1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年四月二十五日(水曜日)
午前十一時三分開議
出席委員
委員長 二階堂 進君
理事 田村 元君 理事 石川 次夫君
理事 中島 巖君 理事 山中日露史君
逢澤 寛君 井原 岸高君
大倉 三郎君 大沢 雄一君
木村 公平君 徳安 實藏君
前田 義雄君 山口 好一君
岡本 隆一君 小林 信一君
兒玉 末男君 佐野 憲治君
山中 吾郎君 田中幾三郎君
出席国務大臣
国 務 大 臣 中村 梅吉君
出席政府委員
総理府事務官
(首都圏整備委
員会事務局長) 水野 岑君
文部事務官
(管理局長) 杉江 清君
建設事務官
(都市局長) 前田 光嘉君
委員外の出席者
参 考 人
(成蹊大学教
授) 佐藤 功君
参 考 人
(一橋大学教
授) 田上 穰治君
専 門 員 山口 乾治君
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四月二十四日
委員田中幾三郎君辞任につき、その補欠として
片山哲君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員片山哲君辞任につき、その補欠として田中
幾三郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十五日
委員丹羽喬四郎君、日野吉夫君及び山田長司君
辞任につき、その補欠として大沢雄一君、山中
吾郎君及び兒玉末男君が議長の指名で委員に選
任された。
同日
委員山中吾郎君辞任につき、その補欠として小
林信一君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員小林信一君辞任につき、その補欠として日
野吉夫君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
首都圏の既成市街地における工業等の制限に関
する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第
一四八号)(予)
首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する
法律案(内閣提出第一四九号)(予)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/0
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001・二階堂進
○二階堂委員長 これより会議を開きます。
予備審査のため本委員会に付託になっております首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する法律案を議題とし、まず本案に対する趣旨の説明を聴取いたします。中村建設大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/1
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002・中村梅吉
○中村国務大臣 ただいま議題になりました首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその要旨を御説明申し上げます。
首都への産業と人口の過度集中を防止し、首都の機能を十分に発揮せしめるよう諸般の施策を強力に講じますことは、現下喫緊の要務であることは申すまでもないところであります。このため、人口増加の原因となる施設の新増設の制限措置をさらに強化することとし、さきに御説明申し上げましたように、本国会に首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律の改正案を提出いたしたのであります。
首都の過大都市化を防止し、首都圏の秩序ある発展をはかりますためには、一方ではこのような制限措置を強化する反面におきまして、他方、これを受け入れる市街地開発区域すなわち工業衛星都市の育成発展につきましても、積極的な施策を講じる必要があるのであります。
このため、首都圏市街地開発区域整備法に基づきまして、現在まですでに十六地区において工業衛星都市の建設に着手し、これらの地区においては、都県の加入する一部事務組合または日本住宅公団等において工業団地の造成を実施いたしている現状であります。
この市街地開発区域の育成発展は、工業団地の造成が適正にかつ円滑に進むかいなかにかかっているのでありますが、現行の市街地開発区域整備法におきましては、工業団地の造成に関する規定が不十分でありますので、これが団地造成につきまして、適正かつ円滑な実施を確保いたしますための規定を設け、市街地開発区域の育成発展を強力に推進する必要があるのであります。これがこの法律案を提案する理由でありますが、次に、その要旨を申し上げます。
まず第一は、この工業団地造成事業の実施の方法についてであります。
すなわち、工業団地造成事業は、市街地開発区域に関する整備計画に基づいて行なわれるのでありますが、これを実施するにあたりましては、一定の条件に該当する土地の区域について、工業団地造成事業を施行すべきことを、都市計画法の定める手続によって、都市計画として決定することができることといたしたのであります。
第二に、工業団地造成事業は都市計画事業として施行することとし、その施行者は都県、もしくは都県の加入する一部事務組合または日本住宅公団といたしております。
第三は、工業団地造成事業の円滑な施行を確保するため測量及び調査のための土地の立ち入り、障害物の伐除等の権限付与並びに建築行為等の制限の措置を講ずることといたしております。
第四は、工業団地造成事業のための土地等の収用でありますが、施行者は工業団地造成事業の施行のため必要がある場合においては、工業団地造成事業を施行すべき区域内の土地等につき、これを収用することができることといたしたのであります。この収用につきましては、特別の規定を除き、土地収用法の規定を適用することといたしております。
第五は、造成敷地等の処分管理計画でありますが、施行者は、工業団地造成事業による造成敷地等の処分及び管理に関する計画を定めて、首都圏整備委員会に提出しなければならないことといたしております。
なお、首都圏整備委員会は、この処分管理計画の提出を受けた場合におきまして、関係行政機関の長の意見を聞いて必要な変更を求めることができることといたしております。
第六は、製造工場等の敷地の譲受人の公募及び選考方法についてであります。
施行者は工業団地造成事業により造成された製造工場等の敷地につきまして、その譲受人を公募することとし、また施行者が譲受人を決定する場合におきましては、工業等の制限に関する法律にする工業制限区域から工場を分散するものを優先して選考する等選考にあたっての優先順位の規定を設けたのであります。
第七は、譲受人の義務に関する規定であります。
施行者から造成工場敷地を譲り受けた者は、製造工場等の建設計画を定めて施行者の承認を受け、この計画に従って建設すべきこととしております。
また、一定期間は譲り受けた造成工場敷地の譲渡または賃貸等につきましては施行者等の承認を受けしめることとし、造成工場敷地の適正な使用を確保することといたしたのであります。
最後に、租税特別措置法の一部を改正して、土地提供者等の譲渡所得等に対する所得税または法人税の軽減措置を工業団地造成事業のための収用の場合にも認めることの規定を設けたのであります。
以上がこの法律案の提案の理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/2
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003・二階堂進
○二階堂委員長 以上で本案に対する趣旨の説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/3
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004・二階堂進
○二階堂委員長 この際、同じく予備審査のため本委員会に付託になり、すでに趣旨説明を聴取いたしました首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律の一部を改正する法律案もあわせて議題といたします。
なお、この際お諮りいたしますが、両案審査のため特に成績大学教授佐藤功君及び一橋大学教授田上穰治君の両君に参考人として御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/4
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005・二階堂進
○二階堂委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
この際、両参考人の方に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は御多忙中にもかかわらず、わざわざ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございました。両案に対し忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。ただ、時間の都合もありますので、最初に御意見をお述べ願います時間は、お一人大体十五分程度にお願いし、後刻委員からの質疑もあろうかと存じますが、そのとき十分お答え下さるようにお願いをいたします。
それでは、はなはだ勝手ながら御発言の順序は委員長に御一任願うこととし、佐藤参考人よりお願いいたしたいと存じます。佐藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/5
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006・佐藤功
○佐藤参考人 二つの法律案が議題になっておるわけでございますが、これはもう御承知の通り両方関連をいたしまして、いわばワン・セットをなしているものであると思います。その二つの法律案の中で、特に重要であり、また憲法上、法律上の問題があると考えられますのは、首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する法律案の方でございますので、そちらに重点を置いて意見を述べさせていただきたいと思います。
そこで問題は、一つは政策的な問題と申しますか、結局狭い国土の中で人口が激増しておる、そこで産業立地計画あるいは土地利用計画、産業政策というようなことを考えなければならないという問題、この二つの法律案もそれを目的にするものであるわけでありますが、そのためにどういう措置が必要であるか、またこの二つの法律案の対策で有効であるかどうかという問題、これは政策問題であります。
私どもが意見を求められましたのはむしろ法律、憲法問題であろうと思いますが、これは憲法で申しますと二十九条の問題になり、土地収用法の問題に中心があると思います。そして、その際にはこの開発整備法の改正法案によって、工業団地を育成、造成する場合に、施行者に土地収用法に基づく収用権を与えるということが、憲法にいう公共の福祉あるいは私有財産を公共のために用いるということに該当するかどうかという問題が中心であろうと思います。その点についてごく簡単に幾つかに分けて意見を述べたいと思います。
第一は、公共の福祉という問題ですが、これはあらためて申し上げるまでもなく、基本的人権と公共の福祉との関係という問題がいろいろな形で出ておることは御承知の通りでございます。その際に私ども学説の方で申しますと、言論の自由とかそういう精神的な自由権に対しては、公共の福祉というものもできる限り狭く認めるべきである。ところがそれに対して経済的な自由権と言われるような財産権などに対しては、公共の福祉による制限というものをむしろ広く認めても差しつかえないという考え方があると思います。それは結局社会福祉国家の思想とでも申すものでございましょう。そして、それが結局は国民の生活、厚生あるいは社会経済の安定とか発展とか生産力の増進とかというようなことが公共の福祉である。それのためには個人の財産権が制限されることは広く認められていいということになろうと思います。今度の法律案も根本的にはそういう目的を持つものであり、首都圏を整備する、あるいは人口の過度集中を防止するというようなことも、今あげましたような公共の福祉に合致するものであると考えられると思います。
そこで、法律としては都市計画法が問題になるわけですが、この都市計画法につきまして、都市計画の施行によって住居の移転を命じた処分に対して、それは不当であるということで争った事件が幾つかございます。その際に、これは下級裁判所の判決でありますけれども、都市計画というものは公共の福祉のために行なわれるものであるということを判示しました判決がございます。これは数が少ないのですけれども、これは都市計画が違憲だとか違法であるとかいうことを争うようなケースがむしろない、つまり都市計画が公共の福祉のために行なわれるものであるということはむしろ当然のことで、それが争われることはあまりないということを意味するものではないかと思います。今度の場合も、都市計画法につきましては同様に考えるべきだと思います。
二番目の問題が憲法二十九条三項におきまする「公共のために用ひることができる。」という、その「公共のために用ひる」という言葉の意味でございます。これは今度の場合でありますと、先ほど提案理由の説明にもございましたように、施行者が工業団地を造成いたしまして、首都圏から分散してきた企業その他のものをそこに入れるということになるわけでありますが、それによって現実の利益を得ますのは、そういう企業者であるわけであります。それが公共のために用いるということになるのかどうかということが一つの解釈問題であろうと思います。
ただこの点につきましては御承知かと存じますけれども、例の有名な自作農創設特別措置法、つまり農地改革のときの最高裁判所の判例がございます。農地改革の場合にも利益を直接受けますのは小作人である。それを公共のため、あるいは公共の福祉ということが言えるかどうかということが問題になりました。しかし、これは判決そのものあるいは上告論旨などにはそういうことは出ておらないのでありますが、裁判官の補足意見のところで、その点について二つの意見が出ておったわけでございます。片一方の意見は、利益は個々の小作人が受けるのであるから、公共のために用いるということにはならないという主張でありましたが、片一方の意見は、現実に利益を受けるのは個々の小作人であっても、農地制度を民主化するという点は公共の目的である。従って、それを公共のために用いるというふうに言ってもいい、考えてもいいという意見であったわけです。このたびの整備法の改正法案の場合にも同様に考えていいのではないかと思います。つまり工場敷地などの譲受人の利益ではありますけれども、しかし先ほど申しましたような意味で、それはやはり公共の利益であり、公共のために用いることになると言えるのではないかと思います。この点は二十六年の土地収用法の改正で、住宅公団が住宅団地のために収用権を与えられた場合と同じように考えてよろしいのではないかと思います。要するに土地収用法で収用権を与えられるのは、教科書などで申しますと、公益事業を行なうためのもの、すなわちその事業の公共性のために収用権を与えられるということであるわけでありますけれども、今度の二つの法律案が目標にしております首都圏の整備とか人口の過度集中の防止とかいうことは、それはいわば新しい意味での公益事業、新しい意味での公共性ということであろうと思うわけでございます。
それから第三の点でありますが、これは二番目の、公共の福祉あるいは公共の用というのに、公共のために用いるということと関連をするわけであります。つまりこの二つの法律案による、土地収用によります工業団地の造成とそれの譲り渡しという、それについていかにして先ほど申しました公共性を確保するか、それのためにどういう用意がこの法律案にあるかということが問題であろうと思います。簡単に申しますと、つまりせっかく収用権を行使しまして、そして農地の所有者などからその土地を収用して、そして工業団地を作ってはみましたけれども、そこにはペンペン草がいつまでもはえているというようなことになってはならないし、もしそういうことがあれば、それは公共性を確保する方法に欠けていると言わざるを得ないのではないかと思います。あるいはペンペン草がはえませんでしても、その造成された工業団地に必ずしも必要のない企業が入ってくるということでありますならば、それはやはり公共性を欠くということになるのではないかと思います。そこで特にその点の用意が今度の法律案では、第二十三条で慎重に考慮されているように私は考えます。つまり第二十三条は、譲受人を選考いたします際に、優先順位を定めた規定でありますが、これはごらんになりましてもすぐおわかりになりますように、工業制限法によって締め出されたというと言葉が悪うございますが、分散せざるを得なくなった企業、それを優先的に今度の造成された工業団地に入らせる、それを考慮して決定をするということを書いたのが、この第二十三条でございます。この点の用意がなされている点が、私は重要な点だと思います。つまり、もしこういう用意がなされておりませんならば、整備法の目的に反するような結果にもなりかねない。それはひいては公共のためにもならないし、公益の、公共の福祉にもならないということにもなるおそれがあると思うのでありますけれども、こういう優先順位を定めまして、首都圏から締め出されたものを、ここに優先的に入れるということが用意されております点で、公共の用、公共のために収用権を与えるということの理由づけが十分になっているのではないかと思うのでございます。
