1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月六日(金曜日)
午前十時四十六分開議
出席委員
委員長 長谷川四郎君
理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君
理事 中村 幸八君 理事 南 好雄君
理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君
理事 松平 忠久君
新井 京太君 岡本 茂君
鹿野 彦吉君 木倉和一郎君
始関 伊平君 關谷 勝利君
野田 武夫君 細田 義安君
前尾繁三郎君 渡邊 本治君
板川 正吾君 内海 清君
大矢 省三君 勝澤 芳雄君
小林 正美君 堂森 芳夫君
中嶋 英夫君 水谷長三郎君
出席政府委員
通商産業政務次
官 中川 俊思君
通商産業事務官
(企業局長) 松尾 金藏君
委員外の出席者
通商産業事務官
(通商局振興部
長) 日高準之介君
通商産業事務官
(企業局産業施
設課長) 川原 英之君
専 門 員 越田 清七君
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
工場立地の調査等に関する法律案(内閣提出第
一三五号)(参議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/0
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001・長谷川四郎
○長谷川委員長 これより会議を開きます。
参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。天然ガスに関する件の調査の必要上、新潟地区地盤沈下の問題について、学識経験者または利害関係の代表の方等に、来たる三月十七日参考人として御出席願い、種々御意見を承わることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/1
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002・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
次に、ただいまの参考人の選定等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/2
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003・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
暫時休憩いたします。
午前十時四十七分休憩
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午前十時五十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/3
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004・長谷川四郎
○長谷川委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。
小売商業特別措置法案、商業調整法案、硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の一部を改正する法律案、輸出品デザイン法案、並びに工場立地の調査等に関する法律案の五案を一括議題とし、審査を進めます。
質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。中嶋英夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/4
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005・中嶋英夫
○中嶋委員 工場立地の調査に関する法律案に対して質問をいたします。今回上程されました本案は、非常に時宜を得たものと私は考えるのでありますが、法案の内容よりも、むしろこの法律の裏づけとなるものについて若干質問をお許し願いたいのであります。
御提案の趣旨から伺いますと、資料の提供と、そして工場の分散化というところに力点を置かれているようでありまするが、しかし、資料の提供、助言等の場合において、各般の条件について十分なる配慮が行われてなければ、ただ機械的に単なる工場誘致の地方運動に同調するだけであっては、いろいろ問題が将来禍根となって残る場合もあり得ると思いますし、また資料の提供の際の助言という問題も、単に工場の採算の問題だけではなくて、社会的な諸問題に対して、わが国の産業がその社会性をどれだけ発揮するかという、そういう関連についても十分な配慮がなければならないと、このように考えるわけであります。そういう点から、二、三の問題について御質問いたします。
まず第一に、最近問題になっております公害に関する点について、どういうお考えを持っておるかということであります。御存じのように、公害問題は、さきに水質汚濁の問題で種々論議があり、対策が講ぜられたわけでありますが、単に汚水の問題だけではなくて、最近煤煙、塵埃あるいは騒音、振動、ガス、こういった害が相当問題になっております。特にある工場地帯においては、一日に百トンの塵埃が平均して降っておるというようなデータも実際に現われておるわけであります。これは、現在地方の自治体、あるいは各大学等においても相当研究が進みまして、神奈川県等においては大気汚染の問題ということで、気象関係までも含めての相当濃密な調査がされておりますが、これらの公害問題に対する政府当局の現在までの熱意の入れ方というものは、非常にまだ希薄であるということが言い得るわけであります。たまたま神奈川県のように、自前で調査費を出せるところ、こういうところは相当進んでおりますが、いまだ関西方面に参りますと、その県の商工部長さんが、公害問題についてどのようにお考えになりますかというわれわれの質問に対して、大阪は、昔からむしろ煙があるということが誇りなんだ、煙部、煙の都という表現が新聞等にも現われているように、むしろ誇りなんだ、煙があることが、民のかまどと同じような意味で、この町の産業が発達している証拠なんだから、こういうことであまり公害問題ということを騒ぐのはむしろ産業の発展上問題があるのではないか、こういうようなことを、私は二、三年前に伺ったことがあるのでありますが、確かに産業革命後のイギリスにおいて、煤煙はその都市の市民のスープだという表現があったということは、相当広く伝えられております。しかし、今ではこの煤煙の問題について、技術的なきめ手がないわけではなくて、技術的なきめ手がある。電気集塵機等の発達によってきめ手がある。問題は、資金的なきめ手が今のところ不十分である。たとえば資本金百万円の工場に、煤煙問題の解決のために、技術的なきめ手があるというので、電気集塵機を設置しろ、こう言いましても、その価格が一千万円では、その会社に作業をやめろということと同じ意味になってくる。こういう問題等から問題が困難だということで、さきに厚生省等において大気汚染に対する法律案の準備があった場合に、通産省はこれに反対をする。しかもその場合に、経済団体の方の反対声明が先になっておるというようなことは、工場地帯における住民に非常に疑惑を持たれ、あるいは不満を買っておるということは、御存じであろうと思うのであります。こういう公害の問題の場合に、単に工場の分散をすることによって、公害発生の事業所が地方にいくので、それで解決になるのだという考え方は問題だと思うのであります。現状において問題があるわけでありますから、工場立地というのは、新しい工場を作るというばかりでなしに、既存の工場地帯において立地条件が、いわゆる経済上の立地条件だけではなくて、社会的な立地条件をまじえた意味においての立地条件を整えるという、こういう積極性がなければ、私は工場立地の調査というものは、不十分なものに終ってしまうと思う。単に地方における工場誘致運動にこたえるだけ、あるいは単に会社工場に対するサービス機関ということで資料提供に終る、こういうものであってはならないと考えるわけです。こういう点、積極的に、既存の工場地帯における現下の立地条件の中に欠くるものは何か、それは単に経済上の問題だけでなくて、採算上の問題だけではなくて、公害の問題その他を含めた社会的な諸問題を含めて、立地条件として満足すべき状態にするにはなおこういう施策が必要である、こういう対策が必要である、そういう積極的なものを企図せられておるかどうか。今後この法律ができましたあとで、そういう点まで積極的に考えますと、それ相応の予算なりスタッフなりというものが必要であろうと思いますので、その点をまず伺っておきたい。
二番目にお伺いしたいのは、今申し上げた幾つかの社会的な諾問題を含めた条件の具備ということの中に関係があるのでありますが、いわゆる適地というのは、地理的な諸条件、いわゆる自然条件、あるいは用水問題とか輸送問題、こういう問題は、提案説明の中でも触れられておりますけれども、雇用問題との関係はどうなるのかということであります。たとえば現在横須賀方面における離職者の対策の問題については、相当その地区の自治体におきましても問題になっておりますし、この点については、通産省その他よく事情は御存じの通りであります。こういう地区における離職者がたくさんあるところにおける工場の誘致運動というものは、特別に考えていかなければならぬと思うのであります。確かに農村方面、あるいは地方の漁港等を改修をいたしまして工場地帯を造成する、その近辺から安い賃金で雇用者を得られるというそういう採算上の感覚というものは、私は事業者の側にはあると思います。しかし一方都会、工場地帯の近くにおります中学卒業生と、農村地帯、漁村地帯における中学卒業生は、同じ課程を経ましても、おのずから周囲、環境からの影響として、科学的な感覚というものは、やはり一段前に出ておると思うのであります。高校卒業生にしてもしかりと思うのであります。こういう関係を考えますと、横須賀地区における離職対策の問題と、武山あるいは追浜地区における既存の工場地帯、これが用水の問題その他いろいろ条件が不十分だということから、いまだ全的解決を見ていないわけでありますが、こういう問題に対してはどういう施策を施せばいいのかという、事業者に対する側の助言だけではなくて、その地区における、あえて横須賀に限りませんけれども、ある団地を指定する場合も、その地区の地方自治体なり、その地方自治体と関係のあります中央における自治庁あるいは建設省、運輸省等に対して、あの地区はこういう条件をなお加えるならばりっぱな工場適地となる、こういう助言が、事業者の側だけではなく、関係各方面に対する助言というところまでいき得るのかどうか、こういう点についてどのようにお考えになっておりますか。おそらくこれから工場適地を探しましても、やはり現状にして完璧というものはないと思うのであります。そういう点を、単にあそこよりここがいいでしょうという事業者の側に対する助言だけで事を済ませたのでは、適正な工場配置という国土計画と結びつくところの工場の分散化というものは、あり得ないと思うのでありまして、こういう点についての御見解等もお伺いしたいと思うのであります。以上二点についてまず御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/5
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006・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 ただいまお話のございました、煤煙その他公害との関係は、工場立地の際に非常に重要な項目であることは、御指摘の通りでございます。その中でも特に大きな、いわば社会問題にまで大きく取り上げられましたいわゆる排水の問題につきましては、一応法律的な態勢が整って参ったことも御指摘の通りでございますが、煤煙その他につきましても、この問題がそれぞれの地方によって大きな問題であることは、私どもも十分承知いたしております。かりにその中の煤煙の問題につきましても、従来におきましても、たとえば鉱山というようなところの煤煙で、特にその鉱害の程度の非常に高いものについては、当然鉱山保安法その他でそれの取締り態勢は一応できておるわけですが、現状では、そういう極端な場合だけでなくして、だんだんと工場がある地域に集中して参りますと、煤煙の問題は、非常に大きな問題になって参ったことは御指摘の通りであります。ただこの煤煙の問題につきましては、今申し上げますように、たくさんの工場が集中的に集まって、それが総集計で非常に大きな問題になるというような状態にある関係から、その因果関係を明白に突きとめることが、なかなかどの工場のどの責任ということが非常に突きとめにくいというような事情で、とかく問題がおろそかにされがちであったと思います。しかし最近におきましても、御承知のように、たとえば新鋭火力発電所ができますような際には、これは今お話のございましたように、技術の面でも、あるいは資金の面でも、その他十分それを解決し得る条件が整っておりますので、そういう比較的恵まれた場合にだけ現在被害の問題、煤煙問題も大体解決済みの方向にあると思いますが、全体としては、今御指摘のように、今なおこの問題は非常にむずかしい、また調査その他で十分検討しなければならぬ段階に現在置かれておると思います。しかし、これをなおざりにするわけでは決してございませんで、今回のこの法律施行の際にも、当然この点は重要な問題として、この運用の際にも取り上げていきたい考えでございます。この中で求めております立地条件の調査項目の中に、その中の大きな重要なファクターとして、予想される煤煙その他の産業公害の問題も調査項目として十分調査をしなければなりませんし、またこの法律に基きまして、指定地区内における既存の工場から報告をとり得るような規定になっておりまして、その際にも、既存の工場が、現実に自分の工場の関係で、排水のみならず、煤煙その他の公害問題でどんな苦労をしているか、悩んでいるかということも、当然報告をしてもらわなければなりません。あわせて、そのようなことから、立地条件の問題に公害の問題をできるだけ取り上げて参りたいということは、当然のわれわれの気持でございます。
