1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年三月十一日(金曜日)
午前十時四十四分開議
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議事日程 第十号
昭和三十五年三月十一日
午前十時開議
第一 弁理士法の一部を改正する法律案(内閣提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/0
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001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/1
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002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
議員石黒忠篤君は、昨十日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
大川光三君から発言を求められております。この際、発言を許します。大川光三君。
〔大川光三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/2
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003・大川光三
○大川光三君 議員石黒忠篤君は、昨暁にわかに病気のため逝去されました。同僚議員としてまことに痛惜にたえません。
石黒君は、明治十七年東京に生まれ、大学卒業後、農商務省に入り、農務、蚕糸の各局長、農林次官を歴任、第二次近衛内閣の農林大臣、鈴木内閣の農商大臣として国務に尽瘁されました。また、昭和十八年貴族院議員に勅選されましたが、戦後、追放解除とともに緑風会から参議院議員として当選、自来、農業関係国際会議に日本代表として出席すること再度ならず、院内においては、緑風会議員総会議長、外務委員長、法務委員会理事あるいは安保特別委員会委員として国政に活躍されました。さらに、国土総合開発審議会、海外移住審議会の各委員その他各種団体の顧問、会長を兼ねておられたのであります。
その卓越した識見と厳正な人格は、常に同僚友人の信頼と尊敬の的であり、本院の権威のために挺身された功績は実に偉大なるものがありました。本院は、同君のごとき豊かな経験と高邁な識見を兼ねた人材の活躍に待つべきものがきわめて多いことを思えば、今さらながら、同君に対する追慕の情切なるを禁ずることができません。
ここに石黒君の御逝去に対し、つつしんで哀悼の誠をささげ、衷心より御冥福をお祈りする次第でございます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/3
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004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) お諮りいたします。石黒忠篤君に対し、院議をもって弔詞を贈呈することとし、その弔詞は議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/4
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005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
議長において起草いたしました弔詞を朗読いたします。
〔総員起立〕
参議院は議員従二位勲一等石黒忠篤君の長逝に対しましてつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます
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弔詞の贈呈方は、議長において取り計らいます。
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006・山田節男
○山田節男君 この際、私は、カラーテレビジョン放送標準方式に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/6
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007・田中茂穂
○田中茂穂君 私は、ただいまの山田君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/7
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008・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 山田君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/8
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009・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。山田節男君。
