1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月二十八日(水曜日)
午後一時五十四分開議
出席委員
委員長 前田 正男君
理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君
理事 中曽根康弘君 理事 西村 英一君
理事 山口 好一君 理事 岡 良一君
理事 山口 鶴男君
秋田 大助君 佐々木義武君
保科善四郎君 松本 一郎君
石川 次夫君 三木 喜夫君
内海 清君
出席国務大臣
国 務 大 臣 三木 武夫君
出席政府委員
法制局長官 林 修三君
科学技術政務次
官 山本 利壽君
総理府事務官
(科学技術庁長
官官房長) 島村 武久君
総理府事務官
(科学技術庁原
子力局長) 杠 文吉君
公安調査庁次長 関 之君
委員外の出席者
原子力委員会委
員 兼重寛九郎君
原子力委員会委
員 西村 熊雄君
外務事務官
(アメリカ局北
米課長) 西堀 正弘君
外務事務官
(条約局法規課
長) 小木曾本雄君
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本日の会議に付した案件
原子力委員会設置法の一部を改正する法律案(
内閣提出第一三四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/0
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001・前田正男
○前田委員長 これより会議を開きます。
原子力委員会設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/1
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002・岡良一
○岡委員 私は、御提案の原子力委員会設置法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたしたいのでございますが、法制局長官大へんお忙しいようでございますから、まず長官から率直に御意見を聞かしていただきたいと思います。
実は御存じのように、軍縮会議ももう第一段階を終えたようでございますが、核停止協定の問題とかベルリン問題とか、まだ目鼻がついておりません。そうなりますと、あるいはアメリカが、また英国が、中部太平洋の海域で核実験をやるかもしれないと思われるわけです。
そこで、法律的な見解をお尋ねいたしたい第一点は、私から申し上げるまでもなく、十九世紀から二十世紀にかけて公海の自由という原則が国際法上確立されておると私は承知をしておるのでございますが、さて核実験を再開するということになりますると、相当広範囲な地域に、かってもありましたように航行の自由が制限される、あるいはまたそこで平和な生産的な作業、漁業というふうなものも制限をされてくるわけでございます。こういうことが国際公法の原則に照らして妥当なものであるかどうか。この点をまずお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/2
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003・林修三
○林(修)政府委員 公海自由の原則というのは、一般に国際法的にいわれておるわけでございますが、ただ、その具体的内容になりますと、時代の変遷あるいは国際情勢の変化等によって必ずしも内容が確定的のものとも言い切りかねるのじゃないかと思うわけです。現在もたとえば国際法委員会あるいは海洋法会議でもその問題は取り上げられて、いろいろ具体的な問題が議論されておるようでございます。ただ、一般的に言いますと、国際法学者あたりの議論によりますと、公海自由の原則というのは、大体いわゆる船の航海の自由、それから漁業の自由、あるいは海底電線等の布設の自由、それから上空を飛行する自由、そういうものが代表的な自由の中に入っておる。さらにそのほかに、たとえば科学研究のために公海において研究し、調査する、あるいは軍艦がたとえば一時的に演習をする、そういうこともその中に含まれるというように考えられているわけであります。
そこで、公海の自由は、これは使用する方の側から見た自由と、それからある国の使用によって迷惑をこうむる方の者から見た自由と、両方問題があるわけでございます。一方から言えば、たとえば今の軍艦による演習の自由、演習することも認められているわけであります。これがたとえば核実験というような問題のように、相当広範囲な、しかも期間の長い、しかも危険性も相当多い、こんなことになった場合に、はたして公海自由の原則に触れるやいなや問題があるわけであります。これは一がいにはなかなか言えない問題だと思いますが、従来私ども——あるいは外務省も大体同じ見解だと思いますが、要するに他国の公海の自由の実施といいますか、実行に対して、合理的な考慮を払わないような方法でやること、あるいは国際的な運輸、あるいは漁業というものの関係において、これもまた非常な損害を与える、そういうふうな方法で公海を長く使うといいますか、そこに危険水域を設定して、危険が起こるからそこに来たものについては保障しないというようなことを言うのは、やはり国際法の公海自由の原則に触れてくるのじゃないか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/3
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004・岡良一
○岡委員 そういたしますと、たとえばクエゼリンあるいはジョンストン島あるいはクリスマス島等で英米が核実験を強行する、その結果として、それを理由として相当長期間にわたって、今御指摘のようなもろもろの公海の自由が制限をされるということは、国際公法上違反である、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/4
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005・林修三
○林(修)政府委員 たとえば、これがはたしてそこまで確立しておるかどうかについてはいろいろ問題があるわけであります。国際法委員会等におきましても、要するに他国の公海の自由を不当に妨げるような使用方法は許されないという考え方もあるようでございます。そういうようなことは大体認められていると思います。その場合、他国の公海の利用を非常に不当に制限するというのが何を意味するかということになるわけでございます。結局具体的な場合に当たってみなければいけないわけでございますが、たとえば相当広範囲で、しかも相当長い期間にわたって、しかもそれによって与える危険も大きいというような場合は、その危険によって生じた損害に対しては、たとえば損害賠償を要求する権利があるというふうなことも言えるのではなかろうかと思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/5
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006・岡良一
○岡委員 ビキニのあとで国際法委員会でございますか、国際法に照らしてあのビキニ事件の際のもろもろの公海の自由原則の否定ということが国際法に関連する権威者によって論議されたことを、私だいぶ前に読んだことがあります。あの結果としての結論はどういうことになったのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/6
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007・林修三
○林(修)政府委員 これは御承知だと思いますが、ビキニによって、日本側の漁船が、たとえば福竜丸の損害でございます。これは日本側は要するに損害賠償という形でアメリカに対して請求いたしました。アメリカ側は必ずしもそういう原則を認めませんで、いわゆる見舞金という形で、一定の補償と申しますか、向こうは補償といわない、見舞金という形でこっちに金を出している。それで両者の関係は妥結をしたという格好になっております。従ってそこを権利の関係で割り切ったという格好にはなっていないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/7
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008・岡良一
○岡委員 こっちがお尋ねしたのは、ビキニの経験というものが国際法の権威者によって論議されたことがあったと私は思うのでございますが、そのときには、あのような広範囲に、しかも長期間にわたる諸原則のコントロールをする、規制をするということは、国際公法の違反であるという結論が出ておったかに私は記憶しておるのでございますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/8
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009・林修三
○林(修)政府委員 必ずしもはっきりした結論は出てはおらないということではないかと思います。先ほどもちょっと申しましたが、たとえば国際法委員会における討議でも、要するにばく然と他国の公海の自由の実行と申しますか、実施を妨げるような公開の使用は許されないのではないか、そういうばく然たる一つのプリンシプルはある程度認められておると思いますけれども、今言ったような具体的な、たとえば核実験の問題に限ってのあれは、まだはっきりしてないのではないかと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/9
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010・岡良一
○岡委員 そういたしますると、的に見ると、長期間、相当な広い範囲における公海の自由の諸原則が否定をされる、無視されるというようなことがあっても、この自由の原則は、大国の核実験のために生ずる諸原則の否定を拘束するわけにはいかないのである。いってみれば大国は勝手にやる、これを拘束するわけにはいかない。そういうふうに広い範囲、長期間にわたって公海の自由というものを踏みにじることは、この国際法上納得しがたいが、しかしそれにもかかわらず、大国があえてやってのければこれを拘束する力は現実にないのである、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/10
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011・林修三
○林(修)政府委員 御承知のように、国際法の上においては、国内法と違って、必ずしもはっきりした権利義務関係あるいはそれを補償する措置がきまってない面が非常に多分にあるわけでございます。従いまして、大体は合理的な基礎でいろいろお互いに解釈をしていくことだと思いますが、結局は話し合いによってその点をきめていくということが第一の問題だと思います。国際司法裁判所もあるわけであります。場合によっては国際司法裁判所によってその見解を求めるということももちろんあるわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、海洋の自由と申しますか、公海の自由それ自体の内容についても、御承知のように学者の間あるいは海洋法会議等においてもいろいろまだ議論が出ておるわけでございまして、これを国際司法裁判所に持ち出しても、はたしてはっきりした結論が出るかどうかという問題についても、はっきりしたことが申し上げられない。国際法上の部面にはそういう部面が相当残っておるということは、岡先生もよく御承知だと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/11
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012・岡良一
○岡委員 国際法というものが、どちらかというと一種の従来の慣習法とでも申しましょうか、というものである。ところが、核実験というようなものはいわば新しい事態である。そうしてみれば、これを理由とするいわゆる公海の自由の否定というか、やり方については、やはり明確な国際公法上の原則を確立する必要があるのではないかと思うのでございます。また、そういうことを日本政府として世界の世論に先がけて当然要求すべきではないか、こう思うのでありますが、その点御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/12
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013・林修三
○林(修)政府委員 こういう公海における核実験ということはごく最近起こってきた問題でございます。たとえば軍艦の演習というようなものは、すでにある程度国際法的にも慣習的にも確立したことで、これ自身が公海の自由の原則に反しないというふうに見られておると思いますが、核実験なんということになりますと、その及ぶ範囲あるいは被害の程度も、今の軍艦の演習というものに比べれば格段の違いがあるわけであります。いわば新しい国際法の分野の問題だと思うのでございます。従いまして、こういうことについて確立した条約でもできればこれに越したことはないわけでございます。従来私どもといたしましては、外務省とも打ち合わせているわけでございますが、先ほど申しましたように、要するに公海の自由といっても、他国の公海の自由の制限に対して合理的な考慮を払わないような方法で使う、あるいは国際的な運送手段あるいは漁業の利益を侵害するような方法で使うということは、やはり国際法的に認められないとすべきではないかという意見は持っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/13
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014・岡良一
○岡委員 そこで、いよいよ実験が再開されたとする。その結果としてもろもろの損害が予想されるわけですね。この損害については、日本の立場からは損害賠償を請求する当然の権利があると存じますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/14
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015・林修三
○林(修)政府委員 具体的にいかなるものを要求するか別でございますが、前にも福竜丸事件のときにも当然損害賠償の請求をやった。そういう実験があれば、損害が生じた場合に賠償請求をする権利を留保するということは、当然に相手国に対して通知すべきものだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/15
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016・岡良一
○岡委員 前回のビキニのときには、日本側は損害賠償の権利があるという建前から、損害の賠償を要求いたしました。ところが、先ほど長官のおっしゃられるように、金一封の見舞金で事が済まされました。あのわが方の要求した金額、それから米側の見舞金の金額、具体的にどういう数字になったでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/16
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017・西堀正弘
