1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月四日(水曜日)
午前九時三十九分開議
出席委員
委員長 櫻内 義雄君
理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君
理事 佐々木盛雄君 理事 床次 徳二君
理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君
理事 森島 守人君
椎熊 三郎君 千葉 三郎君
福田 篤泰君 前尾繁三郎君
松田竹千代君 山村新治郎君
帆足 計君
出席国務大臣
外 務 大 臣 藤山愛一郎君
出席政府委員
総理府事務官
(調達庁総務部
長) 大石 孝章君
外務政務次官 竹内 俊吉君
外務事務官
(大臣官房長) 内田 藤雄君
海上保安官
(海上保安庁次
長) 和田 勇君
委員外の出席者
外務事務官
(経済局次長) 高野 藤吉君
専 門 員 佐藤 敏人君
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二月二十八日
委員大西正道君辞任につき、その補欠として岡
田春夫君が議長の指名で委員に選任された。
同 日
委員岡田春夫君辞任につき、その補欠として大
西正道君が議長の指名で委員に選任された。
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三月二日
千九百五十八年の国際砂糖協定の締結について承
認を求めるの件(条約第五号)
所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
脱税の防止のための日本国とノールウェーとの
間の条約の締結について承認を求めるの件(条
約第四号)(予)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第七八号)
所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
脱税の防止のための日本国とノールウェーとの
間の条約の締結について承認を求めるの件(条
約第四号)(予)
千九百五十八年の国際砂糖協定の締結について
承認を求めるの件(条約第五号)
国際情勢に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/0
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001・櫻内義雄
○櫻内委員長 これより会議を開きます。
国際情勢に関して調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これに許します。帆足計君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/1
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002・帆足計
○帆足委員 大臣のお時間が制限されておりますので、雑用に関することはあとでお伺いするとしまして、最初に大臣にお尋ねしたいのですが、今朝の新聞によりますとソ連フルシチョフ首相とイギリス、マクミラン首相との間に、平和に関する広範な取りきめの前提になるような明るい共同声明が発せられております。私はかねて藤山外務大臣に英国的合理主義的な良識の片りんをうかがうことができまして、まことに頼もしく存じておりました。また先年外相が海外にいらっしゃるにあたりましても、カナダの外務大臣あるいはイギリスの外務大臣等に会いまして、東西二つの世界の平和共存、合理的な話し合い等に対して関心を持たれまして、それぞれの国の最高首脳部の意見を徴せられて、アメリカとの会談に臨むというような含みのある態度をとられておることに対して、心ひそかに敬意を表していた次第でありますが、本日の新聞報道によりまするこのイギリス、ソ連両首相の会談の結果は、原子力に処する人類の前途に明るい希望をもたらすものであると考えまして、このような精神こそ、日本の政府並びに外務省当局がもって範とするに足る路線の一つでないかと思われますので、この際、外務大臣のこれに対する御所見を伺っておきたいと思う次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/2
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003・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 フルシチョフ首相とマクミラン首相との共同コミュニケは、けさ実は私も早々の際にちょっと一瞥いたしましたので、内容その他について、全部まだ十分な検討をいたしておりません。従いまして、申し上げることがあるいは若干不用意な点があろうかと思いますが、何はともあれ、今回のマクミラン首相がソ連に行かれまして、そうして懇談を遂げられたという事実は、これはやはり自由主義陣営と共産陣営との問に、問題をできるだけ話し合いによって解決していこう、しかも相互の意思をできるだけ率直にお互いに話し合いながら、完全な理解を持とうという意味であったと思うのでありまして、そういう意味において、マクミラン首相の訪ソというものは、一つの大きな意義があったと思います。滞在されておりました間にいろいろの経過もあったようでありますけれども、しかし、共同コミュニケに表われております精神というものは、やはり両方ができるだけ今後の世界の共存というものについて、問題を話し合いながらやっていくという友好精神にあったと思うのでありまして、そういう意味において、われわれとしては、まことに過当な機会に訪ソされ、そうして話し合いも十分されて、そうして共同コミュニケに表われている精神そのものはけっこうなものではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/3
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004・帆足計
○帆足委員 私はこの際政府当局の御注意を促したいと思うのですが、今日近代的な社会問題、並びにそれから発展しました社会主義と資本主義という課題は、人類の進化の過程における当然の課題だと思うのです。あえて怪しむに足らぬほど平凡にして当然な課題だと思うのです。この時代において、二つの陣営におけるイデオロギーの相違、また国内における労使のイデオロギーの相違などは、それほど不思議に思うに足らぬ歴史進化過程上の現象でありまして、従って、イデオロギーの相違のゆえをもって直ちに不倶戴天の敵と考え、敵対政策に出るということは、これはきわめて幼稚な頭脳か、野蛮人の考えることであって、イデオロギーは違っておっても、かつて回教徒とキリスト教徒とが百年近くの愚かな争いの後に、やがて共存の道を発見いたしましたように、原子力時代において、イデオロギーの相違にもかかわらず平和の道を発見するということが、今日良識ある政治家に課せられた任務だと思うのです。たとえば、ソ連に対する日本政府の態度は、やや合理的な線に鳩山さんの御努力によって乗りつつあるようでありますが中国に対して、イデオロギーが違うから敵対政策をとるというようなことはまことに幼稚なことであって、今日、中国の政権が磐石の基礎の上に立っており、好むと好まざるとにかかわらずあの道を通じて中国が発展しつつあることはもうごうも疑うことができないわけです。しかるが以上は、私は中国の政府と日本政府とは胸襟を開いて語り合う機会をつかむべきであると思うこれは今次のイギリス、ソ連の会談の精神とも相通ずるものである。少くとも、今直ちにそれが実行できなくても、そういうような方向に進むのが当然であると思いますが、イデオロギーの相違と敵対政策ということについて外務大臣はどのようなお考えを持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/4
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005・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 イデオロギーがかりに違いましても、共存し得ることは当然のことであります。また理想であると思います。たとえばユーゴは共産主義を主張しておりますけれども、また共産主義をもって国を立てている国でありますが、日本としてユーゴと友好親善関係を持っておりますことむろんであります。ただ、これらの共産圏の間と日本の関係においても、あるいは共産圏と日本ばかりでなく、自由主義陣営の中においても、いろいろこれは歴史的な過程があるわけでありまして、そうした同じ自由主義を信奉し、あるいは違った共産主義を信奉しておるそれぞれの国に対しても、その国との歴史的ないろいろの関係の結果として、直ちにいろいろな話し合いに応じ得ないような場合もあることは、これはやむを得ぬ現実の事態だと思います。われわれとしては、中共を特に敵視しているわけではないのでありまして、そうした歴史的な現実の上に立って問題を将来考えていくというのが、現在の政府の態度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/5
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006・帆足計
