1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年七月四日(金曜日)
午前零時二十分開議
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議事日程 第十一号
昭和三十三年七月四日
午前零時十分開議
第一 市町村立学校職員給与負担
法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
(前会の続)
第二 国会法第三十九条但書の規
定による議決に関する件(蚕糸
業振興審議会委員)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/0
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001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/1
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002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(前会の続)を議題といたします。前会に引き続き、本案に対する質疑を続けます。加瀬完君。
〔加瀬完君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/2
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003・加瀬完
○加瀬完君 私は、秋山議員に続きまして、管理職手当について質問をいたします。
先ほど、秋山君に対する御答弁の中で、岸総理は、法律を尊重し、法律に準拠して運営をするというお話がございましたが、私の第一点は、この管理職手当が、どういう法的根拠に基いて行われるのかという点であります。政府は、公立の高等学校長以下に管理職手当を支給する根拠といたしまして、提案説明を見ますると、教育公務員特例法の第二十五条の五を根拠といたしておるようであります。しかし、この内容は、国立学校の教育公務員の給与の種類及び額が前提となるわけでありまして、今度の場合は、国立の高等学校長以下に管理職手当が支給された後、初めて二十五条の五の適用が発生するわけであります。ところが現状では、人事院規則はいまだ改正されておりませんので、国立の高等学校長以下に管理職手当を出し得るところの支給条件は発生しておりません。すなわち、公立の高等学校、小中学校の校長に管理職手当を出す基準は、まだ存在をしておらないのであります。従って、順序からするならば、国立の高等学校長以下に管理職手当が支給をされ、その上で、公立小中高等学校長の管理職手当が問題となり、さらに市町村立学校職員給与負担法が改正されるという筋道を踏まなければならないはずであります。この順序を踏まない理由は何であるか。この点をまず政府に御答えを願いたいのであります。
さらに、法的には存在をしておらない基準をもとに負担法を改訂することが、果して妥当であるか。さらに、教育公務員特例法の二十五条の五を、現在において、公立高等学校長以下の管理職手当支給の根拠にすることは違法であると思うが、この点、法制局、人事院並びに総理の見解を承わりたいのであります。
質問の第二点は、主として人事院に伺いますが、今まで人事院の管理職手当に対する御見解は、昭知二十七年十月二十八日の衆議院人事委員会会議録の第三号に明瞭になっております。それによりますと、管理職員とは、主として監督とか、政策の立案といった重要な仕事をする者、こう説明をしております。さらに、管理職手当をどういう形で出す心ということについては、従って、こういう重要ポストにある性質上、時間外勤務が多いので、超過勤務手当の支給を廃止して、俸給額の調整を行うのだ、こう説明を加えられております。なお、学校教職員に対しては、給与水準そのものを、他の公務員より引き上ぐるべきであって、今回の管理職手当は超勤の肩がわりであって、何も新しい給与額を付加したものではない。従って、学校教職員には超勤がないゆえに管理職手当は考えられない。瀧本局長は、こう答弁をしております。また、この特別調整額は、高給者の超勤額をある一定額に押える意味であって、決して職務と責任においてきめました職務給のほかに、もう一つ職務給的な新しいものをつけ加える意味ではありません。これは浅井人事院総裁の答弁であります。さらに、昭和三十二年の十二月十三日の衆議院の内閣委員会で、管理職手当を学長、学部長から、さらに高等学校長以下に拡大する考えはないかという質問に対しまして、瀧本局長は、学長、学部長あたりにね、他のバランス上つける必要があろうけれども、高等学校長というところまで及ぼす必要はないと判断いたしますと答えております。さらに、人事院が教職員に超過勤務手当を支給しなかった理由は何かという質問に対しまして、教員の給与上の水準差というものを設けるのが適当である。教員の超過勤務手当は計測しがたいので、一般の俸給表より水準を上げて、この中に含ませて解決するのがよかろう、こう答えておるのであります。これが今日までの人事院の態度でありました。
そこで質問をするのでありますが、その一つは、管理職手当は、超勤の肩がわりのもので、何も新しい給与額を付加したものではないというけれども、このたびの高校長以下の手当を、新しい給与の付加とは見ないのかどうか。
その二は、管理職手当は、職務給のほかに、もう一つの職務給的な意味は持っておらない、こう御説明をしておられたわけであります。このたびの管理職手当は、もう一つの職務給的意味があるように文部大臣はお答えになっております。人事院との見解が違いますが、この点はどうであるか。
その三ね、学校教職員の給与につきましては、給与水準そのものを考えるべきである、こういう態度でありましたものを、今回これを捨てて、管理職手当を認める理由は何であるか、特に今の点は大切でありますので、さらに具体的に尋ねますと、政府が管理職手当支給の根拠に考えておりますもう一つのものは、給与法の第十条の二であります。この十条の二の支給対象者というものを考えますと、これは同じく給与法の第十九条の三のワクがはめられると思うわけであります。第十九条の三によりますと、たとえば十六条、十七条の二項、十八条等、すなわち超過勤務手当や休日給や夜勤手当等、こういうものを管理職手当をもらう者は支給されないということになります。このことは、給与法の建前そのものが、十条の二の特別調整額の構成要素には、これら除外されておる手当部分が、当然宿があわされておるという解釈に立っておるわけであります。これは教職員の場合は、前記の超勤、休日給あるいは夜勤手当等が支給されておりません。特に昭和二十四年の文部次官通牒によりますと、学校教職員に超過勤務させてはならないという、こういう次官通牒が出ておるわけでありますから、当然、超過勤務はないわけであります。超過勤務の肩がわりにしなければならないという十九条三の考えからすれば、明かにこれは、このたびの管理職手当を学校長に出すという点は、第十九条の三に違背すると認められるけれども、この点について、人事院の所見を承わりたいのであります。
さらに、今まで人事院は、管理職手当を認める理由といたしまして、管理、監督の性格が濃厚であるかどうかという点、それから職務の特殊性があるかどうかという点、この二点を根拠といたしまして、特に校長に管理職手当を出さない理由といたしまとて、管理、監督の性格が全然ないとは言われないけれども、少くとも支給すべき特殊性はないという見解をとってきておったわけであります。これが一つの証拠といたしましては、提案説明の出で文部大臣が述べておられるように、予算的措置が三月に通ったのであるならば、当然、人事院が人事院規則を変えようとするならば、この予算の通過と見合った形において規則の改正が急がれなければならないはずであります。ところが、これが予算通過後三カ月も放任されておるという点は、この点について人事院当局も種々の疑点を持っておったという裏づけになろうかと思うのであります。
こういう点を最近、非常に改正の方向に踏み切ろうと人事院はしているようでございますが、それならば、支給すべき特殊性というものが生まれてきたのか。昨年の暮の衆議院の内閣委員会におきまして、文部省の政府委員は、校長の職務権限には変更がないと答えております。そうしますと、職務権限そのものに変更がなければ、支給すべき特殊性が生まれたと解さなければなりません。それならば、一体、校長の管理職手当を出さなければならぬ特殊性がどこから生まれたか。この点、政府の政治的な圧力以外に、われわれは特殊性を認められないわけであります。先ほどの御答弁の中でも、人事院と文部省の御見解は違っておるようでありますが、これらについて、文部省並びに人事院がどういう御連絡をとられたか。もっとはっきり言うならば、人事院は文部省から、どういう管理職手当に対して御連絡があったか。それについて公立学校の高等学校長以下の管理職手当支給についての人事院規則を、どういうふうに変えようとなさったか、今までの御態度をまたお変えになりまして、管理職手当を支給すべき特殊性をどこにお認めになったか、これらの点についてお答えいただきます。
第三の質問は、前者も触れられましたけれども、公立高等学校長以下の校長は、果して管理職かという問題であります。前にも引きましたように、人事院は、管理職というのは主として管理、監督、政策の立案をなす重要な仕事のポスト、こう規定しておりまして、そこで学校長は、すなわち学校管理として、どういう内容を持っているかという点に帰すると思いますが、専門家の言うところの学校管理というものは、四つの内容というものを示しております。
一つは人的管理でありますし、その二は物的管理、第三は教育運営の管理、第四は財務管理であります。人的管理は、任免とか、服務とか、雑務とか、懲戒、分限等の権限でございますが、これは教育委員会にありますけれども、学校長にはありません。第二の物的管理としての校地、校舎等の施設、営繕になれば、当然これは教育委員会の権限であります。第三の教育運営管理といたしましての一番問題の教育課程の設定、あるいは教員組織、こういうものの権限も校長にはありません。第四の財務管理としての学校の設置、管理は、もちろん教育委員会であります。このことは、大挙の管理機関と比べまして一そう明瞭であります。たとえば、教育公務員特例法の十一条には「服務」という規定があります。大学の管理機関は、服務についてのいろいろな規則を作る権限があるわけでございますが、高等学校長以下の校長には、これはありません。同じく十二条には、今大きな問題の勤務評定が記されております。その勤務論定をきめる権限、勤務評定をする権限、勤務評定後の措置を行う権限、こういうものは大学の管理機関、学長や学部長にありますが、高等学校長以下の校長には、こういう権限はありません。また、職員の採用、昇任、選考の権限も校長にはないのであります。大学の管理機関にはありますけれども、校長にはありません。このことは、教育委員会の職務権限の規定の中にもう職員の任免、校長、教員の研修、校長、教員の保健、安全、福利に関することは、教育委員会の固有の権限として規定されてあるわけであります。従いまして、「校長は、校務を掌り、所属職員を監督する。」という二十八条の内容というものは、教委なり、あるいは教育長なりに委任された範囲内においてだけ存在するのでありまして、高等学校長以下の校長そのものに固有の監督権、管理権というものがあるわけではございません。全然これは大学の学長や学部長とは異質のものでありまして、監督権は、先ほど質問された秋山さんの御指摘のように、名実ともに教育委員会に誇るわけであります。
そうでありますのに、なぜ、むしろ管理される側にありまする校長を、学長や学部長に準ずる管理職として新しく認めなければならないのか、文部省なり、自治庁、人事院なりの、こう新しく解釈し直す法的な根拠を示されたいのであります。
第四点は、文部省と自治庁その他に対して伺いますが、自治庁は、地方公務員の管理職手当の見解というものを次のように発表いたしております。管理職手当は、超過勤務手当の予算の範囲内において、同手当の予算査定基準、支給実績、職務の繁忙度及び一般の職員との権衡を考慮して定めなければならない。しかし、このたび公立高等学校長以下に管理職手当が出るということになりますと、この支給実績、職務の繁忙、一般の職員との権衡あるいは広く予算範囲全体に、今までの支給条件とは違った原則を立てなければならないことになります。そうなりますると、これは将来、給与体系なり地方財政計画そのものにも大きい矛盾を生じてくるのでありますが、こういう点を自治庁はどう解釈しておられますか。さらに、個条的に伺いますと、より管理職的な立場にあるところの教育長は、二十九府県の教育長が管理職手当をもらっておりません。地方教育委員の教育長は、ほとんどが管理職手当をもらっておりません。管理される校長に管理職手当が出て、管理する教育長に管理職手当が出ておらないという点を、自治庁はどう説明されるか。また、校長よりは比較的に高次の管理職にあると思われるところの部長クラスは、二十七府県が管理職手当を出しておりません。課長クラスになりますと、出しておるものは二県だけであります。こういう状態でありますと、地方公務員法第二十四条の給与、勤務条件の権限の原則というものは全然守られないことになる。この点を自治庁はどう考えられるか。
次に、管理職手当について文部省は、先ほども引例いたしましたよう・に、教育公務員特例法の二十五条の五を基準にしておりますが、それならば、二十五条の五を基準とするにしては、人事院規則が出ておらないわけでありますから、これは基準にならないものを基準にしている。それならば、基準にすべきものをどうして基準にしておらないかという問題に、日直、宿直手当があります。国家公務員は三百六十円ときめられておるのに、地方公務員は百六十円、百八十円という宿日直手当があります。あるいは超過勤務手当も、それぞれ府県は三%、国家公務員は六%と開きがあります。こういう不均衡というものを一体どう考えるのか。これを放任するならば、給与全般について、校長と他の教員との権衡が、さらに失われるということになるわけであります。さらに自治庁は、再建団体のうち九府県に対しまして、議会で決定いたしました給与の額を、さらに利子補給を続けるということで、再建計画のやり直しをさせております。この再建計画をはみ出すものとする額は、どれくらいであるかと言いますと、岩手においては二百八十九万、山形が百九十七万、千葉が四百七十五万、新潟炉三百七十一万、長野が四百四十三万十熊本が九十八万、鹿児島が二百七十九万というように、熊本においては九十八万、他の府県においても二百万ないし五百万であります。今、校長の管理職手当を見積りますと、府県の持ち出し分だけでも一千万前後というものが想定されます。百万円の支出を強力に抑圧して、財政計画を進めなければならないとしている自治庁が、一千万も無理に出すのは一体どういう理由であるのか。管理職手当を無理に出して、議会できめた給与を無理に押える、しかも出す管理職手当は一千万以上、議会できめた給与表は百万そこそこ、この矛盾というものをどう解釈されるのか。で、この点だけから見れば、地方再建計画をこわすものは、地方国体ではなくして、政府みずからであると断定せなければならないのであります。(拍手)
この質問をいたしますと、自治庁は、あるいは政府当局は、地方財政計画の中に管理職手当分は見込んであると、こう答えている。しかしながら、交付税というものは、御存じのように、ひもがついておりません。また、管理職手当を出すだけで、交付税がそれだけ増率をされたわけでもありません。パーセントがふえたわけでもありません。従って当然、管理職手当分が他の教育費に食い込んで参りますと、教育費の競合を生じます。教育を高める意図で始められたという、こういう管理職手当が、事実は教育をマイナスするわけであります。それでも、あえてこの管理職手当を出さなければならないという理由を文部省に伺いたいのであります。
今の問題は、文教予算並びに地方計画において見ますと、たとえば文教予算がどれぐらい増額されたかという点で、文部省が、たとえばすし詰め学級の問題がありますが、小中学校の教員増を、予算要求額として出されたものは、二万二千四百九十九人と聞いております。ところが、査定で決定されましたものは、三千二百十六人であります。また、小中学校の不足建物の整備を、二十七万坪要求しましたのに対して、予算査定は十五万七千坪、また、危険校舎は、二十三万坪の要求に対しまして、十五万坪であります。それどころか、児童生徒災害救済健康管理制度の創設という項目を、文部省はたった三億の予算を出しましたが、これすらも削られております。教員の適正配置について一番問題になりましたのは、地方行政委員会でも、あるいは文教委員会でも、一市町村の同一級地の実施であります。これは十五億円の要求に対しまして、完全に削られている。地方行財政につきましても、自治庁が一番方を入れているのは、行政水準の確保に対する対策といたしまして学校施設に七十億、道路橋梁に三百二十億、環境衛生に八十億、計四百七十億というものを要求しておりましたが、これは査定において一つも認められておりません。その反面、住民負担というものは、自治庁が見積っているだけでも、PTA等の負担の肩がわりをしなければならないものだけでも、百五十億と見積っているわけであります。こういうような状況にある問題をそのままにいたしておりまして、管理職手当だけをここで解決をしなければならないという理由が、われわれには納得ができないのであります。文教政策全般の上で管理職手当を特に強行しなければならない理由を、総理大臣に伺いたいのであります。(拍手)
