1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年六月二十六日(木曜日)
午後四時二十一分開議
出席委員
委員長 松浦周太郎君
理事 吉川 久衛君 理事 助川 良平君
理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君
理事 本名 武君 理事 赤路 友藏君
理事 石田 宥全君
安倍晋太郎君 赤澤 正道君
秋山 利恭君 五十嵐吉藏君
今井 耕君 倉成 正君
佐藤洋之助君 笹山茂太郎君
砂原 格君 高石幸三郎君
内藤 隆君 永田 亮一君
濱地 文平君 松岡嘉兵衛君
八木 一郎君 八木 徹雄君
保岡 武久君 足鹿 覺君
角屋堅次郎君 神田 大作君
久保田 豊君 栗原 俊夫君
實川 清之君 高田 富之君
中澤 茂一君 中村 時雄君
芳賀 貢君 松浦 定義君
松平 忠久君
出席国務大臣
農 林 大 臣 三浦 一雄君
出席政府委員
農林政務次官 石坂 繁君
農林事務官
(大臣官房長) 齋藤 誠君
農林事務官
(蚕糸局長) 須賀 賢二君
委員外の出席者
専 門 員 岩隈 博君
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六月二十六日
委員日野吉夫君辞任につき、その補欠として中
村時雄君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
繭糸価格の安定に関する臨時措置法案(内閣提
出第五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/0
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001・松浦周太郎
○松浦委員長 これより会議を開きます。
繭糸価格の安定に関する臨時措置法案について審査を進めます。
質疑を続行いたします。高田富之君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/1
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002・高田富之
○高田委員 大臣に御質問を申し上げます。昨日二、三の点につきまして御質問いたしました中でやや明確を欠いておりました点につきまして、重ねて大臣から明確な御答弁をいただきたいと思います。
まず第一に、今度の繭糸価格の暴落に当りまして政府のとられました態度は、しばしば状況に押されて小出しに対策を出してきた感が非常に強いのであります。そのために、不必要によけいに混乱を起し、相場の下落等にも拍車をかけたことは御承知の通りであります。今回出されました法案も臨時応急措置としての法案でありますけれども、臨時の対策を立てるにしましても、根本においてやはり政府当局が確固とした蚕糸業に対する方針、態度というものを明確にされて、それを終始徹底させておいたならば、不必要な混乱を招いたり、また政策にいわゆるよろめきを見せたりするようなことがなくて済んだのではないかと思うのであります。この点非常に遺憾に思うのであります。政府は、日本の蚕糸業というものを振興々々と口ぐせのように言うのでありますが、真にこれから先も振興させていこうという確固たる考え方をお持ちなのか、それとも、漸次これを縮小圧縮しながら、全体の産業なり農業の中で適当なところへ位置づけるように持っていこうというようなお考えを持っておるのか、この点について最初に明確な態度を御表明いただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/2
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003・三浦一雄
○三浦国務大臣 蚕糸業に対する根本的態度いかんということでございますが、わが国の農村における養蚕業等の地位は非常に重大でありますから、今後といえども、これを重視し、これの育成をはかり、そしてその振興をはかりたいという根本の態度は、変りはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/3
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004・高田富之
○高田委員 今後といえども変りなくこれを重要な産業として育成振興させる、こういう根本の態度であるというわけでありますが、そういたしますと、最近、業界の一部というより相当部分であるかと思いますが、蚕糸業を振興させるためには、むしろ糸の相場は他繊維の相場と比較しまして毎年毎年割高になりつつあるので、これを是正する意味においてもこれは下げなければならぬという声が次第に高くなってきておるような感じがいたします。それとまた符節を合せますように、政府はこのたび臨時措置とは申しながらも桑園の二割減反ということをいち早く打ち出されておるのでありますが、これは臨時措置というよりはむしろ恒久的な性格を持ったものではないかと思う。今まで、毎年々々政府の方針としては繭の増産ということに意を用いられまして、事実その通り年々増産に励んできたわけであります。こういうような状態の中で、今回政府が二割の減反をこの夏秋蚕からやるのだというようなことを打ち出されておるということ、あるいはまた、この相場の維持につきましても、糸で十九万円、繭で千四百円というものは、すでに既定の方針としてあれほど強く言っておりながら、その点についても今日までとられた態度はきわめてあいまいであるということを考えますと、何か、当面を糊塗するある程度の施策を手を打っておいて、逐次この業界を圧縮、縮小していくような感じを与えていることはいなめないのであります。そういう点に矛盾がないかどうか、これを一つ重ねてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/4
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005・三浦一雄
○三浦国務大臣 糸価を十九万円に維持する、これがやがて繭価の維持に重要な要素になりますから、不動の決意をもちまして糸価は十九万円をもって維持する、同時に、養蚕家に対しましては繭価の千四百円を確保するという基本方針でもってこの政策を進めております。申すまでもございませんが、生糸の海外の需要を見ましても、価格が安定するということが非常に大事でありまして、安定するならば今の糸価をもってしてもなお需要があるのでございますから、かような見地から臨時応急の措置はとっておりますけれども、これを弥縫的な政策として考えておるわけではございません。一環として臨時緊急の措置はいたしますけれども、基本的な態度といたしましては、千四百円の繭価を維持し、糸価の方におきましても十九万円の糸価をあくまでも維持して、そうして健全なる繭糸価格を維持して参りたい、かようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/5
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006・高田富之
○高田委員 そうしますと、糸価の十九万円、繭の千四百円というのは、本年度における価格安定の最低価格というわけではなく、明年も、さらに当分の間引き続いてこの価格を将来にわたって維持するということでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/6
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007・三浦一雄
○三浦国務大臣 さしあたり、現在の異例な事態を生じましたから、この異例な事態に応じまして、従来とってきたところの態度を変更しないように、かたくこの見地から解決して参るということでございまして、今後の見通し等につきましても、永久不断にこの問題をこのままにおくという意味ではございませんけれども、基本方針といたしましては、どこまでも繭価の維持と糸価の維持をはかって参る、かような考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/7
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008・高田富之
○高田委員 今度の法案では本生糸年度のことだけを一応問題にしておるようでありますが、ただいまの大臣のお言葉では、価格の最低という点については、今度打つ手は臨時の手であるけれども、価格は当分将来もこれでいく、こういうことでございますので、一部に、ややもいたしますと、金がなくなるときには価格が下るのだ、従って、今は金の続く限りは努力をしてみるが、やがて一定のところへ、落ちつくところへこれは落ちつく、従って、政府も遠からず最低価格を十七万円あるいは十六万円台程度のところへ置くだろうという見通しが相当流布宣伝されて、そういう思惑で相場等も形成されていると思うのでありますが、そういうことは、従って断じてない、こう了解してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/8
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009・三浦一雄
○三浦国務大臣 さような傾向の出ないように、極力この措置をとって、堅実なものにしていきたいという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/9
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010・高田富之
○高田委員 あくまでも今の大臣の考えておる方針で生糸の最低価格、繭の最低値を堅持していこう、こういう前提を認めるということになりますと、しからば、今度考えておられるこの臨時措置法案によりますと、それだけの確固とした政府の方針が果してこの臨時措置によって貫かれるのかどうか、それだけの考え方がこの法案の中に完全に盛られているかどうかということになりますと、非常に問題があると思うのであります。現に、このために出されました百五十億にいたしましても、これは生糸の方でも数カ月にして現在の状況では食いつぶされる額だといわれておりまするし、繭の方にいたしましても、ただいま共同乾繭されておりますのは二百八十万貫相当額程度でありまして、これよりちょっと多くなれば、すぐに不足をする。まして、夏秋蚕に至っては、全然そういう措置がとられる余裕が一つもないわけでありますから、この春繭については十分とは言えないまでもある程度これに見合う措置が用意されておるわけですけれども、生糸年度全体を通して言いますならば、これは全くその保障のない制度になっておるのではないかと思うのであります。従って、この今の金額がこの程度で十分なんだということについての政府の御見解を一つ発表していただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/10
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011・三浦一雄
○三浦国務大臣 現在の金の範囲でもって運用するわけでありますが、すでに、この対策が画然と打ち出されまして以来、糸価が安定の傾向になってきたことは御承知の通りです。かように、実効的なものが裏づけになりますと、おのずから糸価が安定して参りますし、最低の線とだんだん近づいて参ります。おそらくは、なお、この問題も、逐次実行に移されることによって、これが回復して参る。そうしますと、これが繭価の維持の基礎になりますから、両々相待っていきまするし、この限度でもって十分に効果をあげ得るものと確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/11
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012・高田富之
○高田委員 非常に抽象的なお答えで、よくわからないのでありますが、しかし、これはあくまでも春繭についての措置程度のものであって、この夏秋蚕に至っては、乾繭したくてもおそらくそれまでに処置できないでしょうから、倉庫もほとんどないでしょうし、また現に金が政府の方で用意してありませんから、そうなりますと、夏秋蚕のときになりますと、再び今回と同じような糸価の暴落ということがどうしても予想される。ただ、この中を見ますと、生産制限をするからというようなことがちょっと提案理由の御説明の中に書いてありますけれども、生産制限をするから心配ないということは、これはもう非常に楽観にも過ぎるのであって、御存じの通り、農民大会におきましても、全国の農協の代表者の皆さんが、二割制限は無謀である、今まで毎年々々増産を奨励をしてきておいて、今ここへきて夏秋蚕から二割減らせというようなことを一方的に政府が言われても、これはとうてい応じかねるというわけで、農民の代表者、おそらくこれは全国農民の偽わらざる叫びであろうと思うのです。制限が二割あるからといって、こういうことを勘定に入れまして、金はなくなっても今度は量の方から自然的に減るから大丈夫ということであっては、私は決して今大臣の言われたような価格の維持について本気になってこれに対処しているようには考えられないのでありますが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/12
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013・三浦一雄
○三浦国務大臣 生産の調整は、夏秋蚕につきましては、種繭を抑制いたしまして、そして二割程度の減産を今提唱し、これを同時に実行に移しておるわけでございますが、この場合の臨時措置というものが、異常な繭の増産の趨勢と滞貨の増大に伴いまする異例な事態でございますから、これはやはり各業界とも自衛的なある程度の協力が前提とされるわけでございます。同時に、この了解のもとに、養蚕の関係の人々、同時に製糸の関係の人々も、この施策によって実効をあげようということで、だんだん協力態勢もできておるわけでございますから、これが反対があって何らの協力を得られないという事態でも必ずしもないのであります。さすれば、それによって所要の効果をあげて参ることも、われわれとしましては期待し得ることと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/13
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014・高田富之
○高田委員 製糸工場に対して設備制限をやらしたりあるいは生産制限をやらせたりしますことは、これはまた自主的にやれます。そして、やって、また必要とあれば、これをまた拡大するということにもさして困難はないわけです。しかし、御承知の通り、今日の農村の実態を考え、また、ただいままで戦後営々として増産に励んで、その実績を毎年あげて参りました農業に対して、一挙に二割の減産、さらにこれを転作をさせようというようなことを緊急対策の中で打ち出すということは、私はきわめて乱暴だと思うのです。将来永久にこれからだんだん蚕糸業というものはすたっていくのだから、斜陽産業なんだから減らさなければならぬという恒久対策が立ったときに、秩序と順序と、それに適切なる総合的な営農計画とを立てられて、地域別に実情に即した指導と、資金の裏づけがあって、恒久対策の一環として業界を縮小する方針ならば、私は条件次第ではあるいはそういうことに自由的に協力できるようにもなろうと思う。しかし、今の話では、当面のことしだけの応急対策で価格だけを何とか維持すればいいというときにとる策としては、農民に対して今直ちに減産などという方針を打ち出されることは、農民が憤激してこれを返上するということは当然だと思う。ですから、その二割制限というような措置を撤回されて、そして文字通り臨時応急措置の中でこの価格を維持していく方向をおとりになる考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/14