○帆足委員 中国に対する敵視政策をとろうとは思わないという外務大臣のお考えが真実であるならば、こいねがわくはそれを内閣の統一的意思に持っていき、そうして今後の政策の上に現わしていただくことを切望したいと思いますが、現実としては必ずしもそのようになっていないことを私は遺憾に思います。
次いでお尋ねいたしますが、安保条約の問題については、当委員会において主たる点は論議し尽しましたが、きわめて重要な二、三の点については今後さらに慎重な論議が必要であると思っております。最も必要なことは、日本の国土の範囲の定義をどこに置くかということよりも、日本における基地軍の発動の条件がどうなっているか、すなわち国土が侵されたとりきに単に発動するというのではなくて、アメリカの極東政策並びに一般的、抽象的に極東の平和と安全の維持に寄与する必要があるときには基地から出動し得るというようなことになっているとすれば、私は、非常にこれは危険であると思うのです。この点についての外務大臣の御所見と、それと連関して、同時に出動の条件並びに軍の配置については事前協議をなし得るということになっておって、この内容こそは国民の最も伺いたいと思うところですが、事前協議の意味、すなわち平時における配備についての事前協議、また常時出動についての事前協議、また大局的戦略についての事前協議、緊急の場合における事前協議、これにこたえ得る機構と運用が確保されていなければならぬと思いますが、われわれの心配する点は、緊急非常の事態には、巨象と小ネズミとがけんかするようなことになって、小ネズミが圧倒されて、拒否権があるということは空文のみ、時が間に合わないということで、国会外務委員会の審議も経ずして、一挙に重大なることが外部から強制されるおそれがある。これは保守、革新を問わず、日本国民である以上はだれでも心配するところであろうと思いますので、この問題について詳細なかつ技術的な検討も必要だと思います。この席では時間がありませんから、こまかなことはさらに引き続いて事務的に検討することといたしまして、それについてこの大綱のお考えを外務大臣から伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/6
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007・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 アメリカが日本において基地を使用する。日本はまた基地を提供する。これは日本を侵略から守ることであることもちろんであります。同時に、日本が侵略されることは、やはり極東の平和と安全を非常に大きく害することであろうと思うのであります。極東の平和を守る上からも、日本は侵略を受けてはならぬというふうに考えております。また同時に、日本の侵略ということがいろいろな段階において考えられると思うのでありまして、日本を侵略する一歩手前の状態というようなものも考えられる。作戦行動というものは、おそらく一気に来られる場合もありましょうし、あるいは逐次島伝いにくるというような作戦もあろうと思います。そういうような問題を考えて参りますと、侵略を受ける場合の状況というものは、いろいろな形で行われることが判断されると思います。そうした意味において、いろいろな場合に協議し、そうしてそれに適当に対処していかなければならぬことは、日本を侵略から守る上において当然考えられるところだと思います。お話のように、協議の場合に、一般的な極東に非常な危機が起っておる。その結果は、将来あるいは日本に侵略が起り得るのではないかというような段階における協議も政治的にはあろうと思います。また、周辺において軍事行動が非常に活発に行われ、そうしてその結果としてある時期には日本が侵される、軍事的に進攻を受けるというような状況もあろうかと思います。そうした意味における協議もあるいは行われるのではないかと思います。またただいまお話になりましたように、侵略そのものが軍事的な形において、瞬間的と申しますか、そういうようなことも、思考の上では、ほんとうに一瞬の協議もできないということもあるいは予想されないことはございませんけれども、しかし、軍事的な瞬間的な事態というものは、お天気であって、急にスコールがぱっと十秒や二十秒の間に起るということは、軍事行動ではむしろあまり予想されないのではないか。やはり前提としてのいろいろな条件があるわけでありますから、そういう意味においては私は協議のある程度の時間はあり、また前から協議することによって、それらに対処していく方法が時間的にあり得るのではないか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/7
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008・帆足計
○帆足委員 私が申し上げたかったことは、日本の国土が直接侵されるというような場合における国土の定義とするならば、事はきわめて明確でありますけれども、侵されるおそれがあるということで、アメリカの極東戦略一環の見地から、南太平洋または日本の周辺に危険があるという口実のもとに兵が動く、そうしてそれがまた事前協議の名のもとにおいて若干協議されるということであれば、それは日本の運命に関する問題であるから、従って今日の時代の戦争に自動的に、機械的にそれに巻き込まれるということは絶対に危険であって、従ってそのブレーキとして事前協議というものを置くならば、その事前協議の機関というものは、絶大な力と慎重なる手続と忍耐力と明察とを持っていなければならぬ。それが自衛隊ありたの時代おくれの軍人あたりがそういうようなことをきめるということでは国民は安心できない。従って、外務大臣の意味するところの事前協議というものは、どういうものであるかということは、徹底的に当委員会において私は論議されねば、事前協議の美名のもとに日本が火中のクリを拾うようになることは必至であるとさえ思っておるのが、私は一般の心配だと思うのです。従いまして、この問題に対しましては、今後徹底的な論議また分析が必要である、かように思っております。
それから行政協定の問題は、御承知のごとく多くの国民の主権に対する制限を含んでおりますから、当然国会の批准を受けねばならぬものと思いますが、行政協定の問題についてはまだ十分な論議が少しもされておりません。従いまして、議会に諮ると外務大臣は言っておりますけれども、議会に諮るという意味は、徹底的にこの外務委員会なり本会議で論議すること並びに安保条約と同様に議会の批准を必要とすることが当然であるとわれわれは思っておりますけれども、外務大臣はそれを厳密にどのように解釈されておられるのか、承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/8
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009・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 行政協定につきましては、非常に広範であり、かつ内容につきましても事務的な問題が非常に多いと思います。しかし事務的な問題であるから国民生活につながっているとも申し上げられると思うのでありまして、これらの改定というものは相当慎重にやるべきだと思います。私どもの現在の考え方としては、これらの問題について十分論議を尽して参りますのには相当時間がかかると思います。従って少くも安保条約改定に当りましては、重要な点を二、三改正いたしまして、そうしてさらにゆっくりとこれらの両国の問題については十分討議を尽していくというふうにいたして参りたい、こう考えておりますが、できましたものにつきましては、議会に提出して批准を受けるような考え方で現在やっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/9
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010・帆足計
○帆足委員 これを議会に提出して諮るというお考え自体には私は賛成でありますが、関税の一円、二円のことでも動かすのには国会の了解が心要である。それ以上の多くの問題が行政協定にあるわけでありますから、一つその点は従来のように、これは行政協定だから行政機関が勝手にきめ得る協定であるというような子供らしいお考えでないように切にお願いいたします。
次にお尋ねいたしたいことは、先日の新聞に、沖縄の那覇を自由港にしたらどうかという案が相当強く伝えられておりました。私はこれに連関いたしまして、自由港香港の歴史や、それからイタリアとユーゴスラビアの境にある自由港の歴史などを百科辞典で調べてみたのですけれども、いろいろそれについて問題があります。ことにここを自由港にいたしますと、これが第二の香港になり、そこに日本の設備、加工工場ができるというよりも、外国資本の加工工場がそこにできて、そして日本に不利な状況が出てくる。そこがまたやみの策源地にもなるというおそれがありますので、一応私ども良識的に考えますると、那覇の自由港という案には賛成できがたいと思いますが、さらにこれはそういう動向があるならば大いに検討せねばならぬと存じております。これに対して外務大臣はどのようにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/10
