1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年二月十八日(木曜日)
午前十時二十五分開会
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委員の異動
二月十六日委員大矢正君辞任につき、
その補欠として近藤信一君を議長にお
いて指名した。
二月十七日委員近藤信一君辞任につ
き、その補欠として大矢正君を議長に
おいて指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 加藤 正人君
理事
上林 忠次君
山本 米治君
大矢 正君
永末 英一君
天坊 裕彦君
委員
大谷 贇雄君
岡崎 真一君
木暮武太夫君
河野 謙三君
西川甚五郎君
林屋亀次郎君
堀 末治君
木村禧八郎君
野溝 勝君
平林 剛君
原島 宏治君
須藤 五郎君
政府委員
大蔵政務次官 前田佳都男君
大蔵省主計局長 原 純夫君
大蔵省主税局税
関部長 木村 秀弘君
事務局側
常任委員会専門
員 木村常次郎君
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本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選の件
○船主相互保険組合法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)
○交付税及び譲与税配付金特別会計法
の一部を改正する法律案(内閣送
付、予備審査)
○関税定率法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○関税暫定措置法案(内閣送付、予備
審査)
○租税及び金融等に関する調査
(税制改正に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/0
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001・加藤正人
○委員長(加藤正人君) ただいまから委員会を開きます。
まず、御報告いたします。二月十六日付で委員を辞任されました大矢君が、十七日付をもって大蔵委員に選任されました。
この結果、大矢君は理事の資格を失うことになりましたので、委員長は、前例に従いまして、この際理事に大矢君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/1
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002・加藤正人
○委員長(加藤正人君) これより、船主相互保険組合法の一部を改正する法律案外三件について、順次、提案理由の説明を聴取することにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/2
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003・前田佳都男
○政府委員(前田佳都男君) ただいま議題となりました船主相互保険組合法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその概要を御説明いたします。
船主相互保険組合法は、昭和二十五年に施行されたのでありますが、同法に基づき設立せられました日本船主責任相互保険組合は、当時の海上運送事業の情況に顧み、船舶の所有者または賃借人たる組合員が、その所有または賃借する船舶の航海に伴って生ずる事故による費用及び責任を填補する保険事業のみを行なうこととせられたのであります。従いまして、現在当組合は組合員が他から用船して運送に従事する場合の費用及び責任を担保することができないのであります。
しかるところ、船舶の運航形態を見まするに、わが国海運界の特殊事情もありまして、今日におきましては、運航船舶の相当部分を用船にたよっているのが実情であります。よって、この際組合員が用船により船舶を運航する場合に負担する費用及び責任をも保険に付し得るよう措置することが必要となって参ったのであります。
なお、組合員が、船舶の回航を請け負う事例もありますので、その場合の事故によって生ずる費用及び責任の保険についても組合が引き受けられるよう改正し、あわせて若干の条文整備を行なうため法律改正を行なおうとするものであります。
次に、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
政府におきましては、今般、昭和三十四年度に実施した所得税の減税に伴う道府県民税及び市町村民税の減収が地方公共団体に与える影響を考慮し、あわせてその財政の健全化に資するため、当分の間、毎年度、当該年度における所得税、法人税及び酒税の収入見込額のそれぞれ百分の〇・三に相当する額の合算額を臨時地方特別交付金として地方公共団体に交付することとし、今国会に臨時地方特別交付金に関する法律案を提案いたしたのであります。この措置に伴いまして、臨時地方特別交付金の交付に関する政府の経理は、これを交付税及び譲与税配付金特別会計において行なうことが適当でありますので、同特別会計法について所要の改正を行なおうとするものであります。
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次に、関税定率法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、豚脂の関税率について改正を行なおうとするものであります。豚脂の関税率は、現行輸入税表上従価一〇%とされておりますが、ラードの輸入の自由化に備えて国内のラード、マーガリン、ショートニング工業を保護するため、原料用のものの税率を従価五%に引き下げる一方、精製のものの税率を従価一五%相当の従量税率に引き上げようとするものであります。
最後に、関税暫定措置法案について申し上げます。
この法律案は、関税の暫定的減免制度について規定することを内容とするものであります。関税の暫定的減免制度につきましては、現在関税定率法の一部を改正する法律(昭和二十九年法律第四十二号)の附則で規定されておりますが、この制度の内容に調整を加えてこれをその附則から切り離し、関税定率法及び関税法の特例として、新たにこの法律案で規定しようとするものであります。
以下、その内容につきまして簡単に御説明申し上げます。
まず、炭化水素油につきましては、最近における石炭産業の情況及び石油の輸入価格の推移等に顧み、現行の暫定減免税措置は延長しないことといたしますが、わが国産業の実情を考慮いたしまして、昭和三十五年度に限り、製油原料については現行二%の軽減税率にかえて六%の軽減税率を適用するとともに、農林漁業用のA重油及び肥料製造用の原油については免税することとしております。
次に、電子計算機につきましては、現在暫定的に関税を免除しておりますが、このうち国産の進んでいる中型及び小型の計算機の本体につきましては、国産保護の見地から免税措置を打ち切ることとしております。
次に、ニッケルコバルトクロム触媒及びシリカアルミナ触媒並びに五酸化バナジウムにつきましては、それぞれ石油化学工業並びに特殊鋼産業の発展のために、また、小児麻痺用ワクチン製造用のサルにつきましては、国民保健の向上のために、いずれも昭和三十五年度に限り関税を免除することとしております。
以上申し述べました物品以外の物品で、現在暫定減免税制度の適用を受けているものにつきましては、最近の経済状況等にかんがみ、現行の暫定減免税措置をなお継続することとし、原子力関係物品及び航空機関係物品については三年間、その他の物品については一年間、さらに減免税の期間を延長することとしております。
次に、暫定減免税制度の適用を受けた物品のうち特定の用途に供することを条件としているものにつきましては、その減免税の目的にかんがみ、あらかじめ承認を受けた場合のほかその用途外使用を禁止することといたしております。
このほか必要な規定の整備をはかることとしております。
以上がこの四法律案の提案の理由及びその内容であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/3
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004・加藤正人
○委員長(加藤正人君) これらの法律案に関する補足説明並びに質疑は後日に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/4
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005・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 次に、税制改正に関する件を議題といたします。
御質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/5
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006・木村禧八郎
○木村禧八郎君 税制改正につきまして、政府の方からこの際説明していただきたいのです。それは、今度の三十五年度予算案の一つの大きな特徴は減税をしないということですね。これまで十年間、金額はいろいろ違いますけれども、一応減税措置をやっておりますが、今度初めてやらない。これについては、そのいろいろな事務当局の答えにくい点は、またこれは当然大蔵大臣に伺いますがね、事務当局でお答えし得る範囲で御説明願いたいのですが、その第一は、なぜ減税ができなかったのかという点ですね、その理由を御説明願いたい。それから第二は、租税の見積もりですね、三十五年度の税収の見積もりについていろいろまあ意見があるわけですね。その見積もりについて。それから第三は、われわれの見方では、今度三十五年度に減税できないだけでなく、もう少し長期的に見まして三十六年度、その以後において財源の問題が非常に重大な問題になるのじゃないか、あるいは増税が必要になるかもしれない、あるいは公債発行も必要になるかもしれない。そういう点と関連しまして今の税制ですが、税制についてどういう改正をお考えになっているか。
