1. 会議録本文
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000・会議録情報
本国会召集日(昭和三十三年十二月十日)(水曜
日)(午前零時現在)における本委員は、次の通
りである。
委員長 長谷川四郎君
理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君
理事 小平 久雄君 理事 中垣 國男君
理事 中村 幸八君 理事 加藤 鐐造君
理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君
新井 京太君 岡部 得三君
岡本 茂君 加藤 高藏君
鹿野 彦吉君 菅野和太郎君
木倉和一郎君 久野 忠治君
坂田 英一君 始関 伊平君
關谷 勝利君 中井 一夫君
中村 寅太君 西村 直己君
野田 武夫君 野原 正勝君
濱田 正信君 細田 義安君
山手 滿男君 渡邊 本治君
板川 正吾君 今村 等君
内海 清君 大矢 省三君
勝澤 芳雄君 小林 正美君
鈴木 一君 堂森 芳夫君
中嶋 英夫君 永井勝次郎君
水谷長三郎君
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昭和三十三年十二月十六日(火曜日)
午前十時二十八分開議
出席委員
委員長 長谷川四郎君
理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君
理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君
理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君
理事 松平 忠久君
新井 京太君 岡部 得三君
岡本 茂君 加藤 高藏君
菅野和太郎君 木倉和一郎君
久野 忠治君 始関 伊平君
關谷 勝利君 中井 一夫君
細田 義安君 山手 滿男君
渡邊 本治君 板川 正吾君
今村 等君 内海 清君
勝澤 芳雄君 小林 正美君
鈴木 一君 堂森 芳夫君
中嶋 英夫君
出席国務大臣
通商産業大臣 高碕達之助君
国 務 大 臣 三木 武夫君
出席政府委員
公正取引委員会
委員長 長沼 弘毅君
総理府事務官
(公正取引委員
会事務局長) 坂根 哲夫君
経済企画政務次
官 河本 敏夫君
総理府事務官
(経済企画庁調
整局長) 大堀 弘君
通商産業政務次
官 大島 秀一君
通商産業事務官
(大臣官房長) 齋藤 正年君
通商産業事務官
(通商局長) 松尾泰一郎君
通商産業事務官
(企業局長) 松尾 金藏君
通商産業事務官
(重工業局長) 小出 榮一君
中小企業庁長官 岩武 照彦君
委員外の出席者
議 員 小林 正美君
総理府事務官
(経済企画庁調
整局参事官) 花園 一郎君
専 門 員 越田 清七君
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十二月十日
公共用水域の水質の保全に関する法律案(内閣
提出第一九号)
工場排水等の規制に関する法律案(内閣提出第
二〇号)
小売商業特別措置法案(内閣提出第二一号)
軽機械の輸出の振興に関する法律案(内閣提出
第三〇号)
下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法
律案(内閣提出第三一号)
輸出入取引法の一部を改正する法律案(内閣提
出第三二号)
同月十三日
水質汚濁防止法案(赤路友藏君外四十六名提
出、衆法第一号)
は本委員会に付託された。
同月十六日
水質汚濁防止法案(赤路友藏君外四十六名提
出、衆法第一号)
は委員会の許可を得て撤回された。
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本日の会議に付した案件
国政調査承認要求に関する件
公共用水域の水質の保全に関する法律案(内閣
提出第一九号)
工場排水等の規制に関する法律案(内閣提出第
二〇号)
水質汚濁防止法案(赤路友藏君外四十六名提
出、衆法第一号)
小売商業特別措置法案(内閣提出第二一号)
軽機械の輸出の振興に関する法律案(内閣提出
第三〇号)
下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法
律案(内閣提出第三一号)
輸出入取引法の一部を改正する法律案(内閣提
出第三二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/0
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001・長谷川四郎
○長谷川委員長 これより会議を開きます。
まず国政調査承認要求の件についてお諮りをいたします。
今国会におきましても従来通り通商産業の基本施策に関する件等につきまして調査を進めて参りたいと存じます。つきましては議長の承認を得なければなりませんので、調査事項といたしまして一、通商産業の基本施策に関する事項。二、経済総合計画に関する事項。三、電気及びガスに関する事項。四、鉱業、鉄鋼業、化学工業、機械工業その他一般鉱工業に関する事項。五、繊維産業に関する事項。六、通商に関する事項。七、中小企業に関する事項。八、特許に関する事項。九、私的独占禁止及び公正取引に関する事項。十、鉱業と一般公益との調整に関する事項といたします。
調査の目的といたしましては、日本経済の総合的基本施策の樹立並びに総合調整のため、通商産業行政の実施を調査し、その合理化並びに振興に関する対策樹立のためとし、調査の方法といたしましては小委員会の設置。関係各方面より説明聴取及び資料の要求等といたしまして、承認要求をいたすことにしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/1
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002・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/2
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003・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。
まず公正取引委員長より趣旨の説明を聴取することといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/3
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004・長沼弘毅
○長沼政府委員 ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。
下請代金支払遅延等防止法が制定されましてから今日まで二年有余を経過しておるのでありますが、この間政府関係機関におきましてはこの法律の積極的な運用に鋭意努力いたしまして、下請代金の支払い遅延防止等にかなりの効果をおさめて参ったのであります。
しかしながら、この法律の運用に当って参りました経験によりますと、下請取引を公正ならしめるとともに下請事業者の利益を保護するというこの法律の目的達成をはかる上におきまして、現行法の規定ではいささか不備と思われる点が感ぜられます。特に最近のような景気の後退期にありまして、親事業者が景気後退の理由による困難を下請事業者に転嫁しようとして行う不公正な行為の態様は多岐にわたっておりますので、現行法の規定では何としても規制しがたい状態になっておるのであります。
従いまして、このような親事業者の不公正な行為を防止し、下請事業者の利益を一そう保護するためには、下請代金支払遅延等防止法をさらに強化する必要があると考えまして、ここに本改正法案を提出いたした次第であります。
次に本改正法案の概要について御説明いたします。
その第一点は、現行法におきましては、親事業者としてしてはならぬと規定されておる事項がございます。すなわち不当な受領拒否、支払い遅延、不当な値引き、不当な返品、この四項目となっておるのでありますが、これに対しまして、さらに不当な買いたたきをすること、自社製品手持ち原材料等の購入を押しつけする、すなわち強制する行為、及び下請事業者が事態の改善を要望した場合におきまして、これに対して親事業者のとる不当な報復措置、この三つの事項を追加したのであります。
その第二点は、親事業者が下請業者に交付すべき書面の必要記載事項に給付の受領の時期、下請代金支払いの時期、すなわちいつ品物を受け取って、いつ支払いするかという時期を追加したことでございます。
以上の二点が本法案の要点でございます。
何とぞ慎重御審議の上御賛同あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/4
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005・長谷川四郎
○長谷川委員長 以上で趣旨の説明は終りました。
本案についての質疑は後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/5