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011・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 沖縄に在住いたしております方々の間に、自由港というような問題が若干問題になっておることは私も承知いたしております。ただ、今帆足委員のお話のように、自由港という問題についてはいろいろ利害得失もございます。従って、それらの点については十分検討を要するものがあるのでありまして、今にわかに自由港にした方がいいとか悪いとかいうことを申し上げかねると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/11
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012・帆足計
○帆足委員 私は沖縄が第二の香港の道をたどることには絶対に反対でありまして、政府としても慎重なる警戒をお願いしたいと思います。
次いでお尋ねいたしますが、北鮮の帰国問題につきましては、政府の御努力を多といたしますが、一、二の問題がございます。
第一は、安全航行の問題でありますけれども、どうもこれが少し誇大に伝えられまして——これは航路の選び方によればそれほど他国を刺激しない問題でありまするし、正常なる滞在者の帰国の問題でありますから、これに対して韓国軍が攻撃を加えるならば、人道の敵として弾劾されるわけでありますから、いかに韓国軍といえど、そういう非常識なことは私はあり得ないと確信いたしまするし、同時にまた現在韓国軍は国連軍の指揮下にあるはずでございます。従いまして、国連の意思を無視してそのようなことが行われ得るはずのものでもないと思いますから、この安全航行の問題は大した問題ではあるまい。従いまして、それについての正確な政府のお考えを伺いたい。
それから第二には、国際委員会に今頼んでおりますが、私は安全の問題がさほど心配するに値しないとするならば、赤十字国際委員会にわれわれの望むところのものは、一般的にモラル・サポートと、日本赤十字と北鮮赤十字とまたはソ連赤十字等と協議するためのあっせんを依頼するという程度でよいのであって、赤十字国際委員会に何もかも責任を負わしてしまうということが果して妥当であるかどうか。それはもう少し北鮮赤十字と日本赤十字と相談の上、こういうことは両赤十字だけでは解決つかないということがあれば、さらに国際赤十字と相談することにいたしまして、今日常識で見ますると、安全航行のことも大した問題ではありませんし、また帰国意思の調査の問題も正常なる在留者の調査でありますから、一定のさく内に抑留されておる強制帰還者または捕虜の強制帰還者とは全く範疇を異にしておりまして、本来ならば三々五々わが祖国に帰っても差しつかえないという自由な領域における意思決定の問題でありまするから、これに対しましても、その帰国意思の表示手続の方程式をただ赤十字が監視して了承しておればよいというほどの問題であろうと思います。従いまして、赤十字国際委員会に適当なる責任を課すというよりも、その国際赤十字のモラル・サポートとあっせんをお願いするというようなことに国際法的にも落ちつくのではあるまいか、その点につきまして、多少行き過ぎの点がありはないかと思いますが、日本の政府としましては、国際赤十字にどれほどの責任を負わせようとお考えになっておられるか。一日も早く北鮮の赤十字と日本の赤十字が具対的問題に対して相談するならば、こういう点は大体解決つくが、こういう点は国際赤十字にお願いせねばならぬということは、もっと具体的にはっきりするはずでありますが、承わるところによりますと、日本赤十字と朝鮮赤十字の会談に対して国際赤十字にあっせんを当然頼んであるものと思っておりましたところ、必ずしもそこまでいっていないという情報が伝わっておりますので、まさかそういうことはあるまいと存じますけれども、その辺の経過もあわして伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/12
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013・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 帰還船の安全に関しましてはむろん私はこうした問題について韓国側が何か妨害行動に出るというふうには考えないのが当然であると思います。ただこうした事態が起ります直前において、韓国側にいろいろな意見もあったように思います。従ってわれわれとしては、やはり現実に問題を取り扱って参ります場合に、相当注意をして参らなければならぬことは当然でありまして、そうした注意をできるだけいたしまして、むろんないということは、そう考えてはおりますけれども、しかし最大限の注意だけはいたして参らなければならぬのは、政府としては当然のことだと考えております。
国際赤十字にはまず第一にわれわれとしては帰国者の意思を決定してもらわなければならぬと思って申し入れをいたしておるわけであります。御承知のように何か日本が国内に置いておくのが困るから追放するかのごときいろいろな流説もございますが、われわれは決して国内にいる朝鮮の人を追放するような気持で帰還をきめたわけではないのでありまして、自由意思によって帰られる方は帰ることができるのだということをきめただけなんでありますから、そうしたいろいろな流説があります以上は、やはり国際赤十字の確認を得ますことが、これらの問題に対してほんとうにはっきりした日本の心持を解明し得る方法であろうかと思います。
なおそれに伴いまして、帰還の問題については全般的にいろいろ障害が起りまして、目的を達せざるようになっても相済まぬのでありますから、従ってそれらの問題についても一応国際赤十字に対して事情の説明をいたし、必要があればあっせんを依頼することは当然なことだと思うのでありまして、そういうことでただいま日赤の井上外事部長がいきまして、この問題の経緯とそれから帰還者の意思を確認してもらうということ、並びにその後に起ります送還の手続等についてのいろいろな意見を申し述べておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/13
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014・帆足計
○帆足委員 今の安全の問題は、日本の領海自体を使って北方から航路を選べば問題ありませんし、それから帰国意思の調査も、今の大臣のお考えの通りであって、そうしてしかもこれは正常なる滞在者の帰国意思の調査ですから、一人々々調査する必要はごうもないのであって、帰国意思は、こうした人の申し出が強圧によらないということを確認し得る方程式を作りさえすればいいわけでありますから、国際赤十字はほんのモラル・サポート程度でそれは済むのではないか。従いまして北鮮赤十字と日本赤十字との協議を始めることが、私は問題解決のかぎであるように思いますが、それはそういうふうになっておるかどうか。それから同時にPR運動が足らないと言われておりますけれども、韓国側からはジュネーブに民間代表をやり、また三人、国会議員が日本に説得に来るそうでございます。しからば日本側からも一つ韓国に説得に参るのが当然であろうかと思いますが、李承晩を説得し得るほどの勇士は、大野伴睦氏を除いてはちょっとあるまいかと存じますが、しかしこういうことは互恵平等でありますから、こちらから韓国内に人を一人も入れないでおいて、向うから一方的にやってくるのは国際通念に反しておるものでありますから、すべて互恵平等にやってもらいたい。柳公使のごときは、この前ラジオを聞いておりますと、藤山外務大臣を呼びつけにしておって、下手な日本語で聞いておられませんでした。私はこういう非公式の大使がこういう不遜な態度に出るということは、まことに韓国の名誉のためになげかわしいことである。あれはまさに捨てぜりふではないか、一国の公使としてまことにお気の毒な次第である。それに対して外務大臣の態度は、一この前赤尾敏あたり、ああいうつまらぬのがもぞもぞしましたようでありましたけれども、まことに落ちついた態度であって、私は日本の外務大臣の品位の高きことを大いに誇らしく感じた次第でございます。従いまして、韓国と今後いろいろなことが起りますが、一方的に彼らがほしいままにすることは押えまして、そうして人類は互恵平等であるということを懇切に李承晩に教えてやることが必要であろうと私は思いますから、そういう態度でやっていただきたい。従いまして、韓国から使節が来るといいますけれども、ただのこのこやってくる、そうして日本側からは一人も入れない、そういうような態度はとらせないようにすべきであるまいかと存じますが、先ほども日赤と朝鮮赤十字との会談が早く始まるように、国際赤十字にあっせんしていただくことが私はいいと思っておりますが、それについてのお考えもあわせて伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/14
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015・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 国際赤十赤には、ただいま申し上げましたように、帰還者の意思決定その他これを円滑に遂行していきますためのいろいろな話し合いをいたし、また国際赤十字からアドバイスをもらいますように今日話をしておるわけであります。従って国際赤十字がこういう方法をとったらいいだろう、ああいう方法をとったらいいだろうということ、これは人道的立場で円滑に行きますように注意をしてくれると思います。われわれはそうした国際赤十字のまず第一義的な注意というものを十分尊重して参りたい、こう考えております。
