1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年四月二十八日(木曜日)
午前十時二十九分開議
出席委員
委員長 中村 幸八君
理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君
理事 南 好雄君 理事 松平 忠久君
理事 武藤 武雄君
江崎 真澄君 鹿野 彦吉君
始関 伊平君 田中 榮一君
田中 龍夫君 中井 一夫君
西村 直己君 野田 武夫君
細田 義安君 渡邊 本治君
板川 正吾君 東海林 稔君
北條 秀一君 山下 榮二君
出席国務大臣
通商産業大臣 池田 勇人君
出席政府委員
通商産業事務官
(繊維局長) 今井 善衞君
委員外の出席者
専 門 員 越田 清七君
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本日の会議に付した案件
繊維工業設備臨時措置法の一部を改正する法律
案(内閣提出第九八号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/0
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001・中村幸八
○中村委員長 これより会議を開きます。
繊維工業設備臨時措置法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。
質疑の通告があります。順次これを許します。東海林稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/1
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002・東海林稔
○東海林委員 本改正案の提案理由を見ますと、繊維原料の輸入自由化に伴う事態に対処するためだ、こういうことになっているようであります。貿易自由化の問題は、本委員会におきましてもこれまでも若干論議せられてきたところでありますが、私は、まず、本法案審議の順序といたしまして、政府が、来年四月から、わが国の貿易関係においても最も重要な位置を占めておるところの繊維の関係につきまして、自由化の方策を決定するに至りましたその考え方並びにそのいきさつにつきましてお考えをお聞かせ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/2
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003・今井善衞
○今井政府委員 なぜ繊維原料について明年四月から自由化に踏み切ることにしたかということでありますが、御承知のように、繊維工業のうちの綿業なり羊毛工業につきましては、綿花あるいは羊毛は全額海外から輸入しておるのでございます。ところで、従来、この輸入方式につきましては、外貨資金を紡績業者に割り当てるということにいたしておったのでございます。それに基づきまして、もちろん繊維工業といたしましては、それなりの秩序ができて動いてきたのでございますが、ただ、この外貨資金を紡績業者に割り当てるということに関連いたしまして、非常に不自然、不合理な現象がこれに伴っていたのでございます。と申しますのは、いずれにいたしましても、外貨予算でその総額がきめられておりますので、どうしても不足がちになりやすいということで、たとえば外貨資金を得ました紡績業者は、もし自分が少し余分に持っておるというふうな場合におきましては他にそれを転売する、その間おのずからプレミアムが生ずるというようなことがあったのでございます。従いまして、原料をできるだけ海外から安く自由に買い付けるということが、最も大きな役目でありますところの輸出産業としての繊維産業の使命、あるいは国内の消費者に良質廉価のものを供給するということにかんがみますと、かように高い綿花、しかも、不自然なプレミアムのついた綿花を買うというふうなことは、どう考えましても繊維産業の将来にとりまして、思わしくないというふうな考え方からいたしまして、この際、輸出を伸ばすためには、やはり原料価格を安くする必要がある。また国内の消費者に対しましても、安い原料によって良質廉価な繊維製品を供給したい。繊維産業自体もそれによって、従来の資金割当制における不自然なことがなくなりまして、それに基づいて企業自体が自分の経営について責任を持つ。しかも、その自由なる競争を通じて繊維産業の体質が改善される。それによって繊維産業がますます強くなるのではないか。輸出産業あるいは国内の消費者に対する関係におきましても、繊維産業の使命を果たすには、かえって好都合じゃないか。たまたま繊維産業の業態からいたしまして、非常に強い産業でございますので、綿花、羊毛の自由化をいたしまして、それによって若干過渡的に混乱が起こりましても、長い目で考えました場合には、繊維産業としてますます健全な発達が遂げられるのではないか。かような国内的な見地と、たまたま世界の大勢としまして貿易の自由化を行なった方がよりよいという関係もございますので、綿花、羊毛につきまして来年四月からAAに踏み切った次第であります。その踏み切りに当たりましては、繊維総合対策懇談会という懇談会形式によりまして、業界あるいは学識経験者あるいは関係労働者の代表、こういう方々に委員になっていただきまして、そこで十分検討いたしまして踏み切った次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/3
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004・東海林稔
○東海林委員 原料の自由化をいたしました場合に、繊維業界の内部におきまして、また関連産業につきましてもいろいろと変化なり影響が出てくると思うのでありますが、政府は主としてどういう方面にどういう影響が出てくるというふうに考えておられますか。その点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/4
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005・今井善衞
○今井政府委員 原料の自由化に踏み切りました場合に、業界内部並びに関連産業に対しまして、いろいろの影響が出てくるわけでございますが、その際直接の影響は、従来外貨資金の割当を受け、今後綿花、羊毛を直接使用する紡績業界に出てくるわけでございます。紡績業界といたしまして、従来外貨資金の割当を受けるという関係で、ある意味で保護されたような関係になっておるのでございますが、今後自由にだれでも買い付けられるという関係になりますと、お互いに競争が激しくなりまして、いかにして自分の製品を相手に買ってもらうかという、お客さんに対するサービス競争というような現象を通じまして、やはり競争が激しくなる。従って業界自体が不安定になるということで、紡績業界には過渡的には相当の影響が参ると思います。特に買手であります機屋あるいはメリヤス業者、そういう相手方の業界に対する紡績業者の地位が相対的に低下するということに基づきまして、よほどしっかり経営をいたしませんと、その他相当の問題が起こるというふうに与えられるのでございます。
ところでこの紡績業者の内部で大紡績に有利であって、中小紡績に不利であるかと申しますと、私どもは一がいにはそういうふうには考えていないのでございます。大紡績はもちろん資本なり金融力にすぐれておるのでございますが、また概して大紡績は中小紡績に比べまして生産費が高いという短所、弱点があるのでございますが、中小紡績は逆に金融力は弱いけれども、生産費が大紡績に比べて安いという強みを持っておるのでございます。従いまして中小紡績だからといって、一がいに弱い立場にあるというふうには考えられないのでございます。
ただ先ほど申しましたように、紡績業界におきまして非常に大きな競争が起きる。それによりましてこの糸価が非常に低落いたしまして、コスト自体もまかなえないというふうな事態がかりに長く続くといたしますれば、中小紡績といたしましてそれだけ持ちこたえる力が弱いわけでございますので、従ってそういう意味で、もしさような事態が起こって長く続くといたしますれば、これは何とか考えなければならない。この法律の改正はそういう意味合いにおきまして、特に直接綿花、羊毛を使いますところの紡績業界において大きな混乱、しかもコストをまかなえないような、こういうふうな状態が起こらないようにいたしまして、業界全体を安定させたいという気持があるわけでございます。
それから次に綿花商でございますが、綿花商は従来紡績業者から注文を受けまして、海外から綿花を買っておったという関係になっております。ところで今度自由化になりますと、綿花商自体が自由に綿花を買い付けるという立場になるのでございまして、従いましてそういう意味合いからいきますと、綿花商自体は抽象的にはむしろやりやすくなるということが言えると思うのでございますが、ただ現在非常に多数の綿花商がございまして、そのうちの一部は従来からも直接海外から綿花を買い付けませんで、むしろ他人の買った綿花を仲立ちしておる、しかもその間、先ほど申しましたようなプレミアムかせぎに自分の経営の中心を置いておったというふうな綿花商が間々あるのでございまして、そういう綿花商につきましては、これは非常に苦しい立場に追い込まれると思いますが、経営自体がむしろ統制に基づく変態的なものでございますので、ある意味合いにおいてはやむを得ないとも言えるのでございますが、私どもといたしましては、この点については十分注意いたしまして、急激な影響が起こらないようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
