1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十五年三月十五日(火曜日)
午前十時二十五分開議
出席委員
委員長 小澤佐重喜君
理事 井出一太郎君 理事 大久保武雄君
理事 櫻内 義雄君 理事 椎熊 三郎君
理事 西村 力弥君 理事 松本 七郎君
理事 竹谷源太郎君
安倍晋太郎君 愛知 揆一君
秋田 大助君 天野 光晴君
池田正之輔君 鍛冶 良作君
鴨田 宗一君 賀屋 興宣君
小林かなえ君 田中 龍夫君
田中 正巳君 渡海元三郎君
床次 徳二君 野田 武夫君
福家 俊一君 古井 喜實君
保科善四郎君 毛利 松平君
山下 春江君 飛鳥田一雄君
石橋 政嗣君 岡田 春夫君
黒田 寿男君 田中 稔男君
戸叶 里子君 中井徳次郎君
穗積 七郎君 森島 守人君
横路 節雄君 大貫 大八君
田中幾三郎君 堤 ツルヨ君
出席国務大臣
内閣総理大臣 岸 信介君
外 務 大 臣 藤山愛一郎君
国 務 大 臣 赤城 宗徳君
出席政府委員
内閣官房長官 椎名悦三郎君
法制局長官 林 修三君
防衛庁参事官
(長官官房長) 門叶 宗雄君
防衛庁参事官
(防衛局長) 加藤 陽三君
調達庁長官 丸山 佶君
外務大臣官房審
議官 下田 武三君
外務事務官
(アメリカ局
長) 森 治樹君
外務事務官
(条約局長) 高橋 通敏君
委員外の出席者
専 門 員 佐藤 敏人君
—————————————
三月十五日
委員小西寅松君辞任につき、その補欠として塚
田十一郎君が議長の指名で委員に選任された。
—————————————
本日の会議に付した案件
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
安全保障条約の締結について承認を求めるの件
(条約第一号)
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び
に日本国における合衆国軍隊の地位に関する協
定の締結について承認を求めるの件(条約第二
号)
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
安全保障条約等の締結に伴う関係法令の整理に
関する法律案(内閣提出第六五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/0
-
001・小澤佐重喜
○小澤委員長 これより会議を開きます。
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の締結について承認を求めるの件、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等の締結に伴う関係法令の整理に関する法律案、以上の各案件を一括して議題といたします。
前会に引き続き質疑を行ないます。松本七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/1
-
002・松本七郎
○松本(七)委員 まず、総理にお伺いいたしますが、岸さんは、昭和十六年の十二月八日早暁に日本軍が真珠湾攻撃を敢行した当時は何をしておられましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/2
-
003・岸信介
○岸国務大臣 当時は商工大臣をいたしておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/3
-
004・松本七郎
○松本(七)委員 十二月八日付の開戦詔書に署名されたのはいつでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/4
-
005・岸信介
○岸国務大臣 商工大臣として、詔書に当日署名をいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/5
-
006・松本七郎
○松本(七)委員 八日ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/6
-
007・岸信介
○岸国務大臣 八日だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/7
-
008・松本七郎
○松本(七)委員 先週の参議院の予算委員会における総理大臣の、新条約第五条にいう「武力攻撃」に関する答弁の言葉をそのまま借りるならば、また、昨日、自民党の安保小委員会で、非常に多くの方が出席されて、統一解釈なるものをきめられたことが、きょうの新聞でも報道されております。自民党側では、船田政調会長、賀屋外交調査会長、小澤、草葉衆参両院安保特別委員長、政府側は、椎名官房長官、林法制局長官、高辻同次長、下田外務省官房審議官、高橋同条約局長、加藤防衛庁防衛局長、これらの方々が集まって、統一解釈をきめておられるのですが、その中に、武力攻撃についての解釈なるものも出ておるようです。その言葉を借りますと、昭和十六年の十二月八日に、首相自身が、組織的にして計画的な攻撃をやったということになります。岸さんは、当時、東条英機のふところ刀として戦争指導に当たり、戦犯に問われたわけです。このような真珠湾攻撃をやった人が調印した条約を、いかに防衛的だと言ってみましても、国民はなかなか信頼しない。新安保条約も、あなたが推進された三国同盟と変わらないのではなかろうかという疑いも出てくるわけです。当時は、日独伊三国同盟こそ唯一の戦争防止の策だと言っておったじゃないですか。それが、結果を見れば、国民をだましておる。過日参議院の予算委員会においても、わが党の佐多議員から明らかにされましたように、エリコンを日本が買った場合の経過を見ますると、ハインリッヒ・スターマー、日独伊三国同盟の立役者であり、また、戦時中は駐日ドイツ大使として非常な敏腕をふるった彼が、あなたと同じやはり戦犯容疑にかかり、その後は武器の商人として活躍し、そうしてエリコンの会社の極東支配人になったということが明らかにされておる。この過程においては、日本の植村甲午郎氏あるいは郷古潔氏等と結んで防衛庁に食い込んだということが、佐多氏によっても明らかにされておるでしょう。こういうふうに、すでに三国同盟当時の勢力が、ドイツにおいては着々と復活しつつある。また、日本においては、あなたの手によってこれが復活されつつある。今や同じ手口でもって国民は再びだまされ、あなたはあやまちを再度繰り返して、十三階段を上ろうとしておるというのが、今日のあなたの姿だといわなければならない。(拍手)東洋平和のためならばと、かり立てられた日本の青年が、再び、極東の平和の名においてかり出されんとしておるといわなければならないと思うのです。現に自民党の松村謙三氏は、数日前にこう語っておられます。これは三月十一日の毎日新聞の報道によりますと、「岸首相が二月二十六日の衆院安保特別委で明らかにした統一解釈には「台湾、朝鮮に事があれば日米両国は重大な関心をもつ」という趣旨のことが出ている。金門、馬祖問題もその一つの現われであり、自分はこれと異る考え方をもつ。この中には日独伊三国同盟、大東亜共栄圏を圧縮した考え方がひそんでいないかと思う。」こういうふうに松村謙三氏が指摘をされておるのでございます。はなはだ私どもが遺憾に思うのは、首相の言動には何ら過去の戦争に対する反省の色をうかがい知ることができない。過去の戦争に対して一体いかに現時点において感じておられるのか、この点をまずお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/8
-
009・岸信介
○岸国務大臣 今のお話のうちには、ずいぶん事実に反していることがあります。たとえば、私が三国同盟を推進したということをお話しになっておりますが、三国同盟ができたときは、私が大臣をしておるときではございません。私はそういうことに関係しておったことは何らないのであります。これは事実に反しております。その当時の国際情勢と今日の国際情勢というものを冷静に判断なさるならば、全然事情が違っているものを持ってきてこれを説明されようとするのでありまして、私としては、その点においては、あなたの論旨に対しては、全面的に事情が違うということを申し上げます。私は、戦争を絶対になくする、また、戦争に日本が引き込まれないようにするということが念願でございます。今回の日米安保条約の改定も、その趣旨で、われわれが戦争に引き込まれない、戦争の危険からわれわれはこれを防止するという唯一のねらいでもってやっておることでありまして、私は、過去の戦争に対してまた十分に反省をした結果として、こうした防衛の条約を結んで、そうして日本を安全にしておく、日本を戦争の危険から防ぐということが絶対に必要であるという信念に立っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/9
-
010・松本七郎
○松本(七)委員 ほんとうに過去の戦争に対する責任を感じ、ただ口先ばかりでなしに、その責任を償おうという気持があるならばもう少し行動の面で私は現わるべきものだと思うのです。第一、岸首相の身辺には、戦争を直接指導した者が多過ぎるではないか、こういう声がちまたにあふれております。当時をあらためてあなたに——この安保条約というのはあなたは、戦争防止のためのものだと、ちょうど三国同盟の推進者たちが唱えたと同じようなことを今言っておられるけれども、この重要な段階に際して、あらためて戦争当時のことを思い起こして、十分反省し直してもらう必要が私はあると思うのです。その意味で、岸第一次内閣ができてから今日まで、よく本会議を通じても、あなたが口では、過去の戦争に対しては十分反省もする、民主主義者として立ち直る、こういうことを言われる、その心情は以前にも申し上げたように、われわれは了とするのです。しかし、気持や言葉だけでは足りない。客観的な行動がはたしてその気持に合致したものであるかどうか、これを私どもは客観的に評価しなければならない大事な時期に今際会しておる。従って、決してあなたの個人的なきずに触れたり、個人的な攻撃をする意味でこういうことを言っておるのではない。私どもは、この重大な段階においては、やはり岸さんの戦争に対する政治家としての責任はこの際十分問題にしなければならない、こういう意味でこれを言っておるのでございますから、一つあなたも十分過去に対する反省の絶好の機会としてお聞きを願いたいのです。
私は、そういう意味で、非常に苦労をいたしまして当時の写真を持って参りました。ぜひあなたに見てもらいたいと思うのです。(「いやがらせはやめろ」と呼ぶ者あり)決してこれはいやがらせではない。(写真を示す)これは東条内閣組閣当時の写真です。(「やめろ」と呼ぶ者あり)いいじゃないか。(「ひとり岸さんだけの話じゃないよ、国民全体が反省すべきじゃないか」と呼ぶ者あり)それはそうですよ。(写真を示す)これは巣鴨に行かれるときの写真です。あなたのうしろにMPがいますけれども、今でもMPが背後であやつっておる、今日の日本の状態は……。(発言する者多し)この中のほとんどの方は、自決されたか、あるいは断頭台のつゆと消えたか、あるいは長い戦犯生活や敗戦の悲嘆にくれて病死をした人々が大部分です。この中で現在健在なのは、岸さんと、それから井野碩哉さん、それから賀屋興宣さん、それから谷正之さん、星野直樹さん、当時の書記官長です。岸さんは、満州時代に二キ三スケと呼ばれたグループのあったことを思い出されるでしょう。すなわち、二キ三スケとは、東条英機、彼は関東軍の参謀長、星野直樹、満州国政府の総務長官、松岡洋右、満鉄総裁、鮎川義介、満州重工総裁、岸信介、満州国政府実業部次長として、当時の実質的な満州の軍事、経済の最高指導者であったわけです。そして現在の官房長官の椎名さんが、岸さんの片腕として、当時は満州政府鉱工司長ということであなたを助けた。こうして満州開発五カ年計画を推進したのが、岸さんと、星野直樹さんと、それから、思い出されるでしょう、関東軍の参謀をされておった片倉さん、これで推進されておる。これは間違いないでしょう。あなたは商工次官に起用されて赴任される途次、大連の埠頭において記者会見されております。そのときにどういうことを言われたか。この記者会見で、できばえの巧拙は別にして、ともかく満州国の産業開発は、私の描いた作品だ、この作品に対して私は限りなき愛着を覚える、生涯忘れることはないだろう、こう言っておられるのでございます。あなたはこれを忘れられたのですか。こういうことは自民党の中でもいろいろ問題にされ、先般海外旅行された河野一郎氏は、その感想として何と言っておられるか。世界を回ってきたが、戦争推進者が再び旗を振っているのは、全世界に類例がないと述懐されているじゃないですか。今度の安保改定を見ましても、岸さんを筆頭にして、今の写真にも出ておられた賀屋外交調査会長、それから、これまた同じ翼賛選挙にも出られたし、当時法制局長官をやっておられた船田政調会長、まるで戦犯トリオの合作ともいうべきものが、今度の新安保条約、一体これを国民がどう受け取り、いかに不安な目で見るかという点について、あなたは考えてみたことがあるかどうか、はっきり答弁して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/10
-
011・岸信介
○岸国務大臣 先ほど私が申し上げた通り、この安保条約の内容を御審議いただけばわかるように、これは純防衛的なものであり、日本を戦争に再び巻き込む危険をなくしようというのがねらいでありまして、このために私どもが努力するのは当然である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/11
-
012・松本七郎
○松本(七)委員 この新安保条約が、あなたの言われるように、はたして防衛的なものであるかどうか、それは、おいおい条約の内容を深くあらゆる角度から検討して、それがそうではないという正体をわれわれは暴露していきたいと考えております。それよりも前に、先ほどから言うように、これに取り組んだあなたの基本的な心がまえ、政治的なかまえということが問題になる。それが現に国民の不安の中心になっておる。今のようないいかげんな答弁をされるから、国民の間には不安がだんだんだんだんつのるばかりだ。国民は新条約そのものに重大な不安を感じているのでございますが、さらに、この改定を、岸さん、あなたがやることに二重の不安を覚えておるのです。この点を少しでも思うならば、少なくともあなたみずからが手がけることだけでも控えるべきではないか、こう言わざるを得ない。ほとんど反省の色のないような御様子ですから、私はこの点についてはこれ以上御答弁は求めませんが、少なくともこの条約について、当然なことですけれども、岸さんなるがゆえに特に確認しておきたいのは、岸首相はこの安保改定について政治的責任をとる意思があるかどうか。なぜ特にこの点を確認する必要があるかと申しまするならば、岸首相は、太平洋戦争についての政治的責任をとっておらない。また、近くは、一昨年の警職法の失態についても政治的責任はとっておらない。太平洋戦争については東条首相に、また、警職法については河野総務会長にそれぞれ詰め腹を切らしておいて、みずからは何らの責めを負うことなく今日まできておるじゃないか。警職法であのがたがたが起こって、三閣僚の辞任によって内閣が危機に瀕した際に河野一郎氏に助けを請い……。
〔発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/12
-
013・小澤佐重喜
○小澤委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/13
-
014・松本七郎
○松本(七)委員 かろうじて危機を脱したじゃないですか。しかも、半年後の昨年六月の内閣改造の際には、恩義ある河野氏をほうり出して、手のひらを返すごとく池田氏と組むに至っておる。全くこれは政治的良心を失った無節操ぶりといわざるを得ないのであります。そうして自分では何らの責任を……。
〔発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/14
-
015・小澤佐重喜
○小澤委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/15
-
016・松本七郎
○松本(七)委員 責任を負わないばかりか、今日では、自民党内の反対を押し切ってまで総裁三選を策動しておる。実に要領がよ過ぎる。今ここに問題となっておる安保条約の改定問題は、国民の死活、国家の運命、ひいては世界の平和に重大な関係を持った問題なんです。一歩誤まるならば、はかり知れない危険と惨害をもたらすこのような問題を扱うにあたって、自己の保身術と名誉欲の権化のごとき岸首相が当局者であるということが、国民のひとしく遺憾にたえないところである。安保条約の審議にあたって、岸首相は、みずからの政治的責任についてどのように自覚をしておられるか、この点を一つ承っておきたい。
〔発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/16
-
017・小澤佐重喜
○小澤委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/17
-
018・岸信介
○岸国務大臣 私は、重要な問題に関しましては、常に私の政治的責任をかけてこれを遂行する決意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/18
-
019・松本七郎
○松本(七)委員 さっき写真でもお目にかけたように、あなたは、昭和二十年の九月、戦犯容疑者として巣鴨プリズンに入られて出てこられたのが昭和二十三年十二月のクリスマス・イブです。その後、二十七年の四月に追放解除になられて、十分なる戦争責任を反省することもなく直ちに新たなる政治活動を開始されておる。同年七月に、日本再建連盟というのを結成されて……。
〔発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/19
-
020・小澤佐重喜
○小澤委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/20
-
021・松本七郎
○松本(七)委員 みずからその会長になったのです。その際、覚えておられるでしょう、五大政策というものを発表されておる。その中に「憲法を改正し、独立国家としての体制を整備する」とのスローガンがあります。それから「新しい時代感覚を基準として国民に訴えるようなものを打ち出す」とあります。このように、平和憲法を改悪することをもって新しい時代感覚と心得ておられるところに、戦争責任に対する無反省ぶりが暴露されておるといわなければならない。これは、安保条約を日米軍事同盟に切りかえたことにも本質的には通ずるものと思うのです。岸首相は最近、口を開けば、憲法改正は、憲法調査会の結論を待つ、こうごまかしておられるけれども、首相は、今でも、この時点において依然として憲法の改正を考えておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/21
-
022・岸信介
○岸国務大臣 憲法改正の問題については、しばしばお答え申し上げておる通り、法律で設置されておる憲法調査会の結論を待って措置するつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/22
-
023・松本七郎
○松本(七)委員 あなたが考えておられる憲法改正の内容というのは、すでに明らかなんです。あなたは二十八年の三月に自由党に入党されて、同年十二月に自由党の憲法調査会が設けられると同時にその会長になっておられる。そのときの日本国憲法改正要綱によりますと——これはあなたが会長で作られたのですよ。この要綱によると、まず第一に目につくのは、天皇を日本国の元首とし、その行なう行為に、宣戦講和の布告をはっきりうたっておられる。宣戦講和の布告を天皇の権限に入れておられる。それから「国の安全と防衛」の一章を設けることとし、国力に応じた最小限度の軍隊を設置し得ること、国防に協力する国民の義務、すなわち徴兵制を準備することを明らかにしておられるのです。これこそ、首相の考える憲法改悪の眼目ではないかと、みなこれを疑っておる。今日の時点においてなおこれらの点をあなたは必要と考えるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/23
-
024・岸信介
○岸国務大臣 先ほどお答え申し上げました通り、この問題に関しては、各方面の有識者を集めて、あらゆる点から憲法の調査をし、審議をいたしております。その結果を待って措置すべきものだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/24
-
025・松本七郎
○松本(七)委員 あなた自身、当時はこういうふうに会長として打ち出された。今日の時点においては、あなた自身の考え方はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/25
-
026・岸信介
○岸国務大臣 今お答えを申し上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/26
-
027・松本七郎
○松本(七)委員 新しい安保条約の五条によりますと、憲法上の規定及び手続に従って両締約国が共通の危険に対処するように行動することを宣言する、こうなっております。政府の答弁によれば、ここにいう「憲法の規定」は日本国憲法をさし、「手続」はアメリカ憲法を対象とするという答弁です。このような答弁は全く御都合主義で、得手勝手な解釈といわなければならないのですが、この点に重大な問題と危険がひそんでおると思うのです。実は岸首相の憲法改正のほんとうのねらいというものは、この新条約第五条の規定に相応ずるように宣戦布告の規定を設けようとするものではないでしょうか。そういうことになりませんか。今までの第五条の規定の説明と、あなたが自民党の調査会の会長として出された、さっき私が読み上げた、予想される改定とを合わせると、きちっと第五条と合うようになる。結果においてはそういうことになるということを認めざるを得ないでしょう。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/27
-
028・岸信介
○岸国務大臣 憲法改正とこの条約とは何ら関係ないのであります。憲法の改正については、先ほど来申し上げておるように、憲法調査会の審議を待ってこれを決すべき問題であります。従って、条約の第五条は、現行の憲法をさしておるのでありまして、改正を意味しておるものではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/28
-
029・松本七郎
○松本(七)委員 それからもう一つ問題になりますのは、何といっても、最近の世界情勢の急激な変化について、あなたがどの程度真剣にこれを考えておるかという点です。これがまたはなはだ疑わしい。五年前に大陸閥弾道弾がソ連で成功し、続いて人工衛星が成功する、昨年は宇宙ロケット、それからフルシチョフ首相の軍備完全撤廃の提唱がなされる、こういった一連の動きというものは、まさに人類史の一大転換点を示すものと見なければならない。理想的な平和の世界をいよいよ現実化する物的な力が世界には現われてきておると判断をすべきだと思う。ある軍事評論家に言わせると、これをもって四年制平和大学の開校だといい、五年後にはおそらく軍備はなくなってしまうだろう、こういう予想をしておる人さえたくさんあるのです。首相はこれらの具体的な事実というものを認められるのかどうか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/29
-
030・岸信介
○岸国務大臣 軍備の問題については、ジュネーブにおける十カ国会議の前途を考えてみますと、しかく容易に制限ができるとは考えません。しかしながら、軍備が制限され、撤廃されるということは、われわれの念願であり、希望であることについては、松本君に私は劣らない熱意を持っておる。しかし、軍縮の前途については、現実の問題としてはなお幾多の曲折があり、困難があろうということを考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/30
-
031・松本七郎
○松本(七)委員 そういう答弁はもう聞きあきておるんですよ。それこそ、岸首相が世界情勢の雪解けに目をおおって、力の均衡による平和というあのダレスの亡霊にしがみついておる証拠なんです。去年の八月に、アイク、フルシチョフ相互訪問ということがホワイト・ハウスから発表された。そのときに米国は、在日大使館を通じて外務省にこのことを事前に通告してきておるのです。そこで、当時外務省は、のほほんと南米を漫遊していた岸さん、あなたに、あわてて報告しておるじゃないですか。ところが、当時あなたは、この外務省の報告に対して、そんなばかなことがあるかと、一たんは否定したのですが、いよいよこの相互訪問が事実ということを知るに及んで、あなたは今度は、フルシチョフが一度くらい米国を訪問したからといって、大したことはないと、たかをくくった見通しを述べたと当時の新聞は伝えておりますが、これは事実ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/31
-
032・岸信介
○岸国務大臣 そんな記憶は私は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/32
-
033・松本七郎
○松本(七)委員 記憶がない、記憶がないと言われるのですけれども、しかし、これを裏づける首相の発言が、当時の新聞を見れば明らかなんです。いいですか。これは、昨年の八月十二日付の各新聞をごらんになればわかる。岸首相は、帰国当日の記者会見で何と言っておるか。今回のアイク、フルシチョフの会談でも、平和の理想が実現するとは思えない現在、この会談と安保改定とにつながりを持たせることはおかしな意見だ、われわれは改定された安保体制は絶対に必要だとの立場をとっており、この会談と関係なく促進させたいと力んでおるんですよ。このような頑迷な態度を、朝日新聞は一体何と評しておるか。ごらんになったことがありますか。これは十月二日の朝日の社説です。実にみごとな批評をしておる。「首相の論理によると、国際緊張が緩和の方向に向うことは、首相の意図する安保改定には悪材料だ、という見方のようだ。これは端的にいえば、民衆のわざわいを岸政府の幸いとする、ということにならないか。」と痛撃しておるのです。このみごとな論説に対する感想を一つ率直に聞かせて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/33
-
034・岸信介
○岸国務大臣 私は、今日の国際情勢から見て、真に現実に即して平和を守っていくためには、自由主義の国が協力体制を固めることは必要だと思うし、また、東西の話し合いを将来成功させるためにも、この自由主義国が一致団結した協力体制を持っていることが必要である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/34
-
035・松本七郎
○松本(七)委員 あなたは今までもそうですけれども、一応平和共存が世界の主流となったという事実は認められるポーズだけはとられるが、いつもあなたはただし書きがつく。ただしということがいつの答弁でも出てくる。依然として力による平和にしがみついておる。これでは急速に進展してきておる今の世界のはるかかなたに日本だけが取り残されてしまう。今日の段階でこそ、平和不戦の旗じるしを高く掲げた日本国憲法を、誇りを持って擁護するということが世界的に積極的な意義を持つに至ったと私どもは思うのです。岸首相はそれでもなおこの憲法改悪と安保新条約批准を強行しようというおつもりかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/35
-
036・岸信介
○岸国務大臣 東西両陣営において話し合いでものを解決していこうという機運が動いていることは事実であります。しかしながら、同時に東西両陣営が何ら軍備を縮小もいたしておりませんし、また地域的な安全保障体制を何ら変更していない情勢のもとにおいて、われわれが安保体制を持続していくということは絶対必要であり、またそれが世界平和に通ずるものである、私はかようの考えを持っております。現行安保条約が持っておる幾多の不合理な点を改正する新安保条約は、ぜひこれを成立させなければいかぬという考えでおりますし、また憲法改正の問題と安保条約の問題は、先ほどから申し上げておる通り、何ら関係がない問題でありますから、これをあわせて御議論なさることは、私の考えとは全然違うところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/36
-
037・松本七郎
