1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年三月四日(金曜日)
午前十時三十八分開議
出席委員
委員長 中村 幸八君
理事 大島 秀一君 理事 小川 平二君
理事 小平 久雄君 理事 長谷川四郎君
理事 南 好雄君 理事 田中 武夫君
理事 松平 忠久君 理事 武藤 武雄君
始関 伊平君 中井 一夫君
細田 義安君 渡邊 本治君
板川 正吾君 小林 正美君
東海林 稔君 多賀谷真稔君
堂森 芳夫君 八木 昇君
北條 秀一君
出席政府委員
経済企画政務次
官 岡部 得三君
総理府事務官
(経済企画庁調
整局長) 大堀 弘君
通商産業政務次
官 内田 常雄君
通商産業政務次
官 原田 憲君
通商産業事務官
(通商局長) 松尾泰一郎君
通商産業事務官
(鉱山局長) 福井 政男君
通商産業事務官
(石炭局長) 樋詰 誠明君
通商産業事務官
(公益事業局
長) 小室 恒夫君
委員外の出席者
議 員 勝間田清一君
専 門 員 越田 清七君
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三月四日
委員矢尾喜三郎君及び和田博雄君辞任につき、
その補欠として堂森芳夫君及び多賀谷真稔君が
議長の指名で委員に選任された。
同日
委員多賀谷真稔君辞任につき、その補欠として
和田博雄君が議長の指名で委員に選任された。
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三月二日
弁理士法の一部を改正する法律案(内閣提出第
九四号)(予)
は本委員会に付託された。
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三月四日
石油資源開発への国家投資及び第二次五箇年計
画樹立に関する陳情書
(第二四一号)
同(第二四三号)
同(第二四四号)
同(第二九
九号)
同(第三〇〇号)
同(第三七三号)
石油資源開発への国家投資及び第一次五箇年計
画樹立等に関する陳情書
(第二四二号)
中小企業振興資金助成法に係る設備近代化資金
の貸付限度額増額等に関する陳情書
(第二四五号)
煙害防止法制定に関する陳情書
(第二九二号)
水俣病対策確立に関する陳情書
(第二九六号)
ガス料金及び電気料金等値上げ反対に関する陳
情書
(第三五四号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
石炭鉱業安定法案(勝間田清一君外二十二名提
出、衆法第三号)
石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出第八五号)
中小企業業種別振興臨時措置法案(内閣提出第
九一号)
海外経済協力基金法案(内閣提出第八八号)
滅失鉱業原簿調整等臨時措置法を廃止する法律
案(内閣提出第三一号)(参議院送付)
アジア経済研究所法案(内閣提出第八四号)
重油ボイラーの設置の制限等に関する臨時措置
に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提
出第八一号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/0
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001・中村幸八
○中村委員長 これより会議を開きます。
勝間田清一君外二十二名提出の石炭鉱業安定法案を議題とし、審査に入ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/1
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002・中村幸八
○中村委員長 まず趣旨の説明を聴取いたします。提出者勝間田清一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/2
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003・勝間田清一
○勝間田議員 ただいま議題になりました石炭鉱業安定法案につきまして、提案者を代表してその提案理由の説明を申し上げます。
石炭鉱業は今日、斜陽産業といわれ、日没産業とまでうわさされるほど、重大な危機に直面いたしております。この未曽有の危機の原因は、技術革新によってエネルギーの消費構造に著しい変化が現われ、石炭需要が相対的に低下したことにありますが、より根本的には、政府の石炭鉱業に対する政策の貧困と、炭鉱資本家の無為無策にあることを指摘せざるを得ないのであります。
特に政府のエネルギー政策に対する一貫性の欠除は、石炭価格の割高と相待って、競合燃料の無計画な進出を生み、石炭需要に多大な圧迫を加えて参りました。
申すまでもなく高炭価問題は、わが国石炭鉱業の宿命ともいわれております。しかも生産が弾力性に乏しいという石炭鉱業の特殊性は、わずかの経済変動でも、大きく需給関係に影響し、著しい価格の不安定を招来して、消費市場を喪失するという構造的な欠陥をも、持っているのであります。
さらに政府の石炭政策の貧困は、合理化法が意図した炭価の引き下げを来たさないばかりかいたずらに労使の紛争を惹起し、失業のちまたに放り出された炭鉱離職者のはんらんは、今日重大な社会問題となっているのであります。働く意思と働く能力のある者は必ず職につけるということは近代政治の要諦でなければなりません。
政府は、こうした構造的な欠陥に抜本的な解決策を示さないばかりか、今後四年間にさらに十万人もの首を切って、危機を何とか切り抜けようと画策しているのであります。ただいま本院に提案されました政府の合理化法の一部改正案は、まさしく首切りを合理化するための手段といわざるを得ないのであります。
すでに死の街、飢餓の谷といわれている炭鉱地帯に、これ以上失業者を発生させることは許されません。今こそ、石炭需給を長期に安定させて、しかもコストを切り下げ、雇用も拡大させる政策をとることこそ、今日われわれに課せられた緊急の政治的課題であると考えるのであります。
石炭鉱業の重要性は、今日依然として減じておりません。その一つはわが国将来のエネルギー需要の面から指摘できます。エネルギー総需要の伸びは、国民経済の成長テンポとほとんど並行して増加の一途をたどり、昭和五十年度には石炭換算で二億七千万トン以上と見込まれているのであります。
このエネルギー需要の驚異的な拡大に対する供給源としての水力はその開発がすでに限界に達し、また原子力にしてもその実用化に相当の曲折が予想される状態において、輸入燃料にのみ依存する考えは間違いでありまして、石炭鉱業に課せられた役割は依然として無視することはできません。
しかも、わが国の石炭は、今日の出炭ペースで進んでも、なお百年以上もの確定炭量を埋蔵しており、国内エネルギー資源に乏しく、また国際収支に弾力性が少ないわが国においては最大のエネルギー源であります。
その二は雇用の面から指摘できます。石炭鉱業における雇用吸収率は他産業に比して非常に高く、一千万トン当たりの稼働労働者は約七万人を数え、それに伴う関連産業労働者は数十万といわれております。
一千万人に及ぶ潜在失業者を有し、年々百万人以上もの生産年令人口の増大するわが国経済において、雇用問題は一経済政策の中心課題であり、かかる観点一からも石炭鉱業の地位はゆるがせにできないのであります。このように重要なエネルギー産業である石炭鉱業に対して、わずかな資金融通による細々とした近代化計画や、弱小炭鉱の買いつぶし等の消極策で、問題が解決できるほど、問題は簡単ではありません。石炭鉱業はすでに資本主義的経営自体に対しても、鋭い改革のメスが加えられねばならない段階に来ているのであります。
イギリスにおける炭鉱国有化政策を初め、西欧各国とも公有化その他の特殊な経営形態のもとに、国民経済の拡大発展に寄与させているのであります。こうした世界的な傾向から、ひとりわが国だけがおくれた投げやりな石炭政策を進めることは許されません。
従って社会党は、今日石炭鉱業が当面している危機を打開し、構造的欠陥を克服して、これを将来のわが国重要エネルギー源としての要請にこたえさせるため、長期的な展望をもった抜本的対策を講ぜんとするものであります。
まず第一に、石炭の生産過程に対するわれわれの基本的な考え方を明らかにいたしたいと思います。
わが国の石炭鉱業は稼働の進捗に伴って、採掘地域が漸次深部に移行し、坑道の維持、通気、排水、運搬等の経費が増加するため生産費の増大を見ております。これを最小限度に食い止め、さらに高炭価問題を解消するためには、合理的、計画的な開発を行なって炭鉱の若返り策が講ぜられねばなりません。
生産体制の集約化はそのための前提条件であります。前近代的な古い生産機構である鉱区の独占はすみやかに排除し、鉱区の整理統合を断行して、炭鉱を適正規模に再編成することが最も肝要であります。さらに休眠鉱区の解放も行なわれねばなりません。これらの諸課題は業者間の自主的解決では不可能であり、法の強制力を必要とするのであります。
第二は、流通過程における整備の問題であります。
石炭の流通機構は昭和年代になってからだけでも、過剰貯炭を処理するために昭和石炭株式会社戦時中の日本石炭株式会社、戦後経済再建のための配炭公団、そして最近では新昭和石炭等の設立を見ているのであります。このことは単に石炭が重要物資であるためのみでなく、石炭需給関係の調整の困難性を物語るものであります。需給関係を調整し、価格の安定をはかるためには、流通機構の一元化こそ絶対に必要なのであります。
第三は、石炭の需給を計画化し、その安定的確保をはかることであります。
石炭鉱業はその持つ特性から必然的に需給の計画化を要求いたします。しかもその計画化は長期に進められねばなりません。政府は今日、石炭需要の減退に対して縮小生産の方向をとっているのでありますが、これでは問題の高炭価をも解決できないのであります。高いレベルの拡大生産こそ必要なのであります。さらに積極的に新需要の開拓等が講ぜられねばなりません。このためには社会党は固体燃料としての石炭を流体化し、電気やガス等の流体エネルギーに転換して石炭需要の拡大をはからんとするものであります。
以上の見地から、石炭鉱業の当面している危機を打開し、その安定を期するため、本法案を提案する次第であります。
以下本法案の内容を簡単に御説明申し上げます。
第一章、総則は、目的と定義についての規定であります。石炭鉱業の基幹産業としての重要性にかんがみ、石炭鉱業の継続的安定を期するには、石炭の生産の近代化を推進するとともに、流通機構を整備して、その価格の低下をはかり、その需要を拡大するための諸施策を実施することを目的といたすものであります。
第二章は石炭鉱業近代化計画に関する規定でありますが、五年ごとに石炭鉱業近代化基本計画及び毎年、石炭鉱業近代化実施計画を定め、政府は実施すべき工事に必要な資金の確保に努めるよう規定したのであります。
第三章未開発炭田の開発についての規定であります。石炭資源の開発が十分に行なわれていない地域であって、石炭鉱業の近代化のためにはその開発を急速かつ計画的に行なう必要がある地域を指定し、基本計画に従って石炭資源の開発計画及び実施計画を定める旨の規定をいたしたのであります。
第四章は石炭鉱業開発株式会社に関する規定であります。未開発炭田の開発を目的として石炭鉱業開発株式会社を設立し、政府は常時会社の発行済み株式総数の二分の一以上を保有する等のほか、会社設立に伴う所要の規定を設けたのであります。
第五章は、採掘権及び鉱区の整理統合並びに坑口の開設の制限についての規定であります。鉱業権の交換、売り渡し、鉱区の増減については鉱業法に規定するところでありますが、特に、近代化実施計画で定めるところに従って急速かつ計画的な開発を行なうために鉱区の整理統合はきわめて必要でありまして、政府は適切な措置をとらねばならないといたしたのであります。坑口の開設についても許可制といたしました。
第六章は需給の安定についての規定であります。政府は、毎年石炭関係及び学識経験者よりなる石炭鉱業安定会議の意見を聞いて需給計画を定め、その需給計画に基づいて鉱業権者、租鉱権者に対し生産数量の指示をするものといたしたのであります。石炭の需要を増加させるため、都市ガス、火力発電、石炭化学等に対し、資金の確保その他適切な措置をとるべき旨の規定を設けたのであります。
