1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年二月四日(水曜日)
午後一時四十五分開議
出席委員
委員長 小金 義照君
理事 秋田 大助君 理事 菅野和太郎君
理事 前田 正男君 理事 岡 良一君
理事 岡本 隆一君 理事 原 茂君
天野 公義君 小坂善太郎君
小平 久雄君 佐々木盛雄君
西村 英一君 保科善四郎君
石野 久男君 内海 清君
田中 武夫君 松前 重義君
出席国務大臣
国 務 大 臣 高碕達之助君
出席政府委員
科学技術政務次
官 石井 桂君
総理府事務官
(科学技術庁長
官官房長) 原田 久君
総理府事務官
(科学技術庁長
官官房会計課
長) 杠 文吉君
総理府事務官
(科学技術庁企
画調整局長) 鈴江 康平君
総理府事務官
(科学技術庁原
子力局長) 佐々木義武君
総理府技官
(科学技術庁資
源局長) 黒澤 俊一君
総理府技官
(科学技術庁調
査普及局長) 三輪 大作君
委員外の出席者
原子力委員会委
員 兼重寛九郎君
科学技術事務次
官 篠原 登君
総理府技官
(科学技術庁原
子力局次長) 法貴 四郎君
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昭和三十四年二月二日
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関
する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第
一〇三号)
昭和三十三年十二月二十五日
東海大学に原子炉設置反対に関する請願(岡崎
英城君紹介)(第三九六号)
同(中島茂喜君紹介)(第三九七号)
同(福井順一君紹介)(第三九八号)
同(山田彌一君紹介)(第三九九号)
昭和三十四年一月三十日
東海大学に原子炉設置反対に関する請願(山下
春江君紹介)(第七七九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関
する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第
一〇三号)
科学技術振興の基本的施策に関する件及び科学
技術庁関係予算に関する件
原子力行政に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/0
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001・小金義照
○小金委員長 これより会議を開きます。
高碕国務大臣より発言を求められておりますので、この際これを許します。高碕国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/1
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002・高碕達之助
○高碕国務大臣 今回、私がはからずも科学技術庁の長官を兼任することとなりました。この科学技術庁の発足に当りましては、当時、私、企画庁長官として心からこの発展に努力して参ったのでありますが、その後、長らくそれから遠ざかっておりまして、ごく最近に私は長官を兼任することになったのであります。その間において、非常に急速に進歩発展しておるということに驚いておる次第でありまして、私、留守をしておったために、この仕事がまだよくわかりませんから、どうか今後ともよろしく御指導、御鞭撻を特にお願い申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/2
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003・小金義照
○小金委員長 それでは科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
まず、高碕国務大臣より、科学技術行政に関する所信を承わりたいと存じます。高碕国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/3
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004・高碕達之助
○高碕国務大臣 科学技術振興のための昭和三十四年度における基本的施策につきまして所信を申し述べます。
最近における世界の科学技術の進歩発展は、まことに驚くべきものがあり、人類の宇宙観すら一新しなければならない段階に至ったかの感があるのみならず、その結果、世界の産業構造に革命的変化を与えつつあるものと思われるのであります。
このような変革期にあって、わが国が天賦の資源の貧困を克服しつつ、世界の先進諸国に伍して経済の発展と国民生活の向上をはかるためには、国内資源の最も有効な利用と輸出の飛躍的伸張を一そう推進しなければならないことは言うまでもありません。
このためには、その基盤となる科学技術の振興をこそ、この際、大いに推進する必要があるものと考えます。翻って、わが国科学技術の現段階をつぶさに観察いたしますと、若干の例外はあるものの、全般的に見れば、世界水準に比べてその後進性は、なお脱却し得ない状態にあるものといわざるを得ず、科学技術の水準を向上せしめることは、まさに刻下の急務と考える次第であります。
すでに政府は、その重要施策の一環として、科学技術の振興を大きく打ち出しておりますが、この大目的を達成するため、科学技術庁が当面の施策として新年度にその実施を期待しているものは、大要次の通りであります。
まず第一に、科学技術の振興という大命題を最も効率的かつ適切に実現するため、科学技術に関する基本的な政策を樹立するとともに、長期的かつ総合的な研究目標を設定し、合理的な科学技術の振興を行い得る体制を確立いたしたいと存ずるのであります。このため、内閣総理大臣の諮問機関として科学技術会議を設置し、この会議においてこれら基本的な問題の御審議を願うこととして、現在科学技術会議設置法案を御審議願っている次第でありますが、これにあわせて、科学技術庁におきましても、これら基本的政策の策定に適した体制を整える必要がありますので、科学技術庁の組織を一部改組することとして、今国会に所要の改正法案を提出いたし、その成立を期待している次第であります。
なお、科学技術振興に関する基本的政策の樹立に当っては、国内資源の総合的利用方策を考慮しなければなりませんので、資源問題の構造的分析と総合的検討により将来の動向を明らかにするため、資源の総合的調査を今後とも推進いたしたいと存じます。
第二に、科学技術振興に直接つながる基礎及び応用研究並びにその成果の実用化を強力に推進いたしたいと存ずるのであります。このため、国立試験研究機関、理化学研究所等の研究施設、人員等の整備充実に努力するとともに、研究員の待遇についても改善を加えたいと存じます。
さらに、わが国の科学技術の外国依存性を脱却し、技術水準の向上をはかる方策の一環として、総合的重要研究を重点的に推進するほか、国家的援助により新技術の開発を促進し、優秀な国産技術の育成に努力を傾注したいと考えている次第であります。
第三に、優秀な研究者を多数確保することは、科学技術水準の全般的な向上のため必須の要件でありますので、主管官庁と協力して科学技術者の養成に力を注ぐとともに、一般の科学技術に関する情報、広報活動の活発化に努力いたす所存であります。
最後に、原子力の平和利用に関しましては、本年は、先年来懸案であった実用規模発電炉の導入交渉も一そう積極化する年と考えられ、わが国の原子力の開発も、従来の研究基盤の育成の段階からその応用化、実用化へ移行する段階に到達したと見るべきであろうかと存じます。このような状勢に応じまして、今後考慮すべきことはまず、国際間の双務協定による協調を深めるとともに、国際原子力機関の活動に積極的に参加し、その発展に力をいたすことであると考えます。
他方、国内においては、日本原子力研究所における基礎研究の充実、原子燃料公社による核原料探鉱の推進、製錬施設の整備強化に努力を払うことはもちろんでありますが、本年は、特に原子力関係科学技術者の充実に努めるとともに、核融合反応研究の推進と、原子力船の開発の具体化に力を注ぎたいと思料しております。
以上、わが国経済の発展、国民生活の向上を期するため、当面の施策として考慮している科学技術振興方策の大綱を述べたのでありますが、これらの方策の実現、その効果の発揚は、もとより国民全般の科学技術振興の重要件の認識と協力がなくしては不可能に近いと思われます。政府としては、以上の新方策を基礎として、世界の大勢に目を注ぎ、これに即応した施策を進め、もって、科学技術振興に万全を期する所存でありますので、国会議員各位初め、関係各位の切なる御協力をお願いいたしたいと存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/4
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005・小金義照
○小金委員長 以上をもって科学技術振興のための基本的施策についての高碕国務大臣の所信表明は終りました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/5
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006・小金義照
○小金委員長 質疑の通告がありますので、この際これを許します。岡良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/6
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007・岡良一
○岡委員 ただいまの長官の所信の御表明に関連いたしまして、ごく簡潔に、若干長官の基本的なお心がまえを承わりたいと思います。
私どもは、与野党を越えて、この科学技術の振興には重大な関心を持っておるのでございます。ところが、従来、それぞれの長官には、それぞれのいわばニュアンスはあったとはいえ、科学技術振興という今日の大きな課題について真剣に取っ組んでいただいたかどうかという点には、遺憾ながら私どもも疑義を持つのでございます。そこで、政府のお取扱いといたしましても、たとえば、忙しい通産大臣が科学技術庁の長官を兼ねられるというようなことになりますと、原子力委員長をあなたは、兼ねておられるわけでありますが、委員会に出席しがたいような事情もあろうかと思います。そういうことで、せっかく長官であり、委員長でありながら、その職の責任にたえ得ないというような事態も起り得ることを考えますると、政府の科学技術振興に対する熱意のほどについて、私は非常な疑義を持たざるを得ません。そこで、ただいまの御所信を承わりまして、まことにこの通りでございます。しかし、この文章は、いわば、あなたのまわりにおられる方々が作られたものであります。事実上、科学技術庁の諸君は、大きな意欲と理想と、そうして、また勇気を持っておる。ただ、長官がこれを動員して、ほんとうに科学技術のために献身しようという熱意がない限りは、この諸君の意欲も実を結ばない、こういう事態を、私どもは歴代の長官について非常に遺憾に思っておったのでございますが、まずこの点、真剣に一つ科学技術振興のために、あなたがその任におられる限りは積極的に努力する、献身的に一つやってみよう、この御決意を、私はぜひ持っていただきたいと思う。この点についての御決意を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/7
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008・高碕達之助
○高碕国務大臣 お答え申し上げます。私は岡委員のおっしゃいますことには全く同感でありますし、科学技術庁というものはどうしても、これは熱心なる専任の長官がおってこれをやっていくべき必要がある、こう存ずる次第でありますが、今日の現状といたしまして、いろいろな関係上、私が兼任いたしました以上は、私の力の及ぶ範囲におきまして十分の努力をいたしまして、御期待に沿うように努力いたしたいと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/8
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009・岡良一
○岡委員 そこで、所信の冒頭に、こういう表現がございます。「世界の産業構造に革命的な変化を与えつつあるものと思われる」。なるほど、昨年九月のジュネーブの原子力平和利用会議においては、専門の諸君の一致した意見として、おそらく二十年以内には、核融合反応の人間による製造も可能であるということがいわれておる。そういたしますと、石炭に何百万倍するエネルギーが、しかも、無限の海の水から作り出されることになるのであって、おそらく無気機関の発明によって封建時代が資本主義社会に変革された以上の大きな産業構造の大変化、ひいては社会秩序そのものにも大きな変化が予想されるわけでございます。そこで、あなたはたまたま通産大臣を兼任しておられまするので、この際お聞きをしたいのでございますが、ともすれば、わが国における科学技術行政というものは、いわばわが国の産業行政の手段として考える、いわば一次的、副次的なものとして考える。なるほど御所信の中では、産業構造の革命的な変化というものを予想しておられる。このことは、言葉の正しい意味においては、科学技術の発展そのものが産業に対して革命を招来するということでございます。科学技術の発展が、むしろ諸国の経済政策、産業政策に優先するという表現でございますが、事実上においては、むしろ産業発展の手段としての科学技術振興政策、こういう二次的、副次的な取扱いが、ともすればわが国においては見られたのでございますけれども、この点についての大臣の御所見はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/9
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010・高碕達之助
○高碕国務大臣 私が考えますに、将来核融合反応等の産業的利用ができるということになったときにおいては、基本的に産業の構造が変ってくるということは、岡委員の御意見と全く同一でございますが、まだそこまで進んでいないという現状におきましては、これは、将来におけるものに期待はいたしておりますけれども、それに依存して産業政策を立てることはできない。こういうわけで、経済の許す範囲におきまして、わが国といたしましても、核融合反応などの将来の大変革を来たすべき科学技術の振興につきましては努力いたしたいと存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/10
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011・岡良一
