1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月四日(金曜日)
午前十時三十二分開議
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○議事日程 第十八号
昭和三十三年四月四日
午前十時開議
第一 日本国とインドネシア共和国との間の平和条約の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第二 日本国とインドネシア共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第三 旧清算勘定その他の諸勘定の残高に関する請求権の処理に関する日本国政府とインドネシア共和国政府との間の議定書の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第四 航空法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第五 角膜移植に関する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第六 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第七 地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第八 分収造林特別措置法案(内閣提出)(委員長報告)
第九 通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/0
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001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/1
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002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/2
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003・伊藤顕道
○伊藤顕道君 私は、この際、ソ連の核実験中止宣言に伴う政府の態度についての緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/3
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004・佐野廣
○佐野廣君 私は、ただいまの伊藤君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/4
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005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 伊藤君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/5
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006・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。伊藤顕道君。
〔伊藤顕道君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/6
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007・伊藤顕道
○伊藤顕道君 私は、日本社会党を代表し、ソ連の核実験中止宣言に伴う政府の態度について、岸総理及び関係閣僚に質問をいたすものであります。
まず、核兵器実験停止の問題でありますが、現在ただいま、原水爆禁止と軍縮とは最も大きな国際問題の一つとなっておるのであります。申し上げるまでもなく、日本は広島、長崎、ビキニと三度にわたる原水爆ただ一つの被災国であり、しかもなお、現に太平洋上における米、英、シベリアにおけるソ連の原水爆実験に悩まされているのであります。私どもは、原水爆保有国たる米、ソ、英のいずれの国たるを問わず、その実験には断固反対するものであります。(拍手)
しかるに、岸総理は、国民には原水爆禁止、実験の即時無条件禁止を約束しながら、実際の行動において、何ら一貫した方針を持たないことは、国民のひとしく遺憾とするところであります。総理は当初、国民の切なる要求に押されて松下特使を派遣し、イギリスのクリスマス島における水爆実験中止を要求したけれども、その後、東南アジア訪問に際しては、原水爆禁止を引っ込め、原水爆の登録制などというものを主張して、アジア諸国の不信を買い、また、訪米に際しては、アメリカから軽く反対されて、原水爆禁止の要求を、あっさり取り下げてしまったことは、一大痛恨事と言わなければなりません。総理の、こうした軟弱、クラゲのごとき態度のために、国連における日本代表も、また弱将のもとに勇卒なしのたとえのごとく、腰、くだけて、絶対禁止を貫くことができず、常にアメリカの態度に追随し、史上唯一の原水爆被災国として、原水爆禁止のための指導的役割を果し得なかったことは、千載のうらみと言わなければなりません。日本社会党は、今後さらに、原水爆禁止の国民の心を心として、世界の諸国に向って積極的に呼びかけ、その実現を通して世界の平和に寄与いたしたいと念願しておるものであります。
さて、近い将来に、その実現が予定されている東西首脳会談を前にして、今回、ソ連政府が一方的核実験禁止を宣言、いたしましたが、この宣言は、軍事的優位を確信するソ連政府が、平和を求めている世界の世論を直視し、従来の論議の段階から、具体的実践への第一歩を踏み出したものとして歓迎すべきであります。このソ連の宣言は、平和攻勢のかけ引きを含むものだとしても、この宣言に呼応する世界の世論は、すでに平和への糸口として、ほうはいとして盛り上るであろうことを確信して疑わないのであります。御承知のように、今や平和への世界の世論が、洋の東西を問わず、次第に肉づけされつつある国際情勢の中にあって、日本政府がこれを的確に把握し、日本の立場を明確に世界に反映さすことこそが、急務中の急務ではなかろうかと思うのであります。
そこで、まず次の四点について総理にお伺いいたしますが、いずれも重要な質問でありますので、両岸へふらふらしないで、明確にお答えいただきたいと思います。
まず第一に、核兵器実験停止のための決議案については、先に決議しているわけでありますけれども、この際、新しい情勢に即応するために、総理はいかなる決意と施策を持っているか、具体的な方針をお伺いいたしたいと思います。
第二点は、政府は、今回のソ連の一一方的核実験禁止を率直に受け入れ、さらにソ連政府に対して国際協定化するとともに、無条件禁止するよう積極的に要請する決意があるかどうか、お伺いいたします。
第三点は、今春、太平洋上において米、英両国の準備している核実験に対して、どのように積極的に働きかけて、即時停止させようとするのか、具体的に承わりたいと思います。
第四点は、国連に対し、核実験停止をどのように働きかけようとするのか、具体的に承わりたいと思います“
次に、外務大臣にお尋ねいたします。まず第一に、去る三月十日、日本国政府が、米、英、仏、加の各国政府に対し、国連軍縮委員会を早急に開催するよう要求覚書を送った点でありますが、両陣営が頂上会談において、合理的な解決を求むべく努力している矢先に、それを妨げるような覚書を発して、ソ連からは非難され、英仏からも警告ざれたことはきわめて遺憾とするところであります。政府は、いかなる意図のもとに、かような時期にこのような覚書を送ったのか、この点を具体的にお答えいただきたいと思います。
第二点は、ジュネーヴの国際海洋法会議で、公海上での核兵器実験禁止に関するソ連、ポーランド、チェコ、ユーゴ四カ国提案に対し、自由陣営との関係から、直ちに賛成には踏み切れす、採決となった場合は、棄権の基本的態度で議事に当るよう大江代表に訓令したことは、きわめて遺憾とするところであります。そこで、その真意を明確にしていただきたいと思います。
第三点は、政府は、従来国連を中心に核実験禁止を主張し、米国のエニゥェトク環礁、英国のクリスマス島における実験に対しては、公海自由の原則に反すると抗議してきており、大江代表も海洋法会議で同様な見解を明らかにしておきながら、ソ連圏の提案なるがゆえに、この筋の通った提案は積極的に協力しなかったことは、きわめて遺憾であり、かつ明らかに前後矛盾していると思うが、この点、明確にお答えいただきたいと思います。なお、今後このような場合は、アメリカ一辺倒にとらわれないで、日本の名山富士山のごとき、きぜんたる態度で善処していただきたいことを、藤山外相に要望申し上げておきます。
