1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年二月十八日(木曜日)
午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 福田 一君
理事 岡崎 英城君 理事 高橋 等君
理事 辻 寛一君 理事 前田 正男君
理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君
理事 田万 廣文君
淺香 忠雄君 内海 安吉君
小金 義照君 田村 元君
谷川 和穗君 橋本 正之君
八田 貞義君 保科善四郎君
山口 好一君 久保田 豊君
杉山元治郎君 中原 健次君
柳田 秀一君 受田 新吉君
出席政府委員
内閣審議官
(内閣総理大臣
官房審議室長) 大島 寛一君
総理府総務長官 福田 篤泰君
総理府総務副長
官 佐藤 朝生君
委員外の出席者
専 門 員 安倍 三郎君
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二月十六日
委員堂森芳夫君辞任につき、その補欠として柳
田秀一君が議長の指名で委員に選任された。
同月十七日
委員柳田秀一君辞任につき、その補欠として山
花秀雄君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員山花秀雄君辞任につき、その補欠として柳
田秀一君が議長の指名で委員に選任された。
同月十八日
委員中川俊思君辞任につき、その補欠として田
村元君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員田村元君辞任につき、その補欠として中川
俊思君が議長の指名で委員に選任された。
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ニ月十六日
靖国神社の国家護持に関する請願外三件(井出
一太郎君紹介)(第一五九号)
同外四件(江崎真澄君紹介)(第一六〇号)
同(大坪保雄君紹介)(第一六一号)
同外一件(大橋武夫君紹介)(第一六二号)
同外二件(大平正芳君紹介)(第一六三号)
同(加藤高藏君紹介)(第一六四号)
同外六件(金子岩三君外一名紹介)(第一六五
号)
同(吉川久衛君紹介)(第一六六号)
同(小坂善太郎君外一名紹介)(第一六七号)
同外四件(小林かなえ君紹介)(第一六八号)
同外二件(鈴木正吾君紹介)(第一六九号)
同外二件(加藤常太郎君紹介)第一七〇号)
同外十件(田口長治郎君外一名紹介)(第一七
一号)
同外二件(田中彰治君紹介)(第一七二号)
同外三件(中垣國男君紹介)(第一七三号)
同外八件(中曽根康弘君紹介)(第一七四号)
同外四件(長谷川四郎君紹介)(第一七五号)
同外六件(福井盛太君紹介)(第一七六号)
同外四件(福田赳夫君外一名紹介)(第一七七
号)
同(福田赳夫君紹介)(第一七八号)
同外三件(藤枝泉介君紹介)(第一七九号)
同(保利茂君紹介)(第一八〇号)
同(三池信君紹介)(第一八一号)
同外七件(早稻田柳右エ門君紹介)(第一八二
号)
同外三件(秋山利恭君紹介)(第二二三号)
同外二件(淺香忠雄君紹介)(第二二四号)
同(井出一太郎君紹介)(第二二五号)
同外三十件(石坂繁君紹介)(第二二六号)
同(大倉三郎君紹介)(第二二七号)
同外三件(大矢省三君紹介)(第二二八号)
同外五件(岡本茂君紹介)(第二二九号)
同外四件(押谷富三君紹介)(第二三〇号)
同外二件(菅野和太郎君紹介)(第二三一号)
同(久保田鶴松君外一名紹介)(第二三二号)
同外一件(吉田重延君外一名紹介)(第二三三
号)
同外二件(高碕達之助君紹介)(第二三四号)
同外二件(中山マサ君紹介)(第二三五号)
同外一件(西村榮一君紹介)(第二三六号)
同(原田憲君紹介)(第二三七号)
同外一件(古川丈吉君紹介)(第二三八号)
同外三件(服部安司君紹介)(第二三九号)
同外一件(小川半次君紹介)(第二七三号)
同(大森玉木君紹介)(第二七四号)
同外四件(亀山孝一君紹介)(第二七五号)
同(小平久雄君紹介)(第二七六号)
同外一件(坂田英一君紹介)(第二七七号)
同(笹山茂太郎君紹介)(第二七八号)
同(椎熊三郎君紹介)(第二七九号)
同(周東英雄君紹介)(第二八〇号)
同(田中龍夫君紹介)(第二八一号)
同(田中正巳君紹介)(第二八二号)
同外二件(高瀬傳君紹介)(第二八三号)
同外二件(高橋英吉君紹介)(第二八四号)
同(高橋清一郎君紹介)(第二八五号)
同外一件(塚田十一郎君紹介)(第二八六号)
同(徳安實藏君外二名紹介)(第二八七号)
同(南條徳男君紹介)(第二八八号)
同(長谷川峻君紹介)(第二八九号)
同(保科善四郎君紹介)(第二九〇号)
同(本名武君紹介)(第二九一号)
同(平塚常次郎君紹介)(第二九二号)
同(松浦周太郎君紹介)(第二九三号)
同外三件(三田村武夫君紹介)(第二九四号)
同(三和精一君紹介)(第二九五号)
同外三件(山田彌一君紹介)(第二九六号)
同(中馬辰猪君紹介)(第三二一号)
同(今澄勇君紹介)(第三二二号)
同(加藤鐐造君紹介)(第三二三号)
同(中崎敏君紹介)(第三二四号)
同(中村時雄君紹介)(第三二五号)
同外十一件(相川勝六君紹介)(第三二六号)
同外二十三件(生田宏一君紹介)(第三二七
号)
同外一件(石橋湛山君紹介)(第三二八号)
同外一件(井原岸高君紹介)(第三二九号)
同外九件(金丸信君紹介)(第三三〇号)
同外二件(纐纈彌三君紹介)(第三三一号)
同外二件(世耕弘一君紹介)(第三三二号)
同(武知勇記君紹介)(第三三三号)
同(津島文治君紹介)(第三三四号)
同(橋本正之君紹介)(第三三五号)
同外八件(早川崇君紹介)(第三三六号)
同外五件(星島二郎君紹介)(第三三七号)
同外八件(中村幸八君紹介)(第三三八号)
同外二件(西村直己君紹介)(第三三九号)
同(野田卯一君紹介)(第三四〇号)
同外五件(足立篤郎君紹介)(第三八一号)
同外八件(生田宏一君紹介)(第三八二号)
同外三件(今松治郎君紹介)(第三八三号)
同(内海安吉君紹介)(第三八四号)
同(遠藤三郎君紹介)(第三八五号)
同(大野市郎君紹介)(第三八六号)
同(加藤精三君外三名紹介)(第三八七号)
同外一件(川崎末五郎君紹介)(第三八八号)
同外三件(菅野和太郎君紹介)(第三八九号)
同外三件(木村俊夫君紹介)(第三九〇号)
同外五件(小枝一雄君紹介)(第三九一号)
同(笹山茂太郎君紹介)(第三九二号)
同外一件(櫻内義雄君紹介)(第三九三号)
同(佐藤虎次郎君紹介)(第三九四号)
同(志賀健次郎君紹介)(第三九五号)
同外二件(關谷勝利君紹介)(第三九六号)
同外四件(世耕弘一君紹介)(第三九七号)
同外十七件(瀬戸山三男君紹介)(第三九八
号)
同(夏堀源三郎君紹介)(第三九九号)
同(西村直己君外一名紹介)(第四〇〇号)
同外六件(福田赳夫君紹介)(第四〇一号)
同外一件(藤本捨助君紹介)(第四〇二号)
同外二件(平野三郎君紹介)(第四〇三号)
同外六件(坊秀男君紹介)(第四〇四号)
同外二件(前尾繁三郎君紹介)(第四〇五号)
同外三件(前田正男君紹介)(第四〇六号)
同外三件(松岡嘉兵衛君紹介)(第四〇七号)
同(村瀬宣親君紹介)(第四〇八号)
同外一件(森下國雄君紹介)(第四〇九号)
同外六件(山口喜久一郎君紹介)(第四一〇
号)
同(山口好一君紹介)(第四一一号)
旧軍人恩給の加算制復元に関する請願(小平久
雄君紹介)(第一八三号)
同(鈴木正吾君紹介)(第一八四号)
同外七件(高瀬傳君紹介)(第一八五号)
同(渡海元三郎君紹介)(第一八六号)
同(山口好一君紹介)(第一八七号)
同(吉川久衛君紹介)(第二九八号)
同(津島文治君紹介)(第三四四号)
同(前尾繁三郎君紹介)(第四一八号)
建国記念日制定に関する請願(大平正芳君紹
介)(第一八八号)
同外一件(前田正男君紹介)(第一八九号)
同(西村英一君紹介)(第一九〇号)
同(金丸信君紹介)(第二九七号)
同外四十二件(纐纈彌三君紹介)(第三四二
号)
同外八件(前田正男君紹介)(第三四三号)
同外六十二件(纐纈彌三君紹介)(第四一四
号)
金鶏勲章年金及び賜金復活に関する請願(池田
清志君紹介)(第一九一号)
同(大坪保雄君紹介)(第一九二号)
同(亀山孝一君紹介)(第一九三号)
同(瀬戸山三男君紹介)(第一九四号)
同(橋本正之君紹介)(第一九五号)
同(小泉純也君紹介)(第二九九号)
同(中村幸八君紹介)(第三〇〇号)
同(松永東君紹介)(第三〇一号)
同(高碕達之助君紹介)(第四一五号)
同(坊秀男君紹介)(第四一六号)
旧軍人恩給の不均衡是正に関する請願(福田赳
夫君紹介)(第二四〇号)
高校教育職の特別取扱いに関する請願(八田貞
義君紹介)(第二四九号)
同(關谷勝利君紹介)(第四二六号)
傷病恩給の是正に関する請願(相川勝六君紹
介)(第三四一号)
同外二件(江崎真澄君紹介)(第四一二号)
同(木村俊夫君紹介)(第四一三号)
建設省定員外職員の定員化に関する請願外二十
五件(堤ツルヨ君紹介)(第三四五号)
寒冷地手当増額に関する請願(中澤茂一君紹
介)(第四一七号)
昭和三十二年四月一日以降に新制大学卒業資格
取得者の俸給調整に関する請願(横路節雄君紹
介)(第二〇二号)
同(西村力弥君紹介)(第四一九号)
昭和十八年以降の師範学校卒業者等の俸給調整
に関する請願(横路節雄君紹介)(第二〇三
号)
同(西村力弥君紹介)(第四二〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
農地被買収者問題調査会設置法案(内閣提出第
一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/0
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001・福田一
○福田委員長 これより会議を開きます。
農地被買収者問題調査会設置法案を議題とし、質疑を行ないます。質疑の通告がありますのでこれを許します。久保田豊君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/1
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002・久保田豊
○久保田(豊)委員 私は総務長官に、きょうは序論的な意味でもってごく大まかな点だけお聞きをいたしたいと思います。実質にわたる問題については、きょうではとても尽くせませんので、また後の機会にいたしたいと存じますので、あらかじめ御了承をいただきたいと思います。
そこで最初にお伺いをいたしたいのでありますが、この法律の担当者、責任者は、御承知の通り内閣総理大臣になっている。従って本件については、これは非常に重要な意味を持っております。法案そのものの表側に出ているものは、きわめて簡単な、調査会を設置するだけの問題であります。しかしこれが内包する内容というものは、戦後十五年間を通じて参った日本の農業の根幹、農地制度、あるいはそれを基礎にいたしました日本の農業の発展なり、あるいは農村の民主化というものの基本に、非常に大きな影響を及ぼす問題であります。そういう点から見て、また従来これは二十四国会くらいからぼつぼつ問題になった問題でありますが、今まではあらゆる機会に、基本の問題については総理がみずから答弁に当たっておられるのであります。しかもその総理の答弁が、大体二十七国会当時まではほぼ一貫したものを持っておった。その後だんだんぼけて参りまして、ついにこの法案が三十一国会に出るという仕儀になったわけであります。
〔委員長退席、岡崎委員長代理着席〕
三十一国会以降の答弁等ずっと見ましても、非常にぼけた点がだんだんよけいになってきておるのであります。
これは非常に重要な問題であります。そこでもう一つの問題は、三十一国会では総務長官がこれを一応扱うことになりまして、松野さんが一部の答弁に当たられておるのであります。しかしその答弁の内容を検討してみますと、きわめて事務的な答弁であって、この法案の持っておりまする重要な内容、基本点についての答弁がほとんどされておらないのであります。これはいずれ私はあとの質問で次々にはっきりいたして参ろうと思いますが、そういう観点から見て、大へんどうも総務長官には失礼な言い分でありますが、本件の政府側の全体の答弁に当たられるということは、きわめて不適当であるというふうに私は考えております。しかし衆議院では、御承知の通りあなたが大体において提案理由の説明をされたわけであります。そういう点で、少し誤りがあったのではないかと私は思うわけであります。この点についてはどのようにお考えになっておりますか。あらかじめお聞きをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/2
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003・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 御指摘のこの法案の取り扱いの問題でございますが、もちろんこれは最高の責任者は総理大臣であります。総理大臣がみずから各答弁その他を本会議でもやられた通りでありまして、そうすることが望ましいと思います。ただいろいろな点で、各委員会その他諸般の問題があって、これを補佐する立場から総務長官がかわって、事務的に私が主宰する形になる、その点は御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/3
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004・久保田豊
○久保田(豊)委員 一応総務長官が事務的にはこの問題に当たっていくというのはわかるわけです。特に総理は、今回のような国会では非常に忙しく、あっちこっちの委員会に衆参両院で引っぱられておるということで、非常に困難であることはよくわかります。しかしこの問題の大事な点については、やはり総理に内閣全体を代表して、はっきりした答弁をいただかなければならぬ面がたくさんあるわけであります。何といいましても、国民のほぼ三分の一を占める農民全体にひっかかる問題でありますから、そういう点では、必要なときには総理みずからが出てきて、はっきりした答弁をされる必要がある、こう私は思うのであります。
