1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年二月九日(金曜日)
午前十一時三十九分開議
出席委員
委員長 早稻田柳右エ門君
理事 内田 常雄君 理事 岡本 茂君
理事 中村 幸八君 理事 板川 正吾君
理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君
浦野 幸男君 小沢 辰男君
海部 俊樹君 神田 博君
齋藤 憲三君 首藤 新八君
中垣 國男君 野田 武夫君
原田 憲君 村上 勇君
小林 ちづ君 中村 重光君
西村 力弥君 山口シヅエ君
伊藤卯四郎君
出席国務大臣
通商産業大臣 佐藤 榮作君
国 務 大 臣 藤山愛一郎君
出席政府委員
総理府事務官
(公正取引委員
会事務局長) 坂根 哲夫君
経 済 企 画
政 務 次 官 菅 太郎君
総理府事務官
(経済企画庁調
整局長) 中野 正一君
通商産業事務官
(大臣官房長) 塚本 敏夫君
通商産業事務官
(通商局長) 今井 善衞君
委員外の出席者
総理府事務官
(公正取引委員
会経済部長) 小沼 亨君
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本日の会議に付した案件
新産業都市建設促進法案(内閣提出第五五号)
通商産業の基本施策に関する件
経済総合計画に関する件
私的独占の禁止及び公正取引に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/0
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001・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 これより会議を開きます。
去る六日に当委員会に付託されました新産業都市建設促進法案を議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/1
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002・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 まず趣旨の説明を聴取することといたします。藤山経済企画庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/2
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003・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 ただいま議題となりました新産業都市建設促進法案の提案理由とその要旨を御説明申し上げます。
わが国の経済が近時目ざましい発展を遂げつつあることは御承知の通りでありますが、今後引き続いて、安定した経済成長を維持するためには、なお解決すべき幾多の課題をかかえているのでございます。
なかんずく、京浜、阪神等の既成の大工業地帯における人口及び産業の過度の集中は、いわゆる過大都市化の問題として、工業用水の枯渇や地盤沈下等生産面への弊害のみならず、住宅難、交通難等の生活面にまで深刻な弊害を惹起しつつあり、また既成工業地帯へのこの集中傾向は、同時に、それ以外の地域との間にいわゆる地域格差を生ぜしめる原因となっておるのでありまして、これらはわが国経済の均衡ある発展に重大な阻害要因として作用し、早急に総合的な対策を講ずることを必要としておるのであります。
以上のような地域的課題を解決する方策の一つとして、前国会において、いわゆる低開発地域における工業の開発を促進するため、低開発地域工業開発促進法の成立を見たのでありますが、さらに、全国的な視野に立った適正な産業配置の構想のもとに、産業の立地条件と都市施設の整備をはかることにより、新たに相当規模の産業都市を地方に建設することが特に緊要と考えられるのであります。この対策は、既成大都市の過大都市化の誘因を減殺し、地方の産業や人口が既成の大都市へ流出するのを防いで、そこに定着させ、また新産業都市が中核となってその地方の開発に大きな波及的効果をもたらすという点で、地域格差是正の有効な手段たり得るものと考えるのであります。
本法律案はこのような趣旨から、地方の開発発展の中核となるべき新産業都市の建設を促進するため、所要の措置を講じようとするものであります。
次に、この法律案の要旨を申し上げます。
第一点は、内閣総理大臣は、関係都道府県知事の申請及び経済企画庁長官等関係大臣の要請に基づき、新産業都市建設審議会の議を経て、大規模な新産業都市となる可能性を備えている区域を新産業都市の区域に指定し、新産業都市の建設に関する基本方針を指示するものとしたことであります。
第二点は、区域の指定を受けた場合は、関係都道府県知事は、新産業都市建設協議会の意見を聞いて当該区域にかかる建設基本計画を作成し、内閣総理大臣に承認を申請するものとしたことであります。
第三点は、内閣総理大臣の諮問に応じ、新産業都市の建設の促進に関する重要事項を調査審議するため、総理府に新産業都市建設審議会を置くものとし、また、新産業都市の区域の属する都道府県に建設基本計画の作成等について調査審議するための機関として新産業都市建設協議会を置くものとしたことであります。
第四点は、国及び地方公共団体は、建設基本計画の達成のため必要な施設の整備を促進することに努めるとともに、またこれらの施設の用に供するため必要な土地の取得につきましては、公有水面埋立法等の規定による処分にあたり特別の配慮をするものとしたことであります。なお、建設基本計画を達成するために行なう事業に要する経費に充てるために起こす地方債についても、特別の配慮をするものとしたことであります。
第五点は、国及び地方公共団体は、新産業都市の建設に寄与すると認められる製造事業、運輸事業等の事業を営む者が必要とする資金の確保に努めるものとしたことであります。
第六点は、地方公共団体が新産業都市の区域内に工場を新増設する者に対して不動産取得税または固定資産税の減税をしたときは、当該地方公共団体に交付される地方交付税の算定の基礎となる基準財政収入額の算定につき特別の措置を講ずるものとしたことであります。
第七点は、新産業都市の一体的な建設を促進するため、関係市町村は、合併により、その規模の適正化に資するよう配慮するものとし、合併に際して議会の議員の任期等に関する特例を設けるものとしたことであります。
以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/3
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004・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/4
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005・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 次に、通商産業の基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。
質疑のお申し出がありますので、順次これを許します。板川正吾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/5
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006・板川正吾
○板川委員 それでは過日行なわれました経済企画庁長官の所信表明に関しまして、一般質問をいたしたいと思います。
簡単に二、三点伺いたいのですが、まず大臣は、所信表明の中で、物価の安定ということについて非常に重点を置かれているようなのですが、昨年末の前年同月に比較して、消費者物価というのは一体どういう程度の動きを示しておるかを伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/6
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007・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 三十五年度の十二月と三十六年の十二月だけを比較しますと、大きな増加を示しております。前年比九%であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/7
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008・板川正吾
○板川委員 昨年のちょうど同じ通常国会の再開にあたって、前の経済企画庁長官は、今年度の消費者物価の値上がりは一・一%くらいであろう、——これは平均のことを言っておるのですが、一・一%くらいであろうということを詳細に資料を出して説明しておったのですが、この前年同月比九%、平均すると六%くらいになるかと思いますが、一体こういうように一・一%が平均六%というふうに非常な食い違いが出てきたのはどこに原因があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/8
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009・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 御承知の通り、物価の動きというものは単一な原因だけで動くわけではないのでありまして、いろいろな条件が折り重なって形成されるということをまず前提として申し上げておきたいと思います。そこで、消費者物価の中でやはり一番大きな数字になりまするのは生鮮食料品ということになろうかと思います。これは集中豪雨がありましたり、その他の気候的条件の関係から見まして著しく予想よりも騰貴をして参ったのでございまして、このように季節的な影響、あるいは気候的な変動によって一度上がりましたものは、その影響がなくなりましても、なかなか低下しにくいのであります。
