1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年二月二十一日(水曜日)
午前十時十七分開議
出席委員
委員長 中野 四郎君
理事 齋藤 邦吉君 理事 永山 忠則君
理事 藤本 捨助君 理事 柳谷清三郎君
理事 小林 進君 理事 滝井 義高君
理事 八木 一男君
安藤 覺君 井村 重雄君
伊藤宗一郎君 浦野 幸男君
小沢 辰男君 加藤鐐五郎君
佐伯 宗義君 澁谷 直藏君
松山千惠子君 米田 吉盛君
赤松 勇君 大原 亨君
五島 虎雄君 島本 虎三君
田邊 誠君 吉村 吉雄君
本島百合子君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君
労 働 大 臣 福永 健司君
出席政府委員
厚生事務官
(大臣官房長) 山本 正淑君
厚生事務官
(児童局長) 黒木 利克君
厚生事務官
(年金局長) 小山進次郎君
厚生事務官
(援護局長) 山本淺太郎君
労働基準監督官
(労働基準局
長) 大島 靖君
労働事務官
(職業安定局
長) 三治 重信君
委員外の出席者
専 門 員 川井 章知君
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二月二十日
生活保護基準の引上げに関する請願(下平正一
君紹介)(第一三一三号)
同(井出一太郎君紹介)(第一三七六号)
児童福祉法に基づく措置費増額に関する請願(
下平正一君紹介)(第一三一四号)
同(井出一太郎君紹介)(第一三七七号)
人命尊重に関する請願外十二件(臼井莊一君紹
介)(第一三二二号)
療術の制度化に関する請願(宇田國榮君紹介)
(第一三五二号)
同(床次徳二君紹介)(第一三五三号)
同(上林山榮吉君紹介)(第一四一五号)
同(正力松太郎君紹介)(第一四一六号)
同(宇田國榮君紹介)(第一五六九号)
同(高津正道君紹介)(第一六五三号)
同(中馬辰猪君紹介)(第一七〇二号)
引揚者給付金等支給法の改正に関する請願(坂
田道太君紹介)(第一三五四号)
同(竹下登君紹介)(第一五三一号)
栗生楽泉園看護助手の増員に関する請願(山口
鶴男君紹介)(第一三五五号)
未帰還者留守家族援護に関する請願(尾関義一
君紹介)(第一四九五号)
労働者災害補償保険法及びじん肺法の一部改正
に関する請願(広瀬秀吉君紹介)(第一四九六
号)
外傷性せき髄障害者の長期傷病給付及び休業補
償費の給付率引上げ等に関する請願(島本虎三
君紹介)(第一五三〇号)
同(大柴滋夫君紹介)(第一六五一号)
未帰還者留守家族等援護法による療養給付期間
延長に関する請願(松村謙三君紹介)(第一六
〇七号)
戦傷病者のための単独法制定に関する請願(松
野頼三君紹介)(第一六五四号)
重度し休障害者対策に関する請願(賀屋興宣
君紹介)(第一六九六号)
外傷性せき髄障害者の労働者災害補償保険法適
用に関する請願(五島虎雄君紹介)(第一六九
七号)
外傷性せき髄障害者に対する長期傷病者補償の
適用に関する請願(五島虎雄君紹介)(第一六
九八号)
外傷性せき髄障害者の長期傷病給付及び休業補
償費の給付率引上げに関する請願(五島虎雄君
紹介)(第一六九九号)
長期傷病者補償の第一種傷病給付を受ける外傷
性せき髄障害者の医療費全額国庫負担に関する
請願(五島虎雄君紹介)(第一七〇〇号)
低額補償給付の外傷性せき髄障害者に対する給
付額引上げに関する請願(五島虎雄君紹介)(
第一七〇一号)
は本委員会に付託された。
同月二十一日
国民年金法の一部を改正する法律案(中野四郎
君外二十五名提出、第三十九回国会衆法第一八
号)
は委員会の許可を得て撤回された。
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本日の会議に付した案件
児童扶養手当法の一部を改正する法律案(内閣
提出第九号)
国民健康保険法の一部を改正する法律案(内閣
提出第二五号)
国民年金法の一部を改正する法律案(内閣提出
第三二号)
医療金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣
提出第三五号)
船員保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第六四号)
戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第七二号)
国民年金法の一部を改正する法律案(中野四郎
君外二十五名提出、第三十九回国会衆法第一八
号)
労働関係の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/0
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001・中野四郎
○中野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の児童扶養手当法の一部を改正する法律案、国民健康保険法の一部を改正する法律案、国民年金法の一部を改正する法律案、医療金融公庫法の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案及び戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、以上六案を一括して議題とし、審査を進めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/1
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002・中野四郎
○中野委員長 提案理由の説明を聴取いたします。灘尾厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/2
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003・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 ただいま議題となりました児童扶養手当法の一部を改正する法律案外各案につきまして、その提案の理由及び要旨を御説明申し上げます。
まず第一に、児童扶養手当法について申し上げます。
児童扶養手当法は本年一月から施行され、母子世帯等における児童の福祉の向上をはかるため、母子世帯の母等に対して児童扶養手当を支給することとなっているところでありますが、今回さらにこの児童扶養手当制度の充実をはかるため、手当の額を引き上げるとともに、受給資格者の所得による支給要件を緩和することを内容とするこの法案を提出した次第であります。
次に、今回の改正の概略について御説明いたしますと、まず第一は、手当の月額が、現行法では児童一人の場合は八百円、二人の場合は千二百円、三人以上の場合は三人以上の一につき二百円を加算することになっておりますのを、児童二人の場合は千四百円、三人以上の場合は三人以上の一人につき四百円を加算することに改めようとするものであります。第二は、現行法では受給資格者が前年において十三万円以上の所得がある場合は手当が支給されないこととなっていますが、この所得による制限額を十五万円に引き上げ、支給制限を緩和しようとするものであります。なお、この改正は、手当額の引き上げについては本年五月分の手当から、所得制限額の引き上げについては昭和三十六年分の所得から適用することといたしております。
以上が、児童扶養手当法の一部を改正する法律案の提案理由及びその要旨であります。
次に国民健康保険法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。
国民健康保険は、その被保険者の相当部分が保険料の負担能力の乏しい低所得階層であるため、その財政基盤は比較的薄弱であります。特に受診率の上昇、医療費の改訂等の最近の状況にかんがみ、保険財政の健全化のためには、この際、国の財政措置の強化が必要であると考え、ここにこの法律案を提案した次第であります。
次に、この法律案の内容について御説明申し上げます。
現行の国民健康保険法におきましては、療養給付費についての国庫の負担または補助の率は十分の二となっているのでありますが、この負担または補助の率を五分引き上げ、百分の二十五にすることといたしました。なお、本改正は本年四月一日から実施するものであります。
以上がこの法律案の提案理由であります。
次に、国民年金法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
国民年金法は、昭和三十五年十月の拠出年金の適用及び昭和三十六年四月の保険料納付の開始をもって全面的な実施に入ったのでありますが、この制度につきましては、さきに第三十九国会におきまして相当大幅な改善内容を盛った改正法案について御審議をわずらわし、その実施を見たのであります。しかしながら、わが国年金制度の中核たる基盤を確立し、所得保障の実を上げますためには、なお改善充実に努めなければならないことは申すまでもないところであります。
今回の改正法案は、この制度における低所得者層の処遇をさらに厚からしめるため、当委員会の強い御要望でもある保険料の免除を受けた場合にも保険料を納付した場合と同様に国庫負担を行なうことを実現することによって、低所得被保険者について拠出年金の受給要件を緩和し、あわせて年金額の引き上げを実施するとともに、低所得、かつ、低額の公的年金受給者に対する福祉年金支給制限の緩和等を行なおうとするものでありまして、そのおもな内容は次の通りであります。
まず、拠出年金に関する事項について御説明申し上げます。
国庫が毎年度、前年度において免除された保険料総額の二分の一に相当する額を負担することにいたしましたことは、さきに申し上げた通りでありますが、これに基づき、まず、第一に、老齢年金について、従来二十五年間以上の保険料納付または十年間以上の保険料納付及び十五年間以上の保険料免除のいずれかに該当することを受給要件といたしておりましたが、これを改め、保険料納付期間、保険料免除期間またはこれらの合算期間のいずれかが所定の年数以上あればよいことにしたのであります。
第二に、老齢年金の額は、保険料納付期間に応じて定める額と保険料免除期間に応じて定める額との合算額とし、その合算額が一万二千円に達しないときは、七十才以後の老齢年金額を一万二千円まで引き上げるものといたしたのであります。
第三に、障害年金、母子年金、準母子年金及び遺児年金については、継続する直近の三年間の全部が保険料免除期間であっても支給が受けられるように、その要件の緩和をするとともに、その場合の支給額も保険料納付期間で満たされている場合と事実上ほとんどひとしからしめようとするものであります。
次に、福祉年金に関する改正について申し上げます。
第一に、公的年金受給者に対する福祉年金の併給に関する改正でありますが、その内容は、公的年金を受けている人々の年金額が二万四千円未満であるときは、福祉年金の額の限度で、二万四千円とその公的年金額との差額を支給しようというものでありまして、公的年金が戦争公務により死亡し、または廃疾となったことに基づき支給されるものであるときは、この二万四千円を七万円といたしております。
第二に、受給権者本人の所得による福祉年金の支給制限額十三万円を十五万円に引き上げようというものであります。
第三に、福祉年金の受給権者の配偶者が公的年金を受けております場合に、受給権者に支給する福祉年金の額を六千円に減額する措置は、これを撤廃することといたしております。
