1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十四年三月十一日(水曜日)
午前十時五十八分開議
出席委員
委員長 臼井 莊一君
理事 稻葉 修君 理事 加藤 精三君
理事 木村 武雄君 理事 原田 憲君
理事 小牧 次生君 理事 櫻井 奎夫君
理事 西村 力弥君
木村 守江君 鈴木 正吾君
高橋 英吉君 中村 寅太君
八木 徹雄君 長谷川 保君
堀 昌雄君
出席国務大臣
文 部 大 臣 橋本 龍伍君
出席政府委員
文部政務次官 高見 三郎君
文部事務官
(大臣官房総務
参事官) 齋藤 正君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 内藤譽三郎君
文部事務官
(大学学術局
長) 緒方 信一君
文部事務官
(体育局長) 清水 康平君
委員外の出席者
議 員 加藤 精三君
議 員 堀 昌雄君
専 門 員 石井つとむ君
—————————————
三月五日
委員永山忠則君辞任につき、その補欠として五
十嵐吉藏君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員五十嵐吉藏君辞任につき、その補欠として
永山忠則君が議長の指名で委員に選任された。
同月六日
委員中村寅太君辞任につき、その補欠として林
唯義君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員林唯義君辞任につき、その補欠として中村
寅太君が議長の指名で委員に選任された。
同月十日
委員八木徹雄君辞任につき、その補欠として志
賀健次郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員志賀健次郎君辞任につき、その補欠として
八木徹雄君が議長の指名で委員に選任された。
三月十一日
理事永山忠則君同月五日委員辞任につき、その
補欠として永山忠則君が理事に当選した。
—————————————
三月五日
公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数
の標準に関する法律の一部を改正する法律案(
西村力弥君外三名提出、衆法第三九号)
公立の高等学校の夜間課程の教職員に対する夜
間勤務手当の支給に関する法律案(湯山勇君外
三名提出、参法第五号)(予)
同月六日
国立及び公立の義務教育諸学校の児童及び生徒
に対する教科用図書の給与に関する法律案(野
口忠夫君外二名提出、衆法第四〇号)
高等学校の定時制教育及び通信教育振興法の一
部を改正する法律案(坂本昭君外六名提出、参
法第七号)(予)
同月九日
学校教育法等の一部を改正する法律案(松永忠
二君外二名提出、参法第八号)(予)
同月十日
教育委員会法案(堀昌雄君外二名提出、衆法第
四三号)
—————————————
同月十一日
市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する
法律案(臼井莊一君外八名提出、衆法第四九
号)
同月六日
教職員の研修費制度化に関する請願外一件(石
山權作君紹介)(第二〇八八号)
同(鈴木一君紹介)(第二〇八九号)
養護教諭を各校必置に関する請願外十件(加藤
鐐造君紹介)(第二〇九〇号)
同外一件(田中稔男君紹介)(第二〇九一号)
同(小林かなえ君紹介)(第二一六〇号)
盲ろう教育振興に関する請願(小牧次生君紹
介)(第二〇九二号)
学校教育法第二十八条の一部改正に関する請願
(細田義安君紹介)(第二一八七号)
は本委員会に付託された。
同月十一日
市町村立学校職員給与負担法等の一部を改正す
る法律案(辻原弘市君外三名提出、衆法第三二
号)
は撤回された。
—————————————
本日の会議に付した案件
理事の互選
学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第二六号)
学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴
う関係法律の整理等に関する法律案(内閣提出
第二七号)
教育委員会法案(堀昌雄君外二名提出、衆法第
四三号)
市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する
法律案(臼井莊一君外八名提出、衆法第四九
号)
文教の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/0
-
001・臼井莊一
○臼井委員長 これより会議を開きます。
まず臼井莊一君外八名提出の市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案を議題とし、提出者より趣旨説明を聴取いたしまします。加藤精三君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/1
-
002・加藤精三
○加藤精三君 市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案の提案趣旨説明をいたします。
本件は、われらの文教常任委員全員をもって提案者及び賛成者といたしておりまする法律案でございまして、その趣旨は、大体において五大都市の定時制高等学校教育の沿革的並びに現実的の特殊事情を認めまして、それらに勤務する教員及び職員の給与の負担主体を府県より市町村に変えようとするものでございます。
本件につきましては、委員の中におきましても一人も異存のある人がございませんので、すみやかに御審議をいただきまして、可能な限りすみやかに成立を見ることをお願いいたしたいのでございます。
以上をもちまして提案者を代表いたしまして提案理由の説明を申し上げました。御了承お願いいたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/2
-
003・臼井莊一
