1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年四月二十六日(木曜日)
午前十一時二十七分開議
出席委員
委員長 二階堂 進君
理事 薩摩 雄次君 理事 田村 元君
理事 松澤 雄藏君 理事 石川 次夫君
理事 中島 巖君
逢澤 寛君 綾部健太郎君
井原 岸高君 大倉 三郎君
金丸 信君 徳安 實藏君
前田 義雄君 山口 好一君
岡本 隆一君 石田 宥全君
兒玉 末男君 佐野 憲治君
田中幾三郎君
出席国務大臣
国 務 大 臣 中村 梅吉君
出席政府委員
総理府事務官
(首都圏整備委
員会事務局長) 水野 岑君
委員外の出席者
専 門 員 山口 乾治君
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四月二十六日
委員齋藤邦吉君及び兒玉末男君辞任につき、そ
の補欠として倉成正君及び石田宥全君が議長の
指名で委員に選任された。
同日
委員倉成正君及び石田宥全君辞任につき、その
補欠として齋藤邦吉君及び兒玉末男君が議長の
指名で委員に選任された。
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四月二十五日
首都圏の既成市街地における工業等の制限に関
する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第
一四八号)(参議院送付)
首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する
法律案(内閣提出第一四九号)(参議院送付)
同日
国民のための公共事業推進等に関する請願(安
宅常彦君紹介)(第四六八〇号)
都市計画に基づく昭和通り横断道路廃止案変更
に関する請願(田中榮一君紹介)(第四六八六
号)
建設業法施行令の一部改正に関する請願(原茂
君紹介)(第四七一七号)
同外一件(五島虎雄君紹介)(第四八〇八号)
同外一件(五島虎雄君紹介)(第四九〇六号)
公営住宅入居資格者の収入最高限度額引上げに
関する請願(澁谷直藏君紹介)(第四七五五
号)
東京都目白、茅野市及び磐田市間路線の二級国
道編入に関する請願(羽田武嗣郎君紹介)(第
五〇九七号)
東京都本郷、川越市、富岡市及び松本市間路線
の二級国道編入に関する請願(羽田武嗣郎君紹
介)(第五〇九八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
首都圏の既成市街地における工業等の制限に関
する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第
一四八号)(参議院送付)
首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する
法律案(内閣提出第一四九号)(参議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/0
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001・二階堂進
○二階堂委員長 これより会議を開きます。
首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律の一部を改正する法律案及び首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。
前会に引き続き、質疑を続行いたします。石田宥全君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/1
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002・石田宥全
○石田(宥)委員 建設大臣にお伺いしたいと思うのでありますが、わが国の都市は、東京都を初めといたしまして異常な膨張をいたしまして、最近の交通麻痺の状態やあるいは上水道の状態等、まことに憂うべきものがあるのであります。これは従来のわが国の行政が無定見であり、無計画的に、いたずらに自然の成り行きにまかせてきたことの当然の帰結のように思うのでありますが、この辺で行き当たりばったりの行政をやめて、もっと計画性を持った一定の根本的な検討をする段階に来たのではないかと考えるのであります。そういう意味におきましては、今回提案されております二つの法案に基づいて、すでに首都圏市街地開発区域では十六地区が指定され、さらに将来総計三十地区程度の衛星都市を整備しようとしていると言われておるのでありますが、単に十六地区ないし三十地区の整備ということだけでは、私はまた同じようなことを繰り返すことになるのではないかと思うのでありまして、もっと根本に立ち入っての計画が必要ではないかと思うのでありますが、その点についての大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/2
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003・中村梅吉
