1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十六年四月五日(水曜日)
午前十時五分開会
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出席者は左の通り。
委員長 三木與吉郎君
理事
天埜 良吉君
金丸 冨夫君
村上 春藏君
大倉 精一君
委員
井野 碩哉君
佐野 廣君
重宗 雄三君
谷口 慶吉君
鳥畠徳次郎君
野上 進君
平島 敏夫君
小酒井義男君
重盛 壽治君
中村 順造君
大和 与一君
片岡 文重君
松浦 清一君
白木義一郎君
加賀山之雄君
国務大臣
運 輸 大 臣 木暮武太夫君
政府委員
運輸政務次官 福家 俊一君
運輸大臣官房長 辻 章男君
運輸省鉄道監督
局長 岡本 悟君
運輸省鉄道監督
局国有鉄道部長 廣瀬 眞一君
事務局側
常任委員会専門
員 古谷 善亮君
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本日の会議に付した案件
○国有鉄道運賃法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/0
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001・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) これより委員会を開会いたします。
昨日は私の議事運営の不手ぎわで、十分委員各位に議事運営の実体が徹底いたしませんでしたことは申しわけありませんが、昨日の議事経過をあらためて申し上げれば、昨日午後七時六分再開した当委員会において、村上委員より質疑終局の動議が提出され、これに対し賛成の声がありましたので、直ちに動議を取り上げ、採決を行ない、動議の成立を見たものと判断し、討論に移りましたが、動議の取り扱い方、質疑終局の宣告等に的確を欠き、委員各位に徹底いたしかねましたことは、まことに遺憾であります。その後、都合により午後八時まで委員会の休憩を宣しました。今後議事の取り運びにつき十分注意を払いたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/1
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002・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) これより国有鉄道通貨、法の一部を改正する法律案に対する討論を継続いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/2
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003・大倉精一
○大倉精一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、国鉄運賃法並びに修正動議に対しまして反対をいたします。
討論に入る前に、昨日私の質疑途中で一方的に質疑を打ち切られまして、意を尽くせなかったことは、非常に遺憾に存じております。特に昨日の質問は、国鉄の新五カ年計画、いわゆる運賃の値上げの基本ともいうべきところの五カ年計画に対しまして、中身に入って質問しようとするその入り口を封鎖された形になりまして、私も非常に遺憾に存じております。なおまた、同僚議員の中におきましても、要求資料に基づいて質疑をしようという議員に対しましても、まことに私理事として申しわけないと存じておった次第であります。
以下反対の理由を述べるわけでありまするが、まず第一番に、質疑の中でもたびたび問題になりましたように、国有鉄道の公共性と企業性、これがいまだにはっきりいたしておりません。いわゆる公共性と企業性とは相反するように見えるが、調和しなければならぬ、こういう御答弁がありましたが、はたして現実の問題として、この調和が可能であるかどうか、私は非常に疑問に思うわけであります。特に現在の状態におきましては、公共性よりも企業性が優先をし、企業性が強調されておるという工合に私は考えております。特に今度の運賃値上げにいたしましても、非常に強い企業性が出ておる、かように私は考えております。特に、最近の国鉄の運営を見ましても、いわゆる資金投資の面におきましても、企業性のある部面におきましては、積極的な資本投資も見られますけれども、そうでない、いわゆる地方の公共性の部面に対しましては、資金投資の積極性がきわめて希薄である、かような面が見られるわけであります。私はこの面につきましては、多くは申しませんが、公共性と企業性を調和する唯一の道は、政府がその決意をしなければこの調和はできないと思います。しかるにもかかわらず、今日まで政府はいわゆる国の政策を一方的に国鉄に押しつけて、そうしてそのめんどうを見ない。