1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十四年三月十一日(水曜日)
午前十一時八分開議
出席委員
委員長 小金 義照君
理事 秋田 大助君 理事 菅野和太郎君
理事 前田 正男君 理事 岡 良一君
理事 岡本 隆一君
小坂善太郎君 小平 久雄君
佐々木盛雄君 保科善四郎君
内海 清君 田中 武夫君
松前 重義君
出席国務大臣
国 務 大 臣 高碕達之助君
出席政府委員
内閣官房長官 赤城 宗徳君
科学技術政務次
官 石井 桂君
総理府事務官
(科学技術庁長
官官房長) 原田 久君
総理府事務官
(科学技術庁原
子力局長) 佐々木義武君
外務事務官
(国際連合局長)宮崎 章君
大蔵政務次官 山中 貞則君
委員外の出席者
原子力委員会委
員 石川 一郎君
科学技術事務次
官 篠原 登君
総理府技官
(科学技術庁原
子力局次長) 法貴 四郎君
総理府事務官
(科学技術庁原
子力局科学調査
官) 島村 武久君
大蔵事務官
(主計官) 海堀 洋平君
—————————————
本日の会議に付した案件
核原料物質、核燃料物質及び原子炉
の規制に関する法律の一部を改正す
る法律案(内閣提出第一〇三号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/0
-
001・小金義照
○小金委員長 これより会議を開きます。
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の通告がありますから、この際、これを許します。前田正男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/1
-
002・前田正男
○前田(正)委員 この法律に対しますところの質疑及び審議もだいぶんと終りになって参りましたので、ここで取りまとめて最後的に高碕大臣に一つお話を伺いたいと思います。
この法律ができました場合には、この法律に従いまして、原子炉を設置しようとするものは民間保険にかけるということを建前にいたしまして許可の申請をしなければならぬということになって参ります。そこで、この間からその民間保険のプールにつきまして、大体政府側から内容のあらましについてのお話があったのでありますけれども、それは、そういうふうな民間保険プールができるであろうというふうなお話なのでありまして、その民間保険の内容のはっきりしたもの、あるいはいつごろできるか、こういうことを責任ある大臣から御答弁にならないと、この改正法律が成立いたしましても、肝心の民間保険プールができませんでは役に立たないのであります。ここで一つ大臣から、民間保険のプールの内容と、そのできる時期、そういったものについて、明確な政府側の責任ある御答弁をお願いいたしましてわれわれの審議の参考にいたしたい、こう思っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/2
-
003・高碕達之助
○高碕国務大臣 原子炉の損害保険につきましては、損害保険協会におきまして以前から原子力保険プール準備委員会を結成いたして、鋭意検討中でありますが、これは、法律が施行されましてから九カ月以内に必ず結成いたすということを確信を持ってお答え申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/3
-
004・前田正男
○前田(正)委員 その内容の金額等は、それもこの間から交渉して、大体の額は話しておられましたけれども、大臣から一つ保険金額等も説明をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/4
-
005・高碕達之助
○高碕国務大臣 先般、葛西参考人から御説明がありましたような工合に、一施設当り責任保険と財産保険とを合せまして十五億、海外への再保険を考慮すれば、責任保険のみで大体三十億から五十億程度という見当を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/5
-
006・前田正男
○前田(正)委員 大臣の大体の責任ある御答弁があったようでありますから、一つこの法律がもし成立いたしますならば、民間保険に確実に成立をしていただかないと、この内容が伴わないことになりますので、政府の責任をぜひ一つはっきりしておいていただきたいと思います。
次に、この法律に関連いたしまして、原子炉の許可の問題につきまして一つお聞きしたいと思うのです。われわれは、かねてから、原子炉につきましては、発電用の大型の原子炉、これは日本の国家のエネルギー事情の立場から、当然開発しなければならぬということで推進することに賛成して参ったのであります。しかしながら、同時に、原子炉を日本に設置していく以上は、それに必要な科学者、技術者を養成していかなければならぬのでございまして、そういう意味からいきまして、特に、また原子力というものは、国民生活全般に、電気ができたときと同じような非常に大きな影響を与えるものでありますから、国民全般にもよく知ってもらわなければならぬ、また、そういう技術者も十分な教育をしなければならぬ、こういうふうなところから、原子力の何であるかということをよくわからせるために、小型の原子炉を教育訓練用に多数設置して、そして各大学であるとかその他において、大いに技術者の養成とか、国民の知識を広めるために努力してもらいたい、こういうことをお願いして参ったのであります。ところが、はなはだ残念なことに、文部省の方は、われわれと考えを異にするのかどうか知りませんけれども、非常に安全であると思うような小型の訓練用の原子炉については、公立の学校ではいまだ設けようという計画がありませんで、教授の研究用の原子炉を置こう、——これは研究炉にいたしましても相当高度のものでございます。そういうものを置こうというふうな計画をしておられる。そういうものも、もちろんわれわれ学問を発展するために必要であり、けっこうであると思います。しかし、そういうような研究用の相当高度なものでなくて、一般の教育訓練用の、よくわかりやすいような、ごく簡単な原子炉が、また非常に安い価格でたくさんある。