1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年一月二十八日(水曜日)
午前十時二十五分開議
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議事日程 第八号
昭和三十四年一月二十八日
午前十時開議
第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
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001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
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002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
この際お諮りいたします。井上知治君から、病気のため三十日間請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/2
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003・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。
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004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) この際お諮りいたします。
地方行政委員長 田中 啓一君
法務委員長 野本 品吉君
外務委員長 青柳 秀夫君
大蔵委員長 前田 久吉君
農林水産委員長 関根 久藏君
逓信委員長 三木與吉郎君
予算委員長 井野 碩哉君
決算委員長 小西 英雄君
議院運営委員長 安井 謙君
懲罰委員長 大谷 贇雄君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたい旨の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/4
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005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと建認めます。よっていずれも許可することに決しました。
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006・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) つきましては、この際、日程に追加して、ただいま辞任を許可されました各常任委員長及び欠員中の文教委員長の選挙を行いたいと有りますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/6
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007・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/7
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008・田中茂穂
○田中茂穂君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/8
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009・小林孝平
○小林孝平君 私は、ただいまの田中君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/9
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010・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 田中君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/10
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011・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
よって議長は、地方行政委員長に館哲二君を指名いたします。
〔拍手〕
法務委員長に古池信三君を指名いたします。
〔拍手〕
外務委員長に杉原荒太君を指名いたします。
〔拍手〕
大蔵委員長に加藤丘人君を指名いたします。
〔拍手〕
文教委員長に相馬助治君を指名いたします。
〔拍手〕
農林水産委員長に秋山俊一郎君を指名いたします。
〔拍手〕
逓信委員長に手島栄君を指名いたします。
〔拍手〕
予算委員長に木暮武太夫君を指名いたします。
〔拍手〕
決算委員長に西出甚五郎君を指名いたします。
〔拍手〕
議院運営委員長に高橋進太郎君を指名いたします。
〔拍手〕
懲罰委員長に鈴木万平君を指名いたします。
〔拍手〕
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/11
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012・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)。
昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。佐多忠隆君。
〔佐多忠隆君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/12
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013・佐多忠隆
○佐多忠隆君 昨日ここで行われた岸首相の施政方針演説その他に対して、私は日本社会党を代表し、二、三の質問をなし、われわれの積極的見解を述べ、あらためて岸内閣の所見をただすことにいたします。
昨年、世界は、中近東において、また台湾海峡をめぐつて、さらにベルリンを中心に、三たびにわたって、きわどい国際危機に脅かされました。これらの危機はいまだに完全には消え去らず、再発のおそれさえ残つております。東西両陣営の間には、軍備と科学技術の激しいつばぜり合いが続き、経済的な生産力の競争、貿易と経済協力の抗争が、さらに激化するきざしすらあります。しかし、競争の結果、ミサイル、ロケットの発展は果てしないものとなり、同時に核兵器は行き詰まりました。安全を保障するはずのいわゆる「力の政策」は、むしろ人類を全滅せしめる核戦争をもたらすことが、世界の人々に、まごうかたなく明らかになりました。ソ連は、ミコヤン副首相のアメリカ首脳者との会談を契機として、米ソ間の冷たい戦争を停止し、解消するために、積極的に乗り出したようであります。昨日のフルシチョフ演説においても、それが明らかであります。アメリカではソ連に対する多くの不信がまだ消えない。従って冷戦は継続せざるを得ないとの気持が多分に残つております。にもかかわらず、現在の一般的な空気は平和を強化する方向へ好転しつつあります。ミコヤン副首相との会談後のアイゼンハワー大統領には、ソ連と和解をはかるために、筋の通った方式で話し合う用意ができるまでになりました。本年の四、五月には、米英仏ソ四カ国外相会議を開き、ドイツ問題を本格的に討議しようという機運が高まつております。さらに、アメリカは東西貿易拡大のために、対ソ貿易政策を全面的に再検討し始めました。われわれの見通しによれば、国際緊張は明らかに緩和しつつあります。昨日、岸首相は、これと反対の方向を、藤山外相は、どっちつかず判断を述べたようであります。これらの点をどう考えられるのか。緊張緩和に応じて、わが国の外交、軍事方針も、ここに根本的に、しかも全面的に再検討しなければならない時期に来たと思うのでありますがどうか。これが質問の第一点であります。第二に、安保条約の改定についてお尋ねいたします。岸首相は、昨日、対米依存偏重の現条約を、できるだけ自主性確保の方向に、しかも、日本憲法の範囲内で合理的に改めると言われました。果してそうなるかどうかは、改定の内容によってきまります。日本に駐留する米軍の機能と行動をどう改めようとするのか。核武装をどう規定しようとするのか。沖縄、小笠原をどうしようとするのか。改定された条約の性格は、基地貸与協定か、相互防衛条約か、これらの点について、さつぱりわかりませんので、正確なる答えを求めます。
今わが国が、平和憲法を守り、自主性を確立し、安全と平和を確保するために、アメリカに要求すべきことは、次の諸点であります。そのおそれは、ほとんど考えられませんが、万一内乱があった場合は、それを治めるのは日本自身であります。そのために米軍の駐屯を絶対に必要といたしません。近隣諸国が日本を武力侵略することは、私の考えによれば考えられません。かりにそれをおもんぱかるとしても、そのために日本の国土に米軍が常時駐留することは必要でありません。ことに、日本自身が核武装することはもちろん、米国の核武装部隊が日本に来ることも絶対に許せません。今こそ日本は、核非武装をこの国会で決議をし、従って、政府もまたこれを中外に宣明すべきであります。(拍手)沖縄、小笠原、これを防衛区域に入れるかどうかを論議する前に、沖縄の返還そのものを要求しなければなりません。わが国の安全保障のためには、近隣諸国との間に不可侵条約を結び、日本、南北朝鮮、中国、ソ連、米国等の関係諸国を含む平和保障体制を確立することが必要です。
以上の諸要求は、安保条約の改定では達せられません。安保条約の廃止を目標に、一つ一つの項目を、強力に、しかも、忍耐強く実現すべきだと、われわれは思います。昨日の演説ではそれがはっきりいたしません。岸首相、藤山外相、伊能長官はどう考えるか、お答えを願いたい。
また、安保条約改定の見通しはどうなのか。調印と批准の時期をどう考えているのか。日米両国の国会審議の日程、手続上、本年度中は改定できないことはあまりにも明白ではありませんか。改定の是非、内容についても、与党内ですら、吉田、芦田等の日米提携論者、船田、木村篤太郎等の治安重視主義者、松村、三木等のアジア主義者、これらの間でまちまちであります。今や安保条約改定を岸内閣の唯一最大の仕事としているのに、その岸首相がもろもろの党内の意見を未だ調整統一できずにおります。このままで交渉に臨むにおいては、不都合この上もありません。もはや首相たるの資格はないと言わざるを得ません。(拍手)わが国の方から持ち出した安保条約改定の問題が、わが国の政治状況、しかも政府与党たる自民党の党内事情によって動きのつかぬ状態になっております。これが対米外交の上で非常な国際的不信義を引き起しました。岸首相はそれを一体考えてみたことがあるのか。このような重大な条約改定には、国際情勢と日本の置かれた立場をよく考え、国民の意思、感情が那辺にあるかを洞察して、確固たる方針をもって当るべきです。国民の気持や党内の意見すら十分に調べもしないで、周密な準備もなく、ただ大衆の人気を得るといった打算と、個人の功名心にかられて、事を急ぎ過ぎたにすぎないのです。今直ちにこの交渉を打ち切り、問題を取り下げ、わが国の外交、防衛の体制そのものを根本的に検討することから再出発すべきときです。岸首相、藤山外相は、これらをどうお考えになるか。
第三に、日中関係の打開についてお尋ねいたします。岸内閣、自民党及び財界の一部は、現に次の政策をとつております。すなわち、台湾の蒋介石政府を中国の唯一正当な政府と認め、従って中華人民共和国政府を認めない、これを敵視する態度を出る。今や大陸中国を認めないことが非現実的となるや、いわゆる二つの中国を作ることで妥協を考え始める。日中の友好関係を破り、両国関係の正常化を妨げている。岸首相は、かかる態度を直ちに改め、今後はかかる言動を再び繰り返さないことをここで誓うべきだと思うが、どうか。岸首相は、これまでにわが国で行われた中国国旗侮辱事件について陳謝の意を表し、今後は国旗の尊厳を保持するために万全の措置をとることを約束し、日本政府が中華人民共和国と正常な関係の回復を念願し、そのために努力すると声明し、その上で、今後の両国関係正常化の問題について政府間で話し合うべきであります。岸首相はこれをどう思うか。
わが党は、日中関係打開のために次のような方策を立てております。日本は、アジア、アフリカの諸国と同じく、東西いずれの軍事ブロックにも属せず、あらゆる植民地主義に反対し、大国の支配と圧力を排除し——民族の完全な独立、経済の新建設、民主政治一の確立、平和の保持のだめに闘う。中国は、日本のこの正しい要求を尊重し、これに十分な理解と支持と協力を与えること。日中両国の経済・政治組織、社会制度及びイデオロギーは著しく異なる。が、それらがいかに違おうとも、両国の平和的共存は必要であり、また可能である。しかも両国は、平等互恵の立場で共存をし、お互いに内政には絶対に干渉をしない。日本はいわゆる二つの中国の存在を認めず、台湾統治の問題は中国の内政問題として処理され、台湾をめぐる国際緊張の問題は、関係諸国の間で平和的に解決されることを望む。国連における代表権は中華人民共和国に対して認めるべきである。かかる基本方針をとつております。中国は日本のこれらの主張を了承すること。日本は、かかる基本的方針のもとに、中華人民共和国との正常な関係の回復を念願し、そのために努力をする。日中両国は、正式かつ全面的な国交回復を促進するために、経済、技術、文化、人間等の交流を積極的に展開する。その準則として、貿易、技術、文化、郵便、航空等の諸協定を政府間ですみやかに結ぶべきであります。
わが党は、これらの方針と措置が大多数の日本国民の意思であることを確信いたします。(拍手)岸首相と藤山外相は、これを直ちに取り上げ、政府みずからの方策として、社会党や国民大衆とともに、これをなし遂げる決心をなすべきです。岸首相と藤山外相に、その決心ができるのかどうか、お尋ねをいたします。それができないというのならば、わが党は、国民大衆とともに岸内閣を打倒し、そのしかばねを乗り越えてそれを遂行いたします。高碕通産相、橋本文相、寺尾郵政相、永野運輸相は、おのおの、中国との貿易、技術、文化、郵便、航空等の協定についてどうお考えになるか。
