1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年二月二十六日(木曜日)
午前十時五十六分開議
出席委員
委員長 内海 安吉君
理事 岡崎 英城君 理事 高瀬 傳君
理事 高橋 禎一君 理事 前田 正男君
理事 平井 義一君 理事 飛鳥田一雄君
理事 受田 新吉君 理事 木原津與志君
植木庚子郎君 始関 伊平君
田村 元君 橋本 正之君
茜ケ久保重光君 石橋 政嗣君
石山 權作君 中原 健次君
出席国務大臣
郵 政 大 臣 寺尾 豊君
国 務 大 臣 伊能繁次郎君
出席政府委員
総理府総務長官 松野 頼三君
宮内庁次長 瓜生 順良君
防衛政務次官 辻 寛一君
防衛庁参事官
(防衛官房長) 門叶 宗雄君
防衛庁参事官
(防衛局長) 加藤 陽三君
防衛庁参事官
(教育局長心
得) 小幡 久男君
防衛庁参事官
(人事局長) 山本 幸雄君
防衛庁参事官
(経理局長) 山下 武利君
防衛庁参事官
(装備局長) 小山 雄二君
経済企画政務次
官 河本 敏夫君
科学技術政務次
官 石井 桂君
委員外の出席者
専 門 員 安倍 三郎君
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二月二十五日
委員中原健次君辞任につき、その補欠として山
花秀雄君が議長の指名で委員に選任された。
同 日
委員山花秀雄君辞任につき、その補欠として中
原健次君が議長の指名で委員に選任された。
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二月二十四日
日本国憲法第八条の規定による議決案(内閣提
出、憲議第一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本国憲法第八条の規定による議決案(内閣提
出、憲議第一号)
郵政省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第四三号)
科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内
閣提出第五一号)
経済企画庁設置法の一部を改正する法律案(内
閣提出第七一号)
大蔵省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第七二号)
自治庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第一二六号)
防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第九四号)
自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第
九五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/0
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001・内海安吉
○内海委員長 これより会議を開きます。
日本国憲法第八条の規定による議決案を議題とし、まず政府より提案理由の説明を求めます。松野総務長官。
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日本国憲法第八条の規定による議決案
日本国憲法第八条の規定による議決
皇室は、皇室経済法施行法第二条に規定するもののほか、昭和三十四年三月二十一日から同年四月三十日までの間において、内閣の定める基準により、皇太子明仁親王の婚姻を祝するために贈与される物品を譲り受けることができる。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/1
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002・松野頼三
○松野政府委員 ただいま議題となりました日本国憲法第八条の規定による議決案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
皇室が財産を譲り受けることは、日本国憲法第八条の規定により国会の議決に基かなければならないことになっておりますが、皇室経済法及び皇室経済法施行法によりまして、外国交際のための儀礼上の贈答にかかる場合、その他天皇並びに皇后、皇太子妃等内廷にある皇族においては、一年間にこれらの方を通じて個々の譲り受けの価額の合計が百二十万円に達するに至るまでの場合などには、そのたびごとに国会の議決を要しないこととなっております。
御承知のように、本年四月十日には皇太子明仁親王殿下の御結婚の式が挙行されることに内定しておりますが、これを祝するために、国民を代表する各界等から物品が皇室に贈与されることが予想されますので、さきに申し述べました場合以外に、特に本年三月二十一日から四月三十日までの間において、内閣の定める基準によりまして、皇室が皇太子明仁親王殿下の婚姻を祝するために贈与される物品を譲り受けることができるようにする必要があります。
これが本案を提案する理由であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成の議決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/2
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003・内海安吉
○内海委員長 本議案についての質疑は次会以後に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/3
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004・内海安吉
○内海委員長 次に郵政省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案につきましてはすでに質疑を終了いたしておりますので、これより討論に入ります。