それからもう一つは、やはり住宅費等が相当高騰いたしてきておるのでございまして、その点がやはり非常に大きな要素になっておるように思われます、住宅問題というのは、いろいろな面から来ておることは申すまでもないのでありまして、住宅の高騰につきましても、原因から申しますれば、いろいろな原因が総合されて出てきていると思います。要はそれらの騰貴の背後に異常な経済活動の高進ということが裏づけされておることは申すまでもないのでございまして、それはつまり労働力の移動等が必ずしも円滑にいかなかった結果、部分的な労働力の不足ということのために労働賃金が著しく高騰を見たという関係もございます。そういうことが総合されましてこういう結果になったのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/9
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010・板川正吾
○板川委員 昨年政府が一・一%ということを見通しとして発表した際には、とにかくそういう住宅の関係とか、あるいは経済の異常な発展の状況とかいうのは、これはまあ一つの計算に入っておったと思うのです。それが一・一%が一・二%になったとか、あるいは二%になったとか、そう大差のない狂いならば、そういったことが私は言いわけになると思います。しかし一・一%が六%にもなり、前年同月に比較するなら九%も上がった、こういうことになると、これはどうもあまり違い過ぎるのではないか。そこに政府の施策としてどうも国民生活、消費者生活というものをあまり軽視している、従来の政治のあり方が、要するに生産を上げる資本家の方向ばかり向いておって、国民生活の方面に政治の中心の目がない。こういうところに大きな違いができたんじゃないかと思うのですが、外国では、五%も上がると、とにかく内閣が責任を負って総辞職をしなくちゃいかぬ、こういうような国民世論が盛り上がり、責任追及という声が当然起こってくるということが新聞等で伝えられておる。これはもう政府として、この物価値上がりに対して重大な責任を感ずるべきだと思うのですが、この点は大臣どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/10
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011・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 経済計画を策定します場合に、万般の注意をいたしまして、そして経済の現実に即してそれを調整して参らなければならぬことは当然のことでございます。従いまして、そういう意味において諸般の施策が経済計画とともに並行して参らなければならぬのでございますが、昨年の計画当初におきます予想が著しく違ったことについては、私どもも実はまことに遺憾に思うわけでございまして、御指摘のように、経済の発展段階におきまして、常識上考えて、安定的な成長をする場合に、労働力の問題もございますから、一・五%以内ならばまあいいだろうというのが常識じゃないかと思いますが、それ以上に著しく高騰して参りましたことについては、相当重要な問題だと私どもも考えるわけでございます。従って、本年度としては、この問題にしても、十分な取り組みをいたしまして、そしてやって参らなければならぬのであります。むろん政治の要諦は、終局的に国民生活の安定と改善向上にあるわけで、産業の発達ということの必要性もそこから来るともいえるわけでございまして、そういう面からいえば、われわれさらに一そうこの物価問題については注意をして参らなければならぬ、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/11
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012・板川正吾
○板川委員 池田さんは、物価の問題に触れると、あまり責任を感じないで、長い目で見てくれ、こう言って逃げておるのですね。これはどうも国民の目をごまかすもので、政治家として良心がない、私はこう思うのです。大臣はしばしばこの所信表明の中で、消費者物価対策連絡協議会を今後も一そう活用して、消費物価の引き下げに努力をすると言われる。消費者物価対策連絡協議会というのは、経済企画庁に設置されて、物価の値上げを防止するのだということで作られたようであります。昨年も多分これと同じ文句が書いてあった。私があまり皮肉なものですから注意したのですが、またことしも、消費者物価対策連絡協議会を今後とも一そう活用してと言われた。活用した結果、物価がかつてない値上がりをしたのはどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/12
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013・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 御承知の通り、企画庁に、物価問題を扱います、またこれを十分注意して参らなければならぬために、各省の物価関係の方々に集まっていただきまして、企画庁の次官が中心になりまして、この連絡協議会を作っておるわけでございます。そこで前長官も十分これを活用されたと思いますし、私どももまた十分これを活用して参らなければなりませんので、最近では各省の調整をやりまして、ただいま実は総合的な物価安定の対策というものをこの連絡協議会で考えてもらいたい、そしてそれをさらに総合的に閣議等において審議しようということで、十分これを活用して、そして各省間の連絡協調をやり、また実施部面における促進をはかっていきたい、こういうふうに存じておるのであります。そこでそういうことも申したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/13
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014・板川正吾
○板川委員 これは、今後は——今後とも、じゃないですね。今後は一そう活用していくというなら話はわかるのですが、今後とも、というようなことを書くと、ちょっと一言皮肉を言いたくなるのです。今までどういうような活動をしたのか、それを伺いたいのです。
それと、もう一つは、今後の三十七年度の物価値上がりについて、政府が出された資料によりますると、ことしは二・八%消費物価が上がる、こういう計算をされております。この二・八%がどういう計算に基づいて出されたのか説明をし、後日これは一つ資料で出してもらいたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/14
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015・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 二・八%の、出ました数字につきましては、調整局長から御説明申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/15
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016・中野正一
○中野(正)政府委員 今の御質問の消費者物価対策連絡協議会がどういう活動をしているかということでございますが、これは再々新聞でも出ておりますが、関係省の担当局長を集めまして、——どうもわれわれ見ますと、しばしば言われていることですが、各省の調整が、どうしてもやはり生産者本位というか、私も実は通産省におりましたから、よくわかるのですが、農林省にしましてもどこにしましても、どうしても所管しておる産業や企業というものを常に見ておりますから、その関係で、そこからいろいろ値上げの要求があると、どうしてもそれを弁護するような立場になる。そういうことで、連絡協議会を設けまして、そういうことでなしに、物価安定ということが今の経済政策として一番大事なことであるから、その観点から一つ行政をやっていただきたいということを常に強調しております。現に、たとえば例を申し上げますと、この間ふろ賃値上げがございまして、これは、われわれとしては、事務的に見ると非常に不満足な点もあったのですが、相当大幅な値上げを押えた。それからまた例の教科書値上げにしましても、業界の方では二五%、これを文部省が査定をしまして二〇%ぎりぎりだというのを、企画庁で相当詳細に資料を検討いたしました結果、一四%というこれは業界にとっては少し苦しかったんじゃないかと思うくらいに押えつけたというふうになっております。また現に私鉄十四社の値上げの問題にしましても、運輸省の立場からいえば、これは現に、鉄道だけから見れば赤字になっておる。また輸送力の増強の点からいうと、輸送難を緩和するためには、どうしても前向きで、これは値段を上げてもらいたいという要求はございますが、これも今慎重にわれわれの方と運輸省の方と協力しまして、この内容を審査して、まだこれは認めない、というように、相当企画庁としては各省に対してはつらいことを言うております。そういうことは、やはり各省の行政に相当消費者物価対策連絡協議会を通じて浸透しておるのではないか。今大臣も申されたように、その程度のことではまだいかぬということで、近くむしろ閣僚ベースくらいでいろいろな問題を総合的に御審議願おうということで、せっかく今案を進め、いい案ができるかどうか、私もあまり自信はございませんが、案を、関係省と連絡をとりましてやっておるわけでございます。実はまた現に農林省におかれましても、ことしの見通しを立てるときに、あとで申し上げますが、二・八%にするには、どうしてもこれは農産物、野菜あるいは肉類等を中心にして食料品の値段が安定しないといかぬ。現に十二月の数字を見ましても、一昨年の十二月に比べて、今御指摘がありましたように、九%上がっている。その内容を見ますと、これは野菜の値上がりというものが非常に大きいのです。これは、消費者物価の総理府の発表しておる統計をごらんになればおわかりになりますように、七七%野菜が去年の十二月に比べて値段が上がっているわけです。だからこの二・八%にするには食料品の価格の安定というものをやっていただかなければいかぬというので、農林省の方に非常にやかましく連絡協議会を通じて言いまして、その結果、農林大臣もこの間予算委員会で言われたように、徹底的に全国に人を派して調査をして、三月くらいまでかかるようでありますが、その調査結果を待って、農林省も流通機構の整備改善という問題にも乗り出しておるわけです。そういうふうに、結果から見ますと、今大臣が言われたような最近の経済情勢から消費者物価が非常に上がって、国民の皆さんに御迷惑をかけて、われわれとして頭を悩ましておるのですが、逐次対策を立ててやっていきたいというふうに事務的には考えております。
