1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年四月四日(水曜日)
午後一時四十七分開議
出席委員
委員長 加藤常太郎君
理事 青木 正君 理事 高橋 英吉君
理事 竹山祐太郎君 理事 丹羽喬四郎君
理事 坂本 泰良君 理事 島上善五郎君
理事 畑 和君
荒舩清十郎君 仮谷 忠男君
薩摩 雄次君 首藤 新八君
田中 榮一君 中垣 國男君
林 博君 福永 一臣君
小林 進君 堀 昌雄君
山花 秀雄君 井堀 繁男君
出席国務大臣
自 治 大 臣 安井 謙君
出席政府委員
文部事務官
(社会教育局
長) 齋藤 正君
自治政務次官 大上 司君
自治事務官
(選挙局長) 松村 清之君
委員外の出席者
文部事務官
(初等中等教育
局中等教育課
長) 西村 勝己君
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四月二日
連座制強化に関する請願(山本幸一君紹介)(
第三三五六号)
選挙違反者の罰則強化に関する請願(山木幸一
君紹介)(第三三五七号)
会社、労働組合等からの政治献金禁止に関する
請願(山本幸一君紹介)(第三三五八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
公職選挙法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第一〇八号)
国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法
律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇九
号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/0
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001・加藤常太郎
○加藤委員長 これより会議を開きます。
公職選挙法等の一部を改正する法律案、及び国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案を一括議題といたします。
質疑の通告がございます。これを許します。畑和君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/1
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002・畑和
○畑委員 私は政府案に対する若干の質問をいたしたいと思います。
まず第一に、連座制の問題につきまして質問いたします。くどいようでありますけれども、少し憲法論議をしてみたいのであります。
答申の案では、御承知のように、当然失格ということになっておりますが、これは憲法に違反をするというおそれがあるということで、政府案では、当然失格ということを除いております。そうして検察官が確定後に公訴を提起するということになっております。その憲法違反になるおそれがあるという論拠を、くどいようでございますけれども、もう一度承りたい。三十一条ですか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/2
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003・松村清之
○松村(清)政府委員 ただいまの議論に関しましては、憲法にはっきり違反するかどうか、こういうことではなくて、政府部内の責任当局におきましては、おそれがあるといっておるのでございますが、それは憲法三十一条「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。」三十二条「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。」、この二つの条文に反するおそれもあるのではなかろうか、こういうところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/3
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004・畑和
○畑委員 そうすると、失格というのは刑罰になるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/4
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005・松村清之
○松村(清)政府委員 これがそのおそれになるかどうかの分かれ目でございまして、その他の刑罰という中に失格というものが入るのか入らないのか、どちらともはっきりしておるわけではございませんで、ここに見解の相違が出てくるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/5
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006・畑和
○畑委員 憲法違反のおそれがある——明文に書いてあるはっきりしたものじゃないけれども、この三十一条、三十二条からして当然失格ということは憲法違反のおそれがあると言われるからには、この刑罰に当たるか当たらないかという論議はあるが、解釈のしようによっては憲法違反のおそれがある、こうおっしゃられたようだから、この刑罰という中に当然失格というものが入るのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/6
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007・松村清之
○松村(清)政府委員 先ほども申しましたように、「その他の刑罰」という中に、当選を失うということが入る見解に立てば、これはもう憲法に違反しますけれども、入らないという見解に立つならば、憲法に違反する問題は起こらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/7
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008・畑和
○畑委員 そうすると、憲法違反になるおそれがあるからこれを答申通りにやらなかったということになると、やはり政府の見解としては、一応刑罰の中に入るのだという御見解じゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/8
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009・松村清之
○松村(清)政府委員 これは、責任官庁法務省当局の見解といたしましては、先ほど申しましたように、町方の見解があるわけでございまして、従って、憲法違反のおそれがある、こういう見解をとっておりまして、おそれもある——ないかもしれぬが、あるということにもある。そこで、そういう二つの見解の出てくるような、憲法上問題の出てくるような事柄につきましては、やはり当然失格というような措置はとるべきではない、これがまた人権を尊重するゆえんでもあるのだ、こういうことで、事務当局といたしましては、今の政府案のような案にいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/9
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010・畑和
○畑委員 そうすると、法務当局がそう言うからですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/10
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011・松村清之
○松村(清)政府委員 憲法違反になるおそれもある——違反であるとははっきり言ってないわけですが、おそれもある、従って、当然失格というような措置はとるべきではなかろう、こういう見解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/11
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012・畑和
○畑委員 そうすると、おそれがあるというのは、どういうところでおそれがあるのか。解釈のいかんによっては憲法に違反しない、要するに、刑罰と見るか見ないかということだろうと思うけれども、さらにもっと詳しく法務当局から意見も聞いているだろうから、もう少し説明して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/12
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013・松村清之
○松村(清)政府委員 私といたしましてはそれ以上のことを聞いていないのですが、そういうふうに両論ある問題でございますから、やはりこの法律案を作成する責任者といたしましては、問題のあるような内容にしない力が妥当でございますので、それで原案のような措置をとったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/13
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014・畑和
○畑委員 それは当局としては法務当局の方の意見をもっとよく聞いて自分のものにしてからでないと、やはりうまくないのじゃないか。両方に解釈できる、従って、おそれがあってはいかぬから、何でもかんでもはずしておけば無事だ、しかし半面、とにかく選挙違反を根絶しようという大精神があるのですから、その大精神に基づいて答申がなされておるのだから、そういう場合に、単におそれがある、二つ解釈があるという程度では——それをその通りうのみにして、もっと詳しく自分のものにしないで、そういうおそれがあるのではあぶないからやめておこうということでは、答申の線から非常に隔たると思います。その点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/14
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015・松村清之
○松村(清)政府委員 法律案の作成にあたりましては、政府部内において関係もあるところとこれは十分相談をして作るのが至当な措置だと思います。それで、この問題につきましては、法務省の所管しておる事項でもございますので、法務省の見解に従って措置することが妥当だと考えるわけでございます。そこで、先ほど申しましたように、法務省といたしまして、憲法違反になるのだ——まあはっきりとは言っておりませんけれども、違反のおそれもある、こういうことで法務省自体が当然失格という措置をとるということに反対しておりますから、そういう責任当局が反対しておるものにつきましては、それを取り上げることは政府としては妥当ではないと考えますので、原案のようにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/15