最後の点でありますが、昭和三十三年の三月二十七日の本院の予算委員会で、わが党の矢嶋委員が、管理職手当に対して質問をしましたのに、総理大臣はお答えになられて、管理職手当がいろいろまちまちになっていることは、私実は十分承知していませんでした。いろいろ理由はあると思いますが、十分に検討して筋道の立つようにすべきだと思います。十分検討をいたさせますと、こう答えておられます。そこで、どういうように検討されたのか、検討の結果というものが、審議もしない中間報告を求めて、このような結末をつけようとすることが検討の結果であるか、あるいは衆議院においては、あと四日会期を延長するということがきまっているそうでありますが、会期延長を見越した中にも、委員会の審議を打ち切って通すということが検討の結果であるのか、これらの点について、お答えいただきたいのであります。
また、先ほど総理は、偏向教育の事実も少くないとのことでありましたけれども、その事実を明らかにしていただきたい。また、今度の管理職手当が、自民党総裁としてお考えになられる偏向教育を、校長によって是正するために管理職手当を出すのであるか、この点もお答えをいただきたいのであります。
以上で質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/3
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004・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
管理職手当を今度のこれで給付するということは、われわれは校長というものを管理職であると、こういう前提に立っております。しこうして、これに対して管理職手当を与えるということは、決して法律の規定に違反するわけじゃございませんで、法の秩序を害するものではないと思います。なお、詳しい法律の関係につきましては、文部大臣や人事院の当局かち御説明を申し上げます。
なお、私に対して、この検討をいかに加えて、これをやったのかというお話でございます。管理職手当についての予算措置につきましては、三十三年度の予算に計上されて御審議を得たことは御承知の通りであります。しこうして、これを給付するについての法律の規定を、いかにすべきかということにつきましては、政府として十分に検討をして、今回提案をいたしておるわけであります。
中間報告をとって云々という、こういう審議がどうだというお話に対しましては、先ほど秋山議員にお答えを申し上げました通りで、衆議院で会期延長がきまったようにお話になっておりますけれども、私の承知しておる限りにおきましては、そういうことになっておらないのであります。従いまして参議院でこの案を審議するにつきまして、それぞれの議決によって、こういう方法で審議を進めるということになっておりますから、その方法で審議されることを望むわけであります。
偏向教育云々の問題につきましては、私は管理職手当と何らの関係を持たして先ほどお答えをしたわけではございません。先ほど秋山議員の御質問は、日教組に対して、これを弾圧し、これを分断するということが岸内閣の文教政策の中心をなしておるという御質問に対しまして、私どもはそうじゃないのだ、しかしながら、教育というものについて、文教政策については、あくまでも私は教育の中立性ということに重点を置いて、偏向教育というものに対しましては、これを是正して行かなければならぬということを申し上げましたので、管理職手当と直接の関係のないことは言うを待たないことでございます。(拍手)
〔国務大臣灘尾弘吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/4
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005・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 加瀬君の私に対する御質問につきましてお答えを申し上げたいと思います。
この管理職手当は、先ほど申しましたように、人事院規則における特別調整額に相当するものでございます。従って地方におきましては、この特別調整額として支給せられております手当の種類あるいは額を基準として管理職手当を出すことになるわけでございます。校長の職務については、おのおの先ほど申し上げたごとくでございますけれども、学校教育法第二十八条の規定、あるいはまた地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三十九条の規定におきまして、校長が、一般職の職員の給与に関する法律第十条の二にいう、いわゆる「管理又は監督の地位にある」ということは、明らかであろうと思うのでございます。学校の人的あるいは物的の管理についてその権限が校長にはなくて教育委員会にあるということは、一応ごもっともでございます。しかし、校長は教育委員会の委任を受けまして学校の管理に当っておるということも事実でございます。同時にまた、ただいま申しましたように、法律上の根拠によりまして、校長が管理または監督の職務にあるということは明瞭でございますので、それに従いまして、人事院規則において特別調整額を出すことも何ら差しつかえございません。従って、またこれを基準といたしまして、地方におきまして管理職手当を出すということも、何ら差しつかえないことと思うのでございます。御質問の中に’順序の問題についての御質問がございました。お話の通りに、人事院規則におきまして規定ができません限りは、地方におきまして基準とすべきものがないわけでございます。管理職手当を出すというわけには参らぬと思うのでございます。しかし今日、人事院におかれましでも、この趣旨の特別調整額に関する規定を準備せられておるところでございます。地方におきましても、あるいは予算措置、あるいは財政措置等のことを準備しなけりゃなりません。その場合におきまして、この法律は皆さん御承知の通り、地方における負担関係を定めておるものでございます。すなわち、これもまた地方において管理職手当を出す準備行為でございます。人事院におきましても、また、文部省におきましても、この準備をいたしておるというふうに御了解を願いたいと思うのでございます。
次に、校長に管理職手当を出さなければならぬ理由いかんというふうな御趣旨の御質問でございます。これも前前申し上げます通りに、校長の管理または監督の任にあるその他位にかんがみましてこれは出すわけであります。学校の管理または監督という職務は、きわめて重要でございます。で、さような意味合いにおきまして、このたび管理職手当を出そうというに過ぎないのでございます。
また、管理職手当に経費を出すことによって、ほかの教育上の諸施設に対する経費がそれだけ減る、それだけマイナスになるじゃないか、かような御趣旨の御質問と伺ったのでございますが、もちろん今日、学校教育についてなすべき点が多々あるということは、前々から申し上げておる通りでございます。政府におきましても、いわゆるすし詰め教室の解消等、いろいろ学校教育施設につきましては、鋭意努力いたしておる次第であります。しかし同時に、学校の管理、運営の適正を期するということも、また、学校教育の効果を上げます上において、きわめて重要と考えますので、この管理職手当を出そうというのでございまして、私どもはいずれも重要な事項として考えておる次第でございますので、さよう御了承願いたいと思います。(拍手)
〔国務大臣青木正君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/5
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006・青木正
○国務大臣(青木正君) 加瀬委員の御質問中、文部大臣との重複の分につきましては、ただいま文部大臣のお答え申し上げた通りであります。
自治庁関係におきましてお尋ねの点を申し上げますが、教育長に管理職手当を支給しない府県も多いというお話でありました。お話のように、教育長に管理職手当を支給していない府県も相当あるのであります。しかし、教育長はこれは行政職でありますので、超過勤務手当の方から手当をいたしておる府県もあるのでありまして、この点は、校長に対する管理職手当の問題とは別個の問題と考えております。
それから、再建団体に対して、この給与水準が国の水準より上回っておるということで利子の補給の停止をしながら、一方において、こういう管理職手当を出すことは不適当ではないかと、こういうお話であったのであります。しかしながら、再建団体に対する問題は、これは再建団体の財政の健全化をはかるための措置でありまして、おのずから学校長の管理職手当の問題とは別個の問題と私どもは考えております。しかも、管理職手当につきましては、御承知のように、地方財政計画の上にこの点を織り込んでおるのでありまして、平衡交付金の基準財政需要の中にも入っておるのでありまして、再建団体の問題とは、おのずから別個の問題と考えておる次第であります。また、行政水準の向上、こういう問題があるのに、一方においてはそのことを放任して、校長の管理職手当の問題を取り上げることは矛盾ではないかというお話でありますが、確かに行政水準の向上の問題も考えなければならぬことと私ども考えております。しかし、この問題と校長の管理職手当の問題、これまたおのずから別の問題でありまして、行政水準の向上のためには、行政水準の向上に必要なる経費というものを同時に考えて行かなければならぬ。私どもは両方、行政水準の向上も、またこういう問題も、相ともに考慮して行かなければならぬ問題と存じておる次第であります。(拍手)
〔政府委員入江誠一郎君登壇、拍
手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/6
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007・入江誠一郎
○政府委員(入江誠一郎君) お答え申し上げます。まず第一点の、俸給表の職務給的性質と申しますか、これと、いわゆる管理職手当との付加関係と申しまするか、この問題につきましては、確かに御指摘のごとく、現在の俸給は、職務給的性質を持っておりますからして、職務に伴う給与は、もちろんこれに含んでおるのでございますけれども、しかし、御存じのごとく、たとえば扶養手当でございますとか、あるいは交通手当でございますとか、現在、公務員に伴う諸手当につきましては、俸給表に含んでおりまする部分に加え、民間給与との関係上、これに付加して手当を支給しておる事例はたくさんございますのでありまして、今回の管理職手当につきましては、やはりこの給与法第十条によりまして、御存じのごとく、現在の俸給表に含まれておりまするいわゆる職務給的部分に加え、これを支給いたそうとするものでございます。
それから次に、第二点の、ただいま文部大臣からお答えになりましたが、管理職手当の性質と申しますか、これを超過勤務との関係でございますが、これは、先ほど申します通り、沿革といたしましては、確かに御指摘のごとく、職員の勤務時間以外の実態を考慮した部分もございますので、これは他の政府委員から、いろいろ従来沿革的に技術的にお答えしたこともあると存じまするけれども、しかしながら、もちろんその当初の切りかえ時におきましては、超勤の原資を振りかえましたり、いろいろいたしましたけれども、その後いろいろな、職員の給与の均衡の問題でございますとか、あるいは給与法第十四条の二の法文の解釈その他から、漸次支給範囲を拡大いたしましてやはり管理監督の職にある者のその職務の実態に応じて支給することにいたしたのでございます。その点、法律の規定通り出しておる次第でございます。次に、第三に、十九条の三との問題でございます。お話のごとく、十九条の三は、休日給でございまするとか、超過勤務でございまするとか、これらのものは、管理職手当を支給する者には支給しないとなっておりますが、これは事実上、これらの職員につきましては超過勤務手当を支給することが適当でないと認めまして、十九条の三によって、こういうことにしたわけでございます。
次に、ただいま文部大臣からもお答えになりましたが、人事院規則の改正のおくれております理由でございますが、これは全く事務的に、先般、国会におかれていろいろ各省設置法なんかの御改正がございまして、非常に広範に管理職手当関係を改正すべき部分がございまして、そのためにおくれておるわけでございまして、目下改正を準備中でございますから、近く実現を見ると存じます。
次に、文部省との関係と申しまするか、今回の人事院規則を制定するにつきまして、文部省からどういう交渉があったかという問題でございますが、これは研究職でございますとか、あるいは大学の学部長等との関係上、高等学校以下の校長さん方に対しましても、いずれ管理職手当を支給すべきごとが均衡を得るものと考えておりましたが、今回、国立学校はもちろん、文部省におかれて、地方公務員の校長格に対して予算を獲得されましたので、今回これを人事院規則をもって制定しようとするものでございます。全然事務的な取扱いでございますから、どうか御了承をお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/7
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008・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 加瀬完君。
〔加瀬完君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/8
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009・加瀬完
○加瀬完君 総理大臣に伺いますが、会期延長はお認めにならないのか、この点を明瞭にしていただきたい。
第二は、偏向教育の事例が幾多あると言った。そこで、偏向教育の事例がないならないと、ここで明言していただきたい。
それから自治庁に伺いますが、二十四条の内容は、給与、勤務条件についての権衡の原則だ。それで、より管理職的立場にある教育長に管理職手当というものを出さない。それで管理される方の校長に出す、あるいは部課長に出さないで校長に出す、こういうことになっては権衡の原則が破れるのではないか、この点をどう考えるのか、そういう点であります。
人事官に伺いますが、支給範囲の拡大をしたということは、今まで人事院では一回も発表されておらない。この点を一体どうなさるのか。十九条の三の解釈、十九条の三の内容というものは、結局、超勤その他の手当のない者には、管理職手当は出さないという前提に立って十九条の三が構成されていると思う。あなたの御説明はそれに対して十分お答えいただいておりません。
さらに、文部大臣に伺いますが、教育公務員特例法の附則の二十三条には、教育公務員特例法は全体といたしまして、国家公務員法あるいは地方公務員法に優先するのだという規定がある。そうすると、地方公務員法の二十四条の精神にも違反をいたしますし、あるいは国家公務員法の第一条の三項には、「何人も、故意に、この法律、人事院規則又は人事院指令に違反し、又は違反を企て若しくは共謀してはならない。」という規定がある。そうすると、結局、人事院の規則が出ないうちに二十五条の五を適用するということは、明らかにこれは、今言った二十四条ないし国家公務員法の一条の三項にも違反するということになる。これらの点を一体どう解釈するのか。
以上、お尋ねをいたします。
〔国務大臣岸信介君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/9
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010・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 会期の延長につきましては、審議の進行の事案も考えまして、自由民主党より社会党の方へ、会期延長についての提案をいたしたことは事実であります、しかし、それは両党の話し合いが進められておりまして、これがまとまっておりません。御承知の通り、こういう問題が提案されましても、その扱い及び衆議院においてどういうふうに議決されるかというのは、衆議院の院議できまるわけでございますから、経過及び事情を一応申し上げておきます。
