1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年三月二十九日(火曜日)
午前十時五十一分開会
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委員の異動
本日委員石谷憲男君、青田源太郎君、
北村暢君、山本伊三郎君、久保等君及
び田畑金光君辞任につき、その補欠と
して山本杉君、紅露みつ君、藤原道子
君、秋山長造君、江田三郎君及び村尾
重雄君を議長において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 加藤 武徳君
理事
高野 一夫君
吉武 恵市君
坂本 昭君
藤田藤太郎君
委員
勝俣 稔君
谷口弥三郎君
徳永 正利君
小柳 勇君
藤原 道子君
片岡 文重君
村尾 重雄君
政府委員
厚生省社会局長 高田 正巳君
厚生省児童局長 大山 正君
労働政務次官 赤沢 正道君
労働省職業安定
局長 堀 秀夫君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
法制局側
第 三 部 長 中原 武夫君
説明員
警察庁保安局防
犯課長 町田 充君
文部省初等中等
教育局特殊教育
主任官 辻村 泰男君
厚生省公衆衛生
局精神衛生課長 長友 浪男君
厚生省医務局医
事課長 江間 時彦君
労働省労働基準
局監督課長 上原誠之輔君
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本日の会議に付した案件
○優生保護法の一部を改正する法律案
(谷口弥三郎君外一名発議)
○精神薄弱者福祉法案(内閣送付、予
備審査)
○身体障害者雇用促進法案(内閣送
付、予備審査)
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001・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) ただいまから委員会を開きます。
まず、委員の異動を報告いたします。三月二十九日付をもって北村暢君、山本伊三郎君、石谷憲男君、青田源太郎君及び田畑金光君が辞任し、その補欠として、藤原道子君、秋山長造君、山本杉君、紅露みつ君及び村尾重雄君が選任されました。
右報告いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/1
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002・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) それでは法案の審議に入ります。まず、優生保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
御承知の、谷口参議院議員、勝俣参議院議員の発議でありまして、発議者から提案理由の説明を聴取いたしたいと、かように考えます。発議者の提案理由の説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/2
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003・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 ただいま議題となりました優生保護法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。
まず第一点といたしまして、現行優生保護法におきましては、都道府県優生保護審査会の決定に基づく優生手術に関する費用につきまして直接国庫が支出することとなっておりましたが、優生手術の実施及びその支払い事務等が円滑に行なわれるようにするため、この費用を都道府県が支弁することとし、国庫はその費用を負担することといたしました。
改正第二点といたしましては、都道府県知事の指定を受けて受胎調節の実地指導を行なう者は、受胎調節のための医薬品で厚生大臣の指定するものを販売することができることとなっておるのでありますが、この販売できる期間が昭和三十五年七月三十一日をもって切れることとなっております。そこで、この期間を受胎調節の実地指導の実情にかんがみましてさらに五ヵ年間延長することといたしました。以上がこの法律案提案の理由及び概要であります。
何とぞ慎重に御審議の上、御賛同あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/3
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004・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) ただいま提案理由の説明のございました優生保護法の一部を改正する法律案を審議いたしたいと思います。御質疑のおありの方は御発言を願います。
ただいま発議者両参議院議員のほかに、政府から尾村公衆衛生局長が出席いたしまするところ、出張不在のようでございまして、説明員として、長友精神衛生課長が出席をいたしております。質疑のある方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/4
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005・坂本昭
○坂本昭君 従来まで直接国庫の支出しておりました予算の金額、大体どの程度であるか、御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/5
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006・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) なお報告を漏らしましたが、厚生省からは、ただいま申しました所管の課長である長友精神衛生課長のほかに高田社会局長、大山児童局長たちが出席をいたしております。児童局にも関係があるようでございますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/6
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007・長友浪男
○説明員(長友浪男君) 御説明申し上げます。三十四年度、本年度の優生手術費交付金は千三百六万六千円でございます。なお、現在御審議中の三十五年度の計上額は千百六十六万四千円でございます。
先ほど申し上げました本年度の千三百六万円につきましては、対象人員は、現在三十四年度でございますので、まだ締め切っておりませんが、現在千件を突破しておりますが、三十五年度の千百六十六万四千円に対する対象人員は、千二百二十九名といたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/7
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008・坂本昭
○坂本昭君 そうしますと、これは対象人員となっていますが、優生手術の件数からいきますとどういう数になりますか。それからまた、単価が幾らになるか、並びにその優生手術がここ最近数年間、手術件数がどういうふうな経緯を伴って変化しているか、御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/8
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009・長友浪男
○説明員(長友浪男君) 御説明申し上げます。現在優生手術は、実施は二つに区分されております。一つは本日御審議いただきます対象になっております遺伝性疾患の場合に、医師がそれを診断いたしますと、審査会等の審査を経ましてあとで手術をするもの、それに対しまして国庫が義務費として全額負担しておるわけでございますが、その件数はただいま申し上げました三十五年度に見合う件数といたしまして、三十三年度の実績は千八十一名でございますが、医師の申請によるものは年度繰り越し等のため、最終的には千二百二十九名となります。三十四年度はまだ締め切っておりません。それからそのほかに当事者の同意による手術、審査を経ないで、当事者の同意による手術がございますが、これは三十三年度の実績は四万九百四件、こういうことになっております。従いまして、三十三年度はその両方合わせますと約四万二千件ということでございます。
それから推移でございますが、国が交付いたしております金額の対象になっております件数を申し上げますと、三十一年が千二百八件、三十二年が千二十九件、三十三年度は先ほど申しました千二百二十九件でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/9
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010・坂本昭
○坂本昭君 手術の単価……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/10
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011・長友浪男
○説明員(長友浪男君) 単価は、三十五年度要求金額について申し上げますと、男子と女子に分けておりまして、男子の対象件数は五百件、女子の対象件数は七百二十九件、これはただいままでの実績によってこのように分けております。男子一人につきましては、内容は手術料、入院料、注射料、処置料というふうに分けておりますが、合計いたしまして、三百五十三・三点、こういうことになります。点数でございまして、三百五十三・三点でございます。これは一点十円でございますので、これをかけますと三千五百三十三円でございます。女子の方はただいまのと同じような点数計算いたしておりますが、高くなっておりまして、九千九百二円でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/11
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012・坂本昭
○坂本昭君 今のは全部乙表で計算しているということなんですね。実際は、病院で手術する場合は、甲表の場合もあるし、今の予算単価にもう少し変化があるのじゃないかと思いますが、非常にこまかいことを聞いて恐縮ですけれども、その前に、本人の同意が四万件あるとか言っておられたでしょう。その本人の同意四万件と遺伝性のものと両方合わせて四万二千何がしということでしたが、本人の同意がひどく数が多いのですが、このうちどれくらい手術したのですか。もう少しその辺説明していただきたい。あわせて、甲表、乙表の予算の組み方ももう一ぺん説明して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/12
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013・長友浪男
○説明員(長友浪男君) ただいま申し上げました両方合わせて四万一千九百八十五件と申しますのは、優生手術が実際あった件数でございます。これは、申請がありました場合に、法律の第四条によりますものは、審査会によって適否がきめられまして、もしそれに不服の場合には、さらに中央の、審査会に提訴する仕組みになっております。その分につきましては、いずれもただいまのところ、すべて手術が実施されておりますけれども、同意によりますものは、一応医師が診断いたしましても、いろいろな事情で受けない場合があるというのがございますけれども、これは私どもの方には連絡がございませんので、数字はつかまえておりません。ただ、実施されましたものにつきましては、ただいま申しましたように連絡がございますので、その実績を申し上げました。
それから点数につきましては、御指摘の通りでございますが、そういうふうに今までもずっと予算計上はそういう積算をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/13
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014・坂本昭
○坂本昭君 そうすると、私もこの法律についてこまかいことを承知してなかったので、いささか愚問を呈することになるかもしれませんが、本人の同意の場合がかなりあるけれども、その中で実際に保護法によって国庫が支出をする件数というのはずっと少なくなってくるということに相なるわけですね。そしてその少なくなった結果、三十四年度は一千三百六万円というものが決定されたと思いますが、実際は何といいますか、予算がもっと必要であったということじゃないのですか。今の保護法の対象は、もっと予算を組めばもっと多くの人がこの法律によって国の負担を受けられる。にもかかわらず、予算が少ないために個人負担をしなければならなかったというような結果が比較的多いのじゃないですか。その辺の数を一つ説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/14
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015・長友浪男
○説明員(長友浪男君) 御説明申し上げます。これは、この費用は交付金になっておりまして、全額国の義務費、いわゆる義務費になっておりますので、昨年の予算額が足りませんでも、翌年でそれを補正する、埋め合わせするということはできますものですから、件数を予算によって押えるということは全然ございません。県の支出しましたものについて予算が足りませんものについては、翌年度処置するというふうになっております。
なお、優生保護法の中に、第四条と第十二条がございまして、四条が審査を要件とする優生手術の申請ということで、医師が別表に——簡単に申し上げますと、遺伝性の精神疾患にかかっている場合という限定がございますが、そういう場合、そういう疾患にかかっているということを確認しました場合に、さらに優生手術を行なうことが公益上必要であるという判定のもとに審査会に申請するというように、非常に厳重になっております。その分につきまして国が全額手術料その他を交付するという建前になっております。従いまして、これにつきましては、予算額が少ないからということはあり得ない。かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/15
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016・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 ただいまの説明で、すでにおわかりのことと思いますけれども、私から一言申し上げたいと思います。実は、審査による優生手術は、御承知のように、遺伝性の精神病でございますとか、あるいは遺伝性の精神病質とかというような遺伝の顕著な精神病あるいは奇形というのを別表としてあげておるのでございます。それを、もしも社会的に見て非常にかわいそうな人とか何とかというのを見出すと、届け出てから審査をするようになっております。従って、この件数は非常に少ないのです。私どもは、この件数は多い方がいいと思いますけれども、実際に精神病をずっと家系検査とか、家庭の検査ということをやりますために、なかなか数が出てきませんので、今大体毎年千件ぐらい。それから一方の方の医師の認定による優生手術と申しますのは、優生保護法の第三条に掲げてございますように、五つほどの項目をあげまして、その項目に該当する者について優生手術をやっておるのであります。これは、その患者あるいは配偶者などの同意を得て手術をする。従って、件数が非常に多くなって四十倍近くもなっておるような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/16
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017・坂本昭
○坂本昭君 もう一点伺いたいのですが、改正の第二点の「都道府県知事の指定を受けて受胎調節の実地指導を行なう者」とありますが、この実地指導を行なう者はどういう人が今含まれておりますか。御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/17
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018・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 受胎調節の実地指導をやってもらう者は、助産婦、それから保健婦、看護婦の方々で、この受胎調節実地指導員になりたいという方が志願されましたら、都道府県知事におきましては、一定の時間、たとえば助産婦でございますと、三十六時間、それから保健婦または看護婦でございますと六十四、五時間の講習をいたしまして、その講習で一定の知識を得た者に受胎調節実地指導員という名前をつけまして、そうしてそれに指導をさせておるような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/18
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019・坂本昭
○坂本昭君 今の指導員が特別な受胎調節の医薬品を今まで販売しておりますが、これはどの程度成果があがっているでしょうか。これは谷口委員の方で御承知でございましたら御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/19
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020・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 実は、毎日新聞社の調査によりますと、昭和二十五年度における受胎調節をやっておる家族が全体で一九・五%といっております。ところが、昨年度やりました調査によりますと、四三・五%、すなわち九年間に二三%ほど受胎調節が増加いたしております。これは、やはり一つは、前は実地指導員も薬事法の関係で避妊薬の販売ができませなんだのを、それを、その方に避妊薬をお買いなさいと言うても、恥かしいとか何とか言うて、買いにいくことができなかったものでも、受胎調節実地指導員がこの法律によって医薬品を直接に販売することができるようになった結果であろうと思っております。しかし、なお四二・五%くらいですから、もう少し徹底させる必要があるので、今度五ヵ年間また延長をお願いしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/20
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021・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 他に御質疑はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/21
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022・小柳勇
○小柳勇君 しろうとですから、これはずっと前に論議があったように記憶いたしておりますけれども、この際ですから、一つ専門の先生からお聞きしたいと思います。
この母性保護の十四条の法律は西洋民主主義諸国ではどうでしょうか。大体日本の十四条のようなものでしょうか、もっと高度のものでしょうか、低いものでしょうか、お教え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/22
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023・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 この優生保護法と全然同じような程度でやっておるところは外国にはないようでございます。しかし、これは母性を保護するという立場からいたしまして、やはり受胎調節をはっきりと、あるいは受胎調節を科学的にやらせる必要があるというので特に十四条をこしらえたわけであります。もっともこの法案を作ります時分におきまして、ちょっと名前は忘れましたが、チェコスロバキァでございましたか、どこかの議会では、こういうような法律を作ることにいよいよ議会で決議しておって、その後できておらぬようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/23
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024・小柳勇
○小柳勇君 今先生がおっしゃった受胎調節の実地指導員なんという人が薬を持ちあるいは器具を持って、自分が実地指導しながらそういう器具を販売する、そういうようなシステムについては諸外国はいかがでございましょうか。厚生省の方でも何か統計でもありましたらお教え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/24
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025・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 ほかには、外国にもそういうふうの制度のはっきりしておるところはないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/25
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026・小柳勇
○小柳勇君 たくさん問題はあるようでありますが、私はまだ議員ではありませんでしたが、優生保護法が論議されましたのをいろいろ新聞雑誌その他で見ておりましたし、その後いろいろの批評、批判がなされておりますが、いろいろ見方はございましょう。人口問題の解決もありましょうし、あるいは道義の頽廃などが、このような十四条などについて道義の頽廃というものの一つの原因であるというような批判さえなされておるわけでありますが、医師の立場というような立場と、あるいは精神的のもの、道義的なもの、そういうものを考えてみまして、日本の優生保護法というのは一面から非常にすぐれた法律だと考えるし、一面から道義的には非常に検討しなければならないのじゃないか。特にこの十四条の一項の四分、五号、それから二項、三項などの方は非常に問題ではないかと思いますが、谷口先生の御意見と、できたら厚生省の担当官の御意見を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/26
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027・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 ただいまの十四条の四号、五号という点が特に問題になっておるようなお話でありますが、実際におきまして十四条の五といいますのは暴行または強迫によって妊娠した場合、これは前はこういう場合にも絶対に人工妊娠中絶もやることができぬというので、かなり母性を苦しめておったのですが、この法律ができましたためにこの場合は大いに救われたと思っております。
それからこの四号のところにおきましても、この優生保護法ができましたために、これまでは結核患者あたりが妊娠をいたしまして、そうして病状がだんだん悪化したような場合にもなかなか人工妊娠中絶とかいうのがすぐに行なうことができずに、あるいは二人以上の医者の合議によって、そうしてそれを届け出るとか、その上で審査会にかけるとかいうようなために時日が非常に遷延しまして、せっかくあとで手術をしてもついに目的を達しなんだというような例がたくさんにこの法律を作る当時にあったものですから、その点、特にこういたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/27
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028・大山正
○政府委員(大山正君) 厚生省におきまして家族計画をいろいろな面から指導しているわけでございますが、この理念につきまして、ただいま、いろいろ各方面から批判のあるところであるというお言葉でございますが、厚生省といたしましてこの家族計画を普及しております考え方を申し述べさしていただきたいと思いますが、結局家族計画と申しますのは、それぞれの家庭の実情に応じまして、適当な数の子供を、適当な間隔をあけて産むということが家族計画であるというように考えているのでございまして、決して、子供を産まないようにする、単に産児制限という意味じゃございませんで、子供の産み方を工夫するというような考え方で、結局それぞれの家庭の実情に応じました子供を産みまして、生活の維持向上をはかって、健全な家庭を建設しようというような考え方に基づいているのでございます。ただこの場合、人工妊娠中絶というような形で今の家族計画のようなことが行なわれるということは、非常に母体の健康上も努めて避けなければならぬということで、人工妊娠中絶によらないで、母体保護の見地から受胎調節という方向でいくのが一番適当な方法である、かように考えまして、受胎調節という面の指導を私ども極力進めているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/28
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029・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 今参議院法制局の中原部長から発言を求められておりますので、発言を許したいと思います。参議法制局中原第三部長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/29
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030・中原武夫
○法制局参事(中原武夫君) 諸外国と日本との比較で御質問がありましたので、一言御説明申し上げます。この第十四条の規定は、刑法の堕胎罪の規定の条件の緩和の規定でございます。この十四条で緩和してあります条件は、大きく分けて、身体的な理由によるもの、優生学的な立場からのもの、社会的な立場から条件を緩和したもの、それから経済的な理由に基づいて条件を緩和したもの、大体この四つに分かれるのであります。そのうちで一番問題になっておりますのが、経済的な理由によって緩和した点であります。諸外国においても優生学的な理由とか、社会的な理由とか、身体的な理由によって堕胎罪の条件を緩和したのは非常に多くの国が緩和しております。ただ、経済的な理由によって中絶を認めるということは日本だけであります。ソ連が大体日本と同じ程度に広く緩和しているようでありますが、詳しく存じません。なぜそういうことにしたかと申しますと、堕胎罪に対する国民の考え方、そういうことに根本的な理由があると承知しております。と申しますのは、堕胎罪の規定というものは実は教会法が作り出した規定であります。胎児は神様が与えたものである。で胎児になればもう生命が宿るのであるからそれを殺すことは殺人と同じだという考え方の上に立つ教会法が作り出した理論であります。そのことを裏返して言いますと、この堕胎罪をささえている精神的な基盤はキリスト教精神なのであります。日本では、明治十五年のフランス刑法にならった旧刑法を作りましたときに、堕胎罪の規定を一取り入れました。しかし、その堕胎罪の規定をささえる精神的な支柱であるキリスト教の精神は日本は入っておらなかったわけであります。そこで堕胎罪の規定に対する国民の考え方というものが、西洋と違って日本には多少ゆるやかなものがあります。そうなりますと、この堕胎罪の規定をささえるものは何かといいますと、主として社会的な条件であろうと考えるのであります。子供を産んで子供を育てるということは、これは母性の本能でありますから、だれもそれを断ちたいという者はありません。しかし、どうしても自分が生きていくためにその胎児の生命を断たなければ——生命といってよいかどうか——ともかく胎児をおろさなければならないような事態がきたときに、西洋では、——キリスト教精神のささえのあるところでは、精神的のささえと社会的なささえと両方がささえておるわけです。ところが、日本では、片一方の宗教的な支柱が弱いので、社会的な条件が非常に悪くなってきたときには、ある程度これを許しておきませんと、ちょうど食糧管理法のようなことになるわけであります。そういう日本の国民感情というものが西洋と違った特異な形を持っていることが、この経済的理由によって条件を緩和する条項を取り入れざるを得なかった基盤の一であると私は承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/30
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031・小柳勇
○小柳勇君 ただいまの意見については若干私は問題があると思います。討論すれば相当長くなると思いまするが、ただ、その堕胎罪がキリスト教精神だけではない、私はそのように感じます。また、討論すれば時間が相当かかりましょうが、優生保護法の全体的な問題でありませんので、きょうは私は意見は出しません。今手続的な費用負担の問題とそれからこの薬品販売期限、販売の延期問題でありますが、優生保護法の全体的なものが、今部長が言われたようなものであるならば、私は根本的にこれを検討し直さなければならぬと思う。それではあまりにこの優生保護法の精神自体が物質化しておるものと私は理解しております。この問題は私は討論を省略いたして最後に一つだけ質問いたしましょう。
これは延期、販売の期間を五年にお切りになりましたのは、谷口先生おっしゃいましたように、現在受胎調節の国民的なパーセントが四二・五%であるからもう少しこれを前進さすべきである、それでは五年くらいでよかろうという意味でございましょうか。何か別に五年に期限をお切りになりましたところに理由がありましょうか。その点だけお聞きしまして私質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/31
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032・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 実は前回も、まあ五年ぐらいたてばよほど情勢が変わるだろうというので、五年間というので第一回にこの受胎調節実地指導員に対する販売を許可してもらったのであります。それで、今度も五年ぐらい、そのときの情勢によりましょうから五年ぐらいに切っておいて、そうしてまた延期してもらった方がよかろうというふうに考えただけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/32
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033・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は厚生省にお聞きしたいのです。今中原部長が言われたような歴史が優生保護の歴史の概念、これは全部と言えるかどうか知りませんけれども、非常に問題点をつかれていると思うのです。厚生省は行政をおやりになるのだから、なぜそういう問題点を研究されたり、つまびらかにしてさっきからお答えにならないかということを私は不思議に思うわけです。これが一つです。それは、私はなぜそういうことを言うかというと、やはり四号の経済的な理由によって法で保護する。これはお医者さんの玄関に行きますと、何でもかんでも、それじゃまあ都合が悪いと言えば自由に処理をするという格好じゃないか。だから、今日妊娠中絶二百万とか二百五十万とか言われているのは、私はそこに原因があるのじゃないかと、こう思うのです。この改正案はそこに触れていませんから問題にしませんけれども。そういう点、厚生省としては少しその法の番人として、行政をやる者として怠慢じゃないか。私はそういう工合に、十四条の四号の経済的な面からという問題についてですね、今外国でもそういう例がないと私は思うのです。政治をやる者としては、何といっても子供をですね、他の理由なら別として、経済的理由で生めない。それは処理してよろしいということじゃ、あまりにも政治のうまみといいますか、政治に対する不信感というものを、貧困者はのたれ死にしていいということにつながってくると、私はそう思うので、厚生省はそういう面から一々検討されて、この問題を厚生行政の面にどう生かしていくかということを私は検討されるべき問題じゃないか。私はその一言だけ意見を申し上げたい。これは大臣も見えておりませんから何ですけれども、担当者どう考えているか、ちょっと聞かして下さい。勉強不足だ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/33
