1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月十二日(木曜日)
午前十時三十九分開会
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委員の異動
三月十日委員松野孝一君及び稲浦鹿藏
君辞任につき、その補欠として青木一
男君及び林田正治君を議長において指
名した。
三月十一日委員青木一男君及び林田正
治君辞任につき、その補欠として松野
孝一君及び稲浦鹿藏君を議長において
指名した。
本日委員酒井利雄君辞任につき、その
補欠として仲原善一君を議長において
指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 早川 愼一君
理事
稲浦 鹿藏君
岩沢 忠恭君
田中 一君
委員
石井 桂君
小山邦太郎君
仲原 善一君
松野 孝一君
安井 謙君
内村 清次君
上條 愛一君
村上 義一君
安部 清美君
衆議院議員
小澤佐重喜君
国務大臣
建 設 大 臣 遠藤 三郎君
政府委員
建設政務次官 徳安 實藏君
建設大臣官房長 鬼丸 勝之君
建設省計画局長 美馬 郁夫君
建設省住宅局長 稗田 治君
事務局側
常任委員会専門
員 武井 篤君
参考人
東京大学教授 加藤 一郎君
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本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選
○建築基準法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○土地区画整理法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
○九州地方開発促進法案(衆議院提
出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/0
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001・早川愼一
○委員長(早川愼一君) これより建設委員会を開会いたします。
この際、理事の補欠互選についてお諮りいたします。稲浦君の委員辞任に伴い理事が欠員になっておりますので、その補欠互選を行う必要があるのでありますが、その互選の方法は成規の手続を省略して便宜委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/1
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002・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 御異議ないと認めます。それでは私より稲浦君を理事に再び指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/2
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003・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は参考人として東京大学教授加藤一郎君の御出席をいただいております。まず参考人の方にごあいさつ申し上げます。本日は御多用のところを当委員会のためにわざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。当委員会はただいま議題となっております建築基準法の一部を改正する法律案を審議中でありますが、先日の委員会も関係者の御出席をお願いして、法案全体についての参考意見を聴取したのでありますが、なお宅地建物に関する民法上の相隣関係等について御意見をお伺いするため、本日先生の御出席をお願いした次第でございます。
審議は委員の質問に参考人がお答え願う形式で進めたいと存じます。それでは加藤参考人に御質疑のおありの方は御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/3
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004・田中一
○田中一君 今回の建築基準法の一部改正の法案の内容については、御了承願っておるものと思いますが、この法案では大体において防火施設の強化と、あとは現在建築基準法が持っておりますところの、あらゆる制限を緩和しようというねらいを持っておるわけなんでございますが、ところがこれは部分的な改正であって、今日までわれわれが日常生活において、また社会生活において、常に建築基準法の不備を思っておりました。ために、いたずらな相剋を隣人と起すという事例がたくさんございます。そこでできるならば建築基準法でそうしたトラブルをなくするような方法がないものであろうか、という点について考えておったのでありますけれども、それについて一、二御意見を伺いたい、こう考えております。
第一の問題はこの相隣関係なんです。民法二百十八条を見ましても、たとえば雨水の注潟の禁止とか、それから囲障設置権とか、隣人の建築のためにこちらの環境が侵されるという点、その他ございます。それには、一応法全体から見ましても、空地を取れとか何とか言っておりますけれども、これはただ隣人との問題ではなくて、その家自身の環境なり採光なり通風なりというものを考慮されておるものであって、隣人から受ける悪影響というものに対しては何ら触れておらないのです。そこで一つの例を申しますと境界線ぎりぎりに、ひさしのないブロックの建築を建てられる、これはぎりぎりです。おそらく厳密にいえば、若干はコンクリートのこぶあたりは地下においてこちらの地所に入っておるのではないかというように想定される場合がある。その場合でも、これに対して、その点を、民法の二百十八条にあるような一尺五寸程度のものを後退して建てるというようなことは、民法上にはございますけれども、建築基準法にはきめておらないわけですが、平気でそういうことをやってもその申請を確認する行政官は、建築主事は、この法にはその制限がないから、規定がないからどうにもならぬといって放置している現状なんです。こういう点について、民法上の規定というもの、精神というものを建築基準法に生かすというような方法は考えられるものであろうか、どうか。この点をまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/4
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005・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) ただいまの御質問でございますが、建築基準法の現在の建前というものと民法との関係ということが、今御説明のありましたように違ってきている。民法で要求されていることが、必ずしも建築基準法による確認の場合に、確認対象になってないということはおっしゃる通りだと思うのですが、これにはいろいろの理由も確かにあると思うのです。しかし私はその結論から先に申しますと、理由はあるけれども、民法的な相隣関係とか、そういうものの一部を将来建築基準法の中に取り入れていくということは十分考え得るところであるし、また将来ある程度そういう方向に進むべきではないかと私自身としては考えておるのであります。しかしそれを取り入れるとするためには、いろいろなまた相当考えたしでなければならないという制約もあると思いますので、その点なぜ現行法で相隣関係が確認の対象になっていないか。また将来それを取り入れていくとすれば、どういう方向に持っていくべきかということを少しく分析して申し上げたいと思うのですが、少し長くなってもよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/5
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006・早川愼一
○委員長(早川愼一君) ええ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/6
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007・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) 現在基準法で民法が一応別の問題になっているというのは、私は大体三つ理由があると思うのです。その一は、いわば伝統的な理由でありまして、これは民法ではもともと相隣関係の規定がある。それはそちらにまかしておいていいので、建築基準法はそのあとで出てきたいろいろ都市の問題とか、建築技術的な問題とか、もっぱらそういうものを対象にしていけばよいという出発点の歴史的あるいは伝統的な理由というものが考えられるわけであります。そういう理由に対して、反論を一つ考えてみますと、それは単なる歴史的な理由にすぎないのでありまして、民法ができた当時は、民法は私人間の権利関係を規制していけばそれでよかったということだったのかもしれないのですが、今日のような時代になってくれば、それも建築基準法の中である程度まで審査の対象にしてほしいという要求が出てくるのは、ある程度自然の勢いでもあると思うのです。また民法の規定自体がかなり時代おくれになっておりまして、規定をごらんになりましても非常に今日から見ればおかしな規定もあり、合理的でない規定もあるというわけであります。それからまた民法の規定は私人間の関係にゆだねられていて、争おうとすれば訴訟で争うわけですが、実際問題として訴訟して、できた家をどうしてくれろということはなかなか言いにくいわけですから、そこまで審査、確認のときに調べてやるということが親切ないき方だろうということは言えると思うのです。
それから、民法の規定が別になっているということの第二の理由としましては、いわばこれは理論的な理由でございますが、現在の確認ということの性質というものがあると思うのです。これは一応技術的な点にいろいろ構造とか都市計画の点とか、そういう建築関係の技術的な点に違反しないことを確認するだけで、そのほかの問題は一応別個のものであるという建前があるとしても、この点は何も民法だけに限らずほかのいろいろな関係の法令があると思うのですが、そういう問題もそれぞれの法令にまかせられておりまして、建築基準法というものは非常に技術的な点に集中されておるということがあるのであります。ことに民法の関係は私人間の権利関係ですから、そこまで立ち入っていくということは適当じゃないのではないかという考え方もあると思うのであります。そしてかりに確認をしたところで、それですべての関係が全部まるくおさまったということでなくて、単に建築基準法の線しか調べないから、それで一応つじつまが合っているわけなんです。しかし一般の民衆の方の立場からこれに対する反論を考えてみますと、一応何か役所の確認があるとそれですべての関係が全部是認されたというふうに、これは日本人のくせかもしれませんけれども、そういうふうに考えやすいわけです。これは昔からのお上というような、いろいろそういう考え方があると思うのですが、お上がいいと言ったからそれで一応全部いいのじゃないかというような気持になりやすい。また確認を受けていればもう確認を受けたのだから隣の人は文句を言うなと言って、どんどん違法な建築を強行していくというようなことも考えられる。そういう点から申しますと、そういう民衆の意識というものを考えますと、ある程度まで確認の際にそういう問題まで見てやるのが親切だろうということが言えると思うのです。これが第二の理由でございます。