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015・三浦一雄
○三浦国務大臣 今年の異常な事態というものが昨年の秋以来出てきたのでございますが、やはり異常な場合には、これに応ずる対策を講ずることは、業界といえども、同時にまた関係者といえども、これに対応する手段を講じなければならぬことは当然であります。同時にまた、政府といたしましては、これらの人たちと十分な緊密な連絡をとりつつ、今日までだんだん指導もし、話し合いも進めてきたのでございまして、関係の団体におきましてもこれを了承をして、そうして相当な努力を重ねておるのでございます。これを、臨機応変の措置の際に、何らの自衛的な自主的なこともせずにするというわけには参りません。そうしてまた、相当な準備態勢が整って参り、その上に農業団体等を通じまして種繭の買い上げ等もいたして、それに対する助成をも進めておるということでございますので、これらが全然効果がないということは考えられませんし、現在の状況におきまして、いやしくも命令を出して生産制限するということでは事足りることじゃございませんので、この措置によって相当の効果をあげ得るものとわれわれは確信しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/15
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016・高田富之
○高田委員 最初に御質問申し上げましたときに、あくまでも蚕糸業をこれからも伸長させていく、発展させていくという基本方針を明らかにされた。今お伺いしておりますと、この機会に減らそう、こう言う。しかし、一たん減らしますと——減らすとしたって、今申します通り、なかなかできない、困難でありますけれども、かりに強引な手段を講じまして減らしたといたしますと、そうしてこれを引っこ抜かせたということになれば、今度また増産という場合には何年も何年もかかるわけです。ですから、臨時措置としてやるときには、生糸等につきましてはある程度そういう措置はできるでしょうが、しかし、養蚕農民に対しては、かりに桑の二割なら二割が不要のものになるというならば、これに対する補償をして、そうして、桑畑はしばらくそのままにしておいて、また来年は何とかそれがものが言えるようにしてやるということでなければ、私は臨時応急対策にはならないと思うのです。ですから、今度唐突に二割制限を出してこれをやっていこうという考え方は、政府の根本的な態度とは非常に矛盾しております。どうしてもそこら辺に割り切れないものがあると思うのです。こういうことをやっていきますと、結局どうなるかということです。一時ということで減らさしてやっていったが、またさらにだんだん状況が悪ければよけい減らさなければならなくなるのじゃないだろうかという不安も出てくるでしょうし、また、先行きが非常に悪い産業なんだという印象をずっと与えて参りますと、これは業界全体が萎縮することにもなるでしょう。ですから、ここら辺で応急対策と恒久対策を明確に分けて、そうしてきちっとした方針を出さなければ、業界は混迷するばかりではないかと思う。特に、今生糸の輸出は三分の一程度であろうと思うのですが、内需が非常に多いのです。ですから、輸出を急速に増大できる見通しがあって、その方面で力を注いでやっていけるということであれば、さらにこの価格を維持しつつ、どんどん増産していけばいいわけです。今のようだと、内需の方は一体どうなるか。内需の方面におきましても、今のような不景気で、繊維関係の中小企業あたりでは非常に悲鳴をあげておる。こういうやさきでありますから、少し先行きが不安なような態度を見せるならば、思惑的にもずっと引いてくる。もっともっと値段をたたいて安くしなければだめなもんだというような人気を生じてくると思うのです。積極政策でいくか消極政策でいくかということは、今日の蚕糸業の対策を出す上に非常に私は大事な点だろうと思うのです。応急対策にしましても、そういう点があいまいであるために、この価格を維持すると言ってはいるものの、ほんとに維持する気があるんだか何だか怪しいというようなものが出てくる。せっかく恒久対策を出されても効果が半減されてしまうと思うのです。ですから、先ほど大臣が言われた方針を貫くためには、どうしてもここでもって、価格の維持については十九万円を一円でも割らせない、繭は千四百円を一円でも割らせないんだという確固とした強い方針を貫いていかなければ、どうしてもそこに疑惑は疑惑を生んでいくということになろうかと思います。
そこで、今度の法案の中で、そういう見地から言いますと、今、繭については、御承知の通り、共同乾繭された二百八十万貫のほか、団協によって製糸に渡されましたその残余のほとんど大部分が——すでに一部では、いつまでも待っておれない、どうせ千四百円にはなるまい、早いところお金がほしいというところから、千百八十円とか千二百円で取引をしてしまったものもあるわけでありますが、大部分は製糸家の方へ渡されたまま内渡し金千円の状態に置かれておる状態でありますので、これについて絶対に不安がないのだという方針をここで打ち出されることが私は何より先決問題だと思います。それには、乾繭倉庫の中にある共同乾繭のものについては、全量を輸出生糸保管会社においていつにても申し入れがあれば無条件でこの最低価格で引き取るのだということと、それから、団協で渡されておるものにつきましては、十九万円で保障しておるのであるから、八千七百五十以下の掛目協定というものは許さないということが実際に行われるだけの措置をここでお示しになることが、今直ちに始まろうとしている掛目協定に対しましても非常に重大なる前提条件になるわけでありますので、その点についての大臣の御所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/16
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017・三浦一雄
○三浦国務大臣 掛目協定の根本は今御指摘になった通りでございますから、これを堅持した態度をもって取り進めたいと思います。従来の養蚕家並びに製糸に対しまする指導もここに重点が置かれてございまして、このために糸価も十九万円を維持することができますならば、ただいままで清算されておらぬものもありますけれども、その裏づけができるということになります。その両者の関係の協定等の推移を見まして、そうして適切な指導を加えつつこの問題を解決いたしたいという基本的な態度であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/17
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018・高田富之
○高田委員 先般相場がだいぶ下って参りまして、各地においてどうしても共同乾繭をしなければならない事態に立ち至ったわけであります。ところが、そのときに、悲しいことには乾繭施設を持っていないために、製糸業者の協力を懇請したわけです。ところが、製糸業者の方では、千四百円なんかでとても買えるものではないのだから、そういうふうなことのために何も自分たちの倉庫を貸してやる必要はないというわけで、きっぱり断わってしまったところが非常に多いのであります。そのために、やむを得ず渡してしまっております。このままでいきますと、どういうことになるかと言えば、渡したときにすでに実勢相場で仕切られてもよろしいということを暗に承認をしたから引き取っておるわけです。その後製糸家側の意向は若干は変ってきたかと思いますけれども、やはり根本的には実勢相場でいく、しかも先行き不安ということになれば、当面必要なものについてはある程度の価格で買うけれども、全量をすっぱりと言い値で養蚕家の希望を入れて買うなんということはあり得ない。今はこういう状況であろうと思います。そこで、千四百円以下の掛目協定を行わせないためには、何らかの強力な法的な措置、ないしはそれにかわるべき実効のあがる措置を具体的にとらない限りは、やはり掛目協定ができないでずるずる引きずられていく結果になると思うのです。ですから、何らか、たとえばこの法文の中にこれを多少改正するなりいたしまして、そうして絶対にそれ以下の掛目協定を行うことのないような措置を講ずるお考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/18
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019・三浦一雄
○三浦国務大臣 これは、両者の協定に基きまして、経済的裏づけとして今の糸価の支持、同時にこれから流れてくる繭価の保持、こういうふうになりますから、糸価の維持という経済的措置が講ぜられますことと相並んでこれが実効を期待し得るものでございますが、これを法律で強制するなどという法制のなには別段必要はないと考えておるのでございます。それによって強力に指導をして参りたいというふうに考えております。
〔委員長退席、田口委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/19
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020・高田富之
○高田委員 若干持ち直したとはいいましても、まだ十九万円にははるかに遠いところにあるわけですから、今のままでは千四百円の掛目協定を自主的な団協によって結ばせるということはとうてい困難だと思います。ですから、その点、こういう乾繭したものにつきましては、まだ最終的なものではないと思うのですが、もし数量が今後ふえていったような場合、全量を無条件に買い入れるのかどうか。これは糸についてもそうでありますが、会社の方では、買い入れるときに、申し入れさえすればこれを拒否することができないというような性格のものでありますか。それとも、やはり最終的に政府の買い上げる金額のワクがありますから、それと見合いながら適当に選別をして、無制限でなく会社が買い入れを行うということになるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/20
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021・三浦一雄
○三浦国務大臣 これが一番肝心のことでございますが、養蚕家と製糸家との間に十分な掛目協定等をいたしまして、そうしてその実態が即応するということになって初めてその効果が出て参りますので、この情勢を馴致しつつ、同時にまた、これは先ほど申し上げました通り、法制等の強制は加えませんが、当事者間もだんだん協定によって進んで参っておりますし、当局の指導あっせん等も漸次強化されております。そこで、これらの生糸買い上げ等につきましても、それらの情勢の熟しましたものにつきまして、だんだんといたすのでございます。しかも所要の数量は先ほど申し上げました通り効果を生じ得る見込みでございますので、効果はあるものと確信して進んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/21
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022・高田富之
○高田委員 御承知の通り、例の蚕糸業法を改正いたしまして、団体協約による取引が独禁法の適用を除外されまして以来、農林省は強力な指導をされました。それがために、団体協約によって一粒の繭も農協を通ぜずには売られないように、全部県の養連団体によって一手に集荷しようということを強力に進めてきたわけであります。そこで、今回のこういうような異変が生じたときに、この団協によってほんとうに強力に正直に農林省の方針を順守してきたところが今日では一番不安に襲われているわけであります。それで、幸いにしてふだんから関係施設等を用意をして、そうして乾繭等についてもこれを自主的に奨励をしておったようなところの方が、かえって今度は乾繭の数量も多いわけです。乾繭してあるものについては予算の裏づけもほぼありますから、春繭についてだけ言えばこれが最低価格で引き取られる。ところが、団協をしてやってきた方は実勢相場で仕切られるというようなことになった場合には、これは大へんなことになるわけでありまして、そういうことがもしありますれば、今後の蚕糸行政においては、府県段階以下の末端の方においては農林当局の指導に対して非常に深い疑いを持つ。今後は従っていけないというようなことになるでしょう。この間も、大会において、実は埼玉県の県養連の専務さんが泣きながら演説をしておって、この通り全国模範的な団協によって埼玉はやってきたのだ、そうしたところが、とうとう最後のどたんばにきて、繭がいよいよあした出荷だという日にきて、製糸が施設を一つも貸してくれなかったために、とうとう実勢相場で売るういう内諾を与えて全部繭を引き渡すことにしてしまった、そのときに地にひれふして慟哭し、天を仰いで何とかというような名言を吐いておられましたが、まさにその通りだと思うのです。そういうようなわけでありますから、この際、どんなことがありましても、団協によって製糸に渡された繭は千四百円を一円でも割らせてはならぬと思うのです。そういうことがあったら、今まで農林省の指導にはまじめに従ってきたところも従わない、今までまじめに従ったところは、われわれ大いに糾弾したのでありますが、独禁法違反を冒してまでやってきたであります。そういうことをやって従ってきたところは、今度はまたひっくり返しを食うということになるわけなのであります。今の大臣のお答えでは、制度的にどうするというのではない。だんだんにそういう方向へ機構が維持されていくことであろうからよかろうというのでありますが、現在なお十八万円くらいのところをうろついておるような状態でありますから、とうていこれが十九万円以上にいくことは考えられない。今のままでいきますと、実勢相場で相当たたかれることは必至だと思うのです。でありますから、この点について何らかの強力な指導なり強力な法的措置なりを講じて、そうして政府の公約の通りに最低繭価で買い上げられるようにしなければならないと思いますので、特にその点について強く御要望を申し上げておきます。
それから、最後にもう一つだけお尋ねしておきたいのですが、この臨時措置法だけを出して、これだけでいいということはわれわれも考えていないのですが、政府としましても、今直ちに具体的なものを法案や何かの形ではお出しになってはいないが、これだけの臨時措置を考えるときには、あわせて恒久対策の構想と並行してこれが出てきておると思うのです。そうでなければ全然場当りだということになるのですから、その恒久対策としての大綱に見合ったものがこれだろうと思います。その恒久対策の面ですが、これは、何か一部に伝えられるところによりますと、次の臨時国会にお出しになるような準備をしておるということを聞くのでありますが、こういうものをお出しになるときには、その基本的な大綱くらいは明らかにしておく方が、これについての信馮性というものを出てくるでしょうし、効果もあるわけなので、この際政府の今考えておる恒久施策の骨格というものについての大臣の御所見を述べていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/22
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023・三浦一雄
○三浦国務大臣 ただいままでもこの繭糸価の維持のためには制度を設けているわけでございますが、かような臨時とは言いながら異常な事態が生じて参りました。しかしながら、従来の制度自体につきましても、養蚕等の面につきましてはいろいろ考究をしなければならぬ面もございますし、養蚕と同時に、また製糸の関連におきましても、もっと緊密な関連のもとに、いわばある意味の統制とは申しませんが調整のできる、そうして有機的に動き得る体制をもだんだん考えていかなければならぬと思うのであります。しかも、生糸は一面においては内需がおもなことになって参りましたが、やはり海外にも相当の販路を持っておるというようなことでございますから、一連のものを考えつつ今後の蚕糸対策を講じて参りたい。近く蚕糸業審議会等に学識経験者等を招き、同時にまたこれらの事業に通じておる人たちの十分な意見も聞きまして、そうして従来の制度の再検討とそうして今後展開すべきそれらの問題につきまして強く進めて参りたい、こういう所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/23
