1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年二月二十六日(木曜日)
午前十時二十九分開議
出席委員
委員長 小島 徹三君
理事 鍛冶 良作君 理事 小林かなえ君
理事 田中伊三次君 理事 福井 盛太君
理事 村瀬 宣親君 理事 井伊 誠一君
理事 坂本 泰良君
綾部健太郎君 一萬田尚登君
高橋 禎一君 馬場 元治君
濱田 正信君 三田村武夫君
大貫 大八君 田中幾三郎君
志賀 義雄君
出席国務大臣
法 務 大 臣 愛知 揆一君
出席政府委員
警 視 監
(警察庁警備局
長) 江口 俊男君
検 事
(大臣官房司法
法制調査部長) 津田 實君
検 事
(刑事局長) 竹内 壽平君
法務事務官
(人権擁護局
長) 鈴木 才藏君
委員外の出席者
検 事
(民事局第一課
長) 池川 良正君
検 事
(民事局第三課
長心得) 香川 保一君
検 事
(刑事局公安課
長) 川井 英良君
最高裁判所事務
総長 横田 正俊君
最高裁判所事務
総局事務次長 内藤 頼博君
判 事
(最高裁判所事
務総局人事局
長) 守田 直君
専 門 員 小木 貞一君
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本日の会議に付した案件
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出第一一九号)
検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第一二〇号)
法務行政に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/0
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001・小島徹三
○小島委員長 これより会議を開きます。
まず、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案を一括議題とし、審査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。大貫大八君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/1
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002・大貫大八
○大貫委員 この問題につきまして、裁判所側に二、三お尋ねをいたしたいのであります。前回の法務委員会におきましては、法務省の側の説明によりますと、いわゆる三者協定と申しますか、本案を提出する前提といたしまして、裁判所と法務省と大蔵省の間に三者協定ができたという御説明があったのでありまするけれども、そのような協定というのはどういういきさつでできたのか、裁判所側の御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/2
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003・横田正俊
○横田最高裁判所説明員 その経過につきましては、折衝の経過に一番詳しい内藤事務次長からお答えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/3
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004・内藤頼博
○内藤最高裁判所説明員 ただいまのお尋ねでございますが、私が最高裁判所の事務当局といたしまして法務省と折衝いたしました立場にございましたので、私から御説明を申し上げたいと思います。経過につきましては前会法務省の津田調査部長から説明がございましたけれども、私が法務省と折衝いたしました立場から見ますれば、私どもの見方とまただいぶ違った点があるわけでございます。今回の裁判官報酬法の改正につきまして、最初法務省の事務当局から私どもに連絡があったのでありますが、最初に示された案は、裁判官の報酬と検察官の俸給と全く対等に定められた案でございます。すなわち、裁判官の報酬の一号が検察官の俸給の一号、これはともに七万八千円、以下二号も同じ、三号も同じという案でございます。私はそれに対して、裁判所はこの案ではとうてい承服することはできないということを、法務省当局に伝えておいたのでございます。当時横田事務総長もその問題につきまして馬場法務次官、愛知法務大臣にも会われまして、裁判所側の意見を申されたのであります。愛知法務大臣は、現在自分としてはこれ以外に案がないので、この案にきめるということをはっきり言明されたわけであります。その後いろいろいきさつもございましたが、裁判官の方には特に一号の上に八万円という特号の規定が置かれることになりまして、それによって裁判官と検察官の差異を法制上明らかにするということで、特号の案が出たわけであります。御承知のように、今日における裁判官の報酬と検察官の俸給との間には一号ずつの格差がありまして、判事の一号が検事の特号、それから判事の二号が検事の一号というふうに、一号ずつの格差があるわけでございます。今度はその符号というものをつけることによって、裁判官の優位性と申しますか、職責に応じた報酬になるというわけであります。ところが、この特号ができることになりますと、法務省の方では、この特号は判事六十三才以上の者に適用するということに法律で規定すべきだという意見を出されたのであります。ただいま申し上げますように、もし符号が判事の職責に照らした、判事の優位と申しますか、従来のような思想の上に立った特号であるならば、もし六十三才以上というワクをはめますと、その趣旨が没却されることになるというのが私どもの考えであったのであります。と申しますのは、御承知のように、検事の定年は六十三才、判事の定年は六十五才であります。従って、検事の年令にない定年をこえた判事に限って特号を適用するということでは、結局判事、検事が全く対等になって、従来の給与の建前をくずすことになるというのが、私どもの考えであったのでございます。いろいろその間に折衝がございましたが、結局六十三才以上に適用するということは法律には規定しないということに、これは法務省の譲歩だったと思いますが、そういうことになりまして、そのかわり協定を結ぶということになったわけであります。協定もやはり六十三才以上に適用するという協定で、実はただいま申しましたように、裁判所としてはまことに応じがたい話であったのでありますけれども、とにかく法律の上に特号の規定を置いて、裁判官と検察官の給与の相違ということを法律上に明らかにされたということと、それからもしその協定がなければ、符号をつけた法律の改正案を国会に提出することが困難であるという法務省側の強い主張がありましたので、その協定に応ぜざるを得ない立場になったわけであります。従って、最高裁判所の事務当局といたしましては、その協定に応じたものの、まことに応じがたいものに応じたという気持をぬぐい切れないでおるわけであります。その点で、今回皆様にいろいろ御心配をいただいております東京地方裁判所初め各裁判所の裁判官の気持も、そういった点に向けられた気持の現われなのでございます。裁判官の報酬と検察官の俸給でございますが、これはやはり私どもの考えからすれば、司法制度の根本の裁判官のあり方の一つの具体的な法制上の現われというふうに考えられるわけでございまして、少くとも法制上の形の上においても、裁判官、検察官の間には、その職責の相違に応じた相違がなければならないというふうに考えておるわけでございます。そういうわけで、ただいまお尋ねのございました協定は、そういう精神から申しまして、ただいま申しました経過から、ほんとうにやむを得ず最高裁判所では応じたような結果になっておるわけであります。協定は、御承知のように、法務次官、大蔵次官も加わっております協定でございますが、そういうわけで、裁判所としては、まことにその立場に追い込まれて結んだような経過になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/4
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005・大貫大八
○大貫委員 今、裁判所側の御説明を伺いますと、大へんどうも奇怪なことが出て参ったのであります。一体、特号について六十三才以上というワクをはめなければ、法務省は法案の提出ができないというのは、これはどういう法務省側の説明だったのでしょうか。ちょっと納得がいかないのですが、その辺のいきさつを御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/5
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006・内藤頼博
○内藤最高裁判所説明員 私が裁判所の事務の方で折衝いたして承知いたしております限りでは、特に判事の報酬に一号の上に特号という規定を設けられるということを一つの案として聞きましたその当時には、法務省としては、その特号には当然六十三才以上に限って適用するということを法律に規定するという法務省の考えが伝えられたのであります。私どもの方としては、それを法律に規定することは絶対に困るということを申し入れたのでありますけれども、どうしてもそれを法律に規定しなければならないということを聞かされたわけでございます。その後の折衝を経まして、法律にそういう規定を置かない、そのかわりに協定を結ぶということになった、私の承知する限りにおいてはそういう経過でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/6
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007・大貫大八
○大貫委員 それでは法務大臣にお伺いいたしたいのですが、この十年間にわたって、裁判官と検察官の格差というものが慣行としてずっと行われてきたわけであります。その点はやはり司法権の独立という点からしまして、裁判官の優位性、こういう原則が貫かれておったと私は思う。一昨日の三田村委員の質問の中には、大へん強い裁判官に対する議論がございました。ところが、東京地方裁判所なり東京高等裁判所の判事一同として強い要望書が当法務委員会に提出されました。私はそのこと自体は三田村委員と考えが全く違うのであります。裁判官もやはり国家公務員であると同時に、国民として、勤労者として、当然その待遇、生活問題について、政府なり法務委員会に要望する権利は私はあると思う。これは憲法二十五条によりましても、国民として最小限度の生活を営む権利というものが、裁判官であろうが一般の国民であろうが、何ら違うところはないのであります。従って、裁判官が多少用語の上で強い要望書を出されたとしても、そのこと自体は、私は何ら非難すべきものじゃないと思うのであります。そこで、十年間貫いて参りました裁判官の優位性というか、こういうことを法務大臣としてはお認めになるのですか、ならないのですか。その点を一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/7
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008・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは前回の委員会のときにも詳しく申し上げたつもりなんでありますが、まず第一に優位性ということのお話でございますが、十年以来の経過はいろいろございます。昭和二十六年でございますか、そのときの改正で国家公務員、判検事ともに天井が同じになってしまった。その現状に対して私は何とかこれを改善する必要があると考えておったわけでございまして、現在でもその考えを持っておるわけでございます。その限りにおいて、今、優位性という言葉がございましたが、この前も非常に言葉は練れておりませんが、私としてはある程度その優位性に対する失地回復が判事について今回のものは認められておる、こういうふうに考えております。
それからその次に経過のことについて、これももうすでに申し上げたことで繰り返すようになって恐縮でありますけれども、一番初めは、従って二十六年以来の慣行というか、それをもとにいたしまして、実はこれは大蔵省も政府部内としては非常に関係が深いところなんでありますが、そこでは、そのときと同じように、上を七万八千円でとどめようという考え方が非常に強くあったわけであります。そして裁判所側からの御希望としては、七万八千円ということを前提にして、そうして今度は検事の号俸の呼び名を変えてくれという御要請があったわけです。ところが、御承知のように、国家公務員の方がだんだんベース・アップになっておりますから、検察官についての呼び名を特に判事に対して下位に置くというようなことにいたしますと、一般国家公務員よりも検察官の方が格下げになるというようなことが起ってくるわけでありますから、その両者をあんはいいたしまして、判事について特号というものを認め、そして同時に検察官の最高の号については一般国家公務員とのバランスもとらなければならわということで、その両者のいろいろの関係を総合いたしまして、この案を最善のものと考えるに至ったわけであります。それから私の理解しておりますところでは、これは前に申し上げましたように、閣議でも再々慎重に審議をいたしてこの結論が出たわけでございます。初めはやはり七万八千円というのが最高であるという前提で議論がいろいろ出たのでありますが、私は今申しました判事の優位性ということを十分考えて、特にこれは大蔵大臣と私は折衝いたしまして、いろいろ紆余曲折はありましたが、八万という一格高い号俸を、特に大蔵大臣としてもそれではいろいろの事情からこれを認めるとうことになりました。同時に、その際においては、六十三才ということを法文の上にも明記してもらいたいというのが、最初大蔵大臣並びに財政当局の要望であったわけでありますが、裁判所の方のいろいろの御意見や御希望もございましたので、これは法律からは落したわけでございます。運営の基準として先ほど御指摘があったかと思いますが、それでは当局同士の、これはいわゆる事務当局間というわけではございますが、裁判所の機構の特異性からいって、これはあえて法務省だけの考え方というのではなくて、大蔵省もぜひそういうような協定書を裁判所との間に作りたいということで、覚書というようなものを作ったこともあります。そういう経過でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/8
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009・大貫大八
○大貫委員 私は検事の報酬が一般職より低くていいというような、そういうことじゃないのです。検察官が当然一般職と同様でなければならぬのは申すまでもないのですが、そのことはよろしいのですけれども、今、法務大臣の御答弁の節々に、裁判官の優位性というものをある程度お認めになっておるようなお言葉が出て参るのでありますが、そういたしますと、特号を設けてもこれは優位性を認めたことにはならぬと思うのです。というのは、単純に特号の八万円を設けるならば、これは裁判官の優位性を認めたことになるのですが、六十三才というワクをはめますと、全く判事も検事も同じことになるのであります。いささかも裁判官の優位性というものは、この報酬の法によりますと出ておらないのであります。裁判官の優位性という問題については、この前三田村委員や辻委員からも発言がございましたけれども、しかし司法権の独立を貫く建前からいたしますと、やはり裁判官の地位の保障ということ、これは憲法で明確になっておるし、従って地位の保障の裏づけとして、結局報酬に関することも、わざわざ憲法の上で定めておるものと思う。これは司法権の独立の制度上から見まして、裁判官の優位性というものは、理論上私は認めなくてはならぬ筋だと思うのであります。ただ、現行制度において幾多の問題はございます。たとえば同じ任用資格で同じ試験で、同じように進んでいく現行制度でいいか悪いかはおのずから議論はありましょうけれども、やはり憲法を貫く精神からいたしますれば、司法権の独立という建前からすれば、裁判官の優位性を認めなくてはならぬ。法務大臣もそのような御答弁をなさっておるのでありますけれども、ところが内容は一つも優位性を認めていないのが報酬法の改正だと思うのですが、この点どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/9
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010・愛知揆一
○愛知国務大臣 これはごもっともと思いますけれども、たとえば先ほど私が申しましたように、昭和二十六年の改正のときにさかのぼってお考えをいただきたいと思うのでありますが、御指摘のように、判事は定年が六十五才であります。ところが、六十五才の定年の判事もそれから定年が六十三才である検事も、それから定年制というものがない一般の政府職員も、その三者の最高額がどういうわけでございますか、昭和二十六年のときには、全く同額とされておったのでございます。その二十六年当時の状況にさかのぼって、私は改正を施す必要があると思いましたので、少くとも判事の定年制、その他にもかんがみ、それから先ほどから申しております判事の優位ということから申しまして、少くとも一段階を優位にする。そして同時に、その特号俸の運用等について、財政当局からの切なる希望等もございましたので、覚書を作った、こういうような関係になっているわけであります。従って、これは申すまでもないことでありますけれども、判事の優位性を認める、これはまず第一の原則と思いますが、同時にさらに十年前の状態にさかのぼりますと、他の者が一万円であったときに、一万四千円というような四割も違っておった時代から見ますと、一般国家公務員のベース・アップが最近非常にスピードがかかって参りました。その関係で、ただいまも話がございましたように、一般公務員との関係ということも、私ども政府側の立場としてはバランスを置いて考えなければならない。そして検事がそれよりも下になるということでは、これまた広い意味の司法権の問題からいって困りますので、つまり実額の問題において優位性ということをはっきりする。それから呼び名の問題については、検察官と一般国家公務員との関係ということにも、相当の重点を置いて考えていかなければならない。こういう判断から、かくのごとき結果になったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/10