次に第三の理由としまして、いわば技術的な理由というものが考えられる。それは現在の建築主事が確認をするということですが、建築主事の性格からしまして、そういう権利関係、相隣関係あるいは借地権の関係というような権利関係まで調べる能力は、必ずしも要求されていないし、建築の技術家の人にそこまで要求するのは無理だろうという技術的な点があると思われます。それからまた確認にしましても、やはり客観的な明白な基準というものがないと困るということもあると思うのであります。大体その確認には裁量的な性質がない、つまり法律できちんきちんときまったものを見ていくという性質を持っておる。ところが借地権の有無というようなことになると、非常に法律的にも問題の多いことでありますし、また相隣関係にしましても、たとえば目隠しをつけろというような規定が民法にございますが、これも隣の人が別に文句を言わないのに目隠しをつけろということを確認の際に要求する、ということも必要ないのじゃないかというような、いわばある程度隣の人とのプライベートな任意的な関係だという点もありまして、客観的にそれを強行していくということが必ずしも妥当でない点もあるわけであります。これがいわば私の考えた技術的な理由でございますが、これに対する反論として考えられる点は、借地権の有無にしましても一応は調べて、まあこまかい法律的な厳格な点までは無理にしましても一応あるかないかくらいは調べてもいいじゃないか。現在のところでは全然無権利者でもともかく申請が出てくれば受け付けるという状態でありますし、あるいは二重に申請があれば同じ土地に二重に確認をするということもこれはできる、また逆に言えばしなければならない建前になっているわけで、そこまで一応ではありますけれども調べて、借地権がないということがはっきりしているような場合には、確認すべきではないのじゃないかという感じがするわけでありますし、民法関係以外にいろいろほかの法律で制限のある場合にも、自分で建築主事がわからなければ、ほかへ回してそちらからとってこなければ確認をしない、というような手続も考えられるわけであります。それから権利関係は必ずしも客観的にはっきりわからないという点でございますが、これも民法の規定をある程度客観的なものとして、建築基準法の中に取り入れていくということは、十分考えられると思うのです。たとえば目隠しにしましても、隣の人がいいと言えば、それでいいかもしれませんが、それならば同意書をとって同意書をつけてくれば確認をするというような手続も考えられます。それから一番問題になるのは境界線との距離、五〇センチとか一メートルとかいう距離だろうと思いますが、その距離にしましても今の民法の規定の仕方が合理的かどうかは一つ問題ですが、一応客観的に見ましてある地区では境界線から何メートル離さなければいかんということを、具体的に規定していくことは可能でありまして、民法の規定を客観的なものにしながら取り入れていくということは、将来の方向として十分考えられる。また借地権の点にしましても、地主の判こを一々とれというのは、地主が借地権があっても判こを押さないときもあるでしょうから無理だと思いますが、たとえばそれならば借地契約書を持ってこさせる。あるいはある程度借地権があると認められるような一応の材料、たとえば地代の受け取りであるとか、そういうものを持ってこさせるということで確認をしていくという方法も考えられるのであります。
私が考えました現行法における理由とそれに対する反論というのは大体以上の点なのでありますが、そこで、結論を一応申しますと、現行法にもさっきあげました三つの理由というものがありまして、一応現行法はそういう筋で通してきているので、これを急に今すぐ変えるということはなかなか困難な点があるだろうと思うんです。ですからすぐの改正の問題にはちょっとなりにくいと思うんですが、ただしかし、将来の方向としては、建築基準法のほうからも私人間の権利関係にある程度立ち入っていってもいいのではないか。またそうするのが親切ではないかと思うのであります。現在の基準法は、一応そこに住む人のでき上った建物についての環境衛生というようなことは十分注意している。また全体の都市計画の立場からする空地とかそういう問題も考慮している。ところがそのいわば中間になるすぐ隣の人との関係というのは一応抜けているわけであります。それについても若干、たとえばある空地地区の場合には境界線から何メートルというような距離を指定したり、若干の規定は入っておりますけれども、これもしかし私人との権利関係の調整というよりも、むしろ都市計画的な見地からの規定だと思うんです。いわば隣の人との関係は一応抜けているような形であります。しかし考えてみますと、やはりそこに家を建てる人ばかりでなくて、隣の人の環境衛生あるいは隣の人のそういう点から来る生活の保護、ということもやはり考えていい問題ではないかと思うのです。たとえば日照の点について、建築基準法二十九条に一応どれだけ日照がなければいかぬということが書いてございますが、これも自分がそれに合った日当りのうちを建てたところが、今度隣に高いアパートか何かできて全然もう日が当らなくなつたというのでは、いくら一軒のうちについて日当りを要求していても、あとで意味がなくなるというおそれがあるわけです。この点はしかし非常にむずかしい問題ですけれども、もしその人の環境衛生を確保しようということであるならば、その点にある程度の制限を設けていくということは十分考え得るし、また、考えるべきだろうと思うわけです。また、これをまた民法の方の立場から申しますと、さきほどもちょっと申しましたように、民法の規定というのは、はなはだ時代おくれな規定が多いのでありまして、これをもっと近代化しなければいけない。民法はただ距離とかそういうごく昔風のことしか考えていませんが、それ以外にたとえば今の日当りの問題であるとか、あるいは煤煙の問題、音響の問題、そういう何といいますか生活侵害と一応訳しておりますが、ドイツでイミシオンとか、英米でニューサンスとかいうような、そういう隣人の生活妨害という点をもっと考えていく必要があるだろう。それからまたさきほどの境界線からの距離にしましても、空地地区と密集した地区とでは距離を変えていっていい問題がある。そういうように近代化し、あるいは具体的事情に応じて個別化したような規制を、将来基準法の中に取り入れていくということを考えていいだろうと思うんです。ただその場合に民法の規定は、民法の規定としてやはり近代化しながら残すべきだと思うのでありまして、この確認の方は役所と確認を受ける人との関係だけですから、隣の人が文句を言う場合に、やはり民法の規定がないと困る。民法の規定があれば隣の人が変な建物を建てたときに、それをこわせとかどうしてくれという請求権が民法に基いてできてくるわけですから、民法の規定は残るので、その点では民法と基準法と二本建になると思いますけれども、しかし基準法の中に民法で要求されているような趣旨を取り入れていくことは、十分考えられると思います。これに対しては、そういう私人の権利関係には確認というようなことで立ち入るべきでない、というおそらく理論的な反対が法律家などの間にはあり得ると思われます。まあしかし、そういう理論というものは、私は、あまりそういう抽象的な議論で片つけていくべきじゃないと思うので、実際に便利なようにやっていけばそこでまたおのずから新しい理論を考えていけばいいので、あまり理論にとらわれる必要はないのじゃないかと考えております。ですから結論としましては、そう急には今すぐ根本的に改正するということはなかなかむずかしいだろうけれども、将来の方向としては十分考えられるべきだというのが結論でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/7
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008・田中一
○田中一君 御意見の中の将来の問題としてこの問題を考えるべきだということをいっておりますけれども、むろん建築主事は民法上の規定を強制したりするようなことはできないと思いますけれども、少くとも今日建築基準法の不備というものが認められておるならば、行政指導でもその間違いが間違いであるということをただすことぐらいはしてもいいのではないかということが一つ。
それから先ほどおっしゃっているように、他人の土地であろうと何であろうと確認申請が出ますならば、技術的に見て建築基準法に違反してなければ全部許可して、確認申請書に対する確認をするわけです。だからどこに建てようとそれは自由なんですね。現に当委員会でも先般質問したのですけれども、農地に平気で建てております、宅地になっておらない農地に。従ってそういう場合には、建築基準法がいわゆる申請書に対する確認という方法が、一つの犯罪に手助けをしているような形になる場合もしばしば見受けられるわけなんですよ。そこで行政指導という面で、それらのものを加味した指導、これは一向差しつかえないのでございますが、今たとえば、建築主事は建築基準法の行政を執行すると同時に、民法等を十分知っておるでございましょうけれども、それらに対して助言をするというような形のものが持たれれば、これは間違いが起きないと思うのです。これが一つの問題。
またもう一つの問題は、どこにどう建てるかということの実地検証をして、むろんこれは空地の制限その他ございますから、図面上の問題ばかりでなくて、実地に現地に行って、建てる場所を確認するということが必要ではないかと思うのです。ところが現在では、やはりこの法律の条文に背反してなければ目をつぶって許可してしまうのですね。その図面が正しいか正しくないかもおそらく登記所へ行って土地台帳でも調べるということはしないと思うのです。そういう点については将来これを直すなんていうものでなくして、日常われわれの生活の身辺に常に起る問題なんです。これは終戦後新しい建築基準法が生まれたから、ことさらそういう問題が起きる傾向があるのです。たとえば戦後の短かい期間のように、一々この建築の延べ坪の制限等がありまして、一々やったかやらぬか見にきて摘発するということはどしどしやつておりました。それから他人の土地へ黙って家を作ったり何かするものですから、そういうことをしてほんとうに住宅の困窮時代に市民を脅かしたことをやったにかかわらず、今度は実際の立地というものを検査しないでやっておるわけなんですね。だから将来の問題でなくて現在の問題では、建築主事がそこまでのものを考慮してしなければならぬというような行政指導、法律改正ができなければ行政指導、望ましいのはどこかに一行そうしたものを入れて、民法ばかりじゃない他の法律のこれに関するいろいろな権利義務関係が、間違いのないように考慮しなければならぬ。精神規定でもいいです、何かそういうものを入れるというような余地はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/8