第四に、わが国経済の成長発展についてお尋ねをいたします。岸内閣は、昭和三十三年度経済は調整段階に入るが、不況ではない。この年度の初期には上昇に転じ、年間を通じて着実な経済成長を実現する。こういうふうに主張されました。われわれは、その見通しが誤まりであり、政策を間違えていることを強調したのでありますが、政府は、自己の所見を固執し続けました。一年後の今日、政府は完全に敗北いたしております。国際収支の結果は、一億五千万ドルの受け取り超と見込まれたものが、政府の現在の見積りでも四億六千万ドル、実際は五億ドルを超えることは確実であります。非常な見込み違いです。結果は見込みより多いのだから、外貨事情だけ表面から見れば喜ぶべきことかもしれませんが、その背後には、輸出目標三十一億五千万ドルが二十七億五千万ドルに大きく減少し、昨年度に比べても減つております。輸入は三十二億四千万ドルの目標が、実績二十四億五千万ドルと、さらに大きく減つております。外貨事情の好転は、貿易が非常に縮小したための結果にすぎないのであります。国民総生産も目標に達せず、昨年と比べてほとんど伸びておりません鉱工業生産指数のごときは、四・五%の上昇を見込んでおったのに、むしろ逆に、一・二%も下降をいたしております。着実な経済成長どころか、むしろ停頓をし、縮小をしました。われわれが主張したように、不況の実体を正しく見、それがなお悪くなることも間違いなく予測をして、この年度の初めにこそ不況対策を的確に講ずべきであったのであります。この一事をもってしても、岸内閣は、もはや経済政策を担当する資格はありません。インフレを押えると称しながら、金融には十分のゆとりを与え、独占的大企業には惜しみなく資金を、しかも国家資金をつぎ込み、経済の正常化、調整の名のもとに、独占支配は進められました。これが岸内閣の正体であります。不況のために、卸売物価は予測を越えて下落したのに、消費者物価はむしろ予測を越えて上りました。国民生活の安定と向上をはかるために、特に消費者物価の安定に努める、と言つた岸内閣の約束は、全くのから手形に終つております。不況を強く否定した岸政府は、労働者に対しては、不況の名のもとに賃金をストップし、切り下げ、首切り、人員整理を容赦なくやりました。景気が上向くと言われる来年度も、岸政府は、日経連に指令されて、それをさらに続ける決意を示しております。岸内閣の経済計画は、見通しを誤まり、目標があいまいで、政策実施の責任を負おうともいたしません。最近の岸内閣の経済政策は、景気の波動にとらわれすぎて、経済政策本来の使命を忘れ去つております。わが社会党の政策が示すように、経済政策にとつては、景気の波動や企業の利潤よりも、雇用をふやすことを中心に、国民経済を大きく豊かにし、国民生活の向上をはかることが最大の眼目であります。以上の諸点について、岸首相、世耕長官、佐藤蔵相、高碕通産相、倉石労相の明確な答弁を求めます。
第五に、明年度予算によって、自民党の、岸政府の公約は果されないことについでお尋ねをいたします。今度の予算に盛りだくさんの公約を一応まんべんなく織り込もうと努力したことは認めます。そのいろいろな公約が少しずつ継ぎはぎに、こうやくばりされておるにすぎません。頭のいい大蔵官僚、能吏の予算としては、まあ及第点といってもいいでしよう。しかし、政治家の予算としては全く無性格です。遠くない将来には佐藤内閣でも背負つて立とうとする佐藤氏の財政としては、遺憾ながら及第点を上げられません。景気が上向き始めたときに、大幅な財政支出増が偏在しで出されます。ことに、国庫収支における大幅な散超は避けられない。財政金融の一体化が経文のように唱えられながら、数字的な、計画的な施策になっておりません。これをもっと具体的に示していただきたい。公共事業費が非常にふえたこと自体については反対でありません。が、それで雇用を、いかに、幾らふやすのかが、具体的に、積極的に施策されておりません。もうかるのは、巨大な土建業者と建設材料屋だけです。
中小企業の育成強化は自民党のうたい文句ですが、その対策費は、わずかに十億円余ふえただけです。しかも、そのうち七億円は過剰織機買い上げ資金を中小企業予算に組みかえたものです。実質は、設備近代化補助金がわずかに四億ふえたにすぎません。予算では、財政投融資が大幅にふえました。その一部をさいて、中小企業金融機関の金利を一律に引き下ぐべきであるのに、それが大してなされておりません。結果は中途半端に終つています。中小企業に重点を置いたというのは、真赤なうそです。減税は、自民党内閣の一枚看板でありますが、その金額は公約より大幅に引き下げられております。そして国民所得に対する税負担は、国税と地方税を合せて、本年度の一九・九%に対して、来年度は二〇・四%となります。来年度は、減税によって負担が軽くなるどころか、全体としては、むしろ重くなっておるのであります。佐藤蔵相の手品とはこんなものです。
最もひどいのは、地方財政についてです。地方税の減税は、自民党の公約では、住民税を除いて三百五十五億と称したのに、結局は、平年度で二百二十一億、来年、初年度のごときは九十三億に減らされております。ここでは、自民党の公約とはペテンにすぎません。また、国の予算がきめられても、それに基く地方財政計画が出ておりません。給与関係費と恩給費の増は三百五十億円、さらに、道路整備五カ年計画実施に伴う地方負担分は二百十億円になります。また、地方財政補填のための、PTA負担等の住民の税外負担は百五十億になると、自治庁の資料ですらいわれております。このほか、国の失対事業、治山治水、すし詰め教室と危険校舎の整備、環境衛生施設整備のための地方負担分を加えますと、国の予算できめられた諸事業も、地方負担がないために実施できないということになります。もしこれを強行しようとすれば、増税、また寄付金等の増額ということになり、いずれにしても、また地方住民が犠牲になります。かかる全貌を明らかにするため、地方財政計画を早急に提出し、税外負担を軽減するための措置を明示すべきであります。
今度の予算で一番悪い点は、無計画な拡大のために、ほとんど蓄積財源を吐き出し、財政投融資の財源は洗いざらい使つてしまつたことであります。三十五年度からは、予算の弾力性がなくなっております。今後は、歳出の当然増が歳入の自然増をすべて食つてしまいます。もはや新規政策は全然やれません。わが社会党が主張をしておりますように、三十五年度予算からは財政構造を根本的に再検討することが必要であります。長期の財政計画が策定されなければなりません。
以上、明年度予算に関する諸点について、佐藤蔵相、青木自治相、遠藤建設相、倉石労働相、高碕通産相に、詳細な、しかも明確な答弁をお願いしたい。世耕長官がこれらの点について述べなければならないことはもちろんであります。(拍手)
第六に、社会福祉体制は、自民党の公約通りに進まない、むしろ後退しつつあるということについて、岸首相と坂田厚相にお尋ねをいたします。岸内閣が、わが社会党の提唱した社会福祉体制を取り上げ、国民年金を三つの柱の一つに立てて、これに着手したことに対しては、敬意を表します。が、本年度予算において初めて出発する国民年金制は、財源のゆえに、社会保険ではなく、任意保険にすぎなくなっております。社会保障の精神が失われ、しかも防貧というよりも救貧の施策と言わざるを得ません。これでは社会保険ではありまん。無醵出年金の受給資格がきびし過ぎるために、年金を最む必要とする極貧層が除かれております。政府提案の国民年金制は、社会保障なりと称して、羊頭を掲げて狗肉を売るものであります。岸内閣は、政府提出の国民年金法案を取り下げて、社会党が提出している法案に同調すべきだと思いますが、どうか。岸首相、坂田厚相の明確の答弁を求めます。
第七に、科学技術振興の基本方針、根本的態度について、岸首相、橋本文相、高碕科学技術相にお尋ねをいたします。岸内閣の科学技術振興の施策は無定見であり、ばらばらであり、その出費もスズメの涙ほどにすぎません。科学技術の振興には、強固な基盤をつちかうことが何よりも必要であります。すなわち、技術革新の基盤である基礎科学の研究全般にわたり、その水準を飛躍的に引き上げ、なお、内容を画期的に充実しなければなりません。これが最も肝要です。岸内閣は、この精神で一貫をして、従来の施策をこのように改め、進展せしめる決意はできないのかどうか。
最後に、岸内閣の業績と、その政治的責任についてお尋ねいたします。岸内閣は、すでに在職二年半、この間、国際情勢の推移の方向を見誤まり、近隣諸国との交渉は、西も東も行き詰まり、八方ふさがりになりました。内政においては、経済の実体を見きわめ得ず、的確な政策をとり得ず、日本経済は、あるいは急激に拡大し、または過当に縮小し、停頓と混乱に陥つております。庶民大衆のためになる政策は何一つ実行できておりません。そして歴史の歯車を逆に回すような制度いじり、反動政策の強行に明け暮れ、しかも、事ごとに失敗をし続けております。このようにわが国の政治を長い間空白にしておいた政治的責任を岸総理はどう感じているのか、岸総理、すでに退陣の時です。(拍手)
この一両年の教育制度改革、勤評騒ぎ、道徳教育の混乱は、自民党、岸内閣のあせり過ぎた反動文教政策に無理があるからであります。しかも、何か特権を持っているかのような錯覚を起している役人がそれを押しつけるところに、騒ぎの原因があるのです。文教政策をこのように混乱せしめた政治的な責任を岸首相は少しも感じようとしないのか、わが国文教のために悲しみにたえません。警職法改正案は、国民の基本的人権をじゆうりんし、民主政治を破壊するものとして、国民大衆の全面的な反撃を受けました。この法案の国会における取り扱い方、特に抜き打ちの会期延長に至っては、国会運営をすら危機に陥れ、議会政治を破局の渕に導きました。これに対する世論の憤激は、幸いにして、岸政府を、その与党たる自民党を、完全に敗北せしめました。これは、人間の善意と良識が多数横暴を打ち破る力のあることを示したものであります。(拍手)これに対して、衆議院の議長、副議長も、自民党の最高幹部も、その責任をとりました。与党政府の内閣総理大臣、政府与党の総裁岸氏は、この責任をほおかぶりしようとするのか。総理、総裁、みずから責任をとるべし。
岸内閣成立以来のもろもろの混乱の責任は、もつぱら岸首相その人にあります。しかも、その原因は、岸首相の官僚性に基く権力主義によります。(拍手)「政治は力だ、力は金だ、金は力を作る。」「政治家は権力に執着し、力による政治を夢みている。」という言葉が昔からよくいわれております。この言葉は、あたかも今日の岸氏のために作られたもののようであります。(拍手)今日の保守党では、金の集まるところに人間が集まり、その動きによって人間が動く。金の動きょうによって、政治が、権力が、地位が動かされる。金で政治家の取引が行われ、派閥が形づくられる。政党の総裁公選が金による買収の上に成り立ち、その総裁が首相になる。岸総裁は、岸総理はその典型であります。(拍手)ということが、市井ではかまびすしく、公然の秘密となっております。今度の総裁公選を前にして川島前幹事長は、公選が三月に延びると、前のときのように血みどろな札束の雨が降ると言って、公選延期に反対したといわれる。とすれば、市井のこのおしやべりも、単なるそらごとではないではありませんか。財界は、政治資金規正法に基く正式なルートから保守党に多額の金を流すだけでなく、それぞれの派閥に裏口からも流します。節度もなく財界から金がつぎ込まれるから、政治が金で汚されるのであります。地方選挙においても、またこの汚され方が公然とひんぱんに行われております。かくて現在の保守党は、独占資本、巨大資本、財閥、それらの集まりである一部財界の利害をもつぱら代弁をいたしております。岸首相は、昨日、社会党を一部の階級の政党だとなじつたが、現在の保守党こそ、もつぱら大資本を、財界という特権階級を代表する階級政党であります。(拍手)膨大な金力によって昨年の五月選挙が行われ、自民党は勝利を得ました。岸首相が再び権力の座につくや、それに連なるもろもろの地位が自己の派閥中心に独占された。ついには多数を過信して何でもやれるという錯覚に陥つてしまつた。権力を偏重し、多数を過信し、権力政治が強行されました。ために、世論に聞き、国民とともに政治を行うということが全く失われました。ほかならぬ自民党の内部から、「金力政治から金のかからぬ政治へ」、「権力政治から国民とともに行く政治へ」の声が出て、総裁選挙はこれをスローガンとして戦われました。そしてこれをスローガンとして主張した反主流派が敗れて、それに反対をした岸総理が再選され、再び自民党の総裁となりました。さすれば、自民党は、金力、権力を振り回して政治を行う政党であるということを天下に周知せしめたものです。岸首相はこれらをどう考えられるのか、御答弁を願いたい。
われわれはもはや岸内閣の存続を認めるわけにはいきません。国民大衆の生活をまじめに考え、正しい政治のあり方にしつかりした意見を持ち、これを着実に、しかも強力に遂行しつつあるものは、岸内閣ではなく、われわれであります。(拍手)正しきを求める人たちの望む政治は、清潔な政治であり、だれにも納得のいく政治です。清潔な、平凡な、納得のいく政治はわれわれの側にあります。「政治の規範は、国家国民に対する責任感である。責任感を忘れるのは、政権欲にとらわれ、政権に陶酔するからにほかならぬ。」岸首相はこれを、この声を、神の声、民の声と聞くべきであります。(拍手)岸総理、まさに責任をとるべき時ではありませんか。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/13
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014・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
国際情勢について、国際緊張緩和の方向にあるから、外交路線を再検討して変える必要はないかという第一の御質問でありますが、私が施政方針にも述べております通り、各国の首脳の間において国際緊張緩和の努力がされておることは、私どももこれを認めます。また、私どもはこの緊張緩和の方向に持っていかなければならないという考え方に立っておることも当然であります。しかしながら、現実の情勢は、なお両陣営の間の不信の念は相当根強いものがあつて、これが解けておらない。ジュネーブにおける奇襲防止の会議やあるいは核実験の禁止等の問題に関しての話し合いが、まだ十分にその成果を得ておらないということから見ましても、そういうことが言えると思います。従って、今日の状況をもって直ちに国際情勢が緩和しておると、こう論断することは、私は現実にまだ遠いと思います。従って、この情勢において外交路線を直ちに変えるというようなことは考えておりません。
第二は、安保条約についての御質問であります。言うまでもなく、安保条約が成立しました当時の日本の状況は、全然防衛力を持っておらない情勢であったので、現行の安保条約ができても、これがアメリカの非常な一方的な条項になっておることも、あるいは内乱問題等に関する条項等が入っておる事情等を考えてみましても、今日、日本の国力が充実し、自主独立の立場が十分に認められ、また、国際的地位が高まつてきておる、自衛力も漸増しておるという状況から見まするというと、われわれは対等な自主的な立場においてこれを再検討すべきことは当然であろう。また、国民もそれを望んでおると思います。決してわれわれは、これによって核武装やあるいは戦争に巻き込まれるような危険をしようというものではありません。あくまでもわれわれは、アメリカとの間において、真に対等な立場における自主的な防衛を全うするという方針に基いて、各条項を検討して交渉を続けていくつもりでおります。