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011・大貫大八
○大貫委員 そういたしますと、六十三才というワクを特に法務省が強く主張される根拠はどこにあるのでしょうか。どうも法務大臣のお話を伺っていますと、優位性を認めるような御議論なんです。そうだとすれば、裁判官は一般公務員と同額以上にしなくちゃならぬと思いますが、それはよろしい。そこで裁判官の優位性を認めて特号を置いたとすれば、六十三才というワクをはめなくたっていいのじゃないか。特に裁判所側の先ほどの御説明によりますと、この六十三才というワクをはめなければ、法務省は提案しないとまで強硬意見を述べられたというのですが、その辺のことについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/11
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012・愛知揆一
○愛知国務大臣 私は、前にも申し上げたと思いますけれども、全体論、一般論といたしまして、現在の俸給の改正案がこれであらゆる意味で満足だとは、私決して思っておらぬのであります。これは判検事の任用の問題、その他の問題ともからみ合せまして、できるだけ改善をはかりたいということは私も強く思っておるわけであります。ただしかし、先ほど来何べんも申しておりますように、二十六年のときのあれと比べてごらんになれば、判事の優位性ということについも、あるいは判検事を総合してみても、二十六年のときよりは相当これは前進しているつもりなりんでありまして、私どもが今のような御批判をいただくのならば、これは二十六年の場合と総体的に一つ考えていただきたいと思うのであります。
それから先ほど答弁申し上げましたことでおわかりいただいているかとは思いますけれども、法務省は六十三ということを法律に書かなければ、あるいは協定に書かなければ、提案ができないと言ったというようなことは、これは事実と違うのでございまして、これは政府全体の希望というものを法務省が間に立ちましてあっせんに努め、あるいは関係の方々の御協力をいただいて、こういうふうに落ちついたのでありまして、この点は先ほどお話がございました判事諸公がどういう御意見をお出しになろうと、これはもうそれ自体について私は批判すべきでないと思います。しかし、あそこに書かれていることや、あるいはその経過においての、私は自分の苦心を売りものにするつもりはございませんけれども、非常にこれは苦労し抜いて、そうして関係の間を取りまとめたのであって、法務省だけがどうこうというものではありませんので、その点は御理解をいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/12
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013・大貫大八
○大貫委員 これはやはり根本的には、私は制度上の問題もあると思います。裁判所が独立しておりながら、法案の提案権もないというような現行制度、それから閣議にも列席することができないというような制度上の問題に、相当今度の法務省対裁判所間の問題が出てきておると思います。これは根本的な問題ですが、法務省と裁判所と大蔵省、この三者協定というものは、一体法律的にはどういう効果を持つものなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/13
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014・愛知揆一
○愛知国務大臣 御案内のように、一般の国家公務員、これはもちろん検察官も含めてでございますが、一つは予算という問題がございます。その予算の範囲内において、法律できまっておる号俸の適用を各省所管の大臣が選考する建前にはなっておりますけれども、しかし、全体の昇給のやり方その他について不均衡が生じてはいけませんので、実際問題としては各省間におきまして、運営の基準、昇給等の基準というものを大蔵省を中心に詳細にその事情をお互いに検討し合って、全体の足並みがそろうようにやっておることは御承知の通りなんでございます。今回のこの覚書というものも、これは裁判所でございますから、裁判所に対して行政権が干渉がましいことをするということはもちろん避けなければなりませんけれども、しかし、事、財政当局の立場においては、やはりそういう点もできるだけ協調をとっていただきたいという、この気持からも出て参りましたものであると私は理解するのであります。これは今後一号俸をどういうふうに適用するか、あるいは特号俸をどういう場合に適用するかというふうな運営の基準というものを示したものでありまして、これは法律的な議論と実際上の運営の議論と分けて考えるというと言い過ぎかもしれませんが、要するに運営の基準であって、裁判所としてもこういう基準でもって運営をするということを関係の向きとの間に約束した、こういうものであると私理解いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/14
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015・大貫大八
○大貫委員 報酬問題はこれでけっこうです。あと別な問題で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/15
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016・小島徹三
○小島委員長 それでは、報酬問題で志賀義雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/16
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017・志賀義雄
○志賀(義)委員 この法務委員会でここしばらく非常に大きい問題になっております裁判官の報酬問題について、東京地方裁判所の判事がなぜああいう決議をして、国会へ要望書として出してきたかということを考えてみますと、元来これは最高裁判所の事務総長の方へこういう要望をまとめて出さるべきものでありますが、提出権がないということで、地方裁判所裁判官一同として、「国会に対する法律案の提出権もなく」というふうに書かれております。これは事務総長として十分裁判官の意向を入れらるべきものでありますが、朝日新聞の社説に従っても、だいぶ最高裁判所と法務省との間に深刻な対立があったということであります。ところが、妥協されたので、裁判官一同が自分たちの要望を持っていきようがないために、こういう形で出たのであろうと思います。
まず法務大臣並びに事務総長に伺いたいのでありますが、「率直にいって、過去十年間守られてきた慣行を、なぜ一挙に改めねばならぬのか。」朝日新聞も社説でこういうことをいっております。なぜここで一挙に改めようとされたか、その点をもう一度あらためてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/17
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018・愛知揆一
○愛知国務大臣 ただいまお答えを申しました通り、私の考えとしては一拳に改悪したのじゃなくて、漸進的に改善したつもりなんでございます。それは二十六年のときの改正案をごらんになれば、それから今日までに至っておるあれをごらんになれば、よくおわかりいただけると思うのです。ただ、しいて問題をいえば、先ほど来申しておりますように、判検事の関係と、それからもう一つ一般の国家公務員の関係とを総合的に取り上げなければならないというところに問題のむずかしさがあると私は思うのであります。従って、私は十年に至る慣行を一挙に悪くしたのだなどと言われることは、事情をもう少しよくお調べになり、また感情を入れずに冷静に御判定いただけますならば、私は少くとも現下の情勢におきましては、これは最善のものと考えておるわけでございます。
それからなおこの機会にちょっと付言して申し上げたいと思うのでありますが、一昨日の委員会の終りますときに、本会議の関係などもあって、私十分に志賀さんの御質問に意を尽し得なかった点がございますから、補足して申し上げます。(志賀(義)委員「それはあとから質問いたしますから、先ばしった御答弁はなさらないでようございます。」と呼ぶ)私は司法行政の円滑な運営について、工夫、検討がないものであろうかとひそかに考えておるということを申し上げた次第でありますから、その点は御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/18
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019・志賀義雄
○志賀(義)委員 私が今、朝日新聞の社説を引用して言いましたのは、率直にいって、過去十年間守られてきた慣行をなぜ一挙に改めねばならないのかということを言ったのです。私は改悪するとも何とも言っていないのですよ。法務大臣は、私が改悪するとかなんとか言ったというふうに頭から即断してかかられておるようですが、もう少しこちらの言うことを、私が質問をする場合にはよくお聞きになって、想定の答弁をされては困りますね。なぜ一挙に改めねばならないのかと言ったのです。なるほどインフレーションということを度外視して数字は上っておるでしょう、だからそれは改善をするのだ、こういうふうにまず一つ問題をあげられた。私はその点を言っているのではないのです。また裁判官も絶対額がどうこうというのではないということを言っておる。その点をそういうふうにごまかして言われること自体が、はなはだおかしいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/19
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020・愛知揆一
○愛知国務大臣 私はごまかしてなど全然言っておりません。
〔志賀(義)委員「改悪しておると
言ったじゃありませんか。私は
なぜ一挙に改めねばならないの
かということを伺っておりますの
に……。」と呼ぶ〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/20
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021・小島徹三
○小島委員長 志賀君、私語を禁じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/21
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022・志賀義雄
○志賀(義)委員 裁判官については相当額の報酬ということが特に書かれておりますね。相当額の報酬ということが、先日の辻委員の質問では、身分の保障があるだけだ、だからこういう要望を国会へ提出することはけしからぬというお話でありましたけれども、相当額の報酬ということが裁判官の場合に特記してある。これはどういう意味でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/22
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023・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは前にも申し上げたと思いますが、裁判官として国民の信頼をつなぐ、何と申しますか、そういうりっぱな仕事に対して妥当と思われる報酬をしなければならない、一言にしていえば、私はそういうのが憲法の趣旨であろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/23
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024・志賀義雄
○志賀(義)委員 相当額の報酬ということが裁判官の場合に特記してあるならば、裁判官が、場合によって、これを相当額でないと考える場合には、それは発言する権利があるでしょう。その点はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/24
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025・愛知揆一
○愛知国務大臣 これも再々お答えいたしておりますように、私は要望書を出したということについて、全然コメントしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/25
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026・志賀義雄
○志賀(義)委員 御承知のように、国会というものは予算の審議権と決定権とを持っておりますし、憲法の規定によっても、国会が国権の最高機関である以上、元来事務総長なりが判事の意見をまとめて、こういう要望があるということをはっきりこちらへ持ち出されればいいのです。国会はそういう予算に関することについては、これを審議し、決定する権利がありますから、そういうことを国会へ出されることは、法律にそういうことを出してはいけないという規定がない以上、それは一向差しつかえないのであります。その点について、事務総長は、御自分の方から出されずに、こういう要望をこちらへ回されたのはどういうわけでありますか。その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/26
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027・横田正俊
○横田最高裁判所説明員 先ほど内藤次長から、この法案が提出されるに至ります経過につきまして、あらましを申し上げました。この特号をつけました法案を出すにつきまして、裁判所といたしましては、やむにやむことを得ず、たびたびお話に出ておりますいわゆる三者協定を結びまして、それが一つの条件になりまして、特号のついたこの法案が提出されたような次第でございます。つまり最高裁判所といたしましては、はなはだ不本意ながら、一応この法案の提出につきましては異議がないという立場をとりました関係上、最高裁判所といたしまして、これらの要望を取り次ぐということもいかがかと思われる面もございましたので、と申しまして、またこういう裁判官の強い意向を国会に反映させることは、われわれの立場から考えましても望ましいというふうに考えましたので、直接に裁判所から国会法務委員会に提出してもらった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/27
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028・志賀義雄
○志賀(義)委員 どうも私までが事務総長に文句をつけられるように、三田村委員に対する御答弁と同じような御答弁であります。私は三田村委員とは立場を異にしております。三田村委員は、先日事務総長に対して大へんしかられて、ことに事務総長を通じて裁判官をしかられたようでありますが、三田村委員が、法務省の態度がけしからぬと言われるなら私は筋が通っておると思いますけれども、ああいうふうにしかられては、裁判官一同もきっとびっくりしておられるだろうと思うのであります。だから、もうちっと事務総長は元気を出して答えて下さい。何だか言葉じりを、あちらからも、こちらからも、とらえられないように、不本意ではございますがと——進んで取り上げましたと言ったっていいでしょう。ここは最高機関なんだから、そこは率直に言われたらいいじゃありませんか。ただし、私は今度の決議の態度について、無条件に賛成するものではないのです。ここに若干の独断があるという点だけは、三田村委員の指摘に賛成します。そのほかは全部三田村委員の意見には反対であります。どういう独断があるかと申せば、たとえば最高裁判所の代表の方が、主権者である国民が、民主主義の当然の権利として、表現の自由を持って、裁判についても批判すると、これを雑音といい、そうして裁判官一同がやはり主権者である国民を尊重するという態度をとらない。どうも判決などを見ても、納得のいかないことが多い。わいろを贈った者は有罪である、そのわいろを受け取った者は無罪なんというような判決を出すようじゃ、国民は納得しませんよ。そういうことだから、こういう場合に裁判官がみずから孤立を招くという結果になっておるのです。そういう点で、これほどの重大な問題、三権分立、司法権の独立という重大な民主主義上の課題に対して、国民の間では何のことかよくわからないという結果にもなるのです。そういう点では明らかに独断があって、みずから種をまいておるのでありますが、ここで最初私が朝日新聞の社説を引用して問題にしましたのは、過去十年間行われてきた慣行について一挙に、裁判官の報酬を上げるにもせよ、検察官あるいは他の行政官と同じように考えてくる。特に憲法には相当額の報酬ということが書かれているのに、なぜ一挙にこの十年間の慣行を改められるのか、その点についてもう一度法務大臣の見解を伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/28
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029・愛知揆一
○愛知国務大臣 何と申し上げたらいいのでありますか、一挙に云々ということが私にわからないのでありまして、この点はお答えがちょっといたしかねるのであります。私としても、一般国家公務員もベース・アップして給与が上ってくる、それよりよくしなければならぬ、ところが二十六年のとき以来天井打ちで一律になっておるから、何とかしてこれを上げたい、こういうふうに考えて努力して参ったつもりでございまして、一挙に十年間の慣行云々ということは、先ほど改悪と言って怒られましたけれども、私はよかれかしと思ってやったことで……。(志賀義委員「改悪とは言わないじゃないか」と呼ぶ)だから改悪と言って怒られたけれども、あなたの話によれば、いかにも改悪だというような語気でおっしゃるから、私はそれに対して私流の解釈をいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/29
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030・志賀義雄