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006・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に、少売商業特別措置法案、軽機械の輸出の振興に関する法律案、及び輸出入取引法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし審査に入ります。
まず趣旨の説明を聴取することといたします。大島政務次官。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/6
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007・大島秀一
○大島政府委員 小売商業特別措置法案について提案の理事及びその概要を御説明申し上げます。
まず、提案の理由について御説明いたします。小売商業が国民経済上きわめて重要な分野を占めていることはあらためて申すまでもありませんが、全国百数十万の小売商業者の大部分はいわゆる零細小売商であり、その数は年々増加する傾向を示し、同業者間の競争はいよいよ激甚となり、加うるに購買会等小売商以外の者の小売面への進出により経営の不振と不安定とに悩んでいるのであります。
政府は、かかる点に思いをいたし、小売商業について特別な措置をとり得るよう、第二十六国会において小売商業特別措置法案を提案いたしたのでありますが、第二十八国会において審議未了となりましたので、あらためて十分再検討を加えた上、前国会に本法案を提案したのでありますが再び審議未了となりましたので、このたびあらためて提案するに至った次第であります。
次に本法案の概要について申し上げますと、第一に、都道府県知事は、いわゆる購買会の事業活動が中小小売商の利益を著しく害すると認めるとき、その員外利用を禁止し、さらに必要があれば、その禁止を確保するため必要な命令を出し得ることとしたのであります。
第二に、消費生活協同組合は、消費生活協同組合法において行政庁の許可を受けた場合に員外利用を認めているのでありますが、この員外利用の許可申請があった場合におきましても、当該行政庁は中小小売商の利益を著しく害するおそれがあると認める場合には、許可を与えてはならないこととし、また員外利用を未然に防止するため必要な命令を発し得ることとしたのであります。
第三に、いわゆる小売市場につきましては、近年大阪、神戸、名古屋等の都市においてその乱立による過当競争が激化し、しばしば不公正な取引方法が用いられているのでありますが、かかる小売市場の乱立の根源をなしている市場業者による過大な家賃等の徴収を防止するためまず特定の市においては、市場業者の貸付契約について都道府県知事の許可を要することといたし、また市場内小売商の不公正取引について、都道府県知事及び公正取引委員会が必要な措置をとるための規定を設けることといたしたのであります。
第四に、生産業者の直売行為、卸売商の小売行為等中小小売商の事業活動にかかる紛争につきましては、あっせんまたは調停を行うことといたしますとともに、必要があれば都道府県知事または主務大臣が紛争の当事者に対して勧告できることといたしまして紛争の解決に万善を期したのであります。
以上述べました通り、本法案は小売商の事業活動の機会を確保し、小売商業の正常な秩序を阻害する要因を除去するためのものでありまして、中小企業団体の組織に関する法律の円滑なる運用と相待って中小小売商の経営の安定と向上とを期待するとともに、ひいては国民経済の健全な発展に寄与することを目的としているのであります。
以上が小売商業特別措置法案の趣旨でございます。何とぞ御審議の上可決せられますよう御願いいたします。
次に輸出入取引法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明いたします。
現行輸出入取引法は、昭和二十七年八月輸出取引法として施行され、その後昭和二十八年八月輸出入取引法として改正されましたが、さらにその後二回の改正を経て今日に至っております。
御承知の通り最近におけるわが国の輸出は、国際的な不況の影響を受けて、伸び悩みの状況を続けておりますが、原材料の輸入依存率の大きいわが国にとりましては、輸出の伸張によってこそ経済の拡大均衡が確保できるものであることは、言うまでもないことでありまして、この意味におきまして輸出の振興はわが国のまさに緊急事の一つであります。しかるにわが国の輸出が従来から過当競争のため、いろいろの面で問題を起してきたことは御承知の通りでありますが、輸出における過当競争の傾向はますます激化し、そのため海外輸入業者のわが国輸出品に対する不信ないしは輸入制限の傾向が現われて参り、さらには関税引き上げ等の動きを誘発しているような次第であります。このような傾向を是正し、わが国の貿易の健全な発展をはかるためには国内経済の安定とともに輸出取引秩序の確立をはかることが何よりも必要なわけでありますが、現行輸出入取引法の運用によっては必ずしも十分でないと考えましたので、このたびこの改正案を提案いたした次第であります。
次に、改正の重要点につきまして御説明申し上げます。
第一は、輸出品の生産業者等の協定の締結範囲の拡大であります。現行輸出入取引法におきましては、生産業者等は輸出すべき貨物について協定を締結することが認められておりますが、そのような協定だけでは輸出における過当競争を防止することが必ずしも十分でない場合もありますので、そのような場合におきましては独禁法、中小企業団体法等の他の法令による適法な共同行為をもってしても過当競争を防止するに不十分な場合に限り国内貨物及びその原材料をも含めた協定の締結ができるようにし、それでもなお不十分な場合におきましては、その貨物の販売業者及び原材料の生産業者等にも協定の締結を認めるよう改正せんとするものであります。
第二は、輸出組合及び輸出入組合の事務の明確化並びに出資組合から非出資組合への移行の規定の追加であります。現行輸出入取引法におきましては、輸出組合及び輸出入組合は一定の調整事業と各種の協同事業を行えることとなっておりますが、これら組合の行う事業の重要性にかんがみ、その事業内容を明確にし、さらにこれら組合のうち非出資組合に限り法人税法上の非課税法人とするための必要な規定並びに出資組合から非出資組合へ移行できる旨の規定を追加いたしました。
第三は、貿易連合の制度の創設であります。貿易商社が連合して、輸出入取引を行うということは、輸出入取引の秩序の確立という点からも、また、特に中小商社の健全な発展のためにも必要であり、かつ、有効なことでありますが、現行法令における諸制度をもってしてはいまだ十分でありませんので、このたび、これを貿易連合という名のもとに新しい特殊法人として認めることによりその助長をはかることにし、所要の規定を設けました。
第四は、生産業者等に対するアウトサイダー規制命令の追加であります。現行輸出入取引法におきましては、輸出業者等の協定の場合と異なりまして生産業者等の輸出すべき貨物についての協定に対しましてはアウトサイダー規制を行う規定を欠いておりますが、輸出における過当競争を防止するためには、状況によりこれを行う必要がありますので、このたびこれらについてもアウトサイダー規制を行うことができるように改正することといたしました。
第五は、輸出業者の登録制度の創設であります。特定仕向地において特定貨物について輸出の過当競争が行われているような場合においては、民間業者における自主規制等によりその防止をはかることが何よりも必要でありますが、同時に信用、経験等の不十分な新規の輸出業者が無制限に増加することを抑制することも必要であり、これによって初めて業界の自主的な規制も効果的なものとなることが考えられますので、過当競争の著しい特定仕向地に特定貨物を輸出する輸出業者について登録制度を創設し、登録を受けた者でなければ輸出できないこととするとともに登録に関し必要な法的措置を講じました。
以上が改正の主要点でありまして、その他、これらの改正に伴う若干の修正を行なっておりますが、わが国の輸出貿易の現状と特質にかんがみ以上の改正は、輸出における過当競争を防止し、わが国輸出貿易の健全な発達をはかるためぜひ必要なものと考えられます。
何とぞ慎重に御審議の上すみやかに御可決あらんことを切望いたす次第であります。
次に、ただいま上程されました軽機械の輸出の振興に関する法律案についてその提案理由を説明いたします。
ミシン、双眼鏡を初めとするいわゆる軽機械の輸出は年額一億ドルをこえ、船舶を除く機械輸出の三分の一を占めるに至っております。しかもこれらの輸出は年々確実な増加を示し、今後の輸出拡大のホーフと目されているのでありますが、このような目ざましい輸出の拡大はこれらの経機械が中小企業を主体とするアッセンブル方式によって製造され、その工程に相当の人手を要することによってわが国がきわめて強い国際競争力を持っていることによるものと考えます。
しかしながらアッセンブル方式をとっていることから開業するだけならばほとんど設備らしい設備もなしにできるために業界の過当競争が著しく、輸出価格の著しい低落を見ておるのでありまして、この結果当然得られるべき外貨をみすみす失っているという現状になっているのであります。
