1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年三月八日(火曜日)
午前十一時九分開議
出席委員
委員長 永山 忠則君
理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君
理事 八田 貞義君 理事 藤本 捨助君
理事 滝井 義高君 理事 堤 ツルヨ君
大橋 武夫君 亀山 孝一君
齋藤 邦吉君 中村三之丞君
中山 マサ君 柳谷清三郎君
山下 春江君 亘 四郎君
伊藤よし子君 大原 亨君
五島 虎雄君 山口シヅエ君
本島百合子君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 渡邊 良夫君
出席政府委員
厚生政務次官 内藤 隆君
厚生事務官
(大臣官房長) 森本 潔君
厚生事務官
(保険局長) 太宰 博邦君
厚生事務官
(引揚援護局
長) 河野 鎭雄君
委員外の出席者
議 員 滝井 義高君
専 門 員 川井 章知君
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三月三日
委員池田清志君辞任につき、その補欠として久
野忠治君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員久野忠治君辞任につき、その補欠として池
田清志君が議長の指名で委員に選任された。
同月四日
委員田中角榮君、大原亨君及び多賀谷真稔君辞
任につき、その補欠として小澤佐重喜君、勝間
田清一君及び和田博雄君が議長の指名で委員に
選任された。
同日
委員和田博雄君辞任につき、その補欠として多
賀谷真稔君が議長の指名で委員に選任された。
同月八日
委員勝間田清一君辞任につき、その補欠として
大原亨君が議長の指名で委員に選任された。
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三月四日
健康保険法等の一部を改正する法律案(滝井義
高君外十六名提出、衆法第四号)
同日
市町村、労働組合等の行う職業訓練に対する経
費負担に関する請願(河野密君紹介)(第七〇
六号)
日雇労働者健康保険法の改善に関する請願(五
島虎雄君紹介)(第七〇七号)
同(河野密君紹介)(第七〇八号)
ハンゼン氏病療養所の医師充員対策等に関する
請願(五島虎雄君紹介)(第七〇九号)
パンゼン氏病療養所における患者関係経費増額
等に関する請願(五島虎雄君紹介)(第七一〇
号)
医療施設不燃化等の建築費助成に関する請願(
八田貞義君紹介)(第七四八号)
同(長谷川保君紹介)(第七九三号)
同(藤本捨助君紹介)(第八四九号)
旧満州国軍日系軍官及び生徒の遺家族援護に関
する請願(堀内一雄君紹介)(第七五七号)
未帰還者の調査及び帰還促進に関する請願(渡
海元三郎君紹介)(第七八三号)
けい肺患者に対する打切り補償費存続に関する
請願(島村一郎君紹介)(第八二四号)
けい肺患者の援護に関する請願(山花秀雄君紹
介)第八二五号)
旧軍人軍属の医療費全額国庫負担に関する請願
(池田清志君紹介)(第八三九号)
同(橋本龍伍君紹介)(第九二〇号)
けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護
法の一部改正に関する情願(池田清志君紹介)
(第八四〇号)
戦傷病者のための単独法制定に関する請願(永
山忠則君紹介)(第八四一号)
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す
る請願(永山忠則君紹介)(第八四二号)
鹿児島県東町に診療所設置に関する請願(池田
清志君紹介)(第八七三号)
動員学徒犠牲者の援護に関する請願(池田清志
君紹介)(第八七四号)
病院の労働争議規制に関する請願(池田清志君
紹介)(第八七五号)
戦傷病者の医療制度確立に関する請願(池田清
志君紹介)第八七六号)
保健婦等の産前産後の休暇中における業務の正
常な実施の確保に関する法律制定促進に関する
請願(小林絹治君紹介)(第八七七号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
健康保険法等の一部を改正する法律案(滝井義
高君外十六名提出、衆法第四号)
厚生年金保険法の一部を改正する法律案(田中
正巳君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第
二四号)
日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案
(田中正巳君外二十三名提出、第三十三回国会
衆法第二五号)
船員保険法の一部を改正する法律案(田中正巳
君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第二六
号)
船員保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、第三十一回国会閣法第一六八号)
厚生関係の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/0
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001・永山忠則
○永山委員長 これより会議を開きます。
去る四日付託になりました滝作義高君外十六名提出の健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/1
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002・永山忠則
○永山委員長 まず提出者よりその趣旨の説明を求めます。滝井君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/2
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003・滝井義高
○滝井議員 私は日本社会党を代表して、わが党提出の健康保険法等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
国民健康保険の普及に伴いまして、いよいよ三十五年度で国民皆保険の体制が形の上ではでき上がるわけでありますが、これによってわが国の医療制度は、本格的に保険医療のペースに乗ることになります。そこで今日の段階においては、この保険医療との関連において、医療制度全体の再検討及びばらばらの制度として存在している各種社会保険の総合調整の問題が、緊急の課題になっているのであります。
これらの課題を解決し、皆保険の順調な発展を進めるためには、言うまでもないことながら、保険者、患者、医療担当者及び行政官庁の十分なる意思の疎通が必要であります。しかるに現状を顧みますと、こうした意思疎通は必ずしも円滑に行なわれていないのみならず、むしろ対立関係にまで立ち至っている場合も少なくないのであります。これはわが国医療保険の充実にとってまことに遺憾なことといわねばなりません。かかる事態の原因についてはいろいろ考えられるのでありますが、私は、特にその主要な一つとして、審査及び監査の現行制度が大きな隘路となっていることを指摘したいのであります。この問題は、最近相次いで起こりました保険医の自殺事件に端を発し、保険医療行政の一つの特徴的な性格を示すものとして識者の注目を浴びて参りました。
医療は、もともと医師と患者の間の血の通った人間関係を基本とするものであるにかかわらず、保険財政の狭いワクの中で、行政官庁の厳重な監査によって縛られているのが実情であります。医師は審査に対して苦情を申し立てる権利を有せず、また診療の結果については一方的な監査を受けるだけであります。監査に際しては医師はすでに被告であり、監督官庁の手に活殺の権を握られているといってよろしいのであります。このような状況の中で保険医の間に、現在の保険医療に対する本割が蓄積されてきたのであり、周知のような厚生省と療養担当者の対立を生み出したのであります。皆保険の順調な発展と充実をはかるには、このように隘路となっている矛盾を解決するための効果的な方策が講じられねばなりません。本法律案の趣旨は、以上の事実関係に立脚して保険医療行政の官僚化を是正し、民主的運営の円滑化をはかろうとするところにあります。
改正のおもな点について御説明いたします。
第一に、保険医療機関または保険薬局が診療報酬の請求をする場合には、あらかじめ、医師、歯科医師または薬剤師の団体で厚生大臣の指定するものを経由しなければならないことといたしました。この場合、当該団体は、診療報酬の請求に違算その他不当な個所があると認めるときは、意見をつけて、これを当該保険医療機関または保険薬局に返すことができるものといたしました。第二に、保険者は、一度審査の行なわれた診療報酬請求書について、命令の定めるところにより、保険医療機関または保険薬局から請求があった場合には、再度の審査を行なうものといたしました。
第三に、保険者は、診療報酬請求書の審査、再審査及び支払いに関する事務を必ず社会保険診療報酬支払基金に委託するものといたしました。
第四に、保険医等にたいする監査制度につきまして、現行の健康保険法第四十三条ノ十第一項の改正を行ない、次のような二段階の監査制度といたしたのであります。すなわち第一段階として、保険医療機関もしくは保険薬局に対し報告を求め、もしくは診療録その他の帳簿書類の提出もしくは提示を命じ、または関係者に対して質問することとし、次にこの結果、政令で定める事由がある場合に限り、当該保険医療機関もしくは保険薬局の開設者もしくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者に対し出頭を求め、または当該保険医療機関もしくは保険薬局につき設備もしくは診療録、帳簿書類その他の物件の検査を行なうことができることといたしました。
この際、第一段階の違反につきましては、保険医療機関もしくは保険薬局の指定の取り消しまたは保険医もしくは保険薬剤師の登録の取り消しは、行なわないことといたしたのであります。
第五に、以上の措置にならいまして、日雇労働者健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、国家公務員共済組合法、公共企業体職員等共済組合法及び市町村職員共済組合法等についても、同様の改正措置を講ずるとともに、これに伴って社会保険診療報酬支払基金法について所要の改正を行なうことといたしました。
何とぞ御審議の上、すみやかに可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/3
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004・永山忠則
○永山委員長 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/4
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005・永山忠則
○永山委員長 第三十三回国会、田中正巳君外二十三名提出の厚生年金保険法の一部を改正する法律案、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案及び第三十一回国会、内閣提出の船員保険法等の一部を改正する法律案を一括議題とし、審査を進めます。
質疑を許します。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/5
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006・滝井義高
○滝井委員 先日健康保険組合の方でアンケート様のものを発して、医療機関の調査と医療制度の形質両面にわたる合理化を行なうためにやっておるわけですが、先般の答弁では保険局長は、これは全然厚生省は関知をしていないという御説明でございました。その後私が調査をしたところによりますと、厚生省の保険局の役人ではございませんが、病院管理研修所ですか、ここの職員が関係をしておることがわかりました。この前の御説明では、学者が依頼をしたということでございますが、一体どういう学者が健康保険組合連合会会長安田彦四郎さんのところに御依頼になったのか、これを一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/6
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007・太宰博邦
○太宰政府委員 先般私がお答えいたしましたのは、この調査については厚当省としてはタッチしていないと申し上げたわけであります。私もあとで聞いてみますと、御指摘のように病院管理研修所の方が調査をしたいということでありますが、それは個人としての立場でやっておることであります。従って厚生省としての立場でなく個人としての立場であって、大体そういう人たちは病院管理研修所の人で、そういう病院管理の方を中心とした研究をしておる人たちであります。その人たちに対して、社会保障関係の医療について研究を個人的にお願いしておったのでございます。その人たちがこういう調査をしたいということで、それについて名前をかしてくれ、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/7
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008・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、結局学者というのは、病院管理研修所のこれを健保連に依頼をした人が、個人でそういうものを依頼をして、そしてその人を学者だ、こうおっしゃるわけですね。頭を縦に振っておるから、そういうことのようでございます。これは厚生大臣にお尋ねしたいのですが、こういう綿密詳細にわたる調査というものをおやりになる場合には、療養担当者と厚生省とが今のような状態でございますから、私はこれはやはり厚生省としても慎重でなければならぬと思うのです。大臣が一生懸命になって雪解けの促進をやろうとしておる一方、下の方では冷戦を促進するようなことをやっておるというのでは、これは全く上と下との考えが違うことになるわけです。むしろこういうことをおやりになるならば、保険者と被保険者と療養担当者と、それから厚生省がお入りになって、堂々と同じデータで、意思統一をした調査項目でやるべきだと思うのですよ。それを何かこそこそとどこかに委託をして、だれもわからないと思ってやっておった。ところがあにはからんや患者の側から漏れてきた。この前私が申したように、患者がお医者のところに持っていって、何月何日から何月何日に私があなたのところにかかったという通知が組合からきておるんですけれども、いつからいつまでかかったでしょうか、なかなかむずかしいことを書かなければならぬが、先生ちょっと見て干さいと言って、必ず患者は持ってきますよ。記憶力というものは、二カ月も三カ月も前のことは薄らいでおりますから、これを正確にしようとすればするほど、そうならざるを得ない。従ってこんな調査を患者にやるということになると、案外健康保険組合あたりから患者にお金をやっておるかもしれません。君、金を出すから書いてくれ、こういうこともあるかもしれません。そうなるとますますこれは問題になってくると思うのです。どうですか、この病院及び診療所選択状況調査に関する件というのは、私の聞いたところでは、すでにこの調査は完了しておるらしいのです。全部が全部出しておるとは限らないと思いますが、完了しておるらしい。もし完了しておるとするならば、この資料が病院管理研修所にいっておるはずです。あるいは健康保険組合連合会にあるはずですが、そういうことでも、これを一体お使いになるのか。こういう感情的な問題をはらんだものを基礎にして、医療制度の形質両面にわたるものとして厚生省としてはおやりになるものなのか。これは一役人だとおっしゃいましたけれども、研修所の肩書きがついておれば個人とはいえないと思うのです。昔西尾さんが有名な、西尾書記長個人というような言葉を発したこともあるが、病院管理研修所何の何がし個人ということにはなかなかいかぬと思うのです。病院管理研修所の方が入っておったから、おそらく厚生省という名前が間違って出てきたと思うのです。一体ほんとうにその出た結果をお使いになるつもりか、それともこれはもう撤回され、破棄されて、新しくおやりになるならば、みな話し合った共通の広場から出た調査項目でおやりになるのか、そこらあたりの厚生省の方針をお聞かせ願いたいと思うのです。私はその答弁によっては私の所信を貫かなければなりませんから、この前要求しておった資料も出してもらわなければ、われわれとしてはこの保険四法に対する質問を続行するわけにはいかぬわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/8