○西堀説明員 ビキニのときのこちらからの損害の賠償請求の合計額は、最初にこちらから提出いたしました損害額は二十五億四千六百三十八万円でございます。それに対しまして、米側は当初直接損害と考えられる部分について支払いを認める、こういうことで最初は大体百万ドルの支払いの用意がある、こういう旨を申し出ていたわけであります。その後、こちらの方の資料も整いましたので、さらに詳細な内訳をしましてこちらから提出いたしました金額は、約二十六億九千万円でございます。これに対しまして、大体向こうの考え方を申しますと、直接損害と申しますか、現実に損害をこうむったと思われる損害額については、向こうはこれを考えよう、こういうことでございます。従いまして、こちらの損害の請求額約二十六億九千万円、これに対しまして、米国政府が最後にこちらに言って参りました金額は二百万ドルでございます。これは、ただいま法制局長官が申しましたように、損害の補償ということではなしに、エクス・グラティアと申しますか、法律上の責任とは直接関係がない慰謝料という名目でもって二百万ドルを支払って参りました。これで妥結したわけでございます。そのほかに、例の久保山さんがなくなられました。これに対しましては、当時久保山未亡人に対して百万円の慰謝料が向こうから送られて参りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/17
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018・岡良一
○岡委員 要するに、日本は当然損害の賠償を要求する権利があるという建前から、日本円で二十七億程度を要求をした。ところが、アメリカが支払ったものは七億余であったということですね。
そこで、先般核実験再開に伴う損害賠償の問題について、この国会でも総理に質問をされたことがありました。ところが、総理の御答弁では、損害の補償を要求する、こう言っておられたと私は承知をしております。そこで問題は、ビキニのように、損害の補償を義務として要求することができない、こういうことになれば、また見舞金ということで問題が済んでしまうことになる。これは三本長官にも国務大臣として御所見を伺いたいのだが、やはり当然どこどこまでも、損害の賠償は日本の権利として要求する、アメリカには賠償する義務があるというかけ合いを、私はもし実験再開を強行するならば、やるべきだと思うのです。ただ、権利があるのだ、あるのだと言っておるだけでは、最後においてはビキニのようなわだちを踏むと思うのです。これは政府として当然やるべきことだと思うのです。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/18
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019・三木喜夫
○三木国務大臣 実験によってどういう被害を受けるかという、その場合について考えなければなりませんが、原則としては、損害賠償の権利を持っている。今後そういうことで被害を受けたときは、政府はアメリカに対して損害の賠償を請求する方がいいという見解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/19
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020・岡良一
○岡委員 では、政府は泣き寝入りはしない。従って、もし民間の損害があった場合、政府が補償するという用意もあるくらいの決意を持って、とにかくやはり当然なる権利の要求をするという御決意でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/20
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021・三木喜夫
○三木国務大臣 民間については、これまたその場合々々において、政府が行政的な命令をするような場合も、事によったならばあろうかもしれない。そういう場合には補償も検討せざるを得ない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/21
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022・岡良一
○岡委員 法制局長官はけっこうでございます。どうもお忙しいところを恐縮でございました。そこで、三木長官にお尋ねをいたしたのでございます。この提案理由の説明を伺いましたが、もちろん今回の改正は、本委員会としても全会一致で先般決議をしたことでございますので、われわれはこの改正を歓迎いたします。そこで、放射性降下物による障害の防止に関する対策の基本に関することということでございますが、私はこの問題は、核実験というふうなものが行なわれないということがもちろん最も望ましいことであり、まず基本的なものであろうと思うのでございます。従って、原子力委員会としては、改正を通じて放射能対策ということが大きな責任のある任務となって参りましたが、核実験の再開を阻止するという、やはり政治的な方針というふうなものも、原子力委員会としては一つの大きな仕事になってきたと私は思います。その点、長官の御所信はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/22
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023・三木喜夫
○三木国務大臣 むろん原子力委員会としても、放射性降下物の対策というものは、原爆の実験をやめるということが根本的な対策であることは、御指摘の通りであります。しかし、これは単に原子力委員会というよりかは、日本国民全体の悲願であるし、またその国民の悲願を受け継いで、政府も全力をあげるし、国民も国際的な発言の場を持っているわけでございますから、国民も機会をとらえて世界の世論に訴える。こういうことで、単に原子力委員会というふうに局限しないで、日本の国民、政府全体が一体となって、世界の世論の喚起、世界の良心に訴えるというような方法をとらざるを得ないので、原子力委員会だけが大きな責任を持ってということは、あまりに問題が大きいと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/23
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024・岡良一
○岡委員 もちろんおっしゃる通り、国民、国会、政府、政党一体となっての禁止のアピール、また禁止への努力ということは当然でございますが、この改正を通じて原子力委員会は特にその衝に当たる機関といたして、やはりこの問題についても具体的な、積極的な政治方針を打ち出すべきだ。御存じの通り原子力委員会法によれば、内閣総理大臣に勧告する権利もありますし、またそれは尊重されなければならないということにもなっている。こういう原子力委員会の機能を十二分に活用せられまして、核実験の再開阻止というふうなことに対しても、原子力委員会としては重大な責任事項として、積極的な対策について当然御研究になり、御検討になり、またその態度を御決定いただきたい、こう思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/24
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025・三木喜夫
○三木国務大臣 岡委員も現在の国際政治がパワー・ポリティックスと申しますか、こういう状態の中にあって、対策というても、これはやはり世界の世論に訴えて、そして日本人と考えを同じくしている人類、核保有国以外、あるいは将来持とうとする少数の国を除いては、全部が核爆発実験に対して反対の意見を持っているわけでありますから、世界の世論に訴える。というのは、非常に気長い、何かもっと端的な方法はないかということをわれわれも考えるのでありますが、核保有国が原爆実験をやろうというのを効果的に阻止するという方法がなかなか見当たらないということを残念に思っておるのでございます。結局は、少しは気が長いようなことでありますが、世界世論を喚起するよりほかに方法はない。だから、その世論を喚起するのにあらゆる適切な機会、適切な方法、こういうものを通じて世界の世論を喚起するということ以上に対策というものはなかなかない。そういうことについて原子力委員会もこの問題の一半の責任を感じ、今後そういう原爆実験のような人類に非常にはかりしれない被害を与えるようなことが一日も早く停止されるような、そういう世論を喚起するためにわれわれが努力をいたしますことは申すまでもないのであります。しかし端的に、何かすぐに実効が上がるように対策を考えろということは、考えてはみますけれども、なかなか困難な事態は岡委員もおわかりの通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/25
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026・岡良一
○岡委員 今さら憲法の前文を持ち出すまでもありませんが、人類を恐忙から解放しょうということが前文に書いてある。そうして当面人類の大きな恐怖は、核実験がもたらすところのフォールアウトの影響でございます。また、この前文を受けて、原子力基本法筋二条には、わが国における「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り」と明確に規定をしてございます。そうして原子力委員会は、この憲法の前文を受けた第二条の守り本尊、守るという当然の任務があるわけでありますけれども、むしろ原子力委員会として、政府の核実験停止に対する努力については進んで積極的な政治方針を打ち出してリードしていく。御存じの通り、先般来、国連の科学委員会もいよいよ第二次の報告書を取りまとめるに至ったようでございますが、その最終の結語においても、もはや放射能禍を避けるには大国の核実験というものを最終的に停止するよりほか仕方がないという結論を出しておるようです。この科学委員会では日本の代表も非常な御健闘をいたしておられるように聞いておりますので、ぜひ一つ原子力委員会としてはこの際き然として、この核実験停止あるいは核兵器のための実験の拡散を防止するという態度と決意をもって具体的な対策を用意し、政府を動かし、国民を動かす、これくらいの積極的な活動をしていただくことが、私は一つの大きな、改正からもたらされた原子力委員会の仕事だ、こう存ずるのでございます。こういう御決意をもって当たられるかどうか、重ねてお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/26
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027・三木喜夫
○三木国務大臣 先ほどから申し上げますごとく、それは国民全体の大きな悲願でもありますし、ことに原子力委員会は、原子力基本法にも原子力の平和利用ということが貫かれておるわけでございますから、今後一そう積極的な関心を持ってそういう世界の実現を促進するために、政府等に対してもいろいろな献策等もいたす決意であることを表明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/27
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028・岡良一
○岡委員 なお、先ほど法制局長官との質疑応答でも明らかになったのでございますが、日本としては当然な権利として損害の賠償を要求いたしましたが、とにかく見舞金で事済まされてしまった。そこで今度は、こういうことがあったら、当然どこどこまでも損害の賠償要求をする権利があり、賠償する義務があるのだということを、これは日本だけの問題じゃないので、この際私は国際的にはっきりさすべきだと思う。そういう意味で、まず原子力委員会がイニシアチブをとって、外務省とも話をして、国際司法裁判所あたりへ、核実験に伴う損害について補償の義務、賠償を要求する権利、これをはっきり確立する努力をすべきだと私は思うのです。こういうこともやはり原子力委員会として当然考えてもらわなければならぬことだと私は思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/28
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029・三木喜夫
○三木国務大臣 これは、アメリカがく、後核爆発実験を再開する可能性もありますが、そういう場合における被害の状態、そのときの状況等も勘案しなければなりませんが、やはり日本の政府としては、損害に対して賠償を要求する権利があるという立場で外交交渉をすべきである。そして、国際司法裁判所というお話でありますが、こういうものは、そういうことがあったときには二国間の外交交渉で解決することが好ましいわけでございます。司法裁判所というのは、これはなかなか時間的にも結論が長引くし、国際法のいろいろな関連等もございましょうから、外交交渉を通じて、日本はそういう立場でそういう場合には対処すべきだと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/29
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030・岡良一
○岡委員 ちょうどビキニのときに、担当の外務大臣だったと思いますが、この点について私はお尋ねを申し上げたことがあります。そのときの御答弁は、やはり今の長官の御答弁の通りでした。司法裁判所などといういわば角ばったひまのかかるものよりも、二国間の交渉で合理的な解決を見たいのだ。ところが、御存じのように、二十七億の要求に対してその四分の一程度の見舞金で結局打ち切られたのです。そういう痛い例があるわけです。でありますから、どの程度の被害があるかないかということは、これは将来の問題で、わかりません。どんな被害があろうと、出然賠償を要求する権利がある、支払う義務があるという原則は、そういう苦い経験を浴びているのだから、日本としては当然やはり公の場においてこういう原則を確立すべきだと私は思うのです、それがためにはやはり国際司法裁判所への提訴ということも私は一つの大きな有力な手段だと思う。そういう点で、過去の苦い経験から、それだけの意気込み、決意をもって私は当たってもらいたいと思うのです。長官の御所信はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/30
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031・三木喜夫
○三木国務大臣 国際司法裁判所ということについては、これはすぐに結論が出る問題でもないし、国際法上の解釈などをめぐって、結論を得るのにもやはり相当な期間がかかりましょう。だから、もしそういう場合においては、当然に日本は損害賠償を請求する権利を持ち、またそういう被害を与えたものは損害賠償する義務がある、こういう見解に立って日本は外交交渉をすべきである。そういう経過を見て、そしてそれが十分な目的を達成できぬというような場合にいろいろ方法を考えるべきであります。現在のところは、まだ現に被害も起こってないのでありますから、そういう場合においては、今度ははっきりと日本の立場をそういう立場で外交交渉すべきであるというふうに考えます。こういうふうな外交交渉で解決ができれば、それが一番問題の解決の処理方法としては時間的にも早いし、そういうことが好ましいわけでありますから、今回、将来においてそういうことがあれば、日本の政府の態度をはっきりしてまず外交交渉にゆだねるべきだ、こう考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/31
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032・岡良一