○松本(七)委員 さらにあなたの基本的な態度で問題になるのは、岸首相は従来から国民の世論あるいは国会での議論というものを無視あるいは軽視してきておる。安保改定でも同じことが言える。交渉に臨むにあたっても、あなたは基本的な方針なりそういう大事な点については少しも相談しておらない。内容上の問題点を具体的に明示をするというようなことは全然やっておらない。調印後はどうか。調印後においても条約締結権の名に隠れて、最高機関たる国会の審議権を侵害するような態度を今でも頑迷に続けておるじゃないか。前の国会のときはどうですか。前国会にはベトナム賠償協定に関連する秘密交換公文がちゃんとありながら、衆議院にはとうとうこれを示されなかったじゃないですか。そうして国民や国会になるべく隠れて事を運ぼうとする。そういう点にこそ岸首相自身の体臭があるのです。その要領のよさと陰険な暗い影が危険だといわなければならないのです。
この際あらためて聞いておきますが、それではあなたははたして世論を重んじ、国会を尊重する意思がほんとうにあるのかどうか。もう一ぺんこの大事な時期に確認しておきたい。
〔発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/37
-
038・小澤佐重喜
○小澤委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/38
-
039・岸信介
○岸国務大臣 私はしばしば国会で申し上げておる通り、十分に国会において論議を尽くして、そうして国民の理解と支持のもとに本条約の承認を得て批准を進めたい、これが私のしばしばお答え申し上げておるところであり、また、それを実際に私は国会対策の上におきましても、わが党として責任を持って進めておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/39
-
040・松本七郎
○松本(七)委員 今私が問題にしました国民世論というものが、最近は大きな変化を起こしつつあると思うのです。これは保守的な政治評論家として知られておる御手洗辰雄さんも三月八日の読売新聞でこの点を指摘されておる。これはなかなか的確に指摘されておると思うのですが、こう言っておられます。「安保条約に関する国論は、この数か月の間に明らかに変化を起こしている。条約に反対する国民は増加し、反対論は勢いづくのに反して支持する人は減少し、動揺し始めている。一般国民ばかりでなく、政府与党の議員、しかも有力な指導者の間にまで懐疑的否定的空気が生まれ始めていることは軽視をゆるさない事態といわねばならぬ。」「今年一月の朝日新聞調査では支持二九、反対二五と接近し、さらに二月に行なわれた東京新聞二回目の調査は賛成二四・九に対し反対三六と変化して、条約を否認する国民が三対二の優勢となってきた。」「国論に変化の生じていることだけは動かせない事実である。」こうはっきり御手洗さんも指摘されておるのでございます。(「解散はどうだ」と呼ぶ者あり)解散は首相が辞職してからだ。(「その通り」と呼び、その他発言する者あり)それから松村鎌三氏も、さきに引用した三月十一日の毎日新聞紙上で金門、馬祖問題に関連し、「批准を急ぐ必要もない。」「政府答弁をあくまで固執するなら反対せざるを得ない。」と述べておられます。このような保守党の良識ある長老の憂国の直言にあなたは耳を傾けないつもりですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/40
-
041・岸信介
○岸国務大臣 私は自民党の総裁として党議を尊重いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/41
-
042・松本七郎
○松本(七)委員 党議を尊重するかしないかを聞いているのではない。自民党の中には今声のあるようにいろいろなきわめて貴重な意見が出る。こういう意見については党議に名をかりて耳をかさないつもりですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/42
-
043・岸信介
○岸国務大臣 民主政党としてはいろいろな議論もありますけれども、結局は党議に従うというのが私は民主政治として当然であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/43
-
044・松本七郎
○松本(七)委員 さらに私はあなたに一つお目にかけたいのは、最近自民党の有力な議員の執筆にかかると思われる「安保改定と日中関係打開と——冷戦経済から平和共存経済へ——」こういう論文が出ている。これが国会内外の関心を集めておる事実をあなたは知っておられるかどうか。これをごらんになったことがありますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/44
-
045・岸信介
○岸国務大臣 私は知りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/45
-
046・松本七郎
○松本(七)委員 御存じないなら一つ私が概略を申し上げましょう。この中で岸首相一派の冷戦継続外交を徹底的に批判したあとで次のように述べておる。「(三)自民党内の平和共存派と冷戦派の対置」こうあって、「しかしながら自民党内の多くの領袖は、その識見と行動において必ずしも岸派と同調していない。日中が一丸となってアジアの平和の実現にあたれと説く石橋湛山、道は一つしかなく、実質的な雪解けのためにわが国も努力をいし保守党の政策の脱皮により中産階級の育成をはかれと説く三木武夫、世界情勢の転換のすさまじい進展にさいし日本にとっては経済圏の確立拡大こそ中心課題と説く河野一郎、近代国家として興隆する中国との相互不可侵により交化と経済の日中交流を実現すべしと説く松村謙三、戦争はもはやありえずとの確認から国内市場の拡大の要を説き北鮮・ソ連貿易の発展にも助力を惜しまぬ池田勇人、中・ソとの国交調整に本格的に取りくむ要を説く高碕達之助、これらは何れも世界情勢の判断と日本の歩むべき進路について岸派のそれと相違している。安保改定の全権就任を固辞して手を汚すまいとした大野伴睦も、同様に岸コースの危険と行詰りを知るものといえよう。一方、岸首相の安保改定強行を支持するものとしては、共産圏すなわち過激派政府といった大正初期の認識から出られぬ賀屋興宣などがいる。」こう書いてあるじゃないですか。このように大きななだれですね、地すべりが起こっている。これは決して政界だけの現象ではないのです。おそらくこれは御存じでしょう。外交界の長老で元外務次官もしておられ、駐オーストラリア大使、また前英国大使を歴任された西春彦氏は、昨年の春に岸首相を初め藤山外相、賀屋外交調査会長らに対して、安保改定を中止せよという意見書を提出したとのことでございますが、これは事実ですか。このような西さんの憂国の信念を岸さんはどう思われたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/46
-
047・岸信介
○岸国務大臣 友人や先輩その他いろいろな人からの意見は、私は常時聞いております。しかしながら安保改定の必要性、これをやらなきゃならない、これをやることが日本の平和と安全、繁栄の基礎を築くものであるという私の信念には、何らの変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/47
-
048・松本七郎
○松本(七)委員 この点はまさに重要な事実なので、もっとはっきり確認しておきたいと思うのですが、私はそのために、昨年十一月十二日の南日本新聞紙上に掲載された西さんと南日本新聞の二階堂東京報道部長との一問一答をちょっとあなたに紹介したいのです。二階堂さんが西さんに対して、まず改定反対の意見を岸首相以下に提出された経過を聞いておられるのですが、この返答で、西さんは、ことし二月に岸、藤山両氏に私の意見書を出した。次ついで六月に、自民党の賀屋興宣氏にも新しい意見をつけ加えて出した。そのほか講演会や知友などとの会合の席上でも私の意見は強く主張している。最近意外な人からも賛成だと言ってきている。反対は決して革新的な人々だけではない。私は決して政治的な立場から言っているのではない。外交界にも先輩は多いが、私たちが体験したことを振り返ってみて、ばかばかしい目を日本が再び繰り返しそうだし、同時に、日本の外交界には戦前の苦しい外交を経験した人が少なくなっているので、ここは遠慮なく日本の将来のために言っておきたいというわけだ。政府は改定を急いでいるようだが、あと一年だけ国民論の動向を見守ってからにしてほしい。私としても、あと一年あれば、反対意見が政府部内を圧し、同時に、アメリカとしても日本の立場を理解するものと見ている。政府は急いでやらないことだ。私の運動は私一人のものであって、グループを組んでやっているわけではない。岸、藤山両氏からは何も一言ってこないが、私の同調者は次第にふえてきている。——こうやって、せっかく憂国の至情にやみがたく、こういった貴重な意見書をあなたに、あるいは藤山外務大臣に出されたのに、あなたからは何らの返事もない、何も言ってきておらない、こう言っておられるのですが、一言の返事もされなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/48
-
049・岸信介
○岸国務大臣 さっき私が申し上げたように、いろいろな人からいろいろな意見を受けております。一々返事を出してもおりませんけれども、十分それらの意見は私としては読んでおります。しかし私の考えは先ほどの通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/49
-
050・松本七郎
○松本(七)委員 それは普通の、あなたと違った意見がいろいろあるというふうに扱うべきものじゃないのです。これは外交界の長老として、特にソ連外交に身をもって経験された方である。しかもその内容を口を通されたかどうか、そこも疑わしいような態度でこれを処理されるということは、非常に重大だと思うのです。そういうあなたの態度が独善だと言うのです。西さんはその後も、今お話しした新聞との対談のあとも、憂国の情にやみがたく、「己れの小を思うとき、人ははじめて大となり、義により命を悟るとき、国にはじめて光あり」この土井晩翠の詩を引用しながら、中央公論の二月号と今度出ました四月号に、「日本の外交を憂える」という論文を発表されているのです。これは岸さん何らあれされておらないから、少し私はその要旨をお知らせしておく必要があると思う。(「人の意見はどうでもいい」と呼ぶ者あり)どうでもよくない。国の基本的な外交政策をきめる場合には、自分に都合のいい側面ばかり考えるのでなく、相手の立場にもなって十分その影響を検討しなければならない。このことは日独防共協定、日独伊三国同盟がソ連、米、英などに重大な影響を与え、太平洋戦争に突入する原因となった経験から見て、為政者は十分心すべきことである。新安保条約は疑いもなく一種の相互防衛条約であり、ソ連、中共の立場から見れば、自分らに向けられた日米軍事協力体制の強化である。従って新条約は、対ソ、対中との関係から見て重大な危険をはらんでいる。第一に、新条約は日本の自由意思で締結したものであるから、ソ連、中共が日本の責任を問うことになるのは当然である。第二に、在日米軍の軍事行動には、日本も協議という積極的行為を通じて関与することになる。従って外国に対しては米国と共同の責任を負うことになる。ソ連や中共から共同責任を問われ、その結果どんな重大な危険が生ずるかはあらためて論ずるまでもない。第三に、協議は合意に達することを義務づけたものではなく、あくまでも重なる協議であるということが国際通念であるが、さらに本質的には日本が実力上米国と対等に協議することは絶対にできないということである。日本が米軍の行動を実際問題としては制約できず、しかもこれに対して日本も共同責任をとるのであるから、日本は米国に白紙委任状を与えるものである。結局政府は、日本にこのような内容を、持つ新条約を結ぶ資格も内容もないのに、あえてこれを結んだものである。しかも事前協議による日本の発言権の増大という形式だけを吹聴して、これから生ずる結末には目をつぶろうという無責任な態度である。やりかけた交渉を中止するのは国際信義に反するというが、国の安全はより以上に重大である。日本の外交は新たな危険を引き起こす新条約を締結するのではなく、英国の東西融和への努力に声援を送り、それを通じて世界平和に貢献することにその進路を見出すべきである。この名誉ある大道を進むことができないのは、新安保条約に没頭して、動こうにも動けない状態にあるからだ。これが西さんの中央公論の二月と四月に書かれた大体の要旨なんです。岸さん、その西さんはこの中央公論でも、意見書を出した経過の中に、もう一つ述べておるわけです。昨年一月、政府筋からきわめてばく然とながら安保改定の内容を聞いて、改定は日本にとってさほど歓迎に値するものとは思えないばかりか、自分の経験では、ソ連、中共との関係から、かえって現行安保条約よりも危険を包蔵すると感じたのが始まりだ。この長年の特にソ連との外交の経験をされた西さんは、これがかえって危険を、包蔵するということをはっきりと指摘されておる。さて政府筋から安保改定について説明を受けた際に、私の頭にまず最初に浮かんだのは、日独防共協定締結当時の自分自身の苦しい体験である。そのころのことを直接に知っている人はもう多くない。だからそのときの教訓に徴して、安保改定の危険を指摘するのは私の責務である。これが改定批判を志した私のそもそもの気持だったんだ。こうして最後になって、何度も言うように、外交においては国の安全は何ものよりも重い。もし不幸にして調印ともなったら、国会はあくまでも討議を尽くし、その結果どうしても危険ありという結論に達したならば、批准問題について議決する前にもう一ぺん米国と話し合い、改定中止について了解を求める道もあるのではないか。壁に頭をぶつけるまでは猪突して省みないという行き方は、戦争でほとほとこりたはずである。重ねて言う。外交の要諦は勇敢に現実を直視するにあり、そして重ねて三国同盟の歴史を顧みよう。こうして過去を顧みながらこの安保条約について心配されておるわけです。
私は、実は西さんにもこの間直接会ったのです。その際に西さんは、この米中関係と日中関係には非常な違いがある。アメリカと中国の関係と日本と中国の関係には実に大きな開きがあるという点を指摘されておる。もちろんここは大事なところですが、日中関係には今なお戦争状態は存続しているわけですから、そのときに安保改定をして中国側からはこれを敵視政策、こういう断定を下した場合にどうなる。単なる一面的な敵視性じゃない。これは二重敵性を生むことになる、この点を西さんもやはり非常に心配をされておったわけでございます。またその際に、西さんの語られた言葉の中に、意外な人から賛成と激励が寄せられている。そして財界の某巨頭からも同感の手紙をもらったという話を披露されております。この意外な人というのは岸さんあなたもよく御存じの方なんです。今私の口からその人の名前を言うのは控えますが、いずれこれは明らかになります。さらに西さんは、外務省にも自分の考え方に賛成しておる者は多いのであるけれども、惜しむらくは今の外務官僚には勇気がない、こう言って嘆いておられた。しかし聞くところによりますと、中にはなかなか憂国の士もあって、敢然としてある重要外交政策について直接藤山外務大臣、あなたに意見書を提出したという話を聞いておるのですが、外務大臣、そういう事実はあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/50
-
051・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 特段に外務省の中の人が私に意見書を出すような必要はございません。しょっちゅう話をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/51
-
052・松本七郎
○松本(七)委員 そんなしらを切っておるが、私はちゃんとその事実をつかんでおるのです。しかし当人が左遷させられるようなことになれば気の毒です。この際、政府委員諸公も、もう少し自分の良心と……。
〔発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/52
-
053・小澤佐重喜
○小澤委員長 御静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/53
-
054・松本七郎
○松本(七)委員 正義感を呼びさまして、首相、外相に新安保条約をたな上げするように直言するくらい一つ勇気をふるい起こすべきですよ。首相は先ほどから世論と国会を尊重する、こういうことを言われたのですが、この重大条約の審議にあたって今後公聴会あるいはそういうものを開いて、そうして積極的に広範な世論を聞くお考えはありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/54
-
055・岸信介
○岸国務大臣 委員会の運営につきましては、委員長がきめることだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/55
-
056・松本七郎
○松本(七)委員 私どもはいずれ委員会に参考人も広範に来ていただいていろいろ意見を聞きたいと思っておりますけれども、われわれとしては先ほどから申しますように、外交界の長老でこの問題に非常に関心を持って、しかも有力な意見を述べ、それが官界にも財界にも共感者をどんどん呼んでおるといわれる西さんにもぜひ来ていただいてその意見は開陳していただきたいと思うのですが、そういう場合には、この重要な安保審議の参考人の意見開陳ですから、今までのようにそういうときには一度も出席しないというような態度でなしに、一つ総理大臣、外務大臣そろって参考人の意見を聞くというくらいの確約をしていただけますかどうですか。この気持があるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/56
-
057・岸信介
○岸国務大臣 私はこの委員会に出席するに際しましては、委員長なりあるいは理事会できまったところに従って今日までも出席をいたしております。そういうふうに考えていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/57
-
058・松本七郎
○松本(七)委員 今いろいろ私が披露したのは保守、革新を問わない今日の流れです。いわば全国民的な安保批判の大潮流が今起こりつつある。こういう潮流の前に安保をあくまでも強行しようというこの岸首相一派は、もう完全に孤立しつつあるのです。今までの答弁で、あなたは政治的責任はとると言われておる。また世論と国会は尊重すると繰り返して述べておられる。それならば、この国民的な大潮流はどんどん広がってくる。その大潮流の前に、新条約が挫折した場合には、全責任を負ってあなたは総辞職するだけの覚悟がありますかどうですか。また藤山外務大臣だけに詰め腹を切らせるようなことでは困るのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/58
-
059・岸信介
○岸国務大臣 私は先ほど来申し上げておる通り、国会の審議を十分尽くしていただいた上において、国民の理解と支持を得てこれをあくまでも成立せしめるように全力をあげて努力するつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/59
-
060・松本七郎
○松本(七)委員 そこで条約論に入りますが、一体この新条約は現行の安保条約に比べてどこが一番変わっておるか、これは今国会開会以来政府の満足な答弁は少しも得られない。始終へどもどした答弁に終始しておるわけでございますが、その証拠には、統一解釈に次ぐに統一解釈を行なってきておる。この事実が最もよく現わしております。いかに解釈が統一されていないかを、むしろ物語っておる。これは政府と与党の統一解釈であるかもしれないけれども、残念なことには日米間の統一解釈ではない。岸さんはほんとうに国の安全を考えて安保改定を行なったとおっしゃるならば、この際率直に、今までの安保条約、今度の改定条約はどことどこが違うか、また一番重要な点はどこか、それをもう一度明らかにしてもらいたい。さっぱりはっきりしていない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/60
-
061・岸信介
○岸国務大臣 提案理由におきましてもその他の機会におきましてもしばしば申し上げておる通り、一言にしてこれを尽くせば、現在の安保条約は日本の自主性というものが認められておりませんが、今回の改定によりまして、現在ある安保体制というものを、日本の国際的地位と国情に応じて日米間において対等な、また日本の自主性を明らかにしたところの条項によってこれを改定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/61
-
062・松本七郎
○松本(七)委員 その自主性ということは抽象的には言われるけれども、しからばこの新条約のどことどこに具体的には現われてきておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/62
-
063・岸信介
○岸国務大臣 全面を通じてそういう精神のもとにこれを改定をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/63
-
064・松本七郎
○松本(七)委員 それでは聞きますが、西さんもやはり、安保改定を行なうことによって危険をこうむるのは米国よりむしろ日本だ、そういうことを指摘されておる。そうだとすれば、新条約は祖国日本の防衛よりももっぱら米国の防衛に奉仕することになるのではないか。この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/64
-
065・岸信介
○岸国務大臣 これをごらんになりますとはっきりわかっているように、日本の領土が侵略された場合において、日本が自衛権でこれを防止することは当然でありますが、それに対してアメリカが協力するところの義務を明らかにしているだけでありまして、決してアメリカの領土であるとか、国外に出て日本がそういう場合において行動するような何らの規定はございません。私は、むしろアメリカがはっきりと日本の防衛のために協力することが明らかになっていることが、今度の条約の特徴である、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/65
-
066・松本七郎
○松本(七)委員 もう一ぺん確認しておきますが、今の御答弁によると、日本自身の防衛から見て新条約は米国に防衛の義務を負わせたというところに特徴的な改善がある、こう理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/66
-
067・岸信介
○岸国務大臣 それも一つの点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/67
-
068・松本七郎
○松本(七)委員 今首相の答弁で、新条約は現行安保条約と違って、米軍が日本を防衛する義務が新たに生じたということがはっきりしたわけです。この点は現行条約と違う点を確認できたわけですが、今までの政府の答弁によりますと、新条約第五条でいうところの「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」この解釈として、第三国の武力攻撃が発生した場合には、外交交渉などの手段によらずに直ちに自衛権発動すなわち武力行使に訴えることが、この前の赤城防衛庁長官の参議院におけるこの条項はそのものずばりの条項であるという答弁からも明らかになっているわけです。またその際は日米が当然同時に行動を起こすことになるとも参議院で答弁されております。さらに、政府は明確な答弁を避けてはおりますけれども、新条約第三条では日米は、「個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」この条項は、バーター米国務長官が最近アイゼンハワー大統領にあててアメリカ上院に新条約批准のための資料として送付した報告書の中でも、こういうふうに述べておる。両当事国は武力攻撃に抵抗する能力を維持し発展させることを誓約している、こういうことを指摘しておるのです。ここで明らかなことは、日本の軍事力増強を義務づけられておるという点が、このハーターの報告書の中でもはっきりしておるのですが、この点もそれでは確認していいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/68
-
069・岸信介
○岸国務大臣 しばしばお答えしておる通り、日本の防衛力をいかにするかということは、日本が自主的にきめることでありまして、われわれは国防会議の決定の方針に基づいて、国力国情に応じてこれを効果的に漸増するという基本方針を自主的にきめておりますが、その方針にのっとって将来においてもやっていくつもりでありまして、何らその間に変化はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/69
-
070・松本七郎
○松本(七)委員 十一日の参議院の予算委員会で、わが党の佐多議員の質問に対して、藤山さんは、世界的な軍縮の場合は別として、日本だけが独自の立場で軍縮を行なうのは第三条の趣旨に反する、こういう答弁をされておる。これは軍備を認めない憲法に違反するばかりか、軍備維持増強の義務を負ったことも、間接的な表現ではあるけれども認めたものとしか理解できないと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/70
-
071・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 われわれは憲法九条によります自衛のための防衛力ということを認めておるわけでありまして、その範囲内におきましてわれわれは防衛力を維持発展させることは、日本の当然の独立国としての務めであります。そのことをわれわれが宣言いたしましたことは、決して憲法に違反はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/71
-
072・松本七郎
○松本(七)委員 この点は非常に重要な問題ですから、後ほどさらに詳しくお伺いしなければならぬ点ですが、今数個の点についての御答弁でも明らかになりましたように、この条約は、先ほどから指摘するように、決してアメリカの防衛ということが日本の防衛自体よりも軽く扱われておるものではない、むしろアメリカの防衛ということが非常にウエートが重いという点は、今後各個条にわたって明らかにしていかなければならない重大なポイントだと思いまするが、その点はともかくとして、先ほどの政府の答弁から考えてみましても、日本の国防の基本方針に関する重大な内容を持っておるといわなければならぬと思う。そうなれば、当然この条約そのものも国防会議にかけて最後の決定をされたと思うのですが、いつ国防会議に諮られたのか、その経過と内容を総理大臣から詳細に御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/72
-
073・岸信介
○岸国務大臣 国防会議におきましては、防衛に関する基本方針をきめておりまして、それを何ら変更しているものではありませんから、国防会議にはかけておりませんし、またかける必要がないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/73
-
074・松本七郎
○松本(七)委員 それはちょっとおかしい。国防会議では単に防衛の基本方針ばかりではない、国防の基本方針それから国防に関係するあらゆる重要な問題と認められるものは全部かけなければならないという義務規定がある。総理大臣はこれを義務づけられておるのです。いやしくも日本の国防について外国に防衛義務を負わせるかどうか、そういう点は非常に国防全般に関する重大な事項です。これほど新しい、新たにアメリカに防衛の義務を負わしておるというような新しい条項の入った条約をきめる場合には、これはもっと広範囲な国防という立場から、国防会議にあらためて諮るというのが当然な筋だと思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/74
-
075・岸信介
○岸国務大臣 先ほど来お答え申し上げておる通り、根本の方針につきましては国防会議において決定している。それによってその方針を何ら変更しているものではございませんから、これをかける必要がない、こう考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/75
-
076・松本七郎