要するに憲法問題について申しますならば、この法律は、憲法に違反するということは言えせまん。憲法違反とすべき理由はないように思います。そしてまたこの法律の目標とするところは、これは新しい意味での公益事業というものを増進するという点で、意味がある法律案であるというふうに考えます。ただ、これは私はしろうとでございますけれども、つまりこの場合は、首都圏のみについての法律であるわけでありますけれども、この問題は結局全国的な問題を含んでおる。ほかの大都市圏の過大化の防止あるいは国家全体の産業立地計画というものが、将来の問題に残っていると思います。この二つの法律案は、まず首都圏化についてそれをやるということであろうと思うのでありますけれども、そういう将来なお問題があるということを意識しながら、私はこの二つの法律案は支持すべきものである。また憲法問題としては、憲法違反とは言うべきものではないというふうに考えるわけでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/6
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007・二階堂進
○二階堂委員長 次に田上参考人からお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/7
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008・田上穰治
○田上参考人 二つの法律案につきまして、ただいま佐藤参考人から言われましたことに、原則的に私も同じ考えを持っております。そして特に問題は、ただいまも佐藤参考人から言われましたが、この市街地開発区域につきましての土地収用を認めようとする点が、おそらく御議論になると思うのでございます。
これにつきまして、簡単に考えておりますることを申し上げますと、第一はこの憲法の二十九条第三項で土地収用の根拠が与えられているわけでございますが、これについては、私有財産制度と、そして他方において公共の福祉というか、公益の必要、これをどのように調和するかということが憲法の議論になるわけでございます。この点で、ただいまも佐藤参考人から言われましたように、今のわれわれの憲法は、単純な個人主義、自由主義的な憲法ではないのでございまして、これは二十世紀の外国の憲法にも共通なところでございますが、経済生活については、相当大幅な国による介入というかあるいは規制を加える余地を認めているものでございます。これは世界の——ソ連圏の諸国においては無論でございますが、西ヨーロッパ、英米側のブロックにおきましても同様でございまして、わが憲法では、たとえば三十一条で「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」という有名な規定がございますが、これなどは、大体合衆国憲法に模範があるといわれるのでありまするけれども、合衆国憲法の方では、生命、自由または財産を、法律の定める正当な手続によらなければ奪われない、こういう条文でございまして、はっきりそこに違いがある。つまりアメリカのような十八世紀、十九世紀の憲法においては、生命、自由に並んで財産もみだりに奪われない。生命を奪われないと同じような意味で財産を侵すことも、憲法で厳重に国家権力を押えているわけでございます。ところが二十世紀になると、財産というか、広く言って経済生活については相当大幅な規制を憲法は認めるのでありまして、これはアメリカにおいても明文の規定はありませんが、判例によってそういうように解釈が変わってきておる。日本の憲法は意識的に三十一条で生命、自由を奪われないということは書いてありますけれども、財産を奪われないということは二十九条にはありますが、三十一条には入っていない。この点は合衆国の十八世紀、十九世紀の憲法と非常に違うところでありまして、実はこれは日本だけではなくて、今日の二十世紀の憲法に大体共通な性格を現わしていると思うのであります。
そして先ほども農地改革、自創法などにつきまして、ちょっと佐藤参考人から触れられましたが、私どももこの農地改革、農地の買収などにつきましては、きわめてこういった問題の特色をよく現わしておると思うのでありまして、一体ああいう大規模な農地の改革、特に補償につきまして、今日国会でも議論になっておりまするが、正当な補償であるかどうか相当疑問があると思います。少なくとも十八世紀、十九世紀的な個人主義的な考えでありますと、どうもわれわれは正当な補償と言いがたい。けれども二十世紀の憲法になると、かなり見方が違ってくるのでございまして、結論的には私はあの自創法による農地の買収は合憲であるという考えをとっているのでありますが、しかし、これはやはり今日の憲法が国民の経済生活あるいは財産権について相当きびしい制限を認める余地があるということを前提にするものでございます。
そこで今回の首都圏市街地開発区域整備法の一部改正についての土地収用を簡単に申し上げますと、これは先ほど大臣からも提案理由の説明をなさいましたが、過大都市の解決ということに根本があると思うのでございます。今日人口なり産業が、わが国におきまして、特に大都市に集中する傾向がある。これはもうきわめて顕著でございまするし、また国会、政府においても、必ずしもこの首都圏の問題だけでなくて、全国的に、たとえば北九州の五都市であるとか、あるいは阪神地域であるとか、中京の名古屋地方でありますとか、そういったところに人口が急速に集まっている。これをどのように処理するか。すでに、これはそういった他の首都圏以外の地域においても問題がある。そして、これはひとり建設省だけでなくて、自治省の関係でも、あるいは通産あるいは経済企画庁とか、いろいろな方面におきまして、たとえば地方の基幹都市の構想であるとか、いろいろ広域的な行政、特に地方開発と申しますか、そういう問題はきわめて緊急を要するものと考えられているのであります。その中で最も極端なのが、東京を中心とする、つまり首都圏における過大都市の問題でございまして、これが今回改正法案として提出されておりまする工業規制法と、そしてこの市街地開発区域の整備法の共通する点でございます。でありまするから、一つの考え方は、区画整理のようなあるいは都市計画法によって従来からありました地帯収用のような道路あるいは排水溝などの施設を整備するだめに、付近の土地をあわせて収用するというような考え方は従来もございました。またそのような方法である程度工業都市を作るということも不可能ではないと思いますが、しかしそういった問題、そういった観点ではただ土地の形状、形質を変えるということあるいは道路の施設などについての問題でありますると解決がつくと思うのでありますが、そうではなくして、今回の法案におきましては、工業あるいは学校関係でございますか、そういうような、あわせて人口の分散、適正配置というようなところに大きな眼目がございまするから、ここにどうしても新しい特別な土地収用というものが必要になってくるのではないかと思うのでございます。ただこの点で議論になりますのは、はたして、たとえば高崎であるとかあるいは相模原であるとかいうふうな特定の区域へ、東京の相当の工業なりあるいは学校なりをどうしても移転しなければならないのか、ほかになお、たとえば関東地方の首都圏整備の区域におきましても、まだかわりの土地があるのではないかというような疑問あるいは先ほども指摘せられましたが、せっかくある市街地開発区域におきまして、土地を整備し、工場の誘致ができるようにしても、はたしてそこへ希望通り、計画通りに工場がこない場合はどうかというふうな問題がございます。この点が、御承知のようにたとえば東海道の新幹線あるいは名神高速道路のような、そういう特定の事業、しかもそれがかなり具体的に特定の土地が必要である、そういう場合に収用するというのとかなり違っているわけでございまして、はっきり申しますると、大宮、浦和でなければ工場を持っていくことができないのか、あるいはこれをもう少し場所をかえて、水戸の方はどうかとか、ほかの地域はどうかというふうなことを考えると、どうもそういった点が相対的であって、ある特定の地域がぜひ必要であるという結論にちょっとならない。そういうところが普通の土地収用の場合とだいぶ違うという感じがいたしまするし、またそういった地域につきまして、施設を整備いたしましても、そこにはたして希望通りそういう工場がくるかどうかという点の問題がございます。ただこれにつきましては、これも先ほど指摘せられましたが、現行の土地収用法の第三条三十号におきまして、一団地の住宅経営の事業、地方公共団体でありまするとか、住宅公団による住宅の団地を作る、そうしてその場合には、むろん土地だけではなくて、住宅を建設いたしまして、これを希望者に貸すあるいは譲り渡すという事業でございます。これが新しく現行法では土地収用のできる事業に加わったのでございます。これは従来の古い考えの土地収用とは違うのでございまして、たまたまそこに入る人数は相当多いとしましても、そのために従来の地主から土地を強制的に取り上げるだけの公益性があるかどうかということで疑問があるのでございます。しかし、私はどうもこういう住宅公団の住宅団地を取得するための収用、それからまた今回の法案にございます工業団地造成事業のためにする収用とかなり共通しているのでございますが、この場合に、実際収用の結果、収用して造成されました土地に、あるいは住宅に入ってくる利用者、これは必ずしもそんなに多い数ではない、だからはたしてそれが、国民一般の公共の利益を現わすものかどうか多少の疑問はございます。しかし私は、たまたまそこに入ってくる人の利益だけでなくて、むしろそういった利益は、いわば法の反射的な効果にすぎないのであって、結局この法律のおもな直接のねらいは過大都市の問題、これをどういうふうに合理的に解決するかということにあるのであって、その結果としてたまたま利益を受ける者、それは必ずしも多いものでないかもわかりませんが、しかし、全体として大局的に見ますると首都圏における過大都市の問題を解決する、特に東京の極端な膨張、これから生ずる弊害をどうするか、これは日本の国全体から見てきわめて重大な、しかも急を要する問題でございまするが、それを解決するために必要なあるいはやむを得ない措置であるということになりますと、結果的にたまたまある区域においては比較的少数のものが救済されるというようなことになるかもわかりませんけれども、それは各地域あるいは計画全体としてその相互には不可分の関係があるのでございまして、そういう意味におきまして私は住宅の場合に、これも今日日本全体として住宅難を解決することは重大な政治問題でございます。だから、たまたまある団地において、そこに住むことができる人はそれほど多くなかったとしても、それはただ結果として、間接の効果でありまして、直接には住宅問題を解決するという大きな政治目標というか、公共性があるわけでございますから、これをもって憲法二十九条の公共のためでないということはできない。住宅が容易に手に入る、あるいは工業用地が比較的容易にそれぞれ工場の経営者の希望通りに手に入るような時代でありますると、わざわざ土地収用をかけるということは、これは憲法の精神に合わない。しかし日本で非常に土地が限られており、特に都市に過度に集中している工場、学校などの状況を考えますと、これははきわめて急を要する。特に首都圏においてはその点公共性が明白であると思うのでございます。そして先ほど言われましたが、この法案の一つの大きな眼目というか、特色は、開発区域の整備法の二十三条でございます。優先順位。造成された土地につきましてこれを処分しあるいは管理する計画についてでありまするが、処分するにあたって優先順位の規定がございまして、これを見ますると、一方で市街地における工場あるいは学校を規制する、これの建設を極度に制限する、そのことと不可分の関係にあることが明瞭でございます。そういう意味において、私はこの開発の区域の整備法の改正法案は、結局もう一つの工業規制法と同じ目的を持っておるものであって、過大都市の対策というきわめて重大な公益性がある。だからその意味において憲法二十九条における公共のための措置と、財産権の、土地所有権の制限ということが言えると思うのでございます。
なおもう一つつけ加えますると、これを実現する方法といたしまして、都市計画事業という形をとっておる点でございます。工業団地の造成事業につきまして、その根本は御承知のように首都圏整備法による市街地開発区域というものが決定され、さらにその市街地開発区域の整備計画、事業計画がきまっておるのでございますが、さらに具体的に工業団地の造成事業につきましては、またこれが都市計画としてその事業計画を実施する場合にも、都市計画事業の形で行なうという点でございます。そういうふうな総合的な計画によって事業を行なうということは、これまた最近の世界の趨勢でございます。こういった行政を行なうにあたっての大規模な総合的な計画を立てるということは、これは最近特に注目されてよかろうかと思うのでございます。学界におきましても、行政法の制度といたしまして、計画、プランというものの価値が最近特に注目されているのでございます。従来でありますと、行政は法律によって行なわれるという法治主義、法律の支配ということがいわれておりますが、抽象的な一般的な法規によって行政が行なわれることにかえて、最近においてはこのような総合的な計画によって行政を行なう、これがどう違うかというのはもう御承知かと思いますが、計画の方であると平等の原則に抵触するおそれがないとはいえないのであります。法規の方でありますと、たとえば今の土地の問題であれば、その地方における各地主の所有権にいわば内在する制限というものが法律によって一般的に課せられている。だから、大体それは平等でありまして、制限を受ける地主にとっては、相互の間で公平平等という感じがするのでございます。ところが計画の方の特色は、たとえば今回の場合では、入ってくるあるいは将来そこの工業団地におきまして工場を建設する者にとっては有利であり、従来農地その他の土地を持っておってこれを収用される者にとりましては不利益である。だから、必ずしも国民の権利が平等に扱われない。そこに計画——計画はむろん公共性を持たなければなりませんが、なおそこに財産権の保障に抵触するおそれがあるのでございます。これは正当な補償によって解決をする。法律による規制の方であれば多くの場合に比較的補償を伴いません。これは憲法でも二十九条第二項の方に主としてよるものでありますが、第三項の方でありますと補償が要る。けれどもこの計画につきましてはそういった違いはありますが、一般に関係者の意見を十分に聞き、また政府の内部におきましても関係の責任を明確にし、また国会の規制のもとに計画が立てられるということになれば、これが一般でございますが、そういう場合であれば、財産権の制限を一応公共のために行なうのであって、憲法には反しないという考えでございます。計画によるこういった措置は、先ほども佐藤さんから言われましたように、司法権によるコントロール、監督が十分にいかないということがございます。一つは従来の都市区画整理でありますとか、あるいはもっと古く耕地整理などについても議論がございましたが、実際に法律が訴訟を許さないという時代がありましたし、認めても実際に裁判で必ず争った方が負けになる、従来の地主が負けになるというのがこれまでの判例あるいは制度でございまして、こういう点は実を申しますと、技術的にある程度やむを得ないことがあると思います。つまり総合的な計画でありますから、部分的に争いましてもそこだけで済まない。もしその計画の内容を変更しようとすれば、全体に影響するわけでありまして、その意味で裁判上の救済は比較的困難でございます。これは、計画の持っておる一つの特色なのであります。そういう点で今回の法案を見ますと、都市計画あるいはその前の首都圏市街地開発区域の整備計画、これは今回の法案と直接ではありませんけれども、こういった整備計画なりまた都市計画などを決定いたしますときには、大体私どもが見まして十分な手続、用意が払われていると思うのでございます。審議会あるいは関係行政機関、さらにまた一般の関係者の意見を十分尊重するという手続がございますので、ここまで注意を払ってやれば、憲法違反という問題は起きないと考えております。
いろいろ雑然とこまかいことまで申しましたが、一応時間をだいぶ経過いたしましたから、これをもって私の陳述を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/8
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009・二階堂進
○二階堂委員長 以上で両参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。
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010・二階堂進
○二階堂委員長 政府当局並びに参考人の方々に対し質疑の通告があります。石川次夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/10
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011・石川次夫
○石川委員 大へん御多忙の時間をさきまして、貴重な御意見を伺いまして大へん参考になりました。ありがとうございます。