〔山田節男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/9
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010・山田節男
○山田節男君 私は、民主社会党を代表いたしまして、カラーテレビジョン放送標準方式に関しまして、岸内閣総理大臣並びに所管大臣である植竹郵政大臣、池田通産大臣に、その所信をただしたいと存ずるものであります。総理は御欠席でありますから、その質問に対しては後刻答弁をしていただくことを要求しておきます。
まず第一に、このカラーテレビジョンの問題は、岸内閣が成立いたしまして後、昭和三十二年の十二月に、NHKと日本テレビ放送株式会社に実験放送を許可いたしたのでありまするが、自来、このカラーテレビジョンに対しまする今日までの推移を見ますると、まことに見るに忍びないものがあるのであります。私はこの問題につきまして、前大臣の寺尾君並びに現大臣の植竹郵政大臣に対しましては、私情としては忍びませんけれども、国を憂える至情から、多少苦々しいことを申すかもしれませんけれども、これは良薬口に苦しという意味において御了承賜わりたいと思うのであります。
第二このカラーテレビジョンが問題になりまして、実験放送を許可し、しかしてその後、推移を見まするというと、たとえば、昨年の四月でありまするが、寺尾郵政大臣のときに、実験放送にスポンサーをつけて広告放送をせしめる、こういうようなことは、一体、今日の放送法からしてできるかどうかという問題、あえて当時の大臣である寺尾君がこれを許可されたという事実、並びに、その後、寺尾郵相が退任される直前に、当時の電波監理局長であった浜田君——これはカラーテレビジョンの慎重論者である、これに退任を強要したという事実であります。また、これに関しては、岸総理がみずから乗り出して、慎重論者であるこの浜田君を退任せしめたという、こういうような事実、これは新聞に報ぜられておるもので、事実であろうと思うのでありますが、こういうような、きわめて遺憾な、いかにもそういうカラーテレビジョンの促進を阻害するような者はこれを退け、無理やりに、とにかくカラーテレビジョンを実施していこう、こういうような情勢をわれわれは見るのであります。かようなさなかにありまして、植竹郵政大臣が御就任になり、初めは非常に慎重論者のようでありましたけれども、昨年末に至りまし「て、アメリカのNTSC式の標準方式でカラーテレビを実施するのだということを声明されておるのであります。一体、私は、この岸内閣のもとにおきまして、カラーテレビジョンに関する限り、郵政大臣のいすの周辺には、政治的圧力が発散する、妖気が漂っておるのじゃないかと思うのであります。従いまして、この善良なる、高潔な植竹郵相にしても、いつの間にか、カラーテレビジョンにつかれてしまうというようなことになるのじゃないかと私は思うのであります。こういう点につきまして、私は植竹郵政大臣に、次の質問に対して明快なる御答弁を願いたいと思うのであります。
一体、過去三回にわたりまして、国際標準方式につきましては、モスクワ、サンフランシスコ並びに昨年のITUの会議におきまして、何とかして、今日のこの国際カラーテレビジョンの標準方式をきめよう、宇宙時代であるからして、人工衛星によって世界にこれを中継できるのであるというカラーテレビジョンを将来行なうならば、これを国際の標準にしようというのが、これは今日世界の世論である。しかるに、この国際標準方式が、昨年の十月でありましたけれども、ジュネーブにおきましてこれが問題になって結論が出ない。これは将来標準化するものであるけれども、現在としては、アメリカのいわゆるNTSC式——白黒と両方見えるところの両立性を持っておる。これをもってやろうということは、これは結論として出たのでありまするけれども、しかしながら、走査線であるとか、アメリカの六メガサイクルに対しましてヨーロッパは八メガにしようという、その差が、いわゆるヨーロッパ方式とアメリカ方式の二つに分かれるかもしれないという仮定的な結論はありましたけれども、何ら最後的な結論はないのであります。すなわち、このカラーテレビジョンは、今日宇宙時代に入りまして、国際の放送は、これは中継はもう夢ではないのであります。なぜ、かような国際標準方式がきまらない前に、何を急いで、このカラーテレビジョンをアメリカ式によってあえて急ごうとするのであるか、その理由を私はお伺いしておるのであります。
一体、アメリカの方式、すなわち、NTSC式なるものは、私も過去三回にわたりまして、実地にこのことを研究し、また、私も視察しておりまするけれども、この隘路といたしますところは何と申しましても、カラーテレビジョンが、白黒の受信機で見えるということの特徴はありますけれども、今日、アメリカにおきまして、六千万の白黒テレビジョンの聴視者がありますけれども、過去六年間に、カラーテレビの放送の結果、わずかにその〇・七%の四十五万に満たない聴視者しかいない。その原因はどこにあるかと申しまするならば、この値段は五百ドルないし千ドルでありまするから、大体、日本で二十万円から四十万円でございます。しかし、それよりも、この調整が非常にむずかしいのであります。私は、昨年の十一月の終わりに、サンフランシスコにおりまするときに、日曜の漫画劇を見た、その中に、細君が主人に向かって、カラーテレビジョンを買ってくれ、こう申しましたところが、おれにはエンジニアを雇うだけの金はないよと、こう申しました。これは要するに、アメリカにおきましては、カラーテレビジョンの保守修理に年間どうしても百ドル要るのであります。四万円近くの金が要るのでありますが、かようなことが非常な今日のカラーテレビジョンの普及の隘路となっていること、これは事実であります。のみならず、これを専門的に見ますならば、この白黒に受像いたしましても、絵の質がよくないのであります。日本においてもそうであります。のみならず、その色彩が天然色ではないのであります。今日のまだ研究段階においては、あれは自然色ではない。ただ色がついていればりっぱだ。しかし、これはしばしば言われますごとくに、決して悪い番組が色によってよくなるということはないのであります。
