1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年四月二十六日(火曜日)
午前十一時二分開議
出席委員
委員長 植木庚子郎君
理事 足立 篤郎君 理事 小山 長規君
理事 坊 秀男君 理事 山中 貞則君
理事 佐藤觀次郎君 理事 平岡忠次郎君
理事 廣瀬 勝邦君
押谷 富三君 黒金 泰美君
田邉 國男君 竹下 登君
塚田十一郎君 福井 順一君
福永 一臣君 細田 義安君
毛利 松平君 石野 久男君
石村 英雄君 加藤 勘十君
神近 市子君 栗林 三郎君
堀 昌雄君 山本 幸一君
横山 利秋君 大貫 大八君
松尾トシ子君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
出席政府委員
大蔵政務次官 奧村又十郎君
大蔵事務官
(大臣官房長) 宮川新一郎君
大蔵事務官
(主計局長) 石原 周夫君
大蔵事務官
(銀行局長) 石野 信一君
大蔵事務官
(為替局長) 賀屋 正雄君
委員外の出席者
大蔵事務官
(理財局総務課
長) 澄田 智君
専 門 員 抜井 光三君
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四月二十一日
外地引揚公務員の退職手当の特例に関する法律
制定に関する請願(丹羽喬四郎君紹介)(第二
五六四号)
同(北澤直吉君紹介)(第二六一九号)
濁酒密造防止対策に関する請願(山下榮二君紹
介)(第二六二〇号)
葉たばこ松川葉の収納価格引上げに関する請願
(山下春江君紹介)(第二六九一号)
鳥取税務署庁舎改築に関する請願(足鹿覺君紹
介)(第二七二九号)
姫路市大手前町の国有地払下げに関する請願(
河本敏夫君紹介)(第二七三〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
船主相互保険組合法の一部を改正する法律案(
内閣提出第五四号)(参議院送付)
日本開発銀行法の一部を改正する法律案(内閣
提出第五六号)
経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基
金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣
提出第六〇号)
国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律
案(内閣提出第七九号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/0
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001・植木庚子郎
○植木委員長 これより会議を開きます。
去る十二日為替局長に就任されました賀屋政府委員より発言を求められております。この際これを許します。賀屋正雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/1
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002・賀屋正雄
○賀屋政府委員 私、去る十二日付をもちまして、酒井前為替局長のあとを受けまして為替局長に就任いたしました。
管財局在任中は、当委員会にはことのほか御迷惑をおかけいたしまして、にもかかわらず、大へん御協力をいただきまして、接収貴金属の法案等も無事成立をいたしました。その点委員の各位の皆様方に心からお礼を申し上げたいと存じます。
新しくつきましたポストの仕事でございますが、大へん重要な仕事を受け持っております。にもかかわらず、非常にふなれでございまして、今後大いに勉強の必要があろうかと思いますので、できるだけの努力をいたすつもりでございますが、どうか委員各位の心からの御支援、御鞭撻をお願いいたしたいと存じます。
簡単でございますが、就任のごあいさつといたします。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/2
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003・植木庚子郎
○植木委員長 経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律の一部を改正する法律案、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律案及び日本開発銀行法の一部を改正する法律案の三法律案を一括して議題といたします。
質疑の通告があります。これを許します。石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/3
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004・石野久男
○石野委員 私は今の法律案で相当の質問があるのですが、大臣は十二時までだそうですから、きょうだけではちょっと質問が終わらないので、あと保留しますから、一つお願いします。
この国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律というので、今度第二世銀が出ておるわけですが、この第二世銀というのは、第一世銀とその設立の趣旨、目的等で特にどういう点が違うかという点について、一つ大臣からお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/4
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005・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 第二世銀の構想というものはしばしば論議されて参りましたが、基本的な考え方といたしましては、いわゆる低開発国に対して、第一世銀のような融資条件だけでは十分効果を発揮しないのではないか。そのいわゆる低開発国の特殊性というものを考慮した金融が必要だろうというのが、第二世銀の構想の起こりでございます。そういう意味から見まして、融資条件等について、在来のものと違っておる、やや緩和された方法でございます。特に取り上げて申し上げることはそういう点じゃないか。さらにまた、国際間におきましても、いわゆる工業国——第一部の国と言っておりますが、それと第二部の国、こういうようにいわゆる低開発というものを一応想定して、これを分離しているというようなところに相違がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/5
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006・石野久男
○石野委員 第二世銀が第一世銀と違う点は、今大臣が言われたように、融資条件等が非常に違うというのですが、しかもまた、それを第一部と第二部というふうに分けておる。この融資条件がそれではどういうふうに違って、どういうふうに低開発国の援助という問題に協力するような態勢ができてくるのか。そういう大体予想される融資条件というようなものはどういうふうになって、もう固まっているのかどうか。その点を一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/6
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007・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 具体的な条件はまだ固まっておるわけではありませんが、取り扱い方の基本的方針はきめております。具体的にはケース・バイ・ケースできめていくということであります。いわゆるソフト・ローンという考え方ですね。この硬貨貸付に対して現地通貨返済を一部認める、こういうローンだというところに特殊性がある、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/7
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008・石野久男
○石野委員 現地通貨を使って出資をし、あるいはまた返済が現地通貨で行なわれるという問題が非常に違うということなんですが、この現地通貨を使うということは、出資の面においても、あるいはまた返済の面においても、いろいろな問題を持ち込んでくるだろう、こう思うのです。この第二世銀というのは、はたして、現地通貨を使うことによって、第二世銀設立の趣旨を全うしていけるか、また長期にわたってその目的を達成することができるかという問題について、それぞれの加盟国が相当真剣に考えなければならぬ問題がある、かように思うのです。特に日本の場合それを真剣に考える必要があるのじゃないか、こういうように思うわけです。そこで、現地通貨で返済される場合、具体的に低開発国援助という目的がほんとうに達成されるのかどうかという点について、二、三の点で、特に具体的に、たとえば日本の場合、それがどういうふうに目的達成に役立ちをするかという問題を聞きたいのですが、現地通貨で返済が行なわれた場合に起きるであろうと思われるいろいろな経済的な事情が出てくるだろう。たとえば現地通貨で返済が行なわれた場合に、世銀なり何なりは、返済された現地通貨というものをどういうふうに使うのかという問題が一つ出てくると思いますつが、そういう点はどういうふうに政府は見ておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/8
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009・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 問題は現地通貨で返済されるということ、これは御指摘の通り大へん問題が多いのであります。ことに低開発国が共通の悩みと申しますか、しばしばインフレが高進をしていったりする、こういうような点から考えますと、現地通貨支払いということは非常な問題がある。従いまして、当初、現地通貨払いということについては、いわゆる第一部の国、工業国といわれる国の間でもなかなか一致しない。やはり国際決済に役立つ通貨でなければ困るのではないかということを強く主張された。しかし、一面から申しますと、いわゆる低開発国自身は、そういう国際決済上のドルとかポンドとかその他の通貨を持っていない。そういう点がやはり産業開発上非常におくれをとっているゆえんだ。もしも資金的に十分でありますならば、いわゆる低開発国と申しましても、財政的には非常に恵まれた国であるということが言えるわけであります。ここに一つのジレンマといえばジレンマがあるわけであります。そこで、いわゆる先進国として、基本的な考え方は、しばしば申し上げますように、低開発国の経済を開発して、国民の生活を向上さしていく、そういうことが国際平和確保のゆえんでもあるし、また国際経済の拡大にも役立つのだ、そういう意味で、いわゆる先進国といわれる工業国も低開発国の開発に協力するという、とにかく国際的な責任を認めてもよろしいんじゃないか、こういうのが基本的な考え方であったと思います。そこで、わが国の場合においては、いわゆるトップ・レベルをいく工業国だとは申しませんが、少なくとも低開発国ではない。そういうような意味において、わが国も応分の持ち分についての協力を惜しむものではないということを実は公表して参っておるのであります。