われわれどうも憲法のことはあまり詳しくありませんものですから、きわめて素朴な常識的な質問で、特に憲法論ということよりは現実の問題で、今おっしゃったようなこととはずれる場合が多いのじゃないかと思います。趣旨として今おっしゃったようなことは全く同感の点がほとんどでございまして、ごもっともだというふうに考えるわけでありますけれども、現実論としてその通りいくかどうかという点をわれわれは非常に懸念をしておるところであります。そういう点で御質問をするのは、参考人に対しては適切じゃないのかもしれませんけれども、何とか一つお知恵を拝借したい、こう考えておるわけであります。
まず第一に、非常にしろうとらしい質問で恐縮でございますけれども、憲法二十九条の原文、日本の憲法は、マッカーサー憲法だなんというような一部の批判もありますけれども、二十九条の英文の原文は、これよりかなりきついものであったというふうにちょっと漏れ承ったのですが、私それを忘れてしまいまして、これは別に原文がどうであるからこうだということではありませんけれども、参考までに御存じでしたら伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/11
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012・佐藤功
○佐藤参考人 今何も実は資料を持って参りませんでしたので、非常に不正確なことになるかと思いまして恐縮でございますが、今御発言になりました点は、もっと厳格であったということでありますけれども、最初のマッカーサー草案というものを受け取りましたときに、日本側の特に松本国務大臣などが、その規定はいわば赤い規定だという言葉をその当時使われましたので、それを申し上げていいのだろうと思うのですけれども、赤い規定であるということを言われたことが、有名な事実として残っております。
それは土地の所有権というものが、国に属するというような趣旨の規定があったわけで、これは土地国有の規定であるというふうに、日本側が受け取ったことがあったわけでございます。そのことをおっしゃっておられるのではないかと思いますが、しかし、その土地の究極の所有権は国に属するというのは、必ずしも社会主義、あるいはいわゆる赤い思想ではございませんで、つまり、まさに土地収用をするなどという場合に、英米法、特にイギリスの法律の考え方では、それは国が収用する根拠として、土地の究極の所有権は国にあるのだというような、そういう考え方がイギリスであるわけでありまして、それを文字の上に書き表わした。ですから、それを非常に左翼的な思想だというふうに受け取ったのは、誤解であったのだろうというふうに言われておるわけでございます。そういうことだけをちょっと申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/12
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013・石川次夫
○石川委員 ただいまのことに関連をするわけでございますが、実はわが党では、土地の問題を相当重大視しなければいけない、こう考えて、今念のために伺いました。と申しますのは、実は土地の問題は住宅の問題にも関連するし、地方開発にも、あるいは物価の問題にも、あるいは交通難対策等すべての根は土地にある。しかも、その中で特に地価抑制の問題に関連してくるのではないか、こういうことで非常に困難な作業を今やっておるわけでありますが、そこで考えますのは、今言われた英国のキングス・ランド、土地は自分の土地ではなく国の土地であるという考え方、これは利用権と所有権というふうに分けますと、われわれは憲法を守らなければならない立場でありますから、財産権は当然神聖にして侵すべからずということになりますけれども、利用する権利というものは相当高度に、国の権力というのは語弊があるかもしれませんが、国に帰属せしめる。所有権ではなくて利用権というものは、相当高度に国の最も良識に待つところの権限にまかせなければならぬ。日本の土地というものは狭い、特に平地が少ないし国民が多いというようなことから、日本の場合は英国以上にそういう観念というものを強くしなければいけないのじゃないかというような考え方もあるわけであります。これはわれわれの定説だという意味ではありませんが、そういう点は憲法上は一体どういうふうに日本の実情に照らして判断をしたらよろしいか、お二人のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/13
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014・佐藤功
○佐藤参考人 それは土地の問題に限りませんで、やはり一般に私有財産というものと、公共の福祉あるいは社会主義的な政策との関係の問題であろうかと思います。その場合に日本国憲法の二十九条第一項では、財産権は不可侵であるという式の、いわば私有財産制度の方をまずはっきりと打ち出して、第二項では、今度は逆に財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律で定める、それから第三項では、公共のために私有財産を用いることができる、正当な補償をする、という規定をしておりますので、これは私に限りませんで、一般に憲法学の学説の上でも、いわばこの第二十九条というものが雑然としており、どちらに重点があるのかということが問題とされるわけであります。ですから、社会政策的な理由で私有財産権を強く制限しようという場合には、第一項の私有財産の不可侵ということを理由にしてそれに対して反対をするし、また逆に、あまりに財産権を尊重し過ぎるというような場合には、第二項とか第三項とかの方で、社会政策的な私有財産権の制限というものを要求するというようなふうに、二十九条が両方に使われておるような形になっておると思います。これではすっきりしない、だから書き直せというような議論が、憲法改正の主張として憲法調査会などでも出ておりますけれども、しかし、これは結局あまりすっきりと立法してしまうと、かえって動きがとれなくなるのではないか。ちょっと不徹底であるけれども、今のような形で、あとはそれぞれのケースで立法なり政策なりでまかなえる余地を残している今のような書き方で、むしろいいのではないかという議論もありまして、私などはむしろ今最後に申しましたような考え方を持っているわけでございます。
私からはそれだけを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/14
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015・田上穰治
○田上参考人 簡単に申し上げますが、御承知のように十九世紀の憲法では、日本の憲法二十九条の第一項、第三項に相当する規定が一般でございまして、これはフランス革命の人権宣言あたりからもそうなんでありますが、十八世紀末からの考え方であります。新しい条文というのは、正確な条文はわれわれは第二項だと考えております。そうなりますと、第三項の土地収用に関する規定でございますが、この方はもとから土地が非代替的なものであって、かけがえのない場合が多いものでありますから、そういう場合はいかに私有財産が絶対な時代でありましても、どうしても特定の公共事業のために特定の土地が必要であるというやむを得ない場合になると、これは補償を十分与えるならば取り上げてよろしい、この考えは昔からあったのでございます。先ほども御指摘があったように、古くはヨーロッパにおきまして、土地は君主あるいは国家のものだという考え、イギリスの場合のエミネント・ドメインといいますか、あるいはフランスのドメーヌ・ロワイヤルといいますか、そういう考え方はフランス革命以前からあったのでございます。でありますから、とにかく例外として特定の土地が、どうしてもほかにはかけがえのない土地が公共事業のために必要であるということになりますと、十八世紀、十九世紀の時代から収用を認める。しかし今日の憲法は、新しく第二項が入っておる。この方は、一般的に——特定ではございません。一般の財産に対しまして公共の福祉に適合するように法律でその内容を制限することができるようになったのでございます。この点も公共の福祉という言葉の解釈になりますが、大体日本の通説と思われますのは、十二条とか十三条の広く一般に適合される公共の福祉とは違って、二十九条の公共の福祉はそれとはもう少し違った幅の広いものである。あるいは公共の福祉による制限を、集会、言論などの自由については認めない学説も相当ございますが、そういう場合であっても、二十九条の財産権については公共の福祉の制限を認めている。こういう意味におきまして、たとえば今の二十一条の表現の自由などと比べますと、かなり幅の広い制限が財産権については二十九条第二項で認められた、こういうふうに考えるのでございます。
そうなると、今佐藤参考人からも言われましたが、十九世紀的な第一項の規定を原則と見るか、あるいは二十世紀的な第二項の規定の方に重点が移っている、こちらの方にむしろ原則があると見るのか、ここでかなり大きな違いが出てくると思うのでございます。大体保守的という言葉が適当かどうかわかりませんが、そういう立場からいえば、第一項の方を原則と見る、あるいは地主の立場から申しますと、そういうことになる。それからむしろ土地を公共事業に使おうというふうな、そういう制限する方の立場からいきますと、第二項を原則というふうな、革新あるいは社会主義的な立場から見ますと、当然第二項の方に原則が移っていると見るのございます。そうなると、第三項にもかなり影響があるのではないかと私ども思うのでございまして、第一項とのみ結びついておった第三項でありますと、これはきわめて例外の場合でありますから、農地の解放のような全国的な規模において大地主の土地を強制的に取り上げるなんというようなことは、土地収用というか、従来の考えでありますと、第三項ではとうていまかなえない、憲法違反だという疑いが生ずるのでございます。しかし新憲法が第二項を新しく入れて、むしろここに原則が移ったと見れば、少なくとも第二項が第一項と並んで一つの憲法上新しい方針を打ち出しているというふうに考えますと、土地収用の場合にも、旧憲法時代とは違って、相当公共の利益、公共のために用いるということを幅広く考える余地が出てくると思うのでございます。しかし、また先ほどお話のあった土地の国有化というふうな純粋な共産主義ではございません、第一項がありまするから。その意味で、今日におきましても私有財産を制限する根拠としての公共のため、公共の利益というのは、決していいかげんにあまり拡大解釈、ルーズに考えることはできないのでありまして、その意味で先ほどから申し上げましたし、またこれから御議論になると思いますが、過大都市の問題につきましても、あるいはそれと今回の市街地開発区域整備法の一部改正法案にありまする土地収用ということが結びつくかという、こういう点は十分検討しなければならないのであって、ただ漫然と私どもは土地の収用を広く認めてよろしいというふうには思わない。それは憲法の精神に合わないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/15
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016・石川次夫
○石川委員 ありがとうございました。それから、先ほど佐藤参考人の方からお話がありました自創法でもって小作人が利益を受けるのだから、封建制度の根っこになっている小作制度というものに対処するという、公共の福祉ですか、それがあるから、自創法というものは合憲である。あと一つの具体的な例としては、住宅公団の収用というものもあるのだからというような御説明がありましたけれども、これは人によっていろいろ意見があるのでございましょうが、小作制度というような日本のガンをなしているような非常な重大なものの芽を芟除するんだという意味では、確かに公共の福祉という大きな意味では、歴史的な意味がある、こう考えるわけです。それからあと一つ、住宅公団の住宅地の場合は、人間が狭い日本の土地になかなか住みにくいのだけれども、最小限度の権利として居住権だけは与えなければならぬというような意味が一つありまして、この居住権とあるいは自創法の法律の趣旨というのは、私は完全に公共の福祉というのに合うというような考え方を持つのですが、今度の場合は、実はこれは詳しくお話しするひまがありませんが、実は首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する法律案の考え方は、前からこれは単独で存在しておったわけです。しかしながら、これはいろいろな事情があって、憲法上の問題が特にあったものですから、なかなか意見の調整がつかないままに、今日まで放置されておったというと語弊がありますが、なかなか提案の運びに至らなかった。ところがたまたまこの工業等の制限に関する法律の一部を改正する法律案というのは、いわば皮肉な見方をすれば、時流に乗ったといいますか、首都圏整備あるいは土地過度集中を排除をするということが、交通難対策や何かの考え方と一緒になりまして、非常に脚光を浴びてきた。従って、これはいわゆる公共の福祉の問題に関連のあることであるという一つの口実といっては語弊がありますが、一つの論拠になってこの法案が合憲であるという形をとって今日浮かび上がってきた、こういうことになると思うのです。その論拠は私も否定はいたしません。その通りだろうと思うのでございますけれども、私先ほど申し上げましたように、現実の問題として一体どうなるかということになりますと、この中ではいたずらに世間に貢献しないで私益にばかり優先しないように、優先順位、制限をされた人の優先順位をここでつけるのだというようなことで、制限規定を設けておるから公共の福祉にははずれないのであるというような説明があったわけでございますけれども、これはあくまでも優先順位であって、これだけに工業制限をして、表にはみ出している人だけに限定をしているということではないわけです。それからあと一つ、ごらんになればおわかりになりますけれども、工業等の制限の中には、公共施設の制限をするということがありますけれども、今度の区域整備法の中には学校というのは全然入っていない。完全に住宅でも学校でもなくて、生産手段であるところの、利益を生むところの、企業採算を目標とする民間の事業であるというところにやはり大きな問題があるだろうと思うのです。それと、あと一つは優先順位、工業等の制限でもってはみ出したものを優先順位にするのだということになっておりますけれども、こういうふうに持っていく手段というものは幾らでもできるという形でもって、工場はどうしても狭いのだ、工場をほかに作りたい場合でも、東京都のこの非常に混雑した中で拡張したいという申請をしておいて、それに乗っけておいて、片一方の工業団地の方に優先的に入るというような操作をするということが、現実の問題として可能なわけです。従って、そういうことは私は続々と出てくる可能性が多いというふうに見ている。そういう現実の問題を兼ね合わせて考えてみますと、これは根本論にさかのぼるわけでございますが、日本の国土は狭い。従って、これは農地あるいは商業区域、工業区域あるいは道路というようにきちっと高度利用という利用区分を画然とさせるということは、日本の場合どうしても必要である。そのためには、ある程度の強権と言っては語弊があるかもしれませんけれども、権力を用いてでも、相当きちっとした利用区分を明確にせられてそれをやることが正しい、こう思うのでありますけれども、今度の場合はそういう前提は全然ないわけです。ただ単に工場を何とかしなければならぬという要請にこたえたというだけのような皮肉な見方もできないでもない。私は、この根本趣旨については決して反対ではございませんけれども、現実の問題として高度利用の利用区分というものが前提となっておらないし、それから優先順位といっても適当に運用されるという懸念もある。しかも、これは強制的にこれを取り上げる、結果的には民間の企業採算に合う事業に貢献をするということになる危険があるのじゃなかろうか。大きく見れば土地の過度集中を排除するという目的に沿うということも言えるかもしれませんけれども、その点現実の問題として考えた場合に、はたして合憲であるのかどうかという点で一まつの不安がないわけではないのです。そういうことは小作制度の問題や住宅の問題と全然違うのではなかろうか。そういう点で、趣旨には賛成したい気持はありながら、どうしても不安が残るのはやむを得ないと思うのでございますけれども、その点について、現実の問題として両参考人は一体どういうふうにお考えになるか、この点を一つお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/16
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017・田上穰治
