1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十五年四月二十八日(木曜日)
午前十一時七分開議
出席委員
委員長 福田 一君
理事 淺香 忠雄君 理事 岡崎 英城君
理事 高橋 禎一君 理事 高橋 等君
理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君
理事 田万 廣文君
青木 正君 小金 義照君
谷川 和穗君 富田 健治君
丹羽喬四郎君 橋本 正之君
保科善四郎君 山口 好一君
北山 愛郎君 久保田 豊君
杉山元治郎君
出席国務大臣
国 務 大 臣 石原幹市郎君
国 務 大 臣 益谷 秀次君
出席政府委員
人事院総裁 淺井 清君
人事院事務官
(給与局長) 瀧本 忠男君
総理府総務副長
官 佐藤 朝生君
自治政務次官 丹羽喬四郎君
総理府事務官
(自治庁長官官
房長) 柴田 護君
総理府事務官
(自治庁行政局
長) 藤井 貞夫君
総理府事務官
(自治庁財政局
長) 奧野 誠亮君
大蔵事務官
(主計局給与課
長) 船後 正道君
委員外の出席者
人事院事務官
(公平局訴願課
長) 穗積 重道君
総理府事務官
(自治庁長官官
房総務課長) 長野 士郎君
防衛庁書記官
(人事局調査
官) 山本 明君
専 門 員 安倍 三郎君
—————————————
四月二十八日
委員始関伊平君、中川俊思君、保科善四郎君及
び柳田秀一君辞任につき、その補欠として丹羽
喬四郎君、青木正君、星島二郎君及び北山愛郎
君が議長の指名で委員に選任された。
同 日
委員青木正君、丹羽喬四郎君及び星島二郎君辞
任につき、その補欠として中川俊思君、始関伊
平君及び保科善四郎君が議長の指名で委員に選
任された。
—————————————
本日の会議に付した案件
特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出第二二号)
一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出第二三号)
防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内
閣提出第二四号)
自治庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第九九号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/0
-
001・福田一
○福田委員長 これより会議を開きます。
特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の各案を一括議題とし、前会に引き続き質疑を許します。石山權作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/1
-
002・石山權作
○石山委員 これは人事院が勧告をなさって、それを政府が人事院の意見をば尊重いたしまして今回法律として提案したわけですから、人事院と政府と両者の立案あるいは共同責任というふうなことになるだろうと思いますが、今度の給与改善あるいはそれに伴うところの法律改正を見てみますと、給与の面だけ直接に言いますと、非常に、俗語で言えばなから半端だという言葉を私の方で使うわけなんです。あるいは帯に短したすきに長しという言葉等にも通ずると思うのですが、政府の思いやりがあって、いわゆる七百四円というふうな昇給は、そういう意味では高給者に対しても満足を与えていないのはもちろんでございますが、一般の職員に対してもちょっとも感謝の気持がこのことによって現われない。この欠点は一体どこにあるかということは、人事院も政府も十分考える必要があるのではないか。せっかくなけなしの財布の底をたたいてというわけではないのですが、かなり苦労して政府は財政措置をなさった。人事院は人事院でまた一年間苦労をなさって、そして公平妥当な数字であるというふうな自信を持ってお出しになったと思うのですか、それにしては受け取る側からあまり感謝をされないような面が出てきたとすれば、どこかにこれは受け取る方の政府側に認識の不足がある、あるいは提案の勧告をなさった人事院の中で調査に疎漏があるのか、あるいは目的意識が違っているのか、いずれにしても私は欠点があるのではないかと思うのです。この欠点が是正される必要があるが、人事院に聞きたいのです。その中で格づけがしょっちゅう変わっていることがあるのですが、この変わっていることに対して私の方では説明を承っておりません。たとえば十九才の東京の人の生活を皆さんの方では基準にして案をお出しになっているようですが、その格づけが二十八年、三十年あるいは今回というふうに変わってきているわけなんです。この点はわれわれとしては奇異な感じを受けております。いわゆる十八才の人を基準に置いたならば、この十八才の人は何の学校を出ようが、何の職につこうが、最低は守られなければならぬというふうな生活係数に対する固定した一つの信念を人事院は持っていないのではないか。ということは、逆にいえば、この給与基準に示されている生活係数に対して認識が不十分なのではないかという印象を受けるのですが、三回にもわたって基準を動かした理由をちょっと説明していただきたい。特に今回の場合の基準について説明をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/2
-
003・瀧本忠男
○瀧本政府委員 ただいまお話の点は二点あると思うのです。第一点は、民間給与と比較いたします場合に格づけをするわけでありますが、その問題。それからいわゆる単身成年者の標準生計費の問題、この二点あると思いますが、まず第一点からお答え申し上げます。一昨年の勧告までは、人事院はいわゆるキー・ポジションと申しますか、特定のポイントを民間と対応させるという方式で比較をやって参ったのであります。そういう方式よりもむしろ全体の比較の方がよりいいのではなかろうか、これは各方面からの御希望もあったわけでありまして昨年におきましては、ある特定の号俸を格づけするということよりも、むしろたとえば六等級なら六等級、七等級なら七等級、これに対応いたします民間の該当職種全体を問題にいたし、そうして全体の比較を出す、こういうやり方で昨年はやって参ったのであります。従いまして従前とそこが違っておるということはございます。
それから標準生計費につきましては、十八才というものに対して標準生計費を考えるべきではないか。いろいろな十八才の人がおるわけであるから、何も新制高等学校を出て、そこからいわゆる初級職試験に通った者というものだけを対象にするのは、少し考えが足りないではないかというお話でございますが、われわれといたしましてはやはり公務員に正式に入って参ります場合には、どうしても試験を通って入ってくるということが原則でございます。そこでその一番低い場合はどういう場合であるかと申しますと、新制高等学校を卒業いたしまして入ってくるという場合が年令としては一番低い、それが十八才になるわけでございます。われわれはここを一応の目安といたしまして、単身者の標準生計費を考える、このようなことをやっておるのでありまして、そのことは従来と変わっておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/3
-
004・石山權作
○石山委員 前にあなたの方でお出しになった資料等を見てみますと、十八才の成年に対しての格づけは、通し号俸をずっと見てみますと、今回変わった一と二の関係ですね。それで少し私らはごまかされてしまうのですが、通し号俸の位置づけから見れば、われわれとして希望するのは、格づけが下がっていくべきが当然だと思う。それがあなたの方の勧告は三回変わっていると私は見ているのですが、その三回を見てみますと、通し号俸から見て順次上がってきているわけですね。それは明らかに私は最低の生計費というものを現実的に減らしていく一つの姿に通ずるのではないか、事実そうでしょう。あなたはそれに対してどういうふうに御答弁してくれるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/4
-
005・瀧本忠男
○瀧本政府委員 御指摘の点でございますが、十八才者の新制高等学校を卒業しまして初級試験に合格しました者の給与というものは、一面から見ますと、これは生計費を考える、これは公務員法にそういう規定がございますので、そういうことを十分勘案するということはあるべきであります。現にやっておるわけであります。ところが一方におきまして、そういう人々の初任給を民間で調べてみますと、標準生計費でわれわれが計算すると必ずしも一致しないという面がございます。またここにはやはり暫定手当の地域差の問題に関しまして、そういう問題も介入してくると思うのであります。そういう問題を勘案いたしまして、従来それではどういう十八才者に標準生計費を配して考えるかということをやって参ったのでありますが、最近におきましては、十八才で新制高等学校を出まして初級試験に合格という者を採用いたす号俸というものはきまっておるわけでございますから、その号俸に対しまする金額を考えます場合に、もっぱらそれを対象といたして勘案いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/5
