1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年三月十日(木曜日)
午前十時三十七分開会
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出席者は左の通り。
委員長 山本 利壽君
理事
川上 為治君
古池 信三君
栗山 良夫君
牛田 寛君
委員
井川 伊平君
上原 正吉君
岸田 幸雄君
斎藤 昇君
鈴木 万平君
阿具根 登君
近藤 信一君
吉田 法晴君
島 清君
国務大臣
通商産業大臣 池田 勇人君
政府委員
外務省情報文化
局長 近藤 晋一君
通商産業政務次
官 原田 憲君
特許庁長官 井上 尚一君
事務局側
常任委員会専門
員 小田橋貞壽君
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本日の会議に付した案件
○弁理士法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○経済の自立と発展に関する調査
(日本産業の海外宣伝に関する件)
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001・山本利壽
○委員長(山本利壽君) これより商工委員会を開会いたします。
弁理士法の一部を改正する法律案を議題といたします。
前回に引き続き、これより質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/1
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002・吉田法晴
○吉田法晴君 前回栗山委員あるいは近藤委員等から御質疑があったようですが、問題は七年が妥当であるかどうかということと、それから審査官なり、あるいは特許庁の職員になる者が少ない。その原因は希望が持てる云々ということもありますが、給与の点もあるんじゃないかと考えるのですけれども、その点、二点についてお尋ねをいたしたいと思います。希望を持たせるという意味で、特許庁では五年くらいが妥当ではないかという御意見であります。それから弁理士の方では十年の御希望であったということを聞いております。まあ妥協といいますか、ことのようですが、あるいは重複するかと思いますけれども、その七年でなければならぬという理論的な根拠を一つお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/2
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003・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) 従来は弁理士法第三条第三号の規定でもって、特許庁において高等官に在職して二年以上審判または審査の事務に従事をした場合には、弁理士試験を要せずして弁理士になることができるという規定があったわけでございますが、高等官制度が昭和二十五年に廃止になりまして以降、この規定は全く空文化しているわけでございます。ですから、今日特許庁の審査官、審判官が何年勤務を続けましても、公然には弁理士にはなることができない、われわれとしましては、特許庁としましての最近の行政の実情等から考えまして、審査、審判の迅速化、改善という見地から、要員、審査官、審判官の増加をこれまではかって参ったわけでございまするが、その要員の充足ということを考える場合には、こういう従来のような規定をこの際復活するごとによりまして、一定年限の経験を積むことによって弁理士になることができるということは確かに一つの魅力になるわけでございまして、優秀な新人の充足上、これは非常に効果が大きいということと、もう一つは、今日の特許庁の審査官、審判官が安心して業務に専念することができるということによって、ひいては、これが特許行政の促進、改善にも寄与するであろうというのがわれわれの考えであったわけでございます。
で、そういう見地から、では審査官、審判官として何年勤務という、期間を何年とするのが妥当であるかという問題になるわけでございますが、従来の高等官に在職して二年と申します場合について考えますと、大体高等官になりますには三年ないし四年を要しておったわけでございまするので、これに二年を加えますと、特許庁に入りましから五、六年というのが従来の期間でございました。今日は審査官になりますには、今般の特許法の施行令の規定が四月一日から施行になるわけでございますが、その点から考えましても、あるいは最近の特許庁におきまする実情から申しましても、審査官になりますには大体五年を要しておるのでございます。ですから、かりに審査官として五年ということになりまする場合には、五年プラス五年で十年、かつてと申しますか、従来の規定では五、六年、これが十年になる、まあ一般情勢も変わって参りましたので、われわれ特許庁としましては、最低限度五年くらいの条件でもって弁理士となり行る資格を認めることが適当であるというふうに考えた次第でございますが、他方、弁理士会方面ではそういう特典と申しますか、資格の特例については一部に強い反対のものもあったわけでございまして、いろいろ話し合いました結果、結局、先ほど申されました通り、弁理士会としましては、十年という線が出てきたわけでございます。特許庁は五年、弁理士会は十年ということで、しばらく両々相対立するというような格好が続きましたが、結局われわれとしましては、その妥協としまして、七年という条件で、規定を今回立案したようなわけでございます。まあ理論的根拠と申しますか、どうしても七年でなければならない、あるいはどうしても五年でなければならないというような、はっきりしましたいわゆる理論的根拠というものはございませんけれども、われわれの考え方の経過ないしは背景というものは、ただいま申しましたような事柄でございますので、この程度が特許庁の希望もある程度実現し、また弁理士会の意向にも著しく背馳はしないということで、実際上最も適当な案ではないかと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/3
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004・吉田法晴
○吉田法晴君 まあ、ありのままに御答弁いただいたのですけれども、最初五年と考えた、で、弁理士会は十年、ところが原案で出てきたのは七年、ですから政府原案は七年。昔、五年と考えたというだけの話で、五年の根拠だけを前に同等官制度があった、あるいは審査官として一人前になるのは、特許庁に入って三年、四年たったらと、こういうことでは、これは七年の説明にはなりません。あなたの方が五年で出してこられているならば、今の説明でいいかもしれませんが、原案は七年、実際は妥協であろうと七年でなければならぬというやっぱり説明をなさらなければ、原案を承認するというわけには参りません。五年、十年というそれぞれの意見のあったことは知っています。十年の根拠についても何ら説明がございませんが、とにかく原案の七年でなければならぬという説明は、今の説明では何もなかったようですが、それじゃあこの法案に関連した政府答弁にはならぬと思うのですが、七年でなければならぬという理由というものを、もう少し納得できるように御免明を願いたいと思います。ないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/4
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005・原田憲
○政府委員(原田憲君) 今お聞きの通りのような経緯で、七年ということにきめまして法律案を提出した次第でございますが、まあこれは正確に七年の理論づけをせよと言われると、今長官が答弁した通りでございますので、これを理論づけをするということはむずかしいと思うのでございますが、まあ弁理士法を改正しまして、現在特許庁に勤めておる審判官あるいは審査官を、従来の高等文官試験を通った人たちと同じように弁理士の資格を得せしめようということが、特許行政の改善にもなるという趣旨、それが根本であります。それに対して、その期間を十年にせよという弁理士会の御意見、五年でよいという特許庁の意見、この五年、十年も、それじゃあ、どこから出したのかというと、正確な理論の裏づけができないと思うのでございますが、まあ平穏に、この法律案を提出するのにさしたる波乱もなく解決をしたいということから、七年という妥協点を見出したのでありまして、この法律の趣旨からいたしまして、このくらいのところで落ちつけて法律案を通してもらいたい、平穏裡に提出したい、こういうところであったろうと思うのであります。その辺で、一つ御了承を賜わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/5