○田上参考人 私も十分な知識はございませんけれども、都市、ことに都市と申しましても東京が直接関係があると思いますが、都市の高度の立体的な利用と申しますか、つまり二階、三階建ての、あるいは平均いたしますと、大阪などは、聞いてみますと、二階建てにもならないようでございますが、五階、六階というふうに利用する、こうなれば必ずしも都心の建物なり、あるいは増設するという場合に、これを地方に持っていかなくてもある程度できるというふうに思います。けれども、いろいろそういう工夫を考えてみましても、日本の都市は東京、大阪その他ほとんど、立体的な利用にいたしましても、限度にきていると思うのでございまして、これはもちろん費用の点もございますが、地価も暴騰しておりますし、現状では私どもの常識というと少し語弊がありますが、しろうとの考えでは、郊外というか近郊のまだ開発されていない土地を物色するはかなかろうかというふうに思うのでございます。なるほど先ほど御指摘のように、この法案の運用のいかんによってはあるいは期待に反するようなこと、特に優先順位がございますが、しかし、そのうちの一番初めの方の第一順位とか第二順位なるものが比較的少なくて、おしまいの第五くらいの方に落ちつくということになると、あるいは現在の既成市街地における人口なり産業の分散あるいはその集中の抑制ということに関係がない場合も起こり得ないわけではないと思いますが、しかし現状におきましては、それならばどういうふうにこの法案をさらに改めることが適当であるかという点につきまして、私は正直に申しましてはっきりとした知恵がないというか、大体勉強したところでは、この法案は非常によく工夫されている。これは従来の考えでありますと、工業団地の造成事業を実施するにつきましても、必ずしも住宅公団に限らないで、もっと広く何かこういう種類の、これを一般的な都市計画事業のように広く実施するものを認めるということも考えられるのでありますが、こういう点もよくしぼってありますし、今の優先順位も、私はそういう例外の場合があるかもわかりませんけれども、大体はこの考えよりほかには、ただいまのところ、法案としては工夫ができないように考えております。これはどの程度に公共性が明確であれば合憲であるかというその程度の問題でございますが、私は大体この法案で憲法上は疑いはないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/17
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018・佐藤功
○佐藤参考人 私も技術的なことはあまり承知しておりませんので、非常に大ざっぱなことしか申し上げられないのでありますけれども、一つは、今度のこの整備法の一部を改正する法律案の方が今まで違憲論があって難航しておったのが、最近都市の人口問題が非常にやかましくなって、特に交通問題という形でやかましくなって、それに便乗したきらいがあるというような御意見もございましたが、私もそういう面は一つはあると思います。ただ、それだけではないのではないかということを先ほども最初の陳述のときに申し上げたわけでございまして、その一つの証拠が、二十六年に行なわれた住宅団地の経営について住宅公団に収用権を与えたという問題、これはやはりそういう公益事業というものがそういう方面に発展していくということが、そういう形で現われたのではないかと思います。つまり交通問題に便乗したという点も一つの契機かとも存じますけれども、それだけではないのではないかということを感ずるのでございます。それから、もしこの法律の実施が予想通りに所期の目的を達しないということがあるとすると、一つはどこにこの工業団地のための整備計画々作るかという、つまり首都圏のある区域を選ぶ場合に、もっとほかにいい場所があるではないか、なぜわれわれのこの村を選ぶのかという、そういう問題が一つあるかもしれません。それからもう一つは、先ほど申しました点で、いざ工場用地を作ってはみたものの、入ってくるものがいない、何のために収用されたのかという場合があるかと思うのですが、その第一の点では、都市計画事業として行なうということで、審議会その他の手続を経て、その場所を選定するというやり方でありますし、第二の点は、先ほど私が申した通りでございます。ですから、制度としては、関係者のいろいろの意見というものを十分取り入れた上で土地を選定し、またできたあとでは誘致するという制度はできておるのでございます。ですから、それがはたしてどれだけうまく運用されるかという問題はあるかもしれませんけれども、制度としては、これだけの制度で十分なのではないかということを私は感ずるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/18
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019・二階堂進
○二階堂委員長 田中幾三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/19
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020・田中幾三郎
○田中(幾)委員 二十九条の問題は、すなおに解釈すれば、所有権の不可侵が第一ですけれども、公共の福祉のためにという項目がありますがために、私有権がそれによって制限をされる。結局は私は、やはり個人の財産権というものと、それから公共の用に供するというこの二つの調整の問題だと思うのですね。土地収用法の一条を見ましても、やはり個人の財産と公共の利益の調整をはかっていかなければならぬということが書いてある。公共の福祉が絶対的のものではない。かといって、個人の所有権も絶対的のものではない。ここに調整の問題が起こると思うのです、実際問題として。そこで、最近非常にこの個人の所有権を制限する法律が、次から次へと出て参りました。最近最もひどいのは、ひどいといっては何ですけれども、先へ進んでいったのが公共用地の取得に関する特別措置法、あるいは補償がきまらぬでも、緊急裁決をやって所有権を制限しようという、最も大きな所有権に対する制限の法律、私はこの公共の福祉ということは、解釈によってはいろいろと解釈できまするけれども、やはり第一段階としては私企業に対する分もある。たとえば電源開発のごときは、今度の公共用地の取得に関する特別措置法の条件に入りました。あれは電気を作って、電気をただで提供するならいいけれども、電気を作って電気を売るのですから、会社そのものはやはり私企業だと思うのです。損をしてやるのじゃないのです。利益に合うように発電をして、利益になるようにこれを売るというのですから、その事業を行なうものはやはり私企業である。その会社を通じて電気を供給することによって、公共の福祉ということに結ばれていく。しかし一般には、これも公共の福祉のために必要なんだということで、非常に強い私有権に対する権利を認められているわけです。私は、結局これは究極的には公共の福祉であるが、第一次的には会社の利益のためだ、こういうことでありますから、やはりこの点の調整の必要があろうと思う。そこで私は、この補償の問題がうまくいけば——この調整が結局はこの補償の問題だろうと思うのですが、本人の意思に関係なく、所有権が離れていくのです。本人が売ろうと思わないにもかかわらず、所有権がその人の手から離れていく。しかし本人が満足するような補償がくるならば、たとい自分の意思でなくて所有権が離れていっても、私はそれでバランスがとれると思うのですね。ここに私は問題があろうと思うのですよ。今も農地改革の交付金の問題が出ておりますが、あれは法的にいえば、政府が法律を作って、当時の時価で買い取ったのでありますから、これは値段が上がったからといって、その地価の上がった分だけ補償をよこせというのは、理屈が通らぬと思う。しかし経済的には、当時は放したくなかったけれども、政府の法律によってあれはとられたんだ、惜しいことをした、持っておればよかったというやはり補償の問題に関係してくるわけであります。そこで私が思うに、やはり最近におきまして、私有財産を制限するような法律が、あとからあとからどんどんと出てきた。そうしますと、二十九条の財産権の不可侵という規定が、小さく薄っぺらく押し詰められていくのではないかと思います。けれども、ただいま申しましたように、それに対する本人の満足のいく補償がいけば、私はその問題は、物質的にも精神的にもうまく調整、すなわち解決ができると思うのです。そこで私は、将来もこういう法律がどんどんどんどんできてくるならば、やはり土地補償法のようなものを別に作って、しっかりした土地補償制度、そしてその土地を単に時価ということでなしに、精神的なものが所有者にはくっついておるのですから、そういうふうなことも含めて、この私有権と公共の福祉ということとの調整をはかる一つの役割を果たす意味においても、補償に関する制度をしっかりと確立しておかなければならないんじゃないかと思いますが、どなたでもよろしいから、この点に対する御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/20
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021・田上穰治
○田上参考人 簡単に申し上げますが、自創法のことにつきましては、私自身はやはり疑問を持っております。つまり正当な補償であったかどうかということにつきまして、これはたしか本日の問題でございませんから簡単にいたしますが、当時の米の買上価格というようなことが一つの基礎になっておりますが、しかし、これは貨幣価値が急激に二十一年のときには変わっておりますから、そういう意味で物価が二百倍、三百倍にはね上がった後に、その従来の、二十一年一月でありますか、現在の米の買い上げ価格を基礎にして補償額を算定したというようなことは、私は非常に疑問があると考えております。
今の御質問の点でございますが、損失補償の算定基準につきましては、建設省の方で約半年かかりまして、本年の三月に一応審議会の方では答申が出ておりまして、いずれ御審議をいただくのではないかと考えておりますが、これは今回の市街地開発区域の整備法関係だけではなくて一般の問題でございますが、むろん正当な補償でなければ憲法に反する。公共のためでありましても、補償額の算定などが著しく不当というか、高いのも私はどうかと思いますが、安過ぎるというようなことも憲法に反するように考えております。その意味で、一応この法案とは別個に、この補償の算定基準につきましては、国会で十分御検討をいただいておきめいただきたいと考えております。
それからもう一つは、単に工場を作るために土地が要る。そこで農地を収用するというようなことになりますと、私はこれは憲法違反だと考えております。これはやはり比較の問題でありまして、工場として土地を社会に役立てるということと、農地としてあるいは普通の住宅地として役に立てるということとは、これは一がいにどちらがよいとも言えないのでございます。むしろ工場の場合でありますと、住宅などと比べて比較的大規模なものがあるかと思いますが、そういうふうな場合になるとむしろ逆であって、一部の大きな工場を作るためにたくさんの住宅あるいは農地をつぶすなんということは、どう考えても公共のためとは思えないのであります。そういう意味合いも多分あると思いますが、現在の土地収用法におきましても、単純に工場のために土地が要るというのでは、その工場がどういう工場、どういう事業であるかということを明らかにしないで、ただ一般に工場のための用地ということでは、収用を認めない。これは現行の土地収用法がそうでありますし、私は当然だと考えます。土地収用法を改正して、一般に工場のための用地、工業用地について広く土地収用を認めるなんということは、そういう法律は憲法に反すると考えております。
ただ今回の場合は、繰り返し申し上げますが、過大都市、特にこれは東京に限らないと思いますが、首都圏の場合にはさしあたって東京が中心でございまして、この東京の極端な人口、産業の集中、これは御承知のように毎年二十万、三十万というふうに人口がふえておる。かつて数年前の話でありますと、一年間に福岡市くらいの人口が東京ではふえているということでございましたが、そういう極端な状況を考えますると、急いで解決をしなければならないきわめて国家的な重大な必要があると思っております。それと関連するので——一般の工業用地ではなくて、この過大都市、特に東京における既成市街地の工業を抑制するということと関連するために、私は整備法における土地収用は認めてよろしいのではないかというのでありまして、一般の工業用地についての収用は憲法の精神に反すると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/21
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022・田中幾三郎
○田中(幾)委員 そこで、その今の公共の福祉ということを非常に幅を広く考えて、そのためならばいかに私有財産の制限をしてもいいのだ、こういう考え方は私はいけないと思うのです。たとえば例をとりますと、この法案一つごらん願いたいのですが、二十五条は造成工場の敷地に関する権利の処分の制限をしてある。問題は、工場地帯を作るための土地収用が第一段階として盛り込まれている。他人の土地を収用して、そして一つの地域を作る。これは今の憲法の問題に関係しておるわけですが、土地ができれば、そこで条件にはまった工業、仕事ができるわけですね。その土地の使用収益ができるわけです。ところがその土地を事業をする個人が取得して、しかもその取得した所有権についてなおかつ十年間は譲渡ができない、賃貸しもできないというようなことは、この点は少し行き過ぎではないか。できた土地は、作るまでは公共のために、あるいは人口を始末するために作るのかもしれないけれども、できた以上は、そこの地域で作業する事業家は個人の事業ですから、しかも取得した土地は自分の個人の所有権になるわけでありますから、それをなおかつあと十年も処分も譲渡も何もできない。ただ相続の場合と強制執行で競売をしたとき、そのときだけは所有権は移るけれども、任意に処分ができないというようなことは、これはあまりに所有権の制限ではないか。私はむしろこれは所有権を制限することが目的ではなくして、造成されたところの地域における事業が目的なんですから、その取得した土地を、初め許した事業の目的以外に使用する場合なら、これは制限ができるかもしれません。個人の土地を住宅を建てるためにとか、あるいは工場を建てるために借りるとか、土地の使用の目的を明らかにして賃貸借をする場合もあるのですから、その場合には、双方の合意であっても、その制限は効力があります。けれども、この地域に一つの工場の設置を許されて、そしてそこである事業をやっておる。しかも、その事業そのものを変更するのではなくして、事業もろともに所有権を譲渡するというような場合も、なおかつ自分の所有権を処分できないということは、これは少し行き過ぎじゃないかと思う。私はそこでできた土地については、従来の目的を変更してはいかぬ、工業をやるとしてできたものを、商店に貸すとか、デパートを建てるとか、その仕事の目的を変えることは、この法律の制限しておる条件に反するのですから、これは制限してもいいかと思いますけれども、所有権そのものをなおかつ処分できないという制限は少し行き過ぎじゃないかと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/22
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023・佐藤功
○佐藤参考人 ただいまの御意見は、ごもっともなように私も伺ったのでありますけれども、ただ二十五条の場合は、絶対に許さないというわけではなくて、都県などの長や首都圏整備委員会の承認を得ろというのであります。ですから承認を得る場合もあるわけでありましょうし、それと私ただいま考えましたのは、この土地が造成されましたときに、どういう人をそこに入れるかというのについて、先ほどの二十三条もそうでありますけれども、二十二条なども、簡単に申しますと、確実な人を入れる、いいかげんな人に入ってこられては目的を達しないという考え方が出ているわけでございます。ですから、そういうふうに特に考量をして選んだ人ということでありますので、それをその後不適当な人に譲り渡すというようなことがあってはならない、そういう考え方が現われているのだろうと思います。ただ、その場合に絶対にできないというのではなくて、承認を経ればいいということで、そこら辺の調整が考えられるのではないかと私は存じますが、しかし、これは外からの考えでございまして、当局の方々はどう考えておるか存じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/23
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024・田中幾三郎
○田中(幾)委員 もう一点だけ伺いますが、今の私の心配は杞憂でないということは二十五条の二項の最後に「利用を確保するため必要な条件を附することができる。」とあって、その次に「この場合において、その条件は、当該承認を受けた者に不当な義務を課するものであってはならない。」と書いてある。これは、ここで行き過ぎのないよう訓示規定にしてあるわけですね。ですからこれは、場合によっては行政措置で承認を与えるとか与えないとかいうことになりますから、場合によっては行き過ぎてきびしい条件が出てくるかもしれない。それをおもんぱかって、法はあらかじめそういう不当な義務を課するようなことがあってはならないという訓示はしてありますけれども、しかし所有権を制限して、譲渡については承認を得なければならぬという、そこが問題であります。これは運用によっては非常に心配があるわけです。ですから私は、入るときにその工場の目的に反しなければ、それは譲渡も自由にできる。それを担保にして借金もできないというようなことでは、また自分がちょっと都合が悪いから人に貸してやるというような場合でも、一々その承認を得なければならぬということでは、どうもあまりに所有権の制限がきつくないかということを心配するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/24
