1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年四月二十六日(火曜日)
午前十時三十五分開会
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委員の異動
本日委員吉田法晴君辞任につき、その
補欠として山口重彦君を議長において
指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 山本 利壽君
理事
川上 為治君
古池 信三君
栗山 良夫君
委員
赤間 文三君
上原 正吉君
斎藤 昇君
高橋進太郎君
阿部 竹松君
近藤 信一君
椿 繁夫君
島 清君
加藤 正人君
政府委員
通商産業省石炭
局長 樋詰 誠明君
参考人
財団法人石炭技
術研究所専務理
事 藤田 均三君
電気事業連合会
専務理事 中川 哲郎君
日本炭鉱労働組
合中央副執行委
員長 藤岡 三男君
全国石炭鉱業労
働組合中央執行
委員長 重枝 琢巳君
日本石炭協会専
務理事 佐久 洋君
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本日の会議に付した案件
○石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を
改正する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/0
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001・山本利壽
○委員長(山本利壽君) これより商工委員会を開会いたします。
委員の異動について報告いたします。本日吉田法晴君が辞任され、その補欠として山口重彦君が選任されました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/1
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002・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 本日は午前中、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について参考人の意見聴取を行ない、午後は商工会の組織等に関する法律案の質疑を行ないます。
参考人の件について御報告いたします。参考人の人選については前回の委員会において、委員長及び理事に御一任いただいておりましたのでお手元に配付してございます参考人氏名表の六名を決定いたしましたが、その後、日本石炭鉱業連合会会長武内礼蔵君、電気事業連合会副会長松原根宗一君の両君から、やむを得ない用務のため出席できない旨の申し出がございました。従って委員長といたしましては各理事とも協議の上、電気事業連合会専務理事中川哲郎君を参考人としつて出席を求めることといたしました。以上御了承願います。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/2
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003・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は御多用中、当委員会のために御出席をいただきまことにありがとうございました。委員一同にかわりまして厚くお礼申し上げます。
これから御意見を拝聴いたします。石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正案は、石炭鉱業の現状にかんがみ、昭和三十八年度における石炭の販売価格を昭和三十三年度に比較して千二百円程度引き下げることにより、競合エネルギーに対する経済性を回復させるために、石炭鉱業の急速な合理化をはかろうとするものであります。本問題に関し重大な関心を持っておられる参考人の方々から率直な御意見を伺うことができますならば、今後の審議に資するもの大なるものがあると存じます。
これより意見聴取に入りますが、議事進行の都合上、まず、お一人十分程度で順次御意見を述べていただき、意見の開陳が全部終了したのち、各委員より質疑を願うことにいたします。
それでは石炭技術研究所専務理事藤田均三君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/3
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004・藤田均三
○参考人(藤田均三君) 私ただいま御指名がございました石炭技術研究所の藤田均三でございます。
今般石炭鉱業合理化臨時措置法の一部が改正せられまして、近代化という炭鉱の一つの仕事に対しまして、助成金を出してやろうという法案が提案せられまして、まことに私たちありがたいことと存じております。ぜひともこの法案というものが実現されるよう希望してやまない次第でございます。それに関連いたしまして石炭技術研究所という立場から、私も一つ皆様方に聞いていただきたいことがございますので、ただいまから述べさせていただきます。
日本の石炭鉱業は、欧米の諸国に比較いたしますと、その技術水準はかなり低いところにあるわけでございます。従いまして価格の面におきましても、競合関係にあります重油等に比べましては、かなり割高でありまして、しかも近来著しい技術の革新が行なわれておりまして、その結果、流体エネルギーというものに対する需要が増加いたしました結果、石炭需要というものがある程度圧迫されまして、今日重大な危機にあるわけでございます。わが国の石炭資源というものを見てみますと、これは非常に自給度の向い国内資源でございまして、そういう関係から過去百年間にわたりまして、わが国の産業の原動力として、その発展に貢献して参つたわけでございます。
しかし一般的に申しまして、石炭の採掘には非常に複雑な技術と、そして多額の金が要るわけでございます。こういう関係から重油等に比較しまして、割高になっておるわけでございますが、今後石炭鉱業が生きていくためには、どうしても原価を下げる以外には道はないというところから、抜本的な合理化を実現する必要があるわけでございます。そのためにいろいろ合理化の方法を研究いたし、そうしてこれを実現するということに考えておるわけでございますが、その方法といたしましては、すでに皆さんも御存じの通りに、炭鉱の体質改善と申しますか、スクラップ・アンド・ビルドという最近の言葉で現わされておりますが、そういうふうに炭鉱の非常に条件の悪い、どうしても安くあがらないようなところは一応見送つて、いい体質のところに集中したい、こういう体質改善の方法と、それから坑内構造の改革と申しますか、これは従来は日本の炭鉱というものは、露頭ぎわから斜坑をもって採掘を開始したのが初めでございまして、今日まで大体斜坑方式というものがとられておるわけでございますが、深く広くなって参りますと、この斜坑方式では非常に困難な面も出て参りまして、この数年前から縦坑というものが非常に問題になって参っておりまして、最近縦坑開さくがたくさん行なわれてきておるわけでございますが、こういう面からも坑内構造の改革、こういうものも重大でございます。
それからこれは当然でございますが、作業の機械化というものを進めて、能率を向上させるということが、これはもう重大なことでございまして、終戦以来この面に相当力が注がれておるわけでございます。そのほか流通面の合理化とか、あるいは経営面におきましても、多角経営その他によりまして、いろいろ原価面を安くするという方法も考えられるのでありますが、業界もこういう方向に計画を進めておるわけでございます。昨年末業界が作りました長期計画は、そういった線に沿つたものでございまして、この計画を実施いたしますためには、非常に多額の設備投資と申しますか、資金が必要なのでございます。この調達は非常に困難でございまして、どうしても皆様方の絶大なる御援助をお願いいたさなければ、とうてい達成されないものと信じておりますので、この資金調達の面につきましても、皆様方の十分お力を得たい、こういうふうに考えております。
また炭鉱というものは、皆さんもすでに御承知の通りでありますが、年々生産条件が悪化して参っておるわけでございます。これは採炭がだんだんと進んで参りますと、深くなり広くなるというようなところから、自然条件もだんだんと悪化して参りまして、そういう悪条件というものを克服した上に、さらに今後原価低減をはかつていかなければならないわけでございますので、こういうことに対しましては、どうしても技術の革新ということが必要となって参るわけでございます。しかしまあ技術の革新と申しましても、一朝一夕でできるものではございませんで、ふだんから研究とそれに対する努力が必要なわけでございます。しかもその研究には相当莫大な費用がかかるばかりではございませんで、研究自体がむだになることもあるというふうで、非常に危険負担ということも覚悟せねばならぬわけでございますので、なかなかこういう研究自体というものは、一企業体として十分やつていけるような問題ではございません。
そこで今般発足いたしました石炭技術研究所というものは、日本石炭協会会員の十八社が共同いたしまして、革新技術を開発するとともに、企業化試験をあわせて行ないまして、そうしてそのほかにも石炭採掘の技術の面、あるいは利用加工の技術の面におきましても、センターとなるような役割を演じまして、わが国の石炭鉱業の安定と、そうして日本経済の発展に寄与するために作られたものでございます。
以上申しましたように、石炭鉱業というものは、長期計画によって合理化を実現するために、莫大な設備投資をすることにしておりますが、さらに技術革新の開発普及という研究をいたして参りますためにも、相当多額な費用が必要なわけでございます。
そこで私たち研究所の立場から申し上げますと、石炭鉱業の画期的な合理化というものを実現するような一つ研究に対しましては、十分なる政府の補助金というものを出していただいて、その効果を急速にあげるようなふうにお考えを願いたいということが一つでございます。
それから二つ目は、政府のいろんな助成金を出していただきましても、財団法人でございます研究所というものは、その研究を進めますために、その三倍なり四倍なりというような大きな経費が、研究するため必要なわけでございますが、それは現在寄付金によっているわけでございます。寄付金というものは、税金の対象になっておりまするために、なかなか十分な寄付金を得るということも困難な面もありまして、どうしてもこういう研究に必要な寄付金その他の資金というものにつきましては、研究を育成するという意味から、ぜひ一つ無税というような措置をしていただきたい、こういう二つのことから今後いろいろと研究というものが盛んになるようにしていただくならば、私たちも非常に喜びにたえないことと存じているわけでございます。
いろいろ申し上げますと、こまかいこともございますわけでございますが、大体そういうふうに今日のところ私たち考えておりますので、一応この辺で私の申し上げることを終わりまして、あとで御質問に応じたいと思います。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/4
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005・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 次に、電気事業連合会再務理事中川哲郎君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/5
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006・中川哲郎
○参考人(中川哲郎君) 中川でございます。電気事業といたしましては、現在石炭の需要家といたしまして、最大の量を消費している産業でございますので、この立場からいたしまして、今回の合理化臨時措置法の一部改正の件につきましては、結論から申しますれば全くこの趣旨には賛成でございまして、ぜひこの実現を希望いたす次第でございます。
電気事業といたしまして、最近いろいろ燃料関係につきましては、問題を持っているわけでございますが、何をおきましても、最近の電力需用の増加の傾向が著しいのでありまして、三十四年度におきましては総需用量が七百三十億キロワットアワーという状況でございまして、前年に比べまして一七%という需用の増加を示しております。本年度に入りましてからも、ほぼ同様の状態で、四月を経過いたしておりますので、ここ当分電力の需用の趨勢というものは、こういう傾向のもとにあろうかと存じます。かようなわけで、これをまかないます供給力の面につきましても、水力地点というものが漸次少なくなって参っております関係上、火力発電にどうしても重点を最近ではおいております。総開発設備のうち三分の二は火力設備によっておる、こういうのが現状でございまして、従って、年間百万キロワット以上の火力設備を建設いたしておる状況でございます。従って、火力発電用の燃料と申しますものも年々増加して参ってきておりまして、昨三十四年度の燃料といたしましては、石炭で千三百万トン、重油で百六十万キロリッター、これを石炭に換算いたしまして約千六百万トンの燃料を消費いたしておるのでございまして、今後需用の増加に応じまして、おそらく昭和三十八年度には石炭換算で二千七百万トン程度、さらに昭和四十二年度におきましては約四千万トンに近い燃料を必要とする見通しでございます。
こういうような状況になって参りますと、この燃料の量を十分に確保いたしまして、またその価格というものが電気事業のコストの上に非常なウエートを持って参るわけでございますので、できるだけ安い燃料で、しかもできるだけこれを有効に利用する。こういうことで絶えずいろいろ研究もいたし、またそれの方策について関係業界への御尽力をお願いいたしておる次第でございます。
この石炭あるいは重油に伴います燃料費と申しますものは、電気のコストから申しますと、最近では全体のコストの二割以上を占め、おそらくこの三十五年度におきましては二割五分程度のウエートを持って参ることになろうかと存じます。そういうような次第でございますので、一昨年来、私どもは石炭業界とは特にいろいろな意味で、お互いにこういった長期の見通しに対しまして、燃料の確保、それの価格の低廉化、あるいは石炭と重油との関係をどう振り分けて処理して参るかというような点につきまして、忌憚のない意見交換をいたして参っておる次第でございます。
そういう意味合いから、一昨年におきましても、非常に石炭の過剰時代におきましても、電気業界といたしましては、四百万トンをこえる貯炭を保有いたしまして、石炭の不況の緩和の一部にも役立つように努力もいたして参ってきておりまするし、価格の合理化の面におきましても、いろいろ重油との価格差その他もございまするけれども、できるだけこれはある将来の形を見まして、漸進的にそれに近づいて引き下げをはかつていただく、こういうような趣旨から、価格協定等につきましても、他業界に先んじまして、石炭業界とはいろいろ話し合つて、毎年の価格等をきめて参ってきておる次第でございます。