次に、非核武装地帯の問題でありますが、国際緊張緩和に対する真剣な努力が全世界で積み重ねられておりますが、特にポーランドのラパツキー提案によって大きくクローズ・アップされ、中欧における核武装禁止地帯設置の叫びは、次第に高まりつつある実情であります。また、去る三月二十五日の西独核武装決議が、国内世論の猛烈なる反対にもかかわらず、ついにアデナゥアーのNATO主義による外交的必要から、核武装に追い込んでしまった事実に対して、その反映は西欧全般に及び、英国の核武装反対運動は急激に盛り上るとともに、ラパツキー提案に対する切実感は、西欧における広範な世論となり、行き詰った国際間の重要問題の突破口にならんとしているのであります。また、アジアにおいては、ソ連が提唱するアジア核武装禁止地帯案に対し、それは冷戦からアジアの民衆を解放し、米ソ両陣営の拘束から離れて、真の安全保障を築くものとして、すでにインド、パキスタンを中心として、その機運が盛り上ってきている情勢であります。従来の核武装禁止地帯設置の提案が、ソ連、東欧側からなされてはいますが、今や一片の政治的ゼスチュアとして片づけずに、まじめに受けとめようとする大きな動きがあることは、危険からの解放を望む人類必然の念願と言わなければなりません。真に核兵器からの脅威を防ぎ、世界平和の実現を期さんとするならば、まずもって、世界の世論を大きく盛り上げるための不断の努力と実践を重ねて行かなければなりません。そこで、次の三点について総理の所信をお伺いいたします。
まず第一に、日本の非核武装地帯宣言のための決議案を、自民、社会両党の共同提案の形で、すみやかに衆参両院で決議する考えが、与党の総裁としてあるかどうかお伺いいたします。
第二点は、こうした世界の世論に対し、日本政府は、どのような態度で臨もうとしておるのか、総理の決意のほどをお伺いいたします。
第三点は、日本の非核武装地帯宣言を世界に向って力強く発し、日本の立場と態度を明確にしようとする決意があるのかどうか。さらに、これを端緒として、アジア非核武装化の実現をはかる決意はないか、この点、明確にお答えいただきたいと思います。
最後に、核兵器に関連する防衛問題についてお伺いしたいと思います。昭和三十年七月三十日の参議院内閣委員会において、鳩山元首相は、核兵器持ち込みに関して国際情勢等を慎重に検討して、日本の自衛上必要だという場合においては許可したいという考えを持っていると答弁していますが、現在、ちょうどそのような状態に追い込まれてきているのではなかろうかと思うのであります。すでに昨年六月以来、自衛隊の質的強化と近代化が強調され、促進されていますが、近代化ということは、軍事上の常識として、近代戦に参加し得る装備をすることであり、それが核軍備、ミサイル軍備と不可分の関係にあることは明白であり、さらに、在日米戦略空軍の教育訓練と、核装備を持った米第七艦隊が日本の港を出入するのを見ても、核兵器持ち込みが現実には行われているにもかかわらず、不可解にも、総理は、しばしば国会において、持ち込み拒否の言明をしているのであります。そこで、次の二点について総理にお伺いいたします。
まず第一に、総理は、核兵器持ち込みをあくまで拒否しようとする決意があるのか、また、最後まで拒否できるとの確信があるのか、この点、明確にお答えいただきたいと思います。
第二点は、外交、防衛上、潜在している沖縄に、アメリカはIRBMの基地を設置しようと計画を進めておるようでありますが、不幸にしてこれが強行せられた暁は、ミサイル戦闘化を誘致することとなり、極東の緊張が増大されることは明白と言わなければなりません。今にしてこの禍根を寸断するために、総理は、アメリカに対して、すみやかにこの計画を中止するよう、強力な申し入れをする決意があるかどうか、この点、明確にお答えいただきたいと思います。
次に、防衛庁長官に対し次の二点をお伺いいたします。
まず第一点は、国際情勢は平和への明るい方向へ進んでおり、しかも世界の軍備体制も、これに即応して変化してきているのに、わが国の自衛隊がひとり軍事的増強をはかっていることは、全く世界情勢に逆行するものと断定せざるを得ません。国防政策を立案するに当って、防衛庁は、世界の軍事情勢をどのように分析し、さらに、どのように対処しようとするのか、この点を明確にしていただきたいと思います。
第二点は、昨年六月で一時期が画され、原子戦備に踏み切ったことは明らかでありますが、三カ年計画を急テンポに推し進めようとするあせりがあるところに、大きな問題があると言わなければなりません。ここ二年ないし三年の間の限定原子戦争を想定している米軍部の軍事冒険に、日本もすでに足を踏み入れているのではないかと考えられるが、この点、明確にお答えをいただきたいと思います。
最後に、現在の世界情勢の中で、真に日本を守るものは、ミサイルの前によろめいている自衛隊ではなく、東西いずれの陣営にも加盟しないで、自主独立の外交を推し進め核実験禁止と非武装化を推進する、このことこそは、日本の独立と平和を守り、世界の平和への道であるということを、ここに重ねて強調申し上げて私の質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/7
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008・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
原子力がもっぱら平和的に利用され、人類の平和と福祉に貢献をすべきものであって、これが原爆その他兵器に使用されて、人類の滅亡を来たすがごときことに対しては、日本はその過去の体験から申しましても、これの禁止を強く、私は、世界に対して要望する道徳的義務があるということを考えて、今日まで行動してきておるのであります。(拍手)今回、ソ連が一方的に実験停止についての宣言をいたしましたが、これに対しましては、すでに政府の所信を明瞭ならしめておりますように、今回のソ連のこういう宣言が、どういう意図に出ておるかというようなことについても、いろいろな議論はあります。また、宣言そのものが、将来、実験を復活する自由を留保いたしておりますが、私は、このことをソ連政府が一方的に宣言したということに対しては、日本政府としてこれを歓迎するものであるという考えを明瞭に申し述べております。同時に、将来これをきっかけとして、他の国々も、これにならって停止をし、また、これが一時的の停止ではなしに、永久的の停止になり、さらに進んでこれらが、そういう兵器、原水爆の製造、貯蔵、使用というようなことが禁止されることを、私どもは強く要望するものである。また、それが東西両巨頭会談によりまして、実現を早めるように強く希望するものであるという考えを、私は率直に述べております。この考えは、従来、私、この内閣が主張して参っておるところと一貫しておるところでございます。
さらに、この四月から、エニウェトクを中心としての米国のこの太平洋上の核爆発の実験に対しましては、私どもさっそく、これに対してアメリカに強く反省を求め、これが停止を強く要望いたしておることも、すでに御承知の通りであります。私は、この問題に関しましては、今日まで終始一貫して努めてきておりますが、しかしながら、まだその成果を得ないことは非常に遺憾と考えております。しかし幸いに、このソ連の今回の宣言、これがきっかけとなって、近く行わるべき、ぜひ実現したいと考えておる東西両巨頭会談におきまして、この核兵器の問題、一般軍縮の問題、世界の人類の最も関心の強い、また、不安を感じておるところのこの問題を、両巨頭におきまして隔意なく話してそうして国際的の協定によって、世界の不安を除き、恒久平和の基礎が築かれることを、この上とも、心から日本国民とともに願ってやまないものでございます。また、それに対する必要なことに対しましては、政府として、あらゆる努力をいたす考えでございます。
さらに、この非核武装地帯の問題、また、日本の非核武装についての宣言につきましての御質問でありましたが、私は従来、日本の自衛隊は核武装しない、また、核兵器の持ち込みは拒否するということを明瞭に申しておりまして、このことは、すでに今申し上げました従来の日本のいろいろな国際的な活動、努力とともに、日本のこの方針というものは、今や世界にきわめて明白になっておると私は信じております。従って、特にそういう宣言をするということの必要は、私は考えておりませんけれども、この私どもが従来主張し、明瞭にしておる線に沿うて、そういう宣言がなされるということであるならば、私は、これを拒否するような考えはございませんけれども、すでに私のやっていることで十分ではないかと、私は考えております。
次に、核兵器で武装しない、持ち込みを拒否するという決意は、これは変りないものか、また、それを実現する確信がありゃという御質問でありましたが、私は、それについては強い決意を持っておりますし、また、そういうわれわれの意思に反して持ち込まれるということは、絶対に実現しないという確信を持っております。
沖縄の問題に関しての御質問でありましたが、御承知の通り、沖縄は今日、日本が施政権を持たないのであります。これは非常に遺憾のことであり、施政権の返還についても、従来からずっと努力を続けてきておりますが、そういう状況のもとにおいて、沖縄のこの実際の防衛の施設なり、あるいは米国軍隊の行動等に対して、日本がこれに対していろいろな意見を言い、いろいろな希望を言うことは、もちろん差しつかえないことでありますけれども、日本のこの領土と同じように、私自身の決意、私自身のこの行政のカでもって、どうするということもできない状態であることを非常に遺憾に考えております。(拍手)
〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/8
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009・藤山愛一郎
