1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月二十六日(木曜日)
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議事日程 第二十八号
昭和三十四年三月二十六日
午後三時開議
第一 自動車ターミナル法案(内閣提出、参議院送付)
第二 建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
第三 土地区画整理法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
第四 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第五 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
議員辞職の件
日程第一 自動車ターミナル法案(内閣提出、参議院送付)
日程第二 建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日程第三 土地区画整理法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日程第四 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第五 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
午後三時十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/0
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001・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。
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002・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) この際、御紹介申し上げます。
ただいまオーストラリア外務大臣リチャード・G・ケーシー氏及び同夫人が貴賓席にお見えになりました。ここに、諸君とともに心から歓迎の意を表します。
〔拍手〕
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議員辞職の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/2
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003・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 議員横路節雄君より辞表が提出されております。これにつきお諮りいたしたいと思います。まず、その辞表を朗読いたさせます。
〔参事朗読〕
辞任届
今般北海道知事選挙立候補のため議員を辞職致します
昭和三十四年三月二十六日
北海道第一区
衆院議員横路節雄
衆院議員議長加藤鐐五郎殿発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/3
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004・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 採決いたします。横路節雄君の辞職を許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/4
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005・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、辞職を許可するに決しました。(拍手)
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(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/5
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006・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 日程第一、自動車ターミナル法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員長塚原俊郎君。
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〔塚原俊郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/6
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007・塚原俊郎
○塚原俊郎君 ただいま議題となりました自動車ターミナル法案につき、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、本法案の趣旨を簡単に申し上げます。
最近、都市における自動車輸送の発達はまことに急速かつ顕著なものがあり、特に、バス、トラックの路線網は複雑多岐をきわめて参っておるのでありますが、これらの輸送需要に適合し、路線網を積極的に形成して参りますために、旅客の乗りかえ、あるいは貨物の積みかえのための自動車ターミナル施設を設けて、一般公衆の便益を増進するとともに、自動車運送事業の健全なる発展をはかるべく、自動車ターミナル事業を免許制とし、事業の運営、管理、整備に関して所要の事業を定めようとするものであります。
