1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年三月二十九日(火曜日)
午前十時二十三分開会
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出席者は左の通り。
委員長 清澤 俊英君
理事
安部 清美君
北畠 教真君
吉江 勝保君
加瀬 完君
委員
剱木 亨弘君
近藤 鶴代君
杉浦 武雄君
野本 品吉君
横山 フク君
岡 三郎君
千葉千代世君
豊瀬 禎一君
柏原 ヤス君
常岡 一郎君
国務大臣
文 部 大 臣 松田竹千代君
政府委員
文部政務次官 宮澤 喜一君
文部大臣官房長 天城 勲君
文部大臣官房会
計課長 安嶋 弥君
文部省初等中等
教育局長 内藤譽三郎君
文部省大学学術
局長 小林 行雄君
事務局側
常任委員会専門
員 工楽 英司君
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本日の会議に付した案件
○盲学校、聾(ろう)学校及び養護学
校への就学奨励に関する法律の一部
を改正する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
○国立学校設置法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
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001・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
まず、委員長及び理事打合会の経過につき御報告申し上げます。
理事会にて協議いたしました結果、本日付は、本付託になっております盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案、国立学校設置法の一部を改正する法律案及び高等学校の定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案、以上、三法案の質疑を行ない、なお、盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、本日中に採決を行なうことにし、他の二法案も、時宜によってはその後の審議を続けることに決定いたしました。
以上、理事会の決定通り審議をいたすことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/1
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002・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 御異議ないと認めてさよう取り計らいます。
まず、盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/2
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003・吉江勝保
○吉江勝保君 盲学校で教員の定数をきめますときには、もし盲学校に特殊教育のようなものを設けておるときには、その特殊学級を担当するために、教員の定数を特に見るというような考慮はなされておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/3
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004・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 盲学校の場合には十人に一人となっておりますので、小中学校の特殊教育の場合には十五人に一人になっておりますから、かりに盲学校でやる場合にも、その定数の中でやることになりますから、むしろこの方が優遇されておると思っております。ですから、十人に一人の割で見ておるわけでざごいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/4
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005・吉江勝保
○吉江勝保君 盲学校の実際の教育に携わっておられる人は、これは十人の定員で一名の教員がつきましても、あるいはそれが五、六名の生徒であっても、教えるのに教員に余裕が出るということは考えられないのであります。で、それが五名あるいは六名の学級でも担当の教員は一名どうしても要ると、こういうときに、盲であれ聾であれ、そういうような特殊学級の生徒が五名でも三名でもありました場合には、これは特殊学級として扱ってやらなければ教育ができないので、そこにどうしても、別にやはり担当の教員が必要になってくる。その教員が認められないということで盲学校の教育に支障が起こっております。そういう場合に、特殊学級の担当教員をどういうふうにして考慮するのですか、こういう質問なのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/5
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006・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 盲学校、聾学校の場合に、十人を一人でまかなっておりますので、十人の範囲内で、かりに盲の場合にそういう児童がありますれば、そういう特殊学級を作ることはけっこうでございます。特別に教員の配当は今のところしていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/6
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007・吉江勝保
○吉江勝保君 そこで、この教育を十全にいたしますためには、どうしてもその特殊学級を編成しなければならない。また、編成した以上は、やはり普通学級の方は担当の教員がそこにいるが、特殊学級を担当する教員が今度は認められない、こういうことでは盲学校の教員の過重、あるいは教育が行なえないという結果になるのじゃないかと思う。そういう点に、いま少し実際を見られて、教員の配置につき、定数のお認めについて考慮の余地があるのではないかと見ておるのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/7
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008・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 現在のところ、まだそういう強い御要望もないのですけれども、盲学校や聾学校という特殊教育の児童でございますので、手がかかります。こういう点から、普通の学級に比べまして、普通の学校の特殊児童の場合には十五人に一人ということにしておりますが、今お話のように、盲学校や聾学校にしても、そういう特殊教育の児童がある程度あるというような実情が出て参りますれば、今後検討して参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/8
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009・加瀬完
○加瀬完君 普通の義務教育学校の児童生徒と、今問題になっております盲聾学校の児童生徒の就学の費用というものは、盲聾学校の児童生徒の方が悪条件になるわけですが、文部省で御調査の結果は、どういう点が非常に経費の負担になりますか、家庭にとりまして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/9
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010・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 教科書代にしても、盲学校の場合は非常に高いのでございますが、この場合には、教科書は全部無償にいたしております。それから、そのほかには給食の問題がございますが、これは大体同じような点であろうと思います。特に経費がかかるとすれば、通学費が普通の子供よりはどうしてもよけいにかかると思います。これはっき添いをつけたりいたしますので、こういう点に経費がかかるかと思いますが、全体的にみますと、小学校の場合には、一般の児童の場合ですと七千八百三十七円という数字が出ております。これが保護者の負担分です。盲聾の場合には、小学校の通学にも二万円から二万二千円、そのうち国の方で就学奨励費を支給しておりますのが一万七千円から一万八千円、ですから保護者の負担額は一般の父兄よりも少ないわけでございまして、せいぜい二、三千円程度にとどまるようにいたしているのでございます。これは盲学校、聾学校につきましては特別な就学奨励をとっておりますので、その就学奨励のお金で、一般の保護者負担よりは半分くらいになっているというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/10
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011・加瀬完
○加瀬完君 そうではないんじゃないですか。結局、普通の小学校の生徒の家庭負担七千八百三十七円、かりにこれをとりましても、この子供は一人で大体学校に通うのであって、おとなが一人つき添うとか、だれか特別な者がその子供の世話のために、いつもそばにおらなければならないという条件はないわけですね。費用そのものは確かに二万円か二万二千円、そのうち一万七千円から一万八千円の補助があるのだから、普通の学校の生徒、児童よりは少ないだろうと言いますけれども、特に通学などの場合は、遠距離ですと、つき添いがなければどうにもなりませんね。つき添いというと働ける者が一人つく、こういうマイナスの面も出てくるわけですね。働けるけれども、働く収入というものは得られない、その子供につききりでかからなければならない。これが表に出る通学費と違って、家庭には大きな負担となると思う、働き手を一人働かせないでおかなければなりませんから。そこで遠距離から通う者はどうしても未就学にならざるを得ない、こういう現状がございます。それからもう一つは、こういう一人の人をつけて子供を通わせる財政力というものは、貧困家庭でなくして、普通の家庭でもなかなかできにくい。それでまた普通の子供のように、小学校に行って中学校に行って高等学校に行って大学に行くと、そういう学校にやらせるということについての将来の希望というものも、これは親が、こういう健康児でありませんから心配して、やりたくても、全体の一軒の中でも、家庭の空気というものは、熱心な母親とか、熱心な父親と同じように、家族が全部協力するという形にもなかなかいかないだろうと思う。兄弟なんか多いと、その子供にそれだけの費用をかけるなら、丈夫な子供にかけて、この子供はもういいじゃないかというような、そういう今までの慣習もありますし、そういう特殊な子供に特殊な教育をするという慣例もありませんから、それで未就学が経費のためにふえてくるということはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/11
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012・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) その経費の点で非常に負担になっているとは私どもは考えていないのでございまして、今お話しのように、確かに小学校の場合には、特に低学年の場合には、つき添いの費用が要るわけですから、そのつき添い費用も国の就学奨励の対象にいたしておりますけれども、当然、外に出て働いて何がしかの収入が得られるのに、子供のためにそれだけの負担をかけるということは、大へん父兄にとっては御迷惑のことと思いますけれども、結局、父兄の愛情によってささえられているわけですから、経費の面からは、私どもはそれほど大きな支障になっていないのではなかろうかと思いますけれども、この点も実はいろいろ私どもも検討しております。ただ、経費の面だけじゃなくて、最近のように交通が非常に輻湊して参りますと、事故等も起きやすいのでございますから、スクール・バスや何かも今後検討してみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/12
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013・加瀬完
○加瀬完君 とにかく、特に盲は就学率が四一%でしょう、そうすると、もう過半数は就学しておらないわけですね。この原因を文部省ではどのように把握していらっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/13
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014・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) この四一%という数字も、実は正確かどうか私どもも多少疑問に思っておりますけれども、一応私どもの推計統計を用いまして、〇・〇七%が盲の出現率、こういうふうな数字をとっておりますので、それから計算しますと、四一%という数字になっているわけでございます。確かに盲に比べて聾の方は七割程度が義務制就学をいたしておりますので、聾に比べて盲の就学率が低いというのは、結局就学が困難である、それは主として通学に関する問題ではなかろうか。寄宿舎の方ですと、それほど問題ではないのですけれども、現在、寄宿舎にいる者の経費は一人当たり三万一千円から三万四千円程度になって、そのうち国の方で見ておりますのが二万五千円から三万円程度見ておりますから、これも父兄の負担としては四、五千円というところになろうと思うのです。この額はそれほど大きな負担ではなかろうと思っております。しかし、一番私どもが心配しておりますのは、やはり通学が困難な点ではなかろうか、経済的な面だけじゃなくて、やはり大へん厄介だ、あるいは危険である、こういうようなことに原因があるのではなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/14
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015・加瀬完
○加瀬完君 この推計というのはおかしいじゃないですか。国勢調査もありますし、文部省の指定統計の調査もあるのですから、盲聾で未就学な者あるいは盲聾学校に行っている者、これは区別がはっきり統計に出ているだろうと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/15
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016・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) これは学校に来ておりませんから、指定統計は学校の児童だけを対象にしておりますから、指定統計からは出てこない。それから国勢調査というお話もありますけれども、国勢調査の統計も非常に不正確でございまして、これはサンプルによりまして推計を用いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/16
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017・加瀬完