そこで、税制改正におきましては、御承知のように、初めて今度は正式に法律で、三年間の期間を持って、昨年五月十九日から税制調査会が発足しているわけです。そこで、税制調査会では、企業課税部会とか、税源配分部会、あるいは税制一般部会と、三部会に分かれてこれまで審議してきておりますし、またその過程におきまして調査をやっておられるようです。たとえば法人、個人、営業、農業、給与所得者、青色申告者、それから白色申告者等の税負担の現状調査、それから地方財政の実態調査、そういうものも行なわれておるわけです。そこで、これまで何回ぐらいやりましたか、九回か十回か、ずっとやっておられます。それから、政府側もいろいろ資料を出しております。また、自治庁あたりも、地方税等につきましては資料を出しております。そこで、この税制調査会の審議が固まらないうちに、私たちとしてはそこに出された資料、あるいはそこで行なわれましたいろいろな議論、そういうようなものを一応ここで知っておきたいと思うのです。どういう方向に向かっておるのか、また政府がどういう諮問をされてそうしてどういうような資料を出されておるのか。今後の税制改正は非常に重要と思いますし、すでにもうシャウプ税制改革以後、御承知のように、今の税制は極端にゆがんでしまっておりますから、どうしても改正しなければならないし、特に財源の確保と関連しまして今後重大な問題になると思います。そういう意味で、なるべく詳細に御報告願いまして、また、できる限り税制調査会に出された資料はわれわれの方にも出していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/6
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007・原純夫
○政府委員(原純夫君) お尋ねの三項目、お答えのしようによっては非常に時間を取るわけでありますが、なおつけ加えてお尋ねがあるということを前提として、ざっと一応申し上げます。
最初の、なぜ昭和三十五年度に減税をやらないかというのは、いずれまた大臣からもよくお聞きを願いたいと思いますが、伊勢湾台風で非常に大きな歳出の増があるというのが実際問題として契機になっております。まあ一応平たく言いますれば、諸般の財政需要のために今般はできないということでありますが、経過的に申しますれば、あのときに災害関係の費用がその前に考えておったよりも四百億以上よけいかかるということになり、で、その時分に先生からお尋ねの自然増収の見積もりもまあ千五百億はあるということは、千七百億か千八百億か、もうちっとかというあたりで、大体の見当でおったわけでありますが、まあそこへそういう四百億以上の増加が要るということになってきて、これはむずかしいなあという判断になりましたのが実際の経緯であります。
その後、経済の状況は非常に調子がよくて、収入はもっとあるということで、二千九十六億という三十五年度の自然増収を見積もるようになりましたが、その間、歳出の方の所要額というのが非常に多いと。災害復旧だけでなくて、国土保全の方にも力を尽くさなければならぬ。その他国民年金を初めとしまして、御案内のようないろいろの増加があると。で、最後の段階まで、足らなければ公債を出したらどうだという議論が並行してあったというような情勢でありましたので、それらの経緯を含めて、諸般の財政事情に応ずるためには、三十五年度は残念ながら減税はあきらめなければならぬということに相なったわけであります。
第二段の、三十五年度の見積もりのことは一昔でのお尋ねでございましたので、またお答えも、二千九十六というものが、これもお手元に参っておると思いますが、活版で租税及び各税の見積もりの説明をしたのがございます。これをごらんいただきたいと思いますが、大体租税の見積もり、国民の所得、消費、そういうものの伸びが、政府の経済見通しというようなもので出て参ります。それに裏打ちされまして、見積もって参る中で一番むづかしいのが法人の所得であります。同様なことが申告所得税の所得についても言えますが、その他のものはかなりに基礎が、何といいますか、そうふれがない。法人所得と申告所得はふれがある。特に法人所得にふれがあるのですが、この見積もりに一番苦心をしましたが、この見積もりにつきましては、後ほどいろいろお尋ねいただきますが、過去のいろんな動きの中でどういう実績を示してきたか。今度はかなり、岩戸景気というものがいつまで続くかというむづかしいバックグランドに立って、そういう法人所得の景気の動きに対しての動きの予測をつけた。道にそういう過去との比較だけでなくて、私ども第一線に持っております担当官のうち目のきくものを選んで、いろいろ大会社等については見込みを立てるというようなことを、両面からやりまして、出してきたのがこの見積もりでございます。
第三の、税制調査会の関係のお尋ねでありますが、その審幾がどういうような点について、またどういう角度でやっているかを御承知になりたい。非常にありがたいことであります。ぜひ聞いていただきたい。まあそのためには、実はどうかこういう会議を少なくとも三回ぐらいはやっていただいて聞いていただきませんと、なかなかしっかりした御説明ができないというふうに思いますが、ぜひそういう機会を与えていただきたいというふうに思います。
概して申しますれば、昨年の五月、今お話しのように、三年間の期間の調査会を作りましたこと自体が、私どもとしての、政府としてのこの問題に取り組む腰かまえが、かなり、何といいますか、腰を入れてやろうということだということは御理解いただけると思います。そうして、それも三年あるからいいというだけでなくて、さっそく昨年の五月の初めにもう委員会構成をとりまして、五月の中旬には第一回を開きまして、夏の門も今お話しの奥地調査によってできる限り税の実際の状況、中央、地方の財政の状況というようなものも調べられ、秋に入りましてからは、間もなく部会構成をとりまして、各部会で活発な議論を始めております。本年も引き続き、国会開会中いろいろと何があるけれども、大事な問題だから一つやろうというので、毎週金曜日を定例日といたしまして、各税部会をやるとか、また金曜日は隔週、通則法といいまして、各税共通の事項をきめる法律を考えておりますが、それの審議が行なわれておるというような状況でございます。
どういたしましょうか。調査会におけるのを、ここで二十分くらいで、ざっと申し上げましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/7
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008・木村禧八郎
○木村禧八郎君 問題点をざっとお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/8
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009・原純夫
○政府委員(原純夫君) それでは。まあそういう経緯がございますので、その経緯の中でどういうふうな点を中心にやっているかということを申し上げます。だんだん詳しくお尋ねがあると思いまするが、最初になるべく広くごらんいただくという意味で、お手元に差し上げました二つのとじたものがございますが、薄い方の五ページに「税制調査会において検討すべき主要問題点について」というのがございます。これは一番初めに調査会に政府側から出しましたもので、その後もちろん補足のあるべき筋合いでありますが、今までのところは、まだ大体このワクでやっておりまするので、これを中心にお聞きいただきたいと思います。ここにワクに入ったりしておりますが、これは、この調査会に対しての問題点自体がかなり長いので、最初はワクの中だけで申し上げて、その余があとの補足である。ですから、一番ざっと見ようという場合には、このワクの中だけごらんいただいても、骨組はおわかりになるようにできております。
第一が「総括的事項」、めくっていただきまして、第二が「企業課税のあり方」、第三が十五ページで、「国、都道府県及び市町村間の税源配分の問題」、第四が十八ページの「税制の整備」、第五が二十三ページ「税法の簡素合理化と平明化」、こういうような構成になっております。
「総括的事項」から申し上げますが、1、として「国税及び地方税を通じた租税負担の現状についてどう考えるか。」、それから「2、今後の自然増収及び歳出増加の要請との関連において減税及びその規模についてどう考えるか。」、3として「直接税と間接税との間の相互の比重その他今後の租税体系のあり方の基本的な方向についてどう考えるか。」、4として「国税と地方税(都道府県税、市町村税)との間の相互の比重その他今後の国税及び地方税体系の基本的なあり方についてどう考えるか。」、5として「国税及び地方税を通じ、税務機構の簡素合理化を図るべき点はないか。」——非常に大きな問題でございますが、これを集めて参る。といいますのは、これはまあ全面的に税制を検討しようという場合に当然な問題でありますが、今までお話のありましたように、十年間毎年のように減税いたしておりますが、その間の傾向をいいますと、十年前は、御記憶のように、非常に戦後のインフレーション時代を通して税法の控除、税率等が、何といいますか、もうとうていそのまま適用が非常にむずかしいような重いものになっておったわけです。それをだんだん直してきた。まあ控除であれ、税率であれ、とにかく軽減すれば方向としては間違いない。こまかいニュアンスを読み取るというまでに詰めが十分いかぬでも、結論としては十分及第点をとれるといいますか、七、八十点とれるというやり方できておったのですが、だんだんそういう十年間やりまして、相当減税も行なわれ、合理化も行なわれたので、私ども負担全体について、税負担というものの全体についてどの程度のものが重過ぎるか。これはまあ歳出等との相関関係になりますが、そういう判断、また今度この2にありますように、経済が伸びて参れば自然増収がある。その場合に、増収分を全部歳出に使うのか、あるいは減税に充てるのかというような点を十分御議論願おうというわけであります。
