねのまず第一が、わいろに関する統計でございますが、過去五年間におけるわいろに関する統計の数字はかようになっております。検察庁で受理いたしました人員で、昭和二十七年が四千九百四十八人、昭和二十八年が四千百六十三人、昭和二十九年が三千九百七人、昭和三十年が二千四百五十六人、昭和三十一年は二千百三十八人、かようになっておりまして、昭和三十二年の統計はまだ手元にございません。
それから、いろいろとあっせん収賄罪に関する法案の解釈についてのお尋ねでございまして、まず第一は、依頼者が一方的に印刷した文書を多数の公務員に配付した場合、あるいは依頼者が集会所等で多数の公務員に面会し、説明いたした場合に、請託を受けたことになるのかどうかというお尋ねでございますが、これは実際問題といたしましては、具体の場合について判断しなければ正確な判定はできないと思いまするが、私どもの解釈しておるところで申し上げますると、請託ということは、特定の事項について依頼を受けたというふうに解釈いたしております。一人から頼まれましょうが、大勢から頼まれましょうが、特定の事項について依頼を受けた、そしてこの依頼は不正なことという意識は必要じゃない、ただ、これこれのことを頼むと言うて特定の事項について依頼があれば、それは請託を受けたというふうに解釈しております。
次に、あっせん収賄罪に関する条文が不正行為ということでしぼってあるので、官庁の許可、認可、査定、支払い、採用などにつきまして、法規のワク内でしかるべく頼むというのであれば、ほとんどその行為は犯罪は成立しないのではないかというお尋ねでございまして、これも具体の場合について申し上げなければ、あるいは誤解を生ずるかと思いまするが、要するに、相手方の公務員に対して、不正の行為をしてくれという依頼をしなければ犯罪を構成いたしません。その不正の行為ということが、あるいは違法の行為、あるいは公務員としての職務上の義務に違背してそのために違法になるという場合も、いろいろございますが、要するに、不正の行為でありませんければ、犯罪を構成いたさないのでございます。
それからして、この「報酬」という文字に関連いたしまして、あっせんのための実費あるいは依頼者との簡単な食事とかいうようなものは、報酬として、わいろになるかならないかというお尋ねでございます。これは昭和十六年に、このあっせん収賄罪に関する規定が当時の国会に提案されました際に、衆議院におきまして、この実費その他がどうなるかということが非常に論議の的になりまして、結局その法案は否決されたのでございますが、この点にかんがみまして、「報酬トシテ」という文字を入れて明確にいたした次第でございまして、この報酬の金額が社会観念上不相応に高い場合は、これはわいろと見られるかもしれませんが、それは具体の場合について、その金額によってきまることだろうと思うのでございます。
次に、第三者供賄に関する規定がないのではないか、それで底抜けではないかという御非難でございまして、この点につきましては先ほどるる申し上げましたから、それで御了解を願いたいと思いまするが、これは刑法制定のだんだんの沿革や、それから今日諸方面から、このあっせん収賄罪に関する規定の御提案がありまして、それらを参酌いたしまして、取りあえずはこの規定がなくてもよろしい。理論的には亀田さんのおっしゃる通り、この規定がなければ底抜けでございます。しかしながら、現行刑法でこの規定をいたしました昭和十六年から今日まで、これによって起訴された者はわずかに四名ということで、実際問題といたしましては、それほど活用される規定ではないのでございます。しかし、これは法制審議会でもいろいろ議論がありまして、この規定をいずれ付加した方がよろしいという希望決議がありましたから、この点につきましては将来考慮いたしたいと考えております。
それから、公務員が弁護士や会計士、あるいはまた会社の役員や顧問、それから労働組合や政党の幹部を兼ねておる場合に、公務員としての行動と、その他の身分に基く行動を区別する標準はどうかということでございまして、これは現行刑法の収賄罪につきましても、各場合について非常に判定に苦しむ問題でございまして、結局は各具体の場合について判定をして行くより仕方ないと考えておるわけでございますが、一般的に抽象論を申し上げますと、弁護士等がその弁護士としての業務としての報酬として相当の額であれば、これは犯罪を構成しないと考えておる次第でございます。
それからして、本法案中のいわゆる持凶器集合罪の規定につきましてのお尋ねでございまして、これにつきましては、すでに総理大臣からお答えがありましたから、私はそれを重ねて申しませんが、そのうちプラカードやあるいは旗ざお、これについてのお尋ねでございまして、もとよりプラカードや旗ざおは凶器とはみなされません。通常の形態におけるプラカード、旗ざお等は、凶器とはみなされぬと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/11
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012・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 亀田得治君。
〔亀田得治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/12
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013・亀田得治
○亀田得治君 答弁をお聞きしましたが、ほんとうに汚職追放の熱意があるというふうには受け取れません。こまかい点等については、いずれ委員会でいろいろお聞きしたいと思いますが、ただ、先ほどの答弁の中で、提案の時期の問題等について総理から答弁がありましたが、たとえば法制審議会等を通ったのは二月末でありますが、なるほど、それを通さなければ国会に出さない習慣になっておるわけですが、しかし法制審議会にかければ、どの程度の時間がかかるかということは、これは事前に予測できることなんです。だから、ほんとうに国民が要望しておるこういう法案であれば、昨年のうちに法制審議会を開いて、そうしてそれが間に合うようにやっていく、そこの手心が私はむしろ政府になければならぬ、そういう意味でお聞きしておるので、決して、その途中で審議会等があるからといったようなことが、そういうおくれた理由には絶対にならないと私は思うのです。しかし、これは別にお聞きするわけではありませんが、私の意見を申し上げておきます。