別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/4
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005・内海安吉
○内海委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決いたしました。
なお本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/5
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006・内海安吉
○内海委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決定いたしました。
この際、郵政大臣よりごあいさつをしたいという御希望があります。これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/6
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007・寺尾豊
○寺尾国務大臣 ただいまは、郵政省設置法の一部を改正する法律案につきまして御可決を賜わりまして感激にたえません。本案の提出に際しましては特別の御高配もいただき、また真摯な御審議を賜わりまして、本日この結果を得ましたことを重ねてお礼を申し上げますと同時に、この法律案が成立いたしました暁におきましては、十分御意見等を身につけまして、運営のよろしきを得たいと決意をいたしております。ありがとうございました。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/7
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008・内海安吉
○内海委員長 科技術庁設置法の一部を改正する法律案、経済企画庁設置法の一部を改正する法律案、大蔵省設置法の一部を改正する法律案、自治庁設置法の一部を改正する法律案、防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案を一括議題とし、質疑を許します。平井義一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/8
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009・平井義一
○平井委員 防衛庁長官にお尋ねいたします。今回陸上自衛官を増員しなかったのは、どういう理由でしなかったのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/9
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010・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 御承知のように、先年決定いたしました国防の基本方針に基きまして、日本の自衛隊の整備目標として、昭和三十五年度を目標といたしまして、陸上自衛隊十八万という整備目標がございまするが、本年度一万人の増員を国会の御審議を賜わりまして、十七万ということに相なった次第でありまするが、さらに引ぎ続いて、来年度につきまして一万を増勢するという問題と、御承知のように来年度の自衛隊全般の整備目標といたしましては、空軍兵力の質的整備、それから海上自衛隊につきましては、対潜戦備の充実というような方面に極力力を用いまして、陸上自衛隊については、内容の質的装備に重点を置いて、さらに次年度においてできる限り予算その他の状況、また国力、国情に応じた整備をいたすことといたしまして、昭和三十四年度におきましては、人員の増勢というものを一応見合せまして、ただわずかに従来制服職員でこれをカバーいたしておりましたものを、制服職員でない職員で約一千名を捻出をいたしまして、これによって建設隊あるいはその他の整備に当てる。もっぱら質的増強に当てようという所存をもちまして、今回一万人の増勢というものを本年度は見合したいというような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/10
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011・平井義一
○平井委員 自衛隊でない職員千人でこれを補うということですが、そういう操作をどうして必要とするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/11
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012・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 御承知のように自衛隊の制服職員につきましては、その本来の性質上、もっぱら自衛隊本来の使命に精励せしめ、兵の練成強化を目標とすることが本来の建前と存じましたが、たまたま従来からの予算の関係上、また部隊内務の業務関係上、一部が制服職員をもって部隊の内務のユニホーム以外の事務職員の仕事までやっておりましたというような点も合理化をし、さらにでき得る限り自衛隊自身の本来の方向をこの際少しでも明確にするという立場から、一千名の事務職員の増員によって、自衛隊の職員は自衛隊本来の練成に専念せしめるという所存で変えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/12
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013・平井義一
○平井委員 それでは来年度にでも一万人の増強をやる考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/13
