1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年二月八日(木曜日)
午前十時五十七分開議
出席委員
委員長 前田 正男君
理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君
理事 西村 英一君 理事 山口 好一君
理事 岡 良一君 理事 河野 正君
理事 山口 鶴男君
池田正之輔君 稻葉 修君
佐々木義武君 塚原 俊郎君
細田 吉藏君 松本 一郎君
石川 次夫君 三木 喜夫君
内海 清君
出席国務大臣
国 務 大 臣 三木 武夫君
出席政府委員
科学技術政務次
官 山本 利壽君
総理府事務官
(科学技術庁長
官官房長) 島村 武久君
総理府事務官
(科学牧術庁長
官官房会計課
長) 松田 壽郎君
総理府技官
(科学技術庁計
画局長) 杉本 正雄君
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二月五日
日本原子力研究所法の一部を改正する法律案(
内閣提出第五九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本原子力研究所法の一部を改正する法律案(
内閣提出第五九号)
科学技術振興対策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/0
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001・前田正男
○前田委員長 これより会議を開きます。
日本原子力研究所法の一部を改正する法律案を議題とし、その提案理由の説明を聴取いたします。三木国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/1
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002・三木武夫
○三木国務大臣 ただいま議題となりました日本原子力研究所法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び要旨を御説明申し上げます。
日本原子力研究所は、わが国の原子力研究のセンターとして、昭和三十一年設立以来、各般の業務を通じて原子力の研究、開発、利用の促進に寄与して参ったのでありますが、昨今、原子力開発の新しい分野といたしまして、放射線化学が将来の化学工業の技術革新、高度化に大きな影響を及ぼすものとして、各方面からその発展に多大の期待を寄せられており、海外諸国においても活発な研究開発が行なわれている現状でありまして、高度の化学工業を有するわが国といたしましても、この分野の研究開発を強力に推進することが緊急かつ必要であります。
このため、日本原子力研究所に放射線化学中央研究所(仮称)を新たに設け、民間においては設置が困難と見られる大施設を設置して、放射線化学に関する中間規模試験、放射線源の開発研究、大施設の使用を必要とする基礎研究等を行なうものとし、本年度予算におきましても、これに必要な経費を計上いたしております。
本改正案の内容は、日本原子力研究所の理事の定数を現存の六名から七名に増加しようとするものでありますが。これにより増員される理事一名は、同時に放射線化学中央研究所の所長を兼ね、同研究所の新設に伴う業務及び施設、人員の増大に応じて、この分野における業務の円滑な運営と管理機能の充実をはかろうとするものであります。
以上、この法律案の提案の理由及び要旨を御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/2
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003・前田正男
○前田委員長 次に、合同政府より提案されております科学技術庁設置法の一部改正に関し、その概要について説明を聴取いたしたいと思います。三木国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/3
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004・三木武夫
○三木国務大臣 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、その概要を御説明いたします。
近年における科学技術の進歩はまことに目ざましいものがありますが、これに伴いまして科学技術はその専門分野がますます細分化いたします反面、その総合的推進を要求される状況にありますので、科学技術庁の総合調整機能をさらに強化する必要があります。科学技術庁は、設置されて以来五年有半にわたり科学技術に関する総合的企画、調整官庁として科学技術の振興をはかり、国民経済の発展に寄与するため、諸般の施策を講じて参ったのでありますが、現在の機構にあっては、科学技術に関する基本的政策の企画、立案及び推進並びに関係行政機関の科学技術に関する事務の総合調整の面において必ずしも万全であるとは考えられませんので、新たに研究調整局を設置し、各局の所掌事務を合理的に再配分することにより、前に申し述べた要請にこたえるとともに、科学技術に関する政府の諸施策の遂行をなお一そう円滑かつ強力に推進しようとするものであります。また、昨秋以来外国における核爆発実験の再開を契機といたしまして、放射性降下物による障害の防止対策が恒久化いたします現状にかんがみ、その総合調整事務を科学技術庁の権限に加えますとともに、これを原子力局に所掌せしめることといたしたいと考えております。
次に本法案の概要を御説明いたします。
第一に、研究調整局を新設することであります。現在の機構にありましては、関係行政機関の科学技術に関する事務の総合調整は、振興局において技術導入審査、留学生の派遣、発明奨励、技術士法の施行等いわゆる現業的事務とあわせて行なっておりますために、総合調整機能が機構的にやや弱体であることはいなめない現状にありますので、研究調整局を新設し、関係行政機関の科学技術に関する事務の総合調整、関係行政機関の科学技術振興費予算の見積もり方針の調整及び総合的、基礎的試験研究の助成に専念せしむることとし、特に防災科学技術、宇宙科学技術、環境科学技術等重要総合研究につきましては、積極的に調整を行なわせたい考えであります。従いまして、計画局は、その所掌事務から宇宙科学技術に関する事務を研究調整局に移し、科学技術に関する総合的、共通的事項につきまして基本的政策の企画、立案及び推進並びに総合調整を強力に行なわせるとともに、振興局は、いわゆる現業的事務もっぱら行なわせようとするものであります。
第二に、放射性降下物による障害の防止に関し関係行政機関が講ずる対策の総合調整を科学技術庁の権限に加えますとともに、これを原子力局に所掌せしむることであります。昨秋以来諸外国における核爆発実験の再開を契機といたしまして、放射性降下物による障害の防止に関する関係行政機関の業務が恒久的に行なわれる状況でありますので、これらを総合調整する体制を科学技術庁に整備する必要がありますが、現在、科学技術庁は原子力の利用に関する業務しか行ない得ないので、科学技術庁の権限及び、原子力局の所掌事務にそれぞれ放射性降下物による障害の防止に関し、関係行政機関が講ずる対策の総合調整を加えようとするものであります。
第三に、科学審議官の定数を二名減少することであります。科学審議官は、科学技術に関する基本的な政策を審議いたしますほか、科学技術庁の所掌事務に関する重要な方針の決定について長官を補佐しておりますが、研究調整局の新設により内部機構を充実するにあたりまして、行政組織の簡素化の要請もあり、科学審議官の業務量を勘案して、この際二名を減少し、そのうち一名を局長に振りかえることといたしたいと考えます。
なお、科半技術庁の事務の増加に伴いまして、職員の定員を増加する必要がありますので、所要の改正を行なうことといたします。
以上、本法案の概要を申し上げました。科学技術振興の重要性に対する皆様の深い御理解を切望する次第であります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/4
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005・前田正男
○前田委員長 次に、科学技術振興の基本施策に関する三木国務大臣の所信表明に対する質疑に入ります。
質疑の通告がありますので、順次これを許します。齋藤憲三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/5
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006・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 私は、ここにお許しを得まして、これから三木長官の三十七年度における基本的施策に関する御所信に対し質問を申し上げんとするものでありますが、長官の御所信に対しましては、もとより私も衷心より賛意を表するにやぶさかでないのであります。しかしながら、その申し述べられた長官のお言葉から私が感じ取った意味と、長官がお考えになっておる意味との間に、もし食い違いがあったり相違があったりしては、あとあとに支障がくると考えますので、重大な科学技術振興に関する長官の御所信でありますから、念のためお伺いをいたして、はっきりとした御所信に対する認識を得たいと考えているにほかならないのであります。従って、私の質問は今回一回限りで終わるのではなく、全会期を通じて、許される限り長官並びに当局にあらゆる問題に関する質問を申し上げ、お互いの間に科学技術振興に関する統一した見解を確立し、ますますわが国の科学技術振興の歩調を早めたいと考えておるのであります。このことは、科学技術の振興を長官御同様に市大に考え、あとう限りの努力を国会議員の一員として尽くしたいとの建設的な考えでありますから、ときによっては、あるいは常軌を逸し、あるいは激烈な言葉を使用することがありましても、これは善意に出発した情熱の結果であるということをお考え願いまして、前もってこの点はお許しを願っておきたいと思うのであります。
なお、委員長に一言申し上げておきます。先輩、同僚の委員各位も、広範多岐にわたり、科学技術の振興に関してはさだめし多くの御質問を寄せられることと思いますから、私の質問があまり冗漫に流れるようなことがありましたら、御遠慮なく御注意をお願いいたしたいと思うのであります。
まず第一に、長官が御所信の冒頭に述べられました「近年におけるわが国経済は急速な発展を遂げ、国民生活も着実に向上を遂げて参りました。その基盤となり原動力となったのは科学技術の発展であることは申すまでもないところであります。」かように申されておるのでありますが、このことにつきましては、科学技術の振興を政治の中核とすべきであるということを長年主張してきた私にとっても、まさに金的を射た感を抱くお言葉であります。ただ、現在私の気にかかりますことは、もう科学技術庁が設置されましてから五年有半になりまするけれども、「科学技術」という用語に対して、まだ私自身が的確なる認識を得ておらないということであります。基本法の構想がだんだん熟して参りまして、基本法を制定する前提として、科学技術という用語に対するところの定義を定めなければならないということが今論議されておるのでありますが、科学技術庁設置法の第三条を見ますと、「科学技術庁は、科学技術の振興を図り、国民経済の発展に臨写するため、科等技術(人文科学のみに係るもの及び大学における研究に係るものを除く。以下同じ。)に関する行政を総合的に推進することをその主たる任務とする。」こう書かれておるのでありまして、これも、昭和三十一年、科学技術庁設置法がこの特別委員会に提案されましたときに、いま委員長席におられる前田委員が、まっ先にこの問題に対して質疑をいたしておられるのでありますが、その当時から、この設置法第三条というものは、認識をつかむになかなか苦しんだのであります。それから五年有半たっても、まだ私の頭の中に、この科学技術という言葉に対するところの疑念があるということは、科学技術振興に対する一番大きな障害をなしておるのではないかと思うのであります。第一、この第三条の初めに書いた「科学技術」というのは、これはカッコで制約されてない科学技術、その次に来た「科学技術」は、今度はカッコで制約されて、人文科学並びに大挙の研究に関するものはこれを除く、こういうことでありますから、私もずいぶん回りくどく質問の要旨を書いたのでありますけれども、これ一つでもってきょうの瞬間が一ぱいになってしまうと困りますから、端的に申し上げますが、私は、今の体制からいって、科学技術庁が総合行政としてタッチするところの科学技術というものは、国民経済に寄与するという大きな前提を持っているのである。だから、自然科学の真理追求の分野というものは、これは行政の対象にならない。必ず技術というものが伴って、科学と技術が一緒になって、そうして国民経済に寄与する目標に向かっての総合行政というものが科学技術庁の本筋であるという点から考えますと、科学及び技術と読むのでなくして、「科学技術」という新しい用語であるという認識から出発をするというのがいいのじゃないか、そういうふうにも私は考えられるのですが、長官、もし何かのお考えがありましたら一つ御答弁を、即答であとで問題が残るようでしたら慎重に御考慮を願った上で御回答願ってもいいわけです。これを一つ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/6