さらに前述のごとき観点よりして石炭販売の一元化を行なうこととし、それがために石炭販売公団を設け、石炭の一手買い取りを行なうことといたしたのであります。しかし石炭販売公団が全生産量を取り扱うことは事実上困難でありますので、鉱業権者または租鉱権者をしてその販売の業務の一部を代行させることといたしたのであります。また小口需要については販売業者を指定して、その販売をさせることといたしたのであります。
近代化による生産費の切り下げが価格に反映するために、政府は買い取り価格及び販売価格を決定することといたしました。買い取り価格をもってしては石炭の生産費を償うことができないものにつきましては、価格調整金の制度を設けたのであります。
第七章は石炭販売公団についての規定であります。公団の資本金は五十億円とし、政府が全額出資することといたし、役員、業務、会計、監督についてそれぞれ規定を設けました。
第八章は炭鉱補償事業団についての規定であります。政府の石炭の需給調整措置の実施に伴い、石炭調整金を含む買い取り価格をもってしましても採算がとれなくなったため、事業を休廃止するのやむなきに至った鉱業権または租鉱権者の事業について、採掘権の買い取り、鉱山労働者に対する救済、鉱業等に対する善後措置を講ずるため炭鉱補償事業団を設置することといたしたのであります。
これに要する財源としては石炭販売公団からの納付金のほか、国庫補助の道も講じたのであります。離職する労働者に対しては平均賃金の六十日分を支給すると同時に、未払い賃金については債務者たる採掘権者または租鉱権者と炭鉱補償事業団との連帯債務としたのであります。また鉱害賠償に関する裁定についても必要なる措置を講じました。
第九章は石炭鉱業安定会議についての規定であります。この安定会議は石炭鉱業近代化基本計画並びにその実施計画の決定、採掘権または鉱区の整理統合、需給計画の決定、生産量の決定、買い取り価格、販売価格の決定、雇用の安定その他この法律に関する重要事項を調査審議するため、鉱業権者及び租鉱権者、労働者、石炭の消費者、炭鉱所在の地方公共団体を代表する者、学識経験者をもって構成することといたしまして、これに関する規定を設けた次第であります。
第十章雑則、第十一章罰則といたし、法律施行期日は公布の日から九十日以内に政令で定めることといたしたのであります。
以上この法案の概要について説明を申し上げた次第でありますが、日本社会党といたしましては、わが国エネルギー源における石炭鉱業の重要性にかんがみまして、石炭鉱業の安定をはかり、もって国民経済の健全な発展に寄与せんとするため、本法案を提出いたした次第であります。
議員各位におかれましては何とぞ御審議の上、本法案に賛意を表されんことを切に御願いいたしまして、提案説明を終わる次第であります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/3
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004・中村幸八
○中村委員長 次に内閣提出の石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案、中小企業業種別振興臨時措置法案、海外経済協力基金法案の三案を一括して議題とし、審査に入ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/4
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005・中村幸八
○中村委員長 まず趣旨の説明を聴取いたします。通商産業政務次官原田憲君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/5
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006・原田憲
○原田(憲)政府委員 ただいま議題となりました石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び法律案の要旨について御説明申し上げます。
御承知のように、わが国の石炭価格は、これと競合関係にある重油に比べて相当割高でありますが、これに加えて、近年の著しい技術革新に伴い流体エネルギーに対する需要が増加する傾向にありますため、石炭需要は減退しつつある状況で、このような趨勢に対処して石炭鉱業の安定をはかるためには、その抜本的体質改善を行ない、すみやかに石炭の生産費及び販売価格を大幅に引き下げる必要があると考えております。
なお、最近の石炭需給は、貯炭の減少のため好転のきざしを示しておりますが、これは昭和三十四年度に入ってから生産数量の制限に関する共同行為が行なわれていることによるものでありまして、石炭鉱業の合理化の必要性はこれによって何ら影響を受けることにはならないと考えております。
今回の改正案は、右のような考え方に立って昨年十二月石炭鉱業審議会から提出されました答申に基づきまして、昭和三十八年度の石炭販売価格を昭和三十三年度に比較して千二百円程度引き下げることにより、競合エネルギーに対し経済性を回復させることを目標とし、石炭鉱業の急速な合理化のために必要な助成措置として、石炭坑の近代化等に必要な設備資金の貸付及び非能率炭鉱の買収ワクの拡大を行なうこととしたものであります。
次に本法律案の要旨について御説明申し上げます。
第一は、新しく昭和三十八年度における合理化の目標及び石炭坑の近代化に関する事項を基本計画に定めることとしたことであります。これは石炭鉱業審議会の答申にありますように、昭和三十八年度までに石炭鉱業の急速な合理化を遂行するためには、従来の四十二年度の合理化の目標にとどまらず、三十八年度の目標をより具体的に定めて、政府、業界一体となってその達成に努力することとし、あわせて急速な合理化達成のための主要な条件の一つである石炭坑の近代化に関する事項を基本計画に定める必要があるからであります。
第二は、石炭鉱業整備事業団を改組して石炭鉱業合理化事業団とし、これに二十一億四千万円の政府出資をすることとしたことであります。石炭鉱業整備事業団は非能率炭鉱の買収を目的として設立された特殊法人でありますが、このたび従来の買収業務に加えて石炭坑の近代化等に必要な設備資金の貸付業務を行なわせることといたしましたので、その名称を変えるとともに、貸付業務に必要な資金に充てるため政府から二十一億四千万円の出資を行なうことといたしました。
石炭鉱業合理化事業団の設備資金の貸付は、石炭坑の近代化及び石炭の流通の合理化のため行なうものでありまして、石炭坑の近代化のための貸付は石炭坑の合理化投資を極力推進するため、合理化により高い生産能率と低い生産費で石炭の生産が行なわれることとなるものを対象とし、石炭の流通の合理化のための貸付はその設備が多数の石炭業者に利用されるものであって合理化の効果の大きいものを対象とすることといたしております。
なお、貸付の条件はその趣旨にかんがみ、無利子とし、貸付期間は最長十五年とし、償還は半年賦均等償還の方法で行なうこととしておりますが、これらの事項のほか、貸付を受けた会社が多額の利益を計上した場合には繰り上げて償還せしめること、貸付を受けた者が災害などのため償還することが著しく困難であると認められる場合には償還金の支払いを猶予すること等、貸付金にかかる事項を規定することといたしました。
第三は非能率炭鉱の買収のワクを拡大するための必要な規定を設けることとしたことであります。石炭鉱業整備事業団の非能率炭鉱買収ワクは石炭鉱業合理化基本計画で四百二十万トンと定められ、このために必要な費用を充てるため、昭和三十六年八月末日まで石炭業者から納付金を納付せしめることとなっておりますが、石炭鉱業の急速な合理化をはかるためさらにその買収ワクを拡大することとし、このために必要な費用とあわせて炭鉱離職者援護会に対する交付金の交付に必要な財源にあてるため、石炭業者の普通納付金の納付期間を昭和四十二年度末まで延長することといたしました。
なお、納付金のうち、従来日本開発銀行及び中小企業金融公庫に対し借入金の債務を有している石炭業者からその借り入れ残高に応じ納付せしめることとしている加算納付金制度は、合理化投資を促進するため昭和三十五年度から廃止することといたしました。
以上簡単でございましたが、この法律の提案理由及びその要旨について御説明申し上げた次第であります。
何とぞ慎重御審議の上御賛同あらんことを切望する次第であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/6
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007・中村幸八
○中村委員長 次は通商産業政務次官内田常雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/7
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008・内田常雄
○内田(常)政府委員 ただいま議題となりました中小企業業種別振興臨時措置法案について提案の理由を御説明いたします。
日本経済は、戦後高い成長率で伸展してきたのでありますが、今後その一そうの発展をはかるためには、大企業と中小企業との経営格差を早急に改善し、産業の均衡した発展をはかることが最も緊要であることは申すまでもないことでありますが、特に技術革新の急速な進展、貿易および為替の自由化等に伴う経済情勢の変化が行なわれつつある現段階においては、これがための適切な対策を促進することが必要とされて参ったのであります。
このためには、従来とも、政府において講じて参りました中小企業のための金融措置、組織化対策、診断指導等の対策をさらに推進すべきことは申すまでもありませんが、同時に中小企業は多種多様の業種を含んでおり、具体的な問題点はそれぞれの業種に特有なものがありますので、業種業態ごとに改善を必要とする事項と改善のための方法を具体的に明らかにし、いわゆるきめのこまかい対策を業種別に推進することが最も肝要と考えられるのであります。
このような見地から今回本法律案を提出いたした次第でありますが、次に本法律案の概要について申し上げます。
第一に、前述のごとき業種別対策を講ずる必要のある業種を逐次指定し、これらの業種について経営または設備の合理化、技術の向上、品質の改善、競争の正常化、取引関係の改善等に関する改善事項を定めることとし、これを定めようとするときは、その慎重を期するため、中小企業振興審議会に諮問しなければならないことといたしますとともに、改善事項が定められた場合は、その要旨の公表と中小企業者またはその団体に対する必要な指導を行なうことを規定いたしております。
第二に、この改善事項の円滑な実施をはかるためには、中小企業関係諸法規の運用を効果的に行なうことはもちろんでありますが、なお、競争の正常化及び取引関係の改善に関し必要がある場合には、主務大臣が中小企業者、関連事業者等に対して勧告をすることができることを規定いたしまして、改善事項の円滑な実施をはかることといたしております。
第三に、さきに述べました改善事項の諮問のほか、中小企業の振興に関する重要事項を調査審議させるため通商産業省に中小企業振興審議会を置くことを規定いたしております。
第四に、業種の実態に応じた改善事項を定めるため、または改善事項の円滑な遂行を確保するため、必要がある場合には、中小企業者または関連事業者から報告を徴収することができるように定めまして、中小企業の業種別の実態把握に万全を期した次第であります。
なお、本法は五カ年の臨時立法といたしまして、この期間内に、以上述べました業種別振興対策の推進をはかることといたしております。
以上本法律案の提案理由の概略を申し述べましたが、何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/8
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009・中村幸八
○中村委員長 次に経済企画政務次官岡部得三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/9
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010・岡部得三
○岡部政府委員 ただいま議題となりました海外経済協力基金法案の提案理由を御説明申し上げます。
