1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年四月七日(木曜日)
午前十時四十九分開議
出席委員
委員長 永山 忠則君
理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君
理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君
理事 藤本 捨助君 理事 滝井 義高君
理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君
池田 清志君 大橋 武夫君
河野 孝子君 中山 マサ君
亘 四郎君 赤松 勇君
伊藤よし子君 小林 進君
五島 虎雄君 中村 英男君
山口シヅエ君 本島百合子君
出席国務大臣
労 働 大 臣 松野 頼三君
出席政府委員
労働事務官
(職業安定局
長) 堀 秀夫君
委員外の出席者
専 門 員 川井 章知君
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本日の会議に付した案件
身体障害者雇用促進法案(内閣提出第五五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/0
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001・永山忠則
○永山委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の身体障害者雇用促進法案を議題として審査を進めます。
質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。五島虎雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/1
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002・五島虎雄
○五島委員 若干この法案について質疑をしてみたいと思います。この法律案全文をずっとひもといてみて、この法律案は一体どういう法律の内容を持っているのだろうか、ただ法律案の名前だけが促進法である。読んで字のごとく、この法律案はただ促進だけであって、何にも実がないのじゃないかという印象がしてならないのです。何にもないのじゃないか、こういうように感ずる。何もこの中で強制的な義務もないし、それからまた促進しなければならないとかなんとかいう強行規定も何もない。ただ今町に七、八十万完全失業者がある。それからまた身体障害者もずいぶん多い。その失業者が多ければ多いほど、身体障害者の雇用は阻害されておる。そうして生活が非常に困難である。こういう中から社会党としては前の国会において身体障害者雇用法という法律案を提議して、そしてその中にはあらゆる業者、国、地方公共団体あるいは一般の企業者は法に定める範囲内においては必ずこれを雇用しなければならない。それからまた雇用された身体障害者に対するところの賃金などは国が一部これを負担していくというようなことを規定した法律案を出して、身体障害者の雇用を確保しようという企図を持ったわけです。ところが今度の国会に政府からこの身体障害者雇用促進法が出てきた。ただこの法律案の名前だけ見ると、政府もずいぶん努力して、現在の波に乗りおくれないようにこの法律案を制定されるという老婆心はいいなと思って、それを読んでみると、さいぜん言いましたように何もないのじゃないか。ILOの問題等々で、ただ名前だけを糊塗するにすぎない、こういうような気持がしてならないのです。この提案理由の説明を読んでみますと、三十八回ILOの総会において国際的に勧告が決議されておる。そういうような国際的な情勢もあるのです。そうして身体障害者の生活を確保しなければならぬというような必要があるからこの法律案を出したのだ、こういうように述べられておるわけですが、まだ第一点に、この身体障害者促進法を出した背景は一体何か。そうしてまた諸外国でこの身体障害者雇用法がどのくらいの国々に制定されているか。それからもう一つは、ILOの勧告の趣旨とこの法律案の内容が完全にマッチしているかどうかということについて明らかにしておいてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/2
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003・松野頼三
○松野国務大臣 今回提案いたしました身体障害者雇用促進法は、国際的立場から申しましても、一つのILOの身体障害者に対する共準というものが出ております。その基準の内容は必ずしもそう明確にどうだというふうな、もちろんILOの基準ですから、そう具体的のものにあらずして、身体障害者の雇用を一般的に促進するということを目的にしてあらゆる方針が立っておるわけであります。今日批准しておりますのは十七カ国であります。その中で特に罰則的なものをきめておるのは六カ国であります。あとは大体今回提案いたしましたごとく、一つの促進的思想と協力的なものを掲げておるのが大部分でございます。従って今回提案いたしましたものは、大体その十七カ国の批准いたしましたものの水準をとったわけで、特に今回日本の場合には雇用率の設定、これはどちらからというと、日本の一つの特殊的な思想がよく現われているのじゃなかろうか。それは御承知のごとく今日ほかの場合において、公共事業及び一般事業に対する雇用率の設定というものを日本でやっております。これを今回準用して身体障害者の雇用率の設定というものを設けたということは、これはどちらかといえば日本の特殊な問題だ。またこれは非常に漸進的な問題だと私は考えております。従ってILOの基準には今回の提案は大体合致し、批准をいたしております十七カ国の中の大部分の国もこのような法律が一般世界の水準であります。その中に罰則を設けたのが六カ国ある。これは国柄の内容によっても違いますけれども、これだけであって、大体今回の提案はそういう国際的背景を持っておる。
第二番目に、それは現実にどういうふうになるのだ、これはいろいろな御議論がございましょう。ことにその範囲を身体障害者福祉法に該当する者というものを一つの基準として——それ以外絶対入れないということじゃございません、身体障害者福祉法と今回の雇用促進法とはおのずから目標が違いますので、必ずしもそれを全部入れて、あとのものは一人も入れないというふうな範囲を設けるわけじゃございませんが、一応今回は身体障害者福祉法の該当者及び恩給法の一部の該当者、二つを合わせて雇用促進の一つの対象にした。その内容はどうなのだというと、今まではほとんど行政的に身体障害者の雇用促進を政府はやって参りました。これはあくまで行政的なものであって、促進に対する力がなかった。どちらかといえば行政的な恩恵といいますか、恩情という精神的なもので今日まで身体障害者をやって参りました。その場合には身体障害者の職業訓練というものをやって参りました。しかしそれはどちらかといえば精神的なものであった。今回はそれを義務づける裏づけをするような感じでこの促進法を作ったわけであります。従って今回の政府の予算の中にも適応訓練に対する予算を組むとか、そういうものは予算上に今回関係をしてきておるわけであります。第一歩でございますからそういうことを考える。
第三番目には、いわゆる雇用率の設定というものにつきましては、これは漸進的なもので、急激にこれで何十倍にふやすということは無理であります。しかし今日よりもおそらく倍ぐらいの雇用促進をするために、私たちは雇用率の設定を考えてやっておるわけであります。これは実は政府からも提案の準備を毎年いたしておりました。しかし他の行政官庁、民間から申しますと、そう身体障害者を強制的に雇用することは困る、また雇用率設定も非常にいろいろな議論があって、今日まで日の目を見なかったのであります。今回諸般の空気がそこまで漸進して参りましたので、政府としては法律として提案をいたして参りたい。私はもちろんこれで満足で、これでいいという自画自賛はいたしません。しかし最初のスタートとしては、こういうところも一つの漸進的な方向としてはいい制度だ、善政だと私は信じております。もちろんまだまだ将来の問題もありましょう。また日本の雇用慣習というものもありますから、そう一概に強制するということはなかなかむずかしい。健康な者あるいは失業者でさえも強制的に雇用ということは日本の慣習にはむずかしいのであります。まして身体障害者のことでございますから、雇う方から見ればそれはいろいろな御議論がありましょう。しかしやはり大事な日本の労働力ということから考えれば、身体障害者を放置することは政府としてはうなづけないと思いまして今回提案をいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/3
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004・五島虎雄