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006・吉田法晴
○吉田法晴君 それじゃあ説明にならぬのです。問題は、審査官なり特許庁の職員を得たい、不足がちだし、事務が渋滞しがちだから特許庁なり、あるいは審査官になる者がふえるように、こういうまあ希望から出たことはわかります。しかし、言われる、高等二年をやったら弁理士になれるという規定があったという理由は、これは経過であって現状では高等官制度というものはもうなくなったのですから、これは理由にならないと思う。充足をしたい、あるいは安心して仕事のできるようにというならば、これは弁理士になれるなれぬということよりも、給与なりあるいは身分の保障なり、そういうことの方がこれは先になければならないと思う。給与のことについても御努力になっておるようですが、しかしその結果はまあ大したことはない。で、弁理士になれるかなれぬかということが唯一の解決方法であるかのような説明だし、あるいは建前。そうすると、五年が妥当なのか、あるいは七年が妥当なのかというと、今のお話しのように、これは理論的な根拠がない。あるとすれば審査官が弁理士に早くなれるように、こういうことでしょう。それじゃ二年でも三年でもいいか、こういうことになりますと、それじゃ二年なり三年たってどんどん弁理士になってやめていく、こういうことになれば、これはかえって職員なりあるいは審査官を充足し、それが安心をして仕事に従う、こういうことにはならないと思う。ですから二年でも三年でもやっぱり短か過ぎるということになりましょう。それから十年を主張する弁理士の方では、弁理士会の弁理士の既得権といいますか、あるいは生活擁護という点もありましょう。そこでこの弁理士会の、あるいは弁理士の景気にも著しく脅威を与えないように、そうして弁理士の試験に合格するのと同じような、あるいはより以上の能力があるかどうかという線に、年限なら年限を考えてその主張の調和が出るのですけれども、実際の特許庁の事情あるいは希望と、弁理士の希望とのこの調和の点を、それぞれの利害を調和し、そこから弁理士試験に合格した者と同等の資格、素質、能力を備えるのに何年間、こういうことで七年なら七年ということにならなければ、単に五年と十年との算術的なこの平均で七年をとった、それじゃ八年じゃなぜ悪い、算術的な計算でいけば七年半、そういうことにこれはなってしまう。それじゃ説明にもならないし、それから、そうですかと言って私どもが納得するわけにもいかぬ、実質的なもう少し説明らしい説明はできぬものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/6
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007・原田憲
○政府委員(原田憲君) 今吉田先生の言われたことがその通り七年になった理由になっておると私は思っております。先ほど言葉が、足りなかったのでございますが、この弁理士法を改正して、弁理士の資格を今の現在働らいておる審査官に与えることが即すべての特許行政の改善になる、それだけでなるとは考えておりませんが、またその資格を得たからといって、すぐその人たちがやめて、そうして弁理士業を開業するというものでもないと思う。一番の点は、やはり安心して仕事ができるというか、希望が持てるという点に私はあると思うのでございますが、その点でいろいろ何年にするかということについて、まあ今吉田先生の言われた通りのような、弁理士会には弁理士会のやはり既得権というか、生活権の擁護といいますか、点から出発した意見があり、特許庁からもいろいろな意見を出しまして結論的に七年が一番よいということになった、こう御解釈を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/7
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008・吉田法晴
○吉田法晴君 この高等官制度があった時代には、二年で弁理士になれた、しかし高等官制度がなくなったのですから、昔の高等官制度があったときには二年でなれたということ、これは理由になりませんね。これはお認めになるでしょう、理由になりません。そうすると、調和点の特許庁の五年という考え方と、それから弁理士会の十年との事実上の調和ですけれども、七年にした理由には理由がやっぱりこれはなければならぬ。その実質的な理由、先ほど弁理士試験に合格した者と同等あるいはそれ以上の能力があるようになるのは何年か、こう考えて、それは七年だと、こういうことでなければ、七年の計算が二で割ったということではこれはやっぱり説明にはならぬ。多少考えられる理由らしいものをあげて御質問申し上げたけれども、もう少し、言われる通りでございますというのじゃなくて、あなたの方が原案の提出者じゃないですか。七年なら七年のはっきりした、七年でなければならぬという点を、もう少しこれははっきりして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/8
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009・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) 政務次官の方から申されました通りで、つけ加えるべき点もないかと存じますが、申すまでもなく、弁理士法は弁理士に関する法律でございますので、われわれとしましては、これの改正の立案あるいは弁理士法の軍用につきましては、できるだけ特許庁と弁理士会当局との間に摩擦がないように円滑に運用を続けて参りたいというのが、われわれの希望でございまして、七年という点につきましては、確かに理論的根拠というものは薄弱かと存じます。ただ特許庁の希望としての五年と弁理士会の空気としましての十年というものをわれわれとしましては勘案、考慮しまして最も無難というところから七年という全く妥協の線を出したということだけでございますから、これは政府の原案といたしましての説明、考えでございますが、委員会としましては十分大きな見地から御検討願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/9
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010・吉田法晴
○吉田法晴君 特許庁の事情だとか希望等は先ほど言われましたが、あとでまたただしたいと思いますが、弁理士会の十年の主張あるいは七年まで妥協した裏には、既得権あるいは生活擁護あるいは従来の弁理士よりも著しく低い条件で弁理士がどんどんできたのでは弁理士会の脅威になる、こういう考え方があったのだろうと思うのですが、今までの取り扱い件数による弁理士の収入といいますか、そういうものは実際にどういう工合になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/10
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011・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) これは先般も実は弁理士に対しまする実態調査を行なった次第でございますけれども、収入等の点につきましては、なかなか十分な、正確な実情の把握が困難でございますが、前回の委員会でも申しました通り最近の特許、実用新案、意匠、商標につきましての出願件数は非常に増加を続けております。弁理士の数は現在必ずしも十分じゃない、そういう点から申しますれば、弁理士の数と出願件数との総体的関係という点から申しますれば、弁理士の業務は、一般的に言いまして相当忙しい状況にあるということが申せようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/11