偏向教育云々の問題は、私は先ほど申し上げましたように、教育はあくまで中立性を守らなければならない、偏向教育があってはならないということを申し上げておるわけであります。(「事例をあげなさい」と呼ぶ者あり)かつて、私の山口県におきまして、実例として、相当有名な偏向の事実として、赤の日記の問題がございましたことは、御承知の通りだと思います。かくのごときことがあってはならぬと思っております。(拍手)
〔国務大臣青木正君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/10
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011・青木正
○国務大臣(青木正君) 地方公務員法第二十四条に言ういわゆる給与均衡の原則というものは、申し上げるまでもなく、国家公務員あるいは他の地方団体の公務員、それから民間給与との均衡を考慮して、職員の給与を定めなければならぬということをさしておるわけでありまして、教育長につきまして、御指摘のように、まだ管理職手当を支給しないで、そうして超過勤務手当を支給しておるところも少くないのでありますが、これは漸次管理職手当に変って行くものと私どもは考えております。
〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/11
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012・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 国立の高等学校以下の校長に対する俸給の特別調整額、すなわちいわゆる管理職手当の支給に関する人事院規則の制定につきましては、先ほど人事官からもお話がございました通りに、目下準備をしているわけであります。近くこれが実施せられることと思うのでございます。都道府県の場合におきましては、今後、予算措置を講じ、必要な条例の制定等、支給に要する準備もございますので、あらかじめ、これに要する措置を講じようと考えまして、この法律案を出しました次第でございます。もちろん、人事院規則ができません限りは、この管理職手当を地方において支給するわけには参りませんけれども、この法案を出すことは、決して違法でも何でもないと思うのでございます。
〔政府委員入江誠一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/12
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013・入江誠一郎
○政府委員(入江誠一郎君) お答え申し上げます。
第一点の管理職手当の支給範囲の拡大と申しますか、変遷の問題でございますが、こまかく申しますると、最近まで、約十八次以上にわたって改正いたしておりますが、その中でも、きわめておもなものについて申し上げますると、二十八年の十一月に試験研究機関の部長級、二十九年五月に、国立大学の事務局長、これが十三次でございますが、三十年の七月に、試験研究、研修、検査機関の長、それから三十一年の四月に研究、研修、特大病院の長、大学の学長、学部長、それからさらに三十二年の九月に、研究機関の長、これは課、室長も含んでおります。そういうふうに非常にたびたびにわたって拡大と申しまするか、修正をいたしております次第でございます。
それから十九条の三の問題でございますが、これは先ほどお答え申し上げたのと別に異なるところはないのでございますが、やはりこの管理監督の職務にある者に対しましては、管理職手当を支給いたします関係上、もちろん設立当時の経緯もございまするけれども、大体、給与の一つの筋から申しましても、これに超過勤務手当を支給いたしますことは適当でないと認めまして、十九条の三を適用いたしている次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/13
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014・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 斎藤昇君外一名から成規の賛成者を得て、質疑終局の動議が提出されました。
これより本動議の採決をいたします。表決は記名投票をもって行います。本動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
〔議場閉鎖〕
〔参事氏名を点呼〕
〔投票執行〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/14
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015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。——投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
〔投票箱閉鎖〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/15
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016・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
〔議場開鎖〕
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/16
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017・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百八十七票
白色票 百二十二票
青色票 六十五票
よって質疑は、終局することに決しました。(拍手)
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〔参照〕
賛成者(白色票)氏名 百二十二名
常岡 一郎君 松野 孝一君
杉山 昌作君 島村 軍次君
竹下 豐次君 中野 文門君
佐藤 尚武君 河野 謙三君
松平 勇雄君 武藤 常介君
上林 忠次君 最上 英子君
迫水 久常君 松岡 平市君
田中 啓一君 梶原 茂嘉君
森 八三一君 西川甚五郎君
青山 正一君 藤野 繁雄君
堀末 治君 早川 愼一君
野田 俊作君 谷口弥三郎君
新谷寅三郎君 木内 四郎君
紅露 みつ君 加賀山之雄君
後藤 文夫君 村上 義一君
一松 定吉君 本多 市郎君
鶴見 祐輔君 笹森 順造君
江藤 智君 仲原 善一君
成田 一郎君 西田 信一君
堀本 宜実君 鈴木 万平君
稲浦 鹿藏君 吉江 勝保君
塩見 俊二君 前田佳都男君
三木與吉郎君 青柳 秀夫君
雨森 常夫君 小西 英雄君
館 哲二君 山本 米治君
榊原 亨君 剱木 亨弘君
大谷 贇雄君 白井 勇君
田中 茂穂君 大谷 瑩潤君
苫米地英俊君 小柳 牧衞君
井上 清一君 小林 武治君
斎藤 昇君 小山邦太郎君
木暮武太夫君 石坂 豊一君
廣瀬 久忠君 西郷吉之助君
植竹 春彦君 草葉 隆圓君
安井 謙君 川村 松助君
黒川 武雄君 小林 英三君
野村吉三郎君 苫米地義三君
寺尾 豊君 平井 太郎君
増原 恵吉君 松村 秀逸君
石井 桂君 木島 虎藏君
佐藤清一郎君 柴田 栄君
大沢 雄一君 宮澤 喜一君
平島 敏夫君 後藤 義隆君
吉田 萬次君 重政 庸徳君
西岡 ハル君 横山 フク君
土田國太郎君 横川 信夫君
伊能 芳雄君 宮田 重文君
三浦 義男君 高野 一夫君
高橋進太郎君 古池 信三君
岡崎 真一君 小沢久太郎君
寺本 廣作君 小幡 治和君
関根 久藏君 野本 品吉君
秋山俊一郎君 上原 正吉君
伊能繁次郎君 石原幹市郎君
左藤 義詮君 永野 護君
井野 碩哉君 下條 康麿君
吉野 信次君 郡 祐一君
津島 壽一君 堀木 鎌三君
木村篤太郎君 青木 一男君
泉山 三六君 高橋 衛君
勝俣 稔君 大川 光三君
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反対者(青色票)氏名 六十五名
森中 守義君 鈴木 強君
藤田藤太郎君 相澤 重明君
松永 忠二君 木下 友敬君
平林 剛君 山本 經勝君
岡 三郎君 久保 等君
亀田 得治君 湯山 勇君
柴谷 要君 安部キミ子君
近藤 信一君 東 隆君
大倉 精一君 阿具根 登君
竹中 勝男君 吉田 法晴君
松澤 兼人君 藤田 進君
小笠原二三男君 成瀬 幡治君
小林 孝平君 島 清君
加藤シヅエ君 千葉 信君
戸叶 武君 荒木正三郎君
市川 房枝君 岩間 正男君
長谷部ひろ君 竹中 恒夫君
安部 清美君 鈴木 壽君
伊藤 顕道君 光村 甚助君
秋山 長造君 加瀬 完君
坂本 昭君 阿部 竹松君
大矢 正君 松澤 靖介君
椿 繁夫君 田畑 金光君
中村 正雄君 矢嶋 三義君
横川 正市君 小酒井義男君
河合 義一君 松浦 清一君
高田なほ子君 片岡 文重君
重盛 壽治君 永岡 光治君
羽生 三七君 岡田 宗司君
曾禰 益君 栗山 良夫君
山下 義信君 清澤 俊英君
棚橋 小虎君 内村 清次君
山田 節男君
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/17
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018・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 本案に対し、松永忠二君から成規の賛成者を得て、修正案が提出されております。
この際、修正案の趣旨説明を求めます。松永忠二君。
〔松永忠二君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/18
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019・松永忠二
○松永忠二君 私は、日本社会党を代表して、市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案に対する修正案を提案いたします。
まず、案文を朗読いたします。
市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案に対する修正案
市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
第一条の改正規定中「、管理職手当」を削る。
かかる提案をいたしました理由は、法律を改正して、市町村立の学校の教職員に対して通勤手当を支給することについては賛成でありますが、小学校・中学校の校長に管理職手当を支給することについては反対であるからであります。通勤手当は、第二十八国会において、一般職の職員に対する支給の法律が成立をしておるのでありますから、これに準じて教職員に支給されることは当然であります。しかし、管理職手当の支給については、次の理由から反対をするわけであります。
まず、その第一の理由は、管理職手当は、校長の管理職としての重要性を認め、これを正しく待遇するための給与として与えようとするものではないのであります。これは、校長の管理的地位を強化して、勤務評定における評定者の地位を合理化し、教職員の権力支配をはかることが第一の目的であるのであります。また、管理職手当を支給されている事実を作ることによって校長を非組合員とする根拠を作り、教職員組合の組織の分断をはかることを目的とする政治的意図、謀略的目的を持っているからであるのであります。特に、校長非組合員化を検討中であるという岸総理の本会議における答弁からも、これが将来、こういう政策の目的に利用されることは確実であるのであります。管理職手当が、かかる謀略的なものであるということについては、これが実現されるに至った経過から見れば明らかであるのであります。管理職手当に当る特別調整額の人事院規則の改正については、先ほど加瀬委員からお話がありましたが、最も新しい改正は、昭和三十二年の九月であったのであります。昨年の九月にこの改正が行われたのであります。しかし、そのときは、国立の高等学校、中小学校の校長は、問題なく除かれていたのであります。ところが、それが改正を行なって、一月から二月もたたない間に、突如として、その校長、教頭の管理職手当が問題とされるようになってきたのであります。また、文部省は、当初の本年度の予算の要求には、この手当は要求されておらなかったのであります。ところが突然、自民党側の強い要望もあったのか、追加予算として、この予算が要求されて姿を現わしてきたのであります。当時は勤務評定実施の問題が、ようやくやかましく論議され始めて、校長が第一次評定者としての資格が、あるかないかというようなことが問題になってくるとともに、勤務評定実施に当って、校長の立場が非常に困難になってくるということも、予想されてくるようになってきたのであります。文部省が学校教育法にない、法律にはきめてない教頭の制度を施行規則の改正によって、法律に違反をしてこれを定め、管理職手当の支給の口実を作ったのも、このころであったのであります。校長の非組合員化をはかる法的な改正が、御承知のように、自民党六役会議で論議をされたことも周知の事実であるのであります。このような関連に立って、突然、管理職手当の支給が考えられて、急速に実行に移されてきたことから見て、謀略的なものであるということは明らかであるのであります。校長の権力強化をはかって勤務評定を実施し、天下り的な教職員の権力統制をはかって教育秩序の確立という方法をとるということは、岸官僚内閣の性格にぴったりした方法であるのであります。(拍手)また、校長非組合員化の意図は一職員団体の加入脱退の自由を拘束して、校長の勤務条件の向上を妨げる違憲的な行為であり、なおかつ、日教組の組織に大きなくさびを打ち込んで、その統一と団結の弱体をはかろうとする労働組合弾圧の労働政策であるのであります。かかる意味から私は断固反対をしなければならないのであります。
その次に第二の点といたしまして管理職手当の支給は、給与の法律を混乱させる違法的な行為であるということについては、秋山委員あるいは加瀬委員から各方面の指摘があったのであります。今、文部大臣の答弁を聞き、あるいは人事院の関係の答弁を聞いてみても、文部大臣は、校長の今度の管理職手当は特別調整額であるというふうに言っているのであります。ところが人事院は、超過勤務手当に見合うものとして支給をするものではないと言っておるのであります。こうなりますと、文部省は、管理職手当は特別調整額であると言っておるのでありますから、これこそ、超過勤務手当に見合うものであるのであります。ところが人事院は、超過勤務に見合うものではないと説明をしておるのであります。こういう矛盾した答弁については、後ほどまた速記を調べて、その正確を期さなければいけないのでありますが、ここでその話を聞いてみても、こうした逆な説明が行われておるのであります。文部大臣は、管理職手当は俸給の特別調整額に当るものであるからとの答弁が、先ほど申しましたようにありましたのですが、特別調整額をもらっている者は、超過勤務手当の支給を受けることはできません。しかし、教職員は超過勤務手当に見合うものとして、一般職の職員の給与よりも、一号俸高い給与の水準差がついているのであります。これは、ここに来ておる内藤局長が、委員会ではっきり答弁をしておるのであります。一号俸の給与の水準差の違いは別としても、教職員の給与表を適用されているところに、管理職手当をつけてもらうところの校長は、超過勤務の二重取りであるということを言うこともできるのであります。文部大臣は、管理職手当は管理者としての職責上当然と考えられるかち支給するのであって、超過勤務手当的なものではないと言っているのであるが、これでは管理職手当は特別調整額であるということと矛盾をしておるのであります。しかも、こういう説明を聞いてみても、私たちは、その説明に、法律上は管理者の職責上与えられているのが超過勤務手当的なものである。文部大臣は、管理職手当は管理者としての職責上当然と考えられるから支給するのであって超過勤務手当的なものではないと言っているが、法律上では管理者の職責上与えられているのが超過勤務手当的なものであるのであります。超過勤務手当的でない管理者としての手当などというものは、現行の給与法では考えられないものであるのであります。国立の高等学校、小中学校校長にも支給するからというようなことの話があるのでありますが、これについては、加瀬委員からも再々御質問があったのでありますが、関係予算がすでに国会を通っていて、人事院規則を改めればすぐ支給できるのに、まだ人事院規則が改められておらない。実は人事院は、この法律が成立したらば、その法律成立に名をかりて、規則改正をして行こうというのが人事院の態度なのであります。それほど無理なものであるのであります。実は五十人も四十人毛おるところの各省庁の出張所の所長でも管理職手当をもらっておらないのに、五人や六人の教職員の管理的地位にある校長がこの手当をもらうということは、公務員給与の均衡を失することになるのであります。しかも、五、六人の学校の教頭にまでこれを支給しようというのであります。私は真に校長を優遇しようとするならば、給与表を改めて行けばいいのであります。しかし、管理職手当という名前でやらなければ、実はその政治的目的を達することができないからなのであります。法を守ることを岸総理は施政方針の演説の中で強調されました。これこそ民主主義を守る道だと強調されたのでありますが、なぜこの問題について、正しく法を守るということをおやりにならないのでありますか。(拍手)