○加瀬完君 学校に来ている子供は指定統計に出ておりますけれども、就学該当者の中で、こういう結局普通学校に入れない者は、一年生で入学するときにみんな各市町村で調査をするわけです。だから市町村であれば全部出てくるわけですね。それから不具者や何かの調査なんというものも国勢調査や何かでは出ているわけですね。ですから私は推計でなくて、もっと正確なものが出てこなければ、たとえば非常に通学は危険だから、それじゃもっと学校をふやそうか、盲人なら盲人、聾なら聾の義務教育の該当者がどの地域に多いかということも、全然これじゃ見当がつかないと思うのです。推計で概算を出すのじゃなくて、少なくもこれは教育委員会あたりに文部省が依頼をして、やはりもっと調査を厳密にしないと、四一%というものは、私はもっと就学率が低いのじゃないかというような感じを持つ。それはわれわれが知り得る範囲においても、よほどの家庭でなければ、遠距離からの場合は宿舎に入れるというような形をとれませんよ。それからもう一つ、盲聾なんかの場合、聾の方は、まあ目は見えますから普通の学校に入れられている例が若干あると思う。それで四年、五年たってどうにも仕方がない、からだも大きくなったしするから、それじゃ聾学校に転校させようかという例が幾つかあります。ところが盲の方は初めから行けませんから、それで、相当からだも大きくなったから、遠距離でも通学できるかというときには、一年生からの基礎教育が行なわれておりませんので、今度はいろいろハンディキャップがついて、本人が行きたがらなかったり、行く条件ができても行かれなくなったりする例が多いと思う。もう少し家庭負担というものや、家庭の特別の何か非常に大きな、その子供に対する援助というものは、家庭の奉任という形でなくても、学校に通える方法というものを講じてもらわないと、四一%という就学率は上がらないんじゃないかという懸念があるのです。この点は、この法案も一応考えてはおるわけですけれども、高等学校のところまで行けない、義務教育のところに行けない子供たちというものを、もう少し根本的に救う対策というものをお考えいただけますものかどうか、この点をお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/17
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018・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 確かに盲の場合には通学の点が一番大きな障害になっていると思うのです。で、実は昨年から肢体不自由児の子供にはスクール・バスの用意をいたして国から補助の対象にしたわけです。ぜひ来年あたりは、試みに盲の場合のスクール・バスについても一つ検討してみたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/18
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019・加瀬完
○加瀬完君 スクール・バスというのは、東京のような非常に人口の周密なところはいいのですけれども、大きな岩手県みたいなところでは、おそらく盲学校は一つぐらいしかないと思うのです。長野県も一つか二つだと思うのです。ここにスクール・バスといったって、一日回ったら終ってしまう。そうでなくて、宿舎なら宿舎に全部入れる、保母をつける、こういう根本的な対策というものはお考えになっていらっしゃいませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/19
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020・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) それはもちろん寄宿舎も整備いたしまして、寮母も七人に一人の割合で配当しているわけです。だから宿舎の経費としては十分見ておるつもりでございます。問題は、寄宿舎にも行かない、通学もしないと、こういうところに問題があるわけですから、今のところ寄宿舎が不備であって収容力がないとか、あるいは十分な寮母がいない、こういうような点ですと、まさに加瀬委員の御指摘の通りですけれども、寄宿舎の方は心配がないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/20
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021・加瀬完
○加瀬完君 私の質問が少し舌足らずでしたが、宿舎に完全な設備をして、やはり個人の費用というものが莫大にならなくても、今よりたやすく入れる条件をつけてもらわなければ、結局、現在の寄宿舎がよくても入り得ない状態というものがあってはどうにもならないんじゃないか。これはスクール・バスでは根本的な問題は解決できない。ですから、基本的には寄宿舎でももっとたやすく入れる何か経済的配慮というものをしなければだめじゃないか。といいますのは、この盲聾学校の父兄の生活状態というのは、この統計で見ると非常によくない。ですから、やっぱり基本的にそういう問題を解決してやらなければ就学率は上がらないじゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/21
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022・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) そういう趣旨で、盲聾の場合には大体五割程度、つまり生活保護基準の一・五倍程度のものは、これは無償でやっているわけです。この場合には、教科書も、学校給食も、交通費も、宿舎居住に伴う一切の経費を無償でしておる。さらにそれ以上の二・五倍未満のものは、これは半分程度でございますけれども、やっておりまして、予算の面では六割程度を補助しております。ですから経済的に非常に困っておるところの階層というものは、一応全部救われておりまするし、寄宿舎の経費も奨励費の対象にしておりまして、寄宿舎で要する経費の一人当たりが三万一千ないし三万四千、このうち二万五千から三万程度が奨励費の対象になっておりますから、実際普通の学校の小中学校にやっておる保護者の負担に比べれば、半額くらいで済んでいることになっているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/22
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023・加瀬完
○加瀬完君 そうはならないですよ、さっき申し上げた通り。国が負担する額と、それから家庭の負担する額、盲聾学校の父兄の支出というもの、それを相殺した額の父兄の支出というものと、一般の義務教育——普通の健康児の父兄の負担というものを比べると、おっしゃる通りになりますけれども、盲聾者でありますから特別に手がかかるわけですね。働けるものが働けないということでマイナス面が非常に多い。だけれども家庭経済では、マイナス面だって当然家計の上には出てくるわけですから、それをそろばんをはじいていくと、局長のおっしゃるように、非常に普通の子供よりも金がかからないということにはならない。これが現状だと思うのです。もう一つは、このいただいた統計でも、「生活保護法に基く需要額に対し収入額が二・五倍以上で経済的援助を要しないと認められる者は七、七〇〇人で全体の二四%」、二四%を除いては、これはいずれにしても生活保護法につながる、あるいはこれに準ずる家庭と見なければならないでしょう、父兄が。そういう家庭で働き手を一人さくということは、これはなかなか求めても困難なことじゃないか。その根本的な問題が解決されないと、これは文部省だけで解決しようったって無理ですよね、社会保障全体の問題ですから。もっと極端な例を言うと、生活保護法を受けている家庭で、聾者なら聾者、盲者なら盲者を高校学校に入れるというと、生活保護法はどういうことになりますか、いろいろ隘路があるわけですね。これらをもっと文部省が中心になって、この家庭をもあわせて保護する基本的な問題をもう少し検討しないと、この就学率はなかなか上がらないのじゃないかという懸念があるわけです。これらの点、あなた方がおやりになっていることがずさんだとか、今度出したこの法案が問題にならないということじゃない、これはこれでいいけれども、もう少し基本的な問題が残っているのじゃないかという点で伺っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/23
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024・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) お話の点でございますけれども、実際、文部省の準保読児童の対策としては、基準生計費の一・五倍程度しか見てないのです。本件の場合には二・五倍までは見ているわけですから、一般の家庭に比べて準保護児童の対策としては大幅に援助の手を差し伸べているわけです。それから寄宿舎の問題は、これは今おっしゃった中で、寄宿舎へ入れてもらう方がそんなに手がかかるわけじゃないと思うのです。通学生の場合には、確かに加瀬委員のお話のように、働き手の人がそれだけ手を抜かれると、こういうことにはなろうかと思いますけれども、寄宿舎の場合には、今御懸念になったような点は比較的少ないのではなかろうかと、こう思うのでございます。まあ全体的に盲聾の子供たちが生活貧困であり、特殊な環境にありますので、私どもこれで十分だとはもちろん考えておりませんが、今後とも就学奨励の対象を拡充するようにして参っていきたいと思っております。まだ義務教育の場合でも通学用品のようなものは対象には入っておりませんし、学用品も入ってないと、こういう実情でございますので、就学奨励の仕方が十分ではないという点は私ども重々認めておりますので、そうだからといって……、まあこの点はだんだんと改善して参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/24
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025・加瀬完
○加瀬完君 とにかく私は四一%の就学率というものを上げるには、もっとその家庭を救済する具体的な方法というものがなければだめじゃないかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/25
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026・松田竹千代
○国務大臣(松田竹千代君) 加瀬さんのお話、私はよくわかるのであります。盲聾に限らず、特殊学校、また肢体不自由者についても、あるいは精薄児童にいたしましても、特殊のこれらの児童を完全に救うていくことによって、それらの児童を持つところの家庭だけのマイナス面のみならず、社会全般のマイナスということもあります。すなわちそれらの子供を十分に教育していくことができない場合には、自然的にそれらの子供が常に家庭の大きな負担となり、また、そのために働ける者が働けないというようなマイナスの面があるのみならず、社会全般に、それらの教育によって働けるようになる者も働け得ないというようなことになりますると、家庭のみならず、社会全般のマイナスにもなる面がある、かように私は考える。そのために特殊教育に対して格段の努力を払っていかなきゃならぬ。この面においては、一般の教育よりは、さらに先進諸国と比較して、特に日本はまだ劣っておるということを考えまするので、これに特に力を入れていく、飛躍的な考えをもって、これが充実をはかっていかなきゃならぬというのが私の考え方でございますが、お話のようにやって参りたい。就職率を上げるのみならず、特に義務教育においては、ことごとくこれを学校に行けるようにしていくことは、普通児の場合と同様、いな、それ以上に必要であると考えておるのでありまするが、これは財政一般の事情その他の事情で、そこまでいけないという現在においては事情にあるのであります。漸次これを救済するという方向に向かってわれわれ努力していかなきゃならぬと、こう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/26
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027・加瀬完
○加瀬完君 大臣の御熱意のあるお言葉をいただいたわけでありますから、これ以上いういろいろどい質問は要らないわけでございますが、私ども実情を知っておりますので、これは局長にもう少し念を押しておきたいのですが、生活保護法を受けておる家庭が、こういう子供だから特別教育をさせなきゃならないといって高等学校に進学させた場合、生活保護法を打ち切られた、こういう実例もあるんです。これらについて文部省は、何か厚生省等々と連絡をして、手が打たれておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/27
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028・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 普通の高等学校に行った場合に、生活保護法が打ち切られたというお話を私ども聞きましたので、厚生省の社会局長に申しまして、この点確かめたところ、必ずしも生活保護を打ち切るわけじゃなく、その高等学校へ行った者の分だけは別にして計算はするけれども、高等学校へ行ったから生活保護を打ち切ったという事実はないということを厚生省は言っておった。ですから、まあもしそういう事実がありますれば、事実をあげて厚生省とも折衝いたしたいと思います。特に盲聾の場合には、これは義務教育だけでは生活能力がないんですから、高等学校まではどうしても義務制に準じた扱いをしていただかなきゃならぬ、こういう観点から、就学奨励の面でも、順次義務教育並みにそろえているわけですから、いわんや生活保護を打ち切るなんというようなことは、とんでもないことと思っておりますから、今後こういったようなことがありますれば、厚生省に改善を要求したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/28
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029・加瀬完
○加瀬完君 それからこの前の御説明にあったんですが、産業教育法等によって、盲聾学校の職業指導施設といいますか、こういうものは相当充実されておると言っておりましたが、盲学校などの職業指導の施設というものは、現在ある程度、はり、きゅうなどということ以外の新しい職業指導という面で施設がされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/29
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030・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) まだこの点は大へん不十分でございまして、主として、はり、きゅう、あんまと、それから音楽関係が中心でございます。問題は盲人にどの程度の職業能力があるのか、また、社会へ出て十分太刀打ちできるような職業でなければならぬとも考えますので、こういう点を十分検討いたしまして、今後、盲人や聾人の職業教育の範囲を拡大するように、教育施設の面でも検討して参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/30
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031・加瀬完
○加瀬完君 産振法だけでは非常に不十分だという学校当局の意見も聞くのですが、産振法というような建前は、大体、普通学校を対象にしておりますからね。それだけの費用と、ああいう目的、ああいう方法では、なかなかそれがすぐ盲学校や聾学校に適用されるということはほど遠い、ですから特別この職業指導対策というものも立ててもらわなければ困るのだ、こういう声を聞くのですが、この点は、やはり将来文部省は何かしてやろうという御計画はおありですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/31
