1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年三月十一日(金曜日)
午前十時三十五分開議
出席委員
委員長 羽田武嗣郎君
理事 木村 守江君 理事 二階堂 進君
理事 堀川 恭平君 理事 南 好雄君
理事 中島 巖君 理事 山中 吾郎君
理事 塚本 三郎君
徳安 實藏君 橋本 正之君
服部 安司君 堀内 一雄君
石川 次夫君 兒玉 末男君
實川 清之君 山中日露史君
今村 等君
出席国務大臣
建 設 大 臣 村上 勇君
出席政府委員
農林事務官
(農地局長) 伊東 正義君
建設政務次官 大沢 雄一君
建 設 技 官
(河川局長) 山本 三郎君
建設事務官
(河川局次長) 曽田 忠君
建 設 技 官
(住宅局長) 稗田 治君
委員外の出席者
農 林 技 官
(農地局計画部
長) 岩永 達夫君
専 門 員 山口 乾治君
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三月十日
委員兒玉末男君辞任につき、その補欠として大
西正道君が議長の指名で委員に選任された。
同月十一日
委員橋本正之君及び山中日露史君辞任につき、
その補欠として大久保留次郎君及び兒玉末男君
が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員大久保留次郎君辞任につき、その補欠とし
て橋本正之君が議長の指名で委員に選任された。
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三月十日
名神高速道路建設の鉄筋コンクリート高架式採
用に関する請願(江崎真澄君紹介)(第九五二
号)
母畑ダム建設促進に関する請願(山下春江君紹
介)(第一〇五七号)
同(八百板正君紹介)(第一一二六号)
伊南川上流にダム建設促進に関する請願(八百
板正君紹介)(第一一二七号)
一級国道三号線川内市内の整備促進に関する請
願(中馬辰猪君紹介)(第一一七三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
治山治水緊急措置法案(内閣提出第六九号)
建設省関係重要施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/0
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001・羽田武嗣郎
○羽田委員長 これより会議を開きます。
この際、中島巖君より緊急質疑の申し出があります。これを許します。中島巖君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/1
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002・中島巖
○中島(巖)委員 大臣がお見えになりましたので、一言お尋ねいたしたいと思います。
昨日の新聞を見ますと、長い間問題になっておりました国土開発縦貫自動車道の小牧—吹田間を除く、すなわち小牧—東京間につきまして、予定路線の法案を提出することを交通関係閣僚会議において決定されて、審議会並びに正式の閣議にかけ、国会に法案を提出する予定などがしるされておったのでありますが、事実そうであるか。そうであるとすれば、その後におけるところの御予定はどういうふうになっておるか。その点、大臣にお伺いいたしたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/2
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003・村上勇
○村上国務大臣 昨日の新聞で発表いたしておりますように、昨日午前九時からの交通関係閣僚懇談会におきまして、小牧—東京間の国土開発中央縦貫自動車道、これはあの建設法案によりまして路線決定をしなければならないということでありましたが、建設省においては、その後あの路線の調査も終わりましたので、この懇談会に諮りまして、路線の決定の法案をこの国会に提出するということに決定した次第であります。従いまして、来週火曜十五日の閣議に諮って、十八日の金曜日には審議会にかけ、そして私の見当では大体二十一、二日ごろには国会に提出できるもの、かように予定いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/3
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004・中島巖
○中島(巖)委員 建設省といたしまして非常に御努力願ったことを厚く感謝しておる次第でありますが、御予定通りすみやかに確認あらんことを切にお願いいたしまして、お礼の言葉といたす次第であります。それから、河川局長に一言お尋ねいたしますが、最近の新聞に、私、地元のことを詳しく聞いたわけではありませんけれども、長野県の西筑摩郡の関西電力関係の蘭発電所に対しまして、長野県知事が一カ月間の通水停止の通告をした、こういうことが新聞に出ておったのであります。ちょっと、これは全国にないようなケースでありますけれども、これにつきまして本省の方へ報告があったかどうか。また、そういうようなケースは全国に今まであったことがあるかどうか。この点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/4
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005・山本三郎
○山本(三)政府委員 その点につきましては、長野県当局から電話で報告がございまして、その経過をちょっと申し上げますと、長野県地内でございますが、木曽川の支川に蘭という川があります。これは関西電力の発電所でございますが、それが昭和三十五年の一月九日で三十年の水利使用の期限が切れたわけであります。それに対しまして同社から三十四年の九月二十五日に、期限伸長の申請が出されたわけでございます。それに応じまして、県から地元の村に対しまして期限伸長の諮問をいたしましたところ、地元では同発電所の取水せきを撤去すべきだという要求があったわけであります。長野県といたしましては、その問題につきまして関電と地元とが極力話し合いをいたしまして、話をスムーズにつけるように努力をいたしたわけでありましたけれども、期限の切れるまでに話がまとまらなかったわけであります。そのために、去る三月二日に取水の停止命令を県から出しました。それは事実でございますが、その後関西電力におきまして地元といろいろ御相談申しつつ、県とも相談しつつ、上流の護岸を補強いたしましたり、あるいはそれを高くするというようなことで、地元と一応の了解がついたということに相なりましたために、三月九日に期限伸長を許可するとともに、取水の停止命令を取り消したという実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/5
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006・中島巖
○中島(巖)委員 実は同僚委員の質問通告がありまして、私、十分の時間を切って質問いたすのでこれで打ち切りますけれども、建設省に対しまして特にお願いと申しますか、注意と申しますか、しますのは、この発電所が三十年の期限を切ってあって、その間に非常に河川に異常を来たして公益に害がある、こういうような状態下におきましても、無条件にいつも認可をしておるようであります。そこで三十年間に期限を切って水利使用の許可をするということはどういうことか。それから、無条件に許可をするなれば、何も期限を切らなくても永代許可にすればいいじゃないか、こういう議論が出るわけであります。これは河川局の発行した書類を見ましても、三十年間の期限を付するということは、つまり発電所という構築物をこしらえて後三十年間に、河川に異常があって公益に損害があるかどうかという審査をする機会のためにこの期限を付してある、こういうことは、もうはっきりいたしておるわけであります。従いまして、今度の長野県のとった処置というものは、非常に私は英断であり、妥当な処置だと思うわけであります。従って、それ以前にそういう問題が解決できればけっこうでありますけれども、できなかった場合には、今度の問題なんかでも通産省その他から、非常に長野県に対して圧迫があったようでありますけれども、通水の許可を取り消すのならだけど、通水の一時停止をするくらいの処置はして、そうして流域住民に被害のないような処置をとっていただきたい。いずれまたこの点は、機会をあらためて御質問申し上げますけれども、意見だけを申し上げて、私の質問を終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/6
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007・羽田武嗣郎
○羽田委員長 塚本三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/7
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008・塚本三郎
○塚本委員 住宅問題に対して、簡単に大臣にお尋ねしたいと思います。
幸い道路五カ年計画とか、今度また上程せられております治山治水の五カ年計画等、国家のための五カ年計画が計画的に推し進められておりまして、曲がりなりにも国民の期待する方向に進みつつありますが、住宅問題に対しては、まだそのような長期的な計画というものを聞いておらぬように思います。これは、住宅問題は直接に被害等の問題としては現われては参りませんけれども、国民の生活安定のために不可欠の要件であることは当然だと思っております。しかし、その生活に一番大切な住宅に対して、計画的な見通しが立てられておらないように考えられる。特にまた大都会等においては、狭い部屋に多くの人たちが密集しておるという状態であることは、見のがすことはできません。その点、今後この住宅難解決に対して長期的な計画をお立てになるお考えがおありかどうか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/8
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009・村上勇
○村上国務大臣 住宅問題につきましては、御承知のように、公営住宅についての三カ年計画というような計画を立てて、漸次それを進捗させておる次第であります。一〇〇%までその計画が完遂していないことは遺憾でありますけれども、大体九二、三%程度は進んで参っております。なお、今後御指摘のような住宅難にかんがみまして、住宅対策につきましてはあくまでも十分計画性をもって、これらの事業を進捗して参りたい、かように思っておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/9
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010・塚本三郎