私は、そういうものは国立大学等は全部設けるべきであるというふうなことを申し上げておるのであります。国立大学で、工科とか理科のあるところは設けるべきじゃないかということを申し上げておるのですけれども、いまだそういう方針が出ていないようであります。ところが、そういうことに呼応されまして、民間の大学におきましてはその必要性を認められまして、最近、相当民間の私立大学において、こういう教育訓練用の原子炉を設けようというような機運が出て参りまして、その第一として東海大学がそういうものを設けようということで、政府に、原子力委員会に申請をしておられる。部会の方でいろいろ結論を出されて、それを今原子力委員会の方で検討されておるそうでありますけれども、相当長期間にわたりまして検討しておられるのであります。せっかく、こういう私たちが希望しておるような教育訓練用の原子炉を私立の大学が作ろうとしてどんどん申請してきておるのに、長いこと原子力委員会で持っておられるために、そういう意欲が鈍ってきますと、今後の原子力開発に非常な支障を来たすと思うのです。私は、こういうことは、国立大学はもちろんのことですが、私立の大学でもどんどんやってもらわなければならぬと思うのでありまして、政府といたしましては、早く東海大学の設置の問題につきましても回答すべきじゃないかと思うのです。そこで、原子力委員長といたされて、高碕国務大臣はこの東海大学の許可申請に対してどういう考えでおられますか、また、いつごろ結論を出されようとしておられるか、その点についてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/6
-
007・高碕達之助
○高碕国務大臣 教育訓練用の原子炉につきましては、政府といたしましては、各方面の意見を聞きました結果、安全であるという考えはもう間違いない、安全だと信じております。政府の方針ははっきり申し上げておきたいと存じます。ただ、しかしながら、今日現在、日本の国民全体の原子力に対する不安、ひいては、これが原子炉にも及ぶというような国民的の感情が相当残っておりまして、その点から申しまして、もう少し国民を一般に教育し、その感情がやわらぐまでの間は、東海大学においてもはなはだ御迷惑でありましょうが、その設置場所につきましては十分考慮していただいて、善処していただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/7
-
008・前田正男
○前田(正)委員 そういう御方針のようであれば、大体われわれの方でも了承できると思うのですが、こういった教育訓練用のものが安全であるということは世界周知の事実でございまして、われわれは、実は海外も回らせていただきましたけれども、大学の教室の中だとか、中庭にも置いてあるというような簡単なものでありまして、そういったものを政府の力であまり慎重に取り扱って、かえってこういう伸びようとする意欲を押えないようにしていただきたいと思うのです。そこで、政府側としては、そういう御方針ならばいつごろに認可される御予定でありますか、これを伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/8
-
009・高碕達之助
○高碕国務大臣 ただいま申しました趣旨にかんがみまして、東海大学の責任者ともよく打ち合せまして、なるべく早い機会にこれを実行に移したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/9
-
010・前田正男
○前田(正)委員 それでは、一つなるべく早く解決していただきまして、ぜひこれを機会に、こういった教育訓練用の原子炉も日本のあっちこっちにできまして、原子力というものを国民に正当に理解していただくと同時に、必要な科学技術者ができるだけたくさん養成されるようになることを、私たちも期待するわけであります。
次に、官房長官と大蔵政務次官が御出席でありますので、この際、お聞きをいたしたいと思うのであります。今度の法律の改正によりまして、原子炉を設置しようとするものは必ず民間保険に入らなければならぬのでありますけれども、この民間保険は、先ほど高碕大臣からも御答弁がございました通り、一応日本側としては十五億、国際保険を入れましても三十億か四十億というような負担限度であるようでありますが、原子炉の設置については、もちろん、科学的に、また、各方面の権威者によりまして十分にその安全性とその他必要な条件を検討して認可されるわけでありますから、ほとんど災害というものは起らないとわれわれは考えるのであります。しかしながら、また、不測の、万々一のような災害が起らぬとも限りません。もし、そういう問題が起って参りました場合につきましては、諸外国の例を見ましても、民間保険でできないものに対しましては——今申しました日本でせいぜい十五億、国際再保険を入れましても三、四十億という限度を、もし越えるようなものにつきましては、アメリカ等では、一定の金額までは政府が補償する、それから先の問題についても、もちろん政府が責任をとる。イギリスの場合は、金額も一定金額を示しておりませんけれども、そういうような、いわゆる大きな災害が起った場合、同じような処置をとって、政府がこれに対して補償をする、こういうようにやっておりまして、これは原子炉の性質から見ましても、私は当然であると思うのであります。従って、今回この法律を提出するに当りましては、本来ならば、国家補償の責任体制の立法も提出されるべきであり、また、それに対しますところの内容等も明確にすべきであると思うのであります。これは、この間からの政府側の御答弁によりますと、海外に権威者の調査団を出されまして、その調査されました結果に基いて目下十分に検討中だそうでありますので、私たちとしても、今ここで直ちに、政府のその立法内容だとか補償措置を明らかにしろということは申し上げにくいと思うのでありますけれども、とにかく、政府といたしましては、そういうふうな民間保険の負担の限度を越えるものに対しては国家が補償責任をとる、また、それに必要な措置は講ずべきである、こういうふうなことについて、どういうふうにお考えになっておられるか、官房長官及び大蔵政務次官からお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/10
