1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年六月十一日(土曜日)
午前十一時六分開会
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委員の異動
本日委員井川伊平君及び鹿島守之助君
辞任につき、その補欠として永野護君
及び下村定君を議長において指名し
た。
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出席者は左の通り。
委員長 草葉 隆圓君
理事
井上 清一君
西田 信一君
増原 恵吉君
吉武 恵市君
委員
青木 一男君
青柳 秀夫君
木内 四郎君
木村篤太郎君
後藤 義隆君
笹森 順造君
下村 定君
杉原 荒太君
鈴木 恭一君
苫米地英俊君
永野 護君
鍋島 直紹君
野村吉三郎君
堀木 鎌三君
国務大臣
内閣総理大臣 岸 信介君
法 務 大 臣 井野 碩哉君
外 務 大 臣 藤山愛一郎君
文 部 大 臣 松田竹千代君
厚 生 大 臣 渡邊 良夫君
農 林 大 臣 福田 赳夫君
郵 政 大 臣 植竹 春彦君
労 働 大 臣 松野 頼三君
建 設 大 臣 村上 勇君
国 務 大 臣 赤城 宗徳君
国 務 大 臣 石原幹市郎君
国 務 大 臣 菅野和太郎君
政府委員
法制局長官 林 修三君
警察庁長官 柏村 信雄君
防衛庁長官官房
長 門叶 宗雄君
防衛庁防衛局長 加藤 陽三君
調達庁長官 丸山 佶君
調達庁総務部長 大石 孝章君
外務大臣官房審
議会 下田 武三君
外務省アメリカ
局長 森 治樹君
外務省条約局長 高橋 通敏君
運輸政務次官 前田 郁君
運輸省航空局長 辻 章男君
労働省労政局長 亀井 光君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 信雄君
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本日の会議に付した案件
○日本国とアメリカ合衆国との間の相
互協力及び安全保障条約の締結につ
いて承認を求めるの件(内閣提出、
衆議院送付)
○日本国とアメリカ合衆国との間の相
互協力及び安全保障条約第六条に基
づく施設及び区域並びに日本国にお
ける合衆国軍隊の地位に関する協定
の締結について承認を求めるの件
(内閣提出、衆議院送付)
○日本国とアメリカ合衆国との間の相
互協力及び安全保障条約等の締結に
伴う関係法令の整理に関する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/0
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001・草葉隆圓
○委員長(草葉隆圓君) ただいまから日米安全保障条約等特別委員会を開会いたします。
まず委員の異動について報告いたします。
本日、鹿島守之助君、井川伊平君がそれぞれ委員を辞任され、その補欠として下村定君及び永野護君がそれぞれ選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/1
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002・草葉隆圓
○委員長(草葉隆圓君) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の締結について承認を求めるの件、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国とアメリカ合衆国との相互協力及び安全保障条約等の締結に伴う関係法令の整理に関する法律案、以上衆議院送付の三案件を一括して議題といたします。
前回に引き続き質疑を続行いたします。これより通告順により質疑を許します。木村篤太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/2
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003・木村篤太郎
○木村篤太郎君 私は安全保障条約の質疑に先だちまして、まず、昨日ハガチー氏に対して行なわれた暴行事件について政府の所信をただしたいと思います。
昨日ハガチー氏が空港に到着した、その際に全学連、日教組、総評、これらの連中が暴行を加えました。日本歴史上私はほとんど初めてと言っていいかと思います。まことに由々しき大事であります。これによってわが国の国際信義を失い、アメリカとの友好関係にひびを入らせまして、まことに残念しごくと思います。いやしくも民主主義国家において暴力が行なわれるということは全くもって重大であります。民主主義の根底は何であるか、お互いに手を握って話し合いをしてものを解決しようというのが根底であります。一切暴力を否定されておるのであります。しかも、口に平和を唱え、民主主義を唱えておる者どもがこの暴行事件に関与しておるということに対しては言語道断と言わざるを得ないのであります。私は、おそらくアメリカ国民も憤激しておることかと想像いたします。私は参議院自民党を代表して、アメリカの国民に陳謝いたしたいと思います。
そこで、私は政府閣僚諸君に対してお尋ねいたしたい。一体、こういう暴行事件の背景をなすものは何であるかということであります。私はこの背景はいわゆる国際共産勢力にあると信じて疑いません。ここにもろもろの安保改正反対、岸退陣、反アメリカ行動、これがつながっておると私は推測いたします。かって九大のプロフェッサーでありました向坂逸郎君、これが教授在職中に発表した理論の一部にこういうことが書いてある。政権の奪取は何らかの形において暴力を必要とするのだ、かりに日本の運輸通信の労働者がゼネストをすれば、日本の政治も経済も麻痺する。これだけの力を持っておるのだ、この力を政権奪取に用うべきだということを言っている。まさに暴力革命を目指しているものと言わざるを得ない。この向坂君が九州の三池の炭労争議に関与しておるということを聞いております。まことに私は憂うべき現象であるかと思います。政府はこれらの点についてどういう考えを持っておられるか。ことに、この暴力事件、昨日のハガチー氏に対して行なわれた暴力事件だけではありません。これまで数多の暴力行為が行なわれております。これに対して一部の者がこういう暴力を行なうということはやむを得ないのじゃないか、こういう議論をする者があるのであります。目的と結果を混同いたしておる。民主主義国家においては、いかなる理由ありといえども暴力は排撃しなければならぬと私は信じます。昨晩、たまたまテレビの特別番組を見ておりましたその際に、社会党の委員長である淺沼君が何と言っておるか。私から見れば、言語道断だ。暴力について何ら触れずに、これはことごとく政府の施策が悪いのだと言っている。政府の施策が悪ければ、堂々と国会において非難、論議すべきである。かりにも暴力を肯定するがごとき言論を弄するがごときことは私は思わざるもはなはだしきものと思う。また一部の学者は、この暴力を否定すると同時に、国会における自民党のやり方も悪いのだから、これは寛容さるベきであるという議論も書かれている。これもまた思わざるもはなはだしい。これも結果論からいえば、暴力肯定論になるのであります。こういう議論が行なわれるということは、まことに私は国家の大事と考えておる。ことに教職員の組合員がこの暴力に関与しておることに至っては許すべからざることと思う。あるいは世間伝うるところによると、この暴力行為も一部の日教組に属する教師が関与しておるといううわささえ聞いておる。従来、文部当局がこの日教組に対する態度、考え方が私は甘かったと思う。これらの点について文部大臣はどう考えられておるか。教師が中立の立場をとるべきことは当然であります。思想においてわれわれと異にするものがあることは、これは当然であろうと思いまするが、しかし、これを直接行動の上に及ぼすということにおいては、これは民主政治の破壊であります。それが将来日本の国家を背負って立つ青少年の教育に当たるべき重大なる役目を負っておる教師が行動に及ぼすということについては、私はこれを捨てておくことはできない。従来かくのごとき暴力行為はしばしば行なわれることに対して、政府のとった処置が実に甘かったのじゃないかと、私は思う。すべて時期がおくれておる。暴力行為があれば、法律に照らして断固として、すみやかにこれを処断する、これが必要であろうと思う。しかるに、事が終わってから数十日、はなはだしきは数百日たってからこれを処分するというようなことは、私はこういう暴力行為に対する処置としてははなはだ不適当であろうと思うのであります。今度の暴行事件も、私から考えれば、まさに刑法百六条の騒擾罪に該当するものと思う。法務大臣はこれに対してどういう考えを持っておられるか。もしも法律に該当するなれば、断固としてこれを処分することをしなければならぬのであります。これを私は申し上げたい。
