1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十五年三月十日(木曜日)
午前十一時五分開議
出席委員
委員長 瀬戸山三男君
理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君
理事 小林かなえ君 理事 田中伊三次君
理事 福井 盛太君 理事 菊地養之輔君
理事 田中幾三郎君
綾部健太郎君 一萬田尚登君
世耕 弘一君 高橋 禎一君
中村 梅吉君 馬場 元治君
濱田 正信君 阿部 五郎君
出席政府委員
法務政務次官 中村 寅太君
検 事
(民事局長) 平賀 健太君
委員外の出席者
判 事
(最高裁判所事
務総局人事局
長) 守田 直君
専 門 員 小木 貞一君
—————————————
本日の会議に付した案件
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出第二五号)
検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出第二六号)
不動産登記法の一部を改正する等の法律案(内
閣提出第四九号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/0
-
001・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、この両案を一括して議題といたします。
両案につきましては、去る三日質疑を終局いたしております。
これより討論に入る順序でありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を一括して採決いたします。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/1
-
002・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長 起立総員。よって、両案はいずれも原案の通り可決されました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/2
-
003・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長 次に、不動産登記法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。
本案につきましては、前会において質疑を終局いたしております。
これより討論に入ります。討論の通告がありますから、順次これを許します。鍛冶良作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/3
-
004・鍛冶良作
○鍛冶委員 私は、自由民主党を代表しまして、本案に対して賛成の意を表するものであります。ただし、この法律は趣旨としてはまことにけっこうなものでありますが、ある意味において画期的の大改革だと思いますので、今までの行政上やってきておったことと同じようなことで、この法律が変わったからといって、国民生活に大へん直結したりいろいろなことがございますから、そのために、どうも、国民生活に不安を与えるようなことがあっては大へんだと思うのでありまして、これが適用にあたって、旧来と特別の変わりのないように、十分なる注意のもとに適用せられることを、まず第一番に希望いたしたいと思うのであります。
その次は、これを遂行されるというときには大へんな労力が増すものだと考えます。ことしは、三十五年度において、この法務局に関する人員の増加及び予算の増加も相当あったようでありますが、ことしの増加は、主として今までのいわゆる登記所——法務局の出張所の人員の不足で、しょうがないからふやしたものでありまして、このためもあるかもしれぬが、われわれは、これだけではたしてりっぱにやれるものかどうか、懸念なからざるを得ないのであります。ですから、特に労務が過重にならないことはもちろんでありますが、もし今日の場合で不足するというならば、来年度においてでも十分手配をせられまして、万全の策を講ぜられることを希望いたすものであります。
第三は、これを取り扱っておりまする法務局の出張所、いわゆる登記所ですが、今日、日本の官庁建物として一番悪いものといったら登記所じゃないかと思うのです。こういう建物の中で、こんな画期的な仕事をやられるとしましても、はたしてこれでいいか悪いか懸念なからざるを得ません。この意味におきましても、建物の充実その他内部の充実等をいたして、十分なる計画を立てられまして、両々相待って、完全なる施行をされることを、希一望条件をつけまして、賛成の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/4
-
005・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長 阿部五郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/5
-
006・阿部五郎
○阿部委員 社会党は、この不動産登記法の改正法律案に反対いたします。反対の理由は多々ありますけれども、そのうちの三点を例示いたします。
第一は、憲法上の疑義があるということであります。この法律では、不動産の内容等について登記官吏に強制調査権を与えておりますが、その調査にあたっては、ただに所有者、占有者のみならず、第三者に対してまでも強制的に尋問をしたり、あるいは私有財産に立ち入ったり、そういうふうな強制調査権を与えておるのであります。これは憲法に保障されておるところの基本的権利として、しかも法律によってさえ侵すことができないものとせられておるところの人民の権利を侵す疑いがあるのであります。この点においてまず反対せざるを得ないのであります。
その次に、この法律が台帳と登記面を一致させようという趣旨はかりに了とするとしましても、それをする機会は別にあるのでありまして、こういう多額の費用と労力とを要する仕事を、すでに目前に、メートル法の採用がどうしてものっぴきならないものとして迫っておりますにもかかわらず、二重に手間をかけてこの際これをやる必要は認めがたいのであります。国の費用としても乱費の疑があるという点が、第二の反対の理由であります。
次に第三点といたしましては、この改正によって、かえって国民の不動産に対する権利が危うくされるという疑いがあるのであります。現在でも登記簿における表示欄というのがありますけれども、今回の表題部というものがつきましたならば、それは簿記として強制せられるのであります。しかもそれは今までと違って、それに対して所有者という欄があり、所有者が明示されるのであります。ところが今まででありましたならばそれがありませんから、世の中に現実に行なわれておるところの未登記の不動産の売買ということについては、この点によって危うくされるということは比較的少ないものでありましたが、今回は表題部が強制せられて、あらゆる不動産がすべて一応登記をせられる。それに所有者が明示されておる。そして第三者対抗要件としての登記は強制されておりませんから、その意味において未登記のままで売買されるということはよくあると想像されるのであります。その場合に、この表題部だけの抄本を取って、それに載っておるところの所有者の名前を示すことによって取引をするということになりますと、その間これは大へんな危険が伴うのであって、真実の権利者がその権利を害せられるおそれが多分にあるのであります。これらの点から考えましても、今回のこの改正案を早急に実施せんとすることは早計であろうかと思うのであります。