○岡委員 私は何も今すぐ国際司法裁判所に提訴しろというわけでも何でも一ないのです。ただ、前回そういう苦い例もありますし、国際司法裁判所に提訴するということになれば、相手国の合意を必要としますから、これまでの経験に徴すればなかなか合意を与えないかもしれません。しかし、原則を公に確立をするという、日本がいわばフォールアウトの谷間と言われておるだけに、国際的な責任というか、立場からも、それくらいの腹をもってぜひこの補償の問題の解決に当たる。これはやはり原子力委員会が改正をされて、放射能対策についてのいわばその中核として今後活動されるというならば、それくらいの御決意をもって、せひ当たってもらいたいという私の希望を申し上げた次第なんです。
そこで、もし中部太平洋で核実験が再開されるというような事態になりましたときに、原子力委員会としてはそのための調査、また特にはこの三月、四月になればソ連の核実験に基づくストロンチウム等の降下量も増加するのではないかということもいわれておりまするが、特に中部太平洋における核実験再開に対する調査について具体的な御方針を持っておられるかどうか、この点をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/32
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033・杠文吉
○杠政府委員 ただいまのところ放射能対策本部の幹事会におきましていろいろ具体策を練っております。それはいろいろな場合を想定せざるを得ませんので、たとえばビキニの場合のように環碓地帯に、しかも環礁に近いところで実験をやられる場合、これはビキニのときの相当の経験を持っておるわけでございます。あるいはソ連がやりましたように、中部太平洋の島嶼ではございましょうけれども、非常な高空において実験が行なわれる場合、大きくはそういう二つの部面に分けまして、どのような調査をいたすべきであるかということをわれわれいろいろ検討しておる最中でございます。何しろその辺のところはまだ明確になりませんので、いずれの方法をとるべきであるかというようなことが決定いたしかねておるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/33
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034・岡良一
○岡委員 万一アメリカが再開を強行するとすれば、四月中旬ではないかと思うのです。しかもそれは二カ月ないし三ヵ月の長期にわたるのではなかろうかということもいわれておる。とすれば、やがてもう二十日ほどの期間しかないわけです。ですから、やはり放射能対策本部として、あるいは原子力委員会として、もっと具体的な対策を用意すべきではないでしょうか。いかなる船をもって調査するか、あるいはそこの周辺にいる漁船なり、その他の船についてはフォールアウトについてどういう調査をさせるか、そのためにはどういう設備なり施設を与えるのか。あるいは前回御存じの通り、三崎に上がったマグロが、非常におったまげたものだからガイガーで少しでも放射能が出ればみんな廃棄をしたというようなこともあったようでございました。もうあれから日もたっていわゆる警告線量とか警戒線量というようなものも研究しつつある段階でございますから、その海域から、あるいはまた太平洋からとれたマグロ、もちろん海流は動きますから、放射能の汚染があり得ると思われる魚については一体だれが、どこで、どういう設備をもって調査をするのか、こういう点を具体的に私は尋ねて、さらにまた、それに必要な予算についても原子力委員会としてはちゃんと用意していただかなければならぬ。そうでなくては、こういう改正が無意義なものになる。これは長官、そうじゃないでしょうか。もうあと二十日だというのに、検討中だということでは、まことに私は無責任だと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/34
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035・杠文吉
○杠政府委員 私の説明が不十分でございまして、御疑問があったようでございますが、実は幹事会案というものはほとんど固まっております。ただ、岡先生も御存じの通りに、国連の科学委員会へ塚本代表以下その方面の権威者がみんなおいでになっておりまして、この方々が明日お帰りになります。そこで、その方々の御意見もいれまして御決定をいただこうというふうに考えておるということでございます。従いまして、四月の初めには、どういう対策をやるということは決定の運びになると思います。その想定は、おそらくは二つにつきまして想定せざるを得ません。すなわち、環碓の近くで前回同様のような実験が行なわれた場合と、非常に高空における実験が行なわれた場合に分けまして、対策はそれぞれ考えておりますから、御決定をいただこうと思うわけであります。残念ながら、ただいまのところ、最高の知識をその方面についてお持ちになっておる方々が国連科学委員会に御出席中なものでございますから、その方々のお帰りを待って決定したいというふうになっておる、ということを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/35
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036・岡良一
○岡委員 それでは、この法律案も取り急ぎ本委員会において成立をさせるべきものと思いますので、ぜひこの次の委員会にでもその幹事会決定の案というものを一つお示し願いたいと思います。
それから、これはあるいは非常に素朴な質問かもしれませんが、御存じのように、国際航空というものが非常に発達をいたしまして、太平洋の至るところを通っております。あるいは北極回りでたくさんの飛行機が飛ぶ。大体三万フィートというような高度でありますので、どちらかというと、従来のプロペラ機よりも放射汚染が多いのではないかというようなことも考えてみたりしているのです。飛行機の中に乗ると、外界の空気をとっているようですが、これもどの程度に濾過しておるのかどうか、私ども実際乗ってみてそういうことを感ずるわけなんです。この国際航空線の飛行機についての調査というものは、私まだ遺憾ながら科学的な調査の結果というものを見ておらない。これは等閑視すべき問題ではないと思うのでございますが、今、これは当然日本だけの問題ではないと思いますが、何か具体的な調査あるいは対策というものについて、日本でなくとも、ほかの国でも何か結論が出ておるのかどうか、お示しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/36
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037・杠文吉
○杠政府委員 私の方で直接に調査はいたしておりませんが、いろいろその道の人に問い合わせたところによりますと、やはり空気の濾過装置を取りつけている。ただし、これはどこの飛行機でもそうだというわけではなくて、国際線のうちでも、ことにソ連が核爆発実験をやりました北極回りの飛行機についてそのような措置をとっておる。しかし、今のところその濾過装置にくっついてくる放射能が危険な程度に至っているということは聞いておりません。危険な程度に至っていないどころか、非常に軽微なものである、問題にするに足りないぐらいの量であるということを聞いておりますが、やはり御指摘の通りに、その辺のところも調べておく必要があるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/37
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038・岡良一
○岡委員 外国の飛行機もさることながら、日本航空も、中部太平洋で実験があれば、やはり太平洋を行き帰りするわけだし、また北極ルートも日本の飛行機が行っておるわけですから、これは皆さんの力で、あるいは原子力委員会としてちゃんと調査をし、データを取りまとめるということもぜひ私はやってもらわなければならぬと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/38
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039・杠文吉
○杠政府委員 御指摘の通りにしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/39
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040・岡良一
○岡委員 それから、さっき申しましたように、原子力委員会が、憲法の前文を受け、基本法でもうたわれておる原子力の平和利用ということをふんまえて、さて放射能の対策に乗り出される。国連科学委員会では、放射能の最も有効なる対策はもはや大国の核実験を停止するしかないのだという結論を出そうとしておる。こういう状態の中で、核実験の再開と同時に、核実験を新しく始めてくれるということは重大な問題なんです。最近新聞によりますと、中共の核実験があるいは六月に行なわれるのではないか、あるいはまたもう少しあとだというような新聞報道も出ておる。私は、中共が核実験をやるということは、特にアジア、日本の国民にとっては大きな衝撃だと思うのです。そこで、新聞に散発的に出ておる報道も公安調査庁の御発表のような形をとっておりますので、公安調査庁としてはどのような見通しを持っておられるのか。まずこの点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/40
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041・関之
○関(之)政府委員 先般中共がごく直近の間に核実験をするであろうというような見出しで新聞が報道しておりましたが、その問題につきまして事情を申し上げてみたいと思います。
実はこれは三月十六日の国内の二、三の大新聞でございますが、アルバニアからの外電として、中共が六月に核実験か、こういう記事が出たのであります。これに関連しまして法務省の記者の皆さんが私のところに参りまして、こんな外電が出たが何か国内にそれに関する情報はないか、こういうお尋ねがあったわけであります。そこで、私の方といたしましては、一カ月くらい前から、どうも中共が近く実験をするそうだとか、あるいは夏から秋にかけてどうもやるようだというようなことが一部の共産党員の間から流れてきて、それを一、二情報として入手していたわけであります。その確度その他の点についてはまだ連絡がないから何とも申し上げられませんが、とにかくそういうことは従来なかったことでありまして、今のアルバニアからの外電などの関連で、私自身ちょっと感じたのであります。そこで、お尋ねを受けまして、実は国内としては、別に外国からということではなくて、情報が入っておりますということを申し上げたのであります。話の骨子はそういうことでありまして、その場ではいろいろな雑談が出まして、それがああいうふうに新聞がお書きになった事態かと考えております。経過は以上の通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/41
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042・岡良一
○岡委員 それでは、公安調査庁としてはあの新聞のいわばニュース・ソースは、アルバニアの新聞に伝えられた事実と、いま一つは日本共産党の人たちの言葉、こういうものから察して、あるいはあり得るかもしれないということを新聞記者の諸君に申し上げた、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/42
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043・関之
○関(之)政府委員 中共がいつやるかというような問題になりますと、単にそういう情報のほかに、いろいろ広範な総合的な、科学的なデータをもって判断いたすべき問題かと私は思うのであります。私どもとしましては、要するにそういう情報が入っておる、そうしてその情報の確度とかいろいろな問題についてはまだいろいろな問題があり、ちょっと注意すべきである、こういうようなお話でありまして、役所として断定的に中共が年内に核実験をするとかいうような公式な、断定的な発表ではないのでありまして、参考までにこういう情報がある、こういうふうに実はお話ししたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/43
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044・岡良一
○岡委員 私は、一昨年公安調査庁へ参りました。そうして、調査庁で出しておられる月刊雑誌のようなものかと思いますが、雑誌をちょうだいして参りました。その中には相当具体的に、この中共の核実験近しという証拠となる事実が指摘されておったのです。ですから、公安調在庁としては、そういうあいまいな、アルバニアの新聞だとか、あるいはまた国内のだれかが言っておったということでなくて、三年前にあなた方は相当正確な情報をキャッチしてそれを発表しておられるではございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/44
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045・関之
○関(之)政府委員 今のお尋ね、これは月刊の雑誌でなくて、私ちょっと今失念しておりまして大へん恐縮でありますが、何か取りまとめて調べたものがあるかもしれませんが、私の方といたしましては、これは別に深い科学的な能力を持った者がおるわけではありませんし、また国内における破防法実施上の共産党調査という面から出る情報もそうすぐ全部入るわけではありませんし、入った情報で参考になるものはそれぞれの関係官庁に送っておるような次第であります。しかし、全体的な、総合的な判断はなかなかできないのであります。おそらく察するところ、これは外国の雑誌か何かに出たものを総合的にまとめてみたものではないか、実はこう思っております。どういう記事であるか、失念して大へん恐縮ですが、今記憶がありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/45
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046・岡良一
○岡委員 雑誌をここに持ってきておりませんので、若干数字は違うかもしれませんが、こういうことが書いてある。第一には、昭和二十八年ごろから五千キロワットないし一万キロワットの天然ウランを燃料とする原子炉が運転を開始しておるということ。その翌年プルトニウムの抽出化学処理工場が北京の郊外に建設されたということ、中共でウラン鉱の原鉱を非常に大規模に調残した結果、所在にそれが発見されておるということ。第四には、ドウブナの共産圏の原子核の共同研究所へ相当数の中共の若い科学者が派遣をされて、これが帰国しておるという事実。そして中共は国内に実験場を持っておる。こういう事実から見て中共の核実験は相当に近いものである、実はこういう趣旨のものがあなた方の出しておられ雑誌に出ておる。御存じないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/46
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047・関之