最近の世界経済における重要な動向の一といたしまして、東南アジアその他の開発途上にある地域に対する国際経済協力の問題が大きく取り上げられていることは御承知の通りであります。すなわち、戦後、これらの開発途上にある諸国は、その資源の開発ないし工業化をはかり、急速な経済の発展と、国民生活水準の向上を意図しているのでありますが、そのためには、資本及び技術の面でその多くを先進工業国に依存せざるを得ない状態にあるのであります。
一方において、このような開発途上にある諸国の要請にこたえて、これらの国に対する経済協力を推進することは、世界経済全般から見ても、地域的不均衡を是正し、経済交流の秩序ある進展をはかるためきわめて重要なことであると考えられるのであります。このような情勢のもとに、最近においては第二世銀の設立、大西洋経済会議の発足など、経済協力を国際的規模において一そう強力に推進しようとする動きが見られるのでありますが、わが国といたしましても、今後東南アジア諸国等との経済関係の一そうの増進をはかる上から、これらの国に対する経済協力を積極的に推進することが、この際特に必要であると考えられるのであります。
もちろん従来もわが国のこれらの地域に対する経済協力が行なわれなかったわけではないのでありますが、わが国の場合、民間企業だけではなお資力も十分でなく、また政府関係機関としても、日本輸出入銀行が、輸出入金融のほか海外投融資に必要な金融を行なっているのでありますが、必ずしも十分とは申せない状況でありますので、このたび御審議をいただく海外経済協力基金法案によりまして、新たに独立の法人格を有する海外経済協力基金を設立し、経済協力をさらに積極的に推進するための体制の整備をはかることとしたのであります。
次に簡単にこの法律案の内容を御説明申し上げます。
まず基金の目的は、すでに申し上げましたように、東南アジア地域その他の開発途上にある地域の産業開発に必要な資金で従来日本輸出入銀行及び一般の金融機関から通常の条件で供給を受けることが困難な資金の円滑な供給をはかる等の業務を行なうことによりまして海外経済協力の一そうの促進をはかることであります。
次に基金の資本金は、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律によって、政府から日本輸出入銀行へ出資されておりました五十億円と、その管理運用によって得られた利益の積立金との合計額を日本輸出入銀行から承継することとし、政府がその全額を基金の設立に際し出資することとしているのでありますが、将来、必要に応じて政府が追加出資をすることとなっております。
次に、基金の業務といたしましては、東南アジア地域等の産業の開発に寄与し、かつ、わが国との経済交流を促進するため緊要と認められる事業のために、必要な資金の貸付、または、特に必要があるときは、貸付にかえて出資をすることができるほか、このような事業の準備調査またはその試験的実施のための資金の貸付、さらには以上のような投融資の業務に関連いたしまして基金がみずから必要な調査をすることができるよう規定いたしております。
なお、基金は、その設立の趣旨にかんがみまして、右の貸付等の業務を行なうにあたっては、日本輸出入銀行の業務と十分な調整を行なうとともに投融資の条件等につきましても日本輸出入銀行よりは、やや幅広く運用できるよう配慮いたしております。
次に基金の機構は、極力簡単なものとする建前から、役員としては総裁一人、理事二人、監事一人の計四人とし、また、事務の相当部分は日本輸出入銀行に委託して行なうこととしております。
なお基金の業務の運営については、関係行政機関の所掌事務と密接な関係のあるものも多いと考えられますので、総裁の諮問機関として運営協議会を設けることとし、関係行政機関と緊密な連絡を保って業務の適正な運営が行なわれるよう配慮しております。
次に基金の監督は、経済企画庁長官がこれを行なうのでありますが、この法律の規定に基づいて認可または承認をする場合には、あらかじめ、外務大臣、大蔵大臣及び通商産業大臣と協議して行なうこととなっております。
その他、定款、業務方法書、財務及び会計等の点につきましては一般の政府出資の特別法人とほぼ同様の規定を定めております。
以上がこの法律案のおもな内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/10
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011・中村幸八
○中村委員長 以上で四法案の趣旨の説明は終わりました。四法案に対する質疑は後日に譲ることにいたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/11
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012・中村幸八
○中村委員長 次に、滅失鉱業原簿調製等臨時措置法を廃止する法律案、アジア経済研究所法案、重油ボイラーの設置の制限等に関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし、審査を進めます。
質疑の通告がありますので順次これを許します。長谷川四郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/12
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013・長谷川四郎
○長谷川(四)委員 重油ボイラーの規制法は、今から三年前にこの法案が生まれるときにも、大きな問題を投げかけた法案でありまして、さらに本年度に至りまして、これが三年間延長をされるということになっております。この点について二、三の点をただしてみたいと思うのでございますが、重油ボイラーの規制法の期間の延長、さらに改正によって今後の重油の需給に、どのような影響があるかという点が一点。もう一つは、現在政府が石炭対策のために、外貨割当制度によって重油の供給を削減しておるが、今後もこの方針を続けていく考えかどうか、この二点についてまず伺ってみたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/13
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014・福井政男
○福井政府委員 今回の重油ボイラー規制法の改正によりまして、小型ボイラーを規制からはずすことにいたしておるわけでございますが、これによりまして重油の需給状況にどういう影響があるかという点でございますが、まずボイラーの数字から見まして、どういうことになるかということを申し上げますと、現在ボイラーの設置罐数は全体で五万八千百十二ございます。このうち今回の改正法案で適用外になりますものが四万六千九百三十ということで、比率から申しまして八一%がこの規制外に相なる、こういうことになって参ります。これをまず石炭の関係について見ますと、全部これが石炭でたかれるということになりますと、二百万トンということに大体の計算上はなりますが、産炭地等で使用されますボイラーの関係等を考慮いたしまして数字をはじいてみますと、そういったものが約二割ございますので、百六十万トンくらいになるであろう、こういう程度でございまして、全体の一般炭の需給状況から見ますと約四%程度でございます。これは一応理論上の計算になるわけでございまして、今後フリーになりまして、そういうものからどの程度重油に転換していくであろうか、こういうことに相なるわけでありますが、大体このうち二、三割程度、せいぜいそんな程度のものが新しく設置されましたり、あるいは更新されます場合に小型ボイラーの設置が行なわれるであろうということになりますので、重油の量から見ますと非常にわすかな数量になりまして、大体年間に重油が約千五百万キロ程度、来年度は需要が想定されておりますが、今申し上げました程度の転換ということから考えますと、ごくわすかな量になりまして、重油の需給関係から見ますと、ほとんど問題にはならない、かように考えております。
それから、第二点の重油の削減の問題でございますが、これにつきましては、御承知のように、ただいま御指摘に相なりましたように、石炭対策のためから、外貨割当制度の運用によりまして、輸入量の削減を従来いたして参っております。この点につきましては、最近この石炭は下期におきましても、そういう措置をとったわけでございますけれども、今後はできる限り供給の削減は行なわないようにいたしたい、かように考えております。具体的な検討につきましては、三十五年度の上期のものにつきましては、今後の検討に相なると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/14
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015・長谷川四郎
○長谷川(四)委員 いろいろ電力業界からの陳情等をわれわれも受けているんだが、火力発電用としての重油の専焼、ボイラーの設置について、どういうようなお考えを持っているか、また期間の問題等がこの中に含まれているが、その点はどういうふうに通産省として考えておられるか、これを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/15
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016・福井政男
○福井政府委員 電力の専焼火力の問題につきましては、この法律の改正によらないで措置していきたい、かように考えております。これはただ、ただいまお話のございましたように、業界からも要望がございますが、電力の安定的な送電を確保する、それから急激な電力負荷に即応いたしますために、ロードのセンターにその設置地点を求める必要がございますが、こういった場合に土地の問題でございますとか、あるいは貯炭場の問題でございますとか、こういった点から混焼設備の建設ということが非常にむずかしいというような場合が、立地上の制約等を受けて困難な場合がございます。こういう場合に重油の専焼火力設備を設けることが、どうしても公益事業の性格から見ましても必要であるという場合がございますので、こういったものにつきましては今後電力、石炭、こういった両方の業界の実情も十分検討しまして、そういう専焼設備ができるように検討いたして参りたい、かように考えております。この場合には現行法の第二条に通商産業省令で定めることができる規定がございますので、この規定の運用で参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/16
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017・長谷川四郎
○長谷川(四)委員 それからボイラーの設置についての問題になるんだが、たとえばこれが三カ年延長すると三十八年の十月三十一日ということになる。ボイラー設置にかりに三年かかる、あるいは二年かかるというような仮定がある。そういう場合に三十八年の十月三十一日以後に完成するという場合、こういう場合はどういうふうなお取り扱いをいたしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/17
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018・福井政男
○福井政府委員 この法律で、第二条に重油ボイラーを設置してはならないという規定になっておりまして、設置という文句を使っておるわけでございます。この設置という言葉の解釈がどういうふうにされるかということに、一つはなるわけでございますが、私どもの方の設置の解釈は、御承知のように専焼火力の工事になりますと、今お話のように非常に長くなります。ボイラーを据えつけるための工事に着手いたしましたときから、完成までの一連の行為をさすという解釈をいたしております。従いましてこの法律の施行期間内に着手するが、完成は法律の廃止後になるという場合は、この法律の許可を要するということに相なっております。現在の法律の運用ではそういう許可をすることができないことになっておりますので、ただいま申し上げましたように、この二条の省令を改正する必要があるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/18
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019・長谷川四郎