○中村国務大臣 東京、大阪等への過度の人口集中を排除いたしますためには、特に東京について御承知の通り非常に人口の集中度合いが多いわけであります。これを何とか解決をする必要があるということが、首都圏整備法の生まれた根本であると心得ております。かような角度から、周辺に工業衛星都市を作りまして、都心部の住宅地、商業地域等に散在いたしております工場を、できるだけそういう衛星都市に引きつけて、吸いつけていくということと、さらにまた東京のような大消費地に流れ込もうとしておる産業を、衛星都市に食いとめまして、過度の集中を排除いたしたいという構想で、この首都圏整備計画が進められておるわけでありますが、これだけで十分かといえば、私どもさようには考えておりません。要するに、他の地域に魅力ある新都市ができていくということが、私は東京ならば東京に直通で流入します人口を食いとめる大きな要点ではないだろうか、かように考えております。今度の新産業都市建設促進法等も、大体私どもの考え方としましては、そういう構想の上に立って、地方に魅力ある都市を建設する。これによって地方から東京のような大都市にあこがれて流入して参ります人口を、第一次的には地方の魅力ある都市に吸収するということが実現して参りませんと、周辺に衛星都市を作るだけで、万事用が足りるかというと、足りないんではないだろうか、こういうように私ども考えておる次第でございます。従いまして、政府全体としましても、さような角度に立ちまして、いろいろな施策を目下推進をしておる次第であります。この点は確かに手おくれをしておるといえばその通りでございます。日本の戦時中及び戦後のしばらくの期間というものは、全く当時の状態に追われておりまして、基本的なことがさっぱり進められなかったという実情にありますので、このおくれを何とか取り戻さなければならないというのが現段階であろうかと思いますので、道路整備その他あらゆる公共投資の面を通しまして、できるだけ計画的に御指摘のように進めて参りたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/3
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004・石田宥全
○石田(宥)委員 わが国の国土は非常に狭隘でありまして、人口密度は非常に高いのでありますが、諸外国と比較いたしますると、国土の利用の状況が非常にこれはまた低いのであります。そういう点から考えまして、国土全体についての利用度をもっと高めるべきではないのか、そういう見地に立って、さきに国土調査法というものができておるわけです。ところが国土調査法ができましたが、具体的には見るべき施策が行なわれておらない。聞くところによると、与党の中から議員提出で、国土調査法の促進の法律案が提案されておるということでありますが、まことに遺憾千万であります。このせっかくできた国土調査法をすみやかに実施に移されまして、国土全体の利用の状況を把握し、それをあるいは農業用地なり工業用地なり、それぞれやはりその利用度を高めるための基本的なものを打ち出すことが喫緊の要務ではないかと考えるのでありますが、大臣の所見はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/4
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005・中村梅吉
○中村国務大臣 確かに日本の国はこういう狭い国土でありますから、国土の高度利用ということについては大いに力を注ぐべき事柄であります。特に数字だけを見ますると、日本よりもオランダあたりの方が人口密度が高いといわれておりますけれども、しかし、これは総面積に比較してのことでありまして、日本の国土のあり方がオランダのような平坦な地域でありませんで、山岳地帯が非常に多く占めておりますから、山岳地帯を取り除いた、使用可能な面積に人口を配分して計算を出しますと、おそらく世界でも圧倒的にこの日本の人口密度は高いのではないかと私ども考えて、そういう数字の試算もしておるわけでありますが、かような点にかんがみまして、国土の高度利用ということは非常に大切で、そのために国土調査法あるいは国土総合開発法等が制定されたと思うのであります。ところが制定以来、非常にむずかしい問題であるからでもありましょうが、遅々としてそれらの作業が進まなかったということは、確かに御指摘の通りであります。この内閣になりまして、私どもも石田さんの御指摘のような角度に立ちまして、国土調査法及び総合開発に関する主管省は経済企画庁になっておりますが、私ども入閣いたしました当時は、迫水経済企画庁長官でありましたが、企画庁長官に、制定以来十年近くを経過しておるのに、国土総合開発の基本計画がまだできておらないということは、まことに嘆かわしいことではないか。早くこれを作るべきであるということをわれわれも主張し、発言をいたしまして、迫水長官のとき以来、活発にこれらの調査及び立案が開始されまして、先般も御承知の通り一応の企画庁の草案ができまして、草案を天下に発表して、そうして識者の御批判をいただいて、さらに今度は近々のうちに総合開発の基本計画を公式に策定しようという段階に実は運びつつあるわけでございます。これらにいたしましても、法律が制定されましてから相当長時間を経ておりますので、私どもとしましては、敏速に一つそういった施策を政府の施策として打ち出すようにいたしたい、かような考え方で、直接所管はいたしておりませんけれども、われわれとしましては推進にこれ努めておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/5
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006・石田宥全
○石田(宥)委員 それらの法案が、直接担当でないということであります。それも承知しておるわけでありますけれども、ただいま審議されておるこれらの関係を進める上においての重要な関連がありますので、特に建設大臣から、一閣僚として、経済企画庁長官との間に、すみやかにこれが進行のできるように、ぜひ一つ御努力を願いたいと思うのであります。