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016・畑和
○畑委員 どうもはっきりしませんけれども、この間、ほかの方の質問に対して刑事局の刑事課長ですか検事ですか、答弁されておったところによると、憲法三十一条は妥当な手続の条項、デュー・プロセス条項だから、従ってちゃんとした手続がなければ制裁は課せられないのだ、こういう趣旨だ、従って、そういう見解からすると憲法違反のおそれがある、こう言われたような気がするのです。ところで、それに対して、そのときに私が、いろいろ見解はある、二いろあるのだ、何もそれは統一した見解ではないはずだと言った覚えがございますけれども、審議会の審議の過程で竹内刑事局長が言われたことをお宅の方の記録をもって私見たのですが、それによりますと、法務当局としては、三十一条のいわゆる刑罰ではないという解釈です。従って、当然失格もあえて憲法違反ではない。しかし、これが、今言った三十一条の妥当な手続によらなければ制裁を課せられないのだという意味の、いわゆるデュー・プロセス条項というふうな解釈もある、それによれば、それは違反になるおそれがある。他人の犯罪によって、候補者が当選したのが当然失格になってしまうということになって、何ら裁判の手続を経ずに制裁を受けることになるのだ、従って、そういう立場からすれば、三十一条がそういう意味だとすれば、憲法違反になるおそれがある、こういうふうに二つに分けて言っておったように思うのです。けれども、あくまでも法務当局としては、三十一条のいわゆる刑罰は、失格は含まないという見解をとっておる。従って、憲法違反とは考えない、こういうふうに言っておられるように思うのです。そのとき松村局長も立ち会っておられるはずでありますが、そういうふうに記憶しておられるかどうか。私はその場にいたわけではなくて、ただ記録を見ての話ですが、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/16
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017・松村清之
○松村(清)政府委員 あの記録は、たしか速記でなくて何か要領だと思いますけれども、私も、だいぶ前のことでございますので、そういうふうにお話しになったようでもあり、またはっきりしない向きもございますけれども、ただ私の記憶しておりますのは、そのときも、理由は別といたしまして、憲法違反のおそれもある、そして検察当局としては検察官の訴訟提起ということを希望しておる、このことをはっきり記憶しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/17
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018・畑和
○畑委員 そこで関連してお尋ねしますが、公民権の停止は一体この三十一条の刑罰でしょうかどうでしょうか。失格も公民権の停止もちょっと似ていると思うのですが、一つの選挙法上の制裁だと思うのです。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/18
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019・松村清之
○松村(清)政府委員 これは刑罰とは考えられてないという解釈のようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/19
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020・畑和
○畑委員 そうなると、私は非常に矛盾すると思うのです。失格も公民権の停止も同じような性質だと思うのです。今、公民権停止の方は刑罰ではない、確かに刑罰じゃないんです。結局選挙犯罪を犯した者は公民権が停止することになっている。従って、従来の法規によりましても、特別にそれを短縮したり、公民権を停止せず、被選挙権を停止せずという宣告がなければ、当然、黙っておっても被選挙権、選挙権を失うという法律の建前になっておる。従って、裁判所では略式命令ではそのことを何とも書きません。それから裁判のときも、被告人を懲役何カ月に処するというだけで、何ら公民権被選挙権につきましては触れておりません。ただ、短縮したりあるいはその規定を適用しないというときだけに、初めて判決の中に入れるわけです。従って、これは記録を見ますと、お宅の方も裁判所の方に聞いたことがあるようですが、裁判所も、刑罰かどうかという質問に対しては何らとうとう返事がないということは言っておりますけれども、そういう意味でも、一種の選挙法上の制裁であって、確かに刑罰ではない。それと同じように、公民権の停止がそういうわけで刑罰でないとすれば、当選の失格もやはり憲法違反ではない、私の方の理論を裏づけるように私は考えておる。そのため念のために聞いたのです。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/20
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021・松村清之
○松村(清)政府委員 一般には刑罰ではないという解釈のようでありますけれども、しかし、完全に刑罰でないとも言えないわけで、そこに多少公民権の停止と先ほどの当選失格ということは同じ範疇にあるものだと考えられます。ただ、もう一つ進みまして、問題は、当選を失う連座制の方は、他人の犯した罪によって、本人が何ら裁判を受けないで失格する、公民権停止の方は本人が裁判を受けておるわけでございまして、その点にこの問題の差異が出てくるのであろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/21
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022・畑和
○畑委員 そうなると、要するに、自分の犯罪によって公民権を停止されるという場合と、他人の犯罪によって当選者が当選を失う、要するに責任がないというか、私の見解では、あるのです。あるからこそ連座制、別の責任ですからね。刑事責任がないとしても、それだけの違いだ、そういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/22
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023・松村清之
○松村(清)政府委員 お話しの通りのようになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/23
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024・畑和
○畑委員 そうしますと、ちょっと理論的に一つ矛盾があると思うのです。公民権の停止の方も、これも本人が選挙違反で罰金に処せられるか何かします。それで刑事裁判を受けるのです。しかし、公民権停止については、宣告も何も受けないのです。これは刑罰じゃないという解釈からすればいいわけですが、ちょっと刑罰らしいような話も承る。そうすると、自分の犯罪と他人の犯罪の違いであって、公民権停止そのものについては別に裁判をちっとも受けないのです。いわゆる三十一条による法律上の手続によらないのです。要するに、刑事問題の選挙違反をやった、従って罰金幾らに処す、こういうことにつきましてはちゃんと裁判を受けるのです。ところが、公民権停止そのものについては受けないのです。法律上当然になっちゃうのです。宣告も何もないのです。宣告する場合は、さっきも言ったように、特別に短縮したりあるいは公民権を停止しないという場合だけに限ってやる。当然失格になる、それと、今の他人の犯罪によって当選人が当選を失うということとの違いは、今のあなたの御解釈によると、他人か自分かという違いがあるのだというだけになってしまう。ところが、公民権の停止の問題についても、今言った三十一条の裁判による手続を経ないでということになるのじゃないですが、その辺はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/24
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025・松村清之
○松村(清)政府委員 これは先ほども申しましたように、本人がすでにその犯罪について裁判所の裁判を受けておるわけでございます。それに伴って法律の規定が当然動きます場合に、何も宣告をしないわけで、お話のようにこれを縮めたり、停止しない場合に言い渡すわけでございます。従って、結局は、本人が裁判によったものか、あるいは本人が裁判に関係しないで、他人の裁判の結果が本人の関与しないうちにかかってくるか、そういう違いに問題がくるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/25
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026・畑和
○畑委員 どうも少し混乱してわからぬのですが、それはそれまでにしておきまして、もう一つ、こういう場合はどうでしょうか。今言った当然失格が憲法違反のおそれがあることになるとすれば、正式に、失格ということを刑法上の制裁の中にはっきり入れる。もっとも、今刑法の準備草案がございますね、あれの中には、公民権停止や何かも刑罰の中に入れているらしい。刑法の本条の中に入れれば、はっきり刑罰だ。選挙犯罪の方も刑法の準備草案の中に吸収するということになっておるようですが、そうなってはっきり刑罰にして、懲役や罰金じゃないけれども、それ以外の一つの刑事的な制裁だとして刑法に入れる。総括主宰者、出納責任者あるいは法定の親族、そういった関係者が選挙犯罪を犯す、そうしたときには、その犯した人はもちろん懲役あるいは罰金ということにする、同時にまた、当選人も当選失格にする、こう明文にうたって刑法の中に入れて、裁判のときには両方とも被告になる。当選人は当選失格という言い渡しを受ける。それから選挙違反をした人は、懲役または罰金を受ける。そこで一緒にやってしまう。よく税法上で入場税なんかの違反の場合、それをやった人自体が犯罪として処罰されると同時に、会社あるいはその人を使っている人が処罰されるということになっております。いわゆる両罰規定です。それは結局使っているものが選任あるいは監督を怠ったということが推定される。無過失責任じゃないのだ、過失があるのだ、従って刑罰を課するのだということで今解釈が統一されているようです。この両罰規定と同じように刑法の中に入れちゃって、はっきり失格を刑罰だということに言い切って、そして両方を同時に起訴する。失格というのが起訴に当たるかどうかはあれですが、しかし、刑法上はちゃんと明文に書けばそれでいいはずだと思う。そうなればお宅の方の考え方が変わってくる。それは憲法違反じゃない、こういうふうになりませんか。