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034・大山正
○政府委員(大山正君) 児童局といたしまして、家族計画、受胎調節を所管してただいまその推進をはかっておるわけでございますが、お話のように、人工妊娠中絶によるこのいろいろな弊害、特に母性の健康上の弊害というようなものも非常に大きく感ぜられますので、私どもはあくまでこの人工妊娠中絶を減らしたい。その方法といたしまして受胎調節の方法で家族計画を推進しなければいけないというような観点から、特にこの受胎調節、家族計画の面を推進するように努力しておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/34
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035・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 ちょっと、私の言っているのは少し理由が違うのですよ。経済的な面から妊娠中絶をしてよろしいというなら、お医者さんは、妊娠中絶して下さいと言われれば適当におやりになると思うのです。結局生活が苦しいから子供を産むとか産まぬとかいう理由になってきましょうけれども、そういう数が三百万も二百五十万も妊娠中絶があるといわれている今日において、母体を守るということも必要だ、しかし、そういう経済的な面は国の施政でそういうものを守ってあげるというのが本来の政治の姿なんです。こう私は考えるから、そういう面の検討を厚生行政としてはなぜおやりにならないかということを言っているわけです。母体を保護するのは当然のことです。しかし、経済的な面、理由からその子供を産めないというような人を、自由に妊娠中絶してよろしいということは、家族計画の問題とは違うと思うのですね。金持ちの子供は優生児であり、貧乏人の子供は優生児でないというものにも、理屈を言えばつながってくるのだから、そういう問題は人口問題の計画の問題との関連においてももっと公平でなくてはいけませんし、それで経済面が足らなければ、政治の面でその経済の援助をしてあげる、こういうところに理論の中心があるのじゃないかということを言っているのです。そういう点では行政が、少し皆さん方のこれに対する研究が足らないのじゃないかということを言っているのです。今のあなたのお答えとは違うのです。それで、御意見があったら……、なければよろしい、大臣が来たとき聞きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/35
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036・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 優生保護法の所管は私ではございませんけれども、しかし、今御指摘の問題は、私どもの方にも関連がある問題でございます。広く、何と申しますか、国民の経済生活と関連のあるものですので、実はこれは非常に貧困な方々につきましての生活保護法というような制度の中には、御存じのように、妊産婦加算とか何とかいうようなこともございますけれども、しかし、今指摘されましたような問題は、もう少し広範な問題でございまして、十分問題がある規定のように私は考えます。従いまして、私ども厚生省といたしまして、今後十分検討をして参りたい、かように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/36
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037・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) ちょっと速記を落として下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/37
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038・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) では速記を始めて下さい。
他に御発言はございませんか。——御発言もないようでありますから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/38
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039・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願いたいと思います。なお、修正の御意見がもしあれば、討論中にお述べを願いたい、かように思うわけであります。
御発言もないようでありますから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/39
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040・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。
それでは優生保護法の一部を改正する法律案につきまして採決いたします。
本案を原案の通り可決することに賛成の方は挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/40
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041・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 全会一致でございます。よって、本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
議長に提出する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/41
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042・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/42
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043・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) それでは次に、精神薄弱者福祉法案を議題といたします。
質疑のおありの方は逐次御発言を願います。
精神薄弱者福祉法案につきましては、厚生省から先ほど来答弁の高田社会局長を初め関係課長が出席をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/43
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044・片岡文重
○片岡文重君 精神薄弱者の最近における発生の状態といいましょうか、傾向といいましょうか、ふえておるのか減っておるのか、それからふえるとすれば急激にふえておるのか、あるいは緩漫であるのか、そういうこの最近の発生状況についてわかりますならば、わかりますればというと——これはわかるはずだけれども、その点からまず御説明して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/44
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045・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 当然詳細なことがわかるはずだという御質問でございます。さようであるべきでございますが、率直に申し上げまして、それだけの綿密な調査をいたしておりません。従って、その資料の的確なものは持ち合わしておりません。ただ、御承知のように、この発生原因はまだ学問的にもきわめられていない分野も相当あるようであります。先天的なものもあり、後天的なものもあり、その後天的な原因につきましては、いろいろなまたバラエティがあるのでございます。それらの発生原因そのものにつきましても、もう少し研究をいたしていく必要があるのでございます。もちろん各大学とか民間の学者とか、それぞれ専門の分野からの探求がなされておりますけれども、さらにこれらをいろいろ連絡をとったり、総合をいたしましたりいたす仕事、また、自分自身でも研究するというふうな意味合いで、来年度から精神衛生研究所に精神薄弱研究部というものを設けることに予算で御審議をいただいております。これらのものができまして相当な仕事が進みますならば、さような発生原因等につきましてもある程度の究明がついて参るものと期待をいたしておるわけでございます。発生原因につきましても今申し上げたような程度でございまして、はたして最近ふえておるものか減っておるものか、その発生原因の傾向はどうかというふうな御質問に対しましては、最初申し上げましたように、まことに申しわけない次第でございますが、そこまでの資料を手にいたしておりません。ただ、これは非常な勘でございますけれども、関係者の意見なんかに出てくるあれでございますけれども、特に精神薄弱者が最近の精神病のように特にふえてきておるとかというふうなことは聞いておりません。今まで隠れておったものが見つけられるとか、そういうふうな社会的に見つけられてくるというふうなことは、これはあるわけでございますが、特別にこれがふえて参っておるというふうには私ども聞いておりません。しかし、これは最初申し上げましたように、的確な資料に基づいてのあれではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/45
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046・片岡文重
○片岡文重君 発生の状態が把握されておらないということははなはだ遺憾ですが、しておらないということは責めません。なるべくこういう状況については綿密な調査を私はしておいていただきたい。これが対策の根本問題だと思う。この正確な状況の把握ができないということの一つの理由は、各省間における、たとえばIQの取り方にしても、級別といいますか、魯鈍級——白痴、痴愚というような区別にしても、ある省ではIQ七〇から、あるところでは七五からというようなことで、それ一つとってみても一致しておらない。こういうようなところにもやはり不正確なところがあるでありましょう。さらにこの病気の特質からいって、各家店であまり公にしたがらないということもありましょう。いろいろ原因もあるでありましょうけれども、根本はやはり各省間の連絡の不統一と、それからやはり熱意が私は問題だと思う。ぜひ一つそういう問題の究明の基礎条件ですから、わかるようにしていただきたいと思います。
その次にお尋ねしたいのは、予防と治療対策について、どういうことをしておられるかということなんです。発生状況もつまびらかにしておられないということであっては、予防とか対策等についての具体的な措置もどうかと思うのですが、たとえば精薄者のできる原因としていろいろ言われておりまして、妊娠中絶の失敗からというものあるでしょうし、妊婦の栄養失調というようなことも言われておりますし、あるいは生後における脳膜炎、外傷その他いろいろあるようです。この出生前における原因によって精薄者となるのは、やはり母体保護なり胎児の保護なり、いろいろと手は尽くさるべきであって、そういう手を尽くせば、こういう不幸な子供が出生しないであろということも、私は考えられると思うのです。私はお医者さんでもありませんし、しろうとですから、あまりそういうことについてのことはわかりませんけれども、しかし、一応しろうととして考えても、出生前における母体並びに胎児の保護によって、ある程度これは防げるのではないか。それから出生後における外傷による、あるいは病気による原因によって精薄児になるということも考えられるでしょう。これらに対しては、各家庭における経済なり、いろいろな事情によって、みすみすわかっておっても治療のできない場合もありましょうし、特にこの精薄児が貧困な家庭に多いように私は聞いております。明らかにこれは、防止し得べかりし状態が防止できなかったという場合に大きな原因があると思うのです。そういうこと等をいろいろ考えてみると、国として、やはりこういう不幸な子供の出生を防止する、あるいは出生後におけるこの原因をできるだけ除去してやる、これはもちろん医療法とか生活保護法とか、そういう方面に関係して参りまして、どういう方法をとっておられるか、精薄児の予防、精薄児の対策ということでなくとも、総合的にとっておるのだということにも御答弁はなろうかと思うのですけれども、少なくとも精薄者に対する担当の厚生省として、どういうふうにしておられるのか。簿薄者と児という、この区別を福祉法ではしておられるようですけれども、一応ひくるめて、まず私はお尋ねしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/46
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047・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) この御審議を願っておりまする法律案のねらいまするところは、精神薄弱者の福祉面を取り扱ったものでございますが、その問題より先に、今片岡先生御指摘の、どういう原因で出てくるのか、それからさらに、その発生予防、治療というふうな問題が非常に大きな問題であることは、これはもう当然でございます。それで、それらについて、どういうふうなことをやっておるかという御質問でございますが、最初に申しあげましたように、まず予防ということは、どうしてできるのだという発生原因がつかめませんと、予防の方策も立たないわけでございます。それでその発生原因につきましては、先ほども申し上げましたように、古くは遺伝によるものだというふうに言われておったのでございますが、先天的なものもあるようではございますが、なお後天的な原因といたしまして、ただいま先生おあげになりましたような妊娠中の母体の障害であるとか、あるいは出産時の障害でございますとか、あるいは出産後の、この世に生まれてきていろいろな疾病、外的なものも内的なものも含めまして、疾病によるものであるとか、こういうふうなものが相当多数含まれているということまでははっきり言われているわけでございますけれども、その他精密な研究というものは、学問的にまだ相当未開拓の分野があるのでございます。それで先ほども申し上げましたように、精神衛生研究所に精薄研究部を設けましたのは、この原因をもう少しきわめていくということ、原因をきわめることによって、予防の方法がわかってくる、まあ、こういうことを精薄研究部で一つやってもらおう、しかし、これはもうそこで、若干の人たちがこれに従事をいたしますだけでは、なかなか十分な成果は上がりません。従って、各方面で、さような学問的な研究をなさっている方が多いのでございますので、それらの何といいますか、情報の交換でありますとか、あるいはその研究部が中心になりまして、そういうふうな方々の会合を持つとかというような方法によりましても、これらのものを、自分が研究すると同時に、総体的に研究を促進して参るというふうな任務をもちまして、これは私の局の所管ではございませんけれども、別に精神薄弱研究部を設けまして、これから一つ本腰を入れてやろうというところでございます。従いまして、これが発生の予防につきまして厚生省が、系統的にただいまこういうふうな措置をやっておりますというふうなお答えをいたすまでに進んでおりません。もちろん妊娠中の母体の障害なり、出産時の障害なり、そういうようなものから精薄が生まれてくるということは、十分わかっておりまするので、妊娠中の母体の保護なり、あるいは出産時のいろいろな問題なりにつきましては、児童局でございますとか、公衆衛生局でございますとか、それぞれ所管に基づいての手は打っているわけではございますけれども、特に精薄を予防するというような観点から、系統的に何らかの施策を講じているというふうな点は、今日のところではまだそこまで進んでおらないのでございます。
なお、治療の問題でございますが、私もしろうとで、こういうことを申し上げる資格があるかどうかわかりませんが、私どもが聞いておりますところでは、知能のおくれた程度の者をいろいろ指導訓練をいたすことによりまして、社会的な順応性を得させて、そうしてこれが社会復帰ができるようにするということは可能でございますけれども、精薄そのものを治療するということにつきましては、今日一般の学者の間では不可能であるということにされている、もちろん知能テストなんかを行ないました場合に、知能テストの結果が低く出てくる者でございましても、知能の発達がおくれているだけでなくして、ほかの障害がある場合に、たとえば聴覚障害でございますとか、あるいはその他感情の、情緒の不安定の問題でございますとか、そういうふうな他の障害が重なりまして、知能指数が低く出て参る場合が相当あるのだそうでございます。これらの場合におきましては、さような他の障害が治療できる障害でありますれば、これはその方の治療ということは、これはできるわけでございます。精薄そのものにつきましては、まあ一般の学者の御意見といたしまして、治療ということは非常にむずかしいことであるということに、今日のところでは大体そういうふうなところに私どもは聞いておるわけであります。くどくど申し上げましたが、御質問の要点であるさようなことについていかなる措置をしているか、厚生省としてとっておるかということにつきましては、お答えを申し上げましたように、系統的にさような措置をとるところまでまだきておらない、こういうことで大へん遺憾でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/47
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048・片岡文重
○片岡文重君 どうも私は、現在の局長にだけ申し上げることはどうかと思うんですが、厚生省として、歴代の大臣は精薄児に対する関心が少し足らないと思うのです。特に私の遺憾とするのは、こういう委員会等公式の席上において、約束をされたことを守っておらないのであります。たとえば、これはその当時の記録をお調べいただけばわかるはずですが、たしか私は神田厚生大臣であったと思う。今の秩父学園を設立するについて、国立の重精薄者の収容施設を設立するときに、全国における重精薄者の数だけで相当な数に上っておる。それに全国でわずか百人程度のものを、一カ所くらい作っても仕方がないじゃないですか。少なくとも北海道、東北関東、中部、近畿、九州、四国、その他と八カ所くらいの国立収容所を作るべきだということを私は申し上げたはずなんです。そのときに大臣を初め、当時の児童局長の答弁では、一つのモデル・ケースとしてこれは作るのであって、今後は年々作って参ります、こういう約束をされたわけです。ところが、その翌年になったら、この予算は削られておって一つもできておらない。わずかに秩父学園ができただけです。なぜそういうことをするのかといって、その不信をなじったところが、あれは一つのモデル・ケースとしてやってみたんだが、この際は長期にわたって総合的な計画を立ててやりますからということだったわけです。今伺って見ると、発生の原因もわかっておらない、調べておられない。最近の発生状況も把握しておられない、予算調書を見ても、国立の収容施設を約束通りに増設をしておるとも考えられない。そればかりではない、通園の施設等についても数多くの希望が出ておられますけれども、これすら十分には考えられておらない、こういうことでは私は、はなはだ遺憾だと思う。少なくともこういう権威ある委員会等において約束されたことだけは、たとえ大臣がかわろうとも、局長がかわられようとも、やはり引き続いてやっていただいて、もしそういう方針を変えるならば、変えるようにやはりわれわれの納得のできるような理由で釈明をしていただきたい。特に大臣がかわられても、局長がかわられても、内閣はかわっておらない、岸内閣のもとにやっておられるわけです。こういう点等もやっぱり十分考えていただきたいと思うのです。私はすみやかに、いわゆる総合計画なるものを立てていただいて、意地悪く考えるならば、立てていただいてではなくて、その作られた総合計画なるものをお伺いしたいというくらいなんです、二年や三年ではないんですから。おそらく今の御答弁では、私はそういうものは全然できておらないと思う。それを伺いたいとは申しませんけれども、当委員会において何回も約束をしておられるのですから、当時の記録を一つお調べになって、総合計画なるものをすみやかに樹立をしていただきたいと思うのです。そこで、今局長もいろいろ御答弁になられましたけれども、この際、精神衛生研究所におまかせすることももちろんけっこうですが、それ以外に関係の各省並びにこういう問題について経験を持ち、学識をお持ちになっておられる学者や、実際家等も含めた一つの総合的な審議機関と言いますか、対策の機関、国で責任の持てる対策機関というものをお持ちになる御意思はないかどうか。こういうことになると、これは大臣の御答弁になろうかと思うのですが、少くなくとも大臣に——厚生大臣は残念ながら、厚生大臣ばかりじゃありませんけれども、最近の内閣の諸公というのは、まあ早ければ三月や半年でかわられるのですから、要はやはり担当の部署において熱意を持ってやっていただかなければならぬのですし、具体的な案というものは、担当の部署においてお作りになると思う。従って、局長の御意見も、これは大きく影響するわけですから、私はこの際あるかないか、そういう機関を作る意思があるかないかということよりも、むしろぜひそういう機関を作っていただいて、文部省や労働省、特にこの厚生、文部、労働の三省は緊密な連絡をとって、あまり権威争い、そういうことでなしに、連絡を一つとって、ひとり歩きのできない人々が多いのですから、厚生と保護、特に重精薄であるとか痴愚、白痴という人々になれば、これはもう終生保護の域を出ないと思う。それらについての万全の措置がぜひとられるようにしていただきたいと思うのですが、局長の御所見いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/48
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049・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) この法律案の中に、精薄者審議会というものがございまして、これにはただいま片岡先生御指摘のような関係の各省、特に厚生、それから文部、労働、これは非常に密接な関係があるわけでございます。その他の関係各省にも入っていただき、さらに民間並びに学者関係の方々の有識者の方々にも御参加を願う予定でございます。ただ、今片岡先生が仰せになりましたのは、この審議会でねらっておりまするのは、何と申しましても福祉面でございまして、もう少し広い立場からのものを御指摘に相なっているようでございます。それに対応するものといたしましては、精神衛生審議会というものが、これは精神衛生法関係の審議会でございますが、これが今日ございまして、そうしてここで精薄も含めて精神衛生法が対象といたしておりまする精薄、精神病、精神病質者、この三つを総合的に精神衛生の観点から、いろいろ御審議を願うことになっております。これにもたしか政府関係各省並びに有識者がお入りになっているわけです。さようなものと、それから先ほど申し上げました精薄研究部というふうな、実動的なもの、これらを私ども今回の審議会は新たに設置をしていただくわけでございますが、それから研究部の方も新たに御設置をお認めいただくわけでございますが、これらを十分に活用いたしまして、ただいま先生御指摘のような目的を果たして参りたいと、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/49
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050・片岡文重
○片岡文重君 法案を拝見しましたから、この法案における審議会の設置されることも承知をいたしております。しかし、私の言うのは、今局長も御了解になっておられるようですけれども、もっと範囲の広いもので、とにかく精薄児、乳児、幼児、少年そして成人、全部ひっくるめてどうすべきか、いわば精薄児全体をひっくるめた諸問題を一手に引き受けて、教育と訓練、更生保護、こういうところまで手を伸ばし得るものを、要すれば、たとえば今提案されております福祉法も、あるいは生活保護法も、医療保護法も精神衛生法も、全部その中から関係のものはとって、一つの法律にまとめてやるような構想を大きく持たれて私はやっていただきたい。そういうものを、ぜひ作ってほしいということを言っておるのです。十分もう御承知でしょうが、少なくともこの法案でいくと、十八才以上の者が対象になっている。ところが、私ども特にこの学年の終わりにあたって聞いておるのですけれども、新制中学を卒業して高校にももちろん行けない。しかし、適当な訓練を施せば、自立して人の世話にならぬでもやっていけるような子供が相当おるわけです。これらは職業補導所等においてはなかなか入れません。成績の優秀な子供でも競争激甚で入れない。そこにこういう新卒の精薄児が行こうと思ったって、これは考えるだけでも無理な話です。しかし、ほっておいてもいいのかといえば、これは普通の子供よりもほっておいてはいけないと思う。結局これが非行少年となり、売春婦となって行く道をたどるわけです。全部とはもちろん申しませんけれども、そういう問題等もやっぱり処置のできるような機関でなければ、私はいけないと思う。そういう点も考えて、ぜひこの総合された対策機関というものを設置しておくべきではないかということをお尋ねしているわけです、これに対する御所見を重ねて一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/50
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051・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 確かに今御指摘になりましたような、精薄については何もかもやるというふうな機関、あるいは法律体系というふうなものも考えられるわけでございまして、また、その必要性もいろいろあるわけでございます。私どもこの法律案を起案をいたしまする際の過程におきましても、実はさような点をも配慮いたしましたわけではございますけれども、なかなか今日のこの情勢におきましては、そこまで一足飛びに何と申しますか、踏み切ることがなかなかむずかしい事情がございます。ただ、それが各法律が権限を争っているとか、あるいは関係各省がこの権限を争っているとかという問題ではないので、むしろかようなめんどうな問題はなるべく人にやってもらいたいというふうなことでございますけれども、そういうことでなしに、そういうことを一足飛びにすることがはたして、この福祉をねらっておるものでございますが、福祉の増進ということに、ほんとうに地道に考えて寄与するかどうか、たとえば児童福祉法との関係に例をとって申しますると、児童福祉法ですでに十数年の間精薄児も他の問題児等と一緒に、その一分類として扱って参りまして、今日までに相当な——おとなの方と比べまするという意味でございますが、相当な実は成果を上げてきておるわけであります。施設の数にいたしましても百数十になっておりまするし、扱っておる人たちの数も相当な成績を上げてきておる。さようなものを直ちに一本の法律で行ないますることが、理論的には確かにすっきりするわけでございますが、しかし、現実の問題としてそれは次の段階でものを考えることにして、とりあえず当面穴があいておるところをまずふさいでおいて、そうしてその次の段階に、今のような先生御指摘のような構想でもってもう少し総合的に考えていくということの方が、実は妥当ではあるまいかというふうな実は結論に到達をいたしまして、かような考え方で法律を御提案申し上げたわけなんです。ただしかし、この法律も若干今先生が御指摘になりましたような方向に実は向かっておるわけでございまして、具体的な点を申し上げてみますると、たとえばこの法律で精神薄弱者と申しておりまするのは、身体障害者福祉法が身体障害者を十八歳以上と限っておりますが、この法案でいう精神薄弱者というのは十八歳未満も含めて一応規定いたしております。なおまた、更生相談所でございますとか、精神薄弱者福祉司でありますとか、それらの任務におきましては、身体障害者の場合のように、児童福祉法とぴったり区切ってしまって別々だというふうな建前をとっておりません。両方がオーバー・ラップしていくような建前をとっております。従いまして、さような、これは非常にわずかな点でございますが、今先生御指摘になりましたような理想に向かって若干の萌芽を出しておるというような構成になっております。しかし、いずれにいたしましても、今先生御指摘のようなことにつきましては、将来の問題として段階を踏んで進む方がいいのじゃないかという、まあ私どもの考え方にまとまりまして、かような法律を御提案申し上げたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/51
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052・片岡文重
○片岡文重君 総合的な機関の方向に向かっておるというふうな御答弁があったのですから、なるべく早い機会にそういうふうになるように、私は強く要望しておきたいのです。ただ、今ある穴から埋めていくという行き方もけっこうでしょう。けっこうでしょうが、そういう穴を一つ一つ埋めていく労力も、一挙に総合的に解決をしていく努力も私はそう大して違いはないのじゃないか、各省間においてそれぞれの担当を持っておられるのですから、たとえば、これはまあこの席での私の思いつきですから、一つのヒントにでもなればというので、あえて申し上げるのですが、たとえば総理府等に精神薄弱者対策委員会とかというようなものを作って、その中に訓練可能な者、あるいは教育可能な者、あるいは特殊な者というようなふうに区別をしてやるなり、いろいろこまかなことについては今ここで申し上げる向もないのですが、そういうのも私は一つの方法だと思うのです。特に今各省に分散しておる各担当の方々の扱っておられる諸問題を一つの機関にして進められるならば、その間におのずから連絡も緊密になるし、重復しておるようなたとえば調査にしても、厚生省でお調べになる、文部省で調べられる、労働省で調べられる、そういうものが一省で済むわけでしょう。法務省の非行者に対する取扱いや対策にしても、今よりももっともっと私は円滑にいくでありましょうし、十分の措置が私はとられると思うのです。ですから、そういうふうにしてやった方が、むしろ今ある数多くの不十分な面を一つ一つ埋めていくよりも、一挙に解決のできる方法をとられた方がいいではないかということを申し上げておるわけです。これはぜひ一つ大臣とも十分御相談になっていただいて、しかるべき機会に私またお尋ねをしたいと思いますが、意見をまとめておいていただきたいと思うのです。
今の御答弁の中で、この福祉法の対象とするところは、必ずしも十八才以上の者でもないのだ、十八才未満の者もあるということでありましたが、私は不勉強のせいか、どこの法文にそういうことになっておるか、ちょっとわかりませんけれども、どうもこの法案を一読した感じでは、少なくとも十八才以上ということになっておって、十八才の線を引いて、精薄児と精薄者との区別を対立的にお考えになっておるのではないかという感じを受けるのです。申し上げるまでもなく、私はこういう精薄者に対する考え方は、年令ではなしに、むしろ症状によって私は区別すべきだと思うのです。この福祉法では、そうじゃなしに、年令による区別の方が重点になっておるのではないか、ウエートが置かれているのではないか、こう思うのです。諸外国の例を聞いてみても、この精薄者対策については、年令というのは日本以外にはあまりないようです。症状による区別の方が多いように私は聞いておるのですが、これについて、たとえば今申し上げました、その新卒者十五才から十八才未満の少年、これのしからば取り扱い等は、この福祉法の対象に該当するような者は、これによってできるのかどうか、特に職業補導等は、どう考えておられるのか、今のところそういう機関がないのですから、私ははなはだ問題だと思うのだけれども、それらについて一つ御意見を伺いましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/52