私は、実は主として日本の農業という立場からこの問題を考えておるわけでありますが、私はきょう大臣との質疑でありますから、こまかな数字などは申し上げませんが、少なくとも今後の日本の経済発展の方向というものを考えると、今のような政府の姿勢のもとにすべての施策が行なわれますると、日本の農業というものが立ち行かないような状態になるのではないか。それは単に農業、一農民の問題だけでなしに、やはり国民生活全体と直接大きな関連があるからであります。たとえば一例を申し上げますならば、最近食生活が向上するに従いまして畜産物の需要が非常に伸びて参りました。これはけっこうなことであります。しかし、畜産物の需要が伸びたからといって、最近のように畜産を奨励されますと、養豚熱などが盛んになる。しかし、それに対する飼料の需給関係はまことに悲しむべき状況でありまして、飼料そのもので外国から輸入する部分が四〇%に及んでおる。外国の輸入小麦から出るふすまを計算いたしますと、濃厚飼料の六〇%は外国に依存しておるわけです。この分でもう三、四年たちますと、七百万トン程度の濃厚飼料を外国から輸入しなければならないということになるわけでありますが、一万トンの船で七百隻確保しなければ飼料の輸入ができないということになる。現在の港湾設備では、現在の四百万トン程度の飼料すらも陸揚げができないで、港に二週間ないし三週間、高い船賃の船を係留しておかなければならないような状態であるが、港湾設備も近く相当改善をされるでしょう。といたしましても七百万トンのえさを外国に依存しなければならないというようなことを考えると、日本の畜産の前途というものは、まことに不安定なものがあると私は思うのです。そこで、それならば将来の畜産物の需要が伸びていくのに一体どうやってまかないをつけていくか。もちろん乳製品のごときものは外国の方がはるかに安いのです。ですからそれならば外国に依存したらいいかということになりますと、日本の農産物というものは、国際標準から見ていずれも相当程度高いのでありますから、そういう議論でいきますならば、日本の農業を否定することになると私は考えるのです。なぜ一体日本の乳製品が高いのかというと、やはり飼料の問題です。外国の安くできるところは放牧地が多かったり、採草地が多かったり、自給飼料が多いところにおいてはコストが非常に安くできるわけです。そこで、私が最初に申しました国土総合開発や国土調査法というようなものによって、やはり実態をよく把握して、そうして採草放牧地として適するところはこれを採草放牧地として確保し、そして将来の国民の畜産物に対する需給の状況等を勘案して将来の見通しを立てなければならない。ところが今の政府の姿勢を見ますと、それと逆行するようなものが出ておる。たとえばこれは詳しいことは申しませんが、農林省の調べたところによりますと、五百五十万町歩もの未開発地がある。これは採草地としてあるいは放牧地として、あるいはその他農地として十分利用できるという綿密な調査の上に行なわれたものによって数字が出ておる。五百五十万町歩というと、現在の全農地面積にほぼ匹敵するほどのものであります。ところがそれが、今の法律では、未開発地は政府が農地法四十四条によって買い上げをして、そして開墾をしようという人に売り渡すという法律が現存しているけれども、政府は最近は買い上げをしない。その裏にはどういう動きがあるかというと、これは旧地主の問題——与党の方でもだいぶ持て余しておられるようでありますけれども、この動きがある。旧地主勢力がだんだん強くなって参りますと、未開発地に手をつけるというようなことは、とうてい考えられないという結果を招来するのであります。そういう点において、私どもはやはり前段申しますような点で、政府が一応の国土利用というものについての大綱をすみやかに立てる必要があるのではないか。ことに今審議されておりますこの首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する法律案との関連を見ましても、やはりこういうことが言えるのであります。なぜかと申しますと、なるほどその整備地区に指定されたところの鉱工業はこれはけっこうでありましょう。鉱工業に従事する人たちはすみやかに指定を受け、そして開発をしたいでしょう。しかし、その中にある農地は一体どういうことになるか。農業はどういうことになるのか。こういうことになると、漸次これは圧縮されて参りまして、全く健全な農業を営むことができない状態になるわけです。私はそういう面で、大きな問題だけを申し上げておるわけでありますが、この法律案そのものに対して一番心配をいたしますことは、そういう点であります。私どもは、従って、この法案に対して賛否の態度を決定する前に、やはり国土調査法、国土総合開発、そういう全体的の立地から見て一応土地の利用区分というものを明確にし、その上にこのような法律が実施さるべきではないか、こう考える。この点についての建設大臣の御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/6
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007・中村梅吉