第四に、母子福祉年金及び準母子福祉年金における加算額を一人当たり年額四千八百円とし、現在の倍額にしようというものであります。
なお、以上のうち、福祉年金に関する第一及び第三のものは、昭和三十七年十月分から、第二及び第四のものは、昭和三十七年五月分から支給することといたしております。
次に、医療金融公庫法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
医療金融公庫は、昭和三十五年七月に、私立の病院、診療所等の設置及びその機能の向上に必要な長期かつ低利の資金であって、一般の金融機関が融資することを困難とするものを融通することを目的として設立されたのであります。
設立当初の昭和三十五年度におきましては、二十九億五千万円の融資原資をもって発足いたしましたが、昭和三十六年度におきましてはこれを七十億円に増加し、これについては、三十六年十二月末までに、すでに約六十五億円の貸付を決定しているのであります。しかし、私立の病院、診療所等の適正な整備及び機能の向上をはかるためには、公庫の資金量を一段と増加する必要があり、政府は、昭和三十七年度におきましては、公庫の融資原資として九十億円を予定し、これに要する資金として資金運用部資金の借入金五十九億円及び貸付回収金六億円のほか、一般会計から二十五億円を出資することといたしております。このため、公庫の資本金三十億円を二十五億円増加して五十五億円とする必要があります。
また、医療金融公庫は、昭和三十七年度は設立三年目に当たるわけでありますが、年々その業務量が増大し、経営の基礎も充実して参りましたので、この際、他の公庫の例にならい、理事長を総裁と改め、業務の一そう円滑な運用を期することが必要であります。
以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。
次に、船員保険法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
今回の主要な改正事項は二つありまして、一つは被保険者の標準報酬を改めること、一つは遺族に対する保険給付の合理化をはかることであります。
まず、標準報酬の改正について説明いたします。
船員保険の標準報酬の月額は、現在、最低五千円、最南三万六千円の十八等級に区分されておりますが、社会経済情勢の推移等によりまして、現在、この区分では著しく実情に沿わないものとなって参りました。今回の改正におきましては、この標準報酬の最低を七千円に、最高を五万二千円にそれぞれ引き上げ、あわせて標準報酬の等級を二十一等級に区分いたそうとするものであります。
第二に、船員保険における遺族給付の合理化について説明いたします。
現在、船賃保険の遺族に対する年金給付には、老齢年金の受給資格を満たした人が死亡した場合とか、職務上の事由で死亡した場合に、その遺族に支給する遺族年金の制度のほかに、主として老齢年金の受給資格を満たすに至らない短い被保険者期間しか有しない被保険者が職務外の事由で死亡した場合に、その配偶者または子に支給する寡婦年金、鰥夫年金及び遺児年金の制度がありますが、この両制度の統合及び調整につきましては、昭和二十九年法律第二百四号船員保険法の一部を改正する法律の附則第二十一条によりまして、その実現が強く要請されているところであり、また、厚生年金保険におきましては、すでに昭和二十九年にこれらについての統合が実現しているのであります。
今回の改正は、寡婦年金、鰥夫年金及び遺児年金の制度を廃して、すべて遺族年金の制度の中に統合するとともに、遺族の範囲、年金額の計算方式をも遺族年金の場合と同様とする等の調整をはかり、もって船員保険の遺族給付の合理化をはかろうとするものであります。
以上がこの法律案を提案する理由であります。
次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
戦傷病者、戦没者遺族、未帰還者留守家族、引揚者等に対しましては、戦傷病者戦没者遺族等援護法、未帰還者留守家族等援護法、引揚者給付金等支給法及び未帰還者に関する特別措置法によりまして各般の措置が講ぜられて参りましたが、今般これらの援護措置の改善をはかることとし、別途本国会に提案されております恩給法等の一部を改正する法律案とも関連いたしまして、この法律案を提案する運びとなった次第であります。
次に、この法律案の概要について御説明いたします。
まず第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正であります。この改正は、恩給法等の一部改正による傷病恩給及び公務扶助料の増額に関連いたしまして、障害年金、障害一時金、遺族年金及び遺族給与金の額を増額いたすこととしたものでありまして、増額の程度、増額の実施時期等につきましては、恩給法のそれにならっております。
第二は、未帰還者留守家族等援護法の一部改正であります。その改正点の第一は、留守家族手当並びに死亡の事実の判明した未帰還者の遺族に対して支給する葬祭料及び遺骨引取経費の額を、他制度との均衡を考慮いたしまして増額いたしたことであります。改正点の第二は、未帰還者に対する療養の給付に関しまして、現在給付期間が、帰還の時期により、最高九年ないし十四年となっており、本年八月以降その納付期間が満了する者が生じて参りますが、期間経過後もなお療養を必要とするものについては、当分の間療養の給付を行ない得ることとしたことであります。
第三は、未帰還者に関する特別措置法の一部改正であります。改正点の第一は、最終の生存資料が昭和二十八年以後に存する未帰還者についても、厚生大臣が同法により戦時死亡宣告の請求をなし得るように対象範囲を広げ、民法第三十条に規定する場合と合致させることといたしたことであります。改正点の第二は、戦時死亡宣告を受けた者の遺族に支給する弔慰料の受給者の範囲につき、現在二親等内の血族に限られておりますのを、戦傷病者戦没者遺族等援護法による弔慰金の受納者の範囲と同様に、三親等内の親族にまで拡大することとしたことであります。
第四は、引揚者国債の元利金の支払いにつきまして、その消滅時効の適用についての特例を設けることとしたことであります。
右のほか条文の整理等、所要の改正を行なうことといたしました。
以上がこの法律案を提出いたしました理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、以上の各案につきましてすみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/3
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004・中野四郎
○中野委員長 ただいまの各案についての質疑は後日に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/4
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005・中野四郎
○中野委員長 この際、お諮りいたします。
中野四郎外二十五名提出の国民年金法の一部を改正する法律案について、発議者の全員から撤回の請求がありました。本案はすでに本委員会の議題となっておりまするので、これを撤回するには委員会の許可を要することになっております。
つきましては、本案の撤回を許可することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/5
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006・中野四郎
○中野委員長 御異議なしと認め、本案の撤回を許可することに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/6
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007・中野四郎
○中野委員長 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/7
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008・吉村吉雄
○吉村委員 私は、きょうは賃金関係につきまして、特にその賃金問題の重要な柱ともいうべきところの最低賃金法の実施現況についてしぼりながら、大臣並びに当局の見解をお伺いしたいと思うのです。
初めに、昨年の六月、労働省で発表いたしましたところの三十五年度の労働経済の分析、すなわち労働白書というものを発表されましたけれども、これを要約いたしますと、三十五年度におきましてはその雇用が非常に好転して、三十四年度に比べて大体一一・四%の雇用上昇を示したということが報告されております。第二には、賃金関係につきましても非常に大幅な上昇を示しまして、特に中学あるいは高校の卒業者の新規給与が大幅に上昇を示したということを報告されています。また第三番目には、このような雇用あるいは賃金関係の好転の主要な原因をなしたものは経済の高度成長にある、こういうことを指摘いたしております。しかし、この白書におきましても、以上申し上げましたような雇用ないしは賃金等についての改善が行なわれたとはいいながら、内容的に見てみますと、産業別あるいは地域別並びに規模別にいろいろの問題がある、一つは若年労働者が大企業に集中し始めておる、それから中高年令の労働者が小企業に渋滞してしまっておる、さらにその離職傾向がある、または、技能労働者が不足しておる等々の問題を内包しているということを報告されております。締めくくりといたしまして、これらの問題点を解消していくためには、相当思い切ったところの施策を必要としているというふうに言外ににおわせておるのであります。もちろんこれ以外に、この白書の中では、相当微に入り細にわたって昨年度の労働経済の全般について分析されておるのでありますけれども、そういう報告を読みまして、私は、現在のこの白書が問題としているような点、これらはどういう事情で起こったのであろうかということと、それから今後これに対して労働省がどういうふうな考え方で対処されようとしておるのか、こういうことについて、まず大綱的なことについて大臣から見解をお伺いしておきたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/8
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009・福永健司
○福永国務大臣 今吉村先生から、いろいろ、私どもがすでに発表いたしました労働経済上の諸分析等についてのお話があったのでありますが、事は広範にわたりまするけれども、こうした事情になることにつきましては、わが国の長い間の特殊性も大きく作用していると考えるのであります。これを一一申し上げるまでもなく、かなり複雑したものでありますが、それでありますだけに、ただいま御指摘のごとく、問題点の解決に労働省といたしましては積極的な施策を講じなければならぬ、こういうように考えておる次第でございます。
