1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年二月十三日(金曜日)
午前十一時四十三分開会
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委員の異動
本日委員苫米地義三君辞任につき、そ
の補欠として下條康麿君を議長におい
て指名した。
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出席者は左の通り。
理事
松岡 平市君
山本 利壽君
千葉 信君
田村 文吉君
委員
木村篤太郎君
佐藤清一郎君
下條 康麿君
堀木 鎌三君
松村 秀逸君
伊藤 顕道君
矢嶋 三義君
横川 正市君
八木 幸吉君
政府委員
内閣官房長官 赤城 宗徳君
内閣官房副長官 鈴木 俊一君
憲法調査会事務
局長 武岡 憲一君
事務局側
常任委員会専門
員 杉田正三郎君
説明員
憲法調査会会長 高柳 賢三君
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本日の会議に付した案件
○憲法調査会法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/0
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001・千葉信
○理事(千葉信君) それでは内閣委員会を開会いたします。
前回に引き続き憲法調査会法の一部を改正する法律案を議題として質疑を続行いたします。
御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/1
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002・八木幸吉
○八木幸吉君 私、高柳先生にお尋ねいたしたいと思います。二点お尋ねをいたしたいのでありますが、その質問をいたします前に、去る一月二十一日に憲法調査会でお述べになりました海外調査の報告の速記を昨晩実は拝見をいたしました。つきましては、これを拝見した私の感想を先に述べさしていただきまして、それから質問に移りたいと思います。
感想の第一点は、日本政府案のモデルとなった司令部案は、アメリカ本国で作られたものではないということを強調しておるようであります。同時に、アメリカ政府と日本との間に介在をしたマッカーサー司令部の作ったものであるということが書いてあるのですが、けれども当時マッカーサーは、御承知の通り、日本における最高司令官の地位にあった。占領治下にあった。こういう事実から考えてみますと、向うから強い威圧がかかったということは、その案が、アメリカ本国が作ったか、あるいはマッカーサー司令部が作ったか、どちらにいたしましても、受ける方としての日本の威圧感というものは、私は、変らない、こういうふうに受け取ったのが第一点であります。
それから第二点は、松本博士が非常な強迫的な感を受けられたという口述が、ホイットニーの手紙によってこれが否定されたということをお述べになっております。これは非常に重要なことでありますけれども、私が先生の報告を拝見しましては、その両者の考え方が必ずしも矛盾しておるというふうには実は受け取れなかったのであります。重要でありますから、二、三分かかりますが、ちょっと読ましていただきます。これは先生の報告の一節でありますが、当時自由党憲法調査会で松本博士が口述された速記のうちで、伊能芳雄君が向うが改正案を急いだのは一体どういう理由かと、こういう質問に対して、松本先生のお答えが「おそらく天皇を国際裁判に出すかどうかというところに問題があったのではないかと想像しております。向うのいうことを呑めば出さない、呑まなければ出す、そういうわけで、そういうことになったら大変だと思ってよんどころなく急いでやったのです。いやと言えなかったのです」これが松木先生のお答え、ところが、「これに対してホイットニーは断然この松本氏の解釈を否定しております。それだけでなく当時列席したラウェル・ハッシーらのこの点に関する陳述に照してみても、それは右に述べたような当時の冷厳な国際情勢を率直に、客観的に述べたもので、司令部の意思を表明したものではない、呑めば出さぬ、呑まねば出すという松本氏の解釈は全然誤解であったとすべきものであると考えます。松本博士のこの解釈は広く国民の間に伝わり、押しつけ憲法論の論拠の一つとなっていたようであります。また、ミシガン大学のウオード教授などはこの日本側の資料を基礎として、これでは脅迫だといって論文を書いている。アメリカ人にも松本博士の解釈が影響しているということになる。この点について右のような調査の結果を報告することはフェアプレーの見地から是非とも必要である」これは先生のおっしゃっている点であります。そこで、私はこの両方を考えてみまして、松本博士は、天皇を国際裁判に出すか出さぬかという問題が背後にあったということを想像しておられた。もし司令部の憲法草案をのまなければ、天皇の身辺にどんな重大な事態が発生するかということを憂慮されたので、司令部案をのむという決意をきれたということが、ここで私わかると思うのであります。ところが、このハッシーの陳述にある、当時の国際情勢の冷厳にしてかつ率直なことを述べたという、この冷厳率直な述べ方が、松本博士をしてかくのごとく決意をなすに至らしめた私は動機ではなかろうか。こう思うのは、ホイットニーが松本さんの解釈を否定したのは、自分は強迫する意思ではなかったとホイットニーが言うのは、これはそれに間違いないでしょう。同時に、これをもってしかし冷厳かつ率直に述べられた国際情勢が松本博士を、して畏怖の感を与えたごとを否定する材料には、私はならない。だから両方とも正しいとしても、これは別にそこに何らの矛盾がなくて、しかも国際情勢というものに対するマッカーサーの考え方は、先生がおっしゃっているように、「日本国民、日本国天皇、日本政府があのとき私を支持しなかったとしたら、その結果は日本にとって破滅であったろう」こういう手紙で述べている点から見ても、相当国際情勢というものは、非常に重大になっているということが、私はよくわかると思うのです。でありますから、このほかのところでも、やはり新憲法の改正を急いだ理由の一つは、当時天皇制存続を困難ならしめるような厳しい国際情勢のもとにこれを可能にするために、憲法の改正は欠くべからざる措置であるとマッカーサー元帥が考えておったということも先生がおっしゃっているのでありますから、冷厳にして率直な言い方が、松本博士をして非常な畏怖を感じせしめられたということは、これは私は否定することができないので、この両方をもってして押しつけ憲法でないという直ちに結論をするのは、当時の国際情勢から考えて、私は少し飛躍したものではないかと、こう実は思うのです。
なお私は二点申し上げたいのですけれども、官房長官がお見えになりましたから、ちょっと中断しまして、官房長官の方に質問を切りかえたいと思います。私、官房長官に伺いたいのは、憲法調査会が発足しましてからすでに一年七カ月になっております。そうして経費としましてはすでに八千三百万円使っておられる、今後なお三年かかるか、四年かかるかわからない、こういうまあきのうの会長のお話であります。私はこの憲法調査会の建前としては、まず現在の日本憲法の制定当時の実情を調べる、これが一点、それからもう一点は、現在の日本憲法を施行して、日本の行政面に運用の結果どういうふうな影響を及ぼしたかという、ことを、広く客観的の事実に従って正確な資料を整えられる、これが一つ、その二点を中心としてお調べになって、その結果あるいは憲法改正の結論が出るか、あるいは改正の必要が出るかということはまだ未知数である、こういうお立場でおっしゃっている。このことは私はよくわかるのです。ところが、憲法全般に対して、日本のこの憲法施行の結果が日本の国情に果して合致したものであったかどうかということを調べるということは、これはきのう高柳先生は三年ないし四年とおっしゃいましたけれども、これは国内の情勢、社会情勢というものは、今日時々刻々変化をいたしておりますから、今日の影響が来年の影響と、私は必ずしもそこに非常にコンクリートなものが出てくるということはむずかしいと思います。今度の法案では、五人、人を出すというが、これは五人が十人、三十人ふやしても、短時日の間に比較的正確なものをとるということは、私は非常に困難であると思います。でありますから、この結論を急ぐということは、なかなかこれはむずかしいから、十分研究されることがよかろうと思いますけれども、思いますけれども同時にまた、憲法調査会というものは、これは憲法のP・R運動でもなければ、学者のこれは書斎における研究討論の学界でもないのですから、おのずからそこに相当の政治情勢というか、社会情勢というものがこれに影響を持たなければならぬと思うのです。そこで私申し上げたいことは、現在の自衛隊の存在、この存在というものは、これはほかの、たとえば家族制度の今の規定がどうであるとかこうであるとか、あるいは天皇元首の問題がどうであるとか、地方自治の問題がどうであるとかというようなことでなしに、自衛隊という大きな存在がここに一つあって、しかもこれに対しては、どの公聴会でも、出ている公聴人が、私はざっとこれに目を通しましたけれども、みんな憲法第九条自衛隊の存在に対しては相当疑いがあるから、何とかしてくれということをみんな言っています。そこで、私は現在の自衛隊と憲法第九条第二項との関係に対して憲法調査会の意見はどうであるかということを、内閣並びに内閣を通じて中間報告を私は求めたいこう思うのです。これはむろん今の憲法調査会の人たちが一致した結論を出すということは、これは私は無理だと思う。しかし、憲法第九条第二項と自衛隊の関係との解釈というのは、芦田説や、あるいは佐々木博士の説のように、自衛戦力が持てるという説が一つ、それから自衛戦力が持てないという説が一つ、それから私は高柳先生の御意見は十分のみ込めないのですけれども、憲法の社会的解釈をすれば、必ずしも改正を必要でないかのような御意見のように私は拝聴するのですけれども、そういったような説、およそ三つか四つに私は大別されると思うのです。これはどの憲法の本を読んで見ましても、私は大体それくらいに分類できると思うのです。そこで私の望みたいことは、憲法調査会の中間的な報告として、憲法第九条第二項と自衛隊の厳然たる事実との関係に関する意見、三つでも四つでもけっこうでありますから、その意見のもとに、その意見に賛成する人の署名を取って内閣並びに学会を通じて国会に中間報告を、この国会中に一応出してもらいたい。これは私、憲法調査会法の第二条に、ただ、検討して報告するということを書いてあるのですけれども、期限はありませんけれども、これほど大きな自衛隊という事実があって、そうして公聴会でも、どの公聴人もみんな同じようなことを言っている。これは私は自衛隊をふやすとか、再軍備をこれ以上に強化するとか、そういう意味ではなくて、順法精神の立場から、私はこれを言うのです。このことにつきましては、前の鳩山総理大臣が、第二十四国会で、この憲法調査会法案が、議員提出として山崎さんが提案理由を説明された。私もそのときに質疑をいたしましたが、その質疑のときに、時の首相である鳩山さんはこう言っている。これは鳩山首相の答弁です。「自衛のために陸軍を持ち、海軍を持ち、空軍を持つというのは、憲法の成文から見ますると、ちょっとおかしいのです。それですから、それを正確に持てるように訂正するということが、当然に日本の国民としてとるべき道だと私は考えているのです。」これが鳩山さんのお答えです。私は自衛隊は憲法違反という立場でありますけれども、憲法違反でないという立場にいたしましても、あるいは憲法違反の疑いがあるという立場にいたしましても、とにかく自衛隊と憲法第九条第二項との関係を明らかにしてくれというのが、国民の大多数の世論です。私は何もこれ以上に、話は少し飛ぶかのようでありますけれども、今、現在衆議院で一番の問題は何であるかというと、核武装を永久に放棄するかしないか、昨年四月十八日の衆議院の社会党と自民党との共同提案になる核武装の実験、核実験禁止に関する決議案でも、他国を脅威するような核兵器を持つことをやめるということは、われわれ一貫した立場であるというようなことが、あの当時の決議案にもちゃんと出ています。その後、他国を脅威する武器がどうだとか、こうだとかということが問題になっているが、あの去年の決議から見れば、おかしいと思うのですが、とにかく核武装が問題になるということは、すでに核を使わない通常兵器の軍隊があるということが、どこまでも現実にはもうすでに見ているわけですから、それに対する憲法の解釈が、そうそうたる方がお寄りになって、一年半もかかって、なおこれに対する結論が出ないということはおかしいのでありますから、どうか私は内閣の方から、これに対する中間報告を、まあ説は幾つあってもよいが、一応そうして内閣から国会を通じて、それを中間的に報告しろということを強く私は要求をいたしたいので、これに対する官房長官の御意見を私は伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/2