○塚本委員 もちろん、私ども公団あるいは公営住宅等の計画があることは承知いたしております。しかし大臣も御承知の通り、私どもも金額の点では国家予算から相当無理なことは承知いたしておりますが、不足戸数に対する公団及び公庫、さらに公営等の計画の戸数の比率というものが、あまりにもほど遠いということを私たちは考えるわけです。この点、政府の計画等から検討いたしてみますと、民間自力にその相当数を期待した形になっておると思います。そういたしますると、資金その他の面で政府が直接に手を伸ばす住宅建設に対して、これは不足ではありますけれども、ある程度がまんしなければならぬ面を私どもも認めておるわけであります。しかし、不足住宅に対して政府が直接手を入れております額は、計画が九〇何%に及んでおったとしても、その比率はおよそ八割くらいが民間建設という形になっておるように私ども承知いたしております。そういたしますと、民間建設に対しても、もっと具体的な施策がなされなければならぬと思いますが、その点はどんな御計画をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/10
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011・村上勇
○村上国務大臣 民間自力建設につきましては、これは政府の計画を盛ったいわゆる公営住宅等と相待って、大体予定通り伸びております。しかし、それによって直ちに住宅難が、ここ一、二年のうちに解決するということは、滅失家屋あるいはまた日本の生活——今までは大体五人も七人も一つ世帯に住んでおったのですが、だんだんと世の中が明るくなってくると、両親と別居するとかなんとかということで、自然増もわれわれの予定よりも非常にふえておりますので、必ずしも政府が予定している、二、三年で解決してしまおうと思ったことが、五、六年、四、五年先になるのではないか、こう思っております。民間自力建設につきましては、昭和三十四年度における民間の自力建設住宅を、昨年の十月末の統計で見ますと十九万五千戸でございまして、これを前年の同期の十七万四千戸に比べますと約一一・九%増加しておる。こういうように比較的自力建設、民間の住宅がわれわれの予定通り伸びて参っておりますので、今後の見通しといたしましては、おおむねわれわれの見込んでおります約三十五万戸に達するもの、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/11
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012・塚本三郎
○塚本委員 国民の生活水準、それから所得というものは戦前をはるかに上回っており、国力も国家財政もすばらしく大きくなっておることは見のがすことができませんし、しかも国民の消費支出というものも、すばらしく伸びておることだと思います。しかしながら、住宅問題として、たとえば都会地などにおきましては、いまだに地価と、さらにまた借家あるいは間借り等の金額というものは依然として上昇をたどっておるという事実です。これを見てみますと、確かに三十五万戸建てられるとか、あるいはそういう見通しもあると思いますが、しかし絶対の不足の二百万戸といわれておりますこれに対して、それだけ追っていっても、もちろん自然増もあるでしょうし、あるいは古くなってだめになっていくこと等を考えていきますと、なお大臣が望んでおられますような三年先とか四年先には解消するという見通しは、おそらくこのようなことを二年前にも私、聞いた覚えがございますけれども、やはり先の見通しが立たないのじゃないだろうかというふうな感じがいたすわけです。これは一般の都会地における極端な地域だけということではなくて、全般的な間借りや借家などの金額が上ってきておる。そういう点を考えてみましても、やはり実質的にはまだまだ相当遠いような気がするわけでございます。
ところが一方、国民の所得とか消費水準等からにらみ合わせてみますと、あるいはもっと早く住宅問題は解決していいのではなかろうか。力があるにかかわらず——たとえば衣食の問題等については国民は相当の金を使い、エンゲル係数等もずいぶん変わってきておるわけでございます。しかるにかかわらず、住宅の方にあまり力を入れない。ここに何か大きな問題があるような気がするのですけれども、その点はどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/12
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013・稗田治
○稗田政府委員 住宅不足戸数の解消についての、まず見通しでございますが、御承知のように、住宅不足戸数をわれわれが算定いたします場合に、これは住宅でない非住宅に住んでおる世帯、それから同居をしておる世帯、また過密居住と申しまして、大ぜいの人が狭いところに住んでおるというような世帯の数、それから建物がもうすでに老朽して近く建てかえなければならない老朽家屋に住んでおる世帯、そういうものを全部合算いたしまして、不足戸数というものを算定しておるわけでございます。不足戸数の算定の仕方は、大体世界各国とも同じような標準でやっておるわけでございます。
そこで、過密居住という標準でございますが、現在私たちが調査しております基準と申しますのは、一戸が九畳未満であって、かつ一人当たり二・五畳未満という住まい方を過密居住というふうに取り上げているわけであります。この過密居住のとり方が、今日国民の経済力が非常に伸張して参っておりますので、もうそういった九畳未満であり、かつ一人当たり二・五畳未満というような居住状況では満足できないというような住水準の向上についての需要も出て参っているわけであります。従いまして、従来の基準から算定いたしました過密居住であるとか、同居世帯あるいは老朽家屋というようなことから算定いたしました不足戸数につきましては、大体私たちの見通しでは本年の三月末、年度末におきまして百六十五万戸ぐらいになるのではないか。それを解消していこうというわけでございますが、水準を引き上げるという需要がすでに出ておりますので、そういう意味で実際に現象として現われてくる住宅難というのはなお続くのではないか。従いまして、国の経済の長期計画等を策定されました場合に、それと関連いたしまして住宅の長期計画も再検討して立て直す時期がもうじきくるというふうに私たちは考えているわけでございます。
それからもう一つ、民間自力建設でございますが、民間自力建設に政府の住宅政策がたより過ぎているではないかというお尋ねでございます。これは民間自力建設にたよるという形でなしに、われわれとしての考え方は、普通に民間自力建設は統計上出て参るわけでございます。そこで、不足戸数を解消するのに、民間自力建設だけでは解消できない。そこを政府施策住宅で補っていこうということで、民間自力建設につきましては、われわれの作為によって三十八万戸来年度建ててもらおう、そういうような意図は入っていないわけでございます。統計上当然そのくらい建つであろうという見通しで、それでは解消の促進ができなというので、足らず前を政府施策住宅で補っていこう、こういうような考え方でございます。
それから、民間自力建設につきまして、それじゃ促進策としてどういうことをやっているかということになるわけでございますが、これは国税、地方税の軽減措置を現在やっているわけでございます。なお、金融機関からの住宅建設資金の融通を円滑にさせますために住宅融資の保険制度を設けております。これは住宅金融公庫の方で保険を契約するわけでございますけれども、そういうような施策をやっているのでありまして、民間自力建設がしやすいような措置をとっているわけでございます。
なお、お尋ねの中の国民の生計費の中に占めております住居費の割合でございます。これが戦前と戦後と、著しく他の消費の支出はふえてきても住居費についての支出が少ないのではないかというお尋ね、これは御指摘の通りでございまして、戦前におきましては大体住居費の負担は生計費の中の一割五分ぐらいを占めておったのでありますが、戦後におきましては非常にその住居費の占める割合が少なくなっておりまして、三十年度くらいの調査だったと記憶しておりますが、生計費の中に占めておる住居費の割合は六%というようなことで、戦前の生計費に占めておる住居費の割合をはるかに下回っておるわけでございます。こういった現象がどういうところからきたかということでございますが、これはまあ戦後に食べていくということ、非常に食糧費がかさんでおりましたので、そこの住居費の割合が少なくなった。その傾向がずっと続いてきておるのだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/13
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014・塚本三郎
○塚本委員 緊急質問なんですから、局長、一つ簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/14
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015・羽田武嗣郎
○羽田委員長 塚本さんにちょっと御相談申し上げます。あなたのは日程外の緊急質問でございますから、もう十五分たっておりますし、日程もございますので、それから兒玉君もすでに理事会できまって質疑の通告が先週からしてありますので、この程度に打ち切っていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/15
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016・塚本三郎
○塚本委員 僕は大臣に簡単に一言だけ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/16
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017・羽田武嗣郎
○羽田委員長 日程もございますし、時間がだんだんたってしまいますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/17
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018・塚本三郎
○塚本委員 では、この次にします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/18
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019・羽田武嗣郎
○羽田委員長 治山治水緊急措置法案を議題とし、審査を進めます。
本案につきましては村上建設大臣より提案理由の説明を聴取してありますので、本日は河川局長よりその補足説明を聴取いたします。
山本河川局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/19
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020・山本三郎
○山本(三)政府委員 治山治水緊急措置法案の補足説明を申し上げます。法律をごらんいただきまして、逐条的に簡単に御説明申し上げます。