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024・高田富之
○高田委員 農業の中の特殊地帯のものではありますが、最も重要な現金収入の道をなしている養蚕に対する対策と、生糸あるいは絹織物業なんかに対する対策というものは、ある程度分けてお考えにならなければならない情勢になってくるのではないかと思うのです。それで、生糸や絹織物業に対する経済情勢の変化による要請から、直ちに農業方面まで一貫した方策をどっといつも同じように立てていきますと、農業というものは破壊されてしまうのではないかと思うのです。やはり、普通の企業の方は非常に流動的なものでありますから伸縮自在なものでもありますし、また、それに適応していかなければだめな性質のものでありますが、農業の方はそうはいきませんから、私は、どうしても、恒久対策をお考えになる場合に、この二つのものを一応分けて、農業政策の中で地帯的には非常に重要な一環をなしている蚕糸業対策というものを特にやはり農業政策としてお考えを願いたい、そういう点からいきますと、二重価格というようなことを一がいにやれば、そんなことはとても財政負担がどうこうというようなことを言われますが、必然的に二重価格のような——必ずしも二重価格でなくちゃならぬというのではありましんが、二重価格のような考え方、農業の立場というものと企業の立場を分けた考え方にならなければならないのではないか、こういう気がいたします。それで、そういう点から、この臨時措置の場合にも、繭価の維持というものについては、生糸の価格の維持というよりももう一段と強いお考えを持っていただきたいと思うのです。生糸の方は、多少安くなってもそれで十分引き合えばよいのですし、その方面は割合に伸縮自在性があると思う。しかし、繭についてはそういう伸縮自在性がありませんから、そこで、必ずしも二重価格ばかりを言うわけではありませんが、その対策を分けて考えていく、農業保護という建前から、養蚕に対しては、蚕糸業全般の中へ突っ込んで考えるばかりでなく、特別の考え方で処する、こういろ考え方をお持ちでありますかどうか最後にお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/24
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025・三浦一雄
○三浦国務大臣 養蚕と製糸の関連につきましては、ただいま高田委員も仰せになりましたが、そういう意見もありますこともわれわれ聞いております。現に、この法案の説明の際にも、さらに一歩を進めて、行政機構の面から言ってもむしろ製糸の段階はこれを分離したらどうかというような御意見もございます。しかしながら、長年この蚕糸業を扱っております農林省の経験から申しますと、糸を離すことによっては必ずしも養蚕家の保護育成にはならぬ点もありますので、そこで従来この制度をとってきたのでありますが、養蚕の段階において安定したものをいかにするか、同時にまた、養蚕と製糸の関連においていかような政策をとるかということにつきましては、ただいま二重価格制度のごとき制度はわれわれとしてはとり得ないと思いますけれども、幅広に検討いたしまして、そうして恒久的な対策も考えたい、こう存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/25
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026・田口長治郎
○田口委員長代理 松平忠久君。——大臣に関する質問だけ、一つそういうことに限定して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/26
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027・松平忠久
○松平委員 今度の蚕糸関係の臨時措置法案に関連しまして、若干大臣に質問したいと思いますが、今回の異常な需給関係のアンバランスというものが、今日のような臨時措置法にしなくちゃならぬということになっておりますが、このアンバランスの原因と申しますか、これをよく把握しなければ、緊急対策といえども、また恒久対策はむろんでありますけれども、できないわけであります。そこで、このアンバランスがどういうわけで出てきたかということを農林当局はどういうふうに一体把握しておられるか、これを私はお伺いしたいのでありますが、それを分類してお尋ねいたします。
大体、よく売れるものをとにかくコストを安く作るということに尽きるのでありますが、売る場合に内需と輸出がある。この内需関係においても昨年来不振である、こういうことを言われておる。そこで、大体生糸、絹製品というものが全体の日本人の使っている繊維製品の中でどの程度の一体立場を占めておるかということを農林省としても把握しておられるだろうと思うんですが、その関連におきましてお伺いしたい点は、私どもが調べておるところによりますと、大体昭和二十七年以降の日本人一人の繊維の消費量というものは、昭和二十七年を一〇〇といたしまして漸次ふえてきておりまして、昭和三十二年度には三割五分ふえておるわけであります。三割五分も一人当りの消費量というものがふえておるが、繊維の製品の中でひとり絹織物だけはほとんどふえておらぬ、むしろ減っておる、こういう実情は一体何を意味しておるかということなのであります。この不況のためにこういう危機を招いたということをよく言う人もありますし、また、供給過剰だということを言う人もあります。しかしながら、過去五年間の実績を調べてみると、そういうことは考えられないのであって、大体が、一人当りの繊維製品のふえている量というものは、他の繊維はステディにふえてきておるが、しかし、絹はほとんどふえておらぬ。むしろ昭和二十七年の絹の消費を一〇〇としますと、三十二年度には九六に減っておる。こういう実情であります。他の繊維は三割五分ふえておるけれども、絹の方は四%減っておる。他の繊維はふえておるけれども、絹自体は、われわれ人類の繊維の消費量の中でも、日本人の内需の中におきましてもなおかつ減っておるという理由は一体どこにあるのか、それをどういうふうに農林大臣はお考えになっておるか、この点を私はお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/27
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028・三浦一雄
○三浦国務大臣 この需要の趨勢につきましては、事務当局から若干説明させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/28
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029・須賀賢二
○須賀政府委員 ただいま御指摘のありました生糸の繊維全体における消費の割合でありますが、これは、ただいまお話がありましたように、総体的な割合ではお話の通り減少いたしております。私どもが調べておりますところによりましても、昭和三十一年の資料で二・四%。日本の繊維総消費量の中で生糸の占めております割合は二%強というようなことになっております。これは、特にここ数年来におきます人工繊維の発達によりまして、繊維全体の消費傾向が大きく変って参っておりますことは、これは私から申し上げるまでもないのであります。綿、羊毛、絹その他この種のいわゆる天然繊維は、消費割合としては総体的に減って参りました。化繊その他のものは量としてふえて参っておることは、最近の傾向としてはその通りだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/29
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030・松平忠久
○松平委員 今小さい声でお答えになったのでよくわかりませんでしたが、農林省のその考え方は実情をちょっと認識していないと思うのです。それは、今天然繊維がだんだん減ってきておるということを申されましたけれども、この五年間における毛紡であるとか綿紡というものもやはりふえております。これは一割程度ふえております。しかるに絹だけが減っておるということは一体どこに原因があるのか。私は、これは今のあなたの答弁では納得できない。全体的に繊維がふえている中で、綿紡もふえておりますし、毛紡もふえておりますが、しかし絹だけがひとり減っているというはどこに原因があるのか。値段が高いのか、あるいはまた絹織物業者とかあるいは製糸業者の業界のつかみ方が下手なのか。何かそこに特別の原因がある、私はこういうふうに思うのです。その特別の原因というものをあなた方はどういうふうにお考えになっておるか。ほかのものに比べてこれだけがひとり減るのは何か原因があると私は思うのです。その原因を突きとめずしてこの臨時対策を立ててみても、くその役にも立たぬと思う。あなた方には原因が何だかわからぬじゃないですか。ほかのものはふえておって絹だけが減っておるという原因がどこにあるのか。しかも、今あなたは、毛紡も減っておるとか、あるいは綿紡も減っておるということを言われましたけれども、そういう統計はありません。綿紡は一割以上ふえており、毛紡もふえております。しかるに絹だけは四%も減っておるということは、何かそこに原因がなければならぬわけだ。その原因を突きとめずして対策を立てるということはできるはずがない。その原因を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/30
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031・須賀賢二
○須賀政府委員 特に生糸の場合におきましては、ただいまお話のように、消費の伸びが少いという御指摘でございます。ただし、これは、今年のような異常な生産増加のもとにおきましてこういう状態を呈したわけでございます昭和三十一年までは年間百万貫の生産増加に対しまして、生糸にいたしまして一万俵、それだけ輸出・内需両方の面において年々消費増加をいたしてきておるわけであります。従いまして、昭和三十一年までは、農家が作りましたものがそのままの形において実需に流れたわけでございます。ほかの繊維との消費割合も総体的に伸びておりませんのも、生糸の生産が繭の生産につながっておりまして、かりにふやそうと思いましても、直ちにそういう形においてふえるものではない。緩慢なテンポをたどっております。一方、化繊等は相当早い速度で伸びております。その関係は、伸び方においてかなりの違いが出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/31
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032・松平忠久
○松平委員 大臣、一つ事務当局の言うことをよく聞いてもらいたいのですが、その答えは間違っております。それは、政府の発表したものによりますと、昭和二十七年の生糸の消費量を一〇〇といたしますと、昭和二十八年には一〇一であります。昭和二十九年には八九であります。昭和三十年は九九であります。すなわち、これは昭和二十七年よりもふえていないということなんです。蚕糸局長の言うことは間違いです。そういう間違った統計に基いてやっておるから、ちぐはぐな政策しかできない。政府自体が発表しておる統計がそういう統計なんです。その点について、私は、もっと根本的に、応急対策にいたしましても、この対策を考えてもらわなければならぬと思う。
そこで、これは伸びない原因というものはどこにあるかというと、われわれが聞いておるところは、やはり値段が高いということなんです。高いから伸びない。この間に一番伸びておりますのは合成繊維の中のナイロンの系統なんです。このナイロンの系統は、この五年間に二十二倍の伸びを示しております。アセテートは最も絹に近いものです。今日のアセテートは絹と変りはありません。従って、このアセテートの伸びというものは絹を脅かすわけなんです。ところが、アセテートというものはこの五年間にやはり二倍以上に伸びております。そうして、全体の数量は、生糸が大体一人当り〇・二七二ポンド昨年は使われております。ところがアセテートは〇・二三八ポンド使われておる。ほとんど絹と同じ量のアセテートが使われるようなことになってしまった。こういう状態なんです。ですから、私は、生糸の問題を考える場合においては、これらの全体の繊維の中の生糸の地位というものを考えられて、なおかつそれが農民に非常に関係が深いので、その上で対策を立てなければならないと思う。そうして、その中の最も深い原因を探求して、それを分析して対策を立てなければならぬと思うのです。
〔田口委員長代理退席、本名委員長代理着席〕
次に伺いたいのは輸出なんですが、輸出は、なるほど生糸はこの一月からほとんど減退をしてきておりますが、しかしながら、絹織物が減退をしないのはどういうわけであるか。絹織物が昨年よりもことしの輸出が上回っておるというのはどういう関係にあるのか。大臣はそれをどういうように考えていますか。生糸は少しも出ない。しかし絹織物はこの二、三年の間にほとんど毎年五割増しくらい出ております。しかもことしは去年と匹敵するくらいに、むしろ去年を上回るくらいに絹織物は外国に出ているじゃありませんか。アメリカに出ているじゃありませんか。十匁羽二重なんというものはどんどん出ているじゃありませんか。一体あなたはそれをどういうふうに考えているか。生糸は売れないけれども絹織物はどんどん出ている。これをどういうふうに大臣はお考えです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/32
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033・三浦一雄
○三浦国務大臣 生糸の消費につきまして、先ほど局長の申し上げたのは生糸自体の観測を申し上げたのであって、それがさらに用途別の検討は怠っておりますので、これはなお今後とも十分に検討さしてもらいたい、こう考えます。どうも私も織物の方まではよく実情を存じません。しかし、生糸の問題につきましては、アメリカにおいては一定量の需要のありますことも皆様御承知の通りです。しかしながら、一番困る問題は、不安定である場合に取引が停屯する、これが最大の問題でありますことも申すまでもないのであります。そこで、生糸が常に安定した糸価をもって供給されることを期待しておる、こういう関係にありますので、われわれとしましては、生糸の対米輸出につきましては、その観点に立って今まで施策しておったのでございまして、なお絹織物等の関連におきまして改善しなければならぬ等の点があります場合には、もちろん検討して、十分対処していきたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/33
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034・松平忠久
