1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年三月二十九日(火曜日)
午前十時五十一分開会
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委員の異動
三月二十六日委員石田次男君辞任につ
き、その補欠として辻武寿君を議長に
おいて指名した。
三月二十八日委員小柳牧衞君、太田正
孝君及び片岡文重君辞任につき、その
補欠として津島壽一君、前田佳都男君
及び村尾重雄君を議長において指名し
た。
本日委員亀田得治君及び村尾重雄君辞
任につき、その補欠として山口重彦君
及び田畑金光君を議長において指名し
た。
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出席者は左の通り。
委員長 大川 光三君
理事
井川 伊平君
後藤 義隆君
高田なほ子君
委員
大野木秀次郎君
津島 壽一君
林田 正治君
千葉 信君
赤松 常子君
市川 房枝君
辻 武寿君
国務大臣
法 務 大 臣 井野 碩哉君
政府委員
法務省大臣官房
司法法制調査部
長 津田 実君
法務省刑事局長 竹内 壽平君
法務省人権擁護
局長 鈴木 才藏君
最高裁判所長官代理者
事 務 総 長 横田 正俊君
事務次長総務局
長事務取扱 内藤 頼博君
人 事 局 長 守田 直君
総 務 課 長 長井 澄君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
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本日の会議に付した案件
○裁判官の報酬等に関する法律の一部
を改正する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
○検察官の俸給等に関する法律の一部
を改正する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
送付、予備審査)
○裁判所法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○裁判所職員定員法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/0
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001・大川光三
○委員長(大川光三君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
この際、委員の異動について御報告いたします。三月二十六日付、石田次男君辞任、辻武寿君選任、三月二十八日付、小柳牧衞君辞任、津島壽一君選任、太田正孝君辞任、前田佳都男君選任、片岡文重君辞任、村尾重雄君撰任、本日付、亀田得治君辞任、山口重彦君選任、村尾重雄君辞任、田畑金光君選任、以上であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/1
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002・大川光三
○委員長(大川光三君) 次に、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、刑法の一部を改正する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案、以上四件を一括して議題といたします。
まず、当局より法律案の御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/2
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003・井野碩哉
○国務大臣(井野碩哉君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。
政府は、人事院勧告の趣旨にかんがみ、一般の政府職員の給与の改定を行なうこととし、今国会に一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出し、御審議を仰いでおりますことは御承知の通りであります。この裁判官の報酬及び検察官の俸給に関する両法律案は、一般の政府職員の給与の改定に伴い、一部の裁判官及び検察官の報酬または俸給の各月額を改正しようとするものであります。以下、改正の要点を説明いたします。
まず第一に、一般の政府職員については、中級職員の給与の改善を行なうことといたしておりますので、月額三万円以下の報酬または俸給を受ける裁判官及び検察官につきましても、これに準じてその報酬または俸給の各月額を増額しようとするものであります。
第二に、判事、判事補及び簡易裁判所判事並びに検事及び副検事につきましては、さきの改正によりまして暫定手当の一定の額が報酬または俸給の広月額に繰り入れられ、百円未満の端数を生じておるのでありますが、今回、一般の政府職員について俸給表を整備し、端数の整理等を行なうことといたしておりますので、これに準じて右に述べました裁判官及び検察官の報酬または俸給の各月額について百円未満の端数を切り上げる等の措置を講じようとするものであります。
この改正は、一般の政府職員の場合と同様、昭和三十五年四月一日から施行しようとするものであります。
以上が裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願いいたします。
次に、刑法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
近年いわゆる不動産の不法侵奪、すなわち正当な権限もないのに他人の土地を占拠して建物を建てるなどの行為が、しきりに各方面から問題とされるようになりましたことは周知の通りであります。言うまでもなく、現在問題となっております不法占拠のうちには、終戦直後の社会的混乱期に行なわれたものも少なくありませんが、国民生活もおおむね安定し、社会秩序も平常に復した現在におきましても、なお同種の行為が跡を絶たない実情にあります。しかも、不法占拠のためには、しばしば暴力その他の不法手段が用いられ、他方、権利者の側でも、民事的な手続による早急な解決が困難であるなどの理由から、実力をもって権利を回復しようとする傾向もあるやに見受けられるのでありまして、不法占拠をめぐって各種の暴力的な犯罪が発生することもまれではないのであります。このように、実力をもって他人の不動産を不法に自己の支配に移すような行為を放任しておくことになりますれば、不動産の安全な利用に対する国民の不安感を強め、ひいては、国民一般の順法精神にも軽視することのできない悪影響を与えることとなりますので、政府におきましては、かねてからこのような事態の発生を防止するため懸命の努力と検討を続けて参ったのでありまするが、最近におけるこれら事犯の趨勢にかんがみまして刑法の一部に改正を加えるの必要を認め、ここにいわゆる不動産侵奪罪に関する規定及び境界毀損罪に関する規定の新設並びにこれに伴う所要の改正を内容とするこの法律案を提出することといたしたのであります。
この法律案の骨子は、次の通りであります。
まず、不動産侵奪罪に関する規定は、不法領得の意思をもって、不動産に対する他人の占有を排除し、これを自己の支配下に移す行為を動産に対する窃取行為と同じように処罰しようとするものであります。従来におきましても、不動産に対する窃盗罪の成立を認める学説はありましたが、検察及び裁判の実務では、窃盗罪における窃取の観念を不動産についてまで拡張するのは相当でないという理由から、不動産窃盗として起訴または裁判された事例は一つもないのであります。従って、今直ちに従来の解釈を改めることは、法律生活の安定という面から好ましくありませんので、不法領得の意思をもってする不動産に対する占有の侵害を処罰するためには、特別の規定を設ける必要があると考えられたので、本罪を新設することといたしたのであります。なお、本罪は、動産に対する窃盗と同じ性質の犯罪でありまするから、これと同様に、未遂罪の規定を設け、また、いわゆる親族相盗例を適用するものとすると同時に、日本国民の行なう国外犯とすることが相当であると考えられますので、それぞれ関係法条に所要の改正を加えることといたしたのであります。
次に、境界毀損罪に関する規定は、境界標を損壊し、移動し、もしくは除去しまたはその他の方法で土地の境界を認識することができないようにした行為を処罰しようとするものであります。この規定を新設する趣旨は、第一の不動産侵奪罪に関する規定の新設と関連するのでありますが、他人の土地を侵奪するための手段などとして境界を毀損する行為が頻発している実情にかんがみ、不動産に関する権利の保護に十全を期するためには、現行の器物損壊罪などの規定のみではまかなえない百面があり、改正刑法仮案でも認められておりますように、土地の境界を不明にする行為それ自体を取り締まるのが相当であると考えられたからであります。
以上が刑法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願い申し上げます。
次に、裁判所法の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明いたします。
この法律案は、裁判所法第六十条を改正して、裁判所書記官は、従来の職務のほかに、裁判所の事件に関し、裁判官の命を受けて裁判官の行なう法令及び判例の調査その他必要な事項の調査を補助する職務をも行なうものとしようとするものであります。
裁判所書記官は、裁判事務についての補助的機関であって、その職務の重要であることは申すまでもありませんが、最高裁判所においては、かねてから、その任用資格を高めるとともに、研修制度を整備する等、裁判所詳記賞の学識、能力の涵養に努めて参りました結果、最近における裁判所書記官の素質の向上は暫しいものがあると認められるに至りました。しかるところ、近年、裁判所に係属する事件の増加に伴い、裁判官の精励努力にもかかわらず、訴訟の遅延を見るにいたり、その解消が刻下の急務とされておりますことは御承知の通りであります。そこで、政府におきましては、最高裁判所とともに慎重検討の結果、裁判官について任用資格等の関係からその大幅な増員が期待できない現状のもとにおきましては、事件の審理及び裁判の適正迅速化をはかり、人権保障の実をあげるための方策の一として、素質、能力の向上した裁判所書記官をして、その従来の職務に付随して、事件に関し、裁判官の命を受けて、法令及び判例の調査その他の裁判官の行なう調査を補助させるのを適当とするとの結論に達し、ここにこの法律案を提出した次第であります。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/3
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004・大川光三
○委員長(大川光三君) ただいま御説明を受けました法律案のうち、刑法の一部を改正する法律案と、裁判所法の一部を改正する法律案に対する質疑は、次回にこれを行ないたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/4
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005・大川光三
○委員長(大川光三君) それでは裁判官の報酬、検察官の俸給等に関する法律案二件について御質疑のある方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/5
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006・高田なほ子
○高田なほ子君 法務大臣がおいでになりましてから、実は基本的な問題について伺っておきたかったわけですが、それは、前回、裁判官の報酬の問題について本委員会で大へん問題にした点は、大川委員長から御発言があって、裁判官の「相当額の報酬」については憲法の七十九条と八十条に規定する優位の原則というものが認められなければならないのじゃないか、こういうような御質問があったはずです。これに対して法務大臣が、裁判官の職責の重大であること、それから国民の信頼を十分に保持し得るに足るような待遇を保障する趣旨が、この憲法七十九条と八十条のこういう趣旨である、こういうふうに御答弁があって、裁判官の報酬の優位の原則を法務大臣はお認めになってきたと思う。そこで私は重ねて、前に三者協定のようなものがありましたから、この三者協定については当委員会としては一本くぎをさしておいたつもりでありますけれども、今回の裁判官の報酬というのは、憲法に規定し、かつまた法務大臣が認識される優位の原則というものが、今度の改正案の中で貫かれているものかどうかということについて、若干疑問を持つ点があるわけなんです。それで、具体的にどういうふうに優位になったかということを伺いたいわけです。今、幸い法務大臣がお見えになりましたから、原則論についてもう一度法務大臣にお尋ねしておきたい。今発言したばかりのところでありますが、前の裁判官の報酬に関する法律を私どもが手にかけましたときに、大川委員長から発言があって、裁判官の相当額の報酬について、憲法の第七十九条と八十条は明らかに裁判官優位の原則を確立するという趣旨の文面であるということが、大川委員長から指摘されたわけであります。それに対して法務大臣としては、裁判官の職責は非常に重大である。従って国民の信頼を十分に保持し得るに足るような待遇を保障するということが、この憲法の七十九条並びに八十条の趣旨である、こういうふうに御答弁になったと思うのです。今回もこの一般の政府職員の給与の是正にかんがみて、裁判官の報酬が改善されるようでありますが、改正にあたっては、依然として前に大臣が御答弁なさったように、憲法に規定する裁判官優位の原則というものが貫かれるべき筋合いのものだというふうに私ども承知するわけなのです。従いまして、大へん基本的な問題でありますけれども、あらためて法務大臣から、裁判官優位の、原則というものは、憲法の中でどういうふうに立てられなければならないというお考えを、再度お尋ねをしておきたかったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/6
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007・井野碩哉
○国務大臣(井野碩哉君) 高田委員の御説の通り、裁判官の待避に関しましては、憲法七十九条、八十条等に規定されておりますように、他の一般職員に比較して、これを優遇と申しますか、重要視して参らなければならないことは、これは当然であると考えております。従って、従来もそういう趣旨で裁判官の報酬につきましては政府としても考慮して参った次第であります。今回の改正は、ただ一般職員の改正がございましたので、それに合わせて改正をいたしましたので、これは単なる一般職員との——つまり裁判官の報酬は一般職員よりはよくなっておりますが、一般職員の方がよくなれば裁判官の方もそれだけよくしなければならないわけでございますので、その均衝のために改正をいたしたような次第でございまして、お説のような問題につきましては、今後も裁判官の任用制度の問題に関連いたしまして裁判官の報酬の問題を十分に考慮して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/7
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008・高田なほ子
○高田なほ子君 私、そこが問題だろうと思うのです。今の大臣のお考えが問題だろうと思う。一体、裁判官の報酬の優位の原則を法務大臣も認めておりますが、法律上、この裁判官の報酬の優位原則を認めるような法律上の根拠というものはどこにありますか、何かございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/8
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009・井野碩哉
○国務大臣(井野碩哉君) それは憲法が一番もとでございまして、それに基づきまして今日の裁判官の報酬の法律の中にも、そういう趣旨の規定はございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/9
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010・高田なほ子
○高田なほ子君 憲法は、確かに原則的に書かれてありますけれども、どうも最近、憲法にはあるけれども、事実はすべて空文になるというような現実なんです。裁判官の報酬の優位原則は、ちゃんと憲法にはあるけれども、現実には法律的に何にも根拠がない。むしろ裁判官報酬法の第二条の二、九条、第十条、これには特別号俸の設定、各種手当の支給、べース・アップ等が、これが一般官吏の例に準ずる旨の従属的な規定が置かれてある。一般官吏の例に準ずるという従属的な規定を置いています。私はこの一般官吏の例に準ずるという、この従属的な規定というものが、今回の、このせっかくの裁判官優位の原則を認めながら、またしても今度一般の政府職員の例に準じて、これと同じように是正するということで、さっぱりその憲法の原則というものが打ち立てられないのじゃないかという考えを持つわけです。でありますから、法律上に一般の政府の職員に準ずるなんという、そういうような従属的な規定というものは、これは改正されるべきものじゃないかというふうに考えておりますけれども、ここの運用をどういうふうになさるおつもりでおられますか。大臣のお考えがしかっりしてないから、裁判所は腰が弱いから、年中裁判所は下積みになっている、大臣、もっと憲法々々と言わないで、法律の従属規定をどうするかということについてお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/10
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011・井野碩哉
○国務大臣(井野碩哉君) 大臣がしっかりしてないからどうもいかぬというおしかりを受けておりますが、私は裁判官につきましては、他の職員よりも優位に取り扱わなければならぬという信念を深く持っております。従って、今回の改正で一般職員に準ずるという規定を置いたのはけしからぬ、こういうお言葉でございますが、今回は手当の点について一般職員の方をそれだけ上げますから、裁判官、検察官も同じように上げたというので、準ずるという言葉を使ったから、その準ずるという言葉自体が、裁判官の地位を一般職員並みにしたと、そういう意味ではないので、ただ俸給を上げる法律的な、技術的な用語にすぎないのでありますから、この法律があるがために、われわれの従来からの信念が破れたというふうには考えておりません。また裁判官の報酬等に関する法律の中におきましても、裁判官の優位性を所々に認めておりますので、憲法だけでなく、法律におきましてもその優位性を十分に認めておると信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/11
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012・大川光三
○委員長(大川光三君) ちょっと速記をとめて。
午前十一時十八分速記中止
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午前十一時五十二分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/12
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013・大川光三
○委員長(大川光三君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/13
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014・高田なほ子
○高田なほ子君 裁判所の方にちょっとさっきの大臣への質問に関連してお尋ねいたします。
この裁判官の報酬法の中にある各種手当の支給、それも今度の一般職の職員の給与と同じように調整されるように思うわけですけれども、これはあれですか、裁判官報酬法に基づいて今度の改正をおやりなったということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/14
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015・津田実
○政府委員(津田実君) 私の方は法務省でございますが、今度の趣旨といたしましては、手当の方はこれにはね返ってくることは考えられますが、本来は裁判官の報酬の表を改めるということになっておるわけでございますから、報酬そのものが改まるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/15
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016・高田なほ子
○高田なほ子君 この報酬そのものを改める、その法律的な根拠は、裁判官報酬法に基づいたものなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/16
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017・津田実
○政府委員(津田実君) 裁判官の報酬に関する法律の一部を改正する法律案をただいま御提案申し上げているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/17
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018・高田なほ子