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007・三木武夫
○三木国務大臣 齋藤委員の言われるように、これを分けて考えるということはなかなか困難な現状にある。だから、「科学、技術」でなしに「科学技術」こう言った方がいいと思います。これはおのずから一つの分野があるとは思うけれども、どこにピリオドを打つかということはなかなかむずかしい。だから、そこに間を置かないで、「科学技術」と一気に言った方が私はいいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/7
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008・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 私ども、どうもそういうふうな気がするのであります。そうしますと、おのずから、これから科学、技術という観念で「科学技術」という言葉を解しないで、「科学技術」というものは一体不可分だ、そういう新しい用語的な考え方から、科学技術行政全般についての施策をやっていく。そういうふうにすっきりすれば、私は、またいろいろ考えようがあるのじゃないかと思う。
この諮問第一号「一〇年後を目標とする科学技術振興の総合的基本方策について」という緒論第一ページにも「科学技術は、世界平和の確立と人数文化の増進に奉仕すべき英知と創造力の結晶であるということを永久にかわることのない前提として、」こうある。ですから、科学技術というものは、今後いわゆる技術を伴った自然科学の分野の中から国民経済に寄与する重大な問題を取り上げて、これを具体的な施策に持っていくということが、科学技術庁に与えられたるところの一つの本命である、さように考えて、われわれも委員会において当局に対する質問その他具体的な施策に対しての考え方を進めてもいいというお考えでございますか、もう一ぺん伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/8
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009・三木武夫
○三木国務大臣 その通りに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/9
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010・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 次に私がお伺いいたしたいのは、長官がお述べになりました、「政府におきましても、つとに科学技術の振興の重要性を認識し、明年度の予算編成にあたり新時代に即応する科学技術の開発に最も力点を置いたところでありますが、」こうお述べになっておられるのでありますが、これは総理大臣の施政方針の演説にもそういう言葉がある。また水田大蔵大臣は、文教並びに科学技術のために三千五十三億円をこの予算に盛っておる、と言っておられる。内容を検討してみますと、日本の科学技術の振興、特に科学技術の研究費に対して、各関係行政庁の分も合わせまして、大体三百億円という予算があるわけです。私は別段意地悪く御質問申し上げるのではありませんけれども、国家全体の予算から比べでみますとわずか一%に足らない予算、これに対して総理も長官も大蔵大臣も、大いに科学技術振興のために三十七年度は予算を重点的に考えたんだ、こういうことにはならないのではないかと私は思う。だけれども、逆からいけば、山高きがゆえにとうとからずということもある。予算だけが多くても何もならぬじゃないか、今の日本のいわゆる各行政官庁の直接の科学技術振興の予算を盛る受け入れ態勢というものは、三百億盛れば、もうそれで一ぱいでもって、これ以上予算をつけてもオーバーフローして、流れてしまって何にもならないんだ、だから、これは現在の甘木の科学技術振興受け入れ態勢における各行政官庁の研究が利用し得るところの最大限度の予算をつけたんだという意味での御発言であるか、一つこれを承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/10
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011・三木武夫
○三木国務大臣 予算は十分であるとはむろんわれわれも考えていないのですけれども、しかし、私は科学技術庁の予算折衝などをやってみまして、やはり受け入れ態勢ということにもいろんな問題点がある。だから、これを画期的な予算とするためには、やはり受け入れ態勢自体も検討しなければ、そう委員各位のびっくりされるような予算にはならない。そういうところに、政府が科科技術の振興に相当力を入れようと思いながらも、結果的に現われたものは、今お話しのように、全体の予算の一%を少しはこえておりますけれども、問題にはならない。そういう点で、この科学技術振興に関する予算を画期的な予算たらしめるためには、受け入れ態勢の検討が必要である。齋藤委員と私は感を同じくしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/11
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012・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 第三にお伺いいたしたいのは、長官の次の御所信のお言葉であります。「国民所得倍増計画を効率的に遂行し、買切自由化計画を実現するためにも、かつまた最近の諸外国における驚異的な技術峠新のさなかにおいてわが国が先進諸国に伍して繁栄するためにも、科学技術の振興をはかることはまさに刻下の急務でありまして、私に課せられた責務の重大性をあらためて痛感する次第であります。」と、こう言うておられるのでありますが、この責任の重大性を痛感するという一点から、長官のお言葉には、「私は明年度におきましては、わが国にふさわしい科学技術振興施策を確立し、その具体化に努力して参る所存であります。」こう言うておられるのであります。そして「特に次のごとき諸施策を強力に実施して参りたいと任じています。」と、いろいろなことをここに申し述べられておるのでありますが、それには防災科学技術をどうするとか、海洋科学技術をどうするとか、いろんな項目をお並べになっておられるのであります。そういうことも、もちろん大切でございましょうけれども、長官の言われておる、わが国にふさわしい科学技術の振興施策を確立して、今の急場に間に合わせるというその観点からいけば、海洋科学技術をこれからやったり、防災科学技術をこれからやったりしたって、私はその所得倍増計画及び貿易の自由化に対処してこの困難な時局を乗り切る力にはあまりならないのじゃないか、こう思うのです。それよりは、ほんとうに長官がわが国にふさわしい科学技術の振興を策して、いま長官に与えられたる貿易自由化とかあるいは所得倍増計画の高率達成に対して、力を沿えようとすれば、緊急な、ここでやらなければならない責務というものは、私は科学技術庁にあるのではないか、こう思うのです。所得倍増計画といったって、とうふを小さくして値段をつり上げるという所得倍増なら、これは私はだれにもできると思うのです。しかし、ほんとうに日本の科学技術の水準を世界水準以上に高めて、いい商品を安く作って外国市場に売り出すとか、そうして外貨の独得を増していくとか、そういうことをやって日本の経済力を増加しながら、なおかつ所得倍増計画を達成していくという点に立って、日本に一体何が残されているかということなんです。原料は外国から買わなければいかぬし、エネルギー資源はないし、そうして、しかもこの宿命的な国家の悪条件を乗り越えていって、日本の所得倍増計画、自由貿易に対処して貿易の伸長策をやっていくということは、残されたものは単に日本国民のブレーンしかない。このブレーンが一体今、こういう所得倍増とか、それから貿易の自由化に対して、各職場を通じてどう働いているかということを国家的要請にこたえて検討していくということが、私は科学技術庁に与えられた一番大きな責任でなければならぬ、こう思うのです。長官はいま長官の膝下にあるところの科学技術庁のいわゆる人材でもって、こういういわゆる行政的指導を科学技術的に行なって、日本の今直面しているところの貿易の自由化及び所得倍増高率達成に対して、やっていけるという御自信の上に立っておられるか、とてもこういうような貧弱な体制ではやれないのだというお考えの上に立っておられるのか、これを一つ伺ってみたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/12
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013・三木武夫
○三木国務大臣 科学技術というものは、齋藤委員も特に御存じのように、これはやはり時間をかけなければならぬ課題であります。あまり私は即効薬はないと思うのであります。そういう点で、これは相当長い日盛りで考えていかなければならぬ。そのためには、政府ばかりではいけませんから、民間とも協力しなければならぬので、そういう意味で、今お話のようなブレーンといいますか、日本人の頭脳を十全に動員することに遺憾ない状態にあるかどうかということをよく調べてみる必要がある、それも一つの方法ではございますが、もう少し科学技術振興には、私の考えは、今すぐにということで効果がなくても、五年なり十年なり後に科学技術の体制というものは整備できるような考え方で、私は自分の責任を果たしていきたい。そういう角度からものを考えていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/13
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014・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 そういうお考えもごもっともでございましょうが、ここに「私に課せられた責務の重大性をあらためて痛感する」、それは先ほども申し上げましたような貿易の自由化、それから所得倍増を効率的に一つ速成させるために、しかも国際的に日進月歩である科学技術の進歩に即応してこれを実施していくのが最大の急務であるというふうにお述べになっておられますし、もちろん科学技術は永遠の人類の進化をはかるバロメーターでありますから、十年、二十年、三十年、あるいは百年後を見通してこれに対する対策を立てるということは、これはもちろん重大であります。けれども、現下に差し迫った問題に対して、科学技術的にどう行政指導をやっていくかというととも、五年、十年、百年先の体制を作るのと同じく大切なんじゃ、ないか。ですから、こういう問題に対して、今のようなことではだめなんだ、科学技術庁長官として、この所得倍増計画高率達成、貿易自由化に備えるために日本の科学技術の総動員をやるにはこんなような体制じゃだめなんだ、こういうような体制でいかなければこの責任というものはおれは果たせないのだというお考えがあったら、それは私どもにもお漏らし願って、われわれもそのお考えが是なりとしたら、それに向かって実現を期した方がいいのではないかと思います。ですから、そういう意味で、現状において今お述べになりましたような責任をお果たしになるだけの御自信が持てますかどうですかという御質問を申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/14