○松本(七)委員 その方針というのは一体何ですか。それは防衛力の内容だとかそういうものでしょう。それをきめるもっと広い条件、環境というものが変われば、それを変えることそのことが、国防に重大な関係があるのですから、その周囲を取り巻く条件を審議することを国防会議にかけなければならなくなってくるじゃないですか。その証拠に、これは昨年十二月中句ですよ、椎名官房長官が記者会見をして、新安保条約の調印前に閣議に付議することはもちろんであるが、国防会議にも付議することが筋であると、ちゃんと語っているじゃありませんか。これは当然国防会議にかけなければならないものだと思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/76
-
077・岸信介
○岸国務大臣 かけなければならないものと私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/77
-
078・松本七郎
○松本(七)委員 どういうわけですか、その理由を言って下さい。そんなむちゃな答弁がありますか。ちゃんと理由を言って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/78
-
079・岸信介
○岸国務大臣 国防の基本方針というものが三十二年五月二十日に国防会議できまっております。この方針をごらん下されば、かける必要はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/79
-
080・松本七郎
○松本(七)委員 官房長官でさえ、閣議にかけるのはもちろんのこと、国防会議にかけるのが筋だとはっきり言っているのですよ。どういう趣旨か——これは官房長官を呼んで下さい。官房長官、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/80
-
081・椎名悦三郎
○椎名政府委員 記者会見でどういうことをしゃべったか、私は忘れました。(「こんな重要な問題について、忘れるということがあるか」「これじゃ審議できない」「官房長官、もう一回答弁しろ」と呼び、その他発言する者多し)
昭和三十二年五月二十日の決定に書いてありますが、その第四項に、「外部からの侵略に対しては、将来国際連合が有効にこれを阻止する機能を果し得るに至るまでは、米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する。」こういうことがきまっておるのであります。従って、これを動かす必要があるというような場合には、これは当然国防会議にかける必要があると思いますが、この範囲内において処理する場合にはかける必要はないと私は考えております。それで、いつの新聞であるか知りませんが、これは私、記憶がございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/81
-
082・松本七郎
○松本(七)委員 あなたは重要な記者会見でこういう重要意見を述べておりながら、記憶がないなどというのは、総理大臣にならって日本の新聞記者を軽視しているのでしょう。
今の御意見ですが、それじゃ総理大臣に伺いますが、今度の新安保条約で、あなたは一つの特色として、アメリカに防衛義務を負わしている、また期限が無制限であったのを十年に限っておる、こういう点が新しい点だとして指摘されておる。十年に限ってこの条約を結んだことによって、無抵抗主義がむしろ国防上有利だというような事態にもならないとは限らない。今言われた国防会議というのは、条約締結のはるかに前でしょう。三十二年でしょう。そこできめられたときの条件は、今の新安保条約によって生じた条件とは格段の違いがある。そういう新しい、大きな国防の観点から見て見のがすことのできない条件が出てきた以上は、官房長官が新聞記者に語られたように、これをあらためて一応国防会議で審議するというのが当然の筋じゃないかと思う。それを、それよりはるか前の三十二年の国防会議できめたからといって——そのあなたの言われる基本方針というのは、防衛計画の大綱である。そのほかに、国防の基本方針とここでうたっておるのは、もっともっと広い範囲の国防である。それには、外国との関係特に防衛条約、安全保障条約をどの国と結んでおるかということも、当然一つの大きな要素として考えられる国防なんですり。さらにその第五号には、「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」こういうふうにも書いてあります。従って、当然これは新たにかけなければならない。あなたはこの防衛庁設置法の第四十二条で義務づけられておるのです。こういうところにも総理の独断専行が現われておる。これをかける必要はないと今でも思うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/82
-
083・岸信介
○岸国務大臣 私は、かける必要なしと認めております。先ほど来申しておるように、国防の基本方針としてずっと四項目にわたって規定しております、この精神と少しも変わっておらないのでありまして、そういう意味においてかける必要はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/83
-
084・石橋政嗣
○石橋(政)委員 関連して。ただいま松本委員の質問に対しまして、内閣総理大臣は、国防会議にこの条約をかける必要がないとおっしゃったわけでございますが、かける必要がないという理由は、もう一度確かめますけれども、現在の条約と新しく締結されようという条約とは何ら変更がない、だからかける必要がない、こういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/84
-
085・岸信介
○岸国務大臣 基本方針について重要な変更をしなければならぬような内容の変更があるとするならば、かけるべきでありましょう。しかし、そういう点はないと私は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/85
-
086・石橋政嗣
○石橋(政)委員 国防会議に内閣総理大臣がかけなければならない事項というのは、国防の基本方針だけではございません、御承知の通り。この国防の基本方針に基づいて策定される防衛計画の大綱も、またそれに関連する産業等の調整計画の大綱も全部かかるわけです。かけなくちゃならないわけです。そうしますと、この基本方針に何ら変わりがないといたしましても、これを受けてできてくるところの条約そのものに変更があるならば、当然第五号に定められる、必要と認める重要事項としてかけるのが当然ですよ。内閣総理大臣は、しからば今度の新しいこの条約は国防に関する重要事項とはお認めにならぬ、こういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/86
-
087・岸信介
○岸国務大臣 国防会議につきましては、今おあげになっております内閣総理大臣が国防会議にはからなければならない事項としてはっきり書いてあるものは、四号まででありまして、五号は「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」とこうあります。総理大臣が必要と認める国防の重要事項であるかどうかということであります。先ほどお答え申し上げましたように、すでにきまっておる国防の基本方針の一項から四項までの事項をお読み下されば、この方針によってこの改正のすべての点もこれに入っておるものでありまして、そういう意味において特に国防会議にかける必要はないと認めたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/87
-
088・石橋政嗣
○石橋(政)委員 国防の基本方針の第四項に先ほど官房長官が読まれた条項があることは私十分知っているわけです。しかし国防の基本方針の第四項できまっていることだから、今度の新しい条約を国防会議にかける必要がない、こういう答弁は私は了承できないわけなのです。なぜかというと、もう一度申し上げますけれども、それじゃなぜ重要事項とお認めにならないのですか。(「基本方針に変わりがないからだ」と呼ぶ者あり)国防の基本方針に幾ら変わりがなくたって、それを受けて細目的にきめられておるこの条約には変更があるわけですよ。提案理由の説明で藤山外務大臣は、たくさんぎょうぎょうしく並べておるじゃありませんか、この条約と新しい条約とはこんなに違うのですと。これを抽象的な表現をお借りするならば、非常に自主性が高められた、こういうお話です。とにかく内容としては私はいずれ質問のときに一つ一つやりますけれども、少しも変わっておるとは思いませんが、政府の打ち出し方は非常に変わっているのだ、こういう御説明なのです。そんなに変わったものをなぜ重要事項とお認めにならないのですか。もう少し重要事項と認めなくてもいい理由を一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/88
-
089・岸信介
○岸国務大臣 先ほどお答え申し上げた通り、国防会議できめておるところの国防の基本方針というものを受けて、その範囲内において今度の改正も行なわれていることでございまして、特に国防会議にあらためてかける必要なし、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/89
-
090・石橋政嗣
○石橋(政)委員 今度の新しい条約の提案理由の説明の際に、藤山外務大臣は重要な改正点として本文については大体五つあげておられます。一つは日米間の安全保障体制と国際連合との関係を明確にしたこと、一つは、アメリカの日本防衛援助義務を明らかにしたこと、三つには、いわゆる事前協議という項目を設けたということ、四番目には、従来の日米間に存在した安全保障体制を広範な政治経済上の協力関係の基礎の上に置いたことだ、五番目に、条約の有効期間についての明確な定めをしたことだ、こうあげておられます。これは現在の条約が非常に変わったことだ、内容的にも非常に変わったんだという説明だと私は承っておる。国民の大半もそういうふうに受け取っている。特に先ほど松本さんがおっしゃっておりましたが、あなたが四番目にあげられた従来の日米間に存在した安全保障体制というものは、どちらかというと単に軍事的な面だ。ところが今度のものは広範な政治経済上の協力関係の基礎の上に置いたんだ、もっともっと大きないわゆる体制が日米の間に確立されたんだ、こういう説明ですよ。決して同じゃございません。国防の基本方針が同じであろうとも、それを受けてどういうふうな体制をここで確立するかということにおいて異なったものが出てきたら、当然重要事項として考えなくちゃならないはずなんですが、それじゃ総理大臣は、今度の新しいこの条約は、あなたは盛んに自主性を確立した、内容は本質的に非常に異なったとおっしゃっているけれども、ことさら国防会議にかけるほどの重要性はない、こういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/90
-
091・岸信介
○岸国務大臣 現在の何か一方的に自主性を持った改正をしたということは、安保条約としては重要な意義を持っておると思います。しかし国防会議にかけるかどうかということは、国防の基本方針としてすでに十分論議してきめておる。その方針の範囲内におきまして今度の改正が行なわれておるのでありますから、特にこれをあらためて国防会議にかける必要なし、かように認めた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/91
-
092・石橋政嗣
○石橋(政)委員 今度の条約によれば、アメリカは日本の防衛の義務を負った、こうおっしゃっている。そのかわり日本の負うべき義務も新しく生じているわけです。今まで条約上明らかに義務とはされておりませんでした。いかに日本の施政のもとにある地域であろうとも、米軍に対する攻撃を日本に対する攻撃とみなすというような条文はございませんでした。この条文から考えても、自衛隊がになうべき任務というものの範囲は広がっているとわれわれは考えなくちゃならぬ。この一つをとってみても、私は国防会議にかけるべき重要な事項というものに当然該当すると思うのですが、これほどの問題すら重要事項でないというなら、一体防衛庁設置法四十二条の五号によって国防会議にかけなくちゃならない重要事項というものは何ですか。これ以上に重要事項というものがあるんですか。あったら、お知らせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/92
-
093・岸信介
○岸国務大臣 日本の自衛隊が出動するという場合におきましては、日本の領土なり領空なり領海が武力攻撃を受けたときに限られるのであります。しこうして五条の場合におきましても、その点は実質的には少しも変わっておらないのであります。従って今自衛隊の出動する範囲が広がるような、責任が大きくなったようなお話でありますけれども、私どもはそう考えておらないのであります。従ってそういう意味において国防上の重要事項として国防会議にかけなければならない内容は少しも持っておらない、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/93
-
094・石橋政嗣
○石橋(政)委員 それじゃ、端的にお答え願いたいんですが、この内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項というものは一体どんなものがあるんですか。これほどの国防に関する重要な条約、これを重要事項とお認めにならぬなら、一体どんなものがこの重要事項に該当するものとお考えになっておられますか。その点をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/94
-
095・岸信介
○岸国務大臣 これはあらかじめどういうものだということは、なかなか言うことはむずかしいと思います。いろいろと出てきた場合において総理大臣が認定をするわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/95
-
096・石橋政嗣
○石橋(政)委員 今度のこの条約の問題以上に重要事項と認められるようなものがあるとは思いません。あるなら、一つお知らせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/96
-
097・岸信介
○岸国務大臣 たとえば安保条約をやめるというような場合においては、かけなければならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/97
-
098・石橋政嗣
○石橋(政)委員 それは国防の基本方針が変わることでしょう。それは当然かけなくちゃなりませんよ。あなた方が昭和三十二年に国防会議においてきめられた国防の基本方針が変更されることです。すなわちアメリカとの安全保障体制を基調とするという態度が変わることですから、それは当然かけなければならぬ。それは第五号でございません。第一号の基本方針の策定に関する点でかかってくる。私がお尋ねしているのは、この防衛庁設置法四十二条五号の重要な事項というものにどんなものがあるのですかと、こう尋ねておるわけです。これほどの条約すら必要がないというなら、一体どんなものがあるのですかとお尋ねしているのですから、五号の方でお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/98
-
099・岸信介
○岸国務大臣 先ほど申し上げておる通り、これは起こってきた事態が、国防の重要事項と総理大臣が認めた場合におきましては、かけるのでありまして、それをあらかじめ言うわけにはいかぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/99
-
100・石橋政嗣
○石橋(政)委員 もう終わりますが、答弁できないわけですよ。重要な事項というものにはどんなものがあるか。これほどの条約を重要な事項と認めない。われわれが考えてみて、一号から四号まで以外で重要事項というからには、当然この新しい条約などはかかるべきであって、これがかからぬようなら、五号は要らぬ。要るとおっしゃるなら、具体的に一つでもいいから例をあげてごらんなさい、こう言うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/100
-
101・岸信介
○岸国務大臣 例があがるようなものについては、一号から四号まで書いてあるわけであります、しかしながら、そういうあらかじめ予想できないけれども、いろいろ起こってきた場合において、必要ありと認めた場合においてはかける、こういうことでございますから、明示をしろということは無理だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/101
-
102・小澤佐重喜
○小澤委員長 飛鳥田一雄君より関連質問の申し出があります。これを許します。飛鳥田一雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/102
-
103・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 今、松本君からも、石橋さんからもお尋ねいたしたところですが、今回の安全保障条約の改正は、国防の基本方針に何ら変更をもたらさないという御説明であったように思うのですが、いかがでしょうか、もう一度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/103
-
104・岸信介
○岸国務大臣 変更をもたらすものはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/104
-
105・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 少なくとも、一方において、日本に対する防衛の義務をアメリカに課す、そしてこれを非常に手柄顔に御説明になり、そして他方において、国防の基本方針に何らの変更なしということでは、何か受け取れないような感じがするわけです。少なくとも一つの行為を行なう場合に、相手方が防衛を義務づけられる、戦闘に参加することを義務づけられるかどうかということは、相当大きな変化のように思えます。この変化をあえて無視して、国防会議におかけにならなかった。それはあなたの主観的な考え方であろうと思います。
そこで、私の方で伺いたいと思いますのは、これほど、少なくとも国民の大ぜいが、新しい事態が発生したと考えておることについては、国防会議におかけにならない。にもかかわらず、国防会議の過去の実績を見ますと、昭和三十三年九月には、対潜哨戒機P2Vの整備について、国防会議におかけになっている。まあ悪く言えば、たかが対潜哨戒機をどうするこうするというようなことを、国防会議にちゃんとおかけになっていらして、これだけ大きな、国民的な安全保障条約の改正については、国防会議に何らおかけにならない。こういうことは、一体どういう意味でしょうか。もう少し国民の納得のいくように御説明をいただきたいと思います。ばかばかしくてものが言えないというのが、私たちの考え方です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/105
-
106・岸信介
○岸国務大臣 先ほど来しばしばお答え申し上げております通り、国防会議において国防の基本方針というものをきめておりまして、その範囲内におけるところの、何らそれを変更するような、また、義務を加重するようなことを規定しているわけではございませんから、従って、特に国防会議にかけなければならぬ、こういうふうな必要は認めなかったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/106
-
107・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 さらにもう一つ伺いますが、昨年の十一月、すなわち、昭和三十四年の十一月には、グラマン戦闘機を白紙に戻して、ロッキードをお買い求めになるということを、電光石火国防会議でおきめになった。こういう国民の反体の非常に強いものは、国防会議というものを御利用になって、雷光石火、わずか一時間半の御議論でおきめになってしまったわけです。こういうロッキードをお買い求めになることについて、国防会議を堂々とおやりになって、国防会議を経ましたからということで説明をされる。他方、これほど重要なことを国防会議におかけにならない。この問題については、あなたは、あえて主観の違いとせられ得るかどうか。言葉は御自由です。あなた方が主観の違いだとおっしゃれば、それは御自由です。しかし、やがて歴史の批判を受けるであろうことは明らかだろうと思いますので、ここでロッキードをおかけになって、今度はかけない理由を一つ説明して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/107
-
108・岸信介
○岸国務大臣 先ほど来申し上げておる通り、安保条約としての内容は変わっておりますが、国防の基本方針とは何ら矛盾したり、あるいは抵触する、あるいはそれを変更するというような点がないのであります。この飛行機の製作その他につきましては、防衛の二号、三号の規定によってこれを国防会議にかけておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/108
-
109・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 この国防会議ができましたときに、私もちょうど内閣委員会にいて皆さん方の御説明を伺ったのですが、そのときに鳩山総理大臣は、「現在経済、外交あるいは政治など、すべてのものを総合的に、慎重に審議する必要があると思えばこそ、国防会議というものを起こしまして、閣僚をもってそれに充てて研究をして参りたい。総合的の、慎重な審議をしたいために、国防会議を起こすわけです。」と御説明になったわけです。結局これは、世界の情勢、国内の情勢、こういうものに合わせて常に国防の基本方針については反省を加え、検討をしていくというお心持のようであったと私は考えております。おそらくあなたも、その点については御議論がなかろうと思います。ところが、伺っておりますと、世界が、平和の方向、軍縮の方向へ流れ始めたという事実はお認めになりながら、ただし、今すぐにというわけには参りません、こうおっしゃってこうした地域協定あるいは集団安全保障のようなやり方は、世界の流れの中からいえば、暫定的な措置であるということを、あなたもお認めになっていらっしゃるわけです。そうした場合に、この条約を見ますと、十年という期限が書いてあります。昭和三十二年にきめた国防の基本方針もすでに四年たっており、これから十年間、十四年間変更しなくてもよろしいということをあなた御自身がお一人でおきめになることは、独断ではないでしょうか。当然国防会議にかけて、今後十年間、こういう情勢の中に身を置くことがいいか悪いかということは、国防会議の慎重な討議を経られることが、総理大臣としては慎重な態度ではないだろうか、こう私は思うわけです。基本方針は、今は変わりないとあなたはおっしゃいます。今は変わりない。しかし、兵器の発達とか、平和を望む全世界の国民のいろいろな動きというものは、非常に早い流れで流れつつある、発展しつつある。そういう中に、十年間固定した、アメリカと組んでやってよろしいという固定した政治体制をきめること、このことは想当責任があります。この相当重要な責任を、ただ一ぺんも国防会議におかけにならずに、(「そのときは別だよ」と呼ぶ者あり)グラマンはかける、P2Vはかける、こういうふうに、ささたるものはおかけになって、そういう重要な問題は、一ぺんもかけずにやるということは一体どういうわけでしょう。今、椎熊氏は、そのときはそのときだとおっしゃるのですが、しかし、十年という条約の期限をきめれば、そう簡単に、そのときはそのときとは言えないだろう。ヤジにお答えするわけではありませんが、しかし、そういう不心得な根性があることを、ここで一応御忠告しておかなければいけないだろうと思って、あえて応じたわけです。一つこの点について、くどいようですが、十年間日本を一つの体制に縛りつけることの可否について、国防会議に諮らざる理由を聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/109
-
110・岸信介
○岸国務大臣 国防の基本方針にもはっきり書いてありますように、将来、国際連合が有効にこれを阻止する機能を果たすまでは云々ということが書いてありますが、今度の条約にもそういうことを明らかにいたしております。十年という期間は、今日の条約におきましては無期限になっておりますが、これを、十年たてば、一年の予告をもって一方的に廃棄できるという条文にしたわけであります。今お話しのような国際情勢の非常な変更がありまして、この方針を変えるというような場合におきましては、国防会議に付議することは当然でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/110
-
111・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 私のお聞きしたことには、そのままお答えにならない。私は、これから十年間縛りつけられていくことについて、一度国防会議にお聞きになることが、政治家としての慎重な任務ではありませんかということを伺ったわけです。しかし、まあお答えにならなければけっこうです。
そこで、第二の問題として、今藤山さんがお述べになりましたように、当然、この条約の結果は、日本の自衛隊の増強を義務づけられるわけです。もしそうだとすれば、あなた方が昭和三十二年におきめになった防衛計画の大綱というものは第一次が終わって、新しい第二次に入らなければならぬわけです。第二次の防衛計画を策定しなければならぬという段階にきておる。しかも、その第二次の防衛計画は、当然この条約によって増強を義務づけられていく、すなわち、当然この国防会議にかけなければならない。防衛計画の基本に重大な影響を及ぼすこの条約については、当然国防会議にかけるべきだと私は考えるわけです。この点について、あなた方は、防衛の基本方針だけをかければいいのだ、条約はかけないでもいいのだ、こういうお話になるかもしれませんが、しかし、渕源するところはここにあるということを考えれば、おかけになるのが当然ではないだろうか。第二次防衛計画をもう策定せられる段階にきておるのでしょうから、一緒におかけになるのは当然だったのじゃないか、こう私は思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/111
-
112・岸信介
○岸国務大臣 第二次防衛計画を定めました場合において、国防会議にかけますことは当然でございます。そして、この条約におきましても、国防の基本方針の三項にきめております「国力、国情に応じ、自衛のため必要な限度において効率的な防衛力を漸進的に整備する。」というこの方針は、何ら変更を受けておるものではないのでありまして、これ以上の義務を、われわれがこの条約の改正において負うごとき説明をする人が間違っておるのであります。われわれは、あくまでもこの方針に、少しも変更はないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/112
-
113・小澤佐重喜
○小澤委員長 西村力弥君より関連質疑の申し出があります。この際これを許します。西村力弥君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/113
-
114・西村力弥
○西村(力)委員 関連してお尋ねしますが、自衛隊法の第七十六条ですね。そこには防衛出動の規定がございます。この防衛出動は、「外部からの武力攻撃」、カッコしまして、その「おそれのある場合を含む。」となっておりまするが、どういう場合に防衛出動がなされるわけですか。ここの「外部からの武力攻撃」というものは、これは日本に対しての武力攻撃に限定されている、そのようでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/114
-
115・岸信介
○岸国務大臣 日本の領土、領空、領海等に対して武力攻撃が加えられた場合です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/115
-
116・西村力弥
○西村(力)委員 そうしますると、自衛隊法の第三条に規定されておる自衛隊の任務、ここには「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務」とする、こういう工合になっておりまするが、ここの直接侵略及び間接侵略も、これはわが国自体に対する直接もしくは間接の侵略、こういうことになって参るわけなんでありまするが、それでよろしいでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/116
-
117・岸信介
○岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、わが国の領土、領空、領海に対する侵略であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/117
-
118・西村力弥
○西村(力)委員 それと、今度の新安保条約の第五条には、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、」こういう工合に規定されて、これに対処して、共通の危険に対処して共同の行動を起こすと、こうなっておる。これはだれがやるかといいますと、これは自衛隊がやるはずなんです。この自衛隊の、現在規定されている任務、あるいはその武力攻撃の際の発動というものと、この第五条における自衛隊の行動というものが、全然ここに違いがないというようなことを、先ほど石橋委員の質問に対して答えられましたが、これは大きな誤りであると私は思う。任務は拡大され、また、大きく質的に転換しようとしておるのだ、こう申さざるを得ないと思う。今の自衛隊の諸君は、日本自体に対する危険に対処するけれども、日本国内におるアメリカ軍に対して攻撃があった際においては、その発動というものはないはずです。そういうような工合にわれわれははっきり解釈をする、その点について総理から御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/118
-
119・岸信介
○岸国務大臣 日本におる米軍が攻撃されるという場合において、日本の領土、領空、領海が侵略を受けるわけであります。それなしにそういうことはあり得ない。従って、自衛隊の行動としては、先ほど申しておるように、日本の領土、領空、領海が他から侵略される、武力攻撃があった場合において、これに対処した行動をとるということは少しも変わっておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/119
-
120・西村力弥
○西村(力)委員 この自衛隊法はいつ制定されましたか。これは昭和二十九年——いろいろ小部の改正が三十一年にもございましたが、その現時点において、この自衛隊法というものは制定されておるわけなのでございます。その際においては、新安保条約のような工合に、米軍は、日本の基地を使用するけれども、日本に対する義務は負わない、その反面、米軍に対する危険に対しましても、日本の自衛隊は何ら責任を負わない、こういう立場において、この自衛隊法というものは作られておるはずならでございます。それは昭和二十九年から間違いないと思う。米軍に対する攻撃もわれわれは守るのだ、いっそういう解釈を出したか。今になって、ただ便宜的にそういうことを言っておるが、この法律が制定された昭和二十九年において、そういう解釈を立てられるはずはない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/120
-
121・岸信介
○岸国務大臣 二十九年といえども、自衛隊法が設けられましたときに、いやしくも日本の領土、領空、領海が侵略された場合におきましては、当然に自衛隊が出動するということは、自衛隊法が設けられた最初から今日まで、少しも変わっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/121
-
122・西村力弥
○西村(力)委員 それでは、新しくこの新安保条約の第五条等を設定した理由というものはなくなってしまうはずなんです。新しく結ばれようとしておるこの第五条は、そういう欠陥を補うために、あなたの方から言うと、米軍は駐留するが、日本を防衛する義務はない、片務的であるから、これはよろしくないから防衛の義務を持ってもらうのだと、こう言う。その反対給付として、いずれか一方に対する武力攻撃、すなわち、米軍に対する武力攻撃に対しても日本の自衛隊が責任をとるのだ、そこに相互の片務性を双務性にするという主張があるはずなんです。今無理な解釈をして、日本の領域なんかに対する攻撃は、従来とも、すべて自衛隊の任務であるとして間違いないのだというような解釈をやりまするけれども、そうしますならば、第五条を何がゆえにこのように大事な問題として——これはあなた方、宣伝これ努めているでしょう。片務性を双務性にしたのだ、こういうことを言っているでしょう。先ほどの解釈の通りだとすれば、そういう宣伝をするがごとく、この改正は必要ないはずなんです。(「そうしておかないと、なお危険なんだよ」と呼ぶ者あり)あんたは黙っていなさい。
〔「委員長注意しなければだめだ」と呼び、その他発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/122
-
123・小澤佐重喜
○小澤委員長 静粛に願います。——西村力弥君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/123
-
124・西村力弥
○西村(力)委員 岸総理の答弁を求めても、先ほどの答弁と変わらないと思う。しかしながら、この問題は、そう簡単に、今々の言いのがれのために、そういう解釈を立てるということではいけない。これは自衛隊法を制定した当時の議事録全部を調べて、そうしてこの問題を明確にしなければいかぬ。ですから、その点について、これから私たち調査研究するために、暫時猶予を与えてもらわなければならぬと思うのです。こういうような答弁でそのまま国会の審議が通るとするならば、これはとんでもないことだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/124
-
125・岸信介
○岸国務大臣 自衛隊が、自衛隊法が設けられました最初から、日本の領土、領海、領空が他から侵略された場合においてはその直接侵略と間接侵略の場合を問わず、これを防衛する義務を負うておることは、自衛隊法の一条に明定しておる通りであります。その事柄は今度の改正において実質的に少しも変わっておらないのであります。よそにいる米軍が攻撃されたものに対して、われわれは、日本の領土、領空、領海が攻撃されない場合に、何ら出動の義務を持っておるわけではありませんで、その点は少しも変わっておらないのであります。(「明快々々」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/125
-
126・西村力弥
○西村(力)委員 いささかも明快じゃない。この自衛隊の任務というのは、明らかに日本自体の攻撃に対する軍事行動というか、そういう立場でやっておる。これは間違いないことなんですよ。それならば、その武力攻撃は、米軍に対する攻撃という場合も含むのだ、こういう解釈をあなたは立てるのですか。自衛隊法の第七十何条かの防衛出動の場合に、外部からの武力攻撃を受けたときに出動する、この中には米軍に対する攻撃も含むのだ、こういう工合に解釈されているかどうか。いずれにしても、これは答弁を求めたってしょうがない。それは制定当時の議事録を全部調べて、そうして事を明確にしなければならぬと思います。そのために猶予を与えてもらわなければいかぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/126
-
127・小澤佐重喜
○小澤委員長 この際、昼食のため四十分間休憩をいたします。
午後零時二十六分休憩
————◇—————
午後一時三十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/127
-
128・小澤佐重喜
○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
飛鳥田一雄君より議事進行に関する発言を求めております。この際これを許します。飛鳥田一雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/128
-
129・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 今提案せられている、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定、この問題について審議に入ります前に、ただしておきたいことがあります。
まず第一に伺いたいと思いますのは、日本国憲法七十三条第三号ただし書きの規定というのは、一体何の規定であるかを大臣に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/129
-
130・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 条約につきまして国会の承認を得る規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/130
-
131・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 そういたしますと、この新協定は、条約として承認をお求めになる御意思で、国会に提案をせられておるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/131
-
132・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 もちろんそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/132
-
133・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 もし条約としての提案をせられておるとするならば、当然相手国のアメリカもまた、これを条約として扱わなければならないだろう、こう考えますが、アメリカの様子を新聞等で見ますと、安全保障条約だけを上院の承認を求めるために提出をせられておるだけでありまして、この新協定は、上院の承認を求める手続をとっておらないという報道が参っております。この点について、外務省としてはどの程度正確な事態をとらえていらっしゃるのか、これを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/133
-
134・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 アメリカにおきましては、上院に批准の手続をとっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/134
-
135・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 そうなりますと、おかしいじゃないですか。条約というのは、一方的にだけ成立をするものでしょうか。日本国民に対しては、これは条約としての性格を持ち、条約として国民に対して拘束をする。ところが、アメリカの側では、これを行政協定として、条約としては扱わない。こんな奇怪しごくな事態が生じていいものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/135
-
136・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 その点は、それぞれの憲法によりまして、その国の特殊な事情等によって違っておるわけでありまして、そういう例は幾らもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/136
-
137・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 そういたしますと、アメリカとしては、これは条約としては扱っていない、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/137
-
138・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 アメリカとしてはアメリカの憲法その他の関係からいたしまして、日本と同じような取り扱いをいたしておらぬのでありまして、政府に委任している事項でもあり、あるいは条約としてかけないでいくことにも相なっている。——いろいろございます。手続でやっておりますので、ちっとも差しつかえはないわけでございます。なお、こまかい点は条約局長から申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/138
-
139・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 そういたしますと、アメリカでは条約ではない、日本では条約だ、一つのものがこちらへ向けば条約、一つのものがこちらへ向けば行政協定、こんな奇怪しごくの事象が世界にあるのでしょうか。そういうことについて、なぜもっとアメリカと日本の間で、取り扱いについてきちっと話し合いをしておかれなかったのか、こういう点について話し合いがすでにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/139
-
140・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、条約という言葉の問題になるかと思いますが、アメリカといたしましては、これはアメリカの上院の助言と承認を要するものではないというアメリカの扱いでございます。これはアメリカの憲法上の扱いでそうなっているわけでございます。ただ、これは双方とも全権委員を出して締結した約束でございますから、約束としては同等の効力を持つことは当然でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/140
-
141・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 そういう説明では私たちは納得できません。一つの契約が、日本の国に対しては条約としての大きな効力を持ち、アメリカに対しては単なる政府間の協定にしかすぎないなんという、へんぱな解釈の仕方、取り扱いの仕方が、許されるというはずはないじゃないですか。もし行政協定、アメリカがこう考えるならば、アメリカとしては、日本に対して条約としての要求はできないはずだ。自分の国では行政協定として取り扱っておきながら、日本に対して条約としての要求はできないだろう。また日本の政府としても、自分の国だけは条約として取り扱い、相手方からは行政協定として軽く取り扱われるなんという、そういう屈辱的なやり方自身に問題がありはしないか。なぜ双方とも条約として、こちらも国会にかける、こういうのならば、向こうも国会にかけるという、あらかじめ調印のときに、お約束をなすっておかないのか、こう疑問が出てこないわけにいきません。その点についてどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/141
-
142・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 行政上まかされた条約を締結する分には、アメリカにおいて上院に提出しないで済むのは、アメリカ憲法の規定しているところでありまして、一向に差しつかえございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/142
-
143・小澤佐重喜
○小澤委員長 岡田春夫君より議事進行に関する発言を求められております。この際これを許します。岡田春夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/143
-
144・岡田春夫
○岡田委員 伺いますが、それでは現在政府は、行政協定を国会の承認を得るために付託したわけで、その理由としては、先ほど藤山外務大臣が答弁されたわけですが、この行政協定の前の行政協定は、国会の承認を得ておりませんね。この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/144
-
145・小澤佐重喜
○小澤委員長 林法制局長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/145
-
146・岡田春夫
○岡田委員 いや、林さんに聞いておりませんよ。これは林さんに私は注意を喚起します。この前、参議院でもあなた問題になったでしょう。私たちは衆議院ではこれをことさら問題にしようと思わないのに、藤山さんに聞いているのに、あなた横から買って出て変な答弁をしてもらいたくない。それならば、私は藤山さんに聞いて、藤山さんの都合が悪そうならば認めるけれども、あなたは藤山さんに了解も得ないで答弁しようとしているじゃないですか。あなた少し出しゃばり過ぎるじゃないか。少し考えたらいい。出しゃばり過ぎますよ、あなたは。私はきょうは三百代言的なとかなんとかというようなことは言いませんよ。言わないけれども、大体の意味はわかっているだろう。私が何を言いたいかわかっているだろう。あなたは。注意なさい。
外務大臣、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/146
-
147・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 現在の行政協定が、国会の批准を得なかったのは、その通りでございます。それは第三条によりまして、「配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定する。」こうなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/147
-
148・岡田春夫
○岡田委員 それでは、新しい行政協定は、やはり今度の安保条約の規定に基づいて行政協定を作るという条文がありますね。それに基づいて出されておると同じような形式は、前の行政協定も今度も同じなんでありますが、今度の行政協定をあらためて国会の承認を求めたということは、これは私の考えですが、行政協定に基づいて、新たなる国民に対する権利義務がいろいろな形で押えられるとか、拘束されるとか、権利義務の関係が生まれるから、行政協定を国会の承認を得るために出したのだ、そういう意味では、あなたは条約として承認を求められておるのだろうと思いますが、この点はその通りでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/148
-
149・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 現在の条約と、今度の条約と、書き方が違っております。その詳細につきましては、政府委員より答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/149
-
150・林修三
○林(修)政府委員 現行の安全保障条約第三条は、御承知の通りだと思いますが、その当時の国会においても詳しく御説明がしてあるはずでございますが、要するに、あれは両国の政府間の行政協定できめる、こういうことになっておりまして、あの第三条の御承認を得たことによって、両政府は、あそこに書いてあります駐留軍の配備を規律する条件は両政府間で行政協定によってきめるということの事前承認を得ている、そういう前提で、ただいまの行政協定は出ておるわけであります。ただいまの行政協定は、従ってそれ自身としては、国会の御承認を経ていない。しかし、それはもとになる第三条が国会の御承認を経たことによって、それで条約的効力を有するのだ、こういうことに当時御説明してあるはずでございます。それから今度の第六条は、御承知の通りに、この第六条の第二項でございますが、要するに、現行の行政協定にかわる別個の協定と書いてございまして、これはいわゆる両政府間という言葉をここに書いてございません。つまり、国家間の協定によってきめる、そういう趣旨でございますから、今度国会に出した、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/150
-
151・岡田春夫
○岡田委員 それでは、今答弁を伺いまして明らかになって参りましたが、アメリカにおいても、この行政協定は、国家間の協定として扱われているのでありますか、どうなんですか。すなわち、政府間協定ではなくて、アグリーメントではなくて、そういう意味で、国家間の権利義務を拘束するという意味で、条約として扱われているかどうか、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/151
-
152・林修三
○林(修)政府委員 いわゆる国家間の取りきめという意味で扱われているかとおっしゃれば、私はそうだと思います。ただ、その場合において、アメリカにおいていかなるものを国会の助言と同意によってやるかどうかということは、これはアメリカ憲法の解釈でございまして、アメリカは今まで、いわゆるエグセキューティブ・アグリーメントという観念は、いわゆる上院にかけなくてもいい、いわゆる条約の範囲、国際取りきめの範囲、そういうことでございまして、それをいかなる範囲においてアメリカにおいては可能であるかどうかということは、これはアメリカ憲法の解釈問題だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/152
-
153・岡田春夫
○岡田委員 それはアメリカ憲法の場合においても私はちょっと解せないのでありますが、政府間の協定でアグリーメントの場合にはアメリカの憲法においては承認を必要としないということは当然だろうと思うが、今度の行政協定が、国家間の権利義務を拘束するものとして、条約としてアメリカにおいても扱われているけれども、しかしながら、この条約ではあるが国会の承認を必要としないというのは、アメリカの憲法の規定に基づいているのだ、こういうことになるのですか。この点は非常に重要なんですが、一つ条約局長でも、あるいは藤山外務大臣でもけっこうでありますが、はっきりと御答弁願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/153
-
154・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。ただいま、政府間とか国家間という用語の例でございましたが、いかなる場合でも、アメリカとしましてはアメリカの——私、申しますまでもないことだと思いますが、いかなる国でも、どの国家間の約束、政府間の約束でもよろしゅうございますが、約束をどの範囲まで国会の承認を得べきものとするか、どの範囲はしないでいいのかということは、各国が国内事項として、憲法で決定することだと考えております。従いまして、それによりましてアメリカといたしましては、この行政協定は、アメリカの憲法上の解釈としては国会のアドバイスとコンセントを必要としないという立場でこれをやっていると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/154
-
155・岡田春夫
○岡田委員 今の答弁は、林さんと答弁が幾らか食い違っているのですが、私が国家間の権利義務と申し上げたのは、私は林さんの答弁を受けて伺っているので、国家間の権利義務の問題であるけれども、憲法上の規定で、特に政府間の協定であるならば、これはアメリカの憲法の規定に従って承認を必要としないのだ、こういうことを林さんは言われたのであって、それをあなたの場合には国家間の権利義務であっても、アメリカの憲法においては国家の承認を必要としないものもあるのだ、こういう答弁になると思うのだがお二人の答弁の間に食い違いがあると思いますが、いかがですか。(「ない、ない」と呼ぶ者あり)そうじゃありませんか。もう一度言いましょう。林さんの場合には、政府間の取りきめについては、これは国会の承認を必要としない、それの説明のために、国家間の取りきめ、そういうものについては別であるがという意味での御説明があったように私は伺った。そうすると、高橋さんの場合には、国家間の取りきめであってもあるいは政府間の取りきめであっても、アメリカの憲法においては、どちらの場合であっても国会の承認を必要としない、これはアメリカの憲法においては必要としないことになる場合もあるのだということを言うのですが、それでは国家間の取りきめあるいは政府間の取りきめにおいて、アメリカの国会において承認を必要とするもの、承認を必要としないもの、それは何が基準になってきめられているのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/155
-
156・林修三
○林(修)政府委員 前段において私の言いましたことと、高橋条約局長の言いましたことは、実は食い違ってないと思います。岡田委員が今おっしゃいましたように、私の発言をお引きになった点は、実は日本の憲法の点について申し上げた点じゃないかと思います。それから条約局長の発言をお引きになった点は、アメリカの憲法の問題についてだと思います。その点については、私どもの発言は食い違っておらないと思います。
それから、アメリカの憲法上の慣習と申しますか、取り扱いで、どの範囲をいわゆるアメリカにおいて行政府限りで結び得るか、あるいは必ず国会の同意と助言が必要かということは、これはアメリカの今までの憲法上の慣習問題だと思いまして、これは一がいにどういう基準かということは、私どもが申し上げるのも、ちょっと必ずしもはっきりしたことは申し上げられませんけれども、今までの慣例から見ますと、大体ずっと慣習ができているようでございまして、そのときどきにおいて、アメリカの大統領はその慣習を見つつ、その基準を見つつ、国会にあるものはかけ、あるものはかけない、こういうことで扱ってきているのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/156
-
157・岡田春夫
○岡田委員 私も議事進行で、飛鳥田氏がまだやられると思うので、私はこの程度にしますけれども、要するに、ここではっきりしてきたいことは、日本の側としてはこの行政協定を条約として扱う。これは前の行政協定の場合には条約として扱わなかったけれども、今度は条約として扱う。ところが、これはアメリカの場合においても、行政協定は条約として扱っている、これは間違いないでしょうね。この点ははっきりしておかなければならない点だと思いますが、条約として、いわゆる国家間を拘束する条約として扱っているのであるということは、間違いないのでございますね。この点ははっきりお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/157
-
158・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/158
-
159・岡田春夫
○岡田委員 それでは国会の承認というのは、いわゆる批准を必要とする意味で、非常に重要な意味を持っていると思う。批准条項は当然国会の承認を必要とするというのは、批准というのは重要であり、国民に対する権利義務をいろいろな形で制限するわけですから、そういう意味で国会の承認が必要であり、また、批准というものが必要になってくると思うのですが、日本の国ではこの行政協定が批准が必要であり、アメリカの場合においては批准を必要としないということならば、いわゆる条約の扱いとしてきわめて不公平だと思うのだが、この点については、交渉のときにおいて、何らかお話し合いになっておられるのですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/159
-
160・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 交渉の過程におきまして、それぞれ取りきめ等につきましてどういう手続をするかということは、お互いに話し合いをいたしておりますけれども、アメリカはアメリカ自身の国内の憲法上の取り扱いに従ってやっておるわけであります。日本は日本の憲法上の取り扱いにおいてこれをやるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/160
-
161・岡田春夫
○岡田委員 この点については、まだまだ実は伺いたい点があるわけなんですが、実は法律上の点でいろいろな問題点がありますので、これはあとで一つじっくりお伺いをいたしたいと思います。そこで、この点につきましては、質問の時間をやはりさきますので、きょうはこの程度で留保いたしておきます。それからなお、飛鳥田君の発言も留保されるそうでありますので、委員長に私から申し伝えておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/161
-
162・小澤佐重喜
○小澤委員長 質疑を継続いたします。松本七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/162
-