また中小企業を主体とすることによって海外事情に対する知識はほとんどなく、めくら貿易に近い状況に置かれている上、このような軽機械の輸出拡大に欠くべからざる海外市場への広告、宣伝活動もほとんど行われていないという状況であります。
このような事態に対しまして軽機械の輸出の振興のために従来とられてきた方策を振り返ってみますと、過当競争防止のためには輸出入取引法、中小企業団体法等の施策があげられるのでありますが、軽機械という特殊の商品について考えますと不十分な面がなお存すると考えられますし、また軽機械の品質の向上ないし積極的な海外市場へのマーケッティングという観点についてはほとんど未開拓のまま残されてきたと言って過言ではありません。
従ってここに従来の方策を補完し、軽機械の輸出をさらに一段と発展させるべく種々検討いたしました結果、従来から特に問題の多かったミシン及び双眼鏡を当面の対象として新たなる立法を要するとの結論に達した次第であります。
この法律案の骨子は製造業者の登録制の採用と輸出振興事業協会の設立という二点に要約されるのであります。
第一に輸出向きの軽機械及び軽機械部品について製造業者の登録を行うことにより、メーカーらしいメーカーを育てていく基盤を作り、これによって軽機械の品質の向上を期するとともに、特に軽機械の組み立て業者について過当競争が著しくなりました場合には一時その登録を停止して新規開業を抑え、業界の安定をはかることにしたいと考えます。
第二には輸出振興事業協会を設立し、これを中核体として海外市場に対する調査、宣伝を活発に行い、同時に輸出向け軽機械の品質向上をはかりたいと考えております。これらはまさに輸出拡大のかぎとなるものでありながら国内における過当競争によって従来業界にその余力がなかったのでありますが、協会への負担金の納入によってこれを活発に行うことが可能になると考えます。
申し上げるまでもなく輸出の振興はわが国経済発展のための最大の要請であり、その中でも機械の占める重要性は次第に高まっているのでありますが、このような要請に当面応ずることができるのはまさに軽機械と考えるのであります。このような事情をおくみ取りの上何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/7
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008・長谷川四郎
○長谷川委員長 以上で三法案についての趣旨の説明は終りました。なお三法案についての質疑は後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/8
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009・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に公共用水域の水質の保全に関する法律案、工場排水等の規制に関する法律案及び水質汚濁防止法案の三案を一括して議題といたし、審査に入ります。
まず経済企画庁より公共用水域の水質の保全に関する法律案について趣旨の説明を聴取することといたします。河本経済企画庁政務次官。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/9
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010・河本敏夫
○河本政府委員 ただいま議題となりました公共用水域の水質の保全に関する法律案につきましては、前第三十臨時国会に提案されまして、委員会において慎重御審議をいただき、順調に進捗しておったものでございますが、諸般の事情で成立を見るに至らなかったものであります。本案は、これから御説明申し上げます通り、早急に実施を必要とするものでありますので、本国会に再び提案いたした次第であります。以下に本法律案の提案理由並びにその要旨について御説明申し上げます。
近時都市人口の増大、鉱工業の急激な発展にもかかわらず、都市下水道の整備が著しく立ちおくれ、工場事業場等においても汚水処理施設の整備に欠くるところがありましたため河川、湖沼、港湾、沿岸海域その他の公共の用に供される水域が年々汚濁され各種の問題が随所に発生するに至りました。
すなわち汚濁水の放流に起因して水産業等の関係産業に相当の損害が生ずる等の事例が増加する傾向を示しておりまして、この傾向をこのまま放置するときは、産業相互の協力を害し均衡のとれた経済発展を阻害するだけでなく、これに起因して紛争等を惹起し、また公衆衛生の向上をも期しがたいと考えられるので、政府といたしましてはかかる事態に対処する措置として新たに本法を制定し、水質保全のために必要な基本的事項を定め、もって産業の相互協和と公衆衛生に寄与させようとした次第であります。
以上がこの法律案の提案の理由であります。
御承知のように欧米の工業先進国においてはすでに十九世紀以来水質汚濁の規制についてその対策が論議されており、わが国においてもさきに資源調査会から水質汚濁防止に関する勧告がなされ、その後引き続き政府部内において複雑多岐にわたるこの問題について種々調査研究してきたのでありますが、このたび、成案を得まして提出の運びとなった次第であります。
次に本法律案の要旨につきまして御説明申し上げます。第一に水質基準についてでありますが、本法は各省所管の汚濁水規制に関する各種行政法規に対しいわゆる基本法的な地位に置かれるものでありまして、本法によってこれらの行政法規の運用統一をはかり、直接の取締り等は各行政機関にゆだねることになるのでありますが、この運用統一の基本となるべきものが水質基準でございます。まず経済企画庁長官が公共用水域のうち汚濁による相当の被害が生じまたは生ずるおそれが高い一定の水域を指定水域として指定し、当該水域について水質保全上必要であるとともに具体的に順守可能な水質集準を定め、工場排水等の規制に関する法律、鉱山保安法、下水道法等の主務大臣がこの基準によって現実の取締りを行い、これによって本法の目的とする水質の保全を実現しようと期している次第であります。なおこの基準は公共用水域の水質の保全をはかるための行政上の基準でありますので、当事者の民事上の免責規定ではないのであります。
第三に、水質審議会についてでありますが、経済企画庁の付属機関としてこの審議会を設け、指定水域の指定、水質基準の設定等の重要事項についてはこの審議会で慎重審議の上決定することといたしております。なお水質保全に関しましては地下水の汚濁等今後の研究に待つべき課題も多々あると考えられますので、公共用水域及び地下水の水質の保全に関する基本的事項を水質審議会の所掌事務に掲げ今後の施策の検討の場といたした次第であります。
第三に水質汚濁による被害に関する紛争についてでありますが、この種の紛争は近来各地にしばしば見受けられるところでありますが、解決に迅速を要し、また判定に専門的知識を要する等、本来裁判制度になじまない性格を有するため、ややもすれば両当事者の力関係に支配され、必ずしも合理的な方法で解決を見ているとはいいがたいものがあります。これを放置するときは、産業相互間の協和を害するのみならず社会問題化するおそれなしとしないので、水質保全行政の一環として本法に都道府県知事による和解の仲介制度を設け、紛争処理を合理的な軌道に乗せようとはかったのであります。
最後に本法の施行に伴い経済企画庁において関係行政機関の水質保全行政を調整する等の必要を生じますので、附則において同庁設置法の一部を改正し、関係条文の整理を行なった次第であります。
以上公共用水域の水質の保全に関する法律案の提案理由並びにその要旨を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
なお、本法と並行して工場及び事業場に対し、直接の規制を行う工場排水等の規制に関する法律案が同時に上程されたことを一言申し添えます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/10
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011・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に通商産業政務次官より、工場排水等の規制に関する法律案について趣旨の説明を聴取することといたします。大島政務次官。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/11
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012・大島秀一
○大島政府委員 ただいま議題となりました工場排水等の規制に関する法律案につきまして提案理由を御説明申し上げます。
近年における鉱工業の発展に伴い、工場、事業場から排出される汚水に関し各種の問題が発生し、放置を許さない事態に立ち至っております。この問題は、わが国産業構造の高度化に伴う農水産業等の第一次産業と鉱工業等の第二次産業との間における不幸な避くべからざる摩擦現象でありますが、わが国経済の調和のとれた発展をはかるためには、一面において鉱工業の振興対策を強力に推進しなければなりませんとともに、他面その発達過程における他産業ないしは公衆衛生の分野に対するその悪影響をできるだけ軽減しつつその目的を遂行することが必要であることは言を待たないのであります。