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015・三木武夫
○三木国務大臣 私はこういう考えを持っておるわけであります。一つには、やはり科学技術の振興に果たす民間の役割ということが非常に大きい。そういうことで、各企業がこれからは科学技術というものに力を入れていかなければ競争には勝っていけないのだ、そういう各企業の考え方を助長するために、もう少し税制上の面において、今のは相当税制上にもそういう点で改革がなっておりますが、研究法人というのも一つの考え方でしょうが、もっと画期的な研究ということに投資をすることが非常に税制上においても各企業としても歩がいいし、またその企業の発展のためにもこれがいいんだ、もう少し強烈にそういうことを助長できるような方策というものを確立したいということが一つ。
もう一つは、国立とかこれに準ずるような研究機関、これのあり方というものが、民間の企業ではできない分野というものを受け持たなければならぬ。ですから、これは今、御承知のように、科学技術会議にも諮問をしておりますが、この答申を五月ころには出してもらいたい。思い切ってやはり改革をしてみる。国立の研究機関というもののあり方——これには相当抵抗があると思いますけれども、相当な刷新、充実のために努力をしてみたい。そうしてまた、科学技術というものに、いろいろ国としても基本的な政策とか振興方策などについて、もっとはっきりした形で国が責任を負うことがよろしいから、科学技術基本法というものも、これはぜひ次の通常国会には必ず出したいというくらいのスピードでものを考える。こういうことで現在の体制というものに私は満足していない。このままではいけない。大づかみなお話ですけれども、そういうことを考えて、日本の科学技術のあり方に対して改革を加えていきたいという決心でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/15
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016・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 速記録ができてきたら読んで、わからないところはまた御質問いたしますが、先に参ります。
私が一つ長官に提案をいたしたいことは、私の聞いていることが誤りであるかどうかわかりませんが、先輩から聞かされた話の中で、西暦一八九八年、アメリカでは、ピッツバーグで全米の官民合同の科学技術者会議を開いて、一体アメリカ繁栄のためには何をなすべきかという結論をたくさん出して、それを半世紀にわたって政治力に盛り込んで強力に遂行したためにアメリカが強大をなした一つの要因を得たのだ、こういう話を聞いたことがあるのです。私はいま日本が直面しておるところのこの事態を考えてみますと、わずかに残されたものは、日本に、はたしてこの大きな荒波を乗り切るだけの技術革新というものが重要産業の部分に出てくるか出てこないかということが、われわれの希望なんです。もしも、今のような状態で、欧州は欧州経済共同体を作って輸出振興をやる、アメリカはアメリカでドル防衛をやる、またソ連圏は科学技術のトップ・レベルに向かって貿易の振興をやるならば、あと日本の貿易振興というものは何が一体たよりになるかといえば、単なる残された一つの大きな要因は、日本人のブレーンというものがはたしていろいろな生産事業に対する技術革新を止んで突破できるかということが、いわゆる科学技術の立場に立つところのものから見れば非常に大きな問題になってくるわけなんです。ですから、この際長官は、思い切って日本の科学技術軒、官民を闘わずエキスパートを集めて、この難局を乗り切るには一体どういうことをやったらいいか、どういう考え方を持ってやるべきかというぐらいの国家的な一つの会議を開いておやりになった方がいいのじゃないか。予算がないとか予算があるとかいうような問題が出てくるでしょうけれども、そういうことに対して、長官は陣頭に立って調整費の増額をはかられたのですから、科学技術の振興のためには調整費をどんどんお使いになって、そういう有効な会議を開いて、そして科学技術がほんとうにりっぱな発展を遂げなければ国家の繁栄は持ち来たし得ないのだぞということを国民一般に徹底的に知らしめるためにも、私はそういうことをやった方がいいと思うのでありますが、長官は一体どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/16
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017・三木武夫
○三木国務大臣 最初から私申し上げておるように、日本がその荒波を乗り越えていくためには現在の状態というのは非常に不満である。そのためには、相当思い切って科学技術振興に対して創造力を発揮しなければいけない。今お話しのようなことも一つの方法だと思います。御提案になったようなことも、これは衆知を集めるということで考えてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/17
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018・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 なお一つ、これにつけ加えて御質問を申し上げておきたいのは、お互いのブレーンの尊重であります。私といたしましては、やはり近代国家の繁栄のバロメーターというものは、その国民のブレーンの優劣がバロメーターになるのであって、結局愚鈍な国民は衰亡するし、賢明な国民は国家を繁栄に導いていく。要するに創意工夫というものが国家の運命に対して大きな役割を演じていると私は思っております。その創意工夫がいかなる形によって現われてくるかといいますと、これは法律的にいえば発明であり、特許であります。でありますから、科学技術庁がほんとうに与えられた国表的な使命を果たさんとするならば、この特許庁を他の竹に依存せしめておいて対岸の火災視するがごとき情勢におっては、日本の国民の創意工夫からなる技術、あるいは科学技術的な新しみを行政の上にどんどん盛り込んでいって国家の繁栄をリードしていくということはできないのではないか。この特許庁の問題は、科学技術庁設置法の提案されましたときに非常に問題になっております。これは速記録を見ますと、与野党の委員各位から盛んに特許庁のあり方が質問されておるのであります。しかし、その当時、みんなが科学技術庁の本命を達するには、どうしても科学技術庁に特許庁を持ってこなければその任務が果たされないのではないかということを考えておったのでありますが、どういうわけでございますか、そのセクショナリズムの連合軍の射撃にあったためでありますが、とうとうこの問題は実現しないでしまった。しかし、発明というものを取り去った科学技術庁の機能というものは、まるでどうも、きばを抜かれたオオカミか、つめをはがれたネコみたいになってしまうのではないか。そこで、これを一体どうするかということで、発明奨励課だけは特許庁からもらってきて、発明奨励課を置いたわけなんです。私たちは、この発明奨励は科学技術庁に課せられた非常に大きな課題だと思っておったのですけれども、これを予算的に見ますと、発明奨励に盛られる予算はスズメの涙みたいなものです。そういうところから、長官は大いに張り切って科学技術振興をやらなければならぬというけれども、その下にいくと、みんな科学技術の振興をはき違えておる。私は今、悪口になるから言うまいかと思ったけれども、言った方がいいと思うから言いますが、ある局長になると、今度自分が先行き、行くような仕事はちゃんと作る。しかし、発明奨励は、うんとやったって何も目に見えて大きな母体は止まれてこない。一体今までどんな予算を盛っておったかといいますと、三十一年に二千三百万円、三十二年に二千三百万円、三十三年は逆戻りして二千二百万円、三十四年に二千百万円、三十五年からようやく地方発明センターの補助金というものができて、五千三百万円。しかし、地方発明センターというものは、補助金をやったって、発明奨励に責任を持つ科学技術庁の行政の中には直接的には響いてこない。そうしてようやく三十五年に五千三百九十万円になったけれども、三十六年も五千三百九十七万円、三十七年度予算要求に至りましては五千三百十二万円と減っておる。一体科学技術庁は、大衆に向かって科学技術の振興をはかるんだといっても、国民の創意工夫になるところの発明をこんな形で奨励しておって、どこで一体科学技術の振興をおれはやっておるという結論が生まれるか。私は生まれないと思う。だから、こういう予算の要求に対しては、三十七年度の場合はやむを得ないが、三十八年度にはその考え方を変えて、こういう大衆の創意工夫を助成していくということを大きな力をもってやらなければ、何をやっておるのかさっぱりわからぬということになるのではないかと思うのであります。この点は一体、長官、どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/18
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019・三木武夫
○三木国務大臣 前段の行政機構、特許庁、私もやはり科学技術庁が特許庁を持った方がいいという意見であります。今回、全般的に行政機構の改革が七人委員会等において検討されることになっておりますから、その機会にはこの問題は検討さるべき問題の一つであります。これは何にもないときに特許庁を科学技術庁によこすのがいいんだということは、問題の解決にはなりませんから、全般の行政機構改革の場合に取り上げられなければならぬ問題の一つだと考えておるわけでございます。そういうことで、お話のように、一般に対して発明奨励ということも大きな科学技術振興策の一つであることはお説の通りだと思います。そういうことで、行政機構の改革等ともにらみ合わせて、今後こういう問題については特に力を入れていかなければならぬという齋藤委員の意見に対しては、私も同感であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/19
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020・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 時間を詰めます関係上また先に参りますが、第四にお伺いいたしたいことは、長官の御所信のその次のお言葉であります。「まず、近年科学技術の著しい発達は、一面において専門の細分化をもたらすとともに、他方研究の総合性を必要としております。このような情勢にかんがみ、特に各部門の協力を要する重要研究については、重要総合研究として関係各省庁等と調整をとりつつ、その総合的計画的推進をはかることが緊要であります。」というお言葉から、研究調整局のことに触れておられるのであります。私は三十七年度の予算要求の中に、もしほんとうに新味があるといたしまするならば、長官の御努力によって研究調整局というものを認められたということであって、これは私は一つの科学技術庁行政機構の強化における大きな長官の功績だ、そう思うのであります。ただこれは、今御提案の御説明がございましたからそのときに譲りますが、私といたしましては、全体的に見てこういう大きな希望を持たれても、はたして現在の科学技術庁設置法によってこれが行ない得られるかどうかということが非常に懸念なのであります。