第一条は、治山治水緊急措置法案の目的に関する規定でありまして、本法案が、治山治水事業の緊急かつ計画的な実施を促進することによりまして国土の保全と開発をはかり、もって国民生活の安定と向上に資するものであることを明らかにしたのでございます。
次は第二条でございますが、第二条は、この法律案におきまして用いられておりまする治山事業及び治水事業の範囲に関する規定でございます。すなわち本法案におきまして治山事業と申しますのは、その一つは森林の造成事業または森林の造成もしくは維持に必要な事業、すなわち森林法にいいます保全施設事業で国が行なうもの及び都道府県が行ないその費用の一部を国が補助するものでございます。もう一つは保安林または保全施設地区の存する地すべり地域またはボタ山に関して指定された地すべり防止区域またはボタ山崩壊防止区域における地すべり防止工事、またはボタ山崩壊防止工事に関する事業で国が行なうもの及び都道府県知事が施行いたしましてその費用の一部を国が負担するものをさすことといたしております。
次に、本法案におきまして治水事業と申しますのは、河川法を適用または準用する河川、それから砂防設備及び砂防指定地の存する地すべり地域またはボタ山等に関して指定された地すべり防止区域またはボタ山崩壊防止区域における地すべり防止工事またはボタ山崩壊防止工事に関する事業で国が行なうもの及び都道府県知事が施行いたしましてその費用の一部を国が負担しまたは補助するものをいうことといたしております。なお、ダムに関する事業は河川に関する事業に含まれるものでございます。特定多目的ダムの建設工事に関する事業は特にあとに掲記しております。
しかしながら、本法案では、後に申し上げますように、治山事業及び治水事業について十カ年計画を前期、後期の各五カ年として定めることになっております関係から、その性質上あらかじめ長期的な計画を策定することが適当でない次のような事業につきましては、それらがさきに申し上げました治山事業または治水事業に該当する場合でありましても、本法案は治山事業または治水事業に含めないことといたしております。それは災害復旧事業及び災害関連事業並びにこれらと同様な性格を有する伊勢湾等高潮対策事業、鉱害復旧事業及び地震による地盤変動対策事業でございます。
次は第三条でございますが、第三条は、治山事業十カ年計画及び治水事業十カ年計画に関する規定であります。すなわち農林大臣及び建設大臣は、それぞれ中央森林審議会または河川審議会の意見を聞いて、昭和三十五年度から昭和三十九年度までに至る五カ年間において実施すべき治山事業または治水事業に関する前期五カ年計画及び昭和四十年度から昭和四十四年度に至る五カ年間において実施すべき治山事業または治水事業に関する後期五カ年計画の案を作成いたしまして、閣議の決定を求めなければならないものといたしました。
これらの治山事業または治水事業に関する前期及び後期の各五カ年計画は、これを合わせてそれぞれ治山事業十カ年計画または治水事業十カ年計画と総称いたすわけでございますが、この治山事業十カ年計画または治水事業十カ年計画には、それぞれ前期及び後期の各五カ年間に行なうべき事業の実施の目標及び事業の量を定めなければならないことといたしました。
また治山事業と治水事業とは相互に密接な関連を有し、両者は総合的な計画のもとに実施されて初めてその効果を完全に発揮できる性質のものでございますから、農林大臣及び建設大臣は、治山事業十カ年計画または治水事業十カ年計画を立案しようとするときは、事前に調整をはかるべき旨の規定を設けて、その総合性の確保をはかりました。
また、これらの計画は、国の長期経済計画との関係もまた十分に考慮して作成されなければなりませんので、農林大臣または建設大臣は、治山事業十カ年計画または治水事業十カ年計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ経済企画庁長官と協議しなければならないものといたしたのであります。
なお、治山事業十カ年計画が閣議で決定されたときは、農林大臣及び建設大臣は遅滞なくこれらの計画を都道府県知事に通知しなければならないとの規定を設けておりますが、これは、十カ年計画に基づく事業は国が施行するもののみではなく、都道府県及び都道府県知事もまたこの計画に基づく事業を実施し、かつ都道府県はそれに要する費用の一部を負担しなければならないこととなりますので、計画の円滑な遂行が確保されるようにとの趣旨から設けられたものでございます。
以上の治山事業十カ年計画または治水事業十カ年計画決定に関する手続は、その変更の場合にも準用されることといたしておるのでございます。
次は第四条でございますが、第四条は治山事業十カ年計画及び治水事業の実施に関する規定でございます。すなわちこれらの計画を的確に実施するためには、政府といたしまして、財政上からも行政上からも種々の措置を講ずる必要がございますので、このような規定を設けたものでございます。
以上簡単でございますが、措置法案の内容につきまして御説明を申し上げた次度でございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/20
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021・羽田武嗣郎
○羽田委員長 質疑の通告がありますからこれを許します。
兒玉末男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/21
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022・兒玉末男
○兒玉委員 治水関係について、またそれに関連する問題について御質問をしたいと思います。
最初に地元の問題で、これに関連することでございますが、昨年から問題となっております宮崎県西臼杵郡日之影町に発生している地すべりの問題でございます。先般の農林省の方の見解を聞きますと、この地すべり防止区域指定に、はずれているということを聞いておるわけでございますが、どういうふうな法的な根拠に基づいてこれが指定からはずされたのか。農林省の計画部長にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/22
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023・岩永達夫
○岩永説明員 日之影地区の申請が昨年の十一月に出ましてから、熊本農地局で現地調査をやったのでございます。現地は二つの川にはさまれた台地の上でございますが、地質的に調べてみますると、基盤として中生層の非常にかたい岩盤がありまして、その上に阿蘇火山から出ましたと思われる溶岩が堆積しておるのであります。雨が降りまして、その雨がその溶岩層を伝わって下の基盤に出ますその境目に空洞ができて、その空洞ができたために陥没した。その陥没した個所は三カ所でございます。それがほとんど一直線上に並んでおりまして、そこの地下水が下へ落ちて空洞ができて、そこで陥没したと認められるのでございます。どうも、法律でいう地すべりに該当しないように思われますので、一応指定いたさないことにいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/23
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024・兒玉末男
○兒玉委員 法律に該当しないというその根拠がどういうところにあるかということを、私はもう少し詳しくお聞きしたいわけです。この点については、あとで河川局長にも砂防等の関係と、またもし集中的な降雨にでも見舞われた場合には、この山、畑、田ともに、その一番川岸にあるところの七十戸くらい、これは病院とか郵便局、銀行等を含めてあるわけでありますが、これが全部五ケ瀬川に押し出されるというきわめて憂慮すべき状態に置かれておるわけであります。ですから、単なるしゃくし定木的な法の適用ということでなくて、やはりここに居住するところの住民の生命財産の保護という立場から、これはきわめて重大な意義を持つものであろうと思うわけであります。この点につきまして計画部長並びに河川局長、両方から一つ見解を承りたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/24
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025・岩永達夫
○岩永説明員 私どもの調べましたところでは、なるほど地下水が出ておりますけれども、その地下水がもっと強くなって地すべりを起こすとは、一応考えていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/25
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026・山本三郎
○山本(三)政府委員 日之影町の問題につきましては、右岸側は建設省の所管といたしまして、三十四年度から施工をいたしておりまして、三十五年度も施工をいたすつもりでございます。左岸側につきましては、いろいろとお話がございまして、県の方でいろいろ土木部と農林部とお話をされて、一応県の方としては、一つ今のようなお話で農林省所管でお願いしたいということでおったわけでございますので、建設省といたしましては計画をしなかったわけでございます。私どもといたしましては、今のように農林省の御答弁がありましたような理由は、どういう理由かは、今初めてお伺いしたような次第でございますが、お話によりますと、道路、平地がございまして、川からは少し離れておる地域だというのでございまして、直接すぐ川に影響があるような地帯だとすると、私の方は砂防なりあるいは地すべりなどで処理しなければいけないと思いますが、少し離れておる地域だということで、それでは農林省にお願いしたらというような考えでおったわけでございますが、その事情等も私どもといたしましても今後よく調査をいたしまして、農林省とも打ち合わせの上、処理をして参らなければならぬのじゃないかというふうに考えております。ただ、至急にやる必要があるかどうかというような点につきましても、今農林省のお話もございますので、よくお打ち合わせの上、処理したいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/26
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027・兒玉末男
○兒玉委員 私はどうも日之影地区の問題については、農林省も建設省も所管のことで責任回避的な態度をとっておるように見えてならないわけです。今の河川局長のお答えは、多少なりとも希望の持てるような御回答をなさっておるわけですが、問題が五月、六月の雨期を目前に控えまして、農林省の計画部長のお答えはきわめて私は冷たい態度と思っておるわけです。熊本農地局の調査の結果から通じて、これはそれに該当しないときわめて簡単に割り切っておるようでございますけれども、やはりここに居住する農民なりあるいは市民というものは、はだでその危険性ということを感じておるわけですから、単に法的にいってその区域が狭いとか、あるいは該当する農地等が非常に狭いというような一方的な解釈だけでなくて、全般的な治山治水、あるいはこの地域の住民の生命財産の保護、こういう広範な立場から私は問題の処理を要望したいと思うわけです。特にこの点につきましては、建設省、農林省ともに再度現地住民等の意向——あるいは県当局からも再度何らかの意見の開陳があろうかと思いますので、再度一つ調査を行なっていただいて、そうして地域住民の不安が一時も早く解消されるということを私は特に要望して、この点については質問を終わりたいと思います。