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025・田上穰治
○田上参考人 私も御質問のように、そういう点は運用にあたって十分注意をしていただきたいと考えております。たとえば二十五条で、委員会規則で基準がきまるようになっておると思いますが、こういう規則を首都圏整備委員会の方で作る場合にも、慎重な配慮を必要とするのではないかと考えております。ですけれども、直接法案といたしましては、この程度でよいのではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/25
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026・二階堂進
○二階堂委員長 山中日露史君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/26
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027・山中日露史
○山中(日)委員 時間も迫りましたので、簡単に佐藤先生にお尋ねしたいと思います。
今他の委員からいろいろ御質問がありましたように、今度の法律は土地収用法の発動が非常に問題になっておるわけでありますが、私は首都圏の今日の人口の集中、あるいは交通難、こういったことから考えて、首都圏の外にはみ出して、そうしてそういうものを受け入れる必要がある。そういうことからこの法律が作られたという、その立法趣旨は私どもも了解できるわけであります。しかも、この土地収用法の関係で首都圏の外にそういった工場を分散して、人口の適正配置をするということの公共性があるということも、これは十分わかるわけでありますが、ただ問題は、実際問題として収用される土地が農地であった場合に、これは先ほどから先生いろいろ触れられておりますが、この点もう少し明確にしておく必要があるのではないかと思うので、お尋ねするわけですが、工業団地として収用される土地でありますから、相当広範囲の土地が収用されるということが予想されるわけであります。しかもその土地は利用されておらない土地だとか、あるいは利用されておっても価値のない土地であるというようなことでありますると、収用には非常な困難は感じないわけでありますけれども、それが農地法によって取得した小作人のりっぱな畑であったとか、農地であったとかいうような場合に、その農地の持っておる公共性と、この工業団地を造成することの公共性のどちらの公共性に重点を置くかというような問題が、実際問題としてかなり出てくるのではないかということを心配するわけであります。そこで先ほどもお話のありましたように、農地は封建性の打破ということからああいうような法律で耕作農民に土地が与えられたわけでありまして、このことは単なる耕作農民のためだけではなく、農業に民主主義の精神を生かしたりっぱな公共性だと思いますが、この今度の法律を発動する場合に、その民間の事業に収用させることのその首都圏との関連における公共性と、この農地の公共性というものと、実際問題においてどちらが重いか軽いか、どちらが高いか低いかという高低軽重の標準というものを一体どこに線を引いてきめなければならぬかという点を明らかにしておきませんと、実際問題として非常に困るのじゃないかということが心配されます。先生方はそういう点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、佐藤先生からお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/27
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028・佐藤功
○佐藤参考人 憲法とか法律の問題として申しますと、結局今ちょうど御指摘になりましたように、どちらの利益を重く見るか、軽重のバランスをどう見るかということが結局その判断になる。そこまでは憲法論あるいは法律論としては申し上げられるわけでございます。それならどちらが価値が高いかということになりますと、これは私は先ほどの陳述の一番初めに申しました、いわば政策問題であろうと思うのです。そういう点は私もしろうとでございますけれども、ただ私考えますことは、これは日本に限りませんで、ヨーロッパなどに参りましてもすぐ目につきますことは、至るところでニュータウンの建設というようなことが、だれの目にもわかるようなふうに大規模に行なわれておる。そういう傾向はどこの国にも見られる傾向であると思うわけでございます。そういたしますと、昔からたまたまその土地にある農地というものが、そのためにいわば犠牲になるという問題がそこに出てくるわけでありますけれども、それは先ほど田中委員でございましたか言われました、結局実質的には補償の問題に帰着するのではないかと考えております。それでその補償があまりにも少額であるというようなことなら、幾ら法律論で公共の福祉のための制限だということが言い得たといたしましても、その問題は解決されないのではないか。実際論としてはそれは補償の額という問題に帰着するのではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/28
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029・山中日露史
○山中(日)委員 それから同じく佐藤先生にですが、先ほど田上先生はちょっと触れられたのですが、都市から外へはみ出していく工業については、その性格には何も制限がないわけです。ですから工業制限法によって外へはみ出していく企業の性格、そういう性格は全然問わなくてもいいのかどうか。先ほどの話ですと、田上先生は企業の性格が、公共性といいますか、そういった性格を持っておるものであればいいけれども、そうでない、何でもかんでも工業であれば農地を取得してもいいというようなことは、憲法上の問題も出てくるというようなお話もありましたが、私もそんなような気もいたしますので、結局今度の法律で外にはみ出ていく企業はどんな企業でもいいということになっておりますので、そういう点はこれでいいものかどうか、その点についての御見解を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/29
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030・田上穰治
○田上参考人 私に対する御質問ではなかったのですけれども、先ほど私の申し上げましたのは、一般の工業用地のために土地を収用することは、憲法の精神というか、公共のためとは考えられないと申し上げたのでありまして、今回の場合の過大都市の問題、ことに東京に人口、産業が過度に集中しているこの問題を解決するというためでございますと、はみ出る工場の種類には必ずしも私こだわらないのでございます。ちょっと御発言の中で私が申し上げたことが、あるいは不十分であったかと思いますので、ちょっと補わせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/30
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031・佐藤功
○佐藤参考人 ある土地が工場敷地になって、そこを収用された農民の方々は、自分の土地に非常に重要な企業が疎開してくるということを楽しんで、そのためには土地を取られてもやむを得ないというふうに考えていたといたします。ところがいざやって来た工場が、自分の考えていたのとは違う、いわば大して重要性のないような工場が来たというような場合が、今の御指摘の場合ではないかと思うのです。私もそういうことが心理的にいって、収用された農民の方に愉快でない印象を与えることがあることを心配はするわけでございますけれども、しかしこの二十三条でリンクをして、この優先順位によって来た工場が、どういう種類の企業でなければならぬというところまではいえないのではないかと思います。それはやはり東京が非常に狭くなって、いわばはみ出る、それをこちらで受け入れるというわけですから、ある種類の工場が行ったといたしましても、その結果が東京の過度集中を防止するということに役立つものであれば、それがどういう性質の企業であるかということとは関係ないのではないかと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/31
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032・二階堂進
○二階堂委員長 他に参考人の方に御質疑はございませんか。——別にないようでありますので、参考人の方々にごあいさつ申し上げます。
本日は御多忙中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、両案審査の上に資するところ大なるものがあったと信じ、委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
午前の会議はこの程度にとどめ、この際午後二時まで暫時休憩、いたします。
午後零時四十七分休憩
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午後二時二十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/32
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033・二階堂進
○二階堂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
両案に対し質疑を続行いたします。山中吾郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/33
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034・山中吾郎
○山中(吾)委員 首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律の一部改正法案について、整備委員会並びに文部当局にお聞きしたいのですが、文部省の文教政策の基本として、大都市に学校が集中することが望ましいことと考えておるのかどうか、まず第一にそれをお聞きしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/34
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035・杉江清
○杉江政府委員 そういうことは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/35
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036・山中吾郎
○山中(吾)委員 そうしますと、今度のこの法案は、大学、高等専門学校その他の教室について、この首都圏に人口が集中する非常に大きい原因であるから、これ以上増設することを制限しようという趣旨の法案であるが、この法案の附則において、大学関係については当分の間、それからその他の学校においては三年以内に限り、許可を不要としておるというただし書きが第四条にあるわけです。そうなると首都圏整備、いわゆる建設行政の立場からいってもこれは全くの骨抜きの法案になる。それから文部行政からいっても、都市に集中して、こんな雑音、騒音のはなはだしいところに、また下宿代の高い学費の多い、PTA負担を非常に重くするような、いわゆる今あなたのおっしゃるような基本方針に反する修正が出ておる。文部当局の立場からいっても、首都圏整備の立場からいっても、この当分の間許可を不要とする条項は、どこから見ても皆さんの方針に反すると思う。どうしてこういう法案が出されたか、両者からお聞きいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/36
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037・杉江清
○杉江政府委員 文部省といたしましても、首都圏に人口が過度集中するについて、これを分散する基本方針について何ら異存はないのであります。学校も、ただいまお話のように、この首都圏に集中するという傾向は好ましいとは考えておりません。ただ実際問題といたしましては、人口の過度集中という点から考えましたときの学校のウエートは、他のウエートと比べてどの程度のものか、それに比較しまして学校の公共性、教育の必要性、ことに科学技術者の養成の緊急性等を比べてどのように考えたらいいか、こういう観点から私どもは実際的にこのような緩和措置が必要である、かように考えておるのであります。御承知の通り国立大学につきまして、学校の建設は文部省としては基本的にいたしておりません。既存の大学の人的、物的要素を利用いたしまして、それを増設し、現下の諸要請にこたえておるというのが、実際の文部行政の姿でございます。現在文部行政で年々やっておりますこの数年間の施策は、決してこの都市集中という傾向は一般的に持っていない。むしろ全国的に、たとえば科学技術者の養成では、これを増設、拡張しておるのであります。そういう観点から考えましたときに、実際問題として既存の物的、人的な施設を利用する以外にやりようがない、新設すれば莫大な金がかかります。なかなか敷地も見つからない、人も得がたい、だから既存の人的、物的な要素を利用して科学技術者養成その他の大学教育の要請にこたえておるわけであります。なお実際の新設、増設等の向上を見ますと、それはいわゆる制限地区内のものを見ましても、現定員の中においてもなお基準まで著しく不足している現状でございますので、それを高める場合にも、この法律が一々直ちに適用されるということは私どもいかがなものか、そういうような観点もあるわけでありまして、このような一般的に猶予期間をもって科学技術者の養成、これは御承知の通り、社会の要請に基づきまして文部省としては最も力を入れ、年次計画を持って相当の科学技術者の養成を進めておるわけであります。これらの計画を円滑に行ないますには、どうしても既存のものを利用せざるを得ない。そういうふうな状況にありながら、これを直ちに適用するということは適当ではない、かように考えておるのであります。
今度は私立学校について考えましたときに、私立学校についてはなお一そう財政的な問題もあります。現在私立大学はむしろ経営難に陥っている。しかも施設設備、人的整備の現状は、きわめて不備なものであります。そういう私立大学の現状を基準まで整備するのに、一々このような手続をとるということを直ちにやることはいかがなものか。それから根本的に考えますならば、もし私立学校が今後拡張する場合には、この首都圏以外のところに行けというようなことを言いましても、これは指導陣の人的な問題もありますが、それよりも基本的な問題は、やはり財政難の問題であります。一体土地を求めること自体がなかなかむずかしい。求めましても、相当高価な代価を払わなければならない。何かと財政的な負担があります。そのような負担を国が補償するところまでいけるならば、これは確かに一つの方法だと思います。しかし現実にその補償はございません。現在わずかな補助金すら、要求するほんのわずかな金すらも予算に計上されてない現状でございます。ましていわんやこれを首都圏外に新築、増築の場合には、新築の場合はもちろんでございますが、他に土地を求めて施設するということは、趣旨としては賛同いたすのでありますけれども、実際私立学校の立場に立って見ましたときには、それはあまりにも酷なことではなかろうか、このように考えまして、いろいろ御相談の上、このような緩和規定を設けていただくことにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/37
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038・水野岑
○水野政府委員 ただいまお話しございましたように、東京へ人口が過度集中いたしまして、この集中を防止するということは国家的な急務でございます。そこで大学につきましては、ただいま御意見がございましたように、教育環境は日増しに悪くなるのでございまして、この大学を分散せしめるということは、首都圏整備の観点から申しまして、大きな理想であり、方針であるのでございます。しかしながらただいま文部省からもお話がございましたように、大学の現状を考えてみますと、ことに理工系の学校につきましては、科学技術者の大量養成ということか国家的な急務でございますし、また、理工系の施設を増設するというようなことになりますと、多額の経費を要する関係もございまして、既存の施設を極力利用するというようなことも、大学の現状を考えますとこれは必要でございますので、暫定的な措置といたしまして、理工系の学校その他の大学等につきましては、学年進行による充実等を考えまして、三年間程度はそういう暫定的な措置として時期を限って、学校の現状を考えまして、こういう経過措置を設けたのでございまして、首都圏整備の観点から申しますと、ただいま御指摘がありましたように、非常に不本意ではございますけれども、現状からいたしましてやむを得ない。ただし、こういうような暫定的な措置ということで期限をつけましてこれを認めていく。ただ、この運用にあたりましては、文部省当局とも十分御連絡を申し上げまして、真にやむを得ないものだけにこういう経過措置で認めていく。こういうようなことは、運用の面におきまして十分注意して参りたい、こういうように考えておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/38