次に、本法案の内容のおもなる点は、第一に、自動車ターミナルにつきまして明確なる概念を定め、これを免許事業とし、使用料金を認可制と定め、さらに供用義務、構造設備の維持義務を課して、利用者の利便の確保をはかっております。
第二に、自動車運送事業者がその事業の用に供するための自動車ターミナルにつきましては、主として道路運送法の定めによって運営するものといたしましたが、その構造、設備その他の面については自動車ターミナルと同様に取り扱うことといたしております。
第三に、大都市等において、多数のバス路線が集中しておる場所にバス・ターミナルがない場合、その地区に路線を有するバス事業者に対し、共同してバス・ターミナルの設備に関し必要な措置をとるべきことを指示し得るようにして、路線網の中心地としての機能を十分確保することにいたしております。
第四に、運輸大臣は、自動車ターミナルの設置、改善のための用地及び資金の確保に関し必要なる措置を講ずるよう努めるものといたし、自動車ターミナルの整備の促進を配慮いたしております。
本法案は、三月十六日予備付託となり、二月十九日政府より提案理由の説明を聴取、三月十一日本付託となり、三月十九日政府より詳細なる補足説明を聴取し、三月二十四日質疑を行い、質疑終了後、討論を省略して直ちに採決いたし、本法案は全会一致をもって原案通り可決いたしました。
なお、自由民主党、日本社会党を代表して長谷川峻君より、本法施行に当り、政府は、自動車ターミナル事業の公共性にかんがみ、公有地等の貸付並びに財政的援助等に関し特別の考慮を要望する趣旨の附帯決議案が提出され、採決の結果、これまた全会一致をもって可決いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/7
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008・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/8
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009・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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010・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 日程第二、建築基準法の一部を改正する法律案、日程第三、土地区画整理法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員会理事木村守江君。
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〔木村守江君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/10
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011・木村守江
○木村守江君 ただいま議題となりました二つの法案につきまして、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、建築基準法の一部を改正する法律案について申し上げます。
建築基準法は、去る昭和二十五年に制定され、今日に至ったものでありますが、この間における社会情勢の変化並びに建築技術の進歩に伴い、実情に適合しない面も生じてきたため、法施行の経験をも考慮して、今回全面的に検討を加え、所要の改正を行おうとするものであります。
改正の内容といたしましては、まず第一に、最近の建築材料の進歩に伴い、新たに、従来の耐火構造と防火構造の中間的な防火性能を有する簡易耐火構造を本法による防火基準として設定し、これに伴って建築物の防火措置に関する規定の整備、強化をはかったこと、第二に、用途地域内における工場に関する建築制限の規定につき、最近の工業技術の進歩並びに公害防止施設の進歩に応じて全面的検討を加えるなど、用途地域制度の改善をはかったこと、第三に、地形その他土地の状況により、やむを得ない場合に限り、敷地と道路の関係、建坪率等の規定の一部について緩和を行なって、実情に即応した制限を行うことができるようにしたこと、第四に、最近の物価の変動に応じまして、建築確認手数料を引き上げるなど、手続規定の整備を行なったことなどが、そのおもなる点であります。
本案は参議院先議でありますが、参議院におきまして審査の結果、確認手数料引き上げの点につきまして、手数料の最高限度について、原案で一万円となっておりましたものを二万円とする旨の修正案が提出され、そのように修正の上、去る三月十三日本院に送付され、同日当委員会に付託されたものであります。以来、慎重審議を続けたのでありまするが、この間の経緯の詳細につきましては速記録を御参照願いたいと存じます。
かくて、討論を省略して採決の結果、本法案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に、土地区画整理法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
土地区画整理法が施行されましたのは昭和三十年でありまして、以来すでに四年間を経過しておるのでありまするが、その間の同法施行の実績にかんがみまして所要の改正をはかろうとするのが、本法案の提案された趣旨であります。
初めに、本法案の内容のおもな点について申し上げますと、まず第一は宅地の立体化に関する規定でありまして、現行法におきましても、市街地における土地利用の高度化を促進するため、いわゆる立体換地の制度を設けておりますが、今回の改正、立体換地のできる場合を広げまして、市街地の高度化の促進に寄与せしめようとするものであります。
