1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年三月十五日(火曜日)
午前十時四十一分開会
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出席者は左の通り。
委員長 岩沢 忠恭君
理事
稲浦 鹿藏君
松野 孝一君
武藤 常介君
田中 一君
委員
小沢久太郎君
櫻井 三郎君
田中 清一君
米田 正文君
内村 清次君
武内 五郎君
永岡 光治君
安田 敏雄君
田上 松衞君
小平 芳平君
村上 義一君
国務大臣
建 設 大 臣 村上 勇君
政府委員
農林省農地局長 伊東 正義君
通商産業省鉱山
局長 福井 政男君
運輸省港湾局長 中道 峰夫君
建設大臣官房長 鬼丸 勝之君
建設大臣官房参
事官 高田 賢造君
建設省河川局長 山本 三郎君
建設省河川局次
長 曾田 忠君
建設省住宅局長 稗田 治君
事務局側
常任委員会専門
員 武井 篤君
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本日の会議に付した案件
○海岸法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
○住宅地区改良法案(内閣送付、予備
審査)
○公営住宅法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/0
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001・岩沢忠恭
○委員長(岩沢忠恭君) ただいまから建設委員会を開会いたします。
本日は、先刻の委員長及び理事打合会の申し合わせによりまして、最初に海岸法の一部を改正する法律案、次に建設業法の一部を改正する法律案、右両案の質疑、続いて住宅関係二法案の審査に入ります。
それでは、本日の議事に入ります。初めに、海岸法の一部を改正する法律案を議題といたします。
前回に続き質疑を行ないますから、御質疑の方は、御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/1
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002・田中一
○田中一君 運輸省並びに通産省に対して答弁を書類で求めておりますが、まずその書類をお出し願いたいと思う。
今提出された資料に基づいて、それぞれ説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/2
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003・岩沢忠恭
○委員長(岩沢忠恭君) 中道港湾局長、一つ説明して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/3
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004・中道峰夫
○政府委員(中道峰夫君) 資料につきまして、御説明申し上げます。
「新潟港に於ける地盤沈下と海岸決壊」最初に新潟海岸の決壊について、決壊の状況でございますが、決壊の範囲といたしましては、東海岸におきまして三キロメートル、西海岸におきまして七キロメートルの区間が特に決壊が顕著でございます。もちろん新潟の信濃川の河口からでございます。
その次に海岸線の後退の速度でございますが、東海岸につきましては大正十一年から現在までに約二百五十メートル、年平均いたしまして、約十メートルの後退を見ております。西海岸につきましては最大の後退個所におきまして六十年間に約三百六十メートル、年平均いたしまして約六メートルの後退を見ておるわけでございます。
次にこれらの対策工事後の状況でございますが、終戦後施工いたしました対策工事の結果といたしまして、海岸線の後退の速度はにぶっておりますけれども、昭和三十三年以後地盤沈下が激しくなるに従いまして、東海岸におきましては、海岸線の後退の範囲が広まっておるような状況でございます。
次に工事費でございますが、災害復旧費といたしまして、二十年災から三十三年災にかけまして五億五千七百七万円でございます。高潮対策費といたしまして、三十三年度から三十四年度にかけまして三億九百万円、災害対策費といたしまして二十七年度から三十四年度にかげまして十億九百八万七千円、合計いたしまして今日まで十八億七千五百十五万七千円となっております。
次に新潟地区の地盤沈下の状況でございますが、個所別に申しますと、新潟港の河口の西突堤の付近におきまして、三十四年の三月までの総沈下量といたしまして二メータ七十から二メータ三十の間で沈下をいたしております。それから昭和三十四年度推定最大年間沈下量といたしましては、約五十センチではないかと考えております。それからガス採取の規制をいたしましてから年間の沈下量の推定をいたしますと、これは大体三十四年の十月から三十四年十二月までの測定によります推定でございますが、約三十センチと若干沈下の速度が減っておるわけでございます。
その次臨港埠頭の付近でございますが、これが総沈下量といたしまして約二メートル、それから三十四年度を推定いたしますと、最大年間沈下量といたしましては、五十ないし四十五センチ、ガス採取規制後といたしましては三十センチ。それから西突堤の根元でございますが、これは一メータ八十五、年間の最大沈下量は大体臨港埠頭と同じ五十ないし四十五でございます。ガス採取規制後の沈下量の推定は三十七センチ。山ノ下、導流堤付近は、総沈下量は一メートル五十でございまして、あとは大体同様でございます。県営埠頭でございますが、その付近では、総沈下量は一メートル二十でございまして、年間最大沈下量は四十五ないし二十五センチ、ガス規制後は三十ないし二十センチ。信濃川左岸は、だいぶ減りまして、総沈下量は七十センチ、最大沈下量推定は四十五ないし二十五センチ、ガス規制後は三十ないし二十センチ、県営水産物揚場が、若干上流の付近にございますが、その付近でありますと、総沈下量は四十五センチ、年間最大沈下量は二十五ないし二十センチ。ガス規制後は二十五ないし二十センチ。
そこで運輸省関係といたしまして、これに対する応急対策事業を、昭和三十三年度から三十四年度にかけまして実施いたしております。三十五年度も予定をいたしておるわけでございます。それにつきまして港湾施設といたしましては、三十三年度が二億三千九百四十二万円でございます。海洋施設といたしましては九千百七十万円、その他調査費を含めまして、三十三年度が三億六千九百九十八万円、それから、三十四年度は、同様の施設に対する工費として七億三千七百五十七万一千円、それから、三十五年度といたしまして、来年度予定をいたしておりますのが、十一億二百五十万円、総合計といたしまして、三十五年度まで二十二億一千万円、こういうことにいたしておるわけでございます。
次に、西海岸のいわゆる海岸決壊の部分でございますが、潜堤並びに突堤、この海岸決壊の対策工事、海岸構造物沈下対策でございますが、現状といたしましては、地盤沈下が激しくなるにつれまして、海津決壊の対策のために、それらの潜堤、突堤、護岸等が沈下をいたしているような状況でございます。
これに対する対策といたしましては、昭和三十五年度の新潟地盤沈下対策工率費として計上をいたしておりまして、海津事業費のうちから一億円をもって、西海岸の構造物の補強を行なうということにいたしております。なお、地盤沈下に伴います侵食現象の増加ということは、きわめて重大な問題でございますので、昭和三十五年度におきましては、国費約七十万円をもって調査をいたしまして、それに対する根本的な対策計画を決定いたしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/4
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005・田中一
○田中一君 この決壊の今の工費十八億七千五百万と、応急対策費二十二億とは、これは別個のものですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/5
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006・中道峰夫
○政府委員(中道峰夫君) これは決壊の対策費でございます。片一方の方は、地盤沈下に対する応急対策費でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/6
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007・田中一
○田中一君 それから、第二表の対策のうち、三十五年度の地盤沈下対策工事として計上された海岸事業費の中から一億円をもってやるということは、この三十五年度海岸施設費四億八千二百万円の中の一億円ということですか。それとも、海岸事業という別の予算の計上になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/7
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008・中道峰夫
○政府委員(中道峰夫君) 最初の三十五年度予定の四億八千二百五十万円と申しますのは、この地盤沈下に対する応急対策事業費でございます。
ただいまお話の一億円は、海岸の、つまり海に面した方の決壊に対する部分の費用でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/8