-
006・石山權作
○石山委員 私今こまかい資料を手元に持っていませんが、あなたたちのような考え方でいきますと、公務員の諸君は三十一才にならなければ子供を生んではならないという計数が出るのです。いわゆる三人家族で二万一千円くらいだと思っておったのですが、そういう計数が出る。これは自然な姿ですか。私が先ほど下の方からも喜ばれない給与勧告をなさったと言った点はそういう点なんです。三十一才にならなければ子供を生めないような給与だということ、これが正しい姿でありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/6
-
007・瀧本忠男
○瀧本政府委員 石山委員が三十一才とおっしゃるのは、おそらく十八才の新制高等学校を出ました初級試験合格者、そういう人が初任給から給与表にきめてあります金額で順当に昇給していったとすれば、二万一千円に達するのは三十一才である、こういう趣旨だと思います。そういう意味におきましては、必ずしも現在の給与が全体的に計算通りになっておるとはわれわれ申し上げることはできません。現在人事院がやっておりますことは、全体的に官民の格差を比較いたしまして、それをなくす。公務員の中におきましては給与水準の高い職種もあるわけであります。たとえば税務関係の職種でありますとか、公安関係の警察官関係の職種でありますとか、また学校関係の教員の給与も若干水準より高くなっております。そういうものがございますので、全体を比較するということになりますれば、個々のものが必ずしも民間と合いがたいという点はあろうかと思います。それで御指摘のような点につきましては、その通りになっておるとは申し上げかねるのでありますけれども、その官民格差をいかに現在の状況に配分するのが最も妥当であるかという点を考えまして、去年の勧告はやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/7
-
008・石山權作
○石山委員 私は、あなたの考え方が全部否定されるべきではないと思う。たと、えばつかみ取りに給与を出すということはできないのでございますし、ある範囲内を考えながらおやりになるということでございますから、私はその苦労はわかる。しかしこれはあなたの方から出された資料なんですから、資料はいつも尊重して見ておるのですが、今までの勧告の態度というものですね。これはこの前も私御質問申し上げたのですが、この資料から見ましても、三月の給与水準というものと四月の給与水準というものは、かなりに違って見えるわけなんです。ですから私の方は手っとり早く申し上げれば、三月でなく四月をとりなさいということ。もう一つ言いたいことは、そういうふうな月数を固定するという考え方は、このように経済がぐんぐん伸びていって、民間の給与はかなりな速度で高くなっていくような場合に、三月を基準にする、四月を基準にするというそのこと自体がはたして正しいかどうかということは、この際検討していただかなければならぬのじゃないか。少なくとも年間を通じて、中心をとって問題を律していくというふうな態度を、この場合とる必要があるのではないか。いつでも公務員の方々は言っているのです。われわれは民間給与の水準というふうに言われているけれども、実質的には二年おくれている、こういうことを毎日言われている。機動性がない。民間なら半年ごとで給与改善をやり得る、団体交渉も持ち得る。公務員の方々には気の毒ですが、実質的には二年おくれた形でお金を受け取るということになります。ですから、どうしましても低い三月というのを今までは故意にねらったような傾向があるが、これはぜひともやめていただいて、まず四月をとるという工夫も大切でございますが、私の申し上げたい点は、三月、四月というふうな月数を固定しない方が、より標準が正しいものになるのではないか。これは苦労でございましょう。苦労でございましょうけれども、年間を通じて半期ごとに指数を一つ出してもらってやれば、私はかなりに弾力的なものになると思う。弾力的なものになるということは、かなりにお金も出るということにあるいはあるときは通ずるかもしれません。しかし今公務員の諸君が不平たらたら言って、民間との問題あるいは五現業との対照の問題等は、皆さんの方で年間を通じて指数をお作りになった場合には、私はかなりにその欠点が除去されるのではないかというふうに思っております。この点は、総裁もおいでになるし、給与担当のあなたもおいでになるのだから、あとでまた私たちは公務員法の改正等で議論する余地があると思いますので、一つ案を出しておきますから、研究していただきたいということでございます。
それから政府側にお聞きいたします。それは法案に関する点でございますが、第二条の六号、「給与を決定する諸条件の」という諸条件がまだ御説明を承っておりませんので、給与を決定する諸条件の内容を一つこの際解明していただきたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/8
-
009・佐藤朝生
○佐藤(朝)政府委員 ただいま御質問の第二条第六号の「給与を決定する諸条件」と申しますのは、民間給与でございますとか、生活費でありますとか、物価でありますとか、そういうものをさすものと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/9
-
010・石山權作
○石山委員 この「諸条件」の中には、一般観念的な給与に対する諸条件で、この内容としては法律の適用などは含んでいないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/10
-
011・佐藤朝生
○佐藤(朝)政府委員 この条文は暫定手当の関係の条文でございますので、暫定手当の給与を決定する諸条件ということでございまして、それが全国各地の生活費でありますとか、物価でありますとか、そういうものをさすものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/11
-
012・石山權作
○石山委員 今度の法律によりますと、暫定手当の件、それから寒冷地薪炭手当の件も、人事院に付託になるようですが、それは間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/12
-
013・佐藤朝生
○佐藤(朝)政府委員 ただいまの御質問でございますが、ただいま考えております案ではそれに間違いございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/13
-
014・石山權作
○石山委員 これは在来の給与のごとく、暫定手当あるいは寒冷地薪炭手当も、人事院の勧告をば尊重するという建前はくずれないわけでございますか。これは特別手当だから私特に申し上げるのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/14
-
015・佐藤朝生
○佐藤(朝)政府委員 今おっしゃる通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/15
-
016・石山權作
○石山委員 特に暫定手当などは全国的な問題、あるいは寒冷地薪炭手当など、これもかなりな広範囲にわたった特殊手当でございますが、これに関して、政府としては特別の在来の行きがかりと、あるいは何か指示をなさってこの問題をばゆだねるのか、それともこの問題に関してはほんとうの意味の白紙委任状という形で人事院におまかせになっておるかどうか、その点も一つお知らせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/16
-
017・佐藤朝生
○佐藤(朝)政府委員 人事院は独立機関でございますので、人事院が人事院におきまして適当と思われる調査をして勧告されることを期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/17
-
018・石山權作