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009・渡邊良夫
○渡邊国務大臣 今回の調査につきましては、健保連の方で自発的に取りやめたそうでございます。その後の経過につきましては、私どもも慎重に取り扱ってただいま検討いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/9
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010・太宰博邦
○太宰政府委員 補足して申し上げます。取りやめました結果、資料は外に出ないようにして処置したはずでございます。従いましてこれが御懸念のように利用されるということは絶対にございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/10
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011・滝井義高
○滝井委員 資料が外に出なりいように、調査は一応白紙に返した、こういうことでございますから、そう了承いたしておきます。
この機会に大臣に御注意申し上げておきたい点は、やはり厚生大臣の所管下にある都下がこういう大事なものを勝手にやることのないように、こういうことをおやりになる場合には、それぞれ上司なり大臣のところまで十分連絡をして、その許可を得てやるようにしておかないと、官紀は弛緩してしまって、大臣の思うこととは全く別の方向に厚生行政がいっておるような錯覚を世間に起こさせる可能性があるわけです。これは太宰さんに私やかましく言ったのですけれども、太宰さんの部下ではなくて医務局の方だったということであるから、私が太宰さんに文句を言ったことは相済まなかったと思う。しかし健保連の名前が出ておりますから、これに関する限りは太宰さんだったわけです。太宰さんの方が監督官庁ですから。だからこういう点は、大臣は今後一体どうお取り扱いになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/11
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012・渡邊良夫
○渡邊国務大臣 関係各局に対しまして、慎重に今後取り扱うように命令いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/12
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013・滝井義高
○滝井委員 ぜひ一つそうしていただきたいと思います。この問題はこれで一応終止符を打ちます。私もなかったものとして、私の要求しておったものもこれは出さなくてもけっこうでございますから、質問を進めていきます。
この前、般員保険法等の一部を改正する法律案について、ことに議員提案の三つの法律と、厚生省の方から、あるいは労働省の方から提出になっております船員保険法等の一部を改正する法律案との間の、与党の政党政治における法案の提出の仕方について御質問を申し上げました。この問題については、松野労働大臣にも同様のことをお尋ねしましたが、これはどうも納得がいきかねますので、この法案が最終的な段階に到達するまでに総理大臣を呼んでいただくことをお願いをいたしておきましたから、これは一つ理事会で適当な機会に取り扱っていただくことを委員長にお願いしたいと思います。
次に、総合調整の問題でございます。この前総合調整の問題をいろいろ御質問をいたしましたが、これについてもどうも私納得がいきませんので、もう一回お尋ねをいたしたいのですが、大臣も御存じの通り、社会保障制度審議会におきましては、やはり現在の日本の社会保険のあり方というものは、多くの点で不均衡があって、そうしてこれを是正しなければならぬという論はもう昨年以来強く行なわれておりました。そういう論が行なわれておりましたが、五日の各新聞を見ましても、経済成長に合わせて社会保障を手直しをする、そのためには社会保障制度審議会の総会を開いて検討をする必要があるということがいわれておるわけです。その検討する社会保険関係の問題点としては、まず第一に、保険事故の対象を広げるかどうか、たとえば児童手当を支給するかどうかという問題が一つあるようであります。その次は、医療、年金、失業など各種保険の均衡をはかる、これが今出ておる船員保険法等の一部を改正する法律案に重要な関係のある項目です。三番目に、各種保険の給付の不均衡、保険料の負担能力、国庫負担をどう考えていくか、四番目は各種保険間の重複を排除、適用区分の調整、無用の差別の廃止、統合などをどうするか、こういうのが社会保険の問題点としてあげられておる。従ってこの問題点の中の重要な医療、年金、失業などの保険の均衡をはかっていくということと、同時に各種保険の負担の能力なり国庫負担をどう考えていくかということが、三月中に社会保障制度審議会の大内兵衛先生のもとで総会が開かれて、これを手直しする、こういうような問題が起こっておるわけです。そういうときに、こういうように速急に変えなければならぬという理由は一体どこにあるのかということです。これは変えてもまたすぐに社会保障制度審議会の結論が出れば、ことしの臨時国会が暮れの国会にはまた出してこなければならぬということになるわけですが、それならば、もう一年待っても、現在船員保険にも失業保険にも、それから厚生年金にもあるいは日雇労働者健康保険にも大して支障はきていないわけです。それならば、この際もう一年お待ちになってというか、もう半年なりお待ちになって、社会保障制度審議会の結論が出てからおやりになったらどうか、こういう感じがするのです。それの方がほんとうに総合的な見地に立って、大所高所からものを見ることができると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/13
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014・渡邊良夫
○渡邊国務大臣 この問題はやはり社会的に非常な関心を呼ばれておりますので、私どもも急いでおります。総理大臣の方といたしましても、できるだけすみやかに総合基本方針というものを審議会において出してくれろ、こういうふうに今言っておるような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/14
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015・滝井義高
○滝井委員 だから総合的な計画を出すのだから、これが出ていきますとじゃまになるわけでしょう。これがきわめて簡単なアンバランスの是正をするような形で、あたかも総合調整をするかのごとき形をとっているだけに、じゃまになるわけです。だからむしろこれをしばらくお待ちになって、そして社会保障制度審議会の結論が出たら、おやりになったらどうですか。というのは、この前私がこの委員会の冒頭で、厚生大臣に御質問申し上げたように、日本には、防衛計画というものは、すでにこれから四カ年はロッキードその他は保障されてくる。治山治水の十カ年計画で一兆五百億の金が保障されてくるのに、人に対する社会保障というものは保障されていないじゃありませんか。これの長期計画、年次計画を立てる必要がありますと言ったら、あなたは、これはぜひ今度は八月までには自分の方は企画庁その他と話し合って、そしてその計画を立てると、こうおっしゃっておるわけです。そうしますと、各種保険の総合調整の問題と、この年次計画とはまた無関係ではないのです。ここでその国庫負担を三分の一から四分の一に切り下げたり、何かごちゃごちゃと小手先だけでやるということは、非常に問題があるわけです。だからその総合調整の問題とも年次計画というものは密接に関係をしてくるということになると、どうも今の大臣の答弁では納得がいかないのです。今社会保障制度審議会に、あなたの方で総合調整を諮問されている。社会保障制度審議会の方も三月には一つ総会をやろうといって問題点を出しておる。そこでその問題点を出しておるにもかかわらず、その意見も聞かずして、これを今度先へお出しになるということは、どうもやはり問題だ、もうしばらくお待ちになったらどうだ、こういうことなんです。これは私の主張の方が理論が通っておると思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/15
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016・渡邊良夫
○渡邊国務大臣 先ほど申し上げましたように、緊急に必要なもののみを私どもは当面改正しようとするものでありまして、総合調整全般につきましては引き続き社会保障制度審議会に諮問をしておるような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/16
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017・滝井義高
○滝井委員 緊急なものだけなら、保険料率なんかそういじくる必要はない。これは当面たとえば困っておるところだけやってみたらいい。失業多発地帯に失業保険の給付期間を延ばすとか、あるいは職業訓練を受けた人が支度金がないなら支度金をやるとか、あるいは日雇い健保が皆保険になって——これはあとで質問しますが、そしてそこに幾分か、二カ月くらいのブランクがある。二カ月しなければ被保険者の資格はあっても、医療の恩恵を受けないのだというような、そういう緊急なところだけをおやりになって、料率の改正とか、それから国庫負担をいじるというようなことは、やはり大所高所から総合的におやりになる方がいいのじゃないか。そうしないと、こういうちゃちないじり方をしますと、今度は白紙の上に大きく年次計画と総合計画を打ち立てるというわけにはいかぬのですよ。もうどこか白紙の横には何か絵がかかれておるという形では困ると思うのです。それは横山大観のようなりっぱな絵かきさんがかくのなら、だれか下手なスズメを一匹かいておっても、今度はそこに勢いよく竹をかいて、その下手なスズメを生かすことができるかもしれないが、どうもわれわれのような下手な絵かきが変なものを横に書いておると、全体のバランスがくずれるのです。そういう点で、どうも下手な絵かきがちょっとスズメか何かを先にかいておるような感じがするのです。大内兵衛先生のところは、これは有名な絵かきばかりですから、うまくやるとは思いますけれども、何かそんな感じがするのです。渡邊厚生大臣が下手な絵かきとは申しませんけれども、どうもそんな感じを受ける。だからこの際一つ思い切って白紙でおまかせしたらいい。というのは、あなた方がこの前、社会保険審議会の諮問を経ておりませんから、まだその方針は言われません、こういうことで頑強に突っぱねてきたのです。ところが今度は急ぐからこれはやるのだ、こういうことはどうも筋が通らない。社会保険審議会を尊重したと同じように、社会保障制度審議会を尊重されるならば、これは当然そういう形をとる。きょうは八木先生が来ておらぬから幸いだと思うけれども、来ておったら、八木先生またかみつきますよ。大臣、そこらあたりをはっきりさせないとどうも納得できないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/17
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018・太宰博邦
○太宰政府委員 便宜私からお答え申し上げます。
社会保障制度審議会には引き続き総合調整の基本的な構想について総理大臣から諮問を出していることは御承知の通りでありますが、これは極力私どもは早急に御審議の上、なるべく早くその基本構想をいただきたいとは政府としては念願しておりますが、何しろわが国の社会保障制度全般にわたる総合調整の問題でございまするから、問題の性質から申しましても、これはそう簡単な日月の間に出ない——先ほどお取り上げになりました新聞記事は、おそらく制度審議会の方でどういう問題点があるか、あるいは検討していく手だてとしてのいろいろな考えが、あるいは出たのではないかと存ずるわけでありますが、そういうことで制度審議会が御結論を出して、答申を出していただくということについても、私どもとしてはいつこれをいただけるか、極力早いことをこいねがうわけでございまするが、やはり事柄の性質上、相当の時間がかかることが予想されるわけであります。さらにその答申が得られましても、これは制度審議会といたしまして基本的な構想というものについての意見が出るのでございまして、またそれを一つ一つかみくだきまして、これを具体的なものに持って参りますには、さらに政府部内におきましても検討いたさねばなりません点がございまするので、これまた相当時間がかかる。従いまして御質問のように皆保険の構想があって、それを待ってやるということにつきましては、私どもといたしましては、これはやはり相当時間がかかるということを予見せざるを得ないのでございます。今回私どもが調整の第一歩というような意味合いにおいて一本にまとめて提案し、御審議を願いましたのは、やはり保険の料率の問題と国庫負担、これはこれといたしまして、今回政府が提案いたしました事柄自体は、御承知の通り厚生年金の被保険者の給付の改善の問題なり、またその賃金の実態とも合わせるという考えもあります。また日雇い健保については国庫負担をふやすというようなこともございますので、今回のものは今回のものとして、私どもといたしましてはやはり緊急にこれを通していただきたいというふうにお願いいたすわけでございます。それと別個に総合調整の問題点を取り上げたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/18
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019・滝井義高
○滝井委員 総合調整は別個だということがどうも納得がいきかねるのです。船員保険法等の一部を改正する法律案というのは、これは明らかに社会保険の各法の総合調整をやるためにお出しになっていると思うのです。そうしますと、今内閣でやるのは時期が少しおくれるのだ、だからそれまでは待てないというようなことですけれども、一体これをやらないと保険経済に何か大きな支障がありますか、私はちっともないという感じがするのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/19
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020・太宰博邦