○岡委員 その点について、具体的にお尋ねをいたします。と申しまするのは、そのような観点は、ともすれば、日本の科学技術の外国依存性というものの合理化に役立つのでございます。そこで、御所信の第一項にありまするが、いわゆる「わが国の科学技術の外国依存性を脱却し、技術水準の向上をはかる」云々とございます。私は、この際、特に通産大臣としてのあなたにお伺いをいたしたいのでございますが、全く日本の科学技術は、最近の推移を見ますると、外国の技術に依存をいたしております。御存じのように、ここ三年、四年来、外国に支払うノー・ハウや技術料の対価というものは幾何級数的に増大をしておる。昭和二十年には四十億であったものが、三十一年には七十億、三十二年には百十億になっておる。そして二十三年には百四十億と推定される。四カ年間に三倍半にふえておる。もちろん、われわれが外国の技術を摂取するそのことは、戦争中あるいは戦後における空白と、その立ちおくれを克服するためには、私は決してこれを否定するものではございません。しかし、たとえば、昭和三十二年度において、わが国が技術料ないしノー・ハウの対価といたしまして外国に払ったものは百十億、ところが、わが国が外国に輸出したところの技術料やノー・ハウに対する受取勘定は五億でございます。二十分の一以下でございます。私は、なしろこのアンバランスに、日本の産業の基礎である技術の上に一つの大きな問題点があり、盲点があろうと思うのでございます。御存じのように、現在のいわば近代産業というものは、ほとんど科学技術というものを基礎にしておる。しかも、自主的な、総合的な科学技術の進歩ということについては非常な努力を払っておるのであって、この自主的な技術的な基礎がないということになると、これが景気のいいときはようございますけれども、景気が悪くなりますと、直ちに大きな景気の変動を呼び起す原因になっておる。と申しますのは、輸出競争は、ある意味においては技術競争という側面を強く持っておると思います。そして、またこのような外国依存から脱却をするという積極的な方途がなくては、真のわが国の科学技術の進展というものはあり得ない。私は、この点について待に大臣の御注意を喚起するとともに、ここには、依存から脱却して、自立的な科学振興をやりたいという御所信の表明がございまするが、具体的な御抱負があったら、承わりたいと存ずるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/11
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012・高碕達之助
○高碕国務大臣 お説のごとく、外国の技術に依存する度合いが、数字から申しまして年々ふえておることは悲しむべきような状態でありますけれども、これは日本の産業が発展するにつれて外国の技術を受け入れているわけでありまして、従前のごとく、今後の方針としてイージー・ゴーイングの方法でいくということは考えていないわけであります。何しろ、戦争以来、長期にわたりまして日本の科学技術が欧米各国に比しておくれておったということは事実でございまして、これを導入することによって、逐次日本の技術も向上しつつあるわけであります。これは日本の産業の構造、生産力が大きくなるに従ってそういうふうなことになり、そして外国の技術導入に対するノー・ハウの費用等もよけい払っておるということも事実でありますが、しかしながら、これは一時的の現象といたしまして、おくれておるものを取り返すためには、こうしなければならぬ。しかし、永久にこういうことをやるべきではなくて、日本は日本としての独自の立場から基礎的の研究、基本的の研究につきまして十分の検討を加え、これを実行し得るように、まず最初は、何としても一番必要なことは、科学技術に従事する研究員というものの養成が一番大事である。えてして、従前におきましても日本の科学技術者が比較的文科系統の人よりも優遇されていない、こういうふうな点がありますものですから、今回、科学技術庁といたしましても、研究員の待遇につきましては特別の方法を講ずる。また、一方、教育におきましても、外国の教育は、科学技術の方に対して文科系統の方が割合少いにもかかわらず、日本の方は、今なお依然として文科系統が多くて、科学技術の方が少い、こういうことを是正していく、まず教育方面から人を作るということが根本問題だと存じます。そういうふうな方針で、逐次この科学技術の振興をしていきたいと存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/12
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013・岡良一
○岡委員 その御説もよくわかりますが、まだしかし、この科学技術の重要性についての認識が若干私と食い違うのでございます。なるほど、外国からの技術を導入することは、当然わが国としてもすべきではありましょう。ただしかし、日本の産業の基礎が、自立的な技術であるというこの事実だけは、私も、大臣も御否定ではないと存じます。ところが、御存じのように、日本の硫安の製造は、それは大臣のお得意な専門の場ではありましょうが、外国の特許の展覧会でしょう。化繊の研究もそうです。あるいは、現在の石油精製各社の製品というものを見れば、みんな世界の一流の技術で作っている。しかしながら、そこでできたものは、なるほど素質のいいものが大量にできるかもしれないが、しかし、これが全部特許料やノー・ハウで外国から技術導入をしている。ところが、外国から技術導入したもので、これを中心として民間産業が研究しても、その体系の中の一部分に対する手直ししかできない。それほどに、いわば基礎的な研究から積み重ねて今日の新しい技術革新というものができておる。そうして、新しい技術革新というものが設備となり、技術となって出てきますと、今度は一方、わが国の輸入したものは古くなる。それは、硫安なんかであなたもよく御存じの通りですが、そういう状態になってくると、こちらに自立的な基礎がないだけに、またロイアリティを払い、ノー・ハウの対価を払わなければならぬ。だから、外国の統計なんかを拝見いたしますと、アメリカなんかでも、一九四七年には民間産業の研究投資が大体二十二億ドル、五一年には四十三億ドル、五十五年には七十三億ドル、日本の一カ年の総予算に匹敵するものを研究投資として民間産業が惜しげもなく出しておる。そのでき上ったものを、安上りを、いわば便乗して買ってくるという、ここに、私はもっと思い切った施策が必要だと思うのです。
それはそうといたしまして、いずれ後刻の委員会等でいろいろまた私どもの意見を申し上げたいと思いますが、もう一つ、私は通産大臣でもある長官にお願いいたしたい。大蔵大臣あたりは今度の財政演説なんかにおいても、「当面の経済政策の基本は、日本経済の安定成長と体質改善だ」、こうしばしば言っておられる。ところが、体質改善というけれども、外国に依存しているということは人工栄養で育てられるということだ。そのこと自体が、もうすでに虚弱体質だということだ。きわめて抵抗力が弱い。ここに一つの大きな底が浅い原因がある。この間予算委員会で世耕長官が、底が浅いんだということを言うておられますけれども、底の浅いのは、資源が足りないとか、物質的な条件もありましょうが、科学技術の自立的な基礎がないということが、底の浅いわが国の経済のいろんな前提だと私は思うわけです。
そこで、さらにお尋ねをいたしたいことは、現状のような形で外国の技術導入というものが急がれておりますと、いかに体質の改善をやろう、経済の安定成長をはかろうといたしましても、事実上、設備において、また、技術において、いわゆる大経営と中小経営との間に大きな格差が開いておるわが国における産業構造の二重性というものは、ますます現在の状態であるならば深刻になってくる。これは、やはり通産大臣としての、また、科学技術庁長官としての立場において、このコントロールというものが必要だ。あるいは政府としても、この事実に着眼をしての適当な施策も私は必要だろうと思うのでありますが、この点についての大臣の御所信を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/13
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014・高碕達之助
○高碕国務大臣 今日、肥料工業にいたしましても、石油事業にいたしましても、合成繊維にいたしましても、科学技術、特にケミカルの技術を導入するというふうなことが非常に急速に行われておることは事実でございます。しかし、これが国内における技術を推進する一つの基準になるということも等閑視することができないのであります。しかしながら、将来の日本の経済を発展するためには、現在の産業の体質を改善していかなければならぬ、これがために技術というものを中心にしなければならぬ、この御説ももっともだと思います。しかし、大蔵大臣が言い、政府が考えております体質の改善ということは、これは、一方経理面におきましてもあります。同時に、技術というもの、そうして設備の五代化ということ等が問題になっておりますが、その近代化するときに、日本の技術によってこれを近代化するということは、まずわれわれが希望しなければならぬ一番大事な点だと思います。けれども、そこまで果して現在の技術が進みつつあるかということにつきましては、まだ、やはり現在におきましては、ある程度外国のものを持ってきた方が早く利用できる。こういうふうにして産業技術が進んでおりますけれども、これは逐次抑制して、日本で研究し得るものは当然研究し、日本の技術の振興と同時に、並行してこれに転換していきたい、こう存ずるわけでございまして、海外の技術を導入いたしましても、今後は外資法を運営いたしまして、ある程度これを押えつけ、そして日本の研究のしやすいように持っていきたい、こういう方針をとりたいと存じます。
また、外国の技術の導入は大資本だけだとおっしゃいますけれども、今度中小企業におきましても団体的にこれを運営させまして、中小企業の設備の近代化ということにつきましては、政府といたしましても、今後十分その方策を講じて奨励していきたい、こういうふうに考えておるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/14
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015・岡良一
○岡委員 私がお尋ねいたしたかった中心は、要するに、現在のような形で技術導入というものが放任されておるということになると、ますますもって中小企業と大経営における設備、技術の格差は広がってくる。でありますから、俗にいう高原景気というものが日本にはやってくる。なるほど、大経営を中心とする高原には景気を謳歌するものがある。すそ野では寒い風が吹きすさんで、反動的な不況の中で、あるいは倒産するという状態が中小企業に現に起っていることはあなたも御存じの通りだ。だから、この格差をどう食いとめていくかということです。これは、やはり日本の産業構造を安定なものにし、体質の改善をはかろうとするならば、私は一番の努力目標の一つでなければならぬと思う。なるほど、今大臣は、この点についても配慮を払われるとは申しておられますけれども、本年度の予算を見ますと、設備の近代化のための予算要求はわずか十億です。中小企業庁あたりに聞きますと、少くとも六百億はかかる。千億に県の負担十億を加えても二十億です。だから三分の一の補助率では六十億の仕事しかできない。このような少額であって、果して今日のテンポの早い技術革新の時代に、中小企業が設備の近代化、新技術の導入に追いつき得るかどうか、私は、政府の努力が非常に足りないと思う。こういう点について、やはり、通産大臣としても、科学技術庁長官を兼ね、科学技術そのものの現在の急進的な進歩というものが産業の基礎となって産業政策を動かしておる事実を御認識いただいて、格段の努カがなければならぬと思う。私は、現在の予算を見ては、遺憾ながら納得いたしかねるのでございます。その点について、なお御所信があれば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/15
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016・高碕達之助
○高碕国務大臣 ただいまお説のごとく、中小企業の設備の近代化に対する予算が、私どもの要求しておるよりも少かったということは事実でございますが、これは、限りある予算の範囲においてできるだけ努力した結果があれだけしか得られなかったというわけでありますから、この点は御了承願いたいと存じます。
さらに、中小企業の科学技術の振興につきましては特に政府が持っております各地の試験所、研究所等は——大企業のものは大企業自身がもっと大きな研究費をかけて、先ほど岡さんの御指摘のごとく、自身がもっと研究していかなければならぬ、これはやっていくだろうと思います。また、やっていくように指導しておりますが、中小企業は、それは無理でありますから、政府が持っております研究機関等は、できるだけ中小企業を中心として、中小企業の要求に応じてその研究をやっていくということにして、設備の近代化等の技術的な向上につきましては努力いたしたいと存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/16
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017・岡良一
○岡委員 最後にお聞きをいたしたいのでありますが、先ほども申しましたように、財政演説において大蔵大臣は、「当面の経済政策の重点を、経済の安定成長と、そうして体質の改善に置く」、こう言っておる。しかしながら、日本の産業構造における二重性は、現在の予算措置をもってしては、むしろ格差は広がっても、これを短縮することはできないと思う。そういうことは、やはり生産力の基盤となる雇用構造、雇用賃金その他を含むあらゆる条件の中に敏感に反映してくる。こういうことは、しかし、ここの委員会の話題ではないと存じます。
それで、なお具体的にお聞きをいたしたいのでございますが、この経済の安定成長あるいは体質改善のために、一体、具体的にどうするかということが、遺憾ながら私どもはまだつかみ得ない状態でございます。結局、民間産業の自主的な調整に待つ、あるいは金融機関の金融の適正化に待つ、いわば民間にまかすという、まことに古典的な自由主義経済の原則というものを、ただ方針として投げ出しておられるというだけにとどまっておる。これで果して日本の産業というものが、技術革新の時代に合理的な発展を遂げることができるであろうかという点に、私は大きな疑問を持つのでございます。
そこで、具体的にお伺いをいたしますと、たとえば、企画庁発表によりますと、本年度における設備資金は一兆三千五百億程度だといわれておる。一体、この設備資金、設備投資というものが、民間産業の自主的な調整に待つ、金融機関の金融の適正化に待つという、政府としては民間に全部責任を転嫁せられる形において、果して合理的、効率的な運営ができるのであるか。もうすでに御存じのように、セメントにしろ、鉄鋼にしろ、石炭にしろ、化繊にしろ、ほとんど重要な近代産業においては、過剰設備というものが大きな日本の経済の圧迫となって現われておる現状において、この設備投資一兆三千五百億という莫大な設備資金というものを、もっと政府の責任においてコントロールしなければ、元来技術革新そのものが過剰生産という要因を含んでおるのであります。しかも、それを民間産業が外国の会社と契約して新しい技術を買う、それに伴って新しい設備を導入する、それに必要なる原材料を買い込むという、こういう状態が、これまでのいわゆる民間産業の自主的調整の名のもとに行われておった。まことに自由放任そのままの姿でございます。これでは、一兆三千五百億という設備資金というものが、またしても過剰生産恐慌の要因となって、日本の景気の不安定の要因となるのではないかということを私は心配をするのでございますが、このコントロールについて、私は、もっと政治が経済に優先するという立場におけるコントロールを、政府の責任として遂行される意思があるか、この点についての大臣の御所信を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/17
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018・高碕達之助