いわゆる公共負担分に対しましては、政府はほおかぶりをしておる。こういうところに現在の国鉄の苦悩があり、さらにまた、経営の矛盾も生じておると考えられるわけであります。この答弁の中におきましても、国鉄総裁は、公共性と企業性の調和は非常にむずかしいものでありますという答弁がございましたが、全く私はその通りだと思います。でありまするから、私はこの際、この問題、公共性と企業性という問題をすっきりするように、政府においても特段の配慮をしなければ、再び運賃値上げというものは避けられない、かように考えるわけであります。でありまするから、この際、いわゆる国鉄の公共負担の部面におきましては、政府の積極的な施策を講じなければならぬ、こういうことを私はこの案件の審議を通じて痛感をした次第でございます。
次には、運賃と物価と国民生活の問題であります。これも今度の質疑の中で、私は必ずしも閣内で意見の一致ないしは人心の一致がないのではないかという感を深くいたしました。今度の国鉄運賃の値上げに対しましては、いわゆる、いわれるところの値上げムードには関係がない、こういう運輸大臣の御答弁がありましたが、経企長官の答弁といたしましては、若干ニュアンスの違う答弁があった。つまり、国鉄運賃の値上げは、物価の値上げ、あるいは物価政策に対しまして好ましくないから、これはストップすべきであるという意見を当初持っておったが、それを国鉄の建設が急を要する、やむを得ないという事情を知って、私は本意ではないがこの運賃値上げに賛成をしたのだ、そういう答弁もございました。これはどういう工合に言い回しをされましても、いわゆる政府みずからが提案理由の中でも表明しておるところでありまして、国鉄運賃というものは物価の影響が非常に甚大であるので、これを考慮して最小限度に食いとめた、こういうような提案理由もございます。さらにはまた、私はきわめて納得のできない部面といたしましては、閣議におきましても、国鉄運賃の値上げはやるが、その他の公共料金はストップする、こういう決定をされております。この面につきましても繰り返し私は質問をいたしましたが、遂にその要領を得ませんでした。すなわち、その他の公共料金、その中のたとえば地方の鉄道、電車あるいはバス、トラック、こういうものは物価、国民生活に及ぼす影響が甚大であるから、あるいはまた物価値上げのムードに及ぼす影響が甚大であるから当分の間はストップするのである、こういう理由でストップになったのでありますけれども、はたしてしからば、国鉄の運賃というものは、値上げムードあるいは物価には影響がないのか、こういうことは今なお私は疑問に思っておるわけであります。従って、もしかりに物価並びに国民生活に影響があるからその他の公共料金は一応ストップすべきである、こういうことであるとするならば、まずもって私はその最も大きな影響のあると思われるところの国鉄運賃というものは、少なくとも当分の間はストップすべきが理の当然ではないか、かように私は質問をし、今でも考えておるわけであります。
しかしながら、半面、国鉄の新線計画を中心とする五カ年計画の建設につきましては、いささかも私は反対しておりません。中身はいろいろ疑問はありまするけれども、輸送増強を目的とするところの建設には反対する理由がないのであります。従って、この輸送増強に対する資金の捻出なり、たとえば、当分見合わす分に対する資金手当の問題等は別途に考慮する余地は十分にあると私は考えております。たとえば、今度の公労協の仲裁裁定にいたしましても二百億円という原資が要るのでありまするが、これも大臣の御答弁によりまするというと、その原資については別途に考慮をして、五カ年計画は変更させないように決意をしておる、こういうような御答弁もございます。従って、そういうところから見ましても、国鉄運賃の値上げというもの夢当分見合わしても、五カ年計画には差しつかえない、政府としての手当ができる、こういう工合に私は考えておるわけであります。この部面からいたしましても、少なくともこの時期におけるところの国鉄運賃値上げというものに対しましては反対をしなければならぬ、かように考えておるわけであります。
さらにまた、運賃の構成内容につきましても、私はかねがね大きな疑問を持っているわけであります。この点につきましては、私は逐次質問を続けていきたいと存じておりましたが、その機会を失いましたので、非常に残念に思っておりますけれども、いろいろ統計等を拝見いたしまするというと、運賃負担の不公平、不公正の内容というものは非常に顕著に出ております。たとえて言うならば、旅客にいたしましては、一等客は全乗客の約〇・二%にすぎない。しかるにもかかわらず、二等の旅客は九九・八%にもなっている、しかも収入では一等の旅客さんの収入はわずかに九%、二等の方が九一%、こういう比率を示しております。これを見ましても、いわゆる旅客運賃の黒字ということは、その二等客の大衆がこれを全部負担している、こういう結果になることは明瞭であります。