○臼井委員長 次に教育委員会法案を議題とし、提出者より趣旨説明を聴取いたします。堀日昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/3
-
004・堀昌雄
○堀昌雄君 ただいま議題となりました教育委員会法案の提案理由を御説明申し上げます。日本国憲法及び教育基本法には、学問の自由及び教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきであることが明示されておりますが、このことこそ民主教育の基本的な精神とならなければならないものであります。しかしながら、昭和三十一年六月三十日に地方教育行政の組織及び運営に関する法律が施行され、これにより戦後つちかわれました民主教育は根底よりくつがえされ、ここにわが国の教育行政は一路中央集権化の道を突き進むことになりました。
まずその一例をあげますと、文部大臣と都道府県教育委員会、都道府県教育委員会と市町村教育委員会の関係は、一方的な上から下への関係となり、上部の命令は直ちに下部を拘束することになり、教育界に未曽有の紛争を惹起して参りましたことは国民周知の事実であります。また、教育委員会の委員の公選制が廃止され、任命制になりましたことは、国民が教育に参与する権利を剥奪される結果となり、ときに専断的な地方自治体の首長の恣意的な任命による教育委員会の構成が、教育に対する不当な支配となって現われるおそれがあるのであります。
さらに、都道府県の教育長の任命は文部大臣の承認を得ることとなり、市町村の教育長は、都道府県教育委員会の承認を得て任命することになっております。このため、文部大臣の命令権が実質的には末端教育長まで及ぶこととなりました。
さらに、教育財政について申しますならば、教育予算の原案送付権がなくなりました。これは教育委員会の自主性を奪うのみならず、教育財政の確立とは、およそかけ離れた措置といわなければなりません。
これらのことは、多くの国民に多大の犠牲を強要したあの悲惨な戦争の貴重な反省の上に積み上げられた民主教育の精神を抹殺し、封建的思想への逆行として教育を暗やみに導く危険となって現われて参りました。
ここに日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとりまして、教育行政を本来の国民の手によるものに限り戻すべく、新しく教育委員会法案を提案いたしました次第でございます。
第一に、教育委員会の設置について申しますならば、都道府県教育委員会、市町村教育委員会については、義務設置といたしました。市町村教育委員会を義務設置といたしました理由は、昭和二十八年二月十八日町村合併促進法の制定の趣旨により、急速に町村合併が行われ、小規模な町村はほとんど姿を消し、一町村の学校数、教員数、児童数等も相当増加し、その運営の適正を期するためには、市町村の教育行政の確立を必要とする段階に至っているからであります。
次に、教育委員については公選制といたしました。その理由といたしましては、教育を誤まれる権力支配より守り、学問の自由と教育の自主性を確保する立場より、国民は市町村全体、県下全体、国全体の教育に常に参加し、国民のための国民教育を実現させるために、さらには、国民全体が教育に参与する権利を確立するためであります。
教育委員会の職務権限について申しますならば、都道府県教育委員会と市町村教育委員会の職務権限を明確に分離し、都道府県教育委員会の権限といたしましては、教員の免許状について、県費負担教職員の任免その他の人事について、また教職員の研修、保健、安全、厚生、福利、学校給食のための物資のあっせん等とし、私立学校についても、従来は都道府県知事が所管していたものを、同じ教育の立場より、都道府県教育委員会の所管に属するものといたしました。
市町村教育委員会の職務権限につきましては、主として学校の施設、設備の管理等に重点を置き、教育の向上をはかることを目的といたした次第でございます。
真に子供たちの幸福と心身ともにすこやかな成長を願い、教育を国民の手におさめるために一時も早くこの法律案が実現いたしますよう、慎重御審議の上、すみやかに御決定下さいますようお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/4
-
005・臼井莊一
○臼井委員長 両案に対する質疑は追って行うことといたしましす。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/5
-
006・臼井莊一
○臼井委員長 次に学校教育法等の一部を改正する法律案、及び学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案を議題とし審査を進めます。
質疑の通告があります。これを許します。堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/6
-
007・堀昌雄
○堀委員 この専科大学を中心とする法律案は、前会前会私は反対の討論をいたしておるわけでありますが、大臣がおかわりになりまして、一昨日かの新聞を見ましたところが、何か参議員院自由党の皆さんはこの法案について修正の御意思があるようであって、それに対して文部大臣は何か了承をされたというようなことが新聞によって伝えられておるわけです。私が拝見をした内容というのは、短期大学はこのたびの法律によりますと、今年限りで打ち切りになるわけでございますが、それをもうずっと認めるのだということがその趣旨になっておるように伝えられておるわけであります。
そこで大臣にお伺いをいたしたいのは、そういうふうな事実があるのかないのか、そしてもし参議院でそういうことが行われるというような場合に、それを了承する意思があるのかないのか、その二点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/7
-
008・橋本龍伍
○橋本国務大臣 ただいま御質問のございました点につきましては、内容が少し誤まり伝えられて私非常に遺憾だと思います。