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032・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 新しくやるという方法も一つあろうかと思います。しかし、せっかく産業教育振興法という大きなワクがございまして、今のところ十億ございますので、できますれば、このワク内操作によって、盲学校、聾学校の職業施設を十全にしていきたいと思っているのでございます。これでも不十分だという事態がございますれば、さらに検討したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/32
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033・加瀬完
○加瀬完君 それからスクール・バスの話が出ましたが、大体都心から離れた所に盲学校も聾学校もあるのが普通でございますが、電車なり汽車なり、駅から、通学バスというものが将来考えられる。それは地方が二分の一で、二分の一が文部省の補助という形になりますか、それとももっと大幅な補助というものを考えて、スクール・バスを全部の盲聾学校に作ってやろうというお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/33
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034・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) まだそのスクール・バスにつきましては、盲学校、聾学校は本日までのところ対象になっていません。しかし一番困るのは、やはり何といいましても大都会であろうと思うのであります。大都会は特に交通が輻湊しているところでございますので、大都会から順次やって参りたい、補助率は現在のところ二分の一でありますが、これは府県が設置者でございますから、府県の財政から見ますれば、二分の一で十分ではなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/34
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035・加瀬完
○加瀬完君 これは盲学校だけ対象でしょう。聾学校もスクール・バスの対象になっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/35
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036・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 現在のところ、盲聾ともなっておりません。現在は肢体不自由児の養護学校だけでございますけれども、皆さんいろいろ御意見もございますので、来年度はぜひ盲学校も対象にしていきたい、と申しますのは、聾学校に比べて盲の方が就学率が低い。その一番大きな原因は、私は交通関係ではなかろうかと考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/36
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037・加瀬完
○加瀬完君 交通事故は盲より聾の方が多いのです。目があいておりますからね、耳が聞こえないということはわかりませんから、そばへ寄って行って確かめてみなければ。ですから交通事故は聾の方が多いのです。しかし、盲の方は一般的に目が見えない、かわいそうだからスクール・バスということを考えますけれども、聾の方にはそれが考えられない。で、事故が多いという話をわれわれいろいろ聞くのです。これは予算措置は三十六年度からということになりますね。昭和三十五年度に県がそういう方法をとれば、三十六年度に三十五年度の購入分も補助の対象にしていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/37
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038・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 現在のところ、肢体不自由児の方でございまして、肢体不自由児の場合には、どうしてもスクール・バスが入り用なんでございますので、本年度のワクからは、ちょっと無理かと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/38
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039・加瀬完
○加瀬完君 そうではなくて、盲聾に対しても三十六年度から考えるというのでしょう。三十五年度に府県で、文部省がそういう御意向があるならば、われわれの方で一年でも早い方がいいというので、スクール・バスを購入したような場合は、それも三十六年度に、三十五年度にさかのぼって補助の対象にしてくれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/39
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040・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) それは現在の会計法の建前では無理だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/40
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041・加瀬完
○加瀬完君 それなら、こういう意向だから一年待て、肢体不自由児に準じて、県で盲聾学校の生徒児童に対してもスクール・バスの考慮をしてもらいたいという何か依頼通達といいますか、そういう依頼の意思表示を文部省は各都道府県の教育委員会にしていただける御意思がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/41
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042・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 教育長会議とか、何かの機会には申し上げますけれども、文部省が公文でお願いをするのには、やはり補助予算をつけないと、少し無理ではなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/42
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043・加瀬完
○加瀬完君 文部省の方から、この義務教育盲聾学校の児童生徒のある家庭の生活保護のワクを、何か拡大させるように御要請するお考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/43
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044・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 生活保護は、これはやはり一定の基準がございますので盲聾の家庭であるからといって、特別に生活保護の基準を甘くすることは無理ではなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/44
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045・加瀬完
○加瀬完君 これは私は理屈の上からは筋が通らないことではないと思うのです。普通の子供が学校へ通っているなら、繰り返して恐縮ですが、さほど費用も、それから作業も要らないのに、盲聾学校の生徒、児童が一人いるということが、これは負担が違ってくるのです。ですから、こういう子供が何か生活保護でも、特別のワクで、ただに文部省のワクの中だけで考えるのではなくて、生活自体の一つの重荷になってくるのですから、やはり考えてくれるようにしなければ困るくらいの御主張を、盲聾学校の生徒、児童を一番よく知っておられる文部省で、ある程度御主張していただくことが、就学率を上げる何分の一かの陰の力になるのですね、これは希望を申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/45
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046・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) ほかに御質疑ありませんか。——ほかに御質疑がなければ……。ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/46
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047・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 速記を始めて。
ただいま議題になっております盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案につきましては質疑を打ち切って、午後に討論を持ち越します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/47
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048・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 次に、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案に対して御質疑のおありの方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/48
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049・加瀬完
○加瀬完君 この法案に直接じゃございませんが、大学関係の局長さんもいらっしゃってるようですから伺いたいのですが、博士号、いわゆる旧博士号が終期になっておりますので、この博士号をとるという問題で、国立大学はそうでもないかもしれませんが、私立大学ではいろいろのうわさが飛んでおりますが、御承知ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/49
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050・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 御承知のように、旧制の学位につきまして、本年が大体最終の年度になるわけでございます。特に医科大学等につきましては、そういう関係もございますので、この最後の時期というので、かなり学位の授与が最近行われております。国立大学等におきましても、かなりの数が、この三月三十一日を限度として授与される予定でございますが、ただそれについて、特にただいまお尋ねのございましたような、何らかいかがわしいような事柄が起こっておることについては、私どもまだ十分承知いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/50
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051・加瀬完
○加瀬完君 博士号が売買されているという事実がございますけれども、そういううわさは全然お聞きになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/51
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052・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 私どもの耳にはまだ入っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/52
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053・加瀬完
○加瀬完君 一定の研究期間と、博士号を授与できる研究論文の提出というのがなければならぬのですね。少なくとも博士号を得ようとするところの本人が、一定の研究期間を置いて、一定の研究をして、その間に自分自身の研究成果というものを収録して、それが論文として提出されるという形式をとらなければならないわけです。ところが、論文は引受業者がいて適当に作成をする。本人はまあその打ち合わせに大学に行って、たまに顔出しをするだけで、三年なら三年、五年なら五年という期間は全然置かない。半年か一年ぐらいちょっと大学に行って、本人に関係なく、論文は論文引受業者によって作成されて、それがその大学の教授会を通っている、こういううわさがあるのです。私は若干、直接目の前で、そういう取引を見たり聞いたりもいたしております。安いところで百万、大体百五十万という相場で取引が行なわれている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/53
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054・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 御説のように、この旧制と申しますか、現在の学位授与のほとんどが論文による制度でありまして、その学部の教授会が論文を審査して、合格した者に授与するということでいっておるわけでございます。なお、それ以外にも、学部の研究科と申しますか、大学院で一定期間研究に従事して論文を出すというものもあるわけでございます。そのいずれになりますか、ただいまのお尋ねは、大学院の研究科で二年以上そういう期間があるわけでございますが、その期間の方はあまり勉強をしておらぬ。それから論文の方は今のお言葉で申しますと、引受業者と申しますか、そういうものがあって書いておるのだというお尋ねですが、私どもの耳には、そういうことは全然入ってきておりません。普通に教授会で論文を十分審査して、これに授与するということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/54
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055・加瀬完
○加瀬完君 それは論文ですから、教授会で審査することは間違いありません。その教授会そのものが問題なんです。お互いにそれぞれ抱えておりますから、有無相通ずで、全部作業の終わったものは通す、こういう操作が行なわれているという事実がある。これはまあお医者さんに多い。歯医者さんとか、地方の開業医のお医者とか、こういう方が、もう御年配で、この際、博士号でも取っておこうか、なかなかいい方法があるそうだ、こういうことだけれどもどうだいということで、僕らも相談をかけられて、そういう金が高いとか安いとか、取引に立ち合わされた。あまりのことにあきれちゃった。これは学校の教授が全部そういうことをやっているわけではないでしょうから、その学校をあげることは差し控えますが、あとで学校を申し上げてもようございます。御調査いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/55