さらにまた貨物運賃につきましては、これは全体として赤字でありますが、この赤字の貨物運賃の部面を、いわゆる一等の旅客でなくて二等の大衆によってカバーされている、こういう内容になっているわけであります。さらにまた貨物の赤字にいたしましても、いわゆる赤字の根源というものは何かといえば、これは車扱いである。車扱い貨物というのは、これは独占資本といわれている大企業、大資本の貨物でありまして、こういう車扱いの貨車の利用度が全体の九八・四%、それに引き比べまして、いわゆる引っ越し荷物とか小口扱いとかいう大衆の利用度の多いものはわずかに一・六%であります。しかも運賃収入にいたしましては、いわゆる前者が九二・五%後者がわずかに七・五%、従っていわゆる独占資本の貨物の大きな赤字を、言うならば二等の大衆が負担している、こういう結果に相なっているわけであります。しかるにもかかわらず、今度は一等の運賃が倍率が下がりましたために、たとえば東京から大阪まで参りますというと百円ぐらい安くなるのじゃないかという工合に考えておりますが、こういう点につきましても、近い将来考慮されなければなりませんし、いわゆる運賃値上げの際にはこういう配慮が必要である。しかるにこの配慮は実際なく、ますますこの差が多くなってくるような、こういう運賃値上げに対しましても私は反対しなければならぬ、かように考えているわけであります。
さらにまた、今度の運賃値上げの性格についても私は疑問を持っております。つまり今度の運賃値上げは、五カ年計画の推進ということを中心にして運賃値上げの提案をされておるのでありますけれども、いわゆる国鉄の新線建設とか、あるいは設備あるいは車両の増設というような、こういう設備投資に投入されるものでありますから、これはすべて運賃をもってまかなうということは、これは疑問であります。私はいわゆる国鉄の費用の負担区分というのは、大体公共負担分につきましては、これは国が負担すべきである。さらにまた、設備投資につきましては、これは外部資金をもってまかなうべきである。運営についてはこれは自己資金でやるべきである。こういうような原則を立てることが必要ではなかろうかと、これは私は考えておりまして、この部面に対しましても、質問を重ねて当局並びに政府の意見をただしたいと存じておりましたが、その機会がなくなったのは非常に残念でありますけれども、私はこういうことをこの際やはり確立をしなければならないのではないかと存じておる次第であります。従って、こういう部面の整理をしないというと、再び重ねて運賃値上げをしなければならぬという、こういう結果にも相なるし、さらにまた、いわゆる将来利潤を生むような部面に対しまして、一般大衆の負担によってこれを行なうということは、これははなはだ当を得ないものであるという工合に考えておるわけであります。従って、この運賃値上げの性格の面からも私は反対しなければならぬ、かように考えております。
さらにまた、資金投資の原因となりますところの、言うならば建設のほかに、国鉄の荒廃の原因をあげておりまするけれども、これはあげて私は政府が責任を持って処理しなければならぬ問題ではなかろうかと存じております。すなわち、今日の荒廃の原因としてあげられておりますることは、戦争の際にレールの枕木の更新や、あるいはその他の更新をやめて、そういう収益をあげて軍備に回しておる。さらにまた加えて、戦災によるところの打撃は非常にひどいものであるが、これに対する政府はほとんどめんどうを見ていない。その赤字をすべて公社になったところの国鉄に背負わせておる。こういうところから、この借金が、現在は借金等の返済と利子を合わせて四百五十億にもなっておる。こういう負担をそのままほうかぶりさせておるということが、これまた非常に大きな問題ではなかろうかと存じておる次第であります。さらにはまた、先ほど私は公共負担の問題を申し上げましたけれども、従来はいわゆる低物価政策のために低運賃で押えてきておる、政府の要求によって押えてきておるわけであります。さらにはまた各種運賃割引等、多くの公共負担等も、これまた政府はそのままにほおかぶりをさせておる。国鉄はいわゆる荒廃の手直しの方に手が回らない。こういうことから今日の荒廃ができておるのであります。こういう政府の政策の怠慢からきておるものを大衆の負担に転嫁させる、これはきわめて私はとるべきじゃない、かように考えておるわけであります。
