1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年五月十九日(木曜日)
午前十時三十九分開会
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出席者は左の通り。
委員長 中野 文門君
理事
増原 恵吉君
村山 道雄君
伊藤 顕道君
横川 正市君
委員
大谷 瑩潤君
大谷 贇雄君
小柳 牧衞君
下條 康麿君
松村 秀逸君
鶴園 哲夫君
矢嶋 三義君
山本伊三郎君
辻 政信君
高瀬荘太郎君
衆議院議員
中井 一夫君
秋田 大助君
田万 廣文君
八木 一男君
政府委員
内閣官房内閣審
議室長兼内閣総
理大臣官房審議
室長 大島 寛一君
総理府総務長官 福田 篤泰君
総理府総務副長
官 佐藤 朝生君
大蔵政務次官 佐野 廣君
大蔵省主計局法
規課長 小熊 孝次君
事務局側
常任委員会専門
員 杉田正三郎君
説明員
農林省農地局農
地課長 中島 清明君
食糧庁総務部長 岡崎 三郎君
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本日の会議に付した案件
○同和対策審議会設置法案(衆議院送
付、予備審査)
○農地被買収者問題調査会設置法案
(内閣提出、衆議院送付)
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001・中野文門
○委員長(中野文門君) これより内閣委員会を開会いたします。
さる五月十六日予備審査のため本委員会に付託されました同和対策審議会設置法案を議題といたします。発議者から提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/1
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002・中井一夫
○衆議院議員(中井一夫君) 当委員会に付託御審議を下さることになりました同和対策審議会設置法案の提案理由につきまして、提案者一同を代表してその説明を申し上げます。
お手元に配付してあります同和対策審議会設置法案につきまして御説明申し上げます。本案は自由民主党、日本社会党、民主社会党共同の提案にかかるものであります。
御承知のように同和地区は全国に散在しておりますが、政府の資料によりますと、その数四千、住民は二十五万世帯、約百二十万人に及んでおり、これらの地区における生活環境は御存じの通りはなはだ劣悪なものが多く、地区住民のほとんど大部分は、経済的な基盤を欠いて生活苦にあえいでおるのが実情であります。
また、地区外に居住する関係者もほとんど同様の、状況のものが多数であります。そのため旧来の差別問題も必ずしも払拭されていないというまことに放置することのできない状況にあるのであります。
これらの事情にかんがみまして同和問題の解決に資するため、総理府の付属機関として、存続期間を二年とする同和対策審議会を設置しようとするのが、本案の骨子であります。
この審議会は、同和問題の解決のために必要な総合的な施策の樹立、その他同和地区に関する社会的、経済的問題の解決に関する重要事項について、調査審議し、これらの事項に関して内閣総理大臣の諮問に答申し、必要に応じましては内閣総理大臣に建議することができることにいたしております。
審議会は、二十人以内の委員で組織し、委員には関係行政機関の職員のうちから十一人以内並びに同和問題に関して経験を有する考及び同和問題に関して識見を有する者のうちから九人以内を内閣総理大臣がそれぞれ任命することにいたし、専門の事項を調査審議させるため、学識経験者または関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する専門委員十人以内を審議会に置くことができることといたしております。
なお、委員及び専門委員を補佐させるため、審議会に幹事二十人以内を置き、また、審議会の事務を処理させるため、事務局を設けることにいたしております。
以上は本法案の要旨であります。
何とぞ、御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/2
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003・中野文門
○委員長(中野文門君) 以上で提案理由の説明は終了いたしました。自後の審査は、これを後日に譲ります。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/3
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004・中野文門
○委員長(中野文門君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/4
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005・中野文門
○委員長(中野文門君) 次に、農地被買収者問題調査会設置法案を議題といたします。前回に続いて質疑を行ないます。政府側出席の方々は、現在、幅出総理府総務長官、佐藤総理府総務副長官、大島内閣総理大臣官房審議室長、庄野農林省農地局参事官、岡崎食糧庁総務部長、以上の方々であります。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/5
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006・辻政信
○辻政信君 この調査会の問題につきましては、前委員会で岸総理に質問をいたしましたが、私がこの法案を見まして不満を感ずることがあります。それは二年間という長い期限をつけておる点であります。もう不合理ということは二年の調査を待たずして、今までの資料によって十分わかっておるはずであります。この法案を見て私の感ずることは、どうも政府は責任を逃げるんじゃないか。二年間という長い期間を貫いて、そして一方は地主の不安をそれでやわらげようとするし、また、それによって小作から自作になった人に対しても刺激をしないようにという、きわめて無責任な法案だと思います。ほんとうに信念をもって、この大改革によって生じた社会的不安と不合理を是止しようとするなら、この法案の期限を一年間に短縮してもらいたい。少なくともそれが修正できないならば、附帯決議をもって一年以内にすみやかに結論を出し、政府はその答申を尊重して責任をもってその不合理を是正するという態度を示してもらいたいと思う。この点について福田長官の見解をただしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/6
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007・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) 二年間と一応きめておりますことは、まあ大体一年では相当範囲が広いし、二年ぐらいのゆとりを持った方がいいんじゃないかという考えで、一応二年にしておるわけでありますが、結論的に申しまして、この問題の重要性にかんがみまして、一応の結論が出た場合には、政府はこれを尊重いたしまして、必ずこれを実行するという決意であるということを、この際はっきり申し上げげておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/7
