1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年二月十九日(金曜日)
午後一時四十五分開議
出席委員
委員長 小澤佐重喜君
理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君
理事 櫻内 義雄君 理事 椎熊 三郎君
理事 西村 力弥君 理事 松本 七郎君
理事 竹谷源太郎君
安倍晋太郎君 愛知 揆一君
秋田 大助君 池田正之輔君
石坂 繁君 鍛冶 良作君
鴨田 宗一君 小西 寅松君
田中 龍夫君 田中 正巳君
渡海元三郎君 床次 徳二君
野田 武夫君 服部 安司君
福家 俊一君 古井 喜實君
保科善四郎君 毛利 松平君
八木 一郎君 山下 春江君
飛鳥田一雄君 石橋 政嗣君
岡田 春夫君 黒田 寿男君
多賀谷真稔君 田中 稔男君
戸叶 里子君 中井徳次郎君
帆足 計君 穗積 七郎君
森島 守人君 横路 節雄君
受田 新吉君 大貫 大八君
堤 ツルヨ君
出席国務大臣
内閣総理大臣 岸 信介君
外 務 大 臣 藤山愛一郎君
出席政府委員
内閣官房長官 椎名悦三郎君
内閣官房副長官 松本 俊一君
法制局長官 林 修三君
外務政務次官 小林 絹治君
外務事務官
(大臣官房長) 内田 藤雄君
外務事務官
(条約局長) 高橋 通敏君
外務事務官
(情報文化局
長) 近藤 晋一君
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二月十九日
委員横路節雄君辞任につき、その補欠として多
賀谷真稔君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員多賀谷真稔君辞任につき、その補欠として
横路節雄君が議長の指名で委員に選任された。
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二月十九日
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
安全保障条約等の締結に伴う関係法令の整理に
関する法律案(内閣提出第六五号)
同月十六日
日米安全保障条約改定反対に関する請願外三件
(横路節雄君紹介)(第四三四号)
は本委員会に付託された。
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二月十九日
日米安全保障条約改定反対に関する陳情書
(第一四号)
同(第一五号)
同
(第一六号)
同
(第一七号)
同
(第一八号)
同
(第一九号)
同
(第二〇号)
同(第八一号)
同(第八二号)
同(第八三
号)
日米安全保障条約改定に関する陳情書
(第二一号)
同(第
八四号)
日米安全保障条約改定促進に関する陳情書
(第七九号)
同(第八〇号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
安全保障条約の締結について承認を求めるの件
(条約第一号)
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び
に日本国における合衆国軍隊の地位に関する協
定の締結について承認を求めるの件(条約第二
号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/0
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001・小澤佐重喜
○小澤委員長 これより会議を開きます。
この際、森島守人君、松本七郎君よりそれぞれ発言を求められておりますので順次これを許します。森島守人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/1
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002・森島守人
○森島委員 私は、従来から、条約に関する議案の提出のやり方、さらに広く申しますと、条約審議にあたりまして、国会が憲法上有する権限について疑義を持っておったのでございます。従来政府がとっておりましたやり方によりますと、私は憲法上における国会の権限が著しく侵犯されておったというふうに解釈しておるのでございます。私はこの点を主として御質問申したいと存じますが、その前に、一、二点御質問をいたし、条約案の責任者としての外務大臣、外務行政全般に関する最高責任者としての外務大臣の御答弁を承りたいと存ずるのでございます。
まず第一は、今日までこの重要な問題が国会の問題となりませなんだのは、一つには平和条約以来今日に至りますまでは、ベトナム賠償協定は別といたしましても、比較的に重要な内容を持った条約案が提出されなかったということが一つ、二つには、政府がこの点に関しまして統一ある見解を明らかにする機会をお持ちにならなかったからだと私は存じております。しかし、この点は私見をもっていたしますれば、野党と与党たるとを問わず、国会全体の問題として非常に重要な問題でございます。
右の基本的な質問に入ります前にお伺いしたい第一点は、政府においては、新安保関係の法律案三十一、二件を提出することに御用意になっておると承っておりますが、これは一体いつごろ御提出になるのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/2
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003・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 ただいまお話のありました国内法規の関係は、本日提案をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/3
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004・森島守人
○森島委員 この点につきましては、いずれ審議の仕方等につきまして委員長にもお伺いしたいのでございますが、時間の関係もございますので、時間的に余裕がありましたら、あとでお伺いしたいと存じております。
第二にお伺いしたいのは、外務省の従来の説明によりますと、協定といい、交換公文といっても、条約と同様な効力を持っておるというふうに承っております。政府が今度提案になったものは二つしかございません。いわゆる新安保条約の締結について承認を求めるの件、また、現行の行政協定にかわる協定の締結について承認を求めるの件、この二つに限られておるようでございます。しかし、本会議における藤山外相の説明中にも言及されておりますが、二つの交換公文がついております。この交換公文も御提案になる趣旨でございますか、念のため伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/4
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005・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 ただいまお話の条約と協定と、そのほかに交換公文等がある。それらは、国会の御承認を得るために、相互協力と安全保障条約第六条の実施に関する交換公文、それから吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文、相互防衛援助協定に関する交換公文、それと今の協定、それだけを裸出いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/5
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006・森島守人
○森島委員 次にお伺いしたいのは、アイゼンハワーと岸さんとの共同声明がございますが、これはいかがお取り計らいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/6
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007・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 これは共同声明でございますので、国会に出すということ、承認を求めるということにいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/7
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008・森島守人
○森島委員 次にお伺いいたしたいのは、合意議事録はどうなさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/8
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009・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 合意議事録は参考資料として出しておりますけれども、ただいま、以上申し上げました以外のものは、参考資料として出しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/9
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010・森島守人
○森島委員 政府の御意向はわかりましたが、私は、ここで一つ基本的な問題に入りたいと存ずるのでございます。
政府の御提案になっているものを見ますと、ここにもありますように、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の締結について、日本国憲法第七十三条第三号ただし書の規定に基づき、国会の承認を求める。」という趣旨のものと、もう一つは、やはり同様なものでございますが、安全保障条約、行政協定に関する同様なものが提出されてございます。私のお伺いしたいのは、このほかに、この議案と申しますか、この次に理由言がついておる、そうして、そのあとに条約文なり行政協定文がついておりますが、政府は、これをいかに——議案というのはどれであると、はっきり御答弁願いたい。私は、外務大臣に答弁を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/10
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011・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 こまかい点については法制局長官から答弁いたさせます。
〔「こまかくない」「外務大臣に答弁
を求めておるんだ」「外務大臣、答
弁しろ」と呼び、その他発言する
者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/11
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012・森島守人
○森島委員 私は、法制局長官に答弁を求めておりません。外務大臣だ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/12
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013・小澤佐重喜
○小澤委員長 それは外務大臣の責任において、林法制局長官が答弁いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/13
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014・林修三
○林(修)政府委員 ただいまの条約の出し方でございますが、これは御承知のように、もうすでに新憲法になってから一貫してこういう出し方をやっております。これにつきましては、私ども、憲法の解釈上、これが正しいと考えてやっておるわけでございます。つまり、憲法第七十三条第三号におきまして、条約の締結は内閣の権限とされております。ただし、事前に、または時宜によっては事後に、国会の承認を得なければいけない、かような規定でございます。これに基づきまして国会の承認を得るわけでございます。
この場合には、ただいま申し上げましたように、何々条約の締結について国会の承認を求めるの件、それで、その内容といたしまして、これこれの条約について憲法第七十三条の権限において国会の承認を求める、これがほんとうの意味での議案でございます。もちろん、そのあとに条約がくっついております。この条約は、その議案に付属した文書だ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/14
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015・森島守人
○森島委員 そういう御解釈をとりますと、議案としてお出しになったのは、この紙一枚ということですね。この紙一枚が議案なんですね。——大臣に私はお伺いしておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/15
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016・林修三
○林(修)政府委員 議案という意味でございますが、国会において、いわゆる御決議の対象になるものは、ただいま申しました何々について承認を求めるの件、これがほんとうの意味の議案でございます。それにくっついております条約は、その議案の付属文書でございまして、もちろん、これと切り離し得ないものでございますけれども、いわゆる国会の議決の対象になるのは、承認を求めるの件、この点だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/16
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017・森島守人
○森島委員 今のような三百代言的な御解答では条約のほんとうの審議ができるかできぬか、私は疑問だと思う。この紙一枚が議案ということはあり得ない。憲法の制定されたいきさつから考えましても、私は、これは解せないと思っておるのでございます。憲法制定のいきさつから考えますと、旧憲法の時代におきましては、なるほど、国会は外交に関しては何らの権限を持っておりませんでした。そのために、あるいは日独防共協定、日満議定書あるいは三国同盟というようなものができまして、国民に非常な害を与えたことは御承知の通りでございます。従って、新憲法において、国会に条約に関する権限を与えましたのは、私は二つの意義があると思う。一つは、常任委員会を通じまして、政府の外交を常時批判し、監督する権限を与えたのが一つでございます。第二といたしましては、条約の締結について国会の承認を求めるということにいたしたのが、その趣旨だと思うのでございまして、この点につきましては、ただいま法制局長官の御説明がございましたが、私は、これは国会の権限を、政府が独断的に、一方的に解釈したものだと信じておるのでございまして、憲法学者の間にも、すでに議論のあるところでございます。私は、新憲法において、外交上に国会が関与するようになりましたこの沿革から考えましても、私といたしましては、条約は、行政府と国会との意思が合致した場合において、また、その意思の合致を見た範囲内において効力を持つのだ、こう解釈するのが妥当であると信じておるのでございます。言葉をかえて申し上げますれば、なるほど、行政府で御締結になったのであるから、政府の調印された以上のことを新たに付加したりすることはもちろんできぬでしょう。しかし、国会としては、条約を承認したり否決したりする権利を持っておるのですから、全部としても否決でき、その一部を否決することも当然の権限としてあり得る、こう信じておるのでございます。この点に関する御見解を外務大臣に求めたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/17
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018・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 法制局長官から御答弁をいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/18
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019・林修三
○林(修)政府委員 先ほどから申し上げているように……(「だめだめ、外務大臣」と呼び、その他発言する者多し)ただいま森島委員の御質問の点でございますが、憲法が新憲法でございまして、条約の締結について国会の承認を求めることにいたしました趣旨は、まさに、国会が、条約は国民に非常な関係があるものでございますから、政府の独断で条約を締結しないように、こういう御解釈で行なわれたことはお説の通りだと思います。しかし、これにつきましては、いわゆる条約の締結は内閣の権限で、普通の法律案のような、いわゆる立法権の作用とは違うわけであります。行政権の作用であります。ただし、これが国民に至大な関係がございますから、その締結についても、それは国会に承認を求める、そして国会は、その承認について、それを可決し、否決する、その承認について、ノーあるいはイエスと言われるのは、もちろん国会の御権限でありまして、それについて何ら疑いはないと思います。ただ、今、森島委員の仰せられました一部否決ということは、言いかえてみれば修正だということだと思いますが、やはり、私どもといたしましては、条約というものは相手国との間の約束でございます。国会においてその一部を御修正になるということは、これはやはり問題だ、かように考えております。もしも、一部修正しなければとても承認できない、こういうものであれば、これは御否決になるのが筋だと私は思います。国会の、この条約はこうすべしというような御希望、御意見は、これはあり得ると思いますが、国会の議案の取り扱い方としては否決または可決ということだと思います。ただ、これは過去の国会においても議論のあったところでございますが、いわゆる可分の条約、たとえば、二つの条約を同時に一つの議案として出した、過去においてそういう例もございますが、そういう場合に、一つの条約と他の条約とが分け得るものである、そういう場合には、一つの条約については可決、一つの条約については否決、こういうことは、これはあり得ないことではございません。しかし、条約が不可分のものにつきまして、一部を修正して可決されるということは、これは、私は、条約の性質上あり得ないことだ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/19
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020・松本七郎
○松本(七)委員 林さんが、ただいま、条約は政府のやる行政行為だということを理由に、修正を認められない論理を立てられておるようでございますが、実はそこに根本の問題があると思うのです。そこで私は、やはり総理なり、あるいは主管大臣である藤山さんが、そういう根本の問題についての考え方をはっきりしていただかないと、実は、この条約を国会にかけて審議する、政府が提出したその基本的な態度が問題なんです。私どもが、もう少しここで解明しようというのは、もちろん議案の提出の形式ですね。先ほど森島さんが指摘されたように、この形式も非常に問題があるけれども、この形式は、条約を提出して審議する基本的な態度に合わせて、この形式ができておるといわざるを得ない。
そこで、まず藤山さんに伺いたいのは、こういう形式かどうかということは一応おいて、条約というものを国会で審議する際に、今、林さんの言われるような考え方に基づいて、国会は修正できないのだという建前を外務大臣もやはり持っておられるのか、どこまでもそれを貫くと言われるのかどうか、この点をまず伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/20
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021・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 これは相手国との関係もございます。従いまして、締結されました、署名されました条約というものが修正されれば、新しい交渉になるわけであります。そういう意味で、修正というのは、その条約に関してはあり得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/21
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022・松本七郎
○松本(七)委員 修正されれば新しい交渉になるというのならば、修正ということがあり得るじゃないですか。——いや、修正すれば新しい交渉になるからというのでしょう。それなら、修正を国会が要求することはできるじゃないですか。その要求に基づいて……(「否決だよ」と呼ぶ者あり)いや、要求したことを議決する場合に、否決になるかどうか、それは別ですよ。しかし、修正の動議を出したり、修正をしようと努力することが封ぜられるかどうか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/22
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023・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 今申し上げたように、修正がありましたら、もとの案が修正されれば、締結について承認を得られないことになるわけです。われわれは、出している案を、締結について承認を求めておるわけであります。でありますから、そういう意味において、否決と同じだということであります。なお、こまかい点については、法制局長官から御説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/23
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024・松本七郎
○松本(七)委員 否決される、従って、これは新しい交渉にならざるを得ない、どうせ多数でもって否決されれば仕方がないというのですか。少数意見がかりにある。修正動議を出すこともそれではできないのですか。そこはどうですか。(「出したらいい」と呼ぶ者あり)外務大臣に聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/24
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025・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 そういうことは考えられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/25
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026・松本七郎
○松本(七)委員 考えられるのですか、修正を出すことは許されるのですか、どうですか、その点、はっきり言って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/26
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027・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 今申し上げた通り、許されません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/27
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028・松本七郎
○松本(七)委員 それはなぜ許されないのですか、根拠を示して下さい、法的な根拠を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/28