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039・山中吾郎
○山中(吾)委員 お二人の話を聞いておりますと、この法案などは作らぬ方がいいのだ。観念的にそういうことをおっしゃっておりますが、どちらの御答弁もみな実は実態をつかんでいないと言うのですよ。当分の間というのが入っております。全部の法律を見られたらわかるのです。戦後、当分の間というのは、二十年間ずっと続くものですよ。暫定的と言ったって、この当分の間は、あと二十年も三十年も続きますよ。すべての法律の運用を見てみなさい。一年や二年じゃないのです。それから、その他の三カ年というのは、科学技術の養成、高等学校増設というのは、三カ年で全部できてしまって、あと三カ年を猶予するなら、こういう法律を廃止しなさい。この目安で全部作ってしまって、できるようになっているのです。だから、首都圏整備委員会において、この首都圏の人口の集中を排除するのが刻下の緊急の問題なら、もっと腰を据えて主張すべだと思うのです。それは僕は、建設行政の立場からもっと見きわめないと、この法案というものは、作っても明らかに何もない。そして運営の面というならば、この法案を見ると、許可制なんです。禁止じゃないのですよ。許可するということになっているから、緊急に必要ならば、文部省との関係において認めればいいじゃないですか。許可することができるということですからね。禁止じゃなくて、許可の内容にしておいて、なおかつ当分の間というものは学校関係は許可は要らない。それならばこれは意味がない。
それから、文部省の局長のおっしゃることは、いろいろと言われたけれども、学校の公共性ということと関係ないでしょう。教育の機会均等からいって、大学あるいは科学技術の養成の場合には、各地域に国民の子弟の教育の機会を与えるならば、今格差が問題になっているときに、要望もあれば、地域の方にどうして建設を認めないのか。大都市の東京に大学を集めることが公共のために必要だという説明はおかしいじゃないですか。それから、敷地が困難というなら、さらに大都市の方が困難なので、それもおかしい。それから、既存の設備を活用しなければ財政的に困るというのは、これもおかしい。各県にみな大学があって、工学部がたくさんあるじゃないですか。その既設設備にプラスをして作って、科学技術を養成すればいいのであって、それもおかしい。私学の場合についても言われたけれども、私学について、一体現在の東京の大学で文教行政として不十分なのかどうか。それで、東京のまん中に大学をさらにプラスしたり、学生を増加しなければならぬ文教行政の必要が一体あるか。もう満ぱいでしょう。もしそうなれば、どうして関東地区のこの地域の衛星都市の既設設備を利用して拡大するという方針をおとりにならないのか。あなたのおっしゃることは、日本の文教行政、大学の配置その他からいっておかしい。それで、私は疎開をせいと言っているんじゃない。現在ある大学を外に出しなさいと言っているのじゃない。出すとなれば国が膨大な補助を出してやらなければいけない。現在の既存の大学を認めて、さらに科学技術の養成であるとかというならば、この郊外にある中都市における大学の設備を増大してやるということが、一番文教行政から正しいのじゃないか。そういう点からいいますと、あなたの答弁は全部、文教行政から相反することばかりを言われていると思うのですよ。だから、この法律のこの条項は、文教行政からもマイナスだ、首都圏整備の立場からもマイナスだ。私は、そういう意味において、このところはおとりになるべきだ。そうして緊急に必要な場合については許可制なんだから、それで、首都圏整備委員会と文部大臣との間で許可を協議すればいいので、法律に、大学工学部については当分の間許可することは要らない、その他の高等学校専門の用に供する教室については当分の間許可は要らない、その他の教室については三カ年は許可は要らない。これは法律の意味がないじゃないですか。しかも工業専門学校は制度としてわれわれ疑義があるので反対したのであるけれども、実際問題としては、全国あらゆる方向から誘致運動が出るだろう。従って、東京のまん中にわざわざ工業専門学校を新設する必要がどこにありますか。あちらこちら各地域において、工業専門学校は、熱烈に設置運動をしている。新しく作るならば、もっと中都市に作るべきだ。アメリカその他を調べても、中都市にこういう専門学校を配置している。教育環境の立場からいっても、学生の立場からいっても、学資を節約する立場からいっても、これはもうだれが考えたって、こういう大都市のまん中に大学を増設すべきでないということは常識です。ことに、こういうまん中に農学部を置いて何になるか、農業教育ができるかという極端な論も出るわけです。そういうときに、一方に国家の緊急の要請であるところの首都圏整備の問題があるときに、文教政策からいっても、この機会にこの集中したところに学校を作りたいといういわゆる企業的な立場を含んで要望があるときは、首都圏整備の要請もあるからだめだ、中都市に作るなら大いに奨励してあげますということで、文教行政の立場から善用すべきだと思うのです。それをつぶしていくような立場で、みずからもマイナスしていくようなこういう条項をなぜ作るのか。聞くところによると、文部大臣の方から横やりを入れて、整備委員会の原案に対してこういう骨抜きの条項を入れさしたと聞いているのですが、それはいかがですか。今のような論ではこの法案を通す理屈にはなりませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/39
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040・杉江清
○杉江政府委員 まず、文部省がこの首都圏に学校を集中するような施策をとっているということについては、私はそうは思いません。これは今年度予算におきましても、全国的にその増設等を考えておるのでありまして、都市集中の政策は決してとっておらないのであります。それで、私どもの考えるところは、今都市集中ということを考えました場合に、これはいろいろな要素があります。これは工場もあれば、商店もあれば、何もあり、いろいろな要素があるわけであります。そういったいろいろな要素の中において、私は、学校教育というもののその公共性、その必要性というものは高い、そういうことも一つは考えられるべきだ、かように考えております。
それから、この当面する科学技術者養成とかその他の教育の必要に応じて定員増を考えます場合に、これは先ほど申し上げたことと重なりますけれども、やはり既存の物的、人的施設を利用するということがどうしても必要になってくる。教育的にも、また財政的にもその必要が出て参ります。端的に申し上げるならば、やはり東大はりっぱな施設があり、りっぱな人的要素を持っております。そういったところでやることが——やはり優秀な科学技術者の養成にはどうしても東大にその一半をになっていただくことが必要になって参ります。またそのことは工大等についてもいえることだと思います。しかし東大、工大に決して集中した増設計画をしているわけではございません。全国的にそのような計画を立てております。
それから私学につきましては、先ほど申し上げましたように、私学もまた科学技術者養成の一半をになっております。国としても私学にお願いして、科学技術者養成の一翼をになっていただいておるわけであります。そういう私学についてそれではほかに行ってくれとか、ほかに建てるべきだということを言っても、これは実際的にはできないことであります。やはり現在の人的、物的な施設を利用して、そこでやる以外にとてもやりようがない、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/40
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041・山中吾郎
○山中(吾)委員 大学の方は、そう人口集中する要素にならないということは、そういう第六感で話をされますが、一番多く集まるところですよ。一体東京の大学の学生の出身地を調べてみなさい。東京都内に住んでおる者の子弟じゃなくて、全国からこちらに入っておる学生が大部分でしょう。だから施設で一番都市人口集中の要素になるのは学校ですよ。大学ですよ。たとえば五十坪の教室を作ってそこに百人の学生の定員増をすれば、ほとんど半分以上がいなかから来ておるのだから、それだけ都市集中の大きい要素なんです。工場で五十坪作ったって二、三人ぐらいですよ、現在のオートメーションの場合には。あなたは、大学は他の施設と違って人口集中にはそう作用していないということを答えられておるけれども、それは観念的に考えておるだけなんで、一番大きい問題だと思うんですよ。それから学校の公共性と必要性ということは、都市に学校を置くことが、公共性と必要性でなくて、教育の機会均等も含んで各地域地域に大学を作ってやってPTAの負担を少なくしていく。そのところにこそ公共性があり、必要性を満たしてやるということがあるので、あなたの言うことはどうしても合わぬと思う。それから教育環境からいって、現在首都圏整備の理想にマッチして、しかも文教政策にマッチするならば、千葉市もあるでしょう、大宮あるいは浦和、そういう衛星都市があるじゃないですか。そういうところに既設の大学があるんですから、そこに増設するということならわかる。
そこで、これは法案と結びつけて論議しなければ困るから、法案の中に、許可するという制度までとってしまって、無許可で作ってもいいという法案なので、それが文部省の御意見を反映しているように聞くものですから、文部省に何ら定見もないし、文教政策に何のプラスにもならないことを、どうしてそういうことをするかということを私は問題にしているわけなんです。その点東大のことを例に出したって、何の意味もない。東大の疎開の論議をしているのじゃないのです。私はそういうことを少しもしているのじゃない。そこで緊急の、今所得倍増計画の中で国会で問題になった科学技術者の養成ということならば、法律で骨抜きの法案を作ることをおやめになって、許可制度なんだから、そういう緊急の問題ならば、この原則論の法律を作っておいて協議をされて許可をされればいいじゃないですか。許可をする必要がないという法律を出されて、そうして首都圏整備関係の法としても、何の意味がないということをどうしてされるかということが私は疑問なんです。私は、建設委員をしておるときにも、この前の首都圏整備の制限法で、どうせやるならばもっと厳格にやらなければ意味がない……。これは委員長もおられて、わかっておる。そうして事実今までないじゃないですか。そうして今また同じような法律をお出しになる、これはせめて許可制を一貫されるべきではないか。一番問題になる学校だけを無許可にするなんという手はない。そんなら作らぬ方がいい。しかも工業専門学校など山梨だってどこだってみな要望しているのでしょう。こんな大都市の中にそんなものを作る必要はないですよ。二つも三つも作る必要はないですよ。いなかにあげなさいよ。わざわざ新設するのに、この大都市東京都に都立の工業専門学校を許可する必要はないじゃないですか。教授の不足だなんといいますが、地方の中央都市に、関東地区ならば幾らでもありますよ。文教行政に私は一貫性がない、もっと識見を持って総合的に考えていくべきだと思うのです。この法案の中にそういう支離滅裂な問題が持ち込まれてきているように思うので、私どうしても納得いかない。首都圏の方はどうですか。腹の底は一体どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/41
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042・水野岑
○水野政府委員 本件の問題につきましては、実は文部省から強い要望がございまして、私ども文部省の要望につきましていろいろ考えたのでございますが、私どもの方といたしまして、実は多少痛い点と申しますか、そういう点がございますのは、工場につきましては、御案内の通り受け入れ態勢の整備ということで工業衛星都市の建設を現に実施をしておるのでございます。現在まで工業衛星都市の建設に着工しております地区が十六地区に及んでおりまして、工業衛星都市の建設に現実にもう着工して受け入れ態勢の整備をはかりつつある。ところが一方大学におきましては、そういう受け入れ態勢の整備ということにつきまして、まだ未着手の状況でございます。いずれこの大学につきましては、私どもは学園都市というようなものを首都圏の周辺地域に建設をいたしまして、そうして大学を受け入れていきたい、こういうような構想をもって、いろいろその実現方に目下努力中ではございますけれども、現在のところそういう学園都市の建設もまだ始まっていない、そういう大学の受け入れにつきまして、まだ実行に移されていない、こういう点が実はあるのでございます。そこで、大学の現状につきまして、いろいろ文部省当局からお話を承わりますと、確かに科学技術者の大量養成というようなものは、国家的な急務でもございますし、それから先ほど申し上げましたように、理工系の施設を整備するというような場合におきましては、ことに私立学校のような場合を考えますと、確かに既存施設を最大限に使うようなことも現状においてはやむを得ない実情もあるのではないか、こういうことでこの経過措置を挿入したような次第でございます。ただ、先ほど御質問の中にございました理工系の大学等につきましては、「当分の間」ということにいたしておりますが、私どもは、この科学技術者の大量養成がどうしても国家的に必要だ、そういう期間内にこれは限定していきたい。ですから、これを未来永劫やる、未来永劫「当分の間」で認めていくというようなつもりは毛頭ないのでございます。そういうような実情でございまして、私どもは現状におきましてはやむを得ない、こういうふうに考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/42
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043・杉江清
○杉江政府委員 なおこの緩和規定の適用されるものは、いわゆる既存団地における制限施設の建築でございまして、新設の場合は一応ここにひっかかってくる。この緩和規定のありますのは、既存の団地内において、いわゆる既存学校が既存校地内において制限施設を建てることを制限しておるわけでございます。そういう意味におきまして、ただいまのたとえば高専とかあるいは中都市とかいうお話とは直ちに結びつかないと思います。私どもは、やはり現下の科学技術者の養成その他の教育的な要請に応ずるためには、既存の施設を利用するということがやむを得ない現状であるということを申し上げたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/43
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044・山中吾郎
○山中(吾)委員 高専あたりは新しく学校を作るわけですし、それはおかしいのじゃないですか。既設の学級増というふうなやむを得ないものでなくて、新設の場合も含んでそういうふうなお話ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/44
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045・杉江清
○杉江政府委員 新設の場合は今までと変わらない取り扱いをしておるわけでございまして、特に緩和する、緩和規定の適用は受けないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/45
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046・山中吾郎
○山中(吾)委員 そうすると高等工業専門学校というのは、やはり許可制度なので、別にこれには関係ないというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/46
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047・水野岑
○水野政府委員 高等専門学校のみならず、大学の新設につきましてはこれは従来と同様に許可をしていく、許可基準に該当しなければこれを許さない、こういう措置でございます。この経過措置の三項に規定されておりますのは、いわゆる増築の分でございまして、当該教室が存していた団地内のこの法律施行の際における区域内において教室の床面積を増加させる、この場合についてだけこういう経過措置を設けたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/47
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048・山中吾郎
○山中(吾)委員 そうすると人口の集中に関係のない、現在設備が不十分だ、特別教室を一つふやさなければならないとか、あるいはもっと必要な教室、実験設備その他も増設しないと工学部、理学部の内容が充実しないので、そういう設備の場合ならそれはわかります。それは人口集中にならないから。そうではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/48
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049・水野岑