○松平委員 その大臣のお考え、よくわかります。生糸が不安定であって、原糸が不安定であるから、その取引がなかなかない、これはその通りでしょう。それに関連して、製品である絹織物の方が間接的な影響しかないから、これは出ていくというのはその通りでしょう。しかしながら、近年の対米貿易を見ますと、絹織物というものは、三十年には二千九百万平方ヤード出ています。三十一年にはそれが何と四千六百万平方ヤードになっています。三十二年度にはさらにその五割増しの六千二百万平方ヤード出ておるのであります。圧倒的に毎年五割ずつふえて絹織物がアメリカへ輸出されておる。そして三十二年度は昨年よりも上回るという今日の実績になっておる。私はこれはよほど考えてみなければならぬところがあるだろうと思うのです。ということは、やはりこれは生糸の値段の問題になってくると思います。アメリカにおける原糸から織物に至るまでの加工賃は、日本の加工賃の約十倍であります。従って、こちらが十九万で買ったものを十分の一の加工賃で出したならば、どんどんアメリカへ売れる。しかしながら、その十九万円でアメリカが日本の十倍の加工賃をかけたものは売れないのであります。そこに問題がある。この値段を決定するという場合には、日本の絹織物の値段をもっと上げなければならない。もし原糸を十九万円に決定するというなら、日本の輸出産業に対する生糸の払い下げは二十一万円なり二十二万円にしなければ、これはバランスがとれません。今日決定しているような十九万円の安定帯価格ではなくて、そこにくぎづけするような格好になってしまったこの制度は、やっていけばいくほど、絹織物は出ますけれども、原糸は出ません。この制度を続けていく限り、生糸は漸次減って参ります。そして絹織物が漸次よけいに出ていくということになると私は断定せざるを得ないと思う。ですから、もしこの制度をやろうとするならば、対米の生糸の値段と、アメリカに輸出している絹織物業者に保管会社から払い下げる値段とは、差異をつけていかなければ、バランスがどうしてもとれないから、そういうことを考えていかなければならぬと私は思う。大臣はその間の消息はお知りになっておるかどうか知らぬが、一体どういうふうにしろうとながらお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/34
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035・三浦一雄
○三浦国務大臣 率直に申し上げて、それらの事情はまだ暗いのでございますから、なお十分に考究して参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/35
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036・松平忠久
○松平委員 その点は、私は日本の行政の欠陥であろうと思う。つまり、農林省と通産省の間に所管事項が分れておって、その間に何らの連繋がないというところに非常に大きな欠陥がある。ですから、きょうは実は行政管理庁の長官になっておる国務大臣を呼んできてその点までただそうと思ったのだけれども、生糸をほんとうにやっていくのなら、やはり一貫行政をしていかなければだめなんです。内需におきましても、今私が申しましたように、農林省の見方と通産省の見方は違っております。また、輸出においても、ことごとく違っておる。しかも、それも技術的な試験所の関係等にきましてなおさら違ってくるわけです。それもおいおい申し上げますからお聞き取りを願いたいのだが、そういう工合に、行政指導の一貫性を欠いておるというところに私は非常に大きな難点があると思う。それで、今後お考えおきを願いたいと思いますのは、輸出絹織物業者に対する保管会社からの生糸の払い下げ値段と、原糸でアメリカへ出す生糸の値段というものについては、そこのところの若干の関係を考えられて、少くとも向うの絹織物業者がやっていける、そういうところに値段を落ちつかせていかなければならないと思う。言いかえるならば、もし十九万円で向うに売るというならば、日本の業者にはそれよりも高く売るというようなことをいたしまして、そうしてそこにバランスをとりながらやっていくということにならなければ生糸の輸出というものは伸びないというように私は見ております。その点についての研究をもう少し通産側と一緒になってやっていただきたい、こういうことをお願い申し上げるわけであります。
それから、もう一つお聞きしたい点は、昨年来人絹の危機が参りました。この人絹の危機を突破する一つの方法といたしまして、人絹の一手買取機関を作って、それによって外国貿易を進めていくということになった。今日の十九万円というこの値段をスティックして大体この方向でいくというならば、すでに横浜の浜業者の中にはうまみがないというのでやめていこうという考え方を持ってきている者もある。確かに幅がありませんから、これは今までのような輸出業者がそれに飛びついてくるということはだんだん少くなっていくのではないかと思うのであります。従って、この際、やはり人絹と同じような考え方を持って、一手買取機関というものを作って、これによって外国貿易を一手にやらせていくというような方向でいくならば、今申しましたところの絹製品と生糸とのバランスがとれるようなこともできるだろう、また過当競争というものも絹織物については避けていくことができるだろうと思うのですが、この一手買取機関に対する構想というものを政府部内ではお持ちになっておらぬのかどうか、これをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/36
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037・三浦一雄
○三浦国務大臣 輸出につきまして二重価格制度のような制度をとる考えはただいまのところではございませんが、輸出の機構につきましては、なお十分に検討を重ねて、新しい方途等を見出したい、こういう考えでございます。まだ政府部内には買取会社等の構想はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/37
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038・松平忠久
○松平委員 次にお伺いしたい点は、先ほど高田委員からもかなり繰り返して質問があったわけでありますが、私もその点に対して同様の疑いを持っておりますので、この際お聞かせ願いたいと思うのですが、今日の十九万円、千四百円というこの制度は、これを信用するかどうかということに私はかかっておると思うのです。アメリカあたりから——おそらく大臣の耳にも入っておるでありましょう。アメリカのサリバン君から電報が来ているはずであります。この電報によると、日本は実勢価格に落ちつかしていった方がいいじゃないか、こういうことを言っておる。また、ほかのちょっと名前は忘れましたが、アメリカの業者から来ているのは、やはり同じようなことを言って、成り行きにまかしたらどうか、こういうことを日本の関係商社に言ってきております。そういたしますと、アメリカの考え方というものは、生糸を代表するサリバンあたりがそういうことを言っておるということは、これはただならぬことではないか。よほど日本はふんどしを締めてかからなければ、私は、アメリカの言っておるところの成り行き相場、実勢相場に漸次いくべしという考え方に日本は支配されると思うのです。アメリカ自身がそういう考え方を持っておるならば、これは、百五十億程度のものによって当面を糊塗する、そうして九月かそこらになってまた底をついてきまして同じようなことを繰り返していくというようなことになりますと、結局これは十九万円では売れません。そこで、もし十九万円というものを堅持するというならば、長期の安定をはかるということを考えなければならない。長期の安定をはかるということは、現在の経済常識におきましては、ことに生糸のように先物も相当ある、こういうものの場合におきましては、何としても二年間の安定をはかるという覚悟がなければこれははかれません。従って、何としても来年も十九万円を堅持するのだという方針を政府がほんとうに腹にきめるならば、これはそれでいくでありましょう。アメリカにおきます生糸の立場というものは、全体の繊維製品の中で〇・三%しかない全く微々たるものなのです。そういうものがアメリカの景気等によって支配されることはないのであります。これは大臣や大蔵大臣も言っていましたけれども、今度アメリカが買い控えたというのはアメリカの景気が悪くなったから買い控えたと言っておるけれども、大間違いだ。これは消費の実態から見れば〇・三%しかないようなもので、今生糸はアメリカの景気に左右されるような階層が使っておるのでありません。従って、私は、そういう認識のもとにいくのではだめだと思う。それから、言葉をかえて、ほかの人の言うところを聞いてみると、その人は、たとえば大臣も言われておりましたが、値段が問題ではないと言っておる。値段の安定が問題なのだと言っておる。私は確かにそうだと思う。確かにアメリカについては値段の高低ということは問題ないと思うのです。しかしながら、業者は、やはり安い方がいいから、サリバンのようなそういう考え方で、日本の業者を通じて日本を指導しようという考え方を持っておる。私はこれに乗っては大へんだと思う。だから、乗らずにおるならば、どうしてもここでもって十九万円を堅持するという覚悟をきめるならば、少くともアメリカの連中が策動しないように、これを封ずる必要がある。それには、何としても来年もこれをやるのだ、二年間は動かさない、こういう態度をとるならば、彼らは先物でもこれは十九万円で買います。さもなければ先物も買わない。その場限りのものをちょこちょこ買って、そうして九月、十月になって値がくずれるのを見てまた買う、こういうことに私はなると思うのだが、その辺の消息を政府はおそらく御承知だろうと思う。だから、その消息を知っておるならば、それに乗らぬような対策を講ずる意味において、ここのところは何としても来年も——再来年もということを言いたいのだけれども、そこを言う必要はない。二年間でいいです。二年間はやらないのだ、これはもう絶対に下げない、これでいくのだ、こういう方針をとる必要があると思うのだが、大臣はその点はどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/38
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039・三浦一雄
○三浦国務大臣 私も、ある程度の長さをもちまして、あまり臨機緊急だということにとらわれずに、安定した方策を講じて、持続的に安定するような方策をとりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/39
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040・松平忠久
○松平委員 それは非常にいい答弁であります。(笑声)これは大臣からはまあその程度でいいです。もう少し言ってもらいたいと思うのだけれども……。しかし、これは、九月になってこれが底をついてきたときにそんなことを言ったってだめです。これは、八月ごろまた一つ審議会でも開いてもらって、そこでわれわれが議論しますが、そのときにやはりそういう考え方を持って臨まなければ、これは結局向うからの買いくずしが来ましても、くずれていく、こういうふうに見ておるので、今の大臣の継続的にこれをやるというその考え方は、あくまで一つやってもらうと同時に、その継続の仕方が、見えすいたような、相手に乗ぜられるような継続の仕方をしてもらいたくないということを特に私はこの際申し上げておきたいと思うのです。
そこで、次にお伺いしたい点があるのですが、それはもういうことなんです。アメリカで売れる生糸というものを日本は作っていないと思うのです。今日日本が作っておるのは二一中Aというのだそうです。私も技術的なことはよく知りません。しかしながら、現在アメリカが欲しておるものは何であるかというと、繊維製品の中の、いわゆる細手で、日本でいうならば十匁羽二重というもののもっと薄いものを向うは欲しておって、今日編みもの用に使っておる生糸なんというものはほとんどありません。たまたま向うへ行っている日本の通産省の駐在員がおりまして、農林省の方からその駐在員を使って、そうしてアメリカの業者に連絡をして、新しい用途を開かんとして研究をしておる。そういう中に編みものがあるようであります。しかし、今日までのところ、概してその成績がよくない。そこで、伸びない。結局売れているのは何かというと、スカーフだとかハンカチだとかあるいはワイシャツの生地だとか、そういう繊維製品なんです。この繊維製品を作るという日本の生糸の実態ではありません。蚕種にいたしましても、あるいはお蚕を飼う養蚕家にいたしましても、あるいはまた製糸もそうではありません。横浜の生糸検査所は幾らか直しましたけれども、やはりこの制度そのものは根本的に改革されておりません。ですから、日本における生糸は蚕種から検査まで全然時代おくれなんです。この時代おくれを直していかなければ、日本の生糸の需要なんというものは伸ばすことはできない。これが私どもの今日の確信なんです。ですから、農林省は、向うが何に使っているのだということの実態をよく調べて、その調べた実績に基いて、どういう繊維を作ればいいかという一つのパターンを作らなければならない。このパターンを作って、蚕種はどういうものにする、蚕の飼い方はどういうふうにするのだ、生糸の製糸はどういうふうにするのだ、織りむらはどうするのだということをそこまで考えていかなければ、今日はもういかぬ段階にきてしまっている。つまり、今までのように売手市場ではないわけであって、買手市場で、しかも、この買手市場が、ほかの繊維が出てきたから、なかなか競争が激甚であるので、そこまで研究というものをよくいたしまして、現状を把握した上で日本の行政指導その他を考えていかなければならぬが、今日まで農林省のやってきたことをずっと見ておりますと、その点が非常に欠けておったのではないか、こういうふうに私は思います。しかも、それはひとり農林省だけではなくて、これは蚕種業者もあるいは製糸業者も違っております。考え方がだめなんです。そこで、私は、日本の国内の内需の場合から言いましても、今日日本が一番生糸が売れなくなったという原因は、製糸業者並びに織物業者に罪があると思う。製糸と織物に罪があるのであります。なぜかというと、今日消費者に対しまして絹というものは全然宣伝をいたしておりません。消費者に対して国内においてもただの一厘でも金を使っておりません。ところが、今日の新しい繊維はどうかというと、この秋カシミロンという新しい繊維が出ます。このカシミロンという繊維のために、その会社は現在三億円の宣伝費を用意して使っております。まだその繊維は出ないのであります。大体が繊維の会社は五%を宣伝費に使うということになっておりますけれども、今日日本の機屋さんは絹織物をやっている人は宣伝なんかするだけの能力もない。製糸会社も全然そういう方面の宣伝は怠っておって、ただ機屋さんに対してサービスをよくするとか先染めをするとかいうようなことでサービス程度の宣伝をいたしておるわけであります。消費者に対しては何らのこともやっておらない。これが絹の実態である。私は、そういうところに、今までの消極性というか、あるいは保守性というか、そういうものが積り積ってやはり消費というものが非常に減退しておる一因があろうと思います。そのことは対外宣伝でも同じなんです。だから、私は、もっと生糸に対する感覚を新しく変えた行政指導なり立法措置というものを講じなければならぬ、こういうふうに考えます。そこで、今日絹織物がだんだん伸びてきておって、ことしも去年よりも伸びるという傾向にあるのはどういう原因であるかというと、今日の実績を調べてみますと、いわゆる十匁の羽二重というものの本絹は伸びておりません。この本絹はもう頭打ちで伸びません。現在伸びておるのは、いわゆるまぜ織り、交織が非常に伸びておる。ところが、この交織について農林省は反対の立場をとっておるのじゃなかろうかと私は思う。生糸の製糸業者も大かたこの交織を奨励するということに対して否定的な態度をとっております。ところが、世界の情勢はそうではなくて、交織の方がどんどん伸びておるという実態なのです。そこで、交織の試験研究をするといっても、大蔵省では金を出しません。繊維工業試験所長を今日私は呼んでおったのだが、今洋行中というので来られない。この繊維工業試験所で交織をやって新しい繊維を作っていくという考え方でやっても、ナイロンだとか、そういう化学繊維に対しては金を出すけれども、生糸については一文も金を出さぬ、これが大蔵省の態度なのです。この間本会議で通産大臣が、試験研究に金が二千万とかあるのだと言ったけれども、実際の問題として繊維工業試験所には絹織物に対する金はありません。そこで、だれもそういうことをやりたくても金がないからやれない、計画を出しても本省でもこれをサポートしてくれない、大蔵省に行っても削られる、こういうわけでありますから、一向絹織物の方は栄えておりません。進歩も発展もない。これが現状なのだから、この点に対しても一貫行政ということが必要であるというふうに見ているわけなのです。そこで、この試験研究に関しましては、織物に対する試験をもっと徹底させていく必要がある。このことは、まず通産大臣とあなたがよく話されて、そうして大蔵省へ持ち込んでいって、新しい形の繊維を作っていくということを積極的に考えてもらいたい、これを要望いたしておきます。