○太宰政府委員 一例を厚生年金の例で申し上げますと、今回御提案申し上げております中身は、御承知の通り給付内容をよくするということで、これは最近年金の給付内容がよくないという声も一、二聞いておるのです。さような点からいたしまして、私どもは給付内容をよくするということは、これはやはり緊急なことであるし、それからまた保険料の等級区分が最高一万八千円でとまっておる。これは賃金の実態に合っておらないのでございまして、これに基づいて老齢等の給付年金額が計算されるということになりますれば、これはできるだけ早くその実態に合わせるように引き上げて参りたい、こういうことも私どもとしてはやはり緊急な問題であろうと存ずるわけでございます。また保険の料率の問題にいたしましても、大体二十九年の全面的法改正におきまして、五年ごとに再計算をして、財政の均衡が常にとれるようにしておくという法律の命令でございますので、それを忠実に実行して参るということは、これまた私は必要なことであろうかと思うわけでございます。というように、一例をとって申し上げましても、私どもといたしましてはやはりこの機会に実行に移すべきものは実行に移すべきである、かような考えで、別個にというのは、何もこれと縁がないとは申しませんけれども、この調整等は今回のあれとは別に、総合調整について総理大臣から制度審議会に御諮問申し上げる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/20
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021・滝井義高
○滝井委員 今一つの重要な改正を盛っておる厚生年金の——詳しいことはあとで御質問いたしますが、今厚生年金のことが出ましたから御質問いたします。
一体厚生年金が大量に老齢年金の支給を開始する時期はいつですか。現在三十四年七月末では老齢年金は一万四千六百八十二ですね。遺族、障害の年金もありますが、これらを合計をいたしましても、件数は二十四万九千三百六十七、一番大事なのは老齢年金で、一万四千六百八十二件です。これが一番大量に出てき始めるというのは何年の後ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/21
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022・太宰博邦
○太宰政府委員 三十四年度は大体先ほどお話しのように、一万六千人程度でございますが、これは逐次ふえまして、一番多いというのはだいぶ先になりますが、大量に出てくるといいますか、大体三十万くらいになって参りますのは、四十三、四年ごろでございます。もちろん一番多くなりますのは、三百何十万というときもありますから、これは別といたしまして、大量に出てくるのはそのときであります。しかしながらそういうふうに出て参りましたときが初めていわゆる本格的な時期ということではございませんで、やはりそのときに給付を受ける人は、自分が過去においてかけておりました保険料の基礎になった、いわゆる賃金、これがやはり給付を受ける年金の計算をいたします基礎になるわけでございますので、これはやはり今日から、すでに一万八千円以上とっている人がたくさんおるわけでございますから、そういう人たちにはできるだけ賃金の実態に近づいたようなものをとっておいてあげるということが、将来何十年か後に給付を受けます場合において、それが年金額に大きな影響を来たす、こういうことを考えますと、私どもは今回においてこういう措置をとることは非常に緊急性を持つものだという考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/22
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023・滝井義高
○滝井委員 今から十年の後に、今一万六千台が三十万程度になるわけで、そういう観点から見てみますと、標準報酬の頭打ちが一万八千ぐらいになっておるのを上に上げていくということは、私はそう緊急な問題ではないと思うのです。その前にやはりわれわれが考えなければならないのは、標準報酬も上げなければならぬし、今、月四千円程度の厚生年金の給付ではいかぬので、これも上げなければならぬが、同時に、しからば今ようやく船出をした国民年金との関係をどうするか、その総合調整の問題をどうするかということが最も重大な問題なんです。そういう政策というものは、やはり緩急順位がなくちゃならぬと思うのです。そういう点で、どうも今の御説明だけでは私は納得がいきかねるところがあるのです。特に社会保険制度全般の発展のために年次計画をお作りになるということは、それぞれの被保険者の負担能力なり国の財政に見合った国庫負担というようなものを総合的に見ながら年次計画というものは立てられていかなければならぬと思うのです。ところがこれを途中から、今の総合計画が立てられる前の段階になって、ぐらぐらと保険料や保険料率を変えていくということは、総合的にものを見る場合に隘路になるわけです。変えていくからそこに一つの壁ができるわけです。そうなりますと、今までの制度をずっと——短期保険ならこういうことは申しません。長期の保険を船員保険にしても厚生年金にしても含んでおるわけです。そういう長期の計画を含んでおる保険というものを、ぐらぐらと総合調整をやろうとする前に変えるということは、やはり問題があると思うのです。そういう意味でずっと見てきて、ここ一年ぐらい待ってもそう大きな狂いはないと私は思うのです。一年お待ちになっても、今お出しになっておる四法に大きな狂いはないと思うのです。今非常に困るというのは、日雇働働者健康保険というものが赤字である。この点だけを手当しておけば私はいいと思うのです。そのほかのものは、失業保険にしても黒字です。それから船員保険は失業部面も含んでおるし、それから船員保険は一億円この前、金を出しましたから、ある程度赤字は乗り切れておると思うのです。そうしますと、厚生年金は長期のものだから、日雇いだけ当面何とかしておけば、あとのものは総合調整で年次計画を推進する上にも大丈夫だ、こう思うのです。ところが今あなた方がちょっとこれをいじって、保険のバランスだけをとりますと、大蔵省なんかは、そう渡邊さん欲ばらなくてもいいじゃないか、もう四つの法律が何とかバランスをとれてうまくいき始めておるから、こういうことになりますと、また来年の年次計画ができないということになるのです。だからやはりそういう面からいっても、社会保障制度審議会が問題点として出した点、私が前段に申し上げましたような社会保険における問題点、それから生活保護の基準の問題、それから同時に住宅とか学校給食とか失業対策、それから遺族援護など、準社会保険的な問題というようなものもやはり総合的に見て、年次計画をどうするか、国においてどのように財政の中から負担していくかということは当然考えられなければならぬ問題だと思うのです。そういうものに雇用とか賃金、最低賃金制度の問題あるいは税制の問題というものが加わってくると思うのです。そういう点からどうも総合的にものを見ていくと、社会保障制度審議会が今考えておることとあなた方の考えておることとは、おそらく結論は一緒になるのだが、そのやり方についてちょっとすなおさがないような感じがするのです。それで、これは今の太宰さんの答弁だけではどうも納得がいきかねるのです。私は、私の主張の方が筋が通っておるという自信を持っておるのです。今の問題は、もう一ぺん最後の段階になってから岸総理も来ていただき、大蔵省も来ていただいて、もう少し保守党の内閣のもとにおける社会保障制度、社会保険制度の総合調整の問題を日本の財政計画との関連でどういう工合にやっていくのかという点について聞かしてもらいたいと思うのです。もう少し御検討になって、八月ごろに長期の計画をお立てになるという大臣の言質をいただいておるわけですが、もう八月はすぐきますよ。ぐずぐずしておるとすぐ八月がくるわけですから、そろそろ土台となる構想を一つまとめていただいて、岸内閣としての方針を、詳細には述べることはできないにしても、その輪郭だけは出してもらいたいと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/23
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024・渡邊良夫
○渡邊国務大臣 表現がちょっとおかしいかもしれませんけれども、われわれも総合緊急的なものに重点を置いてこうした措置をとったということでございますので、できるだけすみやかに私どもも結論を出したい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/24
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025・滝井義高
○滝井委員 どうも満足な答弁が得られないので非常に不満ですが、時間の関係がありますから次に移ります。
今回この船員保険法等の一部を改正することになったのですが、一体こういう改正を行なうことによって、船員保険と——失業保険は労働省ですから労働省にお尋ねしますが、船員保険と日雇労働者健康保険と厚生年金にいかなる財政的な影響を及ぼしたか、それを一つ簡単に御説明をしていただきたいと思います。保険料においてどのくらいの増収になる、国庫はどの程度の支出増になる、給付がどういう状態で増加をするかという、あらましでいいです。今年度緊急に総合調整をしなければならぬという、今、大臣の言われたそういう観点から、今度のこの改正というものが財政的にどういう影響を及ぼすか、そして今年はどういう見通しだからこういう改正が必要なんだという、それを一つ要約して簡単に、わかりやすく御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/25
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026・太宰博邦
○太宰政府委員 多少順不同に相なるかと思います。厚生年金保険の方でございますが、保険料の収入見込みの方は全部で、平年度化して現行のままでいきますと五百五十五億でございます。これを今回標準報酬の等級区分を三万六千円まで引き上げるということ及び保険料率を男子の場合に千分の五引き上げるというような標準報酬並びに保険料率の引き上げによりまして、収入見込みが七百八十三億ほどに平年度でなろうかと存じます。従いましてその増が二百二十七億ほどに相なります。
それから日雇健康保険は従来療養給付について二割五分、それから出産手当金等について三分の一でありましたのを、ガラガラにいたしまして三割の国庫負担になりました。その結果、国庫負担の増が二億五千万円でございます。
それから船員保険でございますが、料率の引き上げがあると同時に、疾病及び失業部門の料率の引き下げがございますので、これによります保険料の純増分が一億七千万円程度でございます。
それから給付の方でございますが、今調べておりますので、あとで申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/26
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027・滝井義高
○滝井委員 大臣、今お聞きの通り大きな改正点は厚生年金の二百二十七億の増です。この二百二十七億というものはほとんど全部積み立てられていくもので、これが直ちに今の支給に、財政的に大きな影響が及ぶものではないので、十年以降に三十万台にだんだんなってきても、なお厚生年金の積立金というものはウナギ登りに上がっていくわけです。そうすると、今の財政的な効果あるいは給付——給付の方は今わかりませんからあと回しにしますが、歳入の面で見ても、船員保険の一億七千万円程度、日雇い健保の二億五千万円程度、こういうことならば、そう四法はあわてることはないので、日雇い健保だけの赤字の手当をとりあえずして、そうして総合的に調整をしていくという方向をとることの方がますますいいのです。
給付の方はあとで聞きますが、そうしますと、今度の改正が日雇労働者健康保険の二割五分であった部門を、四分の一を三分の一に引き上げて財政的な健全化をはかっていこう、こういうことになるのですね。問題は、ここに今度の総合調整の問題がからまってくるわけです。各種保険の状態を大臣ごらんになると、全部料率が違うのですね。政府としては、自営業者と被用者との間の国庫負担の問題というものを一体どう考えておるかということです。大きく分けると、現在国民健康保険と健康保険あるいは共済組合と、二つの保険があるわけです。これは二本の柱のものの考え方でいけば、国民健康保険と被用者保険と、こうなる。そうすると、国民健康保険と被用者保険の序の負担の率が違うのですね。それから被用者保険の内部においても、国庫の負担の率が違う。健康保険と日雇いが違う、共済組合が違う。一体どういう理論から国庫負担をやっておるかということ、この根本的な政府の態度をお聞かせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/27
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028・太宰博邦
○太宰政府委員 確かに被用者の関係する保険と、それから一般その他の自営業者を対象とする保険というふうに、今日の日本の社会保険制度は分けることができると思います。その場合に、国といたしましてそれぞれ十分なる手当をいたしたいと思いますが、その場合におきましても、どういうふうに考えるかということは非常に大きな問題であると思います。かような点につきましては、今日私どもといたしましては、被用者保険の実態と、それから一般国民健康保険の方の実態とをいろいろにらみ合わせまして考えて参らねばならぬ、かように思っておる次第でございまして、例の国民年金の実施の際に、国庫負担といたしましては保険料の二分の一を国でもって持つ、こういうふうな仕組みにしたわけでございます。しかしながら、これが直ちに国民年金の方に手厚くしたということもすぐに言いかねる点もあろうかと思います。被用者保険には被用者保険として特質がございまして、事業主が同額の負担をしていくという実情があるわけでございます。そういう点とのにらみ合わせにおいて、今日それぞれ国として適当であるというような度合いにおいて国庫負担をしておるというわけでございます。しかしこれは確かに大きな問題でございまして、同じ被用者保険の中におきましても、いろいろ差も若干あるようでございますし、一般国民の保険との間の調整というものにつきましては、これはやはり大きな問題であろう。制度審議会において総合調整をおはかりになる場合におきましても、そういう点にやはり触れてくるのじゃないかと存ずるわけであります。政府といたしましては、そういう点もにらみ合わせて検討して参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/28
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029・滝井義高