〔委員長退席、青木委員長代理差席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/26
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027・松村清之
○松村(清)政府委員 お話の趣旨が十分のみ込めませんか、第一番には、そういう趣旨の法律が憲法違反のおそれのないものとして作成できるかどうかに問題点がかかってくると思います。従って、そういう法律が憲法違反でないのなら、それで差しつかえない問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/27
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028・畑和
○畑委員 そういう問題になると、どうもちょっと無理かもしらぬ。しかし、私が今言ったことは、仮定的にとにかく刑法の処罰の中に入れてくれればはっきりすると思うのですよ。そうすれば、刑事罰としてみな一緒に起訴するのです。そうでなくて、現状のようであるから問題が起きる。大体われわれの考えからすれば、三十一条は、法律で刑罰のはっきりきまっているものだけをさすのだ。「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」だから、生命を奪う刑罰、あるいは自由を奪う刑罰——生命を奪う刑罰というのは、死刑です。自由を奪う刑罰というのは、懲役もしくは禁固です。「又はその他の刑罰を科せられない。」「その他の刑罰」となれば、今では罰金、科料、そういったものだと思う。とにかくそういうものを全部含めての刑罰、こういうことだと思うのです。そういうことになって、この文理解釈からいたしまして、今まで刑法上の懲役または禁固あるいは罰金、科料、そういったものが刑罰で、それ以外は刑罰でない、こういうことであれば、失格も刑罰でないのだから、何も法律の定める手続による必要はない。さきに申したような法律の手続によらないものは処罰してはいかぬ、こういうことになりますから、そういう刑罰でないとすれば、法律の定める手続は必要はない。一種の選挙法上の制裁だと思うのです。そのもとというのは一つの道義的責任だと思うのです。しいて言えば、さっきの両罰規定の場合の選任、監督——親族の場合にも、少なくとも監督ということは言えるでしょう。それに違反したということで、過失と推定されるということで解釈できると思うのです。これは自治省ではちょっと無理かもしれません。とにかく憲法違反のおそれがあるということだけでいろいろな解釈があるでしょう。しかし、審議会での要領筆記では、法務当局としてはっきり言っているのです。刑事当局として「第一に連座制が憲法三十一条に抵触するかどうかについては、当たらないと思う。三十一条の解釈だが、これはアメリカ修正憲法の五条と十四条とを淵源としたものであり、デュー・プロセス条項だという解釈もあるが、検察の立場では、アメリカ修正憲法の条項と異なり、デュー・プロセス条項でないという考え方をとっている。またかりにデュー・プロセス条項だと考えても結論は消極になる。」こういうようにはっきり言っている。デュー・プロセス違反のおそれがあると言っておりまして、検察当局の立場ははっきりしている。政府の解釈がまちまちであるはずはないと思うのです。そのほか、もう少し先でもこう言っている。「竹内幹事刑罰と解しないから違憲でない。三十一条の刑罰には当選失格は入らないという解釈である。」こういったことを言っておりますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/28
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029・松村清之
○松村(清)政府委員 結局これははっきりしたきめ手がないわけでありまして、たびたび申しますように、この法案を作成する過程におきまして、法務当局において、憲法違反のおそれもあるから、また人権を尊重することにもならないから、法務当局が年来主張しておるように、検察官の訴訟提起ということが一番妥当であるから、こういう主張に基づいて原案を作成したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/29
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030・畑和
○畑委員 大事をとったと言われるわけですけれども、さっきも私が言いましたように、ともかく今度の審議会の任務というのは、最近非常に多くなった悪質の選挙違反を根絶して、金のかからぬ明るい選挙にしよう、こういうのが大原則でございました。従って、その線に沿って答申はなされているわけです。もちろん、その答申を出すまで審議をした過程におきましては、先ほど言ったような竹内刑事局長らの出席も求めて、憲法学者等も中に入っておりますし、相当審議を尽くした結果、総会ではああいう結論になったわけであります。従って、若干おそれがあるということだって、それでもやはりこの機会に徹底したことを講じなければ、とうてい選挙界は粛正されないという大前提に立って、若干のおそれはあっても、なおかつ一方の方の要請の方が強いということで踏み切ったというふうに私は考える。ところが、当局は何だかんだと言ってとうとう変なものになってしまった。御承知のように、あとで確定してから検事が当選無効の訴訟を起こすということになりますと、もう時間的に間に合わないということになるわけです。今までとほとんど変わりはない、こういうことになると思うのです。それではほとんど答申の意味をなさぬと思う。答申の趣旨を尊重するということが大前提である以上、それが根本的にだれが見ても憲法違反ということになれば、これはやむを得ない、こういう二つの解釈がある、しかも、法務当局は刑罰じゃないと確信するから、従って当選失格も三十一条違反にならぬ、少なくともこういう見解をとっておる。しかし、ほかの説もある。ほかの説からいえば、いろいろに解釈できる、こう言っておるのですが、一つそういう点で踏み切ろうという考えが、おそらく当局にはなかったのじゃないかと思うのです。大臣、どうですか、これは根本問題ですから、大臣に伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/30
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031・安井謙
○安井国務大臣 いろいろ今御問答がありましたように、公民権停止の場合は、裁判の結果が直接本人にかかる問題ですから、私は別だと思いますし、それから三十一条、三十二条、それぞれの憲法の精神を考えましても、でき得る限り裁判を通しましてそういったあらゆる国民の不利益な処分は受けられぬようにするのが、法律を制定する建前から私どもはいいと考えております。従いまして、これは今のところきめ手はない。きめ手はないが、相当な法律学者が、検事の手続をとらないなら不当であるという見解が、あの委員会でも相当多数の法律の専門家で占めておった事実もあります。私どもはそういうような状況を判断しまして、なるほど 選挙は粛正しなければならぬと思いますが、その目的のために手段を選ばぬ、どんな方法をとってもいいのだというふうな考えにはわれわれは立つわけにはいきません。やはり常識上最も穏当な方法、完全な手続を済ませるということがどうしても必要であるという見解から、この制度を採用することにいたしたわけであります。そこで、裁判が長くかかるじゃないかという問題があるかもしれません。あるかもしれませんが、しかし、別個の考えから、そのために必要な民主的な穏当な手続を省いてよろしいということは、私は別であろうと思う。できるだけ裁判は急ぐなり何なり、ほかの方法で進めるべきものであろうと思っておる次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/31
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032・畑和
○畑委員 きわめて不満足です。御熱意はさっぱり認められない。そういうことで議論してもしようがありませんから、その次に、同じ関連ですけれども、一つ試みに質問したいと思うのです。
関係者が選挙違反で刑が確定したということで検事が公訴を提起するということになりますと、大体争う余地があるでしょう。どうでしょうか。結局、明文によりますと、関係者が刑罰に処せられた場合には当選人を失格する、こういうことなんです。そうすると、当選無効の訴訟を起こしても、関係者が選挙違反で刑罰に処せられた、こういう条件は、すっかり刑事判決で、刑事訴訟記録で一切明らかになる。それに対してまた争う余地があるなら別ですけれども、今の法規ではないはずだ。かつて今の現行法の前にこういうことがあったんじゃないかと思う。出納責任者と総括主宰者でしたか、それが違反をした場合に本人が失格する。ただし、選任、監督を怠らなかったことを証明した場合にはこの限りではない、こういう条項があったように思うのです。そのときには、それを証明してそれを争う。それからこの前のとおりの規定、おとりだったということを主張し、それを証拠をあげて争うということになれば、その効果はあるのです。ところが、今度の場合は、関係者が本人の当選を得しめる目的をもって選挙違反をやったということによって刑罰に処せられたということは、確定判決でわかる。そうすると、当選無効の訴訟を起こしたって、ただ時間を引き延ばすことだけであって、私は争う余地はほとんどないと思う。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/32
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033・松村清之
○松村(清)政府委員 今度の改正案によりまして申し上げますと、まず現行法と同じでございますが、総括主宰者であるかどうかということが、当選人の側として争う対象でございます。それから今度はさらにたくさん争う事項が加わっておりますが、いわゆる地区責任者であるかどうか、事実上の出納責任者であるかどうか、それから親子兄弟、配偶者、これははっきりしています。それに条件がつけてありますから——政府案ですと、同居しておったかどうか、意思を通じておったかどうか、禁固以上の刑に処せられておったかどうか、そういう点が争いの対象になりまけ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/33
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034・畑和