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012・吉田法晴
○吉田法晴君 きわめて非科学的なお話を承るのですが、全体の取り扱い件数はわかっておるのですか。一人当たりの取り扱い件数というのは、どのくらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/12
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013・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) 先ほど申しましたように、実態調査を行なったわけでございますけれども、件数をはっきり出しますことは、すぐに他方報酬の規定がございますので、そういう点から収入の推測ができるわけでございます。事柄の性質上、もちろんその実態調査につきましては、十分秘密を厳守するという条件で行なったのではございますけれども、いろいろ税の関係その他から、われわれとしましては、残念ながら十分に正確な実情の把握、報告を受けるということができないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/13
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014・吉田法晴
○吉田法晴君 それはまあ速記にとめなくてもいいのですが、一年間の出願件数なりあるいは取り扱い件数というのは、これは出ておると思うのです。それから人員もわかっておりますから、平均するとどのくらいになるかということは、これはわかると思います。問題はやはり十年が妥当か、七年が妥当か、五年が妥当かというときに、いきなり全国で弁理士が雨後のタケノコのようにふえて、それで脅威を与える、こういうことにはこれはしてはならぬと思うのです。七年なら七年でなければならぬかあるいは十年でなければならぬかというその一つの目安としてこの程度の増加ならばこれは差しつかえない。弁理士なら弁理士の、従来の弁理士の生活を脅威するといいますか、あるいは既得権を脅威するということにはならぬということには、これは七年が妥当かあるいは五年が妥当か、十年が妥当かのやはり一つのメルクマールになると思うのです。そういう意味で、どのくらいの取り扱い件数がある。それはまあ記録にしてもしなくてもいいですが、大体どのくらいの収入があるのか。それから五年にした場合、七年にした場合、まあ主として七年ですが、した場合にどのくらいふえて、それについては心配がいらない、こういうことは、これはお話しの場合に、あるいは弁理士会等と協議をされた場合に、腹の中にあったはずだと思うのです。差しつかえない範囲内でお話しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/14
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015・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) 特許庁に対しましての出願は、全部が必ずしも弁理士を通すわけではございません。個人から直接出てくる場合もございますし、また弁理士を通してくる場合もあるわけでございます。その弁理士を通してくる件数というものも、大体の見当はもちろんつくわけでございますけれども、これで、弁理士の数でその件数を除して、大体の件数が出るということはある程度はございますけれども、実は弁理士の分布の状況が東京、大阪で大体全国の七割くらいが集中しておるような状況でございまして、逆に言いますれば、弁理士の一名もいない府県も数県あるわけでございます。まあそういうふうに、非常に地方によりまして弁理士の分布の状況には凹凸がございますので、一般的にどうこうと申しますことはなかなか困難ではないかと思うわけでございます。
なお、今の吉田委員の御質問の答えには直接なりませんが、半面から申しますというと、今度の七年以上云々という規定が加わることによりまして、直接特許庁の関係者で資格者が出ますのは十七名ないし十八名くらいの数でございます。なお、もう少し申しますれば、従来の規定、すなわち高等官として在職して二年審査審判の事務に従事したというもの、この規定の結果としましての有資格者が現在百名ほどいるわけでございます。ですから、そういうような点から申しまして、今回の規定の改正によって、新たに弁理士になり得るものの数がどう、弁理士会にどう影響するかという数的関係の影響については、従来は特許庁、弁理士会両者間においての話し合いにも、あまりこれは表面には出なかった事柄でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/15
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016・吉田法晴
○吉田法晴君 法改正によって十七、八名の特許庁審査官をやめて、弁理士になる人があるだろう、こういう予測が立つということですが、それで特許庁としても支障はないというのか。それからもう一つ、弁理士会の方でも現在出願件数が多くて、あるいは取扱依頼件数が多くて、弁理士会の方でも、急に混乱が起こるといいますか、あるいは脅威が起こるというほどでもないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/16
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017・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) 二つの点についての御質問でございますが、第一点につきましては、先ほど申しましたように、今度の七年以上審判また審査事務に従事したということによりまして、弁理士になり得るというものの数が十七、八名でございまして、これがすぐに特許庁をやめまして弁理士になるということはないと思います。と申しますことは、現に特許庁の職員中で弁理士になり得る資格を持っています者が百名ないしは百二十名ほど従来の規定の効果としましてあるわけでございますけれども、そういう弁理士になり得る資格を有する者も現に安心しまして審査審判の実務に従事しているような状況でございます。ですから今回の規定の改正によってすぐに何名かの人間が特許庁をやめまして、弁理士になるというところは、そこまで考えていない次第でございます。
それから第二の点でございますが、これは結論から申しますれば、弁理士業界に対しまして、そう影響とも言うべきものは私はないと考えております。むしろ弁理士中、非常に繁忙な事務所関係の方面では、毎年の弁理士試験等によりまして、もっと弁理士の数がふえることが難ましいという意見、そういうような意向さえも、われわれとしては聞いておるような実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/17
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018・吉田法晴
○吉田法晴君 まあ東京、大阪が主でしょうけれども、出願件数、あるいは取り扱い件数が多くて、現状では少し弁理士が少な過ぎる、あるいは増加することが望ましいのではないかという、これは特許庁の判断、その弁理士となる者がふえることが望ましいという事情のもとで、特許庁の審査官なり、何なりである者の中から、私は先ほど十七、八名なる予想があると聞いたんですが、あとの答弁ではなり得る者があるので、それが何名なるかどうかはわからぬというお話でしたが、弁理士会からすればその十七、八名が弁理士にすぐなるのではないかというか、そういう弁理士になる者が特許庁側からふえるのではないかという、心理的なこれはやっぱり圧迫であったろうと思う。それが十七、八名はあるけれども、何名になるかわからない、弁理士事務所で今働いておって、弁理士になり得る者あるいは試験を受けてなる可能性のある者はどの程度あるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/18