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053・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) この法律案は、福祉の面につきましては、今年齢の、区分で御質問でございますので、児童福祉法との関係が問題になって参ると思います。この法律が一般法で、児童福祉法が特別法というような、これは非常に通俗的な表現でございますが、そういう建前を実はとっておるのです。たとえば、この法律で何も書いてございませんところは子供の問題もあわせて書いておる、こうお読みをいただきたいと思います。そこで、何か年齢の児童福祉法に譲るところにつきましては、必ず十八歳未満云々とか、十八歳以上とか何とかいうふうに、この法律の中に規定がございます。それで、そういうふうなことに一応この法律構成がなっておるわけでございます。この点につきましては、この法律を立案いたしまする際に、一番実は私ども苦労をいたしたところでございます。と申しますのは、今先生が御指摘になりましたように、十八歳以上十八歳未満、おとな、子供と申しましても、結局その生理的な年齢はおとなであっても、知能が子供のようだから精薄だというので問題になるわけですから、従って、今の点は実は一番苦労をいたしたところでございます。まあ精神衛生法との関係も実はあるわけでございますが、少なくとも児童福祉法との関係におきましては、むしろ児童福祉法からひっぺがして一本の法律にして、そうしてやった方がいいのじゃないかという意見も実は強力にあったわけでございます。しかし、ただ、いろいろ考えまして、たとえば、精薄の児童というようなものにつきましては、精薄であるという特殊なニードと、いろいろ世話をしてもらわなければならぬというニードと、また、子供であるということから発するいろいろなニードと、一体どっちが強いのだ——両方持っておることは事実でございます。しかし、一体どっちが強いのだという点になりますと、これはなかなか専門家の間にも必ずしも割り切れない、議論の出るところでございます。そういうふうな非常にむずかしい論議もありますることも、一つのかような割り切り方をいたしました原因ではございましたが、それよりさらに、先ほど私が触れました、理屈に走って、児童福祉法からひっぺがすことによって、やあ一本になって、やれ気持がいいといって、児童福祉法からひっぺがして……。そういたしますと、第一線機関なんかにつきましても、いろいろ変動が起こってくるわけでございます。児童福祉法からひっぺがしますと、今まで精薄の子供のめんどうを見ていただいておりました児童福祉司というようなものも、児童相談所というようなものも、精薄の子供については、もう手を触れぬということになってくる公算がある。そうすると、こちらで作りまする精神薄弱者福祉司なり、あるいは相談所というようなものが、直ちに強化されて参りますれば問題はないわけでございますが、何しろこちらはこれから作って参ろうというふうなものでございますので、なかなか、初めのうちはそう強化されてこない、それならば児童福祉司をある程度数を減らして、そうして精薄の方に向けたらいいじゃないかという議論になって参りますが、児童福祉司というのは精薄だけを取り扱っておるわけではございません。その他の身体障害者につきましても、非行少年につきましてもいろいろやっておるわけでございます。従いまして、これを減らして片一方に持ってくるということもできない、そういうことになりますと、その辺の移り変わりというものは、よほど実態というものをよく考えてやりませんと、かえって、一本にして総合的に強力に進めるのだというかけ声が主になっちゃって、実際の仕事というものは、かえって過渡期においてはいろいろトラブルがあって、所期の目的を達せないのじゃないだろうかというふうな、まあこれを一口に言えば、児童福祉法というものは、すでに十何年の歴史を持ち、それだけの積み上げをやってきておる。従って、そういう点もやはり尊重して、そうして措置の権限でございまするとか、そういうふうなものにつきましては、十八歳未満についてはやはり児童福祉法にまかして、そうして差しつかえない部分についてはオーバーラップをさせて、そうして両々相待って精神薄弱者のおとなから子供までの福祉をはかっていく、しかも、おとなの方は、非常に何もやっていないような状況でございますので、その穴を埋めて、それが両々相待って、まあ福祉に欠くるところのないようにやっていこう、こういうふうなことが、今日の段階における一番妥当なやり方なんではあるまいか、さんざんこね回したあげく、さような実は結論に到達したわけでございます。
それで法律の条文としましては、非常に奇妙な条文が三条に載っております。普通の法律としましてはおかしな条文が載っておりますが、これらに苦心の表われが一つ出ておるわけでございます。さようなわけ合いでございまして、確かに先生御指摘の点は、これはもう非常に問題の点であるわけでございますけれども、まあ私どもの考えでは、今日の段階ではこれで一つ出発をして、そうして将来の問題として段階的に今のようなことに、先生御指摘のような方向に向かっていったらどうであろうか、非常にこの表現が的確でございませんで御理解がいただけないかとも思いますが、そういうような考え方でこの法律案を準備いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/53
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054・坂本昭
○坂本昭君 関連して。先ほどから指摘しておられる片岡委員の御指摘は私も全く同感であります。で、ただいま局長は両々相待って穴を埋めていきたい、こういう説明がありまして、その説明の意味はよくわかるのです、わかるのだけれども、ちっとも埋まっていないと思う。特に児童福祉法が昭和二十三年にできて十数年たっている、従って、児童福祉法ができて一、二年というならばともかく、十数年もたって、そうしてたとえば児童福祉施設については、国が設置するということが明確に規定せられて、国が設置する児童福祉施設の中で模範的な措置が十数年とられてきているはずである。従って、今度精神薄弱者の福祉法ができるような場合には、従来の児童福祉法の線を単なる特殊法として見るのではなくて、さらにそれを伸ばすような法律を作るべきであったと思う。ことに児童は育っていくものであります。先ほど十八才の問題が出ていましたが、十八才までの精薄児は保護されますが、十八才を過ぎた場合の措置というものは当然この法律で守らなければならない。前日も私は質問しまして、秩父学園の例も出ましたが、なるほど秩父学園では十八才をこした場合、数年見ることのできるようなことは一応規定として定められてはある。しかし、現実の問題としては、片岡委員の指摘された通り、全国にはどこにもできていない、そういう状態の中で、結局秩父学園では十八才を過ぎた者は現実に守られていかない、だから私はこの際、前回伺いました例の国の負担の項目に、その中にはっきりと国の設置する精神薄弱児施設ということを入れておくべきであったと思う。もちろんこれを入れたならば、三十五年度の予算に計上しなければならないということも生まれてくるおそれもあったでしょう。しかし、まあ三十五年度については申しませんが、二、三日後になって、三十六年度の予算を組むときに、あなた方は組み得るように先ほど段階を置いて言っておられましたけれども、その段階は非常に早い段階で、私はこの法律が通った後にすみやかに修正をして、国の設置する精薄施設に入所させた者については、国がその費用を見るという項目を私は当然入れるべきだと思う。そうしないと、児童福祉法との関連においても平衡を私は失すると思う。これは大臣にもあらためてまた伺おうと思いますが、技術的な問題として、私は局長がそういう決意を持っているか、少なくとも三十六年度の予算を組むときにはこれは考えていただかなければならぬ点だと思う。その一点を一つあらためて、これは片岡委員の質問にも直接関連しておりますから、この際伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/54
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055・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) ごく卒直にお答えをいたしますと、実は国が直接設置、経営をする施設に関する規定もこの法律案の中に実は盛り込みたかったわけです。しかし、これはいろいろ政府内部の検討におきまして、予算も通っておりませんし、かつ、法律案立案の常識としてこれが入れられなかった、しかし、将来私どもは、国が直接経営をいたしまするおとなの施設につきましても作って参りたい、こういう考え方を実は持っておるわけです。ただ、これがいつの時期に、三十六年度に実現をするか、三十七年度に実現をするか、この時期の点につきましては、ここで何とも申し上げるわけには参らぬと思いますけれども、できるだけ早い機会に、さようなことも私どもとしては考えて参りたいという希望でございます。
それからまあ、事の前後を言うわけではございませんが、私は国立の施設というものもこれは確かに必要でございますが、それより以上におとなの施設につきましては、全国にまだ今年度、三十四年度に三カ所できただけで、都道府県にこういう施設がまず普及していくということもこれは忘れちゃならないことだと思います。国立の施設の持ちまする使命というものはいろいろあると思いますが、一つには処遇の方法なり研究なりというふうなモデル的な意味合いが相当強い。しかし、都道府県にできまする分は、現実に収容をして福祉をはかっていくということに目的があるわけでございます。その方が、何しろ子供の方は百幾つもあるのに、おとなの方については全く今のような状態ではこれはどうも工合が悪いと思います。従って、この方を拡充強化いたしまして、当面の目標としては、早い機会に、全都道府県に少なくとも一カ所ずつというふうなところを目標に、できるだけ早い機会にこれを充実をして参りたいと考えておるわけでございます。しかし、これを先にして国の方の分にあとにするというつもりではございませんけれども、しかし、さような非常に急ぐ施設もあり、それらと両々にらみ合わせて、将来の問題としては国立の施設も持って参りたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/55
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056・坂本昭
○坂本昭君 今の点についてさらに申し上げたいのですが、なるべくすみやかにということはわかりますが、十八才の者が十九才になることはこれは必然的なことであって、従って、そういう意味で、当然児童施設の延長されたものとして私三十六年度の予算の中には作るべきだ、そういう一つの時間的な、私は物理的な要請もあるので、その点は私はむしろ積極的に財政当局にも御要請なさってしかるべきだと思うのですが、これが一点と、もう一つ、なるほど地方にたくさん設置するということも必要ですが、この問題の性質上、非常に研究を要する困難な私は施設だと思う。そういう点ではやはり国立の施設をたくさん作れとは言いません、指導的なものを、国でなければ研究のできないものを、ごくわずかでもいいですが、これはモデル的なものとして当然作るべきではないか。だから、むしろあなたの説明を裏を返して言えば、二つの理由のゆえに裏を返して言えば、国の施設を、モデル的なものを速急に作る必要がある。私はそういう点で皆さん方のお考えをうしろから大いに推進していきたいというので、あなた方の明確な決意をもっとはっきりしてもらわぬというと、こちらにも都合があるということなんです。で、二、三年あとということじゃなしに、私は三十六年度にはぜひともこれを実現させていただきたい、片岡委員のお気持も私は多分そこにあるだろうと思うので、あえてその点をさらにもう一ぺんお尋ねしておく次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/56
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057・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 将来国立の施設を直接持つことにつきましては、十分な努力をいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/57
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058・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/58
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059・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 速記を始めて下さい。暫時休憩いたします。
午後零時三十六分休憩
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午後二時六分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/59
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060・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) それではただいまから再開いたします。
委員の異動について報告いたします。三月二十九日付をもって久保等君が辞任し、その補欠として江田三郎君が選任されました、報告をいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/60
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061・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) この際、身体障害者雇用促進法案を議題といたします。
ただいま政府からは、労働省堀職業安定局長、住企画課長、木村雇用安定課長、労働基準局からは上原監督課長が出席をしております。警察庁からは町田防犯課長、文部省からは辻村特殊教育主任官が出席をしております。質疑のおありの方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/61
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062・坂本昭
○坂本昭君 すでに私たちは、この前の三十一通常国会のときに身体障害者雇用法案を提出しまして目下継続審議の中にございます。われわれとしては、雇用の基本問題はもちろんのことでありますが、特にこうした身体障害者の雇用問題を促進するということは、労働問題の基本的な面に多々触れる点があるのであって、今回政府がおそまきながら雇用促進法案を提案されてきたことは確かに一歩前進だとは考えます。また、すでに先般労働大臣の提案理由の説明の中でも、国際労働機関の三十八回総会で、身体障害者の職業更生に関する勧告が採択されたということに触れておられたこともまことにもっともだと思います。ただ、今回の政府提案は、なるほど一歩前進には違いありません。しかし、一歩前進であるけれども、国際情勢、文明国における労働雇用問題から見るというと、すでによその国は五十歩ぐらい前進している。その五十歩ほど前進している中で、一歩前進したと言って自画自讃されても、これでは私は日本の国民としてはまことに不満足な点が多いと思うのであります。先ほど申し上げました通り、この身体障害者の雇用の問題は、単なる身体障害者ということにのみ関することはでなくて、いわば雇用問題、労働問題にヒューマニズムの息吹きを吹き込む手がかりだと私は信じております。従って、政府並びに与党の皆さん方ももっと熱意を入れて審議をし、また、この問題に取っ組んでいただきたい。今日の労働状況は、御承知の通り、労働状況だけじゃございません、全部が弱肉強食、そういった最も悪い自由主義の現われが私は日本の社会のすみずみに見えておると思う。あまりにも弱肉強食が露骨過ぎる。そういう点でこの身体障害者の雇用の促進の問題について最初に私は触れていきたいと思います。外国ではどこでも身体障害者の雇用問題は相当に促進せられておりますし、特に第二次大戦後、この戦争犠牲者、身体の障害を受けた者もある、あるいは未亡人になった者もある、あるいは遺児になった者もある、こういう人たちに対して非常に積極的な施策が雇用の上においてはかられている、しかもこれらが全部同じように、なるほど未亡人は身体障害者じゃない、あるいは戦争の遺児もそうじゃない、けれども西ドイツの立法などを見ると、明確にその点が取り上げられている。アデナウアー首相が来て、明後日の午後はそれで時間がとられて審議はできないというようなことを言っておりますが、そんなアデナウアーの外交方針などに私はかかずらう必要はないと思う。アデナウアー首相の施策の中でいい点は、たとえば身体障害者雇用法——この西ドイツの雇用法の中では、戦争未亡人、戦争遺児、あるいはナチスの迫害によって障害を受けた人、こういう人たちの優先雇用というものが明確に取り上げられている。むしろ私はそういう点について、アデナウアー首相に来てもらって、委員会で身体障害者の雇用問題の説明を聞いた方がまだましじゃないかとさえ思うのです。率直に申し上げると。今度の政府のこの提案は、羊頭を掲げて狗肉を売っている、そういうたぐいじゃないかと思う。知っていない人は非常に歓迎しています。早く通してくれ、通してくれと言う。だから、実は私たちも非常に立場上苦慮している点がある。こんな悪い法律を出して結果的にどうなるか。しかし、この名前は、身体障害者の雇用を促進する、これに反対するわけにはいかぬ。名前はいいのですよ。しかし、この内容は、私は非常な問題点を多数含んでいると信じております。で、よく知っている人ほど、特に身体障害者の雇用関係に熟知している人ほど、むしろこれは悪法になりはせぬかということを憂えております。つまり、身体障害者の雇用の促進にならぬじゃないか、つまりこの法を悪用されることによって、今までは、たとえば小児麻痺の人、あるいは脳性麻痺の人たちで中小企業には採用されておった実例がある。ところが、こういう法律が通ると、あとでまた触れますけれども、この身体障害者の規定の中には、人さし指と中指とこうなかったら、これだけで身体障害者になるんですよ。それから足の親指が一本なかったらそれで身体障害者になるのですよ。これだけなくっても仕事はかなりできる、足の親指がなくてもダンスだって何でもできる、今までそういう人はくつをはいていれば別に見えませんし、身体障害者というこのふれ込みもなかった、ところが、今度これが出てくるというと、足の指がなかったら身体障害者、あなたは身体障害者で、今度の雇用率の中で大事の数だから、一つあなたはここへ入ってくれということによって、むしろ企業によっては今まではあたたかい気持の上から、ヒューマニズムの上から雇用されておった人たちが、むしろ法律によって締め出しを食うという危険性もある、つまり軽い身体障害者が、この法律によってその自分の地位を安定化して、ほんとうに必要とする身体障害者の雇用の促進の道がはばまれるのではないか。なぜこういうことになるかというと、この法律の大事なきめ手が抜けているからです。私はそう思わざるを得ないのです。で、ほんとうに雇用の促進を必要とする人、これはまあ先般も日雇健康保険のときにも触れましたが、日雇労働者だとか、あるいは戦争犠牲者だとか、身体障害者だとか、こういう人たちをほんとうに雇用する一体意思を持っておられるのかどうか、私はまず最初にその根性の問題から、根性がちょっと悪いのじゃないかと思うので、まずその点をよく承っておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/62
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063・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 身体障害者雇用の問題につきましては、御承知のように、現在身体障害者が各地域におきまして多数存在しておられるにもかかわらず、その雇用状況は必ずしも良好とは言いがたいものであります。労働省におきましても、従来は、職業安定機関の行政指導と啓蒙によりまして、事実上この身体障害者の方の雇用を促進するという方法をとって参ったのでございまするが、やはり現状を見ますると、一般人と比べまして、身体障害者の失業率、あるいは身体障害者の雇用率というようなものが非常に悪いという状況であります。やはり単なる事実上の指導では限界がおのずからありはせぬかということを考えておるわけであります。そこで、諸外国の例、それから坂本委員が非常に御熱心に提唱しておられます社会党の身体障害者雇用法案等を参考にさせていただきまして、それらの気持を十分に取り入れまして、身体障害者雇用促進協議会という協議会を労働省に設けまして、労使、それから身体障害者の関係者、学識経験者等にお集まりいただきまして、われわれの考え方を述べて御審議を願ったのでありまするが、今回、その成果として作成いたしましたのが、提案いたしました身体障害者雇用促進法案であります。
そこで、この身体障害者雇用促進法案につきましては、われわれは今のようなヒューマニズムの考え方を基本としまして、恵まれない身体障害者の雇用を少しでも多く伸ばしていこうという気持に出発しておるのであります。この内容につきまして、あるいは、たとえば雇用比率の設定にしても、いま少し罰則等を設けて、強制雇用的な色彩を強化すべきであるとか、あるいはもう少し突き進んだことを規定すべきであるというような、いろいろな御意見もあると思いますが、とにかく最初先生の言われましたように、この法案は、今までの状況に比べましたならば、一歩もしくは数歩の前進であることは、これは間違いのないところではないかと私は信ずるものであります。また、この雇用比率の設定にあたりましては、今回の身体障害者雇用促進法案の身体障害者の定義が、軽い者を包含するような法律になっておる結果、結局、重度の者が軽んぜられることになりはせぬかという御心配もあるわけでございます。これは私どもそのようなことも考えまして、いろいろ検討はいたしたのでありまするが、結局、今回のこの法案の別表に掲げましたものというものは、やはり何らかの意味におきまして、作業能力に欠陥があるという方を包含するつもりで入れたのでございまして、やはりここに掲げてあるような方々は、一般人と比べまして、最も就職にあたりましては不利な立場にあるということは間違いはないわけであります。従いまして、やはりこの身体障害者の雇用促進法案を実施するためには、この程度の方もこの中に入ってもらった方がいいという考え方でこれに取り入れたわけでございますが、雇用比率の設定につきましては、これはお手元に差し上げました資料にも若干記載しておきましたけれども、おおむね現行の雇用状況を見まして、その倍程度の雇用を達成しようというねらいに立っておるのであります。従いまして、これによって身体障害者の雇用促進が大きく推進されるということは間違いないところである。軽い者ばかり入りまして、重度の者が保護を受けないというような御懸念に対しましては、この法案に、職業安定機関の使用主その他のものに対するところのいろいろな指導について規定がしてございます。援助についても規定がしてございます。また、適応訓練というような新しい制度も取り入れておるわけでございます。これらのものを活用いたしまして、重度の方に対しまして、その方が軽度の者に比べてさらに保護を加えられますようにわれわれとしては配慮して参りたい。これを要するに、われわれの気持は、純粋に人道的な立場から、一般の国民に比べて不利な条件にある身体障害者に対しまして、その雇用を少しでも前進させたいという、全くの人道的な考え方から作成したものでございまして、われわれとしてもその法案と並びまして、今後職安行政機関を通じまして大きな運動を展開していくことによりまして、身体障害者の雇用促進をはかることに努めたいと考えております次第でございますので、御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/63
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064・坂本昭
○坂本昭君 あなた方のこの雇用促進の目的は、ただ身体障害者の職業の安定をはかるということに尽きていると言うと語弊があるかもしれませんが、ただそれだけのことで、それさえ果たすことができたならば、それでもなおけっこうですけれども、私は現在安定している人の、その職業の安定を促進する結果になりゃせぬかということを一番おそれているのです。それで、今局長は人道主義の、ヒューマニズムの立場に立ってこれをやっていくという決意のほどを述べられました。それでは行政的に具体的な計画、この法律が通る四月一日から具体的にどういうような方法をとって、具体的に何人の人をいつまでに雇用する計画を持っておられるか。これはこの法律の精神にのっとった具体的な計画、その内容を御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/64
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065・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) この法案が成立いたしましたならば、早急にこの法案にございます身体障害者雇用審議会の委員を委嘱いたしまして、これを早急に発足願いまして、そうしてこの審議会の御意見を伺いまして、この法律の中にございまする規定を重点的に実施して参りたい考えでございます。
そこで具体的に申し上げますると、まず第一に、この法案の中核であります雇用比率の設定の関係でございます。大体これはわれわれの一応の推定でございますので、若干の見込み違いがあるかもしれませんから御了承願いたいと思いますが、われわれの一応の推定によりますと、この法案の対象となる身体障害者の数は大体九十六万人とわれわれは推定をしております。このうち新たに常用雇用者として就職することを希望する者の数は、大体いろいろ推定をいたしまして八万三千人程度であろう、このように考えております。そこで、現在の雇用状況について見ますると、国及び地方公共団体等におきましては約二万五千人の身体障害者が雇用されております。それから民間の事業所、これは従業員十人以上をとりますると六万三千人程度が現在雇用されておるわけでございます。そこで、大体現在の国と地方公共団体等と、それから民間の事業に分けて雇用されておる率を見ますると、大体国、地方公共団体等において雇用されております身体障害者の比率は〇・六九%でございます。それから民間事業者におきましては〇・六五%でございます。そこで、われわれといたしましては、これは身体障害者雇用審議会にお諮りしまして、その雇用比率を具体的に設定いたしたいと思っておりまするが、一応われわれの基本的な考え方といたしましては、さしあたりこれを約倍にするということを考えております。従いまして、国それから地方公共団体等の機関にかかる雇用率を一・五%程度ということを考えております。ただし、その中でも相当重度の作業を必要とする国鉄とか、林野関係というようなところは、若干これはその事業の性質を見まして雇用比率を少し下げるということも考えておりますが、それについても一%以上にはいたしたいと、このように考えております。それから民間事業所につきましては大体一・三%程度にいたしたい、これもやはり事業の種類によりまして、現場に重度作業の多いようなところにつきましては若干比率を下げますが、これもやはり一%以上は確保するようにしたい。大体従いまして原則としては、国、地方公共団体等につきましては一・五%、それから民間事業所については一・三%程度の雇用比率を設定いたしたい、そのようにして考えてみますると、今回のこの措置によりまして、国、地方公共団体等において新しく二万三千人、それから民間事業所において六万人、合計八万三千人の身体障害者の方を就職させる、このような目標を作って推進して参りたいと考えておるわけでございます。これにつきまして、その時期をどのくらいにするか、どのくらいの間にこの倍増を達成するかという問題でございまするが、これも審議会にお諮りしまして、産業、企業の実情等を考えつつ、またしかし、あまり考えまして現状より進まないということではいけませんので、それに前進の目標を入れまして、この数カ年の間にこの倍増の計画を達成するということを目標にいたしまして、この民間、地方、国、公共団体に対するところの雇用比率の設定の政令を公布、実施いたしまして、そうして国、民間事業所等において計画を立てて、この目標に向かって充足させていくということを推進いたしたい考えでございます。それと並びまして、こまかな点は省略いたしますけれども、適応訓練という章がございまするが、これは身体障害者につきましては、やはり職場になかなかとけ込みにくいものでございます。従いまして、その職場環境に早くなれるため、都道府県が身体障害者について作業の環境に適応することを容易にさせるということを目的にして適応訓練を行なうことになっておりますが、これは使用主に委託するという形で実施いたしまして、国、地方公共団体が、国と都道府県が二分の一ずつの負担をいたしまして実施をして参りたい。このようにして、身体障害者が新しい職場に早くとけ込めるようにわれわれは考えて参りたい、まずこの二つの点を実施するとともに、あとは職業安定機関の体制を整備いたしまして、この法律に書いてありますいろいろな指導、援助等につきましても積極的に推進して参りたい、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/65
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066・坂本昭
○坂本昭君 今の説明の中で私の求めたのは、つまり行政的な具体的な計画ですが、大事な二点について、もう一ぺん確かめておきたい。それはこの雇用率ですね。まあ率そのものについても、後ほど検討してみたいと思いますが、この雇用率を達成させるために数カ年ということを言っておられますが、これは数カ年というと、二年から九年までが数カ年だと思いますが、そういうあいまいなことでは困るのですね。あと九年かかってこの雇用率を達成したいというようなことでは、はなはだたよりない。あなたは一体この行政を促進するために何年でやるのか。少なくともこの法律の中には何も書いていないのですよ。その点あとの政令にゆだねるとか何とか書いてあるかと思ったら、それも何も書いていない。そんなことではほんとうに絵に描いたもちになってしまう。もっとその点明確にしていただきたい。今の雇用率に達成するまでの期間、何年ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/66
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067・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、身体障害者雇用審議会にお諮りいたしまして、その御意見を十分参酌いたしましてきめたいと思っておりまするが、大体われわれの一応の考え方といたしましては、おそくとも五年程度、五年以内というふうに考えております。しかし、なおこの実施につきましては、いろいろ関係者の方に御意見をお伺いいたしまして、そうして産業、企業の実情に即するとともに、われわれの考えておりますこの身体障害者の雇用を促進するという立場を基本といたしましてきめて参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/67
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068・坂本昭