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009・田中一
○田中一君 これは、別個のものですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/9
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010・中道峰夫
○政府委員(中道峰夫君) はあ、別個のものです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/10
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011・田中一
○田中一君 海津決壊も地盤沈下が激しくなったに従って、その後退も激しいという事実、それから第二の新潟地区の地盤沈下の県資料によるところの報告は、たとえば臨港埠頭を考えてみても、最大沈下量が五十センチないし四十五センチということと、ガス採取規制後の沈下量が三十センチということとを比較してみると、二十センチという沈下現象というものは、やはりガス採取規制前の責任と言っては語弊があるが、原因があったのではないかという推定は、この表を見てもわかるわけですね。そういう推定が西突堤、山ノ下全部含まれ、かつ県営水産物揚場ですか、これなどは全然とまってしまっておるということになるわけですね、この表を見ますと。
そうすると、私は新潟の最近の著しい地盤沈下というものが、その数字だけの面は、人災であると言わなければならぬと思うのです。その点については運輸省の見解としては、どういう工合に判断しておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/11
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012・中道峰夫
○政府委員(中道峰夫君) この新潟地盤沈下の原因につきましては、この前申し上げましたのですが、科学技術庁に特別委員会が設けられまして、そちらで各方面の権威者が、これらの原因探求について御検討をなされましたわけでございます。その一応の結論としては、天然ガスの今の採取によるのが原因であるということを重要視せざるを得ないというふうに申されておるわけでございますので、われわれといたしましても、そのように信じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/12
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013・田中一
○田中一君 建設大臣に伺いますがね、今私が中道局長に質問している点です。少くともガスの採取中の地盤沈下の進み方と、ガス採取規制後の沈下の進み方というものは、そこにこの資料を見ると、おおむね二十センチないし二十五センチの沈下が、その分だけとまったということが明らかになっておるわけなんですよ。
そうすると、この二十五センチ分の沈下というものは、人為的な沈下であるというような見方をしたいと私は考えておるのですが、建設大臣の見解はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/13
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014・村上勇
○国務大臣(村上勇君) この沈下の状況からみますと、田中委員のお考えになっておるような考えも持たれると思いますが、現在関係方面で非常に慎重に調査をいたしておるようでありますから、今ここで、私はあなたが、この差額、要するに沈下のとまった部分は、ガス採取規制に全部がよるのだということもなかなか、常識的には考えられますが、まあ科学的に、この問題は検討して結論が出るまでは、何とも今はっきりした断定は下すわけにはいかないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/14
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015・田中一
○田中一君 今、建設大臣の答弁の中の、この資料による数字の面からみて全部がということを言って、今のような答弁があったので、私は全部と言っているのではないのです。数字の面からみて、五十センチと三十センチと比較して、その二十センチの差というものは、人為的なものであったのではないかと言っているのです。従って私の質問の的をそらしては困るのです。その二十センチについての答えを伺っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/15
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016・村上勇
○国務大臣(村上勇君) こういうような、はっきり数字が出ている限りは、田中委員のお考えと、私も同じように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/16
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017・田中一
○田中一君 そこで中道さん、あなたに、もう一ぺんせんだってのことを繰り返さなければならぬのですが、国費をもって、一つのまあ国策でございましょう、東北開発金庫の資金も相当出しておる。通産省は、相当それを助成しながら、この事業を行なっているという天然ガスの採取並びにこれの化学化の問題、今日の日本の産業の面からいって必要緊喫な事業であるというふうに認定されておるのでありましょうが、ここに、こうした現象というものが起こることは、これは一応人為的なものではなかろうか。私も、結論は出しませんよ、結論は出しません。やはり科学的の裏づけがなければ言えませんから、なかろうかという想定をされておる今日、この対策が、国が全部費用をもってまかなうものならいざ知らず、それもむろん、これは国会の議決をへてやる、いわば国民の納得のもとにやるならばいざ知らず、人為的な、そうした一企業の行為が善良な県民、市民、国民の頭上にかかる、ある場合には――まだ人命等については、あまり災害はなかったように見えますけれども、相当大きな被害を受けている。経済的な負担をかけておる。なるほど国は、若干は補助をしておりますけれども、やはり県なり市なりが、その負担をしておるという現状であります点から見ると、せんだってあなたに伺っているように、少くとも国費を一企業の、悪意とは申しませんけれども、利潤追求の一つの経済行為のために、こうした現象が生まれたということに対する追求は、当然しなきゃならぬものだ。
前回の委員会で河川局長は、当然そういう事態、そういうことになるんではございましょうというような答弁をしておりますけれども、運輸当局としては、どういう見解を持っているか伺っておきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/17
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018・中道峰夫
○政府委員(中道峰夫君) ただいま申し上げましたように、この原因につきましては、科学技術庁におきまして慎重に御検討なさっておるわけであります。またこの対策につきましては、経済企画庁の方に新潟港の地盤沈下対策委員会が設けられております。この天然ガスの採取ということが、大きな原因であろうということになっておりますのですが、運輸省といたしましては、この天然ガスが原因であって、それによって、どうするかという問題につきましては、これは鉱業を所管をされておるのは通産省でございますので、その方において御検討を願うべき問題ではないか。
また、ただいま申したように、その原因並びに対策については、それぞれの機関がございますので、そういった機関によって御検討を願いまして、お話のような結論が出ますならば、われわれとしましては、その線に沿って処置いたしたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/18
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019・田中一
○田中一君 どうも中道さんは、鉱山局とか通産省とかいうことじゃなくて、あなたは、やはり国民の税金をここに投入しているのです、一つのこの悪現象に対して。だから、現在そういうものをとるような法律というものは、港湾局としては考えられませんと、私の方は、仕事をすればいいんでございます、従って、これは全体の面から見る場合には、他の法律でもって、それがとれるものならとって、事業を促進した方がいいという考えだというような答弁ならいいけれども、顧みて、責任を向こうに持っていくという考え方は、僕はとってはならないと思うのですが、そういう点は、中道さんに申し上げておるように、一つ、態度をおきめにならなきならぬと思うのですが、というのは、当然これは人為的なものであるならば、その原因者が、その分は負担すべきであるというような今日の法律の思想的なものがあるわけですから、そういう答弁はできませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/19
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020・中道峰夫