それから、解散の問題です。これは四月解散をするのかしないのか、しても、この法案だけは通すという考えであるのか、もうちょっとこの点を明確にお聞きしておきます。
それから、第三者供賄についての御意見をいろいろ聞きました。理論的には、法務大臣等も私どもの考え方を認めておるようです。しかも、法制審議会をこの法案が通るときには、第三者供賄についての規定を近い将来に立法化する問題について、特にこの要望事項がついておる。それは二十二対一という、もう絶対多数でこれがつけられておるのです。これは、理論的にはこれが認められ、そういう経過等も考えますると、当然、政府は、先ほどからの答弁を聞いていても、次期国会くらいには、さらにこの点を立法化すべき義務がある。こういうふうに考えるのですが、これは総理大臣に、直接この点の見解をお聞きしておきたいと思うのです。
それから、公務員の身分追放の問題については、原則的に、これも総理大臣は同意してくれましたから、はなはだ意を強くするわけですが、私は第三者の供賄の規定と同時に、こういう点の検討も至急やはりなすべきではないかというふうに考えます。そういう点についての、ただ原則的な了承、検討するというだけではなく、果して法案を準備するような意味での検討をなさる気持があるのかどうか、もう少し具体的にこの点を明らかにしてもらいたいと思います。
それから、最後に総理にお尋ねした点の答弁が、非常にぼやけておると言いますか、抜けたように思いますが、つまり、この法案については、いろいろ理論的にも問題があり、実際面を考えても問題があります。これは大川さんの指摘しておる通りなんです。従って、委員会にこれがかかれば、相当な論議が出てくる、修正等の空気も出てくるかもしれません。私は、そういう際における総裁兼総理大臣の、あなたの立場というものは非常に大事だと思うのです。そういう意味で、ほかの法案ならば、何もこんなことをお聞きする必要はないのです。国会自身の判断ですから。ただ、あなたの立場が非常に重要ですから、この点もう一度、そういう国会の空気が起る場合には、それもいいのだという考えかどうか、重ねてお聞きしておきたいと思う。
時間がきましたからやめておきますが、法務大臣に一つお聞きしますが、それは、いわゆる法を曲げることをあっせんする、こういうことが入ったために、本来ならば、あっせん収賄罪として取り締れるものが、そういう条件が入ったために、私はこの法律の実際の適用は五十分の一くらいに減ってしまうのではないかという考えを持っておる。その理由は、法務省の方で作っておる統計からはっきりしておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/13
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014・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 亀田君、時間です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/14
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015・亀田得治
○亀田得治君(続) 現行刑法のもとにおいて、いわゆる法を曲げたやつというものは、全体の三%くらいにしか当っておらないわけです。その率から言いますと、結局、私はこの法律というものは、五十件に一件くらいしか拾えない、ほんとうの意味のざるになってしまうという感じがするのですが、この点についてのお考えをお伺いしたいと思う。
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/15
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016・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えいたします。
解散の問題につきましては、しばしば私の考えを申し上げております通り、私は現在のところ解散ということは考えておりません。従って、この案に限らず、われわれが本国会において御審議を願っております重要案件の成立に、政府も党もあらゆる努力をいたすというのが私の考えでございます。(拍手)従いまして、この法案の提出につきましては、いろいろな事情からおくれておるということについての御批判もありましたが、ぜひとも本国会において成立せしめたいというのが私の希望であり、念願でございます。
それから修正の点について御意見でありましたが、言うまでもなく、政府といたしましては、国会の御審議を尊重すべきことは当然でございます。しかし、私どもは、本案を提案いたしますのには、提案がおくれたぐらいの慎重なる検討をいたして、現在としては、これが一番適当であるという確信を持って実は提案をいたしておるので、十分に一つ御審議をいただき、政府の意のあるところを一つ御了承いただきたいと、こう思っております。
それから、第三者の供賄の問題及び公職追放の問題について、私の考えをはっきり言えということでございます。先ほど来、第三者供賄の問題につきましては、御指摘のありましたような、法制審議会の意向もございますし、理論的な問題もあり、実際上の問題もございまして、十分にそれを検討いたしたいと思います。公職追放の問題も、理論としては、私はそういうお考えには賛意を表したのでございますが、一面におきまして、これは言うまでもなく、相当に人権にも関係する問題でございますから、これまた慎重に一つ検討をいたしたいと思います。今、必ず次の国会に出すということを、ここでお約束はできませんけれども、真剣に検討いたすことを声明いたしておきます。(拍手)
〔国務大臣唐澤俊樹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/16