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019・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) ちょっと最後の御質問の趣旨がつかみかねたのでございますが、現在弁理士になり得る直としましては、現在問題になっておりまする特許庁において一定年限勤務するということ以外には、弁護士が当然弁理士業務が行ない得る、それからまた従来の法律規定の効果といたしまして高等試験合格者も弁理士になることができる、それからまた従来の大学卒業者ないしはこれと同程度の学識を有する者につきましては、選考という方法によって弁理士になり得る道が設けられているわけでございます。こういうふうに弁理士法の従来の幾つかの改正の経過によりまして、だんだんその特例の範囲は狭まって参りましたけれども、今申しましたように、旧法の規定の効果といたしまして、まだ今でも弁理士試験合格者以外に弁理士になり得る道が開かれておるわけでございます。そういうような結果としまして、ここ数年間の毎年の弁理士の新規登録件数を、ここに御参考までに申してみますと、大体三十二年が五十三名、三十三年が五十一名、三十四年が七十三名、大体五、六十名ずつ新しい新規登録者が出ておる。最後に申されました弁理士事務所で働いておる方々で、弁理士になり得る場合と申しますと、まあ多くは弁理士試験を受験するということになろうかと存じますけれども、昭和十六年六月以前の大学の卒業生は、先ほど申しました選考によって、弁理士になり得る道があるというふうな例外の方法がここに開かれているわけでございます。まあそういうようなわけで、大体の最近の弁理士としましての新規の増加の趨勢は、右に申した通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/19
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020・吉田法晴
○吉田法晴君 今昭和三十三年とか、あるいは二年から四年までですか、五十三、五十一、七十三という数字をおあげになりましたが、その中で特許庁の審査官等をして、この弁理士になった者は少ないのだと思うのですが、それが同名、それから昭和十六年以前の大学卒業で選考になった者、それからその後試験によって弁理士になった者、その大体の数はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/20
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021・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) これは二つの数字を申した方がよいかと存じます。三十四年末現在におきまして、弁理士の総数は千七十五名でございます。この中でその弁理士としましての資格の取得の事由別に申しますと、弁理士試験合格者が三百七名、それから弁護士が五十四名、それから高等試験合格者が三十八名、それから審査官、審判官でかってあった者、これが百四十九名、それから先ほど申しました選考によりますのは五百二十七名。それから次に最近の毎年の新規の登録者の数でございますが、便宜上三十四年について申しますれば、合計七十三名でございますが、これの内訳は、弁理士試験合格者が三十三名、弁護士は七一名、同等試験合格者が七名、審査官、審判官であった者が七名、選考によります者が七名、それから再申請十二名、これは再申請と申しますのは、かつて登録をした弁理士であって、その弁理士をやめましてまた申請したというわけでございますから、厳密な意味では新規な弁理士とは言えないかとも存じますが、一応再申請者が十二名、そういう数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/21
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022・吉田法晴
○吉田法晴君 その数字で見ても、試験によって弁理士になるのがまあ一番多いわけですね。弁護士の分はこれは弁護士である資格に基づいて弁理士になるのですから、これは問題は、ここで考える必要ないと思います。それから高等官云々の者も過去の資格に基づいて云々ですからこれも考える必要ないと思うのです。そうすると、結局三十四年の七十三名の中からいえば、選考でなった者が七名、審査官から出た者が七名で、それから試験を受けた者が三十三名、そうすると、三十三名という者がやはり一番多い。これは三十四年の千七十五名の中のあれにしても一番多い、三百七名。そうするとここで試験を受けて弁理士になる者が、どのくらいたって弁理士試験を受け、そして合格をしているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/22
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023・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) 弁理士試験の状況でございますが、これは予備試験と本試験がございます。この三十四年の実績について申しますと、予備試験の受験者が四十二名、そして合格者が九名、それから予備試験を通って本試験を受験する場合と、予備試験を要せずして本試験を受験する場合がございますが、その本試験について申しますと、筆記試験の受験者が二百七十三名、うち合格者が五十二名、口述試験の受験者は四十四名、うち合格者が二十七名ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/23
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024・吉田法晴
○吉田法晴君 これは予備試験を受ける数あるいは予備試験なしに筆記試験、口述試験を受けられたのですが、これはまあ段階もありましょうし、比較の材料にならぬですが、私のお尋ねをするのは、特許庁の事情から、特許庁に働いておって、それから弁理士になるものについてだけ法改正をお考えになっておる。しかし弁理士になる者の相当多くの部分が弁理士事務所に働いておった云々というところから、何年かの経験を経てなる者が一番多い、こういう現実を承ると、弁理士事務所に働いて、そして弁理士になる者との均衡ということも考えなきゃならぬし、あるいは弁理士事務所に長年働いて、そして試験を受ける者から弁理士になる者がふえるようにといいますか、同じようにふえるようにという点は、これは特許庁としても考えなきゃならぬことです。われわれとしても考えなきゃならぬことだと思う。そういういわばいろいろな道を通じて、弁理士になる者の資格について考慮されたかどうか。それからその考慮の基礎になる弁理士事務所に働いて、そして試験を受けるまで何年くらいかかっておるのか、こういうことをお尋ねをしておるわけです。これは算術平均をするわけにもいかぬかと思いますけれども、大体どのくらいで弁理士になっておるのかということをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/24
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025・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) 弁理士事務所に働いておる人が弁理士試験に合格するには何年くらいかかるかという御質問でございますが、これは全くその人その人の能力でございまして、一年以内で勉強して弁理士試験に合格する人もございましょうし、あるいは三年、四年で、何回受験しても合格できないという人もあるわけでございまして、これはその人個人の努力と能力のいかんでございますので、弁理士事務所において大体何年くらい勤務をした者が合格できるかというところは、非常につかみにくいかと存じますけれども、最近の試験の合格者の年令の方から申しますれば、大体二十代から三十代、二十代と申しましても三十近い二十代でもちろんあるわけでございますが、大体年令といたしましては三十才を中心としましてその前後という数が、年令層が弁理士試験の合格者としましては圧倒的に多い状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/25