○政府委員(中道峰夫君) 再々申し上げて申しわけございませんが、この問題は、お話のございましたように、新潟地区の産業とも関連いたしまして非常に重要な問題でございますので、運輸省といたしましては、港湾施設に対する被害ということから、何とかして、それに対する対策の手を講じたいということを考えておりますが、ただお話のように原因者負担、あるいは損害賠償ということを結論づけるということには、今それぞれの機関なりがございますので、そういった機関の結論に従うよりいたし方がないというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/20
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021・田中一
○田中一君 科学技術庁の、今回七十万円計上した調査費によった調査が結論づけられて、人災の面もややあるのではなかろうかというような答申が出た場合には、当然、これは原因者が応分の負担をしなきゃならぬというようなことになるというような答弁だというふうに理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/21
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022・中道峰夫
○政府委員(中道峰夫君) その結論が出ますれば、それに、われわれの方は従っていくというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/22
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023・田中一
○田中一君 新潟海岸の決壊について、港湾地区ですから、みんなあなたの方で受け持っておるのだと思いますが、この(2)の工事費の点です。これらの海岸の決壊というものを災害と考えられておるか、自然現象として、これは災害ではないのだというような考えに立っておるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
この資料には災害復旧費として二十年から三十三年云々と、それから高潮対策費、災害対策費ということになっております。一番初めの災害復旧、これは冬季……、ただ単に、海岸が決壊するという現象以外に、台風とか、まあ天然現象というものは、法律によってはっきり規定しております。洪水とか、地震とかなんとか規定しております。その範疇に入るものか入らないものか、その点明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/23
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024・中道峰夫
○政府委員(中道峰夫君) この二十年から三十三年にかけての災害でございまして、これは新潟については、冬季風浪が多いのでございます。その冬季風浪の災害によりまする災害復旧として考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/24
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025・田中一
○田中一君 そうすると、これは当然国庫負担法のあの率でもって仕事をやっているということですね、あの事業として仕事をやっているということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/25
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026・中道峰夫
○政府委員(中道峰夫君) 災害復旧の一つとして、それに準拠してやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/26
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027・田中一
○田中一君 冬季の風浪というもの一は、これは災害という見なし方をしているならば、風浪はなくても、地盤沈下をしておるという現象、海岸決壊しておるということは、この資料を見ても明らかなんですね。風浪による災害だけが、海岸決壊する原因だとお考えになっておるのか、あるいは激しい風浪がない時分でも、海岸は決壊しておるんだというような見方もできると思うのです。その点はどういう工合に考えておりますか。
また二十年、二十三年自後三十四年等の間には、常に冬季の高い風浪によって、この決壊を招いているのだというような考えに立っておるのか、これは年次的に説明して下さい。そうしてできるならば、二十年から三十三年までの間にどのような冬季における風浪があったかというものの資料もお出し願わなきゃならないと思うのですが、そうすると、だいぶ時間がたっちゃうので、一つ、その点はどうですか。
こういうものを出されると、災害の定義――海岸決壊というものの原因がどこにあるかということになりますと、これはもう、非常に重大な問題なんです。もし風浪という見方ならば、二十年から三十三年までの風浪の災害が、どのくらいのものがあったかということを、全部――何年の何月何日には、こんなものがきた、あんなものがきたということを、全部出して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/27
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028・中道峰夫
○政府委員(中道峰夫君) 地盤沈下の現象が激しくなりましてから、この次に書いております高潮対策費、これによりまして、海岸決壊の対策をやっておるわけでございます。
で、その災害復旧は、つまり構造物の破壊に対する復旧として計上をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/28
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029・田中一
○田中一君 建設大臣に伺いますがね。この海岸決壊並びに地盤沈下というものが、運輸省の方では、海岸決壊の面については、冬季の風浪による災害であるというような認め方をしているんです。それから――といって、この風浪が、どんなものか、資料を出してもらわぬから、わからないんですね。どの程度のものを、決壊を起こすというような力を持った風浪を、その風浪といっているのか、わからないです。だから、冬季における風浪というものが、もう常時一定の高さをもって、何月何日から何月何日までくるんだ、その高さは、こういうもので、科学的な実験の結果、これらのものを、どんどん決壊する力を持っているのかどうかというような問題の、証明する資料をお出し願いたい。それでなければ、あなたの言っている議論は、しろうとですから、納得できない。お出し願いたい。運輸省になければ、まあ建設省の資料でももらって、こっちへお出しになってもけっこうです。単に、抽象的な、冬季における風浪だ、それが原因だということだけでは、きめつけられない問題があるんじゃなかろうかと思うんです。
ことに、地盤沈下によるところの――著しい地盤沈下が起こった後は、海岸決壊というものも激しくなったということが、ここに、どこの資料かしらぬけれども、出ておりますから。――いや、そっちを聞かなきゃ、建設大臣に聞けないですよ。
そこで、じゃ、建設大臣に伺いますが、あのように、答弁してくれないんです、運輸省は。――一体、建設大臣は、こうした現象というものを、災害というものに入れようとするのか、全く自然現象でもって、当然これは宿命的に、そうなるものだからやむを得ないんだよと、それに対する災害の対策というものは国民がしなさいという態度でいるのか。もし、これが――私は地盤沈下も、災害の一つではないかと思うんです、災害の。地震という定義はございますけれども、地盤沈下という定義はない。地盤沈下を起こす原因が、地震であったという場合には、これは災害であるというきめ方を法律ではしているんですが、私は、これは不十分だと思う。その現象そのものが、原因のいかんにかかわらず、災害ではなかろうかという考え方を持っているんです。建設大臣が、それは災害であるという見方をすれば、おのずから補助率その他でもって、非常に違った形のものが起きてくるのです。
たとえば災害に対して、現在三・五・二の比率をもって復旧するのだという原則が立っている。大正十一年から今日まで、二百五十メートルも後退しているという現象は、災害という定義が完全にそれが認められるなら、二百五十メートルのところまで、できるならば、仕事を伸ばさなきゃならんことになるのです。災害という定義を、これにつけようとするならばですよ。これは単に一新潟市の問題ばかりじゃないのです。こうした態度というものが、国民の生活、社会経済の基本的な条件ということにならなければならんのですよ。それが、はなはだあいまいであるということです、ここでね。これは、あっちゃならない。これは建設大臣としては、これをどう見るかというところで、対策なり、今日国民が受けるところの国の方針なりというものがわかるわけなんです。
従って、その点について御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/29
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030・武内五郎
○武内五郎君 ちょっと関連。今、建設大臣の御答弁の前に、一応まだ私からも、建設大臣にお願い申し上げたいと思うのです。