○高田なほ子君 これは一般職と同じ率でもって改正されることになるわけですが、今までのこの裁判官報酬法の第二条の二、九条、十条、これは特別号俸の設定とか各種手当の支給とかべース・アップ、こういうものは一般官吏の例に準ずる旨の規定が置かれてあるわけですが、今回のこの報酬の改正も、一般官吏の例に準じて行なわれたものだとすると、先ほど私が大臣に御質問申し上げたように、裁判官優位の原則というものは、その準ずるということからは出てこないんじゃないかという質問をしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/18
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019・津田実
○政府委員(津田実君) この第二条の二と、それから裁判官の報酬等に関する第九条の場合に、一般官吏の例に準ずるということになっておりますが、これは手当あるいは特別号俸についての問題でございまして、今回改正いたしますのは俸給の表そのものを改正するわけで、三万円以下のものにつきまして、一般職におきましてある額が増額されるわけであります。それに準じまして裁判官につきましてもある額を増額する、こういうことになっておるわけでございましてお手元に差し上げました参考資料の十一ページに横の表がございますが、そこに一般との比較が出ておりますが、つまり裁判官、判事補につきましては、下から三段目の九百七十円という増加額から上へ上がりまして、三百四十円という判事補五号の増加額、そこまでが実質的に増額される、いわゆる中だるみが是正される、こういう問題でございましてそれから上の三十円、七十円というふうな小額の増加がございますが、これは端数を切り上げるというような趣旨の、ごく整理的な増額でございます。この表でごらんいただきますと、これに対応する一般行政職(一)の方につきましては、一番右の方にございますように、増加額は最低八百八十円から二百九十円という三万円程度のところまでが一応の増加になっておりまして、それから上は端数切り上げあるいは間差額の是正という程度に行なわれておるのであります。そういう一般職につきましてやっておりますところの改正に準じて裁判官、検察官につきまして改正を行なうということでございまして、先ほど御指摘の裁判官の報酬等に関する法律の二条の二または九条の「準じて」ということとは関係がないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/19
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020・高田なほ子
○高田なほ子君 具体的には関係がないかもしれませんけれども、そうするとあれですか、一般政府職員よりはやはり大へんよくなって改正されるということになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/20
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021・津田実
○政府委員(津田実君) このもともとの額が、一般政府職員よりも高額になっておる、ただ高額になっている形でありますが、それは一般政府職員の、つまり上の者と対比している形になっておるわけでございます。でありまするから、たとえば判事補の十号というのは現行におきましては一万七千三百三十円、それは一般行政職におきましては五等級の二というものが大体それに似ておるということでございます。しかしながら、判事補の十号の人と五等級の二の人を考えますと、これはたとえば任官後の年数というものは非常に違ってくるわけであります。判事補は修習生を終わった者が直ちに十号に任用されるのでありますが、五等級の二に一般職でなりますと、かりに上級公務員の試験を通りましても相当年数を要するということにおきまして、判事補の方が俸給の優位になっておる、こういうことになるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/21
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022・高田なほ子
○高田なほ子君 いろいろごたごた言って下さるのですが、私は原則的なことを一生懸命になって聞いているわけです。前に日本弁護士連合会から裁判官及び検察官の給与改正に関する要望が参りましてこの要望の中でも、私が前に述べたように、裁判官優位の原則というものが次第にくずれているということが指摘されている、昭和二十三年の第二国会において確立した裁判官と検察官との給与上の格差は、これを保持されるべきものと信ずる、ところが二十三年の第国会でこの問題が出てき、さらにその後裁判官の報酬法が出されて裁判官報酬法の二条、九条、十条、この中では手当とか特別号俸設定とか、ベース・アップ等は、一般官吏の例に準ずるというふうな準則規定が置かれてから、次第に裁判官と一般官吏との格差がだんだんなくなってしまい、ややともすれば裁判官の報酬までが一般官吏の俸給の例に準じて、これと同額にきめられなければならないかのごとき誤解を与えてきている。そういうような解釈に基づいて今般の報酬の改正を行なわれたのではないかという疑問から、私は一般論として伺っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/22
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023・津田実
○政府委員(津田実君) ただいま御指摘の通り第二回国会当時におきましては、裁判官と一般職員との優位性は四〇%というふうに認められたわけでございます。今日におきましてこの優位性が連続しているかどうかという点でございますが、これは上級者につきましては、今日におきましてそういう四割の優位性というものは出ておりません。たとえばごく最近の例を申しますと、先般の改正におきまして判事の報酬八万円というものができました。これは一般の七万八千円というのに二千円優位であるということによって判事の優位は保たれておる、こういうことになっておるわけであります。ところが一般職におきましては、管理職手当との問題でさらにその差を縮めるというようなことが行なわれたということは事実でございます。それに対しまして、最近におきましては、やはり裁判官につきましても管理職手当を認めるというようなことによりましてさらに優位を確保していく、こういう形になっておりますが、第二回国会当初のような優位は、今日においてはないということになっておるわけであります。しかしながら、そういうことのできない主たる原因はどこにあるかと申しますると、これは御承知のように総理大臣、国務大臣の給与が据え置きになっておりまして、最高裁長官と総理大臣と同じである、最高裁裁判官は国務大臣と同じである、こういう給与にずっといたしてきておるわけです。従いまして、総理大臣の給与が上がらないから、最高裁長官の給与が上がらない。そういたしますと、今の判事の最高給に参りますと、もう非常に差が縮まってきまして、場合によりますと、手当を加えますると、高等裁判所長官より上回る判事が出てくるというような事態が起こる可能性が非常に出てきたわけです。そういう意味におきまして全給与体系を考え直さなければならない、こういう事態に到達しておると私どもは考えるのでございますけれども、根本的な改正は、今回はどうしてもできない。ということは、どういうことでございますかと申しますると、裁判官につきまして根本的な給与の改正をするためには。裁判官の任用制度を改めなければならぬという要請が出ておりますので、その意味におきまして、裁判官の任用がまだ検討中である今日におきましては、画期的な裁判官の百優位性を認めるという給与体系ができないという状況になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/23
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024・高田なほ子
○高田なほ子君 そうするとあれですね、総理大臣の報酬それ自体も改まらなければ、裁判官の俸給というものは根本的にいじることはできないということになるわけですか。非常に私は常識的なことを質問しているわけですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/24
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025・津田実
○政府委員(津田実君) その点は、裁判官あるいは検察官と申しまするいわゆる法律家の評価という問題に根本的になると思うのです。法律家の評価を高くして、総理大臣その他と関連を持たせな、で給与体系がきめられるというようなことに考えられますれば、それは問題でないと思います。でありますけれども、一般国家公務員の給与体系の一つであるという考え方になりますと、総理大臣の給与を上回る裁判官というものが、それは最高裁長官は別といたしましても、なかなか認めにくいということなんで、結局、そこの根本的な考え方を変えなければならぬという問題になるのでございますが、そういたしますと、裁判官の任用を、ただいまのように、大学を出て、司法修習生になって、判事補になって、十年たって裁判官になるというような任用制度では、そういう体系の給与はできない。要するに、法曹一元を実現して、全法律家——弁護士を含めての全法律家の中から、りっぱな人を裁判官にするということによって、初めて総理大臣の給与との権衡を破ってもよろしいというような結論になると思いますが、今日におきましては、まだそういうふうな、法曹から優秀な裁判官を任命するというような基盤ができておりませんので、その給与体系がむずかしいということになっているというふうに考えられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/25
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026・赤松常子
○赤松常子君 今、私この表を拝見いたしまして、下から三番目あたり、ちょつと今見たのですけれども、裁判官俸給月額の表と一般職のそれとの比較におきまして、下から三番目でございますね、改正案は一万八千三百円になるわけです。そうして増加額が、九百七十円、ところが一般職は、増加額が九百九十円で、そうして改正案は一万八千三百円になるわけでございますが、こういうふうに見てきますと、決して一般職よりも高くないのですね。増加額も、一般職は九百九十円上がるのに、こちらは九百七十円というので、何か今までいろいろ論議されておりますこととは、逆行しているといいましょうか、追いつけないといいましょうか、はっきりした数字が出ておりますが、これはこの通りでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/26
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027・津田実
○政府委員(津田実君) ただいま御指摘の一番横に書いてございます、判事補十号でございますが、これが一万八千三百円というのが、今度の改正案でございます。それから一般行政職で申しますと、五等級の二号というのがやはり一万八千三百円になるわけでございます。そういたしまして、判事補十号というのはどういう人がなるかと申しますと、司法試験に合格いたしまして、二カ年の修習を終わった人は直ちにこの十号の一万八千三百円に格付されるわけです。ところが、一般行政職の五等級の二号は、国家公務員の上級試験を受けましても、相当の年数たたなければ五等級の二号になれないという意味におきまして裁判官は最初から一般職の人より優位であるということが出てくるという意味でございます。でありますから、一万八千円を両方比較いたしますと同じでございますが、これは行政職では相当年数のたった人であり、判事補では直ちになる、こういうことでございます。大体、五等級の二号になるのは、一般行政職では、採用後七年かかる。判事補につきましては、採用後三年でございますから、非常に違うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/27
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028・赤松常子
○赤松常子君 そうすると、年令におきましてもまた家族構成におきましても、裁判官の方々の方は家族構成も少ない。ということも言えるのですか。一般職の方と比べると、年令の比較などは、比較的若くてこれだけもらっていらっしゃるといえるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/28
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029・津田実
○政府委員(津田実君) 大体、一般論としてはさように申し上げられるわけです。ただ御存じのように、司法試験はむずかしいものでありますから、大挙在学中に合格できない場合が多いという意味におきまして、かりに大学を出て一年たって受かるとすれば、そこに一年の差が出てくるわけでございます。一般の行政職で大学を出てすぐ採用される場合と、一年の差が出てくるわけでございますけれども、そう大きな差はないわけでございます。一般論としては、同じ年令の人では裁判官の方が給与が高いということが申されると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/29
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030・大川光三
○委員長(大川光三君) 裁判所の方に対して他にございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/30
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031・千葉信
○千葉信君 きょう答弁で来ておられるのはどなたとどなたですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/31
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032・大川光三
○委員長(大川光三君) ただいま出席されておりまするのは、最高裁の守田人事局長、最高裁の横田事務総長、法務省の津田調査部長であります。なお、最高裁の内藤事務次長が見えておられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/32
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033・千葉信
○千葉信君 今ここに法務省設置法等がないものですから、それでお尋ねするのですが、やつぱり裁判官の報酬等に関する法律上の提案者は、これは総理大臣ということになると思うのですが、従って私どもの方で質問した場合の答弁者は、あなた方の方ではどちらの方で答弁するというお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/33
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034・津田実
○政府委員(津田実君) 法務省設置法によりますと、司法制度その他法務に関する法令案の作成は法務省の所管になっております。そこで、もちろん国会に提出いたします場合には、政府、内閣が提出するわけであります。でありますが、政府部内における分担といたしましては、法務省の所管事項になっております。そこで、裁判官の報酬等に関する法律は、司法制度と解釈されておりますので、法務省所管として提出しておる。ただ問題は、内容につきましては、これは最高裁判所におきまして処理するわけでございます。従いまして俸給の内容に関する予算につきましても、これは最高裁判所が直接大蔵省と折衝して予算をきめるわけであります。そういう予算においてきまりました内容で、法律案を要する事項につきまして、大蔵省並びに最高裁から法務省に連絡があって、法務省において立案をして閣議を経てこれを提案する、こういう次第になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/34
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035・千葉信
○千葉信君 本来、特別職の職員に対する俸給とか給料の関係は、特別職に関する俸給の法律に基づいてこれは大蔵省が所管しておるはずですが、その特別職の中のそれぞれの任命権者の異なるものは、たとえば自衛隊であるとか、あるいは裁判官、検察官というふうに、それぞれの任命権者が異なる分についてのその問題の担当者は、それぞれの任命権者ですかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/35
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036・津田実
○政府委員(津田実君) これは各省庁の設置法によることだと思うのでございますが、特別職一般については、御指摘のように大蔵省の所管になっておりますが、特別職一般の俸給のうちで司法制度に関するものという意味におきまして、特別のものという意味において法務省の所管になっておるというふうに解釈しておるわけであります。防衛庁につきまし、はよく存じませんが、おそらく同じ見解ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/36
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037・千葉信
○千葉信君 裁判官の場合には、大体その具体的な内容の検討等が最高裁で行なわれ、予算の折衝等も従って大蔵省と直接行なわれる、その結果その決定に基づいてこれを法務省の方に連結し、法務省が法務大臣を通じてこれを閣議にかけて最終決定を行なう、ここまではわかるのですけれども、たとえば裁判官の職員の中に、裁判官並びに秘書官以外の職員がたくさんおります。その裁判官以外の職員等の関係については、裁判所職員臨時措置法に基づいて、たとえば身分の問題、勤務条件の問題、あるいは報酬等の問題も、国家公務員の方の引用裁定、あるいは一般職の職員の給与に関する法御の引用規定等を基礎として、最高裁においてこれを決定する、こうはっきり法律に明定されております。
ところで、問題になりますことは、最高裁の裁判官といえども、これは最高裁としては職員だし、その他の職員の場合においても同じ最高裁の職員、ところが裁判官、秘書官以外の分については、その裁判所職員臨時措置法の規定に基づいてこれは最高裁で一切の最終法規が行なわれる、こういう建前になっているはずでございますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/37
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038・津田実
○政府委員(津田実君) ただいま御指摘の通り、予算関係につきまして大蔵省が関与しているにすぎません。内容につきましては、法務省が関係を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/38
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039・千葉信
○千葉信君 ここにこの法律がありませんけれども、私の把握しているこの把握が間違いないことは確かめられたわけですが、従って、そういうことになりますと、最高裁のその他の職員等の問題等について、最高裁が責任を持ち、最高裁は、決定した事項そのものについて、これがやり方としては、おそらくこれも裁判官の場合と同じように法務省を経由して閣議決定が行なわれて国会に提出される、法律上のそういう経路はわかりますけれども、内容の問題について、国会に対して責任を負う者は法務大臣だということはわかるけれども、実際上の内容についての国会の質疑応答等については、やはりこれは最高裁の最南責任者としての最高裁の長官に私は責任があるという見解なのですが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/39
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040・津田実
○政府委員(津田実君) この裁判所職員臨時措置法によりまして裁判官及び秘書官以外の職員についての給与内容につきましては、最高裁判所がきめることは、ただいま御指摘の通りでございます。その内容につきましては、大蔵省と予算上の関連を持っているということは先ほど申し上げた通りであります。従いまして、その最高裁で行なわれておるところの裁判官、秘書官以外の職員の給与の内容につきましては、法務省としては関連を持ち得ないわけです。従いまして、その内容が閣議に上るということはあり得ないわけでございます。ただ、これが法律問題となって参りました場合は、司法制度の一環として法務省の所管でございますので、それは、むろん法務省に責任があるわけでございまするけれども、ただ、具体的の運用につきまして、あせんけれども、私の把握しているこのものは、これはいわゆる司法行政の範囲に属する司法行政につきまして、また三権分立の関係におきまして、国会、裁判所、それから行政府との関係で、どういう責任の関連を持つかということは憲法上の大問題でありますが、私どもは司法行政につきましては、これは最高裁がまかされている範囲内において量的に行なえるものであって、これをかりに批判するとすれば、最高裁判所裁判官の国民審査よって批判する以外には方法がないのではないかといふうに、私どもは司法制度を運用する上においては考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/40