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026・吉田法晴
○吉田法晴君 そうすると、弁理士事務所で働いておっても、三十代前後でとっておる者が多いという点からいって、大学卒業して五、六年、長くても七年くらいではとっておるから、そこで審査官を七年しておった者が弁理士になれるとしても、当然著しくそれが優位に弁理士になっておるわけではない、こういうことが言えるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/26
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027・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/27
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028・吉田法晴
○吉田法晴君 五年か、十年かという話の際に、弁理士会では、十年という主張と一緒に、弁理士の業務のことに関連をして希望が出ておったというのですが、この点についても、前に御質疑があり、あるいは御答弁があったようですけれども、これは弁理士としてあるいは弁理士会の法の改正に伴って当然出てくる要望ではないかと思うのですが、私は弁理士法あるいは弁護士法その他詳しく研究をしたわけではありませんが、事件が争訟になって、争いになって裁判をするとか、あるいは強制処分を求めるとか、こういうことになりますと、これはまあ弁護士の範囲だと思うのですが、しかし特許庁に対して審査をする、あるいは登録をした特許権なり、あるいは実用新案権なり、そういうものを守る、これは当然権利を確保することから出てくる当然の働きだと思うのですが、そういう意味においては、権利の確保、あるいは行政的な行為、あるいは事実上争訟にならない程度で、権利の確保のためにいろいろなことをする、申し入れをするとか、あるいはその他やるというのは、これは弁理士の任務から当然出てくることではないかと思うのですが、いかがでしょうか。そういうこれは解釈の範囲内で、弁理士なら弁理士の希望をかなえるということを、この際法の改正を最小限要するものがあるかもしれませんが、あるいは要しないでもできるものがあるんじゃないかと考えられるのですが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/28
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029・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) 弁理士の業務の範囲につきましては、現行法第一条に規定しているところでございまして、今回は特許法で新規に行政処分に対する救済の道としての訴願あるいは通産大臣の裁定という制度が設けられましたので、従来の特許、実用新案、意匠または商標に関し特許庁に対しなすべき事項の代理ということ以外に、通産大臣に対してなすべき事項の代理ということを今回加えたわけでございますが、ただいまの御質問の点は、むしろ実際問題としまして、弁理士が依頼人の要求に応じまして、その権利の確保という点から、ある行為を行ない得るその範囲を、できるだけ実情に即して広げるということが至当じゃないか、そういう解釈の余地はないかという点が御質問の要点のように私存じます。従来、特許庁の原案を中心としまして、弁理士会との間のいろいろ話し合いをいたして参りましたが、問題は主として今度の改正法案のそれらの事項に関する鑑定という表現がここにございますが、鑑定ということに関連しまして、今申されましたような、相手方に対する請求のような行為までできるかどうか、その点が議論になったわけでございます。
本来、ここに申しまする鑑定は、言うまでもなく、特許、実用新案、意匠、商標に関しまして、ある具体的な事案について法律的、技術的な専門知識からするその判断ということになるわけでございます。
具体的に申しますれば、甲発明が、特許になるかならないか、あるいは甲特許は、無効になるべきでないか、あるいは甲の特許権の範囲内に、乙の行為が属するのではないかというような技術的判断について、弁理士が、これをなし得ることは、これはもう鑑定というような規定からしまして当然でございますが、実際問題としまして、弁理士としては、その技術的な判断に加えまして、権利侵害というような行為が、現実にあった場合に、相手方に対して、これの差しどめの請求をなし得る、あるいは損害賠償請求をなし得る、そういうような必要が実際上あるわけでございます。特許庁としましては、事実上の問題としましては、弁理士が、この特許、実用新案、意匠、商標に関しましての、何と申しましても専門的な知識、経験を有するものでございますので、そういう具体的な事案につきまして、実際上差しどめ請求、あるいは損害償請求のようなことをなし得るように取り計らうことが、まあ望ましいということは、特許庁としましても考えているところで実はございますが、この法律の解釈としまして、「鑑定其ノ他ノ事務」の中に、これが入るかどうかにつきましては、先般井川委員の御質問に対しましても、お答えした通りでございますが、技術的判断からこえましてそういういわゆる不法行為の、まあそこに成立するという、判断、あるいはこれの差しどめ請求をするとか、損害賠償請求をするということは、これは弁護士法第七十二条との関係から申しまして、これは法律上非常にむずかしい点でございます。
で、われわれとしましては、その鑑定という表現からは、そういう行為までを包含させることはむずかしい、それからまた、その鑑定に続きましての「其ノ他ノ事務」という中に、そういう行為がなし得るものと判断する、解釈することも、これは困難ではないか、「其ノ他ノ事務」と申しますのは、普通は、書類の作成であるとか、相談をするとか、調査をするとかいう事柄でございまして、もっとも他方におきまして、弁理士法第九条という問題がございまして、これは補佐人になり得るという規定でございますが、「裁判所ニ於テ当事者又ハ訟訴代理人ト共ニ出頭シ陳述ヲ為スコト」という規定からして、今御指摘のような点についてまで、弁理士がなし得るのであるというような有力な解釈も、実はないわけではございませんけれども、正面きっての法律論としましては、弁理士法第一条によって第九条も、当然制約をこうむるのであるという議論が、他方にあるわけでございます。言いかえれば、第九条は、第一条の規定する範囲外プラス・アルフアの行為が第九条によってなし得るという議論と、それから第九条は、一見広いように、規定としては、そういう形にはなっておっても、この弁理士法第一条によって当然制約が、限度が、そこにあるのであるという、両方の解釈があるわけでございます。結局、われわれとしましては、今日のこの法文の解釈からは、どうしても弁護士法との関係から申しまして、これは無理ではないかという考えでございます。
しかしながら、立法論として今後弁理士の業務範囲を、どうもっていくかという問題は、またおのずから別でございまするこの点につきましては、弁護士の業務範囲と、弁理士の業務範囲、あるいは弁護士制度、弁理士制度のあり方という、大きなこれは問題でございまして、非常に今後研究を要すべき問題が、そこにいろいろあるわけでございます。
また弁理士制度自体につきましても、今のように同一の弁理士が、特許の代理もなし得る、商標もなし得るというのは、技術が非常に高度化、複雑化しました今日の段階からいって、結局、そういうような弁理士制度が、はたしていいかどうか、言いかえれば、弁理士の業務を専門化すべきでないかというような議論も他方あるわけでございます。そういうような弁理士業務を専門化すべきかどうかというような問題につきましては、今後これは、外国の立法例等も十分に参考にし、かつ広く、いろいろ学識経験者の意見も聞きまして、慎重に検討して参りたいと思っておる次第でございまするが、先ほど申しました、弁理士の業務範囲と、弁護士の業務範囲との、微妙なむずかしい、その限界の調整の問題につきましても、将来弁理士制度のあり方という問題と一体としまして、今後、これは十分、時間を費やして慎重に検討して参りたいと、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/29