そこで私ごくさっぱり申し上げたいのでありますが、本問題につきましては灘尾前文部大臣からも、ぜひこの趣旨によって原案を成立せしめたいという強い意向の引き継ぎを特に私受けたのでありますが、私自身も、文部省内におきましてもいろいろ審議して練ったものでございまするし、私実は原案をぜひ成立せしめたいと考えております。ただこれにつきましては、先般来衆議院の側からもいろいろな御意見がございまして、私の方にもいろいろお話がございます。その内容はやはり短期大学をめぐって修正をしたいという御意見があるのでありますが、私のところへお申し出のございまする筋も実はいろいろに違っておるわけであります。私といたしましては、率直に申しまして原案で成立をさせたいけれども、かといって国会を通る最終の段階におきまして、もう一字一句変えるくらいなら流してしまうというほど固い考えを持っておりません。ただ何とかしてこの法案の趣旨になっておりまするところの専科大学の設立ということを認めていただく法案の骨子というものはぜひ一つ通していただきたいと考えておりまするが、そのためにもしこのままではどうしても通しにくいということがあれば、若干の修正がある場合もやむを得ないと思っております。しかしそれにいたしましても衆参両院を通じましていろいろな御意見の帰趨がどうもなかなかわかりませんので、願わくは、衆議院の方はつい近い国会におきまして一度原案で通ったことでもございまするので、せめて原案で通していただきたい。それから参議院においても原案で通していただきたいのですが、しかし万一どうしてもむずかしいという場合におきましては、参議院の政調会におきまして、参議院だけということでなしに、衆参両院を通じ、与野党を通じて意見をまとめていただきたい。その上で原案の趣旨からあまりかけ離れてどうにもならぬということでないならば、私は原案でなければどうしてもいかぬとまで固執をしない。こういう趣旨のことを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/8
-
009・堀昌雄
○堀委員 今原案の趣旨ということがお話に何回か出たわけです。そこでこの法律案の提案理由がここにちゃんとございまして、「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することを目的として新たに専科大学の制度を設け、短期大学の認可は昭和三十四年四月一日以降は行わないこととするとともに、技能教育施設における学習を高等学校の定時制又は」云々というふうに書かれておるわけです。これが提案の趣旨だと私は理解するわけであります。そうするとさっきおっしゃった一字一句ということについては、提案の趣旨と別個の部分があり得ると私も考えますけれども、この提案の趣旨の範囲はさわらない。これは趣旨でありますから、「深く専門の学芸を教授研究し、」から「短期大学の認可は昭和三十四年四月一日以降は行わないこととする」、あとの問題は別個についておるのでありますから、ここまでは提案の趣旨でありますから、その趣旨は絶対に動かさない。しかし字句についての修正については応じてもいい、こういう今のお話だと私は了解するのでありますが、さようでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/9
-
010・橋本龍伍
○橋本国務大臣 実は私繰り返して申しますけれども、この法案の趣旨の中に述べておるところは、全部趣旨ではございますけれども、一番大きな問題は何といっても専科大学を創設するということにあるわけであります。もちろん専科大学を創設いたしますと同時に、短期大学の認可は今後はしないようにいたしたい。かように原案は考えておるわけでありますが、専科大学を創設するという問題と四月以降は認可を絶対にしないという点にはおのずから軽重の差はあると思うわけであります。そういう問題につきましては、もちろん私といたしましては、原案をいいと思って主張しておるわけでありますが、国会両院のございますゆえんは、国会の意見は十分政府も尊重するということでありますので、承わりたい。ただし私は率直に申しますと、国民健康保険法の改正のときに非常に困ったのであります。中間の段階で一段階ずつ、とにかくきょうこれだけ直せ、それでないとあすからの審議をやらないというふうにごねられますと、参議院を最後に上るまでの間に何べんも段階があって何のことかわからなくなってしまう。それは私は非常に困りますので、どうか一つ国会両院の御意見によりまして——これは万やむを得ないといって私も了承して変節をいたしますときには、一ぺんだけでごかんべんを願いたいというのが私の率直な感じであります。どうかその辺でよろしくお願いいたします。
〔「了解」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/10
-
011・堀昌雄
○堀委員 お気持を加藤さんの伴奏つきで伺いますと、大体意味はわかります。しかし私も率直に申し上げたいことは、法案が趣旨を含めて変更をされるということになりますと、その部分の条項を引き抜いたり、一項だけ直したのでは、法案の体系としてロジックが合わなくなっていくということが、過去のいろいろの法律を調べてみるとたくさん出ておるわけであります。そこでこの法律案は少くとも短期大学がなくなって、これを専科大学に吸収するという考え方で書かれておる法律案です。だから、私はここで何も言質をとってどうこう言うんじゃないんですけれども、問題は、こういうことの中で部分的な修正がもし参議院で行われたと仮定した場合に、私は、あとに非常に大きな問題が残ってくる、こういうふうに考えておるわけです。というのは、まず今のいろいろなことを考えまして、これは私どもも主張しておりますけれども、短期大学は存置したらいいだろうというようなことが結果として起きたと仮定をいたします。短期大学は短期大学として認めるということになりました場合には、短期大学というものはどういうものであるか、それから専科大学はどういうものかということで、もう一回一へ戻ってから問題を提起していかないと、これはきわめておかしなものになるわけです。この法律案自体が、ただ短期大学を昭和三十四年四月一日以降は認可しないというその部分だけを削り取ったらそれでいいんだというような法律ではないわけです。だから私は、もし文部大臣がそこまで腹をくくっておられるなら、これを一回引っ込めて、そういう全体の状況の中で、将来修正を予想されておる点に対して全体から見て支障のないような法律の仕組みに書きかえるのでなければ、私はきわめて複雑な問題が生じてくるであろうと思う。これは私が社会党という意味じゃなくて、どなたがお考えになっても、道理の上から正しいと思う。法律というものは、少くともそういう形の上で御都合的な修正によって部分的に変更したために全体が非常にあいまいなものになる場合が多いことは事実であります。その点で私は非常に心配してあるわけであります。