○高碕国務大臣 現在、格産業の設備過剰を、さらにこのまま捨てて置いたならば、一兆三千五百億円という大きな金が設備に投ぜられる、それを無統制でやったときにはどうなるであろうかという御心配でありますが、政府といたしましては、現在産業の自由制を認めております以上、法的措置をもって、これをかれこれするということはできないのであります。しかしながら、長期の経済計画というものを立てまして、それに沿うように、そうして、現在の状態がどうであるかという実情等もよくしんしゃくいたしまして、これについては過剰設備にならぬように、また、設備の二重投資にならぬように、行政措置をもちまして指導をしていきたい、こう存ずるわけであります。それを法的措置でどうこうということは、ただいまのところ実行し得ず、また、考えていないわけなんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/18
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019・岡良一
○岡委員 私は別に法的に規制をしていただきたいと申し上げておるのではございません。それでは、一体行政措置といわれますが、たとえば、いかなる機関で、いかなる具体的な行政措置を、この設備資金、設備投資の過当競争のコントロールとしてなさるお気持ちでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/19
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020・高碕達之助
○高碕国務大臣 一例で申しますれば、現在の肥料工業でございますが、これが、今まで生産原価を安くせんがために、国内の消費よりも大量の生産をしたわけであります。少くとも四割は輸出しなきゃならぬというようなことでありますが、これは生産原価を下げるためには、それだけの生産をしなきゃならぬということのためにやったのであります。国内の消費をまかなって海外に輸出するには、十分輸出ができればいいけれども、これは値が安い。そして国内では高くて、海外輸出は安いというふうなことになってきておる現状でありますが、そのときに、さらに外国の技術を持ってきて新しく設備を拡大したい、こういう業者が現に出つつあるわけであります。そういうものに向いましては、政府の持っておる力である外資法を運用いたしまして、これを阻止するというふうな方針で進みたいと思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/20
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021・岡良一
○岡委員 私が申し上げておるのは、そのコントロールは、やはり組織的にやるべきである。今お差し示しになったように、なるほど、硫安工業において、昔の固形原料から鉄鉱産業の廃ガスを中心とする新技術と新生産方式が生まれてきておる。そこで、古い固形原料を中心とする硫安工業というものがコスト高となってきた。そういたしますると、問題は、硫安工業なら硫安工業というアンモニア合成方式というものの技術導入が外国からどんどんされ、それに伴う設備が入ってきておる。そして、そこにはすでに固体原料をもってする過当競争というものがある。しかも、それが外国からきたものであるから、みずから自主的に改変するという力がまだ技術的に日本にはなかった。そこへ鉄鉱の廃ガスによる技術というものが入ってくると、前のものは、あるいは政府が買い上げるとか、そういうような形において一応御破算になる。こういう悪循環を繰り返すべきではないじゃないかという立場において、この一兆三千五百億というものは、莫大な設備投資の過当競争にゆだねるような方式はとらないで、これをもう少し合理的に運営をする、そういう道筋を、法的に規制をしないとしても、大臣は行政的にすると言われまするが、積極的なそういう方法があるのかどうか、この点をお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/21
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022・高碕達之助
○高碕国務大臣 かりに、基本産業であります石炭にいたしましても、あるいは鉄鋼日産につきましても、こういうふうなものは、業者自身の計画だけにまかせておけば、各社がむやみに競争をする。そういう場合におきましては、業者を集めまして、そして全体の消費、全体の生産というふうなことも考慮いたしまして、業者とよく話し合いをつけて、できるだけ計画的にこれをもっていく方針で進みたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/22
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023・岡良一
○岡委員 先般、勝間田委員の予算委員会における質問に対して、長官は、いわゆる外資法等をこの規制の支柱にするというふうな御構想を漏らされておりまするが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/23
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024・高碕達之助
○高碕国務大臣 今のは肥料というものについてだけのお話でございますか。それならば外資法をもってこれは規制ができると申し上げたわけなんでありまして、一般的のものは、外資法でどうこうということは不可能でありますから、これは企業者全体の計画、それから政府の長期計画とにらみ合せて業者と話し合いをつけていく、この方針で進みたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/24
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025・岡良一
○岡委員 そういたしますると、たとえば、五つの大きな電気機器メーカーが日本にあって、そのメーカーが新しいロイアルティを払って新しい電気機器を生産するということについて、五社がかりに外国の別々な会社と競合するというような場合に、これを行政措置によってコントロールしながら、設備投資の過当競争を押え、ひいては過剰生産恐慌を防ぐ、チェックしようというならば、政府とすれば、まずその競合というものについて、一定の組織なりがあって、そして、これを押えていかなきゃならないはずだと思うのです。一体これをだれがおやりになるのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/25
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026・高碕達之助
○高碕国務大臣 できるだけ業者自身において話し合いをつけさせまして、全体の生産と消費というものと、業者の計画と政府の計画とをにらみ合せて、業者が自主的にこれを実行するようにいたしていきたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/26
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027・小金義照
○小金委員長 次に、石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/27
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028・石野久男
○石野委員 大臣の科学技術振興についての基本的なお考えを承わったわけですが、そのお考えの中には、いろいろ取り上げられているうちに、特に優秀な研究者を多数確保するということがうたわれておるわけであります。それと同時に、また第二の項でも「人員の整備充実に努力する」ということがいわれております。今日、科学技術振興のために優秀な技術者を確保することは非常に大事なことだと思います。そのために、符に大臣はどのような方策でこの技術者を多数確保しようというふうにお考えになっておるのか、それを、現実的には本年度の施策としてどういうふうに現わしていこうかということについて、御構想がありましたら一つ承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/28
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029・高碕達之助
○高碕国務大臣 大体の方針といたしましては、教育制度の方におきましても、できるだけ技術方面の学生の養成に力を注ぎたいと存じますことと、それから、実際問題といたしましては、各研究所において研究機関を充実し、同時に、この研究に従事する人たちの待遇を幾らかずつよくしていくということも考えておりますことと、もう一つは、特に最近の技術として長足の進歩を示しております原子力関係の問題等につきましては、予算の許す範囲において海外に多数の学生を出しまして、それを修得させたいと存じておりますが、詳細なことは政府委員からまたお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/29
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030・石野久男
○石野委員 今お聞きしましたことは大体原則的なことでございましょうから、非常にけっこうなことですが、実際に、具体的にこの人たちを集めるということになりますと、容易に集まらないのが実情だろうと思いますし、それに、たまたまお集めになった技術者でも、必ずしも満足して職場で仕事ができ得ない実情が各所に見受けられております。特に、国が仕事をしている場所ではそういう傾向が多いと思うのです。この問題は、主として学校教育を充実させるということ以上に、現実的には問題になっておるのではなかろうかと思います。そういう点では、給与面におけるところの問題などはやはり直接出てくる問題ではなかろうか。それらの点を考えますと、先ほど岡委員からも言われたように、今の日本の実情からいいますと、一般に高原景気が非常に強く吹いている関係上、そういうところにはいろいろ優秀な技術者がずいぶん集まっておることは事実であります。それと比較いたしまして、国が行なっておるところの技術振興に対するいろいろな施策には、必ずしもそういうものが出てこないという具体的な問題があるわけであります。この具体的な問題をどこかで切り開かないと、技術者というものは集まってこないのじゃないかということは、過去何回かにわたりこの委員会での問題になっておると思います。そういう問題について、本年度何か希望を持っておるかどうか、そういう点についての御所信を承わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/30
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031・鈴江康平
○鈴江政府委員 来年度の国家公務員である研究者に対しましての待遇改善措置といたしまして、三つの点を実施いたしたいと考えておる次第でございます。第一点は、特別研究員制度の実施でございます。特別研究員制度と申しますのは、部長とか課長とか、そういったような役職につかない研究者でありましても、能力の高い者は、これと同等の待遇を受けるという制度でございますが、これにつきまして、来年度は五等級の研究職、と申しますと中堅級の研究者でございますが、その方々のうち、定員の五%につきましては、これを上級の、大体課長クラスの額に上げまして、そして課長と同様に特別調整額も与えるというようなことにいたしたいと思っておる次第でございます。それが一点でございます。それからもう一つの点は、これは中堅より、むしろもう少し若いところの研究者でございます。それに対しまして超過勤務手当というものが従来支給されておりますが、この時間数を非常にふやしまして——従来は大体平均八時間程度であると思います。悪いところは六時間ぐらいでございますが、これを全部一律に十五時間まで超過勤務手当を支給するということでございます。なお、さらに申しますと、最初の特別研究員制度につきましては、約二百人程度の方が特別研究員になり得る予算措置が講じてございますが、また、超過勤務手当の増額を受けます方々は大体一万一千人程度ということになるわけでございます。それから、その二点のほかに、さらに初任給の引き上げということも考慮しておるわけでございます。御承知のように、現在官庁と民間との初任給の差がだいぶできて参りましたので、一般的に、一般行政職につきましても初任給引き上げということになっております。現在、これは人事院の勧告もあったわけでございますが、来年度からは、大学出の人でございますと、一般的には月千円引き上げる、それに対しまして研究職の方は千二百円上げるということで、一般職よりも優遇の措置を講じていくというふうにいたしたいと存じておる次第でございます。以上の三点が具体的の点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/31
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032・石野久男
○石野委員 具体的にはいろいろこまかいことがありましょうし、また、予算上の問題もありましょうから、きょうはあまり触れませんが、いずれにしましても、研究員を充実確保しようということになれば、相当程度の施策を具体的に出さなければだめなんだというくらいは、はっきりわかっておるわけでございます。これは一つ積極的にやっていただきたいと思います。
それから、なお所信の表明のありましたときに、「国民全般の科学技術振興の重要性の認識」という問題があったわけです。この問題は、全般的に教育の問題も一つありましょうけれども、特に今科学技術の振興について力を入れておる原子力研究というようなことになりますと、原子力研究所は、御承知のように茨城のような辺境の地域に行っておりますが、ああいう地域の人々の具体的な協力態勢も出てこなければならぬのじゃないか、こういうふうに思うのです。ことに原子力研究になりますと、放射能障害というようなことで、地域の人々が非常に脅威、不安を持っておることも具体的にあるわけであります。また、あそこに大きな施設が入ったことによって、地域的にはいろいろな障害も出ておるわけです。そういう点に対して少しも好意のある対策ができていないということは、かえって逆にいろいろな問題をそこに引き起すことが出て参りまして、あそこに働いておる人々に余分な迷惑をかけることが出てくると思うのであります。そういう問題は、むしろ、これは原子力研究所だけではございませんで、ほかの地域にも徐々にそういう問題が出てくるだろうと思うのでありますが、そういう点についても、むしろそういう研究所なり、物事をやろうとするバック・グラウンドになっている大衆の中へ、もっと政府があたたかい、思いやりのある施策を何かしないと、その協力態勢というものは直接には出てこないということが言えると思うのです。そういう点について、政府は来年度の予算の中で何か特に配慮をされておるかどうか、一つお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/32
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033・佐々木義武