○畑委員 総括責任者の問題なんかで今までときどきそういうことがあったと思うのです。地区責任者の場合もそういうことがあったかと思う。ところが、そういうことになったら切りがないと思う。そこで一緒に私はやるべきだと思う。片方の刑事判決についてはちゃんと確定しておる。片方の方についてはそれがあくまで争われる、こういうことであっては、いつになっても時間的にけりがつかない。結局実効は上がらない、こういうことになると思う。そのためにこそ、今度の答申は当選失格という方針をとったと私は思う。そういうことで政府の考えがきわめて微温的で、あちらこちら右顧左眄したとしか見られない。その点私はきわめて遺憾です。法律上の見解につきましては、一つまた法務当局を呼んで聞きたいと思います。あまりその点を詳しく突っ込んでもしようがありませんから……
次にもう一つお聞きします。それは、公務員の立候補制限の問題です。これは井堀氏もこの間質問しておられまして、あの議論を私ずって承っておった。それによると、結局憲法違反のおそれがある。ちゃんと地位を特定して、しかもそれが合理的な理由がありさえすれば違反にはならぬということだった。ところが、実際、立法技術上、それを特定することはきわめて困難だということで、いっそのこと、やらない方がいいということで、立候補は自由だ、しかし、在職中に選挙事前運動等をやった場合に、それがわかったときには失格とする、あるいは刑罰に処せられるというようなことにしたと言われる。しかし、答申の根本方針は、そういった全国区の候補者で、いろいろ職務権限をふるえる地位にある人が立候補すると、とかくほとんどと言っていいように職務を利用してやっている。その実績もあるから、そこで、いっそのこと、そういった人たちに立候補させないということにしなければだめだということで踏み切ったのだと思う。そこで、今度の政府の処置はその答申の案にさっぱり沿うていない、かように思うのです。地位を特定することが、合理的な根拠とか、あれじゃどうだ、これじゃどうだということで比べたり何かして、なかなかむずかしい。極端な例は、だんだん狭くなって、一つか二つしかなくなってしまう、こういうことではしょうがないから、結局やらない方がいい、そして安全な道を講じた方がいい、こういうことのようにこの前聞いておった。非常に言いのがれのような感じが強い。ほんとうにいろいろ研究した過程でどういうわけで立法技術的に不可能だとなったのか、もう少し詳しく具体的な例をいろいろあげて教えてもらわぬことにはわれわれはわらぬ。何だか口実のような感じがする。合理的な理由がありさえすればよろしいのだということになったら、合理的な理由を発見するのに、それは立法技術的になかなかむずかしいということでとうとうだめなんだというのでは、どうも納得いかない。その辺を、これじゃだめだ、これじゃだめだということでどういう苦労をしたかということをもう少しこまかく述べてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/34
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035・松村清之
○松村(清)政府委員 先般申し上げましたように、ただいまお話がありましたが、具体的な案を作成するにあたって、合理的理由のある案というものがなかなか作れない、抽象的に申し上げればそういうことに尽きるわけでございます。いろいろ案を検討してもみたのでございますが、考えられる。案といっても限定がありますけれども、どのような案について見ましても、その指定された職と指定されない職との比較において不合理性が出てくる、あるいは指定された職につきましても、この職に一般的に合理性があることが必要なのでございますけれども、過去においてたまたまある人がそのポストについて、たまたま参議院に立候補して当選した、そういうだけでは、合理的な理由とは言えないわけでございます。そういうふうに、指定されておる職と指定されてない職との比較、また、指定されておる職についても、その職自体にいろいろな弊害を伴う、そういったことで合理的な理由があるということでなくて、たまたまある人が選挙に立って当選したということでその職が指定されることが多いのでございますが、そういうようなこと、それからまた、たとえば指定された職につきましても、後々何十人という人がその職につくわけでございまして、そのような職につく人をすべて立候補を制限するということになるわけですが、こういうところにはたして合理性があるだろうか、こういうような点でいろいろ不合理性が認められますので、答申の趣旨は、結局高級公務員の地位、組織の利用を抑えるというところにねらいがあるのであるから、これを政府原案のように、立候補は自由にしておいて、そういうものを悪用した場合に制裁を加えるということにいたしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/35
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036・畑和
○畑委員 いろいろの場合を想定して、あれでもこれでもというので、結局なかなかむずかしいから、従って、立候補だけは自由にして、あとのことでやろうということになったのだという一応のお話なんですけれども、どうもわれわれ納得いかない。答申のあれはちゃんと出ておるのですよ。それに沿って合理的な線が見つからぬはずはない。最小限度でも何でもそれでやってみたらいいじゃないですか。それをやらぬというのはどうも言いのがれのような感じがしてならない。われわれの方では、少しはずさんのそしりを免れないかもしれぬけれども、ともかく職を指定して、権力的な支配的な威令の及ぶような地位だけを指定して、それで修正案を出しておるのですが、答申案の線にあくまで沿ったつもりで——やってみると、なかなかむずかしいことは確かにむずかしいけれども、やはり答申案の線は、そういう人を立候補させないということにあるのだ。結局立候補させてしまうと、政府案のような処置を講じても、実際にはなかなか——それは少しは心理的な影響はありましょう。しかしながら、実際は行なわれない。それよりも、むしろ立候補させないということに踏み切ったら、よほど実効があり、しかも答申の線に沿うゆえんだ。要するに、踏み切るか踏み切らぬか、そういった熱意があるかないか。いろいろな妨害とか圧力はありましょうけれども、それを断固として排除するだけの気魄がやはりないということに帰するのじゃないかと私は思うのです。いろいろ議論してもいたし方ありませんから、これはまたあとで質問したいと思っております。
第三の点は、例の政治資金の規正の問題であります。これも本会議でやりましたし、ほかの方からも言われましたので、詳しく申しません。選挙に関してということだけでやったということ、どうせ政治資金規正の方につきましては政党法の問題と一緒にあらためてやるのだという理由で、選挙に関してというだけにしたのだ、こういうようなこの前の説明だと思うのですが、政党法に関連しての改正は後の問題として、今とにかく政治資金が選挙に関して非常な盲点になっておる。これが大きな選挙界の腐敗を招いておるのだということに思いをいたしたからこそ、答申案は、個人のあれを除いて、また法人の場合でも例の条件のついた場合、それだけに限ってやるのだからいいではないか、そういうことで政治資金全部について禁止した。ところが、選挙に関してということだけで、今言った理屈は先ほどのようなことに理由づけておりますけれども、非常にその点がわれわれとしても納得がいかない。ほんとうに答申の線に沿って選挙界を粛正するという熱意が政府にはないというふうに見受けられるのです。この点、一つ自治大臣の御意見を承りたいと思います。ほかの政党法や何かと関連してあとでやるのだからということでやられたような話だが、こんなことでは答申案の線に沿っていない、熱意がうかがわれない、かように思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/36
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037・安井謙
○安井国務大臣 政府といたしましても、決してこの選挙法を前向きに直すという点で熱意を持っていないわけではないのでございます。いろいろ熱意を持って答申も尊重し、できるだけ実現をしようと努力したことは間違いございません。今の政治資金の問題にいたしましても、なるほど、全面的に禁止するというのは少し荒っぽく考えていいのではないかという御意見もあろうかと思いますが、これを実際に適用しますと、非常に範囲の広いものになりまして、少し中身を区分しなければ、これは現在の実情に明らかに合わないという点がございます。もう一つは、今お話の政党法の関連で根本的に腐すという問題もありますので、もう少し時期を見たい、こういう考えで選挙に限定をしたわけであります。選挙に限定したのでは全然意味がないではないかという御質問もあろうかと思いますが、たとえば御承知の現在の選挙法におきましても、請負等に関しましては選挙についての献金は禁じております。これはこれなりに相当効果があるものだと私は現在でも心得ております。これをぐっと範囲を広げまして、あるいは少々不合理でも、少なくとも選挙に関してはやってはいかぬという厳重な規定を設けることによって、これは相当な実質上の前進もいたしておるという確信を持っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/37
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038・畑和
○畑委員 あまり多くを申し上げません。自治大臣は、選挙に関してということに規定しただけでも、請負その他の関係や何かに対してそういう条項を入れて禁止をすれば相当効果があるとおっしゃるのですけれども、抜け道は幾らでもございますよ。政治献金だということで逃げれば、幾らでも逃げられる。これは何も選挙に関したことではございません、政治資金であれしたのでございますと言えば、それでのがれられないことはない。それではだめだから、やはり根本的に政治資金そのものをやめさせようということが私は答申の線だと思いますが、答申の線に沿っていませんよ。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/38
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039・青木正
○青木委員長代理 次に、ただいま議題となっております両案並びに公職選挙法等の一部を改正する法律案に対する島上善五郎君外二名提出の修正案を一括して質疑を許します。井堀繁男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/39
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040・井堀繁男
○井堀委員 まず、政府にお尋ねをいたしたいと思います。社会党からの修正案が同時に議題になって一おりますが、社会党案を審議いたしまする関係上、政府原案についてまずお尋ねをしてみたいと思います。