韓国から何か説得使節が来るということは、私も新聞紙上で見ましたが、特段に通報は受けておりません。今日日韓間の関係におきましていろいろな感情的な問題があろうと思いますし、われわれとしても韓国側の態度に対して心ずしも全面的に賛成はいたしておりませんが、しかし日本としてはあくまでもおとなの態度でいきたいというような気持で、私としてはそれらの問題に善処して参りたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/15
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016・帆足計
○帆足委員 もう時間も迫りましたので一つお尋ねいたしたい。
先ほどの帰国の意思の調査につきましては、外国からも誤解があるようでございます。国内におきましても、一定のさく内における強制抑留者の調査というようなことの問題との間にやはり錯覚があるようでございます。正常なる国内滞在者の帰国意思の調査でありますから、これには何らの抑圧も加わってないわけでございますから、最終帰国意思決定の書類の手続の点においてそういうような雑音の入らないように、一定の方程式を作り、総括として、そういう抑圧が加わってないという方程式を国際赤十字が確認すればいい。私はこれは方程式の問題であると思っております。従いまして、これもまた国際赤十字に何十万の意思調査を個別的にやるというような過当なる責任を負わせようというものでなくて、日本に置かれておる諸官庁のもとにおいて、帰国意思決定はこういう手続で行う、しからずとするならばそういう点を二、三修正すればそれでよろしいというような方程式の問題だと思うのです。そういう点について外国論調を見ますと、多少の誤解もあり、また国際赤十字に多少徹底していない点もあるかに報道されておりますから、一つ政府当局において御善処を願いたいと思います。
それから朝鮮赤十字と日本赤十字が話し合うという機会はできるだけ早目に持つことが、私はこの問題を明らかにするためによかろうと思いますので、至急御善処をお願いいたします。
最後に南ベトナムの問題ですが、最近久保田大使がお帰りになって、至急通商協定を結ぶように賠償問題を含めて話が進んでおるように伺っておりますが、御承知のごとく、そういうことをすれば北ベトナムから反撃を受け、またひいてはそれが中国にも影響を及ぼし、あるいはまた最恵国待遇の例の懸案の問題が条約文に入らずに、共同声明あたりでお茶を濁してまとめよう、私はこれは条約に入らなければやはり効果のないものであると思います。こういう重大なる問題を内包しておりますことを、結末を今急がれて南北対立を激化しますようなことは得策でないと思いますから、もう少し慎重な態度をとられることを外務当局に切望いたしたいのですが、その状況はどのようになっておりますか伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/16
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017・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 前段の帰国者意思の決定等につきましては、お話のように何も個々の一々の人に当るというようなところまでむろん国際赤十字が事実的能力はないと思いますから、国際赤十字としては適当なワクにおいて何らかの処置をする方法をつけるのではないかと思いますが、お話しのように何か誤解をされている立場もありますので、それらのものはやはり国際赤十字によって解明してもろうことが適当であると思いますし、なお日本の正しい立場というものをできるだけ各国に周知徹底せしめることは必要でありますので、この上ともそういう点については努力して参りたいと思います。
南ベトナムとの賠償問題は現に進行をいたしております。政府もまた南ベトナムを今日まで正統政府として、賠償を要求する国としてこれに対して交渉を続けておりますし、ある程度内容等につきましても妥結して参ってきていることは事実でございます。ただこれらの交渉をお話のようにいたずらに急いでやっておるわけではないのでありまして、十分慎重に、できるだけ日本の立場も明らかにしつつやるわけで、特に急いでおるわけでもございません。特におくらせておるわけでございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/17
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018・帆足計
○帆足委員 これをもって終りといたしますが、今ベトナムの問題につきましては多くの論議がございますから、一つ急いでばたばたとわれわれ議員の知らないうちに進ましてしまうというようなことのないようにお願いしたいと思います。
それから最後に、これは大臣のお耳にだけ入れておけば、後ほど事務的なことは法案の審議が進みましたときに質疑いたしますが、と申しますのは、占領軍がおりましたときに、非常にたくさんの日本人が戦争直後の荒々しい空気の影響を受けて、占領軍のジープ、その他悪質な水兵の手によりまして一万人近くの障害者が出ておるのでございます。当時のことでありますから、わずか五百円から四、五万円くらいの補償で泣き寝入りになっておりまして、今でも多くの身体障害者がそのために悩んでおるという状況で、その数は一万人に達しております。講和条約ができましてから、やや合理的な損害賠償の規定ができましたが、その損害賠償と当時のそれとは雲泥の相違がございますので、これに対しまする人道的な補償の措置が必要であろうと存じまして、調達庁におきましては予算を取りまして、ことしの六月ころまでに調査が終るといわれております。そういう事情でありますから、外交の衝に当られる外務省におきましても、それに対する関心をお持ち下さいまして、夏か秋の臨時国会には補正予算を通じましてでも、そういう不幸な人たちに対する適切な保護ができますようにお取り運びを願いたいと思います。それにつきまして外務大臣の御注意を促しておきます。後ほど調達庁の責任者の方から現在の実情がどうなっておるかお伺いしておきたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/18
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019・櫻内義雄
○櫻内委員長 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とノールウェーとの間の条約の締結について承認を求めるの件、及び千九百五十八年の国際砂糖協定の締結について承認を求めるの件の両件を一括議題とし、政府側より趣旨説明を聴取いたします。竹内政務次官。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/19
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020・竹内俊吉
○竹内(俊)政府委員 ただいま議題となりました両件について提案理由を御説明いたします。
まず所得に対する租税に関する二重課税の防止のための日本国とノールウェーとの条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
御承知のようにわが国は、さきにアメリカ合衆国及びスエーデンとの間に二重課税防止条約を締結し、去る二月十七日にはパキスタンとの間に二重課税防止条約を署名いたしましたが、今般さらにノルウエーとの間に交渉が妥結し、二月二十一日に東京で本条約に署名した次第であります。
この条約の内容は、基本的には、さきに締結されたスエーデンとの間の租税条約にならうものでありまして、これにより、両国間の経済及び文化関係が一段と緊密化することが期待される次第でございます。
よって、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第であります。
何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
次に千九百五十八年の国際砂糖協定の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を説明いたします。
この協定は、一九五三年の国際砂糖協定が五カ年の有効期間の後昨年末をもって終了することとなっておりましたので、これにかわる新たな協定として、昨年十月に国際連合主催のもとにジュネーブで開催された国際砂糖会議において作成されたものであります。
この協定は、従来の協定に比べ、その五年間の運用の成果を考慮して種々の修正改善を加えられておりますが、その趣旨及び骨子は同様であり、砂糖の輸出入国の立場を相互に調整し、世界の自由市場における砂糖価格を安定せしめることを目的としております。わが国もこの協定の当事国となることによりまして、砂糖輸入国としての立場を十分に保護することができるのみならず、自由市場の砂糖需給計画策定に積極的な役割を果すことができるようになります。