ことに、私が一番憂うるところは、将来日本の国を背負って立つべき青少年に対する教育でまります。閣僚諸君は、おそらく御存じであろうと思う。日教組が教壇に立ってどういうことを教えておるか。私は全国の教員全部とは申しません。中にはりっぱな教師がおります。りっぱに子供を教育してくれる先生たちがおります。私は大多数の者たちはそうであろうと思いますが、一部の教職員においては、全く社会革命をねらうような教育をほどこしておる。これでいいのか。現に全学連の学徒がいろいろの暴行事件を起こしておる。これに対して、一体学校当局はどういう処置をしておるのであるか。現に起訴せられた学徒に対して学校は何らの処置をしていない。こういう点に対して文部大臣はどう考えられるか。こういうことを放置しておるようでは、私はますます日本の国が混乱に陥ることは火を見るよりも明らかであろうと信じて疑いません。私は、全閣僚がほんとうに日本の国を憂うるなれば、この際このときこそ、身命をなげうってまでも、これらの点については私は処置をすべきであろうと考えます。
それと同時に、私が申し上げたいのは、私もいろいろの青年と交わりを深くしております。彼らの言うことは実に純真であります。純潔そのものであります。導き方において正しい方向に向かっていくことは、私は容易であろうと信じておるのであります。しかし、彼らは純真なだけに、きわめて神経が鋭敏であります。われわれ政治家に対する一挙一動を、彼らはことごとく鏡のごとく脳裏に映しておるのであります。しかして、彼らいわく、われわれはアルバイトしてまで学業にいそしんでおるのである、しかるに、政治家は何をやっているか、私行はどうであるか。ことに新聞紙上あたりにおいてしばしば赤坂料亭なんかが使われておるということを聞いておる。こういうことであってもいいのか。これであります。私は頭から水をかけられるような思いをいたしました。政治家の私行は私は慎しまなければならぬと考えております。どうか閣僚諸君は、いわゆる政治の指導者であります。国家の師表とたるベきものであろうと思います。どうか私行においても十分に警戒をしていただきたい。そうしてほんとうの青年学徒をして正しい方向に向かって、将来日本をしょって立ってもらうように私は進んでいきたいと考えるのであります。
それと同時に私は申し上げたい。近ごろの国家公務員はもちろんでありまするが、ことに公立学校の教師諸君が、これは多くは反政府的思想を持っております。はなはだしきに至っては危険なる共産革命思想も持っております。信念に基づいてそういう思想を抱くのであれば何をか言わんやであります。しかし、おそらく大多数の者は、自分らはこういう重責にあるにかかわらずこれに対する待遇がはなはだよろしくない、これであります。私はこれらの人の待遇において、政府は十分に考慮すべき余地があるんじゃなかろうかと思います。今後文部当局においても、こういう点について十分の考慮を払っていただきたい。
要は、わが国は現下きわめて困難な時期に立っております。何としてもわれわれは暴力を排撃してほんとうの平和による日本を作り上げたいと思うのであります。それにはまずわれわれがみずからの身を清うして、そうして専心国家のために努力するという気魄と熱意を持たなくちゃならぬと私は信じておりますが、この機会をかりまして、私はさらに申し上げたいのは、あの先月の十九日の国会における不始末であります。世間がまだこの事情をよく承知しておりません。国会議員が国会の廊下にすわり込みをして、議長がその室から出ることを阻止する、まさに暴力行為であります。これが公然と神聖なる国会議事党において行なわれるということは、私は真に嘆かわしいと思う。それに対して淺沼社会党委員長は何らの反省に意を用いておりません。私は心から嘆くものであります。いたずらに社会党を私は誹謗するものではありません。しかし、ともども国政を負託されておる国会議員として、かような行動に出られる、それを委員長である淺沼君が反省もせずにこれを弁護するがごとき言を弄せられるということは、私はまことに残念しごくであります。これは政府に申すわけではありませんが、この機会をかり、私は淺沼君に反省をお願いしたいと思うのであります。
どうか閣僚諸公、現下の情勢はきわめて多事多難であります。国家の運命、これを見上するときに、真にわれわれは憂慮しております。どうか閣内もしっかり統制をとって、この国難を開いていただきたいと思います。これを希望いたします。私に対する考え方について政府の御所見をこの際承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/3
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004・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 昨日羽田におけるハガチー氏に対する集団暴力が加えられたということは、まことに事態のきわめて重大であり、かつ、かくのごとき事態が日米関係の上に、さらに日本の国際的信用、また民族の誇りの上におきまして、それを大きく傷つけるものであると考えますときにおいて、かくのごとき事態が発生しましたことはまことに遺憾に存じます。また政府としては、昨夜臨時閣議を開きまして、アメリカ大使館に対して遺憾の意を表し、厚くお見舞を申し上げた次第であります。こういう事態を未然に防ぎ得なかったことにつきましては、政府としてまことに責任の重大なるを思うのであります。さらに、こういう事態がどうして起こっているかということを考えてみまするというと、ただいま木村委員もお話しになりますように、これは一朝一夕にかかる事件が突発したものでないことは言うを待ちません。その根底はきわめて私は根強いものがあり、さらにこの国際情勢における国際共産主義の自由主義国への浸透戦略ときわめて密接な関係のあることを見のがすことはできないと思います。私は、真の日本国民の自由の上に明るい民主政治を打ち立てるためには、いかなる意味におきましても一切の暴力を排除し、これを否定しなければならぬと思います。それは理由のいかんにかかわらないのでございます。のみならず、最近の情勢を見まするというと、言を時の政府の施政の善悪にかって、そうしてこれらの集団的暴力に妥当性を与えようとするような風潮すらあるのであります。私は、日本の民主政治を守り、日本国民の国際的信用とその将来の発展を期するためには、いかなることがあっても、私は政治上この暴力に屈したるがごとき印象を与えるような行動は政府として断じてとってはならないという見地に立ってこの問題を処置していきたいと思います。
近く日本の国をあげて歓迎すベきアメリカの元首アイゼンハワー大統領を迎えるにあたりまして、政府といたしましては、警備の問題はもちろんのこと、国民をあげて歓迎し、かくのごとき一部の無謀なる、無法な行動というものは、国民の常識によってこれを未然に押えるところの措置を各般にとりまして、万全を期して、私は日本の大半な国賓を迎えることによって、そうしてこれをりっぱに歓迎することによって、今回の失われたるところの国際的信用や、あるいは傷つけられた国民の気持というものを回復していくことが絶対に必要であると考えております。
また、国家の将来、民族の永遠の運命に関する教育の問題や、青少年の問題についての木村委員の所説に対しましては、私の従来考えておりますことと全然同様な御所見を承りまして、力強く感ずるものでありますが、さらに政府としても、そういう線に沿うて今後強力に施策を遂行しなければならない、かように考えております。なお、具体的の問題に関しましての御質問に対しましては、所管大臣よりお答えをすることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/4
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005・松田竹千代
○国務大臣(松田竹千代君) ただいまの木村委員のお話には、私どもも全く同感でありまして、
〔委員長退席、理事井上清一君着席〕
憂いをともにいたしておるのでございます。