それから次に糸を使います機屋さんなりメリヤス屋さんなりの関係でございますが、これは一般的に申しまして、綿花、羊毛の自由化によりまして地位が相対的に向上いたしまして、仕事がやりやすくなるということが言えると思います。と申しますのは、この機屋さんなりメリヤス屋さんにつきましては、従来から糸高製品安というふうなことがいわれておったのでありますが、これは紡績業者に原料を割り当てる、従いまして紡績業者が売り手として非常に強い立場にあるその反射的な作用といたしまして、買い手である中小の機屋さんが非常に苦しい立場にあるということが言えるわけでございますが、この自由化によりまして紡績自体が買い手に対しましてサービス競争と申しますか、自分の作った糸の市場を確保したいという気持が非常に強くなりまして、従いましてその反射的効果といたしまして、機屋さんといたしましては糸が比較的従来より安く手に入る、そして製品自体は、これは海外の相場によりまして非常に左右されるものでございますので、製品はあまり下がらないのに糸だけ安くなるという現象が現に生じておりますし、また本質的な傾向としてこういうことがあるのではないか、かように考えるわけでございまして、従いまして一般的に見ましてそういう中小の機屋さん、メリヤス屋さんに対してはいい影響があると思います。ただAAになりますと取引が自由になるわけでございますので、従いまして海外の景気変動等によりまして、景気変動の動く幅が多くなるということが言えるわけでありまして、従いましてさような意味合いから変動が大きくなるということは、中小の機屋さんにとりましてはよほど注意して経営しなければならぬ。むしろ糸が低位に安定しておった方がいいということが言えるわけでございまして、かような意味合いから、むしろこの糸自体も低位に安定する何らかの方策が必要だ、かような意味合いでこの法律がやはり中小企業にとっても必要じゃないか、かように考えております。
それから輸出業者に対しましては、これは今まで原料割当制のうらはらの関係でリンク制をしいておりまして、輸出をした場合に、ごほうびに綿花、羊毛を差し上げるというようなことで、輸出意欲をかき立てておったのでございますが、今後はさようなリンク制がなくなりますので、そういう意味で輸出にマイナスになりはしないかという見方もあったのでございますが、ただこの繊維産業自体は御存じのように非常に大きな設備をかかえておりまして、輸出をしなければ生きていけない。特に個々の企業の立場を見ますと、輸出をしなければその企業の経営を続けていけないというふうなことになっておりますので、従いまして自分の企業をいかに続けるかということが、今後この輸出振興の一番大きな原動力になって参ると思います。現に非常に、このAAの発表以降、糸等は価格が低下しておりますが、輸出につきましては一向響いていないというふうな現状でして、むしろこのコストが安くなるというふうなことで、輸出については別に悪い影響はない、かように考えておる次第でございます。
大体さような状態でございまして、繊維産業全般を通じましてむしろいい影響がある面が多いのではないか。ただ懸念されますのは直接の紡績業者の立場でございまして、これにつきまし
てはやはりできるだけ安定の策を講ずることが必要ではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/5
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006・東海林稔
○東海林委員 ただいまのお話のうち紡績業界に対する影響で、大企業家と中小企業に対する関係についての考え方ですが、中小企業の紡績業者でも、一面金融力その他の点においては不利な関係にはあるのだが、しかし大企業に対して生産費が安いということが強みだ、こういうふうなお話があったわけですが、現実的にはそういう面もあるかと思いますが、しかしその生産費が安い理由がどこにあるかということが非常に問題だと思うのです。私をして言わしむれば、要するにこれは労賃が低いことだ、こういうことに主たる原因があると思う。そういうことを今後続けていくことが正しいのか、また続けていかれるのかどうか。そこらの考え方によって、ただいまお話があったような認識がずいぶん変わるのではないかと思うのですが、その点についてのお考え方を一つお聞かせ願いたい。
もう一つは、関連産業とでも言いますか、やはり繊維界でわが国にとって特に重要な化学繊維とか、合成繊維に対する今の綿、羊毛の原料の自由化がどういう影響になってくるか、こういう点についての見解をお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/6
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007・今井善衞
○今井政府委員 中小の紡績が大紡績に比べて生産費が安いのは、主として労務費が安いためではないかという御質問でございます。それも確かにあると思いますが、もう一つ非常に大きな理由は、大きな紡績は御承知のように非常に管理部門が大きいわけでございまして、小さな紡績になりますと一つの工場に対して、極端に申しますればおやじが二、三人の人を使って経営をしておるというふうな関係になりますけれども、大紡績になりますとそうは参りませんで、本社あり、あるいはその宣伝、調査、いろいろの管理部門が非常に大きいわけでございまして、この大きな紡績に対して小さな紡績は管理費は十分の一くらいじゃないかというふうにいわれておる場合もございます。それから労務費につきましては、労銀自体が大紡績と中小紡績と違うわけでございまして、これはお話しのように今後若干近づいて参る傾向にあると思います。しかしこれはもちろん一緒になるということはあり得ないわけでございまして、おのずからやはりそこに競争力として強味が残るというふうに考えております。
それから先ほど申し忘れまして恐縮でございますが、化学繊維に対する影響でございますが、これを二つに分けまして、人絹、スフのような事業、それから合成繊維の事業に対する影響でございますが、これらの業界はもちろん綿花、羊毛を使っておるわけでございませんので、綿花、羊毛の原料の自由化によりまして直接の影響は受けないわけでございます。しかし御承知のように、繊維製品にお互いに競争関係に立っておりまして、ある繊維が下がれば他の繊維もそれにつれて下がるという関係にあるわけでございます。それが綿糸なり毛糸が下がって参りますれば、それにつれてスフ糸なり人絹糸なり、あるいはまた合成糸も下げなければ売れないという関係になっております。従いましてスフ糸なり人絹なりは、やはり綿糸なり毛糸が下がって参りますれば、それぞれ競争関係におきまして下がって参るわけでございますが、もしその綿糸なり毛糸なりが設備規制等によりまして業界が安定すれば、また逆にスフ糸なり人絹の方も安定する、そういう因果関係に立つわけでございまして、さような意味合いからスフ糸なり人絹なり、そういう化学繊維が苦しむかどうかということは、一にかかって綿花なり羊毛を使う業界が安定するかどうかということにかかっておると思います。それから合成繊維につきましては、もちろんやはり競争関係に立つわけでございまして、従って影響を受けるわけでございますが、私どもこれにつきましては相当懸念したこともあるのでございます。しかし合成繊維自体は御承知のように技術革新に乗ったところの産業でございまして、ほかの繊維は今後の技術の改良の余地が狭い。ところが合成繊維につきましては今後技術の改良によってコストを引き下げる余地が多いということで、現に合成をやっている企業自体、もちろん自分たちは今後技術の改良によって十分そういう事態に対処できるというふうに考えておるようでございまして、私どもも現在はさような見地に立ちまして、ちっとも心配いたしておりません。影響ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/7
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008・東海林稔
○東海林委員 もう一つ、やはり同じ繊維関係で、日本の特殊産業の一つである絹関係ですが、これについての影響はどのようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/8
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009・今井善衞
○今井政府委員 生糸につきましてはもちろん人絹だとか、アセテートだとか合成繊維とか、そういうものと一部競争関係に立つのでございます。従って一般的に繊維市況が低落いたします場合におきましては、生糸もその影響を受けるわけでございますが、ただ御承知のように、生糸につきましては商品の使用価値ということ以外に、やはり美しい繊維に対するあこがれというふうな要素が非常に強い。特に生糸あるいは絹織物は、輸出の占める割合が非常に多いという関係で、国内の糸価の高騰あるいは下落に影響される面が他の繊維より少ない。もちろん影響はございますけれども、ほかの繊維ほど影響は受けない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/9
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010・東海林稔