私はこの前皆様に所信を申し上げましたときにも、私の考えております労働行政全体は、言うなれば一種の積極労政ということでありたい、こういう表現もいたしておるのでございます。賃金問題等につきまして、非常に長い間にわたってのわが国の悩みがあるわけでございます。そこで、何とかこうしたことの解決をはかりたいというようなことから、今度賃金部の設置というようなことも国会に提案をいたしておるような次第でございまして、率直に申しまして、従来、割合労働行政の分野では跡始末的な、しりぬぐい的な行政がかなり多かったのであります。これは私は率直に認めなければならぬと思うのでありますが、進んでそうした跡始末やしりぬぐいをするということよりも、そうしたことをしなければならぬような事態を起こさないようにするという方向へいかなければならぬ、こういうことが私どもの基本的な考え方でございます。国民経済全体の中で、労働者諸君のためにも、ぜひ今申しましたような意味での前進が行なわれなければならぬ、こういう態度で私どもは現在もおりますし、将来ますますそうあらねばならぬ、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/9
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010・吉村吉雄
○吉村委員 今後の方向についての大綱的な考え方につきましては、従来の事後処理的な行政ではなくして、積極的に問題を起こさないような立場に立ったところの行政ということでございますので、その点に関する限り了としなければならないと思うのです。
そこで、若干具体的な問題に触れながら見解をお伺いしていきたいと思うのですが、まず第一に、先ほど指摘申し上げましたように、若干労働者が大企業に非常に集中をしておる。昨年の十月の労働者の職業安定課の発表した資料によりますると、中学卒業者の求人充足率を企業別、規模別に見てみますると、五百人以上の規模におきましてはその充足率は六四%に達しておる、ところが、規模十四人以下になりますとわずかに一八%台にとどまっている、その結果、零細企業につきましては若年労働者が集まらなくて、経営それ自体が非常に困難を来たしているということは、再三問題になっておるところであります。こういう状態の中で、この労働省の発表によりますると、若年労働者が非常に大企業に集中してしまって、そして中高年令労働者というものが小企業ないしは零細企業に集中をしている、こういう状態でございますから、この傾向というものは、何らかの積極的な手を加えなければ本年度においても変わりないのではないか、こういうふうに考えられるわけです。このようなものをこのまま放置しておいたのでは、中小企業の経営というものがそれだけ圧迫される、こういうことになってくるというふうに考えられます。従って、こういう点につきまして、労働省としましてはもちろん十分考えて対処されておると思いますけれども、中小企業に対するところの若年労働者の充足率を向上せしめるために、具体的にどういうような方法をとろうとしておるのか、こういうことについてお伺いをしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/10
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011・福永健司
○福永国務大臣 具体的施策の若干につきましては、後ほどまた政府委員からも加えて御答弁申し上げさせることにいたしますが、御指摘のように、ごく若い人が大企業にあこがれて中小企業にあまり来たがらないというこの傾向は非常に顕著であり、従って、これに対する適切な施策を行なって、中小企業に若い人が相当程度行くように向けなければならぬ、こういうことになるわけでありますが、何といたしましても、いろいろの表現はあろうかと思いまするけれども、私の考えているところでは、若い人のセンスからして、進んで中小企業に行きたいというような魅力が乏しいというふうに思うわけであります。そのいろいろの原因はあげられるのでありますが、たとえば一般に中小企業は経営基盤もあまり強固ではないし、また、労使関係においても近代化されてないようなところも多くある。その他いろいろあげられましょうが、こういうような点をとらえてみますと、どうしても中小企業の基盤強化ということのためには、単に労働行政のみならず、国の施策全体が足をそろえてそういう方向に向けられなければならぬというので、現内閣でも相当程度の中小企業対策はやっておりますが、まだ十分、十二分に成果が上がるというところまでいってないことを遺憾とするものであります。従って、この部門における現状といたしましては、先刻私が表現した言葉をもっていたしますならば、かなりにしりぬぐいをしなければならぬ問題がある、こういうことでございますので、他の大蔵省や通産省その他においての施策も強力に進めてもらうようにいたしまして、施策全体の中で、何とか経営基盤の強化というような方向へいかせるようにしなければならぬ。労使関係の近代化というようなことをとらえてみれば、これは主として労働省の方で大いに啓蒙、指導をしなければならない。こういうようなことにつきましては、従来労働省としても非常に力を入れ来たっておるところであり、新年度の予算におきましても、そうしたことにおいての前進をいたすようにしておるところでございます。大企業は大企業なりに経営基盤等が非常に強固ではありますが、私は自分も事業経営等をやった経験からいたしまして思いますが、中小企業になりますと、比較的従業員が少ないだけに、やりようによりましては経営者と労働者の間にうるわしい心と心の交流が行なわれるようなことも期待できると思うのであります。従って、中小企業は単に大企業と同じようなやり方——これも大いに大企業に負けないように諸般の点で近代化していかなければならぬということではありますが、これとともに、むしろ中小企業により魅力を感ぜしめるような、精神面での大企業と違った何らかの工夫というようなことも行なわれなければならぬ、こういうように思うわけであります。単にそういう労使関係や労務管理といったような面だけでなく、生産それ自体について見ましても、中小企業だからこそこういうものができるというものを大いに作る、今の状況は、おおむね中小企業というものは大企業の下請のような仕事が多いのでありますが、そういうことではどうしてもいけないので、外国でもそういう例がかなりありますが、中小企業にして初めてこういういい製品ができるというようなものを、日本ではたくさん作っていく方向にいかなければならないのじゃないか、こんなようなこと等も考えておるわけなのであります。いずれにいたしましても、現在の状況は御指摘の通りでございますが、こういうことで長く推移いたしますと、ますますもって中小企業が窮境に陥るということでもございますので、私どもは、全般といたしまして、今御指摘のような点につきましては特に積極的に施策を講じて参らねばならぬと考えておる次第でございます。
なお、政府委員からつけ加えて御答弁申し上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/11
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012・三治重信
○三治政府委員 計数的なことと、そのほか若干のことにつきまして御説明申し上げます。
御説のように、中小企業における充足率は非常に少ないわけですが、絶対数はやはり大企業に比べて非常に多いわけです。大体われわれが紹介しております新規学卒のうちで、中学校で五百人以上の事業所に就職した者は三〇%でございまして、あとの七〇%は五百人未満の事業所に就職しているわけでございます。高等学校卒業者におきましても、五百人以上の事業所では二七・六%でございまして、それ以外の人は、それ未満の事業所に就職しているということでございます。従って、絶対数におきましてはまだ圧倒的に中規模以下の事業所に就職されている方が多いわけでございますが、しかしながら、その求人の充足率は、大事業所よりだんだん中小零細企業にいくほど、御指摘のように少ないわけであります。従って、これを新規学卒でそちらの方へ振り向けられぬかといいますと、やはり職業選択の自由からいっても、なかなかそれを強制的と申しますか、勧奨しても、大企業また大事業所の方で雇用希望が出てくると、どうしても新規学卒者はそちらの方へ流れます。従って、中小企業並びに零細の方たちの求人については、さらに新規学卒以外の求職者を充足する、もちろん新規学卒について、できる限り各人の特性に応じて、その職場に適する人を勧奨するようにはいたしますけれども、しかしながら、なおここ当分絶対的に不足ということは、だれが見ても明らかだと思います。それをほっておくわけにはいきませんから、それを新規学卒の補充として、またそれにかわる求人を満たすような求職者を探し出すという方法でやっていきたいと思います。
なお、その新規学卒につきましては、一例といたしましては中小企業に事業内訓練、ことに技能者養成の訓練制度、また、夜間学校に行く制度、そういう子供の将来の向学の希望を満たすようなやり方、また、集団求人によって、地域また事業によって労働条件を統一化し、そうしてまた子供たちがお互いに話し合える、各家庭に入らぬでもいわゆる寄宿舎制度、給食制度というものを集団的に中小企業で行なえるような方策をやり、さらに、住宅の関係につきましては融資制度も考えております。そういうふうな福祉施設あるいは各人の向学心、また技能教育を進める、そういう教育訓練の問題も中小企業で行なえるように指導し、援助していくという方向でわれわれの方はやっていきたい。また、中高年令者その他で、そういう適職者を探して充足をはかっていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/12
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013・吉村吉雄
○吉村委員 一番問題になるのは、やはり中小企業の新規学卒者の充足率が低いということが問題だと思います。その充足率が低いということの原因は何かということになるならば、先ほど大臣の答弁の中にありましたように、大企業に比較して、何と申しても魅力が少ない。抽象的ではありますけれども、こういう一言に尽きるのではないか。そういう問題を解決していくためには、やはり政府全体として中小企業の問題をどうするか、こういう立場に立たなければならないことは言うまでもないと思うのですが、そういう点から考えてみますると、今の経済状態の中で、大企業あるいは中小企業、こういうものの産業分野というものが野放しになっておる、こういうことが必然的に中小企業というものに圧迫を来たしておるということになっておると思います。その結果、中小企業の方といたしましては、たとい賃金の値上げをしたいと思っても経営上なかなか値上げするわけにはいかない、こういう因果関係になってくるのではないかと思うのです。労働白書によりますと、新規学卒者の初任給というものは相当値上がりになった。その大部分を占めている中小企業の初任給というものが、相当大幅に上昇したからこういうふうになったのだという趣旨のことが書いてあるわけでありますけれども、そのことは、私の考えでは、中小企業の経営者といたしましては、ぎりぎりのところ、そうしなければ新規学卒者というものが集まらない、こういう結果が、今のような報告を書かせる原因になっていると思うのです。それでもなおかつ、先ほど申し上げたようなきわめて低い充足率という状態でありますから、このままでは経営それ自体も非常に問題になるでありましょうし、同時に、私が心配いたしますのは、今までそこに働いておるところの中高年令者、こういう人たちの待遇というものも、これまた、いつまでたっても非常に低賃金のままで置かれてしまうということになりかねないのではないか、こういうふうに考えられますから、この点については、労働省だけではどうにもならない問題であろうかとは思うのでありますけれども、しかし、中小企業に働いているところの労働者の数は、御承知のように約一千万に近いということでございますから、これらの労働者の生活というものを守っていくために、もっと企業それ自体を健全にしていく、そのために国家的な施策というものを講じていく、こういうようなことをしていくことが非常に大切ではないかと考えますので、こういう点について、現在政府全体としてとういう考え方で対処しようとしておるのか、いま一度お伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/13
