1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月十六日(月曜日)
午前十一時五十二分開議
出席委員
委員長 鈴木 善幸君
理事 亀山 孝一君 理事 纐纈 彌三君
理事 渡海元三郎君 理事 丹羽喬四郎君
理事 吉田 重延君 理事 阪上安太郎君
相川 勝六君 天野 光晴君
飯塚 定輔君 田中 榮一君
津島 文治君 野原 正勝君
山崎 巖君 北條 秀一君
出席国務大臣
国 務 大 臣 青木 正君
出席政府委員
自治政務次官 黒金 泰美君
総理府事務官
(自治庁財政局
長) 奧野 誠亮君
総理府事務官
(自治庁税務局
長) 金丸 三郎君
委員外の出席者
議 員 阪上安太郎君
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本日の会議に付した案件
地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出
第一五三号)
地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提
出第一六六号)
地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一七七号)
地方財政の再建等のための公共事業に係る国庫
負担等の臨時特例に関する法律の一部を改正す
る法律案(阪上安太郎君外十名提出、衆法第五
〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X02419590316/0
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001・鈴木善幸
○鈴木委員長 これより会議を開きます。
地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし、審査を進めます。
この際、地方税法等改正に関する小委員長より小委員会における審査の経過並びに結果について報告を聴取することといたします。渡海元三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X02419590316/1
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002・渡海元三郎
○渡海委員 ただいま委員長から報告を求められました地方税等の改正に関する小委員会の審議の経過並びに結果につき御報告申し上げます。
本小委員会は、ただいま本委員会で審議中の地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案の三案につきまして、その住民負担及び地方財政に及ぼす影響の重大なるにかんがみ、審査に万遺漏なきを期するため、去る三月四日設置、小委員十一名が選任せられました。翌五日第一回の小委員会を開き、その後本日まで六回にわたって開会し、熱心に審議を続行したのであります。
まず三案について、政府当局より逐条説明を聴取し、これに対して熱心な質疑を行うとともに、各方面より寄せられました陳情、要望、意見等についてもしさいに検討をかえ、さらに地方税制度並びに地方交付税制度の根本にも触れて広範多岐にわたる論議をかわすなど慎重に審査を行なって参ったのであります。審議におけるおもな論点を税目別に申し上げますと、次の通りであります。
まず地方税法の改正につきまして
一、事業税に関して申し上げます。(一)改正案における事業税の軽減措置に関しては、他にかわり財源を求めることが困難な地方財政の現状においては、この程度をもって満足するほかなしとする意見が多数でありました。(二)ただ、法人事業税の所得五十万円以下に対する税率の軽減を、他の税率区分の場合と同様二%とすべきであるという意見がありました。(三)その他、事業税における個人と法人との間の負担の均衡化については再検討の要があり、また零細業者の事業所得は勤労による部分が多きを占める事実を考慮すべきである。(四)事業税制度運用の推移から見て、企業課税については全面的かつ根本的に再検討すべき時期に来ている等の意見が述べられました。
二、固定資産税に関して申し上げます。(一)改正案における固定資産税の制限税率の引き下げそのものについては時宜に適した改正と認められたのでありますが、この改正に伴う減収の補てん措置に関しては、減収額を起債によって補てんし、元利を国庫で補給するという三十四年度当面の措置は、国の本年度予算に影響を生ぜしめないための措置であって、さしあたりの措置としてはやむを得ないものであるとの意見でありました。(二)また、三十五年度以降について何らの措置を考慮していないことは、該当する市町村の財政運営を不安定ならしめるものであって、無責任のそしりを免れない。この際、減収補てん補給金制度のごときものを創設して恒久的対策を立てるべきであるという意見が有力でありました。(三)なおこれと関連して、累年行われる国税の減税に伴って生ずる地方税の減収については、調整税率の操作等でこれを回避してきたが、今次の改正による住民税の減収の場合のように操作がほとんど不可能な場合もあるので、国税の一方的な減税に伴う地方税の減収を自動的に補てんする制度を考慮する要があるという意見がありました。地方交付税についても同様に自動的に繰入率の改訂が行われるようにすべきであるということでありました。改正(四)案における固定資産税の免税点の引き上げについては、特に論議はありませんでした。固定資産税の問題としては、農地の価格評価について、農地が肥培管理、土地改良等によって地方をささえている事実に即して、償却資産に準じた評価を行うべきである。固定資産税の税率引き下げは考慮を要する問題であるが、近く固定資産評価方式の統一が行われようとしており、評価変更の基準年度が三十六年度である等の事情にかんがみ、その時期とにらみ合せて検討すべきである。大規模償却資産の課税限度額を再検討する要なきか、現行の課税標準の特例措置は再検討の上整理すべきではないか等の論議が行われました。