○国務大臣(藤山愛一郎君) 国連軍縮委員会の問題について、まず御答弁を申し上げます。
政府といたしましては、国連軍縮委員会が今日のような停頓しております状態は、国際的に軍縮を進行して参ります上において、好ましいとは考えておりません。従いまして、何とかして国連における軍縮委員会を、活動し得るような状態に持って行くことが希望されるのであります。御承知のように、昨年六月、軍縮小委員会はやや歩み寄りを見まして、有望ではないかという感じを持ったのでありますが、九月に行きまして決裂いたしましたことは、まことに残念だと思うのであります。先般の総会におきまして、国連軍縮委員会の構成等についていろいろ議論がありまして、最終的には、国連軍縮委員会のメンバーの問題につきまして意見が対立しまして、そうして終局において二十五人の委員よりなる国連軍縮委員会ができ上ったわけであります。しかしながら、これにつきましては、ソ連がボイコットをいたしておるので、今日まで、成立いたしました軍縮委員会というものは、活動いたしておりません。日本といたしましては、この軍縮委員会がやはり活動することを希望しなければならぬのでありまして、従いまして、活動する前提としては、いかにソ連がこれに参加するかということを考えて行かなければならぬので、それには、まず眠っておりますこの軍縮委員会が開会をいたしまして、そうして軍縮委員会自体として、ソ連をいかなる方法で参加させるかということを、まず研究することが必要ではないかと思うのであります。ことに、軍縮委員会成立の経緯から見ますと、ソ連が三十五人のメンバーを主張し、その他が二十五人というような、数の上においても若干の開きで決裂しておるのでありますから、そういう意味において、軍縮委員会としては、何らか休眠状態でなしに開会をして、そうしてこの問題を論議すべきだと思うのであります。
そういう意味におきまして、政府といたしましては、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ等に対して、国連委員会を再開して、いかにすればソ連を参加させるかということの意向を打診しつつあるわけであります。従いまして、右のような考え方でやっておりますので、米英加等から非難あるいは警告が来たということはございませんし、また、私どもといたしましては、これが巨頭会談のじゃまをいたしたというふうには考えておりません。
次に、ジュネーヴにおきます海洋法会議の問題でございます。御承知のように、海洋法会議は、二月二十四日から開会いたしまして、日本といたしましてね、公海の自由の原則につきまして、これを一貫して主張する態度をとって参っておるのであります。ソ連の提案だから反対をするということは、われわれ考えておらぬのでありまして、公海の自由の源則に十分適応いたすものでありまして、実質的に将来の海洋法典として、りっぱなものができ上ることを希望いたしておるのであります。で、ソ連案が提示されましたときに、ソ連案を議題にすることに対して賛成をいたしたのでありますけれども、しかしながら、ソ連案には、公海上におきます実験のみを取り上げ、島清、海岸、領海等で行われますものにつきましては触れておりませんので、議題になりまして、十分それを検討した上で比較考量してわれわれとしては、その態度をきめなければならぬというのが、わが国の態度であったわけであります。
しかるに二月三十一日、インドが提案をいたしまして、本件は、海洋法会議で論議す、べきでなくて、国連の決定にゆだぬべしという提案をされたのであります。わが国は、海洋法会議におきまして、二十七条にこの問題を何らかの形で入れますことが適当と考えておりますので、インドの提案につきましては、これからはずして、国連総会できめるべきであるというのでありましたから、反対をいたしたので遜ります。また、インドは、これと同時に、ソ連等の共同提案を表決に村さない旨の提案をいたしました。わが方はこれに反対をいたしたのでありますか、結局インド案が可決されて、ソ連等の共同提案については、採決が行われないことになったわけなのであります。なお、ユーゴスラビアは、海洋法二十七条に関しまして、草案についておりますコメンタリーを二十七条に載せるという提案をいたしたのであります。このコメンタリーの成立の過程から見まして、公海において広範囲にこの種の問題を定義いたして参る問題でありますので、日本といたしましては、これを支持いたしました。現に三月三十一日、同案に、メキシコが多少の修正を加えました案が採決に付されますときには、賛成投票を行なったのであります。なお、その後、右のユーゴ案とほぼ同様でありますポーランド案が提出されたのでありますが、その採決に対しましても、わが国といたしましては、これの賛成投票をいたしたのであります。いずれも、これらの案が少数をもって否決されたことは、まことに遺憾だと思います。
以上のような一貫した態度をとって参っておりますので、ソ連または共産圏内の国家の提案だといっても、それに反対をするということは、今日までとって参っておりません。(拍手)
〔国務大臣津島壽一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/9
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010・津島壽一
○国務大臣(津島壽一君) 私に御質問のあった点、二点あったと思います。これにお答えいたします。
第一点は、今日の国際情勢、租界情勢に即応しない自衛隊の増強をやっているが、世界の情勢をどう見ているか、こういう御質問であったと了承いたします。この国際情勢並びに軍事情勢については、私といたしましても十分検討いたしております。いろいろ見方もございまするが、防衛に関する限りにおいては、どの国も、はなはだ抽象的でございまするが、その国を守る体制だけは、一国の独立のために、安全のために備えて行こうという点においては、これはもう基本釣の問題であろうと思うのでございます。その方法にいろいろあるようでございます。しかし、わが国の防衛を考えますときには、御承知のように、基本的の方針といたしましては、国力、国情に応じた必要な最小限度の防衛だけは、この際築き上げよう、こういうのが基本的の方針でございます。これがためには、財政の部面、また民生安定その他のことについて十分な考慮を払って、ここに最小限度の防衛体制を築き上げようということに相なっておることは、もう、るる申し上げたことでございます。そこで、今日の段階は、この姉制を築き上げる、育成の一種の段階にあると、こういうわけでございまして、今後、自衛隊の増強というものは、やはりこの基本的の方針に沿うて行わるべき現在の段階にある、こういう点が私は最も大事な点であろうかと思うのでございます。
なお、第二点の方は、この防衛体制を、今日、整備目標をきめて、それが非常に急速な防衛の増強になっているが、あるいはこれは、米軍部の軍事冒険に日本が足を踏み入れるんじゃないかというようなことについての御質問であったと思います。これは全然そういう意味はございません。防衛の目標と申しますのは、先ほど申しましたような方針に基いて、漸次国力に応じた整備をはかって行こうということが、唯一最大の目標でございまして、アメリカ軍部の、軍事冒険という言葉をお使いになりましたが、これに日本が足を踏み入れたという事実は、これはございません。共同防衛という観念は、これは安保条約等の点においてはございます。しかし、これは一にわが国を守るということに尽きておるわけでございます。従って、わが国は外国からの直接の侵略等がなれれば、これは自衛権の発動はいたさない、絶対にそういう建前でございます。
なお、先ほど総理がお答えの中に申しあげたように、こういった自衛隊の増強のうちにあっても、繰り返して申す次第でございまするが、近代科学の進展に応じて、装備の改善ということは、これは必要だろうと思って、私どもも、ずいぶんこれに対して努力をいたしております。がしかしながら、そういった部面においても、核装備は自衛隊にはいたさないというのは、もう確固たる方針でございます。
以上をもってお答えといたします。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/10
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011・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第一、日本国とインドネシア共和国との間の平和条約の締結についての承認を求めるの件
日程第二、日本国とインドネシア共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件
日程第三、旧精算勘定その他の諸勘定の残高に関する請求権の処理に関する日本国政府とインドネシア共和国政府との間の議定書の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
以上、三件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/11
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012・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。外務委員長寺本広作君。
[寺本広作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/12