それから第二の点といたしまして、工場適地を探す場合に、単に自然条件だけではなくして、それ以外の、たとえば労働力であるとか、あるいは離職者対策であるとか、その他社会的な条件もあわせて考えるべきであるという御指摘でございますが、これも、私ども当然そのように考えます。もちろん一般的に申しまして、企業が自分の工場立地を求めます際には、当然そこにどのような——工場にとって最も大切な労働力がどういうふうに得られるだろうかということを、企業側としても当然考えるだろうと思います。これも、もちろん工場立地の重要なファクターであることは、申すまでもないのであります。しかし、ただその程度だけでは、まだ十分ではないのでありまして、今御指摘のございましたように、ある地域にいろいろな事情から離職者が集団的に発生をしておるというようなところに、工場側も進んで行っていただくように、またこの法律の運用の上からも、そういうところに工場を持っていくように努力すべきではないかという御指摘は、私どもも全く同感でございます。ただこの法律の建前からいたしますと、企業が自分の工場立地を求めて最終的に決定するのは、企業自身の判断決定にまかせられておる形でありますので、この点も、この法律の運用に当っては、私どもの方でもできるだけそのような点に十分留意をして運用して参るということでいくことに相なると思います。その点は、十分考えて参ると思います。いかなければなりませんし、また地方公共団体との関係におきましても、今御指摘のような離職者対策等は、今お話のございました、たとえば駐留軍労務者等の関係におきますと、それに最も関心の深いのは、その現地の地方公共団体であろうと思います。その地方公共団体との関係におきましては、この法律運用の建前から申しますと、その立地条件の調査を、地方公共団体に委託して調査をやっていただくことになっております。そういう意味から、地方公共団体の最も関心の深いそのような点について、公共団体も十分意見を出してもらえると思います。私ども、そのような点を十分配慮して、法律の運用をやって参りたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/6
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007・中嶋英夫
○中嶋委員 今公害の問題で、公害の発生が果してどの工場なのか、工場地帯においては密集しているので、その総合合計として被害が起きており、その判別が困難であるという御見解がありましたけれども、私どもの調査におきましては、大体突きとめることができる。それの試験、あるいは煤塵の分析等によってほとんどわかっておる。現にその工場の石炭の使用量とか、そういうものでもわかる。あるいは最も単純な方法でありますが、煙の濃度の判別によっても、度数等の位づけをしてわかっているわけであります。そういう地区があるのですが、この法案並びに提案の趣旨から受けた感じは、何となく調査地区の選定に当っては、当分の間は既存の工場地帯ではなくて、むしろ地方の漁港とか、あるいは水の便利のいい場所とかいう分散化の方法で調査地区が選定されておるのではなかろうか、こういう感じがするわけであります。もちろん法案が通らないうちから調査地区をもう考えておるのだということは、あるいは疑義のある、問題のあるところかもしれませんけれども、少くとも方向として、既存の工場地帯をも当面考えておるというふうに理解されていいのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/7
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008・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 御承知のように、既存工業地帯にますます工場が集中する傾向にあって、そのために立地条件の整備がますますむずかしくなっていくという傾向は、御指摘の通りでありまして、この点は、今後の工場立地条件の整備の際に非常に重大な問題であると思う。現在私どもの方でやっております関係で申し上げますと、いわゆる四大工業地帯を中心としまして、既存の鉱工業地帯におけるいわゆる産業立地条件の整備が、これは経済企画庁を中心に設けております鉱工業地帯整備協議会を連絡機関といたしまして、ここに公共事業費による産業立地条件の整備を関係各省相談をしながら進めていっております。大体これが施策のむしろ中心になると思います。しかし現実の問題といたしましては、既存工業地帯のその周辺に、全くの新工業地帯ではございませんけれども、工業地帯が伸びていくという傾向は非常に著しい傾向であります。その既存の工業地帯の周辺に伸びていく工業地帯について、また同じような、先ほど御指摘の公害問題でありますとか、あるいは輸送問題でありますとか、そういうむずかしい立地条件の整備がいわば無意識のうちに、知らぬ間にまた問題を起すということでは、非常に困るわけであります。そういう意味で、今回のこの調査地域の選定に当りましては、既存工業地帯でもう工場の入れる余地のないところは、これはむしろ既存工業地帯に対する立地条件整備というもので参らなければならぬと思う。しかし、その周辺に工業地帯が伸びていくことに対しては、やはり当然この法律の運用に当って、考えながら今の立地条件整備に将来禍根を残さないようにということを考えて参らねばならないのであります。全くの新天地ということだけを目指しておるわけでもなければ、単なる分散化だけをねらっておるわけでもない。この辺はあわせて考えて参らなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/8
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009・中嶋英夫
○中嶋委員 すでに工場の用地を発見できないという地域というものは、私は実際ないと思うのです。たとえば京阪神におきましても、あるいは京浜工業地帯におきましても、あるいは北九州の工業地帯におきましても、今埋め立て、造成という形において工場地帯の造成の活動が非常に進んでおるわけです。現に神奈川県の場合におきましても、最近川崎方面において百五十万坪の埋め立て工事が進んでおりますし、横浜市においても、数十万坪の埋め立ての計画が最近漁民との話し合いがついたという状態であります。ここで私は、一つ考えてもらわなければならないのは、たとえば神奈川県におきましては、川崎市の土地の造成の経費は、一坪当り大体六千円から七千円、そして土地ができ上って家屋、会社、工場にこれを売却する場合には、もう売却をしてほしいという、分譲をしてほしいという工場の申し込みは非常に多くて、激しい競争が実際には行われておる。そして結果は、坪当り幾らでこれを分譲したかと申しますと、約一万一千円前後、そうすると坪で約四千円から五千円というものは完全にもうかっておる。そのもうかった金額が、今言った公害問題の解決とか、なおこの工場地帯を、現に既存の工場地帯が適地であるという条件を確保するための、諸般の社会的な諸条件からくるところの工場立地の完備という方向には使われていない。現にこの県においては、最近シルク・センターなる会館を作りまして、このためには、初めは農林省との関係で見返り資金などを期待しておったのでありますが、結局これはだめになりました。結局シルクによって横浜港を復興するんだという知事の方針は、結果的には、県の財政の中から七億円もの巨費を投じて、無理やりにでっち上げる。竣工式をやって万歳をやったけれども、希望者がほとんどない。がらがらで、ローラー・スケート場にでもしようかという話なんです。しかも上層の四階以上はホテルに使っておる。こういう状態であります。おそらくこの七億円もの予算をこういう形に使えるということは、よその府県の逼迫している財政を持っている知事さんや県の議員の方々にとっては、もうよだれが出てしようがないという条件だろうと思う。そうしてその既存の工場地帯において、煤煙は今でも一日百トンずつ降っておるという状態、しかもこの工場地帯における学童に対する被害の状態を調べてみますと、明らかに工場地帯における学生生徒、小学校、中学校の生徒の全員の調べをしてみますと、目の病気において、鼻の病気において、のどの病気において、県下の総平均の三倍、四倍、多いのは十何倍という罹患者の数が出ておるわけであります。極端な場合は、トラホームや結膜炎などは、千人を調べまして百人をこえる罹患者数がある、こういう状態であります。教育委員会等で、学校衛生の面に対して相当力を入れておってなおそういう状態、しかもその工場地帯の次に続く地帯、私は東京の山の手方面もそうだと思うのでありますが、こちらの方は、煤煙の影響は受けてないから、私どもの子供は大丈夫と思ったら大間違いでありまして、煤煙の多いところは、目に入って目を傷つける、目の病気が確かに多い。ところがだんだん離れて参りますと、こまかい煤煙は大気の中に浮遊しますから、相当遠くの地帯に参ります。こういうこまかいものは目に入っても害はない、しかしのどに入った場合は、かえって害が多い。というのは、大きなものでありますと、せきをするとか、くしゃみをするとか、たんをするとかいうことで、人体おのずから排泄する作用を持っておるわけであります。あまりにも微細になって参りますと、せきをする刺激もない、たんをするほどの刺激もないということから、実際には、神奈川県の工場地帯から約四十キロあるいは三十キロという地帯の方で、学童の場合においては、咽喉あるいは鼻の病気が非常に多いという結果が出ておる。これは非常に重大な問題だと思うのでありますが、こういう問題は放置されておる。ですから、私は、工場地帯の造成はけっこうだと思いますが、造成をし、工場を誘致し——あの辺に誘致しなくても殺到するのですから、しかもこれは、私企業ならば大へんなもうけであります。坪七千円で埋め立てができて、一万一千円に売れるのですから、四千円のもうけです。百万坪あるいはそれ以上のものを埋め立てていくんですから、大へんな利益がある。もちろんそれには、道路の舗装とか、あるいは工業用水の問題とかにも費用は使うでありましょうが、関係住民に対する福祉という問題について、十分の配慮が行われていない。従って私は、必ずしも集中不可とは申しません。問題は環境に対する対策を十分して、集中しておるということは必ずしも不可ではない。ただ地方産業の発達の意味から、私はむしろ分散の必要があると思う。煤煙がうるさいから地方に行くんだということでは、問題の解決にはならない。こういうことから、いま少しく通産省当局においても煤煙、塵芥の問題、あるいはその他震動、騒音の問題等について注意を深めていただきたい。単に煤煙というのはなかなか原因が把握できない、捕捉できないというようなことではなくて、もうできるようになっておる。しかも煤煙の発生の状態に対する技術的な対策も進んでおるし、また煤煙そのものを防除する設備も、技術的な面において相当進んでおるわけです。問題は、今言った施策が不足、しかも予算の裏づけがない。予算の裏づけのない公害の規制というものは、問題であります。そういう点から、たとえば農村方面において、霜が降って害があれば補助金が出ます。あるいは水が出れば補助金が出る。しかし工場で、そういう害があって住民が困っておるのに補助金が出ない、こういう片寄ったことはないと思う。やはりこういう問題についてよほど進んだ対策を考えておらないと、今回提案されました工場立地の調査に対しても、何か私どもは、法律はできても、その後はどうなるのかという問題が残ると、結果的に空文化するのじゃないかというおそれを持って、賛成したい気持もちょっと迷ってしまうということになるわけであります。従って、調査地区の問題については、頭からもう余地がないと思わぬで、そういう地区は、なお埋め立ての造成、あるいは丘陵を切り開くとかいうことでどんどん造成——工場はほとんどやっております。全国おそらくやらない地区はないでしょう。そういうことから、やはり既存の工場地帯も調査地区の重点に考えていく、またこの調査によって、次に地方に工場適地を発見し、工場ができる場合、私は非常に有力なデータが生まれてくると思う。漁港を改修して工場地帯を作るのだといっても、そういう既存のところのデータがなければ、工場を呼んでみたって、そうしたところは道路がこわされて、住民は迷惑しておる。煤煙が出て、住民が反対運動を起しておる。工場地帯の住民ですと、半ばあきらめがある。ところが、素朴な農村、漁村においては、素朴なだけに感情的な反対運動になって問題を起す。それから通産省の御示唆と御助言によって工場を持っていったけれども、こういうことになったんですが、どうしてくれますかということになったんでは、これは、問題が発生して、その場所の局地的な解決だけ追いかけていくということではならないと思う。この際こうした問題に対して、関連法案として厚生省がしばしば企図し、そのたびごとに通産省の反対で閣議でつぶれておるところの大気汚染の問題その他の問題についてお考えがあるかどうか。政務次官もお見えになったわけですから、その点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/9