○東海林委員 少し質問を別な方面に移したいと思いますが、ただいまお話がありましたように、この繊維原料の自由化に伴っていろいろな影響が出てくる、こういうわけでありますが、それに対する国の政策として、その一つとしてここに本法の改正案が出たわけですが、そのほかに政府としてこの綿並びに羊毛の原料自由化に関連して、商工行政としてとろうとしているおもなる政策というような点について、一つお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/10
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011・今井善衞
○今井政府委員 この綿花、羊毛の自由化を実施いたします場合に、これに伴って出るいろいろな影響、それを克服いたすことにいかなる対策をやったらいいかということについて、先ほど申し上げました繊維総合対策懇談会で検討いたしまして、それによって約十項目の答申をいただいているのでございます。この市況の安定ということは、その中の約三つばかりに関連する問題でございまして、この自由化を実施いたしまして過渡的に混乱が起こる、その混乱を防止するためにどうしても安定策を講じなければならぬということがこの法律の改正でございますが、もちろんこれはタイミングから申しまして、どうしても事前に用意しなければならぬ方策、そういう意味合いで、私の方としてはどうしても事前にそれだけは準備しておきたいというふうに考えているのでございます。もちろんほかにいろいろとらなければならぬ方策があるわけでありまして、これはできるだけ早くやることが必要だと思いますが、自由化と並行しながらやる、こういうふうなタイミングでよいのではないかというふうに考えているわけでございます。振り返りまして一番大事なことは、ただいま申しました市況の安定、それからさらにいかにコストを引き下げるか、体質改善なり、そういう問題でございますが、それからもう一つは、市場をいかに確保するかという問題だろうと思います。私どもといたしまして、特に市場の確保につきましては繊維製品の輸出市場を開拓する。今いろいろの国で輸入制限を受けておりますが、その輸入制限を経済外交交渉によってできるだけ排除し、緩和していくように努めなければならぬというふうに考えますし、またさらに繊維産業自体といたしましては、今後合成繊維の発達その他によりまして、新しい需要を国内においてもあるいは輸出についても開拓していかなければならぬ、かように考える次第でございます。またこのコストの切り下げ、あるいは企業の体質改善ということにつきましては、もちろん設備の近代化、特に中小企業等につきましてはその償却期間を短縮いたしまして、そしてもっと中小企業の体質が改善されるように努めなれけばならぬ、あるいはまた、特に中小企業等につきましては、金融の円滑化について努めなければならると思います。いろいろ対策があると思いますが、要するにこれらにつきましては、できるだけ早く実施する必要がございますけれども、タイミングから申しまして、この自由化と並行しながらやって差しつかえない、かように思っている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/11
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012・東海林稔
○東海林委員 ちょうど大臣がお見えになりましたので、少し今度は大臣にお伺いしたいと思いますが、ただいままで局長から繊維原料の自由化を政府として決定するに至ったその考え方、いきさつ並びに自由化をやった場合に、繊維業界並びにそれの関連産業に、どのような影響があるだろうかというような点についての御見解を伺っておったのです。その次としまして、自由化に伴って政府として考えている対策はどういう点かということを、質問し始めたところでありますが、ただいまの局長の御答弁によりますと、さしあたっての過渡的な混乱を防ぐためには、本法の改正が必要になるのだ、今後いろいろな面において施策が必要であると思うが、それは原料自由化の推移に従って漸次やっていくのだ、こういう御答弁の趣旨だと承ったわけです。大臣として、特にこの繊維原料の自由化に伴う行政措置として、今後自由化の推移に伴ってやっていくにしても、今この自由化を決定した段階において、どういう点が今後の行政の重点としてやらなければならぬことであるかというふうにお考えになっておられるか、その点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/12
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013・池田勇人
○池田国務大臣 まことに恐縮でございますが、自由化の問題は、繊維産業についてお答えいたしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/13
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014・東海林稔
○東海林委員 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/14
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015・池田勇人
○池田国務大臣 繊維産業につきましては、従来とも国内的には繊維工業設備臨時措置法によりまして原料の為替管理をやっておると同時に、国内におきましても生産面におきましての管理統制をやっておるわけでございます。二重にやっております。それでも、いわゆる中小企業団体法等の規定によりましていろいろの統制を加えておるのであります。今回原料の自由化をいたしますと、その結果として、今までの国内の繊維工業臨時措置法では不備な点がございますので、それを強化していくこと、それからまた、こういう設備臨時措置法ばかりでも、今後の問題につきまして、たとえば原料は自由化したが、製品についての自由化という問題が起こって参りますから、そういう場合には、この法律の改正も必要でございますが、業種別の振興法というものによりまして、繊維関係の振興対策を講じていかなければならぬ。既存の法律を活用することはもちろんでありますが、この工業設備臨時措置法の改正並びに業種別の振興法等を新たに設けまして、既存の法律の活用と同様に万全を期していきたい、こう考えております。
従いまして、今後考えなければならぬ製品の自由化というものについての対策を今後やっていこう、今すぐ製品について自由化するかというと、これはまだまだ先のことでありまして、また相手のあることでありますから、ドイツは自由化いたしましたが、今なお、ミシンとか写真機、ライター、玩具のようなものは二、三年、三、四年のうちに自由化すると言っておりますが、繊維品並びに陶磁器につきましては、いつ自由化するともドイツは言っていない、こういう状況でございます。われわれは原材料の自由化はいたしますが、繊維関係製品の自由化については、まだまだ先のことだと思います。しかし、それにいたしましても、将来に備えていろいろな競争力の強化につきましての施策を講じなければならぬという考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/15
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016・板川正吾
○板川委員 ちょっと関連して。繊維原料の自由化について新聞で承知しているだけなんですが、自由化に踏み切るときは、業界では通産大臣の池田さんに一任する、繊維産業というものは、国内産業としても非常に重要でありますし、輸出の三分の一近くが繊維製品でありますので、重要な輸出産業でもあるわけです。それで、私新聞のあれを今ちょっと思い出したのですが、紡績業界と思いましたが、まさか来年四月には自由化はしまいと思っておったところを、通産大臣に一任すると言ったらば、突然来年四月に踏み切るということで、繊維原料の自由化を踏み切った時期について、業界で一つの混乱があったということが報道されておったと思います。そのときの事情をもう一ぺんここで明らかにしてもらいたいことと、なお、その来年四月から所期の計画通り自由化するという方針には、現在いささかも変わりはないかどうか、その点を一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/16
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017・池田勇人
