1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月十八日(水曜日)
午後二時十七分開会
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委員の異動
本日委員山下義信君辞任につき、その
補欠として阿具根登君を議長において
指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 久保 等君
理事
勝俣 稔君
柴田 栄君
木下 友敬君
常岡 一郎君
委員
有馬 英二君
草葉 隆圓君
斎藤 昇君
谷口弥三郎君
西田 信一者
松岡 平市君
横山 フク君
阿具根 登君
片岡 文重君
小柳 勇者
藤田藤太郎君
光村 甚助君
竹中 恒夫君
国務大臣
労 働 大 臣 倉石 忠雄君
政府委員
労働政務次官 生田 宏一君
労働省労働基準
局長 堀 秀夫君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
説明員
労働大臣官房労
働統計調査部長 大島 靖君
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本日の会議に付した案件
○最低賃金法案(内閣提出、衆議院送
付)
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001・久保等
○委員長(久保等君) これより社会労働委員会を開きます。
委員の異動を報告いたします。
三月十八日付をもって山下義信君が辞任し、その補欠として阿具根登君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/1
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002・久保等
○委員長(久保等君) 最低賃金法案を議題といたします。
御質疑を願います。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中正〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/2
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003・久保等
○委員長(久保等君) 速記を起して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/3
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004・阿具根登
○阿具根登君 大臣に最賃法について御質問申し上げますが、本論に入る前と申しますか、これは直接関係がございますので、一つ賃金というものにつ
いての考え方、定義と申しますか、賃金というものは一体どういうものであるか、こういう点について自民党内でも一番労働問題の詳しい大臣にうんちくを傾けた一つ御説明を願いたいと、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/4
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005・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 賃金につきましては、いろいろな考え方もあるようでありますが、私どもは、賃金は労務を提供したその対価として提供者が委員会会議受け取るべきものである。こういうように理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/5
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006・阿具根登
○阿具根登君 それだけですか、そういう考え方で賃金というものをお考えになっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/6
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007・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) お尋ねの趣旨がよくわかりませんけれども、賃金というものはそういう形で得られるべきものだと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/7
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008・阿具根登
○阿具根登君 私は賃金というものは、これは正常な労働の対価として支払われるものであるけれども、賃金というものは労使の間において、そしてその労働の対価としての話し合いができて、それから賃金というものだと、こう思うわけなんですね。ところが、大臣のお話では労働の対価だ。その労働の対価というものはそれでは一体だれがきめるものであるかという問題が起きてくるわけなんですが、これは最初私が申し上げました労働者と、あるいは使用者と話し合った上で出てくるのが賃金であるのか、あるいは一方的に両者が勝手にきめるのが賃金であるというような定義でございますか。これを御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/8
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009・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、賃金というものについての考え方は、やはり歴史的にいろいろな過程を経てきておると思います。本来、日中経済のもとにおいて、賃金の決定せられる要素というものは、大体需要供給の関係において昔はきまっておった。しかし、近代産業がだんだん発達するに従い、また、労働というものに対する意識が全般に違った考え方を持つようになってきて、最近では、ただいまお話のように、提供する者とそれを受ける者とが話し合って決定していく。また、そういうことについては、われわれはやはり自由経済主義者でありますから、自由な立場で労務提供者と、それを受ける者とが話し合いで決定していく、また、私は現在においてはそういうことが望ましいことである、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/9
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010・阿具根登
○阿具根登君 あとの方がよく私了解できなかったのですが、戦前はいわゆる労働者の賃金に対する発言というものが全然できませんでした。使用者が勝手に自分の利潤の中から一部を労働者に出して、これが賃金だということで進めて参りましたので、非常な低賃金になって、その低賃金に対しても自分たちの主張をすることができなかった。だから、御承知のように、諸外国から日本はソーシャル・ダンピングだということで非常に排斥をされ、現在もその考え方がまだ日本に対して諸外国では払拭されていない。まだ日本に対しては、日本はソーシャル・タンピングをやるのだ、こういうことが私は言われていると思うのです。
なるべく重複しないように御質問を申し上げたいと思いますし、時間が私もございませんので、本論に入っていきますが、衆議院でも論争されたようでございまして、それに大臣の反論もあっておりますけれども、いつも問題になっております西独のエアハルト経済相、この方たちが、大臣の説明では、これはあとで十分に——どこの大学ですか、上智大学ですか、そこで話をした場合には云々だと言っておられますけれども、事実発表されたものは、非常に日本は品物を安くしておるということは、特に労働者の低賃金であるということが指摘されておる、私はこう思うのです。それからもう一つは、日本がILOに復帰します場合にも、英国等が非常な難色を示したのは、やはり日本の低賃金が非常に心配になっておる。私はこう思うわけなんです。そういたしますと、賃金の考え方自体が、大臣は自由経済主義者であるから、だから私とは考えが違うということをおっしゃいましたが、それは立場の相違で、それは私も認めます。しかし、そういう形態を踏んできておるとするならば、私は、賃金問題については、やはり昔はそうであったから、日本が世界の経済市場から非常な非難を受けた。そうするならば、この際、労働者の意見が十分入ったのも賃金だ、こういうように解釈したいと思うのですが、その点はどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/10
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011・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 私は、今のお話の日本の賃金について、現在の段階においていつも例に引かれます分配所得のうちの勤労所得の占める分というものは、必ずしも低位にあるとは思っておりません。ただ問題とわれわれが考えなければならぬと思いますことは、やはり二重三重の産業構造のもとにおいて、いわゆる比較的零細な企業と、大きな産業の労働者との間の賃金格差、これはやはり一つの問題だと思います。従って、われわれは、その低いベースをどのようにしてできるだけ引き上げるかということは、これは皆が努力すべきことであるとそう思っておりますが、今お話にありましたように、いきなり日本に来て、たとえばエアハルトが日本が低賃金だ、どういうことをさしてそういうことを言うのか、彼の新聞に書いたもの、記者に対する談話等研究してみても、どうもつかみどころがない。それで、やはりなるほどILOの機関で、その昔は日本の低賃金が論じられ、あるいはまた、ソーシャル・ダンピングというふうなことを言われたこともありますけれども、私は、そういうことは必ずしも低賃金——そのころはいろいろデータもあったでありましょうが、そのデータに基く低賃金という攻撃以外に、やはりおくれて発達した日本の産業が、たとえばランカシアの紡績に対して、日本の紡績業が彼らを圧倒する地位を占めるようになってきた。そういうふうないわゆる商売がたきというふうな立場で、いろいろにガットの加入等妨害しておるという複雑な事情というものは、やはり見のがしてはいけないと思うのです。私が申し上げることが、日本の低賃金論を否定しようとするのではありませんが、日本に英国がいろいろなことでけちをつけたり、あるいはドイツが何かといえば——今は御承知のように、世界のマーケットで、日本とドイツの製品というものは猛烈な勢いで競争している第一の好敵手なんですから、両方とも。従って、彼らの言うことをそのままうのみに承服するということは私はとらない。しかし、賃金の問題についてエアハルトの言うことが、しっかりしたデータに基いておる、おらないは別として私どもは、やはり日本の賃金構造というものは、さっきちょっと申しましたように、非常に格差の多いということ、それを引っくるめて考えれば、そう高い方ではない、こういうことは言えると思うのです。従って、この賃金というものについて、現状で満足すべきであるというふうなことを私は考えませんが、そこで、私どもはこれから努めなければならぬと思いますことは、いかにしてこの零細な企業を育成してその低賃金をできるだけさや寄せしていくことができるかということに、やはり力を入れてあげるべきだと思うのです。
それからまた、もう一つは、日本の賃金を生み出すべき源泉である企業が、その賃金をコンスタントに支払って、なおかつ、必要なる中小企業というものを維持していかれるだけの、一方において努力を政府はすべきである。今の日本の賃金に対して、大体大ざっぱに言って今申し上げたような考え方をとっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/11
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012・阿具根登
○阿具根登君 諸外国の賃金と日本の賃金を比較するということは、なかなかむずかしい問題だと私も思うのです。しかし、エアハルトの問題が、そういう話題を投げたので、それじゃドイツの労働者と日本の労働者を比較した場合に、これは日本の労働者が、ドイツの労働者に匹敵するだけの賃金をもらっておるということが言えるだろうか、どうだろうか、こう考える場合に、エアハルトは、日本とドイツの貿易上の競争州ら、日本に対してわずかの期間でそういう発言をしたというのは、なかなかむずかしい問題であったというようなことを言われておりますが、エアハルト経済相が見るのは、やはり自分の国の労働者の賃金と日本の労働者の賃金を考えた場合に、そういう発言になってきたのではないか、こういうように考えるわけなんです。そういたしますと、それでは競争意識だけ、商売意識だけでそういうことを言ったのであるかどうかということを判定するためには、じゃあドイツの労働者の賃金と、日本の労働者の賃金は、どういう比率になっておるだろうか、こういうことが検討されねばならないと思うのです。それに対しては、どういうような御見解をお持ちになっておるのか、お聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/12