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056・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 非常に問題がデリケートでございますので、いわゆる権限を持って、これを追及する意味で調査というようなことはむずかしいかと思いますが、御指摘がございますれば、私どものできる範囲内で調査はいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/56
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057・加瀬完
○加瀬完君 どういう権限がありますか、文部省としては、どのくらいの権限がありますか、こういうものに対する調査は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/57
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058・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) これは国立学校についてはもちろん調査もできますし、私学関係についても、まあ直接学校の運営ではございませんけれども、いろいろ資料を作るために、一応の調査は私学校でも調査の権限は認められております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/58
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059・加瀬完
○加瀬完君 そのときに、雑談みたいになって恐縮ですが、博士論文が幾らだ、高い、安いのときに、君、入学金だって幾ら幾らだ、入学金が八十万で、博士論文が百万円という相場があるというようなことを学校の当局者が話しておりましたが、そうすると、いろいろ問題になっている、大学にも学校によっては裏口入学が、金の取引で入学できるというようなことを裏書きしているものだと、私は非常にりつ然たる気持で、いたたまれなくて席をはずしましたが、そういうことが行なわれておる。うわさには聞きません、事情は知りません、文部省の権限の範囲内でお調らべしましょうでは、ちょっと私は日本の学術振興という上から言っても、大学の姿から言ってもおかしいと思う。私立学校でありますから、文部省が直接どうこうということは言われないにしても、認可権は文部省にあるわけです。そういうものが大学として一体認めていいものかどうか、あるいはそういう不正があったものについて、これからは特別の博士号というものはなくなるわけですけれども、一体、博士号の権限というものを、その学校に与えておっていいものかどうか非常に疑問を持ちますので、あとで、あなたに学校の名前を申し上げますが、これは適正な方法をとってもらわなければ困ると思う。
それから、この国立学校設置法の一部を改正する法律案は、この内容を見ますれば、別に問題はないわけでありますが、将来、元の専門学校のような形の短期大学というものを作ろう、いわば専門学校の復活というものを文部省は考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/59
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060・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 現在御承知のように、中堅の技術者教育の制度として短期大学があるわけでございますが、この短期大学は、四年制の大学の年限をまあ一応半分にしたような、制度上そういう形になっているわけでございまして、二年間に専門の技能教育をやるほかに、一般教育も相当部分やるということになっているわけでございます。この点につきまして、いろいろまあ産業界等におきましても、中堅の技術者養成の点から、こういう制度では専門の技能教育に欠けるところが出てくるというところから、二年制の職業教育を中心とした短期の専科大学、または高等学校と一緒になりまして、五年制の専科大学というものを強く要望しているわけでございます。文部省もこれらの強い産業界の要望等を取り上げまして、中央教育審議会等でもいろいろと審議をしてもらいました結果、一つの構想を得まして、この専科大学設置の法案を国会に提案をいたしまして御審議を願ったわけでございますが、現在までにそれがいずれも審議未了で廃案になっておるわけでございます。ただ現状、やはり従来にも増して、この専科大学に対する要望が非常に強い状況でございますので、私どももさらに従来のものを検討いたしまして、できれば最近の機会にそういった法案を国会に提出するようにいたしたいという考えを持っております。なおしかし、それらについてもう少し研究をしなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/60
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061・加瀬完
○加瀬完君 そうすると、まあ終戦直後の学制改革による六三三四という現行制度というものには、少なくも高等学校以上の面については大修正を加えようというのが、現在の文部省の御意思だと判断してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/61
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062・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) ただいま申しましたような専科大学がもしできるものとなりますれば、従来の単一の六三三四の単線型の教育制度に対して、一部分それが修正されるという形になろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/62
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063・加瀬完
○加瀬完君 今度のこの短期大学を新設するのも、単科大学という意味を生かしての設置ということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/63
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064・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 今回の設置法の一部改正では、北見に工業短期大学を作り、また室蘭と香川大学に夜間の短期大学部を設置することを考えておるわけでございますが、これらはいずれも現在ある六三三四の中の短期大学でございまして、直接、専科大学と同じようなものにするということでやっておるわけではございません。しかし将来、専科大学というものができれば、またそのときに再検討しなければならないと思っておりますが、現状におきましては単線型の中の短期大学でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/64
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065・加瀬完
○加瀬完君 この単科大学構想というものを打ち出しても、六三三四のときもそうですけれども、どういうように、教授陣といいますか、教育陣容といいますか、あなたが特に免許の方の担当者ですから、そういう教える側の体制というものが全然整っておらないで、それで中学を作ったり、高等学校を作ったり、大学を作ったり、こういう形をして、しいて言えば、悪い面ではそれが一つの混乱にもなっていると思うのです。学制改革というものの轍を踏まないということを、これを修正しょうという考えを是認するなら、むしろ学校を先に作って、教授陣や設備がこれに追いつかないというようなやり方というものを十分文部省が考慮して、十分施設が作られる方法が講ぜられて、教授陣が全部そろって、そうして文部省の大学の構想というものが発展するということでなければ私はおかしいと思う。これではまた学校はできましたわ、学校の設備はできませんわ、教授陣はそろいませんわということになりませんか、そういう心配がありますが、どうですか、この場合は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/65
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066・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 現在考えておりますところの北見の工業短期大学につきましても、これはいろいろと教授の陣容について準備はいたしております。それは、やはりそれぞれ大学等で教官の資格のある者を持っていくようにしたいと考えておりますので、決してレベルの低い先生方をこういったところに集めて発足するというようなことは考えておりません。なお、施設なり設備等につきましても、それは御承知かと思いますが、地元に非常に強い要望がありまして、それらの面につきましても多大の尽力をして整備をされておるのでございまして、北見の場合におきましては、すでにその校舎の必要部分が大体でき上がってきておるということでございます。一番問題にされました教授陣については、私どもこの際におきましては問題はなかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/66
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067・加瀬完
○加瀬完君 現在の大学でも非常に教授陣というものは貧弱でしょう。かりに有名教授がおっても、それはかけ持ち講座であったりして、非常に不徹底だという非難が上がっているわけですね。むしろ大学を整備して、教授陣容や大学の質を高めるということをすべきであって、新しい大学をこの上にふやしていって、教授陣容が整うかという疑問を持つのです。それからもう一つは、大学院の学生が、一応制度としてありますね。その大学院というものにどれだけ文部省は金をかけているか。あの学生たちが将来学者として、あるいは技術者として立つように、専門家として立つように、どういう方法が講じられているか。学生はおりますけれども、専門にこれを教授する教授陣というものはおらないんじゃないですか、普通の大学とかけ持ちでしょう。ですから昔の研究室に残った人たちのように、専門の教授にみっちり長い時間をかけて指導をされるということはほとんど不徹底ですね。それから経済的にも研究費その他、投げやりのような形に置かれている。ことに研究室に残ってしっかり研究して、将来若干の講師、助教授になって出て行こうという養成が、何というか、とだえてしまうというか、養成所に希望する者もなくなれば、助教授、教授というコースを歩もうとする熱意も若い学徒たちが失ってしまうように、私どもは外側から見ていると感じられるのです。この点、文部省は大学院なんかに対してはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/67
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068・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 全般的に申しますと、大学の教授陣が昔に比べて水準が低いんじゃないかというお尋ねでございます。これは私ども必ずしも全体といいますか、トップのところを比べればそういうことはあるまいと思いますが、これは御承知のように、昔の大学教授というものと現在の大学教授というものをどう考えるかということによって、かなり考えが違ってくると思います。御承知のように、戦前は大学教授というものは、全国を通じて千五百ないし二千くらいしかおらなかったものが、現在ではその十倍もいるということでございますので、従って、新しい大学の教授の中には、昔と同じような、大学院その他を通じて長い期間研究をし、また海外にも行ったという、いろいろなそういう研究上の経験を経てない者もあるわけでございます。従って、そういうもの全体を比較すれば水準が同じであるとは言い得ないかと思います。しかし、私どもトップ・レベルを比較すれば、決して現在の大学の教授が低いというふうには一がいには言えないのではなかろうか。もちろん大学というものを同じレベルに置いて議論をいたします場合に、やはり何としても質の向上ということは非常に必要でございますので、今後年数をかけて、大学の教授陣の質の向上をはかっていかなければならないと思います。それから、それに付随をいたしまして、大学院の学生、ことに国立の大学院の学生についてのお尋ねでございますが、これは御承知のように、大学院と申しますのは、大学の学部の上に研究者の養成機関なり、あるいは高度の技術者の養成機関として置かれているものでございます。従って、施設等につきましても、大学の学部のものをあわせ使うということは、まあこれは当然認められているわけでございます。大学院の学生につきましては、文部省としては、大学院の学生の経費について、一般の学部の学生よりも高い学生経費を予算に計上して実施をいたしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/68
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069・加瀬完
○加瀬完君 大学がふえたから、元の旧制大学の教授とは質も若干変化があるというお話ですが、変化があり過ぎるということを私ども問題にしているのですよ。で、一般に大学の数がふえたから、大学が今のように、ああいうふうに学校差が非常にあるでしょう。二年も三年も浪人しても東大に入ろうとする。これはいろいろな関係もあるかもしれないけれども、学校差そのものが前提としてあるから、学校差をなくするためには、教授陣というものをもっと、トップ・レベルとまでいかなくても、近いものにしなければならない。それには大学の数をふやすことよりは、むしろ数が減って質を高めることの方が一般としては希望しているのじゃないかと思うのです。そういう点を、もう一つ私が伺っておりますのは、トップ・レベルの教授が少ないからトップ・レベルがみんなかけ持ちをしてしまう。かけ持ちをしてしまいますから、一つの学校で大学の学生も大学院の研究者、学生も、しかも丹念に教えるという形が——学生の方からすれば、あの教授というものを慕ってきても、大学院に残っても、その教授に専門的に昔のような教わり方をすることができないという不平があるわけです。これらをもっと考えなくてはだめじゃないか。大学院を作りました、教授はかけ持ちです、そういういいかげんな大学院の教授体制というものでは、私はぽんとうのいい学者も研究者も生まれてこないと思う。そういうような問題があるやさきに、単科大学みたいなものをぽこんぽこんと作って、旧制専門学校みたいな形にさせてしまうことは、はたして、一体日本の大学教育という点からいっても、あるいは学術文化の向上という点からいっても、最良の方法とは考えられないじゃないかという点を問題にしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/69
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070・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 大学の全体の水準を引き上げていくという点につきましては、私どもも決してお尋ねの趣旨と違った考えを持っておるわけでございません。ただ、であるから数をふやす必要がないじゃないかというお尋ねでございますが、御承知のように、大学の高等教育を受けたいという希望者の数も年々ふえておりますし、またわが国といたしましても、これからの産業界の向上等のことも考えまして、いろいろ技術者養成の社会的な要求もあるわけでございまして、こういうものに応じて、いろいろ地域を考えての上でございますが、そういったそれに対応する措置をとっていくということは、私どもはやはり必要なことと思っております。ただ、そのために、従来ありますところの大学の質を下げるということになっては、これは問題でございますので、そういったことの起こらないように十分注意はしていかなければならぬと思います。なお、先ほどもお答え申し上げましたのでありますが、大学院は御承知のように大学の学部の上に設置されるものでございますので、大学の学部の教授が大学院の方もあわせて担当するということは、これはまあ私ども現在においては当然のことと思っておるわけでございます。ただ、それがあまりにかけ持ちが多いために、十分専攻の教授の指導を受けられないというようなことがありますれば、これは今後十分そういう点を勘案して注意をしていかなければならぬと思います。国立大学におきましては、他の職務を併担すると申しますか、併任することについては、私ども極力これを押えておりまして、なるべく公的なものでも差し控えるようにということで、現在まで措置をいたして参っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/70