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029・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 法的な根拠については、法制局長官から御答弁申し上げます。(発言する者多く、議場騒然)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/29
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030・松本七郎
○松本(七)委員 そういうことではだめです。答弁を求めていない。答弁を求めていない。だめだ。答弁を求めていない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/30
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031・林修三
○林(修)政府委員 発言を求められておりますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/31
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032・松本七郎
○松本(七)委員 そういう運営をしてはだめですよ。答弁を求めていない。だめですよ。だめ、だめ。発言、議員の要求ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/32
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033・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 私から、法制局長官に答弁させますと申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/33
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034・松本七郎
○松本(七)委員 別な問題で聞く。答弁を求めない、答弁は求めない。外務大臣が今の問題で答弁できないなら、別な問題で聞きます。すわらして下さい、林さんをすわらして下さい。(発言する者多く、議場騒然。)すわらして、すわらして下さい。答弁求めていない。すわらして下さい、だめだ。(「すわらせなさい、すわれ、実際問題と別の問題だよと呼ぶ者あり)今の問題には、実は非常に大事な点がありますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/34
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035・小澤佐重喜
○小澤委員長 田中君、静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/35
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036・松本七郎
○松本(七)委員 どうしても外務大臣が答弁されないから、やむを得ませんから、ほかの問題から聞く。
外務大臣の一つ見解を伺いたいのは、憲法の四十一条の規定をどのように考えられるか、一つ述べて下さい。(「外務大臣答弁できないなら、総理がやりなさい」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/36
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037・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」と、ここに書いてある通りでありまして、条約は行政権にまかされております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/37
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038・松本七郎
○松本(七)委員 何ですか、四十一条ですよ、憲法の。憲法四十一条を聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/38
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039・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 国会は国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関でありますが、条約の締結は行政府にまかされておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/39
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040・松本七郎
○松本(七)委員 国会が唯一の立法機関であるということは認めるけれども、条約の締結は行政府にまかされておる、こう言われるのですね。なぜ条約に限って行政府にまかされなければならないのか。条約を行政府にまかせ、何ら修正する権利も国会に認めないということは、これは国の最高機関としての、また、唯一の立法機関としての国会の審議権を侵害することにはならないか、この点を藤山外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/40
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041・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 それはないと思います。イエスと言い、ノーと言う権限を国会は持っておられる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/41
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042・松本七郎
○松本(七)委員 それでは普通の法律案について、なぜ修正が認められるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/42
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043・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 そうした憲法論につきましては、林法制局長官から御答弁をさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/43
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044・松本七郎
○松本(七)委員 委員長、答弁を求めていない。求めていない。(議場騒然)それでは、また別なことを聞きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/44
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045・小澤佐重喜
○小澤委員長 松本君、政府の法制局というものは、政府の法律を研究するためにできておるのですから、そのために政府委員になっておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/45
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046・松本七郎
○松本(七)委員 そういう段階になったら聞きます。今は、主管大臣である外務大臣に、基本的な考え方を聞かなければならないときだから、これを聞いておる。まだ林さんに聞く段階じゃない。
外務大臣に聞きますが、条約は、なるほど国内法と違って、国と国の間に権利義務が設定される。しかし、条約は、公布することによってその国民の権利義務を規律するわけです。その面においては、唯一の立法機関である国会が、その条約の締結の過程で、あるいは錯誤による締結ということもあるかもしれない、あるいは不当に国民の権利を侵害する場合があるかもしれない、そういう場合に、当然この条約の内容に立ち入って審議して、もしもそこに不当な個所があるならば、修正の意見をはっきり出すということが許されるべきだと思いまするが、この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/46
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047・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 条約そのものの性質から申しましても、あるいは七十三条の精神から申しましても、そういうふうには出て参らないことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/47
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048・松本七郎
○松本(七)委員 どうして、出てこないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/48
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049・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 詳細にわたりましては、法制局長官から答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/49
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050・松本七郎
○松本(七)委員 主管大臣がこういう大事な問題について答弁ができないならば、答弁できる問題だけどんどん聞きます。そして、あとは、あとへ残しておきます。
〔「法制局長官でいいじゃないか」
「お前は黙っている」「委員長注意
しろ」「理事を注意しろ」と呼び、
その他発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/50
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051・小澤佐重喜
○小澤委員長 理事も委員も御静粛に願います。傍聴人も御静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/51
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052・松本七郎
○松本(七)委員 外務大臣、この条約の中に、審議の過程で不当な個所が発見された、これを、少数意見であるけれども、何とかして修正したいというような意見が出た場合に、それを修正する運動というものは、それが否決されるかどうかということはわからないでしょう。幾ら多数の意見でも、説得した結果、あるいは国会全体の意思としてそれが正しいという場合があり得るのだから、そしてそれが正しいということになれば、行政府のやった行為に対して、それは間違いだ、やり直せということになりますから、国会のその修正の意思を体して、政府は再交渉する。二国間条約ならば再交渉、多数国間条約ならば留保するということになるのでありますから、国会の審議権をあくまでも守るという建前を貫くためには、今言うような、政府のとっている態度で行政府の独走を許すのでなしに、当然国会で、ただ可決か否決かということでなしに、修正を認めるという審議の仕方を許すのが、私は、唯一の立法機関としての国会の権能を完全に果たすことになると思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/52
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053・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 国会が修正の希望を付して否決されるのが当然だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/53
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054・松本七郎
○松本(七)委員 それじゃ、修正意見がだんだんたくさんになってきたら、どうしますか、修正意見というものが多数派になってきた場合にはどうするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/54
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055・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 御承知の通り、条約は相手国があることでありますから、やり直さなければなりません。また、否決しなければ、やり直せないわけであります。(「それは国会がきめることだ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/55
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056・松本七郎
○松本(七)委員 今も、私語ではあるけれども、これは国会がきめることだ、こう言っておる。私どもは、この問題については国会がもっとしっかりと検討して——これは確かに学説だって二つあるんです。修正は認めるべきではないという学説と国会における修正権というものは認めるべきだ、こういう意見が現にあるんだから、そうなれば、小数意見が正しいか、あるいは今の多数意見が正しいかということは今の日本国の憲法あるいは国会法に基づいて国会がきめなければならぬことになるんだ。政府は政府で、今のような解釈をとって臨んでおる、これまでも臨んできた。ところが、その政府の解釈なり基本的な態度が、いろいろ今までの問題を検討してみると、正しくないんではないかという疑いが出てきたから、ここで政府の考え方をはっきりと伺い、特に主管大臣である外務大臣の考え方を伺って、そして、われわれの考えもここで述べる。はたして政府の今までとってきた態度が、国会として——これは自由民主党とか社会党という問題ではなしに、国会全体の審議権の問題ですから、はたしてこれでいいかどうかということを根本的にただす必要があると私は思う。それをたださなければ絶対に審議ができないとか、そういうことをまだ言っているのではない。いやしくも、そういう疑いが少数意見でもある以上は、国会としては、そのことについての一応の検討をして結論をつけておかなければ、将来いつまででもこの問題が糸を引いて残る。これほど大事な国会の審議権を、行政府が条約の名に隠れて独走して、侵すかどうか。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そんなことはないと言うけれども、少数意見だが、これは国会の審議権を侵害するものだという意見がある。従って、私どもは、この問題をもっと真剣に検討する必要がある。そのためには法制局長官の意見も必要に応じて十分述べてもらわなければなりません。しかし、今は主管大臣たる外務大臣が、一体どういう基本的な考えでこれを扱ったかということについて、もっと詳細に伺っておかなければ先に進めないので、そこで大臣の答弁をさっきから求めているわけなんです。ですから、委員長も大臣の答弁を一つ求めてもらいたい。
そこで、その次に私が伺いたいのは、今の国会法によれば、私どもの考えからいえば、条約といえども、なるほど国際間の権利義務は設定するが、同時に、公布によってそれは国民の権利義務を規制する。従って、国会では国内法と同様に扱うべきだ、それが第一点。そういう建前に立っておる証拠が、日本の国会法の規定にもあるということです。それは、国会法の八十三条及び八十五条にこのことがはっきり出ておるわけです。八十三条においては、修正した議案というものを回付案という言葉で表わしてある。八十五条には、条約の回付案ということがはっきり規定してあるわけです。ここでは、条約についての修正案というものを認めておる立場をとっておるわけでございます。従って、憲法の、国の最高機関として、また唯一の立法機関という規定から、また、国会法の八十三条及び八十五条の規定によっても、当然国内法と同じ扱いを条約においてもなすべきである、そして、その修正の要求された部分、原案の修正要求部分を除く部分はまあ可決する、その一部分に修正要求が出た場合には、その部分について、政府が国会の命により再交渉をする、こういう過程を経ることが現在の日本国憲法並びに国会法に最も適した審議の仕方であると考えるわけです。この点、主管大臣どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/56
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057・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 ただいま松本委員の言われましたように国会法の条文を了解すべきではないかと考えておりますし、過去におきましてもそういう論議がございまして、現在のような解釈になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/57
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058・松本七郎
○松本(七)委員 現在のような解釈になった過程を聞いておるのではないので、あなたも国会議員だ、この機会に最高機関の審議権を守っていくためには、この点について、学者の中でも意見が分かれておる。いろいろ調べてみても、今まで国会で十分討議されたことはないんですよ。それでは、この点について、国会で一体どれだけの審議がなされたか。そういう根本の問題についてもっと十分審議をし、検討して、今の政府のとっておるこのような態度でも、国会の審議権の侵害にはならないというはっきりした結論が出れば、私どもも、このままの従来通りの態度でも受け入れてもいいかもしれない。しかし、御承知のように、今までこの点は十分解明されておらないわけです。ですから、本来ならば、私は、こういう修正できないという建前を貫くために、このような法律案と違った形式で条約案が出てきた、これを衆議院が受け取ること自体に問題があると思う。そういう点について、一体議院運営委員会でどの程度の検討がなされたか。過去において、平和条約のときに土井直作さんがちょっと触れられたことがある。しかし、このときはこれほど内容にわたっての議論がされずに、そのまま従来のやり方を踏襲してきておる。ベトナム賠償のときも、参議院で小林孝平さんが、議案は紙一枚じゃないかということで、少し問題になった。しかし、そのときも十分な検討というものはなされておらないのです。そこで、私どもは、この際、これらの問題について、議院運営委員会でもう少し詳細に、いろいろな少数意見、多数意見というものを、あらゆる角度から、国会みずからが検討し直してみる必要があるのじゃないか。そのくらいやらなければ、国会審議権侵害のおそれがあるのを、このまま解明せずに続けていくことは、私どもは、十分責任を果たすことにはならないと思うのでございます。委員長は一体どう考えられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/58
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059・小澤佐重喜
○小澤委員長 私は、大体において、最終決定権は国会にあると考えております。しかしながら、政府の意見を聞くことは自由であります。しかし、政府の方では、もうはっきり修正できないものだという解釈をとっているのでありますから、あとは、国会内におきましていろいろ研究して、最終段階までにその結論が出ればいいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/59
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060・松本七郎
○松本(七)委員 そこで、政府は修正できないという解釈をとっておるわけです。とっておるからこういう形式で出てきたけれども、それをそのまま、「はあ、そうですか」といって国会が受け入れていいかどうかということを問題にしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/60
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061・小澤佐重喜
○小澤委員長 松本君……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/61
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062・松本七郎
○松本(七)委員 いや、待って下さい。それをこの委員会で審議しながら検討するがいいか、あるいは、一応審議に入る前に、議運なら議運で検討して、結論は長引くであろうから、一応、この国会では、この条約の審議を継続しながら、その過程で、議運は議運でなお解明を続けるとするか、あるいは解明ができて、結論づくまで委員会の審議は待てということになるか、それはもう少し検討してみなければわからぬじゃないか。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)わからない。今まで十分やっておらない。(「今までうそをやっていたのか」と呼ぶ者あり)今まで、われわれがこういうしきたりを受け入れてきたということにも、お互いに、ある意味では共通の失態がある、落度があると思う。そういう点を十分解明せずにずっとやってきたということは、確かに落度だと思う。それだからこそ、ここの審議を続けながら議運で解明することになるかもしれません、あるいは解明できるまでしばらく待てということにもなるかもしれません。その結論は議運にまかせるとして、とにかく議運でこれをどういうふうに扱うかということは、一応議運の相談にこれを持ち込むということを私は提案せざるを得ないわけです。いろいろなケースが考えられる。一応修正を認める、修正の結果がどうなるかということは別として、やはり国内法と同じような取り扱いも認めた方がよかろうという結論に達するとすれば、この議案の形式そのものを変えなければならぬわけです。そういうところまで議運で一つ検討してもらって、そうして、これを一応検討はするが、審議だけはやれということならば、私どもはどんどん審議を続けます。(「審議拒否だ」と呼ぶ者あり)しかし、この形式一つ見ても、このままでは、実は途中で修正できるという結論になった——かりになったとします。(「ならない」と呼ぶ者あり)なったとしても、この形式では修正ができない。(「修正は否決だという解釈を僕らはしておるのだ」と呼ぶ者あり)だから、君たちはそういう解釈をする、われわれはそれに反対する解釈をとる。だから、今までの解釈は間違っておる。間違っておるから、この重大な段階にあって、もう一度再検討をすることを要求しておる。(「どこが間違っておるか」と呼ぶ者あり)間違っておる。どこが間違っておるかは、いろいろ君たちも学者の意見を聞いてみたらいいでしょう、この議案の形式にしても、たとえば、道路交通法という普通の法案は、「道路交通法」とあって、ずっとあと全部条文をここへとじ込んで、最後に理由が書いてある。これは全部議案でしょう。これが議案であって、われわれの審議の対象になっておるわけです。ところが、これはどうですか。先ほどから言うように、承認を求めるの件、これ一枚が議案だ。あとは参考書類ということになっておる。(「それが内容なんだ」と呼ぶ者あり)内容で、これが議案になるならば、なぜこの中に同じ形式でやらないのか、なぜこれはわざわざこういうふうな別な形式にしておるのか。