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013・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 賃金の問題について、各国の為替換算率で比較をするのがよく見られる例であります。そういう点から申せば、たとえば、日本は、アメリカの九分の一だ、ドイツは日本の一に対して二・四くらいでありますか、しかし、これは、私は、あまり意味がないと思うのです。そういう為替換算率だの比較率だけとるならば、ドイツは、アメリカに比してうんと低いということがはっきりしておる。これは、やはりその国の国民所得というものと、一般国民の収入というものが、大体正比例していくのでありますから、国民所得の比較で考えれば、きわめて妥当な線ではないか、そういうことが言えると思います。従って、私どもは、そういう意味から申せば、やはり日本人全体の国民所得というものは、日本に対してアメリカは、九・六くらいになりますか、ドイツも約二・四くらいかと思います。従って総合的に、日本の賃金格差というものを論ぜずに、賃金の平均からいえば、大体国民所得と匹敵している、そういうことが言えると私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/13
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014・阿具根登
○阿具根登君 一応数字では、為替換算率でいつも説明されておるようでございまして、それも肯定いたしますが、私はそれよりも、賃金——いわゆるそれによって生活を営んでおるという考えから立つならば、双方の労働者の生活環境はどうあるかということを一応考えてみる必要があるのではなかろうか、かように思うわけです。それで、大臣の先ほどの話では、日本は、大企業と中小企業の賃金の格差が非常に大きいということを言われております。これを裏返せば、中小企業は非常に低い、しかし、大企業はよそ並みにもらっておるのだ、低いことはないのだ、こうなると思うのです。そうならなければ、これは、日本は全般的に見て非常に低いのだということになりますから、格差という言葉が出てこない。そうすると、それじゃ一つの大企業といわれる日本の産業と、ドイツの産業と比較した場合に、賃金格差で大臣が考えておられる——大企業はそんなに賃金は低くありませんよというその大企業を一つ例にとってみますと、日本の炭鉱労働者とドイツの炭鉱労働者の生活環境はどうであるか、お調べであったならばお知らせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/14
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015・大島靖
○説明員(大島靖君) 先ほど来、阿具根先生御質問の御趣旨は、両国の賃金水準の比較につきまして、単に為替換算の名目賃金の比較では、必ずしも問題の解明にはならないが、両国の労働者の生活環境と申しますか、賃金によって実質的な生活内容を得る程度、いわば実質賃金の比較、こういうふうな点についてどうか、こういう御質問の御趣旨と存ずるのでありますが、先生御承知の通り、賃金の国際比較、ことに実質賃金の国際比較ということになりますと、非常に困難というよりも、むしろ不可能に近いわけであります。ただ従来、各国における専門家によって、いろんな実質賃金の国際比較の試みがなされておるわけなんです。その一つに、アメリカの労働省が実施いたしました各国の実質賃金の比較、これは、賃金によって得られます生活内容全般についてと申しますよりも、一番相対的に比較しやすい食糧についての比較を中心にいたしまして、実質賃金を相互に比べてみるというやり方、いわゆる食糧賃金比較という形でやったものが、かなり世界的に有名たわけなのでありますが、これは各国の賃金で、各国の食糧の物価水準で、どれだけの食糧を買えるかという、これによって比較をしているのですが、問題は、その各国における労働者の食生活の内容が、非常に違う。日本においては米を食う。ヨーロッパではハンを食うというように、内容が違いますので、そこで、できるだけそれぞれの各国の生活内容を同じものと仮定した場合どうかというようなやり方で、双方に基準を合せて計算いたしたものがあるわけなのであります。これは、アメリカとヨーロッパについて行われたものでありますが、それをさらに、まあ試算の域を脱しないのでありますが、日本とアメリカと比較いたしまして、アメリカとヨーロッパの比較に接続いたしますと、一応の比較ができるという形なんですが、その計算によりますと、ドイツの実質賃金、食糧賃金は、日本を一といたしますと、一・三四五、この辺の見当にくるのではなかろうかと思います。ただ、この点先ほど来大臣からも申し上げておりますように、それによって低賃金云々の批判になりますのはちょっと早計でありまして、アメリカとドイツを比べましたものは、もちろんさらに低いという形になりますし、従って、大臣が申し上げておりますように、一人当り国民所得の比較と対比して見るということが、やはり比較の問題となると思うのであります。大体以上の通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/15
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016・阿具根登
○阿具根登君 今御説明になりました、アメリカと西欧との比較、それから日本に対する比率、こういうもののデータを資料で出していただきたいと思います。できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/16
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017・大島靖
○説明員(大島靖君) お配りいたしました資料の中に入っておると思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/17
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018・阿具根登
○阿具根登君 それじゃ、あとでまた見てみます。
私が質問しておりますのは、日本の低所得者の問題についてはなかなかおわかりにくいだろう、だから大臣が言われておる格差のある高い方の賃金と、向うの同職業の賃金を比較する場合に、ただ為替換算率だけでは非常にそれはやりにくいと大臣が言っておられるので、実質賃金と言われましたが、その通り、実際同じ産業をやっておって、どちらも非常な大企業であるというような場合を見たときの生活状態がいかにあるかということを言っておるわけなのです。そういたしますと、今度はそれ以下の格差のある中小企業というものは、いかにみじめであるかということがはっきり出てくるわけです。だから、資料をあとで見てみますが、先ほど統計調質部長が言われた言葉では、そう格差はないのだというようなことを言われましたので、一つその数字を示していただきたい。私どもが持っておりますものは、相当開きがあるように感じておりますが、皆さんのように、非常な権威のあるところから調べることが私らにはなかなかむずかしいので、私らの数字を言えば、これはまた一方的に作ったのだというように誤解を受けてもいけませんし、ただ、感情的にドイツの労働者は炭鉱へ行って四万円から六万円の手取りの賃金をもらっております、日本では一万八千円から二万円じゃないか、これだけで割り切ったのではおそらく納得して下さらないと思うので、それを詳細に一つ調べて御提出を願いたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/18
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019・大島靖
○説明員(大島靖君) 全般的な平均賃金、名目賃金にいたしましても、食糧賃金にいたしましても、これを一応国際的に比較いたすとしますと、先ほど来申し上げた通りなんでありますが、ところが先生御指摘のように、各国ともに規模別の賃金格差というものがあるわけであります。従って、それによって規模別に各国を見た場合どうかということなんでありますが、同じく資料の中に詳細に出していると思いますが、日本の場合は規模別の格差が大企業に比べまして小企業、零細企業になりますと大体四割程度に賃金は落ちてくるわけであります。しかし、これがドイツの場合でございますと、大体七割から八割程度にしか落ちない、従って、規模別の賃金格差というものは、ドイツに比べまして日本がはなはだ格差は、大きいということなんであります。従って、平均が一応の数字になっておりますと、規模別に比べますとその国際的な格差というものは、規模の大きい方に至りますと、必ずしもそれほど開かないかもしれず、あるいは規模が小さくなりますとさらに開くかもしれないのであります。ただ御承知の通り、これもお配りいたしました貸金資料の中にかなり詳しくデータをあげているのでありますが、規模別格差、あるいは産業別格差と申しましても、平均の数字で申しますと、これには労働者の構成がべたに入ってくるわけなんであります。従って、平均の格差のほかにさらに規模別に見たらどうか、産業別に見たらどうかというふうな点も格差の点について考えてみなくちゃならぬと思います。規模別格差にいたしましても、今四割程度に落ちると申しましたが、たとえば職種を同じくいたしまして、年令を同じくいたす、あるいは勤続年数を同じくする、こういうふうな形で規模別の格差をとってみますと、これは必ずしも四割程度までには落ちないのでありまして、七割とか六割とか、あるいは場合によれば八割程度にしか落ちない場合も多いわけであります。そういう関係で国際的な比較になますと、産業別に、たとえば石炭で大きなところでドイツの場合の賃金と日本の場合の賃金と、これの実質賃金の比較はどうかということは、ちょっと国際比較としては困難であろうかと、かように存ずる次第であります。御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/19
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020・阿具根登
○阿具根登君 資料見てみましたけれども、私が質問しているのと少し違うようでございまして、私は生活の実態から割り出して、そうして双方の同じような産業をしている人たちの生活の実態、実質賃金というものを私は知りたい、こういうことをお聞きしているのでございますから、あとで資料でまとめてもらいたいと思いますし、この資料に対しても質問ございますが、これは次のことにいたします。
そこで大臣にお尋ねいたしますのは、賃金の問題で、今少し質問してみましたが、大臣は大臣なりのお考えを述べておられますが、これを否定するものではございませんが、私は納得できません。否定しないというのは、大臣の立場からおっしゃられることでございまして、私は賃金という問題について、賃金によって生活している人たちの考え方から見てどうも納得できない、かように思っております。
そこで、それでは最低賃金とはどういうものであるか、いわゆる政府がもう三回にわたってこれを出されている、ILOでは三十年も昔にこれがきめられている。十九世紀の末から最低賃金というのが各国では論議されている。そういうものに対して一顧だもせず、日本は資本主義、軍国主義でこれを押えつけてきている。そうして戦後十三年もたった今日、やっと最低賃金という名前の法律案を出されております。そういたしますと、最低賃金とは何か、この点について御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/20
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021・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 一般に最低賃金と申しておりますのは、国家機関が法的強制力をもって賃金の最低を規制して、使用者はそれ以下の賃金を払ってはならないということをきめておるのが最低賃金である、こういうふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/21
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022・阿具根登