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014・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 この点につきましては、第二次整備目標との関連もございまするが、私どもとしては昭和三十五年度において既定の十八万人にはできるだけ努力をいたして参りたい、かように存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/14
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015・平井義一
○平井委員 それから三方面隊を増強することになっておりますが、これはどういう理由によって三方面隊を増強されるわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/15
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016・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 今回の法律案改正で御審議をたまわっておりまする陸上自衛隊の三方面隊の新設の問題につきましては、御承知のように北海道、九州におきましては、それぞれ方面隊によって、指揮系統の明確化と指揮の統一という問題をはかっておりまするが、内地におきましては、いまだその点について、長官直属の部隊があまりに多くて、指揮系統その他について、長官直属という部隊よりも、やはり北海道、九州の例に徴して、方面総監をして責任をもって部隊の掌握をし、また部隊の練成を強化するという面からいって、国内を大体五つに分け、内地は仙台、東京、大阪というように三方面隊に五分して、今後練成の強化と指揮の統一と同時に、長官直轄というような形でなく、組織も簡素化をしたい、こういう所存から三方面隊の増置を計画いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/16
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017・平井義一
○平井委員 組織の簡素化というのに方面隊をふやすということは、少し逆行じゃないかと思いますが、三方面隊を置いて、方面総監と申しますか、これにある程度指揮権を持たした方が、大臣として統率する上において都合がいいのですか、それとも他に、何というか暴動が起った場合にそうした方が都合がいいとか、あるいは他に目標があるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/17
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018・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 お答え申し上げます。ただいま説明がやや不十分かと存じましたが、御承知のように長官直轄部隊と申しまするのが、北海道、九州の二方面隊のほかに、内地に三管区隊、また二混成団のほかに約四十をこえる部隊が長官直轄部隊、これは事実上長官直轄部隊として、これを指揮いたしますにはやはりその間に責任態勢を明確にする、これは一つの組織の簡素化であると私ども考えておる次第でございまして、ことに本州全体の軍の配備その他から考えまして、この際本州を三方面隊に五分いたしまして、その指揮索統の明確化と同時に練成の強化というこの二点に重点を置きまして、三方面隊の新設ということを計画いたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/18
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019・平井義一
○平井委員 方面隊を増設する件はわかりましたが、第二次防衛整備計画、すなわち昭和三十六年から四十年、これを進めておると聞いておりますが、この計画はどういう進め方をしておるか、大臣の構想を一つお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/19
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020・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 この点につきましては、まだ遺憾ながら構想としてこの席上で御報告を申し上げる段階に至っておらないのでございますが、御承知のように現在の世界の科学兵器その他の進展の情勢が非常に変転きわまりない。ことに誘導兵器その他の兵器の飛躍的な発展に伴いまして、第一次の整備目標以後において陸幕、海幕、空幕の体制を、日本の国力、国情に応じてどういう形で整備をすることがいいかという点については、目下いろいろ角度から研究中でございまして、まだ大体こういう方向というような点をこの席上で御報告申し上げかねるのを非常に遺憾といたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/20
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021・平井義一
○平井委員 第二次整備計画は今研究中だそうですからこれ以上質問いたしませんが、防衛庁長官も——政府が常に自衛隊の質的増強をはかる、これはどなたが長官になられても言う言葉でございますけれども、質的増強、質の強化ということに対して、一番効果があるのはどういうことに考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/21
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022・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 この問題は世界の科学兵器の進展の問題と不可分の関係があろうかと存ずるわけでございまして、現在のところでは私ども最新式航空機、ことにジェット機の高度の利用と開発ミサイル、誘導兵器の活用、誘導兵器をできるだけわが国においても研究してこれに備える、この二点、並びに海幕につきましては、日本の置かれた環境と申しますか、日本の自然的条件等から、対潜装備に対する対潜水艦防衛作戦と申しますか、それらに対する各般の科学的な研究、こういう方向に努力をいたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/22