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008・辻政信
○辻政信君 その調査会のわずか二十人や十人そこいらの専門員で、二年間二万戸の抽出調査だけで結論を出すことは無理であります。すでに農林省で調査した戸数は七十万戸に達しようとしておる。この十数年聞にわたる調査の資料を尊重されて、本調査会は自分の狭い範囲の調査だけで結論を出そうとしないで、すでに調査された資料を生かす、調査会の目的は、個々の問題を調査するよりも、むしろ今までに集められた調査の資料から政府としていかなる救済策を出すかというその案、その結論にこの委員の仕事の電点を向けるように指導なさってもらいたい、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/8
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009・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) 御指摘の通り、すでに農林省で相当精密な約七十万戸に関する調査はできております。ただ、これは御存じの通り、農業経営といたしましては、解放地主、すでに解放されたあとでも農業に従事しておるものだけを対象にしている。これらがその他と一緒に貴重な参考資料になることは言うを待ちませんが、ただ、委員会あるいは調査会の今度の任務は、今、辻委員が言われましたように、大所高所広い立場から判断をするというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/9
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010・辻政信
○辻政信君 政府がほんとうに責任を感じておられるならば、この調査会を待たずしてやられる方法がある。その一つの例を申しますと、一反歩を三百円で手放したものが、この十数年間に一反歩三百万円で農地以外の目的に転売されておるという事実、これほどの不合理がどこにあるか。これに対して、政府が勇気と信念があるなら、三百万円で転売されたもののうちの利益の半分は旧所有者に返す、こういうことは単独立法でもできる、調査会の答申を待たずに。また、まじめにやっておった不在地主でない人が、働き手を兵隊に取られたために、帰って来てみたら何にもなかったというような、非常にこのケースもわかるでしょう。国家の至上命令でやったんで、自分の希望でやったんじゃない。そういう者を救うということは、そう長い時間かけて調査せんでも結論は出るわけですよ。この二つだけを取り上げてみても、私は大きな欠陥というものが是正できるんじゃないか。私の心配は、皆さんがこの調査会というものを作って、二年間適当にごまかしておけという態度をとるんじゃないかということを心から心配しておる。ほんとうにやる決心があったらできますよ、調査会がなくても。ですから、二年間を一年間に縮めてもらいたいというのがほんとうの私の腹ですが、それができないにしても、少なくも本院の委員会の附帯決議でもって、この二年間の期間にこだわらないで、政府としての施策に対する答申を出すように御指導になってもらいたいと思う。もう一回念のために所信を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/10
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011・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) 解放された当時の対価に比較して、その後、相当地価の高騰によって高い値段で売られているから、そのいわば半分を旧地主に返したらどうかと、こういう意見でございますが、実はいろいろの有力な、それに類しました一種の特別の目的税を作ったらどうかという議論も伺っております。ただ、現在の政府といたしましては、そういうような目的税は適当じゃないんじゃないか。不動産取得税、あるいは固定資産の再評価税とか、一つの一応の税制としての建前から売買にあたり、転売にあたっては税金一を取っております。そのために特に一つの目的税を作ることは、今のところ政府は考えておらないわけでございます。ただ、繰り返して申しますが、結論はどう出るかは予測はできませんが、調査会の結論が出た場合には、政府はこれを尊重いたしまして、十分その責任を果たす決意であることを繰り返し申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/11
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012・辻政信
○辻政信君 私は、今、あなたと法理論でやろうというのじゃない。政治論でやります。だれが考えても、三百円で手放したものが三百万円になっている、十年間に一万倍、これは不合理であります。そのうちの半分を旧所有者に返すということは、政治論としてだれも否定できない。法理論を戦わすのじゃないのですから、大局的な、政治的な見地に立って、政府が信念でもってやろうと思えば、単独立法でもできるんじゃないかと思う。これは、調査会の答申を待とうとおっしゃっても、調査会そのものもあなた方の腹の中によって結論が出るという心配もある。その辺は、よく一つ腹を固めて、そうしてその出た答申というものは、信念と責任を持っておやりになるように、念のために申し上げて、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/12
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013・大谷贇雄
○大谷贇雄君 この法案によりまするというと、調査会は委員二十名以内で組織をすると、こういうことになっておりまするが、このごろも私から御質問を申し、また、所懐を申し上げましたように、この農地改革は無地革命とでもいうべき日本の農村社会におきまする一大改革であったのであります。従って、調査会の目的にありまするように、これが今、辻委員からも話があったように、あるいは赤紙で召集をされて帰ってみれば、農地が取り上げられて、明日食べるかてさえもない、あるいは、学校の先生が粒々辛苦して貯蓄をして、退職後は農村に帰って耕作をしようというのが、当時よその村に在職をしておったために、不在地主として、きわめてわずかな金をもって取り上げられてしまうというような、あるいはまた、そのために発狂し憤死し、従来、農村の中堅として農村振興のために、日本の農村維持のために堅実な努力を積み重ねてきた人が一朝にして転落してしまう、わが子さえも、あるいは悲惨な境遇に陥れ、もとより教育を受けさせるというようなすべさえもないというような、いろいろな無数の社会問題がそこに続出をしておるということから、本法案が社会的な問題を調査をするという目的が示されておるわけでありますが、そうした日本の大きな一大改革を断行したあとの無筆の人々に対する調査、この調査がほかの調査会、今も他の法案の御説明にございましたが、大体二十人ぐらい以内の委員で組織をされておるのでありますが、この問題は全く占領下の行政の、占領下の政治のあり方のわだちに打ちひしがれた至上命令によって悲惨な運命に転落をせざるを得ないというような人々の多数を持っておる問題でありまして、そうした委員会が、わずか二十名の委員によって、しかも、今、辻委員は、二カ年は長過ぎる、もっと早く調査を完了すべきであると、これは私も全く同感であります。