なお、管理職手当をもらうことを校長は熱望しておるのではありません。また、今の教育を考えるなら、もっとこの金を使うべき場所があるということについても、皆様方から御指摘がありました。全国小学校長会でも、その決議で、管理職手当を支給する金があるなら、各学校に養護教諭や事務職員を置いてほしい、給食婦の身分を確保して、給与を高めてほしいということを要望しておるのであります。校長、教頭に五千円程度のものを支給するように要求しておるという秘めのころ、若い教員の投書には、その金があれば、私の学校には、二人の若い先生をふやしてもらえる、どんなに教育がよくなるか、また、校長先生も、それを望んでおるということを投書をしているのであります。地方負担も入れば三千人の先生をふやすことができるのであります。政府は、ことし、すし詰め教室を解消すると称して、五千人の教員を増加しただけなのであります。父兄の負担の軽減のためにも、熱望された学校の建築関係の予算は一千万円増加をしたのみであります。恵まれない子供たちへの教科書代補助は一億九千万円であることを思うとき、この金はもっと優先的に使われるべき場所があると思うのであります。給与についても初任給を上げてほしい、僻地手当を高くしてもらいたい、宿日直手当や旅費を正しく支給してほしいということを、長い間熱望しているのにかかわらず、こういうものが少しも解決しておらないのに、要求しない管理職手当だけは進んで支給するというのであります。これはおかしいではないかということを考えるのは、当りまえだと思うのであります。くれるものなら、ありがたくもらっておけ、もらっている以上、これもあれもやるのが当りまえだというようなことは、資本家的な態度が露骨に現われていると思うのであります。(拍手)少し気骨のある先生であるならば、たたき返す気持になるということは当りまえだと思うのであります。支給を当然とする通勤手当と、支給を必要としない管理職手当とを一つの法案としたことも排斥すべきであります。この法案が二十八国会で審議未了となった後に、社会党が反対をしたので通勤手当を支給することができなかったと一自民党政府は宣伝して、社会党と教職員との離間をはかったのでありましてここにも改正法律案の悪質な意図を見るのであります。以上の理由から、私はここに修正案を提案して通勤手当の支給を可能にし、かつ管理職手当の支給を不可能にする本修正案を提案をしたのであります。議員各位の御賛成を心から熱望する次第であるのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/19
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020・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 討論の通告がございます。順次、発言を許します。吉田法晴君。
〔吉田法晴君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/20
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021・吉田法晴
○吉田法晴君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となっております内閣提出の市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案原案に対して、断固反対するとともに、第一条の改正規定中、管理職手当を削る社会党提出の修正案に賛成をいたすものであります。(拍手)
本法律案は、前国会にも提出せられましたが、審議未了となり、今国会に再び重要法案として提出されたわけでありますが、報道機関も伝えておる通り、多くの疑惑を持たれているのでありまして、かかる法案が、本院の文教委員会においては、事実上何ら審議もせられないままに、委員長の中間報告が多数をもって議決され、ここに非常に制限された法案審議の反対討論をしなければならないことを、私は心から遺憾に思うものであります。(拍手)従って、私はここに法案の疑義を諸君に披瀝し、原案が否決せられ、修正案に賛成せられんことを強く希望するものであります。
疑義の第一点は、提案理由に、国立の高等学校以下の校長に対して、管理職手当を支給するための予算措置が講ぜられたことと、公立学校の教育公務員の給与は、国立学校のそれに準ずるという、教育公務員特例法の規定をあげております。しかしながら、実は国立学校の校長に対する管理職手当、すなわち俸給の特別調整額を支給するためには、人事院規則九の十七が改正せられなければなりませんが、これはいまだ改正せられておりません。従って、この提案の理由は、理由になっていないとともに、今ここで、われわれがこの法律案に賛成することは、従来の国家公務員法、人事院規則、地方公務員法に混乱を生ずること、さきに同僚議員が指摘したところであります。一体、根本的に言って、人事院規則の制定は、国家公務員法第三条第四項の規定により、人事院のみに与えられた職責であって、総理といえども、これに関与することはできないのであります。この民主的公務員制度は、政府から独立した人事院をして守らせ、官僚制度の復活を阻止したいというのが、現在の公務員制度の建前であります。今回の国立学校の校長に対する管理職手当の予算がついたということだけで、人事院が規則を改正するとしたら、これは順序が逆であるばかりでなく、民主的教育公務員の制度のかわりに、官僚支配を打ち立てようとするものでございます。(拍手)人事院規則が今なお、なぜ改正せられないのでありましょうか。人事院は民主的公務員制度の擁護者として、人事院規則を改正することに反対であるはずであります。
疑義の第二点は、教育公務員に対して、管理職手当あるいは俸給の特別調整額が支給できるかどうかという問題であります。管理職手当あるいは俸給の特別調整額は、一般職給与法によれば、管理または監督の地位にある者が、職務の特殊性に基き支給されるとありますが、大学の学長、学部長、高等学校以下の校長が、真に管理または監督の地位にあるかどうかは、学校教育法第二十八条、教育公務員特例法第二十五条の規定等によっても、はなはだあいまいであります。さらにこの手当は、勤務時間に関係して支給されている超過勤務手当のかわりとして支給されていることは、当時の人事院の言明でも明らかでありますし、事態は、先ほど同僚加瀬君が明僚に指摘いたした通りであります。教育公務員については、事実上夏季休暇、自宅研修等のこともあり、超過勤務時間の把握が困難であるため、初任給基準を一号俸高くする等、俸給表に水準差を設け、超過勤務手当を支給しないためのカバーをしてきたということも、従来の文部省の説明で明らかであります。従って今回、校長に管理職手当を支給せんとすることは、一般教員に超過勤務手当を支給しない限り、給与の不均衡を来たすのであります。これは給与の根本原則からいって全く不当なことであります。文部省は昭和二十四年、次官通達をもって、教員に超過勤務を行わせないよう配慮いたしてもらいたい、どうしても超過勤務をさせる必要があるときは、特別に手当を出してもよいと言明しておりますが、今日、校長のみに予算措置をし、教員に対する一般的な超過勤務手当の予算措置をしないということは、校長と一般教員を差別取扱いをし、その間に不和を生ぜしめ、教育の場に暗い空気を送り込むことであって、校長を金でつり、教員間に疎隔と対立を作り、教員組合の分断をねらい、果ては教員組合から校長を除くための法案を、今後提案する意図に基く措置であると断ずる以外にありません。教職員組合の弾圧分裂政策以外の何ものでもございません。(拍手)
校長の給与は、今日の給与法あるいは各県給与条例において、一般の教諭が二等級であるに対し、一等級として取り扱われ、職場の責任と困難の度合いに応じた待遇がなされており、この上に、校長のみに七%という、一般公務員において他に例を見ない低い管理職手当を支給し、一般教員に対しては、何もそれに見合う措置をしないということは、人事院がいつも言う、給与は職務給と生活給の調和の上に立ち、公平を原則とすべき給与の建前から言って、まことに不合理であり、国家公務員法、地方公務員法、一般職給与法の関係規定及びこれに共通する原則、精神から言って、断じて許されないものと確信をいたします。
疑義の第三点は、法改正の内容の一つとして、市町村立の義務教育諸学校の教職員に対して通勤手当を支給し、それは都道府県負担とすることを規定をしておりますが、その額は、実費支給を原則とすることが当然でありながら、予算上は、本年度より実施された国家公務員のそれと同様、最高額を六百円に押える義務教育費国庫負担金しか組まれていないことは、実情にそぐわないことでありまして、われわれは、年来の主張通り、通勤手当は賛成でありますが、その引き上げを要求するものであります。
以上、ごく大まかに問題点を指摘しつつ、私は、原案反対、修正案賛成の理由を申し述べて参りましたが、これを要するに、本法案に規定する管理職手当の支給については、義務教育振興の立場から見て、マイナスにこそなれ、積極的役割をするものは何もないと思うのであります。(拍手)義務教育の振興は、だれしも認める通り、すし詰の教育の解消、教育施設、設備の改善、教員定員の確保、恵まれない子供たちのための特殊教育の振興等、なさねばならぬ喫緊の問題が山積しているのであります。もちろん教職員の給与も、一般公務員と同様、いまだ生活をささえるに足る十分なものでは、ありませんから、総体的な待遇改善がされることこそ、教育の振興にとって喫緊なものでございます。しかるに、この法律案は、教育公務員の一般的給与水準の引き上げではなく、公立学校の学校長にのみ、わずか七%の管理職手当を支給し、もって、従来、管理職でないとせられたものを管理職とし、教職員の間に疎隔と対立とをもたらし、文部省、任命された地方教育委員会、校長という行政体系、管理体系を作らんとするものであります。これは民主的公務員制度の破壊であります。民主的な教育行政制度は、戦前の中央集権的な官僚教育制度によって、軍国主義教育、戦争のための教育がなされた失敗を再び繰り返さないために、地方自治制度の中で、中央集権的な教育でなく、民主的な、公選された委員による教育行政が教育委員制度によって行われて参ったのであります。教職員として同じ校長と教員の協力によって教育が行われて参りました。しかるに、教育委員の任命、これは官選と同一でありますが、教育行政の民主性の剥奪、そして文部省の指導助言という形で官僚化し、中央集権化された文部行政をここに確立し、よって、この官僚化、中央集権化された教育行政機構の一環として、校長を管理職としようとするものでありますが、この機構に、勤務評定の実施を強行し、納得と理解の上の協力でなくて、利益誘導と差別支配をしようといたしておるのでありますが、この管理職手当によって職階支配を強化しようとしておるのが、この法律案のねらいであります。これは協力すべき教職員に分裂をもたらすものであり、民主教育制度の破壊の、目標とするところは、民主教育を破壊し、平和教育を破壊し、そして現に進めておる憲法違反の自衛隊の増強、日米軍事同盟あるいはNEATOの結成、そして限定原子戦争という名前で原子戦争をしようとする準備の一環でなくて何でありましょう。青年よ、銃をとるな、平和憲法を守ろう、こういう教育をやめさせるための教育をなさしめんがためであります。それをことさらに、勤務評定を強行実施せんとしたり、校長のみにあえて少額の管理職手当を支給して、一般の教職員から切り離して管理職にするために、この市町村立学校職員給与負担法の一部改正を無理に、審議もさせず強行通過をはからんとする政府与党の態度は、法律案そのものや、教育制度の改変が目ざすがごとく、フアッショそのものであります。私は、戦前、官僚が軍部と結んで次第にフアッショ化し、議会を無視し、議会を引きずって翼賛議会にしていった過程を今ここに思い起し、佐藤軍務局長が「黙れ」と議員をしかりとばし、元貴族院の本議場において、美濃部達吉先生に一身上の弁明を余儀なくせしめ、ついに沈黙を守らざるを得ざらしめた議会史の暗い過去を思い起さざるを得ないのを遺憾に思うのであります。
私は、ここに日本の民主主義、平和主義を守り育てるため、その基礎となる民主教育、平和教育をあくまで守るために、戦争への道を再び歩まないために、また、全国に二千五百万人の児童生徒の教育と幸福を守るために、原案に対して断固反対の意を表し、社会党提出の修正案に賛成をする討論を終るものであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/21
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022・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 野本品吉君。
〔野本品吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/22
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023・野本品吉
○野本品吉君 討論に先だちまして、私は一言、私どもの立場についての誤解があるようでありますから、これを解くために申し添えることをお許しいただきたいと思います。
先刻来の社会党の同僚議員諸君の発言をよく聞いておりますというと、今度のこの法案につきまして、私及び私どもの自民党が、社会党の諸君に発言の機会を絶対に与えないという方針のもとに、この法案審議に臨んだということが、しばしば言われておるのでありますが、これは全く事実に反するのでありまして、この点を明らかにしてから、討論に入りたいと思うのであります。(拍手)
社会党の諸君は、この法案がきわめて重要法案であるというので、予備審査の段階において、本会議の上程を要求し、大臣の趣旨説明を求め、これに対する質問をいたしました。それほど重要な法案でありますので(「賛否を明らかにしろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)かように重要視している法案でありますから、私どももまた、これを慎重に審議したいと思いまして、衆議院から法案の送付直後からの審議を期待いたしておったのであります。(「なぜ討論をしないか」と呼ぶ者あり)討論に先立って弁明しておると、こう言っておる。しかるに、私どもの十分に審議する時間を求めようとする機会は、遺憾ながら、これを与えられることがなかったのであります。そこで、私どもは四日という会期をめどにいたしまして、どうしたらば十分なる審議の時間を求めることかできるかということで、それぞれの日に適当な時間を割り当てまして、計画を立てました。その私どもの四日議了という基本線に基いての審議の時間は、実に十数時間の多きを確保しておいたのであります。(「討論々々」「議長、注意」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)。
私は、自由民主党を代表いたしまして、松永忠二君の修正案に反対し、原案に賛成をいたします。(拍手)
討論の冒頭において申し述べたいここが一つあります。それは、社会党の諸君は、この法案がきわめて重要法案じあるというので、予備審査の段階にわいて、本会議の上程を強く要望し、大臣の趣旨説明を求め、かつこれに質疑を行なったのであります。かようは、この案に対する審議の熱意は、当然、衆議院から法案が送付されれば、直ちに審議されるであろうということをわれわれは期待しておったのであります。(拍手)しかるに、われわれのこの期待は、遺憾ながら実現することができません。そこで三十日の午後の理事会におきまして、私は、会期の四日を基準といたしまして、三日までに委員会の討論採決を終る、これをめどにして、野党諸君のために十数時間にわたる審議を確保いたしましてのスケジュールを提案いたしたのであります。しかるに、この日程を組むに当りまして私どもは、とこまでも三日に委員会を上げる、この全体の計画の上に立っての審議日程を組みたいということを強く要望した。社会党の諸君は、きょうはきょう、あしたはあしたというものの考え方でありまして、この点において、私どもと社会党の諸君の考え方がどうしても一致しない。その結果が、今日の状態に至っておるのであるということを、明らかに指摘しておきたいと思うのであります。(拍手)