○坂本昭君 私が羊頭を掲げて狗肉を売るのたぐいだと言ったことは、まあ雇用率を設定しても、その雇用率に達するための行政の足が実は出てきていない。たとえば今五カ年以内ということを言われましたが、早くやろうとすれば、これはそのためのかなり専門的な技術あるいは能力を持った人がこの問題を扱う必要もあるのではないかと思うのです。なるほど適応訓練といったこういう考えは悪くはありません——悪くはありませんが、労働省の考えの中には、身体障害者を何か特別扱いにしているような感がなきにしもあらず。足のない者には義足をつけて、そうしてそれで訓練をさせて仕事に従事させる。ところが、実際は、身体障害者に聞いてごらんなさい。何も義足をつけてそうして働くような訓練をしてもらわぬでもいい。足なくたって仕事は幾らでもできる。そういう根本的な問題も一つありますが、それよりも一番心配するのは、職業紹介等という第二章の中にいろいろ書いてあります。多分これは公共職業安定所でこの事務を取り扱っていくのだろうと思うのですが、一体この職安の中で、今後の問題を一体だれが専念をして取り扱うことになりますか。また、この法律ができたときに、これを推進する一番第一線に立つ人はだれか。また、そういう人は何人くらいおるか。そうして今のあなたのお考えのような八万三千人をどうやって掌握するか、その職安行政の第一線をどうするか、その説明を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/68
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069・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 身体障害者の取り扱いにつきまして、私どもは今、坂本委員御指摘のように、できますことならばなるべく特別扱いをしないで参りたいということが理想であると考えております。しかし、まあその身体障害の状況によりまして、どうしても特別扱いをせざるを得ないという方につきましては、何というか、劣等感を味わわせるようなことなしに扱いまして、やはり特別な保護を与えるということが必要ではないかと考えておるわけでございます。そこで、適応訓練につきましては、この雇用促進法の中に新しい制度として設けたのでございまするが、訓練につきましては、私どもは、これと並びまして現在の職業安定法、それから職業訓練法に基づきますところの職業訓練所におけるところの訓練、これをさらに拡充して参りたい考えでございます。これにも二通りございまして、一般の職業訓練所と、それから身体障害者の特別の訓練所がございます。この特別の訓練所につきましては、現在八カ所ございます。これは相当重度の身体障害者を収容して特別な訓練をしております。それから一般の職業訓練所におきましても、これは軽い身体障害者でございまして、一般人と同様の訓練ができるという方につきましては、差別をせずに、これにもなるべく収容して参るように考えて参りたい考えでございます。
それから次に職業紹介でございます。これにつきましては、職業安定所に職業紹介官という制度を昨年から設けまして、もっぱらこの職業紹介、職業指導というケース・ワークに当たらせることにいたしまして、これはこの窓口で人に接触し、指導するという仕事につきましては、やはり相当練達の公務員が当たることが必要である。あまり経験のない者、あまり若くて、未熟な人が接するようでは、その人の一生を左右するような問題の指導相談にあずかることはできないのじゃないか、こういう考え方で職人紹介官の制度を設けまして、これは全国で五百人くらい置かれることにしております。もう大体その四分の三程度は補充をいたしまして、残りも早急に補充したいと思っております。このような方々が職安の窓口に配属されまして、そうして、このような身体障害者の関係について具体的な指導、相談を行なうというふうに考えております。それから、なお、比較的大きな職業安定所におきましては、もう身体障害者専用の係を設けまして、そうして、ここにおいて身体障害者について特に御指導を申し上げる、こういうようなことも現在実施しているところがございまするが、こういうようないろいろな組織を活用いたしまして、われわれとしては、身体障害者に対しまして、できることならば、一般人と同様な扱いをしますが、やはりその身体障害の状況によりまして、特別な保護を必要とするような方については、劣等感を与えるようなことを避けつつ、特別の御相談と御指導を申し上げて参りたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/69
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070・坂本昭
○坂本昭君 最初から少しこまかいことをお聞きするようですが、私は具体的にこの八万九千の人が雇用促進される、そのためにこの法案並びにそれに伴ったことが十分整備されているか、それが心配なので、重ねてこの職業紹介官の問題についてお尋ねをしたい。今承ると、五百人でまだ四分の三しか補充されていない。そうしてこの法律は、この四月一日から実施する。かりに八万九千の人の八万三千の雇用を確定するとして、かりにこのこの五年以内ということですが、やはり二十万名くらいの人を対象として、その中から選んでいくということになりはせぬかと思う。そうすると、今五百人としても、一人で四百人くらい受け持たなくてはいけない。はたしてこの職業紹介官が数の上ででき得るかどうかということが一つ、それともう一つ、私もあなたのところの職業安定の仕事を熱心にやっておられる尊敬するあなたの部下である公務員を知っております。実によくやっておる。ところが、このよくやられる方は、まずその気持の上において非常に人道主義的な考えが強くないとできないのです。小児麻痺の子供や、脳性麻痺で動けないような人を、これは主として現在のところでは中小企業のそういうところへ紹介をし、そうしてその人の一生の安定をやるためには、なまやさしいことではできない、そういうことをよくやってこられた人を私知っておるのですが、そういう人ができ上がるためにはなかなか簡単にはいかないのですよ。ことに身分の点あるいはそうした熟練された人がその地位が保障されるという点、そういう点がうまくいかないと、こういう生きものを、生きものの中でも特にデリケートな問題を扱う行政はうまくいかない。で、私はその数の点ですね、今のような一体これだけの職業紹介官がこの問題を解決できるかということと、それからもう一つは、今のような職業紹介官で、身体障害もやればいろいろとことをやる。そういうようなことではたしてその人が彼のヒューマニズムに徹底してこの身体障害者の雇用促進に専念でき得るか、この法律の一番の先の、扱う人の問題、それについて御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/70
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071・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) お話のように、特にこの問題につきましては、この仕事に携わる公務員がほんとうに人道主義的な考え方に徹しましてその職務に専念されることが必要であるとわれわれは考えております。それで、この問題につきましては、私どもといたしましては、その意味におきまして、これもただいま御指摘がありましたように、地位の安定した身分というものを確保してあげるようにしなければいけない。役所の中で出世主義に走りまして課長になりあるいは所長になるというようなコースばかりを目標にすることでは結局今のような人たちは育たないのではないか、このように思っておるわけでございます。そこで、ただいまも申し上げました職業紹介官という考え方は、今の考え方に立ちまして、この職業紹介官という人は、別に課長とか所長とかというポストにつかなくても、やはり給与なりその他身分につきましても安定させるということをねらったものでございます。この職業紹介官の方につきましては、そういう意味で職階の面におきましても安定性を保持させる、こういう考え方で設けたものでございます。それからまあただいまのところ五百人という数になっておりますけれども、私どもはこの五百人で、はたして足りるかと言われますと、これで十分だとはっきりここで断言する自信は持っておりませんけれども、しかし、これだけの方が各職業安定所におられまして、そうしてその職業紹介官を補佐する係員ももちろんつけるわけでございまするから、これらの人が一緒になりまして、この身体障害者の職業紹介、職業指導に応ずるという態勢をとって参りますれば、われわれの考えておりますこのような仕事を、努力は要しますけれども、推進していけるのではないかと思います。なお、やってみまして、今後の情勢によりまして、さらにこれでは不足だということがありますれば、われわれとしては、さらに第三段、第三段と整備の拡充に努めて参りたい、これは相手のある仕事でございまするので、われわれとしても大いに努力しなければなりませんけれども、われわれとしては、そういう面についても今後さらに第二段、第三段と内容を充実させることに努力して参りたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/71
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072・坂本昭
○坂本昭君 今度の法律の皆さんの目的と、先般私たち社会党の出しました雇用法の目的とこれを読み比べてみますと非常な差があるのであります。政府の目的とするところは、「身体障害者が適当な職業に雇用されることを促進することにより、その職業の安定を図る」ということであります。で、先般私が説明をいたしました身体障害者雇用法の第一条「(目的)」には、はっきりと「憲法第二十七条第一項」、つまり「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」、この「理念に基き、労働の意思を有する身体障害者のために公平な就職の機会を確保」する、公平な就職の機会を確保する、そうして、「もってその自主独立と生活の安定を図ることを目的とする。」つまり公平な就職の機会を確保することと、それからもう一つは自主独立と生活の安定、こういうふうに明確な規定をしておる。そういう点が労働省のいろいろな労働行政の法律を見ましても、労働者の生活の安定をはかるというような面が非常に薄い。で、私は、こういう点が結局この法律のすみずみに至るまで、なるほどあなたは一歩前進だと言われたけれども、外国の身体障害者雇用法に比べると、まだまだはるかにおくれているとい争点を私は指摘せざるを得ない。で、これはもう皆さん方御承知だろうと思いますけれども、いかに一歩前進であっても、外国の五十歩、百歩に比べたらおくれているということの具体的な例を簡単にここで私は披瀝をしておきたいと思う。たとえばイギリスの障害者雇用法では、割当雇用の標準は三〇%です。今一・五%がようようだといって、これでさえもだいぶあっぷあっぷしておられますが、イギリスの場合は標準割当率二〇%、それから職業の留保は、御承知の通り、有名なエレベーターの運転手、それから駐車場の番人、非常に明確に規定してある。それから罰則がある。罰金または三カ月の拘禁。きついですよ、なかなかきつい。アメリカの場合は傷痍軍人及びその妻、奥さんまで入っています。あるいは未亡人、こういう人も範囲になる。それから就職の場合の競争制限、官庁の守衛、エレベーター運転係、メッセンジャー、それから管理人、こういったものは障害者の優先的に雇われる。それからブラジル、ブラジルでは割当雇用は二%です。ブラジルは後進国とは言いませんけれども、ブラジルでさえも二%。それからブルガリア、割当雇用一〇%。チェコスロバキァ、割当雇用約三%。オーストリア、割当雇用、約五%、官公庁の場合には五%とはっきりきまっておる。オランダは割当雇用、約二%、これは官公庁と民間で少し違いますが、約二%、そうしてオランダも罰金がある。イタリアの場合、割当雇用一〇%、罰金がある。そうして結核の回復者なども明確にこの中に入っている。おもしろいのは、この罰金はイタリアの場合は国立身体障害者保護援助協会へ交付するとなっている。それからイスラエル、イスラエルなんというものは、こういう国でさえも割当雇用五%それから職業の指定、皆さんのあとで説明承りますけれども、イスラエルあたりでさえも職業の指定に、出札係とか、倉庫の監視係、学校の管理人、エレベーターの操作係、簡易食堂の販売人、案内所の書記、こういうふうに丁寧に規定してある。ユーゴスラビア、割当雇用一〇%、それから罰金がある。東ドイツ、割当雇用一〇%、それから先ほど言いました西ドイツでは、ナチスの迫害によってけがをした人も入っているということを申しました。それから戦争未亡人も入っている。さらに傷痍軍人の妻も入っているということを申しました。割当雇用は約八%、もちろん雇用率の調整があって四ないし二〇%、高いところでは二〇%、西ドイツでは精神障害者も入っている。それから有名な罰金ですね。西ドイツの場合は罰金をぴしぴし取る。補償金を取る。これで身体障害者の住宅を建てている。あるいはフランス。フランスの場合も、戦争未亡人、それから二十一才未満の戦争遺児も入っている。割当雇用は最高一〇%です。そしてフランスの場合も罰金がある。これが外国の状態で、あなたが一歩前進と言うのはけっこうだけれども、日本のこの法律と比べたら、向こうは、五十歩どころでないですよ。百歩も二百歩も進んでいる。こういうことでは、今度できたこの法律は全く絵に描いたもちならまだ絵があるだけでもいいので、一体これはほんとうに役に立つのだろうかということを私は指摘せざるを得ない。
そこで、この身体障害者の雇用については、大きな問題点は三つあると思うのです。第一は、強制雇用、つまり権力をもって割り当てるということです。政府は、ともすれば権力を変な方に振り回してしまって、大事なところに——弱い人たち、こういう人たちを守るために最大の権力を使うことを実は怠っている。当然これは強制割当をしていくべきだと私は思う。そうしてまた、そのためには罰則をつけなくちゃいかぬ、強制割当に。今幾らどこを読んだって、そんなこと一つもない。どういうふうに実際やっていくか。あなたはまあ五年以内に八万三千人を雇用させるというのですが、ずっと読んでみますと、まず第十一条では、「身体障害者の採用に関する計画を作成しなければならない。」計画を作成しなければならぬ。それから、計画を作成した任命権者等に対して、その適正な実施に関する勧告を行なうことができる。これが第十二条ですね。勧告を行なうことができる。それから十三条では、雇用率以上であるように努めなければならない。十四条では、身体障害者の雇い入れに関する計画の作成を命ずることができる。それから、同じ十四条の第三項には、不適当な計画のときには変更すべきことを勧告することができる。勧告ですよ。十五条になると、「重度障害者の採用に関する計画を作成しなければならない。」計画ですよ。「雇用せしめなければならない」ではなくて、「計画を作成しなければならない。」それから、同じ十五条の三項には、これも雇用率以上であるように努めなければならない。それからこうして見ていきますと、勧告をしたり、計画を作らなければならない義務規定はあるけれども、ほんとうに身体障害者の雇用されなければならない義務というものはどこにも書いてない。そして、それを怠った場合に、政府の持っている唯一の権力、その権力で、お前はいかぬということを、企業主に対し、あるいは任命権者に対して要求し、命令することが一つも書いてない。こういうものは私は法律じゃないと思う。これで身体障害者がどこに雇用が促進されるかと私は言いたいのです。今の罰則のない点と、それから今の少しも強制力がないという点。これについて御説明いただきたい。次官も御意見がございましたら一おつ漏らしいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/72
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073・赤澤正道
○政府委員(赤沢正道君) まことにごもっともな御発言でありまして、私たちもそうありたいと実は願っておるわけです。外国の例をたくさん並べられましたが、先進国の場合は、いろいろ経済力も日本と違った面もありますし、長年社会保障面で積み重ねたものがありますので、今の日本の状態とはかなり懸隔がある。日本が立ちおくれておることはこれは事実であります。外国の例はつまびらかにいたしませんが、先般の戦争の結果、非常に多くの戦争犠牲者が出て、これはやっぱり国家が命令した崇高な任務についたわけですから、やはり全国民こぞってこういった人を苦しましちゃいかぬということがこの立法の大きな動機になったんではないかと想像もしておるわけでございます。しかし、日本は、戦後特殊な事情にありましたために、こういう傷痍軍人諸君へあたたかい援護の手を差し伸べることすら遠慮がちでできなかったことが、おくれながらやっと一般の身体障害者並みに今回取り扱われることになったのであって、大へんおくれておることは言うまでもないところでもありますが、ただ、やっぱり最初からちゃんと、こういう職種はぜひ傷痍軍人を使わなければならぬとか、あるいは使わない場合には罰則を適用するといったようなところまで、今の日本の経済状態ではやれないじゃないかというふうに私たちも考える。この間から労働省に私ども席をおくようになったものですから、私ども見ましても少し手ぬるい感じがいたしますけれども、まあバイ・ステップだという意味で今回これを提案をしておるわけでございます。数字の面を調べてみましても、やはり身体障害者の場合は、当然就職で不利を受けるのでございまして、一般の就職率と身体障害者の場合と比べてみますと、やはりよほど悪くなっております。当然でございます。自営業の場合は相当伸びて、比率からいたしますと伸びておりますけれども、やはり雇われる場合には非常に不利な立場に立っておりまするので、まずそれを一般並み以上にまで引き上げる道はないかということが、とりあえずこの立法の趣旨になっておると考えるわけでございます。
ただいま何か法案をお読みになったのは、手ぬるいじゃないかということでお読みになった。計画を立てるとか、勧告をするとか、努めなければならない、まことに弱い表現だ、これじゃ法律にならぬじゃないかという手厳しい御批判もあったわけでございますが、しかし、一応公務員だとか、あるいは一定規模以上の民間産業にも一つの割当基準をきめまして、そうしてこれを周知徹底いたしまして推し進めていけば、やはり次の国会では、その実績はどうだということが必ず問題にもなってきますし、所期の目的を達成いたしますために、今局長は、これは計算の基礎があると思いますので、五年間と申し上げましたが、私どもといたしましては、やはりこれは一年でも早くこの域にまで達せなければならぬし、それがはかばかしくなかった場合には、さらに、皆さん今御指摘になります通りでございまするので、もっとこれを煎じ詰めた法案として修正するとか、あるいは提案するとかということになると思います。ただ、身体障害者にあたたかい職業の確保の面で、またさらには一歩進んで、おっしゃる通りに、生活安定の面でもっと努めなければならぬわけでございますけれども、先ほども申しましたように、手ぬるいようですが、一歩前進というふうに一つお考えをお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/73
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074・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) ただいま政務次官の御答弁に補足して申し上げますが、先ほど外国の事例の御研究の結果をお話しいただきまして非常に参考になるわけでございますが、外国の諸事情によりましていろいろな沿革があるわけでございます。私ども、もとよりこの内容につきましては、たとえば雇用比率の設定についても罰則を課するということが一番進んだあり方である、徹底したあり方であるということにつきましては、その通りだろうと思います。ただ、外国の例を見ていらっしゃって御承知と思いまするが、十七カ国のうち、罰則を設けております国は六カ国でございます。その他の国については罰則はないわけでございます。それから今回提案いたしました法案につきまして、どうもきめ手がないのじゃないかというお話でございまするけれども、この十一条、十二条等の、「国及び地方公共団体、」——これは卒先垂範してまず身体障害軒を雇うようにしようということになっておりまして、十一条も、「身体障害者である職員の数がその身体障害者雇用率を乗じて得た数以上となるようにするため、」、「計画を作成しなければならない。」、こう書いてあるのでございまして、その目的は、この雇用比率以上に身体障害者雇用率を達成する、そのために計画を作るということで、これはもう当然のこととしてそういう具合になっておるわけでございます。これに対しまして、政令でその手続をきめることになっておりますが、労働大臣に協議もしくは通報するというような方法を政令で規定いたしたい、これによって、われわれとしては、今の率先垂範して身体障害者を雇用するという趣旨が徹底するようにわれわれとしてはやっていきたい、それから官庁同士のことでございますから、勧告とかいうことにしておるのでございます。これはもう守ることは、当然、国、地方公共団体は、当然率先垂範して、この点を比率以上にしなければならないことになっておるわけでございます。それから民間につきましても、この一般の場合には、計画の作成命令を規定しております。それから勧告等の規定があるわけでございます。これについて、罰則ではっきりきめたらさっぱりするじゃないかという考え方、それはもう一つの考え方であると思います。ただ、われわれ、実はこの一年以来、まあいろいろな考え方を参考にいたしまして、民間の労使、それから身体障害者の関係者の方々、学識経験者等にお集まり願って、協議会におきましてこの問題をいろいろ議論して、相当突っ込んだ議論があったのであります。そのときの気分から申しますと、やはり罰則をつけてやれと言われるのでは、もういやいやながら雇うようになる、それじゃかえって民間事業主においても何か押しつけられて雇うというような感じになるので、身体障害者にとっては、やはりそのようなことでなしに、まずさしあたり、これはもう最初のステップでございまするから、このような制度の方法によりまして、その気分を盛り上げていくということが適当なんじゃないか、こういう考え方が強かったわけでございます。そこで、このような工合にしたわけでございまするので、考え方においてはわれわれは目標は一致しております。要するに、次は方法論でございます。方法論につきましては、いろいろなことを実は私どもも考えてみたのですが、まずこの出発点にあたりましては、この程度のところで出発するのが適当じゃないか、私はこれは一歩前進じゃなくて数歩前進であると、このように考えております。
それからもう一つ、この社会党の法案との目的の考え方ですが、これはわれわれの考え方も同じことでございます。職業の安定をはかるということは、職業というのは、もとより生活を安定させるためにその職業につくわけでございますから、生活が安定しないような職業では適当じゃないわけでございます。そこで、われわれといたしましては、職業の安定をはかるということはもとより、その生活の安定をはかるために適当な職業の安定をはかる、こういう意味でございまするので、その点は御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/74
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075・坂本昭
○坂本昭君 労働省のいう安定というのは、日雇いの失業保険だって百四十円で安定しようというのだから、だからなまぬるい法律ではだめだと言っておるわけですよ。きょうは、あれはきのうで審議は済みましたから……。だから今の局長の言われた点ですね、官公庁の問題。私はさっき黙って聞いておれば、あなたは官公庁の方も民間の方も五ヵ年以内と言ったでしょう。これはそんなことじゃいけないのです。当然、官公庁の方は、一年なり二年なり、とにかくもっと早くなくちゃいけない。ところがあなたの方は、両方とも同じように五年以内と言っている、現に。私は、こんななまぬるいことじゃ何にもならぬというのは、すでに一昨年、官公庁が十六万人を新規採用しています。そのうち身体障害者はわずか七百六十三名です。そしてすでに身体障害者を優先雇用するという次官会議の申し合わせができたのが昭和二十七年であります。昭和二十七年のときの次官はだれでしょうか、吉武先生は大臣でしたね。そのときに、次官会議をやって、優先雇用をしなければいかぬという申し合わせがあって、それからもう八年もたっているのにかかわらず、一昨年の場合、十六万人採用の中にたった七百六十三人、これが日本のお役所のやることなんですよ。だから、そういう考えのもとに、こんなくらいの法律を伴っても役に立たぬということです。ほんとうにやる気なら、官公庁は、一つ三十五年度の採用について、どんぴしゃりとこれでやって下さい、一・五%にするために。一・五%にするためにはもっとたくさん雇わなければいかぬでしょう、だから、私はこんなことではだめだということを繰り返して申し上げておるんです。官公庁の方については、あとでもう少し議論しますけれども、具体的にこれはもう労働大臣のあれでできることです、もう少し具体的な官公庁についての雇用の促進の意見を聞かして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/75
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076・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) お話のような点につきましては、ここにございますが、国の機関におきまして、昭和二十七年の身体障害者雇用率、これは〇・三八%であったわけでございます。それが昨年の調査によりますと、〇・六六%になっておるということでございまして、まあ次官会議等におきまして、事実上努めようじゃないかというような申し合わせをした結果、不十分ではございましょうけれども、相当進んでおる。しかし、やはり不十分であると思います。私どもは、この事実上のその努力しようということだけでは不十分であるというその反省をいたしまして、その上に立って、だから法律を作って雇用比率以上にするという義務を課したわけでございます。その意味におきまして、単なる次官会議の申し合わせによって、事実上努力しようというようなことでは不十分である、それを今度必ずやるということにいたしたのもその趣旨でございます。法律に基づいてそのようにいたしましたので、これはまあわれわれ今後大いにこれを推進する責めがあるわけでございますので、今までとは違いまして、ずっと推進されることは、これは間違いないところであろうと思います。
それからなお雇用比率が、外国に比べて、一・五%、一・三%というのは少ないじゃないかという点も、これも非常に参考にさせていただいたわけでございますが、これは完全雇用をおおむね達成しております国と、労働力が過剰で、まあ雇用情勢があまりよくないというようなわが国におきましては、おのずからいろいろの違いがある。そこで、われわれといたしましては、この政令で定める雇用比率を、とにかく現在の倍にする、倍増に推進するということを考えたわけでございます。まあこれは、期間につきましては、私どもは有効に進むように一つやっていかなければなりませんので、協議会に諮ってさらにきめたいと思っておりますが、一応まあおそくとも五年以内、こう申し上げたことが、早く進めばそれにこしたことはないわけでございます。それから雇用比率を見まして、さらにこの政令で比率もそのときに応じて、また、弾力性を持たせるという考え方でさらに発展させていくという考え方が入り得るために、政令で雇用比率をきめるということで固定した率にはしなかったわけでございます。そういうようなことで、まずこれをとりあえず倍にするということでございますから、まあ諸外国の進んでおりますところと比べると、比率は少ないといえば少ないわけですが、とにかく倍にするということでございますから、われわれとしては、相当、いろいろこれに対するところの、実は率直に申しますと、反対意見もあったわけであります。そんなに、こんな倍にするというようなことを言われて、思いつきで言われても困るというような議論も一部には実はあった。しかし、それをまあ納得してもらって、とにかくここに踏み切ったということにつきましては、われわれとしても、まあ相当な努力を要したわけでございます。これをさらに進めまして、また、その実行の実績を見まして、さらにこれを前進させていくという方向に努力したい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/76
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077・坂本昭
○坂本昭君 次官にこの際お尋ねしておきますが、今の官公庁における雇用率の促進の問題について私は三つ問題点があると思うのです。
一つは、前回の次官会議のようなことではなまぬるかったので、今度は立法化し、その中にはまず国並びに地方公共団体並びに政府関係機関があります。それに対して具体的にどういうふうに指示するか、前の次官会議の申し合わせみたいなものじゃとてもだめですから、それを具体的にどうするかということ、これは労働大臣としての私は責任問題だと思う。これが一つと、もう一つは、新しくこの身体障害者を雇っていく場合、官公庁に雇うためには、身体障害者の中に能力のある人があるのです。前に私申したことがありますが、何か一つ欠けたところがあれば、その人はどこかに能力が伸びるのです。一官欠ければ他官これを補う、目の見えない人は非常に耳がよいとか、身体障害者の人は、公務員として働いても、私はまじめによくやる要素がたくさんあると思う。従って、そういう人たちを官公庁でとるために、やはり特殊な訓練、適応訓練ではありません、教育ということが必要だと思うのです。そういうことがここには何も出ていない、そういうことをやることによって、能力がある身体障害者を官公庁に雇用させるということも当然考えられなければならぬ、この二点について、これは次官のお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/77
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078・赤澤正道
○政府委員(赤沢正道君) 法律面から見ると、いかにも手ぬるいようですが、私どもといたしましては、これは真剣に実現させなければならないという決意を秘めておるわけでございます。あらかじめこの雇用率を達成するために計画をしなければならないということは、当然、官公庁などに人を採用いたします時期はきまっておるわけでございますから、あらかじめ労働大臣に協議をさせる、通報させるといったような方法を励行いたしまして、必ずその期ごとに計画いたしました率を達成させる、このことは非常に強い決意を持っておる次第でございます。
それから第二のことになりますと、坂本先生はお医者さんですから、なかなかそういった点お詳しいと思います。私は不具の、言葉は悪いのですが、どこかからだの機関に障害があるゆえに、非常に他の機関の能力が発達しておるという事実もまま私ども承知いたしております。これはやっぱり、その特に発達をした面をまた生かすということは最も必要なことでございますが、実は大へん御返事がいつもの通りますいのですが、目下そのことについては重大な関心を持って検討いたしておりますから、それで御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/78
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079・坂本昭
○坂本昭君 今の二番目の点について、これは身体障害者の人たち、若い人たちの非常な熱望であります。熱望でありますから、この適応訓練という、かなり金をかけているでしょう。金をかけておられますから、何らかこういうことについて、官公庁に就職の機会を与えるための、これは職業訓練でなくて講習会になるでしょう。金のかからぬ講習会ですよ、こういうことをおやりになっていただけるのかと聞いているのであって、それを検討中というのはどうも少しふさわしくないので、私はそれくらいの誠意があってしかるべきだと思う。金はかかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/79
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080・赤澤正道
○政府委員(赤沢正道君) 私は、法文にどこに読めるかという意味と聞いたものですから、そういうことですとありませんから検討中と申し上げたわけでございますが、もちろんおっしゃることは当然やらなければならぬことでありまするので、これはさっそく御趣旨の通りに実現いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/80
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081・坂本昭