○阿具根登君 その点は私も同感でございます。そうすると、国家の力で最低の賃金というものをきめて、それ以下の賃金で働かしてはならないという基礎になるものは何でございますか。最低賃金を国家がきめる、その基礎になるものは何でございますか。たとえば生活費もございましょう、あるいは政府がいつも言っておられる支払い能力等もございましょう、あるいは他産業との関連もございましょう。しかし、国家が国家の大きな力によって最低賃金という法律を作って、それで規制して、しかもそれ以下の賃金で人を使ってはできないという最も根本的なものは何でございますかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/22
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023・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) そのお話について考えますことは、私は賃金というものは、さっきもお話の間に出ましたように、本来、労務を提供する者と労務を受ける者との自由なる話し合いによってきめられるのが原則だと思っております。従って、政府というものが、ヨーロッパの極端なる統制経済をやっておる国家のように、法律がすべて賃金をきめるというふうなことは私どもはとらない、そうあるべきものではないと思っております。また、そういうふうにしたいと思っております。しかし、ヨーロッパ諸国でも自由経済をやっておる国家で、やはり一部の人々に法的規制をやっておるものがあります。それは今私が前段に申し上げましたようなことでは救われない人がある。そういうような人々に対しては、やはり社会正義というふうな立場から、政治はこれらの人々を救済するために法制化して最低賃金というふうなものをきめる。私どもやはり日本でもそうあるべきだと思っております。従って、その基礎になるものは、やはり生活費、まあそれからいろいろ日本ではございますたとえば生活保護の算定もありましょうし、あるいはまた、人事院がいろいろの方式によって大体公務員等の賃金をきめる場合の資料にするデータもございましょうし、そういうふうなものを勘案して、そして大体この程度というものが、やはり一応の最低基準として取り上げられるべき参考資料とされるべきものではないか、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/23
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024・阿具根登
○阿具根登君 ただいまの御答弁で、非常によくわかりましたが、そういたしますと、最低賃金というものは、業者と働いておる人が話し合ってきめるのが一番妥当である。これが原則である。しかし、それができない場合に、生活に困窮しておる、生活が営まれない、そういう人に対して、法は、その生活を守る意味をもって最低賃金というものを作って、法律としてこれを守るのだ、こういうことになると思いますが、そういう解釈でよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/24
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025・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 私どもは、原則的にはやはりそういうふうな手段をとっていくべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/25
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026・阿具根登
○阿具根登君 そうしますと、大臣がそうおっしゃいましたように、たとえば人事院が調べた標準賃金もございましょう。成年男子で七千五百なんぼ、生活困窮者が一人三千五百なんぼというのが出ているようでございます。そういうのが出ておるようでございますが、大臣がただいま言われましたあの言葉の根拠、いわゆるどのくらいが最低賃金であるか、人間が労働をやって生活を営む場合に一体どのくらいが要るのか、一応の考えがあって最低賃金というものが出せると私は思います。そうすると、幾らが最低賃金として考えられる線であるか、これをお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/26
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027・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) ただいま大臣から御答弁いたしましたように、最低生活費がどの程度であるかということを検討いたします際には、いろいろな標準が考えられるわけでございます。たとえば、先ほどお話しいたしましたように、生活保護法の保護基準によりますと、東京では成年男子の単身者の月額は約三千五百円となっておることは御承知の通りでございます。また、これに対しまして人事院が標準生計費というものを東京の満十八才成年男子単身者について策定しておりますが、これは月額東京で七千五百円程度でございます。まだ、そのほかにあるいは総理府統計局の家計調査であるとか、あるいは厚生省の厚生行政基礎調査であるとか、いろいろな資料があるわけでございます。そこでしからば、これらのうちどれを最低賃金として、最低生活費としてきめるべきかという問題になるわけでございます。ところが、わが国の労働者の生活状態あるいは賃金状態は、御承知のように、その地域あるいは業種あるいは職種等によりましていろいろな格差があるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、この最低賃金法が実施になりました暁には最低賃金審議会、これは労・使・中立の三者同数の構成から成るものでございますが、この審議会においてその点を御検討願い、これに対しましては、私どもの方からはただいま一、二の例として申し上げましたが、そのほかに、その地域、業態、その生活状態の労働者については生計費に関する調査資料はこの程度であるという資料を全部お出しいたします。また、それと同時に、その地域あるいはその業態におきまするところの類似の労働者の賃金水準というような統計調査資料もございます。また、通常の企業の賃金支払、こういうようなものに関するいろいろな資料もございますが、これらを提供いたしまして、そうして具体的に最低賃金をその地域のこの業種の労働者についてきめる場合には幾らにする、その場合に今申し上げました三つの基準を参考としつつ御意見をいただくわけでございますが、その場合にはその具体的な場合につきまして、ただいま申し上げましたような資料を詳細に提供申し上げ、十分御検討願って、その意見を尊重して最低賃金を決定する、このような方法を考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/27
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028・阿具根登
○阿具根登君 人事院が示しておる成年男子の七千五百円とか、それから空活扶助を受けておる三千五百円という数字は私も知っておるのです。そういうものでなくて、今大臣が言われたように、最低賃金というものは生活を維持できる費用だ、こういうふうにおっしゃったと私は思っておるのです。そうするならば、生活を人間が営む上にどのくらい最低要るかということはすでに皆さんの、私は今まで一月以上これをやられたから、すでに資料を持っておられると思うのです。そういう腹案も何もなくて法律をきめて君たちが最低賃金を持ってきなさい、それによってこれをどうか見てみましょう。そういうことでは私はとても法律をここまで作られたとは思わない。あなた方はちゃんとそのものさしを持っておられるはずです。それを知らして下さいというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/28
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029・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) ただいま申し上げましたように、東京におきまして成年の単身者が日取低の生活を営むという基準は、これは厚生省においていろいろカロリー計算その他をいたしまして、三千五百十円という数字を出しております。そこで私は、その軽易な作業を営んでいる、そうしてそれで最低生活を営むほんとうの最低の生活費というのは、たとえば東京ではこの辺のところが基準になるのではなかろうかと思います。たとえばこの場合におきまして、生活保護はきわめて軽易な作業に従事する軽作業の場合を予定してカロリー計算をいたしております。そこで、最低賃金となりますと、そのほかにその従事する職種、業態によっておのおの違う労働力の消耗を来たす。これに対する補給度というものは、またその業種、業態に応じまして、またあるいは、その地域、農村であるか、都市であるか、あるいは都市周辺であるとか、その辺の物価等によりましていろいろ違ってくるわけであります。そこで、たとえば東京の今のぎりぎりの、きわめて軽作業をやっている場合の成年単身者の最低生活を管む程度のものは、厚生省においてこのように策定しております。これだけは基準にならない。そこで、私は、以上のようなことは一つの標準になりますけれども、それにその業種、業態、地域におけるそれぞれの特殊性を加味いたしまして、それぞれの場合に応じた最低生活費というものが出てくる、このように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/29
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030・阿具根登
○阿具根登君 非常にニュアンスのする言葉回しをされて言われましたけれども、一言にしていうならば、最低件命は東京の成年男子で三千五百円でよろしい、こういう結果になると思うのです。そういたしますと、東京の物価高から比べてみると、いなかというものはおそらく私どもがきわめて驚くような数字を考えておられる、こう思うわけなんです。そんな最低賃金というのがあり得るのか。そこで、最低賃金というものはただ生きるだけのものか生きるだけの、恩恵的に生きるだけのものを言われておるのか、あるいは憲法の示すごとく、最低の文化主任を営むものであるのか、しかもそれに対してこれは労働しておる人に対する貸金でございます。その労働を付加したものがどのくらいあるのか、こういう点をはっきりしてもらいませんと、ただいまの局長の御説明を聞いておれば、国是はびっくりしますよ。三千五百円で東京は食えるのだから、最低賃金というものはもっと下だ、こういうことになると、地域ですよ、東京の厚生省の案をとって、そう言われておるから、地域の差があるということをいつも雷っておられるのであります。それよりも地域の差が出てくるというならば、一応日本では東京が物価の高い方だと私らは考えておる。そうすると、もっといなかにいけば最低賃金というものは三千円を下回るものである。そうであるとするならば、私は最低賃金のあなたが今言われた三千五百円、あるいは地域によってどっかモデル地域でよろしい、その地域でもって三千円なら三千円、二千五百円なら二千五百円で生きるすべての資料を全部出していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/30
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031・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、ただいまも私が申し上げましたように、生活保護法によるところの保護基準と申しますのは、きわめて軽易な作業を営んでおる程度でありまして、いわばまあ労働につけない、適職がない、それでうちでぶらぶらしておるという場合に、それに対して最低生活費はどれくらいというぎりぎりのところでございます。そこで、この三千五百円がそれを全部当てはまるのじゃないか、こういうお尋ねでございますが、私どもはそうは考えておらない。これはおのずからその従事する業態、職種によりましてそれぞれ労働力の消耗を来たすわけでございます。これを補なっていかなければ、これは労働の対価として受けるに価する金額にはならないわけでございます。そこで私は、この厚生省の生活保護費の最低基準というようなものは、これはまあいわばほんとうに、ただいまお話のような、ぶらぶらして生きていくためのものでございますから、その上に当然積み上げられていかなければならない。しからばそれが幾ら、何円であるか、具体的に示せと、こういう御質問に次はなるかと思うのでありますが、私はこれはわが国におきましては、地域それから業種、その従事する業種、業態、そういうものによりまして物価の差異もございますし、それから消耗する労働力の程度も違ってくるわけでございます。それらのものを勘案いたしますと全国一律に最低賃金何千何百円ということは残念ながらきめることは非常にむずかしいと思うのでございます。そこで、私は、この各地域、各業種、業態におきまして、最低賃金が決定されまする際に、これらのようないろいろな資料を検討願いまして、そうして最低賃金審議会において、三者が十分御検討を願って、適正な金額に対する意見を出していただく。それを尊重して政府が決定を行う、こういう方式が妥当なものである、このように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/31