運輸省の港湾局長の御答弁にも見られるように、実は全く明確な、私どもは、この問題についての解決点を、運輸省の答えでは得られないのです。で、私はこの前からも申し上げておりまするように、この問題は、新潟の地盤沈下ばかりでなく、東京、大阪、尼崎等に見られるように、工業用水の急激な、多量のくみ上げに、大きな原因がある。しかし私は、そればかりが原因だとは考えておりません。考えておらんが、従って、私は総合的なものの見方から、原因の探求と対策が必要でないかと考えます。
そこで、私は建設大臣にお伺いしたいことは、これはやはり、私はこの自然に対する人工の結果起きた災害であることは、これは申し上げるまでもないと思う。私が新潟の――これは有力な調査機関の長の――これは、まあ冗談のようなお話でありますけれども、人間があまり自然をいじめるから、こういうことになったと、こう言っておるのですけれども、とにかくそういうようなことから、こういう災害が起きておる。やはりこれは私は、何にしても、これはやはり災害であることは事実であると考えるのです。
しかし、先ほど申し上げまするように、この対策というものは、ガスと工業用水のくみ上げに大きな原因はあるけれども、やはりいろいろな面から、総合的な原因の探求と、その対策が必要でないかと考えるのです。
そこで、私は建設大臣にお伺いしたいことは、そうであればあるほど、総合的な対策機関というものが、政府の中に作られる必要があるのではないか。今日、地盤沈下対策委員会というのがあるようでありますけれども、私は一歩前進して、そういうような機関の設定、それに、そこから出る基本的な、抜本的な策定が必要ではないかと考えるのです。その点を建設大臣から、十分腹を伺っていきたいと考えます。それが第一。
それから第二の問題は、従って、そのそういう総合的な機関の設定のための立法措置が必要になってくるのだが、その立法措置についての用意と、また決意をお伺いしたいと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/30
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031・村上勇
○国務大臣(村上勇君) 先ほどの田中委員の、これは天災か人災かという点について、私は天災でもあるし、あるいはまた考えようによっては人災でもある。ということは、かりにある程度の波がありましても、地盤沈下によって、海岸堤跡等が非常にもろくなっている、そういう場合には、ある程度の災害の起き得ないような波であっても、その海津堤防はこわれてしまう、この場合には、人災による天災ということも考えられると思います。
そういうようなことから私どもとしては、解釈は天災だという解釈で、一応災害復旧はやっておりますけれども、しかしほんとうに、今度それではほかのところは、地盤沈下していないところの海津はどうか、堤防はこわれていないということになれば、これはやはり、そこには人災ということも考えられる、こういうことになるので、何としても、これはその原因を一刻も早く追求して、そして結論を科学的に出した上で、これに対する対策を抜本的にやらなければ、新潟市は、どこへ行ってしまうかわからなくなる。
かりにこの資料で見ますと、毎年五十センチの沈下がある。そうしますと、十年このままで放っておけば五メートル下がる、幾ら堤防をやったって、何やったって、間に合うものじゃありません。
そうなると、こんなことを私が申し上げるのはどうかと思いますけれども、その土地を放棄するか、あるいはこれを助けるか、現在から五メートルも下がった市街地を波浪から守るということは、これは私はなかなか今日から、幾ら技術が進んでも、財政的にもなかなか困難じゃないか。ガスの採取規制をやれば、三十センチしか下がらない、これもこのガスの採取規制というものも、完全じゃないはずです。かりに一日に二十万トンのガスを汲み上げるものを十万トン規制してみた、まだ十万トンは汲み上げている。でありますから、その規制しただけで、そこに二十センチの沈下が少なくなっておるということを考えると、私はこの際、ほんとうにしっかりした科学的な結論を出さなくちゃならない。その地元も業者も、また政治家も、すべての人が、何か結論の出ることをおそれているのじゃないか、こういうことでは私は、今はいいだろうが、五年七年たったら、その後には、それこそ取り返しのつかないものができる。
でありますから、何か他にその方法を求める、地盤沈下しても差しつかえのないようなところからガスを採取して、そして送風管で、そこへ送る。新潟の繁栄の大きな基本になっておるこの事業をどうするということはできないが、しかしそれくらいのことも他面考えてやらなければ、この問題は解決しない。
それから、ただいまの御質問でありますが、今企画庁の中に地盤沈下対策の審議会があるようでありますが、この審議会において、私どもは早く科学的な結論がほしいということは、私どもも念願しておるところであります。
立法措置につきましては、与党内に、これの対策特別委員会を設けて、すでに立法の準備ができておるように聞き及んでおりますが、まだいろんな関係で、提案には至っていないそうであります。私どもは、こういうただ、だれかが言うだろう、だれかがするだろうというような責任の回避とか、あるいは何かこわいものにさわるような態度を改めて、ここで、はっきりした結論を出して、そして初めて今、田中委員の御意見のような、はっきりした結論を出したい。
かように思っておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/31
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032・田中一
○田中一君 伊東君、農地局の、あなたの方の所管の農地で、相当地盤沈下が行なわれておるのです。
これは一体、三十五年度は、どういう対策を立てておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/32
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033・伊東正義
○政府委員(伊東正義君) この前、私出ておりませんので、田中先生の御質問の要旨の回答は、そこに差し上げてございますが、今、御質問のありました三十五年度を、どういうふうにしておるかという御質問でございますが、実は私の方は、応急対策を始めましたのは、三十四年からでございます。本年、来年度は二年目でございます。場所は、新潟の背後地の亀田郷というところでございまして、昔非常に湿田であったところを乾田化して、大きな栗ノ木排水道というものを作りまして、水路をつけて排水しておるという式でございます。ここにおきまして私どもは、二十三年から調査を始めております。
原因につきましては、先ほど建設省ないし運輸省から御答弁がありましたところと同じ、われわれも科学的なはっきりした因果関係が、どういうふうに出るかということを実は待っておるわけでございまして、三十四年度にやりました事業は、実は、応急対策費を予算にとっておりませんでしたので、地盤沈下の予算の中から約四千万の予算の流用をいたしまして、栗ノ木の排水機の能力が、沈下いたしました結果低下しましたので、もう一台ポンプをつけようということで、据えつけのための費用を四千万を三十四年度は流用いたしております。三十五年度には、そのポンプ据えつけと水路が非常に不等沈下の結果、こわれておりますので、水路改修ということで約一億三千万計上いたしております。そのほかに私の方としましても調査いたすべきことがありますので、千七百万円の調交費、今申し上げました一億三千万のポンプ、水路の改修費というものを予算に計上いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/33
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034・田中一
○田中一君 鉱山局長に伺いますが、今農地局長並びに建設大臣等に質疑をしておるのですが、鉱山保安法等に見られる、もしもその結論が、人災であるというようなことになると、何か特別な立法によって、その費用負担というものを持たせようという、持たせることができるという、現段階における法的な根拠はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/34
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035・福井政男