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017・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) あっせん収賄罪に関するこの条文が、不正行為をあっせんした場合だけに限ったために、あっせん収賄行為のうちで、非常に取締りの対象が減ってしまったのではないかというお尋ねでございます。数字上のことは正確には申し上げかねますけれども、不正行為でしぼりましたために、その処罰の対象が減ったことは仰せの通りでございます。ただ、先ほど来だんだんと申し上げました通り、この規定は非常に論議のある規定であり、やかましい規定でございまして、もし、これを広く規定いたしますれば、民主政治下における議員の正当なる活動まで制肘する、適用を一歩誤まれば、検察ファッショにもなるという懸念がございますために、従来から、どの法律案を見ましても、広く規定はいたしましても、何かのしぼりをかけておるわけでございます。これが、先ほど申し上げました通り、改正刑法仮案では、要求して取った場合だけが処罰されるというふうにしぼっております。この案についても、実は私ども検討を加えたのでございまするけれども、要求した場合と、そうでない場合とで悪性を区別するということは、今日の観念としてどうかという学者の意見もございまするし、また、要求してという条件をつけますれば、この立証はむずかしいから、ほとんど全部漏れてしまうというような意見もございましてそうして今度の立案になったようなわけでございまして、この不正行為にしぼりましたことは、なるほど狭くなっておりまするけれども、いろいろの要請を満たすために、かような条文になったのでございまして、御了承を願います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/17
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018・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は、終了したものと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/18
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019・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第二、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。外務委員長寺本広作君。
〔寺本広作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/19
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020・寺本廣作
○寺本広作君 ただいま議題となりました日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約の締結について承認を求めるの件につき、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
日ソ両国は、一昨年十月、日ソ国交回復に関する共同宣言に署名すると同時に、関税、通関手続及び船舶等に関する最恵国待遇を相互に許与するための議定書に署名し、通商、海運関係を平常化する道を開き、自来、両国間の貿易は漸次軌道に乗り、貿易量も次第に増加しつつあるのでありまするが、政府においては、さらに日ソ貿易の発展を促進するため、共同宣言第七項の規定に基き、昨年八月以降、両国間に通商に関する条約締結の交渉を行い、十二月六日妥結、東京において署名を行うに至ったのであります。
この条約は、関税、通関手続、船舶の出入港、内国税等に関する最恵国待遇、為替及び貿易に関する無差別待遇の相互供与等に関する規定をその骨子とし、日本に設置されるソ連の通商代表部に関する事項を規定した付属書が、不可分の一体としてこれに添付されております。条約の有効期間は、批准書交換の日から五カ年、政府は、この条約によって、今後、日本にとって新市場とも言うべきソ連との間に、通商が大きく発展することを期待すると説明いたしました。
審議の過程におきましては、この条約が単なる貿易支払協定にとどまらず、本格的通商条約に進展したことに関する事情、条約成立後における日ソ貿易の具体的見通し、シベリア総合開発計画の日ソ貿易に及ぼす影響、定期航路の開設計画と指定港の問題、日ソ間に航空協定を締結することに関する政府の考え方、ソ連の在日通商代表部の規模及び支部の設置場所、本条約における入国、居住、経済活動等、人に関する規定の欠除とその取扱い、わが国の自由諸国及び共産圏諸国に対する根本的通商政策等について質疑が行われました。また、本条約の批准承認に関連して、現在、日ソ間に進行しつつある漁業交渉、安全操業等の問題についても熱心な質疑が行われたのでありますが、詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。
委員会は、昨十八日質疑を終了し、採決を行いましたところ、本件は全会
一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/20
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021・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決をいたします。
本件を問題に供します。委員長報告の通り、本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/21
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022・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/22
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023・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第三、売春防止法の一部を改正する法律・案