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014・福永健司
○福永国務大臣 中小企業を強化することについては、ただいまのお説のごとく施策全体が足並みをそろえてそういう方向にいかなければならぬということは、私も全然同感でございます。府政全体といたしましても、この問題にきましては、考え方の筋といたしましては、おおむね今のお説のようなことでやっておる次第でございます。ただこの点につきましては、十分であるとか不十分であるとかということになりますと、私どもも、まだまださらに一そうの力を入れなければならぬというように考えておる次第でございます。
なお、お話の中の初めのころに、産業分野等が大企業も中小企業も同じようなことをしている、このままではなかなか問題がうまく解決できないというような意味の御発言がございました。私もその点強く感じております。そこで、先ほども、単に大企業に隷属したような姿とか大企業の下請というようなことでなくて、中小企業にして初めてこういうものができるとか、中小企業なればこそこうなんだというような、そういう特徴が中小企業に多く現われるような方向へ政府も大いに力を注いでいかなければならないというような感じもいたすわけでございます。お話しの産業分野を適当に分かつというようなことも、現実にそうやるということはなかなかむずかしい問題だと思いますが、労働省は労働省的センスで、そういうことについてますます検討を深めていきたいと存じておる次第でございまして、職種によりまして、こういう仕事は中小企業に最もいいのだという意味での啓蒙等は従来もやっておりますが、さらに一そう、これはもっと大規模にそういうことについての研究も進め、啓蒙もしていかなければならないというように私は強く感じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/14
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015・吉村吉雄
○吉村委員 今の中小企業の労働者の賃金問題等につきましては、一つ大臣の方でも、労働者の生活を守っていくという見地に立って、中小企業全般の問題を政府部内において早急に確立して、労働者が安定した気持で働き得るように、そういう施策を推進していただけるように強く要望しておきたいと思うのです。
次に、生産性と賃金の関係について若干お伺いしておきたいのですが、経済白書の中に、三十年から三十五年度にかけましての労働生産性の上昇率というのは四五%に達しておる、これに対して賃金の上昇率は大体三五%であるということが発表になっております。さらに、今月発表になりましたところの経済指標によりますと、三十六年十一月分の労働生産性は、三十年を一〇〇としますと一六六・四%、ところが、賃金指数の方は実質賃金で一一三・六%こういうふうに発表になっております。こういう状態を考えてみますと、生産性の割合に比べまして賃金の上昇率というものは非常に低い、このように言わなければならぬと思うのです。申し上げるまでもないと思うのでありますけれども、生産性の上昇というものは、物価の引き下げ、あるいは労働者の賃金の引き上げ、あるいは資本の蓄積、そういうものに分かれていかなければならないはずでありますから、そういう点でずっと見て参りますと、物価というものはそう引き下げられたというふうにも考えられない。大体労働白書によりますと、物価は安定をしておった、それが日本の経済成長の最大原因になったという趣旨のことが書かれてありますけれども、しかし、当今の状態というものは、そういうところではなくて、御承知のように非常に物価が暴騰しておる、こういう状態に相なっておるわけでございます。こういう状態から考えてみますと、今の状態の中で労働者の賃金を大幅に引き上げるということが、いわば生産性と見合って、労働者が納得して将来の方向に努力していくということになるのではないかというふうに私としては考えるわけですが、日経連におきましては、昨年の人事院の勧告七%を政府が実施したことについても非難がましいことを言い、さらに今回も、今年度の賃上げについてはまかりならぬという趣旨のことを再三にわたって発表いたしておるわけです。こういうような生産性と賃金の関係というものを考えてみまして、大臣としては、今日の状態の中で、賃金というものが生産に見合って低いというふうに考えられておるかどうか、この点について一つお考えを聞かせてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/15
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016・福永健司
○福永国務大臣 賃金が生産性向上と見合って適度に上昇していくということは、私も望ましいと考える次第でございます。もとより御説のごとく、賃金の方ばかりでなくて、一般国民への寄与という点では、製品価格が下がっていくというようなことでそういう結果になることが望ましいし、また、企業の体質改善やある程度の資本の蓄積ということによって、企業それ自体を健全化するという方向にもこれがある程度向けられるということも望ましいのであります。わけて、生産性向上の成果が労働者の賃金の上昇という方向へも向けられるということは望ましいことであります。ただそのときの経済の事情等によって、生産性向上の成果が、今申しましたような三つの方向の中でもどういう方面に多く向けられている結果になっているかということについて私どもは重大な関心を持つわけでありますが、日本経済全体は、最近伸びた伸びたとは申しまするけれども、何としましてもやはり非常に長い間にうんと健全な姿でがっちりと伸びてきたというのではなくて、比較的短い間に伸びておりまするために、なかなか何もかも満足すべき姿にあるとは申せないようなことがあるわけであります。そこに今お話しのようなこと等についてもいろいろのことが起こってくるわけでございます。日経連が賃金等について従来いろいろなことを言っておりますが、この点につきましては、政府の責任者たる私といたしましては、日経連は日経連なりに、そういう立場においてものを言うことがいけないとは申せないと思うのであります。総評は総評らしい表現をされる、日経連は日経連らしい表現というようなことが間々あるわけでございます。ではございますが、そういう立場の違った人たちが、できるだけ相互信頼の考え方の上でうまく話し合って、現実になるほどという話し合いが進行することは、私は望ましいと思うわけでございます。従って、少なくとも日経連が言っておりますることに対して私は批評はいたしませんけれども、それと政府が考えておりますことが同じではないということは、私は申し上げられると思うのであります。しばしば私が申しておりまする通り、無理のない、自然な姿において逐次賃金が上昇していくこと、そしてまた、先ほどからも御指摘のあるように、生産性向上に見合って国民経済の中に適当な均衡を保ちつつ、そのことが行なわれることが非常に望ましいというように存じておる次第であります。若干数字的な点等で、事務当局からもあわせてお答え申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/16
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017・吉村吉雄
○吉村委員 それはけっこうです。
日本の経済成長の中身については、必ずしもノーマルな成長ではなかったというような趣旨の発言がありましたが、これは私は、今までの政府の言明からするといただけないと思うのです。相当長期にわたりまして経済全般としては高度な成長を続けておる、ここ二年間は、政府の言明によりますと、一三%以上の成長を示しておる、こういうことでありますから、それ自体をとらえて、そこが非常に急激だとするならばこれは別でありますけれども、それ以前の状態というものは、全体としての成長というものは相当平均化して進んできているというふうに私どもは考えておったわけですが、内容的には、もちろんわれわれは問題にしなければならない点はたくさんあります。それはそれとしまして、今大臣の答弁の中に、日経連がどういう態度であろうと政府自体はそれと同一ではない、こういう趣旨の話がありました。今新しい状態の中で、本年度の賃金をどういうふうにするかということで、労働団体の中で特に中心的な役割をになっておる総評の考えておることは、御承知の通り大幅賃上げ、こういうことを主張しております。日経連は、これに対してそういうことはでき得ないということを言うて対立をいたしておるのでありますが、この中で労働省がどういう態度をとるかということは、きわめて微妙な影響を与えるというふうに言わざるを得ないと思うのです。そういう場合に、十一月の二十三日に労働省から「日本の賃金事情について」というものが発表になったわけでありますが、これは必ずしも日本の労働賃金というものは安くない、こういう趣旨で貫かれておると思うのです、内容はいろいろこまかく書いてありますけれども。先ほど申し上げましたように、日経連と総評との間に大きな意見の対立のある中で、日本の賃金というものはそう言われるほど安くない、こういうようなものが時たまたま発表になっているということは、これは私にとりましては、意識しているかどうかは別でありますけれども、しかし客観的に見ますると、日経連の主張をあと押ししているように印象づけられてもしようがないのではないか、こういうふうに考えられるわけでありますが、こういう点にいっては一体どのように考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/17
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018・福永健司
○福永国務大臣 率直に申しまして、従来賃金等につきまして、政府、ことに労働省のあり方としまして、強く賃金をとういう方向に向けようというようなことでの政策の展開ということは、かなり慎重を期してきておるわけであります。従来の考え方といたしましては、賃金等が、当事者間でできるだけおだやかな、円満な話し合いができ上がることを期待して、政府は直接にその賃金問題等の個々の折衝に介入はしない、こういうことであったわけであります。将来もおおむねそういうことではございましょうが、しかし、単にそのときの交渉の経過で、どっちが強いとかどっちが弱いとかいうことなんかで賃金がきまることがしばしばあっては——必ずしもしばしばあったわけではないと思いますけれども、そういうことも望ましくないわけであります。同じような労働で同じような事情なら、賃金も、そう会社によってないしは職場によって、大きな差等があるということは望ましからぬことでございます。そういう意味からいたしまして、私どもは、労働省が最も的確な資料等を提供して、労働者諸君のためにも、また経営者の側の諸君のためにも、よき参考となるような資料等は大いに提供していかなければならぬ、こういうことで、そういう意味においての前進をしたと考えまして、賃金問題を考えておるわけであります。