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041・千葉信
○千葉信君 裁判官に対する適否の国民審査の問題はこれは問題として考えなければなりませんけれども、それはこの場合には問題は別です。私のお尋ねしている主眼点は、今お話のように、法務大臣が一応法律上の責任をもってこれは国会に提案されるから、当然その立場における答弁は法務大臣が当たらなければならぬ、これはわかる。ところが今お話のように、その内容等を具体的に決定した実際上の責任者は最高裁の長官であるという立場からすると、その内容の検討については、当然これは最高裁の長官が責任をもってその内容等の説明に当たる、あるいは非違があればこれに対しては責任を負わなければならぬ。そういう解釈になれば、私はここで一つ問題があるのは、従来、最高裁の長官は、どういう理由か、私はその理由の理解に苦しむのですが、最高裁長官は国会に招致されても出席の義務はないなどということをずっと一貫してとってこられた。私は三権分立といっても、最高裁の長官等の場合には、裁判権の独立という立場から、この問題についての国会の介入とか責任追及とかいうこと一については、最高裁の長官はこれを拒否して一向差しつかえない。ただし司法行政の一環としての問題、しかもそのうちの法務省等で専決執行できない、むしろ最高裁の方で専決執行している事項等については、たとえ三権分立の建前であるとしても、立法府の立法事項の審議等の喚問に最高裁の長官が応じないということは、私はこれは納得できない点だと思うのですが、法務省ではどういう見解か、それから最高裁では今の質問に対してどういう見解を持っておられるか、それをお尋ねしたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/41
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042・津田実
○政府委員(津田実君) ただいまの、最高裁の内部において自主的に運営すべき事項として法律に定められている事項につきましての責任は、最高裁裁判官会議が負うわけであります。最高裁判所長官は裁判官会議の主宰者としての責任がまたあるということになると思います。そこでその事項につきまして国会に対していかにして連絡がつくかと、こういう問題だと思いますが、この問題につきましては、私どもの今まで到達しておる見解といたしましては、国会法の七十二条には、「最高裁判所長官又はその指定する代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる。」という規定一項しか見当たらない。そこでこれは最高裁側から出てくるという問題でございます。問題は国会側から喚問し得るかという問題に帰着すると思います。その問題につきましては、これは司法行政につきまして一般行政府のように、最高裁判所が国会に対して直接責任を負うやいなやという憲法上の重要な問題だというふうに考えるわけであります。しかしながら、ただいままでの私どもの検討いたしました見解といたしましては、直接国会において責任を問われるということには最高裁はならない、具体的事件につきましてもむろんでありますが、司法行政につきましてもさようではないかという結論でございます。これは司法行政の点についてはさらに問題があるかと思われますが、それを法律が裁判所に委任した以上は、しかもそれが事件の処理——具体的に裁判に直接、間接に影響があるという事項につきまして司法行政の範囲をしぼるならば、それはそういうことにならざるを得ないのじゃないかというように、ただいまのところ研究の結果は相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/42
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043・千葉信
○千葉信君 そうすると七十二条の解釈は、これは国会の側から出席を要求するということでなくて、最高裁判所長官またはその代理者の方からの要求で、出席するかしないかはそれは最高裁の立場からの判断にまかせられるという、そういう見解ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/43
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044・津田実
○政府委員(津田実君) 国会法の有権解釈はもちろん私どもがいたすわけじゃございませんですけれども、法務省といたしまして解釈いたしているところによりますれば、「その要求により、」というのは長官または代理者の要求であり、「委員会の承認を得て」というのは、委員会において出てきてもよろしいという承認を得たので出てくるという意味に、この文理からは解さざるを得ないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/44
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045・千葉信
○千葉信君 この七十二条は、これは会計検査院の院長あるいは検査官の問題が第一項、第二項は最高裁の関係ということになりますけれども、ただいまの御答弁では、これは見解が完全に分かれるわけです。これは法律の条文の解釈については、今の御答弁のような解釈も一方には成り立つ疑いのある条文になる、しかし解釈としてはそうではない、先ほどからいろいろ質疑をいたしました問題に関連して、実際上の問題の内容を作成したもの、同時にまたその問題に対して責任をとらなければならないものの国会出席が、この場合は召喚される側の任意によってきまるということになれば、一体、国会でほんとうの問題の究明はできないのじゃないか。それで一体三権分立の建前がくずれることなしに、しかも最高機関としての国会の権威が確立されるかどうかという問題も出てくる。そうなれば、やはりこの条文の解釈等については、実際問題から出発した解釈でなければ、ほんとうの解釈にならぬという点からいっても、今のあなたの解釈はどうしても了承できない。特に具体的な問題としては、裁判所職員臨時措置法等の関係を見ても、非常に大きな問題が最高裁の専決事項として決定される、しかもこれに対して最高裁の長官なり、あるいは最高裁の連中は、何ら国会に対して責任を負う必要はない、答弁にも当たる必要はない、答弁するとしても、それは自分たちの自主的な判断、恣意のままに行動できるのだ、こういう解釈は一体合理的と言えますかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/45
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046・津田実
○政府委員(津田実君) ただいま御指摘のような事項につきましては、最高裁裁判官会議が責任があることは先ほど来申し上げた通りであります。その責任者についてその内容を検討する、あるいは内容を明らかにするという事柄が必要であることも、またこれは明らかだと思うのです。その内容を明らかにする場をいかなる場所に求めるかということになると思うのです。従いまして、それが国会がそれをやる場であることが最も適当であると考えられまするならば、裁判所たるものは進んで出て説明をすべきだというふうに私は考えるわけであります。しかしながら、ただいまの解釈は、国会側が出席を求めるということは法律上は拘束力がない、出席をお求めになることはできると思うのですけれども、出席の拘束は今の国会法上はないものと解釈せざるを得ないと私どもは考えるのであります。しかしながら、進んでその内容を国民の前に明らかにするために出席して、合理的な説明をするいうことは、これは決して否定すべきことじゃなくしてそういうことがよろしいということになればそうすべきであると思うのでありますけれども、それはやはり最高裁が自主的にそういう判断をしなければその結果は生まれてこないのじゃないかというふうに現在は考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/46
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047・千葉信
○千葉信君 これくらいにして、食事の時間ですから休憩されたらどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/47
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048・大川光三
○委員長(大川光三君) それでは、午前中における質疑はこの程度にとどめまして、午後一時三十分まで休憩いたします。
午後零時三十一分休憩
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午後一時四十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/48
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049・大川光三
○委員長(大川光三君) これより委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き質疑を行ないます。御質疑のある方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/49
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050・千葉信
○千葉信君 最高裁でも法務当局でもいずれでもいいんですけれども、今回、根本は人事院の勧告を基礎にして一般職の職員等に準じて給与改定が行なわれようとしているわけですが、やはり問題として考えてみなければならないのは、一体、裁判官に対する報酬を通じての待遇なるものが適正なものかどうかということは、十分これは慎重な態度で検討しなければならないと思うのであります。そういう点の判断の基礎として、一体、裁判官、検察官の平均報酬額はどれくらいになっているかということが明らかにされなければならないと思います。それによって、一体他の職員に比していいかどうか、適正かどうかということが検討されなければならぬ、ところが問題は、平均報酬額だけではこれは比較にならないと思うのであります。なぜなら、全く同一の条件のもとに勤務し、あるいは同一の資格のもとに採用されているわけではありませんので、他の職種の比較ということになりますと、その点についてもう少し突っ込んだ検討が行なわれなければならぬ。ということになると、一体裁判官、検察官の学歴の状態がどうなっているか、勤続年数の状態がどういうことになっているか、ないしはまた家族構成等がどういう状態になっているか、こういう点も検討を加えなければ、まじめな意味での審議は不可能だと存じますので、今申し上げた裁判官、検察官の平均報酬額、それから学歴、勤続年数、それに少なくとも家族構成等がどういう平地の状態になっているか、これはどの省庁でもそうですが、そういう程度の把握がはっきりしていなければ、その省庁独自の立場においての問題の検討はできないわけですから、これは、たぶん私の推測では、最高裁でも法務省当局にもあると存じますので、それを至急出してもらうことにしたい、これが第一点。
それから第二点は、これは非常に私どもの方から申し上げにくい要求なんですけれども、行政組織法上の法律の関係は、たいていどの六法全書でも完備していないという状態であります。従って、今回のこの給与の改定を審査するにあたって、たとえば六法全書によく抜けている法務省設置法であるとか、特別職の給与法であるとか、それから抜粋ではない検察官、裁判官の報酬、俸給等に関する法律、この程度のものは、これは他の委員会で案件を審議する場合にも行なわれていることですから、それを一つできれば早急に整備していただけないでしょうか。第一点については、これはどうしても出してもらわなければならない。第二点は、できればという要求ですから……。この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/50
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051・津田実
○政府委員(津田実君) ただいまの第一点のうちで、検察官関係につきましては、できるだけ御趣旨の資料を早急に整えることにいたします。なお、法律案につきましても、これまた可能なことでありますから、できるだけ御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/51
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052・守田直
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 裁判官の学歴、平均報酬、家族構成等につきましては、資料を整えまして提出いたすことにいたします。
なお、裁判官の報酬等に関する法律につきましては、それだけを別偶に印刷いたしまして、お手元に差し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/52
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053・大川光三
○委員長(大川光三君) ちょっと当局に伺いますが、今、千葉委員の御質問のうちの第一点ですね、これについて概要を今わかりますれば、一応概要だけでも説明をしていただくと非常に便利ですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/53
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054・守田直
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 裁判官の平均の報酬月額の概算を申し上げますと、判事、判事補、簡易判事というふうに三つに分かれますが、判事は六万七千円、判事補は四万円、簡易判事は五万円程度でございます。学歴は皆大学卒で、特に専卒の者もありますが、ほとんど大学卒でありまして、司法官試験に合格いたしまして、司法修習生に採用され、二年間司法研修所において研修を受けまして、採用されてきておるものでございます。勤続年数は、判事、判事補、簡易判事とおしなべて平均いたしますれば、約二十年程度になろうか思います。家族構成は、今資料もございませんので、ちょっと申し上げかねます。相当家族はあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/54
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055・津田実
○政府委員(津田実君) 検察官につきましては、これは検事、副検事を通じまして平均給与五万二千円、それから学歴につきましては、司法修習生から採用いたします関係上、ただいま裁判所から申し上げました通り、ほとんどの者が大学卒、それから勤続年数につきましては、検察官は裁判官より二年定年が低いわけでございます。大体、ただいま裁判所と同じくらいのところで、若干それを下回るかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/55
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056・千葉信
○千葉信君 最高裁の方に、ついでにお願いしておきたいことですが、このあと、裁判所法の一部を改正する法律案等の審議の関係もありますので、できれば、今申し上げた資料については、他の裁判所の職員諸君の分も含めて、これは少々おくれても差しつかえありませんから、御用意願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/56
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057・大川光三
○委員長(大川光三君) 他に御発言もなければ、これにて——ちょっと速記をとめて。
午後一時五十八分速記中止
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午後二時十五分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/57
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058・大川光三
○委員長(大川光三君) 速記をつけて。
この際、裁判官の報酬、検察官の俸給等に関する法律案二件にあわせて裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/58
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059・大川光三
○委員長(大川光三君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
御質疑のある方は御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/59
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060・赤松常子
○赤松常子君 私、この説明書の三ページの中ほどにございます最近非常に少年の犯罪事件がふえておりますので、今度そういう傾向と相待って必要な調査の事務がふえましたので、そういう面を充実するということは私は賛成でございますけれども、この間、青少年の問題について公聴会を開きましたときの参考人の御意見の中にもございましたのですが、非常に少年事件を取り扱う方々の態度なり、あるいは少年に接する何と申しましょうね、その方々が、非常に数が多いので、たらい回しにされて少年の心理に非常に悪い影響を与えているという御発言がございましたのですが、そういう面について、とくと御配慮願いたいと思うのでありますが、何か御勘考なすっていらっしゃいますでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/60
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061・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 実は家庭裁判所の調査官の関係と存じますので、私からお答え申し上げます。少年事件の扱いにつきまして御指摘のような問題がございますこと、まことにごもっともと存じます。それにつきましては、関係諸機関の間におきましていろいろ補整をいたしましてそういう弊害のないように努めつつあるわけでございます。で、少年の問題はやはり現在施行されております少年法の精神によりまして処理さるべきものと私ども考えているわけでございまして、少年の保護の徹底、そのための少年の正しい扱い方ということにいろいろ苦心をいたしておるわけでございます。それにつきまして内閣にございます青少年問題協議会あたりにも裁判所関係の者が参りまして、各関係機関といろいろと協議をし、また調整をいたしておるわけであります。御指摘の点につきましては、今後とも十分その弊害のないように努めて参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/61
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062・赤松常子
○赤松常子君 具体的にもうちょっとお伺いしたいのでございます。それで人数はどのくらいおふやしになって、事務量はどのくらいふえる、そういうもっと具体的に処理の方法などお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/62
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063・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 今回の家庭裁判所調査官関係の定員の増員は、調査官二十名でございます。それからさらに調査官補から三十名を調査官に細み入れまして、これは実質的な人員の増じゃなくてこれを調査官に組みかえるわけでございます。合計五十名の家庭裁判所調在官の増員ができたわけでございます。御承知のように家庭裁判所の事件——これは家事事件、少年事件の双方にわたりまして扱っておりましてその両方に家庭裁判所調査官ないし調査官補が事件を担当いたしておるわけでございますが、近年少年事件がふえて参りますと同町に、御承知のようにいろいろ事件の内容が大きな問題を含むようなことが多くございましていろいろ少年の犯罪ないし非行少年の、何と申しますか、凶悪な事例が往々見られるようになったのでございます。そういう事態に即応いたしまして調査官の増員をいたしまして、そういった事案の適正な処理をはかりますと同時に、一方また調査官の研修ということにつきましても充実いたしまして、そういった面の措置をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。実際の扱いといたしましては、少年事件について申しますれば、家庭裁判所には、警察からあるいは検察庁を経てあるいは一般から少年事件が送られてくるわけでございます。それをまず調査官が調査をいたします。そして身柄事件につきましては——身柄事件が全体の十何パーセントかと存じましたけれども——これを少年鑑別所に送りまして鑑別をいたしましてそしてその結果がさらに家庭裁判所の資料になるわけでございます。そういったいろいろ資料を集めまして、同時に調査官が家庭環境あるいは経歴その性格等を調査いたしまして、資料を整えて裁判目の前に出すわけでございます。裁判官はその資料と直接少年に当たりまして処分をきめるわけでございますが、以上申し上げました経路からお考えいただきましても、あるものは警察を経、あるものは検察庁を経、さらに家庭裁判所の調査官あるいは少年鑑別所あるいは裁判官というふうに、その担当の機関々々によって、もちろん別々の立場からそれぞれの職務に応じて調べるわけでございますけれども、少年に当たる人間が、結局一人の少年を対象といたします関係上、ただいまのような御指摘のことが起こるのでございまして、家庭裁判所といたしましては、少年保護処分が最も適正に、迅速に行なわれなければならないというふうに考えておりまして、家庭裁判所調査官の陣容が、わずか今度実質的には二十名の増員でございますけれども、二十名を増員いたしまして、そういった保護処分の迅速、適正な処理をはかろうというようなことを考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/63