政府原案の中で最も私どもの遺憾に思いまする点については、さきにもちょっと申し上げておきましたように、今回の答申案のきわめて重要な点は、答申の中でいう、一、二、三に分けられました三に該当する公明選挙運動の推進に関する事項に対する配慮が足りない、というよりは、むしろこの精神を一体どのように理解しているかを疑うほど、政府が答申案に対して非常に不忠実な、それが最も特徴的な点であるということをこの前も述べたわけでありますが、きょうはこの答申案のうちの第三項についてお尋ねをいたしてみたいと思うのであります。
ここにあげております順序でお尋ねして参りますと、第一は、選挙違反に対する選挙民の意識の問題について言及しておると思いますが、これは、従来の選挙法第六条の選挙に関する啓発、周知に関する事項の中で明らかにされておることを、ここで重ねて徹底するように主張しておるものと思うのであります。この点に対する修正を行なおうとしていないのでありますが、まず、この点に対する政府の答申案に対する見解と、第六条の規定をより積極化しなければならない答申案との違いについて政府はどう理解し、また、この点をなぜこの機会に積極的に改正しようとしなかったかという点について、御意向を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/40
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041・安井謙
○安井国務大臣 井堀委員のお話の通りに、選挙民の自覚を促すこと、いわゆる民間に対する公明選挙の推進ということは、私は何より大事だろうと思います。ただこれは政府の側からあまりいいますと、政府はそちらに逃げるのだという御非難もこうむるかもしれませんが、私ども真剣に、御指摘の通りこれは大事なことだと思いまして、従来より予算も相当額この三十六年、七年とふやしまして、マス・コミその他を使った、あるいは民間の推進団体に依頼をした公明選挙運動は相当な推進をいたしておるつもりであります。三十七年度にもまた相当これをやる予定でございます。ただ第三の一にあります国民の自覚の徹底について、どういうふうな措置をとるかということになりますと、これらの点につきましてはいわゆる法律的の措置をとる問題ではなくて、実施をすべき問題である、実際上国民に周知徹底をしてもらう問題である。従いまして一足す一は二が出るといったような結論になるものではなくて、やはりこれはある程度時間もかかるし、また、たび重なる繰り返しによって徐々にこういうものは効果を現わしていくものじゃないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/41
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042・井堀繁男
○井堀委員 その予算は、この際、この答申案にこたえてどの程度を必要とすると理解しておりますか。具体的に予算の上で——三十七年度はもうすでに予算は成立しておりますから、次年度の予算には、きっと相当額のものを予定しておると思うが、あらかじめどの程度のものを計画しておるか、数字のことでありますから正確でなくともよい、大よそでけっこうです。
それから法律に規定しないで、これは他のどういう意味を持つのか知りませんが、どういう方法でこの精神をそれでは具体化するか。法律によらないとすればどういう方法があるか、お答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/42
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043・松村清之
○松村(清)政府委員 答申によりますれば、一番終わりに書いてございますように、現在の予算は僅少だから大幅に増額をはかるようにというようにあるわけであります。従いまして、これは多ければ多いほどいいのでございますけれども、国の財政の状況もありまして、政府としては今年度予算としてきまっておりますのは、国費を四億五千万円、これは昨年三億でございます。それを四億五千万円、地方費を二億五千万円、これは三十六年度は二億、従いまして合わせまして昭和三十六年度は五億でございましたが、本年度は七億円になるのでございます。これは財政の関係であります。これは私どもといたしましては、国の財政の許す範囲でこれを増額するように今後努力して参りたいと思います。
それから先ほど大臣に御質問のございました国民の選挙違反に対する罪悪感を自覚せしめる、こういう問題は従来やっております、また今後もやりますが、選挙管理委員会、民間団体の公明選挙運動のいろいろな方策の中で、この政治常識を向上する、こういう目的の中において、この問題を具体的に取り上げていくということが一つの方法であろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/43
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044・井堀繁男
○井堀委員 順序は飛びますけれども、この答申の五の広報媒体の活用の問題、この中でかなり具体的にあげております。たとえばテレビ・ラジオなどを積極的に活用するための政治教養番組を充実強化する。あるいはまた雑誌、映画、演劇、有線放送、さらに地方公共団体の広報紙等による積極的な活動を具体的に指示いたしておるのでありますが、こういうものをどの程度やるか。今までもやっているといえば言えぬこともないと思いまするが、ここに盛られておる趣旨は三の項全体の中から出てくることでありますけれども、こういうように具体的に列挙したということは、この種の運動に対して政府の積極的な責任をやはり要請しておる趣旨にほかならぬと思うのです。こういうものをおやりになるとすれば、私は先ほど選挙局長の予算に対する趣旨の説明を聞きますと、昨年五億だったものを、ことし地方の負担を入れて七億程度などと言っておりますが、一体そういうようなわずかの、しかもその金も、内訳を聞くとすぐわかると思いますが、ここに列挙しているようなことをこの予算の中でどの程度おやりになるのか、従来と一体どれだけ違うだろうかということは、五億と七億の違いだというような説明にしか受け取れないのであります。ここにあります第五の答申は、そんな程度のことを意味しているのでしょうか、一つお答えを願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/44
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045・松村清之
○松村(清)政府委員 五の(1)の項目は、これは政府がみずから経費を支弁してやるという問題でなくて、政府自体が民間のこういった関係の方面に協力を求めて、国民の政治常識の向上に資するような事項を取り上げてもらう、そういう働きかけをするということが(1)の項目の趣旨でございますから、これは事実上、政府としてできます限り民間の協力を求めていきたいと思います。
それから(2)は、これは政府の金で提供する放送番組でございまして、本年度におきましてはただいま申しました経費の中で六千五百万円、これは国費でございますから、詳しくは今申しました四億五千万円の国費の中で六千五百万円をさきまして、現にテレビは全国で東京、名古屋、大阪、福岡、こういう地区において計画いたしておりますし、ラジオにつきましても、全国二十七局について計画をいたしております。
それから(3)の問題は、これは御承知のように政府の各機関で、その予算でもっていろいろ広報活動をやっております。この広報活動の上に、この公明選挙運動に協力してもらうような項目を取り上げてもらうということが趣旨でございまして、これは政府部内で広報関係者の会議等もしばしば行なわれておりますので、この席でこういった要望を各省に申し上げて積極的に協力していただく、こういうふうな方向で進んで参るつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/45
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046・井堀繁男
○井堀委員 こういうように列挙して、そのあと一番結びに「公明選挙推進のための財政措置」、そしてそれは大幅な増額をはかることを強く述べておるわけであります。大幅というのでありますが、今のは、本年度の予算に七億でしょうが、次にこの大幅な要求というものにこたえるためとしては、要するに政府はどういう心がまえで次の予算編成に当たるかが、私たちにとっては非常に重要な問題であります。これからのことでありますから、正確な主張は伺えぬかと思いますけれども、こういうものが出た以上は、こういうものに対する財政措置として、しかも大幅に増額というのでありますから、先ほど言うように五億程度のものを七億なんというようなのは、これはお話になりませんし、従ってここで言っておりまするこれ全体の中から言います場合には、局長のお話によりますと、新聞、雑誌、映画、演劇等々は民間のものを活用することではありますけれども、これはいずれも営利社団もしくは事業経費の採算を見ていかなければならぬ機関の事業であります。従ってそういうものは、やはりこの際政府はしかるべき財政的な援助なり、あるいはその協力をつちかうような資金的な措置を講じなければ、こういうものが動かないということは常識上明らかであります。そういうようなものを全部含み、さらに政府自身が積極的にこれこれのことをしなければならぬという規定があるのでありますから、ここでいう、抽象的ではありますが、その財政的措置は大幅な増額というのでありますから、これは大臣、私は次の予算要求にからまってくる問題だと思います。こういう点をはっきり伺っておかなければならぬと思います。
それから、さきに局長の答弁の中で、政府の財政余力の問題に言及しておりましたが、これは少々僭越だと思います。どれだけ財政余力があるかどうかは、もちろん予算編成権は政府にありますが、国会はこれに対する修正も審議権も持っております。本年度、昭和三十七年度の予算審議の際にも、わが党は組みかえ動議の中で明らかにしておりますが、財政余力を相当多額なものにわれわれは見通しておるのであります。これは議論はそこでやるべきでありまして、今日わずかの五億とか十億だとかいったような、そういうような問題が、日本の現在の財政余力を心配するような金額じゃもちろんありません。しかもこの法律は、政府もみずから言っておりまするように、日本の民主政治の基礎を動かす大きな仕事であります。でありますから、このもとを誤りますると、どんなに日本の財政的余力が他に活用されましても、その根本をなしまする政治自身に狂うことがあっては、意味をなさぬのであります。そういう意味で、日本の財政余力というものは、こういうところに優先して使うべき時期がきておる、またそのことをこの答申案は言っておるものと理解すべきであると私は思うのであります。でありますから、そういう趣旨から言いますならば、財政的余力は今日問題ではない。戦後のような、国民の最低の生活をまかなうことのできないような事情とはわけが違うのであります。ちょっといじくれば、十兆何ぼの中で一億とか二億とかいう要するにけちな問題は、こういうところでは問題にならなくなってくる。ここに私は、政府が答申案に忠実であるかないかの一番大きな中心があると思いますので、そういう意味でお尋ねしている。ぜひ一つ私の質問の趣旨にぴったりくるような御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/46