政府といたしましては、右の利点を考慮し、昨年十二月二十三日にこの協定に署名いたしました。また、この協定第四十一条(6)の規定によりますと、協定の受諾期限は一応本年一月一日となっておりますが、国内手続上同日前に受諾を行うことのできない国は、本年六月一日前に協定を受諾するよう努力する旨の通知をあらかじめ英国政府に行なっておき、その後六月一日前に正式の受諾を行えばよいことになっておりますので、この規定に基き、政府は、昨年十二月二十九日に右の通告を行なっております。
よって、この際この協定の締結について御承認を求める次第であります。右の事情を御子察され、御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/20
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021・櫻内義雄
○櫻内委員長 両件に対する質疑は後日に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/21
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022・櫻内義雄
○櫻内委員長 外務省設置法の一部を改正する法律案を議題として審査を行います。質疑の通告がありますので、順次これを許します。床次徳二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/22
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023・床次徳二
○床次委員 今回外務省に設置せられますところの経済協力部の機構に関してお尋ねいたしたいと思います。
経済協力と申しましても、直接通商の振興に寄与するもの以外に、間接に振興に寄与するという意味において相当有益な、また必要な事業であるということについては明らかでありますが、今回外務省の経済協力部において管掌せんとするところの経済協力は、いかなる事項を内容としておるか、まずこの点を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/23
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024・内田藤雄
○内田政府委員 経済協力と一般に言われておりますものは、そのときどきによって非常に意味が違うので、いわゆる企業進出に属するようなものまでも広い意味では経済協力と呼ばれているかと存じます。しかし外務省におきまして特に予算の裏づけをもって行います経済協力と申しますのは、実際問題としては過去においてコロンボ・プランを中心にしました技術援助ないしは技術者の養成等を中心とし、さらに今回技術センターの設置というものをこれに加えまして、そのほか相手国の経済建設にわれわれができるだけ協力する、そういうものを経済協力部において行おうとしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/24
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025・床次徳二
○床次委員 経済協力の限界というものはなかなかむずかしい問題でありますし、またどんどん発展いたしますことは御承知の通りでありますが、単に財政支出を伴うところのものが経済協力であり、その範囲のみを所管するということでありますと、きわめて制限されたものだと思う。今度の予算に計上せられましたところのセンターの設置とか、あるいは技術者の招聘というようなものにかかると思うのでありますが、財政支出の度合いが若干でも加味されて参りますと、それだけ通商貿易上に利益になるものも少くないのであります。すなわち補助あるいは特別なる利息の低減あるいは条件の特別なる緩和、ある意味において日本において財政負担をなしながら経済協力をしますと、これが広い意味の経済協力として伸びていくのじゃないか。やはりいろいろな形において財政支出を伴う経済協力があるのでありますが、かような仕事は外務省が扱われるか、通産省が扱われるか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/25
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026・内田藤雄
○内田政府委員 先ほど私は予算を伴うものを中心としてというふうに申し上げたつもりでございまして、確かにそれの延長と申しますか、それの外延には、貿易等とも非常に密接な関係のある経済協力もあろうかと存じます。もちろん経済協力部は、それらにつきましてできる限りのあっせん、あるいはそれに対する協力をいたすというつもりでおります。従いましてただいまの御質問に対して、所管争い的な意味で私はお答えするのじゃございませんが、一応はあくまで外務省の窓口においてそれを行う。しかし内容に応じまして当然各省の御協力を得なければならぬと思いますから、通産省、建設省あるいは農林省等の御協力を得てそれをやって参るということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/26
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027・床次徳二
○床次委員 私の尋ねんとするところもそこにあるわけであります。経済協力というものを実行いったします場合に、単なる予算の範囲内において経済協力をするというのでありますならば、経済協力の効果というものはきわめて微々たるものです。従って今後大いに経済協力を通じて、両国の親善とかあるいは通商の振興ということを期待しようとするならば、いろいろの方面においてその内容が生じてくると思う。たとえば農林省の関係、通産省あるいは厚生省の施設等におきましても出てくる。あるいは通産省以外のものに対しましては、ある程度において財政負担を伴う場合が多いものと思うのでありますが、かかる事柄を外務省といたしましては渉外の第一線官庁といたしまして十分にのみ込んで、そうして広い意味の経済協力というものが伸展できるように、在外公館はもちろん、部内におきましてもこの経済協力ということに対する深い理解が必要だと思うのであります。この点に関しまして、外務省はいかなる心がまえをもって今後対外経済協力の振興に務めんとするか、これを伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/27
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028・内田藤雄
○内田政府委員 ただいまの御質問は、私ごときものがお答えする資格があるかどうか存じませんが、外務省といたしましては経済協力、これは狭い意味におきましてはもちろん、広い意味におきましても外交そのものの一部であるというふうに考えておりますので、あるいはその後の政治情勢あるいは経済建設の方向、ないしは何を要求しておるかというようなことを十分勘案いたし、またこれに対して正しいあたたかい理解を持ってやって参るということが大事ではないかと思っております。同時に先生の御指摘のごとく、経済協力と申しますのは非常に範囲が広いだけに、外務省が何から何までやろうと思ってもとうていできることでもないと思っておりますので、国内のそれぞれ専門の知識経験をお持ちの方々にできるかぎり協力していただきまして、それによって円満に遂行して参りたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/28
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029・床次徳二
○床次委員 各方面との連絡協調の問題でありますが、通産省と密接な関係を要することはもちろんでございますが、現在の経済協力なるものが各省との連絡に対して果して十分な協力態勢を持ち得るかどうか、この点に対しまして相当努力を要すると思うのです。今までのような官庁のなわ張り争い的な考えを持ちまして仕事を互いに争奪するということでありますならば、ほんとうの仕事は伸びない。もっと各省から大きな協力を得て物事をきめていく、そうして仕事を進めるという態勢が必要だと思うこの点は特に経済協力部の運営に対しまして、私どもは一つ大きな注意を喚起いたしたいと思うのです。従って事務当局間で話がきまりませんときは、さらに現在すでにできておりますところの対外技術援助の協力懇談会でありますか、あるいは閣議決定まで持っていって、国策の線として経済協力を推進するところの強い心がまえが必要だと思います。単なる事務折衝において、事務同士が互いに争い対立しているというのでは、一向この経済協力というものは振興できないということを私どもは憂えておるわけでありまして、特にこの際経済協力部の設置に当って、外務省といたしましてはその主管官庁としての立場から、この事務の遂行については一つ特別な配慮、努力を要望するのであります。これに対して政府の意向をもう一回聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/29
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030・内田藤雄
○内田政府委員 われわれ自身も全く床次先生の御指摘のように考えております。過去におきまして、遺憾ながらいろいろな摩擦もございましたことは事実でございますけれども、これらの点にこだわることなく、いわばそういったことを水に流しまして、十分協力の実をあげるように努力いたして参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/30