○池田国務大臣 この繊維原料の自由化につきましては、私の気持では、岸内閣の国務大臣をしておりますときに、私は閣僚懇談会で発議しました。その後やめまして通産大臣になりますと、私は繊維関係のみならず、まず対ドル差別の自由化をしろ、そして対ドル関係以外の分では、この繊維原料をまずやるべきだと決心したのが、通産大臣になって直ちであります。もう一年半前に国務大臣のときに私は発議しております。それから通産各局の者を集めまして、自由化する、各局長はおのおのその準備を始めてもらいたい、相当反対がございましたけれども、私の決意を知りまして、繊維局長もその線でいこうということになったのが、昨年の八月ごろでございましたか、私はこれは重要なことでございますから繊維関係の方々、ことに綿、毛そして人絹、合成繊維、こういう面、労働者、学識経験者を集めまして審議会を開いてもらったのが九月ごろだったと思います。そのとき私は、大体一年くらい置かなければならぬというので、繊維局長には三十五年の十月を目途として研究を進めてもらいたい、だんだん審議会の審議を重ねるにつれまして、昨年の十一月ごろでございましたか、もう繊維関係の契約がどんどんできて、三十五年の十一月、十二月、三十六年の一月くらいまで契約がどんどんできるような状況になって、三十五年十月ということを私はあきらめました。三十六年の一月からというくらいに思っておったのであります。で、審議会の状況は、十二月の末になりまして、いろいろ聞くところによりますと、三十六年の一月ではちょっとあれじゃないか、通産大臣は十月にやるというふうな腹だったから、一月くらいになるのじゃないかということをお考えになった人もあるようであります。私は結論から申しますると、三十六年の四月からやれば、これは大体全部が賛成をなさる。今のお話の三十六年の四月というのは、綿関係は四月でけっこうだという申し合わせをいたしました。私は、長い間統制しておるものを自由化するのに、二月や三月ということはない、みんなの納得し得るような日にちがいいというので、三十六年の四月、こういうことでやったのでございます。私の聞きますところでは、三十六年の四月でいいのだ、大体全部の人がこれに賛成したということを間接に聞いております。従って、もうそれによりまして外国との取引も行なわれております。しかもこの影響は、私はそう信じませんが、今になってみると、早くやってもらった方がよかった、とにかく原材料の自由化というので、一番ひどい影響を受けましたのは毛でございます。毛糸は、自由化する前には一ポンド千七、八百円、あるいは二千円になったことがありますが、これを発表いたしましてから、国際ロンドン相場の千五百円前後のものが、日本は千三百円台まで下げ、これは相当の影響がありましたが、今は千四百数十円と、ロンドンの相場に近くなっている。その次に影響を受けましたものは、中位の綿花商でございます。今までのやみ口銭、切符で立っていったのが、切符がなくなったということによりまして、ある程度の影響を受けておるようでございます。それからまた、自由化が発表になってから、そういう状況があるから、今度いよいよ来年の四月にやるときに、また影響があるのじゃないか、二度影響があるというようなことは好ましくない、一ぺんにやってもらった方がよかったという説もあるようでございますが、私は結果から考えまして、繊維関係の審議会で通産大臣にまかすとは言われましたが、私は彼らの意向を十分そんたくいたしまして、三十六年の四月、これでいいと思っています。従って、今これを変えようという気持は全然ございません。業界もこれによって協力していっていただいておると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/17
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018・東海林稔
○東海林委員 次にお伺いしたいのは、国際的の自由化と、言葉は妥当かどうか知りませんが、むしろそれと伴って国内の自由化というものが一層促進されなければならないのが、かえって最近の政府の貿易自由化に対する政策の中には、国内の不自由化という方向に向かう点があるというような気がいたします。御承知のように繊維工業設備臨時措置法は五カ年の臨時法でございまして、すでに四年経過して、本来ならば大体その目的を達成したことにならなければならないと思うのであります。今後さらにこれを四カ年引き延ばして、国内の不自由化という形がさらに続いていく。一方においては、また輸出入取引法の改正というような案が出ておるのでありまして、その考え方が一貫していないのじゃないかというような感じを受けるのは私だけでないと思います。そういう批判も相当出ておると思います。この前本委員会で、板川委員が国民所得の倍増論について大臣の所見を伺った際にも、戦後の統制経済を自由経済にしたことが、非常に日本経済の発展を促進した、こういうようなお話があり、さらに、しかし現在国内的にはそういうふうに自由化されたが、国際的に不自由化というのが残っておるので、それを今後貿易を自由化していくことによってさらに国民所得の倍増というものは実現できると期待しておるのだというような御所見を私も伺ったのでありますが、この臨時措置法を、さらに四カ年延ばすというような考え方は、どうもそういう点で不一致じゃないかという感じを強く受けるわけです。現在は五年一昔といわれるのですから、時限法がさらにまた十年近くも続くのだというようなことは、法の形の上からいっても変な点があると思うのでありますが、そういうような点についての御所見を一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/18
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019・池田勇人
○池田国務大臣 いろいろな産業、いろいろな業種によりまして違ってくると思いますが、お話の繊維工業というものは、国内産業といたしましても国際的産業としても最も重要な産業でございます。しこうして今の現状が、原材料の統制、そうして国内の産業設備の規制、こう二通りでいっておるのであります。それを一つにする場合におきましても、ひずみをうまくとっていかなければ、産業全体がこわれてくる。私はいろいろないわゆる関所を一つにして、そうしてそこでうまくやっていこうというのでございます。御承知の通り、今でも綿ともは違いまするが、格納、封緘いたしておる。こういうことをやっているとき、今度原材料を自由化したときには、どうしても格納、封緘のところを強力にやっていかないと、当座の間に合わない。だからこれをやって参りたい。しかし、これからの設備の新設を制限いたしまして、片
一方では経済力、国民生活の向上によりまして格納のパーセンテージをだんだん低めていって、そうしてそういうことのないように、ほんとうの自由な姿にいくための経過的措置でございます。だから私は、自由化の理想に向かっての経過的措置としては、この程度のものは最小限度やっておかないと、産業自体の根底がぐらつく、こう考えてやっておるので、自由化の実現の過渡的の措置、こう考えておるのであります。取引の自由化、もちろん国内的に商品の取引は自由にしており、設備につきましては、商品の適正な自由化を招来する上において、設備の点についてしばらく規制をしていこう、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/19
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020・板川正吾
○板川委員 関連。大臣は前からずっと自由貿易を主張されておる。岸内閣の国務大臣のときから、すでにおれは自由化を一貫してやっておる、また戦後日本経済を立て直すときに蔵相となったときも、一貫して自由化を自分の主張としてこられた。こう言われておるのですが、今東海林委員が言われましたように、政府のとりつつある自由化の中には、自由化すると言いながら、一面また不自由化の面もある。一体それはどこに原因があるかというと、岸さんは御承知のようにカルテル論者です。何と言ったって戦前から一貫して持っています。岸内閣で岸さんがカルテル思想をずっと一貫して持っており、池田さんは戦後自由主義経済理論を持っておって責任ある職についてきた。そこで今度の自由化なんかでも、西欧を見ると、ドイツを中心に考えてもいいのですけれども、自由化をやるということは終戦直後から一貫しておるのですね。それはエアハルトがそういう学派の統領であり、自分の学説の通り、実際に経済大臣となって、学説を実現して、しかも西ドイツの繁栄を来たしておる。池田さんの給料二倍論、月給二倍論、あの前にちょうどエアハルトが来て、日本の労働者の賃金は安いから、給料をもっと引き上げて、そして国内の市場を開発することが日本の産業の発展のためにいいのじゃないか、こういうことを発言して財界にショックを与えたようですが、池田さんはエアハルト流の学派に属する経済理論を持っておられると思うのです。そのエアハルト流の自由競争の学説を信奉する池田さんが、カルテル至上主義を持っておる岸内閣におるために、どこか、自由化といいながら、不自由化も——どうもげたとくつと片びっこずつのような印象を与えるのじゃないか。やはりこれは一貫してどちらか、自由化で行くなら、大いに一つ池田さんがもっと責任を持ってこの一自由化をすっきりとやる、こういうことが必要じゃないかと思うのですが、どうもわれわれ感じておるのは、自由化といいながら不自由化の面も、逆に出ておるのです。そこらがどうもすっきりしないのですが、この考え方に対して、大臣はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/20
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021・池田勇人
○池田国務大臣 エアハルトの考え方につきましては、大体あなたのお話の通りでございます。エアハルトも、野放しの自由ということを言っておりません。また、ドゴールの経済政策を立てましたリューエフ等もやはり自由経済でいっております。岸さんがカルテルをやられた、これは戦争中のああいう状態のときでおやりになったのだと思います。今では岸さんはやはりこの自由化、貿易自由化、為替自由化には大賛成と言っておられるので、決してカルテルをやろうというふうなことはない。貿易上の問題で、例外的には考える。