ということは、すでにもう何年も何年もほったらかしになっておりまする問題であって、従って、一刻も早くこれは解決をしなければならぬ問題であります。従って、この期間を短くするといたしますれば、なおさら、この委員二十名というようなことでは非常な少数で、広い視野から各方面の考えを聞くべきことが多いと思います。そういう意味合いにおきまして、一体、私は二十名は少ないと思うのでありますが、二十名と政府がされました根拠を伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/13
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014・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) 委員の数でございますが、これはまあ厳密に申しまして、二十であるという科学的な根拠があるわけではございませんが、大体、今までのいろいろな調査会、審議会、そういうものの長い経験にかんがみまして、大体二十名というのが適当ではないかと考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/14
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015・大谷贇雄
○大谷贇雄君 大体まあそういう今までの調査会の委員が三十名だということだから、この調査会も二十名の委員をもって足れり、こういうことでありますが、私は、この問題の重要性にかんがみて、しかも、一刻も早く調査を完了するということが、社会の不安をなくするゆえんであろう、かように思う次第でございまして、そういう点から少なきに失するのではないかということをお尋ねをいたしたわけでありますが、長官の御答弁で、まあ二十名ということになされた以上は、今からこれを訂正するということも困難でありましょうから、その点はやむを得ず了承するといたしましても、この方面の十分、学識経験者等の相当の権威ある人々をお集めを願って十分の御審査を願いたいと思うのでございますが、今申しましたその学識経験者のある者から総理大臣が任命するとありますが、一体そういうような学識経験者という意味はどういうような方面から御選考になるのか、もし腹案があれば明らかにしていただきたいのと、この学識経験者の中には国会議員等が参加し得るのか、また含ませる御存であるのか、その点も伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/15
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016・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) 選考の基準になります学識経験という立場でございますが、これは調査会設置の本来の目的を考えましても、単に農業の専門だけでも狭くなります、し、そこにまた厚生関係だとか、あるいはその他社会的に関連のありそうな広い分野にわたっての学識経験者をお願いいたしたいと考えておるわけでございます。なお、国会議員を入れるかどうかという問題でありますが、国会議員なるがゆえに委員にお願いするという建前ではなくて学識経験者の中でもし適当な国会議員がおられる場合には、当然これは考慮してもいいじゃないか、その点はまだ学識経験という建前を通してたまたま国会議員であっても、どなたが見てもこれはこの問題についての適当な方であるという方があれば、これも考慮してもいい場合がある、そう考えておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/16
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017・中野文門
○委員長(中野文門君) ちょっと速記を止めて。
〔速記中止]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/17
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018・中野文門
○委員長(中野文門君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/18
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019・大谷贇雄
○大谷贇雄君 第五条に、「調査会に、専門の事項を調査させるため、専門調査員十人以内を置くことができる。」そしてその「専門調査員は、学識経験のある者のうちから、」同じく「内閣総理大臣が任命する。」とこうありますが、これは一体どういう方面から任命をされる御所存であるのですか。その点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/19
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020・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) 十名以内を予定しております専門調査員でありますが、これは専門事項の調査に当たりますので、やはりこれも学識経験という立場から選びたいと考えております。まあ、これは委員を補佐しまして審議の過程においていろいろ必要な問題が出てくるわけでありますが、これを、専門的に掘り下げていく、あくまで委員の審査、調査に役立つような補佐の役をさしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/20
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021・大谷贇雄
○大谷贇雄君 そこでこの「専門調査員は、非常勤とする。」とありますが、委員の数が二十名で、先ほど私が申し上げたように非常に少ない。その上この専門調査員が非常勤だということでありますが、そんなことでもって調査の完了がすみやかにできるかどうか、この点をお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/21
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022・大島寛一
○政府委員(大島寛一君) お答えいたします。専門調査員につきましては、ただいま総務長官からお答え申し上げたような任務を予定しておりますので、常勤の公務員として常時勤務しないで、ただいまのような任務を果たし得るものと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/22