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064・赤松常子
○赤松常子君 二十人の増員とおっしゃいましたのは、まだ足りないと思うのでございますけれども、ほんとうはどのくらいなければ事務処理ができないのでございましょうか。とりあえず二十人というので、どのくらい満たされる割合でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/64
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065・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 実は今日の事件を処理するために、計算上何人ぐらい要るかという計算は、実務に応じて私ども計算しているわけでございますが、ただいま私どもが持っております数字を申し上げますと、大体調査官において百五十六人、それから調査官補においてさらに六十四人、約二百名ぐらいの増員は必要でなかろうかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/65
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066・赤松常子
○赤松常子君 それがたった一割の二十人ということでは非常に開きがございますが、どういうところに険路がございますのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/66
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067・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) まことにごもっともな御質問でございますけれども、実は家庭裁判所調査官と申しますのは、何と申しますか、高度の専門的な知識と技術を身につけなければなりません。従いまして、ただいま採用いたしております状況を申し上げますと、大学を卒業いたしまして、専門としては心理学であるとかあるいは社会学であるとか、教育学であるとか、そういった方面の学科を経て卒業いたしましたものを調査官補として採用するわけでございます。それも調査官に適するということは、必ずしも学科の成績がいいというだけではなかなか参りませんので、これはパーソナリティーということをよく申しますが、その人柄あるいは面接いたします感じとか、そういった人柄なども非常に慎重に人選しなければならないわけでございます。その上に、ただ学校を出ましただけではなかなか少年事件にしても家事事件にしても、実際の事件をすぐ扱うというわけに参りません。しばらくそれは官補として補助的なことしながら実務を覚えていくわけでございます。そうして二、三年たちますと今度は研修所へ入れまして、これは学校のような学理ばかりでなくて、実務の研修を一年間いたしまして、そうして調査官の任命資格を得るわけでございますが、調査官としてやはりそういった資質、能力ということがどうしても必要でございますので、数字の上でただいま申し上げましたような必要数が出ますけれども、現実の問題としては、何年か、ある期間をかけましてその陣容をはかるほかはないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/67
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068・高田なほ子
○高田なほ子君 この間ちょっと質問の半分しかけになっているのですが、簡易裁判所の判事の員数が三十人定員減になるわけで、今までは簡易裁判所判事の定員は七百三十人、今度はこれを改正して七百人ということになるわけですね。ですから説明にある通りに、三十人簡易裁判所の判事が少なくなるように改正ですか改悪ですかわかりませんが、私どもから言わせると改悪になるのじゃないかという気がするわけですが、この簡易裁判所の強化、改善についての意見が日本弁護士連合会から出されているのを見ますと、「簡易裁判所の現状は、当初の設置の目的を必ずしも十分に果しているとは考えられない。これを改善して、本来の目的である迅速適正な事件処理を行わしめるために、まず特任制を廃止するのが至当である。」云々と、以下いろいろ要望事項が掲げられているわけであります。この中で、この定員の問題と関係のある部分を読んでみますと、「簡易裁判所裁判官の素質の向上を図ると共に、「その他の問題」として、裁判官数の増員、俸給の増額、簡易裁判所の設置場所の統合などを考え」というふうに、数を減らした方がいいというような意見は、どこにも見当たらないのですよ。どうもいろいろの事情をお話しになったようでありますが、実務家からこういう強硬な強化改善についての意見が出ておるにもかかわらず、三十人を減少しようとする根拠については、どうも私どもの納得するに足る説明がされておらないわけであります。なぜこの三十人という数をここへ出してきて、しかもこれを減員するのか。どうも本来の目的を達するために、このことはいいか悪いかということになるわけですが、私どもの納得するに足る説明があれば、この際、この三十人という問題について説明してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/68
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069・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) じゃ私からお答えを申し上げます。裁判官の定員の増減の問題につきましては、実はやっぱり裁判官に特別の事情があるわけでございまして、なかなかこれは一般の職員の定員の増減と同様に考えられない悩みと申しますか、問題を持っているようでございます。その根本は、ただいま連合会の方の意見も出ておりますと存じますが、やっぱり裁判官に欠員を多くかかえておりまして、その充員ができないという現状からでございます。今度判事の増員ということをお願いしているわけでございますけれども、これもなぜ増員が可能になったか。わずか五十名にせよ、増員が可能になったかと申しますと、これは判事に任命する資格を得た者、そして現実に判事になるであろうという見込みのつく者がそれだけ得られることになったというわけなのでございます。それが現実の増員のこの法律の改正となるわけでございます。
一方、簡易裁判所判事の方はどうかと申しますと、ただいまは御指摘のように、七百三十名の定員を持っているわけでございますが、実際問題として、このうち四、五十名の欠員を常にかかえているわけでございます。これも簡易裁判所判事になる資格を取得した者、そして現実に簡易裁判所判事になる見込みの人が今日四、五十名得られれば、これは問題ないのでございますが、実際問題として、それだけの人が得られない現状でございます。これはいろいろ原因はあろうと存じますけれども、現実の問題としてはそういう実情でございます。
そこで、今回の措置で簡易裁判所七百三十名の定員の中から三十名減らしまして、それで判事の三十名の増員に振り向けましたということは、その実情からいたしたことでございましてもし簡易裁判所判事に四、五十名の充員の見込みが十分立つならば、そういった措置は講じないで済むわけでございますけれども、実情は今申し上げたようなわけでございまして、そういう減員の方法をと、たわけでございます。一方には、やはりこれは国家財政上の要請もございましてそういった措置をとるわけでございます。ただいま申し上げましたように、簡易裁判所の制度あるいは整理統合その他の問題はございますけれども、それは別といたしまして、簡易裁判所が簡易裁判所の裁判官の数が必要とされ、またそれだけの人が得られる現実の見込みが立ちますれば、当然その際はさらに増員をお願いすることになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/69
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070・高田なほ子
○高田なほ子君 手元に参っておりますこの参考資料から見ますと、高裁の欠員は従来十九名、地裁の判事の欠員は六名、判事補が二名、家裁の判事が十五名、それから判事補が二十二名、簡易裁判所の判事が四十四名、このように抜群に簡易裁判所判事の欠員の数が多いわけですね。今の御説明によりますと、資格を取得する条件がないために、従来まで四十名内外の欠員がずっと持続されてきたので、欠員のまま置くのはどうかと思うので、実情に即して三十人を減少したのだという、こういう御説明があったわけです。しかし、定員というのは、やっぱり実際の仕事に即して一応定員というのは割り出されてくるので、その定員を満たすだけの措置をするのが政治だろうと思うし、またそれは当局としての御努力ではなかったかと思うのですが、とにもかくにも、現実の問題として四十四名も特段に欠員が多いということは、どうも資格取得の条件が他に比してはなはだしくむずかしいのじゃないかという気がするわけですが、これはどうなんでしょうかね。資格を取得する条件が他の場合に比べて非常にむずかしいというふうに私あまり考えられないのですけれども、今数字を読み上げたように、あまりにもかけ離れて欠員が多過ぎる。その多い現状に即して今度三十人減らしたということでは、ちょっとどうも納得しかねるわけですが、この資格を収得するための条件というのは、どういう条件なんでしょうか。簡易裁判所の判事の場合の説明をもう少ししていただきたいものですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/70
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071・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 簡易裁判所判事の任命資格につきましては、裁判所法に規定しているわけでございます。司法修習生で二年間の修習を終わりました者は、判事補、検事あるいは弁護士として法曹としての仕事に入るわけでございます。それぞれ判事補、検事あるいは弁護士を三年経験いたしますと、簡易裁判所判事の任命資格を得るわけでございます。そのほかに、簡易裁判所判事につきましては、特に選考による任命を認めておりまして、そういった資格がなくとも、適当な学識のある方あるいは各方面の方を最高裁判所に設けられました選考委員会において選考いたしまして、そうして簡易裁判所判事に任命しているわけでございます。
で、確かに、お話の通り四十名余りの欠員を今日なおかかえているということ、さらにこれを充員することが当局の責任ではないかという点でございますが、まことにごもっともなことだと存じます。しかし、実情を申しますと、判事補、検事、あるいは弁護士で三年の経験を終えた者、これが御承知のように各方面でそれぞれ仕事をしているわけでございますが、この中から簡易裁判所判事の任命を希望する者、ことにあるいは弁護士から、検事からということは、現実の問題として無理でございますが、あるいは弁護士からということが実際には望めないのでございます。そういたしますと、先ほど申しました選考による任命はどうかということになるのでございますが、これは一方、いわゆる特認といわれております人たちが入るわけでございますが、やはり選考任命でこれを満たし残すと、どうもいろいろまた別の面から御批判が出るわけでございまして、選考につきましては、やはり十分な裁判官としての能力ということを基準にいたしませんと、選考任命等もやはりいたすことができませんので、やはりそこにどうしても人員の制約ができてくるわけでございます。実は、昨年あたりから選考任命になるべくいい人を得るように努めますとともに、選考任命で任命された方につきましては、特に簡易裁判所判事としての研修というようなことも考えまして、人員を充員しながら、しかもそういう一般の御批判のないような手段を講じるようにいたしております。そういった実情でございますので、なかなかこの四十数名の充員ということが、今日すぐに実現するということは困難なのが実際でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/71
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072・高田なほ子
○高田なほ子君 今でも選考任命ということはやっておりますのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/72
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073・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/73
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074・高田なほ子
○高田なほ子君 一説に伺いますと、この選考任命というのは、選考する機関といいましょうか、選考する基準といいましょうか、ずいぶんこれはややこしいのだそうですね。それで、なかなか進歩的な考えを持っているような人とか、そういう人は排除するようなむしろ傾向を持っておるということも巷間伝えられておる。そういうようなわけで、なかなか任命されないという点と、もう一つは、簡易裁判所というのは少しレベルを低く見ているのじゃないですか。低いのじゃないのだけれども、低く見ておるのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/74
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075・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) レベルが低いということでございますと、ちょっと私どもとしては受け入れかねるわけでありますが、しかし裁判官の任命資格といたしましては、ただいま申し上げましたように、判事補、検事、弁護士の経験三年ということになります。地方裁判所、家庭裁判所、高等裁判所の判事になりますと、同じ経験がやはり十年必要ということになっておりますので、そういう点では、経験の比較的少ない者が簡易裁判所の判事に任命されるということになっております。これは簡易裁判所の扱います事件の性質から申しましても、法律がそういうふうにきめておるものだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/75
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076・高田なほ子
○高田なほ子君 レベルが低いということは、ちょっと占い方が下手かもしれませんけれども、同じ裁判所でも、簡易裁判所というと、簡易裁判所に三年いるよりは、そうじゃない所に三年いた方が結局出世の道のが早いというようになっているのでしょう、これはきわめて常識的な物の言い方ですけれども。ばかばかしくて簡易裁判所に行っていられるかという気持を起こさせるものか和かあるはずです、それはきっと内藤さん御存じなのをおっしゃらないだけの話なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/76
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077・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 裁判所の仕事というものは、やはり一つ一つの要件の裁判の重要性ということが認識できませんと、やはり裁判の仕事が理解できないわけであります。そういう意味におきまして、簡易裁判所は、やはり民事訴訟、刑事訴訟、調停事件等がくるわけでございまして、一件、一件こそが大事な仕事だというふうに私ども考えておるわけでございます。簡易裁判所につきましては、ただいま御指摘のように、若い人も相当参っておるわけでございます。しかし、では簡易裁判所に行っていると、どうも地方裁判所やなんかにいるよりは出世がおそいというような感じを持つというお話でございますけれども、しかし、私どもの実際に当たっております者の感じ方から申しますと、やはり簡易裁判所の経験は一度経ておくべきであるということを、だれしも考えていると存じます。従いまして簡易裁判所に行くのはいやだ、地方裁判所に行きたい、そういう気持は、若い人たちにはそれほどないと思います。また一つ申し上げたいと存じますことは、簡易裁判所の判事は、定年が七十才になっております関係上、六十五才で定年になりまして、定年を終えてからの裁判官がさらに簡易裁判所に行って裁判をしております。これは検察官の方からも、やはり定年でやめられた方がさらに簡易裁判所に行って裁判をしております。そういった大先輩がやはり同じ机を並べて簡易裁判所で仕事をしておられるということは、若い人たちに、あるいは選考任命された方たちに非常に大きな励ましを与えておりますし、その誇りを失わしめないでいると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/77
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078・高田なほ子
○高田なほ子君 ところが、現場の若い人が言うのと、あなたが言うのとまるきり反対です。簡易裁判所は姥捨山だと通常言われているようです。だから日本弁護士会あたりでも、裁判官の定年を七十才でなくて六十五才に引き下げよというような意見が出てきている。あんまり老いぼれて、よぼよぼになって、時代にもおくれているような感覚であるということは——そうでない方たちもおりますけれども、やはり七十才にもなれば、時代的な感覚というものがだいぶ変わってくることも事実です。私どもは、三十才代の方と比べて、まさっている点もあるけれども、非常に時代的にはおくれている点を常に自覚するわけでございますが、これは売り言葉に買い言葉になるわけですが、こういう姥捨山のような空気を是正するために、七十才という定年を六十五才に引き下げたらいいじゃないかという日本弁護士会からの御意見も出ているくらいに、やはり活気が非常に乏しかったり、あるいは選考の任命に、何と申しましょうか、時代的な感覚の欠けるというような点があれば、若い優秀な人がここに進んで行かないというような空気が、この簡易裁判所の機能そのものを増進する方向にいかないのじゃないかという、これは憶測でありますが、するのでありますが、そうすると、見通しとしては、この三十人減というのは、ずっとそのまま続けていくのだというような気持で、ここに三十人減というような数字を出されたのでし、ようか。予算上、減らしますと、実績がこうだからということになってこれをまたもとに戻して、三十人ふやすということはまことに容易ならざることだと思うのです。これはよほどの英断でなければならない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/78
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079・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 私どもの考えとしましては、やはり簡易裁判所がそれだけの判事の増員を必要とする場合には、当然、増員さるべきものと思っております。そのことにつきましては、予算上、最高裁判所と大蔵省の間でいろいろ折衝いたしますが、裁判官が現在非常に多くの事件を負担いたしまして、戦前とは比較にならないような多くの事件を負担いたしまして仕事をしていることは、各方面で十分認識をしていただいていることでありまして、今回の判事の増員にも見られますように、実際にそれだけの目当てがつけば、増員ということは認められるものと、私どもは考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/79
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080・高田なほ子
○高田なほ子君 そういたしますと、この資料は、私の手元にちゃんとしたものはないのですけれども、「三十一年以来、家庭に関する事件の審判又は調停で定められた義務の履行状況を調査し、義務者に対してその義務の履行を勧告し、又は命令する等の制度が実施されるようになった」ということに、ここになっているわけですが、この仕事というのは、大へん今の日本の社会的な封建制の残っている中では、婦人にとっては非常にいい制度なんです。しかし、実際に聞いてみるというと、なかなか手不足で、義務者に対して、その義務の履行を忠実に勧告したり、また命令したりするというような制度の運営が、必ずしも円滑にいっていないということを聞くわけであります。この数字をあげて、どういうふうにこれがなっているのか、実情をちょっと説明していただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/80