それで、再度の調査に対する見解を一つそれぞれお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/27
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028・伊東正義
○伊東政府委員 今御質問の点につきましては、今、計画部長が申し上げましたように、実は最近その地域が地すべり地帯としては無理じゃないかという御返事をしたのでございまして、いろいろ今後その地域をどういうふうにするか、宮崎県の実は特道というようなことで、特殊道路の指定にもなっております。そういうような仕事もございますし、どういうことでその地区を取り上げていったらいいかということにつきましては、河川局長ともよくお打ち合わせをして検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/28
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029・山本三郎
○山本(三)政府委員 ただいま農地局長からも御返事がございましたように、私どもといたしましても実情をよく調査いたし、それから、関係する県あるいは農地局ともよく御相談いたしまして、もう一ぺんよく検討してみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/29
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030・兒玉末男
○兒玉委員 もう一つは、やはり地元の問題で、宮崎県の北諸県郡の三股町の樺山地区というところで、これはいわゆる農地局の管轄になると思うのですが、灌漑排水事業というものを三十二年から着工してやっておるわけでありますが、当初の計画によりますと、反当たり大体二千円程度でできるというふれ込みで農民の同意をとったわけです。ところが最近になりましたら、いろいろと当初の計画が変わって、そうして当初の三千五百万円くらいの予算が、今度は一億三千万円くらいにふえておるわけです。しかも、反当たり大体八万円という高額な負担金を出さなければこの事業は遂行できないということで、今、地元においては賛成、反対の立場から、まさに血の雨が降らんとするようなきわめて険悪な状態で対立をいたしまして、県としては非常に事態を憂慮して、一応一時工事中止という事態に相なっておるわけであります。このことは単に土地改良ということだけでなくて、やはり沖水川支川の花谷川のダムを作って、洪水調節等の役割を持っておるわけでありますけれども、現在の状態においては当然これ以上の進行はできない。私たちが先般現地の調査を通じて感じましたことは、この当初の計画はきわめてずさんであった。それから、その後約三千五百万の貴重な国費を使っておるけれども、その予算の執行についても、何ら地域の農民に対して報告されておらない。こういうことは、農地局の当初の計画に対するところの検討の不的確さ、その後の事業進行に対するところの指導性の欠陥、こういうことがこのような原因を起こしておるのではないかと私は考えるわけですが、この点について農地局長の見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/30
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031・伊東正義
○伊東政府委員 御指摘のところは、実は最初農民の諸君から県営事業としてやってほしいという申請に基づく土地改良でございますが、ありましたのは二十五年でございます。そのときに出てきました金額、農民諸君が一応計算してやってきましたのは、先生おっしゃいましたように三千八百万くらいでございます。それで計画の承認をやりまして、その後昭和三十年に、先生のおっしゃいました金額よりは若干低いのでございますが、約一億二千万足らずで、また計画変更の承認を受けまして、三分の二の同意を得て実は仕事をしております。仕事をしておりますが、先生おっしゃいますように、担当農民の負担を計算してみますと、約九千円足らず、これは事業費でございません、農民負担でございますが、半分国が持ち、その残りの半分は県が持つものですから、受益者負担は、私ども計算してみますと、八千六百円くらいになりますが、全国の平均よりもここは若干高くなっております。先生おっしゃいますように、三十四年の十一月か十二月ころでございましたか、この受益地区内の農民の諸君から、どうもこの事業を続けてもらいたくない、中止した方がいいんじゃないかという意味の陳情書が出ております。私どもといたしましては、先生がおっしゃいましたように、あまり事業計画その他について農民諸君に周知徹底しておらぬじゃないかという御質問でございますが、実は計画変更の手続だけは昭和三十年にやっております。縦覧公告をしまして同意を受けておりますので、そういう手続はいたしておりますが、あるいは先生のおっしゃいましたようなこと、土地改良区の運営上十分知らせなかったことがあるのじゃないかと思われる節も実はございます。それで私どもとしましても、県当局にも照会をいたしましたりしておりますが、県としましては、この事業は一つ継続さしてほしいというような意見を私どもの方へ言って参っております。それで、農林省の見解としましては、先生御指摘になりましたように、いろいろなことを周知徹底しないで、独断的といいますか、そういうことで事を進めていくというようなことは、結局工事が終わりましても、なかなか負担金が取れぬというような問題になってさましたり、いろいろな支障が生じますので、なるべく県の意見のように仕事を進めて参るということにしますれば、地区内の農民諸君の同意をなるべくよけい得まして、納得してもらって仕事を続けていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/31
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032・兒玉末男
○兒玉委員 これは治水関係とも関連のある事件だろうと私は思うわけですけれども、やはり今の局長のようなお考えだけでは、今後この作業の進展は全然期待できないのじゃないか。しかも地元の人たちは、一方は反対、一方は賛成という割り切った気持で、非常に住民の対立感情が激化をしているのが今日の状態なんです。ですから、問題の解決の糸口というのは、絶対賛成、絶対反対というような立場ではなくて、やはり農民の負担というものが、当初農民が賛成をする前提としての負担金額と現在の事業変更後の金額の差というものが非常に大きいところに問題があると思うのです。ですから、この点は単に土地改良という問題だけでなくて、治水関係との関連を含めた総合的な立場から、やはり国庫の負担額を増加して、そして農民の負担をなるべく軽減をするというふうな対策を講じない限り、今のような状態では絶対に負担金も納まらぬし、またますます対立感情が激化をして、全然仕事ができないというふうに私は判断をいたすわけです。ですから、そういう積極的な解決策について再度見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/32
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033・伊東正義
○伊東政府委員 これは、工事の内容は実はため池だけでございます。ため池で、貯水量がたしか三十八万立米くらいでございまして、治水との関係というものはわれわれの考えではほとんどないのじゃなかろうかという見解を実は持っておりますので、そういう面から、これの負担金が安くなっていくということはおそらく無理じゃなかろうかというような判断をいたしております。ただ、県営事業の農民負担につきましては、補助残につきまして、農林漁業金融公庫からその八割は融資をするということになっております。これは今据置期間が五年でございまして、まだ事業効果が発生しないうちから償還になっていくというような弊害がございますので、少しでも農民の負担を軽くするというような意味で、この国会に公庫法の改正をお願いいたしまして、据置期間五年を七年に延ばし、なるべく効果が出てから金の償還期に入るというようなことで、少しでも県営関係の農民負担は軽くしたいというふうなことをやっておる次第でございます。
本件につきましては、私どもが問題を知りましたのも実は最近でございます。県とよく相談しまして、どういうふうに進めていくかということはもう少し検討したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/33
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034・兒玉末男
○兒玉委員 農林省関係はこれで終わりたいと思います。
次に、治水関係について河川局長にお伺いしたいと思います。特に、今度治水関係の特別会計に関する分については、交付公債を廃止するということになっておるようでございますが、今後の治水事業を遂行する上に私はいろいろと問題があろうかと思うのですが、この廃止ということについて河川局長はどういうふうな見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/34
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035・山本三郎
○山本(三)政府委員 治水特別会計の設置に伴いまして、従来の直轄事業に対する地方公共団体の負担は、従来は交付公債で処理されておりましたが、三十五年度からこれを現金納付にいたしまして、その現金納付の財源といたしましては、八割程度の直轄事業債というのを認めて、その処置をして参りたいということでございますが、問題は、残りまする約二〇%程度の現金納付の問題でございまして、これにつきましては、私どもといたしましても、この現金納付がうまく行なわれないといたしますると、事業の施行に非常に差しつかえてくるわけでございますので、非常に心配をいたしておるわけでございます。これにつきましては、目下自治庁、大蔵省あるいは担当事業省の間でいろいろ検討されておりますが、何と申しましても、現金納付を貧弱の府県におきまして行なうということは非常に困難な次第でございますので、できるだけ貧弱の府県からの現金納付は少なくいたしまして、富裕団体の方はできるだけ現金納付をお願いしようということで、その案を作成中でございます。直轄事業債の分につきましては、従来の交付公債におきましても、やはり年次計画に沿って償還するわけでございますので、この点につきましては従来と同じだと思いますけれども、何と申しましても、現金納付の問題が非常に心配されておるわけでございます。しかし、地方財政全体といたしまするならば、交付税の増額あるいは税収の増額等によりまして、全般といたしましては処置されておるわけでございますので、それらの金額がどういうふうに地方公共団体の財政に応じて配分されて参るかという点が非常に重要な問題でございますので、交付税の配分等におきましても、従来よりもぜひこの直轄事業をよけい持っておるようなところにはよけい配分していただくように、ということもあわせて考えていただくようにしたいとただいま研究中でございまして、そういう方向で話は進んでおる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/35