○佐々木政府委員 それでは、私から御質問のありました点、特に来年度の予算に関連の深い点を申し上げたいと存じます。一つの例をあげますと、廃棄物処理の設備を作る予算も原子力研究所にたしか二千万円程度、それから、ただいま大阪の方にできておりますけれども、一カ所千四百万円程度予算を組みました。これはどういうことかと申しますと、ただいまのお話のあったような問題に対する対処方策の一つでございまして、たとえば、アイソトープ等、各所で使っております。御承知のように、日本では非常にアイソトープの利用が盛んでありまして、各所で使っておりますけれども、その使った、たとえば、動物の死体とか、あるいは被服類等の始末が必ずしも十分でございません。障害防止法でこれを非常にきつく取り締ってはおりますけれども、現実の問題といたしましては、法律が出たから、すぐそれが正確に実施されるというわけにもなかなか参りませんので、先般学術会議の方からも勧告がございまして、そういうものは一カ所に集めて、そうして国でこれを処理すれば、アイソトープを使う方の側も非常に安心がいくし、同時にまた、第三者である住民の皆さんにも非常に安心を与えるのじゃなかろうか、こういう勧告がございましたので、実情を調査してみますと、まさしくその必要が看取されましたから、来年度の予算には、まず第一着手といたしまして東海村にそういう廃棄物の倉庫を作りまして、同時に、一定量に達しますれば、原子力研究所で持っております焼却設備等を利用いたしましてその処分をするというふうに処置する一方、大阪の方では関西の中心でございますけれども、すぐ焼却というところまで考えないで、そういうものを集めて、しかも、それを貯蔵していく倉庫を作っておきまして、そうして、しばらくの間様子を見ようということで、先ほど申しましたような予算を大蔵省と折衝の結果いただきまして、ただいま具体的な対策を練っておる最中でございます。そのほかいろいろございますけれども、一例をあげますと、そのようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/33
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034・石野久男
○石野委員 いずれにしましても、科学技術の振興という問題は、国全体がそれに打ち込まないと伸びていかないものだろうと思うわけです。それにつきまして、先ほど岡委員からもお話のありました政府と民間産業との関係の問題があると思うのです。ことに新しい技術を開拓していこうという場合の政府の施策としましては、民間産業に依存するだけではとてもだめだという実情ははっきりしていると思いまするが、そういう点で、特にこれから新しい施策ををやろうとする高碕長官のお考えとして、新しい技術の研究とか、あるいは原理の研究などについての国家の指導的な役割というものと、それから民間産業陣営におけるところの技術陣との抱き合せの問題について、それを今後どういうふうに導いていくか、政治的にどういうふうにそれをうまく統合していくかという問題が一つあろうかと思います。私は、民間産業は、独自の自由主義経済に基いてやるのだから、そのままほうっておいて、国家は国家として、別の機関でやっていくのだというような考え方では、これはとても諸外国に追いつき、追い越すということはできないのじゃなかろうかと思っていますが、今その所信の表明をするに当って、長官は、そういう問題を長い科学技術の政策といたしまして、どういうふうに持っていこうとお考えになっておるのか、この点を一つ最後にお尋ねをしておきまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/34
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035・高碕達之助
○高碕国務大臣 私は、技術というものは国家を超越し、民族を超越し、世界共通のものでなければならぬ、この原則をもって進むべきものだと思っております。その意味において、国内における技術も、民間の技術者といわず、政府の技術者といわず、お互いにこの技術の研究の結果を公表して、そうして一緒になってこの研究を続けていく、この方針をもって今後進んでいきたいと存ずるわけでございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/35
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036・小金義照
○小金委員長 それでは、松前委員の質問はしばらくお待ちを願いまして、ほかに御質疑もないようでございますから、この際、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、政府より提案理由の説明を聴取することといたします。高碕国務大臣。
—————————————
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/36
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037・高碕達之助
○高碕国務大臣 ただいま議題となりました核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び要旨を御説明申し上げます。
本改正案の第一点は、原子炉の設置を内閣総理大臣が許可するに当って、万一の事故によって第三者に損害を与えた場合の賠償措置があることを許可基準の一つとして加えようとすることであります。
具体的には、原子力賠償責任保険制度の発足が予定されておりますので、原子炉設置者に対し、これに加入して相当の保険をかけること、あるいはこれにかわる措置を講ずることを要求しようとするものであります。
原子力の開発を進めます際、災害の防止に万全を期すべきことは申すまでもありません。特に原子炉の設置、運転に当っては厳重な規制を行うべきでありまして、この点は、従来この法律による設置の許可基準や設置許可後の監督、検査等によって十分な取締りを期し得る態勢にありますが、万一の場合に備えて、被災者たる第三者に公正な補償が確保される制度、同時にまた、原子力開発のにない手たる原子炉設置者には補償対策のために過重な負担を課さない制度の確立は、広く要望されているのであります。
政府といたしましては、これがため原子力委員会に専門の部会を設けてその検討を進めておるとともに、先般来、海外に調査団を派遣し、諸外国の事情を調査しております。しかしながら、何分にも新しい問題であり、各国の法制も十分整っていない状況でありまして、抜本的な対策の確立には、いましばらく時日を要する一方、最近大学等において原子炉を設置する動きも盛んになって参りましたので、とりあえず、民間の保険をかける程度の措置を講じようとするものであります。従いまして、今回の改正は、原子炉災害によって損害を受けた第三者を救済する制度を樹立するための第一歩として必要な措置と考える次第であります。
第二点は、原子炉のような連続運転をするものではありませんが、原子核分裂の連鎖反応を実験できる臨界実験装置を大学等で設置する傾向が最近見られましたので、この実験における核燃料物質の使用の方法や、使用したあとの使用済み燃料については特に放射線障害対策を必要とする等の問題がありますので、これに必要な安全上の措置を確保しようとするものであります。これは、いわば技術的見地から、従来の法律を補うという意味において必要な改正と考えるものであります。
以上、この法律案の提案の理由並びにその内容を御説明申し上げました。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/37
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038・小金義照
○小金委員長 以上をもって本改正法律案提案理由の説明は終りました。本案に対する質疑は次会以後に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/38
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039・小金義照
○小金委員長 それでは、先ほどの大臣の所信表明に対して、なお質疑の通告がありますから、これを許します。松前重義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/39
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040・松前重義
○松前委員 私は、高碕科学技術庁長官に対しまして、通産省と科学技術庁との両者の長官を兼務しておいでになりまする関係上、今日までいろいろな行きがかり等もあったのでありまするから、これらの諸問題についてどのような態度をおとりになるか、その点について御所見を承わりたいと思います。
まず第一に、私どもは科学技術の振興を主張して、そして超党派をもって科学技術庁の設置、原子力委員会の設置、その他一連の研究体制の整備に努力いたしました。その途上において一番問題となりましたのは、通産省と、できましたところの科学技術庁との間の確執、言いかえると、なわ張り争いでありました。この研究機関に対するなわ張りというものが払拭される好機は、私は、高碕通産大臣の両者の兼務によって到来したと実は思うのでありますが、その点をお伺い申し上げておきたいと思うのであります。
私どもは、大体研究機関というものは、よほど現実の産業に直結したもの以外のものは科学技術庁のもとに統合して、そして統一ある歩調をとって研究を強力に推進すべきである、こういう主張をいたしまして、通産省の工業技術院の傘下にある研究機関をも含めて、この科学技術庁を作らんと考えたのでありまするが、そのときには通産省系統の方々、あるいまはた通産省自体の中に反対もあり、今日のような姿に科学技術庁が形成されたわけであります。
これらの諸問題の一例といたしましては、これまた高碕大臣は十分御承知のことでありますが、エレクトロニクスの研究にいたしましても、科学技術庁のもとに研究機関を作ってエレクトロニクスの研究の基礎的な部分を強力に推進していきたい、こういう意図をもってわれわれも考えておったのでありまするけれども、これまた通産省の反対によってなかなか実現が困難であります。
このようにいたしまして、なわ張りをお互いに争うことによって国家の科学技術の進歩が相当に阻害されておる現状であることは、いなむことができません。このような問題に対しまして、すなわち、通産省と科学技術庁との間の研究機関を通じてのなわ張りの問題、このなわ張りをうまく仲裁をとって整備される、その立場が、私は高碕通産大臣兼科学技術庁長官が生まれた大きな意義であると思うのでありますから、この点につきまして、大臣の所信を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/40
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041・高碕達之助
○高碕国務大臣 ただいま松前委員の御指摘になりました点は、私は、率直に申し上げて全く同感でございます。先ほど岡委員の御質問にありました通りに、日本の産業界が設備を勝手にやって何ら統制なく、そして過剰な設備投資をしておるということが日本の産業に非常なマイナスになっておると同様に、科学技術におきましても、これが同じような研究を各所でやっておるということは、二重の研究をやって、つまらない、非能率になっておる。これを集中するということが一番大事だと思います。つきましては、科学技術庁と通産省の間というものは密接不離のものでありまして、どうしても、これは両方の研究機関というものを根本的に提携せしめて、どの程度までが科学技術庁であるか、どれどれが通産省であるか、この黒白を解明にするということが最も大事だと思いまして、私が、もし今日国のために尽し得るというなれば、今日の私の地位というものは非常に重大だと感じておるわけでございまして、この間に十分御趣旨に沿うように私は実行に移したいと思いますから、どうかよろしく御支援をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/41
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042・松前重義
○松前委員 今の御意見、まことに満足であります。どうぞ一つ御在任中に、長年の間解決しなかったこの問題を根本的に解決するように、万全の御努力をお願い申し上げたいと思います。
そこで私、原子力に関する問題を——、これは大臣から簡単に、大体の態度を御表明願いたいと思うのであります。それは、原子力行政というものは、大体予算を取って、東海村の原子力研究所を充実して、あそこの一応の指導らしきものをやっていく、これだけで一体とどまるべきものであるかどうかということであります。原子力の平和利用に関する研究というものが必要であるということは、もうここでくどくど申し上げる必要もありません。ただ、この平和利用の研究の推進に対しまして、政府は一体どういう態度をもってお臨みになるか。非常に抽象的でありまするが、こういう質問をしなければならないような現状ではないかと思うのでありますから、新大臣として、特に原子力委員長として御答弁願いたいと思うのです。
例を申しまするならば、アメリカにおきましては、これは原子力委員会が中心であります。この原子力委員会の指導方針というものは実に積極的でありまして、たとえば、ここに原子炉の建設に関する許可の申請等が出る場合においては、どういうことをするかということについて、原子力委員会は次のように書いております。「この手続上、申請者とAECのスタッフとの間に、密接な折衝が建設許可の申請書の提出以前に行われ、そして申請者はAECをたずねることにより勇気づけられ、多くの資料と指示が与えられる。また、原子炉の安全性についても、AECは安全性の基準とAECによって特別に要求される問題について、十分の説明が設置者に得られるために、AECスタッフと設立者の代表との間に最初に討論をして、そして勇気づけられる」、こう書いてある。すなわち、原子炉の許可、その他の設置をやろうというような奇特な者が出てきたら、それを大いに勇気づけて、何とかしてそれを設置させるようにするのにはどうすればよろしいか、すなわち、それを設置させるにはどういうふうにして助けてやればよろしいか。何となれば、原子力というものは、その当時はアメリカにおいては、まだ民間において成長しない姿であった。その当時においては、何とかして民間のやつを促進せしめて、せっかくやってきたならば、一つやらしてやろう、どうすればいいかということで勇気づけて、大いにやりなさい、それにはこうなさいということを一々親切に指示するばかりか、それと一体となって原子力の研究を進めてきたというのが、AECの原子力に対する態度であります。
これに関しまして、私は、現在の原子力行政のあり方はそうでないと断言せざるを得ない。少くとも申請を出した場合においては、あそこが悪い、ここが悪い、ここのところが足らぬじゃないか。結局悪口とか欠点の突つき回しだけであって、もうこれじゃあきらめざるを得ないというところに持っていこうとする。私は日本の原子力行政はこのままでは絶対に前進しない、このような感じを持っておるのであります。今までのような、監督行政のようなつもりで科学技術行政をやってはだめだ。科学技術行政というものは謙虚な態度をもって大自然と取っ組むのでありますから、当然謙虚な態度をもって、民間から来た場合、あるいはその他の政府機関等から来た場合においては、一緒になって、同志としてこれを進めていくだけの謙虚な態度を必要とすると思う。その基本的な問題につきまして、大臣の御所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/42
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043・高碕達之助