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081・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただいまお話のございましたのは、家事事件における審判事件及び調停事件の履行確保の制度と存じます。履行確保の制度は、ただいまお話のございましたように、家事債務という特殊の債権債務関係の履行の方法として実際の上に非常に大きく役立っているわけでございます。件数を、ただいま手元にございます数字で申し上げますと、昭和三十一年の七月から実施されたわけでございますが、三十一年七月から十二月の間に、四千二百件余りございました。それから三十二年の一年間に、一万二千件余り、それから三十三年には、さらにふえまして、一万五千六百件という数字が出ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/81
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082・高田なほ子
○高田なほ子君 こういうふうに事件が飛躍的にふえてきておりますけれども、実際、これを何と申しましょうか、上手に運営できないというようなことを伺うわけなんです。たとえば家事債務の履行を強く要望したとしても、裁判所の手不足のために、義務者に対してその義務の履行を十分に実行するように勧告ができなかったというような実情をよく聞くわけであります。だから、一面言わせますと、非常に不親切だというような評判も、全部ではありませんけれども、聞かなければならないということになるわけです。裁判官が不親切なんじゃなくて手不足のために、ついに不親切というふうな思わざる結果を与えているということになるわけでありますが、この処理の状況は——これは受理の件数でしょうが、処理は、どういうふうに処理されておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/82
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083・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) これは専門のあれで申しますれば、いわゆる事件のアフター・ケアというようなことになるわけでございまして、担当いたしますのは、普通の場合は調査官と、調査官を補助する事務官でございます。これが実際のすでに済みました家事審判の事件、あるいは家事調停の事件におきまして、相、手方なら相手方が申立人に何がしかの金を払うことがきまるわけでございます。そういたしますと、それが一度に払うようにきまることもございますし、多くの場合、家事債務でございますと、無月幾らということで支払い方法をきめておる場合があるわけでございます。そういった場合に、履行がおくれますと申し出がございまして、それによりまして家庭裁判所から債務者の方に履行の勧告をいたすわけでございます。勧告は普通葉書でもって通知いたします。われわれ出頭を求めまして勧告をするわけであります。ある場合には調査官なりが債務者の家に参りまして、そうして実情を調査するという場合もございますが、そういったような方法で勧告をいたすわけでございます。勧告に応じない場合には、さらに履行命令を出しまして履行命令に応じない者は処罰されるという仕組みになっているわけでございます。実はこういった制度は外国にもとり入れられておりまして、いろいろ発達した制度があるわけでございまして、私実際に見ましたのでは、アメリカあたりで早くからこういった家事債務の履行という格好の制度を持っているわけでございます。日本の場合になかなかてきぱきいかないということが、確かにあるようでございます。これは二面に手不足というようなこともございますけれども、やはり裁判所の権限といたしまして、裁判所で一度きめたものを履行しない、そのことがすでにコンテンプトになるという法制がないと、これはなかなか実効が上がらないのじゃないかと考えるのでありますが、現有の制度におきましてできる限りのことをいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/83
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084・高田なほ子
○高田なほ子君 先ほどの赤松委員の質疑に対して調査官の必要人数を大体二百名ほどであるというふうに答えられておりましたが、それは一万五千六百件、三十三年度が。さらに三十四年度、三十五年度と、おそらくこの件数はふえていくと思います。ふえる傾向にありますからね。そういうような中で、簡易裁判所自体の判事の員数が三十人減らされ、そうして調査官もわずか二十名増ということであれば、これらの事務の処理というようなことが完全にいくわけがないと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/84
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085・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただいまの問題は、家庭裁判所の事件でございまして、簡易裁判所の減員とは関係がございません。で、家庭裁判所が、ただいま御指摘のように、こういった担当事件がふえておりますし、あるいは調停事件にせよ、少年事件にせよ、年々増加の傾向にあることは御指摘の通りでございます。これに対応いたしますところの裁判官、調査官の増員ということがこれは当然望ましいわけでございますが、何分にも、先ほど申し上げましたように、判事、裁判官の充員さえなかなか困難な今日、思うような増員ができないわけでございます。調査官につきましては、先ほど赤松委員の御質問にお答え申し上げましたように、実情に応じた増員を考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/85
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086・高田なほ子
○高田なほ子君 どうも納得できるような御答弁がさっぱりいただけないのですよ。一生懸命やると言っても、それは限度があるでしょうし、このことを聞けば、簡易裁判所と関係がないと、もちろんそれは関係がないでしょうけれども、いずれにしても、簡易裁判所にしても家庭裁判所にしても、何だかどうも非常に軽視されているという感じが私はするのです。最近の交通量なんかがうんとふえて、交通関係の処罰なんかも簡易裁判所でやるのでしようけれども、とても最近の交通問題と簡易裁判所の機構というものとからみ合わせてくるというと、どうもここらに納得のいかない点がありますが、こういう点は、私質問をはずしておりますけれども、とてもそういう点が納得がいかない。それから今の家事債務の問題にしても、二十名の増員で、はたしてこれをうまくまかなっていけるものかというところが疑問でございますけれども、ことしは二十名で、あと二、三年の間にどういうふうにかするというような計画が何かありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/86
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087・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 家庭裁判所ができまして、十年を経たわけでございます。その間にいろいろ事件の動きがございまして実態的な調査もおいおい進められるようになりましたので、そういった実態の調査に基づきまして、はっきりした数字を出しまして、何年計画かの増員計画を打ち出したいというふうに考えているわけでございます。現在、まだそういった家庭裁判所全体の運営についての実態的な……。最近になりましてようやく一つの安定したルートに乗ったような事情でございまして、今後に問題が残されているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/87
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088・赤松常子
○赤松常子君 関連して。大へん事務量がふえているわけですが、それに対応する二十人の増員ということは、事務量のふえた量と、それから二十人の増員で処理して参りますその一人当たりの受け持ち量と対比して、どのくらい緩和されるものでございましょうか。事務量のふえる率と増員の率とは比例していかないというふうに私予感がいたしますが、どのくらい比較は開くものでございましょうか、縮まるものでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/88
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089・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 事務量でございますけれども、事件の数の毎年の増加ということから申しますと、その率はおそらく二十人の増員の率では、やはり事件増加の率が多いと存じます。これが私どもの実際の実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/89
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090・赤松常子
○赤松常子君 ちょっとそれに関連しまして、非常に足りないということは、最初から人員が足りない。で、増員をするにしても、いろいろ隘路があってすみやかに増員ができない、事務量に追いつく増員ができないということが、一つの大きな原因だと思うのでございますけれども、すでに、現になっていらっしゃる方がやめてお出になる、ために欠員を生ずる、こういうことも考えられるのでしょうけれども、その欠員はどのくらいの量でございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/90
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091・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 現在の段階では、家庭裁判所の調査官につきまして、やめる方の人数は大した数字ではございません。これによる充員の減耗と申しますか、そういったことは大してないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/91
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092・高田なほ子
○高田なほ子君 これは、何かこれから計画を立てるというお話ですけれども、この最高裁の力では家庭裁判所というものを、何かまま子扱いしているのじゃないですか、非常に無関心じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/92
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093・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 決してまま子扱いということではございません。ただ、何分にも家庭裁判所というのは新しい制度でございましてどこの国でも同じでございますけれども、三十年ないし古いところでも四、五十年の歴史しか持っていないわけでございます。従いまして、家庭裁判所のあり方、その運営の仕方というものは、それぞれ各国におきましても今日なお研究され、工夫されている段階でございまして、今後どうあるべきかということは、いろいろ研究調査しなければならない面が多いわけでございます。日本におきましても、実は、戦争前から家庭裁判所の構想はあったわけでございますけれども、実際に誕生いたしましたのは終戦後になりまして昭和二十四年でございます。そういった各国の情勢などを見ながら、研究を続けて、今後の家裁制度の発展に資したいと考えているのでございます。もちろん、終戦後の司法制度改革の非常に大きな要素になっております。決して最高裁判所としてまま子扱いにするということはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/93
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094・高田なほ子
○高田なほ子君 ここでの御答弁は、まま子扱いになりますということは、もちろんおっしゃれないと思うのです。実際問題としては、新しい制度に対する実態調査なんというのは、もう少し的確に、そうしてまた手当についてももう少し温情のある手当というものは、少々私は必要なのじゃないかという気がするのです。今般の調査官の二十人増は、まあまあできがよかったと思いますけれども、ほんとうはこれは当初何人増を要求されましたのでございますか。これは、速記があって工合が悪かったら、なくてもいいのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/94
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095・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 予予算の要求といたしましては数十名、百名足らずだったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/95
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096・高田なほ子
○高田なほ子君 良心的な増員の要求があったにかかわらず、大蔵省の方で大なたをふるったものだろうと思いますけれども、もう少し大蔵省に対しても新しいこういう制度をよくわからせるような情熱を内藤さんに持っていただかなければならない。この二十人増も、これからだんだん年次的にふやすような計画もお立てになって、そうして要求の資料としてお出しになるのでなければ、なかなかこれははかどらないのではないかという気がいたします。
それからもう一つは、調査官の待遇の問題はまたあとで詳しく触れたいと思いますけれども、この前の委員会だったでしょうかね、前回ではございませんが、前に、調査官の問題について論議をこの委員会でしたことがあります。そのときに、教育界から転任した家裁の調査官が、教育界におったときよりも給与の面でもって低くなっているんじゃないかと、こういう質問を私したことがあるのです。そうしましたら、そのときの家庭局長の御答弁では、二十九年度以後では別に教育界から転勤した者でも給与は下がっておらないんだと、こういうふうにお答えになっておったようであります。しかし、どうもいろいろ私も実地の方にお尋ねをしてみたのでありますけれども、教育界、主として小学校、中学校から家裁の調査官に転勤をしたために給与が下がったというのは、かなりありますね。どの庁にも大体二人ぐらいみんな下がっておる。しかも、その額が三千円から五千円下がっています。これは多分おたくの方に、各庁に対して実態の調査をされただろうと思うが、それに対する回答が来ているだろうと思う。その回等に基づいて私は実際をここで一つ言っていただきたいのですけれどもね。どうも当時の家庭局長の御答弁と実際が、そういうふうに違っているということは、最高裁の皆さん方が家庭裁判所に対して情熱を持っていらっしゃらない一つの証拠じゃないかという気がするのです。大変意地の悪いことを言うようですけれども、実際がそうなんだから、やはりその実態を把握していただかなければならないのではないかという私は気がするのであります。はたして当時の家庭局長の言われるごとくに、下がっていないなら下がっていないでいいのですが、どうも実態がこれと違うようでありますが、どちらが正しいのでありますか。あなたが数字を持ち合わせておいでにならなかったならば、持ち合わせている方が答弁して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/96
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097・守田直
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 私どもの今の考えでは変わってないと思いますけれども、しかし、事例をもしお持ち合わせになりますならば、御指摘下さいますれば個別に検討してみますけれども、特に下げてとったという記憶はございません。ただ、これは古いことでございますけれども、家庭裁判所出発当時、各方面から相当の年配の方々を裁判所の家庭裁判所調査官に迎え入れたわけでございまして、その前後によりまして、最初の人の経験年数や年令や学歴等と比較して、それよりこえるといったようなものについて調整を加えたような例があるかもわかりませんが、その辺のところはちょっと例をただいま思い起こしませんので、ただ可能性だけを申し上げる程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/97
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098・高田なほ子
○高田なほ子君 家裁の調査官についての給与をお調べになったことはないのですか。私の調べたところによると、何か給与について調査をなすって、この調査について回答をした庁が二十四庁、その二十四庁の中で三十八人のものが低くなっている、一庁当たり一・六人が給与が低くなった者がおると、こういうふうに数字が出ております。この数字が出た根拠については、私つまびらかではありませんが、多分小中学校の平教諭は十二級まで進めることになっているわけです。ところが、家裁の調査官は首席以外は皆十級どまりだったためじゃないですか。そうして今の主任調査官やその後首席調査官になった者であっても、当時のそのようなハンディキャップのもとに現俸給が重ねられてきている。だから、その俸給と教職の給与とを比較すると、ずっと下がっているということになるのじゃないかという気がするんですが、これは私よりも皆さんの方がそれの専門家なんですから、もっと的確な答弁をいただけると思いますが、いかがなものでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/98
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099・守田直
○最高裁判所長官代理者(守田直君) ただいまお尋ねの点は、これはちょっと調査をよくいたしてみませんと、むしろ家庭裁判所の設立当初及びその近くに起こっておった事柄でないかと思いますので、一応調査してみませんと、何とも申し上げられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/99
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100・高田なほ子
○高田なほ子君 調査官というのはとても大事な仕事だし、今当局もいろいろ調査官の制度の問題についても御研究であるように聞いているわけでありますから、調査官を将来増員するということになってきますと、大学卒業の心理学、社会学、教育学というようなものだけを専攻したのでは十分であると言い得ないわけです。むしろ実地に教壇で子供を取り扱って、しかも私は調査官になりたいと希望してなるような人は、大いにこれは現場の給与よりは下がらないような条件で採用してこそ、初めて私は調査官としての使命というものが完全に果たされるだろうと思いますから、この点は一つ十分に調査をしていただきたい。ところが、当局の方では、号俸調整のときの八%増額するのに賛成か不賛成かなんというようなことだけは、調査官にもイエス、ノーの返事を署名さしたり、何かそういうことにだけ熱心におやりになるというのは、どうも私まずいと思う。そんなことはいいから、もう少し給与の面についてそういう不平等があるならばそれを正して、計画を立てていく、こういうような心がまえが必要じゃないかというように私は考えられます。多分私の考えと一緒に、考えるとおっしゃるだろうと思うから、答弁は要りません。
次にお尋ねしたいことは、「裁判官以外の裁判所職員の定員及び現在員」の表をちょうだいしております。お手元におありだろうと思いますけれども、たとえば事務官は欠員三百十一名というところに(十)三百十一名と、こうある。それから事務雇というのは三百十四名と、こうあるんです。これが私にはわからないわけですよ。欠員申三百十一名というのはどういうわけで、何でもない三百十四というのはこれは何かということ。この表の説明を一ぺんして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/100
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101・守田直
○最高裁判所長官代理者(守田直君) このプラス三百十一名といいますのは、これは過員ということでございます。それから何も書いてない三百十四名というのはこれは欠員ということでございます。このことは、結局事務雇の方から事務官に上げましたために、そういう定数からいいますというと過員の状況になっているということを現わしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/101
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102・高田なほ子
○高田なほ子君 そうすると、実際には今事務雇の数は三百十四名欠員になっているんだというように読んでいいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/102