163・松本七郎
○松本(七)委員 ただいま飛鳥田さんから出した問題は、非常に重要な問題なので、今後いろいろな角度から、もう少し解明しなければならぬと思うのですが、今問題が出されましたので、私も一点藤山外務大臣に伺っておきたいのだけれども、アメリカと日本の関係ということは、今後なお問題にするとしましても、先ほどの答弁でも、第三条でもって政府間の協定にするという前提があるので、それでああいう扱いをしたのだ、今回はそれを国家間の取りきめにしたのだ、こういうお話が林さんからあったわけです。そうすると、なぜ前回の場合は三条に基づいて両政府間の取りきめにするような扱いをして、それから今回はそれを改めたのか、なぜ違いを生じたのか、この点について、外務大臣から一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/163
-
164・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 現在におきましては、先ほど来お話申し上げましたように、三条によりまして当時の人が取り扱ったと信じております。その後われわれといたしまして、国連に対する協定等も国会にかけましたし、今回のものにつきましても、今申し上げたように、本条約中に現行安保条約第三条のような書き方をいたしておりません。従って、当然今回はこういう取り扱いをするのが適当だと考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/164
-
165・松本七郎
○松本(七)委員 前回の取り扱い方が適当でないから、それを改めたのですか。そこのところはどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/165
-
166・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 前回は前回で第三条によりまして、一番適当な扱いをしたのであります。今回は今回で一番適当な取り扱いをいたすわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/166
-
167・松本七郎
○松本(七)委員 そこのところが問題なんです。今後それはさらに追及します。
そこでこの際、いずれ今後の審議を進めるにあたって、問題点が出るにつれて資料要求はいたさなければなりませんけれども、政府の方も準備の都合もあると思いますので、一応必要と思われる資料を要求しておきます。
一つは、すでに参議院でも要求が出されたのですが、日米合同委員会における議事録並びにその中で合意に達した合意書、この前も外務大臣の御答弁があったと思うのですが、これは全部まとめて出していただけますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/167
-
168・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 御審議にあたりまして、出し得る資料というものはできるだけ出したいと思いますが、なるべく一括して名前等を明示して、こういうものを出してもらいたいということでやっていただきますれば、できるだけ準備を早急に進めまして、出し得る資料は出すようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/168
-
169・松本七郎
○松本(七)委員 そうでなくて、合意書を全部まとめて出すことはできないのですか、できるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/169
-
170・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 前々から申しましたように、合同委員会の合意書というものは出すわけに参りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/170
-
171・松本七郎
○松本(七)委員 どうして出せないのですか。理由は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/171
-
172・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 今日までわれわれは不公表の話し合いをいたしておりますので、出すわけに参りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/172
-
173・松本七郎
○松本(七)委員 条約なり行政協定を実施するにあたって、両者でもって話し合いをしている、その合意に達したものが出すことができない、非公開にするというような話し合いをするということは、おかしいじゃないか。これによって日本国民の権利義務は拘束されておるのだから、この行政協定の実施状況がどのようであったかということを、われわれは詳細に検討しなければならぬ。その運営の大事な、日米間の合意に達したことが、全部出せないというのはどういうわけですか。なぜそういう非公開にするという取りきめをしなければならないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/173
-
174・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 合同委員会におきます議事録及び合意書というものは、出さないことにいたしております。しかし、合意しました上で、いろいろ外部でそういうことを取り扱って参るのでありますから、そういう意味において、説明書は出しますけれども、本文そのものを出すわけには参りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/174
-
175・松本七郎
○松本(七)委員 出さないことにした理由は、その合意が、条約なり行政協定に違反している事項があるからというふうに勘ぐられなければならなくなる。何ら違反事項がなしにこれが行なわれておるならば、全部さらけ出していいはずなんです。それを出していただかなければ、合法的にすべてが取り扱われておるかどうかということは、われわれは判断できないじゃないですか。そういうものがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/175
-
176・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 違反とか違反でないとか、そういう問題ではございません。合同委員会における、ただいま申し上げましたような議事録及び合意書というものは、今日まで不公表の話し合いをいたしておりますので、その限りにおいては出せません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/176
-
177・松本七郎
○松本(七)委員 それでは、これはできるだけ広範囲に、可能な限りまとめて出していただくということと、われわれの方も今後審議の必要に応じて要求をいたすことにします。
それから調達庁関係で、行政協定十八条に基づく補償のケース別、人身補償、不動産補償、こういったケース別の資料をお出し願いたい。委員長の方から一つ要求していただきたい。それからNATOの行政協定並びに特にボン協定、第四には、米国が締結した一切の同盟条約並びにこれに基づく基地協定、以上、いいですね。委員長一つお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/177
-
178・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、御審議のために資料の要求がいろいろあると思います。従いまして、それを委員長を通じまして文書でお出し願いますれば、一番間違いなく、出せるものは作成して出すようにいたしますので、ときどき質問の中で言われただけでありますと、間違ったり、あるいは落としたりする場合がございますから、なるべくそういうふうに文書でもって御要求になっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/178
-
179・松本七郎
○松本(七)委員 それだから、これはあらためて委員長から資料要求することになっておりますから、今委員長を通じて申し上げたのです。速記もとっておるし、これはあらためて委員長から、今申し上げた通りに要求がいきますから、一つ出していただきたい。
そこで、今度の新条約でございますが、新条約ができた経過を少し明らかにしていただきたいのです。実はこの新条約ができました経過については今もってかなりなぞのベールに包まれて、明らかにされておらない点が多い。端的に総理大臣に聞きますが、岸総理大臣が新条約方式にきめられたのは、時期としてはいつでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/179
-
180・岸信介
○岸国務大臣 現行の安保条約を、対等な、また日本の自主性を認めたものにしたいという希望は、私が一九五七年でありましたか、アメリカをたずねましたときに、アイゼンハワー大統領と話し合いをする際に、その私の意向を述べたのであります。これに対してアイゼンハワー大統領は、当時の状況から、その問題は、いきなり改正という問題に入る前に、まず運営の点その他の点を、十分両国の国民の感情と利益に合うようにしていくために委員会を作ろう、また、委員会において、細部において改正を要するというような事態等についても検討するというような意味で、安保委員会が設けられたのでございます。私自身としては、できるだけ早い時期に全面的に改定をしたいという意向を終始持っておったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/180
-
181・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、もう当時から、岸さん自身としては、方式についても今回のような新条約方式でいくということを考えられておったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/181
-
182・岸信介
○岸国務大臣 私は全面的に改定をしたいという考えでありました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/182
-
183・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、条約の方式については、内容は全面的改定、しかも方式においても、結果的に見れば、ちょうど米韓、米比、こういうのと非常に似通った形式になっておるわけですけれども、そういった全面的な大幅な改正にするということについては、藤山外務大臣とも常に相談されてきたものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/183
-
184・岸信介
○岸国務大臣 時々相談はいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/184
-
185・松本七郎
○松本(七)委員 その点をありのまま御答弁願いたいのですが、われわれが知らされたとこによりますと、岸首相は——安保委員会が作られたのは三十二年ですね。三十三年の五月に選挙が行なわれましたね。総選挙直後、大体六月から八月にかけて、マッカーサー駐日大使とずっと会われたでしょう。この事実は間違いないですね。いわゆる予備会談といいますか、しばしばマッカーサー大使と岸総理は会われた事実はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/185
-
186・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 今回の条約改正は、ただいま総理が言われましたように、岸・アイク共同声明によって端を発したことは当然でございます。その後安保委員会ができまして、そこで両国民の願望に沿うようにこの条約を検討するというのが、この安保問題の一つの使命でございます。総選挙が終わりまして、第二次岸内閣ができますときに、私も引き続き外務大臣に就任をいたしましたので、私から総理に、長期政権を担当する以上、日米間の問題を調整することが必要であって、それは安保条約がやはり基底になるものであるからということを進言をいたしました。それが六月の第二次岸内閣のできました直後であります。その当時、私はこの問題と他の経済問題その他を持ちまして、七月初旬にワシントンに参りたい、そうしてダレスとそういう問題について話しをしたいということを申したわけであります。たまたまダレス前長官の都合がつきませんので、従って九月になったわけでございますけれども、六月の末からそういうことを私としては考えて、総理に進言をいたし、その後七月九日前後に、ダレス長官に会えませんから、ワシントンに行って話すような問題につきまして、あらかじめマッカーサー大使と話し合いをしておこうというので、私自身がマッカーサー大使と数回にわたりまして予備的な会談をいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/186
-
187・松本七郎
○松本(七)委員 外務大臣の進言によって総理がマッカーサー大使と会われたのは、六月から何回ぐらいですか。それは総理大臣とマッカーサー大使と二人だけの会談ですか。それとも、外務大臣その他をまじえてでしょうか。何回ぐらいやられましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/187
-
188・岸信介
○岸国務大臣 マッカーサー大使とは、ずっと赴任してからときどき会っておりますけれども、特に今、外務大臣が申しました時期において、私の記憶ではたびたび会った記憶は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/188
-
189・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、今、外務大臣の進言によって会われたというのは、総理が会われたのじゃないんですね。外務大臣自身がマッカーサーと会われているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/189
-
190・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 今ずっと経過を申し上げました通り、私は、そういう意味でマッカーサー大使と七月の初旬から数回にわたりまして会見をいたしました。当時、その席に常時総理が出席はしておられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/190
-
191・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、その外務大臣の出られた会談以外に、総理とマッカーサーだけの会談というのは全然ないのですか、あるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/191
-
192・岸信介
○岸国務大臣 私とマッカーサー大使が、今、外務大臣がお答えをいたした時期において、単純に二人で会った記憶は全然持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/192
-
193・松本七郎
○松本(七)委員 当時、外務省自身では、すでに安保改定の準備を進めておって、外務大臣、次官、条約局長、アメリカ局長、その他数人の担当官というように、限られた人でその準備を進めておったといわれる。また、防衛庁関係では防衛庁長官と次官、その他ごくわずかの担当官だけしかこれを知っておらなかったといわれるのですが、外務省が条約改定の準備に入ったのはいつごろからでしょうか。そして、当時はどういう具体的な案を準備しておったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/193
-
194・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 御承知の通り、その前年以来と申しますか、私が外務大臣に就任して以後も、国会等でもってこの条約は非常に対等ではない、従属的だ、あるいは核兵器の問題についても、何か文書で取りつけろということは、社会党の方からも盛んに質問のあった問題でありまして、私が外務大臣になりまして委員会に出ましても、そういう質疑を盛んに受けましたので、やはり、これは何らかの形でもって、こういう問題については、いわゆる岸・アイク共同声明にもこたえて、そうして改定すべきものだという考えを持っておりましたので、外務省としては、常時こういう問題については検討をして参っておりますことは当然でございます。なお、私が今申しましたような時期に、一ぺんワシントンに行って、この問題をさらに持ち出してみるという問題点等については、十分検討して参らなければなりませんので、従って、当時、そういう点につきまして十分部内で検討させておりましたことはもちろんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/194
-
195・松本七郎
○松本(七)委員 いよいよ本格的に安保改定の交渉が東京で開始されることにきまったのは、三十三年の九月十二日に発表されたいわゆる藤山・ダレス共同声明ですね、これで初めて東京で交渉を開始するということがはっきりしたわけです。しかし、その前の九月十日前後に、日本での各新聞は、外務省がその当時準備しておった具体案というものは大体三つあるというふうな発表がなされているんですが、そのときの具体案というものはどういうものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/195
-
196・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 当時、改定につきましての、こまかい内容にわたっての具体案というものは、まだ作成はいたしておりません。ただ、問題になっておりますような点、たとえば、内乱条項を削除するとか、あるいはアメリカに義務をしょってもらうとか、そういうような問題点を拾い上げたわけでございます。同時に、われわれは、この改定にあたりまして望ましいことは、新条約の形でいくことが望ましいけれども、あるいは交換公文で取りつけるなり、欠点を補うなり、あるいはまた、旧条約の中の部分的訂正をやるなりというようなことも考えられるわけであります。それらのいろいろな場合につきまして、アメリカ側の考えもございますし、われわれとしては、いろいろな角度から検討をいたしたことは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/196
-
197・松本七郎
○松本(七)委員 当時は今の赤城防衛庁長官は官房長官だったと思うんですが、当時、岸さんとマッカーサーの予備交渉、あるいは今申します条約の改定の形式ですね。単なる基地貸与協定のようなものにするとか、あるいは交換公文でもって、あまり手を加えずに、実質的な改定を幾らかやるとか、あるいは新しく防衛条約的なものにするとか、当時三つの方式というものが伝えられておったわけなんですが、そのことは、当時官房長官として御存じだったですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/197
-
198・赤城宗徳
○赤城国務大臣 大体は知っておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/198
-
199・松本七郎
○松本(七)委員 その三つの形式があるということは御存じだったわけですね。その三つの形式をどういうふうにしてやるという、案として御存じだったのかどうか。大体といったって、その三つの形式を、きちんと方式を御存じだったのか。ただ、当時何となく予備交渉がなされて、何か方式についても検討がされておるというような、ばく然とした知り方だったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/199
-
200・赤城宗徳
○赤城国務大臣 形式を三つに分けて、どれをとるかというような交渉をしていたようには私は聞いていません。いろいろ考えて、だんだんに進めてきた、その大体のことを承知しておるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/200
-
201・松本七郎
○松本(七)委員 そのころ岸さんが——これは第一次内閣を組閣されたのが三十二年二月二十五日ですが、第一次組閣当時、岸さんが国民に対する一つの政策として打ち出されたのが、占領政策の是正ということだったと思います。その占領政策の是正を打ち出された当時は、安保条約の改定ということを考えられておったのかどうか。その当時、何かそういったものを公表されたことがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/201
-
202・岸信介
○岸国務大臣 その当時、特に安保条約の改定ということを、何らかの形で具体的に表明したものは私はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/202
-
203・松本七郎
○松本(七)委員 それから三十三年、台湾海峡の紛争が起こった当時、私どもが注目いたさなければならぬと思っておったのは、あの当時の米国の第七艦隊がとった行動ですね、それと、在日米軍の動き、これについて、当時の模様を私どもはいろいろ調べているんですけれども、なお、今後ともこれを十分調べなければならないわけですが、当時の米七艦隊の行動と、それから在日米軍のとった動きを詳細に御報告願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/203
-
204・赤城宗徳
○赤城国務大臣 別に私の方で承知しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/204
-
205・松本七郎
○松本(七)委員 部分的にも全然わからないのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/205
-
206・赤城宗徳
○赤城国務大臣 第七艦隊の行動等について、私の方に別に打ち合わせばありません。ですから、私の方では承知しておりません。在日米軍が移動したというようなことについては、承知しているところもあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/206
-
207・松本七郎
○松本(七)委員 それでは、当時日本の岩国に駐兵していた米海兵隊は出動をしたのですか、しなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/207
-
208・赤城宗徳
○赤城国務大臣 台湾へ移駐しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/208
-
209・松本七郎
○松本(七)委員 そのときの海兵隊は、たしか台湾、それから沖繩ですね、そうでしょう。このときは移動の名目ですか、それとも、演習の名目ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/209
-
210・赤城宗徳
○赤城国務大臣 演習であるというふうに聞いておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/210
-
211・松本七郎
○松本(七)委員 これは当然事前に通告しなければならぬことになっておるのですが、当時、この出動と同時か、または事前に、在日米軍から外務省または防衛庁に通告があったのですか、どうですか。さっきの答弁では、何か通告がなかったように言われたのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/211
-
212・赤城宗徳
○赤城国務大臣 そういうことを通告を受けることになっておりませんでした。向こうでも通知するということにはしてありませんので、通告は受けておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/212
-
213・松本七郎
○松本(七)委員 しかし、当時、外務省はえらくあわてて、このことを在日米軍司令官に問合わせたでしょう、そして、その結果、非公式会談を開いたのではないですか、その経過はどうですか。そして、当時の在日米軍司官、それから参謀長はだれでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/213
-
214・赤城宗徳
○赤城国務大臣 在日米軍の司令官はバーンズ中将、それから参謀長はヘンドリックという人です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/214
-
215・松本七郎
○松本(七)委員 そして、これを外務省が問い合わせた直後に非公式会談をやった事実はどうですか。あったのですか、ないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/215
-
216・赤城宗徳
○赤城国務大臣 ないというふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/216
-
217・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、当時の状況では、外務大臣としては、第七艦隊の無断出港については、何ら差しつかえないという考えでこれを放置されておったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/217
-
218・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 現在の安保条約においては、そういう関係がございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/218
-
219・小澤佐重喜
○小澤委員長 石橋政嗣君より関連質問の申し出があります。これを許します。石橋政嗣君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/219
-
220・石橋政嗣
○石橋(政)委員 ただいま、今の条約では日本政府は何も関係がないとおっしゃいましたが、間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/220
-
221・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 今の条約におきましては、特にそういう問題について協議をしなければならぬというような規定はないのであります。ただ、現行の諸取りきめにおいて、いつでも日本におけるアメリカの軍隊の配備及び使用については、実行可能なときは協議するということが書いてあるだけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/221
-
222・石橋政嗣
○石橋(政)委員 日本におけるということで、沖繩とか台湾に行く分は全然関係がない、いわゆる協議の対象にならぬ、こういうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/222
-
223・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 日本から出ていきます場合に、今のように必要があれば協議いたしても差しつかえないのでありますけれども、別に、特に協議をしなければならぬというようなことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/223
-
224・石橋政嗣