まず、日教組についてお答えいたしまするが、およそ教壇に立って日々人の子を教える者は、よほど重大な責任があることを常に痛感して、これを行なわなければならぬ、いかに優秀な先生でも、何でもおのれは正しく心得ておるのだ——教員というものは常に謙虚な態度であるべきだ、そういうことのために私は常に学びながら教えていくという気持を持っていかなければならぬということを言っておるわけでありまして、なるほど教員の中には、おっしゃるようにとんでもない考えを持って子供に接しておる者もあります。しかし、大体においては教員はよい教師である。なお戦後十分な資格を持たざる者をも採用せざるを得なかった者が三十万に及んだが、それはまだ相当数残っておる者もあります。また思想的に偏向した者もあります。あくまでも教育は中立性を確保していかなければならぬということも常に私どもはそう指導いたしておるわけであります。従って教員は教員らしく、いわゆる特別の専門職、人間建築という特別の仕事に当たるのであるから、単なるこれはプロレタリア、労働者とわけが違うのである、この認識の上に立って教壇に立っていかなければならぬ、かように私は考えております。しかるに、現実には大多数の教員は労働組合、日教組、日本教職員組合を作り、そしてこれは任意組合であるけれども、総評のいわゆる支柱を成して、常に総評と行動を共にしておるというような状態であることもまたおっしゃる通りであります。しかし、過ぐる六・四のゼネストというか、あの交通ストライキのときには、日教組はたまたま大会を開いておりましたが、大会を一日繰り上げて、そうしてこのストに参加するということでありましたので、相当私も憂慮いたしておりましたけれども、しかし、その結果から見まするというと、この前にもお答えいたしましたけれども、参加学校数もきわめて少ない。五%あまりである、また人員も従来のときよりも非常に少ない、朝の一時間を職場大会を開いてやるということでございましたけれども、既定の時間よりも早くから始めて、その時間は一時間に及んだことはない、十五分から三十分程度で終わったところが多いのであります。これで私はよろしいというのではないのであります。しかし、従来よりは漸次こうした行為が少なくなってきておるということは事実、私が就任した当時においてはまだ激しいすわり込みあるいはピケ、その他で騒擾をきわめた場合がしばしばあったのであります。教育委員会で、あるいは新教科書の課程の講習会等において、いろいろありましたけれども、これも今日ではなくなってきておる状態である。しかし、そうした違法行為をやった者に対しては厳重な処罰をいたしてきております。十分に調査をして明確になった者に対しては厳重な処罰、懲戒、免職をやって参っております。
また全学連の問題につきましては、まことに文部大臣として私は責任を痛感いたしておる。従来からも暴行常習犯の感がある。またそうした行為をしばしばやって参った全学連の処置に対しては、まことに心を常に痛めておるのでありまして、そうした事態の起こった場合には、文部省よりそれぞれ大学の当局に向かって厳重に通達をいたして注意をいたし、また特別に寄ってもらって懇談をして、十分な学生補導をやってもらうようにいたして参っておるのであります。昨日のことも予想いたしまして、数日前から大学の懇意で個人的にもよく知っておる現次官をして個々に折衝せしめ、でき得べくんば、単なる通牒というようなものを出してもあまり効果が今までないのであります。今度は個人的に、そうして多くの国公立、私学を問わず学長連中を訪問せしめて、この際何らかの子校当局自体からこうしたことに対して十分な学生に対して説得なり、そうした暴行に参加せしめるということを食いとめるように工夫をこらしてもらいたいということをやって参ったのでありまするが、ついに団体行動をして何することができなかったのはまことに遺憾であります。私は現在の学校の状態、特に官立、公立の大学などにおける全学連のこの状態をこのままにして放置しますならば、大学の自治の根底を私は破壊するものであると、かようにさえ考えておる。むろん私どもは大学教官においても、こういう事態におきましては、ほんとうに大学の教育らしく落ち着いた態度をもってそれぞれ自分の職にいそしみ、学生の補導に常識的な考えをもって進まなければならぬことを教えてもらいたいものである。中にはよほど変な行動に出、政治的行動をやるものがあるが、大学教官としてまことにふさわしくない、国家公務員としてまことにふさわしくないという考えを持つものでございますか、文部省としては、与えられた範囲内においてできるだけのことはやって参っておる次第であります。大学教官もこの際はよほど考えてもらわなければ、大学というものの自治に対して結局墓穴を掘っていくようなことになるのではないか。むろん中にはりっぱな学者、そうして政府の施策にも賛成している者はあります。ただその賛成は沈黙の賛成であるから、表へ出てきておらぬのでありますけれども、しかし妙な、世間の常識から考えて、良識かり考えて、大学教官としてのいろいろの最近とっておられる行動に対しては、われわれは決して賛成いたしておるものではありません。大学においてもオートノマスなやり方でやってきておるのであります。文部省としては、ただ与えられた立場からできるだけのことはやっておるつもりである。また、私もあなたと同じような憂いを持って、そうして、十分これらの学年の行動に対しては注意を払い、適切な指導をしていきたい、かように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/5
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006・井野碩哉
○国務大臣(井野碩哉君) 木村委員のお説の通り、最近、安保審議をめぐりまして、あるいは日教組、あるいは全学連、総評というような団体が、デモと称して、デモの範囲を逸脱した暴力を用いてその行動を推進しようとする傾向がありますことは、まことに遺憾に存じております。検察当局としては、その検挙にあたりまして時日を遷延することなく、直ちに逮捕し、直ちに起訴をいたして、今日、相当数の起訴者を見ておるような次第でございます。ことに、昨日の羽田の外国使臣に対する暴行事件につきましては、私も、国際信義の上から今までの暴行以上の重大性を考えまして、さっそく検事総長を呼び、最高検としての検察方針を確立するように命じました。それに基づきまして検察庁は至急会議を開き、最高検としては、このたび厳重な捜査をし、検挙をいたし、そうして厳罰をもってこれに臨むという方針を確立いたしまして、そうしてそれを、今朝の新聞でもごらんいただいたと思いまするが、その方針を一般の国民諸君に示した、こういうような態度をとっておりますので、お説の通り、今後も時日を遷延することなく、適切なる行動をとってもらいたい、こう考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/6
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007・石原幹市郎
○国務大臣(石原幹市郎君) 昨日の羽田空港におきまする事件につきましては、先ほど総理大臣からもお答えがありましたように、まことに遺憾しごくに存じます。私は、日本国の恥ではないかと、国辱的事件ではないかとまで感じておるのでございます。これらの警備等の態勢につきましても、一応事前の情報に基づきまして相当の整備をしておったのでございますが、結果においてあのような事件になりましたことは、まことに遺憾に存ずる次第であります。羽田の今回の事案につきまして特異の現象といたしましては、今まで比較的平穏な行動をしておりました全学連の反主流派の学生がああいう越軌行為に出たことが一つでございます。また、地方代表━━労組におきましても、川崎とか神奈川県、地方代表の連中が非常な越軌行為に出たことでございまして、これは、安保阻止国民会議の指導統制、言葉を返せば、共産系の動きが相当表面に活発に出ておるということが感ぜられるのでございまして、今回の問題につきまして、私どもさらに一そうの情報の収集に努めまして、整備の万全なる態勢を樹立していきたい。かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/7
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008・木村篤太郎
○木村篤太郎君 私はさらに簡単に石原国家公安委員長にお尋ねいたします。
昨日の羽田の暴行行為は、私は計画的のものであろうと信じております。ところが、昨夕たまたまテレビの特別番組を見まして、石原国家公安委員長も出ておられたが、そのときの問答は、あの計画は知らなかったかのごとき言を弄しておられた。これは私ははなはだ遺憾に思っております。あれぐらいの暴行事件が計画的にやることをあらかじめ知らなかったのか、これはいかがなことであるか。私は当局としてはこういう計画はあらかじめ知っておったと思うのであります。いかがでございますか。これは私は昨晩の、今申しまするテレビの番組を聞いて、あなたの言として私は奇怪しごくに感じました。この点をお尋ねいたします。