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103・守田直
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 事務雇としては三百十四名でございますが、事務官に三百十一名過員になっておりますので、これを合わせて考えますと、欠員は三名ということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/103
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104・高田なほ子
○高田なほ子君 どうもこういうことはさっぱりわけがわかりませんよ。それで、これはどういうふうになっているのですか。今家庭裁判所のところをずっとやっておりますけれども、行政職(一)の七十一名の欠員というのは、今度定員でもってどういうふうにふえるのか。それから行政職(二)の欠員がこれはどうなっていますか。プラス六十九名になっておりますが、これはどうなるのか。それから医療職の(一)、(二)をまぜて十九名の欠員、これは家庭裁判所の場合ですが、これはどういうふうに今度具体的に是正されるのですか。幸いこの表をいただいておりますから、是正される数字をわかるように言って下さい。数字だけではちょっとわかり切らぬわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/104
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105・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 家庭裁判所関係で申しますと、ただいま御指摘のように行政職(一)の方は七十一名の欠員になっております。行政職(二)の方は六十九名のこれは過員になっているわけでございます。これは結局行政職の方の欠員の十算を行政職(二)の方の過員で使っているわけでございます。行政職(二)の方が増加いたしますのは、用人関係の定員が足りないためにこういうことになるわけでございます。その原因といたしましては、たとえば新庁舎ができます場合に、それに伴いまして用人の増員が必要であったり、あるいは自動車の増加のために自動車の運転手が必要であったり、そういったような、とからふえて参るわけでございまして、こういった状況にあるわけでございます。今回の定員法の改正におまましては、用人の増員六十三名をお願いしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/105
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106・高田なほ子
○高田なほ子君 ちょっとタイピストという欄のところを見て下さい。タイピストの柵のところで家庭裁判所のところに定員が二百三十四名ですね。それから現在員が二百二十二名ですね。欠員が十二名ですね。そして改年後の定員というのが二百三十四名になっていますね。これは改正前と改正後の定員は同じなのですね。この十二名を今度どうするというのですか。この十二名の欠員を実際に補充しなければ改正後の定員にならないでしょう。実際的にどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/106
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107・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) これは家庭裁判所のタイピストの分につきましては、定員の改正がないわけでございます。従来通り二百三十四名のままでございます。ただ欠員が十二名あると申しますのは、ここにございますように、昭和三十五年一月一日現在において十二名の欠員があるという意味でございまして、これはその必要に応じ充員されるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/107
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108・高田なほ子
○高田なほ子君 今度これは充員されることになって、予算もちゃんと納まれているわけですか。充員されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/108
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109・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただ定員において変わりがございませんので、充員し得る予算があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/109
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110・高田なほ子
○高田なほ子君 そうすると、今までせっかく定員がこれだけありながらなぜ十二名の欠員があったのか。この非常に事務の停滞がいわれておるときに——タイピストの仕事というものはずいぶん大へんだそうですね、オーバー・ワークになっておるそうですね、どうしてこの十二名が補充されない所、このままになっておったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/110
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111・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) やはり一つはほかの関係でそのタイピストの方の予算を使わなければならないようなこともあるわけでございます。こういうタイピスト、あるいは用人になりますと、その庁その庁の実情に応じまして必要な分の人員を置いていくわけでございましてそういった場合に、ある程度やむを得ない、そういう他の方へ流用しなければならない場合もあるわけでございます。さらに欠員でございますが、これは人事の都合で、ある時期にある数の欠員があるということは、これはどこの庁にもあることでございます。この十二と申しますのは、昭和三十五年一月一日現在でたまたまこういう欠員があったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/111
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112・高田なほ子
○高田なほ子君 裁判所はいろいろな場合に、旅費なんかが少なくて、実際問題としてその少ない旅費をカバーするために、予算定員として組まれたその予算の中から、今仰せのごとくに流用されたりして、そのためにこのタイピストのようなものが数が少なくなっていくような実情にあるということは、非常に私は遺憾だと思うのです。私はこのタイピストの一、二の方に会って実情を聞いてみますと、非常にオーバー・ワークだというのです。それで、結核の検査ももちろんされるようでありますけれども、そういうような躍病率もかなり高いのだというようなことも聞いておるのでありますから、この二百三十四名という定員は最低の定員でありますから、これをほかの方の予算が少ないからという理由で流用しながらこの十二名の欠員を置くということでなくて、加えるのでしょうけれども、やはりこの定員は定員として確保していただくように……。幾ら定員法だけ改正しましても、実際の運用がこういうことであっては何にもならないのじゃないかという気がするわけですが、タイピストの例についてだけお尋ねしますけれども、ことしはこの二百三十四名を、完璧に二百三十四名補充されるという確信をお持ちになっていらっしゃるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/112
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113・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 今回の定員法の改正によりまして、行政職(二)の用人の定員が六十三名増員を、もししていただくことになりますれば、そういった方のゆとりがやはりタイピストに及びまして、タイピストの充員は可能になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/113
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114・赤松常子
○赤松常子君 ちょっと関連して。この提案理由の説明書の二ページにございますね、最初から三行目に、「裁判官の負担が過重となっている地方裁判所における訴訟の適正迅速な処理を図るとともに、」というわけで「五十人増加」という、これが理由になっているようにこれでうかがえるのでございますが、それではあれでしょうか、簡易裁判所の事務量というものは、三十人も減らしてよろしいのでしょうか。私どもは簡裁の方も非常に事務がふえている、こういうふうに聞いておりますのですが、ここだけにこれだけふやすというその理由……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/114
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115・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 御指摘のように、簡易裁判所の方も事務量がやはり増加する傾向でございますけれども、しかし実際の事務の負担を申しますと、地方裁判所と簡易裁判所と比べました場合には、地方裁判所の方がはるかに事務負担量が多いのが現状でございます。たとえば一件当たりの審理期間などを見ますと、これは既済事件について調べますと民事について申しますれば、地方裁判所が十一・八カ月平均かかるものが簡易裁判所は四カ月で済む。あるいは刑事では地方裁判所が五・二カ月かかるものが簡易裁判所は二・三カ月、約半分以下の審理期間で簡易裁判所は片づいておるのであります。こういったことは、やはり事務の一人当たりの割合から申しますれば、地裁の方がはるかに重いという実情がわかるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/115
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116・赤松常子
○赤松常子君 ところが、この定員の現在の資料を拝見いたしますと、簡易裁判所の判事の欠員は四十四と出ておりますが、これはどうなっておるのでございましょうか。事務量がふえているから欠員というものが出ているのでございましょうか。その関係いかがなものでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/116
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117・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) これは実は事務量が簡易裁判所にもふえておりますので、できれば欠員なしに充員いたしたいところでございますけれども、実情は、簡易裁判所判事になる人がいないために、こういう欠員を生じているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/117
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118・赤松常子
○赤松常子君 それじゃここに非常に仕事が停滞しておる現状でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/118
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119・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 実際問題としては、ただいま申し上げましたように、地方裁判所に比べれば審理期間も半分以下で済んでおりますので、どちらかといえば、やはり今これでもなお地方裁判所の方が停滞の率が多いわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/119
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120・赤松常子
○赤松常子君 私この数字上から見ますと、非常にここに割り切れない矛盾を感ずるわけでございますが、かりに提案理由の説明の通りといたしましても、地方裁判所と簡易裁判所の事件負担の均衡というものが、そうスムーズにできるものでございましょうか。どうも私もしろうとでその辺わかりませんのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/120
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121・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 今の地方裁判所と簡易裁判所の事件の実質的な負担量から申しますと、簡易裁判所判事欠員四十四名かかえておりましても、なお地方裁判所の方が負担が大きいわけでございます。そこで、今度簡易裁判所判事の定員七百三十名を、先ほど申しましたように三十名判事の方に組みかえをするわけでございます。それでもなお簡易裁判所の方が負担としては軽いということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/121
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122・赤松常子
○赤松常子君 それでは簡易裁判所の判事さんが、今度は地方裁判所の方に実質的に横すべりに行らしってそうして助けていけると、こういうわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/122
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123・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 今の三十名は定員の上だけのことでございますので、すぐに簡易裁判所判事が三十人そのまま地方裁判所にかわるというわけではございません。しかし、現在簡易裁判所判事をやっております者の中に、地方裁判所で判事補としてあるいは判事として勤務する資格を持っている者がございますから、仕事の上では、そういう運用がある程度なされると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/123
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124・赤松常子
○赤松常子君 それじゃ三十人減少しまして七百人となりますと、欠員が四十四名となりますが、実際上欠員が七十名も実際出ることになりますと、そこに事務の処理はどうなるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/124
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125・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 欠員が四十四名、これはことしの一月一日現在でございますが、一月一日現在の四十四名の欠員をとりますと、それから三十名減員になりますということは、欠員が十四名に減るということでございます。欠員の四十四名から三十名削ってなにしますから、今度は欠員が十四名になる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/125
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126・赤松常子
○赤松常子君 ええ、ここを一応入ったとしてですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/126
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127・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) その欠員を含む七百三十名から三十名を引きますから、欠員が今度は四十四が十四になるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/127
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128・赤松常子
○赤松常子君 それが頭数はまあ合いますけれども、実際の仕事量はどうなるか、最末端の事務の処理がどうなるかという心配です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/128
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129・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 実際にこれだけの欠員をかかえておりますということは、それだけの簡易裁判所判事がいないわけでございます。従って、三十名が減りながら、欠員の四十四が十四になるということはございますけれども、実際にその簡易裁判所の判事の減員ということはないわけでございます。今いる簡易裁判所判事六百八十六名は減ることはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/129
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130・赤松常子
○赤松常子君 それでは、これは最初から頭数でどうということでなく、ほんとうは事務量で考えなければいけないという実際の問題になるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/130
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131・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 根本には確かに事務量の問題があるわけでございますが、事務量から申しましても、先ほど申し上げましたように、地方裁判所の方が実質的には簡易裁判所より負担が多いということが申せます。同時に、簡易裁判所判事には現在四十名余りの欠員がございますので、そのうちから三十名は削りましても、簡易裁判所の仕事の実際には影響はない、まあこういった二つのことから、三十名の減員をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/131
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132・高田なほ子
○高田なほ子君 ちょっと関連さして下さい。
簡易裁判所は地裁に比べて事務量が多いからという説明をされておるわけですが、ここにいただいた地裁と簡易裁判所の事務量の比較、特にこの刑事の数字をちょっと見ていただきたいのです。「訴訟事件」と、それから「その他」、「合計」、地裁の方は三十七万五千三百四十八件、それから簡易裁判所の方は総計二百三十三万五千七百三十件というふうに、件数からいうと、はるかに簡易裁判所の方の事務量が多い。内容はどうか知りませんが、事務量が多い。しかしあなたが今説明された、簡易裁判所の方の事務量は地方裁判所に比べて非常に少ないから、それでいいのだと、赤松委員にそういう答弁をされているのですが、数字はそうならない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/132
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133・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) いや、その点について数字上の御説明を若干申し上げます。
結局、事務の負担量は裁判官一人当たりの負担件数によって見るわけでございますが、その負担件数は確かにただいまおっしゃいましたように、簡易裁判所の方が数としては多くなっております。たとえば地方裁判所の民事が一人平均、これは昭和三十三年の審理事件でございますが、地方裁判所の民事が九十四件、簡易裁判所は民事が百三十件、刑事は地方裁判所が九十七件、簡易裁判所は百二件というふうに多いのでございますが、しかし、さらにこの訴訟事件の開廷の回数を見てみますと、平均開廷回数ははるかに地方裁判所の方が多いのでございます。民事につきまして申し上げますると、地方裁判所が三・八回開いております。簡易裁判所は一・八回でございます。それから刑事につきましては、地方裁判所が四・六回、簡易裁判所は二・六回というふうに、開廷回数が非常に違う。またさらに証人の数を調べましても、地方裁判所の方が簡易裁判所に比べますと、約平均三倍の証人の数を調べておるわけでございます。そこで、先ほど申し上げましたように、その結果は審理期間に現われるわけでございまして、審理期間が地方裁判所は簡易裁判所の倍以上を必要としているような実情でございます。こういうことから、実際には簡易裁判所よりも地方裁判所の方が事件の負担が多く、停滞しがちであるというふうになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/133