この問題に触れて参りますと時間が非常に長くなりますから、私はこれは省きますが、岡委員にも、それから前田委員にも、私が経済企画庁の政務次官として科学技術庁設置法に対する答弁を昭和三十一年にやったのであります。そのときの速記録を読んでみますと、各先輩委員の質問に対する私の答弁というものは、今読んでみるとまさに冷汗三斗の感がある。よくもこう白々しいことを言ってのけたものだ。ある意味において齋藤は太っ腹で見直したという自己の考え方もありますけれども、どうしてああいう答弁をしなければならなかったかというと、各委員は本筋を質問してこられる。しかし、科学技術庁設置法を見てみますると、各行政官庁のいわゆるセクショナリズムによって編成された連合軍に鉄砲を撃たれて、こっちもカッコで逃げている、あっちもカッコで逃げているという、ほんとうに機能を十分に発揮し得ざるところの弱体化された科学技術庁設置法だったと私は思うのです。ですから、それをほんとうにごもっともと言ってしまえば修正だとくるし、そんなに修正ができやせぬし、そんなに修正してしまったら科学技術庁設置法もお流れになってしまうということで、今読んでみると、私は実に自分の良心に問うて、こんないかがわしい答弁をしたのかと思われるような答弁もある。そういうふうにゆがめられた科学技術庁設置法において、どんな研究調整局を作ってみたって、やはりセクショナリズムの連合軍に向かえば、みんな負けてきて、何にもやれない。ただ、名前だけは研究調整局ができて、課ができて局長が一人ふえたというくらいになりはせぬかと私は思うのであります。
ここにおいて長官は、さっきもお話しになりました臨時行政調査会もできておることでございますから、これに有能な人間を入れて、科学技術庁設置法を根本から一つたたき直して、どこから見ても国家の科学技術振興に対して重責が負えるという行政機構の改革をおやりにならなければ、こんな一部ずついじくり回したって、庭木が一本ふえたくらいでもって、あとはおしまいになってしまわないかと私は思うのでありますが、この点に対する長官のはっきりした御所信を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/20
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021・三木武夫
○三木国務大臣 齋藤委員の御指摘のように、なかなかこの調整機能といっても、科学技術庁が積極的にやろうということについてはいろいろな制約があることは御承知の通りであります。ここでやはり、行政機構の改革の場合には、科学技術行政というものを一ぺん見直してみる必要がある。そのために、川島長官にも、科学技術関係の数名の専門委員を入れる、そして科学技術行政というものについても再検討をしてもらいたいということで、専門委員を数名入れることになっておりますから、その機会に根本的に科学技術行政のあり方というものを再検討いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/21
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022・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 その次に、簡単にお伺いしておきたいのは、長官が第二の問題として表明された「国立試験研究機関につきましては、技術革新の目ざましい伸展に伴いますますその任務の重大性を増しつつありますが、この事態に即応すべくそのあり方を再検討し、国立試験研究機関を刷新充実する必要があります。政府は、先般これがための方策を科学技術会議に諮問しておりますので、その答申を待ってその刷新充実策を実施して参りたいと存じます。」かように述べられておるのであります。この国立試験研究機関のあり方というものは、これもやはり科学技術庁設置法の提案されたときから大きなこの委員会の問題であったのでありますが、何分にも、御承知の通り、一切の研究機関を科学技術庁に付置するということは、これは言うべくしてとうてい行なおれない現状なわけなのです。そこでこういう諮問にもなったのだと私は思うのでありますが、この諮問のあり方ということをきのう私は当局から説明を受けたのでありますけれども、私から言いますと、いわゆる、ここに一つの大きな力を持っていって、各国立研究機関だけでもいいから国家の要請にこたえるような研究目標をみな持つのか、与えるのか、これを一つ私はやらなければいけないのではないかと思うのです。研究機関は方々にある。しかも、今の科学技術庁のやり方を見ますと、予算の見積もり方針の調整という権限がある。しかし、予算の見積もり方針の調整がいかなる権限下に行なわれているかというと、通産省とかその他に付置されているところの国立研究所に対して、この研究をやれ、あの研究をやれという命令はできないのです。ただ、向こうから予算要求が行なわれるときに、重複をしてないか、まことに不適当な予算の要求がしてないかということをペーパーの上において検討を加えて、これならよかろうという予算の見積もり方針の調整をやっているだけなのです。ですから、国家全体の立場に立って、科学技術庁というものの存在は、先ほどから申し上げます通りに、科学技術の振興によって国民経済に寄与するという大きな眼目があるわけですから、一切の国立機関のやり方というものは、科学技術庁が考えた国家国民の繁栄に寄与するという角度における試験研究というものが重点的に行なわれなければ、私は予算をつけてやることは、それはある意味においては無意味でないか、こう考えておるわけなのです。そういう意味でのことをも兼ねて諮問を発せられておるのかどうかですね。もしそうでなかったら、一つそういう点も加えて大いに研究をしろ、どういうふうにしたら一番いいかという諮問案に私は変えていただきたいと思うのですが、長官、どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/22
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023・三木武夫
○三木国務大臣 当然に今御指摘のようなこともその中に入っているわけであります。研究機関で国民経済の発展に寄与せない研究機関はないと思いますけれども、時代の変遷に従ってその意義というものが非常に変遷がございますから、国立研究機関のあり方という中にはそういうことも含めて検討を願っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/23
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024・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 だいぶ時間をとりましたから、第一日目の所信に対する御質問はもう一点だけでやめます。しかし、それで全部やめたわけではありませんから、その点は一つまたいろいろ御質問を申し上げたいと思っておりますから、よろしくお願いいたします。
もう一つは、われわれの小委員会の大きな課題となろうとしている科学技術会議のことです。科学技術会議というものは、私が国会におりましたときに、この問題を早く通そうと思って、これで通るのかいなと思ったら、何か学術会議だかどこだかの反対にあって、これは通らなかった。そうして、選挙に出ていって、僕は落選したわけです。それで、出てきたら、ちゃんと科学技術会議というものができておる。これはりっぱなものだ。総理大臣が議長になったのだ、大蔵大臣、文部大臣、それから科学技術庁長官、経済企画庁長官、学術会議会長、しかも必要によってはいかなる大臣でもこの議員となることができる。しかも、科学技術に造詣の深いエキスパートの中から五人の議員を国会の承認を得て総理大臣が任命する。形を見ると、実に堂々たる科学技術最高の殿堂であります。しかし、内容を見ると、こんなつまらないものはないと私は思っている。なぜかというと、各省庁にまたがるところの科学技術の施策の調整に関して諮問に答えるという、調整を必要とすることがあった場合に諮問に答えるということであります。総理大臣が知らぬ顔をしていると一つも仕事ができない、最高の科学技術会議です。こんなものは、あってもなくても同じものだと思うのです。
ところが、一方原子力委員会を見ますと、原子力委員会設置法には、企画、審議、決定権を持っているのですね。企画、審議、決定でありますから、原子力に関するところの一切の問題というものはこの原子力委員会の議を経なければやれないという今の体制なんです。だから、原子力委員会というものは、私はあれは非常に不服ですけれども、細大漏らさずやる。もう一から十まで重箱のすみをつつくような格好に私には見えるのです。あれも一つの欠陥でしょう。あそこに大きな事務局でもつけて、原子力委員というものは大局からものを判断して、それが事務局に流れていって重箱のすみをほじくるようにするのがほんとうだと思う。事務局がないから、原子力委員会それ自体が重箱のすみをようじでほじくっている。あんなことを朝から晩までやったって、私は甘木の原子力体制というものは推進しないと思っている。これもあとから機会あるときにお考えを願うために御質問申し上げたいと思います。
ただ、この科学技術庁設置法を見ますと、四条の十一というところに「科学技術(原子力の研究、開発及び利用(以下「原子力利用」という。)を含む。以下次号及び第十三号において同じ。)に関する基本的な政策を企画し、立案し、及び推進すること。」というのがあるわけなんですね。ですから、科学技術と、こういいますと、先ほどの問題に逆戻りいたしますが、いわゆる原子力の利用という問題も育んでいる。総体的な科学技術という建前からいって、一方の原子力委員会は、企画、審議、決定権を持って科学技術推進に関する最高の殿堂である。科学技術会議は、決定権もなければ、審議権も企画権もない。単に諮問に応ずるということで、一体日本の科学技術の進展というものは企図できるかどうか。科学技術会議のねらいというのは、文部省のいわゆる大学研究に関するものを除くということとどう科学技術庁が連絡をとるかということをも加味して、この科学技術会議というものはできたのだと私も承知しておりますけれども、いよいよ科学技術会議というものを作ってみると、これではわれわれの希望からいうと、その機能というものは十分の一にも及ばない程度に削減をされて、あってよいのかなくてよいのか、ほんとうにわからないような状態に立ち至るということになりますと、これは私は、これだけのものを作っておきながら、機能の発揮というものに十分な効果が見られないと思う。だから、この際、科学技術会議法も改正して、やはり企画、審議、決定権を持たせる。その決定に対しては、やはり総理大臣も尊重しなければならないというふうに改めていけば、原子力委員会と科学技術会議と二つあって、科学技術会議の中からは原子力問題は原子力委員会に譲るけれども、その他の科学技術振興に関しては、原子力委員会と同じようにこの科学技術会議でもって企画、審議、決定をするのである。ここに、いわゆる各官庁に付置しているところの国立研究機関にも、こういうことを研究せよ、ああいうことを研究せよという要望をなし得るようになれば、私は、日本の科学技術の進歩というものは非常に早まるのではないかと思う。さように考えておるわけでありますが、この科学技術会議の将来のあり方について、三木長官はいかようにお考えになっておりますか。
この御答弁を承って、本日の質問を私は打ち切ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/24
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025・三木武夫
○三木国務大臣 科学技術会議は、齋藤委員よりも私は高く評価をしておるわけであります。相当な業績を残しておるのですが、しかし、御指摘のように、当初これができたその意気込みに比べて、現在は必ずしも満足な運営ではない。私は、これは科学技術基本法の中で、この科学技術会議というものは相当重要に取り扱って、相当な権限を与えていく。そうでないと、科学技術基本法の中においても、何か科学技術の振興をしていくだけの中核体というものが要ってくる。その大きな職責を科学技術会議にゆだねることが適当である。そういうことで、基本法の中でこのあり方を再検討いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/25
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026・前田正男
○前田委員長 次に、河野正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/26