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009・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) 今確認についていろいろ不備な点があるというお話でございましたが、今の制度は今の制度として一応筋は通っていると思うのですね。確認というのはただ建築基準法で許可を受けなければならない点だけを見るので、ほかの方はそれぞれの法律にあるわけだから、そっちは見ないというのは、それが大きく見れば不備といえるかもしれませんけれども、今の建築基準法としては一応それで筋を通していると思うのです。ですから主事とすればそこで命じられておるものだけを見ればいいわけなんで、そのほかの点は別に主事がいいといったからといってよくなるわけでもなし、ほかの点はほかの問題として片つけるということで筋は通っていると思うのです。それから主事の人数であるとか、いろいろな現在の主事の置かれておる状態からして、一々現場へ行って確認するということも困難な点があると思うのですが、これは必要があれば現場へ行って見ることももちろん必要だと思いますが、全部見ろということを要求するのも少し無理なような気がするわけです。そうして今の精神規定というようなものを入れるかどうかという点ですが、これはどうも私の考えでは、もしやるとするならば基準法の建前が相当変るわけだと思うので、やはりやるならばもう少し徹底して……一応その基本的な性格が変る問題だと思うものですから、精神規定を入れただけではどうにもならないような気がするわけです。ですからやるとすれば近い将来にそういう建前を変えるということを検討するということはけっこうかと思うのですが、今すぐ精神規定だけをこの中に入れても、予期されるような効果は必ずしも発揮せられない。といいますのはやはりそういうものを入れても、今の基準法の建前からすれば申請があればやはり確認しなければならない。それで相手ががんばっておられれば、七日なり二十一日なりに当然確認しなければならないという義務がやはり主事に生ずると思うので、規定を入れただけでは救われないのじゃないか。規定を入れますと建築基準法の建前にやはり触れる問題ですから、それだけではどうかというような感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/9
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010・田中一
○田中一君 今、加藤さんから現在の実情では、建てる土地の確認といいますかを行うことは無理であろうという御発言があったのですが、それはどういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/10
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011・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) 建築主事の人数からしても、全部一々現場を見るということはおそらく不可能な状態じゃないかと思うのです。これはもっと主事をふやせという問題になるかもわかりませんが、今の状態で全部当るということはちょっと無理じゃないか。中には見なくてもある程度わかるものもあると思うのですが、なるべく現場に行って見るようにしろということはけっこうだと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/11
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012・田中一
○田中一君 今、現在私は世田谷区に住んでおりますが、世田谷区の区役所には主事が何人おって、また主事が自分の仕事を代行させる者が何人おるかというようなことを、あなたは調査済みでそういう御発言をなさっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/12
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013・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) 詳しいことはよく存じませんけれども、全国に置かれている主事の人数というものは、かなり少いように聞いておりますが、それは主事が自分で行かなくても、だれかをかわりにやらせればいいということもありますけれども、私の考えでは東京なんかはなるべく見なければむしろいけないと思うのですが、全国的にかなり離れた所なんかもあるし、また問題ない所もあると思うので、全国的にそれを要求することは無理だろうという意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/13
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014・田中一
○田中一君 建築基準法だけの問題ですと今、現在十数万の建築上というものがいるのです。むろんこれは建築士法を変えて、ある点までのそうした確認に要する基礎調査と申しますか、そういうものの権限の委譲というか、委嘱してもいいわけなんですが、十数万おります。大体におきまして自分で製図をし自分で届け出をするなんということは大部分の者はやらないわけなんです。むろん法律できめておりますように、建築上を使って手続をしているのが常道だろうと思うのです。もしもいたずらに法の運用、たとえば民法の規定あるいは建築基準法の規定等に別々にあって一つの姿になっておるのだということは、他の法律の例から見ても了承いたしますけれども、いたずらに毎日のように自分の身辺に隣人とのトラブルがあるということは、これは政治の一番悪いことなんですよ。問題は運用の問題だと思うのです。従って、今、加藤さんのおっしゃるように、建築主事が手薄ならば、これは政治の問題、行政の問題になります。ふやせばいいのです。ふやすことが不可能ならば数十万といわれている建築士がいるのです。これらに対してそうした意味の委嘱といいますか、実地のそうしたあらゆる点を総合した判断を持ってもらって確認する方法もあるのじゃないかと思うのです。故意にやる人もあるかもしれない。これはむろんそういう故意でやっている者こそ、それを建築基準法だけでなく、別の法律で規制すべきものは指導はし得ると思うのです。ことに善意でやるような場合も、間違いを侵す場合もあるわけなんですね。それが法律が出れば、知らないでも違反すれば罰せられるのが当然であります。当然でありますけれども、ことに日本のように一坪の土地が相当に高い価値を持ったりするような場合には、これはそういうことがほんとうの悪意じゃないけれども、そこに盲点をついてすらすらっと入り込む危険が多分にあるわけです。従ってせめて実際建てる土地を、いろいろな形の法律から見て、これは妥当であるというような判断を建築主事がすべきではないかと思うのです。権限があるなしの問題じゃなしに、指導すべきだと思うのです。間違いを侵してはなりませんといって、民法の条文によって訴訟を起してもこれはいたずらなる訴訟なんです。話し合えば、あ、自分の間違いであったということを発見する人も多くいるのです。一々訴訟できめつけるというなら、これは行政官は要らぬわけです。立法の建前が違うからといって、実際の社会生活にわれわれが当面する問題に対して等閑視されている。あなたは今いいと言われておるわけではないと思うのです。だからもし建築主事が足らなければ、建築士という国が与えている有資格者がいるのですからこれにある程度の権限を移譲して、あるいは委嘱してやればいいのですよ。現に確認手数料というものをとっております。現行法ではそれは五百円から三千円までのものをとっておる。それを今度の法律改正で千円から一万円まで上げよう。当然その手数料は、十坪の木造の建築といえば割合に労力もかからない。鉄骨、鉄筋とかはたくさんの労力がかかるわけです。われわれの家庭、住宅、ことに中小業者の密集地域のような場合、これくらいのものはたとい申請の件数が多かろうとも、現地に行って間違いを侵さないような、平和な社会を作るような方法をとることは行政指導として当然じゃないかと思うのですよ。それについてどうお考えになりますか。あなたが、今の状態ではそうした上地まで調べるというような余裕がないのではないかとおっしやるから私は誓うのですが、方法は幾らでもあるわけです。確認申請というのは図面だけ見ればいいというものではないのです。だから建築基準法の建築そのものに関して、都市計画との関連を含めた政治性がある建築行政というものに持っていかなければならぬ、ということを建築家の諸君も言っているわけなんです。その点については、それは権限を侵すものであるとか、あるいはそういうことはいたずらな助言であるとか何とかいうような、どういうお考えを持っておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/14
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015・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) いたずらな助言とは全然考えないので、そういう違法な、たとえば借地権がないのに家を建てるとか、あるいは農地をつぶして家を建てるとか、あるいは境界線に完全に違反して家を建てるというようなことがあれば、これは当然注意をすべきだし、今おっしゃったような指導をするということは、大へんけっこうだと思うのです。またある程度、所によってはそういうことをやっておられる所もあるのじゃないかと思うのですが、ただそれを今の基準法の建前からいうと、義務として建築士に課するということは無理な点があると思うのです。現在の確認の性質というものが、さっき申しましたような非常に技術的な点に限られているという点がございますから、義務として法律の中でいきなりそういうことまで命じたり、こまかい規定なしにただ建築七はそういう点も確認しろ、ということをそれだけ入れることは、ちょっと今のやり方では無理だ、つまり義務として課するのは無理だと思うので、指導として建築士の心がまえとして注意をしたり何かするのは大へんけっこうなことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/15
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016・田中一
○田中一君 しかし建築基準法の中には、都市計画の見地から、空地の問題にしてもあなたおっしゃっているように、日照の問題にしてもいろいろ規定しております。だからそれに対して助言するのは一向違法じゃないと思う。またすべきだと思うのです。申請に対する確認というものはどこまでの範囲をいっているか、ただ判を押せばいいということじゃないのです。実態について十分調査をして、よろしいとならなければならぬのです。ことに法律に暗い国民は、ことに建築基準法のようなむずかしい法律はだれも国民が覚えようとしません。営業とする者は覚えているでしょうけれども、そういう場合に確認という行為がただ単に書類上の問題であるということに限らないと思うのですよ。だから当然見るべきだというようなお考えはあなたの口から出ませんか。見た方がいいんじゃないかというのも、先ほど見た方がいいけれども、見る何というか、今の建築主事の状態では困難であるといっているのですが、見るべきであるということを主張できないものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/16
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017・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) 見るべきだということはちょっと今の建前からいえないと思うのです。見るといっても相手が聞かんで頑張っておれば、今の基準法の建前から確認して参らなければならぬ義務があるわけですね。注意をするのは大いにけっこうだと思うのですが、注意をしても法律的な効果のない単なる忠告に過ぎないということに、今の基準法の建前ではなっている。それを変えるといえば基準法の性格をかなり変えなけれればならないので、やはりごまかい規定をある程度瞬いて相当全体的に考えなければならない。今の建前で見るのはけっこうだと思うのですが、必ず見ろ、必ずその点を注意をしろということまではちょっと言えない建前になってできていると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/17