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023・平井義一
○平井委員 兵器の強化ということはわかりますが、問題は人間をふやしても、あるいは幾らりっぱな機械を持たせても、人間の精神によると思いますが、この精神的訓練ということに対して伊能長官はどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/23
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024・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 この点につきましては常に各幕の幹部並びに部隊の諸君に私の所信を申し述べておる次第でありまするが、御承知のようにわが国の現在の自衛隊は義勇兵制度でございまするので、みずから自衛隊に志願するという人々が何をおいても国を愛するという観念を、若い自衛隊の青年諸君に自発的な意思からそういう考えがわき上ってくるということについて、われわれとしては格段の配慮をしなければならぬ。また現在の日本の若い青年の考え方が戦争を嫌悪するということ、このことは十余年前の体験に徴して人類の共通の一つの悲願と申しますか、共通な考え方だろう。この問題と愛国心との関係をできるだけ明確に青年の心に植え付ける。その基礎といたしましては御承知のように日本人全体の国民生活が一応最小限度に安定するということが、私は愛国心を若い人々の間にはつらつと燃え上らせる一番大事な基礎ではなかろうか、かように考えております。かっての戦時中、国防の基礎的観念は国民生活の安定であるというような言葉がいわれましたが、その当時のような統制的な考え方とは全く違って、ほんとうに自主的に現在においては日本の防衛の基礎的な観念は国民生活の安定である。この考え方を若い人々の上にも現実にわからせるような政治がなくてはならぬ。現に国防の基本方針につきましてもその点は明示せられた上で、青年の愛国心の発揚に努力をするということも定められておりまするが、現状において御承知のように日本の国力、国情からいって飛躍的な防衛力の増強というものはなかなか望み得ない。アメリカのように全体の予算の六〇%近いものが防衛費あるいは軍事援助、経済援助等に使用される状況とは異なりまして、わずかに国民所得の二%以下一・七%、予算の一割程度の防衛費を計上しております現状におきましては、自衛隊をして、みずから自衛隊に志願した君らが、国を愛して平和な豊かな日本を作り上げる基礎になる人物で、あるという自覚をあらゆる角度から、教育の面においても十分にしみ込ませるということについて幹部諸公の奮励を期待し、また私自身もその方向に向って最善の努力をいたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/24
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025・平井義一
○平井委員 今大臣がおっしゃったように、これはほんとうに愛国心の燃える自衛隊ができ上れば、少々予算を上げてもいい。しかし今日は職がないから自衛隊に一つ入りたい。ほんとうは自衛隊が一番いいのではないか。入ってしまえば愛国心を失うというようなことを聞かぬでもない。また今日の自衛隊の志願者は——私は九州人ですが、九州が一番多い。これは九州人がいかに国を愛しておるか。これに比べて関東や関西、他の地方は非常に志願者が少い。ここに各県の代議士諸君もおりますけれども、九州が一番多くてほかが少いということは、どういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/25
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026・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 御指摘の点につきましては、最近まで御指摘のように九州方面における自衛隊員の志望者というものがきわめて多数であったということは事実でございます。ところが最近におきまして北海道方面におきましては、人口が希薄であるという北海道の特殊な条件もありまして、比較的応募者が少かったのでありますが、ここ数年来逐次全体として自衛隊希望者が増加をいたして参ったことは、まことに私どもとして喜ばしいことであると同時に、ただいま御指摘のような自衛隊が安定した職業であるということと同時に、自衛隊に入隊した以上は自衛隊の本質をつかんで、ほんとうに平和な日本と独立を守るのだという観念を徹底せしめることに努力をしております。おかげで最近におきましては、各部隊とも士気逐次旺盛になり、皆さんの御期待に沿い得る状態に相なって参ったことは、まことに私どもとして喜ばしいことと存じております。今後においてもそういう方向に努力をするつもりでありますけれども、また関東、関西方面につきましても、九州方面に次いで逐次自衛隊の志望者がふえて参っておることは、かたがた喜ばしいことと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/26
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027・平井義一