○石山委員 これは政府側にも人事院の方にも聞いていただきたいと思いますが、給与担当の方は副総理でございますから、特に私は聞いていただきたいと思います。私先ほど申し上げましたように、政府としてはかなり思い切ったような形で財布のひもをゆるめたかもしれませんけれども、あまり感謝感激しておらないのだ、皆さんそうおっしゃっている。それは高給の方の方々も、低い給料の方々もそうおっしゃっている。これはかなりな欠点があるからそういうふうになるのだと思うのです。その欠点をやはり是正されなければならぬと思うのですが、その中心になるのは給料が安いのではないかと思われる節でございます。やはり官吏としてその誇りを持って仕事に従事するには、どうも義務のみが多くして給料が少ない、報われるところが少ないというところに私は原因していると思う。こういう点は民間との不均衡、現在も起こりつつある五現業等の不均衡、こういうこと等も含めあわせて早急に是正しなければならないのではないか。先日も私新聞などを引用して申し上げたのですが、せっかく優秀な人たちが公務員になろうとして試験を受けても、実際就職なさる方は三分の一程度で、あとの三分の二くらいどっかに宿がえをなさったということが、去年からことしの春にかけて現われた現象です。ですからやはり国家としても優秀な人たちをば国民の奉仕者として養成するためには、かなりの努力がこの際必要なのではないか、こういうように意見を申し上げたいのですが、私の方は意見を申し上げたい方に回りますので、せっかく政府や人事院が苦労なさったかもしれませんけれども、今度の給与案に対しては全面的に賛成するということはできません。一つ野党のわれわれに対しても、政府ではやったのだというふうなところを、あるいは人事院はほんとうに誠心誠意、熱意をこめて勧告をしたというふうな姿を一日も早く見せていただくように要望いたしまして、私は質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/18
-
019・福田一
○福田委員長 ほかに御質疑はございませんか。——御質疑がなければ、これにて三案についての質疑はいずれも終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/19
-
020・福田一
○福田委員長 三案に対し、高橋禎一君外十九名より自由民主党及び民主社会党共同提案にかかる修正案がそれぞれ提出されております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/20
-
021・福田一
○福田委員長 この際各修正案について、提出者よりその趣旨の説明を求めます。高橋禎一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/21
-
022・高橋禎一
○高橋(禎)委員 ただいま議題となっております給与関係三法案につきまして、修正案を提出いたします。
案文はお手元にお配りいたしてございますので、その内容を一々朗読することはこの際省略させていただきます。
各修正案の要旨は、いずれも施行期日にかかわるものでありまして、給与関係三法案の審議が他の法案の審議との関係上おくれまして、政府原案の施行期日である昭和三十五年四月一日はすでに経過いたしております関係から、これを公布の日に改めたものでありまして、俸給表の改正等につきましては四月一日からこれを適用することといたすほか、所要の経過規定を置いたものでございます。何とぞ御賛成をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/22
-
023・福田一
○福田委員長 各修正案について御質疑はありませんか。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/23
-
024・福田一
○福田委員長 御質問もないようでありますから、これより三法案及び各修正案を一括して討論に入ります。
別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
まず特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案に対する修正案を一括して採決いたします。各修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/24
-
025・福田一
○福田委員長 起立多数。よって各修正案はいずれも可決いたしました。
次に、ただいまの各修正部分を除く各原案を一括して採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
[賛成者起立]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/25
-
026・福田一
○福田委員長 起立多数。よって各修正部分を除く各原案はいずれも可決いたしました。これにて特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案は、いずれも修正議決いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/26
-
027・福田一
○福田委員長 一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案に関し、石山權作君外二十七名より三党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。この際本動議について提出者よりその趣旨の説明を求めます。石山權作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/27
-
028・石山權作
○石山委員 附帯決議案を出したいのでありますが、この案文は自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党の共同決議案でございます。決議案をまず朗読いたします。
一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議
一、公務員給与と民間給与との格差が相当率に達している現状にかんがみ政府は、速やかにこれが解消のため公務員給与の改訂措置を講ずべきである。
一、昭和三十二年四月一日以降の法律改正による昇給期間の改正により、不均衡を生じた給与については、人事院において、これを調整する措置を採ることを考慮すべきである。
右決議する。
これは簡単に御説明申し上げますと、われわれは、この法律案の質疑討論の中にもありましたように、現実に計数的にも大へんに民間と公務員の差ができてしまった。これを一日も早く是正するように工夫なさるのが政府当局の任務なのではないか。この格差をば至急是正するように勧告をなさるのが、人事院の責任なのではないかというふうに考えますので、当委員会は一致いたしまして右の附帯決議をば上程する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/28
-
029・福田一
○福田委員長 本動議について採決いたします。本動議を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/29
-
030・福田一
○福田委員長 御異議なしと認めます、よって本動議は可決いたしました。
なお、ただいま議決いたしました三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/30
-
031・福田一
○福田委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。
ただいまの附帯決議について、益谷副総理より、閣議においてその趣旨を報告する旨の発言がありましたから、御報告いたしておきます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/31
-
032・福田一
○福田委員長 次に自治庁設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引き続き質疑を許します。北山愛郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/32
-
033・北山愛郎
○北山委員 私は自治庁設置法の改正案につきまして、石原自治庁長官並びに政府委員に対しまして若干質問をいたしたいと思います。
〔委員長退席、岡崎委員長代理着
席〕
今度の自治省設置についての原則的な問題につきましては、ほかの委員からもいろいろと質疑があったと思うのであります。そこでこの自治省設置についての政治的な基本的なねらいという点については、またあらためて、おそらくは総理大臣からその所信を聞く機会があろうかと思うのでありますが、私はもっぱらこの自治省に昇格をするという問題に関連をした、今までの政府の地方自治に対するいろいろな行財政面におけるやり方についてお伺いをしたいのであります。