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013・寺本廣作
○寺本広作君 ただいま議題となりましたインドネシア共和国との平和条約、賠償協定及び請求権の処理に関する議定書の三承認案件につき、外務委員会における審議の経過並びに結果を一括して御報告申し上げます。
三案件成立の経緯は、次の通りであります。インドネシア共和国はサンフランシスコ平和条約に署名しましたが、その後、これを批准せず、賠償問題が解決されるまで、わが国との平和関係は回復しないという方針をとって参りました。わが国は、インドネシア共和国との間の賠償問題の早期解決をはかるため、昭和二十六年十二月以来、数次にわたって同国政府と交渉を重ねて参りましたところ、昨年十一月二十七日、ジャカルタにおいて、岸総理大臣とスカルノ大統領との間に、賠償問題に関する基本的な了解が成立し、続いて十二月八日、同地において小林政府代表とジニアンダ総理大臣との間に、平和条約、賠償協定等の締結に関する覚書が作成され、さらに、この覚書を基礎として、条約、協定等の案文につき具体的交渉が進められた結果、本年一月二十日、同じくジャカルタにおいて、藤山、スバンドリオ両外務大臣の間で、この平和条約、賠償協定及び請求権の処理に関する議定書に署名が行われるに至ったのであります。
次に、その内容を要約いたしますれば、このうち、平和条約は、わが国とインドネシア共和国との間の戦争状態の終了、平和友好関係の存在、通商航海条約が締結されるまでの間における無差別待遇の相互供与、総額二億二千三百八万ドルの賠償、インドネシア共和国による日本国及び日本国民の財産の処分権、わが国の対インドネシア戦争請求権の放棄等につき規定し、賠償協定は、右の二億二千三百八万ドルにひとしい円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務を、十二カ年にわたり、賠償として供与することにつき細目を定めたものでありまして、金額及び期限等を除けば、さきに締結されたフィリピンとの間における賠償協定とほぼ同一の内容となっております。請求権の処理に関する議定書は、両国間の支払い取りきめによって定められた貿易の決済方式による支払いを、インドネシア共和国が一部を除き履行しなかったため、これまでに累積してきた日本政府の債権一億七千六百九十一万ドル余りを、両国間の国交が正常化するこの機会に、一括して放棄しようとするものでございます。
委員会は、三月十四日、衆議院より三案件の送付を受け、自来、岸総理大臣、藤山外務大臣を初め、関係政府委員との間に熱心な質疑応答を重ねて参りました。以下、質疑応答の二、三につき申し上げます。
現在におけるインドネシア内乱の帰趨に関する見通しと、本件承認の関係いかんとの質問に対し、岸総理大臣は、スカルノ大統領に対する国民的信頼には変りがない、紆余曲折はあっても、結局、彼のあっせんによって政情は安定するであろう、一先方においては、本件の承認は、インドネシア国会の意思として決定されておるのであるから、たとえ内閣が変ることがあっても、インドネシア共和国としての意思には変更がない、インドネシア国会の意思がはっきりしている以上、わが国においても、特に批准をちゅうちょすべき理由はないと答えられました。この賠償と、フィリピン及びビルマ賠償との均衡いかん、また、ビルマ賠償の再検討条項が問題化する可能性いかんとの質問に対し、藤山外務大臣は、木賠償とフィリピン及びビルマ賠償との間には十分均衡がとれている、ビルマからは現在まで何らの意思表示はないが、たとえビルマから再検討条項を持ち出されても、同国に対しては納得のいく説明を行い得ると答えられました。賠償に供する生産物を作るための、外貨使用の限度に関する政府の統一見解いかんとの質問に対し、藤山外務大臣は、政府の統一見解として賠償実施のために特に新たな、そのためにのみ必要な外貨負担を伴うものは、賠償として供与しない。その他のものでも、日本にとって外貨負担を伴うものは、供与について検討するが、その具体的取扱いは、各場合について判断する以外に方法はなく、その場合、関係各省間で協議決定すると答えられました。
その他、インドネシアの内乱については、わが方における情報収集の方法、反乱軍からの接触の有無、物資買付、武器禁輸の実情、各国の態度、SEATOと内乱の関係等につき質問が行われ、また、平和条約に関しては、本条約とサンフランシスコ条約との関係、バンドン会議の精神を特に本条約に引用した理由、今後におけるインドネシアへの日本国民の入国制限緩和の条約上の根拠、処分の対象となる在インドネシア邦人財産の補償問題、最恵国待遇と言わず、無差別待遇という表現を本条約で用いた理由等について質問が行われ、その他、賠償の実施と経済協力の進め方、清算協定失効後の対インドネシア貿易の状況、残留邦人の実情とインドネシア国籍取得問題等について、広範多岐にわたり熱心な質問が行われましたが、その詳細は会議録により御承知を願いたいと存じます。
委員会は、昨四月三日質疑を終了し、引き続き討論に入りましたところ、森委員は、社会党を代表して「三案件に賛成し、なお、平和条約、賠償協定の精神を完全に履行するためには、インドネシア共和国の政情安定が必要である、もし、第三国が現下の内乱に介入するならば、事態はさらに拡大する危険性があるから、政府は、断固たる態度をもって、外国の干渉を阻止するため必要な措置をとるべきである」との趣旨の意見を述べられました。
次に、緑風会を代表して石黒委員は、「三案件に賛成し、なお、インドネシアの国内情勢は、同共和国の国内問題たるにとどまらす、国際情勢にも関連する問題であるから、政府は、周密なる情報を得て善処されたい」との趣旨の意見を述べられました。最後に、自由民主党の吉江委員は「本件に関し、インドネシア国会がすでに批准を行い、与野党を問わず、国をあげて賛成しているのであるから、同国の政情いかんにかかわらず、両国親善の大方針に基き、三案件を承認することに賛成する」との旨を述べられました。
かくて討論を終り、採決の結果、三案件とも、全会一致をもって承認す、べきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/13
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014・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより三件の採決をいたします。
三件全部を問題に供します。委員長報告の通り三件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/14
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015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって三件は、全会一致をもって承認することに決しました。手
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/15
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016・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第四、航空法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長天田勝正君。
〔天田勝正君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/16
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017・天田勝正
○天田勝正君 ただいま議題となりました航空法の一部を改正する法律案の運輸委員会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。
わが国の航空事業は、平和条約発効後、すなわち、昭和二十七年四月以降、民間航空の再開に伴い、航空活動の開始を見たのでありますが、自乗、民間航空事業の発達は、航空技術の進歩と相待って、航空機の大型化と高速化が進み、航空交通はひんぱんの度を加えて参りました。この発達に適合するよう、安全運航、飛行場の管理等について、所要の改正をする必要が生じたので、今回、航空法の一部改正案が提案された次第であります。
次に、本改正案の骨子について申し上げます。改正の第一点は、航空の安全の確保をはかったことであります。すなわち航空機の耐空証明を行う場合の指定事項を追加し得るよう改正するほか、飛行場の管理及び機長の路線資格に関する規定を整備強化して、航空の安全の強化及び飛行場の通常の円滑化をはかることにしましたが特に、運航につきましては、機長は、航空機の整備状況、気象情報等を出発前に確認しなくてはならぬことを法律上の義務とし、その責任を明確にいたしますなど、所要の改正をいたしたことであります。改正の第二点は、最近における大型機の導入等に伴い、検査手数料の引き上げを行なっていることであります。以上が、本改正案の骨子であります。