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047・安井謙
○安井国務大臣 これは全く同感でございまして、私ども、これは公明選挙を推進するためには、五億や十億ははした金と考えてやらなければならぬという、実は主観的には強い気持も持っております。従いまして三十七年度の予算も、一応この要求予算ができておりましたものを、さらに途中で追加いたしまして、これは今五億くらいと言われますが、とにかく五億の線までこれは途中で直してきたといったような実情でございますし、また今度はそれをさらに二億ふやしたということです。しかしこれは見方によりますれば、財政余力といったような問題ではなくて、もっと大事な問題だからもっとふやすべきだというお考えは、確かにお話の通りで、今後も私ども十分努力をやっていきたいと思っております。しかし一面からいいますと、財政余力というより財政バランスといったような問題もありましょうし、それからまた今までの国がこういったもので使う金の使い道というものは、少し実際をやってみてからでありませんと、なかなか金だけ入っても有効な働きができないというような場合もありますし、またバランス上の問題から、大蔵省が右から左になかなか認めないというような事情もありまして、今回はまだ不十分かもしれませんが、この程度にとどまったものでございまして、さらに御趣旨をよく受け入れまして、来年以降にも逐次これはふやして参りまして、そしてまた公明選挙といったような仕事は、これは半年や一、二年で完全にできるものじゃない、やはり根気よく、長くその効果を見詰めてやっていかなければならない、その趣旨で今後も努めていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/47
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048・井堀繁男
○井堀委員 まことに御答弁の趣旨、私は遺憾に思うのです。というのは、この答申は、前会からも質疑をいたし、これからも申し上げるわけでありますが、一方には、今日の選挙の腐敗は見るにたえない、聞くにたえない、実に国民としては慨嘆にたえないので、その措置を、実は好むところではないけれども、取り締まりや制裁を強化することによって、ある程度その粛正の道を開こう、しかし根本的には、やはり選挙は民主政治のもとにあります主権者の厳正、公正な投票に待つということでありますから、選挙民の政治常識なり意識が高揚するということが大前提だということを、私は全体の中からくみ取るわけであります。要するに一方には必要悪として、こういう極端な制限や取り締まりやあるいは制裁を行なわなければならない。しかしそれよりは、やはり根本的な問題は、公明選挙推進のための核心に触れてきておるわけであります。こういう答申の精神をそのまま受け取りますならば、まず第一に政府としては、財政上の均衡や財政余力の問題は、私は問題の外にあると思う。均衡ということになりますと、いずれに重点を置くかということでありまして、これはもう何回も繰り返しておるし、政府毛このことを述べておるように、政治の根本を清めていくということがいかに重要であるか、そのためには、今言うように、手段としては好ましくないものも採用しようという状態にある。もちろんあなたがおっしゃられるように、資金ばかりつぎ込んでも、それを活用できなければ、またその活用の具体的な提唱がなければならぬわけです。かなり具体的な提唱も行なかれておる。
〔青木委員長代理退席、委員長着席〕
これはさっき局長はあっさりと答弁してしまいましたけれども、たとえば民間のそれぞれの機関を活用するといたしましても、新聞や雑誌、映画、演劇などにいたしましても、これはやり方はいろいろあると思います。今までのようにごく申しわけ的な新聞広告も、その一つかもしれません。あるいは新聞社自身が社説その他でこういう問題を取り上げてくるという行き方もあるかもしれません。いろいろあると思うのです。しかしそういうものの前提をなすべきものは、やはり政府が企画を組んで、そして具体的な協力を求めようというのがこの趣旨だと思うのです。これらの機関が自発的にやるということについては、営利社団でありますから、おのずから採算に縛られてくるでしょうから、一方においては、政府がそういう積極的な企画と予算を組んで出すということを、ここで言っているわけです。要するに飛躍する時期が来ているということです。あなたは漸進的にと言うが、漸進的にやるのなら、私はこの答申は意味をなさないと思う。今は飛躍もしくは躍進の機会を政府あるいは国会に国民が求めておるものと、この答申の趣旨はとるべきではないか。そういう点で、予算の問題でありますから、ここで数字を中心にして論議をするということは至難ではありましょうけれども、けただけは出てくると思う。少なくとも私は戸隠、千億という程度のけたが出てこなければ、こういうものは本格的にならないと考えておる。たとえば一千億の台を出しましても、千億の資金がバランスをこわしたり、あるいは財政余力をゆすぶるような状態でないことは明らかなんであります。問題はその必要性であります。それをまず予算の提案権を持つ政府がどう考えているか、その審議権を持つ議会がどうこの答申を受け取るかというところに、問題は帰すると思うのであります。この点では、私は、今までの政府の答弁は、提案趣旨とは全く対立したものの考え方から出てくるものだと思う。来年の予算はどう組むか、あなたお一人ではきめられぬことだと思うのですけれども、少なくとも担当大臣として、閣僚として、こういう問題に対しては相当大幅な予算を組むだけの決意ができていなければ、政府改正案について私どもが質問する場合に前提がくずれてくる。それでしつこく実はお伺いしているわけです。もう一度この点に対して——今すくここで予算を組むわけじゃありませんし、要求していかなければならぬのですから、要求権はあなたにあるのだろうと思われますので、あなたの心構えが非常に大切だと思う。けたぐらいはここではっきりしておいてもらいたい。百億ですか、千億ですか、台は。どうです、そこら辺は、あなたのお気持を伺っておきましょう。私は、みみっちい、一億とか二億とか、そんなけちなことを言っておるようでは問題にならぬと思う。しかし、けたは——私が出しましょう、百億ですか千億ですか、そこのところを一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/48
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049・安井謙
○安井国務大臣 けたのはずれた御卓説を伺いますが、私も一面、これはほんとうにごもっともな御趣旨だという感じは強くいたします。しかし、今ここで一つけたを出せと言われましても、まだこれからいろいろ考えなければなりませんので、ここで御約束するわけには参りませんが、しかし私ども、お考えの気持は非常によくわかるわけでありまして、今後も大いに御精神を尊重して、予算要求も十分出すように努力をいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/49
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050・井堀繁男
○井堀委員 私がそのけたを出したのは、答申の中にけたは出てないけれども、ここで大幅というのでしょう。大幅とい言葉も、なかなか重宝な言葉だと思うのですけれども、これは要するに、これこれのことについて財政措置をおやりなさい、そうしてそれは大幅だと、こう言っておるわけですから、かなり具体的なんですよ。言葉のやりとりの上で便利だと思ったから、私は、百か千かというふうに、けたを出したわけです。私は、おそらく千以上のけたを出さなければこれは推進できない、こう思って伺ったわけですが、いかにも警戒されているようで、お述べにならぬとすれば、そういう用意がないというふうにしかとれない。お気持はわかりますといっても、何も私の気持を察してもらわなくてもいい。答申の精神を政府はどう理解しているかということを国民の前に明らかにしてほしい。われわれが審議していく上に、そのことをわかっておくことが大切だと思ってお伺いしたわけです。けたを言うのはどうしても悪いというなら、なぜ悪いかというわけにも参りませんので、逆に戻りますけれども、この答申の中に自治省の所管でないと思われることがありましたので、あるいは私は見当違いでお呼びしたことになるかもしれませんが、文部省の方は、これをごらんになったでしょうか。——十分御検討なすったと思いますが、この答申の中で、第三の項に「学校教育及び社会教育の充実」という見出しで、かなり具体的な要請がなされておる。この点についてきょうは一つお答えをいただきたいと思います。きょうは、自治省の大臣でありますけれども、閣僚ですから、政策面については大臣から御答弁を願おうと思いますが、その前に、この中で、民主政治、特に選挙に関する教科内容を充実せよ、私はそういうことについて全くのずぶのしろうとでありますから、的はずれのお尋ねをするかもしれないが、この文字の上から受け取りますのは、学校教育の中に民主政治を——広い意味では民主政治だと思いますね、教育自身は。教育基本法の精神にもちゃんと出ておる。しかるにもかかわらず、教育基本法の中にいう民主主義推進のための教育ではまだ不十分だ、だからさらにそれを具体的にこうしなければいかぬということを言い出したのには、強い意欲があると思う。それを文部省ではどういうふうにおとりになったのか。またこれを実現しようとするにはどういう具体的な措置が必要であるかということを、実はお伺いしたかったのでお越しを願ったのですが、これでお答え願えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/50
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051・西村勝己
○西村説明員 政治教育については教育基本法の中に「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」という規定があります。この精神を受けまして、小学校と中学校、高等学校において教えるべき具体的内容を、学習指導要領という文部省の告示によってきめてございます。今回その教育内容を全面的に改定いたしました。その改定されました内容を簡単に申し上げてみたいと思います。
