1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月九日(水曜日)
午前十時二十四分開議
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○議事日程 第十九号
昭和三十三年四月九日
午前十時開議
第一 予防接種法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第二 衛生検査技師法案(衆議院送付)
第三 郵便為替法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第四 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第五 昭和三十年度一般会計歳入歳出決算、昭和三十年度特別会計歳入歳出決算、昭和三十年度国税収納金整理資金受払計算書、昭和三十年度政府関係機関決算書(委員長報告)
第六 昭和三十年度国有財産増減及び現在額総計算書(委員長報告)
第七 昭和三十年度国有財産無償貸付状況総計算書(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/0
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001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/1
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002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
この際、お諮りいたします。井上知治君から、病気のため会期中、請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
〔(異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/2
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003・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/3
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004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第一、予防接種法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
日程第二、衛生検査技師法案(衆議院提出)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/4
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005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長阿具根登君。
〔阿具根登君登壇、拍手]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/5
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006・阿具根登
○阿具根登君 ただいま議題となりました予防接種法の一部を改正する法律案及び衛生検査技師法案について、社会労働委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、予防接種法の一部を改正する法律案について申し上げます。
ジフテリアの発生は、特に三才以降幼児に著しい傾向を示しておりますが、ジフテリアに対する免疫効果は、この年令層において著しく低下していること及び乳児が母体から受ける免疫効果は、生後三月ごろから急速に減少していることが判明いたしておりますので、これら二つの年令層に対し強力な免疫効果を付与するため、予防接種法に定めるジフテリア予防接種の定期を改めようとするものであります。
すなわち改正案の内容は、従来、生後六月から十二月までの間に行うこととされていた第一期接種の定期を繰り上げて、生後三月から六月までの間にこれを行うこととするとともに、新たに、第一期接種後十二月から十八月までの間に第二期接種を行うこととするものであります。
この改正によりまして、百日せきの第一期及び第二期の定期予防接種と同一時期に行われることともなりますので、百日せき、ジフテリア混合ワクチンの使用によって、これら両種の予防接種を同時に行うことが可能となるのであります。
本案の審議に当りましては、予防接種による事故の原因を検討し、その防止対策と補償に関する諸問題について厚生大臣並びに政府委員に対し熱心なる質疑を行いました。
かくて質疑を終了し、討論に入りましたが、別段の発言もなく、採決の結果、本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、衛生検査技師法案について申し上げます。
衛生検査の技術者につきましては、現在何らの身分上の法的規制が加えられておらず、正規の職業教育を経た者も少数でありますので、衛生検査技師の資格を定めることにより、その資質を向上させ、もって公衆衛生の向上に寄与しようとするのが、本法案の骨子であります。
本案の要旨とするところは、第一に、都道府県知事の免許を受け、衛生検査技師の名称を用い、医師の指導監督のもとに、細菌学的検査、血清学的検査、血液学的検査、病理組織学的検査、原虫・寄生虫学的検査、その他の政令で定める検査を行うことを業とする者を言うこと。第二に、衛生検査技師の免許は、厚生大臣の行う試験に合格した者等につき、都道府県知事が与えること。第三に、衛生検査技師の試験は、高等学校卒業者等であって、厚生大臣の指定した養成所等において二年以上、衛生検査技師として必要な知識及び技能を修得したもの等につき、厚生大臣が毎年少くとも一回行うこと等であります。