それじゃ、一つ外務省に聞きますが、この条約と、そのあとに今度くっついておるのに参考と書いておるのと、一体どう違うか。先ほどからの御説明で、議案はこの紙一枚だ、そして、あとはこれは付属文書だという、付属文書の中に参考と書いてあるのと、何も書いていないのがある、一体どう違うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/62
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063・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 ただいまの点でございますが、議案と書いてございますが、それは紙一枚という仰せでございますけれども、その議案というのは、内容のある議案でございます。従いまして、内容が何であるかと申しますと、先ほど申し上げました条約及び交換公文でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/63
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064・松本七郎
○松本(七)委員 それならば、なぜそれを同じ形式にしないのですか。なぜこういう別な形式にするのですか。
それから、さらに、憲法の六十一条には「条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。」と書いてある。この第六十条は、予算が修正できるということをここで明記したわけです。これを準用するということは、やはり条約においても変更ができるということをここに認めておるのじゃないか。そういうふうに、憲法の規定に、条約の修正を国会に認めた条項というものがたくさんあるのです。こういう点を全くほおかぶりして、そうして政府側が、行政府が、一方的に、条約の修正権は国会にはないのだという建前で今日まで長年貫いてきたところに、実は大きな問題がある。私どもは、この際、一度根本的にこれを検討し直してみる必要がある。その点をはっきり解明して、そうして、まだ解明には時間がかかるから、特別委員会はなお審議だけは続けろ、そういう結論が運営委員会で出れば、私どもは喜んで審議は継続します。しかし、運営委員会でしばらく待てという結論も出るかもしれません。それがどう出るかわからないうちに、私どもは、このままの状態で審議に入ることはできないじゃないですか。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)早く何とか処置して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/64
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065・小澤佐重喜
○小澤委員長 松本君、相談しますが、この問題はすでに国会と政府との間でこういう解釈ができて、そうして何十件となく同じことを扱ってきている。それで、あなたのような意見がないとは言いませんけれども、また、研究することもいけないとは申しません。しかしながら、前例をたっとんでやってきている国会としては、一応これでよろしいものとして、研究は研究で、別問題としてやっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/65
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066・松本七郎
○松本(七)委員 私どもは、国会の審議権について、今まで、なるほどそういう落度は共通にあった。それは重大な……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/66
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067・小澤佐重喜
○小澤委員長 あなた方にも落度がある。従来、これでよいという解釈がもう国会できまっておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/67
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068・松本七郎
○松本(七)委員 国会で、今までこれでやってきたけれども、はたして十分にその扱いについての検討がなされたかどうかということを——委員長は検討していると言うけれども、われわれは検討したと聞いておらない。従って、はたしてそういう検討がなされたかどうか、その点も議運で十分それを調査してみなければわからぬじゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/68
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069・小澤佐重喜
○小澤委員長 それはちゃんと研究してある。僕は議運をやってわかっています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/69
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070・松本七郎
○松本(七)委員 そういう委員長の一方的な判断ではだめです。すみやかに議運に差し戻して検討すべきである。絶対にそうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/70
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071・小澤佐重喜
○小澤委員長 松本さんの、疑義を究明することには賛成しますよ。しかしながら、前例として何十件もの案を扱ってきたこの国会が、新たにあなたの解釈が出てきたからといって、一々議運でこういうものをやって審議をし直すというばかなことはない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/71
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072・松本七郎
○松本(七)委員 私の今出しておる疑義というものが、今まで大きな問題になって十分な検討がなされておれば、それはいいです。しかし、それがなされておらないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/72
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073・小澤佐重喜
○小澤委員長 なされた結果、今までやってきておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/73
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074・松本七郎
○松本(七)委員 なされておらないから、私どもは、この重要な問題をもう一度議運で十分検討すべきである、こう言っている。だから、検討して、この問題はもうあまり十分検討する必要がないという議運の決定が出るかもしれない。しかし、一応これは検討に値する。従って、検討するが、時間もかかるかもしれないから、特別委員会はこのまま継続してやれ、こういう命令が議運から出れば、どんどんやります。それを一応議運に諮らずして、われわれはこのままやるわけにはいかない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/74
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075・小澤佐重喜
○小澤委員長 松本君、あなたの意見は、私に対してその議論を言っているのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/75
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076・松本七郎
○松本(七)委員 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/76
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077・小澤佐重喜
○小澤委員長 ですから私は、今まですでにこの問題については国会の意思が決定して、何十件も同じような扱いをしてきたのでありますから、もしあなたのような意見があって、さらに研究する必要があるならば、私はその研究には反対はしません。しかしながら……。(「本人の研究は自由だ」と呼び、その他発言する者あり)本人の研究は自由ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/77
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078・松本七郎
○松本(七)委員 私は、条約審議権をめぐって行政府と国会との関係をもっとはっきり究明すべきであるという立場から、今言っておるわけです。そこで、まだ委員長が私の要求に対して了承されず、議運にかけるかどうか、必要はないとあなたは言われるでしょう。しかし、もう少しわれわれの意見を聞いたならば、あるいは、それじゃもう一ぺん考え直そうじゃないかということになるかもしれない。そこで、私は今この問題を簡単に申し上げたけれども、まだ他にそういう意見を持っている人がたくさんおるのですから、それでは続いてその委員の方々の意見をもう一度ここで、政府に対する質疑とか、あるいは委員長に対する質問の形で継続して、なおどうしても議運にかけるべきだというわれわれの意見が変更することができない場合には、一つ十分その点についても取り扱いにもう一度考慮していただきたい。ここで絶対にやらないのだという態度は不当です。もう少し聞いてみて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/78
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079・小澤佐重喜
○小澤委員長 私の意見でしょう。だから私の意見を言っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/79
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080・松本七郎
○松本(七)委員 委員長の意見は今一応聞いたけれども、まだ他の委員の質疑を聞いてみて、その上でなお考慮する余地を残しておいていただかないと、委員長の意見で一方的にそれをここできめられては困る。われわれの意見はわれわれの意見であるのだから。われわれは議運にもう一度諮るべきだと言っておるのだから、その点はもう一度みんなの意見を聞いて、その上で慎重に取り扱うということを約束していただきたい。ただ、一応質疑応答が終わったら、このまま継続するということを前提にやられたのでは困る。いいですか、その点をちゃんと約束して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/80
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081・小澤佐重喜
○小澤委員長 私の答弁は、さっきあなたにお答えしたのと同じことを、何人質問しても、確信を持ってお答えします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/81
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082・松本七郎
○松本(七)委員 今まで政府のとってきた態度、これは全然当然なものとして今まで長年やってきたのだから、もうこれでやるのだ、そういう考え方では、国会の審議権を守ることはできない。まだ少数意見があるのです。たとえば佐藤功さんのごときは、はっきりと、条約の修正権は国会に認めるべきだと言っておる。また、オッペンハイムの原典を見ても、必ずしも修正を否定してはおらない。それから横田さんの書物を見ても、やはり修正ということができないとは言っておらない。論理的にはそういうことはやれると書いてある個所がたくさんあります。ですから、そういう点について、もっとこの際詳細に論議する必要がある。それはこの委員会でやることもいいでしょうが、やはり議運で、今まで扱ってきたこの態度がはたして正しいかどうかという再検討の意味でも、やる必要があると私は思うのです。そういう意味で、これはこの委員会と並行してやるかどうかは今後の問題として、一応他の委員の質問によって、政府も委員長ももう一度考慮していただくというそのくらいのゆとりは持って運営していただかなければならぬ。自分はこうだから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/82
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083・小澤佐重喜
○小澤委員長 あなたの希望の点は十分わかっております。
竹谷源太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/83
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084・竹谷源太郎
○竹谷委員 私は、ただいま松本、森島両委員から質問されたことに関連をいたしまして、一、二政府にお尋ねをいたしたいのであります。
今提案せられている条約の締結について国会の承認を求めるというこの問題でありまするが、このことについてお尋ねしたいのであります。条約、協定あるいは交換公文、その他外交上の公の取りきめは、文書でなければならぬかどうか、口頭でもいいのか、それをまずお尋ねをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/84
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085・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 文書で取りきめるのが通常だと思います。むろん、場合によっては口頭で約束することもありましょうけれども、通常は文書で取りきめるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/85
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086・竹谷源太郎
○竹谷委員 通常は文書であるというが、国会の承認を受け、批准を経なければならないような国際間の公の取りきめは、当然文書によらなければならない、そう考えまするが、さようであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/86
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087・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 その通りでありまして、国会の承認を求めるようなものは文書でいたすことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/87
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088・竹谷源太郎
○竹谷委員 ところで、国会に承認を求めんとする条約の締結、これについて論争があるわけでございまするが、森島君の質問に対して政府は答弁をいたしたようでありまするが、これはこの委員会の議場が喧騒であって私は聞き取れませんでした。重ねてお尋ねしたいのであるが、政府の言うところの、国会の承認を求めんとするその対象は、締結なのか、条約なのか、両方なのか、それをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/88
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089・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 条約を締結するということについて承認を求めるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/89
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090・竹谷源太郎
○竹谷委員 条約の締結、条約と締結と両方でありますから、従って、この承認を求めんとする案件は、条約、交換公文——第一の案件でありまする安保条約の締結に関する承認の件として国会の承認を求めんとするものは、安保条約及び二つの交換公文であるとともに、その締結について、この二つの内容と、そうしてその締結の行為と、その両方について国会の承認を求めようとするものであると考えるが、その点はどうであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/90
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091・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 これこれかくかくの内容のものを締結するという、その締結の承認を求めるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/91
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092・竹谷源太郎
○竹谷委員 締結という行為だけの承認、これはナンセンスなんですね。国際条約を締結するという承認だけでは、これは包括委任みたいな、白紙委任みたいなもので、問題にならない。従って、安保条約及び二つの交換公文、これの承認、そしてそれを締結することの承認、この二つがなければ、国会の承認というものは成立しないと考えるが、どうであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/92
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093・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 議案は一つでございまして、これこれの内容を含む条約を締結するということの承認を求めるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/93
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094・竹谷源太郎
○竹谷委員 私もそれはわかっている、常識的に言って。そこで承認の対象となるものは、ある条約の締結ではなくて、安保条約及び二つの交換公文が対象であり、それがいいか悪いか、同時に、それを締結していいという承認をとろうというのが、政府の議案として提案された趣旨であろうと考えるが、そのように理解していいかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/94
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095・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 つまり、こういう条約を締結するという承認を求めておるわけであります。その承認の内容は、かくかくのものであるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/95
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096・竹谷源太郎
○竹谷委員 そうしますと、やはり一つの条約、二つの交換公文、並びにその締結ということを含んだ、大きい意味での締結を、国会に承認を求めておる、こう理解するのであります。そこで、その先へ行ってお尋ねしたいのは、しからば、その締結せんとする公の取りきめは、安保条約、それから二つの交換公文、すなわち、事前協議に関する交換公文等を含めての三つを承認の対象にしているのかどうか、その点お尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/96
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097・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 交換公文は、二つとおっしゃいましたけれども、三つでございます。今申し上げたように、これこれの内容の条約を締結するという、その締結の御承認をお願いしているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/97
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098・竹谷源太郎
○竹谷委員 私のお尋ねしたいのは、その交換公文そのものの承認を得たいのか、これは承認が要らないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/98
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099・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 安保条約と、それに付属しております交換公文、それを一体として条約の内容でございます。従って、それを締結することを御承認を得ているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/99
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100・竹谷源太郎
○竹谷委員 いつまでたっても、これは平行線でございますが、もう一点重ねて尋ねたい。
政府が国会の承認を求めんとするその対象は、条約及び交換公文、これらのいいか悪いか、そしてそれを締結してよろしいか、この二つの行為の承認を求めておるのか、それとも、あとだけのもので、条約案文あるいは交換公文、これの承認は全然要らないのであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/100
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101・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 これこれの条約を締結するという、その締結の御承認を求めているわけであります。その内容というものは、今申し上げましたような条約、もしくはそれに付属する交換公文ということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/101
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102・竹谷源太郎
○竹谷委員 そうすると、むろん締結の承認を求めているのは間違いないのだが、その締結の対象は条約であり、交換公文である、これの承認が当然含まれなければ、締結の承認があり得ないのです。締結の承認だけで、条約の方は、国会は反対だということはあり得ない。だから、当然に条約並びに交換公文の承認を求めた上で、その承認されたものを締結する、こういうことにして、国会の賛成、承認を得たい、こういうふうな考えが、その通りでよろしいかどうか。それとも、条約、交換公文は不同意でもよろしい、締結だけ賛成であればいいという考えはあり得ないのだが、当然、公文の承認の上に立っての締結の承認である、こう考えるが、その通りであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/102