それから、もう一つは、問題はいかにコストを安くするかということなのです。コストを安くすれば、二割制限しようが三割制限しようが、そんなことは問題ない、コストを安くして今の二倍も三倍も反収があがれば、それで農民は満足なのです。ですから、反収を上げるということを今日農林省はずっと考えられてやっておられる。この反収を上げるということで桑園の改良等を今日やっております。昨年蚕糸局長も行ってごらんになったから御存じであるわけであるが、やはり科学的な桑の一つの革命というものを起さなければならない。桑園に対しては今までのような改良主義ではだめです。今いろいろな科学が発達しまして農業に応用されておる。これによって桑園というものが少くとも今の倍くらいの反収をあげるという桑を作っていく。新しい桑、これは桑でないかもしれません。これは現にそういうものができておりまして、桑の細胞を全部変えてしまう。染色体を変えてしまう。今桑が二十八の染色体であります。二十八の染色体というものを五十六にしちゃうのです。倍の四倍体という桑にして、五十六の染色体を作るということになりますと、大体収繭量は倍になります。世界では今の日本の桑はまことに原始的なものであって——桑の一番原始的なものというものは一倍体でありましょう。そうして普及されておるものは二倍体の桑なのです。ところが、一ノ瀬でも、あるいは改良鼠返でも、これはいいのを持ってくる。それを分析してみれば三倍体なのです。自然に三倍体というものを農民は作り出して、それを桑の一番いい品種として売っておる。ところが、人工でこれを四倍体にしたり六倍体にすることが今日はできるわけです。そこで、農林省はそういう科学的なところへもっと金をつぎ込まなければならない。これによって新しい桑を作っていったならば、今の桑の反収を倍に上げることはむずかしくはない。これは学者も説明しており、現に実験もしておる。そういうことにもう少し科学性を発揮さして、営農形態その他から養蚕家をしてやらしていくという方向に切りかえていかなければならぬ。それには、今の試験場皆さん方の持っておられるもの、各県にある蚕業試験場、これらの活用をはかっていかなければならぬが、これらの人々の中には、なかなか頭が固くて新しいところへ飛びついてくる人もない。そこで、私は、この技術者の頭の切りかえということを考えていかなければならぬと思うのです。技術者はなかなかいいところもあるけれども、そういうところになかなか頑強なところもあります。ですから、そういう新しい科学的なものを取り入れていくというところに相当重きを置いて対策——これは恒久対策になりますけれども、お考え置きを願いたい、こう思うが、以上の点についても、これは私一人で、しゃべっているので、大臣の所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/40
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041・三浦一雄
○三浦国務大臣 非常に傾聴すべき御意見を承わりまして、当局をよく御鞭撻下さいまして、この点はありがとうございます。
さて、新規用途の開拓の問題につきまして織物との関係を強調されたのでございますが、当局としましては、交織面等は当然に新規用途を求めなければならぬ、こう着眼いたしておりまして、よりより通産省とも連絡いたしております。そこで、今度買い上げてあります生糸等は、大体安定して糸価に影響を及ぼさぬというふうな制限のもとに、この試験研究用のためには生糸の供給について相当考慮して参る所存でありまするし、それから、通産省の方におきましても相当これを受け入れる用意があるようでございますから、今御指摘の方途は強く進めて参りたいと存じております。
同時に、反収の増加に伴う桑の新科学性を取り入れた問題でございますが、これはもう、農林省といたしましては、ただ単に蚕糸の問題ばかりでなくて、他の面につきましても、これは思い切って革新的にやるべき事態だと思いますので、御意見をよく尊重いたしまして、将来の施設拡大に寄与いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/41
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042・本名武
○本名委員長代理 ちょっと松平委員に申し上げます。あとお二人通告がありますし、大臣の都合もありますので、なるべく簡単にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/42
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043・松平忠久
○松平委員 最後にお伺いしたい点は、先ほども出ましたが二割制限の点でございます。この二割制限の問題は、聞くところによると、来年はわからないが、来年もこういう状態ならまた制限するのだ、こういうことを言っておられるらしい。そしてこれに対しては補償もない。しかし、蚕種に対しては補償がある。蚕種に対して補償があるのに、農家に対しては補償がない。私はこれほど今までの政策において矛盾したものはないと思う。おそらくつい最近までどこでも増産々々でやってきた。それを今日二割制限ということで何らの補償もなければ支持もない。そうしてこれは自主的制限だといって犠牲を押しつけるような政策。これはまことに悪い政策で、私はおそらく実行はできかねると思うが、一体農林省はどういう用意があってこういうものを卒然として出してきたのか。聞くところによると、事務当局も、こういうむちゃな案ではとびっくりしたという、こういうことを聞いておるが、どういう成算があってこれをやろうとしておるのか、私はこれはほとんどできなかろうと思う。やるとすれば相当の金を用意しなければならぬ、こういうふうに考えますが、これはどういう意図です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/43
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044・三浦一雄
○三浦国務大臣 先ほど、私の考え方といいますか、農林省の取り来たったことを申し上げたのでございますが、これは、春以来この対策を講ずると同時に、夏秋蚕に対する一つの対策として生産の調整を要請して参ったのであります。もう少し詳しくこの経緯を蚕糸局長から……。
そこで、問題の、今のところ桑園の改植までは実はまだ進んでおりません。従いまして、まず第一に、繭価を千四百円に支持して、そして損失をなからしむるということに重点を集中したわけでありますから、おそらくまだ残っていると思いますけれども、今日のところは繭価を維持して農家の受ける損失を防止したいということが重点になっておりますことで御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/44
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045・松平忠久
○松平委員 そうすると、率直に言えば、結局自主制限ということによってそれだけの犠牲をがまんしてもらいたい、そういうことになるわけですか。農民に二割損しろということですか。
〔本名委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/45
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046・三浦一雄
○三浦国務大臣 問題になっております繭価を維持して、それからくる損失なりを防止してあげよう。それから、二割の減産、これは、非常時に応じて調整してこの際としてはやっていただきたいということで、ある意味では自衛的なものとして一つ自発的にやっていただきたい、こういうことです。従いまして、これに伴って今後桑園等に対して非常な損失等があったというようなことでありますと、これはいろいろ考えなければならぬと思いますが、ただいまのところ、この夏秋蚕に不要になった桑を補償するということまでまだ考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/46
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047・松平忠久
○松平委員 若干含みのある御答弁であったわけでありまして、ただげんこつでもって制限するということではなくて、何らかの含みを残してあるただいまの御答弁に受け取れたわけでありますが、その点に関連して、桑苗業者というものは二割制限ということになると一文も収入がないということになると思うのです。今日約八千万本程度の桑苗があると思うのですが、しかもこれが二年生であるということになりますと、桑苗業者は収入皆無ということになるのだが、これに対しても犠牲を払え、こういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/47
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048・須賀賢二
○須賀政府委員 桑苗の問題は、ただいまお話しのように非常に大きな問題であると私どもも考えております。現実に問題が起きますのは今年の十一月以降の問題でございまして、今回の措置によりまして桑苗の需要等が現実にどういうふうな動向になって参るか、それらの事態をよく検討いたしまして、もう少し先でこれに対する具体的な対策を考えたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/48
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049・松平忠久
○松平委員 もう少し先で具体的な考えというのは、やはり補償等を含んでの具体的な対策という意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/49
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050・須賀賢二
○須賀政府委員 桑苗の対策は、率直に申しまして、先般来内部でもいろいろ相談をいたしておるのでありますが、現段階においては、これが最も適切であるという対策までまだきまっておりません。もう少し検討の時間を与えていただきたいということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/50
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051・三浦一雄
○三浦国務大臣 今の点ですが、よく事情を調べまして、できるだけのことはしたい考えでございますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/51
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052・松浦周太郎
○松浦委員長 栗原俊夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/52
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053・栗原俊夫
○栗原委員 先ほど来同僚委員からの質問を通じて、大臣は、今回の事態は異常な事態である、こういうことを盛んに述べておられるのですが、どういうところが異常であるとお考えになっておるのか、まずこの点からお伺いをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/53
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054・三浦一雄
○三浦国務大臣 繭の生産にして大体上下千五百万、合せて三千万貫程度が持続されておったわけでございますが、昨年の秋、それが約千七百万ほどに上昇してきた。これが実は、通例考えておりました事態とは異なって、思わざる豊作といいますか、予想せざる状況の変遷となったのであります。もう一つは、この春の繭におきましても、その豊作気がまえが続きまして、いわゆる増産になった。勢い、これが製糸の方に影響いたしまして、それがまた増産の傾向を助長してきたのであります。同時に、先ほど申しました通り、生糸の需給事情が沈滞して参りました。そして、この春以来生糸の買い上げ等もふえております。これがつまり市場方面を悪化させて糸価の低落を来たした。そういうことでございまして、とにかくに、ここ一、二年の間に不測の事態を生じた、こう見ておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/54
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055・栗原俊夫
○栗原委員 私どもは、養蚕問題について政府が五カ年計画を立案され、順次反収を上げる等の問題を中心にしてではありますが、生産量をふやしていく、こういう傾向をたどっておると教えられてきたわけであります。また、需給関係の、特に消費面につきましても、順次五カ年計画によって生産をふやすということは、消費もふえていくという展望の上に計画が立てられてきた、こう理解しておるのですが、そうした中に、わずか生産がふえた、こういうことで異常な事態であるとびっくりぎょうてんしておる。一体政府は今までどんなことを展望しながら五カ年計画を立っておったのですか。そしてまた、前農林大臣を中心とした蚕糸業対策と、新しい三浦農林大臣の蚕糸業対策の間に大きな断層がここにできるのですから、前の方針を続けていこうとしておるのですか。この点を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/55
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056・三浦一雄
○三浦国務大臣 五カ年計画の推移でございますが、これは実は順調な足取りをとりまして、繭についても約百万貫程度の増産ができました。そして、製糸についても、先ほど松平委員から織物方面との関係においていろいろ御議論がありましたが、生糸の消費量もここ数年のうち順調な足取りをとってきたことは実際だろうと思います。ところが、その順調な足取りが、昨年の春、秋の豊作、今年の春の豊作と相次ぎまして、アンバランスが生じてきたということでございましたので、ここに臨機の措置をとらざるを得ない、こう考えております。同時に、前農林大臣のおとりになりました政策は忠実に承継しまして、蚕糸業対策の誤まらざらぬことを努めておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/56
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057・栗原俊夫
○栗原委員 実は、今年の春の国会で前農林大臣にお尋ねをしました。それは、今年の春にもうすでに繭の値段、生糸の値段等がくずれてきて非常に心配な状況になった中で、政府の五カ年計画というものは一体ここで変更があるのかどうか、五カ年計画にのっとって増産に努めておったのだが、一体その増産の線にのっとってまじめに増産に努めていいのかどうか、こういうことを率直にお尋ねした。もしそれが工合が悪いのなら、この辺ではっきり明示してくれぬと大問題になる、こういうお尋ねをしたときに、前農林大臣は、農民の方々は御安心なさって増産に努めてもらいたい、こうはっきりと言明している。これとただいまの措置とは、だいぶ行き違っておるように思うけれども、大臣はどんなふうにお考えになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/57