○政府委員(福井政男君) ただいまの御質問につきましては、現在鉱業法に第百九条というものがございまして、この百九条で、鉱山の損害賠償責任を規定いたしておるわけであります。ただ、この鉱業法の百九条の鉱害と申しますものが限定されておりまして、この百九条によりますと、「鉱物の掘採のための土地の掘さく、坑水、若しくは廃水の放流、捨石若しくは鉱さいのたい積又は鉱煙の排出」とこういうことによって他人に損害を与えたときには賠償責任があると、こういう規定をいたしております。この規定の字句の解釈から申しますと、現在、新潟でガスの採取をいたしておりまして、この採取に伴います水をくみ上げるということによりまして、仮に鉱害が起きたという場合に、ここに申しております「土地の掘さく」に該当するかどうかということは、法制局の見解によりましても、地下水のくみ上げが「土地の掘さく」に当たるというふうには解釈できないということになっております。と申しますのは、この鉱業法のできましたのが二十五年でございまして、二十六年の十月から鉱業法が施行されておりまして、当時この天然ガスの開発利用ということが現在のようにそれほど大規模には全然考えられていなかったというような時代でございましたので、この鉱業法では全然、天然ガスの採くつのための水のくみ上げに伴います鉱害という問題が、条文上は予定されていなかった、こういう実情でございます。しかしながら、まあ百九条の趣旨から見まして地下水をくみ上げますことが一体「土地の掘さく」に包含されると、こういうような目的論的な解釈をする余地が全然ないというふうには、これまた必ずしも言えないのじゃないかというような解釈になっております。この点につきましては、先国会の本会議におきまして、櫻井奎夫先生の御質問に対しまして法制局長官の答弁がございます。私ども今そういう法制局の見解によりましていろいろ検討いたしております。この法制局の長官の答弁の速記録をそのままちょっと読んでみます。『鉱業法第百九条の解釈の関係でございますが、御承知の通り、鉱業法第百九条は鉱業権者の無過失賠償責任を規定した規定でございます。ここで問題とされておる鉱害は「鉱物の掘採のための土地の掘さく、坑水若しくは廃水の放流、捨石若しくは鉱さいのたい積又は鉱煙の排出によって」与えた損害、こういうことになっております。新潟地区の地盤沈下がこの鉱業法第百九条の問題になるとすれば、天然ガスの採取のための地下水のくみ上げが、ここでいう鉱物の掘採のための土地の掘さくに当たるかどうかという問題だと存じますが、これはどうも文字から申せば地下水のくみ上げでございまして、土地の掘さくではございませんから、文字解釈から申せば当たらないと申すほかはないと思います。ただし、この鉱業法の第百九条の立法趣旨から考えまして、この場合における地下水のくみ上げが土地の掘さくというものに包含して解釈し得るのではなかろうか、こういう問題があるわけでございます。これについてはなお検討の余地がございますけれども、そういういわゆる条理解釈あるいは目的論的な解釈をする余地が全くないとは申せないと思っております。ただし、この点につきましては、御承知の通り、民事上の賠償責任が成立するためには、いわゆる相当因果関係、原因と結果との間に相当因果関係が立証されなければならない。相当因果関係と申しますのは、御承知と存じますけれども、こういう場合に、単に自然科学的な因果関係が立証されただけでは足りないのでございまして、特に本件のような企業責任が問題になっております場合には、結局その鉱業権者に損害の補てんを負わせることが公平であるかどうかという見地から、企業の負担能力あるいは企業の経営規模、あるいは損害発生を予見し得る可能性があったかどうか。こういう点を個々的に事情を総合的に判断して、具体的に判断すべき問題でございまして、これは一がいに簡単に総括的には申し上げられない問題であります。裁判所の従来の判例等も考えまして、具体的ケースについて判断するほかないのであります。結論を申し上げるのは多少なお検討を要すると思っております。』こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/35
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036・田中一
○田中一君 まあ林法制局長官の答弁だから法律的にはそういうわけであって、今紹介された通りだと思いますが、建設大臣に伺いますが、法律の解釈はどうあろうと、条文がどうあろうと、かかる現象がわれわれの前にあるという事実は、これはもう否定できないのです。従って、これをどうするか、これは政治の問題なんですよ。法律の問題でもなければ条文の解釈の問題でもないのですよ。現実の問題なんです。少なくとも国土の保全の任に任じているところの建設大臣、並びに海岸法による所管が港湾地区になっておるところの運輸大臣、あるいは農地の場合には農林大臣等がこれに対する対策というものを今まで等閑視され、この資料によるような著しい悪現象があるにかかわらず、これを何ら解決しようという意図がないことは、ただ単に若干の金を注ぎ込めばいいんだということでは足りないのです。まあこれは社会党のことを言ってははなはだ何ですけれども、昨年御存じのように、地盤沈下対策の要綱を出し、また法律案も提案してございます。自民党とも話し合って、十分この点はお互いに譲歩しながら、この成立を今国会に期そうじゃないかというような熱意をもって働きかけておりますけれども、何分にもあすこの日本ガス工業とか申す会社には、あなた方、あなた方と言っては語弊があるけれども、自民党の大株主もあれば重役もいるそうであります。それらがあるいはこの法律の制定というものを妨げるのじゃないかというようなひがみをさえも私は持つわけなんであります。そこで近々自民党として用意しているところの法律案というものが出るのじゃなかろうかというお話がございましたが、このような対策は当然国がすべきなんです。私は社会党、自民党だということで、これに立法権があるからといって出すべきものではなくて、当然三百余名の大政党として、過半数を持つ政党が責任を持たなければならぬと思うのです。そこでなぜ国がしないか、なぜこの現象に対する、これは世界的な現象ですよ。ことに資料が出ているように、六十年間の沈下の問題も出ておりますし、大正十一年からのものも出ております。これを等閑視していることは、これは国土保全の任にあるところの建設大臣の怠慢です。政府としてはかかる悪現象を克服して立法化する意思があるかどうか。私は人為的な災害だといって企業者に対する追及をすると同時に、これがもし天然現象であるところの災害ならば、当然これに対する対策を立て、そして地元の負担をも軽からしめてやるべきだと思うのです。しかし、それがそういう熱意並びにそういう対策を立てない以上は、政党がこの現象を是正するための法律を出すことは当然でありまして、一体自民党はいつそういう法律案を出そうとしているのか、これはあなた衆議院議員村上さんに聞くのだけれども。もう一つは大臣としては、なぜ国がしないかという二つの点について明確な態度を表明していただきたいと思うのです。これは単に新潟市、大阪とか、兵庫とかいう問題じゃございません。全国的に日本の地形というものがこれを生む宿命を持っているのです。従ってこれに対する抜本的な対策を立てるのが当然の義務でございます。御見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/36
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037・村上勇
○国務大臣(村上勇君) 何か日本何とかいう会社があるそうですが、私はよく知りませんし、そういうことによってこの大きな問題が左右されておるとは考えられません。ただ田中委員の今のお話の中に、全部がこれ建設大臣の責任にあるような御意見ですが、あれば私は即刻これは処理してしまいます。ただしかし私がこういう考えを持っておっても、港湾は運輸大臣、ガスの規制は通産大臣というように、それぞれその責任者がきまっておりまして、国土全体からいえば、私としては私なりの意見を言って、これからやらなければならぬし、私はまあ一衆議院議員としてという御意見もありましたが、私は一昨年新潟に何でもないときに参りまして、二、三度あの新潟の地盤沈下の現況というものを見てきました。私はもう今やれ調査とか何とかいっている間はないじゃないか、早くどっか幾ら地盤沈下しても差しつかえないような所で幾らでもガスは出るはずだ、そこに一つ大きなガスの採取所を作って、それから新潟市内に引っ張り込むようにしたらどうだ、そのために何十億かかったってやむを得ないじゃないか、業者も出そうし、また国も幾らかでも、地元も繁栄になるのだから幾らかでも何とかして、そしてやらなければ、新潟どこへ行くかわからなくなるじゃないかというようなことを、科学者じゃありませんが、しろうとでもあそこへ行ってあの現状を見れば大体想像ができるので、しろうと意見をそういうように申したのであります。その後自民党内にこの対策の特別委員会ができた。馬場元治君が委員長で昨年来十分慎重に検討いたしておりまして、その結果の立法措置が最近できたということです。それに対して今では企画庁がそれを基礎にしてこの国会に地盤沈下対策の立法措置をする、そして何とか早くその結論を出したいというようなことを聞いております。私が全部これ責任もってやっていいというのだったら、私はたちどころに、大体常識的にわかるのですから、こういうことにすべきだという結論は出しますが、建設省としては下水のこわれたのを直す程度のまことに責任が――責任は私は持っておりますけれども、まあ下水の修繕というようなところになっておるようでありますから、あまり一人で飛び出していくわけにもいかないというような状態でありますが、国務大臣という立場から、私はあくまでも企画庁あるいは関係各省の責任者と相談いたしまして、これらについての私の意見も申し述べ、すみやかに立法措置によるこの対策が講じられるように努力いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/37
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038・田中一