さて、ただいま上程になっております市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案でありますが、今まで社会党の諸君からは、校長に対する管理職手当につきまして、あらゆる角度からの反対の主張がなされました。私どもは、政府からもるる説明のありましたように、校長は校務をつかさどり、所属職員を監督する地位にあるものでありますし、また、所属職員の身分上のことについて意見を具申することのできる立場にあるのでありまして、これは法律的な観点から見ましても、また、その責任と地位の職務内容から見ましても、管理職であるということに対しまして、一点の疑いを差しはさみません。
その第二は、一般職の職員の給与に関する法律第十条の二は、管理職手当は、管理または監督の地位にあるものに対し、その職務の特殊性に基いて支給せられるものであるという明文がありますことは、申し上げるまでもありません。以上二つの理由に基いて市町村立学校の校長に対しまして、すでに管理職手当を支給されておりますところの大学の学長、学部長と同様な処遇をなすべきであるということは、まさに当然のことでありまして私どもは、むしろその実施がおそきに失し、その額か低きに過ぎる点を指摘して、今後の是正を求めなければならぬと考えておるのであります。(拍手)次に、この法案につきまして、世上若干の批判がありますのが申したいと思うのでありますが、その第一は、この法案の実施が地方財政に影響を持ってくるということでありますが、この点につきましては、すでに地方財政計画において、それぞれの措置が講ぜられておって、その憂いはないと、かように考えるわけであります。第二は、ただいま吉田君からも御意見がありましたが、管理職手当の支給は、それによって校長と教員とを対立させて、学園の空気を悪化させるという批判であります。校長の責任がきわめて重大であり、その職務が複雑困難であるということは、世人のすべてがこれを認めて疑わないところであります。同時に、日夕、校長と生活をともにしておりますまじめな教員諸君は、またこの事実を確認されておることと思うのであります。従って校長に対して、あるべき給与がなされたということによって、分断、分裂、対立などということを考えるといたしまするならば、それは私どもの考え方と全く違うのでありまして、物事をすなおに考えていただきたいということを申したい。社会党の諸君は、この法案に対しまして、非常な意図的なものであるということについて、われわれの党及び政府に迫っておるのでありますが、もし諸君がそういうことをおっしゃるならば、われわれは、諸君がこれに反対することは、より大きく意図的なものであるということを指摘したい。
管理職手当と通勤手当とは、次の世代の青少年育成という重大な責任を持っております教育関係者諸君に対しまして幾分でもその経済的条件の改善、向上をすることによって、諸君が非常に多く口にされる教育の向上を、きわめて純粋に求めている以外の何ものでもありません。(拍手)
私は、この法案について、最初から反対されておりました社会党の諸君が突如として、修正案を出されたのでありますが、このことについても一言これを指摘せざるを得ないのであります。と申しますのは、この法案の実施について、最初から反対されておりましたのは、日教組の諸君が一番強烈であったと思うのであります。おそらく社会党の皆さんも、この法律の成立については、心ひそかにこれを期待しておることと思うのであります。もしも、そういう期待を内に蔵しながら、ある大きな圧力によって、心ならずもこれに反対するというならば、天下の公党である社会党は、この圧力に屈したというそしりを受けるかもしれません。(拍手)
以上、所見の一端を申し述べまして、重ねて修正案に反対し、原案に賛成するものでありますが、この際、社会党の諸君は、いろいろな行きがかりやら何やらを一擲されて、意を翻して原案に同調、賛成されることを心から希望いたしまして、私の討論を終ります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/23
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024・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 岡三郎君。
〔岡三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/24
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025・岡三郎
○岡三郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案に対して提出されました社会党の修正案に賛成し、政府原案に反対の意思を表明せんとするものであります。(拍手)
ただいままで、各種の角度から、本法案に対しまして、それぞれの反対、賛成意見が述べられて参りましたので、私は角度を変えまして、本法律案に対する反対の意見を進めたいと思います。
社会党といえども、もちろん、学校の校長に対する待遇の改善については反対するものではありません。ただし、先ほど同僚の松永君が指摘した通り、一人二千円内外の金で、いわゆるエビでタイをつるというふうな、こういうやり方に対しては、はなはだしく、自民党の政策に対しては意図的なものを感じておるということを指摘せざるを得ません。政府は、三十三年度予算におきまして、ジェット機を三年間に三百台、約一千億の金を要して、三カ年後においては役にも立ちそうもないというものを、あえて強行して、これを作ろうとしておるのでありますが、このような費用だけでも、せめて学校の校長に、自民党のいうことを聞かせようとするならば、出したらどうですか。(拍手)かようなむだの金を一方において使って教育の充実に対して、緊急を要しておる問題についてそっぽを向いておる自由党が、一体、何の教育のためにこの管理職手当をやったと言えるでしょうか。問題にならぬと思うのであります。
特に、校長先生に対する改善というものは、単に校長先生のみによって学校の教育が振興するということは、これは百人が百人、だれもそうとは考えておりません。学校の運営については、校長と教職員が一体となって、真に児童の教育を担当するということが現実であります。従って、校長のみを待遇をよくして一般の教職員に対しては振り向かないというこの自民党の態度は、一体、教育を振興するものと心から言えるものでありましょうか。私は、このような観点に立って見るときに、どうしてもこの管理職法案というものが、政治的な意図のもとに、日教組の組織の分断をはかり、しかも、そのことによって教育の中央集権化を招来し、やがては憲法改正、再軍備の方向への捨て石というふうに意図をとられても、私は間違いではないと存ずるのであります。(拍手)
次に、私は第二点として指摘する点は勤務評定問題との関連であります。現在まで政府は、非常なる混乱を起して勤評を強行しております。特に文部省自体は、しばしば地方課長等を派遣して、指揮監督ではなくして、これを強制し、恐喝して実行しておるのであります。しかし、心ある世論の反撃を受けまして、非常な教育的な混乱を招来しておりまするが、私どものこの勤評問題に対するところの見解については、今さら申し上げる必要もないと思いまするが、この勤評がいよいよ九月に提出されるという段階を今迎えて、校長が組合員になっているということによって、勤評に対する提出というものがうまくいかないのではないか、こういうふうな意図的な問題の中において、校長に二千円の捨て金をくれて校長を何とか政府の言うなりにしようという、この意図が悪らつなのであります。(拍手)こういうふうな悪らつなる意図を持っているという点を考えまするならば、この校長に対する二千円の管理職手当というものを、心ある校長は、これはいわゆる毒まんじゅう的なものであるということを考えているのであります。
つまり、この管理職手当というものを支給することによって、校長を非組合員化する、そうして一方的に政府の強制によって、権力の末端としてこれを駆使して勤評を提出させるような方向づけをする、その中において政府というものは、校長が組合から離脱する法案を作って、明確に非組合員化になったときには、停年制の問題も、ここにあるように、五十五才に至らずして校長の首を切っても、校長に対しては身分の保障というものを組合がしないから、堂々と人員整理ができるという意図も、この中に内包されていると思うのであります。(拍手)これは地方財政の貧困に伴いまして、佐賀県における事例を見てもわかると思うのであります。佐賀県におけるところの地方財政の貧困が、どの程度教職員の首切りを強行したかということは、今さら言を待たないのであります。このように、教職員を地方財政の貧困に名をかりて首切りをし、やがては愛媛において地方財政の貧困ということを理由にして、そうして勤評を強行したということな、隠れもない事実なのであります。
こういうふうな事実の上に立って、全国の校長、教職員が、この政府の悪らつなる意図というものに対して、自民党はもう少し良心的に、もっと、こういうふうな金があるならば、教育の充実の方向に対してなぜ金を使わないのか、こういう方面に対するまじめなる批判があるのであります。もちろん校長さん方においても、待遇の改善は、冒頭言ったように、だれもほしがらない者はありません。社会党に対しても、自民党に対しても、常時待遇の改善を言っているのが現状でありますが、それならば、もう少しすなおに待遇改善の方向に対して、まじめにこの方策を進めるべきであろうと思うのであります。しかるに、これに対する自民党の考え方というものが漸次露骨になるにつれて、この法律案に対する明確なる反対意思表示をしてきておるということを指摘しなければなりません。
私は、次に、文部省に対して、この問題についての意見を申し上げまするが、文部省は、いわゆる剱木氏が文部次官の当時以来、現在の日教組に対する一つの手だてとして、全部の地方公務員である教職員を国家公務員にしようとする法律を提出いたしました。その昭和二十八年の三月は、ばかやろう解散によりましてこの意図は水泡に帰したのであります。その後順次、大達文政、清瀬文政、その間にひょっくり灘尾文政が入りましたが、今ここに受け継いだ灘尾文政、この五、六年におけるところの一貫しておる方針といものは、教育の充実という方向ではなくして、どこまでも、日教組相手にせずという態度であります。このような自民党の態度が、教育を混乱させておるということを指摘して、私はこの点を自民党に反省を求めなくてはならぬと思うのであります。(拍手)
次に、文部省が、この自民党の手先となって、特に現状においては、内藤初中局長というものは、その模範的なものであると指摘しなければなりません。私が文部省に要求するならば、指摘するならば、文部省は、教職員に対して、政府の手先になって弾圧するのではなくして、文教委員会の背景を得て、大蔵官僚に対して取っ組むべきであろうということを私は言いたいのであります。一般の教師に対しては、ろくでもないところの教育費しか獲得できない程度で、絶えず大蔵省に対しては弱腰である。そういう中において、政府の尻押しによって、この四億四千五百万円というものをとって、鬼の首でも取ったように、校長にこれをはなむけとして勤評その他を強行しようとする、あるいは非組合員化の方向へ強行しようとする、こういう態度は、文部省が徹底的に批判され、改めなければならないところであります。
私は、以上のような観点に立ちまして、文部省当局が現在出しておりまするところのこの法案に対しては、反対してやまないものでありまするが、最後に、本法において、もしも自民党の諸君並びに文部省が、七%程度でよろしいという佐藤大蔵大臣の言明を、今ここに野本君が、自民党は今後これを増額するのだ、教頭にもこれを施行するのだ、こういうようなことを申しておりまするが、こういうふうな七%という問題については、どうしてもだれも理解をし、了解をしておらないのであります。つまり、現状におけるところの管理職手当というものが一二%を最低限度にしておるのに、なぜ今回、校長を七%にしたのか。財政事情が許さないといっても、こういう問題についての政府の責任というものについて、今後明確にしなければならぬことを、ここで申し上げておきます。
つまり、私の言わんとする点は、純粋な教育的見地に立って、教育基本法の精神を体して、あくまでも文教当局は行政的な立場において、施設の充実等、教育条件を具備するために全力を振うべきでありまして、このような政治的な法案を次々に出して、教育界を混乱させ、校長の良心を麻痺させ、教師というものを悲惨のどん底に落ち込ましているという現在の自民党のいわゆる政策に対して、この法案は露骨にその意図を表明をしておるものと思うのであります。
私は以上の点につきまして、この法律案が、このような深夜国会を迎えて強行され、しかも会期は一方において延長されようとしておる、こういうふうなことが国会正常化ということに反するという点を指摘するのみならず、こういうことをしてまでも、校長に管理職手当をつけて、一体何をしようとしておるのか。二千円の金で校長にこびを売って、あるいは買収することによって、何をしようというのか、こういうふうな点を指摘するにとどめておきまするが、ほんとうに自民党が教育を愛するならば、日教組を向うにして教育を愛するならば、社会党を向うにして教育を愛するならば、ジェット機など作らずに、再軍備予算を教育費に向けて、真の意味の文化国家政策というものを樹立して、真に国民大衆にこれを訴えることが日教組対策であると、私はこの壇上においてお教え申し上げておきたいと思うのであります。(拍手)このような、こそくな手段を使って、いつまでもやっているというなことは、教育の内容の充実にもならず、ほんとうに全国民が、こういうふう法律に対して迷惑を感じている、こういうふうな点について、自民党の皆様方の反省をここに強く希望します。
最後に、通勤手当について申し上げます。通勤手当については、先ほどわが党の松永議員が提案をしておりまするので、私はこの点については深く申し上げませんが、六百円の限界というものは、これは現状に適当しておらぬということであります。この通勤手当というものは、民間において現状の実際に即して支給されておるというのが現状ではないでしょうか。しかしながら、われわれをして言わしむれば、おそきに失してこの法案が出てきたことについて文句があるが、通勤手当というものについては、次の方途を考えてこれに賛成しておるものであります。
以上、われわれは政府原案に反対し、われわれ社会党の提出しておるところの通勤手当の修正案について、ここに賛成を申し上げ、私の討論を終らんとするものであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/25
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026・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 常岡一郎君。
〔常岡一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/26
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027・常岡一郎
○常岡一郎君 私は緑風会を代表いたしまして、ただいま議題になりました市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案に対しまして、原案賛成、修正案反対の討論をいたしたいと存じます。(拍手)
法案の内容を考えて参りますときに、すでに国立の大学の学長、またその学部長に対しまして、管理職の勤務手当の支給されておりますことにかんがみましても、市町村立学校の校長のその職務内容から考えまして、当然これは支給すべきものであると考えますので、これに賛成するわけであります。
第二点は、すでに社会党の全員賛成の通勤手当の問題でありますが、これはすでに本年の四月から国家公務員に支給されておりますので、当然、これは市町村立学校の教職員にも、また支給さるべきものであるということを思いますので、これも賛成であります。
第三の点について申し上げますのは、これは内容の問題というよりも、むしろこの法案の性質と言いますか、これがかもし出す雰囲気といいますか、こういう点について非常な問題があるのではないかと考えます。それは、すでに予算にも計上されておりますような問題を、そうして、内容を調べてみますと、それほど大問題ではないものが、この暁の国会とまで言われるような汚点を残すような、この国会になりましたことは、これはまことに、どこに原因があるのかということを、深くそこに考えてみなければならぬと思うのであります。(拍手)
この内容に書かれておらないが、かもし出します雰囲気を考えてみますと、それは日教組の分断をはからんとする陰謀であるというふうに考えられておりますのに、そうじゃない、政府はそうではないのだと言っておられるが、しかし、そうであると思われるような問題とか、それが一つの不思議な雰囲気を生み出し、妖雲を生み出して、そうして、その次に波紋がかなり大きいものがあるから、今日のような大へんな状態になったのではないかと考えるのであります。