そこで、今のような融資条件を緩和するということでない限り、低開発国としては国際金融機関を利用する方法がないというので、ただいま申すような特殊な支払い方法も考案した。だが、問題は、そういう金をもらったときにその金がどうなるかという問題もありますし、同時に、第二世銀の資金としては、現地通貨で支払いを受けたのでは、だんだん融資財源が減少していくだろう、こういう危険も実はあるわけであります。そこで投資する場合のプロジェクトというものについては非常に厳選していくということにならざるを得ない。従いまして、この第二世銀が、言われておりますように、非常に広範な効果を直ちに上げるとは考えられませんが、いわゆる特殊なプロジェクトについてその開発の資金を拡大していくし、またそのプロジェクトの拡大の場合については、現地通貨で支払う面も相当今度は出てくるだろうと思いますので、直ちに第二世銀の資金に全部加入しなくても可能じゃないか、そういうところに効果をねらっておる、こういうように理解し、そういう意味ならば、十分プロジェクトを厳選することによって、第二世銀の目的もある程度達することが可能ではないか、かように実は考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/9
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010・石野久男
○石野委員 現地通貨で返済された場合に、資金量が減ってくるという問題ももちろん出てくるわけでありますが、その前に、融資条件を緩和しない限り、低開発国はなかなかそういう資金を使うことができないということが、具体的には低開発国自体にあるわけでございます。その融資条件を緩和するという問題は、先ほどまだ固まっていないとおっしゃられたのですが、大体どの程度にその貸付条件というものが予想されるのであるか。こういう点は固まっていないと言いながらも、すでにこの法律案ができて、わが国がやはりそれに投資しようとするわけでございますから、その固まっておる貸付条件というようなものを一応ここで御披露願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/10
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011・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 協定の第五条に、融資条件として規定しておりますものは、「加盟国における低開発地域の開発のためにのみ行う。」だから加盟国でなければならぬということです。それから「原則として特定のプロジェクト。」いわゆるプロジェクトを非常に限定する考えである。それから「市場調達不能で、かつ、世銀融資の対象とならないもの。」世銀融資の対象となるならば、第一世銀でやれ。どうも第一世銀の対象としては少し条件、返済の金利等が問題だと思うものをやる。また一般金融市場では調達ができない、こういうものだということです。その次は「融資形態は原則として貸付に限る。」これは別に援助ではないといいますか、あるいは寄付とかいうような援助でない。原則として貸付だ。「国以外の者が借入人となった場合は政府保証を要求できる。」やはり保証は政府保証ということが必要だ。それから「国内支出のための外貨貸付を行うことができる。」それからその次は「上記以外の条件についてはケース・バイ・ケースに定め、また条件修正を行うこともできる。」こういうことでございまして、抽象的な基本的な考え方だけが一、二、三、四、五、六できまっており、そしてケース・バイ・ケースでその条件をきめていく。金利等については世銀金利より安いことを期待するということでありますが、もちろん世銀金利より幾ら安い、何ぼになったというものはまだきまっておらない、こういうことでございます。ただいまきめておりますのは、ただいま読み上げた程度でありまして、まだ非常に抽象的なものだ、かように御了承いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/11
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012・石野久男
○石野委員 世銀が貸し付ける条件というのは、今基本的には六つの条項に固まっておる。しかし、具体的に融資をどのくらいにするかとか、あるいは返済期間をどういうふうにするかということはまだ固まっていないんだというお話ですが、第一世銀よりは有利な条件になるだろう。第一世銀よりは有利な条件にはなるが、しかし、利子あるいは返済期間というものについて、大体めどとしてどういうところまでいくように見通されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/12
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013・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 ただいま申し上げることは非常にむずかしいと思います。普通世銀金利が六分ということをいわれておりますが、これではいかぬだろう、そうすると一体どのくらいになるだろうか、その半分程度までは期待できるというような考え方が一応できると思います。あるいは、期間等についても、相当長期のものが予定されるのじゃないかということは言えると思います。今まで低開発国に対する資金供与の具体的な例とすれば、いわゆる共産国がとった例がございます。それが一応低開発国に対するものだと思います。それは二分とか二分五厘とかいっておりますが、大体二分五厘見当ということであり、二十年という見当だ。しかし、提供しておる条件はその通りでありますが、やはりそのプロジェクトの決定は共産圏の場合でも非常に困難のようであります。従って、提供された金額は今日までなかなか実行に移されておらないということが言えるのじゃないかと思います。具体的にたとえばインドの製鉄所の建設だとかいうようなものは、これはどういう条件でやったか私もつまびらかでございません。最近問題になりましたフルシチョフがインドネシアに出かけた、あるいはそれ以前に中共自身が低利の金を貸すとかいう話があったものは、二分あるいは二分五厘、そして大体二十年といわれておりますが、しからばそれがどの程度まで具体化しておるかということになりますと、相当の問題があるのじゃないか、かように実は思っております。今回IDAが考えておりますものは、別に共産圏がどういう条件だから、それに匹敵するようにという基準があるわけではございません。相互に国際協力して低開発国の経済開発をする、そのことがその民族の生活向上に資し、同時に世界経済の拡大に役立つ、こういうような意味だと特別な金利を考うべきじゃないか、かように実は思うわけであります。ただいま具体的な問題として幾らになるということは申し上げかねますが、大体世銀金利の半分程度でも一応想定しているのではないだろうかという、淡い具体的観測をしているというのが実情でございます。これは私非常に率直に申し上げておりますので、あるいはお前はいついつこういう発言をしたが、その通りにならなかったじゃないかと、あとでとっちめられるのじゃないかと思いますが、実はその程度にお聞き流し願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/13
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014・石野久男
○石野委員 貸付の条件についてはまだはっきりしない。きまっていないと言えば仕方がないのだが、今お話がありましたように、低開発国を援助するための貸付ということになれば、当然やはり共産圏、特にソ連が低開発国に対していろいろな資金の援助をしているという条件が、一応そのめどになるだろうということは予想されるわけです。話を聞くと、最初はアメリカあたりでは二分五厘、四十年くらいの返済期間というような話もあったようにも聞いておるし、しかし、それじゃ西ドイツあたりではとんでもないということで、反対もあったということも聞いておるわけです。いずれにしましても、これらの利子をどの程度にするか、返済期間をどうするかという問題は、低開発国を援助するという意味において非常に重要であります。しかし、また他面において、今度はそのIDAを構成する各国、特にIDAの持つ資金の効用に直接浴し得ないような国々にとっては、やはり相当問題があるだろうと思うのです。そこで、私は、日本の場合、相当な額の出資をするということになるわけでございますが、これを出資した場合に、先ほどありましたその国々の通貨で支出するものもありまするし、それから返済の場合には現地通貨の返済も出てくるというような、出資と返済との側でいろいろな通貨が入りまじってくるわけであります。そのときに日本がどの程度世銀によって利益するかという問題は、今ここでIDAに加入しようとする際、非常に重要なんじゃないかと思うのです。そういう点について私は大臣に所見を聞きたい。その大臣のお話を聞く前に、もっと基本的な問題として、わが国の低開発国援助に対する基本的な考え方というものはやはりなければならないのじゃないか、そういうことを私は思いますので、これはもちろん岸総理なんかの具体的な意見もお聞きしなければなりませんが、この際一つ大臣の低開発国援助に関する基本的な考え方を御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/14