小学校につきましては、第六学年、「現在の政治は国民全体の意見を政治に現わすため、国民が選んだ代表者による議会政治の形をとっている。」ということで、憲法の基本的な仕組みといいますか、それを大まかに教え、中学校に参りますと、さらに程度を深めまして、民主政治の組織と運営という項目がございます。その中で三つほど柱がございまして、日本国憲法と民主政治という内容、それから政治の組織と運営ということ、最後に選挙と政党ということを教えることになっております。特に選挙と政党につきましては、選挙制度のあらましに触れ、公明選挙の実現に対する関心を深めさせる、また、政党と国民との関係や、政治と世論との関係を理解させるというふうに教えることになっております。なお、馬等学校になりますと、さらに内容を深めまして、日本の政治という内容で、民主政治の本質ということで教えます。特に独裁政治との比較関連において取り扱うということになっておりまして、この中にたくさんテーマがございますが、政治の機能とか、政治と法及び道徳の関係とか、権力の分立と地方政治、それから議会政治のところで、代議制と多数決制というふうなものを教え、それから議会と政府の関係を教えるというようなことになっております。これに基づきまして新たに教科書も検定をやりかえまして、中学校につきましては、この昭和三十七年の四月から新しい内容にして教科書も作りかえて教えるということになっております。なお、こういう社会科の問題につきましては、講習会等もございますので、その指導力をもっと徹底するように教員の研修等もやっていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/51
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052・井堀繁男
○井堀委員 答申の中で「副読本等の教材の使用」ということが書いてありますが、副読本ということは、あなたのおっしゃる教科書のことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/52
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053・西村勝己
○西村説明員 いや、違います。副読本として有益適切なものがあれば、学校において教育委員会の許可を得て使うことができることになっております。しかしながら、こういう大事な内容につきましては、むしろ正規の授業の中で正規の教科書を使ってやるということが適切であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/53
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054・井堀繁男
○井堀委員 私はうかつなことをしていたと思います。文部省の方ばかり来ていただきましたが、なるほど、教育委員会が非常に大きな立場に立っておる。もちろん、私どもは、教育基本法の精神なり、民主主義を推進するための教育のあり方の中で、もし文部省あるいは政府の手にこういう教育関係の問題が途中で握られてしまうということは危険でもあるので、教育委員会がこれに対する関係を深く持ってくれると思うのであります。これはあとでまた伺いますが、自治大臣に一つお伺いしておきたい。
教育委員会と選挙法の関係、今の説明で非常に重要になってきたと思う。教育委員会のことは書いてないのですけれども、もちろん教育委員会がこういう仕事に積極的作用を示すことになっておる。これは今後どういう関係を持っていくようになりましょうか。文部省と自治省はわかります。教育委員会に対してはどういう形をとっていくのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/54
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055・安井謙
○安井国務大臣 これは文部省と相談をいたしまして、文部省から意のあるところを一つ各教育委員会へ御指示なり御伝達を願い、相協力して、また、地方の組織では県と教育委員会、市町村理事者側と教育委員会というものがタイアップした形でやらなければならぬと思います。選管も当然これは入っておりますが、そういう形になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/55
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056・井堀繁男
○井堀委員 教育委員会は、何も教育委員会自身が独自の見解を持つということでなくて、人民の意思を反映していくということでしょうから、この辺の関係が答申案の中で非常に重要な役割を果たしてくることと思います。この扱い方については理事会であとで御検討を願いたいと思います。教育委員会がそっぽを向いていたのでは実際動きがとれないという感じがいたしますので、この点は一つあとで理事会で御検討願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/56
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057・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 ただいまの御質問の内容が学校教育の問題でございましたので、説明員からお答えさしたのでございますが、教育委員会と文部省との関係につきましては、教育委員会がそれぞれの地方団体における教育行政の執行者でありますのは当然でございますが、政府全体の施策につきましては、文部省としては適正な指導助言をいたす義務もありますし、責任もございます。また、地方団体の中の各機関につきましては、先ほど自治省からお答えがありましたように、それぞれの局と十分に連係してやっていくようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/57
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058・井堀繁男
○井堀委員 その問題についてもう少し西村さんにお答えいただきたいと思いますが、次に、ここに書いてあります「特別教育活動及び学校行事」という例示をしている。特別教育活動というものは何をさしておるのか、あるいは、学校行事というものはどういうものを意図しておるのかが私どもよくわからぬ。自治省の方ではどういうふうにこれを取り扱っておるか。「民主政治特に選挙の実践的教育を行なうよう努力すること。」私は実践的教育というものに非常に疑問を持って読んだのです。クラスの委員を選んだりするということも一緒かもしれませんけれども、しかし、全体から参りますと選挙法の改正ですから、しかも公職選挙法、特に国会を中心とする公職選挙法が中心で諮問されておりますから、実践というものはそういうものにもとれるのですね。しかも民主政治ですから、学校のクラスのそういうものは、選挙ではありますけれども、ここでいっている実践活動じゃないんじゃないか。これはどっちにもとれるかもしれませんが、しかし、それはむしろ学校の行事やあるいは特別教育活動というものの中で、こういう公職選挙の際における国民のあり方というものを実践的にあるいは特別の活動としてという意味ではないかと私はとっておるのすが、これは文部省、どういうことにでなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/58
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059・西村勝己
○西村説明員 学校の教育課程の中には、特別教育活動、それから学校行事という領域がございます。特別教育活動というものは、たとえば運動部のようなもの、弁論部のようなもの、こういうものがございます。それから学校行事等の中には、修学旅行のようなもの、始業式とか終業式とか、そういったものを学校行事等と呼んでおるわけでございますが、その主眼とするところは、生徒の自主的な活動を助長するというところでございます。従って、その中に生徒会の活動、小学校でいえば、児童会、それから学級会というものがございます。それからホーム・ルームというような呼び方をしている活動がございます。そういう際に、いろんな物事を自主的に話し合いの上でもって処理していく、そういう自主的な態度を養うということでございますので、当然、役員等を選んで、そこで話をして、それから場合によっては多数決によってものをきめるとか、そういうような意味があるわけでございます。そういう活動を通じて、ひいては将来の公民たるにふさわしいような人間を育てていくということで、そういった意味の自主性を学校において指導していくということであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/59
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060・井堀繁男
○井堀委員 これはなかなか問題があると思うのです。私はこの審議会の記録をずっと見たのですが、これはそういう狭い意味ではなくて、もっと広い意味で、そして今言う直接公明選挙につながるものを期待してこういうふうに結論が出たというふうにとっておるのですが、しかし、それはまた問題があります。今、文部省の見解はそれでわかりました。
次に、これから社会教育局長にお尋ねするようになると思うのですが、ここでさらに「公民館、社会教育関係団体、婦人学級、青年学級等を通じて行なう社会教育について、さらに積極的に民主政治特に選挙に関する教育を行なうとともにこれを利用する特別の教材を整えること。」かなり具体的に出ているのです。ここで、公民館は文部省とどういう関係になりますか、あるいは婦人学級、青年学級などに至っては、はたしてどこでどう関係が結ばれてくるかということも問題があると思いますけれども、一応ここでこういう工合に並べておりますものを、あなたの方でお答えいただける範囲のものが相当あると思いますので、一つ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/60
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061・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 この答申の中に例示してあります社会教育活動の中で、公民館、それから婦人学級の大部分、それから青年学級、これはそれぞれ市町村が開設するものであります。それから社会教育関係団体とここでいっておりますものは、いわゆる婦人会とか青年団体とかいう民間の任意の団体のことであります。そこで、この答申に関連いたしまして、従来とも私どものやっておりますことは、公民館が行ないますところのいろんな学級を開設する場合、あるいは市町村が婦人学級、青年学級を開設する場合に、その中で、公民として、あるいは市民としての基本的な政治的な態度というものをプログラムの中に入れるように、いろいろな参考資料等を差し上げる、最近でございますれば、市民性の向上というようなものを社会教育審議会で検討いたしまして、この中には、直接公明選挙に触れた内容のことも書いてあるわけであります。文部省といたしましては、そういう資料を流して、そしてそれぞれの市町村で行ないます社会教育活動あるいは民間団体の行なう社会教育活動の中でそういうものが取り上げられることを期待し、指導しているわけでございます。また、特別の教材につきましては、これはその次の(4)にも関連がございますけれども、従来とも、たとえば視聴覚教育器材といたしまして、録音教材と申しまして、文部省で、いろんな公明選挙とかあるいは公民教育に関係ある方々のテープをとりまして、それを市町村に県を通じて配付いたしまして、それをたとえば有線放送で流すとか、あるいはいろいろな学級活動をいたします場合に教材として使用するというようなことをいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/61