先般重油ボイラー規制法の改正というような問題に関係いたしまして、重油専焼火力の設置の問題がいろいろ皆様方のお耳にも入つたかと思いまするが、この点におきましても、先々の燃料の消費量が非常に増大して参りまして、わが国の石炭の適正な産出量等からはじきまして、どうしても石炭というものが電力へ向けられる面は、おそらく年間で二千万トンないし二千五百万トン程度であろう。そうなりますると、不足する燃料につきましては重油ということになりますので、近い将来に重油を燃料として多量に消費することになります場合には、どういうような発電設備が一番電気事業にとりましても合理的であるかというような点を検討いたしまして、重油に対しましては、重油専焼ボイラーを設置することが適当ではないか。こういうような趣旨からいたしまして、それの設置につきまして強く関係方面にも御要望を申し上げて参つた次第でございます。
今後の燃料といたしましては、従いまして、石炭は一番安定した供給源として、これを石炭の合理化の進展度合等も見まして、昭和三十八年度程度まではおそらく年々百万トン以上の増加をはかりまして、これをべースとして使つて参ります。それ以上の分につきましては重油を使いまして、豊渇水あるいは重用の変動、こういった面は重油で調整をしていただく、こういうことになろうかと思うのでありまして、従って、石炭は電気事業としても国内資源でございますから、これはできるだけ安定した供給源としてこれを毎年豊渇水等の変動等で御迷惑をかけることなく確保して参りたい、かように考えておるわけでございます。
それにいたしましても、現在石炭と重油とでは、ことに京浜等の消費地におきましては、カロリー当たりにおきまして約十銭程度の開きがございまするし、さらに、重油の専焼設備等と比較して考えますると、二十銭程度の開きにもなろうかと思うのでございまして、こういうような意味合いからいたしまして、今回石炭業界並びに政府で三十八年度までにトン当たり千二百円の価格低下をはかる、こういう方針に対しましては満腔の賛意を表しておる次第でございます。従いまして、この法案につきましても、石炭の合理化に必要な設備につきまして、政府の補助あるいは融資をされる、さらに流通機構面におきましても、それの合理化につきまして必要な援助をされる、あるいは非能率な炭鉱の整理をされる、こういった計画につきましては、電気事業者といたしまして非常に賛成をいたすわけでございまして、これが適切に効果を生みまして、所期の価格低下、合理化の成果があがりますことを切望しておる次第であります。
以上、業界といたしましての意見を申し上げた次第であります。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/6
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007・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 次に、日本炭鉱労働組合中央副執行委員長、藤岡三男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/7
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008・藤岡三男
○参考人(藤岡三男君) 私は、炭労副委員長の藤岡であります。石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正について炭労の見解を述べます。
今から五年前、私ども炭労は、この法律制定について反対をいたしました。その理由は、第一に、この法律に基づく合理化計画は、国家資金を引き出すための資本の要求を反映するのみで、労働者にとつては労働強化と首切りだけを予定したものであること。第二に、石炭鉱業整備事業団による中小炭鉱の買い上げは、大手資本の市場の安定を確保するために、中小炭鉱をいけにえにしようとするものである。この法律は、買い上げられた中小炭鉱経営者の財産は保護されるが、労働者は首を切られるだけで、何ら生活上の保障はない。これでは法の公正を欠くものである。第三に、この法律による一切の施策は、独占資本の保護政策に過ぎず、これでは石炭鉱業の真の近代化は期しがたい。逆に資本の国家への依存と寄生性を増大させるのみである。ということであります。
その後五年、事態は私どもの予測した通りとなりました。この法律よって、石炭鉱業はどれだけの技術の進歩を遂げたでしょうか。縦坑開発はどれだけ促進されたでありましようか。たとえば、三十三年三月現在で最も多いのが通気専用、第二位にあるのが人員と材料運搬用で、近代化にとつて最も重要な石炭巻き上げ縦坑は全体のわずか一一%にすぎません。これらの事実は、わが国の斜坑方式の欠陥を取り除くのでなく、切羽機械化と同様、労働時間の延長と標準作業量の引き上げに役立っておるだけであります。これでは労働の生産性は当然低く、災害が増大するのはわかり切つたことであります。
次に、この法律は標準炭価を設定して価格を引き上げることになっていましたが、標準炭価そのものが下がらなかったばかりか、実際の炭価は千五百円も上がつたのに政府は何らの措置もとつていないのであります。
またこの法律によって中小炭鉱は神武景気のただ中においてさえ次々と買いつぶされ、筑豊地帯の五万数千人に及ぶ失業者の群は、食うに食なく、着るに衣服なく、実に失業地獄と化しているのでありまして、失対事業や緊急就労も全く焼け石に水の状態であることは委員各位も御承知のことと思います。
以上が、この法律が五年間に果たした総決算でありまして、全く皮肉にも、石炭産業を合理化したのではなく、一そう破滅に導いたのであります。この法律によってだれが損害をこうむり、だれが利益を受けたかは、もはや言う必要もありますまい。
昨今、にわかにエネルギー革命論や石炭斜陽論がはなばなしく登場し、石炭産業の体質改善が叫ばれています。私どもはこれを全然否定するものではありませんが、石炭産業が今日競争燃料に立ちおくれを示しているのは、エネルギー革命が進行した結果もさることながら、実は政府自身が石炭資本のかかる伝統的な寄生性と頽廃性にはメスを入れないで、これらの法律に示されるような弥縫策を弄して真の近代化を怠つてきたからにほかならないのであります。
前置きが長くなりましたが、それでは今回の法律改正案について私どもの見解を述べてみたいと思います。
まず、本法案の根本的性格が五年前の法律と本質的には大差のないことを遺憾とするものであります。本法案は石炭鉱業合理化審議会の答申案を基礎に作られておりますが、私どもはこの答申案作成の過程においても労働者の意見を述べ、反対して参りました。石炭鉱業の近代化により高炭価を是正し、日本経済の発展に寄与することは、私どものかねてからの主張であり、賛意を表するものであります。
ところで問題なのは、提案理由の第一に、石炭坑の近代化に関する事項を基本計画に定める必要があるといっていますが、その内容についてであります。これは合理化審議会の答申が明白に語つている通り、昭和三十八年度までに十一万人の炭鉱労働者の大量解雇を指すものでありましょう。現在三井三池においては多数の警官を動員し、正当な労働争議を抑圧してまで、あるいはまた暴力団をも利用し、労働者を刺殺してまでも、これを強行しようとしている、政府、石炭経営者の政策は実に目に余るものがあります。私どもが最も不満とするところは、石炭危機の原因をもつぱらエネルギー革命に帰し、政府、経営者の責任や高炭価の歴史的要因については何らメスを入れず、労働者の大量出血によってのみ能率の向上とコスト引き下げを企図している点であります。このことは長い石炭産業の経営の歴史が物語つております。
私どもはエネルギーの消費技術の変化が進行していることを否定するものではありません。しかしこのことが石炭産業の危機をもたらしているのだという主張は、労働者と国民の目から資本主義の矛盾と、政府、経営者の政策をおおい隠そうとするものでありまして、わが国石炭鉱業の高炭価と低能率は、古い生産機構、すなわち、石炭産業の発展の全歴史を通じて、鉱区の独占による鉱山地代の取得と低賃金労働の搾取に根本的に依存してきたところに原困があると思います。こういう方法で利潤追求の目的が達成されるとすれば、資本にとつては、生産力をほんとうに高めるような生産的投資に努力するよりも、膨大な休眠鉱区を抱きかかえたり、炭鉱で得た利潤を他の産業部門に注ぎ込む方が有利でありましょう。また、機械を入れるよりも、農村その他の潜在的過剰人口を集めて、低賃金と圧制的な労務管理でもって搾取する方が有利になることは指摘するまでもありません。このような古い生産機構と、これとうらはらの関係にあめる、不合理きわまる流通機構に対して、根本的な対策は講ぜす、企業利潤はそのままにして、国民経済の美名のもとに、労働者の一方的犠牲を強要する合理化は、古い機構を新しい条件のもとで町生産するだけにとどまり、石炭産業を、真に進歩の軌道に乗せることはできないと思います。まして、職を失つた労働者に対して、ほとんど見るべき具体的措置も考えず、三年間に十一万人を首切るなどという暴挙は、社会的にも許されることではなく、また世界に類例のないことであります。このような計画を基本計画として法に定めるという、第一の改正点について、私どもとしては反対せざるを得ません。
次に、第二の改正点は、石炭鉱業整備事業団を改組して、石炭鉱業合理化事業団とし、二十一億四千万円を政府が出資して、石炭坑の近代化に必要な資金を貸し付けるということですが、その具体的内容は、縦坑開発資金十八億六千万円、流通機構整備費一億四千万円、中小炭鉱の機械化資金一億四千万円と聞いております。縦坑一本を掘るのに数十億円を必要とするのに、全体で十八億六千万円で一体どれほどのことができるでしょうか。これでは何もやらないというにひとしいものであります。流通機構整備費についても、現在進められている石炭鉱業審議会生産性部会の結論を見ますと、施設の共同化などのこそくな手段しか考えられていません。これでは何ら流通機構の改革にはなりません。また、中小炭鉱の機械化資金についても、金融の道は閉ざされ、そのため、技術の近代化が一そうおくれている中小炭鉱を、もし本気になって近代化しようとするなら、これだけでは焼石に水というほかはありません。以上、改正点の第二について、まとめて言うならば、これは合理化を進めるかのごとくであつて、実は逆であります。合理化の看板を掲げ、労働者の大量首切りを合法化しようということに本質があると断ぜざるを得ません。従って、石炭坑を積極的に近代化すべきであるという観点から、本案第二点に反対いたします。
第三は、中小鉱の買いつぶしワクを二百万トン拡大するということでありますが、昨年、私どもの反対を押し切つて百万トンの買い上げワクを拡大したばかりであるのに、今回、さらに二百万トンの拡大が出されるというのは、いかに政府の石炭政策がずさんなものであるかを証明するものであります。これでは石炭産業の危機を克服することはできません。問題は、冒頭指摘したように、根本的な発展のための計画を樹立することにあります。また、炭鉱離職者援護会に交付金を出すことになっていますが、これは買いつぶし促進費であり、十一万人首切り促進のための援護財源にすぎません。なお、この問題について、特につけ加えたいことは、買い上げ金は失業する労働者の生活費にも回るという趣旨であったのに、事実は全く相違している点であります。現実に、買い上げ後一年以上たつて、買い上げ金の大部分が鉱害賠償その他に持っていかれ、賃金も退職金ももらつていないという例が数多く出ているのであります。
ここで触れる必要もないかと思いますが、社会党提案の石炭鉱業安定法案によれば、まず未開発炭田の開発に、政府出資の特殊会社を設立することになっていますが、今日、金融機関が石炭への投資にちゆうちよしており、また鉱区の独占、鉱区の錯綜が開発を妨害している現状において、低廉な石炭を供給するためには、電源開発特殊会社、石油資源株式会社のごとき開発方式が必要であると思います。
第二点として、石炭は生産に弾力性が乏しく、このことが需給関係の安定を著しく阻害しているのであり、加うるに、石炭の需要の大きなウエイトを占める電力用炭において、豊水、渇水が大きな影響を加えているのであり、これらの制度的解決が必要であります。この点社会党案は、販売会社を設け、流通過程の一元化をはかったことは適当な措置であると思います。しかし運営そのものが、過去の配炭公団の末期のごとき粗悪炭のみが残ることのないような生産会社の協力が必要だと思います。同じ資本主義の国においても、石炭はイギリス、フランス等においては国有方式をとり、ドイツにおいても鉱区の整理が行なわれ、販売も一元化されている事実は十分検討に価すると思います。
最後に、この合理化法の基礎となつた審議会答申は、三年後の出炭規模を五千から五千五百万トンに押え、縮小再生産の方向を打ち出しております。私どもは、この方向自体が石炭産業を合理化し、競争燃料と対抗し得ることにならないと思います。この提案理由は、今の石炭市場の拡大に対して生産制限の結果であると言っていますが、絶対的に需要が拡大している事実に目をおおうものであります。私どもは、労働者の雇用を安定し、国の資源の開発を促進することこそ、石炭の価格を引き下げ、日本経済に寄与する最善の方法であると信じているものであります。私は今までに幾たびとなく通産大臣を通じ、あるいは審議会等を通じて炭労の見解を発表し、労働者の考え方を入れた石炭政策を打ち出されるよう要請したにもかかわらず、その意見は全く取り入れられず、失業者が続出する中に何らこれに対する労働対策も考慮せず、まさに死の宣告に価するようなこの法律案には残念ながら反対せざるを得ません。私どもの政策なり見解は、すでに大臣のもとにありますので、ここでは申し上げませんが、どうか労働者のこの切なる希望を入れられた法案を作成されますよう重ねて要望いたし、私の意見を終わります。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/8
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009・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 次に全国石炭鉱業労働組合中央執行委員長重枝琢巳君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/9
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010・重枝琢巳
○参考人(重枝琢巳君) 私、全炭鉱の重枝でございます。参議院におきまして、石炭産業の当面しておる危機の突破について、いろいろな角度から御検討願つていることにつきまして、関係産業の労働組合として厚く感謝の意を表したいと思います。
石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案要綱に対する私の意見を述べます前提としまして、今日の石炭産業の状況をどういうふうに見、それに対してどういう対策が必要であると考えておるかという点について初めに申し上げてみたいと思います。