そこで将来のことにわたって御質問するようで悪いけれども、ここだけ少し確かめておかないと、ただいまの大臣の御答弁を伺っておって、そういう可能性が必ずしもなきにしもあらずというふうに私は感じておりますので、ちょっと具体的に伺っておきたいのですけれども、もし短期大学と専科大学と二本立になるようなことが起きた場合に、専科大学の趣旨というものが果してこれでいいのかどうか、今ここに書かれているものでいいのかどうか、それから短期大学と専科大学の範囲、どういうものが専科大学で、どういうものが短期大学かということを新たに書いてもらわないと、この法律だけではわからない、こういうような事実があるわけです。これについては少し技術的な問題になりますから、前段は大臣に、後段の方は局長でもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/11
-
012・橋本龍伍
○橋本国務大臣 私はこの間参議院に参りまして、実は社会教育法の問題とこの問題の話がありました際に、私が話しましたのに何か具体的な内容めいたものをつけて宣伝をされて、非常に迷惑に感じておるのであります。私が先ほど申しましたのは、あくまでも原案の趣旨を通して参りたい。あまりひどい修正というよりも無修正で通してもらいたい。しかし私はやはり専科大学制度というものを何とか発足させたいと思うから、ちょっとでも直したら流してしまう方がいいというところまでがんこに考えてはおらないが、現在の段階においてはどうもまとまった御意見がないので、それ以上は譲歩しかねるとか、あるいはこの範囲ならいいというようなことを私の方で考えることはできない。ただいま申したような趣旨で、何とか一つ最終段階まで原案でいきたいという要望を私申し上げた次第であります。今お話のございましたような部分について、どこどこまで修正をするものかどうかというような話を聞いたこともございませんし、私の方も考えたこともございません。この原案の趣旨になるべく近いラインで何とか一つ成立できるようにさせていただきたいと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/12
-
013・緒方信一
○緒方政府委員 私も今大臣がお述べになりました通りだと存ずるのであります。かりに修正されるといたしましても、どういうふうに修正されるか私わかりませんので、意見を述べることは差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/13
-
014・堀昌雄
○堀委員 将来のことにわたっての論議ですから、多少それは問題があろうかと思うのですけれども、ただここでこのままほおかぶりをして、参議院にいって一項だけすぽっと抜いた場合に、私はやはり行政上の問題としては問題が残ってくると思うのです。参議院の皆さんの方で修正をされる場合に、全条その趣旨によってなさっていただくような状態になれば、私はそれは大へんけっこうだと思うのですが、過去の例を見ますと、必ずしもそういうことは行われなくて、部分的な修正によってそれが行われる場合がきわめて多いと思う。そういうときに、この問題はやはり学制の基本問題なんです。字句をどうこうという程度の問題なら私はここまでここで申し上げないのです。しかし、学制のあり方が基本的に変ってくるという非常に重大な問題が、字句の問題で起る危険があるということが、現在大体わかっておりますね、感じとして。新聞が伝えるくらいでありますから、根も葉もないことではないと私は考えておりますし、大臣のさっきのお話のニュアンスもわかるわけです。その考え方に私は反対しておるわけではない。そういうことがあっても、それはまた皆さんの全体の御意見がまとまるならけっこうだと思うが、そういうまとまり方をしたその考え方と法律との間に食い違いができはせぬかということを、行政官である皆さんが今後やっていかれる場合に大きな問題が生じてくる可能性が今はっきりわかっておるなら、やはり少し詰めて考えていただかなければいかぬのじゃないか。だからそういう趣旨に立つならば、私は率直に申し上げると、さっき大臣は一字一句修正するなら流してしまう方がいいのだということをおっしゃった、その裏返しにそういうことは考えないとおっしゃったのですか、行政官のお立場としてシビアにお考えになるならば、これは一ぺん引っ込めて——その段階でもけっこうですけれども、その段階においてもしこうなったときは、この法律はこういう法律でお願いをできますかという準備があるのかないのか、ただ法律案の手持ちはこれだけであって、修正するならその部分だけを修正するのだというような安易な考え方、要するにあとは非常に問題が残るけれども、通りさえすればいいのだ、ともかく通すだけだということになれば、あとに問題が残るし、ことに、私はあとでずっと具体的にまだ質問していきたいけれども、今の短期大学の問題は皆さんか考えておられる以上にいろいろと本質的な問題を含んでおると思う。これは統計から見て明らかにそういう事実がある。それは次会にでもゆっくりやりますが、そういう事実があるにもかかわらず、それをほおかぶりして実はここへこの法案が出されてきておる。