○滝井委員 私がお尋ねしたいのは、今いろいろくどくどと御説明になったのですが、政府の基本的なものの考え方としては、自営業者の保険と被用者保険との間に国庫負担の割合が違ってきておる、一体この違うということの理論的な根拠というものは主としてどこに置いておるんだということです。この点とこの点に違える理論的な根拠がありますというものがあれば御説明願いたいのです。単なる財政上の赤字が出たら負担をふやして、少なくなればそれは取り上げていくんだ、こういうその場限りの社会保険政策であるのかどうか。たとえば健康保険に見るがごとく、黒字でも赤字でも三十億出しますよといっておるのが、黒字になったといって五億に削っておる、こういういつも不安と動揺の中にある社会保険政策では困るのです。だからこの際日雇い労働者も三分の一にみんなしていくんだ、こうおっしゃるならば、国民健康保険なり健康保険や共済組合は一体どうなるんだ、こういう問題が当然出てくるのですね。そうすると、日雇健康保険というものは、主として低賃金の労働者が集まっている保険なんだから、国で見ていこう、こういうことになれば、一体貧乏人だけを保険にしておくということで保険として成り立っていくかどうか、こういう問題になる。それならば、これは健康保険に加えたら、こういう発展が出てくるのです。そうすると、貧乏人が健康保険によけい加わると健康保険が苦しくなるというなら、健康保険組合を統合したら、こういう理論的な発展がなくちゃならぬが、こういう理論的な発展がないところに現在の日本の厚生行政というもの、保険というものが行き詰まってくる。そして制限診療だ、ワク内診療だ、差額徴収だ、こういう本来の保険制度に、根本な問題にメスを入れることを怠るために派生的な問題にのみ花が咲いて、こういう大きな根幹についてメスを入れることを怠る、こういう問題が出てくる。だから、まずわれわれがこの船員保険法等の一部を改正する法律案の審議にあたって根幹的な問題に触れていく場合、国庫負担の割合というものは、被用者保険と国民健康保険とは異なるのだが、これは一体どういう理論で異なるのだ。単に事業主が出しておるから、片方はよけいやりませんという理論は成り立たぬ。だから、そこに何かはっきりと国民の納得のいくような線というものが私は出てきておらなければならぬと思うのです。なぜ私がそういうことを申すかというと、昨年でございましたか、所得税を納めておる人は千百十三万人あります。千百十三万の中の八百万人以上の者が雇用労働者で、その人たちが税金を出しておるのです。雇用労働者の出した税金の中から、雇用労働者の作っておる健康保険には補助金がこないということです。そうしてその雇用労働者の出した税金というものが、被用者の側でない国民健康保険に二割なり五分の調整交付金としていっておるという不均衡が現われてきておるわけです。これは根幹に触れる問題です。そういうことになりますと、根本的に国は日本の社会保険全体を進展せしめていく場合に、国庫負担でどういう態度をとるかということを決定しなければならぬ時期がきておる。やはり理論的に打ち立てなければならぬ時期がきておると思うのです。そういう点で、あなた方の被用者と普通の独立自営業者に対する国庫負担の基本的な態度というもの、国民年金と厚生年金というものは、見てみると、国民年金は国が保険料の半分だけは出しましょう、こういうことになっておる。ところが今度は厚生年金の方はそうではないというアンバランスが出てきておるわけです。私はこういう四法を審議するにあたって、やはり当然厚生省は基本的なものの考え方を持っておらなければならぬと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/29
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030・太宰博邦
○太宰政府委員 確かに所得税を納めておる階層の中の大半の人たちは被用者関係の人たちでございます。それの負担しておるものが、国庫負担がそうでない方にいくということについて、あるいは一部の人にはいろいろ御意見もあろうかと思いますが、やはり国は国として国民全体の福祉をはかる、その場合においていわゆる所得の再配分というようなものによりまして、社会保障の推進をはかっていく、今日の社会におきましては、ある一部のものだけが独走的に保障の実が上がり、そうしてその他の多数の人が残されていくというようなことは許されないわけでありまして、それは全体として決して国民の福祉を増進するゆえんでない、かような考えから、さような点については国全体として考えることは、ここでは当然許さるべきことであろうと思うのであります。国としてこういう社会保険制度に一体どの程度てこ入れをするかということにつきましては、今日までいろいろな方々の御意見は伺っておりますが、全部一律に、たとえば幾らの率の負担をするとかいうようなことはまだ伺っておらない。またこれは事実上非常にむずかしいと思います。やはり今日の段階といたしまして、国は社会保険制度を伸ばしていくという建前において、それぞれの制度の実情に即応して、そうしてその制度が伸びていくようにこの運営をしていく。先ほどお述べになりましたように、国民健康保険において国が二割五分負担をしておる。この二割五分というものが、これで十分だとは私ども決して思っておらないのでありますが、これはやはり国の財政あるいは制度の発展とのにらみ合わせで、漸進的にこの内容をよくしていく。それに比較いたしまして、健康保険の分につきましては、はなはだ額が少ないじゃないかというふうな御指摘であります。これは私どもも少ないと思います。しかしこれ自体も、今日の国の財政のもとにおいて社会保険制度全般を伸ばしていくということのためにやむを得ずとった措置でありまして、そのときそのときを考えてみまするといろいろ出入りはありますが、やはり国としては全般的に、社会保険制度全体の推進のためにてこ入れをしていく。そのてこ入れの度合いというものは、やはりそれぞれの制度が今日それぞれの経緯をもってできておるわけであります。それがうまくいくということをねらって、その実態に即応してやっていくということが今日の実情であります。これ自体については、確かに御指摘のように基本的な理念についてもう少し検討する余地はあろうかと思います。その点が、先ほど申し上げましたように、制度審議会等にも御諮問申しておるうちにあるいは出て参り、私どももこういう点については今後検討して参りたいということを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/30
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031・滝井義高
○滝井委員 私が申し上げたいのは、総合調整を考える場合に、当然被用者側からしてみれば社会保険というものについては政府は一文の補助金もくれない——五億くれておりますが、まあ一文もくれておらないと言ってもいいくらいなもので、事務費は補助してくれておるが、給付の方については恩恵がない、いわば独立採算のようなものだ。ところがわれわれが所得税を納めておる状態を見ると、千百十三万人所得税を納めておる中で、八百万というものはわれわれ雇用労働者が納めておるじゃないかという不満というものは、数字の上からいえば出てくるわけです。ところが一方給付の内容を見てみると、国が二割の国庫補助をくれ、五分の調整交付金をくれておる。国民健康保険の給付の実態を見てみると、ことしの予算では国民健康保険の被保険者一人当たりの療養給付費は二千二百十七円、健康保険の本人に比べてみると、健康保険の本人は八千七百六十七円、四分の一です。われわれは補助金をもらっておってもこういう情けない状態じゃないかということで、給付の面からの不平というものは国民健康保険から出てくるのです。それから国庫負担の上から見ると、健康保険の側に不満が出てくる。こういう制度が今とにかくちぐはぐのままで進んでおるということです。だからこれはこのままでは、国民一体的な皆保険態勢というものは作ることができないと思うのです。お互いに不平不満がある。だから、これはやはりものは考え方で、こういう状態を打開するためには一体どこに一番メスを入れなければならぬかということなんです。今は貧しいのは貧しいの、強いのは強いの、こういうことになっておりますから、あなたのおっしゃるように国民的な規模においてものを考えるならば、日雇いも健康保険組合も一体にする以外にないのです。私はやはりこの政治力が必要だと思う。今の段階で国民皆保険政策をほんとうに進めようとするならば、被用者というものをがっと一つに合わせるということです。被用者というものの保険を一つに合わせる、それから独立自営業は独立自営業で一つに合わせる。そしてアンバランスがあるならば——これは今保険料というものは、いつかも申しましたが、賃金と利潤から出ている、こういう形です。片一方の被用者保険の方は、賃金と利潤から出ている。事業主が払うのは利潤のうちから払うのだが、実際はこれは利潤というより経費の中から出てきておる。片一方の国民健康保険の方は、ほとんどいわば税金です。こういう形で違ってきておる。違ってきておるけれども、事業主が出しておるのは経費です。表面は利潤になっておるが、これは会社の経費に落としておる。ということになると、せんじ詰めていけば、事業主は出していないのと同じなんです。そういう形になりますと、全体的な観点から一体これをどう調整していくかという問題を、やはり二つの柱のところまで煮つめてこないと、この問題というものはなかなかうまくいかないのです。だからこの際私は総合調整の問題で、日雇い労働者の健康保険を、ほんとうによりよきものに推進していこうとするならば、やはり貧乏なところと金持ちのところとはある程度ガラガラ計算をしていく政治力というものを持たなければいかぬのじゃないかと思うのです。私はもう今の日本の皆保険というものはそこまで来ておると思うのです。なるほど日本の社会保険というものは組合方式で発展をしてきたけれども、この段階で、健康保険組合と日雇い、政府管掌とを少なくとも一本にするという方向にものを運んでいくだけの意思があるかどうかということです。これは大臣にお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/31
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032・渡邊良夫
○渡邊国務大臣 お説ごもっともでございますが、いわゆる財政上あるいは社会政策上、段階的にこれを処理していきたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/32
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033・滝井義高
○滝井委員 言葉の上だけでは、川崎君が厚生大臣のときからみなそう言っておるのですよ。一向にやらない。歴代の厚生大臣はみなあなたのおっしゃるように、何とか段階的にやっていきたいということをおっしゃっておる。一向段階的にやっておらない。そしてますます組分化されていきます。そうして厚生年金のごときはだんだん脱落者が出てきます。農協も出ていきましたし、だんだん脱落者が出てきて細分化されてきつつある。国民健康保険だって、特別国保がだんだん出てきて、そうして貧しい人だけが寄る、こういう形になってきておる。だからこの点はもう少しあなたの方で腹をきめなければならぬ。これはなかなか大へんなことなんです。大臣、簡単に、段階的とおっしゃるけれども、これは日経連の反対がありますよ。与党でもなかなかまとめ得ない問題なんです。ところがこれがやはり今の国庫負担の問題をどうするかという根本に触れてくる問題なんです。だからまず政府管掌と組合管掌とを一体一本にできるかできないか、段階的にやるかどうか、これが一番先です。できたら弱い日雇いをこれに入れてくるという方策が立てられると思うのです。この点どうですか。大臣、ほんとうにおやりになる意思がありますか。政府管掌の健康保険と組合管掌の健康保険とを一本にする方向に政策を長期計画の中で推進するという意思があるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/33
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034・渡邊良夫
○渡邊国務大臣 これもなかなか重大な問題でございまして、やはり十分検討をいたしまして処理いたしたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/34
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035・滝井義高
○滝井委員 小手先ばかりで、保険の料率をちょっと上げたり何かするということだけでは、これはとてもその皆保険政策をほんとうに推進することはできないと思うのです。国庫負担に対する基本的な態度でも、今のではみんなお聞きになっておるけれどもわからぬですよ。私もわからない。だから、これはもう少しはっきりと根本のところにメスを入れて、被用者保険と国民健康保険との間の国庫負担の基本的な理論というものを、どういう工合に組み立てていくかということは、これは非常に大事なことだと思うのですよ。もう少しわかりやすくやってもらいたいと思うのです。
大臣は参議院の方の関係があるそうですから次に入ります。皆保険政策をおとりになっておりますが、今度御提案になっております日雇労働者健康保険をまず先にやります。日雇労働者健康保険では、ガラガラ計算で四分の一くらいの国庫負担の部門——療養給付費、それから家族療養費は今まで四分の一だったのですが、これを十分の三に引き上げることになったわけです。なったわけですが、この日雇い労働者の被保険者の諸君は、皆保険のもとにおいても二カ月間保険料を納めておらなければ、被保険者になれないわけですね。そうしますと、二カ月は病気をしても、これは医者にかかれないのですよ。皆保険だというから、われわれは保険証をもらったらすぐ医者にかかれると思っておる。ところがこれは二カ月たたないとだめなんです。一体こういう盲点を皆保険のもとで作っていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/35
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036・太宰博邦
○太宰政府委員 日雇健康保険制度については、ただいま御指摘になったような問題点がその他にも若干あると思います。これは今後もこういうままでいくことは私もよろしくないと思います。しかしそれではどういうふうにいたしたらいいかということにつきましては、なかなか技術的な問題もからんで参っておるわけでございますが、これは早急に結論を出したい、かように考えて、目下鋭意検討しているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/36
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037・滝井義高
○滝井委員 法案を出して目下検討中じゃ困るのです。私はこういうところこそ緊急を要する問題だと思うのです、皆保険政策をお進めになる上に。ところが、被保険者になった、しかし、なっても保険証は空のもので二カ月しなければだめなんだ——二カ月してから保険証を渡すことになるのでしょうが、それじゃニカ月間のうちに病気をしたら一体どうなるのだ、こういうことになる。これは生活保護に行かなければならぬ。生活保護は一体何でやるのだといえば税金でやるのですから、もう日雇いの労務者になったならば、そのときに保険証を渡していいのじゃないかという感じがするのです。金がなければ生活保護に行かなければならぬのですから、それならこの際思い切って、国庫負担を三分の一におふやしになったのだから、そういう場合にはまた国庫負担を出します、こういう改正を加えればすぐできるじゃないですか。二カ月分保険料を納めていなければ被保険者になれないのだということならば、とりあえず二カ月分を国が保険経済で保障して払ったらいい。こういうことは被保険者にとって最も緊急な、最も大事な点なんです。御検討になっているというが、大臣どうですか。もしそういう修正をやるとすると、財政的に一体どの程度のお金が要ることになるでしょうか。もし被保険者が二カ月間の経過の後でなければ受診の資格を与えないという制度を取っ払って、直ちに受診資格ができる、こういうようになった場合には、一体どの程度の財政支出が増加することになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/37
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038・太宰博邦
○太宰政府委員 日雇いについて資格をとるのに二カ月間の期間があるという点は、確かに問題であろうと思いますが、それがもし撤廃になったら幾らくらい財政的にふえるかということは、私ども計算しておりません。これはこの制度の本質がくずれてくるというわけで、大へんなことであると思います。御承知の通り日雇い労働者の諸君の実態から申しますと、普通の雇用労働者と違いまして日々雇い入れられるということのために、これを安定した雇用形態として、それに基づいた保険料を取るというわけに参らぬわけであります。従いましてそういう技術的な隘路を打開するために、この二カ月間という問題がそこにどうしても出てきたのだろうと私ども存ずるわけであります。この点についてはおそらく日雇健康保険法の制定の際には相当御審議いただいて、そしてやむを得ずとして今日こういう制度がとられているのであろうと存ずるわけであります。しかしながら確かにこういう期間というものがあることは、皆保険となって参りますと、一つの盲点とも言うべき点であろうと私ども考えるわけでありますので、何とかこれにさらにもう一つ工夫がこらせないものであろうかということで、今日考えております。日雇労働者健康保険法についてはその他の点についても問題がございますので、そういう点を一貫して考えておるわけであります。これをただ、それだけの食い込んだ分を全部国で持つという腹を持てば解決するではないかという見方も、あるいは意見としてはあろうかと存じますが、私どもといたしましては、やはりこれが健康保険制度という制度でできておりまする建前からいいまして、赤字を全部国で見てもらうというような建前はとうていとり得ないのでございます。その点から考えまして、やはり国の負担を相当いたさなければならぬと同時に、被保険者の保険料あるいは事業主も入れて保険料というものを考えてみなければならない。そういたしますと、そういうような立場からいたしまして、この二カ月というものをすぐ取っ払って国の負担に持っていくということもなかなかむずかしい点が確かにあると存じますが、この点はなお検討いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/38