○五島委員 今の大臣の説明のそれ自体はわかるけれども、そうすると身体障害者雇用促進法としての効果を大臣は認めながら、まず芽を出す法律案として現在のためには有効なので、現実にこの法律が制定された暁におけるところの身体障害者それ自身の雇用は一体促進するであろうかどうかということについて、社会の受け入れ態勢ができたようなんだ、従ってこれを法制化することによって促進するのだというように受け取れたわけですけれども、しかしさいぜん申しましたようにこの法律を見てみると、率は労働省で作るのだ、示すのだ、その範囲内において雇用するように指導をするのだ。範囲内において、たとえば国の機関にしましても国鉄とか郵政省とか、そういうところに何%という率をきめられる、そうすると国鉄自体がそのパーセントに身体障害者を雇用しないという状況のときは勧告するということだけであって、何ら責任が——まあ罰則というと行き過ぎかどうか、これは論がありまするけれども、何もない。ただ勧告すれば足りるのだ、しかも強制することができないというような大臣の考え方であれば、ただりっぱな法律はありますが、しかし促進という点では、具体的には身体障害者の人々に対して非常に期待を裏切ることになりはしないか、こういうように思うのです。一体現在労働省が身体障害者雇用促進法上から見たところの身体障害者は、どのくらい該当者があるか、これは職安局長の方から説明していただいてもけっこうです。
それからもう一つこれと関連しますから一緒に質問をいたしますが、身体障害者福祉法は厚生省関係で、もちろん今まで福祉の問題についてはいろいろ努力してこられたわけですけれども、身体障害者福祉法によりましても、その該当の身体障害者があるわけです。それでこの社会保障年鑑をひもといて見ますと、福祉法関係の身体障害者は七十八万五千人と推定されている。これは昭和三十年十月の調べで、推定だと思います。もうあれから五年たっておりますから、それからずいぶん異同したのじゃないかと思うのですけれども、これとこの身体障害者雇用促進法に該当するところの対象人員とは一体どう違うのか、あるいは一緒なのかどうかということについて質問します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/4
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005・松野頼三
○松野国務大臣 先ほどの答弁で批准と言いましたのは、これは勧告ですから、批准にあらずして、これはそういう法律を制定したということに御了承をいただきたいと思います。
ただいまのお話で、何もないじゃないかということですが、この中の国の場合には採用計画を作成しなければならない、これは義務であります。罰則の問題は別として、作成は義務であります。この作成にはもちろん労働大臣が関与いたします。その実施にあたって、実施をしないときに今度は勧告をするということであります。その雇用計画の作成は義務であって、労働大臣がこれに関与する、それをなおかつ実施しなかったときには勧告をする。勧告はどちらかといえま、罰則といえば罰則的なものであります。勧告だけじゃ意味がないじゃないかといういろいろの御議論がありますが、諸般の行政機関の問題では、勧告という言葉が非常に強く使われます。かりに言えば先般の鉱山保安、これは通産省所管でありますが、これの実施についても、不十分なところがあれば労働大臣は通産省に勧告をする。この勧告というのは、どちらかといえば行政的には相当な響きを持つわけであります。もちろん勧告を受ける方もこれは非常にこたえましょう。勧告する方もこれは相当な調査と十分な結論を得てやることであります。そういうように、勧告というのは行政官庁内においては実は相当な影響を持つわけであります。従って今回作成をして、そしてそれを実施しないというので労働大臣から勧告を受けた国の機関がもしありましたならば、これは行政的には相当問題の多いことであります。何も罰金罰則でなしに、行政機関が行政機関に違法という勧告を受けたならば、それは直ちに直さなければならないというのは、非常に大きな問題であります。従って私は、勧告という言葉は相当強い制約力を持っておると信じております。もちろん行政機関ですから罰則罰金を課したって、これはかえって私に言わせれば大した重みのあるものじゃない、刑事上は別ですけれども、行政上は勧告は相当な制約力を持つ。この作成にいたしましても、勧告は各行政官庁内においてはだいぶ議論の多いところであります。
それじゃ内容はどうだといえば、今大体全被用者の〇・七%くらいが身体障害者に該当される方であります。今回の雇用率の設定は大体この倍、一・五%程度にしたい。そうすれば、今までのものが〇・七%くらいでありますので、約倍の数が今回は一応国の機関あるいは民商機関を通じて雇用が進められる。そういたしますと大体現在の被用者の倍数くらいが身体障害者の雇用率になる。ということは、行政的に大体そういう案で立案を今回練っております。従って倍のものは雇用が確かにふえるわけであります。そしてその計画を立てて、労働大臣ももちろん計画に参与いたします。従って私は倍数だけは少なくともこの法律案が通れば雇用の幅がふえる、こう考えております。
あとの計数につきましては局長から答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/5
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006・堀秀夫
○堀政府委員 ただいまお尋ねがありました厚生省の調べによるところの身体障害者福祉法に該当する人員の数は、お話しのように七十八万五千人、このように発表されております。しかしその後の情勢の変動もありましたし、またただいま大臣から説明されましたように、身体障害者福祉法の別表に該当しない者であっても相当程度の身体障害の認められる者につきましては、恩給法等を参考にいたしまして追加するということにいたしまして、この法律には別表を作成してあるわけであります。その結果、そういう関係の人々がふえてくるということも考慮いたしまして、これは昨年の末に労働省において推定いたしました数でございますが、それらのものを入れますると、身体障害者雇用促進法案の別表に該当するであろうと思われる人員は九十六万人、このように考えております。ただしその中で労働の意思、それから全然労働ができないということで——その方は労働能力がないわけであります。もちろん多少能力があれば労働能力があるということにするわけでありますが、その労働の意思と能力のある方は九十六万のうち六十二万というふうに考えております。それからその中でいわゆる失業的な形で存在しておるという方が約六万五千人程度である、このように考えております。しかしその失業形態にある方以外に、新しくどこかに就職したいというふうに考えておられる方を合わせますと大体八万人ないし九万人くらいが該当するのではないか、このように推定しております。そこで今回この法案が成立いたしましたならば、この法律にあります身体障害者雇用審議会にお諮りをいたしまして、具体的に雇用率を設定して参りたい、そうしてそれを推進していきたいと思うわけでありますが、ただいま大臣が言われましたように、大体現在の身体障害者の雇用状況は、国、地方公共団体、三公社等におきましては〇・七弱、正確に申せば〇・六九%でございます。それ以外の民間におきましては大体〇・六五%ということになっております。この場合に、国、地方公共団体それから公社等におきましては、率先垂範して身体障害者の方を雇用しようという考え方から、率も一・五%程度のものを設定したいと考えております。ただし非常に現業的な力仕事の多いようなところはそれよりもやや下げるということは考えておりますが、原則としては一・五%程度を考えておる。それから民間におきましては、ただいまの〇・六五%の倍、一・三%程度を考えております。これも土建関係等のような非常に肉体労働の多いような業種につきましては、この率を若干下げることは考えておりますが、原則は、ただいま申し上げたような考え方で進めたいと思っております。
そこで、これにつきましてどのようなことになるかと申しますと、国、地方公共団体、公社等におきまして、先ほどの〇・六九%の雇用状況でございますので、大体現在在職する身体障害者の方が二万六千人程度である、このように考えております。それに対しまして、今回一・五%程度を原則として比率を設定して雇用を増加してもらうということになりますと、さらに二万三千人の増加を見込まれるわけでございます。それから民間につきまして、現在民間の従業員十人以上の事業場に雇用されておる身体障害者の数は大体六万八千人程度でございます。今回のこの措置を実行していきますと、これにプラスいたしましてさらに六万人程度を増加するということにしております。結局国、地方公共団体、民間を合わせまして約八万三千人程度の身体障害者の雇用を増加するという計画を作成して強力に推進して参りたい、このように考えております。