のみならず、かようなアメリカ式の高いテレビを日本で実施いたしまして、当座、二千台、三千台、そういうものを街頭で見せる、これまた放送法の本旨からいいまするならば、これは一体、テレビとかラジオというものは家庭の中で見るものだ、街頭で見せるものをこれは放送と考えることはどうか、これまた放送法からみれば非常な疑問があるのであります。かようなことをあえて植竹郵政大臣は、カラーテレビジョンをこの方式によってやろうとする。一体、国の経済から見て、はたしてこれが賢明であるかどうかということは、これは所管大臣である郵政大臣として、当然考えるべき問題であろうと思うのでありまするが、この問題について、なぜかような結論に達せられたのか、その理由を承りたいと思うのであります。
なおまた、こういうような次第でありますから、日本の電波法並びに放送法からいたしましても、電波の公平か一つ能率的な利用を確保して、そうして公共の福祉を増進するというのが電波法の精神であります。その最高責任者であるところの植竹郵政大臣が、あえて、この問題にされておるアメリカ標準方式によってカラーテレビを早期に実施しようという、その根拠を私はここに明確に承りたいと思うのであります。
次は、受信機の問題でありまするが、これは通産大臣の所信も承りたいと思うのであります。一体、今日、日本のこのカラーテレビの受信機は、全部国産はできないのであります。最も高い、主要な部分を占めておるブラウン管は、安くても八万円ないし十二万円であります。これを全部アメリカから輸入しなくちゃならぬ、こういうようなことにつきまして、少なくともカラーテレビジョン放送を実施いたしますれば、この受信機を国産化し、しかもこれを量産化しなくてはならない。しかもアメリカのように〇・七%としまするならば、今日二百五十万の白黒テレビジョンの聴視者があっても、わずかに二万数千しか、六年かかっても二方四、五千しかできないのでありまするけれども、しかし日本としては、受信機の製造の体制というものを、国産の体制を整備しなくちゃならぬのでありまするが、一体そういう面におきまして自信があるのかどうか。この点もまた郵政大臣は、これは通産大臣と十分この点について打ち合わせの結果、そういうような自信を持たれておるのかどうか、承りたいのであります。
次に、これは当然このカラーテレビジョンは、いわゆる超短波、VHF帯によってやられると思うのでありまするけれども、こういうようにテレビジョンというものが無数にふえまして、またさらにカラーテレビジョンにもこの超短波の周波数帯を使うということになりますならば、国民共有でありまするところの、その他に幾多使うべきところの需要を持っておるこのVHF周波数帯というものを、一体これに使い得るような余地があるのかどうか。これにつきまして、私はカラーテレビジョンについてのチャンネル・プラン、これを一つ具体的にお示し願いたいと思うのであります。
次に、通産大臣に対してでありますが、先ほど申し上げましたように、植竹郵政大臣は、カラーテレビジョンを早期に実施したいという。これに最も重要なものは、このカラーテレビジョンの受信機の量産化、国産化でございまするが、これに対しまして、一体、郵政大臣からあなたに対して連絡があり、また、あなたからも、それは自信がございますというような確言があったために、郵政大臣は、カラーテレビを早期に実施したいというように考えておられるのかどうか、この点を私はお伺いしたいのであります。なお、貿易・為替の自由化ということは今後進展すると思うのでありますが、そういたしますると、アメリカで大体五百ドルといたしますならば、十八万円、倍としても大体三十数万円で二十一インチのカラーテレビジョンがどんどん入ってくるということになりますれば、これは、国内におけるカラーテレビジョンの機器のメーカーに対しましては非常な脅威であると思うのでありますが、これに対する対策についてもお示しを願いたいと思うのであります。
なお、冒頭に申し上げましたように、このカラーテレビジョンは非常に政治的なにおいがあります。政治的な圧力によって無理やりにこれを押し切っていって、カラーテレビジョン放送をやろう、こういうように見えるのでありますが、党内の実力者である池田通産相に対しましては、このカラーテレビジョンに対しましての何らかの事前の相談があったのかどうか。これは個人的な問題かもしれませんけれども、私はあえて池田通産相に御意見を承りたいと思うのであります。
