1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月二十八日(水曜日)
午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 加藤常太郎君
理事 青木 正君 理事 高橋 英吉君
理事 竹山祐太郎君 理事 丹羽喬四郎君
理事 畑 利君
荒松清十郎君 仮谷 忠男君
田中 榮一君 中垣 國男君
林 博君 福永 一臣君
太田 一夫君 山中日露史君
井堀 繁男君
出席国務大臣
自 治 大 臣 安井 謙君
出席政府委員
警 視 監
(警察庁刑事局
長) 新井 裕君
自治政務次官 大上 司君
自治事務官
(選挙局長) 松村 清之君
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三月二十七日
委員坪野米男君辞任につき、その補欠として小
林進君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
公職選挙法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第一〇八号)
国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法
律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇九
号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/0
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001・加藤常太郎
○加藤委員長 これより会議を開きます。
この際申し上げます。去る十六日本委員会において協議決定いたしました公職選挙法等の一部を改正する法律案についての公聴会につきまして、去る二十二日の理事会におきまして、その開会日を来たる四月三日及び四日の両日とすることにしたのでありますが、諸般の事情により、公聴会の開会日を来たる四月九日及び十日の両日に変更いたしたいと存じます。委員各位の御了承をお願いいたします。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/1
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002・加藤常太郎
○加藤委員長 さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/2
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003・加藤常太郎
○加藤委員長 公職選挙法等の一部を改正する法律案、及び国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案を一括議題といたします。
質疑の通告があります。順次これを許します。太田一夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/3
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004・太田一夫
○太田委員 前回に引き続きましてお尋ねをするわけでありますが、先般松村局長さんの御答弁の中で、公明選挙というのは五年や六年ではできるものではない、十年、二十年かかるという御答弁がありました。気にかかっているんですがね。五年、六年ではできない。十年、三十年というと非常に長い期間で、これは数次の改正を経なければならぬことだろうと思うんです。従って、今度御提案になりました分は公明選挙へのほんの一里塚、従ってこれは将来の理想を示すものではない、こういう御趣旨と理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/4
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005・松村清之
○松村(清)政府委員 私が先般申し上げましたのは、言葉の表現がなにで、お受け取りになった意味が多少違ったように私は受け取ったのですが、私が先般申し上げましたのは、選挙の公明化は、制度の改正も大切でありますけれども、結局、国民の自覚、国国の政治常識の向上ということが基本であるということを申し上げて、それでこのあとの方の、国民の自覚、政治常識の向上を待つということには非常に長い年月がかかると思われる。ただ毎年毎年公明選挙運動等の展開によって漸次向上はしていくけれども、理想に達するには長い年月がかかるように思われる、こういう趣旨で申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/5
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006・太田一夫
○太田委員 今のお話ですが、それはおっしゃった通り書いてあります。さすがにあなたの御記憶の通りであって、「この公明選挙運動というのは、国民の自覚なり、選挙についての関心なり、政治についての常識なり、そういうものを高めていくわけでございますから、これを五年や六年でこの完全なる効果を期待するわけには参りません。これは十年、二十年、もっと長い月日を待たなければ、理想的な姿には参らない、これは諸外国の例を見ても当然なことでございます。」とおっしゃったわけです。国民の自覚に待つということですけれども、国民の自覚に待つという態度が、はたして、今の選挙の態勢の中にあるかどうか、この点疑問なんです。
一つ具体的な例を言いますが、投票所の入場券は、いかなる姿によって配られることが一番理想ないし正しいとされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/6
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007・松村清之
○松村(清)政府委員 投票所の入場券は、選挙管理委員会の責任においてこれを有権者に配付する、こういう姿が最も望ましい姿だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/7
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008・太田一夫
○太田委員 それは公職選挙法に書いてあることでしょう。公職選挙法にはそう書いてあるが、実際の運営は違う。選挙管理委員会は配っておりません。これは実際の姿というものは、ほとんど隣組長ないしは町内会長、あるいは区長、主事とかいう、それぞれの隣保の長たる者がほとんどこれは戸別に回って配っている、こういう姿じゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/8
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009・松村清之
○松村(清)政府委員 選挙管理委員会というものは、御承知のように、四人で構成されているものでございますから、委員会自体がそういう入場券を各戸に配付することは、これは申し上げるまでもなく不可能なことでございますが、選挙管理委員会がその責任において配る人を嘱託する、あるいは雇用する、こうして各戸に配っているのが実情だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/9
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010・太田一夫
○太田委員 しからば、町内会長に配らせる場合、隣組長に配らせる場合、それを嘱託するというどこかに決定があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/10
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011・松村清之
○松村(清)政府委員 それは選挙管理委員会がそういう専務をその人に委嘱してやっていることだと仏は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/11
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012・太田一夫
○太田委員 もし委嘱をしているとするなら、委嘱をされた人が、公明選挙思想と違った、逸脱したような言動をなした場合は、これはいかなる処分をなさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/12
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013・松村清之
○松村(清)政府委員 これは入場券を配付することだけを委嘱しておるのでありまして、そのほかのことを配付する人が実際にやっておるといたしますなれば、これはまた別の問題でございますから、それが通法であるならば、それぞれその法規に照らして処置しなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/13
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014・太田一夫
○太田委員 違法性があるかどうかという点にはなお問題があるのであって、それはおっしゃる通り、長年の慣習として、隣組長が利用されておるのが実情だと思うのですよ。ところが、公職選挙法施行令三十一条では、選挙管理委員会は、投票の期日の前日までに選挙人に入場券を交付するように努めなければならないとある。その努める方法が、今のお話で、隣組長さんという制度を利用していらっしゃる、こういうことだと思うのです。ところが、現実には、その入場券を配りながら合法的な戸別訪問が行なわれて、いよいよあした、あさってとか、何月何日は投票ですよ、この間頼んだ人を頼みますよ、こういうことになっているわけです。これがどれほど公明選挙を害しているかわからない。だから、公明選挙推進の母体である選挙管理委員会は、最も不公明な選挙を行なわしめているということになるわけです。そういうことをお気づきになったことはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/14
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015・松村清之
○松村(清)政府委員 そういう具体的な事実につきましては聞いておりませんけれども、もしそういうことが事実といたしますならば、それはもう戸別訪問としてその人は法に照らして措置されるべきものであり、また、選挙管理委員会としても、そういう者に投票所の入場券を交付さすことはやめるべきものであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/15
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016・太田一夫
○太田委員 大上次官、大臣にかわって答弁して下さい。
今、隣組長さんが投票所の入場券を配るときに、作為的に特定候補を支持するような言動をしつつ配る、こういう例が各地にたくさんあるから、選挙管理委員会が隣組長を利用して入場券を配らせるのは、非常に不公明選挙になるのだからいけないことじゃないかということを私は申し上げているわけです。そういうことは局長さんの方はさほど感づいていらっしゃらない、そういう事実があるということもあまり御存じないようでありますし、もしあるとするならば、何か処断をしなければならないというふうに、非常にまれなケースとして御答弁に相なりましたけれども、あなたはどうですか。今地方自治法から考えて、地方自治法の方でも選挙管理委員会の改正に関する御提案が本国会になされておる。それから公職選挙法の改正もここに本委員会に提案されておりますね。これはもう答申案には全部あることで一部は、地方自治法の改正ですから、地方行政委員会にかかっておる。その中で、選挙管理委員会は地方行政委員会に地方自治法の改正ということで御提案になっておりますけれども、今のような不公明選挙を推進する母体となって選挙管理委員会が悪用されておるということについては、どうですか、自治省としてはいかなる御見解をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/16
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017・大上司
○大上政府委員 ただいまの太田さんの御質問、ごもっともと思います。もちろん、行政組織的に、あるいはこの選挙管理の方法の公式論からいえば、それは松村局長の今答弁したようなことですが、実質上は、そういうふうな問題があれば、なるほど選挙管理委員会がその人に委嘱したとはいうけれども、いわゆるその人の主観的な動きによってただいまのような選挙運動があったとすれば、これはゆゆしき問題であることは、御意見の通りであります。従いまして、そういう実例を私はまだ耳にしておりませんが、もしもあると仮定すれば、あらためてわれわれとしては慎重にこれを検討せねばならぬ、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/17
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018・太田一夫
○太田委員 実際慎重に一つ検討していただかなければならぬでしょうね。いわゆる隣組長、これはいろいろ地方によって名前が違いまして、町内会長とか組長とか、あるいは隣保班長とか主事とか、いろいろの名前があるのですけれども、そういう人たちが選挙の際に負の役割というのは、実は今日いろいろな多極の選挙を籍する一番最尖兵になっておるのです。その最尖兵になっておるところに、戸別にこの入場券を配って下さいというのですから、これは得たりや応でありまして、一軒一軒回って行って、この間集会のときに話したあの人ですよ、いいですね、どこどこのだれですよ、おばあさん、忘れてはいけませんよ——何とこれはおそるべきことではありませんか。そういうことがなされているのです。ところが、今のお話では、選挙管理委員会が入場券を配るように努力しなければならないという公職選挙法のこの具体的意思は、そういう任意団体の長に一任されておる。辞令を用いないでしょう。委嘱の決定があるかないかもわからない。これは非常に手落ちだと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/18
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019・大上司
○大上政府委員 さいぜん申し上げた通りでありまして、これは選挙の実相といいますか、事実を、われわれの方としてもさらに資料を取り寄せ、検討いたしてみます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/19
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020・太田一夫
○太田委員 大臣が御出席になりましたので、大臣に伺いたいと思いますが、今お尋ねしておりますことは、公明選挙に関する選挙管理委員会の割役についてであります。選挙管理委員会は、地方自治法にもはっきり書いてありまして、選挙管理委員会自身はりっぱな人が出るということになっております。けれども、さて、それが具体的な選挙の管理事務となりまして、公職選挙の母体に相なりました際に、具体的には入場券を各有権者に配らなければならない。その際に、非合法的な戸別訪問に類する行動がひんぱんに最近行なわれておる。入場券を配りながら隣組長さんが、だれだれ候補をよろしく頼むと、目つきやら、そぶりやら、話することが、非常に公明選挙を毒しておりますので、私は、選挙管理委員会みずから公明選挙に目をそむけているのではないか、こう思っているのでありますが、何かあたなの御所見はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/20
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021・安井謙
○安井国務大臣 いろいろな選挙の手続等で、投票券を配る際に、管理委員会が色目を使っているというお話を今伺ったのでありますが、実は私どもうかつでありまして、あまりそういった点で弊害があったというようなことは従来聞いておりません。しかし、これはわれれわうかつであって、そういう実態があるかどうか、今後はよく調べてみたいと思います。おそらく管理委員の方々は、相当自分でもそういった点は注意しておられますし、今後は特に管理委員になられる方の資格については十分吟味するような建前に自治法もいたしておりますので、もしそういった御心配というか、御指摘のようなことが、過去にでもまぎらわしいことでもあったというようなところがあれば、今後これは十分絶滅を期するように努力したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/21
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022・太田一夫
○太田委員 局長、従って、公明選挙の運動を推進する中心母体というのは何でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/22
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023・松村清之
○松村(清)政府委員 この中心母体といたしましては、都道府県、市町村ごとの選挙管理委員会、これは法律で任務が規定されております。それから、そのほかに民間の団体といたしまして、公明選挙連盟、これは東京にあるわけですが、最近におきましては、都道府県、市町村にも、民間人で構成されております公明選挙推進協議会という団体ができております。こういうところが推進の母体でございます。しかし、そのほかにも青年団、婦人会、公民館といった団体も役割を演じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/23
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024・太田一夫
○太田委員 大臣、今局長のおっしゃった通り、選挙管理委員会ないしは公明選挙推進連盟などが公明選挙の中心勢力となっている。その中で、選挙管理委員会は地方自治法の関係でありまして、これは答申案におきましても幾多改善策が答申をされておる。ところが、いわゆる政党の党員である者を選挙管理委員にすることは差しつかえないというような建前になっていますね。政党の党員であり、特定政党を支持すること顕著なる者——いわゆる中立性ということを厳格にうたっていない。本山であるところの公明選挙というのは不偏不党でしょう。その不偏不党であるべきところの、公明選挙の中心であるべき選挙管理委員会の委員に、特定政党を支持すること顕著なる者がなっておるということは、いかなることでしょう。そういうことはあってしかるべきものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/24