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015・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 先ほど申しました基本的な一つの抽象的な原則的なものを申せば、やはり低開発国に対しての協力により国際経済の拡大に寄与する。ということは、結局日本に返ってくるということであります。ところで、日本の特殊的地位から特に要望されるものは、南方諸地域であり、あるいは中南米地域、最近ではアフリカ諸国というようなものが考えられるということでございます。そこで、今日までは日本が一国の力においてそれぞれの国に対してどういう処置をとってきたか。東南アジア諸地域に対しては、主として賠償問題を中心にし、しかも賠償問題と並行して締結されておる経済協力、この方法によって低開発国に対する協力援助を積極的に進めて参ったと思います。あるいは、賠償問題のない地域に対しましては、貿易の面において、いわゆる延べ払い方式なりあるいは特殊なクレジット設定なりというようなことで援助をはかってきた、かように実は思います。ところが、御承知のように、今御審議をいただいております経済協力基金にいたしましても、基金をすでに五十億ときめたのが、予算に計上いたしましたのが、三、四年前になりますが、その金を使わないできておる。これは一体どういうわけで使わないできているかと申しますと、当方においても考えなければならないものもあるし、またいわゆる低開発国というのが最近独立したばかりであります。その民族感情から見ましても、なかなか協力を積極的に望まない節もある。これは非常にむずかしい表現だと思いますが、やはり民族自立といいますか、民族自決とでもいうか、独立の思想が非常に強いし、ことに在来の植民地として発達してきたものだけに、この独立を契機にして対外的には非常に強い主張を持っておる。そういう事態でございますので、いわゆる当方が積極的に経済開発に協力するといたしましても、なかなか条件が一致しない、こういうことがある。私ども考えてみまして、しばしば今まで議論をして申し上げたのですが、いわゆる低開発国というものに対して、自分の力によって一国だけがこれの開発をはかるということは、最近の国際情勢から見ても必ずしも望ましいことじゃない。むしろ国際機関を通じて低開発国の経済開発に協力するということが、一番相手国からも受け入れられやすいことだし、そうすることが真の経済協力にもなるのじゃないかということを、実は基本的には考えるわけであります。しかし、一国においても日本自身がやり得るものもございますから、一面に経済協力基金というものを、わずかではありますが、今回五十億はっきり設定していく、こういう処置をとりました。同時に国際機関を通じて低開発国の経済開発に協力する。その意味の私どもの役割を果たすということにする。そうして、日本は、日本の置かれている地理的環境なり経済的環境等から見まして、特に東南アジアに重点が置かれ、あるいは中南米のごときは、多数の移民を送っておる地域でもございますので、そういう意味で、私どもは、過去の経過から見ましても、これには積極的に協力していく。最近はアフリカにおいても日本の積極的協力を求める機運が出ておりますから、そういうものに対しては日本も積極的に協力していく、こういうような考え方で参りたいと思っております。だから、ただいま申し上げますように、低開発国の経済開発は、相当長期にわたるものでないと効果は上げ得ないだろう、そして、そのことが必ずわが国経済の拡大、もっと広く申せば国際経済の拡大に役立つという点で、われわれもわれわれの立場においてその責めを果たしていく、その方針を推進していく、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/15
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016・石野久男
○石野委員 低開発国援助の基本的な方針というのは、今日の世界情勢のもと、あるいは経済的な事情のもとでは、非常にむずかしい問題だ。特に日本の場合はそうだと思います。大臣が今言われたように、低開発国の援助というものは、きょう援助したからすぐあす効果が出るというものでなくて、相当長期にわたらなければその効果が出ないということはよくわかる。ただ、その場合に、日本が低開発国に対して援助する場合の効果というものが、国際的な協力と独自の場合と二本建でいくといたしました場合にも、国際協力の中で行なう経済援助の日本に対する効用といいますか、利益の出方の大小というものが非常に重要になってくるだろうと思う。今日第二世銀を作るに際しての問題点も、やはりそういう観点から相当重要に考えなければならぬのではないかというように私は思います。そこで、たとえば、この第二世銀の貸付の条件や、それからまた、それを借り受けた低開発国が返済するにあたって現地通貨で返済するという問題が、いろいろとわれわれにとって懸念を残しておる。具体的に言いますならば、現地通貨が交換性を持っている場合であれば問題はないと思います。しかし、通貨の交換性を十分に持っていないようなところの現地通貨で返済が行なわれた場合に起きてくる経済的ないろいろな関係、あるいはIDAそれ自体の基金の減少という問題をどういうふうに力バーしていくかということになりますと、これは非常にむずかしいんじゃないか。IDA自身がその目的、行為というものを一そう成果をあらしめようとすれば、当然また資金が不足するから、それへつぎ込まなければならぬということが出てくるわけです。そこで、長期にわたらなければ効果は出ないということを含みつつも、しかし無限にそういう援助をし得られるかどうかという問題が、ここに非常に大きな問題として国の経済に出てくるわけであります。日本の場合は、それが特に痛切に感じられると私は思います。そこで、現地通貨で返済された場合に、私は、どういう現象が出てくるだろうかということを、一つここで真剣に考えてみたいと思うのです。たとえば現地通貨で返済された金を世銀はどう使うかという問題ですが、大臣はそれをどういうふうに考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/16
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017・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 私は、現地通貨で返済されて、現地通貨を必要とするような事業がやはり次々に起こるだろう、かように実は思います。そういう意味で、その金は使い得るんじゃないか、結局は回転していくということになりはしないかということを実は考える。今の基本的な問題で、わが国の場合に、わが国の力が一体どうなのか。第一世銀ならば日本は金が借りられるが、第一世銀からは借りられない。むしろ出資側に回っている。しかも、最近は、第一世銀の方もだんだん窮屈になって出さないということになってくる。そうすると、日本だけの考え方だと、それは非常に困りはしないか。それだけの余裕はあるという問題はございますが、これはやはり、先ほど来申します基本的な構想としては、国際機関を通じて協力するという役割を果たすという考え方だ、かように実は思っておるわけであります。そこで、今までも、たとえばアメリカがアメリカ一国でやっております余剰農産物資のあとの処理の問題だとかいうようなものは、これは非常にはっきりしておる。あるいは綿花借款等においても、日本自身が現地通貨で支払う部分がある。そういうものは一体どうなっておるのか。それぞれその国の産業拡大に役立つような方向に使われる。そういうことで、私は、新しいプロジェクトを出して、そしてその方へつぎ込むことは困難であっても、現地通貨自身を必要とする事業はそれぞれやっていくのだ、かように思いますので、一応考えられる。ただ非常に長期な場合に、インフレ等が高進しておる場合にどういうことになるのかということが一つの心配だと思います。しかし、インフレ高進を防ぐといいますか、そういうことをなくするということが、同時に第二世銀や第一世銀の目標であり、IMFの目標でもある。そこで第二世銀は考えたが、第一世銀のうちにおいてもそういうものを考え、IMFとの関係も緊密にして、そうしてやはり国際的には低開発国を安定さすということの方に努力を払っていくということにならざるを得ないのじゃないか、かように実は思うわけでございます。もちろん、日本として特に心配といいますか、発言をいたしましたのは、昨年の第二世銀設立の設立委員の会とでも申すべき十一、二ヵ国が会合いたしました際に、私特に発言いたしましたのは、低開発国の諸君の民族的感情というものを無視してこういう機構を作ってもだめだ、そういう点には特に留意してもらいたいということ、それからもう一つは、「国際的な金融機関がすでに中南米にはある。あるいは中近東に対しては、この前に問題が起きた際にアメリカが提案したことがある。しかし、今まで国際的な機関としての援助をほとんど受けておらないようなものは、大体東南アジアの諸地域じゃないかと思う。従って、今後第二世銀が発足するにあたっては、過去の国際金融機関等の整備の状況等も考えて、東南アジアについては特に力を入れてもらいたい。これは日本がその東南アジアの諸地域の一国であるという立場から申すわけじゃない。特にこれが必要なことじゃないか」ということを実は指摘いたしておるわけであります。今の現地通貨の問題になりますと、最近でもインドのバイラディラの鉄鉱山開発、あるいは鉄道、あるいは港湾を同時に鉄鉱山開発のために必要とする、こういうような場合に、いわゆる労務支払いなどは当然現地通貨にならざるを得ないというようなこともございますので、現地通貨自身は使い道が全然ないわけではない、かように実は思いますので、この点は取り上げるプロジェクトのいかんに非常に関係があるのじゃないか、かように実は思います。ただいまのところでは、今石野さんが指摘なさるような現地通貨支払いによる各種の欠点なり、将来起こるであろうというような点について、それぞれみんなが指摘しておりますから、プロジェクト設定その他がはたして思う通りに動き出すかどうか、むしろその方が懸念じゃないか、いわゆる相当の危険を冒して踏み切るというところまで行き得るかどうかということじゃないか、むしろその方を実は懸念しているというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/17
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018・石野久男
○石野委員 今大臣のお話もありましたように、そのプロジェクトをいかに選定するかということは非常にむずかしい問題だということ、プロジェクトの選定ができなければ、世銀を作っても活動しませんから、これは意味がないことになってしまうわけであります。しかし、いつまでもそういうことではいけないから、当然プロジェクトの設定をすべきでしょう。そこで、貸し出した金は、当然やはりだんだんと世銀自体としては資金量が足りなくなってくるのですから、現地通貨で返済されたものをまた再活用しなければならぬ。再活用の場合に、労務支払いとか、いろいろな面もありましょうが、それでは新しいプロジェクトの設定ということはなかなか出て参りませんから、当初の低開発国の援助という問題の趣旨が、端的にはやはりなかなか効果的には出てこないのじゃないかと思います。だから、積極的にやはり新しいプロジェクトを求めなければならなかったら、低開発国はただ一つのプロジェクトだけで全体の経済構造を伸展させることはできないわけでありますから、どうしても新しいそうしたプロジェクトの選定ということが必要になってくるわけであります。そこで、新しいプロジェクトをどういうふうに選定するかということになりますと、現地通貨で返済されれば、そこに固定した形になるわけです。再貸付という形でまた新しいプロジェクトとして出てくるのだと私は思うのですが、それだけでうまくいくのかどうかという問題が一つ出て参ります。私は、やはりそういう問題を具体的に考えました場合に、東南アジアにどれだけの銀行の資金が融資されるか、援助資金として回るかということにもかかっておるわけでありますが、もし相当程度多額のものが東南アジアにそういうふうに出れば、東南アジア自体は相当開発されるでありましょうが、それだってどういうふうな割合で出てくるか非常に疑問だと思います。そういう意味から、投資した国が長期にわたって効果は期待はできないけれども、いつかは必ず国際協力の中で効果は出てくるのだ。いつかは出てくる間に投資した国が参ってしまっては、実をいうと困るんですよ。そういう点で、日本がその期間持ちこたえられるかどうかということが、実際問題として一つあるわけであります。そこで、たとえば、日本円をかりに東南アジアのどこかに投資の対象として使うということが出てきた場合、世銀が日本に対して相談をするのかどうかという問題が一つあります。それからまた、それを使ったときに、日本にどういうふうな効果が出てくるかという問題について、大臣はどういうふうに見ておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/18