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058・三浦一雄
○三浦国務大臣 当時お答えになったその状況は、私、存じませんから、何でございますが、五カ年計画の遂行につきまして、前大臣は、既定計画によってお進めなされ、それの遂行に伴いまして適切な措置を講じて、農民の人々に御迷惑がかからぬようにという御信念であったろうと思います。その基本的な考え方につきましては、私は同じ考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/58
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059・栗原俊夫
○栗原委員 それでは大臣にあらためてお伺いします。養蚕に対する五カ年計画の内容を大臣はどのようにお考えになっているか、これを明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/59
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060・三浦一雄
○三浦国務大臣 率直に申し上げて、詳細なことはまだ私もよく存じておりません。ただ、私の存じております点は、年次計画によって大体百万貫程度の増産を期待しつつ、桑園の関係も、同時にまた養蚕方面も、そのめどのもとにこれを伸ばしていく、そうしてこれに伴う糸もなにする、そうしてこれに対応して今までやってきた、こう心得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/60
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061・栗原俊夫
○栗原委員 今度の臨時措置の一つの裏づけとして夏秋蚕を二割調整をしていくのだ、こういうことをはっきり申しておるのですが、百万貫ずつでも伸ばしていくという五カ年計画の中で二割を調整するのだ、このことは一体どういう工合になるのですか。これを明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/61
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062・三浦一雄
○三浦国務大臣 これは、つまり、予想以上の変動が出て参りましたから、これをこの際自主的に調整して、そうして政府の施策と同時に自衛的な手段によってこれをなだらかなものにして安定なものにしようというのがねらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/62
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063・栗原俊夫
○栗原委員 もう少し率直に、蚕糸業について展望を誤まったんだ、ここで五カ年計画というものは根本的に変えなければならぬかどへ来たんだ、こうおっしゃれないのですか。この点を明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/63
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064・三浦一雄
○三浦国務大臣 この際の臨機の措置をとりますと同時に、恒久対策は講ずべきものと思いますから、これは、事態を率直に再検討して、新事態の対策は講じたい考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/64
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065・栗原俊夫
○栗原委員 今度の新しい事態、こういうことに対処するのに、政府は特に単独立法で臨時措置法案というものを出してきた。すでに繭糸価を安定するためには繭糸価格安定法というものがあるわけですが、繭糸価格安定法によらずして、なぜ特にこうした臨時措置法案というような単独立法をしなければならないか。関係農民あるいは関係業者の納得する御答弁をお願いしたいと思います。なぜ繭糸価格安定法の改正等によって処理できないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/65
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066・三浦一雄
○三浦国務大臣 これは全くの臨時的な措置でございますので、これは従来ありますけれども、この臨時措置法によって弾力のある措置を講じて、この事態の解明に努力したい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/66
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067・栗原俊夫
○栗原委員 今回のこうした臨時措置を講ずる事態、これは繭が思ったよりもよけいとれ過ぎた、一方においては需要関係から言って値段もばかに下った、そこで繭糸価を安定しなければならぬ、こういう趣旨だと説明をされておるわけでありますが、先ほど高田同僚委員からもだいぶん詳しく質問しておったのでありますが、生糸において十九万円、繭において千四百円、こういうものを維持していくその措置である、こういうことでありますが、政府では莫大な税金から金を支出して、生糸十九万円あるいは繭千四百円というものを維持していく、こういう決意をしておるのですが、現実には、清算市場、こういうところでその価格を割って、しかもわずか瞬間的に小額を割り込んだというのならばとにかく、ほとんど恒久的な姿で数万円を割り込んでおる、こういうような姿を、国の法律の権威と申しますか、国の施策の権威と申しますか、こういう権威の立場から見てどうお考えになっているのでしょう。われわれにはどうもこれが納得がいかない。この点についての所見をお伺いいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/67
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068・三浦一雄
○三浦国務大臣 まだこれは実施期には入っておりませんで、法律の御審議を経ていよいよ実施期になりますと実効をあげるものと思いまするし、すでに、この対策がはっきり出ましたにつきまして、市場方面には一つの安定感を与えた、そうして市場の回復もいたしたということもいわれまして、必ずやこの法律の実施に伴いまして実効をあげ得るものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/68
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069・栗原俊夫
○栗原委員 なるほど、この新しい臨時措置法はただいま審議中でありますから、これはまだ実施されておりません。しかし、少くとも繭糸価格安定法は従来から厳として存在しておったわけです。しかも、その規定する条章によって、審議会で決定した生糸十九万円というものは、これは当然政府の権威によって守っていかなければならぬ、こういう立場の十九万円であろうと思う。しかし、これが全くないがしろにされて、堂々と清算市場でこの価格を大幅に割って取引されておる。これに対して、値段を守っていく立場にある政府の、しかも農林省の大臣として、今後何とかなると思いますというような答弁では、どうもわれわれとしても納得いかぬのです。これは、そういうものを一切市場からなくするとかなんとか、明確な強い発言をいただきたいのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/69
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070・三浦一雄
○三浦国務大臣 この春までの措置が十分でなかったのでございますから、この臨時立法の措置によりまして確然たる措置を講じたい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/70
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071・栗原俊夫
○栗原委員 先ほどこれまた同僚委員からの質問もあったわけでありますが、法案の内容によりますと、日本輸出生糸保管株式会社に生糸を買わせ、あるいは繭を買わせる、こういう趣旨でありますが、この内容を見ると、買わねばならないというような積極的な規定はどこにも設けてございません。十九万円で買ってくれる、千四百円で買ってくれる、こういうことがはっきりしておって、そして、いつでも、量は何ぼでも買う、こういうことが明確であれば、おそらくそれ以下の価格で売る人はなかろうと思うわけでありますが、どうもこの面から言うと安心がならない。なぜかなれば、今日まで繭糸価格安定法がありながら、しかも最低値段以下の取引あるいは清算市場における値段というものがつけられておる。そこで、くどいように再びお尋ねするわけですが、政府では、この会社をして無制限に買い入れさせる考えなのですか、あるいは、そうではなくて、文字には書いてないけれども、どこぞにやはり限界を設けているのか、この点を明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/71
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072・須賀賢二
○須賀政府委員 ただいまのお尋ねの件でございますが、これは無制限買い入れのものではないつもりであります。ただ、今回の措置は、農家の繭収入の確保をはかることと、生糸の生産制限の励行が行われますことを大きな目的といたしておりますが、その二つの条件が満たされますような方法を十分検討いたしまして、買い入れについて数量その他のワクを設けるというような考え方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/72
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073・栗原俊夫
○栗原委員 ワクを設けるということは、やはり何としても、ワクが終れば、だめになる、こういうことを考えるのです。今日まで繭糸価格安定法がありながら、政府がその権威をまるつぶれにされて、白昼堂々と政府が保障する十九万円というものが日本のその市場において十六万円というようなばか値をつけられてきておる。そういうことではいかぬと思う。やはり十九万円を政府が守るのだ、——法律まで出しておる。それならば、これをほんとうに守らせる。それにはやはり、こうした臨時措置法を作る以上は、持ってこい、全部買おう、こういうことを明らかにしなければならぬ。それは必ずそうしなくてもこういう措置をとれば大丈夫なんだと幾ら皆さんが御答弁なさっても、そうでないということが今まで出てきておるのですから、この点はとてもだめだと思うのです。ほんとうに政府当局が十九万円、千四百円というものをしっかりと守り通す決意があるならば、この中に、幾らでも持ってこい、無制限に買うのだ、こういうことをはっきりうたいきれるはずだと思いますが、この点を大臣から明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/73
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074・三浦一雄
○三浦国務大臣 栗原委員の御指摘の点は、無制限に買い入れるということは、いわゆる何千万円でもこいという意味での無制限だろうと思いますが、われわれは、春以来の買い上げの実績を考えまして、実勢を支配し得る程度の糸は買い得るのでありますから、そうしますとおのずから安定点を見出し得る、こういう確信のもとに本案の構成をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/74
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075・栗原俊夫
○栗原委員 それはわれわれから言わせると逆なんです。幾らでも持ってこいと言っても、そういう行き方をすれば、むしろここに掲げた数字を使わずに済む。なまじ限度をつけるから、全部使っても所期する効果があがらないと考えておる。何ぼでも持ってこいと言っても、何ぼでも持ってくるわけがない。十九万円以上に市価が上れば、ばかばかしい、だれが十九万円で持ってきますか。問題はそういうところにあるのであって、ほんとうに十九万円を守る意思があるならば、堂々と幾らでも持ってこいという態度をとっていくべきだと思いますが、この点はまだ一般の市場では安心ができぬからこそ——もうおそらくこの法案が出た以上は通ると世間では見ています。これがつぶれるとは世間では思っていない。もうできたものだという立場で、しかも市場は十九万円まで来ておらぬ。しかも、先行き限度があるからこそ、先物は十七万円台でうろうろしておる。こういうことでどこに政府が法律を作ってそうして価格を維持する権威がありますか。一つ何とか考えてもらいたいと思いますが、いま一度所信を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/75
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076・三浦一雄
○三浦国務大臣 これはいよいよ実行の段階に入りますと必ず効果を生ずるものと確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/76
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077・栗原俊夫
○栗原委員 だいぶ大臣も自信があるわけですが、前の大臣もそういう自信を持っていて、しかも生糸が暴落していったわけですが、これは単にこの場所における一三浦大臣また栗原委員の一つの問答ではありませんよ。実際においてこの問題は全国で百万に及ぶ養蚕農民の生活を支配する問題なんです。
それでは、もしこれを実行しても先物がべらぼうな安値になる、浜糸が十九万円に乗ってこない、こういうような事態が現われてきたら、責任をとりますか。明確なお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/77
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078・三浦一雄
○三浦国務大臣 さような事態は予想いたしておりません。最善を尽して実効をあげる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/78
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079・栗原俊夫
○栗原委員 農民のおやじといわれる農林大臣ですから、それは自信を持って言っておられるのでしょうけれども、しかも政治の方法で万全を期する道があると思うのですよ。これは、今自信があるとおっしゃるのですから、大臣のお手並み拝見ということで、成り行きを見守りますが、もし御自信の通りいかなかったときには、われわれとしてもその責任を徹底的に追及せねばならぬということをここではっきり申し上げておきます。
次に、これまた先ほど話がありました、繭の取引の中で団体協約によって渡された繭が、ことしの春繭の大部分がまだ値段もきまっておりません。先ほど大臣の説明によると、この法律ができれば浜糸の相場も上ってくる、従って大体所期の目的を達する繭値段というものはきまるのだ、このように答弁されておりましたが、今の団体協約がどのように掛目協定をしておるのか、大臣御存じですか。一つ答えてみて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/79
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080・三浦一雄