○坂本昭君 それでは次に伺いたいのは、強制雇用では実はないのでありまするが、的確に雇用させて八万三千人に就職の機会を与えたいとなると、私は今度のこういう職業安定機関の紹介程度では実際的に僕はできないのじゃないかという心配がある。どうしてもこのためには登録制をとるべきだと思うのです。私の方の出したこの案の中では、先ほど局長も罰則のことを申しておられましたね。われわれの方にも罰則はないのです。罰則のかわりに、雇ったときに有利な条件、税の減税とか、そういう点で考えておって、その点はよろしいのですが、一番大事な違いは登録の問題です。つまりはっきりと、これこれこれの人が労働能力がある、意欲を持っておって、かつ失業している、こういう人をはっきりつかまないと実際に促進できない。そしてその結果は、足の指がないとか、手がこうなっているとか、たったこれだけのことで、ちょうど数が合うからちょうどいいじゃないかということでこの法律が悪用されるということを私は繰り返して申し上げているのです。たとえば、イギリスの立法では、登録制がかなり厳格にできております。これはやはりイギリスがやってみていろいろな隘路があったために、一九五九年の法律改正で登録制というものを実施するようになった。結局その目的は、雇用促進に必要なものを確認するということなんです。これがないというと、この法律は生きてこないのです。で、イギリスの場合は、その後だんだん老齢者が退職をしていくので、登録数がだんだんと減りつつある。結局、割当雇用率をイギリスの場合は下げているのです。日本の場合は将来上げていかなければならぬでしょうが、イギリスの場合はそういう完全雇用の制度がある、それでちゃんと登録はしておる。そういうことで、だんだんと雇用されていくと、雇用率をちょっと下げなければいかぬというようなことが起こってくる。私はなぜ皆さん方が登録制をおとりにならなかったかということ、これは登録制をとると、イギリスの場合あたりを見ますと非常に明確な数がわかってきている。たとえば障害者の種類による登録の数を見ると、いわゆる外科障害が四〇%程度、それから内科障害、これもあとで議論したいと思いますが三八・五%、精神障害が四・二%、つまりどういうふうな人たちが登録しておって、職業を求めているかということがきわめて明確になってくる。で、これを、皆さんの法律では登録制がありませんが、何かこれにかわるところの具体的なものを持って、今度の法律案の実行を御検討しておられるか、その点を一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/81
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082・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 職業安定機関におきまして、これはこの法律作成前から実はテスト・ケースとして実行しておることでございますが、職安に対しまして就職を希望する身体障害者に対しましては、任意登録制を実行しております。これを昨年から全面的に広げて参っております。これは私は、この法案作成にあたりまして、現場の職安を回りまして見て参りました、みずから見て参りましたが、これは一般の求職者につきましてもカードを取っておりますが、これは一定期間が過ぎますると、廃棄するようになっております。しかし、身体障害者の方につきましては、これは永久保存ということにしまして、求職したときはいつであるか。それから紹介してどこに行った。それからどこでこういうことがあって退職した。それからまたどこへ紹介した。それからどこに働いておる、あるいは現在職がなくてさらに求職中であるというように、その登録票、これを永久保存という形で実行しております。これをこの法律の実施と並行いたしまして、全面的に実施して参りたい考えでございます。従いまして、事実問題といたしまして、先生のただいまの御指摘になりましたような方法によって処理されることになるだろう、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/82
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083・坂本昭
○坂本昭君 それでは次の問題に移りたいのですが、雇用率の問題です。先ほど結論的にいうと、現在の雇用率を倍にするということがまあ最初のステップだという御説明であって、この点国際的な状況から見て、われわれとしてはきわめて不満足でありますが、一応そのことは了承するとして、特に雇用率のところで第十一条の中にこの専売公社、国有鉄道、それから電信電話公社こういうものがあがっておりますが、これらに限定された理由、ほかのところにまでこれを広げなかった理由はどういうところにございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/83
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084・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) この十一条の趣旨は、国、地方公共団体等の官庁、それからこれに準ずるようなところにおきましては、率先垂範という見地からして身体障害者の雇用促進に努めなければならぬ、こういう趣旨で設けたわけでございます。そこで、この場合に他の、国、地方公共団体等の機関以外のものについてこれに準ずるものはどんなものがあるだろうかということで、いろいろ考えたのでございますが、やはり公社関係はこれに準ずるものとして取り扱ってよいのではないか。たとえばこの職安関係の失業保険法等におきましても、この三公社は、国、地方公共団体に準ずるということで、同じ取り扱いをしておるわけでございます。まあそれにならいまして、この三つの公社というものを入れたわけでございます。これらのものは公権力はないといたしましても、国、地方公共団体の機関に準ずるということで扱っていいのではないかという考え方で、この三公社をただいまの失業保険法等の取り扱いに準じまして入れたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/84
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085・坂本昭
○坂本昭君 私はさらに公社を入れるくらいならば、特に外国の立法では、金坂機関あたりは非常によく多数に採用をしておる。日本の場合だったら、まず金融機関、日本銀行ですね。それから各種の公団、それから公庫、この線までは当然お入れになってもいいんじゃないか。そうすると、雇用率は、一応一・五%でも、それに吸収される人の数はふえてくる。今言ったこの日銀その他の金融機関、公団、公庫、これをこの中にお入れになってはいかがかと思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/85
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086・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) これは私ども事実問題といたしまして、銀行、公庫、金融機関というようなところは、身体障害者を雇用する適当な場所を非常に多く持っている職場であるとわれわれ考えております。従いまして、雇用比率等につきましても、相当高く考えていいのではないか、このように思っております。でございまするから、十一条の中には入れてございませんが、十三条の方で一般民間事業主を通じてこの雇用率を設定することになるわけでございますが、その場合においても、今の配慮をもって雇用率を考えていくことにいたしたいと思います。これを十一条に入れなかったというのは、別に他意はなかったのでありまして、労働法関係の扱いといたしまして、従来三公社はその五現業なみに、国と地方公共団体と同じ扱いにしておりますので、ここに並列したということでございます。それ以外は他の労働法等に準じまして、十三条の方で取り扱うということにいたしました。しかし、これにつきまして、事実問題といたしましては、これはさっき申し上げましたように、身体障害者の適職を最も多く包含する場所であろうと思いますので、雇用率の設定その他につきましては、これは他の職場に比べまして、重点的に考慮をして設定していくことが必要ではないか、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/86
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087・坂本昭
○坂本昭君 それでは、この法文に触れていないところについても、この身体障害者雇用審議会において、法の趣旨に沿ったような勧告をし、雇用せしめていくというふうに理解してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/87
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088・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/88
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089・坂本昭
○坂本昭君 では次に、強制雇用と雇用率のことに触れまして、次に身体障害者の範囲の問題であります。これがやはり一番大きな点だと思いますが、この範囲のことについて、一番最初にも申し上げた通り、「一下肢のすべての指の機能を喪失したもの」というふうに範囲の第四番目のホのところに書いてありますが、あるいはまた、ハのところには「一下肢の第一指を指中足骨関節で欠くもの」というふうな記載、また、ロのところでは特に「ひとさし指を含めて」というふうに書いてありますが、一番大事なのは、こういう従来のいわゆる身体障害者の観念ではなくて、もうすでに諸外国では身体障害者の範囲というものを内科的な疾患、さらに精神障害、そこまで広げているのが現状であります。特に、今度の法案では、第五番目に「就職に著しい困難があると認められる労働省令で定める身体上の欠陥」という、こういう記載になっておりますが、この記載そのものも、私は不的確で、就職に著しい困難ということよりも、労働が著しく制限を受けるといったような表現をとるべきではなかったかと思いますが、それよりも、この五項の中で、一体どの程度まで身体障害者の範囲を理解してよろしいか、それについて御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/89
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090・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) まず第一に、この表現でございますが、これは先生御指摘のようなものもございます。ただ、このように書きましたのは、身体上の欠陥があるために就職に著しい困難があるという、その雇用促進という見地を取り入れて、その角度から書きました関係でそのようになりましたが、意味は先生御指摘のような意味であると思います。それからその次に、精神障害、それから内部障害と申しますか、内腹部臓器の障害、こういうものについての考え方はどうであるか、こういうお尋ねでございますが、精神障害の方につきましては、私どももいろいろ検討はいたしました。こういうような方についても、支障がない限りはその就職を促進することは必要であろうと思いますが、この雇用比率の設定、そういうような思想にはなじめないものではないかと考えまして、この法案には入れなかったわけでございます。それから内腹部臓器の障害につきましては、これは内腹部臓器その他内部の欠陥があるために作業能力を欠く、それからその他就職に困難を伴うというような方があるわけであります。この点につきましては、実は現在までの立法例といたしまして、身体障害者福祉法の別表、それから恩給法の別表等をいろいろ参考といたしまして検討いたしました。ところが、率直に申しましてこの身体障害者福祉法の方には内腹部臓器の問題はないわけでございます。それから恩給法の方にはいろいろ個別的な記載があるわけでございますけれども、それを見ますると、これは大体補償ですね、コンペンセーションの観点からいろいろ掲げてあるわけでございます。今度の雇用促進という観点からこのいろいろな掲げてある事項を検討してみますると、雇用促進というこの見地からは、必ずしもこれをそのまま書くことは適当じゃないじゃないか、こういう結論に達したわけでございます。そこで私どもといたしましては、内腹部臓器の障害につきましては、これは第五号で、労働省令で追加指定し得る道を開きまして、身体障害者雇用協議会にお諮りをいたしまして、そうしてこの内腹部臓器の障害があって、そのためその作業能力に影響を及ぼしておって、そのため就職に困難を来たしておるというような方は、追加指定いたしたいと思っております。それにつきましては雇用審議会に、医者の方でありますとかその他専門家を専門委員としてお入りを願いまして、十分医学的、客観的検討を願いまして、その結論を尊重いたしまして、われわれとしては、第五号によって指定をして参りたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/90
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091・坂本昭
○坂本昭君 今の第五号の追加を作られたことはいいのですが、外国の場合は非常に範囲が広いということはお認めになりますね。日本の場合も、実は身体障害者の廃疾障害程度をどういうふうにしているか、いろいろな法律があります。身体障害者福祉法がある、厚生年金保険法がある、船員保険法——船員保険法には障害年金と障害手当金で分類しております。労災がある、恩給法がある、国家公務員共済組合法がある、それから国民年金の障害年金の区別がある、これらのものを全部実は集めて検討してみました。ところが、日本の法律でもだんだん変わってきているのです。厚生年金保険法では、この中には今のような精神の問題並びにそのほかの内科的な問題、こういうことを、身体の機能または精神に、労働することを不能ならしめるとかあるいは労働が高度の制限を受けるとか、そういうふうに身体の機能とか精神という考えがはっきり出てきている。それから船員保険法にも精神障害を残したとか、神経系統の機能に著しい障害を残したとか、こういうことがはっきり出ている。また、恩給法の場合にも、この精神的または身体的作業能力を失いと、だんだんとこういう考えが出てきている。だからこの中で、初めて身体障害者雇用促進法を立法される皆さんとしては、やはり一番進んだものをとらるべきだと思う。従って、私は、これはこまかいことは審議会にゆだねられるということですが、常識を持って、今日の進歩した医学並びに身体障害者に関する常識を持ってお取り扱いをいただきたいということを特に要望しておきます。そして最後に、先ほど政令に関するところでの重度障害者に関する事項ですね、これの説明をしていただきたいと思うのです。ほかのことについては読めば大体わかりますから聞きませんが、この重度障害者に関する事項について説明をやっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/91
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092・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 重度障害者につきましては、これは一般の身体障害者に比べまして、特に著しい障害がある方については、これはまた一般の身体障害者より以上の特別の措置が必要ではないか、このように考えまして、そういうような方につきましては、それに適した職というものもあるはずである。そこでそういうような方につきましては、特にまたそれに適した特定の職種を指定いたしまして、この職種については、この雇用比率等につきましても、一般よりもはるかに高い比率を設定して雇用を促進することが必要ではないか、このような観点から設けたものでございます。そこで、われわれがまず第一段に考えておりますことは、ただいま差し上げました資料にもございまするように、重度の視覚障害者をとりあえず指定いたしたい考えでございます。そうしてその重度の視覚障害者につきましては、まあ適職といたしましてはマッサージ職、それからあんま職というようなものが必要なのではないかというふうに考えております。こういうものを特定職種として指定して参りたい。そうして雇用比率につきましては、これと実は並行いたしまして、実際の実情をただいま調査いたしております。病院それからあと保健関係の機関等におきまして、盲人の方をあんまあるいはマッサージ職に雇っておる状況がどうであるかという調査をしておりますが、まだ完全にまとまっておりませんが、たとえばこの東京その他主要府県におきまして、約四千三百の病院、それから保健関係の機関等を調べてみました。それによりますると、マッサージあるいはあんま関係の職につきまして、雇用者中盲人の方の占めておられる率が病院は四四・三%、それから施術所と申しますか、術を施すと書きます施術所におきましては、六九・四%というような数字が出ております。そこで私どもは、この現状を参考にして、こういうようなところについては、さらにこれよりも高い雇用比率を設定して参るということで、この方面の適職について盲人の方の雇用の促進をはかるということを考えて参りたいと思っております。これは第一段の措置として考えて参りたいわけでございます。あとさらに引き続きまして、身体障害者雇用協議会にもお諮りいたしまして、これに準ずるような重度障害者及びその重度障害者にかかるところの適職というものを検討を願いまして、そうして必要に応じて指定して参りたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/92
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093・高野一夫
○高野一夫君 今坂本委員の御質疑の間に条文を読んでおって痛感したことは、第十一条の文章、第十三条の文章、第十四条、第十五条、ことに第十五条の三項、この文章を読んで、これは普通の人がよく直ちにのみ込めるでしょうか、こういうような書き方は、これは法制局の書き方かもしらぬけれども、もう少し私はわかりやすく書ける方法があると思うんですね。これ時間的余裕があるならば、参議院で断然これは修正したい。たとえば第十一条はまだいいとして、第十三条を見てごらんなさい。一般の「雇用主は、労働者の雇い入れについては、常時使用する身体障害者である労働者の数が、常時使用する労働者の総数に、事業の種類に応じて労働省令で定める身体障害者雇用率を乗じて得た数」、読めばその通りわかる。われわれは審議しているのだからわかるけれども、こんな書き方をしないでも、もっと——これはあまり文章を倹約し過ぎてかえってくどくなったのだろうと思う。それで、もう少しこれは分けて、たとえば、右の身体障害者雇用率等——「前項の雇用率とは、事業の種類に応じて労働省令で定める」とか何とかというふうに別項に置いてやれば、前のいわゆる身体障害者雇用数の問題というのがわかりやすくなる。十一条もそうです。それから十四条、十五条、全部そうです。十五条の三項。今さら時間がないからしょうがないけれども、この次の機会には、これを一つ断じて改正しようじゃないか。文章の改正。内容はともかく、これは与党の方から要求しておく。労働省に要求しておきますから、次の国会には、この文章を整理した、内容はけっこうですが、文章を整理した改正案を出す。出さなかったら、われわれ議員立法でこれを全部改正してしまう。それだけのことを申し入れておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/93
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094・小柳勇
○小柳勇君 ただいまの質問に関連して、重度障害者中の、特に視覚障害者について質問したいのですが、まず職業安定局長から。
ただいま東京都内における主要機関四千三百調査されたところでは、雇用者数が盲人四四・三%、施術所の方で六九・四%ということでございますが、全国的に施術所の数、あるいは施療院、そういうような職につかれた視覚障害者の。そういうものがわかっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/94
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095・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 先ほど私が申し上げましたのは、ちょっと言い方が悪かったので恐縮でございますが、東京だけではございませんので、東京、神奈川、愛知、大阪、千葉、埼玉、宮城、岡山、長崎というような主要な府県につきまして、やや大きな病院と施術所をわれわれの方で調査しました結果でございます。従いまして、全部を網羅しておりません。抜き取り抽出で調査したものが出てございますので、全体の数等につきましては、ただいま御質疑の点には沿わない数字であると思います。一応の傾向でございます。
なお、病院、施術所の数等につきましては、厚生省の方で調査しておられると思いますので、厚生省がお見えになっておりますから、その方から御返事があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/95
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096・小柳勇
○小柳勇君 質問を補足いたしましょう。厚生省の方から答弁願いますが、ただいま労働省で発言されたような重度障害者の中で、特に視覚障害者で、あんま、はり、きゅうなどをやっておられる施術所、施療院、そういうものの数がわかっておったら御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/96
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097・江間時彦
○説明員(江間時彦君) お答えいたします。現在厚生省の方であん摩師、はり師、きゅう師、柔道整復師の施術者の数を年々調査しております。昭和三十三年末現在の数字といたしまして、あん摩師の総数は四万七千二百六十名でございます。そのうち失明者は三万二百二十一名、晴眼者の方は一万七千三十九名ということになっております。はり師の方は、総数が三万一千八百八十九名、そのうち失明者は一万五千三百五十一名、晴眼者の方は一万六千五百三十八名、きゅう師の方は総数が三万百四十六名、そのうち失明者は一万三千三百四十六名。晴眼者の方は一万六千八百名、柔道整復師は総数が五千四百九十九名、そのうち失明者は十二名、晴眼者の方は五千四百八十七名ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/97
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098・小柳勇
○小柳勇君 そこで、今人数はわかりましたけれども、これが一人の親方に何人かのはり師、あん摩師、きゅう師というような人がついて、一つの家に、親分対子分のような、そういう形態であると思いますが、そういう点まで調べてありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/98
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099・江間時彦
○説明員(江間時彦君) 現行のあん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法によりますと、これらの施術者は、施術所を持つ場合もあり、あるいは出張のみによって施術を行なうこともできるようになっております。従いまして、統計上は施術所という概念による統計がとれないわけでございます。そういうふうな関係がございまして、統計は免許を受けた施術者の単位でとっております関係上、どのような雇用形態で従事しておられるかという統計は今のところございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/99
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100・小柳勇
○小柳勇君 職業安定局長に質問いたしますけれども、これは私どもがいろいろ調査したところによりますと、東京都内あるいは温泉場などであん摩を呼びますと、大体はあん摩の施術所に数名ないし十数名おりまして、電話をかけますとやってくる。そうして旅館に十円ないし二十円手数料を置いて帰る。あとは、たとえば食費を払う者がある。通勤ならば、そこに電話料を払う。あるいは親方に対して幾らかの歩合を払っておるというような、徒弟制度みたいな制度になっておるようにわれわれとしては見受けておりますが、労働省あるいは厚生省などでそういうような現状について調査されたことがあるのかどうか。御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/100
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101・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 私の方で、今回この法案に直接関連はないわけでございますが、やはりそれに関連して検討すべき問題としてこの方面の調査もしてみたいとは思っておるのでございますが、現在までに調査したことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/101
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102・小柳勇
○小柳勇君 厚生省はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/102
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103・江間時彦
○説明員(江間時彦君) 私の方では、あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師を医業類似行為従事者というふうに把握しておりまして、医業類似行為を行なうにあたっての主として業務内容の規制をいたしておりますので、その雇用形態というものについて調査をいたしたことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/103
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104・小柳勇
○小柳勇君 私先ほど言いましたように、今そういうふうに親方制度みたいな、あるいは施術所がありましてそこに数人の職人を雇っておるふうな形態は、職業安定法の三十二条ないし四十四条、労働者の供給事業というようなもの、そういう法的な考えから考えれば、安定法違反ではないかと考えますが、職業安定局長、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/104
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105・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) これにつきまして、実態を調査したいと思っております。今までのわれわれの方の考え方といたしましては、このような人々は、要するに、お客との間が雇用関係に立つものではない。医業類似行為あるいは施術行為というものをいたすというまあ自営業ではないか、このように考えておるわけでございます。そこで、この観点からいたしますると、雇用関係に立ち入らせることを目的にするこの職業安定法関係の規定の適用はない、今まではそういう見解をとっております。今後の問題につきましては、実態を十分調査した上で対策を考えたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/105
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106・小柳勇
○小柳勇君 実態は、これは今始まったことでなくて、私が調べたところによりますと、昔から徒弟制度で、あん摩、はり、きゅうというものは養成されてきた、従って、親方のところに初めはもう女中や下男のようにして入っておって、だんだん術を覚えて一人前になる、その間はほとんど徒弟制度です。そうしますというと、自分が一人前になりましても、そこの親方のところにおりまして、親方の指令通り、指示の通りに行って、そうして料金を持ってきて、半分なりあるいは七割なりを親方にこれを納める、そういうようなことが今もなおそのままの形で残っておる、そういうものは、今の新しい職業安定法からいえば、それは雇用関係がそこにはないでしょう、直接はないにしても、実際はお客さんから、その職人である施術者が取って帰った金、それだけがまあ雇用関係のようになりますけれども、実際はそこの親方とそれとの間に雇用関係が、職人との間に雇用関係があります。そういうものを、そこに親方がおりまして、五人、十人おってこれを職人としてやりますならば、それは職業安定法などからいえば明らかに違反ではないか、こういう見解を持っておるのですが、そういう関係であればどうですか、実際調査するしないは別として。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/106
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107・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) これは、その親方のようなものがおりまして、事実上何人かの人を雇っておる、そうしてそれを差し向けて、その上がり代のうち一定部分を徴収するというような形をとっておる場合、私は客との間の雇用関係というものを成立させることは法律的にちょっとむずかしいのじゃないか。そこで、その親方とその実際の施術をする人との間に雇用関係が立つというような場合が出てくるだろうと思います。そのような場合には、その間に雇用関係が出て参りまするので、この問題につきましては、職業紹介事業というようなことではなしに、その親方と施術に従事する人との間の雇用関係というものが出てくる、従いまして、もしそういうような実態であって雇用関係が認められるというような場合には労働基準法の問題になるであろう、労働基準法に基づいて、その労働条件等を規制すべき問題である、このような解釈になるであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/107
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108・小柳勇
○小柳勇君 そうしますと、職業安定法の施行規則の二十四条に、医療関係に類似の職業というものがずっと列記してありますね、職業規則に。これにあん摩やはり、きゅうというものを入れまして、そういうようなもぐりのような労働力供給というものができないようにするというような考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/108
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109・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 職安法の施行規則二十四条で列記いたしておりまするのは、要するに、派遣先との間に雇用関係が出るわけでございます。そうして、その派遣先との間に雇用関係を発生させるために、そのたまり場の方で職業紹介をする、こういう形になるわけでございます。ただいま御指摘のような場合には、要するに、お客との間に雇用関係が出るというその認定をしなければならないわけでございますが、これは事実問題としては出ない場合が多いのではないだろうか、むしろ職業紹介ということでなしに、そのたまり場の方の主人とその実際のあん摩、あるいは、はり、きゅう師の間に雇用関係が出てくる、その間の雇用条件、その他待遇等の問題は、労働基準法の問題になる、こう解釈した方が適当ではないかというふうに考えます。なお、この問題について、法律的にはもう少し突き詰めて検討してみたいと思いますが、私、ただいまの感じといたしましては、むしろそのたまり場の主人と、それから、あん摩、はり、きゅう師との間に雇用関係を成立して、そうして労働基準法の適用を受ける、労働基準法の定めるところにより労働条件の規制を受ける、このような問題になるのではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/109
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110・小柳勇