私はどうしても今回の自治省の設置ということを考えるときには、やはり旧内務省への復活というような感じを抱かざるを得ないわけであります。これはただもとの内務省の亡霊がまだわれわれの頭の中にあるというだけではなくて、現在までの保守党政府のこの戦後の長い間のやり方を見ますると、やはり次第に中央集権の方向に地方行財政の関係を持っていっておる、一貫しておる、こういう点は否定できないと思うのであります。むしろ占領軍が統治をしておった時代におきましては、日本の民主主義化のためのいろいろな改革が進められましたが、昭和二十六年にいわゆるリッジウエイの声明が出て、そうして政令諮問審議会が作られて、そうして占領政策の是正というようなわけで、昭和二十七年ごろから急角度に戦前の姿に逆戻りをしようというような改革が各方面で行なわれた。特に地方自治の関係においては、昭和二十七年には地方自治法の改正があって、そして東京都の特別区の区長が任命制になってしまう。公選が廃止になる。あるいは三十一年には自治法の大改正でもって、府県の性格を改める。その他地方団体に対する政府の監督権といいますか、干渉の権限を拡大しておる。また警察についても、特に昭和二十九年には例の乱闘国会の原因を作った大改正が行なわれて、そうして自治体警察という名前は残っても、これは府県の警察というものが国家警察的な性格を帯びてきておる。また教育についても昭和三十一年地方教育行政の組織法がしかれて、そうして文部大臣が地方教育というものを、その実権を握るに至った。こういうようなことを考え、また昭和三十年には財政面においていわゆる地財再建法がしかれて、現在多数の地方公共団体が自治庁の相当強い干渉のもとに置かれておるというような、この一連の、特に昭和二十七年ごろからの一貫した政府の方針、自治庁の方針というものは、もう中央集権化の方向にいく。地方自治の拡大じゃなくて、地方自治を国家の意思のもとに統制していこうというような方向が明らかに見られるわけなんです。私はこの自治省の設置につきましても、そういう背景の中で行なわれる改革であるからこそ、私どもは非常な危険を感ずるわけです。ただ戦前の内務省がわれわれの頭の中に残っているということだけではなくて、現実にこの数年間の政府の方針というものは中央集権化の道をたどっておる。その中で自治庁が自治省に昇格するというのであるから、そこに今度の機構改革の危険な意味を感ぜざるを得ないわけなんです。そういう点について自治庁の長官はどのようにお考えになっておるか、中央集権化の傾向についてどう思うか、今後どうするつもりか、こういう点をまずお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/33
-
034・石原幹市郎
○石原国務大臣 ただいま北山委員からいろいろ戦後の行政なり法制の変化から言われたのでございますが、しかし私どもの考えておりまするところは、地方自治は御承知のように憲法に基づきまして、地方自治の本旨に基づいていろいろな諸制度が立案され、企画され、運営されておるものでございまして、ただいまいろいろ例をおあげになりましたが、この財政再建整備の問題にいたしましても、戦後の混乱からいろいろ地方財政が非常な窮乏に立ったのでありまして、そういう見地から再建整備法というものができて、そういった範囲内においては相当中央からの指示も受けるのでございますが、しかし再建整備を受けるかどうかということは、これは地方団体が自主的に決定していくのでございまして、受けるとなればいろいろ指示を受けるという建前になっております。地方財政の現状等からやむを得なかったことと思うのであります。しかし私どもの今後の考え方としましては、たびたび申し上げておりまするように、地方の自治を確立するには、やはり財政の裏づけも考えなければいけないと思っておるのでございまして、地方制度調査会あるいは税制調査会等におきましても、事務の分配並びに税財源のあんばいというようなことについても根本的な検討を願いまして、地方が国にそう従属しなくてもいろいろの財源も持ち、活発なる活動ができるような方向にしていきたい、こういう気持でいろいろやっておるのでございます。今回の自治省に昇格するという考え方につきましても、これも根本観念はあくまでも地方自治の本旨に沿うて、それを伸ばしていって、しかもまた中央と地方自治との間のいろいろ調整すべき問題等についても、自治省というものが間に入って、そこらの調整がもっと円滑に敏速に強力にやれるようにしよう、こういう趣旨からただ機構、組織の上の問題で考えられておることでございまして、地方団体のいわゆる知事の制度というものも根本的に考え方が変わっておりまするし、警察につきましても国家公安委員会というものがこれを管理いたしまして、昔のような観念ではございません。先ほど例にあげられました国家警察と自治体警察の問題は、一時そういう形をとりましたが、警察本来の仕事の上から考えてみまして非常に弊害が出たということで、ああいうふうに一本の警察に統合されたのでございます。中央集権化の方向に進んでおるという面のみの例をあげていろいろ論ぜられましたが、私どもの考えは今あくまで自治をもっと強力に伸張せしめたい、そのために総理府の外局でなく、独立の一省をもってこれらの仕事を推進したい、こういう意味でやっておるのでございまして、考え方におきましては、全く今言われたような方向でなく、自治を伸ばしていこうということで進んでおるということを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/34
-
035・北山愛郎
○北山委員 しかし現実は今の長官の話とは逆に進んできておる。今日の地方自治体、県でも市町村でもまじめにその自治体の行政をやっている人は、市長でもあるいは議員でも、制度の上から税法の上からあるいは財政上の点から各方面からがんじがらめになって、その団体の自主性、自由裁量の余地がほとんどないのだというような嘆声を漏らしておる。ある県会議員は、もう県会議員なんかいやになった、こういうふうなことを言っておるのです。明らかに地方自治の本旨を実現するということは、やはり地方自治体の自主性を重んずるということでなければならぬと思うのです。地方の問題は地方住民が参画をして、これを自主的に決定をする、そういう範囲をできるだけ拡大をするということが、私は地方自治の最大の要件だと思うのですが、さっき私が申し上げたような傾向というものは、そうではなくて、やはり国の指示権なり指導なり監督なりを強めるということなのです。自治庁の方の頭から見た地方自治の伸張ということと、実際ほんとうのあるべき地方自治の本旨というものは、食い違っておるのじゃないかと私は思うのです。従ってたとえば制度の改革にしても、従来、昭和二十六年の例の神戸委員会の地方事務の再配分の勧告があります。こういうものは全然自治庁としては顧みない。問題にしない。いまだに国、府県、市町村の事務再配分の問題が残っておる。そうして地方制度調査会は何を勧告したかというと、区域の問題、いわゆる府県を廃止をして地方制、道州制を作るという区域の問題、あるいは人事関係、権限の問題を議論しておる。事務や財源の配分ということが最も大事であるのに、そういうことはさておいて、そうでないような集権化の方向へ進んでいるということは、長官がいかにおっしゃっても否定することはできないと思う。そこで私は、今地方自治体、地方行政の中にある具体的な問題として、地方自治を少しでも拡大をするといういろいろな問題があると思うのですが、一々実例について見解を承りたいと思うのです。
警察のお話が出ましたが、警察の問題の中で、いろいろ制度上の問題はありますけれども、庁県警察は自治体の警察ですから、府県の予算を取っていく、これがあたりまえです。ですから府県の固有財源と補助金でまかなわなければならぬはずなんです。ところが府県の警察が使っておるもう一つの金として、いわゆる警察法三十七条の府県の警察費の一部が国庫支弁金として直接警察庁から府県の本部長に渡って、府県の会計経理を通じないで使われておる。これが何十億かあるはずなんです。この問題はすでに地方行政委員会でも数年前に問題にされて、委員会の決議でもってきまっておるのです。こういうものは廃止すべきである、補助金の方に変えるべきであるという決議までできておるはずなんです。自治庁長官は公安委員長でもあるのですが、そういう制度改革についてはどういうふうに考えるか、承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/35
-
036・石原幹市郎
○石原国務大臣 今北山委員の言われましたのは、人件費のうちの若干のものと、それから警備費関係のある程度のものに、直接になっているものがあると思うのであります。しかし毎年の地方財政計画でごらん願えば、若干ずつではございますが単位費用等も増額いたしまして、地方財政の持つ警察費の役割等もだんだんウエートを増すように、私どもも努力をいたしておる次第でございます。
〔岡崎委員長代理退席、高橋(禎)
委員長代理着席〕