で、租税負担が、あるレベルの租税負担というものを想定いたしますれば、その租税負担の中でどういうふうな税に負担をかけていくかという問題がまあ3にある直接税、間接税。これは、まああえて直接税、間接税という観念だけでなく、いろいろ直接税の中でも所得税、法人税、また間接税の中でのいろいろの問題、いろいろ税負担総体のレベルとその中の構成というようなこと、それが国と地方にどう配分されるべきかというようなこと、これはまあ言ってみますれば、税制を説明する教科書的な筋書きであるといえばそれまででありますけれども、そういうような問題について、十年の間とにかく減税をやればいいと。少し何ですけれども、減税に急だったという時代から、税制をじっくり根からみがき上げていこうということになって参った。従って、ここでの議論は大へんむずかしいのであります。なかなか角度のはっきりしたものは簡単に出て参るとは言われません。調査会の審議も、実地調査をやり、さらに一般論をやり、また一般論だけではとうていすぐには結論は出ない。そうなると、個々の問題について議論をやっていく。そうしてまた立ち返って一般論をやっていくというような形で、この問題は昨年の夏の実地調査を通じての結論を——結論といいますか、秋にいろいろなお話があり、その後各論に入りましたあと、またこの正月にこの問題を取り上げて議論をしておられるというところであります。まあ方法としては、わが国における租税負担の過去から現在への推移、外国における租税負担との比較、まあ今までは大体外国における現在の租税負担との比較というようなことにとどまっておりましたが、先般の会合で、外国における歴史的な推移というようなものを入れて、いわば縦横に時限を区切って考える。また、単に負担率というだけでなくて、各国における、何といいますか、中枢的な所得層というもの、その社会における中枢的な所得層がどういう負担をしているかというような角度での階級別の見方もやってほしいというようなことから、だんだん今入っていっておるというような状況でございます。
それから、次の第二の「企業課税のあり方」でありますが、これは企業に関する税といいますと、税の中で非常に多いわけであります。申告所得税、法人税というのはもちろんのことでありますが、他の税でも、源泉所得税なんというのは、もうほとんどが企業の付加価値の中から賃金、給料が払われるという意味で、やはり企業自体から生み出される所得が大部分である。それから間接税、流通税の中でも揮発油税というようなもの、それから関税というようなもの、それから固定資産税ですね、ああいうようなものを、いずれも企業が自分の費用として払うというようなものであるというようなことから見て、いわば税収的に申しますと、もう八割くらいはこの企業との関係があるというふうに思われますが、その企業に関する税の制度をどうしたらば国民経済的に最も能率のいい税制、つまり経済が最も能事よく動くようなことになるだろうかという角度からの検討がなくてはいくまいということで始めた仕事であります。もちろん、抽象的に初めそう考えたというよりも、端的には企業の、一つには企業の自己資本の問題、それからもう一つには企業、法人と個人との税負担の比較において、まあ特に例の家族給与というような問題というようなところにかなり直感的な矛盾を感ずる向きが多い。で、そういうような問題をただいま申しましたような全面的な企業の課税制度にまで突っ込んで考えたらどうかということで始まったわけであります。
自己資本論といいますのは、御案内の通り、戦前は法人企業の自己資本対他人資本の比率が二対一、まあざっと申しまして二対一であったのが、最近では逆に自己資本が一他人資本が二だというふうなことになっておる。で、それを改善する必要がないか。そのためには税制以外いろいろな方法があるだろうが、税制も考えられるのではなかろうかということ。かつて増資配当免税という制度がありましたが、これは非常に何といいますか、法人でも税をかけない、また受け取る個人や法人でも税をかけないというようなおかしな方法であるから、もっとがっちりした、税体系として穴はない、しかしこの負担のかけ方が今申し上げたような意味で自己資本の充実になるようにということを考えるべきじゃないかという御議論であります。
それから、家族給与の問題は、農業法人問題等でもうすでに御案内のところでありますが、なぜ法人になれば家族給与が損金になり、個人ならばいけないのかという角度の問題。これはしかし、それだけの問題でなくて、一体実体を、同じ企業が法人になった場合と個人である場合と税負担が違うということのよしあし、それを何らか統一するような方法が望ましいのではないかという問題ともつながって参ります。この問題は、法人税、それから所得税だけでなく、もちろん地方税である事業税、それから住民税というものにもまたがりまするししまして、非常に深い問題であります。
その二つの柱が実際上のきっかけとなりまして、企業についての税制全般を考えようというわけで、便宜ワクの内のところをごらんいただいて参りますと、1として、「企業に対しては、いかなる角度からどのような租税を課するのが適当か。」、いろいろ企業に対して税のかけ方、そのページの下から次にかけて今かかっているもの、また考えられるもの、いろいろ書いてございますが、こういう角度のこれは結局総論的な問題になってくるわけでありますが、次のページに2として「企業に対する税負担の現状はどうか。また、今後の税負担はいかにあるべきか。」、「一般に要請される税負担との関連においてどう考えるか。」、「企業の資本蓄積、企業意欲等に及ぼす影響についてどう考えるか。」、次のページに参りまして、「租税特別措置の問題を含めて企業に対する税負担のあり方についてどう考えるか。」、この辺にこの企業の税負担で、これはまあ今申し上げましたように、七、八割には及ぶわけでありますが、全般の税負担とのバランスといいますか、公平ということも考えなければならない。同時に、その企業の企業意欲というようなことともからんで、また別の見方としては、やはり企業相互間のバランスということもあると思います。大企業、中小企業の負担、またそういう面の問題として、一体法人税というのはなぜ一本の三八%で、まあ一番下の二百万円部分だけが三三という構成になっているのか、それがいいのかどうかというような問題が、考えてきますと非常にむずかしい問題であり、いろいろなやり方が考え得るわけでありますが、そういうような問題も御議論願おうというわけであります。
特別措置との関係についての考え方、これについては、まあ従来私どもが、この個々のといいますか、特定の業種業態のための特別措置よりも、やはり全般の税負担を軽減する、また特別措置的なものであっても、全体を通じて特殊な事情のある点を救済するといいますか、に心を配るといった方がよろしいという考え方で私どもは来ておりますけれども、なかなか具体的に御要求のある特別措置というのはかなり角度のついたものである。これらの問題がまた当然出て参ります。
それから、3として、「法人及び個人を通じて企業所得に対する課税はいかにあるべきか。」、その「(一)、法人形態による場合と個人形態による場合との負担のバランスをどのように調整すべきか。」、それから次をめくりまして、「(二)、法人所得に対する課税のあり方についてどう考えるか。」、「(1)、法人の性格をどのように考え、その性格に即して法人所得に対する課税のあり方及びその税率のあり方についてどう考えるか。」、それから(2)として、「企業所得の計算上、支払利子は、損金に算入されるが、法人企業の支払配当は、損金に算入されない。この点が株式資本の充実を図るうえで問題とされているが、法人所得に対する課税のあり方の問題として後述の(三)の配当控除等の制度と関連してどのように考えるか。さらに、株式資本の充実を図るためには、税制上の見地からだけではなく、一層綜合的な見地からの施策が必要と考えられるが、これについてどう考えるか。」、この辺で先ほど申し上げました二本日の柱が出て参ります。それを十二ページに続いてお読み願いますと、(3)として、「法人所得に対する課税の考え方には、株式資本の充実を図る見地から、配当に対する税負担の軽減を要望する主張がある反面、内部留保の充実を図るために留保所得に対する負担の軽減を図るべしとする主張がある。他面、法人企業と個人企業との間の税負担のバランスを図る見地から、同族会社の積立金に対する特別課税の制度等がある。これらを綜合して、法人企業の留保所得に対する課税についてどう考えるか。」、御説明を後にいたしまして、ずっとこの辺の関連するところを見ていただきます。次のページの(三)であります。「(三)、配当に対する二重課税の調整方法として現行制度は、配当控除及び法人間配当の益金不算入の制度をとっているが、二重課税の調整に対する考え方、及び特に(二)の(2)に述べた問題との関連においてその具体的方法についてどう考えるか。」、それから次のページに(注)で、固定資産の耐用年数の改訂の問題がありますが、これは読むのを省略いたします。この最後の数ページのところにただいま申しました二つの柱の一つが出ております。
先ほど申しましたように、自己資本充実のために、税制を考慮するという格好での何でございます。この面の審議は、昨年の秋、部会構成がとられましてから、実際問題としてこの企業課税の部会が秋から暮に五回開かれました。本年になって二回開かれております。通計七回、大体この問題に集中してやっていただいております。この中にもありますように、十一ページにありますように、自己資本充実のためには、この配当を利子並みにして、損金にしてほしいという要望が前からあるわけです。ところが、裏返していただきますと、配当を損金にしてしまいますと、結局、法人税がかかる所得というのは配当を払った残りの分だ。というのは、社内留保される部分だということになるわけですね。そうすると、社内留保は大いに充実させろという声がまた別にあるわけです。全然相反するような要望がある。これをここには並べてあるわけです。この企業課税部会においても、この両者を戦わせて、どっちが先だという議論がいずれ要ると思うのですけれども、しかし、まだそこまで委員さん方も、何といいますか、いろいろな各論から立ち返っての際でないとなかなか出ないというので、今までのところでは、一応この利子と配当との関係を何らか調整をはかるという角度で、突っ込んで勉強していただいたらどうかということで、ずっと来ております。で、これをなお二、三回いたしまして、そうしてこの配当を全部なり一定額なり損金に見るとか、あるいは配当部分を安い税率にするとかいうような形についての御審議をある程度やっていただいて、相当程度やっていただいて、その上でまた振り返ってみると、それは留保重課だという声が出てくるかもしらぬ。その角度からどうなんだというような議論は、またその次にやる。その際には、今度はこの法人所得全般について、どういう累進課税がいいか、あるいは今のような比例税率を原則のあれがいいかというような問題も出て参るだろう。さらに、先ほど申した家族給与の問題を含めて、法人、個人のいわば同族的なところでの課税のバランスの問題というようなのがその次に予定されているというような状況でございます。