で、今回繊維工業設備臨時措置法を改正するというゆえんのものは、この繊維産業の置かれた特殊の状況を考えて、最小限度にやらざるを得ない——あなただって、この設備を野放しにせいということはとてもおっしゃらぬと思う。そうしてこれを将来自由にするための過渡的の問題として、板川さんは、これはカルテル強化になるからよせというふうなことは、とてもおっしゃらぬと思います。これは自由化に向かう越えねばならぬ、しかも繊維産業の特殊事情である過剰設備、これをどうやってほぐしていくかということの問題でございますので、イデオロギーの問題ではございません。自由化に向かって進むための例外的、経過的措置であるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/21
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022・東海林稔
○東海林委員 局長に少し伺いたいのですが、従来の法律の目的も、やはり正常な輸出の発展に寄与するためということになっているわけですが、過去四カ年本法を実施してきた実績が、大体これまでの目的としておっところと、どういうような状況になっておるのか。まあ自由化を来年から実際にやるということで、四カ年延ばすということがこの理由になっているわけですが、その点を一応考えずに、従来の目標としておったところと、これまでの実績がどういうような進展状態になっているか、そういうような実績関係について、一応説明を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/22
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023・今井善衞
○今井政府委員 この法律は三十一年にできまして、その際三十五年度を目標年度といたしまして、三十五年度におきましておおむね過剰設備を適正な水準まで正常化することができるという前提でやったのでございます。ところで、この設備につきましては、いろいろ政府といたしまして努力をしておるのでございますが、遺憾ながら三十五年度において過剰を解消するというわけに参りませんで、昨年の改正におきまして三十七年度ということになりまして、今回の改正で、それをさらに四十年にしたい、かように考えておるわけでございますが、この三十一年立案当時におきまして、この五年間におきまして大体過剰設備はなくなるんじゃないか、そういうふうに考えました前提として、片や繊維製品の需要の問題、片やこれに対する供給力の問題と二つあるわけでございまして、需要の問題につきましては、幸いにいたしまして、立案しました当時の需要見込み、それを若干三十五年度においても、さらに三十七年度におきましても上回っておるということがいえると思うのであります。三十一年度立案当時におきましては、三十五年度の需要二十四億五千万ヤール見当じゃないかというふうに考えていたのでありますが、ことし私どもは繊維の需要は二十五億ないし二十六億程度になるというふうに考えております。ところで、供給の面は、繊維設備が非常に合理化されまして能率がよくなったという面が一つあるのでございまして、当時の紡績機械の回転速度が、合理化によりまして格段とよくなりましてこれはその企業によりまして、あるいは機械によりまして、もちろん異なるのでございますが、いいものにつきましては二割ないし三割能率が向上した。平均いたしましても一割以上の向上になっておるというふうな状態になっております。
それからもう一つは、これは非常に遺憾なことでございますが、三十一年度立案当時におきまして、いわゆるかけ込み増設がございまして、それによりまして約二百万錘程度の設備がふえたということになっておるのでございます。それからまた、合成繊維の伸張の速度というものが、当初考えたよりもはるかによく伸びたというふうな関係、従いまして合繊紡機というものを増設せざるを得ないというふうな関係にあるのでございます。さような次第でございまして三十七年度におきましても、今から考えましてもなお約二百万錘程度紡績設備というのは全体で千六百万錘あるのでございますが、二百万錘程度がやはり過剰になるという見込みが出てくるのでございまして従いまして三十七年度を目標年度としていたのでは、繊維工業設備の合理化というものは達成できない、どうしてもそういう面からいたしまして四十年度まで延ばさないと合理化は達成できない。四十年度になりますと、もちろん需要もふえて参り、それによりまして現有設備で大体過不足はなくなる。それによりまして繊維設備の合理化は達成できるんじゃないか、かように考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/23
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024・東海林稔
○東海林委員 今の問題と関連して、この法律の従来の第十条の二の実際の運用の仕方について伺いたいのでありますが、これによりますと、共同行為に基づいて機械の廃棄をやった者、あるいは廃棄以外の方法で処理した者は、再登録に際しては優先権が認められる、こういうことなんですが、これは、現実に処分した者その人だけに限るのでありますか、その人の権利を買い取った者についても、やはりこれは認めるということになるのか、実際運用面はどういうふうにされておるか、その点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/24
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025・今井善衞
○今井政府委員 この十条の二の規定は、昨年の改正におきまして入ったものでございまして、今までまだこれを実施したことはないのでございますが、ただいま合繊紡機が不足しておる。従いまして、他の、たとえばスフ紡機あるいは毛紡機等の余っておる紡機を転換しまして、そうして合繊紡機の方に振りかえるということで、今その点につきましていろいろ打ち合わせ、研究中の問題でございます。今の御質問の点、現実に持っておる者だけに限るのかということにつきましては、これは現実に持っておる者だけに限るわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/25
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026・東海林稔
○東海林委員 今の二回の御答弁から見ますと、かりに貿易の自由化というものがなくても、一応この法律の所期の目的を達成するには若干延ばさなければならない実情にあった、こういうふうに理解していいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/26
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027・今井善衞
○今井政府委員 それはその通りでございまして、ただ自由化によりまして、どうしても延ばしてもらわなければならぬことになったという次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/27
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028・東海林稔
○東海林委員 それからこの間いただきました資料によりましても、いわゆるやみ紡機といいますか、これが相当あるようでございますが、これに対してはどのような処置をとろうとされておるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/28
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029・今井善衞
○今井政府委員 この法律によりますと、法律に規定しました綿糸等の制限糸につきましては、必ず登録した紡機でなければひいてはならないということになっておるのでございます。ところでこの法律の対象になっております制限糸といいますのは、約十ばかりあるのでございますが、その制限糸以外の糸というのは、実は法律ではあり得るのでございまして、たとえば綿花を九%、スフ綿を九一%、あるいは合成繊維九%、スフ綿をやはり九一%、そういう糸は法律の対象にはなっていないのでございます。従いまして登録をしない設備においても、ひいてよろしいということになっておるのでございます。従いまして無登録紡機というのは自由糸、いわゆる制限糸以外の糸をひく面ではあり得るのでございますが、ところが現実問題としましてその無登録の紡機、やみ紡機で制限糸、綿糸なりスフ糸、毛糸というものをひいておるので問題になるのでございます。私どもこの無登録紡機でもって、制限糸をひいていやしないかということでもっていろいろ調査し、あるいは必要な措置をとっておるのでございますが、ただいまの調査によりますと、いわゆる無登録紡機というものは約四十万錘程度でございまして、そのうち二十万錘程度は現に格納されております。使っていないのでございます。残りの二十万錘程度が現実に動いておる。これがこの法律の対象になっておりません。制限糸以外のものをひいておるならば問題がないのでございますが、ところが現実に綿糸なりそういう制限糸をひいているらしい向きもあるのでございます。従いまして登録をしないで、そういう制限糸をひいておるということは、この法律が一番目的にしておりますところの業界全体の秩序を立てて合理化したいという点に、根本的に触れるわけでございます。従いまして何とかこういうことがないように、現にあるものにつきましては取り締まってもいかなければいかぬし、今後またそういうふうなものが起こらないように、予防的な措置も講じていかなければならぬ。この法律の改正案におきましても、無登録紡機でいわゆる制限糸をひく場合におきましては、格納なり何なりを命ずることができるということになっておるのでございまして、私どもこの法律の改正が行なわれますれば、取り締まりを厳重にして参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/29