○志賀(義)委員 そこで、先日の速記録によると、法務大臣のおっしゃるところは、私のほんとうの私見でありまして、法務大臣として正式にいろいろ意見を持っておるわけではございませんが、そういう予算とか営繕とかいったものについては常識的に、つまりこういうアドミンストレーションという言葉を使いました関係は、裁判官に出された書類その他にもありましたけれども、そのことは司法官僚にやらせるならば、もっと能率的にやれるのではなかろうか、こういうふうにおっしゃっておるのでございます。お隣にいる事務総長に現在与えられているもの、これを司法官僚というか法務省というか、法務大臣というか、その方にひったくろうというお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/30
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031・愛知揆一
○愛知国務大臣 先ほど申し上げました通りに、司法行政の円滑な運営について、工夫、検討の余地がないであろうかと私としてひそかに考えておるわけでありまして、法務省にひったくろうというようなことはないということは、とりあえず委員会閉会の直前にも特に発言を求めて申し上げた通りでありまして、私の言い方が十分でなかったために誤解を招いてはいけないと思いますが、人事等については、御承知のように、最高裁の判事等の任命権は政府にございますが、それ以外の現行の制度について私は批判がましいことを申したのでは絶対にありません。これは個人の意見としてもそうなんであります。それからその次に、たしかあのときに御質問がそれに触れておりましたので、若干それに対する私見を申し上げたのでありますが、たとえば予算とか営繕とかというような、いわゆる今も御指摘のように、常識的にアドミンストレーションとでも言いましょうか、これについては、裁判所としては、たとえば財政法第十七条の規定などもございまして、特異の立場は占めておられるけれども、それはそうとして、それらの運営の方式あるいは政府、財政当局等への折衝のやり方等については、私は事実上でも改善の余地があるのではなかろうかと、ひそかに私個人として考えておるということを率直に申し上げただけでございまして、具体的にこれがどうこうというふうなことをまだ研究しているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/31
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032・志賀義雄
○志賀(義)委員 それはつまり最高裁判所の事務総長の予算折衝のやり方がまずい、こういうふうにあなたが判断なさっているのです。それならそれで事務総長に、こういうふうにやったらうまく取れますと、あなたはまた大蔵省から出られた方ですから、いろいろコツも知っておられるでしょう、そういうふうにおっしゃればいいのです。それを司法官僚の方にまかせるならばもっとうまくやって見せるということになるから、そういうことを私見として持っておいでになるから、朝日新聞も社説の中で「この問題の推移のなかに、見えがくれに司法部の持っている権能を軽視し、引きおろそうとする意図さえ感じられる。」こういうふうに——私が言うのじゃないですよ、私だけが言うのだったら、あれは共産党だから人とは別のことを言うのだろうというふうに言って、世間をごまかそうとかかれるかもしれませんが、どう見たって朝日新聞の社説の記者は共産党員じゃないのですから、それさえひしひしと、ありありとあなたの意図を感じているのです。どうです、こんなに感ぜられるものをあなたはお持ちなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/32
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033・愛知揆一
○愛知国務大臣 そういう誤解を起してはいけないと思いましたから、特に先ほども……。
〔志賀(義)委員「しかるにもかかわ
らず、そういう誤解が世間にある
んですよ。」と呼ぶ〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/33
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034・小島徹三
○小島委員長 志賀君、私語を禁じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/34
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035・愛知揆一
○愛知国務大臣 そうでありますから、私は特に本日も申し上げておるのであって、法務省に権限をとるとかなんとかいうことじゃなくて、これは私の法務省へ参りましてからの経験上もそうなのでありますが、国家的に大きな立場から考えると同時に、また裁判所の特殊の立場というものも十分に考えながら、私どもとしては、何といっても司法行政全体の立場からいって、たとえば営繕の問題にしましても、裁判所の庁舎を建てる場合に、できるなら検察庁の立場あるいは弁護士あるいは訴訟関係人というような利便を考えて、相協力してやれるような運営のやり方があるのではなかろうかということを感じたのです。裁判所の方について申すならば、裁判官の方々が雑事になるべく追われないように、そうして私どもの考え方も十分理解をされて、雑事については、感情というものをはずれて、もっとまともにやれば経済効果も国家全体のために上るのではなかろうか、また裁判についてもより多く国民の信頼も仰ぎ得るようになり、また裁判の遅延の促進ということにもなり得るようなやり方があるのではなかろうかとひそかに考えたということを申し上げたのでありまして、私の現在の立場としてはそういうことを考えなければいかぬというふうに、考えることを率直に申し上げたわけでございますから、その点は志賀委員も十分御了解下さるものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/35
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036・志賀義雄
○志賀(義)委員 どうも了解できないのです。雑事々々といって、雑事を裁判官から解放して、それは法務大臣の方で引き受けてやるという御親切な気持かもしれませんけれども、最高裁判所にはそのために事務総長という職務もあるのでしょう。それから、裁判所長としても、やはりある意味での行政官としての職務をやるような規定になっておりますし、だからそういうふうにあなたがお感じになったら、こういうふうにすればと、相当額の報酬、またそれに対する物的設備、営繕費なども含んで、そういうことをあなたが事務総長の方に勧告なさればいいのである。事実今度の法律の改正案を見ますと、明らかに憲法に特記してあることまでも無視して、これを他の官吏と同じようなふうに考えている、こういうことに原則上なってくるのであります。そうなってきますと、戦前司法権が独立していなかった、その方向へ実は運ばれていくという危険が非常にあるのでありまして、法務大臣としては、憲法の建前を守るというのならば、司法権の独立の方向に協力なさるのが建前であろうと思います。ところが、あなたの方でお出しになったものは——こういうふうに裁判官にしろ、要望書としては、ここに提出されているのは、東京地方裁判所と東京高等裁判所だけでありますが、全国の裁判官の間にも同じような疑惑があるのであります。そういう点で、先日のこの法務委員会の速記録にも現われておりますように、営繕その他一切のことはこちらにまかせればもっとうまくやってあげるというようになってきますと、これが営繕という物質だけでなく、自然に人事の面に至るまで法務大臣の権限下に置かれる、そうなってくると、これは行政権に完全に司法権が隷属することになるでしょう事実最近の裁判を見ても、そういう不公平な点が非常に多々あるのであります。警察が駐在所の中にダイナマイトをしかけて、内部から爆発したということが東大の工学部の教授たちの鑑定によっても明らかになり、それに基いて福岡の高等裁判所で、被告になった共産党員の無罪を判決しておるのです。ところが、そのことについて、被告並びに被告の弁護士の方から、彼らを誘導し、こうした内部じかけをやった責任者たちに対してこれを告発したところ、竹内刑事局長の答弁によりますと、いまだに検察庁はこれをそのままにほったらかしておるという事情であります。明らかにそこには、行政官のやることに対しては検察官は非常に寛大であるばかりか、間もなくこれは時効の期限の来る問題でもあります。時効が来たら、告発された者も起訴しないでおいて、うやむやにしてしまう。彼らにひっかかった共産党員の方は、検察庁がこれを上告する、こういうことにもなっておるのであります。検察庁に対して指揮権を持たれる法務大臣として、こういうことを総合してみますと、どうしてもあた方は、営繕の面、雑事といわれる面を通じて裁判官の司法権の独立を行政権のもとに置こうとする、こういうことが事実によって証明されるので、朝日新聞の社説も、先ほど申し上げたように、「司法部の持っている権能を軽視し、引きおろそうとする意図さえ感じられる。」こういうふうにいわざるを得なくなってくるのです。雑事が実は雑事でない、そういうことがあなたとしておわかりでございましょうか。雑事と言われるのがくせ者なんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/36
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037・愛知揆一
○愛知国務大臣 私は声を大にして申し上げたいと思いますが、私はかりそめにも司法権の独立を侵害するというような意図は持っておらないことは、ここに明らかに申しておきます。
それから、雑事と申しましたことにだいぶ御拘泥のようでありますけれども、第一の原則の司法権の侵害をしないということによって、そこのところはお答えをいたしませんでもおのずから私の意図は明白でございます。雑事というような名前において司法権の仲立を侵害するというような意図は毛頭持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/37
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038・志賀義雄
○志賀(義)委員 それならば、東京地方裁判所裁判官一同の要望書の中に、今度の裁判官の報酬等に関する法律の改正案と同時に提出された検察官の俸給等に関する法律の改正案とを対照すると、その根底には、裁判官の待遇も検察官の待遇と同等でよいとする考えがひそんでいるように思われる、かような考え方に基いて立案された法案はとうていわれわれの承服し得ないところである、こういうふうにはっきり書いてありますが、あなたはこれを裁判官の誤解と言われるのでしょうか。もう一度繰り返しますが、「相当額の報酬」ということは、裁判官についてだけ特記してあるのです。そのことと合せて、この裁判官の言っていることは、あなたの意図に全然反したことを言っているのでしょう。その点をはっきり言っていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/38
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039・愛知揆一
○愛知国務大臣 裁判官の決議書について、これは先ほど申しましたように、私の現在の立場においてはコメントすべきではないと思います。と思いますが、ただいまの御質問でございましたからしいて申し上げますが、今お読み上げになりました点は、率直に申し上げますと、私の考え方と正反対なんです。私は、司法権の独立ということを第一義として考え、この前から言っているように、むしろ裁判官の待遇を、失地を回復してあげたいという存念から出ているのでありまして、それは御批評によってはあるいは不十分であるかもしれませんけれども、それなら裁判官諸公はなぜ昭和二十六年のときに大いに反対をされなかったかと私は言いたいくらいなんでありますが、おそらくそのときはいろいろの事情があったのでありましょう。そのときには、まああれでやむを得ないということになったのでありましょうが、私から言わせれば、むしろあれが非常に悪かったのではないかと思います。ですから、これを引き上げて、裁判官のためにとにかく特号俸一級高いものをつけるということについては、私も、微力ではございますが、ずいぶんがんばったのです。この法律案というものは、一度や二度の閣議の問題ではなかったのです。最高裁判所の方にも十分御連絡をし、それから私どもも、その当時——何も自分がこんな努力をしているなどということは言うべきものではございませんけれども、今のようにそう言われれば私も言わざるを得ないのですが、これだけの努力をして、しかもこうやってまとめ上げたものについて非常な憤激をされ、法務省不信任のようなことを言われることは、私として非常に残念でございまして、そういう私の非常にいやな体験から申しましても、司法権の独立、裁判所の独立ということをよりよくいたすために、それに職を奉じておられる判事さんたちに、私どもの意図がもっとよくわかってもらいたい。今話を聞いてもらいたいと思っても、これはもう独立の機関でありますから、私がお話ししようと言っても断わられればそれきりなんですが、その辺のところでいろいろの問題も合せて、制度はきちっとしておき、それを守るがために、もっと感情を抜きにしてやっていただきたい。私は御承知のように司法に関してはずぶのしろうとなんでありますが、こういう場合には、しろうとの方がかえっていいと私は思うのです。中に入ってよく御説明すれば、必ずわかられたに違いない。この社説の批判もすべきではありませんが、そこは何か私どもの意図や努力が反映していないのではなかろうかと思わざるを得ないことは、私としては非常に残念に思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/39
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040・志賀義雄
○志賀(義)委員 今、最後に私が法務大臣に質問いたしましたことについて、事務総長はどうお考えでしょう私の質問ですから遠慮せずに返事を言って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/40
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041・内藤頼博
○内藤最高裁判所説明員 裁判官のお訴えいたしましたそういう気持を御理解いただくためには、法務省の事務当局でございますが、実はちょっとその経過について折衝したことがございますので、ちょっとそのことを申し上げないと御理解いただけないかと存じます。判事の報酬に特号を設けるというときに、六十三才以上に適用するということを法務省から先ほど御説明いたしましたが、そのときに私どもが法務省の当局から直接聞いたのでは、そうしなければ検事がおさまらないということを申されたのであります。そこで、六十三才以上ということをどうしても法律に規定しなければという法務省の御主張であったのでありますが、先ほど申し上げましたように、いろいろそこは法務大臣が御苦心いただいたかと存じますが、ともかく法律の規定から落すということになり、そうして協定になったのであります。どうしてもやはり協定でも六十三才以上ということをはっきりしなければならないということになったわけでございます。そこで、六十三才以上ということになりますと、やはり判事の優位ということがぼやけてしまいますので、その点については、私どももいろいろ苦慮いたしたわけでございますが、結局そういう協定になりました。これについては大蔵当局の方の御意向もあったかと存じますが、私ども先ほど申し上げましたように、六十三才以上というのは、私どもが聞きましたのは法務省当局であり、また六十三才以上というようなしぼり方をしておるのは、どうもやはり従来の給与の定め方としてないことなんで、私どもとしてやはり法務省当局のそういったものの考え方に対する反発、それが今度の裁判官の意見になって出ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/41
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042・志賀義雄
○志賀(義)委員 どうも伺ってみても、何だかまだ裁判官の方の納得も十分いかないと思いますが、今おっしゃったことを見ても、やはりあなたは六十三才以上の規定ということになると、非常に不満を持っておられるということがわれわれには感じられるのです。
また法務大臣、もう一度伺いますけれども、この前の改正案がこちらに参りまして、それを国会で決定したときに、そのときにこそ問題にすべきであった、こういうふうに言われました。そうすると、あれはあなたの推定では、あれもよくなかったのだ、むしろあれが悪かったのだ、それを自分が多少とも改善の努力をしたのだ、こういうお考えでございましょう。しかし、そうなりますと、若干そこで俸給の量を上げてみたところで、財政インフレーションの時代ですから、これは若干の量の問題でありまして、事柄の根本、質に関する問題については相も変らぬということになって、結局あなた自身が批判されるようなこの前の案、それと同じことになるんじゃありませんか。根本の原則は、先ほど私がちょっと読みましたように、裁判官の待遇も検察官の待遇と同等でよいという考えがひそんでいる。私が申し上げますのは、なぜ裁判官の場合にだけ相当額の報酬ということを明記してあるか、この点についてはあなたは避けてお答えにならないのです。なぜこれだけを明記したかということを法務大臣として御答弁願いたいです。そうでないと、どうも話が肝心のところではっきりしないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/42
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043・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは先ほどお答えしたつもりなんでありまして、はっきりおわかりいただけると思いますので、この点はさらに申し上げることを省略させていただきたいと思います。