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027・河野正
○河野(正)委員 三木長官は、さきの長官就任のあいさつにあたりましても、実は次のような抱負を明らかにされておるのでございます。御案内のように科学技術の成果の活用面というものは非常にはなばなしいものがあるけれども、その反面、その振興という面においては広範な知識と豊富な想像力、緻密な計画と強靱な忍耐力を必要とし、しかもすぐには効果は現われない、こういったきわめてじみな仕事である、こういう点を指摘せられております。しかしながら、さればといって、この仕事は、国の将来の繁栄に非常に重大な影響力を及ぼすということは論を待たざる点でございます。しかも、さきの委員会におきましても、あらためて長官はいろいろと所信の表明を行なわれて参りました。その中で、大体主として八点について御指摘があったようでございます。科学技術の総合的計画的推進を必要といたしまする八点の具体的な方針の表明があったようでございます。
そこで、もちろん科学技術の振興というものが大きくは世界の平和、あるいはまた人類の文化の向上、また国内的には国民生活の向上というような、あるいはまた日本経済の繁栄というふうないろいろな面に対しまする大きな影響力を持って参るわけでございますから、そこで、さきの委員会において御表明なさいました主として八点、こういうもろもろの方針に従って今後具体的にいろいろと推進していただくことはけっこうでございますけれども、なかなか、どれもこれもということは、予算の面から見て参りましても、困難でございます。そこで、やはり、重点施策としていろいろ指摘はしておるけれども、その中でも、このことだけは、今日の世界の科学技術の一つの趨勢の中で、まず力点を置いてやるべきでないかという点が私は多々あろうかと考えます。そこで、これはいろいろと所信を承って、そういう論議を発展せしめまするために、必要上、どういう点に特に力点を指向せられておりまするのか、そういう点に対する抱負をまず承って参りたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/27
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028・三木武夫
○三木国務大臣 なかなかこれが、ある一つの問題をとらえて、これを最重点というためには、日本の科学技術水準というものがまだ均衡のある発展を遂げていない。従って、私が先般申し述べたような、いろいろ分かれてはおりますけれども、そういう問題についても多少バランスをとって振興策を講じなければならぬ。今特にこれだけを取り上げて、これが最重点だというべく日本の科学技術水準というものがそういう段階には達していないと思うのでございます。ただ、齋藤委員のときにも申したように、民間が科学技術振興といいますか、試験研究というようなことに力を入れなければ企業は立っていかないのだ、こういう考え方を助長していくということが一つ。もう一つは、民間でできない、国として分担すべき研究機関、国が研究を推進していかなければ民間ではなかなか手がつかないようなものに対して、この分野を明らかにして、これに対して特に今後政府が力を入れていく。こういう、抽象的ではありますけれども——一つの研究題目をとらえて、この問題は最重点でございますということは、なかなか現在の日本の状態からいって適当であるとは私は思っていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/28
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029・河野正
○河野(正)委員 重点の指向については、現在の日本の科学技術の水準からきわめて困難だ、しいて言えば民間の科学技術の振興に対して特に配慮を行なっていきたい、というふうな意味の御答弁でございました。さきの長官の所信の表明の中でも、次のようなことが指摘せられてあるわけです。政府は科学技術の振興の重要性を認識し、新年度の予算編成でも、新時代に即応せる科学技術の開発に最も力点を指向いたしたいものである、こういうような、非常に抽象的ではございますけれども、そういう意味の力点というものが実は指摘されておるわけです。とりもなおさず、長官がおっしゃっておりますように、国民所得倍増計画の効率的な遂行、貿易の自由化、あるいは最近の諸外国における驚異的な技術革新のさなかにおいてわが国が先進諸国に伍して繁栄するためにも、科学技術の振興に格段の努力をやっていかなければならぬ。もちろん、そういう科学技術振興に対しまする格段の努力、あるいは長官のすぐれた力量に対しては、私どもも非常に大きな期待をしなければならぬと思いまするけれども、ただ、私どもがその中で特に御指摘を申し上げ、また私どもが重要に感じておりまする点は、なるほど一がいに言えば科学技術の振興という点でございまするけれども、しかし、私はやはり同じ科学技術の振興といえども、正しい意味の科学技術の繁栄進歩というものがあり得るというように理解をいたすわけです。そこで、今後長官が、いろいろと科学技術の振興に対して力点を指向され、さらにはすぐれた力量を発揮されることは、私どもも非常に期待するところでございますけれども、私はそのためにも、誤りない、正しい理念というものがその前提として大きく流れなければならぬというふうに考えるわけです。そういう正しい理念のないところの科学技術の振興というものは、かえって弊害が起こってくる危険性もあるのではなかろうか、私はそういうことを考えて参ります。
そこで、科学技術振興、科学技術振興と言われますことはけっこうでございますけれども、その大前提である基本的な科学技術振興に対します理念、そういうものに対して一つこの際率直にお示しをいただきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/29
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030・三木武夫
○三木国務大臣 なかなかむずかしい御質問でございますが、しかし、それは理念という御質問に当たるかどうか知りませぬが、科学技術の振興がやはり平和に奉仕しなければならない。これは非常な大きな鉄則であります。戦争でなくして平和に奉仕するという大きな義務を持っておるということと、また一方においては国民の福祉に奉仕しなければならない。平和と国民の福祉に奉仕するという大きな義務のもとに科学技術の振興を考えたいというのが、私のきびしい一つのプリンシプルでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/30
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031・河野正
○河野(正)委員 率直に、私の考えておりますことをお示し願いまして、非常に敬意を表する次第でございます。その点は、長官がお示しになりますと同吟に、科学技術会議におきましても、科学技術の基本理念として、世界平和の確立、あるいはまた人類文化の増進、こういうような二つの基本理念を示して参っておることは、御承知の通りでございます。そこで、いま長官からもお示し願いましたように、私どもも率直に申し上げて、科学というものは常に世界平和と人類文化の増進とにつながるものでなければならぬ。特に第二次世界大戦に巻き込まれ、あるいは原爆の被害をこうむった日本といたしましては、当然、戦争の反省といたしましても、科学技術の振興に力を注ぐことはけっこうでございますけれども、そのこと自体が、戦争あるいはまた軍事力と結ぶようなことがあっては、これはいま長官もお示し願いましたように、基本理念にも反することでございます。この点は、長官に率直にお答え願いましたから、私どももそういう点につきましては非常に敬意を表するし、また今後ともそういう方針を強力に御推進いただきたいと考えます。
ところが、これは私どもも非常に残念だとは思いますけれども、仄聞するところによりますと、防衛庁が電子に対します研究開発というものを積極的に推進をしていくという方針を決定いたしたようでございます。そのために、具体的には二月には電子機器委員会を発足せしめる。もちろん防衛庁のことでございますから、こういう開発というものは電子戦に備えられるのであろうことは、容易に理解し得るところでございます。そういたしますと、なるほど、池田内閣の閣僚でございます長官は、科学技術の開発というものは常に世界平和と人類文化の増進とに直結しなければならぬというふうな御趣旨でございまして、私ども全く同感でございますが、政党政治でございまする今日の政治形態の中で、片や電子戦争に備えて科学技術というものが軍事力に結びついていくということについては、どうも私ども納得がいかぬ点があるわけでございますが、閣僚の一員として長官はそういう点に対してどういうふうに御理解いただいておりますか。この辺の御所見も、一つこの際承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/31
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032・三木武夫
○三木国務大臣 防衛庁の計画については私承知いたしておりません。しかし、この点は社会党の諸君と見解を異にするかもしれませんが、日本の自衛隊というものは防衛的な性格のものであって、海外に対する出兵も許されていないし、また攻撃的ないわゆる交戦権といいますか、そういうものも許されておりません。こういう時代でありますから、自衛隊自身としても、その装備の上において科学技術と無関係であるわけにはいかぬことは、これは申すまでもないのであります。しかし、日本の自衛隊の性格というものが戦争に結びつくものではない、厳格な意味における防衛的性格のものであるという点からして、私の言う平和、いわゆる科学技術が平和に奉仕しなければならぬという、そのカテゴリーを大きく逸脱しておるとは私は考えていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/32
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033・河野正
○河野(正)委員 その点について、長官との間に見解の相違があるだろうということは、私もあらかじめ承知して申し上げたわけです。ただ問題は、現実に防衛庁があり、防衛計画があるわけですから、そういう建前からいいますと、長官があおっしゃいますことも一応理の通った話でございますが、ただ、私の申し上げますのは、防衛庁がこの電子開発の先頭に立って積極的にやっていくというところに、私は日本の科学技術の根本理念に反するものがあるのではなかろうかと思う。もし、長官がおっしゃいますような論理が成り立つといたしましても、それは要するに科学技術の振興の中で電子開発というものが行なわれる。そういう点に対して防衛庁がどういう態度で臨んでいくかということについては、長官がおっしゃいますような論理からいきますと、あるいは当てはまるかもわからない。しかし、今日科学技術というものが、長官を先頭として強力に世界の平和に寄与をし、人類文化の増進に寄与をしていこうという建前で大きく前進をしようという過程の中で、そういう電子化学工業の開発について防衛庁が先頭に立つということが適切であるかどうか。私ども、そういう点については、たとい一歩譲って長官のような御説があるといたしましても、どうも基本理念とはマッチせぬものがあるのではなかろうかというふうに、私どもは純科学的な立場から見て理解をしておるのでございますが、そういう私どもの主張に対してどういうふうにお考えになりますか、あらためて承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/33
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034・三木武夫
○三木国務大臣 日本の将来の科学技術開拓の分野として、電子化学工業などは最重要な部門だと思います。そういう点で防衛庁が先頭に立っておるというふうには私は考えていない。もしそういう感を与えるとするならば、これは科学技術庁の怠慢でございます。われわれこそ先頭に立たなければならぬと考えております。また、日本の電子化学工業の面は今後相当発展の余地を持っておるのでありますから、防衛庁が先頭に立つというような状態ではなくして、われわれこそ先頭に立たなければならぬものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/34