それから、今御質問の中の、二・八%というふうに一応見ましたのは、この表で見ていただきますとわかりますが、消費者物価は三十六年度が一〇六・八に対して三十七年が一〇九・八というふうに見ておるわけです。その結果、二・八上がるのじゃないか、これもなかなか計算がむずかしいのですが、われわれの方は三十七年、ことしの三月の水準が大体どの程度になるかということを一応想定いたしまして、これは十一月当時この資料は作ったものですから、それから御説明いたしますと、十一月が一〇九・二という数字になっておるわけなんです。それから三月水準は〇・五%ぐらい上がるのじゃないか。これは毎年の例をいいますと、大体一、二月は消費者物価は上がって三月は下がる。ことしもそうなるのじゃないかと思いますが、〇・五%高くなるのじゃないか、その結果年度間一〇六・八、これは実績見込みでございます。それから三十七年度が一〇九・八というのは、三十七年度は今言いました十一月から〇・五%上がったところからほぼ横ばい、それと同じ結果になるわけです。どうしてそういうことになるかといいますと、まず食料品でありますが、穀類を除きました食料品は、野菜なんかはだんだん下がっていくのじゃないか。農林省も大体今のところは要するに供給増加——ことしは非常な台風等の影響がありまして、相当減産になっておりますが、供給増加と流通機構の改善によって、野菜なんかを中心にして、昨年に比べればことしの三月に下がるのじゃないか。それから酒が、間接税の減税で、これは企画庁としては相当関係省に間接税を下げた分だけは小売価格を下げてくれということを連絡協議会を通じて強く言っております。大蔵省関係は相当行政指導がききます。通産省関係なんかはむずかしい問題もあるように聞いておりますが、やってもらっております。酒類の減税による価格の引き下げで約一割ぐらいは下がると思います。そういうものによって若干下落する。しかし三月水準から下落するのですから、三十六年度の平均に対してはやや上昇するわけです。それから被服は、今暖冬の関係もありますし、それから繊維関係がああいう状況でありますから、原料が下がってくる。これがやはり製品の方にもある程度響いてくるのじゃないか。昨年は手間賃が上がったために衣類なんか上がっております。しかし、これはある程度下がるのじゃないか、こう見ております。それから問題の逐年上がっておりまする住居費、雑費、これは外国でもそうなんですが、ただ昨年は例の木材が暴騰したために、あるいは大工等の手間賃が非常に上がったために、相当修繕費等が上がっておりますが、この住居費と雑費は、たとえば物品税が下がる、それから入場税が下がる、というようなものが下がりますが、あるいは木材関係が下がるということを織り込んでも、三月の水準より若干上がるのではないかということで、結局全体を見ると三月の水準くらいで横ばいにいくのではないか、その結果計算をしますと二・八%の上昇、こういう数字を出したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/16
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017・板川正吾
○板川委員 結論から言うとこういうことですね。三月まで若干上がって、ことしの三月を一〇〇とすれば、来年は大体それと同じように、消費者物価の値上がりはせぬだろう、ただし三十六年度が平均すると下がっておるから二・八%になる。こういう説明でありました。これはいつも今ごろになると、この前も一・一%しか上がらない、それもこの前は最初は〇・六%しか上がらないと言い、それがあとから〇・五%足して修正して一・一%、とにかく消費物価は、昨年の予想も、ことし一年は上がるまい、こういう政府の答弁であったのですよ。今説明を聞くと、これまたことしの三月を一〇〇とするならば、今年度はほとんど消費物価は値上がりしないだろうという、これはそういうことでほんとうにやれるなら私はけっこうだと思うのです。しかし国会答弁用でごまかして、うるさい期間だけ適当に数字を合わせていくというのでは、私は問題だと思う。そこは今度の企画庁長官の藤山さんはそう人は悪くない、うそを言わないだろうと思う。事実消費物価を約束に従ってそういう方向に押えていくだろう、こう思うのです。しかし、あとで実際に五%も六%も上がっちゃって処置ないということになると、これは藤山さん、責任問題になりますが、一つそのつもりで消費物価を押えてもらいたい、こう思います。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/17
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018・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 本年度の消費物価の高騰は、私は一つの最大の問題だと思います。特に企画庁としてはこれに大きな関心を持たざるを得ないのでございます。従って、予想される数字というもの通りにいくかどうかということについては、これはお話のように企画庁として最大の努力をしなければ、ほっといてこういくというのではございません。従って、われわれとしては、本年度の三月末と申しますか、横ばいというところに押えられるような政策を最大限に集中していくということを考えておるのでございまして、物価問題は広範な原因要素がございますから、なかなかむずかしい問題だとは思いますけれども、そういう気魂で取り組んでいきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/18
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019・板川正吾
○板川委員 横ばいで、多少の上がり下がりを文句を言うのではないのです。上がりっぱなしでずっといくような状態になっておったら、私は政治的な問題になるだろう、こう思います。
それから、昨年の状況を見てみますと、物価の値上がりした中には、いわゆる値上がりムードをあおった関係があります。池田さんの思想あるいは下村さんの考え方、これはある程度消費物価が上がって——まあ物価というのは当然値上がりする要求を持っておりますから、ある程度上がることは政府も認めておるのだということになれば、いわゆる値上がりムードというのが出てくるのです。上げないのだといって押えておることによっても上がりかけるのですから、そういう点は私は政府のやり方はまことに的をはずれておると思うのです。しかし、この値上がりムードを押えるのには、経済企画庁も一生懸命やらなくてはなりませんが、私は、これは経済企画庁あるいは通産大臣に国務大臣として申し上げたいのですが、私は公取をもうちょっと強化すべきじゃないかと思うのです。企画庁が個々に入っていって、お前のところで物価値上がりしたとか言うことはできないでしょう。これは総合的な立場からその問題の対策を立てるほかない。個々に値上がりする場合には、やはり公取が一番これを抑制する機関だと思うのです。公取強化に対して国務大臣として、あるいは物価方面を担当する大臣として、これに対する御意見はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/19
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020・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 物価問題を扱います場合に、公正取引委員会等が物価に十分な関心を持っていただくことは非常に必要なことでございまして、そういう点については、通産大臣としても十分御考慮になっていることと思うのであります。われわれもそういうことが必要だ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/20
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021・板川正吾
○板川委員 いや、公取は通産大臣じゃないのです。内閣ですから総務長官ですが、国務大臣として御意見を承っておきたいと思ったのです。
それで、公取をやはり強化しなくちゃいけないと思うのですが、ところが、この公取の待遇問題にちょっと触れてみますと、昭和二十二年ですか、当初は国務大臣と同じような権限を公取委員長は持っておったのですけれども、最近はすべりにすべって、次官待遇と同じように公取の委員長がなってしまった。従って、委員もずっと下がってしまった。結局、公正取引委員会というのを軽視して、だんだん格を下げてきた。だから、公取も、どうもまま子扱いにされて、あまり自信を持って物価抑制の活動ができない、こういうところに問題もあるんじゃないかと思うのです。この問題はいずれ総務長官に、直接責任者ですから、後刻質問をしたいと思いますから、どうか一つそういう点も念頭に置いていただきたいと思います。
それから、経済企画庁長官にもう一点伺いたいのですが、最近信用状の開設状況が、昨年の八月以降黒字を呈しておる、これは貿易の収支が将来明るくなる前兆であろうと思う、下村説によれば、輸出信用状が伸び、輸入信用状が落ちて黒字になってきたから、二カ月後の為替収支は非常によくなる、心配ないということを盛んに強調されておったようでありますが、この信用状関係について、最近の状況はどうですか。それから、今後の見通しについて一つ承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/21
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022・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 輸出入信用状の好転しておりますことは事実でございます。昨年十月以降好転いたしております。従いまして、その面だけ見ますと、私どもは悪いとは考えておりません。ただ、貿易収支の問題は、先行指標としての輸出入信用状だけが黒字になったからといって、楽観できないのでありまして、信用状なしの輸出入というものもございます。しかも昨年はそれが相当な数字であったように思っていますが、そういうことがありますから、現実にもうちょっと様子を見て参りませんと、全体として輸出、輸入の状況がどうであるかということについては、若干時日をかさないと、無条件に楽観をしていく、もう好転して安心だということにはいけないのじゃないかというふうに私は見ておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/22
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023・板川正吾
