1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年四月八日(金曜日)
午前十時五十二分開議
出席委員
委員長 中村 幸八君
理事 大島 秀一君 理事 小川 平二君
理事 長谷川四郎君 理事 南 好雄君
理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君
理事 武藤 武雄君
岡本 茂君 鹿野 彦吉君
始関 伊平君 關谷 勝利君
田中 榮一君 田中 龍夫君
野田 武夫君 西村 直己君
渡邊 本治君 勝澤 芳雄君
東海林 稔君 北條 秀一君
出席政府委員
特許庁長官 井上 尚一君
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本日の会議に付した案件
弁理士法の一部を改正する法律案(内閣提出第
九四号)(参議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/0
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001・中村幸八
○中村委員長 これより会議を開きます。
弁理士法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑の通告があります。順次これを許します。北條秀一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/1
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002・北條秀一
○北條委員 長官に、弁理士法の改正について、五つ、六つの点について質問いたしたいのでありますが、実はきょう、委員長に御了解を得ましたように、時間がありませんので、できるだけやりますが、途中でやめることがありますから、一つその点は御了承おき願いたいと思います。
第一にお伺いしたいのは、本法律案の改正案が参議院において通過しました後に、日本弁護士会において相当に反論があるというふうに聞いておるのであります。従って、長官の手元にも、そういった各種の陳情あるいは反対の意見が提出されておるかと思うのでありますが、おわかりになっておることがありましたならば、この際、冒頭に一つお示し願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/2
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003・井上尚一
○井上政府委員 今申されましたお言葉中、日本弁護士会とございましたが、弁護士会でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/3
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004・北條秀一
○北條委員 弁護士会です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/4
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005・井上尚一
○井上政府委員 弁護士会の方からの意見は、特許庁としましては、最近のところは何も承知をしていない実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/5
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006・北條秀一
○北條委員 それでは、この点につきましては、私どもの民主社会党にも相当弁護士さんがおりますし、あるいは各政党にも弁護士がおりまして、党内において相当に論議があるわけであります。その点は、今その論議は集約されつつありますから、あらためて次の機会に申し上げて、あなたの見解をお聞きしたいと存じます。
次に参ります。第一の点は、弁理士の業務についてでございます。今までの弁理士さんは、法律にきめられた資格試験によって弁理士の資格を得て、その仕事をやっておりますが、今日、当衆議院にも科学技術振興特別委員会が設けられているように、近来の技術というものは、日進月歩ということは御承知の通りであります。従って、そういう点からいたしまして、現在の弁理士の内容といいますか、弁理士の能力といいますか、そういうものは、相当に過去の弁理士よりは高度なものを要求されておると考えるのであります。
従って、現在の弁理士は大きく分類いたしまして、たとえば大学に今文科系統とか技術系統とかがございますが、一体技術系統が多いのか、あるいは文科系統が多いのか、そういう点、概略おわかりになりましたらお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/6
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007・井上尚一
○井上政府委員 現在の弁理士の業務は、技術の進歩に応じて高度化しているが、その現在の弁理士中、いわゆる法科系統と理科系統の割合がどのくらいになっているかというのが、御質問の要旨かと存じます。