○関(之)政府委員 役所から一般的に出している資料とかそういうものには、そういうのは私は記憶ございませんが、ただ、ある民間関係の雑話に私の方の者が個人的に一種の研究としてそういう記事を出したことがありますので、あるいはそれのお間違いではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/47
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048・岡良一
○岡委員 それでは、今申しましたような、原子炉が運転をしておるとか、要員が訓練を受けて帰っておるとか、あるいはウラン鉱の調査をやっておるとか、あるいはプルトニウムの抽出工場を作ってすでに稼働しておるとか、こういうことはあなたの方の調査の結果ではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/48
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049・関之
○関(之)政府委員 中共の原子力剛発の問題につきましては、これは私の方の調査と申しましょうか、要するに私の方のオリジナルのものは、国内の破防法、実施上、左の側の調査によって出てくるものがありますが、これだけがオリジナルのものであります。あとの情報は、外国の新聞とか雑誌その他公刊物、あるいは関係各省からいただいたものなどを一応取りまとめてみたもの、こう考えておりまして、そういう意味で何かまとめたものがあってお手に渡ったことかと推定している次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/49
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050・岡良一
○岡委員 これはどういうところからそういう情報を入れられたのかというふうなことも含めて、きょう私は調在庁の率直なところをお聞きしたがったのです。私はあなたの役所に行って、これに関する資料がございませんでしょうかと言ったら、いただいたものですから、これは確かにあなたの方で御調査になったものとあるいは即断をしたのかもしれません。しかし、これはおそらく心当たりはあると思う。私きょう持ってこようと思って探したら、ないのです。ですから、あの資料は一つぜひ近い機会にお示し願いたいと思う。
そこで、三木大臣にお聞きしたいのです。いずれにしましても、中共の原爆実験というものが、いつあるか知らないが、必至だという条件なんです。そして今申しましたように、国内においては実験し得るだけの諸条件はそろっておる。そこへもってきて、おそらく国際的にも、やはり中共の原爆実験というものは国際政治上の一つの情勢としてやる可能性も十分考えられると思う。こういうような事態を前にいたしまして、原子力委員会として、あるいはまた国務大臣として、これをどうすればいいのか、拱手傍観をするだけでございましょうか。何か具体的な御所見があったら私は伺いたいし、これは日本国民全体の重大な関心事だと私は思うのです。御意見を聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/50
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051・三木喜夫
○三木国務大臣 中共がいつ核爆発実験をやるかということは、諸説ふんぷんといいますか、なかなか具体的にどうだと言い切れる資料を持っている者はないと思います。しかし、岡委員も御承知のごとく、今日の原爆の技術というものは世界に知れ渡っておるわけでございますから、中共も将来原爆を持つということはむろん可能性のあることだと思います。これに対して技手傍観するのかというお話でありますが、やはりこの問題は単に日本ばかりでなく、世界政治の重大な課題である。まだ国連にも加入してない、こういう中共でありますから、従って国連のワク内でということはなかなかむずかしい。そこで軍縮会議などにも中共は入れるべきだという声が起こっておるわけであります。あるいは核実験の停止の協定の場合も、米ソ英等で相当な話し合いがつくならば、将来そのときに中共が原爆を持っておれば、これは当然に勧誘されるものと思います。勧誘と申しますか、やはり中共も含めて協定に参加しなければ意味をなさないわけであります。だから、日本としてそれなら具体的に今中共に対して働きかけるといっても、国交も回復してないわけでありますから、正式な外交ルートを持ってない。具体的な方法いかんと聞かれれば、具体的な方法というものはこういう方法があるというようなことは、私今考えがつかないのであります。やはりこういう問題は、中共の問題というものは世界の最大の課題だ。日本もそうだけれども、これからは二十世紀後半の最大の問題というものは中共問題である。そういう点で、これは世界政治の中で中共、しかも国際政治の中に加入してない中共が原爆を保有するというこの事態に対して、日本は国際政治の一員として考える面は大いになければならぬ。また、これは世界の最大の問題といってもいいくらいの問題でありますから、国際政治の中でこの問題を真剣に考えいなければならぬ。その国際政治の一環として日本もいろいろ考えさせられるものを持っておる。しかし、今具体的に何か方法があるかといったならば、私の今の考えでは、これをやめてくれ、こういうような効果的に中共の原爆を持とうとする意図をくじくだけの具体的に方策は、残念ながら持たないと申し上げるほかはないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/51
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052・岡良一
○岡委員 それでは中共の原爆実験は手をこまぬいて傍観するより仕方がないということになります。この間新聞では、ケネディ大統領も、核実験停止問題や軍縮問題については中共も入れて話をきめなければほんとうに有効な結論は出ないのだということも言っておられる。また、国連で核実験停止についてどんな協定ができようとも、またどんな軍縮協定ができようとも、中共が国連の外におる限りは、国連の諸決定、諸協定というものは中共を拘束することができない。しかも、御存じのように、伝えられるところによれば、中共は、原子戦争あえて辞せず、われわれは生き残るのだというようなことをいっておるとも聞いておるわけです。でありまするから、われわれはやはりアジアの平和、ひいては放射能対策の徹底という点から考えましても、原子力委員長として、あるいは原子力委員会としても、この問題には重大関心を払ってもらわなければならぬ。ところが、どうも今のお話では、手をこまぬいて傍観するしかない。中共は国連の諸決定に拘束をされない状態に今あるわけなんです。だから、中共を国連に入れる。ところが、この間の総会ではむしろ反対な逆行的な態度に日本は出ておる。私は、中共加盟問題を特別議題とするということによってさらに加盟を困難ならしめるというようなことは、原子力の平和利用を念願とする立場から、またそれを旗じるしとせられる原子力委員会としてもきわめて遺憾なことだと思われるので、放射能対策の根本について原子力委員会が積極的な手を打たれようとするならば、こういう問題点について、やはり国務大臣としてもまた原子力委員会としても、具体的な外交的政治路線を出してもらいたいということをさっきから申し上げておるわけです。政府のやっていることは逆じゃございませんか。だから、手をつかねて傍観するより仕方がない。そういう中共の国連加盟を困難にしないような方向に、逆コースをやらないという方向に——原子力委員長は科学技術庁長官を兼ねられ、実力者として三木さんの御発言は閣内においても大きなウェートを持っているわけなんですから、拱手傍観より仕方がないというようなことでは、非常に私どもとしても頼りないことではないかと思う。こういう政府の中共国連加盟に対してかえってチェックするような方針を紛砕するような方向に御努力を願わなければいかぬと私は思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/52
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053・三木喜夫
○三木国務大臣 岡安員も御承知のように、やはり方向としては中共は国連に加盟さるべきであります。国際政治のワクの中でやはり行動をするということでなければ、極東の安定あるいは核実験の停止、軍縮協定というものは目的を達せられないことは御指摘の通りであります。そのプロセスは、御承知のように台湾問題というような問題もありまして、直ちにこの問題が一気呵成に解決できる国連の状態でないことは御承知の通りです。それでありますから、政府が重要問題としてこの問題を真剣に検討しょうということの中には、台湾問題の困難性が、解決の困知性もその中にある。またこれが世界の大きな悩みの種であります。台湾というものを中共の主張のごとく簡単に割り切ってしまえばこれは簡単であります。しかし、台湾を中共の主張のように抹殺するということは世界の多数の国が賛成はしてないのであります。そういうことを考えてみると、台湾問題の解決というのは実に厄介な問題である。そこにやはり時間をかけて、この問題の解決というものに何らかの解決案を出さなければならぬ。政府も重要な案件としてこれをもっと検討しなければならぬというのが政府の立場であって、それはうしろ向きでは私はないと思う。実際に中共あるいは台湾をめぐる現在の情勢というものを岡委員もお考えになれば、これは一刀両断のもとに解決できない問題を含んでおる。そこになかなかその解決というものには時間をかけなければならぬ余地もあるのだ。だから、日本の政府は、この問題をことさらに中共が国際社会に加入していくことを阻止するために提案をしたと私は思わない。それほどこの問題は解決が困難であるということから、また世界の世論の状態からしても、もう少し重大な案件として検討を要するということでやったもので、これは政府の対中国に対する関心の薄さ、あるいは国際社会に中共を加入させたくないという意図からでないと思う。しかし、大きな方向として、中共は国連に加入しなければならぬ。そうでなければなかなか国際政治の上において、この一つの原爆の問題をとらえてみても、核実験の停止の問題を考えてみても、この問題の世界政治のワク内における解決は困難である。ただ一切の問題というものを中共側の主張の通り一刀両断のもとに解決するということは、なかなか今日の情勢では、日本もできなければ、また世界もそういうことに賛成する国が多数だとは思えない。そこにやはり大きな世界の苦悶の課題になっておるのでありますから、これは多少の時間をかけるということはやむを得ない。しかし、方向としては、中共は国際社会にできる限りそういう懸案を解決して加入されなければならないというのが政治の方内でなくてはならぬと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/53
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054・岡良一
○岡委員 外務委員ではございませんからそのことはそのこととして、次の問題でございますが、長官はパワー・ポリティックスということをよく言われておる。やはりその信奉者でいらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/54
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055・三木喜夫
○三木国務大臣 私は信奉者ではないけれども、世界の現実の政治というものはそういう面がある。そればかりではありませんよ。ありませんけれども、多分にそういう面がある。しかし、自分はパワー・ポリティックスの信奉者ではない。世界の秩序はもっとモラルとか連帯とか、そういうもので動かさるべきものだとは思いますが、残念ながら世界政治の現在の分析は多分にパワー・ポリティックスの面があるということを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/55
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056・岡良一
○岡委員 とにかく原子力基本法で、原子力の利用は、平和目的のためだ。この基本法を守って内外における原子力政策を推し進めていかなければならぬとわれわれは希望しておる。ところで、パワー・ポリティックスの現在における。パワーといえば、おそらくアトミック・パワー、核ミサイルだと思う。この存在を認めるということでは、これはあなた御自身の心底においても一つの疑問があると思うのです。問題は、この間のソ連の核実験の理由を見ると、アメリカ、NATOの帝国主義戦争の挑発のために、世界の平和を守るためには、胸の痛い思いをして踏み切った、こう言っておるのです。ところがまた一方、アメリカ側の言い分を聞くと、やはり自由主義諸国の安全、ひいては世界の平和のためには核実験の再開もやむを得ないと、こう言っておるわけです。双方とも世界の平和、世界の平和と言いながら、核実験の強行をしようとしておる。この矛盾を、断ち切るのは、私は世界に類のない原子力の開発、研究、利用は、平和目的に限るという、こういう大きな旗じるしを掲げた原子力委員会の大きな仕事だと思う。しかも、今度の改正で放射能対世についての根本的な方針を作っていただくということになる。しかも、放射能対策の根本は、結局、大国の核実験を永久的に終止するより仕方がない。これは国連科学委員会という、いわば原子力科学者の専門家の集まりの結論としてやがて発表されようとしておる。そこで問題は、中共もおそらくそれを理由にするでしょう。聞くところによれば、沖縄にはナイキ・ハーキュリーズの某地があるということも伝えられ、あるいはまた何か核弾頭を持った無人飛行機の基地も作られるといって、沖縄の住民は反対をしたということも伝えられる。数年前にベトミンで相当混乱が進みましたときに、第七艦隊は核兵器の使用ということでワシントンで重大な会議を開いた結果、アイゼンハワーもリッジウェイの所見に、采配を上げて思いとどまったということになった。沖縄の第七艦隊にはやはり核装備というものがある。使用できる体制になっている。おそらくこれを取り上げて中共は、われわれも核実験をやり核兵器を保有しなければならぬというでしょう。俗耳に入りやすい論理だと私は思う。だから、やはりこういうアジアにおけるアメリカの基地、艦隊その他の核装備というものを日本だけではなく、やはりこういうものを備えさせないというような——これも私はむずかしいことはわかっている。むずかしいことはわかっているが、原子力委員会としてはやはりそういう方針を打ち出してもらいたいと私は思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/56
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057・三木喜夫
○三木国務大臣 原子力委員会が沖縄における米軍の核装備、これをやめさすというようなこと、原子力委員会がそこまでいくことが原子力基本法の精神だとは私は思わない。これは政府全体の問題でもございますし、また沖縄というものの現在の地位等にも関連をするのでございますから、沖縄の基地問題まで触れて原子力委員会が活動しようという意見は私持っておりません。原子力委員会、また原子力基本法の命ずる使命というものは、そこまで拡大して考えるという考えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/57
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058・岡良一