○三浦国務大臣 春以来の当局の指導によって、ただいまの政府が施行せんとする施策を前提にして、これを実効的に上げるということで進んでおりますから、これを、今後といえども、両当事者間の良識と協力のもとに進めると同時に、政府等もあっせんいたしまして、その実効をあげたい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/80
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081・栗原俊夫
○栗原委員 現在行われておる団体協約の大体の内容は、繭の一番たくさん出た日を中心にして、浜の相場を前後一週間ずつ、合計二週間を算術平均したものを中心に、加工・販売費を差し引いた残りが農民の繭値段だ、こういうことになっておる。繭の一番出た当時は十六万円そこそこですよ。そういうものを中心にしてやったら、それはとても千四百円なんという繭の値段は出てきません。それを指導だけで千四百円に持っていく、この法律が出たら浜糸相場も上ってきたのだ、だから、繭の一番出た当時の浜糸の値段というものは十六万五、六千円という相場であったが、一つ千四百円になるようにする、これで製糸家がほんとうに引き受けるとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/81
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082・三浦一雄
○三浦国務大臣 まだ清算のしない部分もありますし、そういう前提のもとに強力にこれは指導していくほかはなかろう、さように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/82
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083・栗原俊夫
○栗原委員 ただいまの答弁の裏から言えることは、指導はする、しかし実際においてどうも協定掛目が八千七百五十掛、すなわち千四百円の掛目以下に下っても、十分努力してもなおかつ出ないのだというならやむを得ないのだ、こう三浦農林大臣は考えておるのだ、こう受け取っていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/83
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084・三浦一雄
○三浦国務大臣 そうは考えておりません。今後の糸の買い上げ等につきましても、その点を十分に織り込んで実効的な措置を講じたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/84
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085・栗原俊夫
○栗原委員 つまり、千四百円で繭を買わなければ、千四百円以下で買った繭でひいた糸は十九万円で買わないこと、こういうような裏からの指導で、おそらく製糸家というものはびっくりして千四百円で買うだろう、こうお考えになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/85
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086・三浦一雄
○三浦国務大臣 製糸家と養繭家の間のこの掛目協定に関しましては、公正に見まして、この間に政府の指導力をも加え、そして今の実効のある経済方策を兼ね行なって、この実施に移っていく、こういう考えで進んでいきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/86
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087・栗原俊夫
○栗原委員 その指導するというのは、具体的には一体どういう指導なんですか。八千七百五十掛以下は買うな、八千七百五十掛で掛目協定をしろ、こういうことを指導するのですか、どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/87
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088・三浦一雄
○三浦国務大臣 基本はそういうことで強く両団体を指導して参りたい、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/88
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089・栗原俊夫
○栗原委員 それのだめな場合にはやむを得ない、こういうお考えですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/89
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090・三浦一雄
○三浦国務大臣 だめになるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/90
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091・栗原俊夫
○栗原委員 弱ったね、これは。実は、繭糸価格安定法の中には、御承知の通り禁止価格の規定がございます。禁止価格以上の生糸の取引については禁止規定がある。なるほど、普通ならば、繭の値段が騰貴してきて、手持ちの糸で売り応ずる、しかし、現物がなくなれば応じ切れないから、残余は規定によって禁止する以外には手がない。こういう点はわれわれにもわかります。しかし、一方今度は、繭を作る養蚕家にしてみれば、これは下値は保障されたが、しかしさらにこれを買いたたいてくる。そんなばかなことがというようなことをお考えになるかもしれぬけれども、繭はなまものでありますから、ほうっておけばチョウが出る。これを乾燥するには設備がない。これは遺憾ながら繭というものを渡さざるを得ない。こういう状況なんです。こういう状況にあるときに、政府は千四百円を保障するのだと言っておきながら、実際においては保障をする立場をとれない。これが今日の養蚕農民の取った繭の大部分です。そういう繭をここへ置いて、そうしてしかもその繭が今現実に買いたたかれようとしているが、一方では、百五十億使って保障すると、こうやっている。こういう政治はまずないと思うのです。これは、何としてでも、政府が千四百円を保障するのだと言っている以上は、実現してやらなければならぬと思うのでありますけれども、繭糸価格安定法の中には糸の上値の禁止規定がある、従って、今回も、ただ単に行政指導などというような抽象的なやり方ではなくて——千四百円というものを三十三年生糸年度においてはぴったりきめたわけです。しかもこの臨時措置法は恒久立法じゃありません。特に非常事態ということで今年限りときめたのですから、今年きめた千四百円というものは必ず保障するのだ、繭について八千七百五十掛以下は売買を禁止するのだ、このくらいの規定をやってくれなければ、農民のおやじとは言えませんよ。農林大臣、一つ入れようじゃありませんか。ぜひ言明して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/91
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092・三浦一雄
○三浦国務大臣 この春以来とってきた施策、同時にその対策を決定しましてから、この前提になる環境が変ってきている。これを無視してはできないのでありまして、この環境のもとにこの施設をするのでございまして、ただ単に立法措置をもって強制的規定をいたしましても、実行し得るという環境が馴致されずには、それは実効をあげ得ない。われわれといたしましては、両当事者間の協定、並びに、その実勢がだんだん実行し得る段階にもなっていると思いますから、この政策の経済的裏づけをもって実効を確保するという基本方針には変りはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/92
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093・栗原俊夫
○栗原委員 どうもむずかしい説明なのでわからないのですが、それでは、千四百円の繭値を保障するということは全く絵に描いたもちであって、たまたま乾繭装置があって共同乾繭をした繭だけ、これは仕方がないからめんどうを見てやる、あとは声を大にして何とか千四百円になるようにと行政指導をしてほうっておく、こういうことにしか受け取れませんがね。農民の立場に立って率直に農林大臣にお尋ねするわけですが、農民は農林大臣がそう言って突っぱねたと受け取っていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/93
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094・三浦一雄
○三浦国務大臣 さようなことではございません。私は、今回の繭糸価格安定のための資金の裏づけによって、農家は最低繭価見合いの繭代金を確保できるように交渉が取り進められておるものと期待しており、われわれもそのように強く指導して参る所存であります。従いまして、買い入れ方法の具体的内容については、いましばらく今回の措置に応ずる業界の動きを見た上で進めるわけでございますから、あとはその基本方針に従いまして、この実効を期待しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/94
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095・栗原俊夫
○栗原委員 どうもこの点が明らかになりませんな。それでは問題を次に移して参りたいと存じます。
今回のこの臨時措置法は、当三十三生糸年度の一カ年を通じての措置法と考えるわけでありますが、いろいろな説明を聞きますと、まず生糸については五万俵たなあげする、その原資として百億円。これは具体的にはどうなって参りますかわかりませんけれども、これは一応一カ年間を通じてと、こう理解しても、繭の買い上げの方の原資五十億は、春繭の乾繭——政府の説明によれば二百五十万貫、きょう出た統計によると二百六、七十万貫これで大体底をはたくわけなんですが、夏秋蚕については共同乾繭というものは一粒も出ないという前提に立っているのですか。この点はどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/95
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096・須賀賢二
○須賀政府委員 今回の対策を立てました基本の考え方といたしましては、春繭に百五十億を重点的につぎ込みたい、夏秋については生産の調整でやって参りたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/96
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097・栗原俊夫
○栗原委員 これはどうも実に驚いた考え方なので、問題になりません。春繭で百五十億を使って糸と繭を処理すれば、あとは実勢相場が、生糸は十九万円、繭が千四百円、こういうものが厳然として経済界に根をはやす、こういうのですか。どうもそうとしか受け取れぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/97
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098・須賀賢二
○須賀政府委員 五万俵の買い入れと申しますものも、これは春繭の生産量に対しましては相当の割合を占めておるものでもありますし、この五万俵のワクの買い入れにつきましては、現実に買い入れの希望がある限りの間は買い入れを続けていくわけであります。これらの措置によりまして、本年度中の十九万円の価格維持には十分ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/98
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099・栗原俊夫
○栗原委員 それは、先ほどしつこく質問したように、なるほど、団体協約による取引において千四百円が保障されれば、共同乾繭の方は私は一粒も出なくなると思う。しかし、先ほど農林大臣が言う通り、団体協約による受け渡しのすでに済んだ繭の千四百円が保障されない、いろいろな実勢価格を参酌して千四百円が幾らになるかわからぬけれども、割り込むということになれば、夏秋蚕は全部共同乾繭へ共同乾繭へと流れますよ。もちろん、そんなことを言っても農民どもは乾繭装置を持っていないし倉庫も持っていないのだ、やれるものならやってみろといって農民をけころがすなら話は別です。しかし、少くとも農民が共同乾繭をやりたいという意思を持ち、その農民の意思に沿うて農林省が農民の親として手を差し延べて共同乾繭を意思の通りにさせるという方向をとるならば、これは、その線でいけば千四百円は保障してもらえるのだ、片一方はだめなんだ、こういうことになれば、夏秋蚕は全部共同乾繭になりますよ。この見通しはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/99
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100・須賀賢二
○須賀政府委員 現在の段階におきましては、夏秋蚕繭につきまして政府資金の裏づけをもって共同保管を行います事態は考えておりません。農協の正当な融資によって共同保管を行うという事態はあるいはあるかもしれませんで、政府資金の裏づけをもって共同保管をやるということまでは現在のところ考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/100
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101・栗原俊夫
○栗原委員 そうすると、今の局長の答えの中から出てくるのは、三十三年度生糸年度におけるところの繭というものについては一切この法律で扱うのだ、従って、こっちの金がなくなってしまえば、もちろんその間繭糸価格安定法も発動しないのだから、繭は全く野放図の状態にほうり出される、こう考えられるのですが、そう考えていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/101
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102・須賀賢二
○須賀政府委員 春繭に対する対策に重点的に金が注ぎ込まれておりますが、年間におきまして七万五千俵に相当する生糸をたな上げをいたすだけの裏づけを持っておるわけであります。本年度中はこの処置によりまして十分繭糸価格は維持していけるものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/102
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103・栗原俊夫
○栗原委員 いま少し親切に、農民にも安心のできるような措置と答弁がほしいと思うのですよ。この百五十億というものは春繭に関しての引き当ての金なんだ、こう一方では言っており、それでは夏秋蚕はどうなんだと言えば、夏秋蚕は七万五千俵の一つの幅の中で救済できるのだ、こういう話なんですが、局長、そういうばかげたことはないですよ。それは非常に苦しいところだということはよくわかる。わかるのだけれども、やはり、ほんとうに農民が安心する、製糸家も安心する、こういう形の中で政策を打ち出していくことが、一番金を使わずに、しかも皆さんが、そして農民も製糸家も求める事態が招来できると思うのですよ。そこで、私たちは質問の形を通じながらいろいろ皆さんに要求をしておるわけなんですが、どうですか。夏秋蚕も含めて実際において二割制限なんというものはできません。何とかいま一度農林大臣も金額等についても考慮をする余裕はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/103