そこでこの推進につきましては、第一に、国、地方公共団体、公社等におきましては、これはこの法案の十一条をごらんになるとおわかりになりますように、雇用率以上であるようにするために計画を作成しなければならないということで義務づけております。これはただいま申し上げました国、地方公共団体、公社が率先垂範すべきである、このような考え方を取り入れておるわけでございます。これについて罰則はございませんが、国、地方公共団体の義務を明らかに規定しておるのでございます。それでこの計画の作成等につきましては、事前に労働大臣に協議、通報する等の措置を政令もしくは省令で規定したいと考えております。それからその実施状況が悪いときは労働大臣から勧告することができる、このようにしております。それから民間につきましては、この雇用率以上にすることを努力義務としておりますが、しかし労働大臣が必要があると認めるときには計画の作成の命令を出すことができる、このようになっております。それからさらにその実施状況が不適当であると認められるときは勧告ができる、このようになっております。罰則を規定しておりませんが、これはいろいろの法案作成に際しまして、身体障害者雇用協議会という事実上の審議会を設け、労使、身体障害者関係の方々等にお集まりを願いまして、いろいろ案を練ったわけであります。その際の大勢の御議論におきましては、やはり現段階においては罰則をきめて無理やりに押しつけるというよりは、このような形で推進していくことが身体障害者を吸収する機運を盛り上げていくゆえんであろう、このような御議論が多かったのでございます。もとより職業安定法には、雇用状況について、労働大臣は事業主にその状況の報告を求めることができるというような一般規定はございます。これに対しては罰則も規定してございます。この身体障害者雇用計画につきましても、同じくこの職安法の規定は適用になりますので、そういう方面とも相待ってチェックしていくことはもちろんでございます。ただいまのような考え方で、この雇用率の設定、雇用計画の作成等によりまして、われわれは現在の人員の約倍にする、すなわち八万三千人程度を増加する、このような計画で進めて参ると同時に、あとは適応訓練、それから現在の職業訓練所におきますところの職業訓練をさらに強力に推進していき、これと相待って相当の手段を講ずることによりまして、身体障害者の雇用を積極的に推進して参りたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/6
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007・五島虎雄
○五島委員 大体この法律の制定後には八万三千人程度の吸収が見込まれるというようなことですが、身体障害者は九十六万人ばかりの推定だ。そうすると身体障害者のうち、労働の意思がないもの、それから労働の能力がないもの、それを引いても六十二万人だ。大体六万五千人程度が失業状態にある人々である。そうすると五十数万人というのは、大体何らかの仕事を持っておられる人だということがわかるわけですけれども、こういう人々の生活状態、たとえば賃金状態、その状態は、いろいろ非常に優秀な収入状態の人もあろうとは思いますけれども、社会保障年鑑の中で説かれているのを読みますと、非常にこの生活状態が低い。大体一万円程度ではないか。そこで家族の人々から扶助を受けて生活をしている人たちが多い、あるいは仕事がなくて生活を見てもらっている人が多い、こういうような生活の状態だということを書いてある。私たちもそうだと思う。一人前というと身体障害者の方等には悪いのですけれども、やはり労働力が肩を並べていけなければ、貸金は、それだけ現在の賃金体系の中では低いのがあたりまえだ。しかしわれわれはこういう人たちの生活を安定してやらなければならないのではないか、こういうように考えるわけです。それで仕事だけを与えても、生活の安定というものを与えない限りにおいて、この促進法そのものは仏作って魂を入れないということになるのではないか、こういうように思うわけです。それで現在、国関係では〇・六九先が身体障害者を雇用しているのだ、こういうようになるのですけれども、たとえば国鉄なら国鉄に従来関係があって、戦争に行ったりなどして、片手がなくなった、戦傷をして国に帰られた、そういう人たちは退職することなく、国鉄の大きな企業のスケールの中で何らかの仕事をさせている、あるいは国鉄関係の災害のために身体障害者になった人たちは失業させないで何らかの仕事に使っている、こういうような人たちを合わせて大体〇・七%程度の雇用者が見られているのではないかと思うのです。そうすると、一般に失業状態の身体障害者を国に今まで雇ってきたかどうか。これはもうゼロだと思うのです。これは身体検査等が厳格ですから、これはゼロだと思う。民間においてもそうだと思うのです。今や非常に就職が困難な状態のとき、身体障害者を好んで採る民間の会社はないと思うのです。身体検査が厳格になればなるほど、耳が少し悪くても、目が少し悪くても、それはやはり優秀な体格の人たちを優先的に採る。知能と体格と相兼備している人が優先的に採られて、身体障害者は失業に入っていかなければならぬというのが現状だと思うのです。で、〇・七%といい、あるいは民間の〇・六五%——〇・六五%の方は従来はその会社自体で身体障害者になった人々を退職させないで使っている、その人員が大体六万八千人に該当するというように考えられるわけですけれども、今まで雇用者が非常にあたたかい感情を持って、身体障害者の人たちは気の毒なのだから、従って自分のところにはこういうように身体障害者でも仕事ができるようにするからといって、進んで身体障害者の人たちを採用した、民間にそんな実例がありますか。
それから国の勧告というのは、鉱山保安法におけるところの勧告権が労働省にはある。実際の炭鉱の保安関係は通産省にある。勧告を出されたのはたった一ぺんじゃないですか。しかも何々を勧告するといっても、そんな勧告の力は大したものじゃない。私はこの間ガスの爆発事故で行ったのですけれども、一回だと聞いた。大体この勧告というものは義務はない。それは行政上の責任というものは、義務はあろうと思います。それからまた民間では努力義務だけを与えておる。さいぜん私が言ったように、能力に非常に差があるところの身体障害者を努力義務だけによって、さなきだに今では合理化等々と、盛んに体質の改善だとかあるいは企業合理化とかいうようなことで、どんどん首切っているような状態のとき、こういうように能力の差の歴然とある身体障害者の方々たちに、ただ努力義務だけでこの雇用が促進するということは、これはただ言うばかりじゃないかというように解釈されるのですけれども、その点の自信はあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/7
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008・堀秀夫
○堀政府委員 ただいまお話しのように、現在雇用されておる身体障害者の方々は、以前その官庁もしくは会社等に関係があったというような人が、戦争あるいは産業災害その他の事故等によりまして身体障害になられたというような関係で残っておられる方が非常に多いと思います。そこでわれわれの考えは、それではいけないという考え方でございます。要するに、今までその関係のある方が身体障害の事故が起きた場合に、それだけを雇っておればいいということではなくて、やはりその身体障害者に対しては、その能力に応じた働ける職場があるわけでありますから、これを率先して使ってもらうように推進しなければならない、これがわれわれの基本的な考え方でございます。
そこで、現在までどのような状況であるのか、新しく雇った例があるかというようなことでございますが、一、二の例を申し上げますと、たとえば昭和二十七年に、政府の事務次官会議におきまして、各官庁において身体障害者をなるべく雇うようにしようじゃないかというような申し合わせを事実上いたしまして、これを促進しようとした経緯があるわけでございます。その結果、詳しい数はわかりませんがたとえば国の機関について見ますると、昭和二十七年当時の国の機関の身体障害者雇用率は〇・三八であったわけでございますが、それが〇・六九というところまで現在は来ておるという状況でございます。しかしもとよりこれだけでは不十分であることは言を待たない。われわれが今回この法案提出に踏み切りましたゆえんのものは、やはり事実上の行政措置ではいけないので、基本的な法律案を作って、それに基づいて計画的に推進していかなければならない、このようなことが必要である、こう考えたからにほかならないわけでございます。
そこで、今回の法案によってはたしてそれを推進し得る自信はあるか、こういうお尋ねでございますが、これはただいまの国、公共団体、公社等の関係におていは、勧告というような規定もございまするが、それより前に、この十一条その他によりますると、計画を必ず作成しなければならないということになっておるわけであります。その計画を作成する場合には、あらかじめ事前に労働大臣に協議もしくは通報する等の措置を講ずる、このような手続にいたす考えでございます。このように事前にまずこの計画の作成について労働大臣に協議もしくは通報を求めるというような手続を規定いたしまするから、われわれの方としても各関係の機関あるいは公社等に対しまして、相当の発言力はあるわけでございます。これを活用して参りたい、このように思っております。それから民間につきましても、これは努力義務ということでございまするが、しかしこれに引き続きまして、職業安定所長がその必要があると認める場合には、各事業所に対しまして計画の作成命令を出すことができる、このように規定しておるわけでございます。それと勧告を併用して参りたい。さらに基本的には、雇用状況の通報、提出義務等は職業安定法の本則にございます。これには罰則もついておるのでございまするから、これらの手段を併用して参りまして、この計画を達成することに努めたいと思います。ただしこれにつきましては、われわれは大いに努力する考え方でございますが、この問題は、この法案に罰則をつけるとかつけないという問題ではなしに、根本的にはとにかく民間の関係者において、身体障害者はその能力に応じた適当な職場に使えば相当能率も発揮できるのだ、だからこの人たちはその能力に適したところに偏見を持たないでつけてあげる、こういう考え方を徹底させることが大事である。これに対しましては、強力な啓蒙、宣伝活動が必要である。それからそういうような考え方を推進するにあたりまして、いわば一種の国民運動的な形でこの考え方を進めていくということが、これはもう絶対に必要である、このように思っております。そこで今回の法案に基づきまして、身体障害者雇用審議会という審議会を正式にこの法律に基づいて作ることになりました。これには民間の関係の労使を代表する方々はもとより、学識経験者、各官庁の代表者、それから身体障害者の方自身にも入っていただきまして、ここで身体障害者の雇用促進に関する根本問題の御検討を願って、これを実施していこうという考え方でございますので、この法案が成立しますれば、まだまだ不十分ではございまするが、まず相当の効果が期待できるのではないか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/8