そこで、私は申し上げたいのは、これをはっきり考えて参りますときに、教育の問題は、ほんとうに平和な正しき秩序の上に、その教育のすべての組織があらねばならぬと考えます。そうすれば正しい平和の秩序というものは、当然相反する二つのものが、みごとに調和するところにのみ、平均のとれた調和があることと考える。この点から申しまするならば、今言わんとするのは、むしろ日教組は、一つの色でなくて、二つの相反する性質のものが、それが一緒の組織の中にみごとに調和するように分断するのだと、政府の方も言ったらどうかと、私も考えてみたのであります。
同時にまた、社会党の方も、その分断されることの中に、ほんとうに賢明なる日教組のあり方が生まれるんだと悟らなければならぬのだと思うのであります。(拍手)
なぜかならば、一切のものの平和の根底は、相反する二つのものがみごとに調和を保つことから生まれております。人間のからだに考えてみましても、酸性とアルカリ性の二つの力がみごとに調和して、健康体が保たれておる。求心力と遠心力とをもって、初めてみごとなる天体の運行が行われておる。相反する二つが常に一つに調和しなければならない。こう考えて参りますときに、反対のものを否定して、一色で塗りつめて行こうとするものが、これが多くの場合に、驚くべき破滅を呼んだというのが歴史に明らかな点であります。(拍手)
これは、よく日教組の人たちが言われますが、常に戦争にかり立てるのは、道徳の教育をすれば戦争になるんだというようなことが言われまするが、しかし、道徳の教育によって戦争が起ったのではない。この前の戦争が起ったのは、国会を否定して、法律を無視して、そうして、みずからの国家革新という美名のもとに、革命思想を持った青年将校が、一斑の力をもって、反対の勢力を全部駆逐して、ついに、国政を壟断したところに悲しき国家の破滅があり、みずからの破滅を来たしたのが、院鑑遠からざる青年将校の姿であったと考えざるを得ないのであります。言いかえるならば、道徳の教育によって戦争が起ったのではなくて、一党独裁の一つのわがままが、この結果を呼んで、しかも、哀れな敗戦の日本が、実に惨たんたる敗戦の日本が、わずか十年の間に回復して、きょうのりっぱな日本を作り上げてきましたのは、無難にも負けず、苦難に耐えて常に精神的訓練と、長き蓄積の結果であったと考えざるを得ない。かくして考えてみまするときに、(「議長、注意」「関係ない」と呼ぶ者あり)関係あります。かく考えて参りまするときに、(「関係ないぞ」と呼ぶ者あり)関係があります。言いかえますれば、私が今言わんとするところは、日教組の分断は、今日のこの団結の力のためにはマイナスでありましょうけれども、日教組のためには、マイナスであるかしらぬが、日本の教育のためには、プラスになるということを私は申し上げたい。(拍手)一色ならんとするものは、決して真の平和ではない。口に平和を唱えながら、常に争いを教えている姿は、無念きわまりなき姿ではないかと言いたいのであります。(拍手)
こういう意味から考えましても、堂々たる所論をもって、この法案の中に隠されていると思われるものは、表にりっぱに出てきた方が、私はむしろいいんじゃないかと思いまして、そういう意味においても、この原案に賛成し、そうして修正案に反対するものであります。討論を終ります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/27
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028・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 岩間正男君。
〔岩間正男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/28
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029・岩間正男
○岩間正男君 私は、日本共産党を代表しまして、ただいま議題となっております法案の社会党提出の修正案に賛成し、原案に対しまして絶対に反対するものであります。
ます何よりも、原案の適用を受けようとする学校長諸君が、この法案には、実は賛成していないのでございます。高知県では、全県下六百有余名の校長会が全面的にこれに反対して、勤務評定実施のための管理職手当をやめ、その金をすし詰め学級解消のために回すべきであると、こういう決議をしておるのであります。これはまことに良心的な教育者の高鳴りの声であると私は思います。少くとも、わが国教育の現状をつぶさに見詰め、いつでもその将来を憂うる人でありましたならば、この声に耳を傾けざるを得ないのであります。
なぜならば、日本の現実の教育は経済的、財政的に非常に貧困であるからであります。私はその例として、横長会の諸君が、すし詰め学級の問題を自分たちの待遇よりも先に取り上げたということは、非常に実は良心的な問題があると思うのであります。すし詰め学級解消の問題は、自民党の選挙公約でもあったはずであります。ところが、政府はまだほとんど何もこれを解決しようとは思っておりません。この前、当国会におきまして激しい追及がありました。去る六月二十七日に、しぶしぶ閣議決定事項を発表しました。これによるというと、五カ年計画で一学級五十五人以内にするという案なのであります。これはまことに驚くべき案と言わなければなりません。
一体、政府は、現在の法律である学校教育法施行規則に、一学級の生徒、児童数は五十人をこえることができないと、かつて自分たちの手ではっきり規定したことを覚えておるのかどうか。さらに、世界の教育の現状を見るときに、一学級はほとんど三十人以下になっております。五十人という例はほとんどないのであります。こういうことを一体政府は知っておるのであるかどうか。よく勤務評定の問題では、これは法律に規定しているのだからやる、ただこう言っておる。しかし、すし詰め学級の問題では、けろりと法律の問題はほおぶりをしておるのであります。こういうやり方で、果してこれは為政者の責任として正しいものであるかどうか、私はその点を非常に重要視しなければならぬと思うのであります。すし詰め学級の問題は、これは日本の教育の基本的な重大な一つの問題になっております。
私はこの問題は、戦争問題とは実は深い関係があると思います。かつて六十人、六十五人という、ほとんど現在と同じようなあの大量生産のすし詰め学級によりまして、東条時代に教育されました粗製乱造の教育でありました。一人々々を真に育てるというような民主的な教育をやることができなかった。従って、一学級に大ぜい集めておいて、結局何を教えたか、軍国主義であります。木口小平は死んでも口からラッパを離しませんでした。こういうやり方で、軍国主義的に教育したこの粗製乱造の子供が、ことに、大東亜戦争の末期の段階におきましては、御承知のように、アメリカの物量に対しまして、何ももうなくなった、わずかにあるものは、青少年だけであります。それを赤紙によりまして、何万人、何十万人と集めて船団に乗せ、これを南洋の島々に送った。そうしてバシー海峡に、沖繩に、現在いまだ帰らないところの白骨が累々としてある。この一切の根源というものは、実はこのような粗製乱造の教育にあったということを、私は痛烈に感じておる、(拍手)忘れることはできない。少くとも、戦後の教員組合運動が、このようなものを絶対しないという立場から始まったことは、言うまでもないと思う。ところが、このようなすし詰め学級の解消の問題は、実は大へん金がかかります。とても四億四千万円などという、しみったれた金ではできない。この何百倍かかる。ですから、これはいつでもあと回しになっておる、ごまかしになっておる。選挙のときは佃にしますけれども、選挙が終るともけろりと忘れておる。こういうような格好で行われておるのが現在のやり方です。
第二に、金のかかる問題としましては、最近、大衆負担の問題が非常に大きくなってきておる。政府は、今年度の予算を見ましても、小中学校に対して、わずかに九百五十億しか出していない。しかしながら、PTAの会費、学童給食費、教科書代、修学旅行費、さらに多額に上る寄付を加えるときに、大体、年間、父兄の払っておりますところの小中学校のこれらの負担は、約二千億を超過すると言われておるのであります。
憲法二十六条には、言うまでなく何と言っているか。これは無償でする、「義務教育は、これを無償とする。」、この憲法が泣くのであります。三分の一しか、これは政府は実行していない。三分の二を大衆負担にゆだねておる。ところが最近のように生活が非常に困難です。失業者がどんどんふえてきておる一方では貧困層とボーダー・ラインとを加えますと、政府統計でさえ千三百万をこえておる現状であります。こういう態勢の中で、一体、金を出すことができるかどうか。大へんな形で、教育費は出せなくなってきておる。自分の子供の教育に金を出すことができない。従って、再び貧しい階級が、働く階級が教育を奪われている。教育の平等は完全にくずれている。六三制の原則であるところの教育の機会均等は完全に崩壊している。再びこれは資本家階級に都合がいいところの、そうして先ほど竹中委員長がここで話をされましたように、まさに階級的な形で、労働者や貧困層から教育を奪おうとするのが、現在の岸内閣の性格ではないか。私は、はっきりこの点を突かなければならぬと思う。
そのほか、教員の待遇改善の問題にしましても、先ほどからあげられましたいろいろな問題の面から考えまして、金のかかる問題につきましては、政府はほとんどこれは何もしていないのであります。岸内閣は、二言目には、教育を大切にするということを言っている。文教政策は、現に労働政策と並んで岸内閣の二大政策になっているはずです。しかし、金のかかることは何もしない、やることは金のかからないことです。たとえば道徳教育というものは金はかかりません。勤務評定は金はかかりません。愛国心の養成は金がかかりません。ところが、すし詰め学級や、大衆負担を解相するという問題や、学校の先生方の数をふやす、教室をふやす、現在の教育をもっと徹底的にやるということは、これはなまやさしい金ではできない、全部これはごまかしてしまっている。金のかからぬ問題だけを一生懸命にやっております。もっとも、勤務評定では四億四千万円金を出したのでありますから、全然かけないというわけではないが、何百分の一をかけている。
ところが、しかしその金はどういうことでしょう、その金の一体性格というものはどうでしょう、これは先ほどから、同僚諸君によって話をされておるんですが、おもしろいことを最近、朝日新聞の「きのうきょう」欄に、映画監督の木下恵介監督が言っています。これは「勤務評定」という一文です。こう言っておるんです。この管理職手当に対して、「つまらない映画で、金をやってクモ助や子分を手なずける場面がよくあるけれど、そんなときは腹に一物あるときで、芝居としては憎まれ役か、悪い親分のすることである」、憎まれ役か、悪い親分のすることであると、こう言っている。これに一体該当しなければけっこうだと思います。映画監督というものは、そのものずばりの、実におもしろい見方をするものであります。
ここで、私は岸首相に忠告を申し上げたい。この期に及んで、管理職手当な勤務評定とは全然関係がないなどととぼけるのは、官僚制度の手あかにすれきった者どものすることであります。なぜ大胆に本心をさらけ出して、国民の審判を仰ごうとしないのであるか。本法案は、勤務評定の押しつけを、経済面からも理由づけようとするところのたくらみであることは、今や疑いの余地がないのであります。
最近、私は和歌山の勤務評定反対の実際を視察してきました。ここでは、ほかならない自民党の諸君が、たれよりも大わらわになっているのであります。最近、事こまかな自民党本部からの指令が発せられ、その中には、驚くべきことには、勤務評定に反対する教員の私行を徹底的にあばくべしというような一項まで含まれているのであります。これはどういうことですか、覚えがあるだろうと思います。六月二十三日の午前の県庁構内での教員抗議集会では、右翼の暴力団が、あざやかな二本の日の丸を立てて参りました。そして三輪カーの上から、驚くなかれ三本の肥たごをぶちまけたのであります。そうして会場と集会者を汚物で汚したのであります。集会は県警に抗議しましたが、夕方に至ってもまだ調査中とのことであって、白昼数百人の注視する中で起った、これができごとであったのであります。警察の権威が、これで保たれているかどうか。日の丸を立てて、汚物をまき散らす、これ以上の、一体、国旗侮辱があるかどうか、私は考えてみたいと思うのであります。勤務評定押しつけの正体が、まさにここにあるのであります。このような気違いじみた勤評押しつけの陰に隠されているものは、言うまでもなく池田・ロバートソン覚書の履行であり、昨年度、岸渡米の結果発表された共同声明によって、急迫化しつつあるアメリカの原子戦略体制下における前線基地の前線部隊の提供ではないでしょうか。教え子を再び戦場にやるなをモットーにして戦いを進めている日教組五十万の組織を分断しない限り、アメリカとの公約は果されない。一方、自衛隊の核装備を常に促され、そのための軍事費の膨張が、安いただの軍隊、つまりかつての赤紙徴兵令の復活を目ざす憲法改正、そうしてそのための小選挙区制あるいは全国区廃止とつながる一連の政策を考えるときに、実に波及するところは、あまりにも深刻であると言わなければなりません。これらの、世にもおそるべき謀略的な党利党略のもとに、今さし出された一片のパン、しかもおそろしい毒針を含んでいるこの法案に対しまして、日本共産党は、祖国の平和を守り、教育、民主主義と愛する子供の将来を憂うる人々とともに、絶対に反対するものであります。
以上をもって私の討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/29
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030・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。これより採決をいたします。まず、松永忠二君提出の修正案全部を問題に供します。
表決は記名投票をもって行います。本修正案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
〔議場閉鎖〕
〔参事氏名を点呼〕
〔投票執行〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/30
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031・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。——投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
〔投票箱閉鎖〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/31
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032・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
〔議場開鎖〕
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/32
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033・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百九十二票
白色票 六十七票
青色票 百二十五票
よって松永忠二君提出の修正案は否決せられました。(拍手)
—————・—————
〔参照〕
賛成者(白色票)氏名 六十七名
森中 守義君 鈴木 強君
藤田藤太郎君 相澤 重明君
松永 忠二君 木下 友敬君
平林 剛君 山本 經勝君
岡 三郎君 久保 等君
亀田 得治君 湯山 勇君
柴谷 要君 安部キミ子君
近藤 信一君 東 隆君
大倉 精一君 阿具根 登君
竹中 勝男君 吉田 法晴君
松澤 兼人君 藤田 進君
小笠原二三男君 成瀬 幡治君
小林 孝平君 島 清君
田中 一君 加藤シヅエ君
千葉 信君 戸叶 武君
荒木正三郎君 市川 房枝君
岩間 正男君 長谷部ひろ君
鈴木 壽君 大河原一次君
伊藤 顕道君 千田 正君
光村 甚助君 秋山 長造君
加瀬 完君 坂本 昭君
阿部 竹松君 大矢 正君
松澤 靖介君 椿 繁夫君
田畑 金光君 中村 正雄君
矢嶋 三義君 横川 正市君
小酒井義男君 河合 義一君
松浦 清一君 天田 勝正君
高田なほ子君 片岡 文重君
重盛 壽治君 永岡 光治君
羽生 三七君 岡田 宗司君
曾禰 益君 栗山 良夫君
山下 義信君 清澤 俊英君
棚橋 小虎君 内村 清次君
山田 節男君
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反対者(青色票)氏名 百二十五名
常岡 一郎君 松野 孝一君
杉山 昌作君 島村 軍次君
竹下 豐次君 中野 文門君