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103・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 内容をごらんになった上で、締結していいか悪いかということの御判断を願っているということなんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/103
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104・竹谷源太郎
○竹谷委員 要するに、締結をすることの承認を求めるということは、この条約、交換公文、それを認めて締結を承認してもらいたい、このようでなければ、当然理屈は通らないわけでございます。さて、そうなりますと、膨大な公の文書による取りきめがある。これらについて、国会にいろいろ意見があるわけでございます。ある条文は賛成、しかし、ある条文は反対、ある条文については、内容をこのように改善すれば、一そう世界の平和や両国のため、あるいは日本のためによろしい、こう考える場合があるのであるが、これがあるいは批准の留保となり、あるいは修正ということになると考える。この点は、先ほど来盛んに論議せられた点でありまするが、終戦後、日本にその例はなかったとしても、世界各国に、修正もしくは留保の前例が非常にたくさんある。この条約の相手方となっているアメリカにおいても、建国以来千何十件の条約案件があったのでありまするが、その一割以上が上院において修正を受けておる、あるいは批准の留保となっておる。そういう前例がたくさん国際的にもあるわけでありまするが、日本においては、そのような承認にあたっての修正が認められないのだ、このように憲法を解釈するという答弁であったが、その通りであるかどうか、もう一度政府のはっきりした御答弁を承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/104
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105・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 政府の見解は、承認か不承認かでございまして、各国は、それぞれの持っております憲法によって、それぞれ解釈して参るかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/105
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106・竹谷源太郎
○竹谷委員 そうすると、国会というものは、政府の行なう行為に対して、外交上の行動に対して、全体として賛成か、全体として反対か、これ以外にわれわれに与えられた道はない、こういう結論になるが、これでは、新憲法によって、外交関係については国会が政府とともに行動する、すなわち、事前に国会の承認を求めるという、憲法のこの国民外交の精神は、全く抹殺される結果になる。いかようにしてこれを救済すべきであるか、政府の意見をお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/106
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107・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 今お話しのように、国会でいろいろ御意見があって、これはこういうふうに修正すべきだということは、そのこと自体が、国会の御意思で否決されて、そして、もう一ぺん出し直してこい、こういうことになるわけなんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/107
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108・竹谷源太郎
○竹谷委員 そういうような、一度世間を騒がせ、外国と非常な交渉をして、せっかく膨大なる国費を使い、総理大臣以下、国内政治が忙しいときに外国へ行って時間を浪費する、そうして調印式までしてきたものに——初めから国内に相当反対の意見もあり、あるいは、大体はいいが、この点はこうあるべきだという違った意見もその中に含まれている、こういう情勢を見ておりながら調印をしてきて、そして、これを無理やり押しつける、一部反対だが、やむを得ないというところで、国民の意向を無視して、政府の独断によるものを承認させてしまう、こういうような結果になる。これに対しては、しからば、憲法をそのように解釈するということは、私は、国民外交、国会の尊重というものを無視した考え方だと思う。それを、国会を尊重して考える、国民の意向を尊重して考えるということになれば、調印前に国会に相談をして、そして国会の意向として、この点はこのように修正せらるべきである、このような条項は削除せらるべきである、また、このような条文を挿入すべきである、このような国会の意見を聞いた上で調印すればよろしい。そうすれば、今の問題は、政府の解釈であっても救済される、こういうことになるのであります。われわれは、調印前に国会を解散して国民の意向を聞くべしということをかねてから主張したのでありますが、こういう方式によるのでなければ、外交に関する国会の参画、参与ということがほとんど無意義になる危険がある。この点、どのようにお考えであるか。これは憲法上、また、外交全体の今後の大きな問題であり、対国会関係であり、国民の意向の尊重という問題であるので、これは岸総理大臣の見解を承りたいと思う。調印前に国会に諮って、その意向を聞いて調印をし、そして、今度はなごやかに国会の承認、批准がある、こういうふうにいけばきわめて望ましい結果になると私は考える。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/108
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109・岸信介
○岸国務大臣 外交の交渉及び条約、協定等を、両国の間、あるいは多数国との間において話し合いをして、そしてある結論を得て調印をするということは、私は、政府にまかされておる権限であると思います。従って、その結んだものは、効力が発生する前に国会の承認を得るという手続を経なければなりません。従って、国会に出しまして、そして国会が御審議になり、国会が、全体としてこれはいかぬという場合もありましょうし、一部が悪くて、どうしてもこのままにおいて承認することはできないというような場合もありましょうし、そういう場合から申しますと、国会の承認を得ることができないという結果になり、その条約が発効しないことになるわけでございます。そういう場合において、政府が政治的責任をどういうふうに負うかという問題は、これは別に政治的責任の問題になるだろうと思いますが、法律論としては、先ほど来政府の意見を外務大臣あるいは法制局長官から申し上げておる通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/109
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110・竹谷源太郎
○竹谷委員 政府の政治的責任などは問題ではない。日本の国家の安否が問題なのでございまして、もし政府の言うように、外交の行為は、政府、執行部の仕事であるというならば、調印するまでは、われわれはそれを認めるにやぶさかではございません。しかし、その場合には、批准前国会承認の場合において、国会が自由なる修正、反対、削除、そういうものが非常に自由にできる状態に置かれなければならない。ごく一部、百分の一、千分の一反対でも、それは全部否認したらいいじゃないか、全部不承認にしたらいいじゃないか、こういうことをおっしゃっておりまするが、そのような場合に、どういう結果になるかははっきりしているのです。国民の意思を代表した国会が、国家の安否に関するこの重大な条約等に関してどういう意見を持っているかということは、政府が外交行為をやる上りにおいても非常に重大である。でありまするから、それに対して修正やいろいろな意見を認めるという考え方で、初めて、政府が調印まで自分の当然の権能である、こういうことでやることはいいのでありまするが、しかし、批准前国会承認において、全体として是か否か、こういうような憲法解釈をとるならば、調印前に国民の意向、国会の意思を十分に聞く、そうして、その承認を得ておくということを、調印前に政府がやってはならないという憲法上の解釈はないと思う。そういうふうにやることによって、一そう国家のためになるいい外交ができる。そのように考えるべきであろうと思うが、総理大臣はどういうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/110
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111・岸信介
○岸国務大臣 もちろん、私どもがこうした条約の締結について国会の承認を求めておりますその審議の過程におきまして、自由に質疑応答が行なわれ、また、これに対する各委員、議員の意見が述べられることは、これは当然でありまして、それをちっとも制約するとかいうことではございません。そうして、もしも多数の御意見が、ある条約の一部を、どうしても政府が調印したこのままにおいてはいかない、それを削除しなければいかぬとか、あるいはそれを修正しなければならぬという御意見であるならば、われわれが締結を求めておる議案に対しては不承諾であって不承認、承認を得ることができなかったことであります。いわゆる否決されたことでありまして、行政府としては、国会の多数の意見に基づいて、そういうふうに否決され、また、それに対してこうすべきであるという御意見等に対しては、それを尊重して、行政権においてさらにその国と新たな交渉をして、そういう条約が締結するというふうにいくべきものである。議案としては、そういう場合においては、われわれが求めておる承認を得ることができなかった、すなわち、それに対しては国会は否決されたということになると私は思います。それは決して各位の意見を制約したり、押しつけたりする性質のものではございませんで、十分の御審議なり、あるいは御意見のあることは当然である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/111
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112・竹谷源太郎
○竹谷委員 総理大臣の見解に対しては、われわれは反対であります。そこで、この問題については今後とも留保をいたしまして、国会の承認に関する行為のあり方、また、憲法の解釈等についても、十分検討を続けていきたいと思います。
私の質問はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/112
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113・小澤佐重喜
○小澤委員長 多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/113
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114・多賀谷真稔
○多賀谷委員 まず、私は、総理に、憲法の解釈をお聞きいたしたいと思います。
七十三条の第三号に、条約を締結する内閣の権限が書いてありますが、そのただし書に、事前に、あるいは事後に国会の承認を経ることを必要とすると書いてある。この事前及び事後というのは、何を時点として前であるとか、うしろであるとかいわれるのか、御意見をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/114
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115・岸信介
○岸国務大臣 条約として効力を発生するときを基準として、その前に、あるいはその後にと、こう解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/115
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116・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういたしますると、本安保条約は、第八条に「この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。」こうありますが、しからば、この安保条約は批准が効力発生の要件かどうか、そのときであるかどうか、お尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/116
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117・岸信介
○岸国務大臣 条約に書いてあります通り、批准書の交換が行なわれたときが効力発生のときでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/117
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118・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういたしますると、今国会の承認を求めるという議案は、これは事前に国会の承認を求めておられるのであるかどうか、お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/118
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119・岸信介
○岸国務大臣 事前に求めておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/119
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120・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういたしますると、もう一つ、私は、国会法について政府の見解をお聞かせ願いたいと思うのです。それは、国会法八十五条に「回付案に同意しなかった」と書いてある「回付案」とは、一体何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/120
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121・林修三
○林(修)政府委員 この点につきましては、御承知だと思いますが、第十九回国会においても議論があったところでございまして、この規定から、一院が他の院と異なった議決をする、しかも、それが修正議決をすることを前提とした条文ではないかという御議論がございまして、これについて当時の政府の見解を示しております。これは必ずしもそうは考えられない、条約の性質上、先ほど申しましたように、承認または不承認ということが国会においての御議決だ、ただし、ここであるのは、さっきちょっと申し上げましたけれども、たとえば可分の条約——二つの関連するもの、内容は可分である、そういうものを一括して議案として国会の御承認を求める、そういうことも過去においてあった。そういうものについて、一つの方の条約は承認、一つの方の条約は不承認、こういうことがあり得ないわけではない。そういう場合にこの規定は働くのではないか、かようにその当時もお答えしております。ただいまもそう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/121
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122・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私は、可分、不可分というような、論理の魔術をもってこれを解釈すべきでないと思うのです。明らかに国会法は、「予算及び衆議院先議の条約について、衆議院において参議院の回付案に同意しなかったとき、」と、こうある。すなわち、これは衆議院において賛成をして、参議院において修正がなされた、こういう場合に、衆議院に再び戻ってくる場合を回付案というのでしょう。と申しますのは、すでに国会法で回付案という定義が下っておる。「乙議院において甲議院の送付案を修正したときは、これを甲議院に回付する。」と、こうある。ですから、修正ということがなければ、回付ということはあり得ない。国会法は、条約についてわざわざ別の規定を置いておる。しかも、回付案という言葉を使っておるのは、これは明らかに修正を予定した回付案です。ですから、当然国会法としては、条約については修正ができるのだという建前になっておる、こう考えるのですが、総理はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/122
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123・林修三
○林(修)政府委員 この点は、先ほどもお答えいたしました通りに、この八十五条に基づきまして、国会法は条約についての修正を予定しているのではないかという御疑問が、過去においてもあったことがございます。これにつきましては、当時、私どもの解釈といたしましては、これはそうではない、そう読むべきではない、条約というものは、憲法の七十三条等の解釈から申しまして、これはやはり、本来は条約の締結権は行政権に属することでございまして、国会に対しては締結についての承認を求めることであり、しかも、条約というものは相手国があることでございますから、普通の立法作用とは違うわけであります。国会が御議決になったからといって、直ちに内容が変わるものではございません。相手国との間に約束ができなければ、内容の変更はできないわけであります。そういうものの性格から申しまして、これは承認か不承認しかあり得ない。ここで言っておるのは、今申しましたような可分の条約について、あるものは可決、あるものは否決——ということは、議案の内容については一部修正でございます。そういうことは、ごくまれな場合にはあるわけであります。そういうものを予定した条文ではあるまいか、少なくとも、政府としては、そう考えるということを申しておりますし、ただいまもその考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/123
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124・多賀谷真稔
○多賀谷委員 憲法は、事前を原則としておりますね。事後は「時宜によって」と書いてある。例外は事後であるということになるのですから、事前の承認というのは、当然修正権を含まなければ意味がないでしょう。国会法は、しかもその条文を異にして、わざわざ条約の回付案という言葉を使っておるのですよ。これは当然修正でしょう。総理の言うように、一部修正の場合が、否決になるなら、回付はしませんよ。当然、両院が違った議決をしたことになりますよ。回付案というのは、一部修正をした場合に起こるのでしょう。どうですか、総理、あなたの言うように、否決の場合には起こらないわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/124
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125・岸信介
○岸国務大臣 条約の回付案の解釈につきましては、先ほど来法制局長官がお答えを申し上げておるように、従来、条約におきまして、内容的に可分な条約を一緒に議案にした場合が、少ないのでありますが、過去においてもあった。そういう場合に、一部のものに対して否決し、一部はこれを承認するというような場合をさして、国会法になにしておるのであって、国会に出して承諾を求めることは、事前を原則とし、事後をなにするということは、条約の意義からいって、私は当然であろうと思うのです。効力が発生した後に、ある一つの権利義務が生じた後に国会の承諾を求めるというのじゃなしに、それが効力を発生する前に求めてこそ国会はその条約の締結を不当と認め、適当でないと認めた場合においては、承認を与えないということができるわけであります。そうすれば、効力を発生せしめることができないのでありますから、これは当然でありまして、これをもって修正権があるという根拠にはならぬと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/125
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126・多賀谷真稔
○多賀谷委員 しかし、一部修正は修正ですよ。総理の言われるように、否決になるわけじゃないのです。修正は修正ですよ。そうでしょう。その場合に回付案というのがあるわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/126
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127・林修三
○林(修)政府委員 多賀谷委員に申し上げますが、結局、問題は、もとの憲法の解釈の問題であります。あるいは行政作用、立法作用の問題から出発してくるわけでございまして、国会法といえども、それを受けて書かれておるものだと私は考えておるのであります。これは御承知のように、普通の法律案のような立法作用であれば、国会が全面的な権限を持っていらっしゃるわけであります。いかなる立法をなさろうと、憲法違反でなければ、それは全部可能なわけであります。従いまして、かりにその議案を政府が出し、あるいは議員がお出しになった場合でも、その内容と異なる議決をなすことは、まさに国会の立法権の作用でございます。ところが、条約の場合は、これは相手国との間でこういう約束をいたすことにいたしました、ついては、そういう約束をしてよろしゅうございますかどうかということを、国会に御承認を求めるわけであります。従って、それを国会が、いわゆる普通の法律案の修正と同じように、これが修正できるとすれば、相手国と相談なしに、内容を一方的に変更しても何の意味もないわけで、それは先ほど申し上げました通りに、これは国会の御希望として、こういうふうに修正して、もう一ぺん出し直してこい、こういうことだと考えるわけであります。それは結局、出した条約については御承認が得られないということでございまして、もう一ぺんそれは出し直してこい、こういうことで、いわゆる一部修正の御希望があれば、政府としては、前の議案は引っ込めるか、あるいは不承諾の御議決をいただいて、もう一ぺん国会の承認が得られるような内容に直してお出しする、こういうことだと思います。それは、法律案のような修正ということはあり得ない、こういうことを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/127
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128・多賀谷真稔
○多賀谷委員 それは、あなた、外交のことですよ。国会が一部修正をしたら、外交権としては、国会が一部修正をされたんだから、条約は調印して確定しているのだがこれは否決でありますから、あらためて提案をいたしますという外交の問題ですよ。国会の問題じゃない。(「国会に修正権はない」と呼ぶ者あり)いや、国会に修正権があるのですよ。その修正権によって、外交の方が、国会で一部修正になったのだから、今まで話し合った案が変わるんですから、あなたの方は新しい提案を外国にされるのですよ。間違っちゃいかぬですよ、混同して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/128
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129・林修三