本案につきましては、慎重審議が行われ、特に衛生検査技師の業務内容の問題、医師の指導監督の運用と責任問題について、あるいは受験資格と経過特例の諸問題について、熱心なる質疑が続けられたのでありますが、その詳細については会議録に譲ります。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、片岡委員より修正の動議が提出されました。すなわち、次に述べる三つの場合についても、本則の規定にかかわらず、受験の特例の範囲を広げようとするものであります。
第一は、高等学校卒業者等を入学資格とし、かつ、その修業年限が二年以上で、厚生大臣の指定した施設において、この法律の施行前に課程を修了した者、または現に修業中で、この法律の施行後に課程を修了した者について、第二に、入所者資格を限定せず、かつ、その修業年限が一年以上で、厚生大臣が指定した施設において前項と同様に修了した後、通算して一年六カ月以上、医師の指導監督のもとに業務に従事した者について、以上の二つの場合は、いわば既得権者の救済でありますが、第三は、中学校卒業者等を入学資格とし、かつ、その修業年限が一年以上で、厚生大臣が指定した施設において、この法律の施行後に入所し、通算して五年以上、医師の指導監督のもとに業務に従事した者は、昭和四十一年十二月三十一日までの間に限り、本則の例外として受験できることとしたものであります。
次いで、中山委員より、緑風会を代表して、修正案並びに修正部分を除いた原案に賛成の意を表する討論が行われました。
討論を終了し、採決の結果、片岡委員提出の修正案について全会一致をもって可決し、修正部分を除いた原案については、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。よって本案は、修正議決すべきものと決定した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/6
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007・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
まず、予防接種法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/7
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008・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもつて可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/8
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009・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 次に、衛生検査技師法案全部を問題に供します。
委員長の報告は修正議決報告でございます。
委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/9
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010・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって委員会修正通り議決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/10
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011・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第三、郵便為替法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。逓信委員長宮田重文君。
〔宮田重文君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/11
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012・宮田重文
○宮田重文君 ただいま議題となりました郵便為替法の一部を改正する法律案につきまして逓信委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法案は、電信為替による送金を迅速化し、その送金とともに通信文を伝達する制度を設け、利用者の利便をはかろうとするものでありまして改正の要点を申し上げますと、第一点は、為替金の払い渡しにつきましては、現在の取扱いは、電信為替証書を発行して受取人に送達し、受取人が郵便局の窓口に出向き、証書と引きかえに現金を受け取ることになっておりますが、この方法のほかに、差出人の請求があった場合は、郵便局から受取入に、為替金に相当する現金を書留郵便物として送達しようとするものでありまして、この取扱いをする電信為替については、現行料金のほかに、三十円の付加料金を取ることといたそうとするものであります。
第二点は、電信為替の差出人から受取人あての慶弔その他送金の目的などを内容とする通信文を、電信為替証書または現金とともに受取入に伝達する制度を設けようとするものであります。
第三点は、通信文の伝達を伴う電信為替の業務の一部を、日本電信電話公社に委託することができるようにしようとするものであります。
逓信委員会におきましては、慎重審議をしたのでありますが、審議の過程における質疑のおもなるものは、現金送達による防犯対策いかん、電電公社への委託業務の範囲並びにその手数料いかん等の諸点でありますが、その詳細は、会議録によって御了承を願いたいと存じます。
かくて質疑を終了し、討論に入りましたところ、別段の発言もなく、直ちに採決の結果、全会一致をもって、原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/12