○長谷川(四)委員 そうしますと、たとえば火力のみでなく、他の一般産業に対していよいよ三十八年の十月三十一日でこの期限が終了するのだ。そうすると、小さいやつですと半年とか、一カ年あるいは四カ月、この期間内、たとえば三十八年の十月三十一日までの間というものは、その期間内の着工ということは許可はしないのだ、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/19
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020・福井政男
○福井政府委員 原則的にはそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/20
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021・長谷川四郎
○長谷川(四)委員 それに関連してもう一つ伺ってみたいのは、御承知のように貿易の自由化、為替の自由化、これは好むと好まざるにかかわらず現在日本でも当然やらなければならない、また着々と入ってきておる。このときにあたって、石油についてはどういうふうなお考えを持っておられるかということになるのですが、石油産業の自由化について石炭対策というものがあるから、これに対してはまた反面考えなければならぬ面もあると思うのですが、通産省の基本方針としてはどういう考え方を持っておるかということは、要するにきょうは局長さんの御答弁でありますけれども、すでにこの点については通産省としてのお考えがまとまっておると思うのです。またまとまっておらなければならない。またこの業界に携わる方々が、いつ自由化されるのであろうということに常に心配をしておる。従って業務にこれが大きな影響を与えるということも事実でなければならない。私はこの点について明らかにいつごろから大体やる考え方なんだというようなことを示さなければならないと思う。しかしその中には幾多やり方もあると思う。たとえば製品輸入の面と、あるいは原油の輸入の面と二つに分かれているはずであります。石炭の方の対策としての考え方があるならば、製品はどういうような取り扱いを今後に残すとかあるいは原油は先にどういうふうにやるというように区分されたものの考えが出ると思うのでございますが、この辺について明らかにお考えをお示し願いたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/21
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022・福井政男
○福井政府委員 石油類の自由化につきましては、ただいまのところまだ私どもの方で検討中でございまして、最終的に通産省の意見としてまとまったものはございません。ただ私どもただいま検討いたしておりますところでは、御指摘のように石炭との関係からどういうふうに考えるかという問題が、確かに非常に大きい一つの問題点としてございます。そのほかに国内の石油工業、これを供給量から申しますと、御承知のように輸入原油の方が九八%にも及んでおるわけでございますけれども、国内における石油工業の問題におきましても、いろいろ他に検討して参らなければならない点がございます。さらにまた、石油精製業自体について見ましても検討して参らなければならない問題点がございます。過当競争なり設備の過剰問題、こういう問題をどういうふうに考えていくかいうような問題がございまして、いろいろな問題を現在検討いたしておるわけでございます。ただ気持としましては、私どもこの大勢に向かいましてできるだけ早い機会に自由化の方向をとりたいということで、事務的には考えて検討いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/22
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023・長谷川四郎
○長谷川(四)委員 どうもそこのところがちょっとおかしいのです。自由貿易をやると各業界への影響度というものは、大体通産省としてはおわかりだと思う。従ってエネルギーを基本としての産業というもので、またその製品についての貿易が行なわれていっている。一番基本となるエネルギーだけは、各製油会社の過当競争があり、安く売らないような——いや安く売らないというか、ある程度守ってやらなければならないのだ。それを基本として働き上げたその製品が輸出されるときには、これが過当競争以上の競争を、さらに重ねていっているということになると、少し矛盾がありはしないか、こういうふうに私は考えるので、少なくとも基本産業であるエネルギーという問題をまず第一に取り上げて、これらの自由貿易を早々にやるということの方が先じゃないだろうか、私はこう考えるのだが、その点のお考えはどうなんでしょう。それは政務次官から答えて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/23
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024・内田常雄
○内田(常)政府委員 自由化につきましては、御承知のように政府といたしましては本年の一月十三日の閣議で、その決意とおおむねの方向を決定いたしまして、現段階までで政府として踏み切りましたものはすでに発表いたしております。御承知のようにある意味では原材料であるという点につきましては、同質でありますところの繊維産業の原料、原綿、原毛等につきましては来年の四月から実施をするということで踏み切っておりますが、自余の石油でありますとか、あるいは機械類でありますとかあるいは主食でありますとか砂糖でありますとか、それらのわが国貿易量のうちで相当の地位を占めるものにつきましては、今鉱山局長から述べましたような見地から研究をいたしておりまして、おおむね五月末までにそれらに対する今後のスケジュール、対策等を持ち寄って第二次の発表をしょう、こういう段階でありまして、検討中でございます。気持におきましては原材料でありますから、貿易自由化で、その製品が世界的競争のうちに立たされるということになりますと、原料であり原材料でありますものも、自由化することはよいのでありましょうが、しかし他面、御承知の石炭産業との競合関係も大いに考えなければなりませんので、この点は政府といたしましても最も慎重に検討いたしておるわけであります。重油ボイラーの規制法などにつきましても、三年延長するという趣旨も、そういうところにあると私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/24
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025・長谷川四郎
○長谷川(四)委員 どうもそこらのところはおかしい。納得がいかない。あなたは主食などというものと原油の輸入などというものを同一視することが大へんな間違いじゃないか。主食、一般農作物というものと石油、——これを基礎として日本の産業が成り立っており、また今日の拡大された実態をあなたは見ているはずだと思う。日本の産業がこれだけ拡大したのは何がもとだ、エネルギーでなければならないということは論を待たない事実である。それがまず第一に先に考えられていなければならないはずだ。さらに考えていられるから三年間の延長というものを考えていられる。それは国内資源である石炭と競合するから、三年間の延長をわれわれは認めようとしておる。さらに先日来の多額な税金を見てもおわかりの通りであろう。これだけの対策を整えて、一方には大体五月から考えているはずだということになると、何の対策かということになってしまう。もうすでに自由貿易というものに転換されておる、この現実の上に立って通産省としてのどういうふうなお考えがあるか、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/25
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026・内田常雄
○内田(常)政府委員 私が申しましたのは、石油類と主食とを同じ地位に立たせておるということではありません。それは全く違います。日本の貿易量の中で最も大きな地位を占めておりますものは、残っておるのでは石油類と主食、それと機械であります。石油類は今の外貨予算の中でおおむね八%ないし九%くらいを占めております。主食は五%くらいを占めております。機械、これがなかなか難問題でありますが、これがまた大きいもので、外貨予算の九%ないし一〇%を占めております。残っておる、今後五月までに政府として結論を出さなければならぬものとしては、今の石油類があり、機械類があり、主食あり、あるいはまた石炭そのものもあります。製鉄業を考えますときに、あるいはその他の石炭を原料とする産業を考えますときに、石炭の自由化というものも当然議題に上るべきであり、また石炭そのものも外貨予算には二%くらいの地位を占めておりますので、こういった石炭、石油、機械類、主食、それとややそれに次ぐものとしての大きさを持つものとして砂糖などにつきましては、現在のところは政府は諸般の状況や影響を調査中でありまして、五月末までの政府の自由化スケジュールをきめるときまでは、これは今だれも何とも言えないことでありますが、長谷川委員のお気持はよく了承いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/26
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027・長谷川四郎
○長谷川(四)委員 私はこれはもう質問ではなく、一言だけ申し上げておきます。
いずれにしても機械産業の原資材というものが国内に乏しい、これはおわかりの通り。その資材を外国から持ってきて、製品化して輸出していくということ、それを作り上げる基本となるものだから、——私は今の日本の機械産業というものが、いかに重要な地位に立っておるかということもわかる。わかるがゆえにさらに基本であるエネルギーの問題を、なるべく早く解決をつけてやることが、その安定を見るべきものだ、こう考える。であるからなるべく一日も早くこの自由化という面について——すぐ明日からしろというのではないのであって、何月からこれはやるのだという基本方針というものを、一般の業界に知らしてやるべきだ、それがつまり親心であり、親切な方途じゃないだろうか、こう思うのであります。一日も早くこの問題を明らかに発表してもらうことを望んで私は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/27
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028・中村幸八
○中村委員長 次は堂森芳夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/28
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029・堂森芳夫
○堂森委員 ただいま長谷川委員の質問に対しまして、政府側の答弁を聞いておりますと、ボイラー規制法の今回の一部改正案が成立したと仮定しましても、この法律は三十八年十月三十一日一ぱいの時限法律であるが、しかし期限が切れる三十八年十月三十一日以後に完成するものにも許可をしない、こういった方針になっておるというふうに聞きましたが間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/29
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030・福井政男
○福井政府委員 一般的にはその通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/30
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031・堂森芳夫
○堂森委員 そうしますとこれは新聞ですが、通産省は重油専焼ボイラーの着工許可に態度をきめたという記事があります。昭和三十五年度分に東京電力、あるいは中部電力、関西電力などから、五基の専焼ボイラーの許可申請が出ておったが、その中で三、四基は、年々百万トンずつの石油の買い上げを条件として、これを許可していく方針にきめた、従来のような厳格な法律の解釈ではなしに、着工というものと実際に専焼ボイラーを使用しておるということとは意味が違うから、一つこれを拡大解釈をして許可していこうという方針にきまった、こういうふうに新聞に書いておるわけであります。これは間違いでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/31