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019・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 ただいまの点は出資の方法である程度資金獲得の方法を考えておる。これが第二世銀であります。ただいま、御承知のように、最初払い込むものはきわめて少額であり、残りは国債ということになっておりますが、これが、特殊の国に対しましては、必要があればそれをドルまたはポンドというふうに指定通貨にするということで、それだけを条件づけておるということであります。従いまして、わが国としては、それだけの犠牲を払うのでありますから、わが国の主張というものは、そういう意味では強く出していいわけなのです。これは当然のことであります。そういう意味から申せば、東南アジア諸地域に対してそういう金が使われるという場合に、わが方としては協力を惜しまない。しかし、わが方に非常に縁の遠いところで、具体的に日本の払い込みの円をドルまたはポンドに変えてくれろと言われてもごめんをこうむる、こういうことは言えると思います。また、日本自身から特別な品物が出ていく、機械その他が出ていく、あるいは商品が出ていくというような場合には、これは日本円自身の支払いが可能な場合もあります。だから、問題は、これからの運営にあたりまして、わが国は一応の国際的義務は果たすが、それが日本にも返ってくる方法でないと、積極的協力はなかなか困難で、これはひとりわが国ばかりじゃない。加盟国十一ヵ国とも同じような考え方をしているに違いないということであります。そこで、日本自身がそれに耐え得るかどうか。そういう際にはIMFというものが十分日本についても過去においてもめんどうを見てくれたことがありますが、今後ともその関係はIMFの機能として当然期待していいことだ、かように私は考えております。問題は、そういう事態が起こらないといいますか、日本の経済自身といたしましても、いわゆる工業国としての立場でやり得るという見通しがつかない限り、これは第二世銀を構成するいわゆる発起国にしても、日本を十分信頼し、また信用し、日本経済は一応及第しているということで相談をしてくれている、かように私は思いますので、もし万一のことがあれば、もちろんIMFの協力を求める、かように思います。だから、出資の場合の一般的に使い得る範囲といいますか、効果の範囲は、そういう意味ではパーセンテージが非常に低いということであります。将来の問題として、特殊な地域があれば、さらに日本の出資予定のものをドルその他に切りかえるというようなことが要求されてくるのじゃないか、かように思います。その際は十分具体的な問題についてわれわれの主張を通していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/19
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020・石野久男
○石野委員 日本の円を世銀が使う場合には、日本の品物が出ていく場合はもちろん使えるわけですが、その場合には、当然のこととして、世銀は日本に対し日本円を使う場合には相談をするということは、はっきりしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/20
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021・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 いわゆる日本に相談する義務はないのでございます。これはもちろん理事会等で決定していく。そういう場合には、われわれはわれわれの主張を十分通していく、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/21
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022・石野久男
○石野委員 これはまたあとで問題にもなると思いますが、世銀は日本に相談する義務がないということになりますると、なかなか問題が残ると思うのです。率直に申しまして、この問題は一つまたあとでなにするといたしまして、先ほど、大臣は出資はするが、使えない。第二世銀の場合は日本はAクラス、第一部にも入っていることだから、おそらく使えないというのは当然だと思います。その場合に、出資はするけれども、使えないので、その分はIMF等でまためんどうを見てくれるのだと、こういう話がある。これはその通りやってくれる確信があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/22
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023・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 それは大へん誤解なのです。ただいまのお話のうちに、日本は第二世銀に出資し援助はしているが、日本が持ちこたえ得ればいいけれども、効果が上がらないうちに出資国たる日本が手をあげたら困るじゃないか、こういうお話がございましたから、そういうふうに日本が二十年先、三十年先の間に手をあげなければならぬというようなことになれば、それこそIMFがそういうような国に対してはその国際収支バランスを十分見て援助する、在来の貸付といいますか、融資方法をとってくれる、こういうことであります。だから、今の第二世銀に対する出資金に対する問題を、直ちに世銀なりあるいはIMFが金を貸してくれる、それを日本が出資するということではなくて、お話もそういう意味だと思って私聞いたのですが、日本は協力すると言っているけれども、まだそう強くもないのに、そんなに自慢できないじゃないか、日本自身参るのじゃないかという御心配があるようであります。そういう場合には、IMFが日本の経済についてはめんどうを見てくれる、こういうことを実は申したのであります。誤解のないように願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/23
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024・石野久男
○石野委員 第二世銀の一部というのは十七ヵ国で構成していると思います。日本はその一国として一応Aクラスに入っているわけでありますが、今もお話しのように、実際日本の経済力は、特に長期にわたるといたしますと、資金を出して低開発国の援助をするにあたって、ずいぶん無理な形が出てくるのではないかと私は思っているのです。しかし、これは無理であるか無理でないかは、いろいろ認定の相違がありまするから、ここでは論争を避けますが、私はとにかく無理だろうと思う。そういう点で、そういう無理なここへの出資というものはしていいかどうかという問題が一つ残るわけです。しかし、これはまた見通しの問題と関係しますから、私は全体の問題として残さなければならぬと思う。IMFが日本が非常に困難になったときにはめんどうを見てくれるだろうという希望的観測、その希望的観測が実現するときには、日本はAクラスからBクラスに下がっているときだと思う。だから、そういう不安定な形でこの協会に参加するということは、ちょっと無理があるのではないかという気がいたします。これはいろいろな見方がありますから論争を避けますが、大臣にそんな心配は要らないという確信があれば、また御意見は承りますが、ちょっとその点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/24
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025・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 IDAへの出資は御承知のように三千万ドルですから、今御心配になるような事態には私はならないと思います。非常に国際決済上赤字続きだ、インフレが高進するとか、通貨価値の維持ができない、こういうような事態になればIMFの援助を必要といたしますが、ただいまのIDAの出資自身で、これはとてもいかぬのだという石野さんの御質問に対しましては、私は、今の状態そのものから見れば、非常な命取りの問題とは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/25
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026・石野久男
○石野委員 三千万ドルぐらいは今の保有外貨の点から見れば大したことはないと思いますが、十億ドルというこの第二世銀の資金で非常に長期な形で貸付をいたしていきました場合に、この十億ドルというものは五年でみな出資するということになりますけれども、十億ドルの金で後進国がわれわれの予定する段階までずっと上がってくるということは、だれも予想はできないと思います。そこで、今世銀は十億ドルという資金で十分だというお見通しを持っておるのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/26
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027・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 これは十億ドルでいいというわけではございますまい。五年後さらに増資を検討するということでございますから、五年後の期間で一応成功するかしないかといいますか、効果の有無を十分検討することだと思います。ところで、今第一世銀と第二世銀では基本的にやり方は違いますけれども、第一世銀の方で年間に融資している総額は大体七億見当といわれております。これは一年でございます。しかも非常な先進工業国でございますから、この金は相当有効に使われるわけでしょう。第一世銀は御承知のように債券を発行して所要の資金を獲得している。その第一世銀自身が一年に融資する金額が七億ドル程度だと考えますと、いわゆる低開発国を相手にして考えた場合に、五年で一年に二億ドルということになると、一応見当がつくことじゃないか、かように実は思います。やはり先進国でありますれば資金の量が非常に大きいのですけれども、場所柄が場所柄だけに、金額的には相当少なくて済む。しかも、五年間やった場合に、その効果が十分上がるという十分の見通しがつけば、さらに増資の機会もあるということでございます。でございますから、私は、この際に、一国がいわゆる低開発国に対して自分の力でやるということよりも、国際機関であることの方が望ましい。その場合に国際機関を通じてわが国に返ってくるような工夫の余地があるかどうか、そういうことを考えてみた場合に、今まで国際金融機関がなかったと考えられる東南諸地域に対して、この機関は相当働いてくれるということが期待できる。なおまた、わが国自身がすでにこういう機関において十分の発言権を持っておる今日だと、そういうチャンスに恵まれる、かように考えますので、私は積極的に協力したい。ただいまの金額そのものにいたしましても、現在は非常に多額のものではないということを考えると、これは望ましい方法じゃないか、かように実は思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/27