従って、こういうような運賃値上げに対しましては、私どもはあげてこれは大衆の負担、犠牲に転嫁するものであるからして、この際、国鉄運賃値上げというものは、これはストップをすべきである。少なくとも、いわゆる公共料金が物価あるいは国民生活に影響があるという理由のもとに、当分の間はストップするというのであるならば、国鉄運賃というものは、これは当分の間は見送るべきである、こういう工合に考えるわけであります。にもかかわらず、きのうもこの委員会におきまして強行採決をされたように、まだ余すところ五十数日もあるこの審議期間の中におきまして、審議あるいは質疑半ばにおいてこれを打ち切って、あえて運賃値上げを強行せんとするこの挙に対しましては、私は断固として反対をしなければなりません。なるほど法律案でもって四月一日になっておりまするけれども、私は必ずしも四月一日にこだわることなく、いわゆる国民の納得するような審議をし、国民の納得するような中身を明らかにして、国民の納得の上に立って国民に負担をしてもらう。こういうことが私は政治家としても、また当局としても当然の義務ではなかろうかと思っておる次第であります。
私はこういうような状態でもって、いわゆる質疑を尽くすことなく反対討論をしなければならぬこの事態を非常に残念に思うことをつけ加えまして、反対討論を終わるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/3
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004・片岡文重
○片岡文重君 私は民主社会党を代表して、この際、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対して反対の討論をいたします。
その第一は、まず池田内閣の公約違反であるということであります。衆議院選挙の前から、われわれが国鉄の運賃値上げを指摘しておったにもかかわらず、池田内閣はこれを否定してきておる。選挙前から運賃値上げが政府部内においても確定的であったことは、予算委員会並びに当委員会における総理、経済企画庁長官、国鉄当局等の答弁によってきわめて明らかであります。公党として、はなはだ遺憾なやり方である。これがまず最初に申し上げたい反対の理由であります。
その次に申し上げたいのは、今日の池田内閣ばかりではありませんが、歴代の戦後における内閣のやり方を見ておると、交通問題に対する総合対策が全く認められません。そのために、都市を中心とした急激な人口膨脹による輸送の輻湊によって、国鉄経営を不当に圧迫し、ひいては通勤緩和等のために、やむを得ざる国鉄の投資が追られるという事態も起こっております。政府はすべからくこの際強力な総合対策を立てて、一日もすみやかに各機関が平等に、かつ最大限の無理のない責任を果たすことのできるような態勢を整うべきであると考えるのであります。
次は、国鉄に対する政府の認識が時代おくれであるということであります。交通機関が急激な発展を遂げつつある今日に、なお戦前のような独占的企業であるような感覚に置かれておる。口先では独占企業ではなくなったといいながら、今日の激しい競争場裏に置かれておる国鉄の立場というものを全く正確に把握していない。従って、公共負担が重過ぎたり、その国鉄の経営に対する適切な処置もとられず、改善への積極的な協力をなされておらない。さらに国鉄総裁は、赤字増加の原因となるような事項について拒否する力を持たず、経営の責任だけは仮借なく負わされておる、こういう点もまた今回の運賃値上げを招来するに至った重大な原因であると考えるのであります。それから今回の運賃値上げの原因となった重要な原因の一つに、国鉄が負わなくとも、むしろ政府が負うべきだと考えられるような公共対策のためにする投資、すなわち都市計画に関する諸工事であるとか、踏切対策、通学、通勤緩和のための投資等、あるいは新線建設費等というがごとき、当然政府が負わなければならないようなものが全然考慮されておらないで、これに含まれておる。しかも、今まで全然考慮されておらなかったばかりでなしに、今日においてもなお考慮されておらないということが明白であります。それから政治路線といわれるような赤字線、農水産物暫定運賃、その他の割引による欠損等は、これまた当然政府が考慮すべき性質のものであるにもかかわらず考慮されておらない。その結果が今回の運賃値上げとなり、大衆負担になってきておるのですが、これもまた十分反省をさるべきところだろうと思うのであります。
それからその次は、運賃値上げの内容についてでありますが、二等運賃の二倍という現行の一等運賃を、二等の一・六六倍に引き下げて、その差額を通行税として取り上げております。すなわち、政府は値上げをしなければならないほどの困難さにある国鉄に対して適切な措置をとらないばかりでなしに、かえってその上前をはねるようなやり方をしておるということであります。それから国鉄当局に対して申し上げたいことは、経営の合理化、経費の節約等に対して誠意がないとは申しませんが、改善の目をひたすらに内側にのみ向けて、すなわち、きわめて消極的であって、増収をはかるのではなくて、逆にみずからの手足をみずから窮屈にするようなやり方にのみ努力しております。その結果として労働条件の改善をはばみ、輸送サービスを低下させるなど、しわ寄せを国鉄職員や大衆に負わせる結果となっております。