それから、前の方のお尋ねなんですが、何べんも言うようですが、二十六年以来のあれでやりますと、裁判官は六十三才以上になろうが何しようが、一般国家公務員と天井が同じなんです。ですから、そのことは一挙に、それこそだれもが満足するようなことにはならぬかと思いますが、その一挙にとはならなかったけれども、二十六年当時のあれから見れば、むしろ憲法の精神に一歩あるいは二歩前進したと思います。しかし、私は先ほどぐちをこぼしたようになりましたけれども、別にぐちを申し上げるようなことはありません。批判は幾らされてもかまいませんが、ただ私の気持がどうしてわかって下さらないのだろうか。それには話し合いの場も何もなかったのです。また今後も今のままなら何もない。そうすると、将来もこういうことで判事と検事の感情的な争いというものが行われることは、私は醜態だと思います。私のようなしろうと大臣が、その間に調整をするのが私の役割ではなかろうか。この点については、今後大いに画期的な努力をしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/43
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044・志賀義雄
○志賀(義)委員 この問題について、ずいぶん長くかかっているのです。公報にはいつも法務行政のことは書いてあるのですが、委員長は、法務省から出されたような案ばかり協力されずに、法務委員会として少し独立の権限を発揮するように、一週のうちに何曜日には法務行政をやるとか、今までの慣行に従ってやって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/44
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045・小島徹三
○小島委員長 法務行政を議題といたしましたときには、必ず早朝より御出席のほどをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/45
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046・坂本泰良
○坂本委員 一点だけ法務大臣に関連してお聞きしたいのですが、先ほど来のお話のように、特号俸を認められた点、裁判官の憲法上保障された点についてはわかりますが、それを六十三才以上にする、いわゆる三者協定がそこへできた。それがどういうふうないきさつでできて、どうして六十三才以上にしなければならなかったか、その点がわかりませんから、その解明を一つお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/46
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047・愛知揆一
○愛知国務大臣 この点は、その成案に至ります経過でございまして、先ほど裁判所側から御説明がありましたが、これは法務省が窓口であったためにそういう話も出たかとは思いますけれども、沿革はこういうことだったのであります。率直に申しまして、昭和二十六年当時のあのままの形で、一般国家公務員の最高給、すなわち七万八千円と同じでいいじゃないかというのが——これは法務省は同意しなかった案でありますけれども、最初これを報酬並びに給与に関するものであるというので、大蔵省の主計局の給与課というのが相当発言権があったわけでございまして、そこを中心として一応試案的に出ましたものが七万八千円頭打ちの案であったわけであります。そして、そのときに最高裁判所側の御意向としては、私の理解では、最初どうも従来の慣行がこう来ているものですからやむを得ない、そこで七万八千円に対する呼び名を変えてくれ、つまり検事についてはこれを特号にし、そして呼び名を一号ずつ検事の方を下にしてくれ、こういうふうにあっせんしてくれという御要請がございました。ところが、そうなりますと、非常に私は困ったんでありますが、一般国家公務員よりも検察官の方が逆に下に下ってしまうのです。ですから、判事さんの優位ということを保つがために、検察官である限り、今度は一般公務員よりも下目になるということは、これはやはり全体の司法権のためにゆゆしき問題であると考えたわけであります。そこで私としては、実は与党にもいろいろあっせんをお願いいたしましたが、一番本元は、何といっても財政当局でございますから、大蔵大臣に閣議の席あるいは個別的にも何回か折衝いたしました。そのときに、最後的に大蔵大臣から私に内示をしてきましたのは、それは非常にお困りであろう、よく事情がわかったから、八万円というものを予想していなかったんだけれども、特にこれを設けることを承諾する、しかしながら、先ほどもるる申し上げましたように、裁判所の場合においても、この給与については、財政当局として、どういう上げ方をするか、これについては予算の問題もあるものであるから、たまたま判事の停年が六十五であるということに着目をして、六十三才以上ということを法文に出してもらいたい、これを条件にして法務省の顔を立ててあげたい、こういう話がございました。しかしこれは法律上そういうことになることは、私も実はいかがかと思いましたものでありますから、それには再考を求めると同時に、これは与党でも非常に御協力を願いまして、法文には他にもそういう例がないから六十三ということは省く、しかし、せめて当局同士で昇給をする場合の実際のやり方についての運営基準を話し合いできめてもらいたい、こういうことになって、覚書ということになり、六十三才ということになったわけでございます。さような経過でございまして、検事がおさまらぬという話が先ほどございましたが、その点はむしろ六十三ということもそうでございましょうが、そのときだれがどういうことを言ったかはわかりませんが、一般国家公務員よりも検事が下目になるというようなことではこれは私法務大臣としても非常に重大なことでございますので、むしろ裁判所は初めあきらめておられたらしいのですが、八万円に判事を上げるということに私としては全力を上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/47
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048・坂本泰良
○坂本委員 大体わかりましたが、検察官が一般公務員より下になってはいかぬという点はそれはわかります。ただ、裁判官が憲法上保障されて、身分、地位に考慮なくやはり厳正公平な立場をもって裁判をやる。そうする上においては、憲法にも特に相当額の報酬を受けて、それを下げてはいけないとある、やはりこの保障がないと——あるいは裁判官は国家権利の圧力にも反抗して、そして人民のための裁判をしなければならぬから、その保障があって初めて司法権の独立ということもそこにあると思います。そこで、今承わりますと、六十三才以上は財政当局その他で現在ではそれはそういう覚書でやむを得ないけれども、やはり将来はこういうのは撤回して、そうして財政上許すように要望して、裁判官の地位はここに特号も認めて、そして確保しておいて初めてこの人民のための裁判ができると思いますから、そういうふうにわれわれは了解すれば大体いいじゃないかと思いますが、その点は変りはないかどうか、もう一度大臣の御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/48
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049・愛知揆一
○愛知国務大臣 まことにごもっともでございまして、その点は原則的に私も全く同意見でございます。それからなお、これは御質問以外になりますが、御承知のように、実は特別職の方の給与の改訂問題も近い将来にぜひ私は取り上げなければならぬと思っておりますが、御案内のように、現行法では、幸いと申しますか、最高裁判所長官あるいは最高裁判事それから高等裁判所長官と検事長というのには適当な格差がついておるわけでございますが、これらの点については、ほかの方がどんどん上って参りまして下から突き上げられる関係になりますが、これは適当な格差を置いたままで両方を上げるように、この次の機会にはぜひ御審議をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/49
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050・小島徹三
○小島委員長 他に御質疑はございませんか。——御質疑がなければ、両案に対する御質疑はこれをもって終了することにいたして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/50
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051・小島徹三
○小島委員長 御異議なしと認め、さように決します。
本案についての討論採決は次会にいたします。—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/51
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052・小島徹三
○小島委員長 次に、法務行政に関する件につき調査を進めます。
質疑の通告がありますから、順次これを許します。
大貫大八君。
〔委員長退席、村瀬委員長代理着
席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/52
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053・大貫大八
○大貫委員 まず第一に御質問いたしたいことは、大阪府平野警察署における警察署のスパイ工作事件についてお尋ねをいたしたいのでございます。平野警察署の辻井という警部補が、昨年忘年会において紛失したという作業報告書ほか数点のこの平野警察署の警備関係書類が、どういう手づるかしれませんが、共産党の大阪府会議員の三谷秀治という人によって公表されました。この平野警察署のスパイ工作ということが確実に出まして、実は私もこの件について先日大阪に調査に行って参ったのでございます。この明らかになりました警備関係書類から見ますると、まことに内容は戦慄すべきものがあるのでございます。昔の特高以上の活動を警察がやっておるということが明らかになっております。しかも視察の対象になっておりまするのが、労働組合においては、全逓、教組、全電通、国鉄、平野金属、浪速鉄鋼、というような非常に広い範囲に労働組合に対する視察を行なっておった、政党に関しては社会党、共産党に対して視察を行なっておった、なおその他の団体につきまして、日中友好協会、原水協、平和を守る会、学生自治会、こういうふうに非常な広範な範囲にわたりまして、昔の特高以上の活動をいたしておることがこの記録上明白になっておるのでありますが、これらの書類から類推いたしますと、これは単に一大阪府の平野警察署だけの問題ではないようであります。このような調査が全国的に行われておるとみなければならぬのでありますが、まず警察庁の方から、このような大がかりな特高活動をやっておるのかどうか、その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/53
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054・江口俊男
○江口政府委員 お答えいたします。大阪府の平野警察署の警備係の警察官が書類を紛失いたしましたことから発しまして、いろいろ世間に問題を投げかけておるということについては、まことに遺憾と考えておりますが、ただいま御指摘のような、昔の特高以上の活動を現在全国的にやっておるかという御質問に対しましては、昔の特高がどの程度のことをやっておったかということにつきましては、私、残念ながら経験もなければ、またどれくらいの力があったかということも存じませんけれども、現在やっておりまする事柄は、今おっしゃったような、団体名を、おあげになりました団体そのものにつきまして、それがどういうふうであるというようなことを常時知っておく必要はございませんので、そのことにつきましては、ただいまのようなお考えと違うのでありまするけれども、その中におきまする共産党活動の実態という事柄につきましては、その党の性格上、どういうふうに動いておるか、その影響をどういうふうに受けておるかというような事柄については、われわれできる限り、自分たち自身の手で知りますることが第一義でございまするが、その及ばないところにつきましては、協力を得る方々のお力によって、ある程度のこと知りたいと努めておることは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/54
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055・大貫大八
○大貫委員 ただいまの御答弁だと、共産党活動について知っておく必要がある、こういうお答えでありまするけれども、そういたしますと、一体現行法上、どのような法令の根拠でさようなことが行われるのか、それを伺いたいのであります。というのは、私は警察というのは、これはもう申すまでもなく、統治権に基いて人民に対して命令を下したり、あるいは必要があれば実力を行使するというような、権力を行使することを本体とするのが、これは申すまでもなく警察の作用だと思う。ですから、そういう権力を行使するというのは、最小限度にとどめなくちゃならぬことはもう当然なことで、従いまして、現行の警察法にも、厳にそのことを戒めているはずなんです。少くとも日本国憲法の保障する個人の権利、自由、こういうものの干渉にわたることや、そういう権限を乱用するようなことがあってはならぬというようなこと、これは警察法二条に厳に戒めております。従って、昔のような警察国家であれば、これは法令なんかなくとも、権力に基いてどんどんやるということもあったでしょうけれども、少くとも民主国家の建前においては、共産党であろうが何であろうが、少くとも共産党が合法政党として存在する限りにおいては、法令に基かずしてやたらに調査をしたりなんかすることは、憲法の建前からも、これは許されないはずなんです。どういう法令の根拠に基いてさようなことをなさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/55
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056・江口俊男
○江口政府委員 ただいまお述べになりました事柄につきまして、前段につきましては、私どももその通りに考えておるわけでございます。ただ、どうしてそういう活動をするかというお尋ねに対しましては、警察法の第二条の任務——御承知のように、警察は、二条におきまして、犯罪の予防、鎮圧及び捜査ということをやりますと同時に、その他公共の安全と秩序を維持しなければならぬ、こういう責務があるわけでございます。しかしながら、その責務があるからと申しまして、その責務を遂行するために、どんなことでもやっていいということにはならぬことは仰せの通りでございまして、私たちといたしましては、憲法の定めておりまする基本的人権はもとよりでありまするが、その他諸般の法令がございますが、それに抵触しない限りの手段をもって、そういう公共安全と秩序を維持するという目的の遂行をはかるというきわめてむずかしいことでありまするけれども、そのかね合いのところは、どうしてもやっていかねばならぬという考え方に立っておるわけでございます。それを遂行する場合に、憲法の条項なりあるいは各種法令の定めておる条項に触れてはいかぬということは言うまでもありませんけれども、触れないからといってまた必要以上のことをやるというようなことももちろん許されないことで、その中のかね合いということについて御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/56
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057・大貫大八
○大貫委員 そうすると、警察当局としては、警察法第二条に基いて、たとえば共産党活動に対する視察として、このようなことをやっておるのだと、こうおっしゃるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/57
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058・江口俊男
○江口政府委員 その通りでございまするが、あるいは私の説明が不足であって、重ねてお問いがあったと……。(「警察法第二条第二項を読み上げなさい」と呼ぶ者あり)読み上げます。(「これはみな持っているからいいでしょう」と呼ぶ者あり)よろしゅうございますか。そういう目的というものがあるということはお認めになると思いますので、それではそれをいかにして遂行するかという問題になるわけであります。そして、何でもかんでもやっていい、目的さえよければそれでいいというものじゃないということも、われわれは十分認めておるわけでございまするから最後的にはやはり積極的に、いろんな法令に触れないという手段、それからもう一つは、その目的に比例した手段ですね。目的がそうであるからどんな程度にもそういう調査をやるということではなしに、やはり最小限度必要だと思われる限度においてやっていく、こういうことになるわけでございます。もっとわかりよく申しますれば、党そのものが現実にどういうふうなことをやっておられるかという事柄が、将来どういうことをやられるかという事柄の前に、昨年あたりはいろいろな、警職法の反対の運動にいたしましても、勤評阻止の行動にしましても、やはり私たちがこういうふうにして知り得た範囲内におきましては、相当やはり中に突っ込んできておられるわけであります。東京におきましてはいざ知らず、各地方におきましては、相当やはりイニシアチブをとる、あるいはその行動の中心になって、何月何日に何人動員してどういう行動をとる、ジグザグ行進をやるというような事柄につきましては相当な関係があるのであります。そういう事柄については、私たちはやはりあらかじめ知っておかねばならぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/58
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059・大貫大八
○大貫委員 どうも今の御答弁ではちょっとわからないのです。私は根本的に法律論からまず申し上げてみたいのであります。第一に、その警察法の第二条によれば、申すまでもなく、これは犯罪の予防と公安の維持ということになると思うのです。そこで、たとえば共産党がもし暴力革命を行うのだ、こういう方針でも打ち出したならば、これは現行法からいってどうか知りませんけれども、少くとも共産党は、これは合法政党で犯罪を行う団体ではございませんことは申すまでもない。そういたしますと、犯罪の予防という面から、共産党の活動を視察するということは、どう考えても、これは現行の法令の建前上から私は許されないことだと思う。その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/59