○小柳勇君 そういうものを基準監督署などで調査された事実はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/110
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111・上原誠之輔
○説明員(上原誠之輔君) 御質問の、施術者自体の労働条件の状況でございますが、私どもの方でも特別に調査した事例はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/111
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112・小柳勇
○小柳勇君 私が質問いたしておりますのは、たとえば、盲学校など出まして、盲学校の高等科では、ほとんど、あん摩、はり、きゅうだけを教えて出しておる。それがどっかの親方のところに行きませんとなかなか仕事にならない、言われたように、病院などに入った人はいい方でありまして、そうでない人はほとんど電話を持った親方のところに行って、そこに名前を出しておいて、その親方がお客のところに一々出しておる、そうしますと、その親方は、労働力を提供する事業、いわゆる職業安定法にいう、そういうようなものに考えられる、実際行為はそうなって、問題は法的にはいろいろ解釈がありましょう、たとえば、今あなたが言われたように、親方とその職人の間の雇用関係が正確にあるかどうかは問題だと思う、実際のところ。結局は客からその親方のところに電話がありまして、そこから派遣されて来るのですね。そうすると、こことここの間の雇用関係はない——まああるといえばありましょうが、個人の場合と集団の場合がありましょうから。それは最近売春禁止法などによりまして、晴眼の、あん摩、はり、きゅうの人が非常にふえてきた、そうしますと、今言われたような、こういうふうな盲人の最も適職である、あん摩、はり、きゅうという事業が、晴眼の人によって占領されていきまして、だんだんそういう人が中心になっていくという傾向がある。そこで、それかといって、目の見えない人は一番適職でありますから、そういう人を保護していかなければならない、それで現在の保護政策としては、今言いましたように、監督署などでもう少しこれを十分に監督する、調べる、そういうことをして、その職業を守ってもらう、こういうことが大事ではないかと思うので質問いたしておるわけです。従って、今労働省としては、そういうふうな調査もされておらないようでありますが、もっと早い機会に職業安定法、あるいは労働基準法、そういうふうな法の建前から、一つ監督なり調査を進めてもらいたいと思います。今の問題で、次に警察庁の防犯課長に、ただいま私が言っておるような趣旨で質問しますが、あん摩、はり、きゅうになるには、正規の教育機関で、教育を受けて国家免状を取っておるんですが、その免状を持たない者が、親方の名前でそういうような営業をしておるという事実を検察庁でお調べになったことがあるのかないのか、あるいはないとすれば、それに対してどういうふうな御見解であるか御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/112
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113・町田充
○説明員(町田充君) 昭和三十四年、一年間におきまして、私どもの方で、あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法違反として検挙いたしました件数は百三十件でございますが、人員にいたしますと、男が六十七名、女が五十九名、合計百二十六名ということでございまして、これは違反態様別は必ずしも明らかではございませんが、この大半が、いわゆる無免許で、あん摩、はり、きゅう、こういう医療行為をやっていた違反だと見ております。従いまして、決してこういう種類の行為をやることを見のがしておるわけではありませんので、目につきました違反行為については、今申し上げました数字のように検挙をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/113
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114・小柳勇
○小柳勇君 そういうものを特別に組織的に調査され、あるいは実態を把握された事実があるのですか、何か申告さしてそういうものを調査したのか、あるいは全国的に、組織的にそういうものを調査されたのか、その点どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/114
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115・町田充
○説明員(町田充君) 全国的にこの種の事犯の取り締まり検挙を一齊にやったということはございませんが、それぞれ申告などに基づきましてこの種の事犯、特に温泉地、観光地あたりに多く見られますので、そういうところでは重点的に取り締まりを実施しておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/115
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116・小柳勇
○小柳勇君 それから厚生省の問題をもう二、三点質問いたしますが、第一は、理療師、あん摩、はり等の現在の法を改正しようというような声があったようでありますが、今そういうものに着手されているのかどうか、あればそういう方向なり考えを御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/116
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117・江間時彦
○説明員(江間時彦君) お答えいたします。現在業界から現行法を改正して、理療師法という法律にしてほしいという要望は聞いております。理療師法の中身は大ざっぱに申し上げますと、こういう施術者の業務を一括して身分の統一をはかる。まず、あん摩という業務をマッサージと分離いたしまして、あん摩は盲人専業にする。それからマッサージ、はり師、きゅう師、それから柔道整復師、そういうようなものは現在、これらの施術師に認められていない電気療法、光線療法というような、そういう施術を含めて一本の理療師という身分に統一しようというような案だと承知いたしております。これは大体において、この関係職域団体のほぼ一致を見た要望だというふうにわれわれは聞いております。これにつきましては、まだいろいろ問題点もございますし、今後慎重に検討していきたいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/117
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118・小柳勇
○小柳勇君 今のところ、まだ今の法律を改正するというまでに考えていないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/118
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119・江間時彦
○説明員(江間時彦君) 今後検討いたしまして、現行法の改正を必要とする部分がありますならば改正しなければならないと思いますが、今のところ、まだ最終的にこうしなければならないという結論は出ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/119
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120・小柳勇
○小柳勇君 次に、文部省の方に、この盲学校の今の教育について質問をいたしたいのでありますが、現在の盲学校の高等部では理療科のみしか設置しておらない、そういうようなことで、盲学校の高等部に入りますと、ほとんどあん摩、はり、きゅう師等にならなければならぬというようなことで、若い青年として非常に希望がない、しかも卒業しましても、そういうことで、あん摩、はり、きゅうの職場というものもだんだん狭められるということで、青年に希望がないというような陳情を受けておるのですが、現在文部省として、特殊教育の中で、この盲学校の高等部についてどういうふうな方針であるのか、本省の方見えておりますかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/120
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121・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 文部省は、初等中等教育局の特殊教育主任官の辻村君が出席しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/121
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122・辻村泰男
○説明員(辻村泰男君) お答え申し上げます。盲学校の高等部におきましては、今普通課程、これは普通の高等学校に準ずる教育を行なう場所でございます。普通課程とそれから職業課程とに大別いたしておりますが、その職業課程の中には理療課程と申しまして、ただいま問題になっておりますあん摩、はり等の施術を養成する課程がございます。もう一つ職業課程には音楽課程というのがございまして、全国の盲学校は、大体この普通課程と理療課程、音楽課程、こういう三つの課程に分かれております。ただし、音楽課程を持ちません盲学校もございます。そういう実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/122
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123・小柳勇
○小柳勇君 将来ですね、ほかの普通の高等学校と同じような教育課程を持つ構想というのはないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/123
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124・辻村泰男
○説明員(辻村泰男君) その点は、実は私の方も盲学校の出身者をあん摩師、はり師のみに制限する、事実上制限する結果になるということは大へん望ましくないことだと考えております。従いまして、目下盲人の新職業分野の開拓につきましての実験学校等を設定いたしまして研究をいたしております。で、これは実は文教委員会におきましても問題になりまして、初中局長も、三十六年度予算においてはその新職業開拓のための予算を計上するように努力したい、こういうふうに答弁をしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/124
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125・小柳勇
○小柳勇君 この問題については最後でありますが、最後に、また職業安定局長に返りまして質問いたしますが、まあずっと一連考えてみますというと、盲学校で教育を受けるなり、あるいはほかの学校で教育を受けまして、試験を受けて、そしてあん摩、はり、きゅうの仕事をするようになります。そうして狭い職場に入っていって生活の安定をはかろうとしているにかかわらず、最近の情勢では、第一は親方からの中間搾取がひどいということ、そこに入っておりませんというともちろん電話を引く能力もありませんでしょうし、職業にもありつけない。従って、婦人のあん摩師などは、親方に取り入るためには、最悪の場合貞操をも提供しなければならぬ、若い諸君は卑屈になりながらそこに勤めている、そういうもの、それからいま一つは、晴眼の人が、婦人などがその職場をだんだん荒らして参りまして、いい人は正式に免状を取ってやるでありましょうが、悪い人は親方の名前で、そこから親方のかわりに呼ばれてきて、そしてそういうふうな盲人の唯一の職場であるあん摩、はり、きゅうの職場を荒らしていく、こういう訴えが切実としてあるわけです。そういうものについて、法的にこれを守ることができるならこういう際に守ってもらうということ、それから、この身体障害者雇用促進法に入れないとするならば、適当な、たとえば基準監督官を強化するなり、あるいは各県にそういうことで依頼するなりして、もっと徹底的にそういう違反と、それから生活に追われる人たちの保護、そういうものを強化しなければならぬ、これは職業安定局のお仕事ではないかと思うわけです。それについて、きょうは大臣がおられませんので、局長からの決意を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/125
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126・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 今回の身体障害者雇用促進法の立案に際しまして、ただいまのようなお話も関係者から聞きましたので、いろいろ検討をしたわけでございます。そこで自由業でございますると、この身体障害者、雇用促進法は、雇用関係に入ることを促進するという見地からの法案でございまするので、規制ができないことになるわけでございます。そうなりますると、自由業を営むについての、何か今先生お話のような趣旨に沿った取り扱いはできないものだろうかということで、これは厚生省の方にも一つの問題として御研究をお願いしておるわけでございます。
それからいま一つの考え方は、この中におきましても、先ほどお話のように、もしそのたまり場の主人との商に雇用関係があるというような実態でありますれば、身体障害者雇用促進法案の雇用比率というようなものを適用する余地が出て参ります。その点につきまして、実態をさらに調査いたしまして、今先生の御質問の趣旨が実現されまするような方向で関係官庁とも十分に連絡、協議いたしまして、われわれとしては、これらの人々が安定した職場を確保できまするように一つ努力したい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/126
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127・小柳勇
○小柳勇君 今のことは非常に大事なことだと思うのですが、たとえば施術所に十人のそういう理療師を雇用している場合は、たとえば九割にせよとか八割にせよとか、そういうことまで考えるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/127
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128・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 身体障害者の雇用比率の規定を適用いたしまして、そのような措置を考えたいということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/128
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129・小柳勇
○小柳勇君 あと同僚議員の発言がありますから、この一問だけにいたしますが、さっきの坂本委員の質問に関連いたしまして、現在九十六万人くらいの身体障害者の雇用をしなければならないような人がいる。そういうようなのに、年々大体五%ずつくらいは今障害者を採用しているようですから、あと一・三%なり、一・五%しましても、この九十六万人という推定のものは当分消化されないと思うのですが、私が聞き違いであったら、この点はっきり御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/129
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130・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 九十六万人と申しますのは、この身体障害寺雇用促進法別表の規定に該当すると思われる方々の数でございます。で、この九十六万人のうち、現在その雇用関係にある方、それから業主、それから家族従業者というような者が多くあるわけでございます。それで、結局われわれの現在の推定によりますと、この九十六万人のうち今のようなすでに就職し、あるいは自営業を営んでおるというような方々のほかに、新たに常用雇用を希望し、労働省といたしまして、これに対して雇用促進の対象にする必要があると認められる方が八万三千人ございます。この八万三千の方々につきまして、これがなるべく早く雇用の場に入れますようにわれわれは促進して参りたい。そこで、この八万三千人につきましては、官公庁関係に、先ほど御説明申し上げましたが、二万三千人、それから民間の事業所に六万人という計画を立てまして、この方々を一刻も早く雇用をされるように促進して参りたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/130
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131・坂本昭
○坂本昭君 今の九十六万は、身体障害者のこの別表と言われましたが、その中にはこの第五の項はどの程度含まれているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/131
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132・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 第五の項に該当する方は今のところ入れておりません。従いまして、これにつきまして、追加指定いたしますれば、この部分がさらに若干増加するであろう、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/132
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133・坂本昭
○坂本昭君 それと、今八万三千人の点がまた出されましたが、この常用雇用を希望しておられるといいますが、あなたの方の身体障害者でいわゆる自営業の業主を何人ほど見ておられるか。実は労働省の発表を見ましても、身体降雪者の自営業主の割合の方が一般の人より多いのですよ。それはなぜかというと、結局自営業とは言うけれども、それほどの業主ではないのです。一人で何かをやっているかもしれないが、業主というほどの名前でない。言いかえれば、失業だと私は見た方がいいじゃないだろうか。従って、その自営業主の中に、実質的には身体障害者で働いていない人が非常に多い。だから、今の八万三千人というその数だけを常用雇用の希望者としてあげられるのは少し——少しよりもだいぶおかしい。この点についていかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/133
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134・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 九十六万人のうち、労働力人口に該当する方が六十二万人——これも先ほどの続きでございまして、一応の推定でございますからその意味でお聞きとり願いたいと思いますが、六十二万人、そのうち就業しております方が五十五万五千人、このように推定しております。うち業主が二十二万六千人という推定でございます。それから失業者は六万五千人、このように推定しております。これは一応の推定でございます。このような失業状態にある方、それにそのほかこの業主等の形態をとってみましても、就業を希望するという方を入れまして一応八万三千人、このように推定しております。なお、詳細な調査は、今後さらに継続していたしたいと思います。一応われわれの推定といしたましては、以上のように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/134
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135・坂本昭
○坂本昭君 その推定の基礎が私は非常にあいまいだと思う。特に今の業主が五十五万五千人中二十二万六千人という数は、これは高過ぎる。従って、ほんとうの身体障害者の失業はこれよりもはるかに多いと見ていただかなければいかぬ。だから、あなたの方がその今の常用雇用を希望しておる八万三千人を吸収したらいいというその数字の根拠は非常にあいまいだということを私は指摘しておる。従って、この雇用率の一・五%というものも実は低いので、従って、低いならば、官公庁あたりでもなるべくこの職場を広く取っていっていただきたい。そういう理論が生まれてくるわけなんです。ことに別表の五を含めておられないと言いますが、さっき私はイギリスの非常に正確な登録制から出た数から見てもわかるように、外科的な、従来のいわゆる肢体不自由者とほとんど同じほど内科的な疾患がある。従って、この数はさらにふえてくるということです。この点についてこれは幾ら追及しても、これ以上あなた方で資料もないと思いますが、これは今のような数のもとにあぐらをかかれて障害者の雇用促進をしたのでは十分なことに相ならないということだけは明確に心にとどめていただきたい。
さらに申し上げたいことは、当面重度障害者は重度の視覚障害者とするという説明を先ほどいただきました。が、当面というところになかなかうまいこと言いくるめておられますが、こんな重度障害者の定義というものはないですよ。全世界どこを探したってないですよ。重度障害者というのは、これは労働能力がドイツのような場合だと二〇%、三〇%というふうに労働能力で計算をしていっておる。決して「就職に著しい困難」というようななことでは決して規定していない。先ほど局長は、私の言うこととここに書いてあるのと同じだと言いましたけれども、実は、だいぶ違うのですよ。「就職に著しい困難」、たとえば顔面醜形でどこでも雇ってくれない場合がある。こういう場合はあなたの方では一体どう解釈されるかという問題も一つ出てくる。これは非常にこまかい、またむずかしい問題ですが、ある国では顔面醜形の著しい者もこれも身体障害者の中に入っておる。また、日本の法律の中にも、厚生年金保険法の中には顔面醜形というものが入っておる。男の場合と女の場合とでは、女の方の場合にはちょっと傷があっても級が高い。男の場合は同じ傷でも級は低い。こういうことから言うと、就職に著しい困難というこの言葉はまことにけっこうなんですね。けっこうだけれども、やはりこれは定義をはっきりしておく必要があると思うのです。そういう点で今の重度障害者というものをやはり線を引いて、どれ以上は重度障害とするということをまずきめていただいて、その中で重度障害者のこの中での雇用率の適用については、とりあえず視覚障害者の問題を取る上げるというような行き方なら私は納得するのです。ことに先ほど小柳委員から質問されたように、身体障害者の中で盲の人の雇用の状態というのは、きわめて変則であります。この変則な状態については、従来厚生省はきわめて消極的なんです。私たちは非常にこれを心配をしておりまして、今度できたこの身体障害者雇用促進法の中で解決されることを心から望んでおるのです。そういう点でこの取り上げ方自身に私は反対しません。しかし、こういう取り上げ方は、基本的には間違っておるので、この際、一体重度障害者というものをどういうふうにきめるか、その基準、とりあえず重度障害者雇用率の中にこの視力障害者を取り上げるか、さらにどういうものを取り上げるか、その程度まではこれは政令でゆだねられた大事な点なんです。この法律の中ではきわめて大事な点なので、その程度まではもう少し明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/135
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136・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 第一点の顔面に著しい醜状を残すという問題につきましては、身体的欠陥に入ると考えております。これを、しかし、指定するかどうか、この点につきましては、身体障害者雇用審議会にお諮りいたしまして、他の問題の検討とあわせまして御検討を願って、結論を出していただきたいと思っております。
それから重度障害者につきましては、これは本法案の第二条で規定しておりますが、身体上の欠陥の程度が著しく重いために通常の職業につくことが特に困難である身体障害者、その範囲は特定職種ごとに政令できめる、このようになっております。そこで、まず私どもの考え方としては、これはもうだれが考えてもこれは指定しなければならぬという方は視覚障害者であると考えまして、これをまず第一着手として指定するようにしたいと思っております。それ以外の方につきましては、その症状の程度を見まして、これも引き続き雇用審議会にお諮りをいたしまして、これと同じような方がどの程度あるか。それに適する職種がどういうものがあるかということを医学的、技術的に検討を願いまして、結論を得ればさらに政令で指定して参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/136
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137・坂本昭
○坂本昭君 それで、とりあえずにこの視覚障害者についてですが、先ほどのあなたの方の数によると、病院では四四%、施術所では六九%という雇用の実情であるという数をおあげになられました。そこでこの現状に基づいてあなたの方のあれでいくと、大体倍加していきたい。まあこの場合は倍加ということにもならないでしょうが、大体どの程度にこの重度障害の場合のいわば職種の留保、われわれのいう職種の留保指定、どの程度にされるおつもりか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/137
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138・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) この点につきましても、現状より下回ることは絶対にあり得ない。そこで、それをどの程度にするか、これを倍にいたしますと一〇〇%以上になる場合がございます。そこで、この点につきましては、私は現状を考えまして、現状を相当上回る線でその比率を定めていきたいと思っております。これをたとえば七〇%にするか、八〇%にするか、その辺のところは今並行して調査を進めておりまするので、雇用審議会にお諮りをいたしまして、七〇%にするか、八〇%にするか、その辺のところはもう少し関係者の御意見を十分伺いまして、専門家の意見を伺いまして、現状よりも相当上回る線というものを基本観念にいたしまして設定して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/138
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139・坂本昭
○坂本昭君 厚生省はおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/139
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140・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/140
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141・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/141
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142・坂本昭
○坂本昭君 身体障害者雇用促進という面からだと、これは労働省に伺えばいいわけですが、今小柳委員が触れられた通り、厚生行政にも直接関係してくるこの視力障害の問題について厚生省と協議して進めておられますか、その点伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/142
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143・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 厚生省と密接に御連絡をいたしまして進めております。なお、この雇用審議会に厚生省の方に入っていただく予定にしております。それからこの法案作成にあたりましても、厚生省と連絡をとって作成いたしましたし、また、先ほど御指摘がありました雇用関係にない場合の問題点の検討につきましても、厚生省にこのような問題点があるということで御連絡を申し上げて検討を願っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/143
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144・坂本昭
○坂本昭君 そうしますと、今の雇用促進の中で、特に労働省が厚生省と協議しておられる問題点、今の視力障害者だけですか、そのほかにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/144
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145・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) この法案全部につきまして御連絡をしております。具体的に御連絡をいたしまして、厚生省と連絡をとりまして作成したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/145
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146・坂本昭
○坂本昭君 私はこの中で特に問題になるのは、この視力障害とそれから精神障害だと思います。この視力障害については、先ほど医事課長はこのあん摩業については一〇〇%晴眼者を入れてはいけないという、これは希望だと聞きました。それからそういう意見もあるということを言っておりました。が、非常にこの点は私の立場からいうと苦しい問題点なんです。それは憲法二十二条に保障された職業選択の自由、私自身はイギリスの立法のようにエレベーター・ガールあるいは駐車場の番人は全部身体障害者にしてしまいたい、百パーセント。ところが、残念ながらこれは憲法の職業選択の自由をなくしてしまう。今あなたは雇用率六九・四%を七〇%にするか、八〇%にするかということを言っておられたが、場合によれば、私は一〇〇%にしてあげたいのですよ。憲法との関係でこれは九九%くらいにとめなければいかぬこともあり得ると思うのです。その点がこのヒューマニズムの立場からいっても非常に苦しい点でありますが、あなたの方では、非常に特別な重度障害者の雇用についてどういう見解を持っておられるか承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/146
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147・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 私どもといたしましては、ただいま指摘されましたあん摩職であるとかあるいはマッサージ職であるとかいうような職種は、これはもう大部分が今のような考え方に基づきまして、視覚障害者の力によって占められてよい職業ではないかと思っております。そのような見地からいたしまして、職種の指定と障害率の設定につきましては、そのような基本的立場に立って考えて参りたいと存じております。ただ、今御指摘のありましたように、これは、他の者はついてはいけないということになりますと、憲法との関連も出て参ります。いろいろ問題点もあるので、そこまで踏み切ることはなかなかむずかしいと思っております。まあ、基本的な考え方としては、大部分は、この盲人の方によって占められてよい職業ではないかというふうに考えておりますので、そのような基本精神にのっとりまして、身体障害者雇用審議会にもお諮りいたしまして、結論を出していただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/147