私たちは、今日の石炭産業の困難な情勢、それは根本的にはエネルギー消費構造の変革という歴史的な一つの革命的なものに由来するものだというふうに考えております。しかし、こういう世界的な傾向というものの中で、特に日本の石炭産業が困難な情勢にあるのは、そういう大筋の理由のほかに、まだ多くの理由があろうかと思います。そのうちの大きなものといたしましては、第一に、政府が石炭産業の問題に対して総合的、根本的な対策を持っていなかった。一国の産業の基礎になりますところのエネルギー政策というものを総合的にやつてこなかったというところに一つの大きな問題があろうがと思います。その一例は、この石炭鉱業合理化臨時措置法というのは昭和三十年に制定をされました。五年間の施行を経てきておるわけでありますけれども、その施行の実態を見てみますと、何となく場当たり的な傾向が強いわけでありまして、総合的な、根本的なものが欠けておつたというところに今日の危機をより一そう大きくしているのではないかと、こういうふうに考えております。
第二は、日本の石炭経営者の怠慢ということがあろうかと思います。戦後の石炭産業の歴史を考えてみましても、石炭国管の危機を通り越しまして、あるいは朝鮮事変後のブーム、あるいはその後の神武景気によるブームという、こういうような幾たびかのブームがあったわけであります。そういう石炭産業にとつて非常に好条件の中で、将来を見通して根本的な経営の刷新をはかる、こういう施策がやはり欠けておつたのではないかと思います。こういうような、政府あるいは経営者における政策の誤謬あるいは怠慢、こういうようなものが今日の石炭産業の危機を一そう深めておる理由になっておるのではないかと考えるわけであります。
そういう現状の認識をいたしておりますが、それでは当面の石炭産業の危機を乗り切るためにはどうするかという点につきましては、その大筋において、過般、昨年に石炭鉱業合理化審議会から出されました答中の内容に盛り込まれておる点について、われわれとしても大体において賛成をいたしておるわけであります。すなわち、石炭産業が昭和三十八年度までに競合するエネルギーとの競争価格を実現をしていく、そのための体質改善を行なっていくということ、この点については大筋において私たちも賛成をいたしております。で、そういうことをやるためには、企業あるいは石炭産業の経営者あるいは労働者、関係者が非常な努力をしていかなければなりませんが、同時に石炭を使われる消費者の立場においても、日本の産業のやはり基礎をささえるところの一つでありますところの日本の石炭産業が、将来エネルギーの供給源の一つとして確固たる地位を築くその役割を完全に果たす態勢を整えるという段階でありますので、これに対してやはり深い理解を持って協力をしていただかなければならないのではないかと思っております。同時にそういう産業、企業の関係者、あるいは消費者の努力、こういうものがありましても、それだけではなかなかできない。そこでやはり政府においては、政策によって、それらのことではできない欠陥について政策で補充をしていくということが必要である、こういうふうに考えておるわけであります。
そういう態度から、この合理化臨時措置法の一部改正という点について考えてみますと、三十八年度の目標を立てて、その達成のために努力をしていくという点については、これは大へんけつこうなことだと思います。しかし、これをどういうふうにして実現していくからという点がいろいろ問題になってくると思います。
第一は、こういう石炭産業の合理化あるいは体質改善というものは、まず大手大企業を中心にやっていくということではだめだと思います。これは大企業も中小企業もともに石炭産業全体を総合的に考えていくという態度が必要であろうと思います。それからやはり勇気を持って抜本的な対策を立てていくということでなければならないと思います。さらにそういうものは、ほんとうの意味で計画的でなければならない。計画というものをただ立てて、それを掲げていくということだけではだめであつて、その計画はやはり責任を持って実行していくという態勢がなければならないと思うわけであります。特に石炭産業は、需要が急速に変動をいたしましても、それに対応して直ちに供給を調節をしていくという調節力に欠けておる産業でありますので、この点については、需要の確保ということが第一の要件にならなければならないと思います。一定の計画を樹立したならば、その需要を必ず確保する政策の裏づけがなければならない。政府の責任においてその需要を確保していく、こういうことでないと石炭産業というものはうまくいかない。そのしわが各方面に寄つていくということになると思います。そういう意味では、先ほど電気事業の関係の方の御発言もございましたけれども、私たちは、やはり日本の石炭を使う相当大きな部門は電気関係だと思っております。やはりこれには京浜あるいは阪神地区というようなところに発電所を設けるということも必要でありましょうが、産炭地に石炭専焼の火力発電所を、大規模なものを作る。そうして、いわれております超高圧送電というようなことで需用地に持っていく、こういうようなことももっと一つ真剣に取り組んでいただきたいと思うわけであります。石炭産業の困難な状態は、日本だけではなくて、アメリカなどにおいてもそのような情勢にありますけれども、アメリカにおいても、産炭地における発電というものはきわめて低廉にできておるわけでありまして、電力会社等にいろいろ聞いてみましても、自分たちは石炭一本で使つていくことを考えておる。それによって安い電力を供給したいと思っておるということを言明をしておられますし、また石炭産業の関係者もそれに対応して、安いよい石炭を豊富に、安定的に供給しようという態勢を整えておるわけであります。そういう情勢において石炭産業の安定がなし遂げられておるということを見ましても、このことは一応実施をしていただかなければならない問題であろうと思っております。
それからそういう合理化を進めていくのでありますけれども、これは単に生産の面だけでなくて、流通の面も大いに合理化をやつていかなければならない。同時に体質改善ということは、経営のあり方自体も体質の改善をしていただかなければならないと思うわけであります。すなわち経営のあり方というものに対して、やはり民主主義の原則を貫いてもらう。そこに働く労働者の意見を十分聞きながら、経営の民主化をはかつてやっていく。そういう経営の体質改善ということも考えないと、この大事業はなかなかむずかしいのではないかと思っております。同時に、個別の企業の利澗を追求する、こういうようなことがありますならば、この大事業というものはうまくいかないのではないかと思います。たとえば、ドイツなどでは、もし利潤を欲するならば、炭鉱なんかに投資するよりもチョコレート会社に投資した方がよほどいいという話がございます。日本の場合にも、石炭産業というもののやはり社会的な使命というものを考えて、いやしくも利潤の追求ということのために、全体の合理化の対策というものが左右されるということであれば、これは失敗することは明らかでありまして、そういう点では経営者の方々の戒心をお願いをするとともに、政府においても政策上そういう点を強硬に強力に遂行していただかなければならないと思います。
そこで、需要の確保ということはただいま申し上げましたが、それに続いてやはり総合的な計画を実施していくためには、政府の予算上の措置あるいは金融、税制というような点の配慮も必要であるわけでありますが、これは先ほどの藤岡さんの御意見にもありましたように、そういう点がきわめて微々たる額になっております。合理化審議会の千二百円引き下げという案を決定する際にも、政府のそういう金融税制予算措置というものによって吸収できる金額を相当見積もっておつたわけでありますけれども、そういうものが、現実の本年度の予算を見ますと、十分になされていない、こういうことではこの計画と、計画を実行するという方針は、単に画にかいたもちになってしまうと思いますので、そういう点は政策を遂行する上の基礎条件として再検討してもらわなければならないと考えております。
次に、整備事業団を合理化事業団にして、そうして金融の面をいろいろ考える。さらに買い上げのワクを増大するということがございます。私は今まで述べましたような見地から考えて、この買い上げのワクの増大というものもやむを得ない事態だと思っておりますが、買い上げによって生ずる離職者の問題、あるいは全般的にこの体質改善によって出てくることを予想される離職者の問題、こういう問題に対するいわゆる離職者対策というものを根本的に検討して、その対策を確立をするということが必要であると思います。この炭鉱の買い上げについては、その買い上げの実施、買い上げによって支払われる代金を、労働者の諸権利に対して優先的に払うというような点については、この法律案が成立するときに付帯条件としてつけられ、そういうことが行政面で生かされるということになっておつたわけでありますけれども、私たち現実の運営を見てみますと、遅払い賃金の支払いあるいは退職金の残りを支払うあるいは移動資金を支払うという点について、どうも時期的なズレがあったり、それが約束された通りに履行されないということで、炭鉱の買い上げによって失職する労働者に対して非常な犠牲を強いておるという実情がいまだにあるわけであります。こういう点の措置を十分考えていただかなければ、大筋として買い上げのワクを増大することがやむを得ないということであつても、そういう措置が伴わなければ、われわれとしてはこれに対して賛意を表するわけには参らない。ぜひともそういう対策を根本的に検討していっていただきたいと思うわけであります。
それから炭鉱の離職者につきましては、この買い上げによる離職者を含めまして援硬協会というものができております。これは法律は昨年できて、今年の二月一日から発足したと思いますが、ところが、これがまだ実際には何らの活動をしていないといっていいくらい、その人事構成において、石炭産業の事情をよくわかった人たちを多くその要職につけるということでなくて、極端にいいますと、何か労働関係の官僚の定年退職されたような人を、そういう要職につけるというような例も幾つかわれわれ見ておる。そういうことでは、ほんとうに石炭産業の問題から起きてくるそういう離職者を親身になって世話をするという体制がはたして考えられておるかということについて、非常に疑問を感じておるわけであります。同時に、この援護協会の運営委員会といいますか、審議会といいますか、そういうものが法律上あることになっておりますけれども、今日までいまだに開かれていない、こういう怠慢な情勢、運営では、いかにりつぱなことが法律案に述べられ、その提案理由に述べられ、皆さんの御審議の過程でりつぱなことが述べられましても、国民あるいは石炭産業の関係者は、これを信用をしてその措置を待っておるというわけには参らないわけでありまして、そういう点の実情をつぶさに聴取していただいて、それに対する対策もあわせて考えていただきたいと思います。
さらに最後に私は、こういう石炭産業の体質改善という大事業をやっていくという場合に、石炭産業の中の先ほど申しました生産、流通、経営についての体質改善ということも、これは非常に大問題であります。また需要を確保して需要を長期的に調整をしていく、こういう問題も重要であります。またそれから出てくる失業者、十万人程度の炭鉱労働者の減少を見ることになるわけであります。私たちもちろん十万人の減少ということを、そのまま十万人の首切りというふうには考えません。自然減耗によるものもありましようし、その他いろいろな解決方法もございましょうが、やはり多くの失職者が出て参りますので、そういうものの産業構造の変革という意味で、成長産業に新しい労働者として、りつぱな産業人として更生できるような措置が必要であります。そういう点一つを見てみましても、これは国民全体の立場で広く各界の意見を聞いて検討しなければならぬ大きな問題があると思いますので、一つそういう意味で石炭政策全体について、石炭産業全体の問題について各界の意見を聞いて、それを強力に政策その他の中に盛り込めるような方法というものをあわせて考えていただいて、これを進めていただきますならば、りつぱな成果が上げられるのではないかというふうに期待できます。
以上のような要望を申し上げまして、基本的にこの法律案に対して賛成をいたしたいと思います。
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011・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 次に、日本石炭協会専務理事佐久洋君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/11
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012・佐久洋
○参考人(佐久洋君) 私は日本石油協会の専務理事をいたしております佐久でございます。本日は石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について、特に意見を申し述べる機会を与えられまして厚くお礼を申します。石炭関係では私の方の団体のほかに中小の団体がございまして、そこからも本日は参考人として参る予定にしておりましたが、急用のために参れません。これから私が申し上げます内容につきましては、中小の方でも賛成をいたしておりますので、その意味でお聞き取りをいただきたいと思います。
すでに皆様御承知のように、石炭鉱業は昭和三十三年度以来、需給面でも採算面でも非常な窮境に逢着して苦しんで参りました。この不況は、本質的には技術革新に伴うエネルギーの流体化、という消費構造の質的な変化に原因しております。つまり石炭のような固体エネルギーから石油、ガスというような流体エネルギーに移り変わりつつある世界的な潮流によるものであります。わが国の場合におきましては、この傾向に拍車をかけているのが、石炭価格の割高と供給の不安定という二つの要素であります。従いまして、景気変動の底としての不況ではなくして、ただいま申しましたような構造的な不況であり、危機であるという認識に立って対処しなければならないと考えるのであります。
そこで、大手業界といたしましては、まず第一に炭価をできるだけ引き下げて、競合エネルギーに価格面で近づけることによって需要を確保し、続いて新規需要の拡大をはかることを基本的な目標にいたしまして、生産面及び流通面の徹底的な合理化を推進することの必要を感じました。