-
011・赤城宗徳
○赤城政府委員 今お話しのように、原子炉の安全性については十分検討の上設置することに相なるわけでありますから、損害というものはあまりないという見通しのもとに設置することだと存じます。しかしながら、まだ未開発のものでもありますし、不測の災害が生ずることも考えなければなりません。従って、今お話しのように、民間保険もつけるわけですが、災害が生じた場合には非常に大きな災害に相なろうかと思います。でありますので、民間保険の限度を越したものについては、国家がこれを補償するという責任を当然感じておるわけであります。従って、その具体的内容等について、あるいは立法措置を講ずるというものについての法的な問題、そういうものを目下検討中であります。国において責任を感ずるということは強く考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/11
-
012・山中貞則
○山中政府委員 官房長官からのお答えで、別段付言する点もないかと思いますが、財政当局といたしましても、基本的考え方はほぼ同じでございまして、現在におきましても、一般的な問題の普通の大災害等に当りましても、国としては直接、間接支援もしくは救護等の手段を講じておるのでありまして、当然産業革命へのいしずえであります原子力の災害補償等につきましては、政府としても、より情熱を傾けて安全を期しますとともに、不測の場合の処置についても十分、関係者はもちろんのこと、国民のこれに関する期待が不安全性によって動揺せざるように措置することが義務的なものであるとさえ私は考えております。従って、今確定いたしておりますのは、五億ドルを限度といたしますアメリカ等の例があるだけでございますが、その他審議中のイギリス、西ドイツその他検討を加えている諸国がたくさんございますので、二、三年先に具体化いたしまする日本といたしましては、十分調査研究もいたしますし、また、日本の持つ特殊性等から考えまして、先ほど申しましたような、せっかく発足しようといたしまする新しい時代の先がけを、より安全に、しかも、より確実にしたい、こういう念願でございますので、今具体的に、日本がどういう限度の、もしくはどういう内容の立法措置を研究するというところまでは参っておりませんが、ただいま申し述べましたような考え方で、財政当局といたしましても十分誤まりなきを期していく所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/12
-
013・前田正男
○前田(正)委員 ただいま、両政府側から国家補償の責任を明らかにするというふうな御答弁をいただきまして、われわれ満足しているのでありますが、これは当然、先ほども申しました通り、原子炉の許可に当っては、各権威が各条件を十分に検討して許可されるわけでありますから、災害というものは万々一起りがたいものであると私は考えておるのであります。けれども、ただ御承知の通り、日本の国民は、特殊な事情によりまして原子力というものに対して非常に不安な考えを持っておる人が多いものでありますから、そういう場合において、政府が国家補償の責任をとるということを明らかにしてもらいますと、この原子力の開発というものは非常に発達をしていくと思うのであります。私は、そういうものはほとんど起らないと考えているのでありますけれども、ただいまの御答弁によりまして国民の不安を除き、大いに原子力の発達をはかって、国際情勢におくれないようにやっていきたいと思っている次第であります。
大体、私の質問はこれで終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/13
-
014・小金義照
○小金委員長 ほかに御質疑がないようでありますから、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。
この際、委員長より一言申し上げます。
昨年の七月以来、本委員会における原子力に関する調査審議会の経過並びに海外における原子力の事情等を総合考察するに、日本は、この際、すみやかに原子力の開発に格段の努力を払うべきであると判断されるのであります。そこで、わが国では、一方においてコールダーホール改良型実用原子炉の導入が具体的に進められておることは、まさにこの内外の情勢に即応するものと認められるのであります。しかるに、ただいま前田委員から御発言のあったように、原子力関係の研究及び技術者の養成に不可欠な教育用、訓練用の実験原子炉、しかも、世界的に普及しているような小型炉の設置等についても、ほとんど進展を示していないというありさまであります。これは、原爆に対する日本国民の感情等にも起因しておると考えられますが、原子力委員会あるいは政府当局は、すみやかに原子炉の安全性に関する基準を定めて、原子力開発に関する国民の不安を一掃して、その積極的な協力を求めるの挙に出なければ、悔いを後日に残すであろうと考えます。日本の将来に重大な関係のある科学技術の振興に関しては、関係当局が単なる聞き流し、あるいはまた、答弁のしっぱなしで終らしめるようなことは、断じて許されないところであります。ここに本委員会の総意を代表して、委員長から政府及び関係当局に対して警告を発する次第であります。
これより討論に入る順序でありますが、別段討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
これより核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/14
-
015・小金義照
○小金委員長 起立総員。よって、本案は可決すべきものと決定いたしました。