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031・床次徳二
○床次委員 さらに経済協力に関連いたしまして、昨年東南アジアの開発基金設置が認められておるわけであります。ただこの五十億の基金の運用に関しましては、昨年の法律によりますとやや窮屈な感じがあった、これを広く東南アジアの経済協力に運用いたしますためには困難があったように思うのであります。すなわち当初設置せられましたものは、国際間の経済協力事業の一つの基金としてこれを提供するというところに主眼があったようでありますが、この東南アジアの経済開発の基金設置という問題に関しましては、なかなか各国も直ちには応じないような意向が見えておったのでありますが、この関係が今日いかように進展しているかどうか。なお最近米大使におきましても、経済協力に対して特別なアメリカの熱意というものも表示いたしておりますので、従来設置いたしましたところのこの特別基金というものをもっと活用すべき時期になったのではないかと思うのでありまするが、これに対する外務省の意向を伺いたいと思うのであります。なお経済開発のこの五十億の基金は、いわゆる国際協力開発の基金として使いまするほかに、二国間におきまする経済協力に対しましてもこれを積極的に活用するということにいたしまするならば、現下の需要に合い得ると思うのですが、これに対する政府の意向を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/31
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032・内田藤雄
○内田政府委員 われらの率直な希望を申し上げますれば、できればあの五十億がもう少し自由に使える状態にあれば、その方が望ましいと考えております。しかし他面、過去のわれわれの努力も足りなかったのかもしれませんが、法律を改正するということになりますとなかなかむずかしい問題もあるようでございますので、さしあたりのところといたしましては、幸い内閣に設置されておりまする経済協力懇談会というようなものもございますから、その辺のところで、法律の解釈で許される範囲内においてこれの活用をはかりたいというふうに現在のところは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/32
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033・床次徳二
○床次委員 この基金の運営費用に関しましては私は当局としてもっと積極的な態度に出て、すみやかにその効果が上るようにされるべきだと思うのでありまして、十分な政府部内における検討を加えられんことを望むものでありまして、通産省その他関係各省と協議せられまして、その目的を達するがごとく一つ対処せられんことを要望する次第であります。
なおこれに関連して伺ってみたいのでありまするが、直接の経済協力ではありませんが、現下の通商貿易の状態から見ますると、今までの政府のとっておりましたごとき貿易振興対策、今年度におきましてはこれに加うるに積極的にプラント輸出に対するところの保証等の対策を講ぜられまして、相当積極的な意欲を見せておるのでありまするが、現実におけるところのこの経済活動の進出に対しましては、まだまだ隘路が非常に多いのであります。すなわち延べ払いの問題あるいはクレジットの付与というような問題に関しましては、とかく隘路が多い。特にわが国において問題となっておりまするのは、いわゆる輸銀の貸付利子が高い、償還計画年次において著しく制限を受けているというようなところが隘路になっている。これは一面から申しますると、貿易振興に対する直接の障害でもありまするが、同時に経済協力という場合におきましても、これが大きな制限事項になってくるように思うのであります。経済協力を強力に推進するという立場から見ますると、かかる技術的なと申しまするか、事務的な隘路をもっと積極的に打開する必要があるのであります。この点に関しまして外務当局といたしましても十分検討せられておることと思うし、また今後も改善を必要とすると思うのでありまするが、これに対する御意見を伺いたいと思うのであります。相手方の経済建設に寄与するという立場から見ますると、これは明らかに経済協力の立場において日本のいわゆるプラントの進出、あるいは各種資材の売却というような問題も出て参ると思うのでありまして、これに対する政府の決意を要望し、改善方を要望いたしまして私の最後の質問とする次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/33
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034・内田藤雄
○内田政府委員 御指摘のごとく、まさに経済協力あるいは貿易振興の政策というようなものは、一体となって行われなければならぬという意味におきましては、全くわれわれもそう考えております。ただいま御指摘の貿易振興の対策等につきまして、具体的なことは経済局の高野次長が参っておりますので、高野次長から説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/34
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035・高野藤吉
○高野説明員 床次委員の御指摘になりました、貿易振興のためには輸銀の条件を緩和するとか、クレジットをもっと大幅に考慮するとかいうことは、外務省といたしましても関係各省と個別的なケースにつきまして、できるだけ相手国の要望に沿いまして大いに努力いたしております。また輸銀の条件緩和につきましても法律的な制限がございますから、その法律的な制限の許す範囲におきましては、できるだけ外務省は相手国の要望によって関係各省と相談しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/35
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036・床次徳二
○床次委員 ただいまのお話に関連するのでありまするが、直接経済協力というわけでありませんが、たとえばブラジルに対するところの通商貿易の振興という問題に関しまして、私はやはり同じように考えられる問題が少くないと思います。清算勘定の廃止が同国との貿易にいかなる影響を与えたかということは、今さら申し上げるまでもないのでありまするが、これが今後のわが国の貿易並びにわが国と両国の友好親善関係にも相当の悪影響を与えたようにも見えておるのであります。かかる処置をいたしまする場合におきまして、単なる通商関係の立場から、あるいは単なるいわゆる大蔵省的な考え方からだけでもって事を決してはいけないと思う。やはり外務省といたしましても、いわゆる外交上の立場からも十分意見を述べてその結論に入るべきだ、もちろん過去においてはそうせられたこととも思うのでありまするが、結果においては、今日はすこぶるまずい結果になっておると思うのであります。わが国のいわゆる基本的な対策、いわゆる国策として考えまする場合におきましては、より程度の高い考え方に立って対処すべきであったように思うのであります。かかる意味におきまして今後関係各省の連絡と申しますか、別の言葉をもって申しまするならば、政府の基本的態度というものを一つ十分に決定して遺憾ないように期せられたいと思うのでありまするが、この問題に対して関連して一つ御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/36
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037・高野藤吉
○高野説明員 ただいま御指摘のように、現在ブラジルとの貿易関係がちょっとストップの形になっておりまするが、それに関連いたしまして、現地に進出している各企業が日本からのものが入らないというので相当困っておられるのでありまするが、外務省といたしましては通産省及び大蔵省と協議いたしまして、できるだけ相手方のものを買えるように、またそれがなかなか予期通りにいかぬ場合にはクレジットをどうするかということを早急にいたしたい、よりより協議中でございます。できるだけ委員の御指摘になったような点は早急に解決していきたいと考えております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/37
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038・櫻内義雄
○櫻内委員長 国際情勢に関して調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。帆足計君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/38
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039・帆足計
○帆足委員 海上保安庁にまずお尋ねいたしたいのですが、李承晩ラインに対しまして慎重にして適切な対策をとる必要につきましては、しばしば当委員会において指摘された通りでありますが、その後海上の保安を必要といたしますための施策並びに予算の裏づけにつきましては、大蔵省と順調に折衝が進んでおることと思いますが、どのようになっておりますか、ちょっとお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/39