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003・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 憲法第九条第二項について、自衛のための戦力が持てるか、あるいは持てないか、学者の解釈はいろいろあるようであります。しかし、御承知のように政府といたしましては、自衛戦力は持てるということで一貫しておるわけであります。しからば、憲法調査会においてこの問題に対する結論を中間報告してみたらどうかというお尋ねかと思いますが、憲法調査会法の第二条にありますように、また、今御指摘のように、憲法制定当時のいきさつ及びこの運用の問題について検討を続けてきておるわけでありますが、御承知のように、占領中から占領後に切りかえられておりますので、そういう事情のもとで憲法調査会もできたんだというふうに私は了解しておるのであります。でありますから、憲法の調査ということならば、常時これは何十年でも調査の必要がありましょうけれども、先ほど会長が申し上げましたように、そう長い期間でなく、三年ぐらいのところで結論を出したい、こう言っておられますので、そういう運びをいたしたいと思うのであります。そこで、この結論ということになりますというと、やはり総合的な結論が出てきませんと、その問題だけで憲法調査会の中間的結論ということには参らないかと思います。しかしながら、今のお話しのようなこともありますので、そのつど憲法調査会の意見というものは、政府及び政府を通じて国会ということではありませんが、議事録あるいは意見等は、各国会議員の方々等に報告をいたしておるわけであります。正式に政府を通じあるいは政府を通じて国会という形ではありませんけれども、議論の経緯等については、御報告を申し上げておる、こういうことで御了承を願っておきたいと思うのであります。
なお、つけ加えて申し上げますならば、憲法調査会の自衛隊に関する結論がどういうふうに出るかわかりませんけれども、政府といたしましては、先ほど申し上げましたように、憲法第九条二項は、自衛のための戦力は持てる、こういう解釈、また、そのもとに自衛隊を作っておる、こういうふうに御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/3
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004・八木幸吉
○八木幸吉君 私は、政府の憲法解釈にあまり深く触れますと時間がかかりますから、触れませんが、一言だけ申上げますと、今官房長官は、憲法九条第二項は、自衛戦力は持てるという政府の立場、こういう仰せがございましたけれども、これは、佐々木、芦田、清瀬各博士等の意見でありますけれども、岸内閣の意見は、私が内閣委員会において総理等との質疑応答の結果得た結論では、政府の結論はそうじゃないのです。これは、まことに釈迦に説法になりますけれども、政府の結論は、自衛のための戦力は持てるのではなくて、自衛権はある、従って、自衛権の裏づけとしてのある一定最小必要限度の実力行使は許されると見るべきであってこれは憲法以前のものであるというので、佐々木、芦田、清瀬各博士等の意見とは違うのです。ですから、今の官房長官の説を進めてくると、政府の憲法解釈が二つになるということになりますから、これは言葉をごく省略して仰せられたとは思いますけれども、今の御答弁は、私は政府の解釈としては言葉が非常に不十分であり、かつ、極端な言葉を言えば、総理とは相背馳した別の学説をもとにしたお答えであると、このことを私一言申し上げておきます。
それからもう一つは、自衛隊と憲法第九条第二項との関係を、総合的とおっしゃいますけれども、そもそも憲法調査会が起りました動機と申しますか、スタートは、やはり第九条の解釈いかんがスタートになっている。政府の方では、憲法改正の可否を検討するという表面の理由にはなっておりますけれども、憲法改正に反対すると認められる学者のグループが別に一つの団体を作っておる、社会党の諸君がこれにお入りにならん、というような事実から見てもわかりますように、これはまず憲法改正を意図しておると、常識では思っております。しかし、そういうことを意図しておるかどうかということは、私この点で触れる気はございませんけれども、少くとも憲法の九条と自衛隊の関係ぐらいのことは、今のそうそうたる人に結論を聞けば、きょうにでも私は書けると思う。現に、日本国憲法というものは、いろいろないきさつはありますにしたところが、司令部がわずか十数日でこの全体を書き上げたというようなものがもとになっているくらいでありますから、政府にその気さえあれば、また、調査会にその考えさえあれば、これに対する結論くらいなことは当然出されると思う。なるほど、多くの速記録というものは、われわれの所にもちょうだいして拝見をしておりますけれども、そういうことじゃなしに、自分の良心と信念に従って結論がどうあるか、憲法第九条二項と自衛隊の関係はどう見るかということの学識経験者の調査会としての意見は、当然一応中間報告として求めるだけのわれわれは権利を持っておる、こう実は考えておるのでありますから、総合的というようなゆうちょうなことじゃなしに、また、憲法全般をそう軽々に改正されるということは、私は困るという立場でありますが、順法精神の立場から、一応の中間報告の各委員の意見をとりまとめて出してもらいたい。これは、会長もここにおられますが、特に官房長官から会へ対して、要するに諮問機関でありまして、これを出したからといって、これがすぐに国民に問うところの憲法改正案の原案になるのじゃなくて、ただ内閣が国会に対して憲法改正の素案として出す、しかもその一つの参考になるわけでありますから、それがすぐに国民に問われるところの憲法改正の原案になるわけじゃないのですから、これくらいの参考意見は出すことをわれわれが要求することはこれは当然のことである、こう思いますので、重ねて官房長官の御考慮をわずらわしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/4
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005・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 全部の結論が出なければ報告をしないという意味で申し上げたのでありませんが、ただ、それだけを摘出して政府を通じ国会に報告するということは、非常にむずかしいのじゃないか。でありまするから、今のお話しのようなことで大体総合的に考えて、その中で自衛隊はどういうふうだというようなところまで調査が進みまするならば、お話しのように中間報告という形も、私は、差しつかえない、あるいはしていいのじゃないか、こう考えております。しかし、まだそこまで行っていないのじゃないかという気がいたしますので、八木さんのお話しのように今それだけ摘出して報告するということはどうか。これは、憲法調査会の今の運営の状態がどの程度まで行っているか、私正確には承知しておりませんので、申し上げかねるのでありますが、お話しのようなふうに中間報告ができるような段階においては、私は報告したほうがよろしいと、こう考えておりますので、御趣旨のようなことにつきましては、なお憲法調査会の会長とよく打ち合せをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/5
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006・千葉信
○理事(千葉信君) 八木君に申し上げます。官房長官の質疑を要求された方が、長官の出席時間が少いものですから、質疑を急いでおられますので、できるだけ簡単につ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/6
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007・八木幸吉
○八木幸吉君 私は、総合すれば時間がかかりますので、自衛隊は厳然たる事実でありますから、ぜひこれを一つ分けて、一応中間報告をしていただきたいということを強く要求しておきまして、官房長官に対する質疑は一応これでとどめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/7
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008・伊藤顕道
○伊藤顕道君 時間があまりありませんので、ごく簡単に二、三の問題についてお伺いしたいと思います。憲法上の規定を変更する権限は、憲法九十六条によって国会にのみある。こういう根拠から、私どもは調査会を政府が設置することには、強く反対し続けてきたわけであります。ところが、私が申し上げるまでもなく、前の暁の国会で政府与党は社会党の空巣をねらうような形でこの法案を強引に成立させたと、こういう経緯があるわけです。憲法のどこを根拠にして内閣にこういう機関を設置されたのか、その根拠を明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/8
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009・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 今のお話しのように憲法改正を発議する前提としての憲法調査会ということでありますならば、御指摘のようにちょっとまずいと思います。しかし、憲法調査会法の第二条にありまするように、目的が憲法制定当時のいきさつ、及び憲法を運用していくことについての調査、こういうことでありますので、これはこの調査会を設けるのには、法律事項でありますので、国会の議決を経て法律を作るということは憲法違反とかそういうことでないと、こういうような立場から憲法調査会法ができた、こう承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/9
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010・伊藤顕道
○伊藤顕道君 主権市民の憲法のある国で、憲法上の問題に対して政府が法律をもって関与する、こういうことはもう憲法の歴史的また発展の事情を見るとよくわかると思うのですけれども、たとえば君主や政府の専制に苦しんだ過去の国民が三権を分立させ、そして国民の自由を戦い取った。こういう事情からくるならば、この点ははっきりしてくると思う。そういう点で私どもはなかなか政府がやったことについては納得はいかないわけです。この点を明確にしていただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/10
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011・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) で、明治憲法の制定当時なんかを見ましても、伊藤博文氏を中心としていろいろ調査などがされたと思います。あるいはまた、諸外国でもそういう憲法に関して調査をすることはあると思うのですが、ただいまお話しのように、今の憲法調査会は改正を前提とするのじゃありませんが、しかし占領中から占領後に切りかえられたそういう事情にありますので、占領中において、もちろん日本の国会がこれを制定したのでありますが、その制定に至るまでのいきさつ等について明らかにしておく必要があるだろう、あるいはまた先ほど申し上げましたように、占領から占領を解除して切りかえられた、こういう時代にも再会しておりますので、憲法の運用等についてもいろいろな問題があろうかと、こういうことでありますから、憲法調査会においてそういう問題についての調査をした方が適当だと、こういう事情で調査会を設けられたわけであります。そこで、主権在民のことでありますが、主権在民であることは、これはもう憲法にもはっきりしていますし、われわれもそれを信じています。そういう理由でありますので、官庁だけでそのいきさつあるいはまた運用等について調査をするということよりも、主権在民の趣旨に沿うて国会で法律を制定して、そして国会議員の方にも委員として入っていただく、そうして調査を進めるということが、主権在民の趣旨に沿うし、行政庁だけで調査をするよりは民主的だ、こういう考え方から、法律をもって憲法調査会を設けて調査をいたす、こういうことになったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/11
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012・伊藤顕道