なお、岸総理はおられませんけれども、先ほど申し上げましたように、このカラーテレビジョンの慎重論者である浜田電波監理局長をやめさせる場合に、岸総理が、昨年の六月四日、わざわざ自分の公邸に呼んで、そして引導を渡したという、この事実が新聞に報ぜられているのでありまするが、かようなことから見ますると、私は何だか政治的な圧力があってかような挙に出たのではないかと思うのでありますが、この点を岸総理にお伺いしたいと思うのであります。なお、この岸総理の向米一辺倒な政策からいたしまして、無理やりに未完成なアメリカ標準方式のカラーテレビを実施することにつきましては、岸総理に対して、アメリカの政府筋あるいは放送業者等から、何らかの相談なりあるいは依頼なり、あるいは悪くいえば、ひもをつけられているのではないかとさえ私は思うのでありますが、この点を岸総理からはっきりと御答弁を願いたいと思う。なお、岸内閣が、先ほど申し上げましたように、カラーテレビを早期に実施したいという、こういうことにつきまして、もとより国家的見地からかようなことを決定されたと思いまするが、岸総理のこの点に対する正直な所見を、今日御出席になっておりませんから、後日伺うということにいたしまして、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣植竹春彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/10
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011・植竹春彦
○国務大臣(植竹春彦君) お答え申し上げます。
わが国におきますカラーテレビの研究は、昭和二十七年、白黒テレビの標準方式の決定に引き続きまして始められたのでありますが、昭和三十一年にNHKがVHF帯で実験放送を開始いたしましてからも、もうすでに今日まで三年以上を経過いたしておりまして、その間、研究の成果が得られまして、また世論の一部には早期実施を強く要望いたしましたにかかわりませず、政府といたしましては、最近まで慎重な方針をとりまして、確定を保留いたしておりましたことは、いろいろな点にかんがみまして十分に見通しを立てることが必要だったからであります。そのいろいろな点と申しますのは、第一に、送信及び受信に関しまするわが国の技術水準と製造能力いかんという点であります。第二には、国際的動向を見きわめまして、すなわち、各国の研究の方向はどうか、画期的方式の出現はないかどうか、また方式の国際統一の帰趨はどうかという点であります。これは山田議員の第二問に相当する点でございます。第三点といたしまして、白黒テレビの普及との関係はどうなるか。すなわち白黒テレビの発展が確実になることが必然であるのに、カラーテレビの実施が白黒テレビの普及を阻害するようなことはないかという点であります。従来は、以上のいろいろな点について明らかな見通しを立てることが困難でありましたために、方針の確定を留保いたして参ったのでありますが、最近はこれらに関する内外の情勢に新たな展開がございまして、見通し難の条件が相次いで取り除かれるに至ったのであります。すなわち、第一の点、送信、受信の技術面では、送信については、これはかなり前からわが国の技術は十分であったのでありますが、受像機につきましても、試作品の段階ではございますが、全く国産の見通しが今日は立っております。今後は需要の喚起によりまして大量生産、従って価格の低廉をはかり得る段階に到達したのであります。第二の点であります国際的動向についてでありますが、昨年に入りまして、各国の研究開発の方向は、ほとんど例外なくNTSC方式を基本とするものに集中するに至りました。また標準方式の国際統一に関しましては、NTSC方式のワク内におきましてアメリカ式とUHF帯を使用いたしますヨーロッパ方式との二本建てにほぼ固まりまして、方式の異なる国の間の放送中継は方式変換についての方法を開発して解決する方法をとることが、昨年四月及び十月のCCIRの会合で明瞭になりました。これは第二問に対するお答えであります。次に、第三点の白黒テレビの普及との関係につきましては、NHK及び民間放送ともに、その主要な放送局の建設がほとんど今日では完了いたしまして、受信機の数はNHKの契約数だけを見ましても約四百万、来年度中の増加はどんなに少なく見積もりましても百六十五万増加いたします。そうすると普及率は大都市では四〇%から五〇%になります。地方のいなかに参りましても平均二〇%をこえました。すでに受像機購入者が中くらいの所得階層、すなわち広大な層に移っております。また製造業界におきましても年産三百万台以上の計画生産に入っていること等に徴しましても、現在の普及趨勢はきわめて底が固いと言い切ることができるので、カラー放送の導入等によって影響を受けるものではないという見通しを得たわけであります。このような次第でありまして、方針決定の障害となった見通し難の事情がほぼ解消いたし、あるいは解消の目途がつきましたのでありますから、もう、しかる上は、カラーテレビそのものが優れた放送であって、一日も早く国民の利用に供さるべきことはもとより、できるだけ早く政府の方針を明らかにすることによりまして、製造業者に対しましては受像機の本格的生産に着手する拠りどころを与えることができますし、この大量生産の原動力となるべき需要の喚起に役立たせますとともに、放送業界における事業計画の目標設定にも役立たせるようにしようとするものであります。先ほど第三問として、絵の質がよくない、天然色にほど遠いと言われましたが、最近の国産受像機によりますテレビをごらん下さいますと、その色がきわめて天然色に近い、非常に進歩していることがおわかりであろうと存じます。その受像機の操作についてもきわめて簡単になりましたし、画面の安定度もきわめて良好になっていることは御理解いただけることと思います。そういう次第でありまして、その大量生産の原動力ともなるべき需要の喚起に役立たせますとともに、放送業界における事業計画の目標設定にも役立たせるようにしようとするのであります。また、当初は限られた地域において、また比較的少数の受信者であっても、より高度の放送媒体を大衆が享受することを可態とすることは、他に障害を生じません限り一日も早くすべきであるものと考えます。