そこで私は委員長と総務長官にはっきりお願いしておきますが、これはきょうではありませんけれども、いずれ機会をあらためてこの問題の基本点についての一番大事な点を審議いたします際には、一つ委員長も長官も責任を持って、総理大臣がここへ出てくるように、そして総理大臣みずからはっきりした答弁に当たられるように処置していただきたい。これを条件にいたしましてこれから質疑を続けて参りたいと思うが、この点について、委員長並びに長官のはっきりした責任のある態度を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/4
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005・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 御趣旨の通りいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/5
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006・岡崎英城
○岡崎委員長代理 その点は十分委員長においても取り扱いさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/6
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007・久保田豊
○久保田(豊)委員 それでは一つ具体的な質問に入って参りたいと思います。最初にお聞きいたしたいのは、この法案は御承知の通り三十一国会に提出をされて、審議未了になっております。さらに三十二臨時国会にも政府から提案されまして、どういう理由か、私は当時この委員会におりませんからわかりませんが、これは撤回になっております。大体において今度で三回目であります。普通の場合でしたら、こういう法案は二回もそういうことになっておれば、三回目に出すということは、これは少し政治的な常識を欠いておるのではないかというふうに思うのですが、前二回にわたる不成立に終わったものを、第三回目のこの時点において出す必要がどこにあるかという点について、私は一つ政府側のはっきりした御見解をあらかじめ承らしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/7
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008・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 御存じの通り第三回目の提案でございます。第一は残念ながら審議未了となり、また前国会におきましては、災害の復旧対策その他いろいろな重要法案に時間をとられまして、結局時間切れとなって撤回し、今回は再開国会の劈頭に提案をしたわけでございます。どうして二回もだめになったものを三回も出す必要があるのかという御質問でございますが、政府としましては、従来とも提案説明で申し上げております通り、農地改革という大きな日本農政の問題、この効果は私ども十分認めながらも、その激しい社会的変革のためにいわゆる旧地主のいろいろな問題が起こっている。これをそのまま放置しておくことは、全般の国民生活安定という点からも大きい影響があるわけでありまして、その実態をつかむことが必要であるという観点から、またこの提案をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/8
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009・久保田豊
○久保田(豊)委員 この農地改革の結果が旧地主にどういう具体的な影響を与えたかという点については、あとでまた御質問を申し上げたいと思いますが、いずれにいたしましても三十一国会でこれが審議未了になり、あるいは三十二回国会で政府みずからが撤回をするという裏には、これをただ単に国会の内部のかけ引きや都合とだけごらんになることは、私は非常に不適当ではないかと思うのであります。この問題が発生しましてから、なるほど旧地主層が大きな期待を持ったことは事実であります。しかしながら反面においてなおさらにより広範な農民層に、非常に大きな不安を持たしております。しかも場合によりますと、この法案が決定をいたし、その決定の内容いかんによりましては、農村の一番基本である現在の農地制度というものに、大きな影響を及ぼすような問題であります。そういう点から、御承知の通り新聞等も、中央紙を初めといたしまして、地方の新聞もほとんどこの法案については賛成をしている向きはありません。こういう点から見て、今お話のあったような旧地主側の要求といいますか、不満といいますか、そういうものだけを一方的に見てなおこの法案を取り上げるということは、少し政府として反省が足りないのじゃないかというふうに私は考えるわけです。くどくなりますからあまり申し上げませんけれども、たとえばここに全国農業会議所の編成したこの問題に対する新聞の論調集があります。これを見ますと、読むと大へん長くなりますけれども、どの一つをとりましても、この農地補償の問題、旧地主の問題についての運動について、また法案そのものについて賛成をしておるものはありません。一例をとってみると、ちょうどこの法案が出ました当時の三十四年三月十六日の北海道新聞の社説は、こんなふうに書いております。「旧地主調査会の設置が自民党の選挙対策であることは多くを語るまでもあるまい。選挙の票と金になることなら手あたり次第というのが岸内閣のやりかたである。一千万円の調査会で、農村に隠然たる勢力をもつ地主団体の支援を得ることができるのだから、極めて安上りな選挙対策といえよう。だが、この一千万円の選挙対策は、やがて莫大な国家負担を将来に残すおそれが多分にあるのだから、うかつに見のがしておくわけにはゆかない」云々というふうに、かなり手きびしい反対論を出しております。さらにごく最近の新聞の論調を見ましても、たとえば二月十一日の毎日新聞は、はっきり「再補償より地価抑制策を」という見出しで、わざわざ社説を出しておる。その内容を見ますとこういうことであります。「農地被買収者問題調査会設置法案が再び今国会に提出された。九日の衆院本会議で行われた政府の趣旨説明や質疑のもようをみると、政府は旧地主に農地の再補償を行う考えはないかのようにみえる。しかしほんとうに政府に再補償を行う考えがないのなら、どうしてこの問題を繰返し国会にもち出すのか。」云々といって、ずっとこれに対する反対と疑問の態度をはっきりと示している。反対と疑問の態度を表明しておるのが、日本のほとんどの中央、地方の新聞の一貫した論調であります。
〔岡崎委員長代理退席、委員長着席〕
証拠をあげろというのならここに幾らでもあります。しかし、くどくなりますからこの程度でやめますけれども、私は三十一国会でこの問題が審議未了になったということを、単に与野党間のいろいろな取引であるとかなんとかというふうにお考えになることは、政府としては無責任ではないかと思う。これだけ大きな反対のあるものを、また性こりもなく、反省もなく同じものを出しておるという点はどういうお考えか、私はもう一度この点についてはっきりした考えをお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/9
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010・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 この法案に対して、新聞論調その他に現われた相当の反対があることも承知いたしております。いわゆる旧地主制の復活というような、農政そのものに弊害を及ぼす時代逆行的なものは、私どもごうも考えておらないわけであります。しかしまた反面、こういう社会的な激変に伴う実態をどうつかむかという問題で、この調査会に賛成する向きも相当多いわけであります。私どもは従来の考え通り、実態を調査する調査会を設けることは、やはり必要であると今でも考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/10
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011・久保田豊
○久保田(豊)委員 実態を調査されるといいますけれども、実態はすでに農林省その他においてかなり明確な実態が出ておるのです。これらについては私は、あとで御質問申し上げたいと思っておりますから、今の段階では質問を省きます。
しかしもう一つ政府に考えてもらいたいことは、旧地主補償の問題あるいは農地被買収者の問題が問題になって参りましたのは、日本では、大きく見て四つの段階を経ております。第一期は、農地改革の行なわれる過程において、その中においての地主の反対運動がありました。第二期は、大体において二十七年ごろから、この問題を地主団体が至るところで積極的に意識的に取り上げまして、統一的な運動を展開した。具体的に言いますと、下条さんが会長になられまして、そうしてあの四十一万票集めましたあの当時の運動、その後地主団体が内部の分裂をいたしましてごたごたしました時代、さらにこれが自民党のあっせんによりまして統一されて、現在の全国農地解放者同盟という形になりまして、自民党と密接に結びついて今日この法案闘争に入った時代、こう三つあります。
その過程において、現場においてはどういう問題が出たかというと、御承知の通り、分裂の過程並びに統一の時代においては、香川県を初めといたしまして、至るところに地主側の意識的な土地取り上げ、実力行使という問題が出て騒然といたしたのが実情であります。これが三十一国会の背景をなしておる。ところがその後においてはどうかといいますと、大部分の地主は、この問題についてはあきらめておる。そのあきらめたのがどこに現われておるかというと、全国の農地解放者同盟の会費が、千五百万を予定しておるようでありますが、あまり集まってこないということであります。こういう点と、また私どもが地方において地主層といろいろ触れ合ってみましても、この問題についてはもうほとんどあきらめておるのが実情であります。その結果は、三十二年を山といたしまして、全国各地に起こりました小作地の取り上げ問題、あるいは実力行使、そういう問題が現在はほとんど消滅をしたような格好になっており、そのうちわずかなものだけが裁判等によりまして依然として争っておる。そのうちのおもなものは、長野県の例の知事の憲法違反の問題です。これも御承知の通り、つい最近最高裁ではっきりした判決が出まして、これは争う余地がなくなった。こうして現地におきましてはほとんど大部分の問題が片のついた今日、さらにまたこれを出すという点、私は、今いろいろ大きな変革があったからそれの実態を調査されると言いますが、実態の問題についてはあとでまた論議をいたすといたしまして、大体の大勢からいって今申したように、ほとんど現実においてはこの問題の火が消えておる。その時期にさらに三回目にあらためて、問題を将来また現地において巻き起こしそうな危険のあるこういう法案というもとをなぜ出されるのか、これがわれわれには納得いかない。今のような形ばかりの答弁、答弁の模範書に書いてあるような答弁では困ります。全国のはっきりしたこういう情勢を見てとって、こういう法案を今日出す必要があるのかないのか、私は必要は明らかにない。必要が明らかにないだけではない。有害であると思う。せっかく現地において地主側もほとんどこの問題の不当性というものに気がついて、そうしてこういうものをやめて、意識的なあるいは集団的な土地取り上げ等がなくなって、そうして地主と小作人との間やその他が円満にいきそうなときに、なぜこういう法案を出して火をつけるのか。寝た子を起こすようなやり方というものは納得できない。こういう判断とあわせて長官のはっきりした——今のようなお答えでは答弁紙に書いてありますよ。私はそういう場当たりのあれではなしに、はっきりした御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/11
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012・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 過去の長い間の、いわゆる農地改革が行なわれまして以後今日まで、いろいろな起伏がありましたことは御指摘の通りであります。ただ私どもはこの法案を出す必要性については、先ほど申した通り社会的激変に伴う旧地主の社会問題は、やはりはっきり調査しなければならぬという考えをいまだに強く持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/12
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013・久保田豊
○久保田(豊)委員 その社会的問題の実態ということについてはあとで申し上げますから、今の段階では触れませんが、今私が申し上げましたように、せっかく現地でもってこういう問題が片づき始めたときに、また問題を起こすということは、いかにも政府としてまずい政策であり、何かそこに別途の意図ありと私は理解をしてもやむを得ないことだということ御承知おき願いたい。