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028・石野久男
○石野委員 今大臣もお話しになったように、追加出資というものは確かにこの協会規定の中にも書いてあるわけです。また当然それは必要になってくるだろうと思います。それで、先ほど三千万ドルくらいは大したことじゃないと言いましたけれども、追加出資が行なわれれば、三千万ドルになるか五千万ドルになるか、日本は出資国として当然その責任を持たされることになってくるので、今は十億ドルの限度において三千万ドルだから大したことはないのであるけれども、日本の国民経済の立場からすれば、とめどなく出資が要求されるものと見なくちゃいけない。それはそうじゃないとおっしゃるなら、それじゃ十億ドルの金がどういうふうに回転するかという問題を、もう少し真剣に検討しなければいけないのではないかと思うのです。私は現地通貨で返済されるという問題が、ほんとうに資金回転にどういう役割を果たすだろうかということ、そうしてそれが日本にどういうふうに影響するかという問題を、やはり真剣に考えなければいかぬと思うのです。現地通貨の問題では、相当アメリカの余剰農産物によって各国に積み立てておるところの現地通貨があるわけです。これを相当程度低開発国に融資をするという形が出てくることは、当然予想されるのではないかと思いますけれども、その予想なくして低開発国が現地通貨返済ができるだろうかどうだろうか。この点大臣はどういう見通しを持っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/28
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029・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 日本の過去の場合では、日本でこれを使ったということでございます。また最近はインドなどでもそういう考え方があるようです。これはその国では使える。しかし、日本で蓄積したものを他の国に持っていくという例はないだろうと思います。今回のIDAにいたしましても、アメリカ自身も負担分はなかなか大きいと思います。ただいまのこれがどんどん成功していった場合に、次々に増資の引き受けを要求される、しかしこれはもちろんそのときになって私ども考えればいいので、むしろ機関が成功いたす場合だと、資金傾斜は多いに違いない、かように思いますが、日本が第一に三千万ドルなら三千万ドルを出資すれば、日本の持ち分としての権利は確保されておるということでありますし、むしろ私は、将来の増資の場合に、日本はそれを引き受けなければならない義務がある、こうは実は考えません。しかし、むしろ引き受けを主張し得る権利あり、かように実は思うということでございますので、この点もあまり御心配にはならなくていいことではないか。もちろん、私どもも、国力以上のものを、国際協力の名のもとにおいて、それだけの犠牲を払うつもりはございません。だから、わが方としては可能な範囲においての国際協力の義務を果たすという考え方で終始したい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/29
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030・石野久男
○石野委員 増資が行なわれる場合に、日本はその義務は持たされないけれども、権利は残っておるのだ。それは確かにそういうことが規約上言えると思うのです。しかし、その場合に、権利だということで、義務だというような考え方にならないような出資になりますと、発言権は非常に低くなるわけですね。そうすると、先に投資した三千万ドルというのは何の意味もなくなってしまうのです。だから、そんなことはわかっているのに、今のような権利はあるけれども義務はないなんということでは、その意欲は実に自主的じゃないんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/30
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031・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 これは少し言葉じりについての論議になったと思います。私どもは、今の出資の状況から見まして十分効果があれば、次の増資の場合の負担も引き受けて差しつかえないものだ、かように実は確信を持っておりますが、石野さんは非常に御心配で、増資々々といったら非常に大へんなことになりはせぬかというお話をなさいますから、そういうものではないということを実は申したので、少し言葉じりの論議になっているようです。実際は、私どもが冒頭に申したように、非常に積極的な国際協力の意図を持ってこれを発足させるという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/31
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032・石野久男
○石野委員 貸付された金は、返済が大体二十年になるだろうと思うのです。しかも、プロジェクトの成功する見通しというものは、一つのプロジェクトをどこかでやって、それが具体的に経済効果を出してくるのには、ああいう低開発国でありますると、小さいものであれば二年か三年ですぐ効果が上がるだろうと思いますけれども、具体的にはやはり三年、五年とかかってくると思うのです。三年、五年とかかってようやく経済効果が出てくる時期になりましたときに、返済金というものはごくわずかしかないわけですね。そうなりますと、新しいプロジェクトにその返済金を回わしていくということは、長期の貸し出しをしておるわけですから、ほとんど予想できないわけです。そうすれば、第二世銀には、当然、五年たった後には、協会規定の第三条によって増資の話し合いが出てくることだろうと思うのです。そういうことを何回か繰り返さないと、大臣の言う長期の腰だめでやっていないと、ほんとうの効果が出てこない、成果になって現われないわけでございます。そうなりまするならば、第二世銀の役割というものの出資した金というものは、相当期間、これは早く言えば焦げついておるという形になるわけです。そういう形が出てくるわけです。それは大臣もそういうふうにお認めになりますでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/32
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033・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 返済期間が長いということは、その間資金が寝るということでございます。これは御指摘の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/33
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034・石野久男
○石野委員 そこで、寝ておる金がはたして日本の経済に——出資した割合によってどういうような効果が出てくるかということを具体的に考えなければいかぬと思うのです。大臣は、長期にわたって成果を期待するのだと言う。これは、われわれも、やはり日本の国民経済の長期にわたる発展を望む場合には、そのことを、そういう期待の仕方をすることは決して悪いことではないと思いまするけれども、先ほど来私が心配しているといいますか、はたしてそれだけの力量が日本の国民経済にあるかどうかという問題にかかってくるわけなんです。そこで、日本は出資はするけれども、それを借り出すことは、第二世銀に関する限りますできない。そうなってきますと、その期間中にどういうような成果を期待できるのかという問題で、それはそのときになってみなければわからないのだでは困るので、一応やはり大臣の構想なり、政府の考えておる経済効果というものは、輸出の面とかあるいは輸入の面で、どういうふうに出てくるのだという点について、この際大臣の見通しを聞かしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/34
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035・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 まだ具体的なプロジェクトがきまらないうちにこういう議論をすることは、私は少し先ばしったように思います。思いますが、非常に御心配のようですから、一、二の例で申し上げてみたら効果があるだろう。おそらく低開発国に対する経済援助といえば、いわゆる経済基盤の強化、そういうことに役立つものが一つ考えられはすまいか。たとえば鉄道なら鉄道を敷くとか、あるいは港湾を整備するというようなことに所要な金が投ぜられるということにいたしますれば、私は、その開発の途上において、また開発の効果が上がつた後において、相当の効果が必ず返ってくるだろう。あるいは、一国の基幹産業について、たとえば石油が最近問題になっておる。あるいはインドのバイラディラの鉄鉱山の例をとって申せば、この鉱山の開発をする、こういうことを考えますと、そこで製鉄所までやるのか、あるいはバイラディラのごとく、ただ単に鉱石だけを日本に持ってくる、こういう話をしておりますが、こういう場合において、その所要資金は日本からも貸すが、この第二世銀も金を貸すということがあれば、必ず効果が上がってくる。バイラディラの場合で申せば、相当長区間の鉄道の建設を必要とする。鉄道の建設では、車両も必要でございましょうし、あるいはレールも必要だろう。さらにその港湾の積み出しということになれば、港湾施設でいろいろの所要資材、鉄なりセメントなりというようなものも必要だろうし、場合によれば、船というようなものも考えるだろう。こういうことを考えてみますと、プロジェクトの取り扱い方いかんによっては、これは相当長期にわたって効果を上げてき、その計画自身では十分採算のとれることが考えられるし、その開発の途上においての資材も必要とするだろうし、技術も必要とするだろうし、あるいはさらに、それができ上がった後においては、その国の産業にも非常に貢献をしていくだろう、こういうようなことがいろいろ考えられるだろうと思います。だから、問題はどういうようなプロジェクトを選んでいくか、まだその具体的な問題がそれぞれあるだろう、かように実は思うわけであります。私は、第二世銀の構想というものは、扱い方によれば十分効果を上げ得るものだ、また上げさせなければならないものだ、かように実は思います。おそらく、これは、わが国経済の場合でも、ここ二、三年は、予算を編成いたします場合に、いつも日本産業の基盤強化ということを強く主張して参っておりますが、そういうようなことが望ましい方法じゃないかというように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/35