○水野政府委員 ただいま御例示がありましたような場合、当然この三項の規定に入るわけでございます。その他の場合、たとえば学級数を増加いたしまして、そうして既存の団地内で増築をする、こういうような場合も入るのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/49
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050・山中吾郎
○山中(吾)委員 そうすると学級増のための新設は前の許可制度だ、学級増の場合については当分の間許可なしに作ることができる、こういうことなんですね。従って、学級増というふうな場合についてやむを得ないからというふうなことであるならば、一応新設の場合は許可制度を活用して押えるということで、僕が最初考えたよりは少しはある程度のなにがある。そこで私学の場合についても文部省に僕は意見を申し述べておきたいと思うのだが、文教委員会においても、私学がただ届出制度で学級増その他をされることはどうもうまくいかぬというので、法律的に届出制度は困るから事実上許可制にして指導しようとして協議事項にしておった。そこまでやって逆に文部大臣はやっつけられたのですよ。私学を統制するのはけしからぬ、そうして科学技術庁から勧告があったりしてずい分論議したわけなんです。そういうふうな今までの中から考えて、これは首都圏整備の関係から許可制が出たのだから、その許可制ということを善用してあなた方が指導するということで、こういう機会こそ合法的にできるので、おやりになるべきなんです。法律がないときに事実上許可制度にして文句を言われておって、今度は法律を作るときに、わざわざみずから許可制をはずしていくなんという、そんな不見識な、不統一なことをされるのはどういうわけですか。これでいいじゃないか。だから、許可をすることが必要な場合には、されたらいい。そして、あまりにも営利的ないき方の場合には、首都圏の問題もあるのだから、厳重に御指導されるように、この法案を善用すべきであるのに、当分の間許可制をはずしていくというようなばかなことをやってこの法律をお作りになる気持がわからないのです。少なくとも学生が増員にならない範囲内における施設の増設という制限を加えて当分の間というならわかりますが、そうでなければ、これはとってしまって、いわゆる指導面において、緊急に必要ならお許しになっていいので、法案の部分をどうしてもおとりになることが正しいのじゃないか。そしてそれが文教行政にもプラスになるし、建設行政の場合においてもプラスになる。これを残せば両方マイナスになると私は思うので、これはおそらく建設委員の質問も、分析してみるとそうだろうと思うのですよ。だから、すなおにこれを直されて通されたらいかがです。私はもうくどくど言いませんけれども、面子とか何かで、あるいはちょっとした上っすべりのことをお考えになってこの法案ができるならば、ここで採決をされる前に、その点は直されたらどうか。そして、今の論議の中に何の支障もないでしょう、禁止じゃないのだから。整備委員会のお話でも、学都をこの周辺に作る計画があるのだ、今は当分まだ受け入れ態勢ができていない、できるはずだから、できるまでは禁止するというならあなたの意見はわかる。できてないから無許可にするというのは、さらに矛盾でしょう、首都圏整備の立場からいっても。どうしてもおかしいのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/50
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051・杉江清
○杉江政府委員 ただいまの私学のいわゆる定員増の問題でございますが、この届出制になっておる点をこの方法によってチェックするというようなお話があったのでございますが、それは不可能でございます。定員を押えていないので、施設そのものだけを押えているのですから、この法律は定員増には何ら関係なく、建物を建てることを押えているのであって、この法律の申請によって——この定員増の困る実態は、むしろ施設、設備をせずに、定員だけをふやしているという実態が中にあることが問題でありますけれども、それはこれによって押えられないわけなんです。むしろこれによっていろいろ手続をしなければならないことになるのは、定員にかかわりない施設を基準まで充実する、これはどうしてもやらなければならぬ。それも全部この手続をとらなければならぬ。そういうところまでこの制限がかぶってくるところに私どもは問題があると思っておるのです。繰り返しますけれども、全体の御趣旨はよくわかります。文教政策においてもこれに協力をすべき立場にあることはもちろんであります。しかし、実情を考えましたときに、一方国では、大学はいやがるのにかかわらず、やはり現在の人を利用し、施設を利用するということがやはり財政的にもその他教育的にも必要だから、むしろ大学にやってくれと言っておるわけであります。それから私立大学に対してもそれをお願いしているし、私立大学に対してはもっと施設、設備を充実しなければならぬ、こういうふうにやっているわけです。ですから、そういう意味において、一方において何かそれを相当いろいろ手続をするということ、少なくとも私はいろいろな条件が整備されるまで、整備されるように努力すべきは当然でありますけれども、それまでは本法の適用を緩和するということが実際に即して必要だということを確信しているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/51
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052・山中吾郎
○山中(吾)委員 あなたは今力説されて言われているけれども、これは奨励法になりますよ。当分の間無許可にすることは、その間に、今度は許可制になる前に作っておこうというわけで、これは学校乱立の奨励法になるのです。だから、禁止の規定ならば例外はいいんだが、許可制ならば行政指導で許可基準を定められて、あなたのおっしゃるようなことはできる。行政でこの次は許してやるんです。許可できるでしょう。無許可、無届けのような格好にしておいて……。だから建設行政に協力するというんでなくて、文教行政の立場から主張さるべきではないかと私は言っているのです。もちろんこれは設備の抑制なんです。学校の場合は設備と収用とは表裏一体なんです。それで今おっしゃるように、その他の学校は三年といったら三年の間にずらっと増設します。学校の増設とか増員とかいうのは毎年するんでなくて、二十年に一回、三十年に一回のことなんですから、三年の間にやったって、大学では十年、二十年ぶりくらいの定員増と施設はしてしまいますよ。そういう意味において、ただ例外を作って当分の間勝手に作ってもいいということをしておるならば、自然に、この法律ができない前に作るはずの十の施設を予定されておれば、おそらくきっと二十にふやして作るだろうと思うのです。だからやはり許可という、どっか指導するチャンスを法律の中に盛っておかなければ、あなたのおっしゃるように、観念的におっしゃっておるけれども、全部逆になる。今私は責任を持って見通しを言ってもいいと思うのです。
そこで、もう時間がないので、私意見だけ申し上げますけれども、なお分析をされて、こういう論議の中で、これはちょっと心配だということがあれば採決をきれるまでに学校の都市集中排除という文教行政そのものの立場と、それから首都圏整備という建設行政そのものの立場の中で、私はどっちに協力するというんじゃなしに、この法案についてやはりこの点は何とかしておかないと、おかしくなるということを一応気づけば直されていくべきじゃないか、これは意見を申し上げておきますが、あとは大臣もいないんだから建設委員の方々の良識を期待いたしまして、これは間違いなく奨励法になるということだけ申し上げて、私質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/52
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053・二階堂進
○二階堂委員長 石川次夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/53
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054・石川次夫
○石川委員 今山中委員の方から文教の大へん重要な点の質問がありまして、あと小林さんから引き続いて同じような問題があるようです。私も、根本的な問題について非常に多くの問題点をはらんでおりますから、この法案について質問したいと思うのですが、その間若干の時間をさきまして、地方の具体的な問題でちょっと質問することを一つお許しを願いたいと思います。しかし、このことは決してこの法案とは無関係ではございません。と申しますのは、私が申し上げたいと思うのは、古河市の都市計画の現状についての見解をただしたいと思いますけれども、古河は現在の時点においては、全国の首都圏の中で十六の開発地域というものが指定されておりますが、茨城県では土浦、それから水戸の付近という二カ所でありますけれども、将来この法案に基づきまして三十地区程度の工業既設都市を開発地域として指定をしようという有力な候補の中に古河が入っておるという点で無関係ではないということと、いま一つはこの法案を実施するのに都市計画事業として行なうということになっておるわけであります。従って、都市計画それ自体が信頼の置けないような状態の上に築かれたら、本法案の実施というものは非常に危険性を持っているのではないかということで、一つの具体的な例といたしまして都市局長の見解をただしておきたいと思うのですが、きょうは建設大臣は都合つかないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/54
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055・二階堂進
○二階堂委員長 建設大臣は要求いたしておりますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/55
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056・石川次夫
○石川委員 いなければあとで都市局長からよく伝えていただきたい。
その前に前提として都市局長に伺いたいのですが、もちろん都市計画及び区画整理というようなものは、住民の利益、大局的にはその町の繁栄あるいは公共の福祉というものの目的に合致することを目標として行なわれるんだ、こう考えられるわけでございます。それで、もし地方の住民がどうしてもこれがその目的に沿わないんだというような圧倒的な意思表示があったという場合には、当然しかるべき行政指導を行なうことによってこの計画を中止をする、あるいは中止をさせられないまでも、この計画の練り直しを命ずる、当然の権限としてはないかもしれませんが、行政指導の面でそのことはできるんではないかと思うのですが、その点は都市局長いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/56
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057・前田光嘉
○前田(光)政府委員 都市計画事業あるいは区画整理事業につきましては、もちろん先生のおっしゃる通り地元の方々の利益を増進する、その地区の価値を上げるということが目的になっておりますので、原則的には地元の方々の御賛成を得て実施するのが最も望ましいと考えております。ただ具体的な場合によりましては、あるいは自分の土地をその事業のために提供する必要が出てくるとか、あるいは計画につきまして意見を異にする場合もございますので、個々の場合に全員の関係の方方の御理解を得、御賛成を得ることは困難な場合もあります。そのために法律もありまして、一定の場合には強制的な手段をとれるようになっておりますけれども、しかし、われわれといたしましては、事業の円満な施行が原則でありますので、できるだけ円満に仕事を進めて、順調に仕事がいけるように関係の公共団体等を指導いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/57
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058・石川次夫
○石川委員 実は古河の都市計画の問題につきましては、こまかいことを申し上げますと非常に重要な法案の審議に支障があるものですから、重要な点だけを一、二点申し上げて再考を促したい、こう考えるわけです。というのは、三年前に古河の市を対象として組合施行でもって一応区画整理をやろう、こういう案が出たのでありますけれども、ほとんど一割に満たない賛成者の調印しか得られなかったという点で流産をいたしております。従って、その後急にこれはやはり市施行にしなければならぬということで、急遽方針を切りかえて四月からやろうということになって何回も案が出ております。その詳細は省略をいたしますけれども、今年の三月に事業計画書が出たとたんに議会の裁決を仰いで、よく事情はわからないままにわずか三名の反対だけでもってこれが押し切られてしまったということになっておりますが、実はこれは率直に申しまして私の選挙区でも何でもありません。それから地元へ行きまして反対の人の顔ぶれを見ますと、完全に保守とか革新とかいうものを離れて九割までは反対だという実情を、私は誇張でなしに確認をいたしておるのであります。そういうのがただ手続の上では完全に議会でもって採決になっている、あるいはまたこちらの方への報告は、おそらく住民の反対はないのだというようなことで報告をされておるのではなかろうかと思うのでございますけれども、こういうことになったのには、いろいろいきさつがございます。といいますのは、この中に県の所有地の競馬場がございまして、それが市の方の公共事業に使うということで払い下げになっておる。ところが払い下げになっておる土地がいつの間にか市長の経営する自動車学校の私有地として払い下げられておる。これは、県会で大へん大きな問題になったのでございますけれども、非常に困ったことではあるけれども、今となってはやむを得ない、既成事実はしようがないというようなことで、やむを得ず認めたというふうなことも非常に大きな問題点の一つになっております。それから区画整理をやったすぐわきの有力者の大きな一万坪の土地というものは手をつけずにおいて、そこだけは逃げているという点、それから自動車学校のところに通ずる道路をことさらに曲げて取りつけ道路を作るというような考え方のもとに不当な、不利益な立ちのきにあう人が非常に多くなっているというような点、いろいろな点でどう考えても不明朗であるというような不満が非常に多いわけであります。もちろん住民それ自体は区画整理を行なって、将来は首都圏整備の中に入って町が繁栄をするということを決して否定をいたしておるわけではないわけです。しかしながら、このようにゆがめられた計画でやったのでは、どう考えても承服ができがたい。おそらく議会の手続だけは形の上で整えて、しかも通してしまったというような、こういう都市計画の上に立って、この首都圏整備あるいは工場団地土地収用をやるということになりますと、私はこの法案自体についても非常に疑問を感じないわけにいかぬ。この地区とこの近くに総和村がありますが、総和村は住宅団地、工場団地ということで非常に有力な候補地になっておるわけでございますが、これもこのような不満の多い前提に立ちまして強行されるということになりますと、この法案自体の持つ意味というものが非常にゆがめられるのじゃないかということを考えざるを得ない、こういうのです。いろいろ説明したいことはたくさんありますけれども、そういうふうないろいろな問題点が非常に多過ぎる。従って、これは一応形の上では整っておるけれども、どうしても建設省としては公正なる都市計画あるいは区画整理を施行されるという観点で現地の方に調査員を派遣する、そして正常な、正しい現地の実態というものを把握するという努力をぜひやっていただかなければならぬ、こう考えるわけなんですが、その点について一つ御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/58
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059・前田光嘉
○前田(光)政府委員 ただいまお話の古河の区画整理につきましては、先般来地元の方から書類が出てきておりましたが、われわれの手元では、地元における今お話のような反対あるいはそれに対する意見というものを詳しく承知しておりませんので、普通の区画整理と同様の手続で目下進めておりますが、そういうふうな御意見あるいは事情でございますならば、さらに現地の実情を詳細に調べまして、関係の市なり県当局と十分に相談をいたしまして検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/59
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060・石川次夫