それと同時に私は希望を申し上げたい。警官であります。警察官も人の子であり、人の親であり、日本の国民として国家のために治安の任に当たっておられるのであります。私はおそらく数次にわたるこのデモ隊の取り締まりに当たって奔命に疲れておるかと思うので、先般五月十二日に私は警察官のたまり所にたまたま参りまして、私は彼らに感謝の意を表したのであります。この人たちがたまたま万一にも職務に懈怠を及ぼすようなことであれば、これは国家のゆゆしき大事であろうと私は考えるのであります。警察官を愛さなければなりません。しかも人員がきわめて不足であります。われわれはしばしば政府に対して警察官の増員を迫ったのであります。私は治安対策特別委員長をやり、またただいまも委員でありますが、累年にわたって警察官の増員を政府に迫ったのでありますが、今年度においてもわずかしか増員を見られません。こんなことでいいのかと私考えております。今申しまする通り、警察官が私は実に気の毒であろうと思うのであります。この人たちの待遇も改善しなければなりません。また差し迫ってこれらの事件に対して日日奔走しておる、これに対する慰労もしなければならぬと思います。これらの点について石原国家公安委員長はどういうことをやっておられるか、また将来どういうことを考えておられるか、御所見をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/8
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009・石原幹市郎
○国務大臣(石原幹市郎君) お答えいたします。昨日の羽田空港における情勢につきましては、もちろん治安当局といたしましても各方面からの治安情報をもとにいたしまして、当日は全学連反主流派が約四千名ぐらい来るであろう、労組方面が五千名ぐらい来るであろうという情報をもとといたしまして警備態勢を立てておったのであります。しかし、当日はハガチー氏にいろいろ抗議文書を出すとか、抗議の面会を求めるとか、こういうことを中心にいたしまして、不法越軌行為はやらない、こういう前提の情報であったのであります。そこで警備力もフィンガーでありますとか、ロビーであるとか、あるいは弁天橋、ああいう周辺に主として配備をしておったのでございまするが、昨日の事件は、いろいろの見方もございますけれども、ふとしたことから弁天橋付近におりました労組員の大衆が空港内にかけつけて入り込んできた。それを一応ハガチー氏の車は大部分は通り抜けたのでありますが、最後に千名ばかりの労組の団体にひっかかり、そこへ通り抜けて去った方の連中も押しかけ、あとからまた学生の集団が乗るという事態によりましてああいうことになったのでありまして、まことに遺憾しごくに思っておりますが、先ほどお答え申し上げましたように、今回は従来予想していなかった反主流派であるとか、総評会議の指導のもとに入っていると思われる者がああいう越軌行為をいたしましたので、今後につきましては、さらに万全の情報を集め、対策を立てていきたい、かように思っておるのであります。
警察官につきまして非常に御理解ある、御同情ある御発言をいただいたのでございまするが、当局といたしましては、三十四年から三カ年で、ただいま一万名の増員計画を続けて参ってきております。装備その他につきましても、内容の改善充実等に毎年々々相当の予算の増額を願っておるのでございます。十分ではございませんが、今後とも警察力の充実につきましては、十分努力をして参りたいと思っております。
また、今回九州三池の事件あるいは東京のこういう警備事件等に要しまする国費面の部分につきましては、政府は、総理以下大蔵大臣、各大臣の御協力を得まして、警察当局が要望しておりまするいろいろな予算の大部分を認めてもらいまして、今後警察の活動に不安といいますか、不満のないように努力を続けておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/9
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010・木村篤太郎
○木村篤太郎君 本論の安保条約の問題につきましてお尋ねいたしたい。もうすでに数日にわたり、同僚議員から各般の点から詳細な質疑が行なわれました、政府からも綿密な答弁がありました。私は、ごく簡略に、かいつまんで所見を披瀝しながら政府のお考えを伺いたいと思います。
この安保条約の問題は、つづまるところ、日米安保体制が必要であるかどうか。次に、安保条約というものはどういう性格を持っておるものであるか。次は、安保条約によって戦争を誘発し、巻き込まれる危険があるのではないか。第四は、日米安保体制にかわるべき日本の平和と自由と独立を守る方法があるかどうか。この四点に私はしぼられるものと思います。
そこで、日米安保体制はどういうわけで必要であるかということであります。反対論者は、この雪解けがだんだん行なわれてくるときに、かような体制はもはや必要じゃないんじゃないかという議論であります。われわれは、一日も早く世界平和のもたらされんことをこいねがっておる一員であります。また世界の人類もこの再び得難き人生を何とか平和に幕らしていきたい、こういうだれしも望みを持っていることは疑いの余地はありません。雪解けを切望するのであります。去年の一月ミコヤンがアメリカを訪問し、次いでマクミランがモスクワを訪問し、次いでコズロフがアメリカを訪問し、次いでニクソンがモスクワを訪問し、ここにだんだん雪解けの時期が来るんじゃないかとわれわれは考えていました。次いでフルシチョフがアメリカを訪問し、キャンプ・デービッドでアイゼンハワーと会談し、将来国際紛争は話し合いによって解決しよう、武力に訴えないことにしようという意見が一致したのであります。そこでわれわれといたしましては、これでもってパリの巨頭会談も無事にいくんじゃないか、ここで初めて世界の平和の曙光が見られるのではないかと期待をしておったのであります。ところが不幸にしてU2機の問題を契機として、がせんフルシチョフは強気に出てきた、この強気に出てきた原因については、いろいろ見方もありましょう、ソ連の国内事情あるいは中共の突き上げ、原因は想像されますが、とにもかくにもフルシチョフは、今申しまする通り対外強硬政策をとるに至りました。われわれの雪解けの夢は一朝にしてくずれたのでございます。こういう国際情勢のさなかにおいて、一体日本の平和と安全とをどうして確保していこうと考えますか、ここに問題の出発点があると私は信じます。結論から申せば、日本は自由国家と手を握り、アメリカと強力な体制のもとに平和と自由を維持していこうと、これであります。この点については同僚議員からの詳細なる質疑があり、これに対しまして政府からの明確なる答弁がありましたから、私は申しません。
次は、一体日本を取り巻くところの軍事情勢が、日本に対して脅威を与えているかどうか、これであります。何らの脅威がなければ、かような日米安保体制は、私は必要ないと思います。何かの危機感が感ぜられるから、アメリカと手を握っていこうじゃないかということになるのであります。そこで、私は防衛庁長官にお尋ねをいたしたい。一体日本の周辺においてほんとうに日本に脅威を与えるような軍事情勢になっておるのかどうか、きのうも同僚議員からの質問に対して、世界軍事情勢をお説きになりました、お説きになりましたが、現実に差し迫った危機がどこにあるか、日本の周辺にどれだけの軍事情勢があるのかどうかという点についてはお触れになっておりません。私らの信ずるところによりますと、ソ連が終戦直後突如として日本との不可侵条約を破棄して占領いたしましたわが領土国後、択捉、この両島にどれだけの軍備を配置をしておるか、北海道と目と鼻であります。また南樺太にどれたけ軍事力が入っておるか、この択捉の単冠湾は、これはかつて山本連合艦隊があそこに集結をした千島における唯一の不凍港であります。現在ここにソ連が優秀なるシュノーケル型の潜水艦を基幹とする潜水艦隊を配置して、一朝事あれば太平洋に出動して、日本とアメリカとの交通路を遮断し、日本を経済封鎖する態勢を整えておると私は推測しておる。また飛行場もあり、陸兵も配置されておる。ソ連が直ちに日本に対してこういうような軍備配置をして日本に迫ってくるというようなことは、私はないと信じております。断じてそんなことはないでしょう。しかしながら、日本に対して脅威を与えておることは事実であります。もしソ連が将来日本とほんとうに手を握っていこう、友好関係を結んでいこうというなれば、かような日本と密接な関係にあるところの国後、択捉、もしくは樺太に、何がゆえにかくのごとき軍備配置をするのか、これをわれわれは心配するのです。また伝うるところによりますると、ソ連の定期航空便とか称せられまして、時々銚子沖まで偵察機が飛んできておるということを承っております。これらが私は日本の国民に危機感を与えておるのじゃないかと思います。日本の国民の大多数は、さような事実は知らぬでしょう。しかし、多少でも日本の国情について関心を持っておる者は、これらのことを私は知っておると考えております。また、私はこういうことを知っておらなければならぬと思うのであります。日米安保体制が必要でないという論者は、こういう日本に対する周辺の軍事情勢を、はたして知っておるのかどうか。かりにもこういう軍備配置であるということを知れば、おそらく反対論者もこれは反対論を取りやめるのじゃないか。これらが、私は日本に対する危機感として、何とか日本の平和と独立を守っていこうという考えのもとに新安保体制が考えられたわけではなかろうかと考えるのであります。この点について、赤城防衛庁長官にお尋ねいたしたいと思います。おそらく赤城防衛庁長官は、現職の長官として、国際関係についてのかような重大なことは、発言はお困りであろうと思います。お困りならお困りでよろしい。できないということであれば、それで私はあえて追及いたしません。ただ、日本にそういう危機感が与えられるような軍事情勢であるということだけは、お認めになるかどうか、ここではっきり言っていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/10