○平井委員 自衛隊の諸君が北海道に転勤することをあまり喜ばぬのですが、ソ連が近いからですか。一つ北海道なら喜んで行くというくらいの自衛隊でなければ——北海道に二、三年おるから内地に返そう、こういうようなことではしっかりした自衛隊を育てたと言えない。北海道の応募が少いから九州で採った者を——九州はほんとうは暖かくて、気候が反対ですけれども、その反対のものを九州で募集して、入隊をするときには北海道に入隊しておる。これはどうも北海道はあまり芳ばしくないのです。これはほんとうは住みいいのです。九州あたりの人口の多いところよりも北海道の方が生活が楽でしょうけれども、歯舞、色丹が近い、ソ連に近いところは危ないじゃないかというような貧弱な精神を持った自衛隊がふえたのでは、どうも予算にわれわれは賛成できない。喜んで北海道にしばらくやってくれぬかというような自衛隊の訓練、精神的訓練、これは政党政派ではございません。ほんとうに国を思う自衛隊を育ててくれなければ、私は日本の将来に非常に重大な問題が起ると思うのです。現在北海道には無理にやっておるのですか。それとも北海道におれば、二、三年すれば交代をしておるのか。大臣がわからなければ、官房長から一つ説明をしてもらいたいが、何年に一ぺんくらい交代をしておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/27
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028・門叶宗雄
○門叶政府委員 ただいま平井委員から御質問がございましたが、北海道における自衛隊の数からいたしまして、大体五万数千名、相当膨大な数字を擁しております。これが募集源は、今御指摘がございました通り北海道だけでは十分ではありませんので、九州、四国方面からも逐次向うの方へ参っております。大体曹以上につきましては、私主管でございませんけれども、大体四年向うで勤務いたせば内地の方に帰還させる。さらに一年に一回、隊員につきましてはそれぞれの出身県に休暇を与えて帰郷させるというような制度をとっております。さらに今御指摘のような北海道におきましてはいろいろな条件において、九州その他の点と異なって困難がございますので、あるいは官舎その他の厚生施設の面において、また食糧その他の関係におきましても、若干ほかの他方よりも有利に考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/28
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029・平井義一
○平井委員 私は昨年ですか、前の左藤長官に質問をいたしたのでありますが、先般源田空将が近ごろの自衛隊は月給取りで、一般の役人と同じで命を惜しがるから飛行機の技術も進まない、こういうことをはっきり言っておる。こういうようなことではいつまでたってもりっぱな飛行機を買ってきてもパイロットができないという情ないことになるのじゃないか。この点について伊能長官はどうお考えですか。一般の官吏と同様に考えられておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/29
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030・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 非常に重大な御質問でございまするが、この点につきましては自衛隊発足以来いまだ七年というような、伝統もまだ確立もいたしませんと同時に、今後私ども皆様の御援助を得て十分な練成に努力いたさなければならぬ、かように考えております。ただいま御指摘のような点についてももちろん若干ないとは言えませんが、最近における航空幕僚自衛隊の質的な向上につきましては、あるいは飛行場がいまだ十分整備されておらないというような問題その他もございまするが、最近はきわめて良好な状況に練度が高まっております。最近浜松等をごらんいただくならば——ぜひこの点は委員会等においても御視察を賜わりたいと存ずるのでございますが、全般に練度がきわめて向上いたしておるということも事実でございます。もちろんこれをもって満足すべき状態ではなくして、御指摘の根本的な自衛隊精神の確立ということについては、われわれは常住坐臥この点についてあらゆる努力をいたさなければならない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/30
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031・平井義一
○平井委員 これは日本人の癖ですが、戦争中は直立不動で、位が一つ違えば、私も兵隊に行きましたがほんとうに大へんなものです。ところが戦争に負けて自衛隊が出てくると、さっぱり会社員みたいな格好で、あまりにその変化が日本は激しい。これは瓜生さんがちょうど帰りましたけれども、戦争中は天皇は神様だった。このごろはそうかた苦しくせぬでもいいじゃないか、一般の人と一緒でもいいじゃないか。まるっきり神様から一般人に落ちてきたり、非常に変化が激しい。これは皇室のあり方もそうですが、自衛隊のあり方もあまり急激に……。それだから昔の人と若い者の調子がとれない。昔の人はやはり昔のような兵隊を考えておる。このごろの若い者は全然そういうことは考えておらぬ。もうわれわれは月給取りだ。恩給を取るまでぶらぶらしておればいいじゃないかというような気持でおる。これは日本人の通有性ですから仕方がないといたしましても、日本のかっての軍隊は皇室とともにあり、天皇制のもとに置かれておったのでありますから、これとまた天皇制というのは非常に関係が深いと私は思う。急激に天皇陛下の尊厳などというものは、神様から一ぺんに人間に下ってきたり、われわれ同様あるいはわれわれの子供同様、女房はどこからもらってもいいというような、そういうふうに一ぺんに下ってくる。もう少しこの中間に、やまと民族ここにありというようなところを一つ定められて、そうしていかなければ、日本は立っていかぬと思う自衛官を何ぼふやしても問題にならぬと思う英国などは何といってもあれは貴族趣味の国だから倒れぬでやっていっておる。われわれ子供のときから大英帝国は崩壊だといわれながらも、あの貴族趣味の英国が続いておる。それはなぜか。やはり愛国心に燃えておる。戦争があるとか、一朝国の有事に際しては金持ちの坊ちゃんが一番先に死んでいく。貧乏人はあとから来い。日本は反対だ。貧乏人が先に死に、金持ちは残る。中隊長は一番あとから死ぬる。師団長は死なぬで生きておる。こういうことが私は日本の崩壊の原因だったと思う。