○中村国務大臣 実は、この首都圏の市街地開発区域整備法に基づきまして、衛星都市の開発育成をやって参るわけでありますが、今御指摘のように日本の農業のあり方というものと大いに関係がございます。またその地域を開発地域に指定し開発することが、その近傍における農業とどういう関係を持つか、こういう点は非常に慎重に進める必要がございますので、首都圏整備計画を立てます際には、所管の農林大臣と十分協議をする建前になっております。なお、その制度上の問題のほかに、今回の立法措置、法律改正をいたすにあたりましても、農林省とよく相談いたしまして、これらの策定をして参りますのには農林省と、首都圏及び建設を担当いたしております建設省と、それぞれ現地につきまして十分調査検討した上で進めるように、両省間の話し合いも実は基本をきめてあるわけであります。私どもとしましては、首都圏整備という事業の重要性もございますが、御指摘のような点とも十分関連を持たせて、総合的に遺憾のないように進めていきたいという考え方を持っております次第で、この点は制度上としてもわれわれは農林当局と十分に協議をいたしまして、日本の農村のあり方、食糧生産その他農業のあり方と密接な関連を持って進めて参りたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/7
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008・石田宥全
○石田(宥)委員 次に、局長でけっこうですけれども、以前に、住宅団地の取得に対して土地収用法の適用が許されたのでありますが、千葉県等においては、ずいぶんトラブルを起こしておったようでありまして、私どもも中に入って解決に努力したこともございますが、今日まで住宅団地の造成にあたって、土地収用法の適用をいたした地区数と申しますか、件数と申しますか、それと、その取り扱いの状態をちょっと詳しくお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/8
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009・水野岑
○水野政府委員 どうも私、全国的な一団地の住宅経営について所管ではございませんので、正確なお答えをいたしかねるのでございますが、私の承知いたしておりまするところでは、一団地の住宅経営について土地収用権を発動した事例は、今日までのところないように聞いております。ただ、最近、大阪方面におきまして、そういう一団地の住宅経営につきまして土地収用権を発動する、こういうような動きがあるように聞いておりますけれども、現在までのところは、現実に土地収用権を発動するという事態はない、こういうように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/9
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010・石田宥全
○石田(宥)委員 せっかくの伝家の宝刀がなぜ一体適用がないのか、これはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/10
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011・水野岑
○水野政府委員 この土地収用権という権限を背景にいたしまして、地元の方と事業主体がよく話し合いをいたしまして、納得ずくで住宅団地の取得ができるということでありますれば、これはまた一つの行き方だと存じております。土地収用権を発動しないでも済むというような事態でありますれば、これはある意味で私は一つの望ましい姿じゃないか。ただ、土地収用権があるということになりますと、御承知の通り、譲渡所得につきまして所得税なり法人税が軽減されるというような措置があるのでございまして、一団地の住宅経営事業を実施いたします場合には、任意買収におきましても、そういう譲渡所得税が軽減される、こういうことで、関係の収用者の方が非常な恩恵を受ける、土地取得に対して協力するというようなことになっている実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/11
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012・石田宥全
○石田(宥)委員 今局長がおっしゃった通りだと思うのですね。これを背景にしてやるということだと思うのですが、私は、むしろすなおに土地収用法を実施された方がむしろ解決が早いのじゃないか。各方面にトラブルを起こしておるのを見ますると、ただその最後には土地収用法の適用をやるんだぞというおどかしのようなことでかえって混乱させておるのではないか。なるほど土地収用法というものも、相手方によっては相当年月を要しまして、適法にいろいろ手段を講じておりますると、相当年月を要する。しかし、やはりその話し合いを納得ずくでまとめるにいたしましても、一応その手続を踏んで、一面においてまた話し合いをするというような措置が望ましいのじゃないかということを、私ども問題にぶつかるたびに考えるのでありますが、しかし土地収用法も、この前に改正になりまして、手続はかなり簡略になっておりまするから、何かその宝刀を抜くぞ、抜くぞといっておどかしながらやるというようなところに、かえって問題解決のまずさが見受けられるようでありますが、それについてはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/12
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013・水野岑