○田中一君 問題はそこなんです。この海岸法が実施されてから数年になりますけれども、今あなたが自分で反省しているように、各省の共管になっているために海岸保全という事業が進まないんですよ。海岸を悪い条件、悪い条件に持ってゆくのが今のあなた方関係閣僚の態度なんです。先ほど伊東君は私の質問に答えて、文書で十分に打ち合わせながらやっております、と言っておりますが、やっておらない。また建設大臣は自分一人じゃできないということを言っている。私はあなたがイニシアチブをとって、そうしてやるようにすることが望ましいんですけれども、このように海岸法の施行ということは三省ともに熱意をもって仕事をしようという気がまえに立っておらないんです。こういう質問をするのも、今言う一貫性というものが欠けているからいけないと言っているんです。建設大臣は正直だから率直に、それを一貫性が欠けておりますというような答弁のように伺ったんで、そこに追い込むのが僕の目的だったんです、最初から。実際よくありません。ことにまあ国策とは存じますけれども、一企業会社に野放図もなく鉱業法の裏づけもないような行為を容認している。そうしてそのガスの採取の規制すら命令でなくして、自発的な自粛の形で進めているなんという通産大臣の態度は全く不可解でございます。私の言いたいのはそこなんです。一貫性が全然ないということを建設大臣は正直に言っている。これがいけないと言うんです。そんなことでは今度海岸の保全、海岸の復旧を直轄工事にしようが、何にしようが同じことです。同じようになわ張りがあって、セクトがあって完全なものができないということがわれわれ想像されるんです。であってはならないというのが、まあ長い時間かけて私がこうして質疑するもとなんです。伊東君の出している――農林省が出しているがこの答弁書というものも上っつらの公式論です。あなたが言わなくたって法律に書いてあるんです、ちゃんと。実際はどうかということを聞いているんです。建設大臣の正直さは買います。しかし全く運輸大臣なり農林大臣なりは三人一本になって、日本の国土保全並びに国民生活の安定をはからなければならないんです。今これに対する対策というものを立てようという考え方があるならば、この国会に自民党、社会党の案を三省の大臣が取り上げて、よりよい法律案を作りなさい。建設大臣は運輸大臣並びに農林大臣に対して、そのような話し合いを即刻するという用意があるかどうか、一つここで明らかにしてほしいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/38
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039・村上勇
○国務大臣(村上勇君) これはほんとうはもう私だけでなくて、この委員会に関係大臣を呼んでいただいて、そうして今のような審議をしていただいた方がもっと手っとり早く結論が出ると思います。しかし私一人でもこうして……田中委員の御高見は、私どもがもう何年も前から考えておったことですから、私も私なりにとにかく各関係閣僚とも相談して、そうしてこの地盤沈下の基本的な対策をとるような立法措置を急ぐように努力いたします。しかし機会がありましたら、私は十分わかり過ぎておりますから、他の閣僚もわかっておると思いますが、よく一つわかっておっても、ついどうも一日おくれ二日おくれということになってくるものです。ところが一方、沈下の方は一日も待たないで沈下していくということでありますから、われわれ十分これに対する対策をあれして参りたいと思いますので、また、こういう公式でなくても、何らかの機会に御意見を関係方面にお聞かせ願えれば非常に私はけっこうだと思います。が、お聞かせ願えなくても、もう十分承知して、非常に各関係方面では急いでおるようでございますから、この点一つ御安心願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/39
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040・田中一
○田中一君 では、私はきょうこれを採決しろという考え方に立っておるのですが、当然自分の所管の法律案が採決の場合には、その所管大臣が立ち会う慣習に当委員会においてはなっております。委員長においても、農林大臣、運輸大臣を直ちにここへお呼び願って採決をしようと思いますから、そういうことでお取り計らい願います。もし、それができなければ、これまた、今までのわれわれのよい慣習がございますから、慣習を守る意味において、次回に採決を譲らざるを得ないと思いますので、一つ委員長の善処をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/40
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041・岩沢忠恭
○委員長(岩沢忠恭君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/41
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042・岩沢忠恭
○委員長(岩沢忠恭君) 速記を始めて。
それでは、先ほど田中委員からの申し出になりました運輸大臣並びに農林大臣の出席は、都合が悪いそうですから、建設大臣の出席によってこれを採決に持っていきたいと思います。
ほかに御質疑がないようでございますから、これから討論に入りたいと思います。
御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/42
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043・田上松衞
○田上松衞君 さっき冗談の中で、民主社会党の顔も立ててくれればと言っておるのですが、それは希望なんですが、それを前提として原案に賛成いたします。
くどいようですけれども、賛成する理由を申し上げておきますが、私は、島の国であって、しかも、海の国である、この日本の国土の保全を最も重要視されなければならぬ施策が海岸保全施設であると、このことはもう何人だって異論があるはずはございません。ところが政府がたとえば国家予算の関係からといっても、法案の中にありまするところのその規模が著しく大なるものに限ってだけの新設または改良工事のみを、今まで建設大臣が海岸管理者にかわって施行していた。この程度の海岸法であったことのために、極言するならば伊勢湾台風のような天の大きなしかも惨酷な警鐘が鳴らされたのだ、そう実は感ずるわけです。そこでそういう観点から、従来の都道府県知事等の海岸管理者に、もっぱらゆだねてあったところのこの災害復旧工事を、当該管理者にかわって主務大臣がみずから新設、改良とともにやっていこうとするのが今度のねらいであるわけですから、そこで前段申し上げましたように、これについては反対するどころか、むしろおそきに失しておるとまで、実は痛感するわけです。ただしかしこれを検討してみますると、この改正法を適用する当面の対象地域というものが、伊勢湾を中心とする、二、三の府県だけに限っておるというところに、その消極的な面について私は少し不満足である。こういうふうに考えてるわけです。そこでこの際、この場合民主社会党を代表して申し上げるわけですが、今度のこの改正法案がより広範により強力にその目的とするところを達成できるように、格段の努力を願いたいということなのです。考えてみますると、だれだってこんなことはわかり切っておるけれども、しかし今までのことはとかく、もろもろの法律の範囲で施策しなかったので、できなかったのだということに尽きるだろうと思うのですが、私は今、田中さん等のいろいろな質疑応答の中で感じておったことは全く同感なんです。どだい国土の保全と国民の生命を主とするところの生活の安定といいますか、こういうものに影響するところの法律が、これらに反するような場合は、勇敢にどんどんこれを改正していくべきだ。その努力が望ましいと実は考えるわけなんです。この問題に関する限りの難点はこれはもう費用の一点だけだと思うわけです。そこで具体的に希望を申し上げるならば、今後なるべく早くこれらの仕争の裏づけとなるところの費用に関しまして、十分一つ努力をされたい。国の予算獲得については言うまでもないことですが、一面、当該海岸管理者いわゆる地方自治体、これらの財政的な能力程度等についても、特にその中の負担率等の問題について、一そうの今後御配慮と再検討をされて、十分この法律が万全な活用ができるように希望を申し上げたい。その希望を付しまして、当初申し上げた通りに原案に賛成しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/43
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044・岩沢忠恭
○委員長(岩沢忠恭君) ほかに御発言もなければ討論は終局したものと認め、これから本法案の採決を行ないます。
海岸法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。
本案を原案通り可決することに賛成の方は挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/44
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045・岩沢忠恭
○委員長(岩沢忠恭君) 全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書につきましては委員長に御一任を願います。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/45
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046・岩沢忠恭
○委員長(岩沢忠恭君) 次に、住宅地区改良法案、公営住宅法の一部を改正する法律案の両法案を議題といたします。
まず、住宅地区改良法案について逐条説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/46