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036・兒玉末男
○兒玉委員 それに関連しまして、今年度から国の治山治水事業の公共事業費というものは相当ふえておるわけですが、これによって他の地方債の起債ワクというものが制限を受ける結果になるのではないかと思うのです。これによって今後直轄公共事業による自己負担金というのが勢い一般の会計分の交付公債にたよっていかなくてはいけない、こういうことになるのじゃないかと思うわけです。そうした場合に、やはりこの交付公債問題というのが、近い将来再び問題化するということを私は懸念するわけですが、この点について局長はどういうふうに将来に対する見解をお持ちか、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/36
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037・山本三郎
○山本(三)政府委員 三十五年度におきましては、直轄事業債というものを、従来の起債を圧迫するような形でなく、従来の起債におきましても各事業に応じて起債を伸ばしておりますし、それと関係なく直轄事業債というものを別途に設けておりますので、その線が貫かれていくならば直轄事業の起債のためにほかを圧迫するというようなことはないと考えております。しかし、こういうふうなことがやはり前提となりまして、将来におきまして、ほかの起債を圧迫するようなことに相なりますると非常に困るわけでございますので、直轄事業債をほかの起債に振り向けることもできないようにしよう、あるいは直轄事業債の中にほかの起債を持ってくることもできないように、さい然と区別いたしまして処置いたしてもらうならば、そういう混乱は避け得られると思いますので、そういうふうにお願いいたしておるわけでございまして、その点は、はっきり区分して起債をさして参りたいということで進んでおる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/37
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038・兒玉末男
○兒玉委員 それから、先般説明のありました治山治水緊急措置法案に関連してお伺いしたいと思うのですが、今度の十カ年計画と、それから昭和二十八年の大災害によって対策協議会ができまして、緊急対策というもの、治水計画というものが出されたわけでありますが、これとの関連についてはどういうふうに考えておるのかお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/38
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039・山本三郎
○山本(三)政府委員 この法律を通していただきますならば、この線に沿いまして治水十カ年計画——その内容は、前期五カ年計画と後期五カ年計画と、はっきり分けまして御決定いただくわけでございますが、治水十カ年計画の規模といたしましては九千二百億ということが考えられておるわけでございまして、これと昭和二十八年に決定されました基本対策要綱との関係でございますが、二十八年に定められました基本対策要綱によりまして昭和二十九年から事業を実施しておるわけでございます。それの残事業は約一兆一千二百億余りございますので、そのうち九千二百億を十カ年計画でやろうということに相なるわけでございますので、基本対策に定められました重要な、主要な治水事業はこの十カ年間に完成できるものというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/39
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040・兒玉末男
○兒玉委員 それから、緊急措置法案の第三条の一項によると、この広範な事業に対して、すべて閣議の決定ということに待って一切の事業計画がなされるわけですが、実際問題として、このような膨大な事業を一々閣議決定を待たなければいけない。こういうことは、はたして実行されるかどうか。この点についての河川局長の見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/40
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041・山本三郎
○山本(三)政府委員 閣議の内容といたしましては、今お話しのように、直轄河川がどの川に幾ら、あるいは中小河川、あるいは局部改良等の問題まで個所別に幾らというようなものを閣議決定でお願いすることは、なるほど仰せの通り、非常に膨大なものになりますし、また非常に困難な仕事でございますけれども、私どもといたしましては、その基礎資料といたしましては、やはり積み上げを作っておきまして、閣議に決定していただくものといたしましては、直轄河川を何本やる、その事業量は幾らである、それから中小河川は何本やって何本竣工させる、局部改良は何カ所やって、その金は幾らというふうなことを閣議決定していただきまして、大体の方向をそこに置いて決定して置いていただきまして、そのバックといたしましての資料は持っておりまして、その途中におきましていろいろな災害等の実情もございますので、個所別等の多少の変更は、その辺におきまして融通をつけていかないと実施に応じられないという心配もございますので、道路等の場合と同じように、そういうふうな線で御決定いただくのが適当ではないかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/41
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042・兒玉末男
○兒玉委員 これから約一兆二千億という膨大な金を使うわけですが、この十カ年計画についての経済的な効果について若干お伺いしたいと思うわけであります。
建設省からの資料によりますと、特に災害関係について、戦前と戦後の水害の状況から国民に与えている損失を数字で見てみますと、戦前災害の多かった昭和九年から昭和十六年の八年間の平均は、約七百八十億、国民一人当たりは、国民所得に対して千百円、一・六%という損失の率を示しております。なお戦後は、昭和二十一年から昭和三十年までの十カ年間、大体年平均二千四百億、国民一人当たり二千七百円で、所得に対するパーセンテージは三・一%、約戦前の二倍近くの損失を受けておるわけですが、この一兆二千億のいわゆる治水計画によって、どの程度の国民の全体的な損失を補償できるような経済効果が期待できるのか。この点についての見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/42
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043・山本三郎
○山本(三)政府委員 お説の通り、私どもがいろいろと統計によりまして戦後の水害による被害を計算いたしてみますると、直接の被害だけでも、年平均二千四百億ということに相なっております。これは戦前と申しますか、戦争の始まった当時の被害に比較いたしますると、約二倍程度になっておるわけでございますが、その他、人的の被害等を見ますると、それらの点はさらにはっきりいたしてくるわけでございます。この被害をできるだけ少なくいたすことが、国民経済の安定あるいは人命の尊重の立場から、われわれの務めであるということで、今回の五カ年計画あるいは十カ年計画を立案して参りたいということでございますが、今お話しの基本対策の一兆二千億を完成いたしまするならば、二千四百億に達する被害を約二千億程度は減少できるというふうに考えております。さらに、前期の五カ年計画におきましては、その被害を千二百億程度は減少できまして、戦後の被害の二千四百億の被害を半分程度には減少できるではないかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/43
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044・兒玉末男
○兒玉委員 それから、緊急措置法案によりますと、先ほど局長から簡単な説明がなされたわけでありますけれども、治水事業から災害復旧だとか、あるいは災害関連事業とか、こういうことが除外されておるわけですが、私は、災害復旧とか、河川改修なり砂防工事というものは密接不可分の関係にあろうと思うのですが、なぜこれを区分しなければいけなかったのか。また、その区分の限界をどこに置くのか。この辺のことについて見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/44
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045・山本三郎
○山本(三)政府委員 お話の通り、災害復旧なり、あるいは災害関連事業というものは、災害を防止する目的のために行なう事業であるということはお説の通りでございます。それからまた、これらとあわせて治山治水事業を促進いたすことも最も必要な基本的な事項でございます。従いまして、災害復旧事業につきましては別途公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法というのがございまして、災害が起きた場合につきましては、これを三・五・二の比率によりまして緊要な事業は三カ年でやろうということが別途定められておるわけでございますので、その計画に従って遂行いたしますならば、災害の処置はできるということが一つの点でございます。
それからまた、災害を五カ年計画の中に入れるということに相なりますならば、その事業量を確定をしなければ意味がないわけでございまして、御承知の通り、災害というものが幾ら起きるか、将来の問題は想定困難でございますので、この計画を、五カ年計画なり十カ年計画を策定するということが非常に困難でございます。そういう意味から入れることが非常にむずかしいということと、先ほど申し上げましたように、災害につきましては別途国庫負担法等におきまして年次計画を定めて実施する方法がとられておりますので、それとあわせて処置するならば、災害防止の施策が並行して進められるならば万全を期することができるであろうということから、除外した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/45