○伊藤顕道君 たとえば、今の問題についてフランス革命のとき人権宣言にはたしか十六条だったかと思いますが、三権分立のない憲法というものは憲法でないということをはっきり宣言しておるわけです。また、イギリスの例をとっても、イギリスでは憲法を変更するような機関はすべて国会に置いておる。こういう点からも、日本だけがこのような調査会を内閣に作ったことにおいては納得いかぬと思うのです。こういう点を根拠にしても、この点を明確にしていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/12
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013・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 私どもは先ほど申し上げましたように政府で調査するとかいうよりは、やはり国会に籍を置いておる方々も入って調査をするということが適当だろうと、こういうふうな意味で、繰り返して申し上げるようでありますが、憲法調査会法という法律ができておると了解いたしております。特にこの憲法調査会法の提案は議員提出になっておりまして、議員みずからがそういう発意によって、法律をもって調査会を設けたいということでありまするから、政府といたしましては、非常に適当なことであるというふうに考えておりましたし、また考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/13
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014・伊藤顕道
○伊藤顕道君 時間がありませんので、次の問題の憲法九十七、九十八、九十九ですね、この三条がいわゆる最高法規になるわけですが、この九十七条を見ますと、基本的人権が人類の長い戦いの結果得られたものである。こういうことをうたっておるわけです。
それから、九十八条においては、この憲法に反する法律その他はすべて認めない。こういうことを明確にしておるわけです。それから、九十九条ではこれを擁護する義務があるということをうたっておる。こういう点から見て、基本的人権についてはいかような場合でも変更できない、またかえられない、憲法を擁護する義務がある。こういうことになろうと思うのです。そういう点から考えて、前に問題になりました警職法の改正案とか、あるいは労働運動に対する不当弾圧、あるいはまた近く問題になっておる勤務評定の強行、こういうことはまさしく最高法規違反だと、こういうふうに私どもは解釈しておるわけです。この点をはっきりさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/14
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015・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 九十七条、九十八条、九十九条につきましては、最高法規として政府も国民もこれは順守しなければならない問題であることは申し上げるまでもありません。今、例をとりました警察官の職務執行法でありますが、これは御承知のように警察官の職務執行法という法律がすでにあるわけであります。警察官職務執行法は申し上げるまでもなく、何々した者に対しては何々の罰を加えるというような戦前のいろいろな法律とは違って、警察官の職務執行に対しての規定であり、まして、まあ私詳しい法律論は知りませんが、いわゆる手続法的な面が相当多く含まれておると、こう考えております。それでありますので、警察官職務執行法という法律の改正というものは基本的人権を侵害するというような立場において提案されたということではないのであります。あるいはまた、勤務評定の問題でありますが、この勤務評定の問題も、すでに国家公務員法あるいは地方公務員法等において、勤務評定の制度を規定しております。法律に規定してあるからどうということでありませんが、この勤務評定という制度は、日本ばかりでなく世界各国にあり、アメリカの能率主義の点からいいましても、あるいはまた、ソ連等におきましても、ノルマというようなことで、勤務評定的なものがあります。日本に適当したやはり勤務評定というものを行うということは、これは決して基本的人権を侵害するというようなことでは私どもないと思いまして、勤務評定の内容そのものについては、いろいろ御議論もあると思いますが、勤務評定そのものは、決して基本的人権を侵害するものではないという建前に立っておるのであります。そういうふうに、実は、この憲法第十章の九十七条、九十八条、九十九条、これに違反していろいろな法律案等を出したりしているというように私どもは考えておりませんので、その点を御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/15
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016・伊藤顕道
○伊藤顕道君 条約も、その内容によっては、相当強く国民生活を拘束することがあろうと思います。そういうことについて、たとえば安保条約の改定についても、基本的人権に関連を持つような点ですね。たとえば、戦争に巻き込まれるおそれのあるような条約にこれを変更すると、そういうようなときは、基本的人権の侵害ともなり、最高法規の違反ということに関連してくると思うんです。この点をはっきり伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/16
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017・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 条約の改正によって基本的人権を侵害されるというようなことは、絶対にないように私どもいたして参りたい、こう考えております。安保条約との関連において、いろいろ御見解はありましようけれども、基本的人権を侵害するようなことはないように、また、あってはならないと、こういうふうに考えて、交渉等もやっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/17
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018・伊藤顕道
○伊藤顕道君 最後に、時間がありませんので一点だけお伺いしますが、国民の祝日である憲法記念日ですね。この記念日に対して、政府はきわめて無関心で、通達一本出していないと、こういうことについて、昨年のたしか十月末日だと思いますが、衆議院の内閣委員会で、受田委員から長官に対して質問があったわけです。それに対して長官は、普及の行事をしないから憲法擁護の義務を果していないという議論は、少し飛び離れているかと思う、しかし、注意の点はよく考慮いたします、と、そこで回答なさっておるわけです。その後、この点についてどのようによく考慮されたのか、これを承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/18
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019・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 御承知のように、憲法が制定された当時におきましては、明治憲法と非常に違って、平和、民主、基本的人権を守るということが強く出ております。それを普及し、それを擁護するという意味におきまして、憲法公布の記念日等につきましても、相当大がかりな行事が行われたことは、御承知の通りであります。しかし、最近になりまして、この憲法の内容、趣旨等も相当深く国民にわかってきたと思いますから、普及されたというふうに解釈しておりますので、制定当時のように、大がかりにといいますか、大がかりに憲法の公布記念日に督励してお祝いをするというようなことは、今あまりいたしておりませんけれども、この憲法の趣旨及びこの憲法を順守するというようなことにつきましては、各機関、官庁等を通じ、あるいはまた、そういう趣旨を文部省といたしましても特に強調いたしませんけれども、憲法の趣旨をよく理解させて順守するということに督励といいますか、常時やっておりますが、特にその記念日については、なお一そう、そういう趣旨を徹底させるということにもしてきましたが、まだ足らぬ点がありますならば、なお十分にやっていきたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/19
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020・伊藤顕道
○伊藤顕道君 今の御答弁、ちょっとおかしいと思うので、今、長官がおっしゃったような答弁は、衆議院の内閣委員会で今と同じようなことをおっしゃっておるわけであります。普及の問題については政府は熱意がない、何か考慮すべきだということに対して、普及の行事をしないから政府は熱意がないのじゃない、しかし、注意の点についてはよく考慮するということを、あなたはおっしゃっておるわけですね。そこで、よく考慮した結果どうなったのか、具体的に承わりたいと思います。その点についてのお答えが何もなかったわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/20
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021・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) さきにもお答えいたしましたように、また、本日も申し上げておるように、十二分に御趣旨に沿うようにはやっておりますが……、やっておりませんが、(笑声)当日は休日にもなっておりますし、まあ何といいますか、大げさな行事は差し控えたいと思いますが、御趣旨に沿うて、それを記念するというようなことの徹底には、なお努めたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/21
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022・横川正市
○横川正市君 一点だけお伺いしたいと思うんでありますが、私は、官房長官は、おそらく、私どもが官房長官を信頼する唯一の問題は、これは詭弁とか、うそを言わないで、非常に朴訥で正直だというようなところに、私は、官房長官の信頼のゆえんがあるのじゃないかと思うんでありますが、今の問題は、憲法の趣旨が徹底したかしないかということよりか、基本的に平和憲法が制定されたことを国民が喜んで、その意味で盛大にその日をお祝いする、こういうことが、なぜ政府によって行われないのかという質問が主なんだと思います。それは、ただ休日だからいいのだということだけでは、私は質問の趣旨にお答えになっておらぬと思います。ただ、これと関連するのでありますが、昨日、高柳会長と矢嶋委員、八木委員との質問のやりとりの中で明らかにされたのでありますが、憲法調査会法制定当時の、議員立法された趣旨、提案の理由、並びに、その提案を受けて、与党間でそれを了とされたいきさつ等を、これを勘案してみますと、第一には、憲法第九条の解釈からいって、警察予備隊七万五千を持った当時においてさえ、すでに疑義があり、しかも、漸増的に戦力の増強をはかっていくということに対して、非常に苦しい言いのがれをせざるを得なくなってきた、そういうことから、当時の憲法論議の中にも、戦力とは一体何ぞや、あるいは、平和憲法の中に交戦権、自衛権があるのかどうか、それは結論的には、防衛のためにはこれは持ってもいいのだというようなことに正当に判断をすればそうならないものを、われわれとしては、そういうふうにこじつけながら戦力の漸増計画を立ててきたと、こう私たちは考えているんです。そういうその考え方が、究極の問題としてはこれ以上の戦力を強化することができない、ことに核武装の問題になりますと、一般に私は核兵器に対するものの考え方、いわゆる被害があまりにもひどいということから、これを人類の幸福のためにも持つことはいけないんだという平和賞、言に類した反対と、もう一つは、戦力は核武装をすることによってこれは全きを期すのであって、これがない戦力は戦力ではないという意見、こういうのがありまして、現在ではあなたの党、与党の中にも核武装をするのに、大規模のものならばこれはいかぬけれども、小規模のものならば持つべきであるという意見さえ出てきている。こういう意見も総合した憲法改正への非常に強力な意見となってそして提案された。その提案されたあとも、大体自民党の中での憲法改正に主力的な意見を持っている方々が調査会の中に入っていて、そして日本の憲法の制定についての事情を調べられた。その事情の調べ方の第一は、これは押しつけの憲法である、日本の国情に合わない憲法である、だからこれは改正しなければいけないんだ、こういうような意見が相当支配的であったと思うんです。きのう高柳会長は、憲法調査会制定当時の提案理由がどうあれ、その調査会の課せられた使命がどうあれ、調査会法の中に盛られている言葉の字句というものを、これを理解をして、そしてそれを運用すればいいのである、こう理解されて答弁されているようであります。こうなりますと、憲法調査会法を提案をいたしましたおもなる趣旨といいますか、理由といいますか、必要性といいますか、そういったものとは、事実上憲法調査会というのは全然違った独自の見解で歩き出している。こういうことに対して、政府を代表して、長官としてはどのようにお考えになっているのか、それをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/22