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032・阿具根登
○阿具根登君 私の質問を言われたがその通りですがね、生きるだけで三千五百円と、私はこれだけでも、生きるだけということよりも、私は生きるに足りないのではなかろうかと私は思っておるのです。それは生きるだけというならば、家にも住まわずに橋の下でもいいでしょう。拾って食って回っておってもやっぱり生きて、おる人は生きておる人なんです。その最低の生活がどこに線をそれでは引かれているか。このデータもいただきたいのですが、私はこれでも、生きるためだけでも私はおそらく非常に苦労しておられるのではなかろうかと思うのですよ。そういたしますと、最低賃金というものはこれとどうあらねばならぬかという問題になって参りまして、まだ私は全国一律の線を出せと言っておるわけじゃございません。私どもは御承知のように、全国一律でやるべきだという数字もあげております。しかしですよ、今おっしゃいましたように、最低賃金審議会ができたならば、そういうデータを差し上げて、あるいは労働力の再生産というようなこともございましょうし、あるいは生活の向上というのもございましょうし文化的な生活というのもございましょうから、そういう資料を差し上げて、そうして審議を願う、こういうことなら、そういう資料がもうあるはずです。だから、たとえば東京なら東京でその最低賃金というものはどのくらいだというのがあるはずです。あなたは審議会に資料をお出しなさるのでしょう。そうしたらあなたは持っていなさる、すでに。それをどうしてここで言えないのか。あなたは全国一律にいえないというなら、東京なら東京で最低賃金というものはどの程度か。あなたは職種によって違うのだとおっしゃるならば、どういう職種ならどのくらいという基準をお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/32
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033・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 東京におきまして、この最低賃金がどのくらいかということになるわけでございますが、これも私が御説明申し上げておりますように、業種、業態によりましてそれぞれ違ってくるわけでございます。そこで、それらの業種、業態について問題になりました際におきまして、その最低賃金につきまして、いろいろな資料が出てくるはずです。これらの資料については、それぞれ具体的に問題が起きましたときにおきまして、具体的に既存の資料もございまするし、それから具体的にその業種、業態について支払い能力がどの程度であるか、あるいは類似の労働者の賃金がどの程度であるかというようないろいろな資料を準備いたさなければならないわけでございます。それを賃金審議会において十分御検討願うという段取りにしておるわけでございます。しからば、それだけの資料を今持っておるのじゃないか、それを出せということでございますが、これはそれぞれ具体的にある業種、東京のどこの何業種というところで最低貧金をきめようということになりました際に、それを検討される場合に、その業種、業態につきまして、既存の資料及びいろいろもう少し細目の調査をいたさなければなりません。そういう細目の調査をいたしませんと、単に一般論をもって、一般的な抽象的な基準をもって具体的な場合に当てはめることになるのでありまして、これまた避けなければならない。そこで、具体的にその個々の問題になりました場合について必要な調査も実施するように予算をとっておるわけでございます。そういう点につきまして、具体的に調査をいたしまして、それらを一括して御検討願う、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/33
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034・阿具根登
○阿具根登君 私が言ってておりますのは、政府が少くともこういう法律案をおきめになってお出しになって、最低賃金というものをお作りになる場合に、それは業種もある、地域別もある、こういうことを言っておられる。支払い能力の問題にまだ私は触れておりません。今問題になっておるのは、最低賃金というものは、生活をどの程度に見るかということが問題になっておるわけであります。それで生活扶助を受けておる人のが最低賃金かというと、そうでもないということを今言われたのです。それならそれで私はもっと考えがあるのですから、違うのですから。そうすると、生活扶助でもないのだ。ただ生きるだけで、仕事も何にもせぬ。仕事をしたら引かれるのですから、これは仕事も何もしていない。極端に言えば、食って寝ておるだけなんですよ。しかもどこに寝ておるかわからぬ。そこでそういうのも一つ資料があったら出していただきたい。これは厚生省が出しておるのですから、これをいただきたいのですが、私が言っておるのは、そういう問題もからめてここまで審議された案を作るときに、一つの業態もつかんでおられないというような無責任なことではないと私は思うのですよ。たとえば非常に業種が多いかもしれぬけれども、一つの業種でこれをきめるということじゃないでしょう。同一業種というのが非常に大きなファクターになっておるでしょう。そうすると、東京なら東京で、東京においてこの業種はどのくらいだというものさしを持っておられるはずなんだ。全然そういうのを検討されておらないというのならおかしいじゃないですか。大体どのくらいが最低賃金になるのか。私どもが一律に六千円なりあるいは八千円なりというのは、それはむちゃだと言われるのならば、言われるものさしがあるから、むちゃだ、できないということを言われるのだと思う。だからそれを示して下さい。それがなくて人の言うやつをそれはだめだということはできないはずなんですよ。だから一つでもいい。あなたのところで、東京でなくてもよろしい。どこでもいい。あなたの考えておられる土地で、その職業でこのくらいだというものがあったら知らして下さい。あるはずだと私は思うのです。そういうことを調査されずにこういうことをやられることはないと私は思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/34
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035・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、実はこの最低賃金法を策定いたします前に、約半年かかりまして、労・使・中立三者構成の中央賃金審議会において御検討願ったわけでございます。中央賃金審議会の審議の過程におきましても、ただいま先生お話のような議論も出たわけであります。一部の委員から出たわけでございます。そこで、これに対するいろいろな審議の検討もなされたわけでございます。結論は最低賃金額を幾らということにきめることは妥当でない、遠い将来の理想形としては、最低賃金額幾らというふうに具体的にきめることが妥当であるけれども、現段階においては具体的に幾らときめることは妥当でない。そこで個々別々に具体的な業種業態が問題になって出てきたときに、その場合々々について一つ検討をしようじゃないかというような考え方で、もちろんこれには最後まで異論を唱えられる方もございましたが、審議会の大部分の御意見はそのようなことになりました。そうして大体政府案に盛られてありますような内容についての御答申があったわけでございます。そこで、それに基きましてそれをそのまま尊重してこの法案を策定したわけでございます。そこで、この法律案が実施されれば中央には中央最低賃金審議会が設置されます。それから各地には東京なら東京の最低賃金審議会、あるいは神奈川なら神奈川の最低賃金審議会、その他各府県に全部設置されるわけでございまして、それぞれ労・使・中立三者構成の同数の委員が御参加を願うわけでございまして、それぞれの審議会におきまして、具体的にその業種、業態に応じて最低賃金額は幾らが適当であるかということを御検討を願いまして、結論をお出し願う。それを尊重して政府はきめる。こういう立て方にしてあるわけでございます。
以上のような通りでございますので、私は、このような段階の前に、抽象的に東京では幾らが最低生活費だというようなことを出しますのは、この際ちょっとまだ早いのではないか。要するに、そういう三者構成の委員の御意見を尊重していく、そこで十分練っていただく、これが眼目なのであります。たとえば一つの例をあげてみましても、東京の最低生活費は幾らかということになりましても、安い方を主張される委員の方は、生活保護費の保護基準三千五百円程度が、これが最低生活費だと、こういう主張をされる方もございましょうし、あるいは人事院が標準生活費として出しておる、七千五百円程度が、これが最低生活費だとこういう御主張をなさる方があるわけでございます。これらの点はやはり十分に三者の意見を突き合せられて御検討を願って、そこに妥当な金額を決定していくというところにこの最低賃金法のねらいがあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/35
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036・阿具根登
○阿具根登君 私は、この法律はただいま局長が言っておるような法律ではないと思う。そういうことではないのです。中央最低賃金審議会でも、地方の最低賃金審議会でもこれは諮問機関であって、決定されるのは皆さんです、大臣ですが、その大臣がものさしを持たずに、そうして人がきめたやつを、審議会できめたのをイエスとか、ノーとか言えますか。それならば大臣がきめぬでもなぜその審議会に決定権を持たさないのですか。あなたの言うのは、それは今の説明でいくならば、あなた方はものさしを持たないで何もきめきれないというならば、それならば、この権限は審議会にやればいいじゃないですか。この審議会には一切やっておらない。ただ、これは尊重されるだけで、やらなければやらないでいい、だめならだめでいい。そうしたならば、あなた方がそれをきめられる、そういうきめる人がものさしを持たないで、何でイエスとか、ノーとか言えますか。あなたの説明は法律案と非常に矛盾しておるのじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/36
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037・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) この審議会は御承知のように、審議機関でございますが、この意見は最大限に尊重いたさなければならないと思っております。その際におきまして、われわれが決定をいたしますときに当りましては、審議会におけるいろいろな審議の経過、こういうものを十分検討いたしまして、それに基いて、そのような審議の経過を経てこの意見が出てきた、これに対してどのような態度で臨むかということは、これはその審議の経過等も十分尊重して、そういうものを十分検討した上で政府としてこれを尊重していく、その尊重の仕方は審議機関でございますから、最大限に尊重していかなければならないところである、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/37
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038・阿具根登
○阿具根登君 最大限に尊重するという言葉はそれでいいのです。最大限に尊重するということは、審議会の答申をそのまま認めるということですか。言いかえれば、この審議会の決定に従うということですか。そうではないでしょう。あなたの言う最大限に尊重するというのは、それは私はもう従うということだと思う。それならば何も大臣がきめたり、基準局長がきめたりする必要はないと私は思う。最大限に尊重と、そう言われても、現在までいろいろな裁定やら、調停やらあった場合にも、尊重されずにいろいろな問題が起ってきた。労働問題は基準局長はよく御承知の通りだと思います。それでもなぜ尊重しないかといって通すことはできない。そうするならば、あなた方は尊重するけれども、何かそれに対するものを持っておらなければならぬ。ただ、向うの言ったことを聞いただけで、そうしてこれはイエスとか、ノーとか言えない。ただ最大限に尊重するのだという表現のみでは、私はこの法律はおかしいものじゃないか。そこまで、皆さんが今に至るまでそういうものを持たれぬとするなら、おそらく審議会の意見に従うのだという結論になると思います。それなら決定権を審議会に持たしたらいいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/38