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025・安井謙
○安井国務大臣 御承知のように、今日は政党政治の世の中で、政党を建前にいたしておると思うのであります。そこで、管理委員というものは、現在は実際的には各政党が推薦をして決定をする。中央選挙管理委員につきましても、衆参両院の議決によるといったような形式をとっております。そういう意味から、私は、政党色が完全にそういう人選の際排除されてしまわなければいかぬかどうかには、やはり実態上無理があると思うのですが、しかし、今お話しのように、これが全部露骨な政党色を帯びた人ばかりになるということは、また弊害があろうと思いますので、これには一定のきわめて少ない数に政党人というものは制限をされておると心得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/25
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026・太田一夫
○太田委員 少ない数に制限をするというなら、百尺竿頭さらに一歩を進めて、そういう特定の色がついておったり、特定の政党に片寄るような思想偏向を来たしておる者は——思想偏向と言うとおかしいですけれども、これは選挙管理委員会の役職からは遠慮していただいて、もっと中立性の強い、どちらにもつかないという、厳正、公平、中立の方を入れるべきじゃないですか。なるべくそういう者を委嘱するという建前にすべきではありませんか。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/26
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027・安井謙
○安井国務大臣 御趣旨は全くそうだろうと思います。手続の関係が、今のような手順を経て政党がそれぞれ推薦されるという手続になっておりますが、その際でも、いわゆる露骨な政党人というものは極力避けて、できるだけそれぞれの按分によって公正と見られる人をそれぞれの立場から御推薦になって決定をしていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/27
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028・太田一夫
○太田委員 公正と見られると思う人が公正でなかった場合には、これはかえなければいけないし、公正と見られると思う、そうだろうということでやっておりますと、松村局長さんの話で、公明選挙は二十年、三十年、数十年先だということになる。公明選挙ということが成るには、国民の自覚だ、自覚だと言いながら、国民の自覚を押えることをやっているでしょう。国民の声というのは、審議会の声よりはもっとほんとうはきついものです。たとえば棄権防止運動というのがありますが、棄権防止ということを盛んに言って、かり出しをやる。けれども、選挙に際して、特定の政党を支持するか、特定の候補者を支持するか、どちらも何も支持するものがない、政治的に無血だ、白色だ、こういう人たちを無理に連れていって、何でもかでもだれかに入れなさいというような、かり出しによって九九%の投票率を作るなんということがほめられる現象だなんということは、これは行き過ぎですよ。棄権防止も行き過ぎがある。だから、国民の自覚というものは、政治的な無関心から政治的な関心へとどんどん移っていって、しかもそれが、よごれた候補者には投票しないというところまでいかなければいけないでしょう。やることなすことがすべて国民の自覚というものを遠ざけて、国民の自覚というよりは、国民の関心が選挙から遠ざかることばかりやっているように思うのですが、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/28
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029・安井謙
○安井国務大臣 私はその実態的なあり方について今申し上げたのでありまして、お話の通り、私は、できるだけ無色で公正な人を御推薦願うということが一番いいと思うのであります。ただ、御承知のように、これは国会——地方でも同様でございますが、国会あるいは地方の議会自身が選ぶ、こういうことになっております。従いまして、議会自身が選ぶということになれば、各党が持ち寄って相談の上きめるというのが実際の手続になる。そうすると、実態上は、おのおの何名かそれぞれの持ち分でお出しになるが、しかし、その際は、おのずから良識がありまして、きわだって極端な一党一派に偏したような運営をされるような危険な方はお選びにならぬというのが、国会なり地方議会の良識であろうと思っております。しかし、それじゃ議会が選ぶのはいかぬのだ、もう一回政府なり何なりが選ぶようにでも考え直せ、こういう御恩児でありますが、それは御意見としてまた一ぺんよく検討いたしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/29
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030・太田一夫
○太田委員 だから私が尋ねておりますことは、公明選挙、公明選挙という立場からずっと見まして、今次の改正案というのは、ただわずかに一歩を前進させんとする心がまえがかすかに感じられる程度のものであって、ことしは何十年分の一の改正なのだ、だからこれは非常に手ぬるいものであるし、こんなことではとてもいかぬけれども、今の山犬情ではこの程度しかできない、いわゆるある程度腐敗したとか、あるいはいろいろの間違いが多いとか、ある程度粛正しなければならぬものがたくさんあるけれども、この程度しかことしはできぬのだ、こういうことであるのかと先ほど局長さんにお尋ねしたわけです。どうもそんな気がしてしょうがない。これが理想に非常に近づいていて、これは大へんなことだなんというような内容を持つものではない、そう思いますが、この御提案の趣旨というのは、ほんのわずかつま先が動いたにすぎない程度の改正案だ、そういう気持でしょう。大臣どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/30
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031・安井謙
○安井国務大臣 これは見方によりましていろいろ御批評もあろうかと思いますが、私どもは必ずしもそうは考えておりません。現行法の各条黄に比べますと、相当前向きでこの改正を盛ってあるというふうに考えております。しかし、一方では、法律だけをいかにもきびしくさえすればすべていいのだというふうな考えにもなりませんので、極端に申せば、選挙違反のすべてを厳罰に処するというようなことにでも相なれば、それはあるいはもっと効果があるかもしれませんが、それでは一方の角をためて牛を殺すのたぐいになってはいかぬ、そういうような感じから、私どもは、現段階におきましてはこういった程度が一番妥当であろうという考えを持ちまして、そうして現行法からいえば私は相当な改正を加えておるというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/31
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032・太田一夫
○太田委員 松村局長さん、進歩的な提案だということは、それはそのおつもりでなければ出せないことでしょうし、答申案から若干後退しておるにしてもお出しになったということは、民としては非常に喜んでおることなのです。ぜひこれをさらに内容をよくして通してくれという声は非常に強い。
そこで私は、今の公明選挙の問題に関連すると、各地の選管というのが苦になってしょうがないのだが、各地の選管というのがきわめて最近保守政党化しておる。先ほど、政党というのは、政党政治時代だから、いわゆる党員というものがたくさんいるのはあたりまえだろう、従って、厳正中立なんというのはそんなにたくさんいないのだから、その中から出たって差しつかえないだろうというのが大臣の御答弁ですけれども、まずそういう疑わしきはなるべく避けた方がいいと思うのですが、どう見ても選管というのが保守政党化しておるという、こういう国民の疑念というのは、私どもいまだに晴らせるわけにいかぬ、具体的事例一つ一つから。あなたはそういう傾向というのは感じていらっしゃいませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/32
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033・松村清之
○松村(清)政府委員 これは先ほど大臣から申しましたように、地方議会が選ぶものでございますから、結局その地方議会の勢力といいますか、その勢力の分布状況等によってある程度影響があることは、これは避けることができないと思います。しかし、必ずしも保守的色彩がどこの選管でも濃厚になっておるというわけではございませんで、選挙管理委員会の中には、革新的な色彩の強いところが府県、市町村を通じてあるところも、これまた否定できないことでございます。要は、議会の選ぶものでございますから、その議会の勢力なり、あるいはその地方団体のいろいろな影響なり、そういうものに影響されるわけでございますから、全国一律にこれを論ずることは妥当でないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/33
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034・太田一夫
○太田委員 というような事態があるかもしれないから、一律に論ずることはできないというお話でなくして、そういう現象が出てくるならばどうすべきであるかという、一歩進んだ対策というものをお持ちでなくてはならない。少なくともあなたには指導性がなくてはいけない。自治省選挙局長の指導性、自治省自身の指導性、場合によっては警察庁にも指導性がある、法務省にも指導性がある、そういう指導性というものがなくして、どうやって選挙の粛正とか選挙の公明化とか、明るい選挙なんというのができますか。指導性の立場からどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/34
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035・松村清之
○松村(清)政府委員 その問題の先に、先ほど私の申し上げましたことを、資料に基づいて敷衍したいと思います。
選挙管理委員会は、四名のうち一人まで同じ党派に所属しておる者を選ぶことができることになっております。そこで、党所属の人というのがどれくらいの状況になっておるか申し上げますと、都道府県の選挙管理委員会におきましては、自民党所属の委員が七名、社会党所属の委員が十名、民社党所属の委員が四名、こういう状況になっております。市町村の選挙管理委員会におきましては、自民党所属の委員が七十四名、社会党所属の委員が五十五名、民社党所属の委員が二十九名、こういうふうに、所属という点からだけ見ますると、必ずしも保守に片寄っておるというわけのものではないと思います。ただ、その人がどういう性格かということになりますと、これは別問題でございますが、所属という点からの統計を見ますと、そういう状況になっております。
それから、ただいまのご質問でございますが、これは結局今の制度のもとにおいては議会が選任するわけでございますから、議会の良識に期待せざるを得ないと思います。しかし私どもは、選ばれた選挙管理委員会に対しましては、機会あるごとに、公正中立であることを強調しております。なお制度的には、あるいは地方団体の長が離合の同意を得て任命するような形にした力がその人を得られるのではないかという主張も一部にございますけれども、しかし、これは選挙管理委員の資格として、百長というものがそもそも選挙される職でございますから、そういうものが圧倒的に指導権をとるような制度にすることはいかがなものであろうか、制度的には今の議会の選任ということが一応いいのではないか、そういうふうな考えが強うございます。大体以上のように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/35
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036・太田一夫
○太田委員 公明選挙連盟の中の、たとえば政党的な立場の違いが構成のメンバーの中にあるとするなら、どんなふうになっておりますか、全国一括して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/36
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037・松村清之
○松村(清)政府委員 公明選挙連盟のメンバー、これは連盟という名の通りに、いろいろな団体を包含しております。青年団、婦人会というようなものも含めまして、いろいろな団体を包含しておりますので、その中の構成につきましては、今ここに資料もございませんので、どういう分布状況になっておるかわかりませんけれども、全国的な団体をほとんど網羅しておりますので、私は、思想的には片寄ったものになってはいない、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/37
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038・太田一夫
○太田委員 局長さん、別に私は公明選挙運動にけちをつけるわけじゃありませんよ。けれども、あなたの方はそこに助成金を出していらっしゃるでしょう。金を出して、選挙を明るくして下さいと旨いながら、その構成メンバーは、特定の政党支持に片寄っておるというようなことがあるとするなら、断固として助成金、補助金などというものは停止すべきですよ。それをふやすなどということはとんでもない。そういうことをあなたたちは分析していただかなければいかぬ。もっとはっきり、眼光紙背に徹するくらいの認識を持っていなければならないと思うが、両年団とか婦人会が入っているから、各種団体が入っておるから、色はおそらく中立であろうというような感じに受け取れる御答弁になると、私どもは納得できない。青年団の団長とか、婦人会の代表というようなものの中には、とかく事大思想の者が多くて、そして何かの役職につきたい、いわゆるいい顔になりたいというような、小さな功名主義者が非常に多くなっておる。そういう人たちが案外うまく利用されて、青年団とか婦人会という団体の代表者の立場を与えられて、そして公明選挙連盟などに入ってやるのだから、これは具体的な各個の実態を分析しますと、非常に一党一派に偏することが多い。これは左でも右でも、どの政党政派に偏しようと、間違いです。公明選挙運動というのは、公職選挙法をはっきり守ることなんでしょう。法を厳正に実施し、施行できるように、それに協力することでしょう。それが特定の政党の利害だけに奉仕するというようなことになるならば、そんなところにどんなに予算を割いてみたところで、全くもって何ともならない。もっと実情というものを把握されてしかるべきだと思いますが、あまりそういうものは警察庁当局からはきませんか、各地にこういうことがあったということはきませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/38
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039・松村清之
○松村(清)政府委員 そういう具体的な話は聞きませんけれども、私は、公明選挙連盟の構成がどうなっているかということは別にいたしまして、公明選挙連盟がどういう活動をしているかということについては、金を出しております以上、十分承知しておるつもりでございますが、私がその公明選挙連盟の活動という点について見た範囲内においては、公明選挙連盟は公正に、中立的に活動している、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/39
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040・太田一夫
○太田委員 だから、ひが目だと私は申し上げている。あなたは何かの座談会で、公明選挙の常町啓発ほどむずかしいものはないとおっしゃったと私は記憶しております。常時啓発がむずかしいということは私もわかるのですよ。しかし、選挙というものは、まず章百六十五日あるものと認めていらっしゃらなければならないわけです。告示が出てから選挙になるのじゃないというので、事前運動の取り締まりの法規も入ったでしょう。これもまた、やわらかくなったところときつくなったところが出てきた。従って、選挙は常時あるということになれば、常町啓発でしょう。常時啓発が必要ならば、それの中心になるのはどこだと思いますか。選挙管理委員会であり、公明選挙連盟という民間団体だ、こういうことになる。選挙管理委員会でできるなら、選挙管理委員会でもっと積極的にやればいいと思う。今度は事務局員を「置くことができる」というのを、「置く」ことに変わったでしょう。「できる」から「置く」というふうに自治法を変えて、事務局員を置かなければならないという義務づけにした。それほどの改正があるならば、管理委員会そのものに公明選挙の推進役を大きく負荷させて、そして具体的な実情に照らし合わせて——地区々々によって色が違っているでしょう。あちらではこういうことが多い、こちらではこういうことが多いということで違っているのだから、そういうものを一つ一つ分析して、常時啓発、啓蒙運動をやるべきだと思います。あなたのおっしゃるように、公明選挙連盟はやっているだろうから補助金を出しましょうということでは、あまりにも日本の国の財政の逼迫の現状から考えてみてなまぬる過ぎはしないか、そう思うのです。ほんとうの事例をあなたは御存じですか。ほんとうの事例を御存じならば、常時啓発なんかむずかしくないでしょう。こういうことがあったけれども、これはいけないことだとすぐ言えるでしょう。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/40
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041・松村清之