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023・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 高柳会長は学者ですから、私は高柳会長のお話が法律的にはもっともだと思います。法律は、法律に規定されたそのものについて解釈し運用するべきものだ、なお、きのうの高柳会長の話もありましたが、事情変更の理由というものもありますので、法律の成文に従って、また事情変更の原則といいますか、法則といいますか、そういうものなどは当然含まれると思いますが、法律の成文に従って解釈すべきものだと思います。ただ、解釈の参考として、やはり立法理由といいますか、これは非常な参考になる問題だと思います。解釈の上においても参考には当然しなければならない問題だと思います。現実に憲法調査会の運営等につきましては、私は立法当時の立法理由は参考にはなりましょうけれども、それはあくまで参考であって、法律の成文の解釈に従って、成文の運用によって憲法調査会は運営すべきものだと、こういうふうに私どもは考えております、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/23
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024・矢嶋三義
○矢嶋三義君 官房長官お急ぎのようですから、官房長官にまずお伺いします。あなたにお伺いする前提として、高柳会長に一つ伺って、それから質疑いたします。高柳会長にお伺いいたしますが、八木委員からも質疑があったようでございますが、今、日本国の憲法の運用について検討しなければならない最もこの緊急を、要する問題は、憲法九条関係だと思うんです。で、憲法九条の解釈並びに運用等について、憲法調査会では分科会を設けるか何かしてもう今やっているのか、それともやっていないとするならば、いつごろからこれを調査審議するような御計画であるか、まずそれを伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/24
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025・高柳賢三
○説明員(高柳賢三君) 憲法諸問題の中で、九条関係が一番大切だと、こういうふうに考える人たちも委員の中にありましょう。しかし、そうでないように考えている人もある。日本の憲法問題の一番の重点というものは、新憲法の根本原理である民主主義というものの運用が、果して日本を独裁制に追いやるような運用の仕方をやっているのか、右またはたのディクテーター・シップというものに追いやる運営方法をやっているのか、あるいはすなおに育つような運営方法をやっているのか、そういう点が一番大切なので、九条の問題など、そういう個々的な問題は第二次的な問題、であるからわれわれは全体として憲法の運用を検討しなくちゃならぬ、こういう考えの人もあります。そこで、九条につきまして、先ほどから八木委員の御発言もありましたが、憲法調査会は憲法の解釈をする機関ではないということをよくのみ込んでおいていただきたい。であるから、これは憲法の解釈は第一次的には国会、政府、それから究極的には裁判所が権限を持っているので、憲法調査会の委員がいかにえらい人がそろっておられても、そういうオーソリティティヴな解釈をする権限はないのです。われわれの課せられた問題は違った方面にあるので、これについて自衛隊が憲法に違反するかどうか、そういうような問題の解決をわれわれに求めるということは、これは筋違いだと考えております。
それから自衛隊問題をいつやるか、これはまだ運営委員会においても、特に九条が必要だというわけでなく、国政全般の運営が必要だという意味で直ちに取り上げてはおりません。で、提案理由では、そのごろの情勢では、憲法調査会ができました当時の情勢では、九条問題についての論争というものが背景となっていたというような経緯は、私も心得ておりますけれども、先ほど申しましたように、憲法調査会法の成文と精神というものに照らしてわれわれは運用していく、そういう過去の行きがかりにとらわれず、もっと大切な問題があるということを、われわれは考えて全般的にやっているわけで、九条だけを早く取り上げるなんということは、今の運営委員会にはございません。だけれども、時が至れば九条の問題はもちろん取り上げられて九条と自衛隊の関係がどういうふうになって運用されているのかというような点も十分に考慮するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/25
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026・矢嶋三義
○矢嶋三義君 この法案はわずか五人の定員増の法案であるから簡単だと見る人もありますが、私は必ずしもそうでないと思う。三十四年度においても三千八百六十二万四千円という予算要求を本院にされているわけでありまして、どういう運用をしているかという点は重大でありますから、もう少し私は伺って参ります。ただいまの高柳会長の答弁は、一部は了解できますが、一部は私了解できない点があります。それは、この憲法を貫くものは民主主義であり、平和主義、人権尊重主義であると思う。それで民主主義に即応して運用できておるかどうかということはすべてではない、その大部分を占めるというわけのものでも私はないと思う。憲法の前文において特にしかり、憲法九条というのは、平和主義から出てきているのであって、その運用がどうかということは、当然私は憲法調査会で真剣に審議調査すべき対象であると思います。もちろん、憲法解釈も最終的なものは、最高裁判所が憲法の番人であり、最終的な解釈を下すべきものであるということは私は同感の意を表します。しかし、だからといって、憲法調査会が民主主義的な角度から運用されておるかどうかという点に重点を置いて、現実のわが国の政治経済、国民生活にきわめて大きな影響を及ぼし、国民が重大関心を持っている憲法九条の関係の運用について憲法調査会は、今、会長が述べられる以上に私は関心を示さるべきではないか、それが国民の期待でもある、かように私は考えるのである。なぜかと申しますと、そうしないと、行政府の一方的な解釈、行政解釈、行政運用というものが独走するおそれがあるわけですね。それらについて調査審議することが、私は憲法調査会が設置された一つの目的でもあったと思うわけです。従って憲法九条に関する調査会の審議調査という点については、私は八木委員と同感であり、できるだけ早い機会に検討していただきたいと、これは御要望申しあげます。
そこで、高柳会長への質疑はあとに回わし、官房長官忙しいので、私は率直に簡明に伺って参ります。まず、高柳会長の答弁は、今のようであります。政府を代表してお答え願いたいと思いますが、政府は、憲法九条は、自衛のためといえども戦力を持ち得ないと、かように解釈し運用しているのか、憲法九条は、自衛のためといえども戦力は持ち得ないと、こう解釈するのか、あるいは憲法九条は、自衛のためには戦力は持てる。前者においては、自衛のためといえども戦力は持てないか、あるいは今の自衛隊は戦力に至らない、こういうような解釈をして運用しているのか、二者択一であります。いずれでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/26
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027・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 先ほど八木さんからお尋ねがありまして、私の表現がどうも正確でないということでありますが、法律的にあまり正確なことは申し上げられないかと思いますが、今のお尋ねにつきましては、憲法第九条第二項によって、自衛のためならば戦力は持てると、こういう解釈のもとに運営してきておる、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/27
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028・矢嶋三義
○矢嶋三義君 自衛のためなら戦力は持てると、こう解釈している……。きょうはこれ以上深く追い込んでいきませんが、それで、次、承わっておきますよ。自衛のためには戦力は持てる。そうすると、角度を変えて、他国と相互防衛条約というものは結べると政府は解釈し、その立場から運用しようとしているのか、それとも他国と相互防衛条約のようなものは結べないと、こう解釈されているのか、二者択一でお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/28
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029・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 他国と防衛協定を結べると、こういうふうに解釈しております。ただし、その防衛条約を結んだといたしましても、海外に派兵するといいますか、これは憲法上認められておらない、こう解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/29
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030・矢嶋三義
○矢嶋三義君 それからもう一つ具体的に伺います。相互防衛条約となりますと、相手の国は、自衛のためのみならず、あるいは攻撃的な戦力を持っている国であるかもしれません。要するにあなた方の規定する、わが国の持てる戦力とは違う戦力を持っている国ですね。で、相互防衛的な条約となれば、そこに戦力の交流があるわけですね。そうすると、あなた方が憲法九条の解釈に基いて持っている日本の国の戦力というものは、それらの他国の戦力と、共同行為をとり、相互防衛条約になると、相手国が攻撃を受けた場合に守らなくちゃならんですが、日本の国を——いいですか、日本の国を守るために、自衛するために、あなた方が今持っている戦力を行使するだけでなくて、よその国を守るために、そういうあなた方の解釈している戦力というものが発動できる、そういうものをもってそれが発動できる、相互防衛条約というものはそういうものですから……。そういう解釈をしているわけですか。これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/30
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031・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) あくまで自衛のための戦力でありまするから、防衛協定はいたしましても、他国を攻撃したり、他国まで行ってそれを守るというようなことは、これは憲法上許されないものだと、こういうように解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/31
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032・矢嶋三義
○矢嶋三義君 明確にもう一回伺います。他国を——日本の国じゃない、他国を守るため——その国にとっては自衛ですね。他国を守るために、その今の日本が持っている戦力を使えるのですか使えないのですか。どう解釈したらいいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/32
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033・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 他国を守るためには、日本の自衛戦力は使えないというように私は解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/33