出されてきておるものについては部分だけさわるのだということになると、考え方がこういったりああいったりして、専科大学の問題でもまた問題が生じてくるだろうと思う。だから今私があなたに質問したのは、もし短期大学が残るということがきまったときには——今のは全部専科大学に入っておるのです。この法案の考え方では短期大学も専科大学に入っておる。しかし、短期大学が残るということになると、専科大学の中から短期大学が抜けるわけです。そうすると残った部分が専科大学になって、こっちに短期大学が残る。残った部分と出ていく部分の範囲がどういうものになるかということが根本的問題になる。今の皆さん方の考え方は、専科大学と短期大学がオーバラップしておる。それを取りのけたときの範囲はどういうことになるのか、性格はどうなるのか。専大、短大を含んで専科大学ということになるのか、残った部分だけについて性格をはっきりさすのか、ここらは基本問題としてきわめて重要な問題であって、単なる字句の修正の問題ではない。だから短大の今後の位置、そういう問題も、今度はここでそういう修正をするならば、短期大学としてああいうような暫定的な取扱いでなくして、あの短期大学を直そうと当時御審議になったように、短期大学についての法律をやるべきではないか。短期大学とはこういうものだと法律に書かれておるところと、設置基準との内容が違反をするような状態を残されたままで、またもや短大を残していくということでは、短期大学の諸君にしても必ずしも望ましいことではないと思う。ですからもしほんとうに修正がされるのならば、短期大学はやはり大学の中に入るのか、あるいは大学の外に短期大学というものを作るのか、ここらがやはりはっきりされてこないと、私は困ると思うのですが、そういうことが果して修正が行われるかどうかということについては、過去の例をいろいろと見ておりますと、そういう修正はきわめて行われておらぬ。ただ部分的な修正でされると、結局また禍根を将来に残すことになると思う。ですから教育というものは決して一時的なそういう都合によって行われるのではなくて、長い計画と全体の見通しの上に行われなければならない。そういうことであるならば、私はもう少し真剣にこの問題を考えていただきたい、こういうことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/14
-
015・橋本龍伍
○橋本国務大臣 お話はよくわかります。私自身も考えておりまして、将来どこの段階においても、修正の話が出て参ります場合に、これは先のことですからわかりませんけれども、一体この法案を生かすのか、もうそこまでやらなければ通らぬのなら、もう一ぺん考え直すかということを考えなければならぬ時期に私はあると思います。これはお説の通りに私も考えております。ただただいまのところは、これはざっくばらんに申し上げるのでありますが、今堀委員の御質問の中にほのかに予想されるような考えの方もおありだし、それから原案でいいのじゃないかというような方もおありだし、多少期限的にどうこうしたらいいじゃないかというような方であるとか、あるいは短大の中でのいろいろな範囲の問題であるとか、実は衆参両院を通じて、つまり文部省がどういう態度をとるのなら国会も了承だということになるのか、実は今日非常にわかりにくいような段階にあるように思います。ただ事柄自身は、二、三日前に出したのなら審議が十分でないからというので審議を尽さなければいかぬことでありますけれども、問題自身は何べんも出して、投げかけて、いろいろお考えになっていただきながら、なおかつずっと御議論があるというのが現状でございますので、私は衆参両院を通じて何とかこの法案をお認め願いたいと思いまするし、その場合に最終段階でぎりぎり国会はここまでであるということになったときに、一体われわれが提案者としてどういうふうに考えなければならぬかということは、その際慎重に考えさせていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/15
-
016・堀昌雄
○堀委員 将来の問題については一応終りますが、現実にこの法案自体の中で少し伺って、あとは保留させていただくようにいたします。
この法案の問題点は、一つは短期大学の問題にかかっておりますし、一つは専科大学の方にかかっておる。短期大学の問題の中で重要なのは、やはり女子教育の問題なんですが、大臣は女子教育と大学教育というものについては一体どういうふうなお考えを持っておいでになるかを、ちょっと伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/16
-
017・橋本龍伍
○橋本国務大臣 あるいは御質問の趣旨を取り違えておるかもしれませんが、そうしたら再度お尋ねをいただきたいと思います。
私は男子、女子を通じましての一般的な教育としては、本来大学があればよろしいと考えております。ただいまお話のございました女子教育というのは、何と申しますか、家庭婦人としての女子の高等の教育を高めるような方式としてはどういう形がいいのかというお考えかと思いますけれども、私はその場合に、何といいますか、女子に適しました実際教育をやるという点につきましては、やはり一般の大学教育と並んで、専科大学教育というものがあってうまくいくのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/17
-
018・堀昌雄
○堀委員 私はその点ちょっと意見が違うところかあるわけですが、今おっしゃった家庭婦人になるという場合における教育の問題は、実際生活に必要な能力を育成するという問題もあるかと思いますけれども、しかしそういう技術的な問題ではなくて、一般教養と申しますか、女子としての教養を高めるということが、やはり将来の子供の教育その他についても大きな影響を持つものでありますから、私は必ずしも専科大学というような形で女子教育をやらなくてもよいのではないかと考えております。現在いろいろな雑誌でもいわれております女子大とか、女子教育の問題についてのいろいろな議論があるのですが、この議論の中には、男子と同一に扱えという議論が本質的にあり、私はその考え方はそれでいいと思いますが、必ずしも全部が同一ではなくて、家庭婦人になるためにはそうではない場合もあり得ると思います。男子ではその程度の一般教養ということでは不十分であるけれども、女子の場合には、将来それが非常に役に立つ一般教育上の問題もあろうかと考えておりますから、そういう意味で、少くとも短期大学の女子教育に付言しておられる部分については、私はそれなりの評価をいたしているわけであります。