○水野政府委員 ただいまの御意見は、ごもっともな御意見だと存じております。それで、実は私といたしましても、今お話がございましたような方法をとるというようなことが、場合によりましては非常に適切である、こういうようなことも相当多いのではないかというように考えておりますが、ただ、その際私は、実は、この工業衛星都市の建設に長年にわたって携わっておりまして、その体験から申しますと、土地収用の手続を進める、こういうようなことを一つの事業だけでやるというのでなしに、各事業主体、各事業主体はいろいろありますが、この事業主体が全部歩調をとってそういう方針で進んでいく、こういうような態勢をとる、部全お話し合いをいたしまして、そういう協定をいたしまして、そういう方針で進む、こういう態勢ができるのが私は望ましい。そういうようなことでなしに、一つの事業主体だけがそういう土地収用権の発動態勢を準備してやるというようなことになりますと、またかえって問題が起こる場合もある、こういうような考え方を持っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/13
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014・石田宥全
○石田(宥)委員 昨年公共用地取得に関する特別措置法が制定されましたが、これは御承知の通り、鉄道、軌道、道路、それから電気事業というように制限されております。土地収用法も、対象は公共事業というふうに制限されておったわけですが、住宅団地も公共事業として認めるという特例ができたわけです。今度のこの首都圏整備という美名のもとに宅地の造成や工場団地の造成等にあたって、私益追求、直接には私益の追求になるわけですが、それに、公共事業にこれを適用する建前とする土地収用法を用いるということは、これは私は非常に重大な問題だと思うのです。これについては、きょうは法制局の諸君も見えておりませんが、私は憲法上の疑義があるのではないかと思うのであります。この立法の過程においていろいろと御論議があったことであろうと思いますが、それらの点を一つ経過を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/14
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015・水野岑
○水野政府委員 ただいま御質疑がございましたような点、まことに重要な点でございますが、私ども、憲法二十九条との関係でございますが、工業団地を造成する、こういう場合に、土地収用権を付与することにつきまして、公共性があるかどうかという点でございますが、先ほど大臣からもお話がございましたように、わが国の首都東京の過大都市化の弊害というものが非常に大なるものがありまして、人口や産業の過度集中を防止するというようなことは、現在喫緊の要務でございます。そういう情勢にかんがみまして、一方では、人口増加の原因となる工場等の新設拡張を制限する、そういう大きな制限措置を講じておるのでございます。その反面といたしまして、これを受け入れる工業衛星都市の建設を強力に進める、こういうこともまた必要緊急な事業でございます。この工業衛星都市の建設は、首都圏整備計画に基づきまして、総合的な町作りを工業団地の造成事業を中核としてやっていく。しかも、この工業団地造成事業は、町造りのいわば基礎法と言われている都市計画法によって都市計画及び事業決定することとしております。かつ、この工業団地造成事業の事業主体は都県とか都県の加入する地方自治法に基づく一部事務組合とか日本住宅公団とかこういうような公共的な機関に限定する。こういうような諸般の情勢を考えますと、工業団地の取得にあたりまして土地使用権を付与する、こういうことは十分に公共性がある、こういう見解でございます。ただこの工業団地造成事業によりまして、反射的な利益といたしまして、私企業が恩典を受けるとかこういうような面はございますけれども、首都東京都への人口や産業の過度集中を防止する、こういうことが喫緊の要務であって、それに対処いたしますためには、どうしても工業衛星都市の建設を強力に進めなければならぬ。工業衛星都市の建設を進めるためには、工業団地造成事業を中核として総合的な町作りが必要なんだ、まあこういうような見解でございます。この点につきましては、去る三年ほど前から日本一流の憲法学者、行政法学者にいろいろ御相談をいたしまして御意見を拝聴して参ったのでございますが、一流の憲法学者、行政法学者の方はいずれもその趣旨に賛同していただきまして、これは十分合憲的であり、現下の東京の過大都市化の弊害が顕著な情勢にかんがみますときに、法律的にも妥当性がある、こういうような御賛同を得たのでございます。昨日も当委員会に参考人として佐藤功先生や田上穣治先生を呼んでいただいたのでございますが、この両参考人とも憲法上これは合法的であり、しかも現在妥当性がある、こういう証言を実はしていただいたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/15
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016・石田宥全