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035・河野正
○河野(正)委員 いま長官が御披瀝になりましたような方針であることを私どもは強く期待をいたします。しかしながら、これは長官の所信表明の中にもあるわけでございますけれども、その第四項にも見られますように、科学技術の国際交流ということが今後非常に大きく浮かび上がってき、しかも、長官といたしましても、国際交流については積極的に参加しなければならぬ、こう御指摘願っておるわけです。ところが、防衛庁がそういう誤解を受けるようなことは適当ではないというような御発言もございましたが、もし国内においてもそういう誤解を存するということでありますならば、事情のわかりにくい国際間におきましてはさらに大きな誤解が生ずるのではなかろうか。そのことが国際交流に大きく影響する、ひびが入るということでありますと——長官は国際交流を積極的に推進していこうというふうな御所信でもございますので、あながち防衛庁の電子開発が長官の所信と無関係なものであるというふうには理解しがたいのです。この点、防衛庁の電子開発については詳細を十分承知せぬというお話でございますけれども、そういう点については私が指摘をいたしましたので十分関心を持っていただいて、そういうことによって国際交流等に障害が起こることのないように格段の御注意をお願いいたしたい、かように考えます。
今私が御指摘を申し上げましたように、科学技術の振興が、世界平和の確立のためにも、あるいはまた人類文化の増進のためにも、きわめて重要な役割を果たすということは、これは否定することのできない事実でございます。と同時に、そういう二つの大きな使命を達成するためには、私が今まで御指摘申し上げましたように、基本理念がいかに重大かという点についても十分御理解がいただけたであろうと考えます。そこで、そういう点についても今後格段の御留意を願って、日本の科学技術振興のために万全を期していただきたいと考えます。
さらに、そういう理念の上に立って若干の質疑を行なって参りたいと思います。最近、欧州を初めといたしまして、世界の傾向を見て参りますと判然といたしますように、一九六二年、この新しい年は原子力の開発が久しぶりに活気を取り戻し、宇宙開発が一応軌道に乗る年になりそうだ、実はかようにも言われているわけでございます。わが国においても、科学技術会議の答申に基づきます十年後の目標に向かって一歩々々と足場を踏み固めていくということでございます。そこで、今後いろいろ長官の御所信を承って参りますために一応お伺いをいたして参りたいと思うのでございます。
今日の日本の科学技術の大勢と申しますか、水準と申しますか、そういうものが世界の大勢と比較をいたしまして、さっき長官もちょっと触れられたようでございますが、重点を指向する場合に、今日の日本の科学技術の水準ではバランスを考えるべきではなかろうかというような御指摘もございましたが、そういう日本の今日の現状におきまする科学技術の水準というものと世界の大勢と申しますか、水準というものを比較して、どういう状態に置かれておるか。もちろん、そのためには予算の面もございましょう。あるいは現在の日本の科学技術に対する予算というものが——もちろんこれは不満でございまするけれども、そういう予算の面もございましょうし、あるいは長官の所信の中でも指摘されておりまするところのスタッフの問題もございましょう。あるいはまた国立研究所その他の機関、施設の面もございましょう。そういう日本の現状と世界の大勢というものがどういう関係に置かれておるか。この点は、今後具体的に日本の科学技術の振興を強力に推進していただくという意味において、私は非常に大きな参考となり得ると思いまするので、そういう日本の現時点における状況について具体的にお気づきの点がございますならば、この際明らかにしていただきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/35
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036・三木武夫
○三木国務大臣 率直に申して、相当立ちおくれておる、こういうふうに私は考えている。これは端的にこういう点にも現われておるわけですが、技術導入などを見てみましても、三十六年度は三百五十億ぐらいになったでしょうか。それに対して、日本の技術輸出といいますか、それは一割程度である。相当有能な学者あるいは科学者、技術者というものがおるのですが、これはやはり人類の福祉に貢献しようとするならば、企業化すということも大事であります。そういう技術導入の現状などから見ると、相当な立ちおくれであるということを私は率直に認めざるを得ないと考えておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/36
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037・河野正
○河野(正)委員 長官から率直に日本の科学技術の立ちおくれについて御指摘があったわけでございまするが、もちろん今後日本の科学技術の振興のためにはさらに格段の具体的な努力を尽くしていかなければならぬということは、これは私どもいろいろ御指摘申し上げるまでもないことであります。そこで、長官もそういう認識の上に立って、今度八項目に対します所信の表明があったというふうに私ども理解をいたすわけでございますが、要は、なるほどそういう方針であるけれども、具体的にどうやっていくかという点が私はより重大だというふうに考えるわけです。そういう問題を解明していく意味におきまして、大臣が御指摘になりました項目にわたって若干触れて参りたいと考えます。
まず第一にお尋ねを申し上げて参りたいと思います点は、具体的な施策として、長官は国立試験研究機関の刷新、強化をはかりたい、技術革新の時代に即応し、国立試験研究機関の役割、機能について再検討を加える必要がある、そうして試験研究所についてはその刷新、強化もはかっていかなければならぬ。技術革新の時代でございますから、今私が申し上げましたいわゆる長官の御所信というものは当然のことであって、別に新しいことではないわけです。
そこで問題は、先ほど私が御指摘を申し上げましたように、それでは具体的にどう強化、刷新していくか、この点が重大です。もちろんその中に公務員の処遇改善とか、若干の点が幾らか触れられておるようでございます。そこで私は、そういう大臣の所信を具体的に解明していくという意味において、まずそういう試験研究機関の強化、刷新、それに対します具体的な方針について一つこの際お尋ねを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/37
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038・三木武夫
○三木国務大臣 国立研究機関の刷新、強化については科学技術会議に諮問をいたしておりますので、これは非常に熱心に今取り組んでおられる。その答申を待って検討したいと思っておりますが、私の考え方の中にあるのは、一つには齋藤委員も先般御指摘になったような国立研究機関の試験研究題目、これがやはり時代の進運等に適合しておるかどうかという問題がある。また、研究施設というものが、一体現状においてこの技術革新の時代にふさわしいものであるかどうか。あるいはまた人材の確保という点において、現在国立研究機関というものが遺憾ないのか。あるいは全般の国立研究機関というものも、いろいろ分かれておりますが、細分化されておる。そういう状態というものが好ましいのか。また立地的ないろいろな条件、あるいは研究機関というものは、都市の人口の過度集中などの傾向からして、一つの研究都市というようなものを作って、そして、でき得る限り一カ所にそういう都市というものを作るようなあり方が好ましいのではないか。これは私自身のこういう諮問を出しましたときに、こういう問題は検討してみる課題であると考えて諮問をいたしたわけでありますが、こういうことが私の考え方の中にあった。これに対して科学技術会議等において解明をしてもらいたいと望んでおる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/38
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039・河野正
○河野(正)委員 この国立試験研究機関に対します強化、刷新、これについてはいろいろな考え方がございますし、また日本の今日の現状から見て参りますというと、非常におくれております。従って、改善すべき方策というものが多々残されておる。私どももそれを強く認識をいたします。そこで、そういう問題の解決については、すぐ取りかかればすぐ実行できるものもございます。それから、今日の世界の科学技術の水準に即応する体制を作るためには、やや時間のかかるものもあろうかと思います。研究都市の設定あるいは研究題目の問題、施設の改善の問題、充実の問題、そういう点については、一つ今後学識経験者等の意見等も十分お聞き願って、やっていただかなければならぬと思いますけれども、長官の所信表明の中であげられております研究公務員の処遇の問題、この問題はもう予算化すればすぐできる問題であります。特に今日の日本の実情を見て参りますと、一方におきましては非常に経済が成長して参りました。そうして民間の研究施設というものがかなり充実をいたして参りました。ところが、国立研究機関もそうでございますが、これは文部省所管でございまするけれども、大学の研究機関、こういうものは予算上の圧迫を受けて実に旧態依然たるものがございます。見るに忍びぬものがございます。その中で研究者の諸君が一生懸命にがんばっておりますことについては、私どもも頭が下がる思いがいたします。しかし、そういうことでは、今日の世界の科学技術の大きな躍進には追従できぬというふうに考えまするし、なおまた、長官におかれても日本の科学技術の水準というものは非常に立ちおくれておるというふうな点も御指摘願っておりますので、私どもはそういうことについては乾坤一番、さらに格段の努力をしなければならぬということでございます。ところが、今申し上げまするように、研究機関における公務員の諸君は、そういうあらゆる悪条件を克服して、そして世界の科学技術の趨勢に追従するために一生懸命にがんばっておるわけでございますから、当然そういう研究公務員の諸君については即刻改善してもらわなければならぬ。そうしませんと、もうすでに長官も多々お聞き及びと思いますけれども、民間では、野球の選手ではございませんけれども、スカウトを派遣いたしまして、そうして頭脳の開発に努力をしておる。そこで理工系の学部では、もう卒業を持たずして、すでに一年くらい前から優秀な挙止は全部スカウトされてしまうというようなことで、これは後ほど触れたいと思いますけれども、たとえば理工系学部あるいは高専の新増設、こういうものが行なわれて、それは今さらそういう学生を養成するということでございますけれども、りっぱな指導者がおらぬというような欠陥も実は生じてきておるわけです。そこで、私どもはそういう欠陥を防止するためにも、研究公務員の処遇というものについてはすみやかに考えていかなければならぬ。しかも、考えればできることですね。改善すればすぐできること、そういう点について長官も、さらに一そうの勢力を払って参る所存であります。こういうふうに表明されておるわけでございますが、どういう努力をやっておられますか。一つ具体的に承って参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/39
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040・三木武夫