ただいま実例をあげてのお話でございますが、私どもは、今お話しのありましたような御批判を受けることがないように重々注意しておるわけであります。決して日経連の主張の裏書き等をしたようなことではございません。そういう点につきましては、私どもは常に公正な表現ということを考えておるわけでございます。ただそのときの事情によりまして、たとえばアメリカならアメリカが、日本の繊維品は大へんな低賃金で作ったものだから、こういうものは輸入は考えなければいかぬという意味のことでも申すといたします。そうすると、アメリカが言うようなほどの事情じゃないのだという意味において、私どもは、先ほども御表現にございましたように必ずしも安くないという、この必ずしも安くないというのはえたいの知れぬような表現でございますけれども、現実に貿易なんかで問題があるようなときには、こういうようなことでも言って向こうで勘違いをしているところを直してもらうようにしなければならぬ、そういう意味においての私どもの見解の表明ということは、時たまあるわけであります。また、これは労働者諸君を含めて、日本全体として必要なことでもあるわけでございます。私どもは、ことさらに事実を曲げて表現するというのは、これはもう大いに慎んでおるつもりでございます。最近、たとえば新しい傾向として、スペインならスペインの造船事業がかなり頭をもたげてきた、かなりまとまった発注が今スペインに欧州各国から向けられているという一つのことをとらえてみましても、日本の賃金は、見方はいろいろございますが、比較いたしてみますと、イタリアなどとはそう大きな差ではないところにいっておるし、ことに今スペインの例を引きますと、スペインはイタリア等よりまだかなり低いような事情にあるわけでございます。ではございますが、私の今申しますることは、低い賃金にしておくことが望ましいという意味において申し上げるのじゃ決してないのであります。しばしば繰り返して申しておりまするように、私は、健全な姿で賃金が逐次上昇していくことが望ましいということを言っておるのでございます。この表現に関する限りにおいては、むしろどうも日経連とは違う、労働者的な表現だと見る人もあろうかとは思いますが、私は別にどちらにどうということでなくて、日本の現状よりして、賃金については公平に考えて、どういうように表現していくべきかということについて、私どもは私どもなりに考えての表現をいたしておるつもりでございまして、十一月二十三日だったかの労働省が表明いたしました見解につきましても、真意は私の申しまするようなところにあるわけでございます。どうぞそういう点についてはぜひ御理解をいただきたい、こう思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/18
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019・吉村吉雄
○吉村委員 いずれにいたしましても、総評とそれから日経連との間には、生産性と賃金との関係について大きな見解の相違がある。総評は、現在の労働者の賃金は非常に低位にある、国際的に見ましても低いという立場に立って賃上げを要求し、日経連は、今日の段階で賃上げはとうていでき得ない、こういう立場に立っているときに、労働省が、この日本の賃金の実情についてということで、その内容は、現在の日本の労働者の賃金というものは決して低くないんだという趣旨の発表をするということは、これは客観的に言えば、やはり日経連の主張というものを裏づけし、裏打ちしたような結果になりかねない、こういうふうにいわなければならぬと思うので、公平な立場をとると言っておりましても、具体的にはそうでないような結果を招来しているということを、私はきわめて遺憾と考えておるわけです。それは本意ではないということでございますが、ただ、この労働白書によりましても、大体雇用労働者の平均貨金というものは、昨年度——三十五年度の報告でありますけれども、平均して一万七千円である、ところが、その一万七千円の雇用労働者のうちの八千円以下の労働者というものが大部分を占めておるということは、国際的に見ても非常に特徴的であるということが、白書の中にも報告をされておるのです。こういう実態から見ますると、日本の労働賃金というものが非常に低位にあるということは労働白書自体も認めている、こういうふうにいわなければならないと思うのです。にもかかわらず、同じその労働省が、今日の日本の労働省が、今日の日本の労働賃金は決して低いものではないんだという発表をあの時期にするということは、非常に残念なことではないか、しかもまた、相異なった趣旨の発表をしているというふうにいわれても、やむを得ないのじゃないかというふうに考えておるのです。私は、この労働白書が告白しておるような日本の労働賃金が非常に低いということの原因をなしているものは、いろいろあると思うのでありますけれども、一番重要な問題と考えられますのは、日本の労働組合の主要な勢力、主要な指導的な役割を果たして参りましたとこるの官公労働者、この労働者からストライキ権というものを剥奪をしてしまって、それ以降の生産性と労働賃金のあり方というものをずっと調べてみますると、それ以来の賃金というものは非常に低位になってきている、こういうような労働運動全般の進め方にあたっての、労働運動といいますか、労働者の賃金というものを向上させていこうとするところの労働組合のその力というものを、官公労働者のストライキ権というものを剥奪することによって大きくそがれてしまった。ここに日本の低賃金の最も大きな原因があるというふうに私は考えているわけです。いま一つは、三年前から実施をされておりますところの最低賃金法、この最低賃金法は、名前こそ最低賃金法でありますけれども、内容的に見ますると、これは業者のための、その利益を守るためのものであって、決して労働者の生活を守るというような結果になっていない。こういうような最低賃金法というものが一つは原因になっておる。これに加えまして、本来中立でなければならないところの政府が、ややもすると経営者を擁護するような政策をとってきておる、こういうところに今日の日本の低賃金の最も大きな原因というものがひそんでおるのではないか、このように考えておるわけでありますけれども、大臣はどのように考えられておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/19
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020・福永健司
○福永国務大臣 公務員が全体の奉仕者として特別の立場にあって、ある程度制約された事情のもとにあるということは、公務員の性質上、私はわが国においてはこれがよろしいのだ、こういうふうに考えております。現行法の建前を尊重いたしておるわけであります。これについてはいろいろ御議論もあるところでありますが、そういうような意味において、賃金値上げの先頭に公務員が立つという形——お説のようなことについては支持する人もあろうし、また、だいぶ逆に考える人もあろうかと思うのでございます。最低賃金につきましては、これはやはり労働者諸君の利益ということが主として考えられている法律だと認識しておるのでございます。ただいまのお話のごとく、業者の保護のための法律であるというふうには、決して私は考えておらぬのであります。どうも経営者の味方をするような傾きがあるようなおしかりをいただくのでありますが、それと逆のことでしかられることもしばしばあるのであります。労働省というものはそんなことでいいのではないかというように、あきらめもいたしておるのでございますけれども、私は、労働省がより多く経営者の立場を考えて、労働者のためをあまり考えないというようには決して考えてないのであります。何としても、よく見ていただけば、労働省というものは、労働者諸君のためにいろいろ心配もし、施策も講じておるということが言えると思うのであります。しかし、皆さんからごらんになりますと不十分である点等があって、そういう点を強調されますと今のようなお言葉になるかと思いますが、私どもが心がけておりますところは、今申し上げたような次第でございます。経営者に味方するようなことを特に強く考えておるということは決してございません。その点はぜひ御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/20
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021・吉村吉雄
○吉村委員 今私が申し上げたのは、現在の公務員が労働者の賃上げの先頭に立って云々ということを言っておるのではなくて、それ以前の賃金動向を考えてみますると——それ以前というのは二十四年より前ということになります。この公務員にもかつて労働者の基本的な権利というものが全部与えられておった当時の状況と比較をしてみまして、これが剥奪されて以降の労働賃金というものは、推移的に見ると非常に低くなっておる、こういうことから申し上げたわけでありますから、その点は誤解のないようにしていただきたいと思うのです。
今、最低賃金法の関係に触れて参りましたので、最賃法のことについてこれからやや具体的にお伺いしていきたいと思うのですが、まず初めに、最低賃金法というものの現在の実施状況を見て参りますと、本年一月の実績は、まず目につきますのは地域的に非常にその適用がアンバランスになっておる、それから適用件数の中で最も多いのは、やはり業者間協定に基づく第九条、これが圧倒的に多いということと、その決定賃金というものがきわめて低い、こういうことが特徴的に一目で把握できると思うのです。現存適用されておる労働者の数というのは百三十万前後のように記憶しておりますけれども、対象とするのは大体中小企業ということでありますから、九百万前後になろうかと思うのでありますが、労働省としては三カ年計画で二百五十万に適用数をふやす、こういうお話でありますけれども、このように決定賃金が非常に安いというようなことは、先ほど私が申し上げましたように、労働者の生活というものを保障していこうという考え方からすれば、これはきわめて不満足な状態じゃないか、こういうように考えられてならないわけです。こういうふうな点についてどういうふうに考えられるか、まず、その点をお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/21
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022・福永健司
○福永国務大臣 今、地域別に見たり、あるいは産業別に見てかなりアンバランスがあるというようなお話がございましたが、確かにそういう点があるわけでございます。こういう点も漸次そういうことでなくなることは、われわれも期待をいたしておるのであります。なお、現実にきまっているのが非常に低いということ、これは確かにそうでございます。ここのところ賃金も相当な足取りで上昇しておりますだけに、少し前にきめられたのが、今日の現実からすると少し間の抜けたような数字であることは、確かにそういうことが言えるのでありまして、こういうものは漸次是正していくように行政指導もし、現実にそういうこともある程度行なわれておるわけであります。しかし、今までにきまったものの数字を集約してみますと、確かにおっしゃるような顧向もある程度あるわけでございます。そこで、最低賃金の今後の運営方針につきましては、御承知の通り、今中賃の方で鋭意検討をしてもらっているようなわけでございます。この制度が、労働者諸君全体から見てできるだけ深く理解され、喜んでいただけるような結果になるように私どもは努力していきたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/22