本案につきまして、菅野和太郎君より、自由民主党及び日本社会党の共同をもって、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。まず、提出者よりその趣旨説明を求めます。菅野和太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/15
-
016・菅野和太郎
○菅野委員 ただいま政府提出の法律案が満場一致で可決されましたことは、まことに御同慶の至りに存ずるのであります。
この際、附帯決議を付して、政府並びに関係各方面に対して、今後この問題に対する行き方などについて一そう注意を御喚起申し上げたいと思うのであります。
まず、附帯決議の案文を朗読いたします。
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案
原子力の研究開発を推進するためには、災害の予防とその補償が特にわが国の現実にかえりみて緊要である。従って、政府は最も速やかなる機会に左の各項の実現を期すべきである。
一、原子炉に関する万一の災害に対し、その責任の所在を明確にし、民間保険の負担の限度を超える分については、国家の補償責任を明かにするため、立法その他必要な措置を講ずべきである。
二、国家補償に関連して、大型実用原子炉の安全性に対しては、資料の公開、公聴会の開催等の手続を経て決定すべきである。併しながら、教育訓練用小型原子炉については、政府において、安全性等に関し国民の理解と協力を求むるよう措置を講じて原子力の研究、開発及び原子炉の設置を積極的に推進すべきである。
三、国際原子力機関憲章の趣旨に基き、原子力災害の賠償については、国際的規模における保険プールの設定に努むべきである。
右決議する。
以上が附帯決議の案文でありますが、この点につきましては、今までの委員会においてたびたび各委員より熱心な質疑があり、また、政府当局よりも御答弁がありましたので、この附帯決議文については、これ以上説明を加える必要はないと思います。どうぞ、よろしく満場一致可決されんことを特にお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/16
-
017・小金義照
○小金委員長 以上をもって趣旨説明は終りました。
これより採決を行います。核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付すべしとの動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/17
-
018・小金義照
○小金委員長 起立総員。よって、本案は附帯決議を付することに決しました。
この際、附帯決議に対する政府の所見を求めます。高碕国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/18
-
019・高碕達之助
○高碕国務大臣 今回提案されました法律案につきまして、満場一致御可決願いましたことを感謝いたします。同時に、ただいま御可決になりました附帯決議につきましても、政府は意のあるところを十分くみ取りまして、これが実現を期することに努力いたしたいと存じます。まことにありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/19
-
020・小金義照
○小金委員長 ただいまの附帯決議に関連して、岡良一君より質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/20
-
021・岡良一
○岡委員 先ほど委員長から政府に対して若干の警告がありました。私どもも、この規制法の一部改正案の審議に当りまして、御存じのように、内閣総理大臣ば原子炉の設置の許可権者でございますので、総理大臣の責任ある御意図もただしたかったし、また、原子力委員長としての高碕通産大臣にも、この委員会にできるだけ繰り合せ御出席を要望いたしましたし、また、国家補償の問題に関連いたしましては、当然大蔵大臣は御出席あるが至当と存じておるのでございますが、すべてそのことが私どもの意のごとくならなかった。そういう意味で委員会としては、この規制法の改正案についての審議において、国民に対してはまことに遺憾な思いを私は持っておるのでございます。
それはさておきまして、この機会に、官房長官は、総理大臣がこの委員会に御出席しがたいゆえをもって御出席のことと承知いたしておりますので、通産大臣並びに官房長官に若干この付帯決議に関連してお尋ねいたしたいと思います。
まず、第一の問題でございますが、この付帯決議では、国家の補償を明らかにしてもらいたいということを強くうたってございます。原子炉に万一の事故が起った場合、もし民間の保険による保険金によって第三者責任等がカバーできないときは、国の資金でこの災害の補償に当ろうという趣旨でございます。いわば、国民の税金で原子炉の災害の補償に当ろうという趣旨がうたってございますので、それならば、なおさらのこと、災害が起らない、事故を防ぐことという、この原子炉そのものの安全性が非常に重大な問題になってこようかと思うのであります。私は、その点について若干お伺いをいたしたいのでございます。
まず、この原子炉の安全性を検討するのはだれがやるのか。内閣総理大臣は、原子炉の安全性を設置許可の大きな条件にしておられますが、だれがこれをやるのか、まず、この点を明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/21
-
022・赤城宗徳
○赤城政府委員 御承知のように、原子炉の設置許可申請が近く提出される見込みになろうかと存じます。設置許可の申請がありました後に、政府としては、安全性あるいは経済性につきまして正式に審査を行うことになるのでありますが、その正式申請に先だちまして、現在設けてあります原子力委員会の原子炉安全審査専門部会において予備審査を始めて、並行的に安全性について検討を加えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/22
-
023・岡良一