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039・滝井義高
○滝井委員 根本的なところをお考えになると、私はこの問題はむずかしくないと思う。と申しますのは、一体日雇い労務者とは何なのか。これは御存じの通り失業保険が切れて、あるいは失業をして、そして食えなくなる。だから国はここに一般失対なり緊急失業対策事業あるいは特別失対を実施する。そうするとそこに労働者が、失業さなかで食っていかなければならない、とりあえず食っておる間に新しい職場を見つけて、そして自分の生活態勢を確立をする、こういういわば過渡的な一時的な制度として生まれているのが、実はこの失業対策事業だと思うのです。その中に生まれたのが日雇健康保険でしょう。ところが御存じの通りそういう制度として生まれた失業対策というものが、ニコヨン大学を十年たっても卒業できないで、もはやいわゆる長期的な一つの職業になってきたわけですね。だから初めは二百四十円で発足をしたニコヨンが、ニコハチ、二百八十円になった、それから今度はサンマル、三百六円になった。今度は栄養基準その他が上がったというようなこともありまして、あるいは賃金も上がった、べース・アップもあったということで、二十八円上げて三百三十四円に上がったのです。こういうように初め作った制度とは変わってきた。そして変わってきたその制度のもとにおいて、今度は皆保険という新しい網が日雇いにかぶってきているわけです。そうしますと日雇いというものは全く過渡的な臨時的な一時的な制度として発足してきたのだが、今やニコヨン大学を十年たっても卒業できぬ、こういう状態になってくると、私は国民健康保険と同じように、この制度に入ったらすぐ保険にかかれる制度にしてやっておかないと問題が起こってくると思うのです。日雇いに入る前には一体何を持っておったかというと、これは健康保険を持っておったか、あるいは国民健康保険を持っておったか、あるいは医療の面でいえば生活保護の医療扶助を受けておったか、どこかですよ、おそらく。国民皆保険ですから、三十六年以降はそういう姿になってくるわけです。そうすると二カ月問はそれらの三つの制度のどれかをついでいくか、日雇いの中ですぐ受けられる形を作っていくか、そういう形でしかないと思う。健康保険でおった者は、この二カ月だけは健康保険で見てあげますということにするか、あるいは国民保険で見てやるか、あるいは生活保護の医療扶助で見てやるか、この三つのうちどれかを選ぶか、しからずんば日雇い自身が、ニコヨンになったらその日から保険証を渡して見てあげるということにして、国がそれを見ていく。どうせこの三百三十四円では、病気になっても治療費を払うだけのお金はありませんよ。二カ月だってない。ないとすればこれはどういうことになる。それは生活保護の医療扶助を受けざるを得ないことになる。そこまでせんじ詰めて見ていけば、どうせ国がめんどうを見なければならないことになる。どうせこの失業対策事業自体、国がめんどうを見るのだということで出てきている制度ですから、保険もその分を国が見ましょう——これは社会保障ですよ。日本の低所得階層の一番底辺にあるこの不安定な就業者が、日本の低所得階層の二割を占めている。千百十三万人の所得税を納めているとちょうど同じ数だけの低所得階層の二割は、家内労働や日雇いの不安定雇用の労働者が占めているわけですから、その人たちを国が救うことは当然だから、私は国が出したらいいと思うのです。これはどうですか、大臣、一番大事な点ですよ。一番緊急を要する問題です。皆保険の盲点になっている点です。だからこれはいくら頭をひねったって、国が出す以外に救いようがない。それから今申したように他の保険に依存するか国が出すか、どっちかより方法がないと思うのですが、この際これに対する根本的なお考えを承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/39
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040・渡邊良夫
○渡邊国務大臣 国民皆保険下の今日におきまして、あなたのお説はごもっともでございます。しかし現在の制度の上から、段階的にこれを検討していかなければなかなか無理じゃなかろうか。財政的にも現在多少無理があるのじゃなかろうか。しかし先ほどからも、段階的にという言葉を申しますとなまぬるいかもしれませんけれども、しかしそういったような国民皆保険下の気持においては将来一本化する、こういう意味におきまして私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/40
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041・滝井義高
○滝井委員 私が申し上げるのは段階的な第一段階なんです。と申しますのは、皆保険政策というものは三十六年四月一日からおやりになるのですが、そうすると、この人たちは皆保険のもとで、とにか二くカ月間は医者に見てもらえない、ただ被保険者の保険証をもらうだけで医者にはかかれない、こういうことになったのでは困ると思うのです。そうなりますと、これは生活保護か何かで見なければならぬから、結論は同じなんです。大臣は、とにかく日雇い労務者の諸君が、日雇いになったらその日から医療を受ける資格を得ることについては賛成なんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/41
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042・渡邊良夫
○渡邊国務大臣 賛成でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/42
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043・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、もし日雇いになったらその日からやると仮定すれば、どの程度の財政負担が要るのか、目の子でけっこうですが、わかりませんか。それはわからなければ——大臣が参議院へ行かれるそうですから、私は午前中はこれでやめますが、次会でけっこうですから、およその数字を出していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/43
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044・太宰博邦
○太宰政府委員 ただいまの件については、いわゆる日雇い健康保険における受診率とか一人当たり医療費というようなものから、目の子で当たるかどうか知りませんが、出せるなら出してみたいと思います。しかし何回も申し上げますように、それ自体は——私ども何も日雇い労務者の諸君を二カ月もすっぽかしておくのはいいと思っているわけじゃございません。やはり保険制度の技術的な点から、どうしてもそういうふうにしなければ保険制度として成り立たぬということでやっておるわけでございます。今回提案いたしておりますものは、ただ国庫負担を増加したいということだけでございまして、これはそれとは別に御了解はいただけるものと考えております。それから、先ほどちょっと保留しておきました法改正による給付費の増加状況でございますが、三十五年度で改正前と改正後を比較いたしますと、厚生年金では十八億一千万円ほどの増になります。船員保険はまだ少なうございまして六百十五万円程度の増でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/44
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045・滝井義高
○滝井委員 今の二カ月間の待期を撤廃した場合、いろいろ技術上の問題はあると思いますが、一体どの程度の財政支出を必要とするか、早急に調べていただきたいと思います。
午前中はこれでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/45
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046・永山忠則
○永山委員長 午後二時まで休憩いたします。
午後零時三十三分休憩
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午後二時四十三分開議議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/46
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047・永山忠則
○永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。中山マサ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/47
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048・中山マサ
○中山委員 私は、ここが適当な場所かどうか知りませんけれども、あるいは決算委員会でお尋ねすべき筋かもしれないのでございますが、私はその委員でもございませんので、この場を利用させていただきまして、御質問申し上げたいと思います。
私は、ちょっと新聞を見ましたら、大々的に、行政管理庁が厚生省の同調と援助を求めるということで、二十四億のお金が焦げついておるということが出ておりました。それで私は、厚生省が二十四億のその焦げつきに対して、どういう責任があるのか、どういう面でそういうのが焦げついておるのかということをお尋ねしておきたいと思うのでございます。私らは児童の問題につきましても、何とかして子供の間食のために五億ほしいと言って懸命になって、暮れ時分にその獲得に奔走しておりますときには、五億がいただけないで、三億がやっとかっとで、子供の間食ということもやっとそれで私どももいやいやながら納得したのですが、二十四億という金がどこで焦げついておって、どういう責任を厚生省が行政管理庁に負わされていらっしゃるのか。私は、それをつまびらかにしておきませんと、私の頭の中のこういう問題の整理がつきませんので、ぜひ一つはっきりと、この二十四億の焦げついておるというのは、何局でどう焦げついておるのかということを知らせておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/48
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049・河野鎭雄
○河野政府委員 二十四億という数字は、私どうもその出所が明らかでございませんので、私どもの手元の数字でお答え申し上げたいと思います。
新聞に載っておりましたのは、国民金融公庫からの引揚者等に対する更生資金の貸付の問題かと思うのでございます。昭和二十一年から数年間にわたりまして、厚生省から資金を出しまして、引揚者、戦災者、その他生活困窮者を対象とした貸し出しを行なうことにいたしたわけであります。その資金が約三十一億でございます。二十一年から二十六年までにわたりまして、約三十一億の金を、国民金融公庫を通じまして、ただいま申し上げましたような対象に貸付をするというふうなことをいたしたわけでございます。大体貸付条件といたしまして、五年以内の期限を切って貸しております関係上、もうすでに償還の期間も過ぎておりますので、償還のありましたのは回転をいたしまして、年々貸付をいたしておるわけであります。累計をとってみますと、ことしの一月現在で約七十八億ぐらいの貸付を行なっております。これは累計でございます。償還がもちろんございますので、そういうふうにだんだん雪だるまのように大きくなっていくわけでございますが、現在の貸付残高は約二十五億でございます。このうち償還期限の切れておりますものが、ちょっと古い数字になりますが、昨年の九月の決算期におきまして約十八億でございます。もちろんこの十八億がそのまま焦げつきというふうに必ずしも言えないかと思いますが、償還期限が切れてもうすでに償還をしなければならないというふうな、時期を逸しておりますのが、今申し上げました十八億、その後おそらくこのうちからも何がしかの回収は行なわれておると思いますが、現在の数字が手元にございませんので、少し古うございますけれども、お許しを得たいと思っております。
私どもといたしましては、直接の責任といいますか、直接公庫を監督いたしておりますのは大蔵省でございますけれども、厚生省関係から資金が出ておりますし、貸付対象者が先ほど申し上げましたような対象でもございますので、このお金が効率的に運営されるということにつきましては、あるいは間接的ということになるかと思いますが、厚生省としても責任を感じておる次第であります。当初から一定の基準を、要領を作りまして回収の指導をいたして参っておるわけでございますが、御承知のように、一般の金融機関と違いまして、ただ採算ということだけで貸すわけに参りませんし、この点はほかの厚生省関係の貸付の場合も同じであろうかと思いますが、必ずしも物的担保をとらないで貸すわけでございます。こういった零細の金で更生ができそうだというふうな対象にお貸しするわけでございますので、当初から相当の危険負担ということも考えなければならないわけでございますが、大事な税金から支出しております金でございますので、この回収につきましては今後もさらに努力をして参らなければならぬ、かように存じておる次第であります。三十四年度、本年度から二年間にわたりまして、ただいま精密な実態調査を実施いたしておるわけであります。その結果に基づきまして今後の対策を立てて参りたい、かように存じている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/49
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050・中山マサ
○中山委員 引き揚げという、ある意味におきましては国の過去の行為によってその人たちは悲しい立場になったのでございまして、無担保で貸し付けていただいておりますが、もしその期限におくれたりしておりまるときには、どういう処置がなされておるのでございますか。強制執行とか、あるいはそういうふうな普通の貸付と同じように強行手段が講じられておる場合がございますか。それとも延期に応じてその金を、いわゆる権力ずくめでなしに、親切にその人たちの立場を考えて善処していただいておりますでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/50
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051・河野鎭雄