この点一つ、ここがやまと民族の急所である——これは防衛庁長官のみならず日本人がみな腹を据えなければならぬのです。あまり急激にぽんと民主主義に切りかえてやってしまうことは、これでは今の青年の取りつくすべがない。そこで今ほんとうのことを言えば、日本の天皇制、皇室の尊厳は、われわれが子供のとき考えたことと違う。ところが青年のよりどころはどこか。これは事実のところ自衛隊にたよる以外にない。防衛庁が国の柱にならなければならない。もう議会も大したことありません。こんな━━━━━━━━と言うと怒られるかもしれないけれども、乱闘国会と申し上げます。この乱闘国会は国民は信頼しておりません。日本のこういう姿では、これはだれが総理大臣になってもつまらぬ。もう国民は非常に悲観しておる。そのときに健全でなければならぬのは私は防衛庁だと思う。防衛大臣の責任は、いわば総理大臣以上でありますぞ。私は岸さんよりあなたの方をたよっておるくらい……。そこで防衛庁長官は閣僚中でも私は一番しっかりした人が従来なってきておると思いますが、ほんとうに腹を据えて、戦争中の軍人と戦後の自衛隊員の中間をとると申しますか、ほんとうのやまと民族のよりどころはここであるというような教育の仕方をしていただきたい。国際情勢は御承知の通り非常に複雑怪奇でありますから、この点一つ大臣に私は十分お願いをしたい。少しは非難もぶたれるかもしれませんけれども、何十年か後には、伊能長官のおかげで今日の自衛隊ができた、りっぱになったといわれるときがくる。大村益次郎の役割を一つあなたにしてもらいたい。徴兵検査をしようというわけではありませんよ。ありませんけれども、少しおそいけれども、精神のこもった長官が来なければ、いつまでたっても自衛隊の筋が入らぬ、こういうふうに実は考えておりますから、その点長官にお願いするわけであります。それではお前しろと言われても、これは私もなかなか教育はできないのでありますが、まあ自分の修養もし、自衛隊の諸君にも一つ修養をしていただきたい、こういうふうに考えます。
また今日は核兵器、原水爆の時代でありますが、これもだんだん改良され、変ってきております。想像のできないものができておりますが、長官は今後の核兵器並びに原水爆に対して、どういうお考えを持たれるか。また今日、日本の周辺にはいろいろございます。歯舞、色丹はわが日本の領土といいながら、ソ連から占領されておる。また小笠原、琉球諸島は、アメリカの防衛体制の中に入っておるというような現状であります。そこで核兵器あるいは原水爆に対処すると同時に、日本の周辺にはどういう外国の兵力が取り巻いておるか、このごとくらいは研究されておると思いますが、これを参考にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/31
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032・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 ただいま御指摘の新しい自衛隊の建設につきましては、全くお考えの通りであって、私どももその方向に向って最善の努力をいたしておる次第でございます。
それから今後の新しい兵器に対する日本の対処すべき考え方等につきましては、ただいまいろいろ御意見がございましたが、御承知のように現在においては台湾、韓国、フィリピン等、いずれもいまだ核兵器を持つに至っておらない、かように考えておりますので、核兵器の問題につきましては、岸内閣の方針として、総理みずから核装備をしない、かように申しております。しかしこの問題は長い将来の問題といたしまして、日本の自衛隊がいかに質的な装備をなされるかということは、国際情勢とともに、また国民の決定すべき問題であろうか、かように私ども考え、もっぱら世界の科学兵器の進運におくれない方向にあらゆる科学的な、技術的な研究はわれわれ努めなければならぬ、かように考えておる次第でございます。また日本をめぐるソ連、中国、北朝鮮その他外国の兵力等につきましては、私も概略承知いたしておりますが、数字の誤まり等を来たすといけませんから、防衛局長から詳細に説明させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/32
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033・加藤陽三
○加藤(陽)政府委員 日本周辺におきます各国の兵力でございますが、交換されました資料その他を参考として申し上げますと、陸軍について申し上げますれば、ソ連が大体東経九十度以東——ザバイカル以東におきまして四十万から五十万くらい、中共が二百三十万から二百五十万、北鮮が三十五万ないし四十万、韓国が五十万ないし六十万、台湾の国民政府が約四十万というふうに見ております。
海軍について申し上げますと、極東におりますソ連の艦艇約七百隻、約四十万トンぐらいと推定しておるわけであります。中共が約百九十隻、十五万トンから十七万トンくらいの間だろうと思っております。北鮮はきわめて小規模でございますして、魚雷艇等のものが主力艦でありますが、約百隻、一万五千トンくらい、韓国は約八十隻、三万五千トン、台湾の国民政府が約百七十隻、十万トンくらいというふうに見ております。
空軍について申し上げれば、極東にありますソ連の空軍機は約四千機、これは海軍機も若干含んでおります。中共の空軍が三千五百機から四千機、北鮮が約八百機、韓国が三百機足らず、台湾の国民政府が約六百機というふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/33
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034・平井義一
○平井委員 そこで次期防衛計画もございましょうし、先般岸総理にちょっと質問いたしたのでございますが、次期戦闘機の購入問題が、決算委員会その他で問題になっておる。しばしば総理並びに官房長官は、国防会議の内定であって、決定でない、慎重に研究するのである、こういうふうに答弁をされてきております。そこでけさの毎日新聞に、長官が経団連の副会長でございますか、この人に対して、あのときの内定はまだ生きておる——どういう意味で言われたか知りませんが、これは御承知の通りに決算委員会、両党の間でまたいろいろ問題になっておりますので、一つ大臣の真意をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/34