○岡委員 それでは具体的にお伺いをいたしますが、いわゆるコールダーホール型という実用規模の動力炉の導入が漸次決定の方向に向っておるようでございます。この炉の安全性の点等は、それでは原子力委員会に付置されておるこの安全基準に関する専門部会が予備審査をされる、そうすると、最終的な決定はどなたがなさるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/23
-
024・赤城宗徳
○赤城政府委員 今予備審査をしておりまするし、申請がありまするならば、直ちに検討を加えますが、最終決定は内閣総理大臣、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/24
-
025・岡良一
○岡委員 内閣は、いかなる機関の意見を求められて最終的な決定をなさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/25
-
026・赤城宗徳
○赤城政府委員 今のところ、原子力委員会の決定を待って、総理大臣が最終的な決定をいたす、こういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/26
-
027・岡良一
○岡委員 原子力委員会は、それではその安全性をいかなる機関の議を経て決定されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/27
-
028・赤城宗徳
○赤城政府委員 ただいま申し上げましたように、原子力委員会には、専門部会として原子炉安全審査専門部会がありますから、ここにおいて慎重に検討した上に、原子力委員会でさらにそれを検討し、総理大臣に答申するということに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/28
-
029・岡良一
○岡委員 原子力委員長としての高碕通産大臣にお尋ねいたしますが、そういたしますると、原子力委員会は、その安全の基準に関する専門部会の答申をそのままに承認をされる、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/29
-
030・高碕達之助
○高碕国務大臣 原子力委員会といたしましては、原子力委員会のその部会において結論が出ますと、さらに原子力委員の全体会議にかけまして、よくこれを検討いたす考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/30
-
031・岡良一
○岡委員 原子力委員会を開催されて、その専門部会の御報告を検討なさる、それは、原子力委員会が原子力委員会のワク内で検討なさる、そういう意味でございますか。それとも、また、別途に他に権威者を網羅して、そうしてその安全性について、専門部会の答申に、さらに再検討を加えるという御用意はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/31
-
032・高碕達之助
○高碕国務大臣 原子力委員会におきましては、必要があった場合には、その他の関連する権威者を網羅いたしまして公聴会等を開いて、決定いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/32
-
033・岡良一
○岡委員 原子力基本法には、御存じのように、原子力の研究、開発は、民主的に公開をもってということを強くうたっておる。これは平和目的とともに日本の原子力研究、開発の三原則となって、これは議員提出立法で一昨々年の暮れ、満場一致国会が議決をしておる大方針でございます。たとえば、アメリカの場合でも、原子炉の設置許可については、単にその道の専門的な権威のみならず、地元の住民その他にすべての資料を公開をして、その公開された資料の上に公聴会を開いて最終的な決定をやる、こういう手続をとっております。今、委員長は、公聴会を開くと申されましたが、公聴会は開いていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/33
-
034・高碕達之助
○高碕国務大臣 これは原子炉設置の申請があります場合には——これは二カ所に出るわけであります。一つは科学技術庁、一方は電気事業会によりまして通産省に願い出るわけでありますが、通産省といたしましては、公聴会を開きまして、しかも、それは公開する公聴会として開きたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/34
-
035・岡良一
○岡委員 公聴会を開いて、これを公開されるという通産省の公聴会の意味は、安全性についてでありますか、エネルギー需給等の問題についてでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/35
-
036・高碕達之助
○高碕国務大臣 もちろん、これは二つの問題を含んでおります。安全がまず第一でありまして、第二の問題は経済的の問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/36
-
037・岡良一
○岡委員 原子力委員会が当然開くべきものではございませか。先ほど赤城官房長官の御説にもありましたように、設置の許可権者である内閣総理大臣は、当然原子力委員会の意見を求められる、原子力委員会の下には安全基準に関する専門部会がある、従って、その専門部会の意見を原子力委員会が求められる、さて、そこで、原子力委員会が最終的な決定をされる前に、原子力委員会がその安全性について公聴会を開かれる、その公聴会の結論をも十分に参考にし、尊重して、そこで原子力委員会としては、安全なりやいなやという最終的な御決定をなさる、そうして許可権者である内閣総理大臣に原子力委員会の最終的な決定をお伝えになる、これが順序ではございませんか。もし、通産省がこういうことをおやりになるとすれば、ただ、それはエネルギー需給の将来性にわたる具体的な数字の問題とか、あるいは、おそらく原子炉そのものによる発電の経済性の問題についてであって、通産省所管の問題は、おのずから分れているのです。安全性については、当然原子力委員会の所管であることは、これは原子力の各法規によっても明らかであると思いますが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/37