また、第一次五カ年計画の失敗についての真剣な反省も認められず、その責任を負わんとする者もないようであります。このような無責任な態度からすりかえられようとしておる新五カ年計画も、この委員会における質疑を通して明らかになったように、資金の裏づけも十分に考えておらずに失敗をされたようなずさんさであります。第二次五カ年計画の完成の可能性をにわかにわれわれは信じがたいのであります。従って第二次五カ年計画の内容等については再検討すべきではないかと考えるのであります。さらに、値上げの内容について、先ほども申し上げましたが、二等運賃の大幅な値上げになっておるのに、一等運賃は現実に値下げである。値上げムードのただ中にあってただ一つの値下げ異変であります。また値上げの影響を〇・一%というがごとききわめて軽微に見積もっておりますけれども、家庭経済に与える影響は、低所得者になるほど甚大である。このために幾多の前途ある青少年にまでその影響を及ぼしておることはいなみがたい現実の姿であります。
以上申し上げましたような諸点によりまして、私はこの際反対をいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/4
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005・加賀山之雄
○加賀山之雄君 私は、参議院同志会を代表いたしまして、賛成の意を持って討論をいたすものでございます。
国鉄運賃が国民経済並びに国民生活に占めておりまする非常に大きな地位から見まして、もちろん、軽々にこれを動かすべきでないことは言を待たないところでございます。それと同時に、国民におきましても、運賃については非常な関心を持ち、また、これが少しでも低いことを望むこと、これは当然と言わなければならないのでございます。従いまして、今回政府並びに国鉄において運賃改定を策案された場合に、私はこれは容易ならぬ御決意を持ってなすったことと考えるのでございまして、われわれ委員会におきまして、慎重に審議を尽くして参りましたゆえんもここにあるわけでございます。
この今回の運賃法の改正は、一二%の運賃増収をするための、従いまして、やり方としては、いわゆるフラット・インクリース、賃率を一般的に上げることによって増収を期しようとするものでございます。その目的はどこにあるかということを考えますと、新五カ年計画の遂行にあると言われておるのでございます。従いまして、われわれは、この新五カ年計画なるものをよく検討しなければならないのでございますが、国鉄が、先ほど申しましたように、国民経済並びに生活に絶大な影響を与えるものでございますから、今後の国鉄がどうなるかということについては、国民がそれこそ運賃以上な関心事でなければならないし、国民の幸不幸の分かれ道とさえ考えられるのでございます。
私はかねがね鉄道輸送は経済、産業に先行すべきものである。経済、産業が伸展する前に輸送が伸びて、力がなければならない、かように信じておるものでございますが、その意味から申しまして、今回の新五カ年計画というものは、いわば至上命令とも申すべきものではなかろうか。その内容を見ますると、むしろ私どもの見解によれば、旅客五%の伸び、貨物が三・三%の伸びと策定されておりますが、私は、はたしてこれで足りるのかどうか、むしろ危惧を持つと同時に、かかる五カ年計画においては、先ほど申しました先行すべきであるという理由からいたしまして、五カ年計画の前期、つまり最初の三年間にむしろもっと多くのウエートを持って完遂をする必要さえあるというように私は考えるのでございます。この重要な新五カ年計画の原資をどこに求めるかということでございますが、私はだれが考えても、方法は三通りよりなかろうと思う。一つは、政府の出資であります。また一つは、政府よりの借り入れであり、もう一つは、いわゆる自己資金、いわゆる運賃収入によってこれをまかなう、この三通りよりないわけでございまして、そのいずれによってこの原資を得るかということが次に問題になる点だろうと思います。
先ほどから同僚議員から御指摘がありましたように、私はこれほどの公共性を持つ、しかも公共的負担の多い国鉄に対して、投資的出資があまりにも少な過ぎる。今回の施策によりまして、新線に対して三億の予算が組まれておりますけれども、いわゆる投資的の出資はきわめて少ない。従いまして、従来改良費を政府よりの借り入れという形で実施して参ったのが今までの実情でございまして、それが積り積って三千億をこすという膨大な額になって、この利子負担が国鉄経理上まことに重圧になっている現状でございます。従いまして、現在でさえこれだけの血圧になっておる借入金を、さらにどれだけでもふやしていくということは、ますます国鉄経理を困難にするばかりでございまして、これには限度があるということは申すまでもないことと言わなければなりません。従いまして、最後に残った自己資金、すなわち運賃改定によるという方法をとるということは、だれが考えても最後に行きつく問題でございまして、ただこれには厳重な先ほどのワクがございます。