本改正案の審議に際しましては、当委員会としては、二月十八日より数次にわたり、きわめて慎重な審議を行なったのであります。質疑のおもなる点は、ます、わが国における航空の基本問題として、領空におけるわが国の主権の問題並びに航空交通管制の問題、国際航空路新設計画とその見通しに関する問題、国内飛行場の設備及び運営の状況、航空機乗務員の労働条件の問題等、航空行政の全般にわたり、熱心な質疑応答がなされたのでありますが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
かくて質疑を終り、討論、採決に入りましたところ、全会一致をもって、衆議院送付案の通り可決すべきものと決定いたしました。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/17
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018・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/18
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019・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/19
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020・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第五、角膜移植に関する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長阿具根登君。
〔阿具根登君登壇、拍手]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/20
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021・阿具根登
○阿具根登君 ただいま議題となりました角膜移植に関する法律案について社会労働委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法律案は、現行法制下においては、死体から角膜を摘出することは、死体損壊罪との関係から、いろいろ問題がありますので、視力障害者の視力の回復をはかるため、角膜移植術を行う必要があるときは、医師は、適法に死体から眼球を摘出することができることとして視力障害者の視力の回復に寄与しようとするものであります。
本法案のおもなる内容といたしましては、死体から眼球を摘出することができるのは、角膜移植術を行う必要のある患者が特定している場合に限り、かつその際、死体に対する礼意保持について特に規定を設けており、また、変死体または伝染性疾患により死亡した死体等からは、眼球摘出を禁止しておるほか、業として死体の眼球のあっせんをしようとするときは、厚生大臣の許可を受けなければならないことといたしておるのであります。
本案につきましては、慎重なる審議を行い、特に死体損壊罪との関係、死体に対する礼意の保持、眼球の提供のあっせんの許可等に関する諸問題につきましては、提案者並びに政府委員に対し、熱心なる質疑が続けられたのであります。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、藤田委員より、本案に対する賛意を表せられ、次の付帯決議を付すべき旨の提案がありました。
付帯決議案
本法の運用に当っては次の諸点に特に注意すること。
一、眼球の摘出については、遺族の同意のみならず、生前における本人の意思を充分に尊重して行うこと。特に遺族のない場合においては、本人が生前において眼球を提供する旨の意思を表明したとき以外は、摘出を行わないように十分指導すること。
二、眼球の提供のあっせんを業とする者に対する許可に当っては、営利を目的としないことを許可の要件とすること。
右決議する。
かくて討論を終了し、採決の結果、本法律案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお討論中、藤田委員より提出されました付帯決議案につきましては、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/21
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022・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/22
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023・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
〔「議長、どうした」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/23
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024・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 政府関係者の出席を促しております。しばらくお待ち下さい。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/24
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025・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第六、地方自治法の警部を改正する法律案
日程第宅、地方税法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/25
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026・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長小林武治君。
〔小林武治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/26
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027・小林武治
○小林武治君 ただいま議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案について委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。
さきに昭和二十七年の地方自治法の改正により、地方公共団体及びその機関に処理を義務づけている事務並びに地方公共団体に設置を義務づけている行政機関及び職員等を、すべて別表として地方自治法中に掲げることとされておりますことに従い、今回、本法案は、昭和三十一年第二十四回国会以降の法令の制定改廃に伴う別表の整備をはかり、なお、若干の条文の整理を行おうとするものであります。以上の内容を有する政府原案に対し、衆議院においては、一、町村の議会に、市の場合と同様に、条例の定めるところにより、事務局を置くことができることとし、
〔議長退席、副議長着席〕
二、地方自治法に定める市町村の区域の全部もしくは一部もって市を設置する処分または町村を市とする処分については、本年九月三十日までに、その申請がなされたものに限り、人口要件を、五万以上の原則に対し、特に三万以上とする旨の特例を設けることを内容とする修正を加えて本院に送付して参ったのであります。以上が、本法案の内容の大要であります。
地方行政委員会に趣きましては、四月二日、郡国務大臣より提案理由の説明を聞いた後、政府側との間に質疑応答を重ね、慎重審査を行いましたが、その詳細については、会議録によって御承知を願います。
同日、質疑を終り、討論に入りましたところ、大沢委員は自由民主党を、成瀬委員は島本社会党をそれぞれ代表していずれも本法案に賛成の旨を述べられ、緑風会所属の森委員も賛成の旨を述べられました。この討論中に、大沢委員及び成瀬委員より、次のような付帯決議案が提出されました。すなわちその内容は、
政府は、地方自治の実情にかんがみ、左の諸点につき、検討の上、すみやかに適当な措置を講ずべきである。
一、選挙管理委員会の適切かつ円滑な運営のため、事務局を置きうるものとすること。
二、全日制の市町立高等学校の教職員については、その退職年金算定上の在職難問の通算につき、他の公吏学校の教職員に対する場合とその取扱いを異にし、著しく均衡を失すると思われるので、これらの教職員についても、同様の取扱いをすること。
三、知事及び市長等の兼職制限を強化すること。
右決議する。というのであります。
かくて採決の結果、本法案は、全会一致をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、大沢、成瀬両君提出の付帯決議案は、全会一致をもって、これを委員会の決議とすることに決定した次第であります。
次に、地方税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法案は、地方財政の現況にかんがみ、地方観法の一部を改正するもので、改正の要点は、大体次のようなものであります。