-
038・佐々木義武
○佐々木政府委員 私からお答えを申し上げます。原子力規制法にございますように、発電用原子炉に関しましては、電気事業という観点から、通産省も責任を持つ関係がございますので、内閣総理大臣が許可をする際には、通産省と協議の上これを決定するというふうに相なっております。従いまして、原子力委員会として原子炉に関して検討するのでございますが、その際、通産省とも協議いたしましてこれをきめますので、通産省といたしましては、電気事業としてこれを許可するに際しまして、経済性あるいはエネルギー需給等の面からの検討はもちろんでございますが、同時に、安全性に関しましても検討を加えまして、そして、これは電気事業会——占領当時の政令でございますが、それに基きまして公聴会を開いた上、許認可をきめるという法規上の建前になっておりますので、通産省といたしましては、当然公聴会を開きまして、その意見を十分尊重した上、協議に対するお答えをいただけるものというふうに考えております。しからば、原子力委員会で同じような公聴会を別途開くかどうかという問題に関しましては、ただいまのところ、原子力委員会として公聴会を開くというところまでは考えておりませんけれども、お説のように、資料等は原子力基本法に基きましてもちろん公開はいたしますし、何ら秘密事項等はなしに、国民全般の御意見をちょうだいできるような措置は講じたいというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/38
-
039・岡良一
○岡委員 だから、問題は、単なる水、火力の発電事業を新しくやるというのではない、特に問題のある原子力発電をやろうとするのである。そして、その炉の運転をした結果、いろいろ考えられる経済性なりエネルギー需給の問題は、通産省の所管として十分御検討いただけばよいし、あるいは従来の法規や慣例に基いて公聴会を開けばよい。しかし、この原子炉の安全性に関する問題は、原子力の研究、開発の中心機構である原子力委員会の所管であると思う。私が安全性の問題を特に強く申し上げますのは、これは原子力発電を拒否するとかなんとかいう気持ではございません。いつも申し上げますように、日本は、原子力が軍事面に用いられた結果として、まことに手痛い打撃を受けておる。その結果、原子力に対して本能的な恐怖がある。小さな教育用の原子炉でも、敷地問題で地元の反対があって、これがなかなかできない。こういうような恐怖感というものを打破する道は何か。一つは、政府の原子力委員会が、ほんとうに責任を持って原子力の安全逆転をやってみせるということ。いま一つは、それでも現在のところは、御存じのように、絶対安全な原子炉というものは考えられないということは、原子炉に対する世界の定説なのである。してみれば、こういう権威者の意見というものを十分尊重して、いやが上にもこの安全性を確かめる、責任ある安全性の検討をなし遂げるということが、原子力の研究、開発の中心機構である原子力委員会の当然の責任であると私は思う。してみれば、通産省の公聴会は通産省の公聴会としておやりになるとしても、原子力委員会が主体となって当然公聴会を開く、この手続をとるということは、原子力基本法にいう、いわゆる民主的な原子力の研究、開発という大原則からして当然とるべき措置だと私は信じております。この点について、もう一度原子力委員長の御所見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/39
-
040・高碕達之助
○高碕国務大臣 私は、電気事業会というものから考えまして、通商省がやります公聴会というものは、決して経済問題だけではなくて、少くとも、安全性ということが第一でなければならないと存じますから、私はこれで十分だと存じますが、今、岡委員の御指摘になったような点から考えまして、原子力委員会としてもこれは相当考慮する必要があると存じますので、今の御意見に基きまして十分考慮して善処いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/40
-
041・岡良一
○岡委員 そうではない。今あなたは、公聴会を開くとおっしゃられたので、その公聴会を開く具体的なことについてお尋ねをしようとしたら、いや、公聴会は通産省が開くのだとすりかえられておるので、これが私は問題だと思うのです。単に考慮してもらうのではなくて、あなたは開くと言われたが、開かれるのか開かれないのか。開くというのを取り消されるなら取り消しをされて——私は当然開くべきだと思います。開かれますか、開かないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/41
-
042・高碕達之助
○高碕国務大臣 今申し上げました通りに、通産省といたしましては、公聴会を開くということははっきり申し上げておりますが、原子力委員会におきましてこれを開くか開かぬかということにつきましては、十分今後検討してからお答え申し上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/42
-
043・岡良一