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134・高田なほ子
○高田なほ子君 一応そういうふうに御説明にはなりますが、この家庭裁判所の開廷回数が少いというのは、開廷できない条件にあるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/134
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135・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 簡易裁判所でございますが、開廷回数と申しますのは一件平均の開延回数を計算したわけでございまして裁判のその品の開廷回数じゃなくて、一件の済みました事件の開廷回数を調べてみますと、平均がただいま申し上げましたように、地方裁判所の半分ぐらいで済んでいるというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/135
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136・高田なほ子
○高田なほ子君 そうしますと、そういう理屈を今度はこの第五表に関連して伺っていかなければならないんですが、これは昭和三十二年、三十三年の第一審訴訟の既済事件の平均審理期間、こう書いてあるわけですが、これを拝見してみますと、大阪は非常に成績がいいんですね。昭和三十三年度だけ見てみましても、刑事事件は大阪、それから神戸、名古屋、こういう所は平均審理期間よりはずっと期間を狭めてやっていらっしゃる。それから民事の方も、神戸あたりは平均よりはずっと期間が狭まっていますが、これはどういうわけでこういうでこぼこができるのかということが一つと、それから今度の増員された三十名を配置する場合に、こういうような配置の条件というものは、この数字を基礎にして配置されるようになるものかどうかですね。どうしてこういうでこぼこができるんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/136
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137・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 審理期間がそれぞれの地方によりまして違いますことは、これはいろいろなことから起きると存じます。私どもの方といたしましては、定員を配置いたします場合に、過去二年間の事件の受付の数、それを基準にいたしまして定員を配置いたします。従いまして、定員はまず事件数に応じて、配置されていくものというふうに考えるわけでございますが、しかし事件数と申しましても、その地方々々によりまして、ある場合には複雑な事件が多いこともございましょうし、いろいろな事情から審理期間というものにこういう差異が出るものと存じます。で、今度の判事の増員は、地方裁判所の合議体を多くしたいということ、すなわち一審強化のための増員を主としておりますので、配置の方針といたしましては、大体大都市の地方裁判所に増員分の定員を配置いたしまして、そうして合議体の増強ということに力を入れたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/137
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138・千葉信
○千葉信君 最初法務省の津田さんの方にお伺いしたいと思います。
最近になりましてから、やっと衆議院の方へ一般職の職員の定員法の改正案が政府から提案されたことは、あなたも御承知のことと思います。なぜこんなに今回定員法の改正案がおくれたかという理由は、昭和二十四年の定員法制定以来、定員法の問題として主たる問題が定員外の職員——非常勤職員とか、あるいは常勤労務者等の定員内繰り入れをどうするかという問題が問題の中心点であった。その問題を所管しておる行政管理庁の方も、この定員外の問題をかかえて、定員法はその法律自体が無意味だという見解に立って、そうして、いっそ今度、昭和三十五年度から定員法を全部撤廃しようという方針が非常に真剣に考えられた。ところが、裁判所の職員の場合の定員法の関係も、過去二回の裁判所職員定員法の改正にあたっては、政府の方から提案される場合にも、それから本会議の席上で法務委員長が議院に報告する場合にも、今回の定員法の改正は、一般職の職員の定員法の改正に右ならえをして、非常勤職員の問題をどうするかというところに今回の定員法の改正の主眼があったということを、はっきり表明されております。これは法務省としても御承知のはずです。ところが、今度の場合だけに限って、最高裁の方でたとえどういうふうに考えたにしろ、午前中の質疑にもありましたように、この最高裁の定員法自体の問題については、最終的には閣議の決定事項であるはずです。従って、法務省自体もこの問題については責任があるはずです。一体法務省自体は、どうして一般職の職員の場合のそういう定員法の動向に無関係に、今回この裁判所職員の定員法だけを先行して出されたのか、その理由をまず承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/138
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139・津田実
○政府委員(津田実君) 前回までの定員法の経緯につきましては、ただいま仰せの通りと承知いたしております。で、今回につきましても、政府部内におきまして一般職についての定員の問題につきまして御指摘のような定員法をやめるべきかどうかというようなことを議論されたことも承知いたしております。その問題に関連いたしまして、裁判所の定員について定員法をやめるかどうかという問題も同じくあるわけでございます。しかしながら、政府部内におきましては、少なくともただいまのところは、すでに前年を踏襲された方法によって行なう、すなわち予算との関連において政府において認めましたところの定員増を、一般職についても定員数に加えて提案をするという態度がきまったわけであります。その態度によりまして、法務省といたしましては、裁判所の定員についても、大蔵省との関係におきまして予算上の定員としてきまった数を連絡を受けて、立案、提案した、こういう次第になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/139
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140・千葉信
○千葉信君 今の答弁、どうも私の質問をはっきり了解していないか、あるいは勘違いしておるための答弁のようですが、私のお尋ねしておるのは、何といっても定員法の問題のうち一番大きな問題は、そして多年の懸案というのは、非常勤の問題に関する定員法の問題が最大の問題である。従ってその問題は、最高裁でも同時にそのことは変わりはなかったはずだ。これが確認された。そうだとすれば、今度の三十五年度の定員法改正の問題については、政府の方では定員法そのものが無意味だから、いっそこの定員法のワクを取っ払ってしまえ、昭和二十四年のあの不当な首切り以前の1定員法そのものはマッカーサーの指令による措置ですから、その首切りをやった定員法以前の状態に返してしまえというのが政府部内の非常に強い意見なんです。いいですか。そのことのために一般職の場合の定員法の提案が今回はずっとおくれて、三月の下旬になってやっと出た。それにもかかわらず、同じ政府の法務省がそういう問題を横目で見ながら、なぜ最高裁の定員法だけを先行して出したか。不用意じゃないか。もしも政府の方針が、その意見の通りに、定員法は本来無意味だという踏み切った見解に立って、定員法廃止ということに踏み切ったならば、最高裁の関係は、少なくも取り残されてしまうという状態が今回起こったに違いない。一体、なぜそういうふうに法務省としては最高裁のこの問題を踏み切って、はっきり言うと、不用意にも定員法をなぜ出したのか、その理由いかんというのが私の質問なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/140
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141・津田実
○政府委員(津田実君) 一般職につきましての定員法の問題につきましていろいろ政府部内で論議があったことは事実であります。しかしながら、政府の方針が、今回は前年の形を踏襲していくという方針がきまりましたことを承知して、裁判所の関係においても立案をしたわけでございます。その点につきましては、その方針をまた将来改めるということになれば、これは別問題であります。ただいまのところは、改めるというふうに私ども承知いたしておりませんので、この法案は、ことに予算に関する法案はなるべく早く提案すべきものであるという趣旨におきまして、提案いたした次第でござ
います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/141
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142・千葉信
○千葉信君 これは津田さん水掛論じゃないのですよ。水掛論であるどころか、政府の方で定員法改正に踏み切った閣議の決定というのはいつですか、三月の下旬じゃありませんか。それまではいろいろな論議があって、定員法をどうするかということについて方針がきまらなかった。そのきまらない段階に、一体、法務省としてはなぜ先行してさきにこの定員法を出すようにしたか、その点を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/142
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143・津田実
○政府委員(津田実君) 閣議におきまして最終決定をいたしましたのは、私はつまびらかにいたしておりませんが、あるいはそういう日時になっておるかと思います。しかしながら、問題点はたくさんあったわけでありまして、その点、裁判所職員定員法に関連を持つ問題点としては解決していると承知いたしているので、私どもはこの立案をいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/143
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144・千葉信
○千葉信君 てんで答弁になっていないね。あなたは法務省のこの問題を担当している一人でしょう。この問題を担当している人が、政府部内で相当定員法の改正の問題については論議があって、主官庁たる行政管理庁は、最後まで行政管理庁としては定員法は今回廃棄するという態度をもって進んだ。そのために、閣議の決定が最終的には三月の下旬まで延びちゃったわけです。政府の方としてそういう一般職の職員の定員法の関係を論議している最中に、従来最高裁において定員法を出すにあたっても、いつでもこれは一般職の職員の定員法の改正へ右へならいでございますとかといって、従来最高裁の方から定員法の改正が提案されている。これは否定できない、はっきり速記録に載っているのだから。委員長報告でも本会議の席上でそのことをはっきり言っておる。今回のあなた方の提案理由の説明には、その言葉はない。これはあなたたちの巧妙な政治的な判断でその言葉は今回はない。しかし、従来はそういうように右へならえをしてきた定員法の改正を、今回だけそういうように法務省なり、最高裁なりが先行したということは、どこに理由があったのか。なぜそういうように軽率なる行動をとったか。場合によれば、定員法は今回の国会で廃止する法律案が出たかもしれない段階だった。あなた方としては、それは法律の提案のやり方としては軽率しごくじゃないかというのが僕の質問なんです。軽率ではありませんというなら軽率ではないということの理由をあなたはお述べを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/144
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145・津田実
○政府委員(津田実君) 裁判所の定員法が一般職に右へならえするという問題は、事、非常勤職員に関しての問題だと思っております。非常勤職員に関していかなる態度をとるかという問題は、これは国家公務員を通じての問題であるという意味におきまして、従来通り右へならえをしておったということであります。しかしながら、ここに認められております特殊の調査官でありますとか、裁判官、これはまた問題は別で、一般職がふやすがゆえにこういうものをふやすのではございません。そこで、今の非常勤職員の問題をいかが扱うべきかという問題につきましては、すでに政府部内でその当時の方針がきまったものですから、それに基づいてそれを考慮内に置いてこれを提案したというのが、その当時の事情です。その後に事情が変わったということがありますれば、これはまた別問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/145
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146・千葉信
○千葉信君 問題がちょっと微妙になってきましたけれども、あなたは、今定員外の臨時職員の問題については、当時政府部内で定員法改正の方針がきまっていたから、それで法務省の方でも最高裁の分を出したのだ、こういうふうに言われた。あなたは、政府の部内で定員法改正の方針がきまっていたということを何で確認されましたか。何であなたは確かめられたのですか。担当大臣がはっきり言っているのですよ、そのことは。何であなたは確認されたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/146
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147・津田実
○政府委員(津田実君) それは、官庁相互の相互連絡によって了知したということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/147
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148・千葉信
○千葉信君 官庁相互の連絡って何です。次官会議ですか。それとも局長連中の連絡ですか。少なくとも行政権の発動という問題については、閣議の決定がなければ決定にならない。これは内閣法の明示するところです。その行政権の行使にあたって、基本的に決定する閣議の決定以前に、あなたは、どこで一体確認されたのですか。次官会議ですか。そんなものは決定じゃありませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/148
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149・津田実
○政府委員(津田実君) 裁判所職員定員法の提出につきましても、閣議の決定を経ておりますから、すでにそのことについては閣議は了承した。次官会議においても了承されていることはあたりまえでございます。同時に、事務連絡によりまして、相互に了承していることも事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/149
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150・千葉信
○千葉信君 どの法律案を出す場合でも閣議で決定することは、これは子供でも知っていることです。従って、最高裁の定員法の改正案を国会に出すにあたっては、閣議で決定がなされることは当然です。ただしその基本になるのは、最高裁がまずきめる。午前中にも質疑があったように。それからあなたの方の法律的な手続を講ずる。それから法務省の手を経て、法務大臣が閣議において発言して、初めて閣議で決定する。そういう経過になるのだから、従って法務省としてあるいは担当者であるあなたとして、政府部内ではっきりそういう方針——一般職の方の関係の定員法の改正の方針——がきまったという確認は、どこでしたか。その点を聞いている。結果として聞いているのじゃないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/150
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151・津田実
○政府委員(津田実君) この定員法を提出いたしますにつきましては、予算担当官である大蔵省の方と連絡もいたして、それから行政管理庁に、一般職についての方針も聞いております。それによりまして、事務当局間の連絡済みで、次官会議に提出し、閣議で決定されるわけであります。それ以外には方法はないというふうに言わざるを得ません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/151
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152・千葉信
○千葉信君 あまり深追いはしないけれども、それじゃ逆に聞くけれども、あなたは、一体なぜ今回の一般職の定員法の改正案が国会に提出されることがあんなにおくれたか、御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/152
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153・津田実
○政府委員(津田実君) おくれた理由を詳細には存じておりません。しかしながら、大かたの議論は、大体連絡を受けて承知しているわけであります。次官会議にも議論が出たことは承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/153
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154・千葉信
○千葉信君 今の質疑応答で明らかになったことは、最高裁のこの定員法の関係については、もちろん閣議決定ということはあったけれども、最高裁の定員法の改正案の提案以後、なお政府の方としては一般職の職員の場合の定員法改正について、まだ方針がきまらず、三月の末までもみにもんでいた、少なくとも主管官庁たる行政管理庁を中心にして、定員法廃止という問題で、かなり真剣に問題が考究された、これはあなたが答弁で何とごまかそうとしても、この事実は隠せないのです。従って、そういう情勢の中で、裁判所の職員定員法だけが先行するという形がとられたことは、私はきわめて軽率だというふうに考える。特に従来のように、定員法自体の最大の問題というのは、何といっても定員外の臨時職員をどうするかという、その点に定員法の問題があるのだから、従って、少なくとも最高裁の定員法を出すという態度に踏み切る場合には、そういう一般的な政府の方針などというものも十分——最高裁でもそうだし、最高裁は独立機関だというならば、その際は法務省がその問題に対して慎重な態度をとるべきだと思います。それが軽率に出されたから、今質問されてもまことに前後矛盾した答弁をせられるのです。知っていた知っていたと言って、政府の方でもきまっていないことを、あなたの方では知っていた知っていたと言って、最後には最高裁の職員定員法が閣議を通ったのだから、政府の方の方針が正式にきまったじゃないかという、そういう言い方は、これはまさに盗人たけだけしい答弁だと思う。そういう逆の論法は、これは国会ではあまり通らぬ答弁だ、何といってもそのあなたの方で出した出し方というものは、政府の方針がきまる前に出したことは明らかでしょう。事実がそれを証明する。今回は、まああなた方にとっては、幸いにも最後に政府の力では定員法改正案に踏み切ったから救われたけれども、もしこれが逆の場合だったらどうなるかということを、やはりあなた方行政担当者としては、十分考えておく必要がある。まあしかし問題自体はそんなに大きな問題じゃないから、私は別な問題の方に入っていくつもりです。しかし、あなたにもこれから出てくる問題に関連しては御答弁を願わなければならぬと思うから、この問題は一応これくらいにして、先に進みます。
私は単刀直入に最高裁の定員の問題に入って最高裁当局に質問いたします。
これは法務省も関係のあることですが、資料として出されている裁判百以外の裁判所職員の定員及び現在員という表を見ますと、なるほどこの法律によれば、この欄のうちの法律上の定員数というのは、最後の合計欄の右から四番目の合計欄、一万九千九百三十四人という定員、それに対して現在員は一万九千八百三十九人だから、従って欠員は九十五人ある。これは法律上は私はこの点に大した問題はないと思います。しかし最高裁として規則か何かで、行儀の(一)あるいは行政職の(二)幾らとか、ないしはその職種についての定員の数というのは、規則か何かで最高裁としてきめているのでしょう、どうですか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/154
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155・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 定員は、ただいまの定員法に、ただいま御指摘の数字と予算上の数があるだけでございます。最高裁判所といたしましては、あとは配置定員の規定を作りまして、各庁に定員を配置しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/155
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156・千葉信