現在、現行制度におきまして弁理士は、御承知の通りに、特許、実用新案、意匠、商標の四つの業務を取り扱い得ることになっているわけでございまするし、また出願の件数について申しますれば、昭和三十四年におきまして、特許の出願が約四万一千件、実用新案が六万八千件、意匠が二万六千件、商標が三万八千件、合計十七万四千件といいますのが、昭和三十四年におきまする特許庁に対する工業所有権に関する出願の件数の実情でございますが、法律的には、出願は、各出願人個人から直接出してもよし、弁理士を通じてもよしということになるわけでございまするので、この出願件数のみから直ちに、弁理士が特許、実用新案をどれくらい扱い、あるいは意匠、商標をどれくらい扱っているかということは、総体の出願件数からは直ちには出て参らないわけでございます。しかしわれわれの方としまして、最近実態調査をしたところによりますると、大体大ざっぱに申しまして、法科系統と理科系統とはほぼ同じくらいな数になっているというのが、最近の調査の結果でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/7
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008・北條秀一
○北條委員 それでは関連しまして、現在の弁理士は登録された者が何人あるのかということ、それから、弁理士は今のお話の通りに、法律だけを知っておれば十分できるのか、あるいは法律だけ知っておったのではだめなんで——半分は技術者だということでございますが、やはり技術を知らなければ、科学技術というものを十分に身につけていなければ、今後の弁理士としての仕事は完全に行なうことができないのではないか、私はそういう考えを持っておるのでありますが、その点についての長官の御所見を承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/8
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009・井上尚一
○井上政府委員 現在の弁理士の総数は千七十五名でございます。
それから、弁理士の今の試験としましては、必須科目と選択科目がありまして、必須科目は、今日の規定では、工業所有権四法、すなわち、特許、実用新案、意匠、商標という四法、それから工業所有権に関する国際条約というような条約、これが必須科目でございます。それから選択科目では、法律的な科目、技術的な科目が種々ございます。それで、一般的に申しまして、技術が高度化する、複雑化するに応じまして、弁理士に要求される技術的能力はだんだん高度になるべきであるという点は、全く御指摘の通りであろうと存じます。根本問題としまして、日の弁理士制度のあり方でよいかどうか。すなわち同一の弁理士が特許、実用新案、意匠、商標を通じて扱い得るという制度がよいか、あるいはそれを分化いたしまして、特許、実用新案、あるいは意匠、商標というふうに専門分野に応じて弁理士の資格をきめていくというような方法がよいかどうかというところは相当慎重に検討すべき問題かと存じます。われわれとしましては今後十分時間を費やしまして、関係方面、学識経験者等の意見も聞き、また外国の法制等をも参考としまして、この点につきましては十分慎重に検討して参りたいと考えておる次第でございます。
なお特許、実用新案に問題を限って申します場合に、これは技術だけの知識で十分であるとは言えないわけでございまして、発明自体は、内容はもちろん技術的な実体ではございますが、これを工業所有権、すなわち特許権、実用新案権としてどういう範囲にどういうふうにこれを獲得するか、または権利の請求の範囲をどう記述をするかということは、やはり実体が技術的な発明でありますものを、具体的な独占権の対象としまして、特許権、実用新案権の対象としてこれを扱う出願書類に記載するという場合には、やはりこれと並行しまして、工業所有権に関する法律知識が要求されるわけでございます。そういう点から、われわれとしましては弁理士制度の根本につきまして、今後慎重に検討すべき問題があることは先ほど申した通りでございます。と同時に、やはり技術を具体的な権利として要求する、その業務が弁理士の業務であるという点から申しまして、やはり工業所有権に関する法律上の知識というものを、最も重要な要素として要求されるものである、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/9
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010・北條秀一
○北條委員 特許庁に出される各種の出願で、これは外国の場合は知りませんが、日本の場合大へん日数を要する、時間がかかるということをよく言われておるわけでありますが、それも日数がかかるということは、結局手続がかかる。非常にいろいろなところにおいてあやまちがあったり、あるいは出願書に誤記脱落があったり、いろいろな理由があろうかと思います。従って出願にあたって、現在は当の本人がやるという場合と、弁理士がやる場合と、その他弁護士がやる場合と、三通りあると思う。それでそのうちかなり多くのものが、そういった不完全な書類であって、あなたのところで結局事務が非常に渋滞するというふうに聞いておるのであります。そこで私は要点をはっきりして、一つあなたの見解を聞きたいのでありますが、個人が出した出願書に一体誤記脱落があってやり直さなければならないというのがどの程度あるのか。またそういうふうなやり直しのために書類を保管するのに相当の時日がかかっていると思うのでありますが、一体どの程度の日数を要しているのか、そういう点。それから弁理士の場合と弁護士の場合と本人、こういう三つに分けて、あなた方でおわかりになりましたならば、この点聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/10
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011・井上尚一