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018・田中一
○田中一君 せんだって農林省の農地局の農地課長にきてもらって、農地であるとも知らずして調べもしないで申請があればそれを確認する、そのために非常に全国的に問題が多い。何とかしなければならぬということの陳情も国会へ参っております。で、出席してもらってその点に対してどうするかの問題を質問したところが、お互いに町大臣の申し合せを作って、そうして間違いのないようにいたしますということを答弁しております。だから民法の場合にはこれは訴訟ということになりますし、それから一々訴訟々々でやったんではとてもたまったものじゃないのです。だからそうでない、指導面で可能ではないか、またそうしなければならないのじゃないか、平和な社会を作るにはそうしなければならないのじゃないか。こう思うのですが、ただ法律の限度ではどうにもならないということになると、この法律は悪法なわけです。社会生活については、ことに平和を守る法律ではなくなってくるわけですね、こうなってくると。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/18
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019・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) この法律が悪法ということよりか、今の全体の組織がうまくいっていないということの方がむしろ適切だと思うのですが、方々に権限が分れていて、たとえば農地の方は農業委員会の方で見るというように、権限が分れていてそこがうまく統一されていない。建築基準法そのものが悪法だというよりも、むしろその権限分配がうまくいっていないということだろうと思うので建築基準法だけの責任ともいえない点があると思うのであります。ただおっしゃるように、もしやるとすれば今のような農地関係あるいは建築基準法との関係とか、いろいろそういう方面との個別的な折衝とか、あるいはそれをどこまでこっちに取り入れるかということを、個別的に考えて整備していく必要があると思うのであります。ですから一がいに今の状態がそのまま悪法ともいえないと思うのでありますが、そういう点は将来大いに考えていくべき点だろう。たとえば農地の場合についても、建築主事の方で気がつけば農業委員会に通知して向うからチェックしてもらうとか、何かお互いの連絡というものをもっと考えるべきです。理想的なことをいえば、どこかで窓口が一本で統一されていれば、国民の方としては非常に便利だということになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/19
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020・田中一
○田中一君 最後にもう一つ伺いますが、そうすると、農地の場合には話し合ってそういう問題はないようにする、話し合って連絡をとってお互いにそういう問題がないようにする、ということを政府は答弁しているのです。民法上の問題については相手がないものだか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/20
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021・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) 相手がないから、ですからやはり先ほど申しましたように、民法の中で個別的に検討しまして、こういう規定は建築基準法で一律にみてやるべきだというものを個別的に検討して、そうして必要なものは建築基準法の中に取り入れていく。あとは民法の方にまかすというような取捨選択がある程度必要だと思うのであります。ですから今のような農地の場合のように、行政官庁の圏の話し合いで片づけるというわけにいかない問題でありますから、これはやはり将来の立法の改正に待たなければならぬ点だと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/21
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022・田中一
○田中一君 改正に待たなければいかぬということで待っているような段階でないのです。だからそれをどういう方法をとったならば、そういう隣人間のトラブルがなくなるというような方法があるかということなんですが、今言っている行政指導で話し合うのもいいし、また建築主事は民法の規定ということも知っているはずですから、確認をすればよろしい。この場合にはこうしなければならぬのですよとか、こうですよとか。国民は善良なものであるという前提に立とうとするには。これは法の建前なんですよ。だから民法上あるいは農地法、その他各法律のいろいろな制限というものを、あるいは確認を出すときに、もっとこの問題はどうですか、この問題はどうですか、ということを質問してもいいわけなんですよ。おそらくそういうことはしてないから問題が起きるのです。そうして先方から、先方というのは何というか、悪意ある申請人はその法の盲点といいますか、くぐってやる場合もあるのですね。そういう場合にはことさらに確認をする際に十分注意をして、あるいは場合によっては隣人を呼び出して、この問題は話し合いがついているかということくらいは聞いたっていいと思うのです。手が足りなければ今言ったように建築士に代行さしてもいいじゃないか、そのために国が建築士という一つの資格を与えているのですから。そういうふうにすれば当面の問題は解決するのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/22
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023・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) 聞いてみても今の基準法の建前からはそれではどうにもならない。聞いても建築申請者がそれであくまでがんばるならば、やはり確認しなければならない建前になっているので、その建前を変えるとすればこれは相当基本的な確認の性質に関する問題ですから、ちょっとのところを動かしても急にはそれだけで変えるわけにいかないと思うのです。やはり全体の規定でもう少し根本的な改正ということになるのじゃないかと思うのです。今の民法の相隣関係にしましても、隣りの人が文句を言わなければそれまではということになるでしょうし、また境界の距離にしても別段の慣習があればそれによる。慣習があるなしということで非常に問題がある。だから一律にそこで一任意をすべきだといっても、今の民法の規定をそのまま持ってきたのではやはり工合の悪い点がある。これは民法の規定の改正ということも将来考えなければならないと思うが、ですから、農地の場合と違って相手のない仕事ということにはなるが、具体的にいえば結局法務省が民法の所管省ということになっておるので、法務省との折衝で民法の規定をどうするか、民法の規定に盛られている趣旨をどの程度基準法の中に取り入れるかということは、具体的にいえば法務省と折衝した上でそれを考えていくべきであるということになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/23
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024・田中一
○田中一君 政務次官が来ておりますから、加藤さんにちょっと待っていただいて、これに関連して質問したいと思いますが、今、加藤先生のお話のように、民法上の相隣関係については常にトラブルがある。そこで今訴訟を起さなければ事件というものは生じない。しかし訴訟を起さなくても法務局が地方にありますから、これらと話し合って現在の相隣関係に対する建築基準法との関連を一応判断して、建築申請人に助言をするというような方法について相談しあったことがありますか、法務省と。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/24
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025・徳安實藏
○政府委員(徳安實藏君) 法律上の私権に関する問題につきましては、今お話し合いをするといいましてもいろいろな関係がございまして、了解するような話し合いにはまだ至っておらないところでございますけれども、ただ行政的な処置といたしまして、なるべくトラブルの起きないように、建築主事が助言し指導するということにつきましては、建設省の方でも今後十二分に気をつけて指導いたしたい、こういう考え方でやっておる次第でございまして、法務省の方としてはそうした問題についても、法律上の私権に関することについて話し合いはまだいたしておらないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/25
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026・田中一
○田中一君 従来から建築基準法ができて約十年になっておる。その間にそうしたいざこざが全国的に相当あったと思う。私の近辺にも三つ四つあるのですから、最近に、実にたくさんの事例として。そしてそれをどう解決するかという問題はやはり建設省でも考えなければならないと思う。そういう訴訟が起きても、訴訟は建設省を通って裁判所の方に行ってしまうのですから、別にあなたの方には関係はないので事例はわからないでしょうが、自分の方は確認すればいいといって済むかもしれないが、そのために起きる社会生活の平和を乱すことは大きいのです。だからそういうような意味で今、加藤先生が言っておるように、法務省の方と何とかその問題を解決しようじゃないか、というような意見の交換をしたことがあるかどうか。おそらく今の政務次官の話ではしていないでしょう、していないという答弁なんですか、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/26
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027・徳安實藏
○政府委員(徳安實藏君) この法律の建前がおのおの異なっておりまして、先ほどから参考人のお話のように、私どもこれを扱っておる者から申しますと、何も法律を知らない国民多数がやっておることでありますから、従って法律上、精神においては何ら矛盾がありませんでも、適用を受ける国民の面から見ますというと、先ほどのお話のように、法律がみんな別個な性格を持ってできております関係から、まあトラブルがしばしば起きているということにつきまして、私どもは非常にけげんな気持を持って、先般来から研究もし、調査もしているわけでありますけれども、長い間の、この法律の関係で、法制局におきましても、また法務省におきましても、建前が、はっきりと、おのおのこの分限というものがきまっておって、農地の問題にいたしましても、農地をいたずらに宅地にしようとかといったときには、農地法でやるのだ。それは基準法でやるべきでないというような、ほんとうの法律専門家の考え方で、こういう筋が達成されるのでございまして、しかし、国民は、そういうことを知らないわけでございますから、そこには、善意な諸君でも罪を犯す。そういうことが、身辺にしばしば起きているということにつきまして、私ども非常に遺憾に存じている次第でございます。これは、ひとり建築基準法ばかりではなしに、ほかにもそういう例はたくさんあるそうでございますから、政府間におきましても、いずれ近いうちに、そういう問題を是正するか、あるいは法律上の連繋というようなものにつきましても、双方の精神をくみ入れるような組み立て方に改正するとか、何か相談をしなければなるまいという気持は、ただいま持っているわけでございますけれども、この問題にのみ限って、すぐに法務省あるいはその他の関係と、最近相談したという例はないわけでございます。