○岡委員 何も沖縄の基地を返せということを言ってくれというのではないのです。ただ具体的に、アメリカ軍がその基地なり艦隊に原子装備を持てば、この間のソ連とアメリカとの競合での双方の論理を見ると、それを理由として中共も原爆実験を合理化すると私は思うのです。だから、原子力委員会としても、やはりこういう事態に対しても一つの政治的方針を出していただきたい。放射能対策というものの根本は、核実験の再開を停止すること、さらにはそういうことを他の国にやろうとさせないことだというのが、国連科学委員会の最終的な結論ともなっておる今日、いわんや原子力基本法第二条を掲げて原子力政策を進めなければならない原子力委員会、しかも今度の改正で放射能対策の根本についてと言われる以上、ここまで掘り下げた決意の上に原子力政策を進めるという心組みをしていただきたい、私はこう思っておる。
そこで、この間しり切れトンボになりましたが、例のアジア原子力平和利用会議です。この間の話では非常に何か内容は取りとめもなく、十分つかめなかったのですが、あれは具体的にどういうことになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/58
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059・三木喜夫
○三木国務大臣 アジア原子力会議は明年の二、三月ごろに開催をしたい、これについてはその間に十分な準備を進めたいと思っておりますが、開催の時期はそういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/59
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060・岡良一
○岡委員 沖縄問題や第七艦隊の核武装というようなところまで、原子力委員会はなかなか手を広げがたいとおっしゃいますが、それはそうといたしましても、これはやはり日本原子力委員会が御主催になるのですから。御存じのように、ウィーン宣言、ゲッチンゲン宣言、その他アメリカでも、今度の核実験の再開には二万をこえるアメリカの科学者が反対しておる。こういうわけで、良識ある世界の科学者は、原子力の軍事利用というものに対しては、これを拒否するという人たちの方がはるかに多いわけです。いわんやアジアにおいては多いと私は思うのです。そういう会議において、今後のアジアにおける原子力の研究開発についての技術的な、事務的な取りきめをお進めになることもさることながら、こういう機会に、アジアの原子力科学者は原子力の軍事利用に協力しない、すべきではない、こういう高いモラルの宣言をはっきり出してもらいたい。こういうような会議を催されることが今日においての一つの大きな課題だと私は思うのであります。ぜひ、そういうふうにしてもらいたいと思います。委員長いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/60
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061・三木喜夫
○三木国務大臣 その会議は、岡委員がお考えになるような政治的な会議ではないと思っておりますが、そういう機会に、日本は核実験停止、核兵器の貯蔵、製造等もやめてもらいたいという立場でありますから、おそらく集まってくるアジアの人たちの考え方も日本の意見と異ならないと思いますので、何らかの意思表示をその会議を通じてしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/61
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062・岡良一
○岡委員 国際原子力機関の第一回総会、あるいは第二回総会にも私は出ておりますが、第一回総会でもそういう宣言が採択されております。その前の準備会でもそういう宣言が採択された。第三回総会でも、やはりその趣旨が議長のペランによっても強調され、大統領によってもそれが確認されているという形で、大きなウェートを持って科学者の原子力軍事利用に協力しないという態度がはっきり打ち出されている。だから、やはり原子力委員会が主催をして、アジアにおける原子力関係の科学者の会議を催されるならば、これは何の奇異をてらうものでもないのですから、そういう大きな崇高な決意をはっきり打ち出すように、原子力委員会としてもぜひ御努力を願いたい、このことを強くお願いいたしまして、一応私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/62
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063・前田正男
○前田委員長 次に、石川次夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/63
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064・石川次夫
○石川委員 この委員会で前から問題になっておりまして、おそらく私の欠席した委員会で問題が出たのではなかろうかと思いますけれども、安全基準のことで、原子力委員会の方々に、どの程度作業が進んでおるかという点を中心にして、実は私、三時からの会議が予定されておりますので、私自身非常に多忙なものでありますから、大へん恐縮でございますけれども、結論的な質問だけ伺いたいと思います。
原子力委員会の任務は非常に多事多端でございますけれども、大きく分けていわゆる経済性の問題と安全性の問題に帰着すると思うのです。しかし、経済性の問題は、民間では原子力産業白書というものを出しておるくらいでございますから、これを見るまでもなく、この経済性を何とか確立しなければならぬということは民間の非常な関心事でございます。原子力委員会としてはこれを無視してよろしいということにはなりませんけれども、ある程度放置しても相当下から突き上げられる性質のものだ、こう考える。従って、私といたしましては、原子力委員会としてもっと関心を示さなければならぬものとして、安全性の確保ということに集中的に努力を傾けてもらわなければならぬ。これは安全性安全性ということで、前に進もうとする原子力の施策というものの足を引っぱろうという気持は毛頭ございません。権威のある安全基準というものが確立されて初めて、原子力発電所を作るとかあるいは原子力センターを作る作業というものが順調に進む。これが確立されなければ順調に進まないということが逆に言えると思う。そこで私は、最近出たパンフレットでございますけれども、「原子炉安全基準の審議状況について」というのをざっと目を通しました。三十七年三月八日付です。これの二ページ「事故時における基準線量」という段で、三月中旬には基準部会で報告される段階に到達した。こういうことになっておりますけれども、これが提出をされることになったのかどうか。なったと仮定すれば、その内容についてぜひわれわれにお示しを願いたいということが一つです。それから、原子力委員会で月報を出しておりますけれども、去年の五月に、IAEAの基本的安全基準というものが近く理事会で決定を見る運びになっている、こういうことに報告されたまま、その後何かの報告が出ているかもしれませんが、私がうかつなのかもしれませんけれども、まだそれに目を通しておらぬわけです。従って、IAEAの末木的安全基準とういものは、昨年の五月ごろすでに、近く理事会で決定ということになっておりますので、これが一体どういうふうな段階にいっているか。この二点をまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/64
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065・兼重寛九郎
○兼重説明員 ただいまの御質問の初めの力につきまして、先にお答え申し上げます。
審議状況について御報告いたしました第二項は、三月十六日に、原子炉安全基準専門部会に設けられております第一小委員会というものから報告書の案が出まして、そこで部会としていろいろ討議されました上、かなりその場所で表現の修正などいたしました上、その結果は一応これで基準線量というふうにしておくが、なおこれを修文その他いたしました上で、これは部会の中での基準として持っておる。これをもとにして、この問題の前に原子炉の立地基準というのをやっておりますが、その原子炉の立地基準の方に作業を進める。その作業を進めた上で、あるいは何かさらに問題が起これば、この基準線長というものももう一ぺん検討するかもしれないという意味で、これをこの前の報告、正月八日付の資料の中では、基準部会の解義を経て近く原子力委員会に報告されることになろうというふうに申し上げましたけれども、そのことはしばらく行なわれないことになりました。この基準線量と申しますのは、原子炉の設置許可のためになされる安全審査におきまして周辺の公衆に対する放射線障害防止の見地から、立地に対する原子炉施設の安全性を判断するために使われる意味の基準でございます。それで、そういうふうにいたしましたものが、今のところでは発表はされない見込みでございます。その発表されないということが、しばらく秘にしておくという意味なのか、積極的に発表をしないが、これを知られることはかまわないという意味か、その辺のことを先ほど担当の者に聞きましたところが、それがちょっとはっきりいたしておりませんので、きょうここでその内容を御報告することが適当かどうか、私には今判断ができませんから、これは部会長とも打ち合わせをいたしました上で、適当な方法をとりたいと存じます。三月十六日の安全基準専門部会第一小委員会から報告されましたことは、この審議状況について御報告申し上げましたときに、中旬には基準部会に報告される段階に到達した、その通りでございます。
それから、あとのことにつきましてはちょっと御猶予願います。——昨年、炉の災害評価の小委員会で研究炉の安全手引きというものを出しまして検討したことはあるそうでございますが、その後IAEAの理事会できまったという報告がきたという記憶が今担当の者にございませんので、これは取り調べまして、後刻あるいは後日御返事申し上げることにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/65
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066・石川次夫
○石川委員 この原子力委員会の月報の昨年の五月号に、近く理事会で決定という報告が出ておりますから、ぜひ調べて後刻御報告を願いたいと思います。
それで、これは何回も言われておることでございますけれども、を何とか早くきめてもらわなければならぬ。これは実は御承知のように、東海村はコールダーホールというようなでかい発電所もできましたが、射爆場に隣接をして、そして相次いで研究炉が密集してできておるというようなこと、しかも立地基準というものができておらぬ。どろぼうを見てからなわをなうというようなこと、かよく言われておりますが、強盗が危険きわまりのない刃物を振り上げてからなわを見つけておるような状態のように思うのです。どうしても立地基準が確立されないと、今後どこへ原子力センターを作る、あるいは原子力発電所を作るといっても、このような状態では住民の了解を得るということは不可能に近いじゃないかというような懸念すらあるわけです。従って、立地基準を早くきめてもらいたいというわれわれはあせりに近い願望を持っております。この点を強く要望をしておきます。立地基準というものの作業を進めておると思いますけれども、これに対して大体どのくらいできる見通しですか。実は先般外国に参りまして、英国に参りましたときに、英国の原子力委員会のあの有名なフーバー基準を作ったフーバーさんに聞きました。作った基準はもちろん各国によってそれぞれ事情が違うだろうから、自分の方できめたものをきらっと日本の方に押しつけるつもりはないのだということを言っておりましたけれども、しかし、その一応出された基準というものに合わせてみると、東海村は法外に基準をはずれているわけです。非常に危険千万だということがあれから出てくるわけです。そういうことに照らしてみても、日本は日本なりにという言い方、それ自体はあまり科学的ではございませんけれども、しかし、とにかく立地基準というものをはっきり確立をさせてもらわなければ今後の原子力開発ということが進まない。こう思いますが、立地基準についての作業の見込みを一つお知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/66
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067・兼重寛九郎
○兼重説明員 お説の通りに、基準ができまして設置をきめるというふうにできることを望んでおりますことは、私も石川先生におくれをとるものではないと思っております。しかし、何分にもいろいろな条件がありますために、いわゆる安全基準というような形で作ることは現在の専門家にも非常にむずかしい作業であるというふうに了解されますので、従来は安全審査会の方で基準に準ずるようなものを念頭に置きながらその場合場合に審査をしておるわけであります。そして、基準という名前のものがないからどろぼうが目の前にいるのにまだなわもなっていない、そういうたとえが当たるような状況では決してございません。従って、十分安全であるという見きわめがつきましたものについてだけ設置許可をしておるのが現状でございます。これを早く作って形式的にもそういう心配を持たれるようなことがないようにしたいとは考えておりますが、先ほど申しましたように、専門家の間でのこれまでの議論を聞いておりますと、いつごろまでにこういうものを作るかということを私がここで申し上げるようなふうに参らないのでございますが、先ほど御報告いたしましたように、原子炉の安全審査に対する基準線量というものが基準部会の中にとどまるにせよ、とにかくきまりましたということは、これは非常に大きな進歩と申しますか、一つの段階でございますから、これから次第に具体化していくというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/67
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068・石川次夫
○石川委員 私も時間があまりありませんから、こまかい質問ができないのですけれども、どろぼうを見てなわをなうということはないのだというようなお話がございましたが、一つ一つの安全審査はなるほど慎重にやっておられる。この東海村で相次いでできる一つ一つの炉については、なるほどこまかな検討をやっておるかもしれません。しかしながら、これが重なり合って住民に与える影響の度合い、これは立地基準というところから判断をしなければならぬことだろうと思いますけれども、そういう意味での基準というものが全然できておらぬ。それで、この東海村ほど集中的に原子力施設ができておるというところは世界に類がない、こういうふうな学者の話も聞いたことがあるのです。そういう意味で、どろぼうを見てなわをなっているのじゃないとおっしゃるかもしれませんが、立地基準という点からいいますと、まことにたよりない話になっているわけなんです。こういう点、一つぜひ立地基準というものを、厳密な意味でものさしのような形でできるかどうかわかりませんけれども、およそ目安のようなものができなければ話にならぬのじゃないか、こう考えるわけです。
たとえば、これは原子力局長の方に伺いますけれども、向こうの地元の方に聞きますと、二軒茶屋——二軒茶屋といいますと国道付近です。名民間の研究の原子炉というものが相次いでできる。ものが全然わからない人は、あの辺がにぎやかになっていいのだというふうに思う方もおるようですけれども、しかしコールダーホールにしても、あるいは東海村の原子力施設にしても、海岸のあたりにあるということは、災害を半減しているわけです。ところが東海村の国道のあたりにそういう施設ができるということになりますと、海岸の方に逃げるという要素がなくなりますから、被害を受ける危険性というものは倍加される、こう考えなければいかぬわけです。こういううわさが出ますと、また立地基準がないところに相次いでできてくるのかという不安を持つ人が大部分だし、私自身も不安がないわけではないわけです。このうわさを聞いておりますか。そういうふうなうわさが出ておりますか。原子力局長にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/68