両陣営を含めた安全保障体制を作つたらいいじゃないかという御主張でありますが、このことは、実際上、今日の国際情勢のもとにおいては、私は現実から離れておると思います。のみならず、そういう条約ができましても、これを裏づけるところの具体的の保障がないというと、私は単に一片の保障条約だけで日本の安全が保障されるというふうに考えることは非常に危険である。これはわれわれが過去においても現実に経験したところであります。(拍手)
安保条約を廃棄してやれという考え方につきましては、私どもは、今日のこの国際情勢から見て、われわれが国際連合に協力をし、これが真に世界の安全保障機構としてその内容を充実するまでは、やはり各国は自主的な立場において自己の安全を保障していくということを考えなければならない。そうして、その場合において、われわれが単独でできる場合もありましようし、単独でできない場合においては、主義主張を同じくする国と提携して、そうして集団的な安全保障機構を作つていくということは、現在の国際情勢から言えば、当然国の安全を守るという現実の責任を持つ以上は、そうしなければならぬと思います。
日中関係を改善することについては、私どもも心からこれを念願いたしております。しかして、昨年の五月にああいう事態を生じて、自来、貿易関係が中絶しておることは、私ども非常に遺憾と思っております。これにつきましては、すでに私の施政方針におきましても、外交演説におきましても、述べておる通りであります。決して私どもは、中華人民共和国を敵視するというようなことはいたしておりません。のみならず、そういう言議も決していたしておりません。国旗事件につきまして、無思慮な邦人が国旗に対して侮辱を加えたというような事件はまことに遺憾であります。国旗の尊厳をお互いに尊重し合うということは国際上の当然の慣例であつて、このことについては、すでに私が遺憾の意を表しておることで御承知の通りであります。私どもは、お互いに両国の政治体制やあるいは政治上の考え方というものについては、これを尊重し合つて、そうして、内政はお互いに不干渉だ、そうしてお互いの経済や文化等の交流を続けて友好関係を続けていくということは、私どもの心から念願しておるところであります。
なお、経済の問題についての御質問であります。関係閣僚から詳しく御説明申し上げますが、私どもはすでに、この前の国会でもずっと続けて申しておるのでありますけれども、この経済の長い見通しにおきましてはいろいろな変化があります。ただ、この状況は、要するに、一昨年来の状況は、経済の行き過ぎから生じた変態的な状況であつて、これを是正するために緊急総合対策を立てて、そうして経済の調整を行なってきたのでありますが、幸い国民の御協力によりまして経済界が明るい見通しになっておることは、佐多君も御承知の通りでございます。
次に、社会保障制度の問題に関しての、われわれのやつておることは羊頭狗肉だというお話でありますが、これは十分にわれわれのやつておることを御検討下されば、決してそういうものではない。われわれは、一方においてこの社会保険の国民健康保険法を改正して、従来のように単純な任意ではございませんで、各市町村がやつてない所におきましてはこれをやらなければならない。ただ、その経過的なある年限の間において、やつておる所とやらない所ができますけれども、これは経過的の状況であります。国民年金も今年から無醵出制で一応出発することも御承知の通りであります。この二つの制度を今後完備していくことが必要である。もちろん内容が完全であるとは私は思いません。しかしこれについては、日本の財政やその他のもの等を見きわめつつ今後努力していかなければならぬ問題であると思います。
科学振興の問題につきましては、お説のように、この問題はきわめて広範にわたるものでありますから、長期かつ総合的な計画を立てて十分にこれはやつていかなければならないと思います。
最後に、私の政治責任についての御質問でございます。私どもは言うまでもなく、政治の行き方につきましては、すでに施政方針にも明らかにしておるように、われわれ保守党の立場としては、常に秩序の中に進歩を求めてやまないという立場をとつております。従って、社会党の主張のごとく、非常に理想にかられた立場からの諸政策とは、その点において趣きを異にしておるところがありますけれども、しかしながら、私どもが決して歴史の進行に逆行しておるというような、保守反動の何であるというふうな御意見に対しまいては、私は承服をいたしません。(拍手)現にわが党のやつておりまする政策は、常に進歩的なものを秩序の中に求めておるということでありまして、従って、その点においては、御意見でありますけれども、私どもとは見解を異にしております。
さらに、私の政治が金力政治であり、権が政治であるという御意見でありますが、もちろん政治が清潔なものでなければいかぬ、金のかからない政治をしなければいかぬということは、私も同感であります。また、民主政治が常に国民とともにある政治でなければならないことは言うを待ちません。こういう意味におきまして、私が決して金力政治や権力政治を謳歌しておるものではないということは、私の政治信念として、すでに私が総理になりましてから、三悪追放を私の念願としておることからも、その私の政治思想については十分に御理解がいくと思います。
また、総裁選挙についてのいろいろな批判もありますけれども、私は現在の政党におきまして、去る一月二十四日においてああいう公選が平穏裏に正々堂々と行われたということは、わが日本の政党政治の上における一つの画期的な時期であるとして、私は非常にそれについては誇りを持っておるわけでございます。(拍手)
〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/14
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015・藤山愛一郎
○国務大臣(藤山愛一郎君) 外交問題につきましては、総理が詳しく説明せられておりますので、若干補足的なことだけ申し上げておきたいと思います。安保条約の改定につきましては、われわれは、長い間の問題でありますし、この問題につきましては、決して個人的功名心等でやつておるわけではないのでありまして、われわれとしては、七年間たちました今日の情勢から見て、国民の要望としてやつておるわけなんでありまして、十分慎重に国民の考えを聞きながらやつて参りたいと思っております。
なお、施政権の返還について、安保条約よりも前ではないかというお話がありましたが、施政権の返還につきましては、われわれといたしましては、常時外交交渉をもちまして、安保条約の問題と別に交渉を続けていくことが一番適当と考えておりますので、そういうようなことに努力をして参りたいと考えております。
なお、中共との関係でありますが、中共との貿易その他の問題につきましては、われわれ今日まで静観ということを申しておったわけでありますが、静観というのは、決して貿易をやらないという意味で静観と申しておったわけではないのでありまして、従いまして、時期が参りますれば、われわれとしては中共側と十分話し合いをして参るつもりであります。特に郵便協定なりあるいは気象協定なりというものは、政府の関与を要する問題が多いのでありまして、そうした問題に引き続き、貿易等の問題につきましても、今後政府としては十分意を尽してこの問題の取り扱いをいたして参りたいと、こう存じております。(拍手)
〔国務大臣伊能繁次郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/15
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016・伊能繁次郎
○国務大臣(伊能繁次郎君) お答え申し上げます。
お尋ねの日米安全保障条約改定に関する政府の見解につきましては、ただいま総理大臣から詳細申し上げた通りであります。特に私からつけ加えることはございません。(拍手)
〔国務大臣高碕達之助君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/16
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017・高碕達之助
○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。中共貿易につきましては、佐多さんのお説のごとく、政治組織、社会制度が両国異なっておりますので、お互いの立場において尊重し合つて、お互いに内政に関与しないという条件のもとに、親善友好を増進して、そして相互の相補うところの貿易協定は一日も早く醸成せられんことを希望する次第でございます。
第二に、本年度の予算につきまして、大企業集中であつて、中小企業を無視しておるというお話でありますが、決してそうではありません。中小企業の振興こそは、日本の輸出貿易を振興する上におきましても、また経済安定の上におきましても、最も必要だということを痛感しておる次第でありまして、それがために、中小企業の団体法によりまして体制を強化する以外に、設備の近代化等のために相当多額の予算を計上いたしておる次第でございます。
第三に、科学技術の振興につきましては、この基礎科学の水準を引き上げるということは、全く佐多さんと同感でございまして、それがためには、大学の研究のほかに、国立試験所の研究機関の振興におきましても、相当の予算をとつております以外に、研究者自身の待遇改善のために特別研究制度を実施するとか、あるいは研究者の超過勤務手当を出すとかいうことのために、相当の多額の予算をとつた次第でございます。
〔国務大臣橋本龍伍君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/17
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018・橋本龍伍
○国務大臣(橋本龍伍君) 今般文部の担当をすることに相なりました。よろしくお願いをいたします。
科学技術の振興の問題についでお答えを申し上げたいと思います。わが国の科学技術におきましては、戦争中及び戦後におきまする空白と混乱のために、基礎科学の面におきましても、応用技術の面におきましても、著しく立ちおくれて参りまして、戦後の産業再建についても外国の技術に依存せざるを得なかったような状態でございます。そこで、今後諸外国におくれをとらずに、わが国自身の科学技術の進歩をはかりますためには、その基盤となります基礎研究の画期的な充実を期さなければならぬと考えております。このことにつきましては、いろいろな面が考えられますが、やはりわが国では従来大学を中心にして基礎研究を行なって参りましたので、いろいろな面を考慮いたしまても、やはり大学院を持っておりまする大学を中心にいたしまして、その基礎研究の充実をはかつて参りますることが、じみではございますけれども、やはり一番根幹にならなければならぬと考えております。今回の予算におきましても、こういう趣旨で、教官研究費の本年度四十億を来年度五十億にし、さらに科学研究費の増額をはかつておりますし、それからまた施設設備の拡充も考えているのでありまするが、この現状を戦前と比較いたしてみましても、文部省だけでも戦前の水準にまで、まだまだ達しておりませんし、全体の研究費、また研究設備という点から考えてみますると、非常に不十分でございますので、今後大学院を持つた大学を中心にしたこの基礎研究の充実という点に集中して力を注いで参りたいと考えております。次に、日中文化交流についてのお話でございますが、国際間におきまして、学術、芸術、スポーツにも、文化の交流を盛んにいたしまして、わが国と諸外国との理解と親善を進め、相互に文化を向上させることは、きわめて大切なことでございまして、政治組織、社会制度を異にする場合でも、文化の交流が行われますることは、まことに望ましいことであると考えております。日中間におきましても、両国民相互の正しい理解増進に寄与いたしまする文化交流が行われますることは望ましいことでありまするが、ただ日中間にはいまだ国交が正式に回復されておりませんので、政府の手において現在程度以上に交流を行うここには、まだ今日では困難があるように思われます。(拍手)
〔国務大臣寺尾豊君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/18
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019・寺尾豊
○国務大臣(寺尾豊君) 佐多議員の御質問は、日中の郵便協定に関する問題であろうと存じます。現在、中国本土との間におきまする郵便物の直接交換はいたしておらないのでありまして、わずかに通常郵便物についてのみ、香港の郵政庁の仲介によりまして行なっているのみだという、まことに心細い関係にございます。従いまして、小包郵便物でありまするとか小型の包装物というようなものは全然取り扱つてもいないばかりでなく、通常郵便物さえも香港を経由いたしまする関係で、直接であれば上海等には五日ぐらいで行けるものが二十日もかかる、なお料金も高い、こういう非常な不便を忍んでやつておるわけでありますから、早急にこのことを改善をいたしまして、直接交換をいたしたいということで、去る三十年から数次にわたりまして折衝をいたし、このことを交渉いたして参りましたが、交渉地の問題について、両国間でいまだ一致をみていないのであります。しかし、この郵便物の直接交換ということは、国民の利益、便利ということについて、政府がこれをはからなければならぬ、また郵便行政から申しましても、純郵便技術に関する問題でありますので、これを政治的に考えるというようなことはすべきでないと考えております。従いまして、できるだけすみやかに両国間において、開催地の問題等もお互いに謙虚な気持で、譲り合うところは譲つて、早急に郵便物の直接交換に努力をいたしたい、かように考えております。(拍手)
〔国務大臣永野護君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/19
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020・永野護
○国務大臣(永野護君) 中華人民共和国は、航空事業運営の観点からみましても、最も重要な位置を占めておりますので、この間に航空協定を締結せられることは望ましいことと存じておるのであります。ただ、中共は御承知のように、まだ国際民間航空機関、いわゆるICAOと申しておりますが、これに加盟しておりませんので、技術的にいろいろ交渉をせなければならぬ余地が多く残されておるのであります。なお政治的にみましても、いろいろ考えなければならない点が多々ありますので、ただいまのところ、航空協定を具体的に交渉を開始することは考えておりません。(拍手)
〔国務大臣世耕弘一君登場、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/20
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021・世耕弘一