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060・江口俊男
○江口政府委員 その大前提でございまするが、共産党が犯罪を行う団体でない、合法政党であるということは申すまでもなくおっしゃる通りでございまして、われわれも認めるわけでございますけれども、共産党そのものの本貫につきましては、私たちはいずれの日か暴力革命をやるということを企図している団体だ、こういうふうに考えておりまするし、さらに現実の問題として、先ほど申し上げた通り、革命ということに至らぬでも、いろいろなデモなり何なりによって相当急進的な動きをしているという事実は各地にあるわけでございますから、その現実面におきましてもやはり具体的なことを最小限度には知っておらなければならぬ、こういうふうに私たちは考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/60
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061・大貫大八
○大貫委員 共産党自体が将来どうのこうのというのではなくて、現実の共産党のあり方というものは、綱領から見ても、政策から見ても、暴力革命を企図しているということは一言半句もうたってない。(「予防のためだ」と呼ぶ者あり)君は法律を知らぬからそういうことを言う。少くとも法律というのは厳正に運用しなくてはいけない。従って現実の共産党に対しての考え方として、警察法二条でもって犯罪の予防のために視察をするというのは、大へん行き過ぎじゃないかと思いますが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/61
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062・江口俊男
○江口政府委員 ただいまの御質問に対するお答えは、先ほど申し上げたことを繰り返す以外にはないと思いますが、大貫先生のおっしゃる現実の犯罪ということに限ってみましても、あるいは犯罪とまではいかなくても、あしたは警備しなければならぬというような警備事案と申しますか、そういうものに限って考えてみましても、今までの数個の事例の中に、共産党の地方の組織なりあるいは党員なりというものが重要な役割をしているという事実は各所にあるわけでございまして、そのことはやはり知っておかなければならぬ。知ったからそれをどうこうするということは、いかに警察が権力的な手続というものに立っている役所ではございましても、それはもちろんやれませんけれども、どういうことをもくろんでいる、どういう計画があるということは、最小限度のこととして知らなければ、それに対する対策が立たぬわけであります。そういうふうに御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/62
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063・大貫大八
○大貫委員 共産党に関して知っておかなければならぬというお答えなんですが、それだとすると、健全な労働組合、あるいはその他の、たとえば原水協であるとか、日中友好協会であるとか、こういうところまで手を伸ばすのはどうなんでしょうか。いわんや社会党に対してまでも視察をいたしております。これによりますと、たとえば社会党の亀田参議院議員がどこの会合に出たということまでちゃんと記録されておる。そんな必要がどこにあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/63
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064・江口俊男
○江口政府委員 あれは私も読んでみましたが、亀田議員がどうこうされたということを書いたところがございます。しかしそれは亀田議員のみならず、小畑忠良氏その他が列席された全逓の何かの会合だったと思いますが、それは亀田議員そのものの行動を視察したということじゃないのであります。あれは、お読みになればわかりまする通り、そういう会合があって、そこにはこうした方が出ておられたということを書いたところが一カ所あるようでございますが、どうしてそういう共産党自体じゃないものについて調べるのかという事柄につきましては、再再申しますように、ただいまあげられたような団体の中には、共産党が強く働きかけておると申しますか、その影響が相当あるというふうに私たちは見ておるのでありまして、そういう観点からその中身を見ようというので、外がぼやけてその書類にはついているというような問題もございましょうけれども、意図するところは、その団体そのものを見ているわけじゃないということは、先ほど来申し上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/64
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065・大貫大八
○大貫委員 あなたはそう答弁されますが、実際の動きは、共産党に名をかりて、健全な労働組合に対する視察をやっておるのです。そういうことが各所において行われておるのです。そういう点についてあなた方はどう考えるのですか。そういうふうに指導しているのじゃないでしょうか。つまり、共産党に名をかりて、健全な労働組合の動きでも、あるいは社会党の動きでも、何でもかんでも情報をとろうという昔の特高精神に基く特高活動が行われているんじゃないでしょうか。そういうことをあなた方が指導しているんじゃないでしょうか、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/65
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066・江口俊男
○江口政府委員 共産党活動の視察に名をかりてあらゆる団体のことを調べろというような指導はいたしておりません。それは一切いたしておりませんけれども、そういう団体とか組合の名前が出てくるということは、おそらくその時期々々におきまして、たとえば昨年だけの例をとってみましても、九月十五日にはどういうところからどれだけの人間が集まって、どこそこを通ってどういうデモをやる、その間には警察官の警備がこれくらい要するというような現実の面から、どの組合から何日の大会には何名くらい出るのであろうとか、これは公安条例に定められた条件を守ってデモをやってくれるであろうかどうかというようなことの判断は、そのつどやるわけでございますから、そういう場合にはおのずから名前が出てくることもあろうかと思いますけれども、そうじゃなしに、その組合自体がどういう活動をするかということを常時見ている事実はないと私は見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/66
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067・大貫大八
○大貫委員 あなたの先ほどからの答弁によりますと、共産党活動というものの、情報を、最小限度の必要からとっておる、こういうのですが、そうしますと、特に平野警察署におきましては、全逓の東住吉支部の上田利男という執行委員に対して、長い間小づかいをくれて、初めは組合の情報だけをとった。しまいには共産党に入党を執拗に勧めておるのです。この書類を見ますと、はっきりそれが出て参ります。毎度々々まだ入党の決意はできないかといって、執拗に共産党に入党を勧めておる。一体共産党の内容を知るにしても、国家公務員に対して、共産党入党をこのようにしつこく勧めるということは、行き過ぎじゃないでしょうか。これでいいと思うのでしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/67
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068・江口俊男
○江口政府委員 国家公務員であろうとなかろうと、また相手が、中に入れというのが共産党であろうと社会党であろうと自民党であろうと、これは個人の自由に属することであって、これを強制することは、私はいかなる場合においても行き過ぎである、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/68
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069・大貫大八
○大貫委員 そうしますと、上田利男という男に対して平野警察署が共産党入党を執拗に勧めておるというこの事実は、あなたとしてもお認めになりますね。少くとも行き過ぎであるということ、あなたが考える共産党の活動を視察するという、その行き方からいうても行き過ぎであるということは、お認めになるでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/69
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070・江口俊男
○江口政府委員 上田氏に対して係の警察官が強制をしたということであるならば、これは行き過ぎであると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/70
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071・大貫大八
○大貫委員 そこで、今度は法務大臣の方にお尋ねいたします。
この平野警察署の職員が、上田という全逓の執行委員に対して共産党に入党を勧めて、しかもこの上田君には結婚問題が起ってきた。ところが結婚をすると闘志が鈍るからというて、結婚を妨害している事実がこの書面で明らかになっておるのです。こういう点に対して、これが一体人権侵害になるかならぬか、その点についての見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/71
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072・愛知揆一
○愛知国務大臣 ただいまおあげになりましたようなことは、実は私も一月三十一日であったかと思いますが、これは率直に申し上げますが、新聞を見ましてその事態を知ったわけでございます。さっそく人権擁護局を通じまして大阪法務局にも調査を命じております。それから大阪の法務局からもその調査をやる方法等について指示を求めて参りまして、今月早々から具体的な調査をいたしておるのでありますが、その詳細につきましては、人権擁護局長から御説明申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/72
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073・鈴木才藏
○鈴木(才)政府委員 今お尋ねの点でございますが、上田という方に対しまして平野警察署の職員が共産党に対する入党を強要した、それからまたそれに関連いたしまして、上田氏の結婚妨害をしたのではないか、こういう二点の問題につきまして、人権侵害があるのではないかという疑いを持ちまして、大阪法務局におきましては、その強要の程度あるいは現実に結婚を妨害したかどうかの点につきまして極力調査をいたしました。昨日の報告によりますと、大体一応調査を終了したというのであります。ただ、その調査の結果、どういう事実関係を認定したかにつきましてはまだ報告が参っておりませんので、二、三日のうちにはその報告書も着くと思います。その報告書を検討いたしまして、また御返答いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/73
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074・大貫大八
○大貫委員 それでは、その人権擁護の点については報告を待ってからあらためて質問をいたすことにいたしますが、この際、私は断わっておきますけれども、少くともこういうスパイ活動というのは重大な憲法違反である。これは警察庁の方でも十二分に戒心をしていただきたいのだけれども、少くとも憲法十九条の思想、良心の自由に対する違反にもなるし、二十一条の集会、結社、表現の自由に対する問題にもなるし、あるいは二十七条、二十八条の勤労者の権利、勤労者の団結権に対する制限にもなるし、あるいは二十三条の学問の自由、この点にも違反するというようなことになると思うのです。これは、調査の結果については慎重に御考慮願いたいと思うのです。
そこで、警察庁の方にもう一つお尋ねしますが、上田君に対して報酬として毎月千円ないし二千円、それから片方においては結婚を妨害しておきながら、結婚のお祝いだと称して五千円の金を贈っておる。これは上田君自身の口からも聞きましたし、五千円についてはこの書類にもさようになっております。こういう報酬というのはどういう予算からどのようにしてだれが一体支払うのですか。この経過を御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/74
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075・江口俊男
○江口政府委員 ただいまのお話の前提として、入党を強制したあるいは結婚を妨害したということをおっしゃっておられますが、そのことにつきましては、事実の調査ということを先ほどから御要求になっておるようでありますから、そのことを前提として私はお答えするのじゃない。事実としてはっきりしたかどうかということは留保いたしまして、金をどうしてやるかという事柄についてだけお答えいたします。これは警察庁の予算の中に捜査費というものがありまして、それはもちろん警備だけじゃございません。暴力団等の刑事犯あるいは売春等の保安、その他国費で出す警察の捜査費全部を含んでおりますが、その中の一部に、民間協力費というものが内部的な内訳として私たちの予算としてございます。それを各府県に実情に応じて配るわけでありますが、その先は府県本部から各署に、署におきましては署長の責任においてこれを支出いたしますが、その金の性質上、普通、物をどこそこで何円で買った、その領収書はこれになっておるという意味合いのものがとれない性格のものもございますので、この点はただ渡したということの自分だけの書類じゃなしに、それを監督するものが確かにあれにこれを渡したのだということを証明するような形で経理をしておる、こういうふうに私は存じておるのであります。
それから上田氏に対して月々千円なり二千円なり渡しておったということは、これは事実でありますが、これは月々のサラリーというような形でもちろん渡しておるものじゃなしに、これは民間協力費という意味で、実際はそういう情報の収集に要った費用あるいは交通費あるいは日当というような面を考慮しまして、実額の弁償という気持でやっておるわけであります。ただ五千円を結婚のお祝いに差し上げたというのは、やはり実際上毎月これこれ上田氏がわれわれに協力したために要っているというものを、そのまま少しも損をさせないように出しておるというふうには思えないので、何かの場合には、やはりかねがねの実費を固めたような意味合いにおいて、その際は五千円を渡したもの、こういうふうに私は了解しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/75
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076・大貫大八
○大貫委員 五千円というのは、明らかに結婚のお祝いと書いてあるのです。それから実額の弁償といっても、たとえばこの上田君の場合、別に電車賃とかそういうものではどうも実額に合わない。向うの指定されたところで月に二回ないし三回会っておる。しかもそれは電車賃を使ったところで、一回や二回たまたま平野警察署の巡査と会ってみたところで、そんなに千円や二千円も金がかかるものじゃない。実額の弁償ということにしては変だと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/76
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077・江口俊男
○江口政府委員 ただいま申し上げたように、実額というのは何も自分のポケットから何十円、何百円出したという実額ではなしに、これは何も証人に喚問した場合の費用なんかと比べて言うわけじゃありませんけれども、役所で大体これだけのひまを使ってこれだけの距離を来てもらえば、これくらいに相当するという意味の実額でございますから、現実にその日その日何円何十銭使ったからそれを弁償する、こういう意味じゃございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/77
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078・大貫大八
○大貫委員 それにも問題があるけれども、それはいいでしょう。いいというか、これ以上質問しないが、もう一つ、これは北村という刑事と会うたびに飲んでいる。飲んでおるというのは、北村刑事が金を出して上田君をごちそうしておる。初めは相当なごちそうをしたらしい。それがだんだん減ってきて、最後には喫茶店でコーヒーとお菓子をごちそうになる程度だった、こう上田君は言っております。いずれにしろ、二年間にわたって、月に三度ないし四度、少いときで二度、このくらい会見をし、そのたびにおでん屋なり小料理店で酒などをごちそうしておるのですが、そういう金は一体どこから出るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/78
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079・江口俊男
○江口政府委員 それは先ほど申し上げました捜査費というものの中から出ます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/79
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080・大貫大八