○井上政府委員 最近調査しましたところによりますれば、約三千件を対象としまして、代理人を通じての出願、個人からの直接の出願というものをここに調査しておいたわけでございますが、昭和三十二年の分についてその率を申し上げてみたいと思います。
特許につきましては、七四%が代理人による出願でございまして、二六%が個人からの直接出願でございます。それから実用新案につきまして、やはり昭和三十二年の数字でございますが、六五%が代理人による出願の率、三五%が個人からの直接出願。意匠につきましては、五九%が代理人による出願の率、残り四一%が個人からの直接のものでございます。商標につきましては、七一%が代理人による出願、それ以外の二九%が個人からの直接出願ということに相なります。今御質問中には、その代理人中弁護士と弁理士とを分けた数字を御要求されたようでありますが、私どもの方ではただいま弁護士と弁理士別の調査の資料の持ち合わせがございませんので、御了承願いたいと存じます。
なお個人の場合、代理人の場合を通じまして訂正補充等に要する回数と申しますか、この点について御質問でございます。この点につきまして訂正補充等にどのくらい要するかということは、全体の数字としてはございますけれども、残念ながら個人別、代理人別のその出願の区別によりましての手数の要し方、訂正補充の特に比べたものは持ち合わせがございませんので、何とぞ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/11
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012・北條秀一
○北條委員 私がそれをお聞きしましたのは、要するに工業所有権でございますが、こういった権利に属する問題は出願するからには、一刻も早くその権利が確定するということが個人としては好ましいわけです。従ってあなたの方でもそういうふうに一刻も早くやろうとされておることは私どもよくわかりますが、そこで一体特許を出願して能率をよく最後の結論を出すというためには、現行制度にいろいろな欠陥があると思うのです。欠陥があるというのはどういうことかというと、代理人に十分な知識あるいは技術に対する理解というものがなくて、ただやみ雲に出せばいいんだというものが相当あると思うのです。そうするとあなたの方でも審査に困ってしまうわけです。そこであなたの方で現在代理人の出願あるいは個人の出願で、どういうふうな出願の方法をとれば、一番能率的にこれを判定することができるとお考えになっておるか。大へんにわかりにくいような話でありますが、そういう点についてあなたにお考えがあろうかと思う。おそらく今回の法の改正もそういう趣旨に出ておるのだと思うのでありますが、それについての概括的な御意見がございましたならばお示しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/12
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013・井上尚一
○井上政府委員 特許庁の審査の敏速化、促進という見地から代理人の能力について、どういう要求を特許庁としてはやっているかという点が、今の御質問の中心であろうかと存じますが、多少御質問の趣旨からははずれるかと存じますが、審査の促進という見地から、われわれが特許庁としてなすべきこと以外に、外部に向かって要求しておる問題につきまして一、二申し上げてみたいと存じます。と申しますのは、出願の内容が整理されているよい発明であるという場合には、もちろん審査が非常に敏速化するという点から申しまして、これはずいぶん効果が大きいと存じます。この出願の内容のよし悪しと申します場合に、実質的な問題と形式的な問題にこれを一応区分して考えてみたいと存じます。それで実質的な面から申しますれば、特許、実用新案、意匠、商標の四種類を通じましていろいろ事情が違いますが、ただいまかりに代表的に特許について申しますれば、多くの出願中特許になります率、これは三五%くらいでございます。六五%が権利にならないわけでございます。その六五%、不合格になるものの大部分と申しますものが、かつての特許公報にこれと同じあるいは類似のアイデアがすでにあったというのが、これの大部分でございます。そういう点からいいますれば非常にむだな研究、重複した研究、出願が多いということは、十分察知がつくわけでございます。この点につきましては、われわれとしましては特に産業界一般あるいは研究者あるいはその他の出願人、代理人としての弁理士、弁護士の方々に対しまして、技術の事前調査ということを機会あるごとに要望している次第でございます。すなわちどこにどんな特許発明がすでにあったかということを、もう少し調査した上で研究も進める、出願もするいうことによって出願人の手数も省略できますし、また特許庁の審査も促進することができます。また一そう大きな問題としましては、その重複したむだな研究に費されておる時間的、頭脳的ないしは資金的なロスというものは、国家的に見ますと非常に大きいということをわれわれは考えておるわけでございます。そういう意味からいわゆる先行技術の調査を、もう少しやつてもらいたい。特に弁理士は出願の代理をするのを業務としておる職業でございますので、弁理士関係者にはそういう先行技術、どこにどんな技術がすでにあったかということの調査を従来にも増して一そう努力を願う、また代理人としましての出願のいわゆる成功率を向上するという方向に御尽力を願いたいということを希望いたしておる次第でございます。