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039・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) ここで尊重するとあるのは、文字通り尊重するという考えでございます。しからば決定権を持たしたらいいじゃないか、こういうことでございますが、最低賃金というものは第三条にございますように、労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の賃金支払い能力、これら三つのものを勘案して御決定を願う、こういうことになっておるのであります。そこで、具体的に個々の場合につきまして、これらの三つの基準に照らしましてその御意見がそのまま実行し得るかどうかという点について、やはり行政府としては検討してみなければならない。しかし、検討するに当りましては、もとより文字通りこの審議会の意見を尊重する、こういう建前で検討することは当然のことでございます。それならば、その前に資料を示したらどうか、こういうことでございますが、これはわれわれはまず審議会におきまして具体的に幾らというような金一額、あるいはそのほかいろいろな内容が出てくることを期待するわけです。その前に行政府としてこれは幾らだと、おれの方はこうだということをお示しすることは、これは三者構成の審議会で十分練っていただくという趣旨にも反すると思うわけでございます。まず、審議会におきまして十分御検討を願う、その際におきまして、われわれはもとより具体的にその業種、業態あるいは地域によりまして既存の資料も使いますし、具体的な調査もいたします、それも提供申し上げる。それと同時に、われわれがそのとき具体的に調査をいたしましたいろいろな資料に基いてわれわれとしてももとより判断をするわけであります。しかし、その判断をする場合におきましても、一著構成の審議会が慎重に御考慮を願って、そうして出されてきました御意見というものは、これはもとより最大限に尊重するという建前で検討しなければならぬことはもとよりであると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/39
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040・阿具根登
○阿具根登君 私は、支払い能力の問題はまだ質問をしておりませんし、まだ質問を残しております。まず最低生活という問題からこれは質問しておるわけでありますが、今おっしゃいました支払い能力というようなものも加味しなければならぬからと、こういうことを言っておられますが、審議会に上ってくるやつは業者間できめられて上ってくるのが大部分でしょうが、そういたしますと、支払い能力のないようなことを業者がきめてくるわけじゃございませんか、そうでしょう。そうしてそれが審議会にかかってくる。そうしますと、この日取低賃金のものの考え方が私は間違ってくると思うのです。少くとも労働省がこういうものをお作りになる場合には、ちゃんとした資料を持っておられるけれども、ここでお出しにならぬのだと私は思っているのです。いつの場合でもほとんどこういう問題が出る場合には一応の基準というものは持っておられる。それによって地域の差とか何とかありましょう。地域差なんかというものはずいぶん各署でも使われておるようでございますから、それは私は直ちに出てくるもんだと思うわけなんですよ。そうするならば、何が一番むずかしいかという問題になって参りますと、労働力の再生産、これもむずかしい問題でしょう。しかし、この場合考えられておるのは、非常な零細企業、小企業の問題なんですね。そうすると、一番皆さんがお考えになっておられますのは、支払い能力ではなかろうか、こう思うのです。
そこで、労働大臣にこの問題で御答弁願いたいと思うのですが、この法律は三木建になっておりますですね。生活費とそれから他産業、関連産業との比較、支払い能力、こういうことがこの法律の骨子になっておると私は思うのですよ。しかし、これは四十年も前に非常に論議されたことであることは御承知の通りです。そして他産業との比較は、これは別として、生活費と支払い能力というものが両立できるか。全く相反するものであるということが論議されてきたはずです。そうして、一応の結論として出されておるのは、やはりこれは労働者の保護政策である、保護立法である。そうするならば、生活をまず認めてやるのが、これがこの目的である、こういうような解釈が私は出されておるように思うのですが、この点、大臣、どういうふうにお考えになっておるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/40
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041・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) お説のように、労働者の保護を目的とすることは一つの大きな目的であります。この目的にも申しておりますように、「賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低纈を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としておる。従って、ここでいっておりますように、労働者の保護、同時にまた、労働者を保護することは、先ほど来お話のありましたように、この労働条件の改善によって国民経済の健全な発展に寄与することができると、これがわれわれの目的だと、こういう考え方で最賃法を考えておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/41
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042・阿具根登
○阿具根登君 はっきりしていただきたいのは、労働者のこれは保護立法であると、保護立法であるとするならば、生活にこれはウエートがあるのだ。いわゆる憲法二十五条で示されておるように、健康で文化的な最低生活がこの最低賃金だと、これは日本国民全部その権利があるのです。それをあるいは皆さんの解釈では、生活保護費を考えておられるかもわからない。私は、それに働いておる労働再生産力というものが加味されておると思うわけです。で、そうすれば、私の言うのが正しいのだと、こうおっしゃるならば、これは支払い能力云々という問題は、これは相いれないようになってくるわけなんです。どちらにウエートを考えておられるのか。それで先ほど堀局長が言われた答弁とも食い違ってくると私は思うのですが、どういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/42
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043・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) この本質的には御承知のように、日本という国は大東亜戦争以来、領土は狭められ、経済は根本的に破壊され、こういうふうに立ち直ってきた。しかも、人口の増殖率というものは、昔よりもそう衰えておらない、こういうやはり前提を考えて、このような問題は私は考えていかなければならぬと思うのです。そこで、たとえば一つの官庁で行政整理をやるということを希望された、行政整理ということは、当然人員の整理を伴うということになれば、それをどうするかというふうなことに差し迫ったすぐの反動が起きて参りますので、私どもはやっぱりそういう点を考えてみますというと、行政整理ということが必要であるに違いないけれども、それによって来たるところの他の反動、つまりその整理されたる人員をどうするかということが大きなウエートを持って政治の面に現われてくる。私はそういう苦悩というものが産業面においても同じように考えられると思うのです。オートメーション化しなければ国際競争に立ちおくれる、あらゆる方面でそういうことを言われておるにもかかわらず、やっぱり人員というものを整理するということについては大きな悩みを持たなければならぬ、これがやっぱり私は民間の企業でも、国の経営でも大きな問題だと思うのです。従って、日本が今経済的に国際競争力を維持して立ち向っていくためには、やっぱり六〇%以上占めるといわれている中小企業というものが日本の経済の中核をなしているのでありますから、保護育成しなくてはならない。従って、それに対してあらゆる手段を講じて、保護の手を差し伸べると同時に、しかも一方においては、労働の再生産を伴う労働力の培養ということは、これもやらなければならない問題だと思う。従って、最低賃金というようなものを考えます場合に、先ほど私が法の目的で申し上げましたように、もちろん低賃金にあるところの労働者のために、これを保護するという考え方、これが一つの目的、一つはやっぱりそういうことをすることによって、その事業に働いておられる労働者の質的向上も考えることができるようになるし、従って、日本の国際競争力に立ち向っていく日本の経済力の培養にもなる。こういう二つの目的で私は最低賃金法というものは、現在の日本の段階においてはぜひなくてはならないものである、こういうふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/43
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044・阿具根登
○阿具根登君 そうすると、ただいまの御答弁では、支払い能力というものは、そう考えておらないのだということですね。最低賃金をきめて、そうして生活を保障してやり、労働再生産力を培養してやりさえすれば、自然能率も上ってくるし、支払い能力というものは考える必要はないのだ、こういうことに考えてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/44
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045・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 私が申し上げた言葉が足りなかったようでありますが、当該企業について、やはりわれわれは具体的に申せば、この法律案を策定するときに、全国に商工会議所というようなものがあります。地方ではその会員はほとんど中小企業者です。そこで、その傘下におられる零細企業の人たちにもいろいろ集まっていただいて、こういう問題について意見を聞きました。彼らの一部では、現在政府が提案いたしておりますようなものですら、強い反対を唱えており、その大きな理由としては、支払い能力をあげておる。私どもはやはりこの最低賃金というものを、だんだん理想的な方向に近づけたいとは思っておりますけれども、現在の段階では、この審議会の答申を根拠にした政府案というものがきわめて妥当なところであると考えましたのは、やはり現在の日本の零細企業等における支払い能力というものも、大きなウエートを持って考えてあげなくてはだめなんだという見地に立って、支払い能力というものを十分に考慮しなければならぬ、本案を策定するには、そういう考え方は、もちろん大きなウエートを持っておるということを申し上げなければならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/45
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046・阿具根登
○阿具根登君 その場合生活費ですね、生活保護というような意味じゃないのですよ。最低賃金とその支払い能力とどちらにウエートをおかけになりますか。支払い能力にウエートをかけるならばこれは生活賃金を規制することはわかっておるのです。そうすると、生活賃金の方に、生活費の方にウエートをかけられるならば支払い能力というものは一応どこかで規制しなければならないということになるわけです。だから、その場合に、どちらにウエートを置いておられるのか、両方大切だとおっしゃられると、そんなことはできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/46