そこであとで関連して出ますけれども、短期大学というものが何らかの形でもし残るという場合における短期大学というものが、どういう性格かということについては、女子教育との関連で問題が生じてくるのではないかと思いますが、皆さんの方はやはり依然として一般教養的なものをそういうところで見ようとはしないで、ここに書かれたような実際生活に必要な問題ということで割切っていこうとしておられるのかどうかというような点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/18
-
019・緒方信一
○緒方政府委員 女子教育のためには四年制大学のほかに短期の二年くらいの教育機関が適当ではないかということはその通りでございまして、現在の短期大学といたしまして、女子教育の面が相当発展をしておりまする実情からもそれはわかるわけであります。しかしこのたび設けようといたします専科大学は、その短期大学の実態を一つにいたしまして、それを恒久的な制度として目的を明確にしようということでございます。そうしてその中に専科大学の目的といたしましては、職業教育あるいは実際生活に必要な能力を育成するとか、こういうことを規定しているわけでございまして、実際生活に必要な能力を育成する、この範囲、この中に今お話に出ておりまする、女子の将来主婦として実際生活を営みます上におきまして高い教養を持つということは必要でございますけれども、そういう教養を目的とするものもこの専科大学の範囲に含めて取り入れていいではないか、こういう考え方で実は申し上げているわけであります。中央教育審議会におきましてこの案が練られたのでございますけれども、女子教育をどうするかということは、この段階におきましても慎重な検討がございました。そこで短期大学を恒久的な制度とする場合に、その中身といたしまして、今言われましたような女子教育につきましても、これを取り上げていく、そういった制度にした方がいいじゃないか、こういう趣旨で答申も出ておるような次第でございます。御承知のように、旧制の女子専門学校がございましたけれども、この中にはいろいろなものがございまして、やはり一般教養を目的とするものもあったと思うわけでありまして、その意味で、短期の二年または三年という修学年限を持つ学校を学校制度の中に確立するというのがこの趣旨でございますので、その中で女子教育をやっていくことが適当じゃないか、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/19
-
020・堀昌雄
○堀委員 あとは現状の大学と短期大学の問題について、具体的な資料の中でちょっと伺いたいのでありますが、ここはちょうど区切りになりますから、これで私の質問を一応終って、あとは明日に譲らしていただきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/20
-
021・臼井莊一
○臼井委員長 この際お諮りいたします。
去る五日理事永山忠則君が委員を辞任され、同日再び委員に選任され、ただいま理事が一名欠員になっております。
その補欠選任は、先例により委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/21
-
022・臼井莊一
○臼井委員長 御異議なしと認め、永山忠則君を理事に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/22
-
023・臼井莊一
○臼井委員長 次に文教の基本施策に関し調査を進めます。質疑を許します。長谷川保君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/23
-
024・長谷川保
○長谷川(保)委員 私は前会、日本の教育の混乱のもとになっておりまする原因の中心が、教育委員会にあるという立場から、都道府県教育委員会の委員の職業別調べというような点から、これが教育基本法にきめられました教育が不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接に責任を負って行わるべきであるというこの事態がゆがんでしまっておる、そこが今日の教育行政の混乱の原因であるという点を種々御質問申し上げたのでありますけれども、この教育委員会の政治的な偏向と申しますか、そういうきらいが今日ある。その中心になりますものに、もう一つ教育長のあり方があると思う。今日都道府県の教育長というものは、文部大臣の承認を得て教育委員会が任命する、こういうように地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第十六条にあるわけです。新しい大臣になられまして、この際私はこういう紛争を解決すべきときだと思うのであります。大臣は今後どういう基準で、この都道府県の教育長の任命に同意をお与えになるつもりか、その基準を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/24
-
025・橋本龍伍
○橋本国務大臣 これはもう従来通り教育基本法の精神にかんがみまして、現実のいろいろな各府県の事情等もございますので、それを勘案して、教育基本法の精神を実現するに最もふさわしいように、公正にやるつもりでございます。従来と格別方針の違いはございません。ただ実際に当ってみますると、やはり各府県の事情等がございまして、なじみのない人を急に持っていくというふうなこともなかなかむずかしい問題でありまして、事実は私就任以来、二、三手がけてみましても、割合選考範囲というものが限定されがちでございまして、もし事情が許すならば、もう少し広い範囲で人物が求められぬものかというような感なきにあらすでありますけれども、私は教育基本法の精神を発現するという公正な見地から見て、なるべく広い範囲で人を求めていきたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/25