次に、「国、都道府県及び市町村間の税源配分の問題」、十五ページ以下に出ておりますが、「1、国、都道府県及び市町村間の財政需要の見地から税源の配分はいかにあるべきか。」、十七ページに「2、国、都道府県及び市町村の間において、税種の性格からみて税源の配分はいかにあるべきか。また、同一の税源を分ち合う場合には、その配分はいかにあるべきか。」として、ワクで囲んだところは、非常に簡単でございますが、この問題は御案内の通り、シャウプ勧告で国の税制も非常に大きく変わりましたが、地方税制はもう、何といいますか、根本的な革命というような大改革があったわけです。その後の減税を中心にした改正で、国税の方はかなり変わってきておりますが、地方税の方はそう大きな変わりがないが毎年その中でいろいろな議論がありましてこの中央、地方側とで、例の法人事業税の問題あたりが一つの焦点になっておりますが、かなり論争が続いております。で、それらが毎年々々のその減税中心の議論では、実はじっくりと地盤にまで突っ込んだ議論ができないために、結局、最後の段階では政治的な処理というようなことになってしまったというようなことが、そういうようなことを私が言うのはちょっと恐縮でありますが、実際の経過であろう。やはりこれをじっくり時間をかけて岩盤に達する議論をやって、そうしてあらゆる現在ある税というものを並べて、一つの鍋に入れて、それを国と都道府県、市町村に分ける。もう白紙に返すつもりで分けるというならばどうかというような角度での検討があるべきではないかということで、始めたわけであります。
これも一つの部会を設けてやっておりますが、この関係での審議は、その前提に国と地方の事務の配分、国と地方の財政需要のバランスというような問題がからむということで、実はまだ、ただいままでのところ、その段階の議論をいろいろいたしております。ところが、この段階の議論というのは、非常にかっきりすることがむずかしいものでありますから、議論があまりまだコンクリートな形になってきていない、おそらくある段階で、それらについて、今の国よりは地方が苦しい、苦しいのはどれだけ苦しいというようなことが、かっきりとなかなか出ないで、ある感触を得られたところで、先ほど申しましたような現在の税を一つの鍋に入れて、それを盛り分ける作業というようなことに入っていくのではないかと思っておりますが、その際、言われますことは、国は国という一つの広い広域の団体でありますから、いろいろな偏在とか何とかいうことがありましても、かなりたらいの波は平穏になる。ところが、地方団体では税の偏在、偏在する税でありますと、地方税としてはおもしろくない。また非常に景気の変動、フラクチュエーションがありますと、国の場合でも問題がございますが、地方だと特に問題がある。反面、地方団体の財政需要をまかなうためには、それに見合った伸びがなくてはならないという方式なり、いろいろの基準があると思うのであります。それらの基準をいろいろ考えて、その基準から各税の性格を見ていくということ。またさらに、その底に、地方団体はなるべく財源を豊富にしてほしいという声があり、その豊富な財源をなるべく独立税でほしいという声がある。それももちろん一つの要請として考えなければならぬ。同時に、独立税が非常に多くなりますと、財源調整の問題といいますか、貧富の団体の差がひどくなりますので、それの調整がより急角度に行なわれねばならないというような問題とかみ合わして議論が進むということでございますが、ただいまの段階では、今申しましたように、各税の性格を見てその配分を考えるという、前段階での財政額の問題、その配分の問題まで入り込んでしまいますと大へんだという声もありますが、その辺のところが議論の対象になっておるということであります。
次の第四の「税制の整備」でありますが、その一に「所得税の整備」とありまして、「所得税については、その税負担の問題として諸控除乃至累進税率のあり方についてはなお検討を要すること勿論であるが、所得税制として特に各種控除制度、所得分類及び各所得種類ごとの所得計算と課税方式等について各種の問題がある。この点に関し、たとえば次のような問題についてどう考えるか。」、その(一)「現行の諸控除制度の外に、寄附金控除、勤労事業控除等の要望がある反面、現行諸控除の内容の再検討、その統合等の問題があるが、これらについてどう考えるか。」、そしていろいろの控除のことが書いてあります。それから(二)として「一時所得譲渡所得、山林所得、変動所得、臨時所得等臨時に発生する所得に対する累進税率適用の緩和の方法が複雑多岐に分れているが、その整備についてどう考えるか。」、五分五乗方式をやってみましたり、あるいは十五万円引いて半分に課税するというやり方をやってみましたり、変動所得というようなやり方があったり、いろいろあります。
それから、2に「間接税体系の整備」、「(一)、今後の税制のあり方として国税及び地方税を通じ、間接税にどの程度の税収を期待すべきか。また、間接税体系のあり方についてどう考えるか。」、「(二)、現行間接税体系における課税対象及び個々の課税物品間の税負担のバランスについて改善を要する点はないか。」、
それから地方税につきましても、「住民税の課税の方式」として「市町村民税の課税方式を統一すべきか。また、統一すべきものとした場合のその具体的方法はいかにあるべきか。なお、これに関連して都道府県民税の課税方法についてどう考えるか。」、それから「固定資産税の課税の合理化」として「固定資産の評価の適正化と相まって、固定資産税の負担を適正にするため、固定資産税の課税はいかにあるべきか。」、(注)にありますように、「固定資産の評価については、別途固定資産評価制度調査会を設けて、二年間の予定で検討することとなっている。」、三十四年度と三十五年度と二年にまたがって検討することになって、現に審議が続いております。
このところはいわばその他みたいな格好で出ておるわけでありますが、その私どもとしてどうしても手をつけてやらなければならぬと思っております事項を取り上げてある。この辺のところはその他でありますから、調査会でも、先ほど来申しました企業課税の配当、それから家族給与というような問題、それから国と地方の配分問題というだけでなくて、税制全般にまだごろごろ問題がころがっておるのじゃないかというものへの、いろいろ気の配り方がされております。そういうものとして、冒頭に申しました負担論、負担がどうか、その負担をどう配分していくかというような問題と合わせて、そういうような取り上げるべき大きな問題点というものを今当たっておられるという段階であります。当然、先ほど申しました負担論の中での直接税、間接税の問題、あるいは所得税でも、こういう各種の控除とか臨時所得の課税方式だけでなくて、税の控除と税率とをどういうふうなバランスで置くかというふうな問題も当然入ってくるべきと思いますし、また、審議の経過でも、委員さん方、ぜひそういう点を突っ込みたいというような気分が出ておるというのが、最近までの状況でございます。
最後に、第五の「税法の簡素合理化と平明化」ということで、「1、租税に関する通則規定の整備」、「6、国税全体に通ずる総則的な規定を整備統合し国税通則法をどのように制定すべきか。」というのがございます。それから二十六ページで地方税にもその問題がある。「税法の簡素化と平明化」、「国税及び地方税を通じ、税法を簡素平明なものとするため、税制の簡素化を図り、税法を平明な文章で書き改め、また、その表現形式を改善するために、どのような点に配慮すべきか。」というような問題。
この第一の通則規定の整備といいますのは、各国でも所得税法、法人税法、あるいは酒税法というような各税に共通な事項、再調査、審査でありますとか、利子税その他の附帯税、あるいは罰則その他共通な事項が、ここにもいろいろ書いてありますが、いろいろございますが、それらは日本では各税法に、各個別税法に一々書いてある。まあ、大体統一とれているはずですけれども、やはりそのときそのときの特殊な事情が響いてふぞろいだというような場合がある。ふぞろいでいい場合もないとは言えませんけれども、大体こういうものはそろった方がいい。ほかの税負担者にもわかりやすいというので、これを作ろうじゃないかということで、今作業を始めております。これは先般の、昨年御議定願いました国税徴収法、あの審議の際も、徴収法は結局徴収面だけ書くしかできなかった。しかし、徴収面以外で通則的なものがある。それをやはり統一した方がよくないかという御質疑をいただいております。その流れとして、この委員会でも昨年お尋ねがあり、やりたいと思うと申し上げたと思います。やろうということで、これはもう実は一般部会の仕事にいたしておりますが、この一般部会にさらに小委員会というものを設けまして委員さんが五名でありましたか、そのほかにかなり法律的な関係等がありますので、若干そういう向きのエキスパートを追加して、これは隔週集まって各項目にわたって議論しておるという段階でございます。議論の項目はここにいろいろありますので、省略いたします。
最後の簡素化、平明化の問題はもういつも言われるわけでありますが、毎年の調査会ではとうてい処置し得ないし、私どもの方も前のかまえではできないというので、この際思い切って簡素化、平明化する。そこにありますように、どうも税法は非常に長いし、長い中にカッコが入っている。カッコが二重カッコがたくさん入っておって、どこで——始まりはわかりますが、どこで終わるのかなかなかわからぬというような、そういうようなのをカッコの部分ははずして例外規定はあとを見て下さいというような思い切った書き方の何をやる。また率をきめます場合には、何々に対する何々の比率というような文句で、その中に算式で書いてしまうというような方法を、この際今までの法令の形式にこだわらずに、とにかく見いい、わかりやすいという見地で、思い切って考えてみようということで、目下委員さんだけでもいけない。なるべく広くから意見を集めようというようなことで、税務第一線あたりにもいろいろ手配して税関係の税理士さんその他にも聞き合わすというようなことでなにして、だんだんそういう素地を固めていっております。