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036・石野久男
○石野委員 長期にわたるところの経済効果が、日本にも出てくるという場合には、その基本になるものは、プロジェクトをいかに選定するかということにかかわる。そうすると、プロジェクトの選定という問題は、当然やはり貸し出しにおけるところの協議の中で出てくるのだと思うのです。従って、世銀におけるところの貸し出しについて、日本の発言権がどの程度あるかということにかかってくる問題だと私は思います。第一世銀の場合におけるところの資金の利用の形の中では、相当程度日本もアメリカの協力によって成果があったように見受けられる。第一世銀でアメリカは相当オールマイティな力量を発揮したわけです。おそらく、第二世銀においても、アメリカの相当強い発言力が出てくることは予想されるわけだし、また、それを押し切って、日本が独自の形でということもできないから、アメリカのそでの下に隠れて日本が利益を得る、こういうことだろうと私は思うわけなんです。そういうような世銀の中におけるところの発言権の問題で、相当日本の経済に効果を上げ得るような貸付が行なわれる可能性をどういうようにして確保しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/36
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037・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 世銀は理事会でいろいろきめて参りますが、日本は理事会に代表を出し得る状況になりました。一昨年インドへ参りました際に、いろいろ日本グループというか、そのグループの間で、理事のポストを一つ分けてくれというような話がありましたが、私直接参りまして、実情等を話し、また増資の結果日本自身は理事を出し得る状況に今日なりました。従いまして、理事会における発言は相当強くなっている、十分当方の意見を発言し得る立場になっておるということであります。これは、これだけ日本の経済もそういう意味では発達して参っている、かように実は思います。問題は、今言われておりますアメリカは相当力が強いのじゃないかということ。これは、御承知のように、第二世銀は置かれる場所も第一世銀の中であるということであるし、アメリカ自身にそういう機関があるということ、また出資も相当多いという意味において、アメリカの発言権は常識的に見て強いということは言えるでしょう。私ども、いわゆる理事である以上、全部同一の立場において発言することはもちろんでございますが、やはり力というものはそこに自然にあるだろう。しかし、欧州のコモン・マーケットが発足して以来、欧州の発言権もなかなか強い。最近など、ドイツなども非常に強い発言権を持っているというような実情でございますから、最初の第一世銀のときとは、およそ事変わってきているということは言えるだろうと思います。いずれにいたしましても、一部で非難されるような一国の独裁方法とかいうことは許されない。どこまでも民主的に運営されるということの、その基礎だけは私どもも忠実に確保して参るつもりでございます。それによりまして、御懸念のような点も—一国の利益のみを主張しておれば、国際機関の存立の意義がなくなりますので、そういうことは他国の批判もきびしいことでありますから、長続きがしない。いろいろ考えなければならないことではございますけれども、大まかに主流といいますか、流れの方向から見れば協力は可能だ、協力し得る方向だ、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/37
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038・植木庚子郎
○植木委員長 ちょっと速記をつとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/38
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039・植木庚子郎
○植木委員長 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/39
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040・石野久男
○石野委員 委員長からの意見もありますけれども、この問題は非常に重要です。私たちはなるべく法案を通過させるために協力するつもりでおりますけれども、やはり非常に重要ですから、もしここで時間がなければ、私はもう一ぺん質問する機会をいただいてもいいと思います。率直に申しまして、あと十分やそこらでは終わりません。だから、時間がくるまでやって、残りましたら、あと保留させていただきます。
今お話がありましたように、運営はなるべく民主的にやるのだということは、これは規約の上にもちゃんと書いてありますから、その通りだと思いますが、しかし、経済というものはそういうものじゃなくて、国際関係はその力量によって左右される。これは大臣自身が痛切に感じておることだと思います。それで、私たちは、第二世銀というものが、ほんとうに日本が後進国開発のために役立つか、また別な方法も考えられるじゃないかということも、ここでは真剣に、将来の日本の貿易構造の問題や何かと関連しつつ考えませんと、法案はただ三千万ドル出資すればいいのだということですが、それだけの問題じゃないというふうに考えるので、やはり問題をもう少し究明したいと思います。
そこで、私は、率直に申しまして、発言権の問題では、日本の持っている発言権は非常に微々たるものだと思うのです。出資の額も少ないし、割り当てられた発言権も非常に票数は少ないのだから、これは容易なことじゃないと思います。ことに、今回の第二世銀の問題で、後進国の開発援助という目的から、現地通貨の返済を認めているということの中には、いろいろな意味があると思います。なるほど、それは後進国にとりましては非常に有利です。しかし、出資の側からすれば、それがはたして有利であるかどうかということは、力量の関係によってずいぶん違ってきます。私は、この現地通貨の問題が、よく世間で流布されているように、アメリカの余剰農産物における蓄積された現地通貨というものの融資という形で、現地通貨の返還が行なわれてくるとか、あるいはまたそれぞれの国の出資が行なわれるとかいうような場合になって参りますと、これはアメリカにとっては非常に有利です。アメリカにとっては、率直に申しまして、今まで積み立てた金の活用の道が、そこで再活用してくるわけでありますから、これは非常に有利です。第二世銀設立の本旨というのは、何といってもアメリカの国際収支が非常に窮迫を告げてきている、海外援助の形についても、今まで通りではだめだというようなことから、後進国開発に対して、西欧勢国、自由主義国間におけるところの、アメリカを除く他国に肩がわりをしようという意図がアメリカには相当強くあるということは、これは大臣もよくお認めのところだと思います。そういうことが基底になって行なわれている場合に、日本のような経済的にようやく復興し、ある程度の基盤はできてきたといえども、まだほんとうの力を持っていない日本にとっては、そう軽々にこの問題を見るべきじゃないじゃないか、こういうように思うのです。私は、後進国開発におけるところのアメリカの意図というものは、どういう点にあるかということを、はっきりつかまなければいかぬ、こう思うのですが、第二世銀設立におけるところのアメリカの考え方が、政府はどういうふうに見ておられるかということを、この際大臣に一つお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/40
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041・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 御承知のように、IMFあるいは第一世銀を作ったときの加盟国相互が、この方法がよろしいというその結論を出して、あの基礎的な構想——なるほどアメリカは力を持っているとかということはございますが、アメリカ自身は、一面国際機関を通じての協力もしておるし、また一面自国だけでやっておる余剰農産物処理のような方法もやっておるということであります。この余剰農産物資の方についてはいろいろの疑問がある、これは純アメリカ式の考え方だということであります。受ける方の国も利益はあるが、非常に限られたいわゆる共存市場の面から見ると、これは少しアメリカ式じゃないかという考え方が通用するが、国際機関の方ではそういうことはないということだ、かように私は理解しております。今回の第二世銀の構想等におきましても、十一でしたか集まりましたときの考え方は、そういう意味では非常に対等の立場でそれぞれが議論し、そして第二世銀の設立の方向にいった。アメリカのやり方は、自分自身でやるものもやっておるし、国際機関を通じてやるものもやっておる。こういうところに、私は別にアメリカを弁護するわけではございませんけれども、そういうことが言えるのではないかというように私は思います。
それで、アメリカが今度順次切りかえるという考え方じゃないかということ、これをアメリカの経済力云々からと言う向きもございます。あるいはそういうことがあるかないか、それは私ども今そうまでアメリカの経済力が弱っておるとも思えませんが、そういう事態があるにいたしましても、それとは別個の立場で国際機関は設立する、そういう考え方で割り切っておる、かように私は理解しておりますので、その点はちょっと実情が違うのじゃないかというように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/41
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042・石野久男