第二は公共施設管理者の負担金に関する規定でありまして、道路、河川等、大規模な公共施設の用地を確保するため土地区画整理事業を施行する場合において、従来からも、本来の公共施設の管理者から土地区画整理事業の施行者にその用地費相当分を支出していたのでありますが、この関係を法文上明確にすることになっております。
第三、土地区画整理の事業が相当長期にわたるものであるという実情にかんがみまして、土地区画整理審議会の委員等の任期を延長すること等であります。
本法案は、去る二月十一日に予備付託となり、三月十三日に本付託となって審査を続けて参りましたが、その詳細は速記録を御参照願いたいと存じます。
かくて、討論を省略して直ちに採決いたしましたところ、本法案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/11
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012・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/12
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013・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。
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014・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 日程第四、所得税法の一部を改正する法律案、日程第五、租税特別措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長早川崇君。
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〔早川崇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/14
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015・早川崇
○早川崇君 ただいま議題となりました二法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
今回の改正は、政府の説明によれば、低額所得者層の負担の軽減等を主眼として所要の改正を行おうとするものであります。
すなわち、まず扶養控除額につきましては、第一人目の扶養親族の五万円を七万円に、第二人目及び第三人目の二万五千円を三万円に、第四人目以下の一万五千円を三万円に、それぞれその控除額を引き上げることとし、また、税率につきましては、最低税率である一〇%の税率の適用範囲の最高限度額を五万円から十万円に引き上げることとしております。この結果、低額所得者の所得税の負担は著しく軽減されることとなり、標準家族を例にとりますと、平年度において、給与所得者については、年収約三十三万円まで無税、年収四十万円では五割六分の軽減となり、また、事業所得者については、年所得三十万円では五割七分、年所得四十万円では三割四分の軽減となります。
次に、老齢で退職する者が若年で退職する者よりも多額の控除が得られるように、退職所得の特別控除額の計算方法を改め、また、その最高限度額を五十万円から百万円に引き上げることとしております。
次に、借地契約等に伴い収受するいわゆる権利金のうち、一定の要件に該当するものについては、従来のように不動産所得としての課税を改め、譲渡所得として課税するものとするとともに、役務の提供に関する契約に伴う契約金等のように、臨時に発生する一定の所得については、従来変動所得について認められているものと同趣旨の五分五乗課税を行うこととし、また、災害により被害を受けたたなおろし資産にかかる純損失について、青色申告以外の者についても三年間の繰り越し控除を認めることとしております。
最後に、法人が利益をもって株式を消却した場合には、積立金の資本組み入れの場合に準じて、消却されなかった株式を有する株主について配当所得あったものとみなし課税することとしております。
なお、以上の措置による所得税の減収額は、本年度において約三百七十九億円、平年度において約四百二十二億円と見込まれるのであります。
ところで、本案に関しましては奧村又十郎君外二十五名より修正案が提出いたされました。修正の内容は、青色申告者に対して、その青色申告の承認取り消しをする場合には、その通知書に取り消しの理由を付記しなければならないことといたそうとするものであります。
本案並びに修正案につきましては、審議の結果、昨二十五日質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して、松尾委員より反対の旨の意見が述べられました。
次いで採決いたしましたところ、修正案は全会一致をもって、また、修正部分を除く原案は起立多数をもって、それぞれ可決され、よって、本案は修正議決いたされました。
次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法律案のおもな内容は次の諸点であります。
まず第一点は、長期性預貯金、公社債等の利子に対する非課税措置を、その期限の到来を待って廃止することとし、なお今後二年間は、預貯金、公社債等の利子については一〇%の税率による分離課税の特例を適用することといたしております。
次に、配当所得に対する源泉徴収税率の軽減措置はなお二年間継続することとし、また、証券投資信託収益の分配に対する源泉徴収税率について、現行の六%軽減税率を、一般の配当所得と同様に、一〇%の税率に改めることといたしております。
次に、法人の増資費用の軽減に資するため、昭和三十四年一月一日において存在する法人が、昭和三十六年三月三十一日までに増資登記をした場合には、その登記の登録税の税率を千分の七から千分の五に軽減することといたしております。