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023・中野文門
○委員長(中野文門君) ただいま前田大蔵政務次官、小熊大蔵省主計局法規課長、有吉大蔵省銀行局総務課長、池中大蔵省管財局貴金属第一課長、以上の各位が出席なさいました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/23
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024・横川正市
○横川正市君 総理府総務長官に法案の提出についての二、三質疑を行なって、その大綱を明らかにしていきたいと思うのであります。まず、この調査会は国会に提起されまして二度目になるわけであります。そこで、一部にはこの調査会法というのはきわめて単純なまあ性格的に言えば問題を解決するための民主的な機関であると、こういうふうに言われているようであります。そこで、私は政府並びにこの必要性を強調される方々の意見というものをそのままかりにとるといたしまして、この調査会の持っております主たる目的というのが、旧地主の方々の農地解放後における社会的な地位の問題について調査しよう。こういうこの目的を一つ持っていると思うのであります。ところが衆議院の審議の過程、それから先般総理がこの委員会に出席をいたしまして、いろいろ質疑をいたしました内容によりますと、どういう格好であっても補償という問題についてはこれは行なわない。それから先般の委員会で井出農林大臣の明確にいたしました行政上の方法をもって何らかの処置をとることが、ひいては地主団体の解散に通ずるものだと思うので、その点について努力をいたしましょうと言った前農林大臣の言質については、これはそういうふうにおそらく努力をしたでしょう。ただその行政上の実績が上がらないから、団体は今もって現存するのだ。こういう説明があったようであります。さらにですね、総理が参議院の予算委員会等で明確にいたしました内容によれば、補償という格好によらずしてまあいわば社会保障的な方法によってこれを解決することが妥当だと思います。さらに坂田厚生大臣その他松野前総理府総務長官の言質を速記録によってなんしましても、その方向が明確になっておるわけであります。そういたしますと、今この法律案の持っておる社会的な旧地主の地位というものはですね、私は政府の考え方とすれば一貫して答弁のあったようなものであると、こういうふうに考えるわけなんであります。そうであればですね、私どもはしいてこれに反対の意思表示をする必要は毛頭実は持っておらない。より自民党の皆さんが言うように民主的な機関としてですね、いわゆる調査項目を明確にする。たとえば数が明らかになるとか、あるいは生活の実態がどうなるとか、それは一般の生活水準から比べてみて現在の社会構成の中でどの地位に該当する。どのくらいからこれを救済するとかということは、これは私は今の社会保障の段階でそれぞれ一つの基準というものが出てくると思う。いわばそういう意味合いでこの法律案を私どもに審議してもらいたいと、一貫して政府は言っておるように思うのでありますが、そういう点について総理府長官としてどうお考えになっておるか。
もう一つは、私どものきわめて危惧する点は、これは今、辻委員の発言の一中にもありますように、あるいは国が特殊な税金の支出をもって、これに対一して何らかの補償をいたさんとするということになりますと、これは明らかに戦前における地上権と申しますか、地主の持っております私有権といいますか、そういったものを今もってこの調査会で審議をする結果によって認めて、その認めた結果、それに対していわゆる増価税的なものとか、あるいはその他の税による地ならし的な方法によって負担をするとか、あるいはそうでない場合には、国が農地改革を行なった問題に対して遺憾の点があったと反省をして、その遺憾な点をこの際国民のおさめる一般的な税金の中から支出をしよう、こういう考え方に見られるようなにおいもなきにしもあらず、こういう……。について総理府総務長官としてはどうお考えになったか。
それからもう一つは、地主団体の方々の、団体を作られた意向について、私は必ずしもわからないものではないのです。おそらく先ほど辻委員の言うように、インフレの中で自分の所有しておった土地の値上がりというものを現実に見せつけられる、それから身分上の地位が逆転をしている、そのことによっていわば社会悲劇というものが非常にたくさんある、こういったことを何とかしてくれというその気持は、私はこれはむげにできないものだと思う。そこでこの人たちの、それならばそういうものを解決してくれという声を一体何があるかということで、この点を検討してみますと、これは幾多の変遷はあるようでありますが、最初は非常に強力な土地取り上げ運動に発端をいたしておるようであります。ことに香川県の土地取り上げというのは、これは地主の中でも私は最も悪質な行為として、表面化したものだと思うのです。もう一つは、石川県の問題にいたしましても、過去における主従関係を利用いたしまして、脱法行為を行ない、この農地法の成果というものを全く無視して私権だけを強硬に主張するという、そういう考え方でなされている、いわば地主団体の持っております、万人が同情するものとは全然違った形で発足しておったというように私どもは見るわけであります。その後の変遷の状態は、最高裁の判決も二度出されておりますし、それからまた、政治の動向もおのずとこれは認識するということになって参ったと思うのでありますが、その認識の結果、今はどういう考え方を持っているかといいますと、同盟の決定そのものというのは、私は非常に問題があると思うのです。たとえば、これは日にちからいいますと、最近のものだと思うのでありますが、ことに全国に農地解放者同盟の結成をされた後になされたものでありますが、こういうことがいわれております。
一つとして自民党の農地問題調査会の法律をすみやかに実現することを要請する。これは総理府総務長官も聞いておるわけでしょう。それから二つとして、来年度というのですから、もうすでに成立をした本年度予算であります。本年度予算に、解放農地処理に関する予算の計上を要望する。三つとして、われわれは来年度予算確保のため決死の覚悟をもって邁進する。これが農地解放同盟の決議であります。その方向に向かってこれは前進をいたしておるわけであります。
さらに、あなたの所属する自由民主党の方々の団体として、大体二百名程度の人が連署をいたしておるのでありますが、その人の名簿もあります。名前を指摘することもできます。その人たちの処置としては、農地を転用し、売買した際、売り主から土地増価税を取り立て、これを別の経理として、一部を農地達成事業にあて、一部を旧地主に還元をする。一つとして、農地問題審議会を設置する、総理府に審議会を設置し、旧地主の救済対策を審議させ、三十四年度中にその答申を求める。審議会は土地増価税による財源の配分、旧地主への配分基準を検討する。三つとして困窮地主に対する更生資金の貸し付け。四つとして、増加税要綱。などが大体きめられる。こういう一連とした関係の中で、この調査会立法というものが出てくるということになりますと、前者の言われております政府の考え方とは、大よそ内容の変わったものになるのではないか。私どもは人数の問題とか期間の問題とかで問題にするよりか、問題は、こういうところに立法の本旨というものがあるんだとすれば、これはゆゆしき問題だと考えているわけでありますが、そういう点から一つ総理府総務長官のお答えをいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/24