○三木国務大臣 御指摘のように、研究公務員と民間の研究に携わっておる人との給与の差というものは相当開いておる。二二、三%くらいの開きになっておる。そういうことで、御承知のように、公務員の給与は人事院が関係するわけでございますが、人事院に対しても現下の情勢にかんがみて研究公務員の優遇ということを強く要請して参って、先般の給与改定には多少改善を得られまして、七・八%くらいの改善にはなったわけでございます。しかし、とてもこれでは今の民間等に比較いたしまして、研究公務員は給与の面から魅力のあるものではないわけであります。そういう点で、これは私どもも満足してないのですけれども、御承知のように、お前がやればすぐできるじゃないかという建前には今なってないものですから、今後ともこの改善には努力をしていきたいし、単に給与だけでなくして、国立研究のいろいろな機関というものが、研究員の研究意欲を満足させるような条件もあわせてこれを整備していく必要があろうかと思いますが、これは今後一そう努力をいたさなければならぬ問題であることは御指摘の通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/40
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041・河野正
○河野(正)委員 いま長官もお触れになりましたように、民間の給与というものがどんどん上がっていく。そこで、この公務員の給与が上昇いたしましても、民間の給与の上昇には追従できぬ。たとえば人事院の訓育によりましても、昨年より本年の初任給の上昇率を見て参りますると、研究公務員と民間の場合には初任給の上昇率だけでも一〇%開いておるわけです。特にこれは医者関係のごときは一七%開いたというように実は人事院も指摘をしておるわけです。そこで、少々、七%程度上げてもらっても、民間の方が急速に上がって参りますから、これはもうイタチごっこで追いつきっこないというのが現状です。そこで長官が言われましたように、全職種にわたります平均のベース・アップ、給与引き上げ、これも当然必要なことだし、その点については実は長官が御指摘のように、これは人事院が勧告をして、政府がそれを尊重してきめることでございますから、長官の仰せの通りです。ところが、いま一点長官が格段の努力を願えば改善される点が、一つある。それはすでに御承知だと思いますけれども、これは前会の委員会でちょっと触れたのでございますが、研究者の給与に能力給制を採用するということです。これは長官が格段の努力を願えばすぐ実行できるわけです。ところが、能力給制の実施が、残念であるけれども、今日行なわれておらぬ。そういう道が開かれておるけれども行なわれておらぬ。それですから、給与の引き上げについては、さっき長官が御指摘になったように、これは人事院の勧告があって、政府がそれを尊重して実行するかしないかという問題だと思っております。長官も非常な発露力を持っておられると思いますけれども、これは長官の力だけでどうにもならぬのであります。しかし、能力給の問題は、長官が協力していただけばすぐ解決する問題です。ところが、この能力給の問題で改善される研究者の諸君というものは、それぞれの機関において非常な指導力を持っておるということでございますから、この点は私はすみやかに実行してもらわなければならぬというふうに考えるわけでございまするが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/41
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042・三木武夫
○三木国務大臣 研究公務員の待避改善には、能力給というものの体制にしていかないと、なかなかその待遇の改善にはなりませんので、実施したいということで人事院と今折衝いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/42
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043・河野正
○河野(正)委員 ちょっとその点は不満なんです。というのは、人事院が、早く委員会を作って、そうして実行しなさいという勧告をしておるわけです。
〔委員長退席、齋藤(憲)委員長代理着席〕
人事院に相談するのでなくて、人事院の方では、早くやりなさい。ところが、能力給ですから、一体能力があるかないかという判定が問題になるわけですね。その判定においていろいろ不公平が生じてはいかぬということで、若干問題がある。それは結局科学技術庁の中での問題なんです。それですから、人事院の方ではやりなさい、こう言っておる。あとは、やってもらえばいいわけです。ですから、その点は長官の認識と私どもの認識がちょっと違うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/43
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044・島村武久
○島村政府委員 河野委員の今のお話は、実は私どもが承知しております実情とちょっと違うわけでございます。今回の、と申しますか、昨年の人事院の勧告におきまして、科学技術振興の見地からという考え方に立ってもらいますまでには、私ども相当努力して参ったのであります。実は研究所の給与のあり方と申しますものが、いわゆる行政官庁と同じようなシステムで現在定められておりますことに一番不満を持ちまして、研究能力に応じた給与ということを主張して参りましたのは、実は科学技術庁だったという自信を持っておるわけであります。ただ、科学技術振興ということのためにということを人事院が言ってくれましたけれども、それじゃ適当な審査機関ができましたならば——今も先生おっしゃいましたが、審査機関というのは非常にむずかしい問題でございますけれども、そういうものができましたならば上げてやるということは、人事院はまだ言っておらぬのであります。その点が、いま大臣から申し述べましたように、私どもと人事院との間で現在交渉中の問題でございます。私どもといたしましては、このような審査機関を作るから、それに対してある程度の保障をしてもらいたい、その審査機関をパスしてきた者については、能力を認めて、いわば格づけを変えてもらいたいという主張をしておりますのに対しまして、人事院側は必ずしもまだ私どもの線まできておりませんので、その点が交渉の問題として残っているわけであります。ただ、いつまでもそういう観念的な話をしているばかりでも事は進みませんので、私どもといたしましては、まず実際に作って、そうしてその結果も見せて、われわれの主張が貫徹できるように努力もいたしたいと考えまして、その準備もあわせて進めておるわけでございます。補足して御説明申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/44
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045・河野正
○河野(正)委員 いや、そういう能力給制の設定されたということに対する科学技術庁の努力は、私どもは無視しているわけではない。ただ、そういう御努力があって、そうして一応そういう道が開けたということであるならば、すみやかに委員会を作っていただいて、そうしてその委員会の結果をもって、未確定でございますならば、なぜ人事院と交渉なさらぬのであるか。と申し上げますのは、私ども仄聞するところによりますと、人事院は、科学技術庁、各庁に対して、すみやかに幅の広い委員会を作りなさいというような主張を、されたとかされないとかいうようなお話も承っておりますが、それは別として、いずれにいたしましても、だれが能力があるかという判定をする点は非常にむずかしい問題ですから——特に人の研究というものはなかなかわからぬ、そういう困難性もございます。そこで、その能力の判定をするために委員会を作るという基本方針がきめられたなら、なぜお作りにならぬのか。そういうステップを踏まなければ実際には実現せぬ問題ですね。たとえば、人事院が能力給を出してもよろしいといったところで、それでは一体そういう能力はだれが判定したのかという問題が起こってくるのは当然のことです。そこで、やはりこの問題を達成するためには、その委員会を構成するということがまず前提条件であり、先決ではなかろうか。ところが、そういう委員会が今日まだ設定されておらぬ。そうすると、なるほど今日まで御努力されておるけれども、その御努力というものが若干から回りしておるのじゃなかろうか。そうすると、そういう事務的な点は事務当局でやるわけでありましょうけれども、せっかく長官が、研究に従事する研究公務員の処遇の改善についてはさらに一そうの努力を払って参りたい、こういうふうに所信にも述べられておるわけでありますから、そういう点については長官とこと志が違って参るということになりますので、せっかくそういうりっぱな方針がきめられましたならば、すみやかにそういう方針を達成するための手続を行なわるべきではなかろうか、こういうふうに考えるわけです。そこで、そういう手続をすみやかに行なわれまする用意があるのかどうか、一つこの点について、事務当局からでけっこうでありますから、お答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/45
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046・島村武久
○島村政府委員 ただいまも申し上げました通り、人事院に対しまして、りっぱな委員会でも作った暁には、そこを通った者は昇給、昇格というようなことが認められるようにということを、今後強く交渉いたしますと同時に、そういうような議論だけでなくて、現実にサンプルとしてでも委員会を作って、そこで実際に格づけの審査も実行いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/46
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047・三木武夫
○三木国務大臣 それと、これは一つの私の考えですが、人事官の中に技術者出身を入れたい、そういうことで今考えておりますから、近く国会の御承認も得ることになります。やはり待遇改善の問題ともからんで、一人はそういう人のおることが、われわれの待遇を改善したいという目的に合致している。そういう方針でいることを申し上げて一おきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/47
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048・河野正
○河野(正)委員 いま長官からきわめて適切妥当な御答弁をいただきまして、私どもその点については強く敬意を表します。どうかそのことが実現いたしますように、今後とも格段の御努力を願っておきたいというふうに考えます。
次に、長官の所信表明の第三に指摘された点について、若干質疑を行なって参りたいと思います。
ことわざに、仏作って魂入れずということわざがございます。科学技術の振興の基本が人材の養成にあり、人材養成の基盤が次代をになう青少年に対する理科教育の振興にある。こういう点についても、私ども全く同感でございます。科学技術の振興というものは、要は人的物的両面よりの充実ということにあろうかと考えます。ところが、冒頭に私が指摘いたしましたように、仏作って魂入れずで、研究機関はりっぱな機関がありましても、使用者がおらぬ、りっぱな研究者がおらぬということになりますと、これまた所期の目的を達成することができぬということは、これはもう議論の余地のない点であります。