三、住民税に関して申し上げます。(一)本年度の所得税法改正に伴い三十五年度において生ずる住民税への影響について、政府は、今回はこれを回避せず、むしろこれに対応する減税措置を実施する旨を明らかにしておるのであるが、これによる三十五年度以降の減収補てん措置については、たばこ消費税の税率引き上げを予定しているというにとどまり、何ら確たる法的措置を講じていないのは、地方団体にとっては大きな不安であるという意見が圧倒的でありました。(二)住民税については、その課税方式の統一をはかる必要があること。また、住民税の課税標準が前年度所得をとっていることは不合理であるから現年度課税に改められないか(個人事業税についても、同様)という意見が出て、この二点については政府当局の研究に待つこととしたのであります。
四、軽油引取税に関して申し上げます。改正案による軽油引取税の税率引き上げについては、揮発油税の引き上げが三〇%であるのに対し、一挙に五〇%の引き上げを行おうとしていることは、均衡上も問題であり、トラック、バス料金の値上げ等の誘因となることがおそれられるので、引き上げ率を少くとも三割程度に緩和すべきであるという意見が圧倒的でありました。また、地方の道路財源の増強もとより必要であるが、その負担をすべて自動車関係業者に転嫁することは当を得ないという意見もありました。(二)右と関連して、地方道路税を揮発油税の増強に比例して引き上げるべきであるという意見もありました。
五、遊興飲食税に関して申し上げます。いわゆる大衆食堂における飲食及び旅館における宿泊等に対する免税点の引き上げ等、本税の軽減合理化をはかる件については、従前から本委員会としての一致した要望でもあるので、この際これを実現すべきであるという意見が日本社会党所属の委員諸君から強く主張されたのでありますが、自由民主党所属の委員諸君の側では、趣旨はその通りであるが、本年度は国税、地方税を通ずる公約減税を行うことを最高の課題とし、まず事業税の大幅な減税を取り上げることとした関係上、府県税について、他に減税を行うことが困難であったので遺憾ながらこれを見送らざるを得なかったが、来年度は本税の軽減合理化を検討する旨の見解が表明されました。
六、その他の諸税に関して申上げます。(一)自動車税について、三輪車及び小型四輪車に対する課税を、税率を引き下げた上、市町村に移すことが適当ではないかという意見があり、これは将来税体系を検討する際問題とすべきだという結論になりました。(二)また、たばこ消費税を譲与税に改め、これを人口または売上本数に按分して地方団体に配分しようとする案が大蔵省方面で考えられているといわれるが、このように財源偏在に名をかりて、さなきだに乏しい地方団体の独立財源を次々に奪い去ることは、地方財政の自主性をそこなうものとして反対であるという意見がありました。(三)同じ見地から、入場税を再び地方税に移管すべしとする意見も多数の賛同するところでありました。(四)消防施設税の創設は、すみやかにこれを実現すべきであるという声が圧倒的でありました。
七、特例措置の整理について申上げます。(一)地方税法上の各種の特例措置については、国民経済のその後の推移、地方税本来の性格等にかんがみ、この際全面的な再検討を加え、税負担の公平と税制の合理化をはかるべきであるという意見が有力でありました。(二)特に電気ガス税の非課税規定については、非課税範囲が年々拡大する実情にかんがみ、この際これを再検討して整理するか、またはこれを廃止して一般の税率引き下げを行うべきではないか等の意見がありました。これらの問題はあげて政府の検討にゆだねることとされました。
八、最後に地方税財政制度全般にかかる問題について申上げます。(一)いわゆる税外負担のすみやかな解消を要望する声が強くありました。解消の方途としては、地方の独立税を増強し、または地方交付税の総額を増大して各行政費目につき十分な財政需要額を計上する必要があるというのであります。(二)なおこれと関連して、国または他の地方団体に対して行なっている地方団体の法令外負担を解消するための措置等についても論議が行われました。
次に、地方交付税法の改正に関して申し上げます。(一)地方交付税率を百分の三十に引き上げるべしとの意見が日本社会党側から主張されました。(二)地方交付税の配分において、あらかじめその総額を府県分と市町村分とに区別して別ワクとし、それぞれそのワク内において配分操作を行うべきであるという意見がありました。(三)新市町村建設促進法または旧町村合併促進法の適用を受けない任意合併の市町村についても、同法に規定する地方交付税の基準財政需要額算定の特例を適用できるよう検討すべきであるという多数の意見があり、自治庁当局もその検討を約しました。(四)地方団体の予算編成に当り、当該年度に交付せらるべき交付税額につき、ほぼ確実な見積りが得られるように、その算定方式を明確にするとともに、安定化すべきであるという意見がありました。(五)地方交付税の基準財政収入額の算定に用いられる基準税率は、現在府県八〇%、市町村七〇%であるのを、それぞれ九〇%、八〇%に引き上げようとする大蔵省方面の見解は、地方団体間の財源偏在を地方財源の所定のワク内で操作するにすぎず、地方財源全体としてはプラスとならないばかりでなく、各団体に二〇ないし三〇%程度の自由財源を確保せしめることが当然でありますので、地方行政の自主性の見地からも適当でないとする意見が圧倒的でありました。
以上が本小委員会における論議の概要でありますが、これらの論議を通じて小委員会の一致した要望、意見であると認められる次の諸事項については、これを本委員会の決議として採択されることが望ましいという結論を得たのであります。すなわち
(一)国及び地方を通ずる税制のあり方については、総合的、長期的な見地に立って再検討を加え、地方の自主財源を充実強化する方向において根本的改正を行い安定した地方税体系を確立すべきであること。