佐藤 尚武君 河野 謙三君
松平 勇雄君 武藤 常介君
上林 忠次君 最上 英子君
迫水 久常君 松岡 平市君
田中 啓一君 梶原 茂嘉君
森 八三一君 西川甚五郎君
青山 正一君 藤野 繁雄君
堀末 治君 早川 愼一君
野田 俊作君 谷口弥三郎君
新谷寅三郎君 木内 四郎君
紅露 みつ君 加賀山之雄君
後藤 文夫君 村上 義一君
一松 定吉君 本多 市郎君
鶴見 祐輔君 笹森 順造君
江藤 智君 仲原 善一君
西田 信一君 堀本 宜実君
鈴木 万平君 稲浦 鹿藏君
吉江 勝保君 塩見 俊二君
前田佳都男君 三木與吉郎君
青柳 秀夫君 雨森 常夫君
小西 英雄君 館 哲二君
山本 米治君 榊原 亨君
剱木 亨弘君 大谷 贇雄君
白井 勇君 田中 茂穂君
大谷 瑩潤君 苫米地英俊君
小柳 牧衞君 井上 清一君
小林 武治君 斎藤 昇君
小山邦太郎君 木暮武太夫君
石坂 豊一君 廣瀬 久忠君
西郷吉之助君 植竹 春彦君
草葉 隆圓君 安井 謙君
大野木秀次郎君 川村 松助君
黒川 武雄君 小林 英三君
野村吉三郎君 苫米地義三君
寺尾 豊君 平井 太郎君
増原 恵吉君 松村 秀逸君
石井 桂君 木島 虎藏君
佐藤清一郎君 柴田 栄君
大沢 雄一君 宮澤 喜一君
平島 敏夫君 後藤 義隆君
吉田 萬次君 重政 庸徳君
西岡 ハル君 横山 フク君
土田國太郎君 横川 信夫君
伊能 芳雄君 宮田 重文君
三浦 義男君 高野 一夫君
高橋進太郎君 古池 信三君
岡崎 真一君 小沢久太郎君
寺本 廣作君 小幡 治和君
関根 久藏君 野本 品吉君
秋山俊一郎君 上原 正吉君
伊能繁次郎君 石原幹市郎君
左藤 義詮君 永野 護君
井野 碩哉君 杉原 荒太君
下條 康麿君 吉野 信次君
郡 祐一君 津島 壽一君
堀木 鎌三君 木村篤太郎君
青木 一男君 泉山 三六君
高橋 衛君 勝俣 稔君
大川 光三君 八木 幸吉君
安部 清美君
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/33
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034・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 次に、原案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/34
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035・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。(拍手)
これにて午後一時まで休憩いたします。
午前二時五十八分休憩
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午後五時五十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/35
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036・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
この際、会期延長の件についてお諮りいたします。
議長は、会期の延長について、議院運営委員会に諮りましたところ、本院といたしましては、会期を七月八日まで四日間延長すべきであるとの決定がございました。会期を七月八日まで四日間延長することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/36
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037・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって会期は、七月八日まで四日間延長することに決しました。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/37
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038・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第二、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件(蚕糸業振興審議会委員)を議題といたします。
内閣から、衆議院議員小淵光平君、吉川久衛君、栗原俊夫君、助川良平君、松平忠久君を蚕糸業振興審議会委員に任命することについて本院の議決を求めて参りました。
これらの諸君が同委員につくことに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/38
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039・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。
よって本件は、全会一致をもって、これらの諸君が蚕糸業振興審議会委員につくことができると議決されました。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/39
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040・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、国有財産法第十三条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/40
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041・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。(「大蔵委員長いないじゃないか」「休憩と呼ぶ者あり)しばらくお待ち下さい。(「大谷さん、こういうときはやじらなければだめだよ」「与党にも社会党さんにも大蔵委員会の理事がいるのだから」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
静粛に願います。私語を禁じます。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長前田久吉君。当り、いずれもその価格が三百万円以上となりますので、国有財産法第十三条第二項の規定に基いて、国会の議決を求めたものであります。
委員会におきましては、皇居及び大宮御所を視察し、審議いたしたのでありますが、詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終り、討論、採決の結果、全会一致をもって、本件は異議ないもの
と議決いたしました。
右、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/41
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042・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決をいたします。
本件を問題に供します。本件は、委員長報告の通り可決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/42
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043・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって委員長報告の通り可決せられました。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/43
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044・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、繭糸価格の安定に関する臨時措置法案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/44
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045・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長重政庸徳君。
〔重政庸徳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/45
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046・重政庸徳
○重政庸徳君 ただいま議題になりました繭糸価格の安定に関する臨時措置法案について、農林水産委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。
この法律案の趣旨及び内容等については、去る六月二十五日の本会議における三浦農林大臣の説明によって、すでに御承知の通りでございますが、昭和三十三生糸年度の繭及び生糸の異例な需給事情に対処し、昭和三十三年度の繭及びこれを原料とする生糸につて、その価格の安定をはかるための臨時措置を定めようとする趣旨のもので、日本輸出生糸保管株式会社の業務を拡大し、来年の五月三十一日まで、農林大臣の定めるところに従い、規定の価格をもって生糸及び農業協同組合連合会の保管する乾繭を買い入れ、買い入れた乾繭を生糸に加工し、または生糸と交換し、これらの買い入れ、または加工、もしくは交換によって取得した生糸または乾繭を、規定の価格で、政府その他あらかじめ農林大臣の承認を受けて売り渡すことができるごと。会社が取得した生糸または乾繭のうち、昭和三十四年五月三十一日を過ぎてなお保管されているものは、昭和三十四年六月三十日までに、会社の申し出によって規定の価格をもって生糸については百億円を限度とし、乾繭及びこれが加工または交換による生糸については五十億円を限度として、政府においてこれを買い入れること。政府は、右によって買い入れた生糸を繭糸価格安定法によらないで売り渡し、貯蔵し、または加工することができること。会社が生糸または乾繭の買い入れ、売り渡し等によって損失を受けたときは、これを埋めるため政府は会社に補助金を交付すること。政府は、昭和三十四年五月三十一日まで繭糸価格安定法第一条の規定による生糸の買い入れを行わないこと等について規定しようとするものであります。
委員会におきましては、まず、農林当局から法律案の提案理由及びその内容について説明を聞き、続いて質疑に入り、この法律案をめぐるもろもろの事情、法律案の趣旨、内容及び運用方法並びにその当否等について、各般の事項にわたり、政府当局との間にきわめて熱心な質疑応答が行われ、かくして質疑を終り、続いて東委員から、日本社会党を代表して提出されました保管会社における農業協同組合連合会からの乾繭の売り渡し申し込みに対する買い入れ義務、政府における保管会社からの生糸及び乾繭の買い入れ限度の拡大、最低繭価に達しない価格による繭の買い入れ禁止と、これに伴う罰則を内容とする修正案について趣旨説明が行われ、この修正案について、国会法第五十七条の三の規定により内閣の意見が求められ、これに対し高橋農林政務次官から、内閣としては原案によって措置できる考えであるから、修正案に賛成しがたい旨の意見が述べられ、この内閣の意見に対し、予算措置等の問題について、清澤及び北村両委員から質疑が行われ、続いて原案並びに修正案についての討論に入り、関根委員から自由民主党を代表し、原案に賛成、修正案に反対、清澤委員から修正案に賛成、原案に反対、梶原委員から緑風会を代表して、また、千田委員からも、原案に賛成、修正案に反対が、それぞれ意見あるいは希望を付して述べられ、続いて採決に入り、まず、東委員提出の修正案を問題にし、賛成少数で否決され、次に、原案全部を問題に供し、賛成多数で、本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
ここで、関根委員から、今後の事態に対応する措置と、抜本的蚕糸政策の確立に関して政府の善処を求めることを内容とする付帯決議が提出され、全会一致をもって、これを委員会の決議とすることに決定され、この付帯決議に対して高橋農林政務次官から、「趣旨を体して善処したい」旨、政府の所見が述べられたのでありまして、以上の詳細は会議録に譲ることを御了承願います。
右、御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/46
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047・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 本案に対し、大河原一次君外六名から、成規の賛成を得て修正案が提出されております。
この際、修正案の趣旨説明を求めます。大河原一次君。
〔大河原一次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/47
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048・大河原一次
○大河原一次君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました繭糸価格の安定に関する臨時措置法案に対する日本社会党修正案を提出し、その説明を申し上げたいと存ずる次第であります。
まず、修正の要点を申し上げますれば、その第一は、日本輸出生糸保管株式会社は、農業協同組合連合会からの保管乾繭の売り込み申し入れを拒んではならないということ、第二点は、三十三年度に生産されまする生糸の買い入れ限度額百億円を、三十億増額いたしまして百三十億とし、乾繭買い入れの五十億円を、二十億増額いたしまして七十億円とすること、第三点は、何人も、三十三年度の繭を政府保証の最低繭値以下で売買してはならないということ、第四点は、買い入れ禁止に違反した買い主は、一年以下の懲役または十万円以下の罰金に処し、またはこれらを併科すること、以上であります。
御承知のごとく、第二十国会におきましては、わが国蚕糸業の実態と国内産業に占める特殊な立場を考量いたしまして、蚕糸業の経営の安定をはかるため、繭及び生糸の価格の異常なる変動を防止することを目的といたしました繭糸価格安定法が制定され、さらには、第二十八国会におきまして、その一部改正によりまして、本三十三生糸年度の生糸の最低価格を十九万円とし、繭の最低価格千四百円の決定を見たことは御承知の通りでございます。
しかしながら、このような法的措置にかかわりませず、政府の増産指導による繭の増産と、他面、各種繊維の進出による需要の圧迫等によりまして、市場における生糸価格は、三万円を下回る十六万円、繭の取引も千二百円見当のやみ取引が行われている現状でございます。特に、養蚕農民は、当初、政府保証の千四百円をただ一つのよりどころといたしまして、乾繭の共同保管を計画したのでございまするが、遺憾ながら、今日の農民には乾繭すべき設備がございません。一方、製糸業者は、そのあり余っている乾繭設備等の利用に応じないため、かろうじて共同乾繭のできたものは、政府の発表資料によりますれば、春繭の総量千五百五十万貫、このうちわずか二百六十万貫程度でございまして残りの千三百余万貫は、共同乾繭を希望しながらも、施設がないばかりに、やむを得ず、値段もきめられないまま、団体協約によって製糸会社に引き渡されている現状でございます。さらに、現金を必要とする農民は、千四百円を保証されている繭を見ながらも、むざむざ二百円も下回って買いたたかれている実情でございますが、かてて加えで、夏秋蚕を通じて、千七百万貫にも上る繭が生産されようとしておるのでございます。政府は、こうした実情を異常なる事態といたしまして今日、繭糸価格安定法が存在しておるにもかかわらず、あえて臨時措置法によって、これを収拾せんとしておるわけでございます。果して今回の臨時立法によって、特に養蚕農民等の不安が除去され、最低の繭価が保証され得るかは、きわめて疑問のあるところでございます。
すなわち、その内容について見ますると、まず第一に、三十三年度の生糸五万俵を買い入れるために、百億円の限度を設定し、さらに共同乾繭の買い入れには、五十億の限度を設けたのでありまするが、肝心な繭、生糸の買い入れについては、保管会社がこれを無制限に買い入れねばならぬという法的保証は全然なざれ奪いないのであります。従いまして、一方において繭千四百円の最低価格を保証すると言いながら、一方においては、資金の限度内においてのみ、繭の買い入れが行われる結果に相なるのでありますから、せっかく政府が新しい施策を立案されましても、市場においては、保証価格の下値でやすやす芝取引が行われていたのでは、仏作って魂を入れないにひとしいものでございまして、どうしても最低価格を最後まで保証するためには、無制限買い入れを建前とせねばならぬと存ずる次第であります。従って、私どもの修正案は、この盲点ともいうべき抜け穴をふさぐために、保管会社は、農協連合会からの売り渡し申し込みを拒むことができないと規定したわけであります。これを第一の修正点といたしたわけであります。