それで先ほどもお答え申し上げたのでありますが、何だか地方自治がやや中央集権的に、実態において逆行しておりますように見えまする部分は、これは財政面からであろうと思うのであります。私もこの点はある程度感じておる面でございますが、これは何といたしましても地方にもっと財源を出さなければならぬ。ことに問題なのは、後進地域といいまするか、貧弱団体であろうと思います。今の制度からいきますると、何としてもほとんど自主独立ができないような弱小団体までできておるという形でございますので、今後真に地方自治を伸張していきまするためには、先ほど言われました事務の分配と税財源の配分、さらにもう一歩進みまして、市町村については相当の統廃合が行なわれまして、ある程度地域団体としての実力を持つような形になってきましたが、府県の段階におきましてはまだ弱小県が相当多いと思います。そういうところは結局国の財政にたよらざるを得ないという形になりますので、今後の問題としては、そういう後進地域、弱小地域に財源がなるべく多く行くような機構を作り上げるということ、それからまたそういう地域もなるべく広域に、強力な地域団体になり得るような方向に指導していかなければならないのではないか、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/36
-
037・北山愛郎
○北山委員 私の聞いたことを長官御存じないので、聞いたこととは全然別個の御答弁をなさっていらっしゃる。私の聞いているのは、地方自治の侵害になっておるような財政制度が警察費についてあるのだ、府県の自治体の警察の経費の一部に、府県の財政を通じないで直接警察庁から本部長に行っておる金が何十億かあるのですよ。しかもそれを国の予算の方で、警察庁の予算で見ると、どこにそういうものがあるかわからない。どの程度のものが府県警察の国庫支弁金として使われるかということは、国の予算を見てもわからない。地方自治体の方も予算を組まないから、知事も知らなければ出納長も知らない。そういう金が使われているのです。そういう制度はけしからぬじゃないかというのです。たとえばきのうのデモのような金は、警視庁の予算ではあるいは一部を出すかもしれませんが、いわゆる公安犯罪というか、警備の金、あるいは特殊犯罪の捜査費というようなものは、警察庁から本部長に渡っている。警視総監に渡っているのですよ。それを東京都の議会でも知事も知らないわけなんです。そういう経費があっていいかどうかということが、ずっと前の地方行政委員会で問題になってこれは改める、あまり適当でないから改めるのだということの決議がなされたはずなんです。警察は警察庁の仕事じゃないのです。自治体の警察なんですから、自治体の仕事なんです。府県の仕事なんです。ですから、自治庁は全然関係がないとは言えないはずなんです。そういう制度を改めることに一体どういう努力をしたのか、私は聞きたいのです。そういうことが私は地方自治の本旨を実現するゆえんだと思う。具体的な問題で私は聞いているのです。ほかの政府委員でもいいからお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/37
-
038・奧野誠亮
○奧野政府委員 先年北山委員がこの問題について御指摘になったことを承知いたしておるわけであります。また事実国費支弁にかかるものと県費支弁にかかるものと、総合的にながめながら運営をしていかなければならないという重要な問題になろうかと思います。ただ現行の警察法におきましては、先ほど大臣が指摘しましたような若干の経費については国庫で支弁する、こういう建前をとっておるわけでございます。国庫で支弁する方式にいたしませんで、全部都道府県で支弁して、それに対しまして国が全部なり一部なりを負担するという建前に変えますならば、おっしゃるような運用が可能になろうかと思うのであります。しかしながらまた当時警察庁が強く主張しておりましたような事情もあったりいたしまして、現在なお警察法は今申し上げましたような規定のままになっておるわけでございます。警察がある程度弾力ある運用をそれぞれの出先において強力にやっていこうといたしますならば、国費支弁のままの方が都合がよろしいかと思います。しかしながらまた都道府県の財政なりあるいは都道府県自体の総合的な運用を考えます場合には、むしろ一括して予算化した方が都合がよろしいではないか、こういう問題になろうかと思うのであります。なお検討しながらも結論を得ないで今日に至っておるわけでございまして、将来なおその問題につきましては警察庁とも一そう話し合いをいたして参りたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/38
-
039・北山愛郎
○北山委員 とにかく府県警察は地方自治体警察と言っているのです。それを警視正以上を国家公務員にして、人事の面で押えている。それから金の面でそういう機密費的な金を地方に配分をして、府県の自治体がさっぱり知らないような金を府県の本部長が警察で使っているのです。ですから、これがいわゆる機密費的な使い方をされるおそれが非常にあるのです。いつかの大阪でのスパイ活動の経費がどこから出たかというと、この金が流れて行っている。そういうふうに使われている。だから少なくとも府県の警察が自治体の警察である以上はその経費は補助金の形ででも国から出すのはそれはけっこうですが、直接に国から人事系統を通じて流れていくというようなことはけしからぬ話だと思う。公安委員長である石原大臣もそのことをよく調べていただきたいのです。こういう問題をどんどん解決してもらわなればいかぬと私は思います。
もう一つ具体的な点を申し上げますが、確かに大臣の言われる通りに今日の地方団体が自主性がないというのは、財政面からくる点が非常に大きいのです。税法の方は税法できまってしまっておるのですから、問題は起債の方です。私は起債の自由化というものを一つ考えてもらえぬかと思います。起債は補助金と同じように一々の事業について査定をして、そして許可をするという形をとっておる。これではその団体が事業の必要順位によって仕事をやろうと思っても、どの事業が起債の許可になるかどうかわからぬですから、案外必要でない仕事を先にやってみたりして、緩急の順序というものに従ってその団体が自主的にそれを決定することができないというのが、起債の面でもあるわけです。私は起債についても、自治法の本旨から言えば地方団体というのは本来は自由に起債ができるわけなんですが、それを当分の間制限をしておる。この二百五十条で、地方自治体が起債をする場合には当分の間自治庁長官あるいは知事の許可を得なければならぬ、こう書いてある。その当分の間がいつまでも続いておる。これは暫定的な規定なんです。一体いつまで当分の間なのか、どういう条件が整えば起債の自由化ができるのか、そういうことを一つ考えを聞きたいのです。いつまでも当分の間を続けていって、いつになったらその自由化ができるか、その原則ですね。二百二十六条の、地方の起債が自由にできる、自主的起債ができるというほんとうの姿に戻れるかどうか、これを聞きたいのです。このごろ自由化々々々ということを言うから、私は起債の自由化を一つやってもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/39
-
040・奧野誠亮
○奧野政府委員 率直に当時の法律改正の経過を先に申し上げておきたいと思います。中央政府が地方団体に持っておりますいろいろな許可認可の権限、これを総司令部が日本を管理いたしておりました時代におきまして、全部はずしてしまえ、そういう要求を特に民生局を中心にして持ってこられたわけです。ところが同じ総司令部の中におきましても経済科学局の方では、たとえば今御指摘になりました起債の許可の問題を、これを自由にしてしまうと、そうでなくともインフレーションが高進している際に、どんどん借金を目当てに仕事をやっていくということになれば、インフレーションの高進に拍車をかけるのではないか、日本の経済の現状において、地方団体が自由に起債をやれるというのはまっぴらだ、こういうような強い反対があったわけであります。両方の要求から妥協としてできましたのが、起債は自由だ、しかし当分の間は許可が要るのだ、こういう建前になったわけであります。どういうような方向が地方自治の健全な発展に一番好ましいかという点につきましては、いろいろな考え方があろうかと思います。しかし基本的には起債に仰ぎまする資金につきましても、低利の安定した資金を国が調達をしていく、用意をしていくということは、きわめて肝要なことであろうと思うのであります。現在御承知のように資金運用部の資金でありますとか、簡易保険、郵便年金関係の資金でありますとか、あるいは公営企業金融公庫の資金でありますとか、いろいろな形において資金の配慮を国として行なっておるわけでありまして、これをどのように各地方団体に配分していくかということになりますと、何かやはり許可であるとか割当であるとかということが必要ではなかろうかと思うのであります。またそういうような仕事を通じまして、地方団体の資金の需要額総量がわかって参るわけでございますので、国といたしましてもでき得る限りそれらの要望にこたえ得るように努力をしていかなければならない。許可の権限を持っているかわりに、反面それらを調達しなければならない責務を負わされている、こういう格好になっているのではないかと思います。ただそういうようなところから、地方債計画があっても、ワクを越えてしまうから必要な許可さえもできない。これは場合によっては地方自治の運営を不必要に拘束してしまうという弊になりがちでございます。