○板川委員 今後の見通しはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/23
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024・藤山愛一郎
○藤山国務大臣 今後、輸出ムードと申しますか、輸出関係の奨励施策もきいて参りましたし、それから、外国の事情も若干ずつ好転はしているように思います。従って、今後も輸出入信用状の面において、決して悪い状況が起ころうとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/24
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025・板川正吾
○板川委員 信用状の関係が黒字になると同時に、輸入原材料の在庫率というのがぐんぐん落ちてきているようですね。ただ、これは昨年の統計です。最近は数字をごまかしていますからね。それは適当に説明用の数字が出ていると思うのです。それで、昨年の八月の在庫率が一〇九・六%、それが九月が一〇四・四になり、十月が九八・〇になるということで、まあ十二月はこの在庫率がどういうふうになったのか、要するに輸出の状況がやや好転しておるということは、在庫率を食っているんじゃないかなという気がするのです。この在庫率が減るということは、一番減ったのは、三十五年の十二月が九〇になっておりますが、その九○に近づいてくれば、それだけ輸入意欲が強くなって参るわけですから、一がいに当面下村さんが言うように、信用状が黒字になってきたから心配ないというのはどうかと思うという考え方から、これに対して質問したいのですが、その状況について、どちらの大臣でもけっこうですからどうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/25
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026・中野正一
○中野(正)政府委員 数字のことでございますので、私申し上げますが、今先生が御指摘になりましたように、輸入分の総原材料の在庫率でございますが、昨年の八月が一〇九・六で、九月が一〇四・四というふうに非常に高かったわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/26
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027・板川正吾
○板川委員 十月は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/27
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028・中野正一
○中野(正)政府委員 十月は九八・〇、十一月が九七・九、十二月が九七・三というふうになっておりますが、これをこの間の月例報告で発表いたしましたように、季節修正をして出さないと、これはほんとうの傾向はわからないのであります。これを在庫の方も季節修正をし、工場の在庫の方の消費の方も両方修正するとしまして、その数字を申し上げますと、昨年の八月が一〇一・〇、九月が一〇四・一、十月が一〇〇・一、十一月が一〇四・一、この数字は、この間の月例報告で発表して、一〇〇以上になっているんじゃないかということを指摘したのです。十二月が一〇五・八、との数字だけを見ますと、在庫率は比較的高いんじゃないかということが言えます。というのは、十二月は御承知のように、通関が非常に多くて、昨年の十二月に比べて三八%アップであります。為替ベースで二七、八%アップだと思いますが、もう一つは、やはり十二月、一月の通関を見ましても、まだ高いです。それで、ちょっと申し上げたいと思いますが、在庫の関係でありますけれども、これは関係省と今意見を調整しておりますが、われわれの感じでは、十二月までに鉄鋼原料、繊維原料を中心にしましても、二億ドル前後の輸入原材料の在庫の積み出しがあったのじゃないかとわれわれは推定しております。今長官が言われましたが、十二月のLCが一昨年の十二月に比べて一五%ダウンになっております。そういうことから、輸入が一−三月に少し減ってくるのじゃないかということが予想されますが、その間に在庫をある程度食いつぶすのじゃないかというふうに見ております。これはいろいろ日銀あたりでは少し意見が違うようであります。一億ドルは一−三月の間に食いつぶして、一億ドルぐらいを三十七年度に繰り越すのじゃないか、その繰り越したものを、大体上期一ぱいくらいで食いつぶすのじゃないかというふうな感じを持っております。そうしますと、これは結局どういうことになるかといいますと、一億ドル要するに食いつぶすわけですから、三十六年から三十七年にかけては、消費はかりに同じだとすれば、二億ドルは、一億ドル積みまして、その一億ドルを食ってしまうわけですから、輸入の水準からいくと二億ドル少なくとも減るという計算になってくるわけであります。ただ、そう申しましても、生産が一−三月にかけて企画庁の事務当局で見ておるようにある程度落ちてくる——これは十二月が一九%程度十一月より落ちましたけれども、その線くらいで一—三月から五、六月にかけて生産が落ちるということを前提にして、輸入は減ってくるということを考えておりますので、その生産が減ってこないということになると、これは日銀筋が言っているように、四月、五月くらいで在庫を食いつぶしてしまうのじゃないかという心配は企画庁としてもいたしておりますから、その関係で、現在の引き締め基調というものは大いに続けていかなければならぬ、楽観的な見方はいけないということを企画庁としても申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/28
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029・板川正吾
○板川委員 一つ当面あまり経済活動を活発にしないで、在庫の食いつぶしはしないでほしい、こういうようなことになりますと、これはやはり今度は輸出物価に響いて、輸出の方に響いてくるのじゃないかという感じがします。輸出が思ったように伸びないのじゃないかという感じがしますが、しかし、これは当面心配ないというようでありますが、いま少しわれわれも情勢を見ていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/29
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030・田中武夫
○田中(武)委員 ちょっとタイミングがはずれたのですが、通産大臣が中座しておられたので、おくれておったのです。先ほどの板川委員の物価についての質問に関連をいたしましてお伺いいたしたいのですが、どうも質疑応答を聞いておりましても、よくわからないのです。そこでどんぴしゃお伺いしたいのです。
消費者物価対策連絡協議会というのは、一体今まで何をやっていたのか、今後何をやろうとするのか、メンバーはどういうメンバーで構成されておるか。
もう一つは、去年の当委員会においても、この問題を私はやかましく言ったのですが、消費者行政、消費者の立場に立っての行政を専管しておるのは何省であるか、今後それに対してどう考えておるのか、何か今度局を設けるとか聞いておりますが、それはどういう立場からやろうとしておるのか。
もう一つは、公正取引委員会をだんだんまま子扱いにしてきた。こういう点は先ほど板川委員が指摘いたしました。その通りでありますが、やはり消費者行政、物価、こういうふうな点から公正取引委員会の果たす役割は大きいと思うのです。しかるに、聞くところによると、通産大臣は独禁法をさらに骨抜きにするための改正を考えておる、こういうことを聞いておりますが、そういうことがあるのかどうか。一つ通産大臣の気持といいますか、考えを伺いたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/30
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031・中野正一
○中野(正)政府委員 お答え申し上げます。ちょうど手元に資料がございませんので、消費者物価対策連絡協議会の構成メンバーの正確なあれは覚えておりませんが、農林省、通産省、公正取引委員会、大蔵省、郵政省、厚生省、労働省、運輸省等の関係の担当の局長をもってメンバーとしております。それから会長は私の方の事務次官がしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/31
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032・田中武夫
○田中(武)委員 今まで何をやっておったのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/32
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033・中野正一
○中野(正)政府委員 これは先ほどもちょっと申し上げましたが、連絡協議会で要するに消費者物価の動向等を私の方から説明いたしまして、そうして各省からそれぞれ担当の、たとえば農林省では食料品の価格安定についてどういうことをやっておるか、今後の見通しはどうかということを説明していただきまして、それに対して関係のところからいろいろ質問をし協議をして、こういう点についてはもう少し農林省はやってもらいたい、先ほど申し上げましたように、最近の野菜の値上がり等が非常に深刻に影響して、一般家庭にも迷惑をかけておる、これは生産者の価格はそれほど上がっていないのに、末端の価格は上がっているじゃないかということもわれわれの方で指摘いたしまして、それによって農林省が、もちろんこれは農林大臣が決意されたことでありますが、流通機構の整備ということに本格的に農林省が乗り出したわけでございます。そういうふうに、たとえば通産省でも今度間接税を下げるというときに、その分を小売価格に反映させてくれというようなことを、この連絡協議会を通じて企画庁として要望し、またその要望に対して通産省としてどういう手を打ったかということを説明していただいておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/33