次に、形式的な問題としまして、内容の記載のやり方がきわめて不備である。そういうような場合の訂正補充の機会でございます。訂正補充につきましては二通りあるかと存じます。すなわちその範囲を減縮するならば権利になる。権利としての請求範囲が大き過ぎる、従って既存の特許権等に抵触する。従ってその部分を削って範囲を減縮することによって権利になるというような場合、これはむしろ実質的な訂正補充と申してよいかと存じます。また表現が不明確である、あいまいであるというような理由に基づく訂正補充ということもございます。その形式的な場合、実質的な場合、両方を通じまして、訂正補充の機会というものは非常に多いわけでございますが、特に、形式的な内容の不明確、不備と申しますか、記載が不明確、不備であるという理由による訂正補充をできるだけ少なくして参ることが望ましいと存じます。特に、われわれとしましては、特許権というものは技術の公開に対する代償としまして、独占権が認められるのであるということから申しましても、特許公報に掲載になりまする新しい発明の公表が平明正確であることは当然要求されるところでございますので、審査の促進というような見地から申しましても、あるいは特許制度としましての真に効果の大きい運用という点から申しましても、出願内容の平明正確なる記載ということは、われわれは従来絶えず要望して参ったところでございます。その点は特に弁理士の業務の最も重要な問題でありますので、われわれとしましては、その方向に弁理士の協力を期待し、また要望もして参っておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/13
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014・北條秀一
○北條委員 先ほどお話がありましたが、三十四年度の特許、実用、意匠、商標全体で十七万四千件だということでございます。そのうち今のお話で、三五%は権利になり、あとの六五%は権利にならないという。六五%という多数はむだな努力をしておるということになります。またその四つのうちで、特に特許は四万一千件、そのうち三五%が権利になっておるんだ、そうすると、ここにもまた非常なむだがあると思うのです。従って、こういったようなむだを国全体がやっておるということは、お説の通りに大へん遺憾なことであります。そこで、そういうむだを極力省くために、今回の法律の改正を企図されたのであろうと考えるのであります。
そこで、第一の問題の最後の質問として、出願があなたのところになされてから後——これらが三十四年の場合に十七万四千件の出願があった。これは特許庁に出願書類が提出されて、それが整理され、完備された後、これが権利になるまで、今までの経験からいって、一体何月くらいかかっておるか、審査に要する日数はどれくらいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/14
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015・井上尚一
○井上政府委員 先刻三五%と申しましたのは、特許についての数字でございます。ついででございますので、実用新案、意匠、商標について申し上げておきたいと思います。実用新案については大体同様の三五%くらいでございます。意匠につきましては七二%くらいでございます。非常に合格率が大きくなっております。商標につきましてはやはり六七%ないし六九%というような実情でございます。
次に、審査に要する時間についてでございますが、現在、特許、実用新案を通じまして、出願から権利設定まで、すなわち審査の終了まで大体二年六カ月を要しております。意匠につきましては約一年三カ月でございます。商標につきましては十一カ月という状況でございます。このような状態はきわめて遺憾でございますので、われわれとしましては処理の促進の五カ年計画を作成しまして、三十九年を目標としまして、特許実用新案についてはこれを一年二カ月に短縮し、意匠につきましては三カ月、商標につきましては六カ月に短縮することを目標としまして、現在その計画の達成につきましていろいろ努力をいたしておるわけでございます。
なお御質問の、その要する審査期間中形式的な不備の是正と、それから実体的な審査に要する期間の時間的な区分につきましては、何と申しますか、ちょっと厳格に形式的な不備の是正にどれくらいの時間を要し、実体的な審査にはどのくらいの期間を要するかという内容的な区分につきましては、今実情について十分正確なデータをつかんでいないわけでございますので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/15
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016・北條秀一
○北條委員 冒頭申しましたように、時間がきましたので、私はこの際長官にあと三つの問題点だけを申し述べて、きょうは終了したいと存じます。
第二は、弁護士と弁理士との関係、第三は審判官と審査官とについて、第四は弁理士法の全面的な改正という問題について、この三点について、次の機会にあなたの見解を伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/16
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017・中村幸八
○中村委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。
午前十一時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X02919600408/17
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