そういうようなところから、私たちは地方債計画を立てながら、国全体として地方団体の事業分量と資金の調達等の計画を立てていくという必要は、今日においても将来においてもなおあろうかと思うのであります。ただそれがためにことさら必要なものを抑圧してしまうことになってはいけませんので、弾力のある地方債の運用をしていきたい。言いかえればワクが一ぱいになってしまったから、地方団体としては別途に資金を自分で調達できるのにそれさえも認めない、これは穏当でございませんので、最近そういうようなもので特にその団体の財政上支障がなければ、また金融界に不測の混乱を与えるわけでもないようなものにつきましては、どんどん許可をするというような形で運用をいたして参ってきておるわけであります。でありますから法律の表現の許可という言葉がいいか悪いか、いろいろな議論はございましょうけれども、政府が低利の安定した地方債資金を潤沢に調達をする。なおかつそれで地方団体の需要をまかなえないものにつきましては、特別な支障のない限り許可を行なっていくというような今の方向に努力を続けていくことが、むしろ地方自治の発展の上においても適当ではなかろうか、こういう考え方を持っておるわけであります なお御指摘のありました点につきましては、将来もどういう方向が最もよろしいか、地方自治の伸張という見地から一そう工夫検討を加えて参りたい、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/40
-
041・北山愛郎
○北山委員 この規定はおそらく一般的な金融統制がやかましかったころの規定だと思うのです。ところがそれ以外の産業面ではだんだんそういう統制がゆるんできて、そして大産業は特に長期資金をどんどん使っておる。そういう中で地方自治体の仕事である限り、こういう昔ながらの規定で、当分の間ということで続けられておるという事態は、私はおかしいと思うのです。インフレーションを議論するときに、何も地方自治体だけがインフレーションの原因をなすのじゃないわけですから、従って工場とかそういうものだけがどんどん建って、そして地方自治体の行政がおくれていくというようなアンバランスがそこに起こってくるのじゃないか。そういう点も一つ考慮をいただきたいと同時に、それはそれとして、私は個々の許可、それが問題だと思う。地方債は今年は全体としてこれくらいだという一つの大きなワクの中で、それぞれの団体の自主性を尊重する方式というものはあるのじゃなかろうか。一つの算定基準によって特定の市なり県なりのその年度における起債能力といいますか、起債限度に一つの標準を立てて、一千万円なら一千万円のワクの中で、どういう事業でもその団体が自主的に決定できてそれを受け入れるというような、団体の自主性を尊重するような方式があると思うのです。それを今のように一件一件について許可をする。水道の起債の許可をもらうためどれだけ苦労するか、厚生省へ行く、あるいは自治庁へ行く、あるいは現地の財務部へ行く、府県へ行く、あるいは大蔵省、国会まで来るというような工合なんですね。二百万円や三百万円の金を借りるのに、一々国会議員を同道して役所へ陳情しなければならないというのが、現在の起債の実情なんです。自治法でいえばはっきりと自治体は自主的に起債ができると原則は書いてある。当分の間は制限をされているから、そういう事態が起こるわけです。それをその年度における起債の能力の基準の中で何にやるかということを、その団体の自主性を尊重して、そしてその自主性に従って承認を与えていくということにすれば、私はずっとよくなると思う。しかもこの起債を、現在のように一々一件々々の許可制にしているために、赤字の原因を作っているのです。というのは、たとえば五百万円かかる事業について起債申請をする。そうすると三百万しか認められない。あとの二百万は一般財源から持ち出しをして事業をやっている。そういうことをやっておるから、補助金についても同じですが、起債についても赤字の原因を作る。せっかく三百万円の起債を受けるのだから事業をやりたい、あとの部分は一般財源から出すのだ、こういう無理を各団体がやっているから、結局大きな赤字原因を作って、無理な財政運営になってくる、こういうことをよく考えて、しかも地方自治法にちゃんと原則は書いてあるのですから、いつまでも当分の間ではないはずなんです。長官、どうでしょう。この点は根本的に検討してもらって、もちろん自治庁だけの問題ではなくて、これは政令でもって大蔵大臣と協議をすることになっていますから、事はなかなかめんどうだと思うのですけれども、その起債の自由化、これを一つやって、その面だけでも実現をすれば、どれくらい地方自治体が財政面において息がつけるという感じがするかわからない。特にこれは一般単独事業で今年度であれば百四十五億、それから準公営企業、それから公営企業、これが約八百億ないし九百億、これらの単独事業なり公営事業、こういう部分については私は可能じゃないかと思うのです。こういう点を一つお考えを願えるかどうか、お考えを聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/41
-
042・石原幹市郎
○石原国務大臣 この起債の今までの経過につきましては、先ほど財政局長からお答えした通りのようでございます。北山委員の言われましたような感じは、私もこの立場につくまでは従来そういうことをやはり考えておったのでございまして、一ぺんに北山委員の言われるような状態に行くことはなかなか困難かと思いますが、方向としては、私はやはり段階的にワクを府県に与えまして、市町村の事情をよく知っておる府県が、そのワクの中でいろいろ按分していただくというような形をとってだんだん自主的な方向へ持っていくのがいいのじゃないかと思うのです。現に水道は厚生省なり何かになっておりますが、簡易水道の面になると、ワクを与えてその裁量はどこにどういう簡易水道をどのくらいのなにをするということの大本は府県できめていこう、単独事業なども、だんだん全体を通じてそういうふうに持っていきたい。・それから学校の教育施設の関係の起債なども、ワクを府県できめて、そのワク内でいろいろ按分をはかって参っておるのであります。こういうふうにだんだんそういう方向に持っていきまして、府県の段階でまかなわしめる府県は、さらに将来それを市町村の中でも自主的にいろいろなことを計画をさしていく、こういう方向に持っていったらどうかと考えておるものでございまして、一々小さな問題までも全部自治庁でこれを指図したり、指令をしたり、許認可をするという方向は、だんだん是正していかなければならぬのではないか、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/42
-
043・北山愛郎
○北山委員 今まででもそういうような問題を取り上げて、そして自治体の仕事のやりいいような状態にしてくれる自治庁であれば、自治庁がじたばたしなくてもほかの方から自治省にしてやろうかということにもなるわけです。今までやっているところを見ると、どうも地方団体というものは、何かほうっておけば悪いことでもするような悪者に考えて、道楽者のように考えて、その手足を縛るというのが、どうも官僚独善というか、中央の役所の弊害なんです。そして今申し上げたようなことは、熱心にやってくれない、ここに私は問題があると思う。ほかにも例がありますが。時間もございませんので、もう一つお伺いいたします。
それは最近の地方自治体というのは全く情けないのです。どこへ行っても頭が上がらない。このごろでは一般の民間の企業に対してすらも頭が上がらない。中央に行けば陳情で頭を下げる。住民にも頭を下げる。しかも大企業を誘致するということで、産業面にも頭が上がらないということになっている。各地においていわゆる工場誘致のいろいろ行き過ぎた悪例があるようであります。地方行政委員会などにおいても具体的な問題が取り上げられたと思うのですが、どうも今までの自治庁のやり方を見ていると、中央集権と同時に、地方自治体の貧富の較差がひどくなっているのをむしろ放置しておるのではないか、あるいは激しくするような方向へやっているのではないかと思うのです。工場誘致の問題もその一例でありますが、その前に起債政策についてちょっとお伺いしておきたいのです。