そこで昨年五月から半歳を費やしまして、長期の合理化計画の策定作業を行ないました結果、十月にこの炭価の引き下げ対策の基本方針を明らかにしたのであります。すなわち競争燃料に比肩し得る三十八年度の国内炭の需要を五千五百万トン程度と想定いたしまして、そのワク内で極力低炭価の実限を期することといたしました。そのためには非能率炭鉱の整理、高能率炭鉱に生産を集中するといういわゆるスクラップ・アンド・ビルド方式を貫くことによって、炭鉱の体質改善を進めていく。それで結論としては、業界として労使協力して何とかして所期の合理化目標を達成して、三十八年度までには三十三年度に対して炭価を揚地で八百円引き下げるということを公表し、かつこれを約束した次第でございます。この大手業界の決意表明に対しまして、政府におかれましては、構造的な石炭政策の決定に資するために、昨年秋石炭鉱業審議会に基本問題部会と生産性部会を設置いたしまして、まず基本問題部会が基本方向について数回にわたって精力的な検討を重ねました結果、昨年十二月すでに御承知のように、業界の八百円引下げに加えて、政府の強力な助成措置と相待って、三十八年度炭価を三十三年度に対して千二百円程度引き下げるべきであるという答申を行ないました。ついでこの千二百円引き下げの具体策を究明するために、本年一月から生産性部会が検討を開始し、まず最初に流通面の合理化による引き下げの目標について、数回にわたって鋭意検討を行ないました結果、本月初めに北海道―京浜間では二百十円、九州―阪神問では百円の流通経費値下げを目標とすることに、一応の結論を得るに至りました。なお引き続いて生産面の合理化問題を取り上げているというのがこれまでの経過でございます。一方政府におかれましても、すでに本年度の予算に近代化助成金、非能率炭鉱買い上げ補助金、離職者対策費を計上するとともに、今次国会で重油ボイラー制限法の延長、原重油関税の引き上げを決定いたしました。千二百円引き下げを基本目標とした一連の構造的対策を着々推進してきているのでありまして、石炭合理化法のこの改正案はこの基本線に沿うたものであるばかりか、対策推進のための重大な槓杆であることは申すまでもございません。従いまして、石炭業界としては本法案に全面的に賛意を表するものでありますが、この機会に特に次の諸点について特段の御処置をお願いしたいと考えるのでございます。
その第一は、資金の確保であります。所期の合理化目標を達成し、高能率炭鉱を助成するためには、毎年ざつと三百億円程度の設備投資が必要であります。また炭鉱のスクラップ化等による整理資金とも申すべき運転資金は、本年度だけでも百数十億円が必要であるかと考えます。御承知のように、三十四年度は一般炭の大幅な生産制限を実施いたしました結果、最近ようやく正常の需給状況を取り戻すことができましたが、半面赤字は増大いたしまして、今後の炭価引き下げの熾烈な要請、現実の合理化効果などの関連を考えますと、これらの所要資金量を確保するために、企業の資金繰りはきわめて難渋している状態でございます。しかも本年度の予算に盛り込まれました近代化補助金は、当初の通産省原案より相当に減額されております。また開銀融資ワクも業界の必要とする資金量からみますると、不足の感を免れませんので、これら政府資金の増額を今後お願いいたしたいと思うのでございます。
また長年懸案でございました、開銀金利の引き下げと返済期間の延長がこのほど実現されましたが、これもまた懸案でございました税制改正による負担軽減措置についても、この際何とかして実現されますように、重ねてお願いをいたす次第でございます。ところでこれらの設備資金の確保については、市中銀行筋に対する依存度がさらに大きくなるものと思われます。特に運転資金面では多額の借り入れを必要といたしますので、この点格段の御理解と御協力をお願いいたす次第でございます。
その第三は離職者対策であります。この点はすでに昨年秋炭鉱離職者臨時措置法が制定されまして、昨年度、本年度と多額の予算措置がなれさました。炭鉱離職者援護会も発足したのでございますが、その点からみますると、かつて類例のない離職者対策が進められたといえると思いますが、今後の離職者の発生や現実の情勢を考えますると、石炭企業としてはこれまでにもまして配置転換、関連産業への再就職に全力を尽くす考えではござりまするが、さらに恒久的、総合的な離職者対策というものを講ぜられますよう念願するわけでございます。
第三は流通面の合理化に関連しての問題でございます。先に申し上げました生産性部会の流通経費引き下げ目標達成のために、業界といたしましても全力をあげる考えではござりまするが、輸送費の中で大きなウェイトを占めておりまする鉄道運賃の経減につきまして、特段の御配慮をいただきたいと考えるのでございます。
以上石炭合理化法の改正案につきまして意見を申し上げますとともに、あわせて当面の、以上申しました要望事項について十分の御配慮をいただきたい、かように思うわけであります。以上で私の陳述を終ります。
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013・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 以上をもって参考人の御発言は全部終了いたしました。参考人に対し質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/13
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014・栗山良夫
○栗山良夫君 まず最初に電気事業連合会の中川哲郎君にお尋ねをいたしたいと思いますが、先ほどの話では電気事業の火力用炭の需要というものは非常な将来伸びがある。三十八年度には、もちろん重油も入れてでありますが、二千七百万トン、四十三年度には四千万トン、こういう工合に伸びる、こうおっしゃったのでありますが、その場合に、先ほど参考人の御意見の中にも石炭の需給関係が非常に需要が不安定である、であるからしていろいろ操作がしにくいというお話がございましたが、ただいまの電力用炭は昔のような補給火力の性格からだんだん脱皮しましてベース・ロードにする、今後水力開発も、水力の開発の方がかえつて補給的な性格を持っている。こういうふうに私ども承知しておるのでありますが、従って電力用炭が今のような工合で伸びて参ります場合に、炭価の問題が解決されれば、石炭の需給の安定というものについてはどの程度貢献できるか、相当今水が、降ったり降らないということで、石炭の五千五百万トンという一応の目標に対して、非常に大きな不安感というものを与えないで済むのではないか、こういうことを考えるのですが、いかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/14
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015・中川哲郎
○参考人(中川哲郎君) 電気事業の燃料といたしましては、やり今の火力がベース・ロ―ドになるという点はごもっともでございますけれども、今までの実例等からいたしまして、やはり需要の想定と実際との食い違いが、一昨年あたりの不況時代におきまして、想定したよりもよほど下回って参つたとこういった場合には、水力の方は大体水に比例して発電されるものでありますから、やはりその需要の変動のしわは火力発覚に移つて参ります。一方豊水、渇水の問題もございますが、これはやはりいろいろ適正な平水ベースあるいはその年の想定等もいたしますけれども、天候の加減によりましてこれも不可抗力的に出て参る現象でございまして、その結果はいずれも需要の変動並びに豊渇水の影響ということが、結果的にはやり燃料にしわ寄せされてくるわけなのであります。こういう点につきまして、私どもの見通しといたしましては、今後石炭のみならず重油等の燃料もふえて参りますので、今後はやはり石炭自身は非常に変動してくるべき性質のものでございますので、石炭の方はできるだけ安定さして、そうして豊渇水の変動等はむしろ重油で調整すべきものではないか、かように考えるわけでございます。もっとも北海道だとかあるいは九州は石炭だけに依存する地区でございますので、この点では若干の変動があるのではないかと思います。全国を通じましては、むしろ発電のし方といいますよりは、燃料を石炭のみならず重油にもある程度依存し、その結果重油でそういった変動を調整した方が全体として適当ではないか。こういう見地から石炭については従前とは違つて、今後は安定した需要の状態を示し得るのではないかとかように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/15
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016・栗山良夫
○栗山良夫君 まあ大体お考えの結果を伺いまして理解しました。要するに石炭の引き取りについては、ある責任量というものを電気事業連合会には持ち得る、そうして豊渇水の安定しない部分については重油である程度操作ができる、こういうふうに理解しましたが、その点はわかりました。そこで責任量の問題なんですが、今政府が三十八年度で五千五百万トン、これで一応安定させようという考え方を持っておりますが、その五千五百万トンの中における責任量というのはどのくらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/16
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017・中川哲郎
○参考人(中川哲郎君) 昨年末に電力協会と、大手でございましたけれども石炭業界の首脳の方々といろいろ懇談をいたしましたが、その際電力業界としての見通しといたしまして、三十八年度には石炭は千八百万トン程度まではふやして使うことになるだろう、これはつまり価格の問題その他もございまするけれども、そういう問題を除きまして、価格が合理的に引き下げられた場合において、石炭といたしまして千八百万トン程度の需要を電力で御期待申し上げたいと、こういうことを言っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/17
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018・栗山良夫
○栗山良夫君 佐久さんにお尋ねいたしますが、五千五百万から千八百万を引きますと、三千八百万トンくらいで需要が安定するわけですか、一般需要としましては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/18
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019・佐久洋
○参考人(佐久洋君) 五千五百万トンの中には原料炭がありますから、五千五百万トンで原料炭がざつと千二、三百万トンだったと思います。残りの三千三、三百万トンの中で電力として千八百万トンないし二千万トン、こうお願いをしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/19
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020・栗山良夫
○栗山良夫君 そうすると、結論からいえば、今の電気事業連合会の計画でいけば、五千五百万トンはまず安定しりた需要が確立できる、こう見てよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/20
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021・佐久洋
○参考人(佐久洋君) 計画通り合理化が進んで炭価の引き下げが可能であれば、大体ここで安定するのじゃないか、こういうふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/21
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022・栗山良夫
○栗山良夫君 その点はよくわかりました。そこで問題は、過日のこの委員会でいろいろ審議したのでありますが、炭価の引き下げの問題であります。これについて、ただいま重技委員長も藤岡副執行委員長も述べられましたが、経営者の合理化に対する基本的な腹がまえという問題が一つあろうかと思います。この点は一つ両組合の委員長と石炭協会の佐久専務理事にお尋ねいたしたいと思います。
われわれが長い間この石炭の問題扱つて参りました場合に、よくわかったようでわからない点が一つある。それはどういうことかと申しますと、日本の炭層のように割合にアメリカ等と比較いたしまして掘りにくい炭層、炭田を持っておるわけでありますから、よくいわれるように、重点的に縦坑開発をしなくちやいかぬと、こういうことがいわれておる。縦坑開発するということは、先ほどもお話がありましたように、相当巨額の費用を必要とするわけでありますが、その縦坑を重点的に活用するということになれば、今非常に複雑錯綜をきわめておる鉱区の整備ということに手をつけなければ能率的な採炭というものはできないのではないか、ほんとうの意味の合理化はそこから始まるのではないか、こういう気持を私どもはどうも常識的に抜けないのでありますが、その点がなかなか煮え詰まつて具体案として出て参りません。この点をどういう工合にお考えですか、それを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/22
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023・佐久洋
○参考人(佐久洋君) 従来日本の石炭は、従来というのはだいぶ前からの話のようでありますが、イギリス系統の技術者の指導を最初受けて、イギリスはもつぱらこれは斜坑方式であります。そこで明治時代からかなり大きな坑口炭鉱の開発が行なわれていましたが、大部分これは斜坑でやつて参つた。ところがある程度の深さになりますと、斜坑では坑内の構造がいたずらに複雑になって、これを簡素化するといいますか、集約化するためには、どうしても水平と垂直の交わりの形で坑内構造というものを考えなくちやならぬということで、これが縦坑が有利であるという、もつぱらドイツの方式ですが、それが大正の中過ぎから若干採用されるようになつた。終戦後は戦時中の乱掘、それから一時的な増産というようなことで、縦坑を大いに進めなくちやならぬということを知りながらも、なかなか手が及ばなかったのであります。昭和二十八、九年ごろからかなり縦坑の考えも徹底して参りました。現在相当程度開さくには手をつけておるわけであります。それで縦坑の開さくをやるには、もちろん地域にもよりますが、鉱区の整理統合といいますか、もっと単一炭鉱の採掘面積を広げるという意味で、整理統合をする方が有利であるというところはもちろんあろうと思います。今まで私の知っている範囲では、そういう場合に、二、三鉱区の譲渡なり分割なりというものを行なつた例はございます。しかし全部縦坑の場合にはすべて鉱区の整理統合が前提とならなくちやならぬというふうには私は見ておりません。それからまた、必要がある場合に、それをどうしても鉱区の譲渡、分割というものをやらないで困つたという例は、私はあまり聞いておりません。そのつどその問題は解決されておる、こういうふうに解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/23
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024・重枝琢巳