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034・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 消費者のめんどうをだれが見るかという問題が一つ、これは申すまでもなく、私ども産業官庁だといわれておりますが、同時に消費者の利益も確保する、そういう立場でそれぞれの行政を指導しておるわけであります。これは非常な誤解があるのじゃないかと思います。たとえば、企業本位即経営者本位あるいは資本擁護、こういう考え方も持たれるし、消費者が労働者の次に考えられておる、こういうひがみもあるようでありますが、申すまでもなく、産業の目的とするところは、最終受益者にその利益を提供するということにあるのだと思います。そういうことに労使とも徹底しないと、十分の目的を達しないだろう、これが一つの問題であります。
それで、もう少し具体的に申せば、産業の合理化を進めた場合に、その合理化の利益を労使双方だけで分けるのではなくて、それがどういう割合になるかは別として、やはり消費者にその合理化の効果が及ぶように考えていく。これは少し例がどうかと思いますが、過去において、自動車が非常に安くなる、あるいはトランジスターが安くなる、テレビが安くなる、電気洗たく機が安くなる、こういう事柄は、ただいま申しますように、はっきり良質低価のものを提供する、消費者の利益をはかる、こういう意味の産業指導、これを実際やっておるわけであります。
それからもう一つは、直接消費者の保護の立場に立って、最近の誇大広告等が時に選択を誤らせる、こういうような危険がございますので、広告の分野についてもどうも通産省の所管のようでありますが、いわゆる家庭用品等についての規格制度を設けて表示するとか、あるいは消費者組合を設け、消費者協会を設けて、消費者協会自身の活動によって消費者の選択が正鵠を得るように指導するとか、いろいろ問題があると思います。大体そういう方向で指導しておりますので、御指摘の点には沿っておるのじゃないかと思います。なお不足の分は、もちろん現在で十分とは申せませんから、一そうそういう方向で努力して参るつもりであります。
もう一つのお尋ねの、独禁法を改悪し、そうして別の方向に行くのじゃないかというお話でございますが、過日予算委員会において、独禁法を改正する意思ありやいなやということを社会党のどなたかから質問を受けまして、私はそのときに明確にお答えしたのでありますが、独禁法はいわば経済の憲法みたいな基礎法律なのだ、従ってこれを簡単に改正する考えはございませんとはっきり申し上げました。ただ、最近の経済構造の変化なり、あるいは今後の伸展等いろいろ事情が変わってくるでしょう。そういう場合に、独禁法というものが本来の産業の育成強化に役立つように考えなければならぬと思いますが、しばらく実情の推移を見ないと、この独禁法をいかにすべきかということを口にすべきでない、かように実は明確に申し上げておりますので、改悪など計画していないということで、一つお取り消しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/34
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035・田中武夫
○田中(武)委員 幸い次期総裁あるいは総理と見られるお二人がおられるわけでありますが、そこでもう一つ確かめておきたいのです。
まず第一に、消費者物価対策連絡協議会というものは、先ほどの説明を聞いておると、まさにその名の通り連絡協議にすぎない。何らかここで強力な措置をするように、ここ自体がやるということはどうかと思いますが、もっと力を持たせる。そのためには、今までのメンバーと違ったメンバーを入れる必要があるのじゃないか。従って、ただ連絡協議で、お前のところの管轄の物価がこうなのだから何か考えてもらいたい、それはこういうわけだ、こういう程度のことしかやっていないと思うのです。だから、これをもっと強くさすような方向をとってもらうことが一つ。
もう一つは、今度家庭用品品質表示法案が出されることを承知いたしております。しかし、たとえば、これは名がそうであるからといって、今通産大臣が言われたようにひがんではいないのでありますが、やはり通産省というところは生産を見ておる。しかも家庭用品品質表示法案等は企業局が作っておる。やはり企業という立場からそのことに走っておると思うのです。従って専管の省まではどうかと思いますが、外国にはそういう例もあろうと思います。国民生活省とかなんとかいったもの、そういったものが少なくとも専門に物価並びに消費者の立場から立って行政をやる、こういうことを一つ考えてもらいたい。
それからもう一つは、独禁法のことでありますが、今、佐藤大臣は明確に、そういうことは今考えていない、こういうようにおっしゃっておるのですが、たとえばセメント業界の今やっていること、こういうことは明らかに独禁法から見て疑問があります。しかし大臣は、これに対して、むしろいいじゃないかというような考え方をいつか言われたことがあると思うのです。そういうような行政指導の面において独禁法をじゃまものにする、あるいは行政指導によって独禁法を免れるといったようなことが行なわれていることも事実なんです。そういう点について、今後はもっとはっきりしてもらいたい、こういうことを要望いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/35
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036・板川正吾
○板川委員 両大臣に伺いたいのですが、ことしの今後の経済的な見通しは、特に貿易関係で輸出が四十七億ドル、輸入が四十八億ドル、この程度でどうしても押えたい、そうでないと、これはまた国際収支の悪化、あるいは輸入がふえれば、さらに経済の過熱と、こういうことになって参ると思うのです。問題は、輸入を押えることはいろいろ国内的な手があってやればできるのですが、問題は輸出にあると思うのです。輸出が四十七億ドルの目標を達成するということは、私はなかなか容易なことじゃないだろう、こう思うのです。この政府の資料によってもわかりますが、昭和三十六年度の輸出は、四十一億ドルでございました。これは為替ベースの計算ですから、通関ベースですと四十三億五千万ドル、これが三十七年度に為替ベース四十七億ドルを達成するためには、約四十九億九千万ドルですから、五十億ドル。三十六年度の実績は、実は政府の当初予算よりもやや少ないというような見通しもあるようでありますから、三十七年度は、三十六年度に比較して通関ベースで七億ドルふやさなくちゃならぬですね。これは達成可能でしょうか。やらなくちゃならないという気持だというなら別ですが、通産大臣、一体この通関ベースで七億ドル本年の実績にプラスするということは、どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/36
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037・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 四十七億ドルの輸出は可能かという御質問でありますが、数字的に申せば、総生産の割合等から見て、その一割にもならない四十七億ドルですから、それは普通なら可能だと言える。また昨年の輸出の実績に対しての伸び率が一四・六%、一五%近い。これが一体可能か。過去の経験等から見まして、非常な、一八%以上にも出たことがあると思います。そういうことを考えると、その率自身が非常に過大で、とても常識のある考えじゃない、こういうような数字とは思いません。しかしこれを実現するのには、いろいろな条件がございますから、今板川さんはなかなか容易じゃないだろう、こういうお話でしたが、私をして言わしむれば、なかなか、なかなか容易じゃない、こういうように実は思います。ただ問題は、これは容易でないということは、できないことなんだから、非常な希望を持った方向でこの難関を突破する、それだけの協力を得るかどうかということだと思うのです。だから経済全般についてもそうですが、非常に危険があるというこの声だけ大でありますと、どうも健全性を失うような、萎靡するというか、縮こまってしまう。また非常に楽だというような考え方をしますと、非常に放漫に流れる、こういうことに実はなるわけであります。私どもとすれば、楽観をしておらない、非常に困難なものであると考えているが、それだけにまた非常な意気込みを持って努力をするということであります。その努力の何を一体考えるのか。申すまでもなく、内需との調整の問題もありますし、あるいは産業自体の体質を改善して、国際競争力に打ち勝つということもありますし、また同時に国内においても物価がやはり安定する、健全な状態であることが望ましいわけであります。そういうような基礎的な条件ができ、それに対してのさらに経済外交を推進するとか、あるいは新市場の開拓をするとか、こういう方向へ手が伸ばされる、あるいは輸出金融で特別な処置をする、あるいは輸出入銀行の資金をふやすとか、あるいは経済開発基金をふやすとか、あるいは保険制度の充実をはかるとか、それぞれ具体的な対策を立てていき、そうして協力を得れば、必ずしも困難だと言って投げ出すような筋のものではない、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/37
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038・板川正吾
○板川委員 過去の輸出入の実績を見てみますと、通関ベースで議論してみたいと思いますが、昭和三十二年から三十三年はとんとんです。これは三十三年が一年間足踏みをしましたから伸びなかったのですが、昭和三十四年が、この間に七億ドル実は伸びている。しかし三十三年は本来ならば国民総生産がふえておりますから、輸出も伸びるべきであった。しかし、その伸びなかったのを二年分一緒に上がったという形が三十四年の実績だと思います。しかし、今年は昨年よりもさらに輸出は伸びており、この伸びた実績の上に七億ドルということは、私はなかなか容易じゃないだろうと思う。なぜそういうことを主張したいかというと、輸出振興に対して大臣のこれという新しい——何かはく然と手を打っておって、何か七億ドルを達成することができるようにお考えではないかというような感じがしております。通産大臣が所信表明の中で輸出振興を第二番目に取り上げておりますが、新しい市場を開拓するということについてあまり意欲を持っていないように見えるのです、これにはあまり触れておりませんから。特にたとえば東南アジアの新しい市場を開拓することが重要だと思うのですが、東南アジアとの貿易を伸ばす場合には、とにかくもう全部ドルがない国です。この伸び悩みの原因は、ドルがないからだと思いますが、問題は、やはり決済の方法にあるだろうと思います。ドルのない東南アジアあるいは後進国と貿易する場合には、やはりドルがないのですから、ないのに見合うような新しい貿易の方式というものを考えなくちゃいけないのではないか。金を持っていないところと商売しないというのはいけない。そういう意味からいえば、問題は決済の手段が大きな隘路になっているだろうと思います。昨年、前の国会で輸出入取引法が改正されて、二国間貿易協定を結んだ場合には、割高な物資を買ってあっても、それと今度は輸出の場合に輸入の赤字と輸出のもうけとプールして、それで金のないところ、条件の悪いところと貿易を拡大しようということで、輸出入取引法を改正したんです。この条項がその後どういうふうに利用されているか承りたいと思うのです。そういうような決済の方法や、後進国、東南アジアから物を買ってやり、買ってやりながら輸出をふやすというような努力等をもっと検討すべきじゃないか。第一点にこれをお伺いいたしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/38