○国務大臣(世耕弘一君) お答えいたします。
日本の経済成長の問題に関しまして、いろいろお説を拝聴いたしましたのでありますが、お開きした内容を集約して申しますと、長期計画の中に多分に御心配の点があるように拝聴いたしたのでありますが、私の方の考えを率直に申しますると、むしろ成長率が堅実に進みつつあるという結論が実は出てくるのであります。このことはわが党ばかりの断定でございませんので、世間においても最近におきまして景気過熱論が出ておることが、このことを立証するのであります。むしろ景気の上昇をどの程度で調和するか、というのが今日経済界の世論となってきておるわけであります。こういう意味から申しますると、政府のとつております五カ年計画のこの計画方針に基いて、日本の経済が順調に成長しつつあるということを申し上げて、少しも誤まりがないと申し上げることができるのであります。(「内容がないじゃないか」と呼ぶ者あり)この点に関しまして、具体的に申し上げると時間がかかりますので申し上げませんが、ただ消費状況をながめますと正常な歩みをいたしておるということと、輸出関係をみましても、停滞状態がその域を脱しまして、上昇の傾向をたどつているということと、さらに設備投資並びにその他の点も上昇に転じております。なお、そのほかに財政支出等も勘案いたしまして、大部分の業種が上昇増大の傾向をたどつているということから、その目的通り順調な成長を遂げているということを申し上げることができる。かような点から申しまして、いわゆる経済界の過熱論をいかに調節するか、という議論すら出てきたのであります。だから佐多君のおっしゃる不景気の御心配は当分ございません、と申し上げるよりほかにないのであります。(拍手)まあ全体を通じて、経済のことは当分おまかせ願つても御心配ないと、こう思うのであります。(拍手、笑声)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/21
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022・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。ただいま企画庁長官から、経済の成長についての長期計画、この線に大よそ沿って経済が推移しているということを申されました。昨年の景気につきまして、先ほど来、景気論争の続きのお話を伺つたのでありますが、私ども昨年は景気について相当刺激的な政策をとるようにと、こういう御要望がございましたが、三十三年度予算はすでに三十三年度の景気の動向を見込んで作つてあるから、これを実施することが第一だということを申し上げたのであります。幸いにいたしまして、三十三年度予算を実施して参りました結果、当時の見通しのような推移をたどりまして、三十四年の新春とともに景気の明るさを加えて参っているのでございます。この点は別に景気論争を重ねてするつもりはございません。現実に、はっきり事態が証明いたしておりますので、これは説明を省略させていただきます。そこで、三十四年度の予算編成につきまして、この経済の上昇にふさわしい予算を作つたのでございますが、この予算の性格がぼけている、どうも政策がはっきりしておらない、こういう御批判をいただいたように思います。昨日の財政演説でも申し上げましたように、私どもが公約いたしました事項、減税であるとか、あるいは年金制度であるとか、あるいは道路港湾の整備であるとか、文教施設の整備、こういうような問題につきましては、これが大幅に取り入れてあることは、もう説明で尽きていると思うのでございます。同時にまた、中小企業や農林漁業対策といたしましても、特に重点を置いて参つたつもりであります。むかし、これらの予算は、どこまでも経済の着実な成長、これを助ける、またこれに相応する予算規模、こういうことで組んでいるのでございまして、政策がぼけているという御批判は当らないように考える次第であります。
次に、今回の財政投融資計画から見て、また経済の状態から見て、非常な散布超過になるのではないか。大体私ども考えましても二千四百億円程度の散布超過になるのでございます。さように考えますと、この予算の実行あるいは財政投融資を進めていきます場合に、最も大事なことは、御指摘の通り金融の面にあると思うのでございます。金融の面につきましては、昨日の財政演説におきましても、その一部について御説明をいたして参りました。しかし、私どもは、この統制的な方向はどこまでも避けて参る考えでありますし、民間の自主的な調整を第一に望んでやまないのでありまして、この意味におきまして、民間の金融業なり、あるいはまた一般財界等に対しましても、自主的な調節のできるようなことを特に強く要望いたしたのであります。しかしながら、もちろん、政府といたしましては、時々刻々に変つて参ります経済情勢に対して十分の認識を持って、時機を失しないような適切なる処置を講じて参事りいと思います。この適切な措置は、昨年も申し上げたことでございますが、経済に対しましては、どこまでもこの民間の創意と工夫によりまして、経済が自由に伸びていくということを考えたいのであります。もしもその上昇が非常に強いようでありますならば、これにブレーキをかうということも必要だと思いますし、また、経済の成長が非常に鈍い場合におきましては、財政の面からこれにささえをしていく、こういう考え方で、堅実な、着実な成長、これを期して参りたい、こういう考え方でございます。どこまでも民間の自由にまかすと申しましても、政府自身がまかせ切る、こういうような考え方でないことを御了承いただきたいと思います。
次に、公共事業費を相当増額したが、雇用については十分の効果があがらないのではないかということであったと思いますが、公共事業費等が大幅に増額されました結果は、一般経済に対しましても、これが健全な成長をいたしますので、必ず雇用の面に対しましても好結果をもたらすものと確信をいたしております。
次に、中小企業に対しての御意見でございます瀞、中小企業に対する各種の施策が不十分だ、こういう御批判であったように思います。しかし、政府、また大蔵当局といたしましては、先ほど通産大臣からお答えいたしました点、さらにまた、個人事業税や法人事業税の軽減の問題であるとか、あるいはまた、信用保証協会の貸付金をふやすという意味におきまして、信用保険公庫に対する出資をするとか、各方面で総合的なささえをいたしておりますので、中小企業も従前に増してこれが健全に発展していくことだろうと、私は期待いたしておるのであります。
次に、減税の問題につきまして、自由民主党の公約事項が完全ではないではないか、特に地方税の面において期待をはずれておるのではないか、こういう御指摘であったと思いますが、減税は、納税者の面から考えますと、国税であろうが地方税であろうが、納められる方は同一であります。私どもは、国、地方を通じて、大体、平年度七百億円の減税を実施するということをお約束いたして参ったのであります。今日具体的な案としてきめましたのが、昨日も御説明いたしましたように、平年度におきましては七百十七億円に上る減税でございます。疑いまして、個々の税金の扱い方としては、あるいは御期待に沿わないものがあったかと思いますが、総体としての公約の線は、今回の減税案で十分守られておると、かように私は確信をいたしておるものでございます。次に、こ上の財政計画で、三十四年度にかき集めて使い果したから、三十五年度は困るじゃないか、問題は、財政の計画は長期にわたる計画が必要だ。こういう御指摘であったと思います。この長期にわたる計画の必要なことは、御指摘の通り、私も同様に考えておる次第であります。で、今回の三十四年度予算を編成するに当りましても、三十五年度以降についても、一応の想定、見通しもいたした次第であります。三十四年度は、御指摘のような、なるほど剰余金を使つたとか、あるいは経済基盤強化資金を使い果したとか、こういうことで、三十五年度としては相当財源確保に困難があるだろう。あるいはまた、支出の面においても当然支出増がある、一そう困難だろうという御指摘であったと思います。しかし、私ともの見るところでは、三十三年におきましては、いわゆる経済の伸びもありますし、税外収入等におきましても相当の期待かかけられる、かように確信をいたしておりますので、支出の面におけるいわゆる増加がありましても、この三十五年度の予算編成において支障を来たすようなことはないと考えております。ただ問題は、収入の面についての長期的な計画も必要でありましようし、御指摘のお話では、やはり支出の面においても長期的な計画が必要だということを御指摘なすったんだと思いますが、私ども、これは同様に考えております。支出の面の長期的な計画は、やはり社会保障制度の問題などは、これはもう最たるものでありまして、これこそは長期的な計画を立てない限り社会保障制度などを樹立するわけにいかな。あるいはまた、道路の問題であるとか、あるいは港湾整備の問題であるとか、住宅問題等、また支出の面においての長期計画、もちろん必要でございます。基本的には、冒頭に申し上げましたように、私どもは、経済の長期計画と申しますか、五カ年計画を樹立いたしておりまして、この五カ年計画に即応して経済が伸びておるかどうか、絶えずこれを注意いたしておるのであります。この五カ年計画の線が大幅に狂わない限り、ただいま申し上げるような支出の面の長期計画を遂行することができますし、また財源確保の面におきましても別に御心配をかけることはないのでございます。この点、先ほど企画庁長官から御説明したと同様でございます。(拍手)
〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/22
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023・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 雇用の問題についてお話がございました。政府の策定いたしております長期経済計画にも、一番重点を置いておりますのは雇用の問題でございますが、よく御存じのように、一般人口の増加率よりも、ただいま、ここ数年の間は、いわゆる労働力人口の方がずっとカーブが上へ上っておるわけでありますから、われわれの政府が、皆さんの御協力を得て、たとえ経済政策が成功するにいたもましても、やはり雇用の問題というものは楽観を許すべからざる問題であると存じております。そこで、大蔵大臣のお話にもありましたように、来年度予算では、公共事業費、それからまた財政投融資等も大幅にふやしておりますので、この面においてもある程度の雇用量の増大は見込めますけれども、長期経済計画に政府が言っておりますように、産業規模を六・一%増ということでも、やはり私どもは、完全失業者というものは前年程度のことを考慮しなければならないと思っておりますが、政府は実際に人を使つていただく方ともう少し溶け込んで、計画的に雇用の拡大をしなければならないということを考えまして、労働省で昨年の秋ごろから雇用懇談会というものを作りまして、これは一般に、たとえば自動車工業、造船工業、紡績工業といったような業界がございます。そういうところと、一番いい時期に、たとえば三月の卒業というふうなときに、つまり今年度の卒業生についてどういうような技術者をどういう程度に使用するかというふうなことを、実際に雇用をしてくれる方と緊密な提携をして、そうして計画的に一つ雇用拡大をやつていこう。先般私が関西に行きまして、トランジスター・ラジオの工場に行きましたけれども、すでにトランジスターの工場では、あの小さなものを扱う婦人の労働者の欠乏を訴えておるような次第であります、一方において失業者があるかと思えば、一方においてはそういう欠陥がある。そこで、実際に雇用してくれる面と政府の雇用政策とを緊密に連絡をしていこう、そういう意味で、各地にあります職業訓練所の卒業生などは、ある者は一年も前、ある者はもう半年くらい前から就職先が売れていくということでありまして、そういう角度から、私どもは、困難な雇用の拡大について、計画だけでなく、実行に移していく努力をいたしておるような最中であります。
それから労働政策一般についてお話がございましたが、政府の考えております労働政策は、総理大臣の施致方針演説にもございましたように、比較的恵まれない環境に立っておる労働者諸君に対してできるだけ政治の面で暖かい手を差し延べてあげて、政治に対して信頼を持って、楽しみを持って働いていただくことが必要であると存じまして、この国会にも計画を盛つておりますたとえば中小企業の退職金制度であるとか、あるいは全労働者が双手をあげて賛成しておられる産業災害の防止に対する活動であるとか、あるいはまた最低賃金制、あるいはまた母子家庭の未亡人等に対して職業補導サービス、あるいは働く婦人の家というようなものに、乏しい財政の中で努力をいたして参っておるのでありまして、総理の施政方針にありましたような考え方が現内閣の労働政策の基本的考え方であるということについて、一つ御協力をお願いいたしたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣遠藤三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/23
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024・遠藤三郎
○国務大臣(遠藤三郎君) 公共事業と雇用問題についてのお尋ねであったと思いますが、先ほど大蔵大臣及び労働大臣からお答えがありまして、大体尽きておると思うのでありますが、特に私は一言申し上げたいと思います。
御指摘のように、今回の三十四年度の予算では、公共事業が各分野にわたりまして非常に拡大されました。たとえば道路について申し上げましても、昨年に比べて三百二十億円の増、総額一千五億円の道路投資をすることになっております。治水事業についても、下水道につきましても、さらにまた災害復旧につきましても、あるいは住宅の問題等につきましても、公共事業は大幅に拡大されることになっておるのであります。そこで公共事業と雇用問題についてでありますが、今回の予算を施行して参りますと、雇用問題に相当大きな貢献ができる、しかも消極的に貢献するのでなくして、むしろ積極的に雇用問題の解決の一助をになおう、こういう意図のもとに、労働大臣ともよく打ち合せまして、この問題を推進いたして参りたい、こういうことを考えておることを申し上げておきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣青木正君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/24
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025・青木正