次に第一問に返りますが、実験放送にスポンサーをつけた理由はどうだろうか、スポンサーをつけることはいけないという点について答弁申し上げます。電波放送実験無線局と申しますのは、科学又は技術の発達のための実験に専用する無線局という意味であることは、電波法第五条第二号に掲載されている通りでありまして、実験局と広告放送との関係は、法律の条文そのものは明らかにいたしておりません。また、純法律的には、科学または技術上の実験に専用することを妨げておりません限り広告放送が入っても差しつかえないと解されます。少なくとも積極的に実験局に広告放送を禁ずると規定しているとは絶対に解釈できないのであります。実験局における広告放送の取り扱いは、従いまして、法律の解釈の問題であると申しますよりは、行政方針上の問題であると考えます。従来の方針といたしましては、放送の実験を目的とした実験局について広告放送を無制限に認めますと、往々国民大衆にあたかも本放送であるかのごとき印象を与えまするので、結果から申しますと、既成事実ができてしまって、自後の行政に支障を与えることが考えられますので、実験放送中は広告放送を行なわしめなかったのであります。今後ともこの方針には変わりはありません。特別の方法と内容とによる実験放送以外には、実験放送には広告放送をつけないという方針でありますが、それならば逆に、現在行なわれているVHF帯におけるカラー放送の実験放送の場合に、これを認めたのはどういうわけであるかという点をお答え申し上げます。これは、これらのカラー実験局は、現に運用中の白黒テレビの周波数を使用して、送信設備の大部分を共用しているものであります。すなわち当該実験局の運用時間は、これを白黒テレビの放送に当てればその対価を受ける可能性を持つ時間であるこの時間を、当該事業者に限り、実験目的のために実験用の運用に供して、収益可能性をみずから放棄する場合ならともかくといたしまして、カラーテレビ調査会の調査に協力してもらうという趣旨のもとに時間を割愛してもらったのでありますから、カラー番組とする場合に、実験局であることをもって収益の期待性を失わしめるということは妥当を欠くきらいがある、さように考えましてこの広告を許可したのであります。
最後に、周波数の割当がVHF帯において少ない、その点は困るではないかという御質問に対してお答え申し上げますが、このカラーテレビの方式によりますれば、新たに周波数を割り当てる必要がないのであります。放送者が現在与えられている周波数帯、チャンネルでもって、カラーで放送しようが、白黒で放送しようが、いずれでも自由に放送できるのであります。そこで受像者は、白黒受像機を持っている者は白黒で受像できますし、カラーの受像機を持っている者はカラーで受像できますから、その周波数の割当の問題は全然心配がないのでございます。
以上お答え申し上げます。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/11
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012・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) カラーテレビの放送装置、受信機、ブラウン管、全部国産ができます。すでに今年の上期におきましては、八百台、下期には二千五百台ができる予定でございます。ただ問題は、量産過程に参りますると、ブラウン管の増産についての技術導入が必要でございます。しかし今のところ大して台数もふえませんので、国際収支にそう重大な影響はございません。ただ今後におきましては、わが国の増産をはかってそれまでは受信機の輸入は禁止いたします。で、三〇%の関税で競争し得るまではカラーテレビの受信機は輸入はいたしません。今の普通の白黒のテレビでございまするが、御承知の通りわが国が急速に発達いたしまして、今では十四インチはアメリカのものよりは二割程度安く、世界で日本のテレビが一番いいということになっているのであります。行く行くはこのカラーテレビも、世界で一番いいテレビが日本にできることを期待いたしておるのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/12
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013・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 内閣総理大臣の答弁は他日に留保されました。
〔山田節男君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/13
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014・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 山田節男君。