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047・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 私はそんなにあっさり片づけなくてもいいんではないかと思うのです。数年前に御承知のように、絹、人絹織物、立繰、座繰等の最低賃金についての御意見が出ました。私の郷里などはあの業種の中の三つ備えておりますけれども、あれらは実際に何とかして現金収入がほしいのだという人がほとんど競争的に……。なお、障子紙などを作っておる産業というものはあの賃金でなければ引き合わない、そうかといってあの仕事がやはり成立して、昔ながらに伝統的に商売は維持しておる。しかし、そこで働いておられる賃金というものはきわめて低賃金です。そこで、そういうことを考えて参りますというと、最低賃金というものを考えますときに、非常にこの段階の多いということにわれわれが気がつきます限り、今の申しました障子紙などの例と、それからまた静岡にあります花カツオ業者、こういうところのすでに業者間協定などを見ましても非常に段階がある、手すき和紙なども段階があります。大体しかし、こういう方向によって業者間協定というものは、この法律がなくてもやがてこれは実施されるのだということで、現実にはだんだんと地方出先の役所の勧奨もありますし、業者間協定というものは結ばれつつあります。その実績というものを見ますというと、やはり常識的にある程度のレベルの業者間協定をだんだん結んできておる。むしろ前よりも一、二割くらいだんだん上昇してきておるということを報ぜられておるようなわけでありますから、やはり私は本法が実施されるということによって結ばれる業者間協定、あるいはまた、第二の方式にありますように、労使双方の団体協約も、そういう常識的なものが基準になって結ばれていくだろう、また、そういうふうにわれわれも勧奨をしていく。でありますから、現実に即しては非常に低いレベルで人を使うということは、だんだん地域的にそういうものが広がってきますから、いい人がそういう低いところには集まってこなくなりますから、だんだんとそういう低いところにも取り入れられると同時に、われわれもまた、これを勧奨する、一挙に一定のレベルのものを施行するということになりますと、阿具根さんも御承知のように、あるものについては今までよりも非常にこれは低いじゃないかと思われるものがあるかもしれない、あるものは、そんなものをやられたってわれわれは支払い能力がないというものであるかもしれない。従って、私は現在の段階では、現実の日本の状況に照らしあわせてみれば、決して私はこれが理想的なものであるとは申しませんけれども、まずこの段階から手をつけていくことがきわめて妥当なところじゃないだろうかと、こういうふうに考えておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/47
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048・阿具根登
○阿具根登君 そうすると、こういう場合はどうなりますか。たとえば基準法ができます場合には八時間労働、週四十八時間というのがきめられた場合に、今の大臣の御答弁でいきますと、今の場合を考えた場合には、おそらく八時間で労働を切ってもらったのではうちの会社は立たないのだということで、、九時間とか十時間とか働かせなければできないということになってくる、しかし、基準法では八時間というのをきめた、こういうことがちゃんときめられておる。もう一つ静岡のお話が出ましたが、マグロのカン詰は出ませんでしたが、今度は新潟の燕市なら燕市を見る場合に、あすこはほとんど洋食食器を作っておられるが、一ダース百二十円ぐらいで外国へ売っておられると私は聞いておる。そうすると、非常な低賃金で雇っておられるからそういう安いものができるのだ、こういうことになるわけです。それで、先ほどの話でも一つの最低賃金というやつを引けばそれよりももうかっておる所もあるが、それで払い切れない所もある、こうおっしゃったけれども、私は前者の方は当りまえだと思うのです。最低賃金ということをきめられて、上のやつをそれに下げるのは最低賃金じゃないのです。下のを上げるのが最低賃金なんですよ。それならば当然そういう犠牲も出てくる。しかし、それは企業の合理化なりあるいは機械化なり何なりしてやっていくように指導しなければ、いつまでたっても今言われたように、安い所にはいい人間は集まらないけれども、生きるために——今度は生きるためにやはり安い低賃金でやっていかねばならない。御承知のように、毎月々々五十数万人の完全失業者がおる。潜在失業は七百万、八百万、確実な数字はおそらく政府もつかんでおられないと思いますし、私もつかむことができませんが、やはり七百万か八百万の潜在失業者がおる。そうしますと、少しでも生活の足しにするためにそういう所にやはり仕事を求めていく。そうなってくれば、私は最低賃金の意義というものはなくなってくる、こういうように思うわけなんです。最低賃金というものをきめるならば、何度も言うように、一つの尺度というのがあるはずです。たとえば政府の答弁の中で、社会党が言っておるように、一律八千円のベースでやった場合にはこれに見合わない人が四百二十五万人おる。その費用は千二百八十四億円要るということを発表しておる。また、六千円にした場合、満十八才で六千円にした場合でもそれに該当しない者が二百三十七万人おる。それに対する金額は五百四億円と政府は発表しておるわけなんです。そういうふうに、社会党が出したこういう案に対してはそれだけ詳細に説明されておる、反論されている。それならば、自分たちが出したのには幾ら金が要るのか、幾らにするのか、全然それを発表されておらない。それはおかしいじゃないか、私は最低賃金というものは、何回も言うように、上の人に適用するのじゃない、下の人に適用するならばどこかに少しは無理がくる。それが先ほど来言っておるように、支払い能力が主であるのか、あるいは生活が主であるのか、健康で文化的な最低生活というものが主であるのかと、こういうことをお尋ねしておるわけなんです。だから政府としては、六千円にしてもこれだけの金がかかりますよというならば、幾らにすれば金はかからないのだ、その幾らというものは実際最低賃金と称するに足るものであるか、足らないものであるかという論議がされてしかるべきじゃなかろうか、私はこう思うわけなんです。で、私らが聞きたいことは、政府はこの法律ができ上ってから賃金委員会の答申によって、そのときに資料を出して裁定をいたします、決定をいたします、これじゃあまり無責任だと思うのですが、これはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/48
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049・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 最低賃金法というものを策定いたしますときの政府の考え方は、先ほど来申し上げておりますように、労働者保護はもちろんのことでありますが、やはり零細な企業に従事しておられる労働者の賃金を生み出すべき源泉を培養しなければだめだ、従って、支払い能力が現存の段階であるからこれだけ以下のことでもやむを得なかろうという考え方ではいかぬと思うのです。従って、あらゆる努力をして、そういう零細な企業も継続してだんだんと賃金の上昇もできるように、支払い能力も確保できるようにということでこれを助けていかなければならない。これはもう当然のことであります。御承知のように、中小企業対策というものはいろいろ口では言われますけれども、実際やってみて大へんなものであります。これはなかなかむずかしい、われわれもそれを認めますが、やはり零細企業というものが日本の国の産業の中核でありますからしてこれはあらゆる角度から検討して援助しなければならない。そうして少くとも最低賃金というようなベースの賃金というものは払えるようにということを一方にしながらこの法案を実施していく、こういうのが最低賃金を提案いたしますときの政府の腹がまえであります。また、そういうふうに逐次努力をいたしておるわけでありますが、そこで実際には、やはりこの本法でいっておりますように、四つの方式、先ほどお話のありましたような業者間協定、これも一つの方式、しかし、これもやはり協定そのものがすぐにやられるわけではなくて、それを最低貸金審議会というものにかけて、十分な話し合いをして、そうして三者構成でありますから、そこでまとまった御意見を答申してもらって決定をする。その他はここに書いてありますように、これは政府が決定する場合もあり、もう一つは労使協約によってそれを届け出ることによって承認する。こういったような方式を取り入れることが現有の段階では各方面に反射作用を起さないで比較的スムーズにいく方法ではないだろうか、しかし、これはどこまでも私どもは、これが最終的理想案だとは考えておらない。この実行の経過を見て、徐々に一つ理想的なものに近づけていきたい、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/49
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050・阿具根登
○阿具根登君 卵が先か鶏が先かというような論議をやってもしようがないのでございますが、しかし、労働大臣は、非常にこの法律案が最善ではないのだと言っておられますから、これはいつの場合でもそう発言されておりますから、これは最善ではないということはお認めになっておられる。しかし、政府は手もぬらさず、業者は手もよごさずに最低賃金がきまるということは私は考えられないと思うのです。これが一等最初申し上げましたように、これは生活をまず与えることである、労働保護法である、労働者が再生産に協力できるように生活を安定させてやる労働保護法であるということになるならば、社会党の言うような一カ月六千円ということになればそれに見合わないのが二百三十七万人いる。そうなりますね、そうなると六千円でやりなさいといえばこれに五百四億円の金が要ります。こうおっしゃる。それなら私が言うように、労働保護法であるならば、あるいはそれは最低の最低までいけばその支払い能力がそれに見合わないところが出てくるはずです。これはその全部の人が支払い能力に見合うというならばこれは最低の最低であって、生活とか労働力の再生産とかそういうことは考えられない数字になってくると私は思うのです。これはそんな数字にならない。だから、一応の数字があって、これでもどのくらいの人間が適用外になるからこれを適用するためにはどれだけの政府は予算を組まなければならないが、また、支払い能力がないからといってそれをつぶせというのじゃないのですから、これが支払い能力のあるように指導しなければならない。その指導をするためにやはり金融面をどうするとか、あるいは利子をどうするとか、いろいろな政府の施策がこれに裏づけされなければならない。ところが、全然その裏づけも何もなくて、そうして最低賃金というのは政府は手もぬらさず、業者は手もよごさずそうしてこれが最低賃金でございますよということになってくれば、これはとんでもない最低賃金だと私は思うのですが、その点いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/50
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051・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) それは阿具根さんのおっしゃることは、あなたのお立場としてわかりますけれども、あなたの御意見はそうでありましょうが、私はそう思っておりません。先ほど申し上げましたように、中小企業というものを今のお説によりますと、何もやっていなくて培養する方法も講ぜずにおいて、現在のままで低い賃金を払っていいのだというふうなお話でありますが、私どもはさっきから申し上げておりますように、中小企業対策というものは困難でむずかしいことはわかっておりますが、政府は全力をあげて中小企業の保護育成、培養についてあとう限りの努力をしておる。そうしてまた、零細の企業も維持育成していく考えであります。そのことの上手、下手はともかく別問題といたしまして、そういう考えで努力をしておる。一方において、そういうものを保護育成しながらこういうような最低賃金のこの制度を実施していけるようにしむけていく、指導していくのだ、こういうのでありますから、しかもそこで私が申し上げますのは、現在の状況を勘案しまして、零細企業の従業員を保護するという立場、同時に、不当競争をこれで防止する一つのステップでありますから、そういう考え方に立ってやるのと同時に、この最低賃金というものをだんだんと各地域、各産業に、零細企業にも行えるように一方において政府は手伝ってやる。今阿具根さんがちょっと仰せになりました、一定の水準を設けてそれを実施するために支払い能力を勘案して、不足であるというなら、政府は何ほどのそれに対する予算を組むか、その予算ということについて私の理解が間違っていればまた直しますが、あなたのお説はそういうものをやはり国がめんどうを見るべきではないか、こういうふうな御意見だろうと私は思います。それは私どもは、政府としてはできないことだと思います。その民間産業の零細企業の人にだけ特別なことをする、これはもう国民全体に対しては、やはり生活困窮者には生活保護もあり、それぞれ社会保障は政府が負担すべきことであって、企業内の賃金、それが払えないからこれについて予算をやるということになると、やはり他の全体に対して不均衡になることでありますから、自由企業を建前とする私どもの政府としてはそういうことは考えられないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/51