もう一点はこういう点であります。御承知の通り今日本の農業が行き詰まり、また従来の農政が行き詰まって、曲りかどに来ておるということをよくいわれます。現実に日本の農業は非常に大きな停滞期にぶつかっております。同時に今までの農政というものも、今まではだめだというので、政府の方もこの問題についてはかなり真剣な取り上げ方をして、現在農林漁業基本問題調査会において鋭意検討中であることは御承知の通りであります。ここで出ておる問題は何かといいますと、日本の工業なり経済の大きな発展に対しまして、農業が非常に立ちおくれておる。このままではどうもならぬ。特に為替貿易の自由化というような段階で、外国から安い農産物の圧迫が逐次強くなって参る、こういう段階で今までのような農業ではやっていけないということがはっきりして参ったわけであります。従ってこれを打開するには、農民自身の実践活動としても、すでにいろいろな形において、あるいは大型の機械を入れるとか、あるいは積極的に技術を取り入れるとか、あるいは共同化の線をだんだん強めて参るとかいって、非常な苦心をしながらもそういう方向が逐次年々強まっておることは御承知の通りであります。政府もどの程度やれるか、私どもはあまり期待を持っておりませんが、しかしいずれにいたしましても今までの政策ではだめだというので、政府みずからが検討を始めておることも事実であります。ことしあたりの予算の中にもきわめてわずかでありますけれども、そういう方向が少しずつ芽を出しつつあるのが実情であります。その基本の問題の一つとしては、御承知の通りどうしても現在の土地制度に、ある程度前向きの改正を加えなければならぬという段階になってきております。要するに農地法関係なり、あるいは現在の農地改革で行なわれました土地制度にある程度の改革を加えなければならぬということがあることは、御承知の通りであります。その一端が、いわゆる農業法人化の問題にからんで、御承知の通り農地法の一部改正という形で近く政府から提案をされる模様であります。しかしこれは現在の農地制度あるいは農地法の改正でありますけれども、うしろ向きの改正ではございません。はっきり言って前へ向いた農地法の改正をしなければ、日本のすべての農民というものはこれからの時勢についていけない。また日本の国民経済にもこれが大きなウイーク・ポイントになって、将来大へんな問題を起こすというので、保守の立場に立たれる方も、まめじな方はこの問題について相当の関心を持ってきておるのが実情であります。ところがこの法案に含まれております内容、あるいはこの法案が将来発展していく方向というものは、これと全く逆であります。これはあとで私が具体的に一々数字と事実をあげで御質問申し上げますから、その内容についてはこの段階では触れませんけれども、この法案の含んでおります土地制度あるいは農地法に関する問題は、明らかにうしろ向きであります。つまり旧地主の立場における農村の古い秩序の復活であり、古い農地法の農地制度の復活という方向をはっきりこれは内包しております。政府は一方において、基本問題調査会におきましてわずかながらでも前進の、前向きの改革を考えておるし、一方においてこういううしろ向きの改革をやる、こういう矛盾をした、大へん失礼な言い方ですが、新聞の論調からいえばまさに両岸的な農地政策というようなものを予想されるような、こういう案を三たび出されるということは、私は政府の前向きの政策そのものも疑わざるを得ない。一体岸内閣はこの前向きの政策を不十分ながら進めていくのか、あるいはうしろ向きにいくのか、どっちにいくのです。こういう点から見ても、この時点において、このようなもうすでにはっきり烙印の押されましたものを、単に旧地主にまつわるいろいろの社会的な実態を調査するなんというぼけたごまかしの理由によって、三回目に出されるということは、政府としては大きな間違いである。この際どうしてもはっきりしなければならぬ問題だと私は思うのでありますが、この前向きの改革とうしろ向きの改革と大体どちらをとられるのです。もしこれが片方において、たとえば今度の法人化の問題にひっかかりまして、農地法の新しい前向きの改革が行なわれる、この法案が成立いたしましてうしろ向きの農地改革が行なわれるとしましたら、現実の農地政策なり、その土台の上に立つところの日本の農業政策というのは、不要な混乱をするだけじゃありませんか。そういう危険がはっきりしておるものを、今ごろ出されるというのはどういうわけですか。私は一向にわからぬ。この点を明確に一つ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/13
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014・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 東畑先生が会長になっておられる御指摘の農林漁業基本問題調査会、これは非常な御努力で各般の問題を取り上げておるわけであります。従って土地問題についても今述べられたような点が、確かに大きな話題の一つになっておるように承っております。ただ、農政の基本問題は農林当局から説明を聞いていただくことにしまして、今度の調査会の設置法案について、何か全然うしろ向きじゃないか、矛盾があるじゃないかという今のお話でございますが、私どもはそう考えておりません。旧地主の制度の復活というような時代錯誤的な、はっきりうしろを向いたようなものを少しも考えておらないわけでありまして、土地問題は土地問題として基本問題調査会が取り上げると同時に、われわれとしては残された一つの問題といいますか、懸案といいますか、明らかにされてない旧地主の実態を把握する、このことによって土地制度があたかも一方においてうしろ向きになるという御議論には、賛成いたしかねる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/14
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015・久保田豊
○久保田(豊)委員 この法案がうしろ向きでないかどうかは、あとで具体的な事実をもって私は御質問申し上げたいと思うから、今その議論は私はこの段階ではやりません。次の機会にやります。しかし少なくともこの問題の動いて参りました過程というものは、よく御承知の通りであります。たとえば全国農地解放者同盟の綱領といいますか、規約の第二条にはっきり、地主を中心とした新しい農村秩序を作るのだということを宣言しております。いわゆる農地改革の際の補償価格は不当であるから、これに対して新しい補償を獲得するのだということが目的の第一条に載っておるのであります。しかもそういう旧地主団体を育てて、指導されてきたのが、これは御承知の通り自民党さんであります。そうしてその基盤の上にこの法案が出て参ったことは、私はあとで具体的な事実でもってはっきり申し上げたいと思うのであります。その一端に触れますと、大体こういうことになっておるのじゃないでしょうか。私の調べた範囲では、地主団体が最初は一つであったのが、二つにも三つにもなった。それが三十二年の十二月十一日に全国農地解放者同盟という形で統一をされております。そのときに自民党さんがあっせんされまして、そうして自民党のいわゆる農地問題特別調査会からこの三団体に対しましては勧告が出ております。その勧告とあっせんによって、四国の一つだけを除きまして、全国農地解放者同盟というものが三十二年十二月十一日に成立をいたしております。これは大体において会員が二十万、会費が大体において千五百万、こういうのであります。しかも同盟の事務所はどこにあるかといいますと、これは自民党の民情部、千代田区永田町二の十四、ここに一緒におります。現在ほかにはありませんで、こういうところにあります。しかも自民党の衆参両院議員全員が同盟の顧問に就任されております。そのうちの五名の方が——これは衆参両院でありますが、原さん外四名の方が常任顧問という形で、この同盟の全体と密着をいたしております。こういう格好でありまして、地方におきましても、各県に支部その他があるようでありますが、これもほとんど自民党と密着しておるのが現状であります。世間ではこれを自民党の組織である、自民党の外郭団体である、こう言っておるのが実情であります。これはまさか自民党で指導的な役割をされておる長官が知らないというわけはないと思います。おそらく長官もこの顧問には就任されておるはずであります。ですから知らぬはずはない。こういう実態であります。まあ少しお聞きづらいかと思いますが、一つごしんぼう願います。
こういう構成でありまして、さらに自民党内部には、三十二年の中ごろに、従来ありました農地政策の小委員会というものが、今の同盟の要請によって発展的解消をされて、九月に衆参両院の六十名を委員とするところの一農地問題調査特別委員会というものが、自民党の政調の内部に結成をされております。さらに三十三年度の二月には、これに新しく学識経験者を加えた委員三十名の農地問題の調査会というものに発展して、これが今この問題を扱っておるのであります。これが全国の農地解放者同盟と表裏一体の関係をなしており、この法案の出る以前におきましても、すでにこの農地問題調査会が十二月に内閣と党に対しまして、これと似たような法案を作れという三項にわたる答申をいたしております。それに基づいてこの法案の原案がちゃんと自民党の中でできて、この点は確かめてありませんけれども、これはおそらく内閣に答申をされておると思います。それと多少違っておるだけで、本質においては何も違いはない、こういう内容であります。私どもは大へんうがって失礼な言い分であります
が、こういう事実関係を土台にして理解をいたしますと、今度三回目に世間
の反対、新聞の世論の反対というものを押し切って、さらに第三次の提案をされた。こういうように、この団体と自民党の切っても切れないような腐れ因縁というものがあります。さらに自民党がこの問題にあまり深入りし過ぎて、抜くに抜けないという立場からこの旧地主団体に突き上げられて、いやおうなしにここにこの法案を出してきたというふうに理解をする以外にはない。あなたもおっしゃるように、旧地主団体に対する社会問題の実態を調査しなければならぬというようなことは、もうすでに調査はある程度できており、結論を出そうと思えば出ます。にもかかわらずこういう問題を出した点は、私はどうも納得ができない。もっと悪く理解すれば、勘ぐってみれば、これは自民党の次の選挙対策とも考えられないことはない。すでに新聞等においても、そういうふうな論調がぼつぼつ出かかっておるのであります。どうか一つこういう点は、政府といたしましても、自民党といたしましても、特に総理府におきましては十分に考えていただきたいと思います。今申しましたような事実は、これはこちらの方でいろいろと調べてきたものでありますが、こういう農地問題の、いわゆる全国農地解放者同盟と自民党との腐れ因縁というものをあなたは認められますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/15
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016・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 これはもう久保田委員もよく御了解いただいておると思いますが、現在の民主政治の中で、志を同じくしあるいは目的を同じく、する者が団体を作り、またわが党と志が同じであり、考え方が同じであるならば、当然この間に密接な関係を生むことは、民主政治のあり方としてきわめて自然の現象だと思います。
なおこの法案につきまして、いわば圧力団体の突き上げで政府が出したのではないかという御指摘がございましたが、そういう点は全然ございません。繰り返し申し上げております通り、必要であるという私どもの認識から提出をいたしたわけであります。その点は純粋の立場でこの調査会に対して御検討いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/16
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017・久保田豊
○久保田(豊)委員 突き上げではない、圧力団体には負けないと言っておられますが、現実に今までの、二十六国会当時からの政府の答弁を見れば、地主団体に突き上げられて、次々によろめいて、同時にそういう中において自民党とこの団体との結びつきがますます強くなって参って、今にっちもさっちもいかなくなっておる。この事実はいかに口の先で否定をされましても、天下周知の事実であります。それならば実際こういう民情部と同じところに事務所をかまえるのは、おかしいじゃないかというふうに思うわけであります。これならはっきり分けられたらいいと思うのであります。しかしこの点はこれ以上追及いたしましても、おそらくそうだということはおっしゃらぬでしょう。水かけ論になりますからやめておきます。そこで調査の基本的な問題に入る前に、二、三予備的な問題についてきょうは御質問申し上げて、その程度にいたして参りたいと思います。
その一点は、この調査会をなぜ単独法にされたかという点であります。これはあまり大規模な調査会でもないわけであります。普通なら内閣総理府の設置法の一部を改正して、それで済むはずであります。ところが特に単独法でこういう調査会を作られる。しかも存続期間は二年であります。こういう必要はないのではないか。私どもはこれは内閣の設置法の一部改正で十分間に合う、こう思うのですが、なぜこの調査会を特別立法をしてクローズ・アップしなければならぬ理由があるか、この点がわからない。どういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/17
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018・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 なぜ単独法にしたか、設置法の改正でいいのではないかという御質問でございますが、これは今度の調査会の目的、また趣旨を考えまして、法律で明らかにするためには、単独法が適当であると判断したからであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/18
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019・久保田豊
○久保田(豊)委員 今のお話はどうもちょっとおかしいと思う。実態を調査すると言いましても、あとでお聞きしますが、何百万という地主さんの実態が、総理府でこの程度のものを作って、それで明らかに調査のつくものでもありますまい。私は何かここにも政治的な意図があるように思う。つまりこういう単独法を出すことによりまして、地主団体に対して何らか申し開きなり、あるいはごまかしの見せ場を与える、こういう意図があるから、内閣設置法の一部改正でなく、単独法で出したと普通世間は見ております、私どももそう見ざるを得ないと思う。この点の御解明をはっきりされることが必要だと思いますが、この点についてどういうふうにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/19