〔山田節男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/14
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015・山田節男
○山田節男君 ただいまの私の質問に対しまする植竹郵政大臣の御答弁は、冒頭に私が申し上げましたように、このカラーテレビ全部に、あるいは一種の政治的な圧力の発散する妖気にあてられておるというようなことを申し上げましたが、どうも賢明な植竹郵政大臣の御答弁としては、私はよくわからないのであります。一体、先ほど私が申し上げた中で、大臣からこれについての全部の御答弁がございませんが、まず第一に、たとえこれを国産にいたしましても、先ほど植竹郵政大臣が言われましたが、小なくとも二十一インチならば五十万円ないし六十万円かかる、十七インチでも四十万円はかかるというのであります。そういう高いものを、それでは今日国民の中の何。パーセントがこれを使うかというのであります。きわめて限られたそういう特権階級のみがこれを利用し得る、こういうようなことは、一体、放送法の、あまねくこれを放送して公共福祉を増進するという点からいえば、行く行くはこれは発展する、普及すると言われましたけれども、アメリカが、先ほど申し上げましたように、六年かかって六千万の白黒テレビの中でわずか四十数万しかないというこの事実であります。経済力において非常な差のある日本において、今、郵政大臣がおっしゃるような楽観的なことで、こういう重大な問題を早期に実施するという決断をされること自体が、私はおかしいのであります。これに対しまして、今きわめて楽観的なことをおっしゃいますけれども、三月三日の参議院逓信委員会におきまする参考人の意見を徴してみましても、ほとんど全部がまだ時期尚早である。池田通産大臣はもう十分全部国産化するとおっしゃいますけれども、これは事実に反しております。少なくともブラウン管に塗ります塗料なり、あるいは送信機の一部はどうしても国産ができないのであります。これは、あなたはだれからそういうことをお聞きになったかわかりませんが、私は、これにつきましては池田通産大臣よりもよく知っております。のみならず、カラーテレビに使います部分品全部、ほとんど全部がこれは特許です。ロイアルティを払わなくちゃならない。私は、あなたのところから最近調べたところによりますと、こういう問題につきまして年間少なくとも二十五億円のパテント料を払っているじゃありませんか。かような点から見まして、きわめて楽観的なことをおっしゃいますけれども、これは私は、池田通産相の御答弁は事実に反していると思います。この点は一つよく勉強して、もう一ぺん御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/15
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016・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 時間が来ました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/16
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017・山田節男
○山田節男君(続) 私は植竹郵政大臣に対しまして、NTSC方式を、これを実施なさって、五年たち十年たって、後顧の憂いのないという自信があるかということを、もう一ぺん私はここで御確認願いたいと思います。もちろん、これは岸内閣の責任において私はこれを聞きたいと思うのであります。(拍手)
〔国務大臣植竹春彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/17
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018・植竹春彦
○国務大臣(植竹春彦君) 答弁漏れがございまして恐縮でございました。
カラーテレビの普及につきましては、アメリカにおきましては、白黒テレビの驚異的な普及に比べまして、カラーテレビは本格放送開始後約六カ年を経て普及難であったことは、これは事実であります。その理由といたしましては、初めは確かに価格が高かった。操作の困難性もありました。安定度も悪かった。放送番組の不足も原因でございましょう。しかし、初めにこういったような難点、要因が、いろいろそういうふうに折り重なりましたものですから、受信者の不満が起こって、そうして需要を抑制したことは事実でございます。しかし、最近に至りまして、価格の低廉化のほかに、大幅に操作の簡易化ができましたし、先ほど申し上げたように画質の改善も実現しておりますので、従来の伸び悩みの事実をもちまして今後のアメリカの将来を断ずることはできない。いわんや、コスト・ダウンに非常に特徴を持っております日本の生産工業におきまして、低廉な受像機をどんどん生産いたしまする場合には、逆にアメリカに輸出することが可能なことを確信いたしております。今度は日本の場合でありますが、このアメリカの例と日本の場合との関係につきましては、むろん、日本でも急速安易に大量普及が見られることとは思いません。初めは営業用と申しますか、一つの場所に大ぜいの人が集まって見るという段階を経て、それからだんだんまた家庭に、また個人のところへ需要が拡大されていくということは、これは白黒テレビの場合も同じであろうと存じます。あとはもし答弁漏れがございましたら、また答弁申し上げます。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/18