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025・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) まず、第一の御指摘になりましたこの調査会の精神から考えていわゆる補償を考えているのではないかという御質問でございますが、これは総理以下関係当局から、しばしばあらゆる機会にはっきり申し上げておる通りに、改革自体は、この最高裁の判決がはっきり出ている、正当なものであるという認識のもとに、それに伴う補償ということは、政府は一貫して、考えておらないわけであります。
なおまた、こういう法案の裏には、また調査会のねらいの一つとして、旧地主制度の復活というようなことも、伏線としてあるのではないかという御質問でございますが、政府としましては、そういう時代逆行的なことは一切避くべきである。農地改革の効果は非常に大きなものであり、農業生産はもとより、国民生活の向上の上にも非常な貢献をしたという見解を、一貫して持っているわけでありまして個別的な、非常に行き過ぎた例は別といたしまして政府といたしましては、そういう逆行するような地主制度、あるいは現在の農地法の改革というようなことは全然考えておりません。これもはっきりいたしたいと存じます。
なお第三点の、地主団体の要求、あるいは自民党内における特別委員会の要望事項、こういう点をあげられたわけでございますが、これは常識的に考えまして、こういう民主的な政治形態のもとでは、同じ考えを持ち、同じ志を持つ者が団体を結成することは自由でありますし、またそういう方々がいかなる主張をされるのも、これは当然私は自由ではないか。ただ、これらが政府としてそれに従うかどうかという問題でありますが、これは独自の立場で、やはり政府が、筋の通ったものは参考にすべきであろうし、筋の通らないものは政府はとるべきではない、独自の立場で政府はその政策を決定すべきものであると考えております。なお、党の問題につきましては、党内にも、いろいろ有力な意見もあり、活発な動きもあるわけでありますが、政党政治の建前から、もちろん政党の意見は、政府としては尊重することは当然建前ではありますが、しかし、これとても、政府は最後の判断をし、断を下す場合には、独自の立場から、筋の通った判定を下すべきものである、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/25
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026・横川正市
○横川正市君 総理府総務長官の今の答弁なら、私はあえてこの調査会というものは設置する必要がないというふうに考えるわけです。ことに、行政上のきわめて繁雑な時期に、何を好んでこういう設置をしなければならないのか。ことに、調査会を逆な意味で、解放農地の地主団体の人たちの最初の要求等を見ておりましても、審議会に逃げ込むことは、極力避けるように運動が行なわれておる状態であります。ですから、その意味では、私は、この審議会というのは、きわめて党利党略的なにおいの強い、いわば政治の面で万人を納得せしめられない、そういう要素があるものですから、一応民主的な機関としての調査会を設けようという政府の逃げ口上に使われたようなきらいが非常に強い。そうでないとすれば、私が先ほど言いましたように、何といっても、政党は党員の意思決定によって行なわれるわけでありますから、政府がいかにがんばってみても、党が決定をすれば、それに従わざるを得ないということは、岸総理も明確にいたしております。岸総理は、党首としての総理と、総理大臣としての岸総理の使い分けは何回かされておるわけです。そうすると、今ここに二百名の連署があります。これはみんなあなたの方の現議員ですから、その連署に従って意思表示をするということになりますと、これは私は少なくとも自民党の農地関係の調査会の決定の線に従った結論というものを期待をすると、こういうことにならないか。この両者というものを明確にしないでこの法案を出したというところに、私は、非常に苦心されたという点もあるでありましょうが、きわめて欺瞞に満ちたものがこの中に内在していると、こういうふうに思うのでありますが、この点総務、長官としてはどのように解明されるか。もし私の言うことが一方的だということで、ぜひ審議してくれということなら、私はそれに続いて多角的に他の問題と関連させて御質問しなければならぬということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/26
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027・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) 提案の御説明の際にも明らかにしました通り、この調査会は、農地改準というものがきわめて大きな効果を上げたのだが、何といいましても、非常に激しい社会的一一な変革を伴いまして、その結果、いろいろ各委員からお述べになりましたような、非常な国民生活の全般から見ても放置できないいろいろな例が出て、随伴して参つたわけであります。これがどうも実態が明らかでない。この際政府として、責任の立場において、調査会にお願いしてこの実態を明らかにしたい、こういう立場からこの調査会を設置しようとするのでありまして、もちろん、政党政治でありますから、党員の意思は無視できません。しかし、先ほど申した通り、その意見において政府として従うべきものは従い、とるべき意見はとりますが、万一高い立場から、その意見が筋が通らぬような場合には、たとえ党の相当な意見がありましても、政府が独自の判断において決定することも、従来にもございますし、これからもそうして参りたいと思います。特に、こういう問題については、あくまで、調査会を設置する以上は、その答申を尊重すべきであるという建前を堅持して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/27
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028・横川正市
○横川正市君 私は、旧地主の方々の社会的な地位という問題について統計の問題をお聞きしたいと思うのですが、三十三年の十月に農林省の調査によって、ほぼ対象戸数としては九万三千を調査いたしました結果、この社会的な地位という問題についての直接的な調査であったかどうかわかりませんが、そういう意味合いでは、ここに相当商い地位にあるということが結果として資料の上で出てきているわけですが、大体この推定の域を脱した確実な計数としての実数を、社会的一般水準と比較してみましてどういう結果が出たのか、それを一つ明らかにしていただきたいと思う。これは一般農家を一つのグループとしての水準別に分けることが一番妥当かもわかりませんが、そういう資料があれば、それでもけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/28