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040・和田勇
○和田政府委員 お答えいたします。先般来帆足先生からいろいろ御指摘をいただきまして、ただいま主計局の方と折衝中でございます。しかし実際問題といたしまして御承知のように三十三年度の予算は今月末で終りでございまして、予備費等の支出については非常にむずかしいという状況でございます。さしあたりといたしましては最小限度受信機を新しくするということを、三十三年度内の予算でやりたいと考えております。なおこれは水産庁あるいは水産団体から特別御要請がありましたのが、現在李ラインに四隻を常時配備いたしておりますが、近くもう一隻増したいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/40
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041・帆足計
○帆足委員 これは私ども議員としての責任上、主計局と一ぺん懇談会を持ちまして、そうして主計局によく理解してもらいたいと思っておりますが、事が起ってからいろいろの後始末に経費を使いましたり、雑音に悩まされたりいたしますよりも、事の起る前にスマートに処理しておいた方が平和のためにもよいと思いますから、一つ遺憾なきを期せられるようにお願いしたいと思います。また今後当委員会におきましても始終問題の所在を突き詰めておきまして、論議し、政府に要望いたしますから、責任の御当局におきましても十分の確信をもって、対策に遺憾なきを期せられることをお願いする次第であります。
それから巡視船の保護施設につきまして、多少の予算をもって施設をするように昨年からお約束ですが、その方は予算はとりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/41
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042・和田勇
○和田政府委員 お答えいたします。防弾板の設置につきましては、先般来検討して参りまして、主計局とも折衝いたしてございます。これを実際に工事いたしますと、三カ月ないし三カ月の日数を要します状態であります。そこで先ほども申しましたように、ちょうど予算の年度の終りでございまして、かりに今直ちに予備費をいただくということになりましても、三十四年度の予算に入ってくるということになりますので、私どもの方ではいわゆる時間切れというようなところから、今御審議をいただいております三十四年度の予算で考えたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/42
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043・帆足計
○帆足委員 そのようなことで間に合えばもちろんけっこうですが、一部では何かそういう保護施設を加えると、船が重くなり過ぎて技術的に困難であるというようなことも伺いましたが、私はそういうことは技術者にまかせておけば、これは消極的対策ですから、外国を刺激する問題でもございませんし、技術的に適切な方策はあろうと思いますが、何か技術的な困難がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/43
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044・和田勇
○和田政府委員 お答えいたします。特に技術的な困難はございません。実際の工事をいたしますのに二カ月ないし三カ月かかる。ただ防弾板をつけてないよりはつけてある方が速力が幾らかおそくなるということはございますが、今御指摘のような技術的な困難はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/44
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045・帆足計
○帆足委員 それではそういう点は技術者におまかせいたしまして、最も適切な方策をとっていただけばよろしゅうございます。
第二に、韓国との間に今多少の摩擦が起っておりますことはまことに遺憾なことでございますが、これは国際紛争とか自衛隊とか、そういう大ぎょうな問題ではなくて、人道上の問題に連関したちょっとした国際上の矛盾であろうと思います。従いまして、これについての保安の問題は、海上保安庁の御関心事に属する問題であろうと思っております。先ほど朝鮮人の北鮮帰国の航路につきまして、私はきわめて具体的に検討してみればそれほど懸念すべきほどのことでないと申し上げました。航路を北方にとりまして、またソ連赤十字の了解を得まして、北方航路をとりますれば、別に直接李承晩殿と摩擦を起すような接近点もないわけでございますから心配ないと思いますが、同時に内外の情報を集めてみますると、アメリカの国務省のホワイトという人が、この問題について韓国が国際世論の趨勢を冷静に理解して、過激な行動に出るような態度をとることのないことを希望しておる。また技術的には、韓国が所有しておる武器は、アメリカが一九五〇年一月二十六日の米韓相互軍事援助協定の諸条件に基いて供与したものであるから、これらの軍需品の使用は、厳密にその条件に従って使用されねばならない。従ってこれらは、国内治安の維持と合法的な自衛措置、または国際連合憲章の趣旨に合致する範囲においてのみ使用すると制限されておるのであるから、李承晩殿のほしいままな意思によって使用することはできないであろう。また武器の問題と別個に考えても、今日韓国の陸海空軍は、作戦上では国連軍司令部の統制下に置かれておることにも留意する必要がある。こういうことを述べておると伝えられております。しかりとするならば、問題の性質が、正常なる滞在者の帰国問題でありますし、捕虜とか戦時抑留者とかいう問題ではありませんし、第二には人道上の問題でありますし、第三には、韓国軍が現在そういう特殊な国際連合の援助、指揮のもとにあるという特殊事情もありますし、第四には航路を北方にとれば何ら韓国の領海と接触することはないわけであります。しかもその上、第三国の船がこれに参加し、日本海の問題でありますから、実務的にもソ連赤十字が協力する用意があるという声明が出ており、なおかつその上に国際赤十字のモラル・サポートがあるということになれば、この七つ、八つの条件を勘案すれば、航路安全の問題はほとんど解決がついておるというふうに私は見るのでありますが、海上保安庁の方でこの問題について得られておる情報等についてお差しつかえない点を一つ承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/45
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046・和田勇
○和田政府委員 お答えいたします。ただいま帆足先生からお話がございましたような点につきましては、私どもの方では日本側から配船しないということでございますので、特に慎重に検討をする時間を持っておりませんが、まず現在の韓国の警備艇が李ラインに出動しておる状況等から判断いたしまして、先生の御指摘のように、さようにむずかしい事態が起り得るとは現在考えておりません。従いまして今申しましたような航行安全につきまして、庁内あるいは運輸省として慎重な検討はいたしておりませんが、そう新聞紙等に伝えられるほど——これは私も新聞を読んだ程度でありますので、あるいは間違っておるかもしれませんが、韓国の陸海空軍が待機をしておるというようなことも、去る二月十三日の閣議了解がきまりました直後にはございましたが、その後声明等でも取り消しておるような点もございまして、第三国の船を使うということになりますれば、航行の安全ということは比較的保たれるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/46
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047・帆足計