日程第四、婦人補導院法案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/23
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024・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。法務委員長青山正一君。
〔青山正一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/24
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025・青山正一
○青山正一君 ただいま議題となりました売春防止法の一部を改正する法律案並びに婦人補導院法案につきまして、法務委員会における審議の経過並びに結果につき、一括御報告を申し上げます。
まず、売春防止法の一部を改正する法律案は、第二十四回国会において売春防止法が成立する際、法務委員会が行なった付帯決議の中の、勧誘行為等の罪を犯した女子に対する保安処分の規定を設けるべきであるとするものに基き、また、売春対策審議会の具申意見をしんしゃくして立案、提出されたものであります。
本法律案の内容の要点は、第一に、勧誘行為等、売春防止法第五条の罪を犯した満二十才以上の女子に対し、その更生のため、新たに保安処分の一種として補導処分の制度を創設し、裁判所が懲役または禁固につきその執行を猶予するとき、同時に、この補導処分を言い渡すことができることとしたこと、第二に、売春防止法第五条の罪について、懲役または禁固の言い渡しをするときは、原則として、何度でもその刑の執行を猶予し、補導処分に付することができるようにしたこと、第三に、収容期間は六カ月とし、職業、生活の指導等、更生に必要な補導を行うものとしたこと、第四に、退院した者及び仮退院により補導処分の執行を受け終ったとされた者については、原則として同時に、刑の執行猶予の期間を経過したものとみなすことにしたこと等であります。
次に、婦人補導院法案は、前述の売春防止法の一部を改正する法律案を受けて立案されたものであります。すなわち、補導処分に付せられた女子を収容及び補導する施設である婦人補導院に関して必要な事項を規定するものでありまして、売春婦の習性を矯正し、社会に復帰させる目的にかんがみ、他の矯正施設とは相当異なった特色を有しているのであります。
その内容の要点を申し上げますと、まず第一に、社会生活に適応させるため、規律ある生活のもとで、生活及び職業の指導を行い、更生の妨げとなる心身の障害に対して医療を行うものとし、第二に、補導の実施については、学校、病院、宗教団体等に委嘱して、広く外部の援助を受けられるようにし、第三に、在院者の処遇については、本人の性格その他を考慮して、適切妥当な措置を定めることとしたこと等であります。
さて、当委員会におきましては、二月十八日、政府当局より右二法案の提案の理由を聴取したあと、前後七回にわたりまして慎重に審議を重ねました。この間、多数の委員各位によってなされた質疑の詳細は、会議録に譲りたいと存じますが、そのおもな点を申し上げます。
まず、売春防止法の一部を改正する法律案の質疑としましては、刑にかえて、補導処分をすべきではなかったか、現実に補導処分に付されるのは、むしろ常習の傾向の強度な者であるから、本人の更生という観点からすれば、初期において補導の手を打つべきではないだろうか。また、現在の裁判制度では、売春婦の性格、環境などの十分な調査は困難であるから、調査官制度を検討する必要はないか等でありましたが、これに対し、政府当局から、現行の刑事法体系の内部にあって、刑事手続に乗せてこの補導処分が考えられているので、今、早急に刑にかえる制度を持ち込むことは困難である。従って、この制度は、実刑の執行にかえて行われるものであるが、この方法で十分本人の保護更生を期待し得るものと思う。また、本人の性格等については、検察庁の調査で十分であると思うとの答弁がありました。
なお、調査官制度について最高裁側の意見をただしたところ、政府当局のものとは若干の相違があることを認めましたので、特に三月四日、委員懇談会を開き、両者から各個に、さらに一そう詳しい意見を聞く機会を持ち、当委員会の審議の参考にいたしました。
次に、婦人補導院法案につきましては、この施設が身体の自由の拘束を伴うものであって、その処遇等、刑務所とほとんど差別がないではないか、健康診断の際の医学的措置、信書の検閲、懲戒としての謹慎、手錠類似の保護具の使用、連れ戻し収容状の発行等について、収容者の人権尊重の趣旨に沿わないおそれがあるのではないか、補導院の長及び職員の選任について、男子を充てることは補導上不適当ではないか等、大川、一松、棚橋、宮城、赤松、藤原、斎藤、大谷、辻、古野、小林、雨森の各委員から、強い建設的意見を含む質疑が行われました。これに対し、政府当局より、御趣旨に沿って慎重に行うとの答弁がありました。
なお、本二法案の重要性にかんがみ、二月二十五日には、参考人として、売春対策審議会会長菅原通済、東京地方検察庁八王子支部長金子満造、警察庁浅草警察署長斉藤良治、青葉女子学園園長菊沢鋭子、東京都婦人相談員西村好江の五君を招いて、有益な意見を聴取したのであります。
かくして三月十七日質疑を打ち切り、討論に入りましたところ、大川委員から、「保安処分としての補導処分のあり方並びに裁判所調査官制度の採用について、今後、政府に対し、特段の検討を希望するが、売春防止法全面施行を目前に控えた現段階では、本法案の程度の内容でもやむを得ない」として、賛成意見が述べられ、続いて売春防止法の一部を改正する法律案につき、「本法の運用の適正妥当を期するため、政府は可及的すみやかに裁判所調査官による判決前調査制度の法制化について検討すべきである」、また、婦人補導院法案については、「本法の運用に当り、いたずらに婦女子の自由を拘束することのないよう特に留意し、具体的運用において、その実を上げ得ない場合は、政府は可及的すみやかにその改正案を提出し得るよう検討すべきである」という趣旨の付帯決議をなすことの動議が提出されました。続いて棚橋委員から、「保安処分の本質にかんがみ、いたずらに婦女子の身体を拘束することなく、人権と自由を尊重すべきであり、また、調査官制度の検討も必要である」旨の賛成意見が述べられました。