○参考人(重枝琢巳君) 私は、一昨年ですか、一昨々年になりますか、日本の石炭産業の総合調査のためにソフレミンという調査団が日本に参って、相当各炭田を専門的に調査をいたしました。その結果膨大な報告書が出ております。その中で、そういう点に触れては、やはり縦坑方式で総合的な開発をしなければならぬという点があるわけであります。この点では、もう考え方としては、私は日本の関係の各方面でも異存のあるところは一つもないと思う。要は、それをどう施行し、どう実現するかということだろうと思う。そういうことがわかつておりながら、先ほどもちょっと私触れたのですけれども、どうも炭鉱の経営というのがいまだに利潤中心で進められている面がやはり残つておるわけで、そこで理屈ではわかりながら、口では言いながら、実際問題としては、そういう総合的なものができないということでありますから、もちろん現行の法規でも、鉱区の問題の解決の方法はあると思うのですけれども、やはりそれはきわめて狭い道だろうと思うのですから、総合的な開発、斜坑方式を総合的にとるという場合には、鉱区の問題をもっと総合的に解決しやすいような措置がとられることがどうしても必要ではなかろうか、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/24
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025・藤岡三男
○参考人(藤岡三男君) 私は、まあそういう炭価を下げる前に、基本的に労働者として経営者に要望したい点があるわけです。と申しますのは、さっきも申し上げましたように、石炭産業の歴史を考えてみますと、これはもう労働者の首を切つて、そうしてその不況を乗り切るというのが長い歴史の中に繰り返されてきているわけです。しかも、その考え方というものを経営者がなお捨てていない。ここに私は本質的にやはり経営者が考えなければならぬ点があるのじゃないかと、こういうふうに僕らは考えているわけです。だからそういう点から考えてみますと、具体的に、炭価を千二百円下げるためには、労働者を幾ら首切るかということによって、逆算されて、この案というものが出てきておる気がするわけです。そうなりますと、その点は一応百歩譲つたといたしましても、もしかりにそうだとするならば、労働者がどうなるかということを、もっと真剣に考えなければならぬのじゃないか、これが経営者の当然の責任じゃないか、あるいはまた、政府としての当然の責任じゃないか。だからこのような計画を進めていくためには、そういう問題だけでなくして、労働対策というものを並行的に進めていって、これで完全に労働者の将来というものも保障できるという見通しが立つたとき、この計画というものができるのじゃないか、こういうふうに考える。ところが、この法案というものは、全然と言っていいくらいに考えられていないわけです。そうしますと、現在でも、昨年に二万人くらいすでにやめておるわけですね。それから前から考えると十何万という失業者がおるわけです。そういう点も全然考慮されていない。だから幾ら将来は考えると言つたとしても、僕らの立場に立つならば、かつて何万という人間があるにもかかわらず、それを放置されておる。この点も考えずに将来を考えますと言つたつて信用できぬわけですよ、これはどうしても。それだけの考えがあるとするならば、過去にそういうとられた――九州だつて七、八万おるのですね。こういう問題が解決されずに、将来こうしますと言っても信用できない。だからそういう問題を片づけて、そうしてなるほどこういう中に、この人たちも解決すべきだということが出て、こういう法案が出るならば、僕らとしても納得できるわけです。そういう以前のものも放置しながら、こういう法案を出すということは、もってのほかだと僕らは考えるわけです。それから、そういうお考えに立って、今度は千二百円の問題という点を考えてみますと、僕らとしてはもっとほかに方法があるんじゃないか。もちろん僕ら労働者を一人もやめてはいけないということを言っているのではない。これははっきりした、職場が安定すれば、これはやめていかざるを得ぬだろう。しかしやめていくためには、やはり双方が納得してやめていかなければならない。だから僕らとしては、やはりまずそういう点について、生産機構を新しくしなければならないという点を申し述べておる。第二には流通機構の問題、あるいは第三には販売機構とか、いろいろな具体的な意見も出しておるわけですが、まずたとえば、さっきも栗山先生が言われたように、鉱区の統合というか整理、こういう点を考えてみますと、僕も具体的にここの鉱区をこうしろということは、ここで資料もありませんが、たとえば九州地方を考えてみましても、縦坑一本掘るといって、二つの鉱区が掘れるという点があると思うのです。かりに佐賀県の杵島とか、三菱に古賀山とか、この前問題になりました志免炭鉱あるいは三菱の勝田とか、こういうような近郷に鉱区があるわけです。そうしますと、縦坑一本でそういうことが全部できるわけです。縦坑一本掘つて、双方が出てきた炭を比例配分してやつていけば、二本縦坑掘るやつを一本でできるということが考えられるわけです。ところが今の経営者は、わが社、わが社という頭が抜けぬわけです。どうしてもわが企業、だから重枝さんも言つたように、ドイツなんかを見ましても、もっと経営者はわが企業というものを――もちろんそれも考えなければならない、資本主義ですから、これは僕も否定はしませんが、もっと事業の社会性というのですか、そういうものに根本的にやはり経営者の頭というものを切りかえていかぬ限り、やはり僕が言つたように、一方では労働者が犠牲になっていくという点が考えられると思うのです。だから生産機構の面からも、今言つたように縦坑一本掘るのに十億から三十億かかる。そういうものを整理してみますと、二十本掘らなければならない縦坑が八本あるいは十本で済むかもしれません。そういうような点を十分経学者同士が話し合つて、そうして政府がそこに立って、社会性というものを考えながらやっていくということをやらないと、われわれが納めた税金というものは、みんな経営者に何十億か投資されて、僕らが納めた税金のために僕らが犠牲になるということは、政府としてもとるべき政策ではない。だからほんとうに事業の社会性というものを心から考え、そうして重枝さんが言つたように、民主主義というものを身につける経営のあり方というものをやらなければならないのじゃないか、こういうように考えるわけです。
それから、そういうような点を考えてみますと、もっとほかに打つ手もあると思うのです。それから流通機構の問題については、もちろん基本部会、あるいは生産部会から出しておりますけれども、もっともっと僕らの立場から言う面もあるわけです。販売問題についても。だからそういう僕らの考え方というものをもう少し聞いていただいて、そうして具体的に、何年かかってどうしていくか、しかもその労働者の雇用先はどうするのだということ――欧州各国みなやつておるのです。だから僕らとしては絶対に首を切つてはいかぬというあれではない。炭鉱に働かなくとも、やはりほかに仕事があれば、その仕事を僕らは求めていくということは否定していませんから、もっと真剣になって、やはり労働者の意見というものを聞いてやっていく。欧州を回ってみましても各国、このことはやはり日本だけではありませんから、世界各国の問題ですから、具体的に聞いてみますと、たとえば全国の産業別である労働組合、あるいは政府、あるいは経営者が十分話し合つて、双方の計画を持ち寄つて、そうして五年なり八年でこういうようにしようじゃないかということをやつているわけです。だからそういう新しい考え方、新しい民主主義の考え方に立って経営者はやつていただきたい、こういうように考えるわけです。
ほかにまだ意見はありますけれども、あとはまた質問に応じてお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/25
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026・栗山良夫
○栗山良夫君 今の問題をもう少し突つ込んでお尋ねしたいと思いますが、それは佐久専務理事と石炭技術研究所の藤田専務理事、このお二人を大体中心にお伺いいたしたいと思います。
私は先ほど佐久専務理事のお話を承つておりますと、縦坑の問題について、現状の鉱区の配置でもさしたる不便は感じない、特に不便である点については統合等が行なわれている、そういう工合にきわめて消極的な言い回しをされたのでありますが、私は石炭がここまで追い詰められて、再建の道を歩もうとするならば、やはり新しい炭田を、近代的な方式において市場開発をすると同じような気持で、鉱業権というものを再配置を行なう、それくらいなやはり積極的な気がまえが必要ではないかしらと、そういう観点に立ってこの生産性を高め、炭鉱の再建ということをやはり経営者なり石炭協会等ではお考えになる必要があるのではないかということが、どうも頭から抜けないわけであります。実は過日の委員会で、池田通商産業大臣とこの点で若干質疑をかわしましたときに、私はこういう発言をしたのです。日本の石炭の需要というものは五千五百万トンで頭打ちをすることはなかろう。これはさらに伸びなければならぬ。そうすると、今の石炭対策というものは、現時点において六万人の首切りを断行する。これによって千二百円炭価を下げる。これによって流体エネルギーと競争ができるのだ。五千五百万トンで石炭は安定経営ができる、こういう結論であります。ところが近代産業というものは、御承知のように企業を近代化し合理化すれば、マスプロ方式でありまするから、五千五百万トンよりもさらに出炭を高めて、鉱区当たりの出炭量はもちろん上がるでありましょうが、それを高めて、需要開発をして、重油の輸入を押えていく、炭価の競争によって押えていく、こういう積極的な活動を展開するということであれば、六万人に手をつけなくても、炭価を下げて、石炭の出炭をふやして、そうしてしかも石炭を安定させることができるのではないか、こういうお尋ねをしたのでありますが、通商産業大臣も、理屈はその通りだ、そういう工合にやりたいんだ、しかしいろいろ事情があつてできない、こういうことをおっしゃったのです。ですから理屈がその通りであるということであれば、そういう工合にやはり国内の政治、経済、その他あらゆる態勢が協力していくということが必要ではないかと私は考えるのであります。そこでそういうものの考え方について、佐久寺務理事はどういう工合にお考えになっているかということを伺いたい。
それから石炭技術研究所の藤田専務理事には、石炭技術研究所というのは、この間御案内状をいただきまして、財団法人として新しく発足せられた。しかも所長にはその道のべテラン、オーソリティが御就任になつたということを聞きまして、非常に期待をいたしておるのでありますが、この石炭技術研究所はどの程度までの石炭技術の研究をおやりになる御予定なのか。そして今話題になっているように、経営の本体において、要するに鉱業権の再配置を行なって、縦坑を中心にして最も能率の高い採炭を行なう、そのための純技術的な考え、さらに各方面の管理、企業管理、その他要するに技術的な石炭再建のいろいろな具体的な問題についてお触れになるのでありましようか、今私が述べたような点についても、今ここで御所信をお持ちになっているのかどうか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/26
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027・佐久洋
○参考人(佐久洋君) 栗山先生の通産大臣に述べられた御意見というのは、私も希望としてはぜひそうありたいというふうに考えております。ただ、重油の進出というものが非常に強い。それから石炭というのは、やはり消費者がなければ、ただ掘るだけでは意味がないのでありまして、消費者が一向買うつもりにならぬというものでは、せつかく掘つても何にもならぬということになります。さらにまあ三、四年後を考えますと、貿易の自由化というその風がどういうふうな形で当たつてくるか、これには現実なってみなければわかりませんが、私は相当のやつぱり嵐を呼ぶことになりやせぬか、石炭については。そういうことを考えてみますと、やはり相当確実性を持つた計画というものを立てて進まないと、途中で非常な戸惑いを生ずる、こういう観点から五千五百万という需要の見通しというものを一応作つたわけであります。石炭が今後需要が、どんどん掘つても、それがいたずらに貯炭にもならないということは望ましい姿であり、そうであれば、また労働者の整理というようないやらしいこともやらないで済む、望ましい姿であるという点では、私は全く賛成をいたします。
それから鉱区の整理の問題、たとえば北海道の釧路地区とか、あるいは天北地区とか、まだ手を触れていないところがございます。こういうところの開発については、当然その開発計画それ自体において、鉱区の調整というものは事前に行なわれた方がいいというふうに私は考えておりますし、われわれの業界の中でも、抽象的ではありますが、そういう論議をしたことはあります。ただ、どこの会社の鉱区を、どこの会社の鉱区とどう合わすかというような具体的な決定にはまだ至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/27
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028・藤田均三
○参考人(藤田均三君) 栗山先生がおつしやいましたことについて一応御答弁申し上げます。
先ほどから縦坑の問題その他についていろいろ問題点が出ておるわけでございますが、縦坑問題ということについて、これは議論をするのじやなくて、一応観念的な一つ整理をしていきたいと思います。日本の炭鉱が従来斜坑方式でやつて参りましたという事態を考えてみますと、斜坑方式というものは、大体浅いところ、あるいは小規模でやるようなところには斜坑方式が有利である、こういうことが一応理論的に考えられるわけであります。それから縦坑方式となりますと、これは相当大規模の計画をしなければ、相当最初に資金がたくさん要るものでございますから、それともう一つは、かなり長年月かけなければ準備ができない、こういうことから小資本である企業にはなかなか縦坑方式がとれないというようなこともありまして、従来は斜坑方式がそういう関係から日本ではとられてきました。ところが現在の炭鉱の深さというものを考えてみますと、現在のところ、大体全国の平均では三百二、三十メートルの深さの所が平均になっております。しかし、五百メートルをこえるような炭鉱もだいぶ出て参っております。こうしますと、斜坑方式で参りますと、五百メートルをこえるような所には、もう斜坑を三段、四段、五段というふうに持っていきませんと、なかなか運搬、通気、その他がうまくいかないというような格好になって参りますし、また五段も六段もの深い所の斜坑を通して通気をやつて参りますと、これは通気抵抗の面から申しましても、十分な通気が現場近くまで送れないという問題もございまして、そこでまあ新しく縦坑というようなものが考えられてきたわけでございます。それで、ヨーロッパあたりの縦坑方式というものを考えてみますと、縦坑方式というものは、大体水準採炭と申しますか、ある一定の地表から、百メールから二百メートルの間を一つ掘つていくというようなときに、縦坑で運搬をし、そうして水平の主要運搬坑道でその間に払をもって全部縦坑と水平坑道でもって運搬をするというような簡単なやり方をしてスピードアップをして大量生産をしよう、こういうことでございまして、日本のように斜坑でもって浅い所から深い所までもう何段階も採掘をしておるようなところでは、急速に縦坑を打ちましても、その全部を採掘するということ自体において、縦坑方式そのものがとれないわけなんです。そこいらに現場的のいろいろな状況、事情というものを考えて縦坑というのはとられていくわけでございますが、今日までの縦坑方式というものを日本の場合考えてみますと、まだヨーロッパのような完全な縦坑方式というものがとられていないということでございます。今日のところは、その完全な縦坑方式にいくための一応過渡的な時代にあるものと考えられておるわけでございます。そういう関係で、すぐ縦坑方式が観念的にいいから、全部縦坑だというわけにはなかなかいかない面が多いかと存じます。