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104・三浦一雄
○三浦国務大臣 いろいろ御批判がありますけれども、われわれとしましては、この臨時措置法によって所期の効果をあげ得ると、こう考えておりますし、今のところその金額等についているう考えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/104
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105・栗原俊夫
○栗原委員 その問題はだいぶ論議も尽きたようでありますから、これは見解の相違で、われわれはわれわれなりの修正案で臨みたいと考えます。
そこで、最後に一つ、この点は十分お伺いしたいですが、夏秋蚕について二割の自主生産調整を期待する、こういうお話でありますが、その方法として、蚕種のための繭というものが適当に乾燥処分されていっておる、こういう話を聞いておりますけれども、このことはどこが主体になってどこで行なっておるのか、この実態を明らかにしてもらいたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/105
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106・須賀賢二
○須賀政府委員 今回夏秋蚕用の余剰種繭の生産調整をいたしておりますのは、過般全養連を主体といたしまして夏秋蚕の二割生産調整を行うことを決定いたしました裏づけ措置といたしまして、全養連が行なっておる事業でございます。今回の夏秋蚕の生産計画で大体どの程度に額が必要であるか、それに合せて、春以来蚕種業者が進めて参りました種繭の生産数量から実際に余剰として出て参りますものが計算上出て参る。これをとり集めまして買い上げる。従いまして、全養連が余剰種繭を買い上げまして、それを糸繭として処分いたし、入札して販売をいたします。種繭が生産コストが高く、逆にこれを糸繭として処分いたしましたときには価値が低いために安くなる。その間の差額を全養連に対して国で一括補助する。これは、実績がはっきりとまとまりましてから、それに応じまして補助金を算出いたしまして支出をするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/106
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107・栗原俊夫
○栗原委員 これは非常に重大な問題を私ははらむと思うのですが、ただいまの答弁によれば、政府は全く関知しないことなんだ、一切をあげて全養連がやっておることなんだ、こういうことであるようでありますが、実は、先般の養蚕農民の大会で、全養連でそうした方向をとろうという原案を出したにもかかわらず、これは法的な全国養蚕農民大会ではございませんから法的拘束力も何もないとはいうものの、とにもかくにも、全国養蚕農民大会という形で招集された大会では、そうした原案が否決されて、絶対反対、こういう姿が出たわけですけれども、こういう姿の中で全養連の諸君が蚕種業者と話をして、そうして蚕種を処分していく。一方において、全国農民は、桑を仕立てながら、掃こうとすると種が回ってこない。もちろん、このことはいろいろな法律によってそうしたものを罰するとかなんとかいうことはないかもしれないけれども、これはある意味においては重大な問題をはらむものではないですか。とにかく、一方においては桑を仕立てて蚕を掃こうとして待っておる。ところが、途中において種を廃棄していく。このことは重大問題が起ってくると思いますが、この点についての見通しはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/107
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108・須賀賢二
○須賀政府委員 これはすべて今年の夏秋蚕繭の価格維持のために生産者団体で自主的にやってもらっておる仕事でありまして、生産者団体の方の協力態勢に待つわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/108
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109・栗原俊夫
○栗原委員 局長はいかにも養蚕団体が自主的だ自主的だと言うけれども、実はそうではなくて、強力指導をやっておるのだとわれわれには受け取れるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/109
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110・須賀賢二
○須賀政府委員 全養連は総会その他の手順を踏みましてやっておることでございますから、これはもちろんそれ自体は全養連の責任においてやっておることでございます。しかし、これは昨日の閣議決定にもございますように、夏秋蚕につきましては二割の減産によって需給を調整するということを国の方針としてきめておるわけです。全養連がその措置をとるに至ります間においては、もちろん政府の指導によるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/110
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111・栗原俊夫
○栗原委員 夏秋蚕は、御承知の通り採桑の方法が夏蚕、秋蚕というような形で、一ぺんには姿は出てきませんけれども、夏秋蚕を通じて桑が実際に桑園に残る。そして一方には農民がこれを何とか養蚕に使いたいという意思が猛烈に起っておるときに、これを政府としてはそのままほうっておくつもりですか。もしもそういう事態が起った場合に、それはお前たちが自主的にやったのだから政府は知らないのだ、われわれはそうしたことを期待したのだが決して責任はないのだ、こう言って突っぱねるつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/111
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112・須賀賢二
○須賀政府委員 本年度の夏秋蚕繭の需給の調整をはかりますために、農家の協力を求めるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/112
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113・栗原俊夫
○栗原委員 これは実際、昨年例の設備の制限の法律をやったときにも、製糸家の側においても当局からずいぶん自主的な指導を受けながらなおかつできなかったのです。結局最後にやったのは、立法をして、しかも補助金まで与えておる。そうでしょう。一方においては製糸の側にはそういうことをやっておる。それは必要でやったのだからやむを得なかったかもしれません。——われわれは反対したのだけれども。しかし、片一方において養蚕農民には全く自主的な調整を期待する、希望する、こういうことでこれはほっぽっておく。こういうばかげたことはないでしょう。こういう政治はないですよ。大臣、どう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/113
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114・三浦一雄
○三浦国務大臣 こういう環境におきます場合には、やはり当事者においても協力と自主的なことをせざるを得ないのですね。そういう環境のもとにこれを全部片づけるということになると——今までの方針は私必ずしも間違っておるとは思いません。ただ、今後生起すべき事態というものはいろいろあるでしょう。栗原さんのおっしゃることのみ展開するとは思いません。われわれとしましては、ある程度の効果をあげ、安定したものになると思いますが、はからざる事態というものは予想し得ないのでございますから、その場合の措置は決して冷酷な措置をとる考えはございません。その事態に応じてはまた方策等も変ることでありますが、今のところ予断してかれこれのことを申し上げることはできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/114
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115・栗原俊夫
○栗原委員 だんだんと質疑を続けてきましたけれども、こういうことは、別に農民にむやみな金を渡せとか、そういうことではないのです。結局は、農民の所得を少しでも確保して、農民の生活をどうして安定していくか、こういう観点に立ってやっておるわけです。総括的に申しますが、大臣と私の考えは違っておる。今のやり方では、なかなか大臣の所期するような状況にはならない、その結果は農民が非常な窮乏に追い込まれる危険性がある、こういう見方なのですが、幸い大臣の御期待通りの効果が出れば、私たちも拍手かっさいしてともに喜びますが、しかし、不幸にして所期通りにいかなかった場合には、大臣は、農民の親として、農民の生活を守っていくという何らかの手を必ず打つということをここで言明できますか。それをまず言明してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/115
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116・三浦一雄
○三浦国務大臣 私はみずからの本務は心得ております。ただし、この問題についてのお見込みは必ずしも栗原さんの御意見に同調しかねます。われわれとしましては、努力しますならば相当の効果をあげ得る、こういう確信のもとに遂行しておりますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/116
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117・久保田豊
○久保田(豊)委員 関連。
これは大臣にお伺いしますが、この点は非常に大事な点です。最近政府のおやりになっておること一つ一つ全部お考えになっていただきたいと思う。今の養蚕の問題についても、機屋については補助金とか何かを出して整理をしておる。今度は種屋についても補助金を出して整理をしてやる名前は自主的であれ何であれ、補助金を出してやらせる。ところが、農民に対してはどうかというと、何にもないじゃないか。どうしてこういう不公平なことをおやりになるのか。もう一つ、これは単に養蚕の問題ではないということ。タバコはどうです。タバコは、今まで増産々々といって——これはあなたの直接の所管ではないかもしれませんけれども、養蚕は、増産々々とやらして、乾繭施設とかなんかといって金を出しておいて、そうしてようやっとできて、これから落ちついてやろうというところで、今度は二割減産で、減産々々と言う。きょう畜産の大会がありましたが、畜産の農民は何と言っているか。今まで政府が牛を飼え牛を飼えと言うから、われわれは借金をしていろいろ苦労して牛を飼ってきて、ようやくいざというときになって今度は乳の値は下りほうだい。ところが、政府はこれに対して何らの保障もしてくれない。こういうことでは、保守や革新ということでなくて、政治がないということと同じじゃないかと思います。こういういうことを農民の大多数ははっきり——きょう来たのは富農ばかりです。牛を五、六頭使って、村へ行けば大いばりの者です。こういう連中さえはっきりそういうふうに言っている。ですから、あなたがいろいろなことを言って、こうやれば効果が出るとか大丈夫とか言って、おりますが、二割の減産ははっきり桑畑が二割むだになるということじゃないですか。そうでなくても、自然の災害があった場合でも今共済でもって政府は金を出しているじゃありませんか。一方で政府の政策によってこういうことをやって、一方では、その犠牲を農民だけにやって、これだけは自主的だなんというばかなことは、私は許されないと思う。もしそういう農政を今後あらゆる面でやるなら、これまさに自民党農政と言って差しつかえないと思うが、こういうべらぼうなことをやっておっては、日本の農業は、あなたが幾ら何と言ったって、安心してできるはずはないじゃありませんか。せめて百五十億——この桑の二割減産というものは、金にすれば大したことじゃない。これに対して十のものを十補償しろと言うわけじゃないが、せめて農民がある程度安心のできるようにしていただかねばならぬ。しかも、あなたに言えば、養蚕というものはまだまだ斜陽産業じゃないから、ことしだけは臨時措置だと言う。臨時措置なら、臨時措置だけに、大した金でないものをやるのは、農林大臣として、政府として当然の務めだと思う。そういう不信な農政を次から次に全部やっている。みんなそうじゃないですか。こういう基本になるものについては、少くともそのくらいのことは農林大臣として大した金じゃないと思う。勘定してごらんなさい。桑畑の補償くらいのことは、これだけの金を使ってやる以上、大した金じゃありませんよ。そこで、政府が不信を問われるということは、単に自民党とか野党とかいう関係でなく、日本の農民全体がそういうことになりますと、政治的な方向を全く失ってくる。そういう意味において、私は御再考を願いたいと思うが、その点について大臣ははっきりした心がまえ、確信を持たなければ、これからの農政はやれませんよ。こういう点についてははっきり大臣としての確信をお持ちになって、そうして大蔵省でも政府の部内でもどこでも押さなければ、農政というものは成り立ちませんよ。すべての問題がだめになる。私はこれは桑だけの問題ではないと思う。この点の確信を欠いておるような農林大臣は、そう言っては、失礼ですが、この段階において、農業転換期における大臣として、このくらいたよりないものは農民から見てありません。ぜひこの点はお考え直しをいただいて——私は勘定してみれば大した金ではないと思う。事務当局が考えればこれは大へんな問題かもしれませんが、大臣がお考えになれば大した問題ではないと思うが、この点について、もう一度御再考をされる意思があるのかないのか、はっきりと一つ御言明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/117
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118・三浦一雄
○三浦国務大臣 今回の措置を前進させていきましたのも、もとより、養蚕家等を保護したい、そして育成して参りたいという信念に出ておるのですから、今後生起される問題につきましては、十分検討した上にその事態に応じた適当な措置を講ずる決心であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/118
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119・栗原俊夫
○栗原委員 この臨時措置を立てるについては、むろんその前提として恒久対策的な蚕糸業の展望について十分ただしたいのでありますが、時間の関係もございますので、次の機会に留保いたしまして、本日は以上で質問を打ち切らしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/119
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120・松浦周太郎
○松浦委員長 本日はこれにて散会いたします。
午後六時四十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102905007X00519580626/120
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