かくして討論を打ち切り、本二法案及び付帯決議につき採決いたしましたところ、それぞれ全会一致をもってこれを可決すべきものと決定いたしまた。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/25
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026・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/26
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027・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって両案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/27
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028・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第五、製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案
日程第六、昭和二十八年度から昭和三十二年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案
日程第七、漁船再保険特別会計における特殊保険及び給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からする繰入金に関する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/28
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029・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長河野謙三君。
〔河野謙三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/29
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030・河野謙三
○河野謙三君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。現在、フィルター付紙巻たばこの世界的流行と強い国内の発売要望により、フィルター付紙巻たばこ「ホープ」を、また、新しい需要層を開拓して売れ行きの増進をはかるため、ハッカを主とした特殊加香の両切り紙巻たばこ「みどり」を試製販売中であります。
本案は、その売れ行き状況はいずれも良好であるにかんがみ、今後継続して販売するため、「ホープ」十本当り四十円、「みどり」十本当り二十五円を本法の価格表に追加しようとするものであります。なお、本年度の販売計画は、「ホープ」二十億本、「みどり」二十五億本であります。
委員会の審議におきましては、フィルター付紙巻たばこと肺ガンとの関係、公共企業体の企業的弾力性をはかるため、このような商品価格の決定を一々国会の承認を要しないように改正する意思はないか、定価の定め方に、税金部分を区分して、企業成績を明らかにすべきである等の質疑がありましたが、詳細は会議録によって御承知願いたいと思います。
質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、昭和二十八年度から昭和三十二年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
昭和二十八年度から昭和三十二年度の間においては、国債の元金償還のための資金を、一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れる場合、その繰り入れるべき金額は、国債整理基金特別会計法の規定を適用せず、財政法の規定による前々年度の剰余金の二分のを下らざる額とすること。また、日本国有鉄道及び電信電話公社が、発足当時に、政府に対して負うこととなった債務の償還元利金は、直接、国債整理基金特別会計に納付し、一般会計から同特別会計に繰り入れがあったものとみなすという二つの特例措置が講ぜられてきたのであります。本案は、国債償還の状況にかんがみ、かつ経理の簡素化をはかるため、この特例措置をさらに昭和三十三年度においても適用しようとするものであります。
委員会の審議におきましては、現在の国債残高と今後の償還の見通し等について質疑がなされましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終り、討論、採決の結果、全会一致をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
最後に、漁船再保険特別会計における特殊保険及び給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からする繰入金に関する法律案について申し上げます。
漁船損害補償法の規定による漁船の拿捕、抑留等を俣険事故とする特殊保険、及び漁船乗組員給与保険法の規定による漁船乗組員の抑留を保険事故とする給与保険においては、それらの保険事故が異常に発生したために、それぞれ政府の再保険事業に損失を生じたのでありまして、その損失は、特殊保険の再保険事業では、昭和三十一年度約四千四百七十万六千円となり、給与保険の再保険事業では、昭和三十一年度の損失につき、過般、第二十六回国会において所要の法律措置を講じ、一般会計からの繰入金をもって補てんしたものを除き、約九百六十七万八千円の損失が残り、さらに昭和三十二年度においても、同年十二月末日までに約七千三百七十七万九千円の損失を生じましたので、累計は八千三百四十五万七千円となっているのであります。本案は、これらの損失を埋めるために、昭和三十三年度において一般会計から、この特別会計の特殊保険勘定に四千四百七十万六千円、給与保険勘定に八千三百五十万円を限度として繰入金をすることができる措置を講じようとするものであります。