それからもう一つ、最近石炭技術研究所というものができたわけでございますが、これはまだ四月から一応事務を開始いたしまして、現在人員、研究員の充足というものと、それから事業計画というものをいろいろ検討して作るようにしておりますが、まだ今年あたりのところでは、一応水力輸送、水力採炭というものを中心にした現場試験というものと、それからもう一つは、自走鉄柱カッペを組み合わした水圧支保が自動的に移動して切羽支柱がされるという自走水圧支保というふうなものの現場試験をやつてみたい、こういうことを今年は考えております。この二つを一応今年の研究の主要課題といたしまして、そういう研究室を作るつもりで、現在研究員をそれぞれの部門に数名置いて、今予算といいますか、事業計画を作りつつございます。それから、そのほかには、いろいろ今日までいわれているわけでございますが、もちろんこの研究所も、採掘技術だけではございませんで、加工利用の面にも入っていきたいと存じております。また、経営その他の面のいろいろ研究も将来はやつていきたいと考えておりますが、まだ、今年はそこまでの陣容も資金もございませんので考えてはおりませんが、将来はそういうふうに考えていきたい。それから今年大体どの程度の研究的な機構を持つかという問題でございますが、今申しました二つの現場試験のものについては一つの研究室というものを作つてやつて参りたい。それから今後、将来こういうようなことが非常によろしいということを今言われているわけでございますが、地下ガス化という問題が数年前から盛んに問題になっているわけでございます。この地下ガス化というものにつきましても、ソ連あるいはイギリスあたりで相当研究がなされたわけでございますが、最近はイギリスの方はやめておりますし、ソ連の方の事情もあまり詳しくわかつておりませんので、一応そういう面についてソ連あたりを見学さしていただいたらということで、そういう依頼もソ連の方にいたしているわけでございますが、まだきまつておりません。そういう地下ガス化の問題も将来は考えて参りたいということから、これはなかなか専門家という者もおりませんで、現在動力協会の方で、ちょっと正式の名前を忘れましたが、技術対策本部というのがございます。そこで専門委員会で地下ガス化の問題を取り上げていろいろ研究いたしております。そこで一応机上的に一つの地下ガス化の計画というものをまとめまして、そういうものがまとまりましたならば、技術研究所あたりでそういう一つの机上プランによって、これを何とか現場で試験してみられないもかのということで、お互いに話し合いをいたしている程度でございますが、そういうための一つの研究室も一つ作つてみたい。それから利用加工の面でございますが、これはいろいろな問題が各所でそれぞれ単独にやられておりまして、まだどういうことを石炭鉱業がやればこれでよろしいのだというような結論というものも出ておりませんので、それぞれの企業なり場所でそれぞれが考えた問題を取り上げてやつている程度でございまして、こういう問題も総括的に資料を集め、各所でやられております事態を調べまして、そうしてこういうものを総合的な一つの調べをした上で、どういう方向に進んだらいいかというようなことも一つ考えていきたいということから、そういうための研究室も一つ考えております。
それから保安の問題でございますが、これは非常に生産と関連の深い重要な問題でございまして、なかなかこれといった決定的な研究というものができるかどうか、これまだ疑問に存じておる次第でございますが、できるだけそういうふうな保安の問題も基礎的なことから研究していくために、一つの研究室を持ちたい、こういうふうに考えて今準備をいたしております。そのほかの問題につきましては、大体総合的に調査研究をいたしまして、そうして調査研究の結果、こういう問題を取り上げたらいいというようなことができました場合に、研究室というものを作つて、将来は研究室をどんどんふやしていきたい。こういうふうな格好で現在石炭技術研究所というものを進めたいというわけで、今準備をやつておるわけであります。それで、先ほどもお願い申し上げましたのですが、こういう研究所がそういう研究をやりますためにも、たとえば水力採炭、水力輸送の研究を、かりに一炭鉱でやります場合にも、一億数千万円くらいの金が要るわけなんです。そういうものを研究所が調達いたすということになりますと、やはり各会社からの寄付金ということになりまして、非常に寄付金となりますと税金が四〇何%がつくということでございまして、一億円の金を出すためには一億五千万円の金を会社が負担しなければならぬというようなこともございまして、そういう関係でなかなか資金も集めにくいわけでございますので、できれば研究の効果をあらしめるために、こういう研究所が使う金についてはぜひとも無税というような措置をしていただきたい、こういうことを一つお願い申し上げたいと存じます。大体、研究所がどういうことをやつていきたいかというようなことにつきましては、ただいまのところ、そういう考えでございます……。
なお、地下ガス化と申しますと、これは二通りございまして、坑内で化学的ないわゆるガス化をやるわけであります。これは化学的に、と申しますと、化け学の方でございますが、石炭というものを燃やしまして、そうしてガスを取る、これが簡単な理論でございます。そういうことを地下でやつて、そうしていろいろな運搬とか、そういう厄介な問題をできるだけ克服して、ガスとして取り出して利用しよう、こういうのが地下ガスでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/28
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029・島清
○島清君 おもに佐久さんにお答えをいただいた方がよろしいのではないかと思うのですが、それは今石炭の単価の引き下げ、それを前提にする合理化、体質改善の問題等は、国内で重油に対する競争力をつけようとするところに重点が置かれているんですね。そうしてそれが三十八年度に千二百円の炭価を引き下げて、重油に対する競争力がつくのだ、こういうことなんですが、そこで、それはそれでよろしいといたしまして、三十八年度になりますというと、今政府が言っております貿易自由化、これが一応あとの農産物の一〇%ぐらい残して、九〇%の自由化を完成したいというて、いろいろ憶測をして放送されておるわけですが、私たちは、政府の自由化政策というものはまだ具体的なものはないと、こうは思いますけれども、しかし一応は三年ぐらいで九〇%ぐらいの自由化を完成したいと、こう言っているわけですが、たまたま三十八年度には炭価が千二百円引き下げられて重油と競争力がつくんだ、そういう場合には、農産物を残して九〇%の自由化がなされる。こういう場合に、外国炭との競争というようなことを、今から考えておられて対策を講じておられるかどうかですね。そういう場合に、今の千二百円程度の炭価を引き下げただけで、それで十分に競争力があると思われるかどうかですね、その辺の御説明をいただきたいと思いますが、さらに中川さんですか、一点お尋ねしたいと思いますことは、重枝さんからも御指摘になつたんですが、もっと石炭の需要は、電力用炭としては伸びるんだと中川さんおっしゃっておられたんですが、その伸び方が今のような形において、こういったような工業地に石炭を持ってきて、火力発電を従来のような形で起こされるのか、それともまた、私たちが考えますところによると、重枝さん御指摘になりましたように、産地でこの石炭を電力に変えて、それで送電線で需用地の方へ送つた方が非常に経費的にも節減ができるような気がするんですが、なぜ私たちのしろうと流に考えたこの常識的のことがなされないのかどうか、なされないところには、今のような電力の運営機構というようなところに、何か欠陥があるのかどうかですね、もしあるとしますならば、まあ松永安左衛門さんを中心にします、電力の産業研究所ですか、あたりでも、今の広域電力運営というものは、もっとやつぱり再々編成をしなければならぬということを言っておられるんですが、その辺からの、電力業界の中からも、広域の再々編成をしなければならぬと、電力の再々編成をしなければならぬという声を聞きますと、何かそういうことも一つの原因ではなかろうか、こう思いますので、御説明を願えたら仕合わせだと思います。以上二点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/29
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030・佐久洋
○参考人(佐久洋君) 三十八年度以降、かりに炭価の引き下げが実現されたとした場合に、貿易自由化の中で外国炭との競争力をどう考えるか、こういう御趣旨の御質問だと思いますが、一がいに外国炭と申しましても、大体二種類、石炭の種類でいいますと、原料炭の中で強粘結炭と弱粘結炭、この二つあるわけですが、強粘結炭についてはほとんど国内で生産されませんから、これは問題ないと思います。弱粘結炭については、もつぱら今豪州炭が非常に安い、また今後も安く入るということが伝えられておりますが、貿易自由化されて、豪州炭が数最的な制限なしに日本に輸入し得るということになると、国内炭の千二百円引き下げでは競争力は私はないと思います。ただ豪州炭は四、五年先の供給力として幾ら大きく見ても、せいぜい三百万トンぐらいであろうという話であります。そうしますると、残りの部分はおそらく米炭ということになろうと思います。米炭の場合には千二百円引き下げということで、完全に競争に勝てるというところまではいきかねると思いますが、さらに技術的な改善というようなことを考えれば、どうにか対抗し得るんじゃないかという期待を持っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/30
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031・中川哲郎
○参考人(中川哲郎君) 先ほど山元発電のことにつきましてお尋ねがございましたのですが、九州の炭を阪神まで持ってきます場合に、船で運ぶ方がいいか、あるいは送電線で送電した方がいいかというのは、従前阪神で使います精炭について、しばしばそういう計算がされております。
これによりますと、阪神まで精炭を運ぶ場合には、やはり機帆船で運んだ方が安い、こういう結論になっておりまして、従って、船で輸送する場合と、送電線で輸送する場合の境は、おそらく中国の中くらいのところ、広島とか岡山とか、せいぜいその辺の計算になるわけでございます。
これを精炭のかわりに低品位炭ということになりますと、低品位炭は、どうしても船で運ぶ場合にはかさみますので……。その点は、精炭に比べてよりは幾らか歩がよくなるわけでございます。
昨年通産省の石炭局で、石炭の合理化対策の一環として、山元発電を低品位炭でいたしまして、超高圧送電で阪神へ持ってきた場合に、重油に対抗できはしないか、こういうような議論、あるいは計算もございまして、私ども電力業界でも、その点いろいろ検討いたしました。
この場合の結論から申しますと、やはり送電線には、それぞれ超高圧となりますと経費もかかりますし、送電ロスもございまして、広島、岡山どまり、まあ石炭局のそのとき言われました、九州での低品位炭がトン当たり千二百円くらいで出るといたしまして、引き合うのは広島、岡山どまりという
一応の結論になっております。
それで、低品位炭問題につきましては、一つの問題は、やはりどれだけ低品位炭が出るかという問題もございまして、二百万トンと言い、五百万トンと言われますけれども、この点につきましては、現在すでに九州におきまして、低品位炭の需要を現実に考え、そういった発電所の設計等もございます。また電源開発会社で新しく低品位炭専用の発電所を九州に建設いたしております。こういったことで、地元でまず安く発電できることが先決でありまして、それを送電線で、安い場合にはどこまで持ってくるかということは、自然その点からのめどがついてくるわけでございまして、私ども引き続いて、こういった問題は研究しなければならぬ問題と思いますが、現在のところは、一応阪神までこれを持ってきてはなかなか引き合わない。こういうふうな結論になっております。また石炭の出し方を全然変えまして、電力が大きな需要でありますから、山元で二回選炭するような仕組みを変えまして、一回の選炭で出る質の悪い炭の状態でこれを発電したといった場合に、どのくらい安く地元発電ができるか。さらにそれを超高圧で運んだ場合に、どの辺まで経済ベースに乗つてくるかという点は、今後の問題として、もちろん石炭業界でも御検討いただく予定でございますし、私どもの方も研究いたしたいと思っております。必ずしも、電力需要側の、いろいろな運営の態勢がまずくて、そうなるのじゃないかという点は、現在のところはもちろんございません。広域運営で超高圧の二十二万ボルトの送電線も、九州から中国、引き続いて関西と、現に建設されつつございます。
従って、安くさえありますれば、当然阪神にまで電気は流れてくる筋合いになっておるのでございますが、現在の研究の段階では、阪神までは計算に乗らない。こういうのが今までの一応の結論でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/31
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032・椿繁夫
○椿繁夫君 三年間で、炭の値段を千二百円下げて、流体エネルギーとの競争力をつけるということについて、いろいろ生産面での合理化の問題などもございましょうが、今各参考人で共通して述べられたことは、流通面の合理化ということについて述べられたのでございますが、私はあまり石炭のことは詳しくないものだから、妙なことをお尋ねするようですが、一体四千四、五百カロリーから五千カロリー程度の炭が、常磐は別といたしまして、北海道あるいは筑豊でどの程度まで実際採炭コストというものは見積つておられるのか。それが京浜でございますとか、京阪方面の最終需要価格というものとの開きは、相当大きいように思うのですが、結局何とか抜本的なメスを入れる必要があるじゃないかという気がするのです。