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030・吉田法晴
○吉田法晴君 今の御答弁からしても、専門化の問題、あるいは外国法制との比較において、弁理士業務の法制的規定については、研究をしていくということですが、その中で問題になりますのは、中間になる事柄ですが、弁理士が補佐人になり得る、これは裁判に当たっても、その専門的知識を生かす上からすれば、弁理士以外にはないという意味で、補佐人の道が開かれておるのだとも考えておるんですが、弁護士法七十二条をあげられましたが、訴訟事件、非訟事件、訴願、審査、異議の申し立て等、それから、その他一般の法律事件に関係して、この際、こういうことは、これは弁護士法の規定からして、できないのは当然であります。ところが法律の規定の外の事実関係、特に特許あるいは商標その他権利の確保をするために、これは登録をするのですから、その登録をした、あるいは登録に関係する権利の事実上の保全といいますか、法律的な保全じゃなくて、事実的な保全というところまでは、これは登録という制度があり、権利を守る手段として明らかに認められておる以上、事実行為は、これはやり得るのじゃないかということが私の意見であります。法律で弁護士なら弁護士の権限として明定している部分には入ることができないことは、これは間違いない。しかし権利の確保のために、あるいは法のために登録という制度があり、その登録に関係して、当事者のその当該権利を守るために協力をする、あるいは代理をする、こういうことが認められる以上、その権利の擁護についての事実行為というものは、訴訟なり、あるいは法律事項になって云々というところになれば、これは困難かと思いますけれども、それ以前の事実行為については、これは当然なし得るのじゃないか、解釈がなし得るのじゃないか、こう考えるのですが、重ねて特許庁長官の御明答を願っておきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/30
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031・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) 大体、御意見の通りにわれわれも考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/31
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032・吉田法晴
○吉田法晴君 まあそう承って、一応審査官を七年としたのは、弁理士会の希望だけでなくて、弁理士になり得る他の者、特に弁理士事務所で長年働らいておった者が弁理士になるのと、均衡も失しないという意味で、七年が妥当だと、こういうまあ説明と了承いたします。
それからもう一つ要望が出ておりました弁理士の業務の範囲に関連している訴訟事件、あるいは訴訟事件に関連をしない事実行為については、今の法制のもとでもやれるんだ、こういう御解釈で、弁理士に対する全般的の配慮もあったということで了承いたしますが、もう一つ特許庁、あるいは特許庁の職員、あるいはこの審査官等が安心をして仕事に従事し、あるいは今の山積し、渋滞をしておる業務を解決するために、一つの方法として、この弁理士になり得る期限を、七年たったら弁理士になれる道を開く、こういう方法も了解いたしますが、ところが、先ほど質疑の中で明らかになりましたように、弁理士になる道が開けたからと言うて、百名現在なり得る者が、それがどんどんやめて、あるいは十七、八名の者についても、これは百名より、もっと可能性があると思うのですが、それが十七、八名すぐやめてしまっても、やっぱりお困りになるだろうと思う。それを防ぎます道は、私は処遇以外にはないと思うのです。で、弁理士になり得る道をあけるということは、それは将来にわたって希望を与えるということで、今日においては、希望を必ずしも保証されておるということではないと思うのです。
で、今までの審査なりあるいは参考資料として出されたものを見ても、給与の点について特許庁も主張をされ、あるいは人事院等も、改善の要求が出たようですが、それをもってしても、あるいは従来の弁理士に比べて著しく遜色があるということは間違いない。それから同じ技術者という点から言って、民間の技術者の給与等の比較をいたしましても、いただきました資料でも、二千円以上の開きがはっきりある。一般職員との差も出ておりますけれども、やっぱり何と言っても、一番問題になるのは、民間との差、弁理士を含めてですが、これは差だと思うのですが、そうすると、大学を卒業して、一年くらいたっても三千円弱の差ですが、五年たって二千八百円、あるいは十二年もたつと、一万円を越す差が出る、こういう事態は、これは放置しておいたのでは、弁理士に七年たったらなり得るという制度を設けても、これは焼け石に水だと考えざるを得ない、この給与の問題について、あるいは身分の問題等について、どういう具合にお考えになっているのか、もう一ぺん伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/32
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033・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) 御指摘のように、特許行政は非常にじみな、かつ困難な仕事でございまして、われわれとしましても特許庁関係者、なかんずく審査官、審判官の待遇改善の問題につきましては、非常にいろいろ苦慮をいたして参った次第でございます。一般的な公務員の待遇改善ということは別問題としましても、われわれといたしましては、審査官、審判官だけに特別の計らいを、ここに今般考えた次第でございます。と申しますのは、調整額という制度がございますので、これは、われわれ特許庁の方から人事院に対し、また大蔵省に対し、いろいろ交渉しました結果、ようやく審査官、審判官につきましては、本俸プラス八%の調整額、それから審査官補、補助官につきましては四%の調整額が、この四月一日以降認められることになった次第でございます。
その結果としまして、ここに例として申しますれば、大学卒業後五年を経過して審査官になった早々といいますか、そういう場合は、一般公務員でございますれば、一万七千九百十円という六等級三号の俸給でございますが、これに審査官、審判官の場合には——いや審査官につきましてはこれに八%の調整額がつきます結果、一万九千六百十六円ということになるわけでございまして、一般公務員に比べて一千七百円ばかりのこれはプラスでございます。また、大学卒業後十二年の経験者を例として申しますれば、一般公務員としましては四等級一号、二万六千円というのが普通でございますが、これが特許庁の審査官の場合には八%がつきまして二万九千五百六円ということで、三千五百六円のプラスになるということでございます。しかしながら、今申されましたように、これを民間と比べて考えますというと、まだまだ低いわけでございまして、今も申しました大学卒業後十二年の経験者の例について言いますれば、大体民間と比べまして一万円ぐらいまだ低いということになろうかと存じます。
これは、そういう実情でございますので、われわれとしましては、一般公務員の待遇改善の問題は別としましても、特許庁の審査官、審判官について、今回はこの八%、四%という調整額が設けられた、認められたわけでございますが、今後これの増額、すなわち、できれば一二%、一六%というふうにまで調整額の増額ということにつきまして、今後は努力をいたして参りたいと、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/33
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034・吉田法晴
○吉田法晴君 もう一ぺん念を押してお尋ねをいたしますけれども、先ほど十七、八名なり得るという、審査官の中の弁理士になり得るという人の数字をあげられましたが、そういう人たちが、この法律が通ったら、すぐに弁理士になってやめていくということはないというお見通しであるのか、もう一ぺんそれをお尋ねしたい。