○林(修)政府委員 これは決して混同はいたしておりません。普通の立法作用であれば、法律を御修正になれば、あるいは原案を修正議決されれば、それがまさに法律としての効力を発生するわけでございます。ところが、条約の場合は、かりに国会で、今おっしゃったような意味で御修正になって、相手国と妥結できない場合は、その条約は当然成り立たない。こういう意味におきましては、国会が御修正になりましても、その効力は、そう申しては何でございますが、何の効力も発生しないのであります。そういう意味におきまして、そういう修正というものは、これは修正じゃないと私は思います。法律案で申します修正は、まさに、国会がそういう内容の意思をおきめになれば、それはそのまま法律として効力を発生する、そういうことでやっていらっしゃるわけでありますが、条約につきましては、こういうことに内容を変えたらどうかとおっしゃる希望の表明というものは、これは別のことで、あり得ると思いますが、そういう希望の表明があれば、政府としても、また向こうと交渉し直して、もう一ぺん条約を出し直す、そういうことになるわけであります。それは、いわゆる普通の法律案でいうような修正とは意味が違う、普通の法律案のような修正はあり得ない、かように私は言っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/129
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130・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私も、法律案のように、直ちに効力が及ぶということを言っているのじゃないのです。国会で修正をすれば、その修正は元の案の修正ですから、もう一度交渉し直さなくてはならない、そうでしょう。そのことは、国会の意思とは関係がないのです。国会が修正をすれば、当然新たなる提案として交渉するということは、国会の意思決定とは関係がない。あなたはそういうことを言うけれども、現に、今まで国会の運営をつかさどった事務総長、大池君の著書にどういうことが書いてあるか。大池君は、少なくとも国会法の原案の起草に当たった人です。その本にどういうことが書いてあるか。すなわち、「議院において修正をなし得るかどうかの法律論があるが、すでに締結後のものの承認の場合に修正の余地なきは明らかであるが、締結前の案」すなわち、この場合は批准前ですが、批准前の「案については、これに承認を与える場合、修正意見を付し得るは当然であって、これを修正として取り扱って何ら差しつかえないと思われる。」こういうことがはっきり書いてあるじゃないですか。締結とは調印前ではない。総理大臣がさっき言っておる。締結とは、これは批准をもって締結とみなす、こう言っておるのです。しかも、単に一事務総長だけでない。美濃部さんも、やはり事前における承認には修正権があるのだということを、はっきり明記されておる。先ほど松本さんが言われました佐藤功さんも、やはり事前の承認の場合には当然修正権があるんだ、それは国会もみずから認めておるじゃないか、こういうことを書いておる。いやしくも、国会議員がみずから法律を作って認めておいて、自分の権限がないというようなことを言うのは言語道断である。これは明らかに、今まで間違った運営がなされておる。(発言する者あり)ですから、これは当然修正があり得る、こういうように解釈するのですが、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/130
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131・岸信介
○岸国務大臣 修正の権限があるかどうかという問題は、先ほど来質疑応答された通りでありまして、この出しておる議案に対して、国会が、承認を与えるか与えられないかということを決定する、それには条約そのものの内容をいろいろ御審議願い、それに関するいろいろな御意見からそういう結論が出るわけでありまして、先ほど来法制局長官が出し上げているように、修正ということは——いわゆる法律等における修正、法律案については、その修正の国会の御意見が直ちに法律としての効力を持つのであります。ところが、条約においては、多賀谷委員もお認めになっているように、国会が修正したって、そのままが条約の内容をなすのではない。それに基づいて行政府は交渉をすべきであり、もしも相手方がそれを承認すれば、新しいそういう案として提出すべきであり、もし承認しなかったら、できないことであります。そういうことから申しまして、法律の修正ということとは全然意味が違うのでありまして、いわば国会の、ほかのところはいいが、この点はどうしてもいかぬ、この点をこう改むべきだという一つの希望意見といいますか、そういう性質のものだと解釈すべきものであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/131
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132・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうしますと、この点はいかぬという希望意見は、付せられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/132
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133・岸信介
○岸国務大臣 私の申し上げておるのは、国会に出しておる議案としては、その議案に対して承認を与えられるか、与えられないかということを、御審議の結果きめていただくというのが、この条約に対する、われわれの出しておるこの議案に対しての国会の議決というか、そうなるべきものである。その際に、国会がいろいろな希望をおつけになることは、これは私は当然できることだと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/133
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134・多賀谷真稔
○多賀谷委員 アメリカはどうなんです。相手国のアメリカは、上院で一体その修正ができるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/134
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135・岸信介
○岸国務大臣 アメリカの憲法のことについては、事務当局よりお答えいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/135
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136・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 その点につきましては、アメリカの憲法のことでございますから、私が了解いたします範囲におきましては、アメリカの憲法では、上院の同意と助言によって条約が結ばれるということになっております。従いまして、同意をするかいなかというだけではなくて、助言の内容といたしまして、留保と申しますか、了解と申しますか、声明と申しますか、いろいろなことをつけておるようでございます。ただ、それはその上院の意見でございまして、それを政府、行政府がどう取り上げて、どういうふうに交渉するかということは、別問題になっておるというふうに了解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/136
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137・多賀谷真稔
○多賀谷委員 アメリカは、助言の場合は事前ですが、一応調印された場合には、同意を得るかどうかということです。当然、修正をしておるのですよ。相手国だって修正しておる。国会法は当然憲法を受けてできておる。その国会法は修正を認めておる。回付案ということを書いてあるが、修正でしょう。当然、回付案というのは修正意見です。先ほどから総理も言葉の端々に出されておるように、修正ですよ。修正がなければ、回付案というものはあり得ない。どうして違うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/137
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138・林修三
○林(修)政府委員 ただいまの点は、実は先ほどからお答え申し上げました通りに、国会法の八十五条の回付案という言葉につきましては、私どもは、先ほど来申し上げた通りのように解釈をいたしております。少なくとも政府はそういう解釈でございます。私どもは、これは憲法の条約の承認ということから、条約について、法律案と同じような修正ということはあり得ないことだ、かように考えておるわけであります。その場合に、国会がどういう御意見をお立てになるか、これは、もちろん国会の御審議権の自由でございまして、私がとやかく言うべきことではありませんが、こう直したらよくはないかという修正が希望される、あるいは修正すべしという決議をされる、これはもちろん、別に拘束されるわけでも何でもないわけであります。ただ、議案を修正するという意味の修正ということはあり得ない、そういうことを先ほどから申しました。こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/138
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139・多賀谷真稔
○多賀谷委員 どうも納得いかないのです。それは、一部希望意見を付するにしても、あるいは留保するにしても、結局、議案そのものでなければできぬでしょう。議案そのものでなければ、意見の付しようがない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/139
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140・林修三
○林(修)政府委員 先ほどからお答えいたしております通りに、議案は承認を求めておるわけです。従いまして、この承認を求めたその対象となっております条約の内容にもし不満とされる点がございまして、これはこう修正したらよかろうということであれば、それは別の附帯決議か何かでやることは、これはあり得ないことはございません。しかし、その場合には、その内容に同意がないのでございますから、決議としてはこれは不承認である、こういうふうに内容を変更すべしというような国会の御意思が表明される、そういうことじゃないかと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/140
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141・多賀谷真稔
○多賀谷委員 結局、その場合は回付案にならぬでしょう。一部意見を付しても、回付案でこないですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/141
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142・林修三
○林(修)政府委員 回付案の意味につきましては、先ほど御答弁いたしましたように、国会法の八十五条のいわゆる回付案の場合でございますが、可分な条約について一つの議案として議決した場合に、これを一部承認、一部不承認、これはやはり両院の議決が違ってもう一ぺんこれが回付される、こういうことになるのじゃなかろうか、こういう意味のことを私は先ほど申し上げました。この点は、昭和二十九年のときにも、同様なことを政府はお答えいたしております。それ以来、国会法の回付案の意味につきましては、そういう意味において解釈しておりました。今言われたような修正の希望意見の表明ということは、これは回付案と違います。回付案の意味につきましては、さっき申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/142
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143・多賀谷真稔
○多賀谷委員 明らかに修正と書いてあるのですから、その修正というのは、やはり区別して書いてない。法律案の修正とはこう、条約の修正はこうと書いてない。明らかに、前と同じように、あるいは法律案と同じように、修正という文句が使ってある。そうして、回付案ということがいわれておる。ですから、これは当然憲法に基づく国会法ですから、国会法は修正を建前に書いてある。ですから、国会の意思としては、修正をすることができるというのが当然である。そうしなければ、回付案の条項は要らないですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/143
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144・林修三
○林(修)政府委員 その点は何べんもお答え申し上げたわけでございますが、少なくとも私どもといたしましては、あるいは政府といたしましては、憲法の解釈から、国会法の規定は先ほど来申し上げたように解釈すべきものである、かように考えております。同じ修正でも、法律案の修正と予算の修正とは意味が違う。そういうことを国会法は一々書き分けてございませんけれども、私は、おのおの議案の性格から変わってくるのだ、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/144
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145・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうすると、たとえば、ある一条の適用は困る、こういうような場合にはどういうふうになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/145
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146・林修三
○林(修)政府委員 その一条の適用はどうしても因るというのが国会の御意思であれば、その条約については御同意が得られないことだと思います。同意すべきじゃないということになると思います。それは、そこをどう直してもう一ぺん出直してこい、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/146
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147・多賀谷真稔
○多賀谷委員 それは、二国間以外の、多数国間の一般条約についてもその通りですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/147
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148・林修三
○林(修)政府委員 それは私は同じことだと思います。また、その条約でかりにそういうようなものがあって、条約に留保を認める条項がありました場合に、これは政府に対して、そういうことをはっきりして、もう一ぺん出してこい、そういうことをおっしゃることだと思います。留保をつけるというのは、これは議案の修正では決してないわけです。それは国会の御意思で、この条項については留保をつけるという御決議があれば、またそれはそれに従って処置をする。議案の修正という問題ではないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/148
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149・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうすると、二国間の条約でも留保をつけられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/149
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150・林修三
○林(修)政府委員 二国間の条約は、これは申すまでもなく、二国間で留保をつけるということは普通はあり得ないことであります。多数国間であれば、あるいは留保条項がつくということはあり得ますが、二国間では、留保ということは両者の意思が合致しないということで、両者の意思が合致しなければ、それはもう一ぺん条約をし直すということでございます。しかし、条約の内容を変更するようなとりきめを、留保という形でやった例もないではございませんが、その場合の留保というのは、よほどこことは意味が違う、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/150
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151・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうすると、多数国の一般条約に留保をつけた場合は、どういう形で衆議院に返ってきますか。衆議院では賛成して、参議院で一条項についてその適用について留保した場合には、どういう形で返ってきますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/151
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152・林修三
○林(修)政府委員 先ほど申し上げました通り、議案そのものの修正ではないと申し上げております。従いまして、かりに参議院が、これは第何条には留保をつけるべきだという御決議があった場合には、一院の御決議である。それに対して、衆議院の方は、議案そのものが返ってくるのではなくて、また同様の御決議があれば、また国会のどっちかの御決議があれば、政府は当然それを参照してやるべきである。議案の回付という問題とは違うと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/152
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153・多賀谷真稔
○多賀谷委員 多数国間の条約では留保ができるということになれば、それは、やはり条文そのものが議案でなければ、できぬでしょう。多数国の場合には議案として出して、二国間の条約のときには議案でないというのは、おかしいじゃないですか。少なくとも留保をするためには、一般条約の条文は議案で出さなければいけない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/153
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154・林修三
○林(修)政府委員 私の申したことを、どうも私の申した意味に御理解いただいておらないように思います。多数国間の場合に、条文そのものを国会に出すということではございません。国会のある一院あるいは両院で、この条項には留保をつけるべしという意思の表明がある、そうした場合には、あるいは政府はそれに従って行動すべきであろうと思います。ただし、それがいかなる拘束力を持つべきかということは別問題でございます。そういう点は行政府のあれでございますが、条約の承認あるいは不承認ということは、別問題だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/154
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155・多賀谷真稔
○多賀谷委員 留保をつけるためには、議案として出なければ、留保できないでしょう。あなたの方は、今の話では、留保を認めるというのでしょう。留保を認めるというのは、議案として出なければ、留保はできません。そうすると、多数国間の場合はいいけれども、二国間の場合にはできないという話はないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/155
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156・林修三
○林(修)政府委員 いわゆる条約の留保ということは政府のやることで、国会の御決議は、これは留保したらどうかという意思にすぎません。そういう意味で、いわゆる条約そのものに対する留保をつけるか、つけないかということは、行政府のやることでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/156
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157・多賀谷真稔
○多賀谷委員 それは、参議院あるいは衆議院でも、一院で留保するというのは、これは留保するというはっきりした意思の表明をするわけです。議院として決議の内容です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/157
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158・林修三
○林(修)政府委員 その場合には、条約そのものにつきましては、続いて、承認されるか、されないかという問題と関連いたしますが、政府が必ずその条約の条項に従いまして留保をするということがはっきりすれば、あるいは承認、不承認……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/158
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159・多賀谷真稔
○多賀谷委員 政府じゃない、国会ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/159
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160・林修三
○林(修)政府委員 国会の留保ということは、直接にはあり得ないと思います。これは対外的には効力を発生しないものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/160
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161・多賀谷真稔
○多賀谷委員 留保をする決議を国会がするのです。外交はあなたの方がやるのです。政府は、それに基づいて、留保するという話をするのです。混同しちゃいかぬですよ。知っておって混同するのか知らぬけれども、混同して議論してはいかぬですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/161
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162・林修三
○林(修)政府委員 私は決して混同しておりません。混同しておらないからこそ、こういうことのお答えをしておるわけでございます。留保をするか、しないかということは、行政府のいわゆる外交権の処理の問題でございます。あるいは条約の締結権の問題でございます。国会における希望意思の表明というものは、ある条文を直せとか、直さなくてもよろしい、もう一ぺん考えてこいということと同じような意味の御表明だ、かように考えます。これは議案そのものに対する修正とかなんとかいう意味では決してないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/162
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163・多賀谷真稔
○多賀谷委員 留保というのは、広い意味の修正です。この条項だけを停止する、いわば削除でもいいのです。しかし、削除することは、多数国間の条約ですから、一国だけが削除するわけにいかぬので、これを留保という形になる。二国間では留保というのがないというのは、これは相手の国と自分の国だけですから、それは削除という形になるかもしれないけれども、多数国一般条約ですから、留保というのがあるのです。自分だけで削られないのです。そこでそれは当然修正の内容です。ですから、回付案の中にはそういうものがある。しかし、その前提は、やはり条約を議案として提案をしなければできないということになるでしょう。そうすると、多数国の一般条約は議案として提案できますけれども、二国間のものはできないという理論が立たない、こういうことを言っている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/163