第二は、原案の内容は、説明によりますると、三十三年度の対策であると言われておりますが、実際は一カ年間の対策ではなくて、ただ春繭のみに対する施策でありましてすなわち、先ほど申し上げました生糸及び繭の買い入れ限度合せて百五十億円は、全く春繭の手当のみで手一ぱいであり、糸の百億円というのは、今日までの実績から見まして、大体六、七、八、九の四カ月くらいで消えてしまう額であると言われております。また、繭の五十億円は、現在、共同乾繭されておりまする春繭の量に見合うということでしょうが、少しでもその保管量がふえれば、立ちどころに不足する金額であると言わなければなりません。しかも、夏秋蚕に至っては、びた一文出されないばかりか、反対に、二割の自主制限による需給調整を行うという規定がされておるのであります。政府の説明では、今後種々の困難や先行き不安もあろうが、行政指導の面によって養蚕農民には千四百円の価格が維持でき得るように努力をしたいと言われておりますが、さきにも申し上げました製糸業者の手にある春繭の相当部分その他を考量いたしますると、手放しで楽観はできないのでありまして、ここに、資金の増額によって、政府の価格保証とその効果を上げるための修正案を出さなければならなかったのであります。
第三点は、委員会において、いろいろと質疑を通じて明らかになりましたことは、春繭の大部分である千三百余万貫が、値段の取りきめもなしに製糸会社に引き渡されておる、この団体協約による繭の値段についてでありますが、これには何らの保証もないということであります。農民が、政府の保証をたよりに、共同乾繭をしようとしながらも、設備がないばかりに、やむを得ず団体協約によって引き渡した繭に対して、政府の何らの保証がされていないということは、まことに片手落ちの措置であり、遺憾なことと言わねばならぬのであります。当局は、行政指導によって何らかの方策をとると答弁されておるのでありますけれども、ほんとうに団体協約による繭に対して政府が保証をするお考えがおありになるならば、当然その旨をこの法律に明確に規定すべきものと考えられるのであります。この修正案が、最低価格以下の繭の取引の禁止条項を付したのは、働く養蚕農民の不安を除去いたしまして安定法の精神を強く貫こうとするからであります。以上が第三点の修正であります。最後に、この修正案に罰則を規定いたしましたが、このことは、いかにも臨時立法として過酷ではないか、あるいはまた、それほどにせずともという意見等もあったのでありまするが、この禁止条項を設け、これに罰則がなければ、先ほど申し上げました養蚕農民の経営も、安定法の精神も守れないからであり、また、この罰則は繭糸価格安定法第十七条にうたってある罰則と何ら変りがないものでありまするから、一点の疑問もないわけであると存ずる次第であります。
以上、四点の修正案について申し述べたわけでありまするが、その内容の説明に不十分なるものがあるかと存じまするけれども、これら修正案の内容は、一つには、今回の蚕糸業の混乱と不安をいかにして除去すべきかということと、二つには、この臨時措置法も安定法と同様に、依然として養蚕農民の利益よりも、どちらかと言えば、製糸業者の利益擁護の上に立った法案であることを指摘するとともに、先般行われました養蚕連大会から出た切実な要求を取り入れ、七十九万戸数の養蚕農民の経営の安定を守ってあげたいという念願から出たものでございます。
何とぞ十分御考量の上、全員御賛同いただけますよう、切にお願い申し上げまして、以上、趣旨の説明を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/48
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049・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 討論の通告がございます。順次、発言を許します。北村暢君。
〔北村暢君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/49
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050・北村暢
○北村暢君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました繭糸価格の安定に関する臨時措置法案について、社会党の修正案に賛成、政府原案に反対の意思を表明しようとするものであります。
反対の第一の理由は、今回の臨時措置による百五十億円を限度とする生糸及び繭のたな上げでは、政府の期待する繭糸価格の安定並びに最低価格の維持は困難であります。政府は今、暴落に続く暴落を重ね、非常な混乱状態を呈している繭糸業界の窮状を打開するために、緊急措置として、本年の春繭について余剰の生糸を百億円を限度として市場からたな上げし、五十億円を限度として乾繭共同保管を行わしめ、春繭による生糸の十九万円、繭の千四百円の最低価格を維持しようとしているのであります。
このように、余剰生糸及び繭のたな上げによる積極的価格安定策は、春繭についてのみ実施するのであって、続いて出回る夏秋蚕については、何らの資金的裏づけをすることなく、農家が自衛のために、自主的に二割の生産制限を実施するように行政指導をし、その減産の効果を待って需給の均衡を保とうと計画しているのであります。しかしながら、この夏秋蚕の二割減産は、政府がいかに行政指導を強化しても、七十九万の養蚕農家にその趣旨を徹底し、その協力を求めることは、きわめて困難であると思うのであります。従って、このような不確定要素を基礎にして組み立てられました繭糸価格安定方策が、夏秋蚕の出回りとともに破綻を来たすことは、火を見るより明らかであると思うのであります。
また、乾繭共同保管の問題が、最低価格の維持を困難にする一つの原因になっているのであります。それは現在、全養連等の乾繭設備が貧弱なため、春繭千五百五十万貫のうち、農協の行う共同乾繭は、わずかに二百五十万貫程度にすぎません。他の大部分は乾繭設備を持っている製糸工場に持ち込まざるを得ないのが実情であります。従って養蚕家対製糸家の取引交渉も、その結論の出ないうちに、なま繭のまま一千円程度の概算払いで、直接、工場に引き渡さなければなりません。現物をつかまれてからの単価交渉が、養蚕側に不利なことは当然であります。乾繭の保管倉庫も百二十余のうち、その半数以上は製糸側の所有であり、倉庫保管料の政府補助をめぐり複雑な問題が起きております。千四百円の政府の保証繭価をもって買い上げを要求する養蚕団体と、千円以下でなければ繭の保管お断りの態度をもってする製糸側との対立となって現われているのが現状であります。
以上のように、生糸並びに繭の最低価格については、多くの困難な問題がありますが、これらの問題を一気に解決する意味においても、特に弱い養蚕農家を保護するためにも、社会党の最低価格維持の強制規定は、きわめて重大な意義を有するのであります。そこで、最低価格維持のためには、生糸と乾繭を百五十億円でたな上げすることだけでは、非常に困難であることが明らかになったと思います。政府は、真に繭糸価格の安定に熱意を持つならば、その最善の方法は、蚕糸関係者の行き先不安をまず一掃することであります。そのためには、従来通り、国の繭及び生糸の無制限買い入れの制度を堅持することであります。そしてそのことは、さほど困難なことではないと考えるのであります。すなわち、この法案はわずか一年間の時限立法であり、また、金額的にも夏秋蚕のたな上げ分を見込むだけで済むのでありますから、わが党の五十億の修正増額でも、おおよその目的は達し得ると信ずるのであります。
反対理由の第二、農民の犠牲が大きいということであります。政府の計画しております夏秋蚕の二割生産制限のためには、種繭に余分ができるので、種繭業者に対し、用途転換に伴う損害額、俵当り千九百円を補助するというのであります。しかしながら、その針象人員はわずかに七十人くらいのものであります。また、製糸業者の操短に対しましても補償金を出しているのでありますが、これらの人々に対し補償金を出すこと自体に反対するものではありませんが、養蚕農民に対しては二割減産を要請しているにもかかわらず、一切の損失補償をしないということは、きわめて不公平なことと言わざるを得ません。いかに人のいい農民でも、特に山間地帯において唯一の現金収入の道として経営している桑園を、自主的に制限するように言われても、そう簡単に応ずる道理がありません。安くても、なおかつ少しでもよけい繭をとらなければならないのが、今日の養蚕農家の実態であります。従来、政府は桑園能率増進事業等、蚕糸振興に力を入れ、逐次、桑園面積も増加し、年々百万貫程度の繭の増産奨励をしてきたのであります。農民も正直に一生懸命増産に励んできたのであります。しかるに、何らの補償もなしに、自衛手段として自主的に二割減産をするようにと言われても、種繭で繭の生産規制はできるかもしれないが、余った桑の処理については、もてあます結果とならざるを得ないのであります。このことは、今年一年限りというのであれば、まだがまんもできるかと思いますが、もし恒久化の方向をたどるようなことになれば、深刻な問題となると思うのであります。
反対の第三の理由は、蚕糸業振興の基本的なものに欠けている点であります。それは、この法案が動揺激しい蚕糸業界にあって、関係者は旱天の慈雨のごとく待ちこがれているにもかかわらず、業界が政府を信用し切れず、先行き不安を感じていることは、今、法案が通過しようとしている今日、なお相場が回復せず、最低価格の十九万円に乗ってこない事実が、この間の事情をよく物語っていると思うのであります。すなわち、蚕糸業振興対策について、基本的態度がきまっていないというところに、まずもって最大の欠陥があると言わなければなりません。恒久的対策のないことは委員会でも明らかになったところでありますが、輸出または内需について生糸製造業と絹織物業とについての将来の確固たる見通しの上に立って、農業政策の一環としての養蚕業との関連をいかにするかについてすみやかに恒久的、基本的態度を確立して内外の関係者に発表することのできなかった政府の無策に対しては、全く遺憾と言わざるを得ません。
最後に、私は今日の蚕糸業の不振は偶然起ったものではなく、従来の物量増産一点張りの、流通消費を無視した無計画な農林政策の欠陥を暴露したものであってこれに加うるに、岸内閣の経済政策の失敗による一般的不況のしわ寄せが、繊維産業のうちでも最も弱い蚕糸業に集中的に現われ、そのしわ寄せがさらに弱い養蚕農民の犠牲に転嫁されようとしていることに、痛憤おくあたわざるものを感ずるのであります。(拍手)
以上のごとく、この法案は、今日の蚕糸業の混乱を克服するためには、緊急対策としては用をなさないものであると断ぜざるを得ません。
よって、政府原案に断固反対し、社会党の修正案に御賛成あらんことを訴え、私の討論を終る次第でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/50
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051・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 八木幸吉君。
〔八木幸吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/51
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052・八木幸吉
○八木幸吉君 私は、両案に反対であります。
第一に、本案は、本年度の産繭約三千万貫を対象として、百五十億円で繭換算七百五十万貫をたな上げし、これによって繭糸価の安定を期せんとするものであります。しかし、残り二千二百五十万貫に至っては何ら保証がございません。従って春繭は、すでに千円の内渡し金が払われておっても、値ぎめの際に相当の混乱が予想され、もし生糸が十九万円の希望値を維持せざる限り、養蚕、製糸いずれかが損失をこうむることは、きわめて明白であります。
第二に一生糸相場が十九万円を割っても、繭価千四百円を確保せんとすれば、繭を政府の管理に移し、二重価格で売るよりほか方法はございません。これは、いたずらに国費の乱費を来たし、何ら蚕糸業更正の根本策とはなりません。
第三に、現在、生糸の値は人絹、スフ等に比較して割高であります。生糸と人絹との比率は、アメリカでは四対一、内地では五対一が適当の相場と言われておるのに、現在アメリカでは五倍、内地では八倍であります。従って、最近十年間に、消費面で、アメリカでは人造繊維が四割二分増加しておるのに、生糸は二割減少しておる、また、内地では化繊の八倍増加に対して生糸は六割二分の消費増加にすぎません。糸価の安定はもちろん必要でございますが、割高では消費が伸びないのは当然でございます。
第四に、今回の生糸、乾繭のたな上げに要する国費は、もし政府保管の生糸を十九万円で売るとすれば、大蔵省の試算では、九ヵ月間で十二億六千万円であり、このほかに種繭の買い上げ差損金と繰り越し生糸四万六千六百俵の金利、保管料を加算すれば、合計一年間に約二十五億六千万円に上るのであります。加うるに、保管生糸を十九万円以下で売り出すことにでもなれば、その損失は、さらに巨額に達するのであります。何ら蚕糸業の根本対策に触れないで、多額の国費使用は賛成ができません。
第五に、蚕糸業の根本対策は、消費分野開拓のほかに、まず繭をいかに安く生産するかということであります。二万町歩に及ぶ不良桑園整理のために、政府において畑作への転換、副業の奨励、副産物の利用等を親切に考えてこのために十分の資金並びに指導のめんどうを見なければならぬと思います。
これを要するに、政府が長期経済計画において、昭和三十七年度、桑園二十万三千町歩、産繭額三千六百万貫という目標を示して、毎年増産を奨励しながら、わずかに計画に対して四分の豊作で、急遽、農家に夏秋蚕二割減産を強要する等、何ら定見なく、しかも根本対策たる生産費の低下、生糸の海外宣伝、絹織物の研究等に十分な費用を使わず、他繊維の動向を無視し、依然として高値政策を維持し、一時しのぎの生糸、繭のたな上げに多額の国費を乱費する両案には反対せざるを得ないのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/52
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053・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。
これより採決をいたします。まず、大河原一次君外六名提出の修正案全部を問題に供します。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/53
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054・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 少数と認めます。よって本修正案は否決せられました。(拍手)
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/54
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055・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 次に、原案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102915254X01019580704/55
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056・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後六時四十二分散会
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一 市町村立学校職員給
与負担法の一部を改正する法律案
(前会の続)
一、会期延長の件
一、日程第二 国会法第三十九条但
書の規定による議決に関する件
(蚕糸業振興審議会委員)
一、国有財産法第十三条第二項の規
定に基き、国会の議決を求めるの
件
一、繭糸価格の安定に関する臨時措
置法案
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