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148・坂本昭
○坂本昭君 今の問題については、私は、憲法違反をやるくらいの熱意でないと、これはヒューマニズムは生きないと思う。大体政府は、憲法九条あたりで大きなあやまちを犯しておるのだから、それを取り返す意味においても、私は憲法違反を勧めるのじゃないけれども、ヒューマニズムの点からは、憲法ぎりぎりのところまで、私はやってしかるべきではないかと考えております。それで、重度障害者の問題については、同じように、先ほど申し上げた憲法二十七条の線に沿って、働き得る限りは勤労の権利を留保しているという現在、どんどん働いていただきたい。ただ、職場としてはいろいろ迷惑を受けることもあろうと思うので、それで、重度障害者の雇用を促進するために、ドイツの立法のように、重度障害者を一人雇った場合には二人とする、あるいは重度障害者の妻の雇用をした場合には、二人で一人とするというふうな考え、これは、私の提案理由を説明しました社会党の雇用法には、その点を入れたのです。これは、言いかえれば、雇い主に対しても雇用率を確保する点において、きわめて有意義ではないか。そういう点で、罰則のかわりに、むしろ促進するために、重度障害者の場合には、一人雇ったときには数を二人にする、やむを得ずその奥さんを雇った場合には、その奥さん二人を一人と計算する、こういう措置はとることができないものかどうか、その点伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/148
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149・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) ただいまお話のような点につきましても、実は、内々検討をしてみたわけでございます。ただいろいろ問題があります。と申しますのは、たとえば重度障害者の妻を雇った場合に、雇用比率の中に入れるということも一つの考え方だとは思いますけれども、その場合に、たとえば戦争あるいは産業災害等によりまして、重度障害でなしに、戦死あるいは殉職されたという方の妻に対しては、今度どういう扱いにするか、あるいは一般に未亡人、子供をかかえられた未亡人の方をどうするかというような、いろいろ均衡問題が実は出て参りますので、私ども、夫は一つの考え方だとは思いますが、実は今回の法案にはそこまでは考えなかったのでございます。それから重度障害者を入れた場合に、倍加して考えるという考え方も一つの考え方だと思います。しかし、これも、今言ったような考え方で、そこまでは踏み切らなかったわけでございます。ただ、行政上の扱いといたしまして、たとえば雇用比率に達しない場合に、計画作成命令を出すとか、あるいは勧告をするというような場合に、その発動につきまして、今のような特殊事情があれば、その特殊な事情があるということで、その勧告というふうな行政措置までしないというような措置をすることは考えられると思います。そういう点につきましては、われわれの方としましても審議会等の意見を伺いまして、どういうふうに事実上指導していくかということにつきましては、今後の問題として研究さしていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/149
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150・坂本昭
○坂本昭君 あなたの方で、何か法文の建前上取り扱いにくいというふうな御見解のようですが、そもそもは、この身体障害者の雇用を促進しなければならないというのは、あくまで人道主義的な立場に立ち、そうして雇用の面において悪い条件のある人に、優先雇用をさせていこうというのが、この立法の精神なんです。とすれば、私はその精神に立って立法し、また、あなたの言われたように、その行政的な指導をすべきであって、ただいまのあなたの御返事では、堀局長の個人的な見解のみにしかとどまらないと思うので、はなはだわれわれとしても不満であります。でありますから、重度障害者の場合は、これはもうはっきりと障害者自身を雇っているのですから、このときに特別な有利な雇用率を雇用主にあげるということは、私は当然してあげてよろしいのじゃないか、今の問題点は二つありますがね、第一点の重度障害者の場合に、これを数の面、あるいはあとで勧告したりする場合に、省令なりあるいは今の審議会の通達なりに入れて、指導していただきたいと思うのですが、その点お返事いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/150
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151・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 御質問の点につきまして、一つ御趣旨を取り入れまして十分検討いたしまして、そのような線が実現できるように、一つわれわれとして配意して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/151
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152・坂本昭
○坂本昭君 さらに今度重度阻害者の妻の場合、堀さんのような愛妻家の一身同体の夫婦生活をもっておられる方ならば、当然働けない程度まで重い人について、その細君が働きに出るということは、これはできるだけ有利に見て上げるべきだと思うのです。従って、重度障害者の妻の場合も、これは外国の立法には先例もあることですから、ぜひ含んでいただきたいし、さらにあなたは、そうなると戦争犠牲者、さらに今度は戦争未亡人という問題、私はまあ雇用の点において、条件の悪いという点においてはみんな同じなのであるから、これも今の審議会は、雇用促進のための審議会なのですから、今の重度障害者の妻の場合、また、戦争未亡人、戦争遺児、こうした場合についても、これは当然労働省から何らかの行政指導をしていただきたい。そのことの御意見も一つ承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/152
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153・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) お話のように、これらの人々は、雇用にあたりまして非常に不利な条件を持っておられる方でございます。この点につきまして審議会等にもお諮りいたしまして、一つ御趣旨のような線を、なるべく生かしていくというような方向で検討さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/153
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154・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 ちょっと、さっきのに関連して厚生省にまずお尋ねしたいのですけれども、さっきのあん摩、はり、きゅう、それから最後は療術師ですか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/154
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155・江間時彦
○説明員(江間時彦君) 現行法ではあん摩師、はり師、きゅう師、柔道整復師というのが制定されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/155
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156・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 三十三年三月一日現在で、療術師九千八百幾らというのを三年の時限立法で来年の三月で終わる、こういう立法があることを御承知ですね。その人は今何人ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/156
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157・江間時彦
○説明員(江間時彦君) お答えいたします。さっき申し上げました、あん摩師、はり師、きゅう師、柔道整復師以外に、この法律でいわゆる医業類似行為を行なう人が十九条に認められているわけでございます。これらの者の数は昭和二十三年三月三十一日現在で一万四千六百十三名あります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/157
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158・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 二十三年ですか、三十三年ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/158
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159・江間時彦
○説明員(江間時彦君) 二十三年でございます。と申しますのは、この法律のできました当時、医業類似行為に従事していた者に限って昭和三十六年一ぱいまでこの業が認められているわけでありますから、その後新規の業主の発生というのは理論的にないわけであります。もう一ぺん申し上げます。一万四千六百十三名、これは二十三年三月三十一日現在……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/159
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160・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私の尋ねているのは三十三年の三月三十一日で切れる、それを三年の時限立法をして、その間にこのような人は、人を雇っていないので、一人独立してやっているから、三年の間に厚生省はこの方たちの生活の問題やこの仕事が続けられるような立法化をするという、こういう約束であったと思う。だからそれを聞いているのです。だからそれがまず先です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/160
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161・江間時彦
○説明員(江間時彦君) お答えいたします。お尋ねの点は、今申し上げた医業類似行為者だろうと思いますが、これらのものは現行法では昭和三十六年十二月三十一日まで引き続き業ができるということになっております。この者の処遇につきましては、今後いろいろ検討しなければならない面があるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/161
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162・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 その人は二十三年の統計しかないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/162
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163・江間時彦
○説明員(江間時彦君) 昭和三十三年三月三十一日現在において業に従事しておったものは昭和三十六年一ぱいまで業に従事ができるということでございまして、その後において新規にこういう業主が出てくるということは考えられないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/163
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164・高野一夫
○高野一夫君 だから現在何人いるかということです。死んだりやめたりした者があるから、現在何名いるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/164
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165・江間時彦
○説明員(江間時彦君) その点についてはただいま確たる数字を持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/165
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166・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 三十三年の国会できめて、私日にちを間違いましたが、十二月三十一日を三年間、議員立法で時限で三年間延長したのです。そのときの約束では、今度の法律の切れる前にこの人たちがだんだん減っていく、その当時九千八百幾らだと記憶しますが、そういう方々の将来の問題を考えるということになっておる、それを聞いているのです。まあそれはよろしゅうございましょう、明らかになりませんから。もう少しそういう実態を把握しておいてほしいと思うのです。そこで、この療術師の延長をするかしないかのときに問題になったのは、本来私たちはこの療術師というのは、あん摩の免許がないんだから、もう時限立法で切っていこうじゃないかという考え方でありました。ところが、実態を見てみますと、この方々は、昭和二十三年から始まって、一人営業ですからだんだん減っていく、今では八千人か七千人か、減っているんじゃないかと私は思うんです。あん摩さんの組合の方は、これをどうしても時限延長しては困るといって、大挙国会へ押しかけられました。大挙押しかけられましたが、われわれとしても、国の制度として免許制度があるんだから、それでやることがいいという考え方で初めはおった。ところが、あん摩さんの免許を持っている人が、売春は禁止されたけれども、それと同じような状態で営業をしている。これにみんなの議員が——私はあのとき憤激して、その三年間の間に、厚生省がこの方々の営業について保護を与えるという処置をとるべきだということで、これは満場一致で三年延長がきまったんです。だから、この療術師の人を私は無にするわけじゃないんです。今のあん摩さんという、一人が免許営業すれば、あん摩の先ほど違反行為が百二十何件あるとおっしゃいましたけれども、現代のあん摩さんは全然免許も取らずに、学校にも行かずに、そうして営業を全部しておるわけです。五人とか十人置いて、そうして七割まで親方が取って、大ていのところは六畳に五人とか三畳に三人とか寝かして、そうして七割まで取って三割をその人に与える。少し条件のいいところでその営業をしておる間に学校へ行く、これがまだ条件のいいところであります。なくなられた野沢君が、せめて営業を始めたら、直ちにそのときから学校へやって、二年なら二年で卒業させるという約束はさせなければいかぬということまで、ここで論議をしたことを私は覚えているんです。そういう状態の論議の中で、あの時限立法、三年延長したんです。それに先ほどから小柳君の質疑を聞いていると、労働省も厚生省も全然無関心で的確な答えは一つも出てこない。私は非常に残念だと思うのです。これは一つの面から見れば職業安定法の四十四条の問題になってきます。一つの面から言えば基準法の六条の中間搾取の問題になってくるわけです。これはしっかり考えてもらわないと、ただ法律はそのとき通す、あとはその時期がくるまで知らぬ顔ということであっていいのかどうか。実際にあん摩の免許を持っておられる方々、三万か知りませんけれども、実際にやっておられる、営業に参加しておられる方々はこの三倍も、五倍以上あると私は思います。それがそういう格好で、これは身体障害者じゃありません。そういう格好で営業して、そうして一日二回の食事を与えられて、七割まで取られて、そうして、条件のいいところで学校へ行ける、条件の悪いところは、そのままだという状態で雇用関係を結んでいるんですよ。これは私は職安法の四十四条の違反が非常に濃いと思います。それから基準法の六条の違反が非常に濃いと思います。濃いというか、七割まで取ってしまって三割で、二回の食事を与える。そういうことをやっているということが今日許されるでしょうか、私はそう言いたい。長時間です、非常に長時間、夜の二時ごろまで働いて、それはお客がなければ不安定でございます。不安定でございますけれども、不安定なら不安定のように収入も不安定なんです。三百円どの人が来ても取ります、私らがあんまして。その七割取ってしまう、こういう状態なんです。だから、単に法律の条文と照らし合わせて、違反であるとかないとかいう問題では私はないと思う。もっともっとそれまでに問題があるということを私は言いたいんです。先ほどからの質疑を聞いていてそういう真髄に一つも触れてこない。それこそ私は身体障害者の方々がそういうシステムでおやりになるなら、訓練をされた身体障害者の方々が共同の事業として、そこで電話なら電話、店なら店を中心にそこへ収容をして、そうして雇用対策をお立てになるという、それをやろうとすればその実態を把握しなければ全然私はやれない。その実態すらまだ把握いたしておりませんというようなことでは、この問題は私は解決しないと思うということを申し上げたいんです。だから、国会というのは、今日ここでこの問題を審議したら、もう終わってしまって、次、来年になったらそのときにはもうそれで終わりだ、新たな問題として沿革というものを全然関心なしに論議するところでは私はないと思います。この改正が順次行なわれているが、どういう条件でどういう状態で改正されていくか、ということは私は、特に行政府の方々は十分な配慮と思考をもって、その中で一番よいものをどうしたらいいかという工合に見つけてもらわなければ、今のような格好じゃ私はどうも納得できないんです。どうですか厚生省の方々、そういう歴史はあなた方が担当官でないから、お知りじゃなかったら仕方がありませんけれども、行政としてはつながっているはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/166
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167・江間時彦
○説明員(江間時彦君) 数字の把握についてのことにつきましてお答えいたします。昭和二十三年当時、これらの者について特別に届け出を認めて営業を許しております。その後若干の死亡者がございますが、現在とにかくわれわれの手元に届け出業者として登録されているのは、先ほど申し上げました数字でございます。その後の動態的な変動がきわめて微細でございますの特に年々の調査をしていないわけでございます。その後、これらの施術者に認められた猶予期間というものが逐次延ばされて参りまして、現在は昭和三十六年一ぱいになっておるわけでございますが、厚生省といたしましては、これらの施術者がなるたけあん摩師になられることが一番適当な方策であるという考えで、これらの者に対しまして講習会をやりますとか、いろいろな方法で、あん摩師に転業してもらうような手を打って参りまして、現在のところ、三千人くらいの者があんま師の資格に合格いたしておりますが、いろいろな障害がございまして、最近は必ずしもこれらの者があん摩に転業されるということが進捗していない状況でございます。さっき申し上げましたように、これらの者に許された施術期間というのは、昭和三十六年一ぱいでございます。それまでにはこれらの施術者の将来についての方針を確定しなければならないわけでございますが、ただ、最近これらの者の取り締まりにつきまして、最高裁判所から非常に従来と違った種類の判例が出されまして、かいつまんで申し上げますと、医療類似行為については、何人もやってならないわけでございますが、これを無届けの者がやりました場合には、無届けというだけで処罰されていたのが従来の慣行だったのでございますが、今度の最高裁の判例によりますと、身体に有害のおそれがなければ、無届けの医療類似行為をやっても処罰できないというような新しい判例が出て参りました。こういうような意味で、無届け医療類似行為というものの立場について、従来と変わった角度から再検討しなければならないという事態が発生したわけでございます。従いまして、従来の方針の説明もございますが、とにかく昭和三十六年一ぱいまでに間に合いますように、これらの者についての処遇をただいま検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/167
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168・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私の言っておるのは、療術師の問題はこうこうですが、それはさきの統計の問題です。その問題を審議するときに、今あとで申し上げましたようなことを、厚生省は行政指導で直すようにしますというここでの約束だったのです。その約束をされておりながら、実態を把握していない、私が先ほど申し上げましたような実態なんです。免許のある人だけ統計に出され、そうして私が申し上げたような実態で、そのまま置いている、私は労働省の関係は、職安法の四十四条と基準法の六条の違反というものが濃い、このことは一つ申し上げました。しかし、そういう営業の問題は厚生省なんですよ。だから、厚生省はどういう指導をされたかということを私は聞きたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/168
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169・江間時彦
○説明員(江間時彦君) お答えいたします。無免許あん摩につきましては、厚生省も必ずしも放置しているわけではございませんで、昭和三十年の第二十二回の特別国会で附帯決議をいただいたわけでございます。こういうふうな趣旨を尊重いたしまして、折あるごとに無免許あん摩の取り締まりについて通牒を出しておりますし、警察庁におきましても、われわれと同様な趣旨のことを下部にいろいろ御連結いただいておるようでございまして、必ずしも無免許あん摩の取り締まりについて、われわれが放置しているというわけではございませんが、これらにつきましては、今後とも一そう努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/169
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170・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 まああらためて医務局長、大臣とお呼びして、あの当時の議事録を一つ読んでいただいて、そしてこの問題は厚生省との関係は論議したい。労働省の関係、基準局長が見えてないのだけれども、今私が申し上げたような実態なんですがね。四十四条と、基準法の六条の関係はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/170
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171・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 前の労働基準局長をやっておりましたので、あわせまして私の見解を申し上げて御了承をいただきたい。これは先ほどの御質問に対しまして、私の考え方を一応申し上げたのでございますが、その親方が施術者を実際泊めておいて、そうしてその人たちの施術について、一定の配分を受け取っている。それから作業の方法についても、指揮監督をしている、こういうような実態が強いように見受けられます。そういう点から考えますると、私はこれは労働基準法の適用が、雇用関係があるというようにむしろ考えた方が筋ではないかというふうに思っております。そうなりますると、そのような実態を一応さらに調べて見ませんと、また、場所によって違いがあるかもしれませんが、おおむね今のような状況でございますると、基準法の適用がある事業ではないか。そういたしますると、労働共準法に照らして、その条章に対する違反があれば、これは監督官庁において取り締まるという問題になって参ります。労働基準局と職業安定局と、密接に連絡をいたしまして、お話のような弊害がありました場合には、これは厳重に措置をいたしたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/171
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172・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 せっかくあなたが身体障害者雇用促進法というものをお出しになっている。それで身体障害者という者はあん摩の免許を受けるときにも、何点か免除されて、そうして営業ができるようになる。そしてそういう格好で適職を与え、生活のかてを持たしていくというように、今まででもそうした保護があった。それが足らないので今度またもう一段とやるということになって、第一の適職という問題が一つは考えられるわけです、目の見えない方に。それが十何万も目の見える人が、今私が申し上げたような格好であん摩営業をやっている状態というものが、さっき申したような、ちょうど昔の売春法禁止になりましたけれども、私は売春の精神とは実態は違いますけれども、これほど搾取の対象に露骨に現われている営業というものはないと、こう思っているのです。女ばかりを集めて、娘ばかりを集めて、これでいいのかということを私はいつも疑問に思っている。だから、何といってもその四十四条の職安法からいう、人入れ稼業という概念が当てはまるか、当てはまらぬかということも一つの問題ですけれども、もう基準法の六条違反というものは歴然としていると私は思う。それが一つと、長時間労働ですね。婦女子の深夜勤務を禁止されているにもかかわらず、特例があるかもしれませんが、大てい晩の、二時、三時まで働いているというのが常です。また、お客の要求に応じてそうなるのか常でございますけれども、しかし、それにはやはりそういう問題というものはそういう面からも配慮しなければならぬ。私は、第一の面は、営業からくる厚生省の行政指導の問題が第一だと思いますけれども、しかし、それをカバーして、やはりこういうものをなくそうというのが労働基準法、職業安定法ではないか。せっかくお出しになった、これを実効を上げるためには、私はどうしても、摘出するといいますか、そういう所の職場の拡大を厚生省と労働省とが、ぜひ協力しておやりにならなければ、旗は掲げてみたけれども、実効はなかったということに終わるのじゃないかという気がするわけです。だから、もう少し私は実態を把握してほしいと思うのですよ。きょう初めて問題にするのなら、私もこんなことは言わぬのですが、二年前の療術師の期間延長、なくなられた野沢君が提案者になられてこっちへおいでになって、いろいろ論議した。そうしてそういう結果が、三年間あと保護してあげようじゃないか、免許を持っている、持っているといっても、持っている人が一人で免許のない人を十人も雇って、そういう格好でやっている。ひどいじゃないか、行政指導で直してもらおうということとあわせて、あなた方反対陳情もあまり聞こえませんぞと言って、私ども時限立法を、私はそういう免許のない人が療術行為をやることに初めあまり賛成でなかったのです。しかし、そういう結果に前回なったことを思い起こしているのに、厚生省の方の把握の仕方が低くて、非常にそういう点が無関心といいますか、私が納得するようなお答えがないものですから、この点だけは明らかにしておかなければならない。私はそう思って発言したわけです。だから、労働省、厚生省相協力して実態を早く把握してもらって、せっかく職についている者を追い出すというわけにいきませんけれども、やはり国家試験があってやっている。もう一つは、身体障害者で今度その職場を拡大するという一番の適職である。こういう問題がそういう格好で出されているということに無関心であってはならぬ。私はそういう立場から申し上げている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/172
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173・高野一夫
○高野一夫君 厚生省に資料要求しておきます。身体障害者雇用促進法案に関連して、医業類似行為の話が出ました機会に、厚生省に要求をしておきたい。それは、先ほど医事課長の話が出た間に、つい最近、多分十九条に関連してくるのだろうと思うけれども、衛生上危害を及ぼすおそれがないというようなことでもって法律違反にならないというような意味の最高裁の判例が出された。そしてこの法律は、われわれが国会で審議して通した法律、その法律を、いわゆる全く抹殺するような判例が最高裁で出されたならば、直ちに原告、たとえば検察庁でつかまえてきて起訴して、それが最高裁まで行ったのか、厚生省がやったのか、むしろ厚生省の処分が逆にその被告たるべき人から訴えられたのか、その経過を書いて、そして弁護団はどういう法律に基づいた解釈を下し、最後の判決がどういうふうな理由のもとにこういう判決が下されたのか、少なくとも要点くらい書いた資料をこの委員会に配るべきだと思う。そこで私は、これは医務局長の怠慢だと思う。これは医事課長、あなたから答弁する必要はない。そこで、厚生省にお帰りになって、この判例はゆゆしい判例だということをあらためて反省をされる必要がある。そこで、われわれは、今度の最高裁の関係者を呼んで、その判例についても十分協議をしなければならぬ。そういう判例が下って、厚生省はこの十九条を一体どうしようというのか、行政上困るはずなんです。仕事ができないはずだ。その仕事ができない事情に立ち至ったのを、そのままほったらかして、この法律に関係して、国会にも何らのあいさつもない、報告もしない、資料も出さぬ、こういうようなことでは、これはもう反対党の社会党の皆さんより、与党のわれわれの方が承知できない。これは、さっそく大臣と医務局長に相談をされて、その要旨を書いた資料を提出されたい。法案の審議に支障を来たさない適当な時間に、十分私はこの点について吟味をしてみたいと思う。それだけの要求をしておきたい。委員長確認していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/173
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174・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 医事課長、よく局長なり大臣と相談をして、ただいま高野委員の発言のような、期待に沿うような資料を作って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/174
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175・坂本昭
○坂本昭君 先ほどの重度障害者の続きをさらに少し質問いたします。さっきの別表にまた戻りますが、別表の五の中に、精神障害者を取り入れることについて審議会に諮って十分検討したいということでございましたが、今回の身体障害者雇用促進法は、先ほど来審議を尽くして参りましたように、就職の条件の悪い人が対象になっている関係から、この精神障害者——精神病ではありません。精神障害者、これには白痴、魯鈍、痴愚とありますが、非常に重度の場合は、これはとうてい就職にはたえられない。労働にはたえられない。しかし、労働にたえられる程度の精神障害者は、これは、国際的にも身体障害者の中に取り入れられている傾向にかんがみて、先ほどの御答弁以上に私はもっと責任のある御答弁をいただきたい。特に、実は先ほど来厚生大臣を待っておりましたが、今ちょうど精神薄弱者福祉法の審議をやっている最中で、この精神薄弱者福祉法は精神薄弱者の更生を目的とする、そういう新しい法律であります。先般厚生省に質問をした場合に、精神薄弱者の雇用の問題、これについてはどうなっているか、雇用は、これは労働省の所管であるというふうな意見が若干出されておりましたのですが、当然厚生省との協議の中に入ってくる問題として、視覚障害者の多くの問題と一緒に精神障害者の問題も私は取り上げるべきだと思うのでありますが、その問題は、厚生省との協議の間においてどういうふうに取り扱われてきたか。その点を一つ、二点。審議会における取り扱いの方針と、それから精神薄弱者の雇用の問題、その二つお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/175