○石橋(政)委員 岸総理がアメリカに行かれて、岸・アイク共同声明というものを発表された。そして帰ってこられて、その声明に基づいて、いわゆる日米安保委員会というものが作られた。そのとき総理は何とおっしゃいましたか。今の条約では、アメリカの軍隊の配備、使用についてはほとんど発言権がない、それをこの安保委員会を作ることによって規制できるのだと、非常に宣伝されたのです。条約そのものが改定されなくても、この安保委員会というもので、改正したと同様な大きな働きを持たせることができたんだ、自主性を確保したんだ、こういうお話でございました。今のお話では、米軍が移動する、しかも、金門、馬祖において実際にあのような危機がきているという非常に重大な時期に移動する、そういう問題においてすら協議の対象にする必要はない、日本の方から協議の対象にする必要がないなんていうことがなぜ言えますか、アメリカの方ができないといえば、また別ですけれども、あなた方は実行可能な限りという言葉はついているけれども、実際は全部やるのだ、条約を改正したのと同じなんだと、岸総理は当時おっしゃったんだ。おかしいじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/224
-
225・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 岸総理が、条約を改正したと同じだなどということまで言われたとは、私ども思いません。むろん、安保委員会ができまして、できるだけお互いに通報をし、協議をしようという精神は持って参りましたけれども、先ほど申し上げましたように、条約上何らの根拠はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/225
-
226・石橋政嗣
○石橋(政)委員 今になって、またそういうことをおっしゃるわけです。あのときの宣伝は大したものでしたですよ。それは岸・アイク共同声明というものがどんなに重大なものであるか、それによってできた安保委員会というものがどんなりっぱな働きをするものであるか、盛んに宣伝されたわけであります。そのとき、私が、実行可能な限りということがついておるからだめじゃないかと言ったら、いや、それは文書の上では載っかっているけれども、必ずやる、配備についても、使用についても必ず相談するという、こういうお話だった。ところが、おかしいじゃありませんか、と私はさらに言いました。現に行政協定の二十四条というものがある、現実に「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、」協議するようになっている、実行可能な限りも何もないじゃないですか、かえって後退じゃないですか、と私が言ったら、そのとき何とおっしゃいました。総理は、二十四条は二十四条で生きております、そのほかの場合です。そのほかの場合というのはどういう場合かと言ったら、今度は、哨戒も含まれる、あるいは今言ったような移動も入る、こういう御説明だった哨戒も入ると言ったんですよ、哨戒がこの協議の対象になる。追い詰められて逃げ口上だったかどうか知りませんが、そういう答弁をしておられる。それを今になって、今度は移動するというような重大な時期においても、日本側として協議の対象にならぬと、日本側から放棄するようなことは、どうも了解できない。あのときのお話がうそだったというならば、これは了解しますが、今になってどうも話が違うようでございますけれども。朝鮮において再び動乱が再発したとか、あるいは金門、馬祖において重大な危機がやってきたとか、それに対応して在日米軍が動くという場合に、今の条約のもとにおいては、日本政府は何らの相談にあずからなくてもいい、こういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/226
-
227・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 現在の条約では、先ほど来申し上げておりますように、条約上は、協議をするという基本的な条件はございません。従いまして、われわれとしては、できるだけ今回改正をして、そうして必要な場合にはできるだけ協議をしていくようにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/227
-
228・石橋政嗣
○石橋(政)委員 それでは、安保委員会において協議の対象にする必要もない、こういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/228
-
229・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 安保委員会におきましては、先ほど来申し上げておりますように、いろいろな両国の関係において通報をし合い、あるいはお互いに意見の交換をするというのが安保委員会の場であることは申すまでもございません。従って、そういう意味において安保委員会の運営をいたすわけでありまして、特にその場でもって、何か特定の問題をがっちり協議をしなければならぬというような、条約上の問題ではないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/229
-
230・石橋政嗣
○石橋(政)委員 それでは総理にお伺いいたします。総理の当時の説明、国民に対する説明、国会における答弁というものと、今日の外相の話とはどうも食い違っておるようですが、安保委員会において——現在安保委員会というのはあるのですよ。現行条約の運用について相談すべき安保委員会というものは厳然としてあるのです。この安保委員会において、こういう重大な移動というようなものを、日本側として協議の対象としなくてもけっこうでございます、こういう考え方の上に立っておるのか、要求はしたけれども、アメリカが、実行可能な限りとついているじゃないか、これは不可能です、相談は、こういう答えであったのか、どちらかはっきりさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/230
-
231・岸信介
○岸国務大臣 先ほどから外務大臣がお答えをしておる通りに御了解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/231
-
232・石橋政嗣
○石橋(政)委員 関連ですから、私これ以上申し上げません。しかし、いかにでたらめであるか、そのときそのときでいいかげんな答弁をする総理であるかということを、ここではっきり印象づけたと思うのです。あの安保委員会を作ったときには配置についても、装備についても、使用についても全部相談をするようになったのだから、実質的には改定したのと少しも変わりません、こういう説明をしておりましたけれども、そのままの説明を今肯定すると、どうも改定必要論というものが根拠薄弱になってくるものですから、非常にごまかしてきてしまっている、こういうことで私は了解して、関連質問ですからこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/232
-
233・小澤佐重喜
○小澤委員長 松本七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/233
-
234・松本七郎
○松本(七)委員 どうも、この条約をどういう内容で、いかなる方式でいくかということについての最初の構想自体にも、当時の状態を見、また、私どもの聞いたところでは、総理と外務大臣の間にはかなりの意見の食い違いがあったように思うのです。それで三十三年の八月でしたか、さっき外務大臣が、ちょっと言われた、渡米前にマッカーサー大使をまじえて、帝国ホテルかどこかで三人で会談されましたね。たしか、あのときは、レバノン問題で国連関係の話し合いをするということが表面の理由だったようですが、このときに外務大臣は、新条約方式でいくという総理の意向を、この三者の会談の席で初めて聞いたというようなことを、あとで外務大臣は述懐しておられたというのですが、どうでしょうか。この新方式でいくということについては、外務大臣は当初から、また、三者会談の当時まで実はそういう方式は考えておらなかった、しかし、総理がマッカーサ—をまじえた三者会談のときに、いきなりそれを言われた、マッカーサーの方から、総理は一体どういった形式で条約に臨むつもりだろうか、総理の意向も聞きたいという問い合わせが出たところが、そこで初めて岸さんは、新条約方式でいきたいのだ、こういうことを言明されたので、外務大臣は実はびっくりして、総理の気持がそんなのかというので、まあ、大使の前でそう言明された以上はやむを得ないというところから、ずるずるべったりと新条約方式に踏み切ったということを、あとで、あなたは述懐されているというのですが、そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/234
-
235・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 総理と私とがこういう問題を扱いますときに、いろいろお互いに話し合いをするのはあたりまえでありまして、初めから一分一厘意見が違わないというわけではございません。むろん、こういう問題について外務大臣と総理大臣とがいろいろ意見を交換するのはあたりまえでございます。そうして、私といたしましては、初めから新条約方式、あるいは交換公文等によって補正する、あるいは旧条約に若干の手直しをする三つのやり方があるのだということは、総理にも申しておりましたし、一番いいことは、むろん新条約方式でいくことでありますけれども、しかし、なかなかそういうことが困難であれば、次善の策として、旧条約に若干の手直しをする、あるいは交換公文等でやるというようなことも考えられたわけであります。これは交渉の前における問題でありますので、われわれとして、総理とそういう問題についていろいろ意見の交換をするというのはあたりまえのことでございまして、それが決して総理と私と意見が食い違っておるというわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/235
-
236・松本七郎
○松本(七)委員 それから、このとられた新条約方式案を、当時、UPIが非常に早く打ってきましたね。その案なるものも、今度でき上がった条約もそうですが、米韓、米比、米タイとほとんど形が似ておる。これは総理としては新条約方式でいく場合には、大体この米韓、米比、米タイをひな形にして、こういう形でいこうということは、以前から考えられておられたところなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/236
-
237・岸信介
○岸国務大臣 条約を新しい形にして、これに盛り込む事項につきましては、大体外務大臣とも打ち合わせをしておったわけでございますが、それ以上の、どういう形式にやるかとか、どういう用語を使うかというようなことは、最初から考えておったわけでもございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/237
-
238・松本七郎
○松本(七)委員 この経過を問題にしたのは、一貫して岸さんは、今度の新安保条約改定は自主性の回復ということを当初から言われたですね。最初に打ち出されたのが双務性、それからこれが自主性に変わってきた。しかし、その変わったところにも問題があるのですが、それでは、はたして自主性が確保されたかどうかという点になりますと、この新条約方式にきまるまでの過程にも問題があるし、それからアメリカとの交渉過程にも、はたして日本の自主性が貫かれたかどうか、疑うべき点がたくさんあるわけです。こういう条約の改定方式でさえも、自主性について疑わしい点があるばかりではなしに、私どもから言わせるならば、今のこの時点に立って、日本の自主性の回復ということは、もっともっと実質的な面で取り組まなければならぬ重要な点があるのではないかということから、実は、この前もこれは参議院でちょっと問題になりましたが、イーデンの回顧録で、あの蒋介石政権の承認の問題が出ております。これについて、私は岸さんにその経過で一点伺っておきたいのは、あの参議院で問題になりましたイーデンの回顧録によると、イーデンはダレスと約束をして、中国政権の承認の問題は、貿易のこともあるし、やはり、日本が独自にこれは選択をすべき性質のものだというので、約束をしておった。それが、ダレスがああいうふうに日本を脅迫して、無理やりに台湾政権の承認をさせたというので、イーデンが非常に憤慨して抗議をしたところが、アメリカがあやまったという大筋なのです。それについて吉田さんがダレスに手紙を出したということになっておるわけですが、その吉田首相が、当時、ダレス長官に手紙を出す前に、ダレス長官の方から、そのダレスあて吉田書簡の内容についても、具体的に指示してきておる。はっきりアズ・ワン・ガヴァメント・オブ・チャイナ、中国の一政府として、こういうふうに書いたらいいじゃないかと、内容についてまで指示してきたということを、きわめて確実な筋から私は聞いたのでございますけれども、このことについて岸さんは聞いておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/238
-
239・岸信介
○岸国務大臣 私は承知いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/239
-
240・松本七郎
○松本(七)委員 いずれにしても、イーデン回顧録によっても、日本の独自の意思を無視して、アメリカが、この中国政権承認問題については大きな圧力を加えておるということは、事実として認めざるを得ない。こういう状態で台湾との関係ができたのですから、私どもとしては、むしろこういったくされ縁こそ早く断ち切ることが、日本の自主性を回復するためには最も必要なことである。そのためには、こういった条約の改定ということよりも、新中国との関係を正常化するということが自主性回復の第一歩でなければならぬ、むしろこの方が先だということを強調しなければならないわけですが、岸さんは、ダレス・吉田書簡を通じてのこの事実が、イーデン回顧録によって明らかにされた今日でも、このことを最も重視する政策に切りかえる御意向はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/240
-
241・岸信介
○岸国務大臣 私は、しばしば申し上げております通り、日本の立場、日本の進んでいく道というのははっきりしておりまして、自由主義の立場を堅持して、アメリカとの間の協調によって、日本の平和と安全、さらに繁栄を期していきたい、こう思っております。また、台湾との間の国際条約につきましては、やはり国際信義に基づいてこれを尊重して参りたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/241
-
242・松本七郎
○松本(七)委員 この台湾の問題は、単なる条約上の問題とか、承認の問題というだけではなしに、今日では、やはり第七艦隊というものを通じて、日本でよく問題にされておりました核兵器持ち込みの問題にも関係してくる。これがまた、日本の自主性を大きく阻害しておると私は思うのでありますが、米第七艦隊司令長官であった、今度かわりましたフレドリック・N・キベット海軍中将、この人に先般勲二等旭日重光章を贈られたという話を聞いたのですが、これは事実ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/242
-
243・赤城宗徳
○赤城国務大臣 事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/243
-
244・松本七郎
○松本(七)委員 それはどういう功績によるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/244
-
245・赤城宗徳
○赤城国務大臣 伊勢湾台風による日本の災害の救済に非常に協力してくれた、こういう功績でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/245
-
246・松本七郎
○松本(七)委員 伊勢湾台風に協力したといって勲章を贈るのならば、日本人で、もっと功績のあった、やらなければならぬ人はたくさんあります。この第七艦隊は、太平洋最大の艦隊といわれて、原水爆を所有しておる。常時臨戦態勢をとっている。政府の勲章贈与は、原水爆所有の米第七艦隊……。
〔発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/246
-
247・小澤佐重喜
○小澤委員長 御静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/247
-
248・松本七郎
○松本(七)委員 これはもう、アメリカの国防総省が、第七艦隊は原水爆を所有しておるということをはっきり声明しておる。その在日米軍が、事実上伊勢湾台風当時に大いに協力したというのなら、しょっちゅう日本にいるということを認めたわけですね原水爆を保有しておる第七艦隊を、在日米軍として事実上公認したということになるが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/248
-
249・赤城宗徳
○赤城国務大臣 第七艦隊は、在日米軍ではございません。それから核装備は可能でございますが、核装備をして入港はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/249
-
250・松本七郎
○松本(七)委員 それはこの前の報道にもちゃんと書いてあるのです。このキベット海軍中将でも、住居は湘南にかまえておった。また、三十三年二月に来日しましたアメリカのバーク海軍作戦部長は、外国記者団との会見でこういうことを言っております。海上自衛隊の任務は何かという記者団からの質問に対して、ソビエト、中国の潜水艦を極東地域において封鎖、撃滅するための対潜部隊である、こう答えているのです。これじゃ、まるでバーグ海軍作戦部長から海上自衛隊の任務というものを指定されている。日本の自主性はみじんもないじゃないですか。
この前、東京新聞の笠井真男という記者が、第七艦隊に初めて乗船して取材している記事があります。これは防衛庁の資料で、はっきり出しております。防衛庁の準機関誌ですね。御存じでしょう。これは防衛庁の関係者ばかりが編さんに当たっておる。この笠井記者が「レギュラスI型の発射を見る」という記事で、これは「第七艦隊一番乗りの記」といって報道しているのですが、それによりますと、「八日朝、ヘレナ号のうしろ甲板でレギュラスI型の発射実験が行なわれた。予定表を見ると、時間読みは午前二時から始まる。目がさめたころには、すでにごうごうたるジェット・エンジンの排気音が艦窓をふるわせている。後部の主砲塔の上に乗って二十メートルほどの距離からカメラのねらいをつける。八時、水平に置かれたレギュラスの頭部が約四十五度上方に上げられ、白の星章をつけた暗緑色の胴体は小刻みにふるえている。八時三分、ものすごい炸裂音とともにブースターが点火され、その爆音をけってミサイルはたちまち東北東の空に姿を消した。間髪を入れず二機のジェット戦闘機があとを追う。ブースターが落ちた海面の白波の静まるころ、砲塔、レーダー塔、マストを埋めた全艦員の一せいにつくため息が聞こえるような気がした。」そうして……。(「それはだれが言うのだ」と呼ぶ者あり)これは東京新聞の笠井という記者です。(「狸穴情報じゃないのか」と呼ぶ者あり)日本情報です。そうして、そのレギュラスI型の性能を説明してここに記されておるのですが、それによると、頭部核装備、射程高度五百マイル、速度〇・九マッハ、こういうふうに報道されておるのです。ですから、藤山外務大臣は、この前、参議院でしたかの質問に答えて、日本に常時いる在日米軍でも日本を離れれば在日米軍でない、こう言われましたね。それならば、ふだん台湾海峡沖その他におる米軍でも、日本に寄港あるいはしょっちゅう補給のために来れば、そのときには、これは在日米軍ということになりますかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/250
-
251・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 日本に駐屯しておりません、よそにおりますアメリカ軍隊を、在日米軍と呼ぶわけにいかぬことは、小学校の生徒でも明らかでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/251
-
252・松本七郎
○松本(七)委員 第七艦隊の母港が横須賀になっておることは、御承知の通りです。横須賀や佐世保には、しょっちゅう出入りしているわけです。では、そこにいる間はどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/252
-
253・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 防衛庁長官の言われましたように、第七艦隊は在日米軍ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/253
-
254・松本七郎
○松本(七)委員 そうするならば、第七艦隊はしょっちゅう補給に来ますから、もしも入っているときにこれが攻撃された場合には、これはこの前のあれから言うと……(「だれが攻撃するのだ」と呼ぶ者あり)これはそっちに聞きたいくらいだ。万一の場合に攻撃をされた場合には……。
〔発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/254
-
255・小澤佐重喜
○小澤委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/255
-
256・松本七郎
○松本(七)委員 それは、日本に対する攻撃とはみなされないということになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/256
-
257・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 横須賀におります場合に攻撃されれば、横須賀が爆撃されるということでありまして、当然日本に対する攻撃でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/257
-
258・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、軍艦の場合も——この前の参議院の答弁で、領海を侵した程度ならば、これは攻撃ではないという答弁もあったようですが、しからば、領土は侵されないが、軍艦だけが損傷を受けた場合はどうなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/258
-
259・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 日本の領土、領空、領海を侵さないで爆撃するわけには参りません。従って、それは日本に対する攻撃とわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/259
-
260・松本七郎
○松本(七)委員 領海にある軍艦自体だけが爆撃され、被害を受けるということはありますよ。それはただ日本の領空に入ったというだけ、そういう程度の、入ったというだけのものは攻撃とはみなさないと、この前、参議院で答弁したばかりじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/260
-
261・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 御承知のように、領空侵犯とか、そういう程度のものであれば、それがすぐに攻撃になるかどうかということは、問題があるということをわれわれは言っておるわけでありまして、第五条に書いております武力攻撃というものは、意図を持ってやってくる場合のことを言っていることは、従来答弁している通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/261
-
262・松本七郎
○松本(七)委員 その武力攻撃について、いずれ、これは岸さんとの長い間の約束ですから質問しなければならないのですが、その前に、もう少し聞いておきたいのは——どうせ詳細にこの問題は扱わなければならないのです。問題は、今度の条約の正体というものが、はたして日本の自主性において、米軍の行動をチェックする方向を向いておるものかどうか。むしろ米国の極東軍事体制の中に、日本が進んで入り込もうとしているのではないか。米国の独自の軍事行動というものを、日本の独自性においてチェックする方向になっておるか。積極的にアメリカの軍事体制の中に入り込もうとしておるのじゃないか。ここのところが実は一番大事な点ですが、われわれの見るところでは、今までの政府の答弁では、本質としては、この軍事体制の中に入り込むのが本質でありながら、それをあたかも日本がチェックできるかのように説明しようとしている。そのために、次々に矛盾が暴露されておると見ざるを得ない。たとえば、極東の範囲一つとってみましても、われわれがこれまで追及した結果、政府は一体どういう答弁をしてきているか。実にしどろもどろの答弁を重ねて、ようやく統一解釈ができたのはいつですか。二月二十六日の愛知委員の質問に対する首相答弁という形で、「新安保条約にいう極東の観念」という統一解釈なるものを示したわけです。この点で確認しておきたいのです。これはいわゆる統一解釈といわれておるが、この出された文書は、今度こそ、あなた方のよろめき答弁を、ほんとうに清算した決定版と受け取っていいものかどうか、まずこの点をはっきりさせておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/262
-
263・岸信介
○岸国務大臣 終始一貫してわれわれがお答えを申し上げておることを、最も明瞭に文書にいたしたわけでありまして、これを統一解釈と御了解いただくことでいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/263
-
264・松本七郎
○松本(七)委員 それではあの統一解釈は、以後絶対に変えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/264
-
265・岸信介
○岸国務大臣 変えるわけにはいきません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/265
-
266・松本七郎
○松本(七)委員 あれはアメリカとは相談済みのものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/266
-
267・岸信介
○岸国務大臣 アメリカにおきましても、外務大臣がお答え申し上げておるように、これに対して異論を持っておらないということを御了解願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/267
-
268・松本七郎
○松本(七)委員 伝えられるところによると、あの統一解釈の文書なるものは、自民党内でも、党機関に諮らないで、外務省あたりで当然関与すべき人たちも知らないうちに決定されたということをわれわれは聞いておるのです。さらに、原文は、あれは横文字だ、それを縦に直したしろものだといわれておるのですが、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/268
-
269・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 国会において政府が答弁いたしておりますものを、統一的に文章に書きますときには、政府がやるのはあたりまえでありまして、一々党その他に相談はいたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/269
-
270・松本七郎
○松本(七)委員 あれがもし今後絶対に変えない決定版とすれば、あまりにも重大な内容を持っておるのです。たとえば、あの中にこういうのがある。在日米軍の行動範囲は、必ずしも極東の区域に局限されない、こう明記されておる。それでも絶対に変えませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/270
-
271・岸信介
○岸国務大臣 その通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/271
-
272・松本七郎
○松本(七)委員 変えないという確約のもとに、私どもは、今後この統一解釈をもとにして、条約の審議を進めていきます。今までのように、しょっちゅう統一解釈が変わったのでは、幾ら審議をやっても切りがないということになりますから、その点の確認を得たわけです。しかし、自民党の中にも、金門、馬祖問題を中心に、重大な批判が起こっておるじゃないですか。
〔発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/272
-
273・小澤佐重喜
○小澤委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/273