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009・五島虎雄
○五島委員 労働省には従来行政措置として何か身体障害者職業史生援護対策要綱というものがございますが、その援護対策要綱に基づいてどのくらいの身体障害者が就職していったか、最近における実例があれば知らしてほしい。
それからもう一つは、ただいま局長が言われたところの、従来まで身体障害者は労働には適せないものなりということで、ただ援護上の問題としてのみ取り上げられてきたのを、今度労働法上として取りしげたということは、さいぜん申しましたように、社会党ではすでに取り上げたことです。そしてそれに、おそまきながら政府も取り上げたということは、その内容いかんを問わず、これはいいと思う。しかしその内容が伴わないと困る。ただこの法律案がれっきとしてあっても、国民運動的なもので、今までの国民の考え方を是正しつつ身体障害者の生活の安定の方向へ踏み出すということは、これはいいことに違いありません。しかしこの国民運動を展開して、そうして展開することによって倍ぐらいの雇用量を保有していくんだということになるわけで、さいぜん説明されたところの現在民間では六万八千人だ、それを六万人ふやすんだ。これは法律ができたから直ちに六万人倍額増、雇用が直ちに三十五年度に拡大するということはとうてい困難だと思います。
それからもう一つは、そういう人々が雇用されたときの賃金は一体どういうようにお考えになっているのですか。さいぜん申しましたように、ただ単に温情だけでこれを雇用するということでなくて、労働をさせるんだから、雇用を実現するんだから、従って賃金がこれに並行しなければならないと思う。身体障害者だから幾らでもいいんだといって、買いたたくわけにはいかぬでしょう。政府が考慮するところも、こういう身体障害者の生活が安定することが第一の基本でなければならないと思いますけれども、このことについてこの法律は何にも規制してない、この点についてはどういうように考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/9
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010・堀秀夫
○堀政府委員 まず第一に、労働省におきまして従来から実施しておりました行政措置について申し上げます。身体障害者職業更生援護対策要綱というものを、先ほど申し上げました次官会議で申し合わせをいたしました際に、労働省においても作成いたしました。これによりまして事実上の行政指導を行なおうという考えで進んで参ったわけでございます。これにつきまして、まず第一に、職業紹介、あっせんにつきましては、身体障害者の方については任意登録制度というものを実施する、第二に求人開拓の強化、それから第三に職業訓練の強化、第四に、官公庁等に対する雇用を勧めるような措置、このようなことをやりたいと考えて実施したわけでございますが、その結果は、現在各職業安定所におきまして、昭和二十七年から三十四年末までに任意登録をされました方が八万三千六百名という数字でございます。そうして現在すでに就職された方が五万六千七百六十四名という数字になっております。そこで残りの方につきましては、現在一たん職があったがまたその職から退かれ、あるいは職がないという方で、これがいわゆる有効求職数ということになっておるわけであります。これが一万五千人くらいあるわけでございます。このような方々についてもいろいろな事情がございまするが、われわれとしては、やはりこれは単なる行政措置よりも法律の裏づけが必要である、このように考えているわけでございます。
その次に職業訓練の強化につきましては、これは身体障害者専門の職業訓練所を現在八つ作りまして約千二百人程度の方を年々収容しておるわけであります。この方々の就職率というものは大体九〇%を上回っておるという状況でございまして、われわれとしては職業訓練の強化ということを今後もさらに努力して参りたいと思うわけでございます。
それからその次に、賃金についての指導が必要ではないかというお話でございます。この賃金問題についての指導でございまするが、これは御承知のように、現在政府の賃金政策といたしましては、労使間において賃金を自主的にきめる、この大原則にのっとって、それ以外には最低賃金法があるわけでございます。そこで身体障害者につきまして、その能力、能率に応じたところの賃金が支払われるということがぜひ必要でありまして、身体障害者なるがゆえをもって不当な差別取り扱いをするということは適当でありませんし、違法である、このように考えております。それは現在の身体障害者福祉法第三条にも「国、地方公共団体及び国民は、身体障害者に対して、その障害のゆえをもって不当な差別的取扱をしてはならない。」ということがあります。従いまして、われわれといたしましては、これは身体障害者の雇用状況をよく見まして、今後の就職促進に際しまして、身体障害者なるがゆえをもっての差別的な取り扱い、これはもとより賃金もあります。そのような点については、われわれとしてもこの職業紹介、あっせん、それから就職後の指導につきましても十分に指導して参りたい。ただしその場合に、その賃金が幾らでなければならないということを法律で具体的に書くことは、これはそれぞれの身体障害者の障害状況もございまするし、それから産業のいろいろな状況もございまするので適当でない。これは具体的に各職安、それから労働基準監督署、厚生省関係の機関とアイアップいたしまして、身体障害者なるがゆえをもって不当な差別的取り扱いをする向きについては、これは是正さして参る考えでございます。なおこの法案の作成にあたりましては、先ほどお話にありました社会党がお作りになりました身体障害者雇用法、この考え方は十二分に参酌さしていただきまして、われわれがこれを作成するにあたりまして非常に貴重な参考になったということをお礼を申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/10
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011・五島虎雄
○五島委員 賃金の問題は身体障害者なるがゆえに差別をしてはならないということは、身体障害者福祉法にもありますけれども、しかし、しからばそれが現実に差別しないかどうかということは、やはり故意の差別じゃなくて、労働力とその能率において違いがあるから、従って賃金においてもそれぞれ、それはそれなりの労働力に応じて賃金が決定してあると思うのです。そうするとそれが果たして生活をまかなうに足りる賃金であるかどうかということについて疑問がわくのです。それでさいぜん社会党から出されたところの雇用法を十分参酌してあるというように局長言われたわけですけれども、そうすれば、もしもこの労働力において、能力によって賃金が差別があるとするならば、生活の安定をはかるためには、ある力によってどこかがカバーしなければ生活が安定していかないのではないかということになるわけですけれども、それを、賃金の問題を幾らにせいということは最低賃金法があるばかりだというようなことでは、生活を実際に潤すことはできないのではないか。しかも身体障害者が就労されて、そしてその人たちの賃金で、その身体障害者あるいはその家族、その力たちの生活状態は一体どうかということについては、実態について調査してありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/11
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012・堀秀夫
○堀政府委員 身体障害者の賃金でございますが、これは労働省におきまして、同じく昨年に、全体を調査いたしたわけではございませんで、抽出の調査をいたした結果でございますが、大体このような状況になっております。一万円未満の方が、男が四一%、女が八四%、それから一万円から二万円未満の方が、男が三三・七%、女が一・五%、二万円以上が、男が一八・八%、女が二・五%、こういう状況になっております。一般の身体が健全である被用者と、身体障害者の比較でございますが、これは技術的に非常にむずかしい問題でございます。それがどの程度、どこをベースにして比較すべきかということが問題であって、これにはその前に、その能率がどの程度であるかという、まず職務分析、作業状況の分析から始めなければならないわけでございます。従いまして、これが身体障害者なるがゆえに、はたして下がっておるかどうかという点については、われわれが自信をもって申し上げられる資料はただいま持ち合わしておりません。しかしこの点については、今後一つ分析を十分にいたしまして資料にいたしたい、このように思っておりますが、要するにわれわれの考え方といたしましては、具体的にそのケース、ケースによりまして、身体障害者なるがゆえに、賃金その他の不当な差別扱いがないように指導して参りたい。そのために今回の法案におきとましても、第二章におきまして、職業安定所は、求人者に対して、身体的条件その他求人条件について指導することができるというふうに書きましたのも、身体障害者なるがゆえをもって、不当な求人条件というようなものは是正させて紹介する、このようにいたしたい考えからでございます。それから就職後におきましても、環境に適応させるため必要な指導を行なうというような措置も新しく入れました。また、ただいま申し上げました雇用主に対しましては、能力検査、配置、作業設備、作業補助具その他身体障害者の雇用に関する技術的事項につきまして助言することができる、あるいは求人者に対しまして、職業能力に関する資料を提供するというような、いろいろな規定を設けました。われわれといたしましては、身体障害者なるがゆえをもっての不当な差別的待遇をやめてもらうように、具体的にその場、その場に応じて、ケース・ワーク的に指導して参りたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/12