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034・矢嶋三義
○矢嶋三義君 いずれこれはまた他日に論じますが、すると相互防衛条約とは何ぞやということになってきますがね。非常に答弁は矛盾しております。これは他日、他の機会に追及いたします。
で、次に承わりますがね。内閣としては、戦略的な核兵器、戦術的な核兵器と大別されると思うのです、核兵器はですね。御承知のごとく、ICBM時代に入って、もう量産時代に入っているわけですね、アメリカとソビエトは。従ってこの基地政策というものは大きく変って、基地というものは非常に後退いたしました。で、漸次第一線から、ICBM時代になりますというと、戦略的な大規模な核兵器はともかくとして、戦術的な小型核兵器というものは廃止されるというのが、私は一つの戦略の立て方だと思うのです。そういう方向に、戦力を持っている国の軍備というものは動いていっていると思うのですね。これだけを説明しておいて伺いますが、改めて伺いますよ。それは、岸内閣としては、大型の戦略核兵器はもちろんのこと、戦術的な小型核兵器といえども、いかなる核兵器も、日本国憲法九条からは保有できない、保有しない、こういうふうに解釈、決意していると、こういうふうに了承してよろしいか。私の質疑のところに誤まりがあったら、それを訂正してお答え願いたい。政府の解釈です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/34
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035・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 政府といたしましては、核兵器をもって自衛隊を装備しない、また核兵器の持ち込みは承知できないと、こういうことになっていますから、すべての核兵器を含んで、核兵器の装備も、持ち込みも許さない、こういう態度をとっております。ただそれが今のお尋ねのように、それは憲法上そうなのかということにつきましては、これは憲法上の問題とは別だと思います。憲法上の問題からするならば、核兵器を持つということも、自衛のためならばこれは許されないことではない。憲法上の問題は別として日本として、今の岸内閣として、核兵器をもって自衛隊を武装したり、核兵器の持ち込みは許さない、こういう方針を略持しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/35
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036・矢嶋三義
○矢嶋三義君 それならば、その方針を、憲法上は持てるが、政策上からは持てないのだ、そのこと自体問題があると思いますが、かりにあなたのその発言を私は認めた前提に立ってお伺いしたいと思うのですが、いかなる核兵器も日本政府としては保有しないし、他国から持ち込ませないという決意が明確であるならば、それを内閣の名において、責任において中外に発表、発表と言っても、宣言と言っても、どっちでも同じですが、そういう考えはございませんか。そうして、そのあなた方のお考えになっている点を、国民はもちろんのこと、中外にはっきりさせた方が誤解も受けなくて、すっきりしてよろしいと思うのですが、やるべきだと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/36
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037・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) これは衆議院の予算委員会あるいは本会議、あるいはまた参議院の予算委員会、本会議等におきまして、岸総理がしばしばそのことを声明いたしたり、答弁で答えておりますので特にそのことを世界に向って政府として宣明するということでなくてもよろしい、もうすでに明らかになっているというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/37
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038・千葉信
○理事(千葉信君) 矢嶋君に申し上げます。官房長官の出席の時間は、約束の時間をはるかに超過しておりますので、できるだけ簡略に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/38
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039・矢嶋三義
○矢嶋三義君 委員長に協力します。その点は、私はきょうはこの場ですから、あなたの意見だけを承わっておりますが、ひるがえす意思がないということ、それは他日適当なときにやることにして、意見だけ聞いておきます。
そこで、官房長官は、小型核兵器は将来、将来というのが何年かはともかくとして、将来持つようになるであろう、そのよしあしは別ですよ。小型核兵器を日本が持つようになるであろう、こういうお考えでいらっしゃるようにあなたの言動から私は推察するわけですが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/39
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040・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 世間でも、あるいは党内におきましても、いろいろ意見はあります。でありますので、小型兵器というものが非常に発達してきておる。普通の兵器とあまり差別がないというような時代も近づいておるのではないかと思います。そういう場合には、あるいは持つこともあるかもしれません。しかし、それを持つか持たないかというようなことにつきましては、非常に重大なる問題でありますから、それを持つとか持たぬとかという結論を出すのには、相当の検討、研究といいますか、研究をして結論を出すべきもので、簡単にどちらにするかということを今言うべきものではない、きめるべきものではない、よほど慎重にこれは検討しなければならないのではないかということが私の意見であって新聞記者会見等におきましてもそういうことを聞かれましたので、そういうことを答えておいたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/40
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041・矢嶋三義
○矢嶋三義君 その点もう一回お伺いします。私は、新聞並びにラジオ放送を通じて、あなたが記者団にお答えになったのを聞き、また見てこの質問をしているわけです。今の答弁で大体あなたのお考えがわかりました。私推察しておったのに近い、ほとんど同じですがね。結局こういうことなんですね、世界の情勢は刻々動いておる、科学の進歩も著しい、それに伴って科学兵器も日々進歩革新が行われている。こういう科学の進歩と世界情勢の動きから、将来その小型核兵器というようなものが必要になってくるような情勢というものが生まれてくるかもしれない。で、憲法上は自衛のために持てると自分たちは考えている。だからそのときの国内情勢、世界情勢を総合勘案して、そのときの時点に立って、これを持つか持たないかということをきめる。そのためには、今ここで内閣とか、あるいは国会が、将来長く拘束するような宣言を、国内に向って、さらに世界に向ってやることは適当でない、こういう考え方だと、かようにあなたのラジオ放送並びに記者団に発表した記事ときょうの御答弁から私は推察するわけですが、そうでありませんか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/41
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042・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 岸内閣として、核、兵器を自衛隊に装備しない、あるいはまた持ち込みは許さないということは、これははっきりしておるわけであります。しかし国会で、永久に核兵器を持たないようにというような決議をするということには、相当慎重を要するんじゃないか。というのは、今、矢嶋さんのお話しのように、事態が、どういうふうに国際情勢あるいは科学の進歩というものが進んでいくかわからない。それを十年も二十年もというような先までのことを国会で決議をして、行政権も拘束される。言葉をかえてみれば国会の決議が、憲法の条章とこの問題については同じようなことになる。でありますので、例を申し上げる必要もありませんが、イギリスの労働党のベヴァンなども、イギリス国会においてそういう決議をするということには慎重を要するんじゃないかと、労働党の左派のベヴァンなども言っておるというようなことなども考え合せまして半永久的に政府を拘束する、あるいは国民を拘束するような決議というものについては、よほど慎重な取扱いをすべきものじゃないかというのが私の考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/42
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043・矢嶋三義
○矢嶋三義君 今のあなたの考え方というものは、これは官房長官としておいでになっているんですから、内閣の考え方であり、岸総理もそういうお考え方だと、こういうふうに了承してよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/43
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044・赤城宗徳
○政府委員(赤城宗徳君) 国会で決議されるということは、国会の自主性に基いてやることでありますので、これに対して口出がましいことを政府は申し上げる立場でない。でありますので、国会の御決議は、国会の自主的な御決議にまかせるという立場であります。しかし、これを永久的な決議をするということにつきましては、慎重を期せなくちゃならないじゃないか、こういう考え方は、官房長官としての私の考え方でありますが、総理も同感であります。
〔「議事進行」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/44
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045・矢嶋三義
○矢嶋三義君 間もなく終ります。実はきょうは国民年金法案という画期的なものが本会議にかかって、私の同僚の藤田君が本会議で質問もしているわけであります。実はそれも聞きたいわけなんですが、委員長理事打合会の何に協力して参っているわけでありますから、私もそう、長くかかりませんから、しばらくやらしていただきたいと思う。きのうちょっと質疑して、きょうこれだけですから……。八木委員もおりますけれども、憲法の解釈運用、特に内閣委員会としては、憲法九条関係については、ぜひとも内閣の最高責任者の岸総理を呼んでただしたいと、われわれの間で、画三再四何したんですが、ほとんどやる機会がないわけです。それで、ちょうどこれは総理大臣が所管大臣であるとともに、それからまたこの法案が国会で審議されたときの筆頭発議者である。それで今総理においで願って、こういう際に所信をただしたいと思ったけれども、それもできないので、官房長官で代用したわけです。その点私ども委員長の運営に協力しているつもりですから、長くはかけませんから、しばらくやらしていただきたい。
高柳会長にお伺いしますが、今憲法九条を中心とする行政府の解釈並びに運用について、若干私ただしてみたわけです。でこれはただいまの官房長官の答弁には重要な面もありますし、これは他日私は徹底的にただして参るつもりでありますが、お聞きの通りなんですね。これは国民の大きな関心事だと思うのです。そうしてまた国民の立場から見れば、この九条一つにしぼってもこの解釈と運用はずっと変ってきておるのです。同じ政党でも、同じ政党でありながら、一年あるいは二年の時間的経過によって解釈が大きく違ってそれによって運用されている。それは、国民の負担に、国民の日々の生活に直結するわけなんですね。だからこういう現実があれば、憲法調査会というのが、しかもその道の権威者で構成されて、できているとすれば、ある以上は私はその調査審議というものは早急にやってみる必要があるのじゃないか。先ほどのような答弁では、憲法調査会があるという立場からいうならば、十分じゃないじゃないか。最近公聴会を盛んにやられていますが、特にこういう面については、公聴会なんかは私はやられる必要があるのじゃないか。この点とそれから今まで五回地方公聴会をやっていらっしゃいますが、私は公聴会をやるということは非常にいいことだと思うのですが、公述人として皆さん方が選ばれたメンバーを見ると、大体団体代表が多いのですね。おおむね団体の代表というものは、保守と革新に大きく分ければ、保守的な人が多いわけですよ。だからせっかく国費を使って皆さん御苦労なさって公聴会をやられておるわけですが、公述人の選定方法というものは、もう少し私は工夫を要するのではないか。かようにあなた方からいただいた速記録を見て、その人選の、工合を見て私は感ずるのですが、その点についてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/45