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010・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 ただいまお話のございました既成工業地帯についての問題は、私が先はど申し上げたところをさらに敷衍して申し上げますと、先ほど既成工業地帯について、その産業立地条件整備のために、鉱工業地帯整備協議会という連絡機関でその問題を進めておるというふうに御説明申したと思いますが、この関係におきましては、実は三十三年度、本年度、また来年度の予算の案におきましても、本省、地方を通じましてある程度の調査費がすでに計上されております。これは、既成工業地帯についても調査を進めるということを前提にしておるわけであります。さらに本年度五十六カ地点の、先ほど申しました既成工業地帯の周辺を含めた新規開発地点の調査を進めておりますが、その中にも、たとえば四日市でありますとか、播磨でありますとか、世間一般である程度もうすでに既成工業地帯といわれておるような地点についても、やはり調査対象の中に取り入れております。ただいま御指摘がございましたように、一応既成工業地帯でありましても、その周辺の問題のみならず、新たに土地造成をやりながら工業地帯を伸ばしていくという問題が当然あるわけでありますから、その意味で調査対象にもし、また法律の運用の対象にも取り入れていかなければならないことは御指摘の通りであります。
さらにもう一つの、煤煙その他の環境対策の点は、これも先ほど私から一応御説明をいたしたと思いますが、御指摘のように、確かに現在では、煤煙処理の問題につきましては相当程度技術的研究も進んで参っております。しかもその技術の運用いかんによっては、そのような煤煙処理が単なる処理ではなくて、処理の結果、商品をその中から相当とることができる。御承知のように煤煙の中からフライ・アッシュをとったり、あるいは製練所の煤煙の中から硫酸を回収したりというような、技術的に完成したものもすでにございます。今後できるだけそういう技術の運用によって、その問題を解決していくのみならず、さらに広い意味で、環境対策として工場立地を進める際に、あわせてその問題を考えていかなければならないことは御指摘の通りでございます。ただいま補助金あるいは資金というような御指摘もございましたが、これは、たとえばすでに法律ができておる排水問題についても、補助金対策というようなこと、予算措置等の関係でなかなかむずかしい状態にはございますが、今後私どもできるだけそのような方策をあわせて、この問題の解決に努力して参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/10
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011・中川俊思
○中川(俊)政府委員 ただいま御指摘の問題につきましては、局長から答弁をした通りでございますが、しかし大きな問題でございまして、御指摘のように、とかくないがしろにされがちであって、今日まで放置されておったと思うのであります。国民保健の面から考えましても、また部市の美観その他いろいろな面から考えましても、ほうっておくわけには参りませんので、政府といたしましては十分考慮いたしたいと思っております。
なお補助金等につきましては、十分今後の推移を見まして、そういうものもできるだけ財務当局と交渉をして、御期待に沿うように持っていきたいという考えを持っております。先ほど来中嶋さんの御意見の中に、こういう点について、厚生省と通産省との間に何か意見の相違があるかのごとき御意見があったのではないかと思うのでありますが、過程においてはそういうことはしばしばあったと思います。しかしこの法案を出します上におきましては、御案内の通り、各大臣が出席をいたしました閣議の席上で十分話し合いを進めて、この法案を出しておるのでございまするから、過程においてはいろいろな問題はあったと思いまするが、結論におきましては、厚生省も了承してくれておるわけであります。法案の進行中、あるいは決定をいたしましてから、そういう問題が厚生省との間にあるということは決してございませんから、この点は御安心願いたいと思います。ただいま申し上げました通りのことでございまして、政府といたしましては、中嶋さんの御意見を十分体して今後に処したいと考えておりまするから、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/11
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012・中嶋英夫
○中嶋委員 今厚生省との間に意見の食い違いはないというお話でございますけれども、もちろん今度の工場立地の調査等に関する法律案の提出についてはないと思います。ところが数年前——きょうは私資料を持ってきておりませんが、厚生省が大気汚染に関する法案を準備したいとうことが新聞に出た。それで、これは通産省が反対というならまだいいのですが、その間に一こまある。それは、経済団体がこれに反対だという声明を出したということが新聞記事になって、それから閣議でこれが葬られてしまった。通産省は反対である、こういう経過が新聞の上に現われているのです。これは、私は非常に問題があると思うのですね。一省が責任を持って法案の準備をしておって、それが外部の経済団体から反対があったというのが新聞に出て、それからだめになった。これを二度ほど繰り返している状態は、非常に好ましくないと思うですから、私はその点を申し上げたわけで、なおその新聞の切り抜きは持っておりますので、日にちの経過等もわかっておりますから、次会にでもお知らせしてもよろしいし、その点についての当時の情勢を御調査の上で、現在の岸内閣としては、今後そういうことのないようにやっていくというお考えがあれば、この機会に——補助金とは限りません、たとえば今松尾局長が言われましたフライ・アッシュの問題にしても、硫酸をとるという問題にしても、確かにわかっておるのだ。ところが相当の費用が要る。その費用をかければ、結果的には五年、十年の間には、フライ・アッシュが取れれば——ことに最近、コンクリート関係が相当変ってきた。たとえば素はだのままのコンクリート構造というものはかえって美観だという考え方が、建築学会等に現われておる。その地はだをきれいに仕上げるには、貴重なフライ・アッシュである。しかしそのフライ・アッシュを取るいわゆる電気集塵機の装置を作る資金がない、将来はいいかもしれない。こういう場合には長期の、しかも低利な資金を貸し出すという方法も私はあろうと思う。こういう点にも数年前から、先輩であられます野田武夫先生からも、すでに当局の方には示唆があったはずでありますが、いまだに手を触れていない。こういうところに私は問題があると思う。この点について、最近のお考えをお聞きしたいと思います。
なお、今の松尾局長の御答弁によると、いわゆる既存の工場地帯周辺ということでお話がとどまっておるわけであります。現に昭和三十三年度の鉱工業立地条件の調査の地点というものの中に、たとえば東京の場合において八王子、日野が入っている。しかし現に埋立工事がどんどん豊洲方面で進んでいる。こういう地区については調査の対象にしていない。神奈川県の場合においても、相模原並びに湘南は駐留軍労務者の失業対策との関係において、非常に好的な地点の選定であると私は思うのでありますが、しかし横浜、川崎というような工場地帯で、しかも合計しますと約二百万坪をこえる埋立地の造成が現在進行中という、そういう地点が入っていないということから、何となく既存の工場地帯は避けていくんだ、こういうふうに私は考えざるを得ない。しかもこれに対する答弁として、鉱工業地帯の整備の問題について予算が組んであるという、これはあくまでも調査費であります。私は、工場立地という大命題のもとに進める調査は、やはり一元化しなければならぬと思う。しかれば、今後既存の地点の調査によって、その調査が相当厚みのある充実したものになると思うのです。それは別の方法でやっておるんだから、われわれは別なんだということになりますと、あとを追いかける工場立地の計画なり指示、助言というものは、厚みというものがなくなってくる、さっき申し上げたような点で、指定をして助言をして工場を作ってみたが、あとから諸般の問題が出てきた、こういうことで、当局白星が恥をさらすというような格好になってもいかぬと思う。こういう点につきまして、一つ割り切った今後の方針を御明示を願いたい。現に鉱工業地帯の整備の問題については、前からあるわけでありますが、一向進まない。せいぜい東京湾を埋め立てをする、工場地帯ができるのだ、それじゃ水はどうするんだということでとどまってしまったというくらいしか、われわれの方には知られていないのですよ。また工場立地の大命題のもとに、あの程度のものを作る気なのか、こういう疑問を私は持たざるを得ない。この点についてお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/12
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013・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 既成工業地帯との関係について、重ねてのお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたように、本年度すでに五十六カ地点の調査地点について調査を進めております。また来年度六十カ地点くらいを選定いたしまして、調査を進めて参りたいという考えでおるわけでありますが、またそのための予算も、一応予算案には計上されておるのであります。この本年度の五十六カ地点の調査の際にも、たとえば埋立地につきましてもその他につきましても、もうすでに工場予定がきまってしまっておって、それ以上の適用がないというような、先ほど私が申しましたように、既成工業地帯をただ一つだけのものと考えないで、その既成工業地帯の中でも、そういうふうにもう工場の入る予定地がないような部分は、これはまあ何ともいたし方ないと思います。それ以外の地点につきましては、たとえば三十三年度におきましても、先ほど申しましたように、播磨とか四日市、あるいは北九州、あるいは京浜、こういうところにつきましても、その調査地域の範囲を若干しぼりまして、既成工業地帯の中に入っております。来年度におきましても、当然そういうことをあわせて考えていかなければならぬと思いますが、既成工場地帯は済んだのだから、今後何ら手を加える必要はないというようなことではいけないことは、私どももよく承知いたしておるつもりでございます。
それから煙害の点について、重ねてお話がございました点は、先ほど私から申し上げましたようなことで、必ずしも補助金——特に大きな煙害の原因をなすところは、比較的大規模の工場が多いはずであります。そういうような場合に、必ずしも補助金である必要はないわけであります。資金の面その他で解決し得る面も相当あろうかと思います。これらの点は、先ほど申しましたような意味で、今後できるだけその問題の解決に努力して参りたいと思います。
なお厚生省との関係云々という点の御指摘がございましたが、これは、私の承知しております限りでは、当時厚生省におきまして、特に煙害ということだけではなくて、排水の問題その他を含めて、いわゆる公害問題について相当広範な対策論議があったことは、私どもも承知いたしております。ただこの際に、厚生省といたしましても、そのような広範な公害問題について何らかの法律制度を打ち立てるということになれば、非常に問題が重大だ、従ってその技術的な問題、あるいは社会的影響の問題等についても、できるだけ広い範囲の学識経験者の知識を集めての上で判断する必要があろうというので、たしかそのころ厚生省の方でアメリカから、そのための特別の技術者をコンサルタントというような意味で招牌されたというふうに承知をいたしております。その招聘された特別の専門家の意見を種々聞いて、厚生省でもいろいろ対策の論議があったと思いますが、そのコンサルタントの意見等を総合してみると、この問題は非常に重大だ、その影響するところはきわめて大きいということで、その際いろいろ論議があり、私どももその辺の論議はいろいろ伺いました。しかし現実の問題としては、その中で、それから何年か後になって今排水の問題だけが一応軌道に乗ったという状況だ。私どもも排水の問題について、法律の制定の際にいろいろ申し上げましたような意味から申しましても、排水の問題だけであとは問題がないというふうに考えておるわけでは決してございません。まず一番大きな排水の問題が一応法律制度としてスタートいたしましたけれども、今後さらに慎重な検討を進めて、煙害その他を含めた公害の問題にできるだけ早く取り組んでいかなければならないという気持は、私ども十分持っておるつもりでございます。御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/13