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046・兒玉末男
○兒玉委員 ちょっと私、わかりにくい点があるのです。この説明書の二ページですが、伊勢湾等の高潮対策事業というものも除外されております。直轄事業の分については、伊勢湾の高潮対策について治水特別会計から経費の支払いをする、こういうふうに私は聞いておるわけですが、一つの事業に対してそういうふうな区分をしたのはどういう意味か。その点について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/46
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047・山本三郎
○山本(三)政府委員 お説の通り、伊勢湾等高潮対策事業につきましては五カ年計画の対象にはいたしておりません。これは先ほど申し上げましたように、災害復旧なり災害関連事業というものでございますので、全般的の問題といたしまして年次計画を立てることが、想定が入りますので非常に困難であるという見地から、除外をいたしておるわけでございますが、特別会計で処置しようという問題は、これは伊勢湾等の高潮対策事業のうち直轄事業で取り上げるものを特別会計で処置することにいたしております。これはどういうことかと申しますと、今回の伊勢湾の高潮対策事業のうち、名古屋付近から桑名付近に至ります海岸堤防は木曽川あるいは鍋田川等の直轄の河川事業と密接な関連がございますので、これと並行いたしまして計画を立案し、あるいは仕事を進めていく必要がありますので、同一の会計で処理するのが適当であると認めておるわけでございまして、その意味から五カ年計画には入れなかったけれども、特別会計で処置する方が適当であるという観点から、特別会計で処置して参りたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/47
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048・兒玉末男
○兒玉委員 それでは河川改修と砂防関係についてお伺いしたいと思うのです。大体昨年あたりから砂防関係の予算も大幅にふえておるわけですけれども、今年度の予算の比率を見ますと、三十五年度では砂防関係が百十五億五千五百万円で、河川改修が三百六十六億五千七百万となっております。特に河川改修と砂防とは表裏一体をなすものですが、その比較からいって、割合に砂防関係の予算がまだ少ないのじゃないか、こういうふうに私考えるわけですが、この点について局長はどのような見解をお持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/48
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049・山本三郎
○山本(三)政府委員 砂防の重要性につきましては私どもも十分考えておるわけでございまして、砂防事業をもっと促進しなければならぬという点につきましては御意見の通りでございます。ただ、河川におきましては、堤防が切れそうになったところを至急処置してくれというような問題が非常に多いわけでございまして、現在の状況におきましては、そういうふうな比率になっておるわけでございますが、将来におきましては、やはり砂防事業を、もう少し根本的に予防をするという意味からは促進して参りたいということでございますので、これは目下現地の実情を十分勘案いたしまして立案しなければいかぬということで、各県等の実情をつぶさに調査をいたしまして、各県河川砂防当局、あるいは土木部長の手元におきましてそれらの調整が十分できるように、ただいま計画を立案をお願いいたしておるわけでございまして、お説の通りの実情がその結果現われてくるであろうということを私は考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/49
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050・兒玉末男
○兒玉委員 次に、地すべり防止の関係です。先ほども農林省の方が全く味もそっけもない返事をしておりましたが、大体建設省として千七百十地区のうち八百六十地区を五カ年間で改修するということがすでに出ておりますけれども、この地すべり防止指定地区の条件というものはなかなかきびしい、こういうことを私は聞いておるわけでございますけれども、これらの点について、もう少し地域の指定というものの条件を緩和すべきではないか、このように判断するわけですが、この指定地区のことに関連して局長の見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/50
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051・山本三郎
○山本(三)政府委員 指定の状況でございますが、地すべりの指定は緊急に指定すべき地区が全国で約千百カ所くらいあるだろうということを建設省当局といたしましては考えておるわけでございます。そのうち一月の末日までにおきまして約三百カ所の指定が済んでおります。それから、手続中のものが約四百カ所ございますので、これらのものが終わりまするならば約七百カ所の指定が終わるのでございまして、私どもといたしましては、地すべりの様相を備えておりまして、それに適用するものにつきましては、そうむずかしいことを言っておるわけではございません。ただ、建設省の関係といたしましては、砂防指定地域内の地すべりにつきましては建設省所管でございます。また、その他の人家あるいは公共施設等に非常に重大な影響を持っておるものは建設省所管ということで進めております。ただ、先ほどお話がありましたように、森林地区に関係するものは一応農林省が第一段階といたしましてはスクリーンにかけるわけでございますので、農林省がおれの方で研究中であるというものを、建設省が先に出て、おれの方へよこせということができないというのが実情でございますので、それらの点につきましては、県でうまく方向を早く定めていただくことが重要ではないかというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/51
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052・兒玉末男
○兒玉委員 次に、多目的ダムのことについてお伺いしたいと思います。今年度百三十四億という膨大な国費を使うわけでございますけれども、ダムのいわゆる効力ですね。大体どの程度の期間を、いわゆる洪水を調節するとか、そういう効力は大体何年くらいあるものか、その点について、聞くところによりますと、山梨県かどこか、相当巨額の国費を使ったダムが四、五年足らずでダムの効果がなくなった。砂防等が不十分なために砂がうんと流れてきて、洪水調節の意味がなくなったということを私は聞いているわけです。大体その辺に関連して、どの程度のダムの調節の効力というものを発揮できるのか。このダムの効果について、一つ局長の見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/52
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053・山本三郎
○山本(三)政府委員 ただいまのお話は、多目的ダムにつきましての問題でございますが、建設省といたしまして直轄でやり、あるいは補助事業で取り上げておる多目的ダムにつきましては、従来いろいろと資料を集めまして山地の状況を調べまして、一年間にどのくらいの土砂量が下流に流れてくるかという資料をもとにいたしまして計画をいたしておるわけでございます。計画のもとといたしましては、大体百年間くらいにどのくらいの土砂がきてこのダムにたまるかということを想定いたしまして、その量だけは滞砂の予定量といたしまして除外してございます。従いまして、それを除外した残りの貯水量をもって洪水調節をいたし、あるいは利水に使うわけでありまして、計画といたしましては、百年間は普通の状態ならば安全であるということに期待しております。ただいまお話のございました、山梨県等においてそういうお話があるということでございますが、山梨県の例といたしまするならば、これは多目的ダムではございませんで、砂防堰堤を作って、その砂防堰堤を利用いたしまして発電を行なっておるものでございますので、その砂防堰堤に土砂がたまるということは目的を果たしたことでございます。山梨県の例はそういうことでございますので、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/53
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054・兒玉末男
○兒玉委員 次に、河川関係です。直轄河川の利根川、木曽川あるいは筑後川等については、流量調節を目的として十カ年の計画がなされるということを聞いておるわけですが、大体今の建設省の計画によると、流量調節の限界は毎秒最高一万二千立方メートルということが資料に出ておるわけです。ところが、今までの最高流量というのは、秒当たり一万七千立方メートルということが数字として出ておるわけですが、これでは設計の効力というものが意味をなさない。やはり絶対に一万二千をこさないという立場は保証できないと思うのです。この前、島根県でございましたか、川の名前は忘れましたけれども、これは絶対大丈夫だという建設省の計画がはずれて、その堤防をオーバーしたというような事故も起きておるわけです。このような地域住民に重大な影響を与える事故が起きておるのに、どうして今までの実績である一万七千立方メートルという流量を基準としての設計がなされておらないのか。この点について、見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/54
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055・山本三郎
○山本(三)政府委員 利根川、筑後川等におきましては、戦後大洪水が出まして、非常な惨害を及ぼしておるわけでございます。従いまして、あのような洪水にも対処できるような計画を立案いたしまして、早急にこれに対処することが重要でございますので、利根川につきましては、お説の通り、昭和二十二年のキャスリン台風によりまして起こりました洪水、いわゆる一万七千立方メートルの流量に対処する治水計画を立案しておるわけでございます。そのうち三千立方メートルを上流のダムで調節いたしまして、下流は一万四千立方メートルの流量に安全になるように河川の改修をいたすわけでございますが、これが先ほどお話のありました基本対策に入っておる全体計画でございます。従いまして、この全体計画が完成いたしまするならば、今いう一万七千立方メートルに対して完全に安全になるということでございます。