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030・東海林稔
○東海林委員 今の四十万錘という数字は、常識的に言われていた数字から見ると比較的小さいようにも思うのですが、この調査はどのようなふうにして出された数字であるかということが一点、もう一つはどういう業者に比較的多くこれが発見されておるかという点、それから今後規定が改正されれば、処罰規定もあるということなんですが、実際に従来の実績から見て、そういうことがどういう方法をとれば可能か、取り締まりが可能か、そういうふうな点についてお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/30
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031・今井善衞
○今井政府委員 この法律でもって報告徴収あるいは場合によりまして立入検査ができるという規定があるのでありまして、従いましてこの紡機を持っております場合に、それが場合によりまして大部分登録紡機を持って、一部無登録紡機を持っておるという場合がございますので、従ってその立入検査権なり、報告徴収権に基づきまして、通産省の出先の通産局で一々工場に行きまして調べまして、その集計が四十万錘ということになっておるのでございます。それからこの法律によりまして制限糸をひいておる場合には、この無登録設備の全部または一部につきまして格納できるということになっておるのであります。従いまして、場合によりまして明らかに制限糸をひいておるということになりますれば、その工場に対しまして紡機を全部格納するというふうなことはできないことはないのでございまするが、ただ現実問題としまして、現にたとえばその工場が動いております場合には、従業員の問題にも関連するということでございますので、私どもはこの取り締まりにあたりましても慎重にやりたい。たとえば大部分は制限糸をひいておるけれども、一部につきましては自由糸を作ればりっぱに売れる場合もあるということも考えられるわけでございまして、従いましてごく一部は自由糸を作るということで、たとえば製造を認める、大部分を格納するとか、これはそのときのその企業の規模なり、あるいは九のときの情状によりまして弾力的に実際あまり酷にならないように運用して参りたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/31
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032・東海林稔
○東海林委員 今のお話のどういう業者に、たとえば大きいものか、中小いうか、どういう方面に四十万錘というものが主として発見されておりまか、その点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/32
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033・今井善衞
○今井政府委員 この四十万錘のうち約二十万錘は格納されておるのでございますが、この格納されておるもの相当部分というのは、これは大紡績も持っております。と申しますのは、この法律でもって陳腐化と申しますか、古い設備を新しい能率のよい設備に取りかえるということは認めておるわけでございまして、従って大きな企業といたしまして取りかえるつもりでもて新しい設備を発注して、そうして一々についてそれが動き出した。それで古い設備はどこかへ売って使ってもらう予定だったところがそれがどうも取り締まりと申しますか、われわれの方の方針によりまして、売っちゃいかぬということにいたしましたので、大紡績はそういう善意の意味で格納しておるものが相当ございます。それからあと現に動いておりますものにつきましては、これはいわゆる綿糸なり、あるいはスフ糸なり、それぞれりっぱな企業としましてやって去ります工場が、片手間に無登録紡機を持っておるということはまずないのでございまして、それぞれ親戚なり縁故者の名義を使いまして分工場と由しますか、全く名前も変えまして違ったところに若干設備をしておるというのが、大部分でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/33
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034・東海林稔
○東海林委員 次に大臣に一つお伺いしたいと思うのですが、原料の自由化に伴いまして当然企業間の競争が激しくなる、またそれによって企業の体質改善が促進せられるということも当然予想されるし、またそうなければならないわけでありますが、その場合に、企業の進展ということが労働者の犠牲をしいることになっては非常に困ると思うわけです。先般も本委員会でお話し合いましたように、従来日本の繊維関係で特に労働賃金の安いということが、非常に外国における不評を買い、それがまた繊維製品の輸出振興の一つの大きい障害であったというふうなお話を承ったわけであります。最近また各産業におきまして、技術革新というようなものが進められておりまして、たとえばことしの春の新しい中学や高等学校の卒業生の就職関係などから見ましても、若い人たちに対する各企業の求人というのが相当進んできているように思うわけですが、実際に就職を望む若い人たちの希望の状況を見ますと、これは各地におきましてやはり電気とか機械方面についての希望は非常に多いが、繊維関係につきましては、機屋にしましても紡績関係にしても、非常に求人に対して希望者が少ないというような条件が出ているわけです。このことは、繊維関係の労賃が低く、また産業環境が必ずしも良好でない、こういう点に理由があると思うわけでありますが、今後この自由化に伴って企業の合理化をはかるという面においては、どうしてもそういうことが一番先に取り上げられなければならない問題だと思うのでありますが、そういう点について業者にのみこれをまかしておいたのでは、なかなか実現は困難じゃないかと思うわけです。それに対して政府としてどういうような措置を考えておられるか、その点についての御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/34
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035・池田勇人
○池田国務大臣 自由化をすることは、経済の発展と産業の隆盛を招くための手段——繊維関係について見ましても、経営者が最近の新しい労働力の吸収につきまして相当心を砕いておるのでございます。また片一方繊維機械を格納することによって、失業者が今まで出た例はございません。こういう経済の動きから申しまして今後繊維関係方面におきましても、初任給その他がだんだん上がってくる。大体十大紡の方の初任給は、六千円近くいっているのではございますまいか。ただ新紡ことに新々紡につきましては、まだまだそこまでいっておりません。しかし今後この産業自体が合理化されていくならば、大紡績のみならず新々紡につきましてもその影響がだんだん出てくるのだ。たとえば新々紡なんかで、やみで棉花を買ってくる、それがなくなってくる、そうして産業合理化されることになれば、これが当然労働問題の解決、賃金の向上に私は役立つものと考えております。今これをやりますために新たに失業者が出るということはないという確信を持っています。
今お話の無籍紡機の件につきましては、これは別途考究しなければなりませんが、今後この法律改正によりまして、労働問題が悪くなってくる、変な場面が当然起こってくるというふうには政府は考えておりません。従いまして既存の最低賃金法その他のことを考えていけば、私はさしたるものではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/35
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036・東海林稔
○東海林委員 せっかくの大臣のあれですけれども、ちょっとどうもはっきりわからないのですが、この法律の改正によって、特に労働条件が悪くなるということは考えなくてもいいのではないか、こういう点はある程度わかるような気がするのであります。しかし今後原料の自由化によって日本の繊維関係の近代化をはかっていく上においては、この法律の改正だけの問題としてではなしに、やはり労働条件の改善ということは、これはどうしてもやらなければならない問題だし、また業者がそれを怠っておっても、先ほど申しましたように、結局そういう状態では必要な労務者も得られないというような形まで出てくるのでありまして、当然これは好むと好まざるとにかかわらず、要求されてくる事項だと思うのです。しかしそういう場合におきまして、特に十六紡績等は別として、中小企業の紡績等におきましては、非常に困難な事態に立ち至ると思うのです。それに対しての政府としての方策、単に本法律案改正だけの関連でなくて、繊維全体の業界の発展のために、労働条件の改善ということについて、どのようにお考えになっておるか、この点、もう一度御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/36
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037・池田勇人