政府といたしましても、水質汚濁防止に関しては、関係各省が相集まって数年来検討を続けて参ったのでありますが、本年九月ようやく意見の一致を見たのであります。その案によれば、経済企画庁長官が、各方面の学識経験者及び関係行政機関の職員より成る水質審議会の議を経て、保護すべき水域を指定し、その水域に適用される水質基準を設定するとともに、他方、工場、事業場、鉱山、下水道等に対しては、それぞれの主務大臣がこの水質基準を順守せしめるよう法的措置を講ずることとなったのであります。
この決定に従いまして、経済企画庁においては、その担当すべき部分を実施するため公共用水域の水質の保全に関する法律案を立案し、今国会に提案いたすこととなったのであります。この法律による水質基準の適用を受けますものとしては、工場事業場のほかに鉱山、下水道、水洗炭業等々があるのでありますが、鉱山、下水道、水洗炭業等につきましてはすでにそれぞれの規制法律が制定せられておりますので、今回いまだ取締り法規の定められていなかった工場、事業場について、その主務官庁たる大蔵、厚生、農林、通商産業、運輸の各省が共同してこの工場排水等の規制に関する法律案を立案し、前述の経済企画庁立案の法律案と相呼応して、主務大臣に課せられた責務を完遂するための体制確立に万全を期したい所存であります。本法案の主要な内容は次の通りであります。
第一に、この法律は、経済企画庁において定める水質基準の具体的適用範囲のうち製適業、ガス供給業及びこれらに類する事業に関する分野における事業活動だ伴って発生して参ります汚水等の処理を適切にすることによりまして、公共用水域の水質の保全をはかることを目的としております。
第二に、この法律は製造業等の用に供する生産施設のうち汚水等を発生するものを政令で時定施設として指定し、およそ特定施設を設置している者は、その特定施設から排出される汚水等の処理を適切にし、公共用水域の水質の保全に心がけるべき旨を明示しております。
第三に、工場排水等を指定水域に排出する者については、特定施設の設置、変更を行う場合、あるいは特定施設の使用方法ないしは汚水等の処理方法の変更を行う場合において、事前に主務大臣にその計画を届け出ることとし、主務大臣はその計画が工場排水等を水質基準に適合させるものであるかどうかを検討し、もし問題があれば、汚水等の処理の方法の計画の変更を命じ、さらには特定施設自体に関する計画の変更、廃止等を命じ得ることとしたのであります。なお、新たに指定水域が定まった場合、あるいは新たに特定施設が定まった場合等においては、既存の特定施設を設置している者については、経過措置としての届出をさせることとし、実態把握に遺憾のないよういたしております。
第四に、現に指定水域に排出されている工場排水等が、その水域の水質基準に適合していないときは、主務大臣は、その工場排水等を排出する者に対し、汚水等の処理方法の改善、特定施設の使用の一時停止、その他必要な措置をとるべきことを命令することができることとし、常に水質汚濁の事実が発生しないよう取り締る根拠としたのであります。
第五に、特定施設を設置する者に対しまして、以上のように公共用水域の水質を保全する義務を課しましたにつきましては、その義務の履行を容易にして、本法の実効をあげるため、汚水処理施設に対する固定資産税を免除するとともに、国として汚水処理施設の設置または改善につき必要な資金の確保、技術的な助言その他の援助に努めることとし、さらに主務大臣は適切な汚水処理技術の研究及その成果の普及に努めるものとしたのであります。
以上が、この法律案を提出する理由であります。何とぞ、慎重御審議の上、御賛同あらんことを切にお願い申し上げる次第でございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/12
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013・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に水質汚濁防止法案について趣旨の説明を聴取することといたします。提出者小林正美君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/13
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014・小林正美
○小林正美君 ただいま議題となりました水質汚濁防止法案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
申し上げるまでもなく、水は国民の生活にとって最も重大な関係を持っており、水質の管理が正しく行なわれるかいなかは、国民の生存と産業の登展にとって絶大な関係を持っております。国民の福祉のためには、飲料水は清浄にして病源菌及び有毒物質を含まず、魚貝は良好な生活環境を与えられ、農作物は良質の灌漑水にめぐまれるよう管理されねばなりません。工業の発展もまた、良質の工場用水を得るかいなかによって左右されること論を待ちません。
しかるに、国民の繁栄と福祉にとって至大な関係を有する水質管理の重要性が殆んど無視され、公共用水域が汚濁するにまかされているのがわが国の現状であります。ことに、戦後の都市人口の飛躍的な増大、各種鉱工業の急激な復興発展にともない、これら関係施設から排出される汚水、廃水等の量が著しく増大し、農水産業はもとより、公衆衛生に及ぼす被害が激増し、これら排水等の放出をめぐる紛争が年と共に激化していることは、最近発生致しました本州製紙問題、富士フイルム工場の汚水放出による酒匂川のアユ全滅問題をはじめ幾多の事件が示す通りであります。
以上のように水質汚濁に基く被害が続出し、それにかかる紛争が激化するにつれ、水質汚濁の防止並びにこれにかかる紛争の解決の急務が痛感されるに至ったのであります。
この法案は、このような事態にかんがみ、水質管理を実現し公共用水域における水質の汚濁を防止するとともに、工場、事業場から排出される廃液にかかる紛争に関し、あっせん、調停及び仲裁を行うことによって公衆衛生の向上と水資源及び水産資源の保護をはかり、あわせて工場、事業場から排出される廃液等にかかる利害関係者間の利害の調整に資することを目的として立案いたしたものであります。
内容を簡単に御説明申し上げますと、まず第一に、効果的に水質汚濁の規制を行うために次のような措置をとることといたしております。
(一) 公共用水域のうち、公衆衛生の向上と水資源及び水産資源保護の見地から水質の清浄を確保する必要がある水域を、その水域の汚濁に密接な関係を有する地域とともに、水質汚濁規制区域として指定することといたしております。
(二) 水質汚濁防止委員会は、前項の規制区域を指定いたしましたときは、関係行政機関の意見を聞いて、当該規制区域に係る水質汚濁許容基準を定め、これを官報で公示せねばならないことといたしました。同時に、規制区域にかかる水質汚濁許容基準を定めたときは、水質汚濁防止委員会は、当該許容基準に基いて当該区域内の工場、事業場で水質汚濁防止委員会規則で定めるものから、規制区域内の公共用水域に排出される廃液等の汚濁度の許容基準及びその適用期日を定め、当該工場、事業場の事業主に指示するとともに、これを公表しなければならないことといたしております。
(三) 前項の指示に不服がある場合は、その指示を受けた日から三十日以内に、委員会規則の定める手続に従い、異議の申し立てをすることができることとし、申し立てがあった場合は、水質汚濁防止委員会は、申し立てのあった日から三十日以内にこれについて決定し、これを申立人に通知せねばならぬことを規定いたしております。
(四) この法律の規定により廃液等許容基準が定められた工場、事業場主は、廃液等許容基準の適用期日以後は、当該廃液等許容基準を越えて廃液等を規制区域内の公共用水域に排出してはならないことといたしました。そして事業主がこの項の規定に違反したときは、当該事業主に対し、期間を定めて除害施設の設置または改善その他の措置をとるべき旨を命ずることができることを規定いたしました。
(五) 水質汚濁防止委員会は前項の命令をする場合、廃液等による被害が特に著しいと認めるとき、当該事業主に対し、同項の命令にかかる措置がとられるまでの間、事業の全部または一部の停止を命ずることができるようにいたしております。
(六) 規制区域内において、委員会規則で指定する事業を新規に開始しようとするものは、あらかじめ、その廃液等の処理方式につき水質汚濁防止委員会の許可を受けなければならないことといたしました。従って、これらの事業主は、その許可を受けた後でなければその事業を開始してはならないわけであります。