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039・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 過去の実績は、今井通商局長からお答えいたさせます。
御指摘のように、なかなか困難な問題は幾つもございます。で、本年直接の決済は国際収支の上には出てこないようなことではございますけれども、経済協力基金の活用あるいはプラント輸出等も、これはこういう際に輸出全体を拡大するという意味で広範に利用すべきじゃないか、そういうことがやはり新市場の開拓にもなるのじゃないかというように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/39
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040・今井善衞
○今井(善)政府委員 昨年輸出入取引法を改正していただきまして、新たに輸出入の調整の協定ができるという形になっておるのでございますが、結論から申しますと、まだ活用されておりません。と申しますのは、今までイランとイラクに対しまして、輸出する際にある程度の調整金をとりまして、輸入の先に回しておる。これは業者間の協定じゃなくて、数個の組合が連合してさようなことをやっておるわけでございます。ところが、イランにいたしましてもイラクにいたしましても、その後そういうやり方に対する問題が実は多少提起されて参りました。たとえばイラクからデーツを買いますときに、輸出品から調整金をとっておるわけでございますが、イラク側から見ますと輸出品を高く売りつけるというふうにとられておりまして、従いましてさような点で向こうと交渉が必要になっておる。それからイランにつきましても、これは非常な片貿易でございまして、いろいろ今までも努力しておるのでございますが、昨年の九月に向こうと交渉しました結果、交渉がうまくまとまりませんで、現在向こうといたしまして六品目を除きましてほとんど輸入禁止をしておるというふうな情勢がございます。従いまして、あのせっかくできました業者協定を活用するような以前の問題が今ございますので、うまくいっておりません。ナイジェリアにつきましても片貿易でありますので、いろいろ苦心をしておるのでございます。いろいろ難点がございまして、まだその点は活用されておりませんが、いずれにいたしましても、後進国との貿易を伸ばしますためには、わが方は一次産品を積極的に買わなければならぬ。その買う方法としてどういうふうにするか、この間の改正は一つの解決案でございますけれども、それにいたしましてもいろいろ問題がございまして、私ども苦慮しておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/40
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041・板川正吾
○板川委員 輸取法の問題を蒸し返すわけではないのですが、輸取法を改正しようという場合には、そうした割高物資の買付と輸出の利益とミックスして輸出を大いに伸ばすんだ、これと貿易連合の問題が大きな改正の柱であったのです。ところがそのせっかく改正したのはいいけれども、それが今言われるような実情によって少しも活用されないで伸びないというのは、どうもせっかく改正した趣旨が生きないので、一つ大いにそれは生かしてもらいたい。あらゆる方法をもって生かして、一つ新しい市場を開拓してもらいたい、こう思うのです。
それから、輸出振興でもう一つは、通産大臣の所信表明の中に、実は中国貿易問題には一言も触れてないですね。池田さんが通産大臣のときには、とにかく中国に見本市を開催したいということがあいさつの中にもあったので、中国問題について私は前向きだと言っておった。今度の通産大臣のあいさつの中には、中国問題に何も触れておらない。それじゃ見本市は要らないのかと思って予算の方を見ましたら、見本市の通産省の予算が組んであるのですね。通産大臣として、中国貿易問題を将来どういうふうに考えておられるのか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/41
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042・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 ひとり中国大陸といわず、ソ連等とのいわゆる共産圏貿易ですが、私どもは政治と経済は明確に分離した立場で経済の交流が盛んになるように進んでおります。ただ、今までのところは、それぞれの国にそれぞれの事情がございますし、また、わが方から見ますと、共産国との貿易は、多くの場合片道といいますか、輸入超過になっております。できるだけ貿易の均衡を得せしめたい、そうして貿易を拡大していく、こういう方向で進めていきたい、かように考えております。この態度は、今さらあらためて申し上げる要のないことでございますので、所信表明に特にうたわなかったというだけでございます。別にその方針が変更されておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/42
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043・板川正吾
○板川委員 それでは、中国で一つ見本市をやろうという状況があれば、喜んで通産省としてはその参加の労をとる、予算にもありますからそういう方針だろうと思うのですが、そういうような方向と確認していいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/43
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044・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 必要があればそういうことを考えてちっとも差しつかえありません。また、そういう事柄が計画されるような情勢に進むことが望ましいことだと私思います。また、当方からもそういう機会を通じて日本の品物を相手国にうんと買っていただくようにする、その大へん適当な宣伝の場じゃないか、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/44
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045・板川正吾
○板川委員 通産大臣に次にお伺いいたしたいのですが、御承知のように、米国で互恵通商協定法の改正、それから通商に関する大統領教書が発表されております。この方向は、ヨーロッパ共同市場と一つ大いに提携していこうというところに重点があろうと思う。また問題は、ヨーロッパ共同市場と、米国の生産が八〇%をこえているものは、一つ関税はゼロにしていく方向をやろう、こういうようなことも内容として含まれておりますが、こうした米国の新しい互恵通商協定法の改正と今後の米国の動きが日本の貿易に今後どういうような影響をもたらすだろうか。きょうの新聞には、日計が赤でも歳計余りありとか、こんなことを言って、当面は必ずしもよくはない、しかし長い目で見ればいいだろう、何かこういうような方針のようでありますが、一体通産大臣として、この米国の今後の通商に関する動向というものがわが国の貿易にどういう影響があるだろうか、その点を一つ承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/45
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046・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 互恵通商法を改定して貿易拡大法というか、そういう方向へ持っていく、これは最近各国がとっております貿易拡大、通商拡大というもののその基本態度であり、これは別に変わっているとは思いません。同時にこれはまた自由貿易というか、その方向で拡大していくというのであります。ただ問題は、一億七千万の、また経済的にも非常に恵まれたEECというか、欧州共同体との間に、関税等について引き下げの方向で今後交渉をしていく、この点が具体的には影響を持つことだろうと思います。前段の方では貿易を拡大するという立場をとっておる限り、私どももその貿易拡大につけ込むというか、参加するというか、一翼をにない得る余地があるんじゃないか。これは申すまでもなく各国の経済活動にも限度がある、その限度を越してまでそれらの住民の生活を向上さすという場合に、私どもも、やはり貿易拡大の方向である限り、日本の経済を拡大していくその余地はあるものだと思う。問題はただいまの関税の問題であります。特殊な物についてはその関税をなくするというような処置をとられる、最恵国条項との関係でそういうものがこちらに均霑する、これは自由化の建前からいうと望ましいことだと思いますが、わが方の産業が国際競争力を十分持っておればこれは問題ございません。ところが、もし国際競争力の薄いものが、おれの方は関税を安くしたのだから日本も安くしろということを言われたときに、具体的な問題に当面するだろう。そういう場合にはおそらく米国の物も安くするが日本の物もこういうものは安くしてくれ、そういう外交交渉を持つだろう、こういうふうに考えるべきだと思います。ただいまのところ、重機械というか、そういうようなものについては、当方では関税障壁など設けておりますから、いわゆる国際競争力のないものだ、こういうことが言えるわけであります。そういうものに対しても、平等の立場に置くために、他の品種等についてのやりとりの問題があるんだろうというふうに思います。従って私は、今一部で言っておるように、これは大して心配する筋のものではない、むしろこういう機会にわが方がそれに加入する、進出するその場を見つけるべきじゃないかと思う。