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029・中島清明
○説明員(中島清明君) お答え申し上げます。農林省の統計調査部の調査につきまして、一般農家との社会的な地位その他につきましての比較がどうなっておるかという御質問でございますが、農林省の調査が、実は昭和三十一年の臨時農業基本調査でございまして、これによりますと、農地を解放された農家で農村にある方、農業経営をやっておる方につきましては、一応経営面積では一般農家よりも大きいというような結果が出ております。それからもう一つは、いわゆる商品生産の割合でございますが、これは解放農家は四五・二%がいわゆる商品生産農業をやっておるというような数字が出ているのに対しまして、一般農家は二七・七%というような数字が出ているわけでございます。なお、これを兼業の問題について見ますと、兼業の中で、いわゆる季節的な出かせぎをやる方、あるいは季節的な人夫、日雇というようなことで、兼業としてはむしろ非常に程度の低い兼業につきましては、季節的出かせぎは、解放農家では二・〇%、一般農家では三・五%でございまして、季節的な日雇、こういうものは、解放農家では一〇・六%、一般農家では三二・五%、賃労働者として恒常的に雇われる人は、解放農家では一〇・六%、一般農家では一七・三%、こういうような数字が出ております。
なお、ただいま先生から御質問のございましたこの調査の詳細につきましては、実は私専門でございませんので、これ以上お答えできないと思いますが、ただ、この調査は、実は冒頭に「も申し上げましたように、いわゆる農地を解放されました地主の中で、昭和三十年当時引き続いて農村におられまして農業をやっておられる方についての調査でございます。従いまして、農業をやっておられない方、あるいは不在村の方、こういうものは入っていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/29
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030・横川正市
○横川正市君 私は、この旧地主一般の社会的な地位というものを、当時の状態に比べてみますと、三つに分けることができると思うんです。一つは、この北海道の場合には大農場でもってその後逐次解放されておりましたから、戦時中にはほとんどこういった問題は解消いたしておりますし、土地の取り上げやなんかの起こっておりますのは、ほとんど本州各府県によって行なわれておるようでありますから、そういう点では大地主、農場その他を持っておったような方々でなしに、いわば農村の経営、労力、そういったもので、土地は持っておるけれども、他の者にこれを貸しておったという、いわば不在地主の方々、それからもう一つは、事実上これは農村から離れていった人たちでありますから、それほど当時でもおそらくこの農家経営としてはこれ一本にすがることができなくて、兼業その他をやっておったが、そのうち、さっき言ったように、召集その他で全然農家労力をなくしてしまって、そうして他に貸しておった場合の方々、これは兼業で農家から一般に別な格好で分かれてくる。この状態を見ますと、当時から全然農地から離れておった人達の者まで含めて調査をするということは、おそらく私はかりに調査をしてみても、当時の実情からいったのと、今の現状とはさほど違った環境にはないのではないか。ただ一部に都市周辺の土地のきわめて著しい騰貴等を見て感情的にこの問題をとらえたというのが一面と、それからもう一つは、今言ったように、社会の一般の変遷の中にしわ寄せとして出てくる、いわば不合理な中で一番不幸をみた人たち、こういう二つのあれに分けられてくるのじゃないかと思うのであります。そこでこういう人達が大体今の統計の中にも出てきているような格好で、一応筋がどうあれ一つのサンプルが出されてきた。この場合総理府総務長官としてはそれに対して各階層の各事情その他を大別して、今私の言ったような、大体三段階くらいに分かれて出てきた場合、政府の立場として補償もしない。それから絶対補償はしない。しかし答申には政府としては全面的におこた、えしたいと、こういうのでありますが、これは絶対補償はしないということではなしに、そういう格好で何らかの答申の中で補償と思われるようなものが出てきた場合であっても、それは民主的な調査会の意見によるのだから、だからそれに従ってそれを実施をすると、こういうふうに大体予測できるように思うのでありますが、この点は長官としてどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/30
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031・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) 地主の内容につきましていろいろな多様な形があるではないか、御指摘の通りでございます。また、補償の問題について補償でなくても何らかの形で政府は処置すべきじゃないかという御質問でございますが、これはしばしば申し上げておる通りに、いわゆる対価を、不当なものとしての補償は政府は絶対に今後も考えておりませんし、とらないつもりでございます。ただ、それ以外のしからばどういう手当をするか、処置を必要とするか、そういう問題につきましては、調査会の設置された後にどういう調査がせられ、またどういう答申が出るか、今のところ全然予測しておりませんし、また今からいろいろ考えるべきでないと考えておりますので、そういう場合には現在の段階においては答申の出ない前においていろいろお答えすることが不適当であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/31
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032・横川正市