○河野政府委員 いろいろの場合があると思いますが、建前といたしましては、悪質の者につきましては強制取り立てということもやり得るわけでございますが、対象が先ほど申し上げましたような対象でございますので、なるべくそういうふうな方法によらないで回収の成績を上げていくことが適当であろう、かように考えておるわけでございます。場合によりましては借りかえというふうな方法で回収をすることもございまするしいたしますが、現在のやり方は、主といたしまして関係団体を通じまして回収の実績を上げるように努力することが適当であろうということで、公庫の方でも何がしかの助成金を出しまして、回収に当たらしておるわけであります。最近と申しますか、三十二年に、引揚者に対する国債を出すというふうな制度もできましたので、最近はそれ以来、若干回収の成績が上がってきておるように考えられます。そういうふうなことで努力はして参っておるわけでございますが、まだ相当の期限の到来した貸付残があるということにつきましては、さらに努力して参らなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/51
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052・中山マサ
○中山委員 どれくらい悪質のものがあるというお見込みでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/52
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053・河野鎭雄
○河野政府委員 今のところ資料がございませんので、ここではちょっと申し上げかねるのでございますが、そういうふうな実態も十分調べてみなければならぬということで、ただいま実態調査を実施中でございますので、その結果がはっきりするまで、もうしばらく時間をちょうだいさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/53
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054・中山マサ
○中山委員 それでは今のお言葉でございまするので、私もあえてこれ以上追及しようとは思わないのでございますが、そういう立場の、悪質でない限りにおいては、私はあまりひどい追及をしていただくのもどうかと思いますが、実際をお調べ下さいまして、そういうお金が回収されて、また必要な階層へ回せるようにさせたいためにこういう質問を申し上げておるのでございます。それではまた今後そういう調査ができましたら、書いたものでもけっこうでございますから、お見せいただければ幸いと存じます。
これで私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/54
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055・伊藤よし子
○伊藤(よ)委員 関連。ただいまの中山先生の御質疑に関連して、私はむしろ反対の立場の事例を非常にいろいろ陳情を受けておりますので、むしろ寛大にしていただきたいという意味で申し上げたいのです。昭和二十一年ごろにお貸し出しになりました戦災者あるいは引揚者に対する貸付金など、地方によりますと共同で一人頭五千円くらいを借りて、四十人くらいとか五十人くらいで組合を作りまして一つの事業を始めておりますが、それが最近、ただいま局長の方からお話しがございましたように、調査をなさいまして、それのまた回収をやっておいでになるようでございます。いろいろ地方に幾つもの事例がございますが、その当時、一緒に生産組合などを作ってやっておりました人たちがちりぢりばらばらになりまして、ときには一人ぐらいしか残っていない場合もありました。あるいは四十人の中で、私が聞いた実例などは、十五人くらいしか残ってないところへ全額の請求が参りまして、利子などを入れまして一人頭最初五千円だったのが五万円とか六万円というような請求があって、非常に驚いて困っているというのが各所にございます。中山先生がおっしゃったような悪質な者に対しては厳重なお取り調べの結果、回収していただかなければならないと思いますけれども、そういうような実例が、ただいまお話しの引揚者等に対する貸付金の中には非常に出ておりますので、私はむしろそういう点で、政府の方でも寛大な御処置をお考えいただきたいと思っているわけでございます。参考にちょっと申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/55
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056・中山マサ
○中山委員 今のお話を聞きますと、利子の方がおそろしくかさんできておるということでありますが、元金よりも以上に利子がかさんだ問題で——これは学校関係ですが、非常に苦しんでおりますところに、私も四年間このために努力をいたしまして、実は元金より以上の利子をまけてもらったことがあるのでございます。それで、そういう点でございますれば、私は利子はまけて、ただ元金だけでも返済するような温情を示していただくのがしかるべきではなかろうかと思いますので、今伊藤先生のおっしゃいましたように、そういうふうな他人の責任まで帯びておるような場合がございましたならば、利子などは免除して、元金が払えたらそれで棒引きにしてやるという点も、ぜひ一つ気の毒な場合はお考えいただきたいということを印し添えておきます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/56
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057・永山忠則
○永山委員長 それでは再び第三十三国会、田中正巳君外二十三名提出の厚生年金保険法の一部を改正する法律案、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案及び第三十一回国会、内閣提出の船員保険法等の一部を改正する法律案を一括議題とし、審査を進めます。
質疑を許します。滝井委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/57
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058・滝井義高
○滝井委員 午前中に引き続いて質問しますが、日雇労働者健康保険法の、二カ月間の待期を置いて初めて実質的な被保険者として保険証が役立つことになるわけですが、一体財政的な負担は、もし二カ月を撤廃すればどういうことになるかということがおわかりならば、一つ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/58
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059・太宰博邦
○太宰政府委員 お答えいたしますが、結論はどうもできないということでございます。三十五年度の予算における医療給付費は一カ月当り約五億三千七百万円ぐらいで、二カ月といたしますと、十億七千万円ほどに相なります。しかしこれは先ほど御質問の二カ月云々とは、これをもってすぐ論ずるわけには参りません。それから三十五年度で新しく被保険者になるという、これは例の手帳をもらう数でございますが、約六万九千人くらい伸びるというふうに見ておるわけであります。これに現在の一人当たりの保険給付費のうちの医療給付費は年額約六千七百円弱でございますから、これをかけてみて四億六千万円、これは年額でございますからこれの六分の一くらい、約八千万円弱というようなものが二カ月くらいにあるいは相なる、こういうようなものは一応は出ます。ただしこれをもってしても二カ月の受給資格期間をやめたときの医療費の推計のめどにも私実は足りないように思うわけであります。これは申し上げるまでもなく御承知のところでございますが、日雇い健康保険はその日その日について資格を持つわけでございます。従いまして、最初の日に雇われたといいましても、それがずっといわゆる被用者保険のように継続されるという可能性は少ないのでございます。従いまして、最初の日に日雇いとして就労したからといって手帳を交付——今の制度の建前でいきますと、その手帳は一年間は有効であるということでありまして、それに直ちに手帳を交付して、それがそのままずっと受給資格を持って、病気になればすぐに医者のところに行けるかといいますと、これはやはりおそるべき逆選択がそこに出て参るわけでありまして、かようなことになりますと、いわゆる日雇いの本人といえば十割給付でございますから、そういうような意味で、この制度の盲点を利用しようという人が相当出てくる可能性はなきにしもあらずでございまして、やはりこの日雇健康保険という今の制度の建前といたしましては、この受給資格をやめて最初から出すということは不可能である、こういうふうにいわざるを得ないわけでございます。先ほど若干数字を申し上げましたが、結局今日のところでは、そういう逆選択というようなものもどれくらい出るかということは、先ほど申し上げた数字から推測することも実はできないということをお答えせざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/59
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060・滝井義高
○滝井委員 ものの見方を、こういう見方をしてみたらどうでしょうか。日雇い健康保険の保険証をもらってから二カ月閲にどの程度の罹病率があるかということですね。日雇い労働者に入るのは、病人は入れないのですよ。たとえば健康保険から日雇いに入ってくる場合は、病気になれば健康保険の継続給付でずっといっておるはずです。それから国民健康も同じです。大体日雇いに人ってくるというのは、そう初めから重い病気の人というのは私はいないと思うのです。今年度の予算で見ますと、被保険者の数は九十六万三千人ですね。昨年が八十七万一千人。この九十六万三千人の人が全部というわけじゃないのですから、さいぜんあなたがおっしゃったように六万九千人程度が新しく被保険者として入ってくる。こういう形でしょうから、そうするとその二カ月間にどの程度の罹病があるかということを、新しく入った人について二、三カ月ずっと見ていくと、およそわかってくるのじゃないかと思うのです。一応そういうことに近い数字としては、一人当たりの医療費が六千七百円、それに六万九千人をかけて四億六千万円、これの二カ月分だから六分の一で七千万円か八千万円ということになると、七千万円か八千万円あればとにかく解決するということは、一応目の子には出てくるわけです。結論は出ないことはない。それで出てくるのじゃないか。それに罹病率というものを見ていきますと、これは日雇いになってから、入った者が全部すぐにこういう形で病気になるのじゃないと私は思うのです。やはり入った初めは緊張もしておりますし、人間が精神的に緊張しておるということは案外病気にならぬことを意味しますから、入った初めは案外病気にならぬのじゃないか。そうすると二カ月で二十八日働いて、それから後にこういう状態が出てくるのじゃないか、五億三千七百万円という一カ月の平均値になってくるのじゃないかという感じもするのです。そこらあたり何かお調べになったことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/60
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061・太宰博邦
○太宰政府委員 日雇いの被保険者証を得ましてからの当初の数カ月どのくらいの罹病率かというようなものは、まだ調べたものがございませんが、これはそういうことではございませんで、お話のように健康保険の被保険者が失業いたしましても、健保の被保険者時代に病気になっておりますれば、これは継続給付になって参ります。しかし国保の方では、御承知の通り今日大体五割の給付率が大多数といたしますと、やはり国保の被保険者でありましても、半額は自分が持たねばいかぬというようなことで、これはいわゆる逆選択でもって、日雇いの被保険者証を利用する人もなきにしもあらず、一日ぐらいのことは無理してでも、とにかく日雇いの方としていけば、そこで被保険者手帳をもらうということによって、すぐあとは一年間それによって医療の給付が受けられるというようなことになりますと、やはりそこで病気にならんとする、あるいはなった当初の人が、一日無理してがんばっておれば一年間日雇いの被保険考証でもらえる可能性がある。そこにいわゆる逆選択の問題が出てくる。それからまた日雇い健康保険に現に給付を受けておる人でも、二カ月たちまして、それからあとでまた疾病になったとかなんとかいう場合に、二カ月間の手帳に印紙が張ってないとやはり受給資格がない、これは六カ月の七十八枚というのもございますが、人によりましてはそういうところで現在日雇いの被保険者に入っておる人が病気になったか、前からなっておるのだけれども、どうも今すぐ前二カ月、前六カ月間のあれではまだだめであるという場合もあるので、そういうような場合に、これは一度日雇いから出て、また日雇いに入りますと、当初から給付を受けられるというようなことでございまして、この問題は先ほど言ったような数字から推測していくということは私どもとしては困難である。ただいま申し上げましたように、これはただ財政的な問題でございません。やはり日雇い健康保険制度の今のしかけと申しますか、そういう問題の基本にこれはいろいろ影響してくる問題でございまして、従いまして午前中に御答弁申し上げましたように、この二カ月の間に医療にかかれないという点は確かに問題であり、何とかせねばならぬということは私どもも重々考えておるわけでございまするけれども、しかし今にわかにその二カ月間の期間というものを撤廃いたしまして、手帳をもらえばすぐその翌日からでも医療給付を受けるのだということにいたします場合は、これは不可能であるということを申し上げざるを得ないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/61
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062・滝井義高
○滝井委員 総合調整の問題をやる場合には、やはりこういう盲点になる、谷同になるところを残しておいたのでは、制度としては非常に跛行的になってしまうわけです。そこでこれをあなた方が直したい、こうお考えになっているのですから、莫大な何十億という金がかかるものでなくて、七千万か八千万金があれば——一億以下の金で大体片づくものなんです。そうしますと、社会の一番どん底にある、谷間にあるこういう日雇いの諸君にあたたかい手を差し伸べるというのが、一億で少なくとも、八、九十万の人が非常に喜べる制度だというのならば、これは私はまっ先にやるべきだと思うのです。ちょうどおやつ代をわずかに三円、一億九千万ですか、ロッキード半機分を出しても喜ばれるのです。これも同じです。ロッキード半機じゃない、五分の一機分出せばいいのです。一億出せばいいのです。だからそのくらいのことは私は当然やるべきだと思うのですよ。これで一つ小さいながらも谷が埋まっていく、谷がなくなるということになれば、それだけ制度としては非常によくなるのですからね。これはどうですか、せっかくいい法案をお出しになって、画龍点睛を欠くようなことがあってはならぬと思うのですが、龍は二つ目がありますから、これは一つの目になると思う、もう一つ私はあとで目を入れてもらわなければならぬと思う。今あなたの出しておるこの法案はめくらです。めくらでは社会保障の進む方向がわかりませんからね。まず日雇労働者健康保険では、一つの目を入れていく。それは二カ月のこの待期を撤廃していく、こういうことは非常に大事なことだと思いますが、どうですか。一つ与野党一致してこの点を修正をして——これはどうせ出さなければならぬ金ですからね。これをやらなければ生活保護法かどこかで救わねばならぬのですよ。同じ国の財布を、日雇いでも出し、生活保護でも出す、こんなばかなことをしなくて、どこか一本で助かる方法が一番いいのです。なるべく生活保護なんという人間の誇りを傷つけるものを——今の日本人の国民感情としては、生活保護を受けるということは、常識としてはやはり誇りを傷つけられますね。実際は憲法二十五条で保障しておる権利ですからそうでもないと思うが、今なお日本の国民の国民感情としてはそういうところがあるわけです。それならば日雇健康保険はというと、これはわれわれが保険料を出しておる当然の権利だ、こういう形でいけるのです。どうも厚生省はむずかしい問題になると検討いたします、検討いたしますで、一向問題が進まないのですけれども、一つ検討の域を脱して、五重の塔のてっぺんから、ときには首をつぶって飛びおりることが政治ですから、一つ二カ月の待期については目をつぶって、大臣にかわって次官が飛びおりてみたらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/62