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013・五島虎雄
○五島委員 各職場々々において賃金がどれだけ違うかということについては、具体的になかなか調べにくいと思う。しかし傾向として同一であるという断言は、あなたたちはできないでしょう。それでやはり常識論からするならば、現在の賃金体系とか、能率本位の勤労体系とか職務体系とかから類推すれば、稼働力の落ちる身体障害者の人たちに対するところの賃金は、それだけやはりベースは低いということはいえると思うのです。そうすると、今後増大していかなければならない身体障害者雇用促進において、その人たちが現実に、あるいは公共企業体、あるいは三公社とかの国の施設、あるいは民間において職を得て仕事をする場合、それを指導するのだ。指導するのは、なるほど職安局あたりで指導される。その指導はよろしいのです。これは違うじゃありませんか、もう少し上げてやったらどうですかというように、民間の使用者を指導されるでしょう。しかし、指導はしても、何も義務、責任の所在というものがこの法案でうたってなければ、それはいい考えでございますけれども、うちの企業能力はこれこれでございますから、それはいかんともしようがございません、御指導ありがとうございましたと言ってしまえば、それまでということになるのじゃないでしょうか。従って、指導するという法律はよろしいけれども、裏づけがないじゃないかというように私たちは思うのです。
それから、格差があるかないか調べることは、なかなかむずかしいでしょうが、今のように身体障害者の賃金状態が、それは職種にもよりますけれども、女は八四%が一万円以下なんだということですが、この人たちは十八才以上の婦人のことだと思うのです。それから男が四一%ということからするならば、大多数は大体一万円以下の生活であるということが言い得る。しかし、肢体が完備して、そしてからだのいい人と同じに賃金を与えなさいというようなことは、民間の使用者あたりにはそれは無理な話で、できない相談だと思うのです。幾ら法律で強制しようとしても、それはなかなか無理だと思うのです。そうすると、その人々の生活が困難なところがあると見たならば、だれかが保障しなければならない。だから、さっきから言っておるのですけれども、だれかが保障しなければ、完全な保障というような意味にはならないのじゃないかと思うのです。
そこでさいぜんも、社会党の案を十分参酌したと言われる。それならば、社会党の雇用法案の一つの柱とするところは、そういう人たちが働く意思と能力があるにもかかわらず、仕事がなくて生活に困っているのは気の毒だから、そういう人たちを救い上げるために、使用者に責任と義務を負わせて、そして就労させる。その場合、賃金が足りなくて生活に事欠く場合は、これは困難であるけれども、国の予算でその一端を見てやって、そして身体障害者の生活を見てやろうというのが社会党の案であるはずです。しかし政府の案は、これに何ら考慮が払われていない。さいぜん大臣が言われたように、この法律案は芽だけなんだ、これからいろいろ努力し、分析し、研究し、そして身体障害者の雇用率を約一・五%程度、倍額に増大していくことに目標を置くのだ——こういうことだけを言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、そういうようなことになるのじゃないかと私たちには思われて仕方がない。なぜかならば、たとえば国が、職業訓練に民間が委託した場合はその費用を一部見てやろうとか、あるいは国が、地方で重度障害者の職業訓練をする場合は費用を見てやろうというようなことが身体障害者福祉法にプラスするものである。それから今度は、一・七%とか、一・五%とか、雇用率を労働省が省令できめるのだ、そのきめるところに若干の道義的責任を負わせるのだ、これよりほかに何があるか。それは身体障害者福祉法で大体できることじゃないか。身体障害者福祉法でも職業の世話などもやっておる。そういうようなことを考えれば、大同小異じゃないかというように思われて仕方がないのです。従ってこの身体障害者の雇用の問題を中心として論ずるとき、しかも新しい法律として芽が出るとき、身体障害者の賃金の足らざる部分を国が保障する気持が将来も——いや今はないでしょう、法律に書いてないから。そういうことについて、ただ放置するのだというようなことだけで促進ができるかどうかという疑問がわくのであります。この点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/13
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014・堀秀夫
○堀政府委員 身体障害者の賃金問題でございます。これにつきまして、たとえばただいま私が申し上げました資料は十五才以上の方でございます。従いまして相当若年令の方もございます。そういう部分が入っておるということを御承知願います。また勤続も一年未満というような方も非常に多いわけでございます。そういう方も入っておるということを御承知願いたいと思います。なおこれは結局一般の賃金水準の問題ともからみ合わせなければなりません。先ほど私が申し上げましたように、身体障害者とそうでない者とがはたして不当な差別があるかという点につきましては、詳細な分析を必要といたしますので、今申し上げるに足るだけの自信のある資料を持ち合わせておりません。一般国民につきまして形式的にそれを見てみますると、やはり女の方で一万円未満が八〇%あるというような状況でございます。そういうような一般の賃金状況とにらみ合わせて考えることも必要である。しかしこれが適当であると申し上げておるわけではございません。一般の賃金水準ということもからみ合っておる問題である、このように思います。
それからその次に、何らか賃金について具体的な措置をする意図はないか、こういうお尋ねでございます。この法案には、ただいまお話がありましたようにこの問題は入れておりません。と申しますのは、ただいまの考え方といたしましては、賃金については、最低賃金を除きましては国が規制する法は現在ない。関係者の話し合いによるところの賃金決定という原則を中心にしておるわけでございます。従いましてそういうような一般的な賃金政策の現状から見ましても、身体障害者についてはこの程度にするというようなことを一律に規定することは非常にむずかしい問題である。しかしこれは身体障害者福祉法にも明記してありますように、身体障害者なるがゆえをもっての差別取り扱いは法律をもって禁止されております。従いまして身体障害者なるがゆえをもっての不当な賃金の差別というものは法律違反でございますから、われわれは具体的にその場合々々において指導をいたして参りたい考えでございます。
それから最低貸金法につきましては、最低賃金をきめました場合に、適用除外の許可というものがあります。これは中央の最低賃金審議会にもお諮りをいたしましたが、これについては厳格な基準を設けまして、具体的には地方の基準局長の許可が要る、こういうことにいたしました。この許可につきましては、現在まで最低賃金が相当できておりますが、身体障害者なるがゆえをもっての許可は一件もまだ与えておりません。要するに厳格な許可というものにかけておりまするから、この点で国が規制をいたしまする場合の身体障害者に対するところの措置は、不当なことのないように厳重なしぼりをつけておるわけでございます。
なお将夫の問題につきましては、ただいまお話がありましたようないろいろな考え方があることはわれわれも承知しております。身体障害者雇用審議会がこれから発足するわけでございまするから、具体的にこれらの問題についてさらに今後どうあるべきかというような問題については、雇用審議会においてさらに十分御意見を伺って参りたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/14
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015・五島虎雄
○五島委員 その次に行きましょう。さいぜんの説明では、職業訓練の効果のために、現在全国で八カ所を作り千二百人を訓練しておるのだ、そしてその雇用率九〇%という説明がありました。そうすると厚生省にあるアフター・ケア式なものでなくて、労働省にあるこの八カ所の中に、結核患者の治癒した者の職業訓練所は一カ所ですか、ニカ所ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/15