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164・林修三
○林(修)政府委員 先ほどから申し上げたことで御理解をいただけることだと思っておるのでございますが、条約というのは、御承知の通りに、憲法から申しまして締結権——締結権ということは、多数国の条約につきましての、あるいは加入とか、あるいはしないとか、そういうものを全部含んだものだと思うのです。そういうことにつきましても、これは行政権がやることになっております。それについて加入していいか、あるいは批准してよろしいか、そういうことについての御承認を国会に得ることだ、それ自身は、結局、国会がそういう多数国間条約に入ることがいいか悪いかの御承認をするかどうかということだと私は思うわけです。それについて、多数国間の条約については、かりに留保できる条項があるといたしました場合に、行政府に対してそういう希望を表明される、これはあり得ないことじゃない。それは、議案そのものを国会が修正したから直ちに効力を発生するというものではないわけです。それは留保というものができる場合もございますし、できない場合もあるわけです。そういうことは行政府にまかされたことでございます。これに対して国会が御意思を御表明になるということはあり得ることでございますが、多数国間の条約であろうと、二国間条約であろうと、議案の出し方は私は同じことであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/164
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165・多賀谷真稔
○多賀谷委員 くしくも法制局長官ははっきりおっしゃったわけですが、結局、留保をしたということは、修正なのです。その意思を相手国に伝えるかどうか、あるいは黙示の同意を得るかどうかというのが政府なのです。ですから、留保するというのは、やはり国会として修正です。そして国会としてはそれができるなら、これは一般条約と二国間の条約を区別して扱うという必要はない、また、そのことはできない、こういうわけですね。こういう点は、今まで政府が、ことに頭のいい法制局長官あたりがおられて、議員が勉強していない点をついて、あなたの方で国会法を曲げて解釈しているからです。明らかに国会法では、修正ということを予想して、回付案ということを使っておる。いやしくも、時の事務総長が、原案を作成した者が、事前の承認には当然修正権を含むのだと書いてある。当時の責任者ですよ。当時の責任者が、事前承認には当然修正権を含むのだと解釈しておるのですから、これは当然疑義を持ってこの解明をしなければならぬと思う。今までこの解明ができなかったところに、これは私を含めてですが、不勉強さがある。国会としては、こういう重大な安保条約の改定に対して、われわれとしては、承認するかどうかという場合に、一体承認の中には修正権を含むかどうかということは、当然疑義解明をしなければならぬ責任があると思う。これはわれわれは当然そのことを考えなければならぬ。これを考えぬという人は不勉強きわまるのであって、その責任がわれわれにはある。また、今後そういう問題が起こった場合にどういうようにその責任を果たすか、明確にしなければならぬと思う。総理、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/165
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166・岸信介
○岸国務大臣 問題は、この国会法の解釈の問題が、一つの意見の相違になっておるようでありますが、言うまでもなく、国会法は憲法のもとにあって、憲法の範囲内においてこれを解釈していくべきことは、私は当然であろうと思います。そうして憲法の解釈、また条約の締結というこの趣旨から見まして、われわれは、この行政権にまかされておる条約の締結、ただし、それが効力を発生するためには国会の承認を経なければならない、こういうことで、こういう内容のものを締結した、その承認を得るということにつきまして、国会は、それを全体としていかぬという場合もございましょうし、その一部についてこのままでは絶対に承認を与えるわけにいかないという場合もあろうと思います。そういう場合においては、いわゆる承諾を得ることができない。その案件については否決の意思が表示されることだと思います。そうしてなお、それについてこうこうしろという、その国会におけるところの御審議なりあるいは御意向なりというものをくんで、政府がさらに新しい交渉をしてそういうものを、作るか、あるいは政府の考えでもって、そういうふうに内容を変えたのでは意味をなさないから、そういう条約は全然締結しないか、これは政府が行政権にまかされておる範囲内で判断すべき問題だと思います。いずれにいたしましても、いわゆる法律における修正権、これは法律については、立法府として国会の意思が直ちに法律として効果を生ずるのでありますけれども、そういう意味における条約の修正というものは、性質上あり得ないことだ。国会がどうおきめになりましても、相手方のある問題でありますから、それにおいて交渉していかなければならない。従って、それならば、政府が締結をしたところのこの条約について承認を得ることができないという問題でございますから、従って、国会法の回付案というものにつきましては、先ほど来法制局長官がお答えをしておりますように、きわめて例外的な、まれな例でありますけれども、一つの条約のうちに可分なものであり、あるいは数個の条約をいろいろな関係で一括して出して、その一部に対しては承認を与えられ、一部に対しては承認を与えないというようなことが、この表示された場合における扱い、こう解釈することが、憲法の解釈と国会法の解釈を調整する道であると私は思う。そのことについては、すでに今法制局長官がお答え申し上げましたように、かつて二十九年に論議されて、そういうふうな解釈を当時も答えられており、そうして、自来そういうことを一貫して政府もとってきておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/166
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167・多賀谷真稔
○多賀谷委員 総理が憲法の話をされますけれども、憲法からは、そういうことはどこからも出ないのですよ。憲法には、国会は国の最高機関であると書いてある。憲法から今のお話は出ないのですよ。憲法では、政府に条約の締結権があるから、国会で修正できないということはないのですよ。総理、どうですか。そういう議論は憲法からは出ないのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/167
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168・林修三
○林(修)政府委員 先ほどから……。(「総理だ、総理だ」と呼ぶ者あり)憲法の解釈から申し上げておりますが、総理は……(発言する者多く、聴取不能)憲法七十三条に、内閣が条約の締結をするということが書いてございます。その条約の締結について国会で御承認を求める、そういうことでございます。憲法においては、待政権の行使、かように書いております。そういうところから申しまして、普通の立法作用とは違うわけであります。憲法四十一条に、国会は国権の最高機関である、かようにございますけれども、これは憲法上、あらゆることについて、すべてのことができるわけではございません。たとえば裁判の作用、行政の作用、いわゆる三権分立の建前をとっておりますが、三権分立の建前から、ある事項については内閣の権限であり、それについては、ただし国会が関与すということであります。先ほど申し上げたように、条約は、そういう性格から、国会では承認あるいは不承認、こういうことになると思うわけでございます。この点は、たとえばほかの行政作用につきまして、国会の御承認を得るというような案件もいろいろございますが、それについても私どもは同じように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/168
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169・多賀谷真稔
○多賀谷委員 政府の方の解釈でいけば、これは憲法から、条約締結の権限は内閣にあるからということですが、そういう場合なら、調印前にも何もできないのですよ。どうですか、総理、調印前でも何もできないのですか。調印前も、承認も何もできないのですか。修正権はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/169
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170・岸信介
○岸国務大臣 調印前におきましては、両国の間に、われわれ、行政権に基づいて外交上交渉しておるわけでありまして、調印するまでは内容的にはまだ確定してないわけです。従って、それは修正も何もないわけであります。もちろん、民主政治でありますから、各方面のいろんな御意見を承って、それを参考として政府がこの交渉をしていき、そうして調印をすべき最後の案を決定して調印する、こういうわけでありますから、調印前に修正権があるかないかというような問題は、当然起こってこないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/170
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171・多賀谷真稔
○多賀谷委員 調印前には、承認を受けられるということはないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/171
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172・岸信介
○岸国務大臣 普通の場合は、私はないと思います。法律論からいって、調印によって内容が確定するのが普通でありますから、従って、その前に、不確定なもので承認を求めるということはあり得ないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/172
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173・多賀谷真稔
○多賀谷委員 ところが、あるのですよ。現にわれわれ議員に配られた衆議院先例集の中にもある。これは三件出ておる。「日本国との平和条約第十五条(a)に基いて生ずる紛争の解決に関する協定の締結について承認を求めるの件」これは調印前ですよ。「国際連合の特権及び免除に関する国際連合と日本国との間の協定の締結について承認を求めるの件」これはともに第十三回国会、その次に、第十九回国会には、「奄美群島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件」現に調印前に三件もあるじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/173
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174・岸信介
○岸国務大臣 それはいずれもイニシアルをしたところの協定でありまして、私の申し上げておるのは、絶対にそれがないとは、先ほど来申し上げておりません。私はそんなことは申しておりません。通常においては、そういう場合はないということを申し上げております。それは内容が確定しないからということを理由にいたしております。ところが、今のイニシアルをしているところのごく少数の場合において、そういう例があるということは、これは内容が確定をいたしておるからでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/174
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175・多賀谷真稔
○多賀谷委員 今私が読み上げました三つの条約は、調印前に承認を求めておる。いやしくも総理は、二分くらい前に言ったことを、私は言ってないと言う。これは速記録を調べて私は問題にしたいと思うのです。調印前にあるかないかということを聞いておるのです。ほかのことを聞いているのじゃないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/175
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176・岸信介
○岸国務大臣 私先ほどお答え申し上げましたように、この内容が確定しない場合において、これが修正ということはあり得ないということを申したのでございます。そうして通常の場合において、調印前におきましては、この内容が確定するということは一般にはない。しかしながら、今おあげになりましたように、イニシアルをして、内容がすでに確定をしておる問題に関しましては、そういう事例もあることは私も承知いたしておりますし、またそのこともあり得る。しかしながら、通常の場合においては、調印の前におきましては、内容が確定しないから、そういう不確定なものについて承認を求めるというようなことはない、従って、修正もあり得ない、こういう意味で申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/176
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177・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうすると、同じ条約でも、内容が確定しない場合の前の条約には、その承認に修正があるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/177
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178・岸信介
○岸国務大臣 これは正確に申しまして、調印とイニシアルというものは違っておりますけれども、しかしながら、イニシアルしたことは、これは内容的に確定をいたしておりまして、従って、修正という問題は、調印したものも、あるいはイニシアルしたものにつきましても、条約については、われわれは、国会においてそういうものはないと言うことができると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/178
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179・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私はこれ以上ここで総理と議論したくない。それは国会で国会がきめるべきものです。政府がいかに提案しようとも、国会自体がきめることです。しかも、その内容が確定しない前には、この承認には当然修正ができるということを、今の事務総長も書いておる。今の事務総長が「国会運営の理論」という本に書いておる。そうしてその前の事務総長も、事前承認には修正意見を含むと、歴代にわたって書いておるのです。われわれは、こういう状態の中で、これ以上審議することはできない。少なくとも、両事務総長を呼んで、これについて当然審議すべきだ。やり直すべきです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/179
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180・小澤佐重喜
○小澤委員長 穗積七郎君。
〔「休憩々々」「元の事務総長が書い
たんだ」と呼び、その他発言する
者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/180
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181・小澤佐重喜
○小澤委員長 どうぞあまり興奮しないで下さい。——静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/181
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182・穗積七郎
○穗積委員 大へん大事な条約承認の問題ですから、先ほどからの御答弁でまだ不明確な点を、この際、提案理由の説明に入る前に、お尋ねしておきたいと思うのです。
ただいま承認を求められております条約について、内容については承認を求めているが、関連があるけれども、文書そのものは承認を求める対象になっていないというような、あいまいな答弁が、外務大臣から行なわれました。そこで、私は具体的に一つ一つお尋ねいたしますが、安保条約本文は承認の対象になっておりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/182
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183・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 締結について承認を求めておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/183
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184・穗積七郎
○穗積委員 その次に、交換公文の第一、条約第六条の実施に関する交換公文は、承認の対象になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/184
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185・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 同じ意味で、締結に対して承認を求めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/185
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186・穗積七郎
○穗積委員 これはアメリカでは承認の対象になっておりますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/186
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187・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 アメリカでは承認の対象になっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/187
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188・穗積七郎
○穗積委員 それでは次に、吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文は、日本国会に対する承認の対象になっておりますか、どうですか。同時に、アメリカにおいては当然承認の対象になっていないと思いますが、この点も明らかにしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/188
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189・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 吉田・アチソン交換公文は、条約第六条と同じ扱いでございます。承認の対象になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/189
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190・穗積七郎
○穗積委員 おりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/190
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191・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/191
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192・穗積七郎
○穗積委員 おりますね。アメリカではどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/192
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193・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 アメリカではなっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/193
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194・穗積七郎
○穗積委員 その次に、相互防衛援助協定に関する交換公文は、これも日本国会に対する承認の対象としてお出しになっておられますか、どうですか、同時に、アメリカにおいてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/194
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195・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 その通りでございます。アメリカにおいてはなっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/195
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196・穗積七郎
○穗積委員 なっていない。次に、駐留軍に関する行政協定、いわゆる協定ですね。この前は、国会の承認を経ずして行政協定として取り扱われましたが、今度は、これは承認の対象としてお出しになっておられますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/196
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197・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/197
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198・穗積七郎
○穗積委員 アメリカの国会においては、この協定は承認の対象になっておりますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/198
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199・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 ならぬだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/199
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200・穗積七郎
○穗積委員 なっておらない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/200