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020・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 総理府の設置法改正なら手続も非常に簡単でございますが、単独法を選んだ理由は何か意図があるのではないかという点でありますが、私どもはこの調査会の重要性を考え、また法律で明らかにするためには、単独法で明確に目的、趣旨を明らかにした方がいい、そう考えて単独法にいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/20
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021・久保田豊
○久保田(豊)委員 あとではっきり申しますが、この調査会くらい目的のぼやけておるものはないのです。あとで具体的に事実をはっきり申し上げますが、各種委員会あるいは調査会が内閣その他に設けられております。しかしながらこの調査会くらいぼけた目標を持っているものはありません、そういうものを特に単独法をもってやるということが、私は納得がいかないのであります。たとえば農地改革に伴って旧地主にまつわるところの社会的な諸問題というのは一体何ですか。社会的な諸問題というのは何をさしているのですか。具体的な内容です。この点はあとで一つ一つ具体的に御質問申し上げますが、今まで政府の答弁を聞きましても——私もずっと調べてみました。一貫をして政府が今まで各委員会において答弁をされた内容を調べてみたけれども、一向この社会的な諸問題という内容がわからぬ。このくらいぼけた目標を持った調査会はありません。その調査会を特別にこういう単独法をもって作るという必要は、私はさらにないと思います。これはある意味において官制の乱用だと思う。こういう点でもう一回この点をはっきり御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/21
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022・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 かりに単独法にいたしませんと、構成、組織等の問題については一々政令にゆだねなければならぬという点が出て参ります。単独法にして明確にこの目的を明らかにした方がいい、こういう考えで単独法にしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/22
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023・久保田豊
○久保田(豊)委員 この点も納得がいきませんが、もう一つお聞きをいたしておきたいと思うのは、調査会をなぜ総理府にお作りになったのか。大体この問題を所掌して参りましたのは、御承知の通り農林省であります。農林省でなぜこの問題を——地主にまつわる諸問題というものを処理されるというなら、農林省に設置してけっこうじゃないか。それを特に総理府に設置をしましたのは、どういう理由かということ。御承知の通り今まで少なくとも歴代の農林大臣は、赤城さんまでは、この地主団体なり何なりの補償要求に対しては、かなりはっきりした反対をして参りました。また同時に一千万円の調査費を農林省に組むことについても反対をして参った。これは農林委員会等においても大臣の答弁で明らかであります。そういう点から農林省からけちを食ったので、総理府に作ったのですか。どういうわけですか。この点を一つお聞きをしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/23
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024・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 この調査会の調査目的、範囲、そういう点から考えますと、農林省だけではとうていまかない切れない広範なものであります。おそらく大蔵省、厚生省、各省の所管にわたる問題が出て参りますので、総理府の本質から申しまして、各省にまたがる事項を調整するには、やはり総理府内に設置した方が便利ではないか、こういう観点から置いたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/24
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025・久保田豊
○久保田(豊)委員 今までのお話だと、農林省だけではまかない切れない、大蔵省や厚生省の所管事項にもわたるから内閣に設置したといいますと、この調査会が調査審議をした結果、どういうものができるかわかりませんけれども、それらの処理については大蔵省も厚生省も大きな関係を持つという意味ですか。さっきのお話では社会問題の実態を調査するのだ。実態を調査するという過程で大蔵省がどれだけこの問題に連関がございますか。実態を調査するということだけならば、大蔵省はほとんど関係がないはずであります。また厚生省にいたしましても、実態を調査するというなら、今の生活保護法等の対象ということになれば、これはすでに調査の実態ができておるはずであります。実態を調査するという観点から、さっきあなたが御答弁になったような、この調査会はいわゆる地主の社会問題についての実態を調査するということならば、私はおそらく今までの官庁で農林省なんかでやったことが主体になって、あと特に大蔵省がこれに関与するような調査範囲というものはほとんどあるまいと思う。それともこの調査会で結論が出て、その結論を処理する場合においては、大蔵省なりあるいは厚生省が大きくその所管事項に食い込む、その前提としてこれらの問題にもわたる点があるから総理府に置いたというのですか、どっちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/25
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026・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 先ほどお答えしましたように、各省にわたる問題が十分今から予想されるわけであります。ただ問題は、一体それでどういう結果が出るだろうか。これは今久保田委員も言われた通り、今から予想はできません。具体的には調査会が設置されたあとでどういう結論が出るかは、その結果を見たあとでなければ、今から申し上げられませんが、少なくともいわば純粋な農政以上のワクを広げられた社会的な問題になりますと、やはり今申し上げたように厚生省その他の問題が出てくるのではないか、こういうことを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/26
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027・久保田豊
○久保田(豊)委員 どうも今の御答弁ではあれですから、ちょっとくどいようですが、特に私は大蔵省を入れたというのはどういうことか、ちょっとわからないのです。農地改革の過程で、たとえば地代の問題を調べるにいたしましても、補償金の問題を調べるにいたしましても、ほとんど農林省がこれを所管しております。大蔵省がこの地主の問題に調査の段階においてどういうわけで関係を持たれるのか、これがわからない。この点を明らかにしてもらいたい。どういう点で具体的に結びつきを持っておるのですか。この調査会の結論のいかんによって、あるいは補償金という格好でなく、ほかの名目で何か金を出すという予想のもとに大蔵省にわたってやるというのかどうか、ここらもはっきりしないのです。こういうふうな点がぼけておるから、これは名義は何にするか知らぬけれども、実質はおそらくこの法案を足場にして、地主補償をやっていくのではないかという疑問が当然起きてくるわけです。大蔵省が調査の段階において、どういう点で必要なのか、これを御明示いただきたい。また厚生省にいたしましても、生活保護の対象になっておるのなら、もうすでに実施をしておるのでありますから、これは調査ができておるはずであります。そういう点で既存の調査資料なり何なりで十分ではないか。それ以上何かあるとするなら、どういう点があるのか。特に内閣にこの調査会を設置して、これらの厚生省ないしは大蔵省の所管事務にわたって調査を進めるというのは、——私どもは農地改革とずっと取っ組んで現実にやって参りました。役人ではありませんから下からやったのですが、そういう点から見てどうも納得がいかない。ここらに将来この調査会が何らかの結論を出した後における含みと、結びついておるのではないかという誤解が持たれるわけですが、この点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/27
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028・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 何か補償を予想し、前提として、大蔵省を所管の必要な省として考えておるのではないかという御質問でありますが、これは一番初めに申し上げた通り、最初から補償するとかしないとか、こういうことは政府としては一切考えておらないわけであります。結論は調査会にまかしておるわけでありまして、そういう点で大蔵省と補償の問題を直接結びつけられることは、私どもとしては迷惑でございます。ただ問題は、与党内でもいわゆる特別税の問題なども議論されております。いい悪いは別として、いろいろな税の面からも、いわば旧地主の問題にも関連が出てくるのではないか。また今厚生省のお話が出ましたが、生活保護法という点からいろいろな議論もありますが、これは困窮という点だけで取り上げるべきものではなくて、生活の困った者以外に生業の激変というような広い立場もあるわけでありまして、この点はやはり厚生省、大蔵省も所管に関係する面が出てくるということを私ども予想しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/28
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029・久保田豊
○久保田(豊)委員 きょうは最初ですから、あまり実質の面に触れないで、二、三事務的な問題についてちょっとお伺いをいたしておきたいと思うのです。これは要するにさっきからお話のように、旧地主の実態を調査されるという御答弁です。その旧地主というものはどういうものですか。どういうものというと語弊がありますが、非常に差があるのですね。大体旧地主同盟の方からの資料、これはあなたの方にも行っていると思いますが、同盟の方で出した資料によりますと、二百五十三万八千二百二十八戸が対象になると言っております。ところが農林省の調査による推定では、これが百七十六万一千戸となっております。このうちから十四万二千戸の法人団体を除きますと、もっと数が少なくなる。こういう点でも同盟、つまり旧地主側の主張するものと農林省が正規に詳しくやったものとは、非常に大きな違いがあります。あなたの方はもちろん実態を調査するというのですからあれでしょうが、こういう点についてはどういうふうにお考えになっておるのですか。大体農林省の基準によってやるのですか、それとも旧地主団体の基準によってやるのですか、この点も非常に不安です。なぜかというと自民党と同盟とがあまりに密着し過ぎているからである。ここらにもおかしいところがあるが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/29
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030・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 農地改革の対象となったものは、農林省の調査の通り百七十六万戸でございます。おそらく調査対象はこれを基準としてやるべきではないか。農林省が調査いたしましたものはいわゆる旧地主で、しかもまだ農業に従事している者約七十万戸を対象にしているわけでありまして、おそらくこの調査会は残り百万戸についてはまだ未調査であります。こういう点からいいまして、大体農林省の百七十六万戸が正しいものではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/30
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031・久保田豊
○久保田(豊)委員 それでは私はきょうはこの程度にいたしておきたいと思います。実質の問題については、次に少し具体的な数字と事実を土台にいたしまして御質問を申し上げたいと思います。残余の質疑は私は次の機会に保留いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/31
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032・福田一
○福田委員長 次に受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/32
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033・受田新吉
○受田委員 私最初に総務長官に、あなたの職務に関連したことをお聞きいたしたいと思います。総理府設置法においてあなたの総務長官としての身分が確定を見ておるわけでございますが、あなたは単独に総理府部内の事務の管理権、監督権あるいは職員の統督権がありますかありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/33