委員会の審議におきましては、拿捕、抑留等の事故の発生状況はどうか、特殊保険、給与保険の加入が著しく低いが根本的な理由は何か、またその対策はどうか、財政負担をしいられる額は僅少でも、物心両面の打撃は大きいのであって、国際法上容認されない李ラインと拿捕、抑留問題について、農林省及び外務省はいかなる対策を講じているが 特に島根県における保険未加入漁民の窮状に対し、どのような対策を講ずるか等の諸点について質疑がなされましたが、それらの詳細は会議録によって御承知願います。
かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/30
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031・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。
三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/31
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032・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって三案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/32
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033・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第八、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長重政庸徳君。
〔重政庸徳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/33
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034・重政庸徳
○重政庸徳君 ただいま議題になりました繭糸価格安定法の一部を改正する法律案について農林水産委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。
この法律案は、輸出適格生糸の価格の異常な変動を防止して、生糸の輸出増進に資する目的をもって、政府における輸出適格生糸の特別買入制度を拡充するとともに、輸出適格生糸の買い入れ、保管及び売り渡しの業務を行うため、政府が資本金の一部、すなわち昭和三十三年度においては三千万円を出資して日本輸出生糸保管株式会社を設立することとし、その目的、事業、株式、機構、運営及び監督等について必要な規定を設けることを主眼とし、その他、政府が保有している生糸について買いかえの道を開くこととするのが、この法律案の提出理由並びにこれが内容の概要であります。
委員会におきましては、まず、農林当局から提案の理由及び繭糸価格安定制度運営の経過及び現況等について説明を聞き、続いて質疑に入り、生糸の需要及び輸出の見通しとその対策、糸価の推移、適正糸価と糸価安定対策、国産生糸の需要に対する中共生糸及び化繊等の影響、長期経済計画による繭の生産計画と生糸の需要との関係、繭、特に今年の春繭の需給の見通しとその対策、養蚕農家の保護、繭の価格並びにその維持対策、乾繭保管の効果、保管設備の状況並びに保管の実行方法及びこれが経費予算、糸価安定特別会計の現況とその余力並びにこれが対策、生糸の滞貨とその対策、蚕糸業に対する基本対策の再検討、生糸保管株式会社首脳の人選方針、その他が問題になり、また、法案の条文についての疑問がただされ、特に糸価の低落に当面して、繭糸価格安定対策の強化に対する政府の決意を促し、そのすみやかなる実施が強く要望され、これに対して、農林当局から政府の方針が述べられたのでありまして、これらの詳細については会議録に譲ることにいたしたいと存じます。
かくて質疑を終り、討論に入りましたところ、清澤、千田、上林及び関根の各委員から、さしあたっては、生糸及び繭の価格の維持のために、また、今後においては蚕糸対策の確立に対して政府の善処を要望して、この法律案に賛成が述べられ、続いて採決の結果、全会一致をもって、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
右、報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/34
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035・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/35
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036・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/36
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037・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第九、旅館業法の一部を改正する法律案
日程第十、身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/37
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038・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長阿具根登君。
〔阿具根登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/38