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052・阿具根登
○阿具根登君 いや、私の言っているのはそうじゃないのです。いわゆる最低賃金というのをきめれば、それはどの線をお考えになっておるかわからないけれども、何回聞いてもお言いにならないのでわかりませんけれども、一つも犠牲のない、どういう零細企業であっても支払い能力の可能である中においての最低賃金だとお考えになっておるならば、私は最低賃金の価値なしというのです。それは支払い能力だけであって、それは業者の支払う賃金の最低をきめておいでになる。労働者がもらう賃金の最低じゃないのです。労働者対象ではなく、業者対象なんです、それは。で、あなたは、私が言ったのに、国がこういう金を出す必要がないのだとおっしゃるならば、何のために六千円出した場合にそれだけ出せば五百四億円の金が要ります、そういうことをお言いになりますか。社会党が六千円出せば二百三十七万人の人がその線以下にあるから、だから、その業者を助けるなりあるいは何かの補助をするなりすれば五百四億円要る。全国一律八千円の場合なら千二百八十四億円要るじゃないか、こういうことを言っておられるわけなんです。それなら非常におかしいじゃないか。それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/52
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053・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 今お読み上げになりました答弁をいつやったのか、ちょっと政府委員に聞いてみたのでありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/53
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054・阿具根登
○阿具根登君 持っておりますから、読んでもいいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/54
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055・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) それはわかりました。
そこで、そういう話も出たようでありますが、それはおそらく一律に賃金をきめて、そうして零細企業が支払えないという場合に生ずる対象の金額というものはこれだけになるのだという説明を当時したのだろうと思いますが、私はそういうことは別にいたしまして、現在の段階で、先ほど申し上げましたように、自由企業の立場に立っている今日、やはり可能な程度に支払い能力というものを考慮して、そうしてその企業が立ちいくように一方に驚いて援助しながら、政府の考えている最低賃金制というものが実施できるように、それを一つ実行に移して様子を見て、だんだんそれが大体この程度でいけるということになりますならば、やはり政府としては、もっと理想に近いものに後に改正をしていくということが前進的で実情に即したやり方ではないか、こういうことを申しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/55
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056・阿具根登
○阿具根登君 私はそれでは、ただ業者の意見を尊重されただけであって、その下に働いておる人たちが、人に値しない生活をしておるものを救うには何にもならない。それでは労働保護立法ではないではございませんか、こう言っているわけなんです、私の考え方は。そこで、本論に、戻ってみますと、先ほど四本の柱とおっしやいました。確かに四本の柱と言っておられるようですが、私どもはこれは四本の柱ということでなくて、業者間協定がねらいである、かように思っておるのです。この四本の柱の中の第三にしましても、これは労働法の十八条で十分できることは御承知の通りです。第四におきましては、これは基準法の一十八条以下で十分やろうと思えばできることなんです。そうすると、残るというのは、業者間協定、地域におる業者間の協定、業者間がこれは目的である。こうなってくると、最低賃金の意義が、最初から申し上げております意義が狂ってくる。政府はいわゆる育成指導を今までやっておるとおっしゃるけれども、この法律によって政府は何がしかの援助をするとか、あるいは金融面あるいは利子、こういうものについてのお世話をするというような考えも全然ないとするならば、それならば、今のやつから一歩も私は前進しない、こう言えば、おそらくこの一年間の間に三十くらいの業者間協定ができましたよとおっしゃるだろうと思うのです。私も知っております。それは当然できるべくしてできたわけなんです。私どもが心配しているのは、そういうこともできないところが多数あるではないか。それを業者間協定で勝手にきめられるならば、私は一番気の毒なのは、それに使われている労働者ではないか。私は、労働省がこういう最低賃金法案というものを出すならば、一番最初に労働大臣が言われたように、最低賃金というものは、生活を維持し、労働力を再生産するために払うべく国が機関によって決定して、それ以下を払って人間を使うことはできないというのが最低賃金法の考え方ですと、こう言っておられるその精神は一つも生きておらぬではありませんか。そうすれば、最低賃金法と言えないではございませんかと、こう、言っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/56
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057・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) ただいまの御質問に対しまして、従来の経緯を御説明申し上げて、お答えにいたしたいと思うわけであります。
業者間協定——ただいま三十と仰せられましたが、実際には昨年の一年間で、八十件できております。それからなお、業者間協定を締結しようということで実態調査を実施中のものが、そのほかに七十件ございます。これらの実態を見てみますると、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、多いところでは三〇%以上の貸金増加を来たしておるところもありますが、大体平均いたしますると、一〇%ないし二〇%程度の上昇になっておるわけでございます。これらのものは、当然こう自然にできてきたものではないか、こういう御意見でございまするが、実はこれにつきましては、労働基準法に基く最低賃金の決定方法ではなかなか実施ができない。そこで、一昨年のその前の年でございます。その前の年に、労働省にあります労働問題懇談会におきまして、賃金小委員会というものを設置されました。中立、労働者側、使用者側の三者が御参加になって、まず、この最低賃金を理想的な形にだんだん持っていくための基盤をどうやって育成するかというような方法について、いろいろ御検討なさった。一昨年の二月に労働問題懇談会の賃金小委員会において、意見をまとめまして、総会においても満場一致の賛成で労働大臣に意見書が提出されたわけでございます。その意見書と申しますのは、一つは、最低賃金法制の早期実現について、政府は至急検討に着手すべきである、そのためには現在休会中の中央賃金審議会をすみやかに再開して検討を始めるべきである、こういうのが第一点でございます。それから第二点は、業者間協定を実施して、中に最低賃金条項を組み入れていくということは、労働者の保護、企業間の公正競争の維持というようなあらゆる面から意義があることであると思うから、政府はこの業者間協定の締結について援助を行うべきである。こういう意見書が提出されたわけでございます。
そこで、労働省といたしましてはそれを受けまして、労働次官から各地方都道府県基準局長あてに次官通達を出しまして、業者間協定の締結について援助を行う、こういう方針をきめたのであります。その方針をきめて、各地で援助を行いましてからできましたものが、ただいま申し上げました八十件、調査中のもの、なお七十件ということでありましてその結果を見ますると、賃金の上昇率も一〇%ないし二〇%、これと並びまして企業の内部の面におきましても、企業経営の近代化、合理化のための刺激になった、あるいは労働力の維持培養に益するところが多かった、こういう報告がきておるわけでございます。そこで、これを行いまする一方、政府におきましては、この意見書のもう一つの内容であるところの中央賃金審議会を一昨年の七月からまた発足願いまして、それに対して、現状においてわが国の実情に最も即した最低賃金法制はどのようなものが適当であるか、こういう諮問を申し上げたことに対して、いろいろ熱心な御意見が出、中途においては相対立するというようなこともあったのでありますが、結局において一昨年の十二月に答申が出て参ったというわけでございます。これに基いて作成したのがこの最低賃金法案でございます。
そこで、最低貸金法案の内容につきましては、先ほどから御説明申し上げておるように、第一は業者間協定、第二は業者間協定に基く地域的最低賃金でございます。それと同時に、労働協約に基く地域的最低賃金をきめておるわけでございます。これらのものにつきましては、業者間協定だからそれは最低賃金ではないというお尋ねでございますが、労・使・公益三者代表をもって、同数の委員をもって構成される中央賃金審議会においてこれを十分御検討願いまして、その意見に沿って適当であれば最低賃金として決定する、また、必要があればその地域内の同種の労使に及ぶ地域的最低賃金を決定する、こういうことでございましてそういうような経過をたどるわけでございますから、業者間協定がそのまま最低低賃金になるわけではないと考えております。
それから労働協約に基くところの地域的最低賃金でございますが、これ片ただいまちょっと御指摘になりましたが、組合法の十八条によりまして労働協約の拡張適用ということがあるわけでございます。しかしながら、労働協約の拡張適用というものは、いわゆる団結権の維持という見地から、一般的に労働協約を拡張適用するその決定は、労働委員会の議決を経て労働大臣あるいは都道府県知事が行う、こういう仕組みになっておるわけでございます。そこで、これにつきましても中央賃金審議会においていろいろ御検針があったわけでございますが、やはり一つには、最低賃金をきめる場合には、やはりその専門家である中央賃金審議会あるいは地方最低賃金審議会において審議をし、その御意見を求めるということが妥当ではないか、こういうことでこの中に入っておる。また、それと同時に、組合法十八条に甘く労働協約の拡張適用というのはこれは全くの拡張適用でございますから、もとになる労働協約が失効いたしますれば当然拡張適用されたものも失効するわけでございます。このようなことがあっては、最低賃金としての安定性を確保できないではないかという意見でございました。そこで、この法律におきましては、結局労働大臣が決定いたすものでございますから、もとになる協約の効力に関係なしに、もとになるものが失効してもあくまでも最低賃金としては残るということで、最低賃金としての安定性を保っておるということでございます。また、その違反につきましては、民事的効力及びさらに刑事的効力の規定を付与いたしまして、そうして最低賃金としての円滑な運用をはかる、こういう建前で入れたものでございます。
で、これらの三つの方式に加えまして、最終的には、労働大臣が職権に基いて賃金審議会の承認を求めて職権発動をする道も第四としてあるわけでございます。これらの四つの方式を適宜かみ合せて、業種別に、職種別に、漸次最低賃金を拡大していく方向がわが国の現段階としては適正な方法ではないか。将来の理想問題としてはいろいろなあれもありますが、理想に漸次近づいていくための現段階において最も適当な方策としては、やはりこの中央賃金審議会の以上のような過程を経まして提出されました答申を尊重して作成したところの政府の最低賃金法案が現実的な最低賃金法案ではないか、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/57
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058・阿具根登
○阿具根登君 私は、ただいま御説明になりましたが、法を作った方としてはそういうような説明をしなければこれは大へんなことになります。しかし、審議する私どもの立場といたしましては、これは最低賃金法という単独立法を作ってそうして組合法なりあるいは労働基準法を変えられて、すりかえられていっておる。その目的は業者間の賃金協定というところに一番ウエートが置かれておる。いわゆる賃金というものは業者間で勝手にきめられるような形の変ったものにこれはされておるのだと、かように思います。だから組合法、基準法及び労働立法と今度の最賃法の関連については、後日の委員会で十分御質問申し上げたいと思いますから、これは保留しておきます。