すなわち、一、自転車、リヤカー、荷車等に対する自転車、荷車税を廃止することとし、これが減収、平毎度約五十億円を補てんするため、市町村たばこ消費税率を現行百分の町九から百分の十一に引き上げ、二、別に軽自動車税を市町村税として設け、従来府県税たりし軽自動車及び二輪の小型自動車に対するものとあわせて原動機付自転車にもこれを課することとし、三、金業合理化促進法に追加される新技術金業化用機械設備等に対して課する固定資産税については、その課税標準を、新たに固定資産税が課せられることとなった年度から三年度間は、当該資産の価格の二分の一の額とすることとし、四、道府県民税及び市町村民税の課税標準たる所得税額の算定については、昭和三十三年分及び三十四年分の所得税においてその年分の所属税額から控除される貯蓄控除額を控除しないものとし、五、電気ガス税の非課税の範囲にジルコニウム地金等の製造のために使用する電気を加え、六、木材引取税の標準税率を現行百分の四から百分の二に、制限税率を現行百分の五から百分の三に引き下げ、七、「軽油引取税または揮発油税の課される軽油または揮発油」以外の炭化水素油が自動車の内燃機関の燃料の用に供された場合は、その炭化水素油の消費に対しても軽油副取税を課する等が、改正内容のおもなものであります。
大体、以上の内容を有する政府原案に対し、衆議院においては、この法律の施行日が「昭和三十三年四月一日」とあるのを「公布の日」と修正して、本院に送付して参ったのであります。
地方行政委員会におきましては、二月二十七日、郡国務大臣より提案理由の説明を聞き、三月二十六日には早稲田大学教授時子山常三郎君外二名の参考人の意見を聞き、また、政府側との間に質疑応答を重ねる等、慎重審議を行いましたが、その詳細については会議録によって御承知を願います。
四月三日、質疑を終結し、討論に入りましたところ、小柳委員は、自由民主党を代表して、本法案に賛成する旨を述べられ、なお、付帯決議案を提出されました。その内容は、
地方税制については、政府は至急左の諸点を検討の上、適当に措置すべきである。
一、飲食店等における遊興飲食税の免税点については、現価三百円を五百円に引上げること。
二、旅館の宿泊等に対する免税点については、現行八百円を千一円に引上げること。
三、自家用のトラック及び三輪の小型自動車に対する自動車税率は千円を引下げ、営業用と同額とすること。
四、木材引取税については、税率引下げに伴う課税の実態、関係市町村の財政に対する影響等とにらみ合せ、適宜税率を調整すること。
右決議する。というのであります。鈴木委員は、日本社会党を代表して本法案に反対である旨を遊べられ、また、小柳委員提出の純帯決議案に対しても、直ちに賛成できない旨を述べられました。緑風会所属の森委員は、本法案に賛成し、付帯決議案にも賛成すると遜べられ、なお、地方税制の根本的再検討について政府の十分なる考慮を望む旨を述べられました。
かくて採決の結果、本法案は、多数をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定した次第であります。
小柳君提出の付帯決議案は、多数をもってこれを委員会の決議とするこれに決定いたしました、郡国務大臣はこれに対し、「付帯決議の趣旨を体し、善処したい」旨を述べられました。
以主、御報告申し上げます、(拍手発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/27
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028・寺尾豊
○副議長(寺尾豊君) 地方税法の一部を改正する法律案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。鈴木壽君。
〔鈴木壽君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/28
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029・鈴木壽
○鈴木壽君 ただいま議題となっております地方税法の一部を改正する法律案につきまして私は日本社会党を代表いたしまして、反対の意見を述べるものであります。
今回の改正案において、多年わが井会党が撤廃を主張してきた自転車、荷車税が、おそまきながら廃止されることになりましたが、これは、われわれ年来の主張がいかに一出しいものであり、かつ国民大衆の切実な要望を反映していたものであるかの証左でありましてよろめき続ける岸内閣といえども、これを取り上げざるを得なかったというところに、如実にそれが示されていると思うめであります。今回の政府の措置は、われわれ社会党の看板を無断に借用したきらいはありますけれども、失政続きの岸自民党内閣のきわめて異例に属する善政一つとして、これを認めようとするものであります。しかしながら、次に述べますところの他の改正点につきましては、われわれのとうてい容認し得ないものがあるのでございます。
反対の第一は、電気ガス税の非課税範囲の拡大についてでございます。歴代の保守党政府は、基礎資材の生産事業は、産業振興上、あるいは国民の消費生活に重大なる影響を与えるものであるとの理由のもとに、これを電気ガス税の課税の対象の外に置き、さらに年々その非課税範囲を拡大し、現在におきまして、すでに八十種目以上のものの、これらの大法人、大企業を免税の恩典に浴せしめ、その免税額は百二十四億円に及び、三十二年度決算に見られるところのこの税の総収入二百四十五億円の五〇%以上に達しているのでございます。もちろん、われわれといえども、それが真に重要なる基礎資材の生産事業であり、輸出産業または国民生活に至大の関係を持つ産業であるものについては、ある程度の税法上の保護を加えることは認めるのにやぶさかではないのでございますけれども、しかし、それはあくまでも国の経済政策、国の産業保護政策の一環として、国の措置においてなされるべき性質の番のでありまして、かかる地方税の免税といも瀞において解法すべきでねないと考えるのでございます。すでに、この種の大法人、大企業は、租税特別措置法、法人税法、その他多くのものによって、不当なまでに大きな保護を受けております。さらにまた、この種大口の電力需要者には、著しく低廉な電力料で電力が供給されていることからいたしましても、電気ガス税の非課税範囲に入れることは不当なことだと言わなければなりません。従って今回の改正案によって、さらにまた、石油ガス化学、合成繊維工業等の十種類の亀のか新たに追加指定されることになることにつきましては、われわれは、とうてい賛成するわけには参らないのであります。このような非課税範囲のいたずらなる拡大、大企業に対する不当な保護政策の結果、電気ガス税は中小零細の小口消費者、一般家庭消費者のみの負担に転嫁せられ、また、市町村の重要なる財源の確保に大きな支障を与えることになるのは明らかでございます。われわれは非課税範囲を大幅に縮小し、一般小口消費者に対する説率引き下げによる負担の軽減をはかるべきことをこそ、主張するものであって、この見地から、かかる改正には反対せざるを得ないのであります。
反対の第二の点は、木材引取税の大幅な税率引き下げについてでございます。この税の現行税率四%は、昭和三十二年度において従来の五%より一%引き下げられたばかりのものであって、実施後わずか数カ月で、さらに一挙に税率を半分の二%としなければならない理由は、ごうも存在しないのでございます。郡長官は、この税は安定しない税であるとか、捕捉に困難であるとか、あるいは徴収歩合が低いので、税率引き下げによって安定させたいと言っておるが、捕捉を的確ならしめ、徴収歩合の向上対策をはかることこそが、税の安定化の先決要件であって、重税とは言いがたい現行税率の大幅引き下げによって安定をはかるべき性質のものではないのであります。この税は、山村にあっては、全体の税取入中、著しく大きな比重を占める税であって、その割合は三〇%、四〇%あるいは五〇%、六〇%、中には七〇%をこすところもあるのでございまして、かわりに財源なしに、これが税率の大幅な引き下げを行うことね、当該市町村に与える影響は甚大であり、さなきたに自主財源に乏しい地方団体として、ますます窮乏に追いやると言わなければなわません。さらに不可解なことは、現行税率を四%から二%に引き下げていながら、三十三年度におけるこの税の収入額を現行法以上に見ていることであります。一体、税率を一挙
に五〇彩引き下掛ておき、なおかっ、税収入が前年度以上ということが、果して予想し得ることでありましまうか。およそ常識では解しかねるところであります、捕捉を満度に見、徴税率を最大限に見ても、なおかつ足りず、指示価格の大幅引き上げによって、この見込み額を達成せしめようとしているが、これはまことに苦しいごまかし方策であって、一体、政府は減税をうたいながら、その実、この点については増税を行おうとしておるのであります。これは、はしなくも巷間、両岸内閣とうわさされておる現内閣の本質を私は露呈したものと言うべきであると思うのでございます。いま一つ、見のがし得ないことは、政府は、この税率引き下げによって生ずる市町村の減収に対しまして、激変緩和と秘して、特別交村税による補てん、穴埋めを、いわゆる自治庁覚書なるもので約束いたしておるのでございますが、税率変更による穴埋めを特別交付税によってなすことは、特交本来の趣旨を歪曲した不当な解釈、運用と言うべきものでありまして、かかる乱用は、地方交付税法第十五条に照らして、断じて許されるべきものではないのであります。以上の観点から、本木引税の大幅な税率引き下げ、及びこれに関連する一連の措置に反対するものでありますが、一体、このような不当な改正を何ゆえに行われなければならなかったのか、すこぶる私どもは疑問と思うところでございます。