○松村(清)政府委員 公明選挙運動のやり方につきましては、いろいろ考えられると思いますが、しかし、この運動は、選挙管理委員会という、地方の選挙に関する公正中立である機関とか、あるいはいろいろな民間団体、すなわち複数の主体でもってあらゆる活動を進めていくことが、公明選挙の効果を上げる上において非常に効果があると考えております。ただ、選挙管理委員会という帯二の主体が選挙公明化運動をやるだけでは不十分で、いろいろな民間団体がこれとともにやることによって効果が上がると考えておりますので、私は、選挙管理委員会ももちろん選挙公明化運動を徹底的にやってもらうことも必要でございますけれども、それだけでは不十分で、やはりいろいろな主体がこの目標に向かって活動することが望ましい、私はそういうふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/41
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042・太田一夫
○太田委員 それではもうちょっと具体的にお尋ねしますが、先ほどお話のありました、選挙管理委員会が投票所の入場券を配る場合には、委嘱して配らせているだろうが、日当は出しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/42
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043・松村清之
○松村(清)政府委員 日当を出しておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/43
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044・太田一夫
○太田委員 日当を出すならば、もっとそれが公明選挙の推進に役立つ、その使命をはっきり持つ、たとえば公明選挙推進員というような腕章を巻いて、逆に、買収、供応、戸別訪問、利害誘導などということに惑わされないようにやって下さいということがスピーカーのごとく言える人を委嘱して、そういう人に日当をやって配らした方がいい。地方行政機構というものの末端に連なる者をもってそれをやらせるところに、非常に選挙を害する原因があるのじゃありませんか。その点どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/44
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045・松村清之
○松村(清)政府委員 この入場券の配付の方法につきましては、従来からの慣習もありまして、町内会、部落会に相当するようなところを使っておるところも多いかとも思いますが、できましたならば、そういうことでなくて、今のお話のように、公明選挙に役立つそういう人を頼んで配ることが望ましいと思いますが、こういうことも、その土地丸々の事情によって、人を雇うという上にも問題がございますので、できるだけそういうような方向に沿っていくように選挙管理委員会等に話して参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/45
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046・太田一夫
○太田委員 そういうふうにお考えになるべきだと思うのです。そうしませんと、今まで現実に行なわれておる選挙というものは大して腐敗しておらないという前提がありますと、答申案なんというものは行き過ぎだという議論がそこから出てくるのじゃないですか。そこから出てくるのですよ。たとえば選挙に金がかかる、金がかかるというが、実際世間がいうほど、そんなに金は使っておるわけではあるまいという底意があれば、今度のように、「当該選挙に関し、寄附をしてはならない。」というふうに、選挙そのものに限定するのだが、選挙というものは私は三戸六十五日続いておると思っておる。公職選挙法上にいう選挙じゃありませんけれども、選挙なる概念は三百六十五日続いておる。とするならば、「当該選挙に関し」などと限定することは、そもそも、良心の苛責に責められない限り、できないことだと思うのですよ。だから、そういうところは、今最後におっしゃった、投票所の入場券を配るやり方についても、それが戸別訪問を助長したり、一党一派のお先棒となったり、ないしは利害誘導あるいは脅迫、そういうことにならないように十分措置をさるべきだと私は思う。
そこで新井さん、今ちょうど選挙の腐敗の実態というものに触れつつあるのですが、行政機関の選挙干渉というものがどうも最近非常にひどいような気がする。それからもう一つは、今の、金をふんだんに使うところの金の選挙、こういう点が非常に強いように思うのですが、今あなたは、私が申し上げました、行政機関の末端組織あるいは全体の組織をあげて公職選挙法上の逸脱をやっているというこの事例は、全国から幾多の選挙のつど集まってきておることはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/46
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047・新井裕
○新井政府委員 どういうことを御指摘になっているか、はっきりのみ込めない点があるのでありますけれども、公務員の地位利用による選挙運動というものは、今度の改正案で相当広くなっておりますが、そうでない部面で、公務員であってしかも選挙法違反に問われた者も相当ございますけれども、ただいま、どの程度数字があるかということは、記録がございませんので調べはできませんけれども、最近の選挙でもそういう事例がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/47
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048・太田一夫
○太田委員 先ほど申し上げたのは、実は町内会的なもの、隣保班のごときもの、隣組のごときものの長という、実際上は公務員じゃありませんけれども、現実には各地において条例などを作って、町内会長の立場とか隣組長の立場を、はっきりと末端行政機関の地位にしようとする動きが出てきておるわけですが、そういうところで行なわれておりますいろいろな選挙干渉というのは、ほとんど各選挙民の自由意思というものを認めないで、部落の利害だとか、あるいは何々グループの利害のためにはこうしなければならぬという、選挙干渉的な態度で臨んでおるのです。非常にそれらが多いのです。それらが最近一番選挙を腐敗させておると思う。そのためにはもちろん金が要る。そこで、政治資金規正法というものはもっともっと厳重に規正されて、答申案通りにいかれてもなお私は不十分だと思う点がある。さらにそれ以上規正する必要があると思いますけれども、さらに政府案は、「当該選挙に関し、寄附を受けてはならないものとすること」、こういう、「当該選挙に関し」というように非常に小さな対象にしぼられてきたということについては、私は、政府提案というのはほんのわずかしか前進しておらない、つま先がちょっと動いたにすぎないものだということを先ほど申し上げたのでありますけれども、そういう地方公務員でない末端の町内会長、隣組長あるいは区長、隣保班長という人たちの組織的な選挙干渉という事実は、これは非常に多かったと思うのですが、御記憶にございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/48
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049・新井裕
○新井政府委員 選挙干渉というような罪は、公職選挙法上は限定された人間が処罰を課されておるわけでありますが、それ以外について、もっと社会的に見て干渉じゃないかという御趣旨と思いますけれども、選挙がいろいろな社会的な利害というものを代表して行なわれます以上、いろいろな団体がそのために動くという実態はございます。また、われわれの方も、公職選挙法違反の検挙をいたします場合に、比較的地位の高い者を重点を置きまして、末端は、被疑者の立場というよりはむしろ参考人に近い立場で調べておるということがございますので、検挙された被疑者の社会的地位はどういうのか、こういうふうにながめますと、あるいはそういうような人が多いかもしれませんが、そういう点の調べは統計的に何も当たっておりませんので、わかりかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/49
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050・太田一夫
○太田委員 それでは別の角度からお尋ねしますが、今度の公職選挙法の改正案の要綱の中に、政治資金の規正があるわけです。その政況資金の規正の中には、「政党、協会その他の団体は、国又は地方公共団体から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金又は出資金を受けている会社その他の法人から、当該選挙に関し、寄附を受けてはならないものとする」、これが今度の政治資金規正の眼目でございます。ところが、これは答申案にもありますけれども、一般世論というものは、全体的に政治資金の厳重な規正をしない限り、選挙の腐敗というのはあとを絶たないだろう、当該選挙だけに寄付をしてはならないとしても、もとからどんどん流れておるそのたまり水、たまり資金というのが、選挙に際して大きな魔力を発揮して国民の良心を虫ばむ、そういう意味から、政治資金規正法は、常に、その選挙に関するといなとを問わず、政治資金の寄付そのものを厳重に規正すべきだという国民の声は、あなた方取り締まり当局の方から見ると、なるほどその方が正しい、一般的な政治資金の規正をすることが今日の急務だということを御痛感になっていらっしゃると思いますが、御感想はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/50
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051・新井裕
○新井政府委員 個人的な見解を申し上げるのもどうかと思いますけれども、公職選挙法というのは選挙に関しての法規でございますから、選挙のみに注目してその間の動きを規制しよう、こういう法律だと思います。従いまして、政治活動全般についてそういうふうに規制するということが、はたして公職選挙法という法律の窓口から出る結論であるかどうか、私どもはにわかに断定しがたいものがあるのではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/51
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052・太田一夫
○太田委員 そうなりますと、あなたの方は、事前運動というのは、一体いつからを事前運動と目されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/52
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053・新井裕
○新井政府委員 太田委員も御承知のように、事前運動は大へん簡単な規定でございまして、選挙運動期間中あるいは立候補届出後でなければ選挙運動をしてはならないという規定がございまして、これに罰則がついております。従いまして、選挙の期間前の運動は、すべて一応事前運動と推定されるわけでございます。しかし、事柄の性質上選挙運動と目せられないものと昔からやや慣例的に考えられておるものがございますけれども、これについては選挙法上付らの規定がございません。従って、およそ選挙に関する大審院の判例をもしそのままうのみにいたしますれば、面接、間接を問わず、自分の当選を有利にするような行為が全部選挙運動だとするならば、事前に行なわれている運動はすべて公職選挙法違反ということになるわけであります。今山しましたように、それは事柄の性質上不合理な点もあります。昔からの慣例で、そういう点については、こうこうこういう程度のものは選挙運動とは言えないのだ、あるいは政治活動だというような形で解釈されておると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/53
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054・太田一夫
○太田委員 そうすると、お金に、選挙の運動の資金か政治運動の資金かという、資金に二色色をつけて見なければならぬわけで、選挙運動というのは、当選のあくる日から選挙運動になるのだから、選挙に関する運動の資金ということになるならば、これは選挙運動の資金としてとらえなければならない、政治運動に関する資金というならば、それは選挙の告示の前日までとらえるわけにはいかぬ、公職選挙法上の罰則などに照らし合わせるわけにはいかぬのだ、こういうことになるのですね。ですから、そこで選挙運動と政治運動とに資金を区別する必要が出てくるのですが、それは新井さん、やはりそういうのが正しいとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/54
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055・新井裕
○新井政府委員 私どもそこまで言い切って考えておるわけじゃございませんで、罰則をもってある事項をきめて確保しようというのであれば、われわれの取り締まり上、明確な範囲を限定してもらう必要があるということをわれわれは常に考えておるわけであります。従いまして、今設例をあげて御質問になりました政治活動は政治資金、選挙運動は選挙資金、こういうふうに理論的にははっきり分かれるわけでありますが、実際は、先ほどから申し上げておりますように、必ずしも明確でない部面が相田あることは、おわかりの通りだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/55
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056・太田一夫
○太田委員 そこで松村さん、選挙資金と政治資金との区別は、今度の公職選挙法改正案によってどういうふうに規定されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/56
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057・松村清之
○松村(清)政府委員 今度の選挙法の改正案に関しては、選挙資金、政治資金という、区制を法律の上ではっきりしておるわけではございませんが、先ほどお話がありましたように、「当該選挙に関し」、という言葉が一つのよりどころであるわけでございます。この「当該選挙に関し」という言葉は、現行法で公職選挙法、政治資金規正法のあちこちに出ておる、言葉でございます。従って、この「当該選挙に関し」というのは、抽象的には、当該選挙の際に——「際し」というよりももっと広い意味で、当該選挙のことを動機として、こういうような意味に抽象的にはいっておりますが、現行法において、すでに長年「当該選挙に関し」という観念はなじんできておる観念でございます。その観念を、今度政治資金の政党への献金の問題を扱う際にその言葉を持ってきたわけでございます。具体的な事例においてはっきりと判定を下すことはむずかしいかもしれませんけれども、私は、従来からそういう観念が法律のしで使われておりますので、その区別ができないものではなかろう、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/57
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058・太田一夫
○太田委員 そうしますと、選挙期間中であっても、これば政治活動の資金でございますといって寄付がなされますね。選挙期間中、告示から投票までの期間であっても、選挙運動に関する寄付ではありません、これは政治活動の資金として寄付をいたします、これはできますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/58
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059・松村清之
○松村(清)政府委員 理屈から言えば、仰せの通り、選挙運動期間中でも、これは政治活動の資金だから、選挙に使っちゃいけない、政治活動だけに使え、こういうやり方は考えられます。しかし、実際問題といたしましては、政治資金であるか選挙資金であるかということは、いろいろな事情を検討して総合的にきめなければならない問題でございまして、選挙の際に、これは政治資金だからというだけのことで、それが政治資金だというふうになるものでもございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/59
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060・太田一夫
○太田委員 あなたの議論からいけば、「当該選挙に関し、寄附を受けてはならない」、当該選挙というのは、非常に小さくなるのですけれども、「当該選挙に関し、寄附を受けてばならないものとする」ということは、できるだけ遠慮するということ、政治資金の受領を道義的に遠慮するということはあり得ても、これは道義の問題であって、法律の問題ではない。そうすると、「当該選挙に関し、寄附を受けてはならない」ということは、法律上
の条件というのはまことに狭いものだ、それだけでいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/60
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061・松村清之
○松村(清)政府委員 法律解釈といたしましては、「当該選挙に関し」というのは、選挙に関しという言葉よりも狭くなるわけでございます。「当該」という文字がついておりますことは、「この選挙」というものが具体化されてくるわけでございますから、狭くなります。狭くなるとは言いますけれども、しかし、従来から選挙についてのいろいろな規制については、「当該選挙に関し」という言葉をいつも使ってきておるわけでございまして、一般的に「選挙に関し」という言葉は使われておりませんし、また、その選挙資金について規正する以上は、「当該」という文字をつけ加えて表現することが妥当であろう、こういうふうに思っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/61
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062・太田一夫
○太田委員 そういうことになりますと、選挙に入らない前でも、選挙に関し寄付されたと認定されたら、それは政治資金規正法に該当しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/62