○岡委員 これは、私は当然開いていただきたいということを強く申し上げておきます。特に、私がなぜこれを開くべきであるということを強く主張するかと申しますと、この前の委員会でも原子力委員長に御出席を願いたかったのですが、原子力委員会に付置されておる安全に関する専門部会はコールダーホールについては小委員会を持っておられて、すでに予備審査をやっておられる。ところが、このコールダーホールの小委員会なるものは、私は特定の人を取り上げて申し上げるのではございませんが、原子力発電はコールダーホール型でという方向に、むしろ積極的な賛成論者の諸君がかなり多数を占めておる。これでは、十分な安全性についての責任ある検討がこれらの委員会でなし得るかどうか、少くとも、基本法にいう民主的な最終的決定がなされるかどうかということについては、正直のところ、私は若干疑義を持っております。しかも、現に資料を公開すると大臣はおっしゃる。先般、私はこの委員会で、東海村というところにコールダーホール型を入れるというならば、果して気象条件はどうか、こういうことを当事者にお尋ねをした。その気象条件が適当であるならば、適当であるという資料を早く見せてもらいたいということを要求をいたした。ところが、これもいまだに提示されておらない。しかも、私が聞きました範囲内においては、今日までの気象条件の調査というものは、コールダーホール型のような大型の実用炉を入れるには不適当だということを、私は資料として得ておる。私の資料は私のものでございますが、やはり公けに、これは安全であるということを、公開の資料として当然国会に提出さるべきである。こういうところに、私どもは納得しがたいものを実は感じておるのでございます。そういう意味で、一切の資料を公開をして、そして公聴会を開いて、あらゆる方面の権威者の諸君の意見を聞かれるということが私は当然なことだと思う、こう申し上げておるのでございますが、重ねて、ぜひ一つ公聴会を開いていただきたい。委員長の御所見を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/43
-
044・高碕達之助
○高碕国務大臣 現在までに出ております資料につきましては、十分公開いたすことをはっきり申し上げておきます。同時に、岡委員の御希望のごとく、原子力委員会におきましても公聴会を開くかどうかということにつきましては、できるだけ御趣旨に沿うように善処いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/44
-
045・岡良一
○岡委員 それで、コールダーホール型については、とにかく大型のものでございまして、この大型の実用向きの発電炉が、万一事故を起したときにはどういう結果になるかということについての公式な資料として私どもが手にしておるものは、二年前にアメリカの原子力委員会が発表しておる公けの資料でございます。これによりますと、六万キロワットの原子力発電炉でも、万一全面的な事故が発生したときには、その放射能による被害の区域は十五万平方キロメートルである、死亡者は四万三千人である、そうして、その損害の総額は、一平方キロメートル五百人の人間が居住しておるという前提の上に立って、また、その地域においては農産物が作られておるという前提に立って七十億ドルである、これはおどかしじゃない。AECの公式な発表として、こういうものが発表されておる。六万キロワットでこうでございます。まして、十五万キロワットからのものをやろうというならば、私どもは、念の上にも念を入れていただかないと、これは、単に万一の場合の事故の災害だけではなく、わずかな故障があっても、原子力に対する国民の本能的な恐怖というものに輪をかけることになる。せっかくの原子力の研究、開発が、ここで大きなロックに乗り上げてくるというようなことがあってはなるまい、こう思いまして、やはりそれには国民の納得を得ることが大事だ、そのための手続というものは、念にも念を入れて、できるだけやっていただきたいということで申し上げておるわけでございます。
なお、意見にはなりまするけれども、さらにこの機会に申し上げておきたいことがございます。原子炉が安全であるか安全でないかということについては、これもまた、やはり専門の国際的な権威者の諸君の意見は、結局、原子炉というものには、本来、原子炉の安全性を守る一つの固有の原則というものが備わっておる、これが、むずかしくいう、いわゆる負の温度係数というものであります。だから、この固有の安全性の原則というものが無視されたような設計の原子炉であるということは、そのこと自体がすでに災害というものを予想させるではないか、こういうことを、昨年の十月、ジュネーヴの国際会議でもアメリカ側の諸君は非常に強調している。ところが、今度のコールダーホール型においては、マイナスの温度係数でない、正の温度係数というものを前提として、しかも、それで万一事故が起った場合には二重三重の装置もしてあるし、かつはまた、時間的な余裕もあるから、万々大丈夫であろう、こういうような考え方から出発している。ここにも問題があって、すでに先般ここで参考人の御意見を闘いた場合に、藤本東大教授——おそらく日本の学術会議の原子力関係の大部分の御意見としては、非常に危険である、非常に軽率であるという御意見であったわけです。これらの意見というものがもし無視されるというならば、すでに原子力委員会は、原子力基本法の、民主的な手続をとって原子力の研究、開発を進めるという、この民主的な原則をみずから無視されることにもなる。現在は、原子力産業界と原子力関係の学術界と、二本の軌道の上に調和をとって日本の原子力の研究、開発をお進めになることが、原子力委員会の当然のお仕事でなけれぱならぬ。一方のレールを無視されるというようなことがあってはならないと思います。特に、たとえば、先般原子力発電会社の方は、この原子炉に、いわばがんじょうなおおいをつけるかつけないかという問題では、つけないでもいいと言っておられる。これも私は非常に危険なことだと思います。アメリカでは、実用規模の原子炉は、まず炉心部をおおう、その次には、従業員に対して、漏れて出る放射能の障害を与えないような遮蔽をする、その上、万一の事故があっても、これが構内から外に出て一般の住民に被害を与えないために、さらに気密に設計されたところの大規模な鋼鉄のコンテイナーを作って、格納容器の中におさめている。ところが、これも要らないと言っておられる。こういうことでありますが、先ほど申しました例のアメリカの原子力委員会の報告書を見ると、これがあるかないかによって、こういう大規模な原子力発電所の災害というものが、第三者に災害を及ぼすか及ぼさないかの確率を、こう言っている。この報告書によると、これがあれば、万一の事故があっても、構内外の住民に対する放射能の障害というものの確率は一億分の一ないし十億分の一である、ところが、この大規模な鋼鉄の気密容器がない場合における第三者に及ぼす放射能の障害というものは、これは一万分の一ないし十万分の一だ。