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176・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 精神薄弱者の問題につきましては、身体障害者雇用審議会におきまして一つの大きな問題として御検討願いたいと思っております、それから厚生省との連絡につきましては、この法案作成にあたりまして、厚生省と連絡をとりまして、現在精神薄弱者につきましても、職安機関におきまして一般の人とまた区別をいたしまして、特に就職の促進をはかるという考え方で事実上やっております。これは一つの例でございますが、東京都内の職安で特別な指導をしまして就職のあっせんをいたしましたが、昭和三十三年度におきます就職率は九一・七%、それから三十四年度において九五・七%、という工合に、職安へ出かけました方につきましては成績はなかなかよい率を示しております。今後におきましても、われわれといたしましては、従来同様の指導を行なうことによりまして、適した職についてもらいまするように、重点的に考えて参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/176
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177・坂本昭
○坂本昭君 九五・七%というパーセントだけからいうと非常にいいですが、それは、十人のうち九人雇ったら九〇%になるわけですね。私の見るところ、精神薄弱者で労働力となり得る数は四十万人くらいおるじゃないかと思う。これは推定です。従って、あなたの方で、職業安定所の窓口に来ている精神障害者、その数がどの程度につかんでおられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/177
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178・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) ただいまちょっと手元に持ち合わせておりませんので、後刻調べまして御連絡申しあげます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/178
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179・坂本昭
○坂本昭君 これは当然身体障害者の雇用促進に関連して、直接取り上げなければならない問題だと思います。従って、審議会で検討するというようなことよりも、もう一歩進めて、この精神障害者もどういうふうにして雇用さしていくか、そして労働力として、国民の一人としての権利と義務を履行させるかということは、これは身体障害者の雇用促進の力の提案の中で重大な要素と私は思う。それが先ほどの常用雇用希望の八万三千人という少ない数の中で、とうていこれは四十万という精薄の雇用という問題は解決できません。できませんが、この際一歩、やはり身体障害者雇用の促進の中で精薄者を取り上げるということがどうしても必要だと思う。従って、次の機会までに、職安でせっかくそういうことをやっておられるとするならば、全国的にどの程度おるかということと、それから同じような雇用の中で、具体的にさらにどういう方途をおとりになるおつもりか、もう少し明確な御方針を聞かしていただきたいと思います。何もかもが全部審議会の方にまかせられてしまって、どうも議論ができませんが、審議会で検討だけではなく、ぜひともこの中の一部ですね、自痴、痴愚、魯鈍の中では、IQの比較的高い魯鈍の程度は、せめてこの中に取り上げていくという程度の明確なる方針はおとりになることできませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/179
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180・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 今回の身体障害者の雇用促進法、これにつきましては、やはりまず今回の措置といたしましては、その身体の障害というものを、第一段に考えたわけでございます。もちろんその精神薄弱者につきましてなおざりにするということは毛頭ございません。これにつきましては従来同様、われわれとしても力を入れてやっていきたい考えでございます。ただ、この身体障害者のこの別表に基づいて指定するかどうかという問題につきましては、まずわれわれとしては、第一段に身体障害者の雇用促進の方から着手したいと思っておりまするので、今この精神薄弱者をあわせて指定いたすことにつきましては、これは第二段の問題といたしまして、この審議会等において、ただいま先生の御指摘になりました、その精神薄弱の程度の問題もございます。それから雇用主に対するところの指導の問題もございまするので、よく内容を検討を願いまして、それによって、さらにわれわれとしては進めて参りたい。要するに、われわれ今まで職安機関としても一つの重点としてこの仕事を進めておりまして、それをさらに強めて参りたいという考えは変わりございませんが、この別表に基づいて指定するかどうかにつきましては、審議会におきまして十分御検討を願いたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/180
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181・坂本昭
○坂本昭君 それはちょっとおかしいですよ。身体々々と言われるけれども、じゃ目の見えないということは一体どういうことなんですか。目はあいておっても目の見えないということは幾らでもありますよ。つまり視神経の障害のためですね。そのときには目が見えない、これも身体障害者の中に入る。精薄というのは脳神経の機能が衰えたために、つまり精神機能が衰えてきているわけです。だから、同じようなこの細胞一つとってみれば同じようなことなんですよ。あなたは、身体といったら、何か手足だとか指だとかということに限定して考えておられるようだけれども、これはおかしいですよ。そんなことありませんよ。目があいておっても目の見えないというのは幾らでもある。同じことですよ。なぜそんな区別をされるのですか。私はどうも局長の科学的なお考え方がはなはだおかしいと思う。それではこれは重大問題ですよ。精神薄弱者も神経細胞の変化であって、この目の見えないということと何ら選ぶところがありません。その点について、私お考えを直していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/181
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182・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 私どもが申し上げておりますことは、要するに、この精薄者等につきましては、内腹部臓器の欠陥等のある方と同様に医学的、科学的な判定基準というものを確立いたしまして、そうしてそれに基づいて指定を要するものを指定する、このような方法で参りたい。そこで、この別表の中に指定は具体的にいたしませんで、第五号で余地を残しておる、こういうことでございます。で、そういうような問題につきまして、これはお医者さんであるとか、その他専門家の方に専門委員としてお入りをいただきまして、御検討願った上で、その結論を得て善処したいと申し上げておるのでありまして、それをなおざりにしておるというようなことでは毛頭ございません。精神薄弱者の力の雇用促進につきまして、われわれは非常にこれを大事な問題であるという考えはもとより持っております。今後においても重点を注いで参りたいと思っておりますので、その点は御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/182
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183・坂本昭
○坂本昭君 むしろ雇用の面では精神薄弱者の一部の人は普通の人よりもある意味では勤勉だとも言えるのですよ。今日のような、たとえば弱電関係のメーカーあたりで単純な仕事を繰り返し繰り返しやっておるでしょう。かえって精神の健康な人だと耐えられないような仕事がたくさんある。その場合に痴愚、魯鈍程度の人だと繰り返して同じ仕事を幾らでもやれる。場合によると能率が上がるのですよ。これは山下清の例をもう御存じだと思いますけれども、特殊な能力が伸びる場合もあるし、また、そういう普通の人には耐えられない反覆する仕事などは、むしろ適当であるかもしれない。従って、そういう点で、あなたが精神薄弱者を別扱いするということは、医学的な根拠にも欠けるのみならず、この労働の雇用の問題についてもはなはだ私は遺憾であると思う。従って、もしこの審議会が医学の常識に従って決定したときには、労働行政の特別な面からこれをゆがめることなく、正しい医学的な判断に従って、やはり取り上げるということだけはお約束していただきたい。お約束できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/183
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184・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 審議会において御検討願いまして、その得ました結論によって善処いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/184
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185・高野一夫
○高野一夫君 私はこの機会に委員の皆さんに御了解願っておきたいことは、先ほどきわめて重要な問題として厚生省に資料を要求いたしました。これは今の最高裁の判例というのは、私が申し上げるまでもなく、昔の大審院判例に該当するもので、法律解釈の最後のよりどころ、そのよりどころとなるべき判例でもって判例がか示されて、その最高裁で条文の解釈を右左別に解釈するならともかくとして、全く抹殺するような解釈をして、そういうような判例があると厚生省は仕事ができなくなる、従って、これを私は厚生省が騒いで、国会のわれわれに至急にこれを一つ検討してくれと、こうおっしゃるのがほんとうだと思ったけれども、われわれの方から要求しなければ知らぬ顔をしておる。これはもうまことに遺憾でしたが、これは反省してもらって出してもらうとして、出されましたならば、社会労働委員会と法務委員会との合同委員会を開いて、そうしてこの法律を研究した社労とそれからまた、法律的のいろいろな問題を研究する法務委員会と合同審査の機会を持ちたい。最後に、また場合によっては、決算委員会に持ち出したいと、こう私は考えているのですが、今までは、この法案に追われて言い出す機会がなかった。そのうちに厚生省から話があるだろうと思っておったけれどもなかった。こういうようなことですから、適当の機会に、月でもこえまして、法案審議の間の十分の時間がございましたならば一日つぶして、法務委員会と社労委員会との合同審議を、その判例に基づいてやる、こういうようなことで、いずれまた理事会に特ち出したいと思いますが、あらかじめ、ちょうどいい機会であるから、全員の御了承を願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/185
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186・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) わかりました。具体的な日程は理事会におまかせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/186
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187・片岡文重
○片岡文重君 それではちょっと、先ほどの坂本委員の質問に関連をして一つだけ局長に要望しておきたいのですが、精薄者の訓練された人々の就職率は先ほどのお話では非常によろしい、ということは結局精薄者といえども、魯鈍程度の者は訓練の必要があるということを立証しておるわけです。従って、もしこの身体障害者雇用促進法でどうしても時期的に取り上げることができないと言われ、審議会にどうしても出さなければならないとおっしゃられるなら次の最短機会においてこれを修正をするか、ないしはその精薄者の雇用促進法なるものを単独立法で出されるか、いずれにせよ、今日突如として起こった問題ではないのですから、私は当然具体的の措置が至急にとられてしかるべきであるし、とり得ると思う。従って、これに対して修正をすることをお考えになるのか、特別立法を出されるか、できるだけ具体的な期日を見通した御答弁を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/187
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188・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 内腹部臓器の障害のある方とかその他神経系統の障害のある方とか、お話のような力につきましては、身体障害者雇用審議会にお諮りをいたしまして、専門家を入れまして十分御検討願いまして、その結論を待って追加し得る余地を作っております。従いまして、われわれといたしましては、この法案が成立いたしました上は身体障害者雇用審議会を至急発足させますが、その際の一つの大きな問題点といたしましてこの問題の御検討を願い、その結論によって善処いたしたい考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/188
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189・片岡文重
○片岡文重君 それは先ほど坂本委員に御答弁になったのですが、私の言うのは、もっと労働省は積極性を示してほしいということなんです。審議会に諮問される場合に、いかがでございますかということではなしに、これこれの方針で、大体審議会というものの性格をそうざっくばらんに言ったらしかられるかもしれませんが、大体において諮問されておるわけですから、それに案を示して、むしろ了承を得る程度のものが私は多いと思う。せっかくこういう立法をされるのですから、その審議会にかけるという御意思であるなら、これはそれでも仕方がないと思うが、できるなら私はこれとは全然別個に、対象が対象、特殊な人たちであるから別個の単独立法を、持たれてやる方が私はむしろいいんじゃないかと思いますけれども、しかし、これでやられるならやられるとして、労働省として具体的な案を示して審議会の了承を得る、あるいは検討を願う、こういうことでいっていただきたいのです。そういう具体的な行動を、行動といってはどうかと思うが、とにかく具体的に立法を促進する意思があるのかどうかということを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/189
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190・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 労働省といたしましては、精薄者の雇用を促進するという積極的な観点に立ちまして、雇用審議会に御審議をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/190
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191・徳永正利
○徳永正利君 それでは今までの質問がございましたので、重複を避けまして、先ほど来いろいろ各位から御指摘がございましたが、この法案を実施するのに大体五年以内ぐらいでやりたいといったようなお考えのようでございますが、私は少なくともおよそ官庁関係の雇用というものは、この中にはたくさんに産業災害者やあるいはまた、いくさで傷ついた連中がおるだろうと思います。そういうものはむしろ国の責任なんですね。一般の雇用主に対する雇用義務、これは努力義務なんですが、なかなか困難であろうと思いますけれども、少なくとも国の雇用に関しましてはもう少し積極的に努力を願いたいと思うのです、五年と言わずに。これは明確にお答えがございませんでしたが、希望として申し上げておきます。
ところで、九十六万人という中に、傷痍軍人は何人おりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/191
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192・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 傷痍軍人は、これは大体十四万人程度おられるのではないかと思っております。そのうちこの法案の対象になられる方は約八万五千人、このように推定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/192
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193・徳永正利
○徳永正利君 これに関連しまして、先ほど坂本委員からもいろいろ御質問があったのでございますが、重度障害者の妻というような者をこの中に考え込むと、寡婦といったようなものが当然浮かび上がってくるが、この法案の中には取り入れることがいささか困難なために後日審議会にかけてよく検討するというお話であったのであります。未亡人という、いわゆる可能労働者としての未亡人が何人おるか。そうして一般の未亡人あるいはまた、戦争、災害による未亡人、これは何人おるか、お教えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/193
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194・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) やや御質問に沿わないかもしれませんが、ただいま持ち合わせておる資料によりますと、六十才未満の未亡人の総数が約二百七十万人、そのうち未亡人が生活の主たる担当者になっている数は約百三十五万人、このように推定しております。そのうち戦争による犠牲者の未亡人がどのくらいあるかという点につきましては、ただいまちょっと手元に持ち合わせておりませんので、今後調べまして御返事申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/194
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195・徳永正利
○徳永正利君 ところで、今までは子供の問題が出ておらなかったのでございますが、片親または両親のない子供というのを何人ぐらいに推定せられておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/195
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196・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 孤児、それから片親のない子供、これにつきましては昭和三十三年三月卒業者、それから三十四年三月卒業者、このような数字がございまするが、中学校の卒業者でございまして求職いたしました者のうち、孤児、片親の子供、これが昭和三十三年三月におきましては八万七千八百五十三名、それから三十四年の三月につきましては八万三千四百名、それから高校卒業者のうち、求職者につきまして申し上げますと、孤児、片親の児童が、昭和三十三年三月には三万五百二十八名、それから三十四年の三月におきましては一万二千五百五名、このような数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/196
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197・徳永正利
○徳永正利君 その中で戦争によるいわゆる孤児、戦没者の遺児というのが何人おりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/197
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198・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) まことに恐縮でございますが、その内訳を持っておりませんので、これも後ほど調べましてお手元に届けます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/198
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199・徳永正利
○徳永正利君 私は、やはり過去の歴史というものを、なぜこういうふうになったかという歴史をやはりお考えになっていただきたいと思うのです。これはわれわれの責任なんですよ、生きているものの。国の責任なんです。ただメチール飲んでなくなったとかいうのでなく、われわれのために、国のために犠牲になっているのですから、これは私は生きた人間並びに国の責任だと思うのです。こういう面も一つ十分御考慮いただきたいと思うのです。
ところで、子供の就職、あるいはまた、身体障害者なり未亡人の就職、これについて県でいろいろと条例をもっているようでございますが、これはどういうものに対して何件くらいもっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/199
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200・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) お説のように、まず第一に、両親または片親のない子供につきまして、これは形式的に数字だけとってみますると、就職率というものは一般の児童と比べて違ってはおらないわけでございます。大体、先ほどの数字のうち、就職率が九九・七%というところまでいっておるわけでございます。しかし、実情を見ますると、やはり孤児あるいは片親であるというようなことのために、何と申しまするか、求人等につきまして、やはりその求人者側において差別的な意職を持つところがあるわけでございます。特に、たとえば金融関係であるとか、そういうようなところにおきましては、なるべく両親のある子供がいいというような求人条件をつけておるところが見受けられるわけでございます。特に、そういうような子供さんたちのうち、ただいまお話のありましたような、戦没者の遺族の力などにつきまして、このような求人について差別取り扱いがあるというようなことは、非常に好ましくないと思いまして、われわれといたしましては、これにつきましては、職安機関として全力をあげまして、一つこのような差別待遇を排除するために努力をいたしておるところでございます。その一つの試みといたしまして、都道府県に呼びかけまして、身元保証制度というようなものを実施しておるわけでございまするが、これによりますると、ただいまちょっと集計はございませんが、二十五の都道府県、それから三十の社会福祉法人によりまして身元保証制度というものを実施しております。これは両親あるいは片親のない児童それから母子家庭というものにつきまして、都道府県または社会福祉法人が主体になりまして身元保証を行なう、このような制度を実施しておるわけでございます。われわれといたしましては、このような風潮は非常にけっこうなことであろうと思うのであります。労働省といたしましても、今後このような制度のさらに拡大につきまして十分に努力いたしたい。また、孤児、片親の児童をその求人につい差別しないということについては、これは従来からも指導しておりますが、今後においても、これはもう国民運動的な考え方で広く啓蒙宣伝いたしまして、そのような差別待遇を一日も早く排除するという方向にぜひ向けていきたいという強い決意を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/200
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201・徳永正利
○徳永正利君 大へん強い決意を披瀝されまして心強いわけでありますが、九九・七%というようなパーセンテージをお示しになりましたけれども、今年みたような非常に求人の多い年はこれはいいのです。ところが、一たび何か壁に当たりますと、こういう連中に、こういう子供たちにしわ寄せがぐっときちゃうわけです。これは具体的な例を一々ひっぱりあげるまでもなく、大体見当はおつきだろうと思うのですが、この点については、今後とも一つ十分な御配慮をお願いしたい。
二十九年の十二月に、労働委員会で遺児とか未亡人に対する雇用促進の決議をしておられますが、御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/201
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202・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/202
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203・徳永正利
○徳永正利君 で、こういうものに対してですね、たとえば片親のない子供が、あるいは両親のない子供が就職できなかったというような、まあ悲しいといいますか、そういう例が新聞なんかにぱっと出るのですね。もうあちらこちらからおれのところで引き取ってやるという求人がくるのです。ごく最近にもそういう実例がたくさんあるのです。で、これはどうも労働省の、私は、いろいろ努力しているとおっしゃいますけれども、そういうような努力が足らぬと思うのです。で、出先の職業安定所なりどこなりでもう少し熱意を入れて呼びかけていけば、まだまだ打開される道が残されているのじゃないか。で、実際問題として、そういうような決議をされた後において、具体的にはどういうふうな——一、二の例でけっこうでございますが——手を打っておられるか、それをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/203
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204・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) 第一の問題といたしましては、先ほど申し上げました身元保証制度の拡充、これにわれわれは努力しております。各都道府県、それから関係団体に呼びかけまして、このような手をさらに拡充してもらうように呼びかけております。それから職安の窓口におきましても、できましたならば職安の担当官が身元を引き受けてやると、こういうような考え方に立って職業紹介の指導を行なうようにという達しをいたしております。それからもう一つは、公共職業訓練所におきましても、このような孤児、片親の卒業者を収容して職を身につけさしてやるというようなことを積極的に行なってはどうかという考え方で実施しておりますが、たとえば、これは一例でございますが、東京都内の訓練所、職業訓練所につきまして、その訓練生のうち、孤児片親児童の数を、これを申し上げますると、全体の訓練生に対しまして二五・九%が孤児、片親の方である、卒業生であるというような数字になっております。このような公共職業訓練の施設の利用等につきましても、なるべくこのような人々に優先的に入ってもらうような気持で指導しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/204
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205・徳永正利
○徳永正利君 実際問題といたまして、就職率は非常にいいように見えますし、また、未亡人なんかでも働ける連中はみんな何とか食っていっているように見えますけれども、たとえば未亡人なんかの例をとりますと、宿屋とか料理屋の女中なんというのが圧倒的なんですね。おそらく、どこの料理屋に行っても二人や三人の未亡人のおらぬことはないくらいです。まだまだその連中の働いている状況は、子供を里に預けておいて、こういう所で働いておるのをあまり子供に知らせたくないといったような気持の者がほとんどといっていいくらいなんです。もう少しそういう者たちに職場を与えてやるような一つ配慮をしていただきたい。先ほど来、坂本委員からいろいろ御指摘があったのですが、まあこの法案は、私は一歩前進だと思うのです。で、これに加えて、そういうような未亡人だとか孤児とかという者に対して、もう少しあたたかい職場を与えてやるような施策はとれぬものかどうか。あるいは、ことによれば、この法案にありますような雇用に関する国等の義務、あるいは一般雇用主の雇用義務といったような法律を作り上げるというようなことはできぬものか、また、御意思があるかどうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/205
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206・堀秀夫
○政府委員(堀秀夫君) ただいま御指摘の、孤児、片親児童、それから未亡人、この人たちにつきましては、条件が一般に比べて悪いというのは、御指摘の通りであります。いわんや、それが国家的な事故に基づいてそのような環境に陥ったということにつきましては、さらに国としても責任があることは当然でありまして、われわれもただいまの御意見については同じような気分を持っております。そこで、孤児、片親児童につきましては、ただいま申し上げましたのは一、二の例でございますが、このような考え方と制度をさらに拡充して強く呼びかけて参りたい。それから未亡人につきましては、これは婦人少年局とも密接に連絡いたしまして、家事サービス公共職業補導所、それからその未亡人に適した職業訓練を行なう総合職業訓練所、これは大体その関係で定員は六千名ぐらいになると考えておりますが、このようなところに対するところの収容、それからホーム・ヘルパー制度の確立というようなことにつきまして、今後努力して参る。それから内職公共職業補導所につきましても、従来は十六ヵ所でございますが、これを三十五年度の予算におきましては、さらに五ヵ所増設い出たしまして、これを拡充して参りたい。それから、先ほど申し上げました家事サービスの公共職業補導所関係におきましても、一年間に延べ千五百人の職業補導を計画する、そういうような具体的な予算の増額を行なったわけでございますが、この問題につきましては、今、先生の御指摘のような線に沿いまして、われわれとしては大いに今後努力して参りたい。なお、法案につきましては、これは今後の問題として一つわれわれ十分検討さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/206
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207・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) 速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/207
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208・加藤武徳
○委員長(加藤武徳君) それじゃ、速記を起こして下さい。
本日はこれで散会いたします。
午後五時五十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414410X01919600329/208
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