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023・吉村吉雄
○吉村委員 基準局長にお伺いしますけれども、現在の最賃の実施の中で、一日当たりの賃金というものが二百五十円以上になっている件数、その適用労働者数、これはどのくらいになっておりますか。
それからいま一つは、今までこの法律が施行されから、十三条に基づくところの賃金改定の手続、こういうものをやったケースがあるか、それからそれに基づいて実効が上がって改定された件数、こういうものをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/23
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024・大島靖
○大島政府委員 ただいまの御指摘になりました現在の最低賃金の金額でありますが、大きな区分で申しますと、二百円未満のものが四十三件でございます。二百円から二百三十円までのものが二百三十六件、二百三十円から二百五十円までが百七十一件、二百五十円以上のものが百六十八件ございます。これが現在出ておりますものの金額的な区分けでございます。ただ、一昨年最賃法が施行になりまして、それ以後の最賃のでき方をずっと金額的に見てみますと、最初二百円未満のものが四十二件と申し上げましたが、これは最賃法が施行になりましたごく初期にできたものが多いわけです。大体昨年の春あたりからは、ごく特殊なものを除きまして、もう二百円以下のものはできておりません。最近の例で申しますと、昨年の十二月にできました最賃の件数を金額的に申し上げますと、二百円から二百三十円までのものが六件、二百三十円から二百五十円までが三十二件、二百五十円以上のものが五十八件に及んでおります。従って、最近に至りますとだんだん金額がふえて参っておる。なお、先ほど御指摘のありました古いもので金額の低いものの改定につきましては、現在まで改定の行なわれましたものは五十三件、なお、金額の改定についての勧告等の問題については、現在までのところいたしておりません。従って、先ほど先生が非常に分析的に御指摘になりました地域別のアンバランスとか、産業別のアンバランスとか、あるいは金額的にもいろいろアンバランスがある、こういった各種の点、これはもちろん業者間協定が中心でございますから、アンバランスが出てくるのは当然でございますが、一方、国民経済全般の観点からいたしまして、何らかここに全般的な考慮と申しますか、転換も必要でございますので、そういった意味合いにおいて、ただいま大臣から御報告申し上げましたように、先生御指摘のような問題を含めまして、最賃制の今後の運営方針について中賃で検討願っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/24
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025・吉村吉雄
○吉村委員 いま一つお伺いしたいのですけれども、この最低賃金法の適用を受ける労働者を、年令別に分析しておるということはないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/25
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026・大島靖
○大島政府委員 現在最賃制が適用になっております百二十万の労働者について、年令的に労働者の構成を分析いたした資料はございません。ただ、日本の場合、年令と賃金の状況が大体並行いたしますので、従って金額的にこれを分析いたしました資料は持ち合わせておるわけでございます。その点で若干申し上げておきますと、最賃法が施行になりまして、最低賃金額以下の賃金を現にもらっております労働者の数を調べたのでございます。これによりますと、適用になる総労働者の中で、大体一〇%から四〇%くらいのものが最賃できまった額以下の賃金をもらっておる、こういうのが大体八〇%程度、さらにその労働者の賃金が、最低賃金が施行になりまして引き上げになるわけでございますが、その引き上げによってどの程度上がっておるかと申しますと、大体一〇%から三〇%程度、この程度上がっておるのが大体総数の八〇%程に及ぶ、こういう結果が出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/26
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027・吉村吉雄
○吉村委員 最賃法の適用を受けておる労働者の年令構成について、全然調べられていないというのは——調べられてはおるのでしょうが、これを総括したものがないというのはちょっと問題だと思うのです。労働白書によりましても、他のことは詳しく書いてあるのでありますけれども、最賃法のことについてはあまり深く触れられていないのです。それは一体どういうわけなのか私はわかりませんけれども、何と申しましても、賃金問題については、最賃法というものが一つの柱になるということは、言うまでもないと思います。そういうことについて労働白書があまり触れたがらないというところに、実は私は問題がありそうな気がする。私の調べました範囲におきまして申し上げますと、適用総数のうちの、十八才以上と未満とくらいに分けたものが入手されたわけでありますけれども、それによりますと、これは三十六年の四月現在でありますが、適用総数五十五万二千二百九十八人のうちで、十八才以上が四十七万六千四百人、それから十八才未満が七万五千八百三十三人、こういうことでございます。こういうような相当高年令者がこの適用を受けておるということが、これによってわかるわけでありますが、その適用されておる決定貸金というのは、二百五十円以上がわずかに百六十八件、こういうことでございますから、大半は二百五十円以下ということになるわけです。かりに二百五十円といたしましても、一カ月の収入というのは六千二百五十円くらいにしかならない、こういうあんばいになります。始まってから全然そのままになっているといわれる四十三件の一日二百円、これなどは月に五千円ということになるわけですね。ところが、一方において、労働省の発表しておりますところの中学あるいは高校新規卒業者の初任給というものは、三十六年度の卒業者におきまして、男で七千三百円、女子が六千七百九十円、こういうことになっておるのです。こうなって参りますと、中学卒業者の初任給が七千三百円になって大へん上昇率がいいと、一方においていいところばかり強調されておりましても、その柱ともいうべきところの、この最低賃金法の適用を受けておる労働者の賃金というものは、月額にして六千二百五十円前後、せいぜい六千五百円くらいが最高になるでしょう。こういう状態では、先ごろ大蔵大臣が労働者のためにということを言われておりましたけれども、実態としましては、とてもこれは労働者のためになっていない。まさか五千円や六千円前後で、十八才以上の成年男子が食べていけるとは言えないと思うのです。こういう点について、このようなきわめて低い賃金、これを強制するというようなあんばいに現在の最低賃金法はなっている、ここに問題がある、私はこのように考えておるわけでありますが、こういう点を直していくためには、この十三条に基づくところの改定というものを迅速にやっていく以外に方法はないはずだと思う、今の答弁によりますと、監督官庁の方からこの改定手続をした例は一回もない、こういう話では、最低賃金の適用労働者を二百五十万にしようということだけに熱心であって、数だけ幾らふやしてみても、実賢的に労働者のためにならない。もっと賃金額を引き上げていく、こういうふうに労働者あるいは経営者自体も、みずから進んで、この最賃法というものを実施していこうという熱意を抱かせるためには、もっと魅力を持たせる以外に方法がないと思うのです。ところが先ほど申しましたように、新規中学卒業者の初任給と比較をしてみましても、きわめて低位になっておる。こういう状態について、労働大臣は、もっとこの最賃法の問題について真剣に実態というものを考慮しなければならないと思うのです。二百五十万にするということだけに熱意を持っているということではいけない、このように考えるのでありますけれども、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/27
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028・大島靖
○大島政府委員 先ほど先生御指摘の総数の中で、十八才以上が約八六%、十八才未満が一四%という数字は、昨年四月の数字でございまして、その後急速にふえておりますので、現在のところ、それと同じような資料は持ち合わせていないのでありますが、大体先ほど申し上げましたように、金額的に低い者が少のうございますので、先ほど私から御報告申し上げたような数字になると思います。
なお、最賃二百五十万計画の量と質との問題でありますが、一昨年、私どもが二百五十万計画をこしらえました時分には、適用労働者がわずかに二十万程度でございます。私どもとしては、この程度では、まだ日本の近代社会において、最賃制というものは必要欠くべからざるものだという認識がない、だからとりあえず量をふやすことだ、その上で質の問題に及びたい、こういう考え方で二百五十万計画を策定し、実施いたして参ったのでごさいますが、その後、昨年くらいは大体順調に進みまして、約百万程度に伸びて参りましたので、この際、先ほど先生が詳細分析の結果、御指摘になりましたような各種のアンバランスの問題というものも出て参っておりますので、そこで昨年の秋から中央賃金審議会で、今先生御心配になっておりますような問題を含めまして御検討願って、適切な今後の運営方針を御答申願いたい、こういうふうな気持で、現在中賃で御検討願っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/28
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029・吉村吉雄
○吉村委員 先ほども申し上げましたけれども、白書の中でもあまり触れられていないし、それからいろいろ調べてみますと、中学卒の初任給と比較してみましても、この際、最賃法の適用を受けている労働者の賃金というものは非常に低位にある、こういう現況にあるわけです。こういうように、最低賃金だといって「労働者の生活」云々ということを法律の中に書いてあるわけでありますけれども、一体こういうような低賃金のままで置いて、今のように物価が非常に高騰する。しかも、改定の手続については、行政官庁から一回もなされていない。かりにしたとしましても、時間のかかるのがこの法律の特徴だと思うのです。こういう点を考えてみまして、労働大臣としては、この最低賃金法というものが現在の日本の情勢に適しており、これを伸ばしていこうというのには、何かしっかりした自信というものがあるはずだと思うのです。そういう点について、大臣の方から一つ御見解をお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/29
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030・福永健司