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063・松村清之
○松村(清)政府委員 仰せのように、まだ選挙が始まっていないときから、近く衆議院の選挙がある、参議院の選挙がある、この選挙にこの金を使ってくれということで金が渡されるならば、選挙期間に入るどのような以前におきましても、これは当該選挙に関する寄付になるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/63
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064・太田一夫
○太田委員 選挙の前がいいなら、選挙のあとも同じことでしょう。それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/64
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065・松村清之
○松村(清)政府委員 それはむろんその選挙に関して寄付がなされるものならば、選挙期間中も選挙のあとでも同様でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/65
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066・太田一夫
○太田委員 そうなれば、常時選挙は関連してくるから、期間中という時点において受け渡しが行なわれたという以外のものまで入るとするならば、選挙運動期間中に受け渡されたものに必ずしも限定されない。選挙の前後にも全部これが範囲として入るものならば、当該選挙に関し、寄付を受けることができないというような表現を今度の政治資金規正法にお使いになることは、あまり意味がないじゃないか、済んでしまって、もう当選は確定してしまった、届出選挙もしてしまっている。けれども、あなた借金があってお困りですね、じゃ百万円寄贈しましょう、それはいけないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/66
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067・松村清之
○松村(清)政府委員 今の事例のように、選挙の済んだあとで、選挙で使った穴埋めのためにこの金をお使い下さい、こういうようなことがありますれば、これは選挙に関する寄付で、この改正法によって禁止される事項でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/67
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068・太田一夫
○太田委員 それなら、そのときの旨い分が、あなたの御活動が不十分になってはまことにわれわれとしても心苦しいから、後援者として、あなたを理解するものとして、ここに百万円の資金があるから、どうぞ御自由にお使い下さいと古いましたときには、それはよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/68
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069・松村清之
○松村(清)政府委員 これはさきに申しましたように、当該選挙に関する寄付というのは、ただその金を授受する際の言葉だけでは判断できがたいと思います。あらゆる事情を総合して判断すべきであって、たとえ自由にお使い下さいという口実で渡された金であっても、その金の使途が、今ありましたような選挙運動に使うとか、選挙運動費の穴埋めに使うということになりますれば、これは当該選挙に関する寄附ということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/69
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070・太田一夫
○太田委員 そうなれば、答申案に戻った方がいいのじゃありませんか。これは一体穴埋めに使ったのか何に使ったのかなんということを一々調べたり、それを探索するなんということは、並み大ていのことではないですよ。法は作ったけれども守られないということになっては大へんだから、やろうとしたら非常に努力が要る、苦心が要りますけれども、それをやはり三百六十五日やらなければならないとなりますと、そんなめんどうくさいことをやらなくても答申案の通りに、会社、労働組合その他の団体が選挙または政治活動に関し寄付をすることは禁止すべきだというこの原則に照らし合わせて、答申案に、当面次の通りの措置をするとあるけれども、いわゆる個人中心主義であるとか、あるいは関係の地方団体と利害関係のあるものは寄付してはならない——その若干のゆるめはしてもよろしゅうございますけれども、原則としては、答申案の、一切の政治資金というものを規正するという考え方、寄付を規正するという考え方になった方が一番やりいいじゃありませんか、同じことになるんだから。どんなときに帯付をしてもそれは当該選挙に関連したものであるということなら、これにやはり触れるということになるならば同じことだから、いっそのことこの答申案に戻ってよさそうなんですが、答申案からまた別の表現をなさった理由は、何かもう少し狭い意味に考えていらっしゃるのだろうと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/70
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071・松村清之
○松村(清)政府委員 これは必ずしもおっしゃるように、「当該選挙に関し」のあるなしにかかわらず、実際上同じになるかというと、そうではないと思います。当該選挙というふうに具体化された選挙というものは、そうしばしばあるものではございませんが、政党の政治活動というものは常住不断に行なわれておるものでございます。従って、常住不断に行なわれる一切の政党の活動についての寄付を制限することと、当該選挙に関する寄付を制限するということとの間には、庭際におきましても非常な差があると思います。そこで、これは先般来しばしば御議論のあったところでございますが、政党への政治献金について、答申にありますように全面的に寄付の禁止をする、これも一つの理想的な行き力であろうと思います。しかし、これは日本の企業というものの性格からくる問題かとも思いますけれども、日本の会社等につきましては、現実には国と財政的なつながりのある会社が多いのでございます。そういう会社から献金を受けるべきでないということは、これは純粋理論としてはそうでございましょうけれども、そういうことを今直ちにやりますと、政党の政治活動に対して急な影響が出てくる、そういうこともありましたし、また現行法におきましても、当該選挙に関するという、そういう表現のもとにいろいろな規正もやっておりますから、この際は「当該選挙に関し」ということでこの事項を整理しておきまして、一般の政治活動についての寄付の問題は、現在政党制度全般の問題も検討しておるところでございますから、これらの結論と見合って措置して参りたい、そういう考えで政府案ができておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/71
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072・太田一夫
○太田委員 暫定的に一歩進めるにはこの程度より仕方がないという御趣旨と思いますけれども、当該選挙というのは、そのように幅広いものであるとするならば、答申原案でも差しつかえない、それくらいの断があってもしかるべきじゃないかと思いますが、まああなたの力のお考え方がそうでありますから、いわゆるなまぬるい改正案ということになったのでしょう。でしょうけれども、「当該選挙に関し」なんというのでも、選挙の直後に、あなたお困りのようですから、お小づかいが足らないようですから一つ……と言って出すのは、いわば当該選挙に関することと類推されてはっきりするのですが、一応選挙のほとぼりがさめてしまってから出されるものは、事前に出されるものは、これはなかなか鑑定がむずかしいですよ。当該選挙だって、いつある選挙かわからないのだから。それは単なる友人間、知人同士の間の資金の援助、金繰りの援助だという程度のものなら、当該選挙に具体的に、あとになれば、そのときにはその意思がないということで、これはだんだんと実際は狭まってくるのじゃないかと思います。これはむずかしいことですから、おそらくあまり広く取り締まりはやれないと思いますが、それは極力広く解釈されることは私は必要だと思いますから、あまりこまかくせずに広く解釈をして、答申案の趣旨というものを殺さないようにしてほしいと思うのです。
もう一つ、新井さんが来ていらっしゃいますので、この際お尋ねしたいことがあるのですが、最初に公安委員長の安井大臣にお尋ねいたします。
警察の中立性の問題ですが、私は、選挙の際に警察のとられる役割というものは実は非常に大きなものがあると思う。かつては猛烈な選挙干渉が行なわれて、村の駐在に至るまでが政党がかわれば全部かわってしまったという時代がありました。そういうことがまたそろそろ頭を持ち上げてきて、中立性というものがなくなって、何か一方に偏するような傾向があるのではないかと疑われる節もあるのですが、どうですか。そういう中立性に疑義を持たれるような傾向というものはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/72
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073・安井謙
○安井国務大臣 終戦後いろいろな制度が変わりましたが、警察の中立性の点なんか最も変わったものの一つだと思っておりますし、ことに選挙に際しましての今日の警察の取り締まりというものは、まことに厳正中立と言うて過言ではなかろうという感じがいたします。いい例が、前回出しました違反というようなものを見ましても、その比率から見ましても、これは御承知の通りの実態であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/73
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074・太田一夫
○太田委員 大臣、中立性いよいよ厳しくいよいよ確固として、いわゆる金剛不壌の中立性ができつつあるとおっしゃったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/74
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075・安井謙
○安井国務大臣 これは神様でありません、人間のやることですから、金剛不壌というか、ものの表現には限度がありましょうが、中立性を保っておるという点では非常にりっぱなものだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/75
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076・太田一夫
○太田委員 公安委員長みずから、中立性がそこなわれつつあるとおっしゃるわけにいかぬでしょうね。これはあなたの答弁としてはそれでいいでしょう。国民側の答弁を申し上げます。国民はこう見ています。最近警察は、政党に頭を下げるか、官僚に頭を下げるか、二者択一のときを迎えつつある、こう言っている。この意味はおわかりになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/76
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077・安井謙
○安井国務大臣 私にはどうもよくわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/77
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078・太田一夫
○太田委員 まことに厳正中立の委員長としまして、全くそんなことは考えられない、わからぬとおっしゃるのもけっこうなことです。私はそうあってほしい、あなたの気持とあなたの方針というものが厳然として光を輝やかしてほしいと思うのです。ところが、国民、選挙民の方から見ますると、警察の中立性が非常に失われてきつつある、しかも、ただ無方針に失われておるのじゃない、官僚に頭を下げて警察というものが栄える道をたどるか、政党に頭を下げて警察の繁栄栄をはかるか、いずれかをしなければならないときがきつつあるなと見ておるのです。だから、具体的な例ですが、たとえば、山の中の駐在さんが選挙のときにどういう態度をとりますか。これは非常に悩みますよ。そうして最後にその人の気持の中に出ることは、いわゆる時の権勢に直結するというか、時の権勢につながっておるところの候補者に対する取り締まりは手心を加えなければ、かさの台が飛ぶと心得ておるのです。だから、そう考えておる以上、取り締まりが片手落ちになるのはやむを得ない。しかも選挙には何かがなければならぬから、どこかでノルマの点数だけは作らなければならないでしょう。そんなことはないとおっしゃるでしょうけれども、末端ではそう考えておるわけです。ある権力の層に連なる特定候補者に対するとかくの批判やら、とかくの摘発ということは、自分の命をかけて、首をかけてのことでなければできません。こういう感情がもし芽ばえておるとするなら、私は、警察の中立性というものはもう土台がゆらぎつつあると思うのです。そういうようなことのないようにしてほしいと思うのですが、もちろん、あなたは、公安委員長としては、警察の中立性は厳然としておるし、決してこの中立性をそこなうようなことはさせない、こういうお気持でしょうね。この決意はあしたになっても絶対変わるものではないでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/78
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079・安井謙
○安井国務大臣 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/79
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080・太田一夫
○太田委員 ところが、これは一つ公安委員長として研究してほしいと思うのです。内務官僚と申しますか、そう言っては悪いですけれども、今日の政治を動かす特殊な実力グループというものと、それからもう一つは、何々政党という政党というものと、こういうものの二つの影響を警察は受けて中立的じゃない、どちらかにつながることによって繁栄しなければならないんじゃないかという気持が動きつつある。もしそういうことになったら大へんだと私は思いますので、極力中立性は厳守してほしいと思うのです。ただ、末端の若い警察官の中には、こういうことを育っている人があります。われわれは官僚には望みを持っておると言うのです。政党には望みをなくした、政党そのものにはあいそをつかしたが、官僚の中には、非常に将来日本の国のためになる人が多いような気がする、その官僚の中でも新官僚、新しく出てくる官僚の出現、それが力が大きくなることを望むというふうな感じを持っていらっしゃる方が多いのです。このことは、私はちょっと遠回しな言い方をしますけれども、非常に警戒すべきことだと思う。そこで警察の中立性について私は非常に心配して今お尋ねしたわけですが、公安委員長としては、絶対そんなことはない、そこなわれることはないとおっしゃった。新井さん、取り締まりの中からそういうような偏向性が末端に現われたということは、このごろお気づきになっておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/80
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081・新井裕
○新井政府委員 大臣からお答え申し上げましたように、人間のやることであるということ、あるいはまた、というものも、社会の中に暮らしておる者が警察の職務を行なうのでありますから、迷うことが全然ないというふうに割り切るのも不自然かもしれませんけれども、私は、今大臣がおっしゃいましたように、戦前と戦後の警察を比べてみて、私自身戦前と戦後にわたって仕事をしてみて感じますことは、戦後の警察というものの中立性は、制度上も、あるいは心がまえの上でも、きわめて信頼すべき筋にあるというふうに考えています。御指摘のようなことを感じたことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/81
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082・太田一夫
○太田委員 全く感謝すべき御発言でございまして、公安委員長の安井さんといい、長官の柏村さんといい、新井局長といい、私どもは、その人格識見並びにその洞察力に対しては、非常な敬意を表しております。こういう人に今の日本の国の警察行政、公安秩序を守るという先頭に立っていただく限り、私は警察の中立性というものは疑う余地はないと思いますし、心配ないと思いますけれども、うっかりすると、地方において票読みが始まるのじゃないかという心配があるのです。もしも警察当局によって票読みが始まるようになりますと、それは往年の選挙干渉への道を開くことです。これでは公職選挙法も何もない。非常に取り締まり当局の力というものがありますからね。この票読みなどというようなことが始まらないようにしなければならぬと思いますが、その点、安井大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/82
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083・新井裕
○新井政府委員 票読みというのがどういう意味ですか。選挙の全般について、警察は取り締まりの立場からいろいろと状況を観察していくということは、当然あり得ると思いますが、そのために、先ほどからもお話があるように、一方に偏した取り締まりをやるとか、選挙違反の摘発をやるという傾向は、現在のところ、私は全体を通してはきわめてまれなケースだというふうに考えます。また逆に、これは私がそう思っておるとか、言ったとかいうのじゃございませんが、私どもは、選挙の取り締まりの際は、町の市民層を摘発する方がむしろやりやすくて、たとえば、もっと露骨に言えば、労働組合のようなところは、なかなか内部的に機構が複雑だから、手が入らないのだというふうな批評さえ持ってこられるような場合もかえって逆にあるようでございまして、私どもは、それもあっちゃなるまい、やはりこれは公正でなければならぬというふうに考えておりまして、決して御懸念のようなことは今後もないように努力もいたしますし、また、従来そういった傾向は非常にまれな、まあ特異のケース以外にはあるまいというふうに確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/83