ただ将来におきましては、何とかこうした問題を実情に即するように、国民生活の実態に即するような考え方になおすべきではないかという気持は持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/27
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028・田中一
○田中一君 だめじゃないか、徳安君、そんないいかげんな答弁をしたのでは。僕が言っているのはですよ、何も相談などしたことはないのですよ、そういうことはね。そんなしゃくし定木なことを伺っているのじゃないのですよ。農地委員会と話し合って、円滑に、そうした間違いのないようにいたしますと、先般答弁したのですから、しゃくし定木に、法律のことを、法律の権限を言っているのじゃないのです。社会生活に非常な悪影響があるから、そうした面について、今までの事例に基いてですよ、何か相談したことがないかどうかということを伺っているのですよ。したことはないはずなんですね、今の御答弁では。
問題は、あなたの方に火をかぶらなければいいということじゃないのですよ。防犯という言葉があるのです。行政指導も、その一つの行き方です。あるいは補導ということも、その一つの行き方です。犯罪を犯させないように努力するのが、あなた方の役目なんです。義務なんですよ。だから、今のような相隣関係では、はなはだ困難なことは、よく加藤先生から言われたようにわかりました。しかし困難の中でも、そうした問題の起らぬようにあなた方が努力して努力ということは、早速出発することなんです。かつてやったことがあるかどうかということは、まあないらしいから、そういうことを徳安さん、あなたは言っているけれども、今後、農地委員会と話し合って、そういう間違いがないと答弁したと同じように、私は、訴訟を起さなければ問題ないのだから、訴訟を起されたら困る。あったところが、法務省あたりと話し合って、これをどうするかという問題を話し合えば、法律的な効果はないにしても、指導はできると思うのです。国民は善良なる国民という前提に立てば、間違いを犯さないで済むような場合もあるではないかというのです。
それは、法務省と一緒に相談をして、それも先般、農林省の方と話し合ってそういう間違いをないようにすると言った、その言葉をそのまま、ここにも移して、そういう努力を早速する。あるいは話し合ってみるということの御答弁を願うならば、それで私は満足するわけなんです。ただし、それは直ちに実行することなんですよ。実行することなんです。今、加藤先生に伺っても、その点、現段階ではだめだというのだから、だめならば、せめてあなた方は、われわれの社会を平和にさすには、隣人とのトラブルがないように、即刻行動を起すという約束をしてもらわなければ困るのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/28
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029・徳安實藏
○政府委員(徳安實藏君) 先般来から、まあ御意見もございまして、私の方でも、御答弁申し上げておりますが、法律の問題につきましては、正式に取り上げて、話を正式に持ち込んだわけではございませんけれども、この改正につきましても、今申し上げたような、あるいは御疑念がありますような点につきましては、相当法務局なり、法務省とも、話し合いをして論議はいたしておるわけでございますけれども、しかしその論議が、実を結ばないという段階でございまして、やむなく今引き下っておるわけであります。
この改正に当りましても、農地法などの問題について、ある程度までは、これに入れるべきではないかというような関係かとも、私どもは、建設省では考えるのでございまして、一応折衝はしてきたのですけれども、今の法律の建前からいえば、ひとり建築基準法ばかりのみに、そういうものを入れるわけにいかぬというような法律専門家の御意見によりまして、とうとう引き下ってしまった。
従ってやむを得ませんから、そうした根本問題は、将来のことにいたしまして、とりあえずは行政処置によりまして、建築主事等を指導して、そうして出願が出ましたとき等には、そうした犯罪が起きぬように十分助言さしていこう、指導さしていこうということは、これは先ほどお話がありましたように、農地委員会はもちろんのこと、法務関係におきましても、話し合いをいたしまして、そうして、できるだけ適正な助言をいたしたいと、こういう方針には変りはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/29
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030・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) ちょっと今の点で、発言さしていただきたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/30
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031・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 加藤先生、どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/31
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032・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) 今の点に関連しまして、先ほど、具体的に法務省と話し合えばいいと申しましたのは、私の申しましたのは、その立法的の面でございました、農地の場合と、ちょっと性質が違うのです。農地の場合は、どちらも農林省は、行政的な権限を持って、それと建設省と話し合えば、ある程度の話はできるわけですけれども、法務省が、もちろん法の所管庁だといったのは、立法の分野の所管庁で、それを行政指導で、どうするという問題ではない。
従って法務局と話し合って、どうするということでは済まない問題で、ですから将来基準法の改正の中に、民法的な規定の一部を、その精神をくんだ規定を取り入れていくとするならば、立法の段階で法務省と御相談になったらいいだろうという趣旨で申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/32
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033・田中一
○田中一君 それだけでは困るのでね、当面の問題、何かいい方法はありませんか、加藤先生。行政指導というか、防犯の。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/33
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034・加藤一郎
○参考人(加藤一郎君) 今の、結局注意をするということでしょうね。注意も、できるだけ指導の面で、それを生かしていくということでしょうが、それだけでは、今の基準法の建前では、どうにもならぬ面があるので、私が先ほど、初めに結論として、将来、民法の精神をくんだ規定を入れていくべきではないかということを申したのですが、これは、あるいは法律専門家、ことに法務省とか法制局とか、そういう技術的な専門家とは、相当あるいは意見が違い、私個人の意見になるかと思うので、また法律学者の間にも、おそらく、民法は民法でいいのだ、建築基準法は、建築基準法でやっていけばいいのだ、というような意見がかなり多いと思うのです。私の意見が、必ずしも支配的な意見ではないだろうと思う。その点も御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/34
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035・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 他に、御質疑はございませんか。——ほかに御質疑がございませんようでしたら、参考人に対する質疑は、この程度において終了いたしたいと思います。
加藤参考人には、長時間にわたり、貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。委員会にかわりまして、厚くお礼を申し上げます、
それでは、建築基準法の一部を改正する法律案について、政府当局に対する質疑を行います。
先日の委員会で、田中君から問題点の指摘があり、それに対する答弁は、本日の委員会で聴取することになっておりますので、まず住宅局長から、田中君の質問に対する答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/35
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036・稗田治
○政府委員(稗田治君) 前回の委員会におきまして、田中委員から御要求のありました手数料関係の資料を本日提出いたしたわけでございます。建築工事関係資料という横とじの二枚つづりの紙でございますが、それをごらん願いたいと思います。
第一のOビル、大手町ビルでございますが、これの建築基準法関係以外の建物に付随した手数料の総額がそこに合計の欄にございます。七万一千二百五十円。これはできるだけ事務当局におきまして判明したものをあげたわけでございますが、ボイラーの検査手数料であるとか、内圧容器の検査手数料、エレベーターの検査手数料、給水装置の検査手数料、水質の検査料、建築材料の検査料、道路使用許可申請手数料等でございます。七万一千二百五十円でございまして、これに、改正前の現行の三千円という確認申請手数料が加わるわけでございます。このほかに三千円加わりますので、合計しまして、七万四千二百五十円ということに相なるわけでございます。
次は、三千坪ぐらいのビルをということで、Hビルを選んだわけでございますが、これも、実例でございますが、同じように手数料関係につきましては、ボイラー関係の検査手数料、エレベーター関係の検査手数料、給水装置検査手数料、建築材料検査料、道路使用許可申請手数料等でございます。一万一千九百円になってございまして、このほかに現行の確認申請手数料が三千円加わりまして、一万四千九百円というように相なるわけでございます。
それから東京都の方におきまして、実際両建物につきまして、どのくらい検査確認等に費用がかかったかというのが(2)としてあげてございます。大手町ビルにつきましては、そこに掲げてありますように一万三千四百四十円、それからHビルにつきましては一万二百円というような費用がかかっておるというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/36
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037・田中一