○石田(宥)委員 先ほどの答弁で、住宅団地造成についてはほとんど適用されない、こういう答弁があったわけでありまして、そういう見地から見ると、必ずしも土地収用法の適用というようなことをしなくとも、行政的に少し誘導的な政治を行なうならばそれで足りるのではないか、こういう場合に土地収用法を適用するというようなことは、私どもはやはりいささか行き過ぎではないかと考える。学者もいろいろありまするから、やはり国全体の見地に立って、それはやむを得ないという考えもあるかもしれないのでありますが、私は、ここにはやはり疑問が残ると思うのですね。しかし、きょうここで憲法論議をするつもりはございませんが、一つの指定地域の中で、これはどんどん用地としてつぶされていく。そういう場合は、つぶれていくというが、利用されていくところはけっこうですけれども、必ずしも全面的に利用されるとはいえないのですね。その中で一部の農地等が残る。そうすると、農業というものはやはり設備、施設も必要であるし、労力の関係とかいろいろな関係がございまして、分断されたわずかなもので農業を営むといっても、これは採算ベースに乗らないわけです。そういうものに対してはどういう御措置をおとりになるのか、それを見殺しにされるということのようでありますが、何か特別な措置をお考えになっておるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/16
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017・水野岑
○水野政府委員 お話しのような場合につきましては、土地収用法で残地補償の規定がございますので、この残地補償の規定を活用する場合もあると存じますし、それから事業主体が、御承知のように工業団地造成事業は地方公共団体で、地方公共団体と申しましても、都県とか都県の加入する一部事務組合、あるいは日本住宅公団というような公共的な機関でございますので、こういう公共的な機関を督励いたしまして、御指摘のありましたような場合で非常に生活が困窮する、こういうようなものに対しましては十分な救済措置を講じますようにやって参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/17
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018・石田宥全
○石田(宥)委員 その救済措置というものは、どういう団体がどういう法規に基づいてそれを行なうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/18
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019・水野岑
○水野政府委員 この救済措置でございますが、これは特別な法律的な根拠というものはございませんけれども、たとえば職業の紹介あっせんでありますとかそういったような措置を——関係地方公共団体がこの工業団地を造成するということになりますと、非常に町全体が繁栄するというようなことで、地方公共団体に大きなプラスになる仕事でございますので、職業の紹介あっせんなりそういうような措置を講じていくようにしていきたいと考えておるのでございます。
なお、先ほど申しました残地収用の規定は、土地収用法の第七十六条でございまして、土地の一部を収用することによって残地を従来利用していた目的に供することが著しく困難になる、こういうような場合においては、逆に土地所有者の方から収用を請求することができまして、そして、その全体の土地を買収する、こういうような仕組みになっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/19
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020・石田宥全
○石田(宥)委員 そういうあれはありましょう。しかし、一部の土地を収用されて著しく事業の経営が困難になるかどうかというような基準は、結局何もないのですね。ですから従来もそれでずいぶん問題を起こしておるのですよ。そうなりますと、行政官の良識に訴える以外にないということになるわけです。
そこで、もう一つ伺いたいことは、昨年の公共用地の取得に関する特別措置法では、他に利用されることになって売り渡さなければならないという場合のいわゆる犠牲者、これに対しては一つの更生計画というものを立てて、それに対する政府の援助の措置が規定されておったわけです。今度はしかし、そういう規定を入れられなかったのは、これはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/20
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021・水野岑
○水野政府委員 今お話がございましたように、公共用地の取得に関する土地収用法の特例法におきましては、いわゆる特定公共事業は、この特例法の適用を受けますと、御承知のように緊急裁決をすることができるという規定になっておるのでございます。この公共用地の取得に関する土地収用法の特例法におきましては、今御指摘がございましたように、生活再建計画を都道府県知事が作るというような規定があるのでございますが、今回のこの工業団地造成事業は、土地収用法の特例法の適用を受ける特定公共事業ではなくて、一般土地収用法の適用を受ける事業でございますので、法律上はそういう生活再建計画を作るというような規定は設けなかったのでございます。これは他の一般の土地収用法の適用を受ける事業との均衡を考えまして、そういう生活再建計画を作るという条項は挿入していないのでございますが、ただこの工業団地造成事業が相当大規模に土地を買収する、土地を取得するというようなことが出て参りますので、その土地等を提供された方に対する救済措置は、先ほど申しましたように、運用面におきまして関係の事業施行者を十分督励して、万全を期していきたいという考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/21