○福永国務大臣 先刻もお答えいたしましたように、幾つかの問題点もございまするので、そういう観点からいたしまして、今中賃でも検討してもらっておるわけであります。それらの成果を見まして、私どもの方でも、今直ちにこの法律それ自体を改正するかどうかというようなことになりますると、いろいろ考えなければならない点もございますので、先ほど申し上げましたような検討を待って善処したい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/30
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031・吉村吉雄
○吉村委員 その検討が行なわれているそうでありますけれども、その間、こういうようなものを低賃金のままで置かれておる、こういうようなことでは非常に問題だと思うのです。しかも、それをそのままの状態で、また二百五十万に適用を拡大するというのが労働省の方針でしょうが、そこに問題があるのではないかということを言っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/31
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032・福永健司
○福永国務大臣 極端な例をあげられて、これが現実離れをしているというような御指摘でありますが、私も若干そういうものがあることを承知いたしておりまして、このままでいいとは考えておりません。従って、今お話がありましたように、もとより量的の拡大をはからなければならぬが、質的の向上も期さなければならぬということでございますので、十三条による手続等も従来例がないということでの御意見がございましたので、いろいろ考えて、今申しました量的拡大とともに、質的向上をはかることにも意を用いて参りたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/32
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033・吉村吉雄
○吉村委員 極端な例でも何でもないのです。労働省で発表をいたしました数字を私は今申し上げているだけなんです。昨年度の労働白書によりましても、中卒あるいは高卒の初任給というものは、相当大幅に上昇したということが謳歌されて発表になっておるのです。三十六年度の新規学卒者についても、先ほど申し上げましたように男子は七千三百円平均だ、女子は六千七百九十円平均だ、こういうことも労働省の発表された数字なんです。それから最低賃金法の適用を受けておる人たちの人数なり、件数なり、その賃金なり等につきましても、これまた労働省が発表しておる数字を私は引用しただけなんです。だから、悪いところといいところと極端に出して、これを比較しているというものではないのです。私は心配でありましたから、年令構成がどうなっているのかということをまず初めに聞いたわけでありますけれども、その点については十分調査が完了していないというので、私の調べた範囲の中で申し上げたところが、大体その通りであるということでございますから、決して今大臣が言われましたように、極端な例をあげて申し上げているのではないのです。最低賃金法の適用を受けている人たちがきわめて低賃金のままで置かれている、その原因というものは一体何かというふうに考えてみますと、このように学卒初任給が上がってくるというのは、経済の変動というものが大きな原因になっているわけですから、最低賃金法の適用を受けておる労働者も、その経済の変動に見合ってこれが引き上げられていく、こういうような形になっていくとするならば、私は、それはそれなりに、たとい今日の最低賃金法の中に欠陥がたくさんあったとしても、そういうような労働者の生活というものを保障し得るために、最大限賃金を引き上げるために改定手続等が迅速になされていくということであるならば、それはそれなりに効果はあるというふうに考えておったわけですが、そういうものが比較的少ない。しかも、行政官庁からそういう手続がなされたのは一件もない、こういうことでは非常に問題だというふうに私は考えておるのです。それをそのままにしておいて、適用労働者をふやすということだけに力を集中する——集中しているかどうかわかりませんけれども、一生懸命になっているということは、これは本末転倒しているのじゃないか、このように私は考えるので、決して極端な例でも何でもないのですから、その点は一つ誤解のないようにしていただきたいと思うのです。重ねてその点について、大臣から御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/33
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034・福永健司
○福永国務大臣 極端と申しましたのは、私の言い方がまずかったかと思います。そういうような極端な例のものは、現実に即した常識的なものにしたいという気持を表わすべく申し上げたのが、少し言葉がまずかったと思います。私の本意はそういうようなことで、御説の点は今よく伺いました。心して今後に処したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/34
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035・吉村吉雄
○吉村委員 それから次に、いま一つお尋ねしておきますが、これは基準局長の方にお伺いしたいのです。
第二十条によりますと「最低工賃の決定」という項があるわけですけれども、家内労働者に対するところの最低工賃というものは、現在まで決定されたものがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/35
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036・大島靖
○大島政府委員 最賃法二十条によります最低工賃の決定は、現在までございません。この問題は、最低賃金をきめて参りますと、それに伴ってその同じ業種の周辺にある家内労働加工賃の問題が、当然これとパラレルの問題として出てくる。従って、そこに加工賃の決定を及ぼしていくという問題でありますが、現在までのところございません。ただ一方におきまして、私どもの方で家内労働問題、これをどうするかというのが一つの大きな問題でございます。昨年来、各方面の先生方に、家内労働問題についての解釈と申しますか、こういった点の御研究も願い、御審議も願っておるわけでありますが、先生御承知の通り、家内労働問題というものは非常に複雑で、かつ困難な問題であります。従って、この問題を取り上げていく上からいたしまして、数点の家内労働の問題点を選びまして、その中で、たとえば家内労働手帳の問題とかあるいは家内労働の安全とか、ことに衛生の問題、それからさらに、ただいま御指摘の家内労働の加工賃をどうするかといったような問題点を取り上げまして、これについて一応の行政指導をしていくということにしたらどうかという御意見もございまして、昨年来私どもの方の地方の基準局で、家内労働問題についての、そういった点についての問題点の、いろいろ家内労働の業界との折衝を開始いたしております。加工賃の問題については、当面加工賃の協定を実施いたしております向きが若干ございましたので、それらについてかなり詳細な調査をし、これをさらに及ぼしていく可能性いかんという点を昨年来検討いたしております。こういった点で、二十条の加工債の問題、最低賃金法からこの加工賃の問題に参りますか、一方、家内労働対策という点からこの加工賃の問題を講じていきますか、あるいはこれと両方パラレルにしますか、なおしばらくそういう専門の先生方の御意見も承りながら検討していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/36
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037・吉村吉雄
○吉村委員 この法律が施行されてから約三年になろうとするわけですけれども、最低賃金法の適用を受けた地域あるいはその業種、そういう適用労働者の利益を守っていくという見地から、同種の家内労働者の最低工賃というものをきめなければならない、こういう趣旨でこの項が起こされているはずだと思うのです。だから、現在百二十万人に上るところの最低賃金法の適用者ができておるわけでございますから、当然に、その周辺にあるところの同種の家内労働者につきましては、工賃をどうすべきかということを決定をしなければ、最低賃金法の適用を受ける労働者が、あなた方がおっしゃるように、労働者の生活を保障するためのものだという趣旨からするならば、最低工賃というものも同じように実施していかなければ意味はないはずだと思うのです。ところが、いまだにこれが全然適用件数も何もない、調査の段階だということは、これは何を意味しているのかといいますと、結局のところ、最低賃金法の適用を受けておる労働者の賃金というものが非常に低い、低いために家内労働者の賃金というものと大体見合ってきめられておる、だから別に最低賃金法の適用を受けても受けなくても、そう問題はないというところに原因があるのだと思うのです。もしそうでないとするならば、これは当然に最低賃金法の適用を受けておる労働者の側から問題が提供されて、もっと行政官庁が熱心に最低工賃というものを検討をし、これを実施していくということに熱意を持たなければならないような条件というものがそこに出てくるはずだと思うのです。それがそうでないということは、最低賃金というものを決定はしたけれども、別に家内労働者の従来の工賃に比較して大差がない。こういうことが最大の原因じゃないか、こういうように私は考えざるを得ないのです。いずれにしましても、だいぶ問題になってできた法律でありますけれども、これができて以来もう三年になろうとするのに、最低賃金と全くうらはらの関係にあると考えられる家内労働者の最低工賃というものの適用件数が一件もないということは、怠慢といえば怠慢でありましょうし、いま一つの見方をすれば、いわばこの法律というものは実質的に効力を持たない飾りもの的な法律だ、こういわれてもやむを得ないのじゃないかというふうに思うのです。問題は、最低賃金決定に至るまでの手続なりその法の中身、ここに一番問題があって、だからこそこの最低工賃というものも適用し得ない、こういうことになってきているのじゃないかというように考えるのでありますけれども、そういう点について大臣の見解はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/37
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038・福永健司
○福永国務大臣 現実の問題につきましては、先ほど事務当局からも申し上げたのでありますが、最低賃金法の趣旨は、労働省としてはこれは強く生かしていかなければならぬと強く考えておりますから、先ほどの局長の答弁は、事情がよく似たり、あるいは関連があったりという意味でああいう表現をしたのでありますが、私は、法律の精神は精神として、それ自体強く生かしていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/38
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039・吉村吉雄