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035・伊能繁次郎
○伊能国務大臣 お答え申し上げます。本日の毎日新聞だけに特にああいう記事が出ましたが、昨日経団連の植村副会長及び岡野保次郎氏、両氏がお見えになりまして、先般来、いわゆるドレーパー・ミッションが日本に来朝しましたときの、私とドレーパー委員長との間の会談の内容、また植村副会長とドレーパー委員長との間における会談の内容等が、それぞれ新聞等に伝えられて、一部食い違いがあるやに報道せられましたので、私は植村さんのお考えを直接には伺っておりませんでしたが、かつて役所等で一緒に仕事をしていたしました経験もあり、またいろいろ御親交も願っておりますので、大体植村さんの考え方等につきましては理解しておるつもりでありましたが、万一にもさような食い違いがあってはならぬということで、たまたま先般、総理官邸において植村副会長と会いましたときに、その話をいたした結果、では近々一ぺん会って、自分たちの話も聞いてほしいし、君らの話も聞きたいということで、昨日約五十分足らずお話をした次第でございますが、昨日の会談の様様としては、ドレーパー・ミッションが参った当時の、防衛庁としてのドレーパー・ミッションに対する意見の開陳並びに希望の内容はかくかくの通りであったということと、一方、植村さんがドレーパー・ミッションと会談された当時の内容についてはかくかくであったということを、お互いに話し合った結果、基本的には意見の食い違いはない。ただ、私も防衛産業の育成ということについては、植村さんの御意見と全く同感である。しかしながら、現在の日本の国力からいって、急激に防衛産業を育成強化するということはなかなか困難である。従って、伝えられるようないわゆる域外調達というものが急速に実施せられて、それによってアメリカの日本に対する軍事援助が、アメリカ等で巷間伝えられアメリカの国会等が論議されておるような形で、削減を急速に受けるというようなことであっては、日本の防衛整備上も重大な支障があるから、これはぜひ日本の実情をごらん願った上で——急激なる減少は、われわれもちろん希望しないところであるから、ぜひ現状を少くとも五年程度は継続してほしい、その上で、日本の防衛産業の育成という問題をわれわれも考えていくし、またアメリカが考えておられるような問題とうまく調和して、日本の防衛産業の育成に寄与してほしい、こういう意見を私は述べた。植村さんも、基本的には自分もそういう考え方である。ただ、それについても、船であるとか特車であるとか、一部のエレクトロニクス関係の兵器等については、日本の一方が比較的マン・パワー工賃が安いという関係上、具体的な例を申し上げますれば、トランジスターの製作等につきましても、また駆逐艦、警備艦等の製作につきましても日本の方が安い、従ってそういうものについてはできるだけ日本の防衛産業を育成してもらいたいという一般論も自分は述べた。こういうことで基本的に意見の食い違いがないという話し合いをした最後に、ついては防衛産業の育成について最も重大な関係のある航空機産業の現状は、F86Fの生産の停滞によって、相当重大な影響を日本の航空機産業が受けておる、従ってこの点については政府として新しい飛行機の機種決定を急速にするように、一つ防衛庁として努力をしてほしい、こういう希望がありました。それについて私は先般本国会において答弁をいたしましたように、政府としては国防会議において一応の内定を見たということは、その後の国防会議においてまだいわゆる白紙に戻すというような形式的な措置がとられたわけではない、従って防衛庁長官があれは白紙だと言うことは——防衛庁自体の仕事でなしに、国防会議の仕事だから、白紙になったと言うことは言い過ぎであろうと思う。従って内定は内定として防衛庁長官としてはその後の新たなる各般の事情についていろいろと調査をいたしておりますので、政府全体としてはこの問題を新たな角度からもいろいろ検討して、至急きめる方向に私も努力いたしたい、かように申し上げたので、FXが生きておるとかなんとかいうようなお話ではもちろんなかった、この点は御了解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/35
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036・平井義一
○平井委員 その点はよく了承いたしました。私の質問はこれで終りますが、先ほど私が━━━━と言ったことは取り消しておいて下さい。暴力国会はいいが、━━━━は取り消しを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/36
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037・内海安吉
○内海委員長 あなたの人格を尊重いたしまして……。おそらくこれは話のあれじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/37
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038・平井義一
○平井委員 その点は委員長に一任いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104889X01119590226/38
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039・内海安吉
○内海委員長 本日はこの程度といたしまして、次会は明二十七日、午後一時より開会いたします。
これにて散会いたします。
午前十一時四十三分散会
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