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063・内藤隆
○内藤(隆)政府委員 この点は仰せのように、二十八日と申しますか、その間、健康保険、国民皆保険ができておるのに、その恩典に浴せないということは、われわれもちょっと考えるとどうも仰せのように思われますが、しかしさいぜんから局長が答弁しておるごとく、今すぐこれを実施する、せぬと言うことはどうかと思うので、検討という言葉ばかりを使ってまことに申しわけございませんが、検討をさせていただきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/63
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064・滝井義高
○滝井委員 受給の資格が二カ月、二十八日、六カ月が七十八日という二つの条件のいずれかを満たせばいいようになっておりますけれども、これは事の成り行き上、この制度が確立されてからまだ新しいのですから、二十八年からですからね、新しい制度ですからいろいろと悪い条件がついておるのですが、しかしもう三十六年から皆保険になるというこの一年前の段階では、私は当然こういうものは、三十六年に突入する前にやっておかなければならぬ問題だと思うのです。その機会は、やはりこの機会をおいてはないと思うのです。次の通常国会といえば時期的には少しおそくなります。それぞれみんな準備をしなければならぬですから、やはり私はこの国会がこの制度を確立する上の一番いい機会だと思うのです。やるということについては賛成だが、しかしもうちょっと検討させてくれというようなことですか。二カ月の撤廃をするということは、皆保険では当然撤廃をしなければならぬ、しかし財政上の問題その他もあるから、もうしばらく待ってくれ、こういうことなんですか。それとも、どうもこれは制度自体問題があるので、今すぐにはそういうことしか言えません、こういうことなのですか、どちらですか。やるという、撤廃することには賛成だ、しかし財政上の問題があるので、もうしばらく、大蔵省その他の了承も得なければならぬからと、こういうことなのですか。どうですか。やるということには賛成ですか、反対ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/64
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065・太宰博邦
○太宰政府委員 必ずしも財政上の問題ばかりではありません。やはり社会保険制度の一つとして日雇健康保険制度がある。この運営の問題です。今の問題は技術的な問題点でございまして、ただいまのところ私どもとしては、この一カ月間という待期期間をただ単純にやめるということは不可能であるというふうに考えるわけであります。ただし前々からお話のございますように、皆保険を来年の四月からやるといたしますと、皆保険になりました場合において、そういうような盲点があったのではこれはいかぬではないかということにつきましては、私どもも何とか頭をひねりまして、その辺が、谷間が埋まるようなことを考えてみたい。それは簡単にこの待期をやめるということじゃなしに、ほかのいろいろなことも、今すぐ申し上げるようなことはございませんが、何か考えて善処して参りたい、こういう気持を申し上げたわけであります。その辺は一つ御了承いただきたい、かようにお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/65
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066・滝井義高
○滝井委員 なかなかいい返事がもらえませんが、とにかく日雇い労働者が二カ月以内に病気になると医療にはかかれない。そうしますと、その結果は生活もできないのですから、ほとんど大部分は生活扶助を受けられる。そうすると、生活保護費はもらうわ、医療扶助は受けるわということになると、結局同じなんですね。日雇い労働者は、ほんとうはそこで日雇いの健康保険をもらっておれば事務的にも役所に迷惑をかけなくてもいいのだが、やはり日雇いの手続もしておる、一方それはだめなんだから、今度は福祉事務所に行って医療扶助の手続を受ける、生活保護の手続を受ける、こういうことになるわけです。出ていくのは税金です。やはりそういう点で、どうせ救わなければならぬというのだったら誇りを持って救われるやり方をしてやった方がいいじゃないかということになるわけであります。これはあなたの方がなかなかうんと言わっしゃらぬものだから、これ以上申しません。
次にもう一つの問題は、今度は病気になった場合に、もう一つ問題になるのは傷病手当金です、傷病手当金は十四日間です。二カ月しなければ病気にはかかれない。さて今度はかかったら、医療は受けられるが傷病手当金は二週間で打ち切りだ、こういう形ですね。そうすると、もう一つ、そういうわずかに十四日しか傷病手当金をくれないのに、健康保険と比べてこの日雇いの規定は非常にシビアになっておりますね。というのは、健康保険は労務不能の場合だけですよ、労務不能のときはくれます。傷病手当金をずっとくれるのです。ところが日雇いは療養を受けておらなければだめだ、療養を受けて労務が不能だという二つの条件になっておるので、これはどういうことで日雇いと健康保険は違うのですか。十六条の二か何かにあるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/66
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067・太宰博邦
○太宰政府委員 これは日雇い労務者につきましては、この労務不能という健康保険と同じような事態がなかなかつかみにくいので、療養の給付と関連させて把握をいたしておるわけであります。そういうような点から健康保険との間に若干の違いというものはあるかと思いますが、これはやはり日雇健康保険法の特質というようなことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/67
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068・滝井義高
○滝井委員 どうもそれではちょっと答弁にならぬわけです。日雇い労働者の方は、療養の給付を受けておって、同時に「その療養のため労務に服することができないとき」こうなっておるのです。それは待期も違います。片方は三日、片方は四日ですか、健康保険は労務不能だけでよろしい。そうすると日雇い労働者の方は医者にいつも診断をもらってこなければ信用できない。普通の労働者の方は労務不能ということだけで信用ができるのだということは、これはちょっと受け取りにくいですね。同じ日本人だし、同じ労働者です。ただ保険の範疇が健康保険か日雇い保険かということが違っておるだけで、どちらも政府管掌です。そういう点では、どうもちょっと今の答弁では納得ができないのです。次官、少しこまかい技術上の問題ですけれども、こういうこまかいところが大事なところです。それはわずかにニコヨンという、日給三百三十四円しかもらってないのです。その中から十四円とか十五円保険料を出して、そして医者にかかるのです。そしてたとえば盲腸を手術した。そして十日で退院して帰って医者に行かなかった。しかし盲腸で手術して十日で退院して、すぐに四日たって仕事に行けるかというと、行けないことはわかっているのです。だから十四日間はまるまる傷病手当金をくれなければいけない。ところが十日に退院して医者に行かなかったら、あと四日くれないのです。健康保険はくれるのです。だからこれはたとえば医者が、もうあなたは来なくてもよろしい。十四日間診断を書きますよ。労務不能と書きますよ。これだったらもらえるようにしてやることが、制度としては当然のことだと思うのです。この点はどうも納得がいかないのです。医学的な私のヒューマニズムからも納得ができない。次官、これは今聞いておってもおわかりになるでしょう。片方はお医者にいつも面着していなければいけない。医者に行って医者に行きましたというしるしをもらっておかなければ、労務不能とはっきりしておってもいかぬのです。健康保険は労務不能ということがはっきりしたならば傷病手当金をもらえる。片方ではもらえない。それはやはり医者の診断が出たら、そしてその病気が明らかに労務不能に値いするということが認定できれば、これは医者に行かないでも、療養給付を受けていなくてもいいんじゃないか。もしこういう条件で療養の給付を受けなければいかぬというならば、要らない薬でももらいに行くということがあるわけです。逆選択が起こってくるわけです。わずか十四日でしょう。病気で十四日間の診断が出たら、みんなやっておいてもたかが知れているのです。これは今の太宰さんの答弁では工合が悪いのです。次官どうお思いになりますか、常識ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/68
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069・太宰博邦
○太宰政府委員 なおもう一つ、もしこれを療養の給付というものに結びつけないで労務が不能になるというようなことにいたしますると、通常病気になりましてすぐ労務不能となることばかりでございませんで、現に就労状況が悪くなって、あげくの果てどうしてもこれは働けないということになって労務不能になる、そしてそこから起算ということになりますと、その前の就労状況が必ずしもよくないということのために、いざとなると受給資格を失っておるという事態ができることもあるであろうということも一つの理由といたしまして、それから先ほど申し上げたように労務不能の実態がつかめないということで、これは必ずしも日雇い労務者の人たちのために不利をはかるということでなしに、むしろその人たちの実態に合ったこういう規定の方がよろしかろうということでこれをきめたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/69
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070・滝井義高
○滝井委員 健康保険法の四十五条の傷病手当金のところと、日雇労働者健康保険法の十六条の二は、今私が言うように非常に書き方が違うわけなのです。健康保険法の方は「被保険者が療養ノ為労務二服スルコト能ハザルトキハ」となっておるわけです。ところが日雇いのときは、「被保険者が療養の給付を受けている場合において、その療養のため労務に服することができないとき」となっておるわけです。明らかに違うのです。だから日雇いの方は条件が二つになるわけです。療養の給付を受けておるということが大前提です。片一方は療養のためとなるのですから、給付を受けていなくても療養が続いておればいいわけなのです。だから医者が、あなたこれは療養が必要だと言えばいい。日雇い労働者だって、医者が療養が必要ですと言ったら、給付を受けなくてもいいと思うのです。たとえば盲腸の手術はもう糸を抜いた、もう一週間家に安静にして滋養をとっておけば仕事に行っていいんですと認定して医者が診断書を出したら、十四日間は私は上げてもいいのじゃないかと思うのです。ところがそれをわざわざ、君医者に行って薬か何かもらっておかなければだめだぞとなると、お腹が痛くなくても私はお腹が痛いのだと言って、要らぬ薬をもらいに行くことになるのです。その点は同じ日本人、同じ政府管掌の保険なのですから、健康保険と同じようにやってもいいのじゃないか、そんなに日雇い労働者諸君を疑いの目をもって見ないでもいいのじゃないかという感じがするのですが、どうですか。この点は思い切って同じにできるのじゃないですか。制度の根本が違うと言ったって、それは話にならぬです。そうするとこっちは同じ日本人ですぞ、同じ政府管掌ですぞということになる、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/70
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071・太宰博邦
○太宰政府委員 これは別に日雇い労働者の諸君の点について不利益をはかるということではございませんで、先ほど申し上げたように、大体その人たちの働く実態に合わせて、その利益を保護してあげるにはこうした方がいいということから出ているものと思うのであります。運営の点についても十分そういう面に沿って考慮しなければならぬと思いますけれども、これが健康保険と違うといいますのは、やはり日雇いの制度の中にそういう本質的なものがあり、また受給要件として二カ月何ぼという要件を課しているというようなことからいたしまして、今日のところはやはりこの方が日雇いの諸君のためにはいいのではないかというふうに考えるわけであります。しかし御意見のほどはまた将来検討いたします際にあわせて十分検討いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/71
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072・滝井義高
○滝井委員 また将来あわせて十分に検討するのじゃ困る。いろいろ十分大臣では困る。やはり悪いということに気がついたら、こういう点はすぐ改めていいのじゃないかと思う。だから、科学者の医者が、なるほどこれは療養は必要です、しかし給付はあなたはこれから三日間は受けなくてもいいですよ、こういう診断がきちっと出れば、政府管掌の健康保険は結核以外の普通の疾患は六カ月でありますけれども、これは十四日間なんです。あなたがそう言われるなら、傷病手当金の決算を言ってごらんなさい。うんと開きがあるから。三十三年度の予算、決算、三十四年度の予算、決算をちょっと説明しておいて下さい。うんと金は余っています。二割以下です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/72
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073・太宰博邦
○太宰政府委員 三十三年度の決算で申し上げますと、現金給付、これは傷病手当金のほかに若干ありますが、二億七千万円ほどの予算に対しまして七千九百余万円でございますから、確かに決算面では相当減っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/73
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074・滝井義高