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014・中嶋英夫
○中嶋委員 立法化の問題について、アリメカから専門家を呼んでいろいろ聞いた、そのアメリカで、ペンシルバニアにピッツバーグという町がありますけれども、この町では今から七、八年前から公害除去の問題について相当進んだ対策が講じられて、煙害が約八分の一程度まで少くなってきた。従来は、日中でも自動車がライトをつけなければ通行できないという町が、写真を写してみると、ずっと遠くの山の尾根まで写っておる。そういうくらいの大きな変化があったという実態が報告されておるわけです。私もその町に行って参りましたけれども、それを見てびっくりしたわけなのです。工場地帯、鉄鋼と石炭の町、その町で売っているビールにアイアン・シティという名前をつけて売っている。そういう町ですから、あの町に行ったら、おそらく工場地帯の煤煙を見るだろうと思って行ったら、全然からっと晴れておる、どういうことかと思って、だんだんわかってみると、婦人運動から進んで政府も対策をして、こういう結果が現われておる。現に主婦に対する影響というのは、単なる健康上の問題ではない。私どもの調べによりますと、川崎地区においては、平均して主婦が一週間に六時間は余分に働いている。洗たくを余分にやらなければならぬ、お掃除も余分にやらなければならぬ。畳をふくというのは、私ら子供の時分の記憶では、大掃除のときに畳をふく母親の姿を見たのですが、あの辺では、毎日々々畳の上をふくということが日課なんです。こういう状態です。雨どいは話まってしまって、コンクリートの粉なんかも入るのでしょう。コンクリート化し、モルタル化しておる。しかも工場、事業場から発生する公害によって、別の工場、事業場が害を受けて、生産に支障を来たしておる、こういう状態です。こういう結果は、弟なる保健上の問題だけではない。しかもお話によると、一番大きい水質の問題については、対策審ができたという松尾さんのお話なんですが、これは、たまたま江戸川のああいう漁民の悲惨な問題があって社全問題化し、新聞もこれを大きく取り上げたということから、世論の喚起が強く行われたのでこの問題の解消ができた。不十分な対策ではありますが、私はこの水質保全の立法については、非常に喜んでおる次第であります。しかしそれが一番大きいかというと、私はこの煤塵の方がずっと大きいと思う。ある一つの産業に影響する、これはもちろん煤煙の問題でもあります。しかしそのほかに保健上の問題がある。そして主婦労働が非常に増大しておる、こういう大きな問題を持っている。しかもあの周辺、東京を含めて何百万という人のはだに直接関係のある重大な問題、この問題に対して調査費だけでお茶を濁しておって、厚生省の方で議論もあったけれども、この法制化はいろいろ影響が大きい。アメリカの人を呼んで、何かその人の話によって、大へんだからやめたらどうかということを聞いたという御答弁であった。そのアメリカのピッツバーグで実際に成果が上っておるということは、これはどういうことなんです。この点の食い違いを御解明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/14
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015・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 私先ほど申し上げました中で、別段、やめた方がいい、やってはいけないというふうに、もし私の説明がそういうふうでありましたら、決してそういう意味で申し上げたのではないということをおわび申し上げます。私どもが聞いております限りでは、今御指摘のございましたピッツバーグの話、私案は行ったわけではございませんので、聞いておる程度の知識でございますけれども、ピッツバーグでは、そういうために自主的な協議会ができて、そこでその土地の条例と申しますか、条例の制定でこの問題の解決に非常に努力をされた。そして今お話しのようなところまでいっておるのだと思います。現在日本におきましても、御説のように幾つかの都市については、都市条例でこの問題の解決をはかろうと努力はされておるのでありますが、現実の問題として、その条例の制定だけでなかなか解決しない。道なる法律なり条例で解決する問題以上に、非常に根深い問題があるというところに、この問題のむずかしさがあるのだと思います。ただ基本的な態度として、産業の側なり何なりが、そういうめんどうなことはとにかく理由なしにやめてくれというような態度では、これは当然許されないと思います。すでに水の問題のときにも、産業側は、やはり企業の公共的な責任として、できるだけ自分らも努力したい、しかし国もできるだけ援助の手を伸べてほしいというような態度で、従来ややもすれば、問題が起きたときに若干の見舞金なり何なりで解決しようとした。そういうことだけでは、すでにもうそういうことは許されない事態にきておるということ、少くとも水については、産業界なり何なりはこれを十分認識して、ああいう法律案ができたと思います。煙害その他公害の問題については、問題がさらに根深い非常にむずかしい問題ではありますけれども、私どもの態度としては、産業界の態度としても、この問題はただいやだというだけで解決しないということは十分承知しておると思います。私どもその線に沿って、そういう公共的なことを十分考えて問題を解決する方法を努力したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/15
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016・中嶋英夫
○中嶋委員 アメリカの地方公共団体の条例の持つ幅と、日本の府県あるいは都市の持つ条例の幅とは全然比較にならぬのです。従って日本においては、その面を埋めるのは、やはり当然国の責任だと思う。今のところ、仁徳天皇以来、煙が多い方がいいのだという行政官が地方におる。また、これは私の町の誇りだという人もいるのですから、この認識を変えるのが大へんだと思うのですけれども、これは、やはり国の責任でやっていかなければならない。しかも各事業場等も水の方には認識がある。私は率直に言いますけれども、本州製紙の問題があって、漁民の諸君が怒って工場に押しかけた、警官隊が出動してけが人が出た、そういうことで新聞も大きく取り上げて、ああいうものが契機になって、この水に対する政府の施策の窓はやっと開いたと思う。そうしてそれが一番大きい重要な問題だといういうことで、審議に参加し強調もいたしましたが、私は大きい問題はむしろ他にあると思うのです。むしろ窓を開いてもらうのに、今のような政府の態度なら工場に押しかけた方がいい、こうなってくる。そうして警官隊に来てもらって、こん棒でぶんなぐられて血を流せば、国会も政府も動き出し、事業場、会社、工場も考えるというなら、この方が早いということになる。これでは少し問題があると思う。そうならない前に対策をするのが政府の責任だ。現に川崎地区においては、商店街に対する影響も甚大なものがある。全商店街の七五%が煤煙による損害を来たしておるという細査報告もきておる。たとえば包装において、他の地区の商店よりは余分に費用がかかる。あるいはガラス戸を締めていなければ店が開けない。今の商店の営業方針としては、オープンにして客を呼ばなければならぬのだが、窓を締めなければ商品がよごれてしまう。ケースなんかにしても、本来ならば、上に並べて、客が手に取って見て買いたくなるような化粧品等も、一応ケースの中に入れておかなければだめだ、こういうようなことです。そのために、たとえば従業員の労働が多いということ、使用人も余分に置かなければならぬ。水をまくとか、掃除をする対象が多い。店の中は煤煙でよごれてしまう。この結果をあまり発表しますと、それでは工場街の商店の品物を買わぬ方がいいだろうということになると大へんでありますから、あまり詳しく申し上げませんけれども、事実相当の被害を金額に換算して報告を出してきております。大へんなものであります。こういうような情勢を考えた場合、今のような御答弁ですと、やはり本州製紙みたいに、どこかの工場へ集団で押しかけて、こん棒でぶんなぐられて血を流せば政府も考える、そうしてそれに対する窓もあくというふうにしか考えなくなる。これでは大へんなことになると思います。そうならないうちに——おそくら本州製紙の問題が出る前の水質保全の問題は、必要だとは思いますけれども、なかなか産業振興の関係からいって、複雑微妙、困難な問題があるということを言っておった。あの事件があってからぐっと、一歩とは言わぬけれども、少くとも半歩くらいの前進があった。水は重要だから、あれを先に手をつけた。住民の問題が大きいと、社会的な重要性の順位をつけて、水が第一番ですから水からやりましたというふうに聞える答弁でありましたけれども、実態はそうではない。その点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/16
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017・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 水質保全法、工場排水法等の問題につきましては、ただいまお話のございましたような点も、確かにそういう一つの契機があったと私も思います。ただ私ども事務的な内部の事情といいますか、内部でいろいろ論議したところで申しますと、実はその前の国会のときに、そのような、大体あれと大荒ない法案でございましたけれども、法案の用意をいたしまして、実は政府部内でもいろいろ相談をいたしました。ただそのときの情勢では、どうも法案の内容が——それは案でありますけれども、もちろんまだ国会提出以前の案でありますが、その案の内容について、いろいろむしろ水の被害者の側からの非常に強い御意見が出て、その辺で時間的に間に合わなかったというような事情があったのであります。これは、私がこう申しますと、いかにも弁解的に聞えるかもしれませんが、全くこれは、その通りの事実であります。しかしその後、今御指摘のような、ああいう非常な不祥事件が起り、それが一つの契機になったということは、私も率直に認めなければならぬと思いますが、それまで全然放擲しておったというのも、若干事実に反するところもあると思います。これは私、決して弁解がましく申し上げるわけではございません。さらに今の煙害の話につきましても、先ほど申し上げましたように、この問題に取っ組む基本的な態度として、いつでも調査をしておればいいのだというような態度でありますれば、これは今御指摘のように、当然許されないことだと思いますが、私どもも、先ほど来申しております通り、できるだけこの問題に正面から取っ組んで努力をして参りたい、こう申し上げておる点も、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/17
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018・中嶋英夫
○中嶋委員 正面から、しかも速急に取り組んでいただきたいと思います。政務次官の方で、正面から取り組んでやるのはけっこうですけれども、取り組みぱなしではしょうがないですから、早くやるようにお願いしておきます。特に公害問題があまり長くなると、御迷惑になると思いますので、私どもが持っております公害の、住民あるいは商店、主婦、寮等に影響するデータあるいはスライド、映画等もありますので、あらためて先輩の各位、委員長初め当局の方々にもごらん願って、この問題について一歩進めていただくことをお願いしたいと思います。公害問題については終ります。
先ほど問題になりました雇用問題との関係、離職者対策との関連における立地の問題で、ここに湘南、相模原とあるので、私はこれを離職者対策のことを相当考えておるのだなと思いまして、喜んでおる次第でありますが、この問題は、湘南というのはやはりそういう点を相当考えられてなされたものか、単なる工場地帯の周辺だというお考えなのか、その点をお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/18