○田中一君 これは、電気関係の手数料はないのですか、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/37
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038・稗田治
○政府委員(稗田治君) 実は、私も、この資料を集めましたときに、相当大工場にも比すべき変電室等があるものですから、何か手数料があるのではないかというので、いろいろ通産関係等にも、問い合せたわけでございますけれども、ないそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/38
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039・田中一
○田中一君 これは、やはり電気会社の方が、そういう資格を持っておって、請負の金額の中に、それが入っているというようなことじゃないでしょうかね。電気屋さんの請負の中に、それが含まれて支払われておるということじゃないでしょうかね。ないことはないのじゃないかと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/39
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040・稗田治
○政府委員(稗田治君) 手数料というのでなしに、そういうような意味では、工事の負担金の中に入っておるそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/40
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041・田中一
○田中一君 そこで、第二の東京都で調べた。Oビル、Hビルの実例を見ても、少くとも一万円をこえているということは明らかなのです。これはおそらく内輪に見ているのじゃないかと思うのです。
従って、この点については、さっきも理事会で、いろいろ話し合ったんですが、修正案を出そうということになっておりますので、出すときに、意見を申しますけれども、私といたしましては、大体、これで質疑は終えてけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/41
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042・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 速記を止めて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/42
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043・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/43
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044・内村清次
○内村清次君 罰則の規定に、違反建築についての体刑という問題が出ておりますね。六カ月の体刑というようなことが。これは、今日まで、違反建築の実数それからまた、是正の実績だとか、それからそれが国損になった例だとかいう実績は、あなたのほうでは統計をとっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/44
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045・稗田治
○政府委員(稗田治君) 告発しまして送検になった件数とか、その実刑がどういうことになったかということにつきましては、そのたびごとに、報告をとっておるのでございますけれども、ただいま、ここに資料を持ち合わしておりませんので、数字そのものは、ちょっとお答えいたしかねるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/45
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046・内村清次
○内村清次君 そうすると、体刑という問題は、建築違反というような項目から考えますと、私たちは少し重過ぎはしないかというような感じもするんですが、どうやった場合が体刑になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/46
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047・稗田治
○政府委員(稗田治君) 今回の改正におきまして、行政庁の命令違反には、六カ月以下の懲役刑が課せられることになったのでございますが、御承知のように、建築基準法の規定は、敷地、構造、設備及び用途の、非常に多岐にわたっておるわけでございます。その違反も、建築物による道路の不法占拠というような、非常な公益上にも害を及ぼす違反もございますし、また、単なる手続違反というような、種々な段階があるわけでございます。
したがいまして、命令違反を、一々告発するというわけのものではなく、個々の事例にもよるわけでございますけれども、非常に悪質な違反、違反をまた放置しておくことによって、法の威信にかかわるというようなものについて、こういった告発をする考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/47
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048・内村清次
○内村清次君 今回の規定に違反することが明らかな工事中の建築物というものについては、工事の施工停止というのがありますね。だから、この項目で、もちろん私も、違反することが明らかな工事とは、一体どういうものであるかということもあわせて質問いたしますが、工事の施工停止ということが、この規定の中にも入っておりますから、この停止をして、そうして体刑に該当するような工事は——違反工事というものは、これは未然に防止をするというような処置ができないものかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/48
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049・稗田治
○政府委員(稗田治君) この工事の施工停止の命令でございますが、これは現行法におきましても、工事の施工の停止命令は出るようになっておるわけでございます。
しかしながら現行の規定におきましては、まず違反しておるということを相手に通知をいたしまして、それで相手から異議の申し立てがあれば、公開による聴聞をする日を公示しまして、それで公開による聴聞をやりまして、その上で本命令が出る。その本命令の違反のときに、初めて現行におきましては十万円以下の罰金という罰則の規定が働くというようになっておるわけでございます。
従いましてそういった、まず事前に通知を出す。それから通知を受けるまでに相当日がありますが、それから異議の申し立てがある。それでまた公開による聴聞を行わなければならない。それには、前もって予告をしなければならん。その間に、たとえば区画整理などをしております場合とかに、道路の中に、そういった紛争の命令を出すまでの間に、建物が、どんどん仕上ってしまう。かりの命令は、現行の規定でも出すようになっておるわけでございますけれども、現行の規定のかりの命令では、罰則の規定は働かないようになっておるわけでございます。
従いましてこれはそういった法の威信にかかわるまた公益上非常に害のある工事をやっておるという場合に、これは何人が見ても納得できるような違反工事を指すわけがございますが、その場合は、事前通知であるとか、公開による聴聞というような手続を出さずに、木命令を最初から出すというわけでございます。
それで工事の施工停止命令が出まして、停止した人には、この罰則は働かないわけでございます。構わずに、罰金くらいこわくないというので、罰金覚悟で建物を仕上げてしまうというような、悪質な違反者につきまして告発をしまして、場合によれば、その実態に応じては、六カ月以下の体刑もやむを得ないじゃないかというように考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/49
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050・内村清次
○内村清次君 そこで、そういった悪質な工事施行者に対しましては、手続がある。しかもまた、そういう違反建築も、確かにこれは、明らかに中止をすべき違反行為であるということも、今回は承認されておりますが、しかし、それでも違反建築をやるというものが、その体刑という問題で、あなたの方では告発するということになるような御説明でございますが、そういったやはり事例は、たくさんありますか、過去において。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/50
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051・稗田治
○政府委員(稗田治君) 違反の命令を聞かないで、そのまま続行したというので、従来のまあ罰則は、罰金刑でございますけれども、告発処分をされた例はございます。
ただいま、先ほど内村委員からお尋ねの点で、資料が参りましたので、一部の資料でございますがお答え申し上げます。
三十二年度における五大市及び八大都道府県の調査によりますと、是正命令を出したもの四百件のうち、告発したものは二十件となっております。告発後の状況は、現在控訴中のものが多く、罰金刑の確定いたしたものは、二十件のうち九件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/51
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052・内村清次
○内村清次君 そこで罰金刑なら、これは建てた方がいいのだ、たとえ判決が下っても、罰金刑であるからして、そういった罰金刑は、予想しながら建てるというような件数が多ければ、これは法秩序の建前から、あるいはまた今後のまた建築物に対する市街地の要請だとか、あるいは他人に迷惑をかける、あるいは公益に迷惑をかけるという立場から、これはしなくてはならないが、大体罰金刑をこうむったならば、たとえば責任者の意図の通りに是正されていくという原則があったならば、私は無理にその体刑という問題は、必要はないのではないかというような感じを持ちますが、この点は、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/52
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053・稗田治
○政府委員(稗田治君) 全国におきましては違反建築物を建てる建築主の中には、かなり悪質なものがあるわけでございます。