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032・福井政男
○福井政府委員 新聞の記事につきましては、私の見ました新聞記事で正確を欠いておるものもございますので、ただいまの点につきましてもう少し敷衍して申し上げますと、三十八年の十月三十一日、この法律の生きておりますまでに着工いたしますが、でき上がるのは失効後の十一月以降になるというものにつきましては、法律の適用という問題から申し上げますと、やはり許可を要するということに相なります。ただ火力専焼設備につきましては、先ほど申し上げましたように、どうしても必要やむを得ないものについては、具体的に検討して許可をすることになるものが出ようかと思っております。まだ具体的にどこをどうするというようなことは何もきまってはおりません。従いましてそれをやる法律的な関係としましては、先ほど長谷川委員の御質問にお答え申し上げましたように、現行法ではできないことになっておりまして、法第二条の通商産業省令を改正いたしまして許可し得る道を開かなければならない、こういうことに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/32
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033・堂森芳夫
○堂森委員 新聞記事ですから、私全部読みませんが、二月の二十三日の記者会見において、池田通産大臣が、さっき私が申し上げましたような方針で許可をすることにきめた、こういうふうに書いておるわけであります。ですから、あなたがおっしゃるように、法律改正をして三年間の延長をはかっていく、その一方では特別に省令を改正していく。しかも、先刻あなたの答弁を聞いておりますと、今度は小型ボイラーをはずすわけですが、現在ボイラーの数は五万八千百十二基あって、そのうち適用外が四万七千基弱である、つまり八〇%以上のものが規制の外にある、わずか二〇%が規制の対象になる。そうすると、この法律は石炭不況対策の一環としてやられるものだ、こう私は解釈しておるのですが、外貨を払って原油を輸入しておる今日、外貨という面からいいましても、あるいはまた石炭に対する影響から申しましても、この法律はさしたる効果がないのじゃないでしょうか。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/33
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034・福井政男
○福井政府委員 今回の改正によりまして小型がはずれますが、数から申しますと、先ほど申しましたように約八〇%のものが除外になる、こういうことに相なるわけでございます。ただ石炭の使用量から見ますと、この八〇%のものの使用量はわずかに二百万トン前後でございますので、この法律を改正いたしまして小型をはずしましても、石炭に対するウエートというものは非常に大きい、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/34
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035・堂森芳夫
○堂森委員 もう一ぺん戻るわけですが、これはいずれ大臣にお聞きする機会があると思いますが、この新聞に書いておるような、池田通産大臣が記者団に語ったという記事はその通りではない、こういう御答弁でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/35
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036・福井政男
○福井政府委員 新聞の記事につきましては私よく存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/36
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037・堂森芳夫
○堂森委員 政府が三年間延長しようという最も大きな根拠といいますか、従来五年であったのを三年というふうに区切った根本的な目標はどこにあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/37
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038・樋詰誠明
○樋詰政府委員 ボイラー法の設置並びに延長が御承知のように石炭に対する顧慮ということから行なわれておりますことは申し上げるまでもございません。先ほどからいろいろお話のありましたように、石炭が石油に対して非常に割高である、あるいは供給が安定を欠く、この点から需要家にきらわれたと申しますか、そういうこと等は大いに反省されなければならぬということで、昨年の秋通商産業省といたしましては石炭鉱業審議会に、石炭鉱業は斜陽化だとかいろいろいわれておるが、今後どうあるべきかということについての質問をしたわけであります。これにつきまして、先生も御承知のように、昨年の十二月に一応答申が出たわけでありまして、それにはやはり主要な国際競争力の基盤でもあるという意味から、経済性をできるだけ早く回復することが望ましい、また一般の需要家の方から見れば、いますぐにでも経済性を回復いてもらいたいといったいろいろな要請があるけれども、といって、石炭の方は、おいそれと合理化が実現して、簡単に価格を下げ得るものでもないということのために、石炭鉱業審議会としては、今後、石炭労使はもちろん、需要者、金融界、あるいは政府といった全関係者が協力いたしまして、できるだけすみやかに石炭の体質改善、再編成をはかるということを前提にして、一定期間を限って、エネルギーに対しても、ただ経済性の要求ということだけでなくて、もっとほかの、雇用上の問題、あるいは国際収支の問題といったほかの要素の方により大きな重点を置いて、若干の時間をかすべきであるということから、三年間にとにかく千二百円三十三年よりも販売価格を下げて経済力を確保するようにしなさい。しかも、いろいろなデータから検討いたしますと、一応五千五百万トン程度の石炭を、メリットも換算して石油と競争可能である価格で競争するということは、今後関係者の努力いかんによっては決して不可能ではないという結論から、片一方でボイラー規制法は三年間延ばすべきだ、しかし、これはあくまでも経済自由化といった大原則を否定するものでなくて、一応石炭の競争力が確保されるということになれば、人為的なほかのエネルギーに対する抑制措置がなくなって、裸で競争するという覚悟をもってこの三年間やりなさいということで、三年間のボイラー法の延長も、いろいろ各方面に異論はあったのでありますが、客観的見地から見ればやむを得ないということで政府に答申され、政府としてもそれを検討した結果、その答申が一番妥当ではないかというふうに判断いたしまして、ボイラー法の三年間の延長ということを国会にお願いするということになったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/38
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039・堂森芳夫
○堂森委員 私も今局長の答弁のごとく、昭和三十八年度中に炭価を三十三年度よりも千二百円くらい下げて、そして競合力を石炭が持つということに見合って、おそらく三年間、こういうことになったと思うのでありますが、はたして昭和三十八年度中に千二百円の炭価の引き下げということが可能かどうか、こういうこともかなり私は大きな問題があると思います。たとえば当初業者間では八百円程度の値下げをするということすらきわめて困難である、千二百円というような値下げはさらに困難性を倍加するものである、こういうような意見が圧倒的に多かったというふうに聞いておるわけであります。三年間で千二百円の炭価の値下げ、そして年産五千万トンから五千五百万トンくらいの出炭量でやっていこう、こういう政府の考え方から三年間、ボイラーの規制法を延長しよう、こういうことであろうと私は思うのであります。しからば、三年後に千二百円の値下げが可能であるとしましても、原油の値下がり、また今後の貿易の自由化という方向、また世界的な石油情勢、原油の採取の情勢、そういうものからしまして、さらに原油が値下がりをしていく、こういうことは予想できないでしょうか、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/39
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040・樋詰誠明
○樋詰政府委員 三年後に石炭の価格がはたして千二百円下がるかどうかという問題、それから石油がほんとうにわれわれが前提としたような程度で、値下がりが止まるかという御指摘の点、これは確かに先のことでございますし、この通りになるということはわれわれもはっきりしたことは申し上げられませんが、しかし各方面からデータをいただきました結果、大体石油の三年後の価格ということは、タンカーの大型化その他のこともいろいろ勘案いたしまして、一応BC平均で九千円程度という以外の数字は、こうなるはずだという、この方がより正しいのじゃないかといった数字というものは出て参らなくて、あらゆる面から検討いたしました結果、結局一応このくらいに見るのが一番常識的ではなかろうかという点で、一つそこに見当をつけたわけでございます。
それから石炭自体につきましては、これは業界の方で八百円下げるということを昨年の夏一応標榜いたしまして、いろいろ長期計画を立てておりましたが、あのときは業界自体の、たとえば大手だけでも今後五年間に千百九十億程度の投資ということをやって、できるだけ合理化をしていきたいというふうに思ったわけでございます。どうも今石油との競争ということを考えていろいろ研究いたしますと、八百円値下げではとても競争力回復ということにいかないということで、どうやったら一体競争力を回復できるかということを検討いたしました結果、結局三十九年度以降に完成を予定しておりましたような合理化工事といったようなものをできるだけ繰り上げて、三十八年度中に戦列に加える、結局繰り上げて高能率炭鉱を造成させる、それからバルキー・カーゴーで運賃諸掛りが二割ばかり占めております。そういうことで北海道から東京に持ってくるということになると、千七百円くらいいろいろ運賃諸掛りがかかってきます。そのあたりに相当合理化することによって下げ得る余地があるのではないか。中間経費の削減あるいは輸送設備の合理化というような点で下げ得るのではないかということで、業界が考えておりました八百円のほかに、今の流通関係を合理化する。これはたとえば特定港湾施設特別工事というようなもので、去年から揚げ港五港、積み出し港五港ということで工事をやっておりますが、それとタイ・アップしながらいろいろな貯炭場あるいは混炭場というものについてもできるだけ建設を急ぐということをやる。あるいは流通面のむだを排除するということをやるということと、それから山元自体において繰り上げて工事をやるということをやれば、さらに四百円程度販売価格を下げることは不可能でないということから、千二百円の引き下げは今後われわれ関係者が努力すれば可能であるというふうに判断して、それを目標にしてやっているわけであります。かりに千二百円下がったけれども石油がもっと下がったらどうするかというような問題になりますと、これは今のこの段階におきましては、そのときどうするかということを、もう一回慎重に検討しなければいかぬと思っておりますが、われわれとしましては、現在入手し得る限りのデータでは、石油との競争のために千二百円下げるということであれば、一応の競争力はあるはずだというふうに考えておりますし、石炭関係者としましてはとりあえず全力を上げてこの線に向かって邁進する以外にないということで、関係者一同にこの審議会の答申の線を一日も早く実現できるように全力を尽すようにということを要望し、われわれも及ばずながら努力する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/40
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041・堂森芳夫