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047・稗田治
○政府委員(稗田治君) ただいま議題となりました住宅地区改良法案につきまして逐条説明を申し上げます。
第一条は、この法律の目的を定めたものでございます。不良住宅が密集する地区について、その劣悪な環境を除去し、健全な住宅地区に形成することによってその環境の整備改善をはかり、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅の集団的建設を促進することを目的とし、その目的を達成するため住宅地区改良事業の遂行上必要な規定を定めることとしていたしております。
第二条は、この法律において用いている特別の用語の定義を掲げてございます。
第一項は、「住宅地区改良事業」について定めてございます、住宅地区改良事業は改良地区の整備に関する事業及び改良住宅の建設に関する事業とからなり、建設大臣が指定した改良地区内の不良住宅の除却、改良地区を健全な住宅地区に形成するため必要な土地の整備(土地の区画形質の変更、整地等)及びこれらの事業によって住宅を失うこととなる者を入居させる改良住宅の建設を内容といたしております。
第三項は「改良地区」について定めてございます。改良地区とは住宅地区改良事業によりその環境の整備改善をはかろうとする土地の区域であり、不良住宅が密集して、保安、衛生等に関し危険または有害な状況にある一団地で建設大臣が指定したものでございます。
第四項及び第五項は「不良住宅」について定めてございます。不良住宅とは、人が居住する建築物(共同住宅の場合にはその住戸)でその構造又設備が著しく不良であるため、住宅として用いることが著しく不適当なものであります。その判定は政令で定める詳細な客観的基準によって行なうことといたしております。
第六項は「改良住宅」について定めてございます。住宅地区改良事業の施行者は、改良地区の指定の日に、その地区内に居住する者で、事業の施行に伴って住宅を失うこととなり、そのため住宅に困窮するであろうと認められるものの世帯数だけの住宅を建設する義務を負っているのでありますが、その建設される住宅を改良住宅と名づけているのでございます。
第七項の地区施設と申しますのは、改良地区内の土地の整備を行なった後に、集団的に建設される住宅の居住者の共同の福祉または生活上の共同の利便のために、必要であると認められる施設でございます。第八項の公共施設と同様政令で列挙することといたしております。
第三条は住宅地区改良事業の施行者について定めてございます。住宅地区改良事業は住民の安全、健康及び福祉の保持を目的とするものであること、改良住宅を長期にわたって低額の家賃で提供する必要があること等の理由から地方公共団体が行なうものとし、原則的には市町村が、市町村が行なうことが財政的に困難である場合等には都道府県が施行するものとしたのでございます。
第四条は改良地区の指定の要件及びその手続について定めてございます。
第一項は、建設大臣が改良地区として指定することができる土地の具備すべき条件を定めたものでございます。住宅地区改良事業の事業計画を定めるためには建設すべき改良住宅の戸数を確定する必要がありますので、事業計画の認可に先だって、あらかじめ改良地区の指定を行なうことといたしたのでございます。
第三項で都市計画区域内の土地につきましては、改良地区指定の際都市計画審議会の議を経ることといたしましたのは、住宅地区改良事業を行なうべき区域と他の都市計画との調整をはかるためでございます。
第五条は住宅地区改良事業の事業計画の認可について定めております。住宅地区改良事業の事業計画につきましては、関係権利者の保護、技術的な設計能力の補充の必要から建設大臣の認可を必要とすることといたしました。
第六条は事業計画で定めるべき内容及びその準拠すべき原則を定めてございます。
事業計画は改良地区内の土地の利用に関する基本計画及び住宅地区改良事業の実施計画とからなっております。改良地区内の土地の利用に関する基本計画は、改良地区内の土地について整備を行なった後の住宅、地区施設等の用に供する土地の配置について定めるものであります。実施計画と別個にこれを定めることといたしましたのは、整備完了後の土地に建設される改良住宅以外の住宅、地区施設等は、施行者以外の者が設置することとしているためであります。
第四項は住宅地区改良事業の目的を具体化した条文であります。改良地区の環境の整備改善は単に不良住宅の除却を行ならのみでは目的を達することができず、これを健全な住宅地区に形成することが必要であるためであります。
第六項は、改良地区内の土地の利用に関する基本計画を定めない例外的な場合について定めたものであります。土地の利用に関する基本計画は、第四項の規定により改良地区を健全な住宅地区に形成するように定めなければなりませんが、公共施設に関する都市計画が決定されているとか、建築基準法による工業専用地区の指定がされていて住宅を建設することができない場合等には、これを住宅地区とすることはできませんので、土地の利用に関する計画は作成しないことといたしております。
第七項は土地の利用に関する基準計画で、住宅の用に供すべき土地と定められたものには、改良住宅、公営住宅、日本住宅公団法の規定による住宅等の公共的性格を有する住宅を建設すべきことを定めております。改良地区内の土地を整備するためには土地の収用も認めることとしておりますので、限定するのが適当であると考えられるからであります。
第七条は、施行者が事業計画を定める際に、それに関係のある地方公共団体、行政機関等と協議すべきことを定めたものであります。公共施設及び地区施設につきましては、法令上その設置について制約がある等、十分調整をとっておく必要があるので、あらかじめ関係のある管理者、行政機関との間で協議を行ない、改良地区内で住宅の建設を行なおらとする者につきましては、整備完了後の建設計画等についてあらかじめ十分な打ち合わせを行なうことによって、住宅地区改良事業の円滑な施行を確保する趣旨のものでございます。
第八条は事業計画の認可があった場合の公示方法について定めてございます。
第九条は、事業計画の認可後の改良地区内における建築制限について定めたものであります。住宅地区改良事業の円滑な施行を確保するため、おおむね土地区画整理法の規定と同様に、事業計画の認可後、改良地区内においては、住宅地区改良事業の施行の障害となるおそれのある土地の形質の変更、建築物、工作物の新築等は都道府県知事の許可を受けないで行なうことはできないことといたしております。第四項以下の規定は建築制限に違反した行為に対する是正措置及びその手続等について定めてございます。
第十条は、改良地区内の不良住宅は、すべて除却しなければならないことを定めてございます。改良地区の環境を整備改善するためには、地区内に不良住宅が存在しないようにする必要がありますが、その際これを取りこわさず単に地区外に移転させるとすれば、移転先で再び劣悪な環境の地区を形成することとなるので、施行者に取りこわしの義務を課したものであります。
第十一条は、不良住宅を除却するために必要な手段として、不良住宅の収用及び明け渡し命令について定めてございます。不良住宅を取りこわすためには、まず不良住宅の所有者との話し合いによってこれを取得する必要があるわけでありますが、話合いがつかない場合には住宅地区改良事業の目的を達成するため、施行者が不良住宅を収用することができることを規定してあります。
第二項は、施行者との話し合いによってすでに補償金の支払いを受けたにもかかわらず、これを施行者に明け渡さない者に対して、明渡し命令を出す権限を施行者に与えたものであります。これは本来民事訴訟手続によって明け渡しの義務の履行を強制することができるわけでありますが、実際上相当の期間を必要とし、そのために事業の施行が延引することとなれば、すでに住宅を除却された地区内の他の居住者が改良住宅に入居する時期がおくれる、といった不都合が生じることとなりますので、行政的な手段が必要であると考えられるからでございます。
第十二条は、改良地区内の土地を健全な住宅地区に形成するために、必要な土地の整備について定めてございます。改良地区内の土地の利用に関する基本計画で定められた用途に従い、必要な土地の区画、形質の変更、整地等を行なうことによって、改良地区は健全な住宅地区となり、その環境の整備改善の目的が達成できるわけでございます。ここで土地の形質の変更と申しますのは、低湿地のかさ上げ、崩壊防止のための擁壁の設置等を考えております。
第十三条は、土地の整備のために必要な土地の収用及び建築物の移転命令等について定めてございます。土地の整備のためにはその土地を取御する必要がございますが、話し合いによって取得できない場合には、第十一条で御説明申し上げましたのと同様の趣旨で、これを収用してその所有権を取得し、又は土地収用法第五条第一項各号に掲げております地上権、賃借権等の土地に関する権利を収用して、これらの権利を消滅させることができることといたしてございます。
第二項の規定は、第十一条第二項と同様の趣旨の規定でありまして、すでに物件の移転について施行者と話合がつき、補償金の支払いも完了しているにもかかわらずその義務を履行しない物件の所有者に対してその物件の移転を命ずることができることとしたものであります。この場合所有者が移転するのを容易にするために物件の占有者に対して、物件をその所有者に引き渡すべきことを命ずることができることといたしてございます。不良住宅は除却いたしますので、移転命令の対象とはいたしません。