運賃が非常に現在高過ぎる、あるいは国民生活を圧迫する、国民の負担力をこえる、かようなことであれば、いかに必要があっても、これを押えなければならぬことは当然でございますけれども、幸か不幸か、今日までの国鉄運賃の水準は、一般物価水準に比較いたしまして決して商い方ではない。また政府並びに国鉄から説明のあった資料によりますと、物価中に含まれる運賃の要素と申しますものはきわめてパーセンテージは低い。これは二回、三回と鉄道にかかったといたしましても、このパーセンテージは非常に物価を動かすだけのウエートはないはずである。また現在、今日までの実情から申しましても、たびたびの運賃改定にあたって、その後卸し並びに消費物価が急激に高騰したという実例はないということでございまして、この点から物価に対する影響は、私はさようにおそるべきものではないというように考えるわけでございます。むしろこわいのは、いろいろ論議されましたように、いわゆる便乗的な値上げ、他のものの便乗的な値上げがこわい、つまり心理的な問題が出てくるわけでございますが、この点については政府並びに国民の、政府の施策よろしきを得、また国民の協力さえ求められるならば、押えることができるのではないか、私の見解をもってすれば、運賃といわれているものの中にむしろ大きなウエートを持っているものに、荷作り包装費あるいは積みおろし集配費というものがあるのでございまして、これらの費用は、鉄道運賃に比べれば比べものにならない大きな額に上っているはずでございます。これらの中にこそ私は大きなマージンがあるのであって、これらの節約をたとえ一部できるといたしますれば、むしろ今回の運賃値上げのごときは優にカバーできるものと確信を持つ次第でございます。かような意味で、私は今回の値上げを、一部はわずかながら投資的出資、一部を借り入れ、そして一部をこの運賃に求められた方策につきましては、私は賛成をいたす次第でございます。
また、国鉄の性格についていろいろ論議がされましたが、私は運賃もまたこれ物価であるというように考え、いわゆる経済性を持たせなければならぬということでございまして、これはいわゆる原価にできるだけ近いものにすると同時に、もう一方においては、他の輸送機関との輸送の均衡をはかる上においても、国鉄運賃をアンバランスの形に置くことは、経済あるいは輸送秩序を非常に正しく行なうことから考えまして、非常な欠陥になると思うのでございます。さような意味からも、運賃水準を一つの物価として、適正なところに置くということは、むしろ日本の経済に稗益するところ多いというふうに考えるものでございます。
最後に、私は、いろいろ述べられましたこれらの施策が、その根本において、国鉄の求められておる、絶えず努力を続けておられる、いわゆる合理化、近代化というものに負うところが多いと存じます。非常に古い施設を駆使しながら、近代的文化に、あるいは水準の高まりつつある国民の生活に寄与されておる国鉄の当局の経営努力は、われわれも大いに多とする次第でございますが、今回の運賃値上げをもって、必ずこれは何をおいても新五カ年計画は少しの間違い、狂いもなく実施をされんことを私は切に望み、そして日本の経済の伸長あるいは今後の国民生活にこたえられて、真に国民に親しまれ、愛され、そして国民に信頼される国鉄にもっとなっていただく、従来の努力を続けていただくことをこいねがいまして、私の討論を終わる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/5
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006・白木義一郎
○白木義一郎君 私は、今回の日本国有鉄道運賃法の一部改正の法律案に対しまして、反対をするものでございます。
最も広範囲にわたりまして、国民経済に密接な関係のある当法律案については、国民全般は、池田政府の所得倍増案に対し種々の角度より不安の念を寄せておりますやさきに、大衆の足といわれる国鉄運賃値上げに対しては、第一に、一般諸物価の値上がりへの影響をおそれつつも、運賃値上げより生ずる運輸事情の好転がいつになったら期待できるのだとの不安をまじえて、その行方を注視しておる現況でございます。先般来当運輸委員会において慎重に審議を重ねられてきたごとく、国鉄の性格、すなわち公共企業体と独立採算とのジレンマ、公共負担の問題、人件費の増大より起こる新五カ年計画遂行に寄せる危惧、飛行機、バス、トラック輸送への対策等、数多くの問題点を残したまま、国鉄運賃値上げは目前に迫ったわけでありますが、国鉄経営の現況から、多額な公共負担を避けられぬ点を運賃改正に転嫁すべきでなく、政府の公約たる公共投資の増大の面により解決を求めるべきが妥当であると考え、反対をするものであります。