○国務大臣(青木正君) 減税と公約の関係につきましては、大蔵大臣が御答弁申し上げた通りであります。明年度予算の地方財政に及ぼす影響の問題であります。お話のように、わが国の地方財政がようやく健全化の方向に向い、また行政水準もどうにか確保されつつある今日、新しい予算、あるいはまた減税の結果、地方財政に重大な影響を及ぼすことになりましては、せつかくの健全化した地方財政の立場にとりまして、まことに重大でありますので、私どもその点は最も留意いたした問題であります。お話のように、明年度の新しい財政需要として給与関係、これはまあ約三百五、六十億に達するかと思うのであります。そのほかに公共建設、公共事業等合わせまして大体七百億近くの新しい財政需要が起つてくるのではないか、こう私どもは考えております。一方これに見合う収入の面でありますが、税収の伸びが大体三百七十億程度、それに減税を差し引きまして、二百七十億程度の増収、また交付税の御承知のように一%の問題、それから三十二年度の調整金の問題を合せまして約二百四十億、この合計でまあ五百億ちょっとになるわけであります。そこで、差し引き百数十億の不足という問題になるのでありますが、その点は、一方におきまして、起債の面で約百億ほど増加いたしております。それから、そのほかの雑収等によりまして大体収支償うのではないか。現在地方財政計画は、いろいろ各省の計画の決定を待たなければなりませんので、それを待ちまして、目下地方財政計画を立案中であります。お話のように、私ども明年度予算並びに減税、これによって地方財政の運営に支障を来たすことのないように最善を尽す考えであります。(拍手)
〔国務大臣坂田道太君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/25
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026・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) 佐多君にお答えを申し上げます。
国民年金制度は、全国民の多年の要望でありまして、また私たち自民党の選挙公約でもございますことは、御承知の通りでございます。政府といたしましては、公約を忠実に実行して、今国会に法案を提出いたすつもりで、必要な経費を明年度予算案に計上した次第でございます。
制度の内容につきましては、いずれ法律御審議の際に詳細申し上げたいと存じますけれども、基本方針といたしましては、すでに年金制の適用ある被用者を除きまして、広く全国民を対象といたしたいと考えておるわけでございます。さらに基本的な考え方といたしましては、醵出制を基本といたしまして、補充的に無醵出制をあわせ用いるという立場をとつているわけでございまして、明年度はとりあえず無醵出制の援護年金を実施する考えでございます。でございまするから、結局国がまるまる見るわけでございますので、多少の制限も考えているようなわけでございます。制度の健全なる運営をはかるために、醵出のできる人々から分に即応した醵出を求めますとともに、国は保険料、醵出経費の二分の一を負担することを考えているわけでございます。とにかくこういうようなわけでございまして、国民皆保険の制度と同時に、国民年金制度は社会保障制度の二つの柱の一つであるというわけで、乏しい財政の中から、やはり私は一歩前進をしたというふうに考えますし、また国民の方々からも喜んでいただけるものだと考えているような次第でございます。(拍手)
〔田中茂穂君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/26
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027・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 田中君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/27
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028・田中茂穂
○田中茂穂君 議事進行について発言を求めます。
先ほど佐多君の発言の中に不穏当とおぼしき個所があったと思いますので、後刻議長におかれて調査の上、御善処されんことを要望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/28
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029・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) ただいま田中君より、佐多君の発言中、不穏当の個所があったやの御指摘がありましたが、議長は速記録を調査した上善処いたします。(拍手、「どこが不穏当か」「不穏当の個所を明確にしろ」と呼ぶ者あり)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/29
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030・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 高野一夫君。
〔高野一夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/30
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031・高野一夫
○高野一夫君 私は自由民主党を代表いたしまして質問演説に立つた次第ではございまするが、元来、現内閣は、わが自由民主党によって作られた内閣でありまして、従って、一切の施策、施政というものが、内閣から発表される以前において、十分に党と内閣との間で協議が進められ、党で打ち立てた方針に基いて作られた施策であることは、申すまでもないのであります。ことに三十四年度の予算案編成に際しましては、特に自民党の考え方を強く織り込んで、昨年の総選挙においでわが党が国民になしましたるところの公約は、ほとんど盛られているという実情でありますから、わが党の方針に反対の立場に立てば、先ほどの佐多さんのように、いろいろと反対意見、質問の事項もありましようけれども、私としては、さような考え方でございますから、個々の問題について質問するというよりも、もう少し基本的の問題についてお尋ねをいたしてみたいのであります。
私がここで私の見解を申し述べまして、総理大臣初め二、三の関係大臣にお尋ねをいたしたいことは、一切の施策を考え出すに当って、いかなる心がまえ、あるいは計画とでも申しましょうか、そういうものを持つべきであるかという点についてであります。
わが日本は、現在におきましては、日清戦争の時代よりもさらに狭くなつたこの国土に、そのころの三倍になんなんとする人口をかかえているのであります。九千万でありましようとも、一億になりましようとも、この全人口が食つて生きていくためには、国家として、最後まで責任を持たなければなりません。ところで、人口の増加の仕方は、すでに一カ年百万台を割り、九十万台を割って、昨年は八十万台の増加となりました。増加の仕方としては、やや緩和してきましたので、多少愁眉を開けるような感じを持つのでありますけれども、しかしながら、十五才から六十才までのいわゆる生産年令の人口は、かつてない激増ぶりを示しているのであります。この働ける年令層の人口増加は、戦前は御承知の通り大よそ一カ年五十万くらいであったのでありまするが、終戦後の年月がたつに従いまして、次第々々に増加をいたしまして、昭和三十年ごろからは、実に一カ年百五十万の増加を来たしているのであります。その理由は、死亡率の減少とか、平均寿命が十年も延びたとか、人口問題として考慮しなければならぬいろいろの原因がありましようけれども、とにかく、最近は一カ年に百五十万もの生産年令人口が増加をしている。ここに私は日本の根本的の大きな問題がひそんでいるものと考えざるを得ないのであります。ということは、かように激増を示しながら、現在働ける年令層の総数というものは、三十四年、本年におきましては、実に六千六百四十二万人に達する見込みであります。そういたしますると、この六千六百四十二万人もの男女は、あるいは農畜、林業、水産はもちろんのこと、鉱工業、商業、その他あらゆる産業のいずれかに仕事を求めて、自営たると勤務たるとを問わず、とにかく、少くともこれだけの働ける男女は、何らかの仕事にありつかなければならぬものと考えるのであります。六十才を越しました者でも仕事を持たねばなりませんけれども、少くともこの六千六百四十二万の男女は、一人残らず仕事にありつかせなければならない。産業経済に関する長期の計画を立てまする場合には、このことはもちろん考慮されているはずでありますけれども、人口問題については、わずかに厚生省がその調査に当っておって、労働雇用問題につきましては労働省が当つている程度でありまして、各省ごとの事業計画を打ち立てるときに、一々相互に横の連絡をとりながら、人口問題を考慮に入れてやつているかどうかは、はなはだ疑問であると思うのであります。たとえば農水産対策を講ずるといたします。土地改良もやる、開墾、干拓もやる、河川改修もやる、漁港の整備もやる、災害対策も立てるといたしまして、それらは、すべてそのこと自体が目的であつて、もちろん食糧の確保、原材料の生産ということが最終の目標でもありましょうが、一体、現在としても、農業、水産業等にどれだけの世帯、働き手が必要であつて、それ以上はまかなえないんだ、今後の改善、改良の施策によって、何年後にはどの程度の働き手が必要であつて、どの程度の人口が食つていけるんだ、という大よその見通しをつけなければならない。たとえば開墾にいたしましても、今後百五十万ヘクタールやれるか、二百万ヘクタールやれるか、それが何年の計画でできて、その間、年ごとにどれだけの人間がこの方で吸収されるのか、干拓も、大よそどの程度日本としてはやれるのか、それはどの程度の人間を吸収し得るかを見きわめなければならないのだと考えます。現在におきましても全国の農村には、二男、三男問題で困っている、ぶらぶらして、まともな仕事もない、いわば潜在失業者ともいうべき青年が、二百万ないし三百万は居ると想定されておりますけれども、それは一体どうすればよろしいのであるか。さように考えてきますれば、単に土地改良、漁港の整備といったようなことを取り上げるということだけでは、日本の将来に向つて一貫した政策とはなり得まいと考えられます。現在において、三年後において、五年後において、十年後において、農村なら農村で必要とする働き手、養い得る人口というものがわかつてくるならば、それ以外の者はどうするのか。鉱工業に向けるといたしましても、日本の工業の発展計画をどこに求めるか。それぞれの工業の発展ということは、その工業においてできるだけの働き手が就業いたしまして、できるだけの多くの人口が養われていくということが、基本の問題として考慮されなければならない。その工業の生産品をどの程度必要とするかというようなこと、あるいはその工業に要する原材料の問題等も、もちろん大切なファクターではございますが、同時に、その工業の養い得る人口のことを忘れてはならぬものと考えます。これから一兆億円を投じて五カ年計画で道路整備をやろうというわけでありますけれども、これも道路の整備によりまして運輸交通の利便をはかる、あるいは観光客の誘致に資するということが唯一の目的であつてはいけないのでありまして、先ほども建設大臣のお話がございましたが、一兆億円の金を投ずる道路整備に際しまして、どれだけの人間が働き場所を見つけ、どれだけの人間が養われていけるかということを忘れてはならぬと思うのであります。
先ほど来、科学技術の振興の問題が出ましたけれども、科学技術の振興策につきましては、わが党も強く打ち出しておりまして、内閣も力を入れつつあるのでありますが、しかしながら、科学技術の振興ということは、研究テーマが世界に先んじて、あるいは世界にひけをとらずに研究完成する、すなわちテーマの解決ということも、もちろん大事ではありますけれども、それだけでは振興策として十分ではないのであります。また、大学に理工科系統の学科を増設したり、あるいは拡充して、できるだけ理工系統の学徒の養成をするということだけでもいけないのであつて、それら専門的の技術者が世の中に出ましてかち、自分々々の専門の道で仕事を見つけることができるかどうかを考えておかねばならない。就職戦線は容易ではございませんから、理工科出の者といえども、自分の希望通りの仕事につけない例が多いのでありまして、むしろそれが常識かのごとく思われている現代であります。かりに一例をあげまするならば、染料化学を専門にやつた者が、染料会社に入れませずに化粧品会社に行くということになりますれば、せつかく修めた染料化学の学問技術も一向に役に立ちません。もしも染料化学をやつた者がその染料会社に入るということになるならば、工場の現場において、あるいは研究試験室において、興味を持って勉強もできることになりまして、製造方法の改良も行われましょう。品質の改善もでき、または新製品の発明といったことも生じて参る。私は、科学技術振興のほんとうの意義はこういうところにあるのではないかと考えているのであります。少数の学者に少数のテーマを与えて研究に当らせることも必要ではありますが、それはきわめて局限されたことであつて、全般的の振興策というものは、科学の中のそれぞれの専門学科をいかに世の中の仕事場に生かしていくかにあると考えるのであります。人工衛星のごときものの研究はやらぬでもよろしいのである。それはアメリカやソビエトにまかしておけばよろしいのであつて、日本においては、科学技術者養成と並行いたしまして、その技術者が働ける産業部門はどうなっているか、どの程度発展せしめて、津々どの程度の専門技術者を吸収することができるか、こういうことをあわせて計画を立てるのでなければいくまいと考えるのであります。工業の発展計画、その製品の需給事情、それだけをてんでんばらばらに考え、文教は文教、研究は研究というふうではいけないのである。すべては関連あるものとしての総合的計画が立てられるべきであると思います。年々の計画もそうでございまするが、長期計画においては特にその必要性を感ずるのであります。
そこで私は岸総理にお伺いいたしたいことは、政府が施策を立てるに当つては、各省ごとの思い思いのものでなく、各省にまたがつて十分に関連的に考えてもらつて、その上で、各種産業経済の問題、文教の問題等を打ち出すべきものと私は思うのでありまするが、総理はどういうふうにお考えになりますか。もしもその必要があるとなさるならば、これはわが党としても、党だけではとうていむずかしい問題、いわんや各省区々たる計画を寄せ集めて、その寄せ集めた区々たる計画を結びつけるというのでもだめであります。内閣に、政治界、学界、民間有識者等をもって構成する一大調査機関を作つて、日本の人口がいかに増加いたしましても、これを養い得る大計画を立てるということに御興味をお持ちにならないかどうか。政府は各種の調査会、審議会を作っておりまするが、この日本の人口問題を基本としての産業経済計画を総合的に打ち立てるための調査機関というものは、あらゆるものに先んじて必要だと思うのでありますけれども、総理のお考えはいかがであるか、お聞かせを願いたいのであります。次に、大蔵大臣に一言お伺いいたしたいことは、予算案編成に当りましては、われわれ党としても、できるだけ党の方針を組み入れてもらうように、政府側と協力してやつているのでありますけれども、政府としては、各省それぞれの要求に対して適不適を判断されるに当つて、各省にまたがるすべての問題を一応総合的に考慮された企画に基いて編成をするということが、最も適当ではあるまいかと考えるのであります。非常に厄介ではあるけれども、その方向に努めて向けていくということに、もちろん御賛成であるとは思うけれども、それはとてもむずかしく、だめなことであるとでもお考えなのかどうか。この辺のことについて、将来の問題としてでもけっこうでありますから、大蔵大臣のお考えを聞かせていただきたいのであります。