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013・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/13
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014・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/14
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015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第四、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。法務委員長青山正一君。
[青山正一君登壇、拍手]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/15
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016・青山正一
○青山正一君 ただいま議題となりました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の法務委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。
本法律案のおもなる改正点は、最近における市町村の廃置分合等に伴いまして、簡易裁判所の名称及び管轄区域等を変更しようとするものであります。
第一は、栃木今市簡易裁判所及び今市簡易裁判所の名称を変更すること、第二は、広島簡易裁判所ほか五カ所の簡易裁判所の管轄区域を変更すること、第三は、これらに伴い、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表について所要の整理を行うこと等であります。
さて委員会の審議に当りましては、まず、三月十八日、政府当局から提案の理由を聞きました後、数回にわたって大川、棚橋、亀田、赤松、小林の各委員から、簡易裁判所の未開庁の状況並びに整理統合の対策、少年交通事犯処理の方策等、簡易裁判所の将来のあり方等につき、根本問題にも及んで熱心な質疑が行われましたが、これが詳細は会議録に譲ることといたします。
討論に入りましては、別に発言もなく、直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/16
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017・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/17
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018・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/18
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019・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第五、昭和三十年度一般会計歳入歳出決算、昭和三十年度特別会計歳入歳出決算、昭和三十年度国税収納金整理資金受払計算書、昭和三十年度政府関係機関決算書
日程第六、昭和三十年度国有財産増減及び現在額総計算書
日程第七、昭和三十年度国有財産無償貸付状況総計算書
以上、三件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
「異議なし」と呼ぶ者あり]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/19
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020・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
ます、委員長の報告を求めます。決算委員長高野一夫君。
〔高野一夫君登壇、拍手]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/20
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021・高野一夫
○高野一夫君 ただいま議題となりました昭和三十年度一般会計歳入歳出決算外三件につきまして、決算委員会における審議の経過並びに結果の概要を報告申し上げます。
本件は、三十一年十二月二十五日、国会に提出せられまして今回、審査を終えたものであります。
まず、本件の内容の概略を申し上げます。一般会計では、歳入決算額一兆千二百六十三億余万円、歳出決算額一兆百八十一億余万円であって差引千八十二億余万円の剰余を生じましたが、このうち、三十年度で新たに生じた期剰余金は三百二十三億余万円であります。また、年度内に使用し得る歳出予算額一兆七百八十七億余万円に対して、前述の歳出決算額のほかに、翌年度への繰越額が三百七十八億余万円あったので、二百二十七億余万円が不用額となったのであります。
次に、予備費は、予算額八十億円に対し、ほとんど全部使用せられました。また、国庫債務負担行為のうち、財政法第十五条第一項に基くものは、限度額百六十億余万円に対し、実際の負担額は四十七億余万円であり、同名第二項に基くものは、限度額三十億円に対し、実際の負担額は四億余万円でありました。公債は、内外債を合わせ、年度初め現在額五千三十一億余万円、年度中の発行額四十九億余万円、減少額二百四十七億余万円で、年度末現在額四千八百三十三億余万円であり、借入金は、年度初め現在額五百十一億余万円、年度中の借入額十二債余万円、減少額二十六億余万円で、年度末現在額四百九十七億余万円であります。
特別会計は、その数が三十五でありまして各特別会計の決算額の総計は、歳入決算額が一兆八千七百九十八億余万円、歳出決算額が一兆七千二百六十五億余万円であります。