(七) 清掃法、下水道法その他、この法律に含めることのできなかった法律並びにこれらの法律を実施するための命令の実施を所掌する行政庁は、法令の規定により、規制区域にかかる廃液等の排出を許可し、命令しまたは、制限しようとする場合は、当該規制区域につき定められた水質汚濁許容基準によらねばならないことといたしました。この規定にもかかわらず、なお、規制区域内において、水質汚濁許容基準に適合する水質を確保するため必要があると認めるときは、水質汚濁防止委員会は、行政庁に対し、必要な措置をとるべき旨を請求することができることもあわせて規定いたしました。
第二に、パルプ工業、製紙工業、繊維工業、澱粉工業、醸造業その他、その事業の性質上有害な廃液、汚水または固形物を排出する事業で、別に法律で定めるものの工場、事業場の事業主は、その業務上排出する廃液、汚水または固形物によって他人に損害を与えたときは、その損害を賠償する責めに任ずることとし、いわゆる無過失賠償について規定いたしました。
第三に、紛争の処理についてでにありますが、次のように規定いたしました。
(一) まず、あっせん、調停についてでありますが、工場、事業場から排出される廃液等による被害に関して紛争が生じたときは、関係当事者は、委員会規則で定める手続に従い水質汚濁防止委員会に対し、紛争の解決につき、あっせんまたは調停を申請することができることとするとともに、右申請があったときは、委員会は当該紛争の解決につき、あっせんまたは調停をしなければならないことといたしました。あっせんまたは調停は、当事者の一方の申請によっても行い得るようにいたしたわけであります。
なお、あっせんまたは調停は、委員会規則の定めるところにより、その指定する水質汚濁防止委員会の委員もしくは特別委員または水質汚濁防止委員会の事務局の職員がこれを行うこととなっております。
(二) 仲裁の申請は、双方の合意によらねばならないこととなっております。これは、水質汚濁防止委員会の行う仲裁については、この法律に別段の定めがある場合を除いて、仲裁委員を仲裁人とみなして民事訴訟法第八編の規定を適用することとし、その効力を一段と強めることといたしたことによるものであります。
なお、水質汚濁防止委員会による仲裁は、三人の仲裁委員がこれを行うこととし、そのうち少くとも一人は、介護士法第二章の規定により弁護士となる資格を有する者でなければならないと規定されております。仲裁委員は、水質汚濁防止委員会の委員または特別委員のうちから選ばれることになります。
第四に、以上の主務官庁として、国家行政組織法第三条第二項の規定に基いて、総理府の外局として水質汚濁防止委員会を設置することにいたしました。そしてこの委員会が強力な水質管理機能を発揮することができるよう、現在関係各省に分有されております水質管理、汚水防止に関する権限をできる限りこの委員会に統合することといたしました。なお、この委員会には強力な事務局を置き、全国八ブロックに地方事務所を、置くことになっております。
第五に、水質汚濁防止の完璧を期するため、除害施設に対する助成を行うことといたしました。すなわち、国は規制区域内の工場、事業場の事業主に対し、当該工場、事業場の除害施設の設置または改善に要する経費の一部を補助し、または当該設置または改善に要する資金の融通についてあっせんをすることができるよう規定するとともに、他方で地方税法及び租税特別措置法の一部を改正して、除害施設に対する固定資産税の免除及び除害施設に対する特別償却の措置を規定いたしました。
第六に、この法律の厳格な実施を保証するために、罰則を規定し、正直者がばかを見ることのないよう配慮いたしました。
以上が、本案を提出するに至りました理由及び法案内容の説明であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/14
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015・長谷川四郎
○長谷川委員長 以上で三法案についての趣旨の説明は終りました。
引き続き質疑に入ります。田中武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/15
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016・田中武夫
○田中(武)委員 この三法案につきましては臨時国会におきまして大体基本的な質問も終っておりますので、そういう点については省略したいと思っておりますが、ただ一点だけこの際に政府委員から政府の考え方を聞かしていただきでたいと思う点があるのです。と申しますのは、三法案のうちでいわゆる政府二案と社会党の提出案との重要な違いの点は数点ありますが、その一つに、社会党案ではいわゆる無過失責任の点を明記しておるという点であり、政府案にはその点が欠けておる。このことにつきましても何回かさきの委員会において質問いたしておりますが、政府委員の答弁によりますと、公共用水域の水質の保全に関する法律の十九条によって、これは無過失責任のことを明記はしていないけれども、工場その他がその示された水質基準を厳守しておったとしても、それによって生ずるところの損害については、やはり損害賠償の責任があるということがこの法理である、このように答えられておるわけです。ところが実は私の郷里に近い兵庫県の加古川市にある肥料会社に関連して大正の初年に起った事件でありますが、この肥料会社から有毒ガスを排出する、それに関連して附近の農産物に被害を与えた、こういうことにかかる訴訟におきまして、重要な判例が二、三出ておりますので、その判例の経過を今から申し上げまして、私の心配の点について御質問いたしたいと思うのです。
実はその肥料会社から排出される有毒ガスによって付近の農産物に被害を起した、こういうことの訴訟でありまして、その訴訟に対しまして、まず大正五年十月二十四日に大阪控訴院では、「有毒ガスを出して稲に害を及ぼさせた場合は、特別の事情のないかぎり、防止に必要な注意を怠ったというべきである。」こういうことで、過失を認めております。ところがこれに対する上告審におきましては、大正五年の十二月二十二日、大審院におきましては、「化学工業に従事する会社などが、事業から生ずるかも知れない損害を予防するために、相当の設備を施した以上は、他人に損害を被らせても、故意過失がない。」こういう判決を下しまして、さきに申し上げました大阪控訴院の判決をくつがえしております。この大審院の判例を見ますと、私の心配しておるいわゆる水質基準を守るために相当な施設をした場合、そのことによって生ずる被害に対して損害の責任がないのではないか。この今申しました大審院の判例は過失がないということをいっています。もちろんその後法理論の進展によりましで、現在無過失責任を認めるということは常識になっておりますが、まだこの大審院の判例をくつがえしたという事実はあまり聞いておりません。そうしてその後こういう判決によって差し戻されました大阪控訴院におきまして、再び大正八年十二月二十七日に、今度は結論としては過失を認めておるのですが、こういう趣旨のことでございます。「製錬工場から出る亜硫酸ガスおよび硫酸ガスが付近の稲麦に害を与えた場合、他の製錬所においては四〇〇尺、五〇〇尺の高煙筒によってガスを大気中に放散させているのに、わずか一〇〇ないし二〇〇尺の煙筒を使用するにすぎないのは、過失である。上すなわち無過失責任とかいったような論拠ではなく、この会社の煙突が他に比べて低い、従ってその施設が相当でない、こういうようなところに過失がある、こういうことなんです。そうしますとやはり先ほど申しました大正五年十二月二十二日の大審院の判決事件ですが、番号を申しますと大審大正五年(オ)八一六号事件です。この趣旨からいいましたら、結論的には過失を認めて損害に応ずるようにということになっておりますが、その趣旨は今申しましたように、その施設が適当でない、こういうことです。それならば今言っておりますこの法律によるいわゆる水質基準を十分に守る、また守ることに対して故意過失がなく、そしてその設備が相当である、こういうときに、なおかつ被害が出た場合に果して損害賠償に応ずる義務ありやいなや、こういうことが疑問になるわけです。ただあなたの言われるように、第十九条によってそういうことはできますと、こういうことだけでは納得できないわけです。そうすると私が前回に申しておるように、社会党案のごとく無過失責任を明記しなければ、ただこの法律あるいは工場排水法だけで、こういった水質の汚濁等々からくるところの漁業あるいは農業に対する損害に対する万全な保護政策にならない、このように思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/16
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017・大堀弘