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019・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 離職者対策の点は、これは先ほど私が申し上げましたように、企業が工場立地を求める際に、最も大切な労働力を求めていくという意味からいって、長期的には当然非常に重要なポイントであることは申し上げるまでもないと思います。今特に論議されております離職者対策は、御承知のように、火急の離職者対策という問題であります。これにつきましては相模原、湘南というような地区、調査につきましても、それだけを目安にして地点を指定したわけではございませんけれども、ほかの条件もいいし、またそういう問題もある。しかし現実問題としては、このような立地調査、工場誘致ということで、火急な離職者対策として、果して十分間に合うかどうかというぐらいに、私どもはこの問題は非常に火急焦眉の問題であると思います。しかしこの法律運用の際にも、当然その点は十分考えて運用して参らなければなりませんし、今御指摘の点は、私どもそのような気持も含んで調査地点に選んだつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/19
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020・中嶋英夫
○中嶋委員 最後に政務次官にお伺いしてやめたいと思うのですが、本法案の目的、第一条の「工場適地の調査及び工場又は事業場の設置に関する助言を行い、」というこの「助言」は、単なる工場、事業場に対する助言ではなくて、工場立地を進める意味においては、政府内部においても、建設省とか運輸省とか、あるいは厚生省の関係、あるいは地方公共団体、こういう団体等も含めての助言と理解してよいかどうか、この点は非常に重大だと思いますので、伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/20
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021・中川俊思
○中川(俊)政府委員 原則としては、御承知の通り、何もどこへ助言をし、どこへ助言しないということがきまっておるわけではありません。ことに法律では、お説のように書いてあるわけですけれども、しかしこれを進めていく上におきましては、やはり建設省であるとか、あるいはその他の関係官庁、あるいは地方庁等と緊密な連絡をとってやらなければ進めることはできないのですから、条文にはそういうことは書いてないにいたしましても、事実問題としては、そういう場合はあり得ると思うのです。地方庁に対しましても、あるいは関係官庁に対しましても、助言ということが果して妥当であるかどうか、要するに緊密な連絡をとってやらなければできない場合がございまするから、しいて助言と言って言えないこともないと思いますけれども、そういう場合はあり得ると思います。何も条文に書いてありますような窮屈なものではないということに御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/21
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022・中嶋英夫
○中嶋委員 条文を見ると「助言を行い、」という相手は書いてないのですよ。ですから、私は今申し上げたように含まるのではないかと思っているのですが、含まるのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/22
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023・中川俊思
○中川(俊)政府委員 そういうことはあると思います。私は含むと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/23
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024・中嶋英夫
○中嶋委員 これを含むとしますと、私は、この工場立地の調査等に関する法律案というものは、非常に重大な問題だと思う。含むというならば、それにふさわしい態勢と熱意をお示し願いたい。単に工場、事業場に対して、あそこによいところがありますということを知らせるサービス機関でありますならば、今パンフレットに出ております、現在すでにある指導室等においてけっこう格好がつくと思います。小企業でない限りは、自分で調べることができますから。しかし、そういうことを含めることは、大へんよいと思う。反対ではない。含める限り単なるサービス機関に終らないように、指導性を発揮した、国土計画の一環の中に通産省みずからが足を踏み入れたという態勢をお示し願いたい。そのお示しがなければ、私どもはあとで大きな失望をすると思いますので、この点、確認しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/24
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025・中川俊思
○中川(俊)政府委員 これは大体本当を言うと、私は工場立地の調査等に関する法律案よりは、この予算の前提において問題になりました造成公団、こういうものの中にほんとうはこういうものを全部含めてやるべきであったと思うのです。ところが、これが御承知の通り、大蔵省との間に十二億か幾らの財政投資の問題で妥結を見るに至らなかった。そういうことから、この工場立地の調査等に関する法律案というものが自然出てくるようなことになったのですが、今お説のように、目的は国土総合開発の一環としてやるのですから、これは決してそういうちゃちなものではない。将来国土総合開発の一環として生まれるところの造成公団というものができたときに、これが大きな資料になるわけですから、御心配のような、決してちゃちなものでもなく、大きな国家的なものにこれがだんだん発展していくわけでありますから、従って、条文にはどこへ助言するとかしないとかということが書いてないにいたしましても、当然私は、先ほど来申し上げましたように、助言というとちょっと官庁と官庁との間におかしな感情問題を起すかもしれませんが、そういうことは私は当然あり得ると思う。またそれがなくしては、この目的は達せられないと思う。今お説のような大きな問題に発展していく可能性を持っておる法律でありますから、私は法律を実施していく上におきましては、当然そういうことはあり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/25
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026・中嶋英夫
○中嶋委員 今後の施策によって明白化することだろうと思いますので、私はそれ以上追及しませんが、なお助言の中で、工場、事業場等に対して、公害問題も十分配慮した上での助言をしていく、単なる土地作りではないというふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/26
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027・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 私もそう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/27
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028・中嶋英夫
○中嶋委員 それでは土地造成をして、坪七千円で土地を作って一万一千円に売れて、何十億という金がもうかって、ある団体だけが喜んでシルク・センター、貿易観光会館というような名前で七億円も県の費用をつぎ込んで、ローラー・スケート場にする以外にしようがないあき室を作っておる。これは、通産省と関係のあるビルでありますが、そういうようなことのないように、社会的諸条件の方に力点を置いた土地作りであってほしいということを期待して、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/28
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029・長谷川四郎
○長谷川委員長 小林正美君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/29
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030・小林正美
○小林(正)委員 工場立地の調査等に関する法律案が出されて参りましたことは、私どもも非常にけっこうなことだと喜んでおりますが、むろんこれは、おそきに失したという感じがなきにしもあらずでございます。いわゆる自由主義経済機構の中で、とにもかくにもこうした一つの法律案が出されたということは、やはり計画経済に移行する一つの足がかりとしても、私は価値のあるものだと、かように考えております。それで、この法律案が出されるに至りましたきょうまで、一体どういう工合にやってこられたか、大体了解はしておりますが、もう一度ここで一つ御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/30
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031・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 御承知のように、一場立地の問題は、特に大きくクローズ・アップされて参りましたのは、日本の産業が急速に伸びてきたということが一つの契機となって、特に既成工業地帯につきまして、工場の建設はどんどん進むけれども、それに伴う産業立地条件の整備が追っつかないというところからスタートをいたしたと思います。そういう意味で、先ほども触れたと思いますが、既成工業地帯についての産業立地条件の整備、たとえて申しますと、工業用水の問題、あるいは輸送力の問題、道路、港湾の問題、こういうものは、いずれも国がそういう立地条件を整備してやるために、公共事業費の運営と関連をして参りますので、その意味から、既成工業地帯を中心といたしまして、その公共事業費の運営の角度から、先ほど申しました工業地帯整備協議会で連絡をとりながら、その立地条件整備に努めて参ったのが第一歩であります。特にその中で、工業用水につきましては、この国会で御審議願いました工業用水道事業法というような立法もしていただきまして、その整備に努めて参りましたし、これは、もちろん既成工業地帯だけではなくて、今後の新たな新規工業地帯についても、工業用水の問題は進めて参りたい所存でございます。さらに、先ほど来申し上げておりますような意味で、工場が既成工業地帯だけに過度に集中して参るだけでは、この問題をますます困難にして参ります。また全体からいいまして、日本全体の工場が、適地適産の地点を選んでいくということは、工場立地の上からきわめて重要な問題でありますので、この点は、昭和三十三年度から新たに約千二百万円ほどの予算をもちまして、新規工業地点を中心といたしまして、さらに先ほど申しました既成工業地帯の一部を含めて、本年度五十六地区について調査を行なったのであります。その調査の結果は、大体昨年の夏ごろに一応の整備ができました、もちろんこれは、まだ完璧なものではないと思いますが、一応の整備ができまして、そのような整備された資料をもとにして、一般にこれを提供して利用していただく工場立地指導室という場所を作ったのであります。これは通産省本省のほか、各通産局にもそれぞれこの資料整備をした立地指導室を整備いたしました。しかしこれは、本年度スタートしたばかりの状態でございまして、この問題は、来年度以降さらに推進していかなければならないわけでありますが、来年度の予算案におきましては、一応約千五百万円程度の予算を計上していただいております。これによりまして、さらに六十地点くらいを目標にして調査を進めたい。のみならず、前の五十六地区の調査について不備のあるものは補って、さらに調査を進めたい。その調査の結果が、やはり指導室において一般に公開をされて資料の提供になるのほか、今回この法律をもちまして、これを制度化して、本年度は、とりあえず私どもの手元だけで、調査方針その他を立てましたけれども、来年度以降は、この法律が実際の上ではさらに各方面の学識経験者の知識を集めて、そのための審議会も制度化し、そこで十分調査方針等もきめて参る。またその調査地区における既存工場からも、この法律によってデータをとれるようにしたい、そういう制度をあわせて、今後この立地条件の調査整備の問題を進めて参りたいというのが、現在までの経過でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/31
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032・小林正美