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046・高柳賢三
○説明員(高柳賢三君) 第九条の問題と、それから今の地方公聴会の問題、この二つだと思いますが、憲法調査会としては、憲法問題の研究という非常に大きな課題を課せられておりますけれども、そのときどきの問題について諮問を受けて答えるというような性格の調査会ではないと理解しておるのであります。われわれは大きく憲法及び憲法の関連するいろいろな問題を究明して、その結果を国会に報告するというので、それをどういうふうに達成するかということは、憲法調査会として運営委員会で非常に考慮して、そうしてやっておるわけなのでありまして、世間が騒ぐから直ちにこの問題はやれ、あるいは天皇制の問題を早くやれとか、まあいろいろなことを言う人がありますけれども、この調査会といたしましては、そういうようなことも十分に考慮して系統的なプログラムを立てて着々と進めておるわけであります。それで、九条の問題もある時期になりますれば、もちろん取り上げられるのであって、これを回避するということはもちろん考えておりません。ただ、至急に内閣からそれを諮問すると、こういうようなことになると、自主的運営というものが妨げられることになりますから、その点は一つ御批判は十分伺っておきますが、そういう、これを内閣から特に注文する、そういうふうなことは、非常に不穏当だと考えております。やはりわれわれの良識に基く運営というものに信頼されて、そうして批判があるなら幾らでも御批判は承わりますけれども、自主的運営に干渉するというステップをとることをリコメンドされるということは、これは私としては賛成できないことであります。
それからもう一つは、地方公聴会の問題でありますが、これは二つの方法がありまして、公述人は公募による公募者、または関係団体から推薦されたもの、こういうものについて選定すると、こういうことになっておるので、これは公聴会の実施要綱にはそういうふうにきめられております。ところが、実際には関係団体からの推薦されたものという、この方で今はいっておるので、まあどういうふうな公募の方法でやるかということは、いろいろ研究すべきことが多いので、本年度はその方法をとらないで、関係団体から推薦されたもの、これは推薦されたものをそのまま公述人とするということになっております。そこでまあ、この労働関係のグループが今までは少なかった。今度は高松でやるときにはその方の関係者も選ぶということになりまして、これはわれわれの立場としては、あらゆる階層の意見を率直に伺って、それを参考にするというのが目的でありまして、こちらからある考えを植えつけるとか、そういうようなことじゃなく、逆にこちらがパッシヴになって国民の声を聞くと、そのときにその目的に合致するようないい方法がありましたら、喜んでいろいろ御意見を伺いたいと思っております。だからその点は十分御了承願いたい。これは調査会としても非常に重要な部面であります。蝋山政道君が初めぜひ必要であるというので、われわれももっともだというわけで、この制度をこさえたのであります。だから決してある考えを植えつけるなんということではないのですから、その点は御了承を願いたい。この二つの御質問に対してちょっとお答え申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/46
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047・千葉信
○理事(千葉信君) ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/47
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048・千葉信
○理事(千葉信君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/48
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049・八木幸吉
○八木幸吉君 先ほど高柳会長の海外報告を拝見した私の所信を二点まで申し上げたわけです。急いで申し上げますが、次の第三点は、会長の報告は、調査に加わった稲葉、高田、三人の見解の報告となっておりますが、その一人である稻葉君は、大石委員の報告に対する質問に対して、「調査委員の一人としてお答えいたしますが、本日、会長が代表してわれわれ三人の見解として報告された事柄は、あの憲法が押しつけであったか、押しつけでなかったかということの意思決定はしておらぬのです。」とこう言っておられる。それから第四点として申し上げたいのは、この調査委員の海外報告を、憲法調査会委員の諸君が了承したのではない。相当の質問が出たという点を私は想起したいと思うんです。大石教授は、ポツダム宣言が憲法改正を当然含んでおるものだという戦勝国の解釈が客観的に妥当かどうかということについても、依然として批判を残していると言われておる。それから大西委員は、マッカーサーが、最初から自衛戦力の保持を第九条は否定しておるものではないとしても、当時そういうことを言った記録があるかということを質問されておる。さらに中曽根委員は、当時、国会の答弁は、司令部と十分打合せがあった結果であるから、吉田総理が自衛戦力否定の答弁をしたことは、当時の司令部としての見解を披瀝したものと思う。だからホイットニーやマッカーサーが、あとから自衛戦力を肯定しても、それは何ら第九条の解釈としての権威は持たないと言われ、さらに神川さんは、歴史的事実というものは、その関係者が後にいろいろ弁明しても信用するわけにはいかない、証拠としては文書が重要であると言っておられる。これに対しては会長は反論をしておられる。こういうことをなぜ私はくだくだしく申し上げたかと申しますと、国会において憲法調査会長が、日本憲法がアメリカから押しつけられたものではないという証言をしたというふうに国会を通じて国民に伝わり、しかもその結論に対して、何らの疑いも意見もなかったということになれば、それは事の真相を誤まり伝えられることとなり、その影響するところがきわめて多い、こういうように考えたために一言私は申し上げたわけであります。
今まで申し上げた四点につきましては先生の答弁を求めません。私が答弁していただきたいことは、これから申し上げる三点であります。これはきわめて簡単な御答弁をいただけばけっこうであります。第一点は、憲法第九条第二項の芦田修正に対して、先生の報告では、司令部としては、すでにこの修正によって自衛のために戦力は持てるという解釈はできるということに、すでにそのとき気づいておったというのは、起草委員の一人であるピーク教授がホイットニーのところに行って、これをもしのめば、自衛戦力は持てるという解釈になるがよろしゅうございますかと言ったところ、ホイットニーは、君はどう思うか、私はけっこうだと思います。それじゃよかろうということになって帰った。しかもホイットニーは、マッカーサーの意図を知っておるから、最初からこれは自衛戦力は持てるという解釈であったろうと先生はおっしゃっております。そこで、私が先生に伺いたいのは、つまりこのいろいろのやりとりから見て、マッカーサーは、初めから佐々木博士や、芦田博士や、清瀬博士の言うように、憲法第九条の二項は自衛戦力を肯定したものであるというマッカーサーの解釈であるかどうか。これはイエスかノーかでけっこうでありますからお答えいただきたい。これが一点。
それから第二点は、憲法の解釈というものは、これは普通の法律のしゃくし定木の解釈と違って、社会的解釈が成り立つというのが、先生の御意見のようであります。私はこの問題については大陸的に従来育てられておった関係上十分納得できませんが、それはしばらく別問題といたしまして、自衛隊が憲法違反である、こういう訴えが起された場合、先生がもし裁判官であったならば、その訴えに対してどういう判決をお与えになりますか。これはアメリカのマーシャルの言葉を先生は引用されておりますが、先生がもし裁判官になられたら、大所高所からどういう判決を、自衛隊違憲論に対する訴訟に対してどういう判決をお与えになるか、これを伺いたい。
最後に、先生は憲法調査会の運営に対してかれこれ言われるのは困るという、先ほどのお話しでありますが、九条二項と自衛隊の関係においては、これは国論として非常に大きな問題である、これには私はどうしても中間的な報告を求めたい。これは実情をお調べになるまでもなく、一つの考えをおまとめになれば、それていいわけでありますから、やることになれば特に委員会を設けなくても、簡単に各々の意見が三つであろうが、四つであろうが、五つであろうが、私はこれは一応報告を求めたい。これは特に憲法に深い関係があり、これが論争になっておる国会としては、当然の要求であるし、またこれを拒否される理由は私はないと思いますので、その三点について私は簡単率直な御回答を伺いまして、私の質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/49
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050・高柳賢三
○説明員(高柳賢三君) 第一点は、マ案の、マッカーサー元帥は、日本国憲法が制定の当時、自衛のためにはいかなる処置をもとり得る。九条はこの妨げとならないというふうに考えておったというふうに、私への書簡で述べております。その点が正しいかどうかということを検討して先ほどのピーク教授もその問題が傍証になるようなわけで、あとになってそういう理論をマッカーサーがしたのだという反論に対する答弁になるのじゃないか、そういう意味で初めからマッカーサーはそういうふうに考えておった、こういうふうに答えているのです。だから、そのところが非常に……、あまり長くなるから申し上げない方がいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/50
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051・八木幸吉
○八木幸吉君 それで先生はどうお考えでありますか、そのマッカーサーの解釈は同感ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/51
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052・高柳賢三
○説明員(高柳賢三君) 私はマッカーサーの解釈は、司令部の法律家のみな実際意見でそれに従ったわけです、結局はですね、であるから、また一般的に見てああいう九条のような軍備を持つか持たないか、こういう問題について憲法、国の安全ということは、やはり国の持つ憲法が保護する一番大きなインテレスト、それをただ置き去りにしてしまうわけにいかない。そこでやはりああいう九条のようなものを解釈するときには、世界の通念というものを考慮に入れてやらなければいけない。理想は理想として高く掲げるのはけっこうですけれども、実際問題を取り扱うときには、全体お隣りの国は全部軍備を撤廃しているのか、また近く撤廃する可能性があるのか、そういう問題を十分に検討してその背景において日本が軍備を持てるかどうかということを研究しなければいけないのではないか。今の第九条、つまり自衛隊は憲法上持てるか持てないかという問題は、あすこに書いてある文字にのみとらわれて解釈することは間違いだというのが、私の建前であります。
裁判官になってどういうふうに判決するかは、またさらにいろいろな意見を聞いた上でなければ言えないので、仮想的問題でありまして、裁判官になったときには両方の意見を聞いた上で判定しなければならない。第二の御質問に対してはイエスともノーとも答えません。ただ私は個人として今まで研究した範囲内ではそういうふうに言える。こういうこれだけの理論でありまして裁判官云々というのは一つ仮想的の理論ですから、両方の理論を聞かないうちに裁判はできないというのが原則なんですから、同じように憲法調査会でも、その問題について改正すべし、すべからずというような議論、それをどっちがいいのかよく議論を聞いてみなければわからない。そういう点は十分に検討した上で、そうしてみな一致した意見になるか、意見が分れるか、そこはわかりませんが、だから慎重な態度でわれわれは検討しよう、こういうふうに考えております。それでそれが第三の問題に対する私のお答えともなると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/52