それからもう一つ、こういう弁理士になり得るという道をあけて、それで給与の点も、まあ一応八%、四%、いわば手当ですか、これは調整号俸じゃなくて手当のようですが、手当という意味においては、私は不安定だと思うのですけれども、その不安定な手当ということで、審査官なり、あるいは職員が、長く在籍し得ると保証をされるか、さらに行政的に長く在籍をして、審査官職員としての職務に万全を期するには、今まで論議をいたして参りました、すなわち今度の法律の改正と、給与の措置で、十分であるとお考えになるのか、もう一ぺんお尋ねをしておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/34
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035・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) 第一の点につきましては、先ほども申しましたように、今回の審査日、審判官としまして、七年業務に従事するという規定が、資格の特例として加わることによりまして、新たに十七、八名の弁理士になり得る資格を有する者ができるということを申したわけでございますが、実は、これとは別に、繰り返しになって恐縮でございますが、従来の規定の効果としまして、すなわち特許庁において高等官に在職して二年以上審査または審判の事務に従事するとか、あるいは高等試験に合格をするとかいうような従来の規定の効果としまして、現在すでに百名ばかりの弁理士になり得る資格を有する者があるわけでございますが、そういう審査官、審判官も、目下安心して、日々業務に専念をして、従事をしておるという実情でございますので、今度の有資格者といいますか、今度の規定の改正によって資格獲得する者が、直ちに弁理士の方に転向するというようなことは、私は、あまり心配していないわけでございます。
が、しかしながら、今後の問題としましては、特許庁の審査、審判の迅速化、改善という点から申しましても、今般の法律改正、あるいは給与の状況でもって十分かどうかというような御指摘の点につきましては、まだ、これをもって十分であるとは考えてはおらないわけでございまして、今後待遇の改善等につきましては、一そう検討して参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/35
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036・吉田法晴
○吉田法晴君 最後に、要望を申し上げておきます。
一番最初、御質問を申し上げましたときに、七年の根拠の十分な説明ができなかったように、法の改正あるいは給与、待遇の改善等について特許庁、自分の直接の所管部門については、関心があり、また責任を持っておるようですけれども、しかし特許なり、特許庁に関します行政は、やはり弁理士専の協力を含めて全般的に行なわれることでございますから、この視野を狭くして、自分の足元だけを見ているのじゃなくて、法律の改正も、給与の待遇改善も、もちろんやられなければなりますまいが、特許行政全般について、弁理士等の協力を十分得て、そうして今の窮状を打開するように、もっと広い立場でものを考えなければならない。そうして解決策を立てていただくように、最後の答弁からいたしましても、十分であるとは述べておられぬので、全般的な視野から、問題解決の行政的な措置を講ぜられるように、あるいは法の改正についても、途中でいろいろ問題がありましたけれども、全般的な立場から御検討をいただくように要望をしまして質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/36
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037・栗山良夫
○栗山良夫君 まだ、細部にわたってお尋ねをいたしたい点がたくさんあるのですが、この点は、いずれ長官にもお尋ねをすることにいたしまして、弁理士法に対する考え方について、大臣から一言伺っておきたいと思います。
それは過日、大臣がその一部改正法案の提案説明をなさいましたときに、現行の弁理士制度というものについては、根本的な検討を要する点がある、こういうことを述べられておるのでありますが、このことは、われわれも全く同感であります。昨年度の通常国会におきまして、特許四法が根本的に新法として制定を見ましたのも、実は時代の進運に即応し得るような体制を工業所有権の上に設けようという趣旨であったので、われわれももちろん賛成をいたしましたが、問題は、科学技術の振興の成果として工業所有権を設定する道を国が開いておるわけでありますが、科学技術の振興そのものが、近年目ざましい発展を遂げて、質的な進歩をしておるわけでありますから、従って特許庁の内部機構においても、これに即応し得るような体制をとられなければならぬということを、われわれは力説をして参りました。それと同時に、発明発見者と国との間において工業権設定のために、いろいろと努力をせられる弁理士の立場に立ちましても、やはり斬新的な制度というものを設ける必要があろうかと思います。
そこで、この弁理士法の根本的な改正というものは、提案説明では、将来慎重に検討を続けて参りたい、こういう意思表示でありますが、これを緊急に検討せられておやりになる御用意があるのか、この辺を、ただ提案説明の修辞的な言葉として述べられた程度のものであるのか、この点を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/37
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038・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 昨年お話しの通り、改善についての法律の改正をいたしましたが、この技術の進歩等によりましてこの事務は、相当多岐多様にわたると考えております。
従いまして、技術進歩のはなはだしい現状におきましては、常にそれに即応した制度の改善ということを考えていかなければならぬ、これは当然で、一般行政としても、そうでございますが、特にこういう問題につきましては、政府は力を入れて参りたいと考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/38
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039・栗山良夫
○栗山良夫君 力をお入れになることはわかりましたが、弁理士法なるものを、根本的に検討を加えて、特許四法にちょうど対応し得るような、新法として国会に御提案になる、そういうような御用意があられるかどうか、またそういうことは、おおよそ日限的には、どの程度の構想をお持ちになっているのか、こういう点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/39
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040・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 弁護士制度とか、あるいは公認会計士制度とか、あるいは計理士制度、いろいろな制度がございますが、そういうものにもまして、この弁理士制度の方は、変化していくものでございます。
そういう意味において、いつどういうところを、どうするということはございません。心がまえを申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/40
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041・栗山良夫
○栗山良夫君 長官、大体そうですが、事務当局として……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/41
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042・井上尚一
○政府委員(井上尚一君) なるべく早く、研究の方は十分進めて参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/42