-
274・松本七郎
○松本(七)委員 われわれは、この統一解釈なる文書について徹底的に追及して、新条約が、いかに侵略的性格であるかということを明らかにしていくつもりです。要するに、新条約は、いわば抜け穴だらけの条約です。言ってみれば、ハチの巣条約です。穴だらけ、つつけばえらいことになる。そのハチの巣も、ミツバチの巣ではなくて、毒バチの巣です。これからだんだん自民党の中にも反対論が多くなろうとしておりますが、この機会にもう一度岸さんは——もうこれは唯一の反省の機会です。このようなことを急いでやるよりも、もう少し他国との関係を調整する、これによって自主性を回復するという、基本的な方向に政策を転換するために、この機会に、この安保条約改定は一応撤回して、たな上げするというお気持がないかどうか、もう一度聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/274
-
275・岸信介
○岸国務大臣 絶対にそういう意思は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/275
-
276・松本七郎
○松本(七)委員 それでは、あくまでも総理が民族の利益を裏切って、戦争に通ずるこの新条約を固執されようとするならば、われわれは、このバチの巣条約をついてついてつきまくって、この条約の本質と正体を、あらゆる角度からあばき出していくことをここに宣言いたします。そこで、これから長期にわたって、この条約の問題点を微に入り細にわたって解明し、政府の説明の欺瞞性を明らかにしていく予定です。
問題点はたくさんありまするが、以前から外務委員会でも岸さんとお約束していたその点だけ、一つ私はここで質問をしておきます。これは実は、岸さん、調印するまでにはっきりするというお約束だったわけです。それは、先ほどもちょっと問題になりました武力攻撃とは何かという問題です。これをまず、調印者たる首相から説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/276
-
277・岸信介
○岸国務大臣 これは国連憲章の五十一条にも同じ字句が使ってありまして、私どもは、同一に解釈すべきものだと思います。組織的な、計画的な武力の行使によって、他の国に対する侵略の行なわれたその事態をさして、武力攻撃と申しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/277
-
278・松本七郎
○松本(七)委員 侵略というのは、どういうことですか。国連においても、この侵略ということはずいぶん問題になったように聞いておるのですが、侵略というものはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/278
-
279・岸信介
○岸国務大臣 これは一国が一国に対して、武力をもって組織的、計画的に、不法にその国を侵すという場合に、侵略という言葉を使います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/279
-
280・松本七郎
○松本(七)委員 具体的に言うと、どういう場合ですか。具体的に列挙して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/280
-
281・岸信介
○岸国務大臣 この五条の場合における「武力攻撃」というのは、日本の領域に対しまして、他国が、陸海空の武力を用いて、組織的、計画的に侵してくるという場合がこれに当たるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/281
-
282・松本七郎
○松本(七)委員 さっき侵略してくると言われたでしょう。だから、侵略というのは、国際法上も、また国連においてもいろいろな意見があるわけだから、侵略ということを言われる以上は、侵略とは何かということをはっきりしなければならぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/282
-
283・岸信介
○岸国務大臣 不法に日本の領土、領空、領海に対しまして、今申しましたように、武力を用いて計画的、組織的に侵してくることを侵略といいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/283
-
284・松本七郎
○松本(七)委員 それじゃ、武力攻撃とは武力攻撃だと言うにひとしいような答弁ですから、少し先に進みますが、前からもしばしば、外務委員会でもそうだし、それから最近の委員会でも、このことを首相は答弁で言っておられるのですが、国連憲章五十一条でいっておる「武力攻撃」と同じものだ、こう理解していいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/284
-
285・岸信介
○岸国務大臣 そう解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/285
-
286・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、国連憲章五十一条では、「イフ・アン・アームド・アタック・オカーズ・アゲインストア・メンバー・オブ・ザ・ユナイテッド・ネーションズ」、「武力攻撃が発生した場合」とあるのですね。ところが、今度の条約では、「いずれか一方に対する武力攻撃が……認め」というふうになっておるのですが、「発生した場合」というふうに限っていないわけです。字句上の点だけから申しますと、一体、それならば、武力攻撃の急迫した危険というものも含むと考えられるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/286
-
287・岸信介
○岸国務大臣 五条にいっております「武力攻撃」という表現は、国連憲章五十一条に「武力攻撃の発生した場合」というのと同じでありまして、そういうおそれがあるとか、そういう危険が迫っておるということは含んでおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/287
-
288・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、わざわざこの「発生した場合」というのを除いたのは、どういうわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/288
-
289・岸信介
○岸国務大臣 これは文章の用語上からきているわけでありまして、それに意味があるわけじゃありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/289
-
290・松本七郎
○松本(七)委員 国連憲章五十一条では「武力攻撃が発生した場合」となっており、それから改定条約五条で、単に「武力攻撃」といっておるのと比較してみますると、国連憲章で「発生した場合」とやった方がより限定されていると、これは当然思わなければならないと思うのです。ところが、国連憲章でいう「発生した場合」と限定しておる規定でさえも、はたして、あなたの言われるように、現実に武力攻撃のあった場合に限定されるものかどうか、ここに実は疑問があるわけです。たとえば、学説上から見ても、マンチェスター大学のボーエット教授が一昨年書いた「国際法に於ける自衛権」、これは自衛権のことだけ扱った本ですが、この中でも——これは高橋さん、よく知っているでしょう、百九十一ページに次のようにいっています。「第五十一条が、伝統的な自衛権を、武力攻撃の発生以前の差し迫った危険に対してとる行動を排除しようとして制限しているとは信じられない。」こういうふうにはっきり書いておる。これは最近、拡張解釈の傾向が非常に強いということを物語ると思うのです。それからグッドリッチ、ハンブロー共著の「国連憲章」という本の中でも、「自衛権は、武力攻撃の急迫した危険に対しても行使できる。」こういう考えを述べています。それから、これはいつも出されるものですが、エール大学のマクドウガル教授が、昨年の五月の「ザ・エール・ロウ・ジャーナル」に書いた論文の中でも、「予見され得る攻撃に対する防衛を許すことは、国連の機能と責任を害し、または弱めるものではない。」つまり予防的自衛も、国連憲章のもとで認められているということをはっきりしているわけです。学説としても、国連憲章のように「武力攻撃が発生した場合」というふうに厳密に規定している規定さえも、このように拡張解釈をする傾向がある上に、英国のワルドック教授も、一九五二年、ハーグで行なった「国際法における国家による実力行使の規制」という講演の中で、「武力攻撃を構成しない侵害に対して、五十一条が自衛権の発動を禁止しているというのは間違っている。」ということを述べている。私は、そんな拡張解釈をすることがいいと言っているんじゃないですよ。それを是認しているわけじゃないが、そういう拡張解釈が行なわれている。もちろん、これは学者の学説です。しかし、たとえば、国際連合の原子力委員会の一九四六年の報告の中でも、こういう報告をしています。「これらの諸条約」——これは原子力管理のための諸条約のことですが、「諸条約の違反は、憲章第五十一条において認められた固有の自衛権を発動させるほど重大な性質のものであることに留意すべきである。」こう述べておる。条約違反もそういう対象になり得るということです。すなわち、国連の原子力委員会の意見によれば、自衛権は、現実の武力攻撃の場合だけでなく、条約に違反した場合も行使できる、こういうふうな規定をしているわけです。原子力管理条約違反は武力攻撃ではないが、武力攻撃の危険があるからだという立場に立っているわけです。これは、一通り引用したのはおもな学者の学説ですが、今言うように、国連においても、憲章五十一条にいう武力攻撃の範囲は、必ずしも狭く解釈はされておらないという一つの例です。それから、さっき述べましたボーニット教授も、これについて、「条約違反ということは、現実の武力攻撃の概念に入るとは考えられない。そこで原子力委員会は憲章五十一条は予防的自衛を認めたものであるとはっきり理解している。」こういうふうな指摘までしております。
それから、単なる学者の学説ばかりじゃなしに、国際司法裁判所においても、同様の見解がとられておる。これは一九四九年のコルフ海峡事件というものがあって、それの判決があったのですが、この判決の中で、「いずれにしても裁判所は、第五十一条で留保された固有の自衛権について狭い解釈をとっていないことは明らかである。」ということをここで述べております。
さらにイギリスでは、ヨルダン出兵のあと、一九五八年の七月十六日に、マクミラン首相が、英国の下院でもって、はっきり次のように言っている。「危機において、自衛のために行動する古い伝統的な権利は、国連機構の中でも保持されている。」これはどういうことかというと、つまり、武力攻撃の発生という言葉を広く解釈して、危険があれば自衛行動ができるというイギリス政府の立場を明らかにしたものなんです。このことは、昨年一月の英国の国際法の雑誌にも載っております。(「ソ連の解釈はどうだ」と呼ぶ者あり)ソ連の解釈は、そういうふうな認定主義でなしに、武力攻撃とは何かということを、具体的に全部列挙主義をとっております。
それから最後に、米国は、レバノン侵入の際に、その口実を国連憲章五十一条に求めたことは、あまりにも周知の事実。当時、レバノンにはいかなる意味でも武力攻撃は加えられておりませんでした。隣の国のシリアに政変があっただけのことなんです。
そこで伺いますが、一体、日本政府は、この国連憲章五十一条にいう「武力攻撃」が、このように拡大解釈されておるということ自体については、どう考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/290
-
291・岸信介
○岸国務大臣 今あげられましたような学説上のいろいろな意見は、あるということは、一応承知いたしております。これに対して、日本政府としては、さっきからお答えしておるように解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/291
-
292・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、今言うように、これは単なる武力攻撃ではなしに、発生した場合というふうに限定した規定でさえも、学説上も拡張解釈をする傾向にあり、裁判所もそれを拡張解釈をしておる。そういう傾向にあるときに、新条約の第五条の「武力攻撃」を狭く解釈できる証拠は一体どこにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/292
-
293・岸信介
○岸国務大臣 「武力攻撃」は、その文句のごとく武力攻撃でありまして、私どもは、先ほど来説明しておるように、現実にそういう武力を行使して日本の領海や領空が侵された場合を考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/293
-
294・松本七郎
○松本(七)委員 そんなことを聞いているんじゃないですよ。「武力攻撃」という規定は、拡張解釈される危険があるでしょう、現に一ぱい出したじゃないですか。そうしてアメリカ自体も、シリアの政変を口実に—それは明らかに言えば予防戦争ですね。この武力攻撃を、急迫した危険という拡張解釈によってレバノンに出兵しておる事実がある。そういう拡張解釈をする国と日本が今度安保条約を結んでおるのだから、その安保条約の中の第五条で、武力攻撃の起こる危険の発生したとき、というふうに限定しないで、ただ「武力攻撃」と規定してあるその「武力攻撃」を、狭く解釈できる証拠がなければ、相手国はどんどん拡張解釈をしてくるおそれは十分にあると見なければならぬ。もしも、それがないというならば、この点について、この「武力攻撃」は急迫した危険は含むのじゃないのだ、そういうふうな狭義の解釈をするのだということが、日米交渉でどのように論議され、また、いかに意思の合致を見たものか、そこをはっきりしていただきたい。合意書があるならばあると、そういう証拠を出して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/294
-
295・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 レバノンに対するアメリカの出兵というものは、レバノンの政府が要請したわけでありまして、従来も、国際法上の観念から申しましても、一国の政府の主権者がこれを要請すれば、友好国の軍隊を出すことができることは当然でございます。当時の事情からいいまして、レバノンの国内の政争もございましたし、また、シリアとの間の国境紛争もございました。そういう意味で、レバノン政府が内閣の承認を得て、そうして、大統領がこれをアメリカに要請したわけであります。アメリカは、将来もし紛争が起こりました場合には、国連憲章に従って行動することになろうと思いますが、出兵したということについて国連にも通報をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/295
-
296・松本七郎
○松本(七)委員 当時のレバノンの政府の要請とか、そういう経過はどうであろうと、とにかく、当時は、アメリカが五十一条の「武力攻撃」を拡張解釈して、ああいうふうに乗り出したということについては、国際世論は決してこのアメリカの行動を支持しておらない。それが一つ。
もう一つは、それでは別な例を引きますが、SEATO条約の付属了解事項の中に、こういうのがある。米国は武力攻撃とは共産主義者の侵略であると述べているのです。新条約にいう武力攻撃——ちゃんとSEATOの条約では、米国は武力攻撃とは共産主義者の侵略だというふうな規定をしておる。新条約にいうこの武力攻撃についても、相手の米国側のレバノンの例を見ても、それから今のいろいろな学説、国連におけるいろいろな武力攻撃に対する定義も、そういった拡張解釈をする傾向にある今日、そして政府が今度結ぼうという相手国であるアメリカは、拡張解釈はもちろんのこと、実際にも世界の非難を浴びておるレバノン事件という一つの前例がある。またSEATOの条約の付属了解事項にもこのような規定がある。そういう米国を相手にして条約を結んで、しかも、この武力攻撃ということが、国連の規定より以上に限定されておらない、ばく然とした武力攻撃という規定をしておる以上は、こういう心配を国民がするのは当然である。それを心配しないでよろしいというように政府が言うならば、なぜはっきりと日米の双方の間に、ここにいう武力攻撃というものは、狭義なものだという解釈について合意に達して、それを記録にとどめるというような、念の入ったやり方をしなかったか。それがあるなら一つ見せて下さいと言うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/296
-
297・岸信介
○岸国務大臣 武力攻撃という字句は、あまりにも明瞭な字句であります。SEATO等においてそういう別の了解事項を作っておるから、そういうことになるのでありまして、この条約におきましては、そういうように広げた了解事項は一切ございません。また、この武力攻撃のおそれがあるとか、脅威があるというのであれば、武力攻撃があり、またはそのおそれがあるときというふうに書くのが当然であります。それを書いておらない、武力攻撃ということだけを一つ書いておることで、きわめて私は明瞭だと思います。ことに四条の場合におきましては、御承知のように、平和に対する脅威が生じたときというような、現実に武力攻撃を受けているというわけじゃなしに、脅威を生じた場合における協議のことを書いてあります。それにもかかわらず、五条で武力攻撃と、こういう明瞭な、そのものずばりとした表現を用いておりますから、そして今のSEATOのごとき了解事項もないのでありますから、これが先ほど来申しているように、きわめて限定的に解釈すべきことは当然だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/297
-
298・松本七郎
○松本(七)委員 では伺いますが、たとえば領空侵犯、こういう場合はどうなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/298
-
299・岸信介
○岸国務大臣 ただ領空侵犯、こういいましても、先ほど来申しているように、領空侵犯というものが、どういう状況のもとに行なわれているかということが問題だと思います。領空侵犯は一切当たらないとか当たるとかいう問題じゃなしに、武力攻撃というものは、現実に組織的に、計画的に、一国が一国に対して武力の攻撃を加えるという場合であります。その一つとして領空侵犯が現実に起こっていれば、それは武力攻撃と考えるべきであると思います。そうではなしに、ただ何かの偶発的なことで領空を侵犯したとか、あるいはただ一回だけのものであって、継続的、組織的な意図を持ったりそういう態様でないものは、ここにいう武力攻撃には入らない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/299
-
300・松本七郎
○松本(七)委員 それでは、たとえば爆撃や銃撃、砲撃が加えられたというときには、これはもう完全に武力攻撃ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/300
-
301・岸信介
○岸国務大臣 その銃撃や爆撃が、今申したように、継続的、計画的なものである限りにおいては、武力攻撃であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/301
-
302・松本七郎
○松本(七)委員 計画的かどうかは判断することが問題になるし、計画的ということが、非常な大事な要素になるとするならば、たとえば日本攻撃のための相手国の飛行機が基地を飛び立った、その場合はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/302
-
303・岸信介
○岸国務大臣 まだそれはそういう意図を持って飛び立ったというだけであって、日本を侵害してないのですから、そういう場合をいうわけにはいかぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/303
-
304・松本七郎
○松本(七)委員 それじゃ相手国の軍艦が日本の領海に入ってきたという場合はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/304
-
305・岸信介
○岸国務大臣 それは先ほど来お答えしているように、ただ領海に入ったから、直ちにそれが計画的、組織的、また日本を侵略する意思があるということは言えないと思います。そのときの領海侵犯の態様を検討する必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/305
-
306・松本七郎
○松本(七)委員 それじゃ侵犯する意思があるかどうかは、何によって判定するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/306
-
307・岸信介
○岸国務大臣 それはそのときの行動の全般を見れば、当然判断できると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/307
-
308・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、結局そのときの全般的な状況によって判断するほかない、こういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/308
-
309・岸信介
○岸国務大臣 具体的な、そのとき行なわれたところの事実に基づいて、判断をすべきものであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/309
-
310・松本七郎
○松本(七)委員 具体的な事実に基づいて、それぞれの状況に応じて判断するということになりますと、むしろここにまた危険が出てくるわけです。武力攻撃の内容を、結局は具体的には確定できないということですから、そうなりますと、他日これを拡大して解釈する余地は当然出てくるわけであります。いわゆるアメリカがとっておりますように認定にまかせるということになれば——具体的にきちっときめておけば——それはきめないのでしょう。きめてあるならば、それを言って下さい。どれとどれとどれ、どういう場合は武力攻撃だ、そういうことはやらないのでしょう、そのつどの認定にまかせるのでしょう。だから認定にまかせれば、拡張解釈がされるおそれがどうしても出てきます。なぜこれをしっこくあれしなければならないかというと、政府がこの条約を防衛的なものだとしきりに言っている。再三陳弁しているのだが、実は武力攻撃という言葉を拡張できるという余地が残っておれば、予防戦争なる名によって、いつでも他国に攻撃をしかける用意ができる、攻撃することができるのだから、武力攻撃というものが拡張解釈できないということをはっきりさせなければ、予防戦争は否定されているということにはならない。だから武力攻撃の規定を、まずはっきりさせなければならないというわけです。
第一、その証拠に、自衛隊法の七十六条では、武力攻撃といった場合には、わざわざカッコして「(武力攻撃のおそれのある場合を含む。)」と規定しているじゃないですか。そうでしょう。(「それは日本の自衛隊の場合だ」と呼ぶ者あり)日本の自衛隊の場合だと言うけれども、日本の国内法で、拡張解釈できるような道をちゃんと作っておいて、そしてこの条約の規定そのものも、国連憲章のあの規定でさえ拡張解釈される傾向がある。今回の武力攻撃とただいったものでは、なおさらそのおそれがあるわけです。国内法で、ちゃんと自衛隊法によってそういった拡張解釈される道ができておるじゃないですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/310
-
311・岸信介
○岸国務大臣 自衛隊法にわざわざカッコをして、それを含むと書いてある場合に限って、それが含んでおるわけでありまして、カッコがなければ含まないことは当然に含まないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/311
-
312・松本七郎
○松本(七)委員 もう一つ伺いますが、それじゃこの五条にいう武力攻撃とはだれからのものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/312
-
313・岸信介
○岸国務大臣 他国からのものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/313
-
314・松本七郎
○松本(七)委員 この前の愛知委員だったか、石坂さんの質問だったかに答えられた中にも、しきりに岸さんは、外部からの武力攻撃だけを考えている、こういうふうなことを言われております。現行の安保条約の第一条では、ただ武力攻撃でなしに、外部からの武力攻撃と規定しているのですね。今度の安保条約第五条の武力攻撃は、これは外部からのだ、こう今答弁された。そうならば、現行条約と同じように、外部からの武力攻撃となぜしなかったか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/314
-
315・岸信介
○岸国務大臣 観念として、武力攻撃というものを、内部からということを考えることは、私は常識的でないと思います。それから現行安保条約の書いておることは、内乱条項と二つを重ねて書いてありますから、外部からという表現が使われておるのは、内乱条項との関係だと思います。武力攻撃という言葉自身が、内部からの武力攻撃ということはおよそ考えられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/315
-
316・松本七郎
○松本(七)委員 今まで外部からの武力攻撃とあったのを、わざわざこの外部を削除した。それは外部からの武力攻撃も内部からの武力攻撃も、両方含むと解すほかないじゃないですか。どうですか。わざわざとったのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/316
-
317・岸信介
○岸国務大臣 武力攻撃という言葉自体が、ここに一つ書いておいて、そして内部から国に対する一つの武力の行使というのでありますから、内部からその国に対して武力攻撃ということは、私は考えられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/317
-
318・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、武力攻撃である以上は、当然これは外部からのとしか解釈されないと言われるけれども、そうなりますと、自衛隊法の七十六条にいう「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃」外部からの武力攻撃ということを自衛隊法の七十六条で規定していますね。これが意味のないことになるのです。というのは、第三条一項に「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」云々とある。そうすると、直接侵略と間接侵略の両方をさして武力攻撃ということになるじゃないですか。(「そうじゃないんだ」と呼ぶ者あり)そうなるじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/318
-
319・岸信介
○岸国務大臣 自衛隊法の解釈につきましては、法制局長官からお答えをさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/319
-
320・林修三
○林(修)政府委員 御承知の通りに、七十六条は、外部からの武力攻撃に対して防衛出動ということを規定いたしております。七十八条にいきまして「間接侵略その他の緊急事態」ということでございまして、ここでいっております間接侵略、直接侵略という言葉については、いろいろ解釈もあろうかと存じますけれども、主としては、いわゆる外部からの武力攻撃、要するに、外国からの武力行使という観点で、それが表に出て参りますのは七十六条で規定し、いわゆる間接侵略あるいはその他の内乱、間接侵略といえない程度の内乱、つまり、間接侵略は大体内乱形態をさしておると思いますが、こういうものを第七十八条で規定しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/320
-
321・松本七郎