次に、経済企画庁長官にお伺いいたしたいことは、元来、各省にまたがる計画を総合するところに企画庁の仕事があるはずだと考えますが、これまでそういう仕事をうまく果しているものかどうか。各省所管の計画はほとんどが各省勝手に打ち出したものであつて、横の連絡的計画はあまりないように思いますが、私の見方が間違つておりましょうかどうか。また、各省において、計画性に欠陥がある場合、企画庁としては十分にその省に注意を与えてもいいのではないかと思うけれども、たとえば、せつかく法律を作りましても、その法律を運用する場合に、その法律の中にはないけれども、しかも法律と密接な関係のある隠れたる問題がある場合がしばしばあるのであります。その関係問題の計画が不十分であるために、せつかくの法律が効果をあげ得ないことがあります。その実例の一つを申し上げますならば、先年国会を通過した酪農振興法である。酪農振興法なる法律は、農村に乳牛を飼育させることを奨励育成することを内容としておる法律でありますけれども、しかしながら、乳牛をふやすということだけでは、酪農振興にはならぬのである。その乳牛からしぼつた牛乳を、いかにむだなく、いかに適正に処分させて農家の収入をはかるかということでなければ意味をなさない。ところで、一カ年何万頭の乳牛をふやせば何十万キロリッターの牛乳が出るというようなことは、すぐそろばんがはじけるのである。従って牛乳が九十万キロリッターになつたとか、——最近はメートル法になりましたから、まあキロリッターで申し上げますが、九十万キロリッターとか、現在のようにすでに百二十四万キロリッターを超えたというようなことは、事前に想定ができるのである。ならば、その何十パーセントを飲料に供して、何十パーセントを乳製品製造の原料に供するというような計画がもしも立てられない場合には、農家は牛乳の処分に困りまして、乳価をたたかれ、何のために乳牛を飼つて、何のために酪農振興法の恩恵にあずかろうとしたかわからないということになるのであります。全国おいても、地方的にうまく計画的にいっている所もありますけれども、うまくいっていない地方の方が多いのである。また、このことは、直ちに貿易にも関係があります。外国から乳製品がどしどし輸入されまして、国内製造が圧迫を受けるということになりますならば、恒久的の乳製品工業の発展対策、酪農対策は立てられないことになります。従って酪農振興法を生かすためには、法律にはないことであるけれども、これに関係のある工業のこと、貿易のことを、一方において考えておいてやらねば、せつかくの法律も効果をあげないことになるのである。どの産業についてもこれは言い得ることでございまするが、私が一例としてあげた酪農問題ですらもさような事態でございます。これはあえて農林省だけの問題ではなくして、通産省の問題でもあり、企画庁の問題でもあると考えるのでありますが、こういうような場合に、計画を立てて所管省に注意するということは、企画庁としてなさらぬのであるか。経済白書のごときものを見ますれば、実にりつぱなものが企画庁から出されておりますが、その白書に記された内容を見るならば、企画庁は各省に対して、各省と連絡をして、総合的の計画を立てるべきだと思うのでありまするが、いかがでありましようか。この経済白書に記されているようなことが、どの程度そういう仕事が進められているかどうかを企画庁長官に伺いたいのであります。
次に、文部大臣に一言お伺いしたいことは、理工科系統の学生を養成する場合に、その学生が卒業いたしましてからそれぞれ専門の職につけるのか、日本の工業部門の現状、あるいは発展計画というようなものを一応調べて、その吸収力を勘案されるのであるか、それとも無関係に、教育さえすればいいということでやられているかを、一応伺いたいのであります。
外務大臣にお伺いいたしたいことは、国際間の外交折衝といたしましては、政治的な問題ももちろん基本の問題であり、大事ではございますけれども、平時においては経済外交ともいうべき面が、広く、かつ問題も多いのではないかと思います。在外公館では随時調査もされておることではありましょうが、国会議員のわれわれが短期間視察旅行をしただけでも、なおかつ、いろいろな問題点を発見することが少くないのであります。それは、公館でも人が足りず、あるいは十分の費用がないので、考えておっても手が回らぬということであろうと考えます。公館には、農林省からも通産省からも人が来ております。しかしながら、完全に活動が果されているとは見えない点があるのであります。在外公館の総予算が、約九十もある公館総計で、三十四年度が六十六億足らずでございまするが、その中で、経済調査に使われるものは、わずかに一千八百万円にすぎません。もっとも対外宣伝、日本の経済事情、文化事情等の実情を紹介する費用といたしまして、約九千七百万円が計上されてはおりますけれども、こんなことでは、外国の経済事情、特に日本と結びつける点についての十分の調査がなされようとはとうてい考えられない。外務大臣は、これらの費用を思い切って算出してみて、充実した調査をさせるというようなお考えはお持ちにならないかどうか。このことは、私が最初に申し上げましたところの、日本の人口問題を基調とする産業経済計画を総合的に将来に向って立てるという場合、特に必要な要素となるはずだと考えるからでございます。岸総理が一昨年東南アジアを訪問なさいまして、東南アジア各国との経済開発に関する提携、あるいは保健医療に関する提携、その他万般の貿易促進策を強く打ち出されました。われわれもその後回って参りましたが、少くとも今日まで思わしく進捗しておりません。それには、日本以外のいろいろな国も相手にしなければならないことでございますから、日本だけの思うようにばかり参らぬこともありましようけれども、結局は、日本と東南アジア各国とを結びつけての計画が十分立てられていない。計画を立てるために必要な調査が十分なされていない。こういうことに私は原因があるのではないかと思うのであります。はなやかな外交舞台もけっこうなのでございますけれども、こうした地道な調査に一段と精を出すような工夫をしてもらいたいものと考えますが、外務大臣はいかにお考えになるか。
もう一つは、海外移民の問題でありますが、移民をしてみて、予期に反して、あるいは約束と違つて、路頭に迷わされる、そういう場合がしばしばあるということを聞いております。移民の数をふやしてもらうことに関係各国との折衝を今後とも続けていただくと同時に、安心して移民ができるよう、十分の指導監督をお願いをしたいのであります。この点について外務大臣の御見解を聞かしていただきたいと思う。
最後にもう一点、岸総理の御見解を追加して聞かしていただきたいことは、一昨年の十一月モスクワにおける共産国十二カ国の共同宣言がなされまして、昨年八月三日のフルシチョフ・毛沢東の共同声明がなされましたが、これは、私が申し上げるまでもなく、いずれも共産主義による世界革命運動の推進を強く打ち出しているのであります。この一連の流れをくむ日本在住の共産主義者は、日本をことさらにアメリカの従属国なりとみなして、その従属的立場から日本を解放独立せしめる革命をやらなければならぬと考えているのであります。しかも日本現下の実情は、社会主義階層にもすでに容共派とも申すべきグループがいつの間にかできて、政治闘争にも、労働運動にも、学生運動にも、経済界撹乱策にもと、次第次々にその色彩が濃くなりつつあると考えざるを得ないのであります。ことに日本の社会情勢を見まして憂慮にたえないことは、ヨーロツパの自由諸国におきましては、共産国の裏表がよくわかる、そこで、共産国に対してまず健全なる批判をする常識を一般の国民が持っている。ところが、日本におきましては、ソビエトのことにいたしましても、中共のことにいたしましても、いい面だけしか伝わりませんで、陰の面、裏の面、あるいは悪い点を持っておるならば、そういうことが率直に日本人にはわかつておらぬのである。いいことのみが伝たられておる。(「逆だよ」と呼ぶ者あり)中共、ソビエト、それから流れ出る一連の革命運動が次第片々にその色彩が濃くなり、ここに目に見えない動きがあるということは、現在の日本の社会状態として、われわれは憂慮にたえない点だと思うのであります。わが自由民主党は、ある政党のごとく階級政党でも何でもございませんし、全国民を対象として政治をやる、全国民の上に打ち立てするべき福祉国家の建設を強く打ち出しているのでありますから、わが党が支持する現内閣は、その福祉国家建設のだめに、先ほど私が申し上げた産業経済、文教、外交の恒久的計画性を立てると同時に、それを立てるためには、社会不安をかもし出す一切の事柄、しかも、目に見えないうちにいつの間にか滲透してくる革命運動の動きというものに対しまして十分の対策を考えて、治安のよく保たれたる社会を基盤として、その上に計画を進めてもらいたいものと考えるのでありますけれども、この点について、特に総理の御見解をお示し願いたいのであります。
以上をもって私の質問演説を終るのでありまするが、私がいつも考えるのでございますが、要するに、われわれが人間として生きる道にニつの道があると思うのであります。その一つは、いかにかして心安らかにわれわれは生きることであり、もう一つは、いかにかして、すこやかに育ち、元気なからだで働いて、できるだけ豊かな経済生活を送ろうかということであります。この、いかに元気なからだで働いて、できるだけ豊かな経済生活を送るかという問題を解決することこそ、政治の要諦であるはずでございますから、狭い国土にあふれるばかりの人口をかかえて、その人口が生きていける日本をいかにして作り上げていかなければならないかということであります。どうして作り上げていくか、今のうちからその大計画を立でなければならない。私は、そういう考え方から以上の質問を申し上げた次第であります。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/31
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032・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
日本の経済産業計画を立てる場合において、人口問題を頭に置いて雇用問題を解決することを考えなければいかぬという御意見でありますが、全くその通りだと思います。現在わが党において、政府において立てております産業経済五カ年計画におきましても、五カ年の後において五百万人の労働人口を吸収するということを目標に立てておるわけであります。しかし、これだけでもってすでに人口問題のすベてが解決するということではもちろんありません。特に、各種の政策を立てる立場において、横の連絡を十分に緊密にし、各省の間において思い思いの計画でなしに、総合的な計画を立てるために、内閣に、この人口問題を中心にした政策の根本を検討するような調査会を置いたらどうかというお話でありますが、これは、御意見はごもっともだと思いますが、今直ちにそういう調査会を作る考えは持っておりませんが、十分に連絡を緊密にして、総合的に立てるように留意して参りたいと思います。
最後に、反共に関しての御意見でございましたが、われわれは、民主主義の、自由民主の立場を堅持して、人間の自由と人格を尊重した上に福祉国家を建設するというのが理想でありますから、その立場においてすべてのことを考えていきたい。しかして、この意味において、今日現われておる日本の社会情勢におけるもろもろの事象につきましては十分に留意しで、われわれのこの理想を阻害しないように、多数の民衆が平和なこの理想を追求できるように心がけていかなければならぬと思います。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/32
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033・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。予算編成についての心がまえについてのお尋ねだったと思いますが、私は高野君の御所見と全然同一に考えておかます。どこまでも予算は大所高所に立って予算を編成いたしますが、同時に、各省関連の総合的な面も十分注意して参るつもりであります。特に、一、二の例をとつて申しますれば、科学振興ということでいろいろ予算を組
んで参ります。あるいは青年対策というような観点に立って予算を組んで参りますが、これなどは、一省の所管でないものでございますので、各省の関連を十分に考えて、総合的に予算を編成していく、かように一そう努力するつもりであります。(拍手)
〔国務大臣世耕弘一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/33
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034・世耕弘一
○国務大臣(世耕弘一君) お答えいたします。
企画庁の使命、あり方についてのお尋ねがあったように思いますが、各省と
の連絡等に関しましては、御承知のごとく、企画庁の任務ということが法律に規定されております。(「全部読め」と呼ぶ者あり)全部読みますると時間がかかりますので、簡単にいたします。(笑声)「企画庁は、左に掲げる事務をつかさどる長期経済計画の策定及び推進、ニ、経済全般の運営の基本方針及び毎年度の経済計画大綱の策定、三、前号に掲げるものの外、二以上の行政機関の経済施策に関連する総合的且つ基本的な政策の企画立案、四、経済に関する基本的な政策の総合調整、五、総合国力の分析及び測定、六、内外の経済動向及び国民所得等に関する調査及び分析」と、こういうことがあげられておるのであります。この目的に準じまして歴代の長官はそれぞれ御努力をされたものと存じます。はなはだ、たとえごとで恐縮でございますが、私は、企画庁のあり方を、今申し上げたことを総合的に要約いたしまして、私は一面においては、企画庁はレーダーの役をしなくちゃならぬ。あらゆる経済事象をば、すみやかに正確にこれをキャッチして、政府並びに民間に流す。そうして計画性を持つということ、さらにもう一つは、私は名医の態度が必要ではないかと思います。あくまでも、あらゆる面の関係におきまして、十分な経済事象をば診断して誤まりなからしめるということが、企画庁に与えられた重大な使命だと、かように考えております。せっかくこういう心がけで企画庁の事務を取り扱い、また政策を推進いたしたいと思いまするから、この上ともの御指導をお願いいたしたいと思います。(拍手)
〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/34
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035・藤山愛一郎
○国務大臣(藤山愛一郎君) お答えいたします。
経済調査の必要性は、政治、経済の外交をやって参ります上からも必要でありますが、同時に、今、高野君が言われましたように、国内施策の上からも、外国の経済事情を調査いたしまして、十分それを反映させることが必要かと思っております。従いまして、私といたしましては、外務省の経済調査機構をできるだけ拡充し、また、その予算の増額等について希望をいたしておりますが、しかし、限りある予算の中におきましても、外務省の全員を督励いたしまして、それらの機能が十分発揮できますように今後ともやって参りたい、こう考えておる次第であります。
移民の数だけふやさないで、受け入れ地における受け入れ設備を十分に充実してもらいたいという御意見でありまして、受け入れ地の設備、あるいは受け入れ態勢が十分でありませんと、せっかく送出されまして移民の方々が、十分な安心を得て定着されない状況にあろうかと思います。従いまして、われわれといたしましては、その点に十分心がけて参らなければいけないのでありまして、来年度の予算におきましても、約五千万円ほど昨年度から増額していただきました。そうしてその上で、指導員でありますとか、倉庫でありますとか、そうした恒久的な設備をさらに充実していきたいということを考えておるのでありまして、この点今後とも十分な留意をいたして参る所存であります。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/35
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036・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 前田久吉君。
〔前田久吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/36
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037・前田久吉
○前田久吉君 私は緑風界を代表して、岸内閣総理大臣を初め関係各大臣に対して数点の質問を行いたいと存じます。
まず、先般の変則国会において、七十日の会期を空費し、いたずらに政争に明け暮れた醜態は、わが国の議会政治に対する国民の信頼をゆるがせ、海外諸国に与えた影響を考えるとき、まことに憂慮にたえぬ事態であったと思うのであります。わが国の二大政党対立が軌道に乗ってからわずかに三年であるが、早くも今日このような政治形態に疑問と不安を持つ議論が横行し、第三党の実現を待望する声も出てきたことは、国民の懸念の現われであるといっても過言ではないと存じます。今国会の冒頭、私がこの問題をあえて申し上げるのは、かかる不祥事が再び今国会においても繰り返されるおそれなしとしないからであります。それであっては、議会政治の前途は暗たんたるものとなるからで、私はこの際、総理大臣であるとともに自由民主党の総裁である岸信介氏に、次の諸点をお伺いいたしたいと存ずる次第であります。
第一に、今国会では絶対に暴力や政争による院議無視の状態を惹起せしめぬ自信と対策をお持ちかどうか。
第二に、両党間には根本的なイデオロギーの対立があるのみで、共通の話し合いの場がない。総理大臣は施政方針演説の中で、両党の政策が異なっても、議会政治の共通の場において、寛容と互議の精神に立脚した話し合いを進めて、国政運営の実をあげると言っておられるが、過般、社会党の中央委員会で、鈴木委員長は、現在の日本の政治の条件下では、二大政党といっても、現実には保守政党の政権独占であって、政権交代はあり得ないし、また、あるべきではない、という意味の見解を発表されている。社会党内部において、議会主義を軽視する社会主義革命論や階級政党論を唱える勢力が相当強いことは、岸総理も認めておられ、これに対しては明確に対決するという基本的立場を堅持すると、強硬に言明をしておられる。しかし、かかる両党間の溝は、あくまで話し合いによって埋め、共通の広場を打ち立てなければ、議会制度は崩壊せざるを得ないわけで、そのためには、いかなる方法によって共通の広場を確立する用意があるのか、この点をお伺いしたいのであります。私といたしましては、米英諸国のように、外交政策だけでも超党派的態度をもって対処してもらいたいと願っているものでありますが、そのような工合には持っていけないものかどうかということであります。
第三に、議会の権威を高めることのために、わが緑風会は、議長、副議長の党籍離脱を主張して参りました。また、自民党や正副議長に対しても、数回にわたって申し入れを行ってきたのでありますが、自民党は先般の変則国会の苦汁をなめて、ようやく衆議院だけは実現されました。しかし参議院ではいまだ実現を見ておりません。今後再び不測の問題が起った際、衆参両院とも、公平な議長の裁定に服するという保証はないと思うのでありまするが、それは議員全体の良識で、ぜひとも励行していかねばならない。そのためには議長の公平性を強めて、その権威を高めることが重要な前提条件であると信ずるものであります。すでに衆議院では、この必要性を認めて実施されたのであると存ずるのでありまするが、それなら参議院では一そう、議長、副議長の党籍離脱の必要があると思うのであります。この点について、自民党総裁としての岸信介氏はいかにお考えであるか。以上三点について明確にお答えをいただきたいのであります。
次に、外交問題その他の諸問題について若干の質疑を行いたいと存じておりましたが、同僚議員の代表質問と重複いたしますので、私は財政経済問題に質問を限ってお尋ねいたします。
まず、明年度予算案は、昨年十二月、政府が立てた経済見通しに基礎を置く限り、ややふくらみ過ぎて総花的になったきらいはあるが、大筋については大体了承できると思われるのであります。ふくらみ過ぎ、総花的ということは、インフレ懸念を蔵しているということであり、これは今後の運営において、十分慎重に情勢の推移とにらみ合わせていかねばならぬということであります。この情勢の推移を特に強調したのは、昨年来、西欧諸国の多くの国が為替の自由化に一歩を進めたことであります。国際間の貿易競争は、このため一段ときびしくなると見られており、わが国のような輸出振興を第一要件とする国にあっては、この新事態に立ちおくれることがあれば、日本経済界全般に及ぼす影響は、はかり知れないと存ずるのであります。もし日本が今、金ドル準備の充実するまで安閑としているというようなことだったら、私は経済計画の基礎となっている輸出三十億ドル、経済成長率五・五%という数字の達成はむずかしいと憂えるものであります。従って、明年度予算がインフレ傾向を内蔵しているのに、このようなデフレ傾向が現われようとしているとき、今後の予算執行は慎重にする要があるとするゆえんであって、この点に関し、いかなる対策と準備を進めておられるか。また早晩、円の自由化が具体化してくると、為替管理、貿易管理の緩和ないしは立て直しが問題となってくるが、そうなると、今までの国内産業の保護政策も重大な転換期に立たざるを得ません。これに備えて、明年度予算の執行において最も大切なることは、経済の正常化と企業体質の改善に努めなくてはならないと思うのであります。
まず、経済の正常化としての第一要件は、金融の正常化にあると考えるのでありますが、明年度財政資金の散布超過は約二千億をこえる見込みで、これに付随して思惑や人気が先走ったり、貸出競争が再現したりするような波乱を起してはなりません。これを事前に抑制する妙案を大蔵大臣は果して持っているかどうか。また、これに関連して、国際的に割り高なわが国の金利をこの際引き下げる用意があるかどうか。この問題は、経済界にとって、金利の負担軽減という意味で、今年の大きな問題点であり、国際競争力の重要な基盤でもありまするから、日本銀行の公定歩合はなるべく早く引き下げて、今から弾力性をつけておく必要があると思うのであります。この点、政府は早い機会に金利引き下げを行うかどうか。さらに、第二の企業の体質改善という点であるが、目下の現状では、各企業とも、自己資本の充実などと政府が言っても、借入金によって資金を調達する方が安くつくから、馬耳東風の態度であります。これは税制の欠陥に基因するもので、これを改善しない限り、企業の体質改善などということは、お題目を唱えるだけとなるおそれがあるのであります。政府は今国会に、再評価に関連した資本充実法案を提案されるようでありますが、このような小手先き政策は無意味に近いと言わねばなりません。政府はそんなことより、まず抜本的減税をこの際断行すべきであると信じます。
政府の明年度減税は五百二十五億、平年度七百億円と発表されましたが、国民は公約である初年度七百億円を期待していたのであるから、若干裏切られた感じを持っており、さらに間接税の軽減や整理が申しわけ程度で、地方税や営業税、固定資産税の減税なども、公約の線には達しておりません。政府は過去三年間、常に自然増収を一千億円以上もあげているのであるから、減税の余地はまだ十分あると言えるのであります。佐藤大蔵大臣は、その財政演説の中で、税制については、経済の推移に照らし、税制調査会を設置して税体系の根本問題を再検討すると言明されておられますが、来たるべき円の自由化に備えて、大減税を約束する税制改正を断行する意思があるかどうか。以上の諸点について大蔵大臣から御所見を伺いたいのであります。
神武景気が一頓挫してからの長いなべ底景気にもかかわらず、今日までともかく深刻な破綻もなく切り抜けてきたのは、政府の施策が適切であったというよりも、私は、国民の中で一番多い階層である農村と中小企業へのしわ寄せによるものと思っておるのであります。(拍手)実際これらの階級は、海綿のような存在で、常に好況と不況との間で、ふくらんだり縮んだりして調整の役を果してきたのであります。従って、今年は中小企業と農村に対する制政策並びに雇用失業対策が大きく取り上げられねばならぬと存じます。これから国際貿易の競争が一段と激化しそうな情勢を目前にしながら、これらの階層への補強工作は、すべて小手先き政策で、根本的にこれを解決していこうとする政府当局の意気込みは、遺憾ながら感じられないのであります。まず中小企業に対しては、一応金融のワクの拡大とか、中小企業団体法案などと、なるほど手は打たれてきましたが、これらはいずれも大した効果はあがっていない。金融が二階から目薬程度である点もあるが、りっぱな法律ができても、中小企業を育成していこうという不退転の決意が当局にないからだと思うのであります。実際、中小企業対策は最もむずかしい問題であるが、今年は特にこの問題が重要性を持っております。通産大臣は練達の士であるから、今後の対策にいかなるお考えを持っておられるか、お考えが伺いたいのであります。
また、農業問題については、四年続きの豊作で、表面は比較的平穏な状態を呈しているようでありますが、これは全く米の問題だけで、農家の半数を占める畑作の振興はかけ声ばかりであり、繭は五ヵ年の増産計画を進めておりながら、その途中で今度は減産しろと言い出している。さらに、二百億円以上の政府資金を糸価安定のために投じておきながら、繭の支持価格は大幅に切り下げようとしている。一体、政府の蚕糸政策は何をねらっているのか。さらに、酪農政策にしても、牛を飼え、牛乳をとれと奨励しておきながら、今では牛乳が下って、農家は借金までして買った乳牛をいたし方なく安く売り払わねばならなくなった実例もある。これでは、農林当局の政策はどれもこれも、農民を救うどころか、迷わせる政策だといわれても、いたし方がないのではないかと思うのでありますが、この点につき農林大臣はどのようにお考えになっておられるか、これが伺いたいのであります。
次に、雇用失業対策についての岸総理のお考え方は施政演説で聞きましたが、私は、この考え方はいささか甘過ぎると考えるものであります。なるほど表面に出ている顕在失業者は五十数万人でありますが、長いなべ底景気によって、農村に帰ったり、中小企業者の両親や親戚のもとに帰って徒食している潜在失業者の数を合せれば、五百万人をこえると思うのであります。今年の課題は、都会で職を失って帰郷したり、徒食しているこれらの潜在失業者にも職を与えねばならない。このためには、岸総理が簡単に、公共事業費と財政投融資の増大によって積極的に雇用の拡大をはかるというようなことを言っておられるが、そんなことでは満足できないのであります。それについて労働大臣は、もっと詳細に具体的に、対策をお聞かせいただきたいのであります。
以上で大体私の質問を終りますが、最後に、岸総理に心から要望したいことは、長期政権を目ざす以上、一貫性のある、腰のすわった政治をやっていただきたいとうことであります。さらに、総理も大蔵大臣も、このたびの演説では、そろって楽観的なお見通しをしておられるようでありますが、私は、必ずしも前途は決してバラ色ではないと警告したいのであります。来たるべき貿易激化に対処するため、今年は、ここにるる申し上げたように、なさねばならぬ大切なことが山積しているのであり、その一つをとっても、よほど腹をしめてかからないと改革ができないことばかりであります。この意味で、今年は特に岸総理並びに各閣僚諸君の善処を切にお願い申しあげて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/37
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038・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えいたします。
変則国会の問題に関しましては、私も心から遺憾に存じているわけであります。変則国会の最後に、鈴木委員長と私は親しく会見しまして、率直に話し合いをして、将来こういう事態を再び起さないように、両党とも一つ真剣にこの問題の話し合いをしよう、こういうことで話し合いをいたしました。まず、国会運営の上において、多数党がただ数にものを言わせるというようなことで押し切るという態度については、十分にわれわれは反省をする。同時に、少数党が論議を妨害することにおきましても、それにはおのずから限度がある。暴力を持って審議を妨げるようなことは、これは断じて許されないことであり、(拍手)将来そういうことについては十分一つ、両党ともそういうことのないようにしよう。十分国会の運営については、法規、慣例、話し合い等を尊重して、いやしくも審議を暴力やその他でもって妨げて進行させないということは、責任をもってすまいということを、両党の党首として誓い合ったのでございます。私は、もちろん、民主主義のこの問題は、いろいろと忍耐強く努力を続けていかなければなりませんし、あらゆるいい慣行を積み重ねていくことが必要だとは思いますが、少なくとも国会運営の面において、国会の権威を失墜するようなことは、両党において、また議員各位におきまして、十分に一つ戒心をして、権威を高めるようにして参りたい、かように思っております。