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043・栗山良夫
○栗山良夫君 最近も計理士のグループからは、計理士法を制定してもらいたいという動きが出ております。会計士法もあり、それぞれあって、いろいろ重要な使命をもった人たちを保護する法律があり、またないものは作ってもらいたい、こういう要望があります。
ところが、弁護士法などは弁護士の使命、職責、そういうものについて、きわめて明白に基本的な考え方というものが、法律のやっぱり一番冒頭に規定となって示されております。弁理士法の方には、そういうものがないですね。ただ、きわめて簡単なもので、弁理七というのは、これこれの「事項ニ関スル鑑定其ノ他ノ事務ヲ行フコトヲ業トス」ですから、やっぱり何というか、一種の指導理念というか、そういうものが欠けているので、私は法そのものの水準を、もう少し苦いものにする、弁理士というものを高いものにして、そうして弁理士そのものの質的な向上をはかるようにしなければいけないのではないか、たとえばただいま特許、実用新案その他の申請は、非常に数量的には日本は多い、諸外国に比較して多いんだが、それでは実際に、それが特許となるもの、そういうものの率は、どうかと言いますというと、日本は、はるかに低いわけです。
たとえば日本が五十七年度に九万一千件もの出願に対しまして、特許登録になっておるのが二万四下、ドイツは九万七千に対して四万二千、アメリカは七万四千に対して四万二千、こういうことでありますから、特許、新案の出願の中には、もうその資格を最初から備えていない、こういうものも相当あると思います。これらのことは、やはり弁理士が、もう少ししっかりいたしまして、もう弁理士の窓口において、相当に発明発見者との間にPRをして、整理していく、国の事務も従いまして、いたずらに複雑にしない、こういうやはり重要な使命を、弁理士は持っていると思う。やはれ業として収入を得るならば、何でも特許庁の窓口に持ち込むということではよくないと私は思う。そこにやはり弁理士の国家に対する私は責任があり、使命があると思う。そういう点を弁理士法で明確にする必要があるのではないか、考え方としては、そうだと思う。
そういう意味で、どうか一つ、大臣の方においては——ただいまの御答弁は、まだ私、心から満足はできませんが、努力の方向は示されたわけでありますから、時間的に、もう少し明確にせられて、今、私が意見として申し述べましたようなことが、法律的に実現するように御努力願いたい、こう思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/43
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044・山本利壽
○委員長(山本利壽君) では、他に御質疑はございませんか。——他に御発言がなければ質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにして、お述べを願います。——別に御発言もなければ、討論は終局したものと認め、これより採決に入ります。
本案を可決することに賛成の方は挙手を願います。
[賛成者挙手]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/44
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045・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 全会一致と認めます。
よって本案は、全会一致をもって、可決すべきものと決定いたしました。
なお、議長に提出する報告書の作成等につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/45
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046・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 御異議ないと認めます。
よって、さよう決定いたしました。
ちょっと速記とめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/46
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047・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 速記始めて。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/47
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048・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 次に、経済の自立と発展に関する調査を議題といたします。
日本産業の海外啓発宣伝問題に関し、質疑の通告がございますので、これより、本問題について審議を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/48
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049・栗山良夫
○栗山良夫君 情報文化局長にお尋ねをいたしますが、ただいま在外公館は、各省の公務員が全部外務省の所属に転籍されて配置されている。転籍して処置しているから、従って日本の国内事情の海外宣伝は、全部外務省が統括していると見てよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/49
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050・近藤晋一
○政府委員(近藤晋一君) ただいま仰せになりましたように、在外公館には各省の方々が配属されて、そして対外PRにおきまして、各省の関係のいろいろPRにつきましても、在外公館が、それをやっています。
しかしながら、たとえばジェトロは、それ自体が海外のトレード・センターを持っておりまして、ジェトロはジェトロとして、それ自身の貿易振興のPRをやっております。しかしながら在外のジェトロの活動につきましては、在外公館長の指揮監督を受けることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/50
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051・栗山良夫
○栗山良夫君 もう一つ。わかりましたが、外務省の省内としては、その諸外国のPR、日本の国情紹介のPRは、あなたのところで全部一手に統括しておられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/51
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052・近藤晋一
○政府委員(近藤晋一君) ちょっと、初めの御質問の御趣旨がわからないのでございますが、日本の国情に関する対外PRでございますね。——これはわれわれの方で、関係庁と相談をいたしまして、それを取り入れて、適当なるPR活動にいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/52
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053・栗山良夫
○栗山良夫君 それでけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/53
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054・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 本日は、これにて散会いたします。
午後零時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X01319600310/54
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