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071・加瀬完
○加瀬完君 幾ら差し控えさせたって、俸給が安くて、アルバイトをしなければ自分の研究もやっていけないという、こういう中に研究者を置いて、それでかけ持ちするなと言ったって私は無理だろう、特に大学の教授は大学院だけに専念しろと私は言っているのじゃないのです。しかし、旧制の場合は大体大学院を主として担当指導する教授と、それから、一般のいわゆる大学の学生の講座の時間をたくさん持っておる教授と、若干そこに差があって、大学院だけを主として教えてくれるような傾向が強かった。このごろはもう自分の大学の学生とほかの大学のかけ持ちで、大学院までには手が回らないという状況で、大学院には行ったけれども、自分の指導されようという教授に十二分に昔のような指導がされないという不平が大学院の連中にはだいぶ多いのです。それでは結局教授になり、研究者になるものの養成というものに、非常に何か力を抜いておったような形にして置いて、新しい大学をますます作るということになれば、どうしたって、これは教授陣の質の低下を免かれない。ここに矛盾があるのじゃないか。ですから、大学を新設するというよりも、教授陣の質を高めるということにもう少しの力を入れていただけないものか、こういう趣旨なのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/71
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072・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 先ほど来お答え申しておりますように、大学の教授陣の質を高めて、大学での教育の水準を引き上げるということについては、私どももこれは最も大事な教育政策の一つとして考えておるわけでございまして、その点について、お尋ねの点、意見の懸隔があるわけではございません。教官の待遇につきましても、これはやはり学術の水準を引き上げる上から最も大事な点と考えて、従来も努力をしておったところでございます。今回もきわめて一部でございますけれども、御承知のような教官の給与の中だるみ是正というようなこともやっておりますし、また、大学院を置く大学の教官の待遇改善等もいたしておるわけでございます。不十分ではございますが、今後もこれらの点については、できるだけの努力を重ねて参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/72
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073・岡三郎
○岡三郎君 私は国立大学の短期大学その他の学部の新設に伴って、関連した事項について質問をしたいのですが、文部省当局はかねてから理工科系統の学級は国立でやりたい。それから法文系統は私学でいいんじゃないか、こういうふうな言明をしばしばされてきたと思うのですが、その趣旨は、理工科系統の方は非常に金もかかるし、設備もよくせなくては十分な技術者を養成することはできないんではないかというふうな意味も含まれておると思うのですが、先般の予算委員会において質疑がなされた事項に関連しているわけですが、東大の百年祭をめぐって、大学自体というわけでないが、これの関係者、大学の卒業者、そういう人々、財界が工学部の化学教室新設に三億ですか、理学部の化学教室といいますか、それに一億というような募金運動を現在展開している。こういうことについて文部省はどういうふうに考えておるか、これは大臣がおらぬので、宮澤さんの方で一つお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/73
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074・宮澤喜一
○政府委員(宮澤喜一君) 岡委員の御指摘のことでございますが、実は文部省として、そういう事実をはっきり知っておらないようでございます。私も存じませんでしたが、事務当局もそういう事実を、はっきり事実としてまだ知っておらないようでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/74
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075・岡三郎
○岡三郎君 この問題については予算委員会で質疑が出ておると思うのです。そのときに大学学術局長は出ておらなかったのかもわかりませんが、大体、財界の石川一郎氏等を中心として、いろいろと刷りものを刷って、それで各関係会社といいますか、会社にそれを頒布して、そうして募金に乗り出しておる。それから理学関係の化学部門については、柴田とかいう人が、これが募金の委員長とか何とかになって、三十五年の四月一日から三十六年の三月三十一日まで一ヵ年問に工学部関係の方は三億ですか、理学部関係の方は一億、四億の募金運動で、国立大学の建物を作るということで今やっておるわけです。それで、聞くところによるというと、大学の教授もこの募金運動の一端をになわせられて、表面ではないとしても、裏側では、この大学の先生たちが忙しい中を各関係会社に飛び歩って、そうしてこの募金運動に従事しているという話があるわけです。この資料についても、一、二持っておるわけですが、まあ知らぬとなると、これは私の方で教えなきゃならぬわけだが、私の言わんとするところは、東京大学ともあろう大学が、これは募金をいずれの形にしても行う、それが大学の建物を作るということになるというと、これはおかしいじゃないか、従来、図書とか、図書館とかいうものを作っていくという話はずいぶんあるのだが、教室をカンパで作る、資金で作る、寄付金で作る、こういう話になるというと、これは文部省は一体何を考えておるのか、この点についてお尋ねしたかったのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/75
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076・宮澤喜一
○政府委員(宮澤喜一君) 事実を知っておりませんので、事実に基づいてお答えを申し上げることができないのは遺憾でございますが、確かに東京大学ともあろうものがそういうことをしなければならないということは情けないことで、私ども済まないことだと思います。教授としても、そのためには頭を下げなくてはならないでありましょうし、研究その他の時間もさかなければならないでございましょうから、相済まぬことだとは思いますけれども、そのこと自身は私ども特に弊害のあることではない、まことに済まないことだけれども、そうして大学がよくなっていくということそのことは、私どもむしろけっこうなことだと、事実がわかりませんので、事実に即しては申し上げられませんが、抽象的にはそう考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/76
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077・岡三郎
○岡三郎君 事実がわからないから、これ以上ここでやってもしようがないから、午後一つ調べてもらっておいて質疑をしたいと思うわけですが、今、宮澤さんが言ったように、大学がよくなるためにはけっこうだと言われておりますが、少くとも国立大学で、しかもその中で有数な大学自体が、内容を改善するために一々会社へ行って、大学の教授が募金の運動を裏面でしょうという形を見たときに、そうするというと、結局どういうことが出てくるかと言えば、会社自体は金を出すためには、卒業者の中で、こういう人を回せとか、ああいう人を回せとか、いろんな形が生まれてくるのではないかというふうに考えるのであります。特に、国立大学関係等で、こういうふうにあちこちでいろいろと学部を作ったり、あるいは短期大学を作るということについては、いろいろと意見があるとしても、たとえばそういう学部を作る場合に、地方の方からの募金、金を集めてこなければそういうものはできないとか、こういうことになっていくと、現実に義務制の学校なんかにおいても、非常にそういう形の募金運動が現在強いわけです。講堂を建てるとか、体育館を建てるとかということになると、すぐ地元の父兄に寄付金を募集する。で、子供のためだからというので、いやおうなしに——募金運動というものが成功するにはするとしても、その陰では相当負担にたえかねて泣いている人が多いわけです。これは国立大学自体が設備をよくするためにはやむを得ないんだという観点に立っておるかもわからぬが、そういうふうな点が行なわれるということになれば、上は文部省、国立大学から始まって、下は義務制の小中学校の建物を作る場合においても、すべて税外負担というような形でかかってくる、こういうことになるというと、これはやはり非常に工合が悪いんじゃないかという建前で私は質問しているわけですが、大学学術局長はそれを知らないですか。東大が東大がということじゃなくても、そういう東六百年祭にかかわるところの募金運動ということを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/77
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078・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) ただいまお尋ねの点については、私ども事実を聞いておりません。大体、国立大学の建物につきましては、やはり国立大学関係の施設予算というのがございまして、これを通じてやるのが原則でございます。従って一般から、ごとに学生なりあるいはその父兄等から金を集めて建物を建てるというようなことは従来やっておりません。ただ、今お伺いしました話ですと、これは財界あるいは産業界の応援を得てやられるということでございまして、もしそれが自然的に行なわれるものであるならば、私どもさして弊害があるとは思わないわけでございます。ただ一般の場合、ことに義務教育等におきまして、講堂を建てるとか、あるいは体育館を建てるために、父兄等から金を集めるというようなことは、私ども必ずしもいいこととは思っておりません。こういうことはできるだけやはり市町村費等の公費でやるべきものと思っており、従来も文部省としては、府県に対してそういう指導をいたしておったはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/78
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079・岡三郎
○岡三郎君 積極的にその金を出してやるということならば、これはまた話は別です。安田講堂を作るために金を出したとかいうなら。そうじゃなくして、百年祭にからんで東大にそういう建物を作る、そうしてそれは積極的ではなくして、そういう人たちを集めて、そうして募金運動を展開するということになれば、結局、会社自体その他の関係筋をたどって募金運動をするということになるのだが、東大もやがて私立大学にするというのなら、これは話は別だし、日本の大学を全部私立大学にして、寄付金でやっていく方向をやがてはとっていくというのならいいけれども、しかし東大関係というものは、大きな人脈を持っておるから、大工場、大企業等において、先輩有志が一ぱいいるから、その金を集めるというのだから、大したことはないということになるかもしれないが、大学の先生自体がそういうものにかり出されるという実態を見たときに、いいものを作るという趣旨は賛成だが、そういうことがはたしていいものかどうか、文部省がそれを全然知らぬなんというのは、これはばかげたことだと思うんだがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/79
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080・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) ただいまお尋ねの東大の百年祭にちなんでの募金ということにつきましては、私ども事情をつまびらかにいたしておりません。大学の建物につきましては、本年度と申しますか、三十五年度におきましても、工学部、また理学部の建物のうちの一部を建設することにいたしております。これの進捗率が必ずしも十分でないということから、そういったことが起こるのかとも思いますが、いずれにいたしましても、私どもできるだけ早くこの募金の実態を一応調査をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/80
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081・岡三郎
○岡三郎君 それではここで、この問題についての質疑は一応留保して、これは午後質問をしたいと思います。電話をすれば、どういうふうなことになっているのかわかると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/81
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082・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) ほかに御質問ありませんか。——ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/82
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083・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 速記をつけて。
それでは午前の委員会はこれをもって打ち切りとし、午後は一時から再開いたします。
これにて休憩いたします。
午前十一時四十七分休憩
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午後一時三十六分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/83
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084・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。
盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより本案の討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/84
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085・吉江勝保
○吉江勝保君 ただいま上程されております盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案、この法律案に関しましては、私は次のような付帯決議案を動議として提案いたしまして、この付帯決議案を付しまして賛成の意を表したいと思います。
本法案につきましては、すでに十分審議をいたしましたので、その審議の過程におきまして、本委員会におきまして要望を取りまとめまして付帯決議案を作ったのであります。付帯決議案を朗読いたします。
盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励事項に関してはその適用範囲を拡大するとともに、未就学児童生徒の解消及び職業指導施設並びに特殊学級の教員配置等に特別の配慮をすべきである。
以上の付帯決議を付しまして、本案に賛成いたすものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/85
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086・加瀬完
○加瀬完君 私はただいま提案になっておりまする盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案に対しまして賛成をいたします。なお、ただいま御説明のございました吉江委員の付帯決議案にも賛成をいたすものであります。
ただ、希望を申し添えたいと思いますのは、この本法案の提案理由の主軸をなすものは、さらに就学の普及契励をはかるということでございますが、さらに就学の普及奨励をはかるためには、本法案のみではまだ残る問題が数ありますので、ただいまの付帯決議の内容等は、特に重点的に、明年度以降の施策として文部省で十二分に御研究をいただきたいのであります。なお、盲聾児童、生徒の就学を困難にしておりますものは、それぞれの就学条件もございますが、それらの盲聾学校の生徒、児童をかかえておる家庭の生活状態も大きな原因になっておりますので、この点は生活保護法その他の方法で、厚生省とも十二分に文部省においてお打ち合わせの上で、外郭的な問題の解決をもあわせてお取り計らいをいただきまして、この法律のねらっておりまするような目的が、一日も早く達成するように施策を進められるよう希望いたしまして賛成の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/86
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087・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終結したものと認め、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/87
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088・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 御異議ないと認めます。
それではこれより採決に入ります。
盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/88
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089・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 全会一致でございます。よって、本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、吉江君が討論中に述べられました付帯決議案を議題といたします。
吉江君提出の付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/89
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090・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 全会一致と認めます。よって、吉江君提出の付帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続等につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/90
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091・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 御異議ないようでありますから、さよう取り計らいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/91
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092・宮澤喜一
○政府委員(宮澤喜一君) ただいま法律案に付帯しまして、本委員会で決定になりました決議につきましては、今後の施策を進めて参ります上に、十分その御趣旨を尊重して参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/92
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093・岡三郎
○岡三郎君 付帯決議が全会一致で可決されて、宮澤文部政務次官の方から、それに伴う文部省の意向の表明があったわけですが、付帯決議というと、そのときにお茶を濁すという形の傾向もなきにしもあらずでございまするので、一つ今の趣旨を、特にこういうふうな特殊一教育、非常にかわいそうな子供たちへの教育の振興ですから、特段に一つお願いしたいわけです。
なお、今までこの文教委員会において、しばしば各種の法律の採決に伴って付帯決議がなされてきたものが相当多くあるわけです。これに伴って文部省も相当努力をされて参ったということも承知しておりますが、相当経過して、付帯決議自体も色あせてしまった部分も相当あるように考えます。そこでこの際、今までの付帯決議を文部省で御検討いただいて、今までの付帯決議を生かされた点はどこどこであって、それからなお実施に至らないでおる個所はどのような点、それについてはこういう努力をしてきたが、こういう隘路があるというふうに、一つ今までの付帯決議を尊重して、その実行方法についての経過等を含めて、簡単なものでけっこうですから、付帯決議を尊重する建前から、委員の方にその経過を報告願いたいというふうに考えます。これは委員長にお願いしたいと思います。その点を一つ文部省に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/93
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094・宮澤喜一
○政府委員(宮澤喜一君) ただいまの岡委員の御発言につきましては、そのように取り計らいたいと存じます。
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095・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 次に、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑のおありの方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/95
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096・岡三郎
○岡三郎君 午前中に、国立学校設置法の一部を改正する法律案の審議に関連いたしまして、東京大学の百年記念行事として四億の寄付金募集についての質疑をしたわけですが、午前中は文部省の方としてもよくわからないという返答でありましたが、その後調査せられておるようですから、その調査事項について御回答をいただいて質疑を続けたいと思いますので、そのようにお取り計らいをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/96
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097・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) お答え申し上げます。東京大学に対する寄付金はこれは二口でございまして、内容を取り急ぎ取り調べましたところを御報告申し上げますと、まず一つは、工学部の応用化学の教室を拡充整備したい、これは最近の化学技術教育振興の一環といたしまして、学科増設、学生の増募を行なっておりますが、さらに将来のことを考えまして、教育、研究の充実のために、主として設備につきまして最新優秀のものを備えるようにしたいということで、産業界の関係者が後援会を組織してやっておるものでございます。その名称は、東京大学工学部応用化学拡充後援会ということでございまして、後援会の役員といたしましては、会長に石川一郎氏がなっております。それから副会長には昭和電工の安西さんほか五人の方がなっておるわけです。また常務理事には、これもやはり全部産業界の方でございますが、約三十人近くの方々が常務理事に就任しておられますし、理事には、これはちょっと数はわかりませんが、五、六十人の方がなっておりまして、これは形の一上では、いわゆる化学工業に携わっておる関係の事業会社が自発的に教室拡充の後援会というものを設立して、工学部の応用化学系の諸学科の充実を積極的に援助するということになっておるわけでございます。
それからもう一つの方は、理学部化学教室の整備のための期成会ということでございまして、この点は、その趣意書を見てみますと、東京大学の理学部の化学教室の発祥は、文久元年の蕃書取調所に精錬所が設けられたときを起源として、それで明年、昭和三十六年が百年になる。で、現在、理学部の化学教室は基礎化学の研究をしておって、産業界に非常に大きな重要な意味を持っておるのであるが、その後、学生の増募も行なわれておらない。いろいろな求人関係からいっても例年十数倍の求人数がある。将来、学生の定員を大いにふやさなければならぬ。そのためには教室も狭隘である。また、いろいろ設備関係にしても必ずしも十分でないので、ただいま申しました百年記念を機会に、そういった整備を行ないたいということでございまして、期成会の会長には、相当前の教授であられた柴田雄次さんという方が会長になっておるようでございます。一応それぞれ後援会と期成会といたしまして、後援会の方、工学部の応用化学の方では、これは先ほど申しましたように純然たる産業界の方の後援会でございますが、大体、寄付金の予定額として三億円程度を集めて後援したいということで、寄付金の使途は主として設備関係。それから理学部の化学教室の関係の方は大体建物の関係で、寄付金の予定額といたしましては大体一億程度ということで計画を立ててやっておられるようでございます。
以上、大体御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/97
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098・岡三郎
○岡三郎君 そこで、このいずれも事務所を東京大学内に置いておるわけですね。百年記念事業として大学の設備をよくしようということは、これはけっこうだと思うのですが、従来、文部省が言っているように、法文系統と違って科学技術の振興という面から考えて、特に理科系統の学校の拡充といいますか、内容の刷新ということを文部省は強く言って、特に理科系統の学校は国立大学でやるというぐらいに強く言っておる建前から言って、工学部の応用化学系の教室の拡充、理学部の化学教室、これはいずれも教室拡充なんですね。ここに私は一つの問題点があるということと、それからもう一つは、こういう寄付金をつのるのに、どうしても団体だけではなくして、関係教室の教授等が相当出歩いて頭を下げて歩かなければならぬ実態、実情、こういうことをどういうふうに考えるか。つまり教室拡充というふうな問題は当然これは国としてやるべきことであって、それをこういうふうな寄付金でやるということになること自体が私はいかがかと思うのです。これを東京大学だけではなくて、今後、全国の大学がこれに右へならえしてやるということになっていく、こうなれば、ますます今後はそういうふうなことが広く行なわれてくるということにもなるのじゃないかと考えて、一つには大学のこういう教室の拡充というふうな問題は、当然、文部省が鋭意これに当たらなけれどならぬと思うのですが、大学がよくなるんだから寄付金をとってもいいということだけで私は済まされぬと思うのだが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/98
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099・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) ただいまお尋ねがございましたように、大学における学部あるいは学科の増、定員増といったものに見合う施設の増、また設備の充実につきましては、もちろんこれは国費でやるべきものでございまして、従来、ここ数年の間の実績を見ましても、この科学技術振興関係に伴う定員増、あるいは学科増に伴う施設の整備ということについて文教施設費の大半を支出している状況でございます。ただ、最近の学術の振興に伴いまして、大学の教育上、また研究上非常に御要望が大きくなってきておりまして、現在の文教施設が必ずしもそれに伴っていないと申しますか、なかなか追いついていけない点は遺憾でございますが、まあ大学側における理想を追わせるために、国費の足らない部分を関係の産業界等から寄付を仰がれるということは、特に弊害がなければ、私どもはまあやむを得ない措置として、これは認めざるを得ないと思っております。ただお話のございましたように、教授が一々の会社に勧誘に出歩くというようなことで、教育上に何らかの弊害を及ぼす、あるいは研究上の弊害を及ぼすというようなことが出てきますと、これは好ましくないわけでございますので、そういった点は十分大学当局にも注意をいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/99
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100・加瀬完
○加瀬完君 関連。同じ政府の監督下にありながら、自治庁では、今度地方財政計画に公課負担の軽減として九十億かを盛り込んで、地方自治法や地方財政法の一部を改正して、今、岡委員の指摘したような、当然予算でまかなうべきものを寄付に仰いで教室を建てたり、施設を拡充したりするものを禁ずるという方法をとっている。具体的な例を出せば、小中学校等で後援会等を作って校舎の増改築とか、施設の改善とかということに寄付を集めることは地方自治法上できないということになるわけです。一方ではそういう方法をとって、一方、文部省の管轄下では寄付を集める、公然と集めているのを許すということになっては、何だかおかしいじゃないかと思うのです。同じ文教行政という面から見ても、大学なら寄付を集めてもいい、小中学校で寄付を集めては悪い、公課負担を軽減するのは小中学校だけで、大学は公課負担の軽減をさっぱり考えておらない。首尾が一貫しないと思いますが、この間の連絡はついておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/100
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101・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) お話のございましたように、普通教育、ことに義務教育では税外負担を軽減しなければならないということで、従来から、たとえば教材費の国庫負担の額を増すというようなこともやっておりますし、また学校建築の関係等で、校舎の整備費をPTAが一部負担するというようなことはよくないということから、できるだけそういうものは取らないという指導も文部省はやってきております。PTAの負担ということは、それぞれ父兄の負担になるわけでございますので、そういったことは義務教育の建前からも決しておもしろいことではないということでやっておるわけであります。ただ、先ほど申しましたように、この大学における寄付金にもいろいろあると思いますが、先ほど来御説明申し上げておりますのは、ことに工学部の応用化学教室の充実の後援会のような、直接産業界の方が、まあ自分らの事業に関係があるということから、化学工業に携わっておるという関係から、積極的にそういった応用化学系の諸学科の充実をやってもらいたいということでございまして、特にそれが学生なり、あるいは学生の父兄に何されるものとは考えられませんので、私どもはまあ本来の建前からいけば、やはり国立大学の施設なり設備は当然国費で支弁すべきものとは思いますけれども、現在の状況から見てやむを得ない措置だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/101