政府関係機関は、その数が九つでありまして各機関の決算額の総計は、収入決算額八千七百七十九億余万円、支出決算額七千四百七十八億余万円であります。
以上が決算の概略でありますが、詳細は決算書類についてごらんを願います。
本件については、昨年三月十二日、関係各省及び会計検査院から説明を聞きまして、本年四月四日まで、実に四十五回の委員会を開き、また、六班の委員派遣によって、つぶさに現地調査を行い、検査院の批難事項ニ千百八十五件のほか、決算に関連し、または国家財政の調査として、全購連の経理、広島市内太田川の河川改修に伴う補償金、福岡県庁の公金の経理、福島県の関柴ダム工事、日本銀行の宿舎の管理処分、池袋民衆駅、国鉄寝台車の無断使用、農林中央金庫等の融資等の問題を取り上げて慎重に審議を重ねました。詳細は会議録によってごらんを願います。
審議を終了するに当りまして、特に、当委員会の決議をもって、防衛庁、農林省、日本国有鉄道に対して警告を行なったのであります。この省庁、公社に対しては、すでに昭和二十九年度においても警告を発したにかかわらず、三十年度においてもなお改善の跡が見られず、たとえば防衛庁においては、昭和三十年度も、工事の施行に当り処置当を得ないもの四件、物資の調達に当り処置当を得ないもの九件、不正行為三件があり、さらに農林省においては、経理の紊乱しているもの一件、工事の施行に当り処置当を得ないもの七十四件、物件の管理、購入、売り渡しに当り処置当を得ないもの四件、保険事業の運営等について処置当を得ないもの百九十五件、補助金の経理当を得ないもの七百八件、不正行為三件、その他四件があり、日本国有鉄道においては、工事の施行に当り処置当を得ないもの十五件、物件の管理、購入、売り渡しに当り処置当を得ないもの十六件・不正行為一件、その他一件の改善されない事項があるなど、重ねて、三十年度におきましても、警告を発しなければならなかったことは、まことに遺憾にたえない次第であります。
また、太田川の河川改修に伴う補償金及び農林中央金庫等の融資に関する件等につきましては、目下なお審議を継続しているのであります。
審査の結果といたしまして、内閣に対し、次の警告を行う必要を認めましたので、その概要を申し上げます。
第一に、綱紀の粛正であります。ことに現内閣は綱紀の粛正を重点施策としておりますが、その実行こそ大事でありまして各省等の上層幹部たる者が、その地位と職責の重大なるを自覚し、みずから清廉潔白であるとともに、部下職員の指導監督に万全を期するばかりでなく、不当事実に対しては、みずからも重い責任をとるという厳正なる態度を持し、部下に対しては責任追及を徹底せしめて粛正の実をあげることに努むべきであります。
第二点は、財政経理に対する自発的な工夫でありまして、特に内部の統制と監査の必要性であります。経理の適正を期するためには、会計検査院の機能に待つこと大なるはもちろんでありますが、根本は、政府部内において自主的に統制監督を徹底せしめ、かつ内部監査を励行し、不当事態を未然に防止するばかりでなく、善後処理を迅速に行なって国損を最小限にとどめることであります。
第三点は、政府関係機関、その他の出資団体、あるいは国が財政援助をしている公私の団体その他に対する所管大臣の監督であります。とかく監督行政が形式に流れる傾向があることを感じますが、形式よりも実体に触れた監督が必要であって財政資金が終局に至るまで十分に効果を上げるよう努むべきであります。
第四に、制度及び運営の整備改善であります。工事、製造及び物件の購入などの不当事項は、遺憾ながら、大体、各省に共通なものとなっておりますので、政府において統一的な改善措置をとるべきであります。また、食糧管理、農業共済保険、国有財産の管理処分、各種補助金の制度及び運営、経理につきましては、あるいは法律の一部改正、審議会の設置、処理方針の策定など、改善に向いつつありますが、問題の解決には、さらに根本的な措置について一段と強い対策が必要であると考えられます。
以上、概略を申し述べましたが、特に強調されましたことは、以上の諸点は、ほとんど数年来繰り返し警告されているにもかかわらず、その成果が十分でない事実であります。若干改善されつつはありますが、今日なお二千件をこえる批難事項が指摘されておりますことは、真に寒心にたえないところでありまして政府の強い反省と対策が要望されたのであります。
以上は、決算委員会として、党派を越えた一致の意見でありまして、本件採決の際における各委員の熱心な討論によっても明らかであります。その各委員からなされました討論の要旨を申し上げますれば、まず、自由民主党を代表する大谷委員から、「決算を承認するに当って政府に要望したい、二十九年度に比べ、批難件数、金額が減少しており、幾分改善の跡が認められ、三十一年度はさらに減少の傾向にあることから見て政府の努力は多とするが、いまだこれでは十分でなぐ、国民の信をつなぐことはできない、政府は真剣に反省し、すみやかに制度、機構、運営、監督、統括及び内部監査の面に改善の実を上げ、不当事項の絶滅を期して、不信を一掃するよう、最大の努力を払うべきである。また、不当事項に対しては、早期に処置をなし、関係責任者の信賞必罰を明確、厳圧に行い、全体の戒告に資する要がある。警告を発せられたる防衛庁、農林省及び日本国有鉄道には、特段の注意を望みたい」旨の御意見があり、日本社会党を代表する大矢委員からは、「承認はするけれども、政府に申し入れをしたい。二十九年度に比べて批難件数、金額の減少は、表面的には努力の印象を受けるけれども、検査の方法、重点の置き方にもよることであって実態は疑問で安心はできない。次に、決算審議の際は内閣もかわっており、政府の責任感と認識が徹底と充実を欠いている。一方、公務員の不正が跡を断たず、世のひんしゅくを買っており遺憾にたえない。また、防衛庁に批難事項が多いのは、その予算が計画、内容ともにずさんなまま、安易に獲得されるからと思われる。特に防衛庁に厳重に注意したい。なお、今後の問題として国外で使用する経費に対する検査の徹底について善処を望む」との御発言があったのであります。