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034・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 最高の責任者と申しますか、担当者は総理大臣でございます。私はあくまで補佐する立場であるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/34
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035・受田新吉
○受田委員 そうしますと、官房長官の方は内閣法によってはっきりと所属職員の服務に関する統督権があるわけです。あなたには所属職員の服務に関する統督権はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/35
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036・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 大島審議室長から詳しく答弁いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/36
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037・大島寛一
○大島政府委員 総理府本府の職員につきましては、総務長官が指揮監督される次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/37
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038・受田新吉
○受田委員 本府所属の職員については指揮監督権がある、さよう了解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/38
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039・大島寛一
○大島政府委員 そのように了解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/39
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040・受田新吉
○受田委員 単独にできる。すなわち内閣の官房の長と同じように単独に統督権を持つかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/40
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041・大島寛一
○大島政府委員 私その方の直接担当でございませんが、総務長官として監督できる立場にあると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/41
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042・受田新吉
○受田委員 服務に関する指揮監督権というものが単独にある。総理大臣でなくて、あなたが単独にできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/42
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043・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 私はあくまで総理大臣補佐でございますから、最高責任者は総理大臣が建前であろうと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/43
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044・受田新吉
○受田委員 そうしますと、あなたで単独に指揮監督はできないわけですね。法律的な立場からはあなたには権限がない。服務に関する監督ということは考えられるが、指揮権はない、こういうことも言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/44
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045・福田一
○福田委員長 それについて佐藤総務副長官が詳細に説明するそうです。今呼びに行っておりますからちょっとお持ち下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/45
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046・受田新吉
○受田委員 それでは質問を続行しておきます。総務長官、あなたの職務についてどのような権限があるかはよく御承知しておられない。たとえば給与担当国務大臣として、あなたをこれにかわらしむるに適当かどうかというような問題にも発展してくるわけです。あなたの職務は国務大臣をもって充てることができる職務に地位はなっている。けれども現実はあなたは国務大臣になられない。非常に残念なことであろうと私は思います。けれども現実は手きびしく、あなたに対する地位が国務大臣の対象外に置かれているということになっているので、従って閣議へ出席をされても、発言権はあっても採決権がないとか、いろいろな点でおさびしいお気持をなさっておると思うのです。そういうところで、この今度の問題についても、またここで皆さんの御意見が、総務長官が答弁をしていただくのに適当かどうかという問題も起こってくるのであります。
私は次に質問を発展させますけれども、今夏この調査会という機関を付属機関の中へ設けられたことはこれは先ほど久保田委員からもお尋ねのように適切ではないという前提で、私は政府の反駁御意見を伺いたいのです。大体農地被買収者のために、その問題を調査するための機関として、この法案を出されたのでありますが、この法案提出の最も大事な理由の中に、被買収者に関する社会的な問題が取り上げられているわけですね。この社会的問題ということになると、これは総理府の付属機関として適当な問題かどうかということが一つ起こってくる。社会的問題以外のものは取り上げられないのか。たとえば農地解放関係の法律によるところの救済措置が十分できなかったかどうかというような問題の調査というものは、制度的な問題についての取り上げはなぜしてないのか。どうせこういう問題をお出しになるならば、現実に農地解放によって社会的な被害を受けた人々を救済するというだけでなくして、その根拠法の不備、根拠法の運営の問題ということが当然議題になっていいものだと私は思っています。いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/46
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047・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 救済制度の問題は、あくまで農政の基本的な問題として農林省がやるべきだ。調査会自体は先ほど申す通り、社会的な広範な立場から調査するわけでございまして、所管の対象といいますか、範囲が明確でないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/47
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048・受田新吉
○受田委員 どうもこれははっきりしないのでございますが、社会的な欠陥を生じた原因が農地関係諸法規の不備あるいはその運営の不当にあったとするならば、当然それもあなた方の立場からは研究の対象にすべきでなかったのかどうかです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/48
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049・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 御指摘の点は、やはり現在の農林漁業基本問題調査会でこれを取り上げるのが適当ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/49
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050・受田新吉
○受田委員 根本的問題に入りますが、これは性格的に農地関係解放は、基本問題調査会で取り上げるべき性質のものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/50
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051・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 いわゆる農地改革の結果起こったいろいろな問題は、この調査会でやるわけでありますが、今御指摘の救済制度とか、具体的な農政に関する問題は、基本問題調査会の方が適当ではないか、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/51
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052・受田新吉
○受田委員 これは末端の農地委員会で決定を見たもの、それに不服なものは漸次上級機関に訴える道があったわけです。そういう取り扱いにおいて不当な措置がとられたということ、この研究をする機関が基本問題調査会でやる問題として、あなたはお認めになっておるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/52
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053・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 農地改革自体は、先ほどお答え申した中にもはっきり申し上げておりますが、これは当然正当なものであり、効果も大きかったわけでございます。従って農地改革あるいは農地法の実施という問題自体にはこの調査会は一切触れていないわけであります。その結果起こった旧地主のいろいろな激変の問題、そういう点を取り上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/53
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054・受田新吉
○受田委員 私のお尋ねしているのは、その過程における問題です。その処理を当然あわせ考えないと、社会的別な欠陥を生じた原因がどこにあるかわからないわけです。たとえば非常に零細な地主、五反百姓という部類の人々、そういう人々の土地解放、農地解放は非常に無理であったかどうかというような、制度的な欠陥とかいうような問題がひそんでおるとするならば、当然あなた方はそういう社会的にほんのわずかな名ばかりの地主の土地解放が、こういう結果を起こしたという制度的な問題が、それに裏づけされなければならぬと思う。何十町歩、何百町歩、何千町歩と持っている地主と三反百姓、五反百姓の地主と性格が違うというような調査も、あなた方の方では当然なさっておられなければならぬと思うのです。その社会的に起こった現象だけをとらえるのではなくて、そういう制度的な問題も当然その背景に浮び上がっていなければならぬのじゃないですか。片手落ちじゃないですか。私はあなた方の立場で今お伺いをしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/54
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055・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 農地改革、農地解放自体は、この調査会で触れないつもりであります。というのは、農地改革自体が正当な法律に基づきまして行なわれたものでありますし、またこれに関する最高裁の判決も明らかでありまして、制度自体については触れない。調査会の範囲、目的を出ておると思います。以外であります。その結果の問題だけをここは取り上げるものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/55
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056・受田新吉
○受田委員 しからばこれに直接つながる問題を提起しましょう。それは農地解放で不幸な事態、生活に追い込まれたという人とよく似たような問題は、終戦当時保険の加入者あるいは銀行、郵便局へ預貯金をしておった者、その後貨幣価値の急激な落下で、著しく生活が脅かされた人々もあるわけですね。昔は土地を資本と考えて、莫大な金を土地購入に充てて地主になった人と、預金の利子で食っていこうという立場で生活の主体を考えてきた人とあるわけです。あるいは自分の生存している間は何とかなるが、死亡した後の家族のことを考えて保険に加入している人もある。手一ぱいで保険をかけておった、手一ぱいで預貯金をしていた。土地は一切買わないでやってきた。土地に資本を投下した人だけがこの問題の対象になり、そのほかの預貯金、生命保険等へ加入した人々は、急激な貨幣価値の下落で生活が脅かされておりますけれども、これを何ら考えないということは片手落ちじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/56