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011・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) お話のように、雪解けという言葉だけで雪が解けるというような世界情勢でもなし、また極東の情勢でないことは、お話の通りでございます。従って、世界的に見ましても、あるいは日本の立場等を見ましても、理想的な姿ではありません。不自然な形ではありますが、やはり力の均衡という形で日本の安全あるいは世界の平和を保っていかなければならないのが、これは残念ながら現状であると思います。そういうような立場に立って、戦争を抑制し、日本の正和と安全を守る、こういう立場から見まして、戦争を好むものではありませんが、侵略がある場合に、これに対抗するという場合に、日本の自衛力だけでは足らないことも、御指摘の通りでございます。というのは、今お話しのように、日本の周辺におきましても、日本にだけ対抗するということではなかろうと思いますが、強大なる軍備を持って極東に共産国家群が位置を占めております。なおその上に、この間の、今お話しのようなU2事件につきましても、六月の初旬でありましたか、ソ連のマリノフスキー国防相が、こういう領空侵犯があれば、直ちにその基地を爆撃し、またそのロケットの爆撃については、ロケットの総司令官にどのロケットを使うかということを命じてあると、こういうようなこと。あるいは、フルシチョフ首相も記者会見でそういうことを述べています。これは、アメリカに対して報復爆撃することは言っておりませんが、基地に対してということであります。また、昨日外務大臣が御答弁申し上げましたように、そういうことはないということを日本に保証しておりますけれども、しかし、そういうことが万一あったといたしましても、国際法的に言えば、その基地を爆撃するというようなことは許されていることではないと思います。にもかかわらず、そういうことを言明しておるということは、やはりソ連が日本を爆撃するということがなくても、日本に対する心理戦といいますか、この心理戦の非常な強い要素として働きかけておる、そういうことが日本の国内情勢にも反映しておると私は考えます。そういうような情勢、あるいはまた極東における軍備の配置等につきまして、概括的には昨日申し上げました。しかし、今御指摘のように、各国の軍備あるいは配置等は、極度に機密になっておりますので、正確なことは申し上げられませんが、諸情報、諸資料等によって昨日申し上げた次第でございます。しからば本日は、国後、択捉とか、あるいは樺太とか、こういう日本の近接した地域にどういうふうな配備をされておるかということでございます。その点につきまして、私の力でも資料は持っております。でありますので、その点につきましてお話し申し上げる限度につきましては、防衛局長から御答弁申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/11
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012・加藤陽三
○政府委員(加藤陽三君) ただいま長官がおっしゃいました点でございますが、私どもいろいろな方面から資料を集め、調査をしておるのでございます。ただ、こういうことは、今長官がおっしゃいました通り、機密になっておるようで、発表しているものはなかなか見当たらないのでありまして、正確度をもって申し上げるというわけには参りません。ただ、あえていろんな資料等に基づく推測を申し上げるとなりますと、一般的に、抽象的に申し上げるほかありませんが、私どもの判断では、千島諸島には約一個師団、樺太には約四個師団の部隊がおるように考えております。飛行部隊も樺太にはおります。千島諸島にも飛行場があるのでございます。潜水艦は、これは総括いたしまして約百十隻極東方面に配置になっておると思いますが、主たる根拠地は、やはりウラジオ方面、それにソフガワニ、ペトロパブロフスク等であります。おっしゃいました単冠湾等は、これはやはり約一万トン級の艦船の出入ができる良好な港湾でありまして、軍事を含めていろいろな用途に使用しておることと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/12
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013・木村篤太郎
○木村篤太郎君 次に、この新安保条約の性格であります。これは外国に対する攻撃力ではない、ただ防御的一方の目的である、また戦争抑止を目的とする体制である、きのうそういう質疑応答がありました。まことにその通りであると私は信じて疑いません。まず、この現安保条約の体制も、私はただ日本の安全と平和を維持するためにできたものと信じておるのであります。それをさらに今度の新安保条約において、片務的であったやつを双務的にし、アメリカをして日本を防衛せしむる義務を負担せしめる、そうしてアメリカか出動する場合にはすべて日本と協議をする、また軍備の装備、配置等についても日本と協議をしていくと、まことに私は適当なる改正であろうと信じておるのであります。ことに私は、アメリカは、きのうの質疑応答においてありました通り、いまだかつて世界に対して侵略を行なったことはない、しこうして、今度の安保条約においても一番の重大な点はいわゆる国際連合憲章にすべて基づくのだ、国際連合憲章は私から申すまでもなく、いわゆる国際紛争はすべて平和裏にやっていこう、武力は一切行使しない、不幸にして外部から武力攻撃のあった場合には、国際連合としての加盟国があるいは個別的、集団的にこれを防衛していこうというその趣旨にのっておる、この原則をどこまでも守っていって、その基盤の上に新安保体制を整えていこうというのでありますから、決してこれは攻撃していくものでも何でもない。反対論者は常にアメリカは帝国主義だということを言っておりまするが、アメリカは私は帝国主義国ではないと思います。かえって共産帝国主義と私は申したいのであるのであります。私、過般アメリカ極東海軍司令官でありますホーレルの案内を受けまして、世界的最新最大の航空母艦レンジャー号を見に参りました。実にすばらしい船であります。私も実は一驚を喫したのであります。その際、ホーレルはこう申しております。この船を作るために要した費用は日本の金に換算して七百億であります。登載しておる飛行機その他の武器はこれまた日本の金に換算して六百五十億であります。合せて千三百五十億、日本の一カ年の防衛予算をちょっと下回わるくらいの額、乗組員が約四千であります。かように多大な費用をかけて船を作り、かわいい青年をこれに乗せて極東のために何のために配置しておるか、われわれは戦争はまっぴらであります。決して戦争目的のためにやっておるのじゃありません。ただただ世界の平和と人類の自由を求めるために、またこれを擁護するためにやってきておるのであります。また作ったのであります。こういうあいさつであります。私はこの言葉を用いて非常に感銘したのであります。これであります。決してアメリカも他国侵略をするなんというような考えは毛頭ないと私は信じて疑いません。また先般朝鮮事変に参加したアメリカの青年と私は会って話したとき、私は彼に対して尋ねた。君たちは何のために遠く国を去って万里の波濤を越えて他国の戦争に参加したのか、何の目的で参加したのかと尋ねたら、彼は言下に答えていわく、われわれは世界の平和と人類の自由を守るためにやって来ておるのである、これは祖国を守るためであります。これにほかありませんとこう言うのです。私はやはりこのアメリカの青年も偉いものだなという感じをしたのであります。これであります。飜ってわが国の青年をみますると、現在うたた憂慮にたえないものが私はあります。大多数の青年はそうではないと思いまするが、一部の青年はきわめて安易にものを考え、また日本のこの運命共同体であります祖国を愛するという念が欠けておる。ことに安保条約なんかの問題は何らの関心を持たない。あの全学連の多数の者といえども、ほんとうの安保条約の内容を知っておるかどうか、私は疑わざるを得ないのであります。まことに憂うべき現象であろうと思います。