○石野委員 これは、問題はアメリカの経済力の問題についての見方も一つ出てくると思うのです。確かにアメリカには一つの景気がまた新しく出てきているという面もありますが、しかしその景気の内容はやはり消費景気というふうに見なければならぬのじゃないかと思います。アメリカの国内の各産業界等におけるところのバランス・シートは、率直に申しまして確かに黒字を出しておるわけです。しかし、そのバランス・シートは、やはりほとんど売掛金でバランスをとっておるという形が出ておるのが実情だろうと思います。ほとんど月賦販売と何かによって、実際の資金繰りからすると非常に苦しくなってきておるのが実情だろうと思うのです。そういうようなことが、国際収支の問題について累年赤字が出てきておるということに対して、国会あるいはその他の面におけるところの問題になってきた点であり、それが同時に第一世銀から第二世銀というものを考えなければ、とても後進国開発の援助というものは国際的にはできないのだという観点から、こういう構想が出てきておると私たちは見ておるわけです。
そこで、それはアメリカの立場からすれば、第二世銀というものを作るということは非常に有利です。有利ですが、同時に、きつい言葉で言えば、それの巻き添えを食って同調させられている各国というものは、必ずしもありがたいものじゃないという点も出てくる。先ほどお話のあった、欧州におけるところの経済力が非常に高まってきておるというのは、その通りだと思います。それであるからこそ大西洋経済会議というものについてのアメリカの意図が強く出てきたのだということを、われわれはやはり予想しなければならぬわけです。しかも、欧州におけるところの六ヵ国、七ヵ国の対立というものは激しいのだし、またその中でアメリカがシャット・アウトを食うという危険もあったものだから、大西洋経済会議というようなああいう形で、ことしも一月にパリで持たれるというような形も出てくるのだと思います。しかし、その成果は、必ずしもアメリカの意図したようにはいっていないだろうと私は思っております。そういう問題はともかくといたしまして、後進国開発におけるところの第二世銀の構想というものは、どうしてもやはりアメリカのそうした国際収支の観点からする必要度が非常に強く動いているのだということは、別に政府はアメリカを弁護するのじゃないけれどもとおっしゃったけれども、そういうように甘くは見ておれないと思うのですよ。これはやはりシビヤーに見なければ、日本自身の経済確立というものは出てこないのじゃないか、こういうふうに思うのです。
そこで、日本の場合にまた戻りますけれども、やはりこの世銀を使ってはたして成果が上がるかどうかという問題は、やはりプロジェクトをいかに設定するかという問題にかかってくるわけです。そのプロジェクト設定については、第一世銀は確かに理事に入る可能性が出てきましたけれども、第二世銀の場合には、三人委員会というものがあるわけですね。だから、第二世銀の三人委員会に対して、それじゃどの程度の発言権が日本は出てくるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/42
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043・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 第一世銀の理事は自動的に第二世銀の理事になれるということでございます。だから、これは理事会で決定する限り日本の発言権はあります。私先ほどの問題で別に議論するつもりはありませんが、私は、一国の援助を受けるということは望ましい面もあるが、むしろこれは非常に弊害が多い、それよりも国際機関の援助の方が筋が立つ、私はこういう感じがいまだに抜けない方であります。それは、そういうことによって特別なグループを作るとかいうような議論はこれは別でございますが、少なくとも一国の特別な援助を受けるということは、これはあまり望ましい方法じゃないだろうと思います。今までの国会等の審議等を通じましても、そういうことはよくいわれてきたと思うし、また低開発国の民族の感情を無視してはいかぬというのも、実はそういう点なんでございまして、日本が特別に東南アジアの諸地域から日本の真意を疑われるという意味ばかりじゃなしに、やはり国際機関から受けるならばという意味で、この援助は比較的受けやすい、かように実は思います。これは基本的な考え方の相違がございますから、いろいろ論議の中心にはなろうかと思いますが、私はなるべくそういうことをと思う。ただ、今の国際機関というものは不幸にして共産主義国が入ってないというところに、いろんな議論があると思います。それはここらに工夫するものが将来残っておるかわかりませんが、今の国際連合等は、それぞれの国が入っておるということであり、またいわゆる拒否権等の問題がないというところにポイントがあるのじゃないかと思います。
今の問題の点でもう一つありますのは、アメリカの経済自身が、特殊経済援助あるいは武器援助等をしておる。そういうことがアメリカ経済の非常な負担になっておるということ、これは私どもも指摘していいことだろうと思います。しかし、今日までのところ、一方でアメリカがそういう援助をするし、共産圏においてはやはりソ連がそういうような援助をしているというのが実情でございましょう。だから、これは、アメリカ自身もやめ、片一方もやめるというような国際情勢になれば非常にけっこうでしょう。しかしなかなかそこにいかない。それが頂上会談の方向だろう。しかし、少なくとも経済の面においては、今言っておりますことは、低開発国の経済も開発する、その協力をすることが、その民族の生活の向上に役立ち、ひいては国際経済の拡大に役立つ、こういう考え方であります。それは一国がやるよりも、民主的に構成された国際機関を通じてやるということが望ましいやり方だ、かように非常に簡単に割り切っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/43
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044・石野久男
○石野委員 佐藤大臣は、後進国開発については、一国がやるよりも、国際的にやる方がいい。これは一面の理由がある。しかし、それだからといって、一国が低開発国の開発に協力するということが間違っているということじゃないと思うのです。特に東南アジア等、戦後独立を確保してきている民族意識の中で要求しているものは、別に一国でやってはいけない、国際機関でなければならぬということはないと思うのです。そうじゃなくて、援助される条件なんです。その条件につまらない政治的なひもがついちゃ困るということを言っておるわけです。だから、そういうひもがついていなければ、一国であろうと、国際機関であろうとどっちだってかまわないということを言っておるわけです。その、特に佐藤さんが頭にこびりついている国際機関でやる方がいいということの意味は、やはりあなたのお兄さんの岸総理大臣が東南アジア開発基金構想というものを作って、それはアメリカの金で、日本の技術で、現地の材料で、こういう構想がおもしろくないということで強く反発を受けたわけです。それがどうもこびりついているようです。たとえば今度ウー・ヌー氏が来ましたが、ウー・ヌー氏がこちらに来る場合に、向こうで記者会見をしたときに、援助は幾らでもしていいけれども、ただの援助は要らない、こう言っていました。ただの援助はいやです。ちゃんと貸借関係の中でいただいて、私たちはつまらないひもはいただきたくございませんということを言っておりました。こういう考え方がやはりこの低開発国にあるのです。だから、日本でも、アメリカでも、あるいはどこでも、一国がつまらない政治的なひもをつけるとか、軍事的なひもをつけるということをしなければ、どこでも喜んで受けるのです。そういうことの考え方は基本的に改めなくてはいかぬと思うのです。もちろんその場合に問題になるのは、一国の場合に金額は少ないから需要を充足しないのだという意味が一つ出てきます。けれども、問題はそれでは国際機関で十億の金で十二分にやれるかというと、まだ問題なんです。こんなものでは問題じゃありません。それはアメリカが一国で出しておるところの低開発国の援助の基金はそれを越えておりますし、ソ連の場合もそれを越えておるわけです。だから、国際的に第二世銀でそういう金を作ってみたって、その金は一国の持っている金よりもまだ弱少なのでございますから、その効果というものはそんなに大きなものじゃない。それにうつつを抜かして喜んでおったのでは、とんでもないあやまちを犯すだろうと思うのです。だから、この点においては大臣はもっと考え方を改めなければいかぬだろうと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/44
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045・横山利秋
○横山委員 私も今石野委員から質問が出たことを別な角度で聞きたいのですが、本件については、大臣はたしか本委員会で三回同じことを言っておられる。つまり一国間の援助をするということは適当でない。適当でないというか好ましいことではない。だから集団的に経済援助することが望ましい。私は、一回なら聞き漏らすけれども、三回まじめくさって一生懸命力説せられているので、どうしても聞き捨てならぬものを感ずるわけです。国債を含んで二十八億ばかり本年投下する第二世銀と、一方五十億を投じて海外経済協力基金という法案が同じ国会でほかの委員会に出ておるわけです。本委員会はこの関連から共同審議を要求しているのですが、なかなかそれができません。大臣が、一ぺんならず三べんまで、いや集団的経済援助の方が望ましいのだと力説する意味は、海外経済協力基金五十億の問題は軽視していいという気持が一体あるのであるかどうか、これがもし出ていないなら、私はそうも言いませんよ。そんなにまじめくさっておっしゃる意味は、商工委員会の議事録等を聞いたり読んだりいたしますと、どうも所管争いがあって、経済企画庁長官に所管がきまったことについて、閣内でもずいぶんいろいろな問題があったらしい。私は、率直に言えば、こういうようなことは大蔵省所管でいいと思っているのですが、そういうような問題も含みに入れてのお話ではなかろうかと邪推せざるを得ない。しかし、この邪推は別の問題にしましょう。しかし、少なくとも私どもは両法案にあなたとは別な観点を持つのですけれども、それほど一国の経済援助はいかぬと言っておられるあなたが、閣僚の一人として経済協力基金の法案についてどういう意味で賛成をされ、どういう意味で大蔵大臣として答弁に当たっておられるのか、その関連を一つはっきりなさる責任があると私は思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/45