○大堀政府委員 ただいま御指摘の判例につきましては私ども実はまだ十分研究いたしておりませんが、私どもの前回申し述べました考え方はこの法律に規定はございませんけれども、この法律の建前は行政上の責任を規定しておるだけでございまして、司法上の問題につきましては民法七百九条の一般の不法行為の要件によりまして裁判される、こういうふうに考えて解釈上そういうふうに解釈されるということも法制局の見解でございます。私どもとしましては、立法論としましてなるほど無過失賠償責任を規定した方がよろしいという御意見もあるかと思いますが、やはり無過失賠償責任は相当重大な例外でございますので、相当慎重に検討した上で規定すべき問題ではないか、かように考えまして、今回の提案におきましては無過失賠償責任まで規定しない、一般の民法の原則によるという考え方をとっておるわけでございます。ただいま法律の判例の場合につきまして、私どももやはり企業の責任という意味からいいまして、大企業が相当生産事業をやります場合に、それにより被害損害を与えます場合にやはり過失が推定されるようなケースがだんだん多くなっておるので、これは非常に占い判例でございますが、とにかく考え方としては企業者側が相当無過失であったことを証明しなければならぬという関係に相なってくるものと考えておるわけであります。以上で御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/17
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018・田中武夫
○田中(武)委員 今局長は民法七百九条によって云々と言われた。それは七百九条は故意過失を要件とするわけです。だがしかし今日の法解釈としては無過失責任は常識であり通念である。これはもう言うを待たないと思う。これは大審院でいわゆる信玄旗掛の松事件ですか、あれ以来無過失責任ということは通論として唱えられていることはよくわかるのです。従って今私の言うておるところの無過失責任を認めていない大審院の判例があることは、これは大正五年の話ですから、私はこれによって云々するわけではないのです。しかし立法の意思とすれば、こういう紛争のおそれある場合、やはり無過失責任について明記すべきがほんとうじゃないか、少くともこういうことによる漁業あるいは農業に対する被害に対して、紛争を円満にかつ迅速に解決し、そうしてそれらの被害を守ってやろうという以上、そういう気持が必要ではなかろうかということを私は言っているわけです。もちろん現在では無過失責任が通念であることはわかっておる。しかし今までは水質基準というものはなかったわけなのです。だからむしろ紛争の場合、これによって被害を受けたのだ、だから賠償せよ、こういうことをうたったわけです。これが今度水質基準というものが定められる、そうするとその水質基準を守るために適当な相当な設備をした、なおかつ被害が発生した、こういうような場合ですね。もちろんこの法によっては、これは事件の解決の和解の申し立てはできるわけです。和解の申し立てはできるが、必ずその加害者側の抗弁とすれば、私は法に定められた水質を守り、かつそれを守るための適当なる設備をしておる、だから私には責任がないと言うだろうと思うのです。あなたの言われておる十九条であるから云々ということは、それによって紛争が生じたりあるいは被害が生じた場合に、和解の申し立てをすることができるというだけのことなのです。しかしその和解の内容に立って議論をし、お互いの主張をする場合には、私は法に定められた水質を守り、あるいはそれを守るための相当な設備をした、そうするならば大正五年の大審院判例には過失なしということになっておるじゃないか、こういうことを多分言うだろうと思うのです。いかがでしょうか。そういうことで私ここで直ちに、今さら無過失責任を入れろと言ってみたところで話にならぬことはわかっております。だがはっきりしておきたいことは、こういう判例はあるが、立案者としては、これは無過失責任ははっきりとあるのだということを認めるかどうか、その点をはっきりしておいて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/18
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019・大堀弘
○大堀政府委員 ただいまの点でございますが、鉱業法の場合には御承知のようにはっきり無過失賠償責任を規定してございますが、この場合は相当具体的ケースにつきまして、損害の出方が定型化しておりますし、歴史的にも相当長い例がございます。しかも鉱業権が非常に強い権利で、所有権に関係なく地下を掘っていけるという特殊な権利を設定されておりますために、こういった意味で特殊な無過失賠償の規定を入れておりますけれども、一般の工場の場合でございますと、やはり工場の態様が非常に複雑多岐でございますし、因果関係の追及も非常にむずかしいということでございますので、法律の建前として頭から無過失賠償を一挙にきめていくということは、現状におきましては非常に困難だろうと考えておるわけでございます。現実に出ましたケースについて、かりに水質基準によって設備をいたしておりましても、損害が発生いたしますれば、それは当然賠償の責任を生ずる場合があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/19
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020・田中武夫
○田中(武)委員 私の考えからいえば、むしろこれはどっちに入れても入れなくても無過失責任は厳然として今日ではあるということが常識である、こういうふうに考えておるわけなのです。しかしこういう判例もあり、かつ水質基準がきまり、これを守るための設備を十分にした。なおかつ会社に——加害者側からいえば、賠償責任があるのだろうかと必ず言うだろうと思うのです。しかし現実において損害が発生した。しかもそれはそこから排出せられた濁水によってやられたということであるならば、当然私はある、こういうことをはっきりしておきたいと思う。そこでこれは局長に聞いても何ですが、大臣お留守だから次官にお尋ねしますが、そういうことを明確にしていただくということと、これは紛争ができたときにこの法律成立の過程において、当委員会においていかなることが論議せられたかということがやはり一つの法源になると思うのです。従ってこれを明確にしておきたい。なおかつこういうことによって将来紛争が起きるだろうと思う。そういうことがあった場合には、将来私たちが主張しているような無過失責任ということを明記する用意があるかどうか。この点を一つ政治的に御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/20
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021・河本敏夫
○河本政府委員 法律の解釈につきましては、ただいま局長が申し述べた通りでございますが、なお田中委員から御指摘がありました点につきましては、引き続きまして政府におきましても検討を続けていきたい、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/21
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022・田中武夫
○田中(武)委員 これで終りますが、検討という言葉はいろいろありまして、大臣とか次官の答弁はみなこれなんです。検討じゃなしに、私はこういうことが必ずあるだろうと思うのです。法律できめられた水準を守っております、かつ、これを守るためにかくかくたる設備をいたしました、こういう抗弁は必ずあると思うのです。だからそういうことによって将来相当トラブルがあるだろう、紛争があるだろう、こういうことを予想されるわけです。だからそういうことがあった後、いわゆる施行の経過を見て、そういう用意があるかどうか、これだけをもう一ぺんお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/22
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023・河本敏夫
○河本政府委員 そういうことの起らないように、できるだけ運用の面で調整いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/23
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024・田中武夫
○田中(武)委員 それはおかしい。そういう答弁でしたらおかしいのだ。そういうことの起らないように運用の面で云々ということは……、これは法律問題なんだ、いよいよ和解とか訴訟になると。だから、そういうことがあるだろうと思う、そういうことが将来必ず出てくる、出てきた場合、その経過を見て、今私の主張しているような点について法律を整備する用意があるかどうか、そういうことを考えております、用意いたします、そう言うてもらったらいいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/24
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025・河本敏夫
○河本政府委員 法律の解釈につきましては、重ねて御答弁申し上げますが、先ほど局長から申し上げた通りでございます。しかし、田中委員の御指摘のような問題がかりに起ったといたしました場合には、さらにそれに対してどう措置するかということにつきましては、慎重に検討を加えていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/25