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039・阿具根登
○阿具根登君 ただいま議題となりました旅館業法の一部を改正する法律案及び身体障害者福祉法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、旅館業法の一部を改正する法律案について申し上げます。
去る第二十六国会において、旅館業法の一部が改正され、旅館業に対する従来からの公衆衛生上の規制に加え、風俗的見地からの規制をも行い得るものとされたのでありますが、その第八条に規定されている婦女に売淫をさせた者等の処置に関する勅令が、本年四月から売春防止法附則第二項の規定によって廃止されることとなりましたので、今回の改正によって、第八桑中に、従来規定されておりました「婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令に規定する罪」を「売春防止法第二章に規定する罪」と改めるとともに、これに伴う経過措置を整備しようとするものであります。
本委員会におきましては、前回の改正に当って指摘せられました旅館従業員の待遇等の問題について熱心な質疑が重ねられ、また、売春事犯に基く旅館営業に関する行政処分の実情並びに売春防止法の実施に伴い転廃業した特殊対象旅館に対する指導監督の諸問題等、本改正法の実施に関する当局の所信を激しく追及したのでありますが、その詳細は会議録に譲ります。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、山本委員より、「次の付帯決議を付して、改正案に賛意を表する」旨の発言がありました。
旅館業法の一部を改正する法律案に関する付帯決議案
旅館従業員の待遇等の問題については、前国会以来本委員会で指摘されたところである。
この際政府は従業員の待遇の正常化と、その健康の保持について、適切妥当な行政措置を講ずべきである。
右決議する。
かくして討論を終了し、まず、改正案について採決を行いましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次いで、山本委員提出の付帯決議案について採決を行いましたが、全会一致をもって、本委員会の決議とすることに決定した次第であります。
次に、身体障害者福祉法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本改正案の第一点は、収容援護を必要とする身体障害者の収容委託についてであります。現在、身体障害者を公費をもって収容している更生援護施設は、国立及び公立に限られているのでありますが、身体障害者によっては、障害の特異性等よりして、民間篤志事業として、豊富な経験を有する社会福祉法人の設置する施設において、その更生援護を行うことが効果的な場合も考えられますので、厚生大臣の指定するこれらの援護施設へも収容を委託できることとすることであります。
なお、収容委託に要する費用については、居住地の都道府県または市町村が全額を支弁し、国がその十分の八を負担することとし、さらに、委託を受けた施設の便宜を考慮して、施設所在地の都道府県または市町村が、この費用を一時繰りかえ支弁する旨の規定を設けておるのであります。
改正の第二点は、身体障害者福祉法関係事務に対する民生委員の協力について明文化することであります。身体障害者の更生指導につきましては、福祉事務所を中心とする公的機関の活動と交わせ、地域社会その他民間の協力がきわめて重要でありますので、特に民生委員の協力義務を明確にしてその積極的な協力を得ることにより、身体障害者の更生援護の円滑化をはかろうとするものであります。
以上がこの法律案の提案理由並びにその要旨であります。
委員会におきましては、慎重審議をいたし、種々熱心な質疑応答が行われたのであります。そのおもなる点を申し上げますと、厚生大臣は、身体障害者の収容援護を委託すべき民間の更生援護施設を、いかなる基準により指定するか、収容援護を必要とするものの数及びその施設数並びに将来の援護対策はどうか、収容援護に要する費用の負担の問題、民生委員の協力状況及びその処遇に関する問題等についてでありましてその詳細は会議録により御了承願いたいと存じます。
かくて質疑を終了し、討論に移りましたところ、藤田委員より、本改正法律案に賛意を表された上、付帯決議案を提出されました。その案文は次の通りであります。
身体障害者福祉法の一部を改正する法律案に関する付帯決議案
身体障害者の収容援護については、国立及び公立の施設において第一次的に行うべきものと考えられるので、民間施設への収容委託と併せて今後もその整備拡充に努力すべきである。
右決議する。
というのであります。
討論を終り、採決いたしました結果、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次いで、付帯決議案について採決いたしましたところ、これまた全会一致をもって委員会の決議とすることに決定いたした次第であります。
なお、この付帯決議に対しましては、厚生大臣より、本決議の趣旨を尊重して行政指導を行う旨の所信を表明されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/39
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040・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/40
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041・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって両案は、全会一致をもって可決せられました。
次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後零時三十四分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01519580319/41
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