なお、過日当委員会において国鉄総裁は、日本経済成長の判断を誤り、五カ年計画を失敗させ、今日の輸送混乱を招き、国民に多大な迷惑をかけたことは、一切が国鉄の責任であり、総裁の責任であると深く反省している。この責任を新五カ年計画遂行によって果たす決心であると、明快率直な、かたい決意の答弁がございましたが、私もまた、そのまま率直に聞き入れたいと思います。政治の目的は、国民一般の利益を守り、人心の安定をはからねばならぬゆえに、運賃値上げに対する大衆の不安を除く目的をもって、運輸大臣並びに国鉄最高幹部は、マスコミ、特にテレビの前面に立ち、その責任の所在を明らかにするとともに、国鉄労使あげて国民及び乗客に対し、今後の業務運営の確保に努め、全員輸送力増強の日まで、誓ってサービス精神を発揮し、国民の期待にこたえる決意を披瀝して、国民の納得と協力を求め、謙虚な態度をもって人心の安定をはかること、すなわち、運賃を上げていただくからには、国鉄一家あげて、たとえ国鉄財政がどうであろうと、政府のテコ入れが不足であろうと、給料問題等によってお客様には一切迷惑をかけぬようがんばりますから、当分温雅はがまんしていただきたいと、テレビ等を通じ全国民に了解を求める努力を措しまぬことを強く要望して、私の反対演説といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/6
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007・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) 他に御発言もなければ、これをもって討論を終局することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/7
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008・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) 御異議ないと認め、討論は終局いたしました。
これより国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案の採決に入ります。
まず、天埜君提出の修正案を問題に供します。天埜君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/8
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009・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) 多数と認めます。よって修正案は可決されました。
次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/9
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010・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) 多数と認めます。よって本、案は多数をもって修正すべきものと議決されました。
なお、議長に提出する報告書の作成等については、委員長に御一任を願います。
運輸大臣より発言を求められておりますので、この際、御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/10
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011・木暮武太夫
○国務大臣(木暮武太夫君) ただいま当委員会におきまして、国有鉄道通貨法の一部を改正する法律案が可決されましたが、委員長を初め各位の御熱心なる御審議に対しまして、心より御礼を申し上げる次第でございます。
御審議の過程におきまして拝聴いたしました委員各位の貴重なる御意見を十分に心得まして、今後国鉄の指導、監督と、改正案の実施に当たっていく所存でございます。特に、国民の期待される新五カ年計画の遂行に全力をあげる所存でございます。お礼の言葉といたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/11
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012・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) 本日はこれにて散会いたします。
午前十時五十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103813830X02219610405/12
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