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046・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 先ほど石野さんにお答えした通りであります。最初に日本の低開発国に対する経済協力の方法、これは一体何を基本的に考えているかというお話がございましたが、詳細にお答えをした。それは、一国においてやることは経済開発基金でやります。それから共同でやることは第二世銀でやります。この二つの機関を通じてやるということをはっきり申し上げておると思います。今経済開発基金は無用だとか、それはやらぬとかいうことを申しておるわけじゃありません。また、アメリカのやっておる事柄も、二つの方法をやっておることを今言っておるわけであります。しかし、やはりその国際機関を作ることは望ましいことだということを、再三繰り返して言っておるわけであります。その点は、もし誤解があれば、先ほど来の質疑応答をずっと一貫してお読みいただいたら、それは氷解することで、私は、一国でやってはいかぬというようなことは、毛頭申しておるものではございません。もしその点に誤解があれば、今国際協力機関のあり方についてのいろいろの論議がありますから、国際協力機関というのはこういうようなものだということをるる説明しておるわけですが、経済基金の設定の問題と私は別に矛盾しておるとは思いません。ただいま石野さんも指摘しておられるように、金額の点においての相違があるということはありますが、一国でやる場合において話がよくつくならば、それは非常にこまかなところに一国の金が使い得る場合もある、かように私は思います。一国がやることは不都合だとかいうような考え方で申しておるわけではございません。だから、その点は誤解のないように願いたい。これは並行してやり得る。これは先ほど来一貫して申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/46
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047・石野久男
○石野委員 今大臣からお話があったように、国際機関も使い、一国の独自の立場もやる。そういう考え方は、それでいい。別に悪いわけではない。むしろやはりわが国が低開発国の開発を援助するためにどういうような具体的政策を一とるかという問題にかかってくるわけでございますが、その場合に、国際機関に協力するという場合も、効果が望まれる場合と、それからその効果があまりにも——確かにそれは出てくることは間違いない。それは私も認めます。しかし、その出てくる期間の間に、日本自身がどうなるかという問題が——これは具体的に政治ですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/47
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048・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 それは大丈夫です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/48
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049・石野久男
○石野委員 それは大丈夫だと言っておるけれども、その大丈夫であるかどうかということについては、それは具体的にその二十年なりの返済期間の間に増資がどんどん行なわれていく、その間に日本は一体どういうような影響を持ち得るかという問題ですよ。それで私は先ほどから何べんも聞いておるわけです。具体的に今三十万ドルを投資して、十億ドルの金が動いて、低開発国を開発する一つの働きをします。それが日本の経済にどういうように影響するかという問題が一つあります。それから、もう一つは、先ほど来お話のありましたように、国際機関を通じてやることの方が有用であるとはいえ、また一国独自の形はなるべく避けた方がいいというような——それは一国独自のやり方もするけれども、なるべく避けた方がいいという見方を大臣はしておるわけです。しかし、事実上は、先進国といいますか、第一グループをなしておる諸国は、みなそれぞれ自分の市場確保のために真剣になっておる。実を申しますと、国際協力の中で果たす役割よりも、より以上に、自国の輸出市場をどういうふうにして安定させるかという問題に私は積極的だと思う。もしそういうようなものの見方をしないで、国際協力機関の中でその用役を果たすのだというような安易な考え方をしておると、みな先を越されてしまうと思う。要は競争ですよ。その競争の中で、しかも自由主義諸国におけるところの特に欧州の六ヵ国、七ヵ国の立場というものは、つばぜり合いでそれをやっておるというふうに見なければいけないのではないか。大臣はたまたま理事国になったからと喜んでしまって、そういうようなことを忘れてしまうようでは、とてもじゃないが、日本の低開発国に対する構想なんかは出てこないと思う。もっともっとそういう激しい競争があるということを前提として、ものを考えなければいけないのではないか。従って、われわれのように財が乏しく、外貨の乏しいところは、その乏しい外貨をもっと有効に端的に効果が出てくるように使わなかったならば、実質的な発展を期すつることはできないのではないかと思うわけです。そういう意味合いから、やはり第二世銀に対する出資の問題は、どういうふうに日本に効果をもたらすかということが問題だということを先ほど来言っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/49
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050・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 私が毎度国際経済の点について申し上げておりますのは、競争の場であるが、同時に協力の場である、協力の場であるが、同時に競争の場だということを実は申し上げております。これはどうもお互いといいますか、日本人は非常に極端な議論に走りがちで、競争の場であって、協力の場でない、こういうことを——石野さんは言われませんけれども、競争が非常に強くなって、協力の場でないということになれば、これはおそらく世界各国を相手にして競争をしなければならぬ。それは大へんなことになるだろうと思います。またおのれを捨てて全部が協力に終始するわけでもない。これも、国を形成しておる限り、私どもも十分了承しております。問題は競争と協力、これが並立し併存し、そうして相互に利益を得るような形において国際経済を拡大していく、これが私どもの使命のように実は心得ております。だから、今言われます点は非常にむずかしいことでございますが、おそらく、何を見ましても、一面競争の場であるが、一面協力の場というものが必ずあるんだ、かように思います。国際経済の場においては特にその点が強いだろうと思います。ことにわが国のように原材料を外国に依存する度合いが非常に強いという場合だと、その原材料確保のためにはやはり協力を得る必要があります。また製品を出していく面においてやはり競争も必要だ。また原材料を取る場合でも、競争なしには取れないということだと思います。だから、競争と協力の関係を一つ十分御理解いただけば——一方だけに片寄った議論にはどうも私は賛成しかねるというのが、今までの考え方であります。先ほど来の国際機関の問題あるいは一国の経済開発に協力するということについても同様なことが言えるので、もしも私の発言が、国際協力機関の論戦から、その方に非常に重点を置いているようにお聞き取りならば、私もその点はつつしんで訂正しておきます。誤解のないように願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/50
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051・石野久男
○石野委員 今のお話で、大臣は競争と協力という問題を日本人はどうも片寄ってとっているんじゃないか言うが、そんなことは絶対にわれわれは考えていない。ものの発展というのは、いつでも競争と協力によって行なわれるのだということは、皆さんよりも私たちの方がもっと哲学的な面で持っていると思うのです。
そこで、もう一問だけですから、あとに問題を残しますけれども、問題は、その協力の中で日本にどれだけの効果が出てくるかという問題をわれわれ論じているわけなんです。協力はしなければいけません。国際協力はすべきです。しなくちゃならないが、わが国の経済的力量の中でどういう協力をするかという問題は、おのずからその国の政治経済の情勢によって限度が出てくるわけです。そこで私は問題にしている。今原材料も得なければいけないからという意味がございました。原材料を得るということになりますと、また問題は違ってくる面がたくさんございます。原材料を得るのに高いものを遠いところからもらうというようなことでは、何の意味もないわけなんでございます。そうなれば、なるべく買い入れ価格が安いもので、製品のいいものとか、経済的に見合うものを買い入れなければならないことになりますので、おのずから経済の中における貿易構造の問題にもなってくると私は思います。そこで、問題になる基本的な問題はあとに残しますけれども、この貿易構造の問題に入りませんと、この問題の解決は出てこないのです。大西洋経済会議が西欧においてできておりますときに、日本がアジアにおけるところの経済的な発展をどういうふうに確保するかという問題になれば、アジア経済会議あるいは太平洋経済会議というようなものへの着眼をもう少し広く持っていかなければならぬだろう。そういう中で、政府はほとんど無視しておりますけれども、中国の位置というものは相当重要だということをここで考えなければならぬし、また、そういう観点に立って、第二世銀というものを見ていかなければならぬと思っておるのです。そういう問題についての論議はまたあとにしますけれども、問題だけを提起しておきます。私の質問は一応終わります。あと保留しますから、もう一ぺん出て下さい。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/51
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052・植木庚子郎
○植木委員長 次に、船主相互保険組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。
御質疑はありませんか。——御質疑がないようですから、これにて本法律案に対する質疑は終了いたします。
なお、本法律案に対しましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。
採決いたします。本法律案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/52
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053・植木庚子郎
○植木委員長 御異議なしと認めます。よって、本法律案は原案の通り可決いたしました。
ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/53
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054・植木庚子郎
○植木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
次会は来たる二十八日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。
午後零時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X02019600426/54
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