○石川委員 あまりこのことでもって時間をとりたくないと思いますが、一点具体的な問題でお伺いしたいと思います。と申しますのは、市長が、反対が非常に多いということで、対策に苦慮されて、いろいろなことを言っておられるわけですが、たとえば五十坪以下は絶対に減歩の対象にしない、借地借家人は全然この犠牲に合わないようにするということを言明しておりますが、私の知っている範囲の都市計画事業というのは、たとい五十坪であろうが百坪であろうが、やはり減歩というのは公平の原則に従って一様に受けるし、減歩しないという形で施行したという前例を聞いたことがないわけですが、現実にこういうことが可能であるかどうか、この点を一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/60
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061・前田光嘉
○前田(光)政府委員 減歩をしないで済ませるということはできないと思いますが、一応区画整理の施行規程を調べてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/61
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062・石川次夫
○石川委員 この五十坪以下は取り上げないということは、現実の問題としては不可能だと思うのですけれども、私はあえてこの点だけを取り上げて言ったのは、そういうことを言わざるを得ないようなところにまで反対というものが非常に強くなっておるという点の、これは一つの現われなんです。詳しく申し上げません。いずれこれは個人的に局長と会って事情を説明したいと思いますけれども、説明書も差し上げたいと思いますけれども、とにもかくにも非常にゆがめられた都市計画であるという感情的な意味での反対というものもかなりありますけれども、このままの形ではおそらく円滑な施行というものは不可能だ、こう私は考えざるを得ないので、この計画を考え直すように私個人としては考えざるを得ないということで、この点は一つ建設大臣によくお伝えを願って、指導を的確にするという意味で再調査をするということを、県と市の方と連絡をとって実地調査をするということをぜひお願いするということで約束を取りつけたと思いますから、この程度にいたします。
午前中憲法学者の意見を聞きまして、この法案につきましては、大体憲法違反ではなかろう、現在問題になっておる都市の過度集中というものを排除するというねらいを持った、公共の福祉に合致したものではなかろうかというようなことでの参考人のお話があったわけでございます。そのとき私もいろいろと、確かに原則論としては反対をすべきものではないかもしれないけれども、現実に施行されるということになると非常に大きな弊害が出てくる危険性があるということで、われわれとしてはにわかに賛成しがたいのだという意味での質問を午前中行なったわけであります。この中で、私は前から同じようなことを何回も繰り返すようで大へん恐縮なんでございますけれども、この法案について、これは建設大臣というか、内閣を代表する国務大臣というか、実はこういう法案が出るということは、土地獲得が非常に困難である、都市の過度集中というふうな問題、交通難の対策の問題あるいは住宅の問題、これもかかって土地政策が確立しておらないという点から出ているというふうに思わざるを得ないわけです。基本的には、土地の高度の利用というものを国の力でもって精密な調査をして確立をする。利用区分というものを明確にする。農業は農業、商業は商業、住宅は住宅としてそれぞれその所を得せしめるというような、きちっとしたそうした計画を確立した上においてこの法案が実施をされるということであれば、われわれは満腔の賛意を表するのにやぶさかではない、こう思うのであります。しかしながら、国土総合開発というふうな法案はございますけれども、遅々として具体化というものは進んでおりません。そういうときに、この法案だけが工場団地に対して民有地を強制収用するのだということは、この分だけについては必要があるかもしれません、しかし、ほかとのバランスというものがくずれて、この点だけが飛び出したような、非常に進歩的といえば進歩的といえるかもしれませんけれども、バランスのくずれた法案になっているのではなかろうか、こう思うので、われわれといたしましては、社会党の方からも、今度商工委員会を通じて、一つ高度国土開発の総合調査を促進しろというようなことでの法案が出るように聞いておりますけれども、その意味で、われわれとしては、この法案それ自体に必ずしも徹底的に反対をするという論拠はないにしても、何かはかと遊離してバランスを失した形で出ているという点で非常に問題が起こるのではないか。
それと、あと一つ問題は、土地がなかなか獲得をしにくいという点、住宅あるいは工場にしても道路にいたしましても、なかなか建設が容易でないという点は、基本はやはり地価の高騰を抑制することができない政府の無策にある、あえてこう言ってもいいのではないかと思います。しかしながら土地の問題は、われわれ自身もいろいろ考えてみますけれども、非常にむずかしい問題で、なかなか一ぺんにこの対策を立てることは困難だということも、われわれはわからないわけではありません。しかしながら、地価の問題について何かの対策をやろうという積極的な熱意がほとんどないように見えることは、われわれとしては非常に残念でならぬわけであります。しかし、われわれとしては非常に練り尽くせない幼稚な案ではあるけれども、その案は作っておりますが、決して党の立場とかなんとかを固執するつもりはありません。物価の問題につきましても、あるいは工場の団地だけを取り上げてみても、外国の十倍くらいになっております。これでは将来工業生産が物価にもはね返り、庶民の生活を圧迫するだけではなくて、国際競争力にも非常に影響があるのではないか。現在のように、土地はいつまでも持っていれば必ず上がるということが前提になれば、貿易の自由化ではなくて、資本とか為替の自由化ということになって参りますと、外国の資本が日本の国土を押えるということも当然予想しなければならぬという重大な問題をこの土地の問題は幾多はらんでおるというふうにわれわれは考えておるわけであります。従って、この法案が出るのは、別に新産業都市などという問題についても同じことがいえるわけでありますけれども、地価を何とかして押えるのだという——内閣が打って一丸となっていろいろな物価総合対策をやっておりますけれども、その物価の根は地価にあると私は考えております。地価だけではもちろんございませんが、この物価の根をなしておるところの地価の問題を押えることができないで、物価総合対策なんというのは、かなめの欠けた扇のような形にならざるを得ない。こういう点で、政府としてはこの対策をもっと熱心にやってもらいたいと思うのでございますけれども、現在どういう具体的な対策を考え、どうしたら地価が押えられるというふうな方向づけを持っておられるかということを一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/62
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063・中村梅吉
○中村国務大臣 地価の抑制策には、御承知の通りいろいろな手段、方法が考えられるわけでございまして、一つだけで最も目立つような効果を奏するということは非常にむずかしいと思うのであります。特にその中で私ども重視いたしておりますのは、土地が投資の対象になっておるという姿が実需というものとかち合いまして、実際に需要のある人が土地の入手難に陥り、あるいはそのために地価がつり上げられていく、こういう関係にあるように思われますので、土地の投資対象になっておる姿というものを行政上、その他あらゆる知恵を一つしぼりまして解決をしていきたいというように考えておるわけでございます。そのほかに評価鑑定制度でありますとか、あるいはまた住宅の宅地で敷地でございますると、住宅金融公庫あるいは公団等の低利の資金による利潤の伴わない土地の造成、適正な供給というような積極的な面も必要かと思いまするが、いろいろな問題をかみ合わせまして、実は地価の対策については効果の上がるような方法を打ち出したい、こう思ってせっかく目下検討を続けておるような次第でございます。今国会におきまして、御承知の通り宅地対策の審議会を設けていただくことになりまして、われわれとしまして今までの間に研究をし、考えて参りましたことをこの審議会に付しまして、学識経験のある方々に十分論議をしていただき、法制的にも、あるいは税制上からもあらゆる面から一つ濾過していただいて制度化していきたい、効果の上がるようにして参りたい、こう考えておるようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/63
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064・石川次夫
○石川委員 地価の問題は悪質な土地ブローカーがいるというようなことだけが原因でありませんで、非常に複雑な要素があります。困難だということはよくわかりますが、この問題を話しますと、これだけで幾日つぶしてもケリがつかぬということになりますから、適当に切り上げたいと思います。
宅地制度審議会というものができて、これに対してまっ正面から取り組もうという姿勢を見せておりますことはわかりますけれども、一つの問題点は、答申案が出てもしばしば守られないということが従来の例でございます。しかしながら、地価の問題につきましては、具体的に何としても一つ地価を下げるのだという高姿勢といいますか、強硬な決意というものを政府みずからが一つも示しておらぬという点に私は問題があると思うのです。鑑定員なら鑑定員制度だけでもよろしい、全国に土地の標準価格というものをきめて、鑑定員が全部その売買についてタッチするというような方策を一つとるだけでも大へん違うと思います。三十年も四十年も会社に勤めて退職手当をもらったけれども、土地が上がってしまって安住の地を求め得ないというのは、政治の責任だと思います。日本の政治の根幹をなすものが、地価から出てきているというものが非常に多いということをよくお考えいただいて、何とか地価に対して抑制するという一つでも二つでも強硬な態度を打ち出すということをぜひお考えを願いたいということと、それから土地の問題につきましては、午前中参考人の意見もいろいろ徴したのでありますけれども、これは公共の福祉という面で、土地がほんとうに総合的に国民の公共の福祉に貢献するんだという目安がつけば、これは国家の権力でもって相当使ってもよろしいんだというような、端的にいえばそういうふうな結論になったわけでありますが、私も先ほど申し上げましたように、高度利用の利用区分というものが明確になるということを前提として、この本来の土地というものは単なる所有権に固執するという意味ではなくて、憲法の所有権じゃなくて、利用権は相当高度に国家の権力で利用しても差しつかえない、所有権は侵すわけにはいかないというふうに考えざるを得ないわけであります。今度の法案で、きょうは大臣おられますから基本的な問題だけを一、二、午前中も同じような趣旨の質問をしたわけでありますが、この点についても伺いたいと思います。
たとえば自作農創設の法案が終戦後出ましたときには、これは小作人だけが利益を受けるということにはなるけれども、日本の封建制度の禍根をなしておる小作制度というものを根本的に改めるというふうな非常に歴史的な意味があって、それがいわゆる公共の福祉というものに合致をするのだということで、この点は現実に利益を受けるのは小作人かもしれないけれども、しかし、そういうふうな公共の福祉の目的に合するのだということで、これが憲法違反ではないということになりました。それから住宅公団なんかも、人間が住む居住権というものは国民としてだれでも持つわけでございまするが、これに対して強制収用するのだということも公共の福祉に合致するのだということで、これは強制収用しても違憲ではないということはわかるのです。わかりますけれども、今度の場合は、いわゆる利益を得る民間の企業のために強制収用するのだということだと、これは絶対に憲法違反にならざるを得ないわけであります。ただ憲法違反にならないで済んでいるというただ一点は、御承知のように交通難対策あるいはまた都市の過度集中を排除するというようなアップ・ツー・デートの最近の脚光を浴びた課題の要請にこたえるという点で、これは公共の福祉に合致するから違憲ではないということになっているわけでございますけれども、実際の問題として、午前中も御説明申し上げましたけれども、首都圏の非常に込んでいるところを制限をして、表へ出ていけというような格好になって、その人たちが優先的に今度の土地収用の対象になる工場団地に入るのだということまではわかるのですけれども、そのはみ出した人だけを対象とするわけではないのです。それ以外の人ももちろんこの強制収用の対象になる土地に入るという権限を持っているわけです、公募でありますから……。ですから、一つの問題点としては、優先順位をつけたといってもはたしてこの優先順位というのが正当に実現できるかどうかという点です。ということは、たとえば全国的にあっちこっちに工場を持っている人が、その優先的な順位を受けんがために東京の工場を拡張したいのだという申請をすることによって、そこに入れないから首都圏内の開発区域内の工場団地に行かざるを得ないということになって、作為的に優先順位をとるということが可能になってくるという問題が、一つあると思うわけであります。それからあと一つは、優先順位に入った土地からはみ出した制限法の適用を受けた対象になっておるもの以外の工場というものも、今度の工場団地の中に入るということになりますと、この基本的な考え方としては利用できたにいたしましても、現実の問題といたしまして、それがはたして憲法の公共の福祉というものの精神に完全に合致するかどうかという点及びその土地の事情によっては、どうしても農業でもって立たなければならぬということがあって、その農業も無視してでも工場団地にするというふうなことが実際問題としては起こる。これは総合計画でございませんから、工場団地だけを規制してできるというわけでございますから、そういうときの優劣の問題というようなこともからんで参りますし、いろいろとごちゃごちゃと申し上げて恐縮でございますけれども、とにもかくにも基本的な問題の考え方は、やはりまた都市過度集中というものを排除する意味での公共性というものは認められるけれども、現実の問題としてこれは民間の企業の利益に奉仕をするという結果になるおそれがあるのじゃないか。大きな目で見ると大局的には何かわかるような気がするけれども、現実の問題としてこれを規制していくという点では、この法案だけでは非常に心細いような気がするわけであります。具体的にこの政令が出てみないとわかりませんけれども、優先順位というものをきめて工場がはみ出した、工場制限を受けてどうしてもそこに行かざるを得なかったというような人以外の分についてまで土地収用の対象にするということは、私は憲法違反にならないということは言い切れないのじゃないか、こう思うのですけれども、その点についての大臣の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/64
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065・中村梅吉
○中村国務大臣 この市街地開発区域の工業衛星都市の使命は、広く申しますと両様あると思うのであります。
一つは、既成市街地から締め出されていくもの、今後建設をさせない、あるいは現在制限規模以内ではあるけれども、住宅地内あるいは商業地内等にはんらんをいたしております工場が、この工業衛星都市に出ていこうというようなものが一つでございます。これらに対しましては、既成市街地の問題と深い関係がございますから、この法律で定めていこうとしております順位につきましても、実は最も優先的な順位をつけて参りたいと考えておるわけでございます。
もう一つ、既成市街地は、何といいましても大量の消費人口がありますので、この消費をまかなうために外から入りつつある工場も現にあるわけでございますが、この入ってくるものを衛星都市で食いとめて、既成市街地の方には規模の小さいものであっても入れないようにしようという考え方がございますので、これらが順位から申しますと一番すその五番目か六番目に該当するということになるわけでございます。かようにいたしまして、既成市街地の現状を整理し、近代化し、環境をよくしていこうということが、これは大きなねらいでございまするので、これはまさに私の公共の福祉に合致いたしておると思うのでございます。
そこで進め方でございますが、進め方につきましては、御承知の通り、まず基本としては首都圏整備計画というものが立ちまして、その全体としての公共の福祉に合致するような首都圏整備計画を立て、しかもこれをすぐに実行に移すのではありませんで、地域ごとに都市計画を立てまして、都市計画決定をしていただく。この都市計画決定をして初めて実行する段階においてこの法律も適用をするということでございますから、何段階にも公共の福祉というものを地固めをして進めていこうというわけでございますから、私どもとしましては、理論的にも公共の福祉に合致する措置でありまして、憲法上の私権の保護規定とは抵触をいたさない、かように実は考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/65
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066・二階堂進
○二階堂委員長 次会は、明二十六日木曜日、午前十時理事会、同三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X01919620425/66
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