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016・堀秀夫
○堀政府委員 結核回復者につきまして特別な専門の訓練を行なうための訓練所といたしましては、兵庫の訓練所一カ所でございます。そのほかの方につきましては一般の職業訓練所、それからただいま申し上げました八つの身体障害者専門の訓練所等に入っておられる方もおりますが、その特別の指導はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/16
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017・五島虎雄
○五島委員 障害福祉年金の審議の当時、私たちの同僚から、身体障害者の中に内部疾患を入れろということは、厚生省にずいぶん強く言った。労働省は御承知だと思うのです。ところが結核患者の回復者に職業訓練をせしめて、そうして新しい職場につけようという施設は兵庫県伊丹に一カ所あります。そこには全国から集まってくる人たちが、大体一年に四回くらいかわって二百名ばかり収容されておるはずです。こういうような人たちは身体障害者として考慮されるのかされないのか。別表をみますと、内部疾患は身体障害者ではなように考えられるわけです。しかし何か別途に考慮する必要がある、こういうようなことも聞いておる。それから大臣が言われたのですか、何か身体障害者福祉法によりワクを広げて、いろいろ別途に広げているのだというようなことです。その広がった中にこういう人たちが入るのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/17
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018・堀秀夫
○堀政府委員 今回の身体障害者雇用促進法案につきましては、特別の別表を御承知のように設けておるわけでございますが、身体障害者福祉法の別表だけではわれわれは十分でないと考えまして、これよりもさらに範囲を広げたわけでございます。具体的に申し上げますと、いろいろございますけれども、たとえば身体障害者福祉法等においては、耳や目に障害のある方は、やはり両目あるいは両耳に障害がなければならないということになるわけでございます。しかし片目、片耳等についての障害のある方につきましても、非常に重度であるという方につきましては、やはり身体障害者の範囲に入れなければならないのではないかというような考え方を中心にいたしまして、たとえば現在の恩給法で申せば、大体原則として第三款症以上の方々につきましてはこれを入れるというような考え方で整理をいたしまして、別表を新しく作ったのでございます。ただその際におきまして、ただいまお話の胸腹部臓器の障害の者はどうであるかということでございます。これにつきましても、現在の恩給法の項症、款病等についても検討し、あるいは労災保険法の別表であるとかその他のいろいろな現行の制度も見てみましたが、これにつきましては大体補償金もしくは年金あるいは一時金を支払うというような観点からの規定になっておるわけでございます。そこで身体障害者の雇用促進という見地からいたしますと、現在のものをそのまま入れるということでは均衡がとれないような点が見受けられます。そこでわれわれといたしましては、この法案の別表の最後に、その他労働大臣が、胸腹部臓器の障害についての欠陥があるという者でそのために作業能力を欠いておるものというような方については、さらに指定して追加し得るという道を開いたわけであります。これについては身体障害者雇用審議会におきまして十分御検討を願いたいと思います。この身体障害者雇用審議会には、専門のお医者さんであるとかその他関係者を専門委員として入れるようにしております。ここにおいて客観的、医学的、技術的に十分御検討を願いまして、必要な方はこれを追加指定し得るという余地を開いて参りたい考えでございます。その場合において結核はどうなるかという問題でございます。われわれといたしましては、ただいまのところはまだ入れる考えは実は持っておらないわけであります。しかし実際問題といたしましては、この法案の推進と並びまして結核回復者の就職あっせんは強力に進めて参りたい。最近職業安定所でこの関係の技術指導を始めておりますが、職安で手がけました数字によりますと、結核回復者の就職率、これはもとより一部の数字でございますから全体を推しはかることはできませんけれども、大体職安で手がけまして指導していきますと、手がけた方の八二・七%は就職している。割合最近はよい成績が上がっております。これをさらに強力に、積極的に進めたいと考えております。ただいま第一段階といたしましては、まずただいま私が申しましたいわゆる身体障害者福祉法、それから恩給法の第三款症以上の方を考えていく。それからさらに第二段の問題としては追加指定の余地もありますから、十分にこれは検討して参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/18
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019・五島虎雄
○五島委員 ただいまの結核回復者の職業訓練の点については、なるほど就職率はいいでしょう。しかし私がある伊丹の患者といろいろ話をしたとき、あそこの訓練所に入れば結核患者の手帳にマル治ですか、治療した者なりという印鑑が押されるということです。そうしてある一定期間訓練されて、就職期になると所長も一生懸命就職のお世話をしようと努力する。職業安定所も就職をお世話しようと努力する。ところがその訓練所生徒そのものは、マル治の印の押してある手帳を見せて就職試験を受けに行かなければならない。それでマル治を隠して、ただ一種の技術を修得した者であるということで、職業訓練所などとよく相談して就職をしている、こういうような状態だというのです。一度結核にかかった人を民間企業等々は再発のおそれもあるということでなかなか採用しようという傾向にはないということです。全国から集まられてみっちり訓練をされて——その収容人員は非常に少なくて、兵庫県にあるのに北海道から来たり九州から来たりして、非常にその人たちは熱心である。従ってその就職率はいい。ところが回復者の中にはその職業訓練に入れないような人たちがたくさんある。そういう人たちは一体どういうふうにして雇用を推進するのか。ということは、この法律の雇用推進の中にこれを入れなければなかなか就職の機会はないのじゃないか、こういうように思う。今局長は、今のところ別表の中に内部疾患、結核回復者を入れる気持はない、こういうように言われるわけです。回復者ですから、一人前だと判定すれば身体障害者でないというようなことになるかもしれませんけれども、こういうようなことについては将来何か考えていかなければならないのではないかというように思うわけです。
それからもう一つは、身体障害者に対して、就職した場合、国はその事務に支障のないような何か作業具などを研究すると書いてある。支給するとは書いてないですね。そうでしょう。研究していくということならば、いまだ適当した道具というものはなかなかないということをこの法案の中から私たちは類推することができる。このことについて諸外国はずいぶん進んでいるのでしょう。わが国ではこのことについてはまだ研究程度だと解釈していいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/19
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020・堀秀夫
○堀政府委員 結核回復者につきましては、いろいろ医学的な面からもさらに御検討願わなければならない問題がございます。お話の趣旨はわれわれ十分参酌いたしまして、今後身体障害者雇用審議会におきましてこれは一つの問題として積極的に御検討を願うように配慮いたしたいと思っております。
それからいろいろな作業補助具等の問題でございます。これはわが国におきましていろいろ各方面におきまして研究が進んでおります。まだまだ未発達の面が多いようでございますが、本法案によりまして、これは第五条、第二十三条等におきまして、関係者に対する助言、それから調査、研究、資料の整備というような規定を設けておるわけでございます。われわれといたしましては今後さらに努力をいたしまして、この方面の裏づけの財政的な問題もさらに前進いたしますように、今後われわれの大きな努力目標といたしまして努力いたして参りたいと思います。
それから結核回復者につきまして申し落としましたが、職業訓練所につきましては、実は身体障害者専門の職業訓練所は本年度の予算におきまして約四千万円から五千万円程度の増額をいたしております。その人員もふやしておりまするが、そのうちの主要部分は兵庫の結核専門の訓練所の整備充実をはかるために使いたいと思っておりますので、御了承を願いたいと思います。それからさらに一般の職業訓練所におきましても、このような方々につきましてはわれわれは受け入れ態勢をさらに作って参りたい。御承知のように本年度は昨年に比べまして約七億程度の予算の増をはかりまして、収容人員も五万一千人から五万七千人程度、六千人程度の増大をいたしたわけでございますが、お話のような方々につきましての収容の余地というものもこの中において十分検討して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/20