○堂森委員 石炭産業一般につきましては、いずれまた他の法案と関連しまして次の機会にいろいろ質問したいと思います。私の考えでは、あなたがおっしゃるように昭和三十八年度中に千二百円の値下がりが可能で、うまくいくであろうというふうには考えられぬような気がします。また原油の値段は国際価格が下がっていくという見通しの方が、私は多いのではないかというふうに考えるわけであります。そこでしからば、政府が従来とってきた炭主油従政策というか、そういうエネルギー対策としての根本的な考え方は今後も続けていく、こういう考え方でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/41
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042・樋詰誠明
○樋詰政府委員 私の理解いたします範囲におきましては、今までとられております炭主油従政策は、今後も変更はないというふうに考えております。結局高くても悪くても国産エネルギーを使えということで、炭主油従がやられたのではございませんで、やはりいろいろの面、雇用の問題、国際収支の問題、国際競争力の直接輸出面に及ぼす影響、そういう観点から総合的に考えて、そうしてある程度の経済性を回復し得るということを前提に、それまでの間かすに若干の時をもってしようということで、必要以上に設備を押えたり、あるいは外貨の石油に対する割当を抑制したりということを、今までしたわけでございますが、それはあくまでも石炭が経済的な合理性を回復し得る産業であるという立場に立っての施策でございますし、今後においてもその意味において炭主油従という方針は曲げられることはないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/42
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043・堂森芳夫
○堂森委員 質問の方向を変えまして、従来国内における石油資源の開発につきまして、政府は非常な努力を払って参りました。たとえば石油資源開発株式会社というものが昭和三十一年から業務を開始いたしまして、昭和三十五年度に五カ年計画が終わるわけであります。そうしまして当初の目的は年産六十万キロリットルかの国内原油生産を目標としてきたが、予期に反しまして年産十万キロリットルぐらいしか石油が出ない、そういうことで従来資金的な非常な援助をしてきた、たとえば十社と申しますか、特に協力をして参りました大手筋の石油会社が、どうも石油資源開発株式会社は予期しておったような目的を達することができぬから、もう昭和三十六年からおれたちは協力しない、こういうような申し合わせをしたというふうに新聞に書いてありましたが、この石油資源開発株式会社というものの従来における成績について、少し詳しく御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/43
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044・福井政男
○福井政府委員 石油資源開発株式会社の事業の状況でございますが、御指摘のように三十五年度で五カ年計画の最終年を迎えるわけでございます。会社といたしましては三十年の終わりに発足いたしまして、自来探鉱作業を進めておるわけでございますが、その実績についてどういうふうな状況であるかという点につきまして、ごく概略を申し上げます。
作業量の方から申し上げますと、御承知のようにこの会社はただいま申し上げましたように探鉱してそれから試掘をやる、こういうのが順序でございますが、探鉱の方で重力探鉱と地震探鉱とございまして、重力探鉱の方で申し上げますと、五カ年計画の遂行率の割合が約八六%でございます。地震探鉱の方が六一%でございます。これはすべて、重力探鉱で申しますと測点数、地震探鉱で申しますと爆破点数を作業量として割合をとったものでございます。それから試掘で申しますと、地域数では約八二%でございます。井戸の数で参りますと八四%でございます。それから掘進いたしましたメートル数で参りますと約六五%、こういうことになっております。そういうふうに探鉱し試掘をいたしました成果が、どういうふうな実績になっておるかということになりますが、発見いたしました油田の数でございますが、数は大体十一でございます。それから生産量の点から申し上げますと、三十四年度が御承知のように三月がまだございますので若干の見込みを含んでおりますが、原油で申しまして七万三千六百キロということになっておりますし、それからこのほかに天然ガスを生産いたしておりますが、これが約千八百万立米であります。割合で申しますと五カ年計画に対しまして原油の方が五二%という遂行率になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/44
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045・堂森芳夫
○堂森委員 大手の石油会社が、従来石油資源開発株式会社に対して協力してきたが、今後は一切協力をしない、こういうような申し合わせをしたというふうにも聞いておるわけであります。またこの国産原油の値段が国際価格から見れば非常に高い、こういうことも一つの大きな問題でありますが、石油資源開発株式会社というものは、政府としては——三十五年度で五カ年計画は終わるわけでありますから、第二次五カ年計画、そういうものについても今後続けていく、こういう考え方を政府は持っておるのでありますか、伺っておきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/45
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046・福井政男
○福井政府委員 出資金につきまして、石油精製が申し合わせたという意味合いの記事が出ておったようでございますが、私が確かめましたところによりますと、申し合わせをしたというような事実はないようでございます。ただ年々相当額の出資を民間に仰いでおりまして、そのうちの相当部分を石油精製が負担いたしておりますので、なかなか気前よく出資をしていただけないという気持を従来から持っておる会社もありますことは、私どもも承知いたしております。今後の計画につきましては目下検討いたしておりまして、まだその結論を出しておりませんが、東北、北海道方面の関係の地方団体等からは継続して新しい計画を作ってほしいという要望が非常に多く参っております。この石油資源の方の業績が、ただいま申し上げましたような割合ではございますけれども、せっかく今後ようやく実を結ぼうというような段階にもなっておりますので、新しい計画につきましては、この五カ年計画の効果が大いに発揮されますような意味合いで検討を続けて参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/46
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047・堂森芳夫
○堂森委員 局長のただいまの答弁によりますと、精製業者が石油資源開発株式会社に対しては今後協力をしない、こういう申し入れを政府にはしていないわけでございますね、協力をするといっておるのですか、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/47
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048・福井政男
○福井政府委員 この点につきましては、何らの意思表示も私どもの方は受けておりません。いずれにいたしましても、二十五年度の出資につきましては、全然問題なく協力していただけるというふうに確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/48
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049・堂森芳夫
○堂森委員 この国内における石油資源の開発というものは、予想に反してきわめて不成績な状態で進んできたということは否定できないと思うのであります。しかもまた石油資源開発株式会社が、北スマトラにおける油田開発についていろいろ主役を演じておる、またそこに出資をしていこう、こういう状態になっておるわけでありますが、この北スマトラの石油の開発について、ただいまどういうような状態になっておりますか御説明を願いたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/49
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050・福井政男
○福井政府委員 北スマトラの油田の開発につきましては、先般石油資源開発株式会社の社長の三村氏が現地に参りまして、インドネシア政府側と話をいたして、その際の両者の話し合いの内容が、日本側から百八十八億程度の資材と役務を提供する、その見返りといたしまして原油を日本側にもらう、こういう話し合いができたわけであります。これはもちろん民間べースとしてのお話し合いでありまして、政府はそれに対して何ら関与をいたしていないわけでありまして、三村さんがおいでになりましたのも民間の人としてお話し合いにいらした、こういうことになっておりまして、石油資源会社が中心になって話をしているというような立場ではないのでありまして、もともとこの話がインドネシア政府と日本の各商社との間でいろんなルートで行なわれましたのを、そういうことではまずいだろうということで、民間側が一つになってお話し合いをする、こういうことになったのでありまして、その代表として三村さんが交渉においでになって、今申し上げたような大ざっぱなお話し合いをつけてお帰りになった、こういうことでございます。その締めくくりをしなければならないということで、お話し合いを向こうさんとしなければならぬということになるわけでありますが、ただ、そのためにはどういうふうな話し合いをしたらいいであろうかということで、関係者の間でいろいろお話し合い、御相談が行なわれておるようでありまして、それ以上現在のところ何ら進展を見ていないというふうに私どもは承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/50
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051・堂森芳夫
○堂森委員 きょうは大臣がおられませんのですが、いろいろもっと重要な点を聞きたいと思うのであります。
たとえば、最近になって、世銀の方から日本は借款を国鉄であるとか、あるいは電気産業方面について申し入れていながら、一方では、輸出入銀行から北スマトラ油田に対して百八十八億の総資金のうちの何十%か出そうとしておる。あるいはアラビア石油会社に対して巨額の融資をしようということを政府がいろいろやっている。これはけしからぬではないか。よそへ貸す金があって、しかも他の方へ回す金があって、今度は一方で貸してくれとはおかしいじゃないか、こういう申し入れが来たということが新聞に出ておりました。先般予算委員会で、アラビア石油会社に関して池田通産大臣が閣議で発言をして、輸出入銀行から巨額の融資をしようというようなことを、あなたは発言したそうであるがどうかと言ったら、私はそんなことはいたしておりません、ただアラビア石油株式会社の事業計画について、あるいは原油の産出の予想についての会社側の報告をしただけで、資金を貸そうなんという話はいたしておりません、こういうお話でありますから、これはどうも話にならぬので、それで質問はやめたわけですが、石油資源株式会社というのは政府資金、政府資金ということは国民の巨額の税金がもとでありますけれども、そういうような大切なお金が北スマトラの石油会社の方に行く。しかも今日、政府も困って、一体これをどうしたらいいかというので迷っておるというようなことも、盛んに新聞に書かれておるようなわけであります。しかも石油資源株式会社は何がしかの出資もするということをきめておるともいわれるのであります。今後のこの石油資源の開発、こういうことにつきまして、もちろん国内から、あるいは国外において生産される原油であっても、これがドルを必要としない日本への輸入であるということならば、これはもちろんきわめて歓迎すべきことでありますが、しかし今日手放しで、どこへ行ってもそう甘いことはないのであります。こういう点については、いずれまた通産大臣の出席されましたときに質問をしたい、こういうふうに私は考えておるわけであります。