第十四条は、改良住宅に入居させるべき者を一時収容するため必要な施設の設置について定めております。住宅地区改良事業により住宅を除却する際に改良住宅の建設が間に合わず、居住する場所がない場合等必要があるときは、一時的に居住する場所を提供することを施行者の義務といたしました。
第十五条は、前条の一時収容施設、その他事業施行上欠くことのできない施設の設置のため必要な土地の使用等について定めてございます。
第十六条は、この法律の規定による収用または使用の手続、効果等については土地収用法の規定が適用されることを定めてございます。
第十七条は改良住宅の建設の義務について定めてございます。
第一項は改良地区の指定の日におきまして、改良地区内に居住する者で、住宅地区改良事業により住宅を失えば、住宅に困窮することになるであろうと認められる世帯数を調査し、その世帯数に見合うだけの戸数の住宅を建設しなければならないことと規定してあります。世帯数といたしましたのは一戸に一世帯を居住させることが本来的であると考えたためであります。
第二項では前項の戸数の増減について定めてございます。地区外に転居する者があったり、地区指定当時には住宅に困窮していなかったが、後に困窮することとなった者があるときには、建設戸数を増減する必要がありますので、これについて規定を設けました。
第三項は改良住宅の建設場所について定めております。改良地区内に住宅を建設することが法令の規定によって禁止されまたは著しく不適当である場合、改良地区の面積が小さいために建設すべき全戸数を収容しきれない場合等の、特別の事情がある場合を除いて改良地区内に建設すべきものといたしました。
第四項は、改良住宅の構造は原則として耐火構造または簡易耐火構造とすべきことを定めております。これは改良住宅が集団的に建設され、また市街地に存在することが多いため防災上の見地から必要であり、また土地を合理的に利用する面からも適当であると考えたためであります。
第十八条は改良住宅に入居させるべき者について定めてございます。三号にわたってあげておりますが、まず第一号のイは改良地区の指定の口から、事業により住宅を失うまで引き続いて地区内に居住していた者を掲げております。ただしこの中で地区指定の当時ある世帯に属していたが、その後結婚その他の理由で独立して別世帯を構成するに至った者は、地区指定後に地区内に転入してきた者と同一の取り扱いをすることといたしてございます。これが口に掲げている者でございます。これらの者をすべて入居させることは実情に合致いたしませんので施行者の承認したもののみに限定することとしております。ハに掲げるものは地区指定後に結婚その他の理由でイ又は口に掲げる者と同一世帯に属することとなった者でございます。第二号は、改良地区の指定のHから災害によって住宅を失うまで引き続いて地区内に居住していた者であります。第三号は第一号または第二号に掲げる者と改良住宅入居当時同一世帯に属しているものであります。以上申し上げました者のうち改良住宅に入居を希望し、かつ住宅に困窮していると認められる者を施行者は改良住宅に入居させなければならないわけでございます。
第十九条は、改良地区内の土地について整備を完了した後は、施行者はみずから改良住宅を建設する土地以外のものを事業計画に従って、公共施設の管理者等に引き渡すべきことを定めてございます。
第一節、測量及び調査の第二十条は、住宅地区改良事業の施行の準備またはその施行にあたって、測量または調査のため他人の占有する土地への立ち入り権及びその手続等について定めてございます。土地区画整理決にほぼ同一の規定がございます。
第二十一条は、測量または調査を行なうにあたって、必要な障害物の伐除及び試掘等を行なうには、市町村長等の許可を要することを定めてございます。
第二十二条は、他人の占有する土地に立ち入る場合に携帯すべき身分証明書等について定めてございます。
第二十三条は、測量及び調査に必要な立ち入り、障害物の伐除等に伴う損失の補償について慰めてございます。
第二十四条は測量標識を設置する権限について定めてございます。
第四節、費用の負担及び補助の第二十五条は、住宅地区改良事業の施行に要する費用は施行者が負担するのが原則であることを定めてございます。
第二十六条は不良住宅の除却に伴う受益者負担について定めてございます。改良地区が建築基準法の専用地区内にあるような場合には、土地の整備に関する事業は行わず、従って施行者が土地を取得することもないわけでありますが、不良住宅の除却だけは行ないますため、その不良住宅の存在する土地の所有者が、これによって著しく利益を受ける場合がありますので、公平の見地から受益者負担金を徴収することができることといたしました。
第二十七条は事業の施行に要する費用に関する国の補助について定めてございます。不良住宅の買収及び除却に要する費用の二分の一以内、及び改良住宅の建設用地の取得及び宅地の造成する費用及び建築に要する費用の三分の二以内を補助することができることと規定してあります。これは住宅地区改良事業を促進し、改良住宅の家賃を第二種公営住宅程度の低額のものとする趣旨から定めたものでございます。
第二十八条は、住宅地区改良事業の促進をはかるため、都道府県も市町村に対して補助することができることを定めてございます。
第二十九条は、第二十七条の規定により国の補助を受けて建設された改良住宅の管理及び処分については、公営住宅法による第二種公営住宅に準じて行なうことと定めてございます。
第五節、補則の第三十条は、施行者が事業計画に関する図書を利害関係人に閲覧させる義務を負うことを定めてございます。
第三十一条は、施行者が書類の送付にかえて公示送達を行なうことができることを定めてございます。
第三十二条は、国及び地方公共団体が協力して住宅地区改良事業の円滑な施行をはかる趣旨で、技術的援助を請求することができることを定めてございます。
第三章、雑則の第三十三条は、住宅地区改良事業の適正な施行を確保するために、必要な建設大臣の監督処分権限について慰めてございます。
第三十四条は、住宅地区改良事業の施行の促進または改良住宅の適正な管理処分を確保するため必要な、建設大臣または都道府県知事の報告の聴取、勧告等について定めてございます。
範二十五条は、建設制限に違反した建築物等の移転命令、不良住宅の明け渡し命令等に対する異議の申し立て及び訴願について定めてございます。
第三十六条は、改良地区の指定、事業計画の認可等についてあらかじめ厚生大臣と協議すべきことを定めてございます。
次に第四章は罰則について定めてございます。
附則の第一項は、この法律の施行の日、第二項は不良住宅地区改良法の廃止について定めてございます。
第三項の登録税法の一部改正は、住宅改良事業の施行のために施行者が行ないます土地、建物の権利の取得の登記等について登録税を課さないことを定めてございます。
第四項の建設省設置法の一部改正は、建設本省の不良住宅地区改良に関する事務を住宅地区改良法の施行に関する事務と改めたものであります。
第五項の国有財産特別措置法の一部改正は、地方公共団体等が国から貸付を受けて住民を居住させている建築物等を住宅地区改良事業によって取りこわし、改良住宅を建設する場合には、国は、その建築物を譲与し、またはその敷地を改良住宅の標準建築費のうち用地費相当額で、施行者に譲渡することができることとしたものであります。
第六項の租税特別設置法の一部改正は、土地収用法等による収用の場合の譲渡所得に対する所得税の賦課の特例等を、住宅地区改良法による収用についても認めようとするものであります。以上でこの法律案の逐条ごとの説明を終わりますが、十分御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/47
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048・岩沢忠恭
○委員長(岩沢忠恭君) 次に公営住宅法の一部を改正する法律案の補足説明を、一つ簡単にお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/48
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049・稗田治
○政府委員(稗田治君) 公営住宅法の一部改正法律案につきまして、補足して御説明申し上げます。
異常な天然現象のうち、地震、台風等については、一般にその被害が相当広範にわたるので、現行法の基準、すなわち「滅失した戸数が被災地全域で五百戸以上又は一市町村の区域内の住宅戸数の一割以上」、この基準がおおむね妥当であると考えられます。ところが、異常な天然現象のうち集中豪雨のように、その被害が局地的に集中するものが最近ときどき見られるのでありますが、この場合においては、滅失した住宅の戸数が相当に大きくても、その被害が局所的小範囲に限られるので、法定の基準に該当しないことがありますし、また将来においてもそういう場合が予想されるので、火災の場合との均衡をも考慮し、異常な天然現象により滅失した住宅の戸数が、一市町村の「区域内で二百戸以上」である場合を新たに災害の基準に加えた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/49
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050・岩沢忠恭
○委員長(岩沢忠恭君) 両案についての本日の審査はこの程度にとどめまして、本日はこれで散会いたします。
午後零時三十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414149X01219600315/50
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