○小林(正)委員 この条文の中にあります「地内の団地」という言葉でございますが、これは、一体どの程度の大きさを予定しておられるのか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/32
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033・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 そのような点も、実は私ども本年度とりあえずの考え方で進めて参りましたけれども、今後は、立地条件調査審議会で十分検討していただかなければならない問題であろうと思います。本年度の形で概略を申し上げますと、団地といたしましては、大体五千坪から一万坪前後くらいの団地が比較的調査の中心になっております。むろん五千坪以下の団地もございますし、さらに大きくなりますと、一万坪以上の団地も含まれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/33
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034・小林正美
○小林(正)委員 大体通産当局で考えていらっしゃる団地というものの大きさが、五千坪以上を目安にしておられるという今の答弁でありますが、私ども中小企業を守るという立場から考えた場合には、やはりそういう考え方だけでは、せっかくこの法律ができてもいけないのではないか。逆にいうならば、何だか大企業に奉仕する国家機関が、もう一つここにできるのだというような感じさえわれわれは持つわけであります。大きな企業には、御承知の通り十分な資金もあり、技術者もいる。人手も十分でありまして、ある程度自分の力でもって、自分がどこに進出をするかというような調査が十分できるような態勢ができておると私は思う。ところが、わずかばかりの土地、たとえば五百坪とか、千坪とかいったような中小企業者の場合については、そういうものがない。だから、政府機関がせっかく動いていただくならば、そうした中小企業に対して、もうちょっと思いやりのあるような考え方で団地の問題も考慮すべきではないかと考えますが、その点、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/34
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035・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 御指摘の通りだと私どもは考えます。先ほど申しましたことの意味でございますが、実はこのような団地といいますか、工場敷地を求めて、その条件が最もむずかしいのは、やはり五千坪とか一万坪とか、比較的大きな敷地について立地条件が特にむずかしいということは、御考慮いただけると思います。そのような特に立地条件を探すことにむずかしいものを中心にしての調査が、もちろんこの調査の第一歩ではございますけれども、しかし、それらの団地を含んだ調査地区内に、そのような大工場だけが立地をして産業がうまくいくわけではございません。大工場が入れば、それに関連産業として、当然中工場あるいは小工場がその周辺になければ、その工業地帯としては、産業の運営がうまくいかないのは当然でございます。そういう意味から、先ほど申しました意味合いは、そういう立地条件の探査に一番特にむずかしいようなところを中心と申します意味は、何もそれを重点という意味ではございませんで、まずそれを見つけることが一つのポイントではございますけれども、しかしその地区内には、五千坪以下の団地が幾つかそこにはまっておらなければ、工業地帯としては完全なものではないわけであります。従いまして、一番むずかしい地点をまず探すという意味の点ではございますが、それ以外の小さな団地をなおざりにして、工業地帯の整備ができるわけではございませんで、当然そのような団地の調査も、地区内全部の調査をやるわけでありますから、小さい団地の調査も当然入ってくるわけであります。また今御指摘のように、大企業につきましては、たとい大きな敷地条件を求めることがむずかしくても、大企業は大企業なりにその調査の能力を持っておるはずであります。それに比べまして中小企業は、御指摘のように、そのような調査能力その他についても、相当力の弱い立場にあるわけでありますから、そのような点について、私どもは配慮しなければならないのは当然でございます。現実に現在までの状況を見ましても、現在開いております立地条件調査室の利用されておる状況を見ますと、むしろ大企業よりは、中小企業の方たちが比較的よけい利用されているように見受けます。中小企業の方は、自分たちの立地条件を求めるのに、やはりそこへどれくらいの大企業なり大工場が建設されるだろうかという目安があることは、また立地条件の一つの要素にもなるわけであります。また大企業の側も、その周辺に、あるいはその地区内に、関連産業としてどの程度の中工場があるか、関連工場があるかということも、立地条件の一つの要素であります。そういう意味から見まして、現在の利用の実情を見ましても、また今後の運営の方向からいいましても、中小企業なりあるいは小さい団地をないがしろにして、その運営がうまくいくということは絶対あり得ないというふうに私ども考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/35
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036・小林正美
○小林(正)委員 ぜひそういう工合に、中小企業の場合も十分配慮していただきたいということを要望いたしておきます。
それからこの工場の立地条件の問題でありますが、従来工場の立地条件といえば、まず第一番に土地を考えておった。ところが最近は、水をたくさん使う工場がどんどんできて参りました。現在の情勢のもとにおいては、むしろ水というものが第一番に考えらるべきであって、他の条件がむしろそれに従属するのではないかというふうに私は考えておるわけであります。
そこで、少し水の問題について、一番大きなウエートを持っておりますので、お尋ねをいたしたいと思うのであります。一例を引いて、一つお話を申し上げたいと思うのでありますが、三重県の北伊勢臨海工業地帯の中心地の四日前地方におきまして、最近四日市市誘致の工場の建設が相次いで行われまして、最初は、工場の工業用水は、ほとんど自分自身で井戸を掘って井戸水を使っておった。ところがそのさく井の数が六十をこえまして、そのために非常に水をとる能力が減退をする。ついには地盤沈下の問題までも起ってくるということになりまして、御承知の通り、昭和三十二年の六月には、工業用水法の地域指定も行われておるわけであります。そこで第一期の四日市の工業用水が、昭和三十一年の三月に日賦五万トン完成しました。ところがこれでは、工場の増設がどんどんと行われて追っつかないので、三十三年の三月には、第三期北伊勢工業用水が、これは日量四万五千トンでありますが、これに加えられてきたのでありますけれども、これも、やはり工場の需要には追っつかない。そこで、今や大体一日に三十万トンくらいの水は必要でありまして、かてて加えて、近く日本合成ゴムが完了の暁におきましては、ここだけでも一日五万トンからの水を使うということで、さらに第三次北伊勢工業用水計画——これは日量二十五万トンでありますが、三十三年の四月に発足をして、三十九年の三月には完成の見込み、こういうことに相なっております。しかしこういう水の計画を見ましても、どうもあとからつあとからと追いかけられておって、水の供給がうまく工場などの需要にマッチしておらぬ。こういう実情を、僕たちが現に自分の周辺に見ておるわけでありますが、そういう水が足らなくなるということは、大体以前から、もうある程度見通しは立っておった。ところがそれに必要な資金が、これはもうどうしたって国庫補助とか、あるいは国庫引き受けの起債であるとか、あるいはまた公募債など、そういうものに依存しなければならぬということから、その仕事がおくれてしまって、結局は工場側の建設計画や増産意欲もこれがためにそこなわれるということになっておるのは、もう現在たくさん例があると思うのであります。そこで、立地条件という問題も、今やおのずから備わったところの自然的な条件のほかに、多くの人為的な、政治的な諸条件がいかに加えられるかどうかということによって非常に違ってくるのではないか、私どもはこういうように考えるわけでありますが、やはり国とか地方自治体がめんどうを見るべき、いわゆる公共事業費の重点的な配慮によって、どのようにこういった工場地域を将来に適合させていこうとするのか、どうもその点がこれまで不十分なそしりを免れないのじゃないかと思うのです。立地条件とは、現在はこうであるといういわゆるザインの問題ではなくて、将来かくあるべきである、こうしなければならぬ、そういったゾルレンの問題として、十分一つ調査、研究が必要じゃないか、こういう工合に私は考えるわけなんです。工業地帯の必要な諸条件を整備するために、たとえば公共事業費の重点的な配慮ということに、この法律施行後の効果がどんな工合に関連性を持って将来活動していくのか。そういう点、私どもは大きな期待を持つのですが、果してその点、期待していいかどうか、お尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/36
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037・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 ただいまのお話に、北伊勢工業地帯の例がございましたが、確かにお話しの通り、水の問題は、特に北伊勢付近については重大な問題でございます。今お話しの通り、いかにも計画性がないために、現実に困るまでなかなか解決策が見つからないという点は、確かに従来この点について、必ずしも十分な施策であったというふうには、私ども申し上げるわけにいかない。むしろ工場の建設がどんどん進んで、それから工業用水がどうしても足らぬ。ところが工業用水を見つけるのに、地下水のくみ上げにももちろん限度がある。それを見つけるのには、だんだん水源が遠くなって、それだけ工業用水のコストも高くなる。それでは困るではないかというところから、工業用水の問題が特に戦後重大な問題となって、今お話しのような経過をたどったと思います。従いまして、工業用水の建設なり供給は、もう工業用水がなければ工場がとまるような状態になってからではおそいということは、御指摘の通りでありまして、もし今後工業地帯を求め、あるいは工場立地の条件を探す際に、現状では、この地区の工業用水の供給見込みはこういう状態である。それ以上の水を求める工場がくることを予定するならば、そこに、当然この程度の工業用水の供給を用意しておかなければならない。その用意ができるまでは、ただむやみに工場が自分の立地条件を求めても、工場も困るし、また全体として、立地条件の点からいって非常な不都合な結果になる。そういう現在の状況を十分に調査をして、今後の判断を加えて、その両方のところから工場立地条件の判定が下されることに相なると思います。そういう意味から申しましても、現在までそのような現状の調査、今後の見通しの調査というような点も、私どもの手元には必ずしも十分でなかったので、それを制度化して十分にやりたいという意味で、この法案の審議を願っておるつもりでございますが、ただ成り行きにまかせて水の問題が解決するものでないということは、私ども十分自戒いたしまして、運用して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/37
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038・小林正美
○小林(正)委員 日本は、あまり過去において水に恵まれ過ぎておったのではないかという気がするのですね。だから、そういうことのために、水というものに恵まれ過ぎておったから、かえってこれをだだくさにして、結局非常なイージー・ゴーイングな考え方で、今日までこれをほっておいた。それがいよいよ何といいますか、ばちが当って、今になってみると水が足らぬ。農業用水も足らぬし、飲料水も足らぬし、工業用水も足らぬということで、大へんな問題が非常にあちこちに起っておると思うのです。この点については、昨年の夏ですか、産業計画会議も、はっきりと水の問題については、もっと政府が真剣に考えなければならぬという勧告をしておるということも、私は聞いておるのでありますが、最近地下水のくみ上げから、地盤沈下を起した例など考えてみましても、これは大阪、長崎、新潟、あるいは川崎、横浜、東京の江東地区など、枚挙にいとまありません。そういうような状態で、非常な問題がいろいろ起っておるのであります。ところがその水の扱い方が、必ずしも合理的でない。たとえば一例をあげますと、尼崎と大阪では水に困っておる。そのどまん中を淀川が流れておる。果して淀川の水が百パーセント活用されておるか、かように考えると、決してそうじゃない。まだまだどうも十分に活用されておらぬのじゃないか。しかるに、そのすぐそばでは水がなくて困って、いろいろと地下水のくみ上げから地盤沈下が起っておるというような、非常なむだやむらがあるような感じがいたしますので、そういう点についてもっと真剣な、工業用水対策についての具体的なお考えが何かあなた方にないか、私は、この機会にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/38