○千葉信君 そうだろうと思ったのですが、そこで少なくとも予算上はとにかくとしてこれは予算上の問題の論議に入ってきますと複雑になりますから私は単純にその規則なら規則によってこの職種の定員がきまっているということを前提としてお伺いしたいと思います。その場合に、さっきもちょっと問題になりましたけれども、たとえば事務官の場合に四千二百七十七人の定員に対して一千八百七十三人の過員がある。ほとんど五割に近い過員ですね、こういう過員の諸君は、今の御答弁から推しても、予算上の措置はとられているかもしれない、予算上の措置はとられて、そして六千百五十人という現在員がいるのかもしれない。しかしこれらの諸君は、はっきりとその定員内の職員という格好で措置され、同時にその待遇等においても他の同じ職種の事務官と同一の待遇を得ているかどうかというこの点、この点は、たとえば行政職(二)の用人の場合にも同じですが、これはどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/156
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157・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 御指摘の事務官の過員一千八百七十三名は、これは先ほど申し上げましたように、事務雇の欠員一千八百三十一名と見合うわけでございます。こういうことが起こりますのは、事務雇として採用されましたが、相当の勤務期間を経まして、また勤務の能力を備えまして、当然事務官に昇任しなければならないということになるわけでございます。そこで、そういう雇を事務官に昇任いたします結果、こういった事務官の定員超過になるわけでございます。事務雇は事務官の補助として採用されるわけでございますけれども、ただいま申し上げましたような資格を得ますれば、やはり事務官にいずれは昇任せざるを得ないのでございます。そのためにそういった雇の欠員に見合う分だけ事務官の予算人員を超過するわけでございます。これは予算の実行上は何ら問題はございませんし、また事務官となりましての給与の上でも別に大した遜色はないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/157
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158・千葉信
○千葉信君 そうすると、たとえ定員以上に過員があっても、その過員に対しては、正規の定員内の職員と同等の待遇が保障されているということであれば、私はこれはあまり問題にするつもりはありません。ただしかし、この問題に関連して眠りたいことは、こういう過員という格好で採用されている職員が多数存在するということが、ややもすれば待遇上の問題を生じやすい。そういう見地からすれば、おそらくこれは最高裁独自の立場なり、ないしはまた委任された法令等によってこの職種別の定員数をきめているはずでありますから、そうだとすれば、私はこういう過員の存在する職種については、それらの現在員に応ずる定員の改正措置を最高裁としては当然講ずべきだ、それが親切な人事管理じゃないかと思うのですが、最高裁としては、これをどう処理されるおつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/158
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159・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) まことにごもっともな御意見でございます。実質上はこれに別に差しつかえないといたしましても、ただいま御指摘のように、予算上の措置あるいは定員配置の規定におきまして必要な措置をとらなければならないという点は、最高裁判所当局といたしましても、できるだけこういった問題の解決に努力をいたしておるわけでございまして、近い将来において解決いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/159
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160・千葉信
○千葉信君 この前二回の裁判所職員定員法の改正に際して先ほどお話し申し上げたように、裁判所職員の定員法の関係においても非常勤の問題が相当大きな最重点的な問題だった。ところが、今度私どもの手元にいただいている資料によりますと、欠員があるこそすれ、過員なんかはない。一万九千九百三十四人の定員に対してむしろ欠員が九十五人ある。今までの定員法上の問題としての臨時職員とか非常勤職員の問題は、今回は最高裁には全然なかったという、こういう資料でございますが、私の聞いているところによりますと、ここには現在員が二万十七人ということになっております、これで実際上は九十五人の欠員が存在するということに資料ではなっておりますが、しかしこの最高裁の共済の資料によりますと、おたくの関係の人員というのは二万二千四百四人という資料が一方にあり、そうしてしかも現実に今地方の裁判所を含まないひざ元の最高裁で百三十九人の問題になる定員外の非常勤職員がいるという事実がある。これは資料には全然書いてない。最高裁だけでそういうことになると、他の裁判所の場合の問題も調べ直してみないとこれは国会で審議できない。そういう、極端な言葉を使えば、インチキな資料が出ているようでは、正確なこの問題のとらえ方は不可能になる。最高裁で今百三十九人以上の非常勤職員がこの現在員以外に存在する、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/160
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161・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 裁判所におきましては、いわゆる特殊常勤職員というのが、本年の二月十五日現在で百十二人おります。そのほかに、ただいま御指摘のように、臨時の職員がいるわけでございますが、これは臨時の仕事がある場合に臨時に採用するわけでございまして、これは全くそのときそのときの臨機に採用していくわけでございまして、予算の許す範囲内におきまして裁判所としては臨時の職員を採用しているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/161
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162・千葉信
○千葉信君 何人おりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/162
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163・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ちょっと今現在員をはっきり調べておりませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/163
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164・千葉信
○千葉信君 概数でけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/164
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165・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 臨時職員といたしましては、二月十五日現在で百五十人おります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/165
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166・千葉信
○千葉信君 そうすると、これはやはり資料と違って私の方の調べたことが事実に近い——事実なんです。次長は臨時だという答弁をされている。臨時に仕事がある場合に雇うのだという答弁をされた。あなたは従来の定員法の関係でいろいろ国会で論議があったことを御存じかどうか知りませんけれども、これは速記録をごらんになったかどうか知りませんけれども、定員法にからまることで一番大きな問題は、今あなたがこれは臨時だから大したことがないと言って答弁をされているその臨時職の問題が、定員法の一番大きな問題だ、臨時だからということで、たとえば国家公務員法に基づく臨時職の職員、あるいは定員法上二カ月ごとに雇用を更新すれば、これは定員法上の定員以外の臨時職という格好に認めてきた臨時職そのものに問題がある。その点がはっきり出てくると、一番定員法の中で問題になるその問題について、今回最高裁から出てきた資料は、少なくとも国会を軽視したか、ないしはその問題を故意に秘匿したか、いずれかだといって非難されても私は仕方がないと思う。この問題は最高裁だけでなくて、政府の各行政機関にもしょっちゅう起こっていることです。しかも一日ごとに更新するとか、二カ月ごとに更新するとか、あるいは六カ月ごとに更新するという定員法上あるいは国家公務員法上の臨時職の採用というやり方を利用して、そうして臨時職の職員だといって定員外の職員を多数使っている、おまけにその待遇は非常に劣悪だというために定員法上この問題が起こってきた。それを今あなた方はここで結果として私にすっぱ抜かれた格好になったが、数字をあげられてからあなたの方は、これは臨時職でございますと言って、昔政府がしょっちゅう逃げたように簡単に逃げようとしたが、そうは問屋がおろさない、その百五十人おられるという臨時職に対する最高裁の今後の方針、どうするつもりか。この定員法にとっては大きな問題でありますから、そのつもりでお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/166
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167・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 裁判所といたしましても、常時仕事のあるものにつきましては、それを定員化して参るという方針できているわけでございます。しかし、なおやはり臨時の仕事は残るわけでございまして、そういった意味におきまして臨時職員も採用いたしております。
現在、裁判所の実情を申し上げますと、臨時職員はたとえば非常に膨大な破産事件などが地方裁判所で係属いたしますが、債権者の数が非常に膨大な数に上るわけでございまして、そういった事件の、たとえば相談所などを作ります場合の仕事であるとか、そういった臨時の非常に大きな事件が係属する場合に臨時職員が要るわけでございます。あるいはまた女子職員が産前産後の休暇を取るという場合も臨時職員を必要とするわけでございます。あるいはまた、一時的に記録の廃棄という仕事が裁判所にございまして、膨大な記録を廃棄しなければならない。そういった機会にやはり臨時職員の手によって処理するわけでございます。そういったやはりどうしても臨時の仕事は裁判所にあるわけでございまして、そのための臨時職員というものはやはり必要であるというように考えるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、裁判所の仕事の中で常時の仕事がやはりこれはふえて参ります。で、その増加に応じまして定員を増加して参りたいというふうに考えているわけでございまして、今後もその方針で参るつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/167
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168・千葉信
○千葉信君 どうも御答弁がすっきりせぬのですけれども、まあたとえば記録の関係云々ということがありましたが、これはまあわれわれしろうとでは、その記録がどういうもので、そうしてどのくらいかかり、恒常的にそういうものが出てくるのかどうかということは、私の方でわからないから、その点ではかりに触れないとしても、たとえば産前産後の関係のその臨時職員という問題一つを考えてみましょうか。産前産後という現象は、女子の、しかも若い年令層の婦人労働者のいる場合、事務員のいる場合、その現象は私は臨時に起こるものじゃないと思う。ほとんど一定数の職員がおれば、恒常的にそういうものは起こると判断しなければならない。そうなれば、その代替用員なるものは、なるほど一見臨時のような印象を与えるかもしれないけれども、実際上はそれは臨時とはいかない、絶えず起こる問題だ。そうなれば、臨時で雇ったものをまた継続して使役するという状態は必ず出てくる。これはあなたの方だけじゃないのです。そういう状態が、問題を産前産後という問題にしぼった場合でも、政府の行政機関の中でもしょっちゅう起こる。そのために定員法の問題が、臨時職員をどう処理するかということをめぐって、絶えず国会の中で問題が起きている。ですから、あなたの今言われた限りでは、これを定員法上の職員という格好で定員法内に繰り入れる必要はないという結論は出てこないのです。むしろ、そういうふうに定員外の職員ないしは臨時職として待遇することが、待遇上でも問題があり、本人にとっても非常に不利益だという現象は必ずつきまとうから、従って、そういうものは正規の職員として、一体概数としては、産前産後に対応する用員としたらどれくらい要るかという計算の上に立って定員数は策定できるし、また、そういうものについても私は従来臨時職の使い方いかんということを検討してみると、全くその定員内の職員と同じような格好で使役されているし、そういう点からいっても、私は今申されたような理由だけでは、今最高裁にいる百五十人のその臨時者なるものは、定員法の改正にあたって全然考慮の対象に置く必要のない職員だったというふうに判断されることは、非常に大きな誤りを犯すと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/168
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169・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 先ほど申し上げましたように、裁判所の仕事の中で、常時の仕事になりますれば、それは当然定員の増加ということで措置しなければなりませんけれども、臨時である限りは、やはり臨時職員たらざるを得ないということは、先ほど申し上げた通りでございます。女子職員の産前産後の休暇の問題について御意見がございましたけれども、女子職員が多くまとまって仕事をしております職場におきましては、確かに御指摘のようなこともあるいは考えられるかとも存じますけれども、裁判所の場合の女子職員と申しますのは、各庁にそれぞれ勤務いたしているわけであります。全国的にはそれは確かに多くの数になりますけれども、勤務している庁は非常にこまかく分かれているわけでありまして、その女子職員の産前産後の休暇のパーセンテージから割り出して何人ということがかりに計算上できましても、これはやはり臨時職員としてまかなうほかないのであります。で、臨時職員が多くあってはならないということも、まあ私どもはまことにその通りだと思います。なるべく裁判所の仕事を組織化して、そういった臨時の仕事があまりないようにするということは、確かにその通りでございましょう。しかし、やはり裁判所の実際の状況から申しますと、そのときどきの、先ほど申し上げましたような臨時の仕事がどうしてもある程度はあらざるを得ないのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/169
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170・千葉信
○千葉信君 ちょっと執拗になるかもしらぬけれども、そういう今御答弁になられたような見解を最高裁としてはっきりお持ちならば、従来定員法の問題として今お話のその臨時職の問題は、常に問題の焦点であったということは、少なくともこの問題を担当しておる者は知らぬはずはない。私はあなた知らなかったとは言わせられないと思う。そういう点からすると、この定員法審議の際に、これは重要問題になるはずのその臨時職の定員を、全然この資料から除外しているということは、どうも私は態度としてはいただきかねる態度だと思うのです。どうして除かれたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/170
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171・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) これはやはり定員の資料でございますので、このたびは裁判所におる定員だけが載っておるわけでございまして、別にそれ以上の他意があるわけではございません。臨時職の制度は、御承知のようにやはり裁判所にもあるわけでございまして、別にそれを隠す意味も何もないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/171
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172・千葉信
○千葉信君 私はこれは意地悪く追及するのではなく、前二回の定員法改正の際にもありましたように、たとえば衆議院はそのままで成立して参議院に送られた。参議院では前後二回にわたってその衆議院から送られた定員法の改正を行なっております。そしてその衆議院から送られたものに対する参議院の修正というのは、何を根拠にしたのかというと、これは臨時職の職員を根拠にして定員法の改正を行なっている。その参議院における修正の恩典に、たしか最高裁も私の記憶では浴したはずでございます。そういう過去の事例から見ても、私はこの臨時職の職員の数を全然参考資料に計上しようとしなかった最高裁の態度に、非常に不満の感じを持たざるを得ないのです。もし今国会で一般職の職員のその定数の改正案が参議院で修正された場合、あなたの方ではこの前の例から見ると、それにまた便乗しようということを申し出られるに違いない。その場合の根拠がこの資料に関する限りないじゃありませんか。そうなった場合の責任はだれがとりますか。そこにも問題がある。少なくとも非常に不親切な資料だということは言えると思う。この点はどうですか。もしそういう事態が起こった場合に、最高裁としてはどう考えるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/172
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173・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 臨時職員の制度がございますことは、先ほど申し上げました通りで、御承知の通りだと存じますが、まあその資料を今度この定員法の改正に出していなかったということ、それは先ほど申し上げました通り他意があったわけではございませんので、予算上は明らかになっておるわけでございます。予算の面におきましても国会の方に予算案として提出して御審議になっていることと存じますので、特に私これを資料にしなかったということについては、別に差しつかえないものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/173
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174・千葉信
○千葉信君 まあそれでは私はこれ以上この問題での追及は、きょうは見合わせますから、あなたの方から今あなたの答弁に出ていた臨時職員に対する予算、その関係等で至急明細に地方別に、できれば最高裁一本でもけっこうですから、あすまでに至急お出し願いたいのです。その上で審議をいたします。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/174
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175・内藤頼博
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 臨時職員の予算は全国一本になっておりますので、明日までにその資料を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/175
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176・千葉信
○千葉信君 それでは、私はその資料がきましてから、あらためて定員の問題について質疑をしたいと思いますから、きょうはこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/176
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177・大川光三
○委員長(大川光三君) 他にございませんか。——他に御発言もなければ、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案外二件に対する本日の質疑は、この程度にとどめたいと存じます。
以上をもって本日の審議は終了いたしました。次回の委員会は明三十日午前十時より開会いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後四時二十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X01019600329/177
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