○松本(七)委員 武力攻撃というのは、外部からのことであることは当然だ、あなたは当然と解釈されたわけでしょう。そうなれば、自衛隊法の七十六条の「外部からの」というのは、意味がなくなるじゃないかというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/321
-
322・林修三
○林(修)政府委員 あるいは七十六条は、当然の観念として「外部からの」と書いたのだと思います。その点は、実はあってもなくても、意味は同じだと思います。諸外国の安全保障関係の条約を全部見ましても、この点について、ただ「武力攻撃」と書いたものと、「外部からの武力攻撃」と書いたものと、両方例があるわけでございまして、私は、意味は、武力攻撃ということからいって、いわゆる内部からの武力攻撃ということは考えられないわけでありまして、外部からの武力攻撃、要するに、国対国の関係が武力攻撃の観念であります。国連憲章五十一条も、当然その観念でできております。その形態についてはいろいろあり得ると思いますけれども、当然国対国の関係だと思うわけでございまして、これは当然のことを書いたものである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/322
-
323・松本七郎
○松本(七)委員 政府が条約調印の日に発表した記事資料、これは三十五年の一月二十日、外務省の情報文化局、これによりますと、こういうことを言っています。「日本国の安全が脅威されるのは、何も日本に対して直接武力攻撃が行なわれる場合だけには限らない。いわゆる間接侵略によって脅威を受ける場合もあろうし、たび重なる領空侵犯によって脅威される場合もあろう。」こういうふうにあって、「このような場合には、当然日本側から協議を求めて行くことになるであろう。」(「四条だろう」と呼ぶ者あり)これは四条関係、その関係が問題なんです。今は、この説明は四条であるけれども、これから五条に関係するところがあるから、これを言っておるのです。よく聞いておきなさい。これはあなた方が説明を受けたものじゃないですか。いいですか。そうすると、この今の説明では、この協議の結果、どのような措置が具体的にとられるかということについては、説明していないのです。のみならず、間接侵略の脅威ではなしに、間接侵略そのものに対処する方法については、ことさら説明を省いておる。それは、間接侵略が第五条の武力攻撃として対処されるということを意味しておるのです。(「違う」と呼ぶ者あり)そうじゃないか。(「無理な解釈をするな」と呼ぶ者あり)そんなことはない。それじゃ間接侵略というのは、どういうふうに政府は解釈するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/323
-
324・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 間接侵略という言葉でございますが、これは国際法上、御承知の通り、侵略とともにいろいろな概念があり、これはどういうものであるかということは、ほとんどまだ成熟した国際的な観念となっていないというのが、間接侵略の国際間の概念であろうかと思っております。従いまして、一般に間接侵略だといいますが、これはいわば俗的な意味において、国際関係においては使われています。しかし間接侵略でも、たとえば武力攻撃と申しましても、それはその国が自己の国家機関を使って、相手国に対して必ずみずから直接手を下してやるという場合でない場合がある。すなわち、武装団体を使って、これを潜入さしてやるというような場合でございます。これは武力攻撃でございます。しかし、こういう面もあるいは間接侵略といっておる面もあると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/324
-
325・松本七郎
○松本(七)委員 内乱騒擾はどうですか。総理大臣答弁して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/325
-
326・岸信介
○岸国務大臣 内乱騒擾の場合は、いろいろな場合があるだろうと思います。私は、そのすべてを間接侵略だとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/326
-
327・松本七郎
○松本(七)委員 それを間接侵略と認定するのは、結局政府が認定するのでしょう。客観的な条件というものはないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/327
-
328・岸信介
○岸国務大臣 それは、そのときの具体的の状態や、いろいろな内乱が起こっておる事実に基づいて、判断するほかはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/328
-
329・松本七郎
○松本(七)委員 自民党の総務会で了承されたといわれておる安保改定要綱というものがある。その第(三)の国防との関係の(1)間接侵略という項目で、このように書いております。「間接侵略については米軍の援助をうる道を開いておくため、日米両国が協議する等の適切な措置をとる必要がある。」こうありますが、適切な措置ということになれば、結局第五条の発動以外にないと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/329
-
330・岸信介
○岸国務大臣 第四条において、協議し、その事態に応ずるような必要がある場合における援助を受けるということもあり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/330
-
331・松本七郎
○松本(七)委員 今の間接侵略に対する適切な措置というのは、第五条の発動以外にないし、また、第五条の発動が当然予定されると思いますが、それとの関係は全然ないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/331
-
332・岸信介
○岸国務大臣 五条は、あくまでも、武力攻撃があった場合であります。従って、間接侵略と申しますのも、いろいろな態様がございますから、先ほど条約局長がお答えした通り、まだ国際法的に具体的な内容としての観念ははっきりしていないようであります。従って、これは少なくとも日本の平和と安全に脅威を与えるものとして両国が話し合いをし、協議をして、そうして日本としては、そのものに対して、自衛隊法の趣旨から申しましても、自衛隊が出動してこれを抑止するという行動に出ることは当然であります。米国側に必要な援助について協議することは、もちろん当然であり、また必要な援助を与えることもあると思います。しかしながら、五条の発動については、武力攻撃がない限りにおいては、これは発動しないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/332
-
333・松本七郎
○松本(七)委員 そうすると、その武力攻撃というものは、内乱騒擾は一切含まない、こう解釈していいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/333
-
334・岸信介
○岸国務大臣 これは内乱騒擾の場合においての事態をはっきり具体的にきわめなければ、申し上げることはできぬと思います。というのは、今日の国際情勢から見ますと、いろんな内乱あるいは騒擾というものが、他国の干渉により、他国の武力的な援助によって行なわれる場合も少なくないのであります。従って、そういう具体的の事態を、具体的事実に基づいて判断して決するほかはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/334
-
335・松本七郎
○松本(七)委員 もう一つ伺っておきたいのは、この第五条にいう武力攻撃というものは、国以外の、つまり団体ですね、団体からのものも、場合によっては含み得るということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/335
-
336・高橋通敏
○高橋(通)政府委員 必ずしも国が、自己の直接の国家機関でございますか、それを使って武力攻撃を実施するとは限らない、すなわち、真実にはその通りの関係がありますが、外見上は、武装団体を潜入させるというような場合もございます。たとえば、朝鮮事変の場合に中国が北鮮を援助してやったというような場合は、これは含むと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/336
-
337・松本七郎
○松本(七)委員 たとえば、米軍基地で日本の大衆がいろいろな問題を起こす、そういうのがだんだん拡大して、そして団体的に米軍と衝突するという場合も、これは米軍の今後の動き方一つで、砂川の事件等でも見られるように、そういう事件というものが起こり得るかもしれない、そういう場合に、これは絶対に武力攻撃という認定は、日米双方とも下し得ないということは明確にできておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/337
-
338・林修三
○林(修)政府委員 武力攻撃という以上は、これは外国政府あるいはこれに準ずべきものからの働きかけでございまして、国内における団体がどうしたこうしたということは、これは武力攻撃では私はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/338
-
339・松本七郎
○松本(七)委員 それでは、直接日本の団体と米軍との関係においては、いかなる事態になっても、武力攻撃には該当しない、これを確認しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/339
-
340・林修三
○林(修)政府委員 武力攻撃という以上は、あくまでその主体は外国政府あるいはこれに準ずるものでございまして、その手段として、先ほど条約局長が申しましたように、正規部隊のほかに、武装団体というものがありますことは考えられるわけであります。あくまでその主体は外国政府またはこれに準ずべきものでありまして、国内における単なる騒擾というものは、武力攻撃という観念とは相いれないものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/340
-
341・松本七郎
○松本(七)委員 私はそこのところをあれするのは、条文からいってみても、現行条約において内乱条項が好ましくないから、これを消したと政府は言っておられるのです。ところが、表面上は削除したが、実はかえって重大な改悪になるのじゃないかというおそれがあるので、この点はしつこく聞いておるわけです。それは第一は、改定条約で、いわゆる内乱条項というものを削ると同時に、一方では、今の武力攻撃というのを、外部からのという文字を削ってしまったわけですから、そこでさっきから言う問題と関連して、これによって内乱条項が形を変えて第五条の中に生き残っておるのじゃないかという疑いが出るわけです。今後これはなお詳しく解明していきますが、それともう一つ、第二は、現行条約では、一応、間接侵略というものの定義らしいものがあるわけです。現行条約で規定されておる。ところが、この改定条約では、あげて政府の認定の問題、こうなっておるわけです。つまり、今度の改定条約では、その限界は野放しになっておる。そこが一つの問題。それから第三には、現行条約は、形式的にもせよ、一応、内乱の場合は日本政府の明示の要請により米軍が援助するということになっておる。日本政府の明示の要請により米軍が援助するということになっておるのが、改定条約では、内乱に米軍が介入することについて日本政府の明示の要請を必要としなくなるのじゃないか、その点がはっきりしない。だから、今回の改定によっては、内乱には一切米軍が勝手に介入することはないということははっきりしておるかどうか。そういう規定がないのだから、どこの規定によってやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/341
-
342・岸信介
○岸国務大臣 内乱条項を今度は削除したのでありまして、内乱についてアメリカが一方的に介入するということは絶対にございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/342
-
343・松本七郎
○松本(七)委員 それができないという保証は、条文のどこでそれが出ていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/343
-
344・岸信介
○岸国務大臣 米軍がそうした行動をとる場合におきましては、五条に、武力攻撃があった場合に限っておりまして、武力攻撃というものの解釈は、先ほどから申し上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/344
-
345・松本七郎
○松本(七)委員 そこでもう一つ伺いたいのは、さっきから政府は、外国からの武力攻撃ということを言われておるわけですが、そうしますと、具体的に言って、どういう国から武力攻撃が加えられる可能性ありと考えられておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/345
-
346・岸信介
○岸国務大臣 さっき申し上げた通り、他国からということであって、具体的にどの国ということはわれわれは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/346
-
347・松本七郎
○松本(七)委員 それはおかしいじゃないですか。この安保改定をやろうとしておる政府は——この岸内閣の外交政策の基本的な立場は何かといえば、これは勢力均衡論なんです。勢力均衡論の上に立っておる。確かに雪解けの傾向はあるけれども、まだまだ力の均衡によって平和が保たれておるのだ、こういう基本的な立場を政府はとっておればこそ、米軍の駐留を必要とするという情勢の判断で、米軍の駐留を認めるのでしょう。そうなれば、米軍の駐留を認める以上は、この米軍という力に対抗しておる相手方がどういう国であるかということも一応予想しなければ、そんなことは無意味になるじゃないですか。相手国がないのに、日本側だけでただ米軍の駐留を一方的に認めるということならば、これは極東における均衡を日本みずからが破壊することになるじゃないですか。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そうなるじゃないか。何でそういう必要があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/347
-
348・岸信介
○岸国務大臣 そういうことは考えておりません。日本がどこの国からも不当に侵略をされないということを守っておることが、平和と安全を願っておる国民の意思にかなっておることであって、これをどこそこということは私どもは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/348
-
349・松本七郎
○松本(七)委員 最後にもう一つ伺っておきますが、武力攻撃があったかどうかの認定の問題も、これは参議院でちょっと頭を出しましたが、認定はだれがするか、もう一度はっきり御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/349
-
350・岸信介
○岸国務大臣 これは認定も何もない、明瞭な事実があった、事実の問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/350
-
351・松本七郎
○松本(七)委員 事実の問題と言うけれども、その事実を認定しなければならぬじゃないですか。認定しなければしょうがないじゃないですか。どっちがするんですか。日本がやるのか、米国がやるのか、一方的にやれるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/351
-
352・岸信介
○岸国務大臣 これはあくまでも武力攻撃というなににおきましても、国連憲章の中にもいっておる、はっきりした事実が生じたときに、日米両国がこういう行動をとるということを宣言しておるわけでありまして、特に認定を要するというような事態ではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/352
-
353・松本七郎
○松本(七)委員 認定は要らないといったって、国連憲章でわざわざ武力攻撃というものを規定しておる。その国連憲章にいう武力攻撃であるという認定をしなければ、これは行動も起こせないじゃないですか。認定をしなくてだれがきめるのですか。両国でやるのか、日本の認定に基づいてこの条約が発動されるのか、アメリカの認定によって発動されるのか、双方の認定が一致した場合に条約が発動されるのか、いずれかがなければならないじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/353
-
354・岸信介
○岸国務大臣 私は、武力攻撃があった場合ということは、きわめて明白な場合であって、先ほど来言っているように、日本の領土に組織的計画的に他国から武力の攻撃が加えられるという事実でありますから、きわめて明瞭なんであって、いわゆる認定が違うとか、どちらが認定するというような問題ではない、事実がきわめて明白にすべてを語っておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/354
-
355・松本七郎
○松本(七)委員 今までの、世界でいろいろ起こった事件の経過を考えてみれば、そういう評価、認定においても相違が出ることがしばしばあるのです。それはもうスエズ運河の場合でも、あるいはさっきのレバノンの場合でも、やはり世界の攻撃の的になる場合がある。そういった認定を、客観的な事実によって認定の余地がないなんという答弁でこれを切り抜けようとしておったのでは、これは大へんなことですよ。それでは、たとえば朝鮮でまたごたごたが起こった、それがはたして日本にどれだけの大きな影響があるか。極東の平和条項にも関係してくるでしょう。そういうものの認定がすべてもう明らかで、認定をどうのこうの言う余地がないといってきめてかかれるような情勢じゃないでしょう。第五条の場合でも同じこと。先ほどから言うように、武力攻撃そのものがもう一致しておればいいですよ。客観的にきちっときめて、事実を列挙して、これ以外の場合は武力攻撃ではないということがはっきりしておればいいけれども、先ほどからの答弁にあるように、結局はそのケース・バイ・ケースで認定する以外にないというんでしょう。その認定自体が、武力攻撃の定義自体が、先ほどから例をたくさんあげたように、学者にも拡張解釈の傾向がある。裁判所にもそういう傾向がある。アメリカ自身が拡張解釈をやっておるじゃないですか。その中で、いろいろな問題で認定の相違が出るということが予想されるのは当然じゃないですか。それが認定に食い違いがないというのは、これは完全な独善ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/355
-
356・岸信介
○岸国務大臣 先ほどの実例について、あるいは学説につきましては、そういう学説もあることは、私も認めております。しかしながら、あくまでも武力攻撃というものについては、私どもはそういう拡張解釈をとっておらないのであります。アメリカがレバノンに出兵したという事例につきましては、外務大臣が申した通り、五十一条のなにからきているわけじゃありません。とにかく日本の領土、領空、領海に対して組織的計画的な武力を行使しての攻撃が具体的にあるという事実につきましては、私は、いわゆる認定がどうだというような問題ではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/356
-
357・松本七郎
○松本(七)委員 時間もきましたから、これで一応とどめておきますが、今後明らかにしなければならぬ問題が実はたくさんあるのです。今の御答弁によっても、日本に武力攻撃が加えられたと米国が認定すれば、米軍は事前協議もしないで出動できるし、その場合に、日本が武力攻撃のあったことを否定しても、そのときはすでに米軍が行動を起こしておって、日本は交戦区域に入ってしまっておる、この条文からいえば、こういう場面も考えられるのです。条文からいえば、そういう場面が十分考えられる。また第二に、逆に今度は日本が武力攻撃を受けたと認定しても、米国がそれを否認さえすれば、米軍の援助は期待できない、そうして米軍は撤退の自由を持っておるのですから、米軍撤退については、皮肉なことに、ここでは事前協議を必要としないのです。これを要するに、こういう事態を考えてみれば、政府は米軍に日本防衛の義務を負わせたと喜んでいるけれども、今述べたような場合には、結局、日本の安全が維持される保障は全然ない、逆に日本が危険にさらされるだけであるということが、ここにはっきりしておるのです。
そこで、明らかになったことは次の点です。すなわち、政府は、武力攻撃が中ソ及び日本国内のある団体によって行なわれることをやはり前提にしてこの条約を結んだに違いない。これらのものが実質的に仮想敵国になっておるんじゃないですか。これはアメリカの海軍司令官その他の言葉を引用すれば、このことがまた明らかになって参りますが、やがて次の機会にこういう具体的な事実をあげて私は明らかにしたいと思うのでございますけれども、この条約の解釈からすれば、場合によっては、予防戦争の名をかりて仮想敵に対する攻撃も可能である。その結果、日本が戦火に巻き込まれて、米軍は都合によってはいつでも撤退する。日本は、形式上は、武力攻撃の存否についての認定権はあっても、実質的には、在日米軍の防衛の義務を負わされるだけに終わる。この条約の本質が、中ソ等を仮想敵国にしたところの対米軍事従属条約であり、また、国内的には、日本国民を弾圧する条約であるということを、十分この条約は物語っておると思うのです。(拍手)
私どもは十分に解明しなければならぬこれらの点を、今後あらゆる角度から、また、すべての委員があらゆる材料をもってこの点を明らかにしていくつもりでおります。どうぞ政府もいいかげんな答弁でなしに、率直に政府の考えておるところを明らかにしていただくようにここに確約を求めて、本日はこれで私の質問を終わります。——もう答弁は要りません。答弁は要りません。(発言する者多し)答弁は求めてない。答弁は必要ない。
〔「横暴だ」と呼び、その他発言する者、離席する者多し、議場騒然〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/357
-
358・小澤佐重喜
○小澤委員長 静粛に願います。
〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/358
-
359・小澤佐重喜
○小澤委員長 静粛に願います。——岸総理大臣に発言を許しました。
〔議場騒然〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/359
-
360・小澤佐重喜
○小澤委員長 岸総理に発言を許しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/360
-
361・岸信介
○岸国務大臣 ただいまの松本委員の見解とわれわれ政府の考えは、全然違っておるのであります。大体この安保条約というものは、前提として、国連の——全体をごらんになってもわかるように、国連憲章を順守するということと、日米が互いに信頼し、そうして国際信義を守り、忠実にこれを実行するという前提に立っておるのであります。今お話のように、いざという場合に、アメリカ軍隊が撤退して何ら防衛の義務を負わないというようなことは、いやしくも、この条約の基本精神に反しており、そういうことはわれわれは絶対に考えておりません。また、この条約における武力攻撃ということは、先ほどからお答えを申し上げましたように、事実としてきわめて明白な場合でありまして、従って、認定を異にするというような事態は絶対に起こり得ないということを、ここに明瞭に申し上げておきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/361
-
362・小澤佐重喜
○小澤委員長 西村力弥君から議事進行に関して発言を求められております。この際これを許します。西村力弥君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/362
-
363・西村力弥
○西村(力)委員 委員会は、静かに意を尽くして、国民にかわってただすことはただし、明らかにすべきところは明らかにしていく、こういうような工合にいかなければならぬにかかわらず、先ほどから、自民党側において、椎熊委員、天野委員、それから、横から出てきておる池田委員、あるいは福家委員、そういう諸君は、こちらの真剣な質問に対して、もう意味もない、まるで愚にもつかないような不規則発言をして、そうして、静粛な、ほんとうに国民の輿望にこたえる審議をやろうとするにあたって、いたずらに妨害をしておる。私たちは、こういうようなことがこのまま続けられるとするならば、審議の渋滞もこれまたやむを得ない、こういう工合に考えざるを得ない。委員長におきましては、本日のこの審議に対する自民党側の一部委員の不規則な発言に対しましては、今後どういう処置をされるか、それを一つはっきりしていただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/363
-
364・小澤佐重喜
○小澤委員長 お答えいたします。委員会の議事進行に関しては、きわめて慎重、かつ、秩序正しくやらなければなりません。私は、今後皆さんの御協力を得ますれば、何とかこの目的を達成したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/364
-
365・椎熊三郎
○椎熊委員 委員長、委員長、……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/365
-
366・小澤佐重喜
○小澤委員長 議事進行に関して椎熊三郎君から発言を求められております。この際これを許します。椎熊三郎君。ごく簡潔に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/366
-
367・椎熊三郎
○椎熊委員 社会党のいろいろな質問がありまして、最後、私は運営上許すべからざる行動であると思うのは、一方的に、何らかの原稿を書いてきて——質疑応答の結果として、意見を述べられることはままあることではあるが、かねて用意の原稿を朗読しっぱなしで、それに対して政府が発言を求めたのに対して、身をもってこれを阻止するというのは何事でございましょう。国会法のどこにあるか。国会法は、いかなる場合でも、いかなる時期にでも、政府が発言を求めた場合には許さざるを得ないと規定してあるのです。議員の権限をもってこれを阻止することはできない。国会法上できない。いわんや、今日の国会法においては政府一体でありまして、政府委員の発言に対しても同じことなのであります。これを国会法をじゅうりんして、一方的に言いっぱなしで、勝手な憶測を交えた、曲解の上に曲解を加えた独断を吐露しておいて、政府にその弁明の余地を与えないということは、そもそも民主主義の原則に反するのであります。こういう状態で審議を続けるということは、私は許されません。いわんや、議事進行に名をかりて、委員の氏名を個々にあげて、何か非難せんとするがごときは、卑怯未練の行動であって、堂々たる論陣を張ってやってごらんなさい。きょうの質問のごときは、まるでしどろもどろで、古い本を持ってきて読み立てても何にもならぬ。こんな質疑に何の価値があるか。私は、委員長におかれましては、同じような質問、同じ趣旨の質問をたび重ねることとか、他の文書などの朗読とか、そういうことこそ、委員長の職権をもって阻止すべきであって、これは委員会運営の上に最も厳守しなければならぬ基本的原則であると思う。委員長におきましては、その点、御注意あらんことを希望いたしまして、私の発言を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/367
-
368・小澤佐重喜
○小澤委員長 椎熊君の御意見には委員長も同感でございましたから、総理大臣の発言を許した次第であります。どうぞ右御了承願います。
次会は明十六日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。
午後四時八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404961X00719600315/368
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。