また、去年の春、西ベルリンの市長のブラントがやって参りましたときに、私ら数名の者が彼と会談していろいろ話し合ったのであります。被いわく、日本へ来て驚いたことが二つある。一つは、日本の経済力の復興したことである。われわれは西ドイツの復興はすばらしさをもって誇っておったのであるが、日本へ来て日本の経済力の復興には一驚を喫した。もう一つは、日本の国民は国際共産主義のおそろしさを知らない。われわれは共産主義同家と現実に境を接しておって、共産主義のおそろしさをまざまざと知っておる。従って国民は共産主義に対して警戒をしている。ところが、日本は幸か不幸か知らぬが、直接に共産主義国家と境を接していないからか、国際共産主義勢力のおそろしさを知らない。ブラント市長はこういうことを申されました。私はこの言葉を聞きまして、まことにそうだと、日本人はブラント氏の言うようにほんとうの共産主義のおそろしさを知らなければならないと思います。これはよけいなことでありますが、私はこの共産主義というものを青年に説いて回わっておるのであります。いろいろ議論はあるが、とにかく共産主義というのは、自分の考えたことを唯一無二のものとして、これに反するものは徹底的にやっつけよう、情け容赦はしない、まことにおそるべき主義であると私は思う。私はこれを称してにくしみの哲学と申しております。万一日本が共産主義化されれば一体日本の国民はどうなるであろうか、うたた憂慮にたえないのであります。私が申すまでもなく、かのハンガリーのブダベスト市が立ち上がったのは、学生、労働者、青年であります。何のために立ち上がったか、われわれに自由を与えよ、自由のないところに人間生活はあり得ない。パンのみではない、自由を欲する。これで立ち上がったのであります。われわれはこの自由を奪われるとどうなるかということを思えば、ほんとうに日本人がこの際このとき、心を新たにして日本の平和と自由を守らなければならないと私は信じます。これは、私は日本人として特に考慮すべき大きな問題であろうと信じて疑いません。総理初め閣僚諸公はおそらく私と同感の意を表せられるでありましょうが、どうか閣僚諸公よ、ほんとうに閣内は一致結束していただきたい。そうして日本国民の士気を鼓舞していただきたい。私は自衛隊を預かっておりましたが、自衛隊で何が一番必要であるか、装備ではありません。魂であります。われわれの運命共同体ということをどうして守るか、何がゆえに守るのかということの認識を十分与えることが私は一番の目的であり、またここに主眼を置かなければならないと考えておるのであります。どうか閣僚諸公は一致結束してこの困難打開に当たっていただきたいと思います。政府の所見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/13
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014・岸信介
○国務大臣(岸信介君) ただいま木村委員の御所見に対しましては、政府としても全然所見を同じくするものでございます。徳に日本の置かれておる国際的の地位を考えてみまして、また東西両陣営の対立の間におきまして、国際共産主義の考え方というものを思いますときに、その自由主義と平和を唱えておる日本、これは憲法においても、また人類の真の平和と幸福の根源であるところのこの自由主義の立場をとっておるにかかわらず、国際共産主義が日本に対していろいろな面から浸透してきており、またそれが社会的な不安をすら醸成しておる際におきまして、いかにして日本を守り、日本の平和と安全を期していくかということについては、言うまでもなく、国民が真に祖国を愛し、祖国に対していかなることがあっても、その独立と、また人間の自由は守り抜くんだという、この信念に徹して、国の平和と安全を守っていかなければならぬと思います。われわれが政治的に、あるいは自衛隊を置くとか、あるいは警備についての組織を立てるとか、あるいは安全保障条約を結んで、現実の国際の面から考えて、最も安全であり、日本の国民が安心できるような政治的の施策を進めることは当然でありますけれども、基本は、国民にそうした真の正しい愛国の精神を涵養し、これをバック・ボーンとして進んでいかなければならぬことは言うを待たないのであります。さらに、政府が強い決意のもとに、内閣が一致協力することはもちろんのこと、こういう信念を同じくし、これによって国難を打開しようと志を同じくするものが、強い決意のもとに結束をいたしまして、十分にこの考えを国民に徹底するように、この上とも努力していかなければならぬ、かように決意をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/14
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015・木村篤太郎
○木村篤太郎君 この反対論者は、安保条約は戦争に巻き込む危険があるんじゃないか、これを非常に憂慮しておるようであります。青年はすぐ、安保条約即戦争、安保条約のためにわれわれは戦争に持っていかれるんじゃないか、こういうことを言っている。また、こういうことを言いふらして青年を惑わしているものがあるのであります。この点を政府がしっかり解明しておかなきゃならぬと私は思います。ことに、この安保条約の問題について、どういう場合に一体戦争に巻き込まれる危険があるか、彼らに尋ねますると、二つある。要するに、アメリカが自分の帝国主義を遂行するために日本へ基地を設け、日本を利用するんじゃないか、こういうことであります。しかし、これは私は、先刻から申し上げたように、アメリカという国は決して侵略国家ではない。平和国家である。ことに、国連意章に基づいてこの安保条約を結んでおるわけであります。また改めようとするわけであります。そういう懸念は毛頭もないのでありまするが、現実にこの条文からどういうところにそういう危険感を感ずるかと考えてみまするときに、私は、要するに三つあろうと思います。一つは、アメリカが日本の基地を利用して日本からほかに出動する場合、二つは国連軍の出動としてやる場合、三つは、これが一番重要でありますが、いわゆるアメリカは米比相互同盟条約を結んでおります。また台湾政府との間にも米国が相互同盟条約を結んでおります。韓国との間にも米韓相互条約を結んでおります。この条約に基づいて、アメリカがかりにも戦争に参加したときには、日本も戦争に巻き込まれるんじゃないか、これであります。この場合に、アメリカは決して日本の意志を無視してやるんじゃないんだということを、はっきり国民に徹底さしてやらなければいかぬと思います。もとより国連軍の一部として出動する場合には、これは当然のことだろうと思います。しかし、この場合においても、日本との間に事前協議をするということの交換公文も作られておるのであります。またフィリピン、台湾、韓国との間の条約か発効する場合においても、アメリカ軍が決して進んで攻撃することはできないわけです。万一にもフィリピンや台湾や韓国に外部から不当の攻撃が加えられた場合には、この条約が動くのであります。進んでアメリカがこれらの条約に基づいて戦争をするということは、私は断じてないと考えます。かりに防御の目的をもってアメリカが出動する場合においても、日本との間に事前に十分協議するということは、新安保条約によってうたわれておるのでありまするから、何ら私は戦争に巻き込まれる危険はないと信じておるわけであります。アメリカ軍が自分を守るために日本の基地を攻撃された場合に出勤することは当然のことであります。また、これに日本の自衛隊が参加することもこれまた当然だろうと思います。決してこれらの条約との関連性において、日本が戦争に巻き込まれる、また戦争を誘発するような危険はないと、私は信じておる。この点について、しかし日本の青年は憂慮しておるのでありますから、重ねて外務大臣から、そういう危険はないということを指摘していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/15
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016・藤山愛一郎