両党が話し合いの場云々のことでございますが、今日両党が、政策の上というよりも、むしろ世界観やあるいは国際的な外交政策の根本において考えが違っているということは、非常に両党の話し合いの場を狭からしめているゆえんであると思うのであります。超党派外交ということをお話になりましたが、今日の自民党と社会党との間において最もむずかしい問題は、外交上の所見、根本的な考え方を異にしていることであると思うのであります。従いまして、個々の問題について、外交問題についても、話し合う余地はもちろん私はあると思います。しかし、今日直ちにそういう点について話し合いをするということはむずかしいと思いますが、少くとも国会政治を守り、国会の権威を高めるということについては、両党において同じ考えを持っていることを私は信じておりますから、この点を話し合いの場の基礎として、今後といえどもあらゆる問題についてできるだけ話し合いをしていきたいと思います。
議長、副議長の党籍離脱の問題につきましては、過般の変則国会が衆議院における議事から生じまして、これを将来に向って議事の運営の円滑を期するために、衆議院においては、議長、副議長の党籍離脱ということを、両党の党首において話し合いをいたしました。参議院の問題につきましては、その際も、われわれのこの申し合せに準じて、しかも参議院の独立性、自主性というものを認めて、参議院においてきめていただく、こういう話し合いになっております。
〔国務大臣佐藤栄作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/38
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039・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
今回の予算が相当膨大であるから、インフレの危険はないかというお尋ねであったと思います。御承知のように、今回の予算で、これでわが国経済を安定的に、また健全にこれを成長さすという考え方でございます。その観点に立ちますと、予算の実施に当りまして特に私どもが注意しなければならないことは、申すまでもなく、通貨価値の維持ということであります。外国が通貨の自由交換制を回復したと申しましても、一面、国際貿易の面では競争が激化して参ります。そういう際には、どうしてもその経済自身が健全であるためには、その国の通貨が、どこまでも通貨価値が安定していかなければならないと思います。ですから、今回の予算の実施に当りましても、この点に特に意を用いておりますので、インフレなどを起すようなことは絶対に避けていく考え方でございます。また、お話になりましたように、こういうような通貨価値を安定さしていく、あるいは同時に、二千四百億にも上る散布超過の状況になった場合の金融のあり方として、金融機関そのものの態度がともすれば正常化を逸するのではないか、言いかえれば、貸し出し競争などをして、いわゆる財界の意欲にこたえようとする、そういうことが経済の健全性を損うのではないか、こういう御意見だったと思いますが、御指摘になりましたようなことが起りますれば、もう申すまでもなく、それこそはインフレの危険があり、あるいは経済の成長の健全性をこわすということになると思うのであります。私どもは、今回のような散布超過になりました結果は、いわゆる金融の正常化を招来する好機と、かように考えてもいいのではないか。言いかえますならば、日本銀行依存の金融機関の姿勢をこの機会に是正して、そうして金融の正常化の方向を、これを取り戻す好機だろうと、実はかように考えるのであります。この意味で金融機関に対しましても御協力を御願いしておりますが、大蔵省といたしましても、こういう意味で金融機関のあり方に特に意を用いていく考えでございます。そこで、金融機関自身がその施政を正しますと同時に、金融の実際の面で、日本の金利はなお高いから、さらに金利を引き下げることを考えてくれという御意見であり、また同時に、そのためには、日銀の公定歩合などを引き下げるべきではないかという御意見であったと思います。一般の金利につきましては、私どもも今までしばしば申し上げておりますように、どこまでも国際金利水準にさや寄せしてくように、金利を引き下げる方向に努力して参りたいと思っております。散布超過になり、金融が緩慢になる、こういうことの際におきましても、やはり金利そのものを引き下げていく方向にいたしたい、かような努力は引き続いて払っていくつもりでございます。政府の関係機関であります国民金融公庫であるとか中小企業金融公庫であるとか、いわゆる政府三機関といわれております金融機関につきましても、わずかではございますが、この四月以降におきましては、金利を下げるようにしたいものだというので、ただいま準備をいたしております。
そこで、お尋ねになりました日本銀行の公定歩合の引き下げの問題でございますが、概括的な、総体的な、原則的な問題としては、いわゆる国際金利水準にさや寄せする、その方向であることは申し上げ得るのでございますが、この公定歩合そのものを、いつの時期に、また、どういうような割合でというような具体的な取扱いの問題につきましては、これこそは日本銀行にまかすべき筋のものでございます。もちろん政府といたしまして、日本銀行と十分緊密な連携をとっていく考えてはございますが、本筋は日本銀行自身において考えていただくものでございますので、この機会に、いわゆる弾力的な金利であるという、この考え方については、私も同一の考え方を持ってはおりますが、具体的に公定歩合の引き下げ、これをいつするかとか、ただいま直ちに行うべきではないか、まあこういうお尋ねにつきましては、この機会に私の所見を申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。
最後に、税の問題につきまして、年年一千億に近い自然増収があるのだから、これを減税の財源にしてはどうか、企業等においても、まだまだ減税をして、その企業を育成すべき点が多いように思うから、それを一つ努力する考えはないかというお尋ねだったと思いますが、昨日の財政演説でも申し上げましたように、税制の問題については、企業課税のあり方であるとか、あるいは国、地方を通じての財源の分配の問題であるとか、基本的な問題がございますので、これらの点については調査会を設けまして、その調査会で十分審議して、そうして結論を出して参りたい、かように考えておる次第であります。(拍手)
〔国務大臣高崎達之助君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/39
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040・高碕達之助
○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。
お説のごとく不況が長引けば、それは大企業に及ぼすよりも中小企業にしわ寄せが来るということは全く同感でございまして、その意味におきまして、政府は、従前とっておりました中小企業の団体法の強化とか、あるいは金融緩和の措置とかというだけでなくて、さらに、三十四年度の予算を編成するに当りまして、第一に、この中小企業の体質を改善しなければならぬ、それがために設備の近代化をさす、これのために相当の予算をとり、同時に、技術の指導機関を作ると、指導機関の方にもこれを強化することにいたしました。さらに、輸出におきましては、中小企業の製品が大多数輸出されるのでありますから、つまり現在輸出の五〇%以上は中小企業の製品でありますから、その意味から申しましても、この不当競争を防止するという、防止の政策とか、あるいは外国の意匠をよく中小企業者に知らすために意匠センターを作る。そうして輸出振興に進んできたのであります。
第三に、中小企業のうち、小売商が特に零細企業でありまして、これが相互の競争がはなはだしく、その上に百貨店なり購買会等の進出がなかなか目ざましいものがあるために、これに対する対策のために小売商業特別措置法の成立を期しまして、これによってこの小売商を保護していきたいと、こう存ずるわけでございます。
第四に、中小企業の従業員、これは御承知のごとく、大企業と比較いたしまして、きわめて安い賃金で働いている、こういう状態でありまして、これを安定をはかり、それから労働条件を改善するとか、それから勤労意欲を高進するとか、生産性を向上せしめるとかいうことのために、この小企業の退職金に対する法案を今度は今国会において提出いたしたいと存ずる次第でございまして、これは要するに、この中小企業というものにつきましては、通産省といたしましては、大企業は捨てておいても大体はいくだろうと思いますが、中小企業は、何としてもこれは非常に深い関心を持って指導することが絶対必要と存じまして、通商産業政策といたしましては、今後中小企業に最重点を置いて進みたいと存ずる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣三浦一雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/40
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041・三浦一雄
○国務大臣(三浦一雄君) 農村対策、特に蚕糸並びに酪農に関しまする問題につきまして御指摘がございました。従来政府におきましては、蚕糸につきましては、相当高水準の価格を生糸並びに繭価に保つということをいたしておったのでございましたが、一昨年来の需給の異常な事態に立ち至りまして、かつまた、生糸が他の繊維と非常な競争的な立場から不利な状況になっておりますので、かような高水準の価格を維持するということが適切を欠く事態になったのでございます。従いまして、昨年の末に、需給の実勢に即した生糸の最低価格と最低の繭価格をきめるということにいたしまして、大幅に引き下げいたしたのでございます。しかしながら、今後はこの実際の事情に適した価格の支持政策とともに、養蚕方面につきましては、桑園の転換その他養蚕の合理化をはかりまして、そして一面には生糸の需要を増進する施策等も講じまして、一貫したものとして安定したものにいたしたい考えでございます。目下、生産、消費の段階にわたる各般の事情につきましては、蚕糸業振興審議会等にもお諮りいたしまして、そして今後の施策の適切を期したい考えでございます。
なお、酪農の問題でございますが、晩年、生産増大に伴いまして若干消費が伴わないということから問題を起したのでございましたが、昨年来臨機の措置をとりまして、学校方面に対しまする給食の拡大、そのほか集団飲用の奨励等をいたしまして、ただいまではこの需給の調整もとれて参ってきました。従いまして、乳価等も安定の域に達したのでございますが、今度の三十四年度に対しまする予算におきましても、酪農は生産面から消費面にわたりまして一貫したものに積み上げていくということにいたしまして、予算の措置も講じましたし、同時に、今後は酪農振興法の改正もその観点から立案いたしておる次第でございまして、今後酪農は、わが国の農業政策の上におきまして、同時にまた、先ほど御指摘になりました畑作の振興上からいいましても重要なことでございますので、周到な計画のもとに推進して、そごなきを期したいと存ずる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/41
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042・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 雇用、失業の問題につきまして、雇用の面につきましては、先ほど佐多さんのお話にもお答え申し上げましたような方法で、雇用の拡大の点については努力をいたしておりますが、私どもは失業状況について決して楽観をいたしてはおりません。昭和三十四年度予算でも、御承知のように、出て参りました失業者に対しましての就労日数も増加をいたしておりますし、それから御承知のように、今地方の自治体が困っておりますのは、失業対策に対する費用の少いということで、せっかく失業者を雇って仕事をしたいと思っても、自治体の資金が貧弱な結果できないというふうなことでありますので、三十四年度予算も増額をいたしまして、自治体で失対事業をなるべく大幅にやっていただくように、そういう予算も増額をいたしました。それからまた、これは間接的なことになるようでありますが、実は非常に効果のあがりますのは、現在までやっております職業安定の地方の出先であります。私どもは、政府の役人がみな一生懸命やっていてくれますけれども、なかんずく職業安定所の出先の者というものは、非常な労働過重でありましたり、また建物等が非常に不備であって、これに対する審議会などでも答申をそういうことに対して出しております。そういうことについて、財政当局も非常な理解を持ちまして、前年度に比べて約五倍の施設費、人件費等をふやしまして、安定業務について全力をあげるようにいたしました。御承知のように、大産業においては、比較的、今まで安定所の窓口を利用される度数が少かったのでございますけれども、先ほど私が申し上げましたように、人を使ってくれる面の実際担当者と、安定業務をやっております私どもの方の出先とが、さらに緊密に一体となって失業者を救済し得るような方法を講じようと、こういうことをやっておるわけであります。雇用の拡大をもちろんやらなければいけませんが、それでなおかつ出て参りまする失業者に対しては、今のような方法で逐次改善をいたして参るということでございますが、決してわれわれは楽観をいたしておりませんで、この上とも努力を続けて参るつもりであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/42
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043・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/43
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044・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時十六分散会
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の兼
一、常任委員長辞任の兼
一、常任委員長の選挙
一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00919590128/44
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