大体、審議の状況はこのようなふうなんでありますが、概括して申しますと、十年間でまあ減税額がたしか七千二百億ぐらいになっておると思います。これは、その年その年の減税額、平年度額を寄せたものでありますから、二十五年、二十六年ごろの分は、今の値打に直せば非常に大きいわけですから、現在価値といいますか、現在の経済規模でやりますと非常に大きくなると思いますが、そういう減税々々でやってきたと。その閥は、もう方向は確かなんだから、とにかくこれをやろうという式でやってきたので、最近においては、よりきめのこまかい読みをすべき事項が幾つかあるというようなのを取り上げてやる。そういう取り上げ方をしますために、なるべく全般についてそういうきめのこまかい角度であっても、つまり相当日数を要しても考えなければならぬという点は考えようという角度でかまえて進めておるという状況であります。また、足らなかったりいたしましたら、後ほど補足いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/9
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010・木村禧八郎
○木村禧八郎君 大へん長い時間、御苦労さまでした。今の御説明によりまして、大体輪郭はわかりましたが、根本的な税制改革と取り組んでおるわけですから、これがだんだん固まっていきましてこれに基づいて政府も税制改正をやるのだと思います。従ってわれわれはこの経過について無関心ではおれないわけです。また、われわれの立場としての税制の考え方もあるわけです。ですから、ときどきこの経過について、いろいろな出た議論とか、それからまた大蔵省が諮問された事項とか、それに付随する資料も、大へん貴重な資料がこれにも収録されておるようですが、このほかにもまだいろいろあるのじゃないかと思うので、もしおありになりましたら、税制調査会に出される程度のものはこちらにも一つ全部出していただけないでしょうかね。大蔵委員にもですね。やはり、その過程をわれわれは知っておく必要があると思うのです。いきなり税制改正の問題がばんと出てきても、これは非常に広範なものですから、やはり絶えずわれわれは、税制調査会の審議と並行するような形で、われわれもやはり関心を持ち、勉強しておかなければいけませんし、われわれはわれわれの立場として、たとえば企業課税の問題についても、資本蓄積と課税の問題につきましても、それから租税特別措置——措置法だけではなくて、措置全体についても、これもいろいろ考え方があるわけです。ところが、その方向がどんどんある方向にあまり傾斜してしまいますと、どうも因る面があると思います。われわれの意見もそこに反映するように、こういうところで報告していただいて、また意見を述べたら、大蔵省の方にも反映する。いろいろ代表の人も網羅されておりますから、そう一方に傾斜しないと思いますけれども、そういう点で、今後もできる限り、税制調査会に出される資料は、こちらの方にも出していただきたい。それから、経過もなるべく報告していただきたい。
それから、もう一つ、さっきの見積もりなんですけれども、これは、最近、今度の三月決算の法人の見込みが大体出ておりますね。これは見込みでありますけれども、これがまた予想外に多いですね。そういたしますと、私は、どうも見積もり過小ではないかというような気がしてきているのですね。最初は千五百億ぐらいから出発して、その後千七百億、それから二千九十億になりましたが、どうもその後に、九月決算は少し多かったのですけれども、三月決算も、最近は、山一証券のあれなんか見ましても、それからこの間の東洋経済でしたか、日本経済新聞でしたか、ちょっと予想外に大きいですね。これは下期がどうなるか問題でありますけれども、これは感じとしてどうでしょうね、どうも見積もり過小ではないかというような気がしておるのですが、これはまた大臣等にも伺いますが、事務当局としてどうですか。どうも情勢が刻々と変わるので、非常に困難でありましょうが、とにかく最近では過小見積もりのような気がしているのですが、どうなんでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/10
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011・原純夫
○政府委員(原純夫君) 見積もりは、先ほど申しましたように、特に法人税の見積もりあたりが中心でありますが、そこが一番むずかしいわけであります。各経済雑誌、あるいは新聞、証券会社等の調べがぽつぽつ出てきておりますが、あれはたしか一五、六%から二〇%くらいの伸びを言っております。私どももいろいろと三月、四月どうなるということは見積もっておりますが、その見積もりに比べてまあ若干多目だということは言えますが、そうひどく多目だとも言えないのであります。
というのは、ああいう調べは、いずれも金融機関を除外しております。金融機関の三月、四月期の申告所得において占めるウエートは、三月期が大部分でありますが、三割であります。金融機関の分は、とてもああいう伸びは示さない状況にあります。一一〇を割る一〇七、八くらいかというようなことも言っておりますが、平均していきますと、あれが下がって参りまして、一〇〇幾つになりますか、低い方をもとにすれば一一五を割って一二三、四、高い方で二六かその前後というようなことになります。大体私の方は、各月の生産物価の伸び、三月期の決算ならば、その三月期の決算に入る六カ月の生産物価の伸びというものをずっと寄せていきまして、それが三月期の申告期にどうなるというようなことを各月の分を一応平均して出しておりますので、その見地からいいますと、大体やはり三月期あたりは一一二、三から三、四というようなところに来そうな見込みをいたしております。まあ若干の違いはありますが、まあそう大きな違いではないということと、それから法人の見込みで一番むずかしいのは、この印刷物にもあります所得率のところでありますね。
生産物価の伸びだけで動くと、そういうふうにぴったりいくのだと、安心なのでありますが、景気が上り坂にありますと、これは仕入れたときよりも売るときの値段が高い。そうすると、生産物価が伸びる以上、その差は一種のウインド・フォールで入ってくる。もう一つ、売れ行きがふえますと、固定費の割りかけがうんと減ってくる。これもふえるとなると、やはり超過的に利潤が出ます。いつまでも固定費をそのままにして、労働者にも残業々々でやらせるわけにもいきませんから、ある程度のところにいくと、設備をふやし、労働者をふやしていくわけですね。そうなりますと、固定費といっては何ですが、経費の割りかけがずっと違ってくるわけです。そういう事情で、上り坂のときには、エキストラの利益が入るというのが、所得率が一〇五とか一一〇とかいう時期があります。そのかわり、下向きの場合はもちろんのこと、上向きのカーブがゆるみますと、今度は、ゆるむ前にはそういう超過的な利益が出たものが基礎に入っておるでしょう、それがなくなるという意味で、生産物価の伸びでやったよりも減って参るのです。ですから、所得率が一〇〇を切るわけです。三十五年度で一番私でも、こわいといいますか、心配するのはそこなんです。この景気が、三十四年度の九月あたりまで、非常に急激に上がった。その後反落があると相当なんだし、カーブがゆるくなりますと、だんだん今のような現象が起こって参ります。それらの影響がだんだん三十五年度に起こりはしないかというようなことで、所得率も、この調べでは、一〇一一というふうにいたしておりますけれども、この辺がもうきわめて心配なところでありますので、まあ三月、四月かなりに景気はよろしいけれども、そう大きな何でもございませんし、先行きそういうような点もありますので、まず見通しとしてこの程度のところがよろしいのではなかろうかというふうに私どもは考えております。
なお、ただいまの点はちょっと、私申し上げる数字が、一一〇にほぼ近いところになるという、それがもう一つ入る数字がありますのですが、後ほど思い出したら申し上げます。
それから、前段の、あの審議の経過を聞きたいというのは非常にありがたいことで、ぜひときどき聞いていただきたい。資料もできる限り出します。ただ、お願いしておきたいのは、資料も、調査会には、お話の通り、相当の資料を出しておりますが、ある程度コンパイルしませんと、ただぽんと出して、それを受け取られたままで、これは主税局の資料だからといっていろいろなことに使われますと、困るのが実はあるのです。これは秘密とか何とかいうのじゃなくて事柄をどんどん活発に議論するという場合には、これはもう及第点がやっととれるかどうかだという資料でも、とにかくこんなものですといって出す場合があるのです。そういうのを公式にお出しして、他に引用されるベースになりますと、主税局がこんなものを作ったかと言われては困る。そうすると、何かえらいいいかげんなものでやっているように思われるかもしらぬけれども、活発に議論するには、これは外には出してもらっては困るというて見せる場合もあるわけです。ですから、その辺はしかるべく取捨さしていただいて、そしてお目にかける。
同時に、お願いいたしておきたいのは、どうかそういう際に、なかなかむずかしい問題でありますから、そうはっきりした角度の御意見は伺えないにしても、なるべくお気持なり何なりを承らしていただけるというふうにしますと、私ども非常にありがたい。先ほど申した法人税の配当を損金にするかどうかというような問題は、これこそ法人税法の大革命みたいな問題で、委員会でもなかなかこわいような問題で、なかなか意見が伸びやかには出てこない問題です。こういう問題はやっぱりいろいろ御意見を伺う、その他の問題についてもそうでありますが、ぜひお願いいたしたいと思います。できるだけそういう気持でやるようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/11