そこでさらに質問を変えまして、従来日本の国の重油と揮発油、こういう問題を考えますと、日本の場合は、アメリカと違って、揮発油が安くて重油が高い、こういう状態に従来あったと思うのであります。ヨーロッパ、イタリアなんかの状態を見ますると、日本と同様に、揮発油が安くて重油が高い。これはアメリカにおけるシステムを、そのまま直輸入しておるところにも大きな原因があると思うのであります。今後こういうふうな流体エネルギーは、幾ら規制しようとしましても、どうしたって経済の原則というものは、より安くて、運搬に便利で、使用に便利なもの、こういうものを要求してくることは、これは経済の原則でありまするから、今後、石油政策、重油というもの、それからまた揮発油というもの、こういうものに関連しまして政府はどのような方針で臨んでいこうとしておられるのか、この点につきまして質問したい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/51
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052・福井政男
○福井政府委員 ただいま先生の御指摘のように、日本の石油製品の価格構成は、外国と違いまして、特にアメリカとは違いまして、揮発油が安くて重油が高い、こういう価格構成をいたしております。重油が高いということは、使用者の面から見ますと、原油から揮発油、燈軽油、こういった製品を取ったいわば残津が、原油よりも高いとは非常におかしいじゃないかというような気持が、重油の消費者の面には確かにございます。この点は、確かにそういう面があるわけでありますが、ただ石炭との関係から見ますと、やはりそれを直ちに外国のような価格構成に引き直すということもいろいろ問題があるわけでございます。ただ今後、自由化の方向へ向かって参りますわけでございますので、自由化になりますと、やはり価格形成というものは外国と同じ価格形成をいたしていませんと、非常に混乱を生じるわけでございまするし、石炭との関係を考慮しつつ、徐々に是正をしていく方向に向かってやっていきたい、かような気持を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/52
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053・堂森芳夫
○堂森委員 そうしますると、将来の石油政策の根本は、重油の需要に見合って原油を輸入していく、そうすれば日本の場合は重油の需要がぐんぐんふえてくるわけでありまするから、重油の需要に見合って原油を輸入してくる、こういうことになると、揮発油がうんと余ってくる。これは予想しなければいかぬ。こういう方法をとっていくのか、あるいは揮発油の需要に見合って原油を輸入して、日本で精製していく。そうすれば重油が足らぬことになる。今後石油政策を、一体どちらの方向にとっていくのか、そういう見通しについて御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/53
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054・福井政男
○福井政府委員 需給計画の編成をいたしまして、この外貨予算の中心にいたします観点からは、揮発油中心主義ということで、やはり参りたい、当分の間はそういう観点から参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/54
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055・堂森芳夫
○堂森委員 そうしますると、ただいま局長の答弁では、重油は足らない分は輸入していく、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/55
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056・福井政男
○福井政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/56
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057・堂森芳夫
○堂森委員 ちょうど政務次官がいらっしゃいますからお尋ねいたしますが、自由化が全面的とは申しませんが、今後の日本の貿易為替の自由化ということが大勢になっていると思うのでありますが、原油の自由化、石油の自由化ということは、実際にはいつごろになっていくというふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/57
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058・内田常雄
○内田(常)政府委員 先ほど長谷川委員からもお尋ねがあったことでありますが、これは原油にしろ重油にしろ、ある場合には燃料であり、また、ある場合には原料になっておるのでありますから、自由化政策を推し進める以上は、そういう製品の原材料につきましては、これも自由化されなければ世界競争に製品が負けるということになりますから、根本原則としては、石油などにつきましても、自由化の方向に参るべきものだと思います。ただ、今、堂森先生もよく御承知のように、重油は石炭と非常に競合をいたすものでありますので、これが一挙に、また不用意に自由化されるといたしますと、せっかく石炭の再建合理化計画を立てておりましても、これはボイラー規制法を三年間延長したくらいでは、とうてい防ぎ得ないようなことになりますので、政府部内におきましても、石油の自由化とか、あるいは機械の自由化でありますとか、あるいは同じく原料、燃料でありますところの石炭の自由化などにつきましては、最も慎重な態度をとりまして、やる場合には、自由化計画全体を三年くらいの間に段階をつけてやりたいと考えておりますけれども、その点、私が申し述べましたようなむずかしいものにつきましては、早くてもことしの五月一ぱいぐらいまでに、その自由化のスケジュールを政府部内においてめどをつけて参りたい。従って、現在はまだ研究中でございまして、これは私からでも大臣からでも、石油の自由化の時期は申し上げ得ない状況にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/58
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059・堂森芳夫
○堂森委員 もう一度重ねてお尋ねいたしますが、自由化が行なわれる品目の中では、最も慎重に、最もおそい時期に石油の自由化が行なわれる、こういうふうに解釈していいのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/59
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060・内田常雄
○内田(常)政府委員 大体その通りでございます。あるいは、おそいといいますか、これは御承知のように自由化をいたします際には、最後に自由化のできないものがあってもいいというガット協定の打ち合わせになっております。バード・コア・ウエーバーということになっておりまして、従って日本におきましても、主食でありますとか、農産物の一部でありますとか、あるいは問題の石炭というようなものは、そのバード・コア・ウエーバーに該当するものでありますので、それに石油は密接の関係を持つものであると私は考えますので、これは最も慎重を期すべきものであろうと思います。もっとも、やることになりますれば、かようなものは繊維原料と同じように、これは一年も二年も前から自由化をするという発表を行なって、それに対処する態勢を整えておくことにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/60
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061・堂森芳夫
○堂森委員 主食のごとく、あるいは行なえない、こういう場合もあり得ますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/61
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062・内田常雄
○内田(常)政府委員 そういう場合もあり得ます。たとえば石油につきましても、これは私の個人的見解でありますが、最終製品でありますところの潤滑油でありますとか、そういうものにつきましては、自由化に手をつけます際にも、最初に自由化に手をつけることは可能なことであろうと考えますが、今の重油というようなものになりますと、いろいろむずかしい問題があり得るわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/62
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063・堂森芳夫
○堂森委員 原油は自由化しないが、たとえば原油から精製していった重油もそうであると思いますが、そういうものは自由化していく場合もございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/63
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064・内田常雄
○内田(常)政府委員 私は、現状におきましては原油よりも重油を先に自由化の対象として取り上げるということは、石炭の関係上おそらくあるまいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/64
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065・中村幸八
○中村委員長 次は北條秀一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/65
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066・北條秀一
○北條委員 私はアジア経済研究所の法案に関して内田政務次官にお聞きしたいのであります。しかしお互いに時間の都合もございますので、往復十分か二十分くらいでやりますから、どうか私の方もきわめて簡潔にやりますから、イエスかノーか程度で、簡潔に御答弁願いたいと思います。いろいろたくさん聞きたいのでありますが、それは別の機会に譲りまして、きょうは二つだけ聞きたいと思います。
一つは、こういった経済研究所というものは、その性格が最も大事なものであります。ことにアジア経済研究所は、本年政府が非常に力を入れて法人化し、さらにまた資本金を一億出してやるということでございますが、質問の第一点としては、今までの財団法人アジア経済研究所が、一体どういうふうな実績を上げたかということが一つ。
もう一つは、新年度の予算で人員をふやしていくということでありますが、ふえた人員を見ますと、調査研究に当たる人間は全部で五十七人であります。しかも法律案に示すところは、アジア地域等と、わざわざ等という字まで入れて、非常に広範な地域の調査をするというのであります。アジア地域というものは、日本にとっては経済的に非常に重要な地域でございまして、しかもそういった広大な地域、広範な地域の経済調査をやるのに、わずか一億円の金でもって、あるいはまたそれに他の民間の金でもって、しかも人間は五十七人だというようなことで、実際調査効果があがるかどうかということについて非常に疑問を抱くのであります。私は前に満鉄におりまして調査業務に携わっておったのでありますが、一会社であります満鉄でさえも、当時の金において二千万円の金を使い、二千人近い人材を擁してアジア各地域の調査に当たったのでありますが、こういう例は、内田政務次官はよく御承知であろうと思うのでくどくど申し上げませんが、一体新しい機構でどういうふうな調査をやろうとしておるか。この二つの点についてお答え願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/66