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069・杠文吉
○杠政府委員 ただいま御指摘になりました炉というのは、私の方で聞いてあります。それは三菱原子力工業が設けようとする炉でございます。実際の設置者というのは、三菱原子力工業に出資をいたしておりますところの三菱電機株式会社が設置者である。そして、それは非常に小型の炉を置く。もちろん研究炉でございますけれども、大学のような非常に小型の研究炉に近いものを置くということでございまして、すでに申請は出ておりまして、原子炉安全専門審査会の先生方が実地踏査をされております。その結果によりますと、私が中間的に報告を受けておるところによりますと、安全である。おそらく二軒茶屋の近くに置かれることになっておりますが、その地を踏査した結果、非常な小型炉であるから安全であるだろうというような報告でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/69
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070・石川次夫
○石川委員 そういうように相当具体化しているということになると、相当問題かと思うのです。なるほど、一つ一つは安全なんです。非常に厳密に審査をしているのです。しかし、あそこに集中しているという点で、何といっても原子力委員会の御努力を願って——そういう集中の限度というものは、学説的には定説がないそうです。ないそうですけれども、そう無制限に集まっていいという性格のものではないのではないか。これは常識的に考えてもそう考えられる。そういう点で、立地基準というものを確立をしてもらわなければどうしても困る。私は今、反対するとか反対しないとか、三菱電機のことについて言おうとは思いません。しかし、そうなりますと、相当人心も動揺するのじゃないか、卒直に言ってそういう感じがするわけです。非常に小さな原子炉であるから、相当厳密に安全性を確保すれば大丈夫じゃないかという気はします。何しろ、それだけじゃない。相当たくさん将来も原子力研究炉が相次いでできるという予定になっておりますので、それがそう重なり合っていいものかどうか。こういう危惧がありますから、その点については、原子力委員会でもどういう見解を持っておられるか。将来これに対して、立地基準というものを明確に出されないにしても、そういうものに対するある程度の目安といいますか、一つ一つの炉の安全性ではなくて、そう重なり合った場合にどうなるかということに対する基準を作る必要があると思うのですが、その点は一体どういうふうに対処されるおつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/70
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071・兼重寛九郎
○兼重説明員 先ほど、その場合その場合に審査をいたしますが、基準というふうに名前はっけないけれどもそれに準ずるものを念頭に置いて、と申しましたが、そのときは、一つ一つだけではございませんで、たとえば東海村のような場合は、ほかの炉のことも考えております。それで、具体的な例といたしましては、東海発電所の炉を置きますときに、原子力研究所の一部にそういうことが出て参りまして、これは原子力研究所と原子力発電所の間で協議をして解決することになったはずでございます。そのほか、原子力研究所でたとえば材料試験炉というようなものを置く場合に、あそこに置けるかどうかというようなことは、やはりほかの炉との関連において考えておりますわけで、今その炉があそこに置けるはずだとか置けないはずだというような結論にはなっておりませんけれども、そういうようなこともほかの炉との関連を考えながらきめております。ただ、それが、ではこういうところまでいったら置けないということを今すぐ基準として出すに至っておりませんことは御承知の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/71
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072・石川次夫
○石川委員 どうも今のような話ですと、なるほどそういうふうに良心的にやって下さっているというふうな感じはいたしますけれども、何だか政治的にやられてもわからないという印象を受けるわけです。学問的に、重なった場合の結果どこまでだというふうな一応の基準を示されないと、どうも住民としては不安だという気持はぬぐい切れないと思う。そういう意味で、一つそういうことも考えながら善処してもらいたいということを申し上げて、このことにつきましてはまたあらためて質問したいと思います。
それに関連をいたしまして、実は原子力の施設地帯整備の問題でございます。これは原子力産業会議の方で要用書が出ておりますことは、科学技術庁あるいは原子力委員会は御存じの通りだと思います。この原子力産業会議の中で原子力施設地帯整備特別委員会を設けまして、いろいろな整備に関する内容とか計画とかいうものについての検討をするために、昨年の九月にこれが発足しておるわけです。この原子力産業会議は、もちろん産業会議の名の示すように産業界の代弁でございますから、必ずしも国民の立場に立っているかどうかという疑問がないわけではありませんけれども、しかしこの産業会議の結論は、十二名の小委員会を作りまして、それから各方面にいろいろ相談をしておるわけです。原子力局だけではなく、建設省、通産省とか、東大とか、早大とか、首都圏整備委員会とかいうような各方面の権威者とも連絡をとりながら、一応要望としての結論が出たわけです。この結論は、今さら私から申し上げるまでもなく、大ざっぱに言いまして、原子力施設地帯の環境整備を国の仕事として実施をすることが、わが国における今後の原子力開発の進展にとって重要な前提である、こういう結論になっておるわけです。それから、原子力損害の賠償に関する法律の附帯決議の中でも、原子力施設地帯の環境整備を国の施策として実施すべきであるという附帯条件が決議としてつけられておるわけです。そういうことから言いましても、実はこの間の委員会で、三木大臣から、地元の方で一つ青写真を作ってみたらどうか、それを国でもって協力しようじゃないかという話があったときにも私は申し上げたのですが、これはなかなか、先ほどの安全基準、立地基準というようなものも非常にむずかしい問題で、地元としてはうかつには手をつけられない。専門的なこまかい複雑な問題があるということで、どうしてもこれは国としてやってもらわなければ地元ではできませんということを、私、意見として申し上げておいたのです。ところが、その後参議院の方の議事録を見ますと、参議院でも地元の方で一つ具体化してみろということを大臣がおっしゃっているような速記録の記事を見たわけでございますけれども、これは地元では何としても手がつけられません。手がつけられないから、何回もこれを何とかしてくれということを中央の方に陳情を続けて参っておるわけです。
ところが、先ほど申し上げました「原子炉安全基準の審議状況について」の中を見ますと、原子力地帯整備問題について、地帯整備として考えられておる事項は、現行制度によっても実施可能な問題が多いということが書いてある。これは原子力局長に伺いたいのですが、具体的には、現行制度によっても実施可能な問題が多いというのは、どういうことをさしておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/72
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073・杠文吉
○杠政府委員 これはただいま石川委員も御指摘になりましたように、定業会議の中の地帯整備特別委員会の中には、建設省もわれわれと同じにオブザーバーとして入っております。建設省は都市計画課の方から都市計画課長が入っております。また計画局長も、オブザーバーでございますが、非常に熱心に出席しております。都市計画法によりましていろいろな計画を地元でお立てになりましたおりに、建設省としましてはいろいろな協力の仕方がある、そういうことを意味しておるわけでございます。ですから、全然都市計画法等は、はずれて関係がないということではなしに、いろいろな計画を地元でお立てになる場合に建設省として十分の協力をいたしますということでございます。ですから、ただいまも申し上げますように、具体的に青写真が焼けた場合には、どういう点にはどれだけの協力ができますということが申し上げ得るわけでございます。しかしながら、青写真が十分に焼けていないおりに申し上げることは、ただいまのように抽象的でございますが、十分に協力いたす余地があるということを申し上げているわけでございます。それからまた、石川委員が御指摘になりました、国によらざればこのような環境の整備はできないという問題でございますが、原子力産業会議の中に有力なメンバーとして地元の方たちが入っておられることも御存じのことだろうと思うのであります。地元側としても非常な熱意を持ちまして、やっぱり自分たちの問題であるとして、産業会議の中の特別委員会で有力な発言をしていらっしゃいます。われわれはオブザーバーとして参加しておりまして、その御熱意に非常に打たれております。従って、国といたしましても十分の御協力はいたしたい。しかし、何しろ具体的な計画案というものが立ちませんことには、どのような点にどう協力するかということをきめかねておるという現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/73
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074・石川次夫
○石川委員 それで、ただいまの地帯整備の問題に関連して、東海地区に関して、その周辺における具体的な問題についてケース・バイ・ケースで処理する方向で検討を加えることになっているという。今のお話を聞くと、大体ケース・バイ・ケースという考え方になるだろうと思うのです。そうすると、たとえば緑地帯をどうするかという問題、これは極端にいえば人家の間引きまで考えなければならぬということも、安全基準の方向いかんによっては出てくると思う。そういう基本的な方向は地元ではちょっときめられない。従って、こういうようなケース・バイ・ケースということでなくて、一応原則的な問題をきちんと線を引いた上でなければ、ケース・バイ・ケースということにはならないのじゃないか。これは逆ではなかろうか、われわれとしてはこう考えざるを得ないわけです。原子力産業会議がいろいろ熱心にやっておることは私も承知しておりますけれども、原子力産業会議にまかせっぱなしという形ではなくて、国として原子力委員会でも一応立地基準、安全基準というもののしに立ってこういう問題が出てこなければならない。一々の具体的な問題はケース・バイ・ケースで処理するという性質の問題ではないのじゃなかろうかというふうに考えるのですが、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/74
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075・杠文吉
○杠政府委員 先ほど来の石川委員の御指摘に対しまして、兼重委員からお答え申し上げておりますように、一般的な立地基準というものはまだできかねておるということにかんがみまして、やはりケース・バイ・ケースにとらえまして、すなわち東海村、この周辺ということに限りまして問題を処理していかざるを得ないのではないか。その際に、しからば何らの基準もなしに、ただ青写真を焼くのかということでございますが、それは兼重委員もお答えになりましたように、やはり何らかの基準というものは考えておく。それは今までの炉を設置しますおりに、諸先生方がいろいろ議を重ねられまして、いろいろな角度から検討をして、これならば安全であるというようなことで許可になっておりますから、そのようなものがいろいろ積み重なって一つの経験として考えられた、それに照らしまして処理していきたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/75
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076・石川次夫
○石川委員 これもあとでまたあらためて議論したいと思うのですが、実をいいますと、原子力産業会議が非常に熱心にやっていることに対しては私も敬意を払うのです。しかし、原子力産業会議が中心になってやっているということは、あくまでも産業界の意向を強く反映していると思うのです。従って、安全基準というよりは、むしろ何とかしてこれを早く作ってというような、はやりにはやった気持の方が先に立ちまして、安全という問題がそれほど慎重に考慮されておるかどうか。もちろん慎重に考慮しておるのだろうと私は思いますけれども、産業会議が中心になってやっていることをそのままうのみにするという形は、ちょっとおかしいのじゃないか。やはり国として権威ある方向づけというものがあって、それと産業会議というものが意見を合わせるということなら話がわかるのです。産業会議が中心になって、とにかく作りたくてしょうがない、何とかしてそこに原子力施設を持っていきたいという非常に積極的な気持の人が中心になって作られた案というものは、その中には地元も参加しておるのだからよろしい、国もこれを認めているのだからということは、主客転倒じゃないかと思う。私は率直にそう感じます。もちろん非良心的にやっているとは思いません。そう考えたくはないのですけれども、しかし、いかんせん、産業会一議が中心になってこれを作るということは、安全というものが基準になって立てられた国の施策であるならばある程度われわれもこれを信頼することができますけれども、これは少し逆になっているので、国の方がいま少し作業を進めてある程度の基準というもの、原子力地帯整備についての方向づけというものをきめてかからないと、とんだことになる危険性があるのじゃないか、こう私は思うのです。この点についての三木国務大臣の御見解を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/76
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077・三木喜夫
○三木国務大臣 この原子力地帯の整備ということは、御指摘のように大きな問題でございます。これは将来は立法ということも考えなければならぬでしょうが、現在は東海村だけでございますから、ケース・バイ・ケースといっておるのは、現在は東海村というものの環境整備をやることがケース・バイ・ケースの意味だと思います。そこで、私は茨城県の知事その他県会の連中が来られたときに申したのは、やはり地元として一つ青写真を作ってみないか、それには原子力産業会議あるいは政府の力も協力して、そしてそういう青写真はわれわれも協力するわけでありますから、地力だけでやるというわけではない。そうして、まあ、そういう青写真というものができれば、その青写真に沿うて現行法のもとでどの程度まで整備できるのか、それでどうしてもこれはできぬということになれば、これはやはり新しく立法措置も講じなければならぬわけですが、現行法の中で一つできるだけやってみようじゃないか。そのことが問題を非常に具体的に、しかも迅速に解決する道ではなかろうか、ということを申し上げて、まあその当時は一その後あるいは考え方の変化があったのかもしれませんが、私がお話ししたときには、そういうことで一つやってみよう、ということでお帰りになったわけでございます。まあ、現在のところは、そういうことが問題を前進さすのに一番手っとり早い方法だと私は考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/77