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012・木村禧八郎
○木村禧八郎君 資料につきましては、十分われわれもその点は慎重に取り扱います。やっぱり資料の備考等でそういうことはこまかに書いてあるでしょうから、そういう際にはそういうことを注意していただけば、十分もちろん注意いたしますから、十分に出していただきたい。
それから、ほかの方からも御質問があると思いますから、その見積もりについてもうちょっと……。大体、所得に対しての税収の係数ですね、これは非常に大まかなものですが、大体どのくらい……。普通、もう過去の統計からももちろんおとりになるでしょうが、一四%とかですね、どのくらいの係数に過去の経理から押えておられるのですか。たとえば国民所得十兆幾らといいますね、そうすると三十四年度は九兆幾らに対して租税収入が幾らというその係数。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/12
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013・原純夫
○政府委員(原純夫君) 今お尋ねのは、おそらく国民所得が一割ふえたら税収は何割ふえるかというお尋ねだと思います。それはそのときそのときによって違います。しかし、長い間を大きく平均するというような形で見ますと、国民所得の伸び一に対して税収の伸びは一・五六だということが言えますということになります。特にお願いいたしておきたいことは、これはもうその年その年によって大きく違うのです。今申したような景気の上り坂と上りがにぶったとき、またいわんや平らになってしまったというようなときとでは、非常に違います。そういうときには国民所得の伸び率を割るということもあり得るし、また伸び率の倍以上で伸びるというようなこともあり得まするしいたします。
なお、今申しましたのは、国税、地方税つっくるんで、大体そんなことでよろしいと思いますけれども、国税と地方税とではやはりその率が違ってくる筋合いであるし、また国税の方はより今の係数が妥当しやすいが、地方税は、御案内の通り、住民税というようなもので年度のずれがあるわけです。前の年の所得でことしかかる。固定資産税というようなものは三年に一回評価をやって、三年間動かさない。ですから、その時期的な構成が地方税ではかなり、毎年なだらかな格好になっておりませんので、地方税の伸びを考える場合には、大きくいえばその率は大して変わりません。同じようなものですが、やはり地方税でお考えになるときは、特にそういう点のお含みがないといけないというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/13
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014・木村禧八郎
○木村禧八郎君 政府がお出しになりました予算説明書を見ますと、国民所得、三十四年度の見積もりを変えましたね。また、それを基礎にして十兆幾らと、こうなっておる。それから見ると、どうもいわゆるこの伸び率、これはまたいろいろ機械的にはそういかないこともお話の通りですが、それから見て、どうももう少し税収がありそうなもんだ、こう思われるのです。ですから、多少過小見積もりじゃないか。それから、特に三十五年度は上と下とではちょっと景気の見通しも違うでしょうから、これは非常にむずかしいところですが、特に三十五年度は下では、同友会の御意見のように、過剰生産のおそれもあるというような見通しもありますが、やはり上下あたりを区別して考える必要があるのじゃないですか。その二つの点だけお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/14
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015・原純夫
○政府委員(原純夫君) ただいま、一つには、今の伸び率というようなものを当ててみてどうかというお話と、それからもう一つ、第二段として、上下を分けて見る必要があるというお話でございますが、前段の、先ほども申し上げたような、伸び率を当ててみてというのは、実はもうこの際三十五年度の伸びを見ます場合には、そういういわゆる租税係数というもので見るというのは、何といいますか、やめて、やはり各税の何でおやりいただくように。と申しますのは、今申しましたように、平均から一番ふれの多いようなファクターが入っているときなんですが、それが三十五年度だけじゃなくて、三十四年度がいわゆる岩戸景気の本体が入っている年度だろうと思いますが、それが三十五年度でどうなるかということで、非常に大きな何ですから、これはやはり全体の伸び率で見るというわけにいかないのではないかというふうに思います。また、伸び率でいきますれば、私どもそういう計算を実はいたしておりませんが、ちょっと中に、やってみましても、三十四年度の実績が幾らになりまするか、補正を入れて当初予算に対して五百七十億ばかり見ているわけです。それを含めて二千百億ぐらいですから、千五百億ぐらい、この年度の実績よりもふえるというわけですから、かなりその一・五倍というのとはそう開きはないとは言えば言えるのですが、しかし、そういう行き方でいくよりも、やはり各税の何でごらんいただくということでなかろうかというふうに思います。
それから、第二段の、上期下期といいますか、そういうふうに分けて見るというようなこと。まあはっきり区分して分けるとなると、非常に大へんなんですが、三十五年度の状況がどうなっていくかということは、もうすべての指数を年度平均でこうだというふうにはなかなかいきかねるので、それはどういう推移をたどるかということを想定して考えるというのが当然必要であります。それで、生産物価の伸びにいたしましても、毎月々々の生産に当てるというのは大へんですが、趨勢的にはどうなるというようなことをいろいろ現在やっておりますのですが、それをはっきり上期下期に区別して、というよりも、今申したような、年度のうちどういう経済の動きに大体なっていくかということを現在やっております。それがつまり、木村委員のおっしゃる年度の中での時期的な関係を見ろというのにもかなっていくのではなかろうかというふうに思います。もちろん、大体私どもの見ておりますのは、伸びを例の各指数のポイントで、同じポイントづつ上がっていくというような見方をしております。物価あたりですと、最近現在で、計画時現在で横ばいというようなやり方をしておりますが、生産はそういうふうなやり方をしておる。何ポイントというポイントを同じにおいていきますと、毎月同じポイントだけ上がるけれども、伸び率としては若干づつ下がっていくことになります、年度の末にかけて。企画庁中心でやりました見通しもそういうような傾向を申しておりますし、大体そういうようなものに合ってやっておる。その際、生産物価だけではなくて、問題のあるのは所得率なんです。
率直に申しますと、私どもは、下期に入って所得率は、今までのいい所得率が下がってくるだろうと思っております。若干下がってくるというふうに見ております。ですから、お話のような点はそういうような形で織り込んであるというふうに思いますが、もちろん、こういうものはだんだんみがきをかけていくべきもので、今後なお努力して、いい方法がありますればまた使っていきたいと思いまするが、現在では私どもできます限りそうやっております。
なお、先ほど申し上げました数字がちょっと、雑誌等での調べが、金融機関を調整すると……。二と言いましたが、今メモを見ますと、一一〇ちょっと、高い方が二五、六、私どもの見込みが……。一、三というところでありますので、そう大きな違いはないというふうに改めさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/15
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016・木村禧八郎
○木村禧八郎君 大体今まで、減税のできなかった政府側の理由とか、それから税の見積もり、税制調査会等について伺ったんですが、減税のできない政府の方の側の理由としては、いろいろ述べられましたが、これについてはわれわれも意見があるのですが、それは議論にわたりますから、これは大臣にも来ていただきましてやることにして、ほかの方も御質問あるでしょうから、私の質問はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/16
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017・平林剛
○平林剛君 今お話があった、なぜ減税ができないかということについて、主税局長は、平たくいえば一般の経済情勢、具体的にいえば伊勢湾台風の歳出増が予定以上あった、あるいはその他の災害復旧、国土保全などの要求を満たすためにできなくなった、こういうお話があった。これは、じゃあ、逆説的にいって、伊勢湾台風のような災害なかりせば今年は政府が減税をやったかということになりまして、これはあなたを幾ら責めても仕方のないところで、いろいろわれわれとしては議論のあるところです。これは別にして、大蔵大臣は、われわれのなぜ減税しないかということに対して、今年は仕方ないけれども、来年はやります、こう言っているんですね。明年度は減税をいたしますと。減税にもいろいろありますからね、一体減税の規模であるとか、その中身はどんなものであるかということを、われわれはこれから大臣からもお話を聞こうと思います。しかし、本会議やその他の委員会で、大蔵大臣が、来年度は減税をします、こう言った裏には、ある程度の裏づけがなくちゃ、国民を口先だけでごまかしたことになるでしょう。そこで、原さんにお尋ねしますけれども、事務当局として、大臣が言われた具体的なことについてあなた方御相談を受けているかどうか、そうしてどういうような構想が現在事務当局の中で練られているかということを、一つこの機会に聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/17
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018・原純夫