○横川正市君 それで私はこれと関連をいたしまして本来ならば、調査会というのは、ほんとうは農林省の統計関係におまかせすれば、その実態というものが出てきてその実態に対して政府は何らかの救済の手を仲べたいというなら、特別私は別個単独立法か何かでやるべき筋合いであろうと思うのです。こういう調査会を設置した限りは、これと類似する各種多様な同条件の問題がきわめて多いと思うのです。ことに一大変革をやったわけですから。その問題で総理府総務、長官にお伺いいたしたいと思うのでありますが、ことに農林省に置かないで総理府にこの調査会を設置したというところに、私はきわめて強い関連性を持っているのではないかと思うのであります。そこで先般は郵便貯金、それから郵便保険、それから年金等の実態を明らかにしてもらいましたが、今度は同じ法律事項で、いわゆる戦後の法律事項で、当時の立法処置からいきますと、食糧管理法案、それに伴って供米制度が実施をされたわけであります。これは当時はもうすでに食糧のきわめて少ないときでありましていわば商品価値というものはきわめて高かったわけです。しかし、これは公共問題であり人命に関するそういう問題であるから、そこで食糧管理法案というものが国家によって制定されてそうして当時きわめて商品価値の高いものをこれを統制によって政府は買い上げた、こういう問題であります。これに対して総理府総務長官としては当時の事情から照らしてみて、あれもいわゆる戦後の一大変革の中に行なわれた一つのできごとであってそのことによってこれは首をくくった人間もいますし、それから一家心中した者もいますし、いろいろな問題がこの供米食管法をめぐって出てきております。それから食糧にありつけない無事の民は、食糧をあさってきわめてたくさんの罪人を作った法律であります。この法律案制定の当時の事情と、それから農地解放の農地法の制定の事情というものは、いわば私はその内容は異にしておりますが、必要の度合いにおいては、ますどちらがどうということではなかったと思うのでありますが、この点について長官としてはどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/32
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033・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) 年金でありますとか、あるいは供米制度に伴ういろいろなもろもるの犠牲につきまして御指摘があったわけであります。もちろん御指摘の通り敗戦というああいう大きな原因のために各方面においていろいろな犠牲を国民の方々が受けられた。これは私どももおっしゃる通りと思います。ただ問題は、この調査会の対象として考えておるのは、提案でも御説明申し上げました通り、農地改革という特殊な一つの制度に、その制度の強行によって付随的に起こった問題であり、そこに原因なりあるいは起因する、よって来たるものが少し違うのじゃないかという考えを持っております。なお、供米制度につきましては農林当局より御答弁申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/33
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034・岡崎三郎
○説明員(岡崎三郎君) ただいま御質問がございました終戦直後の、いわゆる非常に食糧が逼迫しておった当時の供米制度、またそれに伴います生産者価格というものが、一般の需給事情から見た場合に低過ぎたのじゃないか、抑制価格であったのではないか、こういう御質問かと思います。で、私どもといたしましては、ただいま先生からお話がございましたように、非常に食糧が足りなかった時代でございまして、従って、食糧管理法の第一条にございますように、この乏しい食糧を極力確保する、そうして政府の手持ちとしてそれを確保いたしまして、それでその乏しい食糧を国民に均等に配分したいということでございます。ただ、一面におきまして国家の財政事情ということもございます。そういったすべての経済事情ということを勘案いたしました結果、生産者価格につきましては、先生も御承知と思いますが、当時の物価の値上がり、あるいはまた、そのほかの物価との均衡ということを主眼に置きまして、そうしていわゆるパリティ価格ということではじいたわけでございます。その当時といたしましては、なるほど先生の御趣旨にもございました需給事情から見れば、あるいは低過ぎたのじゃないかということは言えると思いますが、いわゆる生産者価格または消費者価格全体を包みます国の経済事情、あるいは財政事情ということから申しまして、私どもといたしましては当時においては適正な価格であったのじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/34
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035・横川正市
○横川正市君 戦後の、戦前基準の消費者物価の指数で、昭和九年から十一年を大体100にいたしまして昭和二十一年から各年の指数が明らかにされておりますが、それによりますと、二十一年の九月から二十年の八月までの平均は一一七・四になっているわけであります。それから二十三年の九月から二十三年の八月までは今度は約倍二三〇・九、二十三年九月から二十四年八月は二九七・一、随時この消費者の物価指数というのは、ずっとこの水準を維持いたしてきております。私はこの供米制度というものは、当時の食糧上の社会不安というものを、これをいわばきわめて合理的な政治力によってその被害を最小限度にとどめておく、そのためには相当強い法律によるところの施行もやむを得ない、こういうことで行なわれたものでありまして、このことによって起こった損失者という者はこれは相当たくさんおりますけれども、この制度によって救済された者との度合いから考えれば、今これを取り立てて補償するとか、あるいは当時の状況から見て何らかの処置を講ずるとか、あるいは社会上の地位をどうするとかいうような問題は私は起きてこないのが本来の問題だと思うのでありますが、長官としてはどうお考えですか。正当だったとお認めになっていらっしゃるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/35
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036・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) 農林当局が答弁いたしました通り、完全無欠と言わなくても、一応私どもは当時の処置は正当だったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/36
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037・横川正市
○横川正市君 実はこの問題で先般通告してあるようにたくさんあるのですが、建設省の設置法の問題がすぐかかるようでありますから、私はあと一点だけで質問を後日に譲りたいと思います。そうすると、この問題一つ取ってみましても、私は関連事項として言われるのでありまするが、万々補償というような問題での旧地主に対する政府の態度というものはこれは出てこないものだ。もう一つ、かりにそこへ補償するということになりますと、これはもう各種各様のあの混乱期における問題が出てくるわけですが、政府としてはそれを関連させて補償するという腹がまえをお持ちなのかどうか、たとえば調査会の答申がきわめて収益価格が不当であったから、収益価格を当時のものに換算をしてそうして幾ら払いなさい、私はこのインフレの度合いによって今の物価の高いという問題は、これは別だと思うのです。これは全部に影響しているのです、インフレというのは。だから問題は補償するとすれば収益価格の問題だけなんです。この関係は今土台になった幻想的なインフレの金を見て、自分の土地がそうであったのだと幻想を抱くことは大へんな間違いだと思います。だからこの当時の補償ということになれば、収益価格の問題に結びつくということになるわけですが、それ等を検討した結果、当時の状況から見てどうもこれは不当だった。だから何ぼ何ぼ地主に上げなさいと答申が出た場合に、他のことと関連して当然補償しなければならない多くの問題を抱えて……。これは後日一つ一つ明らかにしていきますが、それに関連して、政府としてはそれを補償するという意思をはっきりお持ちたと、こういうふうに私は理解するのですが、その点について一つ総理府総務長官の御意見を伺いまして他の質問は後日に譲りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/37