次に、緑風会を代表する後藤委員から、「承認するが、三十年度だけでも、批難金額は六十六億円にも上り、このほか、決算委員会が調査事項として審議したものがあり、このような事実を見ると、まことに寒心にたえない。国民の血税は、効果的に正しく責任をもって使用されねばならない。三十一年度は幾らか改善の成果が上っているとは言え、いまだ不十分である。政府は、反省すベきは反省し、制度、運営の改善に努力し、不正行為は一日も早く善後処理を行い、国損を僅少にする等、国民の信にこたえなければならない。なお、政府は、決算の審議に当り、勇気をもって事態の黒白を明らかにし、公明にして決然たる態度をもって臨むよう要望する」旨の御意見がありました。無所属クラブを代表して大竹委員から、「承認はするが、次の点を政府に要望する。従来に比較すれば、事態はやや改善されており全く望みなしとは言わぬが、毎年多数の批難事項、汚職事件があって国民の怒りを買っている。これは政府に確固たる責任遂行の信念と道義心に欠くるところがあるためである。この際、真に誠意と責任ある施策をもって事に当る信念を強固にすることが必要である。次に、汚職の温床となり、あるいは政策そのものに疑惑と不信の念を抱かせる各種補助金政策に対し再検討を望みたい。さらに、決算は予算と政治的に不可分であり、また、同一性を有するものであるから、単に体裁を整え、国会に提出すれば足りるというような安易な考え方を改めて、全体的な責任体制を判然とさせる要がある」との御意見がありました。次に、共産党を代表する岩間委員から、「警告の効果を見守るために賛成するが、次の点を要望する。決算審議は生きた審議でなければならないのに、政府は、それを政策面に反映させるという努力を欠いている。次に、いまだに日本の政治はゆがめられたものがあり、三悪追放が叫ばれていて、しかも、これが実行されないのは、基本的に政治体制を正す努力がなされていないからである。三十年度決算を振り返って見ると勤労大衆に対する施策の貧困さが明らかに看取され、はなはだ遺憾である。さらに、会計検査院の指摘事項は氷山の一角にすぎない。官庁内部における監査体制を確立すること、及び責任の所在を明確にする要を痛感し、不満ではあるが、将来の反省を期待して賛成する」との御意見がありました。
以上の討論を終りまして、採決の結果、全会一致をもって審査報告書の通り異議ないものと議決した次第であります。
以上をもって昭和三十年度一般会計歳入歳出決算外三件の報告を終ります。
次に、昭和三十年度国有財産増減及び現在額総計算書並びに昭和三十年度国有財産無償貸付状況総計算書に関する決算委員会の審議の経過並びに結果を報告いたします。
まず、本件の内容の概要を申し上げますれば、昭和三十年度において、一般会計、特別会計分を合計した国有財産の増加額は五千五百九十二億余万円、減少額は六百四十三億余万円、差引純増加額は四千九百四十九億余万円でありまして本年末、すなわち昭和三十一年三月三十一日における国有財産の現在額は、一兆九千二百五十三億余万円となっております。この内訳は、行政財産一兆四百四十四億余万円、普通財産八千八百八億余万円でありまして、行政財産をさらに分類いたしますと、公用財産三千三百九十五億余万円、公共用財産八十四億余万円、皇室用財産九十四億余万円、企業用財産六千八百六十九億余万円となっております。
次に、国有財産の無償貸付は、一般会計、特別会計分を合わせて昭和三十年度における増加額は五十億余万円、減少額は八千余万円、差引純増加額は四十九億千余万円でありまして、年度末における無償貸付の現在額は五十一億千余万円となっております。
決算委員会におきましては、右二件につきまして、政府の説明並びに会計検査院の検査報告の説明を聴取いたしました上、昭和三十年度決算と並行して、慎重審議いたしましたが、本件の内容をなしますところの国有財産の取得、管理及び処分に関し、処理の適正でない点、財産管理の基礎資料となる実態調査、特に旧軍用財産及び旧雑種財産等の実態調査が十分でない点等につきましては、別途、昭和三十年度決算において審査を行いましたので、この二件の計算書については、「異議がない」ことを議決いたした次第でございます。
以上、報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/21
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022・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより三件の採決をいたします。
三件全部を問題に供します。三件は、委員長報告の通り決することに賛成の諸君の起立を求めます。
[賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/22
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023・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって三件は、全会一致をもって委員長報告の通り決せられました。
次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午前十時五十九分散会
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
一、日程第一 予防接種法の一部を改正する法律案
一、日程第二 衛生検査技師法案
一、日程第三 郵便為替法の一部を改正する法律案
一、日程第四 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案
一、日程第五 昭和三十年度一般会計歳入歳出決算、昭和三十年度特別会計歳入歳出決算、昭和三十年度国税収納金整理資金受払計算書、昭和三十年度政府関係機関決算書
一、日程第六 昭和三十年度国有財産増減及び現在額総計算書
一、日程第七 昭和三十年度国有財産無償貸付状況総計算書発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X02019580409/23
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