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201・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/201
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202・穗積七郎
○穗積委員 次にお尋ねいたしますのは、協定第十二条6(d)に関する交換公文は、これは日本国会に対する承認の対象になっておりますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/202
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203・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 参考資料になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/203
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204・穗積七郎
○穗積委員 アメリカでも、従って当然なっておりませんね。内容についてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/204
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205・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 同じことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/205
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206・穗積七郎
○穗積委員 先ほどのあなたの御答弁だと、承認を求める対象の文書にはなっていないけれども、内容については承認を求めるのだという意味の御発言がございましたが、それは一体どこのことを言っておるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/206
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207・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 そういうことは言っておりません。参考に出す文書と、承認を求める文書と、こう分けて申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/207
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208・穗積七郎
○穗積委員 内容については、それでは審議の対象になりませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/208
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209・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 御審議になる参考資料として、そういう意味での御審議は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/209
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210・穗積七郎
○穗積委員 いいえ、そうではありません。私の言うのは、承認を求める行為に対する審議です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/210
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211・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 締結の承認については問題になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/211
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212・穗積七郎
○穗積委員 次にお尋ねいたしますが、岸総理大臣とアイゼンハワー大統領との間における共同コミュニケは、当然これは承認の対象になっておりませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/212
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213・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 なっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/213
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214・穗積七郎
○穗積委員 ところが、これは非常に大事な内容を含んでおる。政府が今まで説明してこられたところでは、特に第二項後段におきます事前協議に関するアメリカ政府の意思表示として、非常に大事なものとして取り扱われておられるけれども、これは国際取りきめの文書としては、効力的にどういう地位を占めておるのか、法律上の効力についてお尋ねいたします。共同コミュニケに関する法律上の効力……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/214
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215・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 両行政府の当事者が、その意思をお互いに確認し合った、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/215
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216・穗積七郎
○穗積委員 ですから、その法律上の効力を聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/216
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217・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 効力という意味はどういうことでございますか、質問の要旨がはっきりいたしておりませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/217
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218・穗積七郎
○穗積委員 では、お尋ねいたしますが、条約、協定あるいは議定書、共同宣言等、国際間における取りきめの文書というものは、いろいろな形式があります。そういうものにおいて、共同コミュニケというものは、一体法律上の効力はどういう地位を占めておるかということをお尋ねしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/218
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219・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 両行政府の首脳者の共同コミュニケでございます。従いまして、その意味において、政治的な非常に大きなウエートを持っておることは申すまでもございませんが、条約と同じだというわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/219
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220・穗積七郎
○穗積委員 非常に御答弁が不明確でございますが、これは一体法律上のオブリゲーションを両方が持っておるのか、持ってないのか。政治上のオブリゲーションはあっても、法律上のオブリゲーションはないとおっしゃるのかどうであるか、どちらであるかをお尋ねしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/220
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221・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 むろん、総理とアイゼンハワー大統領とが、お互いにその意思を確認し合っておるのでありまして、その意味においては、非常に重要な文書だと思います。しかしながら、条約と同じ効力を持っておるのではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/221
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222・穗積七郎
○穗積委員 この問題は、今度の安保審議においても非常に重要な問題でございます。内容については、これから審議に入るならば、その後にいたしますが、この審議にどういう態度で一体国会は臨むのかというこの取り扱い上の問題が、先ほどから問題になっておりますから、事前にお尋ねしておるのです。明確にしていただきたい。私のお尋ねするのは、条約との比較において、その効力に軽重があるかないかということをお尋ねしておるのではなくて、これは単に政治上の義務は持っている、けれども法律上の義務はないと解釈しておられるのか、条約との間における径庭はあっても、条約と同様の法律上の効力を持っておるものであるかどうかということをお尋ねしておるのですから、その点を明確にしていただきたい。すなわち、政治的なオブリゲーションはあるが、法律上のオブリゲーションはないと解釈されるか、軽いけれども、法律上のオブリゲーションがあると解釈されているのであるか、どちらであるかということをお尋ねしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/222
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223・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 御承知のように、この岸・アイク声明の中に、条約の関係において触れておるところがございます。それは、われわれは交渉当時のお互いに確認し合って進めて参りましたものを、さらに両政府の首脳者が確認をいたして参っておるわけであります。その意味において、非常に重要な文書であることは申すまでもないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/223
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224・穗積七郎
○穗積委員 効力は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/224
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225・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 両行政府の解釈を統一してここに表わしておるわけでございますから、そういう意味で、この声明が非常に重要であることは申すまでもないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/225
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226・穗積七郎
○穗積委員 どういうわけでしょうか。私はそういう説明はわかっております。重要な合意の文書であるということはわかっておるけれども、法律上の効力を持っておるのか、政治的な拘束力を持つだけのものであるか、どっちであるかということを聞いておるから、その点、一言だけお答えいただけばよろしい、どっちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/226
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227・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 共同声明にはいろいろな事項がございます。従いまして、その内容の中で、必ずしも条約に直接関係しない問題もあるわけでありまして、岸・アイク共同声明そのものが、全部関連があるというわけではございません。その中で、条約の解釈等についてお互いに意見を述べ合っておりますという点について、その意味においては、解釈としての効力があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/227
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228・穗積七郎
○穗積委員 法律上の効力があるとおっしゃったのですか、ないとおっしゃったのですか。法律上の効力がありますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/228
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229・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 法律という意味がわかりませんけれども、両政府の首脳者をこの共同声明において拘束しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/229
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230・穗積七郎
○穗積委員 その拘束力は、法律的ですか、単なる政治的なものであるかということを伺っておるのです。はっきりしていただきたい、非常に大事な内容を持っておりますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/230
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231・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 普通の意味におきます、いわゆる国際間における合意された条約と類似の文書だというわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/231
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232・穗積七郎
○穗積委員 どういうわけではっきりしないのですかね。法律上の拘束力を持っておるか、単なる政治的な約束であるのか、どちらかということですから、それをはっきりしていただきたいのです。重要な文書であることはわかっている。そんなことを聞いているんじゃありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/232
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233・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 はっきりしておると思いますが、普通の条約のような、国際約束としての効力はないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/233
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234・穗積七郎
○穗積委員 効力はない、ございませんとおっしゃったのですか。法律上の効力はないとおっしゃったのですね。どうですか、もう一ぺんはっきり。よく聞こえません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/234
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235・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 もともと、これは法律文書ではございません。法律文書ではないのであります。両政府の最高責任者が出しました、共同の意思表明であるコミュニケであります。従って、政治的効力は、拘束力をお互いに持っておりますけれども、どういう意味でおっしゃるのか、法律的という意味がわかりませんが、国際約束ではない、いわゆる国際条約と同じ意味の効力はないのだということは、先ほど来申し上げておる通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/235
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236・穗積七郎
○穗積委員 外務大臣はどういうわけか、非常にあいまいにされておりますから、これは御本人である、当事者である岸総理大臣、岸全権にお尋ねいたします。あなたは、法律上の拘束力をお互いに認めるつもりで共同コミュニケをお出しになりましたか、あるいは単なる政治的なる約束としてお出しになりましたか、いずれであるか、あなたのお考えを伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/236
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237・岸信介
○岸国務大臣 この法律的といわれる言葉が、条約でございますので、国際間の取りきめでございますので、そのなにについて先ほど来外務大臣が申しておるように、国際上の条約と同じ意味の拘束力は持っておらないということを申しております。それが条約と同じ効力を持つことが、あなたの御質問の法律的という意味であるかどうか、私、法律的という言葉が、こういう場合にどういうふうな意味で用いておいでになるか、はっきりしませんから、そういう意味において、条約と同じようななにではないということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/237
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238・穗積七郎
○穗積委員 ちょっとお尋ねします。非常に大事な点ですから。しかも、大きな関係を持っておるし、政府も——内容については、私はきょう触れません、形式のことですから。内容は、後に審議に入りましてからお尋ねいたします。
あらためてお尋ねいたしますが、かつて重光外務大臣当時、在日米軍が核兵器の持ち込みはしないかという心配が、日本国民の間にほうはいとして起きてきた。これに答えて重光外務大臣は、時のアリソン・アメリカ代表と、核兵器持ち込みについては、日本政府の同意なくしてやってもらっては困るという申し合せをされたことがございます。これは口約束であって、文書になっておりません。録音もとられていない。しかしながら、これは正確にあるということを、政府の責任において、当時の外務委員会において答弁されて、政府の解釈は、これは法律上の効力を持っておる、文書にもなっていない、政府間代表の正式な、権威ある者の間の申し合せで、口約束であるけれども、これは単なる政治的な約束、道徳的な約束ではなくて、明らかに法律、国際法上のオブリゲーションをお互いに持っておるから、日本の同意なくして、合意なくしては、コンセントまたはアグリーなくしては、絶対に日本に核兵器は持ち込まないから、安心しなさい、こういう説明をされた。これは明らかに国際取りきめにおける法律上の効力を持つものとして、政府は説明されておられます。この重光・アリソンの核兵器持ち込みに関する申し合わせと、この共同コミュニケとは、両方とも合意によるものである。一方は文書になっていないが、これは文書になっている。そのときに、法律上の効力は一方はあって、これはないということは、どういうことであるか。その軽重を、理由を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/238
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239・岸信介
○岸国務大臣 これは要するに、共同声明というものは、国際的に、最近、いろいろなところにおいて、各国の首脳者の往復が盛んである場合において出されておるものでございますが、これはおのおのの見解とか、あるいは意思を表明し合うという性格のものであろうと思います。いわゆる国際的の約束というような意味の形式のものでは私はなかろうと思います。お互いに意思が合致し、お互いの見解を表明するということが、共同コミュニケというものの意味であろうと思います。そういう意味において、いわゆる国際上の約束である国際条約であるとか、あるいは取りきめというような意味における拘束力を持っておるものとは解釈すべきでなかろう、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/239
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240・穗積七郎
○穗積委員 これはちょっと納得がいかない。たとえば、第一項における問題について、この国際情勢の判断等について、大統領から説明があって、総理大臣は賛成した。これは今おっしゃるようなことでしょう。第二項においても、第二項の後段において、あなた方がおっしゃる、これから問題になる事前協議について、ここではっきり重ねて確約をとっておるから、だからこれについては心配はない、すなわち、法律上の効力をジャスティファイするためにこれを使っておる。それじゃ、これはナンセンスだということですね。これはナンセンスだと解してよろしゅうございますか。その点はっきりしていただきたい。これは先ほど言われたような、単なる外交方針に関する情勢判断、または外交的な基本方針のものの考え方、思想について、お互いに話し合ってコミュニケを発表したという性質のものではなくて、こちらからあなたがウイッシェズという言葉を使っております。日本側はこれをウイッシェズという言葉を使っておられる。しかし、これはほんとうは、われわれから言わせれば、デザイアというべきところなんですが、それがウイッシェズということになっております。これは単なる意見の交換ではない。外交情勢や国際情勢の判断の意見交換ではなしに、内容的に、こちらから申し入れがあり、ウィッシェズであるけれども、申し入れをして、それに対して向こうからの答えが約束されておる約束文書です。約束内容です。そういうものが、単なるコミュニケであるから、この内容は単なる言いっぱなし、聞きっぱなしなんだと言われるのかどうか。それだから私は聞いておるのだ。あなた方は、都合のいいときは、これは条約に準ずるような効力があるかのごとく説明し、都合の悪いときは、これは、この条約とは全然別問題であるというような、勝手な説明をされるから困るのですよ。だから、どっちかにはっきりしておきなさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/240
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241・岸信介