○高碕国務大臣 原子力の平和利用ということは、日本の産業政策として根本的に考えていくべき重要な問題であるということは、御同感でございますが、さて、これが実行に当りましては、遺憾ながら日本といたしましては原子力といえば原爆というものを想像するという工合で、国民自体に原子力に対する理解が十分ついていない、こういうことのために、各方面の研究機関等につきましても、いろいろ地方々々におきまして問題等を持っておることはすこぶる遺憾な点でございます。従いまして、これに対する安全性というものを十分知らしめて、そして研究し、これを普及せしむる、そして、いやしくも原子力研究についての希望者があれば、どうしてもこれを推進するように、政府自体もそういう方針で進むべきだと存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/43
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044・松前重義
○松前委員 私の質問も抽象的でありましたから、ただいまの大臣のお気持もよくわかります。わかりますが、私が申し上げようと思っておりました真意は、大体おくみ取りいただいたと思うのでありますけれども、行政は、少くとも科学技術行政、わけても、現在の場合においては、原子力行政というものがもう少し監督的な立場を脱却して、協力的というか、責任をともに負う態勢をここに確立する必要がある、それでなければとても前進しないということであります。アメリカの原子力委員会は、安全委員会その他で論議がかわされ——安全委員会にかけるのは原子力発電用原子炉だけでございます。ほかは、小さなものなんかかけはしません。発電用原子炉について安全委員会が一応設けられ、そうして、また公聴会等が設けられるときに、原子力の研究というものは一日もゆるがせにすることはできないのでありますから、さしむき政府は、全責任を持ってその原子炉設置を許可をしております。そうして、あとトラブルが起ったら全部政府が責任を負うからやりなさい、ノーということが出たら、出たってそのときの話だ、もし賠償の問題があるなら、そのときにはその使った費用だけは全部政府が払いましょう、それだけの気持を持っている。原子炉の設置、原子力の発展にそれだけの積極的な対策をとって、初めて世界のリーダーシップを握っておる。後進国の日本が、何か出てきたやつは片っ端からけちばかりつけて、ああでもない、こうでもない。こうしたらいいだろうということは一口も言わない。そうして、何でも否定的なことばかりでもって、これで行政の責任が済んだというような考え方に立っておるならば、私は、科学技術行政も原子力行政も前進しないと思う。この意味において、ただいまのお気持は大体わかるようでありますけれども、一つ具体的に、監督行政としておやりになるおつもりか。もちろん、監督はしなくちゃいけません。けれども、その裏に謙虚な協力的というか、一つの同志的な、日本という国を進めるために超党派でわれわれがここでやっておるその気持が、やはり行政の中に現わるべきじゃないかと思う。そうして議論すべきは営々と議論して、結論が出たら、一緒になってトラブルの解決に向う、こういうことにならないと、とても日本の国は立ち行かない。先ほど岡委員が申しましたように、科学技術が今後の政治の中心になる可能性がありますので、どうしてもこういう基本的な科学技術行政の態勢を、高碕通産大臣の原子力委員長の時代に確立していただきたい、実は、こういうことを私は念願いたしますがゆえに、もう一ぺん御所見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/44
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045・高碕達之助
○高碕国務大臣 原子力に関する範囲におきましては、非常にこれは専門的になるものでありますから、なかなか政府といたしましてもこれを検討するということに実は困難性がございまして、できるだけ学者諸君の御意見を聞かなければならぬ、こういうわけでありますが、趣旨といたしますれば、どうしても従前の政府の方針というものは、ともすると松前議員の御指摘になったごとく、責任回避ということがまず第一になりまして、その結果、安全性をとるということのために、当然発達すべき事業が阻止されている事実を、私ははっきり認めます。そういうことのないように、少くともこの原子力の平和利用ということについては積極的に進めなければならないということにいたしまして、御趣旨に沿うように十分の検討を加えて、今後進んでいきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/45
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046・松前重義
○松前委員 大臣への質問はこれで終ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/46
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047・小金義照
○小金委員長 次に、昭和三十四年度科学技術庁関係予算の説明を聴取することにいたします。原田官房長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/47
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048・原田久
○原田政府委員 昭和三十四年度の科学技術庁予算総表というのがお手元にお配りしてありますが、それによりまして御説明申し上げます。一般の部と原子力の部と分れておりますが、一般の部から御説明申し上げます。
一般の部といたしましては、まず第一に、科学技術振興総合施策という項目が立ててございまして、内容といたしましては科学技術会議の運営、それから科学技術振興長期計画の策定、内外科学技術調査活動の強化、科学技術試験研究の助成、科学技術者の顕彰、この五つの項目からなっております。
その第一の科学技術会議の運営でございますが、これは、ただいま参議院で御審議中の科学技術会議設置法の成立を期待いたしておりまして、それに必要な経費が盛り込まれてございます。三十三年度に比べまして若干減額になっておりますが、これは第二年度に当りまして初度調弁費などが不要になりますので、それだけ少い金額になっております。金額としましては六百二十七万二千円でございます。
二番目の科学技術振興長期計画策定でございますが、これは三十三年度が第一年で、本三十四年度は第二年目に当ります。第一年度といたしましては大綱的な内容の策定をやっておりますので、三十四年度といたしましては細部積み上げ作業をして参りたいという計画で、二百四万二千円でございます。
三番目の内外科学技術調査活動の強化といたしまして、これは、従来各種の調査をやって参ったのでございますが、総合施策と関連を持たせまして、さらに一そう拡大して調査を進めたい。内容といたしましては、科学技術の一般動向の調査だとか、科学技術活動の実態調査、研究管理といったような内容のものを主として調査いたしたいと考えております。
四番目の科学技術試験研究の助成、これは新項目でございまして、重要な、総合的に研究することが効果ある項目をとらえまして研究を助成し、あるいは委託して進めて参りたいという費用でございます。金額は四千六百五十六万、内容といたしましては、水質汚濁の研究、クロレラの開発研究、水温利用の研究などでございます。
五番目の科学技術者の顕彰、これは、初めてつきました予算でございますが、従来も、顕彰は予算としては計上されておりませんけれども、科学技術庁長官賞などを出して実施しておりました。三十四年度はこのための予算がついたわけでございます。内容といたしましては、表彰者の上京旅費だとか、あるいは記念品などの経費が盛り込まれております。
次に、二番目の試験研究所の整備充実でございますが、内容といたしましては航空技術研究所、金属材料技術研究所でございます。
航空技術研究所は十五億八千二百万円でございまして、内容といたしましては遷音速風洞などの研究施設を中心にする経費でございます。
金属材料技術研究所は五億八千八百九十九万四千円であります。これも施設の充実が主でございますが、特徴ある施設といたしましては、溶解圧延設備、材料試験機などが内容になっております。
放射線医学総合研究所につきましては、原子力の部であらためて御説明申し上げますので、御了承願います。
三番目が理化学研究所の充実でありますが、特殊法人になりましてから二年目の予算といたしまして五億円計上いたしまして、前年度に比べまして一億七千万円の増額でございます。内訳といたしましては、研究設備整備として三億七千万円、新技術開発関係をやっておりますが、その経費が一億三千万円という内容でございます。
四番目の日本科学技術情報センター整備が八千八百万円で、前年度に比べまして八百万円ほど増加になっております。
その他の項目といたしましては、科学技術者の渡航費が増額になりまして五千三百四十万円になっております。
それから、二番目の資源総合利用方策等の調査、これは、閣議決定に基きます庁費、旅費、補助金等の減額によりまして若干減額になっておりますが、内容といたしましては、おおむね前年と同様でございます。金額は千九百四十三万五千円であります。
三番目の発明実施化試験等の助成、これもやはり同様の減額を受けておりまして、金額は二千百八十九万五千円であります。
技術士法の施行の経費としましては百八十二万円でございまして、前年に比べまして八十四万円増額になっております。昨年技術士試験を初めて実施いたしまして、非常に多くの受験者がございましたが、来年も相当数の受験者があるものと予想して予算を組んでございます。
次に、雑件と本庁の機構強化充実を含めて御説明いたします。機構を改革いたしまして、従来の企画調整局と調査普及局を廃止しまして、計画局と振興局を新設するという内容で、十五名の定員増加を見ております。
以上、一般の部の総計を申し上げますと三十億四千三百九十八万一千円と相なりまして、現金の部で八億七千九百二十三万六千円の増、債務負担行為関係で十七億一千九百万円の減額になります。
次に、二枚目の原子力の部を御説明いたしたいと思います。
一番初めの原子力平和利用研究の促進は、日本原子力研究所の整備と国立機関試験研究の促進、民間試験研究の助成の三本からなっております。
まず、日本原子力研究所の整備でございますが、現金予算といたしましては四十四億、前年度に比べまして一億減になっておりまして、債務負担行為の方は三十四億二千七百万円で、二億六千五百六十万円の増額になっております。減額いたしましたおもなものといたしましては、CPうの完成に伴う減額が目立っております。それから債務負担行為の増額のものの中には、動力試験炉あるいは国産一号炉などの国庫債務負担行為の増加が含まれております。なお、人員関係では二百五十六人の増員が認められまして、千六人の定員となる予定でございます。
二番目の国立機関試験研究の促進は五億五千三百一万八千円で、前年に比べまして一億一千八百五十五万一千円の減額になっております。その内容としましては、核原料の調査とか、核融合の研究、原子力船の研究、アイソトープの利用等が含まれております。
民間試験研究の助成は三億八千万円で、債務負担額が一億減、現金が九千万円ほど減額になっておりますが、この減額は、従来、数カ年間民間研究機関の助成を続けて参りまして、漸次民間の自主的研究が活発化して参りましたのに呼応いたしまして若干減額になった次第でございます。
二番目の核燃料開発の促進でございますが、その内容としましては原子燃料公社の事業強化費、それから核原料物質の探鉱奨励費、それから核燃料物質等の購入費等からなっております。
原子燃料公社の事業強化費といたしましては十一億三千万円で、前年度に比べまして一億二千万円ほど減額になっておりますが、おもな減額の理由としましては、精錬施設の初度調弁費に相当するものが第二年度で必要がないというような点から、それだけ減になっております。燃料公社の人員は九十七名増員が認められておりまして、四百十名になる予定でございます。
次に、核原料物質の探鉱奨励、これも数年来続けて参ったものでございますが、従来の経験に照らしまして一千万円ほど減額いたしまして二千万円と定まったわけでございます。
三番目の核燃料物質等の購入費等でありますが、これは濃縮ウランなどを購入いたします経費といたしまして、順次利用面が拡大されますので、それに見合いまして三千百四十一万四千円ほど増額になりまして、九千六百十万五千円となっておる次第でございます。
次に、三番目の原子力平和利用国際協力の強化、これは若干人数が減少になりまして、三百十五万円ほど減額に相なりましたが、金額といたしましては四千五十万八千円となります。
四番目の放射線障害防止措置の強化、その内訳として放射能測定調査の研究と放射線医学総合研究所、放射性廃棄物処理対策、この三本からなっておりますが、放射能測定調査の方は調査範囲を拡大いたしまして、五千九百三十九万円と相なり、前年に比べまして二千三百十四万一千円の増額に相なります。
それから放射線医学総合研究所でございますが、現金予算が五億八千三百十八万七千円で、債務負担が一億四千万円でございます。債務負担のおもなるものは病院を作る経費が含まれております。人員も九十三名増加になりまして、百六十三名に相なります。
三番目の放射性廃棄物処理対策でございますが、先刻原子力局長から御説明がありましたように、関西方面に処理施設を設ける事業の補助をする金額といたしまして千四百十六万円新たに計上したわけでございます。
その他の項目につきましては、事務的でございますので説明を省略させていただきます。
なお、原子力局の機構強化充実の点につきましては、二十九名の増員が認められまして、従来科学調査官三名ありましたのを廃止いたしまして、一次長、一監理官、二課長の増員をしたいと思います。
原子力関係の合計は現金にいたしまして七十三億四千八百八十六万四千円で、前年に比べて三億五千三百九十八万八千円の減になっております。債務負担は三十五億六千七百万円で、一億八千五百六十万円の増額になっております。
以上、総合計をいたしますと、現金が百三億九千二百八十四万五千円で、五億二千五百二十四万八千円の増、債務負担は三十五億六千七百万円で、前年度に比べまして十五億三千三百四十万円減額と相なっております。
なお、人員関係について総合的に御説明いたしますと、本庁関係は三十三年度で二百七十五名おりましたのが、四十四名の増員が認められまして三百十九名と相なっております。それから航空技術研究所、金属材料技術研究所、放射線医学総合研究所は、それぞれ六十五名、七十九名、九十三名の増員が認められまして、三十四年度の定員が百七十九名、百九十九名、百六十三名と相なります。総計にいたしまして、三十三年度の定員五百七十九名が二百八十一名増加をいたしまして八百六十名と相なる予定でございます。
以上をもちまして昭和三十四年度科学技術庁予算の御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/48
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049・小金義照
○小金委員長 以上をもちまして昭和三十四年度科学技術庁関係予算の説明を終りました。本件に関して質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/49
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050・岡良一
○岡委員 ただ一点だけ、兼重先生がお見えでございますし、先生はその道の権威者でおられますので、率直な御意見を聞かしていただきたいのでございます。