○大貫委員 国民の血税をそのようなところに使われるということは、これも国民が聞いたらびっくりすると思うのです。そこで上田君はこう言うております。だんだんしまいには共産党に入れということを言われて、おそろしくなった。そこで北村という巡査は、もしこのことが表面にばれて、そうして首になるようなことがあったならば、警察は一生君の生活を保証する、こういうことを何回か確約している。あなたの方にいわせれば協力者ですが、まあスパイですね。このスパイに対して、もしばれたような場合には、警察が一生めんどうを見るような、そんな予算が一体あるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/80
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081・江口俊男
○江口政府委員 先ほどの質問に関連しますが、捜査費でコーヒーを飲む、なにするというのは、捜査と無関係であれば、そういうものを捜査費から出すというのはおかしい話でありますが、これは刑事事件の捜査にしましても、何の事件の捜査にしましても、聞き込みとかなんとかでそういうことをやることは常識であります。黙って町の中を歩いておる人に、これはどうですかということを聞くばかりじゃないということは御了承願えると思いますが、今の一生保証する、こう言うたということでありますが、そういう費用があるかというお尋ねに対しましては、これはございません。しかしながら、おそらく就職の世話とか、その他、とにかく一生懸命になって、見捨てはしない、俗な言葉でいえばそういう意味のことを言ったんじゃなかろうかと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/81
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082・大貫大八
○大貫委員 もう一つ許しがたいことは、この上田君に対してこう言うております。たまたま全逓の東住吉支部には第二組合の動きが出てきておる。ところがそれに対して北村巡査は、上田君に対して、第二組合なんかに入っちゃいかぬぞ、少くとも君は、第一組合におって、しかも会議においては最も過激な言動をしろ、こういうことを言うておるのです。過激な言動をするということは、この資料にもちょっと一カ所載っておるところがございますが、これは上田君に言わせると、会合に出たらばなるべく激しいことを言え、そうして信用を得ろ、こういうような指導をされておったと言いますが、あなたのおっしゃるように、共産党というものの活動について十分注意をしなければならねという、まさにそれはあなたの言葉を借りて言うならば、犯罪の扇動のようなことにもなると私は思う。春秋の筆法をもってすればそうなります。そういうことは一体いいのですか。過激な言動をしろ、そうして共産党の信用を得るようにしろというような、こんな協力を求める仕方が一体ありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/82
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083・江口俊男
○江口政府委員 あの文書自体、全体を通じて自分たちがあとで検討会をやったとか、あるいは自分はこの際こう言うたということを書いてあることで、それをわれわれの方の監察官のところで、現実にそう言ったのか、そうしたのかということを大阪府警で調べた結果によりますと、相当誇張された分もございまするから、書いてある通りであったかどうかということは私ちょっと即断できないのですが、今の話は確かに書いてございます。これは釈明を聞いてみますと、やはり自分の目標とするといいますか、より確実な情報をとりたいという人に、接近する一つの手段として、そういうことを巡査と協力者との間で話をしたことがあるのでございまして、これが組合の介入をするというような意図がなかったことは言うまでもございませんけれども、しかしながら、間接的にでも、ただいまおっしゃったような事柄によって、介入というような結果が出るというようなやり方については、やはりわれわれとしても反省しなければならぬ点であろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/83
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084・田中幾三郎
○田中(幾)委員 関連して。——先ほどからの御答弁を伺っておりますると、警察法の第二条による警察権の発動だ、こうおっしゃっておられる。第一に、この警察権の発動は、具体的な事件が起ったときに捜査する、それから起ろうとするときに予防するということですが、この警察官の権利といいますか任務といいますか、これはおそらく限界があろうと思います。このスパイ事件は和歌山でも起った。前に私も調査に参りました。そのときに、公安調査庁の次長にお伺いしたところが、これは破防法の規定によって公安調査官がやっておるのだ。それならば、この破防法の調査の対象となる破壊活動をする団体は何かということを私が伺ったら、これは社会党や労働組合は入ってないということをはっきり言った。ところが今の大貫君の資料によりますと、これは社会党もその他の労働組合も日中友好協会というようなものも対象になっておる。こういう破壊活動の対象にならないものを、公安調査庁の調査官なら別問題ですけれども、刑事や警部がそれをやっていいのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/84
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085・江口俊男
○江口政府委員 破壊活動防止法の容疑でやりまする際はもちろんのことでございますけれども、その以外のことで調査をしていいかどうかという御質問については、先ほども大貫先生から御質問がありましたときにお答えしましたように、その組合とか社会党とかいうそのものを調査することはわれわれはやらない。しかし、その中で、ただいまおっしゃったような分子がどういうふうに活動しておるかというようなことは常時見ておる。それから各団体そのものの行動を見たかのごとく思われるのは、やはり何かすぐ前に迫った、何月何日の行事にはこういう動員が行われ、どういう行動がとられるかというような事柄については、何もその団体の性格いかんというようなことじゃなしに、われわれも普通の実質的な警察の準備の必要上、やはりそういう項目については、法に触れない事実上の活動によってこれを知るということについては、何もけしからぬことはない、こういうことでやっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/85
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086・田中幾三郎
○田中(幾)委員 私の伺いたいのは、個々の具体的な破壊活動なり、あるいは団体行動なりないときに、この個人について尾行したり、調査するということは、これは調査すべきことは何もないのですから、その人の思想調査というようなことが対象になっておるのじゃないですか。事件もないのに、具体的な事件も起ろうというような危惧もないのに、ほんとうに遠い将来のことを、もしくは人の思想を調査するというようなことは、この警察法の二条の規定によってやるというならば、私は非常に不思議だと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/86
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087・江口俊男
○江口政府委員 ただいまのお話は、遠い将来は関係があるかもしらぬけれども、現実において何も関係ないのに人の思想を調べるとか、あるいはその人を尾行するというようなお話でございまするが、そういうことはいたしていない、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/87
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088・村瀬宣親
○村瀬委員長代理 志賀義雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/88
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089・志賀義雄
○志賀(義)委員 きょうは警察庁長官が来られませんが、この問題は重要なので、責任ある警察庁長官から伺います。と申しますのは、江口警備局長のお話を聞いても、どうもたよりがなくてしょうがない。第一、警備局長になって初めて出られたときに、岩田宙造という法曹界の大先輩で法務大臣を勤めた人を、どう感違いされたかイワタ・チュウジョウと言われるんですね。山下清流の評価をされるんです。心もとなくてしょうがない。
きょうは予備的に、この次に柏村警察庁長官に伺う順序として、次の点だけを江口警備局長に伺っておきます。確認したいことがあります。この大阪の警察のスパイ活動の文書は、これを警察の当局のものとして確認されますかどうか、その点まず伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/89
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090・江口俊男
○江口政府委員 大阪府警察の平野警察署辻井警部補の書類であるということを確認したようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/90
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091・志賀義雄
○志賀(義)委員 そうすると何ですね、大阪府警本部長並びにその代理の方からテレビで全国に放送された、あれは警察の文書でも何でもない、全然事実無根のことでありますと言ったのは、テレビでうそをついたわけですね。その点確認願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/91
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092・江口俊男
○江口政府委員 私はそのテレビを見ておりませんので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/92
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093・志賀義雄
○志賀(義)委員 日本全国は見ているんだよ。あなたが見ないだけだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/93
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094・江口俊男
○江口政府委員 私は見てない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/94
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095・志賀義雄
○志賀(義)委員 そういうことを言ったのは事実なんですよ。あなたがテレビを見たかどうかを聞いているのじゃないんです。テレビにも出て全国民が周知していることだ。全く事実無根のことだ、警察の文書ではありませんと明言しているんですよ。そういうことを言ったのが正しいかどうかということを伺っているのです。あなたにテレビを見たかどうか聞いているのじゃないですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/95
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096・江口俊男
○江口政府委員 私が連絡を受けておりまする限りにおきましては、あの文書が紛失されて、そしてだれかの手から共産党の本部ですかに行って、三谷という府会議員から突きつけられたときに、大阪府警の総務部長が議会に出ておりまして、これはお前のところの書類であるかどうか、こう言われたときに、それはこちらに返してもらって見なければ確認できません、こういうお答えをしたということは聞いておりまするが、その以外に、その以後におきましても、これは絶対警察の書類じゃない、こういうふうに言うたということは私聞いていないので、さように申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/96
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097・志賀義雄
○志賀(義)委員 返してもらうということを言うたからには、自分のものでなければ返してもらうということはないでしょう。それを頭隠してしり隠さずというんですよ。自分のものでないものを返してもらわなければわからないなんて、そんなこと言うものはほかにありませんよ。そんなうそをつくのは警察だけですよ、そうでしょう。
そこで、その中に書いてあることですが、あなたはさっきから文書を読まれた、読まれたというが、あれは警察庁当局の方針かどうか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/97
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098・江口俊男
○江口政府委員 あれはとおっしゃっても、相当大部なものでありますから、方針であるところもあるし、方針でないところもあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/98
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099・志賀義雄
○志賀(義)委員 そうすると、大体の大きいところは方針であるということを認められたのですが、では、あなたはさっきから大貫委員の質問に対して答弁されたところでは、共産党をいろいろ調べる対象にしたと言われる。それはいつからそういう対象にしたのですか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/99
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100・江口俊男
○江口政府委員 いつからやりましたか、私ここではっきり日にちを明言するわけにいきませんけれども、これはかなり以前におきましても、当国会において時の政府委員なり責任者が答えておることだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/100
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101・志賀義雄
○志賀(義)委員 そのときには、共産党だから調べるということはしないということがちゃんと速記録に出ておりますよ、もう少し勉強してこないとだめです。
それで、そういうふうに調査対象にするについては、やはり警察関係の機関でやらなければならない。あるいは政府でやらなければならない。公安委員会でやったのか、政府関係でやったのか、警察首脳会談でやったのか、どこできめたんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/101
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102・江口俊男
○江口政府委員 お尋ねしますが、一番最後のは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/102
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103・志賀義雄
○志賀(義)委員 警察首脳会談みたいなものですな。どこできめたんです、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/103
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104・江口俊男
○江口政府委員 これはこの間も国会公安委員長が参議院の本会議でお答えになっておりますように、警察全体としてそういう立場をとっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/104
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105・志賀義雄
○志賀(義)委員 警察全体といったって、警官全部集めてきめたわけじゃないでしょう。警察の首脳部の人がきめたんです。公安委員会も参加してきめた。あるいは公安委員会がきめたのか。警察全体できめましたなんてそんなこと答弁になりますか。どこできめたかということをはっきり言って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/105
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106・江口俊男
○江口政府委員 そういうことをあらためてきめたかどうかという事柄さえも、先ほどから言っている通り、私は何月何日にそういうことをはっきりきめました、こう言うことができないのと同様に、そういう方針を何月何日にどの会議で打ち立てたということはおそらく言えないと思いまするけれども、ただいまは存じないということが事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/106
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107・志賀義雄