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084・太田一夫
○太田委員 いや、非常にけっこうなんです。そうあってほしいと思うのです。そのことを確認します。すなわち、警察庁当局並びに公安委員会の当局は、勇気を持ってその道を前進してほしいと思うのです。そうせずに、選挙において各候補の票読みをやって、特定候補者が弱いとなったら、その候補者に票を集中するような何か作戦、策略が用いられるようになってくると大へんだ、こういうことを申し上げておるのです。これはぜひそういうことのないようにしてほしいと同時に、教育でもそうです。きょうは文部大臣いらっしゃいませんけれども、荒木文部大臣は日教組を敵にしていらっしゃる。日教組というものをつぶそうとするか、日教組と対決ばかりして、そして教員が労働組合運動、政治活動なんというものをやることに対して、あまり好ましいことではないとおっしゃるけれども、さて選挙のときになるとどうですか。校長先生や教頭は、学校の先生にどういうことを指示しますか。〇〇候補のところにあなたたちは顔出しをしなければいけないよ、そうしなければあなたたちは遠いところに移されるよ、行かない者はだれだというようなことで、選挙に対してば特定候補の方への誘導ということをやる風潮があるのじゃありませんか。けれども、なかなかもってそういう校長、教頭のなされることに対しては治外法権の趣きがある。私はそういう点をおそれまして、この際警察が中立性というものを断固として保って、勇気を持ってその道をお進みになることを心から願うわけです。そうしなければ、この公職選挙法もほんのわずか一歩を進めただけの改革だ。一つの選挙資金の規正法だけでも、ちょっと考えてみればなかなかむずかしいものがある。けれども、そのむずかしいものを実際に法に照らしておやりになるのが、第一線の警察当局であります。だから、中立性の確保というのが厳然としておるものなら私は心配しませんけれども、教育の面において、地方自治の面において、あるいは一般的な警察行政において、警察活動において、もしもそういう間違ったことがあちらこちらに出てくるようになりますと、これはどんな法律を作っても何にもならぬから、ぜひとも中立性を保っていただいて、取り締まり当局の存在がほんとうを言うと公明選挙の中心になるくらいの権威を作ってほしいと思うのです。そういう点を私は心から念ずるわけですが、大臣どうですか、御同感でございましょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/84
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085・安井謙
○安井国務大臣 御趣旨につきましては全く同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/85
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086・加藤常太郎
○加藤委員長 次に、井堀繁男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/86
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087・井堀繁男
○井堀委員 まず第一に、答申案の中で国家公務員、すなわち高級公職員の立候補制限を、強く重要な項目として要望しておるのにもかかわらず、政府案はことさなにこれを避けられたのには、それぞれ理由があると思います。この点について、まずできるだけわれわれの納得できるような御説明を伺ってみたいと思っております。それから順次具体的なお尋ねをしていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/87
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088・安井謙
○安井国務大臣 答申におきまして、いわゆる高級公務員の立候補制限を出しておられます趣旨は、その高級公務員が公務員たる地位を利用して、選挙上に大きな弊害を残した実績がある、こういうことに基づいてのことであろうと思うのであります。政府としましても、その御趣旨を体して、具体的にいろいろと検討いたしてみたわけでございます。
第一に、選挙上そういう忌まわしい行為を、地位を利用してやるという職務を限定すること自身が非常に困難であるということ、さらに、一部にそういう者があったからといって、全面的にこれを禁止することは、憲法上にも相当問題が残るであろうというような点、そういうことから、この一部の制限というものは、技術的にも踏み切ることができなかった次第であります。今度改正案で出ております案につきましては、前回青木先生が御指摘になりましたように、やってみるといろいろな角度からの困難が伴うものでありますから、私ども、逆に地位利用を取り締まるという点に重点を置いたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/88
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089・井堀繁男
○井堀委員 この答申を受け入れなかったのには、一つには憲法上疑義がある、一つには技術的に困難だという二つの理由があげられているようでありますが、前回この委員会で、社会党案に対する青木委員の質疑の中で、青木委員の考えを、あるいは自民党の考えであるかと思いますが、ある程度明らかにしたようであります。しかし、この審議会の審議の経過などを観察してみますると、また審議委員のメンバーなどから見ましても、憲法に対しても深い知識を持った人たちが、かなり多数参加をしておると見ていいのであります。それからまた選挙法の技術などについては、実際上幹事役を引き受けた自治省の選挙局が、何かと相談に乗ったというわけではありませんが、ある程度経過を観察しながら、側面から協力したいきさつなどもあるようであります。こういう技術的にも全く不可能なような答申が行なわれるということを、あらかじめわからないこともなかったと思うのでありますが、ただ問題は、憲法上疑義があるかどうかということについては、後刻社会党の問題で、私どももう少し質問していきたいと思うのでありますが、その前に、これは政府案として、こういう重要な答申を無視したということに対して、今世間が非難を浴びせておりまする問題でもありますだけに、もっと掘り下げて検討したいと思いますので、ただ抽象的に、憲法上疑義があるというようなことで、そうですがと言わけにはもちろん相なりません。そこで、まず憲法上疑義があると思われる点を御検討なさったと思いますから、わかりやすく、順帳正しく御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/89
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090・安井謙
○安井国務大臣 具体的な法律論につきましては、局長からでも御説明することと思いますが、私の言いました疑義というのは、高級公務員を全面的に禁止するということに対しては、大きな疑問が出てくる、こういう趣旨でございます。答申の内容自身が全面的に疑義がある、こう言っておるわけじゃないのであります。しかしこの答申の内容を実現しようと思うと、これは一部の制限をするか、全面的な制限をするか、どちらかしかないわけでありますが、全面的な制限をするのには非常に疑義がある、それから一部をやろうと思いますと、これは技術上とうてい不可能だ、こういう結論から、結局もとになる、いわゆる地位利用の行為自体を厳重に疑るという方法をとらざるを得なかった、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/90
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091・井堀繁男
○井堀委員 その憲法上疑義を生ずる部分を、どういうように理解されてこれをおやめになったかということが大事であります。憲法の第何条のどこに抵触するか、一つ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/91
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092・安井謙
○安井国務大臣 憲法は十四条で、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とある。もう一つ四十四条の、「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって荒別してはならない。」 こういう意味から、私どもは高級公務員なるがゆえに、これを全面的に制限をするということについては、こういった条章からの疑問が当然生じてくる。しかし、それが地位利用をしているとか、する危険が必ずあるというので制限をするというなら、その意味はよくわかりますし、これはまた問題は別だと私は思いますが、それではそういうものを摘出をして一定の基準をどうつけるかということになりますと、あらゆる角度から検討いたしました場合に、どうしてもこれは困難であり、実現不可能だ、合理的な選定は不可能だという見地から、むしろその精神とする地位利用行為そのものを、全面的に縛るという方が妥当であろうと考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/92
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093・井堀繁男
○井堀委員 今の憲法の二カ条の解釈でありますが、こういうことについては、ひとり立候補の制限だけではなくて、投票を前提といたします選挙の自由を、この選挙法では各方面でかなり制約せざるを得なくなって制約をしておるのであります。どうして立候補のときだけ憲法の政治活動の自由の点を強調されるか。技術的な問題はあとでお尋ねしますが、私は憲法に対する解釈は、この際統一しておかないと、選挙法全体の問題にも影響するし、今度の改正部分だけではないと思います。従来も、かなり憲法の精神と相剋するような制約が必要であるということで、選挙法については、従来慣行として認めたものもありましょうし、あるいは必要悪として認めたものもあると思うのであります。こういう問題が関連して出てくるので、全体の上からも必要でありますから、もう少し、たとえば憲法十四条のどこにどういうように——立候補の制限をすれは、あるいは全く立候補させないということをある部分においてはすることになると思うのでありますけれども、この答申の中にいうているのは、こういう地位を利用して選挙を有利にするというようなことがよくないという意味であると私どもは理解しておったのでありますが、そういう点から観察をいたしまして、この答申案は、この文章ではごく簡単な答申をされておりますけれども、こういう結論が出るまでにはいろいろの論議が行なわれておることを警告などで聞いております。そういう結果として、高級公務員、これこれについてはという、たとえば、「国又は公社、公団若しくは公庫の法律で定める職にあった者」というようにしぼって、しかも限定を参議院の全国区というふうにしておるところに、私は、憲法の精神に抵触しないような最小限度の制約を加えるという趣旨でこうなったものではないかと判断をしておるわけであります。そうすると、その判断と、政府の憲法違反の疑義を差しはさむこととは、まっこうから対立する結果になると思うのであります。そういうふうに理解していいでしょうか。これは大事だと思いますから、一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/93
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094・安井謙
○安井国務大臣 重ねて申し上げますが、私は、答申案自体に憲法違反の疑いがあって、これを捨てたと言っておるのではないわけでございます。そうではなくて、この答申案を生かして実際上にやろうと思うと、方法は二つしかない。一つは、答申案の趣旨をもう少し広げて、いわゆる高級公務員全体にこれを及ぼすものでなければならない、それならばこれは割合に簡単にできる、しかし、これをやると憲法違反になる疑いがあるということを申しておるのでありまして、答申そのものに非常な憲法上の疑義があるから、それを取り上げなかったと言っておるのではないのでありますから、その点は誤解のないように願いたい。それではどうしぼるかという技術的な点だなりますと、いろいろ考えてみましたが、これはちょうど、社会党の案に対して青木委員からの御質問の応答で現われましたような、文字通りどれをどういうふうに取り上げてみても不合理なものが出てくる、こういう感じが実はいたしまして、そこで全体のなにで、むしろ行為自体を縛るという方がより合理的であろうというふうに解釈したのでありまして、答申で言われておりますような一部制限でありまするならば、私は、憲法十二条でいう、同じ権利でも公共の福祉のためにこれは制限を受ける、その他の一定の条件のもとに制限を受けるということは、具体的な方法があれば、あってもやむを得ない、そうは解釈しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/94
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095・井堀繁男
○井堀委員 もっとはっきりお尋ねしておきたいと思いますが、答申案の精神を否定するものではないと一方では言いながら、しかし今度の改正案の中では全然採用してないのですよ。あなたの方は立候補制限については触れていない。運動の点で制限をしようとしている。だから、ここでは趣旨を全く否定した提出になっているわけです。だから、それはどういうわけかとお尋ねしたら、憲法の条章に抵触する疑いを持っておる、いま一つ、技術上困難だ、こういう御説明だった。これは言い方が違うだけで、結果は、この答申案を政府は二つの理由で全く無視してきたということには変わりないのじゃないですか。三つの理由をあげておられる。だから、この答申が憲法違反の疑いがあるというのでありますならば、もっとはっきりさせないといけません。われわれはその点を実は明確に伺いたいと思っておるわけでございますが、言葉のあやではなしに、実際は二つの理由でこれは否認されているのでしょう。その点はっきりして下さい。こう思う、ああ思うではなくて、当然この答申案のここの項だけは、政府案は全く無視しておるわけですから、その理由はと聞いたら、あなたの御説明によると、憲法に抵触する疑いがあるということと、技術上の困難という理由だけでしょう。それははっきりしておると思うのですが、この点もう一度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/95
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096・安井謙
○安井国務大臣 専門的ななにについては政府委員からも御答弁すると思いますが、ただ、私の育ったのは、繰り返して申し上げておきますが、この答申そのものに憲法違反の重大なあれがあると言っておるのではないのでありまして、あの答申の精神を具現化しようとすると、方法は二つしかない。一部のものを、明らかに答申で言われておるようなものを摘出して、一定の職域をきめるか、職責をきめるか、あるいはそういう精神がいわゆる高級公務員には全般に行なわれやすいからということで全部に当てはまるか、二つしか方法はないのであります。全部に当てばまるということになると、これはいささか憲法上問題である。そこで、答申の説の通りやろうと思うと、技術的に合理的に法律化するということは不可能である。そこで、答申の精神も、いわゆる高級公務員が憎いから将来の立候補を制限するというような趣旨じゃあるまい、これはむしろ地位を利用してやる弊害をとめるための方便であろうと思いますから、その精神を生かすために全面的に公務員の地位利用というものを縛ろう、こういうことに考えたのでございまして、さらにもっと具体的な理論的な問題につきましては政府委員から答弁をさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/96
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097・松村清之
○松村(清)政府委員 ただいまの大臣のお話で大体は尽きているわけですが、私から若干補足いたしますと、高級公務員の立候補の制限につきましては、御承知のように、過去におきましても一再ならず国会の議題となったことがあるのでございますが、しかし、そのいずれの場合におきましても、ただいま大臣がおっしゃいましたような、法のもとの平等の原則に反するとか、社会的身分によって被選挙権に区別をつけるとか、あるいはもう一つ、職業選択の自由という憲法の条文にも関係があると思いますが、この三つの憲法の条文に抵触するという説がきわめて強くて、今度の機会まで見送られてきておったのであります。たまたま三十四年の十二月の選挙制度庁さ会の答申におきまして、この高級公務員の立候補制限の問題が正式に答申の中に取り入れられたのでございますが、その際は、選挙制度調査会としては、憲法上の問題があるということを承知の上で、憲法上問題があるならばしょうがない、こういうことを前提のしで答申いたしたことがございます。その際、政府といたしましては、これらの立法化について部内で法制局等といろいろ検討いたしたのでございますが、結局、全面的に高級公務員の立候補の制限をやることについては憲法違反の問題があるということで、立法できなかったのでございます。こういういきさつがあって、昨年から行なわれました選挙制度審議会におきましても、特に今度は高級公務員の立候補制限を議題に上せまして、今度は憲法上の問題に対処いたしまするために、内閣の法制局から責任部長に来ていただいて、内閣法制局としての意見を聞いたのでございます。その意見の要旨は、憲法には