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま御質問のありました第一点の、アメリカ軍が日本の基地から出る場合、あるいは国連軍の場合には、お話の通りでございますが、米韓、米台、米比条約等による問題につきましてお答えいたしたいと思うのでありますが、前提としまして、米韓、米台条約あるいは米比条約——韓国の場合はちょっと別でございますけれども、米比、米台条約において、ともに国連のメンバーでございますし、台湾は国連の安保理事会の理事をいたしております。従って、アメリカ・フィリピンの条約の関係におきましても、あるいはアメリカ・中華民国の関係におきましても、国連憲章五十一条の武力攻撃があった場合でなければこれが発動しないことは、これはもう前提として明らかなことでございます。その場合におきまして、現実にそれではフィリピンなり何なりに他国から武力攻撃があった、フィリピンが自衛権を発動する、またフィリピンの自衛権発動に伴いアメリカが集団的自衛権を行使する、こういう防御的な性質のものであることは、これまた申すまでもないのであります。同時に、国連憲章の規定、今回の日米安保条約と同じでございますが、そういう武力攻撃があったときには、直ちに安保理事会に通報いたしまして、そうして安保理事会もしくは総会の決定に従ってその後の処置をいたすわけでございます。それでありますから、前提として私どもはそれを考えますときに、たとえば米比条約において、フィリピンが武力攻撃を受けた場合に、アメリカがこれと共同防衛の立場をとりましても、直ちにとった措置か国連に通報されるのであります。従って、その後に起こりますアメリカとフィリピンの行動は、国連の決議に従って行なわれるわけであります。あるいはこれを取りやめることになり、あるいは国連の承認を得てこれを強化していくということになろうかと思います。でありますから、そういう前提から考えまして、日本におきますアメリカ軍が、日本の基地から何らかの形でもって直ちに不当に戦争に参加するということは、前提としてあり得ないことだと思います。しかし、そういうような、日本の基地から何か参加するというような場合があります場合において、日本とアメリカの今度の条約におきましては、御承知の通り、日本の基地を作戦行動に使います場合には、事前協議があるわけでありまして、その事前協議は、日本の平和と安全を主眼とし、そうしてそれを保持する、極東の平和と安全を考慮いたすことであります。日本が直接安全に影響の少ない場合等を考慮して、事前協議の活用をいたすわけであります。でありますから、そういう見地から考えましても、日本がいたずらに、何か極東に起こりますときに、直ちに戦争に参加するということは、いわゆる巻きこまれるというような形で行なわれることは全然ないのでございます。また韓国の場合は、現に国連の決議によりましてアメリカに委託をいたした、国連決議に基づく国連軍が存在をいたしておるのでございまして、何か不当な韓国に対する侵略がございますれば、武力攻撃がございますれば、米韓条約も発動いたすと思いますけれども、同時に国連軍としての活動が継続をすることになるわけであります。国連に対する協力につきましては、われわれできるだけ国連のメンバーとして、国連の平和維持に努力をして参らなければならぬことも申すまでもございません。ただ、その場合におきましても、日本におきますアメリカ軍というものが、それに直接参加するかしないかは、日本の事前協議によってきめることになるわけでありますから、日本がいたずらに戦争に何か巻き込まれるということは、全然考える必要のない、また問題にならぬ点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/16
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017・木村篤太郎
○木村篤太郎君 第四の、しからば日米安保条約にかわるべき日本の平和と安全を守る方法があるかどうかという点でありまするが、これは先般来、同僚議員から中立論とるべからざるところ、またソ連と中共、アメリカとの間に不可侵条約を締結したらいいじゃないかという議論もとるべからざるところ、これを詳細にここで論ぜられましたから、私はこの点について触れません。政府の答弁を了といたします。
これで私の質問を終わります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/17
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018・井上清一
○理事(井上清一君) 苫米地英俊君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/18
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019・苫米地英俊
○苫米地英俊君 私は安保条約の各条項について、多少今まで理解されておらないと考えられるものについてお伺いいたしたいと存ずるのであります。
安保条約の改定ができるかできないかということは、日本民族の浮沈興亡にかかわる真に死活の問題であると私は考えるのであります。改定ができなくとも、現存条約が続くのであるからいいじゃないかというような、安易な考えもありますけれども、それは、この改定ができないということによって、現在の状況が変わるものでなく、もっと後退して、国民に及ぼす心理的影響、世界において日本が失うであろう信頼感、これらのことを考えてみますというと、決して、これが成立しなくて、現行安保条約が継続されればそれでよいというものではないと思うのでございます。衆議院の段階におきまして、この条約の条文について微に入り細をうがって、いろいろ議論されて参りましたけれども、現在の段階では、条文をどのように改正するとか、どこが不満である、それを修正するならば賛成するとかいうような議論に耳を傾ける段階ではないのでありまして、それらはむしろ枝葉末節な問題に現在ではなっておると私は考えます。根本は、安保体制そのものを、どう処理するか。万難を排して安保体制を確立、持続するか、あるいはこれを解消して、日米防衛関係を切断して、日本民族を共産圏に売り渡すかという、国民が最終的の決断を下すべきときであると私は思うのであります。この基本的な最も大切な事柄が、今日まで国民大衆に徹底周知されておらないことは、まことに遺憾に存ずるのであります。それにはいろいろ異なった大きな理由がありますが、その一つは、左翼攻勢が、長い期間にわたって基地問題であるとか、親ソ反米の教育であるとかというようなものを利用して、巧みに国内に展開せられたことであります。その次には、日本の法秩序が維持せられなかった。悪法はじゅうりんしてもかまわないのだというような考え方があって、いわゆる実力と称する暴力が事々にあまりにも多くいろいろの場所に繰り返されて参りまして、国民がある程度これに不感症になってしまった。感じなくなってしまった。そして、これをやむを得ないものとして不本意ながら是認する傾向さえ見られるようになったことであります。また、もっと重い点は、日本国民が戦争にこりごりして、心の底から戦争はいやだ、ごめんだ、こういう気持を持ち、いちずに平和をこいねがっておる。その国民がいろいろの問題で宣伝され、説かれ、新聞で読み、ラジオで聞いて、危機感を感じ、恐怖感を覚えておる。このために、平和を望むけれども、平和はほかの人に守ってもらたい、自分は平和を守るためには犠牲は払いたくない、こういう気持になってきておるのでありまして、安保条約の正しい理解を妨げ、国民を混迷に陥れている。もう一つのさらに大きな原因は、中ソの平和攻勢の結果であります。日本国内において、中ソの言うがままに、中ソの意図を実況しょうとして、活機な運動が、共産党員と名乗らない多くの日本人によって、執拗に展開され、アメリカは日共同の敵であると共同声明を発表した人がありますが、国民はこれを聞いて驚愕した。けれども、時日を経るに従ってその驚きもさめていく。どうして国民がそう健忘症になるかというと、中ソがさらに進んで保守党の分断を策し、保守党の人がこれにやはり乗せられていく傾向が見えてきたからであります。安保改定がようやく政治上の問題として現われてくるというと、いわゆるグロムイコの覚書というものが出てきた。そして新安保条約の締結は決して日本の安全を保障するものでなく、むしろ日本を戦争に巻き込む結果となり、不可避的に破局の危険を増大すると言い、第二回目の覚書でも同じ趣旨を貫き、戦争になれば、人口稠密で狭い領土に外国の軍事基地が点在する日本国土が、最初の瞬間に広島、長崎の悲劇的な運命を見るおそれのあることは、何人にも明らかであると、すごい脅迫を日本国民に投げかけているのであります。さらに公文書や私文書、演説などによって、フルシチョフ首相が、グロムイコ外相、フェドレンコ大使等が日本に宣告し、抗議し、脅迫を繰り返して今日に及んでおります。これによって、日本国民の平和を念願する心、戦争におびえている気持、これが非常に動揺して来た。ところが黒いジェット機が問題となって、再び安保条約の審議の途中において日本国民を脅し、またこれを種として、いろいろの宣伝が行われて来た。これが安保条約の基本的な問題を国民が認識することができなかった大きな原因であると思うのであります。