次に、輸出所得控除の適用期限を昭和三十六年三月三十一日まで延長するとともに、特許権等の技術輸出について特にその控除率を引き上げることといたしております。
次に、交際費の損金不算入制度の適用期限を二年間延長するとともに、交際費使用の実情に即するよう、交際費損金不算入の基準を改正することといたしております。
次に、価格変動準備金の制度について、本制度の趣旨に照らして、準備金の取りくずしの方法を合理化することといたしております。
次に、土地収用法等により資産が収用された場合の課税の特例でありますが、その補償金等により一定期間内に代替資産を取得したときは、納税者の選択により、収用された資産の譲渡がなかったものとして、代替資産につき圧縮記帳的な処理を認めることとし、納税者がその選択をしないとき、または代替資産を取得しないときは、収用された資産の譲渡により生じた所得の二分の一に相当する金額を非課税とすることといたしております。
次に、新たに低アルコール度の清酒及び合成清酒に対する酒税の特例を設け、アルコール度が十三度以上十五度未満のものについて、アルコール分に応じ比例軽減税率を設けることといたしております。
その他、重要外国技術の使用料について、現行の軽減税率による源泉徴収の適用を受ける範囲を縮小するとともに、その適用期限を昭和三十六年三月三十一日までとすることとし、また、航空機の乗客に対する通行税の特例措置等の軽減措置は二年間、航空機の燃料用及び工業用揮発油に対する揮発油税及び地方道路税の免税措置は四年間、それぞれその適用期限を延長することなど、所要の改正をいたしております。
本法案は、審議の結果、昨二十五日質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して松尾委員より反対の旨の意見が述べられました。
次いで採決いたしましたところ、起立多数をもって原案の通り可決いたされました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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016・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 討論の通告があります。これを許します。松尾トシ子君。
[松尾トシ子君登壇]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/16
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017・松尾トシ子
○松尾トシ子君 私は、ただいま上程されました所得税法の一部改正案並びに租税特別措置法の一部改正案に対して、日本社会党を代表し、簡単に反対の討論を行いたいと存じます。(拍手)
昨年の五月、総選挙における自民党の公約の大きな柱の一つは、何と申しましても、七百億円減税ということでありました。この減税七百億円の公約は、昭和三十四年度予算において、初年度五百三十三億円、平年度七百十七億円で、表面上は数字のつじつまを合せておりますが、これを国民生活の実際の収支に照らしてその内容を検討いたしますと、減税の目的に全く相反したものが出て参ります。(拍手)すなわち、税金の問題は、それのみを切り離して、その効果を判断することはできません。時の政府の諸政策と税金との関連性を総合的に検討しなければなりません。減税の目的は、申すまでもなく、国民生活の安定にあります。今回の所得税法一部改正案が、各家庭の生計費を軽減して、末端における個々の生活に実質的効果を及ぼすものなりやいなやを厳正に判断いたさなければなりません。
私がまず第一に申し上げなければならない点は、今なお税金が生活費に食い込んでいるということであります。昭和三十三年度の国税の総収入は一兆二百五十九億円、昭和三十四年度は一兆一千二百十二億円で、九百五十三億円の増、地方税は、昭和三十三年度五千百四十五億円、昭和三十四年度五千四百四十五億円で、二百億円の増収となり、国税、地方税を合計いたしますと、一千二百五十三億円の自然増収を見込んでおります。政府は、これに対して、国民総生産の伸びを五・五%と見て計算したと御説明になりますが、国民所得に対する租税負担の率は、昭和三十四年度には、さらに加重になっておるわけであります。すなわち、三十三年度は、国民総所得八兆四千百二十億円、租税負担率は、当初予算において一九・九%、改訂後におきましても二〇・二%であったのに対し、昭和三十四年度は、国民所得は八兆九千二百八十億円に対し、租税の負担率は二〇・三%と相なり、三十三年度のそれより重くなっていることであります。一千二百五十三億円の税金の絶対増に対して、減税が初年度五百三十三億円というのは、全く税制のからくりであり、ごまかしであって、真の減税と申すことはできません。(拍手)減税方々と宣伝されながら、実は千二百五十三億円の増税が行われようとしているのであります。自然増収という美名にごまかされてはなりません。景気の上昇や事業の拡張によるところの自然増収か、あるいは税務署のさじかげんによるしぼり上げかは、税金を払う者の身になれば、すぐにぴんとくる大問題であります。(拍手)
さらに重要なことは、昭和三十三年七月の平均世帯四・五六人家族の家計支出を見てみますと、総理府統計局の統計によっても、一カ月二万七千六百四十円かかるのであって、標準の五人世帯の年支出を計算すれば三十六万三千六百八十円となります。今度の所得税改正によっても、課税最低限は、標準世帯で三十二万七千九百円と相なっております。すなわち、税金が生活費に食い込んでいることが明確に立証されております。日本社会党が、このたびの所得税改正に反対し、年収三十六万円まで免税を主張いたしております第一の理由は、まさにここにあると申さなければなりません。(拍手)
第二に、所得税の改正と関連して、ぜひ申し上げておかなければならないことは、最近の物価値上げ傾向と減税との関連であります。私は、生活に関係の深い例を取り上げながら、今回の減税がいかに効果のないものであるかを実証いたしたいと存じます。