それからもう一つは、どこの国でもですが、いわゆる自由貿易を標榜し、そうして貿易の拡大を表面に押し出しておりますけれども、自国の産業を忘れた通商政策というものはないのでございます。その自国産業を念頭に置いたときに、いわゆる保護貿易の政策が打ち出されてくる、この点を忘れてはならないのですね。だからアメリカのただいまの賦課金問題にいたしましても、あるいはその他の数量制限等の問題にいたしましても、アメリカは一面に自由貿易の立場で貿易を拡大すると言いながらも、自国産業保護のもとでやっておるわけなんです。日本も今後貿易を拡大していく場合に、やはり自国産業を強化しつつ、そういう方向へ進んでいくということになるわけであります。その場合に、競争というか、双方がぶつかる問題ができてくる、そのぶつかりに敗者にならないように、そのためのいわゆる産業自体の新しい構造と申しますかあるいは体質改善と申しますか、そういう方向を努力するということが必要なのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/46
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047・板川正吾
○板川委員 米国の新しい通商政策として新聞等は一般に警戒ぎみですね。必ずしも日本に有利じゃない。これがまあ大勢を占めているようなのです。特に八〇%の条項が適用された場合に、日本の自動車関係なんかはとても太刀打ちはできない、こういうような心配をしておると聞いておるのです。しかし、これは今大臣が言われたように、自国の産業をつぶしては商売は成り立たぬわけですから、その時に応じた一つの保護政策もとられるだろうと思うのです。ただ、この貿易自由化が十月から九〇%になる。今までは比較的自由化しやすいものが先におろされてきておったわけで、なかなか容易じゃないというむずかしいやつが残っておるのです。それが自動車でありあるいは重電機等の機械であろう、こう思うのですが、こういったものが新しい米国の通商政策によって大きな障害を受けるのじゃないか、こういうような心配をしているわけです。しかし、これは一つわれわれも検討して、もう少し先を見てみたいと思うのです。
それからもう一つお伺いいたしたいのですが、これは最近の新聞によりますと、国連の下部機構であるエカフェの三人委員会ですか、ここからアジア共同市場について一つ日本の意向を伺いたいということがきて、閣議では前向きで考えて慎重に考慮する——まあその二つ、前向きと慎重というのが新聞の見出しのようであります。私は、原則として日本の貿易というのは、将来アジア貿易の方へもっともっと力を入れるべきだという考えを持っておるのですけれども、これに対して前向きと慎重——どうも池田内閣の前向きというのは、自分一人の前向きで、さっぱり前へ向いて歩こうとしない点があるのです。あれに対する閣議の決定というものはどういう方向を打ち出そうとしておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/47
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048・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 これは企画庁長官が答えるのがいいのか、通産大臣がいいのか、どうもあるいは外務大臣が一番いいのかとも思いますが、だれがいいかは別として、ついせんだって関係閣僚の懇談会を持ったばかりであります。そのときの模様を申し上げて、今の前向き、慎重のいわれをお話してみたいと思います。
第一回の懇談会を持ちましたが、この第一回の懇談会は、各省大臣の各省の意見のまずヒヤリングでございます。従いまして、全部が同様の意見を開陳したわけではない。そこに慎重にこれから各省の意見をまとめる必要のあること、これでおわかりだと思います。それから同時に、これはなぜそういうふうに違うのかと申しますと、エカフェ加入の十八カ国ですか、この十八カ国の国情というものは、それぞれみな違っております。政治的にも違うし、経済的には特に変化の多い地域でございます。それで比較的先進国の仲間入りのできる国といえばまず日本という立場でございますから、日本が入らないその種の会合というものはまず考えられない。しかして三人委員会というものが、それならば十八カ国の意見をよほどよく代表して取りまとめたものかどうかと申しますと、いわゆる三人委員会は三人委員会でございます。いわゆる十八カ国の意向なども十分明確に出ておるわけでもございません。そういうことを考えますと、やはりここにもう一つ慎重であることが必要であるということであります。それから同時にまた、こういうものはなるべくできた方が望ましいじゃないか、こういう意向もある。日本が率先して音頭をとることならこれはいろいろ誤解を受けることもあるかしらないが、この三人委員会においてそういう話が出、そうしてエカフェの事務局が起案するその立場なら、日本としてもこれは前向きで考慮に値することじゃないか、こういうのでございます。で、第一回の懇談会を持って、直ちに結論を出したわけでないから、新聞に報道されておるごとく慎重に扱う、同時に前向きでこの問題と取り組んでいく、今後さらに二回、三回と会合を重ねていく、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/48
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049・板川正吾
○板川委員 将来の構想ですから、ヨーロッパの共同市場でも十年の準備の時期があったのです。同じような経済の力を持っている国、条件が整っている国でも、それだけの時間があったのです。アジアの場合にはなかなか経済の関係が同一でないから、むずかしいものがあろうと思います。しかしそれはヨーロッパ共同市場と同じようなものを作ろうとするからむずかしいのであって、そういうアジアの情勢に応じた共同市場といいますか、経済協力圏といいましょうか、そういったものは、私は国家百年の大計からいって、当然前向きから一歩前進していく方向に進むべきだ。また池田内閣の方針として、ヨーロッパとも西欧とも協調するが、アジアの一員であることを確認するということもあるのです。その場合に、日本が除かれたアジア共同市場なんというのは意味がないわけですから、慎重に検討されるのはけっこうでありますが、前向きから前進をされることを要望しておきます。
それから通産大臣の何点かについての施策があります。第一に中小企業の振興ということを取り上げております。中小企業の振興を第一に持ってきたんだから、ことしは一つ中小企業基本法でもされるのだろうと思ったのですが、中小企業基本法の提案については触れておりません。中小企業基本法を最近政府としてこの国会に提案する意思はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/49
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050・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 まだ通産省としては成案を得ておりません。しかし、与党ではすでに成果を得られたやに伺っておりますし、今後十分に相談し検討して参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/50
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051・板川正吾
○板川委員 農業基本法のときに、大内兵衛先生かが、あの農業基本法が比較的短時日にできたのは、農業の関係の統計が非常に整備しておったからだ、農業関係の統計というものは末端にも統計事務所があって、なかなか実態をよく把握しておる、これが農業基本法を作るのに非常に役立った、こういう感想を漏らしておったと思うのです。それに比較すると、中小企業の場合は、中小企業の実態をとられた統計というのが非常に不足のように思う。われわれが作ろうと思っても、まことに材料がなかなか手近にない。これはやはり中小企業庁の不備だと思うので、中小企業庁におけるそうした実態を把握する統計、こういったものを一つ強化していくべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/51
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052・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 とにかく実態を十分把握することが必要だと思います。今、中小企業庁がそういう実態を持たない。こういう御指摘でございます。しかし、中小企業基本法は、もうすでに社会党さんの案も出ておりますし、近く与党の案も出るということでございます。ただいま法案自身が進みつつあり、そうして実態論といういかにも慎重論では、ちょっと情勢に合わないような気がする。そこに同時に私どもの不安があるわけでございます。だから今の法案が、社会党の御提案になります中小企業の、それもおそらく政策に基ついてお進めになっておると思いますが、今御指摘になるように、資料は不十分、その際に法律案をどんどん進めることが政府としてどうだろうか、もっと実態をつかみたい、そういう意味で私の方は実は慎重にいたしておるのです。しかしながら要望が非常に強い。いつになったらその準備ができるんだという強い要望もございますし、そういう意味から申せば、各党の案等も出そろっている際に、政府自身が拱手している手はないであろう、こういう意味で積極的に各党の案と取り組んでみる、こういう気持で実はおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/52
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053・板川正吾