○志賀(義)委員 存じないなら調べていただきたいですがね。ただ何となく警察全体でそういうことをきめた、そんなばかなことがありますか。政府の機関、官庁が行動するには法律に準じてこれはやるべきことであるかどうかをきめてかかるのが当りまえでしょう。それをやらずにただばく然とそういうことをやるというのは、つまりあなた方が法律を無視してやるということになる。あなたは犯罪の予防をするというけれども、現にどうです。骨仕事件の菅生駐在所はだれが爆破しましたか。警察が爆破したということは天下周知の事実でしょう。あなた方それを犯罪の予防どころか、犯罪の予防もしなかった。いや、犯罪をあなた方の手でやったじゃないですか。おまけに戸高公徳という警官を新宿の春風荘に警察の手で隠しておったのでしょう警察大学の桜寮において戸高公徳が米の配給を受げる、そういうことまでさしておったでしょう。こっちは配給所を調べてちゃんと証拠もあげておるのです。犯罪を予防するとか、犯罪を検挙するとか言いながら、警察官のことはやっていないじゃないですか。やっていないどころか、先ほど大貫委員の質問に対して過激の言辞を弄した、これはその個人の意思で警察の方針でないようなことを言われたのですが、警察庁、警視庁、こういうものがぐるになって、犯罪を犯した警官をかくまっておるのじゃありませんか。これについては何か調べられましたか。また、これまで調べたことがありますか、今調べておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/107
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108・江口俊男
○江口政府委員 菅生事件のお話だと思いますが、私あとから今の職に参りまして、そのいきさつ等は書類によって読んでおりますが、ただいま御指摘のように、警察官自身がこれを爆破したというようには考えておりません。ただ、しかしながらお互いに裁判にかかっておることでございまするから、これをここでどう申してもしょうがないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/108
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109・志賀義雄
○志賀(義)委員 そういうふうに警察のことはどう申してもしょうがないで、ほおかぶりしているでしょう。そして共産党を調べる。しかし、二月十七日の参議院においては、岸総理大臣は何と答えておるか。共産党なるがゆえに、当然調べなければならぬというような考え方は、私ども持っておりませんと言っておる。あなた方のすることは総理大臣の方針とも食い違っているでしょう。そこで、きょう、あなたお帰りになったら、警察庁長官に、いつから共産党を調査の対象としているのか、どういう法律に基いてやるのか、そういう点を次会に柏村警察庁長官がはっきりと御答弁願えるようにしてもらいたい。あなたじゃ、もうたよりなくてしょうがない。
それで、竹内刑事局長が来られましたから、この前も伺いましたが、今申した菅生事件の戸高公徳、それから当時の上官である小林末喜その他は、菅生事件の被告人及び弁護人から告発されていますね。それをあなたは、まだ起訴検討中だと言いました。間もなくあれは時効がくる事件です。そうすると、検察庁では、そのうち時効がくるから、それまではあれはほったらかしておいて、時効にしてうやむやにしようという魂胆がおありなんですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/109
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110・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 お答え申し上げます。告発を受けました事件について、時効にかけるというようなことがございますならば、これは検察官の一大失態でございます。さようなことは絶対ありません。先般も御指摘がございましたので、さっそく当方から現地の方へ、国会答弁の必要もあって、至急その調べの状況を知らしてほしいということを申しますと同時に、処理の促進を強く要請してあるわけでございまして、まだ回答を得ておりませんが、そういう事情になっておりますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/110
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111・志賀義雄
○志賀(義)委員 最後に、今あなたの隣におられる江口警備局長は、警察のことについては調べようともしてないのですよ。はなはだ困る。実際この予算のことを聞いてみても、とんでもない。コーヒーを飲むのまで捜査費になっているんですからね。そこで、費用のことですが、これはいずれ次会に伺いますけれども、法務省の予算にしても、昨年度に比べて、公安調査庁は五千万円の増額です。ところがあなたのうしろにおられる人権擁護局の方には、局として全国で五十万円の増額にすぎない。そうすると、人権擁護局と、行き過ぎが問題になっている公安調査庁の費用というものはどれほど違うか。大へんな差があるわけです。だから、もう法務局の大阪の事件の調査にしても、今もって締めくくりができない。旅費もろくにないのだから、動きがとれないのですよ。きょうは人員が何人で、タイピストを除いてどうこうというようなことまでは触れませんけれども、人権擁護局は動けないような予算しかないのですよ。そうして警察予算はふくれる、公安調査庁費はふくれる、こういうことになっているのです。そういうことが、きょうの委員会でも午前中に問題になった裁判官の報酬等に関する問題の改正案で、裁判官一同が非常にこの法律案には不満を持っておりますが、それらのことに関連しては次会に質問いたしましょう。委員長、次にはぜひ警察庁長官を出してこられないと、問題になりません。答弁の能力がないのですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/111
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112・村瀬宣親
○村瀬委員長代理 大貫大八君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/112
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113・大貫大八
○大貫委員 大阪の問題はけっこうです。
登記所の統廃合の問題についてお尋ねいたします。登記所の問題につきましては、すでにこの前の法務委員会においても質問がありまして、当局からそれぞれのお答えがあったのでありますが、まだどうも明らかにされていない点があるようでありますから、お尋ねいたしたいのであります。まず統廃合をする目的というのが、事務の分担の量において非常に全国的にでこぼこがある。それを調整して、地方の非常に閑散な登記所の人員を都会地の非常に事務の輻湊しているところに振り向けるのだというような御説明であったのでありまするけれども、大体その統廃合することによって、地方から何名くらいの人員を一体どこへ振り向けようとするのか、その具体的なことを一つお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/113
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114・池川良正
○池川説明員 前会、大臣から申されましたように、登記所の事務は非常に増加して参っております。その増加の傾向の著しいのは都会地でございまして、ただいまの御質問のように、私どもは都会地の登記所にはどうしても職員も増置しなければならない、こう思っておりまして、本年度予算を要求いたしました登記所増強のための職員は七百八十名でございます。これが実は認めるところにならなかったという関係から、どういたしましても都会地の登記所の現状をこのまま放置しておくわけにいかないというので、再配置計画を実施することにしたのでございます。全体を見渡しまして、事件の閑繁、登記書の数等をにらみ合せまして、私どもといたしましては、現在のワクの中で、この都会地の窮状を救うためには、三百名の配置がえをしなければならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/114
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115・大貫大八
○大貫委員 きょうその資料が配られたのですが、そういう重要な点が一つもないのです。三百名というのも、どこからどこへどういうふうに配置するのか、そういうことを具体的にお尋ねしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/115
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116・池川良正
○池川説明員 この計画を一挙に実施するということは、受け入れ庁の準備の態勢、また職員を減員する庁の執務の切りかえというような問題のみならず、職員個人の住宅の問題等がございますので、三百名という配置がえを私どもはしたい考えでございますが、これは何年かの計画にわたりまして実施しなければ、職員に非常に無理にわたる、かような関係から、昭和三十四年度におきましては百名、減員庁から増員庁に移しまして、そうして事件増の緩和に幾分なりとも資したいというふうに考えております。
その内訳のおもなものを申し上げますと、まだこれはもちろん計画の段階でございますからお含みおき願いたいと思うのでありますが、大きいところを掲げてみますると、東京に三十三名、それから大阪に二十三名、それから横浜に十四名、それから名古屋に八名、それから広島に——広島は大したことございません。福岡に十一名というような、こういう数がその異動の中の主要な増員庁でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/116
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117・大貫大八
○大貫委員 そうすると、東京に初年度の計画として三十三名を増員するということなんですが、その東京法務局、特に東京法務局の登記事務が渋滞をしておるという実情を聞いておりますけれども、東京だけで考えて、今の事務というものが即日さばけるのが理想だと思うのですけれども、そのような状況になるには一体何名くらいの人員を必要とお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/117
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118・池川良正
○池川説明員 これはさっき申しましたように、私どもといたしましては、登記事務につきまして七百八十名の増員というものがあれば、現在の窮状を相当程度緩和できると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/118
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119・大貫大八
○大貫委員 その七百八十名の最初の要求、これに基くと、東京には何名くらいの増員の予定なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/119
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120・池川良正
○池川説明員 東京はその見当で参りますと、大体二百名ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/120
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121・大貫大八
○大貫委員 大体東京の登記事務というのは、聞くところによりますと、申請書を出してから登記が完了するのは、一週間ないし十日かかっておるという実情のように私は聞いておりますけれども、実際そうなんでしょうか。しかも今お考えのように、これだけ増員すればそういうことが解消になるという考え方なんでしょうか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/121
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122・池川良正
○池川説明員 私どもは、登記事務の即日処理ということに極力配意しているのでございますが、残念ながら東京では五日ないし一週間おくれるという例がございます。この七百八十名の増員というものがあれば、現在登記事務の方に追われておりまする庁の登記の状況を緩和することができまして、即日処理の原則を貫くことができるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/122
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123・大貫大八
○大貫委員 ところが七百八十名というものが全く認められずに、従って、彌縫策のようなことで、地方の登記所を廃止したり何かするようなこそくな手段で東京へ吸い上げるというようなことをやっているわけですが、こんなことをしますと、これは東京自体もこれだけ増員して大したことにならない、即日処理なんかとてもまだほど遠いという状況にあり、なお廃止された地方の不便というものは大へんなことになると思うのです。これは前会もこの問題については村瀬委員から詳細な質問もあったようでございますけれども、登記所などというのは、非常に長い歴史的な沿革を持っております。しかも廃止されることによって、地方民に実に大へんな不便を与えるようなことになる個所がうんと出てくると思うのです。ですから、七百八十名増員すればどうやらやっていけるというのに、これも増員せずして、こんな彌縫策をやるということによって、この登記事務というものは、多少とも明るい見通しがつくのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/123
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124・池川良正
○池川説明員 登記所の現状を見てみますと、お説の通り、市町村と非常に密接なつながりがございます。市町村の側からいたしますれば、極力それを存置してもらうという要望、十分私どもわかっておるのでございますが、現在の登記所の大部分は、大正の末期ごろにでき上っておりまして、これが大体千八百あるのでございます。その後交通事情等が非常に便利になりまして、小さい出張所に職員二名とか一名とかいうような数で配置いたしておきますと、市町村の一応表面上の利便はさることながら、登記所の職員なり経費を有効に、効率的に使っていくという面には、大きい隘路があるのでございます。のみならず、登記事務と申しますのは、何分にも国民の重要な不動産に関する権利の保護でございまして、そこに一名なり三名の職員を配置して、それに全責任を負わすということになりますと、最近は登記の内容も非常に複雑になって参っておりまして、やはり衆知を集めてこの仕事を遂行するということが私ども非常に大切なことではないかと思われますのと、もう一つは、御承知のように、交通事情も非常によくなりまして、登記所を二つのものを一つにいたしましても、これを利用せられる方々にはさしたる不便をかけないと思われるところも相当数あるのでありまして、これらを何とか一つにいたしまして、与えられた職責を完全に遂行したい、こういう気持も統廃合の一つの要素になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/124
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125・大貫大八
○大貫委員 今年の予算を見ますと、法務省としては、不動産登記制度の改正に必要な経費として五千三百六十万円を計上いたしておるようですが、これによりますと、いわゆる不動産登記事務の一元化と申しますか、何か土地台帳制度、家屋台帳制度を廃止して、不動産登記一本にするというようなふうに聞いておりますが、そのほんとうのねらいはどこにあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/125
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126・香川保一
○香川説明員 本日民事局長が病気で出られませんので、私がかわってお答えいたします。
登記制度の改正につきましては、いろいろ問題があるわけでございますが、ただいま御指摘になりました改正として考えておりますのは、登記台帳の一元化でございますが、これは、簡単に申しますと、現在登記所が所管しております土地台帳、家屋台帳という登記簿を一本の公簿にいたしまして、登記簿自体で土地建物の現況を明らかにすると同時に、権利関係を明確にいたしたい、かような考えであります。その必要性、理由は、第一には現在の登記制度は、御承知のように、権利関係を明確にするものとして登記簿があるわけでございますが、その権利の客体である土地建物の現況は、登記簿からは必ずしも明確に得られないわけであります。これは所有者の申請を待って初めて登記されることになっておりますので、現実とそごした不動産が登記簿に載っておるというのが大半でございます。この欠陥を補うために、現在の権利関係を別にいたしまして、土地建物の現在の状況を明らかにする土地台帳、家屋台帳があるわけでございますが、この公簿が二つになっておることから、国民に非常な不便をかけておりますと同時に、登記所側の事務量が非常に過重になっておる。詳しく申しますれば、たとえば建物を増築いたしました場合に、所有者はまず増築の台帳申告をしなければならぬ。その申告に基きまして台帳に増築が登録されまして、それから同一内容の登記申請をまたしなければならぬ。この同一内容の登記申請をいたしまして初めて登記簿上増築が明らかにされる、かような仕組みになっておるわけであります。増築の申告について、家屋台帳の申告の手続及び登記の申請、この二つの手続をしなければならぬ。このことは明らかに二重の手数、費用を要することは言うまでもないわけであります。これに対応いたしまして、登記所側といたしましては、台帳申告に基きまして台帳の事務を処理しなければならない。そうしてこれは、具体的に申しますれば、台帳に登録する手続でございますが、それと同じことをまた春記申請に基いて登記簿にその処理をしなければならぬ、これも明らかに登記所側といたしまして二重の手数がかかるわけであります。最近非常に登記事件、台帳事件がふえて参りまして、今問題になりましたような非常な過度の人員不足を来たしておるわけでございますが、増員がなかなか容易にできないということになりますれば、登記所の事務量をできるだけ合理的に軽減いたしまして、人員不足を何らかの形で補っていかなければならない、こういうことになるわけでございます。この一元化を実施いたします理由は、先ほど申しました本来の登記制度のあり方としては、一本の登記簿で土地建物の現況等権利関係を明らかにすることが最も好ましいわけでありますし、また事務量から申しまして、一元化いたしますれば、簡単に申しますれば、不動産の表示、不動産自体に関する手続が半減するということになろうかと思うのであります。かようにいたしまして、現在適正、迅速の処理が若干欠ける面のあるところを積極的に即日処理をいたしまして、しかもその処理が適正になされるように努力して参りたい、かような趣旨一元化の登記制度の改正を考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/126