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039・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 工業用水の立場から申しますと、できるだけ近い地点に大きな水源を得られることが、一番望ましいことは申すまでもないことでありますが、しかし先ほど申しましたように、工業用水の問題が特に重大化して参りましたのは、比較的近年といいますか、新しいことである関係から、既存の水源について、あるいは既存の需要部門が水源を相当大幅にとっておる。その中から工業用水の水源を分けてもらうということは、非常にいろいろな意味で国難があるということは、御承知の通りであろうと思います。しかし水の総合利用という点は、かねてより非常に重大な問題であります。河川の総合管理という意味では、建設省においてこの点の調整がとられておるわけでありますが、たとえて申しますと、農業用水の問題と工業用水との調整問題というような、ただいま例としておあげになりましたような点でも、やはり農業の技術の進歩によって、農業用水の使い方にも相当変化があるはずだ、私どもはそういうふうに期待している。そうすれば、従来の農業用水として確保されているものを、あまりいつまでも従来通りの水量以外は絶対に分けられないということばかりではなくて、若干そこにまだ研究の余地があるのじゃないかということも、私どもいろいろな機会に耳にするのであります。そういう意味で、工業用水につきましては、水源の問題ということがまず第一に問題と相なります。しかしそうは言いましても、水源にはおのずから最終的には限度があることは、やむを得ないことでありますので、そのような水源の問題、またその水源とのかね合いから考えまして、工業用水道事業が一体どれくらいのコストで、どれくらいの建設ができるかというようなことも考えて、それぞれの工業地帯、あるいは今後の工業地帯について、そういうことの非常にむずかしい地点については、あまり用水型の工場がこないような適地誘導をもあわせて行わないと、工場がきたあとで水だけしゃにむにとってこいといっても、必ずしもそれでは解決しない。やはり面々相待ってこの問題の解決をして参らなければならないと思いますけれども、もちろん今申しましたような水源の問題、あるいは工業用水道の計画の問題についても、できるだけの努力を今後進めて参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/39
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040・小林正美
○小林(正)委員 初めは土地があって、それから水を求めた。ところがもう現在としては、やはり一番よい水をどうして手近にとることができるかということから、その工場の立地条件というものを勘案していかなければならぬと思うのであります。そこで、次官に一つお尋ねしたいと思いますが、先ほどちょっと中嶋委員からも話が出ましたけれども、土地造成の問題であります。次官の御答弁の中で、工業地帯の開発公団法ができかかっておって、これが資金の面でつぶれてしまった、非常に残念だ。こういう話でありますが、もうどうしても私は、やはり海面などを埋め立ててどんどん土地造成をしなければいけないのじゃないか、現在そういう段階にまですでに来ておるのじゃないかということを考えますので、もう少し熱意を持ってそういった開発公団法を作って、ほんとうに総合的な計画を持ってやってもらわぬといかぬと思う。ところが、それができなかったので、きょう問題になっておる工場立地の調査等に関する法律案を出したのだということになりますと、何だかこれでもって一時お茶を濁すのだという工合に私どもは受け取るのでありまして、もっと積極的に当局が意欲を持って、こうした土地造成の問題について将来やってもらうわけにいかぬのか。この工業地帯の開発公団法がつぶれてしまったいきさつを、もう少し詳しく一つ次官からお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/40
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041・中川俊思
○中川(俊)政府委員 よけいなことを言いましたための御質問のようですが、先ほど五千坪くらいの大きな工場、大企業のことばかりやらぬでもいいじゃないかというような御質問のようにも思いましたが、私は、五千坪くらいは大して大企業だとは思われないんですよ。大体日本の中小企業だって、五千坪や一万坪くらいな工場敷地を持っていて、そうしてその中に娯楽設備や、いろいろな文化設備くらい施すような工場にならなければ、中小企業の将来の発展性はないと思うのです。いつでしたか、私は英国のバーミンガムへ行って見たときに、実に驚いたのですが、とにかく工場の中に学校もある、教会もある、プールもある、トラックもある、中を行き来するのにみな自動車で行き来しておる。これは、何十万坪という大きな工場ですが、日本にはそういうものがないんですね。工場といえば、ちゃちなものを作って、仕事だけするところを作ればいいというような観念が日本人の頭の中にあるのじゃないかと私は思うのですが、五千坪、一万坪くらいの敷地は中小企業が持って、工場の経営に当るというくらいな構想がないと、中小企業というものは、いつまでたっても大工場の下積みになって、立つ瀬がないというような結果を招来するのではないかと、実は私は思っておるわけであります。しかしそれにつきましては、政府としていろいろ資金の面で助成する、そういうことと両々相待って行うということに持っていかなければならぬと思っておるわけであります。従ってそういう観点から考えまして、近時急速に発展の道をたどっております日本の産業構造を見ますと、どうしても大きな工場地帯を作らなければならぬ。そういう見地から、政府といたしましては、鉱工業地帯開発公団を作って、海面も埋め立てたらいいだろう、さらに大きな工場敷地を作れ、こういうことをいったわけです。これは一九五一年ですか、私はイギリスに参りましたときに、オランダの干拓工事を見て帰りまして、瀬戸内海を埋めろといって全国を演説して歩いたら、あのころみんなに笑われたのでございますが、私はだんだん日本はそうなっていくと思うのです。海でも埋めない限りは、簡単に工場地帯はできないと思うのです。四つの島にとじ込められた日本が、関門トンネルができましたから、今はあそこを船で渡らなくてもいいけれども、四国へ行くのはやはり船で渡る、北海道へ行くにもやはり船で渡る、そんなことをやっておったのでは、とても日本の将来はないのだから、瀬戸内海を埋めたらいいじゃないかということを私は言って歩いて、ずいぶん笑われたことがございます。しかし私は、これは夢ではないと思うのです。だんだん日本は、将来そういうふうになっていくと思うのです。そういうふうな見地から、この国会の始まります前にも、そういう公団の構想があったのです。ところがわずか十二億ばかりの財政投資の面で大蔵省とぶつかって、私どもはこれをやらなければだめだというので、建設省なり運輸省といろいろ折衝いたしました。その過程におきましては、いろいろなこともございましたが、結論として話し合いはほとんどついたのです。最後に大蔵省とぶつかった。要するに日本に政治家がいないのだと私は思うのです。そのくらいのことができないようで大きな日本の政治をやろうということが、そもそも間違いだと思っておるのですが、わずか十二億ばかりの金で行き詰まってできないということになって、まことに、実は今あなたからそういう御質問を受けて、汗顔の至りです。後藤新平さんのような人がおったら、私はそのくらいのことは何でもなくやったと思うのです。そういうことができなかった。詳しいことを言っておりますと、政府部内のいろいろなことを、またあなた方からあげ足をとられることになりますから、この程度でごめんこうむりたいと思いますが、要するにわずか十二億ばかりのものを出してくれなかったためにできなかったということでございます。しかしこれは、将来どうしても、好むと好まざるとにかかわらず、私はやっていかなければならない情勢に立ち至ると思います。従って、その場合の準備——準備というとはなはだ場当りの法律のように思われるかもしれませんが、そういう大きな構想をやる上におきましても、基礎調査はどうしてもしておかなければならないわけでございます。そういう見地から、ステップ・バイ・ステップでこの日本の大きな土地を作っていかなければならぬという意味から、この法律ができたわけでございますから、決してこれがむだにはならぬと思うのです。これで大いにあなた方からもいろいろな御教導をいただいて、そして工業立地の調査を完全にいたしておきますれば、そういう大きな構想をいたします場合に非常に参考になると思いますから、どうぞ一つ御協力願いたいと思うのであります。この程度で一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/41
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042・小林正美
○小林(正)委員 次官がだいぶあやまっておられますから、こまかいことは聞きませんが、ただ私が言いたいことは、たとえば大企業を守るために租税特別措置法というものがあって、国の税金では八百億もまけてやっておる。地方税においては四百億円からの減税を行なっておる。そういうような大きな犠牲を国が払っておりながら、将来の国家の百年の大計をきめなければならぬ、こういう工業の立地条件を求めるというような重大な公団を作ろうというのに、十二億の金が出ない。これは私は、どうも次官の御努力がもう一つ足らぬのじゃないか。一つこの点は、なお一そうの御勉強をお願いいたしたいと思うのであります。
そこで次に移りまして、私は、これは重要な問題でありますので、十分一つお考えをいただきたいと思うのでありますが、これも、次官に御答弁を願いたいと思うのです。昨今、県とか市町村などの、いわゆる地方自治体が行なっております工場誘致の実態をわれわれが見ておりますと、実に憂慮にたえないような問題がしばしば起っております。なるほどその努力たるや、まことに涙ぐましいものがあるのでありますが、たとえば敷地は広く安く提供します、ぜひ私どもの方へ来て下さい、水も何とか都合いたします、税金も初め三年間くらいはおまけいたしますと、あたかも観光地の旅館の客引きよろしく、見晴らしのよい部屋があいております、おふろもわいております、お泊り賃も安くまけておきますといって、争って旅行客のそでを引っぱって、自分の方へ工場を誘致しようという運動が盛んに行われておるわけでありますが、この競争があまりにも激しいために、客観的に見て少しどうかと思われるようなところに、思いがけない工場ができたり、あるいは大工場が来たけれども、かえってそれがその自治体のプラスにならないで、その自治体の財政を逆に圧迫したりするような例を私は二、三知っておるのであります。中にはまた今度は逆に、市長さんの甘い言葉に乗せられて、せっかく来ることは来たけれども、さて実際には、一向工場の前の、最初約束したところの舗装道路もやってくれない、あるいは学校も作ってくれない、こういうようなことで、その工場長が非常に憤慨して、もうこんなところへ将来工場を進出させるのはこりごりだ、こういって困っておるような例を私は知っておるわけであります。こういう点について、一体当局はどのような気持で指導されるのか。今のような形でほっておきますと、結局は地方自治体が、工場をある場合にはだます、ある場合には、工場が地方自治体に約束を履行しない、こういうことで、あとで非常にまずい問題が起って、ほんとうに大所高所から見た工場の配置がうまくいっておらぬ例がたくさんあるのではないかと思うのでありますが、この点、次官の方から一つ御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/42
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043・中川俊思