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053・八木幸吉
○八木幸吉君 結局、マッカーサーは初めから自衛戦力は持てるという解釈であったと先生も思われるか。それから裁判官としては何とも言えない。それから三点は今直ちに結論を出すことは困難のように思われる、こういうお考えであると私は思います。もしそれが違っておったら御答弁をいただくし、違っておらなければそれでけっこうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/53
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054・高柳賢三
○説明員(高柳賢三君) 大体そういう趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/54
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055・矢嶋三義
○矢嶋三義君 先生、誤解なさらぬようにしていただきたいと思うのですが、私ども憲法調査会の運営について、その自主性を侵そう、くちばしを入れようという考えは毛頭なくてお伺いするとともに、若干の願望を述べているわけですから、そのつもりでお聞きいただきたいと思う。先生は憲法調査会の会長でいらっしゃるので、それで伺っているわけです。また、先生の御発言というものは相当重大である、影響性も多いと考えて御足労願っているわけです。ただいま八木委員から質疑がありましたが、先生のお答えを拝聴しますと、次々にお伺いしたいことが出てくるのですよ。私は法律学者じゃありません、しろうとです。しかし、先生の御答弁を承わっていますと、純然たる学者、研究学徒の立場でなくて、研究学徒と政治家と中間くらいのところでお答えになっているのじゃないかというような印象を受けるのですが、割り切れないところがある。たとえば、繰り返してこの点重大だから伺いますが、憲法第九条の解釈について、八木委員から質疑があった、それはそのときの世界の通念から考えなければならぬ、周囲の国がどうかということも勘案し、そういう立場からこれを解釈運用すべきもので云々と、こういうお答えですが、私はどうしても了解できないと思うのです。とにかく憲法の前文からそういう僕は結論は出てこないと思うのですよ、この前文をよく読みますと、そうなると、これからいきますというと、憲法第九条の解釈というものは、今ここに先生が答弁席に立たれて質疑を受けた場合に、学究、学者らしく私は明快な……。私たちがそれに賛成する場合がある、あるいは反対する場合がある、いずれになるか、ともかくも、お答えがいただけそうなものだ、こういうふうな私は感じを持っているわけです。で、伺いたいのは、マッカーサーは、自衛のためには戦力を持てる、こういう考えであった、幣原さんが自発的に持ってこられて、喜ばれた、こういうことなんですが、しかし、昔時占領政策が相当進んだ後に、あの日本を占領して新憲法をこしらえた当時に、日本の軍備を解除したのは失敗であった、アメリカの管理政策は失敗であった。こういう声がアメリカにほうはいとして起り、また、アメリカの軍の内部にも起ったということは、当時非常に伝えられたところで、日本国内において再軍備をしなければならぬ、したいという国民の相当部分の方々も、そういう論を張られた。その点は私は感じとしては、いろいろの経過はあるけれども憲法の前文それから九条、これにオーケーを出した、そして当時司令部がやったあの政策を顧みるときに、マッカーサーは、やはり自衛のためといえども戦力は持たせない、持てない、日本を完全に武装解除するのだ、そういうつもりであった。それをまた吉田さんが受けて国会でああいう答弁をされたんだ。その後、昭和二十五年の朝鮮事変あたりを契機に、だんだんとアジアの情勢、世界情勢が変ってきておる。それからこの解釈を変えていって、そして対日政策も変った。それから、日本のそのときの政権がそれを受け入れていった、迎合していった、これが僕は真相ではないかと、かように思うのですが、先生のお考えをあらためてその点伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/55
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056・高柳賢三
○説明員(高柳賢三君) 第一の御感想は、私は学者というのではなく、政治家と半分くらいのまぜこぜみたいな男だ、そういう点ですが、これはあるいはそういうふうに見えるのももっともかと思うのは、やはり憲法学者というのが、大体国際情勢の分析を基礎にして第九条を考えておらない、どの理論を見ても書いておらない。私は実際問題、国防というような問題になりますと、国際情勢、世界の世論、動向、果して日本の憲法のようなものをソ連も、アメリカも、あるいは隣国の中国も、インドも、みんなとるという情勢にあるのかないのか、そういうようなことを考慮してやはり解釈というものはしなければならぬ。これがいわゆる憲法解釈において最も必要だ。先ほどジョン・マーシャルの憲法解釈の原則の、文字にとらわれてはいかぬ、そういう意味では、机の上でただロジックをもてあそぶのが学者である。こういうカテゴリーから言えば、これは学者でなくて、ちょっと政治家的なところもまじっているなという感想もごもっともだと思います。
第二点は、もっと大切な問題でしょうが、これは憲法調査会会長として意見を述べているのではなく、私個人として述べているのでありますから、その点は、こういう解釈の問題になりますと、人々おのおの意見がありますので、私が日本側の証拠と、アメリカ側の証拠を突き合せて、こういうのが真相ではないかと考えたところを率直に申し上げましょう。これには三つの段階があると思います。
第一は、幣原・マッカーサー会談、これが一番高いレベルの会談。ここで何が起ったか。幣原さんは、日本の天皇制を維持するためには、どうしても第九条のごとき規定を憲法に入れなければならぬという考えを披瀝して、マッカーサーが初めはびっくりしたけれども、よく話を聞けばもっともだというので、そこで対外的に大きなゼスチュアとして、第九条というものが入っている。対外的の意味の方が非常に大きい。それにはそれをどういうふうに表現するかというので、非常なるマッカーサー式なレトリックを使って書いたのが、マッカーサー・ノートに出てきている、それが第一段階。
第二段階は、それが司令部の法律家の手に、マッカーサー・ノートの、自衛のためにも持てないという非常な強いあれが乗っかってきた。こっちはレトリックは考えないで、憲法の条文の、国の法律としての条項、こういう見地から、司令部の法律家はおそらく考えたのではなかろうか。そうしてその見地から言えば、マッカーサー・ノートは、マッカーサーから来たのは、国の憲法に入れるのにはおかしいというので、それから日本政府との交渉においては、日本政府の言うなりになり、柔軟性を持たせ、それから今の芦田修正が出てきてもそれを受け継ぐ、こういう態度になってきて、それをマッカーサーは認めておる。つまり法律家的考え方から出たものをマッカーサーも認めている。
それから、しからば第三段階というのはどういうのかというと、これをどういうふうに日本政府に伝えるかということ、それでマッカーサーが、自衛のためには持てる、こういうことを率直に日本政府に伝えて、日本政府のスポークスマン、当時の金森国務相等が、そういうふうな理解でもって政府案を説明した。これは国際的にいうと、ゼロになってしまう。どこの国だって自衛のためにでなく、侵略のために軍隊を持つなんていう、そんな国はありはしない。みな自衛のためです。であるから、自衛のためには持てるのだということになれば、幣原さんが天皇制を保護するためには必要だと考えた対外的なゼスチュアとしてはゼロになってしまう。だからそこのところが、マッカーサー司令部も対外的の方面と、憲法の規定としての九条というものと非常にデリケートな立場にあったので、おそらく日本政府に対してはその点はぼかしておった。従ってそのときにマッカーサーが考えたようなことを、日本政府でちゃんと金森君などがそういうふうに答えておれば、その後の日本の歴史というのはもっと違ってきた、議会における九条論争なんというものは違ってきたと思う。そういうふうに九条の問題については国際的な面と国内的の面とがあり、それに照応してマッカーサー元帥と事務当局とその二つのカテゴリーがあるというデリケートな立場を了解しておらないと、そこのところは了解できないのではないか。だから、ほんとうにマッカーサーは制定の当時から、自衛のために持てるのだと考えておったけれども、そういうふうな解釈を政府に強要も何にもしていないように、政府は国際法上自衛権はあるのであるけれども、軍隊は持てないのだと、第二項の解釈になるのです。そういうふうに金森氏は答えておったように覚えております。だから、そういうのは非常に法律家から見れば変なアンサーで、常識的にいえば、非常におかしい。おかしいのだけれども、とにかくあのときにはそういうふうな解釈があった。分析的にいうと、そういう三つの段階がこんがらがっておった。ただ歴史的な事実を、私の解釈し得る範囲内で述べておるわけです。そういう非常に微妙なものをあのときの九条関係の歴史というものは背後に持っておる。これは将来憲法調査会においてもいろいろな証拠に照らして、私のようなインタープリテーションが正しいのか、あるいはほかの評価が出てきて、私のような見解が間違っておったということになるのか、そこは将来の研究に待たないと、何とも言えません。しかし私が今まで日本側の証拠、アメリカ側の証拠、四十日間その問題を考えておったわけですが、相当よく考えたわけです。フルタイムで憲法問題というものを考えておったわけですが、その結果は、大体今のようなふうなことだろうと思うので、これは私個人の見解でありますから、そのつもりで御了承をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/56
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057・矢嶋三義
○矢嶋三義君 その経過はそれでいいですが、八木委員の質問に関連して重ねてお伺いさせていただきますが、この問題は本院でいろいろな委員会でずっと論じてきたところなんですよ。自衛隊が憲法九条違反だというところまでは、八木委員と私、意見が一致しておる。そのあと違うところは、八木委員はだからやるんだから、ああいうものは必要だから、憲法改正してやれ、こういうところ、そこのところが私と違ってくるわけですがね。それで、私はなぜ先生の発言に関連して伺っているかというと、御承知のごとく、吉田さんが答弁して、そういう解釈をして、当時文部省から出した民主主義読本にも吉田さんの言われたことが書いてあるわけです。それで、日本の教育はずっと転回されてきた。その当時の子供の絵本と今の絵本さえ変ってきているのです。教科書の内容もずっと変ってきているわけですね。こういう点、やはりさっきの先生の憲法の規則というか、文章があっても、その解釈は幅があるというような御発言ですね、これは僕は現実の問題としては幅には限度があるんじゃないかと思うのですね。だから私が伺いたい点は、こういうのは、法律学者高柳先生としてはお答えできないかどうかということですね。それは八木委員のさっき指摘した今の憲法九条に照らすときに、自衛隊は、憲法九条の制定の経過はいろいろあるけれども、法律学者としてこれを解釈した場合、今の自衛隊というものは憲法九条には反すると、合致していると思えないと、だから今の自衛隊を存続させるためには、今の世界の情勢からいって、日本にある自衛隊程度は必要だと考える。従ってそれを合理化する意味で、憲法九条は改正すべきだ、これは私は、八木委員の一貫する主張であるし、先生の腹の中もそうではないかと拝察するのですが、そういう御答弁は八木委員には与えられないのでございますか、ノーかイエスかお答え願います。短くてけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/57
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058・高柳賢三