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102・加瀬完
○加瀬完君 行政指導の幅で、義務教育の学校に寄付金で施設をまかなうということはよくないからこれは押えよう、国立大学なら、ある幅は許してもいいだろう、行政指導の範囲の中で重い軽いをつけるなら許せる、今度は小中学校は法律で禁止されるわけですね。国の法律で禁止されている。同じ行為を今度は国立大学がやる場合には、文部省がこれを奨励しているということではおかしいじゃないかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/102
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103・宮澤喜一
○政府委員(宮澤喜一君) それは午前中にもちょっと申し上げましたのですが、私どもとして、こういうことが現実に行なわれておるということは文部省が行き届かないからであって、相済まぬことだということを申し上げたわけでありますが、結局今の二つの事例について考えますと、これはまことと常識的なことではありますけれども、そういう寄付そのものが行なわれる態様なり、その実態というものに関係があるのだろうと思います。つまり地方の義務教育のPTAを中心とする寄付金の募集というようなものは、自分のうちの子供をどこでも学校へ出しておりますから、相当貧困な家庭でもやはりある程度は一緒につき合っていかなければならない。そういう意味で、直接の国民生活に、人によっては相当に無理な負担を負わせておるというのが実情だと思うのです。その間に、場合によってはやはり地方で、いわゆるボスというものが幅をきかせるというようなことがあり得ると思いますので、現実にそういう弊害が生じておりますので、こういうことを一つやめていかなければならない、こう考えておるのでありまして、本来からいうならば、原則論からいえば、国民が自分の住んでおるところの社会なり、あるいは国なりというものに対して、教育のことに自分のなし得る限りの寄付をするということは、私は少しもこれを無理じいをすることではありませんが、おやめなさいということではないと思うのであります。そこで、この東京大学の事例でございますが、先ほどから大学局長から申し上げましたように、特定の人あるいは企業に対して、自発的な意思を越えて耐えがたい負担を結果として課すというようなことになれば、これは私は一つの弊害であろうと思いますが、そうでない限りは、文部省としてその施策が行き届かなくて申しわけないということは別といたしまして、特にこれをやめなければならない事態だというふうには考えない、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/103
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104・岡三郎
○岡三郎君 今の問題、次官が言っている点、了承する点もありますが、問題は、たとえば新たに設置する大学においても、地域の寄付があればその地域に学部を設ける、つまり国として施策を進めていく場合に、国民全体に対する公平の原則からいって、その地域に設置すべきものを、寄付が集まらなければその地域にはできないとか、あるいはそういうふうな相当の台所をバツクとする卒業生がある場合においては、そういうことはかまわぬ、そういうことになるというと、文部省自体は一通りさっとやって、あとはその学校の力によって、設備、内容の充実はおやんなさい、こういう形になってしまうおそれがあるので、そうなれば学校差——駅弁大学なんと言われているところは、寄付金を集めようといってもなかなか集まらぬ、そういうふうなことで、力がある大学はどんどんやってしまえ、しかし、ないところはそれなりだということになってくると、ますます地方の大学自体というものは貧困の状態のまま放置されるということが多くなるのじゃないか。だから、そうではなくて、国立大学の特にこういうふうな教室の拡充をするという場合においては、少なくともそういう費用は文部省が出し、文部省の計画に沿って、地方大学なども含めて整備をしていく。しかし私が言っているのは、積極的に寄付していこうというのを押えるということではないわけです。ただ、内容を充実していく場合に寄付金にたよるという形はよくないのじゃないか、やはり科学教育を振興していくという国策に沿ってやる場合に、たまたま東大において教室拡充のために募集するということだけで、これがまた京都大学なり、東北大学なり各地区においてそういう傾向が、何年祭々々々ということで記念行事として行なわれるということになっていけば、やはり教育だからいいことだということも言えると思いますが、実際にそれに伴って教授自体がそれに奔命するということが、当然これは起こってきているというふうに私は聞いているわけです。だから学校の設備ということであるならば、教室の拡充などということは、文部省がやはり自信を持って作ってやらなければいけないのじゃないか、そこはどうなんですか。実際そういう寄付があればと言ったって、今の状態は、寄付があればじゃなくて、計画をして寄付をつのっていくわけですね。いわゆる死んだ方が教育にぽんと遺産を提供するというふうな形ではなくて、募集をしていくわけですね、寄付金の募集。だから、そういうふうな形を考えたときに問題が幾つかあるわけですが、少なくとも教室を拡充、整備していくような場合には、これは当然国の費用でやるべきだという考え方、内容的にどこの会社がどうだということについては、とやかく私たちは言わないが、また、書籍等で必要なものを寄付していこうというふうな点について、図書館とか、図書の整備という問題についてならいいが、教室というものを作るに寄付金をもらっていくというのでは、半官半民の学校になっていく。これはちょっと極端かもわからんが、そういう点で、やはり国の方としては、全国の大学に対して総体的にこの施設、設備を向上させていくという見地に立てば、やはりそういうふうなことについては積極的に費用を増加して、少なくとも国立大学の教室の整備等については文部省は自信を持って、あくまでやるのだということでないと、私はちょっと困ると思いますが、どうですか。地方の大学とのいろいろな権衡というものを考えたときに、ほかの大学も勝手に寄付金をもらってやってもいいのだということにはならないと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/104
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105・宮澤喜一
○政府委員(宮澤喜一君) 先ほどから加瀬委員、岡委員の御指摘になっておられることは、私、率直に申してその通りだと思います。それから、ことに義務教育についてもそうでありますが、いわゆる地方の受け入れ態勢が先に進んでいるものへ文部省が補助をする、いろいろの援助、助成をするというきらいがないかとおっしゃれば、私は率直に言って、そういうきらいがあると思うのです。義務教育について言えば、たとえば統合中学の敷地がもうみんな寄付でできておるというところが、ともすれば先にいきがちでありまして、先ほど加瀬委員の御指摘のような税外負担の問題もございますので、これはそういう強制のきらいというものは、やはり税外負担を禁ずるという趣旨から、私どももだんだんに考え直していかなければならないんじゃないかと思います。義務教育以外につきましても、大学そのものは、新しい科の設置というようなことについての誘致運動というものはずいぶんございます。そして、その受け入れ態勢が進んでおるところへ、勢い国としては施策をやりやすいものでありますからやる、これはやっていけないところへやるという意味ではありませんので、どこでもやりたいのですが、おのずからそういうところへ優先するようになるということは、そういうきらいが確かにございます。そこで、義務教育につきましての考えは、先ほど申し上げましたように、無理な負担を地方民にかける、あるいは個人支配の色彩が残るといったようなことを排除しなければならないという趣旨から、今度のような施策になったと考えますが、大学あたりになりますと、個人支配という問題も事実上はございませんし、また、これも情けないことでありますけれども、そういう地方で受け入れ態勢を整えてくれることによって、文部省としては比較的少ない金で大きな効率が上げられるというような問題になってくるものでありますから、そういうことをやりがちであります。義務教育につきましては、ことに先ほどの問題もありますので、今後考えていかなければならない問題だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/105
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106・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/106
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107・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/107
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108・岡三郎
○岡三郎君 これは、大臣、予算委員会の分科会において質問があった事項なんです。東大の百年記念でいわゆる化学教室を拡充する、これは理学部の化学の方もその系統でやる、まあ三億と一億で四億の金だから、財界としてはさほどのものではないかもしらぬ。その財界から教育のために金を吸い上げるということを一がいに悪いとは申し上げませんが、しかし、教授がこの一翼をになって、そして各会社を訪問するなり、あるいは後輩なり、教えたところへ出かけて行って、そして募金の進捗をはかる、これは人情ですから、私はやっぱりそうならざるを得ないと思う。そういうふうなことであっては、大学教育全体として物ごい的なことになっては、これはならぬというふうに考えて、特に大臣も日ごろ言っているように、金のかかる理科系統は国でこれは推進するのだ、こういう建前からいっても工合が悪いのじゃないか。そういうふうな点で、特に、一般の施設その他は別にしても、教室を拡充するなんという場合の寄付ということは、これはやはりちょっと考え直さなければいかぬじゃないか。全国的に見て、大学数は数多くあるが、自由に金の集まるような大学はそう多くはない。そうなってくれば、どこか特定のところはどんどんよくなるが、片方のところはどんどん落ちていく。さなきだに駅弁大学なんて言われている現状において、こういうことが行なわれるならば、もうちょっと科学教育推進のための全国的なカンパ運動ならカンパ運動、全部それの資金をプールして、そして必要なところにそれを出していくというぐらいに、国が大きな構想の中で、特定の大学とか何とかということじゃなくて、科学教育振興のためにやるという方向で、国もやるから、ぜひ心ある人々は、押しつけられなくても、率先して振興のために金を出す、それを、おくれているところにも金を与える、全体的な科学教育の振興というものが国全体として行われればいいわけだが、そういうふうな面において、教室等の施設拡充について、こういうふうな寄付金のあり方については思わしくないのじゃないか、こういうことを私は申し上げておったわけですが、それに伴って、大学局長の方からは、そういうふうな心配があるなら、そういうことは是正していかなければならぬということもあとでつけ加えられておりますが、これはどういうふうに大臣お考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/108
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109・松田竹千代
○国務大臣(松田竹千代君) 私は多年社会事業をやっておりまして、これをやるについては、仕事の方は多々ますます資金を必要とするので、往々みずから資金の募集の任に当たった、その結果、一度二度は、芝居の切符売りをするにしても快く買ってくれておる。ところが、三度、四度になれば、仏の顔も三度までで、どうもいやな気持を持たせるような場合もあったやに思われる。もしそれ、いやな気持を持たせるようなことがあって金を集めたのでは、事業本来の趣旨を没却せしめることに至る、これはよろしくない。むしろ、国が社会政策をもってこれらのことをやるべきだ、こういうことを考えたのが、私の政界進出の動機であります。そういう点から考えてみまして、義務教育はもちろん、国立の大学等においても、国の資金をもってやるのが当然であると思います。しかし、寄付金なども、むろんこれを強制するというような点があってはいけないし、また、教授連がこれにやっきになっていくというようなこともむろんいけないと思います。しかし、私は、寄付者の動機が純真なもので、進んで自発的にいわゆる寄付をするというような場合は、これは受けていいのではないか、いいことであると思う。これはまた一面、持っている者が自発的に金を出すということは、自発的に、必要とする国の施策に協力するのであるから、税金を進んでよく出すようなものでもあり、これはあえて私は拒否すべきものでないと思いますけれども、その寄付者の動機に私はよることであると思います。しかし、おっしゃるように、主として国としてはこれらのものをまかない得るようにやっていかなければならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/109
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110・岡三郎
○岡三郎君 明確に言って、少なくとも、国立大学を問わず、国立の学校は、教室等は国でやるというだけの抱負がなければ私はならぬと思います。教室まで寄付金でやれ、もっとぜいたくなものを作りたい、いいものを作りたいとだれも思います。しかし、少なくとも用に耐えるだけのそういう教室等は国で作ってやるから、そういうようなことで物ごいをするな、また、まわりの人についても、やはり寄付金をするから、おれのところへいい技術者をよこせということにならぬとも限らぬ。これは、そういうような点について明確にお願いしておきたいことは、大学教授等がこういう問題についてかかずり合うことがないと思うが、聞くところによれば、大学の先生等も、こういう問題については、一翼をになわせられるような状態にならざるを得ないと私は思う。そういうような問題のないように、これを大学当局に大学局長の方から言って、そうしてこれは純粋なる寄付として、率先して、何も上の方からお願いするのじゃなくして、進んで寄付するという形をとってもらうように、実行方法についてはやってもらいたいと思うのであります。それから将来とも、全国的に各大学が幾つもあるわけですから、そういうところが、それぞれ任意に寄付金をとって大学の設備を作るとか、教室を作るとかいうことでなくて、もうちょっと総合的な科学教育を充実するための、文部省にやはり構想とか、施策というものを持ってほしいということを、ここにつけ加えておきたいと思うのであります。その二点についてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/110
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111・松田竹千代