○中川(俊)政府委員 お説のような点があると思います。ことに通産省におりますと、連日そういうことです。これは、むろん自分の土地に工場が来れば、就職難の今日、自分の息子が就職できる、娘がその会社に就職できるからというようなこまかい問題から、それから例の終戦後シャウプがやってきて、税制改正をやって、そうして固定資産税というようなばかげたものを設けたものですから、日本の税制は、ある県は非常に潤いがある、ある町村は非常に潤うけれども、工場なんかない町村は、実にみじめな生活をしておる。最初のうちは学制改革をやって、それ公民館を作れ、新制中学を作れというので、どの町村も、昔から持っておった村有林とか町有林を売ってやっておりましたが、それも今日ではもう売るものがなくなってしまったり、町村の貧弱な財政ではやれなくなりましたので、大きな工場でも来てくれれば、固定資産税がうんと入って、それで町村の財政がうまくやっていけるからというようなことからでもあると思うのですが、いろいろな面から、今御指摘のような傾向が確かに現われておると思います。なるが故に、こういう法律を出して、そうして十分に工場適地であるかどうかというようなことも調査をしたい、こういうことから、この法律を出すに至ったわけでございます。御指摘のような弊害は、確かにその衝に当っておる者としては、一そう私どももこれを痛感しておるわけでございまして、さらに御質問の点については府県に対して調査をお願いする、こういうことを行うのでありますが、さらにはまた学識経験者の調査班を設けて、じきじきに通産省としても、この法律の趣旨を体して、いろいろな適地の調査を行う。こういうことでございますから、初めてございますし、いろいろ不備な点が非常に多いと思いますが、それぞれの問題に直面しますつど十分に考慮していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/43
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044・小林正美
○小林(正)委員 地方自治体とそこにできようとする工場とは、ちょうど、いわば結婚するみたいなもので、通産省が仲人役をなさるわけですから、結婚したはいいが、あとでもってお嫁さんの方にとんでもない悪いくせがあったとか、お婿さんの方にとんでもない病気があったということのないように、その点は、一つ十分にお仲人役を果してもらわぬと因るのじゃないか。そういう問題がこれまでたくさん起っておりますから、特に一つ御考慮願いたいと思うのであります。それと、先ほど来中嶋委員からいろいろ発言もありましたが、一つの工場がくるという場合に、やはり注意しなければならぬことは、その工場がきたがために、その地方に住んでおる人々の生活権をいろいろと侵害するという問題があっては困るのでありまして、そういう工場がきたがために問題を惹起しておる事例は、枚挙にいとまがないと思うのでございます。そういう点も、今後特に一つ御配慮をいただきたい。そうでなければ、せっかくこういう法律を作っても、その法律がいわゆる工場の立場に立ったところの法律であって、全般の視野からながめた法律ではないということでは困るのであります。
そこで、一つお尋ねしたいのでありますが、せっかくそういう審議会を設けられるということでございますが、その審議会の委員は、学識経験者をもってこれに当てる、こうなっておりますが、どういう方面の人をもってこの審議会の委員にするのか、この点、局長から一つお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/44
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045・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 この審議会の委員は、この法律にも書いておりますように、いわゆる行政官庁の公務員というものは入らないで、もっぱら学識経験者ということに相なります。十名以内の学識経験者とありますが、現在私どもが当然考えなければなりませんことは、たとえば経済立地の問題、あるいは経済地理学、あるいは経営学というような面の特別の学識経験者、あるいは大学教授というような方にまず第一に入っていただかなければならないと思います。さらに今度は港湾とか、用水とか、あるいは道路とか、そういう土木工学のような関係から専門家に入っていただかなければならないだろうと思います。さらに今度は工場立地を求める側、いわば産業側で特にこのような産業立地について特に深い関心があり、また大局的に見て、そのようなことについて学識なり見識の広い方——もちろん先ほど申しましたように、工場立地を求めるものは必ずしも大企業だけではないわけでありますから、大企業、中小企業を見渡して、そういう意味の学識経験の深い方というような、いわゆる産業界側の代表と申しますか、そういうような方も入っていただかなければならぬと思いますし、さらに工場立地を求める際に、工場側だけではなくて、その地方の行政問題でありますとか、あるいは農林水産業との関係も出て参りますので、そういう関係の意味合いを含めた学識経験者にも加わっていただくことも必要であろうかと思います。いずれにいたしましても、審議会の委員には、行政機関の者は直接には入らない、そういう広い意味の学識経験者に御参加願いたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/45
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046・小林正美
○小林(正)委員 ぜひお願いしたいことは、やはりその工場が来たがために被害をこうむる、その付近の住民の立場に立ってものを考える、そういうような方々も委員の中に入れるように、一つ御配慮を願いたいと考えます。
それから、これもやはり四日市の例でありますが、どんどん工場がやってきて、従業員がふえます。ところがその肝心の住宅の問題とか、学校の問題がちっともそれにうまくマッチしておらない。そのために、当然の義務教育である中学校や小学校においてさえも、非常に収容能力が足らなくて困っておる。いわんや高等学校におきましても、県下でずは抜けて四日市は競争率が激しいというような状況でございます。そういうようなすべての関連性を、この法律を作ることによって、一体どのように将来あなた方は考えていかれるのか、その点を念のために伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/46
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047・松尾金藏
○松尾(金)政府委員 この立地条件調査の場合には、工場の設備なり物だけが来るわけではございませんで、当然それに伴って人が入ってくることは、御指摘の通りであります。そういう意味から、調査項目の中には、住宅あるいは文教厚生施設等が現在どれだけあるか、また将来の形として、地元内の受け入れ態勢が——これは考えているのでありましょうが、そういう受け入れ態勢がどの程度あるかというような点も、この立地条件調査資料の調査項目の中で、大きな項目として当然考えなければならない問題であります。できるだけ客観性のある資料を整備いたしますよう努力して参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/47
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048・小林正美
○小林(正)委員 だいぶいろいろお尋ねいたしましたので、一つ具体的な問題をお願いして、私の質問を終了いたしたいと思うのでありますが、今東海地方におきまして一番大きな問題は、何と申しましても東海製鉄所の問題であろうと考えます。これにつきましては、愛知県の横須賀がよいのか、あるいはまた三重県の北勢地帯がよいのか、いろいろ論議されておるようでありますが、ちょうど昨年の暮れであります、私ら四、五名の者が富士製鉄の永野社長と実は朝飯を一緒に食べまして、いろいろと雑談をしたのでありますが、そのときに、私はこう言ったんです、天皇陛下のむすこさんでも粉屋の娘さんをもらうような時代であって、正田美智子さんは、決して元華族でも皇族でもないが、やはりべっぴんで、からだが丈夫で、非常に頭がよい、そういうようなことで皇太子妃になられるんだと私は考える。ついては、この東海製鉄所の問題も、なるほど名古屋の方が家柄もよいであろう、結婚のおこしらえも多いかもしれない、しかしながらほんとうに国家百年の大計の上に立って考えるならば、やはり三重県の北伊勢工業地帯のどこかにその地点を求めることが、水の点においても、石灰石の点においても、あるいは港湾の点においても、すべての点において有利ではないか、一つこの際顔も美しく、からだも丈夫で、頭もよい、立地条件の一番よい北伊勢のどこかに土地を求める意思はないかと、こう申しましたら、永野社長も、十分に一つ調査をいたしまして、そのように努力したいというようなことを言っておられましたが、この東海製鉄所は、大へん重要な日本の産業の根幹をなすものであると考えますが、この点について、次官と局長と両方から、一つどのような見通しに立って今この問題をお考えになっておるか、一つお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/48
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049・中川俊思
○中川(俊)政府委員 今のお話はまだ具体的にきまってはいないのです。どこへどう持っていくということは、いろいろ調査はしておりますが、名古屋へ持っていくか、三重県へ持っていくか、あるいは名古屋、三重県へいかないでほかへいくかもしれない。とにかくまだ具体的に現在きまっているわけではございませんから、あまり先走らないようにお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/49
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050・小林正美
○小林(正)委員 今の次官の答弁はけしからぬように思うのです。三重県とか愛知県とかきまっておらぬということはけっこうですが、ほかへいくということはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/50
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051・中川俊思
○中川(俊)政府委員 今あなたがおっしゃったように、べっぴんで、頭がよくて、健康である土地がほかにございますれば、そこへいくかもしれない、そういう意味です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/51
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052・小林正美
○小林(正)委員 この東海製鉄の問題は、別に愛知県とか三重県が初めから誘致運動をやったわけではないのです。これは、御承知の通り、中部経済連合会がいろいろと中部経済圏の問題について研究をしました結果、どうしても中部地方に製鉄所が必要であるという、そういった長期計画の中から出てきた問題であって、これは、私は愛知県、三重県を除いては、絶対にほかへいくところの公算はあり得ないと思っている。三重県にこなければ愛知県、愛知県にこなければ三重県、こう思うのですが、それがどうも三重県にも愛知県にもこぬかわからぬということは、少しあなたの言葉は、言い過ぎではないかと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/52
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053・中川俊思
○中川(俊)政府委員 中部地方は、愛知県と三重県だけではございません。ほかの県もございまするから、先ほどあなたが御指摘のように、健康で、美人で、さらに頭がいいという土地が、愛知県三重県以外にありますれば、あるいはそこに行くかもしれない、こういうのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/53
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054・小林正美
○小林(正)委員 突っ込んで聞いても、なかなか次官もお話しにならぬと思いますし、あるいは御存じないかと思いますので、私もこれ以上聞こうと思いませんが、要するに将来のこうした工場立地条件をきめる場合には、先ほど私が申し上げたように、十分一つ国の施策というものがタイムリーに、総合的に行われなければならぬということと、それからそのことが地元の住民などに大きな被害を与えないようにしていただきたいということ、それからせっかくの審議会をお作りになるのだから、その審議会のメンバーの中には、十分そうした工場を建てるという立場の人たちだけでなしに、逆の立場、それによって迷惑をこうむる人たちも審議会のメンバーに入れて、全般的な立場に立ってこの問題を処理していただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/54
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055・長谷川四郎
○長谷川委員長 次会は来たる三月十日火曜日午前十時より開会いたします。
本日はこれにて散会をいたします。
午後零時五十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02519590306/55
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