○吉村委員 それでは少し別な角度からお伺いしたいのですが、この最賃法には、地域の実情に応じて、あるいはその作業の実情に応じて、そうして最低賃金を、支払い能力なりあるいは労働者の生活というものを考えつつきめていく、こういうことがうたわれておるわけです。もしこの法律を、そのまま、そういう立法精神に従って実施していくということになりますと、今日のように地域間においての非常に賃金上の差があるという状態の中では、地域ごとに最低賃金の差ができるのは当然だということを、この法律はまた裏書きしていると思います。ところで、現在の政府の政策の中心的なものの一つには、地域間の所得格差是正というものがうたわれておる。だとするならば、地域における実情に応じて云々ということで最低賃金を定めていこうとするこの法律の趣旨というものは、今の政策からするならば少し相反するような結果を来たすのではないだろうか、こういうふうに考えるのでありますけれども、この点についてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/39
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040・大島靖
○大島政府委員 最低賃金制の地域別の問題でございますが、御承知の通り、日本の賃金構造を全般的に見て参りますと、地域別の賃金格差というものは相当多うございます。全国全業種一律の最低賃金、たとえばアメリカのごとき最低賃金、これにつきましては、ちょっと世界的にも例の非常に珍しい場合でございます。たとえばフランスその他の一般的な諸外国における最低賃金も、やはり地域別にあるいは業種別にきめておるのが現状でございます。たとえば、先ほど先生御指摘の、今年度の新中卒の初任給の一律は七千三百九十円、約七千四百円でございますが、これは日額に直してみますと、大体二百九十五円くらいになる。ただ、これは抽出数でありまして、全国的にこの初任給を分布さしてみますと、地域別の初任給の格差というものは、やはりかなりあるわけなんです。従って、これを全国一律に直ちに実施するということは、現状との隔たりがあって非常に困難だろうと思うのであります。ただ、現在できております最賃の中でも、たとえば十一条の労使間協定に基づく最低賃金、これが約九万人に適用になっておりますが、これはある意味ではその業種における全国的な一律最低賃金であります。また、業者間協定の中でも、昨年の暮れにできましたマッチの産業における最低賃金、これは全国に、業者が大体十一県ぐらいに分布いたしておりますが、これはやはりそのマッチ業種における全国一律の最低賃金、従って、こういうふうな全国一律の最低賃金もできておることはできておるのでありますが、ただそれには、それが可能な条件があったわけなんであります。一般的に全国一律的にやらすということは相当困難が伴うだろう。ただし、そういった問題につきましても中央最低賃金審議会で御検討願うことになっておりまして、この中賃でこの問題について小委員会を設置いたしまして、今後の最賃の運営についての検討すべき問題点というのを先般中賃の総会に御報告になっておりますが、その中でも、こういった金額の問題をどういうふうに考えていくか、検討事項の中へ含まれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/40
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041・吉村吉雄
○吉村委員 いずれにしましても、この最低賃金法は、雇用問題の中におけるところの非常に重要な柱になると思うのです。賃金が非常に問題として騒がれておる中で、最低賃金制の制度がどうあるべきかということについては、ILO等でも、すでに二十六号条約でその見解を明確にしておるわけでありますが、私はILOの二十六号条約にこの最賃法は違反をしておる、こういうふうに考えるのであります。従来の国会におけるところの論議等を見て参りますと、政府の方としましては、これは決してその精神に反していないという趣旨の答弁を繰り返しているにすぎないと思うのです。われわれの見解ではILOの二十六号条約にも違反をしておる、こういう考えでありますが、それは現実に一体どうかということで見なければならぬと思うのです。議論は議論として、現実に一体どうかということを考えてみますと、先ほど来指摘いたしておりますように、決定されておる最低賃金の額というものは、わずかに五千円から六千五、六百円どまり、しかも、その適用を受けておる人は、十八才以上の人が大部分である。こういうようなことと、現実には、この法律の趣旨に従いますと、同種の業者の意見一致を必要として、その申請に基づいて行政官庁がこれを認めていく、こういうことになっておるのでありますから、当然にその決定賃金というものは低くならざるを得ない、こういう宿命的な要素を持っておると思うのです。そこに根本的な欠陥がある。従って、これらのことを直していかない限りは、これは労働者のための最低賃金法ということにはならない、私はこういうふうに考えるわけです。しかも、改定を迅速にでき得ればけっこうなのでありますけれども、この改定手続というものは行政官庁自身もやっていない。やれないという理由の中には、私はいろいろあると思うのです。現場の実態を見ますと、業者からかりに申請をされたとしましても、関連産業その他いろいろ実情を調査しなければならないはずだと思うのです。しかし、実際にはこれを調査し得る人が少ないというようなことで、実情調査というものができ得ない、従って業者から言われたものをそのまま認めざを得ない、こういうような現場の実情もあるというふうに考えられます。このようなことを考えてみますと、さらにまた、今日の段階におきましては、政府が主張いたしておりますように、地域間の所得格差というものをなくしていく、こういうのが一つの方針でもありますから、この場合に、地域の実情に応じてということを立法の精神としているこの最低賃金法では、政策上から見ても私は問題があると思う。それらを実情に当てはめて考えてみますと、適用者が割合に少ない。同時にまた、その決定賃金は非常に安い。しかも、改定手続というものがほとんどなされていない。さらには、これと全く密接な関係を有しておるところの最低工賃等についても全然まだ適用がない。こういうようなことでは、私は、最低賃金法というその名に値する役割を果たしていない、こういうふうに言わざるを得ないと思うのです。今日この段階でこのような重要な問題を解決していくためには、日本社会党が主張いたしておりますように、労働者だれでも最低は全国一律八千円という賃金が保障されるという、そういうシステムの最低賃金法でなければならぬのじゃないか。また、そういうようなことを実施しなければ、労働大臣が再三今までも強調されておりますところの、労働省としては労働者のために、こういう立場に立っての施策ということにはならないのじゃないか、このように私は考えざるを得ないわけです。従って、ILOの条約にも違反するような危険性、そういう内容を包含しておるようなこの最賃法につきましては、できるだけ早くこれを改定する、あるいは抜本的にこれを検討し直す、こういうようにしていかなければならぬ。このように私としては考えるわけですが、そういう点について、いろいろ問題はあるでありましょうけれども、現在の実情というものに目を向けていただいて、社会党が言うておるからとか、社会党が別な法案を出しているからとか、そういう立場でなしに、労働者の賃金というもの、労働者の生活というものをどうして安定させていくか、この中の最低賃金法はどうあるべきか、国際的な見地からどのような趣旨の法律が正しいのか、こういう大所高所から検討を加えられて、もっと労働者全体が納得し、そして協力し得るような、苦労をしなくても適用者が自然にふえていく、こういうような法律内容に変えていくことが、二百五十万人に適用者をふやすよりも今日の段階としては急務ではないかというように私は考えますが、労働大臣はどう考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/41
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042・福永健司
○福永国務大臣 条約違反云々という点につきましては、労働省といたしましては、そういう違反ということにはならぬという見解をとっておるのでありますが、今いろいろお述べになりました点につきましては、これを参考にいたしまして、これから大いに研究もいたしたいと存ずる次第であります。もとより労働者諸君のためを考えて、いろいろ善処していくわけであります。と申しまして、やはり国民経済全体のことに無関心であるというわけにも参りません。そこらに、ただいまもお言葉がございました大所高所から、いろいろな意味で私どもも検討していきたいと存じておることを申し上げて、お答えにかえたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/42
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043・吉村吉雄
○吉村委員 これで私は質問を終わろうと思うのでありますけれども、要は、法律は文句や文字じゃないと思うのです。その法律が現実にどう適用されて行政効果を上げているか、こういうものがなければならぬと思うのですが、先ほど来指摘しておりますように、この法律はほとんど実効を上げていない。しかも、この法律の適用を受けることによって、現実には最低賃金どころか、労働者の最高賃金もしくは標準賃金化しつつある、そのことによってむしろ労働者の賃上げを抑制しつつある、このように考えざるを得ない節々がたくさん出てきている。だから、最低工賃についても全然まだ適用もなされていない。あるいは改定手続等についても全然なされていない。こういうような物価の変動の激しい時期においては、改定手続こそはこの法律の中身において最も活用すべきものだと私は考えておったのですが、それらがなされていないということは、文句は書いてあっても現実にはそれを適用していない、こういう内容を含んでいるのがこの法律だということを意味しておると思うのです。従って、先ほども申し上げましたように、従来のいきさつにあまりこだわらないで、もっと高い見地から、労働者の生活を安定せしむるためには、今こそ、少なくとも労働者すべてに全国一律月額八千円の最低賃金を保障する、こういうような方向に踏み切っていかなければならぬのじゃないか。それによって起こるところの、大臣が再三話しておりますところの、国民経済に与える影響等につきましては、これは内容的に言えば中小企業の経営者ということであろうと思うのでありますが、これはこれとして、中小企業に対する育成策、保護策、こういうものを考えていくということが政府全体の施策として非常に重要なことであり、今日最も必要だというふうに私は考えまするので、あまり従来に拘泥しないで、どうか一つ前向きの姿勢で、労働者のためのほんとうの意味での最低賃金法というものを作り上げてもらいたい。このように特に強く最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/43
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044・中野四郎
○中野委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十二日午後一時より委員会、委員会散会後理事会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後零時十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004410X00919620221/44
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