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021・八木一男
○八木(一男)委員 ちょっと関連して伺いたいと思います。結核の回復者の問題で五島委員から御質問がございましたが、労働省に対して御質問するのは初めてですけれども、厚生省では年金の問題のときに、この結核の問題が非常にあいまいで、理論的根拠がなくて、不熱心で、でたらめな見解を持っておるわけです。労働省は厚生省のでたらめのまねをしないでやっていただきたいと思うのですけれども、結核にかかってもなおった人が完全に身体障害者じゃなしに雇用され、生活していくことは一番望ましいことでありますが、結核がなおったというのは、再発の危険性がないとか伝染の危険性がないとかいうことであって、なおり方にはいろいろある。ちょっとかかって、ちょっとなおった、かぜを引いてなおったのと似たような者は完全に一般人として働いていけると思います。ただし一般的にやはりまだ結核に対する誤解がありまして、伝染するのじゃないかとか、すぐ再発するのじゃないかということがあって、ほんとうに労働能力を持ちながら非常に工合の悪い点がございますから、職業訓練なりあるいは就職あっせんなりについて最大の努力をしていただく必要がありますが、そのほかに、結核はなおったけれども、たとえば手術をした場合もしない場合も肺活量が少なくなって、実際上身体障害がある人が相当多くある。これは目が見えにくいとか、耳が聞こえにくいとか、下足が動きにくいというようなことと同じように、やはり障害になる。それがもし事業主の方がそういう点で、今はただ伝染の危険性とか再発というようなことをぼやっと考えられている人がおりますけれども、もっときびしく、非常に冷酷に、能率だけで考えますと、肺活量の少ない人は重労働にたえられないというようなことで、やはり今の伝染の危険性というようなぼやっとしたものじゃなしに、雇用条件が悪くなる。その雇用条件の悪くなるのを、この雇用促進法と同じような考え方で、そういう人たちは労働の意思と能力があるわけですから、そういう一応の制約があっても就職できるようにしていただくことは当然ではないか、その意味で、手足とか目、耳というような障害と同じように、肺活量が少ないというものは当然入れなければならないと思います。また現状では、学問的なそれだけではなしに、結核にかかった人はすぐ使いにくいのじゃないかとか、伝染するのじゃないかと思われる状態がありますから、労働能力が肉体的に減っている人以外でもやはり雇用促進法に入れていただく必要がある。今熱心に審議をして考慮しますし促進をしますと言われたことはいいことですけれども、こういう制度ができたときに初めにできなければ、これは二、三年必ずおくれるのです。有能な局長さんがおられ、熱心な大臣が推進をしておられても、大体今までの政府のやり方では、一つの問題が始まると三年くらいはストップする。まずいのになると十年くらいストップするわけです。それで問題が片づくとほかの方だということですから、できた機会にやはり入れていただかなければそういう人たちが助からぬ。結核だけではありません。ほかの障害でも同じような状態のものがたくさんございます。そういうものを入れていただく必要がある。厚生省のような、障害が医学的に見て固定していなければというような、ほんとうに冷酷な、人間を愛するという感情が一つもなくしてすべて事務的なことがめんどうくさいというだけで国民の福祉をほうり出すような非人間的なやり方ではなしに、労働省はほんとうに働く者を愛するという意味で、そういうものをすぐ入れていただくように考慮していただく必要があると思います。そういう点につきまして大臣や局長のお考えを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/21
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022・松野頼三
○松野国務大臣 今の場合は、医学的な見解は、私は厚生省が冷酷だという意味でなしに、厚生省の見解を尊重することが正しいと思います。ただ雇用促進の問題は、これは労働省でありますから、私の方が端的に考えますと、この法案に入れることがよりいいのか、あるいは身体障害者と銘打たずに一般職業訓練でやる方がいいのか、これは限度がある。限度があるというのは、個々の症状にもよるのじゃなかろうかと思うのです。従って法律の場合にはもちろんそういうあたたかみのある意味で、これは法律が、あとから入れるとか、改正しなくても労働省令できめられるという意味で幅を持たしてございます。従って個々の場合、身体障害者に入れることがその御本人の雇用にいいのか、一般的な方は一般職業紹介で非常にはけておりまして、そういう方でいかれる方もありましょうから、私の方は入れないという意味じゃありません、そういう具体的なものは労働省令できめられるという意味で法律は公布されるようになっております。入れるようになっておりますので、個々の問題については審議会に諮るとか省令できめるとかいうことで、私の方は入れることに少しも反対ではございません。しかし雇用促進ですから、入れることによってかえってその人の雇用が悪くなるとか、身体障害者に入れられては困るのだという方も個々にはございましょうから、私はそういう意味で、何も厚生省の意見を全部まるのみにしなければいけないとも思いませんけれども、見解は厚生省の意見を支持し、運用は労働省の運用をいたしたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/22
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023・八木一男
○八木(一男)委員 その厚生省の見解を支持されると、これに入れなければならないということになるのです。厚生省は労働能力のない、たとえば社会保障で見なければならない、それの中に入れてくれてないわけです。労働能力のない、所得能力のないものに入れてくれてない以上は、雇用を促進してもらわなければその人は自殺するよりほか方法はないわけです。社会保障で見てくれないのですから、厚生省の見解を大臣は支持されるわけですから、それならば少なくとも、これは雇用の方には入れていただかなければたまったものではない。働かしてもやらない、社会保障もやらない、お前らは首をくくって死ねということになる。変なことを申し上げましたけれども、そういう意味で、厚生省の方でそういう処置ができておらないのですから、当然これはどうしてもこっちに入れていただかなければならない。今大臣のおっしゃった、どっちに入れたらいいかということは、これは私もよく考えてみなければわかりませんけれども、ちょっと弊害があると思いますが、一つの考え方だと思いますけれども、それは別として、結核回復者の中で身体障害のある者は入れるというふうに明記しておいていただければ、回復者の方で障害のない者はない者で、どんどん就職する力もちょっとも迷惑はかかりませんし、それからこういう雇用促進法でしていただかないと雇用ができない人が多数あります。ですからはずす理由は一つもない。そういうようなことで、ぜひ一つ入れていただきたい。大臣も局長の話も、そういう方の雇用を促進させてやろうというあたたかい御配慮は十分にお言葉の中に見えておりますから、言葉じりはとらえませんけれども、ぜひ一つそういうことで入れていただくように、即刻に一つお考えをいただき、積極的な、あたたかい、われわれの喜ぶようなお返事を大臣からいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/23
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024・松野頼三
○松野国務大臣 御趣旨の通り、そのまま私の力は尊重いたします。それでその運営とか内容については、雇用審議会を今回も開きますので、御趣旨を付して、私は審議会で入れるように努力いたします。ただ個々の問題をなぜ法律に書かないかというと、やはり結核は個々の問題で、病状とか固定したとかいわれるとはっきりわからないところがありますので、それはちょうど今回の審議会で、そういう医学的なものの方も参考に入れますから、私は思想としては八木委員のおっしゃる通り、御満足のいく気持でこの法律は運営いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/24
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025・滝井義高
○滝井委員 次会の質問のために、五島さんが適応訓練のことでいろいろ具体的な質問をやらなかったので、ちょっと伺います。都道府県が手当を支給をしたら、支給した分の経費の一部を国が補助することになっておりますから、その概要だけを、後日の質問のためにあなた方の考えだけを御説明願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/25
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026・堀秀夫