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078・石川次夫
○石川委員 この問題も地元の方の意見を私は聞いておるわけではありませんが、ただ問題は、これは多分、中曽根さんが長官になったときに、原子力地帯整備をやるのだという非常に大きなアドバルーンを上げたので、われわれとしても非常に期待しておったのです。国が中心になってやるのだ、こういうむずかしい立地基準という問題もからんでいる、だけに、地力としては処理できないということで、期待しておったのであります。それがなかなか具体化してこない。そこで、業を煮やして、原子力産業会議あたりと連絡をとりながら、地元でも何とか作業をしたいという、結論としてはこういうことになったのですね。そこで、私は、結果論でありますけれども、政府の方が非常に怠慢であった、そのためにこうせざるを得なくなったのだ、こういう感じがするわけです。そのために、今後に問題が残りはせぬかということを私は非常に懸念するから、今あえてこういうことを申し上げておるわけであります。地元でも現実の問題として青写真を作るにいたしましても、これはやはり国として相当責任を持たなければならぬといういきさつを過去に持っておるわけですから、そういう過去の経緯というものを考えながら、それに対しては積極的に取り組んでもらうという姿勢であってほしいということだけを一応ここで申し上げておきたいと思います。
それから、これはちょっと話がはずれまして恐縮です。これは私個人の意見ということではないのですけれども、今度の放射線化学中央研究所ができるということに関連をして、いろいろな話を長官あたりも聞かれておると思うのです。私はちょっと確かめておきたいのです。これはおそらく原子炉がなければできないのだろうと思う。ところが、杠局長は、 これは要らない、原子炉がなくてもよろしいのだという見解を発表されたというふうに、私、ある人から漏れ聞いたわけであります。しかし、原研の菊地理事長は個人的には、原子炉というものは当然置くのだという見解を持っておったと思うのです。個人的にもそういうふうな話をしたように記憶があるのです。この点は一体どうなっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/78
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079・杠文吉
○杠政府委員 私の方では、原子力委員会の中の機構といたしまして放射線化学専門部会というものがございまして、そこの方に、放射線化学の振興策はどうしたらいいかということで、原子力委員会の方からお諮りしてあるわけであります。そこで各方、面の権威者が集まられまして、熱心な討議を重ねられた結果、放射線化学中央研究所といったようなものを設置することが振興策には一番いい方法であるというような御答申をいただきました。その御答申の中には、必ずしも炉を置くというようなことは書いてございません。そこで、現在の段階においては、その御答申をいただいた線に沿って考えていきたいということでございます。私も直接その化学関係の専門家ではございませんので、やはり各方面の権威者を集められたその専門部会の答申に従って考えていかざるを得ないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/79
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080・石川次夫
○石川委員 これは原研の理事長なんかとは意見が違うんじゃないか、その辺の見通しについては違うんじゃないかと思います。
これは実は地元の利益代表みたいな発言にとられる懸念があるのですけれども、今度の中央研究所はぜひ茨城県でほしいという非常に熱心な運動があったことは、今さら御説閲するまでもないと思うのです。そこで、もし群馬県にできると、水質汚濁の問題、中性洗剤のことについても話が出ましたが、あるいはまたメッキの化学薬品の汚水とか、水質保全というものが非常に大きな問題になる。ところで、利根川の上流にそういうものができて、それが出て流れてくるということになりますと、下流は一体どうなるかということが現実の問題としては大へんな問題です。来月の初めですか、関係府県、五県ぐらいの代表が大挙してやってくるというので、私もちょっとあわてているわけです。こういう問題が出ている。そういう点を一つ慎重に考えていただきたいと思います。茨城県はこの問題で、東海村の原研を中心として相当いろいろな苦労をしております。射爆場の問題でも、今まで大へんな努力を重ねてきているわけですが、肝心な中央研究所というものだけは持っていっちゃうということになりますと、これは県会の自民党——私の方ではありません、自民党の県会議員が一致しまして、もしこれが来ないならば、もう中央の原子力の人たちに対しては協力しない、こういうふうな結論を出したようです。私の方も、非常に激しい結論なので、ちょっと面くらっているわけですが、非常に熱心に勧誘をしているようです。とにかく水質汚濁の問題と関連しまして、これはもし原子炉を持ってきて、中央研究所が上流にあっても大した問題はないんだというような結論になるかもしれませんが、現実の問題としては、一部五県の住民は、そういうものができては大へんだ、水質保全にならないじゃないかということで、非常に強い関心を持っているということだけ申し上げておきまして、もし意見があればお伺いしたいと思いますが、私のきょうの質問は終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/80
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081・前田正男
○前田委員長 次に齋藤憲三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/81
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082・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 ただいま岡委員の御質問にも、フォールアウトの問題に対しては政府は早急に強力な対策を立てなければいかぬじゃないか、もう、少し手おくれの状態にあるのではないかというような御意見もございました。過日御提案になりました原子力委員会設置法の一部を改正する法律案、これをなるべく急速に衆参両院を通過せしめて、この法律の趣旨に基づいて、政府当局は強力なフォールアウト対策を立てていただきたいと思うのでございます。もちろんこの改正法律案には賛成でございます。一日も早くこれが実現を望むのでございますが、何らの審査を行なわずして法案の通過を見たいということは、後日非常に形が悪いと思いますので、一応簡単に御、質問申し上げまして、御提案理由にさらに深さを加えていただきたいと思うのであります。
この法律をなぜ一体改正する必要があるかということが、第一の私の疑問でございます。これはおそらく、原子力基本法で原子力の利用というものは平和に限るという大原則があるために、原子力委員会設置法では、一応こういうフォールアウト対策もできるんだということは読み得られるような体制になっておるけれども、これでは明確を欠く。だから、この際はっきりとした線を引っぱって、フォールアウトに対する厳然たる対策確立の法律根拠を作る力がよろしい、こういう意味でこの法律の改正をお出しになった、そう想像されるのであります。長官、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/82
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083・三木喜夫
○三木国務大臣 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/83
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084・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 そこで、私はお伺いいたすのでございます。この法律案提案の理由に「昨年秋のソ連による核爆発実験以来放射性降下物」に対しては、「内閣におきましても放射能対策本部を設けて」万全の措置を講じた、こう書いてあるのでございますが、どういう対策を立てて、どういうことをやって、そしてその結果五十メガトンの核爆発実験のフォールアウトはどういう調査網に引っかかって、今どういう状態を示している、という参考書がもしございましたならば、後日御提出をお願いいたしたいと思うのでございます。
それから、「原子力委員会におきましては、かねて放射能水準の総合的調査分析を進めてきており、今回の核爆発実験に対処いたしましては、調査分析の充実強化と障害防止に関する、研究の推進をはかって参ったのでありますが、」これも一つ、どういうことをやったか、あらましを、簡単な文書でけっこうですから、お出しを願いたいと思うのであります。
それから、従来内閣におきましても放射能対策本部を設けて、フォールアウトの障害に対して万全の処置を講じた、こう言っておられるのでありますが、この問題が提起されましたときに、この予算措置は一体どうするのか、こういう御質問を申し上げましたときに、予備費でやる手もあるというようなお話があったように思うのでありますが、これは予備費でおやりになったのですか。
もう一つお伺いいたしたいのは、この設置法の一部改正法律案は、この御提案の理由にもございます通り、昨年の十一月の衆議院科学技術振興対策特別委員会の附帯決議の趣旨を完全に実施しようと思ってみたところが、やはりこの法律を改正する以外に手はなかった、だからこれをやるんだという意味も多分に含まれておるように思うのでありますが、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/84
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085・三木喜夫
○三木国務大臣 やはりこの委員会の決議を尊重するためにこういう改正も必要であろうということが、一つの理由にもなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/85
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086・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 もう一つお伺いいたしておきたいのは、この一部法律改正の基本線でありますが、「放射性降下物により障害の防止に関する対策の基本に関すること」と、こうあるのでありますけれども、これは一体どういうことを意味するのでありますか。たとえば、放射性降下物による障害の防止に関する対策に関すること、こう言うと、法律改正の論拠も非常に明確になり、範囲も広くなり、強力化されるようになるのでありますけれども、「防止に関する対策の基本に関すること」と、この「基本」という字が使ってある。われわれのような法律に弱い者は非常に戸惑うのですが、これは一体どういうことを意味しておられるのですか、一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/86
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087・三木喜夫
○三木国務大臣 警戒線量的なものもきめる、これもやはり基本に関することです。あるいは非常に放射性降下物の累積が高まってきて、あるいは行政的な処置もとらなければならない。しかし、実際にやるのは各官庁がやります。そういう基本的な方針をきめる場合もある。こういうことで、実際の行政的処置はやらないけれども、こうしようという基本的な方、針はきめたい、そういうことで「基本」という、言葉を使ったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/87
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088・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 そうしますと、ここに書いた「基本」というものの内容はすでに原子力委員会で決定済みなのであるか、あるいはこれを政令か何かにゆだねて、将来これをどうきめていこうというのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/88
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089・三木喜夫
○三木国務大臣 政令にする意思はないのですけれども、今申したように、こういうことに対して各行政官庁が分かれておりますから、それに共通した基本的な方針、こういうものをきめるという意味で、これは常識的に言う基本でございまして、これをさらは政令によっていろいろ列挙していこうという考えはないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/89
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090・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 それでは、大体「基本に関すること」というその基本線について御当局のお考えもございましたならば、これも次の機会にお示しを願いたいと思います。
それから、最後にお伺いをいたしておきたいことは、「対策の基本に関すること」をも所掌することを明らかにし、関係行政機関が講じます具体的対策の基本を決定することによって放射能による障害の防止に遺憾なきを期することとし、もって国民の期待にこたえて参りたい、」こういうのでございますが、この「関係行政機関が講じます具体的対策の基本を決定することによって」ということ、これはすでにフォールアウト対策として関係行政機関が決定すべきおのおのの基本線というものはわかっておるのですか。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/90
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091・杠文吉
○杠政府委員 各省行政官庁でございますが、私が対策本部の幹事をやっておりますので、具体的にお答え申し上げます。たとえば中部太平洋において、もしもアメリカが核実験をいたしましたおりには、マグロということが直ちに問題になるわけでございます。マグロは何カウント以上あったならばどういう処置をしなくちゃならないかというようなこと、あるいは普通の貨物船等がその近くを航行する場合が考えられます。その際にはいかなる計測器を備えつけておかなければならぬか。あるいは乗組員はどのような健康管理をしなければならぬか。そういうようなことが具体的な対策でございます。それを各省が単独にやられるということは困る。やはり原子力委員会にお諮りになって、このような対策を講じたいと思うかどうかということで、原子力委員会といたしましては、先ほど来大臣からもお答え申し上げておりますように、一つの警戒線量とでも申しましょうか、そのような対策に結びつくところの線量を考えておりまして、それに照らし合わせて、この程度では不備である、もっとこのようにしなければならぬということを申し上げるというようなこと。それがここで申すところの関係行政機関が講ずるところの防止対策。それに対して原子力委員会が基本に対する処置をいたしまして、各省に対していろいろな指導をするということに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/91