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057・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 戦時または戦後の非常な、いろいろな激変によりまして、今御指摘のたとえば保険金をかけた者あるいは預金した者が、インフレの非常な悪影響で災害を受けた。これは私は旧地主も貨幣価値という点から見れば共通な現象と思います。ただこれらの問題は、それぞれのケース・バイ・ケースでいろいろな処置も講じてきておりますし、決して十分とは言えませんが、いろいろな処置をとって参っております。旧地主の場合は、一体これはどういう災害を受け、またどういう変化があったか、これから調査しようとするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/57
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058・受田新吉
○受田委員 あなたは大へん変な御答弁をされたわけで、インフレの犠牲になった人々は問題にならぬ、旧地主だけは問題になるのだというような御発言が今あった。これははっきり申し上げまするが、旧地主といえどもインフレがなくて、売買当時の価格がそのまま今日も土地の正当な価格として認められるような経済情勢であるならば、おそらく問題は起こらなかったと私は思います。たとえば反当一千円といたしまして、その反当一千円の貨幣価値が今日も依然として続くような経済、社会であったならば、補償問題というようなことを地主は提起しなかったと思うのです。あなたはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/58
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059・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 地主の立場からいえば、今おっしゃったような貨幣価値の変化ということが相当大きな刺激になり、原因になったと私も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/59
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060・受田新吉
○受田委員 旧地主の人々が要求していることは、補償を金銭でやってもらいたい。もとの土地を戻してくれと要求しているわけじゃないと私は思うのです。これにかわる金銭の給付を要求をしていると私は思うのです。しからば郵便貯金、銀行預金等で、生活の根拠をその利子で充てておった人々と、同じ金額を土地資本に投下した人々と同じ条件じゃないですか。インフレの犠牲になった点においては同じではないでしょうか。違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/60
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061・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 インフレの結果悪い影響を受け、また甚大な損害を受けたという点では、私は同じだろうと思います。しかし片方は正当な法律に基づいた農地改革の結果、単なるインフレの影響だけではなくて、いろいろな社会的な問題が起こっておると私どもは考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/61
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062・受田新吉
○受田委員 インフレの進行ということがなければ、この制度の問題は正当であるとわれわれも認め、あなた方も認めておる。農林省がやった仕事に間違いはないとはっきりとあなた方も認め、制度的な欠陥はないとはっきり言っておられるのですよ。その裏に起こった社会的な現象をとらえて、何とかしなければならぬという御発言のその意味からは、全く金銭を直接資本にした人と土地を資本にした人と同じ条件じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/62
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063・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 先ほどお答えしました通り、インフレの災害という被害者である点では私は共通であろうと思う。ただ、今申し上げたように片方に預金でありますとか保険であるとか、そういうものはまた事柄々々によりまして政府が別個に考えるべき問題だ、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/63
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064・受田新吉
○受田委員 事柄々々によって別個に考えるというと、何か今から対策があるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/64
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065・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 これは主として大蔵省関係と存じますが、まだ適切な、有効な救済なりあるいは適当な措置というものは伺っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/65
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066・受田新吉
○受田委員 特に終戦直後の昭和二十一年三月だったと思うのですが、現金に証紙を貼付して新円に切りかえたときがある。そのとき以後は封鎖預金は最高五百円だったと思うのですが、それ以上は払い出しできない時代があった。いかに金をたくさん握っておっても、金は凍結されておった時代があったわけです。これもやはり制度的な被害じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/66
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067・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 これは敗戦という大きな非常事態にとられたインフレ抑制の非常措置であった。制度というよりは、実際そのときに緊急にとられた非常措置であったと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/67
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068・受田新吉
○受田委員 引揚者等に対する閉鎖機関令というような規定もできて、法律も関係法律が幾つかできておりまして、外国で持った金も凍結されて、いつまでも縛られた時代がある。これもやはり制度的な欠陥じゃないですか。そういう意味からは全く土地と同じではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/68
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069・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 引揚者の問題も制度というよりは、やはり戦後の緊急事態から生じた一つの不幸な被害である、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/69
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070・受田新吉
○受田委員 戦後の事態ということになれば、土地もやはりそういうことが言えるのじゃないですか。土地は戦後の不幸な事態じゃないですか。全然それに関係していませんか。不幸な事態と、私にあなた方の立場で言わしめれば、そういうことが言えるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/70
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071・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 土地解放の、いわゆる農地法の問題については、私は当時の適切な正当な処置であった、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/71
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072・受田新吉
○受田委員 私たちはさように思っておるわけですけれども、あなた方の立場から、占領政策であったからという地主の皆さんの要望に耳を傾けておられるのじゃないですか。全然それはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/72
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073・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 地主の中にはそういう一部の議論もありますが、政府としては制度自体は適切であった、そのために国民経済の上からいっても大きな寄与をしたと今でも確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/73
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074・受田新吉
○受田委員 そういう大きな寄与をし、適切であって、農林省がりっぱにそれを運営してきた問題について、もし地主の側にその農地解放関係諸法規の不備欠陥、運営の不当のために、立場を失うような人が生活を脅かされる人であるならば、その方からの救済でやっていったらいいのじゃないですか。わざわざ新しいものをここに設けて、土地の問題だけについて社会的に不幸な人を救うというやり方は、今私が申し上げた金銭をそのまま資本にしていた人々と比較して、非常に不公平になるという問題が起こってくると思うのです。保険でも同様ですよ。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/74
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075・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 これは法律が通りまして、調査会ができて、しかも二年かけて調査するわけでありますから、その結論を見てからでないと、今から比較すことは私は早過ぎると思います。ただ申し上げておるように、農林省だけではこの問題を扱うには少し幅が広過ぎまして、社会的ないろいろな生業上の各般の問題を取り扱いますので、やはり総理府に置いた方が調査会としては適当ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/75
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076・受田新吉
○受田委員 総理府に置く置かぬの議論は別として、こういう機関を設けることについての問題があることを私は今一応議論しておるわけなんです。今申し上げたような同じレベルで社会的に不幸な事態になったという人々であるならば、同じレベルにたくさんの人々がおるわけです。その同じ人々の中で、農地問題だけを取り上げるということになれば、やがてインフレの進行による急激な貨幣価値の下落に伴うところの犠牲者も救済するという問題が当然起こってくるわけです。それは繰り返し申し上げて大へん失礼ですが、土地資本と、それから預貯金とそれによる利子によって食っていこうという人々と、二通りあったわけですね。その一方が救われて一方が救われないということは、大局から見て片手落ちだと思う。あなたは総理府の、総理大臣の補佐官でありますから、どうぞ一つ大局から見てお考え願いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/76
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077・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 先ほどお答えしましたように、インフレに対する被害者であり、不幸な災害を受けたという点では、私は確かに共通の点があろうと思います。今度の調査会は、いわゆる適法な、適切な農地改革の結果、その制度自体はよかったのでありますが、あまりにも急激な大きな変革でありましたために、広範な全国にわたっての被害が、あるいは激変が起こった。この実態がどういうものであるかということを、まず調べることが必要であるという議論が前からございました。それが調査会を設置しようという形になって現われておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/77
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078・受田新吉
○受田委員 非常にりっぱな制度であったけれども、それが急激であったために被害者が出たということでありますと、これは政治が悪いということになるのですか。非常に悪い政治をしたということになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/78