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022・石田宥全
○石田(宥)委員 あんまりこまかなことを御質問してもどうかと思って要点だけを御質問申し上げたわけでありますが、私どもやっぱり根本的に農業と農民との立場から、さっきもちょっと一例を引き出しただけでありますけれども、これが実施される暁においては、相当にやはり犠牲者を出すであろう。なるほどその地方に工業団地等ができますれば、一般の農地も値上がりを招来することは、それは間違いありません。しかしそういうことで、ちょうど一番最初に大臣に申しましたように、都市が全く無計画、無定見にいたずらに人口集中で膨張してきたように、一応の基準があって次々と地区は作られるでありますけれども、その地区内における農地に対する取り扱い、農業というものに対する非常な圧迫を加える結果になることは、これは申し上げるまでもないわけでございます。最近ずいぶん野菜の値上がりなどが問題になって騒がれておりますけれども、私はやはりそういう点で、たとえば西ドイツあたりではその土地利用区分というものが明らかになっておって、一定の地域において農用地というものが確保されておる。ですから大都市なら大都市並みに、その周辺に、あるいは交通が非常に便利になったから、相当遠くまでも運べるといたしましても、やはり農用地というのもがちゃんと確保されておれば、これはよろしいのでありますけれども、ほとんど今の政府の考え方、またこういう法律の実施にあたっての状況を見ておりますと、無視されておる。そうなりますと、結局農業と農民だけの問題でなくて、やはり国民生活全体の関係になると思うのでありまして、そういう見地に立って、どうもこの法律で土地収用法の適用をするということに対しては賛成いたしがたいわけであります。何と申しましても、当初に申しましたように、すみやかに国土調査法を活用され、総合開発の具体的な方向を立ててもらって、その中で今日このように膨張いたしました日本の国民の生活というものに対して、現在東京都に見るがごとき状態を招来しないような配慮が必要だろうと思うのでありまして、これについて大臣の積極的な御活躍を期待してやまないのでありますが、これについての大臣の所見を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/22
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023・中村梅吉
○中村国務大臣 首都圏整備計画を策定いたしますにあたりましては、先ほども申し上げましたように、農林省、通産省等の関係省とは十分事前に協議をいたしまして、総合的な角度で開発地域を指定していく、こういういき方を現在もとっておりますが、今後は、御指摘の点もございますので、この点につきましては、一そう注意を払って参りたいと思っております。
それから、先ほど来御議論のございましたように、住宅団地につきましては、従来から土地収用法の適用事業ということになっておりますが、幸い今日まで各住宅敷地とも、土地収用法といういわゆる強権の発動を行ないませんで、話し合いで進行をしております。今回この工業団地につきまして、やはり収用法の適用対象に改正をお願いしておるわけでございますが、この法律が成立をいたしましても、努めて強権の発動は避けまして、話し合いのできるものは話し合いによって問題を処理していきたい。ことに、衛星都市の建設の場合におきましては、関係の都あるいは府県、市町村が初めからこの開発地域指定あるいは指定された地域をどういうような範囲にとるか、実施面積をどうするか、こういうことは、所在の公共団体と十分相談をして参る建前になっておりますから、住民との間も、ほかの場合よりも一そうなめらかに進行し得ると思うのであります。ただ、しからばこの土地収用法の適用事業、対象事業にするということによってどういう影響がくるかと申しますと、租税特別措置法の恩典に浴することになりまして、それによって土地を提供した方々の代金に対する租税の特別措置もございます。こういう関係で他に処分するよりは、この公共性のある首都圏整備計画の一環としての衛星都市建設に協力をされた方々自体も、租税との関係において有利な立場に立つわけでございますので、さしあたり実際問題としては、そういうような点が本法によって生ずる重要な関係として浮き上がってくるのじゃないかと私ども考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、市街地の開発地域の指定及び開発ということは、土地の方々あるいは関係市町村、県等の利害というものと非常に重要な関係がございますので、地元の協力態勢のないところには、なかなか指定しても育成しがたいのでありますので、地元との連絡を十分緊密にいたしまして、われわれとしましては、なめらかな運行をはかっていきたい、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/23
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024・二階堂進
○二階堂委員長 次会は明二十七日金曜日、午前十時より理事会、同三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004149X02019620426/24
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