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026・田中武夫
○田中(武)委員 われわれはもうきょうはこれを修正して通すという腹になっているのだ。だから今さらこういうことは言いたくないのだが、もうちょっと割り切って答弁したらどうですか。慎重になにしますと言うよりも、整備しますと言えばいいのだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/26
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027・河本敏夫
○河本政府委員 御趣旨の通りにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/27
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028・長谷川四郎
○長谷川委員長 他に質疑はありませんか。——御質疑もないようでありますし、この三法案につきましては前国会におきまして、十分質疑を尽しておると存じますので、三法案について質疑は終了したものと認めます。
この際、公共用水域の水質の保全に関する法律案及び工場排水等の規制に関する法律案に対し、自由民主党及び日本社会党共同提案にかかる修正案が提出されております。
まず趣旨の弁明を求めます。中嶋英夫君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/28
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029・中嶋英夫
○中嶋(英)委員 今委員長からお話がありましたように、両党間でまとまりました修正案の案文を先に朗読いたします。
公共用水域の水質の保全に関する法律案に対する修正案
公共用水域の水質の保全に関する法律案の一部を次のように修正する。
目次中「第十条」を「第十二条」に、「(第十一条—第十八条)」を、「(第十三条—第二十条)」に、「(第十九条—第二十三条)」を「(第二十一条—第二十五条)」に改める。
第三条第二項中「次条第一項上」を「第五条第一項」に改める。
第二十二条及び第二十三条をそれぞれ第二十四条及び第二十五条とする。
第二十一条中「第十九条」を「第二十一条」に改め、同条に次の一項を加え、同条を第二十三条とする。
2 前項の場合において、一の紛争に係る申立が二以上の都道府県知事になされたときは、当該都道府県知事は、協議により仲介員を指定することができる。
第十九条及び第二十条をそれぞれ第二十一条及び第二十二条とする。
第十二条を第十四条とし、以下第十八条まで二条ずつ繰り下げる。
第十一条第二項を次のように改め、同条を第十三条とする。
2 審議会は、経済企画庁長官の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議する。
一 調査基本計画の決定及びその変更に関すること。
二 指定水域の指定及びその変更に関すること。
三 水質基準の設定及びその変更に関すること。
四 前三号に掲げるもののほか、公共用水域の水質の調査その他公共用水域及び地下水の水質の保全に関する重要事項に関すること。
第十条中「指定水域の指定」を「調査基本計画の決定、変更及び公表、指定水域の指定」に改め、同条を第十二条とする。
第七条を第九条とし、以下第九条まで二条ずつ繰り下げる。
第六条を第七条とし、同条の次に次の一条を加える。(関係行政機関の義務)
第八条 前条第一項の通知を受けた関係行政機関の長は、指定水域の水質の保全に関する事項に係る事務を処理するにあたっては、当該指定水域に係る水質基準を尊重してしなければならない。
第五条を第六条とし、第四条第一項中「おそれの高いもの」を「おそれのあるもの」に改め、同条を第五条とし、同条の前に次の一条を加える。(調査基本計画)
第四条 経済企画庁長官は、次条第一項及び第二項に規定する指定水域の指定及び水質基準の設定の円滑な実施を図るため、公共用水域の水質の調査に関する基本計画(以下「調査基本計画」という。)を立案し、水質審議会の議を経て、これを決定する。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 経済企画庁長官は、前項の規定により調査基本計画を定め又は変更したときは、これを公表するとともに、関係行政機関の長に通知しなければならない。
次に工場排水等の規制に関する法律案に対する修正案を朗読いたします。
工場排水等の規制に関する法律案の一部を次のように修正する。
第二条第七項中「第四条第一項」を「第五条第一項」に改める。
ただいま修正案を朗読いたしましたが、このおもなる修正の要点を申し上げます。
第一に、第四条に調査基本計画を追加しましたが、それは経済企画庁長官が調査基本計画を立案し、水質審議会の議を経てこれを法定し、公表するとともに、関係行政機関の長に通知しなければならないという規定をいたしましたが、これを変更するときも同様とする意味であります。これは審議の過程でわれわれが了解いたしましたように、ただいま政府機関が持ち合せております調査能力は、当面一年間に数河川を指定し、これを調査するにとどまるという様子でありますが、このままの年次計画で見ますと、まさに百年河清を待つという感がいたしますので、調査能力を今後厚くし、その対象を拡大していくという委員会の意向を尊重する意味において修正をしたものであります。
第二に、関係行政機関の義務を追加いたしました。第八条関係行政機関の長は、水質保全に関する事項にかかわる事務を処理するに当っては、水質規準を尊重しなければならないということを規定いたしました。
第三に、仲介員の規定において、紛争が二以上の都道府県にまたがった場合に、そしてそれが二以上の都道府県知事に申し立てがされた場合には、当該都道府県知事は協議をして仲介員を指定すべきことを規定いたしました。
第四に、第四条第一項に「おそれの高いもの」というのがありますが、これは対象となるべきさ河川を幅を非常に狭くするおそれがありますので、この際「おそれのあるもの」ということで「高いもの」という字句を削除したわけであります。
その他たくさん読み上げましたが、ただいま申し上げました点に従って関係条項の整理をしたものであります。
次に、工場排水等の規制に関する法律案に対する修正点は、公共用水域の水質の保全に関する法律案の修正に伴いまして、関係条項を整備したにすぎません。
なお、ただいまも問題になりましたが、審議の過程で無過失責任の問題において、これが作為的鉱害発生の隠れみのとなる危険があるとの論議等もあったわけでありますが、ただいま説明申し上げました修正案の線で一応発足し、立法施行後の経過を見た上で再修正を含めて再検討をすることとし、今回はこの点には触れないことといたしましたことを付加して、説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/29
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030・長谷川四郎
○長谷川委員長 修正案についての御発言はありませんか。——御発言もないようですから、両法案並びに両法案に対するそれぞれの修正案の四案を一括して討論に入ります。これらの討論につきましては、お申し出もありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/30
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031・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
これより順次採決をいたします。
まず、公共用水域の水質の保全に関する法律案の採決をいたします。
最初に、自由民主党及び日本社会党共同提案にかかる本案に対する修正案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/31
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032・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって本修正案は可決いたしました。
次に、ただいま修正いたしました部分を除く原案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/32
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033・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって本部分は原案の通り可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。