「公共の福祉」という言葉が使ってありまして、公共の福祉という理由で国民の基本的権利を制限できることになっておりますが、内閣法制局はそういう公共の福祉という言葉は使いませんけれども、合理的理由という言葉を使ったのでございますが、合理的理由があるならば高級公務員の立候補の制限をすることは憲法の規定に必ずしも抵触するものでない、これがまず第一点でございます。それからその次に、しかし、その高級公務員を全面的に立候補の制限をいたすについては、法制局としては合理的理由があるとは認められない、これが第二点。それから第三点としては、そこで合理的理由があって、高級公務員の一部について立候補の制限をすることについては必ずしも憲法に抵触するものではない。こういう三点が内閣法制局の公式な見解であるのでございます。そこで、この選挙制度審議会といたしましては、そういうことでございますので、高級公務員を全面的に制限することなく、ここで申しておりますように、「法律で定める職」というふうに高級公務員のポストを規定し、それから選挙も、参議院の全国区に限って制限することにいたしたのでございます。従ってこの選挙制度審議会の答申の内容だけならば、これは抽象的な表現でございますから、これだけならば憲法に抵触することにはならないのでございますが、先ほど大臣も言われましたように、それでは法律で一体いかなる職を指定するか、こういう具体的な案の作成の過程になって初めて、そこにそれが合理的理由を持っておるかどうかということで問題が出てくるのでございます。そこで私ども政府事務当局も、答申の線を生かすために、立候補制限の形でいろいろな案を考えてみたのでございますけれども、いずれの案をとりましても、そこに合理的な理由の見出される案というものが得られない。これは先ほどからお話しの社会党の案についても、いろいろ先般御批判がありましたように、また選挙制度審議会の審議の過程で、ある委員が提出されました過去の実績に基づく案をとってみましても、合理的な理由があると認められるような案というものば得られない、私はこれは不可能な問題だと思います。私も、実際は不可能だということを審議会で申したことがあるのでございますが、そういう事情から、立候補制限と真正面に取り組むことは、なかなか合理的理由のある案というものが得られぬ。それでこの答申のねらいというのは、高級公務員が在職中その地位、行政組織を利用して遺勅することが、選挙の公明化にとってきわめて好ましくないから、そういう行為を抑止する、そういうところにねらいがあると思われます。そこでただいま大臣からお話がありましたように、そういう高級公務員の地位の利用あるいは組織の利用、高級公務員につながる他の公務員の選挙運動、こういう面の規制からこの答申の趣旨の実現をはかるように、こういうことで政府案のような内容にいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/97
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098・井堀繁男
○井堀委員 だいぶはっきりしてきたと思うのです。憲法上の問題については、技術的に可能であれば問題じゃないというふうにはっきりしてきたと思うのです。でありますから答申案は、憲法に抵触するということが技術的に解決できるかできぬか、言いかえれば、技術上この答申案を立法化することが不可能だという言葉を今使っておりましたが、不可能だということでこれを否定した、こういうふうにはっきりしてきたと思うのです。そうすると、問題はまた出てくるわけです。立候補の制限だけが憲法の先ほどあげられたもの抵触するのじゃないのですよ。運動の制限などについてもはっきりあるわけです。選挙権と被選挙権を区別して考える必要はないのですから、そういう点で技術的に不可能だという理由がはっきりしてきますと、それでは立候補の制限については不可能であるけれども、有権者としての選挙活動その他に対する制約は技術的に可能だ、こういうことになってくると思うのです。それでは立候補の行為だけについては技術的に不可能で、選挙人としての選挙行為その他については制限することが可能だという理屈になると思うのですが、この点のはっきりした何かの説明がつきませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/98
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099・松村清之
○松村(清)政府委員 こういった問題は具体的な事項かり取り上げてみまして、そしてその具体的な事柄について国民の権利がいかように制限されておるか、その制限の仕方が合理的であるかどうか、憲法上の言葉からいえば、公共の福祉に照らしてそう制限するのが妥当であるかどうか、こういうふうに具体的に論じてみないと、はっきりしたことは申し上げられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/99
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100・井堀繁男
○井堀委員 そうすると、問題は技術上の問題になるわけでありまするが、あなたの方は内閣法制局の知識をかりて検討した結果不可能だという判断を下して、この部分については答申案を無視した、こういうふうにはっきりしてきたと思うのです。そこで問題は、技術的に可能な道が開ければ、この問題はもちろん答申案を尊重するということにはっきり政府は言い切れますかどうか、一つ大臣から御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/100
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101・安井謙
○安井国務大臣 地立を利用して選挙の運動をやるという弊害があるようなものをとめるというだけのことでございましたならば、これはその方法が明確になれば、こういう職にあったものは必ずやるであろうということが明確であり、これをそういう理由でとめなければならぬということが明確であれば、これはその方法があろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/101
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102・井堀繁男
○井堀委員 それでは一つ答申案を審議される際に、いろいろな資料を集められたようでありますが、詳細なことをよく御存じだと思いますから、この際、この機会に、従来高級公務員あるいはここに指摘しておりまするような法律で定める公職を利用して当選を有利にせしめたというような事例を、これこれの場合はこの程度というふうに、程度もありましょうが、一つ具体的に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/102
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103・松村清之
○松村(清)政府委員 これも具体的には、なかなか申し上げにくいのでございますが、過去の実績によりますれば、政府部内の局長とか次官とかあるいは外局の長官等で参議院の全国区に立って、そうして高点をとって当選されておる方が相当ございます。しかしこれらの人たちが、はたして在職中その地位なり行政組織を利用したのかどうかという点になりますと、それは個々具体的の場合に、それに類似した行為をされておる方もあったかと思いますが、この際だれがどうしたということは、私としては申すことが非常に困難でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/103
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104・井堀繁男
○井堀委員 あまり時間をそういうことでとりたくないと思って単刀直入に伺ったのでありますが、この、審議会がこの制限を設けなさいということは、こういう具体的な弊害があるからということが前提になったと思うのです。抽象的に観念的にこういうことを答申してきたのではないと思います。これはきわめて明らかなことだと思います。だからそういう実績について、それが全くぴしゃっとはまるかどうかは別ですけれども、要するに、こういう答申をしなければならなかったということには、原因がはっきりあるわけでありましょう。その点について審議会で実績を幾つかあげておると思いますから、それを紹介しなさいということなら答弁ができるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/104
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105・松村清之
○松村(清)政府委員 これは二通りの趣旨から審議会では問題とされたように伺います。一つは、ただいま私から申し上げましたように、たまたま三十四年の参議院の選挙がございましたが、この三十四年の参議院の全国区の選挙で当選した者の中のベスト・テン、というと言葉が悪いですが、ベスト・テンに相当高級公務員が入っておるわけであります。何十万票というような得票をかき集めた。そういう事実に刺激されて、三十四年の暮れの調査会では問題になったのだと思います。もう一つは、これは私としてはどういう事実があるかということを具体的に指摘することはできないのでございますが、話として聞きますと、いろいろ高級公務員が次の参議院の全国区に立とうとする場合において、在職中その地位を利用したりあるいは末端の組織までいろいろ使って、事実上選挙運動といわれないまでも、それに類似した運動をやっておるという事実が、世間でも一かなりしばしば話題になっておるのでございます。こういう二つの事実から、高級公務員の参議院全国区の問題が議題になったと私は推測しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/105
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106・井堀繁男
○井堀委員 そうもたもたせぬでもいいのではないですか。審議会でこういう答申をしてきたのは、要するにこれこれの弊害と思われる実績を——私はその、審議会には参加できませんものですから、その事情はわかりませんので、これは人ずて、あるいは資料で、間違ってばいけませんから、確認する意味でお尋ねしているのです。だからあなたの方のお考えでなくていいのです。審議会独自の見解でもいい。また三十四年の調査会の話題に上ったということのようでありますが、いずれにしても参議院の全国区に高級公務員あるいは法律で定める公職がとかく選挙運動に利用される、そういう立候補はよくないということを——思いつきでこういう答申が行なわれるはずはありません。だからそういう実績をある程度認めての上での答申だろうと思う。これは私の想像で言ったのじゃいけませんが、私はそういうふうに報告を聞いている。それであなたの方からはっきりと、こういうようなことだということで問題が論議されたはずでありますから、その実績を一つここで御紹介願いたい。こういうふうに聞いていますという、それを出しなさい。記録に残しておこうじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/106
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107・松村清之
○松村(清)政府委員 先ほど申し上げましたように、審議会が取り上げました動機というのは、全国区に立って高点を占めて当選するというその事実、その一人の人が高点をとってたくさんの票を集めるということ、そのことに一つの疑いといえば疑いがあるわけでございます。それとあわせて、しばしば事実上、在職中の地位、組織の利用ということも認められるということも話題になっております。そういうものをかみ合わせて、これを何とかしなければならぬということで、審議会として取り上げたのでございます。
それでは過去においてどういう人が立候補して出たかということになりますと、これはたくさんあるわけでございますが、特に一番顕著だと思われるポストを具体的に指摘いたしてみますと、林野庁長官というのがございます。この林野庁長官は、過去五回、昭和二十二年から昭和三十四年まで五回参議院の全国区の選挙があったわけですが、毎回立候補して当選しているわけです。しかも毎回人をかえて当選しております。最近までそのポストにあった人が、それは選挙の前にはやめておりますけれども、人が毎度かわりながら当選している。こういうことは、私はその人が在職中いろいろ選挙運動類似の行為をやったとは考えませんが、そこに何か組織として一つの問題点があるように思われるのでございます。これは余談でございますが、内閣法制局等ともいろいろ協議した際に、ほんとうに立候補制限する合理的理由があると思われるのはこの林野庁長官だというような話題が出たくらいで、これは一番顕著な例だと思います。そのほかはいろいろ出ておりますけれども、あるときの選挙では出たが次の選挙では出なかったり、また続けて当選しておりましても人が同じ、すなわちすでに参議院の現議員である人が次の選挙で当選しておるというようなことで、一番当てはまる顕著な例ば今申したようなポストであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/107
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108・井堀繁男
○井堀委員 なかなかしぶといな。今、のは一つの例をあげたのですが、五十歩百歩じゃないですか。答申をするにはこういう実績に基づいて行なわれたという根拠が幾つかあるでしょう。それをあげておきなさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/108
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109・松村清之
○松村(清)政府委員 私は御趣旨がはっきりつかめなかったのですが、過去において参議院の全国区に立候補して当選した職を申し上げますと、これは一回のもありますし、二回以上のもありますが、一回でもあったという職を拾い上げてみますと、大蔵省の関係として、大蔵次官、銀行局長、主税局長、国税庁長官、地方のある国税局長です。それから農林省関係として農林次官、開拓局建設部長、これは農地局と変わっているかと思いますが……。それから地方の農地事務局長、地方の農地事務局の建設部長、林野庁長官、食糧庁検査課長、建設省関係として建設次官、それから運輸省関係で観光局長、港湾局長、その他として中小企業庁長官、それから三公社の関係として国鉄の総裁、役員のうちの若干、それから施設局長、専売公社の役員、公社の役員、こういうようなところがあげられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/109
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110・井堀繁男
○井堀委員 それでは、これは数もありましょうから、その部分だけ一つ資料としてぜひ委員長から出さしていただきたいと思います。
これは私は疑義のいろいろあることは、あとで社会党にも質問してお聞きしたいと思う。しかし今までの御答弁で明らかになりましたように、この答申それ自身が憲法に抵触するという疑いは持っていない、しかし答申案を実現していこうとするためには、技術的に憲法に触れないでそういう法律を作ることは困難だという理由で、問題ははっきりしてきたと思うのです。しかも政府は、内閣の法制局の検討だけで一応こういう結論を出したということも明らかになった。衆議院の法制局もありましょうし、また多くの学者もいるわけでありますから、私どもとしてはこの点については、答申案にむげにそういう理由だけで結論を与えることは、かなり軽卒だと思う。それから社会党さんのように、直ちにああいうふうに踏み切ってこられることが、はたしてこの答申案に忠実であるかどうかということについても、また社会党にお尋ねするつもりであります。
そこで、ようやくはっきりしてきたのでありますが、この答申は、過去の実績などから、どうしても制限を加えないとフェアな選挙にならないということだけは明らかになったと思う。だけれども、それを技術的にどう制限するかということは国会の私どもの仕事でありますから、提案者は限界を一応御説明なさいまして、社会党からはそれに対する対案が出ております。両方を審議することによってよい結論が出てくるという可能性が出てきましたので、また後日この問題については委員会の検討の大きな課題になってくると思うのです。
さっきの資料は出して下さいね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/110
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111・加藤常太郎
○加藤委員長 ただいまの井堀君の御希望通り、当局に指示し、さよう取り計らいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/111
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112・井堀繁男
○井堀委員 次に今度は再度を変えてお尋ねします。
答申案の中で問題になりますものは、選挙運動と管理の項で、かなり多くの問題を提起しております。きょうは警察庁もお見えになっておりますが、今度の答申案の中で私どもの一番心配をしておりますものは、公明選挙を実現するために選挙運動に法律で制約を加える、あるいはその違反者に対しては制裁を強化しようという主張が一方に強く現われていると思う。これは無理からぬことだと思うのですが、その場合に、この答申案の全体を流れているものの中で制裁を強化するという、たとえば連座制の問題を初めとして、かなりきびしい制裁が要請されている。これは過振の実情からいって当然であると思うのでありますが、その際についても問題になるのは、制裁を加える以前の問題であります。すなわち、違反の事実を一体どうして掌握するかということが、答申案の中ではあまり深く考慮されていないようであります。というのは、既存の制度をそのまま確認しておくのであろうと想像されるのでありますが、選挙違反を摘発するということの実際問題であります。ここでいっておるように制裁が厳重であることは、言うまでもなく、その制裁を受けなければならぬ違反の事実というものが要するに全部取り締まりの網にひっかかってくるということが前提であって、初めてきびしい制裁が意味をなすと思う。今までのように運が悪かったからつかまる、間が悪かったからひっかかったのだというようなことになると、制裁だけをきびしくするということは、私は結果は間違ってくると思う。悪質違反に対しては厳罰主義をもって臨めというこの答申については、私どもは大賛成です。である限りには、その前提となる違反の事実が、今の警察能力や、あるいは検察庁、裁判所までも含めて、事実に対して正確な取り締まりが要するに可能であるかどうかを論議しなければならなくなってくると思う。これはあとで社会党案と政府案との間で伺わなければならぬのですが、連座制、これはやはり技術士の問題になってくる。憲法の問題です。とにかく、そういう制裁を加えなければならぬ事実を確認するためには、ある場合には身柄を拘束する、ある場合には国民の自由を侵害するような措置をとらなければならぬ場合が起こってくる。それが結果において見当違いであったなんということになりましては、やはり重大な人権じゅうりんが起こってくるわけであります。といって、そのことばかりを懸念しておりますと、取り締まりができないことになる。だから、制裁ばかりをやかましく言うけれども、その制裁を加えるまでの第一段階における、要するに違反の事実をどうして把握するかということについて、私は答申案は抜けておると思う。また、政府がそういうものについて——社会党も同様なことだと私は思う。それは今の警察能力でいいという前提のようで、どこにもほかの法律ば出ていないようです。それとも、念のために一つ伺っておきますが、この制裁を厳重にするためには、もちろん選挙違反の事実については細大漏らさず把握する検察能力、警察能力というものを特別に何か準備されておるのかどうか、準備するとするならば、その方の法律改正が必然的に必要になってくる、この点、念のためにその用意があるかどうか、伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/112