○池田国務大臣 産業がよくなって参りますから、労働条件はそのよくなる以上の速度でよくなると私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/37
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038・東海林稔
○東海林委員 今の点もう少しお伺いしたいが、先ほど局長のお話の中で、原料の自由化の大紡績と中小紡績に対する影響の問題で、出方は違うがしかし中小の紡績においては、現在において管理費とか労務費が非常に低いために、必ずしも大企業に比べて不利だということはないというような見方の、御見解の発表があったわけでございますが、しかしただいま大臣は、業界がよくなっていけば労働条件もよくなるのだ——どっちが先かということが問題になると思うのでありますが、そういたしますと、そういう場合に中小企業の紡績がよくなれば労働条件もよくなっていくのだ、これはわかるのですが、そのよくなっていくためには、やはり業界だけの自主的な努力ということも必要ですが、それだけではなかなか大企業に太刀打ちできないのではないかというような気がするわけですが、そういうような点についての政府の御見解は、どういうふうにおお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/38
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039・池田勇人
○池田国務大臣 今回の法律の改正によりまして、繊維工業界は安定の度を加えると思います。片一方で自由化して原料の入手が楽になると同時に、この法律によりまして繊維工業界は安定の度を加え、健全な発達が期待される。これの結果といたしまして、労働条件その他もよくなる。業界の発展に伴う労働条件の向上ということを私は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/39
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040・東海林稔
○東海林委員 それでは次の問題に移りたいと思いますが、自由化の目的は、一つは輸出振興の点にあると思うのですが、もう一つ大事なことは、やはり国内消費者に対して良質な、しかも安価な繊維製品を供給する、こういう点だと思うわけであります。この法律の改正案が出て、さしあたっての過渡的な措置がとられる。その他については漸次また考えていくのだというのでありますが、一応今の段階において、この過渡的な措置だけで、そういう点の目的も達成することができるというふうにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/40
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041・今井善衞
○今井政府委員 自由化によりまして原料は安くなります。従って消費者にも良質廉価な製品が供給できるということになるわけでございますが、他方何らの用意なくして自由化に踏み切りました場合には、業界に相当の混乱が起きまして、関連業界にそれが波及しまして、国全体として思わしくない影響が起こるということでございます。従いましてこの法律におきまして、たとえば格納なり設備処理なりにつきまして改正を加えておるのでございますが、その場合におきまして消費者に不利なことがないように運用上配慮いたしたい、かように考えておるわけでございます。特にわが国の繊維製品の価格水準というものが、一般的に申しまして国際価格よりもはるかに低いわけでございます。従いまして、ほっておきまして価格水準が生産者のコストすらまかない得ないというようなことになりますれば、これは行き過ぎでございまして、そういうことでは、かりに消費者が不満でございましても、生産者のコストがまかなえる点までがまんしてもらいたい、かような意味合いからいたしまして、この法律を適用するにあたりましては、できるだけ価格水準の低いところで安定し、それによって消費者に迷惑のかからないように運用して参りたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/41
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042・松平忠久
○松平委員 関連して。さっき東海林君から伺った合成繊維、化繊等への影響について、あなたがお答えになった点で、ちょっと私わからないのですが、自由化をやって参りますと、合成繊維、化繊というものは競合繊維であるから、これは当然競合関係に立つので、いろいろな合理化が行なわれていくというような御趣旨であったわけです。私の伺いたいのは、端的にいって、綿並びに毛の自由化をやった場合に、合成繊維あるいは化繊というものは一体伸びていくという影響を受けるのか、あるいは現状のままだと、大して伸びもしないし減りもしないということであるか、その辺のことについてであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/42
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043・今井善衞
○今井政府委員 これは、スフなり人絹のいわゆる化学繊維と、それからあと合成繊維と、ちょっと影響が違うわけでございます。結論的に申しますと、スフなり人絹はAAと無関係にだんだん合成繊維の方に置きかわりつつあるような傾向にございます。従いまして、スフにしろ人絹にしろ、あまり大きな伸びは今後示さないのではないか。これは何もAAと関係する問題ではございません。合成繊維という、よりよい繊維ができて参りましたので、そういう傾向になったわけであります。それから合成繊維につきましては、先ほど申しましたように、今後技術の発達によりましてコストも下がりますし、品質もよくなりますので、従ってAAを実施いたしましても順調に伸びて参る。過去五年間の合成繊維の伸びを見ますと、全体の繊維の供給量の、五年間の増加のうちの半数以上が合成繊維で占める状態でございまして、今後もそういう傾向はこのAAを実施いたしましても続く、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/43
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044・松平忠久
○松平委員 この繊維工業設備臨時措置法を当初われわれ審議したときには、日本の繊維全体を考えまして、なるべく原材料を日本でまかなえるものの繊維を伸ばしていこうじゃないか、従って過剰設備をふいにするという場合にも、合成繊維、化学繊維等については適用外であるというようなことであって、また一部は転換するという考え方で、日本の繊維産業の全貌を漸次そういう方向に持っていくということがあったと思うのです。今お聞きすると、合成繊維の伸びが非常な勢いで伸びておる、事実その通りであります。そこでお伺いしたいのは、今後の政府の方針としては、日本の繊維というものは、逐次やはり合成繊維の方面に置きかえていくということが、日本の資源関係その他からいって適当ではないか、こういうふうに私たちは考えておるわけであって、臨時措置法の精神もそこにあったと私は記憶しておるわけだが、その点について政府はどういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/44
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045・今井善衞
○今井政府委員 やはり国産でまかなえます化学繊維なり、あるいは合成繊維を今後伸ばしていきたいという気持には変わりないわけでございます。ただ昨年の改正によりまして、御承知のように、化学繊維の設備につきましても、合成繊維の設備につきましても、この法律の対象になったのでございますが、その事情は違っておりまして、人絹、スフにつきましては、設備はこの法律から除かれておった関係もございまして、業界で非常な増設競争を行ないました。従いまして三年ほど前の繊維不況のはしりはスフ、人絹から起きてきたというふうな関係がありまして、現に非常にたくさんな過剰設備をかかえております。さような状態で今後増設が行なわれるということになると困るので、増設を押えるという意味で、化学繊維につきましては、この法律の対象になっておるのでございますが、合成繊維につきましてはそれとは全く事情を異にいたしておりまして、新しい合成繊維につきましては、とにかくその需要がある限り伸ばしていきたいということには変わりないのでございます。ただ残念なことには、競争意識が非常に強くて、あの会社がやるならば、自分のところは需要があるかどうか見当がつかぬけれども、とにかく一つ自分のところも増設しようというふうな、良識に基づかない増設意識が非常に旺盛でございます。そこで秩序よく、お行儀のいい発展を合成繊維について遂げてもらいたいという意味で、合成繊維もこの法律の対象にいたしております。これは、その後におきましても、増設希望がありますれば、常にそれを十分審査いたしまして、可能な限り増設を認めておる次第であります。なお、合成繊維の綿をつぶして紡績いたします合繊紡機につきましても、それが不足の場合には他から転換するというふうに、合成繊維の育成につきまして努力しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/45