○堀政府委員 この適応訓練につきましては、この法案におきまして各国にもあまり例のないといわれる独自の考え方を取り入れたつもりでございます。要するに、身体障害者につきましても、一般の職業訓練の系統に乗せていくことは今後もさらに拡大強化して参りたい。予算措置もそのために十分講じまして、その方面をまず第一にやっていきたいと思います。しかしそこまでいかない方でありましても、一般の身体障害者につきましても、割合軽い方はそうでもないわけですが、その職業訓練所でやるほどまでの程度に達しなくても、相当身体障害の程度のある方については、民間の職場になかなか溶け込みにくいものでございます。それで、それを民間の職場に溶け込ませる方法はないものであろうかというような観点から、このような制度を考えたわけでございますが、都道府県が身体障害者について能力に適合する作業の環境に適応することを容易にさせるという目的のために、適応職業訓練を行なうということにいたしました。その場合に、その適応訓練は、事業主に委託して実施するという考え方をとりました。
そして具体的に申し上げますると、この適応訓練は、内容は政令もしくは省令でさらに規定する予定でございますが、大体六カ月程度といたしまして、その際これに要する経費を国が半分、都道府県が半分負担して事業主に補助をするという考え方をとっております。これは大体本年度の予算では、一人につき一カ月五千二百五十円程度を考えております。なおそのほかに身体障害者の個人の方に対しまして一カ月千円の手当を直接支給するということも考えております。これも国が半分、都道府県が半分負担する。ただいまのような考え方におきまして事業主に委託して実施するわけでございますが、大体のわれわれの考え方といたしましては、その事業場において適応訓練が終わりましたならば、その職場に溶け込むことが非常に容易になったわけでございますから、継続してずっと雇ってもらうことが期待される事業主に対して委託をする、このような考え方でいきたい。ただしその場合におきまして、万一の場合に、またよその職場へ行かなければならないような場合も考えられまするから、その環境が標準的なものであると認められるようなことが必要であると考えまして、そのような条件も付するつもりでございます。
以上のような考え方によりまして約六カ月の間身体障害者の方につきまして、職場に対して容易に溶け込ませることを目標といたしまして適応訓練を実施する予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/26
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027・滝井義高
○滝井委員 一カ月五千二百五十円という経費は国と都道府県が二分の一ずつ負担をして、事業主に経費持ちで訓練を委託する、本人は千円だ。そうしますとその人数と、大体どういう方面の事業場で何カ所ぐらいを今年予定しているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/27
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028・堀秀夫
○堀政府委員 人数につきましては、本年度は最初のすべり出しでございまして、いろいろ財政当局とも折衝いたしましたが、本年は五百名を予定しております。また将来におきましてさらに発展さして参りたい考えでございます。事業場につきましては、身体障害者雇用審議会にお諮りいたしまして、具体的に選定して参りたい。ただその選定の基準といたしましては、さしあたり二つのことはぜひ必要であろう。その一点は作業場の環境が標準的なものであること、第二点は先ほど申し上げました適応訓練のねらいからいたしまして、適応訓練が終了した後引き続いてその身体障害者を継続的に雇用してもらうということが期付される事業場を選定したい。このような二つの点を基本といたしまして、あとさらに具体的な細目につきましては、審議会等の御意見を十分伺いまして実効を上げて参りたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/28
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029・五島虎雄
○五島委員 個々の具体的な問題については、他の委員からもたくさんあると思います。私はあと一問でおしまいです。
冒頭に私は、三十八回ILO総会において身体障害者の雇用に関する勧告が行なわれたが、この身体障害者雇用促進法と完全に一致するかどうかというようなことを聞いたわけですけれども、大臣はその趣旨においては一致する、こういうように言われた。ところがその勧告は、身体障害者を強制的に雇用をするように努力しなければならない、こういうような内容を持っているのではないかというように思うわけです。ところが大臣が説明されたのには、本法案そのものには促進であって、国の特殊事情によって強制あるいは割当というようなものはしなくて、できるだけ官公庁は勧告でいき、民間は努力目標でいく、こういうようにして、数は現在の雇用のパーセンテージ上りも倍額上げていきたい、こういうことを言われたわけです。これをイギリスに例をとれば、イギリスは、官公庁関係においては三〇%程度は身体障害者を雇用しなければならない、こういうような法律そのものがあるから、従って、戦争が終わってわが国では非常に混乱したわけですけれども、イギリスあたりは終戦後でも、これは戦勝国だからそうでしょうけれども、イギリスではこの戦傷者に対するところのいわゆる身体障害者等の雇用の問題等々はもう昔に解決をしておる、こういうように聞くわけです。ところがこの芽を出したときだけその率が一・七%あるいは一・五彩ということで倍率になる。倍というのは倍そのものですから、ずいぶん飛躍するけれども、一・五%ないしは一・六九%にすぎないということになれば、イギリスの三〇%、いわゆる三割程度官公庁に身体障害者を雇用しなければならないという法律を持っているその法律に比較すると、ずいぶん差があるのじゃないか。これは国力という国の状況にも違いはあるかもしれませんけれども、その点について強制的な内容を持たない法律案を出した理由をもう一度ここで大臣に明らかにしておいてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/29
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030・松野頼三
○松野国務大臣 今二つの御質問がございましたが、ILOの勧告のおもなものは一点と二点であります。一点は補導及び職業紹介の件、これは今回のILOの勧告に合致しております。二点は、これが四つに分かれております。第一点は、使用者が健常者の解雇を避けるような方法で一定率の身体障害者を雇用すること、いわゆる定率設定が書いてあります。これは勧告に合致いたします。第二番目が、身体障害者のための一定の職業を保留すること、これは今回は重度の方に職業を指定する制度ですから、これも合致しております。三番目は、重度障害者は適職に優先的に雇用されるような措置をとること、これも今回の措置に合致しております。従って今回一、二の大きな項目のうち、小さいものを入れましても六項目のうち五項目は合致しております。従ってILOの水準には十分達しておる。なおイギリスの例をとられましたが、イギリスの三〇%という官公庁のことは存じません。一般的に法律は三%というのがイギリスであります。諸外国を見ますと、一番高いのが一〇%、一番低いのが一%であります。一番高いユーゴスラビア、ブルガリアが最高の一〇%でございます。最低は一%でアルゼンチン、それから西ドイツが八%、イギリスが三%、こういうのが今まで十四カ国で作っております雇用率の設定の基準でありまして、従って私の方の国会の提案は一・五%を基準にしているわけではございません。今まで〇・七%以下ですから、さしあたり倍以上という一・五くらいを最低の策定目標にきめて、順次これを上げていくというつもりで、特に三%とか一%ときめずに、諸外国の例に合わせながらいきたい。少なくとも最初の計画は一・五%にするというのが今回の提案の趣旨でございまして、これは今まで〇・七以下でございますから、従ってこの水準から申しましても、私は十分合致しているというふうに考えまして、世界に誇る得るとは申しませんけれども、世界の水準には当然達していると私は思っています。いずれにしましても、ここまで前進したことは私は非常な前進だと思います。保守党にしてもそういうことは進んでやりたい、私はそう思うのですが、保守党だからどうだとかいうのではなく、本気で進むべきものは賛成していただきたい。それから先ほどの八木委員のおっしゃることも、私はそのまま取り入れますから、ぜひ八木委員も御賛成いただきたい。こういうわけで、どっちかというと、ここまで日本がやるべきことがおそかっただけであって、政府もたびたび気がついておるのです。気がついておるが、なかなか踏み切れなかったのを今回踏み切ったということで、国際的にも国内的にも賛成していただきたい。もちろんいろいろなものがあります。しかし今回の法律はいろいろな場面を含められるように、労働省の省令を非常に広めております。従って、法律はいかにもかた苦しい法律でありますので、基本だけを書いて、あとは運用と政令と審議会にまかせるようにある程度幅を持たせてありますが、これがこの法案の趣旨の本体でなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/30
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031・永山忠則
○永山委員長 暫時休憩いたします。
午後零時三十六分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02619600407/31
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