次に、自由民主党及び日本社会党共同提案にかかる、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、この趣旨説明を求めます。岡本茂君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/33
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034・岡本茂
○岡本(茂)委員 私は、自由民主党並びに日本社会党を代表いたしまして、ただいま議決されました公共用水域の水質の保全に関する法律案に対し、附帯決議を付することを提案いたしたいと存ずるのでございます。
まず、案文を朗読いたします。
公共用水域の水質の保全に関する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当り、次の諸点について特段の努力を払うべきである。
一、経済企画庁に、水質保全に関する機構を設けるとともに、水質基準を作成するための科学的資料を可及的速やかに整備すること。なお仲介員候補者及び仲介員の人選に当っては公正を期すること。
二、水質保全行政の実効を期するための財政措置並びに金融措置の強化を図るとともに、除害施設に対し、税法上特別償却の制度を設けること。
三、下水道の整備を強力かつ速やかに推進するとともにし尿、じんあい等の処理の適切化を期すること。
次に、この趣旨を簡単に御説明申し上げます。
従来、水の取得については、国も、また民間側においても、種々の措置が講ぜられて参ったのでありますが、廃水の処理については比較的等閑に付せられがちでありまして、名産業間においていろいろ紛争を生じ、産業の発展上障害となっておりますることは御承知の通りであります。かかる折から本法案が提出されまして、おそまきながら廃水の規制が実現されることに相なりましたことは御同慶にたえません。
しかしながら、本法案に対し、前回の臨時国会において同僚委員各位の熱心な質疑によって明らかにされましたように、本法はきわめて弾力性のあるものでありまして、その施行に当って、運用上緩怠があれば本法は死文化するおそれがあり、水質保全目的の早期達成はおぼつかないのであります。従いまして、政府は熱意と努力を傾け、次の諸点に留意し、他の法規とも関連して適切妥当な運営をはかられんことを要望してやまない次第であります。
まず、水質保全行政の完璧を期するためには、内容の充実せる地方機関が必要でありますので、経済企画庁に水質保全に関する行政を担当する適当な機構をぜひともこの際新設して、本法の運用に遺憾なからしめる必要があると存ずるのであります。また、水質基準の決定が本法のかなめになっておるのでありますが、これが完全かつすみやかなる作成のためには、これに必要な科学的資料の整備をはかることが急務であると考えるからであります。
次に、仲介員候補者は、一般公益を代表する者、及び工業、農業、水産業その他の産業または公衆衛生に学識経験を有する者のうちから委嘱し、仲介員は右のうちから指定することになっておりまするが、仲介はあくまでも厳正公平に行われなければ紛争解決は困難なばかりでなく、紛争をさらに深刻化するおそれなしとしないのでありますから、その人選に当っては、一方に偏することなく、中正公平を期するよう特に留意する必要があるのであります。
さらに、水質保全行政の実効を期するため、財政措置並びに金融措置の強化をはからなければならないことはもちろんでありまするが、特に除害施設の設置には相当多額の経費を要するのであります。しかるに、これらの施設は本来収益を生ぜざるものであり、資本蓄積の乏しい日本産業の現状においてはこれが負担は容易ならざるものがあり、特に中小企業においてはその負担に耐えないものがあると思うのであります。よって、これらに対しては政府において財政的援助を与え、かつ必要な資金の確保をはかりますとともに、除害施設に対しましては五カ年間十割増程度の償却を望むものであり、そのため税法上の特別償却の制度を設ける必要があるのであります。
次に、都市周辺の水質の汚濁は、生活廃水等によるものが大きな割合を占めており、これが被害の防止は結局下水道網の整備に帰するのでありますから、下水道の整備もまた目下の急務といわなければなりません。また、屎尿塵埃等の処理の適切化をはかることもきわめて緊要でありますので、あわせて要望するものであります。
以上、簡単でありますが趣旨説明を終ります。何とぞ諸君の御賛同あらんことを望む次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/34
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035・長谷川四郎
○長谷川委員長 ただいまの岡本君の動議の通り附帯決議を付することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/35
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036・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
次に、工場排水等の規制に関する法律案の採決をいたします。
まず、自由民主党及び日本社会党共同提案にかかる本案に対する修正案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/36
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037・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって本修正案は可決をいたしました。
次に、ただいまの修正部分を除く原案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/37
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038・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって本部分は原案の通り可決をされました。
本案は修正議決すべきものと決したのであります。
次に、ただいま議決をいたしました両案に関する委員会の報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/38
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039・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
この際、経済企画庁長官及び通商産業大臣より発言を求められておりますので、これを許可いたします。三木国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/39
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040・三木武夫
○三木国務大臣 ただいま本委員会において全会一致可決されました附帯決議に対しては、その精神を尊重して、各位の御意思に沿うように努力をいたしたい覚悟でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/40
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041・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に高碕通商産業大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/41
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042・高碕達之助
○高碕国務大臣 ただいま皆さんの御熱心なる御支持によりまして、公共用水域の水質の保全に関する法律案並びにその附帯決議案が議決されましたことを厚く御礼申し上げます。政府といたしましても御趣旨を十分尊重いたしまして、これが実現を期したいと存じます。まことにありがとうございました。
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043・長谷川四郎
○長谷川委員長 この際水質汚濁防止法案について提出者より成規の手続をもって撤回の申し出があります。本案は本委員会の議題といたしました議案でありますので、委員会の許可が必要であります。この申し出を許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00119581216/43
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044・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、本案は撤回を許可することに決しました。
本日はこれにて散会をいたします。明日は午前十時より委員会を開会いたします。
午前十一時五十一分散会
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