まず私鉄の運賃でございますが、大手十二社の値上率は六%から二〇%、平均一七%の値上げが行われております。今年一月四日には、東武、京成、京王帝都の三私鉄が値上げを実施し、続いて一月二十一日、運輸管は、西武、小田急、東急、京浜、近畿、京阪神等の値上げを認可し、定期券は平均二〇%の値上げとなりました。これはきわめて重要な値上げであります。
私鉄の運賃値上げについては、従来不気味な沈黙を守って、値上げの防波堤になっていたかのように見えた自民党の某実力者が、昨年の末、関西財界との懇談を終ってその帰り道、名古屋において、突如、私鉄運賃の値上げが必要であるとの意見を発表いたしましたことは、世間をあっと驚かせました。━━━━━━━━━━━━━━━━(拍手、発言する者あり)政府並びに自民党に対する国民的疑惑と不満は実にここにありといわなければなりません。
また、電力料金においては、三割頭打ち制度を廃止し、電力料金の値上げを行わんとしておるのであります。これは、五アンペアの契約者、つまり使用量では最低の家庭からも、三割頭打ち制度を取り除こうとしているのであります。これが実施されますと、値上りの最高は月百三十五円、平均すれば一世帯月三十七円の値上げとなります。五アンペアの家庭と申しますと、電灯のほかに、せいぜいラジオ、アイロンを使える程度の家庭で、そのほとんどは減税の対象にならない家庭であります。この電力料金の値上げも今年七月ごろ行われるだろうと伝えられております。
さらに、この四月一日からは、NHKの聴取料が、現行六十七円から八十五円に改正になり、月十八円の値上りになるほか、バス料金、ガス料金、公営住宅、授業料、食塩、小麦粉、入浴料、理髪代、クリーニング代などがすでに値上げになったり、これから値上げを予想されているものであります。減税による恩恵ありとしても、減税の恩恵に浴する者は百万人に満たず、物価の値上りで影響を受ける者は九千二百万人の全国民であります。(拍手)かくのごとく、物価の値上りによる深刻な影響によって、消費者大衆の生活を一そう苦しめて参りました現内閣の減税は、二階から目薬の程度ではないでしょうか。
第三に見のがすことのできないのは、物品税の一部を値上げしようとしていることであります。家庭生活に一番関係の深い砂糖は、六百グラム当り
一円九十七銭の値上りであります。揮発油税も、一キロリットル五千五百円と、大幅な値上げをしようとしております。
重ねて申し上げます。減税とは、生活を豊かにし、向上させて、初めて減税の効果があるのでございます。現内閣のもろもろの失政のもとに、これを総合的に判断いたしまして、今回の減税案は、まさに羊頭を掲げて狗肉を売るものであると断ぜざるを得ません。(拍手)
次に、租税特別措置法の改正について一言申し上げます。
政府は、今回、預貯金等に対する特別措置、配当所得に対する源泉徴収税率の軽減、証券投資信託に対する源泉徴収の税率等、十三項目にわたって改正を加えておりますが、決して大きな改革ではございません。大企業が設備投資に次ぐ設備投資を行い、企業の系列化を得なって今日の繁栄を再びほしいままにしたのは、一つは政府の財政投融資であり、もう一つは租税特別措置法であります。日本社会党は、昭和二十七年ごろより、一千億に余る租税特別措置による法人税、所得税、関税の恩典に対して鋭いメスを加え、この大整理を主張して参りました。政府は、最初、この主張に対し、資本蓄積の重要性、輸出振興の重要性などを主張いたしまして、この租税特別措置法を拡大していったのでありますが、最近に至って、初めて租税特別措置の整理に着手し始めました。しかし、整理と申しましても言いわけ程度のものであって、しかも、整理、改正する以外のものは、これを固定化しようとし始めております。戦後、租税特別措置法によって数千億円の租税が軽減されておりますが、果してそれだけの効果が上ったであろうかと思うのであります。これだけの金を万一社会保障に使っていたら、どれだけりっぱな社会保障制度の確立を見たかわからないであろうと思います。
私は、このような、小手先の、資本家本位の租税特別措置法の整理にとどめず、私どもの主張するごとく、大幅な整備の段階がきたことを、かたく信ずるものであります。
以上、簡単に反対の理由を申し述べまして、私の討論を終りたいと思うのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/17
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018・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) ただいまの松尾君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。
これにて討論は終局いたしました。
両案を一括して採決いたします。日程第四の委員長の報告は修正、第五の委員長の報告は可決であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/18
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019・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告の通り決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/19
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020・加藤鐐五郎
○議長(加藤鐐五郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時四十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105254X03019590326/20
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