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079・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 政治が悪いということは、私は言えないと思います。御指摘のようなインフレ、あるいは貨幣価値の激変という現象もあったでしょうし、また農業を離れて、生業上非常な変化もあったろうし、いろいろな各種の要因があろうと思います。政治が悪いということは、私は根拠は少ないのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/79
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080・受田新吉
○受田委員 社会的な不幸な事態に立ち、被害者がたくさん出た、こういう調査会を作って——予算は幾らですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/80
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081・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 一千万円です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/81
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082・受田新吉
○受田委員 一千万円という国民の血税を使って機関を作るということならば、よほど大きな被害が出たのですね。政治が悪かったということになるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/82
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083・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 政治が悪いとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/83
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084・受田新吉
○受田委員 善政を施した。それではそういう被害者、不幸な事態の人が、調査会を作らなければいかぬようなものがたくさん出るようなのが善政と言えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/84
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085・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 いかに農地改革というりっぱなよい政治をしましても、それに随伴して不幸な現象が起こることも間々あると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/85
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086・受田新吉
○受田委員 間々あるということですが、国費一千万円をつぎ込み、調査会まで設けてやるというような不幸な事態を起こしたということは、これは政治の欠陥であるということが、はっきり指摘されると思うのです。あなた方のお立場からいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/86
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087・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 私どもはそう考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/87
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088・受田新吉
○受田委員 あなた方は、こうした社会的に不幸な事態を引き起こすような政治を平素から盛んにやっておるから、麻痺しておるのです。これは自民党という政党が政治に対する関心がはなはだ薄かった、つまり大衆を愛するということに欠けておったということが言えると思うのでございますが、私の立場からは、制度的には納得できる問題だし、運用面においてある程度不公平な点があるということになれば、その線からの救済をどんどんやっていくということで、これは片づいていた問題だと思うのです。ことさらこれを取り上げるほどの問題に発展すべきものではなかったと思うのです。いわんやこの旧地主のうちで三反とか五反とかの零細な地主であった、地主とは名ばかりの人々が、解放した土地の新しい所有権を獲得した人が、付近に工場ができたり、あるいは道路ができたりしたために、急に土地の値が暴騰してきて、そして急激に利益を得たというようなことをそばで見ていると、これに対してああ惜しかったなあという比較検討の上の被害ということを考える点も、私は相当出てきておると思う。従って土地の高騰を防ぐこととか、最近の住宅地の土地の暴騰などということは、これはとんでもない方向に行っておるのだが、そういうようなものを防ぎ、あるいは不当に高い値段で売りさばいたとかいうようなときには高率の税金をかけるとか、そういう措置によって、こういう旧地主の側の感情問題を緩和する道もあって、あなた方がこういう問題を持ち出さなくても済んだ問題ではなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/88
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089・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 解放農地の売買について、高率の税をかけたらどうかという受田委員の御提案のようであります。これはわが党内にも一部そういう議論がございます。ただこれは税制の立場からいって、譲与所得税だとか、あるいは固定資産評価税とか、そういう点もありますので、政府としてはそういう高い税をかけて不満をやわらげたらどうかという点には、にわかに同意しがたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/89
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090・受田新吉
○受田委員 この調査会でそういうことも討議の種になると私は思うのですが、そういうようなことを討議して、かれこれ議論をして多少とも景物を出せばいいのだというような逃げ腰の調査会という御意図でこれをお出しになるとすれば、またこれは問題が起こるわけです。私が申し上げているのはこういうものを別に作らなくても、個々の問題はこれを救済することができるのじゃないか。わざわざこれを取り上げることによって、直接預貯金による利子を生活のかてにした人々の問題が起こったりいろいろな問題が起こるから、この際おやめになってはどうですかということを今申し上げているわけです。わざわざこれをお作りになるほどのものではないということを申し上げているのです。あなた方の御答弁では、そこにはっきりと矛盾を感じておられることを私はくみ取ることができると思うのです。確かにそういう点では苦労をしているとはっきり申して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/90
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091・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 私は先ほど来お話ししておる通り、やはり必要に感じ、必要を認識して提案しておりますので、別に苦しんでおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/91
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092・受田新吉
○受田委員 そうするとあなた方のお立場をもってすれば、預貯金による被害のものは全然平気だというお気持ですか。もう馬の耳に風だ。そういう連中はへのカッパでやれというような気持ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/92
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093・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 先ほど来お答えしました通り、戦時、それから戦後の貨幣価値の激変その他によって、ずいぶんいろいろな問題が起こりましたことは御指摘の通りであります。これについて政府はケース・バイ・ケースでいろいろな措置も講じたり、あるいは法令等によって措置も講じてきておるのでありますが、中にはまだ救済の対象にもならず、実効も上がっておらないような不幸な方々もあることは十分認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/93
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094・受田新吉
○受田委員 その実効の上がっていないものがたくさんひそんでいるのだから、これだけを取り上げられなくて——これだけおやりになるなら、個々のケースで適当におやりになる道があると思うのです。そういうことでおやりになったらいかがです。これを今取り上げて、全国民的な世論のあらしの中にあなた方は反撃をしておられるわけですが、大へんまずいことになると思うのです。先ほど久保田委員からも指摘されたように、何回も国会に出されて蒸された問題ですから、もうこのあたりで一応義理を立てたから、旧地主の皆さんよ、これくらい政府は努力したから見のがしてくれ、そのかわり個々の問題については政府は一つ骨を折ってやろう、こういうようなところで、政府は一応こうして御答弁に立たれることも適当でございますが、そっとおしまいになるような措置をおとりになるように私はお勧めしておきたいわけです。これは回を重ねて質疑が繰り返されるので、不必要の理由がはっきりしてくると思うのでございますが、もう一度お尋ねしたいのでございますが、社会的な問題だけということになれば、先般来わが党の中村君からも発案されたような厚生省の所管のいろいろな審議会等があるわけですから、社会保障関係のどれに持っていってもいい。そうした問題等を取り扱う機関があるわけで、そういうところで、旧地主について社会的に困窮しておる人々を救済する問題を付議する方法があると思う。そういうことになれば一般的な社会問題として十分検討できるわけだと思うのですが、いかがでしょうか。そういう行き方が一つあるとお考えじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/94
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095・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 今御指摘の社会保障制度審議会、これは御存じのように総理府内にございます。これは社会保障という観点からいろいろな問題を審議しておりますから、見ようによっては今のような御意見もあろうと思いますが、私どもの考えでは、これは農地改革という特別な処置によって起こった非常に特徴のある激変の現象を調査するという立場から、一般の社会保障というものと少し特別な特色があるのではないか、そういう点でやはり特別の調査会で審議を進めた方が適当である、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/95
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096・受田新吉
○受田委員 そういう事態と同類のことは、引揚者の問題もあるわけです。それから遺家族の問題もあるわけなんです。そういうような諸問題について、一般的に不幸な事態の全体の問題としての取り扱いというものを社会保障制度審議会でやって、そしてさらにそれの中で派生した問題を個々の審議会でやってきたわけなんですが、もう個々の審議会というものは必要がない、大きな審議会だけを作って、そこで討議するという段階にきておるので、総理府付属機関も各省のそうした審議会、調査会というような末端の小さな機関をたくさん作って、行政事務の分担をはかるよりは、そういうものを整理統合しようという段階にきておるのです。今行政機構の改革案で、政府自身がそういう方針を立てておられる。そのときにこういうものをわざわざここへ出すということは、これは屋上屋を重ねるという、あなた方の方針とは逆の方向へ行く問題だと思うのです。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/96
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097・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 理想の形としては、今お話のような総合的な高いものを作って、そこで各部門ごとに専門的なものを、ブランチを作るという一つの考えは確かにあるのであります。ただこの問題は、農地改革という特別な問題から派生して起こった問題を対象とするものでありますから、やはり委員の方も、農業問題とかその他いろいろの専門的な知識のある方をお集め願わないと、適切な審議ができない。そこでこの特別の調査会を設置しようとするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/97