最後に、三十とか二十とかというのはあれは去年のことだったようですね。去年のあなたの答弁では二十になっておるようです。よく努力していただいた模様で、それから六十もふえたようでありますけれども、一体幾らにきまっておるのか、詳細の数字を教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/58
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059・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、大体このようになっております。満十五才の者、満十八才の者の初任給をきめたものがございますが、これについてまず申し上げますと、満十五才の者につきましては、最低は三千六百円程度、それから最高は七千三百円程度でございますが、その間の数字を申し上げますると、ちょうどまん中辺の、いわゆる統計の言葉で申しますると、中位数という数になりますが、中位数が四千三百二十九円、それから低い方の、下から四分の一程度の分布に当るもの、これが四千二十二円、それから商い方——上から四分の一下った程度の第三四分位数が四千八百十七円、それが満十五才の初任給。それから満十八才の初任給が、やはりこれも三千六百円程度から上の方までございますが、中位数が四千九百二十九円、それから第一四分位数が四千五百七十五円、第三四分位数が五千二百六十三円でございます。それから十八才の者で初任給でない者の最低賃金を申し上げますと、これはやはり低いところが四千四百円程度でございまして、高いところは八千円以上というものが三件ございますが、これについて平均的な数字を申し上げますと、中位数が六千二百円、第一四分位数が四千二百五十円、第三四分位数が七千百円、こういう数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/59
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060・阿具根登
○阿具根登君 そういたしますと、中位数が十八才以上をとってみまして大体六千二百円、初任給で四千九百二十九円でございますか、こういうことになっておるわけですが、十八才の初任給で三千六百円ということになれば、皮肉にも東京の生活保護を受けておる人と同じ金額できまっておるようでございますね。どうなりますか、そういうのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/60
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061・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) これは八十件のうち三千六百円程度のものが一件ある、こういうことでございます。業者間協定の締結につきましては、これは事実上援助を受けておるわけでございまして、われわれの方から言いましては、何ら強制力はないわけでございます。今度の法案が実施されますれば、これらのものに基く申請が出て参ります。それを賃金審議会において労・使・中立王者構成の審議会で十分御検討を願って、これが適当であるということになれば、労働大臣は決定をいたしますし、適当でないということになれば却下する、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/61
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062・阿具根登
○阿具根登君 この数字はおっしゃったように、業者間がきめた数字でございますね。労働者の意見は一つも入っておらない。支払い能力の範囲内できめられたものだ、こうなるわけですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/62
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063・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、事実上の措置といたしましては、この締結の過程におきまして、何らかの方法で従業員の意見を聞いているものが過半数になっていると報告されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/63
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064・阿具根登
○阿具根登君 そういたしますと問題は、私が労働者の意見労働者の意見というから労働者の意見も入っているということを言われますけれども、事実は私は、非常に弱い発言力だと思うのですよ。もう事実は組合もほとんどないようなところだと思うのですよ。そういたしますと、業者間だけが非常な発言権を持っている。苦情申請も業者間だけになっているように私は拝見いたしておりますが、一体労働者の苦情や労働者の意見はどこで取り上げるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/64
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065・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) ただいままでの業者間協定はあくまでも事実上の措置でございまして、何ら規制はないわけでございます。そこで、お話のような御疑問も出てくるわけでございます。最低賃金法が実施になりますれば、これを労・使・中立三者構成の賃金審議会において十分御審議願うということになりますから、その場におきまして労働者の意見は反映される。なお、賃金審議会におきましては必要があれば、専門部会というものも設けるように法案になっております。専門部会において、なまの関係者の方の御意見をお聞かせ願うというような仕組みになっておりまして、その賃金審議会の意見を尊重して労働大臣が最終的に決定する、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/65
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066・阿具根登
○阿具根登君 最後に一点質問しておきますが、そういたしますと、これが業者間において支払い能力の限度だというように解釈した場合、もう一つ突っ込んで申し上げますと、最低賃金等の法律を作らなければならないというのは、業者が自分が使っている人を人たるの生活の責任を持たないからこういうものも要るようになるわけなんです。実際人の人たるの生活に対する責任を持った業者ばかりであるならばこういう最低賃金法案なんかは私は要らないと思うのです。ILOの終局の目的は私はこういうものを法律で作らぬでも、人を使う人は同じ人間という立場に立って、生活の確保、労働力の再生産の確保をする義務を持っているのだ。それをただ利潤のみを追求して非常に安い賃金をやるから、こういう最低賃金法案が要るのだ、こういうふうに私は考えるわけなんです。そういたしますと、そういう業者が出したこれが、たとえばこれは最低賃金法としては低きに失するということが言われた場合に、支払い能力とこの問題はどうなりますか。さっきから言っているように、政府は一銭も金は出さない、援助もしないし、指導も今やっている範囲内から出ないということを言っておられるが、一体これはどうなる。また、これを払わなかったからといって、一万円の罰金ぐらいで済むようですが、一体どうなる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/66
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067・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 最低賃金法案の第三条に、三つの基準が掲げてございますが、これは「労働者の生計費、類似の労働者の賃金」、それと「通常の事業の賃金支払能力」とこの三つを勘案してきめるということになっておりまして、いずれにウエートを置くということではなくて、この三つを勘案してきめる。しかも事業の支払い能力につきましては「通常の事業の賃金支払能力」と書いてありまして、これは個別的におれのところは払えないのだというような覆いわけはもとより許さないのでありまして、事業が正常な経営を営んでいる場合に期待できるところの「通常の事業の賃金支払能力」そういう意味でございます。そこで、業者間協定、今まで事実上のものにつきましては何ら強制力もないわけでございますが、今度の法案ができますれば、労働者を含む三者構成の賃金審議会において、必要があればさらに専門部会も設けてそこで十分御検討願う。そこで、ただいま申し上げましたように、不法に利潤だけを追求して生活費のことを全然考えていない。それからその地方における同種の労働者に比べてえらく低いというような、不適当であるということになりますれば、それによってこの最低賃金にはならないわけでございます。そういうことによりまして、そこで十分労使あるいは関係の権威者の御意見を反映していただいて、その出されたところの適正な御意見に基いて、これを十分脚重して最低賃金をきめていくという方向で進んで参りたいと考える次第でございます。
なお、罰則の点につきましては、一人一万円程度じゃ低いじゃないかという御意見でございますが、これはただいまの最高裁判所の判例によりますると、一万円というのは労働者一人について、一件について一万円ということでございます。従って、最高額というものは、最高裁の判例でも確立されておるように、相当多額になり得る。ただし、それが実際にどの程度になるか、それは個々の場合について裁判所がおきめになるわけでございますが、最高限というものは、今申し上げたような最高裁の確立された判例によりまして、相当多額でございまするから……。これともう一つは、先ほど申し上げましたそれに下回るものを、たとえ業者と労働者の間で労働協約としてきめても、それは無効であって、当然国がきめた最低賃金としての額まで高められる、民事的に当然そうなるという規定があるわけであります。この民事的効力と刑事的効力を併用していきますれば、最低賃金の円滑な運営に資することができるのではないかと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/67
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068・阿具根登
○阿具根登君 私が刑の低きに失すると寄ったのは、基準法から見た場合のことを言ったのでございまして、かえってこれでは軽減されておる、こういうふうに私は考えておるわけなんです。
それから先ほど局長が言われました、賃金法をきめた場合に、それよりも下回るようなことはさせないとおっしゃったけれども、それはその根本が業者間協定であるという点について、私はこれはそういうことを言うのは言われるけれども、業者間のやはりこの基本になるのは、支払い能力に応じて従業員の生活を犠牲にしてきめられていくものだ、こうしかどうしても考えられない。そこで先ほど申し上げました労働組合法、基準法との関連——今局長が言われましたこの現在八十からできておる、こういうものとの関連、こういうものについての質問は、要求しました資料ができましてから質問させていただきますように、委員長に特にお願いを申し上げて、本日はこのくらいで打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/68
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069・久保等
○委員長(久保等君) それでは阿具根君の質問もまだ残っておるようでありまするが、本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/69
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070・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
ちょっと速記やめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/70
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071・久保等
○委員長(久保等君) 速記起して。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01819590318/71
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