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092・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 法律の一部改正案を読んでみますと、簡単に済ませればオーケー、しかしもっと深く考えますと、今度は非常な重責が原子力委員会に付託されることになるわけです。いやしくも五十メガトンの核爆発実験が行なわれ、さらにクリスマス島においてアメリカが核爆発実験を行なう、そのフォールアウトというものが日本の全国土をおおうような事態がもし発生いたしますと、国民生活のあらゆる問題にこれが関連を持つことになるわけであります。今お話しのように、マグロがどうしたとか、船がどうしたとかいう、そんな簡単なもので各関係官庁の問題が済めばいいのですけれども、全国民の朝から晩まで一瞬も休まざる生活環境に、おそらく大きな影響が及ぶものと思います。われわれがこの委員会において附帯決議をもちまして、原子力委員会が中心となってフォールアウト対策を確立しなければならないというのは、今原子力局長が言われたような、そんなちっぽけな簡単な構想をもって附帯決議をつけておるのではない。これだけは、はっきり間違いのないように考えていただかなければならぬ。それでありますから、今私お伺いいたしたのでございますが、これは全部の問題に及んでいくのじゃないかと思います。ですから、このフォールアウト対策を原子力委員会が中心となって立てていくということは、非常に大きな作業を急速にやらなければならぬということに私は結論づけられると思います。でありますから、あまり簡単に、ものは一から十まであるので、二をやってもいいし、三をやってもいいしということじゃなく、この際日本の原子力界の総力を結集して、原子力委員会を中心として、将来起きるであろうところの障害というものを完全に除歯するにはどういう体制を確立しなければならぬか、それを根本から積み上げて、そして今度その実行にはさらに膨大な予算を獲得しなければならぬということになると私は思います。時間もありませんから簡単に御質問申し上げますが、これを実行する上においての予備費というものは、原子力委員会が中心となって基本線をきめる。その基本線によって、各官庁が所掌事務をやらなければいかぬ。そうすると、各官庁がフォールアウトに対してやらなければならないところの事柄について、予備費というものは原子力委員会の考え方によって科学技術庁がこれを一括してとって分配するという形になるのか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/92
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093・三木喜夫
○三木国務大臣 不測の事態が起これば予備費を要求して、そして予算は各行政官庁につくわけであります。その予算折衝に当たるのは科学技術庁が当たるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/93
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094・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 不測の事態が起きなければいいわけですが、とにかくフォールアウトというものに対して対策を各官庁が立てるということも、昭和三十七年度の予算ではだめなんじゃないか。ところが、核爆発実験というものはすでに行なわれたし、さらに四月に行なわれるかもしれない。これに対するところの対策を立てるにも金が要るだろうし、また、ほんとうに不測の災害が起きました場合においては、これは相当大きな金を必要とするのではないかと思うのです。ですから、今度クリスマス島でさらに核爆発実験が行なわれるということに対して、どういう予算措置を講じて体制を整えられるか、それを一つと、不測の災害が起きたときに、それはやはり予備費を科学技術庁が一本でとって、そして適当にこれを配分するという形をとられるのか、これを一つお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/94
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095・杠文吉
○杠政府委員 ただいま大臣からお答えになりましたものに補足いたしまして御説明申し上げます。あわせてただいまの御質問にお答えを申し上げたいと思います。先ほどの不測の事態におけるところの予備費の要求官庁はそれぞれの各省でございます。ところが、それに対しまして、原子力委員会におきましても基本に関することをいたしますし、科学技術庁におきましても原子力局は、ただいま設置法の御審議を願っておりますが、対策事務の総合調整をやるということになっておりますから、自分のことのようにして協力して予算をとることに事たることはもちろんでございます。
それから、クリスマス鳥における実験を予測していかなる予算措置をするかという御質問に対しましては、ただいまのところはいろいろ想定をいたしておりまして、その、実験の方法がどのようなものであるかというようなことを考えながら、先ほど岡委員から御質問がありましたおりにもお答え申し上げたわけでございますが、対策本部における顧問の方々の御意見も承って、一応その具体策について内定をしておきたい、それによりましていろいろ予算のはじき出し方もあるだろうと思います。これはその時期が間もなく参りますが、四月の初めと考えておりますが、それまで予算の具体的な措置については御猶予を願いたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/95
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096・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 先ほどお願いいたしました資料の御提出をなるべく早くおまとめを願うことにいたしまして、私はこの設置法の一部改正法律案に対する質問をこれで終わります。
ただ最後に、これは本問題に関係ございませんが、念のために伺っておきたいことは、原子力平和利用の推進ということが今総合エネルギー対策の一環として各方面からだいぶ論ぜられるようになって参りまして、原子力発電に関する長期計画に対してもいろいろな批判が加わってきておるのであります。それはそれといたしまして、またの機会に御所見を承りますが、日本の現状から考えて将来の原子力エネルギーというものを見ますときに、日本の現状においてはなかなか本格的な日本固有の原子力エネルギーというものを把握するということが非常にむずかしいのじゃないかと私は思う。というのは、領土狭隘でありますから、燃料のウラニウム原鉱石を調査しても、そう大してこれは把握できないのじゃないか、こう思うのであります。こういう原子力エネルギー対策として、それの原動力となる原料に対して、長官は将来どういうことをやったら一番適切であるというふうにお考えになっておりますか。たとえば、今までは地質調査所と原子燃料公社がエア・ボーンとかカー・ボーンとかいうものによって国内を回って歩いて、そこで見つけたところは人形峠を中心としていろいろなところでやっておるが、こんなものは採算をはじいてみるとばっちりしたもので、とても日本の原子力エネルギーの根源として国家安全の建前からこれに依存するということはむずかしいわけです。そこで、こういうままでほうっていく間に、世界各国は将来の原子力エネルギーという建前から、世界名地にある燃料というものをみんな自国の手に押えていってしまう。これを傍観して放置しておけば、日本は日本国内においてのみこれを求めるという道しか残されていない。この点私は原子力政策として非常に手おくれだと思っておるのでありますが、この点に対して長官はどう考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/96
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097・三木喜夫
○三木国務大臣 やはりウラン鉱は、お話のようにこれはできるだけ国産の資源を使うことが好ましいと思います。探鉱などもやるべきだと思いますが、これは限度がある。どうしても燃料を輸入せざるを得ない。ただしかし、今齋藤委員の御指摘になったように、各国が燃料を確保してあまりよそへ出さないのではないかというのは、少々事情が違っておるように思います。日本に買ってくれないかという申し込みも、たとえば南アのごとき非常に熱心な勧誘を受けておるし、またアメリカ等においてもこれは民間に移そうかということもあって、燃料というものを国家的に独占して、輸入燃料による国は原子力産業は行き詰まるのではないかというふうに、そういう杞憂を持っては考えてない。やはりそれは燃料は輸入し得るという前提で原子力の開発をやっていきたい。また、そう情勢が、これを独占して輸出をしないというような国際情勢にはなってこないだろうという見通しのもとに、原子力開発をやっていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/97
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098・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 これは今長官からお話を伺って、私の原子力エネルギーに関する考え方と根本的に相当食い違いがある。これをやると晩めしも食えなくなりますからやめますが、私はそういうふうに考えてないのです。これは原子力というのは、今こそ遅々たる段階をたどっていますけれども、将来はもう石油がエネルギー源とか、天然ガスがエネルギー源であるということではなくなって、原子力が唯一のエネルギーとなって、あと石油とか石炭とか天然ガスというものはみんな、いわゆる化学製品の原料に置きかえられるところの運命にあるのではないか。ですから、原子力エネルギーというものが石油、天然ガスあるいはその他のエネルギー源よりも当然安くなる運命にあるのですから、安くなったが最後、とにかく原子力エネルギーを——ウラニウムを売りに来たとかイエロ・ケーキを売りに来ているというのは、そんなことは、永久のエネルギー対策から見れば瞬間的な現象だとも考えられるのではないか、私はこう思うのです。きょうは結論のために伺っておきますが、今のお話によると、そういう将来というものを考えますと、今外国から売りに来ているが、一生懸命になって買ってためろというのですか。そうではなく、将来の大きなエネルギー源というものに対しては、友好関係にある東南アジアなら東南アジア諸国の原鉱石というものを目当てに、日本の相手方の後進地域と協力して、原鉱石の調査をやって、そうしてそこに将来のエネルギー源というものを確保するという体制にいくのか、買うのか、あるいは将来に備えて海外にもエネルギー源の調査をやるというのか。そういう根本的な考え方においてどういうふうに所信をお持ちかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/98
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099・三木喜夫
○三木国務大臣 それはもちろん原子力に対しても無限ではないと思います。だから、また次にエネルギー源というものが出て参りましょう。だから、ある期間のものであるということは、そういうふうに考えておるわけでございますから、これが世界的にも一番安いエネルギーということになれば、燃料の国際事情というものが今日とは違ってくると思います。そういう意味において、現在東南アジア等において日本が開発に協力して、将来の燃料確保の方法をとるということは、それは必要な一面だと考えるわけであります。そればかりではいかぬです。やはりほかからも輸入しなければならぬが、そういう一つの長期的な見通しを立てて、いろいろ今から対策を講じておくということは賢明なことだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/99
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100・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員 私なぜこういうことを申し上げているかと申しますと、今国会においては石油業法をめぐって、石油というものの将来はいかにあるべきかということが大問題になっている。一方石炭鉱山の運命というものも、貿易自由化にさらされて将来いかにあるべきかという問題にもなっている。そういう立場から考えますと、この原子力エネルギーという世界がもっと広く開けて参りますと、同じ立場に日本というものがまた立たなければならないということを私はおそれるわけであります。でありますから、私たちが東南アジア原子力全体会議を早く開催してくれという要求はそういうところにポイントがあるのであって、道に向こうから人を連れてきて、こっちと話し合いをして、お茶を飲んでさよならというものではない。そういう原子力体制の将来というものを考えていくと、他国よりも早く日本は東南アジア諸国と原子力関係を緊密に提携をしなければいけない。そういう考え方で、私たちは東南アジア原子力全体会議というものを開いてもらいたいということを言っておるのであります。先ほどの長官の御説明によりますと、それは来年の二月か三月に開くのだ、そんな悠長な——今はマッハの時代です。一マッハの飛行機で羽田を出発すれば、サンフランシスコには八時間で着いてしまう。その時代に、予算はとっておるのに東南アジアの原子力全体会議は来年の二月——来年といったら鬼は笑うのです。これは原子力局の重大な怠慢だと思う。やればもっと早くやれる。なぜそんな遅疑俊巡したことをやるのですか。だから、この間も僕はここで質問したのだ。三木長官は前へ前へと号令かけても、みんなうしろを向いて進むような体制ではだめなんだ。なぜ一体、瞬時も早くアジア原子力全体会議を開かないか。私はそんなばかなことはないと思う。やればやれる。あした羽田を出発して、各国を回ってその了解を求めて、この六月とか七月とかに開くと言ったら、開けるわけでしょう。なぜ一体来年の二月、三月までそういう会議を延ばす現出があるか。一体そんなにむずかしいのですか。私はもっと早めてもらいたいと思いますが、長官、一体どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/100
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101・三木喜夫
○三木国務大臣 私も事務当局の説明を聞いたわけでございますが、これはその時期にはいろいろな理由があったのです。できれば、今年できる限り早く開くということも必要でありましょうから、時期についてはよく検討いたすことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/101
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102・前田正男
○前田委員長 本日はこの程度とし、次会は公報をもってお知らせいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104003913X01719620328/102
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