これらの意味において、わが党はこれに反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/6
-
007・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長 田中幾三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/7
-
008・田中幾三郎
○田中(幾)委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、本案に賛成をいたすものであります。
ただし、私は賛成するにあたりまして、以下述べるところの諸点を強く政府に要望するものであります。
私は、本案に賛成はいたすのでありますけれども、本案は登記の一元化といっておりますけれども、これは法律的意味においてはむしろ二元化ではないか。なぜならば、今までの登記法によりましては、登記は登記簿によって対抗力を持たせる法律的効果を持っておったのでありますけれども、この改正によりまして、建物の客体を特定するという表示をする一面と、さらに従来の登記によりまして権利の対抗力を持たせるという一面と、一つの登記簿によって二つの働きをさせようとするのでありますから、登記簿の性質から申しますならば、これは効力は二つになるのであります。けれども、事務の取り扱い上、またはこれを利用する国民に便宜を与えるという、この点からこれは一つの整理といいましょうか調整といいましょうか、そういう意味合いでありますから、私はそこに主眼を置いて賛成をいたすのであります。
登記所の仕事は、非常に重大な使令を持っておるのでありまして、個人の権利の唯一の証明方法であります。同時にこれを利用する者にとりましては、また必要欠くべからざるものでありますから、登記所・法務局の使命といたしましては、そういう広報的な機能を持つと同時に、国民に対する一つのサービスの点も持っておるといわなければなりません。しかるに、このサービスの面におきましては、しばしば論ぜられております通り、非常に事務が遅延を来たすというのが今まで大きな欠点であります。今日のように経済取引の迅速をたっとぶ時代におきまして、登記をいたしましても、三日も四日も、聞くところによると最近は一週間も延びるという傾向になってきておるそうでありますから、私はこういう点は十分法務局の方におきましても留意をしていただきたいと思うのであります。しかしながら、それはどこから来まするかといいますと、やはり法務局の機構あるいは人員の不足というところから来ておると思うのでありまして、この点は私は十分に御考慮を願いたいと思うのであります。
さしあたって、この帳簿の整理につきましては、何年かの時間をかけてやるのでありましょうけれども、帳簿の今回の表題部の整理については、むろん事務量が非常に増大するわけであります。この整理がつきましたら、あるいは事務が簡素化されるという点もありますけれども、これはやはり法務局の事務量に比較するのでありまして、私は決して事務量が減るとは考えて着りません。でありまするから、この帳簿の整理をするにあたってはもちろんでありますけれども、それ以後におきましても、この事務量の増加に伴って法務局並びに地方法務局の定員を増加する。なお待遇を改善するということを強く要望いたしておくのであります。御承知のように、昨年渡し切り経費というものが問題になりまして、この経費が非常に少ないということは昨年の人事院の判定によりましても明らかになっておるのでありますから、私はこの人員の増加とそれから待遇の改善ということに含めてこれらの点も十分に処置をされたい、これが第一点であります。
第二点といたしましては、これは本案には直接関係はないかもしれませんけれども、登記に関する諸帳簿、書類の保存に関する設備の問題であります。登記所の庁舎というものはほとんど木造の古いものであって、これを存置する倉庫というものもほとんど完備されておらない。これは個人の貴重な財産を証明する書類を扱うところでありますから、この点は今後十分に御考慮を願いまして、同時に庁舎の増築、改築等についても、今すぐ全部というわけにはいきますまいけれども、これは五年計画、あるいは十年計画という多少長期にわたっても、完備したものを作っていただく。同時に庁舎の改築ということは、ここで事務を行なう庁員の事務の能率にも関係することでありますから、この点を強く要望いたしておく次第であります。
それから、地方法務局の統廃合の問題が昨年問題になりまして、これは行なわないということに決定したそうでありますけれども、これはやはり地方民の利用度を高めるという意味において、今回御決定になった通り、固くこの点を維持していただきたいということであります。
それから問題になりました調査権の問題でありますけれども、これは従来の個人の財産に関する権利の点は個人の自由にまかせるという自由主義の点に立っておったものを、強制的に調査するということに相なったのでありますが、これは社会党からも述べられました通り、多分に憲法違反のおそれもあると考えられる点も存するのでありまして、実施に当たりましては十分考慮してやるように、下部の方へしかるべき指示を与えておいていただきたい。
さらに罰則の点でありますけれども、今の新築の届出を怠った場合に対する罰則のごときも、これをやれば非常に危険になるのでありまして、こういう点も、実務の施行にあたりましては万全の処置をとっていただきたい。
これらの点を私は強く要望いたしまして、本案に賛成いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/8
-
009・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長 これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/9
-
010・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長 これより不動産登記法の一部を改正する等の法律案につき採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/10
-
011・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/11
-
012・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長 ただいま可決されました各法律案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/12
-
013・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長 御異議なしと認め、さように決しました。
次会は明十一日午前十時より開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103405206X00919600310/13
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。