○政府委員(原純夫君) 減税を明年度はやりたいということを言われた裏に、具体的なその規模ないし中身についての成案はないかということでありますが、それはありません。それは今申したように、三年の調査会でせっかく練っておりますので、それの審議が進むにつれて、だんだんできてくるということであります。
ただ、減税をやりたいということについては、大へん事務当局としては差し出がましいかもしれませんが、それについては私は大臣に強く進言いたしました。ということは、来年度、御案内の通り、かなり治山治水その他の経費がかさむということも承知いたしておりまするし、また今年のような大幅な増収が必ずしも期待できないということも承知いたしております。しかしながら、この三十五年度は歳出増の要求がきわめて特殊な形で現われ、しかも、経過的にかなり特殊な経過をとりましたために、減税はできなかったけれども、やはり長い財政の歴史において、減税の要求ということは、他のもろもろの歳出増加の要求と並んで、自己を主張してよろしいというふうに私は思いましたので、大臣に進言して、大臣も、大臣はもう前から、御就任当時以来、減税はできるだけやりたいという気持でおられますから、それを態度として、腰がまえとしてお取り入れになったというふうに私は考えております。従いまして、今後三十六年度の税その他の歳入がどうなるか、また歳出面での当然増あるいは生産増の伸びがどうなるかということと見合って、減税というものは一つの要求として考えて処理をするということであろうと思います。まあそう言い切ってしまうと、減税が非常に弱くなるかもしれませんけれども、やはりその中で減税というものが現実に、各般の歳出需要と、いわば競争しながら、結論にたどりつくということであって、やはり今お尋ねの点は、今後この年末までかかっていろいろ、ときどき経過は御報告申し上げますから、そのときいろいろまた伺いながら固まっていくというふうに御承知願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/18
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019・平林剛
○平林剛君 主税局長、なかなか正直でいいです。その通りなんです。私は、だから、これからその点は大蔵大臣に、実際上中身がないのにああいうことを答弁して、気持があったって実際できるかどうかという点を追及したいと思っておるのです。ことしのようなときに、自然増収が二千億もこえたようなときにできなかったら、本年一体できるのかと、こういうことを言いたいのですよ。これは来年だって、別に期待しているわけじゃないけれども、災害が全くないとは言えませんしね。おまけにロッキードのあれですよ。今現在は予算に入っていないやつが来年は入るし、また災害復旧だって、国土保全だって、ことしだけで終わるわけじゃない。ガリオア、イロアの問題だって、ことしは表面に出てこないけれども、アメリカとの話し合いの工合によっては表に出てくるかもしれない。それから国債の償還だって、来年度になれば、三十六年度はピークですよ。ことしみたいな国債の償還というわけにいかぬ。来年に集中しているわけでしょう。これも歳出増と。いろいろな面でやりくりが苦しいことになるのは目に見えているのですよ。東南アジア開発機構だって、ことしはたかだか五十億だけれども、来年度はふやすなんて、こう言っている。そう言っている裏から、今の政府の考え方では減税など無理だということはわれわれはわかっているのだけれども、とにかくああ言い切った以上は、国民に約束通りやってもらいたいという気持なんです。
今、調査会で目下検討中だというけれども、今報告を聞いたら、これは制度全般、税制としての根本的な問題をやっているのであって、私は、この中からなかなか来年度の減税というようなことがすぐに生まれてくるというふうに、今お聞きしなかったわけですよ。そこで、これはここで言っても仕方がありませんけれども、あなたの方としては、税制調査会に今後新しい諮問をしなければならぬと思うのだね。大臣がああ言った以上は、当然来年減税するにあたってどういうところの財源措置で、どういう規模で、この根本的なことをやっている中で緊急やらなきゃいかぬものは何かというような点で、お尋ねにならなきゃならないんじゃないか。そういうことをやるのですか。それとも、今のところ独自で大臣は考えられておるのか、そういう点を一つ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/19
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020・原純夫
○政府委員(原純夫君) それはいたしますが、何といいますか、あらたまって文書を発してということでなくて、審議の経過で、三十六年度にぜひやりたい、それについてはどういうことをなにするかというようなことは、もう申し上げることになると思いまするし、また先ほどの説明を補足いたしますが、今の調査会の審議でも、三年間じっと研究々々でいって、最後にできた、さあやれという形でいくかどうかということになりますと、私ども、やはり三十六年度にはある程度中間的な御答申をいただいて、できるものをやっていく。それは先ほど来話の出ています財源との関係でいいましても、三年先の三十七年度にちょうどまとまった減税財源が利用できるというものでもないわけです。毎年々々、機会があれば減税はしていきたい。また、調査会は減税という一方的な角度ではありませんが、やはり税制改正をやるには多かれ少なかれ財源が必要になりますので、そういう意味で初めからやはり一部は三十六年度にやりたいという気持は持っておりました。調査会もそのつもりでやっていただいておりますから、もうおっしゃるようなかまえになっておる。それが三十六年度にはぜひ減税をやりたいという大蔵大臣の言葉によって、よりプッシュされるということになるのだろうと思います。
なお、大へん恐縮ですが、私が率直に申し上げたことが、中身がなくて、ふいているというようなことで大臣を責められますと、非常に不本意でありますので、むしろ、他の歳出を考えれば減税しないでもいいということになれば、ほかのことをやれという御意見なら御意見で、それはそうおっしゃっていただいてもけっこうですが、減税はやはりやるべきだというお気持でございましたら、どうか、なかなか減税はむずかしいかもしれぬががんばれというふうに言っていただきたいと。(笑声)いろいろそのやり方もありまするので、大へん差し出がましいことでありますが、そういうふうにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/20
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021・平林剛
○平林剛君 きょうは主税局長からやたら注文を受けるけれども、まあきょうは大体お話聞いた程度で、ようございます。ただ、さっき税制調査会の資料について木村さんからお話がありました。なるべく早くですね、きょうは概要だけで、中にいろいろこまかい資料も入っていますけれども、できるだけ早く一つ過去のやつですね、提出をしていただきたいと思います。さっき御注文があったように、慎重に取り扱うということを私は申し上げておきますから、至急に、なおこのほかに過去において出されたものがあったら、資料としてちょうだいいたしたい、これをお願いしておきます。
それから、きょう、私がこの間の委員会で要求した資料がまだ出ていないのだけれども、ここに出されました「国債負担会計別現在額調」のほかにまだ出されるのですか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/21
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022・原純夫
○政府委員(原純夫君) 他の調査会関係の資料は、先ほど申し上げましたような気持で、できるだけ出します。ただし、重ねて申し上げますが、資料をお出しするだけで、それについて御説明申し上げるチャンスがない、また御説明申し上げて御意見を伺うチャンスがないと、まあ実は私どもにとっては非常に心外なことになることがありますので、現実に今まででもいろいろ、それが部外に出て、ある片すみだけが引用されて、非常に不本意なことになりますので、どうか取りまとめて説明をお聞きいただいてなにしたい。(「信用しないな」と呼ぶ者あり)いや、信用しないとかなんとかいうのじゃなくて、大体そういうものでありますから、そういうふうに随時取りまとめて御報告して、御説明して、なるべく御感触を伺うことをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/22
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023・平林剛
○平林剛君 あとのやつは、これはあなたじゃなかったかもしれないけれども、出されるのですか。私がこの間注文しておいたのは、これだけでなくて、民間に入ってくる株式だとか、あるいは借入資金だとか、いろいろこまかいことまで注文をした、これは別に出されるのですか。——それじゃ、まだ出されていなければいいですが、これで終りだということだと、ちょっと疑問があるので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/23
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024・木村禧八郎
○木村禧八郎君 財源問題として公債発行の問題なんかは、この中で、やはりどこかでやるのですか。財源問題について、税ばかりじゃなく、公債の問題。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/24
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025・原純夫