それで、もちろんこの処分といたしましては、こういった罰金刑なり体刑の司法処分ばかりでなしに、行政処分としてのあとの建物に対する使用禁止であるとか、あるいは改築命令であるとか、いろいろ行政処分が伴うわけでございますけれども、御承知のように行政処分を強行し確保する手段としましては、行政代執行法によってやるわけでございます。そうしますと、命令を出した行政処分の中には、不作為行為なり作為行為なりあるわけでございますが、その中には代替性のない、つまり行政官庁がかわってこれを執行のしようのない処分等もあるわけでございます。従いまして法に必ず合わせるというのには、かなり命令違反というものにつきまして、一応の、片方に罰則がありませんというと、行政代執行で、できない行政処分の命令もございますので、今回、そういうように改訂を加えたわけでございますが、もちろん体刑六カ月以下になっておりますが、これも、最高の限度としてなっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/53
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054・内村清次
○内村清次君 この点は、私たちも外国の事例その他見まして、不法建築を一夜のうちに作りあげる、しかもそれが、交通路面に非常に接触をして往来を妨害をするというような点も、よく聞いておりますけれども、だんだんそういった不法建築が、今後の情勢としては多くなってきわしないかという感じも、それは一面ありますが、事例としてですね、体刑をせぬでも、罰金を相当多くして、それを防止することができれば、その方がいいのではないか、こう感じているわけです。
その点は、まあ十分行政指導で違反建築物がないように、一つ指導していただきたい。これは要望いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/54
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055・徳安實藏
○政府委員(徳安實藏君) 今の御要望でございますが、私どもも、この法改正に当りまして、なるべく罰則を重くするというようなことは、あまりいいことでございませんから、いろいろと聞きもし、調査もさしたわけでございますが、先ほど、局長が御説明申し上げましたように、件数も相当ございますし、三十二年度の調査によりますというと、全国で違反建築物の件数が約一万八千、しかも、そのうちの六千というものが全くの無届け建築違反であるというような点、それから少しぐらいの罰金は受けましても、建ててしまって、そしてほかに売ってしまえば、その方が得だというようなひどい人が、非常にふえて参りまして、そしてかりに工事の中止の命令を出しましても、張り番をして見ておるわけではありませんから、受け取りましても、二日や三日のうちには建築ができてしまう。そして善良なものに売ってしまうので、建てた人間がわからないというようなことで、非常にこうした問題が頻発しております関係から、やむを得ぬだろうという気持になりまして、六カ月の問題を、私どもも了承したわけでございまして、お説のようにできることなら、こうした重い罪を課さなくても、軽い罰金刑ぐらいで処置ができれば、これにこしたことはないと思っておりますが、事態が、どうも悪質なものがふえまして、これを放任しておきますというと、他にも善良な国民に弊害を及ぼすというようなことを考えまして、やむなくこうした重い罰則の規定を加えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/55
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056・内村清次
○内村清次君 それから今一つ、今回の改正案の第五十五条の項目の中にありますが、この考え方というのは、敷地面積から三十平方メートル差し引かないで、敷地面積の六割をやる、こういった建蔽率の問題が提起されております。これは昔に返るわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/56
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057・稗田治
○政府委員(稗田治君) お答え申し上げます。
市街地建築物法時代に、敷地面積から三十平方メートルを差し引くというような規定はなかったわけでございます。従いましてある面につきましては、昔に返るところもあるわけでございますが、この三十平方メートルを差し引かない区域というものは、新たに指定しまして、どうしても過小宅地が多くて、既成市街地であって、三十平方メートルを差し引くということが、実情からいって実施が困難であるという区域に限って、この三十平方メートルを差し引くというのをやめるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/57
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058・内村清次
○内村清次君 そこで今回、同時に提出されております土地区画整理法の一部改正の中に、立体換地というのが出てきておりますね。そこで過小宅地地域は、これは区画整理をして、そうしてその立体換地で、まあ建物によって換地をするというような大体思想が出てきておりますが、たとえば、六坪ぐらいのところに、建物を密集するというようなことは、昔に返るような、そういうことは、今後の都市構造としても、どうだろうかと私たちは思っておるのですが、やはり行政指導としては、まあ立体換地をして、そうしてその中に住居をかまえていただくというような指導方法は、どういうふうに考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/58
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059・稗田治
○政府委員(稗田治君) 仰せのごとく区画整理をやりまして、過小宅地を整理したというような区域におきましては、この三十平方メートルを差し引くというのをやめる区域には入れないつもりでございます。これは実情を申しますというと、たとえば一戸の商店などが焼けたりいたしまして、敷地が十五坪しかないというようなところに立っておる商店などがあるわけでございます。そうしますと、焼けたときに、再築した場合に三十平方メートルで九坪になりますから、十五坪から九坪差し引いて、残りの六坪のまた六掛というようなことに相なってしまいまして、実際上、実情として無理ではないかというような事例が、ままこの既成市街地の中であるわけでございます。
そういう所を建設大臣の承認を経て、区域を定めまして、そういう、どうしても三十平方メートル差し引くというのが、実情からいって適しないという区域に限ってだけ、緩和しようというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/59
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060・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 他に、御発言はございませんか。——他に御発言もございませんようですから、質疑が尽きたものと認めて、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/60
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061・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 御異議ないと認めます。
それでは、これから討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにして、お述べを願いたいと思います。なお修正意見のおありの方は、討論中にお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/61
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062・田中一
○田中一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本法案に、
建築基準法の一部を改正する法
律案に対する修正案
建築基準法の一部を改正する法律
案の一部を次のように修正する。
第六条の改正規定中「一万円」を
二万円に改める。この案を提案いたしまして、原案に賛成するものであります。
当委員会で、今まで十分に参考人その他の方々に出席していただきまして、改正案並びに建築基準法のあり方についての質疑をかわして参りましたが、その中には、幾多の国民生活上不備な点等が発見されております。この点につきましては、政府もこれを是認しておるのが現状でございまして、これにつきましては、近い将来に抜本的な基準法の改正を目ざし、国民生活の平和を維持するような方法に進んでいただきたい。かつ参考人等の意見の中にも、それらは、十分に指摘してあります通り、都市計画法との関連等、あるいは民法との関連等につきましても、十分な検討をしていただきたいと思います。
従って将来、政府が熱意を持って建築基準法の改正に努力するということを前提として、本案に賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/62
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063・岩沢忠恭
○岩沢忠恭君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま田中委員から提出せられた第六条を修正することにおいて本案に賛成するものであります。
なお、この建築基準法そのものにつきましては、あまりに本案が微に入り細にわたる教科書的なものでありまして、従いまして、この格好から見ますと、非常に親切のようでありますけれども、何しろこの建築なり、あるいは環境というものが、日々進歩している現状から見ますると、あまりにこの基準法というものをワクにはめ過ぎて、従って建築なり、その他の都市計画から見ても、非常に拘束する面が多いように見えますから、将来この運用の範囲を弾力性を持たす意味におきまして、この基準法を根本的に簡素化するということを私は希望して、この法案に賛成するものでありますし発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/63
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064・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 他に、御意見はございませんか。——御意見もないようですから、討論は終結したものと認めて、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/64
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065・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 御異議ないと認めます。
それでは、これから建築基準法の一部を改正する法律案についての採決に入ります。
まず、討論中にありました田中君提出の修正案を問題に供します。田中君提出の修正案に賛成の方は、挙手をお願いいたします。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/65
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066・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 全会一致であります。よって田中君提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。