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113・安井謙
○安井国務大臣 御指摘の通り、刑罰なり制裁を強化するという建前は、たまたまつかまった者だけを強化するというのではいかぬということは、御説の通りだろうと思います。やはり全面的に公平に取り締まりはやらなければいかぬのでありますが、今回はとりあえずこの答申をもとにしての選挙法の改正でございまして、取り締まりの具体的な問題、これは警察なり検察等を通じた法律の改正というものまでは、今のところ政府としては考えておりません。ただ、改正されました選挙法の精神によって警察としてはできる限り十分の取り締まり態勢をしいていく、こういうことで考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/113
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114・井堀繁男
○井堀委員 公安委員会の委員長、それから警察の最高首脳部がおいででありますから、念のために伺っておきたい。今政府の御答弁で明らかなように、取り締まりについては検察制度を充実強化する、あるいは選挙のための特別のそういう機構を考えていないということでありますから、既存のものを選挙の取り締まりにも使っていくということにはっきりした。そうすると、これは今のままの一番極端な例を申し上げますと、選挙違反をつかまえていくためには、戸別訪問は実質的にそう悪質だと思われぬけれども、戸別訪問を取り締まらないと、買収あるいは供応といったような悪質な犯罪を検挙する手がかりがなくなってしまうという話をよく聞きます。私も調査に行きまして、当時者の声のようであります。それから選挙違反の場合は、ここにも指摘しておりますけれども、選挙犯罪を一般の国民がどう意識しているかということが問題であって、もし一般の善良な国民がそういう犯罪を犯罪だと認識しないということになりましては、これは大問題でありますが、認識したとしても、破廉恥罪と考えない、あるいは直接に被害を受けるような犯罪でないというようなことが、どうしてもその性質からいって出てくると思う。でありますから、これはあとの方でお尋ねをいたしますが、要するに、選挙違反に対する社会通念、常識といいますか、その水準からいたしますと、その方から摘発されてくるということはまずまずない。競争する相手方、対立候補の方からそうした投書がありましたり、あるいは摘発が行なわれたりすることはあると思う。これは必ずしも公正な資料として取りしげにくいのではないか。そうすると、現在の警察あるいは検察庁の能力をフルに使って違反を摘発するという実際上の——先ほど技術士の問題だけか出てきたが、いずれも選挙というものは技術上の問題です。この問題を究明しないで罰則規定だけを強化してみても、私は結果は不公平が起こってくると思う。要するに、おそるべき悪法になってくる。それとも一罰百戒、運の悪いやつだけ罰すればあとは改められるというような状態でないことも明らかなことであります。要するに、警察の検挙の手をのがれ、あるいはもっと言えば、そういう事犯が暴露しないであんばいよく済むかということばかりを気にするようになってくると、ますます選挙は悪質なものになってくる。この辺は非常に大切な問題だと思いますので、せっかくきょうはその総元締めの立場をとられる方々がおられますから、ここで議論を聞いていただたいと思うのでありますが、連座制の問題について、政府案と社会党案が出ている。政府案はかなりざる法で要領よく逃げている。社会党は、きびしくこれを追及しようとしている対照的なものである。きびしくすることは私どもは賛成だと先ほど申し上げました。一体そういう事実が警察にわかっていても手を出せない場合がある。こう言えば、そんなことはありませんと答えるより仕方がない。国民の要するに理解の仕方としては、買収というものは、ほかの犯罪のように、もらった力もやる方も、どっちも秘密を守るのは必然的の理なんです。神様でないものがどうして一体大勢の人の取引を見つけることができるか。あるいは、この間もちょっとその力の専門家の雑談の中で出たのですけれども、えさをつけて要するに泳がしておる。それが方々かぎつけてきて摘出なときに引き上げる。そうすると手落ちもなくて済む。先ほど言うように警察が責任を問われることもない。それは最初からえさをつけて放してあるのですから、運動員のような顔をして買収してもらったり、ごちそうをしてもらったりする。それはちゃんと警察で今言うように使命を受けている。培養活動をやっているのですから、これは自由にできます。そうしておいて、これをあげよう、これは手かげんができるわけです。これは外部から見ると、実に巧妙な取り締まりだと思う。そうして御存じのように、選挙の結果というものは権力の座につながる。憲法でいう最高の機関に選ばれてくる人たち、面接間接に自分たちの身分にも影響を受ける。だからこそ、警察は人民の運営管理のもとに置くべきだという公安委員会の制度が生まれてきたと思う。ところが、その公安委員長には閣僚がすわっておるわけなんです。もちろん制約はありますけれども、これはやはり指揮命令権の、程度こそ相違していますが、影響なしにはおられないわけです。こういう実際問題を伏せて、その末端だけをいじくるというやり方は不当だと私は思う。だから、この問題はぜひこの際は明らかにして、それから選挙に対してはもう徹頭徹尾やる、余すことなくやるというなら、そういうかまえを警察機構の中でもしていかなければならぬ。選挙のときだけほかの犯罪の取り締まりをやめてこれにかかるなどというやり方は、実際上できませんよ。また、そういうときに悪質な犯罪が同時に発生しないとも限らないわけです。だから、こういう全く矛盾した事実をどうして解決するかということについて、政府、それから取り締まりの地位にある人のお考えを一つ伺っておきたい。それは器用に使い分けするのだということになれば、ふだんは遊んでいる人を持っているということになる。そうでなければ、今言うように選挙のときだけはほかの犯罪の方は手を休めてそれにかかるということになるわけです。そのときはもう無警察状態です。そのどっちかです。この点について、もし選挙法が厳罰主義で臨む、強い罰則規定を出して制裁を打ち出してくるからには、余すことなく神に誓って摘発していくということには、警察全能力を打ち込んでやっても足りないと思う。しかし、それでもやれるというなら、あなた方専門家の見解をこの際伺っておきませんと、この法案の審議についてあやまちを来たすと思いますので、今私の言ったことでおわかりだと思う。それぞれの立場の見解を伺わせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/114
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115・安井謙
○安井国務大臣 捜査の技術的な点につきましては、刊事局長もおりますので、お答えするかと思いますが、私は、選挙に対しまして警察の取り締まりが一般に厳正なものでなければならぬ、この御説には全面的に賛成でありますし、またそうしなければならぬ、ことに、一部だけ運悪くつかまったのが非常に過重な制裁を受けるということが不合理であることもよくわかると思います。しかし、同時に、今の選挙というものに対して、これはもうすべてが悪いものだから、これにスパイを入れ、おとりも入れて、全面的な捜査網を発揮してやる、一種の選挙恐怖状況というものを巻き起こすことがはたしていいことかどうか、これは相当な配慮が必要であろうと、私は選挙というものの性格から見て思います。そこはおのずから常識の線が出てくるのじゃなかろうかという感じがいたしております。ただ、今後選挙の取り締まりを十分にやるという意味では、今のところまだ警察体制が不十分じゃないかという点につきましては、よく検討いたしまして、できるだけ合理的に、手抜かりのないように今後も配慮を加えていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/115
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116・新井裕
○新井政府委員 実は、審議会で発育の機会を与えられまして、警察としてどういうふうに考えるかということで、率直にここの委員会にも申し上げたことを出しまして、すべて罰川をもって確保するという方法はこの際考えを改めてほしいということを申し上げたのでありますけれども、いろいろ新しい工夫をされますと、必ずそれを確保するために罰則をお考えになりまして、結果としてはむしろ今までより罰則が多くなったような感じがいたします。われわれは、根本問題としては、きびしい罰則というものは少なくしてほしいという気持を今でも持っております。それから選挙違反は全部つかまらないじゃないかという御意見、いつも言われるのでありますけれども、大へん残念なことですが、どろぼうでも、全国の統計を見ますと、半分しかつかまっておらないわけであります。選挙だけ百パーセントつかまえろといっても、これは人間のやることであり、いろいろ刑事訴訟法の制約もありまして、なかなかそうは参りません。従って私は、百パーセントでないからいいかげんだというのは、やや性急な結論だと思います。
それから、先ほども御意見がありましたけれども、三百六十五日選挙なんだから、選挙運動期間中だけやるのはおかしいじゃないか、こうおっしゃいますけれども、しかし、すべての活動が選挙に連なる、関連があるというのは、社会学的に見ればあるいはそうでありましょうし、文学的に表現すればそうでありましょけれども、そう見るのはまた行き過ぎでありまして、やはり選挙があるということに接着した時期あるいは選挙運動期間というものにおのずから集中して行なわれる、それがまた最も選挙に効果があるわけでありますから、そういう実態に即してわれわれの方は配置人員をあんばいしてやっておるわけであります。今、井堀委員がおっしゃいますように、ほんとうに二六時中やるのならば、別に五千人ほどの専従員を置いてやらなければできないというようなことは、非公式に申したこともあるようであります。しかし、一体そういうことが選挙のためにいいのかどうか、これにはまた国民の一人として大へん疑問に思うのであります。戦前は、選挙粛正という、粛という字を書いて、大へんおっかないようなことをやっておりましたのを、公明選挙という名前にいたしましたのは、単なる字づらの問題ではなくて、公正で明朗であるということを目標にいたしたのだと思います。従いまして、選挙運動をやる際に、警察があたかも主役であるがごとき認識というのは、私はぜひ一般に改めてもらいたいという気が非常に多くするのであります。
よけいなことを申すようで恐縮でありますけれども、司法統計をずっと見て参りますと、第一回の総選挙以来、戦後の選挙の違反の検挙件数というものは実に莫大なものであります。ことに、昭和二十七年に四万八千人の検挙というのは、今までの選挙の取り締まりの公式に残された数字では絶無であります。これまで努力しておるのにもかかわらず、一体そのために選挙がどれだけよくなったかということについて反省をいたしてみますと、必ずしもそれだけでよくなったとは私ども思いません。従いまして、われわれの与えられた、限定された職務の範囲内で活動するのが選挙のために最もよろしいことであるということを私ども考えておりまして、罰則があるから何でもかでも徹頭徹尾やるのだというような考え方は毛頭持っておりません。ことに、井堀委員も御承知と思いますけれども、戦前の選挙法の歴史をずっと法規をもってごらんになるとわかりますけれども、戦前は、全く選挙というものは警察が管理しておるような形のものが多かったのであります。出納のすべての書類を警察署長に出す、署長が必要があれば選挙事務所に行って調べることもできるというような規定すらあったのでありまして、こういうものに返ることは私どもは絶対に賛成できない。それはわれわれの取り締まりの便宜からいえばそれでいいのかもしれませんけれども、一体取り締まりの便宜のために選挙があるべきものではなかろうと思います。従いまして、いかに不自由がありましょうとも、選挙運動が公正明朗に行なわれるのであれば、われわれは工夫をこらしてできるだけの力をこめて、技術的には法律によって与えられた職務、さらに一般的には国民から期待されている職務を厳正に執行していくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/116
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117・井堀繁男
○井堀委員 はっきり御答弁いただきまして、私どもの想像ではなくて、事実がある程度明らかになりました。それは限られた制度の中で選挙法を取り組んでくるわけでありまして、それから、これは私の多年の念願でもあるし、またこの委員会でもこの改正の中で一番重視しておりまするのは、答申案の中の策三の項をこの前もちょっと申し上げたのですが、問題は、制裁を強化するというからには、取り締まりが厳正に行なわれるということが前提にならなければならぬということを聞いたわけです。ところが、今回の答申案は、制裁についてはかなりきびしい答申になっているけれども、取り締まりについては従来の考え方以上に発展していないと思われたので、それで問題点を指摘する意味でお尋ねし、御答弁をいただいたわけです。私は、今回の政府の選挙法改正の際における制裁規定について答申案に忠実であるということを問題にする以前の問題を今指摘したわけであります。でありますから、この制裁規定を強化するということに踏み切るということにもしこの委員会が決定するならば、法律になって出てくるでしょう。そうすると、要するに、結果を正しく出すためには、やはり取り締りをモットーとする、あるいは捜査についてそれに見合うような機構を持たなければならぬということが明らかになってきた。ところが、現状では、さっき警察の立場から述べられたように、なるべくこういうものに参加したくないのは言うまでもない。民主社会にあって、警察が選挙に干渉しなければ公明選挙が行なえないということは、国民自身の恥辱でもあります。これは民主主義に対する反抗でもあります。元来、取り締まりというものは、いわば刺身のつまみみたいなものです。あくまで選挙民の政治常識の高揚と、政党なり候補者なりの自粛に待つべきものであることは、もう議論を待たぬところである。しかし、それは理想であって、実際はそうはいかぬのでというので、答申案がここに出てきたものと判断するわけです。そうだとするならば、制裁規定を強化するならば、当然それに見合う、捜査あるいは取り締まりが妥当であるような手続を法律としては考えるべきではないか、これを一向考えていないというのは、一体どういうことでしょうか。逆説を私は言っているわけではない。ざる法にしたのは、そういうことを見越して、制裁の方も表向きだけは合わしておいて、裏の方は従来と変わりないのだというような考え方でありましようか。そうでないというならば、どうしても制裁を強化するためには、捜査も取り締まりも当然それに見合うように改善あるいは強化しなければならぬということは明らかになったと思うのです。この点はごまかさないで一つ政府の考え方をはっきりしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/117
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118・安井謙
○安井国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、選挙なるがゆえに、これを全面的に一つの罪悪の対象のような感度で取り締まっていくということは、私は、今日の選挙の性格上いかがなものであろうかという点を十分考えております。今度のこの選挙法改正は、取り締まり強化だけじゃございません。いろいろな面にもたくさん問題が出ておるわけでありますが、特に取り締まりの面につきましては、後援団体の活動の規則であるとか、あるいは連座制の強化であるとかといったような点を強調されておるわけでございます。そういう点ではみ出してきたものについては、従来の観念以上にきめられたものについては、当然警察としてその部分についての取り締まりを十分にやっていくべきものであろうと思います。また、今、刑事局長もお答えいたしましたように、選挙なるがゆえにあらゆる力を総動員して選挙にかかっていくというような形に持っていくということは、必ずしも好ましいことではなかろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/118
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119・井堀繁男