今回の措置は、一部業者の執拗、かつ強力な運動に動かされた、きわめて少数の与党議員と与党幹部との間の取引によって生まれたことは明らかでございます。大部分の与党の議員ですら、つんぼさじきに置かれておったのでございまして、業界新聞の伝うるところによりますと、この運動のために、業者の集めた資金は七千万円と言われておるのでございますが、このような莫大な運動資金がどのように使われたかは、もちろん、われわれ知るよしもございませんが、事実とすれば、まことに苦々しいことと言わなければなりません。与党議員ですから心ある者は憤慨しておるのでございます。良識を誇る参議院は、院の信頼と議員の名誉にかけて、かかる改悪を阻止しなければならぬと思うのでございますが、いかがでございましょう。(拍手)
反対の第三点は、改正案による減税一は、自転車、荷車税の廃止等を除いては、その方向を根本釣に誤まっておるということでございます。国民負担の軽減、従って減税は、国税、地方税を通じて、機会あるごとに行われなければならないこと、もちろんでございますが、しかし、それはあくまでも国民大衆の、特に低額所得者の層に向けられることを第一義とすべきであると思うのでございます。従って、今回の改正案による、先に述べた二つの税の減免のごときは、誤まれるもはなはだしきものであります。ますもって、わが党が主張しておりますように、中小、零細なる企業、低額所得者の事業税の減免、住民税の引き下げ、あるいは住民税におきますところの給与所得者と事業所得者との間における負担の不均衡の是正、大衆飲食にかかる免税点の引き上げ等を行なって、それらの収入減についての十分なるかわり財源を与えること、なおまた、法定外普通税を課してあるいはまた、法定を越える増税を行なって住民に多大の負担をしいているものに対してそれぞれ救済措置を講ずることこそ、真の税負担の軽減というべきでありますのに、大企業保護、一部業者の利益の擁護に目を奪われたことは、まことに残念なことだと言わなければなりません。去る二日、自民党川島幹事長は、大阪におきまして、来年度、事業税の減税を行うのだということを言っております。しかし、事業税の減税につきましては、わが党が今回、案を出しているにもかかわらず、それをつぶして、そしてさらに、来年は事業税を引き下げるのだ、このようなことを言っておりますが、これは選挙目当てとは言いながら、まことに無責任な放言と言わなければならぬと思うのでございます。
最後に、私は、最近の地方税法の改正に当っての考え方、その取扱い等からいたしまして、政府の地方財政、ひいては地方自治そのものに対する根本的な誤まりを指摘をして、反対討論を終りたいと思います。
言うまでもなく、現在の地方団体にとって、何よりの急務は、財政の確立であり、特に自主財源の拡充強化が先決問題であります。自主財源の確立なくして、真の地方自治はあり得ないことは明らかでありまして、最近、地方財政はやや好転のきざしを示してきたとはいうものの、その財政構造は依然として不正常であり、国の財政が比較的好調であることに比べれば、まことに寒心にたえぬものがあるのでございます。国の一般会計予算歳入中、租税収入の占める割合は八〇%でありますが、地方財政計画による歳入中、税収入はわずかに四一%にすぎないのであります。しかも、個々の団体におきまして見る場合に、税収入の歳入に占める割合の一〇%あるいは一二%、一三%、一五%というものが少くないことを知るならば、そして一方、多額の地方債をかかえて苦しんでいることを考え合せるならば、いかに地方財政というものが不安定であり、従って、国に依存する度合いのいかに大きいかが明らかであると思うのでございますが、このような財政状況のところにおいては、地方自治とは名ばかりで、財政の面から、完全に国の支配に服しているといって差しつかえないのでありまして、そのよい例が再建団体でございます。従って、地方財政確立のために、その財政構造を正常化し、自主財源の充実強化のために、早急に国、地方を通ずる税体系の再編成を行うべきであるのにかかわらず、政府は、研究調査中と称して、何ら積極的な対策を持ち合わしておりません。地方税をしばしばいじることによって、かえって地方の自主財源を細らせるような方向に持って行きつつあることは、地方自治の本義を没却し、一方、地方制度改正の意図と相待って中央支配の強化をねらうものであると、私どもは断ぜざるを得ないのでございます。われわれは、あくまでも地方自治の本義を守る立場に立って、従って、一切の地方税の改正は、終局において地方自治推進のために、住民福祉の向上と地方財政確立のために行われるべきであることを主張いたしまして、私の討論を終るものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/29
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030・寺尾豊
○副議長(寺尾豊君) これにて討論の通告者の発言は、終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。
これより両案の採決をいたします。
まず、地方自治法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
[賛成者起立]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/30
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031・寺尾豊
○副議長(寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/31
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032・寺尾豊
○副議長(寺尾豊君) 次に、地方税法の一部を改正する法律案全部を問題に供します効
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/32
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033・寺尾豊
○副議長(寺尾豊君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/33
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034・寺尾豊
○副議長(寺尾豊君) 日程第八、分収造林特別措置法案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長重政庸徳君。
〔重政庸徳君登壇、拍手]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/34
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035・重政庸徳
○重政庸徳君 ただいま議題になりました分収造林特別措置法案について、農林水産委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。
木材需要の増大に対処して、人工造林の拡大がきわめて必要であり、これがため、森林所有者の自力造林を中心として人工造林が推進されております。しかし、土地を所有していても、資金や経営力等の関係で、自力で造林することが困難なものについては、他の者の資金や経営技術を導入して造林を行い、その収益を分収する、いわゆる分収造林を積極的に進める趣旨によって、この法律案が提案されたのでありまして、その内容は、都道府県知事は、分収造林契約の当事者になろうとする者から、契約締結について、あっせんの申し出があった場合は、適正な契約が締結されるようあっせんに努めるものとし、民法の特例を設けて、分収造林契約にかかる共有樹木については、共有物の分割請求の規定は適用しないこととし、さらに、地方自治法の特例を設けて、条例で特に重要財産と定めたものでも、分収造林契約にかかる土地については、その団体の議会で出席議員の三分の二以上の同意を得れば、住民投票を行わなくても、十年以上五十年未満の使用を許すことができることとする等であります。
委員会におきましては、農林当局から提案の理由その他について説明を聞き、質疑に入り、事が、造林に関し長期にわたるものであるところに特に関心が払われ、この法律のねらい及びその効果、分収造林による分収所得に対する課税、将来、契約当事者及び造林地等に不測の事態が生じた場合の措置、土地所有者の所有権の保護、契約は、自主的を主とするか、あっせんに重点をおくか、その基本方針、この制度によってパルプ等の産業資本の進出が促進され、これが地元造林に及ぼす影響、この制度の対象となるべき土地の見通し、並びにこれが入会地もしくは部落有林あるいは開墾適地等である場合の措置、ひいて土地利用区分の適正化、分収造林計画及びこれが完遂の見通し、人工造林伐採跡地にかかる分収造林契約の取扱い、適正な分収造林契約の具体的内容、分収歩合の基準及びその決定方法並びにこれら基準と他のものとの調整、この制度に対する国の補助及び農林漁業金融公庫融資の取扱い、分収造林契約による施業案と、これに対する指導方針、紛争とその処理、法案第三条の民法の共有物分割請求に関する規定の適用排除の当否及びその効力、この法律による分収造林契約と他の契約によるものとの区別判定及び制度上における両者の関係、地元民の保護と山村経済の振興のため、この制度のあり方、植栽された樹木の共有関係、正規の金融機関の費用負担者としての取扱い、町村合併と町村有あるいは部落有林等のあり方及びその指導方針、奥地造林の実行性その他が問題となったのでありまして、これが詳細については、会議録によることを御了承願いたいのであります。