○板川委員 中小企業の統計部門を強化してくれ、こういう要望ですから、一つ考慮してもらいたいと思います。時間がないから、 あと二、三点お伺いしますが、重点の第三として自由化対策の強化と拡充という項で、エネルギー問題に大臣が触れられております。これは石油業法がいずれ出るでしょう、その際にまた詳しく議論をしたいと思うのですが、ただ私に、大ざっぱな考えとして、石炭をどうも従来は経済ベースのみで見てきた、まあそれはそれでいい。最近になってこれは社会問題として政府も大きく取り上げて取り組んだ。しかし私は、石炭問題は、もう一つ日本の産業のエネルギーの安全保障というのですか、ごろが正しくないかもしれませんが、最近の総合エネルギーという観点から見ると、石油がどんどん伸びてきている。しかもその石油の大半、九割何分が輸入による。その輸入による石油の大半は、欧米のいわゆる国際石油資本が掌握しておる、こういう形になっておる。万一そういった輸入エネルギーの供給が停滞でもした場合には、これは大へんなことになる。日本の産業が半分になるということになってしまうと思うのです。その場合には、どこの国でも石油の二カ月間、三カ月間の貯蔵義務なんか持たしておるけれども、日本で石油業者に貯蔵義務を持たせるということは適当でないかもしれません。しかし石炭をある程度、たとえば五千五百万トン・ベースは保証する、これ以下には下げない、こういう政府の長期の方針、こういったものが、石油の何カ月間の貯蔵というエネルギーの安全保障という効果を持っておるだろう、こう思うのです。ですから、石炭政策は、最近加えられた社会性を見るばかりではなくて、エネルギーの安全保障、安全供給、こういう面から石炭問題も評価すべきではないか、こう考えております。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/53
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054・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 板川君の御意見に私賛成でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/54
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055・板川正吾
○板川委員 それから大臣が「官民協力のもとに国産品愛用運動を広く展開する等の施策を講じ、もって貿易の自由化の円滑な実施を期したいと存じます。」こう言っております。これは多分この前にも同様な趣旨のことがうたわれてありました。国産品愛用運動は効果がありますか、どの程度に効果があると考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/55
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056・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 商工会議所を中心にして、今回国産品普及推進本部、そういうものを作って、政府が、わずかではございますが、その補助金も出すようになっております。従いまして、今後の運動の展開に待たなければならないと思いますが、これは相当効果を上げ得る素地はある、実はかように考えております。と申しますのは、先ほど来四十七億ドルの輸出は可能か、四十八億ドルの輸入はそれを押えることができるかというようなお話がございましたが、現に国産品はどんどん外国へ行っておるのです。そして、外国においては日本の商品に市場を撹乱されるといって、いろいろな条件、障壁まで設けておるのです。このことをどうも根本に忘れているんじゃないかと思う。そのことがちゃんと頭にあれば、日本の時計はりっぱな時計だ、日本のカメラはりっぱなものだ、トランジスターなら外国で買う必要はない。最近はあるいは電気洗たく機にしても、冷蔵庫にしても外国に劣らない。ひとり繊維製品ばかりじゃありません。ことに時計なども非常に評判がよろしい。あるいは写真機もちろんであります。これは身の回りのものついて申すのでありますが、これ以外に、たとえば機械の部門で、よもや紡績機械を外国から買われるような実業家はないでしょう。もう日本の紡績機械はどんどん外国へ行っている。そうすれば、紡績機械国内で言わなくても使用される。同様なことが工作機械その他にも言えるわけであります。どんどん国産でできておる。だから、これはいわゆる身の回りのもの、あるいは化粧品あるいはインスタント・コーヒー、こういうような部類でなくて、産業全部門にわたってもう少し日本品の優秀性、これを国民自身が自負あるいは自覚してしかるべきものだ、こういうことが必要だ。そのために同時に国産品の規格等も周知徹底するような方法が必要だと考えます。あるいはお互いが消費者協会等とも提携して粗悪品等を駆逐するとか、こういうような運動も望しまいんじゃないか、かように思います。
だから、国産品愛用の普及運動を展開して、どれだけの効果があったか、これは数字的に出すことはなかなかむずかしいかと思いまするが、その余地が多分にあるということ、ここらに運動の目標があることを御了承いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/56
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057・板川正吾
○板川委員 前段の輸出の問題ですが、その前に、関連しちゃうから戻りますが、日本が非常に輸出をしておって、輸出先で混乱があります。いろいろ排斥運動なんかも起きている、あるいはガットの三十五条等の援用がなかなかとれない。それはどうも日本商品がいいといっても、いいからといって人の——売り方に問題があるんですね。人が店を開いている軒先へ行っておれの方が安いんだ、こういう形になるからいけない、新しい市場を開拓しようという点に欠けておって、人が魚がつれるからおれもそこへ行ってやろうというようなことでやるから問題を起こすんですね。だから、これは市場開拓という、自分でいいものを売りたかったら自分で新しい市場を開拓するということが私は大切だ、こう思うのです。
この国産品愛用運動ですが、確かに時計や何かは日本のものは優秀である。しかし一般はまだまだ外国性の方が優秀のつもりになっておる。ドイツ人なんかは絶対に自分のところの品質に自信を持っておるから、自分の国のものが一割やそこら高くても、これは品物がいいんだから自分のところのものを買う、こういうような習慣があるそうです。ところが日本は、たとえば腕時計にしても、外国の品より日本の品の方がよくても、外国の品の方がいいように思っておるから、そこに国産品愛用運動の必要があろうと思うのですが、この「官民協力のもとに」、こう書いただけでは大して実効はないだろう。具体的に言いますと、国産品を優先的に使え、こういう法律で規制している国があります。調査して下さい。それは一般じゃないか。ガットの関係がありますから、そういうことは全部に法律で規制するわけにいきませんが、政府機関では、性能が同じ程度であれば、アメリカの州では六%までは国産品を買わなくちゃいけない。ベルギーは一〇%まで高くても買わなくちゃいけない。ノルウェーは二二%高くても買え、こういう法律である程度規制する。日本は長い間の習慣で舶来品は優秀だという頭があります。ですからそういう頭を切りかえさせるためには、たとい時限法でもいいから、そういうある程度差があっても国産品を政府機関では買わなくちゃいけないという規制をされたらどうだろうか。そうすると、ずっと頭が切りかわってくるのじゃないか、こう思うのです。官公需に対する国産品優先主義というのですか、こういうような法律を、この運動をもっと強固にするために、やる気持はございませんか。特に総評でも大いに一つ国産品愛用運動をやろう、こう言っておるのですから、いつも政府としては目のかたきにしておるようですが、その総評が国産品愛用運動をやろうというのですから、これこそ官民一体となってやる気持はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/57
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058・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 これは法律を作ることは技術的にどうかと思いますが、政府機関が国産品を使うこと、これはみずからきめ得ることだし、またこれをきめたからといって、外国からどこからも文句を言われることじゃございません。そういう意味で普及推進という場合に第一にその点は考える。今さら官庁が範を示すという筋じゃございませんけれども、やれるところからまずやる、こういうことで進めておるわけであります。すでにこの点は、自動車などにおいて官庁は国産自動車を使うということをきめておりますから、そういうことではっきりいたしております。——ちょっと速記を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/58
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059・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/59
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060・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/60
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061・板川正吾
○板川委員 時間も大へんおそくなりましたから、一応これで打ち切りますが、一つ国産品愛用については法的規制を考えて下さい。もしだめならば、われわれ議員立法として考えたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/61
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062・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十三日、火曜日、午前十時に理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後一時十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X00619620209/62
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