○帆足委員 同感でございまして、特に配船が北鮮赤十字の責任において行われる、しかも日本海に起ることでございますから、適当な船といえば、おそらく第三国船を使わざるを得ないであろうということは一般に推察されておる。それに加えてソ連赤十字が国際赤十字のあっせん並びに道徳的支持を尊重しつつ、低姿勢で、国際赤十字または朝鮮赤十字の御要望があるならば、ソ連赤十字は実務的に協力する準備ができておる、こういう声明が何を意味するかということはほぼ推察がつくことであろうと思います。そうだとするならば、安全の問題はほとんどないのであって、従って国際赤十字に安全の責任をとらせるという形で、もし政府が交渉しておるならば、私はそれは行き過ぎであると思う。そうではなくて、この問題全体を国際的摩擦なしに純人道的問題として行うために将来考えなければなならぬあらゆる摩擦を緩和するために、国際赤十字のモラル・サポートを得ようとしておる、そうして安全そのものの実務については、朝鮮赤十字が責任をとれば解決のつくものである、私はこういうふうに理解している。また海上保安庁はそれについての実務的な責任に当っておる官庁でありますから、外務省とよく打ち合せて下さって、実務的には問題はないと予測される、しかし国際赤十字のモラル・サポートが必要であるとすれば、国際赤十字の立場は、二月二十六日の国際赤十字できめた通牒のワク内でなし得ることであるから、問題はもっとすらすらと解決つくのではないか。同時にあわせて調査の問題も、先ほど外務大臣が言われたように、一人々々を調査するのではなくて、正常なる滞在者の自由意思による帰国の問題ですから、これはきわめて楽な問題で、強力が加わるといっても、拘置所の中で、所長が権限をふるっているような場所では監視というものが必要ですけれども、自由な場所に住んでいるのですから、強制するということはあり得ない。しかし念のために、さらに意思発表の手続を公正ならしめるような方程式を作っておくということでいいのであるから、これまた国際赤十字のモラル・サポートの限界で済むことであって、帰国意思の調査について赤十字が過大なる責任をとらなければならぬということはない。どうもこの二つの問題について、国際的に誤解があって、過大な責任を国際赤十字に押しつけようとしているかのごとき錯覚があるように思う。従いましてこの錯覚を解ぎますためには、日本赤十字と朝鮮赤十字が、国際赤十字のあっせんのもとに話し合ってもらえば、問題の所在がわかって、それを国際赤十字がよく聞いておって、自分のあっせんする限界はこの辺のところであろうということでいけば、問題はもっと迅速に解決つくのではなかろうかと思っておりますので、その一つの難点になっておる安全保障のことをお尋ねしたわけですが、おおむね私どもの見通しと海上保安庁の見通しとは、同じような見通しでございます。それでありますので、私どもの考えとしては、韓国との間もなるべく摩擦なしに万事円滑に済ませたいと思っておりますから、海上保安庁のお骨折りを多としておる次第でございます。従いまして来年度に必要なる施策並びに予算措置の施行につきましては、外務委員といたしましてわれわれも御協力いたしますから、あとで失敗しまして、新たに抑留漁夫がふえるというようなことのないようにお願いしたいと思います。また抑留船員につきましては、保安庁にも非常にお世話になっておりますが私どもとしてはこれを北鮮帰還との人質のような、交換条件のような形にすることは望ましくない、二つを全然別個の問題として、人道上の問題として、正々堂々と解決していく、そうしていけば一方と同時に他方も解けていくのであって二つをからませると、人質というまことに人類最悪の封建時代のやり口になるわけでございますから、そういうことにならないように気をつけていかなければならない。そのためには現在の交渉を並行的にして、二つをからませないでやるという精神が重要であると同時に、今後の措置について先方がからんで参りましても、スマートに身を避けて冷静に対処していく。そのために必要なる予算と、その措置は一つ海上保安庁として責任を持っていただかねばならぬ。私どもはしろうとでありますから、それが必要であるということを痛感いたしまして、保安庁の御苦労を多として御協力することはいたしますけれども、こまかな施策上の面については局外者には案の立てようもありませんから、保安庁としては十分の責任を持って——この国においては自衛隊がほんとうの戦争をすることは許されていない国柄であります。憲法でそれはきまっていることでございます。従いまして必要なる治安の維持は、海上保安庁が当らねばならぬという御自覚のもとに、一つ遺憾なきを期していただきたいと思っております。
それから調達庁の大石総務部長に御出席を願っておりますが、先ほどお尋ねいたしました占領時代における進駐軍の傷害事件の跡始末でございますが、予算も取りまして、今年の六月ごろから調査もできて、それに基いて行政措置をなさるか、何か法令を出して、その一万人に対する保護施策をなさるか、きまるということでございますが、私どもはやはりこれは人道問題並びに障害者保護の問題として非常に重要だと思っております。また調達庁においきましては、占領下における不当なる家屋使用などについての賠償の跡始末なども考えておられる。それももっともなことでありますけれども、人命に関する問題は、家屋や不動産に対する問題よりももっと重要なことでございますし、また困っている人たちはほんとうに生活に追い詰められておりまして、アメリカ軍を恨む念は切々たるものがあるという状況でありますから、政府としても早く対策をお講じになって、その人たちの苦しみをやわらげることが必要であると思います。敗戦の軍人にまで恩給が与えられている世の中において、その敗戦の犠牲者に対しては血も涙もないということでは政治の公平が許さないと思います。人数からいえば一万人、隠れている人間がまだ二、三千人いるのではないかと私は思いますが、現われているだけでも一万人の被害者がいるわけでございます。従いましてこれに対して一つ適切なる保護施策をお願いし、現在どういうことで進んでおりますか、その経過をお知らせ願いたい。この所管は内閣委員会でありますか、他の委員会でありますか、それぞれ御準備されていると思いますけれども、私ども外務委員といたしましても、これに対して深い関心を持っておりますことについて御注意を促して、一つ適切なる御措置をお願いするとともに現在の状況を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/47
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048・大石孝章
○大石政府委員 ただいま帆足先生の御指摘がございましたように、占領期間中における旧連合国軍の行為によりますところの生命身体に関します被害の状況は、占領期間中は厚生省で見舞金措置を講じたということでありまして、それを調達庁が引き継ぎまして、昭和二十八年に追給措置を実施したという状況でございます。その件数は療養、それから傷害、死亡という件数を合わせまして、ただいまお話がございましたように、約一万人の件数でございますが、実はその詳細につきましては今後いろいろな調査を進めまして、その実態を確認しないとはっきりした状態はわからぬような状況でございます。しかしながら、ただいままで私どもの方で明年度実施いたしますところの準備作業をやった程度でわかったことを申し上げますと、都道府県に申請から支給に至りますまでの関係の書類が保存されてあるわけでありまして、都道府県の現在までの連絡の状況によりますと、大体四十くらいの都道府県については逐次整理を進めているような状況でございます。それからこの問題は先ほども先生からお話しございましたように、現在の行政協定十八条に基きますところの事故の補償という措置に対してきわめて均衡を失しておるという関係でございますが、その方面は、申し上げましたように、実態調査によって結論を出すといたしまして、占領期間中の見舞金措置、それ自体にも実は漏れておったというケースもございます。そのケースは現在までに判明している状況では百十一件ほどございまして、死亡の関係で三十二件、傷害関係で七十九件というのが現在まで判明いたしております。私どもとしましては、この問題につきまして申し上げましたように、正確なる実態調査をいたしまして、その上でお話しございましたように、国として何らかの措置をしなければいかぬ、そのために目下御審査願っておる予算案の中に、調査費としまして約四百万円ほど計上いたしております。明年度の調査の計画につきましては、お話しございましたように、六月くらいまでの間に第一段階の調査を実施いたしまして、それによってほぼこれに対処するところの結論を出したい。それからもっと詳細なる調査につきましては、その後も継続いたしまして、その事案に対処したいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/48
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049・帆足計
○帆足委員 この気の毒な被害者の諸君に対して、政府がこのような綿密な調査を開始されましたことを私どもは多とするのでございます。障害者の諸君はそれぞれ非常な窮境に陥っておりますので、急いで保護施策をしてくれということを要求しておりますことは了とするのでありますが、政府といたしましては、それを実行しようとすれば、同時に正確な資料によらなければやはり国としてはしにくいということはよくわかります。現在調査中で、すでに見舞金すら漏れておった人が今のように百十一名もあり、死亡者が三十二名ある、傷害者も七十九件もあった、こういうことも発見されましたことは、政府の態度がこれに対してまじめにおやりになっておるということを見まして、私も大へんこれはよいことであると思います。六月に第一次の調査が済むということでございますから、いずれ臨時国会もあることでありましょうから、臨時国会には一つはっきりした政策が打ち出せますように、私ども外務委員としても、この問題を重要視しておりますことを申し上げまして、長官の方にもお申し伝えのほどをお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/49
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050・櫻内義雄
○櫻内委員長 本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103103968X00919590304/50
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