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127・大貫大八
○大貫委員 まことに理想としては大へんけっこうなんですが、現実は、あなたのおっしゃるのと大へん違っていると思う。というのは、御説のように、今登記簿と現況というものが必ずしも一致しないのじゃなくて、一致しないのがむしろ大部分じゃないかと思います。たとえば、不動産については、もう面積なんかについては、実測して登記されているなんというのはごくわずかであって、特に山林なんかについては、登記簿上の面積と実地とでは大へんな違いがあります。これを整理するというのは、国をあげての大事業であります。かって満洲国がありました当時は、大々的な地積整理をやって、航空写真までとって、十年間ぐらいの歳月をかけてほぼ完成しようというときに満洲国はつぶれてしまったのですが、日本ではこんなことは全く手をつけておらぬのであります。でありますから、あなたのおっしゃるように、二重の手数を省いてというようなことは、まことに届け出る者からはけっこうですけれども、そんなことを現実にやり出したら、大へんなことだと私は思うのです。むしろ人員不足から事務量が過重になっておる、この現況を何とか救済策として一元化も考えるのだというようなことであったならば、これは全く実情に反すると思う。しかもそうした調査を職員がするということになったら、大へんな事務過重になる。たとえば、不動産の面積についてもそうだし、それから建物の現況なんかについても、もうほとんどぴしっとなっているものと、また登記簿と合っていないものもございます。そういうことを一々実地について調査をするなんということになったら、登記所の今の職員の数ではとうてい不可能なんです。地方の登記所を統廃合してわずかばかりの人間を中央へ集めたりなんということでは、とてもやり切れるわけはないと思うのですが、その点についてどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/127
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128・香川保一
○香川説明員 お説の通り、一元化いたしまして、事務が簡素化されましたといたしましても、全国の土地建物全部を逐一早急に調査して、現況を登記簿に載せるというようなことの不可能なことは、お説の通りだと思うのであります。しかし、現在土地台帳法、家屋台帳法におきましては、登記所が職権で調査して、土地建物の現況を台帳で明らかにしておくということになっておるわけであります。しかし、これが一元化後においては、登記所において明らかにするというようになって参るわけでありますが、お説のように、積極的に全国の土地建物全部をこの際調査してというふうなことは、とうてい不可能でございますけれども、しかし、必要ある場合の調査すら現在の人員ではできないわけであります。たとえば建物が滅失したというふうな申告がありまして、これは申告通り滅失の登録をいたしますと、その建物が現実に滅失していない場合に、二重登記がされるというおそれもあるわけであります。かようなぜひとも最小限実地調査をしなければ登記制度の維持がはかれない、取引関係に非常に混乱を生ずるというふうな部分におきましてすら、現在の人員ではとうてい実地調査ができない状況にあるわけであります。かような最小限度ぜひともしなければならぬ、登記制度の維持上なさなければならぬことをできるだけやって参りたいという意味から、事務量の軽減ということで一元化を考えておるわけであります。一元化ができたからということで、お説のように、全国の土地建物の全部の職権調査をやろうというふうなことは、現段階ではとうてい考えられないことであります。これは別途やはり国土調査法に基く国土調査なり、あるいは登記所自体の人員増加その他の条件の整備が必要なことは、十分承知いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/128
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129・大貫大八
○大貫委員 その御説の事務量の軽減のために一元化を考えているとしたならば、これはおよそ実情に沿わない結果になると思うのであります。土地台帳法第十条によりますと、「土地の異動があった場合においては、地番、地目及び地積は土地所有者の申告により、申告がないとき又は申告を不相当と認めるときは、登記所の調査により、登記所がこれを定める。」と、こうあります。これはたしか家屋台帳法にも第六条でしたかに同じような規定があると思うんですけれども、現在だって、こんなのは法律にあるけれども、実はほとんど有名無実じゃないですか。調査をしているでしょうか。実際はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/129
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130・香川保一
○香川説明員 お説の通り、土地台帳法、家屋台帳法では、すべて職権調査をやることになっておるわけでございますが、先ほど来申しましたように、現在の人員あるいは旅費その他の予算からでは、とうてい法律通りの調査ができないわけでございますが、ただ登記制度の維持から申しまして、最小限度必要なものだけは、できるだけ予算、人員を効率的に利用してやるようには指導いたしておるわけであります。ただ、私どもの申し上げたいことは、事務を簡素化して、そして職権調査を徹底的にやるという方向よりは、現在、土地台帳、家屋台帳と登記簿が二本になっているから、単なる登記所の内部における事務量というものが倍加されておるというところだけでも一元化して、簡素化したい、そしてその余力を本来のやるべき仕事の方にできるだけ向けたい、かような意図のもとであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/130
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131・大貫大八
○大貫委員 ところが、そういう目的のために事務量を軽減するというのですけれども、実際は、それに移行するまでには大へん事務が多くなるんじゃないか。しかも、現在のように職員が非常に足りないところにこんなことをやってのけますと、これは大へんな労働過重になるのじゃないか。これは東京とか、大阪とか、大都市はもちろんのこと、今度統廃合されたところの地方の登記所、つまり事務を委任された統合された登記所では、これまた従来よりも事務量がふくれ上って、むしろ予算もとらずに——予算というか、わずかの予算で、人員をふやさずしてこんな仕事に手をつけるということは、大へんな労働過重になると思うのですけれども、こういう過重労働については、一体職員に対して超過勤務の予算をたくさん取っておるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/131
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132・香川保一
○香川説明員 お説のように、この一元化の作業は大へんな仕事でございまして、これをいかに円滑に実施するかということにつきまして、いろいろ工夫、検討いたしておるわけでございますが、予算の点から申しまして、一時的なと申しますか、平常の業務ではなしに、一元化自体だけの仕事でございますので、このための増員ということになりますれば、一元化が完成すればまたその減員の問題も起って参りますので、増員の方法はとらずに、できるだけ賃金と超勤という形で実施して参りたい。しかし、現在登記所の事務が平常業務だけでも相当多量ある現状でございますので、むしろ賃金でなし得る処理はできるだけ賃金で実施して参りたい、かように考えております。ただ、その予算措置といたしまして、本年度、三十四年度の五千五百万円の予算は、私どもとしても必ずしも十分なものとは考えていないわけでありますが、この予算の範囲内で三十四年度に一応どの程度できるであろうかということをテスト的にやってみた上で、三十五年度から、その資料に基きまして、大蔵省との折衝に努力したい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/132
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133・大貫大八
○大貫委員 これはこまかいことになりますが、一元化のために、一時事務的に大へんな混乱を起すと思うのです。私が取り寄せてみたところによりますと、まず最初に台帳から新しい登記簿に移記をする、現在のままで台帳から書いて、そうして今度はさらに後にメートル法による書きかえをする、こういうことが今考えられておるようですが、そうなんでしょうか。そうだとすると、実にばかげた煩瑣な手続をとると思うのです。むしろ今移記するならば、メートル法のまま移記してしまった方がいいと思う。二重の手数となると思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/133
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134・香川保一
○香川説明員 メートル法の関係でございますが、実は計量法が制定されました当時、土地建物をどうするかということが問題になったわけでありますが、その際に、メートル法を土地建物についても直ちに実施するといたしますと、登記所におきまして、台帳と登記簿をメートル法に書きかえなければならぬということが必然的に起って参りますので、現在の登記所の内容、人員、予算のもとでは、とうてい台帳、登記簿をメートル法に書きかえるというふうなことは不可能だということ、それともう一つは、土地建物につきまして、国民一般の間に、一体直ちにメートル法が完熟するかどうかという問題もございましたので、土地建物についてだけはしばらくメートル法の施行は待ってもらいたいということで、関係各省が折衝いたしまして、政令で特例を定めることが認められたわけでございます。さようないきさつから、現在、先般の国会で計量法施法の一部改正がなされまして、土地建物についてもやはりできるだけメートル法に切りかえた方がいいというふうなお考えのもとに、昭和四十一年の三月三十一日までの政令で定める日からメートル法を実施する、かような計量法施行法の改正がなされたわけであります。この点につきまして、私どもとしては、できるだけ登記所の計量事務が円滑にさばける状態になってからにしてもらいたいということを再三お願いしたわけでございますけれども、国全体としまして、他の計量単位が全部メートル法に切りかわっておるのに、土地建物だけについて依然として昭和五十年度あたりまでメートル法に切りかえられないということはいかにも形としてはおかしいということで、今申しましたように、四十一年三月三十一日まで待っていただくということになったわけであります。ただし、さような関係は国民にも非常に関係あることでございまして、登記の申請あるいは台帳の申告のみならず、その前提として土地建物に関する取引なり、あるいは建築の請負契約とか、そういうふうなことも非常に関連があるわけでございまして、今直ちに一元化を実施する際に、たとえば三十四年度に台帳に基いて新しい登記を申請する場合にメートル法に書きかえるといたしますと、その地域については、土地建物についての登記申請についてはメートル法を強制せざるを得ないことになります。さような一地域ごとにメートル法が実施されていくという姿もはなはだ妥当ではないわけであります。また移記した地域が果してメートル法に完熟しておるかどうかということも、直ちに即断できないわけでございます。かような考えから、四十年度一ばいかかって、登記簿、台帳を三川化いたしまして、そのころには国民にもメートル法の完熟が予想されますので、その上でメートル法の土地建物についての施行をいたして参りたい、かような考えであるわけであります。ただ、法律的には、今お説のように、四十年度で申しますれば、四十一年の三月三十一日現在すでに登記されておるものについては、直ちにメートル法に書きかえなければならぬという法律上の要請はないわけでございます。これは御承知の通りだと思いますが、計量法施行法のたしか十三条で、既存のものについてはそのままでいいという経過規定が認められておるわけでございます。しかし、登記所といたしまして、国民が土地建物についてすでにメートル法を使用しておるその段階にありまして、登記簿自体が依然として尺貫法による計量単位を使っておるということは、取引から申しましても、はなはだ不便であろうということを考えまして、昭和四十年度におきまして、全国一斉にできる限りメートル法に書きかえをいたしたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/134
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135・大貫大八
○大貫委員 そういたしますと、四十一年からメートル法で書きかえをするならば、今にわかに二重の手数は必要ないんじゃないですか。今直ちにこれに現状のままで移記して、そうしてさらに今度は四十一年になってメートル法に書きかえる。何かしら非常なむだがそこにあると思うのです。これは労力的に見ても非常なむだがありましょうし、その他経費の面においても、非常なむだがあるのじゃないかと思うのです。それならば、一挙に、にわかにメートル法による書きかえが困難とするならば、一元化ということを十分研究題目として、その四十一年なら四十一年から一挙にやるというようなそういう考え方はできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/135
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136・香川保一
○香川説明員 土地建物につきまして、今申しましたように、昭和四十一年の三月三十一日までの政令で定める日から施行する。その政令はすでに制定されておりまして、昭和四十一年の三月三十一日ということになっておるわけであります。そういたしますと、昭和四十一年の四月一日から、土地建物についてメートル法が実施されることになるわけであります。ところがそれまで待っておりまして、メートル法の書きかえをするといたしますと、土地台帳、家屋台帳、登記簿全部について書きかえをしなければならぬということになるわけであります。そうなりますと、この面におきましても、二重の手数、倍の費用がかかるわけでございます。その前までに一元化をいたしまして、公簿一本にして、メートル法の書きかえをいたしたい。ところが、それならば四十年一年間かかって全国一元化をすればいいというふうに考えられますけれども、この事務自体は非常な膨大なものでありますし、これに要する経費も莫大なものでございますので、現在の登記所の実情から申しまして、全国一斉に一年間で一元化を実施するということは、とうてい不可能であります。また国の予算の面から申しましても、一年限りではございますけれども、その年度において一時に巨額の金を支出するということも、これは大蔵省との折衝の過程を見ましても非常に困難な事情にございますので、これを昭和三十四年度から昭和四十年度までの七カ年間にわたって実施して参りたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/136
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137・大貫大八
○大貫委員 一元化を強行いたしますと、一体こういう点についてはどういうお考えを持っておるのですか。今の登記簿というのは昔の大福帳式なんかと違って、取りはずしができるつづり方をやっているのじゃないですかね。登記簿の閲覧というようなことも都会地では非常に輻湊すると思うのですが、もしひょっとして抜かれたりしてしまったり、紛失したというような場合にはどうするのですか。現在のように台帳があり、登記簿があれば登記簿の方でかりに紛失しても台帳でわかるということになるのですが、それが一本になってしまうとどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/137
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138・香川保一
○香川説明員 今御質問のように、登記簿がなくなった場合に、台帳があればそれでわかるということのようでございますが、台帳は、御承知のように、土地建物の現況を明らかにする公簿でございまして、その権利関係は現在の台帳では明らかになっていないわけであります。従って、登記簿がなくなりますと、台帳がございましても、その不動産についての権利関係はわからなくなってしまうわけであります。さようなことから、登記簿の滅失、紛失というようなことは絶対に防止しなければならぬわけでございますが、その点につきまして、現在の登記簿は用紙の脱落とか、抜き取りが困難のような仕組みになっておりますし、また登記簿を閲覧するという場合には、必ず登記官の面前において閲覧しなければならぬということになっておりまして、登記用紙の紛失というようなことは絶対ないように、十分配慮いたしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/138
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139・村瀬宣親
○村瀬委員長代理 本日はこの程度にて散会いたします。
午後一時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105206X00919590226/139
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