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062・井堀繁男
○井堀委員 次にお尋ねしようと思うのをお答えいただいた(4)でありますが、公民館、図書館——図書館もいろいろありましょうけれども、広い意味のことだろうと思いますが、こういったようなものから、それに、私伺おうと思いましたが、今あなたが言われた目や耳からのそういう器材、それから啓発資材という言葉を使っていますね、これは金のかかる仕事でもあると思いますが、そういうものをどういうものを作るかということも、これは非常に問題があると思うのです。しかし、それをどこへ作らせるかということは何もはっきりしていないですよ。政府が出したから政府がやればいいわけでしょうが、政府の中にも——これは自治大臣一つ聞いておいて下さい。あなたのところでこれをお作りになることになるのでしょうが、こんなものはざっと聞いてそのまま見送るのでしょうが、これは具体的ですから、こういう器材とか資材、さっきテープレコーダーのようなものの話がありましたが、安くありません。これは一部だけにやるのでは意味がない。図書館とか公民館——公民館が全国にかなりあるでしょう。こういうように拡充整備、活用をはかるというのですから、県に一つずつ配ればいいというものではないでしょうし、公民館の中で、どこぞだけ置けばいいというわけではないし、私は、少なくとも公民館にはこういうものを一つずつ備えつけるということが、答申に忠実な政府の態度だということになってくると思います。予算が大へん要るのですよ、大臣。こういうようになってきますと、答申案に少なくとも忠実かどうかということは、こういうところで出てくると思います。文部省では、まさかこういうものを買ってお分けになるような予算もありますまい。ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/62
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063・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 この答申を私たち拝見いたしまして、この公民館、図書館——特に図書館と出ておりますのは、図書館においてもいろいろフィルム・ライブラリーの活動も兼ねているから、わざわざ図書館と出されたのだろうと思いますが、そういう資材を、地方団体の努力も、それから国の努力もあってだんだん整備する、そしてその中で公民教育に必要なものも充実していくという趣旨であろうと思いまして、現在公民館につきましては、教材そのものでなくて、利用するいろいろな映写機でありますとか、あるいは録音の機械でありますとか、そういうものは、公民館の設備費の補助として年々充実して参ってきているわけであります。さらにそのかけます内容につきましては、一例として先ほど申し上げましたように、生活の改善その他万般にわたりまして、毎年そのテープを作って流しておりますが、その中にも、従来とも公明選挙に関連するものはシリーズとして出しておりまして、それを府県で複製をして地方へ流すというようなことをやっております。また、公民館等の立場になって参りますれば、必ずしも文部省だけで作るものではなくて、公明選挙という観点から、常時啓発を御担当になっております公明選挙連盟とか、そういうものが、有効な資料がありますれば、どんどんこういうところの活動に入れていってもらえば、それを充実していく速度も増してくるだろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/63
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064・井堀繁男
○井堀委員 安井大臣にお尋ねすることになるわけでありますが、今文部省の方に伺いますと、特別の御予算も計画もおありでないようであります。従来のものに多少積極性を持たせるというように理解すべきではないかと思います。そうすると、ここでは目から耳から、その他感覚の上で自然の上にそういう教育をやれということ、しかもここでは器材、資材なんといっているくらいですから、芸がこまかいです。しかし、私はこれは要を得ていると思うのです。そうすると、公民館も今全国かなりの数に上っていると思いますが、それに一台ずつテープレコーダー、あるいは紙芝居でもいいですけれども、そういう道具立てを用意するということになると、相当の金額をやはり予定しなければならぬと思うのです。これは大臣、どこがやるのでしょうか。それともこれは聞き流すのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/64
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065・安井謙
○安井国務大臣 決して聞き流すつもりではございませんし、私どもも非常にこれは大事なことだと思います。ただ御指摘のように、まだまだこういう活動面が不十分なことは、私どもも十分気がついております。ただ、今までの慣習、組織の上から、一挙にこれを持ち込みましても、かえって消化不良を起こすといったような懸念がありまして、私どもはこれを逐次強化していこう、こういうつもりでやっております。今度もふえました予算、あるいは従来の予算の中から、スライドとか、あるいはテープレコーダーでなくて、テープレコーダーのテープ、あるいは公明選挙のハンドブック、こういったようなものは、公明選挙の推進協議会連盟とも協議いたしまして相当作り、これをそういった選挙管理委員会等を通して公民館なんかへも流すといったような活動もやっておるような次第でありまして、まだ不十分かもしれませんが、さらに一方文部省とも十分連絡いたしまして、教育委員会の方からもそういうものに気をつけてもらうと同時に、われわれも側面からそういう資料を流すというようなことで、両々相待って効果を上げたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/65
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066・井堀繁男
○井堀委員 次に、話し合い活動などに対する助言者の養成というのですが、これは私非常に大切なことだと思うのです。民主主義の一番初歩に考えられる有権者各位の話し合い、もちろん話し合いといっても、いろいろやり方があると思うのですが、それの指導者あるいは助言者とかいっておりますが、こういう者を養成せい、こういっている。しかもあとに「助言者を養成するため、常時、研修会、講習会等を実施すること。」こう結んでおるわけでありまして、これも自治大臣、金がかかりますよ。これも一人か二人養成すればいいわけではありますまい。全国に、しかも有権者全体に、あなたは一ぺんに与えると消化不良を起こすなんというが、これは食べ過ぎて問題を起こすようなものとは違うと思う。この助言者の養成というものは、十分か二十分話を聞かして、それで助言者になる能力のある者もおるかもしれませんが、そんなことを言っているのじゃないと思う。やはり相当計画的な、こういう活動をやりなさい、その計画的な活動をやるためには、助言者というようなことをいったことはかなり政府を縛ると私は思う。だからこういうことは、ほかのところで審議会の答申に忠実だとかなんとか言ってみても、ただこの一項だけを取り上げて、助言者を養成するために政府は何をしたかということを聞けばすぐわかる。一体自治省はこの助言者養成ということについて、どういうふうに受け取っておられますか、一つ伺っておきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/66
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067・安井謙
○安井国務大臣 これも非常に大事なことで、助言者の養成あるいは話し合いの活動というのは、これは同じ金がかかる中でも比較的資材を要しない、会場とお茶があれば大体できるものでありますから、比較的貧乏世帯の選挙局でも、これは割合力を入れてやってきているのでありまして、大体三十五年、六年からずっと各府県の選挙管理委員会を中心にいろいろやって参っておりまして、特に話し合いというようなことは、相当行事としてやって参っております。三十七年度におきましては、各都道府県全体で五万三千入程度の参加者の計画を持って養成をしていこう、こういうような計画も実に具体的に立てておるわけで、県別の割当人員といったようなものも、もうすでに予定を作っておるようなわけであります。しかしこういうものは、ある部落では非常に熱心にやってくれますが、ある部落ではなかなか取り上げてくれないといったような不均衡もかなり今まで見られますので、できるだけそういった点に一つ全部が均霑するように、そしてその波を大きくしていくように、大いに努力を続けていきたいと思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/67
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068・井堀繁男
○井堀委員 この項目につきましては、今も申したように、教育委員会の関係もあるようでありますから、きょうのところはこの程度にいたしまして、一つまた理事会で御相談を願って、教育委員会の意見が聞けるような方法を講じていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/68
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069・加藤常太郎
○加藤委員長 本日は、この程度とし、次会は来たる六日午前十一時より開会いたします。
これにて散会いたします。
午後三時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004219X01019620404/69
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