○岸国務大臣 その条項は、先ほど外務大臣も申しておるように、事前協議の対象とするという交換公文が、今度御承認を求める文書の中に入っております。この事前協議の対象とするということの意味につきまして、日本側が一体ノーと言えるか言えないのか、あるいはノーと言った場合に、アメリカがその意思に反した行動ができるのかどうかということが、この論点の中核をなしておることは御承知の通りであります。その点に関しては、外務大臣がしばしばお答えを申し上げておるように、従来の交渉の過程において、日米両国とも、協議が成立するためには合意が必要であり、従って、日本がノーと言う場合もある、イエスと言う場合もある。ノーと言った場合において、それに反してアメリカは行動しないという了解が両方の間に十分成り立って、そうしてこの事前協議の主題とするということがきめられたということを、外務大臣が国会におきましてしばしば説明をいたして参っております。この事柄を、その法律の解釈といいますか、交換公文の解釈について、私とアイゼンハワー大統領との意見が、従来の外務大臣とマッカーサー大使その他との間の交渉の経緯においての両国の了解と、同じであるということを再確認をした意味において、これが述べられておるのでございます。こういうことがその本旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/241
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242・穗積七郎
○穗積委員 御答弁は納得が参りませんが、伺うと、両党理事の間で、ここで一ぺん休憩をして、理事会を開きたいということのようでございますから、私は留保いたしまして、この問題は後の機会にさらにお尋ねいたしたい。アリソン・重光申し合わせと、これとの比較についての論拠が明確になっておりませんから、これは重ねて留保いたしておきます。ですから、なお二点だけ簡単にお尋ねをいたしまして、一応打ち切ることにいたします。
第一点は、先ほどから問題になりました点ですが、条約の批准の場合には、全文を取り消して否決してしまう場合と、それから、全文をそのまま承認をして、そのまま批准する場合とありますね。その中間に、制限または留保ということがあり得るわけです。もとより、制限または留保の行為を行なうものは政府でございます。行政府であることは明瞭である。ところが、その行政府がみずからの意思によって制限または留保をつける場合もあるし、もう一つの場合は、国会の決議に従って留保または制限をつける場合があり得る、そう解釈をせざるを得ませんが、そう解釈してよろしゅうございますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/242
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243・林修三
○林(修)政府委員 その点は、先ほど申し上げました通りに、普通の二国間条約につきましては、普通の場合に、留保とか制限ということはあり得ないと思います。これは要するに、内容が一致しないことになりますから、そういうことはあり得ませんが、多数国間条約につきましては、場合によっては留保を認める場合もあり得るわけであります。しかし、その留保は、あくまでも条約の締結権を持っておる内閣がやることでございます。しかし、国会においてその条約の審議にあたって、こういうことをすべきであるというような一つの意思の表明があるということは、これは国会の御意思によってきまることでございまして、内閣においてとやかく言うべきことではない、さように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/243
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244・穗積七郎
○穗積委員 もう一点この際お尋ねしておきたいのは、これは内容を審議いたしました後に、この条約の違憲性についてわれわれは多くの点を見出すわけです。そういうことがございますから、審議に入ります前に、内閣総理大臣にお尋ねしておきたいと思いますが、条約と憲法との関係について、すなわち、憲法九十九条と九十八条との関係について、この際明確にしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/244
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245・岸信介
○岸国務大臣 九十八条の二項の「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」、この一項の方には条約は入っておりません。二項のこの関係において、憲法違反の条約という問題につきましては、われわれは、二国間において、政府として、そういう憲法に違反するような条約を締結してはならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/245
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246・穗積七郎
○穗積委員 留保して次の機会に譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/246
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247・小澤佐重喜
○小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後四時八分休憩
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午後五時三十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/247
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248・小澤佐重喜
○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の締結について承認を求めるの件、及び、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、右両件を一括議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/248
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249・小澤佐重喜
○小澤委員長 まず、政府側より趣旨説明を聴取いたします。藤山外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/249
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250・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 ただいま議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の締結について承認を求めるの件、及び、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を一括御説明いたします。
現行安全保障条約は、その締結以来、多年にわたりわが国の平和を守り、安全を確保するため重要な貢献をして参りましたが、他方、同条約により築かれた日米安全保障体制を堅持しつつ、現状に即するよう合理的な改定を加えることは、国民の強い願望であり、また、政府の長年の懸案であったのであります。しかるところ、昭和三十二年、岸総理大臣とアイゼンハワー大統領との会談によりこれが改定の端緒が開かれ、さらに、翌三十三年九月、本大臣とダレス国務長官との間に条約改定交渉開始の話し合いがまとまり、同年十月より交渉は開始されたのであります。自来一年数カ月、この間国内においても十分に論議が尽くされ、これに並行して改定交渉も進捗し、ついに本年一月十九日、ワシントンにおいて新条約、新協定及び関係文書の署名を見るに至ったのであります。
新条約は、日米両国間の安全保障体制を維持しつつ、その基礎たる現行条約につき、従来指摘せられてきたもろもろの不備な点を改めたものでありますが、その要点といたしましては、まず第一に、この安全保障体制と国際連合との関係を明確にしたことでありまして、条約が国連憲章の趣旨精神にのっとったものであることを明らかにするとともに、両国が国際連合の平和維持の任務が一そう効果的に遂行されるように、これを強化することに努力すべきことを定めております。第二に、米国のわが国防衛援助義務を明定したことであります。第三には、条約の実施全般を日米両国間の協議の基礎の上に置き、特に、合衆国軍隊のわが国への配置及びその装備における重要な変更、並びに、同軍隊が施設区域を条約第五条の規定に基づいて行なわれるもの以外の戦闘作戦行動のための基地として使用することについては、別に交換公文をもって事前の協議にかからしめることとしたことであります。さらに、第四に、従来両国間に存在した安全保障体制を、広範な政治、経済上の協力関係の基礎の上に置き、この協力関係をますます促進すべく努力することといたしました。第五に、現行条約には明確な期間の定めがなかったのに対し、締約国の自主性と両国間の安全保障関係の安定性とをあわせ勘案して、条約発効十年の後は、いずれの締約国も、一年の予告をもってこれを廃棄し得る旨の規定を設けた次第であります。これらの改正を行ない、新条約を締結するにあたりまして、わが国の憲法の規定に十分な注意を払い、日本国の義務を厳に憲法のワク内のものといたしましたこと、もちろんでありますが、新安保条約全体として、わが憲法の精神に完全に合致しているものと確信しております。なお、この条約には、事前協議に関する交換公文のほか、さらに二つの交換公文が付属しておりますが、これらは、朝鮮動乱に対する国際連合の措置に対しわが国が従来通り協力することを明らかにし、また、安全保障条約の切りかえにより相互防衛援助協定に影響が及ぼされることのないようにする必要から、それぞれ取りかわされたものであります。
新たに署名されました地位協定は、現行の行政協定を基礎とし、これに、同協定従来の運営の経験に照らし、かつ、他国の同種規定を参考としつつ諸般の改善を加えたものでありまして、施設区域の使用に関する規定の改善、米軍の軍人、軍属及び家族の日本からの送り出しに対する米国の協力、税関検査免除対象の縮小、米軍関係労務者の保護、いわゆる特殊契約者の指名の制限、民事上の請求権の処理に関する規定の改正、いわゆる防衛分担金条項の削除その他協定全般にわたって幾多の改善を見ることになった次第であります。
わが国は、もとより国際連合の安全保障措置によりその平和と安全を確保することを理想とするものであります。しかしながら、現在、国際連合の平和維持機構としての力は遺憾ながら十分でないといわざるを得ない状況にありますので、国際連合の平和維持機能を補完するため、国際連合憲章の認める安全保障措置として、共通の信条と目的を有する米国との安全保障条約によりわが国の平和と安全を確保せんとするものであります。しこうして、この条約が他のいかなる国をも脅威しない全く防御的性格のものであることは、条約の条文及び精神より明白な事実であり、しかも、条約の定める防御のための手段が発動を見ずして、両国がすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きることこそ、この条約の真の目的なのであります。新条約及び新協定の締結につき国会の承認を得、発効の運びとなります暁には、政府は、この平和と自由のための条約の基盤の上に、ますます平和と善隣と繁栄のための外交の推進に努力を傾注いたす所存であります。
よって、ここにこれらの条約及び協定の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/250
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251・小澤佐重喜
○小澤委員長 松本七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/251
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252・松本七郎
○松本(七)委員 一つ委員長に、これは議案じゃない、付属文書ですけれども、整理の都合上ちょっと伺っておきたい点があるのです。先ほどの疑義解明の過程で、議案はこの紙きれ一枚ということがはっきりしたのですが、この付属文書にもいろいろ区別がつけてあるのです。その中で、ちょっとわからない点がありますので、委員長がお答えできなければ、どなたでも委員長の御指名による人に御答弁願います。
まず第一に、この条約の方を見ていただくと、表題に「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」こう書いて、一つのとじになっているわけです。これをあけますと、一ページに、表題と同じ文句で「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」こうなっているんですね。この一まとめにしたものの表紙の題と、それから条約の冒頭に掲げてある題と全く同じなんですが、これは間違いじゃないかどうか、一応確かめておきたい。これで間違いないんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/252
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253・小澤佐重喜
○小澤委員長 これは政府の方ですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/253
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254・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 同じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/254
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255・松本七郎
○松本(七)委員 同じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/255
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256・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/256
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257・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、この安全保障条約というのは、六ページまでなんですね。そのあとは交換公文となる。交換公文と、この相互協力及び安全保障条約をまとめたものを上の表紙にするのなら、一番上の表紙は、条約等とか、何かなければおかしいんじゃないですか。そうでしょう。何かこれは間違いじゃないかと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/257
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258・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 これは従来の慣例によったわけでございまして、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の締結に関する件といたしまして、その交換公文三つを付属として含んでいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/258
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259・松本七郎
○松本(七)委員 いや、この表紙ですよ。この中の一部とだけ、この表紙の題が一致している。交換公文を含むのなら、表紙に、これ及び交換公文とか、等とか、何かを入れないと、これは含んだことにならないんじゃないですかというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/259
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260・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 広い意味でございます。含んだ意味で表紙をつけてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/260
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261・松本七郎
○松本(七)委員 それからもう一つあるのです。この五ページのまん中に、「千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。」こうなっているわけですね。そうしてこの英文もついておるわけですよ。ところが、この英文には参考という判が押してない。付属文書の中でも、わざわざ参考という判の押してあるのと、ないのとある。そうすると、この条約文は参考という判が押してない。そして「正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。」として、これに参考の判を押さずに出してくると、一つの議案じゃないけれども、付属文書の中の、同等で、ここにわざわざ参考という判を押したものとはまた違った意味がこれにあるのでしょうか、そこのところを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/261
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262・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 日本語、英語ともに正文でございますから、御説の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/262
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263・松本七郎
○松本(七)委員 そうですか。それは今後の審議の前提ですから……。それから、参考と書いてあるのと、ないのと、同じ付属文書といわれる中で区別してあるのは、どういうところで区別してあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/263
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264・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 ただいま問題となりました、締結の承認の対象になっているかどうかということで、締結の承認の対象になっていないのは、参考という文字を押したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/264
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265・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、締結の承認の対象になっているか、なっていないかというのは、何を基準にしてきめるのですか。これはどうせ後ほどまた詳しく解明しなければならぬけれども、形式を分けてあるから、なぜ分けたかという理由をもう少し聞いておかないと今後困るのですが、内容を見ると、行政協定なら行政協定のさらに詳しく述べたものが参考文書になっている。そうすると、内容的には性質は同じものなんですね。それをなぜ形式をこう分けたかということをちょっと聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/265
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266・林修三
○林(修)政府委員 これは結局、憲法七十三条で、その締結について国会の御承認を得べきいわゆる条約、憲法七十三条の三号でいう条約の範囲に入るものには、参考ということは書いてございません。そうでないものは参考になっております。その基準は、従来御説明していると思いますが、いわゆる国家間の約束で国家間を国際法的に拘束する性質のもの、これは憲法七十三条でいう条約、名前は協定であろうと、ほかの名前をとっておろうと、これはそうである、そういう解釈でございます。参考としてある方は、そういう意味の、憲法七十三条でいう条約ではない、つまり、それに付属してそれを解釈し、あるいはそれに付属して行政府限りできめた取りきめ、そういうものは、憲法七十三条でいう、締結について国会の御承認を得べきものでない、こういう解釈で参考としたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/266
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267・松本七郎
○松本(七)委員 今の御答弁は答弁になっていない。憲法七十三条できめた条約の承認の対象でないということは、何によってきめるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/267
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268・林修三
○林(修)政府委員 それはただいま申し上げましたが、結局、国家間の国際法的な権利義務をきめたものかどうかということによって区分しておるわけでございます。いわゆる行政府限りで、行政府の権限内でできますものは、従来からの取り扱いも、必ずしも憲法七十三条三号の「条約」ではない、かような解釈でやっております。そこに区別があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/268
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269・松本七郎
○松本(七)委員 これが実は非常に問題なんです。これをやっておると、またさっきの疑義解明のことになってきますし、せっかく両党で話し合ったのですから、この際はこの程度にしておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/269
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270・小澤佐重喜
○小澤委員長 この際、お諮りいたします。
ただいま議題となっておりまする条約二件の審査に関しまして、参考人を招致し、その意見を聴取したいと存じます。これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/270
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271・小澤佐重喜
○小澤委員長 御異議がなければ、さよう決定をいたします。
なお、参考人の選定につきましては、委員長に一任を願いたいと存じます。御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/271
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272・小澤佐重喜
○小澤委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。
次会は、来たる二十三日午前十時より開会することとし、参考人の意見を聴取することといたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後五時五十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00219600219/272
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