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038・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) 対価の正当性につきましては、御承知の通り最高裁におきまして、はっきりと正当性を認めております。これはもうたびたび申し上げました通り、政府は一貫してやはり最高裁の判決を尊重すべきものである。従って対価に伴うところの問題から来た補償ということは、絶対考えておりませんし、今後も考えないつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/38
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039・矢嶋三義
○矢嶋三義君 私、用件があって二十日ばかり国会を留守にしておりましたので、あるいは資料が出ているかと思いますが、出ておったならば、どういうようなものが出ているとお答えいただきたい、出ていなかったならばどういう資料を出せるということを御答弁いただいて早急にやってもらいたい。それは農地の問題はきょうに始まったことではない、長きにわたる問題です。従って総理府なり農林省は当然行政の一部として相当の調査をしているはずです。していなかったら怠慢だと思う。ここに総理府の付属機関としてこういう調査会法案を出した以上は、行政事務としてかくかくの調査をやってみたが、さらに突込んで調査会を設けてやる必要があるという観点に立って法案というものは出されてなければならない。従ってこの法案審議開始以来、本委員会に従来総理府並びに喪林省で調査された数的な資料ですが、どういうものを提出されたか、もしされていないならば、私はこの法、案を提案するに至った前提としての今まで持っておられる資料というものを早急に出していただきたい。先ほど農林省の農地課長が昭和三十年の調査として答弁されておりましたね、それは一つの貴重な資料ですよ。プリントして委員会にも配付してあるかないか、なかったならば配付していただきたい。これはお尋ねを兼ねての資料要求です。
それからもう一つついでに総理府総務長官に御要望申し上げておきたいのですが、私はきょう初めてこの審議に参加したのですが、何か奥歯にはさまつたような答弁の仕方をされているのじゃないか。そういう答弁の仕方をされているというと、法案成立がもたついて時間かかりますよ。おそらくここにいらっしゃる方々は、農地関係の方だと思うのですがね。こういう方々は補償を要求されているのじゃないですか。それから自分のかわいがった土地が非常に安く買い上げられた。ことに農地として買い上げられたものが、その後宅地となって何百倍と目の前で羽がはえて飛ぶように売れている。そういうものを見て忍びずに何とかしてほしい、自分たちは戦争のときには一生懸命国策としての戦争遂行に協力したのだ。そのとき一旗を振ったのは役人であり、ことに軍人であったのだ。ところが戦争がはからずも負けた。しかしその旗を振った軍人さんは軍人恩給を復活していただいている。また、行政責任をとっておった当時のお役人様もそうだ、恩給をもらっている。海外引揚者についても何らかの措置がとられている。自分たちは土にまみれて食糧増産という立場において国策遂行のために一生懸命働いた。しかも、軍人の最も大きな供給源は農村であった。かわいい子供も戦地で生命を奪われた。そうして自分たちの祖先以来の土地がそういう形で扱われているから忍びない、何とか補償してほしいと、そういうような気持であるのじゃないかと僕は推察しているのですがね。ところがあなた方のこの提案理由も、僕は前に読んだことがあるのですけれども、何をしようとするのかさっぱりわからない。きょうの横川委員の質問に対しても、何を目的としておるものかということがはっきりしない。そういうような、もう少し法案の提出に至つた経過並びに理由、それから今後これをどういうことをやるんだということが明確にならぬと、この法案の審議はもたつきますよ。慎重審議していただ歩いて早く成立さしていただきたいとあなた方お考えになっても、そういかぬようになるかもしれませんよ。それはちょうど安保条約の審議と私は同じようなことじゃないかと思うもう少し法案提出責任者は、総理ともよくお話しになって、もう少し審議するわれわれがはっきりそれがわかるような態度で答弁される心がまえをして、次に…(「たびたび答弁をしておるのだ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/39
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040・中野文門
○委員長(中野文門君) お静かに願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/40
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041・矢嶋三義
○矢嶋三義君 私が発言中ですから。あなたは懲罰委員長でしょう。さっきの資料要求に関しての答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/41
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042・福田篤泰
○政府委員(福田篤泰君) まだ資料は提出しておらぬようでありますので、御要求次第、委員会の御要求に従いまして資料は直ちに提出いたしたいと思います。なお、今後の審議の模様につきましては、今後とも十分御審議を願いまして御賛成いただくよう切にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/42
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043・中野文門
○委員長(中野文門君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/43
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044・中野文門
○委員長(中野文門君) 速記を起こして。
他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
本日の委員会はこれをもって散会いたします。
午後零時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414889X02819600519/44
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