石炭協会でいろいろ検討された結果、九州とか北海道で百円とか二百十円とかの経費の節減ということができるという結論が出たというのでありますが、協会の方では、これは一応の結論であつて、まだこれから流通面についての経費節減の検討をされるおつもりなのか。組合の方では、一体どう考えておられるのかということについてお聞きをしたいのと、いま一点は、協会の方からも、設備近代化について、開発銀行の金融ワクというもの、融資ワクというものが小さいから、少し広げてもらわなければいかぬという話がありましたが、私は、鉱区の再配置とか、鉱業権の再配置とか、鉱区の統廃合というようなことができないのに、そういう希望だけを簡単に聞くわけにもいかぬというような気がするのですが、今度の合理化臨時措置法によってみましても、二十一億四千万円ばかりの政府が全額出資をやつて貧鉱の買い上げをやろうというのですが、こういう政府資金が大量に注ぎ込まれるような事業については、経営者・組合・政府などが、一体になって相談をするような機関ですね。西独などでは、企業共同決定法というものがあつて、それぞれ対等の立場で物が言える、そうして一つの結論が出れば、国家として推進をしていくというような方法がとられているように思うのですが、そういうことについて、いろいろお考えになっておることはないのか、という二点についてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/32
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033・佐久洋
○参考人(佐久洋君) 先ほどの流通機構について二百十円とか百円とかの節減を考えるというのは、現にそういう機構ができて、すでにそれだけの引き下げが実現できるという態勢には、まだなっておりません。この問題について、配船の調整の問題とか、今非常にたくさんある炭種をもっと集約化して、石炭を送る場合にロットをもっと大きくするというような問題も解決しなくちやならぬ問題として残つております。それから同時に、需要家の方でも、年間で大体平均の引き取りをやつてもらう、これは需要家関係との話になります。それからロットを大きくしますと、積み上げ地の積み込みあるいは荷下ろしの設備というものもそろえていかなくてはならぬ、さらに進んでは石炭の専用船を作つて、それがピストン輸送をして輸送効率を上げる、こういう問題もあるわけでありますが、こういうことを考えた結果、ほぼ二百十円なり百円の節減ができるのではないかという一応の見当でありまして、こういう機構をこれから作り上げなくてはいかぬという段階でございます。
それからもう一つは、石炭の今後の生産態勢を固めていくために経営者、労働者、政府が一体になって検討をしていく機構が必要だろうというお話であります。私も、そういう機構が円滑に運営されるならば、大へんけつこうだと思います。現在ございますのは石炭合理化法に基づいて石炭鉱業合理化審議会というのが三者構成で作られております。それのこまかな問題を検討するための下部機構として生産性部会とかあるいは基本問題部会とか、これは労使、消費者も入り、中立関係の人も入つた機構であります。それが現在ありまする機構でございます。
これも最近は、しばしばそういう会合を開いて、これは問題の取り上げ方も真剣になっておりますし、かなり率直な意見も各代表から述べられて相当な効果を上げておるというようにみております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/33
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034・重枝琢巳
○参考人(重枝琢巳君) ただいまの点については、佐久さんの言われたことのほかに、もう一つは、銘柄を集約するということと関連をして石炭の販売機構をもう少し整備するということによって、また一つの合理化ができるのではないかと思います。一応の生産性部会としての北海道と京浜二百十円、九州、阪神百円というのが出ておりますけれども、これはまだ全然手をつけないままでの努力目標ということになっておるわけであります。その間、何かいわゆる安全率を見たいという立場からのいろいろの主張もあつて、そういうところに落ち着いたと思うのでありまして、やはりもっと関係者が努力をして、もう少しこの流通過程での引き下げについては、余地があるのではないかと、私たちは、そういう気持を持っております。
それから尤ほど私は、こういう大事業をやっていくためには、民主的な方法でやつていかなければならない、各界の意見を十分聞いてやつていかなければならない、あるいは産業、企業においては労働者の意見を十分取り入れなければならないということを申し上げましたが、その例は、今椿委員が申されたように、ドイツにおける共同決定法などという先例もあります。もちろんそれを直ちにわが国に取り入れることは、いろいろ問題があるかもしれませんが、そういう考え方というものに立って、日本に適合する方法というものを真剣に考える時期ではないかと思っております。ただ、私たちは、全炭鉱としては、経営者側とともに労使協議会というものを労使の機関として持っております。ここで体質改善その他の問題については、すべて事前に労使が協議をしてやっていくという原則を確認してやつておりますけれども、そういう労使の自主的なものよりも、もっと次の段階に進むべき時期ではないだろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/34
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035・藤岡三男
○参考人(藤岡三男君) 炭労としましても、今重枝さんが言われたように、さっきも僕が主張したんですが、やはり生産コストを下げるということについては、生産面の新しい方式と合わせて、販売、流通、僕はそう申したわけです。だから炭労として考えておりますのは、まだ具体的にまとめてはおりませんけれども、やはり山元で現在掘り出される石炭というものは、重油と比較して高くないんです。むしろ安いんですね。あるいはそういう面から考えてみると、何が一番高くなっているかというと、やはり流通機構なんです。運賃に取られていくのですから、だからその流通機構を、どのように解決するかというところで、具体的にはまだ出しておりませんが、そういうことを販売と両方並行して考えていかなければならぬ、販売の一元化、流通の一元化、このように考えております。ただ流通機構を整備し一元化するためには、あるいは合理化するためには、非常に困難な問題があるというふうに考えます。
たとえば筑豊を考えてみますと、これは国鉄に影響をいたします。あるいは港湾に影響があるわけです。だから、そういう港湾のたとえば沖仲仕とか、あるいは国鉄の問題を、今佐久さんからも言われたように、そういう問題を合理化していく。あるいは港湾の仲仕が作業している問題を、もっと合理的にやっていくというためには、やはりそういう港湾それから鉄道の合理化をはかつていく。だから、そうした販売とあわして、流通機構を抜本的に改革する必要があるだろう、このように考える。
その面に対して、まあ二百円といい、あるいは百円という数字が出ているのですが、そのような対策を考えてみるならば、これは、はっきり数字はまだはじき出しておりませんが、大体目安としては四、五百円ぐらい何とかなるのじゃないかというような目安を立てております。だからそうした面を考えて、具体的に一つ一つ取り上げて、そうしてなおかつ、このような合理化をしたのちに、労働者を何人整理しなければならぬか、こういうことを積み上げていって、初めて整理の問題と金額の問題、コストの引き下げの問題というものが出るのが僕らは至当ではないかと思う。ところがそういうこともやらないで、首切りというものを先に持っていくことは、本末転倒しているのじゃないか、こういうふうに考えているわけです。
それからもう一つは、このような問題と具体的に取り組んでいく生産性部会とかありますが、僕はそういうことよりも、もっと、そうした問題を石炭対策委員会か何か知らぬが、そういうものをもって、そうして抜本的に生産面と労働対策面とをあわした対策委員会というものを考える。そうして日本の将来の石炭産業というものを、もっと真剣に考える必要があるのじゃないか、このように考えております。
だからドイツの共同決定法をそのまま生かすということは、おそらく日本では僕は無理だと思いますが、そのような対策委員会というか、そういうものを設置して、もっと真剣に考えてみる必要があるだろう。
それから僕は、重油という問題を、今一生懸命やつておる日本の段階でありますけれども、私が、一昨年でしたか、ドイツに行つたときに、すでに十五億の金を出して研究を続け、原子との対抗をどうするかということをドイツでは研究しております。だからもっと当面の重油のみでなくして、石炭産業が原子との競合をどうするか、あるいは原子が出てきた場合どうするかという根本的な問題をやはり検討しなければならない時期にきているのじゃないか。またそのような十何億という金を投じながら、ドイツの経営者はやつている。だから、そういうものを考えてみると、今こちらに出ました一億何千万とか二億とかだけの問題ではなくて、もっとやはり本質的に、真剣になって考えなければならぬ段階じゃないだろうか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/35
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036・椿繁夫
○椿繁夫君 私が申しますのは、これはやはり、流体エネルギーとの競争力をつける。その意味で炭の値段の引き下げについて、いろいろ話が出ておるわけなんですが、協会の方から伺いますと、三者、経営者、労働者、消費者まで含めて合理化審議会というふうなものが持たれている、持たれているでしようけれども、伺つていますと、ここでの話では、結論が違うのですね、組合側と、経営者を代表される協会側のお話とが。ですから、私はやはり、こういうふうに今回の合理化事業団に対しても、二十一億も政府は直接、全額出資をやる、また開発銀行の方からも、近代化資金については、ワクは少ないようですけれども、出すといっておられる。それから離職者対策の問題にしても、そういう金が出ておるのに、十分に使われていないところへ、いろいろ問題があるわけなんです。
ですから、直ちに西独の共同決定法というようなものを、ここで作るとかどうとかということではなくて、そういうふうな趣旨に基づいて、ほんとうに政府もそこに加わつて、この当面の石炭の重大な段階の諸問題について協議をするような権威ある機関を持って、相談をされ、そこで一致して出た結論を、国としては推進していくというようなことにしないと、経営者は経営者で主張している、組合は組合の方だけでこういっておられる、組合の中でも意見が違うというふうなことで、この財政投融資を大幅にということで要求が出ましても、にわかに賛成しかねる。たとえば税制の問題につきましても、経営全般の合理化の問題についても、そういうことを一つ話し合いする権威ある機関というものをお互いが持っていかれるような方法はないものか。そういうことでわれわれの方が相談を受けて、国会として意思をきめていくというような工合にならないものかということを考えるので、皆さんの意見を、もう一ぺん聞きたいと思います。
それから、この機会に一つ藤岡さん、この間も、実は三池の問題について国会でも相当論議がありましてですね、よその山の一人当たりの採炭量に比べて、三池は特に少ないのだというようななにが出まして、私ども、三池製作所というのが機械部門でありますが、ここで、二千人ばかりの人が炭を掘らずに、機械を生産しているわけだな、こういう人たちを一人頭に割り当てられて、そうして平均したものを、採炭量少ないじゃないかというふうにいっておられるような気がしながら聞いておつたのです。で、実際にごの三池の従業員一人の採炭量というものは、純粋に見て、ほんとうにいわれておるほど生産性というものが低いのかということを――私どもは、そうじゃないとこう思っているのだけれども、実際のことを知らないものですからね、この機会に、お答えをいただく際に、ちょっと教えていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/36
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037・藤岡三男
○参考人(藤岡三男君) 三池の問題が出たんですが、私も三池ですから、三池のことならわかつているつもりです。
大体、今採炭の、その出炭量の問題が出たんですが、今日本で採炭一人当たり、採炭夫一人当たりは最高です。日本で一番高い。その次は、太平洋だったと思うのですが、まあ確かかどうかよくわかりませんが……。これは、はっきり言えます、採炭夫一人当たりの出炭は最高。ところが労働者一人当たりとなって参りますと、……間接が多いわけですね、よそから比べると三池は。だから、そういう面から見ると、十四、五トンだったと思います。だから平均程度ですね。だから三池の一人当たりの採炭では最高であるけれども、余体から見ると平均どうしてそうなるかということであります。どうしてそうなるかと申しますと、御存じのように、三池炭鉱は、海底採掘をやつておりますから、非常に間接の道路も長いし、そういう関係で、間接がたくさん要るわけです。だからその間接夫に要する人間というものがたくさん要りますから、全体を考えてみますと、平均程度、十四、五トンくらいしかいかない、これは言えると思います。
ではその間接夫が、それだけ要るのかどうかということについては、やはり会社は会社なりの言い分があると思います。これは、もう少し減らして直接に回していけばいいじゃないか。ただそこで問題は、その間接夫を、どこに合理的に配置転換するかということが、やはり重要な三池炭鉱の将来の出炭を上げるポイントになるのじゃないかと思います。だから、そういう配置転換がスムースに今後いくことが、一番大切なことであるというふうに考えます。
それから、そうなって参りますと、今申し上げましたように、今の出炭は、取高ですが、設備その他から見ますと、条件もいいんですから、やはり今の出炭では足らないのだというのが経営者の言い分ではないかと思うのです。だから、あれだけの設備と、あれだけの条件でありますから、もっと炭が出なきゃならぬということを経営者は言っているのじゃないかというふうに考えますが、一般的に認識されておるのは、三池が一番低いと、こういうことを言われておりますから。こういう点は、絶対ありませんから、これは資料を出して、経営者に出させてみても、やはり採炭一人当たりは最高である、こういうふうに御認識願いたいと思います。
で問題は、今申し上げました同接夫の人員が、今後最も合理的にいき、あるいは三池の出炭を上げるためには、切羽をたくさんふやしていく。そうして集中的にその切羽を、今の進められているたとえばカッペとか、あるいはいろいろな方式で、新しい方式で切羽を拡大して採炭夫をふやすということが三池の出炭を上げる一番大切なことじゃないか。
ただ、今申し上げましたようにそれだけ道路が古い山ですから、海底をたくさん長く掘つておりますから、その点で、どこまで間接夫を縮めることができるかというのが、やはり問題ではないだろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/37