○滝井委員 傷病手当金だけで見ると二億二千八十五万九千円の予算が三千六百十三万二千円の給付ですよ。二割以下です。予算が二億以上も組んであって実質的な支出はその二割以下だという、これだけ予算が余っておるのです。余れば必ず大蔵省に今度は削られて、保険のワクをだんだんあなたたちみずからが狭めることになる。こういうところは、十四日間ですし、しかも病気で休むのですから生活保護か路頭に迷わなければならぬということなのですから、もう少し健康保険と同じような施策を講じていいのじゃないかと思う。これで赤字になるということは絶対にないです。これは法律改正をする必要はない。日雇労働者健康保険法の十六条の二を健康保険法と同じように読んでいったらいいと思う。「療養の給付を受けている場合において、その療養のため労務に服することができない」ということは、薬をやったのが療養じゃないのです。やらなくても、うちで大事にしなさいよ、かたいものを食っちゃいけませんよ、激動してはいけませんよという指導をして、それを守るということも療養だと思う。これも無形の療養の給付です。医者が処方を与えるのと同じです。ただ単に紙に書いてやっておるのが処方ではなく、これは口で言っている養生の処方だと思うのです。そうするとやはり療養のために労務に服していないということでやっていいのじゃないかと思う。次官、どうですか。十四日ですから、答弁しても何のことはない。今までしゃくし定木にやっているのですから、行政指導でそういうようにやりましょう、きちっと診断書が出ればやりましょうということにしていただければ、それが一番いいのです。
〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/74
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075・内藤隆
○内藤(隆)政府委員 これは予算の問題というよりか、私の考え方では制度全般にも関係を持っておりますので、御趣旨はごもっともでありますから、十分これまた検討を加えなくてはならぬ、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/75
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076・滝井義高
○滝井委員 検討を加えるのはわかりますが、健康保険では「療養ノ為労務二服スルコト能ハザルトキハ」、どうしてそういうことが出てくる、同じ日本人で、同じ政府管掌の中で。何も療養給付を受けていなくてもいいのですよ。現実に健康保険ではどうしてそういうことができるのですか。同じ保険制度のもとで日雇いだけはなぜ療養の給付を現実に受けていなくてはならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/76
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077・太宰博邦
○太宰政府委員 健康保険の場合には、同じ事業主のところでずっと固定して働いておるわけでありますから、労務不能ということは事業主の証明書をとることが可能であります。しかし日雇いの場合においては、事業主がその日その日で縁が切れるというような建前でありまして、不定でございますために、事業主の証明がこの場合においてはとれない、こういうような制度の建前からきていることであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/77
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078・滝井義高
○滝井委員 その欠陥は職業安定所で防ぐことができると思います。毎朝職安にみなやってくるのですから、職業安定所の窓口で、きょうは君はどことどこへ行くのだ、君はあぶれだ、こういうことがはっきりしてくるのですから、それがはっきりしない人は、私はここに行きました、きょうは病気のために行きませんでしたということを、あとで通知させてもいいのじゃないかと思うのですよ。これは六カ月も金をやるというのではない、十四日間なんですからね。しかも予算よりか、決算をしてみたらば、決算は二割以下でよかったのだということならば、この制度はもう少し活用してやる必要があると私は思うのです。このくらいは国の予算一兆五千億から見ればスズメの涙の一滴ですよ。低所得階層の対策をやるのだとよくおっしゃるのだけれども、こういう点で、政府の答弁がここでできぬで、制度全般の問題でございますから十分検討いたします、検討いたしますと言うのでは、われわれはここで質問する甲斐がないですよ。日雇いの十六条と健康保険法の四十五条と同一でないことは明らかだと思う。日雇い労働者の差別待遇、こういう面まで手かせ足かせをはめられている。同じ日本人でそれほど信頼できないという制度は私は情ないと思うのです。これは行政であなた方がやろうと思えばできることなんです。それはやったって一千万円も金はふえやしませんよ。どうですか、これは行政でそういうように指導しておやりになる意思がありませんか。これは職安で、そういうインチキをもしやる人がおるならば、防止することができると思うのです。職業安定所で、どこにいつ行ったかということを、病気になったときにはきちっと届出を出させておけばいいのですよ。しかも医者が診断書を出すのですから、医師の診断書があった場合は、療養の給付を必要としないときにはやらなくても療養だけでよろしいのだ、そのかわり診断書をきちっと出すということならいいはずだと思う。これはあなた方が医者も信頼しないし被保険者も信頼しないということだ。ただあなた方の独善ですよ。そこらあたりもう少しはっきりしてみて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/78
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079・太宰博邦
○太宰政府委員 職業安定所においても、これは必ずしもはっきりつかめないと私は思います。また日雇いの労働者は必ずしも失対の労働者だけではございませんで、確かあれは五割程度であると思います。従いまして必ずしも職安を迫る人たちばかりではございませんから、その点からいっても問題がある。それから今の運営だけでやるという問題は、法律の解釈としてもなかなか問題があると私どもは考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/79
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080・滝井義高
○滝井委員 どうも制度の根本にまつわるということで、同じ日本人でもこれくらい差別待遇をされておるわけです。少なくとも法のもとで平等であるという憲法の精神が、最低の基準を示す社会保障立法の中でも差別待遇をする、しかも貧しい生活をしている人にますます過酷な法律の作り方をやっておるということは、どうも私納得できないのです。岸さんの演説もあなた方のやり方は全く違うのです。従ってそういう点ではあなた方のやり方はどうも納得がいきません。しかも金は決算面から見てもうんと少なくて、あり余っておる。こういうことでしょう。
もう一つお尋ねしますが、療養費払いをやる場合に、日雇労働者健康保険では、乙表でかかりますと支払いは甲表で行なっておりますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/80
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081・太宰博邦
○太宰政府委員 療養費払いの場合は甲表で支払いをいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/81
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082・滝井義高
○滝井委員 これもおかしいことで、それはどういう理論上の根拠からそうなるのです。乙表と甲表とは全然組み立てが違うということはあなた方のおっしゃっておる通りです。しかも公然と日本の療養制度は甲表と乙表と両方認められておるのですよ。それを乙表で診療を受けたものをなぜ甲表でやるか。どうしてそれが完全にできますか。全く違った技術上の評価、片一方はものについても平均薬価でいっている、片一方は技術料と混在しておるというようなものを、どうして甲表で評価できるかということです。一体どういう理論上の根拠から、乙表で請求書を出したものを甲表で換算をしてやるということが出てくるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/82
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083・太宰博邦
○太宰政府委員 これは甲表、乙表の二表を告示いたしました際に、大体甲表の方でもって支払うというふうにいたしたわけであります。その精神はやはり甲表というものが医療の合理化の点及び進歩の点から考えまして、当時厚生省としてはこの精神でいくべきであるという原則のもとに、療養費払いについては甲表でやる、こういうことにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/83
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084・滝井義高
○滝井委員 それはあなた方の独善であって、甲表が合理化されていないということが館林君等の説明でわかってきたわけです。甲表を合理化するのは何で合理化するか、注射と投薬を少なくするためと言ったけれども、注射と投薬とはかえってふえたのです。合理化されておらないのです。こういう点はやはり乙表で請求書が出たら乙表で支払うのが当然です。それが療養費払いというものなんですよ。全く異質の表式で支払うということは間違いだと思う。だから甲表で出たものを乙表で支払うということもあり得ない。甲表で出たら甲表、乙表で出たら乙表で支払うべきだと思うのです。これはあなた方の独善です。私は甲表で出たら中表で支払う、乙表で出たら乙表で支払うというのが正当な行き方だと思うのですが、こういう点は政務次官いかがですか。合理化であろうとなかろうと、告示したのは厚生省が告示したのですから、政府が公然と天下に二つのものを認めたって、一つは公定価格だ、一つはやみでだめですよというような行き方なら、これを天下に表明しなければいかぬ。ところが二つをお認めになって告示をされて、そうしてどちらでも自由に選択しなさい、患者も選択が自由だし、医者の方も選択が自由だ、こうおっしゃっておって、患者が乙表の方を選んで入院をした、ところが療養費払いにするときには今度は甲表で払うなんという、そんなばかなことはないですよ。そういうことになれば患者がますます損をするじゃありませんか。あるいは得をすることもあるかもしれませんが、そういう行き方は私はフェア・プレーじゃないと思うのです。患者がそれを承知の上でやったのに、お金をもらってきたら甲表で計算しておる、これはおかしいじゃないかと言ってねじ込んでも、いやそうじゃない、私の方はこれでいくことに方針をきめておるのだ、それは厚生省が勝手に方針をおきめになったのであって、国民は納得していません。われわれ国会でもそういうことは聞いたことがありません。今初めて聞いたのです。ずいぶんおかしいことだと思いますが、これはまさか制度の根本で検討しなければならぬということじゃないと思うから、すぐお返事が出ると思いますがね。乙表で出たものは乙表で支払います、甲表で出たものは甲表で支払います、これは当然の論理ですよ。政務次官どうですか、そういうことは常識ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/84
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085・内藤隆
○内藤(隆)政府委員 さいぜんの局長の説明によりまして当時の事情等がわかりましたが、私は就任日浅いので、そういうところまで聞いてもいなければ、また研究もしていないのでございます。しかしながら甲表、乙表を一本化していかなければならぬという強い意思表示等もだんだんと当委員会にも出ておりますし、また厚生省としてもさような方針でこれまた一つ研究をしなければならぬという段階に今立ち至っておりますので、そういう時期がいつになるかはここで明言できませんが、そういう時期がくればこれは十分解決すべき問題だ、私はさように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/85
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086・滝井義高
○滝井委員 その甲乙二表の一本化の問題と違うのですよ。それは、診療の基礎が乙表で診療を受けた、だから乙表の請求書を出したところが、これを甲表に換算をして甲表で支払っているのですよ。一体そういう芸当がどういう理論根拠からできますかというのです。これはよく太宰さんが言うように、滝井さん、あなたたちが料理屋で酒を飲んだ、そうすると酒のつけがきたときに、その金を払うのは保険者が支払うでしょうがというのと同じで、つけを乙表で出して、何でこれを甲表でするかというのです。ビールを飲んでおったのにウイスキーを飲んだと書きかえたら、これは詐欺ですよ。公文書偽造ですよ。診療報酬の請求書というものは一種の公文書です。その公文書を勝手に保険者が書きかえて甲表で払うというのは公文吉偽造ですよ。こんなばかなことはないですよ。これは常識で、制度の根本になるから検討をするとか、甲乙二表を一本化するから検討するという問題じゃない。甲表で出たら甲表で払うし、乙表で出たら乙表で支払うのは当然のことです。そうしてそこで乙表の診療なら乙表の診療に過誤があり、過剰が出たら、それを削るのは審査権がある保険者の自由なんです。ところが乙表で出たものを甲表で払うということは、いわば公文書偽造ですよ。乙表で出たものを甲表で支払う、そんな権限は保険者にはない。そういう権限があったら大へんですよ。そういう権限があるなら、診療報酬請求書は乙表で出ても、みんな甲表で換算して支払うということができることになるのですよ。そういう法律上の根拠は一体どこにあるのだということです。国権の最高機関である国会は厚生省の行政にそういうことをゆだねてないのです。法律のどこを見ても、療養費払いは乙表で出たら甲表で支払いなさいということは出ていない。健康保険にもあるいは日雇労働者健康保険にも出てないのです。だからこれは当然改めなければならぬと思う。この点は私はきょうは引けませんよ。検討するとか、制度の根本にまつわる問題じゃないのですから、すぐあなたの政治的な判断でできる問題ですからね。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/86
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087・内藤隆
○内藤(隆)政府委員 ごもっともな御質問でありますから、一つ研究をして、すみやかに善処したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/87
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088・滝井義高
○滝井委員 龍の目の片方、半分だけが入りました。きょうは三つか四つおもな問題を出しましたが、最後の一つだけ善処するということになりました。前の傷病手当金の問題なり待期の問題は、やはりもう少しあなた方も御検討になって、暗い谷間にホタルの光くらいのともしびはさし込ませなければいかぬと思うのです。きょうは私四時からちょっと党の会議もありますからこれでやめますが、日雇いだけ残っておりますから、あすでも時間があればやらしてもらいますが、今の点だけは一つお間違いなくすみやかに検討して、乙表で出たら乙表で又払う、甲表で出たら甲表で支払うようにしてもらいたいと思います。前の二つはできるだけ早く検討をしていただく。それでよろしゅうございますね。——首を縦に振っておるから、そういうことで了承いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/88
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089・大坪保雄
○大坪委員長代理 本日はこれにて散会いたします。
午後三時五十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X01319600308/89
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