○政府委員(原純夫君) 公債発行問題も議論してはどうかという意見の委員さんもあります。ただ、全面的に議論をするかどうかということは、まだきまっておりません。少なくとも中央地方の配分の際には、中央は一般会計では公債なしでやっておりまするが、地方は御案内の通り一般債があります。この一般債は、もうある程度は一時的な需要をまかなうために当然だという議論はありますけれども、どの辺が妥当なのかというような議論は、たとえば中央、地方の配分の前提となる財政ワクといいますか、税源ワクというものを考える場合に出ますので、それは議論になると思います。ただ、国の一般会計で公債を発行してなにしたらどうだという議論までいきますかどうかは、まだあまりそこまで進んでおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/25
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026・河野謙三
○河野謙三君 今国会に農林省が農業法人法を提出するとすでに言明していますが、これは今農林省の手元にある政府原案を作るまでに、大蔵省と当然合議されたと思うのですが、政府が今用意している農業法人法、これに伴う農地法の一部改正ですね、これと税収との関係についてはどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/26
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027・原純夫
○政府委員(原純夫君) 農林省の方の御案というものも、これでという正式の何はまだいただいておりません。いろいろ部内で案があると新聞あたりで承知し、また部内案程度のものを随時お互いに話し合うといいますか、若干の連絡をとるという程度はしておりますが、私がそういう意味でざっと承知している農業法人に関する立法の関係と税の方との関係について考えているところを申し上げますれば、一つには、この法人化するということが、主管省である農林省でおやりになるということならば、それはそれで一つの政策であろう。ただ、税の方として少し言い過ぎになるかもしれませんが、あの動きが、もう八、九割税を根幹といいますか、税を主軸として動いた。ということは、それは決して健全な現象ではないというふうに私は思います。そう思いまするからこそ、今度の調査会で、企業課税の一環として法人、個人の税負担のバランスというものを考えて、あとうべくんば、いい理想的な税制としては、法人になったら税が大きく変わる、個人なら重いんだというような、また逆なことがあってもおかしいわけですが、そういうようなことのないような工夫ができるならばしてみたいということで、一そう努力しなければならない。まあそれを努力いたしますれば、もし農業法人がそういうことを大きな原因としてできているとすると、むしろ全体として、より健康な制度になっていきはせぬかということを一つ考えます。
それからもう一つは、今お話しの税収への影響でありますが、これは国の方に入って参りまする農業の税は、もう十六、七億、二十億に足らぬような状況でありますので、大きな何はないと思います。また、法人化といいましても、今のような事情でありますから、あれができたら、もう一斉に法人になるとも思いませんし、そう大した影響はない。しかし、地方税における住民税の影響は、そういうことがややもすると地域的に相当集中的に行なわれやすいというようなことがありますので、その方面への影響は相当あるんじゃないかなというふうに思います。そういう角度で、先ほど御説明しました中にも、調査会で地方の住民税の課税方式というような検討は、これは昨年以来やっておりますので、これをまあ急がんならぬ。しかし、急いでも、残念ながらこの国会に御提案申すことはできない。追っかけて提案する。住民税の課税方式は、この問題だけを契機としてやるのでございませんけれども、その方の審議が特に急がれてくるというようなことになるのではないかと思います。
もう一つ、まあ新聞あたりで見ますと、農業協同組合に経営をやらす農業法人というものを考えられておるようでありますが、そうなりますと、わが国の税法では、農業協同組合は、法人税法のある条文に、例の事業分量分配金は損金にする組合等が規定してあります。その中に農業協同組合が入っておる。で、それはいわゆる共同的な販売、仕入れの今までの協同組合を考えておったわけです。ところが、個々の経営がすっぽり入って農業法人になるというような場合に、事業分量分配金を損金にしてしまいますと、非常におかしなことになりますので、その辺は調整が要るんじゃないか。私も精細に見ておりませんが、特に気がつきました点はその三点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/27
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028・河野謙三
○河野謙三君 実は、農林省の方では、もうある程度成案を得て、まあ与党の方には説明会といいますか、ある程度相談をかけるというようなところまでいっているんです。当然農林省は、一番関係の深い大蔵省と数回合議をされて、この段階に来たと私は承知しておった。ところが、今伺ってみますと、そこまで大蔵省との連絡もまだついていない。特に今私たちの疑問に思っておりますのは、農業協同組合の問題です。この性格からいきましても、今政府が考えているのは非常におかしな点があるので、これは私は、むしろ今主税局長の言ったような意見を私もとるものなんですが、そういう御意見を今ここで伺っている一方、農林省の案は、ある程度具体化しているというのは非常におかしいと思うんです。もちろん、御説のように、今度の農業法人法は、課税の減免を目的とした法人法ではなくて近代化、農業企業としての農業というものを打ち立てるためにどうしてもやらなければならぬということなんで、それが税に及ぼす影響というものは、そう大したことはないと思いますが、私は、ひがみかもしれぬけれども、今度農林省が持っている一応の案は、農業法人法としてはきわめて消極的な、ごまかしといってもいいような現在のところでは案なんです。これは大蔵省が多分牽制をしてそういう消極的なものに農林省をさしているんじゃないかというような私はひがみを持っておった。これはまあ誤解であったということがわかりますが、少なくとも、もう少し農林省が当然やるべきことであるけれども、大蔵省からも積極的にこの問題について、一番関係の深い大蔵として、もっと農林省と十分な私は合議をされることを、今のお話で特にその感を深くするんですが、最近何か合議するような段階になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/28
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029・原純夫
○政府委員(原純夫君) あらたまっての正式な提案、またそれに基づく合議ということはまだ始まっておりませんが、随時連絡をとって気持を通わせる程度にはいたしておることは先ほど申した通りで、現に協同組合についての今の法人税法の規定を直さんならぬというような点は、すでに農林省に申し入れてあります。これは農林省部内でも、最終案というものをまだまとめ切っていないように実は思っておったのでありますが、まだそこまでいっておりませんが、一つできるだけ連係をとるようにいたして参りたいと思います。
なお、大蔵省がこの農業法人法に消極的でないかという点は、私どもはそうではございません。先ほど申しましたように、まあ税が、七割とか八割とかいっちゃいけませんが、大きな契機でこういう話が出るんだと、税制自体反省せにゃならぬと申しましたことは、先ほど御説明しましたが、法人、個人の関係で、個人であっても家族給を認めるかどうかということにかかってくるわけです。そういう点については、実は農林省ともよく連絡をとりながら、私どもの気持も農林省に申してあります。というのは、これを取り上げるということは、やはりその線もじっくり考えてみようということでありますから、まあそれは何といいますか、農業法人というような形で税の調整をはかるのはおかしい。むしろ税制自体で、そういうことなしに済むようなことを考えるべきじゃないかという議論がある。そういう議論も十分突っ込んで考えるべきだというかまえでおるということでございますから、御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/29
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030・平林剛
○平林剛君 ちょっと、私、主税局長の責任に入るんではないかと思いますが、お願いしておきたいことがある。それは、けさ新聞で発表になった資本金一億円以上の民間の会社の十一月決算における所得申告があった。これはベスト・テンしか出ていなかったけれども、公表されました。だから、この一億円以上の資本金を持っている会社のただいまの所得調べ、新聞に発表された以外にも、大きなところを一つ資料として出していただくということをお願いしたい。同時に、おそらく個人のやつは、今度発表になっていなかったと思いますけれども、個人のものでも、出せるものがあれば、それをもらいたいということです。
それから、これは、おそらく国税庁関係だと思いますが、もう一つついでにお願いをしておきたいのは、東京あるいは大阪など大都市でけっこうですから、代表的な土地の評価額、これは私は、最近の土地の暴騰について、いろいろ検討しなければならぬ点があると思うので、そういう意味でほしいのです。だから、代表的な土地、高い方ですがね、こういうところの評価額調べがありましたらば、それを一つ資料として出してもらいたい。
この三つをお願いをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/30
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031・加藤正人
○委員長(加藤正人君) ほかに御発言がなければ、これをもって散会いたします。
午後零時十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00319600218/31
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