かくして質疑を終り、討論に入り、千田委員から、「林業の基盤を確立し、分収林の管理指導に努め、目的達成に遺憾なからしめるよう」、また、東委員から、日本社会党を代表して、「契約に当り、土地利用区分の適正を期し、山村開発に対する障害を排除し、分収造林の成果を享受せしめ、契約の適正を期し、その履行のため懇切な指導を行い、紛争防止の措置を確立するよう」、また、柴田委員から、自由民主党を代表して、「法律運用上の措置に十分な手配を施し、特に課税の措置に遺憾なきを期し、安心して積極的に造林し得るよう」、続いて梶原委員から、緑風会を代表し、「分収造林に対する課税の措置を明確にし、これが適正を期し、かつ、権利関係の紛争を防止するよう」、それぞれ政府の善処を求めて賛成を述べられ、他に発言もなく、採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
右、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/35
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036・寺尾豊
○副議長(寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/36
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037・寺尾豊
○副議長(寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/37
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038・寺尾豊
○副議長(寺尾豊君) 日程第九、通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長藤田進君。
〔藤田邊君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/38
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039・藤田進
○藤田進君 ただいま議題となりました通商産業省設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
まず、本法律案の改正の要点を申し上げますと、その第一点は、輸出振興に関する行政の体制を格段に強化するため、通商局に振興部を設置し、輸出振興に関する事務及び経済協力に関する事務のほか、意匠の奨励及び盗用の防止等の事務を所掌させることとしたこと。その第二点は、アルコール専売事業が、その事業の特殊性にかんがみ、その行政組織を明確にし、事業運営の合理化をはかるため、軽工業局にアルコール事業部を設置し、アルコール専売に関する事務を所掌させることとしたこと。その第三点は、金沢繊維製品検査所高岡支所が、年々その検査高が増加を来たしておる実情にかんがみ、その機能の充実をはかるため、これを本所に昇格させることとしたこと。その第四点は最近、工業所有権の出願の増加に伴い、審査官及び審判官の質の向上をはかり、審査及び審判事務の能率を促進するため、これら職員に必要な研修を行う機関として、特許庁に、付属機関として工業所有権研修所を設置することとしたことであります。
内閣委員会におきましては、本法律案審議の機会に、行政機構全般に関する諸問題につきまして、岸総理及び石井行政管理庁長官の出席を求めて、その所見がただされましたほか、本法律案の内容につきまして、前尾通商産業大臣その他関係政府委員との間に、質疑応答が重ねられました。
岸総理に対しましては、近時、行政機構が著しく拡大され、今国会においては、各省庁の設置法の改正法律案において、局の新設されるもの六、部の新設されるもの九、官房長の新設されるもの三というがごとき急激な機構拡大の案が提出されておって、行政機構の拡大について何ら抑制のあとが見られないが、かくのごとき局及び部等を増設する理由いかん、また、審議会、協議会等が最近著しく増加を来たしているが、ここに特に問題として政府の猛省をうながしたい点は、現在、法律に基かず、単に閣議決定によって設けられている審議会、協議会の類がその数、十六に上っておる点である。国家行政組織法第八条においては、審議会、協議会等は、すべて法律によって、これを設置すべきこととなっておるにかかわらず、現在この規定が無視せられ、いわば違法の審議会等が設けられておる、この点についての総理の所見いかんとの質問がなされましたが、岸総理はこれに対し、政府は、行政機構は、行政費の節約の点より見ても、これを簡素化し、能率化し、かつ責任体制を明らかにすべきものであるとの基本方針を堅持しており、今回の各省庁設置法の改正は、この基本方針に基いたものである。また、法律に基かず、現在、閣議決定によって設けられておる審議会等は、国家行政組織法第八条に違反する性質のものでないとの見解のもとに置かれておるものであるが、今後、政府は、右第八条の規定を十分検討し、将来の問題として善処する旨、その所見が明らかにされました。
なお、本法律案に関連して、通商局に振興部、及び軽工業局にアルコール事業部を新設する理由等、本法律案の改正の諸点につき、また、輸出振興の重要性にかんがみ、これに対応する行政機構をさらに根本的に検討するの要否、海外貿易、特に日中貿易の実情と海外貿易振興会、及びこれにかわり、近く発足の予定されておる日本貿易振興会の性格とその運営、中小企業対策に関する諸問題等、通産省所掌事務の現状につきまして、一前尾通商産業大臣その他関係政府委員の間に質疑応答が重ねられましたが、その詳細につきましては、委員会会議録に譲りたいと存じます。1
昨日の委員会におきまして、質疑を終り、次いで、討論に入りましたところ、永岡委員より、「本法律案は、部の増置等、一機構の拡大を主たるねらいとしておるものであって、機構を拡大すれば、」行政能率をあげ得るとの錯覚に基くものである。政府は、まず、職階制等の面において、適当な措置を講ずべきにかかわらず、事、ここに出でず、単に機構の拡大により、行政機能の強化をはからんとするものであり、またかくのごとき措置は、機構の拡大化を抑制せんとする岸内閣の機構改革の方針にも矛盾するものであって、この理由により、本法律案には反対である」旨の発言があり、次いで、八木委員よりも同一趣旨の反対討論がありました。
かくて討論を終り、本法律案について採決いたしましたところ、賛成者多数をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
右、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/39
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040・寺尾豊
○副議長(寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより本法案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/40
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041・寺尾豊
○副議長(寺尾豊君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
次回の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後零時四分散会
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○本日の会議に付した案件
一、ソ連の核実験中止宣言に伴う政府の態度についての緊急質問
一、日程第一 日本国とインドネシア共和国との間の平和条約の締結について承認を求めるの件
一、日程第二 日本国とインドネシア共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件
一、日程第三 旧清算勘定その他の諸勘定の残高に関する請求権の処理に関する日本国政府とインドネシア共和国政府との間の議定書の締結について承認を求めるの件
一、日程第四 航空法の一部を改正する法律案
一、日程第五 角膜移植に関する法律案
一、日程第六 地方自治法の一部を改正する法律案
一、日程第七 地方税法の一部を改正する法律案
一、日程第八 分収造林特別措置法案
一、日程第九 通商産業省設置法の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X01919580404/41
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