それは、大臣は核融合反応研究の推進について力を注ぎたいと、こう所信表明にあったわけであります。実は、昨年の九月、原子力平和利用会議に御出席の方々の中で、核部門を代表せられる方、湯川博士を初め数名の方に、会議の結果からしてどういう御意見を持っておられるかということを率直に聞きました。そのときの共通した御意見としては、一つは、核分裂反応については各国ともかなり研究の成果が上っておるので、これに追いつくには日本としても異常な努力が必要であるとの印象を受けた、現に三年前の会議では、むしろ核分裂反応の分野では日本のアイデアはかなり進歩的であり、頭角を現わすものもあり得るという印象を受けたけれども、その後、イタリア、ドイツなどにおいては施設等についての予算的努力が大規模であり、今度の発表を通じては、まことに日本の立ちおくれを痛感して、残念なことであるというのが一つの御意見でした。いま一つは、核融合反応の分野では、各国の報告を聞いておると、まだ基礎研究もきわめて初歩的な段階にあるのではないかという印象を強く受けた、そこで、日本においてもこの方面については専門的な研究者もかなりいることでもあり、また、それぞれ熱意を持っておることでもあり、また、この方面の専門家の諸君のサークルもあることでもあり、そこで、政府として、あるいは原子力委員会として、この核融合反応について格段の努力を払うべきである、こういうのが、その席上におけるいわば専門家の人たちの会議を回顧しての率直な御意見であったわけでございます。そこで、私も機会があるごとに、この件について科学技術庁、原子力委員会が積極的に一つやってもらえないかということをいつも申しておりました。今度の予算の御説明、先般大蔵省への要求予算の御説明などを聞きましても、科学技術庁独自の予算は核融合反応については見られない。ただ、各省あるいは大学、その他いろいろにまたがっておる研究機関と申しましょうか、こういうものを統一的に推進をするという御意見であったわけです。しかし、私が、どの程度の予算が果して要るものでしょうかということを学者の方々にお聞きいたしましたところが、あと五億程度の予算はどうしても本年度としてほしいという意見もありました。もちろん、その積算の基礎などというものは、官庁と違って明確な基礎があるわけでもございませんので、これはきわめて一方的な数字でございまして、本年度は二億プラス若干というような程度じゃないかと思いますが、この点、会議のあとで原子力関係各分野の代表の諸君と話し合いのときに申された御意見が、科学者の意見としてかけ引きのない、正当な要求じゃないかと思うのです。とすれば、できるだけこれが実現するようにわれわれの立場から努力したい、こう思っておるのでございますが、この点、原子力委員会として、具体的にどういうふうにお進めになるのか、どういう目標のもとにお進めになるのか、その具体的なプログラムは、ことしはどういう段取りを考えておられるのか、この点だけ一つ先生からお教えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/50
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051・兼重寛九郎
○兼重説明員 十分なお答えができますかどうかわかりませんですが、核融合反応の研究につきましては、ただいま岡委員のお話しになりましたふうなことを私どもかねがね聞いております。ぜひ今後日本で盛んにやる必要もあり、また、やる価値のあるものであるということは、みな考えておるわけでございますが、私ども検討いたしましたところでは、現状では、核融合反応の基礎的な研究は全部日本では主として大学でやっております。従って、原十方委員会にも核融合専門部会を設けまして、湯川教授をその部会長に推していろいろ検討していただいておりますが、そちらの方で伺います御意見も、現状では、そちらの方の研究に力を入れるべきだというふうになっております。従って、その点から申しますと、国費を注ぎ込む段になれば、文部省関係の予算を主に考えることが必要でございますが、そういう意味では、原子力委員会あるいは科学技術庁としては、直接できないうらみがございます。ですが、その間の連絡は可能な範囲でとっております。数字のことは、必要があればここにメモがございますから、お話し申し上げますけれども、そういう段階でございますので、原子力委員会の関係で、たとえば三十四年度に中央的な研究機関を設けて、そこに相当の金を注ぎ込んでこういう研究を始めるという段階にはまで至っておりません。つい二週間ばかり前に名古屋でありました——その方の専門部会の正式の会合ではなかったかと思いますけれども、大部分の専門家の集まりました会合の席でも、来年度は大学における各種の研究を進める、その結果、次の年度あたりにその中のどういうものを、どういうふうな形で、もっと大規模に促進することがよかろうというような見通しが立つようになれば、それを取り上げて考えるという段階にあったと考えております。決してこの問題を軽んじておるわけではございませんが、予算的に、そういう関係から目立ったものが出ていないというのが現状でございます。しかし、御承知のように、前年度に比べれば、比率からいえば、かなり大きな比率でふやしておるということは、核融合の研究を重要視しているということの一つの現われかと思いますので、その点を御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/51
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052・岡良一
○岡委員 一点だけですが、実は現在の研究室の状態、お説のように、核融合反応は大学の研究室を中心に今年は進められるということでございますが、大学の研究室は、御存じのように、端的に言えば、プロフェッサーもアルバイトしなければならぬ、研究生も親の仕送りの中から研究費を出さなければならぬというのが、医学方面でも偽わらざる実情でございます。一般の処遇が改善されたところで、なかなかそれで落ちつくものではございません。そういうことで、特に核融合反応の研究が大学中心でされることになると、施設を初め、いろいろな形において相当な予算というものが必要になってくると思いますが、現在文部省を通じてつけられた核融合反応研究のための予算は、先生の専門的な立場から、この程度で大体満たされるであろう、こうお思いでございましょうか、この点、率直なところを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/52
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053・兼重寛九郎
○兼重説明員 その点に関しましては、私は決して十分とは思いません。むしろ、忌憚なく言わしていただけば、非常に不十分であると感ずるのでございます。しかし、御指摘のように、大学の研究費あるいは研究施設全体が非常に貧弱な現状でございますから、その中で、核融合の関係だけをほかと非常に違った大きなものに持っていくということの困難さも、私には理解できなくもございません。それで、ただいまでは、大学の研究費を、せめて戦前の水準までできるだけ早く回復してほしいということを私ども機会あるごとに申しておりますが、それさえまだ、たとえば、三年後にはそういうことができるという見通しも立っていない現状でございますので、それも大事であると考えます。しかし、それができるまでは、核融合の研究について特別な措置を何もとれないというのでは、時期おくれになることも明らかでございます。その両方を組み合せて適当なところを見出していくべきでございますが、その解決案の困難であることは私が申すまでもないところであります。そういう点で、国会の諸先生方の御援助が得られて、全体的に早くそういうことが促進されるようになりますことを、私の方からむしろお願いいたしたい。方法について、なお考え落ちがあれば、御注意のもとに検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/53
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054・岡良一
○岡委員 私どもも、そういう点非常に心配しておるわけでございます。委員会でしばしば申し上げる点は、たとえば、東大の理工学部といえば、大学の自然科学研究のいわば本山である。そこの内容が、定員の問題にしても、教授その他の処遇の問題にしても、今度若干改良されたとはいうけれども、まだまだこれでは十分でない。そこに持ってきて、その研究施設にしても、工学部の施設は、私のお聞きする範囲では、明治、大正時代の施設が七二%、昭和になってからのものも、独立後に新しく購入したものは一%に満たないというのであります。そのようにして、現存した老朽施設を新規のもので補てんするには、東大の工学部だけで百四十億もかかる、こういう数字を当事者は出している。ところが、今度の予算で一体それにどれだけのものが回されるかというと、これまた全くスズメの涙の状態である。そういう悪平等のまま、新しいものに取りかかるのを遠慮するという形で、とりあえず取りかかるべきものが、これに引きずられているということになるのは非常に残念である。特に原子力エネルギーの自給ということになれば、ウランの乏しいわが国で、核融合反応などで海水でも利用できるということになれば、日本の経済にとって非常に大きなプラスも考えられる。いずれにしろ、うんとこれだけは取り上げて一つやる。核融合研究所ぐらい作って、そうして研究者の研究の意欲を十分に満たし得る施設を与えてやらすというふうなことでもやらないと、この老朽した施設と悪平等な形では、新しい科学は発展しないのじゃないかということを実は心配しておるのです。これは私の気持でございますが、原子力委員会あるいは科学技術庁としても、こういう点にもやはり十分積極的な御努力を願いたい。こういうことを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/54
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055・小金義照
○小金委員長 なお、原子力行政に関して質疑の通告がありますから、この際これを許します。松前重義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/55
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056・松前重義
○松前委員 兼重原子力委員に御質問を申し上げます。
原子力委員会が原子力政策の推進の衝に当っておられる。そのための機関が原子力委員会であることは言うまでもありません。そういう意味からしまして、原子力委員会は、委員長はまだ新任でありまして、さほどこの辺は御承知ないかと思いまするから、あなたにお伺いいたしますけれども、原子力委員会はわが国の原子力の平和利用に関する科学技術的な開発に関してどのような基本的な政策をお持ちでございますか。それは、きょうの大臣としてのいわゆる所信表明の中にも抽象的にしか出ておりませんから、原子力委員会として、具体的にその内容をお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/56
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057・兼重寛九郎
○兼重説明員 ただいまの御質問に対しまして、私から的確にお答え申し上げることは困難かと思いますが、原子万委員会がわが国の原子力平和利用の開発、推進に対して相当の大きな責任を持っておりますことは、御指摘を待つまでもなく、承知していなければならぬことでございます。たとえば、アメリカの原子力委員会と日本の原子力委員会とは、性格、権限に相当大きな開きがあることも事実でございますけれども、目的としては、はなはだ似通ったものがございます。従って、推進をいたしますのに、具体的な長期の計画を内定いたしましたり、あるいはその中で、また部分的な基本計画、あるいは考え方というような形でいろいろ出しておりますことはございますが、もう一つ別な面といたしまして、安全の確保ということについても、推進と同じような責任と申しますか、任務を持っておることでございます。この二つの事柄が、場合によりますと、ちょっと矛盾と申しますか、お互いが一致しないと申したらよろしゅうございますか、そういうようなことがございます。そのことは、先般アメリカのグレアムという原子力委員がこられましたときに、「そういうことが感じられるけれども、アメリカではどうですか」という質問に対して、向うでも同様であるという返事でございました。これが私どもにとっての一つの大きな悩みでございます。でありますから、原子力の平和利用に対する開発はできるだけすみやかにできるように、この促進に大いに努力しなければならないということは、もちろん十分承知しておりますが、その途中の段階で、それを究極の目的といたしますために、ある場合には、安全確保の点を重視することがかえって先において促進をするというふうな考え方から、場合によると、監督ばかりに目がくらんでおるではないかという印象を外部に与えることがあるかとも思いますが、基本方針としては、先ほど委員長がお話しになりました通りのことを私どもは考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/57
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058・松前重義
○松前委員 伺ってみますると、どうも明確に、お話しになった御趣旨がわかりません。言いかえると、安全確保のためにおくれておることは当然であるという言いわけであったのか、それとも、推進のためには安全確保というものをまず決定してからでなければ推進はできないとおっしゃるのか。それならば、安全確保のために全力を注いで現在のところおやりになって、それで推進の役割は、それができてからおやりになったらいいだろう、こういう理屈になるわけです。そのところは一体どっちでありますか、一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/58
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059・兼重寛九郎
○兼重説明員 究極において原子力の平和利用が促進されるようにいかなければならぬということは、私から繰り返すのはかえって失礼と思います。従って、どっちか一方だけというふうに参りませんために、両方を考えることのために、推進ということを考えていないのかというふうにおっしゃられることは、ちょっと私どもの本意に合わないことでございます。でございますから、基本方針としては、どこまでも推進ということにあると思いますが、その安全確保ということを無視して推進するということは、これは決して推進することでありませんので、そこの組み合せをどういうふうにするかというところに、ただ、ものさしではかってきめればいいというふうな、簡単な割り切り方ができないわけでございまして、そこは、ある程度そのときそのときの判断を加えながら進んできております。また将来も、当分の間はそういう行き方をしなければならないかと考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/59
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060・松前重義