そこで私は、今後政府としてなすべきことは、まず法秩序をいかにして維持するかということであります。今までもたびたびあったことでありますが、もしこの条約をわれわれが通した暁においても、反対論者が、これは悪法である。戦争に巻き込まられる条約である。であるから、われわれはこれをぶちこわさなければならない。そのためには、近ごろできた抵抗権というようなものを振り回して、この条約に対して絶えず国内をゆすぶることは火を見るより明らかであると思うのであります。そこで、従来のように、三池においてピケに対して裁判所の命令が行なわれない。きのうのデモのようなああいう常識を逸した、国を恥かしめるような、先ほど木村委員から質問のあった、ああいうことがあったときに、従来はどうも、法秩序が乱されても、徹底的に法秩序を維持するために努力がされなかったかのように思うのでありますが、今後はこの法秩序維持のためどういう構想を持たれ、どういうふうにこれを強行されるか、それを伺いたいのであります。
もう一つは、私は日本国民の恐怖感、危機感というものを除くためにどういうふうにするか、こういうことをまずお伺いいたしたいのであります。先ほども質問がありましたが、今の日本国民の指導階級、私は、いわゆる進歩的な文化人、それからして言論機関、これらのものが相当誤って報道をいたしておると思うのであります。しかし、その根源はどこにあるかといえば、大学の教育にあるのであります。この現在の大学の教育というものを改めなければ、これらの誤った、共産党員と名乗らない共産党員が日本の秩序を乱すということが絶え間なく起こってくると思うのであります。これは非常にむずかしい問題でありますが、文部大臣の御所見を伺いたいと存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/19
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020・松田竹千代
○国務大臣(松田竹千代君) 戦後わが国の大学制度の大きな変革があり、また国立学校の数も多数にふえ、国公私立を合わせて五百二十何校というおびただしい数になっておりまして、これらの学校の教官については、いろいろ外国の大学の教官などと比べて、いろいろの点において、はたして十分な大学教育としてその程度等においても劣るところがないかというような話までいろいろする人々もあるのであります。また昔の日本の大学の卒業生から批評させるというと、今日の大学の卒業生は、昔の高等学校の卒業生よりも劣るというような人さえもあるのでありますが、今日のそれらの多数の大学の教官、特に国立大学の教官について、その教官の行動のややもすれば政治的な活動をやる者のあることに対しては、まことに私ども遺憾に存じておるわけでありまして、もちろん国家公務員法並びに教育公務員特例法などにも照らしまして、むろん行き過ぎた違法なものが出て参りますれば、厳正にこれは処置していかなければならぬと思うのでございますが、お話のように、今日の大学全体にわたって今のままで置いてよろしいのかということがしばしば考えられる。大学の方面からもいろいろ意見は出ておるようなわけでありまして、制度そのものの上から、あるいはまた、大学の教官の問題についても、いろいろと考えさせられる問題があるのであります。たとえば日本の大学教官ほど完全にその身分が保障せられ、何でも好きなことがやれる——なるほど教官の給与が低いとかいうような非難もありまするけれども、しかし、その身分が保障せられ、そうして自分の研究室において何でも自由なものを研究してやっていけるという立場において、まことにその身分たるや、三日やればやめられぬというくらいにまで言われておるのであります。ところがアメリカあたりでありますというと、特別の大学における教官の場合には、やはり同じようにそれが容易に動かされません。また少し違った地方の大学においても、特定の期間、やはり教官を勤めてからでなければ、特定の期間を経ればいつでも動かされるということになっておるが、日本の場合は、なかなか大学の教官を一たびやれば容易に動かすこともできないというようなこともあり、またアメリカでは、大学の教官は 一定の年限、契約で、あるコースを講義するというようなことになっているが、日本では大学の教官はいつまでも、停年のくるまではその身分が確保されているというようなことになっているので、この地位に甘んじて、そうしてその教官の立場においてやるべからざる、また教官としてふさわしくないような行動に出ることはまことに困ることであって、行き過ぎた者に対しては厳重に取り扱っていかなければならないと考えているわけでございます。そうして今のところでは、これらの大学の問題について、制度そのもの、またいろいろの角度から大学の問題を検討し、根本的にあらゆる角度から検討を加えて、そうして改善していきたいという考えをもちまして、これらの問題を今審議会にかけているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/20
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021・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 民主主義の基礎は、言うまでもなく法秩序の維持ということにあることは、言うを待たないことであります。しかして、近来その法秩序が非常に乱されており、これをじゅうりんして顧みないというような風潮がありますことは、非常に憂慮すべき状態である。いやしくも法秩序に反するような、これを破壊するような者に対して、徹底的にこれを調査して、これに対して、そういう行動のあった者に対して、法律によってこれを処断することは当然であります。私はその点において、特にこれは政府というよりも、むしろ国会議員として私は感じていることは、民主主義の一番中心をなすものは国会制度であると思います。議院制度であると思います。この議院内においてすら法秩序が維持されておらない実情であることは、私は議員として非常に国民に対して相済まぬと思う。われわれが院外におけるところの法秩序の違反に対して、治安当局あるいは検察当局に対して、これに対して法律により処断すべきことは当然でございますが、まず国民に法秩序の維持が民主主義の基礎であるという考えを徹底せしめるためには、国会内においての法秩序の維持、これの確保について、私は真剣に議員として考えていかなければならぬ。そうして、これはぜひ、まず法秩序の維持ということを国民の前に国民が信頼できるような形においてすることが、この際非常に必要である。こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/21
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022・苫米地英俊
○苫米地英俊君 ただいまの総理のお考え、私も同感であります。英国の国会においては、議長の命令に従わない者は直ちに退場させられる。議長のその命令に従わない者は除名される、こういうふうな機構になっていると承知しているのでありますが、日本では、議長の命令を聞かないだけではなく、議長を軟禁してそれが当然であるようなことを言うている。多数横暴であるから、これに対しては抵抗権以外にはないのだということを言っておりますのみならず、国会において、自分が反対した法案は、悪法だから守る必要がないと国会議員が言うている。この状態では、私は民主主義は実施できないと思うのであります。しかるに、言論機関はその大切なところを抜きにして、総理が反省しないとか、自民党が相変わらず強引だとかというようなことばかり言うているのでありますが、私はその前に、日本を憂えるならば、言論機関はもっと慎重であるべきだと思いますけれども、現在のような学校制度において教育せられた左翼的な人々が、最後の就職点はどちらかというと、新聞社と学校であります。新聞社と学校は無条件にこういう人々を取り入れている。私はそういう実情を見るときに、先ほど文部大臣からお話がありましたけれども、早急に大学教育というものを考え直す必要があるんじゃないか。これは世論の力も必要でありますし、各国の制度の研究も必要である。とにかく大学を今のままにしておいて、日本の正常なる、正しい平和と安全を期することは困難であると思うのであります。
だいぶいろいろ各条項についてお伺いいたしたいのでありますが、私はきょうは質問をこの程度にとどめて、残余は次回に行ないたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/22
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023・井上清一
○理事(井上清一君) それでは本日はこの程度とし、明日十二日午前十時から委員会を開会いたしたいと存じます。
本日は、これにて散会いたします。
午後一時三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414961X00619600611/23
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