○井堀委員 安井さんは私の質問をはぐらかしている。むずかしい質問をしているんじゃないですよ。制裁規定を強化するという答申案ですから、それを忠実に社会党案は守っている。あとで社会党にも聞くつもりです。そうすれば、さっきから皆さんの御答弁で明らかなように、制裁する以前に——だから、すぐ具体的にお尋ねが出てくるのでありますけれども、たとえば、今度の改正案の中で連座制の部分を取り上げてみましても、親族をどう扱うとか、あるいは突貫的に選挙運動をやっている者をどう規定するかということを、ここでいいものを考え出して規定したとしても、その範囲を広げれば広げるほど効果があるわけですからね。それをどこでとめるかという技術士の問題だというが、私は技術の問題でなく、程度の問題だと思う。その程度とは一体何かということです。それには二つの面を考えなければいかぬ。それで大目的は、われわれの今日の理想とするところではないけれども、どうしてもやはり取り締まり、制裁を強化することにしなければ公明選挙に近づけぬということでありますから、それは必要なる悪として認めるというならば、それに見合うような条件を整えるということでしょう。ところが、要するに選挙違反を摘発していくためには、選挙管理委員会としても別にそういうところまで研究していないのですね、そうすれば、やはり既存の制度ということになると、警察を使うことになる。だが警察の方は、さっきからお話のあるように、なるべく選挙運動の取り締まりに参加したくないという、これは姓前であります。もし警察の力ばかりを期待することになると、戦前のように、与党のために巡査部長までとりかえてしまうような、警察官を選挙運動員にしなければならぬようなことになる、われわれはそういう過去を持っておるわけであります。それがもういかぬことは言うまでもないわけであります。少しでもそういう方向に、逆コースをとらぬようにしなければならぬ、そういうことばこの際厳に慎まなければならぬ。ここで警察を強化して、警察の力にたよって公明選挙をもしも進めるということになったら、世論はごうごうとしてこれに反対するであろうと私は思う。でありますから、そこの点は、一つの世論が、時代の要求があるわけですから、これが民主主義の姿でありますから、そういうことを前提にするならば、取り締まりを従来通りにして——制裁だけをということになりますと、これはだれが考えても結果は明らかでしょう。一罰百戒という効果があるものなら別ですよ。この点は政府はどのように考えているかということを明らかにしてわれわれは論議をしていかなければならぬものですから、そこのところを聞いている。だから、安井さんに答弁しやすいように二つのことを聞いたわけです。それは、答申案は、制裁を強化せい、われわれも、連座制をもっと拡大強化せいというのですから、はっきりしております。それをやるためには、その違反の事実をだれが認定するかということです。二つある。国民が認定する。国民の問題はこれは別の項でお尋ねしたい。ここの項では、結局、制裁を強化せい、強化するためには、当然その対象になるものを打ち出していかなければならぬ、その打ち出す方法は何か。何もないということであってはならぬ。それを聞いているわけです。だから、一つは、今の警察制度というものに対して改善、改革というか、どういうか知りませんけれども、それで警察当局も逃げられたのですが、現在の機構で許された限り、こう言っておりますけれども、四六時中それをやるということはむずかしい、無理でしょう。その選挙期間中だけでけっこうと思う。この法律にも、これこれの期間にやった行為はいかぬというように、それははっきりしている。それだから、選挙運動の期間については、国会議員の場合は、全国一斉に、しかも激しい運動が行なわれてくるのでありますから、今の警察能力ではその期間だけほかの業務が停滞することは間違いない。ここの問題をどう解決するかということが同時に法律の中にも出てこなければいかぬのではないか。その必要はないというなら、答申案はあんばいようごまかそうという考え方なのか、どっちですか。どっちでもないというならどうするのかということをお答えいただきたい。簡単なことですから、その点、安井さん、ごまかさぬではっきり言って下さい。あとでわれわれが政府案を審議していく上にも、あるいは社会党案について質問していく上にも、その点が明らかにならないと隔靴掻痒になりますから、時間がむだになりますから、その急所の面だけを答えていただきたい。現在のままでいいというなら、その部分については答申案を受けられぬのか。ほかに何かいい方法がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/119
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120・安井謙
○安井国務大臣 大へんむずかしい御質問でございますが、結論的に申しますならぼ、この選挙法を改正することによって、選挙の取り締まり体制を変えるための、少なくとも警察は、法律改正であるとか、特殊の作業をすることは格別考えておりません。ただ、従来やっておりましたような取り締まりに不合理な点があれば、これを十分直し、また、この法律が通りますれば、この法律の精神に沿った取り締まりが十分できるような有機的な活動は強化していきたいと思いますが、そのために選挙取り締まり用の人員を格別にふやすとか、あるいは法律、制度を直すというふうには考えておりません。そうすると、それじゃ、こんな法律が出ても、どんな強いものが出ても、まるでナンセンスじゃないかというお問いかと思いますが、私は必ずしもそうじゃないと思います。これは従来同じ犯罪として扱われておったものに対する評価が変わってくるのだと思います。従って、こういうことは今まではいいと思われており、あるいは今までは非常に軽かったというものが、性格上これは重くきつく評価されてくるのだということでございまして、今のところ、結論的には、警察制度を変えたり、法律を変えて特別のこの対策をやるということは、よしあしの御批評は別として、考えておらぬわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/120
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121・井堀繁男
○井堀委員 だんだん具体的に聞けば、すぐまた元へ戻ってくると思いますが、むだを省きたいと思ってお尋ねするのですけれどもい言いにくいから言わぬと思う。今度の改正は、答申案にこたえてですけれども、抽象的に言うと、形式犯はできるだけ減らしたい。それからそういうものは公営の方にいったりしておりますから、いい傾向へ向いている。ところが、こういう形式犯の取り締まりは楽なんです。張って悪いところにポスターを張ったり、検印のないポスターを張ったりするということは、だれでもわかるのです。取り締まりは容易なことです。その容易なことはやめた方がいいというのだから、それは趣旨はいいが、今度はこの中で連座制の強化によって——社会党の案を見ればすぐはっきり出てくるわけでありますが、政府案を見ましても、この連座制の強化は、たとえば出納責任者とか、あるいは総括責任者だとかいう言葉としてばあるけれども、実際問題をつかむときに、われわれも経験しておりますけれども、一体総括責任者というものを届け出をすればわかるのですが、それが実際に総括責任者の役をするかしないかということはだれが見るのでしょう。私は、違反を検挙していく場合には、形式じゃなしに、実質を見ていくべきだと思う。連座制の場合一番問題になってくるのは金銭を取り扱ったり、あるいは選挙活動に対する命令、支配権を持っている者をいうのですから、それについて届け出をすれば、した人だけでいいのか。やはりその実質をつかんでこなければ、制裁が妥当性を持たぬことになる。そうすると、名義人をこっちに作るのです。昔のように出納事務長でもいい。そのほかに陰にちゃんとした者を置いたらどうするのです。そういうものを一体どうして今の警察能力や今日の機構の中でつかむことができるでしょうか。わかり切ったことじゃありませんか。そういう改正なんです。だから、これは今の話じゃないけれども、どろぼうだって半分しかつかまらぬというほど警察は忙しいのだから、能力をどんなにフルに使っても今日の治安警察だけでも手一ぱいだというのに、選挙のときだけその方に手を抜いたら、二分の一か三分の二しかあがらぬという議論ができるわけです。そうして今度は、従来の形式犯から知能犯、しかも一番大きな買収事犯、あるいはそれに類するような、金の動きを左右するようなものをつかもうというのです。だから、これはたびたび私ども地方へ出て、取り締まり当局からの希望意見として聞いたのを報告したこともありますが、選挙のときだけは通貨はやめなさい、選挙用の金券を発行してという要望が出たのは、私は適切な意見だと思う。今でさえ、現行法でもそうです。そうすると、選挙のときだけは特別の金券でやりますから、取り締まりが非常にはっきりするわけです。日本のお札や硬貨にはしるしがありませんよ。何ぼ選挙にはこれだけの金といって限定してみても、出納責任者とかあるいは総括責任者とかいうものだけを別に置いておいて、それが金を扱わないで、だれでもやれますからね。銀行に頼んでもいいのですよ。そんな取り締まりをお願いしなければならぬことになるのです。警察もお手上げで、ごめんだとおっしゃっている。結局、法律を作ったところで、答申案の趣旨に沿うことにならぬのじゃないかということは、これは安井さん、何も議論せぬでもわかったことである。そこら辺をどういうように解決するかということの説明がなければ、この法案の説明になりませんよ。これだけ罰する、した者は処分するというだけの話で、しかも懲役五年のやつを十年にするとか、あるいは失格をここまで広げるとか、そういうことを変えてみたところで、失格するかしないかの前提になる違反の事実をどうしてわれわれは把握していくかということが大前提でなければならぬ。これは政府として考えておかなければならぬ。この力は考えておりませんということがわかったわけです。あなたの方でも法律の改正をやろうと言わぬ、あるいは行政的にどういう制度の改正をやろうとも言わぬわけでありまして、今まで通りとおっしゃっている。そうすると、これはえらいことになるのじゃないかと思うんですよ。それとも、特別に何かそういうものを把握するような方法などということについてお考えでしょうか。もう限度の問題です。社会党と政府案との間の非常に興味のある問題はここだと思う。だから、形式犯のようなものならいいけれども、さっきから行うように、これは今の警察能力でもある程度やれる、ちっとは忙しくなるけれども。しかし、今度の連座制の制裁のきめ手になる出納責任者だとかあるいは総括責任者だとかいう名前で呼ばれている、選挙を実質的に候補者にかわって支配していくという人たちは、こういうもので一体どうしてつかまえるか、つかまえ方はどうしておやりになるか、一つその点ためしに聞いてみましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/121
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122・安井謙
○安井国務大臣 井堀さんがるるお述べになっております、つかまらなけば何にもならぬじゃないかということも、一面確かにお説の通りだと思います。しかし、それでは、つかまえるための手役として方法をどういうふうに広げるかというと、先ほど申し上げましたように、これが警察万能になって、選挙というものを犯罪の対象のように初めから考えていくといういき方は、決して好ましいものじゃない。そこで、合理的な捜査をやり、取り締まりをやるということに限定して、の法律や制度の改正は、取り締まり当局としては、少なくとも警察は考えていないという点は、お答えした通りであります。そこで、それじゃざる法になってしまうじゃないかという御質問でございますが、私はその点はいささか違うと思うのでありまして、今度の連座制の強化の答申がありました面につきましても、たとえば出納責任者、総括主宰者というものがつかまって、それが犯罪を犯しておれば、これは連座制にかかる。しかし、陰におった人がつかまったりあるいは親族が身がわりになってやっておったのがつかまっても、これは連座にかからないのが今までの法律である。そこで、そういう者は実際的にやっておるのだから、出納責任者と同じ、あるいは候補者の身がわりと同じ仕事をやっておるのだが、そういう者がつかまった際は、つかまっても従来はかからないが、今度はそういう者がつかまれば、それは連座の対象にするということで、刑罰の評価を重くしておる点においては非常に違ってくると思うのであります。同じような摘発にしましても、その結果の評価が変わってくる。この意味では、私は、この法律自体が実際に与える影響は変わってくるので、決してこれがそのために出しても何にもならぬ法律だというふうにはなるまい、こう思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/122
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123・井堀繁男
○井堀委員 あなたの言葉じりをとらえるわけじゃないけれども、何にもならぬどころでなく、さっきから言っているように、私は連座制を強化せいという主張をしている。するなら、もっとはっきりしなければいかぬじゃないか。とにかく、あなたの評価はどこに基準を求めるかといえば、結局失格という最高の制裁ですから、それはいいと思う。最高の制裁を加えるということについては、より明確にして、より強いものを出すということは、その評価の上からいえば当然の結論です。その点は社会党の方はなかなかはっきりしていいと思う。そこで、なぜもっと答申案のようにやらなければならないかということが次に起こってくるわけです。その前の議論を今しておるわけです。その点では社会党の方に軍配が上がってしまうのです。要するに、答申案通りやろうとすれば、できるだけ連座規定というものを拡大して——程度の問題ですけれども、その程度は、要するに評価を高く求めれば拡大するということになるわけです。こんなことはわかり切っておるわけです。それをできるだけ縮めていくことにいかに苦心しているかということは、具体的に質問すればあとでわかりますけれども、それ以前にはっきり考え方を伺っておかないと、質問がむだになるからと思って、その以前のことを聞いておるわけです。それは私どもがさっきから繰り返し言っているように、そういういわば制裁規定のようなもの、極論すれば、悪質なものはどれもこれも失格するというふうにきめれば、それが一番効果があるわけです。だからその点は、それをどうこうというのじゃなくて、それを強化しなさいという立場で質問をしているのです。しかし、それをやるのは——五十歩百歩の議論になってくるわけですから、これは社会党に聞いてみようと思うが、社会党の案も考え方は同じである。取り締まりの方はあなたの方にまかせて、制裁のところだけ高いところにきめようというのですから、これはどういう綱渡りをするのか、聞いてみようと思っております。(「民社党ずるいぞ」と呼ぶ者あり)それで答弁の機会を与えると思いますから……
それで大事なことは、取り締まりを強化するということはもとよりはっきりわかっておる。だから私は答申案の第三を一番先にお尋ねしたのです。要するに、今度の答申案の趣旨はどこにあるだろうかということはだんだん明らかになってきたと思うのです。それはやはり選挙民の政治常識の高揚、あるいは政党や候補者の自粛を世論の前にただそうという、民主政治のあり方を説いているわけです。そこへ改正を持ってきておるなら、少々そういうものについての議論が粗雑であってもいいと思う。しかし、この問題は、この前お尋ねして明らかになったように、何らの準備もやらない。これはあとで具体的にお尋ねしますが、どうしてもこの問題ははっきりしませんと、結果は答申案の趣旨に沿わない逆なものを作り上げる危険性があることを冒頭に申し上げてお尋ねしておるわけです。今の段階では、制裁規定を強化するということはわれわれは異存はないと言っておる。それを強化するためには、連座制を強化すると同時に、その具体的事実をどうして把握するかは、捜査と取り締まりにかかってくるわけです。これは従来通りということに今までなってきておる。ここで問題の焦点が明らかになってきたと思う。
きょうは次に触れる時間があまりありませんけれども、大きな問題だけははっきりしてきたと思うのです。答申案というものがずっと出ていますけれども、大事なところは三つだと思う。第一の問題は、立候補の制限というようなことでフェアな選挙をやるという前提を作ろうとしておるのですから、大事なことだと思います。それを技術的に困難だからといって逃げては、答申案に不忠実なものになってしまう。この点の立法技術についての工夫を政府が怠っておるならば、われわれがやらなければならぬ。これは与野党の間で修正を必要とするという論拠が一つ出てきたと思います。第二の問題は、制裁を強化するというからには、その制裁が効果を上げることにしなければならぬと思う。要するに、公正な取り締まりが、そういうふうに集約されてきたということは、これは当然の経過ですから、それの前提となるべき処置について今度政府では何もやっておらぬということであります。こういう点が一つ明らかになってきたと思うのであります。それから、この前わずかの時間でお尋ねいたしました問題ですが、きょう時間があればこれから一番大事なところに入るわけでありますが、この答申の三項の、要するに公明選挙運動推進に関する一から六までの項が一番重要だと思うのです。この項について、たとえば政府としては、この法案と同時にぜひ予算をつけて出さなければならぬ性質のものであります。その予算の用急があるかないか、あるいはまた、選挙管理委員会の機能をどういう工合にしようとするのか、あるいは学校教育までここに持ってきていることにつきまして、これは非常にいいことでありますが、これはあとで委員長にお願いをして、ここに出ておりまする「学校教育及び社会教育の充実」これをどうして効果あらしめるかということによって、第一、第二の問題はある程度の救済ができると思う。でありますから、この三つは別々に論議するわけにはいかぬことになりますが、順序から言えば、第三の問題について一番最初にお尋ねして、それから詳細に入っていけばいいと思いまして、最初第三の問題にちょっと触れたのでありますが、時間がありませんものですから、不得要領な質問に終わったわけでありますが、次回には、一つこの第三項の問題についてお伺いをして、それから政府案の一つ一つ、さらに社会党案についても質問をいたしていきたい、こう思っておるわけであります。
私の質問の順序なり考え方を申し上げて、ぜひ発言の機会をまた与えていただきますように委員長に要望いたしておきたいと思います。
それから特に、私の重視しておりまする第三の項の、学校教育とかあるいは社会教育というような、従来にない答申が行なわれております。この点については、自治省だけではどうかと思いまするので、これはぜひ文部大臣から、こういうものに対してどの程度の施策をお考えになっておるかを直接聞いてみる必要があると思います。そうして自治省と並んでいただいて、いろいろお答えをいただくことによってはっきりさせていきたいと思います。社会教育というものについては、文部省だけではありません、公民館の問題や図書館の問題などが出てきております。こういう問題についての所管も問題になりましようが、こういうところに実は存外今度の答申案の大きなねらいがあるのではないかと思われます。この問題に少し時間をさいていだだいて質問の機会をお与え下さるように委員長にお願いいたしまして、きょうのところは、非常に粗雑な質問でありましたけれども、質問に入る前提としての質問という意味でお尋ねしたわけであります。次回にまた質問をお許しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/123
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124・加藤常太郎
○加藤委員長 本日はこの程度にし、次会は三十日午後二時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。
午後一時二十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X00919620328/124
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