修正部分を除いた原案に賛成の方は、挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/66
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067・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 全会一致であります。よって本案は、全会一致をもって修正すべきものと可決されました。
なお本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/67
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068・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/68
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069・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 次に、土地区画整理法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本法案については、前回まで逐条に質疑を行なって参りまして、それに対する質疑は、一応終りましたが、なお御質疑のおありの方は、御発言を願います。——別に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めて、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/69
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070・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 御異議ないと認めます。
それでは、これから討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/70
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071・田中一
○田中一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本法律案に賛成する者であります。
しかしながら、今次の改正が、事業の進行を考えるのに急であって、実態に対しますところの措置が、不十分な点が多々見受けられます。ことに権利の申告制度は、所有権以外の未登記の権利を保障する重要な手段であり、当事者の一方的な証明によって、申告後の権利の届け出が受理されるようになっておりますが、これは、区画整理事業地区の実態から言って、そうしたことが、今までの経験によって生み出されたものと思っておりますけれども、これらが、常に一方の権利者あるいはまた他の権利者との争い等がある場合、今度の改正の措置によって、一方的な申告だけで、その権利の異動を認めるというような措置は、事業を遂行する面からは便利であろうけれども、事業施行者の意思によって、他方の権利者の権利が侵害されるような点もありはしないかという懸念を持っておるものであります。
従って十分に双方の権利者、またはあらゆる権利者の権利を施行者は十分に間違いのないような方法をもって、それを確認して、手続等につきましても間違いのないような指導をされることを期待して、本案の改正に対しまする賛意を表するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/71
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072・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 他に、御発言ございませんか。——他に御意見もないようでございますが、討論は終結したものと認めて、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/72
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073・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 御異議ないと認めます。
これから採決に入ります。土地区画整理法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方は挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/73
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074・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/74
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075・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 御異議ないと認めます。さように決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/75
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076・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 次に、九州地方開発促進法案を議題といたします。
本日は、まず発議者より提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/76
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077・小澤佐重喜
○衆議院議員(小澤佐重喜君) ただいま議題となりました、九州地方開発促進法案の提案理由について、発議者を代表いたしまして、ご説明申し上げます。
およそ、狭隘な国土と過大な人工を擁し、原料資源の多くを海外に依存するわが国におきましては、国土を最大限度まで開発し、利用し、保全することが最も緊要であることは申すまでもありません。
九州地方開発に関しては、去る昭和三十二年十二月の通常国会において、「九州地方開発に関する決議」が満場一致をもって可決せられたのでありますが、この決議の趣旨等からも明らかでありますように、今日、九州地方は、地方ブロック的開発を必要とする多くの問題を抱えております。すなわち、九州地方のうち、とくに南九州は産業発達の程度が低く、所得水準の面からみましても、全国で最も後進的な地域でありますし、また、本地方は全体として台風の常襲地帯であり、その大部分が、特殊土壌等の劣悪な自然条件にあるのであります。さらに、北部川州の産業の実態についてみますれば、戦後における生産基盤並びに市場条件の感化等のため、諸産業の発展は漸次停滞の傾向に陥り、全体として戦後の発展は、他地域の発展傾向とは逆に、停滞ないし後退の傾向を示しておるのであります。
しかも本地方は、かかる多くの問題を内包する反面、有明海、屋久島、中部脊梁山脈地帯等に大規模な未開発資源等が残され、その他地下資源、農林水産等の重要資源の有効な開発が遅々として進まぬ現状であります。
従って、九州地方としては、特に苦しい南九州の後進性の引き上げに重点を指向しつつ、さらに九州地方全般の産業経済の停滞性を打破するため、広域経済的見地から、特に重要な、これら資源の開発並びに産業基盤の整備等の事業を促進して、国民経済の発展に寄与いたしますことは、国家的にきわめて緊要なことと存じます。
しかして、本地方におけるかかる資源の総合的開発を促進するためには、国が、その開発促進計画を作成し、これに基く事業を円滑、かつ強力に実施し得るような基本法の制定が、ぜひとも必要であると存ずる次第であります。
これが、この法律案を提案する理由であります。次に、法案の要旨について御説明をいたします。
第一は、内閣総理大臣は、九州地方開発審議会の審議を経て、九州地方開発促進計画を作成することといたしております。
この開発促進計画は、九州地方における土地、水、山林、鉱物、電力その他の資源の総合的開発の促進に関する計画でありますが、資源の開発と一体の関係にある産業基盤の整備事業並びに国土の保全に関する事業等は、開発計画の前提として、当然、含まれることは申すまでもありません。
第二は、九州地方開発審議会に関し、その設置、所掌事務、組織その他必要な事項について規定をいたしておりまするが、部会の設置その他審議会の具体的運用については、政令をもって定めることにいたしております。なお、審議会の設置に要する昭和三十四年度の予算としては百万円が計上されております。
第三は、開発促進計画に基く事業の実施及び調整についてでありますが、開発促進計画に基く事業は、この法律に定めるもののほか、当該事業に関する法令の規定に従って、国、地方公共団体その他の者が実施するものとし、経済企画庁長官が、毎年度の事業計画及び資金計画の調整を行うことといたしたのであります。
第四は、開発促進計画の実施を促進するための措置に関してでありますが、政府は、開発促進計画を実施するために必要な資金の確保をはかり、かつ、財政の許す範囲内において、その実施の促進に努めねばならないと規定いたしておるのであります。
また、開発促進計画に基く事業の実施促進に伴う、地方財政再建促進特別措置法との関係については、財政再建団体及び財政再建法準用団体である県が、開発促進計画に基く事業を円滑に実施でき得るように、自治庁長官が、財政再建計画の変更の承認に当って、特別の配慮を行わねばならないと規定いたしたのであります。
次に、これらの事業実施に当って、第十二条に規定する県にかかる国の負担または補助の特別措置の問題でありますが、昭和三十四年度予算においては、財源の裏づけを得るに至りませんでしたので、昭和三十五年度以降において所要の改正を行うことにいたしまして、付則第二項のごとき規定を設けたのであります。すなわち昭和三十五年度の予算の編成に伴って、重要な事業については、九割を限度として、国の通常の負担割合を二割程度引き上げる措置をとり、もって開発促進計画の実施促進を期している次第であります。
以上のほか、この法律の制定に伴い、必要な関係法律の一部改正を行うことにいたしております。
なお、付則第二項においては、財政再建団体及び準用団体たる県につき、特別措置をとることになっておりましたが、衆議院において、同項中の「第十二条に規定する県」を「九州地方の県」と修正せられたことを申し添えておきます。
以上が、この法律案の要旨でありますが、何とぞ、慎重審議の上、すみやかに御協賛あらんことを切にお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/77
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078・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 本法案に対する質疑は、次回の委員会において行うことといたします。
本日は、この程度において散会いたします。
午後零時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114149X01619590312/78
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