それでは、一体、人材の養成はどうであるか。先ほど私がちょっと指摘申し上げましたように、文部省でも、大学の理工系学部、高専の新増設、こういう方策を立てまして、今後科学技術者の確保に努めるというふうな方針を実は示しておられるわけであります。そういう施設、機関を作れば、将来の科学技術者の確保には役立つでありましょう。ところが問題は、そういういろいろな施設の中で養成するということでありますけれども、それでは一体だれが養成していくのか。要するに指導者の問題、この点を無視して、幾ら養成施設を作っても、それは先ほど申し上げましたように、仏作って魂入れずで、りっぱな人材を確保することにはならぬ。量的にはなりましょう。量的になったといたしましても、質的には確保することにならぬというふうに考えるわけであります。そこで、そういう人材を養成するための指導者、そういう指導者を多く確保していくためには、もちろん今申しました処遇の問題もございます。と同時に、研究機関の充実という点についてもやはり力を注いでいただかぬと、たとえば一皮外国に留学いたしますと、なかなか帰ってこない。そういう実例が非常に多いわけです。それは、外国に行った方が学者、研究者を非常に優遇する。それから、研究機関の施設が非常に充実しておる。それで自由濶達に研究ができる、あるいはりっぱな研究ができるということで、外国に一たん出て参りますと、なかなか日本の研究機関に帰ってこないという傾向が非常に顕著に出ておるわけです。これは笑い話でございますけれども、外国の研究機関で最近日本の碁が非常に流行しておるといわれておる。それほど日本の研究者が外国の研究機関にも移出されておるわけですね。こういう点については非常に反省しなければならぬ。そういう問題の解決なくして、私は長官の第三に指摘された問題を解決するわけには参らぬと思うわけであります。それについては、今まで若干触れましたように、処遇の問題、施設の改善の問題等々あろうと思います。そういう問題を解決しなければこの第三の所信の達成は不可能ではなかろうか。そういうためにも、技術者の養成でなくして、指導者の養成という点についても特別の措置が強力に行なわれなければならぬと思うわけでございますが、そういう点に対してどういうふうにお考えになっておるか。もし具体策がございますればけっこうですけれども、なければ、将来どういう方針で臨みたいというふうな所信でもけっこうです。この際一つお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/48
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049・三木武夫
○三木国務大臣 文部省の管轄でございますが、いろいろ理工系を充実するについて、臨時教員養成所等で、指導者といいますか、教師の養成をやっておるわけであります。少し急ごしらえの感はありますけれども、こういう要請にこたえるためにはそういう拙速主義もある程度やむを得ない場合もございましょう。また科学技術庁としては、いろいろな研究機関、たとえば原研なども、将来原子力開発に対する指導者の養成を兼ねておるわけであります。われわれの方としては、科学技術庁が所管しておるいろいろな研究機関は、その間に指導者が生まれてきて、将来その中から日本のそういう産業の指導に当たれるような人を作るということもその目的にしておることは御承知の通りであります。全般にわたって、御指摘のように、やはり指導者というものは非常に大聖でありますから、政府機関全般がそういう養成をすることについては、よほど力を入れていかなければならぬ問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/49
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050・河野正
○河野(正)委員 指導者の養成について若干所信の御披瀝を願ったわけですが、それに関連をして、これは長官自体の問題ではございませんけれども、しかし、どうしても指導者を養成するという意味で御尽力を願わなければならぬ点が一つあるわけです。それはどういうことかと申しますと、これは今までもたびたび問題になってきて、今日問題になっております公務員の地域給の問題です。これがやはり非常に隘路になっておるわけです。たとえば、最近文教施設の適正配置という点についても、教師の異動にあたって地域差が非常に隘路になっておる。そこで、私どもも、ぜひ、日本の科学技術の水準を引き上げていく、あるいはアンバランスを是正していくという意味においても、学校差をなくしていかなければならぬ。ところが、その場合にも地域手当が非常に大きな隘路になっておる。優秀な先生は地域給の下がる方の地域の機関になかなか行かない。放す方もそれを口実に引きとめていこうとする。そういう傾向があって、なかなか人事の交流はうまくいかぬ。そのために学校差はなかなか解消できない。そのために技術のアンバランスがどんどん出てくる。そこで、この点は長官一人の責任ではございません、所管でもございませんが、しかし、抜本的にそういう問題を解決するためには、長官の政治力に期待をして、こういう問題については一刻も早く解決するという方向で、ぜひとも御尽力をいただかなければならぬというふうに考えるわけでございますが、そういう点に対する長官の御決意のほどを、この際あわせて承っておきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/50
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051・三木武夫
○三木国務大臣 御指摘のように、非常に格差といいますか、学校差によって、学校教育などの場合でも、いい学校と悪い学校といいますか、それは一応教育水準からくるのでしょう、そういうことが一つ現在あることは御指摘の通りであります。所得格差ということが問題になっておりますが、知能格差の解消ということは、それに劣らないくらいの非常に大きな問題だと思います。その中で、御指摘のように、地域給の問題がその原因の一つにもなっておるわけでありますから、次第に本俸に繰り入れていって、地域給をなくしていこうという政府の方針であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/51
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052・河野正
○河野(正)委員 この地域差を撤廃していくというのは政府の方針であることは、私ども承知しております。ところが、現実の問題としてなかなか縮まりもせぬし、撤廃の方にも進んでいないのが現状です。ところが、今申し上げるように、それが長官が仰せられる知能格差が非常に大きな原因になっておるという面もございます。いろいろございましょうけれども、一面においてそういう点が指摘されておるところでありますし、これは政府の方針であり、だれもが地域差を撤廃してもらわなければならぬと異口同音に指摘するわけですけれども、具体的にはそういう方向にいっておらぬのです。(「金を出さないからだよ」と呼ぶ者あり)これも今発言がございましたように、金を出してもらえば即刻解決する問題です。ですから、科学技術のアンバランス、特に世界の水準から劣っておりまする日本の実情、こういう点を解消するためには、いろいろございます。いろいろございますけれども、時間をかけて、これはさっき長官から、長い目で科学技術の振興を見ていかなければならぬというような御指摘もございましたように、長い目で見なければならない点もございます。ですけれども、政府の英断で即刻解決する問題です。これは金さえ出せば解決する。しかも、その方向としては撤廃しなければならぬのです。これを撤廃してはいかぬという非常に強い抵抗があるということなら別ですけれども、大勢としては撤廃しなければならぬ。ただ予算が許さないということでございますから、これはぜひ撤廃という方向に、政府内においても格段の強い御発言を願いたい、かように考えます。
それから、次に、長官が指摘されておりまする科学技術の国際交流。この点は科学技術の振興策に非常に大きな意義を持って参るというふうに考えます。特に科学技術の研究が、今や国際規模において行なわるべき時代にだんだん入って参ったということは、これはしばしば他の委員からも御指摘になった点でございます。そこで、科学技術に関しまする国際交流、こういう点が非常に重要であると同時に、必然性というものも強めて参った。これはもう否定することはできない事実でございます。長官の方も、国際機関の行なう研究には積極的に参加していく方針である、こういうふうに指摘をされておるわけです。そこで私は、その際問題となりまする点は、もちろん国際研究に対処していく、参加すると同作に対処していくということが非常に問題となるわけでございますが、ただその場合に私どもが考えますことは、国際研究に対処いたしまする一本側の態勢ですね、そういう態勢というものに統一的な指針というものがなければ、国際研究に対処していくけれども、その対処の仕方というものがそれぞれてんでんばらばらという形では、せっかく国際交流をやりましても、その成果の導入ということはなかなか困難ではなかろうか。そこで、国際交流をやることは非常にけっこうであるし、その重要性も私どもは認めますけれども、その際に日本側の態勢として統一的な指針というものがなければならぬというふうに思うわけです。その点については、あるいは科学技術基本法の問題等も出てくるかと思いますけれども、いずれにしても、やはりそういう統一的な指針というものが、かちっとなければ、せっかく国際交流に尽力願いましても、てんでんばらばらの格好でやる、全く不統一な形でやっているということでありますると、これは少しも能率は上がっていかぬというふうに思うわけです。国際交流に臨む日本側の態勢としての、そういう統一的な指針という点について、どういうふうに具体的にお考えになっておるのか。また、将来どういう方向でやっていかれようとするのか。この点が非常に私は国際交流を考えて参ります場合には重要だと思うのです。そういう点に対する御所見を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/52
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053・三木武夫
○三木国務大臣 先般、科学技術に対する基本理念は何かという御質問があったときにも申したように、国際交流を通じて世界の平和に寄与して人類の福祉に貢献するという、指針は何かといえばそういうようにお答えするよりほかにはないのではないか。もう少し具体的に個々の問題について御質問があればお答えをいたしますけれども、大きな指針としては、そういう平和と人数という視野に立って貢献しようという、そういうことが国際交流に臨む日本側の基本的指針でなくてはならぬと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/53
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054・河野正
○河野(正)委員 もちろん基本的には、私は長官の言われたその通りと思うのです。そういう基本理念でいくということは非常に望ましいと思います。思いますが、今日の世界の科学技術の趨勢を見て参りますと、必ずしもいま長官が御指摘になりましたような平和、あるいはまた人数の福祉という基本理念でなくて、戦略的な科学技術の問題というものも非常に強く出ておる一面があるわけです。そういう際に、私はやはり長官としても、単に基本理念ということだけでは解決せぬ問題があるのではなかろうかというふうに考えます。そこで、具体的に言えばどうだと言われましても、私ここに具体案もございませんが、この点は私は、今世界が二つの陣営に分かれておる。そういう情勢の中では、この日本側の臨みます態勢についての具体的指針というものも十分考慮していただかなければならぬ。もちろん基本的に私は、いま長官が表明されました世界の平和あるいはまた人類の福祉、そういう理念でけっこうだと思いますけれども、さらに具体的な突っ込んだ指針というものが必要になってくるのではないか。もちろんそういう点については基本法の中で解決するということが必要でありましょうし、いろいろあると思いますけれども、そういう点についても今後一つ機会がございますならば、委員会で御表明願えば非常にけっこうだと思います。
いろいろまだたくさんございますけれども、お約束の時間が参ったようでございますので、一応きょうは長官が御表明願いました所信の中でおもな点についての御所見だけを承って、あとの問題は、また機会を見て一ついろいろお伺いをしたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/54
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055・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員長代理 本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後一時七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X00519620208/55
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