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067・内田常雄
○内田(常)政府委員 御承知のようにアジア経済研究所は、従来は財団法人でございまして、一昨年暮れにできましたけれども、事業を始めましたのは昨年の中ごろからでありまして、ざっくばらんに言えば十分に調査の基礎もでき上っておりません。ことに人間を集めることが非常にむずかしくて、従来は民間の養成された人間とか、あるいは官庁におけるその方面を担当しておる個人のタレントを利用しておったという状況でありまして、このまま参りますならば、今北條先生が言われますような、昔の満鉄の調査部というような大陣容をかかえた大調査をすることはできません。そこでその基礎を強固にして有能な人材を集めるということが趣旨であります。そのために今回そのことが大きな目的の一つ、理由の一つとなりまして、これを特殊法人に改組をいたしたわけでございます。こういたしますと基礎が安定いたしますから、官庁や民間の既存の調査員をかり集めてくるということなしに、有能な調査担当者をアジア経済研究所自体のスタッフとして集めることができるというところに、今回の大きな野心を持っております。
何をやるかということにつきましては、もちろんアジアとの関係は、経済的な関係がおもでありますが、ただ一般の商社が貿易をしたり、あるいは経済協力をしたりするために、その目的の調査ということではなしに、これはやがてはそういうものの資料にもなりましょうが、昔の満鉄の調査部のやっておりましたような基礎的かつ総合的な調査を、すぐ役に立っても役に立たぬでも、掘り下げた広い調査をやろうという大野心を持って出発をいたしております。ただ昔の満鉄の調査部とその趣旨、目的は大いに違いまして、政治的あるいは軍事的の大陸発展とかいうような目的は全くございません。アジアにおいて今まで日本に欠けておった経済の基礎調査、総合調査というものを——さような帝国主義的侵略のような昔のアイデアは全くなしに、今後の貿易の発展とか経済協力にも役立たせる基礎的な調査としてやるというところに大きな違いがあることは御承知の通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/67
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068・北條秀一
○北條委員 ただいま内田さんのお話の中に、昔の満鉄がいかにも帝国主義的な調査をやったというお話がありましたが、それは全面的に否定はいたしませんが、しかしかなり言い過ぎであろうと思います。その点は慎んでいただきたいと思います。
そこであなたが言われましたように、アジア経済研究所をほんとうにりっぱなものにするためには、その基盤をしっかりしなければならぬ。そのためには財団法人を特殊法人にするんだということでありますが、特殊法人にするということについては、私は根本的に反対なんです。これはなぜかといいますと、長年の満鉄における経験あるいは中国における興中公司の経験を持っております。興中公司は単なる民間会社でありまして、いわゆる商事会社である。ところが日本政府はその後シナ事変が始まると、いきなり有能な働きをしている興中公司を解体をして、これを特殊法人である北支那開発株式会社、中支那振興株式会社にしたのであります。そこで私は当時の陸軍省及び海軍省と大げんかをして、遂に興中公司をやめたのでありますが、先ほど言いましたように、経済研究所というものはその性格が非常に問題なのであります。すなわち今内田政務次官の言われた日本政府の考えておる線は、自分の方には都合がいい、基盤を強化し、そして人材を集める、基礎的な調査をするためにはこういう組織にした方がいいんだ、なるほどそうかもしれません。しかしながら調査はアジア地域を対象とするのでありますから、相手のことを考えなくちゃいけない。だからこの案は、特殊法人にするということは相手のことをちっとも考えてない、自分のことだけを考えてやっておるということです。だからまさにこれは官僚主義であります。日本人独得な独善ですね。だからこれはもとの方がはるかにいいと思う。基盤が弱いからということでありますが、そうなると結局要するに金の問題になります。同時に調査員の身分の保障の問題になってくると思います。今の財団法人では工合が悪いということは、これは財団法人には政府は金を出さぬということになり、その身分は保障しない。そうなってくるとその調査員の人格について、私ははなはだ疑わざるを得ないのであります。なぜならば寄らば大樹の陰とか、親方日の丸ということならば自分たちは仕事はするけれども、そうでないときは仕事はしないというふうに思われるのであります。その点は満鉄の社員というものは、あえて満鉄社員の誇りを言うわけじゃありませんが、満鉄社員はもっと建設的であり、もっと犠牲的であった。だからそういうことは抜きまして、特殊法人にするということは自分勝手のことだ。相手のことを考えたらこれは特殊法人にしては断じていかぬということに私は考えるのでありますが、所信を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/68
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069・内田常雄
○内田(常)政府委員 これはわが方の都合から特殊法人にしなければ——わが方の都合といいますか、調査員が集まらない、あるいは資金が相当大規模に集まらないということは御理解のようでありますが、今回特殊法人にいたしましたのは政府の官僚主義からやったのではございません。そもそも一昨年財団法人アジア経済研究所ができますときには、とにかく暫定的にわれわれも金を出すから、政府からも金を出してくれということで、財団法人で出発をいたしました。そのとき以来、またその後さらに強力に民間側の方から今先生が御指摘のような理由から、これはもっと基礎的な調査——調査員の身分が確立され、また大規模な調査ができるようにするためには、ぜひ政府の特殊法人として基礎を固めてほしいという要望からやったものでございまして、政府の独断ではございません。ただ後段御指摘の調査の対象となるアジア地域の方面から同じ調査を受けるならば、日本の政府機関であるよりも財団法人である調査機関の調査研究を受けた方が快し、こう思うことにつきましては、私もややその心配なきにしもあらずでありますが、いろいろ調べてみましたところでは、さようなことを取り上げておりますのは、今までのところでは新華社電によると香港で出しております文匯報というのがございます。それに今先生が御心配になるほどではございませんが、ややそれに近いような論調が載っておっただけでございまして、東南アジアその他の地域からあまりこの法律案について快からずというようなことの論評などは聞いておりません。これはあくまでも調査機関でございまして、みずからが事業をするとか、貿易をするとか、あるいは経済協力をするというものではございません。もちろん現地に調査員などが調査のために行くことはございますが、経済行為をするものではございませんので、私はそこまで心配しなくてもよかろう、かように考えております。またこれの運営につきましては、そういう誤解をいやしくもアジアの地域に与えないようにやりたい。しかるがゆえに一応明文による監督規定などはございますが、別に閣議の決定などもございまして、政府はこの監督を官僚的にはやらない。あくまでも自主的、合理的に調査機能が上がるような意味の監督の態度をとる、こういう申し合わせまでいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/69
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070・北條秀一
○北條委員 もう一つだけ発言しておきたいと思いますが、今内田さんは北條先生なんて言われましたが、私に関する限りは先生ということをやめていただきたい。そこで今あなたがいろいろ言われましたが、あなたも満州の経験があり、外地の経験を持っておられる。従ってその経験からすれば、あなたは私の意見にのどのところまでおそらく同調しておるのだと私は思うのであります。あなたの顔を見ていると、そういうふうに書いてある。だからこそこういうふうな財団法人でやるべきやつをわざわざ特殊法人にする。相手はどう思おうとかまわぬ、こっちでやるのだ。新華社が何と言ったか知りませんけれども、そういうことをおやりになるから、今のあなたの内閣は官僚ばかりが中心におられますが、それだけでなしに実際に官僚主義だ。ちっとも昔と変わっていないじゃないか、何ら昔を反省していないじゃないか、こういうことを年がら年じゅう言われるのです。だからこれは非常に小さい問題のようでありますけれども、小さな法律案でありますけれども、非常に大事な問題だと思うのです。だから、将来私は私のおそれていることが事実となって現われてくるであろうと予見するのであります。でありますから、この際私は最後にあなたに聞きたいのは、あなたは特殊法人にすることをやめたらどうか、こういうことについてあなたの個人としての信念を一つ言明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/70
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071・内田常雄
○内田(常)政府委員 今回の特殊法人化につきましては、現財団法人アジア経済研究所の理事をされておりますところの学界の方々、あるいは民間の研究団体の方々等も、かくのごとき基礎を固めることによって初めて調査の万全を期し得るということで、賛意を表されておりますので、問題は私は今後のやり方にあると考えますので、やり方につきましては十分御注意を受けまして、いやしくも世界にかくのごとき、さような誤解を起こさないようにいたしつつ、今回は私は個人としてもこれは特殊法人として基礎を固めることがいいという信念を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/71
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072・松平忠久
○松平委員 資料要求をしたいと思いますが、今の関係の法律案について先般資料を出されましたが、その出された資料の中に、いろいろな経済の調査団体がございます。そういう経済の調査団体について、今日政府で一体どの程度の補助金なり、あるいは委託費というものを出しておるか、それを一つリストに作って提出していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/72
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073・中村幸八
○中村委員長 松平委員より要求のありました資料につきましては、当委員会にさっそく御提出を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/73
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074・田中武夫
○田中(武)委員 議事進行。ただいまのアジア経済研究所法案に関連いたしまして、北條委員の質問に対する政務次官の答弁を聞いておりますと、現在の財団法人のアジア経済研究所の理事さん方も、みずから進んで特殊法人にしてくれ、こういうことであったというふうに言われておるので、そういう点を明らかにするために、現在のアジア経済研究所の理事の方一、二名に、参考人として来ていただいて意見を聞く、こういうようにお計らい願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/74
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075・中村幸八
○中村委員長 ただいまの田中委員の御発言につきましては、次会の理事会においてお諮りいたします。
本日は、この程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。
午後零時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X01219600304/75
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