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098・受田新吉
○受田委員 専門的な問題というよりは、これは社会的な問題を討議すると書いてあります。社会的ということになったら、農業の専門家ということよりも、実際に被害を受けておる者を問題にしておるのです。どういうわけで被害を受けたかの原因は別だと今あなたはおっしゃった。そうしたらむしろ現状において苦労をしておる人の生活実態という方が問題じゃないですか。農業の専門家が関与する問題というよりは、直接生活的に不幸な立場になっている人をどう見るかという問題の方が重点じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/98
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099・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 それはお話の通りやはり社会的な問題でありますから、農業の専門家も必要でありましょうし、あるいは社会保障といいますか、広範な民生という点から見ることも必要でありましょう。各立場における専門家を動員しませんと、適切な結論が出ない。農業だけの専門家という意味ではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/99
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100・受田新吉
○受田委員 実態調査をやるのは、その原因が入るわけですか。なぜこういう不幸な事態になったかということが調査の対象になりますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/100
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101・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 もちろん原因も入ろうと存じますが、先ほど来明確にお答えしております通り、制度自体とか、あるいは実行いたしました農地改革自体に対するいろいろな再検討ということは、もう必要がないわけでございます。この点は繰り返し申し上げてあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/101
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102・受田新吉
○受田委員 社会的な事象だけを取り上げるということになっているわけでしょう。そうしたら農業の専門的な問題というものは、これは当然はずすべきなんだ。実際に今生活が困っている者を対象に見ようというわけで、生活が困っていない人は全然見ないというわけでしょう。だからはっきり申し上げますが、あなた方の今回のこの調査会の目的は社会的な問題であるから、食っていけなくなったという人を対象にするのであって、旧地主であったから幾らか金を出すという、旧地主であったがゆえの金というものは全然考えない。旧地主であったうちで、いよいよ今困っている人のごく一部、生活困窮者というものだけを何とか救おうという意味の、社会的な問題という意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/102
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103・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 単に生活が困る、いわゆる生活困窮者というだけですと、社会保障的なもので十分であります。私どもはもっと幅の広い——中には生活困窮している人もあるでしょうし、あるいは生活が困らなくても、生業上著しい変化が起こった者もある、もっと広い問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/103
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104・受田新吉
○受田委員 生活が困らなくて、りっぱに食っていけるという人でも、何かの補償をするということですか、今のお答えは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/104
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105・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 この点は一番先にもはっきり申し上げた通り、補償するかしないかはまだ結論が出ておらぬわけです。調査会において実態をきわめ、補償する必要があるかどうか、また必要があればどうすればいいか、こういう点は調査会の審議に待つほかはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/105
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106・受田新吉
○受田委員 調査会の審議に待つといっても、ここであなた方が調査会を作った理由を今われわれは問うておる。社会的な問題ということがはっきりしている以上は、生活に困っていない問題を含むのか含まぬかを聞いておるのです。生活に困っておらぬ人も国家補償というような形で何とかしょうというような意味かどうか、社会保障以外のものを考えるということになるのかならぬのかです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/106
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107・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 先ほどもお答えした通り、生活困窮者あるいは生業上の手違いから困ってはいないが、著しく変化があった者を全部対象にしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/107
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108・受田新吉
○受田委員 これはややっこしいことになって、どうもはっきりしないのですが、生活には困っておらぬということになれば、その人は一応生活は保障されたことになるのです。旧地主にすれば山林とかなんとかの方で救われている人もあるのだから、そういう人たちに対しても生業上のということになると、どういうことになりますか。生業上の問題ということはどういうことですか。言葉がはっきりしないのです。例をあげて説明して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/108
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109・福田篤泰
○福田(篤)政府委員 たとえば農地を解放されて、農業をそのままやっておる方もありますし、あるいは農業を全然離れて他の職業に移った方もあります。そういうような実態がどうなっておるか、それが明確にまだ把握されていないのが現状であります。農林省が調べると言っておりますが、これは農業をやっておる者だけを調べた統計でありまして、農業をやっておらない大部分の百万戸の分については、ほとんど調査がされておらぬ。こういう実態を見きわめようではないか。従って初めから補償するとかしないとかいう問題を前提といたしますと、私どもの調査会の目的からはずれるわけであります。あくまで一体どうなっておるかということをきわめて、それによっていろいろなことを結論を見出そうというのが調査会の目的であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/109
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110・受田新吉
○受田委員 生活に困っている人、食っていけない人というのを救うという意味なら、私たちも一応わかるのです。今生活には困っておらぬ、しかし職業を変えたいような立場の人も何とか研究しなければいかぬということになると、あなた方の立場からしてもここにまた一つ問題が起こるわけです。どうも何か別の、つまり社会保障以外の報奨制を考えようというようなお考えが、今の御答弁の中からうかがうことができるのです。調査会の問題だとおっしゃっても、あなた方の構想の中にそういうのも十分検討するということになると、そういう問題を当然取り上げるべきだということになるのですね。今第二の生活に困っておる人はいいが、今困っておらぬのだが何とかせなければならぬという御発言は、私は非常に大事な問題だと思う。そうすれば困っておらぬ人を何とか救うというよりは、さしあたり預貯金で食っていって全部根こそぎやられたような人、生活に困っておる人の方が先に取り上げられなければならぬ問題ですから、筋道が違いますよ。これは大へんややこしい問題になってきた。これは設置の理由が成り立たぬようになってきたわけです。
きょうは思いがけなく質問が長引きましたが、時間がきたようですので……。先ほどのあなた方の沈痛な面持ちから窮迫状況にあることがはっきりしませんけれども、さっきの、あなたの御職務を長官御自身が御理解になっておらぬ、部下職員の監督権の範囲というものがどういうところにあるかが、まだおわかりになっておらなかったのです。官房長官と総務長官とで服務上の管理、監督権というものに相違があるかないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/110
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111・佐藤朝生
○佐藤(朝)政府委員 官房長官と職務上の相違は、官房長官は内閣関係の部局の部下を監督するということであります。総務長官は総理府関係という次第でございまして、その範囲の違いだ、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/111
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112・受田新吉
○受田委員 総理府設置法と内閣法を読んでみると、官房長官には服務関係の統督権があるわけです。総務長官にその権限が書いてない。これはどうです。事務の監督権しかない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/112
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113・佐藤朝生
○佐藤(朝)政府委員 総理府設置法の項にはこういうふうに事務の監督権だけでございますが、私詳しく今知っておりませんが、私の記憶では行政組織法の方の適用を総理府設置法は受けますので、そちらの方で受けるのではないかと思うわけであります。官房長官は行政組織法の適用がございませんので、そちらの方に条文が置いてございますが、総理府の方は行政組織法の適用がございますので、そちらの方の適用で部下の統督権ということがあると存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/113
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114・受田新吉
○受田委員 行政組織法の中には、各省大臣の職務は事務管理、分担管理の規定しか書いてない。それを直接総務長官がやられるのかどうかということです。総務長官に直接権限があるかどうかを聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/114
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115・佐藤朝生
○佐藤(朝)政府委員 その点は受田委員がおっしゃる通り各省大臣は統督権がございますが、総務長官はその統督の補助者としての任務しかないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/115
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116・受田新吉
○受田委員 内閣法には官房長官に統督権が認められ、総務長官は補助者であるというところに相違点がある。そういうところから給与担当国務大臣は福田さんのようなお人柄であっても、非常にりっぱなお方であっても、閣議における地位とかいうところで責任者をという要求が出てきておると私は思っておるわけなのです。この問題は責任の所在がどこにあるかということと、責任がどこまで持てるかとしうことと二つの面から考えられると思います。総務長官のような高潔な人格を持っておられても、なかなか閣議では思うことが言えないという点が、補助者という今の御発言ではっきりしたわけですが、そういうところにもあると思いますので、一つ長官、馬力をかけてもらわぬといかぬと思うのです。きょうは私の質問はこれだけにしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/116
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117・福田一
○福田委員長 次会は明十九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X00519600218/117
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