○松前委員 ただいまの御答弁も、前の御答弁と全然同じでありまして、どうもはっきりいたしません。私が申し上げておるのは、安全性というものが重要である、このことは申すまでもないことでありまするが、それが重要であるがゆえに、この問題に対する確信がないから、新しい推進はできないのだとおっしゃるようにも聞えるし、もし、そうであるならば、安全性に関して大体の踏み切りを、もう世界の実情が大体わかっておりますから、踏み切りをつけて、そうしてその基礎の上に立って推進をはかる、こういう行き方になぜなさらないのか、その点を私は特にお伺いしたいと思う。と申しまするのは、世界の実情は、もう私から申し上げるまでもありません。安全性に関する問題も、絶対安全などということは世の中にないことで、ございません。従って、この絶対安全ということがない現状において、大体踏み切りをつけて、もう情勢はわかって、それでどんどんやっておるのでありますかり、従って、それを参照として、われわれとして踏み切って前進して、そうして国民に安心感を、原子力委員会という責任ある存在が与えてやらなければ、国民は、やはり場合によったら危ないのではないか、こういうふうに思うのは、私は、ある意味においては当然だと思う。だれが一体これを踏み切って責任を持って推進するか、現在の場合は、こういうことであると思うのであります。そこで、アメリカの原子力委員会のやり方等を見ても、安全性等において文句が起ったときには公聴会を開く。開くことは開くが、それは半年ぐらいかかって、なかなかきまらないで、結論が得られないから、原子力委員会は直接原子炉の設置その他に対して、いいと認定したときには、ぴしゃっときめて、そうして、あと、もし不許可にならざるを得ないような情勢に追い込められた、そうなったときには、原子力委員会が全責任を持って賠償もやる、お金がうんと要ったならば、それだけやってあげましょう、これくらいの責任ある態度を持って——そのままのことが日本においてできると私は思っておりませんけれども、大体そのくらいの心がまえを持って前進させなければ、このおくれた原子力の現状は打開できないと思う。私はお利口口はきこうと思っておりませんので、これから委員会ごとにずっとこの問題について兼重さんにお伺いして、一応そのとびらを開かなければならぬと実は思っております。そうしなければ前進しません。だからして、これくらいの強さのものは、どういうふうな条件のもとに設置してもよろしい、また、運転してもよろしい、運転するにはどういう条件が必要である、これこれのものは——いわゆるパワー・リアクターはどうすればいいか、あるいはマテリアル・テスティング・リアクター、中級程度のものはどうすればよいか、教育用の小さなクリチカル・リアクター、ほとんどゼロ・パワーに近いものはどうすればよいか、こういう基本的な、積極的な設置方針なりをきめて民間を指導し、あるいはまた設置しようとするところの学校や、その他を指導する、こういう態勢にならなければ、これは前進しませんよ。ですから、私はきょうは上品な口はもうききませんが、とにかく、このようにして何とか基本的な線を打ち出していただかなければ、このとびらは開かないと思う。明確な態度をおとりになるかどうか、こういう基準をお作りになるかどうか、原子力政策の出発点をまず解決されるかどうか、この点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/60
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061・兼重寛九郎
○兼重説明員 こういうふうな腹をきめて進めなければ、なかなか進行しないという御意見、私も、そういう点が大いにあることを感じております。しかし、先ほどから出ましたアメリカの原子力委員会がやっておりますようなふうには、日本の原子力委員会は、すべての条件から見まして、その通りにはいかないと思います。従って、日本の原子力委員会としてまだ努力の足りないところは、もちろんあることでございましょうけれども、先ほどの標準を立てるようなことについても、今何も考えていないわけではございません。たとえば、それを作業いたしますのに原子力局の助けを借りるというふうにいたしましても、現在の原子力局の陣容、人数では、そういうことは、そうすぐ右から左に片づくようなことでないことは、おわかりになっていただけるかと思います。従って、そういうようなことから解決してかからなければいけないということになれば、先ほどから岡議員の御質問にお答えしたと同じようなことが起るわけであります。それはそれとして、機構の拡充をはかりながら、先ほどお話になりましたようなこと、とうてい松前議員のお考えになっておられますようなところまでいくとも考えられませんけれども、ある程度その線に沿った行き方をするように努力はしております。今後もそれは続けるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/61
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062・松前重義
○松前委員 大体、この原子力の安全性に対するいろいろな基準というものを考えてはおるというお話でございます。それに対して、原子力局はそれだけのスタッフがまだそろっていない、こういう話であります。スタッフはどこからお求めになってお作りになるのか存じませんけれども、原子力研究所もあることでありますから、これはやろうと思えば、日本並みに私はできると思う。外国の例も大体わかっておりますから——外国の例は全然参考にならないとはおっしゃらないだろうと思うのです。アメリカの原子力委員会の行政というものが、そっくり日本に移植できないことは私もよくわかっておる。原子力委員会の権限も違います。予算も違います。それはできません。けれども、やはりこのおくれた国を前進させるために必要な手段としてはどうしてもそこにこれだけの条件と、外国の現状その他から見て、大体この辺は大丈夫だという線はわかっておる。明白なんです。その明白なところを基礎として前進するというところにあると思うのでありまして、これは踏み切りであります。今踏み切らなければ、とても問題にならぬ。こんなじんぜん日を久しゅうして、ただ、いたずらに何もかも用心ばかりしておるというようなことであるならば、これは原子力基本法とかなんとか、あんなものを作らんで、黙って原子力の研究をした方がよかったというような感じもする。その方が前進したかもしれない。そこに今の原子力行政の基本問題がある。大臣に伺っても、この間就任されたばかりで、内容は御存じないでしょうけれども、やはり、おやりになっておる方とほんとうにひざ突き合せて、国会の場においても討論すべきだと思うのであります。率直に申し上げます。今のお話ならば、もしもここに基準をお作りになるということであるならば、いつまでにそれをお作りになるおつもりか。永遠にできないのなら、これはだめです。原子力委員会は解散した方がいいと私は思う。それは兼重先生お一人の責任ではありませんよ。きょうは、まことにお気の毒ですけれども、一つ代表して小言を聞いていただきたいと思うのでありますが、一体、いつまでにこれをお作りになるおつもりか。そうすると、その基準に従って民間はしかるべく考えます。また、いろいろ御指導をいただいて、ここが足らぬとおっしゃれば、そのようにします。そうして、早くこれをなにするようにしなければいかぬ、私はそう思うのであります。これは、私の言うことは無理じゃないだろうと思うのだが、いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/62
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063・兼重寛九郎
○兼重説明員 御無理でないと申し上げたいのでありますけれども、私どものコミティとしては、いつまでにすぐ作ることにいたしますという見通しは、現在ではまだ立っておりません。しかし、御説のように、いつまでたってもできなければ意味がないことは十分承知しております。できる限り早く、希望通りのものができませんでも、それに準ずるもので踏み切るとか、いろいろなことがあると思います。今日ここにお伺いいたしましたことは、私ども今後の検討に十分注意いたすようにいたしたいと思います。ほかの委員にもお伝えすることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/63
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064・松前重義
○松前委員 きょうはあまりお上手を言わないで申し上げますが、ただいまのお言葉を拝聴しておきまして、いずれまた、この問題については、だいぶ時間もたっておりますから次の機会に譲りたいと思います。
幸いに政務次官もおいでになりますから、原子力に関し、しかも、私事に関してお伺いします。
先般、あなたは科学技術庁政務次官として現職におつきになりました。しかも大臣ではないが、大臣を、補佐する責任ある衝においでになる。その立場において、先般来各方面に書いたものをお配りになっていらっしゃる。おそらく参議院の事前運動だろうと思う。その中に、「東海大学が設置しようとする原子炉に対しては絶対反対だ、あんなものは危ない」という断定をしておる。これは、まだおきまりになっていないはずである。しかも、責任ある科学技術庁次官ですよ。あなたは責任を感じませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/64
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065・石井桂
○石井(桂)政府委員 ただいまの御質疑で非常に恐縮しておりますが、これは断定は下していないのでありまして、あれは、私の後援者に配る機関紙でございます。その中に、こういう事件があるということで、東海大学方面の御主張と、それから反対の御主張を書き、そうして、なお私の聞いた、新聞に発表された経過を載せまして、判断は読者にゆだねてあるように書いておるつもりであります。もし、そのうちの文章が不穏当である——断定はしてございませんですが、私はそういうふうに記憶しております。もし、不穏当なところがあれば訂正をいたしますが、私も選挙に出ておりますので、私の後援者には、いろいろなことが起きるたびに——あれは一年前から毎月一回ずつ出ておる新聞でございますが、そういうのを参考に差し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/65
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066・松前重義
○松前委員 いずれ、それは書いたものもあるようでありますから、それを持ってきて具体的に一つやりましょう。この問題は、現職の方として非常に重大な問題であると思います。幾ら選挙の事前運動といえども、少し行き過ぎである、こういうふうに思っております。
そこで、この問題はまたあとに残しまして、これは兼重先生は十分御承知のことでございましょう。また、こういうことを申し上げるのも釈迦に説法であることは申すまでもありませんけれども、一言、私は国会の速記録にとどめる意味において、特に申し上げておきたいことがあります。
それは、ただいま石井政務次官に対して私が質問いたしました事件に関連したことであります。関連でなく、似通った問題であります。ここにございます北里柴三郎伝、この北里先生に関するところの問題であります。北里先生が
内務省より貸下を受けた芝区愛宕町の地所に研究室及付属病室を建てることとし、其の設計成り明治二十六年五月将に工事に着手せんとした。然るに端なくもここに一大難問題が生じて来た。其は区内に伝染病研究所の如き危険なものを設立させてはならぬと芝区民多数の猛烈なる反対運動の起ったことである。理由とする所は、伝染病毒は消毒を以て完全に危険を防ぐに足らぬものである。況んや研究所に病院を附属せしむるが如きは、当区の繁栄を害し到底忍び得ざることであると云ふので、或は演説会を催し、或は当路に猛運動を試み、甚しきは既設の研究所に瓦石を投ずるの暴挙をさへ見るに至ったのみならず、蒙昧なる民衆の反対は、遂に駆って芝区内有力者の殆んど全部を連判加盟せしめ、衆議院議員末松謙澄、文明評論家末広鉄腸等をして、代表的の演説を為さしめ、(一)伝染病研究所は学理上決して伝染の憂なしといふべからず、(二)消再は一々行届かざるなり、(三)上水道下水道によりて病毒を散らす恐あり、(四)人の感情を傷ひ土地の繁栄を害する旨を高調し、前帝国大学総長渡辺洪基、子爵林友幸等多数著名の士が此の反対運動に参加するに至った。帝国大学総長も入っているのです。而して遂に衛生会会頭伯爵土方久元に対し、区民暴動の虞あり、衛生会関係者殊に北里等は身辺を注意せよと脅迫する者さへ出で来た。かくて世論囂々賛否の声は期せずして全国に起り、稀に見る所の社会問題となった。而して此の間芝区民の東京府知事に対する運動は一時効を奏するに至り、曩に提出してあった大日本私立衛生会の建築願に対し、富田府知事は「伝染病研究所を人家稠密の地に設け候儀は本府に於て許可せざる様芝区民より出願の旨も有之、然るに本願の病室は虎列刺天然痘を除くと雖も伝染病の名称は公衆の感情を害ふに至らん。因りて伝染病の三字を避け名称更正の上更に申出づべしと指令するに至った。これは責任のがれのやり方です。
学理上とるべき反対理由は一とてなきのみならず「公衆の感情云々」といふが如きは、学術を甚しく侮辱するものとして先生の憤慨に堪へぬ所であった。
乃ち先生は一書を裁して伝染病研究所並に病室の建設は今日之を他の場所に移転すべからざる所以を述べ、之を大日本私立衛生会の議に附し、毅然として学者の向うべき途を天下に明かにしたが、研究所建設の工事は全く中止され、荏苒数月にわたって愚論の横行にまかせ、其の対策折衝の為、先生は寸刻を争う研究事業を殆んど顧みる暇なき有様となり心中漸く焦燥を禁じ得ぬ有様であった。依て遂に学術に国境のない事を想ひ、故国に容れられずんば出でて海外の招聘に応じ、自由に驥足を延ばさんと決心し、伝染病研究の委托を辞せんとした。大日本私立衛生会の当事者は事の意外に驚愕し極力先生を慰撫し、建設事務を一切会の責任に於て遂行し、建設の完了と共に之を研究所長たる先生に引継がんことを約し、其の事務担当者に幹事永井久一郎を挙げた。
こういうふうな反対運動に対しまして、北里先生は非常な苦しみを受けたのであります。そこで、こういう動きが東海大学のみなず、京都大学の場合においても出てきておる。そうして、今後にきいて、おそらく設置しようとする場合において、また必ず出ます。そうして、日本には、東海村以外に、原子力研究に一番大事な原子炉は、幾ら小さくても置けないということになるのです。そればかりではありません。研究だけならいいけれども、原子力発電の発電炉のごときは、これは東海村に置かれても、東京に及ぼす影響は、東京にクリティカル・パワーの原子炉を置いたよりも大きい。これは計算上ちゃんと出てきておる。そういうことで、一体原子力委員会は、ほんとうに原子力の推進を責任を持ってやろうとしておられるのかどうか、この問題を私ども疑わざるを得ない。こういうふうな歴史的な問題は、たくさんあります。鉄道の敷設のときだってそうです。鉄道のようなものがきたのでは醇風美俗を害するというので、みんな自分の町に停車場を作ることに反対した。だからずっと遠方のところに停車場を作って、今困っておる。方々で困っております。そのほかに、電気の場合もあります。電気の場合は、これに書いてあります。いわゆる電信電話の電柱をみんなでもってのこで切って、しかも、たこをあげて電線を切って歩いたりした、こういうこと。そうして、非常な妨害があった。モールス電信機に対して、抜刀して、このキリシタンめといってたたき切ったこともあるようです。