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038・佐久洋
○参考人(佐久洋君) この労使、政府も入つた機関ができて、もっとこう円滑にいかぬかというお話ですが、今の態努では、政府も入つた機関というものが一体できるかどうか私疑問なんですが、国管でもやれば、これは終戦直後何とか協議会というものがあつて、それは政府も入っておる、労使ともに入っている。今、国管でもありませんし、そういうものを前提にしないで政府も入つた機関で、最後の決定をやるというような制度が一体考えられるかどうか、考はよく、その点がわかりません。今の審議会、先ほど私が申し上げました審議会というものは、これは通産省の諮問機関でありまして、諮問機関では物足りないという御趣旨かもしれませんけれども、しかし今の諮問機関でも、もちろんこれは労使お互いに立場を変えておりますから、反対のことも言いますし、一致した場合もあります。しかし、同時にまあ消費者の意見も入り、それをその道の人も聞いておるというので、組織としては一応私はいいんじゃないか。どういう組織を作つてみたところが、やつぱり労使は立場を異にしておりますから、どうしたつて意見の対立というのは、これは防げない、ただその場合に、大所高所から見て、どうまとめていくかというのは、それぞれ代表のとるべき態度によってきまつてくる話で、機構そのものによってきまる問題ではない、こういうふうに、まあ私考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/38
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039・川上為治
○川上為治君 私の、まあ質問しようとしたい点につきましては、椿委員の方から、だいぶ質問がありまして、大体了承したのですが、この流通機構の問題、流通面の問題について、いろいろ先ほどから問題があったようですが、佐久参考人の話では、まあいろいろやつてみても、大体二百十円かあるいは二百円くらいのものだろうと、これも今からいろいろな措置をとつた上で、その程度だろうというようなお話がありましたが、この二百十円とか二百円というのは、消費地におけるいわゆるその千二百円の中に含まつておると思うのですが、その点は、どういうことになっておりますか。これが一点。
それからもう一つは、佐久参考人の話と藤岡参考人の話とは、だいぶその流通面の問題については、違うように私には聞こえるわけです。佐久参考人の方では、いろいろやつてみても、その程度であろうというような御意見のようですが、藤岡さんの意見としては、これは、少なくとも四百円か五百円ならば下げられるのじゃないか、こういうお話があったのですが、この四百円ないし五百円というのは、さっきのお話ではよくわかりませんでしたが、いわゆる販売機構についても、一元的な販売機構を作るとか、あるいは流通面についても、全くこれは一元的な措置をとるとか、そういう相当な、これは何といいますか、根本的な改革と申しますか、そういうような措置をとつた上で、その程度下がるというようなことでしょうか。それとも、まだそういうようなことについては、いろいろ問題があるので、そこまではいかなくても、ある程度改良して、そして大体四百円ないし五百円程度下げれる余地がある、こういうような意味の話でありましようか。
その点を一つお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/39
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040・佐久洋
○参考人(佐久洋君) 千二百円引き下げの中に、先ほど申しました流通面の合理化による節減額というのが含まれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/40
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041・藤岡三男
○参考人(藤岡三男君) 私が申し上げましたその四百円という数字は、これは、まだはっきり出しているわけではないのです。しかし、さっき言われた二百円よりも、もっといくのではないか。ただ、そのいく場合に、やはりそのためには販売機構を一元化していかなければならぬ。
それから、たとえば九州地方においては、今の置かれている地方線を、国鉄と十分これは討議しなければいけませんが、そういう線を、石炭専用列車のタイヤを、どのように変更して、それを設置するとか、あるいは若松の港を具体的にどのようにやっていくか、そういう計画をやつていけば、大体四、五百円ぐらいは出るのじゃないかという目算を立てている。まだ具体的な数字をここに確認しているという意味ではない、そういう研究を炭鉱としては今続けている、こういうように御理解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/41
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042・川上為治
○川上為治君 そうしますというと、流通機構を一本にするとか、あるいは販売機構を一本にするという、そういう根本的な措置はとらなくても、あるいはその積み地の問題とか、あるいは輸送の問題とか、いろいろそういう問題について改良を加えていくならば、少なくとも四百円ないし五百円くらいは下げられる、こういうような意味なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/42
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043・藤岡三男
○参考人(藤岡三男君) 大体、それが具体的にまだ出しておりませんから、今検討中なんですから。それを根本的にやつた場合に、幾らになる、あるいは漸進的に改良を加えた場合は幾らになるという工合にまだ出しておりませんから、いずれそういう研究が出たら、僕らとしては提出したい。
だから、そのような研究を具体的に続けながら、そうして首切りというものを考えるべきではないだろうか。ところが、そういう研究は、あと回しにして、まず千二百円を下げるためには十一万人の首を切るということの計画が、そもそもおかしいのじゃないかと、僕らとしては考えているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/43
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044・島清
○島清君 今、流通面に関連をして、大口の電力用炭の購入については、生産者とそれから電気会社と、直接の取引なんですか。それとも、そこに仲買人みたいなものがいて、何かそういう仲買人的なものに口銭みたいなものをやつているか。それから一般の消費者、一般の需要者に対する流通面の段階は、どういうふうになっておるのでございましょうか。
この二点について、ちょっと説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/44
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045・佐久洋
○参考人(佐久洋君) 電力会社の購入炭が、全部石炭の生産会社から行っているわけではございませんで、これは数量を私、はっきり覚えておりませんが、大した量にはならない。いわゆる商社から買つているところもございます。しかし大部分は、直接石炭業者から買つておる。それから一般のものは、大手について申しますと、全生産量の七割が直接、工場に石炭会社から売られておる。三割が、中間の機関を通して小口に流れる。
大体、パーセンテージから言うと、そういうことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/45
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046・島清
○島清君 その中間のマージンというものは、大体何パーセントぐらい占めるのですか、炭価の。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/46
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047・佐久洋
○参考人(佐久洋君) 前に、私はそれを調べたことがあるのですが、ちょっと正確な数字を覚えておりませんが、だいぶ景気のいいときのマージンというのが七%ぐらいだったと記憶しております。正確な記憶じゃないのですが、うろ覚えで、そのぐらいと記憶しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/47
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048・重枝琢巳
○参考人(重枝琢巳君) その点については、合理化審議会の生産性部会の中で、流通機構についての検討をいたしまして、その中の資料等に詳しくありますので、それをお取り寄せになれば明確になると思います。
私も、その委員の一人ですけれども、今資料を持ちませんから、ここで、あまりはっきりしたことを出して申し上げるのは、かえつてまずいかと思いますが、ただ流通過程の問題で、いろいろありますが、輸送荷役の合理化ということと交錯輸送という問題があるのですが、たとえば北海道の炭が阪神に行く。九州の炭が京浜に行く。特殊炭は別として、大体普通に使えるものであれば、北海道の炭が阪神まで行かずに、京浜どまりになってくる。九州の炭は京浜まで来ないで、阪神で使つてもらう。こういうような交錯輸送をやめるということも、相当大きな問題になってくる。先ほどちょっと触れましたけれども、石炭には非常に銘柄が多くて、従来消費者も、自分のところは、どこどこの何という炭をとつて使つておるので、それが使いいい。こういうようなことで、銘柄に対する執着というものが消費者の側にもかなり多いわけです。これは科学的に、そういうものがいいという点もあろうかと思いますが、従来の慣習だとか、あるいは取引の惰性というようなもので、銘柄に固執しておられるという消費者も相当あると思います。やはり銘柄を整理して、同じような炭ならば、新しい見地から使つてもらう。こういう銘柄の整理というようなものもやらなければならない。それから消費者と生産者の直結でなくて、中に販売業者がおる場合に、その販売業者の整理ということは、いろいろな面で必要になってくるし、マージンの問題も、いろいろ検討して整理しなければならぬ問題もあろうと思います。そういう点もと原則的には、問題点は摘出されておりますけれども、やはりそれぞれ自分の事業に関係することですから、相当な抵抗があるわけです。
そこで、さっき申しましたように、二百十円あるいは二百円に下げるというのは、かなりそういう面の安全率が見られた金額だと私たちも考えます。もっと具体的に、一つ一つを強力に施策を加えながら合理化していくということによって、もっと下げ得る面が出てくるのではないかと思います。
もう一つは、海上輸送の問題で石炭専用船を使うということについては、実は、これは運輸省あたりで、日本の内航船を全体の立場から、石炭だけがそういうことをやつてもらうと、他に運賃その他の問題で影響するということで、相当の抵抗があるように私たちは印象を受けております。それから石炭輸送費の問題も、そうだと思います。そういう点を、やはりもっと高い見地から政策を立てていただくということが必要になってくるのではないかと思います。
それからもう一つは、そういう輸送面だけの合理化を考えていきますと、消費地から遠いところにあったところが、そういう輸送費、流通費が高くなっておりましたからそれを圧縮する可能性が多いわけです。近い方では、その可能性が総体的に少ないものですから、そうしますと、全体的に炭価を下げていくという場合に、従来そういう流通条件で優位の地位に立っておつたところが、今度は、必要以上に不利の条件に立たされるという派生的な問題が出て参ると思います。
たとえば京浜市場における常磐炭の優位性というものは、そういう近くにあったというところが相当あったと思います。北海道炭が輸送の面で合理化されてくるということになると、常磐炭にとつての新しい問題が出てくる、石炭産業全体として価格の引き下げのために努力しなければならぬことは明らかでありますが、そのことによって、派生的に出てくる問題もあわせて、総合的な立場で解決をしながらやっていくという政策の点についても、ぜひとも御検討願いたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/48
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049・藤岡三男
○参考人(藤岡三男君) 僕はさっき、ちょっと意見のとき申し上げたのですけれども、やはりもう一つ、石炭産業の近代化の面について、やはり注意しなければならぬ面があると思うのです。それは、僕らが考えているのは石炭産業の近代化というか、合理化というものは、大手企業だけではだめだ、全体的にやらなければならぬ。この場合、一番ガンになっているのは、さっきも申し上げましたのですが、地代ですね、鉱区の地代、これが一割から一割五分、高いところは二割ぐらい取つているあれがあるんですね、それでトン当たり一割五分の地代を払いますと、あとはそのために、非常に労働者を低賃金で押えつけている中小企業があるんです。
で、それに投資をして、合理化をやつてみても、それだけの、二割程度の地代を払うと、なかなか合理化というものはむずかしいんじゃないか、そうなってくると、やはり若返りというか、近代化をするためには、このような実態にある中小をどうしてやっていくかというのは、日本の石炭産業として非常に問題じゃないか、だからこの点も、やはりこの問題を、どのように処理するかということは、やはり十分検討する必要があるのである、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/49
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050・山本利壽
○委員長(山本利壽君) ほかに御質疑はございませんか。――参考人の方々に、一言お礼申し上げます。
本日は、朝来有益な御意見を拝聴し、まことにありがとうございました。当委員会といたしましては、今後の審議において、十分参考にいたしたいと存じます。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/50
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051・山本利壽
○委員長(山本利壽君) 速記をつけて。
一応、休憩いたします。
午後一時十四分休憩
〔休憩後開会に至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414461X02519600426/51
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