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019・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
私は、カラーテレビが国産できると申し上げました。ただ量産についての特許料、またブラウン管の一部について輸入することはございます、当初において。これは全体のごく一部分でございます。たとえばトランジスター・ラジオは国産できる。しかし、原材料の一部は輸入しているのでございます。しかし、全体的に申しまして、大体国産品として立ち得るという状態に相なっておるのであります。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/19
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020・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第一、弁理士法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず委員長の報告を求めます。商工委員長山本利壽君。
〔山本利壽君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/20
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021・山本利壽
○山本利壽君 ただいま議題となりました弁理士法の一部を改正する法律案について、商工委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、本法律案の内容につき、そのおもなる点を申し上げますと、第一は、弁理士の資格の特例についてであります。現行法におきましては、弁理士試験によらないで弁理士となる特例の規定がありますが、高等試験制度及び高等官制度が今日すでになくなっておりますので、その規定を削り、これにかえて、特許庁において七年以上審判官または審査官の事務に従事した者は弁理士となる資格を有する旨を規定しようとするものであります。第二は、弁理士の登録事務を弁理士会に移譲することで、現行法におきましては、これを特許庁において行なっておりますが、弁理士会の自主性の強化に資するため、その登録を弁理士会になさしめようとするものであります。第三は、弁理士の業務についてでありまして、特許法等、新工業所有権法の制定に伴いまして、行政庁がなした処分に対する訴願の道が広く認められ、また特許、発明等の実施が公益上特に必要な場合は、通商産業大臣に裁定を請求することができるという制度が認められましたので、これらの事項に関する代理その他の事務を業として行なう際は、弁理士をしてこれを行なわせようとするものであります。なお、このほか、弁理士会の目的を現在にふさわしいものとする等、若干の点において現行法の諸規定を改善補完しようとするものであります。
当委員会におきましては、きわめて熱心に審査が行なわれましたが、そのおもなる点は、第三十一回国会に行なわれた特許法等の大改正及び最近の技術革新に即応させるための弁理士法の根本的改正問題、特許庁の審査及び審判の促進の問題、弁理士資格の特例において七年以上とすることの理論的根拠、審査官、審判官の待遇改善、弁理士の業務の範囲に関する問題等でありました。そのうち弁理士法の根本的改正については、弁理士の業務範囲の問題、弁理士法との関連等を慎重検討して、急ぎ成案を得るよう努力するとの答弁があり、七年以上とする点については、各方面の意見と実情を参酌して、これを妥当なるものと認めたとの答弁がございました。それらの詳細につきましては、会議録に譲りたいと存じます。
質疑を終了して、採決いたしましたところ、本法律案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/21
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022・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/22
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023・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。
次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時三十二分散会
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○本日の会議に付した案件
一、故議員石黒忠篤君に対する追悼の辞
一、故議員石黒忠篤君に対し弔詞贈呈の件
一、カラーテレビジョン放送標準方式に関する緊急質問
一、日程第一 弁理士法の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415254X01119600311/23
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