(二)住民の税外負担を解消するため、すみやかに収入の増強、地方交付税の増額等適切な措置を講ずべきこと。
(三)所得税法の改正に伴い昭和三十五年度以降において生ずる住民税の減収については、たばこ消費税の税率引き上げ等地方の自主財源を強化することによってこれを補てんすべきこと。
(四)地方税法上の各種の特例措置、特に非課税規定については、税体系合理化の見地から全面的な再検討を加え、これを整理すべきこと。
以上四点の外、(一)地方税徴収制度の合理化をはかる趣旨において提案されている地方税法の一部を改正する法律案に対して、今次改正案で抵当権等の保護が厚くされたことにかんがみ、賃金債権及びこれに関連ある中小企業の下請代金債権の保護をも考慮すべきである旨の附帯決議を付すべきであるという意見がありました。また、(二)地方交付税法の一部を改正する法律案に対しても、交付公債制度を廃止して、その所要財源はこれを地方財政計画に計上し、地方交付税の増額等によって措置するとともに、過去の交付公債については少なくとも利子を免除すべきであるという趣旨の附帯決議を付すべきであるという意見が有力でありました。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X02419590316/2
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003・鈴木善幸
○鈴木委員長 これにて小委員長の報告は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X02419590316/3
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004・鈴木善幸
○鈴木委員長 次に、去る十三日付託になりました地方財政の再建等のための公共事業に係る国庫負担等の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題として、提出者より提案理由の説明を求めます。阪上安太郎君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X02419590316/4
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005・阪上安太郎
○阪上安太郎君 私は、ただいま議題となりました地方財政の再建等のための公共事業に係る国庫負担の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、日本社会党を代表いたしまして趣旨の弁明をいたしたいと思います。
この法律の改正は、この法律の附則第三項中「昭和三十四年三月三十一日」とあるものを、「昭和三十七年三月三十一日」まで、つまり有効期限をさらに三年間延長しよう、こういう趣旨のものでございます。同時に「昭和三十三年度分」を「昭和三十六年度分」に改めまして、繰り越しの場合における有効を規定しよう、こういうものでございます。
御案内のように、臨特法の廃止がこの三月三十一日でございますので、そういうことになりますると、昭和三十四年度の地方財政というものは、この法律に基きます補助事業において概略五十五億円、国の直轄事業の分担金の増といたしまして三十二億円、合計八十七億円という膨大な負担増となるのでございます。また、このほかに、同法の第五条の公共事業費の国、地方負担額の決定に際しての受益者負担金の地方分算入規定、これの廃止が当然起って参りますので、これによる地方負担増が約六億円、及び再建団体の指定補助事業における地方のはね返り分と申しますか、これが負担増として約五億円、同直轄事業分として約三億円、合計これまた十四億円が見込まれるわけであります。こういうことになって参りますと、結局、同法の廃止による地方負担の増というものは、表面的には五十五億円というようなことでございますけれども、債務を後年度に及ぼしている国直轄事業分担金等を勘案いたしました場合には優に百億円を突破するであろう、かように考えられるのであります。最近地方財政はいろいろな各方面の努力によりまして健全化の方向をたどりつつございますけれども、三十二年度の決算におきましても、御案内の通り、全体の二七%以上というものがやはり依然として赤字団体でございます。一方、明年度の財政計画においては、単独事業面における極度の抑制等によって地方税減税等の影響をカバーしており、財政の運営がきわめて困難となり、財政改善の努力にもかかわりませず、再び貧困団体に転落するものが相当出てくるんじゃないかということが予想されます。従いまして、地方財政の健全化を促進し、地方行政水準の維持をはかるためにも、公共事業に関するこの臨時特例法の適用期限は、当然延期すべきであるとわれわれは考えるわけでございます。交付税等において多少の勘案はされておることでありましょうけれども、こういった百億になんなんとするものが全く救済されずに、歳入欠陥の原因を作っていくということになりますれば、これはもう減税以前の大問題だろうとわれわれは考えるわけでございまして、この場合、特段の御配慮をいただきまして一つ御賛成をいただきたい、かように存ずるわけでございます。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X02419590316/5
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006・鈴木善幸
○鈴木委員長 本日は、これにて散会いたします。
午後零時十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X02419590316/6
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