そのように、文明の前進の犠牲というものが今日のわが国にもある。この北里先生の伝染病研究所にもあったし、また、電信電話にもあったし、鉄道にもあった。今、私は、原子力がそういう時代に遭遇していると歴史的には思うのです。その歴史のとびらを開かなければならぬのは、私は原子力委員会だと思う。これは非常に重要な段階にあると思う。だから、簡単にこのことを、現在の姿のように、あっち見、こっち見してやるべきものではなくて、やはり歴史の将来を見通してやるべきものではないか、こう私は思うのです。そこで、原子力委員会はこういう問題、すなわち、歴史の一番重要な課題、この課題に対しまして、このとびらを開くために全力を注いでもらわなくちゃいかぬし、同時にまた、これがあなた方の使命であるということを私は確信いたしております。そしてまた、これは名誉ある使命だと実は思っておる。でありまするから、私の学長をやっております東海大学のことを、あまり今まで申し上げたくなかったから遠慮しておりました。しかし、今はもう言います。あの記録はちゃんとそのままの記録として、反対運動の記録、だれが反対したか、全部記録にとりました。朝日新聞のだれがどういう論説を書いたか、全部そのままにして、これらの記事も、北里先生の記事も、鉄道の記事も、それからまた、電信電話に反対したその記事も、歴史の前進をはばむそのときに起ったそのトラブル、それらの姿を具体的に書いて、国民全体に訴えようと思って、実は今印刷をしております。これは、私は全国民に訴えようと思っております。石井さんの配られたその相手は大体わかっておりますから、そこには、私はこれを無料で配ってやろうと思っておる。選挙妨害のつもりではありませんよ。私は意見が違うかもしれぬ。違った意見を聞いてもらうために、やろうと思っておる。このようにいたしまして、とにかく、ここに原子力委員会が腹をきめて今出発すべきときだと私は思う。私の大学が不許可になったって私自身はちっとも差しつかえありません。しかし歴史のとびらは開いてもらわなければなりません。こういうことです。一つ科学技術庁政務次官、特に原子力委員会は、この問題の解決に全力をあげていただきたいと思います。この質問は、まだこの次も続けます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/66
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067・兼重寛九郎
○兼重説明員 新しい事柄が生まれ出るときに、いつも生みの悩みがあることは、もちろん承知しております。先ほど来例をあげてお話しになりましたことは、その通りであるかと思います。しかし、当時はその通りであった。現在、私どもが一番そういう問題で困難を感じておりますのは、事情を知らない一般民衆がどうであるということ以外に、学者、しかも、比較的専門家と見られるような学者の間にいろいろ意見の相違があることがございます。そういうようなことからだんだん解きほぐしていかないと、ただ向う意気だけでもいかぬ点がございます。私ども、そういうとびらを開く熱意が足らぬということはあるいはあるかもしれません。そういうことがないであろうかということを感じていないわけではない。十分感じております。そこで、それをどういうふうにして打開していくか、その行き方において、多少御満足を得ないようなことがあるのかもしれません。ですが、私どもは、これが結局こういうものの開発を進める方法であると考えてやっておる点もございます。従って、御趣旨と逆なことをするつもりはございませんが、個々に具体的に現われたときに、松前議員がこうすべきだとお考えになる通りのものにならぬものも、中にはあるかもわかりません。その点で御不満があることはやむを得ないかもわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/67
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068・松前重義
○松前委員 基本的な問題ですよ。不満なんて言われるから、私は学校のことは言いたくなかったんです。個人の問題として考えられちゃ困る。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/68
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069・兼重寛九郎
○兼重説明員 別段御自身だけのことを考えていらっしゃるという意味で申し上げているのじゃございません。国のそういうことを進める行き方について、ある場合には、それに意見の違いがあることもあるかと思うという意味で申し上げておるのであります。たとえば、京都大学が世話をしております関西研究用原子炉というのがございます。それが、ここ数年来片づいておりません。私は、それに最初から関与しておったわけではございませんが、これまでの経過から見まして、むしろ急がば回れというような気持で進む方が、結局解決点に早く到達するのではないかと考えながら、私自身は、できることは幾らもございませんけれども、私の力の及ぶ範囲のことでは、そういう考えのもとに進んでおるわけでございます。そういうことがいろいろの点にございまして、そこいらのところが、いかにも右顧左眄ばかりしておって、一向目的に進むつもりがないのではないかというような印象を与えておるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/69
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070・松前重義
○松前委員 原子力局長に伺います。アメリカにおける原子炉設置許可を与える手続と機構についてお調べになったことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/70
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071・佐々木義武
○佐々木政府委員 昨年の、たしか二月ころかと承知しておりますが、岡委員等からも御指摘がございまして、わざわざ一番優秀な技官をアメリカに派しまして、アメリカではこういう障害防止に対して、お話しになりましたような委員会等がどういうふうな態勢で、どういう条正項を主として調べるのか、過去の実例はどうだったのか、そういう点をつまびらかに調査いたさせました事実がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/71
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072・松前重義
○松前委員 その調査した結果は発表されましたか。何か書いたものがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/72
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073・佐々木義武
○佐々木政府委員 資料として作ってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/73
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074・松前重義
○松前委員 それを一つ参考のために下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/74
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075・佐々木義武
○佐々木政府委員 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/75
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076・松前重義
○松前委員 もう一つ、その御調査の中に「ア・スタディ・オブ・AECブロシージャース・アンド・オーガニゼーション・イン・ザ・ライセンシング・オブ・リアクター・フアシリティーズ」、こういうのがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/76
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077・佐々木義武
○佐々木政府委員 ただいま調査資料を持ってきておりませんので、何とも申し上げられませんが、御指摘の点はよく調査してからお答え申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/77
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078・松前重義
○松前委員 アメリカでは、特に民間のやつ——政府のやってるのは、自分でやるから、かわいがって作らせるのが当りまえだが、民間のやつに対しては協力して、足りないところは助けてやって、あらゆる点で、人的に、もしスタッフが満たされないときにはしかるべく世話してやって、そうして、そういう希望者に対してはこれをエンカレッジして、勇気づけてやらしておるということがちゃんと書いてある。だから、一体となってやっておるわけだ。そういういうことは、あなた方調査した中になかったですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/78
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079・佐々木義武
○佐々木政府委員 むしろ、何と申しますか、実情、手続等の問題、あるいは許可しなかった場合の実例がどうだったかというような点を主として調査させたのでありまして、そういう行政の態度と申しますか、そういう点は、たしか報告書になかったように記憶しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/79
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080・松前重義
○松前委員 科学技術庁が非常に不親切であるとか、官僚的であるとかいうようなことを私は言っておるのじゃありません。割合に親切で、そうして官僚的じゃありません。けれども、私は、やはり日本の行政官庁の通弊として、あまりに監督的な眼に走りやすいということがあると思う。しかし、ほかのところに比べて、われわれの接触する限りにおいて、科学技術庁の原子力局が特に官僚的であるというふうには、われわれには今日まで認められなかった。けれども、足りない点があるのはどこかというと、やはり民間のやつはいろいろな点で不足しておるだろうから、何とか一つ促進してやろうというお気持も、全然ないわけじゃない。全然ないわけじゃないが、もう少し積極的にその点を、個人としてでなく、お役所全体の空気として推進されるようにありたいものだ。ことに原子力のごときは、なかなか芽がはえようとしても、民間自身の力ではその芽がはえない。だから、それを何とか培養して、これをものにしてやる、こういう態度に出ない限り、私は前進しないと思う。これだけの条件を満足するならばということは出たっていいんです。それだけのものは出てもいい。原子力委員のおっしゃったように、それだけのものは出てもいいんです。それも実は出ていない。出ないならば、この辺ならよかろうということは目安がつきそうなものです。その辺のところで、もう少し積極的な指導というか、芽ばえを助ける肥料が足りなければ肥料をやる、こういう行政を確立していただきたいのですが、どういうふうに思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/80
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081・佐々木義武
○佐々木政府委員 お説のような趣旨で今後とも進みたいと思います。この安全問題等は、従来この科学技術特別委員会が始まりましてから、ほとんどのテーマはこの問題に集中しておったといってもいいほど、シビアに議論された問題でございますので、私どもといたしましては、できるだけ慎重にという、その点だけを非常に神経質に考えておったものですから、あるいはそういう面で指導行政と申しますか、そういう点では若干欠けた点があったかと思いますけれども、今後は注意して進んでいきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/81
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082・松前重義
○松前委員 これできようは終りますけれども、まだたくさん残っておりますので、この次続行いたします。この次は少し詳しくデータを持ってやります。
そこで、ただいま原子力委員と原子力局から御答弁がありましたけれども、私の考えとしては、先ほど来申し上げた通りでありまして、すみやかに基礎的なデータを——データまででなくても、大体の基本方針を打ち立てなければ、民間はどうしていいかわからないと思う。あれもいかぬ、これもいかぬばかりじゃ、どうにも話にならぬ。これじゃ全然どこへいっていいかわからない。たとえば、何か出せばすぐ悪口をいわれる。こういうような非常に冷たい態度では、ある大学が設置しようとすると、ほかの大学の先生は、幾らエキスパートでも、あれが作るのは困る、おれの方が先でなければ因ると思う人もなきにしもあらずです。人間ですから……。その声を私は聞いた。そういうものをもって権威だと心得ては間違いだと私は思う。従って、そういうあるものに属しない人、原子力委員あるいは科学技術庁の原子力局、それらの人々がほんとうに中正な、公平な立場に立ってこの判断をすべきであって、人間性をその中に加味して、何か運動に動かされるというようなことによってやったのではいかぬ。同時にまた、このように国民が原子爆弾のお見舞いを受けたその恐怖心を利用した向きもありましょうけれども、しかし、それを過度に宣伝して、そして、いかにも原子炉が爆発するようなことを宣伝するということに対して、政府の責任において、これだけは大丈夫だというような一つの安心感を、一日も早く国民に与えない限り、原子炉の問題は、どこへ何を作られるにしても、それは大へんなことになってできませんよ。私は、それは政府の責任だ、言いかえると、原子力委員会の責任だと思う。いわゆるPRと申しますか、国民に対してほんとうの認識を持たせてもらうそのためにも、早くここに政府の確固たる態度をおきめになる、科学的な態度をおきめになることが、私は一番大事だと思います。それなくして前進はない。核融合反応についてのお答えもいろいろありますけれども、それは核融合反応のときに放射能が出ます。そこで地元の反対がある。どこにやらせますか。日本にはやらせるところがありませんよ。びくびくしておっちゃだめです。やはりどこかに腹をきめて、ちゃんとそこにけじめをつけて、そして外国の例もちゃんとあるのですから、それを参照して、それで腹をきめられないはずはないと私は思う。これほどおくれた日本ですよ。人がどんどん通って、そのあとを通って、それで危ない、危ないというような愚かな現状に放置していいでしょうか。私はこのことを痛切に感じますから、今度はもう少しデータを集めて、継続的に御質問申し上げたいと思いますが、本日はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/82
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083・小金義照
○小金委員長 本日の質疑はこれで終了いたします。
なお、この際申し上げます。先ほどの事委員会の理事会において御決定を願ったことでありますが、航空技術研究所その他の視察を行うことになりましたので、日程等、詳細案を作りまして御通知を申し上げます。委員多数の御参加をお願い申し上げます。第一回は来週、すなわち二月十一日、水曜日の午前中から航空技術研究所等に参ります予定でございます。
本日はこの程度にいたしまして、次会は十三日、金曜日午前十時より理事会、十時三十分ごろから開会いたしたいと存じます。
本日は、これにて散会いたします。
午後四時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00219590204/83
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