それから筑後川につきましても、先般来、いろいろ問題になっておりますように、大山川筋に二カ所のダムを作りまして、二千五百トンをそのダムで調節いたしまして、下流の河川におきましては六千立方メートルを安全に流そうということで進めておるわけでございます。これが完成いたしますならば、筑後川の昭和二十八年のような洪水が参りましても絶対安全ということになるわけでありまして、この計画も基本対策の一兆二千億の中には全部組み入れられておるのでございます。従いまして、先ほどお話がありましたように、一万二千立方メートル等の計画の対象となりましたものは、第一次計画、あるいは五カ年計画の暫定の目標でございますので、建設省といたしましては基本対策をなるべく早期に完成いたしたいということでございまして、この十カ年計画が完成いたしますならば、ただいま申し上げましたような主要事業は、その大部分が完遂できるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/55
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056・兒玉末男
○兒玉委員 あと一つお伺いしたいと思うのです。国土総合開発の基本調査の一項として、河川水理調査費というものが組まれておるようでありますが、これは建設省が直接調査をするのだと思うのであります。特に私は基本的な事項として非常に大事なことだと思うのですけれども、たとえば調査の対象は、河川から農業、工業用利水にどれくらい水をとっておるか、これらの水の中で実際はどの程度使われておるか、それからその河川から利用できる水量は最大限どれくらいか、こういうことが調査の対象としてきわめて重要なことであるわけです。にもかかわらず、その調査予算というものは、昨年度が三千八百万円、ことしが三千九百万円となっていて、私たちしろうとの考えでは、この基本的な調査費というのが少ないのではないかというふうに感ずるわけです。しかも一方、治水関係は一兆二千億という膨大な金を使う割合からいきましても、きわめて基本的なことである調査費の三千九百万というものは少な過ぎると思うのであります。この点について、どの程度の調査の実効というものを期待しておるのか。この点についての御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/56
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057・山本三郎
○山本(三)政府委員 ただいまのお話は企画庁の予算の問題でございますので、あるいは私から申し上げるのは適当でないかと思いますけれども、これは全般的に重要なる地区におきまする水がどういうように使われておるか、現状がどのくらいあるかというような概括的な話をつかむわけでありまして、それに応じまして、私どもの方におきましては、重要なる河川がどれだけ水があって、どういうふうにその川から使われておるかという、それに対応する調査を建設省といたしましても調査費の一部をもって施行することにいたしております。これは従来からもやっておりましたけれども、来年度におきましてもさらにこれを強力に促進して参りたいということでございまして、河川事業調査費というものが一億五千万計上されておりますが、その中で利水の調査もあります。あるいは洪水のときにおきます流量の調整もあります。この一億五千万の調査費の内容は、ほとんど流量の調査に差し向けられるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/57
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058・兒玉末男
○兒玉委員 これは利根川の総合開発計画の関係です。三十五年度において利根川の薗原に多目的ダムを建設するということが予定されておる模様でありまして、かなり地元でも問題があるところではないかと思っておるのですが、これは予算措置その他がどうなっておるのか、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/58
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059・山本三郎
○山本(三)政府委員 利根川の水源についての問題でございますが、今お話のダム地点は薗原のダムかと思います。これは沼田のところで利根川に合流しております片品川の上流に作るダムでありますが、これの用地問題につきましては、そう大して支障はございませんので、昨年度から事業費がついて、すでに業者も定まり、事業の実施に移っております。用地問題等につきましては、そうむずかしい問題は私どもに報告をされておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/59
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060・羽田武嗣郎
○羽田委員長 山中吾郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/60
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061・山中吾郎
○山中(吾)委員 大臣に、治山治水緊急措置法案を御説明いただいたことについて、総括的な点だけを質問いたしたいと思います。
私、この法案は非常に重要な法案だと認識をいたしております。従いまして、慎重に審議をする責任があるということからお聞きいたしたいのでありますが、これは国費を一兆二千億支出するという裏づけの法案でありますから、まことに重要な法案だと思います。建設委員会自体の問題ではないと思いますが、国会全体のあり方の中に、一兆二千億の国費の支出を法的に予約するこの法案が、重要法案として本会議にかけられないで、簡単にこういう委員会にかけられているというふうな手続そのものに、非常に便宜的なものを感ずるのであります。これはもちろん建設委員会としての、大臣のその立場からの法的な答弁をお伺いしておるのではないのでありますけれども、建設委員会の権威から、こういう問題を軽く取り扱うということがあるとすれば、建設大臣としてはやはりそれについて、建設行政の立場から御意見を述べらるべきものではないかと思うのです。これは少しこの法案直接の問題ではないのでありますけれども、私、議会運営のことその他まだしろうとでございますので、今後の参考に、御見識だけをお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/61
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062・村上勇
○村上国務大臣 まあ、私どもから考えますと、御指摘のように、この治山治水緊急措置法案というものは重要法案であろう、かように思っております。従いまして、あるいは本会議でこれを取り上げて、本会議で一応その提案理由の説明をするものじゃないかと、私はこう思っておりました。ところが、これは国会対策と議運で法案の取り扱いは全部やっておりますので、別に議運の方でもこれを本会議で取り上げるということが、多少議題にはなったように聞いておりますが、しかしまあ、その必要もなかろう——と申しますのは、大体大きな問題ではありますけれども、ほとんどこれは各党みなこれにあまり疑義をはさむものもないのじゃないかという点、まあ超党派的に治山治水の緊急対策というものはやらねばならないというようなことから、これが委員会にそのまま付託になったのじゃないか、こう思っております。参議院におきましても、そういうように参議院の議員の方で、これはどうしても本会議で取り上げたいのだということを言われた方がありましたが、やはりまああまり与野党ともに疑義のない立法であるからということで、私、それぞれ委員会付託になったのだろう、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/62
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063・山中吾郎
○山中(吾)委員 率直に御正直にお答え願って、その通りだろうと、私もわかります。ただ、与党、野党で問題の多いものを本会議にかけられる、重要であるかいなかは別であるという考えがその底に流れておることは、私はしろうとでありますけれども、まことに遺憾だと思うので、全党が賛成である、ないにかかわらず、こういう国土保全の基本的な問題であり、一兆二千億の金を支出する法的根拠をなにする場合については、国民にそれを知らしめるというようなことが必要だ。そういう立場から、私は、本筋は出すべきじゃないかと思うので、お聞きいたした。これはお聞きしただけであります。
それから、この法案を見ておりますと、責任の所在が私はわからないのであります。この国土保全についての責任の最高の責任者は、この法案から、だれと読みとっていいのですか。それをお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/63
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064・村上勇
○村上国務大臣 私はやはり政府全体の責任になってくると思います。閣議でこの事業費を裏づけるべき閣議決定をするということが最後にありまして、そうして財政当局がこれの財政的な、要するに予算の裏づけをはからなければならないということでありますから、結局政府全体の責任ということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/64
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065・山中吾郎
○山中(吾)委員 そういう政治的な責任は、主管大臣といいますか、いわゆる国土保全行政の立場の最高責任者はどうなるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/65
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066・村上勇
○村上国務大臣 治水においては建設大臣であり、治山は農林大臣ということになっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/66
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067・山中吾郎
○山中(吾)委員 その立案の過程において経済企画庁長官も参画いたしますが、そうすると、経済企画庁の治山治水に対する責任というのはどういう性格なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/67
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068・村上勇
○村上国務大臣 経済企画庁としては、全般の企画をしておるのでありまして、この局部的な、部分的な責任は私は主管大臣にある、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/68
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069・山中吾郎