最近における起債の割合を見ますと、公営企業に重点が置かれてきております。三十五年度のものを見ますと、一般会計分が五百六十億、直轄事業が百六十億、準公営企業二百五億——準公営企業というのは港湾、簡易水道、屠畜場、下水道、宅地造成、ですからほとんど全部都市的な事業ですね。公営企業に至っては電気事業が百三十五億、水道事業が三百億、交通事業が百三億というようになって、一般補助事業というような普通の固有の地方自治体の仕事に伴うものは、わずかに百二十億ということで、去年に比べるとわずかに十五億しかふえていない。そうして準公営企業においては六十七億ふえている。公営企業については八十八億ふえている。準公営企業と公営企業の大部分は、これは都市の事業です。特に大きな都市の事業なんです。そういたしますと起債政策においては、一般の地方の自治体が、都市も農村も、その行政水準を上げるための起債政策というよりは、もう都市中心の起債政策である。これでは今の経済のいわゆる大企業二重構造という問題で、そうでなくても大きな都市がどんどん伸びていく、その較差がひどくなっていく上に、こういう政策をとったのでは、いよいよもって文化水準、行政水準の較差がひどくなるのではないか、これはいかぬと私は思うのです。行き過ぎだと思うのです。いわゆるペイする事業だけに金を回すという考え方で、都市と農村の文化的な較差をひどくする。従って農村の人口が大都市に集中するのはあたりまえなんです。こういう点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/43
-
044・石原幹市郎
○石原国務大臣 今例にあげられましたけれども、非常にワクがふえておりまするのは、公営企業に関する面のものが非常にふえておりまするけれども、しかしこれは人口の配置の状態とかいうことで、たくさん人のおるところには、それだけいろいろのサービス施設、文化施設をやっていかなければならぬのでありますから、ある程度これはやむを得ないと思うのであります。しかし私どもも農村その他に対する施設を、決してなおざりにしているわけではないのでございまして、そのいい例は簡易水道などであろうと思うのであります。これは相当ワクもふやしておりまするし、年々ふえてきて、県によって違うと思いますけれども、相当農村地帯にまで普及していると思います。それから学校に関する施設起債等は、これは何も都市に偏重しているのではないのでございまして、むしろ老朽校舎の改築とかそういう問題からいえば、農村部面にも非常にこういう金は参っていると思うのでございます。ただ起債のワクを私どもは非常にふやしたいのでありますが、地方の税財源といっても、なかなか論議をしましてもそう簡単に確保できませんので、とりあえず起債をふやしていくにはなるべくペイをする事業でないと、非常に大きな債務を将来に残すということになりますので、自然ペイもできる事業、しかも人口のたくさんおる、そういう施設の事業へということで、比較的公営企業の面がふえておるのでございますが、決して農村地帯なり、そういうところをないがしろにしておる、こういう感じは少なくとも私どもは毛頭持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/44
-
045・北山愛郎
○北山委員 これは数字が示しておるのですよ。今の簡易水道、確かに前よりは簡易水道の問題も取り上げられておる。しかし総体からいえばたった二十七億ですよ。あとのものはほとんど大部分は都市的なものなんです。しかも一般単独の起債がちっともふえない、たった八十億ですか……。ですからそういう農村だとか町村においてやれるような仕事が一般単独に入ってくるのです。そういうものをふやさないで、どんどん公営企業、準公営企業債をふやしておるという方向は、これは都市偏重と言われても弁解の余地はないではないか。今農村のことを言われましたが、たとえば住宅にしろ、都市にはどんどんアパートができるでしょう。一体農村の住宅政策はどう考えておるのか、農村には不良住宅がたくさんあって、それの改造について農民自体が非常に悩んでおるのです。改造の資金くらいを起債したらどうですか。そういうことをほとんどやっておらない。そういうふうに農村の水準を悪くしておるから、いよいよもって町に出てくるわけだ。町の方がりっぱなアパートがあるし、交通機関もあるしというふうなわけです。そういうむしろ都市の人口集中という傾向をひどくしているような政策に見える。そういう点を考えていただきたいと思います。
それから時間もありませんが、先ほどの工場誘致の問題ですね。これも私は、自治庁はほうっておけないと思うのです。もう五、六年前ですけれども、この工場誘致の問題について自治庁の当時の財政部長ですか税務部長かに質問したときに、工場誘致の産業に対して事業税なり固定資産税を減免するということは、いわゆる地方税法の第六条に言う公益上の必要、そういうものに該当しない。いわゆる違法の疑いがあるというような見解を当時の後藤さんが述べられた。その後、税の減免という方式についてはやめるように自治庁は指導してきたはずです。現状は一体どうなっておるか、ここをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/45
-
046・奧野誠亮
○奧野政府委員 先年御指摘のような問題から、地方団体に対しまして、はたして公益上必要であるかどうかということもあるわけだから、ただ税金をそのまま免除するようなやり方は避けて、むしろ必要なものについては歳出予算に計上して十分な審議を尽くした上で、与えるべき援助は与えるというようなやり方をすべきだというようなことを指摘したことがございます。また昨年さらに企業誘致の結果、多大の支出をした末、財政が困難になっているというような団体も見受けられますので、そういうようなことを基礎にして、企業誘致について地方団体が援助を与える場合の注意を喚起したことがございます。企業誘致に地方団体が努力することはけっこうなわけでございますけれども、その結果非常な財政負担を必要以上にこうむってしまう、これはやはり避けなければならないと思います。また地方団体が競争する結果、企業に乗ぜられているというようなところもあるようでございます。企業誘致の結果、関連産業が発達し、非常にその地方が発展してきたというようなところもございますし、また企業誘致をねらって、莫大な土地を提供した、その支出が非常な財政圧迫になっているにかかわらず、企業が案外伸びてこない、関連産業も発展してこない。その結果赤字財政に陥ってしまった。両様の面があるわけでございます。私たちはあくまでも企業誘致について地方団体のあり方としては、ただ税金を免除することではなくて、地方団体としては、企業が発展していくような立地条件を整備していかなければならないのだ。そういう方向に地方団体も努力を向けまして、ただ税金をまける、企業に乗ぜられるというようなことのないように努力を払っておるわけでございます。非常にいい姿において企業誘致が行なわれておるところと、赤字財政に転落する原因を作っておるところと両様あるようでございます。一般的には企業誘致のために払う犠牲が、私たちから見ましても地方団体はいかにも過大である、こういう感じを私は強く持っておるのでございまして、この点につきましては、将来も今申し上げましたような方向で指導助言に当たって参りたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/46
-
047・北山愛郎
○北山委員 その政策というよりも、私は法律の解釈の問題もあると思うのです。地方税法第六条のいわゆる公益上その他の事由により、それは適当でないというような前の自治庁の答弁があったわけなんですが、しかし税を減免することが工合が悪いなら、いわゆる補助金をやる、奨励金をやるということがいいとは言えないのじゃないか。これも地方自治法の第二百何条だったかにあるわけですが、公益上の必要であれば寄付金あるいは補助を出すことができると書いてある。その公益上とは何だ、こういう営利企業に土地を提供したり、あるいは奨励金を出したり——しかも大企業ですよ。大企業に対してそういう奨励金を出すということが一体公益上の必要かどうか。これが公益なら何でもかんでも公益ですよ。何で百姓、農業に対して公益でないことがあるか。おふろ屋さんだって何だってみんな公益ですよ。公益という観念はもう少し厳格に解さなければ——民法の法人だって、公益法人と営利法人とは別になっておるのだ。営利企業に補助金を出すことが公益であるというようなことは許されないと思う。国の方だって、国の財政なんか、法人に対しては財政援助は制限されておるわけなんですよ。そういう趣旨はやはり地方自治体でも同じだと思う。たしか前の町村制では、判例のようなものは長野さんもよく知っておると思うのですが、前の町村制当時に公益上の必要ということで営利会社に補助金を出すということが、違法であるという判例があるのですよ。一体その法律解釈はどうなんですか。そういうことをあいまいにして、ただ政策上の指導が適当であるとかないとかいって、そうして放置しておる、こういうやり方はいかぬのですよ。その法律解釈の問題はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/47
-
048・奧野誠亮