これがあるかないかということで、事故に基く第三者災害の予防における確率が、一方は一億分の一ないし十億分の一、これを作っておかなければ一万分の一ないし十万分の一だ。ところがこれを作るべきだと言ったところが、作らなくてもいい、こういうようなことであります。だから、気象条件の結果は発表されない、しかも、この構造において、もう原子力の専門家ならばだれしも申しているところの、炉の安全性についての負の温度係数の問題についても、いろいろな理由を設けて安全であるということを固執せられる。それでも、なお念のためにこの容器を作るべきではないか。何も日本だけのことでない。アメリカは全部作っているのだから、ぜひおやりなさいと言うけれども、これも作る必要はない、こういうような形でコールダーホール型が導入されるということは、これは、とにかく国会の意思、国会の意見というものを全く無視された形における、いわば一方的な独走であって、これでは民主的でもなければ、資料の公開も、われわれとすれば納得ができない状態にある、こういうことでございますので、原子力委員長としては、ほんとうに日本の原子力の研究、開発の将来性に真剣に責任を持って思いをいたされるならば、私どものこの附帯決議の、特に第二項の問題について、十分安全性を検討されたか。そこで、私は御提案申し上げたいのでございますが、科学技術会議というものがいよいよ発足いたします。私どもは、科学技術会議というものに対しては大きな期待を持っております。そこで、科学技術会議は、当然、この大型動力炉の安全性については、責任ある御検討を、ぜひとも願わなければならぬと思う。これは、先ほど山中大蔵政務次官も言われたように、原子力の平和利用というものが第二次の産業革命をいざなっておる。しかも、これを日本において進めるか進めないかという大きな岐路に立つものでもございますので、科学技術会議は、大型動力炉の安全性に対しては、まず責任を持って検討を加えるという態度に当然出るべきだと思う。何も科学技術会議の皆さんが直接されるのではない、科学技術会議がしかるべき機関に公開的な形で委嘱をされて、そうして大型炉の安全性に対して責任ある検討と結論を得られる、ここまでの措置はとっていただきたいということを、私は心から願っておるのでございますが、この点、通産大臣は当然科学技術会議の最も有力なメンバーでもございますので、通産大臣の御所見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/45
-
046・高碕達之助
○高碕国務大臣 原子力が日本の産業の将来にとっていかに重大であるかということを考えましたときに、第一回に導入するコールダーホール型というものにつきましては、岡委員のおっしゃるごとく、念には念を入れて、十分の検討を加えてやらなければならぬということは全く同感でございますが、それにつきましては、岡委員のおっしゃったごとく、できますれば原子力委員会におきまして公聴会を開きたい、こういうふうなことについて十分検討いたしたいと存じます。
また、科学技術会議につきましては、大きな別の意味の使命があるわけでありますから、ただいまのところ、科学技術会議にこれをかけるかどうかということは考えておりませんが、これらの点につきましても、原子力委員会の公聴会にかけるかというふうな問題と並行的に、十分検討いたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/46
-
047・岡良一
○岡委員 科学技術会議のお仕事は、もちろん広範にわたっておりますけれども、日本における近代科学の研究、開発を進めようという使命においては、科学技術会議の使命はこれであり、なお、それの具体的な分野として原子力委員会の使命が原子力の分野であるわけであります。しかし、原子力の研究、開発というものが近代科学の進歩、発展のための最も大きな分野であることは、大臣も御否定でないと思う。してみれば、この炉が万一事故を起すならば、日本の原子力の研究、開発も大きなデッド・ロックに乗り上げるかもしれないという重大な問題について、科学技術会議は責任を持ってこれに関心を注がるべきが当然だと思う。いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/47
-
048・高碕達之助
○高碕国務大臣 御意見は一応傾聴に値すると私は思いますが、ただいまのところ、まだそこまでは決定いたしておりません。しかし、御趣旨に沿うように十分検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/48
-
049・岡良一
○岡委員 どうせ、科学技術会議の運営について、万般の作業は科学技術庁がおやりのことと思います。もちろん、文部省なりその他の関係もあろうと思いますので、科学技術庁としては、やはり科学技術会議が、こうした日本の原子力の将来の成否を分つような重大問題、いわゆる大型炉の定全性の問題については、十分責任ある関心をお示しをいただくように、科学技術会議内部においてぜひとも、御努力をお願いしたい、このことを申し上げて、私の質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/49
-
050・小金義照
○小金委員長 ただいまの議決に伴う委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/50
-
051・小金義照
○小金委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
次会は公報をもってお知らせすることといたしまして、本日は、これにて散会いたします。
午後零時五分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103913X00819590311/51
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。