○説明員(高柳賢三君) 第九条の解釈につきましては、先ほど言ったように、憲法上軍隊は一切持てないという憲法条理というものは、時代をあまり超越し過ぎておるというふうに考えるので、憲法上は持てると、持てないという解釈は、これは憲法解釈としては邪道だ、私の法律学の解釈の見地から言えばそういうことであります、ただ問題は、その次の問題、憲法上は持てるとしても、国の政策として持たないということはできる。この二つが混乱されて出ておるのではないか、憲法の問題と国の政策の問題というものが混乱されておる。憲法というものは、やはり国のセーフティというものは最も大切なイントレスト、これは絶対に持てないのだ、憲法にこう書いてあれば、日本はどうなってもそんなことは問題じゃない、そういう憲法の解釈は間違っている、こういうふうに考えます。そういう意味で憲法上の問題と政策上の問題を、日本の国会における討論は相当にごちゃごちゃになっているのではないか、これは私の感想であります。傍観者としてそういうふうに見ておったと。外国に参りましてやはり同じことが、日本における憲法論争を学会でも話しました。向うの公法学者を前に置いていろいろ先生らの感想を見たら、そんなに概念法学的な議論を日本でやっているのかという意味で笑われた。もう少し大所高所から憲法の問題を考えるのが本道ではないか、そういう意味では、私は憲法上は持てるのだというような、日本のセーフティを守るためには持てるのだ、そういうふうな解釈を今でも持っております。これを今廃止して改めるのかどうか、改めるとすればどういうふうにするかという問題は何も考えておりません。私自身考えますと、今変えないでも、政府は合法的にふるまっているんだ、いろんな理屈をつけた、つけた理屈はちっとも感心しておりません。しかしながら大筋から言えば、憲法上は持てる、これを社会党の方が憲法論を楯にとって向っていく、あの戦法というものは非常にナイーヴだ、もう少し憲法問題でなく、政策の問題でうんと争ってもらいたい、私自身はそういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/58
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059・矢嶋三義
○矢嶋三義君 あなたのお考えになっている点はわかりました。しかし、私は法律学者やないのですが、にわかに同調いたしかねます。岸さんもあなたから習って近ごろああいうふうに答弁したと思います。従来代々の総理大臣の答弁も時によって違うし、また顔が違うように、学者にもいろいろ御意見があるものだとつくづく感じているわけです。鳩山さんの意見もちょっと違うようですが、岸さんはあなたの受け売りをしていることがわかってそれは拝聴しておきます。
最後にお伺いいたしたい点は、このマッカーサーさんとホイットニーさんが、非常に無礼だと言って、誤解ですか何か憤慨したという質問要綱というものはどういう点であるかという点と、それから先生が退席されるに当って参考に承わっておきたいのですが、この法案が成立するときに、本院で論じたのですけれども、憲法改正の発議権がどこにあるかという点で議論されて、そうして内閣にもあるということで、政府はああいう措置をとられたわけです。そのときの政府側の見解というものは、今もそうだと思うのですが、憲法七十二条によって内閣は法案を国会に提出することができる。だから、憲法改正も一つの法律案件であるから、内閣にも発議権があるのだ、こういう解釈をされたわけです。それは、御承知のごとく、憲法にははっきりと条章を改めて、憲法改正という章を別建てにして、九十六条に憲法改正の発議権の所在を明確にしてあるわけです。だから、私はお伺いしたい点は、憲法七十二条に内閣は法律の提案権があるから、憲法の発議権も内閣にあると、こういうような何ならば、憲法というこの法を作業して組み立てる場合に、あの憲法改正という条章のところに私は明記すべきだったと思う。これが明記されていないということは、七十二条に法律の提案権は内閣にあっても、憲法改正の発議権は九十六条に限定されるのであって、内閣にはないと解釈するのが、私は常識的ではないかと思うのですが、学者としての高柳先生はどういう見解を持たれておるか、これは参考に承わっておきたいと思う。それで質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/59
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060・高柳賢三
○説明員(高柳賢三君) この問題は、今の憲法調査会ができるときの社会党側からのいろいろな法律論、そういうようなものに関連するのではないかと思いますが、憲法調査会というものは、全体国会の発議権というものとは何も関係がない、とにかく憲法のいろいろな問題を調査審議してただ報告するだけであって……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/60
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061・矢嶋三義
○矢嶋三義君 あなたの御意見を教えてもらおうと思って聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/61
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062・高柳賢三
○説明員(高柳賢三君) そういう意味であってそれをどういうふうに国会が取り扱おうが御自由なわけで、国会の発議権というものに干渉するような性格の団体ではないと、そういうことですね。それ以外に、発案権とか、発議権とかいうのですか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/62
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063・矢嶋三義
○矢嶋三義君 内閣にあると解釈されておるかどうか、学者としての先生の御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/63
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064・高柳賢三
○説明員(高柳賢三君) それは、発案権がないと否定する根拠も大してないのではないですか。しかし、私その点をこまかく検討しておりませんから、今明確に申し上げられません。また、そういう文字を研究した学者の意見も二つに分れておるということですね。私自身その点は特に研究したこともありませんので、ここで申し上げない方がいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/64
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065・矢嶋三義
○矢嶋三義君 マッカーサーとホイットニーが非常に無礼だといって憤慨しているということですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/65
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066・高柳賢三
○説明員(高柳賢三君) マッカーサーから怒ってきたというのは、これはデマですね。ホイットニーの手紙だけが断わってきた。それは、マッカーサーに手紙を大使館でやっておらないのです。ホイットニーに手紙をやって、マッカーサーに取り次いでもらったというような格好になっておるのです。それで、ホイットニーが断わった理由は、きのうも申し上げたと思うのですけれども、二つある。一つは、憲法調査会というのは改憲を目的とした委員会だ、それに対して国内に反対の動きもある。むしろ、ホイットニーらは反対側の方に同調しているでしょう。自分たちが作った憲法をむやみに改められるという感情もありましょう。それから第三は、今度やって来たのは、改憲に都合のいいような資料、つまり押しつけられたる憲法であるということを裏づけるような資料を集めに来たのじゃないか。こういう二つの点におもな誤解の点があるということは、このホイットニーの大使館にあてた手紙の内容からきわめて明白であります。であるから、それに対して、その二つの前提というのは、われわれが知っておる憲法調査会の性格及び今度の渡米の目的とは全然違うのであるから、それを手紙に書いて出した、こういうわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/66
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067・矢嶋三義
○矢嶋三義君 わかりました。高柳先生に対する質疑は終りました。
事務出局に一つだけ伺います。その質問の第一点は、憲法調査会における出席状況はどうか。それから第二点は、五人を増員するというのであるが、職制から言えば、どの程度の人を増員しようとするのか。それから、三十三年度の予算には九カ月五人分という予算がすでに計上承認されているわけです。で、予定している五人に相当するような人が、非常勤職員とか、何らかの形においてすでに入って仕事をしているのか、それとも全くしていないのか、その点局長からお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/67
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068・武岡憲一
○政府委員(武岡憲一君) お答え申し上げます。第一点の委員会における出席状況でございますが、大体平均して申しまして、総会の場合八〇%ないし八五%くらいになっておると思います。
それから第二点の、今回の五人の増員はどの程度の職員を増員するのかということでございますが、考えておりますのは、五等級の職員を二名と、それから七等級の者を五名と、この五人というふうに考えております。それから、それに該当するような職員が現在すでに入って仕事をしておるかということでございますが、さようなことはただいまのところございません。もし法律の方を御決定下さいますれば、直ちに準備をいたしまして増員いたしたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/68
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069・千葉信
○理事(千葉信君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認め、これにて質疑を終局することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/69
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070・千葉信
○理事(千葉信君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/70
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071・千葉信
○理事(千葉信君) 先刻委員の異動がございました、苫米地義三君が辞任され、その後任として下條康麿君が委員に選任されました。以上御報告いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/71
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072・千葉信
○理事(千葉信君) それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/72
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073・千葉信
○理事(千葉信君) 御異議ないと認めます。
それではこれより採決に入ります。憲法調査会法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)全部を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/73
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074・千葉信
○理事(千葉信君) 多数と認めます。よって本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、議長に提出する審査報告書の作成につきましては、慣例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/74
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075・千葉信
○理事(千葉信君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114889X00719590213/75
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