○奧野政府委員 一般的に私たちは、ただ企業がくる場合に税金をまけるという方向は穏当ではないと思うのであります。いろいろ関連産業もありますが、特別な企業をぜひ持っていきたい、持っていくについては、いろいろ努力を払う。そのことは即住民の福祉に寄与しているのだ、こういう場合も例外的にはあろうかと思いますが、一般的には私たちは穏当ではないと思うのでございまして、先ほども申しましたように、地方団体としては企業の発展のために、いろいろ立地条件を整備していかなければならない。そういう意味においては企業の誘致にあたりまして、道路をつけるとか、下水を整備するとか、そういうようなことで企業の立地をするような方法をはかることが、法の精神からいっても望ましいのだ、また住民の福祉にも尽くせるだろう、こういうような指導的な態度をとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/48
-
049・北山愛郎
○北山委員 長野さんは今その地方自治法の大家ですから、長野さんに聞いておきたいのだが、少なくとも公益上という言葉を自治法の中で使っておる。それから地方税法でも使っておる。それはやはり一定の意味があると思うのです。また通説によると、慈善だとか、宗教だとか、学芸だとか、そういうことが一応公益というように言われておるのだが、一体営利会社に補助金を出すということは公益なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/49
-
050・長野士郎
○長野説明員 お話のございましたように、かつて町村制のころでございましたか、確かに営利会社に金を出すことが必ずしも公益とは言えないというような行政解釈があったように記憶しております。ただその具体の場合の問題と事情の変化という問題もあるかと思うのでありますが、現在の工場誘致という問題になりますと、やはり工業用水を確保いたしましたり、土地造成をいたしましたり、道路を整備したり、港湾を整備したりいたしまして、いわゆる国土の総合開発といいますか、土地開発といいますか、そういうような産業立地条件を整備するという一つの開発計画の一環として行なっておるような場合におきまして、その企業の種類や性質によりましては、やはりある面では公益に該当するという場合もあろうかと思います。ですから、一般に営利会社に補助金を出すことが全部いかぬということで割り切ってしまえるかということになりますと、その点ではやはり公益に該当する場合もあるのではないかという気が実はいたすわけであります。ですから、問題によってよく考えていく必要があると思うわけでありますが、私どもが経験をいたしましたときは、工場誘致奨励金、補助金というものは努めて出すことを避けまして、むしろそれに付帯いたしますところの道路の整備でありますとか、港湾の浚渫でありますとかいう点で、産業立地条件を整備するという面に重点を置いてやっていくべきだというふうに考えておりますが、一律一体に企業に補助金、奨励金を出すことが全部違法なんだというふうには、事情によっては考えられないのではないか。もちろん全般的にそれが適法だというふうには私は言えないと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/50
-
051・北山愛郎
○北山委員 そういうふうな産業の地方分散というか、そういうことが公益ならば、国が政策としてやるべきことである。それをやらないで、個々の自治体が血まなこになって、どんなことをしても工場を持ってこよう、企業の方では一番条件のいいところに行ってやろうというので、あっちこっち競争させるような格好になっている。私はこの点、国と同じように地方自治体も一つの権威があっていい。また尊厳かなければならぬと思うのです。自治庁に来て陳情をして頭を下げることはいいけれども、民間の企業にまで頭を下げなければならぬということになれば、地方自治体の尊厳というものは私はないと思う。そういうような事態があちこちで起こっておる。一つの企業が町の実権を握ってしまっておる。頭が上がらないという事態があちこちに出てきておる。そういうことをほうっておくような自治庁ではとても自治省に昇格させられない。そういう点について、そう新しい問題ではないのですから、工場誘致という問題についての特別の調査機関を設けて実態を調査して、これを直すような方向をとるなり、あるいはこれは地方自治体の現状で放置することはできない、大きな工場の地方分散というものは、国土開発なり大きな見地からして国が計画的にやるべきである、国の責任でやるべきであるということで、政府が立案をしたらいいのです。それをしないというのは怠慢ですよ。そして、これは国土開発に関係があるから公益だというようなことを、ただ法律解釈でこじつけることは、これはもうなすべきことをなしていないということです。非常にはなはだしい実例があちこちにあると思うのです。私は去年ですか、秋田市に参ったのですが、石山さんのところです。ところがその秋田市は、一年に六千万円も奨励金をガス会社とか石油会社に出している。市から金をもらわなくてもやっていけるような大企業に、六千万円も奨励金を出さざるを得ないような条例になっている。町の中小企業が非常に困っておるときに、市の援助を仰がなくともやっていけるような大企業に、貧弱な地方の財政の中から、そういう莫大な援助をしなければならぬという事態を、一体ほうっておいていいのですか。長官、どう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/51
-
052・石原幹市郎
○石原国務大臣 北山委員の言われます点も私大体了承できるのですが、しかしあなたの御意見が全部ということにはちょっと私も同意しかねる。それは、そういうことは一切国の責任でやったらいいじゃないか、こう言われますが、やはり地方としては地方それなりに、何とか早く地方の開発、向上をはかりたいのだ。そういう盛り上がる意欲から、いろいろの企業がくるようなことを計画するという、この気持も私は当然だと思うし、あってもいいと思う。国としても、御指摘になりましたように、やはりもっと工場が分散するような——私どもは先年そういう意味で電力料金の地域差といいますか、発電地帯には電力料金を安くするとか、何か工場がもっと地方に分散するような大きな政策を打つべきではないか。あるいは工場立地に適当しておるような地域に対しては、国がその地方の土地整備をはかるとか、いろいろのことを一面やっていかなければならぬと思う。しかし地方側に一切国の施策を待っておれと言ったところで、それは地方、ことに後進地域ではそういうことを待ち切れないわけでありまして、後進地域もいろいろやる。それが若干行き過ぎておるのではないか、これが北山さんの指摘されたところでありまして、その点は私も同感であります。そこで、やはりそういう面を補う意味で、先ほどから出ておりますように、地方団体がもっと企業誘致なり工場誘致の立地条件を整備していくようないろいろな施策をやる。それをやりいいようにしてやる。そういう方途のもとに、私は、地方財政計画を立てる場合にも、やはりそういう意味の費用についての基準財政需要額といいますか、金ができるだけ取れるような仕組みを考えていく。あるいはまた今盛んに論議されております未開発後進地域の公共事業に対する国庫負担率等をふやして、道路をもっと早くどんどん整備するように、あるいは河川の総合開発、総合整備が行なわれるようにとか、こういう後進地域の公共事業に対する国の力の入れ方を、いろいろ効率を上げまして、そういう地域がもっと開発されていく、こういう施策を強力に打ち出すべきではないかということを、今自治庁が中心になって主張しておりますことは、御承知願えていると思うのでありまして、そういう意味でやはり両々相待たねばならぬと思いますが、しかし確かに北山委員の御指摘になりましたような弊害が、地方団体に生じておることもいなむことができませんので、そういう点につきましては十分注意をしまして、そうしてそういうことをしないで済むような施策を強力に打ち出すように、今後とも努力いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/52
-
053・北山愛郎
○北山委員 私の言うことは、要するに今の自治体をこじきのような状態に置かないでくれということなんです。やはり憲法にちゃんと、地方自治の本旨ということを書いてある以上は、中央に来れば陳情だ、中央に頭が上がらぬというような地方自治体の姿、しかももう現在では実際の内容は国の仕事の下請機関みたいなものですよ。そういう格好はどんどん片っ端から直すようにしてもらいたいということなんです。きょうはほんとうは消防のことを最後にお伺いしたいと思ったのですが、もう時間もだいぶ経過しておりますから、以上でもって一応消防の問題はあとでまた機会がありましたならばお伺いすることにして、きょうの質問は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/53
-
054・高橋禎一
○高橋(禎)委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時四十一分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404889X03419600428/54
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。