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046・松平忠久
○松平委員 去年のいきさつも承知しておるわけですが、今伺うと合成繊維も非常に無鉄砲な競争をしておるように思う。そこで一社に対して数社が出かけていっていろいろな交渉をしておるということも最近非常に多くて、新聞でたたかれて——ポリプロピレンというのですか、あれなんかも大へんなことらしいが、ああいったやり方に対してはどういうような指導の仕方をやっておるのか。ただほったらかしておくのか、あるいは何かあっせんでもするのか、繊維関係の人たちはちょっとああいうことをすると、すぐそこに飛びついていくということで、非常に指導もやりにくいと思うのです。ああいうことをやっておると、またこれを適用して過剰のものをつぶしていかなければならぬということになって、一方からいって、政府はこれに金を出していかなければならぬということをやっておるわけです。実際初めから非常に無計画な競争というものはやめさせていった方がいいのではないかと思うのですが、そこらはどうですか。どういうことを今やっておるのですか。イタリアのポリプロあたりはどういう指導のやり方をしておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/46
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047・池田勇人
○池田国務大臣 お話の点のごとく、貿易自由化で原材料の綿スフや綿、毛の方ははずしますが、合成繊維、化繊の方はパルプの問題、あるいは原料のソーダの問題等々、相当関税その他で自由化しておりません。議論はありましたが、将来を見れば合成繊維がずっと伸びていくから、自然に調節ができるだろうというので、綿、毛以外の関係業者も納得していただいたわけなんでございます。今後の繊維関係は、やはり合成繊維は相当伸びて参ります。最近のナイロンあるいはごく最近のテトロン等々の業績は非常によくいっております。人絹、スフで赤字だったのを、この合成繊維で努めて立て直しをしております。
次の問題のモンティカティニのポリプロピレンの問題は、なかなかやっかいな問題でありまして、二つの会社が契約しておるようでございますが、これは本年に始まったわけではないので、ずっと以前から二、三の会社でやっておって、最近に至って前の分を破棄いたしまして、別の二つの会社が今やっておるようでございます。契約内容その他につきましては審査いたしております。ポリプロピレンの関係は樹脂の方ではよくわかっておりますが、繊維の方でもこれは合成繊維の最後のものだろうというふうなことをいわれております。モンティカティニの特許権をフランス、イギリスはもうすでに旅行いたしまして、二社くらいがやっておると思います。アメリカにおきましてもモンティカティニの特許権をとっておるのもあります。またアメリカ独自のポリプロピレンもあるようでございます。いろいろな点を考えまして、今通産省といたしましては、契約の内容を審査している状況でございます。今ここで私が結論を申し上げる段階に至っておりません。将来ポリプロピレンというものは非常に有望な繊維であるということは認めておりますが、いかなる処置をするかということにつきましては、相当慎重に考えなければならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/47
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048・東海林稔
○東海林委員 この配付を受けました繊維総合対策懇談会の答申を見ますと、その中に生産数量調整のための共同行為を可能ならしめるよう、法律改正を行なう必要があるというような意見が出ておるわけです。そこで本改正案を見ていきますと、過剰設備の処理に関する共同行為の指示に当たっては、当面の繊維需給を参酌することにしたい。さらに設備処理のアウトサイダー規制命令の規定を設けた点等を考え合わせて見ますと、実質的にはこの対策懇談会の意見に出ておる短期的な生産調整をあげることを了としておるようにも見られる点があるわけですが、もしそうなったといたしますと、この独禁法の適用除外となっている設備処理の共同行為のワクを越えまして、実質的には独禁法に触れるようなことになるのじゃないかというふうに場も考えられるのでありますが、その点についてはどのようにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/48
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049・今井善衞
○今井政府委員 この総合対策懇談会の答申には、第二条といたしまして生産数量の調整措置ができるように法律を改正しろという答申があるのでございますが、今回の改正の中には、この生産数量を直接とらえるとかいう問題につきましては、答申を却下していると申しますか、答申通りにやっていないのでございます。ただ共同行為の指示の第二十四条におきまして、当面の綿製品の需給状態と、特に輸出の見込を参酌事項として政府として考えなさいということを入れたわけでございますが、この法律の目的は第一条にもございますように、輸出の正常な発展に寄与するために設備規制を行なうことによりまして、目標に一致しない過剰設備がないように措置するということでございまして、従いまして二十四条の共同行為におきましても、あくまでも根本は長期的な観念を中心としてやるのでございます。ただ自由化によりまして非常に業界自体の安定というものが強く要請されるわけでございます。その場合に短期的な需給の事情なり、あるいは特に目的に照らしまして、輸出の正常な発展に寄与するという意味合いから、輸出見込み等をも参酌しなければならぬ。従来の二十四条におきましても、その点については何にも触れていないのでございますけれども、しかしながらこの当面の事情なりなんなりというものを参酌して悪いことはないという解釈も、実はできるのでございます。特に今回のAAに対処いたしまして、当面の事情なりなんなりを、必ず設備処理に当たりまして政府として参酌しなければならぬということにいたしたのでございます。と申しますものの、これはあくまでも設備規制でございまして、従いまして格納なり封緘という直接設備自体に触れる共同行為でございまして、たとえば生産数量を幾らとして、各社はこれ以上に作ってはいかぬという指示はできない建前になっております。設備規制をあくまでも中心にしてやる、しかし設備規制の反射的な効果として、それによって生産調整に資することはあろうと思いますけれども、あくまでも目的自体は設備規制にあるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/49
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050・東海林稔
○東海林委員 ただいまの点ですが、確かに形式的に入っていないことは私らもわかっている。しかし短期の需給関係を考慮した規制でございますと、今のお話の中にも反射的というお言葉があったと思いますが、やはり意識的にそこに生産調整という観念が入ってくると思うのです。僕は実質的に入ると思うのですが、その点もう一度お願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/50
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051・今井善衞
○今井政府委員 生産数量を調整するということになりますと、直接的に企業の生産活動を押えるということになりまして、たとえば能率のいい工場におきましてもそれ以上作れないというふうなことになるわけでございます。設備自体を押えるということになりますと、能率のいいものは能率の悪いところよりはよけい作れるとか、あるいは古い機械がありますれば新鋭機械に入れかえて、それによって多少の生産を上げることができるということで、外側から生産数量に影響することはございますけれども、あくまでもやはり設備規制は設備規制でございます。特に政府自体が過剰設備を選定して国の要請として業界に指示して、業界がその共同行為をするということでございまして、直接いわゆる数量調整をするカルテルとは違うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/51
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052・東海林稔
○東海林委員 ただいまの点ももう少し議論してみたいと思いますし、改正条項のこまかい点についても、相当お尋ねしたい点があるわけですが、実は私の党においても、零時半から議員総会があるそうですし、この辺で質問をやめさしていただきまして、あとはこの次に留保いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/52
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053・中村幸八
○中村委員長 本日は、この程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。
午後零時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404461X03719600428/53
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