-
026・長谷川保
○長谷川(保)委員 日本の教育委員会のあり方というものは、私はいわゆるレイマン・コントロールというやり方であると思います。教育の専門家でない人々が、初めは選挙によって教育委員になって教育委員会を構成して、教官を直接つかさどっていったという形でありまして、今日一応任命制という杉になりましたけれども、教育のしろうと支配と申しますか、こういう形はそのまま一応続けられていると思うのです。事実そうだと思う。こういうようなあり方は私は正しいと思うのです。こういう方法をおとりになったときの議会におきます議事録を、実はまだ不勉強で読んでおりませんけれども、レイマン・コントロールという行き方をして参りました。そうして今日もそれをやっておるのについて、文教当局はどういうお考えを持っているか、この際伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/26
-
027・橋本龍伍
○橋本国務大臣 私は今日のただいまお話のありましたような趣旨というのは非常にいいと思っておるのでございます。本来的に、ことに戦前の施策と対比をいたしました場合に、戦争前におきましては、結局教育は天皇の大権事項に属するという部分が非常に大きくて、現実には結局文部省の役人がやっておったということになるわけでありますけれども、教育の基本方針というものは、やはり国民社会の先達が考えらるべきものだ。要するに非常に誠実な、高い意味における常識が支配すべき世界だというのが今とっております制度の根本の思想だと私は考えておる次第でございまして、そういう趣旨は十分に常に考えて参らなければならぬところであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/27
-
028・長谷川保
○長谷川(保)委員 御承知のように教育行政の立場、目的というものは、学校を作り、あるいは学校のいろいろな設備を作り、その他の教育の諸条件を作っていくというところに目標がある、そういうような意味を含めまして、ただいま大臣のおっしゃいましたような、教育の目的がりっぱな人間を形成する、新しい社会の、新しい日本の人間像を作っていくという、非常に全人的な立場においてのものでなければならないというところから、私はこういう二つの大きな目的を持つ以上、今日の教育委員会のレイマン・コントロールといういき方は正しいと思う。しかし、それだけに教育の専門職でありますところの現場の教師と、教育委員会の、いわばしろうとといたしましての立場の中間に立ちます非常に重要な役目をする教育長というものは非常に大事だと思うのです。このあり方が非常に大事だ。このあり方が、私は相当に教育を支配する。教育がどういうようなものになっていくかという、その一つの非常に重大なかなめだと思うのです。教育長の立場というのは、申し上げるまでもなく、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の十七条、あるいは二十条あるいは二十六条等によって、一面から見れば一つの事務職員、教委の指揮監督のもとに事務をつかさどる、こうはっきり書いてありますし、また教委の会議の議事について助言をする、また二十条には事務局を統括し、所属職員を指揮監督すると書いてある。二十六条には代理委任の条文がございます。これらを総合して見ますと、私は今のよううな教育委員がしろうとであるという立場、そして一方には現場の専門職であります、しかも非常に高度の専門職でありまする教育職員、教員というものがある。そのつなぎをなしましてりっぱにこの制度の運営をして参りますためには、教育長というものはやはり教育の専門の十分な知識を持っている、経験を持っている、こういうような人がふさわしいと思うのであります。おそらくこの日本の教育委員会というものを作りましたとき、先ほど申しましたように私は不勉強で読みたいと思いながらまだ会議録を読んでおりませんが、そのときにはそういう意図があったと思う。教育長は教育の専門職を充てるという大きな目的があったと思うのです。こういう点はどうであったろうか、この点を伺いたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/28
-
029・橋本龍伍
○橋本国務大臣 お説の通りでございまして、教育長は教育委員会と現場の職員との間におきまして、教育行政がうまくいくようにする重要なかなめでございます。従いまして教育長を選任するに当りましてはやはり教育行政の専門に通暁するということは選任いたします場合の判断の基準としてきわめて重要に考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/29
-
030・長谷川保