○国務大臣(松田竹千代君) そういう趣旨のもとにおいて、科学の振興に対して科学技術財団をこしらえたのも、そういう趣旨にあると思うのであります。あなたのおっしゃるように、特定のものを自発的に進んでやる、作るという場合には、講堂を作るとかいう場合には、従来例がありますように、自発的にやられるものはよろしいが、寄付金などもそうしたお話のように、科学技術財団というようなものにプールして、それによって必要なところへ金を回すというようなやり方でいきたいと思っております。かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/111
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112・岡三郎
○岡三郎君 大学の当局に対しては……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/112
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113・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) お話のございましたように、少なくとも国立大学におきましては、最低限の校舎と申しますか、教室なり、あるいは実験室、研究室というようなものは国費で整備する建前で、従来も実はやっておるわけでございますが、文教施設整備費が十分でないために、その関係だけで整備しておりますと、速度がまあ大学等の御希望になる速度にマッチしないわけでございます。また一部の大学では、きわめて程度の高いものをお考えになっておるというようなことから、まあそういった寄付にたよろうとするようなことが出てくるわけでございますが、私どもも、ただいま岡委員の御注意にありましたように、そういうようなものはできるだけ国費でやるように指導もいたしたいと思いますし、また、万一寄付を集める場合には、純粋な寄付の形で、先生方がそのためにそうわずらわされるようなことのないようにやっていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/113
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114・岡三郎
○岡三郎君 それで、応用化学のようなものは割合に金が集めやすいのですね、比較的。直接、産業に寄与するというこの金もうけの道具になる。ところが、そうでない面については、なかなかそうはならぬですよ。だから金のほしいところは一ぱいあるけれども、特殊の産業に直結するようなところは金が集まるが、そうでない部面はなかなかそうはいかぬ。同じ大学の中においても、そういうきらいが多く出てくると思うのです。だからそういうふうな点で、今私も先ほど言ったように、全国的な科学を推進する財団とか、いろんな面をよく作って、総合的に、国費のみでいけない場合においても、その施策があまり影のない、ひなたのところはひなたでしょっちゅうよく行き届くが、部分的に片手落ちが出てくるということも、相当多くの問題が出てくるのじゃないかと私は思う。そういう点で、特に地方の大学等において、同じ応用化学をやっている部面のものも、これはやはりこうなったらネコもしゃくしも東大にこなきゃならぬ、もう地方の大学はあほらしくってだめだといえば、入学試験競争はますますこういう面からいっても激甚になる、だから、それをいかぬとは言わぬが、方向というものを大きくつかまえて、そうして総体的に日本の科学が進歩するように、特に東大なんかは日本の科学水準の最高になっておるわけですから、文部省自体の方もそういう事態が起こらぬ前にも、そういう点を十分施策していけばいいんじゃないかというふうにも考えられますし、なかなか限られた費用の中で、思うようには参らぬことも理解できますが、とにかく国立大学の教室を建てるために寄付金をやるというようなごときことは、もうあまり聞かないことだから、一つこういう点については御留意をしていただきたい、こういうように考えておりますが、以上で私は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/114
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115・豊瀬禎一
○豊瀬禎一君 大臣は昼食前だそうでありますので、簡単に一、二質問さしていただきたいと思いますが、岡委員からしばしば言われた問題とある程度関連すると思いますが、私はこの問題は、大学教授が物ごい的になるとかいった問題よりも、最後に岡委員が指摘されましたように、今、大学に幾つかの問題がありますが、民間産業の方に、卒業すると、こういう化学関係の人は給与が高いために行って、大学に残る人に人材が少なくなりつつあると同時に、大学の研究室の企業化といいますか、請負化といいますか、大学教授自身が、ある特定の産業から直接研究費を別途にもらって、そこで研究をしているという事態が各所に起こっていると思うのです。私は、東大ですからそういうことはないだろうという考えだけでは済まされないと思うのです。東大のようなところにまで、岡委員から指摘されましたように、数億の金をつぎ込んで、民間産業が研究教室を作ろうということが、私は重大な問題だと思う。特に大臣に私はお聞きしたいのは、自民党の文教政策を見ましても、ここ数年間は産業教育の振興というのが大きな文教教育の方針ですね。大臣もことはしばしば言って、文科系を廃止してでも、こういうものを充実したいというような、新聞記事に載るほど、大臣はこういうことについては一生懸命なんです。そこで私は二つ大臣にお尋ねしたいのですが、午前中の質問によると、こういう寄付行為を、東大自身といいますか、東大関係者がやっているということを文部省が御存じなかったやに承っておりますが、東大としては国にこれだけの予算をもし要求したとするならば、文部省はこれに対してどういう措置をとられるか。それと岡委員が質問した産業教育あるいは科学教育の振興という、自民党の文教政策を背負って立っておられる大臣としては、どういう考え方で対処されたか。もう一つは、私が前段に申し上げました研究室の企業化、請負化という現在の大学の一つの科学系統の危機の中にあって、東大が教室までも、数億の金を民間人から出さして作ろうとしている、その中に、もしかりに寄付行為をしたある会社の発展に必要な研究が、大学の教授の請負でなされようとすると、大学の学問の自由というものが侵されていくと思う。私はむしろ教授が卑屈になるということよりも、このことをおそれるのですが、この点に関して大臣はどういう見解をお持ちになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/115
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116・松田竹千代
○国務大臣(松田竹千代君) 大学の方から要求されるものに対しては、できるだけわれわれもその希望に沿い、あるいは実際またその必要があると考えましたときには、極力その予算を措置することに奔走いたすのでありますけれども、往々にして、それが十分に満たされないということは、まことに遺憾であります。またお話のように、一面特殊の金によって科学の振興をはかるために、ややともすればその効果が一部のものに壟断されるというようなきらいがあるということは、これは厳に警戒しなければならぬことであり、注意しなければならぬことだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/116
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117・豊瀬禎一
○豊瀬禎一君 ちょっともう一つだけ大臣に。第一の点ですが、東大としてこれだけの施設が必要だから、これだけの予算が要りますということを要求してきたかどうか。要求してきたとすれば、大臣としては最終的にこれをどう処理されたかを、具体的にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/117
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118・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 御承知のように、東京大学は学部の数も非常に多いわけであります。また付置研究所もかなりたくさん持っております。従って、各学部からそれぞれ年次計画を立てて、大学本部の方へ御要求になるわけでありますが、たとえば理学部の化学におきましても、理学部の中だけで見ましても、第一順位には実は出てこないわけであります。従って東京大学として、これを取りまとめまして、東京大学全体のワクの中で順番をつけて参りますと、非常に下位の順位になるわけでございまして、文部省の方へ三十五年度の予算要求としては、化学教室の増設というようなものは出てきておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/118
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119・豊瀬禎一
○豊瀬禎一君 先ほど私、午前中の質問を、退席いたしておりましたので承知しないのですが、確かに文部省は、この寄付行為が行なわれておるということを御存じなかったようですが、ほんとうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/119
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120・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 私どもの耳には入っておりませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/120
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121・豊瀬禎一
○豊瀬禎一君 そこが私は問題だと思うのです。先ほどから申しておりますように、国立大学の中でいろいろな重点が行なわれるでしょうけれども、先ほど申し上げましたように、科学教育の振興というのは非常に重大な政策の一つに掲げられておる。そうして、しかも東大の、岡委員が申し上げましたように研究図書とか、こういったものでなくして、教室その他の重大な施設が寄付によって行なわれておる。しかも、それが国の予算の中に請求されていないというところがどうも不思議でならないし、いろいろの問題の際に、大学の自治に関与されるんではないかという心配さえ持つような問題が起こっておるのに、こういう重大な問題について文部省が御存じなかったというのは、私はやはり監督の不行き届きといいますか、ではないかと思うのです。大臣も抽象的に御答弁になりましたが、おそらく局長としては、こういうことはやむを得ないということよりも、やはり、できれば、あってならないことだというふうにお考えになっておるのではないかと思う。というのは、私が指摘しましたように、研究室がある特定の産業の請負化、企業化されておるという事例は、特に私立大学に多いし、国立大学の中にも時おり教授陣からその弊を聞くところです。で、東京大学の場合も初めて御存じになったようですけれども、今までのいきさつからして、十分この点を今後の対策として、いやしくも国立大学の研究室が特定産業の、企業の一つの発展のためにこうした寄付によって利用されることがないように、十分警戒し、監督を強化していただきたいと思うのですが、この点に対しての御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/121
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122・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 先ほど申しましたように、この東京大学の理学部の化学教室の趣意書を読んでみますと、現在、学生定員が化学科では二十二名、これでは現状非常に不足であるから、将来その増員をしたい、で、増員をするには教室が足らぬからという、将来の増員計画に対応する校舎——校舎と申しますか、教室の建築をしたいという要望のようでございます。従って、そうしたものでございますので、三十五年度の予算要求には出てこなかったのじゃなかろうか、私はそういうふうに推察をいたすわけでございます。なお、お尋ねのございました教室の企業化あるいは請負化ということでございますが、これはただ単に特定の事業会社のためだけに利益をはかるようなことは、私どもとしてももちろんいいこととは思っておりません。ただ御承知のように、これは日本だけでなく、また世界各国共通でございますが、できるだけ大学と民間の学術あるいは技術の研究の交流というようなことも科学技術振興の一つの方策として従来とられております。受託研究というものもございまして、正当なルート通って研究が行なわれるものであれば、私どもはそれはいいのじゃなかろうか。ただ単に研究費をもらうためだけのことでなしに、科学研究の振興という見地から、そういったものも認められるのではないかと思います。ただ施設の整備を、ある特定の事業会社からもらうというようなことは、これはもちろん本筋ではございませんので、私どもはそういった面は今後大学当局に対して十分注意をして参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/122
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123・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) ほかに御質疑の方ありませんか。——他に御質疑もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/123
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124・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/124
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125・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより採決に入ります。国立学校設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/125
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126・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 全会一致でございます。よって、本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出する報告書の作成その他自後の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/126
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127・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 御異議ないと認めまして、さよう取り計らいます。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/127
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128・清澤俊英
○委員長(清澤俊英君) 速記を始めて。
それでは本日はこれをもって散会いたします。
午後二時三十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415077X00819600329/128
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