○山中(吾)委員 御説明によりますと、この法案の思想は責任分散主義なんだというふうな感じがするのです。結局政府も何分の一か——閣議ですから全体ですが、治水については建設大臣、治山については農林大臣、そして何らかの意味における経済企画庁の責任。それから知事に通告する、知事も何かある。五つか六つあるので、この法案の思想は責任分散主義なんです。ところが、実際になると問題が起こると建設大臣が一番矢面に立って非難を受ける。称賛もされますけれども、非難も受けるはずです。そうして、この法案全体の主管は建設大臣になっているように思うのですけれども、どうも私はその辺がはっきりしない。それで、国土保全についての国の政治の責任が明らかでないので、いつでも政治家というものは大して責任を感じないで済ましておられるという根本の欠陥があるように思うのですが、その点について大臣は、この法案について何か欠点をお考えになっておられないか。将来に対して何らかの建設大臣としての抱負、識見を、まず法案の内容に入る前に、これは門口の論議でありますけれども、お聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/69
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070・村上勇
○村上国務大臣 山中委員の御指摘になりました、この法案に対して何か物足りないものがあるんじゃないかということは、たとえば道路の五カ年計画ということについては、その財源の裏づけとなるべきものは揮発油税というものがある。ところが、治山治水の緊急措置法、治山治水の五カ年計画あるいは十カ年計画については、そういうはっきりした財源の裏づけがないという点が、何だか仏をきざんで魂が入っていないような、眼が入っていないような感じを受けるかもしれない。が、それは結局私は、この法律によって閣議で決定する、そして政府はこれに対して財政の裏づけをしなければならぬということが、結局財源になると思いますが、ただそれだけではどうも不安じゃないかということを考え出すと、これはもう論議をすれば切りがないと思います。しかし、少なくともこの五カ年間に四千億という金が、それはわれわれが今後の国民総生産というものと比較してみてとうてい手の届かないほど膨大なものであれば、これはどうも当てにならぬということが言い得る。そういう意見も私どもは一面にやむを得ぬと思いますが、大体われわれの計算では一一・五%程度の伸びで、十分四千億の目的を達成できるのでありますから、日本の経済の成長が七・二といっていますが、あるいは今それを上回っておるような状態であります。従って、治山治水の緊急措置ということは、何をおいても、経済の成長率よりも、国民総生産の率よりも、もっと一足先に飛び出していかなければならぬということを、戦後の各種の大災害等によって初めて国民も政府も国会も、全部認識されて、ここにこういう緊急措置法というものがまとまり上がったのですから、今後これを裏づけていく予算措置については、私は不安を感じていないのであります。ということから、要するに予算措置さえ不安がなければ、この立法は何らの疑義をはさむところはない、かように思っておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/70
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071・山中吾郎
○山中(吾)委員 私の御質問申し上げているのとお答えが少し違っておる。たとえば道路につきましては、特定財源があって事業の進行に心配ない、そういうこととは関係なしに、道路行政については建設大臣が全責任を持っておりますから、その点について財源が不確定であるかいなかということからの質問ではないのです。国土保全の治山治水の場合については、先ほど申し上げましたように、治山は農林大臣、治水は建設大臣、その他に分散をしておる。財源が確定しておっても、責任の分散する姿がこの法案の中にそのままあるものですから、それを伺っておるわけです。
そこで矛盾を感ずるのは、この法案の所管大臣は建設大臣、そして法案を見ると治山と治水とは五分々々の責任であるというふうになっておるのではないか。たとえば治山の欠陥で洪水が起こったときは農林大臣が腹を切る、治水の方の工事の不正とかその他の欠陥から出たときは今度はおれの責任だ、こういうわけには、国土保全は人命その他の関係でいかぬのではないか。この法案の思想の中では、農林大臣と建設大臣は五対五の責任なのか。建設大臣が全責任があるならあるのだ。しかし、計画については、農林大臣が治山をやるというふうになっているのか。これは、責任政治といたしまして大事なことだと思う。そして、実際の慣行では、おそらく建設大臣が矢面に立つと思うのです。その点の法構成が政治責任の立場において非常に不明確ですから、それをお聞きしている。財源の確定、不確定ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/71
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072・村上勇
○村上国務大臣 そういう御疑念のありますのは、これが建設委員会に提案されて、建設省の提案ということになっておるので、そういうようにお考えになるのだろうと思いますが、これは農林大臣と共管で、治山と治水というものは全く別な所管でありますけれども、便宜上こうして建設委員会に付託されて御審議願っているわけであります。法案が通過すれば、治山の面は農林大臣がそのまま持って農林大臣の責任、治水事業はすべて建設大臣の責任において取り計らっていくのでありますから、法律を共管で出しているのでおかしく考えられるところがあるかもしれませんが、私どもとしてはこれは便宜上やっていることでありまして、これはほんとうは治水緊急措置法案というものだけで出せばはっきりすると思いますけれども、その必要はないのじゃないか。治山と治水を一緒に出しておっても差しつかえないのじゃなかろうか。それによって責任の分界点がわからないというようなことは、私は考えられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/72
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073・山中吾郎
○山中(吾)委員 まだ私の質問を十分御理解になっていないと思う。国土保全ということは建設省の設置法しかないわけです。従って、国土保全全体の責任大臣は建設大臣ではないのか。そういう一つの日本の行政機構というものが前提にあると思うのです。そこで、私の思想を申し上げますと、たとえば伊勢湾台風と同等の台風が東京湾に参ったときには、朝日新聞その他の調査によりますと、何万という人が死ぬ非常な被害になるというふうなことが予想される、これは仮定の上に立っておりますけれども。そういう国土保全の欠陥から、もしそういうことになった場合には、主管大臣である建設大臣は辞表を出すべきではないか。私はそういう考え方なんです。こういう民主政治におきましては、むしろ辞表を出して、そして住民の犠牲に対して責任を感ずる。そういうあれに進んでいくべきだ。これが私の政治思想です。天災か人災か、そういう論議はもう越えてきていると思うのです。そういうことを考えてみても、実際辞表を出す出さぬということは別ですが、そういう責任政治の上に立ったときに、私は、少なくともある大臣だけがその最高の主管大臣というようにはっきりしておく必要があるのじゃないか、こういうふうに思うので、申し上げているのです。これは法案の構成と建設省設置法の関係その他を含んで、いろいろと論議をする必要があると思いますけれども、お答えは次でもけっこうですが、もう少し明確にお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/73
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074・村上勇
○村上国務大臣 御承知のように、設置法にはその根拠がなければいけない。結局治水は建設省、治山は農林省というように、はっきりした根拠があります。今あなたの御質問の、全部の責任をとっていくくらいなということになりますと、結局それは、私どもがいつも考えておりましたいわゆる国土建設省というような、すべての公共事業というものはある一つの省で全部行なう。そういうことになりますと、私は理想的だろうと思います。しかしながら、今の段階では、それぞれみな技術的にも、また行政的にも、こう分かれているところにうまみがあるとでも申しますか、今の行政機構のもとでは、どうしてもこういうふうになりがちでありまして、この点は私ども、やむを得ないことだ、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/74
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075・山中吾郎
○山中(吾)委員 来週の水曜日、金曜日、その他木曜日に連合審査がありますので、そのときにやるとして、今は内容でなしに、門口のところを聞きたい。
もうこれで終わりたいと思うのですが、これはちょっとよけいだと思いますけれども、私は伊勢湾台風のときに感じておることが一つあるのです。伊勢湾台風のあの災害の視察をされまして、大臣が帰られて、天皇陛下に報告をされた。そして非常に知っておられるので、ちょっと答弁に困ったというような新聞の記事を私は読んだのです。そのとき、私は日本の現在の大臣というのは昔の戦争前の大臣と違って、天皇を補弼し、責任を持つという旧憲法でなくて、主権を有する国民に対して向かっておるんだから、ああいうのは次官とか、ほんとうの内容に詳しい人が報告をして、大臣はいつも罹災者に対して至誠を持っていくべきであって、宮中に報告をすることの方が中心になるような感じを私は受けた。
そこで、そういうことを含んで申し上げることは、この国土保全、災害については、やはり責任の所在というものは、私は日本の政治の体質の改造を含んで、私はもっとこれを明らかにしなければならぬということも含んで御質問申し上げておるのですが、いずれにしても、そういうことをこの法案の中にもっとはっきりできなければ、事業遂行その他、あるいは今後の基本法の設定その他について、私は検討していくべきだと思うのです。
内容については次会に譲りまして、きょうはこれで一応終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/75
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076・羽田武嗣郎
○羽田委員長 次会は三月十六日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
なお、本日の午後二時より不良住宅街の視察をいたしますので、どうぞ皆さん御参加をいただきます。
午後零時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404149X01019600311/76
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