○長谷川(保)委員 それは今の大臣のお答えは正しいと思うのです。ところが現実を見るとどうもそういうことになっておらぬ。三十一年の秋に任命制の教育委員会が発足した。そのときに都道府県の教育長のうちで十七人が更迭をいたしました。新任の十七人中実に十四人が教育を専門としない官僚の出身だった。十七人中十四人ですよ。前から居すわっております更迭されませんでした者の中にも七人の官僚出身者がいる。合わせまして全国の四十六人の都道府県の教育長中二十一人、つまり約半数に近い者が教育の専門家でない。あの勤評の大騒ぎを演じました愛媛県の大西教育長のごとき、これは全然教育の専門家でない、官僚です。だからこういう諸君は、本来は教育委員会の事務職員です、事務官です。もちろん代理委任というのが先ほど申しました法律の第二十六条にありますけれども、しかしはっきりと教育長の権限というものは、先ほど申し上げましたように、これはむしろ本来事務職員的の存在です、ただ非常に重要な立場に立っている。それが先ほどお話しの通り、私はどう考えてもここは一番かなめだから、そこが教育の専門の能力を持ったところの職員でなければならない。それならばあのようなひどい勤務評定というようなものは私はしないと思う。無暴な行き方はしないと思う。先ほど申しましたように、私は明日ちょっと広島の方に調査に参るのでありますけれども、これは広島の調査から帰ってきたらとくと質問したいと思っていますけれども、広島のある学校で非常に人望のあるりっぱな校長が勤評を良心的にどうしても書くことができないということを言ったのでありますが、そうしたら校長を首にした、しかもその学校で平教員にした、新しい校長も他から転任さした、一体こんなむごいことが常識からいってあり得ないと思うのですよ。そのような立場でその先生が果して児童に対して教育ができるかどうかということは——実にひどいことをする、むごいことをするものだと私は思うのでありますけれども、あまり腹が立ったから、明日一日調査に行こうと思っておる、だから新しく任命された校長もそこへ行くのはいやだといっておる、そんなことはできないといって——しかも父母が、信望のある校長でありますから、親たちがこういうような措置に対して今非常な反対の立場をとっておるわけです。こういうようなことを初め、勤評のあり方を見ていると実にひどいと思うのだ。勤評自体のよしあしについてはなおのちほどまた私はいろいろな面から御意見を——これは今日の日本の教育の混乱の一つの大きな問題でありますから、御意見を伺いたいと思いますけれども、しかしいずれにいたしましても、こういう教育委員会というものと専門職である教員との中間の一番重要なかなめになって双方を十分能率的にそうして平和に工合よくやっていかなければならない立場にある人が、教育の専門家でない、しろうと支配の教育委員会というもの、こういう事実、これは私は非常な大きな問題だと思うのです。だからこの点につきまして、今申しましたように新しくなりました十七人の中に十四人が教育を専門としなかったところの官僚の出身である、前の居すわりの人も合わせまして約半数に近い二十一人までそういうものでないというところに、今日の教育の混乱の一つの大きな原因があると思う、大臣は今後この教育長を任命するのに、それに対する同意を与えるのに、こういう法律を変えるべきだと私は思うが、その点について大臣の御意見を重ねて承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/30
-
031・橋本龍伍
○橋本国務大臣 先ほど申し上げましたように、私も就任以来ごくわずかでありますが、その間に携わりました一、二の事例から申しましても、具体的の事情でいろいろ人選の範囲というものが限定されがちであります。十分留意をいたして参りたいと思っておりますが、従来でもやはりその人が教職出身の人でなくても、教育長というのはやはり教育というものの一種の専門的行政に対して十分な理解の深い人でなければなりませんので、そういう趣旨で適当だということで人選をされただろうと思いますが、私今後この教育長の選任に当りましても、必らずしも教員出身でなければならないとは思いませんけれども、専門行政としての教育、専門としての教育というものに理解の深い、職場にできるだけやはりなじみの深いという人たちを選考の基準としては考えていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/31
-
032・内藤譽三郎
○内藤政府委員 ただいまお述べになった事例の中で、私どもはただいま大臣が申し上げましたように、教育長は教育行政の長でございますので、もちろん教員出身ということだけを条件にするわけではございません。教育に対する深い理解と同情を持った人が必要であろうと思います。こういう意味から、特に選考に当ってはそういう点を中心にしていただくように指導をいたしておりますし、また承認をする場合にも、学校の先生のうちで、りっぱな行政官もおられるし、またそうでない方もおります。特に教育行政に多年経験のあった方、あるいは教育に理解のある方、こういう点を特に重視して選考いたしております。ですから、お述べになったうちの大部分がかって教育行政に携わっておった、こういうことが言われると思うのであります。特に教育長を補佐するところの事務職員、これが専門職でございますので、当然専門的な立場から教育長を補佐すると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/32
-
033・長谷川保
○長谷川(保)委員 ただいま申しましたような点、私は戸籍調べをやっているのでありますけれども、どうも必ずしも局長のおっしゃるような教育に理解のある人ではないということになっておる。教育に対する政治的な支配というものが行われるということを非常におそれられる、また事実そういう傾向が出てくる原因であると思います。いずれにいたしましても、そういうようなことであれば、一方において教員の身分の保障が十分なされるならば、この混乱はある程度防げるのではないかと思うのですが、今日の教員の身分保障についてのあり方というものが、私はたとえばアメリカに比べましても、あるいはイギリスに比べましても、非常に薄いと思うのです。この点について議論して参りますとずっと長くなりますので、きょうはこれで終っておきまして、次の機会にはまたやらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/33
-
034・臼井莊一
○臼井委員長 本日はこの程度とし、明日委員会を開きます。時間等については公報をもってお知らせいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105077X01119590311/34
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。